説明

ICタグおよび物品の管理方法

【課題】リネン物品など、金属探知装置による検査が必要とされる物品に使用されても、金属探知装置に反応して誤動作を起こすことがなく、しかも、外部の情報通信器との間の非接触による情報通信は十分に良好に行うことができるICタグを提供する。
【解決手段】電子情報を記憶して外部の情報通信器と非接触で情報通信するICタグである。電子回路部32、アンテナ部34、保護外殻部20を備える。電子回路部32が、投影面積0.1〜2mmのベアICチップからなる。アンテナ部34が、非磁性で線径10〜100μmの導電線材を中空渦巻状に巻回してなる外周面積30〜1200mmの巻線アンテナからなり、その両端が電子回路部32のベアICチップに直接に接合されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグおよび物品の管理方法に関し、詳しくは、例えば、ホテルや病院で大量に使用されるシーツなどのリネン物品を、洗濯などの取り扱い作業において個別に管理する場合など、物品を個別に管理するのに利用されるICタグと、このようなICタグを用いた物品の管理方法とを対象にしている。
【背景技術】
【0002】
ホテルや病院においては、シーツやバスタオルなどのリネン物品が大量に使用される。使用済みのリネン物品を洗濯したり、洗濯済みのリネン物品を使用するまで保管しておいたり、必要な場所に必要な種類のリネン物品を仕分けして搬送したりする作業が日常的に繰り返して行なわれる。
このようなリネン物品の取り扱いの際に、個々のリネン物品を識別して、例えば、使用材料や製造条件、製造時期、製造ロット、使用開始後の経過期間や洗濯回数などの使用履歴、その他の情報を管理することで、リネン物品の取り扱いを適切かつ能率的に行なうことが考えられた。
【0003】
リネン物品に限らず、各種の商品や物品の情報管理に、ICタグが利用される。ICタグは、ICチップとアンテナを備えた電子部品であり、樹脂に埋め込んだり樹脂シート間に積層したりして物理的に保護された状態で使用される。ICチップの記憶領域に情報を電子的に記憶したり読み書きしたりできる。電子情報は、アンテナを介して外部の情報通信器と非接触で無線通信によってやり取りされる。例えば、ICタグを取り付けた物品を情報通信器に近づければ、情報通信器でICタグの情報を読み取って物品を識別し、必要な情報を読み出したり書き加えたりできる。
ところが、リネン物品にICタグを取り付けておくと、リネン物品に混入した金属異物を金属探知装置で検査する際に、誤作動が起こり易いという問題がある。金属探知装置が、金属材料を含むICタグを金属異物として検知してしまうのである。人体に触れることのあるリネン物品は、安全上の観点からも金属探知検査は、かかせない作業である。
【0004】
リネン物品に取り付けておいても、金属探知装置で検知されないICタグが提案されている。特許文献1には、ICタグであるデータキャリアのコンデンサやリードフレームを含む全体を、銅やパラジウムなどの非磁性材料で構成することで、金属探知装置に反応しないようにできるとされている。
【特許文献1】特開平11−144011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した非磁性材料からなるICタグを用いても、リネン物品を金属探知装置で検査したときに、ICタグが反応してしまい、誤動作を起こすことがある。
金属探知装置で針片などの微小な金属異物までを検知しようとして探知感度を上げると、非磁性材料とされている銅やパラジウムを使用するICタグであっても磁性的に反応してしまうことがある。
その理由の一つは、ICタグに含まれるアンテナが、金属探知装置の磁界や磁力線の影響を受けて電磁気的に反応するのであると考えられる。非磁性材料であっても、導電材料である限り、アンテナによる電磁気的な反応をなくすことは困難である。また、金属探知装置が、鉄などの磁性金属だけでなく、非磁性金属からなる異物についても検知できる機能を備えている場合には、非磁性材料を用いたICタグでも、検知され易くなる。
【0006】
金属探知装置による検査で、リネン物品に取り付けられたICタグが反応しないようにするために、ICタグのアンテナを小さくしたり感度を弱くしたりすることが考えられた。しかし、アンテナ感度が弱くなると、ICタグと外部の情報通信器との間における非接触の情報通信がうまく行なえなくなる。リネン物品の場合、かなりの嵩がある状態で取り扱ったり、多数を重ねて取り扱ったりすることがあるので、リネン物品の内部に隠れたICタグと確実に情報通信を行なうには、十分なアンテナ感度を有するように、感度の高いアンテナを備えていなければならない。
リネン物品に限らず、ICタグを取り付ける物品には、同様の問題が発生する。
【0007】
本発明の課題は、リネン物品のように、金属探知装置による検査が必要とされる物品に使用されても、金属探知装置に反応して誤動作を起こすことが防止でき、しかも、外部の情報通信器との間の非接触による情報通信は十分に良好に行なうことができるICタグを提供し、リネン物品などの管理を適切に行なえるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるICタグは、電子情報を記憶して外部の情報通信器と非接触で情報通信するICタグであって、前記電子情報の記憶および入出力を行なう電子回路部と、前記電子回路部と電気的に接続されている情報通信用のアンテナ部と、前記電子回路部と前記アンテナ部が収容された保護外殻部とを備え、前記電子回路部が、投影面積0.1〜2mmのベアICチップからなり、前記アンテナ部が、非磁性で線径10〜100μmの導電線材を中空渦巻状に巻回してなる外周面積30〜1200mmの巻線アンテナからなり、その両端が前記電子回路部のベアICチップに直接に接合されてなる。
各構成について具体的に説明する。
【0009】
〔ICタグ〕
電子情報を記憶して外部の情報通信器と非接触で情報通信する。
データキャリア、電子タグ、RFIDタグなどと呼ばれている微小な電子部品である。基本的な構造は、通常のICタグなどと共通している。
情報通信は、通常、電磁誘導方式で行われる。通信周波数は、ICタグの規格によって決められている。例えば、13.56MHzを採用するものが知られている。
ICタグには、電子回路部、アンテナ部および保護外殻部を備えている。
〔電子回路部〕
電子情報の記憶および入出力を行なう。ICタグの動作および情報機能を果たす基本的な構造である。
【0010】
電子回路部に組み込まれる電子回路には、情報を記憶するメモリ、メモリへの情報の書き込み読み取りを行なうメモリ駆動回路、演算回路、入出力回路、コンデンサ回路、給電回路、周波数変換回路、発振回路などを含むことができる。目的とする機能によって、具体的な回路の配置や組み合わせ構造は異なってくる。
電子回路部は、ICタグとしての情報機能が果たせる限り、金属探知装置に対する反応性をできるだけ抑えておくことが望ましい。基本的には、出来るだけ小型であることが望ましい。回路などの導体部分の量や配置面積ができるだけ小さいものが望ましい。電磁的に反応し難い材料や構造が望ましい。
【0011】
そこで、シリコンなどからなる半導体チップに加えて、印刷回路やエッチング回路なども含む半導体パッケージや半導体モジュールを構成するものよりも、半導体チップの単体だけで電子回路部の機能を果たす、いわゆるベアICチップが、金属探知装置への反応性を抑え易い。
具体的には、電子回路部となるベアICチップの投影面積を0.1〜2.0mmに設定する。好ましくは、投影面積0.5〜1.5mmである。ここで規定する投影面積は、ベアICチップの姿勢を変えて投影面積を測定したときに、最も大きくなる投影面積で規定する。通常、ベアICチップは平板状をなすので、この場合は、平面積が投影面積になる。
【0012】
投影面積は、非金属材料など金属探知装置に全く反応しない材料については除外したほうが正確な評価ができる。但し、簡便には、非金属材料や導電金属などを含めた全体の面積で、金属探知装置への反応性を評価することができ、実用的にはそれで十分である。
〔アンテナ部〕
電子回路部と電気的に接続され情報通信器との情報通信を行なう。
基本的には、通常のICタグにおけるアンテナ構造と同様の材料や構造の範囲の中で、金属探知装置への反応性が弱くなる条件を採用する。
アンテナ構造として、基本的には通常のループアンテナが採用される。ループアンテナは、アンテナ線がループ状をなし、その両端が電子回路部に電気的に接続されている。ループアンテナのループは、1重である場合、複数のループが渦巻状に配置されていたり、折り畳み形態で配置されていたりする場合がある。ループアンテナのループ長は、情報通信に利用する周波数によって適切な感度特性を示す範囲に設定される。
【0013】
このループアンテナを構成するアンテナ線としては、通常採用されている、導電ペーストによる印刷パターンや導電金属薄膜のエッチングパターンからなるものではなく、導電線材を中空渦巻状に巻回してなる巻線アンテナを用いる。
巻線アンテナは、非磁性の導電線材を用いる。具体的には、Cu、Al、Ag、Pd、Au、Ptなどの導電金属およびその合金など、通常の電子部品に利用されている導電材料を延伸加工したりして得られる細線材からなる。コスト的および性能的にCuあるいはCu合金が好ましい。導電材料であっても、強い磁性を示すFeやNiは、金属探知装置への反応性が高いので使用しない。
【0014】
導電線材の断面形状は、通常は円形である。楕円形や長円形、矩形その他の多角形など、円以外の形状も採用できる。巻線アンテナの外周面積を小さくして、金属探知装置に反応し難くするには、円形が好ましい。巻線アンテナの面方向よりも厚み方向の径が大きな形状も好ましい。加工性から見れば、円形が製造し易い。
巻線アンテナの線径、すなわち、導電線材の線径を10〜100μmの範囲に設定できる。線径が細過ぎると、アンテナ形状への加工が難しかったり強度が低下したり、電気抵抗が大きくなってアンテナ性能が低下したりする。線径が太過ぎると、金属探知装置に反応し易くなる。ここで、線径は、断面円形であれば直径で規定され、円以外の断面形状の場合は最大の差渡し径で規定することができる。
【0015】
導電線材は、外周を絶縁被膜で覆って絶縁しておくことができる。中空渦巻状に巻回された内外周の導電線材同士を確実に絶縁できる。絶縁被膜としては、通常の導電配線材料と同様の絶縁樹脂、絶縁塗料が使用できる。絶縁被膜の膜厚は、要求される絶縁性能と使用材料によって異なる。
巻線アンテナの全体形状は、基本的には中空円形状すなわちドーナツ形である。中空楕円形状、中空多角形状なども採用できる。外周形状と内周形状とを違えることもできる。巻線アンテナを構成する中空渦巻は、通常、同じ平面上で内周から外周へと渦巻を構成するが、内周から外周へと厚み方向に傾斜させて、厚みのあるテーパー状の渦巻を構成させることもできる。
【0016】
巻線アンテナは、小さなものほど、金属探知装置に反応し難い。但し、情報通信の感度が悪くなる場合がある。そこで、巻線アンテナの外周形状で囲まれた内側の面積を外周面積としたときに、この外周面積を30〜1200mmに設定できる。好ましくは、50〜900mmである。より好ましくは、250mm以下である。
また、巻線アンテナの外周径を5〜50mmに設定することができる。好ましくは、8〜40mmである。より好ましくは9〜20mmである。ループアンテナのループ長は同じでも、導電線材の巻数を変えれば、巻線アンテナの外周径が変わる。巻線アンテナの全体形状が、中空円形状の場合は、巻線アンテナの外周径は円の直径である。それ以外の形状の場合は、最大の差渡し径と最小の差渡し径との平均値で外周径を規定することができる。
【0017】
巻線アンテナにおける渦巻状ループの巻数は、アンテナループ長や外周面積、外周径などで制約されるが、通常、3〜30回の範囲に設定できる。
巻線アンテナにおいて、中空渦巻形状を構成する導電線材は、絶縁性が確保される限り内外周の間隔を少なくしておくほうが、全体の小型化を図れる。導電線材が絶縁被複層で覆われている場合は、内外周で互いに接触させておくことができる。
一つの電子回路部に、電気的特性の異なる複数のアンテナ部を組み合わせることもできる。例えば、ループ長を違えて周波数特性の異ならせた2つのアンテナ部を組み合わせることができる。この場合、個々のアンテナ部が前記した各条件を備えていることが望ましい。また、複数のアンテナ部を合わせたアンテナ部全体で、前記各条件を満足させることが望ましい。
【0018】
〔保護外殻部〕
電子回路部およびアンテナ部を収容して、物理的あるいは化学的に保護しておく機能を果たす。
基本的には、通常の封入構造のICタグと同様の材料、構造が採用できる。ICタグの使用環境に合わせて、その使用環境に耐える材料および構造を適切に設定することが望ましい。
例えば、リネン物品の管理に用いる場合は、リネン物品に、洗濯、乾燥、プレスなどの作業を行なうとき、あるいは、リネン物品の使用時に晒される環境における温度、圧力、摩擦、化学薬品との接触、光線の照射などに耐えることが要求される。
【0019】
保護外殻部の材料として、合成樹脂、セラミック、ガラス、紙材、繊維材など、金属探知装置に対する反応性が低く、しかも、アンテナ部による情報通信を阻害しない材料が使用される。電磁気的に透過性の材料が使用できる。
リネン物品用のICタグのような過酷な使用環境で使用されるICタグの保護外殻部を構成する樹脂材料として、ポリエステル系樹脂などが使用できる。
保護外殻部の形状は、電子回路部およびアンテナ部の形状に合わせて設定される。通常、面状に配置された中空渦巻状のアンテナ部に対して、中空部分に電子回路部が配置されるので、アンテナ部の外形状に合わせて保護外殻部の外形を設定すればよい。
【0020】
例えば、円形状のアンテナ部に対して、保護外殻部を円盤状に設定できる。
保護外殻部の外面は凹凸の少ない滑らかな形状が、機械的な損傷を防止するために有効である。
保護外殻部は、予め製造された容器状の保護外殻部に、電子回路部およびアンテナ部を収容し蓋を閉じて一体接合することもできる。保護外殻部を成形製造する際に成形型に電子回路部およびアンテナ部を配置しておいて、成形と同時に封入一体化させることもできる。保護外殻部となる樹脂液に、電子回路部およびアンテナ部を浸漬し引き上げ、電子回路部およびアンテナ部の外周を覆う樹脂液を硬化させる方法も採用できる。一対のシート状をなす保護外殻部の間に、電子回路部およびアンテナ部を挟んで、両側のシート状保護外殻部を接着したり、プレス圧着したりする方法も採用できる。袋状をなす保護外殻部に電子回路部およびアンテナ部を収容したあと、加熱収縮させたり、真空吸引したあと開口を封止したりすることもできる。組立状態で保護外殻部と電子回路部およびアンテナ部の間にできる隙間を樹脂などで埋めてしまうことができる。
【0021】
保護外殻部の表面に、ICタグを取り付ける対象物品の識別番号その他の情報を、着色や印刷、成形、打刻などの手段で表記しておくことができる。ICタグによる電子情報がなくても、視覚によって対象物品を識別したり、ある程度の情報を得たりすることができる。ICタグによる電子情報と視覚による情報とを組み合わせて、対象物品の管理を行なうこともできる。
〔その他の構造〕
ICタグには、電子回路部、アンテナ部および保護外殻部に加えて、必要に応じて、別の構造部分や機能部分を備えておくこともできる。
【0022】
例えば、ICタグをリネン物品などの対象物品に取り付けるための構造がある。保護外殻部の一部に、取付用の嵌合部や係合部を設けておくことができる。保護外殻部に糸通し孔を貫通させておけば、縫い付けによる取り付けが可能になる。保護外殻部に取付用部材を埋め込んでおいたり接着しておいたりすることができる。取付部材は、樹脂やセラミックなどを用いれば、金属探知装置に反応し難い。
〔インレット〕
ICタグは、前記した電子回路部およびアンテナ部が組み込まれたインレットを、予め製造しておき、このインレットを保護外殻部に収容することで製造できる。
【0023】
インレットには、電子回路部およびアンテナ部に加えて、ICタグに必要な各種構造部材を含めておくことができる。また、電子回路部やアンテナ部を保護したり固定したりする樹脂材料などの固定部材や保護部材を設けておくことができる。電子回路部やアンテナ部が保護部材で保護された形態の独立したインレットは、ICタグとみなすこともできる。
インレットは、ICタグを構成せず、単独で対象物品に内蔵したり付設したりして使用することもできる。保護部材や固定部材を有しないインレットを、そのまま、対象物品に内蔵したり付設したりできる。インレットが露出した状態で使用される場合は、電子回路部やアンテナ部を保護する部材を設けておくことが望ましい。
【0024】
〔ICタグの使用〕
基本的には、通常のICタグと同様に、各種の材料や構造からなる対象物品に取り付けておいて、対象物品の情報管理に利用することができる。
特に、対象物品が、金属探知装置による検査を受ける用途に有用である。
対象物品として、前記したシーツなどのリネン物品のほか、肌着やインナーウェアその他の衣料品あるいはアパレル製品、布団や枕、マットレスなどの寝装品、その他の各種布製品、さらには、加工食品、農海産物などの生鮮食品、薬品やガーゼなどの医療用品、化粧品、美理容用品、ぬいぐるみ等の趣味用品、これらの物品を収容した包装体、などが挙げられる。なお、複数の物品を収容した包装体の場合、個別の物品それぞれにICタグを取り付ける場合と、包装体の全体を個別の物品とみなして、包装体にICタグを取り付ける場合とがある。
【0025】
物品に対するICタグの取り付けは、接着、縫い付け、嵌合、係合、ピン打ち、貼り合せ、紐による縛り付け、埋め込み、あるいは、物品の生産段階での一体成形、封入など、通常のICタグの利用技術で採用されている取り付け技術が適用できる。取り外しが出来ない永久的な取り付けと、着脱自在な取り付けの何れの場合もある。
<リネン物品>
前記したICタグは、リネン物品の管理に適している。
リネン物品は、シーツやベッドカバー、まくら、まくらカバー、パジャマ、バスタオルなど、ホテルなどの宿泊施設で使用され、使用、洗濯、再使用を繰り返す繊維製品である。病院や美理容院、スポーツ施設、介護施設などにおいても、同様のリネン物品が使用される。飛行機や鉄道などの乗り物で使用される座席カバーやテーブルクロスなどもある。食品や医薬品の製造工場や処理工場など各種の産業現場において使用される作業着や作業用資材も含まれる。
【0026】
これらのリネン物品は、製造段階から流通段階を経て、使用現場における繰り返しの使用段階の何れか、あるいは全ての段階において、各種の情報を管理することが必要とされる。例えば、繰り返し使用の回数と耐用期間とを管理して、廃棄すべき時期を知ることが求められる。使用材料や製造条件に合わせて、洗濯方法や洗濯条件を変えるように管理することが求められる。損傷や事故が発生したときに、それまでの履歴を知ることが求められる。
そこで、リネン物品を、製造型番や製造ロットなどで包括的に管理するだけでなく、個々のリネン物品毎に、個別の情報を管理することが必要になる。そのためには、個々のリネン物品にICタグを取り付けておくことが有効である。
【0027】
ICタグは、リネン物品の何れの場所に取り付けることもできるが、通常は、使用時に邪魔になり難い場所や形態が望ましい。取り扱い中に外れたり損傷したりし難い場所および形態が望ましい。例えば、リネン物品がシーツであれば、シーツの端部にボタン状のICタグを縫い付けておくことができる。布が袋状に綴じ合わせられている個所の内部にICタグを埋め込んでおくこともできる。
<金属探知>
ICタグが付設された対象物品に対して、金属探知装置を用いて、金属異物の混入を検査することができる。
【0028】
金属探知装置は、通常の産業用途で使用されている装置構造や機能を有するものが使用できる。金属探知の機構として、電磁誘導式と磁気誘導式とが知られており、何れも使用できる。通常、磁気誘導式は、鉄などの磁性金属に敏感に反応するが、非磁性金属には反応し難い。アパレル分野で良く使用されており、縫製用の針を検出することで検針器と呼ばれることがある。電磁誘導式は、非磁性金属にも反応し易い。食品分野で良く知られている。一つの金属探知装置に、電磁誘導式と磁気誘導式の両形式の検知機構を備えていて、必要に応じて切り換えたり同時に作動させたりできるものもある。
金属探知装置の探知感度を、検出できる金属球体の直径で表現することがある。例えば、アパレル分野の検針器では、直径1.0mmの鉄球を検出できる程度の探知感度に設定されることがある。食品分野の金属探知機で、直径1.2mmの鉄球、および、直径3.0mmのステンレス(SUS)球を検出できる探知感度に設定されることがある。
【0029】
金属探知検査は、固定設置された金属探知装置の探知領域を、対象物品を搬送するコンベアの走行路が通過するように配置しておくことができる。対象物品の包装ラインに金属探知装置を設置しておくこともできる。手持ち式の金属探知装置を対象物品の表面などに沿って移動させて検査を行なうこともできる。ロボットアームなどで機械的に移動される金属探知装置を、対象物品に近づけたり遠ざけたりして検査を行なうこともできる。対象物品に各種の処理を施す処理装置に、金属探知装置を組み込んでおき、処理を施す前あるいは処理中に金属探知検査を行なうこともできる。例えば、リネン物品の洗濯装置や乾燥装置に金属探知装置を組み込むこともできる。
【0030】
金属探知検査に対する反応性が抑えられているICタグは、通常の金属異物を検出できる程度の探知感度であれば、ICタグを金属異物と間違って誤作動を起こすことはない。
金属探知装置による検査は、対象物品を一つずつ検査する場合のほか、複数の対象物品を同時に検査する場合がある。集積状態あるいは集合状態の複数の対象物品が同時に、金属探知装置の検査領域に配置されたり移動通過したりすることがある。
<複数の対象物品の同時検査>
複数の対象物品が同時に検査される場合は、対象物品の数に対応する数のICタグが同時に、金属探知装置の検査領域に存在することになる。ICタグの存在数が増えるほど、反応性が強くなり、金属探知装置が誤作動し易くなる。
【0031】
そこで、金属探知装置で同時に検査される対象物品の数が増えるほど、個々のICタグの反応性を少なくしておくことが望ましい。例えば、ICタグに用いるベアICチップの投影面積を小さくしたり、巻線アンテナの線径を小さくしたり、巻線アンテナの外周面積や外周径を小さくしておいたりすることが有効である。
具体的には、金属探知装置で同時に検査される対象物品の個数Nと、対象物品に付設されたICタグの巻線アンテナの外周面積A(mm)とが、下式(1)を満足するように、ICタグを設計しておくことができる。
A<2255/(N+1) …(1)
<情報通信>
ICタグが付設された対象物品に外部の情報通信器を近づけ、ICタグと情報通信器との間において非接触で情報通信する。
【0032】
情報通信器は、通常のICタグ技術において利用されているのと同様の構造や機能を有するものが使用できる。情報通信器は、固定設置型のものと手持ち式の可搬型のものとの何れも使用できる。対象物品の搬送経路や処理作業ラインに、情報通信器を設置しておけば、対象物品の移動に合わせて順次別の対象物品との間で情報通信を行なうことができる。情報通信器が複数のICタグに対して同時あるいは順次に情報通信を行なうことができる機能を備えていれば、多数の対象物品が重ねられたり集積されたりしている状態でも、対象物品を個別の識別して情報通信を行なうことができる。
情報通信器における通信感度は、通常のICタグと同様に設定しておいてもよいし、より確実な通信を果たすために通信感度を高めに設定しておくこともできる。
【0033】
通常、情報通信器とICタグとの間で情報通信が可能な最大距離を10〜30cmの範囲に設定しておくことができる。
なお、情報通信と金属探知とは、別々に行なうこともできるし、同時に行なうこともできる。情報通信と金属探知の何れが先であってもよい。情報通信装置と金属探知装置とが組み込まれた複合装置を用いることもできる。
【発明の効果】
【0034】
本発明にかかるICタグは、外部の情報通信器と非接触で情報通信を行なうアンテナ部、および、電子情報の記憶および入出力を行なう電子回路部の材料や形状構造などを適切に設定することによって、金属探知装置に過剰に反応することがなく、誤動作を起こす可能性を確実に低減できるとともに、本来の目的である情報通信の機能は何ら問題なく良好に果たすことができる。
具体的には、アンテナ部に、導電線材を中空渦巻状に巻回してなる巻線アンテナを用いることで、従来のICタグに採用されている印刷回路やエッチング回路からなるアンテナに比べて、通信感度を低下させることなく、金属探知装置に対する反応性を大幅に減らすことができる。特に、巻線アンテナの線径や外周面積を適切に設定することで、前記した良好な通信感度と金属探知装置に対する低い反応性とを両立させることが可能になる。
【0035】
また、電子情報の記憶および入出力を行なう電子回路部に、適切な投影面積を有するベアICチップを用いて、アンテナ部の巻線アンテナをベアICチップに直接に接合されていることで、アンテナ部だけでなく電子回路部を含めたICタグの全体における金属探知装置に対する反応性が格段に低下する。
その結果、金属探知装置による検査が必要なリネン物品などの対象物品にICタグを取り付けておいても何ら問題なく使用に供することが可能になる。金属探知検査を行なう前に対象物品からICタグを一時的に取り外して再び取り付けたりする手間のかかる作業が不要になる。ICタグを取り付けた対象物品を検査するときだけ金属探知装置の探知感度を低く設定するような面倒な調整も不要になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
〔ICタグの構造〕
図1に示すICタグ10は、シーツなどのリネン物品に取り付けて使用される。
ICタグ10は、電子回路部32、アンテナ部34および保護外殻部20とで構成されている。全体形状は、ボタンのような小さな円盤状をなし、外周縁を含む全体が滑らかな表面になっている。
電子回路部32は、所定の回路構造が組み込まれたICチップからなり、小さな矩形板状をなす、いわゆるベアICチップである。図示を省略しているが、電子回路として、メモリや入出力回路、演算回路、発振回路などを組み込んでおくことができる。なお、電子回路部32そのものには電池などの電源は備えておらず、外部の情報通信器からの電磁波を受信して、そのエネルギーで作動するようになっている。
【0037】
アンテナ部34は、断面が円形をなす微細な被覆銅線で構成されている。被覆銅線は、Cuからなる導電線材を、エナメルなどの絶縁被覆で覆ったものである。このような被覆銅線を、略同じ平面上で、渦巻円状に周回させてコイルを構成している。図1(b)に示すように、内外周の被覆銅線が互いに隙間なく隣接する状態で配置されている。図2に示すように、渦巻円状をなす被覆銅線は、内周側の端部はそのまま電子回路部32に直に接続され、外周側の端部は渦巻円を横断して内周側まで延ばした状態で電子回路部32に直に接続されている。被覆銅線同士が接触していても、絶縁被覆が存在するので、導電線材同士が電気的に短絡することはない。
【0038】
保護外殻部20は、耐熱性や耐熱水性、機械的強度などに優れたポリエステル系樹脂で構成されており、リネン物品を洗濯したりする際に晒される環境条件に十分に耐えることができる。射出成形などで保護外殻部20を成形製造する際に、成形型の内部に電子回路部32およびアンテナ部34を配置しておく。成形された保護外殻部20の内部に電子回路部32およびアンテナ部34が封入されることになる。
〔ICタグの使用〕
ICタグ10は、シーツなどのリネン物品に取り付けて使用される。
対象物品の生産段階でICタグ10を取り付けておけば、その後の対象物品の処理加工や運搬、流通保管、使用、廃棄まで、全ての段階でICタグ10による個別管理が可能になる。
【0039】
例えば、リネン物品であるシーツが縫製された段階で、シーツの端部にICタグ10を挟み込み縫い付けておくことができる。シーツを折り畳んだり、丸めたりして取り扱っても、延ばした状態で使用しても、端部に取り付けられたICタグ10が取り扱いの邪魔になることはない。
<情報通信>
対象物品の物品管理を、ICタグ10を利用して行なうことができる。
通常、対象物品の生産段階で、ICタグ10を取り付けておき、その後の処理や加工、取り扱いにおける管理を、ICタグ10に記録された識別番号などの情報を元にして行う。
【0040】
例えば、対象物品が生産された段階、あるいは、生産工程の途中の段階で、対象物品のICタグ10に記録された識別番号を、管理データベースに登録する。管理データベースには、対象物品の識別番号とともに、対象物品の種類、製品名、生産ロット、生産日時など、管理に必要な情報が集積される。生産工程における処理や加工の条件、製品試験の結果などの情報も加えることができる。対象物品の出荷、輸送、流通、販売などの各段階において、必要な情報を加えることもできる。これらの情報のうち、一部はICタグ10の電子回路部32に含まれる記憶メモリに書き込んでおくこともできるし、対象物品とは別に、管理用のコンピュータに構築される管理データベースに蓄積しておくこともできる。
【0041】
ICタグ10からの情報取得を含む情報通信は、ICタグ10を取り付けた対象物品を、情報通信器の通信領域に送り込むことで果す。例えば、対象物品を搬送するコンベア走行面に近接して情報通信器が設置されていれば、情報通信器の設置個所を通過する対象物品との間で必要な情報通信が可能である。情報通信器の通信領域に、複数個の対象物品すなわちICタグ10が存在していても、個別のICタグ10および対象物品を識別して、それぞれのICタグ10との間で情報通信を行なうことができる。可搬型の情報通信器であれば、情報通信器の処置部分を対象物品のICタグ10に近づければよい。
<金属探知検査>
金属探知検査は、対象物品によって必要な段階あるいは時期に行われる。
【0042】
通常、対象物品が製造され、出荷する前の段階で金属探知検査を行なうことが多い。この段階では、製造ラインや出荷ラインの一部に組み込まれた金属探知装置の検査領域を、ICタグ10が取り付けられた対象物品が通過するときに、個々の対象物品について金属探知検査が行われる。金属反応が検出された対象物品は、さらに詳細な検査工程に送られたり、不良品として廃棄されたりする。
対象物品にICタグ10が取り付けられたままでも、ICタグ10が金属探知装置で検知されて不良品と誤判定されることはない。また、ICタグ10は検知されないが、有害な金属異物は確実に検知されるように、金属探知装置の感度設定を適切に調整しておくこともできる。
【0043】
対象物品の金属探知検査は、対象物品を1個づつ検査する場合と、複数の対象物品をまとめて検査する場合とがある。
複数の対象物品をまとめて金属探知装置に送り込んだ場合、対象物品の数に対応する複数のICタグ10が、金属探知装置の検査を同時に受けることになる。ICタグ10の数が増えれば、それだけ磁気的あるいは電磁的な反応性が高まり、金属探知装置で検知され易くなる。但し、複数のICタグ10が上下に重なった状態であるか、水平に並んだ状態であるかによって、金属探知装置の探知用の磁界に対する磁気作用が違ってくるので、検知され易さが違ってくる。したがって、金属探知装置に同時に送り込む複数の対象物品は、金属探知装置に検知され難い配置にしておくことが望ましい。
【0044】
例えば、折り畳んだ状態のリネン物品を多数重ねておく場合、折り畳み方を揃えれば、全ての対象物品のICタグ10が上下に間隔をあけて重なった状態にでき、投影面積としては、一つのICタグ10と同等になる。このような状態であれば、多数のICタグ10が存在していても、金属探知装置に誤作動を起こさせる可能性を少なくできる。
【実施例】
【0045】
本発明のICタグを具体的に製造し、その性能を評価した。
〔ICタグ:実施例1〕
図1に示す構造を有している。ポリエステル系樹脂からなる保護外殻部20の外径21mm、厚さ2.5mmである。
電子回路部32は、「I・CODE SLI」〔製品名、PHILIPS社製、面積約1mmの矩形板状をなすベアICチップ、シリコン基板使用〕を用いた。通信周波数13.56MHzである。
アンテナ部34は、エナメル被覆銅線(線径70μm)を中空渦巻円状に巻回してなり、外周径18mm、内周径16mm、ループ長640mm、重量0.021gである。銅線の両端を電子回路部32のベアICチップに対して熱圧接により直接に接合している。
【0046】
〔ICタグ:比較例1〕
市販のICタグ〔テキサス・インスメンタル社製〕を用いた。外観は、実施例1と同様の円盤状(外径21mm)をなしている。外殻の樹脂部分を分解したところ、電子回路部として、モジュール基板にICチップが搭載され、アンテナ部として、線径100μmの銅線が中空渦巻円状に巻回され、モジュール基板のエッチング回路に接続されていた。
〔性能評価:情報通信〕
実施例1のICタグを用いて、情報通信が可能な最大距離を測定した。
情報通信器:
据置き型リーダ/ライタ〔TR3−L002C:タカヤ社製〕に、ロングレンジアンテナユニット〔TR3−LA101:タカヤ社製〕を組み合わせて用いた。
【0047】
試験方法:
ICタグに対して情報通信器を離れた位置から徐々に近づけていき、情報通信器でICタグのデータを読み取ることができる最大の距離を測定した。複数回の試験を繰り返した。
試験結果:
実施例1のICタグの場合、通信可能な最大距離が17.0〜20.5cmであった。通常の使用形態でICタグに要求される通信距離として十分な性能を有していることが確認できた。
【0048】
〔性能評価:金属探知〕
<金属探知装置>
装置A:ハシマ社製、HN−2630C(鉄片探知機、磁気誘導式)。検査面に載せた直径1.0mmの鉄球を検知できる感度(感度目盛8)に設定。
装置B:ニッシン社製、ND800i、形式91G−06018(電磁誘導式)。検査面に載せた直径2.0mmのステンレス(SUS)球を検出できる感度に設定。
<試験結果>
(1) 装置A
市販ICタグである比較例1は、検査面上で0cmの高さに置いた時には検知されなかったが、3cmの高さに置くと検知されてしまった。装置Aは、検査面の上方に検知機能部があるので、検知機能部に近くなるほど検知され易くなる。対象物品にICタグを取り付けた状態では、検査面よりも高い位置にICタグが存在するので、比較例1では、装置Aを誤動作させる可能性が高い。
【0049】
これに対し、実施例1は、検査面上3cmの高さに置いても、全く検知されなかった。さらに、実施例1のICタグを上下に4個重ねた状態でも、全く検知されなかった。ICタグを取り付けた対象物品を重ねたままで検査を行っても、ICタグが検知されてしまう問題を起こすことはないと判断できる。
(2) 装置B
装置Bでも、比較例1は、検査面上0cmで検知されてしまった。実施例1は、検査面上0cmでは検知されなかった。実施例1でも、検査面上の高さを高くしたり、複数個を水平方向にずらして配置したりすると検知されることがあるが、通常の使用形態では、誤って検知されることはないと推定できる。
【0050】
(3) 装置A,Bのほかに、鉄片検知機〔サンコウ社製、APA−750w〕、金属探知機〔サンコウ社製、SW−752、SY−752〕などでも試験を行ったが、装置A,Bと同様に、比較例1では検知されてしまう条件でも、実施例1は検知されないことが確認された。
〔ICタグの寸法と金属探知〕
実施例1と寸法条件を違えたICタグを製造し、その性能を評価した。
<実施例2>
実施例1において、アンテナ部として、矩形の中空渦巻状に巻回したものを用いた。外周形状が15×25mm、内周形状が13×23mmであった。これ以外の製造条件は実施例1と共通している。
【0051】
<実施例3>
実施例1において、アンテナ部の径を変更した。外周径7.5mm、内周径2.5mmであった。
<実施例4>
実施例1において、アンテナ部の径を変更した。外周径33mm、ループ長730mm、重量0.023gであった。
<比較例2>
実施例1において、電子回路部のベアICチップを、モジュール基板にベアICチップが搭載されたモジュール構造のものに変更した。アンテナ部の銅線は、モジュール基板に形成されたエッチング回路に接続した。
【0052】
<金属探知装置>
金属探知機〔サンコウ社製、SW−752〕を感度目盛10に設定して試験を行った。
<試験結果>
(1) 実施例2〜4の何れも、実施例1と同様に、金属探知装置で誤検知されることはなかった。また、前記した情報通信試験では、実施例2〜4の何れも、実用的に十分な通信機能を発揮できた。但し、金属探知装置に検知部に近づけて、さらに検知感度を上げると、実施例1〜3は誤検知されないが、実施例4は誤検知されることがあった。
(2) 比較例2では、検知されてしまった。このことは、アンテナ部および電子回路部の両方を、適切な条件に設定しなければならないことを裏付けている。
【0053】
〔複数同時検査〕
ICタグを複数個、同時に金属探知装置の検査領域に配置した場合の性能を評価した。
<ICタグ>
実施例1のICタグで、アンテナ部の外周径を、33mm、17.6mm、13.5mmおよび9.0mmに設定した以外は、実施例1と同じ構造のICタグを作製し、実施例5−1〜5−4とした。
<金属探知装置>
金属探知装置の検知感度を、鉄球φ1.0mmおよびSUS球φ3.0mmを検知可能に設定した。
【0054】
<試験方法>
金属探知装置を設置したコンベア上に、各実施例のICタグを、同じ平面上で前後左右に等間隔で碁盤目状に配置した状態で、金属探知装置の検知領域を通過させた。検知領域に同時に配置されるICタグの個数を順次増えるように、ICタグ同士の間隔を狭めて、同様の検査を繰り返した。
金属探知装置が誤検知を生じるICタグの最少個数を測定した。その結果は以下のとおりであった。
<試験結果>
実施例5−1:外周径33mm、外周面積830mm、誤検知最少数2個。
【0055】
実施例5−2:外周径17.6mm、外周面積220mm、誤検知最少数10個。
実施例5−3:外周径13.5mm、外周面積116mm、誤検知最少数21個。
実施例5−4:外周径9.0mm、外周面積38mm、50個以上になっても誤検知されなかった。
したがって、多数の対象物品を同時に金属探知装置の検知領域に送り込む用途の場合は、同時に検知領域に存在する可能性のあるICタグの個数に合わせて、アンテナ部における外周径あるいは外周面積を制限することが有効である。前記した外周面積A(mm)の算出式(1)に基づいて、ICタグの設計を行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、シーツなどのリネン物品を個別に情報管理するのに利用できる。リネン物品の製造から販売流通さらには使用時の取り扱い作業を、個別のリネン物品を識別して、適切に管理することが可能になる。リネン物品の取り扱い時に金属探知装置による検査を行なっても、ICタグが反応して誤動作させる心配がない。しかも、必要なときには、外部の情報通信器との間で非接触による情報通信を良好に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態を表すICタグの平面図(a)と要部拡大断面図(b)
【図2】アンテナ部と電子回路部を取り出した状態の平面図
【符号の説明】
【0058】
10 ICタグ
20 保護外殻部
32 電子回路部
34 アンテナ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子情報を記憶して外部の情報通信器と非接触で情報通信するICタグであって、
前記電子情報の記憶および入出力を行なう電子回路部と、
前記電子回路部と電気的に接続されている情報通信用のアンテナ部と、
前記電子回路部と前記アンテナ部が収容された保護外殻部とを備え、
前記電子回路部が、投影面積0.1〜2mmのベアICチップからなり、
前記アンテナ部が、非磁性で線径10〜100μmの導電線材を中空渦巻状に巻回してなる外周面積30〜1200mmの巻線アンテナからなり、その両端が前記電子回路部のベアICチップに直接に接合されてなる、
ICタグ。
【請求項2】
前記導電線材が、非磁性の導電金属またはその合金からなる群から選ばれる非磁性材料からなる、
請求項1に記載のICタグ。
【請求項3】
再利用可能なリネン物品に付設されてなる、
請求項1または2に記載のICタグ。
【請求項4】
前記電子情報の記憶および入出力を行なう電子回路部と、
前記電子回路部と電気的に接続されている情報通信用のアンテナ部とを備え、
前記電子回路部が、投影面積0.1〜2mmのベアICチップからなり、
前記アンテナ部が、非磁性で線径10〜100μmの導電線材を中空渦巻状に巻回してなる外周面積30〜1200mmの巻線アンテナからなり、その両端が前記電子回路部のベアICチップに直接に接合されてなる、
インレット。
【請求項5】
前記導電線材が、非磁性の導電金属またはその合金からなる群から選ばれる非磁性材料からなる、
請求項4に記載のインレット。
【請求項6】
再利用可能なリネン物品に内蔵されてなる、
請求項4または5に記載のインレット。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載のICタグを付設、または、請求項3または請求項4に記載のインレットを内蔵或いは組込してなる物品に対して、
前記ICタグまたは前記インレットの電子回路部との間で情報通信を行なう工程と、
金属異物の混入を検知する金属検知工程と、
からなる物品管理方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−233597(P2007−233597A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53186(P2006−53186)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(398004149)株式会社スミテックス・インターナショナル (3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】