説明

EPDM発泡体、その製造方法およびシール材

【課題】N−ニトロソジメチルアミンおよびN−ニトロソジエチルアミンの発生を低減させることができながら、柔軟性を向上させることができるEPDM発泡体、そのEPDM発泡体を備えるシール材、および、EPDM発泡体の製造方法を提供すること。
【解決手段】
チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸系加硫促進剤およびチウラム系加硫促進剤を、チオウレア系加硫促進剤/チアゾール系加硫促進剤/ジチオカルバミン酸系加硫促進剤/チウラム系加硫促進剤の重量比率として、1〜20/1〜20/1〜20/1〜30の割合で含有している加硫発泡剤を用いて、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、加硫剤0.1〜5重量部と、加硫促進剤0.1〜10重量部と、発泡剤1〜30重量部と、発泡助剤とを含有する発泡組成物を発泡させることにより、EPDM発泡体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EPDM発泡体、そのEPDM発泡体を備えるシール材、および、EPDM発泡体の製造方法に関する。詳しくは、各種産業製品のシール材として好適に用いられるEPDM発泡体、そのEPDM発泡体を備えるシール材、および、EPDM発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種産業製品のシール材として、耐久性の観点から、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下、EPDMと記載する。)を、発泡剤により発泡して得られるEPDM発泡体が知られている。
このようなEPDM発泡体には、発泡剤とともに、EPDMを加硫させる加硫剤や、EPDMの加硫を促進させる加硫促進剤が配合されている。また、加硫促進剤としては、第二級アミン類が多用されているが、第二級アミン類を用いた場合には、ニトロソアミン(N−ニトロソジメチルアミン、N−ニトロソジエチルアミンなど)が発生する場合がある。
【0003】
そこで、ニトロソアミンの発生を低減させることができるEPDM発泡体として、例えば、加硫促進剤として、ニトロソアミンを生じる可能性がない加硫促進剤(N,N’エチレンチオウレア、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジフェニルグアニジン、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドおよびジアルキルジチオリン酸亜鉛)を用いたスポンジゴムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−225415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、上記した特許文献1に記載のスポンジゴムでは、ニトロソアミンを生じる可能性がない加硫促進剤を用いて、従来のニトロソアミンを生じる加硫促進剤を用いたスポンジゴムと同等の圧縮永久歪を実現しているものの、柔軟性が劣るという不具合がある。
また、スポンジゴムの柔軟性が劣ると、スポンジゴムをシール材として用いた場合に、スポンジゴムのシール対象への密着性が劣るため、スポンジゴムのシール性が劣るという不具合がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、N−ニトロソジメチルアミンおよびN−ニトロソジエチルアミンの発生を低減させることができながら、柔軟性を向上させることができるEPDM発泡体、そのEPDM発泡体を備えるシール材、および、EPDM発泡体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明のEPDM発泡体は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、加硫剤0.1〜5重量部と、加硫促進剤0.1〜10重量部と、発泡剤1〜30重量部と、発泡助剤とを含有する発泡組成物を発泡させて得られ、前記加硫促進剤は、チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸系加硫促進剤およびチウラム系加硫促進剤を、チオウレア系加硫促進剤/チアゾール系加硫促進剤/ジチオカルバミン酸系加硫促進剤/チウラム系加硫促進剤の重量比率として、1〜20/1〜20/1〜20/1〜30の割合で含有していることを特徴としている。
【0008】
また、本発明のEPDM発泡体は、前記発泡剤が、アゾジカルボンアミドであることが好適である。
また、本発明のEPDM発泡体は、50%圧縮荷重値が、0.10〜2.0N/cmであることが好適である。
また、本発明のEPDM発泡体は、見掛け密度が、0.04〜0.5g/cmであることが好適である。
【0009】
また、本発明のEPDM発泡体は、連続気泡構造または半連続半独立気泡構造を有することが好適である。
また、本発明のシール材は、部材の隙間を充填するためのシール材であって、上記したEPDM発泡体と、前記EPDM発泡体の表面に設けられる粘着層とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明のEPDM発泡体の製造方法は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、加硫剤0.1〜5重量部と、チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸系加硫促進剤およびチウラム系加硫促進剤を、チオウレア系加硫促進剤/チアゾール系加硫促進剤/ジチオカルバミン酸系加硫促進剤/チウラム系加硫促進剤の重量比率として、1〜20/1〜20/1〜20/1〜30の割合で含有する加硫促進剤0.1〜10重量部と、発泡剤1〜30重量部と、発泡助剤とを含有する発泡組成物を調製する調製工程と、前記発泡組成物を加熱して加硫発泡させる発泡工程とを含むことを特徴としている。
【0011】
また、本発明のEPDM発泡体の製造方法は、前記発泡組成物を押出成形する成形工程を含み、前記発泡工程は、前記成形工程により押出成形された前記発泡組成物を、加硫発泡させることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のEPDM発泡体によれば、加硫促進剤が、特定の重量比率において、チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸系加硫促進剤およびチウラム系加硫促進剤を含有している。
そのため、N−ニトロソジメチルアミンおよびN−ニトロソジエチルアミンの発生を低減させることができながら、柔軟性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明のシール材によれば、上記した効果を有するEPDMを備えるため、EPDM発泡体を部材に確実に密着させることができ、確実に部材の隙間を充填することができる。
また、本発明のEPDM発泡体の製造方法によれば、上記した効果を有するEPDM発泡体を、簡易かつ生産効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のEPDM発泡体は、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(以下、EPDMと記載する。)、加硫剤、加硫促進剤、発泡剤および発泡助剤を含有する発泡組成物を発泡させて得られる。
EPDMは、エチレン、プロピレンおよびジエン類の共重合によって得られるゴムであり、エチレン−プロピレン共重合体に、さらにジエン類を共重合させて不飽和結合を導入することにより、加硫剤による加硫を可能としている。
【0015】
ジエン類としては、特に限定されないが、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
EPDMのジエン含量は、例えば、1〜20重量%、好ましくは、3〜10重量%である。
加硫剤としては、例えば、硫黄、セレン、酸化マグネシウム、一酸化鉛、有機過酸化物類(例えば、クメンペルオキシドなど)、ポリアミン類、オキシム類(例えば、p−キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシムなど)、ニトロソ化合物類(例えば、p−ジニトロソベンジンなど)、樹脂類(例えば、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物など)、アンモニウム塩類(例えば、安息香酸アンモニウムなど)などが挙げられる。得られたEPDM発泡体の加硫性に起因する耐久性などの観点から、好ましくは、硫黄が挙げられる。加硫剤は、単独で用いてもよく、また2種以上併用してもよい。
【0016】
また、加硫剤の配合割合は、その種類によって加硫効率が異なるため、適宜選択すればよいが、例えば、硫黄では、EPDM100重量部に対して、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは、0.5〜3重量部である。
加硫促進剤は、チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸系加硫促進剤およびチウラム系加硫促進剤を含有しており、好ましくは、これら4種類の加硫促進剤のみからなる。
【0017】
チオウレア系加硫促進剤は、N,N’−ジエチルチオ尿素、N,N’−ジブチルチオ尿素、N,N’−ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素から選択される。
チアゾール系加硫促進剤は、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジベンゾチアジルジスルフィドから選択される。
【0018】
ジチオカルバミン酸系加硫促進剤は、ジイソノニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛から選択される。
チウラム系加硫促進剤は、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィドから選択される。
また、加硫促進剤は、チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸系加硫促進剤およびチウラム系加硫促進剤を、チオウレア系加硫促進剤/チアゾール系加硫促進剤/ジチオカルバミン酸系加硫促進剤/チウラム系加硫促進剤の重量比率として、例えば、1〜20/1〜20/1〜20/1〜30の割合、好ましくは、1〜15/1〜10/1〜10/1〜30の割合、より好ましくは、2〜15/2〜7/1〜5/1〜25の割合で含有している。
【0019】
また、加硫促進剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは、1.0〜7.0重量部である。
発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼンなどのアゾ系化合物、例えば、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド、2,4−トルエンジスルホニルヒドラジド、p,p−ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)エーテル、ベンゼン−1,3−ジスルホニルヒドラジド、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジド系化合物、例えば、p−トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系化合物、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタンなどのフッ化アルカン、例えば、5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物などの有機系発泡剤、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどの炭酸水素塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸アンモニウムなどの亜硝酸塩、例えば、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素塩、例えば、アジド類などの無機系発泡剤が挙げられる。好ましくは、有機系発泡剤、より好ましくは、アゾ系化合物、より一層好ましくは、アゾジカルボンアミド(ADCA)が挙げられる。
【0020】
なお、有機系発泡剤としては、加熱膨張性物質がマイクロカプセル内に封入された熱膨張性微粒子などを用いてもよく、そのような熱膨張性微粒子としては、例えば、マイクロスフェア(商品名、松本油脂社製)などの市販品を用いてもよい。これらの発泡剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
発泡剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、1〜30重量部、好ましくは、5〜25重量部である。
【0021】
発泡助剤としては、例えば、尿素系化合物、サリチル酸系化合物、安息香酸系化合物などが挙げられる。好ましくは、尿素系化合物が挙げられる。これら発泡助剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
また、発泡助剤の配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、1〜15重量部、好ましくは、2〜10重量部である。
【0022】
また、発泡組成物は、必要により、加硫助剤、滑剤、充填材、顔料、軟化剤などを適宜含有することができる。
加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛などが挙げられ、その配合割合は、EPDM100重量部に対して、例えば、1〜20重量部、好ましくは、2〜10重量部である。
滑剤としては、例えば、ステアリン酸やそのエステル類などが挙げられ、その配合割合は、EPDM100重量部に対して、0.5〜5重量部、好ましくは、1〜3重量部である。
【0023】
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウムなど)、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸およびその塩類、クレー、タルク、雲母粉、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉などの無機系充填材、例えば、コルクなどの有機系充填材、その他公知の充填材が挙げられ、好ましくは、無機系充填材が挙げられ、より好ましくは、炭酸カルシウムが挙げられる。これら充填材は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0024】
充填材の配合割合は、例えば、EPDM100重量部に対して、300重量部以下、好ましくは、200重量部以下である。
顔料としては、例えば、カーボンブラックなどが挙げられ、その配合割合は、EPDM100重量部に対して、0.1〜80重量部、好ましくは、0.5〜50重量部である。
軟化剤としては、例えば、乾性油類や動植物油類(例えば、アマニ油など)、パラフィン、アスファルト、石油系オイル類(例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイルなど)、低分子量ポリマー類、有機酸エステル類(例えば、フタル酸エステル(例えば、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP))、リン酸エステル、高級脂肪酸エステル、アルキルスルホン酸エステルなど)、増粘付与剤などが挙げられ、好ましくは、パラフィン、アスファルト、石油系オイル類が挙げられる。これら軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0025】
軟化剤の配合割合は、例えば、EPDM100重量部に対して、20〜300重量部、好ましくは、50〜200重量部である。
さらに、発泡組成物は、必要に応じて、得られるEPDM発泡体の優れた効果に影響を与えない範囲において、例えば、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤、防カビ剤、難燃剤などの公知の添加剤を適宜含有することができる。
【0026】
次いで、EPDM発泡体の製造方法について説明する。
EPDM発泡体を製造するには、まず、上記した各成分を配合して、ニーダー、ミキサーまたはミキシングロールなどを用いて混練りすることにより、発泡組成物を混和物として調製する(調製工程)。
なお、調製工程では、適宜加熱しながら混練りすることもできる。また、調製工程では、例えば、加硫剤、加硫促進剤、発泡剤および発泡助剤以外の成分を、まず混練して、一次混和物を調製してから、一次混和物に、加硫剤、加硫促進剤、発泡剤および発泡助剤を添加して混練して、発泡組成物(二次混和物)を調製することもできる。また、一次混和物を調製するときに、加硫促進剤の一部(例えば、チオウレア系加硫促進剤)を配合することもできる。
【0027】
調製された発泡組成物の120℃におけるスコーチタイムt(JIS K 6300−1に準ずる。)は、例えば、20分以上、好ましくは、30分以上である。
そして、調製された発泡組成物を、押出成形機を用いてシート状などに押出成形し(成形工程)、押出成形された発泡組成物を、加熱して加硫発泡させる(発泡工程)。
発泡組成物は、配合される加硫剤の加硫開始温度や、配合される発泡剤の発泡温度などによって、適宜選択されるが、例えば、熱風循環式オーブンなどを用いて、例えば、40〜200℃、好ましくは、60〜160℃で、例えば、1〜60分、好ましくは、5〜40分、予熱した後、例えば、450℃以下、好ましくは、100〜350℃、より好ましくは、120〜250℃で、例えば、5〜80分、好ましくは、15〜50分加熱される。
【0028】
また、調製された発泡組成物を、押出成形機を用いて、加熱しながらシート状に押出成形(成形工程)して、発泡組成物を連続的に加硫発泡(発泡工程)させることもできる。
これにより、発泡組成物が発泡しながら加硫されて、EPDM発泡体を得ることができる。
本発明のEPDM発泡体の製造方法によれば、上記した効果を有するEPDM発泡体を、簡易かつ生産効率よく製造することができる。
【0029】
得られたEPDM発泡体の厚みは、例えば、0.1〜50mm、好ましくは、1〜45mmである。
なお、得られたEPDM発泡体は、ロールまたは針などを用いて、物理的に破泡させ、連続気泡化させることができる。
これにより、EPDM発泡体を、連続気泡構造(連続気泡率100%)または半連続半独立気泡構造(連続気泡率0%超過100%未満、好ましくは、連続気泡率10〜98%)に形成することができる。
【0030】
EPDM発泡体が連続気泡構造であれば、柔軟性に優れるという利点がある。EPDM発泡体が半連続半独立気泡構造であれば、止水、気密などのシール性に優れるという利点がある。
また、EPDM発泡体のセル径は、例えば、300〜1200μm、好ましくは、300〜1000μmである。
【0031】
このようにして得られるEPDM発泡体の体積発泡倍率(発泡前後の密度比)は、例えば、2倍以上、好ましくは、5倍以上、通常、30倍以下である。また、EPDM発泡体の見掛け密度(JIS K 6767に準ずる。)は、例えば、0.04〜0.5g/cm、好ましくは、0.04〜0.3g/cmである。
また、EPDM発泡体の50%圧縮荷重値(JIS K 6767に準ずる。)は、例えば、0.10〜2.0N/cm、好ましくは、0.1〜1.5N/cmである。
【0032】
また、EPDM発泡体の抗張力(JIS K 6767に準じた引張り試験における最大荷重)は、例えば、1.0〜50.0N/cm、好ましくは、2.0〜30.0N/cmである。
また、EPDM発泡体の伸び率(JIS K 6767に準ずる。)は、例えば、10〜1500%、好ましくは、200〜1000%である。
【0033】
また、EPDM発泡体の30%圧縮時における通気度(at20℃、JIS K 1096に準ずる。)は、例えば、2.0cm/cms以下、好ましくは、0.001〜1.0cm/cmsである。また、EPDM発泡体の50%圧縮時における通気度(at20℃、JIS K 1096に準ずる。)は、例えば、1.0cm/cms以下、好ましくは、0.001〜0.5cm/cmsである。
【0034】
また、EPDM発泡体の30分後の圧縮永久歪(at23℃、JIS K 6767に準ずる。)は、例えば、0〜40%、好ましくは、0〜30%である。また、EPDM発泡体の24時間後の圧縮永久歪(at23℃、JIS K 6767に準ずる。)は、例えば、0〜30%、好ましくは、0〜20%である。
また、EPDM発泡体を200℃で3時間加熱したときのニトロソアミン(N−ニトロソジメチルアミン、N−ニトロソジエチルアミンを含む。)の発生量(ガスクロマトグラフィ/質量分析法(GC/MS)により、例えば、後述する測定方法で測定する。)は、例えば、1.0μg/g以下、好ましくは、0.8μg/g以下、より好ましくは、検出限界以下である。
【0035】
また、GC/MSにより測定されたニトロソアミンにおいて、N−ニトロソジメチルアミンの発生量は、例えば、0.4μg/g以下、好ましくは、検出限界以下であり、N−ニトロソジエチルアミンの発生量は、例えば、0.4μg/g以下、好ましくは、検出限界以下である。
なお、GC/MSによるニトロソアミンの測定は、ニトロソアミンの揮散による発生量の変動を考慮して、好ましくは、EPDM発泡体の発泡後、2日以上経過後に実施する。
【0036】
そして、EPDM発泡体は、特に制限されることなく、制振、吸音、遮音、防塵、断熱、緩衝、水密などを目的として各種部材の隙間を充填する、例えば、防振材、吸音材、遮音材、防塵材、断熱材、緩衝材、止水材などとして用いることができる。
EPDM発泡体を上記用途に用いるには、例えば、EPDM発泡体の表面に、EPDM発泡体を貼付するための粘着層が設けられたシール材を準備する。
【0037】
特に、EPDM発泡体が、平均セル径1200μm以下、50%圧縮時における通気度1.0cm/cms以下、抗張力5N/cm以上、伸び率150%以上、24時間後の圧縮永久歪(at23℃)10%以下であれば、防塵性、曲面追従性、段差追従性の観点から、シール材として好適に用いることができる。
詳しくは、上記物性を有するEPDM発泡体であれば、高い柔軟性(抗張力および伸び率)および高復元性(低い圧縮永久歪)を有するため、シール対象への密着性を向上させることができ、しかも、発泡体内部における通気性(通気度)を低く抑えることができる。そのため、そのようなEPDM発泡体は、発泡体とシール対象との界面および発泡体内部においてシール性を向上させることができ、シール材として好適に用いることができる。
【0038】
そして、シール材を、粘着層の粘着力により、各種部材の隙間に貼付することにより、EPDM発泡体によって、各種部材の隙間を、均一に充填する。
このような本発明のEPDM発泡体によれば、加硫促進剤が、特定の重量比率において、チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸系加硫促進剤およびチウラム系加硫促進剤を含有している。
【0039】
そのため、ニトロソアミンの発生を低減させることができながら、柔軟性を向上させることができる。
また、本発明のシール材によれば、上記した効果を有するEPDMを備えるため、EPDM発泡体を部材に確実に密着させることができ、確実に部材の隙間を充填することができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。
(1)EPDM発泡体の製造
(1−1)処方成分
A)樹脂:
EPDM(A):EPT3045(三井化学社製、ジエン含量4.7重量%)
EPDM(B):EP−24(JSR社製、ジエン含量4.5重量%)
EPDM(C):エスプレン501A(住友化学社製、ジエン含量4.0重量%)
アタクチックPP(アタクチックポリプロピレン樹脂、千葉ファインケミカル社製)
B)加硫助剤:
酸化亜鉛:酸化亜鉛2種(三井金属鉱業社製)
C)滑剤:
ステアリン酸:粉末ステアリン酸さくら(日油社製)
D)充填材:
炭酸カルシウム:N重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)
E)顔料:
カーボンブラック:旭#50(旭カーボン社製)
F)軟化剤:
パラフィン:パラペレ130(谷口石油社製、融点:54.4〜57.2℃、針入度:50以下)
アスファルト:ブローンアスファルト10−20(新日本石油社製、軟化点:135〜142℃、針入度(25℃):10〜20)
パラフィン系オイル:パラフィン系プロセスオイル(ダイアナプロセスオイルPW−90、出光興産社製、密度:0.85〜0.89g/cm、動粘度(40℃):75.0〜105.0cSt)
G)加硫剤:
硫黄:アルファグランS-50EN(東知社製)
H)加硫促進剤:
チオウレア系加硫促進剤:N,N’−ジブチルチオ尿素(ノクセラーBUR、大内新興化学社製)
チアゾール系加硫促進剤:2−メルカプトベンゾチアゾール(ノクセラーM、大内新興化学社製)
ジチオカルバミン酸系加硫促進剤:ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(ノクセラーZTC、大内新興化学社製)
チウラム系加硫促進剤:テトラベンジルチウラムジスルフィド(ノクセラーTBzTD、大内新興化学社製)
I)発泡剤:
ADCA(アゾジカルボンアミド):AC#LQ(永和化成工業社製)
炭酸水素ナトリウム:FE−507(永和化成工業社製)
DPT(N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン):セルラーCK#54(永和化成工業社製)
J)発泡助剤:
尿素系発泡助剤:セルペーストK5(永和化成工業社製)
(1−2)製造工程
表1に示す配合処方に記載の配合量において、樹脂、加硫助剤、滑剤、充填材、顔料、軟化剤およびチオウレア系加硫促進剤を配合し、3L加圧ニーダーにて混練し、一次混和物を調製した。
【0041】
別途、加硫剤、加硫促進剤(チオウレア系加硫促進剤を除く)、発泡剤および発泡助剤を配合した。その後、得られた配合物を一次混和物に配合して、10インチミキシングロールにて混練し、発泡組成物(二次混和物)を調製した(調製工程)。
そして、発泡組成物のスコーチタイムtを、JIS K 6300−1に準じて測定した。結果を表1に示す。
【0042】
次いで、発泡組成物を、一軸押出成形機(45mmφ)を用いて、厚み約8mmのシート状に押し出し、発泡組成物シートを作製した(成形工程)。
そして、発泡組成物シートを、熱風循環式オーブンにて、120℃で20分間予熱した。その後、熱風循環式オーブンを10分かけて160℃まで昇温し、発泡組成物シートを、160℃で20分間加熱して加硫発泡させ(発泡工程)、EPDM発泡体を得た。
(2)物性測定
得られたEPDM発泡体の各物性を、下記に示す方法で測定した。結果を表1に示す。
A)見掛け密度
JIS K 6767に準じて測定した。具体的には、各実施例および各比較例のEPDM発泡体のスキン層を除去して、厚み約10mmの試験片を調製した。その後、重量を測定して、単位体積あたりの重量(見掛け密度)を算出した。
B)50%圧縮荷重値
JIS K 6767に準じて測定した。具体的には、各実施例および各比較例のEPDM発泡体のスキン層を除去して、厚み約10mmの試験片を調製した。その後、圧縮試験機を用いて、圧縮速度10mm/分で50%圧縮してから10秒後の圧縮荷重値を測定した。
C)抗張力および伸び率
JIS K 6767に準じて測定した。具体的には、各実施例および各比較例のEPDM発泡体のスキン層を除去して、厚み約10mmの試験片を調製した。その後、ダンベル1号を用いて、試験片を打ち抜き、測定用サンプルとした。引張り試験機にて、引張り速度500mm/minの速さで測定用サンプルを引張り、測定用サンプルがダンベル形状平行部で切断したときの荷重(抗張力)および伸び率を測定した。
D)平均セル径
デジタルマイクロスコープ(VH−8000、キーエンス社製)により、発泡体気泡部の拡大画像を取り込み、画像解析ソフト(Win ROOF、三谷商事社製)を用いて画像解析することにより、平均セル径(μm)を求めた。
E)通気度
JIS K 1096(フラジール試験法)に準じて、30%圧縮時、および、50%圧縮時の通気度を測定した。具体的には、各実施例および各比較例のEPDM発泡体のスキン層を除去して、厚み約10mmの試験片を調製した。その後、試験片を、外径108mm、内径80mmのリング形状に打ち抜き、測定用サンプルとした。通気度測定装置(3C−200、大栄科学精器製作所製)を用いて、測定用サンプルを30%および50%圧縮し、通気度を測定した。
F)50%圧縮永久歪
JIS K 6767に準じて、30分後、および、24時間後の50%圧縮永久歪を測定した。
G)N−ニトロソジメチルアミンおよびN−ニトロソジエチルアミンの発生量
GC/MSを用いて測定した。まず、発泡から2日後に、約0.25gのEPDM発泡体(または、標品として、N−ニトロソジメチルアミンまたはN−ニトロソジエチルアミンの特定濃度のクロロホルム溶液1μl)を、20mlのバイアル瓶に入れて密栓した後、ヘッドスペースサンプラー(HSS)を用いて、200℃で3時間加熱した。
【0043】
次いで、加熱後のバイアル瓶内のガス1mlを、GC/MSに注入した。HSS条件およびGC/MS測定条件を下記に示す。
(1)ヘッドスペースサンプラー(HSS)条件
装置:7694(Agilent Technologies製)
オーブン温度:200℃
加熱時間:3時間
加圧時間:0.12分
ループ充填時間:0.12分
ループ平衡時間:0.05分
注入時間:3.00分
サンプルループ温度:220℃
トランスファーライン温度:220℃
(2)ガスクロマトグラフィ(GC)条件
装置:6890(Agilent Technologies製)
カラム:Ultra2(ジメチルポリシロキサン100%、50m×0.32mm(内径)×0.52μm(膜厚)、Agilent Technologies製)
カラム温度:40℃で3分間維持した後、毎分10℃で300℃まで昇温した。その後、300℃で11分間維持した。
【0044】
カラム圧力:17.2kPa(定流モード)
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:1.0ml/min(定流モード)
注入口温度:250℃
注入方式:スプリット(スプリット比20:1)
検出器:MS
(3)質量分析(MS)条件
装置:5973(Agilent Technologies製)
イオン化法:電子イオン化法
エミッション電流:35μA
電子エネルギー:70eV
E.M.電圧:1259V
ソース温度:230℃
分析部:四重極型
Q−ポール温度:150℃
インターフェイス温度:300℃
質量範囲:m/z10〜800
そして、得られた測定データにおけるm/z=74またはm/z=102のピーク面積と、別途測定される標品のN−ニトロソジメチルアミン(m/z=74)またはN−ニトロソジエチルアミン(m/z=102)のピーク面積とを比較して、EPDM発泡体のN−ニトロソジメチルアミン発生量またはN−ニトロソジエチルアミン発生量を定量した。
【0045】
定量されたN−ニトロソジメチルアミン発生量およびN−ニトロソジエチルアミン発生量の総量をニトロソアミンの発生量とした。検出限界は、0.4μg/gであった。
【0046】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、加硫剤0.1〜5重量部と、加硫促進剤0.1〜10重量部と、発泡剤1〜30重量部と、発泡助剤とを含有する発泡組成物を発泡させて得られ、
前記加硫促進剤は、チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸系加硫促進剤およびチウラム系加硫促進剤を、チオウレア系加硫促進剤/チアゾール系加硫促進剤/ジチオカルバミン酸系加硫促進剤/チウラム系加硫促進剤の重量比率として、1〜20/1〜20/1〜20/1〜30の割合で含有していることを特徴とする、EPDM発泡体。
【請求項2】
前記発泡剤が、アゾジカルボンアミドであることを特徴とする、請求項1に記載のEPDM発泡体。
【請求項3】
50%圧縮荷重値が、0.10〜2.0N/cmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のEPDM発泡体。
【請求項4】
見掛け密度が、0.04〜0.5g/cmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のEPDM発泡体。
【請求項5】
連続気泡構造または半連続半独立気泡構造を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のEPDM発泡体。
【請求項6】
部材の隙間を充填するためのシール材であって、
請求項1〜5のいずれかに記載のEPDM発泡体と、前記EPDM発泡体の表面に設けられる粘着層とを備えることを特徴とする、シール材。
【請求項7】
エチレン・プロピレン・ジエンゴム100重量部に対して、
加硫剤0.1〜5重量部と、
チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸系加硫促進剤およびチウラム系加硫促進剤を、チオウレア系加硫促進剤/チアゾール系加硫促進剤/ジチオカルバミン酸系加硫促進剤/チウラム系加硫促進剤の重量比率として、1〜20/1〜20/1〜20/1〜30の割合で含有する加硫促進剤0.1〜10重量部と、
発泡剤1〜30重量部と、
発泡助剤とを含有する発泡組成物を調製する調製工程と、
前記発泡組成物を加熱して加硫発泡させる発泡工程と
を含むことを特徴とする、EPDM発泡体の製造方法。
【請求項8】
前記発泡組成物を押出成形する成形工程を含み、
前記発泡工程は、前記成形工程により押出成形された前記発泡組成物を、加硫発泡させることを特徴とする、請求項7に記載のEPDM発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2011−116882(P2011−116882A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276576(P2009−276576)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】