説明

ICタグユニット

【課題】簡素な構造で、床面に設置されても、フォークリフトなどによる外圧や衝撃などからICタグが破壊されることなく保護され、使用中はICタグユニットとして床面などの被着面と十分に接着するICタグユニットを提供する。
【解決手段】硬質樹脂板と、クッション性を有する発泡層の両面のいずれにも接着層を有する両面テープとの間の中央部にICタグを挟むように貼着してなるICタグユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを外圧から保護したICタグユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ユビキダス(「いつでもどこでも」というラテン語)社会の到来、すなわち、コンピュータを複合的に利用した社会の実現が求められている。具体的には、物流、販売等の商品管理分野では、バーコードに代わり、RFID(Radio Frequency Identification:無線周波数認識)と大量の情報を記載できるメモリーとを具備したICタグを商品や倉庫床面に設置する商品管理システムに利用することが提案されている。
具体的には、コンピュータとデータ通信可能なRFIDを含むICタグを有するICタグユニットを商品、商品棚、商品倉庫の床面、壁面、天井などの被着体に設置して、物品の種類、ロット番号、製造年月日、入庫年月日、入庫者、出庫年月日、出庫者、価格などの大量のデータを被着体のICタグユニットとコンピュータとの間で交換して、商品の迅速かつ的確な管理に供するシステムなどが知られている。
最近、商品寿命の短期化などから、ICタグユニットについても頻繁に交換する場合が多くなり、ICタグユニットを交換のしやすい床面に設置する場合が提案されている。床面に設置されたICタグユニットは、フォークリフトなどによる外圧や衝撃に曝され、ICタグが破壊されて無線通信できないという問題がある。
このような問題に対して、衝撃力を緩和するために、ICタグを微多孔性合成樹脂フィルムで保護したICタグユニット(特許文献1)や、ICタグを補強部材とクッション性を有する発泡基材で保護したICタグユニット(特許文献2)が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−251048号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2004−355519号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらは外圧や衝撃からICタグを保護するため複雑な形状を有することから、安価で簡単に製造するためには、ICタグユニットの一層の改良が求められている。
本発明者らが、耐衝撃性を考慮してゴム素材であるエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)の板と両面テープとの中央部にICタグを挟むような簡素な構造のICタグユニットについて検討したところ、EPDMの板と両面テープとの界面が剥離する問題が生じることが明らかになった。
本発明の目的は、簡素な構造で、床面に設置されても、フォークリフトなどによる外圧や衝撃などからICタグが破壊されることなく保護され、使用中はICタグユニットとして床面などの被着面と十分に接着するICタグユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、硬質樹脂板と両面テープとの間の中央部にICタグを挟むように貼着してなることを特徴とするICタグユニットである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のICタグユニットは、硬質樹脂板、両面テープ及びICタグのみからなる簡素な構造であり、被着体が床面であっても、フォークリフトなどによる外圧や衝撃などによってICタグが破壊されることはなく、使用中には樹脂板と両面テープとの界面、並びに、両面テープと被着体との界面において、実用上、剥離しない程度の十分な接着力を有する。さらに、ICタグユニットを交換する際には、スクレイパーなどで容易に被着体から剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
従来のICタグユニットは、上面がクッション性の発泡基材で保護される場合が多かったのに対し、本発明のICタグユニットは硬質樹脂板が上面に載置されICタグを保護する。ここで硬質とは、JIS K 7202−2(ロックウェル硬さ)のMスケールで60以上、好ましくは90以上であることを意味する。
【0008】
硬質樹脂板を構成する樹脂としては、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる板であり、中でも、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、板と両面テープとの界面の接着性に優れる傾向があることから好ましく、とりわけ、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル樹脂は、両面テープと樹脂板との間が汚れにくい傾向があることから好ましい。
【0009】
硬質樹脂板中には、前記樹脂の他に、炭酸カルシウム、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの非導電性充填材が含有していてもよく、このような充填材を含有させて硬質の板としてもよい。充填材の充填量は電磁波を遮断しなければよく、通常は樹脂分と同重量以下である。
さらに、硬質樹脂板には、硬度が保たれ、かつ電磁波が遮断されない限り、例えば、中和剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0010】
本発明に用いる板の板厚は、1.5mm以上であり、好ましくは1.8mm以上である。1.5mm以上であると、3トンの重量のフォークリフトが通過しても破壊が抑制される傾向があることから好ましい。
板厚は小さいほど、運搬時に障害にならないことから好ましく、通常は5mm以下、好ましくは3mm以下である。
【0011】
本発明に用いる硬質樹脂板は入手可能であり、具体的には、ポリ塩化ビニルとしては、例えば、ZEST(登録商標、新第一塩ビ製)、メタアクリル樹脂としてはスミペック(登録商標、住友化学製)、ABS樹脂としてはクララスチック(登録商標、日本A&L製)、ポリカーボネート樹脂としてはワンダーランド(登録商標、旭化成ケミカルズ製)、ポリスチレン樹脂としてはGPPS(登録商標、PSジャパン)、AS樹脂としてはスタイラックAS(登録商標、旭化成ケミカルズ製)、PET樹脂としてはぺテック(登録商標、タキロン製)、PBT樹脂としてはジュラネックス(登録商標、ウインテックポリマー製)、ポリアミド樹脂としてはUMCナイロン(登録商標、宇部興産製)、ポリアセタール樹脂としてはジュラコン(登録商標、三ツ星ベルト製)、ポリエーテルサルフォン樹脂としてはスミプロイS(登録商標、住友化学製)、ポリエーテルイミド樹脂としてはULTEM(登録商標、GE社製),PEEK樹脂としてはスミプロイK(登録商標、住友化学製)、PK−450(日本エクストロン製)、PAI樹脂としてはTR−4203(日本ポリペンコ製)、PP樹脂としてはPPプレート(タキロン製)、コウベポリシート(新神戸電機製)、PE樹脂としてはPE(日本エクストロン製)、コウベポリシート(新神戸電機製)が挙げられる。
【0012】
硬質樹脂板は、図1に示したように直方体でもよいが、図2に示したように、角を切削したものは、フォークリフトなどの走行を阻害しない傾向があることから好ましい。さらに、ICタグの位置決めするために、両面テープと接する面の中央部にICタグが収納できるように凹部があってもよい。この場合、凹部の大きさはICタグが収納し得る程度である(図3参照)。
また、硬質樹脂板が、硬度が保たれ、かつ電磁波が遮断されない限り、同種あるいは異種の樹脂からなる積層板であってもよい。
【0013】
硬質樹脂板の製造方法としては、例えば、硬質樹脂板を所望の形状に切断・加工する方法、例えば、所望の形状の板を与える金型に樹脂(必要に応じて充填材、添加剤などが含有されていてもよい)を押出成形する方法などが挙げられる。
【0014】
両面テープとは、ポリオレフィン系、アクリル系、ウレタン系等の発泡基材、紙、不織布などの層の両面にアクリル樹脂などの粘着剤等の接着層を有するものである。両面テープの一方の接着層は硬質樹脂板に貼着され、もう一方の接着層は、商品、商品棚、商品倉庫の床面、壁面、天井などの被着体に接着される。
ICタグが両面テープに埋め込まれ、硬質樹脂板によって外圧や衝撃を埋め込まれない部分全体で支えることから、ICタグが破壊されないと考えられる。
中でも、ポリオレフィン系発泡基材などのクッション性を有する発泡層の両面に接着層を有する両面テープが、外圧や衝撃からICタグを保護することから好ましい。
両面テープの厚みとしては、0.4mm以上、好ましくは0.8mm以上である。0.4mm以上であると、3トンの重量のフォークリフトが通過しても破壊が抑制される傾向があることから好ましい。
両面テープの厚みは小さいほど、運搬時に障害にならないことから好ましく、通常は5mm以下、好ましくは3mm以下である。
具体的には、両面テープの接着層が剥離シートで覆われた状態で、積水化学や住友スリーエムなどから市販されている両面テープをそのまま使用すればよい。
【0015】
両面テープの硬質樹脂板と貼着する反対側の面の接着層に、さらに剥離シートが貼着されてなるICタグユニットは、被着体に接着するまで接着層を保護し、ICタグユニットとして運搬が容易であることから好ましい。また、該接着層には、被着体からの静電気などの影響を排除するために、絶縁性の粘着剤を用いてもよい。
【0016】
本発明のICタグとは、非接触状態でデータの送受信を行って、データの記録、消去などが行なわれる情報記録メディア(RFID)を備えたタグであり、具体的には、物品の種類、ロット番号、製造年月日、入庫年月日、入庫者、出庫年月日、出庫者、価格などのデータを蓄積するICチップや情報を電磁波等でやりとりするアンテナ部とからなっている。ICチップは集積回路、アンテナ回路などのICを封止材で封止したものである。
ICタグとしては、例えば、凸版印刷、大日本印刷、日立製作所、オムロン、日本アールエフソリューション、日本インフォメーションシステム、マイティカード、東レインターナショナル、三菱マテリアル、王子製紙などの各社から市販されているICタグをそのまま使用すればよい。
【0017】
ICタグは、硬質樹脂板と両面テープとの間の中央部に挟むように置かれる。ここで中央部とは、ICタグが硬質樹脂板及び両面テープから、はみ出さない部分を意味し、ICタグがはみ出さないようにできるだけ中央が好ましい。通常、外縁部から1mm以上、好ましくは3mm以上の中央部が好ましい。
【0018】
ICタグユニットの製造方法としては、例えば、両面テープの一方の剥離シートを剥がし、該両面テープの接着層の中央部にICタグを置き、その上から樹脂板を貼合して上からローラーなどで圧締・脱気させて接着する方法、例えば、硬質樹脂板の中央部の凹部にICタグを置き、その上から両面テープの剥離シートを剥離させた面を貼合し、ローラーなどで圧締・脱気させて接着する方法、例えば、広面積の両面テープの一方の剥離シートを剥離させた面にICタグを略等間隔になるように多数置き、さらに上から両面テープと略同形状の硬質樹脂板を貼合し、ローラーなどで圧締・脱気させて接着したのち切断し、ICタグユニットを製造する方法、例えば、あらかじめ一方の剥離シートが剥離され、ユニット1個分の大きさに裁断した両面テープをベルトコンベアで連続的に供給し、各両面テープの中央部に連続的にICタグを置き、その上に両面テープと略同形状の硬質樹脂板を貼合し、ローラーなどで圧締・脱気させて接着して、ICタグユニットを製造する方法、例えば、中央部に凹部を有する硬質樹脂板をベルトコンベアで連続的に供給し、該凹部にICタグを連続的に置き、その上から両面テープの剥離シートを剥離させた面を貼合し、ローラーなどで圧締・脱気させて接着する方法等が挙げられる。
【0019】
続いて、両面テープのもう一方の接着層(図1及び2の3−3)に残された剥離シート(図1及び2の4)は、床面などの被着体に接着する直前に剥離して、被着体に接着する。
被着体としては、例えば、床、壁、天井、ラックなどが挙げられ、被着体の材質としては、例えば、アスファルト、セメント、土、ガラスなどのセラミック材料、例えば、木、紙などのセルロース材料、例えば、ダイカストなどの金属材料、例えば、塗料、プラスチックなどの高分子材料などが挙げられる。
【実施例】
【0020】
次に、実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例により限定されるものではない。
【0021】
(実施例1)
ICタグユニットの製造例:クッション性を有する発泡層(3−2)の両面に接着層(3−1及び3−3)及び剥離シート(3−1及び3−3の外層、図示せず)を有する両面テープを10cm×5cm×1mm(縦×横×厚み、以下同じ)の大きさに裁断した。続いて、両面テープの上側の接着層(図1の3−1)に貼合された剥離シートを剥離し、7cm×2mm×0.2mmのICタグを両面テープの該接着層(3−1)の中央部に置き、その上から10cm×5cm×2mmのMMA硬質樹脂板(登録商標、スミペックGT、住友化学製、図1の1)を貼り合わせたのち、ハンドローラー(1kg重)を用いて樹脂板の上をゆっくり転がし圧締・脱気してしっかりと貼り合わせ、その後、室温で1日養生させた。
尚、図1では、両面テープを模式的に記載したので接着層の中にICタグが存在するように記載されているが、ICタグ部分(2−1)は接着層(3−1)よりも厚いことから、発泡層(3−2)にICタグは埋め込まれるように挟み込まれていた。
【0022】
(外圧試験)
前記ICタグユニットの剥離シート(図1の4)を剥離して、コンクリートの上に接着したのち、フォークリフト(豊田自動織機製 TOYOTA GENEO 25(型式42−7FG25:車両重量 3870kg))を約30回走行したが、外観性状に変化はなく、剥離しなかった。
【0023】
(剥離性)
外圧試験終了後、コンクリート面と両面テープとの界面をスクレイパーで引っ掛けて木槌でたたくと、剥離した。(表中では○と記載した。)
【0024】
(実施例1〜12、比較例1)
板の種類、板厚が異なる以外は実施例1と同様に実施した。結果を表1にまとめた。
【0025】
【表1】

*1:図3のように、実施例1の樹脂板のエッジ部分を丸くした。
硬質樹脂板の詳細一覧を表2に示した。
【0026】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のICタグユニットは、外圧や衝撃に強いことから、床面など貼付して物流管理システム、商品管理システムに好適に用いられる。また、硬質樹脂板、両面テープ及びICタグのみからなる簡素な構造であることから、安価で容易に製造することができる。さらに、スクレイパーで簡単に剥離でき、頻繁にICタグユニットの交換に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1のICタグユニット(平面図、正面図)
【図2】実施例1のICタグユニット(断面図)
【図3】実施例2のICタグユニット(断面図)
【図4】ICタグの位置決めのための凹部を有する板(両面テープの側から見た平面図)
【符号の説明】
【0029】
1 :硬質樹脂板
1−1:(ICタグ位置決めのための)凹部
2 :ICタグ
2−1:ICチップ
2−2:アンテナ部
3 :両面テープ
3−1:(両面テープの)接着層(アクリル系粘着剤)
3−2:(両面テープの)発泡層(ポリオレフィン発泡基材)
3−3:(両面テープの)接着層(アクリル系粘着剤)
4 :剥離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質樹脂板と両面テープとの間の中央部にICタグを挟むように貼着してなるICタグユニット。
【請求項2】
両面テープが、クッション性を有する発泡層の両面のいずれにも接着層を有する両面テープである請求項1に記載のICタグユニット。
【請求項3】
両面テープの厚みが0.4mm以上である請求項1又は2に記載のICタグユニット。
【請求項4】
硬質樹脂板の厚みが1.5mm以上である請求項1〜3のいずれかに記載のICタグユニット。
【請求項5】
硬質樹脂板が、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる樹脂板である請求項1〜4のいずれかに記載のICタグユニット。
【請求項6】
両面テープの硬質樹脂板と貼着する反対側の面の接着層に、さらに剥離シートが貼着されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のICタグユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−148848(P2007−148848A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343202(P2005−343202)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(501460383)住化ケムテックス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】