説明

III族窒化物半導体結晶の成長方法およびIII族窒化物半導体結晶の成長装置

【課題】III族窒化物半導体結晶を成長させる成長速度を向上したIII族窒化物半導体結晶の成長方法およびIII族窒化物半導体結晶の成長装置を提供する。
【解決手段】III族窒化物半導体結晶の成長方法は、以下の工程を備えている。まず、原料13からの熱輻射を遮るための熱遮蔽部110を内部に含むチャンバー101が準備される。そして、チャンバー101内において、熱遮蔽部110に対して一方側に原料13が配置される。そして、原料13を加熱することにより昇華させて、チャンバー101内の熱遮蔽部110に対して他方側に、原料ガスを析出させることによりIII族窒化物半導体結晶15が成長される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体結晶の成長方法およびIII族窒化物半導体結晶の成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム(AlN)結晶は、6.2eVの広いエネルギバンドギャップ、約3.3WK-1cm-1の高い熱伝導率および高い電気抵抗を有しているため、光デバイスや電子デバイスなどの半導体デバイス用の基板材料として注目されている。
【0003】
このようなAlN結晶などIII族窒化物半導体結晶の成長方法には、たとえば昇華法が用いられる。AlN結晶の成長方法として、昇華法により炭化珪素(SiC)基板上に成長させる方法が、たとえば特開平10−53495号公報(特許文献1)、米国特許第5,858,086号明細書(特許文献2)および米国特許第6,296,956号明細書(特許文献3)に開示されている。
【0004】
上記特許文献1には、以下の工程が実施されることが記載されている。すなわち、まず、AlN粉末と、AlNと加熱下に反応してAlNを分解気化させる酸化チタン(TiO2)と、フェノールとを混合することにより、混合粉末が準備される。また、下地基板と
してSiC基板が準備される。次に、炭素と窒素とを含む雰囲気で、得られた混合粉末を1800℃に加熱するとともに、SiC基板の温度を1700℃に昇温して、混合粉末を分解気化させることにより、SiC基板上にAlN結晶が成長される。
【0005】
また、上記特許文献2および3には、昇華法を用いて、原料を昇華させて、下地基板上に0.5mm/hrの成長速度でAlN結晶を成長させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−53495号公報
【特許文献2】米国特許第5,858,086号明細書
【特許文献3】米国特許第6,296,956号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では、原料の加熱温度が1800℃と低いため、原料の昇華する速度が低くなる。このため、下地基板上に成長するAlNの成長速度が低いという問題がある。
【0008】
また、上記特許文献2および3に記載されている0.5mm/hrの成長速度を得るためには、原料の温度を高温にする必要がある。しかし、原料の温度を高温にしようとすると、下地基板の温度も高温になる。下地基板の加熱温度が高くなると、下地基板上に成長したAlN結晶が再昇華するので、AlN結晶を成長させる速度が不十分になるという問題がある。
【0009】
したがって、本発明は、III族窒化物半導体結晶を成長させる成長速度を向上したIII族窒化物半導体結晶の成長方法およびIII族窒化物半導体結晶の成長装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のIII族窒化物半導体結晶の成長方法は、III族窒化物半導体を含む原料を昇華させ、昇華させた原料ガスを析出させることによりIII族窒化物半導体結晶を成長させる方法であって、以下の工程を備えている。まず、原料からの熱輻射を遮るための熱遮蔽部を内部に含むチャンバーが準備される。そして、チャンバー内において、熱遮蔽部に対して一方側に原料が配置される。そして、原料を加熱することにより昇華させて、チャンバー内の熱遮蔽部に対して他方側に、原料ガスを析出させることによりIII族窒化物半導体結晶が成長される。
【0011】
本発明のIII族窒化物半導体結晶の成長方法によれば、原料とIII族窒化物半導体結晶を成長させる空間との間に熱遮蔽部が配置されているので、原料とIII族窒化物半導体結晶を成長させる空間との間の熱抵抗が高くなる。このため、原料を昇華させるための熱が、III族窒化物半導体結晶を成長させる空間側に伝わることを妨げることができる。原料の温度を高くできるので、原料の昇華を促進できる。また、III族窒化物半導体結晶を成長させる空間の温度を低くできるので、成長したIII族窒化物半導体結晶の昇華を抑制できる。さらに、原料の温度とIII族窒化物半導体結晶を成長させる空間の温度との温度差を大きくできるので、この温度差を原料と成長させる空間との距離で割った温度勾配を大きくすることができるため、III族窒化物半導体結晶の成長を促進できる。したがって、原料の温度を高くすること、III族窒化物半導体結晶を成長させる空間の温度を低くすること、および原料とIII族窒化物半導体結晶を成長させる空間との温度勾配を大きくすることができるので、III族窒化物半導体結晶の成長速度を向上できる。
【0012】
上記III族窒化物半導体結晶の成長方法において好ましくは、熱遮蔽部は、III族窒化物半導体結晶の熱輻射率よりも低い熱輻射率を有している。
【0013】
これにより、III族窒化物半導体結晶を成長をさせる空間は、原料側からの熱伝導をより受けにくくなる。このため、原料の温度をより高くすること、III族窒化物半導体結晶を成長させる空間の温度をより低くすること、および原料とIII族窒化物半導体結晶を成長させる空間との温度勾配をより大きくすることができるので、III族窒化物半導体結晶の成長速度をより向上できる。
【0014】
上記III族窒化物半導体結晶の成長方法において好ましくは、熱遮蔽部は、複数の板状部を含み、複数の板状部は、原料を配置するための第1の空間と、III族窒化物半導体結晶を成長させるための第2の空間との間に位置し、かつ第1および第2の空間の各々に対して仕切られた第3の空間を設けるよう配置され、原料ガスを通すための貫通孔を有している。
【0015】
これにより、III族窒化物半導体結晶を成長させる第2の空間において、第1の空間の原料から熱輻射を直接受ける領域を減少できる。このため、このため、原料の温度をより高くすること、III族窒化物半導体結晶を成長させる空間の温度をより低くすること、および原料とIII族窒化物半導体結晶を成長させる空間との温度勾配をより大きくすることができるので、III族窒化物半導体結晶の成長速度をより向上できる。
【0016】
上記III族窒化物半導体結晶の成長方法において好ましくは、第2の空間から第1の空間を見たときに、板状部の貫通孔がそれぞれ重ならないように板状部が配置されている。
【0017】
これにより、III族窒化物半導体結晶を成長させる空間において、原料から直接受ける熱輻射を遮断することができる。このため、原料の温度をより高くすること、III族窒化物半導体結晶を成長させる空間の温度をより低くすること、および原料とIII族窒化物半導体結晶を成長させる空間との温度勾配をより大きくすることができるので、III族窒化物半導体結晶の成長速度をより向上できる。
【0018】
上記III族窒化物半導体結晶の成長方法において好ましくは、III族窒化物半導体結晶を成長させる工程は、第3の空間に原料ガスを他のIII族窒化物半導体結晶として析出させる工程と、他のIII族窒化物半導体結晶を昇華することにより、第2の空間にIII族窒化物半導体結晶を成長させる工程とを含んでいる。
【0019】
第3の空間に析出させた他のIII族窒化物半導体結晶中の不純物量は、原料中の不純物量より少なくなる。さらに第2の空間で成長させたIII族窒化物半導体結晶は、他のIII族窒化物半導体結晶中の不純物量よりさらに少なくなるので、高純度のII族窒化物半導体結晶を成長させることができる。
【0020】
上記III族窒化物半導体結晶の成長方法において好ましくは、原料ガスの一部を放出する工程をさらに備えている。
【0021】
これにより、原料に含まれる不純物をより好ましく排出することができる。このため、高純度のIII族窒化物半導体結晶を成長できる。
【0022】
上記III族窒化物半導体結晶の成長方法において好ましくは、III族窒化物半導体結晶は、AlxGa(1-x)N結晶(0<x≦1)である。これにより、成長速度を向上して成長された有用なAlxGa(1-x)N結晶が得られる。
【0023】
本発明のIII族窒化物半導体結晶の成長装置は、チャンバーと加熱部とを備えている。チャンバーは、III族窒化物半導体を含む原料を配置するための第1の空間と、III族窒化物半導体結晶を成長させるための第2の空間と、第1の空間と第2の空間との間に配置され、原料からの熱輻射を遮るための熱遮蔽部とを含んでいる。加熱部は、第1の空間に配置された原料を昇華させるためのものである。
【0024】
本発明のIII族窒化物半導体結晶の成長装置によれば、原料を配置する第1の空間とIII族窒化物半導体結晶を成長させる第2の空間との間に熱遮蔽部が配置されているので、第1の空間と第2の空間との間の熱抵抗が高くなる。このため、加熱部により原料を昇華させるための熱が、第2の空間側に伝わることを妨げることができる。加熱部により原料の温度を高くできるので、原料の昇華を促進できる。また、第2の空間の温度を低くできるので、成長したIII族窒化物半導体結晶の昇華(劣化)を抑制でき、熱応力も低減できるので安定して高品質な結晶を得るのに効果的である。さらに、第1の空間の温度と第2の空間の温度との温度差を大きくできるので、第1の空間と第2の空間との温度勾配を大きくすることができるため、III族窒化物半導体結晶の成長を促進できる。したがって、原料を配置する第1の空間の温度を高くすること、III族窒化物半導体結晶を成長させる第2の空間の温度を低くすること、および第1の空間と第2の空間との温度勾配を大きくすることができるので、III族窒化物半導体結晶の成長速度を向上できる。
【0025】
上記III族窒化物半導体結晶の成長装置において好ましくは、熱遮蔽部は、III族窒化物半導体結晶の熱輻射率よりも低い熱輻射率を有している。
【0026】
これにより、第2の空間は、第1の空間からの熱伝導をより受けにくくなる。このため、原料の温度をより高くすること、第2の空間の温度をより低くすること、および第1の空間と第2の空間との温度勾配をより大きくすることができるので、III族窒化物半導体結晶の成長速度をより向上できる。
【0027】
上記III族窒化物半導体結晶の成長装置において好ましくは、熱遮蔽部は、複数の板状部を含み、複数の板状部は、第1の空間と第2の空間との間に位置し、かつ第1および第2の空間の各々に対して仕切られた第3の空間を設けるよう配置され、原料ガスを通すための貫通孔を有している。
【0028】
これにより、III族窒化物半導体結晶を成長させる第2の空間において、原料を配置した第1の空間から熱輻射を直接受ける領域を減少できる。このため、原料の温度をより高くすること、第2の空間の温度をより低くすること、および第1の空間と第2の空間との温度勾配をより大きくすることができるので、III族窒化物半導体結晶の成長速度をより向上できる。
【0029】
上記III族窒化物半導体結晶の成長方法において好ましくは、第2の空間から第1の空間を見たときに、板状部の貫通孔がそれぞれ重ならないように板状部が配置されている。
【0030】
これにより、第2の空間において原料からの直接受ける熱輻射を遮断することができる。このため、原料の温度をより高くすること、第2の空間の温度をより低くすること、および第1の空間と第2の空間との温度勾配をより大きくすることができるので、III族窒化物半導体結晶の成長速度をより向上できる。
【0031】
上記III族窒化物半導体結晶の成長装置において好ましくは、チャンバーは、原料を昇華させた原料ガスの一部を放出するための開口部をさらに有している。
【0032】
これにより、原料に含まれる不純物を排出することができる。このため、高純度のIII族窒化物半導体結晶を成長できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明のIII族窒化物半導体結晶の成長方法およびIII族窒化物半導体結晶の成長装置によれば、熱遮蔽部を含むチャンバー内でIII族窒化物半導体結晶を成長させるので、III族窒化物半導体結晶を成長させる成長速度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶の成長装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態4におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態5におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態6におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態7におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態8におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態9におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶の成長装置の構成を概略的に示す断面図である。図2は、本実施の形態におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。本実施の形態における成長装置100は、III族窒化物半導体を含む原料を昇華させ、昇華させた原料ガスを析出させることによりIII族窒化物半導体結晶を成長させるための装置である。
【0036】
図1および図2に示すように、本実施の形態における成長装置100は、熱遮蔽部110を含むチャンバー101と、加熱体121と、反応容器123と、加熱部125とを主に備えている。
【0037】
図2に示すように、チャンバー101は、熱遮蔽部110に対して一方側(図2において上側)に位置し、かつIII族窒化物半導体を含む原料13を配置するための第1の空間R1と、熱遮蔽部110に対して他方側(図2において下側)に位置し、かつIII族窒化物半導体結晶15を成長させるための第2の空間R2と、第1の空間R1と第2の空間R2との間に位置する第3の空間R3とを含んでいる。第2の空間R2には、下地基板11が配置されている。本実施の形態では、図1に示すように、チャンバー101は、下部で原料13を保持し、上部でIII族窒化物半導体結晶15を成長させる。
【0038】
熱遮蔽部110は、第1の空間R1と第2の空間R2との間に配置され、原料13からの熱輻射を遮っている。熱遮蔽部110は、原料13と直接接触していない。
【0039】
熱遮蔽部110は、III族窒化物半導体結晶15の熱輻射率よりも低い熱輻射率を有していることが好ましく、原料13からの熱輻射を効果的に遮るために、0.5%以下の熱輻射率を有していることがより好ましい。具体的には、熱遮蔽部110は、熱輻射率が低く、耐熱性が高く、かつ原料ガスとの反応性が低いため、タンタル(Ta)、タングステン(W)などの高融点金属、炭化物などよりなることが好ましく、表面は鏡面状であることが好ましい。
【0040】
なお、熱輻射率は、黒体(入射するあらゆる波長を吸収し、反射も透過もしない理想の物体)が放射する全放射エネルギーと、実際の物質が放射するエネルギーとの比として定義される。
【0041】
熱遮蔽部110は、複数の板状部111、113を含み、この複数の板状部111、113は、第1および第2の空間R1、R2の各々に対して仕切り、かつ第1および第2の空間R1、R2の各々に対して第3の空間R3を設けるように配置されている。複数の板状部111、113は、原料13と成長させるIII族窒化物半導体結晶15とを結ぶ最短の距離を原料ガスが流れる方向(図2における矢印Aの方向)と交差する方向に配置されており、本実施の形態では直交するように配置されている。
【0042】
板状部111、113は、原料13が昇華された原料ガスを通すための貫通孔111a、113aを有している。
【0043】
チャンバー101の周りには、チャンバー101の内部と外部との通気を確保するように加熱体121が設けられている。この加熱体121の周りには、反応容器123が設けられている。この反応容器123の外側中央部には、加熱体121を加熱するための高周波加熱コイルなどの加熱部125が設けられている。加熱部125は、第1の空間R1を加熱するための第1の加熱部と、第2の空間R2を加熱するための第2の加熱部とを含んでいることが好ましい。これにより、原料13が配置されている空間R1を高い温度に加熱し、III族窒化物半導体結晶15を低い温度に保持することができる。この場合、第1の加熱部と第2の加熱部の間に熱遮蔽部110が配置されている。
【0044】
加熱体121および反応容器123の一方端部には、反応容器123内に配置されたチャンバー101へたとえば窒素(N2)ガスなどのキャリアガスを流すための導入口121a、123aと、反応容器123の外部へキャリアガスを排出するための排出口121b、123bとを有している。
【0045】
反応容器123の上端面および下端面には、チャンバー101の上方および下方の温度を測定するための放射温度計127がそれぞれ設けられている。
【0046】
なお、本実施の形態の成長装置100においては、原料13が配置される第1の空間R1が下方に位置するように、かつIII族窒化物半導体結晶15を成長させる第2の空間R2が上方に位置するようにチャンバー101が配置されているが、チャンバー101の配置は特にこれに限定されない。たとえば、成長装置100において、第1の空間R1が上方に位置するように、かつ第2の空間R2が下方に位置するように、チャンバー101が配置されていてもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、チャンバー101は、第1、第2および第3の空間R1、R2、R3を設けるために複数の板状部を有する熱遮蔽部110を含んでいるが、第3の空間R3をさらに複数の空間に仕切るための別の板状部を熱遮蔽部110はさらに有していてもよい。
【0048】
続いて、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法について説明する。本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶は、図1および図2に示す成長装置100を用いて昇華法により成長される。
【0049】
まず、図1および図2に示すように、原料13からの熱輻射を遮るための熱遮蔽部110を内部に含むチャンバー101を準備する。原料13は、成長させるIII族窒化物半導体を含んでおり、AlxGa(1-x)N(0<x≦1)を含んでいることが好ましい。
【0050】
次に、チャンバー101内において、熱遮蔽部110に対して一方側に原料13を配置する。本実施の形態では、板状部111により仕切られた第1の空間R1に原料を配置する。
【0051】
次に、チャンバー101内の熱遮蔽部110に対して他方側に下地基板11を配置する。本実施の形態では、板状部113により仕切られた第2の空間R2に下地基板11を配置する。下地基板11の材料は、成長させるIII族窒化物半導体結晶15と同じであっても、異なっていてもよく、たとえば、窒化アルミニウム、炭化珪素、サファイヤなどを用いることができる。なお、下地基板11として異種基板を用いる場合には、異種基板はAlGaNの成長環境において劣化しやすいが、本実施の形態では下地基板11の温度を低く設定することができるので、適用可能である。特に、大口径な結晶が入手しやすいという点では、炭化ケイ素あるいはサファイアを下地基板に用いることが好ましい。下地基板11を配置すると、大口径のIII族窒化物半導体結晶15を成長させることができる。
【0052】
なお、この下地基板11を配置する工程は省略されてもよい。この場合は、自発核生成により、後述するIII族窒化物半導体結晶15を成長させる。
【0053】
次に、原料13を加熱することにより昇華させて、チャンバー101内の熱遮蔽部110に対して他方側に、原料ガスを析出させることにより、III族窒化物半導体結晶15を成長させる。本実施の形態では、昇華した原料ガスを下地基板11上に析出させている。
【0054】
以上の工程により、III族窒化物半導体結晶15を成長することができる。成長させるIII族窒化物半導体結晶15は、AlxGa(1-x)N結晶(0<x≦1)であることが好ましい。
【0055】
続いて、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置100の効果について説明する。
【0056】
成長装置100は、原料13を配置する第1の空間R1とIII族窒化物半導体結晶15を成長させる第2の空間R2との間に熱遮蔽部110が配置されているので、原料13とIII族窒化物半導体結晶15との間の熱抵抗が高くなる。このため、原料13を昇華させるための熱が、成長させるIII族窒化物半導体結晶15に伝わることを妨げることができる。したがって、原料13の温度が高くなるように、加熱部125により加熱した場合であっても、III族窒化物半導体結晶15の温度が高くなることを抑制できるので、III族窒化物半導体結晶15を成長させる雰囲気に配置された下地基板11が劣化することを防止できる。言い換えると、下地基板11が劣化する温度よりも低い温度になるように設定しても、熱遮蔽部110により原料13の温度を高温に設定できる。このため、成長時の条件変動を抑制でき、再現性を向上して高品質のIII族窒化物半導体結晶15を成長できる。
【0057】
また、原料13の温度を高くできるので、原料13の昇華を促進できる。また、III族窒化物半導体結晶15を成長させる第2の空間R2の温度を低くできるので、原料ガスが析出する速度が析出したIII族窒化物半導体結晶が再び昇華する速度よりも十分に大きくなるため、成長したIII族窒化物半導体結晶15の昇華を抑制できる。さらに、原料13を配置する第1の空間R1の温度とIII族窒化物半導体結晶15を成長させる第2の空間R2の温度との温度差を大きくできるので、この温度差を原料13とIII族窒化物半導体結晶15との距離で割った温度勾配を大きくすることができるため、III族窒化物半導体結晶15の成長を促進できる。したがって、原料13の温度を高くすること、III族窒化物半導体結晶15の温度を低くすること、および原料13とIII族窒化物半導体結晶15との温度勾配を大きくすることができるので、III族窒化物半導体結晶15の成長速度を向上できる。その結果、III族窒化物半導体結晶15を成長させるために要するコストを低減できる。
【0058】
さらに、原料13に含まれているドロップレット、固形物などの不純物が熱遮蔽部110により、第2の空間R2に到達することを抑制できる。これにより、不純物がIII族窒化物半導体結晶15の成長中に取り込まれることを抑制できるので、多結晶の核が生成されることを抑制でき、良好な成長の阻害を抑制できるため、成長させるIII族窒化物半導体結晶15の純度を向上できる。
【0059】
さらには、本実施の形態では、原料13を昇華させた昇華ガスが第2の空間R2に配置された下地基板11に均一に供給されやすい。このため、成長させるIII族窒化物半導体結晶15の形状が凸状になるので、欠陥または転位が中央に集中することを防止できる。このため、III族窒化物半導体結晶15の結晶性を向上できる。
【0060】
したがって、成長速度を向上して成長され、結晶性が良好であるIII族窒化物半導体結晶15は、たとえば発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光素子、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT(High Electron Mobility Transistor;高電子移動度トランジスタ)などの電子素子、温度センサ、圧力センサ、放射線
センサ、可視−紫外光検出器などの半導体センサ、SAWデバイス(Surface Acoustic Wave Device;表面弾性波素子)、振動子、共振子、発振器、MEMS(Micro Electro Mechanical System)部品、圧電アクチュエータ等のデバイス用の基板などに好適に用いる
ことができる。
【0061】
(実施の形態2)
図3は、本実施の形態におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。図3に示すように、本実施の形態における成長装置は、基本的には図2に示すチャンバーと同様の構成を備えているが、熱遮蔽部110を構成する板状部111、113の貫通孔111a、113aの位置が異なる。
【0062】
具体的には、原料13と成長させるIII族窒化物半導体結晶15とを結ぶ最短の距離を原料ガスが流れる方向(図2における矢印Aの方向)と反対の方向に向けて、第2の空間R2から第1の空間R1を見たときに、板状部111、113の貫通孔111a、113aがそれぞれ重ならないように板状部111、113が配置されている。言い換えると、矢印Aと反対の方向に向けて第2の空間R2から第1の空間R1を見たときに、板状部111、113が見え、第1の空間R1が直接見えないように、板状部111、113が配置されている。
【0063】
本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法は、基本的には、実施の形態1と同様の構成を備えているが、チャンバー101を準備する工程において、上記のチャンバー101を備えた成長装置を用いている点において異なる。
【0064】
なお、本実施の形態では第2の空間R2から第1の空間R1を見て、板状部111、113の貫通孔111a、113aがそれぞれ重なっていない場合を例に挙げて説明したが、本発明は実施の形態1における図2に示すように、貫通孔111a、113aが重なっていてもよい。この場合には、矢印Aに向けて第2の空間R2から第1の空間R1を見たときに、熱遮蔽部110により覆われている合計の面積が70%以上であることが好ましい。70%以上の場合、原料13から第2の空間R2が直接受ける熱輻射を低減できる。
【0065】
本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置によれば、III族窒化物半導体結晶15を成長させる第2の空間R2において、原料13から直接受ける熱輻射を板状部111、113で遮ることができる。このため、第1の空間R1の温度をより高く、すなわち原料13の温度をより高くすること、第2の空間R2の温度をより低く、すなわちIII族窒化物半導体結晶15の温度をより低くすること、および原料13とIII族窒化物半導体結晶15との温度勾配をより大きくすることができる。したがって、III族窒化物半導体結晶15の成長速度をより向上できる。
【0066】
(実施の形態3)
図4は、本実施の形態におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。図4に示すように、本実施の形態における成長装置は、基本的には図2に示すチャンバーと同様の構成を備えているが、原料13を昇華させた原料ガスの一部を放出するための開口部101aをさらに有している。本実施の形態では、チャンバー101において第3の空間R3を構成する部分に開口部101aが設けられている。
【0067】
本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法は、基本的には、実施の形態1と同様の構成を備えているが、原料ガスの一部を放出する工程をさらに備えている。具体的には、原料13を加熱して、昇華させた原料ガスの一部を第2の空間R2に到達させずに開口部101aから排出させ、昇華させた原料ガスの残部を第2の空間R2に到達させて、III族窒化物半導体結晶15を成長させる。
【0068】
なお、本実施の形態のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は実施の形態1だけでなく実施の形態2にも適用することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置によれば、原料13に含まれる不純物を原料ガスの一部に含めて、開口部101aから排出することができる。このため、第2の空間R2に到達する原料ガスの純度を高めることができるので、高純度のIII族窒化物半導体結晶を成長できる。したがって、光学特性を向上できるIII族窒化物半導体結晶を成長できる。
【0070】
(実施の形態4)
図5は、本実施の形態におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。図5に示すように、本実施の形態における成長装置は、基本的には実施の形態3における図4に示すチャンバーを備えた成長装置と同様の構成を備えているが、板状部111、113の配置が異なっている。
【0071】
詳細には、原料13から第3の空間R3までの原料ガス輸送速度を、第3の空間R3から第2の空間R2におけるIII族窒化物半導体結晶15までの原料ガス輸送速度よりも大きくなるように、板状部111、113が配置されている。
【0072】
このような輸送速度を実現するために、たとえば、第1の空間R1と第3の空間R3とを仕切る板状部111の貫通孔111aの面積を、第3の空間R3と第2の空間R2とを仕切る板状部113の貫通孔113aの面積よりも大きくしている。
【0073】
本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法は、基本的には実施の形態4のIII族窒化物半導体結晶の成長方法と同様の構成を備えているが、III族窒化物半導体結晶15を成長させる工程において異なる。
【0074】
具体的には、第3の空間R3に原料ガスを他のIII族窒化物半導体結晶17として析出させる。そして、この他のIII族窒化物半導体結晶17を昇華することにより、第2の空間R2にIII族窒化物半導体結晶15を成長させる。
【0075】
このような工程を実施するために、たとえば、上述した図5に示すチャンバー101内でIII族窒化物半導体結晶15を成長させる。
【0076】
なお、図5に示すチャンバー101を用いずに、図2に示すチャンバーなどによっても、第3の空間R3に他のIII族窒化物半導体結晶17を成長させることができる。具体的には、原料13から第3の空間R3までの温度勾配を、第3の空間R3から第2の空間R2におけるIII族窒化物半導体結晶15までの温度勾配よりも大きくなるように温度を設定して成長する。
【0077】
ここで、「原料13から第3の空間R3までの温度勾配」とは、(原料13の温度と、第3の空間R3と第2の空間R2とを仕切るための板状部113の温度との温度差)/(原料13と、第3の空間R3と第2の空間R2とを仕切るための板状部113との最短の距離T1)を意味する。また、「第3の空間R3から第2の空間R2におけるIII族窒化物半導体結晶15までの温度勾配」とは、(第3の空間R3と第2の空間R2とを仕切るための板状部113の温度と、III族窒化物半導体結晶15の温度との温度差)/(第3の空間R3と第2の空間R2とを仕切るための板状部113と、III族窒化物半導体結晶15の温度との最短の距離T2)を意味する。
【0078】
あるいは、たとえば初期段階では、加熱部125により第3の空間R3と第2の空間R2とを同じ温度にして、昇華した原料ガスが第3の空間R3に析出させる。後期段階では、第3の空間R3の温度よりも第2の空間R2の温度を低くして、第2の空間R2に昇華した原料ガスおよび他のIII族窒化物半導体結晶17を昇華させた原料ガスとを輸送する。
【0079】
また、本実施の形態のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は実施の形態1だけでなく実施の形態2、3にも適用することができる。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置によれば、第3の空間R3に析出させた他のIII族窒化物半導体結晶17中の不純物量は、原料13中の不純物量より少なくなる。さらに第2の空間R2で成長させたIII族窒化物半導体結晶15は、他のIII族窒化物半導体結晶17中の不純物量よりさらに少なくなるので、第2の空間R2で高純度のIII族窒化物半導体結晶15を成長させることができる。
【0081】
特に、第3の空間R3で他のIII族窒化物半導体結晶17を析出させる場合には、チャンバー101にいおいて第3の空間を構成する部分に開口部101aが設けられていることが好ましい。この場合、第3の空間R3から原料ガスおよび他のIII族窒化物半導体結晶17の一部を排出することができる。このため、原料ガスに含まれる不純物を排出できるとともに、第3の空間で析出させた他のIII族窒化物半導体結晶に含まれる不純物を排出できる。したがって、非常に高純度のIII族窒化物半導体結晶15を成長できる。
【0082】
(実施の形態5)
図6は、本実施の形態におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。図6に示すように、本実施の形態における成長装置は、基本的には実施の形態3における図4に示すチャンバーを備えた成長装置と同様の構成を備えているが、原料13と成長させるIII族窒化物半導体結晶15とを結ぶ最短の距離を原料ガスが流れる方向と垂直な方向に対して、板状部111、113が同じ方向に傾斜して配置されている点においてのみ異なっている。
【0083】
なお、これ以外のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は、実施の形態3におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0084】
また、本実施の形態のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は実施の形態1だけでなく実施の形態2〜4にも適用することができる。
【0085】
(実施の形態6)
図7は、本実施の形態におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。図7に示すように、本実施の形態における成長装置は、基本的には実施の形態3における図4に示すチャンバーを備えた成長装置と同様の構成を備えているが、原料13と成長させるIII族窒化物半導体結晶15とを結ぶ最短の距離を原料ガスが流れる方向と垂直な方向に対して、板状部111、113がそれぞれ異なる方向に傾斜して配置されている点においてのみ異なっている。
【0086】
なお、これ以外のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は、実施の形態3におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0087】
また、本実施の形態のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は実施の形態1だけでなく実施の形態2〜4にも適用することができる。
【0088】
(実施の形態7)
図8は、本実施の形態におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。図8に示すように、本実施の形態における成長装置は、基本的には実施の形態1の成長装置と同様の構成を備えているが、熱遮蔽部が1枚の板状部111のみからなる点において異なる。
【0089】
なお、これ以外のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は、実施の形態1におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0090】
また、本実施の形態のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は実施の形態1だけでなく実施の形態3、5、6にも適用することができる。
【0091】
(実施の形態8)
図9は、本実施の形態におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。図9に示すように、本実施の形態における成長装置は、基本的には実施の形態8の成長装置と同様の構成を備えているが、熱遮蔽部を構成する1枚の板状部111が原料13と成長させるIII族窒化物半導体結晶15とを結ぶ最短の距離を原料ガスが流れる方向と略同じ方向に配置されている点においてのみ異なる。
【0092】
なお、これ以外のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は、実施の形態8におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0093】
また、本実施の形態のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は実施の形態1だけでなく実施の形態3、5、6にも適用することができる。
【0094】
(実施の形態9)
図10は、本実施の形態におけるチャンバーの構成を概略的に示す断面図である。図10に示すように、本実施の形態における成長装置は、基本的には実施の形態8と同様の構成を備えているが、熱遮蔽部110が板状部でなく固形の部材である点においてのみ異なる。
【0095】
本実施の形態においても、熱遮蔽部110に対して一方側に原料13を配置するための第1の空間R1と、熱遮蔽部110に対して他方側にIII族窒化物半導体結晶15を成長させるための第2の空間R2とは、熱遮蔽部110を介して対向している。
【0096】
なお、熱遮蔽部110は、固形状の部材と、板状の部材との両方を有していてもよく、さらに他の形状の部材を有していてもよい。
【0097】
また、これ以外のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は、実施の形態8におけるIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置の構成と同様であるので、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0098】
また、本実施の形態のIII族窒化物半導体結晶の成長方法および成長装置は実施の形態1だけでなく実施の形態2〜8にも適用することができる。
【0099】
[実施例]
本実施例では、熱遮蔽部を内部に含むチャンバーでIII族窒化物半導体結晶を成長させることの効果について調べた。
【0100】
具体的には、図5に示す実施の形態4における成長装置を用い、第1の空間R1にAlNを含む原料を配置し、第2の空間R2に下地基板としてSiC基板を配置した。
【0101】
次に、チャンバー101内をN2雰囲気に置換し、第1の空間R1を2200℃、第3の空間R3を2000℃、第2の空間R2を1900℃になるように、加熱部125により加熱した。10時間の成長時間により、第1の空間R1の原料13を昇華して、第3の空間R3に他のIII族窒化物半導体結晶17としてのAlN結晶を成長させ、さらに第2の空間R2にIII族窒化物半導体結晶15としてAlN結晶を成長させた。
【0102】
次に、AlN結晶を冷却した後、SiC基板上に成長させたAlN結晶を成長装置から取り出した。AlN結晶の厚みは2mmであった。
【0103】
このAlN結晶をXRDによるX線ロッキングカーブを用いて測定した結果、半値幅が45arcsecであった。また、このAlN結晶のEPD(エッチピット密度)測定をした結果、転位密度が8×105/cm2と良好な結晶品質を有していた。また、AlN結晶の不純物濃度としての酸素濃度をSIMS(二次イオン質量分析器)を用いて測定した結果、3×1016atm/cc未満と高純度であった。
【0104】
以上より、本実施例によれば、原料の温度を高くすること、III族窒化物半導体結晶を成長させる空間の温度を低くすること、および原料とIII族窒化物半導体結晶を成長させる空間との温度勾配を大きくすることができることが確認できた。このことから、III族窒化物半導体結晶を成長させる速度を向上できた。
【0105】
また、III族窒化物半導体結晶の成長速度を向上した場合であっても、成長させたIII族窒化物半導体結晶は良好な結晶性を有していることが確認できた。
【0106】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
11 下地基板、13 原料、15 III族窒化物半導体結晶、17 他のIII族窒化物半導体結晶、100 成長装置、101 チャンバー、101a 開口部、110 熱遮蔽部、111,113 板状部、111a,113a 貫通孔、121 加熱体、121a,123a 導入口、121b,121b 排出口、123 反応容器、125 加熱部、127 放射温度計、R1 第1の空間、R2 第2の空間、R3 第3の空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物半導体を含む原料を昇華させ、昇華させた原料ガスを析出させることによりIII族窒化物半導体結晶を成長させる方法であって、
前記原料からの熱輻射を遮るための熱遮蔽部を内部に含むチャンバーを準備する工程と、
前記チャンバー内において、前記熱遮蔽部に対して一方側に前記原料を配置する工程と、
前記原料を加熱することにより昇華させて、前記チャンバー内の前記熱遮蔽部に対して他方側に、前記原料ガスを析出させることにより前記III族窒化物半導体結晶を成長させる工程とを備えた、III族窒化物半導体結晶の成長方法。
【請求項2】
前記熱遮蔽部は、前記III族窒化物半導体結晶の熱輻射率よりも低い熱輻射率を有する、請求項1に記載のIII族窒化物半導体結晶の成長方法。
【請求項3】
前記熱遮蔽部は、複数の板状部を含み、
前記複数の板状部は、前記原料を配置するための第1の空間と、前記III族窒化物半導体結晶を成長させるための第2の空間との間に位置し、かつ前記第1および第2の空間の各々に対して仕切られた第3の空間を設けるよう配置され、前記原料ガスを通すための貫通孔を有している、請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体結晶の成長方法。
【請求項4】
前記第2の空間から前記第1の空間を見たときに、前記板状部の前記貫通孔がそれぞれ重ならないように前記板状部が配置されている、請求項3に記載のIII族窒化物半導体結晶の成長方法。
【請求項5】
前記III族窒化物半導体結晶を成長させる工程は、
前記第3の空間に前記原料ガスを他のIII族窒化物半導体結晶として析出させる工程と、
前記他のIII族窒化物半導体結晶を昇華することにより、前記第2の空間に前記III族窒化物半導体結晶を成長させる工程とを含む、請求項3または4に記載のIII族窒化物半導体結晶の成長方法。
【請求項6】
前記原料ガスの一部を放出する工程をさらに備えた、請求項1〜5のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶の成長方法。
【請求項7】
前記III族窒化物半導体結晶は、AlxGa(1-x)N結晶(0<x≦1)である、請求項1〜6のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶の成長方法。
【請求項8】
III族窒化物半導体を含む原料を配置するための第1の空間と、前記III族窒化物半導体結晶を成長させるための第2の空間と、前記第1の空間と前記第2の空間との間に配置され、前記原料からの熱輻射を遮るための熱遮蔽部とを含むチャンバーと、
前記第1の空間に配置された前記原料を昇華させるための加熱部とを備えた、III族窒化物半導体結晶の成長装置。
【請求項9】
前記熱遮蔽部は、前記III族窒化物半導体結晶の熱輻射率よりも低い熱輻射率を有する、請求項8に記載のIII族窒化物半導体結晶の成長装置。
【請求項10】
前記熱遮蔽部は、複数の板状部を含み、
前記複数の板状部は、前記第1の空間と前記第2の空間との間に位置し、かつ前記第1および第2の空間の各々に対して仕切られた第3の空間を設けるよう配置され、前記原料ガスを通すための貫通孔を有している、請求項8または9に記載のIII族窒化物半導体結晶の成長装置。
【請求項11】
前記第2の空間から前記第1の空間を見たときに、前記板状部の前記貫通孔がそれぞれ重ならないように前記板状部が配置されている、請求項10に記載のIII族窒化物半導体結晶の成長装置。
【請求項12】
前記チャンバーは、前記原料を昇華させた原料ガスの一部を放出するための開口部をさらに有する、請求項8〜11のいずれかに記載のIII族窒化物半導体結晶の成長装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−140325(P2012−140325A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−63654(P2012−63654)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【分割の表示】特願2007−332141(P2007−332141)の分割
【原出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ナノエレクトロニクス半導体新材料・新構造技術開発―窒化物系化合物半導体基板・エピタキシャル成長技術の開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】