説明

ICカード、ICカード用基材、ICカードの製造方法、ICカードの製造装置、凹部形成済ICカード用基材の製造方法、および凹部形成済ICカード用基材の製造装置

【課題】 高い製造歩留まりで安価にICカードを製造することができるICカードの製造方法を提供する。
【解決手段】 ICカードの製造方法は、第1板状部材40と、第1板状部材上に積層された第2板状部材30と、第1板状部材と第2板状部材との間に設けられた接続端子34aを有するアンテナ回路34と、を有する基材20を準備する工程と、基材を切削して凹部22を形成する工程と、凹部内にレーザ光を照射して接続端子を露出させる工程と、凹部内にICモジュール11を配置し接続端子を介してアンテナ回路に接続させる工程と、を備えている。切削工程において、基材の接続端子上方を第2板状部材側表面から切削する。照射工程において、接続端子上方にレーザ光が照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部装置とデータの送受信を行うICカード、ICカードの製造方法、およびICカードの製造装置に係り、とりわけ、高い製造歩留まりで安価に製造することができるICカード、ICカードの製造方法、およびICカードの製造装置に関する。
【0002】
また、本発明は、ICモジュールと接続されることによって外部装置とデータの送受信を行うICカードを形成するICカード用基材であって、ICモジュールを収納する凹部が形成されたICカード用基材、凹部形成済ICカード用基材の製造方法および製造装置に係り、とりわけ、高い製造歩留まりで安価に製造することができるICカード用基材、凹部形成済ICカード用基材の製造方法、および凹部形成済ICカード用基材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0003】
昨今、リーダ・ライタ等の外部装置と非接触でデータの送受信を行うICカードが広く普及している。ICカードは、一般に、複数の板状部材と板状部材間に配置されたアンテナ回路とを有するICカード用基材と、IC回路を有しアンテナ回路に接続されたICモジュールと、を有している。
【0004】
また、ICモジュールが外部端子を有し、非接触状態だけでなく接触状態においても、外部装置とデータの送受信を行うことができるICカードも普及している。このようなICカードは、「ツーウェイカード」、「デュアルカード」、あるいは「ハイブリッドカード」と呼ばれることもある。
【0005】
このようなICカードは、まず、ICカード用基材を作製し、次に、ICカード用基材を一方の面から切削してアンテナ回路の接続端子を露出させる凹部を形成し、最後に、ICモジュールを凹部内に配置するとともに接続端子を介してアンテナ回路とICモジュールとを接続することにより、製造され得る(例えば、特許文献1)。このうちICカード用基材のアンテナ回路は、例えば、板状部材上に金属箔を接着しこの金属箔をエッチングにより所望の形状にパターニングすることにより、板状部材に接着された回路として作製される。
【特許文献1】特開平9−123654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この製造方法において、切削して凹部内に接続端子を露出させる工程中に接続端子を厚く切削し過ぎた場合、言い換えると、板状部材上に残存する接続端子の厚みが薄くなり過ぎた場合、切削手段の切削刃の通過にともなって接続端子が板状部材上から剥離してめくれあがってしまう、という不具合が生じる。このような不具合を考慮すると、接続端子を形成する金属箔の厚みを少なくとも40μm程度以上に設定しなければならない。また、金属箔の厚みが40μm程度以上であったとしても、切削手段による切削切り込み移動量の精度や切削刃の取付精度等に起因して、多数の切削不良品が発生するという不具合が生じている。
【0007】
一方、今般、本発明者がアンテナ回路にICモジュールを接続して実験したところ、接続端子の厚みが10μm以下であっても、外部装置を用いたアンテナ回路を介してのICモジュールとの通信が十分可能であることが判明した。金属箔は比較的高価であり、金属箔の厚みが厚くなることによりICカードの製造コストが高くなってしまう。
【0008】
ところで、通常、ICカード用基材の板状部材は白色系のプラスチックから構成される一方で、アンテナ回路は板状部材とは異なる色を有した銅やアルミニウムから構成される。したがって、凹部内に接続端子が露出していない切削不良品は視覚的に検出可能であり、切削不良品をICカードの製造工程中において排除することができるものと考えられていた。しかしながら、今般、本発明者が発生した不良品について鋭意研究を重ねた結果、アンテナ回路を板状部材に固定するための無色透明な接着層が排除されきれておらず、この接着層によって接続端子とICモジュールとの接続が妨げられている不良品ICカードが、全不良品中に多数含まれている、との知見を得た。すなわち、接着層が接続端子上から除去されていない切削不良品が多数発生しており、これらの切削不良品が検出されることなくその後の処理を施されているのである。このことは、良品率を下げるだけでなく、全体としての生産効率を著しく悪化させることになる。
【0009】
さらに、通常プラスチック等から構成されるICカード用基材の板状部材と、通常金属箔から構成される接続端子との強度は大きく異なる。このように大きく異なる強度を有した材料を同時に切削する場合、切削刃への負担が大きく、切断刃の寿命が短くなってしまう。微細で切削許容誤差範囲の狭い凹部を形成するための切削刃は高価であることから、切削刃を頻繁に交換しなければならないということは、切削刃の取付精度に起因した切削不良品を増加させるだけでなく、ICカードの製造コストを大きく増大させてしまうことにもなる。
【0010】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、接続端子を露出させる凹部がICカード用基材に精度良く形成され、これにより、高い製造歩留まりで安価に製造することができるICカード、ICカード用基材、ICカードの製造方法、ICカードの製造装置、凹部形成済ICカード用基材の製造方法、および凹部形成済ICカード用基材の製造装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1板状部材と、第1板状部材上に積層された第2板状部材と、第1板状部材と第2板状部材との間に設けられた接続端子を有するアンテナ回路と、を有するICカード用基材の接続端子上方を、第2板状部材側のICカード用基材表面から切削して、凹部を形成する工程と、凹部内の接続端子上方にレーザ光を照射して、凹部内に接続端子を露出させる工程と、凹部内にICモジュールを配置し、接続端子を介してICモジュールをアンテナ回路に接続させる工程と、を備えたことを特徴とするICカードの製造方法である。このような本発明によれば、ICカード用基材に形成された凹部内に精度良く接続端子を露出させることができ、これにより、ICカードを高い製造歩留まりで安価に製造することができる。
【0012】
また、切削する工程において、ICカード用基材を接続端子の近傍まで切削するようにしてもよい。この場合、レーザ光照射による除去量を低減することができ、より効率的かつ高精度で接続端子を凹部内に露出させることができる。
【0013】
さらに、ICカード用基材が第2板状部材と接続端子との間に介在する接着層をさらに有し、切削する工程において、接着層を露出させるよう、ICカード用基材を切削し、レーザ光を照射する工程において、接着層にレーザ光を照射するようにしてもよい。この場合、除去が容易な接着層のみをレーザ光によって除去することになり、より効率的かつ高精度で接続端子を凹部内に露出させることができる。
【0014】
さらに、レーザ光を照射する工程が、レーザ光を照射する第1照射工程と、第1照射工程の後に、第1照射工程より低出力でレーザ光を照射する第2照射工程と、を有するようにしてもよい。この場合、第1照射工程により接続端子上に酸化膜が形成されたとしても、形成された酸化膜を第2照射工程により大幅に低減することができる。これにより、最終的に得られるICカードの非接触での通信特性を向上させることができる。
【0015】
さらに、レーザ光を照射する工程において、YAGレーザ発振器から発振される1/2基本波長のレーザ光が照射されるようにしてもよい。
【0016】
さらに、レーザ光を照射する工程において、QスイッチパルスYAGレーザ発振器から発振されるレーザ光を照射するようにしてもよい。この場合、接続端子の露出表面の表面積が増大し、これにより、ICモジュールとアンテナ回路とを強固に固定することができるとともに、ICモジュールとアンテナ回路との接続抵抗値を低減することもできる。
【0017】
また、本発明は、第1板状部材と、第1板状部材上に積層された第2板状部材と、第1板状部材と第2板状部材との間に設けられた接続端子を有するアンテナ回路と、を有するICカード用基材の接続端子上方を、第2板状部材側のICカード用基材表面から切削して、凹部を形成する切削手段と、凹部内の接続端子上方にレーザ光を照射して、凹部内に接続端子を露出させるレーザ光照射手段と、凹部内にICモジュールを配置し、接続端子を介してICモジュールをアンテナ回路に接続させる配置接続手段と、を備えたことを特徴とするICカードの製造装置である。このような本発明によれば、ICカード用基材に形成された凹部内に精度良く接続端子を露出させることができ、これにより、ICカードを高い製造歩留まりで安価に製造することができる。
【0018】
また、切削手段は、ICカード用基材を接続端子の近傍まで切削するようになっていてもよい。この場合、レーザ光照射による除去量を低減することができ、より効率的かつ高精度で接続端子を凹部内に露出させることができる。
【0019】
さらに、ICカード用基材が第2板状部材と接続端子との間に介在する接着層をさらに有し、切削手段が、接着層を露出させるよう、ICカード用基材を切削するようになっており、レーザ光照射手段が、接着層にレーザ光を照射するようになっていてもよい。この場合、除去が容易な接着層のみをレーザ光によって除去することになり、より効率的かつ高精度で接続端子を凹部内に露出させることができる。
【0020】
さらに、レーザ光照射手段が、照射されるレーザ光の特性を変化させる機能を有していることが好ましい。
【0021】
さらに、レーザ光照射手段が、Qスイッチパルスレーザ発振器を有するようにしてもよい。この場合、接続端子の露出表面の表面積が増大し、これにより、ICモジュールとアンテナ回路とを強固に固定することができるとともに、ICモジュールとアンテナ回路との接続抵抗値を低減することもできる。
【0022】
さらに、本発明は、第1板状部材と、第1板状部材上に積層された第2板状部材と、第1板状部材と第2板状部材との間に設けられた接続端子を有するアンテナ回路と、を有するICカード用基材の接続端子上方を、第2板状部材側のICカード用基材表面から切削して、凹部を形成する工程と、凹部内の接続端子上方にレーザ光を照射して、凹部内に接続端子を露出させる工程と、を備えたことを特徴とする凹部形成済ICカード用基材の製造方法である。このような本発明によれば、凹部内に精度良く接続端子を露出させることができ、これにより、ICカードを高い製造歩留まりで安価に製造することができる。
【0023】
さらに、本発明は、第1板状部材と、第1板状部材上に積層された第2板状部材と、第1板状部材と第2板状部材との間に設けられた接続端子を有するアンテナ回路と、を有するICカード用基材の接続端子上方を、第2板状部材側のICカード用基材表面から切削して、凹部を形成する切削手段と、凹部内の接続端子上方にレーザ光を照射して、凹部内に接続端子を露出させるレーザ光照射手段と、を備えたことを特徴とする凹部形成済ICカード用基材の製造装置である。このような本発明によれば、凹部内に精度良く接続端子を露出させることができ、これにより、ICカードを高い製造歩留まりで安価に製造することができる。
【0024】
さらに、本発明は、第1板状部材と、第1板状部材に積層され貫通孔を有する第2板状部材と、第1板状部材と第2板状部材との間に設けられた接続端子であって、少なくとも一部分が第2板状部材の貫通孔内に配置された接続端子を有するアンテナ回路と、第2板状部材の貫通孔内に配置され、接続端子を介してアンテナ回路と接続されたICモジュールと、を備え、接続端子の厚みが25μm以下であることを特徴とするICカードである。このようなICカードにおいては、接続端子の厚みが従来に比べて格段に薄くなっており、これにより、安価に製造することができる。
【0025】
さらに、本発明は、ICモジュールと接続してICカードを形成するICカード用基材において、第1板状部材と、第1板状部材に積層され貫通孔を有する第2板状部材と、第1板状部材と第2板状部材との間に設けられた接続端子であって、少なくとも一部分が第2板状部材の貫通孔内に配置された接続端子を有するアンテナ回路と、を備え、貫通孔内に配置された接続端子に、略三日月状のくぼみが多数隣接して形成されていることを特徴とするICカード用基材である。このようなICカード用基材においては、多数形成されたくぼみにより貫通孔内に露出した接続端子の表面積が非常に大きくなる。これにより、ICモジュールとアンテナ回路とを強固に固定することができるとともに、ICモジュールとアンテナ回路との接続抵抗値を低減することもできる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、接続端子を露出させる凹部をICカード用基材に精度良く形成することができる。これにより、ICカードの製造歩留まりを向上させるとともにICカードの製造コストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1乃至図9は本発明によるICカード、ICカード用基材、ICカードの製造方法、ICカードの製造装置、凹部形成済ICカード用基材の製造方法、および凹部形成済ICカード用基材の製造装置の一実施の形態を示す図である。なお、図1乃至8において、ICカードおよびICカード用基材は、後に詳述する切削工程を開始する切削開始側の面が上方に配置されるよう、図示されている。
【0029】
<ICカード、ICカード用基材>
まず、主に図1乃至4に基づき、本実施の形態におけるICカード10およびICカード用基材20について説明する。
【0030】
ここで図1はICカードを示す斜視図であり、図2は図1のII−II線に沿った断面図であり、図3は凹部形成済みのICカード用基材を示す斜視図であり、図4はICカードを示す分解断面図である。
【0031】
図1および図2に示すように、ICカード10は、ICモジュール11と、凹部形成済ICカード用基材20と、を備えている。ここで凹部形成済ICカード用基材20とは、図3に示すように、ICモジュール11を収納するための凹部22が形成されたICカード用基材20のことである。
【0032】
このようなICカード10は、図示しない外部装置(リーダ・ライタ等)と非接触で通信することができ、外部装置からICモジュール11に記憶された情報を読み取ったり、ICモジュール11へ新たな情報を書き込んだりすることができるようになっている。なお、後述するように、本実施の形態においては、ICモジュール11に外部端子13aが設けられており(図1)、この外部端子13aを介した接触状態で、ICカード10と外部装置との間における情報の送受信を行うことも可能となっている。
【0033】
ICカード用基材20は、図4に示すように、第1板状部材40と、第1板状部材40の上側に積層された第2板状部材30と、第2板状部材30の上側に積層された第3板状部材と、第1板状部材40と第2板状部材30との間に設けられたアンテナ回路34と、を有している。
【0034】
各板状部材40,30,46の積層は、種々の方法を用いることができる。本実施の形態においては、図2から理解されるように、各板状部材40,30,46間にポリエステル系の熱可塑性樹脂からなる接着層25,28を設け、熱圧着処理を施すことにより、各板状部材が隣接する板状部材に対して接着固定されている。しかしながら、このような態様は一例であり、当然にこれに限定されるものではない。
【0035】
ICモジュール11を収納するための凹部22は、後述するように、ICカード用基材20に切削加工およびレーザ光照射を施すことによって形成される。後に図6乃至図8を用いて詳述するように、凹部22は、それぞれ切削加工によって形成される第3板状部材46の貫通孔48、第2板状部材30の貫通孔32、および第1板状部材40の開口孔42によって構成される(図8)。そして、図2に示されているように、第3板状部材46の貫通孔48、第2板状部材30の貫通孔32、および第1板状部材40の開口孔42は組み合わさってICモジュール11を収納することができるような形状となっている。
【0036】
第1乃至第3の板状部材40,30,46は、一般的に、白色系のPETや紙等からなり、非導電性である。一方、アンテナ回路34は、外部装置と非接触状態で通信する際にアンテナとして機能するものであり、銅やアルミニウム等の導電性材料から構成される。また、アンテナ回路34は、ICモジュール11と電気的に接続(導通)するための一対の接続端子34a,34aを有している。図5に示すように、接続端子34aは第2板状部材30の貫通孔32に対応する部分に配置されており、少なくとも接続端子34aの一部は、凹部22が形成されたICカード用基材20において、凹部22内に露出している。
【0037】
本実施の形態において、アンテナ回路34は、図3に示されているように、コイル状アンテナの形式をとっており、銅やアルミニウム等の導電性金属からなっている。また、図2および図4に示されているように、アンテナ回路34は、予め第2板状部材30の下側面に接着層24を介して接着されている。このようなアンテナ回路34は、例えば、まず、第2板状部材30に接着層24を介して銅やアルミニウム等の導電性金属箔を積層し、次に、エッチングにより所望の形状にパターニングすることにより、得られる。ここで接着層24としては、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0038】
ところで、第2板状部材30の上側面にも接着層24が設けられている(例えば、図4)。アンテナ回路34を形成するにあたり、アンテナ回路34のコイル部分を短絡しないよう、必要に応じて、銅やアルミニウム等の導電性金属からブリッジ部(図示せず)が設けられる。ブリッジ部は、例えば、図3における、アンテナ回路34のコイル部分を横切って接続端子34a(図3において右側に配置されている接続端子34a)まで延びる部分に設けられる。第2板状部材30の上側面に設けられた接着層24は、このようなブリッジ部を上述した方法と同様にして第2板状部材30の上側面に形成する際、金属箔を接着するために用いられるものである。なお、形成されたブリッジ部は、例えば、第2板状部材30を貫通する穴を設け、この穴を導電性材料(例えば、銀ペースト)で埋めることにより第2板状部分の下側面のアンテナ回路34と電気的に接続される。
【0039】
なお、ブリッジ部の構成は、上述した態様に限定されるものではなく、例えば、非導性接着剤を介して導電性材料(金属箔等)をアンテナ回路34の所望の場所に貼り付ける等、種々の方法で形成することができる。
【0040】
また、本実施の形態において、アンテナ回路34がコイル状アンテナからなる例を示したが、これに限られない。非接触状態での通信に用いられる電磁波によっては、例えば、ダイポールアンテナとして機能する、一対の略棒状の導電体によってアンテナ回路が構成されることもある。この場合、略棒状の導電体の一部が、ICモジュール11との接続用の接続端子34aを構成することになる。
【0041】
次に、図2を用いてICモジュール11について説明する。
【0042】
本願におけるICモジュール11とは、アンテナ回路34と接続されて外部装置と非接触状態で情報の送受信を行うことができる機能を有した要素であり、本実施の形態におけるICモジュール11はこのような機能を達成することができる回路を書き込まれたICチップ15を有している。また、本実施の形態において、ICモジュール11は、アンテナ回路34の接続端子34aと接触して接続するための一対の接続電極18,18と、上述した外部端子13aが表面に設けられ、外部端子13aをICチップ15に接続させて外部装置との接触状態における通信を可能にするための基板13と、をさらに有している。図2に示すように、基板13は、外部端子13aをICカード10外部に露出させるよう、ICチップ15の一側に設けられている。また、接続電極18は基板13の外部端子13aが設けられた面と反対側の面に設けられている。
【0043】
図2に示すように、このような構成からなるICモジュール11が凹部形成済ICカード用基材20の凹部22内に収納装着され、凹部22に向けて突出したICモジュール11の一対の接続電極18,18が凹部22内に露出したアンテナ回路34の一対の接続端子34a,34aとそれぞれ向かい合うよう配置されている。
【0044】
ところで、図2に示されているように、本実施の形態においては、向かい合うアンテナ回路34の接続端子34aとICモジュール11の接続電極18との間に隙間が生じており、この隙間に導電性の接着剤19が介在している。導電性の接着剤19としては、銀ペーストを用いることができる。銀ペーストはバインダー樹脂となる非導電性接着剤中に銀粉、または銀粉および銀粒子を分散させたものである。この銀ペースト中の銀同士の接触(接合)により、向かい合うアンテナ回路34の接続端子34aとICモジュール11の接続電極18とが電気的に接続(導通)されている。
【0045】
また、ICモジュール11と凹部形成済ICカード用基材20との強固な接合を担保するため、凹部22内におけるICモジュール11と凹部形成済ICカード用基材20との間のその他の隙間が接着剤等によって埋められていることが好ましい。
【0046】
このようなICカード10においては、通信用の電磁波を発する外部装置にICカード10を接近させることにより、あるいは、外部装置にICカード10を物理的に接触させることにより、情報の送受信、例えば、ICカード10の所有者の認証等を行うことができる。また、ICカード10を外部装置のスロットに挿入し、外部端子34aを介して電気的に接触(接続)した状態で、情報の送受信、例えば、データの書き込みや修正を行うことができる。
【0047】
<ICカード(ICカード用基材)の製造装置および製造方法>
次に、主に図5乃至図9を用いて、本実施の形態におけるICカードの製造装置50および製造方法について説明する。
【0048】
ここで図5はICカードの製造装置50、ICカードの製造方法、ICカード用基材の製造装置52、およびICカード用基材の製造方法を示す概略構成図であり、図6および図7は切削手段66および切削工程を説明する図であり、図8はレーザ光照射手段70およびレーザ光照射工程を説明する図である。
【0049】
なお、凹部形成済ICカード用基材の製造装置52および製造方法は、ICカードの製造装置50および製造方法から、ICモジュール11の凹部形成済ICカード用基材20への配置接続手段88および配置工程を除いたものであり、ICカードの製造装置50および製造方法の一部としてこれに含まれる。以下、ICカードの製造装置50および製造方法を説明することによって、ICカード用基材の製造装置52および製造方法についても説明したこととする。
【0050】
[ICカードの製造装置50および製造方法の概略構成]
まず、図5を用いてICカードの製造装置50および製造方法の概略構成について説明する。
【0051】
図5に示されているように、ICカードの製造装置50は、第1板状部材40と、第1板状部材40上に積層された第2板状部材30と、第1板状部材40と第2板状部材30との間に設けられた接続端子34aを有するアンテナ回路34と、を有するICカード用基材を準備する手段60と、ICカード用基材20の接続端子34a上方を第2板状部材30側のICカード用基材20表面から切削し、凹部22を形成する切削手段66と、凹部22内の接続端子34a上方にレーザ光を照射し、凹部22内に接続端子34aを露出させるレーザ光照射手段70と、凹部22内にICモジュール11を配置し、接続端子34aを介してICモジュール11をアンテナ回路34に接続させる配置接続手段88と、を備えている。
【0052】
一方、ICカードの製造方法は製造装置50に対応して、第1板状部材40と、第1板状部材40上に積層された第2板状部材30と、第1板状部材40と第2板状部材30との間に設けられた接続端子34aを有するアンテナ回路34と、を有するICカード用基材20を準備する工程と、ICカード用基材20の接続端子34a上方を第2板状部材30側のICカード用基材20表面から切削し、凹部22を形成する工程と、凹部22内の接続端子34a上方にレーザ光を照射し、凹部22内に接続端子34aを露出させる工程と、凹部22内にICモジュール11を配置し、接続端子34aを介してICモジュール11をアンテナ回路34に接続させる工程と、を備えている。
【0053】
以下、各工程について、各工程に用いられる手段とともに順に詳述していく。
【0054】
[ICカード用基材を準備する工程]
本実施の形態においては、図4に示すように、第1板状部材40と、アンテナ回路34を接着された第2板状部材30と、第3板状部材46とが、接着層25,28を介して熱圧着されることによりICカード用基材20が製造される。
【0055】
具体的には、まず、一対の接続端子34a,34aを有するアンテナ回路34が接着層24を介して接着された第2板状部材30を準備する。このような第2板状部材30は、上述したように、例えば、第2板状部材30上に接着層24を介して導電性箔を積層し、次に、エッチングを施して導電性箔を所望の形状にパターニングすることにより、得られる。
【0056】
次に、第1板状部材40の上方に、アンテナ回路34を第1板状部材40に向けて第2板状部材30を重ね合わせるとともに、第3板状部材46を第2板状部材30の上方に重ね合わせる。この際、各板状部材30,40,46間に、熱可塑性樹脂からなる接着剤が供給される。接着剤としては、例えば、液体状の接着剤やシート状の接着剤を用いることができる。
【0057】
図5に示すように、このように重ね合わされた第1乃至第3の板状部材30,40,46が、本実施の形態におけるICカード用基材準備手段(ICカード用基材を準備する手段)60を構成する熱圧着機61へ供給される。熱圧着機61は、第1乃至第3の板状部材30,40,46を加熱しながら押圧する。これにより、各板状部材30,40,46間に設けられた接着剤は一旦溶融し、その後、温度の低下にともなって各板状部材30,40,46同士をそれぞれ融着させる接着層25,28を形成するようになる(図2)。
【0058】
このようにしてICカード用基材20が製造され、製造されたICカード用基材20は、第1板状部材40と、第1板状部材40の上方に積層された第2板状部材30と、第1板状部材40と第2板状部材30との間にそれぞれ接着層24,25を介して設けられた接続端子34aを有したアンテナ回路34と、を備えている。
【0059】
[切削工程]
次に、主に図6および図7を用いて切削工程について説明する。
【0060】
本実施の形態において、切削手段66は、切削刃としてエンドミル67が取り付けられたフライス盤から構成されている。周知のようにエンドミル67を用いたフライス加工を行った場合、凹部22の底面を略平らにすることができる。
【0061】
エンドミル67は、アンテナ回路34の接続端子34aに対応する部分であって、接続端子34aを基準として第2板状部材30側のICカード用基材20表面から切削を開始する。すなわち、本実施の形態においては、ICカード用基材20の第3板状部材46側の表面から切削を開始する。
【0062】
具体的には、まず、エンドミル67が、第3板状部材46のアンテナ回路34の接続端子34a上方および接続端子34a間上方を切削する。次に、図6(b)に示されているように、ICカード用基材20の接続端子34a間に対応する部分を第1板状部材40まで削り込んで切削し、第3板状部材46に貫通孔48が形成され、第2板状部材30に貫通孔32が形成され、第1板状部材に開口孔42が形成される。ここまでの切削加工によりICカード用基材20に形成された凹部22の上方視が、図6(a)に示されている。
【0063】
次に、図7に示すように、ICカード用基材20の接続端子34a上方を、切削開始側となるICカード用基材20表面の側から、接続端子34a近傍まで切削する。このとき、後述するような理由から、図7(b)に示されているように、エンドミル67が接続端子34a上に隣接して配置された接着層24まで削り込むことが好ましい。ここまでの切削加工によりICカード用基材20に形成された凹部22の上方視が、図7(a)に示されている。
【0064】
なお、上述したように、貫通孔32,48および開口孔42によってICモジュール11を収納するための凹部22が形成される。したがって、切削工程および後述するレーザ光照射工程における加工は用いられるICモジュール11の形状を考慮して形成されなければならない。
【0065】
このような切削工程においては、強度の低いPET等からなる各板状部材40,30,46および接着層24,25,28のみが切削され、これらよりも強度が格段に高い銅やアルミニウム等の導電性金属からなるアンテナ回路34の接続端子34aが同時に切削されることはなない。したがって、切削刃67に加えられる負担が著しく軽減され、これにより、切削刃の摩耗等を低減し、切削刃の長寿命化を図ることができる。
【0066】
[照射工程]
次に、図5および図8を用いてレーザ光照射工程について説明する。
【0067】
レーザ光照射工程は、接続端子34a上の接着層24等を除去し、凹部22内に接続端子34aを露出させる工程である。銅やアルミニウム等の導電性金属からなる接続端子34aと、PET等からなる板状部材30,40,46あるいは接着層24,25,28との間においては、硬度や反射率等の物性が大きく相違する。そして、板状部材30,40,46および接着層24,25,28は、接続端子34aに比べレーザ光の照射によって除去されやすい。すなわち、低エネルギー量(低出力)のレーザ光を照射することにより、接続端子34aを除去することなく、接続端子34a上の接着層24等のみを除去することができる。
【0068】
また、とりわけ接着層24は、レーザ光の照射によって容易に除去され得る。このことから、上述した切削工程において、接続端子34a上方の第2板状部材30が完全に除去され、レーザ光照射工程に持ち込まれるICカード用基材20の凹部22内に、接続端子34a上の接着層24が露出していることが好ましい(図7(b))。この場合、より低エネルギー量(より低出力)のレーザ光によって確実に接着層24のみを除去し、凹部22内に接続端子34aを露出させることができる。
【0069】
図5に示すように、本実施の形態におけるレーザ光照射手段70は、レーザ光を発振させるQスイッチパルスYAGレーザ発振器75と、レーザ光を案内する光ファイバー73と、レーザ光を照射するレーザ光照射口71と、を有している。また、レーザ光照射手段70は、例えば、周波数、出力、走査速度等のレーザ光の特性を変化させる機能を有していることが好ましい。
【0070】
しかしながら、レーザ発振器75は、YAGレーザ発振器に限定されず、CO2レーザ発振器、エキシマレーザ発振器、半導体レーザ発振器、He−Neレーザ発振器、Arレーザ発振器等、種々のレーザ発振器を用いることができる。また、発振形式もQスイッチパルスに限定されず、CWあるいはパルス方式とすることができる。
【0071】
Qスイッチパルス状のレーザ光(Qスイッチパルスレーザ光)を放射して接着層24等を除去する場合、図8(b)に示すように、レーザ光照射口71をICカード用基材20に対して少しずつ相対移動させる等して、接続端子34aを露出させるべき範囲全域にわたってレーザ光を放射していく。このようにして、第1板状部材40と、第1板状部材40に積層され貫通孔32を有する第2板状部材30と、第1板状部材40と第2板状部材30との間に設けられた接続端子34aであって、少なくとも一部分が第2板状部材30の貫通孔32内に配置された接続端子34aを有するアンテナ回路34と、を備えた凹部形成済みのICカード用基材20が作製される。また、図9に示すように、貫通孔32内に配置された接続端子34aには、くぼみ38が多数隣接して形成されている。このくぼみ38は、QスイッチパルスYAGレーザ発振器75に接続されたレーザ光照射口71から照射される各レーザ光ショットによる略円形状のレーザ痕が、重なり合っていくことにより形成される。したがって、個々のくぼみ38の輪郭は、各レーザ痕の輪郭の一部分をなす弧状線によって画定されている。また、各レーザ痕の縦方向および横方向への重なり合いの程度によって、個々のくぼみ38は、略三日月状、略半円状、略いちょうの葉状、略楕円状、あるいは略鱗状等の種々の形状を有するようになる。
【0072】
このようにして凹部22内に露出した接続端子34aは、凹部22の形成中に切削刃67によって切削されることはない。したがって、切削刃67の移動にともなって接続端子34aがICカード用基材20から剥離してしまうという、従来方法において生じていた不都合は生じ得ない。したがって、接続端子34aを形成する上述した金属箔の厚みを薄くすることもできる。
【0073】
なお、一般に、レーザ光の波長が短い程、精度良く除去処理を行うことができるとされている。本発明者は、実験結果に基づき、QスイッチパルスYAGレーザ発振器から発振される1/2基本波長(基本波長の半分の波長、532nm)のレーザ光により、接着層24等を除去して凹部22内に接続端子34aを精度良く露出させることができるとの知見を得た。
【0074】
また、高エネルギー量(高出力)のレーザ光を照射した場合、接着層24等を確実に除去することができる一方で、銅やアルミニウムからなる接続端子34aの露出した表面上における酸化膜の形成を促進してしまう虞がある。接続端子34aの表面に酸化膜が形成されると、ICモジュール11とアンテナ回路34との間における接続抵抗値(接触抵抗値)が増大し、この結果、最終的に得られるICカード10の通信能力が低下するといった不都合が生じる。本発明者は、実験結果に基づき、レーザ光照射工程を2段階に分けることによって、接着層24等を除去することができ、さらに、不都合を生じさせる程度の酸化膜が形成されていない接続端子34aを凹部22内に露出させることができる、との知見を得た。このような方法としては、例えば、レーザ光照射工程が、QスイッチパルスYAGレーザ発振器75から基本波長(1064nm)のレーザ光を接続端子34a上方に照射する第1照射工程と、第1照射工程の後に、第1照射工程より低出力でQスイッチパルスYAGレーザ発振器75から発振される基本波長のレーザ光を接続端子34a上方に照射する第2照射工程と、を有する。この場合、第1照射工程において、接続端子34a上の接着層24等を除去することに十分な出力のレーザ光を照射し、接続端子34aを除去することなく、接続端子34a上の接着層24のみを除去し、凹部22内に接続端子34aを露出させることができる。また、第2工程において、レーザ発振器75から発振されるレーザ光を、銅やアルミニウムからなる接続端子34aを除去してしまうことはないが、接続端子34a上に酸化膜が形成されている場合に、酸化膜を除去することができる程度の出力に調整し、調整された低出力のレーザ光を接続端子34a上に照射する。これにより、不都合を生じさせる程度の酸化膜が形成されていない接続端子34aを凹部22内に露出させることができる。
【0075】
[ICモジュールを配置する工程]
次に、ICモジュールを配置する工程について説明する。
【0076】
図5に示すように、本実施の形態において、ICカード用基材20の凹部22内にICモジュール11を配置し、接続端子34aを介してICモジュール11をアンテナ回路34に接続させる配置接続手段88は、凹部形成済ICカード用基材20の凹部22内に接着剤19を供給する接着剤供給装置90と、ICモジュール11を吸着して搬送する吸着ノズル89と、を有している。
【0077】
まず、ICモジュールの配置接続工程に搬送されてきた凹部形成済ICカード用基材20の凹部22内の接続端子34a上に、接着剤供給装置90から接着剤19が供給される(図5)。本実施の形態において、接着剤19は、上述した銀ペーストであってバインダー樹脂となる非導電性接着剤中に銀粉および銀粒子を分散させたものを用いている。このような銀ペーストは、反応開始材の投入や加熱によって短時間で硬化することができ、また、接続抵抗値を小さくすることができる。
【0078】
この動作に併せて、吸着ノズル89は、順次供給されるICモジュール11を1つずつ吸着して凹部形成済ICカード用基材20の凹部22上まで搬送する。その後、吸着ノズル89が降下し、接着剤19が供給された凹部形成済ICカード用基材20の凹部22内にICモジュール11を押圧して嵌め込む。
【0079】
このとき、ICモジュール11の一対の接続電極18,18は、凹部22内に露出したアンテナ回路34の一対の接続端子34a,34aに銀ペースト(接着剤)19中の銀粉および銀粒子を介してそれぞれ電気的に接続される。また、銀ペーストが硬化してICモジュール11が凹部形成済ICカード用基材20の凹部22内に固定される。
【0080】
ところで、上述したように、凹部22内に露出した接続端子34aには、レーザ痕としてくぼみ38が多数隣接して形成されている。したがって、表面が平らに形成されている場合に比べ、接着剤19への接触面積が大きくなっている。これにより、接続端子34aと接着剤19との間における接触抵抗値を小さくすることができるとともに、ICカード用基材20へICモジュール11を強固に固定することができる。
【0081】
以上のようにしてICカード10が製造され、製造されたICカード10は、第1板状部材40と、第1板状部材40に積層され貫通孔32を有する第2板状部材30と、第1板状部材40と第2板状部材30との間に設けられた接続端子34aであって、少なくとも一部分が第2板状部材30の貫通孔32内に配置された接続端子34aを有するアンテナ回路34と、第2板状部材30の貫通孔32内に配置され、接続端子34aを介してアンテナ回路34と接続されたICモジュール11と、を備えている。
【0082】
なお、接着剤供給装置90によって供給される接着剤19は、バインダー樹脂となる非導電性接着剤中に銀粉および銀粒子を分散させてなる銀ペーストに限られない。バインダー樹脂となる非導電性接着剤中に銀粉を分散させてなる銀ペーストや、非導電性バインダー樹脂中に導電性粒子等を分散させてなる異方性導電性接着剤等を用いることができる。また、用いられる接着剤19の種類に応じて、配置接続手段88も種々変更することができる。例えば、接着剤19の硬化に加熱が必要となる場合には、配置接続手段88の吸着ノズル89の下流側に、加熱機構を有した接着剤硬化装置をさらに設けなければならない。
【0083】
さらに、上述したように、凹部22内における接続端子34aと接続電極18との間以外のICモジュール11と凹部形成済ICカード用基材20との隙間に、接着剤を塗布するようにしてもよい。これにより、ICモジュール11が凹部22内で安定し、ICモジュール11と凹部形成済ICカード用基材20とを強固に接合することができる。
【0084】
なお、この場合、配置接続手段88に、さらなる接着剤供給装置および接着剤硬化装置を設けるようにしてもよい。
【0085】
<作用効果>
以上のように本実施の形態によれば、接続端子34に対して第2板状部材30側のICカード用基材20表面から、ICカード用基材20の接続端子34a上方を、好ましくは接続端子34aの近傍まで、さらに好ましくは接続端子34aと第2板状部材30との間に設けられた接着層24まで、切削して凹部22を形成し、次に、凹部22内の接続端子34a上方にレーザ光を照射し凹部22内に接続端子34aを露出させている。このような方法によれば、接続端子34aと接着層24等との物性が相違することから、レーザ光照射によって、接続端子34aを除去することなく接着層24等を除去することができ、これにより、凹部22内に接続端子34aを確実に露出させることができる。これまで、接着層24が接続端子34a上に残存した不良品は、接着層24が無色透明であることに起因して視覚的に検出することができず、ICモジュール11接続後の最終検査によって検出されていた。このことは最終的に得られたICカード10の良品率を低下させ、ICカード10の生産効率をさげていたが、本実施の形態によれば、このような不都合を回避することができる。すなわち、高い製造歩留まりでICカード10を製造することができるとともに、信頼性の高いICカード10を安価に製造することができる。
【0086】
また、切削手段66により切削して接続端子34aを露出させる必要がないので、切削手段66の切削刃67の削り込み量の精度や切削刃67の取付精度等に起因した切削不良品は発生しない。また、従来生じていた切削刃67の移動にともなった接続端子34aの剥離も生じない。したがって、接続端子34aおよび接続端子34aを形成する金属箔の厚みを薄くすることができる。本発明者が行った実験結果によれば、厚みが25μm以下の金属箔から接続端子34aを有するアンテナ回路34を作製し、このアンテナ回路34を用いてICカード10を製造したところ、製造されたICカード10が所望の機能を十分発揮することができた。さらには、レーザ光照射手段70から照射されるレーザ光を適宜調整することにより、厚みが10μm以下の金属箔(接続端子34a)を用いて製造されたICカード10も所望の機能を発揮することができた。すなわち、厚みが薄く安価に入手することが可能な金属箔を用いてICカード用基材20およびICカード10を製造することにより、ICカード用基材20およびICカード10の製造コストを格段に低減することができる。
【0087】
さらに、切削工程において、接続端子34aは、強度が大きく異なる板状部材40,30,46や接着層24と同時に切削されることはない。したがって、切削手段66の切削刃67に加えられる負担が軽減され、切削刃67の寿命を長寿命化することができる。これにより、ICカード10の製造コストを削減することができるとともに、また、切削刃67を頻繁に取り替える必要がなくなるので、切削刃67の取付精度に起因した切削不良の発生を抑制することもできる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、QスイッチパルスYAGレーザ発振器75から発振されるレーザ光が接続端子34a上方に照射され、レーザ光を照射された接続端子34aには略三日月状のくぼみが多数隣接して形成され、凹部22(貫通孔32)内に露出した接続端子34aの表面積は非常に大きくなる。これにより、ICモジュール11とアンテナ回路34との接続抵抗値が小さくなり、最終的に得られるICカード10は良好な通信特性を有するようになる。また、接着剤を介してICモジュール11を凹部22内に接着固定する場合に、凹部22内に露出した接続端子34aの表面積が大きいことから、ICモジュール11を凹部22内に強固に固定することができる。
【0089】
さらに、本実施の形態によれば、レーザ光照射手段70から2段階に分けてレーザ光を照射することができる。この場合、1回目のレーザ光照射において、接続端子34a上の接着層24等を確実に除去し、2回目のレーザ光照射において、1回目のレーザ光照射より低出力でレーザ光を接続端子34aに照射し、接続端子34a上に形成された酸化膜を大幅に低減することができる。これにより、接続端子34aを介したアンテナ回路34とICモジュール11との接続抵抗値を低減することができ、最終的に得られるICカード10に良好な通信特性をもたらすことができる。
【0090】
さらに、本実施の形態によれば、レーザ光照射手段70にレーザ光の波長を切り換えるためのレンズをさらに設けることにより、レーザ光照射手段70が低周波数のレーザ光を照射するようにすることができる。この場合、より精度良く確実に凹部22内に接続端子34aを露出させることができる。
【0091】
<変形例>
上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0092】
以下、変形例の一例について図10乃至図12を用いて説明する。なお、図10乃至図12は、ICカード20の変形例を示す部分断面図である。図10乃至図12において、図1乃至図9を用いて説明した実施の形態と同一部分には同一符号を付すとともに、重複する詳細な説明は省略する。
【0093】
[ICカード用基材の構成についての変形例]
まず、ICカード用基材20の構成についての変形例を説明する。
【0094】
上述した実施の形態においては、第1板状部材40、接着層24を介してアンテナ回路34が接着された第2板状部材30、第3板状部材46の順で積層してICカード用基材20を作製し、ICカード用基材20の第3板状部材46側から切削およびレーザ光照射して、第1板状部材40と第2板状部材30との間に設けられた接続端子34aを露出させるようにしているが、これに限られない。接続端子34aの切削開始側に接続端子34aよりもレーザ光の照射によって除去されやすい物性を有した要素が隣接して配置されていればよい。このような場合、レーザ光照射によって接続端子34aを除去することなく該要素を除去することができ、これにより、凹部22内に接続端子34aを確実に露出させることができる。
【0095】
以下、このような変形例の一例について図10および図11を用いて説明する。
【0096】
図10に示す変形例においては、第3板状部材46の上方に第1板状部材40が積層され、第1板状部材40の上方に第2板状部材30が積層され、アンテナ回路34の接続端子34aは第1板状部材40の上側面に接着層24を介して形成され第1板状部材40と第2板状部材30との間に配置されている。また、第1板状部材40および第1板状部材40上に形成された接続接点34aと第2板状部材30との間には接着層25が設けられており、この接着層25を介して互いに接着固定されている。このような構成からなるICカード用基材20においても、ICカード用基材20の第2板状部材30側の表面から、接続端子34a上方を、好ましくは接続端子34a上に隣接した接着層25まで切削し、その後、レーザ光を接続端子34a上方に照射することによって、上述したように接続端子34aを確実に露出させることができる。つまり、接続端子34aの切削開始側に接続端子34aよりも除去されやすい物性を有した要素が隣接して配置されている限りにおいて、接続端子34aを含むアンテナ回路34が、第1板状部材40および第2板状部材30のいずれの表面に形成されているかは問題にならない。また、第3板状部材46についても、上述した実施の形態のように切削開始側である必要はない。
【0097】
また、図11に示す変形例においては、ICカード用基材20は、第1板状部材40と、第1板状部材40の上方に積層された第2板状部材30と、第1板状部材40の上側面に接着層24を介して形成され第1板状部材30と第2板状部材40との間に配置された接続端子34aを有するアンテナ回路34と、を備えている。このような構成からなるICカード用基材20においても、ICカード用基材20の第2板状部材30側の表面から、接続端子34a上方を、好ましくは接続端子34a上に隣接した接着層25まで切削し、その後、レーザ光を接着端子34a上方に照射することにより、上述したように接続端子34aを確実に露出させることができる。つまり、2枚の板状部材30,40からICカード用基材20を構成してもよく、また、4枚以上の板状部材からICカード用基材20を構成するようにしてもよい。また、図11に示す変形例において、アンテナ回路34aの接続端子34aが第1板状部材40の上側面に形成された例を示しているが、図10を用いて上述したように、接続端子34aを第2板状部材30の下側面に形成するようにしてもよい。
【0098】
さらに、上述した実施の形態においては、接着層24を介して導電性金属箔を第2板状部材30に接着し次にエッチングすることによってアンテナ回路34を形成する例を示した。しかしながら、接続端子34aの切削開始側に接続端子34aよりも除去されやすい物性を有した要素が隣接して配置されている限りにおいて、アンテナ回路34の構成を種々変形することができる。例えば、アンテナ回路34の接続端子34a以外の部分をコイル巻きした導線によって形成してもよい。
【0099】
さらに、上述した実施の形態および変形例においては、接着層24を介し板状部材上に接続接点34aを含むアンテナ回路34を形成し、また、各板状部材を接着層25,28を介して接着固定する例を示したが、これに限られない。銅やアルミニウムからなる接続端子34aに比べ、PET等からなる板状部材がレーザ光の照射によって除去されやすいことから、接続端子34aの上方に板状部材が隣接して配置されていてもよい。つまり、接着層24を用いることなく、スクリーン印刷機等を用いて板状部材上に導電性インキを印刷して接続接点34aを形成するようにしてもよい。また、各板状部材40,30,46にラミネート加工を施し、接着層25,28を用いることなく各板状部材40,30,46を互いに接着固定するようにしてもよい。
【0100】
さらに、上述した実施の形態においては、アンテナ回路34が第2板状部材30の一方の面上に形成された例を示したが、これに限られない。例えば、アンテナ回路34のコイル部分を第2板状部材30の両側の面上に形成する、すなわちコイル部分を2つ設けるようにしてもよい。この場合、アンテナ回路34(ICカード10)の通信能力を増強することができる。
【0101】
さらに、上述した実施の形態においては、各板状部材40,30,46が同サイズの平板からなる例を示したが、これに限られない。例えば、各板状部材40,30,46の大きさが異なってもよい。また、板状部材は平板に限られるものではなく、縁部が突出した断面略コ字状あるいは断面L字状を有する略板材を板状部材として用いることもできる。この場合、突出した縁部の内方に他の板状部材を配置するようにしてもよい。
【0102】
[ICモジュールの構成についての変形例]
さらに、上述した実施の形態において、ICモジュール11が外部端子13aを有し、製造されたICカード10が接触状態で外部装置と通信することができるようになっている例を示したが、これに限られない。外部端子13aを有さないICモジュール11に対しても、すなわち、得られたICカード10が非接触状態でのみ外部装置と通信することができるようなICモジュール11に対しても、本発明を適用することができる。
【0103】
また、上述した実施の形態において、ICモジュール11の接続電極18が、基板13の下面から突設された例を示したが、これに限られない。例えば、図12に示すように、接続電極18がICチップの下側面に突設されるようにしてもよい。
【0104】
さらに、ICモジュール11の接続電極18が銀ペーストや異方性導電性接着剤等の接着剤19を介してアンテナ回路34の接続端子34aに接続される例を説明したが、これに限られない。図12に示すように、ICモジュール11の接続電極18を対面するアンテナ回路34の接続端子34aに直接接触させて電気的に接続するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明によるICカードの一実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図。
【図3】ICカードの凹部形成済ICカード用基材を示す斜視図。
【図4】ICカード用基材を示す分解断面図。
【図5】本発明によるICカードの製造装置、ICカードの製造方法、ICカード用基材の製造装置、およびICカード用基材の製造方法の一実施の形態を示す概略構成図。
【図6】切削手段および切削工程を説明する図。
【図7】切削手段および切削工程を説明する図。
【図8】レーザ光照射手段およびレーザ光照射工程を説明する図。
【図9】レーザ光照射工程を経た後の接続端子を示す上面図。
【図10】ICカードの変形例を示す部分断面図。
【図11】ICカードの変形例を示す部分断面図。
【図12】ICカードの変形例を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0106】
10 ICカード
11 ICモジュール
13a 外部端子
18 接続電極
20 ICカード用基材(凹部形成済ICカード用基材)
22 凹部
30 第2板状部材
32 貫通孔
34 アンテナ回路
34a 接続端子
40 第1板状部材
50 ICカードの製造装置
52 ICカード用基材(凹部形成済ICカード用基材)の製造装置
60 ICカード用基材を準備する手段
66 切削手段
70 レーザ光照射手段
75 レーザ発振器
88 配置接続手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1板状部材と、前記第1板状部材上に積層された第2板状部材と、前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に設けられた接続端子を有するアンテナ回路と、を有するICカード用基材の前記接続端子上方を、前記第2板状部材側のICカード用基材表面から切削して、凹部を形成する工程と、
前記凹部内の前記接続端子上方にレーザ光を照射して、前記凹部内に前記接続端子を露出させる工程と、
前記凹部内にICモジュールを配置し、前記接続端子を介して前記ICモジュールを前記アンテナ回路に接続させる工程と、を備えたことを特徴とするICカードの製造方法。
【請求項2】
前記切削する工程において、前記ICカード用基材を前記接続端子の近傍まで切削することを特徴とする請求項1に記載のICカードの製造方法。
【請求項3】
前記ICカード用基材は、前記第2板状部材と前記接続端子との間に介在する接着層をさらに有しており、
前記切削する工程において、前記接着層を露出させるよう、前記ICカード用基材を切削し、
前記レーザ光を照射する工程において、前記接着層にレーザ光を照射することを特徴とする請求項1または2に記載のICカードの製造方法。
【請求項4】
前記レーザ光を照射する工程は、
レーザ光を照射する第1照射工程と、
第1照射工程の後に、第1照射工程より低出力でレーザ光を照射する第2照射工程と、を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のICカードの製造方法。
【請求項5】
前記レーザ光を照射する工程において、YAGレーザ発振器から発振される1/2基本波長のレーザ光を照射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のICカードの製造方法。
【請求項6】
前記レーザ光を照射する工程において、QスイッチパルスパルスYAGレーザ発振器から発振されるレーザ光を照射することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のICカードの製造方法。
【請求項7】
第1板状部材と、前記第1板状部材上に積層された第2板状部材と、前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に設けられた接続端子を有するアンテナ回路と、を有するICカード用基材の前記接続端子上方を、前記第2板状部材側のICカード用基材表面から切削して、凹部を形成する切削手段と、
前記凹部内の前記接続端子上方にレーザ光を照射して、前記凹部内に前記接続端子を露出させるレーザ光照射手段と、
前記凹部内にICモジュールを配置し、前記接続端子を介して前記ICモジュールを前記アンテナ回路に接続させる配置接続手段と、を備えたことを特徴とするICカードの製造装置。
【請求項8】
前記切削手段は、前記ICカード用基材を前記接続端子の近傍まで切削するようになっていることを特徴とする請求項7に記載のICカードの製造装置。
【請求項9】
前記ICカード用基材は、前記第2板状部材と前記接続端子との間に介在する接着層をさらに有しており、
前記切削手段は、前記接着層を露出させるよう、前記ICカード用基材を切削するようになっており、
前記レーザ光照射手段は、前記接着層にレーザ光を照射するようになっていることを特徴とする請求項7または8に記載のICカードの製造装置。
【請求項10】
前記レーザ光照射手段は、照射されるレーザ光の特性を変化させる機能を有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一項に記載のICカードの製造装置。
【請求項11】
前記レーザ光照射手段は、Qスイッチパルスレーザ発振器を有することを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一項に記載のICカードの製造装置。
【請求項12】
第1板状部材と、前記第1板状部材上に積層された第2板状部材と、前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に設けられた接続端子を有するアンテナ回路と、を有するICカード用基材の前記接続端子上方を、前記第2板状部材側のICカード用基材表面から切削して、凹部を形成する工程と、
前記凹部内の前記接続端子上方にレーザ光を照射して、前記凹部内に前記接続端子を露出させる工程と、を備えたことを特徴とする凹部形成済ICカード用基材の製造方法。
【請求項13】
第1板状部材と、前記第1板状部材上に積層された第2板状部材と、前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に設けられた接続端子を有するアンテナ回路と、を有するICカード用基材の前記接続端子上方を、前記第2板状部材側のICカード用基材表面から切削して、凹部を形成する切削手段と、
前記凹部内の前記接続端子上方にレーザ光を照射して、前記凹部内に前記接続端子を露出させるレーザ光照射手段と、を備えたことを特徴とする凹部形成済ICカード用基材の製造装置。
【請求項14】
第1板状部材と、
前記第1板状部材に積層され貫通孔を有する第2板状部材と、
前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に設けられた接続端子であって、少なくとも一部分が前記第2板状部材の前記貫通孔内に配置された接続端子を有するアンテナ回路と、
前記第2板状部材の前記貫通孔内に配置され、前記接続端子を介して前記アンテナ回路と接続されたICモジュールと、を備え、
接続端子の厚みが25μm以下であることを特徴とするICカード。
【請求項15】
ICモジュールと接続してICカードを形成するICカード用基材において、
第1板状部材と、
前記第1板状部材に積層され貫通孔を有する第2板状部材と、
前記第1板状部材と前記第2板状部材との間に設けられた接続端子であって、少なくとも一部分が前記第2板状部材の前記貫通孔内に配置された接続端子を有するアンテナ回路と、を備え、
貫通孔内に配置された前記接続端子に、くぼみが多数隣接して形成されていることを特徴とするICカード用基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−11985(P2007−11985A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195316(P2005−195316)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】