GPR64に対する抗体とその利用法
GPR64抗体組成物を提供する。この抗体を用いると、がん(特に、卵巣がん、ユーイング肉腫、子宮がん、GPR64を発現する他のタイプの腫瘍)を診断または治療することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPR64タンパク質に特異的に結合する抗体の同定および製造と、その抗体を利用した、あるいはその抗体を含む組成物を利用した、がんの診断法、予後予測法、治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵巣がんは女性で6番目に多いがんであり、女性のあらゆるがんの約6%を占める。卵巣がんは、女性におけるがん死の第5位にランクされる。アメリカがん学会は、アメリカ合衆国において2000年に約23,100人の新しい卵巣がん患者が発生し、約14,000人の女性がこの病気で死ぬと予測している。卵巣がんで死ぬ人が不釣り合いに多いことは、多くの卵巣がんが初期の段階では検出できないことで説明される。実際、生殖管のがんで死ぬ女性のほぼ半分は卵巣がんであり、生殖器に関する他のどのがんよりも死者が多い。
【0003】
最も優勢な形態である上皮卵巣がんになったほとんどの患者は、初期の段階では症状がなく、ステージIIIまたはIVになって症状が現われる。彼女らの5年生存率は25%未満であり、アフリカ系アメリカ人女性では生存率がさらに低い。初期の段階で卵巣がんが発見された患者は少数派だが、5年生存率は80%〜90%である(Parker, S.L.他、Cancer statistics, 1997、第47巻、5〜27ページ、1997年頃)。
【0004】
卵巣がんの家族歴がない場合、一生の間に卵巣がんになるリスクは1/70である。リスク因子としては、家族性がん症候群(遺伝性乳房/卵巣症候群のある女性では70歳までのリスクが82%);家族歴(卵巣がんの人が親類に一人もいないと生涯リスクは1.4%、一人いると5%、二人いると7%;Kerlikowske, K.他、Obstet. Gynecol.、第80巻、700〜707ページ、1992年);出産未経験;加齢;肥満;個人的に乳がん、子宮内膜がん、結腸直腸がんの経験あり;少ない妊娠;高齢(35歳以上)の初産などがある。しかし全卵巣がんの95%はリスク因子のない女性に発生している。ホルモン性避妊薬の使用、卵巣切除、卵管切除は、卵巣がんのリスクを低下させる(Kerlikowske, K.他、Obstet. Gynecol.、第80巻、700〜707ページ、1992年;Grimes, D.A.、Am. J. Obstet. Gynecol.、第166巻、1950〜1954ページ、1992年;Hankinson, S.E.他、JAMA、第270巻、2813〜2818ページ、1993年)が、両方の卵巣を切除しても卵巣がんを完全に効果的に予防できるとは限らない。
【0005】
卵巣がんの治療は、主に、外科的卵巣切除、抗ホルモン療法、化学療法のいずれか、またはこれらの組み合わせである。卵巣がんの多くの患者は効果的に治療されているとはいえ、現在の治療法だと必ず深刻な副作用が起こるため、生活の質が低下する。特定のどの治療法を選ぶかは、一般に、さまざまな予後予測パラメータとマーカーに基づく(Fitzgibbons他、Arch. Pathol. Lab. Med.、第124巻、966〜978ページ、2000年;HamiltonとPiccart、Ann. Oncol.、第11巻、647〜663ページ、2000年)。例えば遺伝的傾向のマーカーとして、BRCA-1とBRCA-2がある(Robson、J. Clin. Oncol.、第18巻、113〜118ページ、2000年)。
【0006】
新たな治療標的と診断マーカーを突き止めることは、卵巣がん患者の現在ある治療法を改善する上で不可欠である。分子医学の最近の進歩により、さまざまな免疫療法や小分子戦略の標的として、腫瘍特異的な細胞表面抗原に興味が集まってきている。免疫療法に適した抗原は、がん組織において高度に発現するが、理想的には正常な成人の組織では発現しない必要がある。しかし生きる上で不可欠な組織における発現は許容されるであろう。このような抗原の具体例としては、Her2/neuとB細胞抗原CD20が挙げられる。Her2/neuに対するヒト化モノクローナル抗体(ハーセプチン(登録商標)/トラスツズマブ)が、転移性乳がんの治療に現在用いられている(RossとFletcher、Stem Cells、第16巻、413〜428ページ、1998年)。同様に、抗CD20モノクローナル抗体(リツキシン(登録商標)/リツキシマブ)を用いて非ホジキンリンパ腫が有効に治療されている(Maloney他、Blood、第90巻、2188〜2195ページ、1997年;LegetとCzuczman、Curr. Opin. Oncol.、第10巻、548〜551ページ、1998年)。
【0007】
卵巣がんに関する免疫療法の潜在的な標的が同定されている。そのような1つの標的は、多型性上皮ムチン(MUC1)である。MUC1は膜貫通タンパク質であり、腺上皮細胞の先端面に存在している。MUC1は卵巣がんで過剰に発現することがしばしばあり、一般に、変化したグリコシル化パターンを示す。その結果、抗原として他とは明確に異なる分子になるため、第1相臨床試験でワクチンの標的となっている(Gilewski他、Clin. Cancer Res.、第6巻、1693〜1701ページ、2000年;Scholl他、J. Immunother.、第23巻、570〜580ページ、2000年)。腫瘍で発現するこのタンパク質はしばしば開裂して循環系に入り、そこで腫瘍マーカーCA15-3として検出される(Bon他、Clin. Chem.、第43巻、585〜593ページ、1997年)。しかし多くの患者の腫瘍でHER2もMUC-1も発現しない。したがって、局所的な疾患と転移性の疾患を取り扱うため、別の標的を同定する必要があるのは明らかである。
【0008】
産業界と学問の世界で新規な配列がいくつも同定されたものの、その新規な配列の機能を明らかにするのに同程度の努力はなされてこなかった。治療の標的と診断用マーカーを同定するために疾患状態にある新規なタンパク質や化合物の役割を明らかにすることは、卵巣がん患者の現在ある治療法を改善する上で不可欠である。したがってこの明細書では、卵巣がんその他のがんを治療するための分子標的が提供される。さらに、この明細書では、この標的を利用して卵巣がんの診断と予後予測に用いることのできる方法も提供される。
【0009】
GPR64タンパク質は、ある種のがん症状(例えば卵巣がん、ユーイング肉腫、子宮がん)に関与していることが知られている。転移性のがんを含めてがんの診断、予後予測、効果的な治療に役立つ抗体があると望ましかろう。そこでこの明細書では、ある種のがんの診断、予後予測、治療に用いることのできる組成物と方法を提供する。
【0010】
GPR64(文献ではOv1、HE6とも呼ばれており、この明細書と図面ではOAM6と呼ぶこともある)はオーファンGタンパク質結合受容体であり、大きくて重いグリコシル化されたN末端細胞外ドメインを備えている。
【0011】
GPR64は、Osterhoffら(DNA AND CELL BIOLOGY、第16巻、379〜389ページ、1997年)により、特異的Gタンパク質結合受容体(GPCR)としてクローニングされた。
【0012】
2002年6月17日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/173,999号(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)とその中の実施例に記載されている遺伝子発現プロファイルから、卵巣がん組織では正常な組織と比べてGPR64が上方調節されていることがわかる。
【0013】
公開データベースに基づいてGPR64遺伝子の配列をバイオインフォマティクスで分析すると、このタンパク質産物が、シグナル配列と、大きな細胞外ドメイン(619アミノ酸)と、7つの膜貫通ドメインとを備えており、細胞膜に位置していてGタンパク質結合受容体として機能することが示唆される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明により、治療を目的とした接合抗体を作るのに役立つ抗GPR64抗体が提供される。本発明の抗GPR64抗体を、例えばGPR64を発現している腫瘍細胞(例えば卵巣がん細胞、子宮がん細胞、ユーイング肉腫細胞)に対する選択的細胞毒性剤として用いることができる。いくつかの実施態様では、本発明の抗体を利用し、がんおよび/または他の増殖性疾患(良性の増殖性疾患を含む)を疑われている患者、またはそう診断された患者を治療することができる。本発明の1つの特徴によると、本発明のGPR64抗体を用い、卵巣の増殖性疾患(例えば卵巣がん)を治療する。別の実施態様では、この抗体を用い、子宮がん、ユーイング肉腫、またはGPR64を発現する細胞の増殖と関係するあらゆる疾患を治療することができる。
【0015】
本発明により、配列ID番号1(Hs.421137、NM_005756.1)のヌクレオチド配列によってコードされているGPR64タンパク質(配列ID番号2)に対する高アフィニティ抗体が提供される。本発明の一実施態様では、GPR64-18、GPR64-81、GPR64-93、GPR64-101からなるグループの中から選択したGPR64抗体にGPR64ポリペプチドが結合するのを競合的に抑制する抗体が提供される。この実施態様で役に立つ可能性のある他の選択された抗体は、図5に示してある。本発明のいくつかの実施態様では、エフェクター部またはエフェクター成分に接合した抗体が提供される。エフェクター部に標識すること(例えば蛍光標識、エフェクター・ドメイン、例えばMicA)、あるいはエフェクター部を細胞毒性剤(例えば放射性同位体または細胞毒性物質)にすることが可能である。好ましい一実施態様では、本発明の抗体は、細胞毒性剤であるアウリスタチンである。別の実施態様では、本発明の抗体だけを用いて腫瘍細胞の成長を抑制することができる。発明の別の好ましい一実施態様では、その抗体が、抗体依存性細胞毒性を媒介する。
【0016】
本発明によって提供されるGPR64抗体としては、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体が挙げられる。本発明のいくつかの実施態様では、霊長類の患者を治療するため、霊長類化GPR64抗体が提供される。本発明により、GPR64抗体全体と、GPR64抗体フラグメントが提供される。好ましい実施態様では、抗体フラグメントとして、Fab、Fab'、F(ab')2、Fvフラグメント、rIgG、二重特異性抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体が挙げられる。
【0017】
本発明の抗体には、図2に示したVH領域とVL領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列(配列ID番号3〜22)と95%以上の相同性を有する抗体が含まれる。本発明の好ましい一実施態様では、GPR64-18のそれぞれVH領域とVL領域に対応する配列ID番号17および/または配列ID番号18を含む抗体が提供される。
【0018】
本発明により、GPR64(配列ID番号2)のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有する(好ましくは98%の相同性を有する)配列を含むポリペプチドと結合するモノクローナル抗体も提供される。いくつかの実施態様では、本発明のGPR64モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれかである。そのモノクローナル抗体は、GPR64上のリガンド結合部位を求めて競合することが好ましく、生体内の腫瘍細胞の増殖を抑制することがさらに好ましい。この場合の腫瘍細胞は、卵巣がん細胞、ユーイング肉腫細胞、子宮がん、GPR64を発現する他の腫瘍細胞からなるグループの中から選択される。いくつかの実施態様では、モノクローナル抗体をエフェクター部(例えばアウリスタチンなどの細胞毒性剤)と共役させる。本発明の別の一実施態様では、抗体依存性細胞毒性を媒介するモノクローナル抗体が提供される。
【0019】
本発明の別の一実施態様では、GPR64-18、GPR64-81、GPR64-93、GPR64-101からなるグループの中から選択した抗体が結合するのと同じGPR64エピトープと結合するモノクローナル抗体が提供される。
【0020】
本発明により、ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマ細胞系が産生するモノクローナル抗体が結合するのと同じGPR64エピトープと結合するモノクローナル抗体も提供される。
【0021】
本発明の別の一実施態様では、あらゆるGPR64抗体を産生することのできる宿主細胞が提供される。好ましい実施態様では、宿主細胞は、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞からなるグループの中から選択する。
【0022】
本発明の別の一実施態様では、あらゆるGPR64抗体を産生することのできるハイブリドーマが提供される。本発明の好ましい一実施態様では、ハイブリドーマ細胞系:ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマが提供される。
【0023】
本発明により、薬理学的に許容可能な賦形剤と、本発明による任意のGPR64抗体とを含む医薬組成物も提供される。医薬組成物のいくつかの実施態様では、GPR64抗体をエフェクター部またはエフェクター成分と共役させる。エフェクター成分は、標識すること(例えば蛍光標識)、あるいは細胞毒性剤(例えば放射性同位体または細胞毒性化学物質部)にすることができる。本発明により、GPR64抗体に接合させることのできるさまざまな細胞毒性剤が提供される。細胞毒性剤としては、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、ネオマイシン、アウリスタチンなどがある。好ましい一実施態様では、細胞毒性剤はアウリスタチンである。医薬組成物に含まれる抗体は、抗体全体でもよいし、抗体フラグメント(例えばFab、Fab'、F(ab')2、Fvフラグメント、rIgG、二重特異性抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体)でもよい。いくつかの実施態様では、医薬組成物に、キメラGPR64抗体、ヒト化GPR64抗体、ヒトGPR64抗体のいずれかが含まれる。
【0024】
本発明の別の一実施態様では、抗体と、薬理学的に許容可能な基剤または賦形剤とを含む組成物が提供される。この場合の抗体は、ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマ細胞系によって産生されるモノクローナル抗体である。
【0025】
本発明により、卵巣がんに関係する細胞の増殖を抑制する方法も提供される。この方法は、細胞を本発明のGPR64抗体と接触させる操作を含んでいる。多くの実施態様では、がん細胞は患者(一般にヒト)の体内にある。患者は、転移性卵巣がんと診断されて治療計画を実施している途中であってもよいし、あるいは単純に転移性卵巣がんを疑われているだけでもよい。
【0026】
本発明により、GPR64を用いた治療法と、関連する組成物も提供される。例えば本発明により、腫瘍細胞の成長を抑制する方法であって、哺乳動物(ヒトが好ましい)に、配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列と結合することのできる抗体を治療に有効な量投与する操作を含む方法が提供される。好ましい実施態様では、この方法の抗体をエフェクター部(例えばアウリスタチン)に接合させる、あるいはこの抗体が、抗体依存性細胞毒性を媒介する。好ましい実施態様では、この方法により、腫瘍細胞の成長を抑制する。そのとき腫瘍は、卵巣がん、ユーイング肉腫、子宮がん、GPR64を発現する他のタイプの腫瘍細胞からなるグループの中から選択される。
【0027】
抗体と、治療に有効な量の細胞毒性剤とを患者に投与する方法の別の実施態様では、抗体と細胞毒性剤は、同時に投与してもよいし、一方を他方の前に投与してもよい。別の一実施態様では、細胞毒性剤を抗体に接合させることによって同時に投与する。
【0028】
本発明によりさらに、さまざまなGPR64抗体を用いた診断テストとイムノアッセイも提供される。好ましい実施態様では、この方法は、患者からの生物サンプルに含まれるがん細胞を、その生物サンプルを本発明の抗体と接触させることによって検出する操作を含んでいる。いくつかの実施態様では、抗体を標識(例えば蛍光標識または放射性同位体)と共役させる。
【0029】
本発明の好ましい一実施態様では、哺乳動物の体内にある腫瘍を診断する方法であって、抗体を、哺乳動物から採取したテスト・サンプルと接触させ;抗体と、テスト・サンプルのポリペプチドの間に複合体が形成されることを検出する操作を含んでおり;そのとき抗体が、配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドと結合することを特徴とする方法が提供される。この方法の好ましい実施態様では、テスト・サンプルは、腫瘍細胞が成長または増殖していることが疑われる個人、あるいは卵巣がんであることが疑われる個人から採取する。
【0030】
本発明の別の一実施態様では、細胞表面受容体タンパク質に対して特異的な高血清力価の抗体を産生させる方法であって、細胞表面受容体に、その受容体とシグナル伝達系を分離する突然変異を起こさせ;突然変異したその受容体をある細胞系にトランスフェクションして発現させ;その細胞系を用いて哺乳動物を受動的に免疫感作することにより、細胞表面受容体に対して特異的な高血清力価の抗体を産生させる操作を含む方法が提供される。好ましい一実施態様では、この方法を、細胞表面受容体が、Gタンパク質と結合する受容体(GPR64であることが好ましい)である場合に実施することができる。別の好ましい実施態様では、この方法の突然変異はDRYボックス突然変異であり、この方法で用いる細胞系はBalb/c同系細胞系3T12である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明により、GPR64に対する抗体を用いてある種のがんを治療、診断、予後予測するための新規な試薬と方法が提供される。特に本発明により、GPR64発現細胞のための選択的細胞毒性剤として特に役立つ抗GPR64抗体が提供される。
【0032】
抗体が高アフィニティで結合するエピトープのマッピングは、従来技術でよく知られている競合結合アッセイを通じて実現することができる。これについては後で詳しく説明する。この方法を用いると、多数の別々のエピトープを認識する複数の抗体を同定することができる。次に、試験管内でのGPR64依存性細胞死に関してこれらの抗体を評価する。この方法を利用すると、細胞死を顕著に促進する抗体を同定することができる。
【0033】
定義
【0034】
この明細書では、“抗体”は、特定の抗原と免疫反応する免疫グロブリン分子を意味する。抗体には、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方が含まれる。この用語には、遺伝子操作した形態として、例えばキメラ抗体(例えばヒト化ネズミ類抗体)や、異種共役抗体(例えば二重特異性抗体)も含まれる。“抗体”という用語には、抗原と結合する形態の抗体として、例えば抗原と結合する能力を有するフラグメント(例えばFab'、F(ab')2、Fab、Fv、rIgG)も含まれる。『ピアース・カタログ・アンド・ハンドブック、1994年〜1995年』(ピアース・ケミカル社、ロックフォード、イリノイ州)も参照のこと。例えばKuby, J.、『免疫学』、第3版、W.H.フリーマン社、ニューヨーク、1998年も参照のこと。この用語は、組み換え一本鎖Fvフラグメント(scFv)も意味する。抗体という用語には、二価の分子または二重特異性分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体も含まれる。二価の分子と二重特異性分子は、例えばKostelny他、J. Immunol.、第148巻、1547ページ、1992年;PackとPluckthun、Biochemistry、第31巻、1579ページ、1992年;Hollinger他、上記文献、1993年;Gruber他、J. Immunol.、第152巻、5368ページ、1994年;Zhu他、Protein Sci.、第6巻、781ページ、1997年;Hu他、Cancer Res.、第56巻、3055ページ、1996年;Adams他、Cancer Res.、第53巻、4026ページ、1993年;McCartney他、Protein Eng.、第8巻、301ページ、1995年に記載されている。
【0035】
特定の抗原と免疫反応する免疫グロブリン分子は、ファージまたは同様のベクターの中で組み換え抗体のライブラリを選択する方法などの組み換え法(例えばHuse他、Science、第246巻、1275〜1281ページ、1989年;Ward他、Nature、第341巻、544〜546ページ、1989年;Vaughan他、Nature Biotech.、第14巻、309〜314ページ、1996年を参照のこと)によって、あるいは動物に抗原を用いて、あるいは抗原をコードしているDNAを用いて免疫感作することによって、作ることができる。
【0036】
一般に、免疫グロブリンは重鎖と軽鎖を備えている。それぞれの重鎖と軽鎖は、定常領域と可変領域を含んでいる(これらの領域は“ドメイン”としても知られている)。重鎖と軽鎖の可変領域には、3つの超可変領域(“相補性決定領域”または“CDR”とも呼ばれる)によって隔てられた4つの“枠組構造”領域が含まれている。枠組構造領域とCDRがどれだけの広がりを持っているかは、すでに明らかにされている。いろいろな軽鎖と重鎖の枠組構造領域の配列は、1つの種の中では比較的保存されている。抗体の枠組構造領域、すなわち構成要素である軽鎖と重鎖の枠組構造領域を合わせた領域は、三次元空間内にCDRを位置づけて揃えるのに役立つ。
【0037】
CDRは、抗原のエピトープとの結合に主として関与する。それぞれの鎖のCDRは、一般に、N末端から順番にCDR1、CDR2、CDR3と呼ばれており、一般に特定のCDRが位置する鎖によっても同定される。したがってVH CDR3は、そのCDR3が見いだされた抗体の重鎖の可変領域に位置し、VL CDR1は、そのCDR1が見いだされた抗体の軽鎖の可変領域からのCDR1である。
【0038】
“VH”または“VH”とは抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域であり、具体例としては、Fv、scFv、Fabの重鎖が挙げられる。“VL”または“VL”とは抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域であり、具体例としては、Fv、scFv、dsFv、Fabの軽鎖が挙げられる。
【0039】
“一本鎖Fv”または“scFv”は、一般的な二本鎖抗体の重鎖と軽鎖の可変領域が合わさって一本鎖を形成している抗体を意味する。一般に、リンカー・ペプチドが2本の鎖の間に挟まることで、適切な折り畳みと、活性結合部位の形成が可能になる。
【0040】
天然のクラスIgG抗体の定常領域と実質的に同じ定常領域を持つ抗体とは、存在しているどの定常領域も天然のクラスIgG抗体の定常領域とアミノ酸配列が実質的に同じである(すなわち少なくとも約85〜90%、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する)抗体を意味する。
【0041】
この明細書では、“モノクローナル抗体”は、ハイブリドーマ法で作られた抗体に限定されない。“モノクローナル抗体”という用語は、単一のクローン(例えば真核生物、原核生物、ファージのクローン)に由来する抗体を意味し、どの方法で作ったかは問題とされない。本発明で役に立つモノクローナル抗体は、従来技術で知られている多彩な方法で調製することができる。方法としては、例えば、ハイブリドーマ法、組み換え法、ファージ提示法や、これらの組み合わせがある。モノクローナル抗体は、例えば従来技術で知られているハイブリドーマ法で作ることができる。この方法は、例えばHarlowとLane、『抗体:実験室マニュアル』、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版、ニューヨーク州、1988年;Hammerling他、『モノクローナル抗体とT細胞ハイブリドーマ』、エルスヴィア社、ニューヨーク、1981年、563〜681ページに記載されている(両方とも参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0042】
本発明の好ましい多くの用途(例えばヒトの体内でのGPR64抗体の使用や、インビトロ検出アッセイ)では、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれかを用いることが好ましかろう。
【0043】
“キメラ抗体”は、免疫グロブリン分子の内部で、(a)定常領域またはその一部が改変、置換、交換されていて、抗原結合部位(可変領域)が、別のクラス、エフェクター機能部、種、または変化したクラス、エフェクター機能部、種の定常領域と連結しているか、この免疫グロブリン分子に新しい性質を付与するまったく別の分子(例えば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬など)と連結している免疫グロブリン分子、あるいは(b)可変領域またはその一部が、抗原特異性を持つ可変領域を用いて改変、置換、交換されている免疫グロブリン分子である。キメラ抗体を作る方法は従来技術において公知である。例えばMorrison、Science、第229巻、1202〜1207ページ、1985年;Oi他、BioTechniques、第4巻、214〜221ページ、1986年;Gillies他、J. Immunol. Methods、第125巻、191〜202ページ、1989年;アメリカ合衆国特許第5,807,715号、第4,816,567号、第4,516,397号を参照のこと(これらは、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0044】
“ヒト化抗体”または“ヒト化免疫グロブリン”は、ヒトの枠組構造と、非ヒト抗体からの少なくとも1つの(好ましくはすべての)相補性決定領域(CDR)とを含んでおり、存在しているどの定常領域も、ヒト免疫グロブリンの定常領域と実質的に同じである(すなわち少なくとも約85〜90%、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する)免疫グロブリンを意味する。したがってヒト化免疫グロブリンでおそらくCDRを除くすべての部分は、1つ以上の天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。したがってこのようなヒト化抗体は、元の完全なヒト可変領域が非ヒト種からの対応する配列によって置換されている箇所が実質的に1つ未満であるキメラ抗体である(アメリカ合衆国特許第4,816,567号)。ヒト枠組構造領域の枠組構造残基は、抗原の結合を変えること、好ましくは改善することを目的として、CDRドナー抗体からの対応する残基で置換することがしばしばある。こうした枠組構造置換は、従来技術においてよく知られている方法で同定される。例えば、CDRと枠組構造残基の相互作用をモデル化して抗原が結合する上で重要な枠組構造残基を同定し、配列を比較して特定の位置にある通常とは異なる枠組構造残基を同定するという方法がある。例えばQueen他、アメリカ合衆国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、第6,180,370号を参照のこと(それぞれの特許は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。抗体は従来技術で知られている多彩な方法でヒト化することができる。例えばCDRグラフティング(ヨーロッパ特許第239,400号;PCT公開公報WO 91/09967;アメリカ合衆国特許第5,225,539号、第5,530,101号、第5,585,089号)、ベニアリングまたはリサーフェシング(ヨーロッパ特許第592,106号、第519,596号;Padlan、Mol. Immunol.、第28巻、489〜498ページ、1991年;Studnicka他、Prot. Eng.、第7巻、805〜814ページ、1994年;Roguska他、Proc. Natl. Acad. Sci.、第91巻、969〜973ページ、1994年)、鎖シャッフリング(アメリカ合衆国特許第5,565,332号)。なおこれら文献は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする。
【0045】
ヒト患者の治療には完全な“ヒト”抗体が望ましかろう。ヒト抗体は、従来技術で知られている多彩な方法で作ることができる。例えば、ヒト免疫グロブリン配列からの抗体ライブラリを利用する上記のファージ提示法がある。アメリカ合衆国特許第4,444,887号、第4,716,111号;PCT公開公報WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、WO 91/10741を参照のこと(これら特許文献は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。ヒト抗体は、機能する内在性免疫グロブリンは発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子は発現できるトランスジェニック・マウスを用いて作ることもできる。ヒト抗体を作るためのこの方法の概要に関しては、LonbergとHuszar、Int. Rev. Immunol.、第13巻、65〜93ページ、1995年を参照のこと。ヒト抗体とヒト・モノクローナル抗体の製造方法、そのような抗体の製造プロトコルの詳細に関しては、例えばPCT公開公報WO 98/24893、WO 92/01047、WO 96/34096、WO 96/33735;ヨーロッパ特許第0,598,877号、アメリカ合衆国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、第5,885,793号、第5,916,771号、第5,939,598号を参照のこと(これら特許文献は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。さらに、アブジェニックス社(フレモント、カリフォルニア州)やメダレックス社(プリンストン、ニュージャージー州)などの企業は、選択した抗原に対するヒト抗体を、上記の方法と似た方法を利用して提供することができる。
【0046】
選択したエピトープを認識する完全なヒト抗体は、“ガイド式選択”と呼ばれる方法を利用して作り出すことができる。この方法では、選択された非ヒト・モノクローナル抗体(例えばマウス抗体)を利用し、同じエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択をガイドする(Jespers他、Biotechnology、第12巻、899〜903ページ、1988年)。
【0047】
“霊長類化抗体”という用語は、サルの可変領域とヒトの定常領域を含む抗体を意味する。霊長類化抗体の製造方法は、従来技術で知られている。例えばアメリカ合衆国特許第5,658,570号、第5,681,722号、第5,693,780号を参照のこと(これら特許文献は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0048】
“エピトープ”または“抗原性決定基”は、抗原上で抗体と結合する部位を意味する。エピトープは、連続したアミノ酸と、タンパク質の三次折り畳みによって隣り合わせになった連続していないアミノ酸の両方から形成することができる。連続したアミノ酸から形成されるエピトープは、変性用溶媒に曝露されたときにも一般に保持されるのに対し、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、変性用溶媒で処理すると一般に失われる。エピトープは、独自の空間的配座の中に、一般に少なくとも3個、より一般的には少なくとも8〜10個のアミノ酸を含んでいる。エピトープの空間的配座を明らかにする方法としては、例えば、X線結晶学、二次元核磁気共鳴などの方法がある。例えば『分子生物学におけるエピトープ・マッピングのプロトコル』、第66巻、Glenn E. Morris編、1996年を参照のこと。
【0049】
“IgGクラス”の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4という抗体を意味する。重鎖と軽鎖におけるアミノ酸残基の番号は、EUインデックスの番号である(Kabat他、『免疫学的に興味深いタンパク質の配列』、第5版、国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州、1991年;この中で使用されているEU番号スキーム)。
【0050】
“GPR64”という用語は、核酸とポリペプチドの多型変異体、対立遺伝子、突然変異体、種間ホモログで、(1)好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000個またはそれ以上のヌクレオチドからなる領域において、配列ID番号1のヌクレオチド配列と約60%以上の配列同一性を有する、すなわち65%、70%、75%、80%、85%、90%、より好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するもの;あるいは(2)配列ID番号1のヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列を含む免疫原に対する抗体(例えばポリクローナル抗体)、あるいはその変異体で保存的変更がなされたものと結合するもの;あるいは(3)厳しいハイブリダイゼーション条件下で配列ID番号1の核酸配列またはその相補体と特異的にハイブリダイズするもの;あるいは(4)好ましくは少なくとも約25、50、100、200個またはそれ以上のアミノ酸からなる領域において、配列ID番号2のアミノ酸配列と約60%以上の配列同一性を有する、すなわち65%、70%、75%、80%、85%、90%、より好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するものを意味する。ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、一般に哺乳動物に由来する。哺乳動物としては、霊長類(例えばヒト);囓歯類(例えばラット、マウス、ハムスター);ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、あるいはその他の哺乳動物が挙げられる。“GPR64ポリペプチド”と“GPR64ポリヌクレオチド”には、天然の形態と組み換え形態の両方が含まれる。
【0051】
“完全長”のGPR64タンパク質または核酸は、天然の1種類以上の野生型GPR64ポリヌクレオチドまたは野生型GPR64ポリペプチド配列に通常含まれるすべてのエレメントを含む、卵巣がんのポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列、またはその変異体の配列を意味する。例えば完全長GPR64核酸は、一般に、天然の完全長タンパク質をコードしているすべてのエキソンを含んでいる。“完全長”になるのは、翻訳後プロセシングまたはスプライシング(例えば選択的スプライシング)のさまざまな段階の前でも後でもよい。
【0052】
この明細書では、“生物サンプル”は、例えばGPR64タンパク質、ポリヌクレオチド、転写産物いずれかの核酸またはポリペプチドを含む生物の組織または体液である。このようなサンプルとしては、霊長類(例えばヒト)または囓歯類(例えばマウスやラット)から単離した組織が挙げられる。生物サンプルとしては、組織の切片(例えば生検サンプル、剖検サンプル)、組織学的検査を目的として採取した凍結切片、血液、血漿、血清、痰、糞便、涙、粘液、毛髪、皮膚なども可能である。生物サンプルには、移植片や、患者の組織に由来する一次細胞培養物および/または形質転換された細胞培養物も含まれる。生物サンプルは、一般に真核生物から得られる。真核生物として最も好ましいのは哺乳動物(霊長類(例えばチンパンジーやヒト);ウシ;イヌ;ネコなど);囓歯類(例えばモルモット、ラット、マウス);ウサギ;あるいは鳥類;爬虫類;魚である。
【0053】
“生物サンプルを用意する”は、本発明の方法で使用する生物サンプルを得ることを意味する。これは、動物から細胞サンプルを取り出すことによって実現されることが最も多いが、以前に単離した細胞(例えば別の時および/または別の目的で別の人から単離した細胞)を用いることや、本発明の方法を生体内で実施することによっても実現できる。治療歴または転帰歴がわかっているアーカイブの組織が特に有用であろう。
【0054】
2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列という文脈における“一致する”またはパーセント“一致”という用語は、BLASTまたはBLAST2.0という配列比較アルゴリズムを以下に説明するデフォルト・パラメータにして用いて測定したときに、あるいは手でアラインメント作業を行なって目で調べたときに、アミノ酸残基またはヌクレオチドの全体または所定の割合が同じである(すなわち、比較ウインドウまたは指定された領域で対応が最大となるように並べて比較したとき、特定の領域において、約60%の同一性を有する、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する)2つ以上の配列または部分配列を意味する(例えばNCBIのウェブ・サイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTなどを参照のこと)。このような配列は、“実質的に同一”と言われる。この定義は、テスト配列の相補体にも関する、あるいは適用することができる。この定義には、欠失および/または付加のある配列、置換のある配列、天然の多型変異体や対立遺伝子変異体、人工的な変異体も含まれる。以下に説明するように、好ましいアルゴリズムはギャップなどを説明することができる。同一性は、長さが少なくとも約25個のアミノ酸またはヌクレオチドの領域に存在していることが好ましく、長さが50〜100個のアミノ酸の領域に存在していることがさらに好ましい。
【0055】
配列を比較するためには一般に1つの配列が参照配列として機能し、テスト配列をこの参照配列と比較する。配列比較アルゴリズムを利用する場合には、テスト配列と参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合には次いで座標を指定し、配列アルゴリズム・プログラムのパラメータを指定する。デフォルトのプログラム・パラメータを利用できること、あるいは別のパラメータを指定できることが好ましい。次に、配列比較アルゴリズムが、プログラム・パラメータに基づき、参照配列に対するテスト配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0056】
この明細書では、“比較ウインドウ”に、連続位置の数が、20〜600、通常は約50〜約200、より一般的には約100〜約150からなるグループの中から選択した1つの数である1つのセグメントを参照することが含まれる。このセグメントの中では、ある配列と参照配列のアラインメントを最適化した後、その配列を参照配列と比較する。比較のために複数の配列をアラインメントする方法は従来技術において周知である。比較のために複数の配列のアラインメントを最適化するには、例えばSmithとWaterman(Adv. Appl. Math.、第2巻、482ページ、1981年)の局所的相同性アルゴリズムを用いる、あるいはNeedlemanとWunschの相同性アラインメント・アルゴリズム(J. Nol. Biol.、第48巻、443ページ、1970年)を用いる、あるいはPearsonとLipmanの類似性検索法(Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA、第85巻、2444ページ、1988年)を用いる、あるいはこれらのアルゴリズムをコンピュータ化した方法(ウィスコンシン・ジェネティックス・ソフトウエア・パッケージ(ジェネティックス・コンピュータ・グループ、575サイエンス・ドクター、マディソン、ウィスコンシン州)のGAP、BESTFIT、FASTA、TFASTA)を用いる、あるいは手でアラインメント作業を行なって目で調べる(例えば『分子生物学における最新プロトコル』(Ausbel他編、1995年増補版)を参照のこと)。
【0057】
パーセント配列同一性と配列類似性を明らかにするのに適したアルゴリズムの好ましい具体例としては、BLASTアルゴリズムとBLAST2.0アルゴリズムがある。これらは、Altschul他、Nuc. Acids Res.、第25巻、3389〜3402ページ、1977年と、Altschul他、J. Mol. Biol.、第215巻、403〜410ページ、1990年に記載されている。BLASTとBLAST2.0を利用し、この明細書に記載したパラメータを用いて、本発明の核酸とタンパク質に関するパーセント配列同一性を明らかにする。BLAST分析を行なうためのソフトウエアは、国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から自由に入手することができる。このアルゴリズムは、まず最初に、検索配列の中にある長さWの短いワードを同定することにより、高得点配列ペア(HSP)のうちで、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントしたときに何らかのプラスの値である閾値Tと一致するもの、あるいはその閾値を満たすものを同定する操作を含んでいる。Tは、近傍ワード得点閾値と呼ばれる(Altschul他、上記文献)。最初にヒットした近傍ワード群が、そのワードを含むより長いHSPを見つける検索を開始するための種となる。ヒットしたワードは、累積アラインメント得点が大きくなれる限り、それぞれの配列に沿って両方向に延長される。累積アラインメント得点は、例えばヌクレオチド配列に関し、パラメータM(一致する残基ペアに関する報酬得点;常に0より大)とN(一致しない残基に関するペナルティ得点;常に0未満)を用いて計算される。アミノ酸配列に関しては、得点マトリックスを用いて累積得点を計算する。ヒットしたワードのそれぞれの方向への延長を停止させるのは、累積アラインメント得点が、到達する最大値から量Xだけはずれたとき;あるいは、負の得点になる残基のアラインメントが1つ以上累積することで累積アラインメント得点が0またはそれよりも小さくなったとき;あるいは、いずれかの配列の端部に到達したときである。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、Xは、アラインメントの感度と速度を決定する。(ヌクレオチド配列のための)BLASTNプログラムでは、デフォルトとして、ワード長(W)を11、期待値(E)を10、M=5、N=-4にして両方の鎖の比較を行なう。アミノ酸配列に関しては、BLASTPプログラムにおいて、デフォルトとして、ワード長を3、期待値(E)を10、BLOSUM62得点マトリックス(例えばHenikoffとHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89巻、10915ページ、1989年を参照のこと)のアラインメント(B)を50、M=5、N=-4にして両方の鎖の比較を行なう。
【0058】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計的分析も行なう(例えばKarlinとAltschul、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA、第90巻、5873〜5787ページ、1993年を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって与えられる類似性の1つの指標は、最小和確率(P(N))である。P(N)は、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が偶然に一致する確率の指標となる。例えばテストする核酸を参照核酸と比較したときの最小和確率が約0.2未満である(約0.01未満であることがより好ましく、約0.001未満であることがさらに好ましい)場合には、その核酸が参照配列と類似していると考えられる。Log値としては、大きな数(例えば、5、10、20、30、40、50、70、90、110、150、170など)をマイナスにした値が可能である。
【0059】
2つの核酸配列またはポリペプチド配列が実質的に同一であることの1つの指標は、以下に説明するように、第1の核酸によってコードされているポリペプチドが、第2の核酸によってコードされているポリペプチドに対する抗体と免疫学的に交差反応することである。したがってあるポリペプチドが一般に第2のポリペプチドと実質的に同一であるのは、例えばこれら2つのポリペプチドが保存された置換による違いだけを有する場合である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、以下に説明するように、2つの分子またはその相補体が、ストリンジェント条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であることのさらに別の指標は、同じプライマーを用いてその2つの配列を増幅できることである。
【0060】
“宿主細胞”は、天然の細胞であるか、あるいは発現ベクターを含んでいて、その発現ベクターの複製または発現を支援する形質転換細胞である。宿主細胞としては、培養した細胞、移植片、生体内の細胞などが可能である。宿主細胞は、原核細胞(例えば大腸菌)、または真核細胞(例えば酵母、昆虫、両生類、哺乳動物の細胞で、具体的にはCHO、HeLaなど)にすることができる(例えばアメリカ基準培養物コレクションのカタログまたはwww.atcc.orgを参照のこと)。
【0061】
“単離された”、“精製された”、“生物学的に純粋な”は、本来の状態で一般に付随している成分から実質的または本質的に自由な状態になっている材料について用いる。純度と均一性は、一般に、分析化学の技術(例えばポリアクリルアミド・ゲル電気泳動、高性能液体クロマトグラフィ)を利用して測定される。調製物の中に優勢な化学物質として存在するタンパク質または核酸は、実質的に精製されている。特に、単離された核酸は、天然の状態で遺伝子に隣接していて、その遺伝子によってコードされている以外のタンパク質をコードしているいくつかのオープン・リーディング・フレームから分離されている。いくつかの実施態様における“精製された”という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドを生み出すことを意味する。これは、核酸またはタンパク質が少なくとも85%の純度であるという意味であることが好ましい。より好ましいのは純度が少なくとも95%の意味であることであり、最も好ましいのは純度が少なくとも99%の意味であることである。他の実施態様における“精製する”または“精製”は、精製することになる組成物から少なくとも1つの汚染物を除去することを意味する。この意味では、精製によって精製された化合物が均一になる(例えば純度100%である)必要はない。
【0062】
“ポリペプチド”、“ペプチド”、“タンパク質”という用語は、この明細書ではどれも同じ意味で使用し、アミノ酸残基からなるポリマーを意味する。これらの用語は、1個以上のアミノ酸残基において対応する天然のアミノ酸が人工的な化学的ミメティックになったアミノ酸ポリマーのほか、天然アミノ酸からなるポリマー、修飾された残基を含むポリマー、天然には存在しないアミノ酸からなるポリマーに適用される。
【0063】
“アミノ酸”という用語は、天然アミノ酸と合成アミノ酸のほか、天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログとアミノ酸ミメティックを意味する。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされたアミノ酸と、後から修飾されたアミノ酸(例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、O-ホスホセリン)である。アミノ酸アナログは、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を有する(例えば水素、カルボキシル基、アミノ基、R基にα炭素が結合している)化合物を意味し、具体的には、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなどがある。このようなアナログは、修飾されたR基を備えること(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を備えることができるが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸ミメティックは、アミノ酸の一般的な化学的構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化合物を意味する。
【0064】
この明細書では、アミノ酸は、一般に知られている3文字コードで、あるいはIUPAC-IUB生化学命名法委員会が勧めている1文字コードで指定することができる。同様に、ヌクレオチドも一般に受け入れられている1文字コードで指定することができる。
【0065】
“保存的変更がなされた変異体”は、アミノ酸配列と核酸配列の両方に適用される。個々の核酸配列に関しては、保存的変更がなされた変異体は、例えば本質的に同じか関連した天然の連続配列と同じアミノ酸配列か実質的に同じアミノ酸配列をコードしている核酸を意味する(実質的に同じ場合には、あるアミノ酸配列を核酸がコードしていない)。遺伝暗号は縮重しているため、たいていのタンパク質は、機能が同じ多数の核酸によってコードされている。例えばコドンGCA、GCC、GCG、GCUはすべて、アラニンというアミノ酸をコードしている。したがってあるコドンによってアラニンを指定するすべての位置で、コードされるポリペプチドを変化させることなく、そのコドンを上記の対応する別のコドンに変えることができる。このような核酸の変異は“サイレント変異”であり、保存的変更がなされた変異の一種である。ポリペプチドをコードしている本明細書記載のどの核酸配列にも、核酸のサイレント変異がある。当業者であれば、所定の状況においては、核酸内の各コドン(AUGとTGGは除く。前者は、通常はメチオニンを指定する唯一のコドンであり、後者は、通常はトリプトファンを指定する唯一のコドンである)を変えて機能的に同じ分子を作り出せることを知っているであろう。したがってあるポリペプチドをコードしている核酸のサイレント変異は、発現産物に関して記載された配列でははっきりわからないことがしばしばあるが、実際のプローブ配列ではそうではない。
【0066】
アミノ酸配列に関しては、当業者であれば、核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、タンパク質配列における個々の置換、欠失、付加により、単一のアミノ酸またはコードされた配列のわずかな割合のアミノ酸において変化、付加、欠失がある変異体は、このような変化の結果としてあるアミノ酸が化学的に似たアミノ酸で置換されている“保存的変更がなされた変異体”であることを知っているであろう。機能が似たアミノ酸を与える保存された置換の表は、従来技術において周知である。保存的変更がなされたこのような変異体は本発明の多型変異体、種間ホモログ、対立遺伝子に追加され、これらが除外されることはない。一般に、互いの間でなされる保存された置換は、1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);8)システイン(C)、メチオニン(M)である(例えばCreighton、『タンパク質』、1984年を参照のこと)。
【0067】
巨大分子の構造(例えばポリペプチドの構造)は、有機的組織体のさまざまなレベルという観点で説明することができる。この有機的組織体に関する一般的な議論は、例えばAlberts他、『細胞の分子生物学』(第3版、1994年)と、CantorとSchimmel、『生物物理化学パート1:生物の巨大分子の立体配座』(1980年)を参照されたい。“一次構造”は、特定のペプチドのアミノ酸配列を意味する。“二次構造”は、ポリペプチドの内部で局所的に秩序化された三次元構造を意味する。この構造はドメインとして一般に知られている。ドメインはポリペプチドの一部であり、そのポリペプチドのコンパクトな単位を形成することがしばしばあり、一般にアミノ酸25〜約500個の長さである。典型的なドメインは組織化の程度がより小さなセクション(例えばシートや螺旋)からなる。“三次構造”は、ポリペプチド・モノマーの完全な三次元構造を意味する。“四次構造”は、通常は独立な三次単位が非共有結合することによって形成された三次元構造を意味する。異方項は、エネルギー項としても知られている。
【0068】
“標識”または“検出可能部”は、分光手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段、他の物理的手段によって検出できる組成物である。例えば有用な標識として、蛍光染料、高電子密度試薬、酵素(例えばELISAで一般に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、コロイド状の金、ナノ結晶(例えば量子ドット)、ハプテン、タンパク質や、例えば放射性標識をペプチドに組み込むことによって検出可能にできる他の要素、ペプチドと特異的に反応する抗体の検出に用いられる他の要素が挙げられる。放射性同位体は、例えば3H、14C、32P、35S、125Iである。本発明のタンパク質に対する抗体を用いる場合には、後で説明するように、放射性同位体を毒性部として用いる。標識は、GPR64核酸、タンパク質、抗体の任意の位置に組み込むことができる。抗体を標識に共役させる従来法のうちの任意の方法を利用することができる。例えば、Hunter他、Nature、第144巻、945ページ、1962年;David他、Biochemistry、第13巻、1014ページ、1974年;Pain他、J. Immunol. Meth、第40巻、219ページ、1981年;Nygren, J.、Histochem. and Cytochem.、第30巻、407ページ、1982年に記載されている方法がある。放射性標識したペプチドまたは放射性標識した抗体組成物の寿命は、放射性標識したペプチドまたは抗体を安定化させて分解されないよう保護する物質を付加することによって延ばすことができる。放射性標識したペプチドまたは抗体を安定化させる任意の物質または物質の組み合わせを利用することができる。そのような物質として、アメリカ合衆国特許第5,961,955号に開示されている物質がある。
【0069】
“エフェクター”、“エフェクター部”、“エフェクター成分”は、リンカーまたは化学的結合による共有結合、非共結合、イオン結合、ファン・デル・ワールス結合、静電結合、水素結合を通じて抗体に結合した分子である。“エフェクター”としては、例えば検出部となる多彩な分子が可能である。例えば、放射性化合物、蛍光化合物、酵素または基質、タグ(例えばエピトープ・タグ)、毒素、活性化可能な部分、化学療法剤または細胞毒性剤、化学走性誘因物質、リパーゼ;抗生物質;“硬い”放射線(例えばβ線)を放出する放射性同位体などがある。
【0070】
この明細書で使用する“細胞毒性剤”という用語は、細胞の機能を抑制または阻止する物質および/または細胞を破壊する物質を意味する。この用語には、放射性同位体(例えば131I、125I、90Y、186Re)、化学療法剤、毒素(例えば酵素で活性化する細菌の毒素、真菌の毒素、植物由来の毒素、動物由来の毒素、あるいはこれらの断片)も含まれるものとする。
【0071】
“化学療法剤”は、がんの治療に役立つ化合物である。化学療法剤の具体例としては、アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(“Ara-C”)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソイド(例えばパクリタキセル(タキソテール、ブリストル-マイヤー・スクウィブ・オンコロジー社、プリンストン、ニュージャージー州))、ドキセタキセル(タキソテレ、ローヌ-プーラン・ロレール社、アントニー、フランス国)、トキソテール、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イフォスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラマイシン(アメリカ合衆国特許第4,675,187号を参照のこと)、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン、アクチノマイシンD、VP-16、クロラムブシル、他の関連したナイトロジェンマスタードなどがある。この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節または抑制するホルモン剤(タモキシフェン、オナプリストン)も含まれる。
【0072】
この明細書で使用する“基剤”としては、その基剤に曝露される細胞または哺乳動物に対して使用する用量および濃度で毒性のない、薬理学的に許容可能な基剤、賦形剤、安定剤が挙げられる。生理学的に許容可能な基剤は、pH緩衝水溶液であることが多い。生理学的に許容可能な基剤の具体例としては、リン酸塩、クエン酸塩、他の有機酸、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、リシン);単糖類、二糖類、他の炭水化物(例えばグルコース、マンノース、デキストリン);キレート剤(例えばEDTA);糖アルコール(例えばマンニトール、ソルビトール);塩形成対イオン(例えばナトリウム);非イオン性界面活性剤(例えばトゥイーン(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、プルロニックス(登録商標))などがある。
【0073】
がんの治療に関する“治療に有効な量”は、以下に示す効果のうちの1つ以上を起こすことのできる量を意味する:(1)腫瘍の成長をある程度抑制する(例えば成長速度の低下または成長の完全な停止);(2)腫瘍細胞の数の減少;(3)腫瘍のサイズ減少;(4)周囲の臓器への腫瘍細胞の浸潤抑制(すなわち減少、速度低下、完全な停止);(5)転移の抑制(すなわち減少、速度低下、完全な停止);(6)抗腫瘍免疫応答の増大(しかし腫瘍が退縮したり排除されたりするとは限らない);(7)腫瘍に付随する1つ以上の症状のある程度の緩和。腫瘍の治療を目的としたGPR64抗体の“治療に有効な量”は、経験的に、あるいは定型的な方法で決定することができる。
【0074】
“治療”は、治療措置と予防措置の両方を意味する。治療を必要とする人には、すでに異常を抱えている人と、異常を予防しようとする人が含まれる。
【0075】
例えば細胞、核酸、タンパク質、ベクターに関して用いるときの“組み換え”という用語は、細胞、核酸、タンパク質、ベクターが、異種の核酸またはタンパク質の導入によって変更されていること、あるいは元の核酸またはタンパク質が変化したことによって変更されていること、あるいは細胞がそのように変更された細胞に由来することを意味する。したがって、例えば組み換え細胞は、細胞の元々の形態(非組み換え形態)では見られない遺伝子を発現する、あるいは、組み換えられていなければ異常に発現したり、発現が少なかったり、まったく発現しなかったりする元の遺伝子を発現する。したがってこの明細書では、“組み換え核酸”という用語は、自然界で通常見られる形態に対して例えばポリメラーゼやエンドヌクレアーゼを用いて試験管内で核酸を操作することによって初めて形成された核酸を意味する。この方法により、さまざまな配列を機能上リンクさせることができる。したがって線状の単離された核酸も、通常は接合していないDNA分子同士を試験管内で連結することによって形成した発現ベクターも、両方とも本発明の目的のための組み換えであると見なされる。組み換え核酸が作られて宿主細胞または宿主生物に導入されると、その組み換え核酸は、非組み換えによって、すなわち試験管内の操作ではなく、宿主細胞の生体内細胞機構を利用して、複製を行なう。しかしこのような核酸は、組み換えによって作られると、続く複製が非組み換えによって行なわれたとしても、本発明の目的のための組み換えであると見なされる。同様に、“組み換えタンパク質”は、組み換え技術を利用して(すでに説明したように、例えば組み換え核酸の発現を通じて)作ったタンパク質である。
【0076】
核酸の一部分に関して用いるときの“異種”という用語は、その核酸が、自然界では通常は互いに同じ関係になっていることがない2つ以上の配列を含むことを意味する。例えば新しい機能的核酸を形成するように配置された互いに関係のない遺伝子からの2つ以上の配列(例えば1つの供給源からのプロモーターと、別の供給源からのコード領域)を有する核酸は、一般に組み換えによって作られる。同様に、異種タンパク質は、自然界で互いに同じ関係になっていることのない2つ以上の部分配列(例えば融合タンパク質)をしばしば意味する。
【0077】
“プロモータ”は、核酸の転写を指示する核酸制御配列のアレイとして定義される。この明細書では、プロモーターに、転写開始部位の近くにある必要な核酸配列(ポリメラーゼII型プロモーターの場合にはTATAエレメント)が含まれる。プロモーターは、必要に応じ、遠位エンハンサー・エレメントまたはリプレッサー・エレメントも含んでいる。これらのエレメントは、転写開始部位から最大で数千塩基対離すことができる。“構成的”プロモーターは、たいていの環境条件や成長条件のもとで活性なプロモーターである。“誘導的”プロモーターは、環境や成長を制御した状態で活性なプロモーターである。“機能上リンクした”という表現は、核酸発現制御配列(例えばプロモーター、転写因子結合部位アレイ)と第2の核酸配列の間が機能的に結びついていて、核酸発現制御配列が、第2の配列に対応する核酸の転写を指示することを意味する。
【0078】
“発現ベクター”は、宿主細胞の中で特定の核酸を転写できるようにする特定の核酸エレメント群を用い、組み換えまたは合成によって作った核酸構造体である。発現ベクターとしては、プラスミドの一部、ウイルスの一部、核酸断片が可能である。一般に、発現ベクターは、プロモーターと機能上リンクしていて転写されることになる核酸を含んでいる。
【0079】
抗体と“特異的(または選択的)に結合する”、あるいは“特異的(または選択的)に免疫反応する”という表現は、タンパク質またはペプチドに関して用いる場合には、いろいろなタンパク質または他の生物製剤が混じった集団の中に目的とするタンパク質が存在していることを決定づける結合反応を意味する。したがって指定されたイムノアッセイの条件下では、特定の抗体が特定のタンパク質配列と、バックグラウンドの少なくとも2倍(一般には10〜100倍超)結合する。
【0080】
このような条件下で抗体に特異的に結合するには、特定のタンパク質に対する特異性に関して選択された抗体が必要とされる。例えば特定のタンパク質、多型変異体、対立遺伝子、オルソログ、保存的変更がなされた変異体、スプライス変異体、これらのものの一部に対するポリクローナル抗体は、GPR64と特異的に免疫反応するが、他のタンパク質とは免疫反応しないポリクローナル抗体だけが得られるように選択することができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を差し引くことによって実現できる。多彩なイムノアッセイの形式を利用し、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択することができる。あるタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するには、例えば固相ELISAイムノアッセイが一般に利用されている(特異的な免疫反応性を決定するのに利用できるイムノアッセイの形式と条件に関しては、例えばHarlowとLane、『抗体、実験室マニュアル』、1988年を参照のこと)。
【0081】
“がん”、“がん性”という用語は、哺乳動物において細胞の成長が調節されていないことを一般に特徴とする生理学的状態を記述している。がんの具体例としては、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病などがある。このようながんのさらに詳細な具体例としては、頭部がん、前立腺がん、大腸がん、扁平上皮細胞がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胃腸がん、膵臓がん、頚部グリア細胞腫がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓がん、外陰部のがん、甲状腺がん、肝細胞癌、頭部と首のさまざまながんがある。
【0082】
この明細書では、“腫瘍”は、あらゆる腫瘍細胞(悪性でも良性でもよい)の成長および増殖と、前がん状態とがん状態のあらゆる細胞および組織を意味する。
【0083】
核酸からのGPR64ポリペプチドの発現
【0084】
本発明の核酸を利用してGPR64ポリペプチドを発現する多彩な発現ベクターを作り、次いでそのGPR64ポリペプチドを用いて本発明の抗体を発生させることができる。それについて以下に説明する。発現ベクターと組み換えDNA技術は当業者によく知られており、タンパク質を発現させるのに利用されている。発現ベクターとしては、自己複製する染色体外ベクター、あるいは宿主のゲノムと一体化するベクターが可能である。一般に、このような発現ベクターには、GPR64タンパク質をコードしている核酸と機能上リンクした、転写と翻訳を制御する核酸が含まれている。“制御配列”という用語は、特定の宿主生物の中で機能上リンクしたコード配列を発現させるのに用いるDNA配列を意味する。原核生物に適した制御配列は、例えば、プロモーターと、必要に応じて存在するオペレータ配列と、リボソーム結合部位とを含んでいる。真核細胞では、プロモーターと、ポリアデニル化シグナルと、エンハンサーが用いられていることが知られている。
【0085】
核酸は、別の核酸配列と機能上関係がある状態にされたときに“機能上リンクしている”。例えば前駆配列または分泌リーダーのためのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前駆タンパク質として発現するとき、そのポリペプチドのDNAと機能上リンクしている。プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響を与えるとき、そのコード配列と機能上リンクしている。リボソーム結合部位は、翻訳を容易にする位置にあるとき、コード配列と機能上リンクしている。一般に、“機能上リンクしている”は、リンクしているDNA配列が近接していることを意味し、分泌リーダーの場合には近接していて読み取り相にあることを意味する。しかしエンハンサーは、近接している必要はない。リンクは、一般に、適切な制限部位における連結によって実現される。そのような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドからなるアダプタまたはリンカーを通例に従って用いる。転写または翻訳を調節する核酸は、一般に、GPR64タンパク質の発現に用いる宿主細胞に適したものにする。多彩な宿主細胞のための適切な多くのタイプの発現ベクターと適切な制御配列が、従来技術において知られている。
【0086】
一般に、転写または翻訳を調節する配列は、プロモーター配列と、リボソーム結合部位と、転写開始配列と、転写停止配列と、翻訳開始配列と、翻訳停止配列と、エンハンサー配列またはアクチベータ配列とを含むことができるが、含まれるものはこれだけではない。好ましい一実施態様では、調節配列に、プロモーターと、転写開始配列と、転写停止配列が含まれている。
【0087】
プロモーター配列は、構成的プロモーターまたは誘導的プロモーターを含んでいる。プロモーターは、天然のプロモーターでもよいし、ハイブリッド・プロモーターでもよい。ハイブリッド・プロモーターは2つ以上のプロモーター・エレメントが合体したものであるが、やはり従来技術で知られており、本発明において有用である。
【0088】
さらに、発現ベクターは追加のエレメントを含んでいてもよい。発現ベクターは例えば2つの複製系を備えることができるため、2つの生物でその機能を維持することができる(例えば哺乳動物または昆虫の細胞で発現させ、原核生物宿主でクローニングと増幅をさせる)。さらに、複数の発現ベクターを一体化するため、発現ベクターは、宿主細胞のゲノムと相同な少なくとも1つの配列(好ましくは、発現構造体に隣接する2つの相同な配列)を含んでいる。一体化したベクターは、そのベクター内に組み込むのに適した相同配列を選択することにより、宿主細胞の特定の遺伝子座に向かわせることができる。複数のベクターを一体化するための構造体は、従来技術においてよく知られている(例えばFernandezとHoeffler、上記文献)。
【0089】
さらに、好ましい一実施態様では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞を選択できるようにするための選択マーカー遺伝子を含んでいる。選択遺伝子は従来技術においてよく知られており、使用する宿主細胞が何であるかによって異なる。
【0090】
本発明のGPR64タンパク質は、GPR64タンパク質をコードしている核酸を含む発現ベクターで形質転換した宿主細胞を、GPR64タンパク質の発現を誘導または誘起する適切な条件下で培養することによって産生される。PR64タンパク質の発現に適した条件は、発現ベクターおよび宿主細胞として何を選択するかに応じて異なるが、当業者であれば、定型的な実験または最適化法によって容易に確かめることができる。例えば発現ベクターの中で構成的プロモーターを用いる場合には、宿主細胞の成長と増殖を最適化する必要があろう。それに対して発現ベクターの中で誘導的プロモーターを用いる場合には、誘導のための適切な成長条件が必要になる。さらに、いくつかの実施態様では、回収のタイミングが重要である。例えば昆虫細胞での発現に用いられるバキュロウイルス系は溶解ウイルスであるため、回収するタイミングの選択が産物の収量にとって極めて重要になる可能性がある。
【0091】
適切な宿主細胞としては、酵母の細胞、細菌の細胞、古細菌の細胞、真菌の細胞、昆虫の細胞、動物の細胞(哺乳動物の細胞も含む)が挙げられる。特に興味深いのは、サッカロミセス・セレビジエなどの酵母、大腸菌、枯草菌、Sf9細胞C1129細胞、293細胞、ニューロスポラ細胞、BHK細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)、THP1細胞(マクロファージ細胞系)や、他のさまざまなヒト細胞と細胞系である。
【0092】
好ましい一実施態様では、GPR64タンパク質を哺乳動物の細胞の中で発現させる。哺乳動物発現系も従来技術においてよく知られており、その中にはレトロウイルス系やアデノウイルス系が含まれる。1つの発現ベクター系はレトロウイルス・ベクター系であり、例えばPCT/US97/01019やPCT/US97/01048に記載されている(両方とも参考として明らかな形でこの明細書に組み込まれているものとする)。哺乳動物プロモーターとして特に有用なのは、哺乳動物のウイルス遺伝子からのプロモーターである。なぜならウイルス遺伝子は、よく発現することがしばしばあり、しかも宿主の範囲が広いからである。具体的には、SV40初期プロモーター、マウス乳がんウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルス・プロモーター、CMVプロモーター(例えばFernandezとHoeffler、上記文献を参照のこと)などがある。一般に、哺乳動物の細胞が認識する転写終止配列とポリアデニル化配列は、翻訳終止コドンの3'側に位置する調節領域であるため、プロモーター・エレメントととともにコード配列に隣接している。転写ターミネータとポリアデニル化シグナルの具体例としては、SV40に由来するものがある。
【0093】
外来性核酸を哺乳動物宿主や他の宿主に導入する方法は従来技術においてよく知られており、使用する宿主細胞によって異なる。方法としては、デキストランを用いたトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降法、ポリブレンを用いたトランスフェクション、プロトプラスト融合法、電気穿孔法、ウイルス感染法、リポソーム内へのポリヌクレオチドの封入、核へのDNAの直接微量注入などの方法がある。
【0094】
いくつかの実施態様では、GPR64タンパク質を細菌系の中で発現させる。細菌発現系は従来技術においてよく知られている。バクテリオファージからのプロモーターも従来技術においてよく知られており、使用することができる。さらに、合成プロモーターとハイブリッド・プロモーターも有用である。例えばtacプロモーターは、trpプロモーター配列とlacプロモーター配列のハイブリッドである。さらに、細菌のプロモーターには、細菌起源ではないが細菌のRNAポリメラーゼに結合することができて転写を開始する天然のプロモーターが含まれていてもよい。機能するプロモーター配列に加え、効果的なリボソーム結合部位も望ましい。発現ベクターは、細菌内でGPR64タンパク質を分泌するシグナル・ペプチド配列も含むことができる。このタンパク質は、増殖培地(グラム陽性菌)の中に、あるいは細胞の内膜と外膜に挟まれた周辺質空間(グラム陰性菌)の中に分泌される。細菌発現ベクターは、形質転換された細菌株の選択を可能にする選択マーカー遺伝子も含むことができる。適切な選択遺伝子としては、薬剤(例えばアンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、テトラサイクリン)に対する抵抗性を細菌に与える遺伝子が挙げられる。選択マーカーは、生合成遺伝子(例えばヒスチジン、トリプトファン、ロイシンの生合成経路に存在する遺伝子)も含んでいる。これらのエレメントが組み合わさって発現ベクターの中に入っている。細菌のための発現ベクターは従来技術においてよく知られており、特に、枯草菌、大腸菌、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・リビダンスなどのためのベクターがある。従来技術において周知の方法(例えば塩化カルシウム処理、電気穿孔など)で細菌のためのこれら発現ベクターを細菌宿主細胞に入れ、この宿主細胞を形質転換する。
【0095】
一実施態様では、GPR64ポリペプチドを昆虫細胞の中で産生させる。昆虫細胞を形質転換するための発現ベクターと、バキュロウイルスをベースとした発現ベクター、特に後者は、従来技術においてよく知られている。
【0096】
GPR64ポリペプチドは酵母細胞の中で産生させることもできる。酵母発現系は従来技術においてよく知られており、例えば、サッカロミセス・セレビジエ、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・マルトーサ、ハンセヌラ・ポリモルファ、クルイベロミセス・ファギリス、クルイベロミセス・ラクティス、ピキア・ギレルモンディイ、ピキア・パストリス、スキゾサッカロミセス・ポンベ、ヤロウィア・リポリティカなどのためのベクターがある。
【0097】
GPR64ポリペプチドは、従来技術においてよく知られている方法を利用して融合タンパク質にすることもできる。したがって例えばモノクローナル抗体を作るとき、エピトープが小さいことを望むのであれば、GPR64タンパク質を担体タンパク質と融合させて免疫原を形成するとよい。あるいはGPR64タンパク質は、発現を増大させるという理由で、あるいは別の理由で、融合タンパク質にすることもできる。例えばGPR64タンパク質がGPR64ペプチドである場合には、発現を目的として、このペプチドをコードしている核酸を他の核酸とリンクすることができる。
【0098】
GPR64ポリペプチドは、一般に発現後に精製または単離する。GPR64タンパク質は、サンプル中に存在する他の成分が何であるかに応じ、当業者に知られているさまざまな方法で単離または精製することができる。標準的な精製法としては、電気泳動、分子法、免疫法、クロマトグラフィ法(例えばイオン交換クロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィ、アフィニティ・クロマトグラフィ、逆相HPLCクロマトグラフィ)、等電点クロマトグラフィなどがある。GPR64タンパク質は、例えば標準的な抗GPR64タンパク質抗体カラムを用いて精製することができる。限外濾過法やダイアフィルトレーション法も、タンパク質の濃縮と組み合わせると有効である。適切な精製法に関する一般的なガイドとしては、Scopes、『タンパク質の精製』(1982年)を参照のこと。必要な精製の程度は、GPR64タンパク質の用途が何であるかによって異なる。場合によっては精製は不要であろう。
【0099】
当業者であれば、発現するタンパク質は野生型GPR64配列である必要はなく、野生型配列の誘導体または変異体でもよいことが理解できよう。変異体は、一般に、置換変異体、挿入変異体、欠失変異体という3つのクラスのどれかに分類される。変異体は、通常は、カセット、あるいはPCR突然変異誘発、あるいは従来技術でよく知られている他の方法を利用して、タンパク質をコードしているDNA中のヌクレオチドに部位特異的突然変異誘発を起こさせることにより変異体をコードしているDNAを作り出し、その後、上に概略を説明したようにそのDNAを組み換え細胞培地の中で発現させることによって調製する。しかし約100〜150残基までの変異タンパク質断片は、確立された方法を利用した試験管内での合成によって調製することもできる。アミノ酸配列変異体は、変異が所定の性質を持つこと、すなわちGPR64タンパク質のアミノ酸配列に天然に生じる対立遺伝子変異または種同士での変異とは異なる性質を持つこと特徴とする。変異体は、一般に、自然界に生じるアナログと定性的に同じ生物学的活性を示すが、特徴が変化した変異体を選択することもできる。これについては後で詳しく説明する。
【0100】
本発明のGPR64ポリペプチドをある方法で修飾し、GPR64ポリペプチドが別の異種ポリペプチドまたは異種アミノ酸配列に融合したキメラ分子を形成することもできる。一実施態様では、このようなキメラ分子は、GPR64ポリペプチドとタグ・ポリペプチドの融合体を含んでいる。このタグ・ポリペプチドは、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープになる。このエピトープ・タグは、一般に、GPR64ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に位置する。GPR64ポリペプチドにエピトープ・タグが付いたこのような形態は、タグ・ポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープ・タグを付けると、抗タグ抗体を用いたアフィニティ精製を利用することにより、あるいはエピトープ・タグに結合する別のタイプのアフィニティ・マトリックスを利用することにより、GPR64ポリペプチドを容易に精製できる。別の一実施態様では、キメラ分子は、GPR64ポリペプチドが免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域と融合した融合体を含むことができる。二価形態のキメラ分子にするには、IgG分子のFc領域に対してこのような融合させるとよかろう。
【0101】
さまざまなタグ・ポリペプチドとそのそれぞれに対する抗体は、従来技術においてよく知られている。具体例としては、ポリ-ヒスチジン(ポリ-his)タグ、ポリ-ヒスチジン-グリシン(ポリ-his-gly)タグ;HIS6タグ、金属キレート化タグ、flu HAタグ・ポリペプチドとそれに対する抗体12CA5(Field他、Mol. Cell. Biol.、第8巻、2159〜2165ページ、1988年);c-mycタグとそれに対する8F9抗体、3C7抗体、6E10抗体、G4抗体、B7抗体、9E10抗体(Evan他、Mol. Cell. Biol.、第5巻、3610〜3616ページ、1985年);単純ヘルペスウイルスの糖タンパク質D(gD)タグとそれに対する抗体(Paborsky他、Protein Engineering、第3巻(6)、547〜553ページ、1990年)などがある。他のタグ・ポリペプチドとしては、フラグ-ペプチド(Hopp他、BioTechnology、第6巻、1204〜1210ページ、1988年);KT3エピトープ・ペプチド(Martin他、Science、第255巻、192〜194ページ、1992年);チューブリン・エピトープ・ペプチド(Skinner他、J. Biol. Chem.、第266巻、15163〜15166ページ、1991年);T7遺伝子10タンパク質ペプチド・タグ(Lutz-Freyermuth他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第87巻、6393〜6397ページ、1990年)などがある。
【0102】
GPR64ポリペプチドに対する抗体
【0103】
GPR64タンパク質が産生されると、それを用いて例えば免疫療法または免疫診断のための抗体を発生させる。本発明のいくつかの実施態様では、抗体は、表2に示したCDRと同じエピトープを認識する。特定の抗体が別の抗体と同じエピトープを認識する能力は、一般に、1つの抗体が、第2の抗体が抗原と結合するのを競合的に抑制する能力によって決まる。多数ある競合結合アッセイのどれを利用しても、同じ抗原に対する2つの抗体の競合を測定することができる。アッセイの一例は、後出の実施例に記載したビアコア・アッセイである。要するに、このアッセイでは、相互作用物質(例えば異なる抗体)が別の相互作用物質の結合を抑制する能力をテストすることにより、構造に関して結合部位をマッピングすることができる。2つの抗体サンプルを十分な濃度で連続的に注入すると、同じエピトープへの結合が競合する抗体のペアを同定することができる。抗体サンプルは、1回の注入ごとに十分に飽和する能力を持っていなくてはならない。注入した第2の抗体の正味の結合は、結合エピトープ分析にとって意味のある情報である。2つの応答レベルを利用すると、完全な競合と、エピトープが異なることによる競合しない結合の境界を知ることができる。注入した第2の抗体の結合応答量を、同じ結合エピトープおよび異なる結合エピトープの結合と比べることで、エピトープの重複度が決定される。
【0104】
従来技術で知られている一般的な別のイムノアッセイを本発明で利用することができる。例えばサンドイッチELISAアッセイを利用すると、抗体が結合するエピトープによって抗体を区別することができる。これは、ウエルの表面を覆うのに捕獲抗体を用いることによって実現される。次に、準飽和濃度のタグ付き抗原を捕獲表面に付加する。このタンパク質は、特異的抗体とエピトープの相互作用を通じて抗体に結合することになる。洗浄後、検出可能部(例えば、検出抗体である標識付き抗体を有するHRP)に共有結合した第2の抗体をELISAに付加する。この抗体が捕獲抗体と同じエピトープを認識する場合には、この抗体はそのエピトープをもはや結合に利用することはできなくなるため、標的タンパク質と結合できないであろう。しかしこの第2の抗体が標的タンパク質表面の異なるエピトープを認識する場合には、結合することが可能であり、この結合は、適切な基質を利用して活性レベル(したがって抗体の結合)を定量することによって検出できる。バックグラウンドは、単一の抗体を捕獲抗体および検出抗体の両方として用いることによって明らかになる。それに対して最大の信号は、抗原特異的抗体を捕獲し、抗原上のタグに対する抗体を検出することによって明らかにすることができる。バックグラウンドと最大の信号を参考値として用いることにより、抗体をペアにして評価してエピトープの特異性を明らかにすることができる。
【0105】
上記のいずれかのアッセイを利用したとき、第1の抗体の存在下で抗原に対する第2の抗体の結合が少なくとも30%低下している場合(通常は少なくとも約40%、50%、60%、75%低下し、少なくとも約90%低下していることもしばしばある)には、第1の抗体が第2の抗体の結合を競合的に抑制すると考えられる。
【0106】
ポリクローナル抗体の調製法は当業者にはよく知られている(例えばColigan、上記文献;HarlowとLane、上記文献)。ポリクローナル抗体は、例えば免疫感作剤と必要に応じてアジュバントを1回以上注入することにより、哺乳動物の体内で作り出すことができる。一般に、免疫感作剤および/またはアジュバントは、多数回の皮下注射または腹腔内注射によって哺乳動物に注入する。免疫感作剤としては、図面に示した核酸によってコードされるタンパク質またはその断片、あるいはその融合タンパク質が可能である。免疫感作する哺乳動物の体内で免疫を生じさせることが知られているタンパク質に免疫感作剤を共役させると有用であろう。免疫を生じさせるこのようなタンパク質の具体例としては、スカシガイのヘモシアニン、血清アルブミン、ウシのチログロブリン、ダイズのトリプシンインヒビターなどが挙げられる。使用可能なアジュバントの具体例としては、フロイントの完全アジュバントやMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコール酸)などが挙げられる。免疫感作のプロトコルは、当業者であれば特別な実験なしに選択することができよう。
【0107】
抗体はモノクローナル抗体でもよい。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を利用して調製することができる。ハイブリドーマ法は、例えばKohlerとMilstein、Nature、第256巻、495ページ、1975年に記載されている。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター、あるいは他の適切な宿主動物に免疫感作剤を用いて免疫感作し、免疫感作剤に特異的に結合する抗体を産生するリンパ球、あるいは産生することのできるリンパ球を誘導する。あるいは試験管内でリンパ球を免疫感作することもできる。免疫感作剤としては、一般に、配列ID番号1の核酸によってコードされているポリペプチドまたはその断片、配列ID番号2のタンパク質の融合体またはその断片などが挙げられる。
【0108】
一般に、ヒト由来の細胞が望ましい場合には末梢血リンパ球(“PBL”)を使用し、非ヒト哺乳動物の供給源が望ましい場合には、脾臓細胞またはリンパ節細胞を使用する。次に、適切な融合剤(例えばポリエチレングリコール)を用いてリンパ球を不死化細胞系と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding、『モノクローナル抗体:原理と実際』、59〜103ページ、1986年)。不死化した細胞系は、通常は形質転換した哺乳動物の細胞(特に囓歯類、ウシ、ヒトに由来する骨髄腫細胞)である。一般に、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞系を使用する。ハイブリドーマ細胞は、適切な培地の中で培養することができる。この培地は、融合していない不死化細胞の成長または生存を抑制する1種類以上の物質を含んでいることが好ましい。例えば親細胞にヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)という酵素が欠けている場合には、ハイブリドーマのための培地は、一般に、HGPRT欠乏細胞の成長を阻止する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含むことになる(“HAT培地”)。
【0109】
図2には、5種類のモノクローナル抗体GPR64-1、GPR64-16、GPR64-18、GPR64-20、GPR64-48(配列ID番号3〜22)のVH領域とVL領域のヌクレオチド配列とアミノ酸配列を示してある。さらに、標準的な方法に従ってGPR64-Fc融合体から生成させたさらに別の41個のmAbを、その結合特性とともに図5の表にリストにしてある。これらGPR64 mAbのうちの2つ、すなわち#81と#93(OAM6#81、OAM6#93とも呼ばれる)は、2003年12月18日にATCCに寄託された。
【0110】
いくつかの実施態様では、GPR64タンパク質に対する抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体である。すでに指摘したように、ヒト化した抗体は、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、望む特異性、アフィニティ、能力を有する非ヒト種(例えばマウス、ラット、ウサギ)のCDRからの残基で置換されたキメラ免疫グロブリンである。
【0111】
ヒト抗体は、従来技術において知られているさまざまな方法を利用して作ることができる。例えば、ファージ提示ライブラリ法(HoogenboomとWinter、J. Mol. Biol.、第227巻、381ページ、1991年;Marks他、J. Mol. Biol.、第222巻、581ページ、1991年)がある。ヒト・モノクローナル抗体を調製するのにColeらの方法やBoernerらの方法も利用できる(Cole他、『モノクローナル抗体とがんの治療』、77ページ、1985年;Boerner他、J. Immunol.、第147巻(1)、86〜95ページ、1991年)。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物(例えば内在性免疫グロブリン遺伝子の一部または全体を不活化したマウス)に導入することによって作ることができる。チャレンジの際には、遺伝子の再配置、組み立て、抗体のレパートリーなどのあらゆる点でヒトにおいて見られるのと非常によく似たヒト抗体の産生が観察される。この方法は、例えばアメリカ合衆国特許第5,547,807号、第5,547,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号と、以下の論文:Marks他、Bio/Technology、第10巻、779〜783ページ、1992年;Lonberg他、Nature、第368巻、856〜859ページ、1994年;Morrison、Nature、第368巻、812〜813ページ、1994年;Fishwild他、Nature Biotechnology、第14巻、845〜851ページ、1996年;Neuberger、Nature Biotechnology、第14巻、826ページ、1996年;LonbergとHuszar、Intern. Rev. Immunol.、第13巻、65〜93ページ、1995年に記載されている。
【0112】
いくつかの実施態様では、抗体は一本鎖Fv(scFv)である。scFv抗体のVH領域とVL領域は、折り畳まれて二本鎖抗体で見られるのと似た抗原結合部位を作り出す一本鎖を含んでいる。一旦折り畳まれると、非共有相互作用によって一本鎖抗体が安定化する。いくつかの実施態様の抗体のVH領域とVL領域は互いに直接結合させることができるが、当業者であれば、これらの領域を1つ以上のアミノ酸からなるペプチド・リンカーによって分離してもよいことが理解できよう。ペプチド・リンカーとその利用法は、従来技術において周知である。例えばHuston他、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA、第85巻、5879ページ、1988年;Bird他、Science、第242巻、4236ページ、1988年;Glockshuber他、Biochemistry、第29巻、1362ページ、1990年;アメリカ合衆国特許第4,946,778号、第5,132,405号、Stemmer他、Biotechniques、第14巻、256〜265ページ、1993年を参照のこと。一般に、ペプチド・リンカーは、領域を互いに接合すること、あるいはVHとVLの間の最小距離または他の空間的関係を保持すること以外は、特別な生物活性を持たない。しかしペプチド・リンカーを構成するアミノ酸は、分子のいくつかの性質(例えば、折り畳み、正味の電荷、疎水性)に影響を与えるように選択することができる。一本鎖Fv(scFv)抗体は、場合によってはアミノ酸が50個以下のペプチド・リンカーを含んでいる。ペプチド・リンカーは、長さが一般にアミノ酸40個以下であり、アミノ酸30個以下であることが好ましく、アミノ酸20個以下であることがより好ましい。いくつかの実施態様では、ペプチド・リンカーは、配列がグリシン-グリシン-グリシン-グリシン-セリンであるコンカテマーである。このような配列の数は、2個、3個、4個、5個、6個のいずれかであることが好ましい。しかしリンカー内にアミノ酸置換がいくつかあってもよいことが理解できよう。例えばバリンをグリシンで置換することができる。
【0113】
scFv抗体を作るいろいろな方法がこれまでに報告されている。Huse他、上記文献;Ward他、上記文献;Vaughan他、上記文献を参照のこと。手短に説明すると、免疫感作した動物のB細胞からmRNAを単離し、cDNAを調製する。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域に対して特異的なプライマーを用いてこのcDNAを増幅する。PCR産物を精製し、核酸配列を付加する。リンカー・ペプチドが必要な場合には、そのペプチドをコードしている核酸配列を、重鎖の核酸配列と軽鎖の核酸配列の間に挿入する。scFvをコードしている核酸をベクターに挿入し、適切な宿主細胞の中で発現させる。望む抗原と特異的に結合するscFvは、一般に、ファージ提示ライブラリを選別することによって見つける。選別は、いくつかある方法のうちの任意の方法で行なうことができる。選別は、表面に望む抗原を発現する細胞、または望む抗原でコーティングされた固体表面を用いると簡単に行なうことができる。表面を磁性ビーズにするとよい。結合しないファージは固体表面から洗い流され、結合したファージが溶離される。
【0114】
アフィニティが最も大きい抗体が見つかるかどうかは選択プロセスが有効かどうかによって決まり、スクリーニングされるクローンの数と、スクリーニングの厳しさにも依存する。一般に、スクリーニングがより厳しくなることは、より選別がなされることに対応する。しかし条件が厳しすぎると、ファージは結合しなくなる。選別を1回行なった後、GPR64で覆われたプレートに結合するファージ、またはその表面でGPR64を発現する細胞に結合するファージを大腸菌の中で増やし、さらにもう1回選別を行なう。このようにすると、3回の選別において何倍もの増大が起こる。したがってたとえ1回ごとの増大は少なくとも、多数回の選別により、稀なファージと、その中に含まれていて最大のアフィニティを有するscFvをコードしている遺伝材料や、ファージの表面により多く発現する遺伝材料を単離できるようになろう。
【0115】
選択した選別法とは関係なく、ファージ提示によって遺伝子型と表現型の間の物理的リンクが提供されるため、抗原への結合に関し、たとえクローンのライブラリが大きくとも、cDNAライブラリのすべての要素をテストすることができる。
【0116】
一実施態様では、抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、あるいは同じ抗原上の2つのエピトープに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体であることが好ましい。一実施態様では、結合特異性の一方はGPR64タンパク質に対する特異性であり、他方は別のがん抗原に対する特異性である。あるいは四量体タイプの方法で多価試薬を作ることもできる。
【0117】
いくつかの実施態様では、GPR64タンパク質に対する抗体が、GPR64を発現する細胞(例えば卵巣がん細胞)の減少または消失を可能にする。一般に、活性、成長、サイズなどの少なくとも25%の減少が好ましい。この減少は少なくとも約50%であることが好ましく、約95〜100%であることが特に好ましい。
【0118】
免疫療法とは、GPR64タンパク質に対する抗体を用いた卵巣がんの治療を意味する。この明細書では、免疫療法は、受動的な方法でも能動的な方法でもよい。この明細書における受動的な免疫療法は、レシピエント(患者)に抗体を受動的に移入することである。能動的免疫感作は、レシピエント(患者)の内部で抗体および/またはT細胞の応答を誘導することである。免疫応答の誘導は、レシピエントに抗原(例えばGPR64、またはそれをコードしているDNA)を供給し、その抗原に対して抗体が生じた結果である。当業者であればわかるように、抗原は、抗体を生じさせようとするポリペプチドをレシピエントに注入することによって提供すること、あるいは抗原を発現できる核酸を、その抗原が発現する条件下で、レシピエントに接触させて免疫応答を起こさせることによって提供することができる。
【0119】
いくつかの実施態様では、抗体をエフェクター部と共役させる。エフェクター部に含まれる分子の数は任意でよく、このエフェクター部は、例えば放射性標識や蛍光標識などの標識部にすること、あるいは薬剤部にすることができる。薬剤部の一例は、GPR64タンパク質の活性を変化させる小分子である。別の一実施態様では、薬剤部は、GPR64タンパク質に付随する分子またはGPR64タンパク質の近傍にある分子の活性を変化させる。
【0120】
別の実施態様では、薬剤部は、細胞毒性剤である。この方法では、細胞毒性剤を卵巣がんの組織または細胞に向かわせ、その結果として病気になった細胞の数を減らし、そのことによって卵巣がんに伴う症状を軽減する。さまざまな細胞毒性剤があり、具体的には、細胞毒性薬、毒素、そのような毒素の活性断片などが挙げられる。適切な毒素とそれに対応する断片としては、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシン、アウリスタチンなどがある。細胞毒性剤としては、卵巣がんのタンパク質に対する抗体に放射性同位体を共役させることによって作った放射性化学物質や、抗体に共役結合させたキレート剤に放射性核種を結合させることによって作った放射性化学物質もある。薬剤部を膜貫通卵巣がんタンパク質に届けると、卵巣がんになった領域における薬剤部の局所的濃度が増大するだけでなく、薬剤部に付随する可能性のある好ましくない副作用も減る。
【0121】
本発明による抗体の結合アフィニティ
【0122】
本発明の抗体は、GPR64ポリペプチドに特異的に結合する。好ましい実施態様では、抗体はGPR64に非常に大きなアフィニティで結合し、KD値は1μM未満になる。KD値は約0.01μM未満であることが好ましく、0.01μM未満またはナノモル程度であることが最も好ましい。
【0123】
一実施態様では、GPR64抗体のアフィニティは、GPR64ポリペプチドに対する競合的抑制を(アフィニティがわかっている)別のGPR64抗体と比較することによって明らかにすることができる。競合が強力に抑制されるというのは、GPR64に対する結合アフィニティが大きいことを意味する。
【0124】
標的抗原を探すための結合アフィニティは、一般に、標準的な抗体-抗原アッセイで測定または決定される。アッセイとしては、ビアコア競合アッセイ、飽和アッセイ、イムノアッセイ(例えばELISA、RIA)などがある。
【0125】
このようなアッセイを利用して抗体の解離定数を決定することができる。“解離定数”は、ある抗原に対するある抗体のアフィニティを意味する。抗体と抗原の間の結合特異性は、抗体の解離定数(KD=1/K、ただしKはアフィニティ定数である)が1μM未満である場合に存在する。解離定数は、100nM未満であることが好ましく、0.1nM未満であることが最も好ましい。抗体分子は、一般に、小さな範囲のKDを有する。KD=[Ab-Ag]/[Ab][Ag](ただし[Ab]は抗体の平衡時における濃度であり、[Ag]は抗原の平衡時における濃度であり、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体の平衡時における濃度である)。一般に、抗原と抗体の間の結合相互作用としては、可逆的な非共有結合(例えば静電引力、ファン・デル・ワールス力、水素結合)が挙げられる。
【0126】
イムノアッセイ
【0127】
本発明の抗体を用いると、よく知られた多数の免疫学的結合アッセイ(例えばアメリカ合衆国特許第4,366,241号、第4,376,110号、第4,517,288号、第4,837,168号を参照のこと)のうちの任意の方法を利用して、GPR64、またはGPR64を発現している細胞を検出することができる。一般的なイムノアッセイの概説に関しては、『分子生物学における方法』、第37巻、Asai編、アカデミック・プレス社、ニューヨーク、1993年;『基本的臨床免疫学』、第7版、StitesとTerr編、1991年も参照のこと。
【0128】
したがって本発明により、GPR64を発現する細胞を検出する方法が提供される。1つの方法では、対象に対して生検を行ない、回収した組織を試験管内で調べる。次に、この組織を、あるいはこの組織からの細胞を本発明の抗GPR64抗体と接触させる。免疫複合体がわずかでも得られれば、GPR64タンパク質が生検サンプルの中に存在していることを意味する。このような検出を容易にするため、抗体を放射性標識したり、検出可能な標識(放射性標識)であるエフェクター部と結合させたりすることができる。
【0129】
別の方法では、典型的な画像化システムを利用して生体内で細胞を検出することができる。次に、標識を検出するための公知の任意の方法により、標識の位置を明らかにする。従来からある、可視化するための診断用画像化法を利用することができる。例えば常磁性同位体をMRIで用いることができる。抗体の内部化は、生物の体内での寿命を、細胞外の酵素環境によるクリアランスと循環系のクリアランスの組み合わせに敏感であると思われる細胞外結合した場合の寿命よりも長くするのに重要である可能性がある。
【0130】
GPR64タンパク質は、標準的なイムノアッセイと本発明の抗体を利用して検出することもできる。標準的な方法としては、例えば、ラジオイムノアッセイ、サンドイッチ・イムノアッセイ(ELISAも含む)、免疫蛍光アッセイ、ウエスタン・ブロット、アフィニティ・クロマトグラフィ(固相に結合するアフィニティ・リガンド)、標識した抗体のその場での検出などの方法がある。
【0131】
RNAiを利用した内在性GPR64遺伝子の発現抑制
【0132】
多くの種において、二本鎖RNA(dsRNA)(この明細書では、小さな干渉RNA(siRNA)と呼ぶこともある)を誘導することにより、強力かつ特異的な遺伝子サイレンシングが起こる。遺伝子サイレンシングとは、RNA干渉またはRNAiと呼ばれる現象である。この現象は、線虫セノラブディティス・エレガンスにおいて詳しく報告されている(Fire, A.他、Nature、第391巻、806〜811ページ、1998年)が、他の生物(トリパノソーマからマウスまで)でも広く見られる。対象とする生物が何であるかに応じ、RNA干渉は、“共抑制”、“転写後遺伝子サイレンシング”、“センス抑制”、“クエリング”と呼ばれてきた。
【0133】
RNAiは、バイオテクノロジーのツールとして魅力的である。なぜなら、特定の遺伝子の活性をノックアウトする手段を提供するからである。RNAiは、これまでは遺伝子分析や遺伝子操作ができないと考えられていた種における遺伝子の発現をノックアウトするのに特に有効である。
【0134】
RNAi実験を設計するとき、考慮すべき因子として、dsRNAの性質、サイレンシング効果の持続時間、送達系の選択などがある。
【0135】
RNAi効果を生み出すには、生体内に導入されるdsRNAまたはsiRNAが、エキソン配列を含んでいる必要がある。さらに、RNAiプロセスは、相同性に依存する。そのため配列を注意深く選択し、遺伝子の特異性が最大になるようにするとともに、相同だが遺伝子特異的ではない配列の間で起こる交差相互作用が最少になるようにせねばならない。dsRNAは、dsRNAの配列と抑制しょうとする遺伝子の間の一致が、90%超である、あるいは100%でさえあることが好ましい。標的遺伝子との一致が約80%未満である配列は、実質的に効果がそれよりも小さい。したがって、dsRNAと発現を抑制しようとする遺伝子の間の相同性が大きくなるほど、関係のない遺伝子の発現が影響を受けることが少なくなる。
【0136】
さらに、dsRNAのサイズが重要である。長さが500塩基対よりも大きなdsRNAが用いられることがしばしばあるが、より小さな断片もRNAi効果を生み出すことができる。
【0137】
dsRNAの導入は、公知の任意の方法(例えば微量注入、電気穿孔)で実現することができる。dsRNAが遺伝子の発現を抑制できるメカニズムはこれまでいろいろと提案されてきたが、特定のメカニズムを支持する証拠は欠けたままである(Fire, A.、1999年)。
【0138】
医薬組成物とワクチン組成物の投与
【0139】
本発明の抗体を医薬組成物の形にすることができる。したがって本発明により、治療に有効な量の抗GPR64抗体を投与する方法と組成物も提供される。正確な投与量は、治療の目的が何であるかによって異なるが、当業者であれば、周知の方法で確認することができよう(例えばAnsel他、『Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery』;Lieberman、『Pharmaceutical Dosage Forms』(第1巻〜第3巻、1992年)、デッカー社、ISBN 0824770846、082476918X、0824712692、0824716981;Lloyd、『The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding』、1999年;Pickar、『Dosage Calculations』、1999年)。従来技術で知られているように、卵巣がんでの分解、全身送達か局所的送達か、新しいプロテアーゼの合成速度、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時刻、薬の相互作用、疾患の程度を考慮する必要があるが、当業者であれば、これらを定型的な実験によって確認することができよう。アメリカ合衆国特許出願第09/687,576号にはさらに、卵巣がんの診断と治療を行なうための組成物と方法が開示されている。その内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0140】
本発明の目的に関する“患者”には、ヒトとそれ以外の動物(特に哺乳動物)の両方が含まれる。したがって本発明の方法は、ヒトの治療と獣医学での用途の両方に適用できる。好ましい実施態様では患者は哺乳動物であり、その哺乳動物は霊長類であることが好ましく、最も好ましい実施態様では、患者はヒトである。
【0141】
本発明による抗体の投与は、すでに説明したようにさまざまな方法で行なうことができる。例えば、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、膣、直腸、眼内に投与することができる。
【0142】
本発明の医薬組成物は、患者への投与に適した形態にした本発明の抗体を含んでいる。好ましい一実施態様では、医薬組成物は水に溶ける形態であり、例えば薬理学的に許容可能な塩として存在している。これは、酸添加塩と塩基添加塩の両方を意味する。“薬理学的に許容可能な酸添加塩”は、無機酸または有機酸とで形成されており、遊離塩基の生物学的効果を保持していて、生物学的に望ましくないこと、あるいは別の意味でも望ましくないことが起こらない塩を意味する。無機酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などがある。有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などがある。“薬理学的に許容可能な塩基添加塩”には、無機塩基に由来する塩が含まれる。無機塩基としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などがある。特に好ましいのは、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩である。薬理学的に許容可能な非毒性の有機塩基に由来する塩としては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、置換されたアミン(自然に置換されたアミンも含む)、環式アミン、塩基性イオン交換樹脂(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミンなど)の塩などがある。
【0143】
医薬組成物は、担体タンパク質(例えば血清アルブミン);緩衝液;充填剤(例えば微結晶セルロース、ラクトース、トウモロコシその他のデンプン);結合剤;甘味剤その他の風味剤;着色剤;ポリエチレングリコールのうちの1種類以上を含んでいてもよい。
【0144】
医薬組成物は、どのような投与法であるかに応じ、さまざまな投与形態で投与することができる。例えば経口投与に適した投与形態としては、粉末、錠剤、ピル、カプセル、ロゼンジなどがある。抗体は、経口投与するときに消化されないよう保護されている必要があることが知られている。これは、一般に、分子を組成物との複合体にして酸や酵素による加水分解への抵抗性を持たせることによって、あるいは分子を適切な抵抗性担体(リポソームまたは保護障壁)の中に包み込むことによって実現される。
【0145】
投与用の組成物は、一般に、本発明の抗体を薬理学的に許容可能な基剤または賦形剤(好ましくは水性基剤)に溶かした形で含むことになる。さまざまな水性基剤を用いることができる。水性基剤としては、例えば生理食塩水などがある。溶液は殺菌状態であり、望ましくない物質を一般に含んでいない。組成物は、従来からあるよく知られた殺菌法で殺菌することができる。組成物は、生理的条件に近くなるようにするため、必要に応じて薬理学的に許容可能な補助物質を含むことができる。補助物質は、例えばpH調節剤、緩衝剤、毒性調節剤などであり、具体的には、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどが挙げられる。製剤中の活性剤の濃度は広い範囲で変えることができるが、選択した特定の投与法と患者の必要性に従い、主として流体の体積、粘度、体重などに基づいて選択する(例えば『Remington's Pharmaceutical Science』(第15版、1980年);GoodmanとGillman、『The Pharmacological Basis of Therapeutics』(Hardman他編、1996年))。
【0146】
したがって静脈内投与するための典型的な医薬組成物は、患者一人につき1日当たり約0.1〜10mgになろう。特に薬を血流ではなく隔離された部位(例えば身体の中空部や臓器の管腔)に投与すると、患者一人につき1日当たり0.1〜約100mgの投与量にすることができる。局所投与では、実質的により多い投与量にすることができる。非経口投与が可能な組成物を調製する実際の方法は、当業者に知られているか、当業者にとって明らかであろう(例えば『Remington's Pharmaceutical Science』;GoodmanとGillman、『The Pharmacological Basis of Therapeutics』)。
【0147】
本発明の抗体を含む組成物は、治療または予防のために投与することができる。治療の用途では、ある疾患(例えばがん)を患っている患者に、その疾患と合併症を治癒させる、あるいは少なくとも進行を部分的に停止させるのに十分な量の組成物を投与する。このようにするのに十分な量は、“治療に有効な投与量”として定義される。この用途で有効な量は、その疾患の程度と、患者の全般的な健康状態によって異なる。組成物は、患者が必要とし、しかも患者が許容する投与量と頻度で、1回または複数回投与することができる。いずれにせよ、組成物は、患者を効果的に治療するために本発明の薬剤を十分に供給できねばならない。哺乳動物におけるがんの進行を停止または遅延させることのできる量のモジュレータは、“予防に有効な投与量”と呼ばれる。予防に必要とされる具体的な投与量は、哺乳動物の医学的症状と病歴、予防しようとするがんの種類のほか、他の因子(例えば年齢、体重、性別、投与経路、効率など)によっても異なる。このような予防法は、例えば以前にがんだったことのある哺乳動物で利用してがんの再発を予防したり、あるいはがんになる可能性の大きいと考えられる哺乳動物で利用したりすることができる。
【0148】
卵巣がんタンパク質を変化させる本発明の化合物は、単独で投与できること、あるいは卵巣がんタンパク質を変化させる別の化合物または他の治療薬(例えば他の抗がん剤)と組み合わせて投与できることが理解されよう。
【0149】
診断および/または予後予測の用途で使用するキット
【0150】
上に示した診断、研究、治療の用途のためのキットも本発明によって提供される。診断と研究の用途では、このキットは、アッセイ試薬、緩衝液、本発明のGPR64特異的抗体のうちの任意のものまたはすべてを含むことができる。治療用のキットは、殺菌した生理食塩水、または薬理学的に許容可能なエマルジョン用ベースや懸濁液用ベースを含むことができる。
【0151】
さらに、キットは、本発明の方法を実施するための指示(すなわちプロトコル)を含む指示材料も備えることができる。指示材料には、一般に、手書きの材料または印刷された材料が含まれているが、必ずしもそうであるとは限らない。このような指示材料を記憶させておき、それをエンドユーザーに伝えることのできるあらゆる媒体を本発明では考える。そのような媒体としては、例えば電子記憶媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光記録媒体(例えばCD ROM)などがある。このような媒体には、指示材料を提供するインターネットのサイトのアドレスを含めることができる。
【実施例1】
【0152】
卵巣がんと正常な組織におけるGPR64遺伝子の発現プロファイルの測定
【0153】
この実施例では、卵巣がんの有効な標的としてのGPR64を同定するためのジーンチップ発現プロファイルを利用する方法について説明する。
【0154】
要約
【0155】
卵巣がんのサンプル66個の遺伝子発現を、異なる58種類の臓器を代表する347個の正常な成人の組織と比較した。目的は、卵巣がんにおいて上方調節されていて抗体が近づくことができるが、治療用抗体の望ましくない副作用をできるだけ少なくするために生きた臓器での発現はほとんどないかゼロである遺伝子を細胞表面で探してその場所を特定することであった。望む発現プロファイルを持つ遺伝子をバイオインフォマティクス分析で精力的に調べ、その構造と機能がどう分類されるかを決定し、細胞表面に局在できるかどうかを明らかにした。GPR64遺伝子(国立バイオテクノロジー情報センターの参照配列番号NM_005756.1;参考としてOsterhoff他、DNA Cell Biol.、第16巻、379〜389ページ、1997年)は、望むすべての特徴を示した。
【0156】
RNAの抽出とマイクロアレイのプロトコル
【0157】
凍結させたばかりの前立腺組織と異種移植組織からの全RNA調製物を、トリゾール試薬(ライフ・テクノロジーズ社、ゲティスバーグ、メリーランド州)を用いた抽出によって取得し、オリゴデオキシチミジル酸とT7プロモーター配列を含むプライマーを用いて逆転写した。次に、得られたcDNAを、試験管内において、ビオチニル化したヌクレオチド(Bio-11-CTPとBio-16-UTP)の存在下でT7 メガスクリプト・キット(アンビオン社、オースチン、テキサス州)を使用して転写した。
【0158】
ビオチニル化した標的は、Eos Hu03とハイブリダイズした。Eos Hu03は、カスタム化したアフィメトリックス・ジーンチップ(アフィメトリックス社、サンタ・クララ、カリフォルニア州)オリゴヌクレオチド・アレイであり、ヒトゲノムの最初のドラフトに基づく46,000通りの配列を表わす59,619個のプローブセットを備えている。これらの配列の中には、既知のエキソンと、予測されるFGENESHエキソンの両方が含まれている。Hu03プローブセットは完全に一致するプローブだけからなり、たいていのプローブセットはプローブを6個または7個備えている。ハイブリダイゼーションの信号は、フィコエリトリンと共役したストレプトアビジン(モレキュラー・プローブズ社、ユージン、オレゴン州)を用いて目に見えるようにした。
【0159】
遺伝子発現データの規格化を以下のようにして行なった。強度に関する経験的な累積分布を望む分布にマッピングするための逆関数を利用し、それぞれのアレイからのプローブのレベル強度データを所定の分布にフィットさせた。この手続きは、他のチップごとの規格化手続きと似ており、例えばそれぞれのチップの平均値と標準偏差を標準値に固定するが、1つか2つのパラメータではなく、分布全体を決めるという意味で、ここでの手続きのほうが厳密である。チップごとに規格化する目的は、チップ間の変動が生物学的因子にはよらない(すなわち操作上のノイズによる)と考えてその変動を取り除くためである。分布のスケール・パラメータは、勝手に選んだ平均値が300の分布になるよう選択した。良好なサンプルでは経験的分布の典型的な形状が再現されるよう、形状パラメータは0.81にした。
【0160】
プローブセットを構成するプローブの強度に関してテュキーの三項平均を利用し、それぞれのプローブセットについて平均強度の指標を1つだけ計算した(Tukey J.W.、『調査のためのデータ分析』、アディソン-ウェズレー・リーディング社、マサチューセッツ州、1977年)。三平均は、異常値の効果に抵抗して中央に向かう指標である。最後に、非特異的ハイブリダイゼーションを補正するため、平均強度の指標それぞれからバックグラウンドを差し引いた。寄せ集め配列を有する491個のプローブからなる“無”プローブセットの平均強度の指標を、チップ上の他のすべてのプローブセットから差し引いた。
【0161】
結果
【0162】
GPR64は、正常組織と比べると卵巣がんにおいて有意に過剰発現していた。正常な脊髄神経節と副甲状腺においていくらかの発現が検出された。正常な卵巣と、テストした残りの正常な組織では発現が見られなかった。卵巣がんになっていない組織のうち、ユーイング肉腫でも高い発現レベルが検出された。子宮がんにおいてより低いレベルでGPR64が発現することが検出されたが、他のがん(例えば大腸がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、膵臓がん、腎臓がん)では発現は見られなかった。
【実施例2】
【0163】
抗GPR64は、生体内で腫瘍細胞の成長を抑制する
【0164】
この実施例では、GPR64抗体が生体内の腫瘍の体積を減らすのに有効であることを示す。
【0165】
ヒト腫瘍細胞系NCI-H460で免疫感作したSCIDマウスを用いて動物実験を行なった。NCI-H460細胞系は、GPR64-18抗体が認識する抗原を発現する。GPR64-18抗体のVHとVLのヌクレオチド配列とアミノ酸配列を図2に示してある(配列ID番号7、8、17、18)。
【0166】
抗体は、GPR64の大きなN末端と抗原としてのヒトFcが融合したタンパク質を用い、標準的な方法で作った。
【0167】
SCIDマウスの体内で腫瘍の成長を開始させるため、NCI-H460腫瘍細胞系を注入し、腫瘍を成長させた。腫瘍のサイズが50〜100mm3に達したとき、マウスをグループに分け、以下に示すいずれかのものを用いて治療した。
a)対照となるアイソタイプ抗体;
b)図2に示したVHとVLの配列(配列ID番号2〜22)を有する5種類のGPR64抗体のうちの1つ;
c)5種類のGPR64抗体のうちの1つを化学療法剤(パクリタキセルやカルボプラチン)と組み合わせたもの。
【0168】
抗体を2日ごとに10mg/kgの割合で投与した。抗体+化学療法のグループでは、化学療法剤も4日間隔で4回投与した。抗体は、4日ごとに10mg/kgの割合で3回投与した。腫瘍のサイズは、一週間に2回の割合で20日間にわたって測定した。
【0169】
これら実験の結果から、対照となるアイソタイプ抗体による治療を受けたマウスと比べると、GPR64-18抗体を用いた治療を受けたマウスでは腫瘍の体積が有意に減少していることがわかる。
【0170】
抗体と化学療法剤の組み合わせによる腫瘍の減少を比較する実験からは、GPR64抗体を化学療法剤と組み合わせたときのほうが、対照となるアイソタイプ抗体を化学療法剤と組み合わせたときよりも腫瘍の体積が大きく減少することがわかる。さらに、GPR64-18抗体は、化学療法剤と組み合わせたときには付加的な効果も持っていた。
【0171】
したがってGPR64-18抗体は腫瘍の体積を減らすのに有効であり、GPR64タンパク質が発現しているがんを効果的に治療するのに利用できる。さらに、GPR64タンパク質が発現しているがんを効果的に治療するには、GPR64タンパク質と結合してGPR64-18抗体の結合を抑制するあらゆる抗体も用いることができる。
【0172】
さらに、GPR64抗体と化学療法剤が腫瘍の体積減少に及ぼす効果は加算的であるため、GPR64抗体を用いると、がん患者の腫瘍の体積を効果的に減少させるのに必要な化学療法剤の量を減らせるであろう。その結果、化学療法剤の毒性副作用に起因する患者の苦痛を減らせるであろう。
【実施例3】
【0173】
RNAiによってGPR64をノックアウトすると、GPR64を発現するがん細胞の細胞増殖が抑制される
【0174】
この実施例では、GPR64の発現が試験管内における腫瘍細胞の成長に不可欠であり、GPR64が卵巣がんの標的として役に立つことを示す。
【0175】
興味の対象であるタンパク質のコグネイトmRNAに対して特異的な二本鎖の短い干渉RNA(siRNA)を用いると、そのタンパク質を下方調節することができる。この方法を利用してGPR64を抑制することで細胞の成長が下方調節されて細胞死が起こることを示した。したがってこの実験結果は実施例2に示した実験の結果と一致しているため、GPR64の発現を下方調節することでGPR64タンパク質の発現が関与するがんを効果的に治療できるであろうという基本的な結論が確認される。
【0176】
RNAiアッセイ法
【0177】
GPR64に対して特異的なsiRNA(すなわち対照siRNA)をコードしているプラスミドを、成長する際にGPR64が必要とされる2つのGPR64プラス・ヒト腫瘍細胞系(H460とMe180)に導入した。さらに、同じsiRNAを、成長する際にGPR64が必要でないGPR64マイナスPC3細胞に導入した。GPR64タンパク質のレベルをFACSで追跡し、細胞の生存と増殖を測定するアッセイを利用して成長に対する効果を評価した。
【0178】
リポフェクタミン2000(インヴィトロジェン社)を用い、ヒト腫瘍細胞にOAM6 siRNAを以下のようにしてトランスフェクトした。フェノールレッドを含まない最少必須培地(インヴィトロジェン社)の中でリポフェクタミン2000を50倍に希釈し、MEMに120nMの濃度で含まれる同じ体積の適切なsiRNAと混合した。リポフェクタミン2000/siRNA混合物を96ウエルのプレートに入れ、細胞をピペットで最上部に載せ、siRNAの最終濃度を10nMにした。トランスフェクトされた細胞を37℃にてインキュベートし、細胞がどれくらい増殖したかを、トランスフェクションを行なってから24、48、72、96時間後にMTSアッセイで調べた。このアッセイでは、セルタイター96(登録商標)水性非放射性細胞増殖アッセイ(プロメガ社)を製造者の指示に従って使用した。吸光度を490nmで読み取った。それぞれのデータ点は、3つのウエルでの平均を表わしている。
【0179】
3'dTdT張出部を有する二本鎖として、siRNAをダルマコン社から購入した。以下のsiRNAを使用した:
H2R-1(負の対照)センス:5'-CAGACACGGCCACGUGUGAdTdT-3'(配列ID番号23)
H2R-1アンチセンス:5'-UCACACGUGGCCGUGUCUGdTdT-3'(配列ID番号24)
HKSP-1(正の対照)センス:5'-GCUAGCGCCCAUUCAAUAGdTdT-3'(配列ID番号25)
HKSP-1アンチセンス:5'-CUAUUGAAUGGGCGCUAGCdTdT-3'(配列ID番号26)
OAM6-110センス:5'-GCUUACUCCCUUCAAACGAdTdT-3'(配列ID番号27)
OAM6-110アンチセンス:5'-UCGUUUGAAGGGAGUAAGCdTdT-3'(配列ID番号28)
OAM6-111センス:5'-CCCCAGAGAAAUAUCUGCAdTdT-3'(配列ID番号29)
OAM6-111アンチセンス:5'-UGCAGAUAUUUCUCUGGGGdTdT-3'(配列ID番号30)
【0180】
結果
【0181】
FACSアッセイによると、OAM6-110というsiRNAは、OAM6-111よりもGPR64タンパク質の発現を大きく下方調節させた。さらに、GPR64タンパク質の発現が下方調節された細胞は、細胞増殖が劇的に低下した。図3に示したように、OAM6-110とOAM6-111の両方とも細胞増殖に対して検出可能な効果を引き起こしたが、OAM6-110で観察された細胞増殖の低下は、どちらのGPR64プラス細胞系(H460とMe180)でも、OAM6-111で観察されたよりもはるかに大きかった。OAM6-110とOAM6-111による細胞増殖の低下におけるこのような違いは、これら2つのsiRNAでFACSアッセイによって観察されたGPR64タンパク質の下方調節の違いと相関していた。
【0182】
興味深いことに、H460細胞とMe180細胞におけるOAM6-110の効果は、正の対照であるキネシン(HKSP-1)の効果よりもはるかに強かった。さらに、HKSP-1は、GPR64を発現しないPC3においてほとんど細胞を増殖させず、OAM6-110とOAM6-111のどちらの影響も受けない。これは特異性があることを示している。
【0183】
siRNAによる分析を、より多くのGPRプラス細胞系とGPRマイナス細胞系でも行なった。図4に示したように、5つのGPRプラス細胞系のうちの3つが、GPR64 siRNAによるチャレンジを受けたときに増殖効果を示した。それとは対照的に、22あるGPRマイナス細胞系のうちの2つだけが、GPR64 siRNAで処理したときにわずかな増殖効果を示すことが見いだされた。この結果は、GPR64の発現が、GPR64 siRNAに対する感受性と強く相関していることを示している。
【0184】
siRNAに関するこの結果は、内在性GPR64発現細胞と卵巣がんの増殖にGPR64が必要であるという結論を強く支持している。したがってGPR64は、卵巣がんの機能的標的として有効である。
【実施例4】
【0185】
GPR64に対するモノクローナル抗体群
【0186】
一群のモノクローナル抗体を作り、標準的な方法でGPR64に対する結合アフィニティをスクリーニングした。
【0187】
GPR64-Fc融合タンパク質を用いてマウスを免疫感作した。この融合構造体は、完全長GPR64配列(配列ID番号2)のアミノ酸1〜588にFcタンパク質が連結したものである。脾臓細胞を融合させ、元のハイブリドーマをまず最初にFACSとELISAでスクリーニングし、その後、凍結した組織切片に関するIHCによって増殖効果を調べ、さらにオフレート結合反応速度を調べた。結合が強くオフレートが低い約40クローンを選択し、サブクローニングした。サブクローンを増やし、精製した。次に、精製したこのモノクローナル抗体をFACS滴定、免疫蛍光、ビアコアによって互いに比較し、試験管内と生体内において増殖に及ぼす効果を評価した。
【0188】
FACSアッセイ
【0189】
5mMのEDTAを含むトリス-HCl(pH8.0)を用いて細胞を取り出し、熱で不活化した3%FBSと正常な1%ヤギ血清とを含むHBSSの中で4℃にて5分間にわたって遠心分離することによって反応を停止させた。細胞をFACS緩衝液(0.1%のBSAを含むPBS)の中で抗GPR64-FITC(10μg/ml;R&Dシステムズ社)とともに4℃にて1時間にわたってインキュベートした。過剰なmAbを遠心分離によって除去し、細胞を、ヨウ化プロピジウム(1μg/ml)を含むFACS緩衝液の中に再び懸濁させた。蛍光強度をFACSキャン(ベクトン・ディキンソン社)で測定した。FACSの定量を同様にして行なったが、細胞に対して飽和濃度の抗GPR64-FITC(50μg/ml)を使用し、クオンタム・シンプリー・セルラー・ビーズ(シグマ社;結合している抗体の量がわかっている4つのアガロース・ビーズ群の混合物)で同様に処理した点が異なっている。それぞれの細胞系のMFIをクオンタム・シンプリー・セルラー・ビーズ群のMFIと比較することによって抗体結合部位を定量し、報告されているようにして非特異的効果に関する補正を行なった(Brockhoff他、Cytometry、第17巻、75〜83ページ、1994年)。実験は、3つ用意した同じサンプルについて2回行なった。
【0190】
表面プラズモン共鳴による速度論的分析
【0191】
ビアコア3000(ビアコア社、スウェーデン)を利用し、ヒトGPR64-Fc融合タンパク質とGPR64モノクローナル抗体の間の速度論的測定を行なった。バイオコア・アミン・カップリング試薬(N-エチル-N'-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド、EDC;N-ヒドロキシスクシンイミド、NHS;エタノールアミンHCl、pH8.5)により、研究グレードのCM5センサー・チップの上に、100RUとともに抗GPR64 mAbを固定化した。流速30μl/分で室温にてアッセイを実施した。それぞれのGPR64-Fcを3分間会合させる相の後、解離をモニターするため流れている緩衝液(10mMのヘペス、300mMの塩化ナトリウム、3mMのEDTA、0.05%のP-20、pH7.4)を10分間注入した。25mMのNaOHを用いてmAbの表面を再生させた。各ペアGPR64-mAbの結合の反応速度に関する計算は、異なる6通りの濃度(2048nM、512nM、128nM、32nM、8nM、2nM)の分析物GPR64-Fcでのデータから、BIA評価プログラムを用いて行なった。参照表面と緩衝液だけからなる対照からのバックグラウンド応答を除去するため、それぞれの分析において二重参照法を適用した。結合のアフィニティ(KD)は、BIA評価ソフトウエアからの二価分析物モデルを利用し、一連の濃度の分析物からのセンサーグラムの会合相と解離相を同時にフィッティングすることによって得た。
【0192】
免疫蛍光アッセイと内部化アッセイ
【0193】
カバーガラスの上で増殖した細胞を、増殖培地に入れた氷の上で10分間にわたって冷やした。増殖培地の代わりに、抗GPR64 mAb(10μg/ml)を含む4℃の培地を1時間にわたって用いた。抗体の結合は、AlexaFluor-488ヤギ抗マウス二次抗体(冷やした増殖培地の中で2200倍に希釈;モレキュラー・プローブズ社)を用いて検出した。細胞をPBSで3回洗浄し、5%超高純度ホルムアルデヒドを含むPBSを用いて40分間にわたって固定し、PBSでさらに2回洗浄した。可視化するためにパーマフロー(Permafluor:コールター社)を用いてスライドを取り付けた。
【0194】
GPR64抗体の内部化を調べるため、細胞を37℃にしたインキュベータの中に1時間入れた後、停止溶液(20μg/mlの純粋なヤギ抗マウス抗体を含む培地)の中に入れた氷の上に1時間置いた。PBSの中で洗浄した後、5%超高純度ホルムアルデヒドの中で細胞を固定した。次に0.5%トリトンX-1000を用いて細胞を洗浄し、AlexaFluor-488ヤギ抗マウス二次抗体(冷やした増殖培地の中で2200倍に希釈;モレキュラー・プローブズ社)とともにインキュベートした。上記のようにして、内部化された抗体を可視化した。
【0195】
インビトロ増殖アッセイ(MTTアッセイ)
【0196】
細胞系をウエル1つにつき細胞が2500個の密度になるように96ウエルのプレートに植え、フェノールレッドは含まないが、10%FBSとサプリメント(増殖培地)を含むイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)の中で一晩にわたって回復させた。細胞に対するチャレンジを、所定の濃度のmAbまたはADC(50μlの体積で2回)を含むIMDMを用いて1時間にわたって行なった。次に細胞を増殖培地で2回洗浄し、新鮮な増殖培地の中で4日間にわたって増殖させた後、セルタイター96水性非放射性細胞増殖アッセイ(プロメガ社)を製造者の指示に従って使用し、細胞の生存を評価した。増殖に関するすべての実験は、3つ用意したサンプルに対して少なくとも3回実施した。
【0197】
結果
【0198】
図5には、42個のmAbに関する結果をまとめた表が示してある(実施例2で説明したGPR64-18も含む)。この結果には、抗体の結合アフィニティに関するさまざまな測定が含まれる。例えば、FACS滴定測定(すなわちEC50)、表面プラズモン共鳴測定(すなわちビアコア)、免疫組織化学測定(IHC)、免疫蛍光測定(IF)などである。興味深いことに、これらモノクローナル抗体の多くは、IgG2aおよびIgG2bというアイソタイプである。より重要なことは、これら抗体の多くが、FACSアッセイでは小さな値のEC50を示し、ビアコアではナノモル以下のKD値を示すことである。
【0199】
免疫蛍光(IF)アッセイでは細胞表面が染色されたが、それはFACSアッセイでも確認された。GPR64モノクローナル抗体の内部化を可視化するために設計したIFアッセイにより、蛍光染色が細胞の表面から内部へと移動することがわかったのは意味がある。この結果は、GPR64 mAbが内部化されたことを証明している。このことは、抗体-薬共役体(ADC)法で治療を行なうときにmAbを使用する上で極めて重要である。
【0200】
したがって、GPR64の発現に関係する腫瘍の成長や他の増殖性疾患を標的とする抗体治療薬候補として使用する上で望ましい結合特性を示す、精製された多数の抗GPR64モノクローナル抗体が生成した。標準的な4日間MTTアッセイを利用し、精製されたGPR64 mAbが試験管内での成長に及ぼす効果も評価した。精製されたmAbだけだと、インビトロ・アッセイにおいて細胞の成長に対する効果はほとんどないか、まったくないという結果だった。しかし実施例2と以下の説明からわかるように、成長に対する効果はインビボ・アッセイによって検出することができる。
【実施例5】
【0201】
GPR64が卵巣がんの標的として有効であることのIHCによる確認
【0202】
正常組織サンプルと卵巣がんサンプルの組織マイクロアレイをクライノミクス・バイオサイエンシーズ社(ピッツフィールド、マサチューセッツ州)から入手した。ホルマリンで固定してパラフィンに包埋した組織について、以前に報告されている標準的な方法(Henshall他、Oncogene、第22巻、6005〜6012ページ、2003年)でIHCを実施した。加圧調理器の中に入れたダコ標的回復溶液の中で熱誘導抗原回復を15分間にわたって実施した。次にサンプルを、GPR64特異的抗体(例えばGPR64-101)または対照となるマウスIgG1[TIB191、マウス抗トリニトロフェノールmAb(ハイブリドーマ・クローン1B76.11、ATCC)]とともに30分間にわたってインキュベートした。ビオチニル化した二次抗体[ヤギ抗マウスIgG(3mg/ml、30分間;ジャクソン・イムノリサーチ社)]を用いて抗体の結合を検出し、ヴェクタステイン・エリートABCキット(ヴェクター・ラボラトリーズ社)と安定なDAB(ジアミノベンジジンとH2O2;リサーチ・ジェネティクス社)を用いて現像した。染色は、ダコ・オートステイナーを室温で用いて実施した。
【0203】
図6に示したように、抗体GPR64-101(図面のOAM6#101)を用いたさまざまな卵巣がんサンプルのIHC染色により、GPR64が多く発現していることがわかった。同様に重要なことは、図7に示してあるように、GPR64-101(図面のOAM6#101)が、テストした正常などの組織も有意には染色せず、唯一の例外は、副甲状腺がいくらか染色されたことである。
【0204】
図6と図7に示したデータは、オリゴヌクレオチド・マイクロアレイ(ジーンチップ)を用いて明らかにしたGPR64の発現プロファイルと一致しており、GPR64が正常な身体地図と比べて卵巣がんで多く発現していることの確認となっている。したがってIHCにより、GPR64が卵巣がんの標的として有効であることがさらにわかる。
【実施例6】
【0205】
生体内H460移植片治療モデルにおける精製した抗GPR64 mAbの効果
【0206】
実施例2に記載したのと同じ一般的な方法に従い、高アフィニティを示した精製した抗GPR64 mAb(GPR64-18、GPR64-61、GPR64-62、GPR64-81、GPR64-93、GPR64-95)を、生体内H460移植片モデルに基づいてテストした。H460腫瘍をサイズが約100mm3になるまで増殖させた後、精製したままのGPR64抗体、または対照であるTIB191アイソタイプを10mg/kgの割合で用いて治療した。
【0207】
図8に示したように、どの抗体もH460移植片における腫瘍の成長を完全には阻止できないが、アフィニティのより大きな抗体GPR64-81(図面のOAM6#81)とGPR64-93(図面のOAM6#93)は、成長を遅らせる生体内効率が優れていた。
【実施例7】
【0208】
精製した抗GPR64 mAbのエピトープ・マッピング
【0209】
競合的FACSアッセイによってエピトープ・マッピングを行なった。手短に説明すると、H460細胞を25μg/mlの標識していない抗体とともに氷の上で1時間にわたってインキュベートした。その間、FITCで標識した抗体をさまざまな量添加した。さらに30分経過した後、細胞を1回洗浄し、蛍光をフローサイトメトリーで測定した。すべてのデータはビアコアで確認した。
【0210】
結果から、4つの異なるエピトープが同定される。興味深いことに、生体内で最大の効率を示した2つの抗GPR64 mAb(GPR64-81、GPR64-93)は、GPR64上の異なる2つのエピトープを認識する。GPR64-101も独自のエピトープと結合するが、GPR64-18、GPR64-61、GPR64-62、GPR64-65、GPR64-95、GPR64-99はどれも同じエピトープと結合する。
【実施例8】
【0211】
細胞をベースとした免疫感作
【0212】
Balb/c同系細胞系3T12の中でトランスフェクタントを用いて細胞ベースの免疫感作を行ない、完全長GPR64抗原に対するmAbを生成させた。しかし野生型GPR64の発現が少なくて3T12のバックグラウンド力価が大きいと、一般にGPR64特異的力価は小さくなった。GPR64特異的力価を大きくするため、3T12の中でGPR64のDRYボックス突然変異体を作った。DRYボックス・モチーフは、GPR64を対応するシグナル伝達Gタンパク質に結合させることに関与する。DRYボックス突然変異体はこのシグナル伝達メカニズムを阻止するため、GPR64の発現増大が可能になる。FACS分析により、DRYボックス突然変異体で操作した3T12は、GPR64の発現レベルが野生型細胞の20倍であることがわかった。3T12のDRYボックス突然変異体を受動的免疫感作法で使用した。元の野生型細胞をベースとした免疫感作と比べると、GPR64に対して得られた血清力価ははるかに大きく、バックグラウンドはより少なかった。
【0213】
DRYボックス突然変異体と受動的免疫感作を組み合わせることにより、結合アフィニティと、腫瘍の成長抑制効率がはるかに向上した、完全長タンパク質に対する一群のGPR64 mAbを作り出すことができる。
【実施例9】
【0214】
H460細胞に関するGPR64抗体-薬共役体
【0215】
GPR64抗体を毒素アウリスタチンE(VCAE)に結合させ、試験管内でH460細胞を殺す能力を調べた。
【0216】
抗GPR64-VC-MMAE(バリン-シトルリン連結モノメチルアウリスタチンE)ADCを以前に報告されているようにして調製した(Doronina他、Nat. Biotechnol.、第21巻、778〜784ページ、2003年)。手短に説明すると、精製した抗GPR64 mAbまたは対照のアイソタイプ(TIB191)を10mMのDTTで還元し、エルマン試薬とともに培養した後、A412を測定することによってチオールの含有量を決定した。同じモル数のマレイミド-VC-MMAE溶液(DMSOの中に8mM(シグマ社))を含む冷たいアセトニトリル(最終濃度は20%)を還元したmAbとともに4℃にて30分間にわたってインキュベートした。共役しなかったVC-MMAEを4℃にてPBSの中に透析することによって除去し、濾過した。共役したmAbをA280/A260を用いて定量し、サイズ排除高性能液体クロマトグラフィにより、モノマーに対する凝集体の割合を決定した。最後に、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析を利用し、1つのmAb当たりの薬分子の数を明らかにした。
【0217】
図9に示してあるように、(上記の実施例4で説明した)4日間MTTアッセイにより、異なる18種類のGPR64 mAb-VCAE共役体をH460細胞でテストした。結果を見ると、GPR64-18、GPR64-81、GPR64-82、GPR64-93、GPR64-95を含むGPR64 mAb ADCが、H460細胞の生存を有意に抑制することがわかる。
【0218】
実施例6に記載した方法に従い、上記ADCのうちの2つ、すなわちGPR64-81とGPR64-93が、生体内でH460移植片の成長を抑制する能力をさらに調べた。図10に示したように、両方のGPR64-VCAE ADCが腫瘍の成長を有意に遅らせるが、どちらも完全な効果は持っていない。
【0219】
上記の実施例が本発明の真の範囲を制限することはなく、実施例は例示が目的であることを理解されたい。この明細書で引用した出版物、登録番号の配列、特許出願はすべて、個々の出版物または特許出願が参考として具体的かつ個別にこの明細書に組み込まれているかのようにして、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0220】
この明細書におけるすべてのUniGeneクラスター同定番号と登録番号は、GenBank配列データベースのためのものであり、その登録番号の配列は、参考として明らかな形でこの明細書に組み込まれているものとする。GenBankは従来技術において知られており、例えばBenson, D.A.他、Nucleic Acids Research、第26巻、1〜7ページ、1998年を参照されたい。配列は、他のデータベース(例えば、ヨーロッパ分子生物学研究所(EMBL)や日本DNAデータベース(DDBJ))でも利用できる。
【0221】
材料の寄託
【0222】
以下の材料をアメリカ基準培養物コレクション(ATCC;10801大学大通り、マナサス、ヴァージニア州、20110-2209、アメリカ合衆国)に寄託した。
【0223】
【表1】
【0224】
この寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約と、この条約(ブダペスト条約)に基づく規則の規定に基づいてなされた。そうすることにより、寄託の日から30年間にわたって寄託した生きた培養物のメンテナンスが保証される。この寄託物は、ブダペスト条約の条項と、プロテイン・デザイン・ラブズ社とATCCの間の契約とに基づいて、ATCCによって利用可能な状態にされる。そのため、関係するアメリカ合衆国特許が効力を持ったとき、あるいはアメリカ合衆国特許出願または外国出願が、いずれが先であるかに関係なく公開されたとき、寄託した培養物の子孫を、一般の人が恒久的かつ無制限に利用することが保証されるとともに、アメリカ合衆国特許商標庁長官が35U.S.C.の§122に従って利用に値するとした人や、その条項(886OG638を特に参照した37CFR§1.14も含む)に基づく長官の命令によって決められた人が利用することが保証される。
【0225】
本出願の譲受人は、寄託した材料の培養物が、適切な条件下で培養したときに死んだり失われたり破壊されたりした場合には、通知を受けたときにその材料を別の同じものとただちに交換することに同意した。寄託した材料が利用できるからといって、その事実を、すべての国の政府機関によってその国の特許法により認められた権利に反して本発明を実施するためのライセンスであると見なしてはならない。
【0226】
本発明の範囲は、寄託した構造体に限定されてはならない。なぜなら寄託した実施態様は、本発明のいくつかの特徴の単なる一例であり、機能的に同等なあらゆる構造体が本発明の範囲に含まれるからである。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1A】GPR64のヌクレオチド配列とアミノ酸配列である(配列ID番号1と2)。
【図1B】図1Aのつづき。
【図1C】図1Bのつづき。
【図2A】GPR64-1、GPR64-16、GPR64-18、GPR64-20、GPR64-48という5種類の抗GPR64抗体のVH領域とVL領域のヌクレオチド配列とアミノ酸配列である(配列ID番号3〜22)。
【図2B】図2Aのつづき。
【図2C】図2Bのつづき。
【図2D】図2Cのつづき。
【図3】4日間成長アッセイのデータをプロットしたものであり、GPR64を発現するがん細胞の中で細胞が増殖するときにGPR64の発現がRNAiによって下方調節されることを示している。
【図4】GPR64を発現するがん細胞の中で細胞が増殖するときにGPR64の発現がRNAiによって下方調節されることを示すデータのリストである。
【図5】42種類の抗GPR64モノクローナル抗体について結合を調べた結果をまとめた表である。
【図6】さまざまな卵巣がん組織のサンプルをモノクローナル抗体GPR64-101を用いて免疫組織化学的に染色した画像である。
【図7】さまざまな正常組織のサンプルをモノクローナル抗体GPR64-101を用いて免疫組織化学的に染色した画像である。
【図8】さまざまなGPR64モノクローナル抗体を用いたとき、H460異種移植片が生体内で腫瘍として成長する様子をプロットした図である。
【図9】mAb-アウリスタチン(mAb-VCAE)接合体の概略図と、さまざまなGPR64 mAb-VCAE共役体の存在下におけるH460の4日間の成長をプロットした図である。
【図10】GPR64-81 mAb-VCAE接合体とGPR64-93 mAb-VCAE接合体を用いた投薬計画を実施している間の、生体内におけるH460腫瘍の成長をプロットした図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPR64タンパク質に特異的に結合する抗体の同定および製造と、その抗体を利用した、あるいはその抗体を含む組成物を利用した、がんの診断法、予後予測法、治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵巣がんは女性で6番目に多いがんであり、女性のあらゆるがんの約6%を占める。卵巣がんは、女性におけるがん死の第5位にランクされる。アメリカがん学会は、アメリカ合衆国において2000年に約23,100人の新しい卵巣がん患者が発生し、約14,000人の女性がこの病気で死ぬと予測している。卵巣がんで死ぬ人が不釣り合いに多いことは、多くの卵巣がんが初期の段階では検出できないことで説明される。実際、生殖管のがんで死ぬ女性のほぼ半分は卵巣がんであり、生殖器に関する他のどのがんよりも死者が多い。
【0003】
最も優勢な形態である上皮卵巣がんになったほとんどの患者は、初期の段階では症状がなく、ステージIIIまたはIVになって症状が現われる。彼女らの5年生存率は25%未満であり、アフリカ系アメリカ人女性では生存率がさらに低い。初期の段階で卵巣がんが発見された患者は少数派だが、5年生存率は80%〜90%である(Parker, S.L.他、Cancer statistics, 1997、第47巻、5〜27ページ、1997年頃)。
【0004】
卵巣がんの家族歴がない場合、一生の間に卵巣がんになるリスクは1/70である。リスク因子としては、家族性がん症候群(遺伝性乳房/卵巣症候群のある女性では70歳までのリスクが82%);家族歴(卵巣がんの人が親類に一人もいないと生涯リスクは1.4%、一人いると5%、二人いると7%;Kerlikowske, K.他、Obstet. Gynecol.、第80巻、700〜707ページ、1992年);出産未経験;加齢;肥満;個人的に乳がん、子宮内膜がん、結腸直腸がんの経験あり;少ない妊娠;高齢(35歳以上)の初産などがある。しかし全卵巣がんの95%はリスク因子のない女性に発生している。ホルモン性避妊薬の使用、卵巣切除、卵管切除は、卵巣がんのリスクを低下させる(Kerlikowske, K.他、Obstet. Gynecol.、第80巻、700〜707ページ、1992年;Grimes, D.A.、Am. J. Obstet. Gynecol.、第166巻、1950〜1954ページ、1992年;Hankinson, S.E.他、JAMA、第270巻、2813〜2818ページ、1993年)が、両方の卵巣を切除しても卵巣がんを完全に効果的に予防できるとは限らない。
【0005】
卵巣がんの治療は、主に、外科的卵巣切除、抗ホルモン療法、化学療法のいずれか、またはこれらの組み合わせである。卵巣がんの多くの患者は効果的に治療されているとはいえ、現在の治療法だと必ず深刻な副作用が起こるため、生活の質が低下する。特定のどの治療法を選ぶかは、一般に、さまざまな予後予測パラメータとマーカーに基づく(Fitzgibbons他、Arch. Pathol. Lab. Med.、第124巻、966〜978ページ、2000年;HamiltonとPiccart、Ann. Oncol.、第11巻、647〜663ページ、2000年)。例えば遺伝的傾向のマーカーとして、BRCA-1とBRCA-2がある(Robson、J. Clin. Oncol.、第18巻、113〜118ページ、2000年)。
【0006】
新たな治療標的と診断マーカーを突き止めることは、卵巣がん患者の現在ある治療法を改善する上で不可欠である。分子医学の最近の進歩により、さまざまな免疫療法や小分子戦略の標的として、腫瘍特異的な細胞表面抗原に興味が集まってきている。免疫療法に適した抗原は、がん組織において高度に発現するが、理想的には正常な成人の組織では発現しない必要がある。しかし生きる上で不可欠な組織における発現は許容されるであろう。このような抗原の具体例としては、Her2/neuとB細胞抗原CD20が挙げられる。Her2/neuに対するヒト化モノクローナル抗体(ハーセプチン(登録商標)/トラスツズマブ)が、転移性乳がんの治療に現在用いられている(RossとFletcher、Stem Cells、第16巻、413〜428ページ、1998年)。同様に、抗CD20モノクローナル抗体(リツキシン(登録商標)/リツキシマブ)を用いて非ホジキンリンパ腫が有効に治療されている(Maloney他、Blood、第90巻、2188〜2195ページ、1997年;LegetとCzuczman、Curr. Opin. Oncol.、第10巻、548〜551ページ、1998年)。
【0007】
卵巣がんに関する免疫療法の潜在的な標的が同定されている。そのような1つの標的は、多型性上皮ムチン(MUC1)である。MUC1は膜貫通タンパク質であり、腺上皮細胞の先端面に存在している。MUC1は卵巣がんで過剰に発現することがしばしばあり、一般に、変化したグリコシル化パターンを示す。その結果、抗原として他とは明確に異なる分子になるため、第1相臨床試験でワクチンの標的となっている(Gilewski他、Clin. Cancer Res.、第6巻、1693〜1701ページ、2000年;Scholl他、J. Immunother.、第23巻、570〜580ページ、2000年)。腫瘍で発現するこのタンパク質はしばしば開裂して循環系に入り、そこで腫瘍マーカーCA15-3として検出される(Bon他、Clin. Chem.、第43巻、585〜593ページ、1997年)。しかし多くの患者の腫瘍でHER2もMUC-1も発現しない。したがって、局所的な疾患と転移性の疾患を取り扱うため、別の標的を同定する必要があるのは明らかである。
【0008】
産業界と学問の世界で新規な配列がいくつも同定されたものの、その新規な配列の機能を明らかにするのに同程度の努力はなされてこなかった。治療の標的と診断用マーカーを同定するために疾患状態にある新規なタンパク質や化合物の役割を明らかにすることは、卵巣がん患者の現在ある治療法を改善する上で不可欠である。したがってこの明細書では、卵巣がんその他のがんを治療するための分子標的が提供される。さらに、この明細書では、この標的を利用して卵巣がんの診断と予後予測に用いることのできる方法も提供される。
【0009】
GPR64タンパク質は、ある種のがん症状(例えば卵巣がん、ユーイング肉腫、子宮がん)に関与していることが知られている。転移性のがんを含めてがんの診断、予後予測、効果的な治療に役立つ抗体があると望ましかろう。そこでこの明細書では、ある種のがんの診断、予後予測、治療に用いることのできる組成物と方法を提供する。
【0010】
GPR64(文献ではOv1、HE6とも呼ばれており、この明細書と図面ではOAM6と呼ぶこともある)はオーファンGタンパク質結合受容体であり、大きくて重いグリコシル化されたN末端細胞外ドメインを備えている。
【0011】
GPR64は、Osterhoffら(DNA AND CELL BIOLOGY、第16巻、379〜389ページ、1997年)により、特異的Gタンパク質結合受容体(GPCR)としてクローニングされた。
【0012】
2002年6月17日に出願されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/173,999号(その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)とその中の実施例に記載されている遺伝子発現プロファイルから、卵巣がん組織では正常な組織と比べてGPR64が上方調節されていることがわかる。
【0013】
公開データベースに基づいてGPR64遺伝子の配列をバイオインフォマティクスで分析すると、このタンパク質産物が、シグナル配列と、大きな細胞外ドメイン(619アミノ酸)と、7つの膜貫通ドメインとを備えており、細胞膜に位置していてGタンパク質結合受容体として機能することが示唆される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明により、治療を目的とした接合抗体を作るのに役立つ抗GPR64抗体が提供される。本発明の抗GPR64抗体を、例えばGPR64を発現している腫瘍細胞(例えば卵巣がん細胞、子宮がん細胞、ユーイング肉腫細胞)に対する選択的細胞毒性剤として用いることができる。いくつかの実施態様では、本発明の抗体を利用し、がんおよび/または他の増殖性疾患(良性の増殖性疾患を含む)を疑われている患者、またはそう診断された患者を治療することができる。本発明の1つの特徴によると、本発明のGPR64抗体を用い、卵巣の増殖性疾患(例えば卵巣がん)を治療する。別の実施態様では、この抗体を用い、子宮がん、ユーイング肉腫、またはGPR64を発現する細胞の増殖と関係するあらゆる疾患を治療することができる。
【0015】
本発明により、配列ID番号1(Hs.421137、NM_005756.1)のヌクレオチド配列によってコードされているGPR64タンパク質(配列ID番号2)に対する高アフィニティ抗体が提供される。本発明の一実施態様では、GPR64-18、GPR64-81、GPR64-93、GPR64-101からなるグループの中から選択したGPR64抗体にGPR64ポリペプチドが結合するのを競合的に抑制する抗体が提供される。この実施態様で役に立つ可能性のある他の選択された抗体は、図5に示してある。本発明のいくつかの実施態様では、エフェクター部またはエフェクター成分に接合した抗体が提供される。エフェクター部に標識すること(例えば蛍光標識、エフェクター・ドメイン、例えばMicA)、あるいはエフェクター部を細胞毒性剤(例えば放射性同位体または細胞毒性物質)にすることが可能である。好ましい一実施態様では、本発明の抗体は、細胞毒性剤であるアウリスタチンである。別の実施態様では、本発明の抗体だけを用いて腫瘍細胞の成長を抑制することができる。発明の別の好ましい一実施態様では、その抗体が、抗体依存性細胞毒性を媒介する。
【0016】
本発明によって提供されるGPR64抗体としては、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体が挙げられる。本発明のいくつかの実施態様では、霊長類の患者を治療するため、霊長類化GPR64抗体が提供される。本発明により、GPR64抗体全体と、GPR64抗体フラグメントが提供される。好ましい実施態様では、抗体フラグメントとして、Fab、Fab'、F(ab')2、Fvフラグメント、rIgG、二重特異性抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体が挙げられる。
【0017】
本発明の抗体には、図2に示したVH領域とVL領域のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列(配列ID番号3〜22)と95%以上の相同性を有する抗体が含まれる。本発明の好ましい一実施態様では、GPR64-18のそれぞれVH領域とVL領域に対応する配列ID番号17および/または配列ID番号18を含む抗体が提供される。
【0018】
本発明により、GPR64(配列ID番号2)のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有する(好ましくは98%の相同性を有する)配列を含むポリペプチドと結合するモノクローナル抗体も提供される。いくつかの実施態様では、本発明のGPR64モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれかである。そのモノクローナル抗体は、GPR64上のリガンド結合部位を求めて競合することが好ましく、生体内の腫瘍細胞の増殖を抑制することがさらに好ましい。この場合の腫瘍細胞は、卵巣がん細胞、ユーイング肉腫細胞、子宮がん、GPR64を発現する他の腫瘍細胞からなるグループの中から選択される。いくつかの実施態様では、モノクローナル抗体をエフェクター部(例えばアウリスタチンなどの細胞毒性剤)と共役させる。本発明の別の一実施態様では、抗体依存性細胞毒性を媒介するモノクローナル抗体が提供される。
【0019】
本発明の別の一実施態様では、GPR64-18、GPR64-81、GPR64-93、GPR64-101からなるグループの中から選択した抗体が結合するのと同じGPR64エピトープと結合するモノクローナル抗体が提供される。
【0020】
本発明により、ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマ細胞系が産生するモノクローナル抗体が結合するのと同じGPR64エピトープと結合するモノクローナル抗体も提供される。
【0021】
本発明の別の一実施態様では、あらゆるGPR64抗体を産生することのできる宿主細胞が提供される。好ましい実施態様では、宿主細胞は、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞からなるグループの中から選択する。
【0022】
本発明の別の一実施態様では、あらゆるGPR64抗体を産生することのできるハイブリドーマが提供される。本発明の好ましい一実施態様では、ハイブリドーマ細胞系:ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマが提供される。
【0023】
本発明により、薬理学的に許容可能な賦形剤と、本発明による任意のGPR64抗体とを含む医薬組成物も提供される。医薬組成物のいくつかの実施態様では、GPR64抗体をエフェクター部またはエフェクター成分と共役させる。エフェクター成分は、標識すること(例えば蛍光標識)、あるいは細胞毒性剤(例えば放射性同位体または細胞毒性化学物質部)にすることができる。本発明により、GPR64抗体に接合させることのできるさまざまな細胞毒性剤が提供される。細胞毒性剤としては、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、ネオマイシン、アウリスタチンなどがある。好ましい一実施態様では、細胞毒性剤はアウリスタチンである。医薬組成物に含まれる抗体は、抗体全体でもよいし、抗体フラグメント(例えばFab、Fab'、F(ab')2、Fvフラグメント、rIgG、二重特異性抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体)でもよい。いくつかの実施態様では、医薬組成物に、キメラGPR64抗体、ヒト化GPR64抗体、ヒトGPR64抗体のいずれかが含まれる。
【0024】
本発明の別の一実施態様では、抗体と、薬理学的に許容可能な基剤または賦形剤とを含む組成物が提供される。この場合の抗体は、ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマ細胞系によって産生されるモノクローナル抗体である。
【0025】
本発明により、卵巣がんに関係する細胞の増殖を抑制する方法も提供される。この方法は、細胞を本発明のGPR64抗体と接触させる操作を含んでいる。多くの実施態様では、がん細胞は患者(一般にヒト)の体内にある。患者は、転移性卵巣がんと診断されて治療計画を実施している途中であってもよいし、あるいは単純に転移性卵巣がんを疑われているだけでもよい。
【0026】
本発明により、GPR64を用いた治療法と、関連する組成物も提供される。例えば本発明により、腫瘍細胞の成長を抑制する方法であって、哺乳動物(ヒトが好ましい)に、配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列と結合することのできる抗体を治療に有効な量投与する操作を含む方法が提供される。好ましい実施態様では、この方法の抗体をエフェクター部(例えばアウリスタチン)に接合させる、あるいはこの抗体が、抗体依存性細胞毒性を媒介する。好ましい実施態様では、この方法により、腫瘍細胞の成長を抑制する。そのとき腫瘍は、卵巣がん、ユーイング肉腫、子宮がん、GPR64を発現する他のタイプの腫瘍細胞からなるグループの中から選択される。
【0027】
抗体と、治療に有効な量の細胞毒性剤とを患者に投与する方法の別の実施態様では、抗体と細胞毒性剤は、同時に投与してもよいし、一方を他方の前に投与してもよい。別の一実施態様では、細胞毒性剤を抗体に接合させることによって同時に投与する。
【0028】
本発明によりさらに、さまざまなGPR64抗体を用いた診断テストとイムノアッセイも提供される。好ましい実施態様では、この方法は、患者からの生物サンプルに含まれるがん細胞を、その生物サンプルを本発明の抗体と接触させることによって検出する操作を含んでいる。いくつかの実施態様では、抗体を標識(例えば蛍光標識または放射性同位体)と共役させる。
【0029】
本発明の好ましい一実施態様では、哺乳動物の体内にある腫瘍を診断する方法であって、抗体を、哺乳動物から採取したテスト・サンプルと接触させ;抗体と、テスト・サンプルのポリペプチドの間に複合体が形成されることを検出する操作を含んでおり;そのとき抗体が、配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドと結合することを特徴とする方法が提供される。この方法の好ましい実施態様では、テスト・サンプルは、腫瘍細胞が成長または増殖していることが疑われる個人、あるいは卵巣がんであることが疑われる個人から採取する。
【0030】
本発明の別の一実施態様では、細胞表面受容体タンパク質に対して特異的な高血清力価の抗体を産生させる方法であって、細胞表面受容体に、その受容体とシグナル伝達系を分離する突然変異を起こさせ;突然変異したその受容体をある細胞系にトランスフェクションして発現させ;その細胞系を用いて哺乳動物を受動的に免疫感作することにより、細胞表面受容体に対して特異的な高血清力価の抗体を産生させる操作を含む方法が提供される。好ましい一実施態様では、この方法を、細胞表面受容体が、Gタンパク質と結合する受容体(GPR64であることが好ましい)である場合に実施することができる。別の好ましい実施態様では、この方法の突然変異はDRYボックス突然変異であり、この方法で用いる細胞系はBalb/c同系細胞系3T12である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明により、GPR64に対する抗体を用いてある種のがんを治療、診断、予後予測するための新規な試薬と方法が提供される。特に本発明により、GPR64発現細胞のための選択的細胞毒性剤として特に役立つ抗GPR64抗体が提供される。
【0032】
抗体が高アフィニティで結合するエピトープのマッピングは、従来技術でよく知られている競合結合アッセイを通じて実現することができる。これについては後で詳しく説明する。この方法を用いると、多数の別々のエピトープを認識する複数の抗体を同定することができる。次に、試験管内でのGPR64依存性細胞死に関してこれらの抗体を評価する。この方法を利用すると、細胞死を顕著に促進する抗体を同定することができる。
【0033】
定義
【0034】
この明細書では、“抗体”は、特定の抗原と免疫反応する免疫グロブリン分子を意味する。抗体には、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方が含まれる。この用語には、遺伝子操作した形態として、例えばキメラ抗体(例えばヒト化ネズミ類抗体)や、異種共役抗体(例えば二重特異性抗体)も含まれる。“抗体”という用語には、抗原と結合する形態の抗体として、例えば抗原と結合する能力を有するフラグメント(例えばFab'、F(ab')2、Fab、Fv、rIgG)も含まれる。『ピアース・カタログ・アンド・ハンドブック、1994年〜1995年』(ピアース・ケミカル社、ロックフォード、イリノイ州)も参照のこと。例えばKuby, J.、『免疫学』、第3版、W.H.フリーマン社、ニューヨーク、1998年も参照のこと。この用語は、組み換え一本鎖Fvフラグメント(scFv)も意味する。抗体という用語には、二価の分子または二重特異性分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体も含まれる。二価の分子と二重特異性分子は、例えばKostelny他、J. Immunol.、第148巻、1547ページ、1992年;PackとPluckthun、Biochemistry、第31巻、1579ページ、1992年;Hollinger他、上記文献、1993年;Gruber他、J. Immunol.、第152巻、5368ページ、1994年;Zhu他、Protein Sci.、第6巻、781ページ、1997年;Hu他、Cancer Res.、第56巻、3055ページ、1996年;Adams他、Cancer Res.、第53巻、4026ページ、1993年;McCartney他、Protein Eng.、第8巻、301ページ、1995年に記載されている。
【0035】
特定の抗原と免疫反応する免疫グロブリン分子は、ファージまたは同様のベクターの中で組み換え抗体のライブラリを選択する方法などの組み換え法(例えばHuse他、Science、第246巻、1275〜1281ページ、1989年;Ward他、Nature、第341巻、544〜546ページ、1989年;Vaughan他、Nature Biotech.、第14巻、309〜314ページ、1996年を参照のこと)によって、あるいは動物に抗原を用いて、あるいは抗原をコードしているDNAを用いて免疫感作することによって、作ることができる。
【0036】
一般に、免疫グロブリンは重鎖と軽鎖を備えている。それぞれの重鎖と軽鎖は、定常領域と可変領域を含んでいる(これらの領域は“ドメイン”としても知られている)。重鎖と軽鎖の可変領域には、3つの超可変領域(“相補性決定領域”または“CDR”とも呼ばれる)によって隔てられた4つの“枠組構造”領域が含まれている。枠組構造領域とCDRがどれだけの広がりを持っているかは、すでに明らかにされている。いろいろな軽鎖と重鎖の枠組構造領域の配列は、1つの種の中では比較的保存されている。抗体の枠組構造領域、すなわち構成要素である軽鎖と重鎖の枠組構造領域を合わせた領域は、三次元空間内にCDRを位置づけて揃えるのに役立つ。
【0037】
CDRは、抗原のエピトープとの結合に主として関与する。それぞれの鎖のCDRは、一般に、N末端から順番にCDR1、CDR2、CDR3と呼ばれており、一般に特定のCDRが位置する鎖によっても同定される。したがってVH CDR3は、そのCDR3が見いだされた抗体の重鎖の可変領域に位置し、VL CDR1は、そのCDR1が見いだされた抗体の軽鎖の可変領域からのCDR1である。
【0038】
“VH”または“VH”とは抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域であり、具体例としては、Fv、scFv、Fabの重鎖が挙げられる。“VL”または“VL”とは抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域であり、具体例としては、Fv、scFv、dsFv、Fabの軽鎖が挙げられる。
【0039】
“一本鎖Fv”または“scFv”は、一般的な二本鎖抗体の重鎖と軽鎖の可変領域が合わさって一本鎖を形成している抗体を意味する。一般に、リンカー・ペプチドが2本の鎖の間に挟まることで、適切な折り畳みと、活性結合部位の形成が可能になる。
【0040】
天然のクラスIgG抗体の定常領域と実質的に同じ定常領域を持つ抗体とは、存在しているどの定常領域も天然のクラスIgG抗体の定常領域とアミノ酸配列が実質的に同じである(すなわち少なくとも約85〜90%、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する)抗体を意味する。
【0041】
この明細書では、“モノクローナル抗体”は、ハイブリドーマ法で作られた抗体に限定されない。“モノクローナル抗体”という用語は、単一のクローン(例えば真核生物、原核生物、ファージのクローン)に由来する抗体を意味し、どの方法で作ったかは問題とされない。本発明で役に立つモノクローナル抗体は、従来技術で知られている多彩な方法で調製することができる。方法としては、例えば、ハイブリドーマ法、組み換え法、ファージ提示法や、これらの組み合わせがある。モノクローナル抗体は、例えば従来技術で知られているハイブリドーマ法で作ることができる。この方法は、例えばHarlowとLane、『抗体:実験室マニュアル』、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー出版、ニューヨーク州、1988年;Hammerling他、『モノクローナル抗体とT細胞ハイブリドーマ』、エルスヴィア社、ニューヨーク、1981年、563〜681ページに記載されている(両方とも参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0042】
本発明の好ましい多くの用途(例えばヒトの体内でのGPR64抗体の使用や、インビトロ検出アッセイ)では、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれかを用いることが好ましかろう。
【0043】
“キメラ抗体”は、免疫グロブリン分子の内部で、(a)定常領域またはその一部が改変、置換、交換されていて、抗原結合部位(可変領域)が、別のクラス、エフェクター機能部、種、または変化したクラス、エフェクター機能部、種の定常領域と連結しているか、この免疫グロブリン分子に新しい性質を付与するまったく別の分子(例えば酵素、毒素、ホルモン、増殖因子、薬など)と連結している免疫グロブリン分子、あるいは(b)可変領域またはその一部が、抗原特異性を持つ可変領域を用いて改変、置換、交換されている免疫グロブリン分子である。キメラ抗体を作る方法は従来技術において公知である。例えばMorrison、Science、第229巻、1202〜1207ページ、1985年;Oi他、BioTechniques、第4巻、214〜221ページ、1986年;Gillies他、J. Immunol. Methods、第125巻、191〜202ページ、1989年;アメリカ合衆国特許第5,807,715号、第4,816,567号、第4,516,397号を参照のこと(これらは、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0044】
“ヒト化抗体”または“ヒト化免疫グロブリン”は、ヒトの枠組構造と、非ヒト抗体からの少なくとも1つの(好ましくはすべての)相補性決定領域(CDR)とを含んでおり、存在しているどの定常領域も、ヒト免疫グロブリンの定常領域と実質的に同じである(すなわち少なくとも約85〜90%、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する)免疫グロブリンを意味する。したがってヒト化免疫グロブリンでおそらくCDRを除くすべての部分は、1つ以上の天然のヒト免疫グロブリン配列の対応する部分と実質的に同一である。したがってこのようなヒト化抗体は、元の完全なヒト可変領域が非ヒト種からの対応する配列によって置換されている箇所が実質的に1つ未満であるキメラ抗体である(アメリカ合衆国特許第4,816,567号)。ヒト枠組構造領域の枠組構造残基は、抗原の結合を変えること、好ましくは改善することを目的として、CDRドナー抗体からの対応する残基で置換することがしばしばある。こうした枠組構造置換は、従来技術においてよく知られている方法で同定される。例えば、CDRと枠組構造残基の相互作用をモデル化して抗原が結合する上で重要な枠組構造残基を同定し、配列を比較して特定の位置にある通常とは異なる枠組構造残基を同定するという方法がある。例えばQueen他、アメリカ合衆国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、第6,180,370号を参照のこと(それぞれの特許は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。抗体は従来技術で知られている多彩な方法でヒト化することができる。例えばCDRグラフティング(ヨーロッパ特許第239,400号;PCT公開公報WO 91/09967;アメリカ合衆国特許第5,225,539号、第5,530,101号、第5,585,089号)、ベニアリングまたはリサーフェシング(ヨーロッパ特許第592,106号、第519,596号;Padlan、Mol. Immunol.、第28巻、489〜498ページ、1991年;Studnicka他、Prot. Eng.、第7巻、805〜814ページ、1994年;Roguska他、Proc. Natl. Acad. Sci.、第91巻、969〜973ページ、1994年)、鎖シャッフリング(アメリカ合衆国特許第5,565,332号)。なおこれら文献は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする。
【0045】
ヒト患者の治療には完全な“ヒト”抗体が望ましかろう。ヒト抗体は、従来技術で知られている多彩な方法で作ることができる。例えば、ヒト免疫グロブリン配列からの抗体ライブラリを利用する上記のファージ提示法がある。アメリカ合衆国特許第4,444,887号、第4,716,111号;PCT公開公報WO 98/46645、WO 98/50433、WO 98/24893、WO 98/16654、WO 96/34096、WO 96/33735、WO 91/10741を参照のこと(これら特許文献は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。ヒト抗体は、機能する内在性免疫グロブリンは発現できないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子は発現できるトランスジェニック・マウスを用いて作ることもできる。ヒト抗体を作るためのこの方法の概要に関しては、LonbergとHuszar、Int. Rev. Immunol.、第13巻、65〜93ページ、1995年を参照のこと。ヒト抗体とヒト・モノクローナル抗体の製造方法、そのような抗体の製造プロトコルの詳細に関しては、例えばPCT公開公報WO 98/24893、WO 92/01047、WO 96/34096、WO 96/33735;ヨーロッパ特許第0,598,877号、アメリカ合衆国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号、第5,885,793号、第5,916,771号、第5,939,598号を参照のこと(これら特許文献は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。さらに、アブジェニックス社(フレモント、カリフォルニア州)やメダレックス社(プリンストン、ニュージャージー州)などの企業は、選択した抗原に対するヒト抗体を、上記の方法と似た方法を利用して提供することができる。
【0046】
選択したエピトープを認識する完全なヒト抗体は、“ガイド式選択”と呼ばれる方法を利用して作り出すことができる。この方法では、選択された非ヒト・モノクローナル抗体(例えばマウス抗体)を利用し、同じエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択をガイドする(Jespers他、Biotechnology、第12巻、899〜903ページ、1988年)。
【0047】
“霊長類化抗体”という用語は、サルの可変領域とヒトの定常領域を含む抗体を意味する。霊長類化抗体の製造方法は、従来技術で知られている。例えばアメリカ合衆国特許第5,658,570号、第5,681,722号、第5,693,780号を参照のこと(これら特許文献は、参考としてその全体がこの明細書に組み込まれているものとする)。
【0048】
“エピトープ”または“抗原性決定基”は、抗原上で抗体と結合する部位を意味する。エピトープは、連続したアミノ酸と、タンパク質の三次折り畳みによって隣り合わせになった連続していないアミノ酸の両方から形成することができる。連続したアミノ酸から形成されるエピトープは、変性用溶媒に曝露されたときにも一般に保持されるのに対し、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、変性用溶媒で処理すると一般に失われる。エピトープは、独自の空間的配座の中に、一般に少なくとも3個、より一般的には少なくとも8〜10個のアミノ酸を含んでいる。エピトープの空間的配座を明らかにする方法としては、例えば、X線結晶学、二次元核磁気共鳴などの方法がある。例えば『分子生物学におけるエピトープ・マッピングのプロトコル』、第66巻、Glenn E. Morris編、1996年を参照のこと。
【0049】
“IgGクラス”の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4という抗体を意味する。重鎖と軽鎖におけるアミノ酸残基の番号は、EUインデックスの番号である(Kabat他、『免疫学的に興味深いタンパク質の配列』、第5版、国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州、1991年;この中で使用されているEU番号スキーム)。
【0050】
“GPR64”という用語は、核酸とポリペプチドの多型変異体、対立遺伝子、突然変異体、種間ホモログで、(1)好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000個またはそれ以上のヌクレオチドからなる領域において、配列ID番号1のヌクレオチド配列と約60%以上の配列同一性を有する、すなわち65%、70%、75%、80%、85%、90%、より好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するもの;あるいは(2)配列ID番号1のヌクレオチド配列によってコードされたアミノ酸配列を含む免疫原に対する抗体(例えばポリクローナル抗体)、あるいはその変異体で保存的変更がなされたものと結合するもの;あるいは(3)厳しいハイブリダイゼーション条件下で配列ID番号1の核酸配列またはその相補体と特異的にハイブリダイズするもの;あるいは(4)好ましくは少なくとも約25、50、100、200個またはそれ以上のアミノ酸からなる領域において、配列ID番号2のアミノ酸配列と約60%以上の配列同一性を有する、すなわち65%、70%、75%、80%、85%、90%、より好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するものを意味する。ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、一般に哺乳動物に由来する。哺乳動物としては、霊長類(例えばヒト);囓歯類(例えばラット、マウス、ハムスター);ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、あるいはその他の哺乳動物が挙げられる。“GPR64ポリペプチド”と“GPR64ポリヌクレオチド”には、天然の形態と組み換え形態の両方が含まれる。
【0051】
“完全長”のGPR64タンパク質または核酸は、天然の1種類以上の野生型GPR64ポリヌクレオチドまたは野生型GPR64ポリペプチド配列に通常含まれるすべてのエレメントを含む、卵巣がんのポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列、またはその変異体の配列を意味する。例えば完全長GPR64核酸は、一般に、天然の完全長タンパク質をコードしているすべてのエキソンを含んでいる。“完全長”になるのは、翻訳後プロセシングまたはスプライシング(例えば選択的スプライシング)のさまざまな段階の前でも後でもよい。
【0052】
この明細書では、“生物サンプル”は、例えばGPR64タンパク質、ポリヌクレオチド、転写産物いずれかの核酸またはポリペプチドを含む生物の組織または体液である。このようなサンプルとしては、霊長類(例えばヒト)または囓歯類(例えばマウスやラット)から単離した組織が挙げられる。生物サンプルとしては、組織の切片(例えば生検サンプル、剖検サンプル)、組織学的検査を目的として採取した凍結切片、血液、血漿、血清、痰、糞便、涙、粘液、毛髪、皮膚なども可能である。生物サンプルには、移植片や、患者の組織に由来する一次細胞培養物および/または形質転換された細胞培養物も含まれる。生物サンプルは、一般に真核生物から得られる。真核生物として最も好ましいのは哺乳動物(霊長類(例えばチンパンジーやヒト);ウシ;イヌ;ネコなど);囓歯類(例えばモルモット、ラット、マウス);ウサギ;あるいは鳥類;爬虫類;魚である。
【0053】
“生物サンプルを用意する”は、本発明の方法で使用する生物サンプルを得ることを意味する。これは、動物から細胞サンプルを取り出すことによって実現されることが最も多いが、以前に単離した細胞(例えば別の時および/または別の目的で別の人から単離した細胞)を用いることや、本発明の方法を生体内で実施することによっても実現できる。治療歴または転帰歴がわかっているアーカイブの組織が特に有用であろう。
【0054】
2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列という文脈における“一致する”またはパーセント“一致”という用語は、BLASTまたはBLAST2.0という配列比較アルゴリズムを以下に説明するデフォルト・パラメータにして用いて測定したときに、あるいは手でアラインメント作業を行なって目で調べたときに、アミノ酸残基またはヌクレオチドの全体または所定の割合が同じである(すなわち、比較ウインドウまたは指定された領域で対応が最大となるように並べて比較したとき、特定の領域において、約60%の同一性を有する、好ましくは70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する)2つ以上の配列または部分配列を意味する(例えばNCBIのウェブ・サイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTなどを参照のこと)。このような配列は、“実質的に同一”と言われる。この定義は、テスト配列の相補体にも関する、あるいは適用することができる。この定義には、欠失および/または付加のある配列、置換のある配列、天然の多型変異体や対立遺伝子変異体、人工的な変異体も含まれる。以下に説明するように、好ましいアルゴリズムはギャップなどを説明することができる。同一性は、長さが少なくとも約25個のアミノ酸またはヌクレオチドの領域に存在していることが好ましく、長さが50〜100個のアミノ酸の領域に存在していることがさらに好ましい。
【0055】
配列を比較するためには一般に1つの配列が参照配列として機能し、テスト配列をこの参照配列と比較する。配列比較アルゴリズムを利用する場合には、テスト配列と参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合には次いで座標を指定し、配列アルゴリズム・プログラムのパラメータを指定する。デフォルトのプログラム・パラメータを利用できること、あるいは別のパラメータを指定できることが好ましい。次に、配列比較アルゴリズムが、プログラム・パラメータに基づき、参照配列に対するテスト配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0056】
この明細書では、“比較ウインドウ”に、連続位置の数が、20〜600、通常は約50〜約200、より一般的には約100〜約150からなるグループの中から選択した1つの数である1つのセグメントを参照することが含まれる。このセグメントの中では、ある配列と参照配列のアラインメントを最適化した後、その配列を参照配列と比較する。比較のために複数の配列をアラインメントする方法は従来技術において周知である。比較のために複数の配列のアラインメントを最適化するには、例えばSmithとWaterman(Adv. Appl. Math.、第2巻、482ページ、1981年)の局所的相同性アルゴリズムを用いる、あるいはNeedlemanとWunschの相同性アラインメント・アルゴリズム(J. Nol. Biol.、第48巻、443ページ、1970年)を用いる、あるいはPearsonとLipmanの類似性検索法(Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA、第85巻、2444ページ、1988年)を用いる、あるいはこれらのアルゴリズムをコンピュータ化した方法(ウィスコンシン・ジェネティックス・ソフトウエア・パッケージ(ジェネティックス・コンピュータ・グループ、575サイエンス・ドクター、マディソン、ウィスコンシン州)のGAP、BESTFIT、FASTA、TFASTA)を用いる、あるいは手でアラインメント作業を行なって目で調べる(例えば『分子生物学における最新プロトコル』(Ausbel他編、1995年増補版)を参照のこと)。
【0057】
パーセント配列同一性と配列類似性を明らかにするのに適したアルゴリズムの好ましい具体例としては、BLASTアルゴリズムとBLAST2.0アルゴリズムがある。これらは、Altschul他、Nuc. Acids Res.、第25巻、3389〜3402ページ、1977年と、Altschul他、J. Mol. Biol.、第215巻、403〜410ページ、1990年に記載されている。BLASTとBLAST2.0を利用し、この明細書に記載したパラメータを用いて、本発明の核酸とタンパク質に関するパーセント配列同一性を明らかにする。BLAST分析を行なうためのソフトウエアは、国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から自由に入手することができる。このアルゴリズムは、まず最初に、検索配列の中にある長さWの短いワードを同定することにより、高得点配列ペア(HSP)のうちで、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントしたときに何らかのプラスの値である閾値Tと一致するもの、あるいはその閾値を満たすものを同定する操作を含んでいる。Tは、近傍ワード得点閾値と呼ばれる(Altschul他、上記文献)。最初にヒットした近傍ワード群が、そのワードを含むより長いHSPを見つける検索を開始するための種となる。ヒットしたワードは、累積アラインメント得点が大きくなれる限り、それぞれの配列に沿って両方向に延長される。累積アラインメント得点は、例えばヌクレオチド配列に関し、パラメータM(一致する残基ペアに関する報酬得点;常に0より大)とN(一致しない残基に関するペナルティ得点;常に0未満)を用いて計算される。アミノ酸配列に関しては、得点マトリックスを用いて累積得点を計算する。ヒットしたワードのそれぞれの方向への延長を停止させるのは、累積アラインメント得点が、到達する最大値から量Xだけはずれたとき;あるいは、負の得点になる残基のアラインメントが1つ以上累積することで累積アラインメント得点が0またはそれよりも小さくなったとき;あるいは、いずれかの配列の端部に到達したときである。BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、Xは、アラインメントの感度と速度を決定する。(ヌクレオチド配列のための)BLASTNプログラムでは、デフォルトとして、ワード長(W)を11、期待値(E)を10、M=5、N=-4にして両方の鎖の比較を行なう。アミノ酸配列に関しては、BLASTPプログラムにおいて、デフォルトとして、ワード長を3、期待値(E)を10、BLOSUM62得点マトリックス(例えばHenikoffとHenikoff、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第89巻、10915ページ、1989年を参照のこと)のアラインメント(B)を50、M=5、N=-4にして両方の鎖の比較を行なう。
【0058】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計的分析も行なう(例えばKarlinとAltschul、Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA、第90巻、5873〜5787ページ、1993年を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって与えられる類似性の1つの指標は、最小和確率(P(N))である。P(N)は、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が偶然に一致する確率の指標となる。例えばテストする核酸を参照核酸と比較したときの最小和確率が約0.2未満である(約0.01未満であることがより好ましく、約0.001未満であることがさらに好ましい)場合には、その核酸が参照配列と類似していると考えられる。Log値としては、大きな数(例えば、5、10、20、30、40、50、70、90、110、150、170など)をマイナスにした値が可能である。
【0059】
2つの核酸配列またはポリペプチド配列が実質的に同一であることの1つの指標は、以下に説明するように、第1の核酸によってコードされているポリペプチドが、第2の核酸によってコードされているポリペプチドに対する抗体と免疫学的に交差反応することである。したがってあるポリペプチドが一般に第2のポリペプチドと実質的に同一であるのは、例えばこれら2つのポリペプチドが保存された置換による違いだけを有する場合である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの別の指標は、以下に説明するように、2つの分子またはその相補体が、ストリンジェント条件下で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であることのさらに別の指標は、同じプライマーを用いてその2つの配列を増幅できることである。
【0060】
“宿主細胞”は、天然の細胞であるか、あるいは発現ベクターを含んでいて、その発現ベクターの複製または発現を支援する形質転換細胞である。宿主細胞としては、培養した細胞、移植片、生体内の細胞などが可能である。宿主細胞は、原核細胞(例えば大腸菌)、または真核細胞(例えば酵母、昆虫、両生類、哺乳動物の細胞で、具体的にはCHO、HeLaなど)にすることができる(例えばアメリカ基準培養物コレクションのカタログまたはwww.atcc.orgを参照のこと)。
【0061】
“単離された”、“精製された”、“生物学的に純粋な”は、本来の状態で一般に付随している成分から実質的または本質的に自由な状態になっている材料について用いる。純度と均一性は、一般に、分析化学の技術(例えばポリアクリルアミド・ゲル電気泳動、高性能液体クロマトグラフィ)を利用して測定される。調製物の中に優勢な化学物質として存在するタンパク質または核酸は、実質的に精製されている。特に、単離された核酸は、天然の状態で遺伝子に隣接していて、その遺伝子によってコードされている以外のタンパク質をコードしているいくつかのオープン・リーディング・フレームから分離されている。いくつかの実施態様における“精製された”という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1つのバンドを生み出すことを意味する。これは、核酸またはタンパク質が少なくとも85%の純度であるという意味であることが好ましい。より好ましいのは純度が少なくとも95%の意味であることであり、最も好ましいのは純度が少なくとも99%の意味であることである。他の実施態様における“精製する”または“精製”は、精製することになる組成物から少なくとも1つの汚染物を除去することを意味する。この意味では、精製によって精製された化合物が均一になる(例えば純度100%である)必要はない。
【0062】
“ポリペプチド”、“ペプチド”、“タンパク質”という用語は、この明細書ではどれも同じ意味で使用し、アミノ酸残基からなるポリマーを意味する。これらの用語は、1個以上のアミノ酸残基において対応する天然のアミノ酸が人工的な化学的ミメティックになったアミノ酸ポリマーのほか、天然アミノ酸からなるポリマー、修飾された残基を含むポリマー、天然には存在しないアミノ酸からなるポリマーに適用される。
【0063】
“アミノ酸”という用語は、天然アミノ酸と合成アミノ酸のほか、天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログとアミノ酸ミメティックを意味する。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされたアミノ酸と、後から修飾されたアミノ酸(例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、O-ホスホセリン)である。アミノ酸アナログは、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を有する(例えば水素、カルボキシル基、アミノ基、R基にα炭素が結合している)化合物を意味し、具体的には、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなどがある。このようなアナログは、修飾されたR基を備えること(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を備えることができるが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸ミメティックは、アミノ酸の一般的な化学的構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化合物を意味する。
【0064】
この明細書では、アミノ酸は、一般に知られている3文字コードで、あるいはIUPAC-IUB生化学命名法委員会が勧めている1文字コードで指定することができる。同様に、ヌクレオチドも一般に受け入れられている1文字コードで指定することができる。
【0065】
“保存的変更がなされた変異体”は、アミノ酸配列と核酸配列の両方に適用される。個々の核酸配列に関しては、保存的変更がなされた変異体は、例えば本質的に同じか関連した天然の連続配列と同じアミノ酸配列か実質的に同じアミノ酸配列をコードしている核酸を意味する(実質的に同じ場合には、あるアミノ酸配列を核酸がコードしていない)。遺伝暗号は縮重しているため、たいていのタンパク質は、機能が同じ多数の核酸によってコードされている。例えばコドンGCA、GCC、GCG、GCUはすべて、アラニンというアミノ酸をコードしている。したがってあるコドンによってアラニンを指定するすべての位置で、コードされるポリペプチドを変化させることなく、そのコドンを上記の対応する別のコドンに変えることができる。このような核酸の変異は“サイレント変異”であり、保存的変更がなされた変異の一種である。ポリペプチドをコードしている本明細書記載のどの核酸配列にも、核酸のサイレント変異がある。当業者であれば、所定の状況においては、核酸内の各コドン(AUGとTGGは除く。前者は、通常はメチオニンを指定する唯一のコドンであり、後者は、通常はトリプトファンを指定する唯一のコドンである)を変えて機能的に同じ分子を作り出せることを知っているであろう。したがってあるポリペプチドをコードしている核酸のサイレント変異は、発現産物に関して記載された配列でははっきりわからないことがしばしばあるが、実際のプローブ配列ではそうではない。
【0066】
アミノ酸配列に関しては、当業者であれば、核酸配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、タンパク質配列における個々の置換、欠失、付加により、単一のアミノ酸またはコードされた配列のわずかな割合のアミノ酸において変化、付加、欠失がある変異体は、このような変化の結果としてあるアミノ酸が化学的に似たアミノ酸で置換されている“保存的変更がなされた変異体”であることを知っているであろう。機能が似たアミノ酸を与える保存された置換の表は、従来技術において周知である。保存的変更がなされたこのような変異体は本発明の多型変異体、種間ホモログ、対立遺伝子に追加され、これらが除外されることはない。一般に、互いの間でなされる保存された置換は、1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);8)システイン(C)、メチオニン(M)である(例えばCreighton、『タンパク質』、1984年を参照のこと)。
【0067】
巨大分子の構造(例えばポリペプチドの構造)は、有機的組織体のさまざまなレベルという観点で説明することができる。この有機的組織体に関する一般的な議論は、例えばAlberts他、『細胞の分子生物学』(第3版、1994年)と、CantorとSchimmel、『生物物理化学パート1:生物の巨大分子の立体配座』(1980年)を参照されたい。“一次構造”は、特定のペプチドのアミノ酸配列を意味する。“二次構造”は、ポリペプチドの内部で局所的に秩序化された三次元構造を意味する。この構造はドメインとして一般に知られている。ドメインはポリペプチドの一部であり、そのポリペプチドのコンパクトな単位を形成することがしばしばあり、一般にアミノ酸25〜約500個の長さである。典型的なドメインは組織化の程度がより小さなセクション(例えばシートや螺旋)からなる。“三次構造”は、ポリペプチド・モノマーの完全な三次元構造を意味する。“四次構造”は、通常は独立な三次単位が非共有結合することによって形成された三次元構造を意味する。異方項は、エネルギー項としても知られている。
【0068】
“標識”または“検出可能部”は、分光手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段、他の物理的手段によって検出できる組成物である。例えば有用な標識として、蛍光染料、高電子密度試薬、酵素(例えばELISAで一般に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、コロイド状の金、ナノ結晶(例えば量子ドット)、ハプテン、タンパク質や、例えば放射性標識をペプチドに組み込むことによって検出可能にできる他の要素、ペプチドと特異的に反応する抗体の検出に用いられる他の要素が挙げられる。放射性同位体は、例えば3H、14C、32P、35S、125Iである。本発明のタンパク質に対する抗体を用いる場合には、後で説明するように、放射性同位体を毒性部として用いる。標識は、GPR64核酸、タンパク質、抗体の任意の位置に組み込むことができる。抗体を標識に共役させる従来法のうちの任意の方法を利用することができる。例えば、Hunter他、Nature、第144巻、945ページ、1962年;David他、Biochemistry、第13巻、1014ページ、1974年;Pain他、J. Immunol. Meth、第40巻、219ページ、1981年;Nygren, J.、Histochem. and Cytochem.、第30巻、407ページ、1982年に記載されている方法がある。放射性標識したペプチドまたは放射性標識した抗体組成物の寿命は、放射性標識したペプチドまたは抗体を安定化させて分解されないよう保護する物質を付加することによって延ばすことができる。放射性標識したペプチドまたは抗体を安定化させる任意の物質または物質の組み合わせを利用することができる。そのような物質として、アメリカ合衆国特許第5,961,955号に開示されている物質がある。
【0069】
“エフェクター”、“エフェクター部”、“エフェクター成分”は、リンカーまたは化学的結合による共有結合、非共結合、イオン結合、ファン・デル・ワールス結合、静電結合、水素結合を通じて抗体に結合した分子である。“エフェクター”としては、例えば検出部となる多彩な分子が可能である。例えば、放射性化合物、蛍光化合物、酵素または基質、タグ(例えばエピトープ・タグ)、毒素、活性化可能な部分、化学療法剤または細胞毒性剤、化学走性誘因物質、リパーゼ;抗生物質;“硬い”放射線(例えばβ線)を放出する放射性同位体などがある。
【0070】
この明細書で使用する“細胞毒性剤”という用語は、細胞の機能を抑制または阻止する物質および/または細胞を破壊する物質を意味する。この用語には、放射性同位体(例えば131I、125I、90Y、186Re)、化学療法剤、毒素(例えば酵素で活性化する細菌の毒素、真菌の毒素、植物由来の毒素、動物由来の毒素、あるいはこれらの断片)も含まれるものとする。
【0071】
“化学療法剤”は、がんの治療に役立つ化合物である。化学療法剤の具体例としては、アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(“Ara-C”)、シクロホスファミド、チオテパ、ブスルファン、サイトキシン、タキソイド(例えばパクリタキセル(タキソテール、ブリストル-マイヤー・スクウィブ・オンコロジー社、プリンストン、ニュージャージー州))、ドキセタキセル(タキソテレ、ローヌ-プーラン・ロレール社、アントニー、フランス国)、トキソテール、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イフォスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラマイシン(アメリカ合衆国特許第4,675,187号を参照のこと)、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン、アクチノマイシンD、VP-16、クロラムブシル、他の関連したナイトロジェンマスタードなどがある。この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節または抑制するホルモン剤(タモキシフェン、オナプリストン)も含まれる。
【0072】
この明細書で使用する“基剤”としては、その基剤に曝露される細胞または哺乳動物に対して使用する用量および濃度で毒性のない、薬理学的に許容可能な基剤、賦形剤、安定剤が挙げられる。生理学的に許容可能な基剤は、pH緩衝水溶液であることが多い。生理学的に許容可能な基剤の具体例としては、リン酸塩、クエン酸塩、他の有機酸、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(例えば血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、リシン);単糖類、二糖類、他の炭水化物(例えばグルコース、マンノース、デキストリン);キレート剤(例えばEDTA);糖アルコール(例えばマンニトール、ソルビトール);塩形成対イオン(例えばナトリウム);非イオン性界面活性剤(例えばトゥイーン(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、プルロニックス(登録商標))などがある。
【0073】
がんの治療に関する“治療に有効な量”は、以下に示す効果のうちの1つ以上を起こすことのできる量を意味する:(1)腫瘍の成長をある程度抑制する(例えば成長速度の低下または成長の完全な停止);(2)腫瘍細胞の数の減少;(3)腫瘍のサイズ減少;(4)周囲の臓器への腫瘍細胞の浸潤抑制(すなわち減少、速度低下、完全な停止);(5)転移の抑制(すなわち減少、速度低下、完全な停止);(6)抗腫瘍免疫応答の増大(しかし腫瘍が退縮したり排除されたりするとは限らない);(7)腫瘍に付随する1つ以上の症状のある程度の緩和。腫瘍の治療を目的としたGPR64抗体の“治療に有効な量”は、経験的に、あるいは定型的な方法で決定することができる。
【0074】
“治療”は、治療措置と予防措置の両方を意味する。治療を必要とする人には、すでに異常を抱えている人と、異常を予防しようとする人が含まれる。
【0075】
例えば細胞、核酸、タンパク質、ベクターに関して用いるときの“組み換え”という用語は、細胞、核酸、タンパク質、ベクターが、異種の核酸またはタンパク質の導入によって変更されていること、あるいは元の核酸またはタンパク質が変化したことによって変更されていること、あるいは細胞がそのように変更された細胞に由来することを意味する。したがって、例えば組み換え細胞は、細胞の元々の形態(非組み換え形態)では見られない遺伝子を発現する、あるいは、組み換えられていなければ異常に発現したり、発現が少なかったり、まったく発現しなかったりする元の遺伝子を発現する。したがってこの明細書では、“組み換え核酸”という用語は、自然界で通常見られる形態に対して例えばポリメラーゼやエンドヌクレアーゼを用いて試験管内で核酸を操作することによって初めて形成された核酸を意味する。この方法により、さまざまな配列を機能上リンクさせることができる。したがって線状の単離された核酸も、通常は接合していないDNA分子同士を試験管内で連結することによって形成した発現ベクターも、両方とも本発明の目的のための組み換えであると見なされる。組み換え核酸が作られて宿主細胞または宿主生物に導入されると、その組み換え核酸は、非組み換えによって、すなわち試験管内の操作ではなく、宿主細胞の生体内細胞機構を利用して、複製を行なう。しかしこのような核酸は、組み換えによって作られると、続く複製が非組み換えによって行なわれたとしても、本発明の目的のための組み換えであると見なされる。同様に、“組み換えタンパク質”は、組み換え技術を利用して(すでに説明したように、例えば組み換え核酸の発現を通じて)作ったタンパク質である。
【0076】
核酸の一部分に関して用いるときの“異種”という用語は、その核酸が、自然界では通常は互いに同じ関係になっていることがない2つ以上の配列を含むことを意味する。例えば新しい機能的核酸を形成するように配置された互いに関係のない遺伝子からの2つ以上の配列(例えば1つの供給源からのプロモーターと、別の供給源からのコード領域)を有する核酸は、一般に組み換えによって作られる。同様に、異種タンパク質は、自然界で互いに同じ関係になっていることのない2つ以上の部分配列(例えば融合タンパク質)をしばしば意味する。
【0077】
“プロモータ”は、核酸の転写を指示する核酸制御配列のアレイとして定義される。この明細書では、プロモーターに、転写開始部位の近くにある必要な核酸配列(ポリメラーゼII型プロモーターの場合にはTATAエレメント)が含まれる。プロモーターは、必要に応じ、遠位エンハンサー・エレメントまたはリプレッサー・エレメントも含んでいる。これらのエレメントは、転写開始部位から最大で数千塩基対離すことができる。“構成的”プロモーターは、たいていの環境条件や成長条件のもとで活性なプロモーターである。“誘導的”プロモーターは、環境や成長を制御した状態で活性なプロモーターである。“機能上リンクした”という表現は、核酸発現制御配列(例えばプロモーター、転写因子結合部位アレイ)と第2の核酸配列の間が機能的に結びついていて、核酸発現制御配列が、第2の配列に対応する核酸の転写を指示することを意味する。
【0078】
“発現ベクター”は、宿主細胞の中で特定の核酸を転写できるようにする特定の核酸エレメント群を用い、組み換えまたは合成によって作った核酸構造体である。発現ベクターとしては、プラスミドの一部、ウイルスの一部、核酸断片が可能である。一般に、発現ベクターは、プロモーターと機能上リンクしていて転写されることになる核酸を含んでいる。
【0079】
抗体と“特異的(または選択的)に結合する”、あるいは“特異的(または選択的)に免疫反応する”という表現は、タンパク質またはペプチドに関して用いる場合には、いろいろなタンパク質または他の生物製剤が混じった集団の中に目的とするタンパク質が存在していることを決定づける結合反応を意味する。したがって指定されたイムノアッセイの条件下では、特定の抗体が特定のタンパク質配列と、バックグラウンドの少なくとも2倍(一般には10〜100倍超)結合する。
【0080】
このような条件下で抗体に特異的に結合するには、特定のタンパク質に対する特異性に関して選択された抗体が必要とされる。例えば特定のタンパク質、多型変異体、対立遺伝子、オルソログ、保存的変更がなされた変異体、スプライス変異体、これらのものの一部に対するポリクローナル抗体は、GPR64と特異的に免疫反応するが、他のタンパク質とは免疫反応しないポリクローナル抗体だけが得られるように選択することができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を差し引くことによって実現できる。多彩なイムノアッセイの形式を利用し、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択することができる。あるタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するには、例えば固相ELISAイムノアッセイが一般に利用されている(特異的な免疫反応性を決定するのに利用できるイムノアッセイの形式と条件に関しては、例えばHarlowとLane、『抗体、実験室マニュアル』、1988年を参照のこと)。
【0081】
“がん”、“がん性”という用語は、哺乳動物において細胞の成長が調節されていないことを一般に特徴とする生理学的状態を記述している。がんの具体例としては、癌腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、白血病などがある。このようながんのさらに詳細な具体例としては、頭部がん、前立腺がん、大腸がん、扁平上皮細胞がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、胃腸がん、膵臓がん、頚部グリア細胞腫がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓がん、外陰部のがん、甲状腺がん、肝細胞癌、頭部と首のさまざまながんがある。
【0082】
この明細書では、“腫瘍”は、あらゆる腫瘍細胞(悪性でも良性でもよい)の成長および増殖と、前がん状態とがん状態のあらゆる細胞および組織を意味する。
【0083】
核酸からのGPR64ポリペプチドの発現
【0084】
本発明の核酸を利用してGPR64ポリペプチドを発現する多彩な発現ベクターを作り、次いでそのGPR64ポリペプチドを用いて本発明の抗体を発生させることができる。それについて以下に説明する。発現ベクターと組み換えDNA技術は当業者によく知られており、タンパク質を発現させるのに利用されている。発現ベクターとしては、自己複製する染色体外ベクター、あるいは宿主のゲノムと一体化するベクターが可能である。一般に、このような発現ベクターには、GPR64タンパク質をコードしている核酸と機能上リンクした、転写と翻訳を制御する核酸が含まれている。“制御配列”という用語は、特定の宿主生物の中で機能上リンクしたコード配列を発現させるのに用いるDNA配列を意味する。原核生物に適した制御配列は、例えば、プロモーターと、必要に応じて存在するオペレータ配列と、リボソーム結合部位とを含んでいる。真核細胞では、プロモーターと、ポリアデニル化シグナルと、エンハンサーが用いられていることが知られている。
【0085】
核酸は、別の核酸配列と機能上関係がある状態にされたときに“機能上リンクしている”。例えば前駆配列または分泌リーダーのためのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前駆タンパク質として発現するとき、そのポリペプチドのDNAと機能上リンクしている。プロモーターまたはエンハンサーは、コード配列の転写に影響を与えるとき、そのコード配列と機能上リンクしている。リボソーム結合部位は、翻訳を容易にする位置にあるとき、コード配列と機能上リンクしている。一般に、“機能上リンクしている”は、リンクしているDNA配列が近接していることを意味し、分泌リーダーの場合には近接していて読み取り相にあることを意味する。しかしエンハンサーは、近接している必要はない。リンクは、一般に、適切な制限部位における連結によって実現される。そのような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドからなるアダプタまたはリンカーを通例に従って用いる。転写または翻訳を調節する核酸は、一般に、GPR64タンパク質の発現に用いる宿主細胞に適したものにする。多彩な宿主細胞のための適切な多くのタイプの発現ベクターと適切な制御配列が、従来技術において知られている。
【0086】
一般に、転写または翻訳を調節する配列は、プロモーター配列と、リボソーム結合部位と、転写開始配列と、転写停止配列と、翻訳開始配列と、翻訳停止配列と、エンハンサー配列またはアクチベータ配列とを含むことができるが、含まれるものはこれだけではない。好ましい一実施態様では、調節配列に、プロモーターと、転写開始配列と、転写停止配列が含まれている。
【0087】
プロモーター配列は、構成的プロモーターまたは誘導的プロモーターを含んでいる。プロモーターは、天然のプロモーターでもよいし、ハイブリッド・プロモーターでもよい。ハイブリッド・プロモーターは2つ以上のプロモーター・エレメントが合体したものであるが、やはり従来技術で知られており、本発明において有用である。
【0088】
さらに、発現ベクターは追加のエレメントを含んでいてもよい。発現ベクターは例えば2つの複製系を備えることができるため、2つの生物でその機能を維持することができる(例えば哺乳動物または昆虫の細胞で発現させ、原核生物宿主でクローニングと増幅をさせる)。さらに、複数の発現ベクターを一体化するため、発現ベクターは、宿主細胞のゲノムと相同な少なくとも1つの配列(好ましくは、発現構造体に隣接する2つの相同な配列)を含んでいる。一体化したベクターは、そのベクター内に組み込むのに適した相同配列を選択することにより、宿主細胞の特定の遺伝子座に向かわせることができる。複数のベクターを一体化するための構造体は、従来技術においてよく知られている(例えばFernandezとHoeffler、上記文献)。
【0089】
さらに、好ましい一実施態様では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞を選択できるようにするための選択マーカー遺伝子を含んでいる。選択遺伝子は従来技術においてよく知られており、使用する宿主細胞が何であるかによって異なる。
【0090】
本発明のGPR64タンパク質は、GPR64タンパク質をコードしている核酸を含む発現ベクターで形質転換した宿主細胞を、GPR64タンパク質の発現を誘導または誘起する適切な条件下で培養することによって産生される。PR64タンパク質の発現に適した条件は、発現ベクターおよび宿主細胞として何を選択するかに応じて異なるが、当業者であれば、定型的な実験または最適化法によって容易に確かめることができる。例えば発現ベクターの中で構成的プロモーターを用いる場合には、宿主細胞の成長と増殖を最適化する必要があろう。それに対して発現ベクターの中で誘導的プロモーターを用いる場合には、誘導のための適切な成長条件が必要になる。さらに、いくつかの実施態様では、回収のタイミングが重要である。例えば昆虫細胞での発現に用いられるバキュロウイルス系は溶解ウイルスであるため、回収するタイミングの選択が産物の収量にとって極めて重要になる可能性がある。
【0091】
適切な宿主細胞としては、酵母の細胞、細菌の細胞、古細菌の細胞、真菌の細胞、昆虫の細胞、動物の細胞(哺乳動物の細胞も含む)が挙げられる。特に興味深いのは、サッカロミセス・セレビジエなどの酵母、大腸菌、枯草菌、Sf9細胞C1129細胞、293細胞、ニューロスポラ細胞、BHK細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)、THP1細胞(マクロファージ細胞系)や、他のさまざまなヒト細胞と細胞系である。
【0092】
好ましい一実施態様では、GPR64タンパク質を哺乳動物の細胞の中で発現させる。哺乳動物発現系も従来技術においてよく知られており、その中にはレトロウイルス系やアデノウイルス系が含まれる。1つの発現ベクター系はレトロウイルス・ベクター系であり、例えばPCT/US97/01019やPCT/US97/01048に記載されている(両方とも参考として明らかな形でこの明細書に組み込まれているものとする)。哺乳動物プロモーターとして特に有用なのは、哺乳動物のウイルス遺伝子からのプロモーターである。なぜならウイルス遺伝子は、よく発現することがしばしばあり、しかも宿主の範囲が広いからである。具体的には、SV40初期プロモーター、マウス乳がんウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルス・プロモーター、CMVプロモーター(例えばFernandezとHoeffler、上記文献を参照のこと)などがある。一般に、哺乳動物の細胞が認識する転写終止配列とポリアデニル化配列は、翻訳終止コドンの3'側に位置する調節領域であるため、プロモーター・エレメントととともにコード配列に隣接している。転写ターミネータとポリアデニル化シグナルの具体例としては、SV40に由来するものがある。
【0093】
外来性核酸を哺乳動物宿主や他の宿主に導入する方法は従来技術においてよく知られており、使用する宿主細胞によって異なる。方法としては、デキストランを用いたトランスフェクション、リン酸カルシウム沈降法、ポリブレンを用いたトランスフェクション、プロトプラスト融合法、電気穿孔法、ウイルス感染法、リポソーム内へのポリヌクレオチドの封入、核へのDNAの直接微量注入などの方法がある。
【0094】
いくつかの実施態様では、GPR64タンパク質を細菌系の中で発現させる。細菌発現系は従来技術においてよく知られている。バクテリオファージからのプロモーターも従来技術においてよく知られており、使用することができる。さらに、合成プロモーターとハイブリッド・プロモーターも有用である。例えばtacプロモーターは、trpプロモーター配列とlacプロモーター配列のハイブリッドである。さらに、細菌のプロモーターには、細菌起源ではないが細菌のRNAポリメラーゼに結合することができて転写を開始する天然のプロモーターが含まれていてもよい。機能するプロモーター配列に加え、効果的なリボソーム結合部位も望ましい。発現ベクターは、細菌内でGPR64タンパク質を分泌するシグナル・ペプチド配列も含むことができる。このタンパク質は、増殖培地(グラム陽性菌)の中に、あるいは細胞の内膜と外膜に挟まれた周辺質空間(グラム陰性菌)の中に分泌される。細菌発現ベクターは、形質転換された細菌株の選択を可能にする選択マーカー遺伝子も含むことができる。適切な選択遺伝子としては、薬剤(例えばアンピシリン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、テトラサイクリン)に対する抵抗性を細菌に与える遺伝子が挙げられる。選択マーカーは、生合成遺伝子(例えばヒスチジン、トリプトファン、ロイシンの生合成経路に存在する遺伝子)も含んでいる。これらのエレメントが組み合わさって発現ベクターの中に入っている。細菌のための発現ベクターは従来技術においてよく知られており、特に、枯草菌、大腸菌、ストレプトコッカス・クレモリス、ストレプトコッカス・リビダンスなどのためのベクターがある。従来技術において周知の方法(例えば塩化カルシウム処理、電気穿孔など)で細菌のためのこれら発現ベクターを細菌宿主細胞に入れ、この宿主細胞を形質転換する。
【0095】
一実施態様では、GPR64ポリペプチドを昆虫細胞の中で産生させる。昆虫細胞を形質転換するための発現ベクターと、バキュロウイルスをベースとした発現ベクター、特に後者は、従来技術においてよく知られている。
【0096】
GPR64ポリペプチドは酵母細胞の中で産生させることもできる。酵母発現系は従来技術においてよく知られており、例えば、サッカロミセス・セレビジエ、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・マルトーサ、ハンセヌラ・ポリモルファ、クルイベロミセス・ファギリス、クルイベロミセス・ラクティス、ピキア・ギレルモンディイ、ピキア・パストリス、スキゾサッカロミセス・ポンベ、ヤロウィア・リポリティカなどのためのベクターがある。
【0097】
GPR64ポリペプチドは、従来技術においてよく知られている方法を利用して融合タンパク質にすることもできる。したがって例えばモノクローナル抗体を作るとき、エピトープが小さいことを望むのであれば、GPR64タンパク質を担体タンパク質と融合させて免疫原を形成するとよい。あるいはGPR64タンパク質は、発現を増大させるという理由で、あるいは別の理由で、融合タンパク質にすることもできる。例えばGPR64タンパク質がGPR64ペプチドである場合には、発現を目的として、このペプチドをコードしている核酸を他の核酸とリンクすることができる。
【0098】
GPR64ポリペプチドは、一般に発現後に精製または単離する。GPR64タンパク質は、サンプル中に存在する他の成分が何であるかに応じ、当業者に知られているさまざまな方法で単離または精製することができる。標準的な精製法としては、電気泳動、分子法、免疫法、クロマトグラフィ法(例えばイオン交換クロマトグラフィ、疎水性クロマトグラフィ、アフィニティ・クロマトグラフィ、逆相HPLCクロマトグラフィ)、等電点クロマトグラフィなどがある。GPR64タンパク質は、例えば標準的な抗GPR64タンパク質抗体カラムを用いて精製することができる。限外濾過法やダイアフィルトレーション法も、タンパク質の濃縮と組み合わせると有効である。適切な精製法に関する一般的なガイドとしては、Scopes、『タンパク質の精製』(1982年)を参照のこと。必要な精製の程度は、GPR64タンパク質の用途が何であるかによって異なる。場合によっては精製は不要であろう。
【0099】
当業者であれば、発現するタンパク質は野生型GPR64配列である必要はなく、野生型配列の誘導体または変異体でもよいことが理解できよう。変異体は、一般に、置換変異体、挿入変異体、欠失変異体という3つのクラスのどれかに分類される。変異体は、通常は、カセット、あるいはPCR突然変異誘発、あるいは従来技術でよく知られている他の方法を利用して、タンパク質をコードしているDNA中のヌクレオチドに部位特異的突然変異誘発を起こさせることにより変異体をコードしているDNAを作り出し、その後、上に概略を説明したようにそのDNAを組み換え細胞培地の中で発現させることによって調製する。しかし約100〜150残基までの変異タンパク質断片は、確立された方法を利用した試験管内での合成によって調製することもできる。アミノ酸配列変異体は、変異が所定の性質を持つこと、すなわちGPR64タンパク質のアミノ酸配列に天然に生じる対立遺伝子変異または種同士での変異とは異なる性質を持つこと特徴とする。変異体は、一般に、自然界に生じるアナログと定性的に同じ生物学的活性を示すが、特徴が変化した変異体を選択することもできる。これについては後で詳しく説明する。
【0100】
本発明のGPR64ポリペプチドをある方法で修飾し、GPR64ポリペプチドが別の異種ポリペプチドまたは異種アミノ酸配列に融合したキメラ分子を形成することもできる。一実施態様では、このようなキメラ分子は、GPR64ポリペプチドとタグ・ポリペプチドの融合体を含んでいる。このタグ・ポリペプチドは、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープになる。このエピトープ・タグは、一般に、GPR64ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に位置する。GPR64ポリペプチドにエピトープ・タグが付いたこのような形態は、タグ・ポリペプチドに対する抗体を用いて検出することができる。また、エピトープ・タグを付けると、抗タグ抗体を用いたアフィニティ精製を利用することにより、あるいはエピトープ・タグに結合する別のタイプのアフィニティ・マトリックスを利用することにより、GPR64ポリペプチドを容易に精製できる。別の一実施態様では、キメラ分子は、GPR64ポリペプチドが免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域と融合した融合体を含むことができる。二価形態のキメラ分子にするには、IgG分子のFc領域に対してこのような融合させるとよかろう。
【0101】
さまざまなタグ・ポリペプチドとそのそれぞれに対する抗体は、従来技術においてよく知られている。具体例としては、ポリ-ヒスチジン(ポリ-his)タグ、ポリ-ヒスチジン-グリシン(ポリ-his-gly)タグ;HIS6タグ、金属キレート化タグ、flu HAタグ・ポリペプチドとそれに対する抗体12CA5(Field他、Mol. Cell. Biol.、第8巻、2159〜2165ページ、1988年);c-mycタグとそれに対する8F9抗体、3C7抗体、6E10抗体、G4抗体、B7抗体、9E10抗体(Evan他、Mol. Cell. Biol.、第5巻、3610〜3616ページ、1985年);単純ヘルペスウイルスの糖タンパク質D(gD)タグとそれに対する抗体(Paborsky他、Protein Engineering、第3巻(6)、547〜553ページ、1990年)などがある。他のタグ・ポリペプチドとしては、フラグ-ペプチド(Hopp他、BioTechnology、第6巻、1204〜1210ページ、1988年);KT3エピトープ・ペプチド(Martin他、Science、第255巻、192〜194ページ、1992年);チューブリン・エピトープ・ペプチド(Skinner他、J. Biol. Chem.、第266巻、15163〜15166ページ、1991年);T7遺伝子10タンパク質ペプチド・タグ(Lutz-Freyermuth他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、第87巻、6393〜6397ページ、1990年)などがある。
【0102】
GPR64ポリペプチドに対する抗体
【0103】
GPR64タンパク質が産生されると、それを用いて例えば免疫療法または免疫診断のための抗体を発生させる。本発明のいくつかの実施態様では、抗体は、表2に示したCDRと同じエピトープを認識する。特定の抗体が別の抗体と同じエピトープを認識する能力は、一般に、1つの抗体が、第2の抗体が抗原と結合するのを競合的に抑制する能力によって決まる。多数ある競合結合アッセイのどれを利用しても、同じ抗原に対する2つの抗体の競合を測定することができる。アッセイの一例は、後出の実施例に記載したビアコア・アッセイである。要するに、このアッセイでは、相互作用物質(例えば異なる抗体)が別の相互作用物質の結合を抑制する能力をテストすることにより、構造に関して結合部位をマッピングすることができる。2つの抗体サンプルを十分な濃度で連続的に注入すると、同じエピトープへの結合が競合する抗体のペアを同定することができる。抗体サンプルは、1回の注入ごとに十分に飽和する能力を持っていなくてはならない。注入した第2の抗体の正味の結合は、結合エピトープ分析にとって意味のある情報である。2つの応答レベルを利用すると、完全な競合と、エピトープが異なることによる競合しない結合の境界を知ることができる。注入した第2の抗体の結合応答量を、同じ結合エピトープおよび異なる結合エピトープの結合と比べることで、エピトープの重複度が決定される。
【0104】
従来技術で知られている一般的な別のイムノアッセイを本発明で利用することができる。例えばサンドイッチELISAアッセイを利用すると、抗体が結合するエピトープによって抗体を区別することができる。これは、ウエルの表面を覆うのに捕獲抗体を用いることによって実現される。次に、準飽和濃度のタグ付き抗原を捕獲表面に付加する。このタンパク質は、特異的抗体とエピトープの相互作用を通じて抗体に結合することになる。洗浄後、検出可能部(例えば、検出抗体である標識付き抗体を有するHRP)に共有結合した第2の抗体をELISAに付加する。この抗体が捕獲抗体と同じエピトープを認識する場合には、この抗体はそのエピトープをもはや結合に利用することはできなくなるため、標的タンパク質と結合できないであろう。しかしこの第2の抗体が標的タンパク質表面の異なるエピトープを認識する場合には、結合することが可能であり、この結合は、適切な基質を利用して活性レベル(したがって抗体の結合)を定量することによって検出できる。バックグラウンドは、単一の抗体を捕獲抗体および検出抗体の両方として用いることによって明らかになる。それに対して最大の信号は、抗原特異的抗体を捕獲し、抗原上のタグに対する抗体を検出することによって明らかにすることができる。バックグラウンドと最大の信号を参考値として用いることにより、抗体をペアにして評価してエピトープの特異性を明らかにすることができる。
【0105】
上記のいずれかのアッセイを利用したとき、第1の抗体の存在下で抗原に対する第2の抗体の結合が少なくとも30%低下している場合(通常は少なくとも約40%、50%、60%、75%低下し、少なくとも約90%低下していることもしばしばある)には、第1の抗体が第2の抗体の結合を競合的に抑制すると考えられる。
【0106】
ポリクローナル抗体の調製法は当業者にはよく知られている(例えばColigan、上記文献;HarlowとLane、上記文献)。ポリクローナル抗体は、例えば免疫感作剤と必要に応じてアジュバントを1回以上注入することにより、哺乳動物の体内で作り出すことができる。一般に、免疫感作剤および/またはアジュバントは、多数回の皮下注射または腹腔内注射によって哺乳動物に注入する。免疫感作剤としては、図面に示した核酸によってコードされるタンパク質またはその断片、あるいはその融合タンパク質が可能である。免疫感作する哺乳動物の体内で免疫を生じさせることが知られているタンパク質に免疫感作剤を共役させると有用であろう。免疫を生じさせるこのようなタンパク質の具体例としては、スカシガイのヘモシアニン、血清アルブミン、ウシのチログロブリン、ダイズのトリプシンインヒビターなどが挙げられる。使用可能なアジュバントの具体例としては、フロイントの完全アジュバントやMPL-TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノミコール酸)などが挙げられる。免疫感作のプロトコルは、当業者であれば特別な実験なしに選択することができよう。
【0107】
抗体はモノクローナル抗体でもよい。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を利用して調製することができる。ハイブリドーマ法は、例えばKohlerとMilstein、Nature、第256巻、495ページ、1975年に記載されている。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター、あるいは他の適切な宿主動物に免疫感作剤を用いて免疫感作し、免疫感作剤に特異的に結合する抗体を産生するリンパ球、あるいは産生することのできるリンパ球を誘導する。あるいは試験管内でリンパ球を免疫感作することもできる。免疫感作剤としては、一般に、配列ID番号1の核酸によってコードされているポリペプチドまたはその断片、配列ID番号2のタンパク質の融合体またはその断片などが挙げられる。
【0108】
一般に、ヒト由来の細胞が望ましい場合には末梢血リンパ球(“PBL”)を使用し、非ヒト哺乳動物の供給源が望ましい場合には、脾臓細胞またはリンパ節細胞を使用する。次に、適切な融合剤(例えばポリエチレングリコール)を用いてリンパ球を不死化細胞系と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding、『モノクローナル抗体:原理と実際』、59〜103ページ、1986年)。不死化した細胞系は、通常は形質転換した哺乳動物の細胞(特に囓歯類、ウシ、ヒトに由来する骨髄腫細胞)である。一般に、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞系を使用する。ハイブリドーマ細胞は、適切な培地の中で培養することができる。この培地は、融合していない不死化細胞の成長または生存を抑制する1種類以上の物質を含んでいることが好ましい。例えば親細胞にヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)という酵素が欠けている場合には、ハイブリドーマのための培地は、一般に、HGPRT欠乏細胞の成長を阻止する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジンを含むことになる(“HAT培地”)。
【0109】
図2には、5種類のモノクローナル抗体GPR64-1、GPR64-16、GPR64-18、GPR64-20、GPR64-48(配列ID番号3〜22)のVH領域とVL領域のヌクレオチド配列とアミノ酸配列を示してある。さらに、標準的な方法に従ってGPR64-Fc融合体から生成させたさらに別の41個のmAbを、その結合特性とともに図5の表にリストにしてある。これらGPR64 mAbのうちの2つ、すなわち#81と#93(OAM6#81、OAM6#93とも呼ばれる)は、2003年12月18日にATCCに寄託された。
【0110】
いくつかの実施態様では、GPR64タンパク質に対する抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体である。すでに指摘したように、ヒト化した抗体は、ヒト抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、望む特異性、アフィニティ、能力を有する非ヒト種(例えばマウス、ラット、ウサギ)のCDRからの残基で置換されたキメラ免疫グロブリンである。
【0111】
ヒト抗体は、従来技術において知られているさまざまな方法を利用して作ることができる。例えば、ファージ提示ライブラリ法(HoogenboomとWinter、J. Mol. Biol.、第227巻、381ページ、1991年;Marks他、J. Mol. Biol.、第222巻、581ページ、1991年)がある。ヒト・モノクローナル抗体を調製するのにColeらの方法やBoernerらの方法も利用できる(Cole他、『モノクローナル抗体とがんの治療』、77ページ、1985年;Boerner他、J. Immunol.、第147巻(1)、86〜95ページ、1991年)。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物(例えば内在性免疫グロブリン遺伝子の一部または全体を不活化したマウス)に導入することによって作ることができる。チャレンジの際には、遺伝子の再配置、組み立て、抗体のレパートリーなどのあらゆる点でヒトにおいて見られるのと非常によく似たヒト抗体の産生が観察される。この方法は、例えばアメリカ合衆国特許第5,547,807号、第5,547,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,661,016号と、以下の論文:Marks他、Bio/Technology、第10巻、779〜783ページ、1992年;Lonberg他、Nature、第368巻、856〜859ページ、1994年;Morrison、Nature、第368巻、812〜813ページ、1994年;Fishwild他、Nature Biotechnology、第14巻、845〜851ページ、1996年;Neuberger、Nature Biotechnology、第14巻、826ページ、1996年;LonbergとHuszar、Intern. Rev. Immunol.、第13巻、65〜93ページ、1995年に記載されている。
【0112】
いくつかの実施態様では、抗体は一本鎖Fv(scFv)である。scFv抗体のVH領域とVL領域は、折り畳まれて二本鎖抗体で見られるのと似た抗原結合部位を作り出す一本鎖を含んでいる。一旦折り畳まれると、非共有相互作用によって一本鎖抗体が安定化する。いくつかの実施態様の抗体のVH領域とVL領域は互いに直接結合させることができるが、当業者であれば、これらの領域を1つ以上のアミノ酸からなるペプチド・リンカーによって分離してもよいことが理解できよう。ペプチド・リンカーとその利用法は、従来技術において周知である。例えばHuston他、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA、第85巻、5879ページ、1988年;Bird他、Science、第242巻、4236ページ、1988年;Glockshuber他、Biochemistry、第29巻、1362ページ、1990年;アメリカ合衆国特許第4,946,778号、第5,132,405号、Stemmer他、Biotechniques、第14巻、256〜265ページ、1993年を参照のこと。一般に、ペプチド・リンカーは、領域を互いに接合すること、あるいはVHとVLの間の最小距離または他の空間的関係を保持すること以外は、特別な生物活性を持たない。しかしペプチド・リンカーを構成するアミノ酸は、分子のいくつかの性質(例えば、折り畳み、正味の電荷、疎水性)に影響を与えるように選択することができる。一本鎖Fv(scFv)抗体は、場合によってはアミノ酸が50個以下のペプチド・リンカーを含んでいる。ペプチド・リンカーは、長さが一般にアミノ酸40個以下であり、アミノ酸30個以下であることが好ましく、アミノ酸20個以下であることがより好ましい。いくつかの実施態様では、ペプチド・リンカーは、配列がグリシン-グリシン-グリシン-グリシン-セリンであるコンカテマーである。このような配列の数は、2個、3個、4個、5個、6個のいずれかであることが好ましい。しかしリンカー内にアミノ酸置換がいくつかあってもよいことが理解できよう。例えばバリンをグリシンで置換することができる。
【0113】
scFv抗体を作るいろいろな方法がこれまでに報告されている。Huse他、上記文献;Ward他、上記文献;Vaughan他、上記文献を参照のこと。手短に説明すると、免疫感作した動物のB細胞からmRNAを単離し、cDNAを調製する。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域に対して特異的なプライマーを用いてこのcDNAを増幅する。PCR産物を精製し、核酸配列を付加する。リンカー・ペプチドが必要な場合には、そのペプチドをコードしている核酸配列を、重鎖の核酸配列と軽鎖の核酸配列の間に挿入する。scFvをコードしている核酸をベクターに挿入し、適切な宿主細胞の中で発現させる。望む抗原と特異的に結合するscFvは、一般に、ファージ提示ライブラリを選別することによって見つける。選別は、いくつかある方法のうちの任意の方法で行なうことができる。選別は、表面に望む抗原を発現する細胞、または望む抗原でコーティングされた固体表面を用いると簡単に行なうことができる。表面を磁性ビーズにするとよい。結合しないファージは固体表面から洗い流され、結合したファージが溶離される。
【0114】
アフィニティが最も大きい抗体が見つかるかどうかは選択プロセスが有効かどうかによって決まり、スクリーニングされるクローンの数と、スクリーニングの厳しさにも依存する。一般に、スクリーニングがより厳しくなることは、より選別がなされることに対応する。しかし条件が厳しすぎると、ファージは結合しなくなる。選別を1回行なった後、GPR64で覆われたプレートに結合するファージ、またはその表面でGPR64を発現する細胞に結合するファージを大腸菌の中で増やし、さらにもう1回選別を行なう。このようにすると、3回の選別において何倍もの増大が起こる。したがってたとえ1回ごとの増大は少なくとも、多数回の選別により、稀なファージと、その中に含まれていて最大のアフィニティを有するscFvをコードしている遺伝材料や、ファージの表面により多く発現する遺伝材料を単離できるようになろう。
【0115】
選択した選別法とは関係なく、ファージ提示によって遺伝子型と表現型の間の物理的リンクが提供されるため、抗原への結合に関し、たとえクローンのライブラリが大きくとも、cDNAライブラリのすべての要素をテストすることができる。
【0116】
一実施態様では、抗体は二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、あるいは同じ抗原上の2つのエピトープに対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体であることが好ましい。一実施態様では、結合特異性の一方はGPR64タンパク質に対する特異性であり、他方は別のがん抗原に対する特異性である。あるいは四量体タイプの方法で多価試薬を作ることもできる。
【0117】
いくつかの実施態様では、GPR64タンパク質に対する抗体が、GPR64を発現する細胞(例えば卵巣がん細胞)の減少または消失を可能にする。一般に、活性、成長、サイズなどの少なくとも25%の減少が好ましい。この減少は少なくとも約50%であることが好ましく、約95〜100%であることが特に好ましい。
【0118】
免疫療法とは、GPR64タンパク質に対する抗体を用いた卵巣がんの治療を意味する。この明細書では、免疫療法は、受動的な方法でも能動的な方法でもよい。この明細書における受動的な免疫療法は、レシピエント(患者)に抗体を受動的に移入することである。能動的免疫感作は、レシピエント(患者)の内部で抗体および/またはT細胞の応答を誘導することである。免疫応答の誘導は、レシピエントに抗原(例えばGPR64、またはそれをコードしているDNA)を供給し、その抗原に対して抗体が生じた結果である。当業者であればわかるように、抗原は、抗体を生じさせようとするポリペプチドをレシピエントに注入することによって提供すること、あるいは抗原を発現できる核酸を、その抗原が発現する条件下で、レシピエントに接触させて免疫応答を起こさせることによって提供することができる。
【0119】
いくつかの実施態様では、抗体をエフェクター部と共役させる。エフェクター部に含まれる分子の数は任意でよく、このエフェクター部は、例えば放射性標識や蛍光標識などの標識部にすること、あるいは薬剤部にすることができる。薬剤部の一例は、GPR64タンパク質の活性を変化させる小分子である。別の一実施態様では、薬剤部は、GPR64タンパク質に付随する分子またはGPR64タンパク質の近傍にある分子の活性を変化させる。
【0120】
別の実施態様では、薬剤部は、細胞毒性剤である。この方法では、細胞毒性剤を卵巣がんの組織または細胞に向かわせ、その結果として病気になった細胞の数を減らし、そのことによって卵巣がんに伴う症状を軽減する。さまざまな細胞毒性剤があり、具体的には、細胞毒性薬、毒素、そのような毒素の活性断片などが挙げられる。適切な毒素とそれに対応する断片としては、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシン、アウリスタチンなどがある。細胞毒性剤としては、卵巣がんのタンパク質に対する抗体に放射性同位体を共役させることによって作った放射性化学物質や、抗体に共役結合させたキレート剤に放射性核種を結合させることによって作った放射性化学物質もある。薬剤部を膜貫通卵巣がんタンパク質に届けると、卵巣がんになった領域における薬剤部の局所的濃度が増大するだけでなく、薬剤部に付随する可能性のある好ましくない副作用も減る。
【0121】
本発明による抗体の結合アフィニティ
【0122】
本発明の抗体は、GPR64ポリペプチドに特異的に結合する。好ましい実施態様では、抗体はGPR64に非常に大きなアフィニティで結合し、KD値は1μM未満になる。KD値は約0.01μM未満であることが好ましく、0.01μM未満またはナノモル程度であることが最も好ましい。
【0123】
一実施態様では、GPR64抗体のアフィニティは、GPR64ポリペプチドに対する競合的抑制を(アフィニティがわかっている)別のGPR64抗体と比較することによって明らかにすることができる。競合が強力に抑制されるというのは、GPR64に対する結合アフィニティが大きいことを意味する。
【0124】
標的抗原を探すための結合アフィニティは、一般に、標準的な抗体-抗原アッセイで測定または決定される。アッセイとしては、ビアコア競合アッセイ、飽和アッセイ、イムノアッセイ(例えばELISA、RIA)などがある。
【0125】
このようなアッセイを利用して抗体の解離定数を決定することができる。“解離定数”は、ある抗原に対するある抗体のアフィニティを意味する。抗体と抗原の間の結合特異性は、抗体の解離定数(KD=1/K、ただしKはアフィニティ定数である)が1μM未満である場合に存在する。解離定数は、100nM未満であることが好ましく、0.1nM未満であることが最も好ましい。抗体分子は、一般に、小さな範囲のKDを有する。KD=[Ab-Ag]/[Ab][Ag](ただし[Ab]は抗体の平衡時における濃度であり、[Ag]は抗原の平衡時における濃度であり、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体の平衡時における濃度である)。一般に、抗原と抗体の間の結合相互作用としては、可逆的な非共有結合(例えば静電引力、ファン・デル・ワールス力、水素結合)が挙げられる。
【0126】
イムノアッセイ
【0127】
本発明の抗体を用いると、よく知られた多数の免疫学的結合アッセイ(例えばアメリカ合衆国特許第4,366,241号、第4,376,110号、第4,517,288号、第4,837,168号を参照のこと)のうちの任意の方法を利用して、GPR64、またはGPR64を発現している細胞を検出することができる。一般的なイムノアッセイの概説に関しては、『分子生物学における方法』、第37巻、Asai編、アカデミック・プレス社、ニューヨーク、1993年;『基本的臨床免疫学』、第7版、StitesとTerr編、1991年も参照のこと。
【0128】
したがって本発明により、GPR64を発現する細胞を検出する方法が提供される。1つの方法では、対象に対して生検を行ない、回収した組織を試験管内で調べる。次に、この組織を、あるいはこの組織からの細胞を本発明の抗GPR64抗体と接触させる。免疫複合体がわずかでも得られれば、GPR64タンパク質が生検サンプルの中に存在していることを意味する。このような検出を容易にするため、抗体を放射性標識したり、検出可能な標識(放射性標識)であるエフェクター部と結合させたりすることができる。
【0129】
別の方法では、典型的な画像化システムを利用して生体内で細胞を検出することができる。次に、標識を検出するための公知の任意の方法により、標識の位置を明らかにする。従来からある、可視化するための診断用画像化法を利用することができる。例えば常磁性同位体をMRIで用いることができる。抗体の内部化は、生物の体内での寿命を、細胞外の酵素環境によるクリアランスと循環系のクリアランスの組み合わせに敏感であると思われる細胞外結合した場合の寿命よりも長くするのに重要である可能性がある。
【0130】
GPR64タンパク質は、標準的なイムノアッセイと本発明の抗体を利用して検出することもできる。標準的な方法としては、例えば、ラジオイムノアッセイ、サンドイッチ・イムノアッセイ(ELISAも含む)、免疫蛍光アッセイ、ウエスタン・ブロット、アフィニティ・クロマトグラフィ(固相に結合するアフィニティ・リガンド)、標識した抗体のその場での検出などの方法がある。
【0131】
RNAiを利用した内在性GPR64遺伝子の発現抑制
【0132】
多くの種において、二本鎖RNA(dsRNA)(この明細書では、小さな干渉RNA(siRNA)と呼ぶこともある)を誘導することにより、強力かつ特異的な遺伝子サイレンシングが起こる。遺伝子サイレンシングとは、RNA干渉またはRNAiと呼ばれる現象である。この現象は、線虫セノラブディティス・エレガンスにおいて詳しく報告されている(Fire, A.他、Nature、第391巻、806〜811ページ、1998年)が、他の生物(トリパノソーマからマウスまで)でも広く見られる。対象とする生物が何であるかに応じ、RNA干渉は、“共抑制”、“転写後遺伝子サイレンシング”、“センス抑制”、“クエリング”と呼ばれてきた。
【0133】
RNAiは、バイオテクノロジーのツールとして魅力的である。なぜなら、特定の遺伝子の活性をノックアウトする手段を提供するからである。RNAiは、これまでは遺伝子分析や遺伝子操作ができないと考えられていた種における遺伝子の発現をノックアウトするのに特に有効である。
【0134】
RNAi実験を設計するとき、考慮すべき因子として、dsRNAの性質、サイレンシング効果の持続時間、送達系の選択などがある。
【0135】
RNAi効果を生み出すには、生体内に導入されるdsRNAまたはsiRNAが、エキソン配列を含んでいる必要がある。さらに、RNAiプロセスは、相同性に依存する。そのため配列を注意深く選択し、遺伝子の特異性が最大になるようにするとともに、相同だが遺伝子特異的ではない配列の間で起こる交差相互作用が最少になるようにせねばならない。dsRNAは、dsRNAの配列と抑制しょうとする遺伝子の間の一致が、90%超である、あるいは100%でさえあることが好ましい。標的遺伝子との一致が約80%未満である配列は、実質的に効果がそれよりも小さい。したがって、dsRNAと発現を抑制しようとする遺伝子の間の相同性が大きくなるほど、関係のない遺伝子の発現が影響を受けることが少なくなる。
【0136】
さらに、dsRNAのサイズが重要である。長さが500塩基対よりも大きなdsRNAが用いられることがしばしばあるが、より小さな断片もRNAi効果を生み出すことができる。
【0137】
dsRNAの導入は、公知の任意の方法(例えば微量注入、電気穿孔)で実現することができる。dsRNAが遺伝子の発現を抑制できるメカニズムはこれまでいろいろと提案されてきたが、特定のメカニズムを支持する証拠は欠けたままである(Fire, A.、1999年)。
【0138】
医薬組成物とワクチン組成物の投与
【0139】
本発明の抗体を医薬組成物の形にすることができる。したがって本発明により、治療に有効な量の抗GPR64抗体を投与する方法と組成物も提供される。正確な投与量は、治療の目的が何であるかによって異なるが、当業者であれば、周知の方法で確認することができよう(例えばAnsel他、『Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery』;Lieberman、『Pharmaceutical Dosage Forms』(第1巻〜第3巻、1992年)、デッカー社、ISBN 0824770846、082476918X、0824712692、0824716981;Lloyd、『The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding』、1999年;Pickar、『Dosage Calculations』、1999年)。従来技術で知られているように、卵巣がんでの分解、全身送達か局所的送達か、新しいプロテアーゼの合成速度、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時刻、薬の相互作用、疾患の程度を考慮する必要があるが、当業者であれば、これらを定型的な実験によって確認することができよう。アメリカ合衆国特許出願第09/687,576号にはさらに、卵巣がんの診断と治療を行なうための組成物と方法が開示されている。その内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0140】
本発明の目的に関する“患者”には、ヒトとそれ以外の動物(特に哺乳動物)の両方が含まれる。したがって本発明の方法は、ヒトの治療と獣医学での用途の両方に適用できる。好ましい実施態様では患者は哺乳動物であり、その哺乳動物は霊長類であることが好ましく、最も好ましい実施態様では、患者はヒトである。
【0141】
本発明による抗体の投与は、すでに説明したようにさまざまな方法で行なうことができる。例えば、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、膣、直腸、眼内に投与することができる。
【0142】
本発明の医薬組成物は、患者への投与に適した形態にした本発明の抗体を含んでいる。好ましい一実施態様では、医薬組成物は水に溶ける形態であり、例えば薬理学的に許容可能な塩として存在している。これは、酸添加塩と塩基添加塩の両方を意味する。“薬理学的に許容可能な酸添加塩”は、無機酸または有機酸とで形成されており、遊離塩基の生物学的効果を保持していて、生物学的に望ましくないこと、あるいは別の意味でも望ましくないことが起こらない塩を意味する。無機酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などがある。有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などがある。“薬理学的に許容可能な塩基添加塩”には、無機塩基に由来する塩が含まれる。無機塩基としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩などがある。特に好ましいのは、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩である。薬理学的に許容可能な非毒性の有機塩基に由来する塩としては、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、置換されたアミン(自然に置換されたアミンも含む)、環式アミン、塩基性イオン交換樹脂(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミンなど)の塩などがある。
【0143】
医薬組成物は、担体タンパク質(例えば血清アルブミン);緩衝液;充填剤(例えば微結晶セルロース、ラクトース、トウモロコシその他のデンプン);結合剤;甘味剤その他の風味剤;着色剤;ポリエチレングリコールのうちの1種類以上を含んでいてもよい。
【0144】
医薬組成物は、どのような投与法であるかに応じ、さまざまな投与形態で投与することができる。例えば経口投与に適した投与形態としては、粉末、錠剤、ピル、カプセル、ロゼンジなどがある。抗体は、経口投与するときに消化されないよう保護されている必要があることが知られている。これは、一般に、分子を組成物との複合体にして酸や酵素による加水分解への抵抗性を持たせることによって、あるいは分子を適切な抵抗性担体(リポソームまたは保護障壁)の中に包み込むことによって実現される。
【0145】
投与用の組成物は、一般に、本発明の抗体を薬理学的に許容可能な基剤または賦形剤(好ましくは水性基剤)に溶かした形で含むことになる。さまざまな水性基剤を用いることができる。水性基剤としては、例えば生理食塩水などがある。溶液は殺菌状態であり、望ましくない物質を一般に含んでいない。組成物は、従来からあるよく知られた殺菌法で殺菌することができる。組成物は、生理的条件に近くなるようにするため、必要に応じて薬理学的に許容可能な補助物質を含むことができる。補助物質は、例えばpH調節剤、緩衝剤、毒性調節剤などであり、具体的には、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどが挙げられる。製剤中の活性剤の濃度は広い範囲で変えることができるが、選択した特定の投与法と患者の必要性に従い、主として流体の体積、粘度、体重などに基づいて選択する(例えば『Remington's Pharmaceutical Science』(第15版、1980年);GoodmanとGillman、『The Pharmacological Basis of Therapeutics』(Hardman他編、1996年))。
【0146】
したがって静脈内投与するための典型的な医薬組成物は、患者一人につき1日当たり約0.1〜10mgになろう。特に薬を血流ではなく隔離された部位(例えば身体の中空部や臓器の管腔)に投与すると、患者一人につき1日当たり0.1〜約100mgの投与量にすることができる。局所投与では、実質的により多い投与量にすることができる。非経口投与が可能な組成物を調製する実際の方法は、当業者に知られているか、当業者にとって明らかであろう(例えば『Remington's Pharmaceutical Science』;GoodmanとGillman、『The Pharmacological Basis of Therapeutics』)。
【0147】
本発明の抗体を含む組成物は、治療または予防のために投与することができる。治療の用途では、ある疾患(例えばがん)を患っている患者に、その疾患と合併症を治癒させる、あるいは少なくとも進行を部分的に停止させるのに十分な量の組成物を投与する。このようにするのに十分な量は、“治療に有効な投与量”として定義される。この用途で有効な量は、その疾患の程度と、患者の全般的な健康状態によって異なる。組成物は、患者が必要とし、しかも患者が許容する投与量と頻度で、1回または複数回投与することができる。いずれにせよ、組成物は、患者を効果的に治療するために本発明の薬剤を十分に供給できねばならない。哺乳動物におけるがんの進行を停止または遅延させることのできる量のモジュレータは、“予防に有効な投与量”と呼ばれる。予防に必要とされる具体的な投与量は、哺乳動物の医学的症状と病歴、予防しようとするがんの種類のほか、他の因子(例えば年齢、体重、性別、投与経路、効率など)によっても異なる。このような予防法は、例えば以前にがんだったことのある哺乳動物で利用してがんの再発を予防したり、あるいはがんになる可能性の大きいと考えられる哺乳動物で利用したりすることができる。
【0148】
卵巣がんタンパク質を変化させる本発明の化合物は、単独で投与できること、あるいは卵巣がんタンパク質を変化させる別の化合物または他の治療薬(例えば他の抗がん剤)と組み合わせて投与できることが理解されよう。
【0149】
診断および/または予後予測の用途で使用するキット
【0150】
上に示した診断、研究、治療の用途のためのキットも本発明によって提供される。診断と研究の用途では、このキットは、アッセイ試薬、緩衝液、本発明のGPR64特異的抗体のうちの任意のものまたはすべてを含むことができる。治療用のキットは、殺菌した生理食塩水、または薬理学的に許容可能なエマルジョン用ベースや懸濁液用ベースを含むことができる。
【0151】
さらに、キットは、本発明の方法を実施するための指示(すなわちプロトコル)を含む指示材料も備えることができる。指示材料には、一般に、手書きの材料または印刷された材料が含まれているが、必ずしもそうであるとは限らない。このような指示材料を記憶させておき、それをエンドユーザーに伝えることのできるあらゆる媒体を本発明では考える。そのような媒体としては、例えば電子記憶媒体(例えば磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光記録媒体(例えばCD ROM)などがある。このような媒体には、指示材料を提供するインターネットのサイトのアドレスを含めることができる。
【実施例1】
【0152】
卵巣がんと正常な組織におけるGPR64遺伝子の発現プロファイルの測定
【0153】
この実施例では、卵巣がんの有効な標的としてのGPR64を同定するためのジーンチップ発現プロファイルを利用する方法について説明する。
【0154】
要約
【0155】
卵巣がんのサンプル66個の遺伝子発現を、異なる58種類の臓器を代表する347個の正常な成人の組織と比較した。目的は、卵巣がんにおいて上方調節されていて抗体が近づくことができるが、治療用抗体の望ましくない副作用をできるだけ少なくするために生きた臓器での発現はほとんどないかゼロである遺伝子を細胞表面で探してその場所を特定することであった。望む発現プロファイルを持つ遺伝子をバイオインフォマティクス分析で精力的に調べ、その構造と機能がどう分類されるかを決定し、細胞表面に局在できるかどうかを明らかにした。GPR64遺伝子(国立バイオテクノロジー情報センターの参照配列番号NM_005756.1;参考としてOsterhoff他、DNA Cell Biol.、第16巻、379〜389ページ、1997年)は、望むすべての特徴を示した。
【0156】
RNAの抽出とマイクロアレイのプロトコル
【0157】
凍結させたばかりの前立腺組織と異種移植組織からの全RNA調製物を、トリゾール試薬(ライフ・テクノロジーズ社、ゲティスバーグ、メリーランド州)を用いた抽出によって取得し、オリゴデオキシチミジル酸とT7プロモーター配列を含むプライマーを用いて逆転写した。次に、得られたcDNAを、試験管内において、ビオチニル化したヌクレオチド(Bio-11-CTPとBio-16-UTP)の存在下でT7 メガスクリプト・キット(アンビオン社、オースチン、テキサス州)を使用して転写した。
【0158】
ビオチニル化した標的は、Eos Hu03とハイブリダイズした。Eos Hu03は、カスタム化したアフィメトリックス・ジーンチップ(アフィメトリックス社、サンタ・クララ、カリフォルニア州)オリゴヌクレオチド・アレイであり、ヒトゲノムの最初のドラフトに基づく46,000通りの配列を表わす59,619個のプローブセットを備えている。これらの配列の中には、既知のエキソンと、予測されるFGENESHエキソンの両方が含まれている。Hu03プローブセットは完全に一致するプローブだけからなり、たいていのプローブセットはプローブを6個または7個備えている。ハイブリダイゼーションの信号は、フィコエリトリンと共役したストレプトアビジン(モレキュラー・プローブズ社、ユージン、オレゴン州)を用いて目に見えるようにした。
【0159】
遺伝子発現データの規格化を以下のようにして行なった。強度に関する経験的な累積分布を望む分布にマッピングするための逆関数を利用し、それぞれのアレイからのプローブのレベル強度データを所定の分布にフィットさせた。この手続きは、他のチップごとの規格化手続きと似ており、例えばそれぞれのチップの平均値と標準偏差を標準値に固定するが、1つか2つのパラメータではなく、分布全体を決めるという意味で、ここでの手続きのほうが厳密である。チップごとに規格化する目的は、チップ間の変動が生物学的因子にはよらない(すなわち操作上のノイズによる)と考えてその変動を取り除くためである。分布のスケール・パラメータは、勝手に選んだ平均値が300の分布になるよう選択した。良好なサンプルでは経験的分布の典型的な形状が再現されるよう、形状パラメータは0.81にした。
【0160】
プローブセットを構成するプローブの強度に関してテュキーの三項平均を利用し、それぞれのプローブセットについて平均強度の指標を1つだけ計算した(Tukey J.W.、『調査のためのデータ分析』、アディソン-ウェズレー・リーディング社、マサチューセッツ州、1977年)。三平均は、異常値の効果に抵抗して中央に向かう指標である。最後に、非特異的ハイブリダイゼーションを補正するため、平均強度の指標それぞれからバックグラウンドを差し引いた。寄せ集め配列を有する491個のプローブからなる“無”プローブセットの平均強度の指標を、チップ上の他のすべてのプローブセットから差し引いた。
【0161】
結果
【0162】
GPR64は、正常組織と比べると卵巣がんにおいて有意に過剰発現していた。正常な脊髄神経節と副甲状腺においていくらかの発現が検出された。正常な卵巣と、テストした残りの正常な組織では発現が見られなかった。卵巣がんになっていない組織のうち、ユーイング肉腫でも高い発現レベルが検出された。子宮がんにおいてより低いレベルでGPR64が発現することが検出されたが、他のがん(例えば大腸がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、膵臓がん、腎臓がん)では発現は見られなかった。
【実施例2】
【0163】
抗GPR64は、生体内で腫瘍細胞の成長を抑制する
【0164】
この実施例では、GPR64抗体が生体内の腫瘍の体積を減らすのに有効であることを示す。
【0165】
ヒト腫瘍細胞系NCI-H460で免疫感作したSCIDマウスを用いて動物実験を行なった。NCI-H460細胞系は、GPR64-18抗体が認識する抗原を発現する。GPR64-18抗体のVHとVLのヌクレオチド配列とアミノ酸配列を図2に示してある(配列ID番号7、8、17、18)。
【0166】
抗体は、GPR64の大きなN末端と抗原としてのヒトFcが融合したタンパク質を用い、標準的な方法で作った。
【0167】
SCIDマウスの体内で腫瘍の成長を開始させるため、NCI-H460腫瘍細胞系を注入し、腫瘍を成長させた。腫瘍のサイズが50〜100mm3に達したとき、マウスをグループに分け、以下に示すいずれかのものを用いて治療した。
a)対照となるアイソタイプ抗体;
b)図2に示したVHとVLの配列(配列ID番号2〜22)を有する5種類のGPR64抗体のうちの1つ;
c)5種類のGPR64抗体のうちの1つを化学療法剤(パクリタキセルやカルボプラチン)と組み合わせたもの。
【0168】
抗体を2日ごとに10mg/kgの割合で投与した。抗体+化学療法のグループでは、化学療法剤も4日間隔で4回投与した。抗体は、4日ごとに10mg/kgの割合で3回投与した。腫瘍のサイズは、一週間に2回の割合で20日間にわたって測定した。
【0169】
これら実験の結果から、対照となるアイソタイプ抗体による治療を受けたマウスと比べると、GPR64-18抗体を用いた治療を受けたマウスでは腫瘍の体積が有意に減少していることがわかる。
【0170】
抗体と化学療法剤の組み合わせによる腫瘍の減少を比較する実験からは、GPR64抗体を化学療法剤と組み合わせたときのほうが、対照となるアイソタイプ抗体を化学療法剤と組み合わせたときよりも腫瘍の体積が大きく減少することがわかる。さらに、GPR64-18抗体は、化学療法剤と組み合わせたときには付加的な効果も持っていた。
【0171】
したがってGPR64-18抗体は腫瘍の体積を減らすのに有効であり、GPR64タンパク質が発現しているがんを効果的に治療するのに利用できる。さらに、GPR64タンパク質が発現しているがんを効果的に治療するには、GPR64タンパク質と結合してGPR64-18抗体の結合を抑制するあらゆる抗体も用いることができる。
【0172】
さらに、GPR64抗体と化学療法剤が腫瘍の体積減少に及ぼす効果は加算的であるため、GPR64抗体を用いると、がん患者の腫瘍の体積を効果的に減少させるのに必要な化学療法剤の量を減らせるであろう。その結果、化学療法剤の毒性副作用に起因する患者の苦痛を減らせるであろう。
【実施例3】
【0173】
RNAiによってGPR64をノックアウトすると、GPR64を発現するがん細胞の細胞増殖が抑制される
【0174】
この実施例では、GPR64の発現が試験管内における腫瘍細胞の成長に不可欠であり、GPR64が卵巣がんの標的として役に立つことを示す。
【0175】
興味の対象であるタンパク質のコグネイトmRNAに対して特異的な二本鎖の短い干渉RNA(siRNA)を用いると、そのタンパク質を下方調節することができる。この方法を利用してGPR64を抑制することで細胞の成長が下方調節されて細胞死が起こることを示した。したがってこの実験結果は実施例2に示した実験の結果と一致しているため、GPR64の発現を下方調節することでGPR64タンパク質の発現が関与するがんを効果的に治療できるであろうという基本的な結論が確認される。
【0176】
RNAiアッセイ法
【0177】
GPR64に対して特異的なsiRNA(すなわち対照siRNA)をコードしているプラスミドを、成長する際にGPR64が必要とされる2つのGPR64プラス・ヒト腫瘍細胞系(H460とMe180)に導入した。さらに、同じsiRNAを、成長する際にGPR64が必要でないGPR64マイナスPC3細胞に導入した。GPR64タンパク質のレベルをFACSで追跡し、細胞の生存と増殖を測定するアッセイを利用して成長に対する効果を評価した。
【0178】
リポフェクタミン2000(インヴィトロジェン社)を用い、ヒト腫瘍細胞にOAM6 siRNAを以下のようにしてトランスフェクトした。フェノールレッドを含まない最少必須培地(インヴィトロジェン社)の中でリポフェクタミン2000を50倍に希釈し、MEMに120nMの濃度で含まれる同じ体積の適切なsiRNAと混合した。リポフェクタミン2000/siRNA混合物を96ウエルのプレートに入れ、細胞をピペットで最上部に載せ、siRNAの最終濃度を10nMにした。トランスフェクトされた細胞を37℃にてインキュベートし、細胞がどれくらい増殖したかを、トランスフェクションを行なってから24、48、72、96時間後にMTSアッセイで調べた。このアッセイでは、セルタイター96(登録商標)水性非放射性細胞増殖アッセイ(プロメガ社)を製造者の指示に従って使用した。吸光度を490nmで読み取った。それぞれのデータ点は、3つのウエルでの平均を表わしている。
【0179】
3'dTdT張出部を有する二本鎖として、siRNAをダルマコン社から購入した。以下のsiRNAを使用した:
H2R-1(負の対照)センス:5'-CAGACACGGCCACGUGUGAdTdT-3'(配列ID番号23)
H2R-1アンチセンス:5'-UCACACGUGGCCGUGUCUGdTdT-3'(配列ID番号24)
HKSP-1(正の対照)センス:5'-GCUAGCGCCCAUUCAAUAGdTdT-3'(配列ID番号25)
HKSP-1アンチセンス:5'-CUAUUGAAUGGGCGCUAGCdTdT-3'(配列ID番号26)
OAM6-110センス:5'-GCUUACUCCCUUCAAACGAdTdT-3'(配列ID番号27)
OAM6-110アンチセンス:5'-UCGUUUGAAGGGAGUAAGCdTdT-3'(配列ID番号28)
OAM6-111センス:5'-CCCCAGAGAAAUAUCUGCAdTdT-3'(配列ID番号29)
OAM6-111アンチセンス:5'-UGCAGAUAUUUCUCUGGGGdTdT-3'(配列ID番号30)
【0180】
結果
【0181】
FACSアッセイによると、OAM6-110というsiRNAは、OAM6-111よりもGPR64タンパク質の発現を大きく下方調節させた。さらに、GPR64タンパク質の発現が下方調節された細胞は、細胞増殖が劇的に低下した。図3に示したように、OAM6-110とOAM6-111の両方とも細胞増殖に対して検出可能な効果を引き起こしたが、OAM6-110で観察された細胞増殖の低下は、どちらのGPR64プラス細胞系(H460とMe180)でも、OAM6-111で観察されたよりもはるかに大きかった。OAM6-110とOAM6-111による細胞増殖の低下におけるこのような違いは、これら2つのsiRNAでFACSアッセイによって観察されたGPR64タンパク質の下方調節の違いと相関していた。
【0182】
興味深いことに、H460細胞とMe180細胞におけるOAM6-110の効果は、正の対照であるキネシン(HKSP-1)の効果よりもはるかに強かった。さらに、HKSP-1は、GPR64を発現しないPC3においてほとんど細胞を増殖させず、OAM6-110とOAM6-111のどちらの影響も受けない。これは特異性があることを示している。
【0183】
siRNAによる分析を、より多くのGPRプラス細胞系とGPRマイナス細胞系でも行なった。図4に示したように、5つのGPRプラス細胞系のうちの3つが、GPR64 siRNAによるチャレンジを受けたときに増殖効果を示した。それとは対照的に、22あるGPRマイナス細胞系のうちの2つだけが、GPR64 siRNAで処理したときにわずかな増殖効果を示すことが見いだされた。この結果は、GPR64の発現が、GPR64 siRNAに対する感受性と強く相関していることを示している。
【0184】
siRNAに関するこの結果は、内在性GPR64発現細胞と卵巣がんの増殖にGPR64が必要であるという結論を強く支持している。したがってGPR64は、卵巣がんの機能的標的として有効である。
【実施例4】
【0185】
GPR64に対するモノクローナル抗体群
【0186】
一群のモノクローナル抗体を作り、標準的な方法でGPR64に対する結合アフィニティをスクリーニングした。
【0187】
GPR64-Fc融合タンパク質を用いてマウスを免疫感作した。この融合構造体は、完全長GPR64配列(配列ID番号2)のアミノ酸1〜588にFcタンパク質が連結したものである。脾臓細胞を融合させ、元のハイブリドーマをまず最初にFACSとELISAでスクリーニングし、その後、凍結した組織切片に関するIHCによって増殖効果を調べ、さらにオフレート結合反応速度を調べた。結合が強くオフレートが低い約40クローンを選択し、サブクローニングした。サブクローンを増やし、精製した。次に、精製したこのモノクローナル抗体をFACS滴定、免疫蛍光、ビアコアによって互いに比較し、試験管内と生体内において増殖に及ぼす効果を評価した。
【0188】
FACSアッセイ
【0189】
5mMのEDTAを含むトリス-HCl(pH8.0)を用いて細胞を取り出し、熱で不活化した3%FBSと正常な1%ヤギ血清とを含むHBSSの中で4℃にて5分間にわたって遠心分離することによって反応を停止させた。細胞をFACS緩衝液(0.1%のBSAを含むPBS)の中で抗GPR64-FITC(10μg/ml;R&Dシステムズ社)とともに4℃にて1時間にわたってインキュベートした。過剰なmAbを遠心分離によって除去し、細胞を、ヨウ化プロピジウム(1μg/ml)を含むFACS緩衝液の中に再び懸濁させた。蛍光強度をFACSキャン(ベクトン・ディキンソン社)で測定した。FACSの定量を同様にして行なったが、細胞に対して飽和濃度の抗GPR64-FITC(50μg/ml)を使用し、クオンタム・シンプリー・セルラー・ビーズ(シグマ社;結合している抗体の量がわかっている4つのアガロース・ビーズ群の混合物)で同様に処理した点が異なっている。それぞれの細胞系のMFIをクオンタム・シンプリー・セルラー・ビーズ群のMFIと比較することによって抗体結合部位を定量し、報告されているようにして非特異的効果に関する補正を行なった(Brockhoff他、Cytometry、第17巻、75〜83ページ、1994年)。実験は、3つ用意した同じサンプルについて2回行なった。
【0190】
表面プラズモン共鳴による速度論的分析
【0191】
ビアコア3000(ビアコア社、スウェーデン)を利用し、ヒトGPR64-Fc融合タンパク質とGPR64モノクローナル抗体の間の速度論的測定を行なった。バイオコア・アミン・カップリング試薬(N-エチル-N'-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド、EDC;N-ヒドロキシスクシンイミド、NHS;エタノールアミンHCl、pH8.5)により、研究グレードのCM5センサー・チップの上に、100RUとともに抗GPR64 mAbを固定化した。流速30μl/分で室温にてアッセイを実施した。それぞれのGPR64-Fcを3分間会合させる相の後、解離をモニターするため流れている緩衝液(10mMのヘペス、300mMの塩化ナトリウム、3mMのEDTA、0.05%のP-20、pH7.4)を10分間注入した。25mMのNaOHを用いてmAbの表面を再生させた。各ペアGPR64-mAbの結合の反応速度に関する計算は、異なる6通りの濃度(2048nM、512nM、128nM、32nM、8nM、2nM)の分析物GPR64-Fcでのデータから、BIA評価プログラムを用いて行なった。参照表面と緩衝液だけからなる対照からのバックグラウンド応答を除去するため、それぞれの分析において二重参照法を適用した。結合のアフィニティ(KD)は、BIA評価ソフトウエアからの二価分析物モデルを利用し、一連の濃度の分析物からのセンサーグラムの会合相と解離相を同時にフィッティングすることによって得た。
【0192】
免疫蛍光アッセイと内部化アッセイ
【0193】
カバーガラスの上で増殖した細胞を、増殖培地に入れた氷の上で10分間にわたって冷やした。増殖培地の代わりに、抗GPR64 mAb(10μg/ml)を含む4℃の培地を1時間にわたって用いた。抗体の結合は、AlexaFluor-488ヤギ抗マウス二次抗体(冷やした増殖培地の中で2200倍に希釈;モレキュラー・プローブズ社)を用いて検出した。細胞をPBSで3回洗浄し、5%超高純度ホルムアルデヒドを含むPBSを用いて40分間にわたって固定し、PBSでさらに2回洗浄した。可視化するためにパーマフロー(Permafluor:コールター社)を用いてスライドを取り付けた。
【0194】
GPR64抗体の内部化を調べるため、細胞を37℃にしたインキュベータの中に1時間入れた後、停止溶液(20μg/mlの純粋なヤギ抗マウス抗体を含む培地)の中に入れた氷の上に1時間置いた。PBSの中で洗浄した後、5%超高純度ホルムアルデヒドの中で細胞を固定した。次に0.5%トリトンX-1000を用いて細胞を洗浄し、AlexaFluor-488ヤギ抗マウス二次抗体(冷やした増殖培地の中で2200倍に希釈;モレキュラー・プローブズ社)とともにインキュベートした。上記のようにして、内部化された抗体を可視化した。
【0195】
インビトロ増殖アッセイ(MTTアッセイ)
【0196】
細胞系をウエル1つにつき細胞が2500個の密度になるように96ウエルのプレートに植え、フェノールレッドは含まないが、10%FBSとサプリメント(増殖培地)を含むイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)の中で一晩にわたって回復させた。細胞に対するチャレンジを、所定の濃度のmAbまたはADC(50μlの体積で2回)を含むIMDMを用いて1時間にわたって行なった。次に細胞を増殖培地で2回洗浄し、新鮮な増殖培地の中で4日間にわたって増殖させた後、セルタイター96水性非放射性細胞増殖アッセイ(プロメガ社)を製造者の指示に従って使用し、細胞の生存を評価した。増殖に関するすべての実験は、3つ用意したサンプルに対して少なくとも3回実施した。
【0197】
結果
【0198】
図5には、42個のmAbに関する結果をまとめた表が示してある(実施例2で説明したGPR64-18も含む)。この結果には、抗体の結合アフィニティに関するさまざまな測定が含まれる。例えば、FACS滴定測定(すなわちEC50)、表面プラズモン共鳴測定(すなわちビアコア)、免疫組織化学測定(IHC)、免疫蛍光測定(IF)などである。興味深いことに、これらモノクローナル抗体の多くは、IgG2aおよびIgG2bというアイソタイプである。より重要なことは、これら抗体の多くが、FACSアッセイでは小さな値のEC50を示し、ビアコアではナノモル以下のKD値を示すことである。
【0199】
免疫蛍光(IF)アッセイでは細胞表面が染色されたが、それはFACSアッセイでも確認された。GPR64モノクローナル抗体の内部化を可視化するために設計したIFアッセイにより、蛍光染色が細胞の表面から内部へと移動することがわかったのは意味がある。この結果は、GPR64 mAbが内部化されたことを証明している。このことは、抗体-薬共役体(ADC)法で治療を行なうときにmAbを使用する上で極めて重要である。
【0200】
したがって、GPR64の発現に関係する腫瘍の成長や他の増殖性疾患を標的とする抗体治療薬候補として使用する上で望ましい結合特性を示す、精製された多数の抗GPR64モノクローナル抗体が生成した。標準的な4日間MTTアッセイを利用し、精製されたGPR64 mAbが試験管内での成長に及ぼす効果も評価した。精製されたmAbだけだと、インビトロ・アッセイにおいて細胞の成長に対する効果はほとんどないか、まったくないという結果だった。しかし実施例2と以下の説明からわかるように、成長に対する効果はインビボ・アッセイによって検出することができる。
【実施例5】
【0201】
GPR64が卵巣がんの標的として有効であることのIHCによる確認
【0202】
正常組織サンプルと卵巣がんサンプルの組織マイクロアレイをクライノミクス・バイオサイエンシーズ社(ピッツフィールド、マサチューセッツ州)から入手した。ホルマリンで固定してパラフィンに包埋した組織について、以前に報告されている標準的な方法(Henshall他、Oncogene、第22巻、6005〜6012ページ、2003年)でIHCを実施した。加圧調理器の中に入れたダコ標的回復溶液の中で熱誘導抗原回復を15分間にわたって実施した。次にサンプルを、GPR64特異的抗体(例えばGPR64-101)または対照となるマウスIgG1[TIB191、マウス抗トリニトロフェノールmAb(ハイブリドーマ・クローン1B76.11、ATCC)]とともに30分間にわたってインキュベートした。ビオチニル化した二次抗体[ヤギ抗マウスIgG(3mg/ml、30分間;ジャクソン・イムノリサーチ社)]を用いて抗体の結合を検出し、ヴェクタステイン・エリートABCキット(ヴェクター・ラボラトリーズ社)と安定なDAB(ジアミノベンジジンとH2O2;リサーチ・ジェネティクス社)を用いて現像した。染色は、ダコ・オートステイナーを室温で用いて実施した。
【0203】
図6に示したように、抗体GPR64-101(図面のOAM6#101)を用いたさまざまな卵巣がんサンプルのIHC染色により、GPR64が多く発現していることがわかった。同様に重要なことは、図7に示してあるように、GPR64-101(図面のOAM6#101)が、テストした正常などの組織も有意には染色せず、唯一の例外は、副甲状腺がいくらか染色されたことである。
【0204】
図6と図7に示したデータは、オリゴヌクレオチド・マイクロアレイ(ジーンチップ)を用いて明らかにしたGPR64の発現プロファイルと一致しており、GPR64が正常な身体地図と比べて卵巣がんで多く発現していることの確認となっている。したがってIHCにより、GPR64が卵巣がんの標的として有効であることがさらにわかる。
【実施例6】
【0205】
生体内H460移植片治療モデルにおける精製した抗GPR64 mAbの効果
【0206】
実施例2に記載したのと同じ一般的な方法に従い、高アフィニティを示した精製した抗GPR64 mAb(GPR64-18、GPR64-61、GPR64-62、GPR64-81、GPR64-93、GPR64-95)を、生体内H460移植片モデルに基づいてテストした。H460腫瘍をサイズが約100mm3になるまで増殖させた後、精製したままのGPR64抗体、または対照であるTIB191アイソタイプを10mg/kgの割合で用いて治療した。
【0207】
図8に示したように、どの抗体もH460移植片における腫瘍の成長を完全には阻止できないが、アフィニティのより大きな抗体GPR64-81(図面のOAM6#81)とGPR64-93(図面のOAM6#93)は、成長を遅らせる生体内効率が優れていた。
【実施例7】
【0208】
精製した抗GPR64 mAbのエピトープ・マッピング
【0209】
競合的FACSアッセイによってエピトープ・マッピングを行なった。手短に説明すると、H460細胞を25μg/mlの標識していない抗体とともに氷の上で1時間にわたってインキュベートした。その間、FITCで標識した抗体をさまざまな量添加した。さらに30分経過した後、細胞を1回洗浄し、蛍光をフローサイトメトリーで測定した。すべてのデータはビアコアで確認した。
【0210】
結果から、4つの異なるエピトープが同定される。興味深いことに、生体内で最大の効率を示した2つの抗GPR64 mAb(GPR64-81、GPR64-93)は、GPR64上の異なる2つのエピトープを認識する。GPR64-101も独自のエピトープと結合するが、GPR64-18、GPR64-61、GPR64-62、GPR64-65、GPR64-95、GPR64-99はどれも同じエピトープと結合する。
【実施例8】
【0211】
細胞をベースとした免疫感作
【0212】
Balb/c同系細胞系3T12の中でトランスフェクタントを用いて細胞ベースの免疫感作を行ない、完全長GPR64抗原に対するmAbを生成させた。しかし野生型GPR64の発現が少なくて3T12のバックグラウンド力価が大きいと、一般にGPR64特異的力価は小さくなった。GPR64特異的力価を大きくするため、3T12の中でGPR64のDRYボックス突然変異体を作った。DRYボックス・モチーフは、GPR64を対応するシグナル伝達Gタンパク質に結合させることに関与する。DRYボックス突然変異体はこのシグナル伝達メカニズムを阻止するため、GPR64の発現増大が可能になる。FACS分析により、DRYボックス突然変異体で操作した3T12は、GPR64の発現レベルが野生型細胞の20倍であることがわかった。3T12のDRYボックス突然変異体を受動的免疫感作法で使用した。元の野生型細胞をベースとした免疫感作と比べると、GPR64に対して得られた血清力価ははるかに大きく、バックグラウンドはより少なかった。
【0213】
DRYボックス突然変異体と受動的免疫感作を組み合わせることにより、結合アフィニティと、腫瘍の成長抑制効率がはるかに向上した、完全長タンパク質に対する一群のGPR64 mAbを作り出すことができる。
【実施例9】
【0214】
H460細胞に関するGPR64抗体-薬共役体
【0215】
GPR64抗体を毒素アウリスタチンE(VCAE)に結合させ、試験管内でH460細胞を殺す能力を調べた。
【0216】
抗GPR64-VC-MMAE(バリン-シトルリン連結モノメチルアウリスタチンE)ADCを以前に報告されているようにして調製した(Doronina他、Nat. Biotechnol.、第21巻、778〜784ページ、2003年)。手短に説明すると、精製した抗GPR64 mAbまたは対照のアイソタイプ(TIB191)を10mMのDTTで還元し、エルマン試薬とともに培養した後、A412を測定することによってチオールの含有量を決定した。同じモル数のマレイミド-VC-MMAE溶液(DMSOの中に8mM(シグマ社))を含む冷たいアセトニトリル(最終濃度は20%)を還元したmAbとともに4℃にて30分間にわたってインキュベートした。共役しなかったVC-MMAEを4℃にてPBSの中に透析することによって除去し、濾過した。共役したmAbをA280/A260を用いて定量し、サイズ排除高性能液体クロマトグラフィにより、モノマーに対する凝集体の割合を決定した。最後に、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析を利用し、1つのmAb当たりの薬分子の数を明らかにした。
【0217】
図9に示してあるように、(上記の実施例4で説明した)4日間MTTアッセイにより、異なる18種類のGPR64 mAb-VCAE共役体をH460細胞でテストした。結果を見ると、GPR64-18、GPR64-81、GPR64-82、GPR64-93、GPR64-95を含むGPR64 mAb ADCが、H460細胞の生存を有意に抑制することがわかる。
【0218】
実施例6に記載した方法に従い、上記ADCのうちの2つ、すなわちGPR64-81とGPR64-93が、生体内でH460移植片の成長を抑制する能力をさらに調べた。図10に示したように、両方のGPR64-VCAE ADCが腫瘍の成長を有意に遅らせるが、どちらも完全な効果は持っていない。
【0219】
上記の実施例が本発明の真の範囲を制限することはなく、実施例は例示が目的であることを理解されたい。この明細書で引用した出版物、登録番号の配列、特許出願はすべて、個々の出版物または特許出願が参考として具体的かつ個別にこの明細書に組み込まれているかのようにして、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0220】
この明細書におけるすべてのUniGeneクラスター同定番号と登録番号は、GenBank配列データベースのためのものであり、その登録番号の配列は、参考として明らかな形でこの明細書に組み込まれているものとする。GenBankは従来技術において知られており、例えばBenson, D.A.他、Nucleic Acids Research、第26巻、1〜7ページ、1998年を参照されたい。配列は、他のデータベース(例えば、ヨーロッパ分子生物学研究所(EMBL)や日本DNAデータベース(DDBJ))でも利用できる。
【0221】
材料の寄託
【0222】
以下の材料をアメリカ基準培養物コレクション(ATCC;10801大学大通り、マナサス、ヴァージニア州、20110-2209、アメリカ合衆国)に寄託した。
【0223】
【表1】
【0224】
この寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約と、この条約(ブダペスト条約)に基づく規則の規定に基づいてなされた。そうすることにより、寄託の日から30年間にわたって寄託した生きた培養物のメンテナンスが保証される。この寄託物は、ブダペスト条約の条項と、プロテイン・デザイン・ラブズ社とATCCの間の契約とに基づいて、ATCCによって利用可能な状態にされる。そのため、関係するアメリカ合衆国特許が効力を持ったとき、あるいはアメリカ合衆国特許出願または外国出願が、いずれが先であるかに関係なく公開されたとき、寄託した培養物の子孫を、一般の人が恒久的かつ無制限に利用することが保証されるとともに、アメリカ合衆国特許商標庁長官が35U.S.C.の§122に従って利用に値するとした人や、その条項(886OG638を特に参照した37CFR§1.14も含む)に基づく長官の命令によって決められた人が利用することが保証される。
【0225】
本出願の譲受人は、寄託した材料の培養物が、適切な条件下で培養したときに死んだり失われたり破壊されたりした場合には、通知を受けたときにその材料を別の同じものとただちに交換することに同意した。寄託した材料が利用できるからといって、その事実を、すべての国の政府機関によってその国の特許法により認められた権利に反して本発明を実施するためのライセンスであると見なしてはならない。
【0226】
本発明の範囲は、寄託した構造体に限定されてはならない。なぜなら寄託した実施態様は、本発明のいくつかの特徴の単なる一例であり、機能的に同等なあらゆる構造体が本発明の範囲に含まれるからである。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1A】GPR64のヌクレオチド配列とアミノ酸配列である(配列ID番号1と2)。
【図1B】図1Aのつづき。
【図1C】図1Bのつづき。
【図2A】GPR64-1、GPR64-16、GPR64-18、GPR64-20、GPR64-48という5種類の抗GPR64抗体のVH領域とVL領域のヌクレオチド配列とアミノ酸配列である(配列ID番号3〜22)。
【図2B】図2Aのつづき。
【図2C】図2Bのつづき。
【図2D】図2Cのつづき。
【図3】4日間成長アッセイのデータをプロットしたものであり、GPR64を発現するがん細胞の中で細胞が増殖するときにGPR64の発現がRNAiによって下方調節されることを示している。
【図4】GPR64を発現するがん細胞の中で細胞が増殖するときにGPR64の発現がRNAiによって下方調節されることを示すデータのリストである。
【図5】42種類の抗GPR64モノクローナル抗体について結合を調べた結果をまとめた表である。
【図6】さまざまな卵巣がん組織のサンプルをモノクローナル抗体GPR64-101を用いて免疫組織化学的に染色した画像である。
【図7】さまざまな正常組織のサンプルをモノクローナル抗体GPR64-101を用いて免疫組織化学的に染色した画像である。
【図8】さまざまなGPR64モノクローナル抗体を用いたとき、H460異種移植片が生体内で腫瘍として成長する様子をプロットした図である。
【図9】mAb-アウリスタチン(mAb-VCAE)接合体の概略図と、さまざまなGPR64 mAb-VCAE共役体の存在下におけるH460の4日間の成長をプロットした図である。
【図10】GPR64-81 mAb-VCAE接合体とGPR64-93 mAb-VCAE接合体を用いた投薬計画を実施している間の、生体内におけるH460腫瘍の成長をプロットした図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPR64-18、GPR64-81、GPR64-93、GPR64-101からなるグループの中から選択した抗体にGPR64ポリペプチドが結合するのを競合的に抑制する抗体。
【請求項2】
エフェクター部に接合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
上記エフェクター部が、蛍光標識、放射性同位体、細胞毒性剤のいずれかである、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
上記細胞毒性剤が、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシン、アウリスタチンからなるグループの中から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
上記細胞毒性剤がアウリスタチンである、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
抗体フラグメントである、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
上記抗体フラグメントが、Fab、Fab'、F(ab')2、Fvフラグメント、rIgG、二重特異性抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体からなるグループの中から選択される、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
ヒト抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項10】
上記GPR64ポリペプチドががん細胞上に存在している、請求項1に記載の抗体。
【請求項11】
薬理学的に許容可能な賦形剤と請求項1に記載の抗体を含む医薬組成物。
【請求項12】
上記抗体がエフェクター部に接合している、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
上記エフェクター部が放射性同位体または細胞毒性剤である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
上記細胞毒性剤がアウリスタチンである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
上記抗体がキメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
上記抗体がヒト抗体である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項17】
患者からの生物サンプル中の卵巣がんを検出する方法であって、その生物サンプルを請求項1の抗体と接触させ、結合した抗体の量を測定する操作を含む方法。
【請求項18】
上記抗体を蛍光標識または放射性同位体に接合させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
卵巣がん細胞の増殖を抑制する方法であって、その細胞を請求項1の抗体と接触させる操作を含む方法。
【請求項20】
上記抗体が抗体フラグメントである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
卵巣がん細胞が患者の体内に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
上記患者が霊長類である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記患者が転移性卵巣がんを治療するための治療計画に従っている、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
上記患者が、転移卵巣がんである、あるいは転移卵巣がんを疑われている、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
配列ID番号17および/または配列ID番号18を含む抗体。
【請求項26】
エフェクター部に接合している、請求項25に記載の抗体。
【請求項27】
上記エフェクター部が、蛍光標識、放射性同位体、細胞毒性剤のいずれかである、請求項26に記載の抗体。
【請求項28】
薬理学的に許容可能な基剤または賦形剤と、請求項25に記載の抗体とを含む医薬組成物。
【請求項29】
患者からの生物サンプル中の卵巣がんを検出する方法であって、その生物サンプルを請求項25の抗体と接触させる操作を含む方法。
【請求項30】
卵巣がん関連細胞の増殖を抑制する方法であって、その細胞を請求項25の抗体と接触させるステップを含む方法。
【請求項31】
ポリペプチドと結合するモノクローナル抗体であって、そのポリペプチドが、配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有する配列を含むことを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項32】
上記相同性が少なくとも98%である、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項33】
Fab、Fab'、F(ab')2、Fvフラグメント、rIgG、二重特異性抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体からなるグループの中から選択した抗体フラグメントである、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項34】
腫瘍細胞の増殖を抑制する、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項35】
上記腫瘍細胞を、卵巣がん、ユーイング肉腫、子宮がん、GPR64を発現する他の腫瘍細胞の中から選択する、請求項34に記載のモノクローナル抗体。
【請求項36】
GPR64を過剰発現する腫瘍細胞が生体内で増殖するのを抑制する、請求項34に記載のモノクローナル抗体。
【請求項37】
キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれかである、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項38】
GPR64のリガンドのリガンド結合部位と競合して結合する、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項39】
GPR64の発現を低下させる、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項40】
細胞毒性剤に接合している、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項41】
上記細胞毒性剤がアウリスタチンである、請求項40に記載のモノクローナル抗体。
【請求項42】
抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項43】
請求項31に記載の抗体を産生する宿主細胞であって、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞からなるグループの中から選択された宿主細胞。
【請求項44】
GPR64-18、GPR64-81、GPR64-93、GPR64-101からなるグループの中から選択した抗体が結合するのと同じGPR64エピトープと結合するモノクローナル抗体。
【請求項45】
ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマ細胞系が産生するモノクローナル抗体が結合するのと同じGPR64エピトープと結合するモノクローナル抗体。
【請求項46】
請求項31に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項47】
ハイブリドーマ細胞系:ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマ。
【請求項48】
腫瘍細胞の成長を抑制する方法であって、哺乳動物に、配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列と結合することのできる抗体を治療に有効な量投与する操作を含む方法。
【請求項49】
上記抗体がエフェクター部に接合している、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
上記抗体が抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
上記抗体がモノクローナル抗体である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
上記腫瘍細胞が、卵巣がん、ユーイング肉腫、子宮がん、GPR64を発現する他のタイプの腫瘍細胞からなるグループの中から選択した癌を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
上記腫瘍細胞が卵巣組織細胞である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
上記哺乳動物がヒトである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
細胞毒性剤を治療に有効な量投与する操作をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項56】
上記抗体と上記細胞毒性剤を同時に投与する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
上記抗体を上記細胞毒性剤よりも前に患者に投与する、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
上記細胞毒性剤を上記抗体よりも前に患者に投与する、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
上記細胞毒性剤を上記抗体と共役させる、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列と特異的に結合する抗体と、薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項61】
細胞毒性剤をさらに含む、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
抗体と、薬理学的に許容可能な基剤または賦形剤とを含む医薬組成物であって、その抗体が、ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマ細胞系が産生したモノクローナル抗体であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項63】
哺乳動物における腫瘍を診断する方法であって、(a)その哺乳動物から採取したテスト・サンプルに抗体を接触させ;(b)その抗体とテスト・サンプルのポリペプチドの間に複合体が形成されたことを検出する操作を含んでおり、その抗体が、配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドと結合することを特徴とする方法。
【請求項64】
上記テスト・サンプルを、腫瘍細胞が成長または増殖している疑いがある個人から採取する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
上記テスト・サンプルを、卵巣がんの疑いがある個人から採取する、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
細胞表面受容体タンパク質に対して特異的な高血清力価の抗体を産生させる方法であって、
a.細胞表面受容体に、その受容体とシグナル伝達系を分離する突然変異を起こさせ;
b.突然変異したその受容体をある細胞系にトランスフェクションして発現させ;
c.その細胞系を用いて哺乳動物を受動的に免疫感作することにより、
細胞表面受容体に対する特異的な抗体を高血清力価で産生させる操作を含む方法。
【請求項67】
上記細胞表面受容体が、Gタンパク質と結合する受容体である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
Gタンパク質と結合する上記受容体がGPR64である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
上記突然変異がDRYボックス突然変異である、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
上記細胞系が、Balb/c同系細胞系3T12である、請求項66に記載の方法。
【請求項1】
GPR64-18、GPR64-81、GPR64-93、GPR64-101からなるグループの中から選択した抗体にGPR64ポリペプチドが結合するのを競合的に抑制する抗体。
【請求項2】
エフェクター部に接合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
上記エフェクター部が、蛍光標識、放射性同位体、細胞毒性剤のいずれかである、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
上記細胞毒性剤が、ジフテリアA鎖、外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、クルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシン、アウリスタチンからなるグループの中から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
上記細胞毒性剤がアウリスタチンである、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
抗体フラグメントである、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
上記抗体フラグメントが、Fab、Fab'、F(ab')2、Fvフラグメント、rIgG、二重特異性抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体からなるグループの中から選択される、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
ヒト抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項10】
上記GPR64ポリペプチドががん細胞上に存在している、請求項1に記載の抗体。
【請求項11】
薬理学的に許容可能な賦形剤と請求項1に記載の抗体を含む医薬組成物。
【請求項12】
上記抗体がエフェクター部に接合している、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
上記エフェクター部が放射性同位体または細胞毒性剤である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
上記細胞毒性剤がアウリスタチンである、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
上記抗体がキメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
上記抗体がヒト抗体である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項17】
患者からの生物サンプル中の卵巣がんを検出する方法であって、その生物サンプルを請求項1の抗体と接触させ、結合した抗体の量を測定する操作を含む方法。
【請求項18】
上記抗体を蛍光標識または放射性同位体に接合させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
卵巣がん細胞の増殖を抑制する方法であって、その細胞を請求項1の抗体と接触させる操作を含む方法。
【請求項20】
上記抗体が抗体フラグメントである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
卵巣がん細胞が患者の体内に存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
上記患者が霊長類である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記患者が転移性卵巣がんを治療するための治療計画に従っている、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
上記患者が、転移卵巣がんである、あるいは転移卵巣がんを疑われている、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
配列ID番号17および/または配列ID番号18を含む抗体。
【請求項26】
エフェクター部に接合している、請求項25に記載の抗体。
【請求項27】
上記エフェクター部が、蛍光標識、放射性同位体、細胞毒性剤のいずれかである、請求項26に記載の抗体。
【請求項28】
薬理学的に許容可能な基剤または賦形剤と、請求項25に記載の抗体とを含む医薬組成物。
【請求項29】
患者からの生物サンプル中の卵巣がんを検出する方法であって、その生物サンプルを請求項25の抗体と接触させる操作を含む方法。
【請求項30】
卵巣がん関連細胞の増殖を抑制する方法であって、その細胞を請求項25の抗体と接触させるステップを含む方法。
【請求項31】
ポリペプチドと結合するモノクローナル抗体であって、そのポリペプチドが、配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有する配列を含むことを特徴とするモノクローナル抗体。
【請求項32】
上記相同性が少なくとも98%である、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項33】
Fab、Fab'、F(ab')2、Fvフラグメント、rIgG、二重特異性抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体からなるグループの中から選択した抗体フラグメントである、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項34】
腫瘍細胞の増殖を抑制する、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項35】
上記腫瘍細胞を、卵巣がん、ユーイング肉腫、子宮がん、GPR64を発現する他の腫瘍細胞の中から選択する、請求項34に記載のモノクローナル抗体。
【請求項36】
GPR64を過剰発現する腫瘍細胞が生体内で増殖するのを抑制する、請求項34に記載のモノクローナル抗体。
【請求項37】
キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれかである、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項38】
GPR64のリガンドのリガンド結合部位と競合して結合する、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項39】
GPR64の発現を低下させる、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項40】
細胞毒性剤に接合している、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項41】
上記細胞毒性剤がアウリスタチンである、請求項40に記載のモノクローナル抗体。
【請求項42】
抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項31に記載のモノクローナル抗体。
【請求項43】
請求項31に記載の抗体を産生する宿主細胞であって、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞からなるグループの中から選択された宿主細胞。
【請求項44】
GPR64-18、GPR64-81、GPR64-93、GPR64-101からなるグループの中から選択した抗体が結合するのと同じGPR64エピトープと結合するモノクローナル抗体。
【請求項45】
ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマ細胞系が産生するモノクローナル抗体が結合するのと同じGPR64エピトープと結合するモノクローナル抗体。
【請求項46】
請求項31に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項47】
ハイブリドーマ細胞系:ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマ。
【請求項48】
腫瘍細胞の成長を抑制する方法であって、哺乳動物に、配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列と結合することのできる抗体を治療に有効な量投与する操作を含む方法。
【請求項49】
上記抗体がエフェクター部に接合している、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
上記抗体が抗体依存性細胞毒性を媒介する、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
上記抗体がモノクローナル抗体である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
上記腫瘍細胞が、卵巣がん、ユーイング肉腫、子宮がん、GPR64を発現する他のタイプの腫瘍細胞からなるグループの中から選択した癌を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
上記腫瘍細胞が卵巣組織細胞である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
上記哺乳動物がヒトである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
細胞毒性剤を治療に有効な量投与する操作をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項56】
上記抗体と上記細胞毒性剤を同時に投与する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
上記抗体を上記細胞毒性剤よりも前に患者に投与する、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
上記細胞毒性剤を上記抗体よりも前に患者に投与する、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
上記細胞毒性剤を上記抗体と共役させる、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列と特異的に結合する抗体と、薬理学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項61】
細胞毒性剤をさらに含む、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
抗体と、薬理学的に許容可能な基剤または賦形剤とを含む医薬組成物であって、その抗体が、ATCC____(ハイブリドーマOAM6#81)とATCC____(ハイブリドーマOAM6#93)からなるグループの中から選択したハイブリドーマ細胞系が産生したモノクローナル抗体であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項63】
哺乳動物における腫瘍を診断する方法であって、(a)その哺乳動物から採取したテスト・サンプルに抗体を接触させ;(b)その抗体とテスト・サンプルのポリペプチドの間に複合体が形成されたことを検出する操作を含んでおり、その抗体が、配列ID番号2のアミノ酸1〜588の配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドと結合することを特徴とする方法。
【請求項64】
上記テスト・サンプルを、腫瘍細胞が成長または増殖している疑いがある個人から採取する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
上記テスト・サンプルを、卵巣がんの疑いがある個人から採取する、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
細胞表面受容体タンパク質に対して特異的な高血清力価の抗体を産生させる方法であって、
a.細胞表面受容体に、その受容体とシグナル伝達系を分離する突然変異を起こさせ;
b.突然変異したその受容体をある細胞系にトランスフェクションして発現させ;
c.その細胞系を用いて哺乳動物を受動的に免疫感作することにより、
細胞表面受容体に対する特異的な抗体を高血清力価で産生させる操作を含む方法。
【請求項67】
上記細胞表面受容体が、Gタンパク質と結合する受容体である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
Gタンパク質と結合する上記受容体がGPR64である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
上記突然変異がDRYボックス突然変異である、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
上記細胞系が、Balb/c同系細胞系3T12である、請求項66に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2006−517911(P2006−517911A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563891(P2004−563891)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/040820
【国際公開番号】WO2004/058171
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(501219301)プロテイン デザイン ラブス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/040820
【国際公開番号】WO2004/058171
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(501219301)プロテイン デザイン ラブス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】
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