説明

IH定着式画像形成装置

【課題】IH定着式画像形成装置において、当該定着ユニットへの回転駆動力の入力機構を簡素化する。
【解決手段】定着装置60は、加熱ローラー61、定着ローラー62、加圧ローラー63、誘導加熱ユニット65、及び定着ニップ部60Nのニップ圧を調整するニップ圧調整機構を含む。加圧ローラー63の第1回転軸63Sは、ハウジング600内において固定された本体フレームで支持され、ニップ圧が通常加圧状態及び減圧状態の双方においてシフト移動はしない。一方、定着ローラー62の第2回転軸62S及び加熱ローラー61の第3回転軸61Sはシフト移動する。シフト移動しない加圧ローラー63に、装置本体のモーターから回転駆動力が与えられる。従って、回転駆動力の入力機構を簡素化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が転写されたシートにIH(誘導加熱)方式で定着処理を施す画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置における定着装置は、定着ローラーと加圧ローラーとを備え、これらローラーにより形成される定着ニップ部にトナー像が転写されたシートを通過させて加熱加圧することで、当該シートにトナー像を定着させる。このような定着装置において、熱を発生させる方式として誘導加熱を採用したIH定着装置が知られている。IH定着装置は、磁束を生成するための誘導加熱コイルと、磁路を形成するためのコア部材とを備えるIHユニットと、該IHユニットによって誘導加熱される加熱ローラー(又は加熱ベルト)を有する定着ユニットとを含む。
【0003】
前記定着ユニットは、経時劣化等の要因で交換を要する場合がある。この場合、IHユニットに問題がないにも拘わらずIH定着装置全体を交換させるのは不経済であるため、IHユニットと定着ユニットとは別体構造とされている。すなわち、IHユニットは画像形成装置の装置本体側に装着され、定着ユニットは前記装置本体に着脱自在とされている。これらを別体構造とした場合に問題となるのが、定着ユニットの着脱前後で、誘導加熱コイルと加熱ローラーとの距離関係を如何に一定に保つかである。両者間の距離が変化すると誘導加熱効果が変化し、所望する定着熱を加熱ローラーが的確に発生できなくなる。このため、この種のIH定着装置においては、誘導加熱コイルと加熱ローラーとの距離を一定に保つことができる位置決め機構が付設される(例えば特許文献1、2)。
【0004】
ところで、前記定着ニップ部におけるニップ圧を、通常加圧(高圧)状態と減圧(低圧)状態との間で切り換えるニップ圧調整機構を備えた定着ユニットが知られている。このニップ圧調整機構は、通常紙厚のシートを前記定着ニップ部に通紙させるときには前記ニップ圧を通常加圧状態とする一方で、封筒等の厚紙又は薄紙を通紙させるとき若しくはジャム処理時には前記ニップ圧を前記減圧状態とする。加圧ローラーの回転軸は、定着ユニットのハウジングに、定着ローラーに対して接近又は離間する方向にシフト移動できるよう支持され、前記ニップ圧調整機構はモーターの駆動力を用いて前記状態の切り換えを行う。このようなニップ圧の切り換えにより、厚紙又は薄紙について、前記定着ニップ部の通過の際にシワ等の発生が抑止され、またユーザーはジャム処理を容易に行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−350054号公報
【特許文献2】特開2009−258457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来装置において、シフト移動させるローラーとして加圧ローラーが選ばれるのは、定着ローラー(加熱ローラー)と誘導加熱コイルとの位置関係を一定に保ち易くするためである。すなわち、定着ローラー側が不動であれば、定着ユニットを画像形成装置の装置本体における所定位置に装着した時点で誘導加熱コイルに対する位置が決まる。従って、定着ニップ部の形成時における位置ズレが発生することはない。
【0007】
また、従来装置において、装置本体の駆動手段から定着ユニットの各ローラーに対する回転駆動力の伝達は、加圧ローラーの回転軸への駆動入力により実現されている。これは、定着ローラーがスポンジ状のローラーであるのに対し、加圧ローラーが定着ローラーよりも剛性に高いローラーであることに起因する。外径変化を起こし易い定着ローラーを駆動入力用のローラーに選択した場合、ローラー外周の周速度に変動が生じることになり、正確なローラー回転制御が行えなくなる。
【0008】
しかしながら、上述の通り加圧ローラーは、その回転軸がシフト移動されるローラーであることから、当該加圧ローラーへの駆動入力には機構的な工夫が必要となる。つまり、前記圧接状態及び解除状態の状態変更に伴い軸心が移動する加圧ローラーに、駆動入力を行わせる機構は複雑なものとなり、またコストアップも招来する。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたものであって、装置本体へ着脱されるIH方式の定着ユニットを備えたIH定着式画像形成装置において、当該定着ユニットへの回転駆動力の入力機構を簡素化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面に係るIH定着式画像形成装置は、定着処理を行うための部材を収容する第1ハウジングと、シートに画像を形成する画像形成部を収容し、前記第1ハウジングが装着される第2ハウジングと、第1回転軸を有し、前記第1ハウジングで前記第1回転軸がシフト移動不能な状態で回転自在に支持される第1ローラーと、第2回転軸を有し、前記第1ハウジングで前記第2回転軸がシフト移動可能な状態で回転自在に支持され、シートに定着処理を施す定着ニップ部を前記第1ローラーと共に形成する第2ローラーと、前記第2ローラーを、前記第1ローラーに対して第1の圧力で圧接させる第1姿勢と、該第1姿勢の状態から前記第2回転軸をシフト移動させることで前記第1の圧力よりも減圧された第2の圧力で前記第1ローラーに対して圧接させる第2姿勢と、の間で姿勢変更させるニップ圧調整機構と、前記第2ハウジングに取り付けられ、前記定着処理に必要な熱を発生させるための誘導加熱ユニットと、前記第2ローラーと前記誘導加熱ユニットとの相対位置を、前記第2ローラーの前記第1姿勢時及び前記第2姿勢時の双方において一定に維持させる維持機構と、前記第1ローラーに回転駆動力を与える駆動機構と、を備える(請求項1)。
【0011】
この構成によれば、第2ローラーがシフト移動するローラーとなるが、この第2ローラーと前記誘導加熱ユニットとの相対位置は、ニップ圧調整機構による姿勢変更動作に拘わらず維持機構により一定に保たれる。一方、第1ローラーはシフト移動不能な状態で第1ハウジングに支持され、この第1ローラーに駆動機構から回転駆動力が与えられる。従って、誘導加熱ユニットに対する第2ローラーの距離関係を一定に保ちつつ、回転駆動力の入力機構を簡素化することが可能となる。
【0012】
上記構成において、前記第1ローラーが、第1の硬度を有する素材にて形成され、前記第2ローラーが、前記第1の硬度よりも低い第2の硬度を有する素材にて形成されている場合、より本発明の利点を享受できる(請求項2)。
【0013】
この構成によれば、第1ローラーの方が第2ローラーよりも高い硬度を有しているので、回転駆動時においてローラー外周の周速度に変動が生じないという点で、駆動入力には第1ローラーの第1回転軸が適している。
【0014】
上記構成において、前記第1ハウジングは、本体フレームと、該本体フレームに対して移動可能に組み付けられた移動フレームとを含み、前記第1ローラーは前記本体フレームで支持され、前記第2ローラーは前記移動フレームで支持され、前記維持機構は、前記誘導加熱ユニットと前記移動フレームとを位置決めして互いに係合させる係合構造部と、前記係合を維持させる付勢力を前記誘導加熱ユニットに与える付勢機構とを含むことが望ましい(請求項3)。
【0015】
この構成によれば、前記ニップ圧調整機構は移動フレームを移動させるという簡易構成で、前記第2ローラーの姿勢変更を実現できる。また、前記誘導加熱ユニットと前記移動フレームとの位置決めも、簡易な構成で実現できる。
【0016】
上記構成において、第3回転軸を有し、前記移動フレームで支持され、前記誘導加熱ユニットにより誘導加熱される第3ローラーと、前記第2ローラーと前記第3ローラーとに架け渡されるベルト部材と、をさらに備え、前記第1ハウジングが前記第2ハウジングに装着された状態において、前記誘導加熱ユニットと前記第3ローラーとが対向する構成とすることができる(請求項4)。
【0017】
この構成によれば、誘導加熱される第3ローラーの熱がベルト部材により定着ニップ部に運搬される。かかる構成において、前記誘導加熱ユニットと第3ローラーとの距離関係が一定に維持される。
【0018】
この場合、前記誘導加熱ユニットは、磁束を生成するための誘導加熱コイルと、磁路を形成するためのコア部材と、前記誘導加熱コイル及びコア部材を保持する保持部材とを含み、前記移動フレームは、前記第3ローラーの第3回転軸を軸支する軸支部を備え、前記第3回転軸の両端部が前記移動フレームから突出した状態とされ、前記係合構造部は、前記第3回転軸の両端部と、前記保持部材に形成され前記第3回転軸の両端部が嵌合される位置決め凹部とからなることが望ましい(請求項5)。
【0019】
この構成によれば、第3ローラーの第3回転軸の両端を利用して、前記誘導加熱ユニットの位置決めが為される。前記第3回転軸自体が位置決め部材として用いられるので、誘導加熱コイルと第3ローラーとを精度良く位置決めすることができる。
【0020】
上記構成において、前記付勢機構は、圧縮バネと、前記第2ハウジング側において前記圧縮バネの一端側が当接される第1バネ座と、前記誘導加熱ユニット側において前記圧縮バネの他端側が当接される第2バネ座とを含み、前記移動フレームの移動に追従させて前記誘導加熱ユニットを移動させる構成とすることができる(請求項6)。
【0021】
この構成によれば、圧縮バネの付勢力を利用して、移動フレームの移動に追従させて前記誘導加熱ユニットを移動させることができる。従って、ニップ圧調整機構が第2ローラーの前記姿勢変更を実行しても、前記付勢力によって第2ローラーに追随して前記誘導加熱ユニットは移動する。
【0022】
この場合、前記誘導加熱ユニットに付設され、前記誘導加熱ユニットを冷却するための通風路を形成するダクト部材と、前記第2ハウジングに備えられ、前記ダクト部材に連結される冷却ダクトと、前記冷却ダクトと前記通風路との連結部に配置される伸縮性のシール部材と、をさらに備えることが望ましい(請求項7)。
【0023】
この構成によれば、誘導加熱ユニットの冷却を図ることができると共に、誘導加熱ユニットが圧縮バネにより移動されたとしても、伸縮性のシール部材によって前記通風路の密閉性を維持できるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、装置本体へ着脱されるハウジング構造を備えたIH方式の定着ユニットを備えたIH定着式画像形成装置において、当該定着ユニットへの回転駆動力の入力機構を簡素化できる。従って、装置構造の簡素化が図れ、IH定着式画像形成装置の小型化、コストダウンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を示す断面図である。
【図2】定着ユニット(第1ハウジング)が装置本体(第2ハウジング)から取り外されている状態を示す簡略的な図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る定着装置の内部構造を示す断面図である。
【図4】定着装置の一部破断斜視図である。
【図5】定着装置及びその周辺機器の分解斜視図である。
【図6】ニップ圧調整機構の構成を示す定着装置の端部斜視図である。
【図7】定着装置の断面図であって、定着ローラー及び加熱ローラーの回転軸の移動を説明するための図である。
【図8】定着装置の断面図であって、維持機構の構成を説明するための図である。
【図9】(A)は定着装置の一側面図、(B)は他側面図であって、維持機構の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1(IH定着式画像形成装置)の内部構造を示す断面図である。ここでは、画像形成装置1として複写機を例示するが、画像形成装置1は、IH定着方式を採用している限りにおいて、プリンタ、ファクシミリ装置、或いは、これらの機能を備える複合機であってもよい。
【0027】
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を有する装置本体10(第2ハウジング)と、装置本体10上に配置される自動原稿給送装置20とを備える。装置本体10の内部には、複写する原稿画像を光学的に読み取る読取ユニット25と、シートにトナー像を形成する画像形成部30と、前記トナー像をシートに定着させる定着装置60と、画像形成部30へ搬送されるシートを貯留する給紙部40と、シートを給紙部40から画像形成部30及び定着装置60を経由してシート排出口10Eまで搬送する搬送経路50と、この搬送経路50の一部を構成するシート搬送路を内部に有する搬送ユニット55とが収容されている。
【0028】
装置本体10の右側面10Rには、ジャム処理の際、或いはメンテナンス時に画像形成部30や定着装置60等のユニットを装置本体10から取り外す際に開閉される本体カバー101が備えられている。本体カバー101は、その基端部(下端部)において、装置本体10に対して回動可能に取り付けられている(図2も参照)。
【0029】
自動原稿給送装置20は、装置本体10の上面に回動自在に取り付けられている。自動原稿給送装置20は、装置本体10における所定の原稿読取位置(第1コンタクトガラス241が組み付けられた位置)に向けて、複写される原稿シートを自動給送する。一方、ユーザーが手置きで原稿シートを所定の原稿読取位置(第2コンタクトガラス242の配置位置)に載置する場合は、自動原稿給送装置20は上方に開かれる。自動原稿給送装置20は、原稿シートが載置される原稿トレイ21と、自動原稿読取位置を経由して原稿シートを搬送する原稿搬送部22と、読取後の原稿シートが排出される原稿排出トレイ23とを含む。
【0030】
読取ユニット25は、装置本体10の上面の自動原稿給送装置20から自動給送される原稿シートの読取用の第1コンタクトガラス241、又は手置きされる原稿シートの読取用の第2コンタクトガラス242を通して、原稿シートの画像を光学的に読み取る。読取ユニット25内には、光源、移動キャリッジ、反射ミラー等を含む走査機構と、撮像素子とが収容されている(図略)。走査機構は、原稿シートに光を照射し、その反射光を撮像素子に導く。撮像素子は、前記反射光をアナログ電気信号に光電変換する。前記アナログ電気信号は、A/D変換回路でデジタル電気信号に変換された後、画像形成部30に入力される。
【0031】
画像形成部30は、フルカラーのトナー画像を生成しこれをシート上に転写する処理を行うもので、タンデムに配置されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各トナー像を形成する4つのユニット32Y、32M、32C、32Bkを含む画像形成ユニット32と、該画像形成ユニット32の上に隣接して配置された中間転写ユニット33と、中間転写ユニット33上に配置されたトナー補給部34とを含む。
【0032】
各画像形成ユニット32Y、32M、32C、32Bkは、感光体ドラム321と、この感光体ドラム321の周囲に配置された、帯電器322、露光器323、現像装置324、一次転写ローラー325及びクリーニング装置326とを含む。
【0033】
感光体ドラム321は、その軸回りに回転し、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。感光体ドラム321としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。帯電器322は、感光体ドラム321の表面を均一に帯電する。露光器323は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム321の周面に、原稿画像の画像データに基づく光を照射して、静電潜像を形成する。
【0034】
現像装置324は、感光体ドラム321上に形成された静電潜像を現像するために、感光体ドラム321の周面にトナーを供給する。現像装置324は、2成分現像剤用のものであり、攪拌ローラー、磁気ローラー、及び現像ローラーを含む。攪拌ローラーは、2成分現像剤を攪拌しながら循環搬送することで、トナーを帯電させる。磁気ローラーの周面には2成分現像剤層が担持され、現像ローラーの周面には、磁気ローラーと現像ローラーとの間の電位差によってトナーが受け渡されることにより形成されたトナー層が担持される。現像ローラー上のトナーは、感光体ドラム321の周面に供給され、前記静電潜像が現像される。
【0035】
一次転写ローラー325は、中間転写ユニット33に備えられている中間転写ベルト331を挟んで感光体ドラム321とニップ部を形成し、感光体ドラム321上のトナー像を中間転写ベルト331上に一次転写する。クリーニング装置326は、クリーニングローラー等を有し、トナー像転写後の感光体ドラム321の周面を清掃する。
【0036】
中間転写ユニット33は、中間転写ベルト331、駆動ローラー332、従動ローラー333、テンションローラー334及びバックアップローラー336を備える。中間転写ベルト331は、これらローラー332、333、334、336及び一次転写ローラー325に架け渡された無端ベルトであって、該中間転写ベルト331の外周面には、複数の感光体ドラム321からトナー像が、同一箇所に重ねて転写される(一次転写)。
【0037】
駆動ローラー332は、金属製の導電シャフト上にスポンジ状の導電性ゴムを円筒型に成型してなるローラーであり、中間転写ベルト331を周回させるための駆動力が付与される。駆動ローラー332の周面に対向して、二次転写ローラー35が配置されている。二次転写ローラー35も導電性のローラーである。駆動ローラー332と二次転写ローラー35とのニップ部は、中間転写ベルト331に重ね塗りされたフルカラーのトナー像をシートに転写する二次転写部35Aとなる。
【0038】
二次転写ローラー35には、トナー像と逆極性の二次転写バイアス電位が印加され、駆動ローラー332は接地される。なお、従動ローラー333は、中間転写ベルト331の周回に応じて従動するローラー、テンションローラー334は中間転写ベルト331に所定の張力を付与するローラー、バックアップローラー336は、中間転写ベルト331の周回方向において二次転写部35Aの直上流側で、中間転写ベルト331を屈曲させるローラーである。
【0039】
トナー補給部34は、イエロー用トナーコンテナ34Y、マゼンタ用トナーコンテナ34M、シアン用トナーコンテナ34C、及びブラック用トナーコンテナ34Bkを含む。これらトナーコンテナ34Y、34C、34M、34Bkは、それぞれ各色のトナーを貯留するものであり、YMCBk各色に対応する画像形成ユニット32Y、32M、32C、32Bkの現像装置324に、図略の供給経路を通して各色のトナーを供給する。
【0040】
給紙部40は、画像形成処理が施されるシートを収容する2段の給紙カセット40A、40B及び手差し給紙用の給紙トレイ46を備える。これら給紙カセット40A、40Bは、装置本体10の前方から手前方向に引出可能である。給紙カセット40A、40Bは、自動給紙用に設けられたカセットであるが、手差し給紙用の給紙トレイ46は装置本体10の右側面10Rに設けられている。給紙トレイ46は、その下端部において本体カバー101に対して開閉自在に取り付けられている。ユーザーは、手差し給紙を行う場合、図示の通り給紙トレイ46を開き、その上にシートを載置する。
【0041】
給紙カセット40A(40B)は、複数のシートが積層されてなるシート束を収納するシート収容部41と、前記シート束を給紙のためにリフトアップするリフト板42とを備える。給紙カセット40A(40B)の右端側の上部には、ピックアップローラー43と、給紙ローラー44とリタードローラー45とのローラー対とが配置されている。ピックアップローラー43及び給紙ローラー44の駆動により、給紙カセット40A内のシート束の最上層のシートが1枚ずつ繰り出され、搬送経路50の上流端へ搬入される。一方、給紙トレイ46に載置されたシートは、同様にピックアップローラー461及び給紙ローラー462の駆動によって、搬送経路50へ搬入される。
【0042】
搬送経路50は、給紙部40から画像形成部30を経由して定着装置60の出口までシートを搬送する主搬送路50Aと、シートに対して両面印刷を行う場合に片面印刷されたシートを画像形成部30に戻すための反転搬送路50Bと、主搬送路50Aの下流端から反転搬送路50Bの上流端へシートを向かわせるためのスイッチバック搬送路50Cと、主搬送路50Aの下流端から装置本体10の左側面10Lに設けられたシート排出口10Eまでシートを水平方向に搬送する水平搬送路50Dとを含む。この水平搬送路50Dの大半は、搬送ユニット55の内部に備えられているシート搬送路で構成されている。
【0043】
主搬送路50Aの、二次転写部35Aよりも上流側には、レジストローラー対51が配置されている。主搬送路50Aを搬送されてきたシートは、停止状態のレジストローラー対51に付き当たって一旦停止され、スキュー矯正が行われる。その後、画像転写のための所定のタイミングで、レジストローラー対51が駆動モーター(図略)で回転駆動されることで、シートは二次転写部35Aに送り出される。この他、主搬送路50Aには、シートを搬送するための搬送ローラー対52が複数配置されている。他の搬送路50B、50C、50Dも同様である。
【0044】
搬送経路50の最下流端には、排紙ローラー対53を備えた排紙ユニット530が、搬送ユニット55の図1において左側に隣接して配置されている。排紙ローラー対53は、装置本体10の左側面10L側に装置本体10に接続されて配置される図略の後処理装置に、シート排出口10Eを通してシートを送り込む。なお、後処理装置が取り付けられない画像形成装置では、シート排出口10Eの下方にシート排出トレイが設けられる。
【0045】
搬送ユニット55は、定着装置60から搬出されるシートを、シート排出口10Eまで搬送するユニットである。本実施形態の画像形成装置1は、定着装置60が装置本体10の右側面10R側に配置され、シート排出口10Eは、右側面10Rと対向する装置本体10の左側面10L側に配置されている。従って、搬送ユニット55は、装置本体10の右側面10Rから左側面10Lに向けて、シートを水平方向に搬送する。
【0046】
定着装置60は、シートにトナー像を定着させる定着処理を施す誘導加熱方式の定着装置であって、加熱ローラー61(第3ローラー)、定着ローラー62(第2ローラー)、加圧ローラー63(第1ローラー)、定着ベルト64(ベルト部材)、誘導加熱ユニット65及び搬送ローラー対66を含む。定着装置60は、装置本体10の右側面10Rの近傍に設けられた収容空間102内に配置されている。
【0047】
図2に示すように、誘導加熱ユニット65を除く上掲の構成部材はハウジング600(第1ハウジング)内に収容され、定着ユニット60Uとしてユニット化されている。定着ユニット60Uは、装置本体10に対して着脱が可能である。一方、誘導加熱ユニット65は、装置本体10の収容空間102内の適所に取り付けられており、定着ユニット60Uが装置本体10から取り外された状態では、誘導加熱ユニット65だけが収容空間102内に残存することになる。このような構成とすることで、定着ユニット60Uが経時劣化等で交換を要する場合において、誘導加熱ユニット65に問題が無い場合には誘導加熱ユニット65を装置本体10に残存させつつ、定着ユニット60Uだけを交換することが可能となる。
【0048】
図3は、定着装置60の内部構造を示す断面図、図4は、定着装置60の一部破断斜視図、図5は、定着装置60及びその周辺機器の分解斜視図、及び、図6は、ニップ圧調整機構80の構成を示す定着装置60の端部斜視図である。以下、図3〜図6に基づいて、定着装置60の詳細構造を説明する。
【0049】
定着ユニット60Uのハウジング600は、断面形状が略矩形状であり、定着処理を行うための部材を収容する。ハウジング600は、当該ハウジング600に対して固定状態とされる本体フレーム601と、この本体フレーム601に対して移動可能に組み付けられた移動フレーム602とを含む。図示は省略しているが、移動フレーム602は、本体フレーム601に設けられた回動支点に回動可能に取り付けられている。ハウジング600は、図3において右上角部の位置に開口部を有し、その開口部は開閉自在なカバー部材68にて覆われている。定着ユニット60U内でシートジャム等の不具合が発生した場合、このカバー部材68が上方へ開放される。
【0050】
加熱ローラー61は、誘導加熱ユニット65により誘導加熱されるローラーであって、例えば鉄やステンレス等の磁性金属からなり、その表面には例えばPFAからなる離型層が形成されている。加熱ローラー61は、回転軸(第3回転軸61S)を有し、該第3回転軸61Sの軸回りに従動回転する。
【0051】
定着ローラー62及び加圧ローラー63は、定着ベルト64を挟んで周面同士が圧接され、定着ニップ部60Nを形成するローラーである。二次転写部35Aにおいてトナー像が二次転写されたシートは、定着ニップ部60Nを通過し、加熱及び加圧されることで、トナー像がシート表面に定着される。
【0052】
定着ローラー62は、弾性層を表層に有する弾性ローラーである。前記弾性層としては、シリコンスポンジからなる弾性層を用いることができる。定着ローラー62は、回転軸(第2回転軸62S)を有し、該第2回転軸62Sの軸回りに従動回転する。
【0053】
加圧ローラー63は、定着ローラー62を加圧し、所定幅の定着ニップ部60Nを形成するためのローラーである。加圧ローラー63の好ましい構成の一つは、鉄やアルミニウム等の金属芯材と、この芯材の上に形成されたシリコンゴム層と、シリコンゴム層の表面に形成されたフッ素樹脂層とを備える構成である。加圧ローラー63は、定着ローラー62の表層の硬度(第2の硬度)よりも高い表層の硬度(第1の硬度)を有しており、その内部にはハロゲンヒーター等の加熱エレメントが備えられている。加圧ローラー63は、回転軸(第1回転軸63S)を有し、後記で説明する通り、第1回転軸63Sの軸回りに駆動回転する。
【0054】
定着ベルト64は、加熱ローラー61と定着ローラー62とに架け渡され、加熱ローラー61と同様に誘導加熱ユニット65により誘導加熱されるベルトである。この定着ベルト64の内周面には、当該定着ベルト64に張力を与えるためのテンションローラー641が当接されている。定着ベルト64は、例えばニッケルのような強磁性材料からなる基材上に、シリコンゴム弾性層及びPFA離型層が順次形成されてなる。なお、定着ベルト64に被加熱機能を具備させず単に加熱ローラー61が発する熱のキャリアとする場合は、ポリイミド(PI)等の樹脂ベルトを用いることができる。
【0055】
加圧ローラー63の第1回転軸63Sは、ハウジング600内の本体フレーム601で回転自在に支持されている。一方、加熱ローラー61の第3回転軸61S及び定着ローラー62の第2回転軸62Sは、ハウジング600内の移動フレーム602で回転自在に支持されている。換言すると、加圧ローラー63の第1回転軸63Sは、ハウジング600内において実質的にシフト移動が不能な状態で支持されているのに対し、加熱ローラー61の第3回転軸61S及び定着ローラー62の第2回転軸62Sは、ハウジング600内においてシフト移動が可能な状態で支持されている。なお、図9に示しているように、第3回転軸61Sの両方の端部61E、及び第2回転軸62Sの両方の端部62Eは移動フレーム602から外方に突出している。なお、本体フレーム601には長孔601Hが穿孔され、シフト移動する第2回転軸62Sの端部62Eが該長孔601Hに嵌め込まれている。
【0056】
具体的には、加熱ローラー61、定着ローラー62、テンションローラー641及び定着ベルト64が移動フレーム602に搭載されてベルトユニット64Uとされ、このベルトユニット64Uが図6に示すニップ圧調整機構80によって移動されることで、第2回転軸62S及び第3回転軸61Sがシフト移動する構成である。図7〜図9に基づき後記で詳述するが、ニップ圧調整機構80は移動フレーム602を移動させることによって、定着ニップ部60Nのニップ圧を調整する。すなわち、定着ローラー62の周面が加圧ローラー63の周面に比較的強い圧力(第1の圧力)で圧接される通常加圧姿勢(第1姿勢)と、比較的低い圧力(第2の圧力)で圧接される減圧姿勢(第2姿勢)との間で、定着ローラー62の姿勢変更を行わせる。
【0057】
ニップ圧調整機構80は、移動フレーム602を移動させる駆動力を発生するモーター81と、駆動ギア列83とを含む。モーター81はハウジング600の側壁に搭載され、その出力ギア82が、駆動ギア列83の第1ギア84に歯合されている。駆動ギア列83は、複数の減速ギアと、図6には表れていないセクトギアとを含み、モーター81が発生する駆動力を移動フレーム602に伝達し、前記通常加圧姿勢と前記減圧姿勢との間で移動フレーム602を移動させる。
【0058】
図4に模式的に示すように、加圧ローラー63の第1回転軸63Sには、装置本体10側に備えられたモーターM(駆動機構)から、所定の減速機構を介して回転駆動力が入力される。加圧ローラー63の回転により、加熱ローラー61、定着ローラー62、テンションローラー641及び定着ベルト64は従動回転する。上述の通り、加圧ローラー63の方が定着ローラー62よりも高い硬度を有している。このため、回転駆動時においてローラー外周の周速度に変動が生じないという点で、モーターMからの駆動入力には加圧ローラー63の第1回転軸63Sが適している。
【0059】
誘導加熱ユニット65は、定着処理に必要な熱を発生させるためのユニットであり、誘導加熱コイル651と、センターコア652、複数対のアーチコア653及び一対のサイドコア654からなるコア部材と、これらを収容するユニットハウジング650(保持部材)とを備える。
【0060】
誘導加熱コイル651は、加熱ローラー61及び定着ベルト64を誘導加熱するための磁束を発生するもので、加熱ローラー61及び定着ベルト64の断面視における円弧面に対向する仮想的な断面視における円弧面上に配置されている。センターコア652、複数対のアーチコア653及び一対のサイドコア654は、フェライト製のコア部材であり、加熱ローラー61及び定着ベルト64の一部を経由する磁路を形成するために配置されている。誘導加熱コイル651が発生した磁束が前記磁路を通過することで、加熱ローラー61及び定着ベルト64には渦電流が発生し、これに伴うジュール熱を発生することになる。
【0061】
ユニットハウジング650は、上記の誘導加熱コイル651及びコア部材を保持するハウジング部材であって、加熱ローラー61及び定着ベルト64の一部が入り込む円弧状の凹部65Hを備えている。誘導加熱ユニット65のユニットハウジング650と定着ユニットのハウジング600の側面(図3では左側面)とは位置決めされた状態で嵌合され、凹部65Hの内周面と定着ベルト64の表面との間には所定間隔のギャップが形成されている。
【0062】
上記のギャップ(つまり、加熱ローラー61及び定着ローラー62と誘導加熱ユニット65との相対位置)は、ニップ圧調整機構80によってベルトユニット64Uが移動され、前記通常加圧姿勢及び前記減圧姿勢のいずれの姿勢となっても、維持機構によって一定に維持される。本実施形態では、上記維持機構として、定着ユニット60Uのハウジング600には、位置決めピン600Aと、受け部602Eとが備えられている。また、誘導加熱ユニット65のユニットハウジング650には、位置決めピン600Aに対応した挿入孔65Aと、受け部602Eに対応した当たり部650Eと、第3回転軸61Sの端部61Eが嵌合される受け溝650C(図9参照)とが備えられている(以上、係合構造部)。
【0063】
維持機構は、さらにコイルバネ65B(付勢機構)を含む。コイルバネ65Bは、圧縮バネであって、該ユニットハウジング650をハウジング600に向けて付勢し、前記ギャップを一定に維持するために配置されている。すなわち、コイルバネ65Bの付勢力によって、当たり部650Eが受け部602Eに圧接され、また、第3回転軸61Sの端部61Eが受け溝650Cに圧接される。言うまでもなく、定着ユニット60Uが装置本体10から取り外されるとき、位置決めピン600Aは挿入孔65Aから外れ、当たり部650Eは受け部602Eから離れ、端部61Eと受け溝650Cとの嵌合も解消される。
【0064】
図3を参照して、搬送ローラー対66は、定着ニップ部60Nを通過したシートをハウジング600の下流側の水平搬送路50Dへ送り出すための搬送ローラー対である。搬送ローラー対66は、ハウジング600に回転自在に支持される第1搬送ローラー661と、カバー部材68で回転自在に支持される第2搬送ローラー662とからなる。第1搬送ローラー661は、回転駆動力が装置本体10側から入力される駆動ローラーであり、第2搬送ローラー662は、第1搬送ローラー661の回転に伴って従動回転する従動ローラーである。第2搬送ローラー662は、シート搬送力を具備させるために、所定のニップ圧で第1搬送ローラー661に圧接されている。
【0065】
定着ニップ部60Nのシート搬送方向上流側には、定着ニップ部60Nに向けて搬入されるシートを案内する一対のガイド部材671、672が配置されている。また、定着ニップ部60Nのシート搬送方向下流側には、定着ニップ部60Nから排出されるシートを搬送ローラー対66に向けてシートを案内する一対のガイド部材673、674が配置されている。さらに、定着ニップ部60Nのシート搬送方向下流側には、シートの通過を検知するためのアクチュエーター67Aが、揺動自在な状態で配置されている。
【0066】
図3において、定着ローラー62及び定着ベルト64は反時計方向に回転し、加圧ローラー63は時計方向に回転する。定着ニップ部60Nよりも回転方向下流側において、定着ベルト64の周面に対して分離プレート675が配置され、また加圧ローラー63の周面に対して分離爪676が配置されている。これら分離プレート675及び分離爪676は、定着ベルト64又は加圧ローラー63の周面に巻き付こうとするシートを引き剥がすために配置されている。分離プレート675は、定着ローラー62の軸方向に延びる板状の部材であり、その先端部と定着ベルト64の周面との間には、微小な空間が設けられる。一方、分離爪676は、加圧ローラー63の軸方向の幅が数ミリ程度の部材であり、その先端は加圧ローラー63の周面に当接される。なお、分離プレート675は通紙幅に相当する長さを備える一枚の板部材であるのに対し、分離爪676は加圧ローラー63の軸方向に所定間隔を置いて複数個配置されている。
【0067】
図3〜図5を参照して、ユニットハウジング650の背面には、ダクト部材69が一体的に取り付けられている。このダクト部材69の背面には、装置本体10の本体フレーム70が配置されている(図5では本体フレーム70は省かれている)。上述のコイルバネ65Bは、本体フレーム70とダクト部材69との間に配置されている。
【0068】
コイルバネ65Bは、一箇所当たり二個ずつ、加熱ローラー61の軸方向に離間して二箇所に配置されている。各コイルバネ65Bは、シャフト65Sに挿通されている。シャフト65Sは、ダクト部材69の背面に当接する押圧板691(第2バネ座)から、ローラー軸方向と直交する方向に突設された部材であり、その先端部は本体フレーム70に設けられた孔(図示略)を貫通している。コイルバネ65Bの一端は、本体フレーム70と圧接するバネ座701(第1バネ座)に当接され、他端は、押圧板691に当接している(図3)。
【0069】
ダクト部材69の内部には、冷却風が流通可能な空間D(通風路)が備えられている。図5に示すように、ダクト部材69の両端付近の背面に、装置本体10側に備えられている本体冷却ダクト71、71が連結されている。この連結部においてダクト部材69は開口しており、前記空間Dと本体冷却ダクト71、71の内部とは連通している。
【0070】
冷却風の流通経路の下流側の本体冷却ダクト71には、排気ダクト72が連結されている。冷却風の流通経路の上流側の本体冷却ダクト71には冷却風の吸い込み用の冷却ファン73が、冷却風の流通経路の下流側の本体冷却ダクト71と排気ダクト72との間には冷却風の吹き出し用の冷却ファン74が組み付けられている。冷却ファン73、74が駆動されることで、冷却風の流通経路の上流側の本体冷却ダクト71、ダクト部材69、冷却風の流通経路の下流側の本体冷却ダクト71及び排気ダクト72に至る冷却風の通風路AFが形成され、誘導加熱ユニット65の冷却が図られる。
【0071】
図4に示すように、本体冷却ダクト71とダクト部材69との連結部には、伸縮性のシール部材71Sが介在されている。本体フレーム70は不動であるが、誘導加熱ユニット65と一体のダクト部材69はコイルバネ65Bに押圧されて移動する。かかる移動が行われても、本体冷却ダクト71とダクト部材69との連結部から冷却風の漏洩が生じないよう、伸縮性を有するシール部材71Sが配置されている。
【0072】
続いて、図7(A)、(B)を参照して、ニップ圧調整機構80によるベルトユニット64Uの移動動作について説明する。図7(A)は、定着ニップ部60Nにおいて定着ローラー62(ベルトユニット64U)が通常加圧姿勢に設定されている状態を、図7(B)は、定着ローラー62が減圧姿勢に設定されている状態をそれぞれ示している。前記通常加圧姿勢は、定着ニップ部60Nにおいて高いニップ圧が形成されている状態であり、通常紙厚のシートを定着ニップ部60Nに通紙させるときに設定される。一方、前記減圧姿勢は、定着ニップ部60Nにおいて僅かなニップ圧が形成されている状態であり、封筒等の厚紙又は薄紙を定着ニップ部60Nに通紙させるとき、若しくは定着ユニット60U内でシートジャムが生じた場合等に設定される。
【0073】
上述の通り、加圧ローラー63の第1回転軸63Sは、ハウジング600内において固定された本体フレーム601で支持されているので、通常加圧姿勢及び減圧姿勢の双方においてシフト移動はしない。すなわち、第1回転軸63SのポジションはP1から不変である。本実施形態では、このようにシフト移動しない第1回転軸63Sに、装置本体10に備えられているモーターM(図4)から回転駆動力が入力される。このため、回転駆動力の入力機構をシンプルなものとすることができる。
【0074】
一方、ベルトユニット64Uは、ハウジング600の移動フレーム602によって支持されており、ニップ圧調整機構80が移動フレーム602を移動させ通常加圧姿勢から減圧姿勢に姿勢変更させると、定着ローラー62の第2回転軸62S及び加熱ローラー61の第3回転軸61Sはシフト移動する。すなわち、第2回転軸62SのポジションはP21からP22へ距離d1だけシフト移動し、第3回転軸61SのポジションはP31からP32へ距離d2だけシフト移動する。勿論、d1=d2である。
【0075】
本実施形態では上述の維持機構が備えられているので、このようなベルトユニット64Uの移動に追従して、誘導加熱ユニット65も移動する。図7(B)の減圧姿勢から図7(A)の通常加圧姿勢に移行する場合には、ベルトユニット64Uは加圧ローラー63に接近する方向に移動する。この際、コイルバネ65Bの付勢力によって、誘導加熱ユニット65のユニットハウジング650が定着ユニット60Uのハウジング600に圧接された状態が維持される。具体的には、前記付勢力によってユニットハウジング650の当たり部650Eが受け部602Eに圧接され、また、第3回転軸61Sの端部61Eが受け溝650Cに圧接された状態(図9)が維持されるものである。さらにまた、位置決めピン600Aが挿入孔65Aに当接された状態も維持される。
【0076】
これに対し、図7(A)の通常加圧姿勢から図7(B)の減圧姿勢に移行する場合には、ベルトユニット64Uは加圧ローラー63から離間する方向に移動する。この際、誘導加熱ユニット65は、コイルバネ65Bの付勢力に抗する押圧力をベルトユニット64Uから受ける。これにより、誘導加熱ユニット65は図7の左方に移動し、コイルバネ65Bは圧縮された状態となる。つまり、誘導加熱ユニット65のポジション(ここではダクト部材69のポジションで示している)は、通常加圧姿勢の時のP41からP42へ距離d3だけシフト移動する。言うまでもなく、d3=d2=d1である。従って、ベルトユニット64Uと誘導加熱ユニット65との相対位置は、ニップ圧調整機構80による姿勢変更動作に拘わらず、常に一定に保たれる。
【0077】
本実施形態では、誘導加熱ユニット65とベルトユニット64Uとの密着性を良好とする工夫が施されている。この点について、図8及び図9に基づいて説明する。コイルバネ65Bは、上下方向に2個並んで配置されている(それぞれ上コイルバネ65B1、下コイルバネ65B2という)。加熱ローラー61の第3回転軸61Sは、上コイルバネ65B1と下コイルバネ65B2との中間点よりも上方に偏心した位置に配置されている(a1<a2)。
【0078】
図9(A)、(B)に示すように、第3回転軸61Sの端部61EはU字型の受け溝650Cに嵌合されている。従って、誘導加熱ユニット65のユニットハウジング650は端部61Eの軸回りに揺動可能である。そして、a1:a2の距離差が存在する各作用点に上コイルバネ65B1の押圧力F1と、下コイルバネ65B2の押圧力F2(F1=F2)とが各々加えられる。このためユニットハウジング650には、図中矢印Bに示す方向の回転モーメントが働き、位置決めピン600Aと挿入孔65Aとの嵌合遊びの範囲で、ユニットハウジング650は端部61Eの軸回りに矢印B方向に揺動する。これにより、当たり部650Eは自ずと受け部602Eに押し当てられるようになり、誘導加熱ユニット65とベルトユニット64Uとを精度良く位置決めすることができる。
【0079】
以上説明した本実施形態のIH定着式の画像形成装置1によれば、誘導加熱ユニット65とベルトユニット64U(定着ローラー62)との相対位置は、ニップ圧調整機構80による姿勢変更動作に拘わらず、コイルバネ65Bを含む維持機構により一定に保たれる。一方、定着ローラー62よりも高い硬度を有する加圧ローラー63は、シフト移動不能な状態でハウジング600(本体フレーム601)に支持され、この加圧ローラー63にモーターMから回転駆動力が与えられる。従って、誘導加熱ユニット65とベルトユニット64Uとの距離関係を一定に保ちつつ、回転駆動力の入力機構を簡素化することができる。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施形態につき説明したが、本発明は上記の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、加熱ローラー61及び定着ベルト64を備える定着ユニット60Uを例示したが、これらが存在しないタイプの定着ユニットを用いても良い。具体的には、定着ローラー62の外周に、定着ベルト64と同様な磁性体で形成された円筒状ベルトが巻かれた構成である。この変形実施形態では、誘導加熱ユニット65は、前記円筒状ベルトを誘導加熱することになる。
【符号の説明】
【0081】
1 画像形成装置
10 装置本体(第2ハウジング)
30 画像形成部
60 定着装置
60N 定着ニップ部
600 ハウジング(第1ハウジング)
600A 位置決めピン(係合構造部)
601 本体フレーム
602 移動フレーム
602E 受け部(係合構造部)
61 加熱ローラー(第3ローラー)
61S 第3回転軸
61E 端部
62 定着ローラー(第2ローラー)
62S 第2回転軸
63 加圧ローラー(第1ローラー)
63S 第1回転軸
64 定着ベルト(ベルト部材)
65 誘導加熱ユニット
65B コイルバネ(付勢機構/維持機構)
650 ユニットハウジング(保持部材)
650C 受け溝(係合構造部)
650E 当たり部(係合構造部)
651 誘導加熱コイル
652、653、654 センターコア、アーチコア、サイドコア(コア部材)
69 ダクト部材
70 本体フレーム
71 本体冷却ダクト
71S シール部材
80 ニップ圧調整機構
M モーター(駆動機構)
D 通風路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着処理を行うための部材を収容する第1ハウジングと、
シートに画像を形成する画像形成部を収容し、前記第1ハウジングが装着される第2ハウジングと、
第1回転軸を有し、前記第1ハウジングで前記第1回転軸がシフト移動不能な状態で回転自在に支持される第1ローラーと、
第2回転軸を有し、前記第1ハウジングで前記第2回転軸がシフト移動可能な状態で回転自在に支持され、シートに定着処理を施す定着ニップ部を前記第1ローラーと共に形成する第2ローラーと、
前記第2ローラーを、前記第1ローラーに対して第1の圧力で圧接させる第1姿勢と、該第1姿勢の状態から前記第2回転軸をシフト移動させることで前記第1の圧力よりも減圧された第2の圧力で前記第1ローラーに対して圧接させる第2姿勢と、の間で姿勢変更させるニップ圧調整機構と、
前記第2ハウジングに取り付けられ、前記定着処理に必要な熱を発生させるための誘導加熱ユニットと、
前記第2ローラーと前記誘導加熱ユニットとの相対位置を、前記第2ローラーの前記第1姿勢時及び前記第2姿勢時の双方において一定に維持させる維持機構と、
前記第1ローラーに回転駆動力を与える駆動機構と、
を備えるIH定着式画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のIH定着式画像形成装置において、
前記第1ローラーが、第1の硬度を有する素材にて形成され、
前記第2ローラーが、前記第1の硬度よりも低い第2の硬度を有する素材にて形成されている、IH定着式画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のIH定着式画像形成装置において、
前記第1ハウジングは、本体フレームと、該本体フレームに対して移動可能に組み付けられた移動フレームとを含み、
前記第1ローラーは前記本体フレームで支持され、前記第2ローラーは前記移動フレームで支持され、
前記維持機構は、前記誘導加熱ユニットと前記移動フレームとを位置決めして互いに係合させる係合構造部と、前記係合を維持させる付勢力を前記誘導加熱ユニットに与える付勢機構とを含む、IH定着式画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載のIH定着式画像形成装置において、
第3回転軸を有し、前記移動フレームで支持され、前記誘導加熱ユニットにより誘導加熱される第3ローラーと、
前記第2ローラーと前記第3ローラーとに架け渡されるベルト部材と、をさらに備え、
前記第1ハウジングが前記第2ハウジングに装着された状態において、前記誘導加熱ユニットと前記第3ローラーとが対向する、IH定着式画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載のIH定着式画像形成装置において、
前記誘導加熱ユニットは、磁束を生成するための誘導加熱コイルと、磁路を形成するためのコア部材と、前記誘導加熱コイル及びコア部材を保持する保持部材とを含み、
前記移動フレームは、前記第3ローラーの第3回転軸を軸支する軸支部を備え、前記第3回転軸の両端部が前記移動フレームから突出した状態とされ、
前記係合構造部は、前記第3回転軸の両端部と、前記保持部材に形成され前記第3回転軸の両端部が嵌合される位置決め凹部とからなる、IH定着式画像形成装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載のIH定着式画像形成装置において、
前記付勢機構は、
圧縮バネと、前記第2ハウジング側において前記圧縮バネの一端側が当接される第1バネ座と、前記誘導加熱ユニット側において前記圧縮バネの他端側が当接される第2バネ座とを含み、
前記移動フレームの移動に追従させて前記誘導加熱ユニットを移動させる、IH定着式画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載のIH定着式画像形成装置において、
前記誘導加熱ユニットに付設され、前記誘導加熱ユニットを冷却するための通風路を形成するダクト部材と、
前記第2ハウジングに備えられ、前記ダクト部材に連結される冷却ダクトと、
前記冷却ダクトと前記通風路との連結部に配置される伸縮性のシール部材と、をさらに備える、IH定着式画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−208417(P2012−208417A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75656(P2011−75656)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】