説明

EGRクーラ

【課題】熱交換を行うコア部の体積の割合を大きくして冷却性能を向上させるとともに、耐圧強度を向上させたEGRクーラを提供する。
【解決手段】排気ガスを通過させる多数の扁平なチューブ4を中空筒状のシェル7の内部に積層してシェル7に接合し、上記排気ガスとチューブ4の周囲を流れる冷却水との熱交換を行うコア部1と、一端をシェル7のガス流れ上流側に接合されてコア部1へ上記排気ガスを供給する筒状の入口ヘッダー2と、一端をコア部1のガス流れ下流端に接合されてコア部1から上記排気ガスを送出する筒状の出口ヘッダー3とからなるEGRクーラであって、入口ヘッダー2および出口ヘッダー3をシェル7の外面に接合するとともに、この接合部分13のシェル7の内面にチューブ4を接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばディーゼル車などの車両において、排気ガスの一部を還流してエンジンの吸気系に戻すことで窒素酸化物(NOx)の発生を低減させるEGRシステムに用いられ、上記排気ガスを冷却するEGRクーラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のEGRクーラは、図1、図7に示すように、大口径の角筒状に形成されたシェル7の内部に多数のチューブ4を配置して、チューブ4内を排気ガスが流れるガス流路とし、シェル7とチューブ4との間を冷却水が流れる冷却水流路としていた。ガス流路と冷却水流路とは、互いに気密を保つように接合されている。
【0003】
シェル7の下面部に冷却水入口パイプ11が取り付けられるとともに、シェル7の上面部には冷却水出口パイプ12が取り付けられ、冷却水は冷却水入口パイプ11から冷却水出口パイプ12へとシェル7内を通過する。
また、シェル7の長手方向両端には、それぞれ入口ヘッダー2と出口ヘッダー3とが取り付けられ、排気ガスは入口ヘッダー2から多数のチューブ4へ分岐して流れ、出口ヘッダー3から排出される。
シェル7にチューブ4を収容してなるコア部1では、ガスと冷却水との間でチューブを介して熱交換が行われ、ガスが冷却される。
【0004】
図7、図9に示すように、チューブ4は、対向するチューブインナー5およびチューブアウター6を組み合わせてなる扁平管であり、チューブ4相互の間隔を維持して積層配置するため、入口部分および出口部分に、厚さ方向に膨出した膨出部5a、6aを形成していた(特許文献1)。
また、図1、図8に示すように、チューブ4内にはインナーフィン8を収容して接合することにより、排気ガスと冷却水との熱交換面積を増やし、熱交換を促進していた。
【0005】
EGRクーラの冷却性能を向上させるには、熱交換が行われるコア部1の体積を大きくすることが効果的である。しかし、EGRクーラが搭載される車両のエンジンルームのレイアウトには制約が多く容易にEGRクーラを大型化することはできなかった。そのため、ヘッダー等の熱交換に寄与しない部分14(図2(a)参照)が占める体積の割合を減らし、コア部1の体積の割合を大きくすることが考えられた。
もっとも、従来のEGRクーラでは、図7(b)に示すように、ヘッダーとシェルとの接合部分15、およびシェルとチューブとの接合部分16をそれぞれ形成しており、強度確保のためにはこの接合部分15、16の寸法を小さくすることはできない。そのため、EGRクーラを小型化するほどコア部1の割合を小さくせざるをえず、冷却性能が低下するという問題があった。
【0006】
さらに、EGRクーラでは、使用時にガス流路と冷却水流路との双方で加圧されるため、構成部品および接合部分に耐圧強度が必要とされる。
たとえばチューブ4では、内部にインナーフィン8を収容することで耐圧強度を向上させていた。
【0007】
また、ヘッダーとシェルとの接合部分15およびシェルとチューブとの接合部分16では部品が2層に重なっていることにより耐圧強度が確保されていたが、2箇所の接合部分15、16の間にはシェル7のみしか存在しないため、この部分の耐圧強度が不足して変形しやすく、板厚の薄いチューブ4や、入口ヘッダー2(出口ヘッダー3)母材、シェル7母材、ヘッダーとシェルとの接合部分15がこの変形に引っ張られて破損することがあった。
このような従来の構造では、入口ヘッダー2または出口ヘッダー3とシェル7との両方の板厚を増やさなければ耐圧性を向上させることができなかったため、入口ヘッダー2、出口ヘッダー3やシェル7の材料コストが増加していた。
【0008】
さらに、特許文献1のEGRクーラでは、図8(a)(b)に示すように、チューブ4内にインナーフィン8を収容して接合するためにチューブインナー5、チューブアウター6の平板部の内面の全域にろう材10を塗布していたが、図8(c)に示すように、ろう材10の厚みによってチューブ4の厚さが増し、シェル7内に所定の数のチューブ4を収容することができなくなるという問題があった。
ろう材10は鉱粉末と液体とを混合したペーストであるため、その厚みをコントロールすることは難しかった。
【0009】
また、図9に示すように、従来のチューブ4では、チューブインナー5、チューブアウター6の双方の平板部に、チューブ4相互の間隔を保持して冷却水流路を形成するために厚さ方向に膨出する膨出部5a、6aを設けていたため、チューブインナー5およびチューブアウター6がともに複雑な形状になり、加工コストおよび材料コストが大きくなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−243125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、コア部の体積の割合を大きくして冷却性能を向上させるとともに、耐圧強度を向上させたEGRクーラを提供することを課題とする。
また、チューブ内面とインナーフィンとを接合するろう材によって増加するチューブの厚みをコントロールすることのできるEGRクーラを提供することを課題とする。
さらに、チューブの製造コストを低減させることができるEGRクーラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において、上記課題が解決される手段は以下の通りである。
第1の発明は、排気ガスを通過させる多数の扁平なチューブを中空筒状のシェルの内部に積層してシェルに接合し、上記排気ガスと上記チューブの周囲を流れる冷却水との熱交換を行うコア部と、一端を上記シェルのガス流れ上流側に接合されて上記コア部へ上記排気ガスを供給する筒状の入口ヘッダーと、一端を上記コア部のガス流れ下流端に接合されて上記コア部から上記排気ガスを送出する筒状の出口ヘッダーとからなるEGRクーラであって、入口ヘッダーおよび出口ヘッダーを上記シェルの外面に接合するとともに、この接合部分の上記シェルの内面に上記チューブを接合したことを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、上記チューブ内には上記排気ガスの流れを乱流化する波板状のインナーフィンを収容するとともに、上記チューブの内面に、上記チューブと上記インナーフィンとを接合するろう材を敷設するビードを凹設したことを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、上記チューブは、平板部の両側端から内側壁を立設してなるチューブインナーと、平板部の両側端から上記内側壁に外接する外側壁を立設してなるチューブアウターとを組み付けてなり、かつ、上記チューブインナーと上記チューブアウターとのいずれか一方のみの平板部の長手方向両端に、厚さ方向に膨出して他のチューブとの間隔を保持する膨出部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、入口ヘッダーおよび出口ヘッダーを上記シェルの外面に接合するとともに、この接合部分の上記シェルの内面に上記チューブを接合したことにより、熱交換に寄与しないヘッダーおよび接合部分の体積の割合を小さくし、コア部の体積の割合を大きくすることができて、冷却性能を向上させることができる。
また、シェルおよび入口ヘッダー(または出口ヘッダー)接合部分と、シェルおよびチューブの接合部分との間に、耐圧性に乏しいシェルのみの部分が存在せず、三層構造によって耐圧性を向上させることができるとともに、使用条件によってさらに高耐圧化する必要がある場合にも、入口ヘッダーまたは出口ヘッダーのみの板厚を増やすことで高耐圧化できるため、材料コストを抑えることができる。
【0016】
第2の発明によれば、上記チューブ内には上記排気ガスの流れを乱流化する波板状のインナーフィンを収容するとともに、上記チューブの内面に、上記チューブと上記インナーフィンとを接合するろう材を敷設するビードを凹設したことにより、使用するろう材の量を減らして材料コストを低減させることができるとともに、ろう材によるチューブの厚みの増大化を防止して、製品精度を向上させることができる。
【0017】
第3の発明によれば、上記チューブは、平板部の両側端から内側壁を立設してなるチューブインナーと、平板部の両側端から上記内側壁に外接する外側壁を立設してなるチューブアウターとを組み付けてなり、かつ、上記チューブインナーと上記チューブアウターとのいずれか一方のみの平板部の長手方向両端に、厚さ方向に膨出して他のチューブとの間隔を保持する膨出部を形成したことにより、チューブを形成するのに必要な全体の材料コストおよび加工コストを低減させることができる。
また、冷却水流路の高さ(チューブ相互の間隔)に仕様変更があった場合にも、チューブインナーとチューブアウターとのうち、膨出部を設けた一方の形状(膨出部の高さ)を変更するのみでよく、膨出部を設けない他方については形状を変更せずに仕様変更前の型を流用できるため、型費を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るEGRクーラを示す斜視図である。
【図2】(a)は同EGRクーラの断面説明図、(b)は(a)の部分拡大図、(c)は(b)中のA部の部分拡大図である。
【図3】同EGRクーラのチューブを示す図であり、(a)はチューブの側方図、(b)は同平面説明図、(c)は(a)中のB−B線断面説明図である。
【図4】同チューブを示す分解拡大斜視図である。
【図5】(a)から(d)は、それぞれ別態様に係るEGRクーラのチューブを示す平面説明図である。
【図6】(a)、(b)は、それぞれ別態様に係るEGRクーラのチューブを示す平面説明図である。
【図7】(a)は従来のEGRクーラの部分拡大説明図、(b)は(a)中のC部の部分拡大図である。
【図8】従来のEGRクーラのチューブを示す図であり、(a)はチューブの側方図、(b)は同平面説明図、(c)は(a)中のD−D線断面説明図である。
【図9】従来のEGRクーラのチューブを示す分解拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係るEGRクーラについて説明する。
図1に示すように、このEGRクーラは、排気ガスと冷却水との熱交換を行うコア部1の両端に、エンジンの排気系(図示せず)から排気ガスを導入する入口ヘッダー2と、エンジンの吸気系(図示せず)へ排気ガスを排出する出口ヘッダー3とを取り付けてなる。
図2に示すように、コア部1は、排気ガスを通過させる多数の扁平なチューブ4を所定の間隔を設けて積層し、これを角筒状のシェル7に収容し、接合によって固定してなる。
【0020】
図2、図4に示すように、チューブ4は、略平坦な平板部の両側端に内側壁を立設してなるチューブインナー5と、略平坦な平板部の両側端に上記内側壁に外接する外側壁を立設してなるチューブアウター6とを組み付けてなる中空の扁平管状に形成されている。
チューブインナー5とチューブアウター6とは、ろう付けによって接合される。
【0021】
このチューブ4では、チューブインナー5の長手方向両端において、平板部を厚さ方向に膨出させた膨出部5aを形成している。膨出部5aと平板部の他の部分とは斜面によって接続されている。このため、多数のチューブ4を積層すると、この膨出部5aが他のチューブ4に当接することによって、チューブ4相互の間に冷却水流路となる所定の間隙が設けられる。
他方、チューブアウター6には膨出部を設けず、平板部は長手方向の全域で平面状に形成されている(後述するビード9を設ける場合を除く)。
【0022】
図1、図3に示すように、各チューブ4は、波板状のインナーフィン8を収容することにより、チューブ4を通過する排気ガスを分散、合流あるいは蛇行させて乱流化するとともに、インナーフィン8によって排気ガスと冷却水との熱交換面積を増加させ、熱交換を促進している。
インナーフィン8は、チューブ4内に収容され、ろう付けによってチューブ4の内面に接合される。
図3に示すように、チューブインナー5およびチューブアウター6の平板部の内面には複数の直線状のビード9を凹設しており、全体として、相互に角で接する2つの正方形の辺を形成している。
インナーフィン8をチューブ4に接合するには、チューブインナー5、チューブアウター6のビード9にろう材10を塗布し、次いでインナーフィン8を所定の位置にセットして、チューブインナー5とチューブアウター6とを組み合わせ、加熱してろう付けする。
【0023】
図1に示すように、シェル7は、2枚のコ字状の板材を接合してなり、両端に開口部を有して、積層した多数のプレートチューブ4を収容できる角筒体に形成されている。また、シェル7の入口側下面部と出口側上面部とには、それぞれ冷却水入口パイプ11、冷却水出口パイプ12が接続されている。
【0024】
コア部1の上流側に取り付けられる入口ヘッダー2は、エンジンの排気系からの配管(図示せず)に接続されるフランジ部2aと、コア部1のシェルに接合される大径の下流側開口部2bとを有し、下流側開口部2bに向かって次第に拡径する略角筒状に形成されている。
【0025】
コア部1の下流側に取り付けられる出口ヘッダー3は、コア部1のシェル7に接合される大径の上流側開口部3aと、エンジンの吸気系への配管(図示せず)に接続されるフランジ部3bとを有し、上流側開口部3aに向かって次第に拡径する略角筒状に形成されている。
【0026】
図2に示すように、入口ヘッダー2の下流側開口部2bは、シェル7の上流側の端部よりも大径に形成され、接合部分13でシェル7の外面に接合される。
同様に、出口ヘッダー3の上流側開口部3aは、シェル7の下流側の端部よりも大径に形成され、接合部分13でシェル7の外面に接合される。
一方、この接合部分13では、積層したチューブ4がシェル7の内面に接合され、チューブ4内のガス流路と、チューブ4外の冷却水流路とを気密に保っている。
【0027】
図2(c)に示すように、入口ヘッダー2(出口ヘッダー3)は、入口ヘッダー2(出口ヘッダー3)、シェル7、チューブ4の三層の接合部分13よりもコア部1側へ延設され、シェル7のうち冷却水流路の壁面を構成する部分へせり出している。
また、図2(c)に示すように、チューブ4とシェル7との長手方向の長さを等しくし、組み付ける際に両者の長手方向端面が揃うようにしている。そのため、組み付け時には、チューブ4とシェル7との長手方向両端を合わせることで容易に位置決めすることができ、EGRクーラの生産性を向上させることができる。
【0028】
このようなEGRクーラでは、入口ヘッダー2および出口ヘッダー3をシェル7の外面に接合した接合部分13において、積層したチューブ4をシェル7の内面に接合することにより、入口ヘッダー2、出口ヘッダー3、各ヘッダー2、3とシェル7との接合部分、シェル7とチューブ4との接合部分といった熱交換に寄与しない部分14の長手方向の長さを縮小し、EGRクーラにおけるコア部1の体積の割合を大きくすることができるから、同体積あたりのEGRクーラの冷却性能を向上させることができる。
【0029】
また、長手方向の同一位置(接合部分13)において、シェル7の外面に入口ヘッダー2(または出口ヘッダー3)を接合し、シェル7の内面にチューブ4を接合する三層構造としたことにより、シェル7および入口ヘッダー2(または出口ヘッダー3)の接合部分と、シェル7およびチューブ4の接合部分との間に、耐圧性に乏しいシェル7のみの部分が存在せず、三層構造によって耐圧性を向上させることができる。
また、使用条件によってさらに高耐圧化する必要がある場合にも、入口ヘッダーまたは出口ヘッダーのみの板厚を増やすことで高耐圧化できるため、材料コストを抑えることができる
また、図2(c)に示すように、接合部分13において、入口ヘッダー2(出口ヘッダー3)が、入口ヘッダー2(出口ヘッダー3)、シェル7、チューブ4の三層の接合部分13よりもコア部1側へ延設され、シェル7のうち冷却水流路の壁面を構成する部分へせり出していることにより、入口ヘッダー2(出口ヘッダー3)がシェル7を補強し、冷却水に対する耐圧性を向上させることができる。
【0030】
さらに、図3に示すように、チューブ4の内面に、チューブ4とインナーフィン8とを接合するろう材10を敷設するビード9を凹設したことにより、ろう材10の量をビード9に充填する量に減らすことができて、材料コストを低減させることができる。
また、鉱粉末と液体とを混合したペースト状のろう材10が塗布用ロボット等によってビード9に充填され、チューブ4とインナーフィン8とを接合するため、ビード9以外の平面部にろう材10が溜まってチューブ4の厚さを増やしてしまうことがなく、シェル7内に所定の数のチューブ4を収容することができる。
また、ビード9はチューブ4から冷却水流路側へ突出しているため(図3(c))、冷却水を乱流化して熱交換性能を向上させることができる。
【0031】
さらに、図4に示すように、チューブインナー5のみに膨出部5aを設け、チューブアウター6には膨出部を設けない構造としたから、チューブ4を形成するのに必要な全体の材料コストおよび加工コストを低減させることができる。
なお、本発明の実施形態とは逆に、チューブアウター6のみに膨出部を設け、チューブインナー5には膨出部を設けない構造としてもよい。
【0032】
<別態様>
なお、本実施形態ではビード9をチューブインナー5およびチューブアウター6の双方に形成したが、これらの片方のみにビード9を設けるようにしてもよい。
また、本実施形態では図3(b)のように互いに接続しない計7本のビード9を形成したが、全てのビード9を互いに連続させると、チューブ4の製造工程において塗布用ロボットが一筆書きのように連続的にろう材をビード9に塗布することができ、作業工数を削減することができ、チューブ4の生産性が向上する。
【0033】
また、チューブ4に設けるビード9の形状は、特に限定されない。
たとえば、図5(a)に示す別態様では、チューブインナー5またはチューブアウター6の平板部を長手方向に蛇行するビード9を延設している。
また、図5(b)に示す別態様では、チューブインナー5またはチューブアウター6の平板部の所定の角から対角へ蛇行するビード9を延設している。
図5(a)(b)のビード9は、蛇行の折り返し部分が丸みを帯びたR形状に形成されている。
【0034】
図5(a)(b)の別態様では、ろう材を連続した1本のビード9に充填するため、製造工程において塗布用ロボットが一筆書きのように連続的にろう材をビード9に塗布することができ、作業工数を削減することができ、チューブ4の生産性が向上する。
また、ビード9の蛇行の折り返し部分がR形状に形成されていることにより、塗布用ロボットが急激な方向転換なくスムーズにろう材をビード9に塗布することができ、製造時間を短縮することができる。
【0035】
図5(c)に示す別態様では、チューブインナー5またはチューブアウター6の平板部の所定の角から対角へ蛇行するビード9を延設している。
また、図5(d)に示す別態様では、チューブインナー5またはチューブアウター6の平板部を長手方向に蛇行するビード9を延設している。
図5(c)(d)のビード9は、蛇行の折り返し部分が尖った角形状に形成されている。
【0036】
図5(c)(d)の別態様でも、ろう材を1本の連続したビード9に充填するため、製造工程において塗布用ロボットが一筆書きのように連続的にろう材をビード9に塗布することができ、作業工数を削減することができ、チューブ4の生産性が向上する。
また、ビード9の蛇行の折り返し部分が角形状に形成されていることにより、図5(a)(b)の別態様よりもビード9の総面積を小さくすることができ、使用するろう材の量を減少させることができるため、材料コストを低減させることができる。
【0037】
図6(a)の別態様では、ビード9aが、チューブインナー5またはチューブアウター6の平板部の角P1から、長手方向中央かつ幅方向反対端の位置P5へ直線状に延設され、このP5で角P3へ向かって折り返し、P3への距離の略半分の位置まで延設されている。また、P3からは、直線状のビード9bが、P5への距離の略半分の位置まで延設されている。
P1の対角P6からも、ビード9aが、長手方向中央かつ幅方向反対端の位置P2へ直線状に延設され、このP2で角P4へ向かって折り返し、P4への距離の略半分の位置まで延設されている。また、また、P4からも、直線状のビード9bが、P2への距離の略半分の位置まで延設されている。
【0038】
図6(a)の別態様では2組のビード9a、ビード9bが互いに反転形状となるように形成されているため、プレス加工によってチューブインナー5またはチューブアウター6にビード9a、9bを形成する際には、1組のビード9aおよびビード9bの型によって1組のビード9aおよびビード9bを形成し、次いでチューブインナー5またはチューブアウター6を180度回転させて、同じ型によって残りのビード9aおよびビード9bを形成することができ、製造コストを低減させることができる。
また、切れ目無く連続する1つの大きなビードによって平板部が囲まれるようにした場合、ビードの囲いの内側と外側との伸び率の差や残留応力などによって、プレス成形後にチューブインナー5またはチューブアウター6に変形が発生しやすくなるが、図6(a)の別態様では、2つのビード9aの間に切れ目を設けて不連続に形成し、平板部の中央部がビード9aに完全に包囲されないため、チューブインナー5またはチューブアウター6にゆがみやたわみが発生しにくく、プレス成形性が向上する。
【0039】
図6(b)の別態様では、チューブインナー5またはチューブアウター6の平板部の角P7から角P8へ長手方向に蛇行するビード9cが延設されている。このビード9cは、幅方向中央で折り返すように形成されている。
P7の対角P10からも、角P9へ長手方向に蛇行する同形のビード9cが延設されている。
【0040】
図6(b)の別態様では、一対のビード9cが互いに反転形状となるように形成されているため、プレス加工によってチューブインナー5またはチューブアウター6にビード9cを形成する際には、1つのビード9cの型によって1本のビード9cを形成し、次いでチューブインナー5またはチューブアウター6を180度回転させて、同じ型によって残りのビード9cを形成することができ、製造コストを低減させることができる。
また、切れ目無く連続する1つの大きなビードによって平板部が囲まれるようにした場合、ビードの囲いの内側と外側との伸び率の差や残留応力などによって、プレス成形後にチューブインナー5またはチューブアウター6に変形が発生しやすくなるが、図6(b)の別態様では、2つのビード9cの間に切れ目を設けて不連続に形成し、平板部の中央部がビード9cに完全に包囲されないため、チューブインナー5またはチューブアウター6にゆがみやたわみが発生しにくく、プレス成形性が向上する。
【符号の説明】
【0041】
1 コア部
2 入口ヘッダー
2a フランジ部
2b 下流側開口部
3 出口ヘッダー
3a 上流側開口部
3b フランジ部
4 チューブ
5 チューブインナー
5a 膨出部
6 チューブアウター
6a 膨出部
7 シェル
8 インナーフィン
9、9a、9b、9c ビード
10 ろう材
11 冷却水入口パイプ
12 冷却水出口パイプ
13 接合部分
14 熱交換に寄与しない部分
15 (ヘッダーとシェルとの)接合部分
16 (シェルとチューブとの)接合部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを通過させる多数の扁平なチューブを中空筒状のシェルの内部に積層してシェルに接合し、上記排気ガスと上記チューブの周囲を流れる冷却水との熱交換を行うコア部と、
一端を上記シェルのガス流れ上流側に接合されて上記コア部へ上記排気ガスを供給する筒状の入口ヘッダーと、
一端を上記コア部のガス流れ下流端に接合されて上記コア部から上記排気ガスを送出する筒状の出口ヘッダーとからなるEGRクーラであって、
入口ヘッダーおよび出口ヘッダーを上記シェルの外面に接合するとともに、この接合部分の上記シェルの内面に上記チューブを接合したことを特徴とするEGRクーラ。
【請求項2】
排気ガスを通過させる多数の扁平なチューブを中空筒状のシェルの内部に積層してシェルに接合し、上記排気ガスと上記チューブの周囲を流れる冷却水との熱交換を行うコア部と、
一端を上記シェルのガス流れ上流側に接合されて上記コア部へ上記排気ガスを供給する筒状の入口ヘッダーと、
一端を上記コア部のガス流れ下流端に接合されて上記コア部から上記排気ガスを送出する筒状の出口ヘッダーとからなるEGRクーラであって、
上記チューブ内には上記排気ガスの流れを乱流化する波板状のインナーフィンを収容するとともに、
上記チューブの内面に、上記チューブと上記インナーフィンとを接合するろう材を敷設するビードを凹設したことを特徴とするEGRクーラ。
【請求項3】
排気ガスを通過させる多数の扁平なチューブを中空筒状のシェルの内部に積層してシェルに接合し、上記排気ガスと上記チューブの周囲を流れる冷却水との熱交換を行うコア部と、
一端を上記シェルのガス流れ上流側に接合されて上記コア部へ上記排気ガスを供給する筒状の入口ヘッダーと、
一端を上記コア部のガス流れ下流端に接合されて上記コア部から上記排気ガスを送出する筒状の出口ヘッダーとからなるEGRクーラであって、
上記チューブは、平板部の両側端から内側壁を立設してなるチューブインナーと、平板部の両側端から上記内側壁に外接する外側壁を立設してなるチューブアウターとを組み付けてなり、
かつ、上記チューブインナーと上記チューブアウターとのいずれか一方のみの平板部の長手方向両端に、厚さ方向に膨出して他のチューブとの間隔を保持する膨出部を形成したことを特徴とするEGRクーラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113243(P2013−113243A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261316(P2011−261316)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000220217)東京ラヂエーター製造株式会社 (71)
【Fターム(参考)】