説明

FPNデータ取得装置および固体撮像素子並びに電子カメラ

【課題】
従来は、シェーディングがある場合に高精度なFPN補正データを得ることが難しいという問題があった。
【解決手段】
本発明に係るFPNデータ取得装置は、光学系を介して入射する光量に応じた信号を出力する画素が2次元行列状に配置された撮像部と、同列の画素から行順に読み出される信号を一時的に保持する保持部と、前記保持部に保持された信号と読み出し中の信号とを比較し、比較結果が閾値未満の場合は前記保持部に保持されている信号を前記読み出し中の信号に更新し、比較結果が閾値以上の場合は前記保持部に保持されている信号を更新しないように制御する比較部とで構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPNデータ取得装置および固体撮像素子並びに電子カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像素子を用いた電子カメラが広く普及している。ところが、電子カメラの回路動作によって発生するFPN(固定パターンノイズ)が問題となる。そこで、一般的な電子カメラでは、固体撮像素子から信号を読み出す際のFPNデータを撮影前に取得してFPN補正データを作成しておき、画像撮影時にFPN補正データを用いた補正処理を行っている。例えば、補正データをOB領域で収集するようにして、その際に画素信号に対して予め閾値を設定しておき、閾値を超えたものを閾値レベルに置換する方法が行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−157263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、固体撮像素子では、一様な輝度分布を持つ光を照射した場合でも回路素子のばらつきなどによって画像の周辺部が中心部に比べて暗くなるシェーディングが発生する。ところが従来技術では、シェーディングがある場合に高精度なFPN補正データを得ることが難しいという問題があった。
【0005】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、シェーディングがある場合でも高精度なFPN補正データを得ることができるFPNデータ取得装置および固体撮像素子並びに電子カメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るFPNデータ取得装置は、光学系を介して入射する光量に応じた信号を出力する画素が2次元行列状に配置された撮像部と、同列の画素から行順に読み出される信号を一時的に保持する保持部と、前記保持部に保持された信号と読み出し中の信号とを比較し、比較結果が閾値未満の場合は前記保持部に保持されている信号を前記読み出し中の信号に更新し、比較結果が閾値以上の場合は前記保持部に保持されている信号を更新しないように制御する比較部とで構成されることを特徴とする。
【0007】
特に、基準信号を発生する基準信号発生部を更に設け、前記保持部は、最初の画素から信号を読み出す前の初期値として前記基準信号を保持することを特徴とする。
【0008】
また、前記比較部の閾値は、前記保持部に保持されている信号を基準値とし、(前記基準値+前記閾値)を上限値および(前記基準値−前記閾値)を下限値とする範囲を設け、前記比較結果が前記範囲内の場合は前記保持部に保持されている信号を前記読み出し中の信号に更新し、前記比較結果が前記範囲外の場合は前記保持部に保持されている信号を更新しないように制御することを特徴とする。
【0009】
さらに、前記比較部は、前記閾値を第1閾値と前記第1閾値より相対的に大きい第2閾値の2つに分け、前記保持部に画素から読み出された信号が保持されている場合の閾値を第1閾値とし、前記保持部に前記基準信号が保持されている場合の閾値を第2閾値として設定することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るFPNデータ固体撮像素子は、前記FPNデータ取得装置を搭載する固体撮像素子であって、通常撮影モードとFPNデータ取得モードとを選択する選択部と、前記選択部で通常撮影モードが選択されている場合は前記撮像部から読み出される信号を外部に出力し、前記選択部でFPNデータ作成モードが選択されている場合は前記保持部が保持する信号を外部に出力する出力部とを設けたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る電子カメラは、前記FPNデータ取得装置を搭載する電子カメラであって、通常撮影モードとFPNデータ取得モードとを選択する選択部と、前記選択部でFPNデータ取得モードが選択されている場合は前記FPNデータ取得装置が出力する信号からFPN補正データを作成するFPN補正データ作成部と、前記選択部で通常撮影モードが選択されている場合は前記FPN補正データ作成部が作成したFPN補正データを用いて撮像部から読み出される信号を補正するFPN補正処理部と、前記FPN補正処理部が補正した撮影画像データを記憶する記憶部とを設けたことを特徴とする。
【0012】
或いは、本発明に係る電子カメラは、前記固体撮像素子を搭載する電子カメラであって、前記固体撮像素子の前記選択部を制御する制御部と、前記選択部でFPNデータ取得モードが選択されている場合は前記FPNデータ取得装置が出力する信号からFPN補正データを作成するFPN補正データ作成部と、前記選択部で通常撮影モードが選択されている場合は前記FPN補正データ作成部が作成したFPN補正データを用いて撮像部から読み出される信号を補正するFPN補正処理部と、前記FPN補正処理部が補正した撮影画像データを記憶する記憶部とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るFPNデータ取得装置および固体撮像素子並びに電子カメラは、シェーディングがある場合でも高精度なFPN補正データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】固体撮像素子101のブロック図である。
【図2】FPN補正を説明するための補助図である。
【図3】FPNデータの取得処理を説明するための補助図である。
【図4】第1の実施形態に係る固体撮像素子101におけるFPNデータ取得部105の構成を示すブロック図である。
【図5】第1の実施形態におけるFPNデータ取得時のタイミングチャートである。
【図6】第2の実施形態に係る固体撮像素子101bにおけるFPNデータ取得部105bの構成を示すブロック図である。
【図7】第2および第3の実施形態におけるFPNデータ取得時のタイミングチャートである。
【図8】第3の実施形態に係る固体撮像素子101cにおけるFPNデータ取得部105cの構成を示すブロック図である。
【図9】第4の実施形態に係る固体撮像素子101dにおけるFPNデータ取得部105dの構成を示すブロック図である。
【図10】電子カメラ500の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るFPNデータ取得装置および固体撮像素子並びに電子カメラの実施形態について、図面を用いて詳しく説明する。尚、本発明はFPNデータ取得装置の構成に特徴があるので、後にFPNデータ取得装置の構成についていくつかの実施形態を例に挙げて詳しく説明する。
【0016】
先ず、FPNデータ取得装置を含む固体撮像素子101の構成について図1を用いて説明し、その後、複数のFPNデータ取得装置の構成例を説明し、最後に固体撮像素子101を搭載する電子カメラについて説明する。
【0017】
図1は固体撮像素子101の構成例を示すブロック図である。図1において、固体撮像素子101は、N行M列(NおよびMは自然数)の画素で構成される撮像部102と、同列の画素から読み出した信号を出力するM本の垂直信号線103と、各画素の特性のばらつきなどによるノイズを除去するための相関二重処理部104と、本発明に係るFPNデータ取得装置に対応するFPNデータ取得部105と、列毎に読み出された信号を固体撮像素子101の外部に出力する水平出力部106と、各部の動作タイミングを制御するタイミング制御部107とで構成される。
【0018】
さらに、FPNデータ取得部105は、列(1)から列(M)まで各列毎に設けられたM個の列データ取得部151と、モード切替スイッチ152とで構成される。尚、M個のFPNデータ取得部105の中で特定の列に配置されたものを指定する場合は列符号((1)から(M))を付加して表記する。例えば(m)列目のFPNデータ取得部105は、FPNデータ取得部105(m)と表記する。同様に、M個のモード切替スイッチ152についても特定の列に配置されたものを指定する場合は列符号を付加して表記し、例えば(m)列目のモード切替スイッチ152は、モード切替スイッチ152(m)と表記する。
【0019】
図1において、固体撮像素子101は、外部から与えられる制御信号に応じて、FPNデータ取得モード/画像撮影モードの切り替えを行ったり、指定された解像度で画像信号を読み出すタイミング信号などを各部に出力する。例えば、固体撮像素子101を搭載する電子カメラ側でFPNデータを取得する場合は、固体撮像素子101に対して制御信号でFPNデータ取得モードを指定する。これを受けたタイミング制御部107は、FPNデータ取得部105のモード切替スイッチ152をa側に切り替える。そして、撮像部102から行単位で読み出した信号は、各列の列データ取得部151を介して水平出力部106に読み出した後、列順に固体撮像素子101の外部に出力する。また、電子カメラで画像を撮影する場合は、固体撮像素子101に対して制御信号で画像撮影モードを指定する。これを受けたタイミング制御部107は、FPNデータ取得部105のモード切替スイッチ152をb側に切り替えて、撮像部102から行単位で読み出される信号を各列の列データ取得部151を介さずに直接、水平出力部106に読み出した後、列単位で固体撮像素子101の外部に出力する。
【0020】
ここで、本実施形態に係る固体撮像素子101は、シェーディングを含むFPN(固定パターンノイズ)を補正するためのFPNデータを取得する機能を有している。図2に示すように、補正前の画像201は中心部に比べて周辺部が暗くなるシェーディング251や縦筋ノイズ252,253,254および255が現れる。尚、図2では分かりやすいように、シェーディング特性や縦筋ノイズの幅などは強調して描いてある。そこで、本実施形態に係る固体撮像素子101では、シェーディング251や縦筋ノイズ252,253,254および255などの行方向の変化をFPNデータ256として取得し、固体撮像素子101の外部に出力できるようになっている。これにより、固体撮像素子101を搭載する電子カメラ側では、画像撮影時に同じ固体撮像素子101から読み出した画像データから撮影前に取得したFPNデータ256を列単位で減算し、撮影画像からシェーディング251や縦筋ノイズ252,253,254および255を除去するFPN補正処理を行い、シェーディングや縦筋ノイズの無い補正後のきれいな画像202を得ることができる。
【0021】
次に、FPNデータ256の生成方法について図3を用いて説明する。図3(a)は従来技術によるFPNデータ256の生成方法で、撮像部102を遮光状態にして行毎に読み出したN行のデータを列毎に平均してFPNデータ256を取得する。ところが、図3(a)において、各行にほぼ同じように現れるシェーディング251や縦筋ノイズ252,253,254および255以外に特定の行だけに突発的にノイズ260が現れる場合がある。ここで、ノイズ260のレベルが小さい場合や平均化する行数が多い場合は平均効果によって生成されるFPNデータ256に与える影響は殆ど無視できるが、レベルが大きい場合や平均化する行数が少ない場合は平均化してもFPNデータ256にノイズ261として残ってしまう。この結果、FPNデータの精度が悪くなり、適正なFPN補正を行うことができないという問題が生じる。
【0022】
そこで、本実施形態に係る固体撮像素子101のFPNデータ取得部105では、図3(b)に示すように、特定の行に現れたノイズ260が生成されるFPNデータ256bに影響しないように、ノイズ260を含む行のデータを出力しないように制御する。この結果、図3(a)のようにノイズ260によるFPNデータ256のノイズ261を除去し、図3(b)のようにノイズ261を含まないFPNデータ256bを得ることができる。尚、平均化は列毎に行われるので、ノイズ260を含む列の平均化処理時に(3)行目のデータが除外されるだけで、ノイズ260を含まない他の列の平均化処理には(3)行目のデータが用いられる。
【0023】
以下、FPNデータ256bを得るための固体撮像素子101のFPNデータ取得部105について、いくつかの実施形態を挙げて説明する。ここで、FPNデータ取得部105は、本発明に係るFPNデータ取得装置に対応する。
【0024】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態に係る固体撮像素子101のFPNデータ取得部105の構成を中心に描いた図である。図4において、列データ取得部151(m)は、保持部301と、比較部302と、AND(論理積ゲート)351とで構成される。尚、分かり易いように、図4ではAND351を比較部302とは別に描いてあるが、点線で示したようにAND351を保持部301に含めてもよいし、或いは比較部302に含めても構わない。
【0025】
図4において、タイミング制御部107は各部の動作に必要なタイミング信号などを出力する。例えば、撮像部102に対して複数の読み出しタイミング信号を出力し、撮像部102の各画素から行単位で信号を読み出す。また、保持部301に対して、AND351を介して保持タイミング信号を出力し、撮像部102から読み出された信号を保持部301に保持する。尚、AND351には比較部302の出力が加えられており、比較部302の出力が論理”1”の時に保持タイミング信号が保持部301に与えられる。また、タイミング制御部107は比較部302に対して比較タイミング信号を出力し、比較部302は撮像部102から読み出し中の行(例えば(n)行)の信号と保持部301に保持されている過去に撮像部102から読み出された行(例えば(n−1)行以前の行)の信号とを比較する。例えば、2つの信号のレベル差が閾値未満の場合は論理”1”をAND351に出力して保持タイミング信号を保持部301に与え、閾値以上の場合は論理”0”をAND351に出力して保持タイミング信号を保持部301に与えないように制御される。尚、閾値は、タイミング制御部107から全ての列に対して共通の同じ値が与えられる。
【0026】
また、タイミング制御部107は、モード切替スイッチ152(m)に読み出しモード信号を出力し、撮像部102から読み出された信号をそのまま(m)列目の信号として出力するか、列データ取得部151(m)の保持部301に保持されている信号を(m)列目の信号として出力するかを切り替える。例えば、固体撮像素子101のFPNデータ取得モードが外部から指定された場合は、タイミング制御部107は読み出しモード信号の論理”0”を出力してモード切替スイッチ152(m)をa側に切り替え、画像撮影モードが選択された場合は、タイミング制御部107は読み出しモード信号の論理”1”を出力してモード切替スイッチ152(m)をb側に切り替える。
【0027】
ここで、図4において、点線円(a)は保持部301の回路例を示し、点線円(b)は比較部302の回路例を示す。点線円(a)に示した保持部301の回路例において、撮像部102から読み出された信号はバッファ361に入力され、AND351を介して入力される保持タイミング信号によってスイッチトランジスタ362がオンしてコンデンサ363に撮像部102から読み出された信号が保持される。また、点線円(b)に示した比較部302の回路例において、撮像部102から読み出された例えば(n)行の信号(Vn)と保持部301に保持された例えば(n−1)行以前の行の信号(Vk)とがコンパレータ371に入力され、予め設定された閾値(Va)以上の差があるか否か比較される。これは、例えば信号Vnと信号Vkの差の絶対値が閾値Va以上であるは否かを判断することを意味し、|Vn−Vk|≧Vaの時コンパレータ371の出力は論理”0”となり(NG)、|Vn−Vk|<Vaの時コンパレータ371の出力は論理”1”となる(OK)。つまり、点線円(c)に描いたように、保持部301の出力信号Vkを基準として、撮像部102から読み出された信号Vnが閾値Vaの変動内にあるか否かを判別している。これは、先に図2で説明したように、同じ行であっても列によって信号レベルが異なるシェーディングがある場合でも、全ての列の列データ取得部151に対して同じ閾値Vaを与えればよいことを意味しており、各列毎に異なる閾値を準備する必要がない。さらに、シェーディングの変動幅よりも小さい値の閾値にすることも可能で、精度を高めることができる。
【0028】
次に、固体撮像素子101のFPNデータ取得モードが選択されている場合の動作について図5を用いて詳しく説明する。図5は、図4の回路の(m)列目において、(1)行目から(N)行目までのFPNデータを取得する際のタイミングチャートである。尚、図5(a)は比較部302で閾値以上のノイズを全行にわたって検出しなかった場合のタイミングチャートで、図5(b)は比較部302で閾値以上のノイズがある行(3行目)を検出した場合のタイミングチャートである。
【0029】
先ず、図5(a)のタイミングチャートから説明する。
【0030】
(タイミングT0)タイミング制御部107は、読み出しモード信号を論理”1”にしてモード切替スイッチ152をa側に切り替え、FPNデータの読み出しモードにする。尚、この時点で保持部301は何らかの初期値を保持しているものとする。また、比較部302の出力は初期値として論理”1”になっているものとする。
【0031】
(タイミングT1)タイミング制御部107は、読み出しタイミング信号を撮像部102に出力し、撮像部102の出力((1)行目の信号)を垂直信号線103に読み出す。
【0032】
(タイミングT2)タイミング制御部107は、保持タイミング信号を出力する。ここで、保持タイミング信号は、比較部302の出力が論理”1”なので、AND351を介して保持部301に与えられ、保持部301の出力は初期値から(1)行目のデータに更新される。尚、保持部301の回路例に示したように、バッファ361の出力インピーダンスは低いのでスイッチトランジスタ362がオンした時にコンデンサ363に蓄積された電荷はリセットされるものとする。或いは、コンデンサ363の両端にリセット用のトランジスタを設けてタイミング制御部107からリセット信号を出力するようにしても構わない。また、保持タイミング信号は撮像部102から各行の信号を読み出し中に必ず所定位置で出力されるようになっている。
【0033】
(タイミングT3)タイミング制御部107は、読み出しタイミング信号を撮像部102に出力し、撮像部102の出力((2)行目の信号)を垂直信号線103に読み出す。
【0034】
(タイミングT4)タイミング制御部107は、比較タイミング信号を短い期間だけパルス状に論理”1”にして比較部302に出力し、比較部302の出力を更新する。
【0035】
図5(a)の例では、撮像部102から読み出し中の(2)行目の信号と保持部301に保持されている(1)行目の信号とのレベル差が閾値未満の場合を示し、初期値と同じ論理”1”が継続して比較部302から出力される。尚、図5(a)において、比較部302で比較する2つの信号のレベル差が閾値以上の場合をNG、閾値未満の場合をOKと表記してある。また、比較部302の回路例に示したように、コンパレータ371の出力インピーダンスは低いのでスイッチトランジスタ372がオンした時にコンデンサ373に蓄積された電荷はリセットされるものとする。或いは、コンデンサ373の両端にリセット用のトランジスタを設けてタイミング制御部107からリセット信号を出力するようにしても構わない。
【0036】
(タイミングT5)タイミングT2と同様に、タイミング制御部107は、保持タイミング信号を出力する。この時点で、比較部302の出力は論理”1”なので、AND351を介して保持部301に保持タイミング信号が与えられ、保持部301の出力は(1)行目のデータから(2)行目のデータに更新される。
【0037】
(タイミングT6)タイミングT3と同様に、撮像部102の出力((3)行目の信号)を垂直信号線103に読み出す。
【0038】
(タイミングT7)タイミングT4と同様に、比較部302の出力を更新する。図5(a)の例では、撮像部102から読み出し中の(3)行目の信号と保持部301に保持されている(2)行目の信号とのレベル差が閾値未満の場合を示し、前の行と同じ論理”1”が継続して比較部302から出力される。
【0039】
(タイミングT8)タイミングT5と同様に、タイミング制御部107は、保持タイミング信号を出力する。この時点で、比較部302の出力は論理”1”なので、AND351を介して保持部301に保持タイミング信号が与えられ、保持部301の出力は(2)行目のデータから(3)行目のデータに更新される。
【0040】
(タイミングT9)タイミングT3およびT6と同様に、撮像部102の出力((4)行目の信号)を垂直信号線103に読み出す。
【0041】
(タイミングT10)タイミングT4およびT7と同様に、比較部302の出力を更新する。図5(a)の例では、撮像部102から読み出し中の(4)行目の信号と保持部301に保持されている(3)行目の信号とのレベル差が閾値未満の場合を示し、前の行と同じ論理”1”が継続して比較部302から出力される。
【0042】
(タイミングT11)タイミングT5およびT8と同様に、タイミング制御部107は、保持タイミング信号を出力する。この時点で、比較部302の出力は論理”1”なので、AND351を介して保持部301に保持タイミング信号が与えられ、保持部301の出力は(3)行目のデータから(4)行目のデータに更新される。
【0043】
以降、図5(a)の例では、(N)行目までの比較部302の比較結果は全てOK(2つの信号のレベル差は閾値未満)なので、上記と同じ動作を繰り返し、(1)行目から(N)行目までの全ての行の信号が読み出され、(m)列目のFPNデータとして固体撮像素子101の外部に出力される。
【0044】
尚、タイミングT12において、タイミング制御部107は、読み出しモード信号を論理”1”から論理”0”にして、FPNデータ取得部105のモード切替スイッチ152をb側に切り替える。これにより、固体撮像素子101はFPNデータ取得モードから画像撮影モードに切り替わるので、固体撮像素子101を搭載している電子カメラのレリーズボタンが押下された時に、固体撮像素子101の撮像部102から画像信号を読み出すことができる。
【0045】
次に、図5(b)のタイミングチャートについて説明する。図5(b)のタイミングチャートは比較部302で閾値以上のノイズがある行(3行目)を検出した場合のタイミングチャートで、3行目以外の動作は図5(a)と全く同じである。ここでは、図5(a)と異なる部分についてのみ説明する。(タイミングT0)から(2)行目を読み出すまでの(タイミングT6)までの動作は省略する。
【0046】
(タイミングT7)タイミングT4と同様に、タイミング制御部107は、比較タイミング信号を比較部302(スイッチトランジスタ372のゲート)に出力し、その時点のコンパレータ371の出力をコンデンサ373にラッチし、比較部302の出力を更新する。但し、図5(b)の例では、撮像部102から読み出し中の(3)行目の信号と保持部301に保持されている(2)行目の信号とのレベル差が閾値以上(NG)なので図5(a)の場合とは異なり、比較部302は論理”0”を出力する。このため、図5(a)のタイミングT8でタイミング制御部107出力する保持タイミング信号は、AND351の出力には現れないので、保持部301には与えられない。この結果、保持部301の出力は(2)行目のデータから(3)行目のデータに更新されず、(2)行目のデータを保持し続ける。
【0047】
尚、先に述べたように上記の処理は列毎に行われるので、(m)列目以外の列(例えば(2)列目)において比較結果が正常である場合は、(2)列目の列データ取得部151(2)の保持部301は、(3)行目のデータを保持する。
【0048】
(タイミングT9)図5(a)と同様に、撮像部102の出力((4)行目の信号)を垂直信号線103に読み出す。
【0049】
(タイミングT10)図5(a)と同様に、比較部302の出力を更新する。
【0050】
(タイミングT11)図5(a)と同様に動作するが、図5(b)の例では、撮像部102から読み出し中の(4)行目の信号と保持部301に保持されている(2)行目の信号とが比較される。つまり、必ずしも1行前の信号と比較されるわけではなく、保持部301に保持されている1つ前のOK(正常)であった時の行の信号と比較され、NG(異常)であった行は飛ばされる。
【0051】
ここで、図5(b)の例では、撮像部102から読み出し中の(4)行目の信号と保持部301に保持されている(2)行目の信号とのレベル差が閾値未満であった場合の例を示しているので、論理”1”が比較部302の出力となり、(4)行目の信号が保持部301に保持される。例えば、閾値以上であった場合は論理”0”が出力されるので、保持部301は引き続き(2)行目のデータを保持し続ける。以降の処理は図5(a)と同じなので説明を省略する。
【0052】
尚、上記の説明では、(m)列目の列データ取得部151(m)について説明したが、(1)列目から(M)列目までの列データ取得部151(1)から列データ取得部151(M)についても同様に動作する。但し、先に説明したように、上記の処理は列毎に行われるので、同じ行でも比較結果がOKである場合とNGである場合とがある。
【0053】
このようにして、行毎に読み出されたFPNデータは図1で説明した水平出力部106に出力された後、列順に固体撮像素子101の外部に読み出される。この結果、図3(b)で説明したように、ある列のある行の信号を読み出した時に大きいレベルのノイズ260が有った場合は、ノイズ260が有る列の出力信号として過去の正常な行の信号を出力するので、図3(b)のようにノイズ261が残らないFPNデータ256bを取得することができる。この結果、画像撮影時に精度の高いFPN補正を行うことができ、高品質な画像を撮影することができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るFPNデータ取得装置および固体撮像素子について説明する。図6は、第2の実施形態に係る固体撮像素子101bのFPNデータ取得部105bの(m)列目の列データ取得部151b(m)の構成を示すブロック図である。図6において、列データ取得部151b(m)は、保持部301と、比較部302と、AND(論理積ゲート)351と、入力切替スイッチ401とで構成される。尚、図6において第1の実施形態の図4と同符号のものは同じものを示す。特に図6と図4との違いは、列データ取得部151b(m)に入力切替スイッチ401が設けられていることである。そして、入力切替スイッチ401によって、保持部301の入力信号は、撮像部102から読み出される信号または予め設定された基準信号のいずれかの信号が選択される。また、図6のタイミング制御部107bは図4のタイミング制御部107とは少し異なり、入力切替スイッチ401を制御する入力切替タイミング信号を出力する。例えば、タイミング制御部107は、入力切替タイミング信号の論理”1”を出力して入力切替スイッチ401をa側に切り替え、論理”0”を出力して入力切替スイッチ401をb側に切り替える。上記以外の点は第1の実施形態の図4と同じである。
【0055】
次に、固体撮像素子101bに対してFPNデータ取得モードが指定されている場合の動作について図7(a)を用いて詳しく説明する。図7(a)は、図6の回路で(1)行目から(N)行目までのFPNデータを取得する際のタイミングチャートで、第1の実施形態の図5(b)に対応する。従って、図7(a)は比較部302で閾値以上のノイズがある行(3行目)を検出した場合のタイミングチャートである。尚、図7(a)において図5(b)と同符号のタイミングは同じものを示す。以下、図5(b)と異なる動作についてのみ説明する。
【0056】
(タイミングT21)タイミング制御部107bは、撮像部102から(1)行目の信号を読み出すタイミングT1より前のタイミングT21で保持タイミング信号を出力する。尚、タイミング制御部107bは、タイミングT21以前に入力切替タイミング信号の初期値を論理”0”にしておき、入力切替スイッチ401はb側に接続され、保持部301には基準信号が入力されている。このため、保持タイミング信号がAND351を介して保持部301に与えられた時に、保持部301には基準信号が保持される。この後、タイミング制御部107bは、タイミングT1で入力切替タイミング信号を論理”1”にし、以降(N)行目の読み出しが終了するまで論理”1”を保持する。この結果、入力切替スイッチ401はa側に接続され、保持部301には撮像部102から読み出される信号が入力される。つまり、(1)行目の読み出しを行う前だけ入力切替スイッチ401を基準信号側に切り替えるようになっている。
【0057】
(タイミングT22)タイミング制御部107bは、短いパルス状の比較タイミング信号を比較部302に出力する。これにより、保持部301に保持されている基準信号と撮像部102から読み出されている(1)行目の信号とが比較される。図7(a)の例では、撮像部102から読み出し中の(1)行目の信号と保持部301に保持されている基準信号とのレベル差が閾値未満の場合を示し、論理”1”が比較部302から出力される。
【0058】
尚、次のタイミングT2以降の動作は、図5(b)と同様なので重複する説明は省略する。
【0059】
このようにして、第1の実施形態と同様に、行毎に読み出されたFPNデータは図1で説明した水平出力部106に出力された後、列順に固体撮像素子101の外部に読み出される。この結果、図3(b)で説明したように、ある列のある行の信号を読み出した時に大きいレベルのノイズ260が有った場合は、ノイズ260が有る列の出力信号として過去の正常な行の信号を出力するので、図3(b)のようにノイズ261が残らないFPNデータ256bを取得することができる。この結果、画像撮影時に精度の高いFPN補正を行うことができ、高品質な画像を撮影することができる。また第1の実施形態では、(1)行目の信号に異常があった場合に除去することができず、この場合は逆に(2)行目以降の信号が異常であると判別されてしまう恐れがあった。これに対して本実施形態では、(1)行目の信号を読み出した時に基準信号と比較するので、基準信号を信号値として予測される標準的なレベルに設定しておくことによって、(1)行目の信号に異常があった場合にこれを除去することができる。
【0060】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るFPNデータ取得装置および固体撮像素子について説明する。図8は、第3の実施形態に係る固体撮像素子101cのFPNデータ取得部105cの(m)列目の列データ取得部151c(m)の構成を示すブロック図である。図8において、列データ取得部151c(m)は、保持部301と、比較部302と、入力切替スイッチ401と、OR(論理和ゲート)402とで構成される。尚、図8において図6と同符号のものは同じものを示す。特に図8と図6との違いは、列データ取得部151c(m)の入力切替スイッチ401の入力切替タイミング信号にある。図6ではタイミング制御部107cが出力する入力切替タイミング信号は、直接、入力切替スイッチ401に与えられていたが、図8ではタイミング制御部107cが出力する入力切替タイミング信号は、OR402を介して入力切替スイッチ401に与えられている。また、OR402には比較部302の出力も与えられているので、比較部302の比較結果がOKの場合(論理”1”の場合)は入力切替タイミング信号が入力切替スイッチ401に与えられず、入力切替スイッチ401はa側になる。逆に比較結果がNGの場合(論理”0”の場合)は入力切替タイミング信号が入力切替スイッチ401に与えられ、入力切替タイミング信号が論理”0”の時に入力切替スイッチ401はb側になる。また、タイミング制御部107cが出力する入力切替タイミング信号は、タイミング制御部107bとは異なり、図7(b)に示すように、撮像部102の読み出し信号に応じて同じタイミングで常時出力される。また、タイミング制御部107cが出力する保持タイミング信号についても、図6のタイミング制御部107bとは異なり、保持部301に直接与えられている。上記以外の点は図6と同じである。
【0061】
次に、固体撮像素子101cのFPNデータ取得モードが選択されている場合の動作について図7(b)を用いて詳しく説明する。図7(b)は、図8の回路で(1)行目から(N)行目までのFPNデータを取得する際のタイミングチャートで、第2の実施形態の図7(a)に対応する。従って、図7(b)は比較部302で閾値以上のノイズがある行(3行目)を検出した場合のタイミングチャートである。尚、図7(b)において図7(a)と同符号のタイミングは同じものを示す。以下、図7(b)について説明する。
【0062】
(タイミングT21)図7(a)と同様に、タイミング制御部107cは、撮像部102から(1)行目の信号を読み出すタイミングT1より前のタイミングT21で保持タイミング信号を出力する。尚、タイミング制御部107cは、タイミングT21以前に入力切替タイミング信号の論理が”0”になるように初期化するので、入力切替スイッチ401はb側に接続され、保持部301には基準信号が入力されている。そして、タイミングT21で保持タイミング信号が保持部301に与えられた時に、保持部301には基準信号が保持される。この後、タイミング制御部107cは、タイミングT1で入力切替タイミング信号を論理”1”にし、以降、撮像部102から各行の信号を読み出す周期と同じ周期で入力切替タイミング信号を出力する。
【0063】
(タイミングT22)図7(a)と同様に、タイミング制御部107cは、短いパルス状の比較タイミング信号を比較部302に出力する。これにより、保持部301に保持されている基準信号と撮像部102から読み出されている(1)行目の信号とが比較される。
【0064】
次のタイミングT2からタイミングT6までは比較部302の出力が論理”1”なので図7(a)と同様に動作し、タイミングT7の時点で保持部301には(2)行目の信号が保持され、撮像部102からは(3)行目の信号が読み出されている。
【0065】
(タイミングT7)タイミングT4と同様に、タイミング制御部107cは、比較タイミング信号を比較部302に出力し、比較部302の出力を更新する。但し、図7(b)の例では、撮像部102から読み出し中の(3)行目の信号と保持部301に保持されている(2)行目の信号とのレベル差が閾値以上(NG)なので、比較部302は論理”0”を出力する。このため、タイミングT9までの期間は、入力切替タイミング信号の論理”0”がOR402を介して入力切替スイッチ401に与えられ、入力切替スイッチ401はb側に接続される。
【0066】
(タイミングT8)タイミングT9より前のタイミングT8において、タイミング制御部107cは、保持タイミング信号を出力する。この時点で、入力切替スイッチ401はb側に接続されているので、保持部301は基準信号を入力し、保持部301の出力は(2)行目のデータから基準信号による基準値に更新される。
【0067】
(タイミングT9)この時点で、入力切替タイミング信号は、論理”0”から論理”1”になるので、OR402を介して入力切替スイッチ401に与えられ、入力切替スイッチ401はa側に接続される。
【0068】
(タイミングT10)タイミングT4と同様に、タイミング制御部107cは、比較タイミング信号を比較部302に出力し、比較部302の出力を更新する。図7(b)の例では、撮像部102から読み出し中の(4)行目の信号と保持部301に保持されている基準値とが比較される。
【0069】
ここで、図7(b)の例では、撮像部102から読み出し中の(4)行目の信号と保持部301に保持されている基準値とのレベル差が閾値未満であった場合(OK)の例を示しているので、論理”1”が比較部302の出力となる。従って、入力切替スイッチ401はa側に接続され、撮像部102から読み出し中の(4)行目の信号が保持部301に入力される。
【0070】
尚、撮像部102から読み出し中の(4)行目の信号と保持部301に保持されている基準値とのレベル差が閾値以上であった場合(NG)は、論理”0”が比較部302の出力となり、且つ入力切替タイミング信号も論理”0”なので、入力切替スイッチ401はb側の基準信号に接続され、保持部301は引き続き基準値を保持し続けることになる。
【0071】
(タイミングT11)図7(b)の例では入力切替スイッチ401はa側に接続されているので、タイミング制御部107cの保持タイミング信号によって、(4)行目の信号が保持部301に保持される。
【0072】
以降、(N)行目の信号が読み出され、FPNデータの読み出し期間が終了するタイミングT12まで同様に動作する。
【0073】
尚、基準信号は、列毎に異なる値を与えても構わないが、例えばシェーディング特性の変動範囲の中心値にして、全列に同じ基準信号を与えるようにすれば、極端に値の異なるノイズを除去する効果を得ることができる。
【0074】
このようにして、行毎に読み出されたFPNデータは図1で説明した水平出力部106に出力された後、列順に固体撮像素子101の外部に読み出される。この結果、図3(b)で説明したように、ある列のある行の信号を読み出した時に大きいレベルのノイズ260が有った場合は、ノイズ260が有る列の出力信号として基準信号を出力するので、図3(b)のようにノイズ261の影響が残らないFPNデータ256bを取得することができる。この結果、画像撮影時に精度の高いFPN補正を行うことができ、高品質な画像を撮影することができる。
【0075】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るFPNデータ取得装置および固体撮像素子について説明する。図9は、第4の実施形態に係る固体撮像素子101dのFPNデータ取得部105dの(m)列目の列データ取得部151d(m)の構成を示すブロック図である。図9において、列データ取得部151d(m)は、保持部301と、比較部302と、AND(論理積ゲート)351と、入力切替スイッチ401と、閾値切替スイッチ403とで構成される。尚、図9において第2の実施形態の図6と同符号のものは同じものを示す。特に図9と図6との違いは、列データ取得部151d(m)に閾値切替スイッチ403が設けられていることである。そして、閾値切替スイッチ403によって、比較部302に与えられる閾値は、第1閾値(Va)または第2閾値(Vb)のいずれかが選択される。また、図9のタイミング制御部107dは図6のタイミング制御部107bとは少し異なり、閾値切替スイッチ403を制御する閾値切替信号を出力する。例えば、タイミング制御部107bは、閾値切替信号の論理”1”を出力して閾値切替スイッチ403をa側(第1閾値)に切り替え、論理”0”を出力して閾値切替スイッチ403をb側(第2閾値)に切り替える。上記以外の点は第2の実施形態の図6と同じである。
【0076】
尚、第1閾値(Va)と第2閾値(Vb)の関係は、図9の点線(a)に描いたように、Va<Vbの関係になっている。従って、第1閾値(Va)が与えられている時に比較部302がOK(論理”1”)となる範囲は狭くなり、第2閾値(Vb)が与えられている時に比較部302がOK(論理”1”)となる範囲は広くなる。そして、タイミング制御部107dは、タイミングT3以前は閾値切替信号を論理”0”にして第2閾値を選択し、タイミングT3以降は閾値切替信号を論理”1”にして第1閾値を選択するよう制御する。
【0077】
これにより、図7(a)のタイミングチャートにおいて、撮像部102から読み出し中の(1)行目の信号と保持部301に保持されている基準値とを比較するタイミングT22の時点では第2閾値が選択されるので、シェーディング特性の変動範囲を考慮した広めの閾値を用いて、撮像部102から読み出し中の(1)行目の信号と保持部301に保持されている基準値とを比較することができる。一方、タイミングT3以降のタイミングT4の時点では狭い範囲の第1閾値が選択されるので、撮像部102から読み出し中の(2)行目の信号と保持部301に保持されている(1)行目の信号とを精度良く比較することができる。
【0078】
このようにして、第2の実施形態と同様に、行毎に読み出されたFPNデータは図1で説明した水平出力部106に出力された後、列順に固体撮像素子101の外部に読み出される。この結果、図3(b)で説明したように、ある列のある行の信号を読み出した時に大きいレベルのノイズ260が有った場合は、ノイズ260が有る列の出力信号として過去の正常な行の信号を出力するので、図3(b)のようにノイズ261が残らないFPNデータ256dを取得することができる。この結果、画像撮影時に精度の高いFPN補正を行うことができ、高品質な画像を撮影することができる。
【0079】
特に本実施形態では、基準信号と比較する際に広い閾値を用い、他の行の信号を比較する際には狭い閾値を用いるので精度の高い比較を行うことができ、より小さなノイズを除去することが可能になる。
【0080】
以上、第1から第4の実施形態に係るFPNデータ取得装置および固体撮像素子について説明してきたが、これらの固体撮像素子を搭載する電子カメラの実施形態について説明する。
【0081】
(電子カメラの実施形態1)
図10は、電子カメラ500の構成を示すブロック図である。図10において、電子カメラ500は、レンズ光学系501と、撮影機構502と、固体撮像素子503と、AFE(アナログフロントエンド)504と、画像バッファ505と、画像処理部506と、制御部507と、メモリカードI/F(インターフェース)508と、表示部509と、操作部材510と、メモリ511とで構成される。
【0082】
電子カメラ500において、レンズ光学系501から入射する被写体光は絞りやシャッターなどで構成される撮影機構502を介して固体撮像素子503の受光面に結像され、光量に応じて電気信号に変換される。ここで、固体撮像素子503は上記の第1の実施形態から第4の実施形態で説明した固体撮像素子101,101b,101cおよび101dのいずれかに対応する。固体撮像素子503が出力する電気信号は、AFEでノイズ除去や増幅が行われA/D変換されて画像バッファ505に取り込まれる。その後、画像処理部506および制御部507によって、ホワイトバランス処理や色補間処理およびJPEG画像圧縮処理などが施され、最終的に撮影画像としてメモリカードI/F508に装着されているメモリカード508aに保存される。尚、必要に応じて、撮影画像は表示部509の画面に表示される。また、撮影者は、操作部材510の電源ボタンやモード切替ボタン或いはレリーズボタンなどを操作して電子カメラ500を使用する。操作部材510の操作情報は制御部507に入力され、制御部507は操作情報に応じて電子カメラ500の各部の動作を制御する。
【0083】
以上が電子カメラ500の基本動作である。次に、本実施形態の特徴であるFPN補正処理について説明する。電子カメラ500は、電源投入時や撮影前に図3で説明したようなFPNデータを適宜取得し、画像撮影時には図2で説明したように取得したFPNデータを用いてFPN補正処理を行うようになっている。そこで、電子カメラ500ではFPN補正処理を制御部507で行うために、制御部507にはFPNデータ取得部551と、FPN補正データ生成部552と、FPN補正処理部553とが設けられている。
【0084】
FPNデータ取得部551は、撮影機構502を遮光状態にして固体撮像素子503にFPNデータ取得モードを指定する。そして、先に第1の実施形態から第4の実施形態で説明したように、固体撮像素子503から読み出されるFPNデータはAFE504を介して画像バッファ505に取り込まれる。
【0085】
FPN補正データ生成部552は、図3(b)で説明したように、画像バッファ505に取り込まれるFPNデータの同列の信号を全行に渡って加算して各行毎に平均値を求め、メモリ511にFPN補正データとして記憶する。
【0086】
FPN補正処理部553は、画像撮影時に、メモリ511に記憶されているFPN補正データを読み出して撮影された画像データの行毎にFPN補正データを減算して、シェーディング特性の補正やパルス状のノイズなどを除去する。尚、制御部507から画像処理部506にFPN補正データを渡して画像処理部508にFPN補正処理を指令するようにして、撮影画像からFPNデータを減算する実際の処理は画像処理部506で行うようにしても構わない。
【0087】
そして、FPN補正された画像データは、制御部507からメモリカードI/F508を介してメモリカード508aに保存される。
【0088】
このようにして、電子カメラ500は、固体撮像素子503として第1の実施形態から第4の実施形態で説明した固体撮像素子101,101b,101cおよび101dのいずれかを用いているので、図3(b)で説明したように、ある行の信号を読み出した時にある列に大きいレベルのノイズ260が有った場合、ノイズ260が有る列の信号として出力しないので、図3(b)のFPNデータ256dのようにノイズ260の影響が残らないFPNデータを取得することができる。この結果、画像撮影時に精度の高いFPN補正を行うことができ、高品質な画像を撮影することができる。
【0089】
(電子カメラの実施形態2)
次に、電子カメラの実施形態2について説明する。本実施形態の電子カメラも図10に示した電子カメラ500と同じ構成である。但し、固体撮像素子503は上記の第1の実施形態から第4の実施形態で説明した固体撮像素子101,101b,101cおよび101dのいずれかではなく、通常の固体撮像素子が用いられる点が電子カメラの実施形態1とは異なる。このため、本実施形態に係る電子カメラ500では、FPNデータ取得部551の動作も異なり、以下のように動作する。
【0090】
FPNデータ取得部551は、撮影機構502を遮光状態にして固体撮像素子503から画像データを行単位で読み出す。そして、図3(b)で説明したように、(1)行目から(N)行目までの同列の信号を加算して平均値を求める。このようにして求められた1行分のM個の平均値がFPNデータとして取得され、FPN補正データとしてメモリ511に記憶される。尚、この時、FPNデータ取得部551は以下の処理を行う。
【0091】
(ステップ1)固体撮像素子503から(n)行目のM個のデータを読み出して画像バッファ505に一時的に記憶する。
【0092】
(ステップ2)画像バッファ505に一時的に記憶されている(n−1)行目以前のM個のデータとステップ1で読み出した(n)行目のM個のデータとを各列毎に比較する。これは、例えば図4の比較部302の処理に相当し、各列毎に(n)行目のデータと(n−1)行目以前のデータとの差の絶対値を求め、予めメモリ511などに記憶されている閾値と比較し、閾値以上であるか否かを列毎に判断する処理である。
【0093】
(ステップ3)ステップ2の比較結果がNGの場合(閾値以上である場合)、当該列の(n)行目のデータを同列の(n−1)行目以前のデータに置き換えて画像バッファ505に再記憶する。
【0094】
(ステップ4)(1)行目から(N)行目までの処理が終了するまで、ステップ1からステップ3までの処理を繰り返す。尚、(1)行目のデータを読み出す際には、(n−1)行目以前のデータとして適切な初期値または過去のFPNデータ値が基準値として用いられるものとする。
【0095】
このようにして、FPNデータ取得部551は、第1の実施形態から第4の実施形態で説明した固体撮像素子101,101b,101cおよび101dではない場合でも、FPNデータを取得することができる。
【0096】
FPN補正データ生成部552は、図3(b)で説明したように、画像バッファ505に取り込まれたFPNデータの同列の信号を全行に渡って加算して各行毎に平均値を求め、メモリ511にFPN補正データとして記憶する。
【0097】
FPN補正処理部553は、電子カメラの実施形態1と同様に、画像撮影時に、メモリ511に記憶されているFPN補正データを読み出して撮影された画像データの行毎にFPN補正データを減算して、シェーディング特性の補正やパルス状のノイズなどを除去する。
【0098】
そして、FPN補正された画像データは、制御部507からメモリカードI/F508を介してメモリカード508aに保存される。
【0099】
このようにして、電子カメラの実施形態2に係る電子カメラ500は、固体撮像素子503として第1の実施形態から第4の実施形態で説明した固体撮像素子101,101b,101cおよび101dのいずれも用いることなく同様の効果を得ることができ、図3(b)で説明したように、ある行の信号を読み出した時にある列に大きいレベルのノイズ260が有った場合、ノイズ260が有る列の信号として出力しないので、図3(b)のFPNデータ256dのようにノイズ260の影響が残らないFPNデータを取得することができる。この結果、画像撮影時に精度の高いFPN補正を行うことができ、高品質な画像を撮影することができる。
【0100】
尚、上記のステップ1からステップ4までの処理は、列毎に比較処理を行わなければならず、処理時間が掛かるという問題がある。例えば、撮影毎にFPNデータを取得するような場合は高速処理が要求され、電子カメラに高価なLSIを搭載する必要がある。また、画像バッファ505に取り込まれた後で各列毎にノイズを判断するので、必ずしも固体撮像素子自身のシェーディングやノイズのFPNデータを取得することにはならない恐れがある。これに対して、第1の実施形態から第4の実施形態で説明した固体撮像素子101,101b,101cおよび101dを用いる場合は、固体撮像素子内部でアナログで処理されるため、取得されるFPNデータの精度が高くなり、電子カメラ側の処理負担も軽減することができる。
【0101】
以上、本発明に係るFPNデータ取得装置および固体撮像素子並びに電子カメラの各実施形態について説明してきたが、その精神またはその主要な特徴から逸脱することなく他の多様な形で実施することができる。そのため、上述した実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明は、特許請求の範囲によって示されるものであって、本発明は明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0102】
101,101b,101c,101d,・・・固体撮像素子;102・・・撮像部;103・・・垂直信号線;104・・・相関二重処理部;105,105b,105c,105d・・・FPNデータ取得部;106・・・水平出力部;107,107b,107c,107d・・・タイミング制御部;151・・・列データ取得部;152・・・モード切替スイッチ;301・・・保持部;302・・・比較部;351・・・AND(論理積ゲート);361・・・バッファ;362・・・スイッチトランジスタ;363・・・コンデンサ;371・・・コンパレータ;372・・・スイッチトランジスタ;373・・・コンデンサ;351・・・AND;401・・・入力切替スイッチ;402・・・OR(論理和ゲート);403・・・閾値切替スイッチ;500・・・電子カメラ;501・・・レンズ光学系;502・・・撮影機構;503・・・固体撮像素子;504・・・AFE(アナログフロントエンド);505・・・画像バッファ;506・・・画像処理部;507・・・制御部;508・・・メモリカードI/F(インターフェース);509・・・表示部;510・・・操作部材;511・・・メモリ;508a・・・メモリカード;551・・・FPNデータ取得部;552・・・FPN補正データ生成部;553・・・FPN補正処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を介して入射する光量に応じた信号を出力する画素が行列状に配置された撮像部と、
同列の画素から行順に読み出される信号を一時的に保持する保持部と、
前記保持部に保持された信号と読み出し中の信号とを比較し、比較結果が閾値未満の場合は前記保持部に保持されている信号を前記読み出し中の信号に更新し、比較結果が閾値以上の場合は前記保持部に保持されている信号を更新しないように制御する比較部と
で構成されることを特徴とするFPNデータ取得装置。
【請求項2】
請求項1に記載のFPNデータ取得装置において、
基準信号を発生する基準信号発生部を更に設け、
前記保持部は、最初の画素から信号を読み出す前の初期値として前記基準信号を保持することを特徴とするFPNデータ取得装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のFPNデータ取得装置において、
前記比較部の閾値は、前記保持部に保持されている信号を基準値とし、(前記基準値+前記閾値)を上限値および(前記基準値−前記閾値)を下限値とする範囲を設け、前記比較結果が前記範囲内の場合は前記保持部に保持されている信号を前記読み出し中の信号に更新し、前記比較結果が前記範囲外の場合は前記保持部に保持されている信号を更新しないように制御する
ことを特徴とするFPNデータ取得装置。
【請求項4】
請求項3に記載のFPNデータ取得装置において、
前記比較部は、前記閾値を第1閾値と前記第1閾値より相対的に大きい第2閾値の2つに分け、前記保持部に画素から読み出された信号が保持されている場合の閾値を第1閾値とし、前記保持部に前記基準信号が保持されている場合の閾値を第2閾値として設定することを特徴とするFPNデータ取得装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のFPNデータ取得装置を搭載する固体撮像素子であって、
通常撮影モードとFPNデータ取得モードとを選択する選択部と、
前記選択部で通常撮影モードが選択されている場合は前記撮像部から読み出される信号を外部に出力し、前記選択部でFPNデータ作成モードが選択されている場合は前記保持部が保持する信号を外部に出力する出力部と
を設けたことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のFPNデータ取得装置を搭載する電子カメラであって、
通常撮影モードとFPNデータ取得モードとを選択する選択部と、
前記選択部でFPNデータ取得モードが選択されている場合は前記FPNデータ取得装置が出力する信号からFPN補正データを作成するFPN補正データ作成部と、
前記選択部で通常撮影モードが選択されている場合は前記FPN補正データ作成部が作成したFPN補正データを用いて撮像部から読み出される信号を補正するFPN補正処理部と、
前記FPN補正処理部が補正した撮影画像データを記憶する記憶部と
を設けたことを特徴とする電子カメラ。
【請求項7】
請求項5に記載の固体撮像素子を搭載する電子カメラであって、
前記固体撮像素子の前記選択部を制御する制御部と、
前記選択部でFPNデータ取得モードが選択されている場合は前記FPNデータ取得装置が出力する信号からFPN補正データを作成するFPN補正データ作成部と、
前記選択部で通常撮影モードが選択されている場合は前記FPN補正データ作成部が作成したFPN補正データを用いて撮像部から読み出される信号を補正するFPN補正処理部と、
前記FPN補正処理部が補正した撮影画像データを記憶する記憶部と
を設けたことを特徴とする電子カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−97162(P2011−97162A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246587(P2009−246587)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】