説明

EDTA耐性S100A12複合体(ERAC)

本発明は、診断及びその他の目的に使用することができるヒト生体物質中の新規なタンパク質複合物の発見に関する。本発明は、さらに、前記タンパク質複合物に関連する生成物、方法及び使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年10月19日に出願された米国仮出願第60/999,653号の正規の出願であり、米国仮出願第60/999,653号はまるごと参照によって本願明細書に含まれる。 また、仮出願又は本願明細書において引用する全ての特許文献及び非特許文献もまた、まるごと参照によって本願明細書に含まれる。
本発明は、診断及びその他の目的に使用することができるヒト生体試料における新規なタンパク質複合体の発見に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの白血球は、例えば、微生物、腫瘍細胞又は体内に入った異物の殺害及び除去、死んだ細胞の分解及び除去、病的過程の部位へのより多くの白血球の補充、炎症のアップ又はダウンレギュレーション等の生体機能に重要な多くの異なるタンパク質を含む。白血球、例えば好中球顆粒球又は単核白血球の活性化時に、白血球は異質細胞又は物質を食菌する(取り込む)。その結果、血液、脳脊髄液、滑液、溝滲出液、鼻及び気管支分泌物、唾液、尿又は便等の体液又は排泄物中で白血球由来タンパク質濃度の増加が見られる。それらの材料における白血球由来物質の分析は、多くの異なる患者群における日常的な診断手順の一部となっている。病状が実際に存在する場合以外にも、いくつかのマーカーの濃度上昇はある特定の疾患及び病的過程の種類に特異的なものである場合がある。
【0003】
S100タンパク質ファミリーに属するタンパク質は、この特別な分野に役立つ。特に、S100A8及びS100A9のヘテロ3量体であるカルプロテクチンは広く利用されている(非特許文献1)。近年、S100A12(以下、「A12」と略す)に関して興味深い知見もまた報告されている。例えば、炎症性腸疾患の患者の血清(非特許文献2)、関節リウマチの患者の血清(非特許文献3)及び炎症性腸疾患の患者の便サンプル(非特許文献4)中にこのタンパク質の濃度上昇が見られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Johne B & al. Mol Pathol. 1997 Jun;50(3):113-23.
【非特許文献2】Foell D & al.,Gut 2003;52:847-853
【非特許文献3】Foell D & al., Arthritis & Rheumatism 2004;50:1286-1295
【非特許文献4】Kaiser T & al., 2007, Gut. 2007 Aug 3
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様においては、2価金属イオンが除去された試料内におけるERACの存在を検出するキットが提供され、該キットは以下のi)〜iii)を含む:
i)固体担体
ii)該固体担体と接触させる試料にERACが存在する場合に、前記固体担体に結合され、ERACを直接検出することができる第1の標的種、及び
iii)少なくとも1種の標識。
【0006】
本発明の一実施形態で、前記キットは、さらに担体分子、好ましくは高分子担体分子を含む。本発明に係る高分子担体分子は、高分子担体1g当たり約5〜約5000μmolの量で反応性官能基を含むことが好ましい。
別の実施形態で、例えば本発明に係るデキストラン鎖を含む高分子担体分子は、約400未満、例えば380未満(例えば360未満)、例えば340未満(例えば320未満)、例えば300未満(例えば280未満)、例えば260未満(例えば240未満)、例えば220未満(例えば200未満)、例えば180未満(例えば160未満)、例えば140未満(例えば120未満)、例えば100未満(例えば80未満)、例えば70未満(例えば60未満)、例えば50未満(例えば40未満)、例えば30未満(例えば25未満)、例えば20未満(例えば15未満)、例えば12未満(例えば10未満)、例えば8未満(例えば4未満)、例えば3未満(例えば2未満)の標識種を、好ましくは目視検出可能な標的種又は蛍光検出可能な標識種のかたちで含む。
【0007】
高分子デキストラン鎖の分子量は、約500,000Daであることができるが、約100,000Da〜約900,000Daの分子量であってもよい。
【0008】
一実施形態では、各デキストラン鎖は、好ましくはジビニルスルホンで20〜22%が活性化された約2700個のグルコース単位を含む。なお、その他の連結部位もまた、以下に詳細に記載するように使用することもできる。
【0009】
好適な高分子担体は、例えば、次のような官能基を有する高分子担体であってもよい:
O-(例えば、ポリペプチド又はタンパク質のチロシン残基の脱プロトン化芳香族水酸基等の脱プロトン化フェノール性水酸基)、
S-(例えば、ポリペプチド又はタンパク質のシステイン残基の脱プロトン化チオール基等の芳香環又は脂肪族基上の脱プロトン化チオール基)、
OH(例えば、オリゴ糖又は多糖類のグルコース又は他の単糖環等の糖環上の脂肪族水酸基;又はポリエチレングリコール等のポリオールのアルコール性水酸基;又はセリン又はトレオニン残基等のポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸残基の水酸基)、
SH(例えば、ポリペプチド又はタンパク質のシステイン残基のチオール基)、一級アミノ基(例えば、ポリペプチド又はタンパク質のリジン又はオルニチン残基又は多糖類又はキトサン等のその誘導体のアミノ置換糖環の一級アミノ基)又は二級アミノ基(例えば、ポリペプチド又はタンパク質のヒスチジン残基の二級アミノ基)。
【0010】
従って、本発明における分子種の問題の官能基は、通常は、上述したタイプの1つの求核性を有する官能基など、求核性を有する官能基であってもよい。
【0011】
一実施形態では、デキストラン鎖当たり約600個の連結部位、好ましくは、それに限定するものではないが、ジビニルスルホン基等の約半分が、抗体、好ましくは抗ERACモノクローナル抗体等の標的種、及び後述する標識等の本発明に係る標識種と反応し、デキストラン鎖当たりの標識種の数は約400未満となる。しかしながら、600個の連結部位の約半分よりも多くが標識種と反応してもよく、従って標識種の数は約400より多くてもよいことは明らかである。
【0012】
本発明に係る高分子担体分子当たりの標識種及び標的種の数は、本発明によって検出することができるERACの量の下限に影響を及ぼす。
【0013】
一実施形態では、本発明に係るキット又は方法によって検出することができるERACの量の下限は、試料1mL当たり1000ng未満、例えば900ng未満、例えば800ng未満、例えば700ng未満、例えば600ng未満、例えば500ng未満、例えば400ng未満、例えば300ng未満、例えば200ng未満、例えば100ng未満、例えば95ng未満、例えば90ng未満、例えば85ng未満、例えば70ng未満、例えば75ng未満、例えば70ng未満、例えば65ng未満、例えば60ng未満、例えば55ng未満、例えば50ng未満、例えば45ng未満、例えば40ng未満、例えば35ng未満、例えば30ng未満、例えば25ng未満、例えば20ng未満、例えば15ng未満、例えば10ng未満、例えば5ng未満、例えば1ng未満、例えば0.5ng未満、例えば0.1ng未満、例えば0.05ng未満、例えば0.01ng未満、例えば0.005ng未満、例えば0.001ng未満である。
【0014】
別の態様では、本発明に係るキットの製造方法が提供され、該製造方法は次の工程を含む:
i)固体担体を用意する工程、
ii)前記固体担体と接触させる試料にERACが存在する場合に、ERACを直接検出することができる標識された第1の標的種を、前記固体担体の結合領域に添加する工程、及び
iii)標識されていない第1の標的種を前記固体担体の試験領域に添加する工程。
【0015】
さらに別の態様では、試料中のERACの検出又は定量のための、本発明に係るキットの使用が提供される。
【0016】
さらに別の態様では、次のi)〜v)の工程を含む、ERACの検出方法が提供される:
i)試料を用意する工程、
ii)前記試料から2価金属イオンを除去する工程、これにより、前記試料中の遊離2価金属イオンの量を削減ないし除去される、
iii)前記試料にERACが存在する場合にERACを直接検出することができる標識された第1の標的種を用意する工程、
iv)処理された前記試料を前記標識された第1の標的種と接触させる工程、及び
v)前記標識された第1の標的種に結合されたERACの存在を検出する工程。
【0017】
本発明の一実施形態では、ERACの検出方法によって陽性又は陰性の結果が得られる。その方法の陽性の結果となる下限を設定するために、ERAC検出のための低い方のカットオフレベルを予め設定することができる。
【0018】
本発明の一実施形態では、検出されたERACは、同一数のモノマー単位を含む天然のS100A12オリゴマーの分子量と実質的に同一の分子量を有する。
別の実施形態では、検出されたERACは、同一数のモノマー単位を含む天然のS100A12オリゴマーの分子量と比較したとき、異なる分子量を有する。本発明に係るキット又は方法によって検出されたERACの重量は、同一数のモノマー単位を含む天然のS100A12オリゴマーと比較して、例えば50%未満、60%未満、70%未満、80%未満、90%未満、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、又は少なくとも500%であってもよい。
【0019】
本発明に係るキット又は方法によって検出されたERACは、2個のモノマー単位を含む2量体、3個のモノマー単位を含む3量体、4個のモノマー単位を含む4量体、5個のモノマー単位を含む5量体、6個のモノマー単位を含む6量体、7個のモノマー単位を含む7量体、8個のモノマー単位を含む8量体、9個のモノマー単位を含む9量体又は10個のモノマー単位を含む10量体のかたちであってもよい。検出されたERACは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のモノマー単位数を含んでいてもよく、又は20を超えるモノマー単位数を含んでいてもよい。
【0020】
本発明に係るキット又は方法によって検出されたERACの分子量は、500〜2100kDa、例えば500〜1000kDa、750〜1500kDa又は1000〜2100kDaの範囲内であってもよく、あるいは500〜700kDa、例えば550〜600kDa、600〜650kDa又は650〜700kDa、あるいは700〜900kDa、例えば700〜750kDa、750〜800kDa、800〜850kDa又は850〜900kDa、あるいは900〜1100kDa、例えば900〜950kDa、950〜1000kDa、1000〜1050kDa又は1050〜1100kDa、あるいは1100〜1300kDa、例えば1100〜1150kDa、1150〜1200kDa、1200〜1250kDa又は1250〜1300kDa、あるいは1300〜1500kDa、例えば1300〜1350kDa、1350〜1400kDa、1400〜1450kDa又は1450〜1500kDa、あるいは1500〜1700kDa、例えば1500〜1550kDa、1550〜1600kDa、1600〜1650kDa又は1650〜1700kDa、あるいは1700〜1900kDa、例えば1700〜1750kDa、1750〜1800kDa、1800〜1850kDa又は1850〜1900kDa、あるいは1900〜2100kDa、例えば1900〜1950kDa、1950〜2000kDa、2000〜2050kDa又は2050〜2100kDaの範囲内であってもよい。
【0021】
さらに別の態様では、試料中に存在するERACを定量する方法が提供され、当該方法は次の工程を含む:
i)本発明に係るキットを用意する工程、
ii)試料を用意する工程、
iii)前記試料を前記キットと接触させる工程、
iv)前記試料中のERACの存在を検出する工程、及び
v)前記試料中において検出されたERACを定量する工程。
【0022】
さらに別の態様では、試料中に存在するERACを定量する方法が提供され、当該方法は次の工程を含む:
i)ERACを検出するために本発明に係る方法を行う工程、及び
ii)前記標識された第1の標的種に結合されたERACを定量する工程。
【0023】
さらに別の態様では、試料又は個体をプロファイリングする方法が提供され、当該方法は次の工程を含む:
i)本発明に従って試料中においてERACの存在を検出する工程、又は本発明に従って試料中におけるERACの量を定量する工程、及び
ii)前記試料中において少なくとも1種の他の免疫学的マーカーの存在を定性的又は定量的に検出する工程。
【0024】
好ましくは、前記他の免疫学的マーカーはS100タンパク質ファミリーの一員である。より好ましくは、前記他の免疫学的マーカーはS100A1、S100A2、S100A3、S100A4、S100A5、S100A6、S100A7、S100A8、S100A9、S100A10、S100A11、S100A13、S100A14、S100A15、及びS100A16タンパク質からなる群から選択される。
【0025】
好ましくは、前記他の免疫学的マーカーはカルプロテクチンである。
【0026】
S100タンパク質ファミリーのメンバーについては、例えば、Heizmann CW,Ackermann GE,Galichet A:“Pathologies involving the S100 proteins and RAGE",Subcell Biochem.2007;45:93-138及びMarenholz I,Heizmann CW,Fritz G:“S100 proteins in mouse and man:from evolution to function and pathology(including an update of the nomenclature)",Biochem Biophys Res Commun,2004 Oct 1;322(4):1111-22にさらに記載されている。
【0027】
さらに別の態様で、試料中におけるERACの存在を監視する方法が提供され、当該方法は次の工程を含む:
i)本発明に従って体液試料中におけるERACの存在を検出する工程、又は本発明に従って試料中におけるERACの量を定量する工程、及び
ii)所望により所定の間隔で、前記工程(i)を繰り返す工程。
【0028】
ERACの監視は、例えば、秒、分、時間、日、週、月又は年間隔などの一定の間隔で行うことが好ましい。好ましくは、ERACの監視は、毎年、例えば1年に2回、例えば1年に3回、例えば1年に4回、例えば1年に5回、例えば1年に6回、例えば1年に7回、例えば1年に8回、例えば1年に9回、例えば1年に10回、例えば1年に11回、例えば1年に12回、例えば毎月、例えば1ヶ月に2回、例えば1ヶ月に3回、例えば1ヶ月に4回、例えば毎週、例えば1週間に2回、例えば1週間に3回、例えば1週間に4回、例えば1週間に5回、例えば1週間に6回、例えば1週間に7回、例えば毎日、例えば1日に2回、例えば1日に3回、例えば1日に4回、例えば1日に5回、例えば1日に6回、例えば1日に7回、例えば1日に8回、例えば1日に9回、例えば1日に10回、例えば1日に11回、例えば1日に12回、例えば1日に13回、例えば1日に14回、例えば1日に15回、例えば1日に16回、例えば1日に17回、例えば1日に18回、例えば1日に19回、例えば1日に20回、例えば1日に21回、例えば1日に22回、例えば1日に23回、例えば1日に24回、例えば1時間毎、例えば1時間に2回、例えば1時間に3回、例えば1時間に4回、例えば1時間に5回、例えば1時間に6回、例えば1時間に7回、例えば1時間に8回、例えば1時間に9回、例えば1時間に10回、例えば1分毎に、例えば30秒毎に行う。
【0029】
ERACの監視は、医学的な訓練を受けていない者又は医学的な資格を有していない者によって、所望により自宅やその他の任意の場所等の病院以外の場所で行うことができる。本発明は、医学的な訓練を受けた者又は医学的な資格を有する者の援助を必要とすることなく本発明に係る監視を含む本発明に係る方法を行うことができるという利点を有する。さらに、本発明は、本発明に係る監視等の本発明に係る方法を病院から離れた場所等の任意の場所で行うことができるという利点を有する。
【0030】
さらに別の態様では、臨床症状を診断する方法が提供され、当該方法は次の工程を含む:
i)本発明に従って試料中におけるERACの存在を検出する工程、本発明に従って試料中におけるERACを定量する工程、本発明に従ってプロファイリングを行う工程、又は本発明に従ってERACの存在を監視する工程、及び
ii)前記臨床症状を診断する工程。
【0031】
さらに別の態様では、個体の臨床症状の転帰、進展、再発、緩解又は進行を予測する方法が提供され、当該方法は次の工程を含む:
i)本発明に従って試料中におけるERACの存在を検出する工程、本発明に従って試料中におけるERACを定量する工程、本発明に従ってプロファイリングを行う工程、又は本発明に従ってERACの存在を監視する工程、及び
ii)前記個体の予後を決定する工程。
【0032】
さらに別の態様では、臨床症状を治療する方法が提供され、当該方法は次の工程を含む:
i)治療を必要とする個体において
個体の体液内に存在するERACの量を減少させる工程。
【0033】
さらに別の態様では、臨床症状を治療する方法が提供され、当該方法は次の工程を含む:
i)受容体に結合するためにERACと競合することができる化合物を、治療を必要とする個体に投与する工程。
【0034】
好ましくは、前記受容体は、ERACが結合する受容体であり、より好ましくは終末糖化産物受容体(receptor for advanced glycation end products(RAGE))である。
【0035】
さらに別の態様では、臨床症状を治療する方法が提供され、当該方法は次の工程を含む:
i)本発明に従ってERACの存在を監視する工程、及び
ii)本発明に従って前記臨床症状を治療する工程。
【0036】
さらに別の態様では、臨床症状を治療する方法が提供され、当該方法は次の工程を含む:
i)ERACに関連する臨床症状を診断する工程、及び
ii)本発明に従って前記臨床症状を治療する工程。
【0037】
さらに別の態様では、臨床症状を治療する方法が提供され、当該方法は次の工程を含む:
iii)本発明に従って予後診断を行う工程、及び
iv)本発明に従って前記臨床症状を治療する工程。
【0038】
さらに別の態様では、本発明に従って治療する方法が提供され、当該治療方法は抗炎症薬の投与を含む前記臨床症状の治療と組み合わされる。
【0039】
本発明に係る臨床症状は、慢性及び急性炎症性疾患、自己免疫疾患、癌、腎臓疾患又は機能不全、心臓血管疾患又は感染症であってもよい。
【0040】
臨床症状は、感染症、放線菌症、アデノウイルス感染症、炭疽病、細菌性赤痢、ボツリヌス中毒症、例えばブルセラ-メリテンシス及びブルセラ-スイスに起因するブルセラ症(バング病)、カンジダ症、蜂巣炎、軟性下疳、コレラ、コクシジオイデス症、急性無熱性疾患、結膜炎、膀胱炎、皮膚糸状菌症、細菌性心内膜炎、喉頭蓋炎、丹毒、類丹毒、胃腸炎、生殖器ヘルペス、腺、淋疾、肝炎、ウイルス肝炎、ヒストプラスマ症、膿痂疹、マラリア、単核症、インフルエンザ、レジオネラ症、レプトスピラ症、ライム病、類鼻疽、髄膜炎、ノカルジア-アステロイデスによるノカルジア症、非淋菌性尿道炎、ピンタ、肺炎球菌肺疾患、ポリオ、原発性肺感染症、偽膜性全腸炎、抗生物質関連分娩後敗血症、狂犬病、回帰熱、リウマチ熱、ロッキー山紅斑熱、風疹、麻疹、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、連鎖球菌咽頭炎(連鎖球菌性咽頭炎)、梅毒、破傷風、毒素性ショック症候群、トキソプラズマ症、結核、野兎病、腸チフス熱、チフス、腟炎、水痘、疣贅、百日咳、いちご腫(フランベジア)及び黄熱病。
【0041】
臨床症状は、喘息、自己免疫疾患、慢性炎、慢性前立腺炎、腎炎、移植片対宿主疾患、宿主対移植片疾患、過敏症、炎症性腸疾患、炎症性筋疾患、骨盤内炎症性疾患、子癇前症、再潅流損傷、関節リウマチ、シェーグレン症候群、移植片拒絶反応、及び脈管炎からなる群から選択されてもよい。
【0042】
臨床症状は、動脈瘤、狭心症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、脳血管疾患、鬱血性心不全、冠動脈障害、高血圧症、心筋梗塞、安定狭心症、発作、及び不安定狭心症からなる群から選択されてもよい。
【0043】
本発明の一態様では、臨床症状は好ましくは関節リウマチであってもよい。
別の態様では、臨床症状は好ましくはシェーグレン症候群であってもよい。
さらに別の態様では、臨床症状は好ましくは子癇前症であってもよい。
【0044】
さらに別の態様は、本発明に係る定量方法を実施するための命令を含むコンピュータ読み取り可能な媒体を提供する。
【0045】
さらに別の態様では、以下のi)〜iii)を組み合わせて含む、本発明に係る定量方法を実施するために適した自動システムが提供される:
i)複数のデジタル画像を含むことができるデータベース、
ii)デジタル画像から複数の画素を分析するソフトウェアモジュール、及び
iii)本発明に従ってERACを定量する方法を実施するための命令を含む制御モジュール。
【0046】
さらに別の態様では、コンピュータのメモリにロードすることができるソフトウェアプログラムが提供され、該プログラムは、本発明に係るERACの定量方法を実施するための命令を含む。
【0047】
さらに別の実施形態において、本発明は天然のS100A12を測定することなくERACを測定することを含む。一実施形態で、本発明はERACの検出のみを対象とし、従って、本発明は、EDTAで処理されると解離する天然のS100A12オリゴマーの検出を含まない。
【0048】
本発明は、複数のS100A12モノマー又はオリゴマーを含むポリペプチド複合体を開示する。ここで、S100A12モノマーが以下のアミノ酸配列番号1:
TKLEEHLEGIVNIFHQYSVR KGHFDTLSKGELKQLLTKEL
ANTIKNIKDKAVIDEIFQGL DANQDEQVDFQEFISLVAIA
LKAAHYHTHKE
を有するか、又はアミノ酸配列番号1と実質的に同一である
【0049】
また、本発明は、本発明に係るポリペプチド複合体の製造又は使用方法に関する。
【0050】
定義
【0051】
本願明細書において、冠詞「a」、「an」又は「the」は「1」又は「1以上」、すなわち「少なくとも1」を意味する。
【0052】
抗体:本願明細書において使用するように、「抗体」という用語は、必要な可変領域配列を含む単離又は組換え型の結合物質を意味し、抗原性エピトープに特異的に結合する。従って、抗体は、例えば特定の標的抗原に結合する所望の生物学的活性を示す任意の形態の抗体又はそのフラグメントである。抗体が複数の種に由来することができる。例えば、抗体は、マウス又はラット等の齧歯動物、ウサギ、羊、ラクダ及びヒトの抗体を含む。抗体はまた、1つの種の可変領域を別の種の定常領域に結合するキメラ抗体を含むことができる。同様に、抗体はヒト化することができ、組換えDNA技術によって構築され、別の種の免疫グロブリンからの相補性決定領域(CDR)に結合したある種からヒトフレームワーク領域を有する免疫グロブリンを産生する。抗体はモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であることができる。抗体はアイソタイプ(IgA、IgG、IgM、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM1、IgM2)に分類することができる。
【0053】
抗体:別の実施形態で、「抗体」という用語は、完全な抗体又は抗原との結合において完全な抗体と競合する抗体のフラグメントを意味する。ある実施形態では、抗体フラグメントは組換えDNA技術によって生成する。ある実施形態では、抗体フラグメントは完全な抗体の酵素的又は化学的開裂によって生成する。抗体フラグメントの例として、これらに限定するものではないが、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv及びscFvが挙げられる。また抗体フラグメントの例としては、これらに限定するものではないが、ドメイン抗体、ナノ抗体、ミニ抗体((scFv-CH3)2)、マキシ抗体((scFv-CH2-CH3)2)、ダイア抗体(scFvの非共有結合性2量体)も挙げられる。
【0054】
抗体フラグメント:抗体フラグメントは、F(ab')2、F(ab)2、Fab'、Fab等の抗体の一部である。構造にかかわらず、抗体フラグメントは完全な抗体によって認識される抗原と同一の抗原と結合する。例えば、抗(本発明に係るポリペプチド)モノクローナル抗体フラグメントは、本発明に係るポリペプチドのエピトープに結合する。また、「抗体フラグメント」という用語は、軽鎖可変領域からなるポリペプチド、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる“Fv"フラグメント、重鎖及び軽鎖可変領域がペプチドリンカー(“scFvタンパク質")によって連結された組換え型単鎖ポリペプチド分子、及び超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位などの特定の抗原に結合する合成又は遺伝子組換えポリペプチドも含む。
【0055】
生物発光性:本願明細書において使用する「生物発光」という用語は、化学エネルギーが光エネルギーに変換される間の化学反応の結果として生じる生体による光の生成及び放射を意味する。
【0056】
化学発光性:本願明細書において使用する「化学発光」は、化学反応の結果として生じる熱の放射を伴わない光の放射(発光)である。
【0057】
キメラ抗体:「キメラ抗体」は、齧歯動物の抗体に由来する可変ドメインと相補性決定領域を含む組換えタンパク質であり、一方、その抗体分子の残りの部分はヒト抗体に由来する。
【0058】
発色団:本願明細書において使用する「発色団」は、波長の範囲にわたって光の吸収に関与する可視着色分子の一部である。拡大解釈すれば、「発色団」という用語は、分子の紫外線又は赤外線吸収部分に適用することができる。
【0059】
共有結合:本願明細書において「共有結合」という用語は、原子間における電子対の共有によって特徴付けられる化学結合の形態を表わすために使用される。電子を共有する際に原子間で形成される引力-斥力安定性は共有結合として知られている。
【0060】
診断:評価によって疾患又は損傷の性質及び原因を特定又は決定する行為又は過程。
【0061】
検出可能な標識:「検出可能な標識」は、抗体部位に結合して診断に有用な分子を生成することができる分子又は原子である。検出可能な標識の例としては、キレート剤、光活性剤、放射性同位元素、蛍光剤、常磁性イオン、又はその他のマーカー部位が挙げられる。
【0062】
蛍光性:本願明細書において使用する「蛍光性」という用語は、別の波長の光によって活性化される際にある一定の波長の光を放射できる性質を有することを意味する。
【0063】
蛍光色素:本願明細書において使用する「蛍光色素」という用語は、マークする、例えば蛍光標識を有するタンパク質を付けるために染料として使用されるあらゆる蛍光化合物を意味する。
【0064】
フルオロフォア:本願明細書において使用する「フルオロフォア」は、分子に蛍光性を与える分子の成分である。
【0065】
ヒト化抗体:「ヒト化抗体」は、モノクローナル抗体のマウス相補性決定領域がマウス免疫グロブリンの可変重鎖及び軽鎖からヒト可変ドメインに移動した組換えタンパク質である。
【0066】
標識:本願明細書において、「標識」は標識分子と同じ意味で使用される。本願明細書に記載する「標識」は、検定において検出可能であり、標識された分子を生成する分子に結合することができる識別可能な物質である。これにより、標識された分子の性質を研究することができる。
【0067】
標識化:本願明細書において「標識化」は、分子に標識を付けることを意味する。
【0068】
モノクローナル抗体:本願明細書において使用する「モノクローナル抗体」は、全く同じである抗体を意味し、なぜなら、それらは1種類の免疫細胞によって産生され、単一の親細胞の全てのクローンである。
【0069】
1価抗体:本発明における抗体は1価抗体であってもよい。1価抗体の製造方法は当業界で周知である。例えば、ある1つの方法として、免疫グロブリン軽鎖と修飾重鎖の組換発現が挙げられる。通常、重鎖は、重鎖の架橋を防止するためにFc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基を別のアミノ酸残基で置換又は削除して架橋を防止する。インビトロ法も1価抗体の製造に好適である。抗体を消化させてそのフラグメント、特にFabフラグメントを得ることは当業界で公知の技法を用いて果たすことができる。
【0070】
オリゴマー:オリゴマーは、共有化学結合で結合された限られた数の繰り返し構造単位(すなわちモノマー)通常は2〜20個からなる化合物である。例えば、オリゴマーは1以上の共有化学結合によって結合された2つのモノマーからなっていてもよい。
【0071】
ペプチド又はタンパク質:少なくとも2つのアミノ酸からなる任意の分子。通常、ペプチドは約30以下のアミノ酸からなる小さな分子を意味し、タンパク質はより多くのアミノ酸を含むより大きな分子を意味する。
【0072】
ポリクローナル抗体:本願明細書において使用する「ポリクローナル抗体」は、異なるB細胞株に由来する抗体である。ポリクローナル抗体は、特定の抗原に対して分泌され、異なるエピトープを各々認識する免疫グロブリン分子の混合物である。
【0073】
ポリマー:本願明細書において使用するポリマーは、共有化学結合で結合された任意の数の繰り返し構造単位(すなわち、モノマー)からなる化合物として定義される。
【0074】
ポリペプチド:ペプチドは、所定の順番で結合された種々のα-アミノ酸によって形成された短分子のファミリーである。1つのアミノ酸残基と次のアミノ酸残基と間の結合はアミド結合であり、ペプチド結合と呼ばれる場合もある。より長いペプチドは、タンパク質又はポリペプチドと呼ばれる。
【0075】
予後:「予後」という用語は、個体の臨床症状の経過、例えば、患者の回復の見通しの予測を通常は意味する。好ましくは、予後は、個体の臨床症状の結果、進展、再発又は緩解の可能性を判断することを目的とする。
【0076】
放射能:放射線崩壊は、不安定な原子核が粒子又は電磁波として放射線を放射することによってエネルギーを失う過程である。
【0077】
試料:この文脈において「試料(sample)」という用語は「標本(specimen)」という用語と同一の意味で使用する。
【0078】
標準:標準は、検出対象物質を既知の濃度で含む試料の1以上の測定結果の実例である。標準は、標準曲線の形であってもよい。標準曲線は、様々な既知の濃度の検出対象物質の複数の測定値である。通常、標準曲線はグラフ、図表又はチャートとして描かれる。ラテラルフロー装置の場合には、標準は、標識された標的種に結合した、様々な既知の濃度の検出対象の物質を含む多数の点、帯域、線又は領域の形であってもよい。例えば、標準は、標識された第1の標的種に結合した、様々な既知の濃度のERACを含む複数の線の形であってもよい。例えば、標準は、未知の濃度の試料の測定値を指し示す様々な標準線と比較するために使用することができ、こうして、試料における測定した物質のおおよその濃度を決定することができる。本発明に係る標準曲線等の標準は、バーコード又はチップのかたち等のデジタル形式で又はデジタル的に読み取り可能な形式であってもよい。例えば、標準又は標準曲線は、本発明に係るキットにおいてバーコードとして存在していてもよい。
【0079】
治療:治療は、治癒、改善及び予防などいくつかの異なる方法で行うことができる。通常、治癒的治療は、治療した個体に既に存在する疾患や感染症等の
臨床症状を治癒させることを目的とする。改善治療は、個体において既存の臨床症状を改善させるために治療することを通常は意味する。予防的治療は、臨床症状を予防することを通常は目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】High-Load Superdex-75カラム(ファルマシア製、スウェーデン、カラムサイズ:1.6×60cm)を使用したGPC実験の結果を示す。緩衝液は、トリス緩衝食塩水及び2mM塩化カルシウム(pH8.0)である。試料は0.3mLの正常ヒト血清である。流量は1mL/分である。
【図2】High-Load Superdex-75カラム(ファルマシア製、スウェーデン、カラムサイズ:1.6×60cm)を使用したGPC実験の結果を示す。緩衝液は、5mM EDTAを含有するトリス緩衝食塩水である。試料は0.3mLの正常ヒト血清である。流量は1mL/分である。
【図3】High-Load Superdex-75カラム(ファルマシア製、スウェーデン、カラムサイズ:1.6×60cm)を使用したGPC実験の結果を示す。緩衝液は、5mM EDTAを含有するトリス緩衝食塩水(pH8.0)である。試料は0.3mLの関節リウマチ患者の血清である。流量は1mL/分である。
【図4】塩化ナトリウム濃度を段階的に傾斜させたDEAEアニオン交換クロマトグラフィー実験の結果を示す。試料は0.3mLのヒト関節リウマチ患者の血清である。カラムは、DEAE-sepharose Fast Flow(ファルマシア製、スウェーデン、サイズ:12×18mm)である。緩衝液は、25mMバルビタールナトリウム(pH8.8)である。試料は、いくらかERACを含むが、ほとんどが通常のS100A12である0.3mLの関節リウマチ患者の血清である。200mM塩化ナトリウムで溶出されたS100A12はERACを示す。
【図5】X軸が濃度、Y軸が光学密度(OD)のS100A12 ELISAの典型的な標準曲線を示す(、)。
【図6】ラテラルフロー装置の形で、本発明に係るキットの一実施形態を示す写真である。全部で4つのラテラルフロー装置は試料中のERACの測定に適している。4つのラテラルフロー装置に使用した試料は、以下の表1に示すとおりである。 図6の写真に示すように、試料をEDTAで処理した場合には、ERAC含有試料(ERAC陽性試料)のみが陽性の試験結果(試験領域(「T」)における明確な線)を示した。すべての場合で、対照領域を有するラテラルフロー装置を使用する場合に常に見られるように、対照領域(「C」)は陽性である。ラテラルフロー装置の添加領域は、試験領域の右側に円形の開口部として示されている。添加領域において装置に試料を添加した。
【図7】試料中のERACの定量測定のグラフを示す。上記のERACラテラルフロー試験の試験ラインの染色度は、例えば測光計器によって決定することができる。図7は、LFT試験ストリップを走査した際の典型的な走査曲線を示す。図7に示すように、対照領域/コントロールラインはタンパク質濃度(0〜500ng/mL)に関わらず等しいサイズのピークを示すが、試験ラインのサイズは試料中のERACの濃度の増加に従って増加する。
【図8】50〜2000ng/mLのERAC濃度を有する試料に対して試験を行い、スキャナを使用して読み取った際に得られた標準曲線を示す。
【図9】本発明に係るラテラルフロー装置のスキャナ機械読取結果と視覚連続読取の結果との相関を示す。X軸にスキャナ読取結果をプロットし、Y軸に視覚連続読取結果をプロットする。
【0081】
【表1】

【発明を実施するための形態】
【0082】
関節リウマチ又は放射線による腸管損傷を有する患者について研究するために、ヒトA12のための酵素免疫学的検定(ELISA)が開発された。正常範囲は、健康な個体から得た試料を検定することによって決定した。検定結果は試料中のカルシウム濃度に強く依存することが判明した。実際、EDTAやクエン酸塩のようなカルシウム結合性化学物質が血液の凝固を防ぐために使用されることから、非常に少量(もしあっても)のA12しか正常な血漿中において検出されないであろう。A12はカルシウムの存在下で2量体及びオリゴマーを形成し得ることが判明しているため、EDTAを添加し又は添加せずに血清試料をゲルパーミュエーションクロマトグラフィーカラムに通すことによって血清中のそのような複合体を調べることにした。この方法では、分子量に応じてタンパク質分子を分離することができる。健康な個体から得た試料では、クロマトグラフィー緩衝液がカルシウムを、例えば2mM塩化カルシウムを含む場合には、A12は約800kDa以下の分子量を有するモノマー又はオリゴマーとして存在することを確認した。一方、クロマトグラフィー緩衝液がEDTAを例えば2g/Lの量で含む場合、A12は約10kDaの分子量に対応するモノマーとして溶出する。意外なことに、何人かの患者及び外観上健康かつ正常な血液提供者の一部から採取した血清が、EDTAを添加した場合でさえ高分子量のA12を含むことが判明した。従って、この物質を、EDTA Resistant A12 Complex(EDTA耐性A12複合体)を省略して「ERAC」と呼ぶ。
【0083】
本発明は、ヒトにおいて、白血球由来タンパク質であるS100A12が、EDTAの存在下でモノマーへの解離に抵抗する500kDa以上の分子量に対応する高分子量型として血清に生じ得るという事実に関係するものである。ERACは、関節リウマチ患者の約50%で見つかっている。一方、ERACは、ベルゲン大学病院(ノルウェー)の血液銀行において150人の正常な血液提供者のうちの2人のみに存在していた。これらの2人の血液提供者は、外観上健康であるにもかかわらず、基準上限値の10倍となる1リットル当たり約13マイクログラムの血清A12濃度を有していた。
【0084】
本発明は、関節リウマチ又は同様な疾患の患者の高い割合(約50%)及び健康成人の小さい割合(約1.5%)で、白血球由来タンパク質であるS100A12(A12)の高分子量型を対象にするものである。
【0085】
新たに開発したA12のための酵素免疫学的検定(ELISA)及び様々な患者群におけるその使用の評価時に、検定結果はカルシウムの有無に依存することが判明した。通常はEDTA抗凝固処理血液からの血漿中のA12レベルは、非常に低いか又は検知されなかった。使用した抗体はA12上の単一の抗原エピトープと反応し、ELISAにおける陽性反応が2以上のA12モノマー(A12 2量体、オリゴマー又はポリマーの存在)間における複合体の形成を必要とすると仮定した。ELISAの結果はカルシウム濃度と比例して増加したため、検定レベルが2量体/オリゴマーの高い含有割合と相関性を有するか否か試験を行うことにした。そういうわけで、血清試料をゲル透過クロマトグラフィー(GPC)カラムに、2mM塩化カルシウム(pH8.0)を含有するトリス緩衝食塩水(pH8.0)で平衡化したHigh Load Superdex-75(ファルマシア製、スウェーデン)に通した。
【0086】
図1は、正常な血清において、10〜約500kDaの分子量に対応する少なくとも6つのフラクションにおいてA12が検出されたことを示している。
一方、緩衝液がカルシウムを含まず、5mM EDTAを含む場合には、A12は10kDaの分子量に対応する単一のフラクション(モノマー)に溶出した。これを図2に示す。特徴的なことに、EDTAの結合力を克服するために塩化カルシウムを添加しない限り、このフラクションはELISAにおいて全く反応しなかった。関節リウマチ(RA)患者の血清を、EDTAを含む緩衝液とともにカラムに通し、ELISAを行う前にカルシウムをフラクションに全く添加しなかった。非常に驚くべきことに、これまでにないはるかに大きな分子量に対応する初期フラクションにおいて強い反応性が見られた。そのような知見は公表されていない。何回もの反復試験によってパターンが確認された(図3を参照)。従って、いくつかの血清試料がA12を含む高分子物質を含むとの結論に達した。他のA12複合体(2量体、オリゴマー/ポリマー)とは対照的に、上記物質はEDTAの存在下で解離しない。
【0087】
次に、多くのRA患者と数人の健康な対照から採取した血清をGPCカラムに通してERACを調べた。13人のRA患者のうちの9人及びシェーグレン症候群の2人の患者のうちの1人がERACを有することを見出した。図4に示すように、ERACは様々な量のA12モノマーと共に存在し得る。患者の記録から、ERAC陽性は関節外症状、通常は動脈硬化性疾患の存在と相関を有していることが明らかである。非常に驚くべきことに、ERACは2人の健康かつ正常な血液提供者にも見られ、無症状性症状を示唆するものである。全てのERAC陽性の個体は、血清に高いA12レベルを有していた。消耗的な長距離走の直後に2人から採取した試料は、A12レベルは基準上限レベルの50〜80倍だったが、ERACを示さなかった。
【0088】
ERACはまた、弱いアニオン交換材料への結合によっても特徴付けられる。GPCからのERACフラクションを25mMバルビタールナトリウム緩衝液(pH8.8)で平衡化したDEAE-Sepharose Fast Flowカラム、に通すと、ERACはアニオン交換体に結合し、200mM塩化ナトリウムで溶出することができる(図5を参照)。
【0089】
A12は炎症を引き起こすこと知られており、そして、タンパク質は炎症部位、例えばRA患者の関節において好中球顆粒球から放出されるため、ERACのような大きな複合体は組織内に残り、炎症を引き起こしたり、維持するかもしれないと仮定することができる。
【0090】
例えば冠状動脈心疾患を引き起こす病理学的な過程であるアテローム症は炎症性疾患であることが一般に認められている。この場合も、ERACは病原性的な役割を果たし得る。外観上健康な個体においてERACの知見は、早めの予防処置の採用に関して有用な無症状性アテローマのマーカーとなり得る。
【0091】
A12と密接な関係を有するカルプロテクチン(S100A8及びS100A9のヘテロ3量体)の高分子量複合体の大量の蓄積により、関節炎を含む多臓器病状によって特徴付けられる「カルプロテクチン症候群」(刊行物6及び7)が生じる。カルプロテクチン症候群は、ERACに関連する疾患と同様にある種のプリオン病であるという仮説は興味深いものである。プリオンのインビトロ複写技術(刊行物8)を使用することにより、添加した標準的なA12がERACに結合するか否かについて試験することができる。
【0092】
ERACが慢性炎症を引き起こしたり、維持することができるならば、治療はERACを除去するか、不活性化することを狙うことができる。
【0093】
ERACの検定は、研究及び臨床目的の両方に有用であり得る。ERACは、A12が関与する病理学的な過程を、例えば、新薬の試験時に監視するために使用して、疾患活動性及び治療に対する反応を観察するために使用することができる可能性がある。ERACの検定は、ERACのみが、EDTAの存在下にELISA及びおそらくは他の免疫学的検定において陽性シグナルを与えるという知見に基づくものである。
【0094】
ERAC及び配列番号1の変異体
パーセント配列相同性は在来の方法によって決定する。
例えば、Altschul et al.,Bull. Math. Bio. 48:603(1986)及びHenikoff及びHenikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915(1992)を参照されたい。簡単に説明すると、2つのアミノ酸配列のアライメントを行い、ギャップ開始ペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ1及びHenikoff及びHenikoff(前掲書)の“BLOSUM62"スコアマトリックスを使用してアライメントスコアを最適化する。そしてパーセント相同性を次のように計算する:
([一致総数]/[長い方の配列の長さ+2つの配列のアライメントを行うために長い方の配列に導入されるギャップの数])×(100)
【0095】
当業者は、2つのアミノ酸配列のアライメントを行うために利用可能な多くの確立されたアルゴリズムがあることを認識している。Pearson及びLipmanの「FASTA」類似性探索アルゴリズムは、本願明細書に開示するアミノ酸配列と推定又は変異体のアミノ酸配列が共有する相同性のレベルを調べるために適したタンパク質アライメント法である。FASTAアルゴリズムは、Pearson及びLipman,Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 85:2444(1988)及びPearson,Meth. Enzymol. 183:63(1990)に記載されている。
【0096】
簡単に説明すると、FASTAは、保存的アミノ酸の置換、挿入又は欠失を考慮せずに、問い合わせ配列(例えば、配列番号1)及び最も高い相同性(変数ktup=1の場合)又は対をなす相同性(ktup=2の場合)を有する試験配列のいずれかを共有する領域を特定することによって配列類似性を最初に特徴付ける。相同性の最も高い10領域について、アミノ酸置換マトリクスを使用して全てのアミノ酸対の類似性を比較することによってスコアを再計算し、そして最も高いスコアに貢献する残渣のみを含むように領域の端部を「トリミング」する。「カットオフ」値(配列の長さとktup値に基づいて所定の式によって計算される)よりも大きなスコアを有する領域が複数ある場合には、トリミングされた初期領域を調べて、領域をギャップと近似アライメントを形成するために接合できるか否かを決定する。 最後に、2つのアミノ酸配列の最もスコアの高い領域を、アミノ酸の挿入及び欠失を可能とするNeedleman-Wunsch-Sellersアルゴリズム(Needleman及びWunsch,J. Mol. Biol. 48:444(1970);Sellers,SIAM J. Appl. Math.26:787(1974))の変形を使用してアライメントする。FASTA分析の好ましいパラメータは:ktup=1、ギャップ開始ペナルティ=10、ギャップ伸長ペナルティ=1、置換マトリクス=BLOSUM62である。これらのパラメータは、Pearson,Meth. Enzymol. 183:63(1990)の添付書2に説明されているようにスコアリングマトリックスファイル(「SMATRIX」)を修飾することによってFASTAプログラムに取り入れることができる。
【0097】
本発明は、配列番号1のアミノ酸配列と比較して、1以上の保存的アミノ酸置換を有するポリペプチド変異体及び1以上の保存的アミノ酸置換を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも対象とする。配列番号1の変異体としては、例えば、アルキルアミノ酸がアルキルアミノ酸で置換された配列、芳香族アミノ酸が芳香族アミノ酸で置換された配列、硫黄含有アミノ酸が硫黄含有アミノ酸で置換された配列、ヒドロキシ含有アミノ酸がヒドロキシ含有アミノ酸で置換された配列、酸性アミノ酸が酸性アミノ酸で置換された配列、塩基性アミノ酸が塩基性アミノ酸で置換された配列、又は二塩基性モノカルボキシアミノ酸が二塩基性モノカルボキシアミノ酸で置換された配列が挙げられる。
【0098】
一般的なアミノ酸のうち、「保存的アミノ酸置換」としては、例えば、次の群の各々におけるアミノ酸中の置換によって説明することもできる:(1)グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、(2)フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、(3)セリン、トレオニン、(4)アスパラギン酸、グルタメート、(5)グルタミン、アスパラギン、及び(6)リジン、アルギニン、ヒスチジン
【0099】
BLOSUM62テーブルは、タンパク質配列セグメントの約2000の局所多重アライメントから得られたアミノ酸置換マトリクスであり、500グループを超える関連タンパク質のhighly保存領域を表す(Henikoff及びHenikoff,Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:10915 (1992))
【0100】
BLOSUM62テーブルは、タンパク質配列セグメントの約2000の局所多重アライメントから得られたアミノ酸置換マトリクスであり、500グループを超える関連タンパク質の保存領域を表す(Henikoff及びHenikoff,Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 89:10915(1992))。従って、本発明のアミノ酸配列に導入されるかもしれない保存的アミノ酸置換を定義するためにBLOSUM62置換頻度を使用することができる。化学的性質のみに基づいてアミノ酸置換を設計することも可能だが(上述のように)、「保存的アミノ酸置換」との用語は好ましくは-1より大きいBLOSUM62値によって表される置換を意味する。例えば、置換が0、1、2又は3のBLOSUM62値によって特徴付けられる場合、アミノ酸置換は保存的である。このシステムによれば、好ましい保存的アミノ酸置換は少なくとも1(例えば、1、2又は3)のBLOSUM62値によって特徴付けられ、より好ましい保存的アミノ酸置換は少なくとも2(例えば、2又は3)のBLOSUM62値によって特徴付けられる。
【0101】
配列番号1の特定の変異体は、例えば、アミノ酸配列における変異が1以上の保存的アミノ酸置換によるものである場合、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は95%を超える配列番号1との相同性を有することによって特徴付けられる。好ましくは、本発明に係るポリペプチドは、少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列番号1との相同性を有する。
【0102】
本発明に係るポリペプチドに特異的な抗体の産生
ERACに対する抗体又はそのフラグメントは、天然源から単離された本発明に係るERACを使用することによって得ることができる。特に有用な抗体は、ERACに「特異的に結合する。」以下、ERAC及びそのフラグメントをまとめて本発明に係るポリペプチドと呼ぶ。
【0103】
抗体が、次の二つの特性の少なくとも一つを示す場合、抗体は特異的に結合すると考えられる:
(1)抗体が結合活性の閾値を有する本発明に係るポリペプチドに結合する、及び
(2)抗体が以下に定義する本発明に係るポリペプチドと関連するポリペプチドと有意に交差反応しない。
【0104】
第1の特性に関して、抗体が106M-1以上、好ましくは107M-1以上、より好ましくは108M-1以上、最も好ましくは109M-1以上の結合親和力(ka)を有するポリペプチド、ペプチド又はエピトープに結合する場合、抗体は特異的に結合する。抗体の結合親和力は、当業者によって、例えばScatchard解析(Scatchard,Ann.NY Acad. Sci. 51:660(1949))によって容易に決定することができる。第2の特性に関しては、例えば、抗体が本発明に係るポリペプチドを検出するが、標準的なウエスタンブロット分析において同様又は同一の量で添加された既知のポリペプチドを検出しない場合、抗体は関連ポリペプチド分子と有意に交差反応しない。
【0105】
抗体は、エピトープを有する抗原性ペプチド又は本発明に係るポリペプチドを使用して製造することができる。エピトープを有する抗原性ペプチド及び本発明に係るポリペプチドは、配列番号1に含まれるアミノ酸の少なくとも4個の、又は15〜約30個のアミノ酸の配列又はそのフラグメントを含むことが好ましい。ただし、配列番号1のより大きな部分を含むペプチド又はポリペプチド、例えば、30〜50個のアミノ酸を含む配列又は本発明に係るポリペプチド(配列番号1及その変異体)のアミノ酸配列までの及び該配列全体を含む任意の長さのペプチド又はポリペプチドも、本発明に係るポリペプチドと結合する抗体を得るために有用である。エピトープを有するペプチドのアミノ酸配列は、水性溶媒中において実質的な溶解性を示す(すなわち、配列が比較的親水性残基を含むが、好ましくは疎水性残基を含まない)ように選択することが望ましい。また、プロリン残基を含むアミノ酸配列も抗体産生にとって望ましい場合がある。
【0106】
実例として、本発明に係るポリペプチドにおける潜在的な抗原部位は、LASERGENE(DNASTAR、ウィスコンシン州マディソン)のPROTEANプログラム(バージョン3.14)を実行してJameson-Wolf法(Jameson及びWolf,CABIOS 4:181,(1988))によって特定することができる。この分析ではデフォルトパラメータを使用した。
【0107】
Jameson-Wolf法は、タンパク質構造予測のための6つの主要なサブルーチンを組み合わせることによって潜在的な抗原決定基を予測する。簡単に説明すると、Hopp-Woods法(Hopp et al.,Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 78:3824(1981))を使用して最も高い局所親水性(パラメータ:平均7残査)を有する領域を表すアミノ酸配列を特定する。第2のステップでは、Emini法(Emini et al.,J.Virology 55:836(1985))を使用して表面確率(パラメータ:表面決定閾値(0.6)=1)を計算する。第3では、Karplus-Schultz法(Karplus及びSchultz,Naturwissenschaften 72:212(1985))を使用して骨格鎖柔軟性(パラメータ:柔軟性閾値(0.2)=1)を予測する。解析の第4及び第5のステップでは、二次構造予測をChou-Fasman法(Chou,「Prediction of Protein Structural Classes from Amino Acid Composition」,in Prediction of Protein Structure and the Principles of Protein Conformation,Fasman(ed.),pp.549-586(Plenum Press 1990)、及びGarnier-Robson,Garnier et al.,J. Mol. Biol. 120:97(1978))を使用してデータに適用する(Chou-Fasmanパラメータ:立体配座テーブル=64タンパク質;α領域閾値=103; β領域閾値=105;Garnier-Robsonパラメータ:α及びβ決定定数=0)。第6のサブルーチンでは、柔軟性パラメータとハイドロパシー/溶媒露出度ファクターを結合して「抗原性指標」として示される表面輪郭数値を決定する。最後に、ピーク拡大関数(peak broadening function)を抗原性指標に適用し、それぞれのピーク値の20、40、60又は80%を加えることによって主要な表面ピークを拡大して内部領域に対する表面領域の移動度から得られる付加的な自由エネルギーを考慮に入れる。しかしながら、螺旋領域は柔軟性が低い傾向があるため、この演算は螺旋領域にある如何なる主要なピークにも適用されない。
【0108】
ERACに対するポリクローナル抗体は、当業者に周知の方法を使用して調製することができる。例えば、Green et al.,「Production of Polyclonal Antisera」,in Immunochemical Protocols(Manson,ed.),pp.1-5(Humana Press 1992)、及びWilliams et al.,「Expression of foreign proteins in E. coli using plasmid vectors and purification of specific polyclonal antibodies」,in DNA Cloning 2:Expression Systems,2nd Edition,Glover et al.(eds.),p.15(Oxford University Press 1995)を参照されたい。ポリペプチドの免疫原性は、ミョウバン(水酸化アルミニウム)やフロインド完全又は不完全アジュバント等のアジュバントを使用して増加させることができる。免疫に有用なポリペプチドとしては、例えば、ERAC又はその一部と免疫グロブリンポリペプチド又はマルトース結合蛋白質の融合によって得られる融合ポリペプチドも挙げられる。ポリペプチド免疫原は、完全長分子又はその一部であってもよい。ポリペプチド部分が「ハプテン状」である場合、そのような部分は、免疫化のために高分子担体(キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)又は破傷風トキソイド等)に有利に結合させることができる。
【0109】
ポリクローナル抗体は馬、牛、犬、鶏、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ヤギ又は羊等の動物内において通常は産生させるが、本発明に係るポリペプチドに特異的な抗体はヒトに近い霊長類抗体から得ることもできる。ヒヒにおいて診断的及び治療的に有用な抗体を産生させるための一般的な技法は、例えば、Goldenberg et al.,WO 91/11465,及びLosman et al.,Int. J. Cancer 46:310(1990)に記載されている。
【0110】
あるいは、本発明に係るポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を産生させることもできる。特定の抗原に対する齧歯動物のモノクローナル抗体は、当業者に公知の方法によって得ることができる(例えば、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)、Coligan et al.(eds.),Current Protocols in Immunology,Vol.1,pages 2.5.1 2.6.7(John Wiley & Sons 1991)[“Coligan"]、Picksley et al.,“Production of monoclonal antibodies against proteins expressed in E. coli",in DNA Cloning 2:Expression Systems,2nd Edition、Glover et al.(eds.),p.93(Oxford University Press 1995)を参照)。
【0111】
簡単に説明すると、モノクローナル抗体は、遺伝子産物を含む組成物をマウスに注射し、血清試料を除去することによって抗体産生の存在を確認し、脾臓を除去してBリンパ球を得、そのBリンパ球を骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマを得、該ハイブリドーマをクローニングし、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、ハイブリドーマ培養液から抗体を単離することによって得ることができる。
【0112】
また、本発明に係るポリペプチドに特異的な抗体をヒトモノクローナル抗体から得ることもできる。ヒトモノクローナル抗体は、抗原投与に反応して特定のヒト抗体を産生するように設計された遺伝子導入マウスから得られる。この技法では、ヒトの重鎖及び軽鎖遺伝子座の要素を内因性重鎖及び軽鎖遺伝子座の標的破壊を含む胚性幹細胞株から得たマウスの細胞株に導入する。遺伝子導入マウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、マウスはヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生するために用いることができる。遺伝子導入マウスからヒト抗体を得るための方法は、例えば、Green et al.,Nature Genet.7:13(1994)、Lonberg et al.,Nature 368:856(1994)、及びTaylor et al.,Int. Immun. 6:579(1994)に記載されている。
【0113】
モノクローナル抗体は、様々な確立した技法によってハイブリドーマ培養液から単離・精製することができる。単離技法としては、Protein-Aセファロースによるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーが挙げられる(例えば、Coligan,pp.2.7.1-2.7.12及びpp.2.9.1-2.9.3;Baines et al.,“Purification of Immunoglobulin G(IgG)",in Methods in Molecular Biology,Vol.10,pp.79-104 (The Humana Press, Inc. 1992)を参照)。
【0114】
特別な用途のために、本発明に係るポリペプチドに特異的な抗体のフラグメントを調製することが望ましい場合もある。このような抗体フラグメントは、例えば抗体のタンパク加水分解によって得ることができる。抗体フラグメントは、従来の方法による抗体全体のペプシン又はパパイン消化によって得ることができる。実例として、抗体フラグメントは、ペプシンによる抗体の酵素的開裂によって5SフラグメントF(ab')2を得ることによって製造することができる。このフラグメントをチオール還元剤を使用してさらに開裂させて3.5S Fab'1価フラグメントを得ることができる。所望により、開裂反応はジスルフィド結合の開裂によって生じるスルフヒドリル基に対して保護基を使用して行うことができる。別の方法として、ペプシンを用いる酵素的切断は、2個の1価Fabフラグメントと1個のFcフラグメントを産生する。これらの方法は、例えば、Goldenberg,米国特許第4,331,647号、Nisonoff et al.,Arch Biochem. Biophys. 89:230(1960)、Porter,Biochem. J. 73:119(1959)、Edelman et al. 及びColigan,both in Methods in Enzymology Vol.1,(Academic Press 1967)に記載されている。
【0115】
その他の抗体開裂法、例えば、重鎖フラグメントを分離して1価の軽-重鎖フラグメントを形成する方法、さらにフラグメントを開裂する方法、又はその他の酵素的、化学的又は遺伝的技法も、フラグメントが完全な抗体によって認識される抗原に結合する限りにおいて、使用することができる。
【0116】
例えば、FvフラグメントはVH及びVL鎖の会合を含む。この会合は、Inbar et al.,Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 69:2659(1972に記載されているように、非共有結合的であってもよい。あるいは、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって結合されていても、あるいはグルタルアルデヒド等の化学物質によって架橋されていてもよい(例えば、Sandhu,Crit. Rev. Biotech. 12:437(1992)を参照)。
【0117】
Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによって連結されたVH及びVL鎖を含むことができる。これらの一本鎖抗原結合性タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドによって連結されたVH及びVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって得ることができる。構造遺伝子は発現ベクターに挿入され、次いで大腸菌等の宿主細胞に導入される。組換え型宿主細胞は、2つのVドメインを連結するリンカーペプチドを有する一本のペプチド鎖を合成する。scFvを製造するための方法は、例えば、Whitlow et al.,Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:97(1991)に記載されている(さらに、Bird et al.,Science 242:423(1988)、Ladner et al.,米国特許第4,946,778号、Pack et al.,Bio/Technology 11:1271(1993)及び上述したSandhuも参照)。
【0118】
実例として、scFvは、インビトロにおいてリンパ球をポリペプチドに曝し、そしてファージベクター又は同様のベクターにおける抗体ディスプレイライブラリーを選択する(例えば、固定又は標識されたタンパク質又はペプチドを使用して)ことによって得ることができる。潜在的ポリペプチド結合ドメインを有する遺伝子コードポリペプチドは、ファージ(ファージディスプレイ)又は大腸菌等の細菌上に展示されたランダムペプチドライブラリーをスクリーニングすることによって得ることができる。ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、例えば、ランダム変異導入及びランダムポリヌクレオチド合成などの様々な方法によって得ることができる。これらのランダムペプチドディスプレイライブラリーは、リガンド又は受容体、生物学的又は合成的な巨大分子、有機物質又は無機物質等のタンパク質又はポリペプチドであってもよい公知の標的と相互作用するペプチドをスクリーニングするために使用することができる。そのようなランダムペプチドディスプレイライブラリの作成及びスクリーニング技法は当業界で公知であり(Ladner et al.,米国特許第5,223,409号、Ladner et al.,米国特許第4,946,778号、Ladner et al.,米国特許第5,403,484号、Ladner et al.,米国特許第5,571,698号、及びKay et al.,Phage Display of Peptides and Proteins(Academic Press,Inc.1996))、ランダムペプチドディスプレイライブラリー及びそのようなライブラリーをスクリーニングするキットは、例えばCLONTECH Laboratories,Inc.(カリフォルニア州パロアルト)、Invitrogen Inc.(カリフォルニア州サンディエゴ)、New England Biolabs,Inc.(マサチューセッツ州ベヴァリー)、及びPharmacia LKB Biotechnology Inc.(ニュージャージー州ピスキャタウェイ)から市販されている。ランダムペプチドディスプレイライブラリーは本願明細書に開示された配列を使用してスクリーニングし、結合するタンパク質を特定することができる。
【0119】
別の形態の抗体フラグメントは、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、対象となる抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって調製することができる(例えば、Larrick et al.,Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991)、Courtenay-Luck,“Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies",in Monoclonal Antibodies:Production,Engineering and Clinical Application,Ritter et al.(eds.),p.166(Cambridge University Press 1995)、及びWard et al.,“Genetic Manipulation and Expression of Antibodies",Monoclonal Antibodies:Principles and Applications,Birch et al.,(eds.),p.137(Wiley-Liss,Inc.1995)を参照)。
【0120】
あるいは、本発明に係るポリペプチドに特異的な抗体を「ヒト化」モノクローナル抗体から得ることもできる。ヒト化モノクローナル抗体は、マウス相補性決定領域をマウス免疫グロブリンの可変重鎖及び軽鎖からヒト可変ドメインに転移させることによって得られる。次に、ヒト抗体の典型的な残渣を対応するマウスのフレームワーク領域で置換する。ヒト化モノクローナル抗体から得られた抗体コンポーネントを使用することにより、マウスの定常領域の免疫原性に関連する潜在的な問題を取り除くことができる。マウス免疫グロブリンの可変ドメインをクローニングする一般的な技法は、例えば、Orlandi et al.,Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:3833(1989)に記載されている。ヒト化モノクローナル抗体を製造するための技法は、例えば、Jones et al.,Nature 321:522(1986)、Carter et al.,Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:4285(1992)、Sandhu,Crit. Rev. Biotech. 12:437(1992)、Singer et al.,J. Immun. 150:2844(1993)、Sudhir(ed.),Antibody Engineering Protocols(Humana Press,Inc.1995)、Kelley,“Engineering Therapeutic Antibodies",in Protein Engineering:Principles and Practice,Cleland et al.(eds.),pp.399-434(John Wiley & Sons,Inc.1996)及びQueen et al.,米国特許第5,693,762号(1997)に記載されている。
【0121】
ポリクローナル抗イディオタイプ抗体は、標準的な技法を使用して本発明に係るポリペプチドに特異的な抗体又は抗体フラグメントで動物を免疫することによって製造することができる。例えば、Green et al.,“Production of Polyclonal Antisera",in Methods In Molecular Biology:Immunochemical Protocols,Manson(ed.),pp.1-12(Humana Press 1992)を参照されたい。また、Coligan,pp.241-247も参照されたい。あるいは、上述した技法を使用して本発明に係るポリペプチドに特異的な抗体又は抗体フラグメントを免疫原として利用することによってモノクローナル抗イディオタイプ抗体を製造することができる。あるいは、上述した技法を使用してヒト化抗イディオタイプ抗体又はヒトに近い霊長類の抗イディオタイプ抗体を製造することもできる。抗イディオタイプ抗体の製造方法は、例えば、Irie,米国特許第5,208,146号、Greene et. al.,米国特許第5,637,677号及びVarthakavi及びMinocha,J. Gen. Virol. 77:1875(1996)に記載されている。
【0122】
ERAC及びERACの検出のためのキット及び方法
S100A12は、好中球顆粒球及び単球内において主に見られるカルシウム結合タンパク質である。このタンパク質はは、特に、例えば内皮細胞に見られる受容体、RAGE(終末糖化産物受容体)に結合して炎症を引き起こすことによって細胞内及び細胞外機能を示す。S100A12に関する1つの仮説は、S100A12が受容体と相互作用する6つの分子であるということである。しかしながら、この仮説は、関節リウマチ(RA)患者に見られる病理学的な複合体としてのより大きな複合体(ERAC)に関する我々の新規な知見によって拡張されるかもしれない。
【0123】
ERACに関連する知見(EDTA耐性S100A12複合体)は、ERACはゲル透過クロマトグラフィーの高分子量(通常は100〜400kDa)のフラクションにおいて見られることを示している。ERACの重要な特徴は、EDTAの存在下でS100A12モノマーに溶解しないことである。我々は、ERACのより小さな分子量の複合体への溶解に物質(内因性及び外因性)が影響を及ぼし得ると仮定した。アテローム性動脈硬化症の薬品治療は、虚血性疾患のリスクを減少させ得る。仮説は、ERACが内皮細胞受容体に結合し、病理学的な持続する炎症性シグナルを引き起こすというものである。ERACを溶解する薬品治療は、病理学的な持続する受容体への結合時間を短縮させ得る。この点に関して考えられ得る薬品しては、抗炎症薬、例えばアセチルサリチル酸及びスタチン等が挙げられる。薬品が仮定した病理学的な受容体への結合に干渉することができる別のメカニズムは、TNF-αアンタゴニストのメカニズムと同様のRAGEアンタゴニストであり得る。
【0124】
一実施形態において、本発明は、標本又は試料中のERACを検出する方法を提供する。そこで、所望により望ましくない成分を除去するように処理された標本を、ERACに対する標的種、好ましくは抗体を含むキットと接触させる。抗体の場合には、接触によってERAC抗原との免疫複合体が形成される。
【0125】
次に、キットを標本から分離する。分離したキットを、抗体等の所定の標的種が結合した本発明に係る高分子担体分子を含む移動固相に接触させる。抗体により、本発明に係る高分子担体分子が免疫複合体に結合する。次に、キットを可動固相から分離する。キットに結合した本発明に係る高分子担体分子の存在を検出し、それによって標本におけるERACの存在を検出又は決定する。
【0126】
また、本発明は、次の成分を含む、ERAC検出キットを提供する:
(a)標的種と、好ましくはERACの特徴を示す抗原と免疫複合体を形成することができる抗体と結合した固体担体、及び
(b)前記標的種又は異なる標的種、好ましくはERACの特徴を示す抗体に結合し、本発明に係る分散された高分子担体分子からなる移動固相
【0127】
一実施形態では、ERACを含むかもしれない標本を、少なくとも一箇所においてERACの抗原と複合体を形成する標的種によって少なくとも一箇所被覆されたキットに暴露する。
【0128】
一実施形態では、例えばキットから標本を洗い流すことによって標本からキットを分離し、分離したキットを、同一又は異なる標的種、好ましくは抗体を含むみ、分散された本発明に係る高分子担体分子からなる移動固相に接触させる。ERACの免疫複合体がキットの固体担体上に形成されていれば、本発明に係る高分子担体分子はそのような複合体に結合する。
【0129】
次に、移動固相の結合していない本発明に係る高分子担体分子は例えば洗浄によって除去され、そしてキットを調べてキットに結合した本発明に係る高分子担体分子の存在を決定する。例えば、本発明に係る高分子担体分子が当初は染色されている場合には、これらは目視により検出することができる場合がある。顕微鏡的な調査も採用することができる。本発明に係る高分子担体分子にトレーサー又は標識を使用することにより、以下により詳細に説明する他の検出方法も使用することができる。
【0130】
このようにして、結合した本発明に係る高分子担体分子の有無により、ERACの有無を検出することができ、結合した本発明に係る高分子担体分子の量を評価することにより、例えば、既知の濃度のERACで試料を測定することによって得られた標準結果又は標準曲線と比較することによって標本中のERACの量を決定することができる。
【0131】
本発明に使用するキットは、様々な形態又は構造を有することができる。固相は、標的種、好ましくは抗体が結合又は会合することができる位置を有し、標的種、好ましく抗体を有するそのような固相の形成により、標本と本発明の方法に使用される他の材料を接触させることができる。好ましい標本は、本願明細書に記載するような体液試料である。
【0132】
キットは、標本と他の試薬を簡単な操作によって接触させることができる方法で形成することが最も望ましい。そのため、キットはディップスティック、注射器、チューブ又は容器の少なくとも一部を形成することができる。
【0133】
標本と他の試薬を注射器から吐出するか、チューブ内を流動させるか、試験管状容器等の容器に貯めることができる。そのような装置において、キットはそのような装置の全体又は一部を形成することができ、注射器、チューブ又は容器の場合、キットの形状をなしている部分を装置の内部で少なくとも露出させ、標本及び試薬と接触させる。標的種、好ましくは抗体は、好ましくはキットの固体担体のある場所に集められ、標本に曝される。
【0134】
キットの別の好ましい形態はディップスティックである。ディップスティックの場合には、キットは少なくとも一端に含まれ、該キットの固体担体に結合した標的種、好ましくは抗体はディップスティックの端部に集められる。ただし、キットは、一端又は複数の場所に集められた標的種、好ましくは抗体を有するディップスティック全体を含むことができる。
【0135】
ディップスティックは全体がキットによって形成されていてもよく、ディップスティックの一端に標的種、好ましくは抗体のコーティングを結合させることもできる。別の実施形態では、ディップスティックは、一端が本体部に取り付けられたキットを有する。標的種、好ましくは抗体のコーティングをキットに結合させる。さらに別の実施形態では、キットは全体として内部に標本を配置することができる筒状容器を形成する。標的種、好ましくは抗体のコーティングは、容器の底近くに配置され、1以上の場所に集められる。
【0136】
キットの固体担体は、所望の標的種、好ましくは抗体を結合させることができる任意の材料で構成される。抗体タンパク質との共有結合については、官能性カルボキシル表面を含むように固体担体材料を選択することができ、接合試薬として水溶性カルボジイミドを使用することができる。好ましい材料は、所望の標的種、好ましくは抗体を接合によって結合させることができるカルボキシル化表面を有するアクリル系樹脂である。アミノ表面基を有する材料については、無水コハク酸と反応させることによって反応性カルボキシル中間物を調製することができる。様々な無機担体、通常はガラスを、標的種、好ましくは抗体との共有結合のために用意することもできる。
【0137】
標的種、好ましい抗体と結合することができる固体担体の材料は、方法の工程に大きく干渉しない材料から選択される。固体担体の材料は、例えば以下の材料から選択することができる:
Whatman GF/D
Whatman F147-11
Whatman GF/AVA
Whatman 147-02
Whatman GF/DFA
Whatman F147-09
Whatman F075-17*
Millipore Rapid Q24*
Millipore Rapid Q27
Ahlstrom A142
Millipore Hi-Flow Plus HF07504
Millipore Hi-Flow Plus HF09004
Millipore Hi-Flow Plus HF12004
Millipore Hi-Flow Plus HF13504
Millipore Hi-Flow Plus HF18004
Sartorius Unisart CN40
Sartorius Unisart CN90
Sartorius Unisart CN200*
【0138】
組織試料中に、非特異的な凝集物、特に免疫グロブリンと結合した凝集物が存在すると、ERACが存在しない場合でも本発明に係る可動高分子担体分子とキットの結合を引き起こすことによって誤差が生じ得る。検定時に繰り返し洗浄することによって非特異的結合は減少させることができるが、そのような望ましくない結合を回避するために非特異的凝集物を除去することが必要な場合がある。例えば、単純なポリスチレンラテックス表面によって凝集物のいくらかを消極的に除去することができる一方で、IgG-被覆表面はより良い親和性を有する。
【0139】
ERACに対するモノクローナル抗体は、一貫性のある再現可能な結合を行う。特異的抗体を適切に供給することにより、競合タンパク結合測定法に必要な運動学的平衡のための培養時間が現在必要ではないため、放射免疫学的検定で行われる競合タンパク結合免疫学的検定と対比して、本発明の直接結合免疫学的検定は信頼が高く、非常に高速な方法となる。
【0140】
本発明の方法によれば、抗血清の通常のIgフラクション又はモノクローナル抗体のいずれかからの抗体標的種を、キットの固体担体と及び所望により移動固相(本発明に係る高分子担体分子)とそれぞれ結合させる。
【0141】
キットの機能は、取り扱い及び遊離抗原からの結合分離のためのものであり、一方本発明に係る移動高分子担体分子の機能は形成された免疫複合体を検出するためのものである。抗体タンパク質と各種固相材料との結合技法は十分に開発されている(例えば、W.J.Dreyer,米国特許第3,853,987号を参照)。
【0142】
本発明の方法の一実施形態では、得られる免疫複合体は、固体担体+標的種、好ましくは標識化抗体+ERAC+標的種、好ましくは抗体を含む多層「サンドイッチ」である。
【0143】
しかし、共有結合に必要な抗体の量は、ポリ塩化ビニル等のプラスチックに受動的に吸着される量の1000倍未満であり、そのような量の非常に特異的な標的種、好ましくは抗体を使用することは非常にコストがかかる可能性がある。
【0144】
共有結合のある程度の強度と、標的種、好ましくは抗体の特異性とを維持する結合の代替方法は、標的種と固相とを第1の抗体(標的抗体のFc部分に対して標的化された抗種抗体)によって連結することである。
【0145】
すなわち、安価な第1の抗体を最初に固相に共有結合させ、結合した第1の抗体が標的抗体の種特異的Fc部分を引き付け、ERACの抗原に関して標的抗体の機能的なエピトープをそのまま残す。そのような第1の抗種抗体によって連結することにより、種を検出する場合、本発明の免疫学的検定によって、固体担体+抗種抗体+標識化標的抗体+ERAC+標的抗体+抗種抗体からなる「サンドイッチ」が得られる。
【0146】
本発明の直接結合検定法では、固体担体と標的種との、好ましくは抗体とのカップリング、及び所望により本発明に係る高分子担体分子と標的種、好ましくは抗体とのカップリングは予め準備することができ、上述した直接結合検定の前に前処理のために試料中の非特異的凝集の要素を除去又は失活させる。
【0147】
マイクロフローシステム
本発明に係るキットは、WO 98/10267に記載されたマイクロフローシステム等のマイクロシステムにも適用することもできる。そのようなシステムはTorsana Biosensor A/S(デンマーク)から市販されている。
【0148】
マイクロフローシステムの技術の原理は、少なくとも2つの案内流の流量を制御することによって、試料流を標的表面に正確に位置させることができる。
【0149】
案内流と試料流の流量割合を制御することによって、試料流を数mmの幅内に集中させることができる。試料流は分子を運び、表面と相互作用する。
【0150】
システムの固定レーンは、y-次元において未知の試料を含む液体流と相互作用する。
【0151】
反応が生じる数千個所のユニークな交点が形成される。
【0152】
非常に狭い液体流において乱流が全く発生しないため、試料流の焦点を乱す唯一の現象は拡散である。実質的に、この技術により、平面上に液体流を正確に位置させることが可能となる。このようにして、材料を数mmの精度で配置することができる。
【0153】
マイクロ流体システムにより、チップの表面と相互作用させる材料(DNA、タンパク質、細胞)を運ぶ液体の非常に狭い流れを制御することができる。
【0154】
マイクロフローシステムにより、反応物質の流れ、この場合には標識された標的種の流れを固定し、化学反応が生じる数千個所の交点で模様を創り出す1以上の試料で続く試験を行い、検出することができる。手順全体は、試料、反応物質の添加、固定化の選択、検出化学、配列レイアウトに関して柔軟性が得られる閉じられた流体系で行われる。
【0155】
特に、複数の免疫学的マーカーの試験を行うためにキットを使用する場合、例えば、免疫学的マーカーのプロファイル又は自己抗体のプロファイルを得る場合には、本発明はマイクロシステムにおけるキットの使用を好適に含む。
【0156】
マイクロシステムに加えて、本発明に係るキットは、例えばラテラルフロー装置等の従来のマクロシステムの一部を構成することができる。
【0157】
ラテラルフロー装置
本発明のキットは、好ましくはラテラルフロー装置(LFD)の形態であることができる。ラテラルフロー装置(ラテラルフロー試験又はラテラルフロー免疫クロマトグラフィー測定法としても知られている)は、試料(マトリックス)中の標的検体(タンパク質、ペプチド、タンパク質複合物、ペプチド複合体又は核酸等)の有無又は量を検出することを目的とした簡単な装置である。最も一般的には、ラテラルフロー装置は、自宅診断、ポイント・オブ・ケア診断又は実験室使用のために使用されている。ラテラルフロー装置はディップスティック形式で製造されることが多い。ラテラルフロー試験は、試験試料を毛管作用によって固体担体に沿って流す免疫学的検定の形態でである。試料に対して試験を行うと、試料と混合される標識された試薬と通常遭遇し、抗体等の標的種で予め処理された線又はゾーンに遭遇する基材を通過する。試料中に存在する分析物に応じて、標識された標的種は試験線又はゾーンにおいて結合することができる。ラテラルフロー試験は、競合測定法又はサンドイッチ測定法のどちらでも行うことができる。
【0158】
本発明に係るLFDは、固いプラスチックケース等のケースによって囲まれた固体担体を含むことができる。好ましくは、ケースは、試料を固体担体に添加するため少なくとも1つの開口部(通常「試料添加開口部」という)、及び試験結果及び所望により固体担体上の任意の標準を観察又は読み取るための開口部又は透明部分(通常「試験結果観察開口部」という)を有することができる。
【0159】
本発明の一実施形態では、LFDの固体担体は、通常はケースの試料添加開口部を介して試料を添加するための添加領域を含む。固体担体に添加されたとき、試料は、毛管力によって固体担体内を流れる。以下の説明において、「上流」及び「下流」という用語は、固体担体における試料の流れ方向を意味する。通常、添加領域は固体担体の一端に位置し、試料は実質的に一方向にのみ流れる。固体担体は、添加領域の下流に位置するか、添加領域とオーバラップする結合領域をさらに含む。固体担体は、結合領域の下流に位置する試験領域をさらに含む。固体担体は、試験領域の下流に位置する対照領域をさらに含むことができる。
【0160】
LFDをサンドイッチ測定法のために使用する場合には、結合領域はERACと結合することができる標識された標的種を含む。試験領域は、ERACと結合することができる標識されていない標的種を含む。このようにして、試料中のERACは添加領域から結合領域に流れる。結合領域では、試料中のERACは標識された標的種、例えば標識されたモノクローナル抗ERAC抗体と結合する。標識された標的種と結合したERACは、試験領域に流れ、標識されていない標的種と結合する。このようにして、試料がERACを含む場合には、標識された標的種は試験領域に到達する(陽性)。試料がERACに存在しない場合には、標識された標的種は試験領域に到達しない(陰性)。
【0161】
LFDを競合測定法のために使用する場合には、結合領域は標識されたERACに結合した標的種を含む。試料中のERACは、標的種と結合するために争い、その結果、標識されたERACと競合する。標識された標的種と結合した標識されたERAC又は標識されていないERACは試験領域に流れ、そこで標識されていない標的種と結合する。試料に含まれるERACの量が多いほど、試験領域に到達する標識は少なくなる。換言すれば、ERACを全く含まない試料は完全に標識された試験領域となり、一方、ERACを多く含む試料はほとんど又は全く標識されない試験領域となる。
【0162】
試料が添加領域から結合領域及び試験領域を通り、越えて固体担体内を流れたことを示す対照領域をLFDが含む場合には、結合領域は対照タンパク質を含み、同様に及び対照タンパク質と結合することができる標識された標的種を含む。対照領域は、対照タンパク質と結合することができる標識されていない標的種を含む。このようにして、試料がLFDに添加される場合、試料は固体担体内を通り、添加領域から結合領域及び試験領域を通って流れ、少なくとも対照領域に達する。対照タンパク質と結合した標識された標的種は、試料と共に流れ、対照領域において標的種と結合して終わる。このようにして、試料が固体担体を流れた場合には対照領域は標識される。
【0163】
LFDにおいてERACとの結合に使用される標的種は、好ましくは抗体、例えば、ERACを含むS100A12の2量体及びオリゴマーを認識することができるモノクローナル抗体であってもよい。しかし、EDTA等の2価金属イオンキレート剤の存在下(すなわち、カルシウムイオンの非存在下)において、S100A12の2量体及びオリゴマーの解離によって生じるS100A12モノマーを抗体は認識しない。好ましくは、抗体はERACに特異的に結合する抗体である。一実施形態では、抗体は、ERACに特異的に結合するが、天然のS100A12オリゴマーには結合しない抗体である。
【0164】
一実施形態に係るキットは、
・ ERACを含む可能性のある体液試料を添加するための領域、当該領域はERACと結合することができる少なくとも1種の標識された可動標的種を含む、
・ この添加領域は、前記標的種に結合したERACの存在、量又は濃度の試験を行うための領域と液体接触し、前記添加領域は、前記体液試料で含まれるERACの少なくともかなりの量を前記試験領域に固定するための標的種をさらに含み、
・ 所望により、前記体液試料の少なくとも一部の前記添加領域から前記検出領域への移動を確認する陽性対照を生成する陽性対照領域、
を好ましくは含む。
【0165】
試料添加領域、又は必要に応じて別の結合領域に含まれる少なくとも1種の標識された標的種は、少なくとも標識された標的種の存在を検出することを可能とし、そして好ましくは、ERACに結合した抗体及び/又は標識された標的種を定量的に検出することを可能とする少なくとも1種の標識、タグ、リンカー又はマーカーを含む抗体を含む。
【0166】
試験領域の標的種も好ましくは抗体だが、この抗体はタグ、標識又はマーカーを少しも含まない。その結果、体液試料に存在するマーカーの量を正確に反映する定量的に検出可能な量のレポーター種を試験領域に固定することができる。使用する少なくとも1種のタグ、標識又はマーカーにより、例えば電磁放射線又は可視色の生成による視覚検出及び例えば放射される電磁放射線の定量化の両方を行うことができる。
【0167】
可動標的種は、例えば固体担体を含むラテラルフロー装置に添加された場合に例えば固体又は半固体表面の上を、表面の中に、或いは表面を通って動くことができる標的種を含むと理解されるべきである。
【0168】
本発明の本態様の一実施形態は、体液試料中に存在するERACを検出する分析装置を提供することであり、該装置は以下を含む:
・ 体液試料添加開口部と試験結果観察開口部を有する中空ケース、
・ 、前記試料添加開口部に添加された前記体液試料を収容する、前記中空ケース内の吸水性体液試料収容部材、及び
・ 前記観察開口部を介して観察可能な試験結果領域を有する、硝酸セルロース等の乾燥多孔質担体を前記ケース内に含み、前記吸水性体液試料収容部材から前記試験結果観察開口部に及び該観察開口部を超えて延びる試験ストリップ、・ ただし、前記吸水性体液試料収容部材と前記試験ストリップの少なくとも1つは、前記試験結果領域の上流に、ERACに特異的に結合して第1の複合体を形成することができる検出可能な標的種を含み、
・ 前記標的種は、染料ゾル、金属ゾル又は着色ラテックス粒子等の少なくとも1種の粒子状標識、所望により、前記体液試料によって移動可能に放出される少なくとも1種の蛍光検出可能な標識を含み、
そこで、前記試験ストリップと前記標識の相互作用を減少させるために有効な量で前記試験結果領域の上流における前記試験ストリップの少なくとも一部を多糖類を含む材料で被覆するか、あるいは多糖類を含む材料の存在下で前記試験結果領域の上流における前記試験ストリップの一部において前記標識を乾燥させることにより、前記試験ストリップ内における前記標識の移動度が向上しており、
そこで、前記乾燥多孔質担体は、前記試験結果領域に、前記試験結果領域に固定された標識されていない標的種を含む、前記第1の複合体を結合させるための手段を含み、
そこで、前記吸水性体液試料収容部材から前記乾燥多孔質担体への及び経由の前記体液試料の移動により、前記第1の複合体は毛管現象によって前記乾燥多孔質担体の前記試験結果領域に送られ、前記試験結果領域において前記結合手段は前記第1の複合体と結合して第2の複合体を形成し、
前記第2の複合体の存在、量又は濃度の測定は、前記試験結果観察開口部を介して観察可能である。
【0169】
別の実施形態においては、体液試料内のERACを検出する分析装置が提供され、がい分析装置は、(固体担体の)試験領域に少なくとも1種の検出可能な標的種を含む固体担体を含み、前記少なくとも1種の検出可能な標的種はERACと結合することができ、前記標的種は、リポソーム又は可視粒子状染料化合物及び所望により蛍光検出可能なマーカーを含むマイクロカプセルをさらに含む。
【0170】
さらに別の実施形態においては、・ 沈着したERACと結合することができる抗体を含む所定量の標的種を含み、流体連通されている試料添加領域、
・ 前記試料添加領域と流体接続され、前記指示薬と結合することができる抗体を含み、少なくとも1種の目視検出可能な粒子及び/又は少なくとも1種の蛍光検出可能な粒子と可動標的種を含む反応領域、及び
・ 前記指示薬と結合することができる抗体を含む標的種を含む検出領域、
を含み、
ERACを含む前記体液試料を前記試料添加領域に添加すると、閾値量の前記指示薬が抗体に結合して前記反応領域に存在する抗体との結合が妨げられ、
ただし、結合せずに前記体液試料中に残ったERACは前記試料添加領域から前記反応領域を通ってに流れ、ここで、
i)前記指示薬と結合することができる抗体、及び
ii)少なくとも1種の目視検出可能な粒子及び/又は少なくとも1種の蛍光検出可能な粒子、
を含む前記可動標的種と結合され、
前記可動標的種と結合したERACは、ERACが、ERACと結合することができる前記抗体を含む前記標的種と結合する前記検出領域と接触し、そして、
ERACの結合により、
i)ERACと結合することができる抗体、及び
ii)少なくとも1種の目視検出可能な粒子及び/又は少なくとも1種の蛍光検出可能な粒子、
を含む前記可動標的種が固定される分析装置を提供する。
【0171】
本発明は、標的種及び標識種、より一般的には分子種を使用する。本発明に関連して使用する「分子種」という用語は、例えば、標識又はマーカー(酵素又は蛍光又は発光種等)として機能する分子又はイオン種;又は標的種として機能する分子、すなわち、1種以上の標的分子、部位、受容体又はエピトープに選択的または特異的に結合することができる分子を意味する(標的種の例としては、ハプテン、ハプテン複合体、抗原、抗体、ヌクレオチド配列、ホルモンが挙げられる)。格別な一実施形態において、本発明は、それぞれ
i)同一又は異なる、及び
ii)ERACに特徴的な抗原決定基の同一又は異なるエピトープに特異的である
ポリクローナル及びモノクローナル抗体を含む第1の標的種及び第2の標的種のいずれか一方を又は双方を同時又は順次使用することに関する。
【0172】
本発明に係る分子種は、数多くの様々な物質の中から見出され、その例として、フェリチン、フィコエリトリン、フィコシアニン又はフィコビリン等のタンパク質;ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、ガラクトシダーゼウレアーゼ等の酵素;毒素;薬剤;染料;蛍光、発光、蓄光又はその他の光放出物質;イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)又はデスフェリオキサミンB等の金属キレート化物質;放射性同位体で標識された物質;又は重原子で標識された物質が挙げられる。
【0173】
多くの分子種が本発明に係る複合体における標識種として機能することができる。標識種のさらなる例を以下に記載する。
【0174】
i)例えば、フルオレセイン(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)が適する)、フルオレセインアミン、1-ナフトール、2-ナフトール、エオシン、エリトロシン、モリン、o-フェニレンジアミン、ローダミン及び8アニリノ-1-ナフタレンスルホン酸から選択される蛍光物質
【0175】
ii)例えば、水素(三重水素(3H))、炭素(14C等)、リン(32P等)、硫黄(35年代等)、ヨウ素(131I等)、ビスマス(212Bi等)、イットリウム(90Y等)、テクネシウム(99Tc等)、パラジウム(109Pd等)及びサマリウム(153Sm等)の同位体から選択される放射性同位体
【0176】
iii)例えば、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、In、Ag、Au、Hg、I、Bi、Y、La、Ce、Eu及びGd等から選択される重原子
【0177】
増進試薬として金(Au)を銀(Ag)と組み合わせて使用することができ、Auは多くの場合において特に有用な重原子である。
【0178】
また、分子種は、生物起源材料の相補分子又は相補構造領域と選択的に結合又は選択的に反応することができる標的種の形態であってもよい。
そのような標的種の例としては、例えば、抗原;ハプテン;モノクローナル又はポリクローナル抗体;遺伝子プローブ;天然又は合成オリゴ又はポリヌクレオチド;天然又は合成単糖、オリゴ糖又は多糖;レクチン;アビジン又はストレプトアビジン;ビオチン;成長因子;ホルモン;受容体分子;又はプロテインA又はプロテインG等が挙げられる。適当な抗体の例は、本願明細書の実施例に記載されている。関連するホルモンの例としては、ステロイドホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、コーチゾン等)、アミノ酸ホルモン(チロキシン等)、ペプチド及びタンパク質ホルモン(バソプレッシン、ボンベシン、ガストリン、インスリン等)が挙げられる。
【0179】
一実施形態で、本発明は、ERAC検出のための標準的な免疫組織化学的又は細胞化学的検出方法、又はそのような方法のあらゆる適切な変形を採用することができる。従って、本発明は、ERACの形態としての標的抗原決定基とのみ反応することができる特異的ないわゆる一次抗体との抗原決定基の免疫化学反応によって仲介された抗原決定基を認識する任意の測定法を採用することができる。
【0180】
一次抗体は、直接又は間接的に検出可能なシグナルを生成することができる適切な標識で標識されることが好ましい。標識は、酵素、同位体、蛍光基又は金等の重金属であることが好ましい。
【0181】
別の実施形態で、本発明は、一次抗体と反応することができる特異的ないわゆる二次抗体との免疫化学反応による一次抗体の検出を採用する。この場合、二次抗体は、酵素、同位体、蛍光基又は金等の重金属等の適切な標識で標識されることが好ましい。
【0182】
さらに別の実施形態では、本発明は、いわゆるリンカー抗体をERACの検出手段として採用する。この実施形態は、ERACの形態における標的抗原決定基と一次抗体との間の免疫化学反応が、一次抗体と、免疫化学反応を介して、又は共有結合等を介して酵素が結合した別の抗体との両方と同時に反応することができる特異的なリンカー抗体が関与する別の免疫化学反応を介して生じることを利用する。
【0183】
本発明のさらに別の実施形態では、ERACの形態における標的抗原決定基と一次抗体との間の免疫化学反応は、又はもう一つの方法として、一次抗体と二次抗体との間の免疫化学反応は、抗原及び抗体以外の相補分子対の結合によって検出される。例えば、ビオチンやストレプトアビジン等の相補対が好ましい。この実施形態では、相補対の一方は一次抗体又は二次抗体に結合し、相補対のもう一方は、例えば酵素、同位体、蛍光基又は金等の重金属等の適切な標識と結合している。
【0184】
酵素標識を標識種として使用する場合には、上述の固体担体に結合したERACは、基材、好ましくは発色試薬で処理される。酵素は基材と反応し、酵素の位置及びその周囲に着色された不溶性の付着物が順々に形成される。呈色反応の形成は、試料中にERACが存在することを示すものである。
【0185】
金等の重金属の標識を使用する場合、試料は、例えば、銀又は同様な対比指示薬を含む試薬の形態でいわゆるエンハンサーによって処理することが好ましい。銀は、好ましくは黒い付着物として金の位置及びその周囲に沈殿する。蛍光標識を使用する場合、発色試薬は通常必要でない。
【0186】
少なくとも1回の洗浄工程を導入し、洗浄工程後に試料の構成要素の一部を適切な染料との反応によって着色させ、件の標識種による色と対比させることが望ましい場合がある。任意の最終洗浄工程の後に、好ましくは標本を透明試薬で被覆し、検査のために永久記録を残す。
【0187】
件の標識種の検出は、好ましくは、ERACの形態で標的抗原決定基の位置と量の両方を示す。検出は、目視検査、光学顕微鏡検査(酵素標識の場合)、光学又は電子顕微鏡検査(重金属標識の場合)、及び適切な波長の照射光を使用した蛍光顕微鏡検査(蛍光標識の場合)又はオートラジオグラフィー(同位体標識の場合)によって行うことができる。試料の目視検査によってERACの存在及び好ましくは指示薬の量を検出することが好ましい。
【0188】
特に好適な実施形態では、視覚検出はカットオフポイントに基づいて行い、カットオフポイントを超えると、ある色が最小量(カットオフポイント)を超えるERACの存在を示し、カットオフポイント未満では、別の色が、カットオフポイントで示される量未満の量でERACが存在することを示す。蛍光マーカーを使用する場合には、検出されたERACの量を検出装置で測定された蛍光と直接相関させることができる。
【0189】
試験によって所定期間内に上述したようにERACの量を検出できる場合に
本発明にとって好ましい統計的な品質パラメータは以下のように要約される:
感度:少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%
特異性:少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%
陽性適中率:少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%
陰性適中率:少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、より好ましくは少なくとも99.5%
【0190】
陽性及び陰性適中率は、試験対象群の臨床症状の有病率に密接に関連する。本発明の場合には、試験を使用するために現実的な種類の群に基づいて統計計算を行うことが好ましい。そのため、臨床症状にあることが分っている群だけではなく、臨床症状について陰性と判明する可能性がある個体にも基づいて統計計算を行う。本発明に係るキットの有効性及び感度によって、このキットは、試験対象の症状の有病率が100%未満、例えば90%未満、例えば80%未満、より好ましくは70%未満、さらに好ましくは60未満%、例えば約50%の群を試験するために特に適している。
【実施例】
【0191】
実施例1:ERACの評価のためのクロマトグラフ及び酵素免疫学的検定
血清試料を、例えば、1.6×60cmのHigh Load Superdex-75(ファルマシア製、スウェーデン)カラムのゲル透過クロマトグラフィーに、50mMトリス緩衝液(150mM塩化ナトリウム及び5mM ETTA、pH8.0)を使用して通した。流量は1mL/分とした。高い分子量を有するタンパク質は、低い分子量を有するタンパク質よりも早く溶出した。カラムから溶出したフラクション中のERACとA12について以下に説明するELISAで評価を行った。通常、10kDaの標準的な分子構造を有するA12は、約68mLの緩衝液をカラムに通した時点で溶出し、一方、ERACは約55mLのみの緩衝液をカラムに通した時点で溶出する。標準的なA12とERACのMW差は大きく、フラクション間のオーバラップはない。溶出体積を表す一般的かつ一貫した方法は、試料中の1つの均質なタンパク質のフラクション、通常はアルブミンとして溶出体積を表す方法である。上述したカラムを使用した場合、ERACとアルブミンの溶出体積比は約0.82だった。一方、標準的なA12の溶出体積比は約1.32だった。
【0192】
あるいは、図5に示すように、ERACはアニオン交換クロマトグラフィーを使用して標準的なA12と区別することもできる。DEAE-Sepharose FastFlowゲル(ファルマシア製、スウェーデン)を充填し、25mMバルビタールナトリウム緩衝液(pH8.8)で平衡化)で平衡にしたカラムに血清試料を添加した。標準的なA12は75〜100mM塩化ナトリウムの添加によってカラムから溶出したが、ERACは塩化ナトリウム濃度を200mMに上昇させた時に溶出した。アニオン交換体はアニオン交換カラムではなく膜(例えば、マイクロウェルの底部)であってもよく、ERACの結合後、ERACの存在は、例えば、酵素、蛍光色素又は着色粒子で標識された抗体を使用して検出することができる。標準的なA12からERACを分離することを可能とする緩衝液と媒体を選択することにより、カチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー又はクロマトフォーカシング等の他のクロマトグラフィーを使用することもできる。
【0193】
以下の酵素免疫学的検定(ELISA)をERACの評価に使用することができる。
【0194】
リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)で希釈(例えば、1:500)したウサギ抗ERACのIgGフラクション150μLで、例えば、300μLの溶液を受け入れる96ウェルを有するマイクロタイタープレートのウェルを少なくとも18時間培養する。あるいは、ERACに対するモノクローナル抗体を適当な濃度(例えば、10μg/mL)で使用することもできる。最適な希釈は、ウサギ抗血清中の抗ERACのタイター及びERACと抗体の親和性に依存する。後者はモノクローナル抗体にも当てはまる。培養中に、抗ERAC抗体はウェルの壁に付着する。水の蒸発を防ぐために、ウェルは粘着テープを使用してカバーする。使用前に、ウェルは0.5mL/L Tween-20含有PBSで4回、毎回250μL/ウェルで洗浄する。
【0195】
50mMトリス緩衝液、150mM塩化ナトリウム、0.5mM塩化マグネシウム、2.5mM塩化カリウム、5mM塩化カルシウム、10g/Lウシ血清アルブミン、0.5mL/L Tween-20を含有する緩衝液(pH8.0)に6.25〜400ng/mLの濃度で添加した精製ERACからなる標準(50μL)を指定されたウェルに添加する。カリウムETTAの100mM溶液10μLに混合した血清試料(40μL)を別々のウェルに添加する。標準と試料の両方を全く同じ試験を行う。マイクロプレートに蓋をし、室温で60分間、約1000rpmで振とうする。次に、上述したようにウェルを洗浄する。次に、アルカリホスファターゼ(ALP)結合アフィニティー精製抗ERACを適切な希釈物(例えば、1:500で希釈)で50μLを各ウェルに添加し、振とうしながら60分間培養する。上述したようにウェルを4回洗浄した後、100μLの適当な酵素基質(例えば、0.1mg/mLp-ニトロフェニルリン酸(10%ジエタノールアミンに溶解)、0.1g/L塩化マグネシウム、0.1g/Lチメロサール;pH9.5))を添加する。酵素反応により、ERACの濃度を反映する黄色強度が得られる。マイクロプレート用に設計された分光光度計を使用して読み取りを行う。ERAC濃度を、リーダーに接続又は組み込まれたコンピュータによって算出するか、標準の光学濃度(O.D.、色強度を反映)が既知濃度に対してプロットされたマニュアル標準曲線から算出する。図6に典型的な標準曲線を示す。
【0196】
ERACを含有する血清試料は、6.25ng/mLの標準よりも高いERAC濃度に対応するO.D.を示し、一方ERACを含有しない試料はそれよりも低い光学濃度を示す。
【0197】
あるいは、ERAC濃度は、迅速試験、例えば、ラテラルフロー原理に基づく免疫クロマトグラフィー法(LFT試験とよく略称する)を使用して決定することもできる。ERACのLFT試験は、次からなる:実験動物を精製ERACで免疫することによって得た特異的な抗ERAC抗体を、ニトロセルロース膜又は同様なタンパク質結合性膜の中央を横切るように細いストライプとして塗布する。抗体は、通常は5×60mmの大きさを有する膜に非可逆的に結合する。膜上の残りのタンパク質結合部位は、動物性タンパク質、例えばウシアルブミンによる培養によってブロックする。膜の一端に、第2の膜(試料添加パッド、約5×5mm、コロイド金粒子で標識した抗ERACを添加して乾燥した)を取り付ける。あるいは、他のかたちの着色粒子(例えば、ラテックス製)で抗体を標識することもできる。膜は、濾紙、ガラス繊維又は同様の適切な材料からなることができる。長い膜の他端に、吸水性濾紙のパッド(5×5mm)を取り付ける。ERAC含有溶液、例えば100μLの血清又はそのクロマトフラクションを試料添加パッド膜に添加すると、標識された抗体は溶解され、試料中でERACと反応する。抗原/抗体複合体は吸水性パッドに向かった膜内に拡散され、膜の中央を横切る抗体ストライプに結合する。このようにして、膜を横切る着色された線が現れる。線の染色強度はある範囲内においてERACの濃度に比例し、光度計によって測定することができる。図7は、高濃度(500)の試料と低濃度(31.3)の試料に対して試験を行ったLFT試験の例を示す。このようなLFT試験を使用することにより、ゲル透過クロマトグラフィーからの高分子フラクションにおけるERACの存在を実証することができる。
【0198】
実施例2:免疫学的検定によるERACの直接評価
精製ERACによって免疫したウサギの多くは、単一の抗体結合部位又はタンパク質のエピトープに対する抗体を産生する。いくつかのモノクローナル抗体は単一のエピトープにも結合する。ELISA、LFT、凝集、比濁法又は免疫沈降等の通常使用される免疫学的検定の多くは、少なくとも2つのエピトープが抗原、例えばタンパク質に存在することを必要とする。単一のエピトープと反応する抗ERAC抗体を使用する場合には、S100A12が少なくとも2つのA12モノマーを含む2量体、オリゴマー、ポリマー又はヘテロ複合体として存在しない限り、陰性反応が生じる(免疫複合体が全く生成しない)。正常なヒト血清内では、A12はほとんどが2量体や6量体等のカルシウム依存性オリゴマーとして存在し(図1を参照)、例えばELISAを使用する場合には強いシグナルを与える。EDTA等のカルシウムキレート性物質を試料及び検定緩衝液に添加すると、反応は陰性になる。EDTAはカルシウムに結合し、図2に示すようにオリゴマーはモノマーに解離する。カルシウムを検定緩衝液に例えば5mMの最終濃度で添加する(オリゴマーが再び形成される)と、モノマーフラクションの存在はELISAによってのみ検出される。ERACを含む血清試料中では、EDTAが例えば5mMの濃度で存在する場合でも陽性反応が見られる。このことが、ERAC(EDTA Resistant A12 Complex(EDTA耐性A12複合体))という名前の所以である。
【0199】
従って、ERACの存在を検出する試験は、例えば、EDTAの存在下において、ELISA、免疫蛍光法、化学発光、免疫フローサイトメトリー、LFT、抗体被覆細胞又は粒子の凝集、比濁法又は免疫沈降等の多くの様々な免疫学的検定を使用して行うことができる。EDTAを適切な濃度(例えば5mM)で使用することにより、A12モノマーによる反応が防止され、患者の血清中に存在するERACは陽性反応を示す。
【0200】
実施例3:血清中のERACの検出
患者及び健康対照者の多数の群からの選択された血清試料について、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によってERACの存在を調べた。
【0201】
関節リウマチ
関節リウマチ(RA)患者(n=129)の群において、17人の患者(13.2%)が心臓血管(CV)疾患に罹患していた。CV疾患の存在は、患者病歴、臨床評価及び関連性確認手順の記録のレビューに基づくものである。患者が心臓内科医によって虚血性心疾患(すなわち、狭心症又は心筋梗塞)と診断されたか、心エコー検査によって鬱血性心不全と確認されたか、コンピュータ断層撮影によって脳卒中と確認されたか、あるいは血管造影図によって下肢の間欠性跛行症であると確認された場合に、CV疾患が存在するとみなした。
【0202】
S100A12の高血清濃度に基づいて選択した上記群からの24個の血清試料を調べた。また、低い(通常の)S100A12濃度を有するいくつかの試料についても調べた。24個の試料のうち21個の試料でERACが検出された。

GPCでの調査:24人の患者

21人の患者にERACが存在
ERAC及びCVDが存在:10人の患者
ERACが存在、CVDは存在せず:11人の患者

ERACが存在しない3人の患者:
ERACは存在しないが、CVDが存在:1人の患者
ERAC及びCVDが存在せず:2人の患者

健康な血液提供者
150人の血液提供者の群(全員が健康であると仮定)

GPCでの調査:9人

ERACが存在:2人*
ERACは存在せず:7人
*)2人とも推奨基準上限の6倍以上の範囲のS100A12血清濃度を有した。
【0203】
健康人の運動:
2人の健康人に3km走ってもらった。運動直後のS100A12濃度は一時的に非常に高かったが、これらの試料にはERACは存在しなかった。
【0204】
正常妊娠及び妊娠中毒及び糸球体腎炎に罹患した妊娠女性:
正常妊娠の女性及び妊娠中毒症妊婦の群

正常妊娠:n=23
GPCでの調査:3人の妊婦
ERACは存在せず:3人の妊婦

妊娠中毒症の女性:n=23
GPCでの調査:4人の患者
ERACが存在:1人の患者
ERACは存在せず:3人の患者

糸球体腎炎の妊娠女性*:n=1
ERACは存在せず:1人の患者
*)推奨基準上限の6倍の範囲の高いS100A12血清中濃度

原発性シェーグレン症候群:

142人の患者の群から:
GPCでの調査:6人の患者
ERACが存在:5人の患者
ERACは存在せず:1人の患者
【0205】
実施例4:ラテラルフロー装置
本発明の一実施形態は、適切なタンパク結合性材料、例えばニトロセルロース(NC)からなる膜片(例えば、厚さ:0.1mm、長さ:60mm、幅:6mm)を含むラテラルフロー免疫クロマトグラフィー試験(LFT試験)である。適当な濃度(例えば、2μg/mL)の抗体溶液を膜片の中心部を横切ってピペットによって添加し、S100A12に対する抗体を線(例えば、太さ:0.5mm)として不可逆的に結合させる(これを「試験領域」という)。ある程度離れた個所、例えば「試験領域」から10mm離れた個所に、無関係のタンパク質に対する抗体(例えば、ヤギγグロブリン)の類似領域を結合させる(この領域を「対照領域」という)。膜片上のあらゆる残りのタンパク質結合部位は、別の適当なタンパク質(例えば、カゼイン)を適当な温度で適当な期間(例えば、室温で1時間)培養することによってブロックする。膜片の一端に近接した位置(「試料添加領域」という)に、別の適当な膜(例えば、ガラス繊維製、適当なサイズ、例えば厚さ:1mm、長さ:10mm、幅:6mm)を取り付ける。この膜を「試料添加パッド」という。使用前に、このパッドは、適切な濃度(例えば、1μg/mL)の着色粒子(例えば、コロイド)で適切に標識された抗体に浸漬する。抗体は、抗S100A12と、対照領域で使用されるタンパク質に対する抗体との混合物、及び同様に対照領域の抗体に結合する適当な濃度のタンパク質との混合物である。適当な温度で適当な時間(例えば、室温で1時間)浸漬した後、例えばファンによって室温で1時間、試料添加パッドを乾燥させる。膜片の他端(すなわち、試料添加パッドの反対側)に、水吸収性材料のパッド(例えば、厚さ:2mm、幅:6mm、長さ:10mm、濾紙製)を取り付ける。膜が空気中の水分を吸収することを防止するために、吸湿剤(例えば、乾燥シリカ)も入れた水蒸気漏れのないパウチ内に付属品付きの膜片を詰める。簡単に取り扱うために、試験領域及び対照領域の試料添加及び検査のための開口部を有するカセット(例えば、プラスチック製)に膜片を入れることができる。S100A12含有試料を添加する(例えば、血清又はその希釈液を、100μLの量で)と、試料パッド内のタンパク質は溶解し、吸収パッドに向かってNC膜片内に拡散される。S100A12に対する標識された抗体は、如何なるS100A12分子又はS100A12含有複合体にも結合する。そのような抗体-抗原複合体が試験領域に達すると、それらはそこで抗体と結合し、抗体の標識のような色を呈する。色の強度は時間と共に増加し、約1時間で最大に達する。定量分析の場合には、迅速試験による結果を迅速に得るために約10分間の培養期間が好ましい。試験領域に加えて、同様に着色された対照領域が、対照抗体を添加した領域に対応する試験膜片の位置に現れる。この領域は、試料が添加され、乾燥タンパク質の溶解が生じ、NC膜への拡散が生じたことを確認する機能を果たす。定量のために、試料パッド又はNC膜におけるばらつきを補償するために、試験領域と対照領域の染色度比を使用することができる。
【0206】
実施例5:ERACを検出するためのラテラルフロー試験の使用
定性試験:定性試験は、試料がERACを含むか否かを確認することを目的とする。試験は、S100A12分子の単一のユニークなエピトープと反応するモノクローナル抗体の使用に基づく。血清は、通常S100A12のカルシウム依存性オリゴマーを含んでおり、少なくとも2つのエピトープが抗体結合に利用可能であり、着色粒子で標識されたものを含む。従って、ほとんどすべての個体から採取した血清は陽性反応(すなわち、LFT試験における着色線)を示す。一方、試料がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を適切な濃度(例えば、10mM)で添加されると、ERAC陽性試料のみが陽性反応を示す。陽性ERAC試験では、EDTAの添加後であっても明確な試験線が読み取り時間に、例えば10分後に現れることが必要である。読取装置を使用することによってより客観的に読み取ることができる。図6は、ERAC陽性及びERAC陰性の血清試料を試験した際の試験パターンを示す。矢印は、ERAC陽性及びERAC陰性反応における試験線を示す。
【0207】
実施例6:定量試験
上述したERACラテラルフロー試験の試験領域の染色度は、測光器によって決定することができる。図7は、LFT試験膜片を走査した際の典型的な走査曲線を示す。図7に示すように、対照領域はタンパク質濃度(0〜500ng/mL)にかかわらず等しい大きさのピークを示すが、試験領域のピークは試料中のS100A12の濃度の増加と一緒に増加する。
走査は、標準的なオフィス文書スキャナ等の様々な種類のスキャナ、標準的なコンピュータ、例えば、ノートパソコン、及び上に示したように画像分析用のコンピュータプログラムを使用して行うことができる。あるいは、LFT試験の試験領域の写真を携帯電話のカメラで撮影し、画像分析用のセントラルサーバーコンピュータにMMSファイルとして送信することができる。定量結果は、短時間内、通常は20秒以内に携帯電話に送り返されてくることができる。
50〜2000ng/mLのS100A12濃度を有する試料に対して試験を行い、スキャナを使用して結果を読み取った際に得られた典型的な標準曲線を図8に示す。ERACの存在は、試料採取、試料処理及びLFT手順の規定された処理計画に従って決定さるあるレベルを超える濃度に対応する試験領域によって定義することができる。後者の場合、抗体の種類及び濃度は特に重要である。あるいは、試験領域の染色度は、印刷された視覚アナログスケールの一連の線と比較することによって決定することができる。ヒトの目は、染色度の差が約15%以上であれば、染色度間の差を見分けることができる。図9は、同一のLFT試験の膜片のスキャナ読取結果と目視アナログ読取結果の相関を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価金属イオンが除去された試料中のERACの存在を検出するキットであって、
i)固体担体、
ii)前記固体担体と接触する試料中にERACが存在する場合に前記固体担体に結合し、ERACを直接検出することができる第1の標的種、及び
iii)少なくとも1種の標識
を含むキット。
【請求項2】
前記第1の標的種は、抗原;ハプテン;モノクローナル及びポリクローナル抗体;遺伝子プローブ;天然及び合成オリゴ及びポリヌクレオチド;天然及び合成単糖、オリゴ糖及び多糖;レクチン;アビジン及びストレプトアビジン;ビオチン;成長因子;ホルモン;受容体分子;プロテインA;プロテインGからなる群から選択される、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記第1の標的種はモノクローナル及びポリクローナル抗体から選択される、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
前記第1の標的種はERACに特異的に結合することができる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項5】
前記第1の標的種は、ERACに特異的に結合することができる抗体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキット。
【請求項6】
前記標識が、色素、染料、磁性粒子、重原子標識、金粒子、ラテックス、蛍光標識、発色団、フルオロフォア、蛍光色素、発光、リン光、放射性標識及び酵素標識からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
前記標識が、マレイミド化合物、ビマン化合物及びハロアセトアミド化合物からなる群から選択される、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
前記標識が、直接結合した又は共有結合性リンカーを介して間接的に結合した蛍光又は芳香族基を有する化合物から選択される、請求項6に記載のキット。
【請求項9】
前記蛍光基が、フルオロン、ローダミン、アクリジン、シアニン、チオニン、サフラニン、クマリン及びフェナントリジンから選択される、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記蛍光又は芳香族基が、水溶性及び/又は前記試料による溶解性を増加又は減少させる置換基を有する、請求項8に記載のキット。
【請求項11】
前記フルオロン蛍光基が、CFDA-SE、CFSE、カルセイン、カルボキシフルオレセイン、エオシン、エリスロシン、フルオレセイン、フルオレセインアミダイト、フルオレセインイソチオシアネート、インド黄及びメルブロミンから選択される、請求項9に記載のキット。
【請求項12】
前記ローダミン蛍光基が、ローダミン、スルホローダミン 101、スルホローダミンB及びテキサスレッドから選択される、請求項9に記載のキット。
【請求項13】
前記アクリジン蛍光基が、アクリジンオレンジ及びアクリジンイエローから選択される、請求項9に記載のキット。
【請求項14】
前記シアニン蛍光基が、DiOC6及びSYBRグリーンから選択される、請求項9に記載のキット。
【請求項15】
前記フェナントリジン蛍光基が、臭化エチジウム及びヨウ化プロピジウムから選択される、請求項9に記載のキット。
【請求項16】
前記芳香族基が、フェニル、ナフチル、アントラセン、フッ化アクリジン、ピリジン、ピリミジン、プリン、インドールから選択される、請求項10に記載のキット。
【請求項17】
i)前記第1の標的種に結合された担体分子
をさらに含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載のキット。
【請求項18】
前記担体分子が、少なくとも1種の反応性官能基を複数含む高分子担体分子である、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記担体分子が、天然及び合成多糖;ホモポリアミノ酸;天然及び合成ポリペプチド及びタンパク質;及び求核性官能基を有する合成ポリマーからなるポリマー群から選択される、請求項17又は18に記載のキット
【請求項20】
前記担体分子が、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリエチレングリコール及び置換ポリアクリレートからなるポリマー群から選択される、請求項17〜19のいずれか1項に記載のキット
【請求項21】
前記担体分子が、デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、澱粉、ヒドロキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、グリコーゲン、アガロース誘導体、セルロース誘導体及び天然ガムからなる群から選択される、請求項17〜20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項22】
前記担体分子がデキストランである、請求項17〜21のいずれか1項に記載のキット。
【請求項23】
前記担体分子が、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される、請求項17〜22のいずれか1項に記載のキット
【請求項24】
前記担体分子が標識されている、請求項17〜23のいずれか1項に記載のキット。
【請求項25】
前記標識が請求項6に記載の標識である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
i)対照タンパク質、及び
ii)前記対照タンパク質に特異的に結合することができる第2の標的種、をさらに含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載のキット。
【請求項27】
前記第2の標的種が請求項2又は3に記載の標的種である、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記第2の標的種が、前記対照タンパク質に特異的に結合することができる抗体である、請求項26又は27に記載のキット。
【請求項29】
前記対照タンパク質に特異的に結合することができる前記第2の標的種の少なくとも一部が標識され、これにより標識された第2の標的種を構成し、前記対照タンパク質に特異的に結合することができる前記第2の標的種の少なくとも一部が標識されておらず、標識されていない第2の標的種を構成する、請求項26〜28のいずれか1項に記載のキット。
【請求項30】
前記対照タンパク質及び前記標識された第2の標的種が前記固体担体の結合領域に含まれる、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記標識されていない第2の標的種が前記固体担体の対照領域に結合している、請求項29又は30に記載のキット。
【請求項32】
ERACを直接検出することができる前記第1の標的種の少なくとも一部が標識されておらず、標識されていない第1の標的種を構成する、請求項1〜32のいずれか1項に記載のキット。
【請求項33】
前記標識されていない第1の標的種の少なくとも一部が前記固体担体の対照領域に結合している、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
ERACを直接検出することができる前記第1の標的種の少なくとも一部が前記少なくとも1種の標識を含み、標識された第1の標的種を構成する、請求項1〜33のいずれか1項に記載のキット。
【請求項35】
前記固体担体が、前記固体担体の結合領域に標識された第1の標的種を含む、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
前記固体担体の結合領域に含まれる前記標識された第1の標的種がERACオリゴマーに結合している、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
前記試料を添加するための添加領域をさらに含む、請求項35又は36に記載のキット。
【請求項38】
前記添加領域が前記結合領域と完全に又は部分的にオーバラップしている、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
i)標識された第3の標的種によって結合された所定量のERACを含む少なくとも1つの領域を含む標準領域
をさらに含む、請求項1〜38のいずれか1項に記載のキット。
【請求項40】
前記第3の標的種が請求項2〜5のいずれか1項に記載の標的種である、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
ラテラルフロー装置又はマイクロフロー装置の形態である、請求項1〜40のいずれか1項に記載のキット。
【請求項42】
請求項1〜41のいずれか1項に記載のキットの製造方法であって、
i)固体担体を用意する工程、
ii)前記固体担体と接触させる試料にERACが存在する場合に、ERACを直接検出することができる標識された第1の標的種を前記固体担体の結合領域に添加する工程、及び
iii)標識されていない第1の標的種を前記固体担体の試験領域に添加する工程、
を含む方法。
【請求項43】
i)対照タンパク質及び前記対照タンパク質と結合することができる標識された第2の標的種を前記結合領域に添加し、
前記対照タンパク質と結合することができる標識されていない第2の標的種を前記固体担体の対照領域に添加する
工程をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
i)標識された第3の標的種によって結合された所定量のERACを含む標準を前記固体担体の標準領域に添加する工程をさらに含む、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記固体担体の前記結合領域に含まれる前記標識された第1の標的種がERACに結合している、請求項42〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
試料中のERACの検出又は定量のための、請求項1〜41のいずれか1項に記載のキットの使用。
【請求項47】
前記試料が、生体試料、体液試料、滑液、血液、血清、血漿、尿、大便、組織、唾液、粘液、唾液、創傷流体、結膜液、鼻分泌物、咽頭分泌物、口内洗剤、気管支洗剤、頸管分泌物、膣分泌液、腹水、小胞、病巣滲出液及び脳脊髄液からなる群から選択される、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記試料が2価金属イオンキレート剤によって処理されている、請求項46又は47に記載の使用。
【請求項49】
前記2価金属イオンキレート剤がEDTAである、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
ERACを検出する方法であって、
i)試料を用意する工程、
ii)前記試料中の遊離2価金属イオンの量を減少させるかなくすために、前記試料中の遊離2価金属イオンを除去する工程、
iii)前記試料にERACが存在する場合にERACを直接検出することができる標識された第1の標的種を用意する工程、
iv)処理された前記試料を前記標識された第1の標的種と接触させる工程、及び
v)前記標識された第1の標的種に結合されたERACの存在を検出する工程、
を含む方法。
【請求項51】
iv.a)ERACに結合することができる第2の標的種を用意する工程、及び
iv.b)前記試料を前記第2の標的種と接触させる工程、
の追加の工程を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記工程(iii)で用意する前記標識された第1の標的種はS100A12オリゴマーに結合する、請求項50又は51に記載のキット。
【請求項53】
前記試料が請求項47〜49のいずれか1項に特定された試料である、請求項50〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記標識された第1の標的種が、請求項6〜16のいずれか1項に特定された標識で標識されている、請求項50〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記第1及び/又は第2の標的種が、請求項2〜5のいずれか1項に記載の標的種から選択される、請求項50〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記第1及び/又は第2の標的種が担体分子に結合されている、請求項50〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記担体分子が請求項18〜25のいずれか1項に記載の担体分子である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
天然のS100A12を検出することを含まない、請求項50〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記天然のS100A12が、2価金属イオンキレート剤で処理したとき、モノマーに解離するオリゴマーを形成する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
EDTA等の2価金属イオンキレート剤で前記試料を処理することによって前記2価金属イオンを除去する、
請求項50〜59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記試料が請求項47〜49のいずれか1項に記載の試料である、請求項50〜60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
試料中に存在するERACを定量する方法であって、
i)請求項1〜41のいずれか1項に記載のキットを用意する工程、
ii)試料を用意する工程、
iii)前記試料を前記キットと接触させる工程、
iv)前記試料中のERACの存在を検出する工程、及び
v)前記試料中において検出されたERACを定量する工程、
を含む方法。
【請求項63】
前記試料が請求項47〜49のいずれか1項に記載の試料である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
試料中に存在するERACを定量する方法であって、
i)請求項50〜61のいずれか1項に記載の方法を実施する工程、及び
ii)前記標識された第1の標的種に結合されたERACを定量する工程、
を含む方法。
【請求項65】
前記定量を標準との目視比較によって行う、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記定量をデジタル画像解析によって行う、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記デジタル画像解析が、
i)前記標識された第1の標的種に結合されたERACを示すデジタル画像を取得する工程、
ii)前記デジタル画像を分析し、
前記標識された第1の標的種に結合されたERACの量の尺度である結果を得る工程、及び
iii)所望により前記結果を標準及び/又は対照と比較する工程、
を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記デジタル画像をデジタル写真撮影又は走査によって取得し、次いでコンピュータ装置又はコンピュータ読み取り可能な媒体に送信及び/又は保存する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記画像を自動走査又は写真撮影によって得、次いでコンピュータ装置又はコンピュータ読み取り可能な媒体に送信及び/又は保存する、請求項67又は68に記載の方法。
【請求項70】
前記工程(ii)の分析を、標識された前記第1の抗体の標識の強度を測定することによって行う、請求項67〜69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記標識の強度を標準と比較する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記標準が、異なる標識の強度が標識された第1の抗体に結合したS100A12オリゴマーの異なる所定の量を反映する標準曲線である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記対照が標識のバックグラウンドレベルを示す、請求項67〜72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記デジタル画像をデジタル写真によって得、次いでマルチメディアメッセージングサービス(MMS)によって送信側から分析のためのコンピュータシステムの形式で受信側へと送信する、請求項68〜73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記方法の結果を自動的かつ電子的に受信側に送信する、請求項64〜74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
試料又は個体をプロファイリングする方法であって、
i)請求項50〜61のいずれか1項に従って試料中におけるERACの存在を検出する工程、又は請求項62〜75のいずれか1項に従って試料中におけるERACの量を定量する工程、及び
ii)前記試料中における少なくとも1種の他の免疫学的マーカーの存在を定性的又は定量的に検出する工程、
を含む方法。
【請求項77】
前記少なくとも1種の他の免疫学的マーカーが、S100A1、S100A2、S100A3、S100A4、S100A5、S100A6、S100A7、S100A8、S100A9、S100A10、S100A11、S100A13、S100A14、S100A15、S100A16からなる群から選択される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
試料中におけるERACの存在を監視する方法であって、
i)請求項50〜61のいずれか1項に従って体液試料中におけるERACの存在を検出する工程、又は
請求項62〜75のいずれか1項に従って試料中におけるERACを定量する工程、及び
ii)所望により所定の間隔で前記工程(i)を繰り返す工程、
を含む方法。
【請求項79】
臨床症状を診断する方法であって、
i)請求項50〜61のいずれか1項に従って試料中におけるERACの存在を検出する工程、又は
請求項62〜75のいずれか1項に従って試料中におけるERACを定量する工程、又は
請求項76又は77に従ってプロファイリングする工程、又は
請求項78に記載に従って監視する工程、及び
ii)前記臨床症状を診断する工程、
を含む方法。
【請求項80】
個体の臨床症状の結果、進展、再発又は緩解を予測する方法であって、
i)請求項50〜61のいずれか1項に従って試料中におけるERACの存在を検出する工程、又は
請求項62〜75のいずれか1項に従って試料中におけるERACの量を定量する工程、又は
請求項76又は77に従ってプロファイリングする工程、又は
請求項78に従って監視する工程、及び
ii)前記個体の予後を決定する工程、
を含む方法。
【請求項81】
臨床症状を治療する方法であって、
i)治療を必要とする個体の体液内に存在するERACの量を減少させる工程
を含む方法。
【請求項82】
前記個体の体液内に存在するERACの量を減少させることができる薬剤
を投与することを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記薬剤が、ERACをS100A12モノマーに解離させることができる、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記個体の体液を濾過及び/又は透析することを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
前記個体の体液を置換することを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
前記体液が、滑液、血液、血清、血漿、結膜液及び脳脊髄液からなる群から選択される、請求項81〜85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
臨床症状を治療する方法であって、
i)受容体への結合においてERACと競合することができる化合物を治療を必要とする個体に投与する工程、
を含む方法。
【請求項88】
前記化合物が天然のS100A12オリゴマーである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記受容体が終末糖化産物受容体(RAGE)である、請求項87又は88に記載の方法。
【請求項90】
臨床症状を治療する方法であって、
i)請求項78に従ってERACの存在を監視する工程、及び
ii)請求項81〜85のいずれか1項に従って前記臨床症状を治療する工程、
を含む方法。
【請求項91】
i)請求項79に従って診断を行う工程、及び
ii)請求項81〜85のいずれか1項に従って前記臨床症状を治療する工程、
を含む方法。
【請求項92】
臨床症状を治療する方法であって、
i)請求項80に従って予後診断を行う工程、及び
ii)請求項81〜85のいずれか1項に従って前記臨床症状を治療する工程、
を含む方法。
【請求項93】
抗炎症薬を使用して前記臨床症状の治療と組み合わせて実施する、請求項81〜95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記抗炎症剤が、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、又は炎症過程に関与する1以上の酵素又はサイトカインと反応し、阻害する物質、好ましく抗体から
なる群から選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記臨床症状が、慢性及び急性炎症性疾患、自己免疫疾患、癌、腎臓疾患又は機能不全、心臓血管疾患及び感染症からなる群から選択される、請求項79〜94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記臨床症状が、
放線菌症、アデノウイルス感染症、炭疽病、細菌性赤痢、ボツリヌス中毒症、例えばブルセラメリテンシス及びブルセラ-スイスによるブルセラ症(バング病)、カンジダ症、蜂巣炎、軟性下疳、コレラ、コクシジオデス症、急性無熱性疾患(afebril)、結膜炎、膀胱炎、皮膚糸状菌症、細菌性心内膜炎、喉頭蓋炎、丹毒、類丹毒、胃腸炎、生殖器ヘルペス、腺、淋疾、肝炎、ウイルス肝炎、ヒストプラスマ症、膿痂疹、マラリア、単症、インフルエンザ、レジオネラ症、レプトスピラ症、ライム病、類鼻疽、髄膜炎、ノカルジア-アステロイデスによるノカルジア症、非淋菌性尿道炎、ピンタ、肺炎球菌肺疾患、脊髄性小児マヒ、原発性肺感染症、偽膜性腸炎、抗生物質関連産褥熱、狂犬病、回帰熱、リウマチ熱、ロッキー山紅斑熱、風疹、麻疹、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、連鎖球菌咽頭炎、梅毒、破傷風、毒素性ショック症候群、トキソプラズマ症、結核、野兎病、腸チフス熱、チフス、腟炎、水痘、疣贅、百日咳、いちご腫及び黄熱病からなる群から選択される、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記臨床症状が、喘息、自己免疫疾患、慢性炎、慢性前立腺炎、腎炎、移植片対宿主疾患、宿主対移植片疾患、過敏症、炎症性腸疾患、炎症性筋疾患、骨盤内炎症性疾患、子癇前症、再潅流損傷、関節リウマチ、シェーグレン症候群、移植拒絶及び脈管炎からなる群から選択される、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
前記臨床症状が、動脈瘤、狭心症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、脳血管疾患、鬱血性心不全、冠動脈障害、高血圧症、心筋梗塞、安定狭心症、発作及び不安定狭心症からなる群から選択される、請求項95に記載の方法。
【請求項99】
前記臨床症状が関節リウマチである、請求項95に記載の方法。
【請求項100】
前記臨床症状がシェーグレン症候群である、請求項95に記載の方法。
【請求項101】
前記臨床症状が子癇前症である、請求項95に記載の方法。
【請求項102】
受容体との結合においてERACと競合する化合物を特定する方法であって、
i)ERACを用意する工程、
ii)ERACが結合する受容体を用意する工程、
iii)少なくとも1種の非ERAC化合物を用意する工程、及び
iv)前記ERAC受容体への前記非ERAC化合物の結合に関して試験を行う工程、
を含む方法。
【請求項103】
前記受容体がRAGEである、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
請求項64〜75のいずれか1項に記載の方法を実施するための命令を含むコンピュータ読み込み可能な媒体。
【請求項105】
請求項64〜75のいずれか1項に記載の方法を実施するために好適な自動システムであって、
i)複数のデジタル画像を含むことができるデータベース、
ii)デジタル画像から複数の画素を分析するためのソフトウェアモジュール、及び
請求項64〜75のいずれか1項に記載の方法を実施するための命令を含む制御モジュール、
を組み合わせて含む自動システム。
【請求項106】
コンピュータのメモリにロードすることができるソフトウェアプログラムであって、請求項64〜75のいずれか1項に記載の方法を実施するための命令を含むソフトウェアプログラム。
【請求項107】
複数のS100A12モノマー又はオリゴマーを含むポリペプチド複合体であって、S100A12のモノマーが次のアミノ酸配列番号1を有するか、
TKLEEHLEGI VNIFHQYSVR KGHFDTLSKG ELKQLLTKEL ANTIKNIKDK AVIDEIFQGL DANQDEQVDF QEFISLVAIA LKAAHYHTHK E(配列番号1)
又はアミノ酸配列番号1と実質的に同一であるポリペプチド複合体。
【請求項108】
少なくとも500kDa、
例えば少なくとも800kDa、
例えば少なくとも1000kDa、
例えば少なくとも1200kDa、
例えば少なくとも1400kDa、
例えば少なくとも1600kDa、
例えば少なくとも1800kDa、
例えば少なくとも2000kDa
の分子量を有する、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項109】
前記複合体のS100A12モノマー又はオリゴマーが、低濃度、例えば5mMのEDTAの存在下において解離しない、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項110】
pH8.8の60mMバルビタール緩衝液を含むアガロースゲルに2V/cmで2時間通過させた場合に、α2〜β2グロブリンと同等な電気泳動移動度を有する、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項111】
5.5〜7.5の範囲のpIを有する、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項112】
DEAEセファロースのような弱アニオン交換材料を使用してイオン交換クロマトグラフィーを行った場合に、約200mMナトリウムで溶出する反応性を有する、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項113】
ヒト細胞内又は細胞外タンパク質から群から選択されるポリペプチドをさらに含む、請求項1に記載のポリペプチド複合体。
【請求項114】
請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体、及び製薬学的に許容し得る担体、を含む医薬組成物。
【請求項115】
請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチドに特異的な抗体又はその結合フラグメント。
【請求項116】
ERACに特異的に結合する、請求項115に記載の抗体。
【請求項117】
天然のS100A12オリゴマーに結合しない、請求項116に記載の抗体。
【請求項118】
ポリクローナル抗体である、請求項115に記載の抗体。
【請求項119】
モノクローナル抗体である、請求項115に記載の抗体。
【請求項120】
F(ab')2、F(ab)2、Fab'及びFabからなる群から選択される抗体の一部を含む、請求項115に記載の抗体フラグメント。
【請求項121】
特定の抗原に結合する合成又は遺伝子組換えポリペプチドである、請求項115に記載の抗体フラグメント。
【請求項122】
軽鎖可変領域を含む又はからなる抗体フラグメント、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる“Fv"フラグメントを含む又はからなる抗体フラグメント、ペプチドリンカーによって重鎖及び軽鎖可変領域が連結された組換え型単鎖ポリペプチド分子からなるFvフラグメントを含む又はからなる抗体フラグメント(「scFvタンパク質」)、および超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位を含む又はからなる抗体フラグメントからなる群から選択される、請求項115に記載の抗体フラグメント。
【請求項123】
齧歯動物の抗体に由来する可変ドメインと相補性決定領域を含み、抗体分子の残りの部分がヒト抗体に由来する組換えタンパク質の形態のキメラ抗体である、請求項115に記載の抗体。
【請求項124】
モノクローナル抗体のマウス相補性決定領域がマウス免疫グロブリンの可変重鎖及び軽鎖からヒト可変ドメインに転移した組換えタンパク質の形態のヒト化抗体である、請求項115に記載の抗体。
【請求項125】
抗体部位に結合してより容易に検出することができる部位を生成する分子又は原子の形態の検出可能な標識を含むか、該標識に関連付けられている、請求項115〜124のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項126】
前記標識が、キレート剤、光活性剤、放射性同位元素、蛍光剤及び常磁性イオンからなる群から選択される、請求項125に記載の抗体。
【請求項127】
請求項116又は117に記載の抗体に特異的に結合するポリペプチド。
【請求項128】
請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を含む宿主細胞。
【請求項129】
哺乳動物の宿主細胞である、請求項128に記載の宿主細胞。
【請求項130】
ヒト以外の宿主細胞である、請求項128に記載の宿主細胞。
【請求項131】
植物細胞、真菌細胞、酵母細胞及び細菌細胞からなる群から選択される、請求項128に記載の宿主細胞。
【請求項132】
請求項128に記載の宿主細胞を含むトランスジェニック動物。
【請求項133】
ヒト以外の動物である、請求項132に記載のトランスジェニック動物。
【請求項134】
体液試料中の請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を検出するキットであって、
a)体液試料の量を得るための手段、及び
b)前記ポリペプチド複合体が前記試料中に存在している場合に、検出するための検定を行うための指示又は試薬、
を含むキット。
【請求項135】
EDTA又は同様なカルシウム結合性物質を含む溶液をさらに含む、請求項134に記載のキット。
【請求項136】
試料中の請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を検出する方法であって、
a)請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を含む試料を用意する工程、
b)請求項115〜126のいずれか1項に記載の抗体を用意する工程、
c)前記試料を前記抗体に接触させる工程、及び
d)前記試料中の請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を検出する工程、
を含む方法。
【請求項137】
タンパク性物質及び/又は生体分子をさらに含む試料から請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を精製する方法であって、
請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体の1以上の物理的又は機能的特性に従って、前記試料の前記タンパク性物質及び/又は生体分子の少なくとも一部から、前記ポリペプチド複合体を分離する工程、及び
前記試料の前記タンパク性物質及び/又は生体分子の少なくとも一部から前記ポリペプチド複合体を分離することによって
請求項107〜113のいずれか1項に記載の前記ポリペプチド複合体を精製する工程、
を含む方法。
【請求項138】
請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を単離する工程をさらに含み、前記単離によって99%(w/w)を超える前記ポリペプチドを含む組成物を得る、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
患者の心臓血管(CV)疾患を診断する方法であって、
a)患者から体液試料を得る工程、
b)前記試料を2価金属イオンキレート剤と共に培養する工程、及び
c)前記試料中の請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を検出する工程、
を含み、前記検出が前記患者のCV疾患と正の相関を有する方法。
【請求項140】
患者の心臓血管(CV)疾患の発症可能性を予測する方法であって、
a)患者から体液試料を得る工程、
b)前記試料を2価金属イオンキレート剤と共に培養する工程、及び
c)前記試料中の請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を検出する工程、
を含み、前記検出が前記患者のCV疾患の発症可能性と正の相関を有する方法。
【請求項141】
前記患者が関節リウマチに罹患していると診断されている、又は関節リウマチに罹患する可能性が高い、請求項139又は140に記載の方法。
【請求項142】
前記患者のCV疾患を予防及び/又は軽減及び/又は治療及び/又は監視するために前記患者を治療する工程をさらに含む、請求項139〜141のいずれか1項に記載の方法。
【請求項143】
患者の関節リウマチを診断する方法であって、
a)患者から体液試料を得る工程、
b)前記試料を2価金属イオンキレート剤と共に培養する工程、及び
c)前記試料中の請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を検出する工程、
を含み、前記検出が前記患者の関節リウマチと正の相関を有する方法。
【請求項144】
患者の関節リウマチの発症可能性を予測する方法であって、
a)患者から体液試料を得る工程、
b)前記試料を2価金属イオンキレート剤と共に培養する工程、及び
c)前記試料中の請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を検出する工程、
を含み、前記検出が前記患者の関節リウマチの発症可能性と正の相関を有する方法。
【請求項145】
前記患者の関節リウマチを予防及び/又は軽減及び/又は治療及び/又は監視するために前記患者を治療する工程をさらに含む、請求項143又は144に記載の方法。
【請求項146】
炎症又は感染症等に罹患した患者の血液等の体液から請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を除去する方法であって、
前記患者の前記体液中の請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を検出する工程、及び
前記体液から請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を除去する工程、
を含む方法。
【請求項147】
前記患者が心臓血管疾患に罹患している、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記患者が関節リウマチに罹患している、請求項146に記載の方法。
【請求項149】
請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体の終末糖化産物受容体(receptor for advanced glycation end products(RAGE))への結合のアンタゴニストを特定する方法であって、
a)侯補アンタゴニストを請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体と接触させる工程、及び
b)前記侯補アンタゴニストの請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体に対する結合親和力を決定する工程、
を含み、
前記侯補アンタゴニストが請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体に対して高い結合親和力を有する場合は、前記侯補アンタゴニストが請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体に結合することができ、請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体のRAGEへの結合を競合的に阻害することを示す方法。
【請求項150】
請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を宿主細胞内において製造する方法であって、請求項107〜113のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体をコードするポリヌクレオチドを用意する工程、及び前記宿主細胞内において前記ポリヌクレオチドを発現させる工程、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−502244(P2011−502244A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529401(P2010−529401)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064058
【国際公開番号】WO2009/050277
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510108928)
【氏名又は名称原語表記】ERAC AS
【Fターム(参考)】