説明

ICカードの製造方法

【課題】剥離紙が残ったままの状態でICモジュールをカード基材の収納凹部内に収納することを防止できるようにする。
【解決手段】供給されるキャリアテープ11のLSI実装面側に対し、接着テープ14を接着層18側から重ね合わせ、この重ね合わせた接着テープ14を加圧加熱することにより接着層18を介して接着させ、この接着された接着テープ14の剥離紙16を剥離し、この剥離紙16の剥離後にICモジュール2に剥離紙16の一部16aが残留したか否かを判別部21によって判別し、判別部21によって剥離紙16の一部16aが残留したと判別されるのに基づいて、警報部29により残留した剥離紙を除去すべきことを警報し、剥離紙16aが残留しないICモジュール2をキャリアテープ11から個別に打ち抜き、この打ち抜かれたICモジュール2をカード基材の収納凹部内に収納して接着固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードの製造方法に係わり、特に、ICモジュールに対し剥離紙が残留したか否かを判別する判別機能に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードを製造する場合には、例えば、一面側に複数の通信用端子を有し、他面側に前記通信用端子に電気的に接続されてICモジュールを構成する複数のLSIを実装してなるキャリアテープを供給し、このキャリアテープのLSI実装面側に対し、剥離紙と接着層とを積層してなる接着テープをその接着層側から重ね合わせてこれを加圧加熱することにより貼り付ける。そして、この貼り付けられた接着テープの剥離紙を剥がしてからICモジュールを個々に打ち抜き、この打ち抜いたICモジュールをカード基材の収納凹部内に接着層側から収納して加熱することによりICモジュールを接着固定するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−157049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、剥離紙を剥離する際に、剥離紙が破れてその一部がICモジュールの接着層面に残留してしまうことがある。
【0004】
しかしながら、従来においては、残留した剥離紙を検出することができず、ICモジュールの接着層面に剥離紙が残留したままの状態でカード基材の収納凹部内に収納してしまうことがあった。ICモジュールの接着層面の剥離紙が残っている箇所は加熱後もカード基材の収納凹部の内面部と接着しないため、ICモジュールがカードから極めて外れ易い状態となるが、残留する剥離紙は外見上は見えないことから、発見が難しく、良品として出荷されてしまう虞があった。
【0005】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、剥離紙が残った状態でICモジュールをカード基材の収納凹部内に収納することを防止できるようにしたICカードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1記載のものは、一面側に通信用端子を複数有し、他面側に前記通信用端子に電気的に接続されてICモジュールを構成するLSIを複数実装するキャリアテープを供給し、この供給されるキャリアテープの前記LSI実装面側に対し、剥離紙と接着層とを積層してなる接着テープを前記接着層側から重ね合わせ、この重ね合わせた接着テープを前記キャリアテープのLSI実装面側に加圧加熱することにより前記接着層を介して接着させ、この接着された前記接着テープの前記剥離紙を剥離し、この剥離紙の剥離後に前記ICモジュールの前記接着層に前記剥離紙の一部が残留したか否かを判別手段によって判別し、前記判別手段によって前記剥離紙の一部が残留したと判別されるのに基づいて、通知手段により前記残留した剥離紙を除去すべきことを通知し、前記剥離紙が除去されたICモジュールを前記キャリアテープから個別に打ち抜き、この打ち抜かれた前記ICモジュールをカード基材の収納凹部内に収納して接着固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、剥離紙が残った状態でICモジュールをカード基材の収納凹部内に収納することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、ICカードを分解して示す平面図で、図2はその側断面図である。
【0009】
図中1はカード基材で、このカード基材1の一面側には収納凹部1aが座ぐり形成されている。カード基材1の収納凹部1a内にICモジュール2が収納されるようになっている。ICモジュール2は基板3と、この基板3の一面側に設けられる通信用の接触端子5と、他面側に設けられ接触端子5と電気的に接続されるLSI6とを有して構成されている。LSI6は、封止材で封止されている。また、基板3の他面側(LSI実装面側)には接着層7が設けられ、ICモジュール2は接着層7を介して収納凹部1a内に接着固定される。
【0010】
図3は、ICカード製造装置の第1の製造ライン8を示す図である。
【0011】
図中10はキャリアテープ11の供給部である。この供給部10からは送り出されるキャリアテープ11は図4及び図5にも示すように基板3を有し、この基板3の一面側には通信用の接触端子5が複数配置され、他面側には封止材によって封止されるLSI6が複数配置されている。接触端子5とLSI6とはそれぞれ電気的に接続されてICモジュール2が構成されている。
【0012】
キャリアテープ11の基板3の両側部にはスプロケット(図示しない)が嵌め込まれる搬送用の穴12が搬送方向に沿って多数穿設され、キャリアテープ11はスプロケットの回転により搬送される。さらに、キャリアテープ11の中央部にはその搬送方向に沿って所定間隔を存して透孔13が複数穿設されている。
【0013】
また、キャリアテープ11の搬送方向には接着テープ14の供給部15と剥離紙16の巻取部17が配設されている。接着テープ14は剥離紙16とこの剥離紙16の下面側に積層される接着層18とによって構成されている。供給部15と巻取部17との間にはキャリアテープ搬送方向に沿って所定間隔を存してガイドローラ19が配設されている。接着テープ14はガイドローラ19にガイドされてキャリアテープ11に沿って供給される。ガイドローラ19間には、接着テープ14をキャリアテープ11に対し熱圧着するための熱圧着ヘッド20が昇降自在に設けられている。
【0014】
また、巻取部17の下流側には接着テープ14の剥離紙16の剥離後に接着層18の表面に剥離紙16が残留したか否かを判別するための判別手段としての判別部21が設けられている。判別部21は光源30と、この光源30にキャリアテープ11を介して離間対向する光電センサ31を備え、光源30から発光された光は接着層18及び透孔13を介して光電センサ31によって受光するようになっている。光電センサ31には送信回路を介して制御部28が接続され、制御部28には制御回路を介して通知手段としての警報部29が接続されている。制御部28は光電センサ31から送信される受光信号を受信し、所定の時間間隔で受信した場合には、剥離紙16の残留はないと判断し、所定の時間間隔で受信しない場合には、剥離紙16が残留していると判断するようになっている。
【0015】
さらに、判別部21の下流側には、キャリアテープ11からICモジュール2を個々に打ち抜くための打抜部22が設けられている。打ち抜かれたICモジュール2は吸着搬送ノズル23によって吸着されて後述する第2の製造ライン9におけるカード基材24に向かって搬送されるようになっている。
【0016】
図6はICカード製造装置の第2の製造ライン9を示すものである。
【0017】
図中24はカード基材26の投入部で、この投入部24から投入されたカード基材26は、搬送機構(図示しない)により搬送路27に沿って搬送される。搬送路27中には搬送方向に沿って所定間隔を存して座ぐり部32、ICモジュール実装部33、ICモジュール熱圧着部35が順次配設されている。座ぐり部32には座ぐりヘッド36が設けられ、ICモジュール熱圧着部35には熱圧着ヘッド38が昇降自在に設けられている。
【0018】
次に、ICカードの製造方法について説明する。
【0019】
まず、図3に示すようにキャリアテープの供給部10からキャリアテープ11をそのLSI実装面側を上向きにして供給搬送するとともに、接着テープの供給部15から接着テープ14を供給する。供給された接着テープ14は、ガイドローラ19間でキャリアテープ11に対し図7及び図8にも示すようにその接着層18側からキャリアテープ11の基板3のLSI実装面側に重ね合わせる。この状態から図3の熱圧着ヘッド20を下降させて接着テープ14をキャリアテープ11に向かって押し付けて加熱し貼り付ける。この加熱後、熱圧着ヘッド20を上昇させてキャリアテープ11を搬送するとともに、巻取部17により図9にも示すように接着テープ14の剥離紙16を巻き取って剥離する。
【0020】
これにより、キャリアテープ11のLSI実装面側に接着層18が付着される。この接着層18が付着されたキャリアテープ11は打抜部22に向かって搬送されるが、このとき、判別部21によって後で詳しく述べるように剥離紙16の一部が残留したか否かが判別される。残留していないと判別された場合には、打抜部22にキャリアテープ11は搬送されてICモジュール2が個々に打ち抜かれる。
【0021】
一方、このときには図6に示すように,第2の製造ライン9でカード基材の投入部24からカード基材26が投入搬送されて座ぐり部27に送られ、座ぐりヘッド36によってカード基材26に収納凹部1aが座ぐり形成される。こののち、カード基材26はICモジュール実装部33に搬送される。
【0022】
上記した第1の製造ライン8の打抜部22で打ち抜かれたICモジュール2は、その接触端子側が吸着搬送ノズル23によって吸着されて第2の製造ライン9のICモジュール実装部33へと搬送され、カード基材26の収納凹部1a内にその接着層18側から嵌め込まれて収納される。この収納後、カード基材26は熱圧着部35に搬送されてそのICモジュール2が熱圧着ヘッド38により押圧加熱されて圧着され、ICカードが完成する。
【0023】
ところで、上記した接着テープ14の剥離紙16の剥離時において、図10に示すよう
に剥離紙16の一部16aが破れて接着層18上に残留して透孔13を遮ってしまうこと
がある。この場合には、光源30から発光された光が図11に示すように残留した剥離紙
16aによって遮られ、光電センサ31による受光が遮断される。このように受光が遮断
されると、制御部28は剥離紙16の一部16aが残留したものと判断し、警報部29に
警報させるとともに、打抜部22への搬送を停止する。オペレータは、警報を聞くことに
より、残留した剥離紙16aを除去する。この除去後、キャリアテープ11が打抜部22へ搬
送されて剥離紙16aが除去されたICモジュール2が打ち抜かれる。そして、この打ち
抜かれたICモジュール2は図12に示すようにその接着層18側からカード基材1の収
納用凹部1a内に収納されて圧着される。
【0024】
なお、剥離紙16の一部16aが残留したままで、ICモジュール2をカード基材1の
収納凹部1a内に収納した場合には、図13に示すようにICモジュール2の接着層18
は残留剥離紙16aを介してカード基材1の収納凹部1a内に収納され、浮き上がった状
態となり、外れ易くなってしまう。
【0025】
また、上記した接着テープ14の剥離紙16の剥離時において、剥離紙16の一部16
aが接着層18上に残留しなかった場合には、図14に示すように光源30から発光され
た光は、透孔13を介して光電センサ31によって受光される。この場合には、制御部2
8は剥離紙16が完全に剥離されたものと判断し、ICモジュール2はそのまま打抜部2
2に搬送されて打ち抜かれる。
【0026】
上記したように、この実施の形態によれば、接着テープ14の剥離紙16の剥離時にその一部16aがICモジュール2の接着層18側に残ってしまった場合には、判別部21によって判別し、警報部29によって警報するため、オペレータはICモジュール2がカード基材1の収納凹部1a内に実装される前に残留剥離紙16aを除去することが可能となる。従って、ICモジュール2に残留剥離紙16aを付着させたままカード基材1の収納凹部1a内に実装してしまうことを確実に防止することができる。
【0027】
なお、上記した実施の形態では、キャリアテープ11の基板3の中央部にその搬送方向に沿って所定間隔を存して透孔13を複数穿設したが、これに限られることなく、図15に示すようにキャリアテープ11の基板3の両側部側にもその搬送方向に沿って所定間隔を存して透孔13を複数穿設してもよい。この場合には、図16に示すように剥離紙16が小さく破れてキャリアテープ11の基板3の片側に小さく残留した場合でも判別部21で判別することが可能となる。この判別に用いられる透孔13は数が多いほど、微小な剥離紙16の残留を判別できる利点がある。
【0028】
また、キャリアテープ11の基板3が高い透孔性を有する場合には、図17に示すように基板3に透孔を穿設しなくても光源30から発光された光を光電センサ31によって受光して残留する剥離紙16aの判別が可能となる。
【0029】
また、上記した実施の形態では、基板3を透過した光を光電センサ31によって受光して残留剥離紙16aを点的に検出したが、これに限られることなく、図18に示すように剥離紙16が剥離された後の基板3の接着層18面を画像処理部40で光を走査してその反射光を受光することにより、線的或いは面的に画像処理して残留剥離紙16aの有無を判別するようにしても良い。
【0030】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態であるICカードを分解して示す平面図。
【図2】図1中のA−A線に沿って示す側断面図。
【図3】図1のICカードを製造するための第1の製造ラインを示す図。
【図4】図3の第1の製造ラインで供給されるキャリアテープの一面側を示す図。
【図5】図4のキャリアテープの他面側を示す図。
【図6】図1のICカードを製造するための第2の製造ラインを示す図。
【図7】図3の第1の製造ラインでキャリアテープの基板に接着テープが貼り付けられた状態を示す平面図。
【図8】図7中B−B線に沿って示す側断面図。
【図9】図3の第1の製造ラインにおいて、接着テープの剥離紙が剥離される状態を示す図。
【図10】図3の第1の製造ラインでの剥離紙の剥離時にその一部がICモジュールに残留した状態を示す図。
【図11】図10の残留剥離紙を判別する判別部を示す構成図。
【図12】図10の残留剥離紙が除去されたICモジュールがカード基材の収納凹部内に嵌め込まれた状態を示す図。
【図13】図10の残留剥離紙を付着したままのICモジュールがカード基材の収納凹部内に嵌め込まれた状態を示す図。
【図14】図3の第1の製造ラインにおいて判別部の光源から発光された光が光電センサによって受光された状態を示す図。
【図15】本発明の他の例であるキャリアテープを示す平面図。
【図16】図15のキャリアテープに剥離紙が残留した状態を示す図。
【図17】本発明のさらに他の例であるキャリアテープを示す平面図。
【図18】本発明の他の例である残留剥離紙の判別部を示す図。
【符号の説明】
【0032】
1…カード基材、1a…収納凹部、2…ICモジュール、5…通信用端子、6…LSI、11…キャリアテープ、13…穴部、14…接着テープ、16…剥離紙、18…接着層、21…判別部(判別手段)、29…警報部(通知手段)、30…光源、31…光電センサー、40…画像処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に通信用端子を複数有し、他面側に前記通信用端子に電気的に接続されてICモジュールを構成するLSIを複数実装するキャリアテープを供給し、
この供給されるキャリアテープの前記LSI実装面側に対し、剥離紙と接着層とを積層してなる接着テープを前記接着層側から重ね合わせ、
この重ね合わせた接着テープを前記キャリアテープのLSI実装面側に加圧加熱することにより前記接着層を介して接着させ、
この接着された前記接着テープの前記剥離紙を剥離し、
この剥離紙の剥離後に前記ICモジュールの前記接着層に前記剥離紙の一部が残留したか否かを判別手段によって判別し、
前記判別手段によって前記剥離紙の一部が残留したと判別されるのに基づいて、通知手段により前記残留した剥離紙を除去すべきことを通知し、
前記剥離紙が除去されたICモジュールを前記キャリアテープから個別に打ち抜き、
この打ち抜かれた前記ICモジュールをカード基材の収納凹部内に収納して接着固定することを特徴とするICカードの製造方法。
【請求項2】
前記判別手段は、前記キャリアテープを介して対向配置される光源と、この光源から発光される光を受光する光電センサーを備え、前記光電センサーの受光に基づいて前記剥離紙の残留の有無を判別することを特徴とする請求項1記載のICカードの製造方法。
【請求項3】
前記キャリアテープはその搬送方向に沿って複数の穴部を有し、
前記光源から発光される光は前記穴部を介して前記光電センサーによって受光されることを特徴とする請求項2記載のICカードの製造方法。
【請求項4】
前記キャリアテープは高い透光性を有し、
前記光源から発光される光は前記キャリアテープを介して前記光電センサーによって受光されることを特徴とする請求項2記載のICカードの製造方法。
【請求項5】
前記判別手段は画像処理部を有し、この画像処理部で前記剥離紙の剥離後における前記接着層を画像処理することにより前記剥離紙の一部が残留したか否かを判別することを特徴とする請求項1記載のICカードの製造方法。
【請求項6】
前記通知手段は、前記剥離紙の残留を警報する警報部であることを特徴とする請求項1記載のICカードの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2010−160701(P2010−160701A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2769(P2009−2769)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】