説明

EDDNを経由するTETAの新規製法

本発明は、次の段階を含むトリエチレンテトラアミン(TETA)の製法に関する:
a)エチレンジアミン(EDA)をホルムアルデヒド及び青酸(HCN)と反応させてエチレンジアミンジアセトニトリル(EDDN)を取得し、この際、EDA対ホルムアルデヒド対HCNのモル比は、1:1.5:1.5〜1:2:2[モル/モル/モル]であり、
b)触媒及び溶剤の存在下で、段階a)で得られるEDDNの水素添加。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒でのエチレンジアミンジアセトニトリル(EDDN)の水素添加によるトリエチレンテトラアミン(TETA)の製法に関し、この際、EDDNはエチレンジアミン(EDA)とホルムアルデヒド及び青酸(HCN)との反応によって製造される。場合により、EDDNは、付加的にエチレンジアミンモノアセトニトリル(EDMN)を含有するアミノニトリル混合物の成分としても存在し得る。水素添加の際に場合により得られるジエチレントリアミン(DETA)を返送することによって、アミノニトリル混合物中に、付加的にジエチレントリアミンモノアセトニトリル(DETMN)又はジエチレントリアミンジアセトニトリル(DETDN)が含有され得る。この更なるアミノニトリルの水素添加によって、付加的にテトラエチレンペンタアミン(TEPA)が得られる。
【0002】
一般に、場合によりなお更なる官能基で置換されている脂肪族ニトリルは、触媒の存在下で、相応するアミンに水素添加され得ることは公知である。後記に示すように、そのような水素添加法は、若干のアミンを製造するための様々なアミノニトリルについても公知である。しかし今日まで、TETAが、アミノニトリルEDDNから又は場合によりEDDN及びEDMNを含有するアミノニトリル混合物から出発して、アミノニトリルの直接的水素添加によっても製造され得ることはどこにも記載されていない。しかし後記に示すように、TETAの従来公知の製法は不利な点と結びついている。
【0003】
公知技術水準において、α‐アミノニトリル アミノアセトニトリル(AAN)及びイミノジアセトニトリル(IDAN)又はβ‐アミノニトリルの多数の水素添加法が記載されている。即ち、通例では、β‐アミノニトリルの水素添加は問題なく行なわれるが、α‐アミノニトリルの水素添加は、多くの不都合な点の出現、例えば、C‐CN結合又はRN‐C結合の水素添加分解と結びついていることが公知である。"Handbook of Heterogeneous Catalytic Hydrogenation for Organic Synthesis, S.213-215"は、α‐アルキルアミノニトリル又は環状α‐アミノニトリルにより、α‐アミノニトリルの水素添加の問題性を、β‐アミノニトリルに比較して示している。α‐アミノニトリルの公知の安定率問題は、今日までα‐アミノニトリルAAN又はIDANのEDA(エチレンジアミン)又はDETA(ジエチレントリアミン)への水素添加だけがより詳しく記載されている主な理由であろうと推測される。しかし大工業的に、EDA又はDETAは、次に記載されるEDC法又はMEA法によって製造される。しかし、より高級のα‐アミノニトリルについては、相応する水素添加は記載されていない。
【0004】
DE‐A3003729に、溶剤系の存在下で、コバルト触媒又はルテニウム触媒を用いる、脂肪族ニトリル、アルキレンオキシニトリル及びアルキレンアミノニトリルの、一級アミンへの水素添加法が記載されている。使用される溶剤系は、水及びアンモニアの他に、エーテル又はポリエーテルを含有する。出発物質として使用可能なアルキレンアミノニトリル又はアルキレンオキシニトリルは、各々、複雑な一般式によって定義されている。特に、相応するジアミンに水素添加され得る具体的な化合物又は例として、エチレンジアミンジプロピオニトリル(EDDPN;N,N’‐ビス(シアノエチル)‐エチレンジアミンとしても示される)又は3,3’‐(エチレンジオキシ)‐ジプロピオニトリルが挙げられる。これに対して、DE‐A3003729は、シアノメチル置換基を有するEDA‐誘導体の単一化合物、例えば、EDDN又はEDMNの使用に関する言及は明らかにしていない。更に、後者はその文書によるアルキレンアミノニトリルの一般定義下にはない。
【0005】
EP‐A0382508は、有利に無水アンモニアの存在下で、ラネーコバルト触媒での液相における非環状の脂肪族ポリニトリルの水素添加による、非環状の脂肪族ポリアミンのバッチ式製法を記載している。この際、ラネーコバルト触媒を実際に無酸素の雰囲気中で含有する反応帯域にポリニトリル溶液を供給する。全反応時空間にわたり、ポリニトリル溶液を、ポリニトリルが水素と反応帯域中で反応する最高速度よりも早くない速度で供給する。この方法で、ポリアミンは、ポリニトリル、例えば、イミノジアセトニトリル(IDAN)、ニトリロトリアセトニトリル(NTAN)、エチレンジアミンテトラアセトニトリル(EDTN)又は2個以上のシアノ基を有する詳細には未明記の他の化合物から製造され得る。IDANの直接的水素添加生成物は、ジエチレントリアミン(DETA)である。
【0006】
EP‐A212986は、EP‐A0382508と同様の脂肪族ポリニトリルを、出発物質流中に含まれる液体の一級又は二級アミンの存在下で、顆粒のラネーコバルト触媒で水素添加させて、相応するポリアミンを得ることができるもう1つの方法に関する。特に、余儀なく存在するアミノ成分として、エチレンジミン(EDA)が、多数の更なる一級又は二級アミンとともに挙げられる。
【0007】
EP‐A1209146は、ニトリルから一級アミンへの連続水素添加のためのもう1つの方法に関し、この際、各々のニトリルを、液相で、アルミニウムを含む合金をベースとする懸濁化の活性化ラネー触媒と共に使用し、反応はアンモニア及び塩基性アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物が不在で実施される。ニトリルとして、多数の他のものと共に、IDAN、EDTN、EDDPN又はエチレンジアミンモノプロピオニトリル(EDMPN)も相応するエチレンアミンに変換され得る。
【0008】
EP‐B0913388は、ニトリル基の一級アミンへの変換を実施するための条件で、コバルトスポンジ触媒の存在下で、ニトリルと水素との接触を包含するニトリルの触媒的水素添加法に関する。先ずコバルトスポンジ触媒を、触媒量の水酸化リチウムで処理し、かつ水の存在下で方法を実施する。ニトリルとして、1〜30個の炭化水素原子を有する脂肪族ニトリル、特にβ‐アミノニトリル、例えば、ジメチルアミノプロピオニトリルも好適である。相応するポリニトリルからポリアミンを製造するもう1つの製法は、DE‐A2755687に公開されている。この方法では、触媒の分解を抑制する安定剤の存在下で、錠剤形の水素添加触媒での水素添加が実施される。ポリニトリルとして、特にエチレンジアミンジプロピオニトリル(EDDPN)が使用され得る。安定剤として、特にEDAが好適である。
【0009】
US‐A2006/0041170は、TETA、殊にTETA塩の製法及び薬剤としてのその使用に関する。この多段階法では、先ずEDDNが製造される。引き続いて、EDDNをベンズアルデヒドと、(環状)イミダゾリジン誘導体の生成下に反応させる。2個のシアノ基を有するこの環状化合物を、例えば、水素との反応によって還元させ、この際、相応する環状のジアミノ化合物が得られる。酸の存在下で、このジアミノ化合物を再び加水分解させ、相応するTETA塩を得る。選択的実施態様で、環状ジアミノ化合物を、同様にベンズアルデヒドと反応させ、相応するジイミン化合物を生成させ、酸の存在下で、引き続きこれを再び加水分解して、相応するTATE塩を得る。他の方法選択として、この文書中に、EDDNとBoc保護基(三級ブトキシカルボニル基)との反応が記載されている。ここで得られる、二個のBoc保護基で保護されたEDDN誘導体を、引き続いて水素添加して、相応する保護されたTETA誘導体を得る。Boc保護基の離脱は、酸性加水分解によって、相応するTETA塩の取得下に行なわれる。US‐A2006/0041170に記載されたこの方法の欠点は、殊に、水素添加を実施するために、使用される出発物質EDDNを、始めに化学的に誘導体化させなければならない多段階水素添加法が問題であるということである。更に、先ずTETAを塩として生成させて、遊離塩基形で生成させないことが欠点である。
【0010】
従って、EDDN又はEDDN及びEDMNを含むアミノニトリル混合物を、アミノニトリルの直接的水素添加によって、TETA及び場合により他のエチレンアミンの製造に使用することができることは、公知技術水準にはどこにも記載されていない。しかし、他の(大工業的)TETA製法は公知である。
【0011】
EP‐A222934は、強塩基の添加下に、水相で、過剰量のアンモニアと隣接ジハロアルカンとの反応による高級アルキレンポリアミンの製法に関し、この際、イミン中間生成物が生成され、これを引き続きアルキレンポリアミンと反応させ、高級アルキレンポリアミンを生成させる。隣接ジハロアルカンとして、殊に、エチレンジクロリド(EDC又は1,2‐ジクロルエタン)が好適である。アルキレンポリアミンとして、殊に、エチレンジアミン又は高級エチレンアミン、例えば、DETA、しかしTETA及びテトラエチレンペンタアミン(TEPA)も使用される。この方法(EDC法)では、様々なエチレンアミン(直鎖エチレンアミン、例えば、EDA、DETA、TETA、TEPA又は高級エチレンアミン及び環状誘導体、例えば、ピペラジン(Pip)又はアミノエチル‐ピペラジン(AEPip))の混合物が生成する。いずれのエチレンアミンが出発物質EDC及びNHに添加されるかに応じて、反応混合物は相応する割合の高級エチレンアミンを含有する。例えば、合目的にTEPAを製造すべき場合には、出発物質EDC及びNHにエチレンアミンTETAを添加する。この方法で、生成物(エチレンアミン混合物)は、より高い割合のTEPAを含有するが、前記の他の直鎖及び環状のエチレンアミンも含有する。この方法の欠点は、殊に、この方法が少ない選択率で経過する(得られるエチレンアミン混合物の成分に関して)及び始めに特異的エチレンアミン(例えば、DETA)を製造し、これを、次に高級エチレンアミン(例えば、TETA)を合目的に製造するために又は収率を高めるために、引き続いて方法に装入しなければならないことである。更にこの方法は、使用される出発物質(ハロゲンアルカン)及び生成する塩酸に基づく腐食問題及び生成する塩に基づく環境問題を示す。
【0012】
US‐A3462493は、TETAの製法に関し、この際、少なくとも5倍のモル過剰量のEDAをエチレンジクロリド又はエチレンジブロミドと反応させる。この際、副生成物として、殊にPip又はピペラジノエチルエチレンジアミンが生成する。
【0013】
DE‐T68911508は、直鎖的に延長されたポリアルキレンポリアミン、例えば、TETAの選択的製法を記載している。この方法では、二官能性脂肪族アルコールとアミン成分とを、タングステン含有触媒の存在下で反応させる。二官能性脂肪族アルコールとして、殊に、モノエタノールアミン(MEA)が好適であり、アミン成分として、例えば、EDA又はDETAを使用することができる。この方法によって、原則的に、直鎖的に延長されたポリアルキレンポリアミンを含む混合物(要するにエチレンアミン混合物)が得られる。このエチレンアミン混合物中には、エチレンアミンDETA、TETA、TEPA、Pip、AEPip又は高級エチレンアミンのピペラジン誘導体が含まれ、この際、各成分の割合は、使用されるアミン成分に応じて変化する。アミン成分としてDETAを使用する場合には、高い割合のTETA及びTEPAを有するエチレンアミン混合物が得られる。この方法では、低い選択率で方法が経過すること(得られるエチレンアミン混合物の成分に関して)及び二官能性脂肪族アルコール(例えば、MEA)と反応させる、付加的なエチレンアミンを始めに合成しなければならないことが欠点である。この際、より大量の副生成物、例えば、アミノエチルエタノールアミン(AEEA)又はより高級のヒドロキシ含有のエチレンアミンが生成し、これらは経済的にはあまり重要ではない。より多量で生成する副生成物は、MEA又はより高級のエタノールアミン(例えば、AEEA)が、使用されるアミンのかわりに、それ自体と反応し得ることに理由がある。(統計的に)多くの反応可能性に基づき、直鎖TETAへの選択率は、カップリング生成物という理由で全く低く、かつ制御不可能である。合成は部分的変換率でのみ可能である。
SRI-Report"CEH Product Review Ethyleneamines";SRI International,2003;S.53-54は、エチレンアミンの製造に関する概観を示し、ここでは、前記の方法(出発物質EDC又はMEAを用いる)に相応して、殊にEDA又はDETAが製造される。この際、高級エチレンアミン、例えば、TETA又はTEPAが副生成物として生成し、又はこれらは出発物質とEDA又はDETAとの新規の反応によってより高い収率で得られる。
【0014】
更に、EDDN又はEDMNの製法が既に散発的に文献に記載されている。即ち、K. Masuzawa et al., Bull. Chem. Soc. Japan, Band 41(1968)702-706頁は、2‐ピペラジノン誘導体の窒素類似体及び硫黄類似体の製法及び反応を記載している。この物質群の製造のために、先ず出発物質EDA及びFACHから出発する。2つの成分の反応は等モル比で行なわれ、この際、メタノールが溶剤として使用される。反応溶液を室温で2日間放置した後に、溶剤及び未反応の出発物質の減圧下での除去後、油状の生成物が得られる。この油状生成物は、環状化合物の他に、EDMNも副成分として含有する。この反応は、水の遮断下に行なわれた。油状生成物を、引き続いて、多段階法で更に、所望の2‐ピペラジノン誘導体に反応させる。この文書では、EDAとFACHとの反応での不所望な副反応として、EDDNの製造も記載されている。モル過剰量のEDAとFACHとをメタノール中55〜60℃で反応させる場合には、EDDNが得られる。減圧下での濃縮後に、生成物単離が真空蒸留によって行なわれる。この際、使用されたEDAに対して約27.3%の収率が得られる。
【0015】
H. Baganz et al., Chem. Ber, 90(1957), 2944-2949頁は、N,N’‐エチレン‐ビス‐アミノ酸誘導体の製法を記載していて、この際、EDDNの二塩酸塩がこの多段階法の出発物質として用いられる。この文書に、EDDNの二塩酸塩についての合成法も見出される。この際、EDAの二塩酸塩及びシアン化カリウム(KCN)を反応容器中に前もって装入させ、引き続いて30%のホルムアルデヒドを反応容器に滴加させ、この際、反応温度は25℃を超えない。12時間の反応時間及び苛性ソーダ溶液の添加後に、生成物をエーテルで振出させ、乾燥させ、塩化水素の添加によってアンモニウム塩として生成させる。得られる生成物を引き続いて結晶させる。この方法の欠点は、殊に、塩化水素及びKCNの使用であり、これにより水相は極めて塩含有となる。更に、EDDNの良好な水溶性に基づき、反応生成物が完全にはエーテル相に移行しないので、エーテルでの抽出は問題である。
【0016】
H. Brown et al., Helvetica Chimica Acta, Band 43(1960) 659-666頁は、チアゾール系列を含む錯化剤の製法を記載している。この多段階法では、EDDNを出発物質として使用し、更に、EDDNの製造のための合成法がこの文書に含まれている。そこに記載された方法により、水中のEDAを反応装置に前もって装入させ、その後に攪拌及び氷冷下にHCN及び水中のシアン化カルシウム(Ca(CN))を同時に添加させる。しかしこの方法では、ホルムアルデヒドを使用しない。経費のかかる処理後に、比較的少ない収率でEDDNが得られる。
【0017】
既に前記したUS‐A2006/0041170は、そこに記載された出発物質EDDNの製法も同様に含む。一方で、EDDNは、ハロアセトニトリル、例えば、クロルアセトニトリル又はブロムアセトニトリルでのEDAの直接的アルキル化によって製造され得る。他方で、EDDNは、EDA、殊にEDAの二塩酸塩を、先ずホルムアルデヒドと、次いでシアノ塩、例えば、KCNと既に前記したように反応させることによって製造される。ここで得られる反応生成物を、更に酸で処理する。EDAを出発物質として使用する場合には、先ず付加的にEDAをその塩形、殊に二塩酸塩に変換させ、その後にホルムアルデヒドと更に反応させる。この方法の欠点は、シアノ塩の使用による塩生成である。EDAを直接塩として使用するか、又は先ず塩に変換させるので、EDA塩の固体取扱が、同様に欠点である。更に、US‐A2006/0041170に記載された方法は、連続的使用には適さない。
【0018】
従って、本発明の課題は、TETA及び場合により合目的量で更なるエチレンアミンを製造するための簡単かつ経費的に有利な方法を得ることである。
【0019】
この課題は、次の段階を含むトリエチレンテトラアミン(TETA)の製法によって解明される:
a)エチレンジアミン(EDA)をホルムアルデヒド及び青酸(HCN)と反応させてエチレンジアミンジアセトにトリル(EDDN)を取得し、この際、EDA対ホルムアルデヒド対HCNのモル比は、1:1.5:1.5〜1:2:2[モル/モル/モル]であり、
b)触媒及び溶剤の存在下で、段階a)で得られるEDDNの水素添加。
【0020】
本発明による方法は、TETA及び場合により更なる主成分DETAを、高い変換率及び/又は選択率で製造することができるという利点を有する。高められた選択率は、殊に、使用されたEDDNが圧倒的にTETAに水素添加されることで判明する。この際生成される副生成物は、主に他の直鎖エチレンアミンである。環状エチレンアミンの割合は、本発明による方法では比較的少ない。しかし、他のエチレンアミンは、部分的に同様に重要な有価生成物であり(主に直鎖エチレンアミン、例えば、DETA)、その単離は、例えば、大工業的方法で利益価値がある。これに対して、環状エチレンアミン、例えば、AEPipは有価生成物としてあまり重要ではないが、返送によって更に反応させることができる。
【0021】
本発明による方法の選択率は、有利な方法で、水素添加の前に、低沸点物、殊に青酸(HCN)分離を実施することによって高められ得る。この際、青酸はホルムアルデヒドシアンヒドリン(FACH)の分解生成物としても生じ得る。殊に青酸は水素添加の際に触媒毒として作用する。
【0022】
低沸点物が分離されているかぎり、EDDN及び場合により他のアミノニトリル、例えば、EDMN又はDETDNは、より早く及びより高い選択率で製造され得る。このことは、続いての水素添加での選択率に肯定的にも作用する。
【0023】
有利な方法で、EDDN及び場合によりEDMNを完全に又は殆ど完全に反応させる。このことは、殊に大工業的方法では重要であり、それというのも、通例、未反応の出発物質を製造循環に返送する又は廃棄しなければならないからである。大量のEDDN及び/又はEDMNが反応されない方法は、EDDN又はEDMNの高い不安定性に基づき、特別な欠点である。一方で、EDDNもEDMNも、より高い温度で分解傾向を有し、従って、分解生成物を各循環に返送させることはできず、他方で、この分解は爆発的強度で経過し得ることもある。本発明による方法で、アミノニトリルは完全に反応され得るので、生成物循環への返送については努力する必要はない。
【0024】
本発明による方法のもう1つの利点は、EDC法に比べて、出発物質としての塩素化炭化水素の使用を放棄することができることである。更に、塩酸又はその塩は、更なる反応生成物として生成しない。前記物質の廃棄は、殊に大工業的方法では(環境)問題である。MEA法に比較して、異なった出発物質に基づき、AEEA及びヒドロキシ官能基を有する他の化合物の生成は役に立たないことが有利である。同様に、本発明による方法を連続的に実施し得ることが利点である。
【0025】
本発明による方法で、アミノニトリル混合物を水素添加するかぎり、市場の需要に応じて、より高い又はより低い割合のTETA又はDETAを製造することができることが利点として見なされ得る。このことは、出発物質EDMN対EDDNの比率が、原則的に、生成物におけるDETA対TETAに関して再現されることに基づく。即ち、本発明による方法では、市場で所望される量比を得るために、特殊なアミノニトリル混合物組成物を合目的に使用することができる。本発明による方法により、TETA少なくとも30%を、DETA少なくとも5%と共に及び場合により他のエチレンアミン、例えば、ピペラジン誘導体を有価生成物として含有するエチレンアミン混合物を高い選択率で得る。
【0026】
更に、本発明による方法は、段階a)に基づき、EDDN及び場合によりEDDN及び他のアミノニトリル、例えば、EDMNを含有する合目的混合物を、簡単な方法でかつ高い純度で製造することができるという利点を有する。EDDNも場合によりEDMNも、簡単な方法で、純粋な結晶形で単離させることができるが、これに対して、公知技術水準による方法では、生成物は粘性の液体として生成し、これから所望の生成物は経費のかかる処理手段によってのみ、かつ悪い純度で単離され得る。
【0027】
本発明による方法のもう1つの利点は、シアノ塩、例えばKCN及びCa(CN)を放棄することができることである。更に、本発明による方法では、有利な方法で、EDAを塩としてではなく、遊離塩基の形で出発物質として使用する。従って、本発明による方法では、反応溶液中の塩の割合はより少なく、かつ従って、塩含有副生成物又は未反応出発物質もより少なく生じる。このことは、殊に大工業的方法では利点である。反応溶液中の高い塩含量は、殊に、本発明による方法が水相で実施される場合には不利である。従って、少ない反応段階で、所望の生成物を簡単な方法で製造することができる。更に、本発明による方法、殊に段階a)を連続的に実施し得ることは有利である。
【0028】
本発明による方法のもう1つの実際の利点は、1種だけの出発物質(EDA)から出発して、2種の(主)生成物(TETA及びDETA)を合目的に調整可能な比率で相互に含有するエチレンアミン混合物を製造することができることに見ることができる。本発明のもう1つの実施態様で、エチレン混合物中に含有されるDETAを全て又は部分的に、有利にFACHと反応させるために、段階a)に導き戻すことができる。この方法で、DETDN及び/又はDETMNを製造し、これらを次に更に水素添加してTEPA又はTETAにする。従って、出発物質(EDA)から出発する本発明による方法及び水素添加生成物DETAの部分的返送によって、異なったエチレンアミンTEPA、TETA及びDETAを製造することができる。選択された出発条件に応じて、前記の主生成物が可変比率で相互に存在するエチレンアミン混合物を製造することができ、この際、個々のエチレンアミン(TETA、TEPA及び/又はDETA及び場合により他の副生成物)を、エチレンアミン混合物から単離させることができる。
【0029】
もう1つの実施態様で、水素添加の際に環状副生成物として生成されるAEPipを段階a)へ返送することも考慮することができる。AEPipを相応するアミノニトリルへ反応させ、かつ引き続いて水素添加させることにより、ジアミノエチルピペラジン(DAEPip)、ピペラジンエチルエチレンジアミン(PEEDA)及びアミノエチルピペラジニルエチルエチレンジアミン(AEPEEDA)が得られる。これらの環状エチレンアミンは、同様に有価生成物として重要である。
【0030】
段階a)
段階a)により、エチレンジアミン(EDA)をホルムアルデヒド及び青酸(HCN)と反応させ、エチレンジアミンジアセトニトリル(EDDN)を取得し、この際、EDA対ホルムアルデヒド対HCNのモル比は、1:1.5:1.5〜1:2:2[モル/モル/モル]である。
【0031】
次に他の記載のないかぎり(選択a1)〜a4))、段階a)の出発成分を任意の順序で各反応容器中に加えることができる。例えば、1種の出発物質を完全に前もって装入させ、かつ第二の出発物質を添加することができる。EDDNは、次に挙げる選択a1)〜a4)の1つにより製造することが有利である。EDDNは、選択a1)により製造することが特に有利である。
【0032】
選択a1)により、先ずホルムアルデヒド及びHCNを反応させて、ホルムアルデヒドシアンヒドリン(FACH)にさせ、この際、引き続きEDAを再びFACHと反応させ、EDA対FACHのモル比は1:1.5〜1:2[モル/モル]である。DEA、ホルムアルデヒド及びHCNは、商業的に入手できる生成物であり、又は原則的に当業者に公知の方法で製造され得る。本発明による方法では、EDAをその遊離塩基の形で使用することが有利であるが、場合によりEDAの塩、例えば、二塩酸塩を出発物質として使用することもできる。
【0033】
ホルムアルデヒド及びHCNの反応は当業者に公知である。FACHの製造は、水性ホルムアルデヒドと青酸との反応によって行なわれ得る。ホルムアルデヒドは30〜50%の水溶液として有利に存在し、青酸は90〜100%の純度で有利に使用される。この反応は、有利に苛性ソーダ溶液又はアンモニアで調整されるpH値5.5で行なうことが有利である。反応は、例えば、ループ反応器及び/又は管反応器中で、20〜70℃の温度で行なわれ得る。
【0034】
精製された青酸(HCN)の代わりに、HCN生ガスを、ホルムアルデヒド水溶液中で前記の条件下に化学吸着させ、FACHを得ることができる。HCN生ガスは、有利にホルムアミドの熱分解によって製造され、水とともに、殊に少量のアンモニアを含有する。
【0035】
得られるFACH水溶液を、場合により、慎重な真空濃縮蒸発、例えば、薄膜式蒸発器又は薄層蒸発器で濃縮することができ、低沸点物、殊に青酸を除去することができる。濃縮は、有利に50〜80%のFACH溶液まで行なわれる。濃縮の前に、例えば、酸添加による、例えば、燐酸又は有利に硫酸の添加による、pH値≦4、有利に≦3への低下によるFACH溶液の安定化が有利である。
【0036】
選択a1)で、EDA対FACHのモル比は、有利に約1:1.8〜1:2[モル/モル]、殊に約1:2[モル/モル]である。
【0037】
選択a2)により、EDDNを、エチレンジアミン‐ホルムアルデヒド付加物(EDFA)と青酸(HCN)との反応により製造し、この際、EDFA対HCNのモル比は、1:1.5〜1:2[モル/モル]である。EDFA対HCNのモル比は、有利に1:1.8〜1:2[モル/モル]、殊に約1:2[モル/モル]である。EDFAは、有利に、EDA及びホルムアルデヒドのほぼ等モル量の混合によって製造される。
【0038】
選択a3)により、EDAを、ホルムアルデヒド及び青酸を含む混合物(GFB)と反応させ、この際、EDA対GFBのモル比は、1:1.5〜1:2[モル/モル]である。EDA対GFBのモル比は、有利に1:1.8〜1:2[モル/モル]、殊に約1:2[モル/モル]である。GFBは、有利に、ホルムアルデヒド及び青酸からほぼ等モル量での混合によって製造される。
【0039】
選択a4)により、EDAをホルムアルデヒド及び青酸(HCN)と同時に(並行して)反応させ、この際、EDA対ホルムアルデヒド対HCNのモル比は、1:1.5:1.5〜1:2:2[モル/モル/モル]である。EDA対ホルムアルデヒド対HCNのモル比は、有利に1:1.8:1.8〜1:2:2[モル/モル/モル]、殊に約1:2:2[モル/モル/モル]である。この実施態様では、3種の出発成分を同時に又は段階的に、各出発物質全量に対して同一のモル部分量で反応容器に添加することが有利である。
【0040】
状況により、各出発物質又は中間生成物を、それらの製造直後に、本発明による方法で使用することができる。例えば、選択a1)で、FACHを、前もって単離せずに、本発明による方法で出発物質として使用することができる。しかし場合により、引き続いて本発明による方法で使用するために、FACHをその製造後に先ず単離させることができる。
【0041】
本発明の1実施態様で、段階a)は、シアノ塩、例えば、KCNを含まずに又は少なくとも実際に含まずに実施される。
【0042】
本発明による方法の段階a)は、通例、溶剤の存在下で実施される。本発明による方法で、EDDNの製造のために、出発物質を水相で反応させることが有利である。場合により、水とともに、水と混合可能な、当業者に公知の更なる溶剤を使用することができる。しかしアルコール、殊にメタノールは溶剤としてあまり有利には使用されない。
【0043】
段階a)は、有利に10〜90℃、殊に30〜70℃の温度で実施される。反応は、標準圧又は場合により高められた圧力でも(過圧)実施され得る。段階a)は、有利に管反応器又は攪拌釜カスケード中で実施される。また段階a)は、有利に連続的方法として、殊に大工業的方法として実施され得る。
【0044】
本発明による方法の段階a)で、主生成物EDDNとともに、重要な副生成物としてエチレンジアミンモノアセトニトリル(EDMN)が生成する。相応する方法パラメーター(例えば、出発物質、温度、溶剤又は圧力)の選択に応じて、反応生成物中のEDMNの割合が変化し、かつEDMNが副生成物としてではなく、第二反応主生成物として生成するように、本発明による方法を制御することができる。従って、本発明のこの実施態様で、EDDNとともにEDMN(主生成物として)も含有するアミノニトリルが製造される。この際、有利に、EDDN少なくとも30質量%及びEDMN少なくとも5質量%を含むアミノニトリル混合物が製造される。アミノニトリル混合物中に、EDDNは通例30〜95質量%、有利に50〜95質量%、特に有利に75〜90質量%まで含有される。アミノニトリル混合物は、EDMNを通例5〜70質量%、有利に5〜50質量%、特に有利に10〜25質量%まで含有する。前記の値は、段階b)からの水素添加生成物の返送によって生成した更なるアミノニトリルを考慮せずに、EDDN対EDMNの比率にだけ関連する。
【0045】
前記のEDDN又はEDMNの質量%表示は、混合物中に含有されるアミノニトリルの全量に関連する。付加的に存在する水又は他の溶剤は、この量表示には考慮されていない。
【0046】
アミノニトリル混合物中のEDMN割合の上昇は、選択a1)〜a4)において挙げられたパラメーター範囲で、FACH(選択a1))、HCN(選択a2))、GFB(選択a3))又はホルムアルデヒド及びHCN(選択a4))を、各々より少ないモル割合で使用することによって達成される。即ち、例えば、選択a)により、EDMN割合の上昇のために、EDA対FACHのモル比1:1.5〜1:1.8[モル/モル]が使用される。
【0047】
更に、EDMNのより少ない割合、例えば、≦10質量%、殊に5〜10質量%を含有するアミノニトリル混合物の製造のために、本発明による方法の1実施態様で、EDAとできるだけ高いモル割合のFACHとの反応によって製造することができる。この際、FACH≧40質量%水溶液又は純粋のFACHを使用することが有利である。この場合、EDA対FACHのモル比は、有利に1:2[モル/モル]である。
【0048】
本発明により、場合により、少ない割合のEDMNを有する極めて純粋なEDDNを製造することができる。EDMN及び場合により、なお更なる副生成物、例えば、他のアミノニトリルの含量は、EDDNに対して、有利に≦10質量%、殊に≦5質量%である。
【0049】
段階b)
段階b)は、触媒及び溶剤の存在下で、段階a)で得られるEDDNの水素添加を包含する。本発明の範囲の水素添加は、EDDN及び場合によりEDMN及び場合により存在する他のアミノニトリルと水素との反応を意味する。
【0050】
段階b)は、段階a)の直後に実施することができ、場合により段階a)及び段階b)の間に、1段階以上(次に挙げる精製段階)を実施することができる。
【0051】
i)低沸点物分離
本発明の1実施態様で、水素添加の前に、段階a)の反応生成物から低沸点物を分離する。EDDN及び場合によりEDMNの製造のために、FACHを使用する場合には、低沸点物分離はFACHとEDAとの反応前に既に行なわれ得る。
【0052】
低沸点物として、青酸(HCN)を分離することが有利である。この際、HCNはFACHの分解性生物としても生じ得る。更に、この代わりに、場合により存在するアンモニアを分離することができる。分離は、蒸留、例えば、薄層蒸発の形で、例えば、サンベイ(Sambay)蒸留("Chemie Ingenieur Technik, Vol. 27, S. 257-261)で行なわれる。場合により、反応混合物を窒素でストリップすることもできる。
【0053】
ii)水の減少
水は、有利に低沸点物と一緒に、又は低沸点物分離後に、完全に又は部分的に減少させることができる。水の減少は蒸留として行なうことが有利である。これは、蒸発器又は蒸発器カスケードにおいて1段階以上で行なうことができ、この際、段階的に異なった圧力又は温度で調整することができる。水分離は蒸発カラム中で行なうこともできる。水分離は真空中で行なうことが有利である。残留するアミノニトリル又はアミノニトリル混合物は、なお水及び低沸点物の残分を含有し得る。少なくとも10質量%の残水含量が有利である。ここで低沸点物はほんの少量の痕跡量で含有されている。低沸点物分離及び水分離はFACH合成後に実施することも考慮可能である。
【0054】
iii)不純物の吸着
段階a)で得られるアミノニトリル(混合物)は、直接又は低沸点物分離を行なった後に、又は低沸点物分離及び水分離を行なった後に、吸着剤、例えば、活性炭又はイオン交換体での不純物吸着によって精製され得る。これは、例えば、吸着剤を充填させた吸着カラム中で行なわれ得る。
【0055】
EDDNは室温で固体であり、EDMNも同様である。従って、本発明による方法の段階b)は、溶剤、例えば、有機溶剤及び/又は水の存在下で実施される。溶剤として水を使用することが有利であるが、場合により水及び有機溶剤、例えば、エーテル、殊にTHFを含む混合物を使用することもできる。しかし、水とともに、有機溶剤(不活性有機化合物)の付加的な使用は、それによって、殊に生成アミンが存在する水性アミノニトリル混合物の各個成分の安定化が達成され得るので、有利であると判明する。更に、有機溶剤の使用によって、使用触媒の洗浄効果(洗浄サイクルの減少、触媒排出の減少)を達成することができ、それによってその持続時間を高め又はその消耗を低下させ(より長い触媒寿命)及び触媒負荷を改善することができる。更に、好適な溶剤の使用によって、他の副生成物、例えば、AEPipの生成を減少させることができる。
【0056】
1種以上の成分を包含し得る好適な溶剤は、有利に次の特性を有するべきである:
(a)溶剤は、EDDN又は場合により、EDMNに安定的に作用し、殊に支配温度でのその分解を阻止すべきである;
(b)溶剤は良好な水素溶解性を示すべきである;
(c)溶剤は反応条件で不活性であるべきである;
(d)反応混合物(EDDN又は場合によりEDMN、場合により水及び溶剤)は、反応条件下に単相であるべきである;
(e)溶剤選択は、水素添加に続く生成物流から生成物を有利に蒸留的に分離することを考慮して行われるべきである。この際、エネルギー消費又は装置的経費のかかる(例えば、近沸混合物又は分離し難い共沸混合物)分離は回避すべきである。
(f)溶剤は生成物から良好に分離可能であるべきである、即ち、その沸騰温度は生成物のそれと十分に異なっているべきである。この際、生成物のそれよりも低い沸騰温度が有利である。
【0057】
可能な溶剤(水の他に)は、有機溶剤、例えば、アミド、例えば、N‐メチルピロリドン(NMP)及びジメチルホルムアミド(DMF)、芳香族及び脂肪族炭化水素、例えば、ベンゾール及びキシロール、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、二級ブタノール及び三級ブタノール、アミン、エステル、酢酸メチルエステル又は酢酸エチルエステル及びエーテル、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、グリコールジメチルエーテル、ジグリコールジメチルエーテル、ジオキサン及びテトラヒドロフラン(THF)である。本発明による方法では、有利にエーテル、より有利に環状エーテル及び特に有利にテトラヒドロフランが使用される。もう1つの実施態様では、アルコール、殊にメタノールを有機溶剤として使用する。
【0058】
溶剤は、使用されるアミノニトリル(EDDN及び場合によりEDMN)に対する質量比0.1:1〜15:1で使用される。水素添加がその中で実施される溶液中のアミノニトリル混合物の濃度は、好適な供給速度又は滞留速度が調整され得るように選択されるべきである。アミノニトリルを10〜50質量%まで溶剤と混合させることが有利である。特に有利な溶剤メタノール又はテトラヒドロフランに対して、例えば、アミノニトリルを溶剤に対して20〜40質量%まで使用することが有利である。
【0059】
水が存在する場合には、溶液中の水の割合は、0〜60質量%、有利に10〜30質量%の範囲である。この際、水の量表示はアミノニトリル混合物に関連する。
【0060】
水素添加がその中で実施される溶液中に、場合により、付加的な添加剤が含有されていてよい。添加剤として、原則的にヒドロキシド、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルコラート、アミド、アミンがこれに該当する。添加剤として有利にアミン、特にEDA及びアンモニア、殊にEDAが好適である。更に、酸性の添加剤、例えば、シリケートが溶液中に付加的に含有されていてもよい。これらの物質は、純物質として又は溶剤に溶かされて添加され得る。本発明による方法は、添加剤の添加下に実施されることが有利である。
【0061】
本方法の1実施態様で、水素添加が行なわれる溶液に、アンモニアは添加されない。アンモニアがなお出発物質中に又は場合により使用される水溶液中に溶解している又は水素添加の際に副生成物として遊離される場合には、これは障害とならない。場合により存在するアンモニアは、当業者に公知の方法で、例えば、蒸留で除去され得る。アンモニアを廃棄するかぎり、このことは、系の自己圧が減少されるという利点を有する。
【0062】
アミンへのニトリル官能基の水素添加のための触媒として、活性種として、周期系の第8副族(Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)の1種以上の元素、有利にFe、Co、Ni、Ru又はRh、特に有利にCo又はNiを含有する触媒を使用することができる。水素添加活性金属及びもう1種の成分(有利にAl)を含む合金の浸出(活性化)によって得られる、いわゆる骨格触媒(ラネー(Raney-(登録商標))型としても称される;次に同様に:ラネー触媒)もこれに含まれる。触媒は付加的に1種以上の促進剤を含有することができる。有利な1実施態様で、本発明による方法では、ラネー触媒、有利に、ラネーコバルト触媒又はラネーニッケル触媒及び特に有利に元素Cr、Ni又はFeの少なくとも1種を添加されたラネーコバルト触媒又は元素Mo、Cr又はFeの1種を添加されたラネーニッケル触媒が使用される。
【0063】
触媒は、完全触媒として又は担持されて使用され得る。触媒は、有利に金属酸化物、例えば、Al、SiO、ZrO、TiO、金属酸化物の混合物又は炭素(活性炭、カーボンブラック、グラファイト)を使用することが有利である。
【0064】
酸化物系触媒は、使用前に、反応器の外で又は反応器中で、高めた温度で水素を含むガス流中での金属酸化物の還元によって活性化される。触媒が反応器の外部で還元される場合には、その後に酸素を含むガス流によって又は不活性物質への埋床によって、不働化を行なうことができ、それによって、空気での不制御な酸化を回避し、かつ安全な巡回を可能にすることができる。不活性物質として、有機溶剤、例えば、アルコール、しかし水又はアミン、有利に反応生成物を使用することができる。活性化の際の例外は、例えば、EP‐A1209146に記載されている水性塩基での浸出によって活性化され得る骨格触媒である。
【0065】
実施される方法(懸濁水素添加、渦動層法、固床水素添加)により、触媒は、粉末、砕片又は成形体(例えば、押出体又は錠剤)として使用される。
【0066】
特に有利な固床触媒は、EP‐A1742045に公開された、Mn、P及びアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)を添加されたコバルト完全触媒である。これらの触媒の触媒活性物質は、水素での還元の前に、各々酸化物として計算される、コバルト55〜98質量%、殊に75〜95質量%、燐0.2〜15質量%、マンガン0.2〜15質量%及びアルカリ金属、殊にナトリウム0.05〜5質量%を含む。
【0067】
他の好適な触媒は、EP‐A963975に公開され、その触媒活性物質は、水素での処理の前に、ZrO22〜40質量%、CuOとして計算される銅の酸素含有化合物1〜30質量%、NiOとして計算されるニッケルの酸素含有化合物15〜50質量%(この際、Ni:Cuモル比は1よりも大きい)、CoOとして計算されるコバルトの酸素含有化合物15〜50質量%、Al又はMnOとして計算されるアルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物0〜10質量%を含み、かつモリブデンの酸素含有化合物を含まない触媒であり、例えば、この文書中で公開された、組成ZrOとして計算されるZr33質量%、NiOとして計算されるNi28質量%、CuOとして計算されるCu11質量%及びCoOとして計算されるCo28質量%を有する触媒Aである。
【0068】
更に、EP‐A696572に公開された、その触媒活性物質が、水素での還元の前に、ZrO20〜85質量%、CuOとして計算される銅の酸素含有化合物1〜30質量%、NiOとして計算されるニッケルの酸素含有化合物30〜70質量%、MoOとして計算されるモリブデンの酸素含有化合物0.1〜5質量%、及びAl又はMnOとして計算されるアルミニウム及び/又はマンガンの酸素含有化合物0〜10質量%を含有する触媒、例えば、この明細書に具体的に公開された、組成ZrO31.5質量%、NiO50質量%、CuO17質量%及びMoO1.5質量%を有する触媒が好適である。同様に、WO‐A99/44984に記載された、(a)鉄又は鉄をベースとする化合物又はその混合物、(b)(a)に対して、Al、Si、Zr、Ti、Vの群から選択される2、3、4又は5個の元素をベースとする促進剤0.001〜0.3質量%、(c)(a)に対して、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属をベースとする化合物0〜0.3質量%、及び(d)(a)に対して、マンガン0.001〜1質量%を含有する触媒が好適である。
【0069】
懸濁法には、ラネー触媒を使用することが有利である。ラネー触媒では、活性触媒は、二成分合金(アルミニウム又は珪素を含むニッケル、鉄、コバルト)から、酸又は苛性アルカリ溶液での1成分の浸出によって"金属スポンジ"として製造される。本来の合金成分の残成分はしばしば相乗的に作用する。
【0070】
本発明による方法で使用されるラネー触媒は、有利にコバルト又はニッケル、特に有利にコバルト及びアルカリに可溶性であるもう1種の合金成分を含む合金から出発して製造される。この可溶性合金成分では、有利にアルミニウムが使用されるが、他の成分、例えば、亜鉛及び珪素又はそのような成分を含む混合物を使用することもできる。
【0071】
ラネー触媒の活性化のために、可溶性合金成分を全部又は部分的にアルカリで抽出し、それには、例えば、苛性ソーダ水溶液を使用することができる。その後に、触媒を水又は有機溶剤で洗浄することができる。
【0072】
触媒中に、1種以上の他の元素が促進剤として存在していてよい。促進剤の例は、周期系の副族IB、VIB及び/又はVIIIの金属、例えば、クロム、鉄、モリブデン、ニッケル、銅等である。
【0073】
可溶性成分(典型的にはアルミニウム)の浸出による触媒の活性化は、反応器自体中で、又は反応器への充填前に行なわれ得る。前もって活性化された触媒は、空気感受性かつ発火性であり、従って、通例、媒体、例えば、水、有機溶剤又は本発明による反応で存在する物質(溶剤、出発物質、生成物)下に保管され及び取り扱われ、又は室温で固体である有機物質中に埋床される。
【0074】
有利な実施態様で、本発明により、Co/Al合金から、アルカリ金属水酸化物水溶液、例えば、苛性ソーダ溶液での浸出及び次の水での洗浄によって得られ、かつ有利に促進剤として元素Fe、Ni又はCrの少なくとも1種を含有するラネーコバルト骨格触媒が使用される。
【0075】
そのような触媒は、典型的には、コバルトとともに、なおAl1〜30質量%、特にAl2〜12質量%、極めて特にAl3〜6質量%、Cr0〜10質量%、特にCr0.1〜7質量%、極めて特にCr0.5〜5質量%、殊にCr1.5〜3.5質量%、Fe0〜10質量%、特にFe0.1〜3質量%、極めて特にFe0.2〜1質量%、及び/又はNi0〜10質量%、特にNi0.1〜7質量%、極めて特にNi0.5〜5質量%、殊にNi1〜4質量%を含有し、この際、質量表示は各々触媒総質量に関連する。
【0076】
本発明による方法での触媒として、例えば、グレース社(Firma W. R. Grace & Co.)のコバルト骨格触媒"ラネー(Raney) 2724"を使用することが有利である。この触媒は次の組成を有する:
Al:2〜6質量%、Co:≧86質量%、Fe:0〜1質量%、Ni:1〜4質量%、Cr:1.5〜3.5質量%。
【0077】
同様に本発明により、Ni/Al合金から、アルカリ金属水酸化物水溶液、例えば、苛性ソーダ溶液での浸出及び次の水での洗浄によって得られ、かつ有利に促進剤として元素Fe、Crの少なくとも1種を含有するニッケル骨格触媒を使用することができる。
【0078】
そのような触媒は、典型的にはニッケルとともに、なおAl1〜30質量%、特にAl2〜20質量%、極めて特にAl5〜14質量%、Cr0〜10質量%、特にCr0.1〜7質量%、極めて特にCr1〜4質量%、及び/又はFe0〜10質量%、特にFe0.1〜7質量%、極めて特にFe1〜4質量%を含有し、この際、質量表示は、各々触媒総質量に関連する。
【0079】
本発明による方法で触媒として、例えば、ジョンソンマッテイ社(Firma Johnson Matthey)のニッケル骨格触媒A 4000を使用することが有利である。この触媒は次の組成を有する:
Al:≦14質量%、Ni:≧80質量%、Fe:1〜4質量%、Cr:1〜4質量%。
【0080】
触媒は、場合により、活性及び選択性が減退する際に、当業者に公知の、例えば、WO99/33561及びそこで引用された明細書に明らかである方法で再生され得る。
【0081】
触媒の再生は、本来の反応器中で(in situ)又は触媒を反応器から取り出して(ex situ)実施される。固床法では、その場で(in situ)再生することが有利であり、懸濁法では、触媒の一部を連続的に又は不連続的に取り出して、その外で(ex situ)再生させ、送り戻すことが有利である。
【0082】
この段階b)で実施される温度は、40〜150℃、有利に70〜140℃、殊に80〜140℃の範囲にある。
【0083】
水素添加で支配的な圧力は、一般に5〜300バール、有利に30〜250バール、特に有利に40〜160バールである。
【0084】
有利な1実施態様で、EDDN又はEDDNを含有するアミノニトリル混合物は、EDDN及び場合によりアミノニトリル混合物の残余成分が水素添加で水素と反応する速度よりも早くない速度で、水素添加に添加される。
【0085】
供給速度は、有利に準完全変換が達成されるように調整すべきである。これは、温度、圧力、混合物の種類、触媒、反応媒体の量及び種類、反応器内容物の混合品質、滞留時間等によって影響される。
【0086】
本発明による方法で、1種(又はそれ以上)の溶剤が使用され、この際、溶剤を先ずEDDN又はアミノニトリル混合物と混合させる。場合により添加剤も含有し得る、取得溶液を、引き続き、触媒を含有する反応容器中に添加する。場合により、例えば、セミバッチ法で、溶剤の一部を触媒と一緒に反応容器中に前もって装入させ、それに溶液を添加することができる。連続法では、溶剤の一部分量を、EDDN、溶剤及び場合により添加剤を含有する溶液とは別に、反応容器に添加することができる。有利な1実施態様で、溶液中に含まれるEDDN及び場合により含有される他のアミノニトリル、例えば、EDMNの供給は、水素添加の際にEDDNと水素とが反応する速度よりも早くない速度で行なわれる。場合により、例えば、セミバッチ法で、溶剤の一部を触媒と一緒に反応容器中に前もって装入させ、それに溶液を添加することができる。
【0087】
EDDNの水素添加によるTETAの本発明による製法は、触媒反応に好適な通例の反応容器中で、固床法、渦動相法、懸濁法で、連続的に、半連続的に又は不連続的に実施され得る。水素添加の実施のために、アミノニトリル及び触媒とガス状の水素との接触反応が圧力下に可能である反応容器が好適である。
【0088】
懸濁法での水素添加は、攪拌反応器、ジェットループ反応器、ジェットノズル反応器、バブルカラム反応器で、又はこのような同じ又は異なった反応器のカスケードで実施され得る。固床反応器での水素添加については、管反応器、しかし束管反応器も考慮され得る。
【0089】
固床触媒の場合には、アミノニトリルを塔底法又は細流法で通過させる。しかし、懸濁法は、半連続的及び有利に連続的方法で使用することが有利である。
【0090】
ニトリル基の水素添加は、熱の放出下に行なわれ、通例、この熱は排出されるべきである。熱の排出は、組み込まれた熱伝面、冷却ジャケット又は外部熱伝体によって反応器の周りを循環して行なわれ得る。水素添加反応器又は水素添加反応器カスケードを直通して行なうことができる。選択的に循環法も可能であり、その際、有利に循環流を前もって処理せずに、反応器排出物の一部を反応器入口に送り戻す。従って、反応溶液の最適希釈を達成することができる。殊に、循環流は外部熱伝体によって簡単にかつ経費的に有利な方法で冷却され、そうして反応熱は排出される。それによって、反応器は断熱的に動作することもでき、この際、反応溶液の温度上昇は、冷却された循環流によって制限され得る。その場合には、反応器自体を冷却する必要はないので、簡単で経費的に有利な構成が可能である。1選択は、冷却された束管反応器(固床の場合のみ)である。2つの方法の組み合わせも考慮され得る。この際、固床反応器を懸濁反応器に後接させることが有利である。
【0091】
本発明による方法は、主生成物として、直鎖エチレンアミン(C‐生成物)TETA(1.例)及び他のエチレンアミンを副成分として生成させる。本発明による方法で、EDDN及びEDMNを含有するアミノニトリル混合物を使用する場合には、主成分として2種の直鎖エチレンアミン(C‐生成物及びC‐生成物)TETA及びDETA(2.例)及び副成分として他のエチレンアミンを含有する混合物を得る。
【0092】
副成分は、2つの例において、直鎖でも、環状のエチレンアミンでも、又はその他の副生成物であってもよい。最も重要な環状副生成物は、1.例では、AEPip(C‐(副)生成物)が生成される。生成物におけるTETA対AEPipの比率は、通例3:1〜12:1である。この比率は、例えば、溶剤、触媒の選択及び/又は添加剤の添加によって調整され得る。1.例では、DETAは同様に(直鎖の)副生成物である。他の副反応としては分解反応があるが、これは、殊に溶剤、供給速度、出発物質純度及び/又は触媒の選択によって調整され、かつ最少にされ得る。2.例では、Pipは、主にEDMNから生成されている、他の重要な環状副生成物(C‐(副)生成物)として出現する。生成及びDETA対Pipの調整に関して、TETA対AEPipの場合と同様の説明が当てはまる。本発明による方法は、次の式1で、2.例により明らかにされ、この際、EDDN及びEDMNは共通して、例えば、FACHから出発して製造される。
【0093】
【化1】

【0094】
反応生成物は2種の直鎖エチレンアミンを主成分(TETA及びDETA)として含有するので、第二例で"エチレンアミン混合物"という用語が使用されるが、第一例では、1種だけの直鎖エチレンアミンが主生成物(TETA)が存在する。従って、前記又は後記の副生成物は、これらの2例における用語定義について考慮されない。
【0095】
第一例で、EDDNの使用量に対して、有利に≧70質量%、殊に≧85質量%の選択率でTETAを得る。第二例で、出発物質EDDN及びEDMNの比率は、原則的に、水素添加後の相応する生成物TETA及びDETAにおいて再現される。
【0096】
"他のエチレンアミン"という用語は、本発明の範囲において、各々TETA(1.例)及びTETA及びDETA(2.例)と異なる、少なくとも2個のエチレン単位及び少なくとも2個の官能基を含有する炭化水素含有化合物のことであり、この際、官能基は、一級、二級又は三級アミノ基から選択されている。他のエチレンアミンとして、本発明の範囲では、環状化合物、例えば、ピペラジン(Pip)及びその誘導体も解するべきである。同様にエチレンジアミン(EDA)も、他のエチレンアミンとして解釈すべきである。他のエチレンアミンは、殊にジエチレントリアミン(DETA;1.例だけ)、ピペラジン(Pip)、アミノエチレンピペラジン(AEPip)又はテトラエチレンペンタミン(TEPA)である。
【0097】
本発明の1実施態様で、水素添加の際に得られるDETAは、全部又は部分的に、段階a)後に返送される。この実施態様は、有利に、TETA及びDETAを各々主成分として含有する、エチレンアミン混合物が得られる前記の第二例と関連して実施される。従って、段階a)への返送は、引き続いて再び水素添加されるアミノニトリル、殊にDETDNの製造のためにDETAが使用されることを意味する。
【0098】
有利にDETA(全部又は部分的に)を返送させ、そうして選択a1)によりFACHと反応させる。この際、DETAとFACHとの反応は、EDA及びFACHの反応と同時に実施され得る。選択的に、DETAの返送は、使用されるFACHの部分量をDETAと反応させ、かつもう一方の部分量をEDAと反応させるように実施することもできる。
【0099】
DETAとFACHとの反応によって、主にアミノニトリル ジエチレントリアミンジアセトニトリル(DETDN)が製造される。DETAとFACHとの反応条件は、前記のEDAとFACHとの反応条件に広範に相応する。DETA対FACHのモル比は、有利に1:1.5〜1:2[モル/モル]である。DETDNは、今まで文献には未だ記載されていない。本出願の出願人は、DETDNの製法及び水素添加法を目的とするもう1つの出願を同時に提出した。DETDNの製造とともに副生成物として付加的にジエチレントリアミンモノアセトニトリル(DETMN)が生成され得る。DETA対FACHのモル割合の比率に応じて、DETDN及びDETMNを含有するアミノニトリル混合物が製造される。DETAに対するFACHのほんの少しの過剰で、DETDNと共に、より多くのDETMNが生成される。
【0100】
DETAとFACHとの反応により製造される、DETDN及び場合によりDETMNを含有するアミノニトリル混合物を、引き続き、共通して又は場合により別々に合成した、場合によりEDMNも含有し得るEDDNと合一させ、かつ水素添加する(DETA及びEDAを別々に互いにFACHと反応させた場合)。
【0101】
EDDN及びEDMNとともに、更にDETDN及び場合によりDETMNを共通して水素添加させる、本発明による方法のこの実施態様の引き続いての水素添加で、主成分としてTETA及びDETA及び付加的にTEPAを含有するエチレンアミン混合物が得られる。この場に際し、水素添加の際にDETMNからもTETAが生成されることが指摘される。水素添加におけるEDMNの存在は、生成したDETAを全部又は部分的に再び返送させ得るために必要である。次の式2は、DETAとFACHとの反応の部分段階に関する、本発明による方法のこの実施態様についての概要を示す。EDDN及びEDMNの並行して行なわれる製造及び水素添加は、この式には示されていない。
【0102】
【化2】

【0103】
本発明のもう1つの実施態様で、水素添加の際に副生成物として得られるAEPipを全部又は部分的に段階a)に返送させる。この実施態様は、有利に、TETA及びDETAを各々主成分として含有するエチレンアミン混合物が得られる、前記の第二例と関連して実施される。この際、返送は、前記のDETAの返送と一緒に又はそれと別々に行われ得る。AEPipの返送は、DETAと一緒に行なうことが有利である。従って段階a)への返送は、AEPipが環状アミノニトリルの製造に使用されることを意味し、この環状アミノニトリルは再び引き続いて水素添加され、環状エチレンアミン(より高級なエチレンアミンのピペラジン誘導体)を取得する。
【0104】
有利にAEPipを(全部又は部分的に)返送させ、そうして選択a1)によりFACHと反応させる。この際、AEPipとFACHとの反応は、EDA及び/又はDETAとFACHとの反応と同時に実施され得る。選択的にAEPipの返送は、使用されるFACHの部分量をAEPipと反応させ、かつ他の部分量をEDA及び/又はDETAと反応させるように実施することもできる。
【0105】
AEPipとFACHとの反応によって、主に環状のアミノニトリル ピペラジニルエチルアミノアセトニトリル(PEAN)、アミノエチルピペラジニルアセトニトリル(AEPAN)及び/又はシアノメチルピペラジニルエチルアミノアセトニトリル(CMPEAN)が製造される。AEPipとFACHとの反応条件は、原則的にDETAとFACHとについての前記の反応条件に相応する。AEPip対FACHのモル比は、有利に1:1.5〜1:2[モル/モル]である。
【0106】
AEPipとFACHとの反応の際に生成する環状のアミノニトリルPEAN、AEPAN及びCMPEANは、文献には未だ記載されていない新規の化合物である。従って、これら3種の環状アミノニトリルはそのものとして又はその混合物及びその製法は、本発明の更なる目的である。
【0107】
AEPipとFACHとの反応によって製造される、PEAN、AEPAN及び/又はCMPEANを含有するアミノニトリル混合物を、引き続いて、場合によりEDMNも含有し得る別々に合成されたEDDN及び/又は場合によりDETMNも含有し得る別々に合成されたDETDNと合一させ、かつ水素添加する(AEPip及びDETA及び/又はEDAを別々に互いにFACHと反応させた場合)。
【0108】
EDDN及びEDMNとともに、更にDETDN、PEAN、AEPAN及び/又はCMPEAN及び場合によりDETMNが共通して水素添加される、本発明による方法のこの実施態様の引き続きの水素添加で、主成分として、TETA及びDETA及び付加的にTEPA、ジアミノエチルピペラジン(DAEPip)、ピペラジンエチルエチレンジアミン(PEEDA)及び/又はアミノエチルピペラジンエチルエチレンジアミン(AEPEEDA)を含有するエチレンアミン混合物が得られる。水素添加におけるEDMNの存在は、生成したDETAの返送を経由して、DETDN及びそれからTEPAを更なる主成分として製造するためにだけ必要である。次の式3は、AEPipとFACHとの反応の部分段階に関する、本発明による方法のこの実施態様についての概要を示す。EDDN及びEDMN又はDETDN及びDETMNの並行して行なわれる製造及び水素添加は、この式には示されていない。環状のエチレンアミン AEPEEDA、DAEPip及びPEEDAは、EDC法によるTETA又はTEPAの大工業的製造における公知の副生成物である。この実施態様では、有利な環状エチレンアミンは、DAEPip及びPEEDAである。
【0109】
【化3】

【0110】
水素添加に続いて、得られる生成物(TETA又はエチレンアミン混合物)を場合により、例えば、溶剤及び/又は触媒を当業者に公知の方法により分離することによって、更に精製することができる。殊に、主生成物(TETA及び場合により、DETA、TEPA又は場合により、環状エチレンアミン DAEPip、PEEDA及び/又はAEPEEDA)を共通して又は単独で、当業者に公知の方法により、反応生成物から単離することができる。各々の主生成物を共通して単離させる場合には、それらを引き続いて、例えば、蒸留によって各々の単一生成物に単離させることができる。従って、最終的に、純粋のTETA、純粋のDETA、純粋のTEPA及び場合により純粋のDAEPip、純粋のPEEDA及び/又は純粋のAEPEEDAを得る。他の不純物、副生成物又は他のエチレンアミン、例えば、TEPA又はPipは、それらが存在するかぎり、同様に当業者に公知の方法で、各々の生成物から分離することができる。
【0111】
場合により、2種以上の前記のエチレンアミンの混合物も、例えば、TETA及び/又はTEPAとの混合物として単離することもできる。
【0112】
有利な1実施態様で、本発明による方法は、溶剤としてテトラヒドロフラン又はメタノールの使用下に実施される。水素添加での温度は有利に80〜140℃であり、圧力は有利に40〜160バールである。水素添加はEDA及び/又は場合によりアンモニアが存在して有利に実施される。
【0113】
本発明による方法で、エチレンアミンの高い総収率とともに、直鎖TETA又は他の直鎖エチレンアミンの高い割合が達成される。
【0114】
本発明による方法を次の実施例につき説明する。他の記載のないかぎり、割合は質量%で示される。随伴の内部標準、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME)は、場合により生成される揮発性分解成分の測定による生成物の定量化を可能にする。定量化はガスクロマトグラフィー(GC)によって行なわれ、この際、各々採取した試料に均一化のためにメタノールを添加する。
【0115】
実施例
ホルムアルデヒドシアンヒドリン(FACH)の一般的合成法
変法a)
プロペラ攪拌器を備えた6l入り反応容器中に、ホルムアルデヒド(30%)6000g(60モル)を前もって装入させ、苛性ソーダ溶液(1モル/l)でpH値5.5に調整する。2.5時間内で、青酸1661g(61.2モル)を、攪拌器の下部にある加熱U管を通じてガス状で供給させ、この際、反応温度は30℃、pH値は5.5で保持される。30分間の後攪拌時間後に、硫酸(50%の)でpH値を2.5に調整する。リービッヒ(Liebig)滴定により相応する含量を測定する。
【0116】
変法b)
プロペラ攪拌器を備えた6l入り反応容器中に、ホルムアルデヒド(30%)7000g(70モル)を前もって装入させ、苛性ソーダ溶液(1モル/l)でpH値5.5に調整する。3時間内で、青酸1938g(71.4モル)を、攪拌器の下部にある50℃に加熱したU管を通じてガス状で供給させ、この際、反応温度は30℃、pH値は5.5で保持される。10分間の後攪拌時間後に、硫酸(50%の)でpH値を2.5に調整する。低沸点物、殊に青酸を分離するために、反応生成物をサンベイ(Sambay)蒸留(例えば、"Chemie Ingenieur Technik, Vol. 27, S. 257-261に記載されている)(1ミリバール、30℃)にかける。リービッヒ滴定を介して、相応する含量を測定し、場合により水の添加により、FACH含量43〜44%又は67%に調整する。
【0117】
例1:
ホルムアルデヒドシアンヒドリン
FACHを一般方法で変法a)により製造する。
【0118】
エチレンジアミンジアセトニトリル
2l入り反応容器中に、FACH(42.5%)536.5g(4モル)を前もって装入させ、氷冷下に最高35℃の温度で2時間以内にエチレンジアミン132g(2.2モル)を滴加する。反応成分はやや黄色から橙色を経て褐色に変色する。短時間の後攪拌後に、遊離青酸を窒素でのストリップによって除去する(ボルハード(Volhard)滴定)。リービッヒ滴定により、FACHの変換率97.2%を得る。
【0119】
トリエチレンテトラミン
a)得られる生成物をセミバッチ法で水素添加する。この際、270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g及びTHF15mlを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧100バールまで水素で加圧する。120分間以内に、THF106g中の粗製EDDN溶液13.8g、内部標準13.8g及び水4.2gを含む混合物を添加する。反応混合物を更に60分間反応条件下に攪拌する。生成物をメタノールで均一化する。選択率は、AEPip28%及びTETA30%である。更に、C4‐生成物(Pip+DETA)4質量%を見出す。
【0120】
b)同一生成物を同様にセミバッチ法で水素添加する。この際、270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g及びTHF15ml及びEDA5.4gを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧100バールまで水素で加圧する。120分間以内に、THF106g中の粗製EDDN溶液13.8g、内部標準13.8g及び水4.2gを含む混合物を添加する。反応混合物を更に60分間反応条件下に攪拌する。生成物をメタノールで均一化する。選択率は、AEPip12%及びTETA43%である。更に、C4‐生成物(Pip+DETA)4質量%を見出す。
【0121】
例1aに比べて、EDAのTETA生成への肯定的な影響を示す。
【0122】
例2:
ホルムアルデヒドシアンヒドリン
FACHを一般法で変法b)により製造する。
【0123】
エチレンジアミンジアセトニトリル
2l入り反応容器中に、EDA132g(2.2モル)を前以て装入し、氷冷下に最高30℃の温度で2時間以内に、FACH(44.6%)511.2g(4モル)を滴加する。4.5時間の後攪拌後に、やや黄色の溶液を分取する。FACH変換率は、リービッヒ滴定により99.2%である。反応成分は、遊離青酸0.11%を含有する(ボルハード滴定によって測定)。滴定により、使用したFACHに対して、EDDN収率91.7%を得る。EDMNは滴定によって測定することはできない。EDDNへ反応しない変換エチレンジアミンから、EDMNが生成されるという仮定下に、総アミノニトリル収率として95.7%、従ってEDMNの収率4%が判明する。
【0124】
トリエチレンテトラミン
a)得られる生成物をセミバッチ法で水素添加する。この際、270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g及びTHF15mlを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧100バールまで水素で加圧する。120分間以内に、THF106g中の粗製EDDN溶液13.8g、内部標準13.8g及び水4.2gを含む混合物を添加する。反応混合物を更に60分間反応条件下に攪拌する。生成物をメタノールで均一化する。選択率は、AEPip27%及びTETA47%である。更に、C4‐生成物8質量%を検出する。
【0125】
FACH合成後の低沸点物分離によって、明らかに改善されたエチレンアミン収率が達成され得ることが判明する。EDDN合成における過剰なEDAによって、C4‐生成物DETA及びPipに水素添加されるEDMNが生成される。
【0126】
b)同一生成物を同様にセミバッチで水素添加する。この際、270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g及びTHF15ml及びEDA13.5gを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧100バールまで水素で加圧する。120分間以内に、THF106g中の粗製EDDN溶液13.8g、内部標準13.8g及び水4.2gを含む混合物を添加する。反応混合物を更に60分間反応条件下に攪拌する。生成物をメタノールで均一化する。選択率は、AEPip8%及びTETA82%である。更に、C4‐生成物16質量%を検出する。
【0127】
変法2b)におけるEDA添加によって、直鎖TETAがより多く生成される。同様に、EDA縮合に基づくC4‐生成物の上昇が判明する。C4‐生成物の質量%表示では、EDA縮合による質量増加が考慮される。
【0128】
例3:
ホルムアルデヒドシアンヒドリン
FACHを一般法で変法b)により製造する。
【0129】
エチレンジアミンジアセトニトリル
2l入り反応容器中に、EDA132g(2.2モル)を前以て装入し、氷冷下に最高30℃の温度で約2時間以内に、FACH(67%)340.8g(4モル)を滴加する。3時間の後攪拌後に、黄色の溶液を分取する。FACH変換率は、リービッヒ滴定により99.5%である。反応成分は、遊離青酸0.08%を含有する(ボルハード滴定によって測定)。滴定により、使用したFACHに対して、EDDN収率82.9%を得る。EDMNは滴定によって測定することができない。EDDNへ反応しない変換エチレンジアミンからEDMNが生成されるという仮定下に、総アミノニトリル収率として90.5%、従ってEDMNの収率8%が判明する。
【0130】
トリエチレンテトラミン
a)得られる生成物をセミバッチ法で水素添加する。この際、270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g及びTHF15mlを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧100バールまで水素で加圧する。120分間以内に、THF106g中の粗製EDDN溶液13.8g、内部標準13.8g及び水10gを含む混合物を添加する。反応混合物を更に60分間反応条件下に攪拌する。生成物をメタノールで均一化する。選択率は、AEPip10%及びTETA69%である。付加的に、C4‐生成物(Pip及びDETA)13%を得る。
【0131】
比較可能性のために、例2aに比べてより多い水が添加される。EDDN合成における過剰なEDAによって、C4‐生成物DETA及びPipに水素添加されるEDMNが生成される。
【0132】
b)得られる生成物をセミバッチ法で水素添加する。この際、270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g、THF15ml及びEDA13.5gを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧100バールまで水素で加圧する。120分間以内に、THF106g中の粗製EDDN溶液13.8g、内部標準13.8g及び水10gを含む混合物を添加する。反応混合物を更に60分間反応条件下に攪拌する。生成物をメタノールで均一化する。選択率は、AEPip5%及びTETA76%である。更に、C4‐生成物16%を得る。
【0133】
EDA添加によって、直鎖TETAがより多く生成される。同様に、EDA縮合に基づくC4‐生成物の上昇が判明する。
【0134】
c)得られる生成物をセミバッチ法で水素添加する。この際、270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g及びTHF15mlを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧100バールまで水素で加圧する。120分間以内に、THF106g中の粗製EDDN溶液13.8g、内部標準13.8gを含む混合物を添加する。反応混合物を更に60分間反応条件下に攪拌する。生成物をメタノールで均一化する。選択率は、AEPip9%及びTETA76%である。付加的に、C4‐生成物(Pip及びDETA)12%を得る。
【0135】
例3aに比較して、TETAに肯定的に作用した水の付加的な添加が放棄される。
【0136】
例4:
ホルムアルデヒドシアンヒドリン
FACHを、一般法で変法b)により製造する。
【0137】
エチレンジアミンジアセトニトリル
2l入り反応容器中に、EDA132g(2.2モル)を前以て装入し、氷冷下に最高50℃の温度で約35分間以内に、FACH(67%)340.8g(4モル)を滴加する。1時間の後攪拌後に、ほとんど澄明な溶液を分取する。FACH変換率は、リービッヒ滴定により99.2%である。反応成分は、遊離青酸0.07%を含有する(ボルハード滴定によって測定)。滴定により、使用したFACHに対して、EDDN収率87.7%を得る。EDMNは滴定によって測定することはできない。EDDNへ反応しない変換エチレンジアミンからEDMNが生成されるという仮定下に、総アミノニトリル収率として93%、従ってEDMNの収率5%が判明する。
【0138】
トリエチレンテトラミン
a)得られる生成物をセミバッチ法で水素添加する。この際、270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g及びTHF15mlを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧100バールまで水素で加圧する。120分間以内に、THF106g中の粗製EDDN溶液13.8g、内部標準13.8gを含む混合物を添加する。反応混合物を更に60分間反応条件下に攪拌する。生成物をメタノールで均一化する。選択率は、AEPip10%及びTETA76%である。付加的に、C4‐生成物(Pip及びDETA)11%を得る。
【0139】
試験4aは3cの結果を確証する。この場合にも、EDDN合成における過剰のEDAによって、C4‐生成物(DETA及びPip)の収率は約11%である。
【0140】
b)得られる生成物をセミバッチ法で水素添加する。この際、270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g、THF15ml及びEDA13.5gを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧100バールまで水素で加圧する。120分間以内に、THF106g中の粗製EDDN溶液13.8g、内部標準13.8gを含む混合物を添加する。反応混合物を更に60分間反応条件下に攪拌する。生成物をメタノールで均一化する。選択率は、AEPip4%及びTETA80%である。更に、C4‐生成物15%を得る。
【0141】
例4bにおいて、EDA及びより少量の水が存在する水素添加によって、AEPip生成は明らかに抑制され得ることが確証される。EDDN合成においてEDA過剰量及び水素添加においてEDAが存在する場合には、C4‐生成物15質量%の含量は普通である。
【0142】
例5:
ホルムアルデヒドシアンヒドリン
FACHを、一般法で変法b)により製造する。
【0143】
エチレンジアミンジアセトニトリル
2l入り反応容器中に、EDA180g(3モル)を前以て装入し、氷冷下に最高50℃の温度で約1時間以内に、FACH(67%)511.2g(6モル)を滴加する。1.5時間の後攪拌後に、明黄色溶液を分取する。FACH変換率は、リービッヒ滴定により99.2%である。反応成分は、遊離青酸0.02%を含有する(ボルハード滴定によって測定)。滴定により、使用したFACHに対して、EDDN収率92.6%を得る。EDMNは滴定によって測定することはできない。EDDNへ反応しない変換エチレンジアミンからEDMNが生成されるという仮定下に、総アミノニトリル収率として94.5%、従ってEDMNの収率2%が判明する。
【0144】
トリエチレンテトラミン
a)得られる生成物をセミバッチ法で水素添加する。この際、270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g及びTHF15mlを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧100バールまで水素で加圧する。120分間以内に、THF106g中の粗製EDDN溶液13.8g、内部標準13.8gを含む混合物を添加する。反応混合物を更に60分間反応条件下に攪拌する。生成物をメタノールで均一化する。選択率は、AEPip10%及びTETA77%である。付加的に、C4‐生成物(Pip及びDETA)3%を得る。
【0145】
EDDN製法における半モル量のEDAの使用によって、水素添加後のC4‐生成物の含量は、3%だけであることは判明する。
【0146】
b)得られる生成物をセミバッチ法で水素添加する。この際、270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g、THF15ml及びEDA13.5gを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧100バールまで水素で加圧する。120分間以内に、THF106g中の粗製EDDN溶液13.8g、内部標準13.8gを含む混合物を添加する。反応混合物を更に60分間反応条件下に攪拌する。生成物をメタノールで均一化する。選択率は、AEPip6%及びTETA82%である。更に、C4‐生成物7%を得る。
【0147】
この場合にも、C4‐生成物の含量は、明らかに例4bのそれ以下である。
【0148】
前例は、使用されるFACHの品質が、EDDN製造における反応時間及び生成物の色への影響を有することを示す。更に、引き続いての水素添加で、FACHを蒸留精製するかぎり、より高い選択率が達成される。更に、添加剤の添加は、直鎖エチレンアミンに関する選択率に肯定的に作用する。同様に水量は、直鎖TETAの生成への影響を示す。
【0149】
例6:
ホルムアルデヒドシアンヒドリン
FACHを、一般法で変法b)により製造する。
【0150】
エチレンジアミンジアセトニトリル
2l入り反応容器中に、EDA132g(2.2モル)を前以て装入し、氷冷下に最高50℃の温度で約35分間以内に、FACH(67%)340.8g(4モル)を滴加する。1時間の後攪拌後に、ほとんど澄明な溶液を分取する。FACH変換率は、リービッヒ滴定により99.2%である。反応成分は、遊離青酸0.07%を含有する(ボルハード滴定によって測定)。滴定により、使用したFACHに対して、EDDN収率87.7%を得る。EDMNは滴定によって測定することはできない。EDDNへ反応しない変換エチレンジアミンからEDMNが生成されるという仮定下に、総アミノニトリル収率として93%、従ってEDMNの収率5%が判明する。
【0151】
トリエチレンテトラミン
前記で取得した溶液の引き続いての水素添加を、断流器及び攪拌板を備えた270mL入りオートクレーブ中で連続的に実施する。この際、Cr添加のラネーコバルト22gを前もって装入し、水素20NLを連続的に供給する。1時間当たりEDDN溶液4.5gを、内部標準2g、EDA4.9g及びTHF30gと一緒に供給する。水素添加を120℃及び100バールで実施する。26時間(h)を経過して、平均してC4‐生成物のPip2.6質量%、DETA19.5質量%及びC6‐生成物のAEPip5.6質量%及びTETA79.9質量%を単離することができる。EDDNに関して、これは、C6‐生成物の収率96%に相応する。
【0152】
例7:
ホルムアルデヒドシアンヒドリン
FACHを、一般法で変法b)により製造する。
【0153】
エチレンジアミンジアセトニトリル
2l入り反応容器中に、EDA120g(2モル)を前以て装入し、氷冷下に最高70℃の温度で約30分間以内に、FACH(67%)340.8g(4モル)を滴加する。1時間の後攪拌後に、澄明な帯黄橙色溶液を分取する。FACH変換率は、リービッヒ滴定により99.3%である。反応成分は、遊離青酸0.12%を含有する(ボルハード滴定によって測定)。滴定により、使用したFACHに対して、EDDN収率91.6%を得る。EDMNは滴定によって測定することはできない。EDDNへ反応しない変換エチレンジアミンからEDMNが生成されるという仮定下に、総アミノニトリル収率として94.3%、従ってEDMNの収率3%が判明する。
【0154】
トリエチレンテトラミン
前記で取得した溶液の引き続いての水素添加を、断流器及び攪拌板を備えた270mL入りオートクレーブ中で連続的に実施する。この際、Cr添加のラネーコバルト22gを前もって装入し、水素20NLを連続的に供給する。1時間当たりEDDN溶液4.5gを、内部標準2g、EDA4.9g及びTHF30gと一緒に供給する。水素添加を120℃及び100バールで実施する。26時間(h)を経過して、平均してC4‐生成物のPip2.4質量%、DETA13.2質量%及びC6‐生成物のAEPip4.8質量%及びTETA84.1質量%を単離することができる。EDDNに関して、これは、C6‐生成物の収率98%に相応する。
【0155】
例8:水素添加での負荷影響
別個の試験列で、負荷の影響を、比率TETA/AEPipについてだけ考察する。
【0156】
ホルムアルデヒドシアンヒドリン
FACHを、一般法で変法a)により製造する。
【0157】
エチレンジアミンジアセトニトリル
2l入り反応容器中に、EDA132g(2.2モル)を前もって装入させ、氷冷下に最高35℃の温度で1.5時間以内に、FACH(45%の)506.6g(4モル)を滴加する。1時間の後攪拌後に、FACH(45%の)14.3g(0.1モル)を後添加し、40℃に加熱する。リービッヒ滴定により、FACHの変換率約100%を得る。
【0158】
(異なった負荷でのEDDN水素添加):
270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g(乾燥)及びTHF15mlを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧200バールまで水素で加圧する。一定の時間内で、THF106g中の前記で取得したEDDN水溶液13.8g、内部標準13.8g及び水4.2gを滴加する。反応混合物を反応条件下に60分間攪拌する。試料を異なった時間で取り出し、これをメタノールで均一化する。完全な添加後に、EDDNを検出することができない。
【0159】
TETA/AEPipの比率を次のように測定する:
a)60分間添加:TETA/AEPip:2.2
b)180分間添加:TETA/AEPip:3.3
c)180分間添加:TETA/AEPip:4.5
水素添加温度80℃及び添加60分間で、TETA/AEPip比率1.3だけが達成され得る。
【0160】
例9(添加剤としてアンモニア):
アンモニアが存在する水素添加について、例7で得られるEDDN溶液を使用する。
【0161】
a)270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g(乾燥)、THF15ml及びEDA5.2gを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧200バールまで水素で加圧する。60分間以内で、THF106g中の前記で取得したEDDN水溶液(43質量%の)13.8g、内部標準13.8g及び水4.2gを滴加する。反応混合物を反応条件下に60分間攪拌する。試料を異なった時間で取り出し、これをメタノールで均一化する。完全な添加後に、EDDNを検出することができない。60分間の後水素添加後に、TETA及びAEPipの比率は4.1である。
【0162】
もう1つの試験で、EDAに付加的に、アンモニア12gを前以て装入する。これによって、比率を9.0に高めることができた。
【0163】
b)270mL入りオートクレーブ中に、Cr添加のラネーコバルト触媒3.25g(乾燥)、THF15ml及びアンモニア12gを前もって装入する。オートクレーブを120℃に高温加熱し、総圧200バールまで水素で加圧する。60分間以内で、THF106g中の前記で取得したEDDN水溶液(43質量%の)13.8g、内部標準13.8g及び水4.2gを滴加する。反応混合物を反応条件下に60分間攪拌する。試料を異なった時間で取り出し、これをメタノールで均一化する。完全な添加後に、EDDNを検出することができない。60分間の後水素添加後に、TETA及びAEPipの比率は5.7である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の段階:
a)エチレンジアミン(EDA)をホルムアルデヒド及び青酸(HCN)と反応させてエチレンジアミンジアセトニトリル(EDDN)を取得する段階、
この際、EDA対ホルムアルデヒド対HCNのモル比は、1:1.5:1.5〜1:2:2[モル/モル/モル]であり、
b)段階a)で得られるEDDNを、触媒及び溶剤の存在下で水素添加する段階
を含むトリエチレンテトラアミン(TETA)の製法。
【請求項2】
段階a)は、選択a1)〜a4)により実施され、この際、
a1)先ずホルムアルデヒド及びHCNを反応させて、ホルムアルデヒドシアンヒドリン(FACH)を生成させ、引き続いてエチレンジアミン(EDA)をFACHと反応させ、この際、EDA対FACHのモル比は1:1.5〜1:2[モル/モル]であり、又は
a2)エチレンジアミンホルムアルデヒド付加物(EDFA)をHCNと反応させ、この際、EDFA対HCNのモル比は1:1.5〜1:2[モル/モル]であり、又は
a3)EDAをホルムアルデヒド及び青酸を含む混合物(GFB)と反応させ、この際、EDA対GFBのモル比は1:1.5〜1:2[モル/モル]であり、又は
a4)EDAをホルムアルデヒド及びHCNと同時に反応させ、この際、EDA対ホルムアルデヒド対HCNのモル比は1:1.5:1.5〜1:2:2[モル/モル/モル]である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階a)は、水相で及び/又は10〜90℃、殊に30〜70℃の温度で実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
EDDNは、EDDNとともにエチレンジアミンモノアセトニトリル(EDMN)も含有するアミノニトリル混合物中に含有されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
示されたパラメーター範囲での、アミノニトリル混合物中のEDMNの割合を上昇させるために、より少ないモル割合のFACH(選択a1))、HCN(選択a2))、GFB(選択a3))又はホルムアルデヒド及びHCN(選択a4))を使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アミノニトリル混合物は、EDDN少なくとも30質量%及びEDMN少なくとも5質量%、殊にEDMN10〜25質量%を含有する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
段階a)は、選択a1)により実施される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
水素添加の前に(段階b)反応混合物から低沸点物を分離させ、この際、選択a1)での低沸点物分離は、FACHの製造に続いて既に行なわれてよく、及び/又は水素添加の前に、水の減少が実施される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
段階b)で、ラネー触媒、有利にラネーニッケル触媒又はラネーコバルト触媒、殊にCo/Al合金からアルカリ金属水酸化物水溶液での浸出によって得られ、かつ促進剤として元素Fe、Ni又はCrの少なくとも1種を含有するラネーコバルト骨格触媒を使用する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
段階b)で、溶剤は、水及び/又は有機溶剤、殊にテトラヒドロフラン又はメタノールであり、及び/又は圧力は30〜250バールであり、及び/又は温度は80℃〜140℃である、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
水素添加後に、TETA及び/又はジエチレントリアミン(DETA)及び場合により、副生成物として各々得られる反応生成物中に含まれている他のエチレンアミンを単離させる、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
EDDN又はアミノニトリル混合物を、EDDN又はアミノニトリル混合物が水素添加の際に水素と反応する速度よりも早くない速度で水素添加に供給する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
水素添加は、添加剤の存在下で、殊にEDA又はアンモニアの存在下で実施される、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
段階b)で得られるDETAを全部又は部分的に段階a)に返送させる、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
返送されたDETAを選択a1)によりFACHと反応させ、この際得られる反応生成物を水素添加する。請求項14に記載の方法。
【請求項16】
水素添加後に、テトラエチレンペンタアミン(TEPA)を反応生成物から単離させる、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
段階b)で得られるアミノエチルピペラジン(AEPip)を全部又は部分的に段階a)に返送させる、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
返送されたAEPipを選択a1)によりFACHと反応させ、この際得られる反応生成物を水素添加する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
水素添加後に、ジアミノエチルピペラジン(DAEPip)、ピペラジンエチルエチレンジアミン(PEEDA)及び/又はアミノエチルピペラジニルエチルエチレンジアミン(AEPEEDA)を別々に反応生成物から単離させる、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
ピペラジニルエチルアミノアセトニトリル(PEAN),アミノエチルピペラジニルアセトニトリル(AEPAN)又はシアノメチルピペラジニルエチルアミノアセトニトリル(CMPEAN)から選択されるアミノニトリル。
【請求項21】
AEPipをFACHと反応させる、請求項20に記載のアミノニトリルの製法。

【公表番号】特表2010−520170(P2010−520170A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551210(P2009−551210)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052413
【国際公開番号】WO2008/104582
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】