説明

ICカード

【課題】カードリーダーを使用しなくても、簡便に、ICカードの偽造・変造の有無を識別でき、また、ICカード内の電子部品が破損している場合であっても、簡便に、ICカードの偽造・変造の有無を識別できる、優れたセキュリティー性を有するICカードを提供する。
【解決手段】電子部品を収納したカードコア層と、前記カードコア層の一方の面に設けられた表基材層と、前記表基材層の表面に設けられた情報記録層と、を少なくとも備えたICカードにおいて、前記表基材層の、前記情報記録層が設けられた面とは反対側の面には、透かし模様が印刷されており、前記透かし模様をICカード毎に僅かに異なるが全ICカードとして略同一の紋様パターンとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身分証明証カード等の個人情報等が記録されたICカードに関し、より詳細には、偽造、変造を防止でき、また、偽造、変造等が行われた場合であっても容易に真贋判定を行うことができるICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
身分証明書等のIDカードや銀行等のキャッシュカード等のICカードには、個別認識できるように、ICカードの表面に人物の顔写真やその人物の住所や名前等の文字情報が記載されるとともに、ICカード内部の電子部品のメモリに個人情報が記録されている。そのため、たとえICカードの表面に印刷している顔写真や文字情報に改変を加えたとしても、ICカード内部に記録された個人情報と照合することにより、ICカードを変造したことがわかるようになっている。
【0003】
ところで、ICカード内部に備えられた電子部品のメモリに記録された内容を確認するには、専用の読み取り機(カードリーダー)が必要になるため、カードリーダーを持ち合わせていないと、ICカード内部に記録された情報を読み出すことができない。例えば運転免許証を警察官が確認するときのように、カードリーダーを持ち合わせていない状況であっても偽造変造の有無を即座に確認できることが必要とされる場合がある。また、ICカード内部の電子部品が破損している場合も同様に情報の読み出しができなくなる。その場合、ICカードの表面に記載されている内容とICカード内部に記録されている情報とが一致しているかを確認できないため、そのICカードが偽造・変造されたものであるかどうかの識別ができなくなる。
【0004】
上記のような問題に対して、ICカードが偽造・変造されたなものであるかどうかを容易に識別できるように、種々の対策が講じられている。例えば、ICカードの表面にホログラムや光学特性が変化するような特殊なインクで文字等を印刷したり、拡大鏡によってしか視認できないようなマイクロ文字を印刷することが行われている。また、透かし印刷によってICカード内部に紋様パターンを設けておき、所有者に紋様パターンが印刷されていることを認識させないようにすることも行われている。特許文献1には、ICカード使用者が通常の使用時には透かし模様を認識せず、特定の場合、例えば、ICカードを太陽光や室内照明等に透かして見た場合にのみICカード内部の模様を識別できるようなICカードが提案されている。これらの偽造防止手段は、偽造や変造が容易に行われないようにするとともに、たとえ偽造・変造等が行われた場合であっても、それがすぐにわかるようにして、セキュリティー性を向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−85525公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したホログラム等の偽造防止手段はICカードの表側に形成されるため、ICカードの表基材を剥離するなどしてICカードを分解し、他のICカードの表面とすげ替えたような場合には、視認しただけではICカードの真偽判定は困難である。
【0007】
また、ICカードを分解する際に、透かし模様が印刷されている部分を含めて他のICカードの表面とすげ替えたような場合には、透かし模様には改変が加えられないため、透かし模様によってICカードの偽造・変造を判定するのは困難である。また、ICカードに透かし模様が印刷されていることが知徳された場合、その透かし模様を精巧に再現して偽造ICカードを作製することも可能である。この場合も、視認しただけではICカードの真偽判定は困難である。
【0008】
また、ICチップが破損していた場合などICカードに不具合が生じても、その不具合がどの段階で生じたのか製造履歴をたどることができず、不具合の原因を特定しても、その結果を製造工程へフィードバックすることが困難であった。
【0009】
本発明は、このような点からなされたものであり、トレーサビリティーを備え、かつカードリーダーを使用しなくても、簡便に、ICカードの偽造・変造の有無を識別でき、また、ICカード内の電子部品が破損している場合であっても、簡便に、ICカードの偽造・変造の有無を識別できる、優れたセキュリティー性を有するICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるICカードは、電子部品を収納したカードコア層と、前記カードコア層の一方の面に設けられた表基材層と、前記表基材層の表面に設けられた情報記録層と、を少なくとも備えたICカードにおいて、
前記表基材層の、前記情報記録層が設けられた面とは反対側の面には、透かし模様が印刷されており、
前記透かし模様は、ICカード毎に僅かに異なるが全ICカードとして略同一の紋様パターンであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明によるICカードは、全ICカードの個々の紋様パターンが符合情報としてコード化されており、前記符合情報が前記情報記録層に印刷されていてもよい。
【0012】
本発明によるICカードは、前記符合情報が微細文字または図形であってもよい。
【0013】
本発明によるICカードは、前記ICカードが、複数のICカードを行列単位に配置した枚葉シートをICカード毎に打ち抜いて製造されるものであり、前記符合情報が、行番号と列番号と文字列からなるものであってもよい。
【0014】
本発明によるICカードは、前記微細文字または図形が、赤外吸収インクを用いて印刷されていてもよい。
【0015】
本発明によるICカードは、前記符合情報が、前記電子部品のICチップに記録されていてもよい。
【0016】
本発明によるICカードは、前記紋様パターンの画像が、電子データとして前記ICチップに記録されていてもよい。
【0017】
また、本発明の別の実施態様によるICカード認証方法は、読み出し装置を用いて、ICカードのICチップに記録されている紋様パターンおよび符合情報を読み出し、
サーバー上のデータベースに格納されている各ICカードのシリアル番号、紋様パターンおよび符合情報の中から、前記ICカードのICチップに記録されているシリアル番号に基づいて、紋様パターンおよび符合情報を呼び出し、
前記ICカードの紋様パターンおよび符合情報と、データベースから呼び出した紋様パターンおよび符合情報とを照合することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の別の実施態様によるICカードの生産システムは、上記ICカードを用いた生産システムであって、
カード発行番号および符合情報が情報記録層に記録されたICカードと、
前記カード発行番号、ならびに、ICカードの発行場所および発行日時を含むICカード発行情報、が格納された第1のデータベースと、
前記カード発行番号、ならびに、ICカードの製造場所、製造日時、使用材料、製造条件および製造ロットを含むICカード製造情報、が格納された第2のデータベースと、を備え、
前記第1データベースおよび/または第2データベースに格納された情報に基づいて、前記ICカードのカード発行番号および/または符合情報から製造情報を参照し、当該ICカードの製造履歴を特定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によるICカードには、透かし模様として、全ICカードとして略同一の紋様パターンであるが、各ICカードそれぞれでこのパターンが僅かに異なっているため、ICカードに透かし模様が埋め込まれていることにたとえ気づいたとしても、他のICカードと比較しなければ、ICカード毎に透かし模様の紋様パターンが異なっていることに気づかない。したがって、各符合情報に対応する紋様パターンを把握しておけば、ICチップが破壊されて、ICカードの表面に印刷された個人情報と、ICチップ内に記録されている個人情報とを照合できない場合であっても、ICカードの透かし模様と印刷された符合情報とを確認して、透かし模様の紋様パターンが予め把握している紋様パターンと異なっていれば、そのICカードが偽造・変造されたものであることを認識できる。そのため、ICカードの表基材層のみをすげ替えて偽造・変造を行った場であっても、もとの透かし模様を再現できなくなるため、ICカードの透かし模様によって真偽判定を行うことができる。
【0020】
また、略同一ではあるが微妙に異なる紋様パターンが、枚葉シートのどの位置のものであったかを別途記録しておくことにより、市場流通した後であっても、ICカードの紋様パターンを識別することにより、枚葉シートのどの位置にあったICカードであったかを把握することができる。したがって、製造後にICカードに不具合が生じても、その不具合がどの段階で生じたのか製造履歴をたどることができため、不具合の原因を製造工程へフィードバックすることができる。
【0021】
また、本発明によるICカードの生産システムによれば、たとえ、発行情報や製造情報が記録されているICチップが破損しているICカードであっても、ICカードの情報記録面に記録されている発行情報や符合情報から、第1データベースや第2データベースに格納された情報に基づいて、製造情報を参照できるため、ICカードの製造履歴をたどることができるため、不具合の原因を製造工程へフィードバックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態によるICカードを情報記録層側から見た正面概略図である。
【図2】図1のII−II 線に沿った断面図である。
【図3】ICカード基材の裏基材層(筆記層)側から光を照射して、情報記録層(保護層)側から見た図である。
【図4】表基材層の裏面に透かし模様を印刷し、情報記録層にフォーマット印刷を行った枚葉シートを、表基材層の裏面側(透かし模様側)からの光照射によって、情報記録層3側からみたときの図である。
【図5】図4の枚葉シートにおいて、透かし模様の一部の紋様パターンが赤外吸収インクによって形成された実施形態を表した図である。
【図6】ICカードのICチップ内に記憶させる情報S1、およびサーバー上に置かれたデータベースに格納されたICカード情報S2を照合する際の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態によるICカードを情報記録層側から見た正面概略図であり、図2は、図1のII−II 線に沿った断面図である。ICカード10は、電子部品7を収容したカードコア層1と、カードコア層1の一方の面に設けられた表基材層2と、その表基材層2の表面に設けられた情報記録層3を備えている。情報記録層3には、ICカードの製造時に予め形成されるフォーマット印刷5cの他、ICカードの発行時に記録される画像情報5aや文字情報5b、さらに、後記する符合情報5dが印刷されている。また、図示はしないが、情報記録層3には、通常、ICカード発行時に、カード発行場所やカード発行時刻等のカード発行情報も記録される。
【0025】
表基材層2の情報記録層3が設けられた面とは反対側の面には、透かし模様4が印刷されている。透かし模様とは、ICカードの表面を通常の明るさで視認した場合には当該模様を認識することができず、ICカードを太陽光や室内照明等にかざして見た場合にその模様の形状を認識できるものを意味する。すなわち、ICカードの中を透過する光量が、模様のある部分と模様のない部分とで異なることを利用して、ICカードの内部に印刷されている模様の形状を認識できる。したがって、ICカードの厚み方向の光の透過率が0%であってはならないが、ある程度の透過率を有していれば、透かし模様を認識することができる。
【0026】
図3は、ICカード基材の裏基材層8(筆記層9)側から光を照射して、情報記録層3(保護層6)側から見た図である。ICカードを透かして見た場合、図3に示すように、情報記録層に印刷した文字情報や画像情報だけでなく、ICカード内部に収納されているICチップ7aやアンテナ7bや、透かし模様4を視認することができる。
【0027】
先ず、この透かし模様について詳細に説明する。後記するように、ICカードは、情報記録層3を設けた表基材層2と裏基材層8との間に、電子部品7を含むインレットを挟み込んで接着剤により互いを積層することにより製造されるが、透かし模様は、表基材層2と裏基材層8とを積層する前に、表基材層2の一方の面に予定の紋様パターンを印刷することにより形成される。これらの工程は、ICカード毎に実施されてもよいが、通常は、生産性の観点から、一枚一枚製造されるのではなく、複数のICカードを行列状に配置した枚葉シートを、ICカード単位毎に打ち抜いて製造される。したがって、透かし模様を印刷する場合も、枚葉シート全体に透かし模様を印刷される。また、顔画像や住所等の個人情報は、ICカード単位に打ち抜いた後に情報記録層3に印刷されるが、各ICカードに共通する印刷柄は、枚葉シートの段階でフォーマット印刷が行われる。
【0028】
図4は、表基材層2の裏面に透かし模様4を印刷し、情報記録層3にフォーマット印刷5cを行った枚葉シート11を、表基材層2の裏面側(透かし模様側)からの光照射によって、情報記録層3側からみたときの図である。図4では、理解を容易にするために、3列×3行の枚葉シート11が示されているが、生産性等の観点からは、一枚の枚葉シートに50枚程度のICカード単位が含まれているのが好ましい。
【0029】
図4に示すように、フォーマット印刷5cは各ICカードで共通する。一方、透かし模様4は、全ICカードとして略同一の紋様パターンであるが、9枚のICカードそれぞれでこのパターンが僅かに異なっている。即ち、略同一パターンではあるが、僅かにパターンの異なる9種類の紋様パターンを、透かし模様として枚葉シート11に印刷したものである。僅かに異なるパターンとしては、例えば、紋様を文字とした場合に、その文字の繰り返しの規則性を一部の文字のみ変えたもの等が挙げられるが、枚葉シート11全体として紋様パターンが略同一に見えるものであれば、これに限定されるものでない。このような透かし模様をICカード内部に設けておくと、ICカードに透かし模様が埋め込まれていることにたとえ気づいたとしても、他のICカードと比較しなければ、ICカード毎に透かし模様の紋様パターンが異なっていることに気づかない。したがって、各符合情報に対応する紋様パターンを把握しておけば、ICチップが破壊されて、ICカードの表面に印刷された個人情報と、ICチップ内に記録されている個人情報とを照合できない場合であっても、ICカードの透かし模様と印刷された符合情報とを確認して、透かし模様の紋様パターンが予め把握している紋様パターンと異なっていれば、そのICカードが偽造・変造されたものであることを認識できる。
【0030】
枚葉シート単位としては、紋様パターンとして同一のものを使用してよい。このように枚葉シート単位で同じ紋様パターンを使用すれば、個々の紋様パターンを有限(図3の実施形態では9種類)とすることができるとともに、行と列とを特定すれば、どの紋様パターンかを追跡することができる。例えば、行番号および列番号を、符合情報としてコード化し、この符合情報と各紋様パターンとを関連付けておくことにより、この符合情報に基づいてどの紋様パターンであるかを追跡することができる。例えば、第A列の第1行をA1、第A列第2行をA2というように、枚葉シート11のICカード6単位毎にA1〜C3までの符合情報を関連付けておくことにより、符合情報に基づいて、紋様パターンを特定することができる。符合情報としては、上記した文字の他、模様や図形等であってもよい。
【0031】
また、透かし模様の一部の紋様パターンを可視光では視認できないような材料を用いて形成してもよい。図5は、図4に示した枚葉シートにおいて、透かし模様の一部の紋様パターンを赤外吸収インクによって形成したものである。図5に示すように、枚葉シート11中のICカード10は、各ICカード毎に、赤外吸収インクによって形成された紋様パターン4’の位置が異なっている(図中では、C列1行およびC列2行のICカードの紋様パターン4’を記載し、C列3行、A列、B列の紋様パターン4’を省略してある)。この場合、ICカード使用者がたとえ透かし模様を認識したとしても、紋様パターンの違いまでは認識できないため、ICカードの偽造・変造をより確実に防止することができる。また、この位置情報を、上記した符合情報5dと関連付けておくことにより、市場流通した後であっても、ICカードの紋様パターンを識別することにより、枚葉シートのどの位置にあったICカードであったかを把握することができる。したがって、製造後にICカードに不具合が生じても、その不具合がどの段階で生じたのか製造履歴をたどることができるため、不具合の原因を製造工程へフィードバックすることができる。
【0032】
図1に示すように、符合情報5dは、ICカード10の情報記録層3にフォーマット印刷5cとともに印刷されていてもよい。この場合、カード所有者に、符合情報5dを認識させないようにするために、符合情報をマイクロ文字や模様等の図形とすることができる。また、符合情報5dを情報記録層3に印刷する際に、可視光では視認できないような赤外吸収インクを用いて符合情報を印刷することにより、符合情報の存在自体をカード所有者に認識させないようにすることができる。よって、より巧妙な偽造・変造に対しても、ICカードの真偽判定を確実に行うことができるようになる。
【0033】
符合情報5dを印刷する位置は、特に制限されないが、画像情報等、ICカード表面の偽造されやすい箇所の近傍に符合情報5dが印刷されていることが好ましい。ICカードに印刷されている顔画像等の画像情報のみを他人の顔画像に改変することが行われた場合に、偽造・変造者は符合情報が印刷されていることに気付かないため、画像情報とともに符合情報も改変ないし除去してしまう。よって、ICカード10の情報記録層3に符合情報5dが欠落していたり、あついは、符合情報5dは印刷されていても、紋様パターン4が、その符合情報5dに基づくものでなかった場合に、そのICカードが偽造・変造されたものであることを容易に判定することができる。
【0034】
ICカードの認証は、上記のようにカードリーダー等を持ち合わせていなかったり、またはICチップが破損している場合であっても可能であるが、勿論、ICカードに印刷されている個人情報等と、ICチップ内に記録されている個人情報等と照合することにより行われてもよい。本発明によるICカードを用いたICカード認証方法の一実施形態について説明する。
【0035】
図6は、ICカードのICチップ内に記憶させる情報S1、およびサーバー上に置かれたデータベースに格納されたICカード情報S2を照合する際の概略ブロック図である。CIカードのICチップには、ICカードシリアル番号、符合情報、紋様パターン、顔写真等の画像情報等を記憶させておく。例えば、ICカード10の製造時、上記したように枚葉シート11から各ICカードを打ち抜く前に、書き込み装置(RW)を用いて、各ICカードのICチップに、上記した情報を記憶させることができる。また、サーバー上に置かれたデータベースにも、各ICカードの情報を格納しておく。サーバー上のデータベースに格納されている各ICカードのシリアル番号、紋様パターンおよび符合情報の中から、前記ICカードのICチップに記録されているシリアル番号に基づいて、紋様パターンおよび符合情報を呼び出し、ICカードの紋様パターンおよび符合情報と、データベースから呼び出した紋様パターンおよび符合情報とを照合することにより、ICカード認証を行う。勿論、ICカードに印刷された画像情報等と、ICチップ内に記憶されている画像情報等とを照合させることによっても、ICカードの認証を行うことができるが、上記のように紋様パターンおよび符合情報を照合することにより、より巧妙に偽造・変造されたICカードの真偽判定を確実に行うことができる。
【0036】
次に、上記したICカードを用いた生産システムについて説明する。本発明によるICカード生産システムは、カード発行番号および符合情報が情報記録層に記録されたICカードと、前記カード発行番号、ならびに、ICカードの発行場所および発行日時を含むICカード発行情報、が格納された第1のデータベースと、前記カード発行番号、ならびに、ICカードの製造場所、製造日時、使用材料、製造条件および製造ロットを含むICカード製造情報、が格納された第2のデータベースと、を備えている。ICカードには、上記したように、ICチップ内に、ICカードシリアル番号、符合情報、紋様パターン、顔写真等の画像情報等を記録されているが、ICチップが破損等して読み出し装置によってICチップ内の情報を読み出せなくなった場合、ICカードの情報記録層(券面)に記載されている情報のみによって、ICカードを特性せざるを得ない。本発明によるICカード生産システムにおいては、ICカードの情報記録層に記載されているカード発行番号に基づいて、第1のデータベースにアクセスすることにより、そのICカードの発行情報を知徳することができる。また、第1データベースに格納されたCI発行情報と第2データベースに格納された製造情報とを関連付けておくことにより、ICカードの情報記録層に記載されているカード発行番号および符合情報に基づいて、製造情報を知徳することができる。したがって、個々のICカードに不具合が生じた場合であっても、ICカードの券面に記載されているカード発行番号および符合情報に基づいて、そのICカードの製造場所や製造時期、製造ロット等を特定することができるため、不具合がどの段階で生じたのか製造履歴をたどることができるため、不具合の原因を製造工程へフィードバックすることができる。
【0037】
ところで、ICカードは、通常、日常の使用に耐えうるように製造されているため、ICカードが破損する場合、製造上のトラブルや材料等に起因する場合は必然的に多いと言える。例えば、ICチップは不織布やフィルム上に形成されたアンテナ上にICが載置されたインレット形態となっているため、連続した細長いリールに巻かれた状態で納入されるのが一般的である。これが列毎に供給されてICカードとなるため、ICカードの市場流通後に、ある列のみIC破損率が高いとわかれば、その列のインレットの製造物が疑わしい、と判断するができる。また、破損したICカードを調査して、破損したICカードは、通常のICカードよりも厚みが厚いことが分かれば、厚みが厚くなったICカードの製造ラインを特定し、そのラインの製造情報履歴を調べることにより、原因を特定できる。例えば、特定の製造ラインでは、接着剤を介在させてカードを貼り合せる際の接着剤厚みがその列だけ異常であり、貼り合せ装置の接着剤塗布部の異常で、通常より多量の接着剤を介してIC部分をプレスするために過大な応力かかって、ICが破損した可能性を疑うことができる。このように、内部のICチップが破損してしまったICカードであっても、そのICカードの製造履歴を特定可能とすることで、製造工程へにフィードバックすることができる。その結果、ICカードの故障率を下げることが可能となる。
【0038】
以下、図2を参照しながら、本発明の実施形態によるICカードの各層の構成について説明する。表基材層2は、画像情報5aや符合情報5d等が印刷される情報記録層を支持するともに、裏基材層8との間に設けられるカードコア層1を支持する層である。この表基材層2には、情報記録層3が設けられた面とは反対側の面に、透かし模様4が印刷されている。
【0039】
表基材層2および裏基材層8としては、各種のカード基材の材料として使用されているものを用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、生分解性脂肪族ポリエステル、生分解性ポリカーボネート、生分解性ポリ乳酸、生分解性ポリビニルアルコール、生分解性セルロースアセテート、生分解性ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂シートが挙げられるが、これらのなかでもポリエチレンテレフタレートを好適に使用することができる。
【0040】
表基材層2および裏基材8の厚みは30〜300μm、好ましくは50〜200μmである。50μm以下であると表基材層と裏基材層とを接着剤を介して互いに貼り合わせる際に加熱したときに熱収縮等を起こす場合がある。なお、熱収縮率を低減させるシート部材のアニール処理を行ってもよい。
【0041】
透かし模様4は、上記した表基材層2の情報記録層3が設けられる面とは反対側の面に形成される。透かし模様は、光の透過率が低いインクで印刷されていればよく、通常使用される不透明なインクを用いて形成することができる。透かし模様が印刷されていない部分よりも、透かし模様のある部分の光の透過率が低くなることにより、ICカード10の裏基材層8(筆記層9)側から光を照射して表基材層側3(保護層6)側から視認すると、「透かし模様」として認識することができる。
【0042】
情報記録層3は、顔写真等の画像情報5aや、カードの種類、氏名、住所、生年月日、有効期限等の文字情報5b(以下、これらをまとめて個人情報という場合がある)が記録される層である。また、情報記録層3には、上記した画像情報5aや文字情報5bの他、画像情報5aの枠や文字情報5b以外の固定文字等のフォーマット印刷(図示せず)がされていてもよい。また、ICカードは、上記した情報記録層3に記録された画像や文字の情報を保護するために、情報記録層3上には保護層5が設けられていてもよい。
【0043】
画像情報5aや文字情報5bは、熱転写記録方式で昇華性染料もしくは熱拡散性染料を受容して、情報記録層3に印画される。したがって、情報記録層3は、昇華性染料または熱溶融性インク等の熱移行性の色材を受容し易い材料から形成されることが好ましい。このような材料としては従来公知の樹脂材料を使用することができ、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体もしくはポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンもしくはプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体系樹脂、アイオノマーもしくはセルロースジアスターゼ等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等が挙げられ、特に、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂またはポリエステル樹脂が好ましい。
【0044】
また、上記した個人情報を記録する染料としては、後記するような、低いエネルギーで画像の濃淡を表現できかつ優れた画像耐久性を実現できるポストキレート染料が好適に使用されることから、情報記録層3には、ポストキレート染料と反応してキレートを形成し得る金属イオン含有化合物を含有していることが好ましい。情報記録層3中に含有させる金属イオン含有化合物としては、従来公知のものを使用することができ、第I、第VIII族に属する2価および多価の金属の無機または有機の塩および金属錯体を好適に使用することができる。例えば、Ni2+、Cu、Co2+、Cr2+およびZn2+を含有する、下記一般式:
[M(Q1)k(Q2)m (Q3)n]pp(L
(式中、Mは金属イオンを表し、Q1、Q2、Q3は各々Mで表される金属イオンと配位結合可能な配位化合物を表わし、Lは錯体を形成しうる対アニオンを表し、kは1、2または3の整数を表し、mは1、2または0を表し、nは1または0を表すが、これらは前記一般式で表される錯体が4座配位か、6座配位かによって決定されるか、あるいはQ1、Q2、Q3の配位子の数によって決定され、pは1、2または3を表す。)で表される錯体が好ましく用いられる。これらの中でも、金属と配位結合する少なくとも一個のアミノ基を有する配位化合物が好ましく、具体的にはエチレンジアミンおよびその誘導体、グリシンアミドおよびその誘導体、ピコリンアミドおよびその誘導体が挙げられる。また、錯体を形成しうる対アニオンLとしては、Cr、SO、ClO等の無機化合物アニオンやベンゼンスルホン酸誘導体、アルキルスルホン酸誘導対等の有機化合物アニオンが挙げられるが、特に好ましくはテトラフェニルホウ素アニオンおよびその誘導体、ならびにアルキルベンゼンスルホン酸アニオンおよびその誘導体である。このような金属イオン含有化合物としては、米国特許第4,987,049号明細書に例示されたものを挙げることができる。金属イオン含有化合物の樹脂中への添加量は0.5〜20g/mが好ましく、1〜15g/mがより好ましい。
【0045】
画像情報5aや文字情報5b等の個人情報は、公知の熱転写シートを用いて、情報記録層3に熱転写方式により形成される。熱転写シートの色材層に用いられる色材としては、上記したようなポストキレート染料が好適に用いられる。ポストキレート色素としては、従来公知のものを使用することができ、このようなキレート形成可能な昇華性色素としては、例えば特開昭59−78893号、同59−109349号、特願平2−213303号、同2−214719号、同2−203742号に記載されている、少なくとも2座のキレートを形成することができるシアン色素、マゼンタ色素およびイエロー色素を挙げることができる。キレートの形成可能な好ましい昇華性色素は、下記一般式で表わすことができる。
X1−N=N−X2−G
(式中、X1は、少なくとも一つの環が5〜7個の原子から構成される芳香族の炭素環、または複素環を完成するのに必要な原子の集まりを表わし、アゾ結合に結合する炭素原子の隣接位の少なくとも一つが、窒素原子またはキレート化基で置換された炭素原子であり、X2は、少なくとも一つの環が5〜7個の原子から構成される芳香族複素環または、芳香族炭素環を表わし、Gはキレート化基を表わす。)
【0046】
一方、フォーマット印刷5cは、通常使用されるBkインク等により情報記録層3に印刷すればよい。また、符合情報5dは、上記したようなインクで印刷されてもよいが、可視光波長領域では吸収がなく、赤外光波長領域のみに吸収を有する赤外吸収インクを用いて印刷されていることが好ましい。このような赤外吸収インクとしては、公知のものを使用することができ、例えば、五二酸化リンを主成分とし酸化鉄または酸化銅あるいはその両者を含むリン酸結晶粉末、五二酸化リンを主成分とし、Fe2+またはCu2+イオン含むガラス系粉末、金属錯体の赤外線吸収剤、シアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アントラキノン系、コロニックメチン系、アズレオニオム系、ピリリウム系等の赤外吸収染料と樹脂バインダーとを溶剤に溶解させたインクを好適に使用することができる。
【0047】
情報記録層3には、離型剤が添加されていてもよい。離型剤としては、用いるバインダーと相溶性のあるものが好ましく、具体的には変性シリコーンオイル、変性シリコーンポリマーが代表的であり、例えばアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーン樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂等が挙げられる。このなかでもポリエステル変性シリコーンオイルはインクシートとの融着を防止するが、情報記録層3の2次加工性を妨げないという点で特に優れている。その他の離型剤として、シリカ等の微粒子や硬化型シリコーン化合物等を使用することもできる。
【0048】
情報記録層3は、上記した各成分を溶媒に分散あるいは溶解させた受像層用塗工液を調製し、受像層用塗工液を後記する表基材層2の一方の面に塗布し、乾燥することよって形成することができる。情報記録層3の厚みは、一般的に1〜50μm、好ましくは2〜10μm程度である。
【0049】
保護層6は情報記録層を保護してICカードの耐久性を向上させる機能を有するものであり、上記した情報記録層3に画像情報5aや符合情報5dを印刷した後、保護層転写箔シートを用いて、情報記録層3上に保護層6を転写することにより形成される。保護層転写箔シートとしては、支持体上に離型層を介して保護層を設けたものを好適に使用することができる。保護層転写箔シートに使用される支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂シート、又は上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、金属箔等の単層体またはこれら2層以上の積層体が挙げられる。支持体の厚みは10〜200μm、好ましくは15〜80μmである。
【0050】
支持体上に設けられる離型層としては、高ガラス転移温度を有するアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ボリビニルブチラール樹脂などの樹脂、ワックス類、シリコンオイル類、フッ素化合物、水溶性を有するポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、Si変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース樹脂、ヒドロキシセルロース樹脂、シリコン樹脂、パラフィンワックス、アクリル変性シリコーン、ポリエチレンワックス、エチレン酢酸ビニルなどの樹脂、ポリジメチルシロキサンやその変性物、フッ素化オレフィン、パーフルオロ燐酸エステル系化合物等のフッ素系化合物が挙げられる。
【0051】
保護層としては、情報記録層を保護するために、耐久性や透明性に優れた樹脂であれば、従来公知の何れの樹脂も使用でき、例えば、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。透明保護層は、例えば、適当な溶剤又は分散液に、上記の樹脂を溶解又は分散させた保護層塗工液を、支持体又は離型層の表面に、厚みが0.5〜5g/m(乾燥基準)程度となるように塗布し、乾燥させることにより形成することができる。透明樹脂層の厚みは0.3〜50μmが好ましく、より好ましくは0.3〜30μm、特に好ましくは0.3〜20μmである。
【0052】
保護層転写箔シートの保護層面には、情報記録層との接着性を向上させるために、接着層が設けられていてもよく、接着層としては、熱貼着性樹脂としてエチレン酢酸ビニル樹脂、エチンエチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、アイオノマー樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、粘着付与剤などが挙げられ、それらの共重合体や混合物でもよい。具体的には、ハイテックS−6254、S−6254B、S−3129等(東邦化学工業(株)製)、ジュリマーAT−210、AT−510、AT−613等(日本純薬(株)製)、プラスサイズL−201、SR−102、SR−103、J−4等(互応化学工業(株)製)の市販のものを使用することができる。接着層の厚みは0.1〜1.0μm程度である。
【0053】
上記した保護層転写箔シートは、支持体、離型層、保護層、接着層の各層の接着性を向上させるため、各層の間に中間層としてプライマー層やバリア層が設けられていてもよい。
【0054】
カードコア層1は、電子部品7を収容するための層である。電子部品7はICチップ7aとコイル状のアンテナ7とから構成されるが、上記した表基材層2および裏基材層8に接着剤を塗布し、表基材層の接着剤が塗布された面に電子部品7を配置して裏基材層8で挟み込むことにより、カードコア層1が形成される。ICカードの平滑性を保つため、表基材層および裏基材層の間に接着剤を介して電子部品7を直接挟み込むのではなく、インレット(図示せず)としたものを挟み込んでもよい。インレットは、基材上に塗布した接着剤に電子部品を封入するために、予め、電子部品を多孔質の樹脂フィルム、多孔質の発泡性樹脂フィルム、可撓性の樹脂シート、多孔性の樹脂シートまたは不織布シート状にしたものである。インレットを含む電子部品の全厚さは100〜600μmが好ましく、より好ましくは150〜500μm、特に好ましくは、150〜450μmである。
【0055】
表基材層2と裏基材層8との間に、電子部品7を収納したカードコア層を設けた積層構造を形成する方式としては、熱貼合法、接着剤貼合法、接着剤塗布法及び射出成形法が挙げられるが、いずれの方法で各部材を貼り合わせてもよい。貼り合わせに接着剤を使用する場合、特に制限されることなく従来公知の接着剤を用いることができるが、本発明においては、ホットメルト接着剤等を好適に使用することができ、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)系や、ポリエステル系、ポリアミド系、熱可塑性エラストマー系、ポリオレフィン系の接着剤を挙げることができる。これらのなかでも、湿気硬化型の接着剤が好ましい。上記したもの以外でも、湿気硬化型接着剤として、特開2000−036026号公報、特開2000−211278号公報、特開2000−219855号公報等に開示されている接着剤を好適に使用することができる。なお、カードコア層の厚みは100〜600μmが好ましく、より好ましくは150〜500μm、特に好ましくは、150〜450μmである。
【0056】
また、裏基材層8の表面には、筆記層9が設けられていてもよい。筆記層とは、ICカードの裏面に筆記をすることができるようにした層である。筆記層としては、例えば炭酸カルシウム、タルク、ケイソウ土、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機微細粉末を含有させた熱可塑性樹脂(ポリエチレン等のポリオレフィン類や、各種共重合体等)フィルムを第1シートの最表面に設けることにより、形成することができる。
【0057】
ICカードには、表基材層2と情報記録層3との間に、クッション層(図示せず)が設けられていてもよい。クッション層を設けると、情報記録層3への記録(熱転写)の際の表面の凹凸の影響を緩和することができ、画像5aや文字5bを再現性良く転写記録することができる。クッション層を形成する材料としては、ポリオレフィンが好ましい。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−水素添加イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエン、光硬化型樹脂層のような柔軟性を有し、熱伝導性の低いものが適する。具体的には、特願平2001−16934等のクッション層を使用することができる。
【0058】
上記した各部材を貼り合わせる際には、表基材層および裏基材層の表面平滑性や、表基材層および裏基材層の間に設ける電子部品の密着性を向上させるために、加熱及び加圧を行うことが好ましく、上下プレス方式、ラミネート方式等で製造することが好ましい。加圧によるIC部品の破損を考慮して、ローラプレスよりも平面プレス型とするのが好ましい。加熱は、10〜180℃が好ましく、より好ましくは30〜150℃である。加圧は、1〜300kgf/cmが好ましく、より好ましくは1〜200kgf/cmである。これより圧が高いと電子部品が破損する場合がある。
【0059】
ICカードは、接着剤貼合法や樹脂射出法で連続シートとして形成された貼り合わせた枚葉シートまたは連続塗工ラミロールとして形成してもよく、それらシートないしラミロールを所定のカードサイズに打ち抜いてICカードを作製することができる。なお、ICカードを作製した後、または、情報記録層を形成した後に、他方の面上に、個人識別情報ではない一般的な書誌事項を印刷することもできるが、シートないしラミロール状の状態で、連続して一般的な書誌事項を印刷しておく方が好ましい。所定のカードサイズに成形する方法としては、打ち抜く方法、断裁する方法等を主として採用できる。
【符号の説明】
【0060】
10 ICカード
1 カードコア層
2 表基材層
3 情報記録層
4 透かし模様
4’ 赤外吸収インクで印刷された透かし模様
5a 画像情報
5b 文字情報
5c フォーマット印刷
5d 符合情報
6 保護層
7 電子部品
7a ICチップ
7b アンテナ
8 裏基材層
9 筆記層
11 枚葉シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収納したカードコア層と、前記カードコア層の一方の面に設けられた表基材層と、前記表基材層の表面に設けられた情報記録層と、を少なくとも備えたICカードにおいて、
前記表基材層の、前記情報記録層が設けられた面とは反対側の面には、透かし模様が印刷されており、
前記透かし模様は、ICカード毎に僅かに異なるが全ICカードとして略同一の紋様パターンであることを特徴とする、ICカード。
【請求項2】
全ICカードの個々の紋様パターンが符合情報としてコード化されており、前記符合情報が前記情報記録層に印刷されている、請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記符合情報が微細文字または図形である、請求項2に記載のICカード。
【請求項4】
前記ICカードが、複数のICカードを行列単位に配置した枚葉シートをICカード毎に打ち抜いて製造されるものであり、前記符合情報が、行番号と列番号と文字列からなる、請求項3に記載のICカード。
【請求項5】
前記微細文字または図形が、赤外吸収インクを用いて印刷されたものである、請求項3に記載のICカード。
【請求項6】
前記符合情報が、前記電子部品のICチップに記録されている、請求項2〜4のいずれか一項に記載のICカード。
【請求項7】
前記紋様パターンの画像が、電子データとして前記ICチップに記録されている、請求項4に記載のICカード。
【請求項8】
請求項7に記載のICカードを用いたICカードの認証方法であって、
読み出し装置を用いて、ICカードのICチップに記録されている紋様パターンおよび符合情報を読み出し、
サーバー上のデータベースに格納されている各ICカードのシリアル番号、紋様パターンおよび符合情報の中から、前記ICカードのICチップに記録されているシリアル番号に基づいて、紋様パターンおよび符合情報を呼び出し、
前記ICカードの紋様パターンおよび符合情報と、データベースから呼び出した紋様パターンおよび符合情報とを照合することを特徴とする、ICカードの認証方法。
【請求項9】
請求項1〜7に記載のICカードを用いた生産システムであって、
カード発行番号および符合情報が情報記録層に記録されたICカードと、
前記カード発行番号、ならびに、ICカードの発行場所および発行日時を含むICカード発行情報、が格納された第1のデータベースと、
前記カード発行番号、ならびに、ICカードの製造場所、製造日時、使用材料、製造条件および製造ロットを含むICカード製造情報、が格納された第2のデータベースと、を備え、
前記第1データベースおよび/または第2データベースに格納された情報に基づいて、前記ICカードのカード発行番号および/または符合情報から製造情報を参照し、当該ICカードの製造履歴を特定することを特徴とする、ICカードの生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77210(P2013−77210A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217380(P2011−217380)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】