説明

ICモジュール及びICカード

【課題】ICモジュールの信号用の接点間の絶縁溝の付近で静電気が生じても、信号用接点に静電気が流れることがないようにする。
【解決手段】基板3と、この基板3の一面側に実装されたICチップ4と、基板3の他面側に配置され、ICチップ4に電気的に接続される複数の信号用の接点C1〜C4,C6〜C8、及び基準電位用の接点C5と、複数の信号用の接点C1〜C4,C6〜C8間に形成された絶縁溝10とを備え、基準電位用の接点C5に複数の延出部C5a〜C5eを形成し、これら複数の延出部5a〜C5eを複数の信号用の接点C1〜C4,C6〜C8間の絶縁溝10内に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICモジュール及びICカードに係わり、特に、外部との電気通信を行なう接点の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5はICカード101を示すもので、このICカード101はICモジュール102を備えている。ICモジュール102は、図6に示すように基板104を有している。基板104の裏面側にはICチップ105が実装され、表面側には外部との電気通信を行なうための複数個(8個)の接点C1〜C8が配置されている。接点C1〜C8間には、絶縁溝106が形成され、互いに絶縁されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平1−275196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来おいては、ICモジュール102の接点C1〜C8間の絶縁溝106の付近に例えば静電気108が生じた場合には、任意の接点に静電気が流れ、ICチップ105の劣化および電気的に破壊するという問題があった。
【0004】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、ICモジュールの接点間の絶縁溝の付近で静電気等が生じても、接点に静電気が流れることのないようにしたICモジュール及びICカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、基板と、この基板の一面側に実装されたICチップと、前記基板の他面側に配置され、前記ICチップに電気的に接続される複数の信号用接点、及び基準電位用接点と、前記複数の信号用接点間に形成された絶縁溝とを備え、前記基準電位用接点に複数の延出部を形成し、これら複数の延出部を前記複数の信号用接点間の絶縁溝内に挿入したことを特徴とする。
【0006】
請求項3記載の発明は、カード基材と、このカード基材に設けられるICモジュールとを具備し、前記ICモジュールは、基板と、この基板の一面側に実装されたICチップと、前記基板の他面側に配置され、前記ICチップに電気的に接続される複数の信号用接点、及び基準電位用接点と、前記複数の信号用接点間に形成された絶縁溝とを備え、前記基準電位用接点に複数の延出部を形成し、これら複数の延出部を前記複数の信号用接点間の絶縁溝内に挿入したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、信号用接点間の絶縁溝に静電気が生じても、静電気を基準電位用接点に逃がすことができ、ICチップの劣化および電気的な破壊を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態であるICカード1を示す平面図である。
【0009】
ICカード1はその表面の一側部側にICモジュール2を備えている。このICカード1は、縦85.5±0.12mm、横53.97±0.006mm、厚さ0.76±0.008mmの大きさに規格化された薄型形状物の内部に縦横約15mm、厚さ約0.5mm程度のICモジュール2を組み込でいる。
【0010】
図2はICモジュール2の基板3を示す正面図である。
【0011】
基板3の表面側には複数個(8個)の接点C1〜C8が配置され、裏面側には図3及び図4に示すようにICチップ4が実装されている。ICチップ4には8個の端子6が配設され、これら端子6は基板3に形成された複数の接点C1〜C8にワイヤ7を介してそれぞれ接続されている。ワイヤ7は基板3に穿設された貫通穴3a内に挿通され、ICチップ4とともに合成樹脂材8にてモールドされている。
【0012】
通信時には、接点(信号用接点)C1〜C3、C5、C7をリーダ/ライターに接触させてデータ通信を行なうようになっている。
【0013】
上記した接点C1〜C8は、35μmの厚の銅箔にニッケルメッキと金メッキを施して形成されている。接点C1はVCC(供給電圧)、接点C2はRST(リセット信号)、接点C3はCLK(クロック信号)、接点C5は基準電位接点(グランド)、接点C6はVPP(可変供給電圧)、接点C7はI/O(データ入出力)用の端子で、接点C4,C8は、RFU(予備端子)となっている。
【0014】
各接点C1〜C8は、その縦寸法が1.7mm、横寸法が2.0mm以上(ISO基準)を確保しつつ、接点C5は、モジュール基板3の中央に逆L字型に形成され、その左側に上から接点C1,C2,C3,C4が形成され、右側に上から接点C6,C7,C8が形成されている。そして、各接点C1〜C8間にはそれぞれ絶縁溝10が形成されている。
【0015】
ところで、上記した基準電位接点(グランド)である接点C5は、その一側部側に第1乃至第3の延出部C5a,C5b,C5c、他側部側に第4及び第5の延出部C5d,C5eをそれぞれ一体的に形成している。
【0016】
第1の延出部C5aは接点C1とC2との間の絶縁溝10内に挿入され、第2の延出部C5bは接点C2とC3との間の絶縁溝10内に挿入され、第3の延出部C5cは接点C3とC4との間の絶縁溝10内に挿入されている。また、第4の延出部C5dは接点C6とC7との間の絶縁溝10内に挿入され、第5の延出部C5eは、接点C7とC8との間の絶縁溝10内に挿入されている。
【0017】
上記したICモジュール2の各接点C1〜C8間の絶縁溝10には静電気が生じることがあるが、各絶縁溝10内には上記したように基準電位接点(グランド)である接点C5の第1乃至第5の延出部C5a〜C5eがそれぞれ挿入されているため、静電気は第1乃至第5の延出部C5a〜C5eを介して基準電位接点C5に逃がされてICチップ4の劣化及び電気的な破壊が防止されることになる。
【0018】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態であるICカードを示す平面図。
【図2】図1のICモジュールの基板を示す正面図。
【図3】図1のICモジュールを示す正面図。
【図4】図1のICモジュールを示す裏面図。
【図5】従来のICカードを示す平面図。
【図6】図5のICモジュールを示す正面図。
【符号の説明】
【0020】
1…ICカード、2…ICモジュール、3…基板、4…ICチップ、C1〜C4…信号用の接点、C6〜C8…信号用の接点、C5…基準電位用の接点、C5a〜C5e…延出部、K…カード基材、10…絶縁溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
この基板の一面側に実装されたICチップと、
前記基板の他面側に配置され、前記ICチップに電気的に接続される複数の信号用接点、及び基準電位用接点と、
前記複数の信号用接点間に形成された絶縁溝とを備え、
前記基準電位用接点に複数の延出部を形成し、これら複数の延出部を前記複数の信号用接点間の絶縁溝内に挿入したことを特徴とするICモジュール。
【請求項2】
前記複数の信号用接点は前記基板の一側部側、及び他側部側に所定間隔を存して配置され、
前記基準電位用接点は前記基板の略中央部に設けられることを特徴とする請求項1記載のICモジュール。
【請求項3】
カード基材と、
このカード基材に設けられるICモジュールとを具備し、
前記ICモジュールは、基板と、この基板の一面側に実装されたICチップと、前記基板の他面側に配置され、前記ICチップに電気的に接続される複数の信号用接点、及び基準電位用接点と、前記複数の信号用接点間に形成された絶縁溝とを備え、前記基準電位用接点に複数の延出部を形成し、これら複数の延出部を前記複数の信号用接点間の絶縁溝内に挿入したことを特徴とするICカード。
【請求項4】
前記複数の信号用接点は前記基板の一側部側、及び他側部側に所定間隔を存して配置され、
前記基準電位用接点は前記基板の略中央部に設けられることを特徴とする請求項3記載のICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−75779(P2009−75779A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243076(P2007−243076)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】