説明

HER3アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる癌の治療方法

本発明の一態様は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤と、HER3および/またはHER2および/またはEGFRの発現を低下させる1種以上のアンチセンスオリゴマーとの同時処置により、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である癌を治療するための方法を提供する。本発明の別の態様は、HER2の阻害剤と、HER3の発現を低下させる1種以上のアンチセンスオリゴマーとの同時処置により癌を治療するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 関連出願に対する相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組入れられるものとする、2009年4月14日に出願された米国特許仮出願第61/169,093号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、HER3アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる癌の治療方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2. 発明の背景
HER3は、ErbBファミリーの受容体チロシンキナーゼのメンバーであり、4種の異なる受容体:ErbB-1(EGFR、HER1)、ErbB-2(neu、HER2)、ErbB-3(HER3)およびErbB-4(HER4)を含む(Yardenら、Nat. Rev. Mol. Cell. Biol, 2001, 2(2):127-137)。このファミリーの受容体タンパク質は、細胞外リガンド結合ドメイン、1個の疎水性膜貫通ドメインおよび細胞質チロシンキナーゼ含有ドメインから構成される。1種以上のErbB受容体に結合し、受容体ホモまたはヘテロダイマー化を行う少なくとも12種の増殖因子が存在する。ダイマー化は、リガンド結合受容体の内在化および再循環(またはその分解)、ならびに、特に、細胞の生存、アポトーシスおよび増殖活性を調節する下流の細胞内シグナリング経路を誘発する。HER3(ErbB3)がチロシンキナーゼ活性を欠くことは当業者によって理解されている。
【0004】
EGFR、HER2および最近ではHER3が腫瘍形成に関与してきた。最近の研究により、EGFRがいくつかの悪性ヒト組織において、その正常な組織対応物と比較して過剰発現されることが示された。EGFRをコードする遺伝子の過剰発現、増幅、欠失および構造的再配列の高い発生率が、乳腺、肺、卵巣および腎臓の腫瘍中で認められている。例えば、EGFRは、80%の頭部および頸部の癌において過剰発現され、約50%のグリア芽細胞腫において増幅および/もしくは突然変異により活性化され、ならびに西洋においては非小細胞肺癌(NSCLC)の10〜15%およびアジアにおいてはNSCLCの30〜50%において、突然変異により活性化される(Frederick, L, Wang, XY, Eley, G, James, CD (2000) Cancer Res 60: 1383-1387; Rielyら(2006) Clin. Cancer Res. 12(24):7232-7241)。多形成グリア芽細胞腫におけるEGFR遺伝子の増幅は、知られた最も一貫した遺伝子変化の1つである。EGFR過剰発現はまた、多くの非小細胞肺癌においても顕著であった。HER2は約25〜30%の乳癌において増幅もしくは過剰発現される(Slamonら(1989) Science 244:707-712)。ヒト乳癌においては高レベルのHER3 mRNAが検出されている。
【0005】
Bennettらの米国特許第6,277,640号は、HER3の発現を阻害するためのアンチセンス化合物、組成物および方法を開示している。
【0006】
いくつかのタンパク質チロシンキナーゼ(「PTK」)阻害剤が、タンパク質チロシンキナーゼ発現が調節不全である特定の癌のための選択的療法として認可されている。2001年に初めて認可されたグリベック(登録商標)(イマチニブ)は、成人および子供における特定の型の白血病、侵襲的全身性肥満細胞症、好酸球増加症候群、転移性隆起性皮膚線維肉腫、ならびに特定の型の転移性悪性消化管間質腫瘍の治療のために認可されている。小分子PTK阻害剤であるイレッサ(登録商標)(ゲフィチニブ)は、白金およびドセタキセル療法の失敗後の局所進行性または転移性の非小細胞肺癌の治療のために認可されている。タルセバ(商標)(エルロチニブ)は、局所進行性もしくは転移性の非小細胞肺癌の治療のための単剤療法として、または局所進行性、切除不能性もしくは転移性の膵臓癌の治療のためのゲムシタビンとの組合せとして認可されている。しかしながら、阻害剤に対する耐性が時間と共に生じるため、そのような療法の効果は限られている。Aroraら(2005) J. Pharmacol. and Exp. Therapies 315(3):971-971-979。最近、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いたHER2およびEGFRチロシンキナーゼ活性の阻害が、HER3発現およびPI3K/Akt経路を介するその後のシグナリングの代償的増加に起因してHER2によって駆動される乳癌に対して限られた効果を示すことが示された(Serginaら、Nature, 2007, 445:437-441)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性であるか、もしくはそれに対する応答性が低くなった、および/またはHER2阻害剤を用いる治療に対して耐性であるか、もしくはそれに対する応答性が低くなった癌において、HER3機能を効率的に阻害することができる薬剤が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
3. 発明の概要
一実施形態においては、本発明は、哺乳動物における癌を治療する方法であって、隣接するモノマーがリン酸基もしくはホスホロチオエート基によって共有結合した10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーを哺乳動物に投与することを含み、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1の領域を含み、第1の領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシド類似体であり、第1の領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子もしくは哺乳動物HER3 mRNAの最良に整列された標的領域の逆相補体と少なくとも80%同一であり、ならびに当該癌がタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤および/もしくはHER2阻害剤および/もしくはHER2経路阻害剤を用いる治療に対して耐性である、前記方法を提供する。この耐性は、前記オリゴマーを用いるHER3の発現低下の結果として少なくとも部分的に逆転してもよい。関連する変形は、オリゴマーと阻害剤のそれぞれの阻害効果が一時的に重複するように、HER3アンチセンスオリゴマーと、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤および/またはHER2阻害剤および/またはHER2経路阻害剤の両方を投与することを含む。この様式では、本発明は、癌によるそのような阻害剤に対する耐性の発生を少なくとも部分的に防止する(既に発生していない場合)か、または癌によるそのような阻害剤に対する耐性を少なくとも部分的に逆転させる(既に発生している場合)治療を提供する。
【0009】
前記オリゴマーは、例えば、配列番号180の配列を有する。癌は、例えば、ゲフィチニブを用いる治療に対して耐性である癌であってよい。
【0010】
いくつかの実施形態においては、本発明は、配列5’-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC -3’(配列番号180)(式中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを指し、小文字はDNAモノマーを指し、下付文字「s」はホスホロチオエート結合を指し、MeCは5-メチルシトシン塩基を含むβ-D-オキシ-LNAモノマーを指す)からなる有効量のオリゴマーを哺乳動物に投与することを含み、癌が、限定されるものではないが、ゲフィチニブまたはラピチニブなどのタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である、哺乳動物における癌を治療する方法を提供する。
【0011】
様々な実施形態において、本発明は、隣接するモノマーがリン酸基もしくはホスホロチオエート基によって共有結合した10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーのコンジュゲートの有効量を哺乳動物に投与することを含み、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1の領域を含み、第1の領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシド類似体であり、第1の領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子もしくは哺乳動物HER3 mRNAの最良に整列された標的領域の逆相補体と少なくとも80%同一であり、ならびに癌がタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である、哺乳動物における癌を治療する方法を提供する。
【0012】
特定の実施形態においては、本発明は、哺乳動物癌細胞の増殖を阻害する方法であって、該細胞と、隣接するモノマーがリン酸基もしくはホスホロチオエート基によって共有結合した10〜50個の連続するモノマーからなる有効量のオリゴマーとを接触させることを含み、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1の領域を含み、第1の領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシド類似体であり、第1の領域の配列が、哺乳動物HER3遺伝子もしくは哺乳動物HER3 mRNAの最良に整列された標的領域の逆相補体と少なくとも80%同一であり、ならびに哺乳動物癌細胞の増殖がタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤により阻害されない、前記方法を提供する。
【0013】
本発明のさらに別の実施形態は、HER3の発現を下方調節する(低下させる)アンチセンスオリゴマーを投与しながら、同時に、またはそれと共に、限定されるものではないが、ゲフィチニブもしくは本明細書に記載のいずれかなどの少なくとも1種のタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(PTKI)を用いて哺乳動物を治療することにより、哺乳動物における癌を治療する方法を提供する。前記オリゴマーおよびPTKIを同時投与してもよいし、またはしなくてもよい;重要なことは、オリゴマーとPTKIが同時に哺乳動物患者において治療上有効量で共に活性であり、および/またはそれぞれの阻害効果が一時的に重複することである。癌は、PTKIを用いる治療に耐性を持つようになったか、もしくはそれに対する応答性が低くなったものであってよく、またはそれらは1種以上のPTKIに対する耐性を一度も生じたことがない癌であってよい。癌は、例えば、乳癌などの、1種以上のPTKIを用いる治療に対して少なくとも最初は応答する癌であってよく、または本明細書に記載の癌のいずれかであってよい。癌がPTKIを用いる治療に対して実質的に耐性でない場合、一実施形態は、本明細書に記載の任意の様式でHER3の発現を低下させることにより、PTKIに対する耐性(またはさらなる耐性)を少なくとも部分的に防止することを提供する。
【0014】
関連する実施形態は、哺乳動物における癌、例えば、ヒト患者の癌、例えば、乳癌の治療における、限定されるものではないが、ゲフィチニブなどの、PTKIと同時に、もしくはそれと一緒に用いるための医薬の調製のための本明細書に記載のHER3の発現を下方調節する(低下させる)少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーの使用を提供する。別の実施形態は、ヒトなどの哺乳動物、例えば、PTKI耐性ヒト乳癌患者におけるPTKI耐性癌の治療のための医薬の調製における、HER3の発現を低下させる少なくとも1種のオリゴマーの使用を提供する。本発明のさらなる実施形態は、限定されるものではないが、ゲフィチニブなどの少なくとも1種のPTKIを用いて、ヒト患者などの哺乳動物における癌を治療するための改良された方法であって、この改良が、例えば、本明細書に記載のものなどのHER3の発現を下方調節する少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーを哺乳動物に投与することにより、哺乳動物における(例えば、哺乳動物中の癌細胞における)HER3の発現を同時に阻害することを含む、前記方法を提供する。少なくとも1種のPTKIは、例えば、本明細書に記載のいずれかであってよい。癌は、例えば、乳癌などの、PTKIに対して少なくとも最初は応答する癌であってよく、または本明細書に記載の癌のいずれかであってよい。
【0015】
いくつかの実施形態においては、哺乳動物癌細胞の増殖は、同じ型の治療されていない(未処理)細胞の増殖と比較した場合、少なくとも50%阻害される。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態は、HER3の発現を下方調節するアンチセンスオリゴマーを投与しながら、同時に、またはそれと共に、HER2もしくはHER2経路の少なくとも1種の阻害剤を用いて哺乳動物を治療することにより、哺乳動物における癌を治療する方法を提供する。前記オリゴマーおよびHER2の阻害剤を同時投与してもよいし、またはしなくてもよい;重要なことは、オリゴマーとHER2もしくはHER2経路の阻害剤が同時に哺乳動物患者において治療上有効量で共に活性であり、および/またはそれぞれの阻害効果が一時的に重複することである。癌は、HER2結合抗体もしくはその結合フラグメント、例えば、トラスツズマブもしくはペルツズマブなどのHER2阻害剤、またはラパチニブなどのHER2経路阻害剤を用いる治療に耐性を持つようになったか、もしくはそれに対する応答性が低いものであってよく、またはそれらはHER2阻害剤に対する耐性を一度も生じたことがない癌であってよい。癌は、例えば、乳癌などの、HER2もしくはHER2経路の阻害に対して少なくとも最初は応答する癌であってよく、または本明細書に記載の癌のいずれかであってよい。癌がHER2阻害剤またはHER2経路阻害剤を用いる治療に対して実質的に耐性でない場合、一実施形態は、本明細書に記載の任意の様式でHER3の発現を低下させることにより、HER2阻害剤またはHER2経路阻害剤に対する耐性(またはさらなる耐性)を少なくとも部分的に防止することを提供する。
【0017】
関連する実施形態は、哺乳動物、例えば、ヒト患者における癌の治療における、HER2の少なくとも1種の阻害剤と同時に、もしくはそれと一緒に用いるための医薬の調製のための本明細書に記載のHER3の発現を下方調節する(低下させる)少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーの使用を提供する。別の実施形態は、ヒトなどの哺乳動物、例えば、HER2阻害剤もしくはHER2経路の阻害剤を用いる治療に対して耐性を持つようになったか、またはそれに対する応答性が低い乳癌を有するヒトにおける、限定されるものではないが、トラスツズマブもしくはペルツズマブなどのHER2もしくはHER2経路の阻害剤、またはラパチニブなどのHER2経路阻害剤を用いる治療に対して耐性を持つようになったか、またはそれに対する応答性が低い癌の治療のための医薬の調製における、HER3の発現を低下させる少なくとも1種のオリゴマーの使用を提供する。本発明のさらなる実施形態は、HER2もしくはHER2経路の阻害剤を用いて、ヒト患者などの哺乳動物における癌を治療するための改良された方法であって、この改良が、例えば、本明細書に記載のものなどのHER3の発現を下方調節する少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーを哺乳動物に投与することにより、哺乳動物における(例えば、哺乳動物中の癌細胞における)HER3の発現を同時に阻害することを含む、前記方法を提供する。HER2またはHER2経路の阻害剤は、例えば、本明細書に記載のいずれかであってよい。癌は、例えば、乳癌などの、HER2もしくはHER経路の阻害に対して少なくとも最初は応答する癌であってよく、または本明細書に記載の癌のいずれかであってよい。
【0018】
上記の実施形態のいずれかおよびその変形について、HER3の発現を低下させる1種以上のアンチセンスオリゴマーは、例えば、DNAモノマーの中心部分に結合した、それぞれの末端に1、2、3または4個の連続するLNAモノマーを有する、5'および3'末端のそれぞれに末端LNAモノマーを有するギャップマーであってよい。少なくともいくつか、例えば、全てのモノマー間結合がホスホロチオエート結合であってよい。
【0019】
本発明のさらなる特徴、利点、および実施形態を、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲の考慮から説明することができるか、またはそれらから明らかである。さらに、前記の本発明の概要と以下の詳細な説明は共に例示的なものであり、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定することなく、さらなる説明を提供することを意図されることが理解されるべきである。
【0020】
4. 図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1−1】それぞれ配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139および140の配列を有するオリゴマーにより標的化されるHER3標的配列を、太字および下線付きで示し、HER3転写物中のその位置を示す(GenBankアクセッション番号NM_001982 - 配列番号197)。
【図1−2】図1−1の続きである。
【図2】配列番号169〜179のトランスフェクションの24時間後の15PC3中でのHER3 mRNA発現を示す。
【図3】配列番号169〜179のトランスフェクションの24時間後の15PC3中でのEGFR mRNA発現を示す。
【図4】配列番号169〜179のトランスフェクションの24時間後の15PC3中でのHER-2 mRNA発現を示す。
【図5】配列番号180〜194のトランスフェクションの24時間後の15PC3中でのHER3 mRNA発現を示す。
【図6】5および25 nM濃度のオリゴヌクレオチドでトランスフェクトされたHUH7細胞中で様々な時点で活性化キャスパーゼ3/7として測定されたアポトーシス誘導を示すデータである。配列番号235を有するスクランブル対照オリゴヌクレオチドでモック処理された細胞と比較した結果をプロットする。
【図7】5および25 nM濃度のオリゴヌクレオチドでトランスフェクトされたHUH7細胞中で様々な時点でMTSアッセイを用いてOD490として測定された生細胞を示すデータである。配列番号235はスクランブル対照オリゴヌクレオチドである。
【図8A】25および50 mg/kgのq3dx10で配列番号180で静脈内処理されたメスのヌードマウスに移植された15PC3異種移植腫瘍における腫瘍体積の変化率(%)を示すデータである。塩水で処理されたマウスを対照として用いた。
【図8B】25および50 mg/kgのq3dx10で配列番号180で静脈内処理されたメスのヌードマウスに移植された15PC3異種移植腫瘍におけるHER3 mRNA発現を示すデータである。結果をGAPDHに対して正規化し、塩水処理された対照の%として提示する。
【図9】配列番号180または配列番号234に示される配列を有する、1または5 mg/kgのオリゴヌクレオチドを用いて3日間連続で静脈内処理した後のマウス肝臓におけるHER3 mRNA発現を示すデータである。結果をGAPDHに対して正規化し、塩水処理された対照の%として提示する。
【図10】10μMの高い濃度のゲフィチニブに対して耐性であるHCC827ヒト肺腺癌細胞の生成を示すデータである。
【図11】リン酸化されたEGFRのレベルが、親HCC827ゲフィチニブ感受性細胞におけるよりもゲフィチニブ耐性HCC827細胞において非常に低いことを示すデータである。
【図12】非リン酸化EGFRおよびリン酸化EGFRのレベルが、未処理の(「-」)親細胞中での非リン酸化およびリン酸化EGFRのレベルと比較して、ゲフィチニブの存在下(「+」)または非存在下(「-」)で、HCC827ゲフィチニブ耐性クローンにおいて有意に低下することを示すデータである。対照的に、EGFRシグナリング経路にも関与する、ErbB3またはMETのレベルは、親細胞と比較して耐性クローンにおいて有意に低下していない。
【図13】10日間にわたる配列番号180を有する1μMのオリゴヌクレオチドを用いる処理が、ゲフィチニブに対して感受性であるHCC827細胞の増殖に対するよりも、ゲフィチニブ耐性HCC827細胞の増殖の阻害に対してより大きい効果(未処理の対照と比較して80%を超える増殖の低下)を有することを示すデータである。
【図14】トラスツズマブではなく、HER3発現を低下させるLNAアンチセンスオリゴマーが、3種のヒト癌細胞系においてラパチニブによるHER3およびP-HER3発現のフィードバック上方調節を阻害することができることを示すデータである。
【図15】3種のヒト癌細胞系におけるアポトーシスの相乗的促進が、ラパチニブとトラスツズマブとの組合せよりも、ラパチニブとHER3発現を低下させるLNAアンチセンスオリゴマーとの組合せについてより高いことを示すデータである。
【図16】アンチセンスHER3阻害剤である配列番号180が、ヒト非小細胞肺癌のin vivoマウス異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害することを示すデータである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
5. 発明の詳細な説明
特定の実施形態において、本発明は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である細胞中でHER3(および/またはEGFRおよび/またはHER2)の発現を調節する方法を提供する。いくつかの実施形態においては、耐性細胞は癌細胞である。様々な実施形態において、コードする核酸に細胞内条件下で特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(オリゴマー)を投与することにより、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる処理に対して耐性である癌などの、HER3過剰発現と関連する疾患を治療または防止する方法を提供する。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の方法における使用のためのオリゴヌクレオチドは、HER3の発現を下方調節する。他の実施形態においては、本明細書に記載の方法における使用のためのオリゴヌクレオチドは、HER3、HER2および/またはEGFRの発現を下方調節する。
【0023】
本明細書で用いられる用語「HER3」は、用語「ErbB3」と互換的に用いられる。
【0024】
5.1. 方法
様々な実施形態において、本発明は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤および/またはHER2もしくはHER3経路阻害剤を用いる治療に対して耐性である細胞におけるHER3の発現および/または活性を阻害する方法であって、該細胞と、有効量のオリゴマー化合物(もしくはそのコンジュゲート)とを接触させて、細胞中のHER3(および必要に応じて、HER2およびEGFRのうちの1種以上)の発現および/または活性の阻害(例えば、下方調節)を行うことを含む前記方法を包含する。特定の実施形態においては、HER3(および必要に応じて、HER2およびEGFRのうちの1種以上) mRNA発現を阻害する。他の実施形態においては、HER3(および必要に応じて、HER2およびEGFRのうちの1種以上)タンパク質発現を阻害する。様々な実施形態において、前記細胞はヒト細胞などの哺乳動物細胞である。様々な実施形態において、前記細胞は癌細胞である。
【0025】
特定の実施形態においては、前記接触をin vitroで行う。他の実施形態においては、本明細書に記載の組成物を哺乳動物に投与することにより、前記接触をin vivoで行う。様々な実施形態においては、本発明は、細胞中でのHER3タンパク質および/もしくはmRNAの発現、ならびにHER2タンパク質および/もしくはmRNAの発現を阻害する(例えば、下方調節による)方法を提供する。ヒトHER2 mRNAの配列を、配列番号199に示す。さらなる実施形態において、本発明は、細胞中でのHER3タンパク質および/もしくはmRNAの発現、ならびにEGFRタンパク質および/もしくはmRNAの発現を阻害する(例えば、下方調節による)方法を提供する。ヒトEGFR mRNAの配列を、配列番号198に示す。さらなる実施形態においては、本発明は、細胞中でのHER3、HER2およびEGFR mRNAおよび/またはタンパク質の発現を阻害する(例えば、下方調節による)方法を提供する。
【0026】
本明細書で互換的に用いられる用語「タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤」、「PTK阻害剤」および「チロシンキナーゼ阻害剤」とは、1種以上のチロシンキナーゼドメインに結合し、その活性を阻害する分子を指す。タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤は、本明細書の以下に記載のようにHER3を標的化するオリゴマーではない。いくつかの実施形態においては、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤は、モノクローナル抗体である。他の実施形態においては、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤は、300〜700 Daなどの1000 Da未満の分子量を有する小分子である。
【0027】
特定の実施形態においては、PTK阻害剤は、1個以上のEGFRファミリーメンバーのチロシンキナーゼを標的とする。様々な実施形態において、PTK阻害剤は、1個以上のEGFRファミリーメンバーと相互作用するか、またはそれにより調節される1種以上のタンパク質、例えば、1個以上のEGFRファミリーメンバーで始まる1種以上のシグナリングカスケードに関与するタンパク質のチロシンキナーゼを標的とする。いくつかの実施形態においては、チロシンキナーゼは、受容体チロシンキナーゼである、すなわち、細胞外リガンド結合ドメインを有し、1個以上のリガンドの結合により活性化される、より大きいタンパク質の細胞内ドメインである。特定の実施形態においては、タンパク質チロシンキナーゼは、非受容体チロシンキナーゼである。チロシンキナーゼ酵素は、1種以上のシグナリング経路中の他のタンパク質の活性を、それらをリン酸化することにより調節する。
【0028】
本明細書で用いられる、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である細胞とは、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤と接触させた場合、成長または増殖が実質的に低下しない細胞を指す。本明細書で用いられる、細胞の成長または増殖は、PTK阻害剤と接触させた場合、成長または増殖が、PTK阻害剤と接触させなかった、そのような耐性を欠く同じ型の細胞の成長または増殖と比較して、30%未満、例えば、20%未満、例えば、10%未満低下する場合、PTK阻害剤を用いる治療に対して耐性である。いくつかの実施形態においては、耐性細胞は、PTK阻害剤を用いる治療に対して本質的に耐性である細胞である。いくつかの実施形態においては、耐性細胞は、単剤療法として、または1種以上のさらなる薬剤、例えば、化学療法剤もしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドとの組合せ療法の一部として、以前の曝露から、PTK阻害剤に対する耐性を獲得した細胞である。同様に、本明細書で用いられる、HER2阻害剤またはHER2経路阻害剤を用いる治療に対して耐性である細胞は、一般的には、その成長または増殖が、そのような阻害剤と接触させた場合に実質的に低下しない細胞を指す。本明細書で用いられるように、細胞の成長または増殖は、阻害剤と接触させた場合、成長または増殖が、阻害剤と接触させなかった、そのような耐性を欠く同じ型の細胞の成長または増殖と比較して、30%未満、例えば、20%未満、例えば、10%未満低下する場合、HER2阻害剤またはHER2経路阻害剤を用いる治療に対して耐性である。いくつかの実施形態においては、耐性細胞は、HER2阻害剤またはHER2経路阻害剤を用いる治療に対して本質的に耐性である細胞である。いくつかの実施形態においては、耐性細胞は、以前の曝露から、HER2阻害剤またはHER2経路阻害剤に対する耐性を獲得した細胞である。
【0029】
いくつかの実施形態においては、前記細胞は、ゲフィチニブ(ZD-1839、イレッサ(登録商標))、イマチニブ(グリベック(登録商標))、エルロチニブ(OSI-1774、タルセバ(商標))、カネルチニブ(CI-1033)、バンデタニブ(ZD6474、ザクチマ(登録商標))、チロホスチン AG-825 (CAS 149092-50-2)、ラパチニブ(GW-572016)、ソラフェニブ(BAY43-9006)、AG-494 (CAS 133550-35-3)、RG-13022 (CAS 149286-90-8)、RG-14620 (CAS 136831-49-7)、BIBW 2992 (Tovok)、チロホスチン9 (CAS 136831-49-7)、チロホスチン23 (CAS 118409-57-7)、チロホスチン25 (CAS 118409-58-8)、チロホスチン46 (CAS 122520-85-8)、チロホスチン47 (CAS 122520-86-9)、チロホスチン53 (CAS 122520-90-5)、ブテイン(1-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2-プロペン-1-オン 2',3,4,4'-テトラヒドロキシカルコン; CAS 487-52-5)、クルクミン((E,E)-1,7-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン; CAS 458-37-7)、N4-(1-ベンジル-1H-インダゾール-5-イル)-N6,N6-ジメチル-ピリド-[3,4-d]-ピリミジン-4,6-ジアミン (202272-68-2)、AG-1478、AG-879、シクロプロパンカルボン酸-(3-(6-(3-トリフルオロメチル-フェニルアミノ)-ピリミジン-4-イルアミノ)-フェニル)-アミド(CAS 879127-07-8)、N8-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N2-(1-メチルピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン、2HCl (CAS 196612-93-8)、4-(4-ベンジルオキシアニリノ)-6,7-ジメトキシキナゾリン(CAS 179248-61-4)、N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)ピリド[3,4-d]ピリミジン-6-イル)2-ブチナミド(CAS 881001-19-0)、EKB-569、HKI-272、およびHKI-357から選択されるPTK阻害剤に曝露された後に耐性を獲得した。
【0030】
様々な実施形態において、前記細胞は、ゲフィチニブ、イマチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブおよびソラフェニブから選択されるPTK阻害剤に曝露された後に耐性を獲得した。1つの変形においては、前記細胞はゲフィチニブに曝露された後に耐性を獲得した。
【0031】
特定の実施形態においては、前記細胞は、HER2結合およびHER2阻害抗体またはHER2結合およびHER2阻害抗体フラグメントなどのHER2阻害剤に曝露された後に耐性を獲得した。1つの変形においては、前記細胞はトラスツズマブおよび/またはペルツズマブに曝露された後に耐性を獲得した。
【0032】
特定の実施形態においては、本発明は、疾患がPTK阻害剤および/またはHER2もしくはHER2経路阻害剤を用いる治療に対して耐性である患者における疾患を治療する方法であって、有効量の少なくとも1種のオリゴマー、またはそのコンジュゲート、および製薬上許容し得る賦形剤を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む前記方法に関する。本明細書で用いられる用語「治療すること」および「治療」とは、存在する疾患(例えば、本明細書の以下で言及される疾患もしくは障害)の治療、または疾患の防止、すなわち、予防の両方を指す。
【0033】
特定の実施形態においては、本発明の方法は、PTK阻害剤ならびに/またはHER2および/もしくはHER2経路阻害剤に対して耐性である細胞の増殖を阻害するのに有用である。様々な実施形態において、抗増殖効果は、治療されていない細胞サンプルと比較して、細胞増殖の少なくとも10%の低下、少なくとも20%の低下、少なくとも30%の低下、少なくとも40%の低下、少なくとも50%の低下、少なくとも60%の低下、少なくとも70%の低下、少なくとも80%の低下、または少なくとも90%の低下である。他の実施形態においては、抗増殖効果は、小分子タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤で治療された細胞サンプルと比較して、細胞増殖の少なくとも10%の低下、少なくとも20%の低下、少なくとも30%の低下、少なくとも40%の低下、少なくとも50%の低下、少なくとも60%の低下、少なくとも70%の低下、少なくとも80%の低下、または少なくとも90%の低下である。様々な実施形態において、前記細胞は癌細胞である。いくつかの実施形態においては、癌細胞を、乳癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、および上皮癌細胞から選択する。
【0034】
従って、本発明の方法は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療および/またはHER2もしくはHER2経路阻害剤を用いる治療に対して耐性である、癌などの過増殖性疾患を治療するのに有用である。いくつかの実施形態においては、治療しようとする耐性癌を、リンパ腫および白血病(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫)、結腸癌、直腸癌、上皮癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、頸部癌、精巣癌、肺癌、膀胱癌、黒色腫、頭部および頸部癌、脳腫瘍、未知の原発部位の癌、新生物、末梢神経系の癌、中枢神経系の癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、小細胞肺癌、上皮癌、グリオーマ、アストロサイトーマ、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫、重鎖疾患、転移、または未制御の、もしくは異常な細胞増殖を特徴とする任意の疾患もしくは障害からなる群より選択する。
【0035】
特定の実施形態においては、耐性癌を、肺癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、上皮癌、および胃癌からなる群より選択する。
【0036】
特定の他の実施形態においては、肺癌は非小細胞肺癌である。本発明の1つのそのような実施形態は、非小細胞肺癌の治療を必要とするヒトなどの哺乳動物に、HER3の発現を低下させる治療上有効量の少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーまたはそのコンジュゲートおよび必要に応じて、HER2もしくはHER2経路の1種以上の阻害剤を投与することを含む、前記癌の治療のための方法を提供する。1つの変形においては、少なくとも1種のオリゴマーまたはそのコンジュゲートは、配列番号180またはそのコンジュゲートを含むか、またはそれである。
【0037】
特定の実施形態においては、本発明はまた、本明細書に記載のPTK阻害剤耐性、HER阻害剤耐性もしくはHER2経路阻害剤耐性障害の治療のため、または本明細書に記載のそのような障害の治療方法のための医薬の製造における、本明細書に記載の化合物またはコンジュゲートの使用を提供する。
【0038】
様々な実施形態においては、本発明に従うPTK阻害剤耐性、HER2阻害剤耐性またはHER2経路阻害剤耐性障害の治療を、放射線療法、化学療法または免疫療法などの1種以上の他の抗癌治療と組合わせることができる。
【0039】
特定の実施形態においては、PTK阻害剤耐性疾患は、HER3遺伝子(および/もしくはHER2遺伝子および/もしくはEGFR遺伝子)またはタンパク質産物がHER3と関連するか、もしくは相互作用する遺伝子における突然変異と関連する。いくつかの実施形態においては、突然変異遺伝子はチロシンキナーゼドメイン中に突然変異を有するタンパク質をコードする。様々な実施形態において、チロシンキナーゼドメイン中の突然変異は、小分子であるPTK阻害剤の結合部位および/またはATP結合部位にある。従って、様々な実施形態においては、標的mRNAは突然変異形態のHER3(および/もしくはHER2および/もしくはEGFR)配列である;例えば、それは癌と関連するSNPなどの1個以上の単一点突然変異を含む。
【0040】
特定の実施形態においては、PTK阻害剤耐性疾患は異常なレベルの突然変異形態のHER3と関連する。特定の実施形態においては、PTK阻害剤耐性疾患は、異常なレベルの野生型形態のHER3と関連する。本発明の一態様は、異常なレベルのHER3と関連する症状に罹患するか、または罹りやすい患者を治療する方法であって、HER3を標的とするオリゴマーまたはそのコンジュゲートの治療上有効量を前記患者に投与することを含む前記方法に関する。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは本明細書の以下に記載の1個以上のLNA単位を含む。
【0041】
様々な実施形態において、本発明は、異常なレベルの突然変異形態のHER2、または異常なレベルの野生型形態のHER2と関連する症状に罹患するか、または罹りやすい患者を治療する方法であって、前記症状がタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性であり、HER3(ならびに必要に応じて、HER2およびEGFRのうちの1種以上)を標的とするオリゴマーまたはそのコンジュゲートの治療上有効量を哺乳動物に投与することを含む前記方法に関する。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは本明細書の以下に記載の1個以上のLNA単位を含む。
【0042】
さらに他の実施形態においては、本発明は、異常なレベルの突然変異EGFR、または異常なレベルの野生型EGFRと関連する症状に罹患するか、または罹りやすい患者を治療する方法であって、前記症状がタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性であり、HER3(ならびに必要に応じて、HER2およびEGFRのうちの1種以上)を標的とするオリゴマーまたはそのコンジュゲートの治療上有効量を前記患者に投与することを含む前記方法に関する。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、本明細書の以下に記載の1個以上のLNA単位を含む。
【0043】
様々な実施形態においては、本明細書に記載の本発明は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である疾患を予防または治療する方法であって、治療上有効量のHER3調節性オリゴマー(ならびに必要に応じて、HER2およびEGFRのうちの1種以上)またはそのコンジュゲートを、そのような療法を必要とするヒトに投与することを含む前記方法を包含する。
【0044】
様々な実施形態において、前記オリゴマー、またはそのコンジュゲートは、例えば、標的核酸への水素結合を介して、ヒトにおいて所望の治療効果を誘導する。前記オリゴマーは、標的のmRNAへの水素結合(例えば、ハイブリダイゼーション)を介して標的の発現の低下(例えば、阻害)を引き起こし、それによって遺伝子発現の減少をもたらす。
【0045】
本発明の化合物は、ワトソン・クリック塩基対形成により、HER3 mRNAなどの標的核酸にハイブリダイズすることができるのが非常に好ましい。
【0046】
5.2. オリゴマー
第1の態様においては、例えば、配列番号197に示されるHER3核酸などの哺乳動物HER3をコードする核酸分子、および哺乳動物HER3をコードするそのような核酸分子の天然の対立遺伝子変異体の機能を調節するのに有用であるオリゴマー化合物(本明細書ではオリゴマーと呼ぶ)を提供する。このオリゴマーは、共有結合したモノマーから構成される。
【0047】
用語「モノマー」は、核酸中に天然に存在し、改変された糖もしくは改変された核酸塩基を含まないヌクレオシドおよびデオキシヌクレオシドの両方(集合的に、「ヌクレオシド」と呼ぶ)、すなわち、リボース糖もしくはデオキシリボース糖が、天然の、非改変核酸塩基部分(すなわち、プリンおよびピリミジン複素環であるアデニン、グアニン、シトシン、チミンもしくはウラシル)に共有結合した化合物ならびに糖部分がリボースもしくはデオキシリボース糖以外のものである(二環式糖もしくは2'改変された糖、例えば、2'置換された糖)か、もしくは塩基部分が改変された(例えば、5-メチルシトシン)、核酸中に天然に存在するか、もしくは核酸中に天然に存在しないヌクレオシドである「ヌクレオシド類似体」、またはその両方を含む。
【0048】
「RNAモノマー」は、リボース糖と非改変核酸塩基を含むヌクレオシドである。
【0049】
「DNAモノマー」は、デオキシリボース糖と非改変核酸塩基を含むヌクレオシドである。
【0050】
「ロックド核酸モノマー」、「ロックドモノマー」または「LNAモノマー」は、本明細書の以下でさらに説明するように、二環式糖を有するヌクレオシド類似体である。
【0051】
用語「対応するヌクレオシド類似体」および「対応するヌクレオシド」は、ヌクレオシド類似体中の塩基部分とヌクレオシド中の塩基部分とが同一であることを示す。例えば、「ヌクレオシド」がアデニンに連結された2-デオキシリボース糖を含む場合、「対応するヌクレオシド類似体」は、例えば、アデニン塩基部分に連結された改変された糖を含む。
【0052】
用語「オリゴマー」、「オリゴマー化合物」および「オリゴヌクレオチド」は、本明細書に記載の方法の文脈においては互換的に用いられ、例えば、リン酸基(ヌクレオシド間でホスホジエステル結合を形成する)またはホスホロチオエート基(ヌクレオシド間でホスホロチオエート結合を形成する)による、2個以上の連続するモノマーの共有結合により形成される分子を指す。オリゴマーは、10〜50個のモノマー、例えば、10〜30個のモノマーからなるか、またはそれを含む。
【0053】
いくつかの実施形態においては、オリゴマーは、本明細書に記載のように、ヌクレオシド、またはヌクレオシド類似体、またはその混合物を含む。「LNAオリゴマー」または「LNAオリゴヌクレオチド」とは、1個以上のLNAモノマーを含有するオリゴヌクレオチドを指す。
【0054】
オリゴマー内に含まれていてもよいヌクレオシド類似体は、対応するヌクレオシドと同様に機能するか、または特異的な改善された機能を有してもよい。モノマーのうちのいくつか、または全部がヌクレオシド類似体であるオリゴマーは、細胞膜を貫通する能力、細胞外および/もしくは細胞内ヌクレアーゼに対する良好な耐性ならびに核酸標的に対する高い親和性および特異性などの、そのようなオリゴマーのいくつかの望ましい特性のため、天然の形態よりも好ましいことが多い。LNAモノマーは、例えば、上記の特性のうちのいくつかを付与するのに特に好ましい。
【0055】
様々な実施形態においては、オリゴマー内に存在する1個以上のヌクレオシド類似体は、対応する天然ヌクレオシドに対して、機能において「サイレント」または「等価」である、すなわち、オリゴマーが標的遺伝子発現を阻害するように機能する方法に対して機能的効果を有さない。それにも拘わらず、そのような「等価な」ヌクレオシド類似体は、例えば、それらをより容易に、もしくはより安価に製造できるか、またはそれらが保存もしくは製造条件下でより安定であるか、またはタグもしくは標識を含んでもよい場合には有用である。しかしながら、典型的には、類似体は、例えば、標的核酸の標的領域に対する結合親和性の増加および/または細胞内ヌクレアーゼに対する耐性の増加および/または細胞中への輸送の容易性の増加をもたらすことにより、オリゴマーが発現を阻害するように機能する方法に対する機能的効果を有するであろう。
【0056】
かくして、様々な実施形態において、本発明の方法における使用のためのオリゴマーは、ヌクレオシドモノマーおよび少なくとも1個のヌクレオシド類似体モノマー、例えば、LNAモノマー、または他のヌクレオシド類似体モノマーを含む。
【0057】
用語「少なくとも1」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などの1以上の整数を含む。本発明の化合物の核酸またはタンパク質標的に関して言及する場合などの、様々な実施形態において、用語「少なくとも1」は、用語「少なくとも2」および「少なくとも3」および「少なくとも4」を含む。同様に、いくつかの実施形態においては、用語「少なくとも2」は、用語「少なくとも3」および「少なくとも4」を含む。
【0058】
いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、10〜50個の連続するモノマー、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個の連続するモノマーからなる。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記オリゴマーは、10〜25個のモノマー、好ましくは、10〜16個のモノマー、およびより好ましくは、12〜16個のモノマーからなる。
【0060】
様々な実施形態において、前記オリゴマーは、10〜25個の連続するモノマー、10〜24個の連続するモノマー、12〜25個または12〜24個または10〜22個の連続するモノマー、例えば、12〜18個の連続するモノマー、例えば、13〜17個または12〜16個の連続するモノマー、例えば、13、14、15、16個の連続するモノマーを含むか、またはそれからなる。
【0061】
様々な実施形態において、前記オリゴマーは、10〜22個の連続するモノマー、または10〜18個、例えば、12〜18個または13〜17個または12〜16個、例えば、13、14、15または16個の連続するモノマーを含むか、またはそれからなる。
【0062】
いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、10〜16個または12〜16個または12〜14個の連続するモノマーを含むか、またはそれからなる。他の実施形態においては、前記オリゴマーは、14〜18個または14〜16個の連続するモノマーを含むか、またはそれからなる。
【0063】
様々な実施形態において、前記オリゴマーは、10、11、12、13、または14個の連続するモノマーを含むか、またはそれからなる。
【0064】
様々な実施形態において、前記オリゴマーは、22個以下の連続するモノマー、例えば、20個以下の連続するモノマー、例えば、18個以下の連続するモノマー、例えば、15、16または17個の連続するモノマーからなる。特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、20個未満の連続するモノマーを含む。
【0065】
様々な実施形態においては、前記オリゴマーはRNAモノマーを含まない。
【0066】
本明細書に記載の方法における使用のためのオリゴマーは線状分子であるか、または線状になるように合成されたものであるのが好ましい。そのような実施形態においては、前記オリゴマーは、一本鎖分子であり、典型的には、オリゴマーが内部二本鎖を形成するように、同じオリゴマー内の別の領域と相補的である、例えば、少なくとも3、4または5個の連続するモノマーの短い領域を含まない。様々な実施形態においては、前記オリゴマーは実質的に二本鎖ではない、すなわち、siRNAではない。
【0067】
いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、本明細書に開示される配列番号(SEQ ID NO)(例えば、表1〜4を参照されたい)により同定される配列を有する、モノマーの連続伸長物からなる。他の実施形態においては、前記オリゴマーは、モノマーの連続伸長物からなる第1の領域と、少なくとも1個のさらなるモノマーからなる1個以上のさらなる領域とを含む。いくつかの実施形態においては、第1領域の配列は、本明細書に開示される配列番号により同定されるものである。
【0068】
5.3. ギャップマー設計
典型的には、本発明の方法における使用のためのオリゴマーは、ギャップマーである。
【0069】
「ギャップマー」は、例えば、本明細書では領域B(式中、領域Bはその5'および3'末端の両方で、それぞれ領域AおよびCと呼ばれる領域(領域AおよびCはそれぞれ、1〜6個のヌクレオシド類似体などの、親和性増強性ヌクレオシド類似体などのヌクレオシド類似体を含むか、またはそれからなる)にフランキングする)と呼ばれる、少なくとも6個または7個のDNAモノマーの領域などの、本明細書の以下でさらに説明されるようなRNAse(例えば、RNAseH)を動員することができるモノマーの連続伸長物を含むオリゴマーである。
【0070】
典型的には、ギャップマーは、5'から3'に向かって、領域A-B-C、または必要に応じて、A-B-C-DもしくはD-A-B-C(式中、領域Aは少なくとも1個のヌクレオシド類似体、例えば、少なくとも1個のLNAモノマー、例えば、1〜6個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマーからなるか、もしくはそれを含み;領域BはRNAse(mRNA標的などの、標的RNA分子の相補的標的領域との二本鎖中で形成される場合)を動員することができる少なくとも5個の連続するモノマー、例えば、DNAモノマーからなるか、もしくはそれを含み;領域Cは、少なくとも1個のヌクレオシド類似体、例えば、少なくとも1個のLNAモノマー、例えば、1〜6個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマーからなるか、もしくはそれを含み;領域Dは、存在する場合、1、2もしくは3個のモノマー、例えば、DNAモノマーからなるか、もしくはそれを含む)を含む。
【0071】
様々な実施形態においては、領域Aは1、2、3、4、5もしくは6個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマー、例えば、2〜5個のヌクレオシド類似体、例えば、2〜5個のLNAモノマー、例えば、3もしくは4個のヌクレオシド類似体、例えば、3もしくは4個のLNAモノマーからなる;および/または領域Cは1、2、3、4、5もしくは6個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマー、例えば、2〜5個ヌクレオシド類似体、例えば、3もしくは4個のヌクレオシド類似体、例えば、3もしくは4個のLNAモノマーからなる。
【0072】
特定の実施形態においては、領域Bは、RNAseを動員することができる5、6、7、8、9、10、11もしくは12個の連続するモノマー、またはRNAseを動員することができる6〜10個、もしくは7〜9個、例えば、8個の連続するモノマーからなるか、またはそれを含む。特定の実施形態においては、領域Bは、少なくとも1個のDNAモノマー、例えば、1〜12個のDNAモノマー、好ましくは、4〜12個のDNAモノマー、より好ましくは、6〜10個のDNAモノマー、例えば、7〜10個のDNAモノマー、最も好ましくは、8、9もしくは10個のDNAモノマーからなるか、またはそれを含む。
【0073】
特定の実施形態においては、領域Aは3もしくは4個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマーからなり、領域Bは7、8、9もしくは10個のDNAモノマーからなり、および領域Cは3もしくは4個のヌクレオシド類似体、例えば、LNAモノマーからなる。そのような設計は、(A-B-C)3-10-3、3-10-4、4-10-3、3-9-3、3-9-4、4-9-3、3-8-3、3-8-4、4-8-3、3-7-3、3-7-4、4-7-3を含み、1個または2個のモノマー、例えば、DNAモノマーを有してもよい領域Dをさらに含んでもよい。
【0074】
さらなるギャップマー設計は、参照により本明細書に組入れられるものとするWO 2004/046160に開示されている。
【0075】
参照により本明細書に組入れられるものとする米国特許仮出願第60/977,409号は、「ショートマー」ギャップマーオリゴマーに言及している。いくつかの実施形態においては、本明細書で提供されるオリゴマーは、そのようなショートマーギャップマーであってもよい。
【0076】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、10、11、12、13または14個の連続するモノマー(式中、オリゴマーの領域は、5'から3'に向かって、パターンA-B-C、または必要に応じて、A-B-C-DもしくはD-A-B-C(式中、領域Aは1、2もしくは3個のヌクレオシド類似体モノマー、例えば、LNAモノマーからなり、領域Bは相補的RNA分子(mRNA標的など)との二本鎖中で形成される場合、RNAseを動員することができる7、8もしくは9個の連続するモノマーからなり、領域Cは1、2もしくは3個のヌクレオシド類似体モノマー、例えば、LNAモノマーからなる)を有する)からなる。存在する場合、領域Dは1個のDNAモノマーからなる。
【0077】
特定の実施形態においては、領域Aは1個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Aは2個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Aは3個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Cは1個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Cは2個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Cは3個のLNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Bは7個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Bは8個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Bは9個のヌクレオシドモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Bは1〜9個のDNAモノマー、例えば、2、3、4、5、6、7または8個のDNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域BはDNAモノマーからなる。特定の実施形態においては、領域Bはα-L配置にある少なくとも1個のLNAモノマー、例えば、α-L配置にある2、3、4、5、6、7、8または9個のLNAモノマーを含む。特定の実施形態においては、領域Bは少なくとも1個のα-L-オキシLNAモノマーを含む。特定の実施形態においては、α-L-配置にある領域B中の全てのLNAモノマーはα-L-オキシLNAモノマーである。特定の実施形態においては、オリゴマーのA-B-C領域中に存在するモノマーの数を、(ヌクレオシド類似体モノマー-領域B-ヌクレオシド類似体モノマー):1-8-1、1-8-2、2-8-1、2-8-2、3-8-3、2-8-3、3-8-2、4-8-1、4-8-2、1-8-4、2-8-4、または;1-9-1、1-9-2、2-9-1、2-9-2、2-9-3、3-9-2、1-9-3、3-9-1、4-9-1、1-9-4、または; 1-10-1、1-10-2、2-10-1、2-10-2、1-10-3、および3-10-1からなる群より選択する。特定の実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーのA-B-C領域中の存在するモノマーの数を、2-7-1、1-7-2、2-7-2、3-7-3、2-7-3、3-7-2、3-7-4、および4-7-3からなる群より選択する。特定の実施形態においては、領域AおよびCはそれぞれ、2個のLNAモノマーからなり、領域Bは8または9個のヌクレオシドモノマー、好ましくは、DNAモノマーからなる。
【0078】
様々な実施形態においては、他のギャップマー設計としては、領域Aおよび/もしくはCが3、4、5もしくは6個のヌクレオシド類似体、例えば、2'-O-メトキシエチル-リボース糖(2'MOE)を含むモノマーまたは2'-フルオロ-デオキシリボース糖を含むモノマーからなり、領域Bが8、9、10、11または12個のヌクレオシド、例えば、DNAモノマーからなり、領域A-B-Cが5-10-5または4-12-4個のモノマーを有するものが挙げられる。さらなるギャップマー設計は、参照により本明細書に組入れられるものとするWO 2007/146511A2に開示されている。
【0079】
5.4. 連結基
本明細書に記載のオリゴマーのモノマーを、連結基を介して一緒に結合させる。好適には、各モノマーを、連結基を介して3'側の隣接するモノマーに連結する。
【0080】
用語「連結基」または「ヌクレオシド間結合」は、2個の連続するモノマーを一緒に共有結合させることができる基を意味する。特定の好ましい例としては、リン酸基(隣接するヌクレオシドモノマー間でホスホジエステル結合を形成する)およびホスホロチオエート基(隣接するヌクレオシドモノマー間でホスホロチオエート結合を形成する)が挙げられる。
【0081】
好適な連結基としては、WO 2007/031091に列挙されたもの、例えば、WO 2007/031091(参照により本明細書に組入れられるものとする)の34頁の第1段落に列挙された連結基が挙げられる。
【0082】
様々な実施形態においては、連結基を、その通常のホスホジエステルから、ヌクレアーゼの攻撃に対する耐性がより高いもの、例えば、ホスホロチオエートまたはボラノホスフェート(これらの2つはRNase Hにより切断可能であり、標的遺伝子の発現のRNaseを介するアンチセンス阻害を可能にする)に改変するのが好ましい。
【0083】
いくつかの実施形態においては、本明細書に提供される連結基を含有する好適な硫黄(S)が好ましい。様々な実施形態においては、ホスホロチオエート連結基が、特に、ギャップマーのギャップ領域(B)にとって好ましい。特定の実施形態においては、ホスホロチオエート結合を用いて、フランキング領域(AおよびC)中のモノマーを一緒に連結する。様々な実施形態においては、ホスホロチオエート結合を、領域AまたはCと領域Dを連結するため、および領域D内のモノマーを一緒に連結するために用いる。
【0084】
様々な実施形態においては、特に、例えば、ヌクレオシド類似体の使用がエンドヌクレアーゼ分解から領域AおよびC内の連結基を保護する場合、例えば、領域AおよびCがLNAモノマーを含む場合、領域A、BおよびCは、ホスホジエステル結合などの、ホスホロチオエート以外の連結基を含む。
【0085】
様々な実施形態においては、オリゴマーの隣接するモノマーを、ホスホロチオエート基により互いに連結する。
【0086】
ホスホロチオエート主鎖、特に、ヌクレオシド類似体モノマーの間の、またはそれに隣接するホスホロチオエート連結基を有するオリゴマーへの1個または2個の連結などのホスホジエステル結合の含有(典型的には、領域Aおよび/またはC中)は、オリゴマーの生体利用率および/または生体分布を改変し得ることがわかる(参照により本明細書に組入れられるものとするWO 2008/053314を参照されたい)。
【0087】
好適な場合、および具体的に示されない場合、上記の実施形態などの、いくつかの実施形態においては、残りの連結基は全て、ホスホジエステルもしくはホスホロチオエートのいずれか、またはその混合物である。
【0088】
いくつかの実施形態においては、全てのヌクレオシド間連結基はホスホロチオエートである。
【0089】
本明細書で提供されるものなどの、特定のギャップマーオリゴヌクレオチド配列に言及する場合、様々な実施形態において、連結がホスホロチオエート結合である場合、本明細書に開示されるものなどの代替的結合を用いることができる、例えば、特に、LNAモノマーなどのヌクレオシド類似体間の連結のために、リン酸(ホスホジエステル)結合を用いることができることが理解されるであろう。
【0090】
5.5. 標的核酸
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、本明細書では互換的に用いられ、上記のように、2個以上のモノマーの共有結合により形成される分子と定義される。2個以上のモノマーを含む、「核酸」は任意の長さのものであってよく、この用語は、本明細書に記載の長さを有する、「オリゴマー」に含まれる。用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、一本鎖、二本鎖、部分的に二本鎖、および環状の分子を含む。
【0091】
様々な実施形態において、本明細書で用いられる用語「標的核酸」とは、哺乳動物HER3ポリペプチド(例えば、配列番号197の配列を有するヒトHER3 mRNA、またはGenBankアクセッション番号NM_001005915、NM_001982および選択的スプライス形態NP_001973.2およびNP_001005915.1 (ヒト); NM_017218 (ラット); NM_010153 (マウス); NM_001103105 (ウシ)を有する哺乳動物mRNA; またはGenBankアクセッション番号XM_001491896 (ウマ)、XM_001169469およびXM_509131 (チンパンジー)を有する推定mRNA配列など)をコードする核酸(DNAまたはRNAなど)を指す。
【0092】
様々な実施形態において、「標的核酸」はまた、哺乳動物HER2ポリペプチド(例えば、GenBankアクセッション番号NM_001005862およびNM_004448 (ヒト); NM_017003およびNM_017218 (ラット); NM_001003817 (マウス); NM_001003217 (イヌ); ならびにNM_001048163 (ネコ)を有する哺乳動物mRNAなど)をコードする核酸を含む。
【0093】
様々な実施形態において、「標的核酸」はまた、哺乳動物EGFRポリペプチド(例えば、GenBankアクセッション番号NM_201284、NM_201283、NM_201282およびNM_005228 (ヒト); NM_007912およびNM_207655 (マウス); NM_031507 (ラット); ならびにNM_214007 (ブタ)を有する哺乳動物mRNAなど)をコードする核酸を含む。
【0094】
上記のGenBankアクセッション番号は、cDNA配列を指し、mRNA配列自体を指すものではない。成熟mRNAの配列を、チミン塩基(T)をウラシル塩基(U)により置換して、対応するcDNA配列から直接誘導することができることがわかる。
【0095】
様々な実施形態においては、「標的核酸」はまた、HER3(もしくはHER2もしくはEGFR)をコードする核酸またはその天然の変異体、およびそれから誘導されるRNA核酸、好ましくは、mRNA、例えば、プレ-mRNAを含むが、好ましくは、成熟mRNAを含む。様々な実施形態において、例えば、研究または診断において用いる場合、「標的核酸」は上記のDNAまたはRNA標的核酸から誘導されたcDNAまたは合成オリゴヌクレオチドである。本明細書に記載のオリゴマーは、典型的には、標的核酸にハイブリダイズすることができる。
【0096】
用語「その天然の変異体」とは、マウス、サル、および好ましくはヒトなどの哺乳動物などの規定の分類群内に天然に存在するHER3(もしくはHER2もしくはEGFR)ポリペプチドまたは核酸配列の変異体を指す。典型的には、ポリヌクレオチドの「天然の変異体」に言及する場合、この用語はまた、染色体転座または複製により染色体Chr 12:54.76-54.78 Mbに見出されるHER3(もしくはHER2もしくはEGFR)をコードするゲノムDNAの任意の対立遺伝子変異体、およびそれから誘導されるmRNAなどのRNAを包含してもよい。特異的ポリペプチド配列を参照する場合、例えば、この用語はまた、天然形態のタンパク質も含み、従って、例えば、シグナルペプチド切断、タンパク質溶解的切断、糖鎖付加などの翻訳同時改変または翻訳後改変により加工されてもよい。
【0097】
特定の実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーは、オリゴマーのモノマーと、標的核酸のモノマーとの間で、ワトソン・クリック塩基対形成、フーグスティーン水素結合、または逆フーグスティーン水素結合のいずれかにより標的核酸の領域(「標的領域」)に結合する。そのような結合は「ハイブリダイゼーション」とも呼ばれる。別途指摘しない限り、結合は相補的塩基のワトソン・クリック対形成(すなわち、アデニンとチミン(DNA)またはウラシル(RNA)、およびグアニンとシトシン)によるものであり、オリゴマーの配列が、標的領域の逆相補体の配列と同一であるか、または部分的に同一であるため、オリゴマーは標的領域に結合する;本明細書に記載の目的のためには、オリゴマーを、標的領域と「相補的」または「部分的に相補的」であると言い、標的領域の配列に対するオリゴマー配列の「相補性」の割合(%)は、標的領域の配列の逆相補体との「同一性」(%)である。
【0098】
本文によって別途明確に為されない限り、本明細書に記載の「標的領域」は、本明細書の以下に記載のアラインメントプログラムおよびパラメーターを用いて、特定のオリゴマーの配列の逆相補体(またはその領域)と最良に整列する(アラインメントする)配列を有する標的核酸の領域であろう。
【0099】
本明細書に記載の方法における使用のためのオリゴマー(またはその領域)と、本明細書に記載のものなどの、哺乳動物HER3(もしくはHER2もしくはEGFR)をコードする核酸の標的領域との間の「相補性」の程度を決定する際に、「相補性」の程度(「相同性」とも呼ぶ)を、オリゴマーの配列(またはその領域)と、それと最良に整列する標的領域の配列の逆相補体との同一性(%)として表す。この%を、2個の配列間で同一である整列された塩基数を計数し、オリゴマー中の連続モノマーの総数で割り、100を掛けることにより算出する。そのような比較において、ギャップが存在する場合、そのようなギャップが、ギャップ内のモノマーの数がオリゴマーと標的領域との間で異なる領域よりもむしろ単なる不一致であることが好ましい。
【0100】
アミノ酸およびポリヌクレオチドのアラインメント、配列同一性%、および相補性の程度を、標準設定:http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/index.htmlを参照、Method: EMBOSS::水 (ローカル): Gap Open = 10.0、Gap extend = 0.5、Blosum 62を使用(タンパク質)、またはヌクレオチド/核酸塩基配列についてはDNAfullを使用:を用いるClustalWアルゴリズムを用いて本発明の目的のために決定することができる。
【0101】
理解されるであろうが、文脈に応じて、「不一致」とは、配列中の非同一性(例えば、オリゴマーの核酸塩基配列と、それが結合する標的領域の逆相補体との間;例えば、2個の整列されたHER3をコードする核酸の塩基配列の間)、または配列中の非相補性(例えば、オリゴマーと、それが結合する標的領域との間)を指す。
【0102】
好適には、前記オリゴマー(または本明細書の以下にさらに記載されるコンジュゲート)は、HER3(またはHER2またはEGFR)の発現を阻害(下方調節などによる)することができる。
【0103】
様々な実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーは、正常な発現レベルと比較して少なくとも10%、より好ましくは、正常な発現レベルと比較して少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%のHER3(またはHER2またはEGFR)mRNA発現を阻害する。様々な実施形態においては、前記オリゴマーは、正常な発現レベルと比較して少なくとも10%、正常な発現レベルと比較して、少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%のHER3(またはHER2またはEGFR)タンパク質発現を阻害する。いくつかの実施形態においては、そのような阻害は、1 nMの前記オリゴマーまたは本発明の方法における使用のためのコンジュゲートを用いる場合に認められる。様々な実施形態において、そのような阻害は、25 nMの前記オリゴマーまたはコンジュゲートを用いる場合に認められる。
【0104】
様々な実施形態において、mRNA発現の阻害は、100%未満(すなわち、発現の完全な阻害未満)、例えば、98%未満の阻害、95%未満の阻害、90%未満の阻害、80%未満の阻害、例えば、70%未満の阻害である。様々な実施形態において、タンパク質発現の阻害は、100%未満(すなわち、発現の完全な阻害未満)、例えば、98%未満の阻害、95%未満の阻害、90%未満の阻害、80%未満の阻害、例えば、70%未満の阻害である。
【0105】
あるいは、例えば、ノーザンブロッティングまたは定量的RT-PCRにより、mRNAのレベルを測定することにより、発現レベルの調節を決定することができる。mRNAレベルを介して測定する場合、1および25 nMなどの好適な用量を用いる場合の阻害レベルは、様々な実施形態においては、典型的には前記化合物の非存在下での正常レベルの10〜20%のレベルである。
【0106】
発現レベルの調節(すなわち、阻害または増加)を、例えば、SDS-PAGE、次いで、標的タンパク質に対する好適な抗体を用いるウェスタンブロッティングなどの方法によってタンパク質レベルを測定することにより決定することもできる。
【0107】
いくつかの実施形態においては、本発明は、HER3 mRNAの1種以上の選択的スプライスアイソフォームおよび/またはそれから誘導されるタンパク質の発現を阻害(例えば、下方調節)するオリゴマーを提供する。いくつかの実施形態においては、本発明は、HER3の1種以上の選択的スプライスタンパク質アイソフォーム(GenBankアクセッション番号NP_001973.2およびNP_001005915.1)の発現ならびに/またはHER3タンパク質アイソフォーム(GenBankアクセッション番号NM_001982およびNM_001005915.1)をコードする核酸の発現を阻害するオリゴマーを提供する。いくつかの実施形態においては、HER3アイソフォーム1をコードするmRNAが標的核酸である。他の実施形態においては、HER3アイソフォーム2をコードするmRNAが標的核酸である。特定の実施形態においては、HER3アイソフォーム1およびHER3アイソフォーム2をコードする核酸が標的核酸であり、例えば、オリゴマーは配列番号180の配列を有する。
【0108】
様々な実施形態においては、オリゴマー、またはその第1領域は、HER3核酸中の標的領域の配列と相補的である塩基配列を有し、HER3 mRNAおよび/またはHER3タンパク質発現を下方調節し、1種以上のErbB受容体チロシンキナーゼファミリーメンバー、例えば、HER2および/もしくはEGFRのmRNAならびに/またはタンパク質の発現を下方調節する。2個の異なるErbB受容体ファミリー核酸(例えば、HER2およびHER3 mRNA)の標的領域に効率的に結合し、両標的のmRNAおよび/もしくはタンパク質発現を下方調節するオリゴマー、またはその第1領域を、「二特異的」と呼ぶ。3個の異なるErbB受容体ファミリーメンバーの標的領域に結合し、3個の遺伝子全てを効率的に下方調節することができるオリゴマー、またはその第1領域を、「三特異的」と呼ぶ。様々な実施形態においては、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、多特異的であってよく、すなわち、ErbBファミリーの受容体チロシンキナーゼの複数のメンバーの標的核酸の標的領域に結合し、その発現を下方調節することができる。本明細書で用いられる用語「二特異的」および「三特異的」は、いかなる意味でも限定的ではないと理解される。例えば、「二特異的オリゴマー」は、第3の標的核酸に対していくらかの効果を有してもよいが、「三特異的オリゴマー」はその3個の標的核酸の1つに対する非常に弱い、および従って有意でない効果を有してもよい。
【0109】
様々な実施形態においては、二特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3核酸中の標的領域およびHER2標的核酸中の標的領域に結合し、HER3およびHER2 mRNAおよび/またはタンパク質の発現を効率的に下方調節することができる。特定の実施形態においては、二特異的オリゴマーは、HER3 mRNAおよび/もしくはタンパク質ならびにHER2 mRNAおよび/もしくはタンパク質の発現を同程度に下方調節しない。他の好ましい実施形態においては、二特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3標的核酸中の標的領域およびEGFR標的核酸中の標的領域に結合し、HER3 mRNAおよび/もしくはタンパク質ならびにEGFR mRNAおよび/もしくはタンパク質の発現を効率的に下方調節することができる。様々な実施形態においては、二特異的オリゴマーは、HER3 mRNAおよび/もしくはタンパク質ならびにEGFR mRNAおよび/もしくはタンパク質の発現を同程度に下方調節しない。さらに他の実施形態においては、三特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3標的核酸中の標的領域、および2種の他のErbBファミリーのチロシンキナーゼ標的核酸中の標的領域に結合し、HER3 mRNAおよび/もしくはタンパク質ならびにErbBファミリーの受容体チロシンキナーゼの2種の他のメンバーのmRNAおよび/もしくはタンパク質の発現を効率的に下方調節することができる。様々な好ましい実施形態において、三特異的オリゴマー、またはその第1領域は、HER3 mRNAおよび/もしくはタンパク質の発現、HER2 mRNAおよび/もしくはタンパク質の発現、ならびにEGFR mRNAおよび/もしくはタンパク質の発現を効率的に下方調節することができる。様々な実施形態において、三特異的オリゴマーは、HER3 mRNAおよび/もしくはタンパク質、HER2 mRNAおよび/もしくはタンパク質ならびにEGFR mRNAおよび/もしくはタンパク質の発現を同程度に下方調節しない。
【0110】
従って、様々な実施形態において、本発明は、HER3タンパク質および/もしくはmRNAを発現しており、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である癌細胞中のHER3タンパク質および/もしくはmRNAの発現を阻害(例えば、下方調節による)する方法であって、前記細胞と、該細胞中のHER3タンパク質および/もしくはmRNAの発現を阻害する(例えば、下方調節する)のに有効な本明細書に記載のオリゴマーまたはコンジュゲートの一定量とを接触させることを含む前記方法を提供する。好適には、前記細胞は、ヒト細胞などの哺乳動物細胞である。特定の実施形態においては、前記接触を、in vitroで行うことができる。他の実施形態においては、本明細書に記載の化合物またはコンジュゲートを哺乳動物に投与することにより、前記接触をin vivoで行うことができる。様々な実施形態においては、本発明は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である細胞中のHER3タンパク質および/もしくはmRNAの発現ならびにHER2タンパク質および/もしくはmRNAの発現を阻害(例えば、下方調節による)する方法を提供する。ヒトHER2 mRNAの配列を配列番号199に示す。さらなる実施形態においては、本発明は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である細胞中のHER3タンパク質および/もしくはmRNAの発現ならびにEGFRタンパク質および/もしくはmRNAの発現を阻害(例えば、下方調節による)する方法を提供する。ヒトEGFR mRNAの配列を配列番号198に示す。さらなる実施形態においては、本発明は、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である細胞中のHER3、HER2およびEGFRのmRNAおよび/またはタンパク質の発現を阻害(例えば、下方調節による)する方法を提供する。
【0111】
本明細書に記載のオリゴマーは、典型的には、ヒトHER3および/もしくはヒトHER2および/もしくはヒトEGFRのmRNAの標的領域に結合し、そのようなものとして、例えば、配列番号197、配列番号198および/もしくは配列番号199の塩基配列と相補的であるか、または部分的に相補的である塩基配列を有する領域を含むか、またはそれからなる。特定の実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーの配列は、必要に応じて、配列番号197、198または199の最良に整列された標的領域の配列と比較した場合、1、2、3、4個以上の塩基の不一致を含んでもよい。
【0112】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーは、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択される配列と同一である配列を有する(以下の表1を参照されたい)。他の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択される配列と比較した場合、1、2、または3個の塩基において異なる配列を有する。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、10〜16個の連続するモノマーからなるか、またはそれを含む。16個の連続するモノマーからなるオリゴマーの配列の例は、配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、および140である。より短い配列をそれから誘導することができる、例えば、より短いオリゴマーの配列は、配列番号200〜227、1〜140および228〜233の塩基配列を有するものから選択されるオリゴマーの領域中に同一的に存在してもよい。より長いオリゴマーは、配列番号200〜227、1〜140および228〜233中に同一的に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの配列を有する領域を含んでもよい。
【0113】
さらに、HER3タンパク質またはmRNAの発現を阻害(例えば、下方調節による)することができる、配列番号1〜140のオリゴマーの1個以上と相補的であるか、または部分的に相補的である標的領域を含む標的核酸(例えば、HER3をコードするDNAまたはmRNA)も提供される。例えば、配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、および140の配列を有するアンチセンスオリゴマーと相補的であるヒトHER3 mRNAの標的領域を図1に示す(対応するオリゴマーの上記に示される配列番号を太字と下線付きで示す)。
【0114】
様々な実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号141〜168に示される塩基配列を有する。特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、LNAオリゴマー、例えば、配列番号169〜196および234の配列を有するもの、特に、配列番号169、170、173、174、180、181、183、185、187、188、189、190、191、192および194の塩基配列を有するものである。様々な実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号169、170、172、174、175、176および179の塩基配列を有するものなどのLNAオリゴマーである。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーまたはその領域は、配列番号169、180または234に示される塩基配列からなるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態においては、コンジュゲートは、配列番号169、180または234に示される塩基配列を有するオリゴマーを含む。
【0115】
特定の実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーは、好適には、より短いオリゴマー中に同一的に存在する、配列番号200〜227から選択される配列などの特定の配列を有する領域を含んでもよい。好ましくは、前記領域は、10〜16個のモノマーを含む。例えば、配列番号200〜227の塩基配列を有するオリゴマーはそれぞれ、領域の配列が、配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、および140の配列を有するより短いオリゴマー中に同一的に存在する領域をそれぞれ含む。いくつかの実施形態においては、16個より少ないモノマー、例えば、10、11、12、13、14または15個のモノマーを有するオリゴマーは、配列が配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、または140の配列を有するオリゴマー中に同一的に存在する少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個または15個の連続するモノマーの領域を有する。従って、様々な実施形態においては、より短いオリゴマーの配列を、より長いオリゴマーの配列から誘導する。いくつかの実施形態においては、本明細書に開示される配列番号を有するオリゴマーの配列、またはその少なくとも10個の連続するモノマーの配列は、より長いオリゴマー中に同一的に存在する。典型的には、オリゴマーは、配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、または140中に同一的に存在する配列を有する第1領域を含み、オリゴマーが配列番号1、16、17、18、19、34、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、74、75、76、91、92、107、122、137、138、139、または140中に同一的に存在する第1領域よりも長い場合、前記オリゴマーのフランキング領域は、標的核酸の標的領域にフランキングする配列と相補的である配列を有する。2種のそのようなオリゴマーが、配列番号1および配列番号54である。
【0116】
様々な実施形態においては、前記オリゴマーは、哺乳動物HER3をコードする標的核酸の標的領域と全部相補的である(完全に相補的である)モノマーの配列を含むか、またはそれからなる。
【0117】
しかしながら、いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーの配列は、HER3標的核酸の最良に整列された標的領域と比較して、1、2、3または4個(以上)の不一致を含み、さらに標的領域に十分に結合して、HER3 mRNAまたはタンパク質発現の阻害を行う。ワトソン・クリック水素結合した二本鎖に対する不一致の脱安定化効果を、例えば、オリゴマーの長さの増加および/またはオリゴマー内に存在するLNAモノマーなどのヌクレオシド類似体の数の増加により相殺することができる。
【0118】
様々な実施形態においては、オリゴマーの塩基配列は、例えば、哺乳動物HER3をコードする標的核酸の最良に整列された標的領域の塩基配列と比較して、3個以下、例えば、2個以下の不一致を含む。
【0119】
本明細書に記載のオリゴマーまたはその領域の塩基配列は、好ましくは、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択される配列と少なくとも80%同一である、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、さらには100%同一である。
【0120】
本明細書に記載のオリゴマーまたはその第1領域の塩基配列は、好ましくは、配列番号197、198および/または199に存在する標的領域の配列と少なくとも80%相補的であり、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、さらには100%相補的である。
【0121】
様々な実施形態においては、前記オリゴマー(またはその第1領域)の配列を、配列番号200〜227、1〜140および228〜233からなる群より選択するか、または配列番号200〜227、1〜140および228〜233の少なくとも10個の連続するモノマーからなる群より選択する。他の実施形態においては、前記オリゴマーまたはその第1領域の配列は、必要に応じて、配列番号200〜227、1〜140および228〜233の配列を有するオリゴマー中のものとは異なる1、2もしくは3個の塩基部分、または前記選択された配列もしくはその領域と最適に整列された場合、その少なくとも10個の連続するモノマーの配列を含む。
【0122】
特定の実施形態においては、モノマー領域は、10〜15個、12〜25個、12〜22個、例えば、12〜18個のモノマーなどの11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29個の連続するモノマーからなる。好適には、様々な実施形態において、前記領域はオリゴマーと同じ長さのものである。
【0123】
いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、5'もしくは3'末端にさらなるモノマーを含む、例えば、標的領域の配列と非相補的である、オリゴマーの5'末端および/もしくは3'末端に、独立に、1、2、3、4もしくは5個のさらなるモノマーを含む。様々な実施形態においては、前記オリゴマーは、さらなるモノマーにより5'および/または3'にフランキングする、標的と相補的である領域を含む。様々な実施形態においては、前記領域の3'末端は、1、2または3個のDNAまたはRNAモノマーにフランキングする。3'DNAモノマーは、オリゴマーの固体状態の合成の間に用いられることが多い。同じか、または異なっていてもよい様々な実施形態においては、オリゴマーの5'末端は1、2または3個のDNAまたはRNAモノマーにフランキングする。特定の実施形態においては、さらなる5'または3'モノマーは、DNAまたはRNAモノマーなどのヌクレオシドである。様々な実施形態においては、5'または3'モノマーは、本明細書に記載のギャップマーオリゴマーの文脈において言及される領域Dであってよい。
【0124】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号200、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0125】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号201、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0126】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号202、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0127】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号203、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0128】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号204、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0129】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号205、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0130】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号206、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0131】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号207、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0132】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号208、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0133】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号209、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0134】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号210、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0135】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号211、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0136】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号212、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0137】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号213、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0138】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号214、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0139】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号215、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0140】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号216、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0141】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号217、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0142】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号218、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0143】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号219、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0144】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号220、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0145】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号221、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0146】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号222、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0147】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号223、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0148】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号224、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0149】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号225、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0150】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号226、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0151】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、配列番号227、またはその領域に従う核酸塩基配列を有する連続モノマーからなるか、またはそれらを含む。
【0152】
配列アラインメント(上記のものなど)を用いて、ヒトならびに1種以上の異なる哺乳動物種、例えば、サル、マウスおよび/またはラットに由来するHER3(またはHER2またはEGFR)をコードする核酸の領域であって、ヒトHER3(またはHER2またはEGFR)標的核酸と、異なる哺乳動物種に存在する対応する核酸との両方を標的化する(すなわち、その発現を阻害するために十分な特異性でそれに結合する)オリゴヌクレオチドの設計を可能にする種間に十分な長さの核酸同一性が存在する前記領域を同定することができる。
【0153】
いくつかの実施形態においては、そのようなオリゴマーは、ヒトに由来するHER3(またはHER2またはEGFR)をコードする核酸と、異なる哺乳動物種に由来するHER3(またはHER2またはEGFR)をコードする核酸の標的領域の配列と、配列において100%相補的である、少なくとも10個、例えば、少なくとも12個、例えば、少なくとも14個、例えば、少なくとも16個、例えば、少なくとも18個、例えば、11、12、13、14、15、16、17または18個の連続するモノマーの領域からなるか、またはそれらを含む。
【0154】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の方法における使用のためのオリゴマーは、ヒトHER3(またはHER2またはEGFR)をコードする核酸と、マウスのHER3(またはHER2またはEGFR)をコードする核酸などの、異なる哺乳動物種に由来するHER3(またはHER2またはEGFR)をコードする核酸との両方の標的領域の配列と、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、例えば、少なくとも98%または100%相補的である配列を有する連続モノマーの領域を含むか、またはそれからなる。前記オリゴマーの連続する核酸塩基配列は、ヒトHER3(またはHER2またはEGFR)mRNAの標的領域と100%相補的であるのが好ましい。
【0155】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーは、HER3標的核酸の標的領域に結合し、HER3 mRNAおよび/またはタンパク質の発現を下方調節する。様々な実施形態においては、HER3核酸の標的領域に結合する本明細書に記載のオリゴマーは、例えば、配列番号169〜196および234に示される配列を有する。
【0156】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の二特異的オリゴマーの第1領域はHER3核酸の標的領域に結合し、二特異的オリゴマーの第2領域はHER2核酸の標的領域に結合し、該オリゴマーはHER3とHER2の発現を下方調節する。様々な実施形態においては、二特異的オリゴマーは、HER3とHER2の発現を異なる程度に下方調節する。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーの第1領域と第2領域は同じである。様々な実施形態においては、前記オリゴマーの第1領域と第2領域は重複する。特定の実施形態においては、HER3核酸の標的領域とHER2核酸の標的領域とに結合する二特異的オリゴマーは、例えば、配列番号177および178に示される配列を有する。さらに他の実施形態においては、二特異的オリゴマーはHER3核酸の標的領域と、EGFR核酸の標的領域とに結合し、HER3とEGFRの発現を下方調節する。いくつかの実施形態においては、HER3核酸の標的領域とEGFR核酸の標的領域とに結合する二特異的オリゴマーは、例えば、配列番号171および173に示される配列を有する。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の二特異的オリゴマーの第1領域はHER3核酸の標的領域に結合し、二特異的オリゴマーの第2領域はEGFR核酸の標的領域に結合し、該オリゴマーはHER3とEGFRの発現を下方調節する。様々な実施形態においては、二特異的オリゴマーは、HER3とEGFRの発現を異なる程度に下方調節する。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーの第1領域と第2領域は同じである。様々な実施形態においては、前記オリゴマーの第1領域と第2領域は重複する。さらに他の実施形態においては、本明細書に記載の三特異的オリゴマーはHER3核酸の標的領域、HER2核酸の標的領域、およびEGFR核酸の標的領域に結合し、3個の遺伝子全部の発現を下方調節する。いくつかの実施形態においては、HER3、HER2およびEGFRに結合する三特異的オリゴマーは、例えば、配列番号169、170、172、174〜176および179に示される配列を有する。いくつかの実施形態においては、三特異的オリゴマーの第1領域はHER3核酸の標的領域に結合し、三特異的オリゴマーの第2領域はEGFR核酸の標的領域に結合し、三特異的オリゴマーの第3領域はHER2核酸の標的領域に結合し、前記オリゴマーはHER3、HER2およびEGFRの発現を下方調節する。様々な実施形態においては、三特異的オリゴマーは、HER3、HER2およびEGFRの発現を異なる程度に下方調節する。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーの第1、第2および第3領域は同じである。様々な実施形態においては、前記オリゴマーの第1、第2および第3領域は重複する。様々な実施形態においては、二特異的または三特異的オリゴマーは、例えば、配列番号197、198および/または199に示される配列を有する標的核酸の最良に整列された標的領域と比較した場合、1、2、3、4、5個以上の不一致を有する。
【0157】
5.6. ヌクレオシドおよびヌクレオシド類似体
様々な実施形態においては、前記オリゴマー中に存在する少なくとも1個のモノマーは、5-メチルシトシン、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5-ブロモウラシル、5-プロピニルウラシル、6-アミノプリン、2-アミノプリン、イノシン、ジアミノプリン、2-クロロ-6-アミノプリン、キサンチンおよびヒポキサンチンから選択される塩基などの、改変塩基を含むヌクレオシド類似体である。
【0158】
様々な実施形態においては、前記オリゴマー中に存在する少なくとも1個のモノマーは、改変糖を含むヌクレオシド類似体である。
【0159】
いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーの少なくとも2個の連続するモノマー間の結合は、ホスホジエステル結合以外のものである。
【0160】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、改変塩基を有する少なくとも1個のモノマー、改変糖を含む少なくとも1個のモノマー(同じモノマーであってもよい)および非天然のものである少なくとも1個のモノマー間結合を含む。
【0161】
本明細書に記載のオリゴマーにおいて有用なヌクレオシド類似体の特定例は、例えば、Freier & Altmann; Nucl. Acid Res., 1997, 25, 4429-4443およびUhlmann; Curr. Opinion in Drug Development, 2000, 3(2), 293-213、ならびにスキーム1(いくつかのヌクレオシド類似体をヌクレオチドとして示す):
【化1】

【0162】
に記載されている。
【0163】
かくして、前記オリゴマーは、ヌクレオシド、好ましくは、DNAモノマーの単純な配列を含むか、またはそれからなってもよいが、RNAモノマー、またはヌクレオシドと1個以上のヌクレオシド類似体の組合せを含むか、またはそれからなってもよい。いくつかの実施形態においては、そのようなヌクレオシド類似体は、好適には、標的核酸の標的領域に対するオリゴマーの親和性を増強する。
【0164】
好適かつ好ましいヌクレオシド類似体の例は、その全体が参照により本明細書に組入れられるものとするWO 2007/031091に記載されているか、またはその中で参照されている。
【0165】
いくつかの実施形態においては、ヌクレオシド類似体は、2'-O-アルキル-リボース糖、2'-アミノ-デオキシリボース糖、および2'-フルオロ-デオキシリボース糖などの、2'-置換基を提供するように改変された糖部分を含む。
【0166】
いくつかの実施形態においては、ヌクレオシド類似体は、二環式糖(LNA)を作る架橋構造が存在し、結合親和性を増強し、また、いくらかのヌクレアーゼ耐性の増加をもたらし得る糖を含む。様々な実施形態においては、LNAモノマーを、オキシ-LNA(β-D-オキシ-LNAおよびα-L-オキシ-LNAなど)、ならびに/またはアミノ-LNA(β-D-アミノ-LNAおよびα-L-アミノ-LNAなど)ならびに/またはチオ-LNA(β-D-チオ-LNAおよびα-L-チオ-LNA)ならびに/またはENA(β-D-ENAおよびα-L-ENAなど)から選択する。特定の実施形態においては、LNAモノマーはβ-D-オキシ-LNAである。LNAモノマーを以下でさらに説明する。
【0167】
様々な実施形態においては、LNAモノマーまたは2'-置換された糖を含むモノマーなどの、オリゴマーへの親和性増強性ヌクレオシド類似体の組込み、または改変連結基の組込みは、ヌクレアーゼ耐性の増加を提供する。様々な実施形態においては、そのような親和性増強性ヌクレオシド類似体の組込みにより、オリゴマーのサイズを低下させ、また、非特異的または異常な結合が起こる前にオリゴマーのサイズを上限まで低下させることができる。
【0168】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、少なくとも2個のヌクレオシド類似体を含む。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、3〜8個のヌクレオシド類似体、例えば、6または7個のヌクレオシド類似体を含む。好ましい実施形態においては、少なくとも1個のヌクレオシド類似体が、ロックド核酸(LNA)モノマーであり、例えば、少なくとも3個または少なくとも4個または少なくとも5個または少なくとも6個または少なくとも7個または8個のヌクレオシド類似体がLNAモノマーである。いくつかの実施形態においては、全てのヌクレオシド類似体がLNAモノマーである。
【0169】
好ましいオリゴマー塩基配列に言及する場合、特定の実施形態においては、前記オリゴマーが、対応するLNAモノマーまたはオリゴマー/標的領域二本鎖の二本鎖安定性(Tm)を上昇させる他の対応するヌクレオシド類似体(すなわち、親和性増強性ヌクレオシド類似体)などの、対応するヌクレオシド類似体を含むことがわかるであろう。
【0170】
様々な好ましい実施形態においては、オリゴマーの塩基配列と標的領域の塩基配列との任意の不一致(すなわち、非相補性)が存在する場合、それは、本明細書に記載の領域B、および/または本明細書に記載の領域D、および/または標的領域と相補的であるオリゴマーの領域に対して5'もしくは3'側にある領域などの、親和性増強性ヌクレオシド類似体(例えば、領域AもしくはC)を含むオリゴマーの領域以外に位置する。
【0171】
いくつかの実施形態においては、オリゴマー内(本明細書に記載の領域AおよびC中など)に存在するヌクレオシド類似体を、例えば、2'-O-アルキル-リボース糖を含むモノマー、2'-アミノ-デオキシリボース糖を含むモノマー、2'-フルオロ-デオキシリボース糖を含むモノマー、LNAモノマー、アラビノース糖を含むモノマー(「ANAモノマー」)、2'-フルオロ-アラビノース糖を含むモノマー、d-アラビノ-ヘキシトール糖を含むモノマー(「HNAモノマー」)、参照により本明細書に組入れられるものとするChristensen, Nucl. Acid. Res. 30: 4918-4925(2002)に定義された挿入モノマー、および2'MOE糖を含むモノマーから独立に選択する。特定の実施形態においては、前記オリゴマー、またはその領域中に存在する上記の型のヌクレオシド類似体のうちの1種のみが存在する。
【0172】
特定の実施形態においては、ヌクレオシド類似体は、2'-O-メトキシエチル-リボース糖(2'MOE)、または2'-フルオロ-デオキシリボース糖またはLNAモノマーを含み、そのようなものとして、本発明のオリゴヌクレオチドは、これらの3つの型から独立に選択されるヌクレオシド類似体を含んでもよい。ヌクレオシド類似体を含む特定のオリゴマーの実施形態においては、前記ヌクレオシド類似体の少なくとも1個は2'-MOE-リボース糖を含み、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のヌクレオシド類似体が2'-MOE-リボース糖を含む。特定の実施形態においては、前記ヌクレオシド類似体の少なくとも1個は2'-フルオロ-デオキシリボース糖を含み、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のヌクレオシド類似体が2'-フルオロ-デオキシリボース糖を含む。
【0173】
様々な実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーは、少なくとも1個のロックド核酸(LNA)モノマー、例えば、1、2、3、4、5、6、7もしくは8個のLNAモノマー、例えば、3〜7個もしくは4〜8個のLNAモノマー、または3、4、5、6もしくは7個のLNAモノマーを含む。様々な実施形態においては、全部のヌクレオシド類似体がLNAモノマーである。いくつかの実施形態においては、前記オリゴマーは、β-D-オキシ-LNAモノマーと、以下のLNAモノマー:β-Dもしくはα-L配置のチオ-LNAモノマー、アミノ-LNAモノマー、オキシ-LNAモノマー、および/もしくはENAモノマー、またはその組合せとの両方を含む。特定の実施形態においては、前記オリゴマー中の全てのLNAモノマーのシトシン塩基部分が5-メチルシトシンである。本発明の特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、LNAおよびDNAモノマーの両方を含む。典型的には、LNAモノマーとDNAモノマーの合計数は、10〜25個、好ましくは、10〜20個、さらにより好ましくは、12〜16個である。本発明の特定の実施形態においては、前記オリゴマーまたはその領域は、少なくとも1個のLNAモノマーからなり、残りのモノマーはDNAモノマーである。特定の実施形態においては、前記オリゴマーは、LNAモノマーと、必要に応じて、ホスホロチオエートなどの改変連結基で連結されたヌクレオシド(RNAまたはDNAモノマーなど、最も好ましくは、DNAモノマー)のみを含む。
【0174】
様々な実施形態においては、前記オリゴマー中に存在するヌクレオシド類似体の少なくとも1個は、5-メチルシトシン、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5-ブロモウラシル、5-プロピニルウラシル、6-アミノプリン、2-アミノプリン、イノシン、ジアミノプリン、および2-クロロ-6-アミノプリンからなる群より選択される改変塩基を有する。
【0175】
5.7. LNA
用語「LNAモノマー」とは、二環式糖(「LNA糖」)を含むヌクレオシド類似体を指す。用語「LNAオリゴヌクレオチド」および「LNAオリゴマー」とは、1個以上のLNAモノマーを含むオリゴマーを指す。
【0176】
本発明のオリゴヌクレオチド化合物において用いられるLNAは、好ましくは、一般式I:
【化2】

【0177】
[式中、Xは-O-、-S-、-N(RN*)-、-C(R6R6*)-から選択され;
Bは水素、置換されていてもよいC1-4アルコキシ、置換されていてもよいC1-4アルキル、置換されていてもよいC1-4アシルオキシ、核酸塩基、DNA挿入剤、光化学活性基、熱化学活性基、キレート化基、リポーター基、およびリガンドから選択され;
Pはその後のモノマーへのヌクレオシド間結合、または5'末端基のためのラジカル位置を表し、そのようなヌクレオシド間結合または5'末端基は、置換基R5もしくは同等に適用可能な置換基R5*を含んでもよく;
P*はその前のモノマーへのヌクレオシド間結合、または3'末端基を表し;
R4*およびR2*は一緒になって、-C(RaRb)-、-C(Ra)=C(Rb)-、-C(Ra)=N-、-O-、-Si(Ra)2-、-S-、-SO2-、-N(Ra)-、および>C=Z(式中、Zは-O-、-S-、および-N(Ra)-から選択され、RaおよびRbはそれぞれ、水素、置換されていてもよいC1-12アルキル、置換されていてもよいC2-12アルケニル、置換されていてもよいC2-12アルキニル、ヒドロキシ、C1-12アルコキシ、C2-12アルコキシアルキル、C2-12アルケニルオキシ、カルボキシ、C1-12アルコキシカルボニル、C1-12アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1-6アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1-6アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1-6アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1-6アルキル)アミノ-C1-6アルキル-アミノカルボニル、C1-6アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1-6アルカノイルオキシ、スルホノ、C1-6アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1-6アルキルチオ、ハロゲン、DNA挿入剤、光化学活性基、熱化学活性基、キレート化基、リポーター基、およびリガンドから独立に選択され、アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、2個のジェミナル置換基RaおよびRbは一緒になって、置換されていてもよいメチレン(=CH2)を表してもよい)から選択される1〜4個の基/原子からなるビラジカルを表し;
存在する置換基R1*、R2、R3、R5、R5*、R6およびR6*はそれぞれ、水素、置換されていてもよいC1-12アルキル、置換されていてもよいC2-12アルケニル、置換されていてもよいC2-12アルキニル、ヒドロキシ、C1-12アルコキシ、C2-12アルコキシアルキル、C2-12アルケニルオキシ、カルボキシ、C1-12アルコキシカルボニル、C1-12アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1-6アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1-6アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1-6アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1-6アルキル)アミノ-C1-6アルキル-アミノカルボニル、C1-6アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1-6アルカノイルオキシ、スルホノ、C1-6アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1-6アルキルチオ、ハロゲン、DNA挿入剤、光化学活性基、熱化学活性基、キレート化基、リポーター基、およびリガンドから独立に選択され、アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、2個のジェミナル置換基は一緒になって、オキソ、チオキソ、イミノ、もしくは置換されていてもよいメチレンを表してもよいか、または一緒になって、-O-、-S-および-(NRN)-(式中、RNは水素およびC1-5アルキルから選択される)から選択される1個以上のヘテロ原子/基により中断され、および/もしくは終結してもよい1〜5個の炭素原子のアルキレン鎖からなるスピロビラジカルを形成してもよく、2個の隣接する(非ジェミナル)置換基は二重結合をもたらすさらなる結合を表してもよく;ならびにRN*は、存在し、ビラジカルに含まれない場合、水素およびC1-4アルキルから選択される];ならびにその塩基塩および酸付加塩
の構造を有する。
【0178】
特定の実施形態においては、R5*は、H、-CH3、-CH2-CH3-、CH2-O-CH3、および-CH=CH2から選択される。
【0179】
様々な実施形態においては、R4*およびR2*は一緒になって、-C(RaRb)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-C(ReRf)-O-、-C(RaRb)-O-C(RcRd)-、-C(RaRb)-O-C(RcRd)-O-、-C(RaRb)-C(RcRd)-、-C(RaRb)-C(RcRd)-C(ReRf)-、-C(Ra)=C(Rb)-C(RcRd)-、-C(RaRb)-N(Rc)-、-C(RaRb)-C(RcRd)-N(Re)-、-C(RaRb)-N(Rc)-O-、および-C(RaRb)-S-、-C(RaRb)-C(RcRd)-S-(式中、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、およびRfはそれぞれ、水素、置換されていてもよいC1-12-アルキル、置換されていてもよいC2-12-アルケニル、置換されていてもよいC2-12-アルキニル、ヒドロキシ、C1-12-アルコキシ、C2-12-アルコキシアルキル、C2-12-アルケニルオキシ、カルボキシ、C1-12-アルコキシカルボニル、C1-12-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ-カルボニル、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ-カルボニル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールカルボニル、アミノ、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)-アミノ-カルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノ-およびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、スルホノ、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、ニトロ、アジド、スルファニル、C1-6-アルキルチオ、ハロゲン、DNA挿入剤、光化学活性基、熱化学活性基、キレート化基、リポーター基、およびリガンドから独立に選択され、アリールおよびヘテロアリールは置換されていてもよく、2個のジェミナル置換基RaおよびRbは一緒になって置換されていてもよいメチレン(=CH2)を表してもよい)
から選択されるビラジカルを表す。
【0180】
さらなる実施形態においては、R4*およびR2*は一緒になって、-CH2-O-、-CH2-S-、-CH2-NH-、-CH2-N(CH3)-、-CH2-CH2-O-、-CH2-CH(CH3)-、-CH2-CH2-S-、-CH2-CH2-NH-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-O-、-CH2-CH2-CH(CH3)-、-CH=CH-CH2-、-CH2-O-CH2-O-、-CH2-NH-O-、-CH2-N(CH3)-O-、-CH2-O-CH2-、-CH(CH3)-O-、-CH(CH2-O-CH3)-O-から選択されるビラジカルを表す。
【0181】
全てのキラル中心について、非対称基をRまたはS方向に見出すことができる。
【0182】
好ましくは、本明細書に記載のオリゴマーにおいて用いられるLNAモノマーは、式:
【化3】

【0183】
[式中、Yは-O-、-O-CH2-、-S-、-NH-、またはN(RH)であり; ZおよびZ*はヌクレオシド間結合、末端基または保護基から独立に選択され;Bは核酸中に天然に存在するか、または核酸中に天然に存在しない非改変塩基部分または改変塩基部分を構成し、ならびにRHは水素およびC1-4アルキルから選択される]
のいずれかに記載の少なくとも1個のLNAモノマーを含む。
【0184】
特に好ましいLNAモノマーを、スキーム2:
【化4】

【0185】
に示す。
【0186】
用語「チオ-LNA」とは、上記の一般式中のYがSまたは-CH2-S-から選択されるLNAモノマーを指す。チオ-LNAは、β-D-またはα-L-配置にあってもよい。
【0187】
用語「アミノ-LNA」とは、上記の一般式中のYが-N(H)-、N(R)-、CH2-N(H)-、および-CH2-N(R)-(式中、Rは水素およびC1-4アルキルから選択される)から選択されるLNAモノマーを指す。アミノ-LNAは、β-D-またはα-L-配置にあってもよい。
【0188】
用語「オキシ-LNA」とは、上記の一般式中のYが-O-または-CH2-O-であるLNAモノマーを指す。オキシ-LNAは、β-D-またはα-L-配置にあってもよい。
【0189】
用語「ENA」とは、上記の一般式中のYが-CH2-O-(式中、-CH2O-の酸素原子は塩基Bに関して2'位置に結合する)であるLNAモノマーを指す。
【0190】
好ましい実施形態においては、LNAモノマーは、β-D-オキシ-LNAモノマー、α-L-オキシ-LNAモノマー、β-D-アミノ-LNAモノマーおよびβ-D-チオ-LNAモノマー、特に、β-D-オキシ-LNAモノマーから選択される。
【0191】
本文脈において、用語「C1-4アルキル」とは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルなどの、鎖が1〜4個の炭素原子を有する線状または分枝状の飽和炭化水素鎖を意味する。
【0192】
5.8. RNAse H動員
いくつかの実施形態においては、オリゴマーは、翻訳の立体障害、または他の機構などによる、標的mRNAの非RNase媒介性分解を介して機能するが、しかしながら、様々な実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーは、RNase Hなどのエンドリボヌクレアーゼ(RNase)を動員することができる。
【0193】
典型的には、前記オリゴマーは、標的RNAの標的領域との二本鎖を形成する場合、RNaseを動員することができる、少なくとも6個、例えば、少なくとも7個の連続するモノマー、例えば、少なくとも8個または少なくとも9個の連続するモノマー、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の連続するモノマーの領域を含む。RNAseを動員することができるオリゴマーの領域は、本明細書に記載のギャップマーの文脈で言及される領域Bであってよい。特定の実施形態においては、領域Bなどの、RNAseを動員することができるオリゴマーの領域は、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のモノマーからなる。
【0194】
EP 1 222 309は、RNaseH活性を決定するためのin vitro方法を提供しており、これを用いてRNaseHを動員するオリゴマーの能力を決定することができる。オリゴマーは、RNA標的の相補的標的領域と接触させた場合、それが、参照により本明細書に組入れられるものとするEP 1 222 309の実施例91〜95により提供される方法を用いて、同じ塩基配列を有するが、2'置換を有さず、オリゴヌクレオチド中の全てのモノマー間にホスホロチオエート連結基を有する、DNAモノマーのみを含むオリゴヌクレオチドの少なくとも1%、例えば、少なくとも5%、例えば、少なくとも10%または20%未満のpmol/l/分で測定される初期速度を有する場合に、RNase Hを動員することができると見なされる。
【0195】
様々な実施形態においては、オリゴマーは、RNA標的の相補的標的領域、およびRNaseHと接触させた場合、pmol/l/分で測定されるRNaseHの初期速度が、参照により本明細書に組入れられるものとするEP 1 222 309の実施例91〜95により提供される方法を用いて、同じ塩基配列を有するが、2'置換を有さず、オリゴヌクレオチド中の全てのモノマー間にホスホロチオエート連結基を有するDNAモノマーのみを含むオリゴヌクレオチドを用いて決定された初期速度の1%未満、例えば、5%未満、例えば、10%未満または20%未満である場合に、RNaseHを本質的に動員することができないと見なされる。
【0196】
他の実施形態においては、オリゴマーは、RNA標的の相補的標的領域、およびRNaseHと接触させた場合、pmol/l/分で測定されるRNaseHの初期速度が、参照により本明細書に組入れられるものとするEP 1 222 309の実施例91〜95により提供される方法を用いて、同じ塩基配列を有するが、2'置換を有さず、オリゴヌクレオチド中の全てのモノマー間にホスホロチオエート連結基を有するDNAモノマーのみを含むオリゴヌクレオチドを用いて決定された初期速度の少なくとも20%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも80%である場合に、RNaseHを動員することができると見なされる。
【0197】
典型的には、標的RNAの相補的標的領域との二本鎖を形成し、RNaseを動員することができるオリゴマーの領域は、DNAモノマーおよびLNAモノマーを含み、標的領域とのDNA/RNA様二本鎖を形成する。LNAモノマーは、好ましくは、α-L-配置にあり、特に好ましくは、α-L-オキシ-LNAである。
【0198】
様々な実施形態においては、前記オリゴマーは、ヌクレオシドとヌクレオシド類似体の両方を含み、上記で定義されたギャップマー、ヘッドマーまたはミクスマーの形態にある。
【0199】
「ヘッドマー」は、第1領域と、それと連続的である第2領域とを含み、第2領域の最も5'側のモノマーが第1領域の最も3'側のモノマーに連結されたオリゴマーと定義される。第1領域は、非RNase動員ヌクレオシド類似体の連続伸長物を含み、第2領域は、DNAモノマーまたはRNAseにより認識可能かつ切断可能なヌクレオシド類似体モノマーの連続新長物(少なくとも7個の連続するモノマーなど)を含む。
【0200】
「テイルマー」は、第1領域と、それと連続的である第2領域とを含み、第2領域の最も5'側のモノマーが、第1領域の最も3'側のモノマーに連結されたオリゴマーと定義される。第1領域は、DNAモノマーまたはRNaseにより認識可能かつ切断可能なヌクレオシド類似体モノマーの連続伸長物(少なくとも7個のそのようなモノマーなど)を含み、第2領域は、非RNase動員ヌクレオシド類似体モノマーの連続伸長物を含む。
【0201】
「ミクスマー」と呼ばれる他の「キメラ」オリゴマーは、(i)DNAモノマーまたはRNaseにより認識可能かつ切断可能なヌクレオシド類似体モノマー、および(ii)非RNase動員ヌクレオシド類似体モノマーの交互組成物からなる。
【0202】
いくつかの実施形態においては、標的領域へのオリゴマーの親和性を増強させることに加えて、いくつかのヌクレオシド類似体はまた、RNase(例えば、RNase H)の結合および切断も媒介する。α-L-LNAモノマーは特定の程度までRNase活性を動員するため、いくつかの実施形態においては、α-L-LNAモノマーを含むオリゴマーのギャップ領域(例えば、本明細書の以下に記載の領域B)は、RNaseにより認識可能かつ切断可能なより少ないモノマーからなり、ミクスマー構築物中により高い可撓性が導入される。
【0203】
5.9. コンジュゲート
本開示の文脈において、用語「コンジュゲート」は、それ自身、核酸またはモノマーではない1個以上の部分(「コンジュゲート化部分」)への、本明細書に記載のオリゴマーの共有結合(「コンジュゲーション」)により形成された化合物を示す。そのようなコンジュゲート化部分の例としては、タンパク質、脂肪酸鎖、糖残基、糖タンパク質、ポリマー、またはその組合せなどの大分子化合物が挙げられる。典型的には、タンパク質は、標的タンパク質に対する抗体であってよい。典型的なポリマーは、ポリエチレングリコールであってよい。WO 2007/031091は、好適な部分およびコンジュゲートを提供しており、これは参照により本明細書に組入れられるものとする。
【0204】
従って、本明細書に記載のオリゴマーと、該オリゴマーに共有結合した、核酸でもモノマーでもない少なくとも1個のコンジュゲート化部分とを含むコンジュゲートが本明細書で提供される。従って、特定の実施形態においては、オリゴマーが本明細書に開示されるように特定の塩基配列を有する連続モノマーからなる場合、コンジュゲートはまた前記オリゴマーに共有結合した少なくとも1個のコンジュゲート化部分を含んでもよい。
【0205】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーを、オリゴマー化合物の細胞取込みを増加させる部分にコンジュゲートさせる。
【0206】
様々な実施形態においては、コンジュゲートは、本明細書に記載のオリゴマーの活性、細胞分布または細胞取込みを増強させることができる。そのような部分としては、限定されるものではないが、抗体、ポリペプチド、コレステロール部分などの脂質部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル-s-トリチルチオール、チオコレステロール、および脂肪鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-o-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-h-ホスホナート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、オクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分が挙げられる。
【0207】
特定の実施形態においては、前記オリゴマーを、活性薬剤物質、例えば、アスピリン、イブプロフェン、サルファ剤、抗糖尿病剤、抗菌剤または抗生物質にコンジュゲートさせる。
【0208】
特定の実施形態においては、コンジュゲート化部分は、コレステロールなどのステロールである。
【0209】
様々な実施形態においては、コンジュゲート化部分は、例えば、1〜50、例えば、2〜20、例えば、3〜10アミノ酸残基の長さの正荷電ペプチドなどの正荷電ポリマー、および/またはポリエチレングリコール(PEG)もしくはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキシドを含むか、またはそれらからなる(参照により本明細書に組入れられるものとするWO 2008/034123を参照されたい)。好適には、ポリアルキレンオキシドなどの正荷電ポリマーを、WO 2008/034123に記載の遊離可能なリンカーなどのリンカーを介して、前記オリゴマーに結合させることができる。
【0210】
5.10. 活性化オリゴマー
本明細書で用いられる用語「活性化オリゴマー」とは、1個以上のコンジュゲート化部分、すなわち、それら自身、核酸でもモノマーでもない部分への本明細書に記載のオリゴマーの共有結合を可能にする少なくとも1個の官能部分に共有結合(すなわち、官能化)されて、本明細書に記載のコンジュゲートを形成する前記オリゴマーを指す。典型的には、官能部分は、例えば、3'-ヒドロキシル基またはアデニン塩基の環外NH2基、いくつかの実施形態においては、親水性であるスペーサーおよびコンジュゲート化部分に結合することができる末端基(例えば、アミノ基、スルフヒドリル基もしくはヒドロキシル基)を介して、オリゴマーに共有結合することができる化学基を含むであろう。いくつかの実施形態においては、この末端基は保護されておらず、例えば、NH2基である。他の実施形態においては、この末端基を、例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」、Theodora W GreeneおよびPeter G M Wuts、第3版 (John Wiley & Sons, 1999)に記載のものなどの任意の好適な保護基により保護する。好適なヒドロキシル保護基の例としては、酢酸エステルなどのエステル、ベンジル、ジフェニルメチル、もしくはトリフェニルメチルなどのアラルキル基、およびテトラヒドロピラニルが挙げられる。好適なアミノ保護基の例としては、ベンジル、α-メチルベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、およびトリクロロアセチルまたはトリフルオロアセチルなどのアシル基が挙げられる。
【0211】
いくつかの実施形態においては、官能部分は、自己切断性である。他の実施形態においては、官能部分は生分解性である。例えば、その全体が参照により本明細書に組入れられるものとする米国特許第7,087,229号を参照されたい。
【0212】
いくつかの実施形態においては、オリゴマーを5'末端で官能化して、オリゴマーの5'末端へのコンジュゲート化部分の共有結合を可能にする。他の実施形態においては、オリゴマーを3'末端で官能化することができる。さらに他の実施形態においては、オリゴマーを、主鎖に沿って、または複素環塩基部分上で官能化することができる。さらに他の実施形態においては、オリゴマーを、5'末端、3'末端、主鎖および塩基から独立に選択される2個以上の位置で官能化することができる。
【0213】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載の活性化オリゴマーを、官能部分に共有結合させた1個以上のモノマーを合成の間に組入れることにより合成する。他の実施形態においては、活性化オリゴマーを、官能化されていないモノマーを用いて合成し、合成の完了時にオリゴマーを官能化する。
【0214】
いくつかの実施形態においては、アミノアルキルリンカーを含むヒンダードエステル(式中、アルキル部分は式(CH2)w(式中、wは1〜10の整数、好ましくは約6である)を有し、アルキルアミノ基のアルキル部分は直鎖もしくは分枝鎖であってよく、官能基をエステル基(-O-C(O)-(CH2)wNH)を介してオリゴマーに結合させる)を用いてオリゴマーを官能化する。
【0215】
他の実施形態においては、(CH2)w-スルフヒドリル(SH)リンカーを含むヒンダードエステル(式中、wは1〜10の整数、好ましくは約6であり、アルキルアミノ基のアルキル部分は直鎖もしくは分枝鎖であってよく、官能基をエステル基(-O-C(O)-(CH2)wSH)を介してオリゴマーに結合させる)を用いてオリゴマーを官能化する。いくつかの実施形態においては、スルフヒドリル活性化オリゴヌクレオチドを、ポリエチレングリコールまたはペプチドなどのポリマー部分を用いて(ジスルフィド結合の形成を介して)コンジュゲートさせる。
【0216】
少なくとも1個の官能部分に共有結合させた活性化オリゴマーを、当業界で公知の任意の方法により、特に、米国特許出願公開第2004/0235773号(その全体が参照により本明細書に組入れられるものとする)およびZhaoら(2007) J. Controlled Release 119:143-152; およびZhaoら(2005) Bioconjugate Chem. 16:758-766に開示された方法により合成することができる。
【0217】
さらに他の実施形態においては、米国特許第4,962,029号および第4,914,210号に実質的に記載された官能化試薬、すなわち、親水性スペーサー鎖を介して、保護された、もしくは未保護のスルフヒドリル基、アミノ基またはヒドロキシル基を含む反対側の末端に連結された一方の末端にホスホルアミダイトを有する実質的に線状の試薬を用いて、オリゴマーにスルフヒドリル基、アミノ基またはヒドロキシル基を導入することにより、本明細書に記載のオリゴマーを官能化する。そのような試薬は主に、オリゴマーのヒドロキシル基と反応する。いくつかの実施形態においては、そのような活性化オリゴマーは、オリゴマーの5'-ヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。他の実施形態においては、活性化オリゴマーは、3'-ヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。さらに他の実施形態においては、活性化オリゴマーは、オリゴマーの主鎖上のヒドロキシル基に結合した官能化試薬を有する。さらなる実施形態においては、米国特許第4,962,029号および第4,914,210号(その全体が参照により本明細書に組入れられるものとする)に記載の2種以上の官能化試薬を用いて、オリゴマーを官能化する。そのような官能化試薬を合成し、それらをモノマーまたはオリゴマーに組込む方法は、米国特許第4,962,029号および第4,914,210号に開示されている。
【0218】
いくつかの実施形態においては、固相結合オリゴマーの5'末端をジエニルホスホルアミダイト誘導体を用いて官能化した後、脱保護されたオリゴマーを、例えば、Diels-Alder環化付加反応を介してアミノ酸またはペプチドとコンジュゲートさせる。
【0219】
様々な実施形態においては、2'-カルバメート置換された糖または2'-(O-ペンチル-N-フタルイミド)-デオキシリボース糖などの、2'-糖改変を含むモノマーのオリゴマーへの組込みは、オリゴマーの糖へのコンジュゲート化部分の共有結合を容易にする。他の実施形態においては、1個以上のモノマーの2'位置にアミノ含有リンカーを有するオリゴマーを、例えば、5'-ジメトキシトリチル-2'-O-(e-フタルイミジルアミノペンチル)-2'-デオキシアデノシン-3'-N,N-ジイソプロピル-シアノエトキシホスホルアミダイトなどの試薬を用いて調製する。例えば、Manoharanら、Tetrahedron Letters, 1991, 34, 7171を参照されたい。
【0220】
さらなる実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーは、N6プリンアミノ基、グアニンの環外N2、またはシトシンのN4もしくは5位置などの核酸塩基上にアミノ含有官能部分を有する。いくつかの実施形態においては、そのような官能化を、オリゴマー合成において既に官能化された市販の試薬を用いることにより達成することができる。
【0221】
いくつかの官能部分が市販されており、例えば、ヘテロ二官能性およびホモ二官能性連結部分が、Pierce Co.(Rockford, Ill.)から入手可能である。他の市販の連結基は、5'-アミノ-改変剤C6および3'-アミノ-改変剤試薬(双方ともGlen Research Corporation(Sterling, Va)から入手可能である)である。5'-アミノ-改変剤C6は、Aminolink-2としてABI(Applied Biosystems Inc., Foster City, Calif.)からも入手可能であり、3'-アミノ-改変剤は、Clontech Laboratories Inc.(Palo Alto, Calif.)からも入手可能である。
【0222】
5.11. 組成物
様々な実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーを、医薬製剤および医薬組成物中で用いる。好適には、そのような組成物は、製薬上許容し得る希釈剤、担体、塩またはアジュバントを含む。参照により本明細書に組入れられるものとするWO2007/031091は、好適かつ好ましい製薬上許容し得る希釈剤、担体およびアジュバントを提供している。好適な用量、製剤、投与経路、組成物、剤形、他の治療剤との組合せ、プロドラッグ製剤も、参照により本明細書に組入れられるものとするWO2007/031091に提供されている。また、製剤および投与のための技術に関する詳細を、「REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES」(Maack Publishing Co, Easton Pa.)の最新版に見出すことができる。
【0223】
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーをコンジュゲート化部分に共有結合させて、細胞膜を横断するオリゴマーの送達を補助する。細胞膜を横断するオリゴマーの送達を補助するコンジュゲート化部分の例は、コレステロールなどの親油性部分である。様々な実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーを、Lipofectamine 2000またはLipofectamine RNAiMAX(双方ともInvitrogen社から市販されている)などのリポソームを形成する脂質製剤を用いて製剤化する。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーを、1種以上の脂質様非天然小分子の混合物(「リピドイド」)を用いて製剤化する。従来の合成化学方法により、リピドイドのライブラリーを合成することができ、リピドイドの様々な量および組合せをアッセイして、選択された投与経路による標的化組織への特定のサイズのオリゴマーの効率的な送達のためのビヒクルを開発することができる。好適なリピドイドライブラリーおよび組成物を、例えば、http://www.nature.com/nbt/journal/vaop/ncurrent/abs/nbt1402.htmlで入手可能な、Akincら(2008) Nature Biotechnol.(参照により本明細書に組入れられるものとする)に見出すことができる。
【0224】
本明細書で用いられる用語「製薬上許容し得る塩」とは、本明細書で定義された化合物の所望の生物活性を保持し、許容し得るレベルの望ましくない毒性効果を示す塩を指す。そのような塩の非限定例を、有機アミノ酸と共に形成させることができ、また、それらは亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウム、ナトリウム、カリウムなどの金属陽イオン、またはアンモニア、N,N'-ジベンジルエチレン-ジアミン、D-グルコサミン、テトラエチルアンモニウム、もしくはエチレンジアミンから形成される陽イオンと共に形成された塩基付加塩であってよく;または(c)(a)と(b)の組合せ;例えば、タンニン酸亜鉛などであってよい。
【0225】
PTK阻害剤を用いる治療に対して耐性である疾患の治療または予防にとって有効である少なくとも1種のオリゴマーの量を、標準的な臨床技術により決定することができる。一般的には、用量範囲を、in vitroおよびin vivo動物モデルにおいて有効であることがわかったEC50に基づいて見積もることができる。用いられる正確な用量は、例えば、投与経路および疾患の重篤度にも依存するであろうが、医師の判断および/またはそれぞれの患者の環境に従って決定することができる。他の例においては、特に、治療される患者の体重および身体状態(例えば、肝機能および腎機能)、治療しようとする苦痛、症候の重篤度、投与間隔の頻度、および有害な副作用の存在に応じて、必然的に変化が起こるであろう。
【0226】
様々な実施形態においては、オリゴマーの用量は、約0.01μg〜約1 g/kg体重であり、1日1回以上、毎週、毎月もしくは毎年、またはさらには2〜10年毎に1回与えるか、または数時間から数ヶ月間の連続輸液によって与えることができる。特定の実施形態においては、投与の反復速度を、体液または組織中での活性薬剤の測定された滞留時間および濃度に基づいて見積もることができる。治療の成功後、患者は疾患状態の再発を防止するためにHER3標的化療法を含む維持療法を受けてもよい。
【0227】
5.12. 他のアンチセンスオリゴマーと化学療法剤との組合せ
いくつかの実施形態においては、本明細書に記載のオリゴマーは、HER3、HER2および/またはEGFR核酸を標的とする。かくして、いくつかの実施形態においては、本発明は、2種またはさらには3種全部の標的核酸を標的化する2種以上のオリゴマーを投与することにより、PTK阻害剤を用いる治療に対して耐性である疾患を治療する方法に関する。様々な実施形態においては、HER3を標的化するオリゴマーを、EGFRまたはHER2を標的化する第2のオリゴマーと共に投与する。様々な他の実施形態においては、HER3を標的化するオリゴマーを、HER2を標的化する第2のオリゴマーおよびEGFRを標的化する第3のオリゴマーと共に投与する。本明細書に記載の方法においては、そのようなオリゴマーを、同時に、または連続的に投与することができる。
【0228】
様々な実施形態においては、本発明は、HER3に対して標的化されたオリゴマーと、HER2 mRNAを標的化するアンチセンスオリゴマーなどの、HER2を標的化し、その発現を下方調節するさらなる治療剤とを含む医薬組成物を投与することにより、PTK阻害剤耐性疾患を治療する方法に関する。
【0229】
同じか、または異なっていてもよい他の実施形態においては、本発明は、HER3に対して標的化されたオリゴマーと、EGFR mRNAを標的化するアンチセンスオリゴマーなどの、EGFRを標的化し、その発現を下方調節するさらなる治療剤とを含む医薬組成物を投与することにより、PTK阻害剤耐性疾患を治療する方法に関する。
【0230】
いくつかの実施形態においては、HER2および/またはEGFR mRNA(またはそのコンジュゲート)を標的化するオリゴマーは、HER3を標的化するオリゴマーと同じ設計(例えば、ギャップマー、ヘッドマー、テイルマー)を有する。様々な実施形態においては、HER2および/またはEGFR mRNA(またはそのコンジュゲート)を標的化するオリゴマーは、HER3を標的化するオリゴマーとは異なる設計を有する。
【0231】
特定の実施形態においては、本発明は、本明細書に記載の1種以上のオリゴマーと、限定されるものではないが、アルキル化剤、代謝拮抗物質、エピポドフィロトキシン、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、植物アルカロイドおよびテルペノイド、モノクローナル抗体、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ならびに白金化合物などの1種以上のさらなる化学療法剤とを投与することにより、PTK阻害剤耐性疾患を治療する方法に関する。
【0232】
5.13. キット
本発明はまた、第1成分と第2成分とを含むキットを用いて、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である疾患を治療する方法も提供する。様々な実施形態においては、前記第1成分は、HER3の発現を阻害することができる(例えば、下方調節による)本明細書に記載のオリゴマー、またはそのコンジュゲートおよび/もしくは医薬組成物を含む。他の実施形態においては、前記第2成分は、第2の活性成分を含む。いくつかの実施形態においては、第2成分は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチドである治療剤である。他の実施形態においては、前記治療剤は、オリゴヌクレオチド以外のものである(例えば、タキソールなどの小分子治療剤)。いくつかの実施形態においては、本明細書に記載のキットの有効量の第1成分と第2成分を、それを必要とする患者に投与することを含む、PTK阻害剤を用いる治療に対して耐性である癌などの過増殖性障害を治療する方法において、前記キットを用いる。様々な実施形態においては、第1成分と第2成分を同時に投与する。他の実施形態においては、第1成分と第2成分を連続的に、任意の順序で投与する。
【0233】
いくつかの実施形態においては、前記キットは、HER3の発現を阻害する(例えば、下方調節による)ことができるオリゴマー、またはそのコンジュゲートおよび/もしくは医薬組成物を含む第1成分と、本明細書に記載のようなHER2および/もしくはEGFR発現を阻害する(例えば、下方調節による)ことができるアンチセンスオリゴヌクレオチド、またはそのコンジュゲートおよび/もしくは医薬組成物である第2成分とを含む。
【0234】
(実施例)
6.実施例
6.1. 実施例1:モノマー合成
LNAモノマー構成要素およびその誘導体を、公開された手順に従って調製した。WO07/031081およびそこに引用された参考文献を参照されたい。
【0235】
6.2. 実施例2:オリゴヌクレオチド合成
オリゴヌクレオチドを、WO07/031081に記載の方法に従って合成した。表1は、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドモチーフの例を示す。
【0236】
6.3. 実施例3:オリゴヌクレオチドの設計
本発明に従って、ヒトHER3(GenBankアクセッション番号NM_001982、配列番号197)に加えて、ヒトEGFR (GenBankアクセッション番号NM_005228、配列番号198)およびヒトHER2 (GenBankアクセッション番号NM_004448、配列番号199)の様々な領域を標的化する一連のオリゴヌクレオチドを設計した。
【0237】
以下の表1に示される配列のうち、配列番号1〜50、53、139および140は、ヒトHER3に加えて、ヒトEGFRおよびヒトHER2を標的化するために設計されたものである。HER3、EGFRおよびHER2との配列相同性%を示す。オリゴマーの配列は、EGFRの最良に整列された標的領域の配列と比較した場合、0〜2個の不一致を含み、HER2の最良に整列された標的領域の配列と比較した場合、1〜2個の不一致を含む。
【表1】






【0238】
表2において、太字は表1に示されたより短い配列を表す。
【表2】


【0239】
表3に示される配列番号141〜168において、大文字はヌクレオシド類似体モノマーを示し、下付文字「s」はホスホロチオエート結合を表す。小文字はDNAモノマーを表す。モノマーの間に「s」が存在しない場合、ホスホジエステル結合を示す。
【表3】


【0240】
6.4. 実施例4:in vitroモデル:細胞培養物
標的核酸発現に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの効果を、標的核酸が測定可能なレベルで存在するという条件で、様々な細胞型のいずれかにおいて試験することができる。標的を内因的に発現させるか、または該標的をコードする核酸の一過的もしくは安定なトランスフェクションにより発現させることができる。標的核酸の発現レベルを、例えば、ノーザンブロット分析、リアルタイムPCR、またはリボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて、日常的に決定することができる。例示目的のために以下の細胞型を提供するが、標的が選択された細胞型において発現されるという条件で、他の細胞型を日常的に用いてもよい。
【0241】
細胞を以下に記載の好適な培地中で培養し、37℃、95〜98%湿度および5%CO2で維持した。細胞を日常的に週に2〜3回継代した。
【0242】
15PC3:ヒト前立腺癌細胞系15PC3を、DMEM(Sigma) + 10%ウシ胎仔血清(FBS) + 2 mM Glutamax I + ゲンタマイシン(25μg/ml)中で培養した。
【0243】
HUH7:ヒト肝細胞癌細胞系を、DMEM(Sigma) + 10%ウシ胎仔血清(FBS) + 2 mM Glutamax I + ゲンタマイシン(25μg/ml) + 1x非必須アミノ酸中で培養した。
【0244】
6.5. 実施例5:in vitroモデル:アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いる処理
トランスフェクションビヒクルとして陽イオン性リポソーム製剤LipofectAMINE 2000(Gibco)を用いて、細胞をオリゴヌクレオチドで処理した。細胞を6穴細胞培養プレート(NUNC)中に播種し、80〜90%集密になった時に処理した。オリゴマー濃度は1 nM〜25 nMの最終濃度であった。オリゴマー-脂質複合体の製剤化を、無血清OptiMEM(Gibco)および最終脂質濃度5μg/mLのLipofectAMINE 2000を用いて本質的には製造業者により記載されたように実行した。細胞を37℃で4時間インキュベートし、オリゴマーを含有する培養培地の除去により処理を停止させた。細胞を洗浄し、血清を含有する培地を添加した。オリゴマー処理の後、細胞を20時間回復させた後、それらをRNA分析のために収穫した。
【0245】
6.6. 実施例6:in vitroモデル:RNAの抽出およびcDNA合成
上記のようにトランスフェクトされた細胞から、製造業者の説明書に従ってQiagen RNeasyキット(Qiagenカタログ番号74104)を用いて、総RNAを抽出した。第1鎖合成を、製造業者の説明書に従ってAmbion社製の逆転写酵素試薬を用いて実施した。
【0246】
各サンプルにつき、0.5μgの総RNAを、RNaseを含まないH2Oで10.8μlに調整し、2μlのランダムデカマー(50μM)および4μlのdNTPミックス(2.5 mMの各dNTP)と混合し、70℃に3分間加熱した後、サンプルを氷上で急速に冷却した。サンプルを氷上で冷却した後、2μlの10xバッファーRT、1μlのMMLV逆転写酵素(100 U/μl)および0.25μlのRNase阻害剤(10 U/ml)を各サンプルに添加した後、42℃で60分間インキュベートし、95℃で10分間、酵素を熱不活化し、次いで、サンプルを4℃に冷却した。
【0247】
6.7. 実施例7:in vitroモデル:リアルタイムPCRによるHER3、EGFRおよびHER2発現のオリゴヌクレオチド阻害の分析
HER3、EGFRおよびHER2発現のアンチセンス調節を、当業界で公知の様々な方法でアッセイすることができる。例えば、HER3、EGFRおよびHER2 mRNAレベルを、例えば、ノーザンブロット分析、競合的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、またはリアルタイムPCRにより定量することができる。リアルタイム定量的PCRが現在好ましい。RNA分析を総細胞RNAまたはmRNAに対して実施することができる。ノーザンブロット分析などの、RNA単離およびRNA分析の方法は当業界で日常的であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John WileyおよびSonsに教示されている。
【0248】
リアルタイム定量的(PCR)を、Applied Biosystem社から入手可能な、市販のMulti-Color Real Time PCR Detection Systemを用いて都合良く達成することができる。
【0249】
HER3、EGFRおよびHER2 mRNAレベルのリアルタイム定量的PCR分析
ヒトHER3、EGFRおよびHER2 mRNAのサンプル含量を、ヒトHER3、EGFRおよびHER2 ABI Prism Pre-Developed TaqMan Asssay Reagents (Applied Biosystems社カタログ番号Hs00951444_m1 (HER3)、Hs00193306_m1 (EGFR)およびHs00170433_m1 (HER2))を製造業者の説明書に従って用いて定量した。
【0250】
グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH) mRNA量を、サンプル調製における任意の分散を正規化するための内部対照として用いた。ヒトGAPDH mRNAのサンプル含量を、ヒトGAPDH ABI Prism Pre-Developed TaqMan Asssay Reagents (Applied Biosystems社カタログ番号4310884E)を製造業者の説明書に従って用いて定量した。
【0251】
リアルタイム定量的PCRは、当業界でよく知られた技術であり、例えば、Heidら、Real time quantitative PCR, Genome Research (1996), 6: 986-994に教示されている。
【0252】
リアルタイムPCR
実施例5に記載のように実施された第1鎖合成に由来するcDNAを2〜20倍に希釈し、Applied Biosystems社製Taqman 7500 FASTまたは7900 FASTを用いるリアルタイム定量的PCRにより分析した。プライマーとプローブを、2x Taqman Fast Universal PCRマスターミックス(2x) (Applied Biosystems社カタログ番号4364103)と混合し、4μlのcDNAに添加して、最終容量10μlにした。各サンプルを2回分析した。目的のRNAを発現する細胞系から精製された材料上で調製されたcDNAの2倍希釈液をアッセイしたところ、アッセイのための標準曲線が得られた。非鋳型対照のために、cDNAの代わりに滅菌H2Oを用いた。PCRプログラム:95℃で30秒間、次いで、95℃で3秒間、60℃で20〜30秒間の40サイクル。標的mRNA配列の相対量を、Applied Biosystems Fast System SDS Software Version 1.3.1.21.またはSDS Software Version 2.3を用いて計算された閾値サイクルから決定した。
【0253】
6.8. 実施例8:in vitro分析:オリゴヌクレオチド化合物によるヒトHER3、EGFRおよびHER2発現のアンチセンス阻害
表4に提示されるオリゴヌクレオチドを、15PC3細胞(または*により示されるHUH-7)中で、1、5および25 nMの濃度でHER3、EGFRおよびHER2 mRNAを下方調節するその能力について評価した(図2、3、4および5を参照)。配列番号235および236を、スクランブル対照として用いた。
【0254】
表4のデータを、25 nMでモックトランスフェクトされた細胞と比較したmRNAの下方調節(%)として提示する。小文字はDNAモノマーを表し、太字、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す。LNAモノマー中の全てのシトシンは5-メチルシトシンである。下付文字「s」は、ホスホロチオエート結合を表す。
【表4】


【0255】
表4に示されるように、配列番号169、170、173、174、180、181、183、185、187、188、189、190、191、192および194に示される配列を有するオリゴヌクレオチドは、これらの実験において、15PC3細胞中、25 nMでHER3 mRNA発現の約85%以上の阻害を示したため、これらが好ましい。
【0256】
また、例えば、長さ(より短いか、もしくはより長い)および/またはモノマー含量(例えば、ヌクレオシド類似体モノマーの型および/もしくは比率)が変化した、例示されたアンチセンスオリゴマー配列に基づくオリゴヌクレオチドも好ましく、HER3発現の良好な阻害を提供する。
【0257】
6.9. 実施例9:LNAオリゴヌクレオチドによるアポトーシス誘導
トランスフェクションの前日に、2.5 x 105細胞/ウェルの密度で6穴培養プレート(NUNC)中にHUH7細胞を播種した。75〜90%集密になった時、トランスフェクションビヒクルとして陽イオン性リポソーム製剤LipofectAMINE 2000(Gibco)を用いて、細胞をオリゴヌクレオチドで処理した。用いたオリゴマー濃度は、5 nMおよび25 nM(ウェル中での最終濃度)であった。オリゴマー-脂質複合体の製剤化を、無血清OptiMEM(Gibco)および最終脂質濃度5μg/mLのLipofectAMINE 2000を用いて、本質的には製造業者により記載されたように実行した。細胞を37℃で4時間インキュベートし、オリゴマーを含有する培養培地の除去により処理を停止させた。Optimemで洗浄した後、細胞がウェルから剥離するまで、300μlのトリプシンを各ウェルに添加した。ウェルに3 mlのHUH7培養培地を添加することによりトリプシンを不活化し、細胞懸濁液を上下に穏やかにピペッティングすることにより単一の細胞懸濁液を作製した。スクランブルオリゴマー配列番号235を対照として用いた。
【0258】
この後、100μlの細胞懸濁液を、Nunc社製白色96穴プレート(カタログ番号136101)の各ウェルに添加した(様々な時点での測定のために4個のプレートを調製した)。次いで、プレートを37℃、95%湿度および5%CO2でインキュベートした後、アッセイを実施した。
【0259】
キャスパーゼアッセイ:アポトーシス特異的キャスパーゼ3および7の活性を、発光キャスパーゼ-Glo 3/7基質アッセイ(Promega社カタログ番号G8091)を用いて測定した。分析しようとするプレートを、15分間室温に平衡化させた。キャスパーゼ-Glo(登録商標)3/7バッファーを、キャスパーゼ-Glo(登録商標)3/7基質と混合して、キャスパーゼ-Glo(登録商標)ワーキング溶液を形成させ、室温に平衡化させた。次いで、100μlのキャスパーゼ-Glo(登録商標)ワーキング溶液を、96穴プレートの各ウェル中の培地に注意深く添加した(気泡およびウェル間の夾雑を避ける)。プレートを注意深く1分間振とうした後、それを室温で1時間インキュベートし、光から保護した。キャスパーゼ活性を、Luminoscan Ascent装置(Thermo Labsystems社)中、相対光単位/秒(RLU/s)として測定した。データを補正し、モックサンプルの平均値に対してデータを補正し、プロットし、1に設定した。図6を参照されたい。
【0260】
6.10. 実施例10:LNAオリゴヌクレオチドを用いる増殖のin vitroでの阻害
HUH7細胞をトランスフェクトし、実施例9に記載のように単一の細胞懸濁液中に収穫した。配列番号235をスクランブル対照として用いた。収穫後、MTSアッセイのために100μlの細胞懸濁液を96穴プレート(「Orange Scientific」)の各ウェルに添加した(様々な時点での測定のために4個のプレートを調製した)。次いで、アッセイを実施するまで、プレートを37℃、95%湿度および5%CO2でインキュベートした。
【0261】
増殖中の生細胞の測定(MTSアッセイ)
増殖アッセイのために、10μlのCellTiter 96(登録商標)AQueous One Solution Cell Proliferation Assay (Promega, G3582)を、96穴プレートの各ウェルの培地に添加し、プレートを注意深く振とうし、37℃、95%湿度および5%CO2で1時間インキュベートした後、測定した。分光光度計中、490 nmで吸光度を測定し、アッセイのためのバックグラウンドを、培地のみを含むウェルから差し引いた。490 nmでの吸光度は、生細胞数に比例し、これを、モックトランスフェクトされた細胞およびオリゴマーでトランスフェクトされた細胞について時間に対してプロットした。図7を参照されたい。
【0262】
6.11. 実施例11:in vivoでの標的mRNAノックダウンの評価
in vivoでのHER3オリゴマー化合物のノックダウン効果を評価するために、右腋窩側腹部への5 x 106細胞/マウスの皮下注射により開発した15PC3異種移植片を担持するメスのヌードマウスに、様々な用量および注射スケジュール(すなわち、単回用量、qd、q3d、q4d)でオリゴマーを静脈内注射した。スクランブルオリゴマー配列番号236を陰性対照として用いた。最後の注射の24時間後、マウスを安楽死させ、肝臓および腫瘍組織をRNAlater溶液(Ambion)中に回収した。総RNAを組織から精製し、HER3 mRNAのレベルを、QuantiTect Probe RT-PCRキット(カタログ番号204443;Qiagen)を用いる定量的逆転写リアルタイムPCR(qRT-PCR)により決定した。GAPDH mRNAを内部対照として用いた。
【0263】
マウスHER3: プローブ: cca cac ctg gtc ata gcg gtg a、プライマー-1: ctg ttt agg cca agc aga gg、プライマー-2: att ctg aat cct gcg tcc ac。
【0264】
ヒトHER3: プローブ: cat tgc cca acc tcc gcg tg、プライマー-1: tgc agt gga ttc gag aag tg、プライマー-2: ggc aaa ctt ccc atc gta ga。
【0265】
ヒトGAPDH: プローブ: act ggc gct gcc aag gct gt、プライマー-1: cca ccc aga aga ctg tgg at、プライマー-2: ttc agc tca ggg atg acc tt。
【0266】
マウスGAPDH: プローブ: agc tgt ggc gtg atg gcc gt、プライマー-1: aac ttt ggc att gtg gaa gg、プライマー-2: gga tgc agg gat gat gtt ct。
【0267】
200 ngの総RNAをPCR反応において用いた。ABI-7500 PCR Fast Systemに含まれるソフトウェアを用いることにより、データ分析を実施した。表5を参照されたい。
【0268】
表5のデータを、5日間連続で示された用量のオリゴヌクレオチドを動物に静脈内投与した後、肝臓および腫瘍サンプル中での塩水処理対照と比較したHER3 mRNAレベル(%)として提示する。
【表5】

【0269】
6.12. 実施例12:腫瘍増殖阻害の評価
in vivoで腫瘍増殖を阻害するHER3特異的LNAの能力を、15PC3異種移植片を担持するメスのヌードマウスにおいて評価した。15PC3ヒト前立腺腫瘍モデルを、右腋窩側腹部への5 x 106細胞/マウスの皮下注射により開発した。キャリパーで2つの寸法を測定し、式:腫瘍体積=(長さx幅2)/2)を用いて算出することにより、腫瘍体積を決定した。腫瘍が70〜100 mm3の平均体積に達した時、腫瘍を担持するマウスを治療群と対照群とに分けた。q3d x 10スケジュールで、それぞれ25および50 mg/kgの配列番号180をマウスに静脈内注射した。塩水または配列番号236を有するスクランブルオリゴヌクレオチドを対照として用いた。マウスの体重および腫瘍サイズを週に2回測定した。臨床観察、臨床化学および組織病理学的検査により、毒性を評価した。実施例11に記載のQPCRにより、腫瘍のHER3 mRNAを測定した。図8Aおよび8Bを参照されたい。
【0270】
6.13. 実施例13:マウス肝臓でのHER3 mRNAの阻害
3日間連続で1または5 mg/kgのオリゴヌクレオチドをNMRIマウスに静脈内投与した(5匹のマウス/群)。アンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号180および配列番号234)を、0.9%塩水(NaCl)に溶解した。最後の投与の24時間後に動物を犠牲にし、肝臓組織をサンプリングし、RNA抽出およびQPCR分析までRNAlater(Ambion)中に保存した。総RNAを抽出し、肝臓サンプル中のHER3 mRNA発現を、マウスHER3 QPCRアッセイ(カタログ番号Mm01159999_m1、Applied Biosystems)を用いて、実施例7に記載のようなQPCRにより測定した。結果をマウスGAPDH(カタログ番号4352339E、Applied Biosystems)に対して正規化し、塩水処理対照と比較してプロットした(図9を参照)。
【0271】
6.14. 実施例14:オリゴマーとポリエチレングリコールとのコンジュゲートの調製
配列番号141または配列番号152に示される配列を有するオリゴマーを、日常的なホスホルアミダイト化学を用いて、Fmocなどのブロッキング基でブロックしたヘキサン-1-アミンなどのアミノアルキル基を、オリゴマーの5'リン酸基に結合させ、得られた化合物を酸化し、それらを脱保護し、それらを精製することにより、5'末端上で官能化して、それぞれ、式(IA)および(IB):
【化5】

【0272】
(式中、太字の大文字はヌクレオシド類似体モノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付文字「s」はホスホロチオエート結合を表す)
を有する官能化オリゴマーを達成する。
【0273】
PBSバッファー中の式(II):
【化6】

【0274】
(式中、PEG部分は12,000の平均分子量を有する)
に示されるものなどの活性化PEG、ならびに式(IA)および(IB)の化合物の各々の溶液を、室温で12時間、個別の容器中で攪拌する。反応溶液を塩化メチレンで3回抽出し、合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させる。得られた残渣を再蒸留水に溶解し、陰イオン交換カラム上に充填する。
【0275】
未反応のPEGリンカーを水で溶出させ、生成物をNH4HCO3溶液で溶出させる。純粋な生成物を含有する画分をプールし、凍結乾燥すれば、それぞれ、式(IIIA)および(IIIB):
【化7】

【0276】
(式中、配列番号141および152のオリゴマーはそれぞれ、遊離可能なリンカーを介して12,000の平均分子量を有するPEGポリマーに結合する)
に示されるコンジュゲート配列番号141および152が得られる。
【0277】
上記のプロセスを用いて配列番号169、180および234に示される配列を有するオリゴマーを用いて作製することができるPEGポリマーコンジュゲートの化学構造を、それぞれ、式(IVA)、(IVB)および(IVC):
【化8】

【0278】
(式中、太字の大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付文字「s」はホスホロチオエート結合を表し、MeCは5-メチルシトシンを表す)
に示す。
【0279】
それぞれ式(IVA)、(IVB)および(IVC)に示されるコンジュゲートを作製するためのこのプロセスにおいて用いることができる活性化オリゴマーは、式(VA)、(VB)および(VC):
【化9】

【0280】
に示される化学構造を有する。
【0281】
6.15. 実施例15:様々な投与周期を用いるin vivoでの標的mRNAノックダウンの評価
実施例11に上記されたものと同様のプロトコルを用いて、15PC3細胞またはA549細胞(NSCLC)またはN87細胞(胃癌)から誘導された異種移植片腫瘍を担持するヌードマウスにおいて、オリゴマーのノックダウン効果をin vivoで評価した。2〜4回の投与で3日毎にオリゴマーを注射により投与した。組織を、最後の注射の3または4日後に収穫した。
【0282】
表6および7のデータを、示されたオリゴマーを動物に静脈内投与した後、肝臓および腫瘍サンプル中での塩水処理対照と比較したHER3 mRNAまたはHIF-1α mRNA(%)として提示する。
【表6】

【0283】
配列番号169および配列番号180の配列を有するオリゴマーの観察されたノックダウン効果は、同様の効果がA549(NSCLC)およびN87(胃癌)細胞から誘導された腫瘍においても観察されたため、15PC3腫瘍細胞に独特であるわけではない。以下の表7を参照されたい。
【表7】

【0284】
6.16. 実施例16:ゲフィチニブ耐性細胞系の作製
HCC827肺腺癌細胞(ATCC CRL-2868)を、10%ウシ胎仔血清を補給したRPMI培地中、5%CO2および95%空気の加湿雰囲気中、37℃で維持した。ゲフィチニブ耐性を作製するために、細胞を3ヶ月間、大量のゲフィチニブ(最大500 nM)で処理した。3ヶ月間の終わりに、MTT((3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを用いて、親細胞およびHCC827Rゲフィチニブ耐性細胞の両方と比較した細胞増殖を試験した。結果は、HCC827R細胞が、試験した最も高い濃度(10μM)でもゲフィチニブに対して耐性であることを示す(図10)。
【0285】
6.17. 実施例17:ゲフィチニブ耐性細胞系の特性評価
HCC827およびゲフィチニブ耐性細胞HCC827Rにおける受容体チロシンキナーゼ(「RTK」)の発現レベルおよびリン酸化状態を、RTK Antibody Arrayキット(R&D Systems, Inc., Minneapolis, MN)を用いてプロファイルした。簡単に述べると、細胞を溶解バッファー中で可溶化し、細胞溶解物中の総タンパク質濃度を決定した。500μgの総タンパク質をアレイインキュベーションバッファー中に希釈し、アレイ膜と共にインキュベートし、製造業者により提供されたプロトコルに従って処理した。最終画像化結果(図11)は、HCC827R細胞中のリン酸化EGFRレベルが親のものよりも非常に低かったことを示している。
【0286】
ウェスタンブロット分析
HCC827およびゲフィチニブ耐性クローン(R2、R3およびR5)を、24時間、1μMのゲフィチニブを含む(+)または含まない(-)培地中で培養した。次いで、細胞溶解物を調製し、総タンパク質濃度を決定した。約15μg/レーンのタンパク質を8%SDS-PAGEゲル中で電気泳動し、BioRad液体トランスファー装置を用いてPVDFに移した。好適な西洋ワサビペルオキシダーゼ結合第2抗体(Transduction Labs)および増強化学発光試薬(SuperSignal, Pierce)を用いて、ウェスタン分析を実施した。用いた一次抗体(Ab)としては、Cell Signaling社製の抗MetモノクローナルAb(25H2)、抗蛍光体Met(Y1234)ウサギモノクローナルAb(D26)、および抗蛍光体ErbB3(Y1289)ウサギモノクローナルAb(21D3);Santa Crutz社製の抗ErbB3 Ab(sc285);Abcam社製の抗蛍光体Met(Y1349)Ab(Ab4706R)、抗蛍光体EGFRウサギモノクローナルAb(Ab40815)、および抗EGFR Ab;ならびにロード対照のための西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗チューブリンAbが挙げられる。
【0287】
データは、非リン酸化およびリン酸化EGFRのレベルが、未処理の(「-」)親細胞における非リン酸化およびリン酸化EGFRのレベルと比較して、ゲフィチニブの存在下(「+」)または非存在下(「-」)で、HCC827ゲフィチニブ耐性クローンにおいて有意に低下することを示す。対照的に、EGFRシグナリング経路にも関与する、ErbB3またはMETのレベルは、親細胞と比較して、耐性クローンにおいて有意に低下しない。これらの知見は、EGFRの下方調節が、いくつかの癌細胞がゲフィチニブに対する耐性を獲得する機構であり得ることを示唆している。
【0288】
6.18. 実施例18:ゲフィチニブ耐性細胞に対するオリゴマーの効果
HCC287およびHCC287R細胞を、6穴プレートに200個の細胞/ウェルで2回播種し、24時間インキュベートした。細胞を1μMのON180(配列番号180)で処理し、10日間インキュベートした後、細胞をMTTで染色し、コロニー数を計数した。対照の割合(%)を、HCC827およびHCC827R細胞の両方について算出した。図13に示される結果は、オリゴヌクレオチドON180が、HCC827ゲフィチニブ感受性細胞の増殖の下方調節(未処理対照と比較して細胞増殖が約50%減少)におけるよりも、ゲフィチニブ耐性細胞の下方調節(未処理対照と比較して細胞増殖が80%以上減少)において有意に有効であることを示している。
【0289】
本発明のさらなる態様および実施形態を、図14〜16に関して例示する。
【0290】
図14は、トラスツズマブではなく、HER3発現を減少させるLNAオリゴマーが、3種のヒト乳癌細胞系、BT474、SKBR3およびMDA453において、ラパチニブによるHER3およびP-HER3発現のフィードバック上方調節を防止することができることを示す。ラパチニブのみで処理した細胞(1)、ラパチニブとトラスツズマブで処理した細胞(2)、ラパチニブと配列番号180で処理した細胞(3)および配列番号180のみで処理した細胞(4)について示されるように、0、1、4、24および48時間でのHER3、P-HER3(Y1197)およびP-HER3(Y1289)の発現レベルを示す。ラパチニブを1μMの濃度で、トラスツズマブを10μg/mlの濃度で、配列番号180を5μMの濃度で用いた。
【0291】
図15は、3種のヒト乳癌細胞におけるアポトーシスの相乗的促進が、ラパチニブとトラスツズマブの組合せよりも、ラパチニブとHER3発現を減少させるLNAオリゴマーとの組合せについてより多いことを示す。この図は、3種の細胞系のそれぞれに関して実施されたApoBrdUアポトーシスアッセイの結果を示す(図14と同じ系)。細胞を、ラパチニブおよび/またはトラスツズマブで48時間処理した。72時間で、細胞を血清飢餓させ、配列番号180またはランダム対照オリゴマーで処理した。各細胞系について、処理はランダムオリゴヌクレオチド対照のみ(1)、配列番号180のみ(2)、トラスツズマブのみ(3)、ラパチニブのみ(4)、ラパチニブと配列番号180(5)、およびラパチニブとトラスツズマブ(6)であった。ラパチニブを1μMの濃度で、トラスツズマブを10μg/mlの濃度で、および配列番号180を5μMの濃度で用いた。
【0292】
図16は、配列番号180が、HCC827ヒト細胞系を用いるヒト非小細胞肺癌のin vivoマウス異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害することを示す。平均腫瘍体積は、約31日で30 mg/kgの配列番号180の静脈内処理については、塩水対照に対して65.5%低下し、約31日で45 mg/kgの配列番号180の静脈内処理については、塩水対照に対して81.3%低下した。N=6。
【0293】
特定の実施形態、参考文献の引用
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によってその範囲を限定されるものではない。実際、本明細書に記載のものに加えて、本発明の範囲内の様々な改変が、前記説明および添付の図面から当業者には明らかとなるであろう。さらに、本発明の一実施形態と関連して記載された特徴を、上記に明確に記述されていない場合でも、他の実施形態と共に用いることができる。
【0294】
特許出願、特許、および科学出版物などの様々な参考文献が本明細書で引用されている;そのような参考文献のそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に組入れられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における癌を治療する方法であって、
タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を該哺乳動物に投与すること;および、
該哺乳動物にHER3の発現を低下させる少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーまたはそのコンジュゲートを投与すること、
を含み、タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤の阻害活性とHER3の発現の低下が一時的に重複する、前記方法。
【請求項2】
癌が乳癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
癌がタンパク質キナーゼ阻害剤を用いる治療に対して少なくとも部分的に耐性であり、該耐性がHER3の発現を低下させる少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーまたはそのコンジュゲートを投与することにより少なくとも部分的に逆転する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
癌が乳癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤が、ゲフィチニブ、イマチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブおよびソラフェニブからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーまたはそのコンジュゲートが、治療上有効量の5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3’(配列番号180)
(式中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付文字「s」はホスホロチオエート結合を表し、およびMeCは5-メチルシトシン塩基を含むβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す)
またはそのコンジュゲートを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
哺乳動物におけるタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤耐性癌の治療のための医薬の調製における、HER3の発現を低下させる少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーまたはそのコンジュゲートの使用。
【請求項8】
少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーまたはそのコンジュゲートが、治療上有効量の5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3’ (配列番号180)
(式中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付文字「s」はホスホロチオエート結合を表し、およびMeCは5-メチルシトシン塩基を含むβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す)
またはそのコンジュゲートを含む、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
哺乳動物における癌を治療する方法であって、
該哺乳動物にHER2阻害剤を投与すること;および、
該哺乳動物にHER3の発現を低下させる少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーまたはそのコンジュゲートを投与すること、
を含み、HER2阻害剤の阻害活性とHER3の発現の低下が一時的に重複する、前記方法。
【請求項10】
癌が乳癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
癌がHER2阻害剤を用いる治療に対して少なくとも部分的に耐性であり、該耐性が、HER3の発現を低下させる少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーまたはそのコンジュゲートを投与することにより少なくとも部分的に逆転する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
癌が乳癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
HER2阻害剤がトラスツズマブおよびペルツズマブからなる群より選択される、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーまたはそのコンジュゲートが、治療上有効量の5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3’ (配列番号180)
(式中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付文字「s」はホスホロチオエート結合を表し、およびMeCは5-メチルシトシン塩基を含むβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す)
またはそのコンジュゲートを含む、請求項9〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
HER2阻害剤を用いる治療に対して少なくとも部分的に耐性である哺乳動物における癌の治療のための医薬の調製における、HER3の発現を低下させる少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーまたはそのコンジュゲートの使用。
【請求項16】
少なくとも1種のアンチセンスオリゴマーまたはそのコンジュゲートが、治療上有効量の5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3’ (配列番号180)
(式中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付文字「s」はホスホロチオエート結合を表し、およびMeCは5-メチルシトシン塩基を含むβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す)
またはそのコンジュゲートを含む、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
哺乳動物における癌を治療する方法であって、隣接するモノマーがリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合された10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーの有効量を哺乳動物に投与することを含み、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシド類似体であり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最良に整列された標的領域の逆相補体と少なくとも80%同一であり;および癌がタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である、前記方法。
【請求項18】
癌が、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、頸部癌、精巣癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、黒色腫、頭部および頸部癌、脳腫瘍、未知の原発部位の癌、新生物、末梢神経系の癌、中枢神経系の癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、小細胞肺癌、上皮癌、グリオーマ、アストロサイトーマ、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
オリゴマーの第1領域の配列が、配列番号1〜140および169〜234に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列と少なくとも80%同一である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
オリゴマーの第1領域の配列が、配列番号1、54、200または211に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列と少なくとも80%同一である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
オリゴマーの第1領域の配列が、配列番号169または180に存在する少なくとも10個の連続するモノマーの領域の配列と少なくとも80%同一である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤が、ゲフィチニブ、イマチニブ、エルロチニブ、カネルチニブ、バンデタニブ、ラパチニブ、ソラフェニブ、AG-494、RG-13022、RG-14620、BIBW 2992、チロホスチンAG-825、チロホスチン9、チロホスチン23、チロホスチン25、チロホスチン46、チロホスチン47、チロホスチン53、ブテイン、クルクミン、AG-1478、AG-879、シクロプロパンカルボン酸-(3-(6-(3-トリフルオロメチル-フェニルアミノ)-ピリミジン-4-イルアミノ)-フェニル)-アミド、N8-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N2-(1-メチルピペリジン-4-イル)-ピリミド[5,4-d]ピリミジン-2,8-ジアミン,2HCl (CAS 196612-93-8)、4-(4-ベンジルオキシアニリノ)-6,7-ジメトキシキナゾリン、N-(4-((3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ)ピリド[3,4-d]ピリミジン-6-イル)2-ブチナミド(CAS 881001-19-0)、EKB-569、HKI-272、およびHKI-357からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
オリゴマーの第1領域中の少なくとも1個のモノマーが、LNAモノマー、2'-O-アルキル-リボース糖を含有するモノマー、2'-O-メチル-リボース糖を含有するモノマー、2'-アミノ-デオキシリボース糖を含有するモノマー、および2'フルオロ-デオキシリボース糖を含有するモノマーからなる群より選択されるヌクレオシド類似体である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
オリゴマーの第1領域中の少なくとも1個のモノマーが、LNAモノマーである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
哺乳動物がタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤で以前に治療された、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
哺乳動物がタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤で以前に治療されなかった、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤がゲフィチニブである、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
哺乳動物における癌を治療する方法であって、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3’ (配列番号180)
(式中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付文字「s」はホスホロチオエート結合を表し、およびMeCは5-メチルシトシン塩基を含むβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す)
からなるオリゴマーの有効量を前記哺乳動物に投与することを含み、癌がタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である、前記方法。
【請求項29】
タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤がゲフィチニブである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
哺乳動物における癌を治療する方法であって、隣接するモノマーがリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合される、10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーのコンジュゲートの有効量を前記哺乳動物に投与することを含み、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシド類似体であり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最良に整列された標的領域の逆相補体と少なくとも80%同一であり;および前記癌がタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いる治療に対して耐性である、前記方法。
【請求項31】
前記コンジュゲートが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3’ (配列番号180)
(式中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付文字「s」はホスホロチオエート結合を表し、およびMeCは5-メチルシトシン塩基を含むβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す)
からなるオリゴマーのコンジュゲートである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
哺乳動物癌細胞の増殖を阻害する方法であって、該細胞と、隣接するモノマーがリン酸基またはホスホロチオエート基により共有結合される、10〜50個の連続するモノマーからなるオリゴマーの有効量とを接触させることを含み、該オリゴマーが少なくとも10個の連続するモノマーの第1領域を含み、該第1領域の少なくとも1個のモノマーがヌクレオシド類似体であり、該第1領域の配列が哺乳動物HER3遺伝子または哺乳動物HER3 mRNAの最良に整列された標的領域の逆相補体と少なくとも80%同一であり;および前記哺乳動物癌細胞の増殖がタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤により阻害されない、前記方法。
【請求項33】
前記オリゴマーが、配列:
5'-TsAsGscscstsgstscsascststsMeCsTsMeC-3’ (配列番号180)
(式中、大文字はβ-D-オキシ-LNAモノマーを表し、小文字はDNAモノマーを表し、下付文字「s」はホスホロチオエート結合を表し、およびMeCは5-メチルシトシン塩基を含むβ-D-オキシ-LNAモノマーを表す)
からなる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞の増殖が、同じ型の未処理細胞の増殖と比較した場合、少なくとも50%阻害される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記哺乳動物癌細胞が非小細胞肺癌細胞である、請求項32に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2012−524096(P2012−524096A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506153(P2012−506153)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/031005
【国際公開番号】WO2010/120861
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(596124151)エンゾン ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (24)
【出願人】(510144465)サンタリス ファーマ アー/エス (6)
【Fターム(参考)】