説明

EU−1ゼオライトをベースとする多孔質複合材料の調製およびC8芳香族化合物の異性化におけるその実施

【課題】キシレン類の収率が改善されたC芳香族化合物の異性化性能が得られるEU−1ゼオライトベースの多孔質複合材料の調製方法およびC芳香族化合物の異性化のための前記材料の適用を提供する。
【解決手段】1)ヘキサメトニウムカチオンを含む水溶液の含浸段階、2)容積V(mL)のオートクレーブ、水蒸気下、120〜220℃の温度Tの、オートクレーブに事前に導入される水の量が厳密にV×[23.48×10−10×T−48×10−8×T+5×10−5×T−0.002]に等しい容積測定量より多く、かつ、0.25×V以下であり、前記固体は直接的には水と接触しないようにされる、水熱処理段階、3)乾燥、焼成段階を包含する方法により、無定形コア部から形成され、この上にEU−1ゼオライトの結晶が分散させられた多孔質複合材料が得られる。該材料に基づいて、C芳香族の異性化における使用ための触媒が調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質複合材料であって、EU−1ゼオライト結晶をその外表面上に含むものの調製およびC芳香族化合物の異性化のための前記材料の適用の分野に関する。より詳細には、本発明による前記材料の調製は、1種以上の無機酸化物からなる無定形多孔質構造のEU−1ゼオライトへの転化を用いる。この転化は、所定量の外部水相の存在下に行われる水熱処理の間に行われる。
【背景技術】
【0002】
EU−1ゼオライト(EUO構造型)は、従来技術に記載され(非特許文献1)、一次元ミクロ孔ネットワークを有し、その細孔径は、4.1×5.4Å(1Å=1オングストローム=1×10−10m)である。N.A.Briscoeらは、これらの一次元チャネルは、8.1Åの深さおよび6.8×5.8Åの径を有するサイドポケットを有すると教示した(非特許文献2)。
【0003】
特許文献1には、下記式を有するEU−1ゼオライトが記載されている:
少なくとも10のXO:Y:0.5−1.5R2/nO:0−100H
(式中、Rはn価のカチオンを示し、Xはケイ素および/またはゲルマニウムを示し、Yはアルミニウム、鉄、ガリウムおよびホウ素から選ばれる少なくとも1種の元素を示す)。当該文献には、水性媒質中で、前記EU−1ゼオライトの調製方法であって、少なくとも1種の元素X源、少なくとも1種の元素Y源および構造化剤として作用する窒素含有有機化合物Q(これは、α−ωジアンモニウムポリメチレンのアルキル化誘導体または前記誘導体の分解物または前記誘導体の前駆体のいずれかである)を混合する工程を包含する方法も記載されている。反応混合物は、次いで、自生圧下、85〜250℃の温度に、ゼオライト結晶を生ずるまで置かれる。得られた生成物は、ろ過によって回収され、洗浄され、乾燥させられ、焼成されることにより有機構造化剤が除かれ、場合によっては、イオン交換に付されて酸型のEU−1ゼオライトが得られる。このようにして調製された酸型EU−1ゼオライトをC芳香族化合物の異性化方法に用いることが知られている。特許文献1に記載された標準的な方法によって調製されたEU−1ゼオライトは、粉体の形態で得られ、触媒として用いられる前にバインダにより成形することを必要とする。水素化金属が、次いで、ゼオライトおよび/またはバインダ上に担持させられる。例えば、特許文献2には、C芳香族化合物の異性化触媒であって、均一な方法で、無機バインダ、例えば、アルミナと混合された1〜90重量%のEU−1ゼオライトを有し、元素周期律表第VIII族の少なくとも1種の元素0.01〜20重量%を有するものが記載されている。
【0004】
形状化技術によるマトリクスとのゼオライト粉体の均一化は細心の注意を要する操作である。触媒を成形するためのより魅力的な代替は、ゼオライト合成段階の間にゼオライト結晶を担体上に直接的に担持させることである。このような手順の別の利点は、ゼオライトを担体上に固定するためのバインダの使用がもはや必要でないことである。
【0005】
例えば、Van der Puilらは、のゼオライト形成のために必要な全試薬を含有する水溶液中にアルファアルミナ担体を浸した(非特許文献3)。無機担体を含有するこの混合物は、ゼオライトの結晶化が可能になるように水熱処理に付される。この担体の外部表面が完全に覆われるまで、形成された結晶は担体表面上に定着する。
【0006】
ゼオライトの合成の間の直接的なルートによって触媒を調製するための他の方法では、形状化された試薬のゼオライトへの転化が実施される。
【0007】
特許文献3には、ゼオライト構造中の若干の結晶間多孔度を維持することを可能にする調製方法が記載されている。活性な多孔質無機構造、例えば、メソおよび/またはマクロ孔ケイ酸構造がゼオライトを形成するための反応物として用いられる。この構造は、次いで、ゼオライトの成形に必要な別の反応物(構造化剤、鉱化剤、骨格要素(element)等)の水溶液を乾式で含浸させられる。次いで、十分な量の水の不存在下に水熱処理が行われ、これは、多大な表面ゲル化を引き起こし得る。内部表面において結晶化が始まり、次いで、全体構造にわたり進行する。少なくとも15%の出発無機構造は、ゼオライトに転化される。初期構造の巨視的形態は維持され、少なくとも25%の多孔質容積が維持される。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0042226号明細書
【特許文献2】米国特許第6057486号明細書
【特許文献3】国際公開第99/16709号パンフレット
【非特許文献1】ダブリュー・エム・マイアー(W. M. Meier)およびディー・エイチ・オルソン(D. H. Olson)著、「アトラス・オフ・ゼオライト・ストラクチャー・タイプス(Atlas of Zeolite Structure types)」、第5版、2001年
【非特許文献2】エヌ・エイ・ブリスコら著、「ゼオライツ(Zeolites)」、1988年、第8巻、p.74
【非特許文献3】ファン・デル・プイル(Van der Puil)ら著、「ミクロポーラス・アンド・メソポーラス・マテリアルズ(Microporous and Mesoporous Materials)」、1999年、第27巻、p.95−106
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、1分子当たり8個の炭素原子を有する少なくとも1種の芳香族化合物を含む芳香族フラクションの異性化方法においてキシレン類の収率に関して改善された触媒性能が得られるEU−1ゼオライトをベースとする多孔質複合材料の調製方法およびC芳香族化合物の異性化のための前記材料の適用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも1種の酸化ケイ素をベースとする無定形コア部から形成され、該コア部上にEU−1ゼオライトの結晶が分散させられた多孔質複合材料の調製方法であって、少なくとも1)少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む固体に、式[R−N−(CH−N−R2+(nは3〜12であり、R〜Rは同一または異なって、1〜8個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシアルキル基であり、R〜R基の5つまでは、水素原子であり得る)の少なくとも1種の第4級ジアンモニウムカチオンを含む少なくとも1種の水溶液を含浸させる段階と、2)容積V(mL)のオートクレーブにおいて、水蒸気下および120〜220℃の温度(T)で実施される、段階1)からの前記固体の水熱処理の段階であって、前記オートクレーブに事前に導入される水の量は、厳密に、V×[23.48×10−10×T−48×10−8×T+5×10−5×T−0.002]に等しい容積測定量より多く、かつ、0.25×V以下であり、前記固体が直接的には水と接触しないようにされる、段階と、3)段階2)からの固体を乾燥させ、次いで、焼成して、前記多孔質複合材料を得る段階とを包含するものである。
【0010】
好ましくは、前記無定形コア部は、酸化ケイ素または酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物から形成される。
【0011】
好ましくは、前記無定形コア部は、全体的に酸化ケイ素によって構成される。
【0012】
好ましくは、前記多孔質複合材料は、押出物の形態である。
【0013】
好ましくは、前記段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む前記固体は、全体SiO/Alモル比が10〜150である無定形のシリカ−アルミナである。
【0014】
好ましくは、前記段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む前記固体は、酸化ケイ素によって構成された少なくとも1種の構造上にアルミニウムを含有する溶液を含浸させることによって得られる。
【0015】
好ましくは、前記段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む前記固体は、酸化ケイ素によって構成された前記構造内に均一に分配されたアルミニウムを有する。
【0016】
好ましくは、前記段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む前記固体は、前記構造の外表面上に担持させられたアルミニウムを有する。
【0017】
好ましくは、前記多孔質複合材料は、0.5未満のアルミニウム分配係数を有する。
【0018】
好ましくは、前記多孔質複合材料は、酸化ケイ素によって構成された前記構造の巨視的形態と同一の巨視的形態である。
【0019】
好ましくは、前記第4級ジアンモニウムカチオンQは、nが6に等しく、R、R、R、R、RおよびRがメチル基である式を有する。
【0020】
好ましくは、前記段階1)による含浸の各段階に次いで、200℃以下の温度での乾燥が行われる。
【0021】
好ましくは、前記段階1)の終了時に、固体は、
SiO/Al :少なくとも10、
OH/SiO :0.1〜6.0、
(M+Q)/Al :0.5〜100(Mはアルカリ金属およびアンモニウムから選ばれる1価カチオンを示す)、
Q/(M+Q) :0.1〜1、
O/SiO :0〜20
のモル組成を有する。
【0022】
好ましくは、前記水熱処理は、180℃の温度で、100mLオートクレーブにおいて行われ、オートクレーブの底部に導入され、直接的には固体と接触しない水の量は、少なくとも4mLに等しい。
【0023】
好ましくは、合成は、EU−1ゼオライトへの転化率が15重量%以下である時に停止させられる。
【0024】
また、本発明は、上記の方法に従って調製された前記多孔質複合材料に、元素周期律表第VIII族の少なくとも1種の金属を含浸させることを含む少なくとも1回の段階を包含する触媒の調製方法である。
【0025】
好ましくは、前記第VIII族金属(単数種または複数種)は、乾式による含浸によって担持させられる。
【0026】
好ましくは、0.5〜10時間の期間にわたる250〜600℃の焼成の段階を含む。
【0027】
また、本発明は、1分子当たり8個の炭素原子を有する少なくとも1種の芳香族化合物を含有するフラクションの異性化方法であって、前記芳香族フラクションを、上記の方法に従って調製され、触媒反応器中に存在する少なくとも前記触媒と接触させる工程を包含する。
【0028】
好ましくは、温度:300〜500℃、水素分圧:0.3〜1.5MPa、全圧:0.45〜1.9MPa、毎時の触媒の重量(kg)当たりの導入される装入材料の重量(kg)で表される原料空間速度:0.25〜30h−1の操作条件下に実施される。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、少なくとも1種の酸化ケイ素をベースとする無定形コア部から形成され、該無定形コア部上にEU−1ゼオライトの結晶が分散させられる多孔質複合材料の調製方法であって、1)酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含む固体に、ヘキサメトニウムカチオンを含む水溶液を含浸させる段階、2)容積V(mL)のオートクレーブにおいて水蒸気下および120〜220℃の温度Tで実施される、段階1)からの前記固体の水熱処理の段階であって、前記オートクレーブに事前に導入される水の量は、厳密に、V×[23.48×10−10×T−48×10−8×T+5×10−5×T−0.002]に等しい容積測定量より多く、かつ、0.25×V以下であり、前記固体は直接的には水と接触しないようにされる、段階、3)段階2)からの固体を乾燥させ、次いで、焼成する段階を包含するものである。また、本発明は、このような材料からの触媒の調製方法に関する。本発明では、このような無定形コア部から形成され、該コア部上にEU−1ゼオライト結晶が分散させられた多孔質複合材料を含む触媒(例えば、ビーズまたは押出物の形態)によって、1分子当たり8個の炭素原子を有する少なくとも1種の芳香族化合物を含む芳香族フラクションの異性化方法において前記触媒が用いられた場合にキシレン類の収率に関して改善された触媒性能が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、少なくとも1種の酸化ケイ素をベースとする無定形コア部から形成され、該無定形コア部上にEU−1ゼオライトの結晶が分散している多孔質複合材料の調製方法であって、少なくとも
1)少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む固体に、少なくとも1種の式[R−N−(CH−N−R2+(nは3〜12であり、R〜Rは同一または異なって、1〜8個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシアルキル基であり、R〜R基の5つまでは、水素原子であり得る)の第4級ジアンモニウムカチオンを含む少なくとも1種の水溶液を含浸させる段階、
2)容積V(mL)のオートクレーブにおいて、水蒸気下、120〜220℃の温度Tにおいて実施される、段階1)からの前記固体の水熱処理の段階であって、事前に前記オートクレーブに導入される水の量は、厳密にV×[23.48×10−10×T−48×10−8×T+5×10−5×T−0.002]に等しい容積測定量より多く、かつ、0.25×Vに等しい容積測定量以下であり、前記固体は、直接的には水と接触しないようにされる、段階、
3)段階2)からの固体を乾燥させ、次いで焼成して、前記多孔質複合材料を得る段階
を包含する方法に関する。
【0031】
本発明による前記材料の調製は、1種以上の無機酸化物からなる無定形多孔質構造のEU−1ゼオライトへの転化を実施する。この転化は、所定量の水の存在下に行われる前記水熱処理の間に行われる。結晶化現象は、最初に固体の外表面上で起こり、その後に、合成時間に応じて、固体の内部に向けて進行する。合成が中断させられた後、EU−1ゼオライトへの転化率は15重量%を超える。材料のコア部は無定形のままである。
【0032】
本発明はまた、前記多孔質複合材料を含む触媒であって、元素周期律表の第VIII族からの少なくとも1種の金属をさらに含むものの調製に関する。本発明によると、EU−1ゼオライトの結晶は、前記多孔質複合材料の前記コア部の外表面上に分散させられ、本発明の触媒の調製のために有益な利点を構成するゼオライトを形状化するためにバインダを用いることは必要ではない。前記触媒は、有利には、1分子当たり8個の炭素原子を有する少なくとも1種の芳香族化合物を含む芳香族フラクションの異性化方法において用いられる。驚くべきことに、このような無定形コア部から形成され、該コア部上にEU−1ゼオライト結晶が分散させられた多孔質複合材料を含む触媒(例えば、ビーズまたは押出物の形態)によって、1分子当たり8個の炭素原子を有する少なくとも1種の芳香族化合物を含む芳香族フラクションの異性化方法において前記触媒が用いられた場合にキシレン類の収率に関して改善された触媒性能が得られることが発見された。
【0033】
本発明の主題は、少なくとも1種の酸化ケイ素をベースとする無定形コア部から形成され、該無定形コア部上にEU−1ゼオライト結晶が分散させられた多孔質複合材料の調製方法であって、少なくとも
1)少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む固体に、式[R−N−(CH−N−R2+(nは3〜12であり、R〜Rは同一または異なって、1〜8個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシアルキル基であり、R〜R基の5つまでは、水素原子であり得る)の少なくとも1種の第4級ジアンモニウムカチオンを含む少なくとも1種の水溶液を含浸させる段階、
2)容積V(mL)のオートクレーブにおいて、水蒸気下、120〜220℃の温度Tで実施される、段階1)からの前記固体の水熱処理の段階であって、前記オートクレーブに事前に導入される水の量は、厳密に、V×[23.48×10−10×T−48×10−8×T+5×10−5×T−0.002]に等しい容積測定量より多く、かつ、0.25*Vに等しい容積測定量以下であり、前記固体は、直接的には水と接触させられないようにされる、段階、および
3)段階2)からの固体を乾燥させ、次いで、焼成して、前記多孔質複合材料を得る段階
を包含する方法である。
【0034】
本発明によると、本発明の方法によって調製された材料は、少なくとも1種の酸化ケイ素をベースとする無定形コア部から形成され、該無定形コア部上にEU−1ゼオライト結晶が分散させられた多孔質複合材料である。こうして得られた前記材料は、主にマクロ孔形態である。それは、より広い細孔を有し、細孔容積は、本発明の方法の前記段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む固体の細孔容積より少なくとも30%少ない。前記材料の無定形コア部は、酸化ケイ素または酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物から形成され、好ましくは、それは、全体的に酸化ケイ素によって構成される。EU−1ゼオライトの結晶および結晶集合物は、前記コア部の外表面上に分散させられるが、前記表面を全体的に覆う連続的な結晶化されたEU−1ゼオライト層を有しない。前記材料は、透過型電子顕微鏡法(transmission electron microscopy:TEM)および走査型電子顕微鏡法(scanning electron microscopy:SEM)によって特徴付けられる。本発明の方法に従って調製された前記多孔質複合材料は、種々の巨視的形態であり得、例えば、押出物またはビーズの形態であり、好ましくは、押出物の形態である。本発明によると、前記多孔質複合材料は、本発明の方法の前記段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む固体の巨視的形態と同一の巨視的孔形態である。
【0035】
本発明による材料の調製方法の段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む固体は、例えば、無定形シリカ−アルミナであって、全体SiO/Alモル比が少なくとも10、好ましくは10〜150であるものである。前記シリカ−アルミナは、種々の巨視的形態であり得、例えば、押出物、ビーズまたは当業者に知られる任意の他の形態である。前記シリカ−アルミナの平均サイズは、0.1〜5mmで変動し得、好ましくは0.5〜3mmである。それは、メソおよび/またはマクロ孔を含む秩序のあるまたは無秩序な多孔質系であり、すなわち、2nmより大きい平均細孔径および0.01〜2mL・g−1、好ましくは0.1〜1.5mL・g−1の細孔容積を有する。本発明によると、前記多孔質複合材料は、シリカ−アルミナの巨視的形態と同一の巨視的形態である。
【0036】
本発明による材料の調製方法の段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む固体は、アルミニウムを含有する水溶液を少なくとも酸化ケイ素によって構成された構造上に含浸させることによっても得られ得る。用いられる酸化ケイ素は、種々の巨視的形態であり得る構造であり、例えば、押出物、ビーズまたは当業者に知られる任意の他の形態である。用いられる酸化ケイ素によって構成された前記構造の平均径は、0.1〜5mmで変動し得、好ましくは0.5〜3mmである。酸化ケイ素によって構成された前記構造は、メソおよび/またはマクロ孔を含む秩序のあるまたは無秩序な多孔質系を有し、すなわち、2nmより大きい平均細孔径を有し、細孔容積は、0.01〜2mL・g−1であり、好ましくは0.1〜1.5mL・g−1である。
【0037】
酸化ケイ素構造上にアルミニウムを含有する前記水溶液の実施の実施形態によると、少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む前記固体は、酸化ケイ素によって構成された構造内に均一に分配されたアルミニウムまたは酸化ケイ素によって構成された前記構造の外表面上に担持されたアルミニウムのいずれかを有する。
【0038】
少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含み、酸化ケイ素によって構成された構造内に均一に分配されたアルミニウムを有する固体を得るために、酸化ケイ素によって構成された構造は、周囲温度で、乾式または過剰で、あるいは当業者に知られる任意の他の方法に従って、アルミニウム源を含む水溶液を含浸させられる。好ましい含浸法は、乾式含浸であり、含浸させられるべきアルミニウムを含有する水溶液の容積は、好ましくは、酸化ケイ素によって構成された構造の細孔容積に等しい。
【0039】
含浸後、少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含み、酸化ケイ素によって構成された構造内に均一に分配されたアルミニウムを有する前記固体の全体SiO/Alモル比は、少なくとも10、好ましくは10〜150である。
【0040】
少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含み、酸化ケイ素によって構成された前記構造の外表面上に担持されたアルミニウムを有する固体を得るために、酸化ケイ素によって構成された構造は、最初に、アルミニウムを含まない液体を含浸させられる。好ましくは、含浸は、乾式により、周囲温度で、酸化ケイ素の構造の細孔容積に等しいかわずかに少ない容積の液体により行われる。酸化ケイ素によって構成された前記構造の細孔容積は、少なくとも90%、好ましくは95〜99%この液体で満たされる。アルミニウムを含まず、酸化ケイ素によって構成された構造の多孔度を阻止するために用いられる液体は、有利には、水、有機溶媒および水と有機溶媒の混合物から選ばれる。有機溶媒としてアルコール、第4級アンモニウム基を含む化合物、有機酸、ポリオールまたは当業者に知られる他の溶媒を用いることが可能であり、前記有機溶媒は、焼成によって除去されるために100〜1000℃で分解する特性を有する。次いで、前記構造は、乾式含浸または過剰含浸によって、好ましくは、乾浸含浸によってアルミニウム源の水溶液を含浸させられる。このようにして、酸化ケイ素によって構成された構造の細孔中のアルミニウムの拡散は低減させられるか、さらには防止され、アルミニウムは、主に、前記構造の外表面上に担持される。本発明による調製方法の前記段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む固体の全体SiO/Alモル比は少なくとも200である。本発明の方法によって調製され、酸化ケイ素によって構成された前記構造の外表面上に担持されたアルミニウムを有する固体から調製される多孔質複合材料は、0.5未満、好ましくは0.4未満、非常に好ましくは0.3未満のアルミニウム分配係数によって特徴付けられる。キャスタン・マイクロプローブ(Castaing microprobe)によって得られる前記アルミニウムの分配係数は、前記材料の巨視的形態による前記多孔質複合材料の押出物またはビードのコア部中のアルミニウム濃度の、この同一の押出物またはこのビードの端部におけるアルミニウム濃度と比較される比に対応する。
【0041】
本発明によると、前記多孔質複合材料は、酸化ケイ素の前記構造上にアルミニウムを含有する水溶液を含浸させることによって段階1)の実施のために用いられる前記固体が得られる場合に、酸化ケイ素によって構成された構造の巨視的形態と同一の巨視的形態である。
【0042】
酸化ケイ素によって構成された構造上の含浸のために用いられるアルミニウム源は、有利には、アルミニウムを含み、水溶液中に活性な形態でアルミニウムを放出することができる任意の化合物であり得る。アルミニウム源は、好ましくは、アルミン酸ナトリウムまたはアルミニウム塩(例えば、塩化物、硝酸塩、水酸化物または硫酸塩)またはアルミニウムアルコキシドである。
【0043】
酸化ケイ素によって構成された構造内に均一に分配されるかまたは酸化ケイ素によって構成された前記構造の外表面上に担持されるかのいずれかであるアルミニウムの含浸の後、酸化ケイ素および酸化アルミニウムを含む前記固体は、有利には200℃以下、好ましくは120℃以下、非常に好ましくは100℃以下の温度で乾燥させられ、かつ/または、有利には150〜1000℃、好ましくは300〜700℃、一層より好ましくは400〜650℃温度で、1〜20時間の期間にわたって空気下に焼成される。
【0044】
本発明による調製方法の段階1)によると、少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む前記固体は、式[R−N−(CH−N−R2+(nは3〜12であり、R〜Rは同一または異なって、1〜8個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシアルキル基であり、R〜R基の5つまでは水素原子であり得る)の少なくとも1種の第4級ジアンモニウムカチオンQを含む少なくとも1種の水溶液を含浸させられる。好ましくは、nは6に等しく、R、R、R、R、RおよびRはメチル基である:これは、ヘキサメトニウムカチオンである。ケイ素およびアルミニウムの酸化物を含有する前記固体の含浸は、周囲温度で、乾式、過剰、または、当業者に知られる任意の他の方法により、少なくとも前記第4級ジアンモニウムカチオンQを含む水溶液により行われる。含浸の好ましい方法は乾式による含浸であり、含浸させられるべき少なくとも前記カチオンQを含む水溶液の容積は、少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む固体の細孔容積以下である。前記カチオンQは、水酸化物の形態で、または、ハロゲン化塩として、好ましくは水酸化物の形態で存在する。非常に好ましくは、前記カチオンQを含む前記水溶液は、ヘキサメトニウムヒドロキシドを含む。
【0045】
前記第4級ジアンモニウムカチオンQを含む水溶液の含浸は、有利には、数回繰り返され、例えば、3回の含浸が行われる。各含浸段階の後、200℃以下、好ましくは120℃以下、非常に好ましくは100℃以下の温度で乾燥が行われて、水が留去され、次の含浸のために細孔容積が自由にされる。
【0046】
本発明の方法の前記段階1)による含浸および乾燥段階の終了時に、固体は、以下のモル組成を有する:
SiO/Al :少なくとも10、
OH/SiO :0.1〜6.0、好ましくは0.1〜1.0、
(M+Q)/Al :0.5〜100、
Q/(M+Q) :0.1〜1
O/SiO :0〜20、
(Mは、ケイ素およびアルミニウム源に由来する1価カチオンを示し、アルカリ金属およびアンモニウムから選ばれる。好ましくは、Mはナトリウムである)。
【0047】
本発明による調製方法の段階2)によると、前記段階1)からの少なくともケイ素およびアルミニウムの酸化物を含有する前記固体は、容積V(mL)のオートクレーブにおいて、水蒸気下、120〜220℃の温度Tで実施され、前記固体の表面上に分散したEU−1ゼオライトの結晶の形成に至る水熱処理に付される。前記段階2)によると、事前に前記オートクレーブに導入される水の量は、厳密に、V×[23.48×10−10×T−48×10−8×T+5×10−5×T−0.002]に等しい容積より多く、かつ、0.25×Vに等しい容積以下であり、前記固体が直接的には水と接触しないようにされる。
【0048】
本発明の方法の前記段階2)の実施のために、本発明の方法の段階1)からの前記固体は、有利には、ステンレス製の支持体上に置かれ、オートクレーブの上部または中央部に配置される。このオートクレーブの底部には、水が存在し、水は、直接的には前記固体と接触しない。オートクレーブの底部に導入される水の量は、前記固体の周りの雰囲気が水蒸気により飽和され、水が前記固体上に再凝縮するのに十分であるように選ばれる。オートクレーブの底部に導入される水の容積は、厳密に、V×[23.48×10−10×T−48×10−8×T+5×10−5×T−0.002]に等しい容積より多く、かつ、0.25×Vに等しい容積以下であり、Vは、mLで表されるオートクレーブの容積であり、Tは、℃で表される水熱処理の温度である。好ましくは、水熱処理は、180℃の温度で、100mLのオートクレーブにおいて行われ、オートクレーブの底部に導入され、直接的には固体と接触しない水の量は、0.5mLより多く、好ましくは、少なくとも1mLに等しく、一層より好ましくは少なくとも4mLに等しい。固体上で再凝縮する水は、前記固体の外表面のゲル化を引き起こし、これによって結晶化現象が起こり、これは、前記固体の外表面において始まり、その後に、合成時間に従って固体の内側に進行する。「表面ゲル化」は、本発明の意味の範囲内で、表面における、表面多孔度の喪失およびより濃密な無定形相の形成(これも表面での)と同時に起こる無機固体の顕著な溶解に対応する。コア部は、表面ゲル化現象によって、表面におけるより少なく影響を及ぼされ、その結果、その多孔度は、結晶化の間に表面におけるより少なく改変される。本発明によると、外表面のゲル化現象は、本発明の方法により調製された多孔質複合材料のコア部が無定形のままであるような方法で起こり、外表面のゲル化は、外表面の結晶化がコア部に向かって進行するのを制限する拡散障壁を形成する。前記材料のコア部において結晶化現象が観察されることはなく、EU−1ゼオライトの結晶のみが前記無定形コア部の外表面上に存在する。
【0049】
本発明の方法の前記段階2)の実施のために行われる水熱処理は、自生反応圧下、120〜220℃、好ましくは140〜200℃、非常に好ましくは150〜190℃の温度で行われる。合成期間は、1時間〜数日、好ましくは6時間〜7日、一層より好ましくは12時間〜4日である。合成は、EU−1ゼオライトへの転化のレベルが、有利には15重量%以下、好ましくは10重量%以下である時に停止させられる。転化のレベルは、表面において少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも4重量%であり、材料のコア部において3重量%未満、好ましくは1重量%未満である。
【0050】
EU−1ゼオライトへの転化率は、全体的に100重量%の結晶EU−1ゼオライトによって構成された基準サンプルに対するX線回折によって測定される。より正確には、それは、本発明の方法により調製された多孔質複合材料の回折図から、全体的に100%結晶EU−1ゼオライトによって構成された前記基準サンプルのものと比較することによって計算される。前記基準サンプルは、特許出願EP A-0,042,226に記載された教示により調製され、100%結晶であるEU−1ゼオライトによって構成される。重量百分率(重量%)で表される転化率は、回折角度2θの領域13°〜32°からバックグランドノイズを減算した後の、100%結晶化基準EU−1ゼオライトのピークの表面積に対する本発明の方法により調製された多孔質複合材料のピークの表面積の比率に対応する。
【0051】
本発明による調製方法の前記段階2)の終了時に、得られた材料は未加工の合成形態にある。それは回収され、洗浄され、次いで、本発明による調製方法の段階3)に従って、それは、乾燥させられ(好ましくは200℃以下、非常に好ましくは120℃以下の温度で)、次いで、それは焼成される。焼成は、当業者に知られた方法によって、例えば、乾燥空気の流れの下に行われて、材料のミクロ孔中に占められる有機構造化剤として作用する第4級ジアンモニウムカチオンQが除去される。焼成は、有利には150〜1000℃、より有利には300〜700℃、一層より有利には400〜650℃の温度で、好ましくは1〜40時間、より好ましくは10〜20時間の期間にわたって行われる。焼成された材料がアルカリ金属のカチオンの形態のMカチオンを含有するのであれば、少なくとも1段階のイオン交換が、例えば、NHNOの少なくとも1種の水溶液により行われて、アルカリ金属カチオンの少なくとも一部、好ましくは全部が除去される。
【0052】
本発明の主題はまた、上記の本発明方法によって調製された多孔質複合材料からの触媒の調製である。前記触媒の調製のための前記方法は、前記多孔質複合材料に、元素周期律表の第VIII族の少なくとも1種の金属および場合による第IIIAおよびIVA族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属を含浸させることを含む少なくとも1回の段階を包含する。
【0053】
本発明による触媒の調製は、上記の方法の調製の3段階による材料の調製後に、当業者に知られる任意の方法によって行われ得る。好ましくは、本発明による材料の調製方法の段階3)の終了時に行われる焼成および例えばNHNO水溶液とのイオン交換の任意の段階の後に、第VIII族の少なくとも1種の金属が、前記材料上、すなわち、大部分コア部中に、または、大部分EU−1ゼオライトの結晶上に、または、ゼオライト−コア部の組合せ上に導入される。コア部上への前記金属の担持は、有利には、乾式含浸の技術、過剰含浸の技術またはイオン交換によって行われる。複数種の金属が導入される場合、これらは、全部同じ方法でまたは異なる技術によって導入され得る。
【0054】
全ての第VIII族金属前駆体が、上記の3段階の本発明の方法により調製された材料上への1種以上の第VIII族金属の担持に適している。特に、任意の第VIII族貴金属のために、アンモニア化合物、またはクロロ白金酸アンモニウム、ジカルボニル二塩化白金、ヘキサヒドロキシ白金酸、塩化白金、硝酸パラジウム等の化合物を用いることが可能である。白金は、一般的に、ヘキサクロロ白金酸の形態で導入される。第VIII族貴金属の導入は、好ましくは、上記金属化合物のうちの1つの水溶液または有機溶液を用いる含浸によって行われる。用いられ得る有機溶媒の中で、パラフィン性、ナフテン性、芳香族性の炭化水素(例えば1分子当たり6〜12個の炭素原子を含有するもの)、ハロゲン化有機化合物(例えば1分子当たり1〜12個の炭素原子を含有するもの)が挙げられ得る。例えばn−ヘプタン、メチルシクロヘキサン、トルエン、クロロホルム等が挙げられ得る。溶媒の混合物を用いることも可能である。
【0055】
担持の間に実施される所定のパラメータ、特に、用いられる第VIII族の金属(単数種または複数種)の前駆体の性質をチェックすることは、前記金属(単数種または複数種)の担持を、大部分、本発明の方法によって調製された材料のコア部またはゼオライト結晶に向けることを可能にする。
【0056】
それ故に、第VIII族金属(単数種または複数種)、好ましくは白金および/またはパラジウムを大部分コア部上に導入するために、ヘキサクロロ白金酸および/またはヘキサクロロパラジウム酸による陰イオン交換が、競争剤、例えば塩酸の存在下に実施され得、担持の後、一般的には焼成が行われる。この焼成は、例えば、350〜550℃の温度で、1〜4時間の期間にわたって行われる。このような前駆体により、第VIII族金属(単数種または複数種)は、大部分コア部上に担持され、前記金属(単数種または複数種)は、触媒の押出物またはビーズを通して良好な分散および良好な巨視的分配を有する。
【0057】
第VIII族金属(単数種または複数種)、好ましくは白金および/またはパラジウムを陽イオン交換によって担持させて、前記金属(単数種または複数種)が、大部分、ゼオライト結晶上に担持させられることを構想することも可能である。それ故に、白金の場合、前駆体は、例えば、下記から選ばれ得る:
・アンモニア性の化合物、例えば、式Pt(NHの白金(II)テトラミン塩、式Pt(NHの白金(IV)ヘキサミン塩、式(PtX(NH)Xの白金(IV)ハロゲノペンタミン塩、式PtX(NHの白金 N−テトラハロゲノジアミン塩等;および
・式H(Pt(acac)X)のハロゲン化化合物
(式中、Xは、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素によって形成される群から選ばれるハロゲンであり、Xは、好ましくは塩素であり、「acac」は、アセチルアセトンから誘導されるアセチルアセトナート基(総和式Cを有する)を示す)。このような前駆体により、第VIII族金属(単数種または複数種)は、大部分ゼオライト結晶上に担持させられ、前記金属(単数種または複数種)は、触媒押出物またはビーズを通じて良好な分散および良好な巨視的分配を有する。
【0058】
材料上への第VIII族金属の乾式含浸は、コア部およびゼオライト結晶の両方上への前記金属の担持に至る。
【0059】
好ましくは、乾式含浸技術が用いられて、上記3段階の本発明の方法により調製された多孔質複合材料の外皮部(crust)中の第VIII族金属の担持が促進されることになる:キャスタン・マイクロプローブによって測定される前記第VIII族金属(単数種または複数種)の分配プロファイルから計算される前記第VIII族金属(単数種または複数種)の巨視的分配係数は、0.7未満、好ましくは0.6未満である。前記係数は、前記触媒の巨視的形態による触媒の押出物またはビードのコア部における前記第VIII族金属(単数種または複数種)の濃度の、触媒の同一の押出物または同一のビードの周縁部における濃度と比較される比として定義される。
【0060】
本発明により調製された触媒が第IIIAおよびIVA族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属も含有する場合、当業者に知られるこのような金属の全ての担持技術およびこのような金属の全ての前駆体が適し得る。
【0061】
第VIII族金属(単数種または複数種)および第IIIAおよびIVA族金属(単数種または複数種)を、少なくとも1つの単位段階において別々にまたは同時に加えることも可能である。第IIIAおよびIVA族の少なくとも1種の金属が別に加えられる場合、第VIII金属の後にそれが加えられることが好ましい。
【0062】
第IIIAおよびIVA族金属から選ばれる追加金属は、第IIIAおよびIVA族金属の塩化物、臭化物、硝酸塩等の化合物を介して導入され得る。例えば、インジウムの場合、硝酸塩または塩化物が有利に用いられる。第IIIAおよびIVA族金属から選ばれる追加金属はまた、前記金属の錯体、特に、金属のポリケトン錯体、およびヒドロカルビル金属、例えば、金属のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールおよびアリールアルキルによって構成された群から選ばれる少なくとも1種の有機化合物の形態で導入され得る。この後者の場合、金属の導入は、有利には、有機溶媒中の前記金属の有機金属化合物の溶液を用いて行われる。金属の有機ハロゲン化化合物を用いることも可能である。金属の有機化合物として、特に、スズの場合にはテトラブチルスズ、インジウムの場合にはトリフェニルインジウムが挙げられ得る。
【0063】
第VIII族金属の前に第IIIAおよびIVA族金属から選ばれる追加金属が導入されるならば、用いられる第IIIAまたはIVA族金属の化合物は、一般的に、金属のハロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、炭酸塩およびシュウ酸塩によって構成された群から選ばれる。次いで、導入は、有利には、水溶液中で行われる。しかし、それは、金属の有機金属化合物、例えば、テトラブチルスズの溶液を用いても導入され得る。この場合、少なくとも1種の第VIII族金属を導入する前に、空気下の焼成が行われることになる。
【0064】
さらに、焼成および/または還元等の中間処理が、異なる金属の連続する担持の合間に適用され得る。
【0065】
触媒の調製は、一般的に、焼成により終わる。焼成は、通常、250〜600℃の温度、0.5〜10時間の期間にわたって行われ、好ましくは、乾燥が先に行われ、この乾燥は、例えば、オーブン中、周囲温度から250℃の範囲の温度、好ましくは40〜200℃で行われる。前記乾燥段階は、好ましくは、前記焼成を行うために必要な昇温の間に行われる。焼成の次に、場合によっては、水素下に還元が行われる。この還元は、一般的には300〜600℃、好ましくは350〜550℃の温度で、1〜10時間、好ましくは2〜5時間の期間にわたって行われて、主として触媒活性に必要な還元型である前記金属(単数種または複数種)が得られる。
【0066】
本発明により調製された触媒が硫黄を含有する場合、硫黄は、以前に記載された元素(単数種または複数種)を含有する焼成済みの触媒上に、触媒反応の前に現場で、または、現場外で導入される。硫化は、当業者に周知である任意の硫化剤、例えば、ジメチルジスルフィド、硫化水素等を用いて行われる。任意の硫化は還元後に起こる。現場硫化の場合、還元は、触媒が事前に還元されていないならば、硫化前に起こる。現場外硫化の場合、還元が行われ、次いで、硫化が行われる。
【0067】
こうして調製された触媒は、EU−1ゼオライト結晶が表面上に分散させられた無定形コア部とは別に、元素周期律表第VIII族の少なくとも1種の金属、好ましくは、白金およびパラジウムによって形成される群から選ばれる金属、一層より好ましくは白金を含有する。前記第VIII族金属(単数種または複数種)の重量含有量は、一般的には0.01〜2.0%、好ましくは0.05〜1.0%である。前記触媒は、場合によっては、元素周期律表の第IIIAおよびIVA族の金属から選ばれる少なくとも1種の追加金属、好ましくは、インジウムおよびスズから選ばれる金属を含む。前記追加金属(単数種または複数種)の重量含有量は、一般的には0.01〜2.0%、好ましくは0.05〜1.0%である。前記触媒はまた、有利には、硫黄を含み、そのレベルは、担持させられた第VIII族の金属の原子数に対する硫黄原子数の比が0.5〜2であるようにされる。
【0068】
本発明の主題はまた、分子当たり8個の炭素原子を有する少なくとも1種の芳香族化合物を含有するフラクションの異性化の方法であって、前記芳香族フラクションを、上記の前記方法により調製され、触媒反応器中に存在する少なくとも前記触媒と接触させる工程を包含する方法である。分子当たり8個の炭素原子を有する少なくとも1種の芳香族化合物を含有する前記芳香族フラクションは、特に、分子当たり8個の炭素原子を有する芳香族化合物として、キシレン類の混合物のみ、または、エチルベンゼンのみ、または、キシレン(単数種または複数種)とエチルベンゼンの混合物を含む。
【0069】
本発明によるC芳香族フラクションの異性化の方法において用いられる触媒は、ビーズまたは押出物の形態である。
【0070】
前記異性化方法は、一般的に、下記操作条件に従って実施される:
・温度:300〜500℃、好ましくは320〜450℃、一層より好ましくは340〜430℃;
・水素分圧:0.3〜1.5MPa、好ましくは0.4〜1.2MPa、一層より好ましくは0.7〜1.2MPa、
・全圧:0.45〜1.9MPa、好ましくは0.6〜1.5MPa、
毎時の触媒の重量(kg)当たりの導入される装入材料の重量(kg)で表される原料油の空間速度:0.25〜30h−1、好ましくは1〜10h−1、一層より好ましくは2〜6h−1
【0071】
下記実施例は、本発明を例示するが、しかしながら、本発明の範囲を制限するものではない。下記実施例1〜6において調製された材料は、X線回折(Panalytical,X’Pert)、走査型電子顕微鏡法(JEOL,JSM 6340)、透過型電子顕微鏡法(FEI,Tecnai)およびキャスタン・マイクロプローブ(JEOL,8800R)によって特徴付けられる。
【0072】
下記実施例において用いられる、全体的にEU−1ゼオライトによって構成された基準サンプルは、特許出願EP A-0,042,226に記載された教示により調製され、100%結晶性である。
【0073】
(実施例1(本発明):5重量%のEU−1ゼオライトを含有する多孔質複合材料M1の調製)
多孔質無定形構造として、Saint Gobain NorPro社によって供給されたシリカ押出物7gが利用され、これは、1.5mmの平均径、1mL・g−1の細孔容積および10nmの平均細孔径を有している。
【0074】
次いで、これらのシリカ押出物は、アルミン酸ナトリウム(Carlo Erba)0.55gを含む脱イオン水溶液(7mL)を周囲温度および乾式で含浸させられた。次いで、含浸済みの押出物は、空気下に500℃で2時間にわたって焼成される。
【0075】
6gの臭化ヘキサメトニウム(Acros)を4.6gの酸化銀(Alfa Aesar)と12gの蒸留水中で反応させることによって、ヘキサメトニウムヒドロキシドの水溶液が調製される。この混合物は、攪拌下に終夜暗所で放置される。AgBr沈殿物をろ過により分離した後、25質量%のヘキサメトニウムヒドロキシド溶液が回収される。
【0076】
次いで、押出物は、ヘキサメトニウムヒドロキシドのこの溶液11gを乾式および周囲温度で含浸させられる。この含浸は3段階で行われる。各含浸の後、押出物は、80℃で乾燥させられて、水が蒸発させられ、細孔容積が空になる。
【0077】
これらの含浸および乾燥段階の終了時に、押出物は、下記モル組成を有する:
SiO/Al :40
OH/SiO :0.2
(Na+HM)/Al :7;HMはヘキサメトニウムである
HM/(Na+HM) :0.6
O/SiO :0.8
次いで、押出物は、ステンレス製100mL(V)オートクレーブの中央部に配置されたステンレス製支持体に移される。オートクレーブの底部において、5mLの蒸留水が導入される。
【0078】
50LのBinder通気炉(Binder ventilated oven)へのオートクレーブの導入によって、攪拌なしで1日の期間にわたって180℃(T)で水熱処理が行われる。
【0079】
生成物は回収され、蒸留水(500mL)により洗浄され、100℃で乾燥させられる。次いで、それは、空気下に550℃で18時間にわたって焼成される。材料M1が得られる。
【0080】
全体的にEU−1ゼオライトによって構成された基準サンプルとの比較によるX線回折分析によって、材料M1は5重量%の転化率に対応する5重量%のEU−1ゼオライトを含むことが示される。走査型電子顕微鏡法分析によって、1〜5μmを測定するEU−1ゼオライトの結晶凝集体の分散が材料M1の押出物の外表面上に観察される一方で、押出物を分断するとコア部が最初のシリカ押出物と同一の形態を有することが示された。材料M1の押出物の表面とコア部とから取られたサンプルについて行われた透過型電子顕微鏡法分析によって、表面が電子ビームを回折する結晶性粒子からなる一方で、コア部から取られたサンプルは無定形であることが示される。材料M1はまた、キャスタン・マイクロプローブによって分析される:分析は、材料M1の押出物の内部断面に沿って全部段階的に行われる。R(Al)で表示されるアルミニウムの分配係数は1に等しい。
【0081】
(実施例2(本発明):15重量%のEU−1ゼオライトを含有する多孔質複合材料M2の調製)
この材料は、実施例1に記載された操作方法に従って調製されるが、水熱処理は、2日にわたって180℃で行われる。調製の終了時に、材料M2が得られる。
【0082】
全体的にEU−1ゼオライトによって構成された基準サンプルとの比較によるX線回折分析によって、材料M2は、15重量%の転化率に対応する15重量%のEU−1ゼオライトを含むことが示される。走査型電子顕微鏡法分析を通じて、押出物の外表面上および約100μmの厚さ上の周辺周囲に1〜10μmを測定するEU−1ゼオライトの結晶凝集体が観察される一方で、押出物の破壊により、コア部が最初のシリカ押出物と同一の形態を有することが示される。材料M2の押出物の表面とコア部とから取られたサンプルについて行われた透過型電子顕微鏡法分析によって、表面は電子ビームを回折する結晶粒子からなる一方で、コア部から取られたサンプルは無形的であることが示される。材料M2はまた、キャスタン・マイクロプローブによって分析される:分析は、材料M2の押出物の内部断面に沿って全て段階的に行われる。R(Al)で表示されるアルミニウムの分配係数は、1に等しい。
【0083】
(実施例3(本発明):5重量%のEU−1ゼオライトを含有する多孔質複合材料M3の調製)
多孔質無定形構造として、Saint Gobain NorPro社によって供給されたシリカ押出物7gが利用され、これは、1.5mmの平均径、1mL・g−1の細孔容積および10nmの平均細孔径を有している。
【0084】
次いで、これらのシリカ押出物は、実施例1に記載された手順に従って調製された25質量%のヘキサメトニウムヒドロキシドの溶液6.8gを乾式および周囲温度で含浸させられる。次いで、これらの押出物は、0.03gのアルミン酸ナトリウム(Carlo Erba)を含む蒸留水溶液(1mL)を乾式および室温で含浸させられる。含浸済みの押出物は、次いで、空気下に500℃で2時間にわたって焼成される。
【0085】
次いで、押出物は、25質量%のヘキサメトニウムヒドロキシドの溶液11gを乾式および周囲温度で含浸させられる。この含浸は3段階で行われる。各含浸の後、押出物は、80℃で乾燥させられて、水が蒸発させられ、細孔容積が空になる。
【0086】
これらの含浸および乾燥段階の終了時に、押出物は、下記のモル組成を有する:
SiO/Al :731
OH/SiO :0.2
(Na+HM)/Al :78;HMはヘキサメトニウムである
HM/(Na+HM) :1.0
O/SiO :0.8
次いで、押出物は、ステンレス製100mL(V)オートクレーブの中央部に配置されたステンレス製の支持体に移される。オートクレーブの底部には、5mLの蒸留水が導入される。
【0087】
水熱処理は、攪拌なしで1日の期間にわたって180℃(T)で、50LのBinder通気炉へのオートクレーブの導入によって行われる。
【0088】
生成物は回収され、蒸留水(500mL)により洗浄され、100℃で乾燥させられる。次いで、それは、空気下に550℃で18時間にわたって焼成される。材料M3が得られる。
【0089】
全体的にEU−1ゼオライトによって構成された基準サンプルとの比較によるX線回折分析によって、材料M3は5重量%の転化率に対応する5重量%のEU−1ゼオライトを含むことが示される。走査型電子顕微鏡法分析を通じて、1〜5μmを測定するEU−1ゼオライトの結晶凝集体の分散が前記材料M3の押出物の外表面上に観察される一方で、押出物の破壊により、コア部が最初のシリカ押出物と同一の形態を有することが示される。材料M3の押出物の表面とコア部とから取られたサンプルについて行われる透過型電子顕微鏡法分析によって、表面は電子ビームを回折する結晶性粒子からなる一方で、コア部から取られたサンプルは無定形であることが示される。材料M3はまた、キャスタン・マイクロプローブによって分析される:分析は、材料M3の押出物の内部断面に沿って全て段階的に行われる。R(Al)で表示されるアルミニウムの分配係数は0.2に等しい。
【0090】
(実施例4(本発明):15重量%のEU−1ゼオライトを含有する多孔質複合材料M4の調製)
多孔質無定形構造として、Saint Gobain NorPro社によって供給されたシリカ押出物7gが利用され、これは、1.5mmの平均径、1mL・g−1の細孔容積および10nmの平均細孔径を有している。
【0091】
これらのシリカ押出物は、最初に、実施例1に記載された手順に従って調製された25質量%のヘキサメトニウムヒドロキシド溶液6.8gを乾式および周囲温度で含浸させられる。次いで、これらの押出物は、0.08gのアルミン酸ナトリウム(Carlo Erba)を含む蒸留水溶液(1mL)を乾式および周囲温度で含浸させられる。次いで、含浸済みの押出物は、500℃で2時間にわたって焼成される。
【0092】
次いで、押出物は、25質量%のヘキサメトニウムヒドロキシドの溶液11gを乾式および周囲温度で含浸させられる。この含浸は3段階で行われる。各含浸の後、押出物は、80℃で乾燥させられて、水が蒸発させられ、細孔容積が空になる。
【0093】
これらの含浸および乾燥段階の終了時に、押出物は、下記のモル組成を有する:
SiO/Al :274
OH/SiO :0.2
(Na+HM)/Al :30;HAはヘキサメトニウムである
HM/(Na+HM) :0.9
O/SiO :0.8
次いで、押出物は、ステンレス製100mL(V)オートクレーブの中央部に配置されたステンレス製の支持体に移される。オートクレーブの底部には、5mLの蒸留水が導入される。
【0094】
水熱処理は、攪拌なしで2日の期間にわたって180℃(T)で、50LのBinder通気炉へのオートクレーブの導入によって行われる。
【0095】
生成物は回収され、蒸留水(500mL)により洗浄され、100℃で乾燥させられる。次いで、それは、空気下に550℃で18時間にわたって焼成される。材料M4が得られる。
【0096】
全体的にEU−1ゼオライトによって構成された基準サンプルとの比較によるX線回折分析によって、材料M4は、15重量%の転化率に対応する15重量%のEU−1ゼオライトを含むことが示される。走査型電子顕微鏡法分析を通じて、1〜10μmを測定するEU−1ゼオライトの結晶凝集体が押出物の外表面上および約100μmの厚さ上の周辺周囲に観察される一方で、押出物の破壊によって、コア部が最初のシリカ押出物と同一の形態を有することが示される。材料M4の押出物の表面とコア部とから取られたサンプルについて行われる透過型電子顕微鏡法分析によって、表面は電子ビームを回折する結晶粒子からなる一方で、コア部から取られたサンプルは無定形であることが示される。材料M4はまた、キャスタン・マイクロプローブによって分析される:分析は、材料M4の押出物の内部断面に沿って全て段階的に行われる。R(Al)で表示されるアルミニウムの分配係数は、0.4に等しい。
【0097】
(実施例5(比較):15重量%のEU−1ゼオライトを含有する多孔質複合材料M5の調製)
この材料は、実施例1に記載された操作方法に従って調製されるが、水熱処理は、オートクレーブの底部での蒸留水の導入なしで、3日にわたって180℃で行われる。調製の終了時に、材料M5が得られる。
【0098】
基準サンプルとの比較によるX線回折分析によって、材料M5は、15重量%の転化率に対応する15重量%のEU−1ゼオライトを含むことが示される。走査型電子顕微鏡法分析を通じて、約200nmを測定するEU−1ゼオライトの小結晶粒子の形成が押出物の外表面上並びにコア部中に観察される。材料M5の押出物の表面とコア部とから取られたサンプルについて行われる透過型電子顕微鏡法分析によって、表面およびコア部のサンプルは、電子ビームを回折する結晶粒子からなることが示される。材料M5はまた、キャスタン・マイクロプローブによって分析される:分析は、押出物の内部断面に沿って全て段階的に行われる。R(Al)で表示されるアルミニウムの分配係数は1に等しい。
【0099】
(実施例6(比較):15重量%のEU−1ゼオライトを含有する多孔質複合材料M6の調製)
この材料は、実施例1に記載された操作方法に従って調製されるが、水熱処理は、オートクレーブの底部での0.5mLの蒸留水の導入により、3日にわたって180℃で行われる。調製の終了時に、材料M6が得られる。
【0100】
基準サンプルとの比較によるX線回折分析によって、材料M6は、15重量%の転化率に対応する15重量%のEU−1ゼオライトを含むことが示される。走査型電子顕微鏡法分析を通じて、約200nmを測定する小結晶粒子の形成が押出物の外表面上並びにコア部中に観察される。材料M6の押出物の表面とコア部とから取られるサンプルについて行われる透過型電子顕微鏡法分析によって、表面およびコア部のサンプルは、電子ビームを回折する結晶粒子からなることが示される。材料M6はまた、キャスタン・マイクロプローブによって分析される:分析は、押出物の内部断面に沿って全て段階的に行われる。R(Al)で表示されるアルミニウムの分配係数は、1に等しい。
【0101】
(実施例7:触媒C1〜C6の調製)
焼成され、実施例1〜6に従って調製された材料M1〜M6は、3回のイオン交換に付される。イオン交換は、各交換につき10NのNHNO溶液中、100℃で4時間にわたって行われる。これらの処理の後、これらの焼成された材料に含まれるEU−1ゼオライトはNH型である。
【0102】
次いで、材料M1〜M6は、ヘキサクロロ白金酸を乾式で含浸させられて、触媒C1〜C6のそれぞれ上に、0.6%に等しい質量含有量の白金が導入される。固体は、最後に、120℃で12時間にわたって乾燥させられ、空気下に500℃で1時間にわたって焼成される。その結果、それぞれ、材料M1、M2、M3、M4、M5およびM6から調製された触媒C1、C2、C3、C4、C5およびC6が得られる。キャスタン・マイクロプローブによって測定される白金の分配係数は、触媒C1〜C6のそれぞれについて0.4である。
【0103】
(実施例8:C芳香族化合物の異性化における触媒C1〜C6の触媒特性の評価)
触媒C1〜C6のそれぞれと連続的に接触させられる、異性化されるべき装入材料は、エチルベンゼンのみによって構成される。
【0104】
実施例7からの触媒C1〜C6の性能は、エチルベンゼンの異性化において5gの触媒を用いて評価される。
【0105】
異性化の操作条件は、下記の通りである:
・温度 :410℃;
・全圧 :10バール(1バール=0.1MPa);
・水素分圧 :8バール;
・装入材料 :エチルベンゼン;
・原料の空間速度(毎時の触媒(C1〜C6)中に存在するゼオライト重量(g)当たりの導入される装入材料の重量(g)で表される):66.6h−1に等しい。
【0106】
15重量%のゼオライトを含有する触媒は、10h−1に等しい空間速度(毎時の触媒(C2、C4、C5およびC6)の重量(g)当たりの導入される装入材料の重量(g)で表される)において試験される。5重量%のゼオライトを含有する触媒は、3.33h−1に等しい空間速度(毎時の触媒(C1およびC3)の重量(g)当たり導入される装入材料の重量(g)で表される)について試験される。したがって、同一の装入材料の流量/ゼオライトの量で試験される触媒C1〜C6の性能が比較可能である。触媒C1〜C6の触媒性能は、エチルベンゼンの異性化について連続的に評価される。
【0107】
触媒は、最初に、2時間にわたって400℃で水素下に還元され、次いで、それらは、水素の存在下、ジメチルジスルフィド(DMDS)を含有する装入材料により、硫黄/金属の原子比が1.5であるような濃度で処理される。触媒は、3時間にわたって400℃で水素の流れの中で維持され、次いで、装入材料が注入される。
【0108】
材料は、異性化収率に関して評価される。キシレン類に関する収率(または異性化収率ともいう)は、生じたキシレン類の質量百分率(質量%)の値から測定され、前記質量百分率は、流出物のクロマトグラフィー分析によって得られる。
【0109】
【表1】

【0110】
表1に示された結果により、無定形コア部から形成され、該無定形コア部上にゼオライト結晶EU−1が分散させられた多孔質複合材料を含む触媒C1、C2、C3およびC4によって、キシレン類の収率に関して、EU−1ゼオライト結晶の存在に起因してコア部が無定形でない多孔質複合材料を含む触媒C5およびC6によって得られた触媒性能よりはるかに良好な触媒性能がもたらされることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の酸化ケイ素をベースとする無定形コア部から形成され、該コア部上にEU−1ゼオライトの結晶が分散させられた多孔質複合材料の調製方法であって、少なくとも
1)少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む固体に、式[R−N−(CH−N−R2+(nは3〜12であり、R〜Rは同一または異なって、1〜8個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシアルキル基であり、R〜R基の5つまでは、水素原子であり得る)の少なくとも1種の第4級ジアンモニウムカチオンを含む少なくとも1種の水溶液を含浸させる段階と、
2)容積V(mL)のオートクレーブにおいて、水蒸気下および120〜220℃の温度(T)で実施される、段階1)からの前記固体の水熱処理の段階であって、前記オートクレーブに事前に導入される水の量は、厳密に、V×[23.48×10−10×T−48×10−8×T+5×10−5×T−0.002]に等しい容積測定量より多く、かつ、0.25×V以下であり、前記固体が直接的には水と接触しないようにされる、段階と、
3)段階2)からの固体を乾燥させ、次いで、焼成して、前記多孔質複合材料を得る段階と
を包含する、方法。
【請求項2】
前記無定形コア部は、酸化ケイ素または酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物から形成される、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記無定形コア部は、全体的に酸化ケイ素によって構成される、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
前記多孔質複合材料は、押出物の形態である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項5】
前記段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む前記固体は、全体SiO/Alモル比が10〜150である無定形のシリカ−アルミナである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項6】
前記段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む前記固体は、酸化ケイ素によって構成された少なくとも1種の構造上にアルミニウムを含有する溶液を含浸させることによって得られる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項7】
前記段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む前記固体は、酸化ケイ素によって構成された前記構造内に均一に分配されたアルミニウムを有する、請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
前記段階1)の実施のために用いられる少なくとも1種の酸化ケイ素および少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む前記固体は、前記構造の外表面上に担持させられたアルミニウムを有する、請求項6に記載の調製方法。
【請求項9】
前記多孔質複合材料は、0.5未満のアルミニウム分配係数を有する、請求項8に記載の調製方法。
【請求項10】
前記多孔質複合材料は、酸化ケイ素によって構成された前記構造の巨視的形態と同一の巨視的形態である、請求項6〜9のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項11】
前記第4級ジアンモニウムカチオンQは、nが6に等しく、R、R、R、R、RおよびRがメチル基である式を有する、請求項1〜10のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項12】
前記段階1)による含浸の各段階に次いで、200℃以下の温度での乾燥が行われる、請求項1〜11のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項13】
前記段階1)の終了時に、固体は、
SiO/Al :少なくとも10、
OH/SiO :0.1〜6.0、
(M+Q)/Al :0.5〜100(Mはアルカリ金属およびアンモニウムから選ばれる1価カチオンを示す)、
Q/(M+Q) :0.1〜1、
O/SiO :0〜20
のモル組成を有する、請求項1〜12のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項14】
前記水熱処理は、180℃の温度で、100mLオートクレーブにおいて行われ、オートクレーブの底部に導入され、直接的には固体と接触しない水の量は、少なくとも4mLに等しい、請求項1〜13のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項15】
合成は、EU−1ゼオライトへの転化率が15重量%以下である時に停止させられる、請求項1〜14のいずれか1つに記載の調製方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1つに記載の方法に従って調製された前記多孔質複合材料に、元素周期律表第VIII族の少なくとも1種の金属を含浸させることを含む少なくとも1回の段階を包含する触媒の調製方法。
【請求項17】
前記第VIII族金属(単数種または複数種)は、乾式による含浸によって担持させられる、請求項16に記載の触媒の調製方法。
【請求項18】
0.5〜10時間の期間にわたる250〜600℃の焼成の段階を含む、請求項16または17に記載の触媒の調製方法。
【請求項19】
1分子当たり8個の炭素原子を有する少なくとも1種の芳香族化合物を含有するフラクションの異性化方法であって、前記芳香族フラクションを、請求項16〜18のいずれか1つに記載の方法に従って調製され、触媒反応器中に存在する少なくとも前記触媒と接触させる工程を包含する方法。
【請求項20】
温度:300〜500℃、水素分圧:0.3〜1.5MPa、全圧:0.45〜1.9MPa、毎時の触媒の重量(kg)当たりの導入される装入材料の重量(kg)で表される原料空間速度:0.25〜30h−1の操作条件下に実施される、請求項19に記載の異性化方法。

【公開番号】特開2009−62270(P2009−62270A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226540(P2008−226540)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】