説明

HCV治療のための3’,5’−ジ−O−アシル化ヌクレオシド

式I[式中、Rは本明細書に定義のとおりである]を有する化合物は、C型肝炎ウイルスNS5bポリメラーゼインヒビターである。肝炎の複製を阻害するための組成物および方法、該化合物を製造するプロセスならびにそのプロセスで使用される合成中間体もまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)RNA依存性RNAウイルスポリメラーゼのインヒビターのプロドラッグである3’,5’−ジ−O−アシル化ヌクレオシドを提供するものである。経口投与される時、これらの化合物は消化管から容易に吸収され、インビボで効率的に親ヌクレオシドに戻る。これらのプロドラッグは、RNA依存性RNAウイルス複製を阻害し、HCV NS5Bポリメラーゼのインヒビターとして、HCV複製のインヒビターとして、そして哺乳動物のC型肝炎感染の治療に有用である。
【0002】
特に本発明は、このヌクレオシドが経口投与された時に改善された薬物吸収を提供し、過去に開示されたプロドラッグよりも優れた、アシル化ピリミジンヌクレオシドの使用に関わるものである。
【0003】
C型肝炎ウイルスは重大な健康問題であり、全世界で慢性肝疾患の主たる原因となっている(Boyer, N. et al. J. Hepatol. 2000 32:98-112)。HCVに感染した患者は、肝硬変とこれに続く肝細胞癌を発症するリスクがあり、よってHCVは肝臓移植の主要な適応である。
【0004】
世界保健機関によれば、2億人以上の感染者が全世界に存在し、毎年少なくとも300〜400万人が感染している。いったん感染すると、約20%の人間はウイルスが除去されるが、残りの人間はその後の人生でHCVを担持し得る。慢性感染した人間の10〜20%は、最終的には肝臓を破壊する肝硬変または癌を発症する。このウイルス疾患は、汚染された血液および血液製品、汚染された針によって、または性的に非経口的な伝染をし、感染した母親またはキャリアの母親から子へと垂直に伝染する。組換えインターフェロンα単独またはヌクレオシド類似体リバビリンとの組み合わせを用いた免疫療法に限定されているHCV感染の現行治療は、急速に耐性が現れるため、臨床上の有益性が限られている。慢性HCV感染に対して効果的に闘う、改善された治療薬に対する緊急の必要性がある。
【0005】
現在、HCV感染の治療に使用できる認可された治療法は限られた数しかない。HCVを治療するための新規および既存の治療的アプローチならびにHCV NS5Bポリメラーゼの阻害が以下で論じられている:R. G. Gish, Sem. Liver. Dis., 1999 19:5; Di Besceglie, A. M. and Bacon, B. R., Scientific American, October: 1999 80-85; G. Lake-Bakaar, "Current and Future Therapy for Chronic Hepatitis C Virus Liver Disease", Curr. Drug Targ. Infect Dis. 2003 3(3):247-253; P. Hoffmann et al, "Recent patents on experimental therapy for hepatitis C virus infection (1999-2002)", Exp. Opin. Ther. Patents 2003 13(11): 1707-1723; F. F. Poordad et al. "Developments in Hepatitis C therapy during 2000-2002", Exp. Opin. Emerging Drugs 2003 8(l):9-25; M. P. Walker et al, "Promising Candidates for the treatment of chronic hepatitis C", Exp. Opin. Investig. Drugs 2003 12(8):1269-1280; S.-L. Tan et al, "Hepatitis C Therapeutics: Current Status and Emerging Strategies", Nature Rev. Drug Discov. 2002 1:867-881; R. De Francesco et al. "Approaching a new era for hepatitis C virus therapy: inhibitors of the NS3-4A serine protease and the NS5B RNA-dependent RNA polymerase", Antiviral Res. 2003 58: 1-16; Q. M. Wang et al. "Hepatitis C virus encoded proteins: targets for antiviral therapy", Drugs of the Future 2000 25(9):933-8-944; J. A. Wu and Z. Hong, "Targeting NS5B-Dependent RNA Polymerase for Anti-HCV Chemotherapy", Cur. Drug Targ.-Inf Dis. 2003 3:207-219。これらの総論は、現在開発プロセスの様々な段階にある化合物に言及している。同一または異なる標的に対する2または3種の抗ウイルス薬による併用療法が、耐性ウイルス株の発生を回避または遅延させるための標準的な抗ウイルス療法となっており、上記の総論に開示される化合物は本発明化合物との併用療法に使用でき、これらの総論を引用によりその全内容を本明細書の一部とする。
【0006】
リバビリン(1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1H−[1,2,4]トリアゾール−3−カルボン酸アミド;VIRAZOLE(登録商標))は、合成の、非インターフェロン誘導性広域スペクトル抗ウイルスヌクレオシド類似体である。リバビリンは、Flaviviridaeを包含する幾つかのDNAおよびRNAウイルスに対してインビトロ活性を有する(G. L. Davis, Gastroenterology 2000 118:S104-S114)。単剤療法では、リバビリンは患者の40%において血清アミノトランスフェラーゼレベルを正常まで低下させるが、HCV−RNAの血清レベルは低下させない。さらに、リバビリンは著しい毒性を示し、貧血を誘発することがわかっている。リバビリンはHCVに対する単剤療法には認可されていないが、この化合物はインターフェロンα−2aおよびインターフェロンα−2bとの併用療法において認可されている。ビラミジンは肝細胞でリバビリンに変換されるプロドラッグである。
【0007】
ほぼ10年の間、慢性肝炎の治療にインターフェロン(IFN)が利用されてきた。IFNは、ウイルス感染に応答した免疫細胞により産生される糖蛋白である。二つの異なったタイプのインターフェロンが認められている:1型には幾つかのインターフェロンαおよび一つのインターフェロンβが含まれ、2型にはインターフェロンγが含まれる。1型インターフェロンは主に感染した細胞によって産生され、近傍の細胞をデノボ感染から防御する。IFNは、HCVを包む多くのウイルスのウイルス複製を阻害し、C型肝炎感染の唯一の治療として使用する場合、IFNは血清HCV−RNAを検出不能レベルにまで抑制する。加えて、IFNは血清アミノトランスフェラーゼレベルを正常化する。都合の悪い事に、IFNの効果は一時的である。治療の終了によって再発率70%という結果となり、僅か10〜15%が、正常な血清アラニントランスフェラーゼレベルを持つ持続的ウイルス学的反応を示すに過ぎない(L. -B. Davis, 上記)。
【0008】
初期IFN療法の一つの制限は、血液からのこの蛋白の急速なクリアランスであった。ポリエチレングリコール(PEG)を用いたIFNの化学的誘導体化は、実質的に改善された薬物動態学的性質を有する蛋白を生成した。PEGASYS(登録商標)は、インターフェロンα−2aおよび40kD分岐モノメトキシPEGのコンジュゲートであり、そしてPEG-INTRON(登録商標)は、インターフェロンα−2bおよび12kDモノメトキシPEGのコンジュゲートである(B. A. Luxon et al., Clin. Therap. 2002 24(9):13631383; A. Kozlowski and J. M. Harris, J. Control. Release, 2001 72:217-224)。
【0009】
インターフェロンα−2aおよびインターフェロンα−2bが、現在HCV治療のための単剤療法として認可されている。ROFERON-A(登録商標)(Roche)は、インターフェロンα−2aの組換え型である。REGASYS(登録商標)(Roche)は、インターフェロンα−2aのPEG化(即ちポリエチレングリコール修飾された)型である。INTRON-A(登録商標)(Schering Corporation)は、インターフェロンα−2bの組換え型であり、そしてPEG-INTRON(登録商標)(Schering Corporation)は、インターフェロンα−2bのPEG化型である。
【0010】
インターフェロンαの他の型、ならびにインターフェロンβ、γ、τおよびωが、HCV治療のために現在臨床開発中である。例えば、InterMune社によりINFERGEN(登録商標)(インターフェロン アルファコン−1)、Viragen社によりOMNIFERON(登録商標)(天然インターフェロン)、Human Genome Sciences社によりAlBUFERON(登録商標)、Ares-Serono社によりREBIF(登録商標)(インターフェロンβ−1a)、BioMedicine社によりオメガインターフェロン、Amarillo Biosciences社により経口インターフェロンアルファ、ならびにInterMune社によりインターフェロンγ、インターフェロンτ、およびインターフェロンγ−1bが開発中である。
【0011】
リバビリンおよびインターフェロンαによるHCVの併用療法が、現時点で最適な治療法である。リバビリンとPEG−INF(上記)の組み合わせは、患者の54〜56%に持続的ウイルス反応(SVR)をもたらす。このSVRは2型および3型HCVについては80%に近い(Walker, 上記)。残念なことに、この組み合わせは副作用をも導き、それが臨床上の問題をもたらす。皮下IFN−αには抑欝、インフルエンザ様症状および皮膚反応が伴い、リバビリンによる持続的治療には溶血性貧血が伴う。
【0012】
C型肝炎ウイルス感染治療のために現在前臨床または臨床開発中であるその他の高分子化合物には、Schering-Plough社のインターロイキン−10、Intermeuron社のIP-SO1、Vertex社のメリメボディブ(VS-497)、RPI社のHEPTAZYME(登録商標)、Idun Pharma社のIDN-6556、XTL社のXTL-002、Chiron社のHCV/MFS9、NABI社のCIVACIR(登録商標)(C型肝炎免疫グロブリン)、SciClone社のZADAXIN(登録商標)(チモシンα−1)、SciClone社のチモシン+PEG化インターフェロン、CEPLENE(登録商標);Innogenetics社のE2に対する治療ワクチン、Intercell社の治療ワクチン、Epimmune/Genencor社の治療ワクチン、Merix社の治療ワクチン、Tripep社の治療ワクチン、Chron-VacCがある。
【0013】
リボザイムはHCV RNAを標的としている。リボザイムは、RNAの配列特異的開裂を触媒する、エンドヌクレアーゼ活性を有する天然の短分子である。これに代わるアプローチは、RNAに結合してRNアーゼH仲介性開裂を刺激する、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用である。
【0014】
抗HCV療法としての薬物開発のための潜在的分子標的が現在幾つか同定されており、それらには、NS2−NS3オートプロテアーゼ、N3プロテアーゼ、N3ヘリカーゼおよびNS5Bポリメラーゼが包含されるがこれらに限定される訳ではない。一本鎖センスRNAゲノムの複製にはRNA依存性RNAポリメラーゼが絶対不可欠であり、この必須酵素は薬化学者の間に著しい興味を喚起してきた。
【0015】
NS5Bポリメラーゼのヌクレオシドインヒビターは、鎖伸張ができない非天然基質として、または、ポリメラーゼとの結合について天然ヌクレオチドと競合する競合的インヒビターとして作用できる。鎖ターミネーターとして機能するためには、ヌクレオシド類似体が細胞に取り込まれ、インビボで三リン酸に変換され、ポリメラーゼヌクレオチド結合部位について競合せねばならない。この三リン酸への変換は、通常、細胞キナーゼによって仲介され、それが潜在的ヌクレオシドポリメラーゼインヒビターにさらなる構造上の要件を付与する。残念なことに、この事が、HCV複製のインヒビターとしてのヌクレオシドの直接評価を、in situリン酸化が可能な細胞型アッセイに限定する。
【0016】
【化3】

【0017】
2β−メチルヌクレオシド1はE. Walton 等(J. Med. Chem. 1969 12(2):306-309)によって最初に記載された。置換ヌクレオシドのエステルは、合成反応列において保護炭水化物中間体として使用されてきた(E. Walton, GB 12909654。1970年10月21日公開)。塩基がシチジンである場合、アシル化誘導体は一般に、アミノ置換基がアシル化されている、2のジ−およびトリ−エステルである(E. Walton, 上記、J. L. Clark et al. J. Med Chem. 2005 48(17):5504-5508; R. E. Harry-O’kuru et al. J. Org. Chem. 1997 62(6):1754-1759; J. -P. Sommadossi et al. WO 2004002422)。エステル中間体は典型的には、結晶化合物をより生成し易い安息香酸エステルまたはフェニル酢酸エステルである。4−アミノ−1−((2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−3−メチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1H−ピリミジン−2−オン誘導体の抗ウイルス活性が報告されている(E. Walton, J. Med Chem., 上記)。
【0018】
2001年11月29日に公開されたWO 01 90121において、J. -P. SommadossiおよびP. Lacollaは、式1および2で示される1’−アルキル−および2’−アルキルヌクレオシドの抗HCVポリメラーゼ活性を開示および例示している。2001年12月6日に公開されたWO 01/92282において、J. -P. SommadossiおよびP. Lacollaは、式1および2で示される1’−アルキル−および2’−アルキルヌクレオシドによるフラビウイルス属およびペスチウイルス属の治療を開示および例示している。2003年4月3日に公開されたWO03/026675において、G. Gosselinは、フラビウイルス属およびペスチウイルス属を治療するための4’−アルキルヌクレオシド3を開示している。2004年6月3日に公開されたWO2004/046331において、J. -P. Sommadossi等は、2’−分岐ヌクレオシドおよびフラビウイルス科の突然変異を開示している。2003年4月3日に公開されたWO03/026589において、G. Gosselin等は、4’−修飾されたヌクレオシドを用いたC型肝炎ウイルスの治療法を開示している。2005年2月3日に公開されたWO2005009418において、R. Storer等は、HCVを包含するフラビウイルス科により引き起こされる疾患の治療のためのプリンヌクレオシド類似体を開示している。
【0019】
別の特許出願は、C型肝炎ウイルス感染を治療するための或る種のヌクレオシド類似体の使用を開示している。2001年5月10日公開のWO 01/32153において、R. Storerは、ウイルス疾患治療のためのヌクレオシド誘導体を開示している。2001年8月23日公開のWO 01/60315では、H. Ismaili等が、ヌクレオシド化合物を用いたフラビウイルス感染の治療または予防方法を開示している。2002年3月7日公開のWO 02/18404では、R. Devos等が、HCVウイルス治療のための4’−置換ヌクレオチドを開示している。2001年10月25日公開のWO 01/79246では、K. A. Watanabeが、ウイルス疾患治療のための2’−または3’−ヒドロキシメチルヌクレオシド化合物を開示している。2002年4月25日公開のWO 02/32920および2002年6月20日公開のWO 02/48165では、L. Stuyver等が、ウイルス疾患治療のためのヌクレオシド化合物を開示している。
【0020】
【化4】

【0021】
2003年12月24日公開のWO 03/105770において、B. Bhat等は、HCV感染の治療に有用な一連の炭素環式ヌクレオシド誘導体を開示している。2003年1月22日公開のWO 2004/007512では、B. Bhat等がRNA依存性RNAウイルスポリメラーゼを阻害するヌクレオシド化合物を開示している。この公報に開示されているヌクレオシドは、主として2’−メチル−2’−ヒドロキシ置換ヌクレオシドである。2002年7月25日公開のWO 2002/057425では、S. S. Carroll等が、RNA依存性ウイルスポリメラーゼを阻害するヌクレオシド誘導体およびHCV感染を治療する方法を開示している。2002年7月25日公開のWO 02/057287では、S. S. Carroll等が、塩基が場合により置換されていてもよい、7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンラジカル5である関連する2α−メチルおよび2β−メチルリボース誘導体を開示している。同出願は、3β−メチルヌクレオシドの一例を開示している。S. S. Carroll等(J. Biol. Chem. 2003 278(14):11979-11984)は、4−アミノ−1−((2R,3R,4R,5R)−4−ヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−3−メトキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1H−ピリミジン−2−オン(5a)によるHCVポリメラーゼの阻害を開示している。2004年1月29日公開のWO 2004/009020では、D. B. Olsen等が、RNA依存性RNAウイルスポリメラーゼのインヒビターとしての一連のチオヌクレオシド誘導体を開示している。
【0022】
「2’−フルオロヌクレオシド」なる標題のPCT公開No.WO99/43691(エモリー大学)は、HCVを治療するための或る2’−フルオロヌクレオシドの使用を開示している。「2’−フルオロヌクレオシド」なる標題の米国特許No.6348587(エモリー大学)は、B型肝炎、HCV、HIVおよび異常な細胞増殖の治療に有用な2’−フルオロヌクレオシドのファミリーを開示している。2’−フルオロ置換基の両方の立体配置が開示されている。
【0023】
Eldrup等(Oral Session V, Hepatitis C Virus, Flaviviridae; 16th International Conference on Antiviral Research(Apr. 27, 2003, Savannah, Ga.))は、HCV阻害のための2’−修飾ヌクレオシドの構造活性相関を記載している。
【0024】
Bhat等(Oral Session V, Hepatitis C Virus, Flaviviridae; 16th International Conference on Antiviral Research(Apr. 27, 2003, Savannah, Ga.); p A75)は、HCV RNA複製の潜在的インヒビターとしてのヌクレオシド類似体の合成および薬物動態学的性質を記載している。この著者は、2’−修飾ヌクレオシドが細胞に基づくレプリコンアッセイにおいて強力な阻害活性を示すと報告している。
【0025】
Olsen等(Oral Session V, Hepatitis C Virus, Flaviviridae; 16th International Conference on Antiviral Research(Apr. 27, 2003, Savannah, Ga.)p A76)はさらに、HCV RNA複製に及ぼす2’−修飾ヌクレオシドの効果を記載している。
【0026】
HIV逆転写酵素の非ヌクレオシドアロステリックインヒビターは、単独で、そしてヌクレオシドインヒビターとの、およびプロテアーゼインヒビターとの併用で、有効な治療薬であることが証明されている。ベンズイミダゾール(H. Hashimoto et al. WO01/47833、H. Hashimoto et al. WO03/000254、P. L. Beaulieu et al. WO03/020240 A2; P. L. Beaulieu et al. US6448281 B1; P. L. Beaulieu et al. WO03/007945 A1);インドール(P. L. Beaulieu et al. WO03/0010141 A2);ベンゾチアジアジン(D. Dhanak et al. WO01/85172 A1; D. Dhanak et al. WO03/037262 A2; K. J. Duffy et al. WO03/099801 A1, D. Chai et al. WO2004052312, D. Chai et al. WO2004052313, D. Chai et al. WO02/098424, J. K. Pratt et al. WO2004/041818 A1; J. K. Pratt et al. WO2004/087577 A1)、チオフェン(C. K. Chan et al. WO02/100851);ベンゾチオフェン(D. C. Young and T. R. Bailey WO00/18231);β−ケトピルバート(S. Attamura et al. US6492423 B1, A. Attamura et al. WO00/06529);ピリミジン(C. Gardelli et al. WO02/06246 A1);ピリミジンジオン(T. R. Bailey and D. C. Young WO00/13708);トリアジン(K. -H. Chung et al. WO02/079187 A1);ローダニン誘導体(T. R. Bailey and D. C. Young WO00/10573, J. C. Jean et al. WO01/77091 A2);2,4−ジオキソピラン(R. A. Love et al. EP256628 A2);フェニルアラニン誘導体(M. Wang et al. J. Biol. Chem. 2003 278:2489-2495)を包含する幾つかのクラスの非ヌクレオシドHCV NS5Bインヒビターが記載されており、現在様々な開発段階にある。
【0027】
NS3プロテアーゼが、新たな抗HCV療法発見のための大きな標的として浮上している。1998年5月28日公開のWO98/22496においてM. R. Attwood等は、プロテアーゼのメカニズムベースの活性部位を開示した(M. R. Attwood et al., Antiviral Chemistry and Chemotherapy 1999 10:259-273; M. R. Attwood et al., Preparation and use of amino acid derivatives as anti-viral agents, ドイツ国特許公開DE 19914474)。1998年4月30日公開のWO98/17679では、R. D. Tung等が、NS3プロテアーゼに関するメカニズムベースのペプチドインヒビターを開示した。
【0028】
1999年2月18日公開のWO99/07734および1999年8月9日公開のWO00/09543においてM Llinas-Brunet等は、HCVプロテアーゼのペプチドインヒビターを開示している。2000年10月12日公開のWO00/59929では、Y. S. Tsantrizos等が、HCV NS3プロテアーゼの強力なインヒビターである大環状トリペプチドを開示している。Boehringer-Ingelheimの一連の関連特許は、関連するプロテアーゼインヒビターを開示しており、トリペプチド誘導体BILN 2061の同定を導いている(M. Llinas-Brunet et al. Biorg. Med. Chem. Lett. 2000 10(20):2267-70; J. Med Chem. 2004 47(26):6584-94; J. Med. Chem. 2004 47(7):1605-1608; Angew. Chem. Int. Ed. Eng. 2003 42(12):1356-60)。
【0029】
Bristol-Myers Squibbにより同定された別のトリペプチドインヒビターが、特に、2003年12月4日公開のWO03/099274、2004年4月22日公開のWO2004/032827、2003年7月3日公開のWO03/053349、2005年5月26日公開のWO2005/046712および2005年6月9日公開のWO2005/051410に開示されている。2004年8月26日公開のWO2004/072234および2004年11月4日公開のWO2004/093798では、Enanta Pharmaceuticalsによってさらなるトリペプチドプロテアーゼインヒビターが開示された。2005年4月28日公開のWO2005/037214では、L. M. Blatt等が、HCV NS3プロテアーゼを阻害するさらに別のトリペプチド誘導体を開示している。2005年4月7日公開のWO2005/030796では、S. Venkatraman等がHCV NS3セリンプロテアーゼの大環状インヒビターを開示している。2005年6月30日公開のWO2005/058821では、F. Velazquez等がHCV NS3/NS4aセリンプロテアーゼのインヒビターを開示している。2002年6月20日公開のWO02/48172では、Z. ZhuがNS3プロテアーゼのインヒビターとしてのジアリールペプチドを開示している。共に2002年1月31日に公開されたWO02/08187およびWO02/08256においてA. Saksena等はHCV NS3プロテアーゼのペプチドインヒビターを開示している。2002年1月31日公開のWO02/08251では、M. Lim-Wilby等がNS3プロテアーゼのペプチドインヒビターを開示している。1999年12月21日公開のUS6004933では、L. W. Spruce等が、HCVエンドペプチダーゼを包含するシステインプロテアーゼを阻害するヘテロ環式ペプチド誘導体を開示している。
【0030】
RD3−4082およびRD3−4078(前者はアミドの位置が14炭素鎖で置換されており、後者はパラ−フェノキシフェニル基をプロセシングする)を包含する、2,4,6−トリヒドロキシ−3−ニトロベンズアミド誘導体のような非基質型NS3プロテアーゼインヒビター(Sudo K. et al., BBRC 1997 238:643-647; Sudo K. et al. Antiviral Chemistry and Chemotherapy 1998 9:186)もまた研究されつつある。
【0031】
フェナントレンキノンSCH68631はHCVプロテアーゼインヒビターである(Chu M. et al. Tetrahedron Lett. 1996 37:7229-7232)。同じ著者による別の例では、真菌Penicillium griseofulvumから単離されたSCH351633がプロテアーゼインヒビターであると同定された(Chu M. et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 1999 9:1949-1952)。高分子エグリンcに基づく選択的インヒビターの設計により、HCV NS3プロテアーゼ酵素に対するナノモルレベルの有効性が達成されている。ヒルから単離されたエグリンcは、S. griseusプロテアーゼAおよびB、α−キモトリプシン、キマーゼおよびサブチリシンといった幾つかのセリンプロテアーゼの強力なインヒビターである(Qasim M. A. et al., Biochemistry 1997 36:1598-1607)。
【0032】
逆相HPLCアッセイにおいてNS3/4A融合蛋白およびNS5A/5B基質と関連する阻害を示すチアゾリジン誘導体(Sudo K. et al. Antiviral Research 1996 32:9-18)、特に、長鎖アルキルで置換された融合シンナモイル部分を有する化合物RD−1−6250、RD4 6205およびRD4 6193。チアゾリジンおよびベンズアニリドは、N. Kakiuchi等(FEBS Let. 1998 421:217-220)およびN. Takeshita等(Anal. Biochem. 1997 247:242-246)によって同定された。
【0033】
HCVのNS3セリンプロテアーゼインヒビターとしてのイミダゾリジノンが、WO02/08198(Schering Corporation。2002年1月31日公開)およびWO02/48157(Bristol Myers Squibb。2002年6月20日公開)に開示されている。2002年6月20日公開のWO02/48116では、P. Glunz等がNS3プロテアーゼのピリミジノンインヒビターを開示している。
【0034】
抗HCVのためのその他の酵素標的には、HCV IRES部位(内部リボソーム進入部位)およびHCVヘリカーゼがある。IRESインヒビターはImmusol、Rigel Pharmaceuticals(R803)により、およびAnadys(ANA245およびANA246)により報告されている。VertexはHCVヘリカーゼインヒビターを開示している。
【0035】
耐性突然変異株を抑制できる併用療法は抗ウイルス化学療法に対する充分に確立されたアプローチとなっている。本明細書に開示したヌクレオシドインヒビターは、他のヌクレオシドHCVポリメラーゼインヒビター、非ヌクレオシドHCVポリメラーゼインヒビター、およびHCVプロテアーゼインヒビターと併用することができる。その他の種類のHCV薬、例えばウイルス進入インヒビター、ヘリカーゼインヒビター、IRESインヒビター、リボザイムおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドが浮上し、そして開発されていることから、これらもまた併用療法のための優れた候補薬となるであろう。インターフェロン誘導体は既にリバビリンとうまく併用されており、インターフェロンおよび化学修飾インターフェロンは、本明細書に開示されるヌクレオシドとの併用に有用であろう。
【0036】
本発明の目的は、C型肝炎ウイルスに感染した宿主の治療のための新たな化合物、方法および組成物を提供することである。
【0037】
ヌクレオシド誘導体は、しばしば強力な抗ウイルス(例えば、HIV、HCV、単純ヘルペス、CMV)および抗癌化学療法薬である。あいにくそれらの実用性は二つの要因によってしばしば限定される。第一に、乏しい薬物動態学的性質が、腸管からのヌクレオシドの吸収およびヌクレオシド誘導体の細胞内濃度をしばしば制限し、そして第二に、不十分な物理的性質は、活性成分の送達を強化するために用いられ得る製剤の選択枝を限定する。
【0038】
Albertは、固有の生物活性を欠いているが活性薬物への代謝的変換が可能である化合物を表現するのにプロドラッグという用語を導入した(A. Albert, Selective Toxicity, Chapman and Hall, London, 1951)。プロドラッグは近年論評されており(P. Ettmayer et al., J. Med Chem. 2004 47(10):2393-2404; K. Beaumont et al., Curr. Drug Metab. 2003 4:461-485; H. Bundgaard, Design of Prodrugs: Bioreversible derivatives for various functional groups and chemical entities in Design of Produrgs, H. Bundgaard(ed) Elsevier Science Publishers, Amersterdam 1985; G. M. Pauletti et al. Adv. Drug Deliv. Rev. 1997 27:235-256; R. J. Jones and N. Bischofberger, Antiviral Res. 1995 27;1-15およびC. R. Wagner et al., Med. Res. Rev. 2000 20:417-45)、これらの文献は引用によりその全内容を本明細書の一部とする。この変換は特異的酵素、しばしば加水分解酵素によって触媒されるが、活性化合物は非特異的化学プロセスによって再生されることもある。
【0039】
薬学的に許容されるプロドラッグとは、宿主において代謝、例えば加水分解または酸化されて、毒物学的不利益を有するフラグメントを形成せずに本発明化合物を形成する化合物を指す。典型的なプロドラッグの例は、活性化合物の官能基部分に結合した生物学的に不安定な保護基を有する化合物を包含する。糖部分にあるヒドロキシ基(群)の、アルキル化、アシル化またはその他の親油性修飾が、プロヌクレオシドの設計に利用されてきた。これらのプロヌクレオシドはインビボで加水分解または脱アルキル化されて活性化合物を生成できる。
【0040】
経口バイオアベイラビリティーを制限する要因はしばしば、胃腸管からの吸収ならびに腸壁および肝臓による初回通過排泄である。GI管を経由した経細胞吸収の最適化は、ゼロより大きなD(7.4)を要する。しかしながら、分配係数の最適化が成功を保証する訳ではない。プロドラッグは、腸細胞にある活性な排出トランスポーターを回避する必要があるかも知れない。腸細胞での細胞内代謝は、排出ポンプにより腸管内腔へと代謝産物を戻す受動輸送または能動輸送を引き起こし得る。プロドラッグは、標的細胞またはレセプターに到達する前の、血中での望ましくない生物学的変換を回避するよう設計されねばならない。
【0041】
ペプチドトランスポーター(PEPT蛋白)は、腸および腎臓の上皮細胞の刷子縁膜に局在する、プロトン共役能動輸送系(proton-coupled active transport system)であって、蛋白およびアミノ酸吸収において重要な役割を果たす。これらの輸送系がアミノ酸と結合した薬物の取り込みを仲介するという発見は、薬物デリバリーのための強力な手段を提供した(T. Terada and K. Inui, Curr. Drug Metab. 2004 5(1):85-94; E. De Clercq and H. J. Field, Brit. J. Pharmacol. 2006 147(1):1-11)。抗ヘルペスヌクレオシドであるアシクロビルおよびガンシクロビルは、L−アミノ酸エステルに結合する時、PEPT蛋白により効率的に細胞中に輸送されることが見いだされた(H. Han et al., Pharm. Res. 1998 15(8):1154-1159; C. U. Nielsen and B. Brodin, Curr. Drug Targets 2003 4(5):373-388)。アシクロビルのL−バリニルエステルおよびバラシクロビルはPEPT取り込みの基質であることが見いだされた(G. M. Friedrichsen et al. Eur. J. Pharm. Sci. 2002 16(1-2):1-13; A. Guo et al. J. Pharm. Exp. Ther. 1999 289(32):29509-29514; M. E. Ganapathy et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 1998 246(2):470-475)。
【0042】
2004年1月8日公開のWO2004/003000においてJ. -P. Sommadossi等は、1’−、2’−、3’−および4’−置換β−Dおよびβ−Lヌクレオシドの2’−および3’プロドラッグを開示している。2004年1月8日公開のWO2004/002422では、フラビウイルス感染治療のための2’−C−メチル−3’−O−バリンエステルリボフラノシルシチジンを開示している。Idenixは、1のバリンエステル4(B=シトシン)であると考えられる関連化合物NM283の治験を報告している。2004年1月8日公開のWO2004/002999では、J. -P. Sommadossi等が、HCV感染を包含するフラビウイルス感染の治療のための、1’、2’、3’または4’分岐ヌクレオシドの、一連の2’または3’プロドラッグを開示している。2004年6月24日公開のWO2004/052899では、R. Storer等が、2β−メチル−シトシンの3’−O−バリニル誘導体の製造プロセスを開示している。2004年7月15日公開のWO2004/058792では、R. Storer等が3’−O−バリニル誘導体製造のための一段階プロセスを開示している。
【0043】
2005年1月25日登録のUS6846810においてJ. A. Martin等は、HCV感染患者の治療に有用なプロドラッグとして4’−アジド−シトシンのアシル誘導体を開示している。U.S. Ser.No.11/635898では、K. Sarma等が、HCV感染患者の治療に有用な、2’−デオキシ−2’−α−フルオロ−2’−β−メチル−シチジンのジアシル誘導体を開示している。2006年2月23日公開のUS公開No.2006/0040890では、J. A. Martin等が、HCV感染患者の治療に有用な4’−アジド−シタラビンおよびそのプロドラッグを開示している。
【0044】
本発明は、4−アミノ−1−((2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−3−メチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1H−ピリミジン−2−オン(I、(2R)−2β−メチル−シチジンとも言う):
【化5】


[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C3−5シクロアルキルおよびC2−5ハロアルキルより成る群から独立して選ばれる]
なる新規なジ−アシル誘導体ならびにそれらの水和物、溶媒和物および酸付加塩を目的とするものである。
【0045】
本発明化合物は、HCVにより仲介される疾患の治療に有用であり、さらに本発明は、単剤または併用療法において本発明化合物を用いてHCV感染患者を治療する方法ならびに該化合物を含有する医薬組成物を含む。本発明はさらに、このジアシル誘導体を製造する方法に関するものである。
【0046】
4−アミノ−1−((2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−3−メチル−テトラヒドロ−フラン−2−イル)−1H−ピリミジン−2−オン I−4のHCVポリメラーゼ阻害活性が開示されている(J. -P. Sommadossi等、上記)。臨床診療においては、HCVポリメラーゼを速やかに阻害する、高いI−4の血中レベルを提供し、それによって、ウイルスが突然変異して耐性株を選択する機会が最小限となる条件の下でウイルスレベルを低下させる事が望ましい。親ヌクレオシドでは充分な高レベルを達成するのは困難である。プロドラッグは、化合物の薬物動態学的および物理的性質を改善し、それによってバイオアベイラビリティーを最適化し得る。バリンエステルI−5がI−4のプロドラッグとして研究されてきた。
【0047】
プロドラッグ候補物質の想定は一見単純に見えるが、適切な物理化学的および薬物動態学的性質、インビボ変換、ならびに安全性プロファイルを有する化合物の同定は、かなりの実験を要する複雑な複合的取り組みである。経口デリバリー用プロドラッグの同定に対する障害は、投与後の活性部分の迅速且つ効果的な放出を可能にしつつ、充分な水溶性、親油性および化学的安定性を維持することを包含する。プロドラッグの非エステラーゼ代謝およびトランスポーター仲介性クリアランスを最小化せねばならない(K.Beaumont
et al. Curr. Drug Metab. 2003 4(6):461-485)。チトクロムP450酵素の阻害または誘導もまた望ましくない薬物−薬物相互作用を産むことがある。
【0048】
ここに、I−4のジエステルが優れたプロドラッグであり、実質的により高いI−4の血中レベルを提供することが見いだされた。
【0049】
本発明の或る態様では、Rが本明細書上記に定義のとおりである、式Iの化合物が提供される。
【0050】
本発明の別の態様では、Rがエチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチルまたはイソ−ブチルである、式Iの化合物が提供される。
【0051】
本発明のさらに別の態様では、Rがエチルまたはイソ−プロピルである、式Iの化合物が提供される。
【0052】
本発明のさらに別の態様では、Rがイソ−プロピルであり、該化合物が塩酸、メシル酸塩、ヘミ硫酸または硫酸塩である式Iの化合物が提供される。
【0053】
本発明のもう一つの態様は、HCVにより仲介される疾患の治療のための抗ウイルス薬としての、上記定義による式Iの化合物またはそれらの水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の使用である。
【0054】
本発明の別の態様は、HCVにより仲介される疾患の治療のための、少なくとも一つの免疫系調節物質および/またはHCVの複製を阻害する少なくとも一つの抗ウイルス薬と組み合わせた抗ウイルス薬としての、上記定義による式Iの化合物またはそれらの水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の使用である。
【0055】
本発明の別の態様は、HCVにより仲介される疾患の治療のための医薬を製造するための、上記定義による式Iの化合物またはそれらの水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の使用である。
【0056】
本発明の別の態様は、HCVにより仲介される疾患の治療のための医薬を製造するための、少なくとも一つの免疫系調節物質および/またはHCVの複製を阻害する少なくとも一つの抗ウイルス薬と組み合わせた、上記定義による式Iの化合物またはそれらの水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の使用である。
【0057】
本発明のさらに別の態様では、式I[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C2−5ハロアルキルおよびC3−5シクロアルキルより成る群から選ばれる]で示される化合物またはその水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、HCVにより仲介される疾患を治療するための方法が提供される。
【0058】
本発明のさらに別の態様では、1日あたり0.1〜10g用量の式I[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C2−5ハロアルキルおよびC3−5シクロアルキルより成る群から選ばれる]で示される化合物またはその水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩を、それを必要とする患者に投与することを含む、HCVにより仲介される疾患を治療するための方法が提供される。さらに別の態様では、この用量は一日あたり0.5および7gの間であり、さらなる態様では、この用量は1日あたり1.0および6.0gの間である。
【0059】
本発明の別の態様では、式I[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C2−5ハロアルキルおよびC3−5シクロアルキルより成る群から選ばれる]で示される化合物またはその水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の治療有効量、ならびに、少なくとも一つの免疫系調節物質および/またはHCVの複製を阻害する少なくとも一つの抗ウイルス薬の治療有効量を、それを必要とする患者に同時投与することを含む、HCVにより仲介される疾患を治療するための方法が提供される。
【0060】
本発明の別の態様では、式I[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C2−5ハロアルキルおよびC3−5シクロアルキルより成る群から選ばれる]で示される化合物またはその水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の治療有効量、および、少なくとも一つの免疫系調節物質(この免疫系調節物質は、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子またはコロニー刺激因子である)の治療有効量を、それを必要とする患者に同時投与することを含む、HCVにより仲介される疾患を治療するための方法が提供される。
【0061】
本発明の別の態様では、式I[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C2−5ハロアルキルおよびC3−5シクロアルキルより成る群から選ばれる]で示される化合物またはその水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の治療有効量、および、少なくとも一つの免疫系調節物質(この免疫系調節物質は、インターフェロンまたは化学的に誘導体化されたインターフェロンである)の治療有効量を、それを必要とする患者に同時投与することを含む、HCVにより仲介される疾患を治療するための方法が提供される。
【0062】
本発明の別の態様では、式I[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C2−5ハロアルキルおよびC3−5シクロアルキルより成る群から選ばれる]で示される化合物またはその水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の治療有効量、および、少なくとも一つの他の抗ウイルス化合物の治療有効量を、それを必要とする患者に同時投与することを含む、HCVにより仲介される疾患を治療するための方法が提供される。
【0063】
本発明の別の態様では、式I[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C2−5ハロアルキルおよびC3−5シクロアルキルより成る群から選ばれる]で示される化合物またはその水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の治療有効量、および、少なくとも一つの他の抗ウイルス化合物(この化合物は、HCVプロテアーゼインヒビター、別のヌクレオシドHCVポリメラーゼインヒビター、非ヌクレオシドHCVポリメラーゼインヒビター、HCVヘリカーゼインヒビター、HCVプライマーゼインヒビターまたはHCV融合インヒビターである)の治療有効量を、それを必要とする患者に同時投与することを含む、HCVにより仲介される疾患を治療するための方法が提供される。
【0064】
本発明の別の態様では、少なくとも一つの薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合した、式I[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C2−5ハロアルキルおよびC3−5シクロアルキルより成る群から選ばれる]で示される化合物またはその水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩を含む、医薬組成物が提供される。
【0065】
本発明の別の態様では、式I[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C2−5ハロアルキルおよびC3−5シクロアルキルより成る群から選ばれる]で示される化合物またはその水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の製造方法であって、下に列挙され実施例に例示される工程(i)〜(v)を含む方法が提供される。この方法は、均質であっても二相性であってもよい塩基性水性有機媒質中で、DMAP、および溶液を少なくとも約7.5のpHに維持するに充分な塩基の存在下に、本明細書に定義されるようなアシル化剤でIを処理することを含む。本方法は、ヘテロ環式塩基による付随反応を伴わないアシル化が可能である。
【0066】
本発明のさらなる態様は、塩基性反応条件下でO−アシルヌクレオシドIIを得るためのヌクレオシドIの選択的O−アシル化:
【化6】


[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C3−5シクロアルキル、C2−5ハロアルキルおよび場合により置換されていてもよいフェニルより成る群から選ばれる]
の方法であって、
(i)IIおよびDMAPを不均質な水性溶媒混合物に溶解し、水性塩基を添加してpHを約7.5〜約12に調節し;
(ii)場合により充分な飽和NaCl水を加えて二相性反応混合物を生成し;
(iii)アシル化剤を加え、pHを約7.5〜約12に維持するに充分なさらなる塩基を加え;
(iv)反応を監視して、変換が満足できるレベルに到達した時に前記アシル化剤および前記塩基の添加を中止し;
(v)場合により、このO−アシルヌクレオシドを薬学的に許容される酸と接触させて、O−アシルヌクレオシドの酸付加塩を形成させる、
工程を含む方法である。
【0067】
本明細書で使用する「a」または「an」という句は、1以上のその実体を指し;例えば、「a compound」とは、1以上の化合物または少なくとも一つの化合物を指す。このように、「a」(または「an」)、「1以上」、および「少なくとも一つ」は本明細書では互換的に使用できる。
【0068】
「本明細書上記に定義されるように」という句は、本明細書に記載された最初の定義を指す。
【0069】
本明細書で使用される「独立して」という語は、同じ化合物の内部に同じまたは異なる定義を有する変数が存在するかしないかに関わりなく、或る変数が任意の一例に適用されることを示す。したがって、Rが2回現れ、且つ「C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C3−5シクロアルキルおよびC2−5ハロアルキルより成る群から独立して選ばれる」と定義されている化合物では、両方のRが同一であってもよいし、Rが異なる意義を有していてもよい。
【0070】
本明細書で使用される「場合による」または「場合により」という語は、その後に記載される事象または状況が起こるかも知れないが起こる必要がある訳ではなく、この表現が、その事象または状況が起こる例と起こらない例を包含することを意味する。
【0071】
本明細書で使用される「独立して」という語は、同じ化合物の内部に同じまたは異なる定義を有する変数が存在するかしないかに関わりなく、或る変数が任意の一例に適用されることを示す。したがって、Rが2回現れ、且つ「C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C3−5シクロアルキルおよびC2−5ハロアルキルより成る群から独立して選ばれる」と定義されている化合物では、両方のRが同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0072】
本明細書で使用される「アルケニル」という語は、1または2個のオレフィン二重結合(好ましくは1個のオレフィン二重結合)を持ち2〜10個の炭素原子を有する非置換炭化水素鎖基を指す。本明細書で使用される「C2−5アルケニル」とは、2〜5個の炭素より成るアルケニルを指す。例にはビニル、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)または2−ブテニル(クロチル)がある。
【0073】
本明細書で使用される「アルキル」という語は、1〜10個の炭素原子を含む非分岐または分岐鎖の飽和一価炭化水素残基を指す。本明細書で使用する「C2−5アルキル」とは、2〜5個の炭素より成るアルキルを指す。アルキル基の例には、エチル、プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルまたはペンチル、イソペンチル、ネオペンチルがあるが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という語は、3〜8個の炭素原子を含む飽和炭素環式環、即ちシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチルを指す。本明細書で使用する「C3−5シクロアルキル」とは、炭素環式環内の3〜5個の炭素で構成されるシクロアルキルを指す。
【0075】
本明細書で使用される「ハロアルキル」という語は、1、2、3またはそれ以上の水素原子がハロゲンで置換されている、上記定義による非分岐または分岐鎖アルキル基を指す。本明細書で使用される「C2−5ハロアルキル」とは、2〜5個の炭素および1〜11個のハロゲン置換基より成るハロアルキルを指す。例には、1−フルオロメチル、1−クロロメチル、1−ブロモメチル、1−ヨードメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、トリヨードメチル、1−フルオロエチル、1−クロロエチル、1−ブロモエチル、1−ヨードエチル、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、2−ヨードエチル、2,2−ジクロロエチル、3−ブロモプロピルまたは2,2,2−トリフルオロエチルがある。
【0076】
本明細書で使用される「ジ−アシル」誘導体という語は、3’−および5’−ヒドロキシがエステル−OC(=O)R[式中、Rは請求項1に定義のとおりである]である、本明細書に記載の誘導体化されたヌクレオシド化合物を指す。
【0077】
本明細書で使用される「アシル化剤」という語は、無水物または酸ハロゲン化物のいずれかを指す。本明細書で使用される「無水物」という語は、一般構造RC(O)−O−C(O)R[式中、Rは請求項1に定義の通りである]で示される化合物を指す。本明細書で使用される「酸ハロゲン化物」という語は、一般構造RC(O)X[式中、Xはハロゲンである]で示される化合物を指す。「アシルイミダゾール」という語は、一般構造RC(O)X[式中、XはN−イミダゾリルである]で示される化合物を指す。
【0078】
本明細書で使用される、化合物の「活性化誘導体」という語は、元の化合物を所望の化学反応において活性にする、該化合物の一時的な反応性形態を指し、ここで、元の化合物は中等度に反応性であるか、または非反応性である。活性化は、元の化合物よりも高い自由エネルギー内容量を有する、誘導体または当該分子内部の化学基を形成することによって達成され、このことにより、活性化型が他の試薬とより反応し易くなる。本発明の状況において、カルボキシ基の活性化が特に重要であり、対応する活性化剤またはカルボキシ基を活性化する基を、下により詳細に述べる。本発明にとって特に興味深いのは、カルボン酸無水物およびカルボン酸塩化物である。
【0079】
本明細書で使用される「不均質な水性溶媒混合物」という句は、二相性または不均質な混合物を生成する、水および有機共溶媒の混合物を指す。この不均質な水性溶媒混合物は、限られた水溶性を持つ共溶媒から生成されてもよく、または水性成分のイオン強度を、水相中での共溶媒の溶解度を限定するよう調節することができる。
【0080】
「アルカリ金属水酸化物」という語は、式MOH[式中、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはセシウムである]で示される化合物を指し、「アルカリ金属重炭酸塩」は、式MHCO[式中、Mは、ナトリウムまたはカリウムである]を指し、そして「アルカリ金属炭酸塩」は、式MCO[式中、Mはナトリウムまたはカリウムである]を指す。当業者は、pHを所望の範囲に維持するために他の塩基を使用でき、そして他の塩基もまた本発明の範囲内にあることが理解できるであろう。
【0081】
本明細書で使用される略語には、アセチル(Ac)、雰囲気(Atm)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、メチル(Me)、アセトニトリル(MeCN)、ブチル(Bu)、メタノール(MeOH)、融点(mp)、MeSO−(メシルまたはMs)、質量分析(ms)、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、ジクロロメタン(DCM)、プロピル(Pr)、ポンド/平方インチ(psi)、ビリジン(pyr)、室温(rtまたはRT)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トリエチルアミン(EtNまたはTEA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、酢酸エチル(EtOAc)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(EtO)、エチル(Et)、4−Me−CSO−またはトシル(Ts)、イソ−プロピル(i−Pr)、エタノール(EtOH)がある。接頭辞ノルマル(n)、イソ(i−)、第二(sec−)、第三(tert−)およびネオを包含する常套的命名法は、アルキル部分と共に使用される場合、それらの慣用的意義を有する(J. Rigaudy and D. P. Klesney, Nomenclature in Organic Chemistry, IUPAC 1979 Pergamon Press, Oxford)。
【0082】
本発明に包含され本発明の範囲内にある代表的化合物の例を表Iに記載する。これらの例およびそれに続く製造例は、当業者が本発明をより明確に理解し実施できるよう、提供するものである。それらは本発明の範囲を限定するものと考えてはならず、単に本発明を例示および代表するものと考えるべきである。
【0083】
一般に、本明細書で使用される命名法は、IUPAC体系的命名法の創成のためのAUTONOM(登録商標)v.4.0、Beilstein Instituteコンピューターシステムに基づいている。表示される構造とその構造に与えられた名称の間に相違がある場合、表示された構造により重要性を認めるべきである。さらに、構造または構造の一部の立体化学が例えば太線または点線によって示されていない場合、その構造または構造の一部は、全ての立体異性体を包含すると解釈すべきである。これらの環系の付番方式を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
ヒト対象における潜在的挙動をさらに評価するため、Caco−2細胞を経由した輸送を推定プロドラッグについて評価した。Caco−2細胞は、分子の潜在的吸収/透過性を評価するために一般的に使用される(G. Gaviraghi et al. in Pharmacokinetic optimization in drug research. Biological, Pharmacokinetic and Computational Strategies. B. Testa et al. eds. Wiley Interscience VCH, Zurich 2001 pp3-14)。I−4のC2−4アルキルジエステルについてCaco−2透過性が許容可能であることが判明した。
【0086】
本発明化合物は、水性有機溶媒中、I−4のアシル化により一工程で製造するのが好都合である。溶媒は、均質な水溶液または二相溶液のいずれであってもよい。水性有機溶媒のpHは、アシル化によって生成される酸を中和するための塩基を添加することにより、7.5以上に維持される。この塩基は、アルカリもしくはアルカリ金属水酸化物または第三アミンのいずれかとすることができる。この反応を、当分野においてアシル化の触媒であることが知られているDMAPの存在下で実施する。この方法の有利な点は、ヘテロ環式塩基をアシル化せずに所望生成物を取得できることである。保護基は必要なく、よって保護/脱保護工程の必要性を排除できる。この方法を、付記する実施例に記載する。
【0087】
本発明化合物は多岐にわたる経口投与剤型および担体中に調合できる。経口投与は、錠剤、被覆錠剤、硬および軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤、シロップ剤、または懸濁剤の形態とすることができる。本発明化合物は、他の投与経路の中でも特に、坐剤投与する時に有効である。最も好都合な投与方法は一般に、都合の良い毎日の投薬レジメンを用いる経口投与であり、このレジメンは、疾患の重篤度および抗ウイルス薬に対する患者の反応に従って調節できる。
【0088】
本発明化合物または化合物群および薬学的に使用可能なそれらの塩を、1以上の常套的賦形剤、担体、または希釈剤と共に、医薬組成物および単位剤型の形態とすることができる。この医薬組成物および単位投薬形態は、さらなる活性化合物を含むまたは含まない、常套的割合の常套的成分で構成され、そして、単位投薬形態は、使用される目的日用量範囲に相応する活性成分の、適切な有効量を含有できる。この医薬組成物は、固体、例えば錠剤もしくは充填済みカプセル剤、半固体、散剤、持続放出調合物、または液体、例えば懸濁剤、乳剤、もしくは経口使用のための充填済みカプセル剤;または直腸もしくは腟内投与のための坐剤の形態で使用できる。典型的な調製物は、約5%〜約95%の活性化合物または化合物群(w/w)を含有するであろう。「調製物」または「投薬形態」という語は、活性化合物の固体および液体調合物の両者の包含を意図しており、当業者は、所望の用量および薬物動態学的パラメータに応じて活性成分が異なる調合物として存在できることが理解できるであろう。
【0089】
本明細書で使用する「賦形剤」という語は、医薬組成物の製造に使用され、一般に安全で、非毒性で、且つ生物学的にもその他の点でも不適切でない化合物を指し、獣医学的使用およびヒトへの薬学的使用のために許容される賦形剤を包含する。本発明化合物は単独で投与できるが、一般的には、目的とする投与経路および標準的薬務に関して選択された1以上の適切な薬学的賦形剤、希釈剤または担体と混合して投与される。
【0090】
さらに、活性成分の「薬学的に許容される塩」の形態は、まず非塩形態においては存在しない望ましい薬物動態学的性質を活性成分に付与し、そして、身体におけるその治療活性の点で活性成分の薬力学に良い影響を与えることさえある。本明細書で使用される化合物の「薬学的に許容される塩」という句は、薬学的に許容され、親化合物の望ましい薬理活性を有する塩を意味する。そのような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸によって形成される;もしくは、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、サリチル酸、ムコン酸等のような有機酸によって形成される酸付加塩がある。薬学的に許容される塩に対する全ての言及は、本明細書で定義される、同じ酸付加塩の、溶媒付加形態(溶媒和物)または結晶形態(多形)を包含する事を理解すべきである。
【0091】
固体形態の調製物には、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、および分散性顆粒剤がある。固体担体は、希釈剤、香料、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としても働き得る1以上の物質であってよい。散剤においては、担体は一般に、微粉化された活性成分との混合物である、微粉化された固体である。錠剤においては、活性成分を、一般に、必要とされる結合能を有する担体と適切な割合で混合し、所望の形状およびサイズに圧縮する。好適な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ロウ、カカオ脂などを包含するが、これらに限定される訳ではない。固体形態調製物は、活性成分に加えて、着色料、香料、安定剤、緩衝剤、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有できる。
【0092】
液体製剤もまた経口投与に好適であり、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤および水性懸濁剤をはじめとする液体製剤を包含する。これらは、使用直前に液体形態調製物に変換されるよう意図されている固体形態調製物を包含する。乳剤は、溶液、例えばプロピレングリコール水溶液中に調製することができ、または、レシチン、ソルビタンモノオレアート、またはアラビアゴムのような乳化剤を含有することができる。水性懸濁液は、微粉化した活性成分を、粘性材料、例えば天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびその他の周知の懸濁化剤を用いて水に分散させる事によって製造できる。
【0093】
本発明化合物は、坐剤として投与するために調合することができる。まず、低融点ロウ、例えば脂肪酸グリセリド混合物またはカカオ脂を融解させ、活性成分を例えば撹拌によって均一に分散させる。次に、溶融した均質な混合物を、都合の良いサイズの鋳型に注ぎ、冷却し、固化させる。
【0094】
本発明化合物は、腟内投与用に調合することができる。活性成分に加えて、当分野で適当であることが知られているような担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、発泡剤またはスプレー剤。
【0095】
好適な製剤は、薬用担体、希釈剤および賦形剤と共に、E. W. Martin編、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。熟練した製剤科学者は、本明細書の教示内の製剤を改変して、本発明に係る組成物を不安定にしたりそれらの治療活性を損なったりすることなく、特定の投与経路のための数多くの製剤を提供することができる。
【0096】
本化合物を、例えば水またはその他の媒質に対してより可溶性にする改変は、軽微な改変(例えば塩の形成)によって容易に達成でき、それらは充分に当分野の通常の技術範囲内にある。患者に最大有益効果が得られるように本化合物の薬物動態を管理するため、特定化合物の投与経路および投薬レジメンを改変することも、充分に当分野の通常の技術範囲内にある。
【0097】
本明細書で使用する「治療有効量」という語は、個体において疾患の症状を低減させるのに必要な量を意味する。用量は、それぞれ特定の症例における個体の必要性に適合させる。その用量は、治療しようとする疾患の重篤度、患者の年齢および全身健康状態、患者がそれによって治療されている他の医薬、投与経路および投与形態、ならびに関わっている医師の好みおよび経験といった数多くの因子に応じて広範囲に変わり得る。経口投与のためには、一日あたり約0.1および約10gの間の日用量が、単剤療法および/または併用療法において好適である。好ましい日用量は、一日あたり約0.5および約7.5g、より好ましくは1.5および約6.0gの間である。一般的に、治療はウイルスを速やかに減少させまたは排除するため大量の初期「負荷用量」で開始し、その後感染の再発を防止するに充分なレベルまで用量を減少させる。本明細書に記載の疾患の治療における通常の技術を有する者は、過度の実験を行うことなく、個人の知識、経験および本出願の内容に依拠して、与えられた疾患および患者のための本発明化合物の治療有効量を確定することができる。
【0098】
治療上の有効性は、血清蛋白(例えば、アルブミン、凝固因子、アルカリホスファターゼ、アミノトランスフェラーゼ(例えば、アラニントランスアミナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ)、5’−ヌクレオシダーゼ、γ−グルタミニルトランスペプチダーゼ、等)のような蛋白レベル、ビリルビン合成、コレステロール合成、および胆汁酸合成を包含する(但しこれらに限定されない)肝機能;炭水化物代謝、アミノ酸およびアンモニア代謝を包含する(但しこれらに限定されない)肝代謝機能の試験から確認できる。或いは、治療上の有効性はHCV−RNAを測定することによって監視できる。これらの試験の結果によって用量を最適化できる。
【0099】
本発明の態様において、活性化合物または塩を、リバビリンのような他の抗ウイルス薬、他のヌクレオシドHCVポリメラーゼインヒビター、HCV非ヌクレオシドポリメラーゼインヒビター、HCVプロテアーゼインヒビター、HCVヘリカーゼインヒビターまたはHCV融合インヒビターと組み合わせて投与できる。活性化合物またはその誘導体もしくは塩を他の抗ウイルス薬と組み合わせて投与する時、その活性は、親化合物よりも増大し得る。治療が併用療法である場合、このような投与は、ヌクレオシド誘導体の投与に関して同時または連続的とすることができる。よって本明細書で使用される「同時投与」とは、同時または異なる時点での該物質の投与を包含する。2以上の物質の同時投与は、2以上の活性成分を含有する単一製剤によって、または、単一の活性物質を有する2以上の投薬形態の実質的同時投与によって達成できる。
【0100】
本明細書における、治療に対する言及は、現在の状態の予防および治療に拡大されることを理解されたい。さらに、本明細書で使用されるHCV感染の「治療」という語もまた、HCV感染に付随するまたはそれにより仲介される疾患もしくは状態、またはその臨床症状の治療もしくは予防を包含する。
【0101】
実施例1
プロピオン酸(2R,3R,4R,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−3−プロピオニルオキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル;塩酸塩9(I−1)。
THF(15mL)およびHO(7mL)中のI−4(1.0g、3.89mmol)の溶液にTEA(4.72g、33.87mol)を加え、反応混合物を5℃に冷却した。反応混合物の温度を0℃以下に維持しながら塩化プロピオニル(1.44g、15.45mmol)を徐々に加えた。反応をhplcで監視し、初期添加が完了した後、モノプロピオナートエステルがまだ存在していたので、さらなる塩化プロピオニル(0.72g、7.77mmol)を加え、反応をRTで一夜撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、濃HClでpHを約6.5に調節した。混合物をEtOAc(30mL)およびHO(15mL)に分配し、相を分離した。水相をEtOAc(2x25mL)で抽出し、合した有機抽出液を希ブライン(2x20mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、減圧濃縮して、油状物として遊離塩基を得た。この油状物をIPA(5mL)に溶解し、IPA中のHCl(約4N HCl 1mL)で処理し、減圧濃縮した。残留物をIPA/MTBE/酢酸イソプロピル(1:3:15)から再結晶し、得られた結晶を濾過し、酢酸イソプロピルで洗浄し、80℃で減圧乾燥すると、0.95g(60.1%)のI−1が得られた。
【0102】
実施例2
イソ酪酸(2R,3R,4R,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−4−ヒドロキシ−3−イソブチリルオキシ−4−メチル−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル;塩酸塩(I−2)。
I−4(0.50g、1.94mmol)、DMAP(0.026g、0.21mmol)、THF(8mL)およびHO(4mL)の溶液に、TEA(2.36g、16.93mmol)を加え、反応混合物を約−5℃に冷却した。反応温度が0℃以下に維持される速度でイソブチリルクロリド(0.93mL、8.75mmol)を滴下した。反応をHPLC−MSで監視した。モノアシル化副生成物を除去するため(hplcにより測定)、さらなる0.41gおよび0.21gアリコートのイソブチリルクロリド(計1.55g、14.58mmol)を加えた。反応をRTで一夜撹拌し、0℃に冷却し、濃HClでpHを6.5に調節した。混合物をEtOAc(30mL)およびHO(15mL)に分配し、相を分離した。水相をEtOAc(2x15mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を、希ブライン(20mL)、希NaHCO(20mL)、希ブライン(15mL)で順次洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、減圧濃縮して、油状物として遊離塩基を得た。この油状物をIPA(5mL)に溶解し、IPA中のHCl(約4N HCl 1mL)で処理し、減圧濃縮した。残留物をIPA/MTBE(1:10)から再結晶し、得られた結晶を濾過し、MTBEで洗浄し、80℃で減圧乾燥すると、0.61g(72.6%)のI−2が得られた。
【0103】
実施例3
ペンタン酸(2R,3R,4R,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イル)−4−ヒドロキシ−4−メチル−3−ペンタノイルオキシ−テトラヒドロ−フラン−2−イルメチルエステル;塩酸塩(I−3)。
I−4(0.490g、1.90mmol)、DMAP(0.026g、0.21mmol)、THF(7mL)およびHO(3mL)の溶液に、TEA(2.31g、16.59mmol)を加え、反応混合物を約0℃に冷却した。反応温度が5℃以下に維持される速度で無水吉草酸(1.6g、2.57mmol)を滴下した。反応をHPLC−MSで監視した。モノアシル化副生成物を除去するため、0.32gアリコートの無水吉草酸を2回加えた(計2.24g、11.99mmol)。反応混合物を0℃に冷却し、濃HClでpHを6.8に調節した。混合物をEtOAc(30mL)およびHO(15mL)に分配し、相を分離した。水相をEtOAc(2x15mL)で抽出し、合わせた有機抽出液を、希NaHCO(2x20mL)および水(1x20mL)で順次洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、減圧濃縮して、油状物として遊離塩基を得た。この油状物をIPA(5mL)に溶解し、IPA中のHCl(約4N HCl 0.8mL)で処理し、減圧濃縮した。残留物をIPA/MTBE/ヘプタン(1:0.5:10;15mL)から再結晶し、得られた結晶を濾過し、ヘプタンで洗浄し、N雰囲気下に80℃で減圧乾燥すると、0.88g(55.7%)のI−3が得られた。
【0104】
実施例4
ラットにおける薬物動態学的パラメータの決定
体重200〜250gの無傷の雄性IGSウィスターハンラットCrl:WI(GLx/BRL/Han)IGS BR(ハノーバー−ウィスター)ラットを使用した。実験化合物の各用量レベルについて3匹のラットより成る群を使用した。実験の間は動物に餌と水を自由に摂取させた。被験物質を、10mg/kgのI−5に相当する用量で、Captex 355EP、Capmul MCM、EtOH、およびプロピレングリコール(30:20:20:30)を含有する水性懸濁液として調合し、強制栄養により経口投与した。0.25、0.5、1、3、5、および8時間の時点で頸静脈カニューレから、そして24時間の時点で心臓穿刺により、処置ラットから血液試料(0.3mL)を採取した。この試料にシュウ酸カリウム/NaFを加え、サンプリング操作の間、氷上に保存した。試料をできるだけ速やかに−4℃の冷蔵遠心機で遠心し、血漿試料を、分析するまで−80℃の冷凍庫に保存した。血漿のアリコート(0.05mL)をアセトニトリル0.1mLと混合した。内部標準(水中0.05mL)および0.02mLのブランク溶媒を加えた。非処置ラット由来の血漿0.05mLアリコートをアセトニトリル0.1mL、メタノール:水(1:1)中の標準溶液0.02mLアリコート、および水中の内部標準0.05mLアリコートと混合することにより、一組の較正標準を作製した。各々の血漿試料および較正標準を良く撹拌し、次いで3000rpmで5分間遠心して蛋白を沈殿させた。遠心で得た上清(各々100μL)を、LC/MS/MS分析用に200μLの水性移動相を入れた96ウェルプレートに移した。
【0105】
試料の分析 − プロドラッグを、タンデム質量分析計(HPLC/MS/MS)を備えた高速液体クロマトグラフィーを用いて分析した。分離にはThermo Aquasil C18 4.6x50mmカラム(5μM)を使用した。イオン化プロセスにはエレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用した。移動相Aは、0.1%ギ酸を加えた水中5mM酢酸アンモニウムを含有し、移動相Bは、0.1%ギ酸を加えたMeOHを含有していた。溶離を1mL/分の流速で勾配を使用して実施した。
【0106】
実施例5
Caco2プロトコル
材料
クレブス・ヘンゼライト緩衝液、塩化カルシウム二水和物、および重炭酸ナトリウムの粉末はSigma(St. Louis, MO)から購入した。Caco−2細胞(継代 〜100)はRoche Baselから得た。ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)/high medium、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタン−スルホン酸(HEPES)、および牛血清は、JRH Bioscience(Lenexa, KS)から取得した。MEM非必須アミノ酸、L−グルタミン、ペニシリン、およびストレプトマイシンはGIBCO Labs, Life Tech. LLC(Grand Island, NY)から得た。Snapwell細胞培養インサート(直径6.5mm、1.12cm2、孔径0.4μm)はCostar(Cambridge, MA)から取得した。
【0107】
細胞培養
75cm2のフラスコで細胞を増殖させ、5%COおよび95%空気の雰囲気下で37℃に維持した。培地は、5%牛血清、25mMHEPES、1%MEM非必須アミノ酸、1%L−グルタミン、100U/mLペニシリン、および100μg/mLストレプトマイシンを添加したDMEM/high mediumで構成した。培養を分割比1−3で毎週継代した。透過性の実験のため、継代数110〜120のCaco−2細胞をSnapwellインサートに入れたTranswellポリカーボネートフィルター上に400000細胞/cm2の密度で撒き、使用前に7日間培養した。
【0108】
クレブス・ヘンゼライト緩衝液
10mMグルコースおよび2.5mM CaClを含有しpH6.5および7.4に調節したクレブス・ヘンゼライト重炭酸塩緩衝液を、パケットの指示どおりに調製した。塩粉末を、ミリポア水で必要容量の約90%に定量的に溶解した。1N HClまたは1N NaOHでpH調節する前に、塩化カルシウム二水和物および重炭酸ナトリウムを加えた。さらなるミリポア水を加えてこの溶液を最終容量とした。この溶液を0.22ミクロン孔の膜を用いて濾過滅菌し、使用するまで冷蔵庫(〜20℃)で保存した。
【0109】
細胞の調製
Cell Culture Core Facilityから分化した細胞を得、5%COおよび95%空気の雰囲気下に37℃で平衡化させた。caco−2単層を含むSnapwellインサートを37℃の平衡化したクレブス・ヘンゼライトpH7.4緩衝液ですすいだ。
【0110】
方法
拡散チャンバーとして細胞インサートを利用した。頂端および側底チャンバー中のクレブス・ヘンゼライト緩衝液のpHはそれぞれ6.5および7.5であり、頂端側の基質の初期濃度は100μMであった。頂端チャンバー中の被験化合物を伴う細胞を、5%COおよび95%空気の雰囲気下に37℃でおよそ30分間プレインキュベートした。pH6.5クレブス・ヘンゼライト緩衝液中100μMの化合物を伴う細胞インサートを、側底チャンバー中のプレ平衡化緩衝液を入れた新たなプレート中に移した時に実験を開始した。ドナー側からの試料を時刻0分に、そしてドナーおよびレシーバー側からの両試料を時刻30分に採取して分析した。
【0111】
実験後対照
ルシファーイエローを使用して拡散系の挙動を評価した。被験化合物の最終サンプリングの後、ルシファーイエローを初期濃度100μMとなるように頂端チャンバーに加えた。60分間インキュベートした後、底部チャンバーから250μLを取り、アッセイした。
【0112】
透過係数(Papp)の算出
appを以下の式を用いて算出した:
【0113】
【数1】

【0114】
式中、Vは、レシーバー溶液の容量(cm3)であり、Aは、Snapwellインサートの表面積(cm2)であり、Cは初期濃度(nM)であり、そしてdC/dtは、レシーバーチャンバー内の経時的濃度変化、即ち、レシーバーチャンバー内の濃度対時間の傾き(nM/分)である。各サンプリング時点における濃度は、実験に応じて、取り除いたアリコートまたは新しいプレートへのドナーインサートの移動を考慮して補正した。
【0115】
実施例6
本化合物のための代表的医薬組成物
【0116】
【表2】

【0117】
成分を混合し、造粒し、活性化合物約500mgを入れた硬ゼラチンカプセルに分注する。
【0118】
【表3】

【0119】
成分を合わせ、水などの溶媒を用いて造粒する。次にこの調合物を乾燥し、適切な打錠機を用いて活性化合物約500mgを含有する錠剤を製造する。
【0120】
【表4】

【0121】
成分を混合して経口投与のための懸濁剤を製造する。
【0122】
【表5】

【0123】
成分を一緒に融解し、蒸気浴上で混合し、総重量2.5gが入る鋳型に注ぐ。
【0124】
それらの特別な形態で、もしくは開示された機能を実行する手段の観点で表した、上の説明または後の請求項に開示される特徴、または開示された結果を達成する方法もしくは過程は、必要に応じて、別々に、またはそのような特徴を任意に組み合わせて、様々な形態で本発明を実現するために利用できる。
【0125】
前記の発明を、明確化および理解の目的のため、説明および実施例によって幾分詳細に記載してきた。付記する請求項の範囲内で変更および修飾を施し得ることは、当業者には明らかであろう。故に、上の説明は例示的なものであって限定的なものでないことを理解すべきである。したがって本発明の範囲は、上の説明を参照して決定すべきものではなく、以下に付記する請求項および係る請求項が権利を与える等価物の全範囲を参照して決定せねばならない。
【0126】
本明細書に引用する全ての特許、特許出願および公報は、各々個々の特許、特許出願または公報が個別にその旨記載してあるかの如く、引用によりその全内容を本明細書の一部とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


[式中、Rは、C2−5非分岐または分岐アルキル、C2−5非分岐または分岐アルケニル、C3−5シクロアルキルおよびC2−5ハロアルキルより成る群から独立して選ばれる]
で示される化合物ならびにそれらの水和物、溶媒和物および酸付加塩。
【請求項2】
が、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチルまたはイソ−ブチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、エチルまたはイソ−プロピルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
がイソ−プロピルであり、化合物が、塩酸塩、メシル酸塩、ヘミ硫酸塩または硫酸塩である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
HCVにより仲介される疾患の治療のための抗ウイルス薬としての、請求項1〜4のいずれか1項に定義される式Iの化合物、またはその水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の使用。
【請求項6】
HCVにより仲介される疾患の治療のための、少なくとも一つの免疫系調節物質および/またはHCVの複製を阻害する少なくとも一つの抗ウイルス薬と組み合わせた抗ウイルス薬としての、請求項1〜4のいずれか1項に定義される式Iの化合物またはそれらの水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の使用。
【請求項7】
HCVにより仲介される疾患の治療のための医薬を製造するための、請求項1〜4のいずれか1項に定義される式Iの化合物またはそれらの水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の使用。
【請求項8】
HCVにより仲介される疾患の治療のための医薬を製造するための、少なくとも一つの免疫系調節物質および/またはHCVの複製を阻害する少なくとも一つの抗ウイルス薬と組み合わせた、請求項1〜4のいずれか1項に定義される式Iの化合物またはそれらの水和物、溶媒和物もしくは酸付加塩の使用。
【請求項9】
請求項1に記載の化合物の治療有効量を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、C型肝炎ウイルス(HCV)により仲介される疾患を治療する方法。
【請求項10】
一日あたり0.1および10gの間の用量の化合物を患者に投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
一日あたり0.5および7.5gの間の用量を患者に投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
一日あたり1.0および6.0gの間の用量を患者に投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一つの免疫系調節物質および/またはHCVの複製を阻害する少なくとも一つの抗ウイルス薬を投与することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも一つの薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合した、治療有効量の請求項1に記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項15】
塩基性反応条件下でO−アシルヌクレオシドIIを得るためのヌクレオシドIの選択的O−アシル化:
【化2】


[式中、Rは、C2−4非分岐または分岐アルキル、C2−4非分岐または分岐アルケニル、C3−6シクロアルキル、C2−5ハロアルキルおよび場合により置換されていてもよいフェニルより成る群から選ばれる]
の方法であって、
(i)IIおよびDMAPを不均一な水性溶媒混合物に溶解し、水性塩基を添加してpHを約7.5〜約12に調節し;
(ii)場合により充分な飽和NaCl水を加えて二相性反応混合物を生成し;
(iii)アシル化剤を加え、pHを約7.5〜約12に維持するに充分なさらなる塩基を加え;
(iv)反応を監視して、変換が満足できるレベルに到達した時に前記アシル化剤および前記塩基の添加を中止し;
(v)場合により、このO−アシルヌクレオシドを薬学的に許容される酸と接触させて、O−アシルヌクレオシドの酸付加塩を形成させる、
工程を含む方法。

【公表番号】特表2009−532411(P2009−532411A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503529(P2009−503529)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052866
【国際公開番号】WO2007/113159
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】