説明

FM−CWレーダ装置、ペアリング方法

【課題】目標物に対するペアリングを短期間で精度良く行うことを可能とするFM−CWレーダ装置、ペアリング方法を提供すること。
【解決手段】電圧制御発振器11の制御電圧VCONTの算出方法を周波数上昇区間と周波数下降区間とで異なるように制御し、送信波と受信波を混合して得られたビート信号の周波数成分を算出し、周波数上昇区間におけるビート信号の周波数成分と、周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分とのペアリングを行い、ペアとなった成分同士の信号レベルの差が所定値以下である周波数成分のペアを、目標物(ターゲット)に対応する正しいペアとして特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FMCWレーダ装置におけるペアリング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両内あるいは固定の公共設備等に搭載され、目標物(例えば前方の車両)との間の距離および対象物の速度を算出するFM−CW(Frequency Modulated-Continuous Wave)レーダ装置が知られている。FM−CWレーダ装置によって目標物との間の距離および目標物の速度を算出する方法は概ね、以下のとおりである。
すなわち、FM−CWレーダ装置は、周波数上昇区間と周波数下降区間を含むように周波数変調(FM変調)された送信波を、目標物(ターゲット)に対して送信し、目標物から反射された波を受信波として受信する。周波数変調における変調信号は、代表的には三角波であるが、鋸波、台形波等の三角波以外の信号でもよい。FM−CWレーダ装置は、送信波と、目標物からの反射により得られる受信波とのビート信号を取得するとともに、このビート信号を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を施して周波数分析を行う。周波数分析されたビート信号は強度が大きくなるピークが生じるが、このピークに対応するピーク周波数は、目標物の距離に関する情報を有する。FM−CWレーダ装置と目標物との間に相対速度が存在する場合には、その相対速度によるドップラ効果のために周波数上昇区間と周波数下降区間とでビート信号のピーク周波数が異なるため、そのピーク周波数差から目標物との距離及び相対速度が得られる。目標物が複数存在する場合は、各目標物に対して一対の周波数上昇区間と周波数下降区間のピーク周波数が生じるが、この周波数上昇区間と周波数下降区間の一対のピーク周波数を組み合わせることをペアリングという。
【0003】
一例として、FM−CWレーダ装置と目標物との間に相対速度が存在しない場合におけるピーク周波数の算出方法について、図1に示す。図1では変調信号が三角波の場合について示している。FM−CWレーダ装置は、図1(a)のとおり周波数が変化する送信波を目標物に向かって送信し、目標物から反射された波を受信波として受信する。このとき、受信波は、送信波と同様に周波数変調された信号であるが、FMCWレーダ装置と目標物との間を電磁波が往復する時間(τ)だけ遅れが生ずる。そのため、周波数上昇区間と周波数下降区間とで、それぞれ周波数差FupとFdownが生ずる。FM−CWレーダ装置と目標物との間に相対速度が存在しない場合には、図1(b)に示すように、この周波数差FupとFdownがビート信号の同一のピーク周波数(ターゲット成分)となる。このとき、目標物までの距離は、α×(Fup+Fdown)/2(α:定数)の式によって得られる。
一方、図1には図示していないが、FM−CWレーダ装置と目標物との間に相対速度が存在する場合には、周波数上昇区間における周波数差Fupと、周波数下降区間における周波数差Fdownとが異なり、目標物の相対速度は、β×(Fup−Fdown)/2(β:定数)の式によって得られる。なお、上記α、βは、送信波の電波伝搬速度(光速)、中心周波数、変調周波数幅等によって定まる値である。
【0004】
ところで、かかるFM−CWレーダ装置では、目標物との間の距離、目標物の相対速度を精度良く算出するためには、送信波の周波数変化が高い線形性を備えていることが好ましい。この点について、図2を参照して説明すると、以下のとおりである。図2は、図1と同様の図であるが、図1の(a)では周波数変化が完全に線形であるのに対し、図2の(a)では送信波の周波数変化が十分に線形でない場合が想定されている。図2に示す場合には、ビート信号を取得するタイミングに応じてビート信号の周波数が異なる。そのため、図2(b)に示すように、ビート信号のスペクトル分布では、図1(b)と異なり、複数の周波数成分(Fup1とFdown1,Fup2とFdown2,Fup3とFdown3)の組合せが存在する。このため、目標物に対応した適切なペア(Fup1とFdown1)のみをスペクトル分布から抽出できず、誤った組合せでペアリング(ミスペアリング)を行う場合が生じうる。図2では単一の目標物を想定しているが、複数の目標物が存在する場合には尚更である。
【0005】
そこで、従来、送信波の周波数変化が高い線形性を備える、あるいはミスペアリングを防止することを目的としたFMCWレーダ装置が知られている。
例えば、ビート信号のサンプリングデータを得て、このサンプリングデータに対し、複数の部分区間でFFT処理を行い、複数の部分区間に対するビート周波数を抽出し、抽出されたビート周波数から非線形歪みを数値化し、これによって線形性を補償するようにしたFM−CWレーダ装置が知られている。
また、変調信号を切り替える手段と、変調信号の切り替え前と切り替え後について、あるペアリングにて算出された目標物との距離または相対速度を比較する手段とを備え、変調信号の切り替え前と切り替え後で、目標物との距離または相対速度が異なることを検出したときのペアリングをミスペアリングとするようにしたFM−CWレーダ装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−174548号公報
【特許文献2】特開2002−236170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非線形歪みを数値化した従来のFM−CWレーダ装置では、多項式モデルの係数を算出することによって非線形歪みを補償するための逆特性を求めている。しかしながら、近年、測定すべき距離または相対速度の分解能を向上させるために、送信波の帯域幅(周波数変化の幅)を広くすることが行われている。そのため、広い帯域幅で高精度にモデル化を行うことは、D/A(Digital to Analogue)変換器の能力上困難となっている。
【0008】
一方、変調信号の切り替え前と切り替え後で目標物との距離または相対速度が異なることを検出する従来のFM−CWレーダ装置では、変調信号の切り替え前と切り替え後とで少なくとも2回のビート信号のピーク検出処理を要し、時間が掛かる。このようなFM−CWレーダ装置は、測定すべき相対速度が比較的低い用途(例えば、FMCWレーダ装置を車載し、前方車両との衝突を防止する用途)には適用可能かも知れない。しかしながら、測定すべき相対速度が比較的高い用途(例えば、FMCWレーダ装置が固定の公共設備等に搭載され、車両の絶対速度を測定する用途)には適用が困難な場合が生じうる。変調信号の切り替え前後の2回のビート信号のピーク検出処理が完了する前に、目標物が測定不可能となる場所まで移動することが考えられるためである。
【0009】
よって、発明の1つの側面では、目標物に対するペアリングを短期間で精度良く行うことを可能とするFM−CWレーダ装置、ペアリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の観点では、周波数上昇区間と周波数下降区間を含むように周波数変調された送信波を、目標物に対して送信し、当該目標物からの反射波を受信波として受信するFM−CWレーダ装置が提供される。
このFM−CWレーダ装置は、
制御電圧に基づいて送信波の周波数を変化させる電圧制御発振器;
上記制御電圧の算出方法を、周波数上昇区間と周波数下降区間とで異なるように制御する第1制御部;
送信波と受信波を混合してビート信号を生成するミキサ;
周波数上昇区間と周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分を算出する周波数成分算出部;
周波数上昇区間におけるビート信号の周波数成分と、周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分とのペアリングを行い、ペアとなった成分同士の信号レベルの差が所定値以下である周波数成分のペアを、目標物に対応する正しいペアとして特定する第2制御部;
を備える。
【0011】
第2の観点では、周波数上昇区間と周波数下降区間を含むように周波数変調された送信波を、目標物に対して送信し、当該目標物からの反射波を受信波として受信するFM−CWレーダ装置におけるペアリング方法が提供される。
このペアリング方法は、
電圧制御発振器の制御電圧に基づいて送信波の周波数を変化させること;
上記制御電圧の算出方法を、周波数上昇区間と周波数下降区間とで異なるように制御すること;
送信波と受信波を混合してビート信号を生成すること;
周波数上昇区間と周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分を算出すること;
周波数上昇区間におけるビート信号の周波数成分と、周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分とのペアリングを行い、ペアとなった成分同士の信号レベルの差が所定値以下である周波数成分のペアを、目標物に対応する正しいペアとして特定すること;
を含む。
【発明の効果】
【0012】
開示のFM−CWレーダ装置、ペアリング方法によれば、目標物に対するペアリングを短期間で精度良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来のFM−CWレーダ装置において目標物との間に相対速度が存在しない場合におけるピーク周波数の算出方法を示す図。
【図2】従来のFM−CWレーダ装置において送信波の周波数変化が十分に線形でない場合のピーク周波数の出現態様を示す図。
【図3】実施形態のFM−CWレーダ装置におけるペアリング方法を説明するための図。
【図4】実施形態のFM−CWレーダ装置の構成を示すブロック図。
【図5】実施形態のFM−CWレーダ装置の制御部の詳細構成を示すブロック図。
【図6】実施形態のFM−CWレーダ装置の動作を示すフローチャート。
【図7】送信波のUP区間とDOWN区間とで電圧制御発振器の制御電圧の算出方法が同一である場合の周波数上昇区間(点線)と周波数下降区間(実線)において、目標物との距離と、ビート信号の電圧との関係を示す図(図8に対する参考図)。
【図8】実施形態において周波数上昇区間(点線)と周波数下降区間(実線)において、目標物との距離と、ビート信号の電圧との関係を示す図。
【図9】実施形態の変形例に係るFM−CWレーダ装置の制御部の詳細構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係るFM−CWレーダ装置1について説明する。
【0015】
(1)本実施形態のFM−CWレーダ装置におけるペアリング方法の概要
先ず、図3を参照して、本実施形態のFM−CWレーダ装置1におけるペアリング方法の概要について説明する。図3は、実施形態のFM−CWレーダ装置1におけるペアリング方法を説明するための図であり、図1および図2と同様の態様の図である。なお、本実施形態の説明では、変調信号は、図3に示すように三角波とするが、鋸波、台形波等の三角波以外の信号でもよい。
図3(a)では、図2(a)同様、送信波の周波数変化が十分に線形でない場合が想定されている。このとき、送信波と受信波の周波数差が、ビート信号の周波数である。このとき、送信波と受信波の周波数変化は共に時間の経過に対して線形の変化ではないため、図3(a)に示すように、ビート信号を取得するタイミングに応じてビート信号の周波数が異なり、例えば、複数の周波数成分の組合せ(Fup1とFdown1,Fup2とFdown2,Fup3とFdown3)が存在する。
【0016】
本実施形態のFM−CWレーダ装置1では、図3(a)に示すように送信波および受信波の周波数変化が線形でない場合であっても、短期間で精度良く目標物に対応する周波数成分(ターゲット成分;正しいペアリング)を特定することを意図している。そのため、本実施形態のFM−CWレーダ装置1では、周波数が三角波状に変化する送信波を生成するための電圧制御発振器の制御電圧の算出方法を、送信波の周波数上昇区間(以下、適宜「UP区間」という。)と周波数下降区間(以下、適宜「DOWN区間」という。)とで異なるように制御する。つまり、FM−CWレーダ装置1では、電圧制御発振器の非線形性を補償するための制御電圧の算出方法として少なくとも2通りの方法が実装されており、適用する方法を送信波のUP区間とDOWN区間とで切り替えるようにする。
2通りの制御電圧の算出方法として、例えば、以下で述べる検索方式および近似方式による制御電圧の算出方法を適用してもよい。
【0017】
検索方式による制御電圧の算出方法とは、予め電圧制御発振器の電圧−周波数特性(VF特性)を測定しておき、このVF特性を参照して、電圧制御発振器の目標の出力周波数(目標周波数)を得るために電圧制御発振器に与える制御電圧を算出する方法である。この方法では、時刻の経過とともに電圧制御発振器が出力すべき目標周波数が得られるように、予め測定した電圧制御発振器のVF特性を参照する。このとき、測定済みのVF特性は、電圧と周波数が対応付けられたVFテーブルとしてメモリに格納される。VFテーブルの測定ポイント数は、メモリの容量にもよるが例えば数10ポイントであり、ポイント間の電圧は隣接するポイントの電圧の値を補完して算出する。
【0018】
近似方式による制御電圧の算出方法とは、所定の観測区間に含まれる複数の部分区間で得られたビート信号のピーク周波数に基づいて電圧制御発振器のVF特性の近似式(例えば2次あるいは3次の近似式)を得る方法である。この方法では、理想的な三角波の信号に対して予め電圧制御発振器のVF特性の近似式の逆特性の歪みを与えたものを、電圧制御発振器に与える制御電圧とすることで、等価的に電圧制御発振器の線形性を得るようにする。なお、近似方式の詳細については、例えば特開2001−174548号公報を参照されたい。
【0019】
本実施形態では主として、FM−CWレーダ装置1の電圧制御発振器の制御電圧の算出方法として、検索方式による制御電圧の算出方法と、近似方式による制御電圧の算出方法とを採る場合について説明するが、これに限られない。その他、次数が異なる近似式を用いた近似方式による制御電圧の算出方法を、送信波のUP区間とDOWN区間とで切り替えるようにしてもよい。
【0020】
上述したように、本実施形態では、FM−CWレーダ装置1の送信波を生成するための電圧制御発振器の制御電圧の算出方法を、送信波の周波数上昇区間と周波数下降区間とで異なるようにしている。その結果、図3(b)に示すように、ビート信号のスペクトル分布を算出すると、目標物に対応したピーク周波数(ターゲット成分)のUP区間とDOWN区間のペア(Fup1とFdown1)の電力レベル(または電圧レベル)にはほとんど差がない。一方、ターゲット成分以外のUP区間とDOWN区間のペア(Fup2とFdown2,Fup3とFdown3)では、電力レベル(または電圧レベル)に差が生ずるようになる。
これは、以下の理由による。すなわち、送信波のUP区間とDOWN区間とで電圧制御発振器の制御電圧の算出方法を異なるようにしているものの、その目的は電圧制御発振器の非線形性を補償するという点で共通している。そのため、ビート信号の電力レベルが最大となるターゲット成分ではレベルに差が出にくい一方で、ターゲット成分以外の成分は電圧制御発振器が仮に線形であれば出現し得ない虚像成分であるため、算出方法の違いによる影響を受けやすくレベル差が顕著に現れるためである。
【0021】
(2)FM−CWレーダ装置の構成
次に、本実施形態のFM−CWレーダ装置1の構成について、図4および図5を参照して説明する。図4は、本実施形態のFM−CWレーダ装置1の構成を示すブロック図である。図5は、本実施形態のFM−CWレーダ装置1の制御部の詳細構成を示すブロック図である。なお、図4では、アンテナから出射するビームの指向性を制御するためにアンテナを回動させるための機械的走査機構、あるいは機械的機構を用いずにビームの指向性を電気的に変化させる電気的走査機構等は省略してある。以下では、アンテナのビームが目標物(ターゲット)に向けて出射するようにアンテナが適切に位置決めされていることを前提に説明する。また、図5では、FM−CWレーダ装置1が上位システムと通信を行うための通信インタフェースは省略してある。
【0022】
図4を参照すると、FM−CWレーダ装置1は、電圧制御発振器(VCO:voltage controlled oscillator)11、方向性結合器12、増幅器13、アンテナ14、増幅器15、ミキサ16、フィルタ(BPF)17、A/D変換器18、FFT処理部19、制御部20、およびVFテーブル記憶部21を備える。
【0023】
電圧制御発振器11は、制御部20から与えられる制御電圧VCONTに基づいて送信波の周波数を変化させる。FM−CWレーダ装置1の送信波は、国内では例えば60GHz,76GHz等の周波数帯が使用されるが、電圧制御発振器11は、システム上規定される周波数帯の周波数変調された送信波を生成する。電圧制御発振器(VCO)11は、例えばMESFETおよびバラクタダイオードによって構成され、図4ではその出力周波数(周波数変調された出力信号)をfOUTとしているが、この出力周波数fOUTを送信波の周波数と一致させるようにしてもよいし、図示しない後段の逓倍回路によって最終的に送信波の周波数を得るようにしてもよい。例えば、76GHz帯の送信波周波数を得るために、38GHz帯のVCO出力を76GHz帯へ変換するための2逓倍回路を設けてもよい。
電圧制御発振器11自体の電圧−周波数特性(VF特性)は完全に線形にならないため、本実施形態のFM−CWレーダ装置1では、その非線形歪を補償するための制御電圧VCONTが制御部20において設定される。
【0024】
電圧制御発振器11の送信波は、方向性結合器12を介してミキサ16へ与えられるとともに増幅器13へ送出される。
アンテナ14は、例えば平面アンテナで構成され、増幅器13によって所定のレベルまで増幅された送信波を目標物に向けて送信する。アンテナ14はさらに、目標物(ターゲット)からの反射波を受信波として受信する。この受信波は増幅器15において所定のレベルまで増幅される。
【0025】
ミキサ16は、方向性結合器12から得られる送信波と、増幅器15から得られる受信波とを混合して、送信波と受信波の周波数差に等しい周波数のビート信号を生成する。フィルタ17は、ミキサ16により生成されたビート信号について、ビート信号として予定されている周波数範囲の成分のみを通過させ、それ以外の成分に含まれるノイズを除去するバンドパスフィルタ(BPF)である。フィルタ17を通過したビート信号は、デジタル信号に変換されてFFT処理部19へ送出される。
FFT処理部19は、ビート信号に対してFFT処理を施し、ビート信号の周波数成分(スペクトル分布)の分析結果(FFTデータ)を算出する。FFT処理部19は、周波数成分算出部の一例である。
【0026】
VFテーブル記憶部21は、例えば不揮発性のメモリで構成され、電圧制御発振器11の電圧−周波数特性(VF特性;特性データ)を予め測定して取得したVFテーブルを格納する。VFテーブルでは、電圧制御発振器11に対する制御電圧と出力周波数とが対応付けられており、VFテーブル記憶部21の記憶容量にもよるが、例えば数10ポイントのデータからなる。
【0027】
図5に示すように、制御部20は、第1電圧算出部201、第2電圧算出部202、タイミング制御部203、非線形歪補償部204、ペアリング処理部205、および距離・速度算出部206を備える。制御部20は、マイクロコントローラおよびデジタル回路を主体として構成される。
【0028】
制御部20は、電圧制御発振器11の制御電圧VCONTの算出方法を、送信波の周波数上昇区間(UP区間)と周波数下降区間(DOWN区間)とで異なるように制御するために、第1電圧算出部201と第2電圧算出部202を備える。第1電圧算出部201と第2電圧算出部202はそれぞれ、電圧制御発振器の非線形性を補償するための制御電圧の算出方法が異なる。ここでは、第1電圧算出部201は、VFテーブル記憶部21内のVFテーブルを参照して、前述した検索方式による制御電圧の算出方法を採る。第2電圧算出部202は、FFT処理部19からフィードバックされるビート信号の周波数成分の算出結果に基づき、前述した近似方式による制御電圧の算出方法を採る。
【0029】
より具体的には、第1電圧算出部201は、時間の経過とともに周波数が線形に変化する送信波が生成されるように電圧制御発振器11が逐次出力すべき周波数を基準にして、その周波数が得られるような制御電圧をVFテーブルを参照して算出する。このとき、予めVFテーブルに含まれるポイント数は有限であるため、電圧制御発振器11が出力すべき周波数がVFテーブル内の2ポイントの周波数の間の周波数である場合には、その2ポイントの周波数に対応する電圧値を補間して制御電圧を算出する。以上のようにして得られる電圧が図5のV1である。
【0030】
一方、第2電圧算出部202は、電圧制御発振器11の非線形歪みを補償するための電圧制御発振器11の近似式(例えば2次あるいは3次の近似式)を算出し、理想的な三角波の信号に対して予め電圧制御発振器のVF特性の近似式の逆特性の歪みを与えたものを、電圧制御発振器11に対する制御電圧V2として算出する。近似式の算出方法は、特に問わないが、前述した特開2001−174548号公報に記載された方法を採るとすれば、以下のとおりとなる。非線形歪補償部204は、例えば、UP区間およびDOWN区間の各々に含まれる観測区間内の複数の部分区間を対象として、ビート信号のピーク周波数成分(FFTデータ)をFFT処理部19から取得する。非線形歪補償部204は、各部分区間で得られるビート信号のピーク周波数が電圧制御発振器11のVF特性の微分に比例することを利用して、電圧制御発振器11のVF特性の近似式を算出する。例えば3次の近似式をf=av+bv+cv+dとすると、その微分はf’=3av+2bv+cであり、各部分区間で得られるビート信号のピーク周波数を2次回帰分析することで、係数a,b,cを算出する。3次式の係数dは任意の1点の測定値から求めることができる。非線形歪補償部204は、近似式の係数を算出して第2電圧算出部202へ与える。
第2電圧算出部202は、非線形歪補償部204から与えられた係数に基づく電圧制御発振器11の近似式の逆特性を算出し、この逆特性を理想的な三角波の信号に与えた信号電圧をV2として出力する。これにより、電圧V2が制御電圧として与えられると、電圧制御発振器11の出力周波数は、電圧制御発振器11の非線形性が等価的にキャンセルされたものとなる。
【0031】
タイミング制御部203は、第1電圧算出部201により算出される電圧V1と、第2電圧算出部202により算出される電圧V2のいずれかの電圧の選択を、送信波のUP区間とDOWN区間とで切り替えて、電圧制御発振器11に対する制御電圧VCONTとする。例えば、タイミング制御部203は、送信波のUP区間ではVCONT=V1としてDOWN区間ではVCONT=V2とするか、あるいは送信波のUP区間ではVCONT=V2としてDOWN区間ではVCONT=V1とする。タイミング制御部203は、第1制御部の一例である。
【0032】
ペアリング処理部205は、FFT処理部19から取得するビート信号の周波数成分(FFTデータ)に基づいて、UP区間で得られるビート信号のピーク周波数と、DOWN区間で得られるビート信号のピーク周波数とのペアリングを行い、目標物に対応するターゲット成分を特定する。距離・速度算出部206は、ペアリング処理部205のペアリング結果に基づいて、目標物の距離および相対速度を算出する。なお、ペアリング処理部205は、第2制御部の一例である。
【0033】
ペアリング処理部205で実装されるペアリングのアルゴリズムについては、如何なるアルゴリズムを適用することも可能である。例えば、目標物が静止しており相対速度がゼロである場合には、UP区間とDOWN区間とで対応するピーク周波数は同一となるため、ペアリング処理部205は、FFT処理部19で算出されるビート信号の周波数成分のうち、ピーク周波数が同一となるペアを組み合わせる。このとき、第1電圧算出部201あるいはタイミング制御部203によって生成される電圧(V1,V2)によっても電圧制御発振器11の非線形性は完全には解消されないため、その非線形性に起因して、目標物に対応する周波数成分であるターゲット成分以外の複数のピーク周波数の成分(虚像成分)が出現する。ペアリング処理部205は、図3(b)に示したように、ターゲット成分および虚像成分を含むすべての周波数成分のペアを組み合わせる。
【0034】
なお、目標物が移動している場合等、相対速度がゼロでない場合には、UP区間とDOWN区間とで対応するピーク周波数が異なるためにペアリング処理はより困難となるが、本実施形態の説明では、ペアリングのアルゴリズム自体については深く言及しない。ペアリングのアルゴリズム自体は如何なるものを適用してもよいが、公知のペアリングの詳細については、例えば特開2008−111779号公報を参照されたい。
【0035】
ペアリング処理部205は、複数のペアの組合せを決定すると、各ペアについて、信号レベル(つまり、ビート信号の電力または電圧)の差をとり、その差が所定値以下であるペアを、目標物に対応した正しいペア(ターゲット成分)として特定する。前述したように、本実施形態のFM−CWレーダ装置1では、送信波のUP区間とDOWN区間とで電圧制御発振器11の制御電圧の算出方法を異なるようにしているため、ターゲット成分以外では信号レベル差が顕著に現れるようになっている。そのため、各ペアについて信号レベルの差が大きいものはターゲット成分から除外できる。
【0036】
距離・速度算出部206は、ペアリング処理部205により特定されたターゲット成分の周波数に基づいて、目標物の距離および相対速度を算出する。すなわち、特定されたターゲット成分のペアのうち、UP区間のピーク周波数をFupとし、DOWN区間のピーク周波数をFdownとした場合、距離・速度算出部206は、前記したように、目標物までの距離を、α×(Fup+Fdown)/2(α:定数)の式によって算出する。また、距離・速度算出部206は、目標物の相対速度を、β×(Fup−Fdown)/2(β:定数)の式によって算出する。なお、α、βは、送信波の電波伝搬速度(光速)、中心周波数、変調周波数幅等によって定まる値である。
【0037】
(3)FM−CWレーダ装置の動作
次に、本実施形態のFM−CWレーダ装置1の動作について、図6を参照して説明する。図6は、FM−CWレーダ装置1の動作を示すフローチャートであり、主としてFM−CWレーダ装置1の制御部20内で実行される。
【0038】
FM−CWレーダ装置1の制御部20において、送信波の周波数上昇区間(UP区間)と周波数下降区間(DOWN区間)とで異なる方法で電圧制御発振器11の制御電圧を算出する(ステップS10)。つまり、第1電圧算出部201は、VFテーブル記憶部21内のVFテーブルを参照して、検索方式による制御電圧の算出方法によって、電圧制御発振器11へ与える電圧V1を算出する。第2電圧算出部202は、FFT処理部19からフィードバックされるビート信号の周波数成分の算出結果に基づき、近似方式による制御電圧の算出方法によって、電圧制御発振器11へ与える電圧V2を算出する。タイミング制御部203は、電圧制御発振器11へ与える制御電圧として、電圧V1と電圧V2のいずれかの電圧の選択を、送信波のUP区間およびDOWN区間の各々の区間ごとに切り替える。
【0039】
そして、定期的な内部の測定開始指示、あるいは上位のシステムからの測定開始指示に応じて、目標物に対する距離および相対速度の測定の処理が開始される(ステップS12)。FM−CWレーダ装置1は、測定開始指示を契機として、送信波を目標物に対して送信し、目標物から反射された波を受信波として受信する。そして、FFT処理部19は、送信波と受信波により得られるビート信号の周波数成分の分析結果(FFTデータ)を算出する(ステップS14)。
【0040】
ビート信号のFFTデータが算出されると、ペアリング処理部205がUP区間とDOWN区間の複数のピーク周波数についてペアリングを行う。このとき、ペアリング処理部205は、各ペアについて、ビート信号の信号レベルの差をとり、その差が所定値以下であるか否か判定する(ステップS16)。ステップS16がYesであれば、ビート信号の信号レベルの差が所定値以下であるペアをターゲット成分(正しいペア)として特定し、距離・速度算出部206は、特定されたペアに基づいて、目標物の距離および相対速度を算出する(ステップS18)。信号レベルによる判定は、すべてのペアについて完了するまで行われる(ステップS20)。定期的な内部の測定停止指示、あるいは上位のシステムからの測定停止指示がなければ(ステップS22のNo)、再度送信波を送信して受信波を取得し、新たなビート信号についてFFTデータを取得して、ステップS16〜S20の処理を繰り返す。
【0041】
以上説明したように、本実施形態のFM−CWレーダ装置1によれば、送信波のUP区間とDOWN区間とで電圧制御発振器11の制御電圧の算出方法を異なるようにしているため、ターゲット成分以外では信号レベル差が顕著に現れるようになる。そのため、各ペアについて信号レベルの差が大きいものはターゲット成分から除外でき、ターゲット成分を精度良く特定することができるようになる。また、このターゲット成分の特定は、ビート信号の1回分(1度のUP区間およびDOWN区間の送信波および受信波により得られるビート信号)に相当するFFTデータで行うことができ、短期間で可能である。
【0042】
以下、図7および図8を参照して、本実施形態のFM−CWレーダ装置1の効果について説明する。
図7は、図8と比較するための参考例であり、送信波のUP区間とDOWN区間とで電圧制御発振器の制御電圧の算出方法が同一である場合(ともに近似方式で算出した場合)において、UP区間(点線)とDOWN区間(実線)を基礎として算出した目標物との距離と、ビート信号の電圧との関係を示す図である。図8は、図7と同一の条件で、本実施形態のFM−CWレーダ装置1の構成による場合(つまり、電圧制御発振器の制御電圧の算出方法が異なる場合)において、UP区間(点線)とDOWN区間(実線)を基礎として算出した目標物との距離と、ビート信号の電圧との関係を示す図である。図8では、電圧制御発振器の制御電圧の算出方法についてUP区間を検索方式、DOWN区間を近似方式としている。図7、図8共に、静止した単一の目標物に対する測定結果を示している。
目標物との距離とビート信号の周波数は比例関係にあるため、図7および図8は等価的に、横軸を周波数として見たときの、UP区間(点線)とDOWN区間(実線)におけるビート信号のFFT結果(スペクトル分布)として見ることもできる。
【0043】
図7の場合には、UP区間とDOWN区間とでスペクトル分布が類似しており、ビート信号の主要なピーク周波数に相当する距離であるp1〜p5において、ほぼ同一の信号レベルとなっている。一方、図8の場合には、UP区間とDOWN区間とでスペクトル分布が異なっている。図8において、主要なピークについて比較すると、ターゲット成分に相当するp3ではUP区間とDOWN区間とで信号レベルが同一であるのに対して、ターゲット成分以外の虚像成分ではUP区間とDOWN区間とで信号レベルに大きな差異がある。この差異は、前述したように、送信波のUP区間とDOWN区間とで電圧制御発振器の制御電圧の算出方法を異なるようにしている場合には、その算出方法に起因した虚像成分の出現態様が算出方法に応じて異なることに起因する。また、図8では、異なる算出方法であっても、ビート信号の電力レベルが最大となるターゲット成分ではUP区間とDOWN区間とで信号レベルに差が出にくくなっている。
【0044】
よって、例えば図8に示したようなデータを得た本実施例のFM−CWレーダ装置1では、以下のとおりターゲット成分(この場合は、p3)を特定することができる。すなわち、FM−CWレーダ装置1は先ず、10〜20dBmV程度を下限とする閾値を設け、p1〜p5のペアを抽出する。その後、抽出されたp1〜p5の各ペアについて信号レベルの差をとり、その差が所定値以下であるか否か判定する(図6のステップS16)。この判定によって、p3がターゲット成分(目標物に対応した正しいペア)であると特定することができる。
【0045】
なお、図7では、例えば30dBmV程度を下限とする閾値を設けることで、ターゲット成分p3を特定できそうに見えるが、実際には、この閾値を大きく設定することは困難である。図7は単一の目標物の場合のデータであるが、複数の目標物が存在する場合には、閾値を大きく設定してしまうと、p3以外のターゲット成分を除去する可能性が高くなってしまうためである。一方、本実施形態のFM−CWレーダ装置1では、UP区間とDOWN区間とで信号レベルに差が生ずるため、ターゲット成分を検出するときに信号レベルの絶対値のみに依存しなくて済む。すなわち、ペアのレベル差を判別する手段を採ることによって図8の結果に対するピーク検出の閾値を上げずに済む。そのため、複数の目標物が存在する場合にも各目標物のターゲット成分を精度良く特定することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明のFM−CWレーダ装置、ペアリング方法は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
【0047】
例えば、上述した実施形態とは異なり、次数が異なる近似式を用いた近似方式による制御電圧の算出方法を、送信波のUP区間とDOWN区間とで切り替えるようにする場合には、FM−CWレーダ装置の構成を、図9に示したようにすればよい。図9では、第2電圧算出部202は、上述した実施形態と同様に電圧制御発振器11のVF特性を3次の近似式をf=av+bv+cv+dでモデル化するが、第1電圧算出部201は、VFテーブルを参照せずに電圧制御発振器11のVF特性を2次の近似式をf=ev+fv+gでモデル化する。このとき、近似式の係数e,f,gは、非線形歪補償部204で算出される。上記2次の近似式の微分はf’=2ev+fであり、各部分区間で得られるビート信号のピーク周波数を1次回帰分析することで、係数e,fを算出する。2次式の係数gは任意の1点の測定値から求めることができる。
【0048】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0049】
(付記1)
周波数上昇区間と周波数下降区間を含むように周波数変調された送信波を、目標物に対して送信し、当該目標物からの反射波を受信波として受信するFM−CWレーダ装置であって、
制御電圧に基づいて送信波の周波数を変化させる電圧制御発振器と、
前記制御電圧の算出方法を、周波数上昇区間と周波数下降区間とで異なるように制御する第1制御部と、
送信波と受信波を混合してビート信号を生成するミキサと、
周波数上昇区間と周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分を算出する周波数成分算出部と、
周波数上昇区間におけるビート信号の周波数成分と、周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分とのペアリングを行い、ペアとなった成分同士の信号レベルの差が所定値以下である周波数成分のペアを、目標物に対応する正しいペアとして特定する第2制御部と、
を備えた、FM−CWレーダ装置。
【0050】
(付記2)
前記電圧制御発振器の制御電圧と出力周波数との関係を示す特性データを記憶する記憶部、をさらに備え、
前記第1制御部は、
前記特性データを参照することによって、目標周波数を得るための電圧制御発振器の制御電圧を算出する第1の算出方法を、周波数上昇区間および周波数下降区間の一方で用い、
電圧制御発振器の制御電圧と出力周波数の非線形歪みを、制御電圧と出力周波数の近似式で補償することによって、目標周波数を得るための電圧制御発振器の制御電圧を算出する第2の算出方法を、周波数上昇区間および周波数下降区間の他方で用いる、
付記1に記載された、FM−CWレーダ装置。
【0051】
(付記3)
前記第1制御部は、
電圧制御発振器の制御電圧と出力周波数の非線形歪みを、制御電圧と出力周波数の第1の次数の近似式で補償することによって、目標周波数を得るための電圧制御発振器の制御電圧を算出する第1の算出方法を、周波数上昇区間および周波数下降区間の一方で用い、
電圧制御発振器の制御電圧と出力周波数の非線形歪みを、制御電圧と出力周波数の第2の次数の近似式で補償することによって、目標周波数を得るための電圧制御発振器の制御電圧を算出する第2の算出方法を、周波数上昇区間および周波数下降区間の他方で用いる、
付記1に記載された、FM−CWレーダ装置。
【0052】
(付記4)
周波数上昇区間と周波数下降区間を含むように周波数変調された送信波を、目標物に対して送信し、当該目標物からの反射波を受信波として受信するFM−CWレーダ装置におけるペアリング方法であって、
電圧制御発振器の制御電圧に基づいて送信波の周波数を変化させ、
前記制御電圧の算出方法を、周波数上昇区間と周波数下降区間とで異なるように制御し、
送信波と受信波を混合してビート信号を生成し、
周波数上昇区間と周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分を算出し、
周波数上昇区間におけるビート信号の周波数成分と、周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分とのペアリングを行い、ペアとなった成分同士の信号レベルの差が所定値以下である周波数成分のペアを、目標物に対応する正しいペアとして特定する、
ことを含む、ペアリング方法。
【0053】
(付記5)
前記電圧制御発振器の制御電圧と出力周波数との関係を示す特性データを記憶すること、をさらに含み、
前記制御することは、
前記特性データを参照することによって、目標周波数を得るための電圧制御発振器の制御電圧を算出する第1の算出方法を、周波数上昇区間および周波数下降区間の一方で用い、
電圧制御発振器の制御電圧と出力周波数の非線形歪みを、制御電圧と出力周波数の近似式で補償することによって、目標周波数を得るための電圧制御発振器の制御電圧を算出する第2の算出方法を、周波数上昇区間および周波数下降区間の他方で用いること、を含む、
付記4に記載された、ペアリング方法。
【0054】
(付記6)
前記制御することは、
電圧制御発振器の制御電圧と出力周波数の非線形歪みを、制御電圧と出力周波数の第1の次数の近似式で補償することによって、目標周波数を得るための電圧制御発振器の制御電圧を算出する第1の算出方法を、周波数上昇区間および周波数下降区間の一方で用い、
電圧制御発振器の制御電圧と出力周波数の非線形歪みを、制御電圧と出力周波数の第2の次数の近似式で補償することによって、目標周波数を得るための電圧制御発振器の制御電圧を算出する第2の算出方法を、周波数上昇区間および周波数下降区間の他方で用いること、を含む、
付記4に記載された、ペアリング方法。
【符号の説明】
【0055】
11…電圧制御発振器
12…方向性結合器
13…増幅器
14…アンテナ
15…増幅器
16…ミキサ
17…フィルタ
18…A/D変換器
19…FFT処理部
20…制御部
201…第1電圧算出部
202…第2電圧算出部
203…タイミング制御部
204…非線形歪補償部
205…ペアリング処理部
206…距離・速度算出部
21…VFテーブル記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数上昇区間と周波数下降区間を含むように周波数変調された送信波を、目標物に対して送信し、当該目標物からの反射波を受信波として受信するFM−CWレーダ装置であって、
制御電圧に基づいて送信波の周波数を変化させる電圧制御発振器と、
前記制御電圧の算出方法を、周波数上昇区間と周波数下降区間とで異なるように制御する第1制御部と、
送信波と受信波を混合してビート信号を生成するミキサと、
周波数上昇区間と周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分を算出する周波数成分算出部と、
周波数上昇区間におけるビート信号の周波数成分と、周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分とのペアリングを行い、ペアとなった成分同士の信号レベルの差が所定値以下である周波数成分のペアを、目標物に対応する正しいペアとして特定する第2制御部と、
を備えた、FM−CWレーダ装置。
【請求項2】
前記電圧制御発振器の制御電圧と出力周波数との関係を示す特性データを記憶する記憶部、をさらに備え、
前記第1制御部は、
前記特性データを参照することによって、目標周波数を得るための電圧制御発振器の制御電圧を算出する第1の算出方法を、周波数上昇区間および周波数下降区間の一方で用い、
電圧制御発振器の制御電圧と出力周波数の非線形歪みを、制御電圧と出力周波数の近似式で補償することによって、目標周波数を得るための電圧制御発振器の制御電圧を算出する第2の算出方法を、周波数上昇区間および周波数下降区間の他方で用いる、
請求項1に記載された、FM−CWレーダ装置。
【請求項3】
周波数上昇区間と周波数下降区間を含むように周波数変調された送信波を、目標物に対して送信し、当該目標物からの反射波を受信波として受信するFM−CWレーダ装置におけるペアリング方法であって、
電圧制御発振器の制御電圧に基づいて送信波の周波数を変化させ、
前記制御電圧の算出方法を、周波数上昇区間と周波数下降区間とで異なるように制御し、
送信波と受信波を混合してビート信号を生成し、
周波数上昇区間と周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分を算出し、
周波数上昇区間におけるビート信号の周波数成分と、周波数下降区間におけるビート信号の周波数成分とのペアリングを行い、ペアとなった成分同士の信号レベルの差が所定値以下である周波数成分のペアを、目標物に対応する正しいペアとして特定する、
ことを含む、ペアリング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−112861(P2012−112861A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263318(P2010−263318)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】