IMPDH含有組成物及びIMPDHの安定化方法
【課題】様々な条件下において、イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)を安定化する方法及び安定化されたIMPDHを含有する組成物を提供すること。
【解決手段】IMPDHと、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)とを含有する、IMPDH含有組成物を提供する。リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するイノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)をさらに含有する、IMPDH含有組成物も提供する。
【解決手段】IMPDHと、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)とを含有する、IMPDH含有組成物を提供する。リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するイノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)をさらに含有する、IMPDH含有組成物も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDHと略す場合がある)を安定して含む、IMPDH含有組成物に関する。また、本発明は、IMPDHを安定化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IMPDHは、生体内に存在し、グアニンヌクレオチドの新規合成に関与する酵素である。IMPDHは、典型的には、イノシン5’一リン酸(IMPと略す場合がある)を酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADと略す場合がある)の存在下、キサントシン5’一リン酸(XMPと略す場合がある)と酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADHと略す場合がある)に変換する反応に作用する(非特許文献1)。増殖の早いヒト白血球細胞系や、その他の腫瘍細胞系において、IMPDHの活性上昇が観察されており、これは、IMPDHが免疫抑制療法や抗癌療法のための標的となり得ることを示唆する。また、ウィルスに感染した細胞系におけるウィルスの複製において、IMPDHが関与することも知られている。これらのことから、IMPDHは、種々の医薬品の開発において着目されており、例えば、IMPDH阻害剤は、免疫抑制剤、抗癌剤、抗血管過増殖剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗乾癬、及び抗ウィルス剤となり得ると考えられる。
【0003】
しかしながら、IMPDHは安定性が低いという問題を有する。例えば、水溶液中における哺乳類由来のIMPDHは不安定であり、特に水溶液の塩濃度が低いときには凝集しやすいということが知られている。IMPDHの安定性について非特許文献2には、IMPDHを濃縮するか又は牛アルブミンと共存させると、室温でも安定となること、及びジチオトレイトール(DTTと略す場合がある)の添加はIMPDHの安定性を向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】酵素ハンドブック、朝倉書店、1987年第5刷、78頁
【非特許文献2】Hager P. W.、Collart F. R.、Huberman E.、Mitchell B. S.、 Recombinant human inosine monophosphate dehydrogenase type I and type II proteins、 Biochem. Pharmacol.、49巻、1323−1329頁、1995年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、IMPDHは、医薬品の開発や、試薬の開発の分野で重要視されている酵素であり、様々な条件下において、IMPDHを安定化する方法及び安定化されたIMPDHを含有する組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、IMPDHの安定化方法を種々検討する中で、IMPDHの安定化効果を有するとして非特許文献2に報告されているDTTが、非特許文献2に記載されるような条件下では確かにIMPDHの安定化効果を示すが、異なる条件下、例えばATPとマグネシウムイオンの存在下においては、DTTがIMPDHを不安定化するという想像もしなかった効果を示すことを発見した。一方、本発明者らは、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NACと略す場合がある)がIMPDHの安定化効果を有することを発見し、さらにこれらの化合物は、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても顕著なIMPDHの安定化効果を示すことを発見して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の態様では、以下のものが提供される。
[1]
イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)と、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)とを含有する、IMPDH含有組成物。
[1−2]
リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はNACをさらに含有する、IMPDH含有組成物。
[1−3]
リン酸供与体及び金属イオンが混在するIMPDH含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はNACをさらに含有する、IMPDH含有組成物。
[1−4]
前記リン酸供与体がATPである、[1−2]又は[1−3]に記載のIMPDH含有組成物。
[1−5]
前記金属イオンがマグネシウムイオンである、[1−2]〜[1−4]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−6]
水溶液の形態である、[1]〜[1−5]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−7]
IMPDHの含有量が、0.01U/mL以上1000U/mL以下である、[1]〜[1−6]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−7−1]
IMPDHの含有量が、0.1U/mL以上200U/mL以下である、[1]〜[1−6]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−7−2]
IMPDHの含有量が、0.1U/mL以上50U/mL以下である、[1]〜[1−6]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−8]
チオグリセロール又はNACの含有量が、0.1mM以上100mM以下である、[1]〜[1−7−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−8−1]
チオグリセロール又はNACの含有量が、1mM以上50mM以下である、[1]〜[1−7−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−8−2]
チオグリセロール又はNACの含有量が、1mM以上20mM以下である、[1]〜[1−7−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−9]
IMPDH 1U当たり、チオグリセロール及び/又はNACを0.02μmol以上200μmol以下含有する、[1]〜[1−8−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−9−1]
IMPDH 1U当たり、チオグリセロール及び/又はNACを1μmol以上200μmol以下含有する、[1]〜[1−8−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−9−2]
IMPDH 1U当たり、チオグリセロール及び/又はNACを1μmol以上125μmol以下含有する、[1]〜[1−8−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−10]
IMPDHの酵素反応を利用するための組成物である、[1]〜[1−9−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−11]
IMPDHの酵素反応を利用して、IMPDHの阻害剤、IMPDHの基質若しくはIMPDHの補酵素又はこれらの前駆体のいずれかを測定するための試薬である、[1]〜[1−10]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−12]
IMPDHの酵素反応を利用して、ミゾリビン及び/又はリバビリンを測定するための試薬である、[1]〜[1−11]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−13]
ジチオトレイトール(DTT)を実質的に含まない、[1]〜[1−12]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−14]
乾燥状態である、[1]〜[1−5]及び[1−9]〜[1−13]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−15]
凍結乾燥状態である、[1]〜[1−5]及び[1−9]〜[1−13]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−16]
前記IMPDHが、Bacillus属由来である、[1]〜[1−15]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−17]
前記IMPDHが、Bacillus subtilis由来である、[1]〜[1−16]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−18]
前記IMPDHが、Bacillus subtilis ATCC23857株由来である、[1]〜[1−17]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−19]
IMPDHの酵素反応を利用して、IMP、キサントシン5’一リン酸(XMP)、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(酸化型NAD(P)類)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(還元型NAD(P)類)、ミゾリビン5’一リン酸、リバビリン5’一リン酸、ミコフェノール酸及びこれらの前駆体のいずれかを測定するための試薬である、[1]〜[1−18]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−20]
酸化型NAD(P)類を含有する[1]から[1−19]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−21]
還元型NAD(P)類を含有する[1]から[1−20]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−22]
IMPを含有する[1]から[1−21]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−23]
XMPを含有する[1]から[1−22]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−24]
塩化カリウムを含有する[1]から[1−23]のいずれかに記載の組成物。
[1−25]
[1]〜[1−24]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物を試薬として含む、IMPDHの酵素反応を利用して試料を測定するためのキット。
【0008】
また、本発明の第2の態様では、以下のものが提供される。
[2]
リン酸供与体及び/又は金属イオンと、イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)とを含有するIMPDH含有組成物のための安定化剤であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を有効成分とする安定化剤。
[2−2]
前記IMPDH含有組成物が[1−4]〜[1−7−2]及び[1−10]〜[1−24]のいずれかに記載の特徴を有する[2]に記載の安定化剤。
[2−3]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの量が0.02μmol以上200μmol以下である、[2]又は[2−2]に記載の安定化剤。
[2−3−1]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの量が1μmol以上200μmol以下である、[2]又は[2−2]に記載の安定化剤。
[2−3−2]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの量が1μmol以上125μmol以下である、[2]又は[2−2]に記載の安定化剤。
【0009】
また、本発明の第3の態様では、以下のものが提供される。
[3]
イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物の安定化方法であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を前記組成物に添加する工程を含む安定化方法。
[3−2]
前記IMPDH含有組成物が[1−6]〜[1−7−2]及び[1−10]〜[1−24]のいずれかに記載の特徴を有する[3]に記載の安定化方法。
[3−3]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が0.02μmol以上200μmol以下である、[3]又は[3−2]に記載の安定化方法。
[3−3−1]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上200μmol以下である、[3]又は[3−2]に記載の安定化方法。
[3−3−2]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上125μmol以下である、[3]又は[3−2]に記載の安定化方法。
[3−4]
リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物の安定化方法であって、チオグリセロール及び/又はNACを前記組成物に添加する工程を含む安定化方法。
[3−5]
前記IMPDH含有組成物が[1−4]〜[1−7−2]及び[1−10]〜[1−24]のいずれかに記載の特徴を有する[3−4]に記載の安定化方法。
[3−6]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が0.02μmol以上200μmol以下である、[3−4]又は[3−5]に記載の安定化方法。
[3−6−1]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上200μmol以下である、[3−4]又は[3−5]に記載の安定化方法。
[3−6−2]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上125μmol以下である、[3−4]又は[3−5]に記載の安定化方法。
【0010】
また、本発明の第4の態様では、以下のものが提供される。
[4]
リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するイノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物の保存方法であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を前記組成物に添加する工程、及び、前記IMPDH含有組成物を25℃以下で保存する工程、を含む保存方法。
[4−2]
前記IMPDH含有組成物が[1−4]〜[1−7−2]及び[1−10]〜[1−24]のいずれかに記載の特徴を有する[4]に記載の保存方法。
[4−3]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が0.02μmol以上200μmol以下である、[4]又は[4−2]に記載の保存方法。
[4−3−1]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上200μmol以下である、[4]又は[4−2]に記載の保存方法。
[4−3−2]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上125μmol以下である、[4]又は[4−2]に記載の保存方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、様々な条件下、例えば、リン酸供与体及び/又は金属イオンの存在下であっても、IMPDHを安定化する方法を提供することができる。また、IMPDHが安定化された、IMPDH含有組成物を提供することができる。これらの方法及び組成物は、例えば、医薬品の開発や、試薬の開発の分野で非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例2において、IMPDH、ATP及びマグネシウムイオンを主に含有する組成物7を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図2】実施例2において、組成物7に1mM DTTを添加した組成物7−1を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図3】実施例2において、組成物7に1mM チオグリセロールを添加した組成物7−2を、10℃にて種々の期間保存後、この保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図4】実施例2において、組成物7に1mM NACを添加した組成物7−3を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図5】実施例3において、IMPDH、ATP及びマグネシウムイオンを主に含有する組成物9を4℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図6】実施例3において、組成物9に5mM DTTを添加した組成物9−1を4℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図7】実施例3において、組成物9に5mM チオグリセロールを添加した組成物9−2を4℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図8】実施例3において、組成物9に5mM NACを添加した組成物9−3を4℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図9】実施例4において、5mM チオグリセロールを添加したIMPDH、ATP及びマグネシウムイオンを主に含有する組成物10を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図10】実施例4において、組成物10に0.07%マンニトールを添加した組成物10−1を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図11】実施例4において、組成物10に0.14%マンニトールを添加した組成物10−2を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図12】実施例4において、組成物10に0.75%(40mM)マンニトールを添加した組成物10−3を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図13】実施例4において、組成物10に0.14%トレハロースを添加した組成物10−4を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本実施の形態は、イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)と、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)とを含有する、IMPDH含有組成物に関する。
【0015】
本実施の形態におけるチオグリセロール(α−チオグリセロール、α−Thioglycerolともいう)は、公知の化合物であり、CAS番号96−27−5と分類される場合もあり、チオール基を有する。なお、本実施の形態における「チオグリセロール」とは、所望のIMPDH安定化活性を有する限り、その塩、誘導体等であってもよい。
【0016】
本実施の形態におけるNAC(N−アセチルシステイン、N−Acetyl cysteine、(2R)−acetamido−3−sulfanylpropanoic acidともいう)は、公知の化合物であり、CAS番号616−91−1と分類される場合もあり、チオール基を有する。なお、本実施の形態における「NAC」とは、所望のIMPDH安定化活性を有する限り、その塩、誘導体等であってもよい。
【0017】
本実施の形態におけるDTT(ジチオトレイトール、dithiothreitolともいう)は、公知の化合物であり、CAS番号3483−12−3と分類される場合もあり、チオール基を2つ有する。
【0018】
本実施の形態におけるIMPDHは、正反応として、NAD(P)類とIMPからNAD(P)H類とXMPを生ずる反応A、又はこの逆反応に対する触媒作用を主な作用とする酵素である。正反応の場合、IMPに加えて、アデノシン5’一リン酸、5−メチルウリジン5’一リン酸、グアノシン5’一リン酸、シチジン5’一リン酸、ウリジン5’一リン酸等から選択されるいずれか一つ以上のヌクレオチドや、デオキシアデノシン5’一リン酸、デオキシチミジン5’一リン酸、デオキシグアノシン5’一リン酸、デオキシシチジン、デオキシウリジン5’一リン酸等から選択されるいずれか一つ以上のデオキシヌクレオチドに作用してもよい。一態様において、本実施の形態のIMPDH含有組成物を、後述のミゾリビン又はリバビリンの測定に用いるという観点からは、IMPDHは、ミゾリビンで阻害されず、リン酸化ミゾリビンで阻害される反応を触媒し得る理化学的性質や、リバビリンで阻害されず、リン酸化リバビリンで阻害される反応を触媒し得る理化学的性質を有することが好ましい。本実施の形態におけるIMPDHは、上記の反応A又はその逆反応に対する触媒作用を有する限り特に限定されず、また、I型、II型のいずれのアイソザイムであってもよいが、例えば、EC 1.1.1.205と分類される酵素を用いることができる。
【0019】
本実施の形態におけるIMPDHの由来は特に限定されず、天然の生物由来であってもよい。例えば、ヒト、大腸菌、Candida albicans、Tritrichomonas foetus、Brrelia burgdorferi、ラット、ウサギ、Bacillus sereus由来等公知のIMPDHであってもよいし、それらのアイソザイムであってもよく(S.F.Carrら、J.Biol.Chem.、268巻、27286頁、1993年、H.J.Gilbertら、Biochem.J.、183巻、481頁、1979年、G.A.Koehlerら、J.Bacteriol.、179巻、2331頁、1997年、F.G.Whitbyら、36巻、10666頁、1997年、X.Zhouら、J.Biol.Chem.、272巻、21977頁、1997年等)、典型的な例としては、Bacillus属やOceanobacillus属に属する微生物、好ましくは、Bacillus subtilis又はOceanobacillus iheyensis、更に好ましくは、Bacillus subtilis ATCC23857株又はOceanobacillus iheyensis DSM14731株、最も好ましくはBacillus subtilis ATCC23857株由来である。他の菌株バンクで購入できる上記の株との同等株や自然界から分離した同等株由来であってもよい。
【0020】
本実施の形態におけるIMPDHのアミノ酸配列は、上記の所望の活性を有する限り特に限定されない。例えば配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列あるいはこれらの配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列であってもよい。該アミノ酸配列は、IMPDHオーソログで高く保存されている配列である配列番号3のアミノ酸配列及び配列番号4のアミノ酸配列を含む配列が好ましく、更に、同様に高く保存されている配列でIMP結合に関連するとされている(J. Biol. Chem., 2004年、 279巻、 40320-40327頁)配列番号5を含む配列がより好ましく、更に、同様に高く保存されている配列で活性中心のループ配列であるとされている(J. Biol. Chem., 2004年、 279巻、 40320-40327頁)配列番号6の配列を含む配列が更に好ましく、特に好ましくは配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列である。配列番号1又は配列番号2におけるアミノ酸の欠失、置換若しくは付加のうち、付加の例としては、N末端側及び/又はC末端側にチオレドキシン酵素等の機能性酵素やその他のアミノ酸配列からなる部分の付加が挙げられる。付加アミノ酸残基としては、シグナルペプチド、TEE配列、Sタグ又はHisタグ等が挙げられる。アミノ酸を融合タンパク質とすることも好ましい例として挙げられ、例えば、タンパク質の精製や確認等をすることのできるタグと呼ばれる部分を融合させることができる。場合によっては、タグ部分を削除してもよいし、タグ部分の全部又は一部を残してもよい。さらには、例えば、IMPDHを菌体外やペリプラズム(グラム陰性細菌等の場合)へ輸送する為の約20個のシグナルペプチドの付加や、効率的な精製を行う為の5から10個のHisの付加であってもよい。これらを直列して付加してもよい。これらのアミノ酸配列の間等に数個のプロテアーゼ認識アミノ酸配列を配置して付加することもできる。上記の付加の例と同様に、欠失、又は置換についても、当業者に公知の様々な欠失又は置換を行うことができる。欠失の例としては、N末端側又はC末端側から順にアミノ酸を削除する欠失が挙げられる。例えば、IMPDHの酵素の本質的な機能とは無関係の数個のアミノ酸からなるドメインが存在する場合や、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列中の複数個のアミノ酸からなるギャップが存在する場合、それらの欠失を組み合わせることもできる。1つのアミノ酸配列において、欠失、置換又は付加を適宜組み合わせることも可能である。本実施の形態におけるIMPDHは、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列において、場合によっては、N末端のMetの欠失や、N末端がアシル基やアルキル基等による修飾を受ける等の翻訳後修飾を受けたものであってもよい。IMPDHを公知の方法で無水コハク酸やPEG等により化学修飾して、至適pHや安定性等の性質を利用しやすいように変化させたものであってもよい。所望の活性を有する限り、IMPDHの二次構造、三次構造及び四次構造は、特に限定されない。
【0021】
本実施の形態におけるIMPDHを、塩基配列の翻訳によって得る場合に用いる塩基配列は、得られるIMPDHが所望の活性を有する限り特に限定されない。例えば配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列をコードする塩基配列の場合、配列番号1又は配列番号2と実質的に均等なアミノ酸配列をコードする塩基配列であってもよく、例えば配列番号1のアミノ酸配列のうち、IMPDHの所望の活性に関与しない一部のアミノ酸を変異させたアミノ酸配列、例えば1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列であってもよい。好ましくは、前記の塩基配列は配列番号1又は配列番号2のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列が含まれる塩基配列である。配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列をコードする塩基配列としては、配列番号7又は配列番号8の塩基配列や、その塩基配列を大腸菌や放線菌等宿主のコドン使用頻度に合わせて当業者に公知の手法により変更した塩基配列が例示される。
【0022】
一態様において、本実施の形態は、リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はNACをさらに含有する、前記IMPDH含有組成物に関する。特に好ましい態様において、本実施の形態は、ATP及び/又はマグネシウムイオンが混在するIMPDH含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はNACをさらに含有する、前記IMPDH含有組成物に関する。
【0023】
本実施の形態において、「リン酸供与体」としては、例えば、ATP、ITP、UTP、CTP、GTP、TTP又はポリリン酸等のいずれか一つ以上が挙げられ、好ましくはATPである。一態様において、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物がミゾリビン/リバビリン測定試薬である場合、リン酸供与体は、ミゾビリン/リバビリンのリン酸化に寄与する化合物であることが好ましく、ATPが特に好ましい。
【0024】
本実施の形態において、ATP(アデノシン5’−三リン酸、Adenosine Tri−phosphate、5−(6−アミノプリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシオキソフラン−2−イルメトキシヒドロキシホスホリルオキシヒドロキシホスホリルオキソリン酸ともいう)は、公知のATPを含み、ナトリウム塩等を形成した塩としてIMPDH含有組成物中に含有されてもよい。
【0025】
本実施の形態において、「金属イオン」としては、例えば、マグネシウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン等が挙げられ、好ましくは2価の金属イオンであり、より好ましくはマグネシウムイオンである。一態様において、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物がミゾリビン/リバビリン測定試薬である場合、金属イオンは、ミゾビリン/リバビリンリン酸化酵素の補因子となる金属イオンであることが好ましく、マグネシウムイオンが特に好ましい。
【0026】
本実施の形態において、例えばマグネシウム(Mg)イオンは、マグネシウムイオン(Mg2+等)自体及び水溶液中でマグネシウムイオンとなるマグネシウムを含み、塩を形成した塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等としてIMPDH含有組成物中に含有されてもよい。本実施の形態における他の金属イオンについても同様である。
【0027】
本実施の形態において、リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物(例えば、ATP及び/又はマグネシウムイオンが混在するIMPDH含有組成物)とは、リン酸供与体及び/又は金属イオンが前記組成物に混在する場合のみならず、混在すると予想される場合も含む。好ましくは、前記組成物は、リン酸供与体及び金属イオンが混在する組成物である。また、本実施の形態において混在とは、前記組成物に意図的に混在させる場合と意図せずに混在する場合を含む。リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物において、リン酸供与体及び/又は金属イオンとIMPDHとが同時に存在する限り、それぞれの量、存在比及び同時に存在している時間は限定されない。混在するリン酸供与体及び/又は金属イオンの量は特に限定されず、後述する細胞や培地中に存在する程度の量でもよいが、これらの存在下でも安定してIMPDHを含む組成物を提供するという観点からは、IMPDHの1当量以上が好ましく、後述する濃度であれば更に好ましい。
【0028】
なお本発明の一態様としては、DTTを実質的に含まない、前記のIMPDH含有組成物、特にリン酸供与体及び/又は金属イオンが混在する前記IMPDH含有組成物(例えば、ATP及び/又はマグネシウムイオンが混在するIMPDH含有組成物)が好ましい例として挙げられる。DTTは、一定の条件下、例えばATPとマグネシウムイオンの存在下においては、IMPDHの不安定化に働くことがあり、その場合には、DTTを、例えば検出限界以下とすることが好ましい。そのような場合の例として、DTT含有量が0.1mM以下、好ましくは0.05mM以下、より好ましくは0.01mM以下であることが例示される。同様に、DTTの分解物や酸化されたDTTも実質的に含まない前記IMPDH含有組成物も、好ましい例として挙げられる。
【0029】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物の用途は限定されない。例えば、該IMPDH含有組成物の用途としては、前記のIMPDHの酵素反応(逆反応)を利用した、物質変換における作用剤としての用途が挙げられ、その例としてはイノシン又はIMP(イノシン酸と呼ばれる場合がある)の合成が挙げられる。その他の用途としては試薬としての用途が挙げられ、その例としてはプリンヌクレオチド生合成経路の解析試薬、新規IMPDH阻害剤のスクリーニング用の試薬等が挙げられる。好ましい試薬の例としてはIMPDHの阻害剤(例えば、ミゾリビン5’一リン酸、リバビリン5’一リン酸、ミコフェノール酸等)、IMPDHの基質(例えば、IMP、XMP等)、IMPDHの補酵素(例えば、酸化型NAD(P)類、還元型NAD(P)類等)又はこれらの前駆体(例えば、ミゾリビン、リバビリン、後述の各種ミコフェノール酸前駆体等)等を測定するための測定試薬が挙げられる。一態様において、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物の用途は、IMP、XMP、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(酸化型NAD(P)類)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(還元型NAD(P)類)、ミゾリビン5’一リン酸、リバビリン5’一リン酸、ミコフェノール酸並びにミゾリビン及びリバビリンを含むこれらの前駆体からなる群から選ばれるいずれかの化合物の測定であることが好ましく、ミゾリビン及び/又はリバビリンの測定であることが更に好ましい。
【0030】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、IMPDHの阻害剤を測定するための試薬として用いる際の具体例を以下に説明する。IMPDHは、例えば、IMPをNADの存在下、XMPとNADHに変換する酵素であるため、測定対象とするIMPDH阻害剤の存在下又は非存在下で、上記の反応を行い、反応生成物の濃度変化から、IMPDH阻害剤の濃度を測定することができる。
【0031】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、IMPDHの基質を測定するための試薬として用いる際には、例えば、IMPDHの補酵素とIMPDHを含有する溶液中、IMPDHの基質の存在下又は非存在下で、IMPDHの酵素反応を行い、反応生成物の濃度変化から、IMPDHの基質の濃度を測定することができる。同様に、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、IMPDHの補酵素を測定するための試薬として用いる際には、例えば、IMPDHの基質とIMPDHを含有する溶液中、IMPDHの補酵素の存在下又は非存在下で、IMPDHの酵素反応を行い、反応生成物の濃度変化から、IMPDHの補酵素の濃度を測定することができる。
【0032】
また、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、上記のIMPDHの阻害剤、IMPDHの基質又はIMPDHの補酵素の前駆体を測定するための試薬として用いる際には、前駆体を上記の各阻害剤等に変換した後、上記と同様の手法を用いることにより、それぞれの前駆体の濃度を測定することができる。
【0033】
本実施の形態におけるミゾリビン(Mizoribine、4−carbamoyl−1−β−D−ribofuranosylimidazolium−5−olateともいう)又はリバビリン(Ribavirin、1−β−D−ribofuranosyl−1H−1,2,4−tri−azole−3−carboxamideともいう)は、公知の化合物であり、それぞれCAS番号50924−49−7又は36791−04−5と分類される場合もある。ミゾリビンはブレデニン等という商品名で市販されている場合もある。
【0034】
ミゾリビンは、主に免疫抑制剤として使用されている低分子化合物であるが、各個人に最適な投与を行うためには、血中ミゾビリン濃度を測定しながら投与量を調整することが必要であるという指摘がある(今日の移植 VOL.19 NO.5 SEPTEMBER 2006年 567頁)。従って、ミゾリビン濃度の正確な測定は非常に重要度が高い。なお、リン酸化ミゾビリン、リン酸化リバビリンは、IMPDH阻害作用を有することが知られている(Biochemical Pharmacology、49巻、9号、1323頁、1995年)。リン酸化ミゾリビン又はリン酸化リバビリンは、ミゾリビン又はリバビリンにリン酸基が結合した物質であり、リン酸基の数は1、2又は3であることができるが、好ましくは1である。すなわち、モノリン酸化ミゾリビン又はモノリン酸化リバビリンが好ましい。リン酸化され得る部位は特に限定されず、ミゾリビン又はリバビリンの糖部分、すなわちリボース部分の任意の水酸基であることができ、例えば1’位、2’位、又は5’位のリン酸化が挙げられ、場合によってはリングを形成してもよい。例えばモノリン酸化ミゾリビン又はモノリン酸化リバビリンの場合は、5’位が好ましく、すなわち、ミゾリビン5’一リン酸又はリバビリン5’一リン酸が好ましい。
【0035】
本実施の形態におけるミコフェノール酸(Mycophenolic acidともいう)は、公知の化合物であり、CAS番号24280−93−1と分類される場合もある。ミコフェノール酸はIMPDH阻害作用を有することが知られている(Biochemical Pharmacology、49巻、9号、1323頁、1995年)。一態様において、本実施の形態におけるミコフェノール酸は、IMPDHの阻害活性有する限り特に限定されず、硫酸、酢酸、グルタチオン、グルクロン酸と抱合される等、代謝されたミコフェノール酸、ミコフェノール酸類縁体等を含む。ミコフェノール酸の前駆体としては、ミコフェノール酸モフェチル((E)−6−(1,3−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−6−メトキシ−7−メチル−3−オキソ−5−イソベンゾフラニル)−4−メチルヘキセン酸2−(4−モルフォリニル)エチルエステルともいう)という場合がある。
【0036】
本実施の形態におけるNAD(P)類(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(リン酸)ともいう)は、それ自体又はその類縁体がIMPDHの補酵素としての活性を有する限り特に限定されず、NAD(P)、デアミドNAD(P)、チオNAD(P)、ニコチンアミドグアニンジヌクレオチド(リン酸)、ニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチド(リン酸)等が挙げられ、そのうちいずれか一つ以上であってもよいが、NADが好ましい。本実施の形態において、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(還元型NAD(P)類)、NAD(P)H類とは、上記NAD(P)類の還元型である。
【0037】
本実施の形態において、ATP、NAC、チオグリセロール、ミゾリビン、リバビリン、ミコフェノール酸等の化合物や添加物は、それぞれ所望の性質を有する限り、その由来、剤型、結晶型、添加物、商品名等により限定されない。
【0038】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物中のIMPDHは安定であり、特に溶液の形態のIMPDH含有組成物中においても安定である。また、後述するように、一態様において、本実施の形態は、IMPDHの安定化方法に関する。ここで、「IMPDHの安定化」は、X線回折や円偏光二色性スペクトルを利用したIMPDHの立体構造、電気泳動やゲル濾過等を利用したポリペプチドの状態、又は理化学的性質を指標として確認することができるが、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、IMPDHの酵素反応を利用するために用いるという観点からは、後述するIMPDHの活性を指標として確認することが好ましい。
【0039】
一態様において、本実施の形態は、IMPDH含有組成物の安定化方法であって、チオグリセロール及び/又はNACを前記組成物に添加する工程を含む安定化方法に関する。該安定化方法において、IMPDH含有組成物が安定であるか否かは、例えば、IMPDH含有組成物において、チオグリセロール及び/又はNACを添加した場合と、添加しない場合とで、どちらの場合のIMPDHが安定化しているかを比較することで判断することができる。例えば、IMPDHに温度や保存(期間)等の負荷を加えた条件下で、該比較を行うことができる。一般的には、温度は高いほど高負荷となり、保存(期間)は長いほど高負荷となる。そのような条件と、特に溶液の形態であるIMPDH含有組成物の安定化の指標の好ましい例を挙げれば、添加物を添加せずに、ATP及びマグネシウムイオンの存在下、IMPDH含有組成物を10℃で7日間又は14日間保存し、IMPDHの残存活性が保存前の80%又は69%以下になる条件において、チオグリセロール及び/又はNAC等を添加した場合には、IMPDHの残存活性が保存前の85%又は75%以上となる例が挙げられる。また、添加物を添加せずに、ATP及びマグネシウムイオンの存在下、IMPDHを25℃で7日間又は14日間保存し、IMPDHの残存活性が保存前の41%又は23%以下になる条件において、チオグリセロール及び/又はNAC等を添加した場合には、70%又は41%以上となる例が挙げられる。例えば試薬として用いるという観点からは、ATP及びマグネシウムイオンが混在するIMPDH含有組成物は、凍結保存した場合、1年以上安定であれば好ましく、1年半以上安定であれば更に好ましく、2年以上安定であれば最も好ましい。ATP及びマグネシウムイオンが混在するIMPDH含有組成物を凍結乾燥させた場合には、その状態で、25℃以下において1年以上安定であれば好ましく、1年半以上安定であれば更に好ましく、2年以上安定であれば最も好ましい。凍結乾燥状態である該組成物を、溶解(再構成)した溶液の形態の場合、10℃以下において1週間以上安定であれば好ましく、1ヶ月以上安定であれば更に好ましく、2ヶ月以上安定であれば最も好ましい。
【0040】
本実施の形態における、IMPDH含有組成物を特定の用途に用いる場合、該組成物に温度や保存(期間)等の負荷を加えた後に、該特定の用途に該組成物を用いることができることが望ましい。例えば、ATP及びマグネシウムイオンが混在する、特に溶液の形態である前記IMPDH含有組成物を、ミゾリビンを測定する目的(ミゾリビン測定用試薬)で用いる場合、10℃で6日間保存した後にもミゾリビンの測定が可能であることが好ましく、11日間保存した後にも測定が可能であることがより好ましく、21日保存した後にも測定が可能であることが更に好ましい。ミゾリビン測定用試薬に異なる条件の負荷を加えた場合の例としては、4℃で15日間保存した後にもミゾリビンの測定でが可能であることが望ましく、22日間保存した後にも測定が可能であることが好ましく、29日間保存した後にも測定が可能であることがより好ましく、49日間保存した後にも測定が可能であることが更に好ましい。なお、上記IMPDH含有組成物の安定性は、通気条件、湿度、気圧等により影響される場合がある。例えば、該組成物が溶液の形態である場合は、該組成物の容器を密栓して保存する方が開栓して保存するより一般的には安定性が向上する。該組成物が凍結乾燥状態を含む固体状態である場合は、低湿度下で保存する方が高湿度下で保存するより一般的には安定性が向上し、低湿度低気圧下で保存すれば更に安定性は向上する。
【0041】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物は、チオグリセロール、NAC又はチオグリセロール及びNACを含有することで、IMPDH含有組成物中のIMPDHが安定化する。チオグリセロール及びNAC以外で、IMPDH含有組成物中のIMPDHを安定化し得る化合物として、IMPDHを含むSH酵素に関して公知である安定化剤のうち、所望の安定化作用を示す化合物が挙げられる。例えば、セミカルバジド、TCEP、β−メルカプトプロピオン酸、システイン、チオグルコース、システアミン、グルタチオン、メルカプト琥珀酸、メルカプト酢酸、臭化2−アミノエチルイソチオウロニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸、又はメルカプトエタノール等から選択される化合物、より好ましくは、システイン、グルタチオン(特に還元型)、メルカプト琥珀酸、TCEP塩酸塩及びチオグルコースから選択される化合物は、これら単独であっても、IMPDH含有組成物に添加した際にIMPDHの安定化作用を示しうる。より高いIMPDHの安定化作用を得るという観点からは、これらを、チオグリセロール及び/又はNACと組み合わせて、IMPDH含有組成物に添加することが好ましい。従って、本実施の形態は、一態様において、チオグリセロール及び/又はNACに加えて、上記の化合物の一種以上をさらに含む、IMPDH含有組成物、IMPDH含有組成物の安定化剤ならびにIMPDH含有組成物におけるIMPDHの安定化方法にも関する。
【0042】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物におけるIMPDH濃度は特に限定されず、該組成物やIMPDHの製造方法や該組成物の用途に応じて適宜設定することができる。例えば、微生物や動物等の細胞からIMPDHを製造する場合、該IMPDHは、該細胞や培地由来のリン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物となり得る。さらに、その後の塩析や熱処理等の固液分離工程やカラムクロマトグラフィー工程等の精製工程中もIMPDHにリン酸供与体及び/又は金属イオンが混在(残留)する可能性があるが、これらの工程後に得られるIMPDH含有組成物中のIMPDH濃度は、一般に培養スケールや製造スケール等に応じて変化する。通常、IMPDH製造におけるIMPDH濃度は、加水濃縮脱塩工程であれば例えば0.01U/mL程度に希釈し、硫安沈殿工程であれば例えば100U/mL以上に濃縮する場合もある。また、IMPDH濃度を、前記IMPDH含有組成物の用途によって変化させる例としては、物質変換の用途の場合に望ましい濃いIMPDH濃度、例えば100〜1000U/mL等とすることが挙げられる。また、試料の測定の用途(試薬)に利用する場合、レートアッセイであれば例えば1U/mL以下、エンドポイントアッセイであれば例えば1〜10U/mL程度のIMPDH濃度の組成物を使用し得る。また、IMPDH活性を測定するための試薬(組成物)中にリン酸供与体及び/又は金属イオンが混在する場合も想定されるが、この場合のIMPDH濃度は通常0.1U/mL以下である。
【0043】
本実施の形態において、特にIMPDH含有組成物が溶液の形態であることが好ましい。IMPDH含有組成物の安定化方法における前記組成物中のIMPDH濃度の下限値は特に限定されないが、通常0.01U/mL以上が例示でき、0.1U/mL以上が好ましく、1U/mL以上が更に好ましい。同様に、前記組成物中のIMPDH濃度の上限値は特に限定されないが、特にIMPDH含有組成物が溶液の形態である場合、通常1000U/mL以下が例示でき、500U/mL以下が好ましく、200U/mL以下が更に好ましい。
【0044】
本実施の形態において、IMPDHと、チオグリセロール及び/又はNACとを含有するIMPDH含有組成物中のチオグリセロール又はNACの濃度は特に限定されず、前記組成物の製造方法や用途に応じて適宜変更し得る。例えば、IMPDH製造時のIMPDH含有組成物においては、該濃度は1〜5mMとなり得る。凍結保存を含む低温で前記IMPDH含有組成物を保存する際には、該濃度は0.5mM程度となり得る。IMPDH含有組成物中のチオグリセロール又はNACの濃度は、IMPDH含有組成物が溶液の形態である場合、一般的には1mM以上20mM以下が例示でき、例えば100mM以上では過剰な場合もある。過剰な濃度であるかどうかの判断は、例えば、前記組成物中に沈殿、濁り、発色、変色、pH変化等が発生するかどうかで判断することができる。本実施の形態の、IMPDH含有組成物の安定化方法において前記組成物中に添加されるチオグリセロールやNACの濃度の下限値は特に限定されないが、特にIMPDH含有組成物が溶液の形態である場合、通常それぞれ0.1mM以上が例示でき、1mM以上が好ましく、5mM以上が更に好ましい。同様に、上限値は特に限定されしないが、特にIMPDH含有組成物が溶液の形態である場合、通常それぞれ100mM以下が例示でき、50mM以下が好ましく、20mM以下が更に好ましい。
【0045】
本実施の形態において、チオグリセロール及び/又はNACを含有するIMPDH含有組成物中のIMPDHと、チオグリセロール又はNACとの存在比率は、IMPDH含有組成物がいずれの形態であっても特に限定されないが、下限としては、IMPDH 1U当たりのチオグリセロール又はNACが、通常0.02μmol以上が例示され、0.1μmol以上が好ましく、1μmol以上であれば更に好ましく、10μmol以上であれば更により好ましく、31.25μmol以上であれば最も好ましい。また上限としては、IMPDH 1U当たりのチオグリセロール又はNACが、200μmol以下であることが好ましい例として挙げられ、125μmol以下が更に好ましく、100μmol以下が最も好ましい。
【0046】
また、チオグリセロールとNACが共存する形態であってもよい。その場合は、チオグリセロールとNACの存在量がそれぞれ上述の上限及び下限の範囲となることが好ましい例として挙げられ、チオグリセロールとNACとを合算して、上述の上限及び下限の範囲となることもさらに好ましい例として挙げられる。
【0047】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物が、チオグリセロール及びNACを含有する場合又はIMPDH含有組成物にこれらを添加する場合、2成分のそれぞれの濃度、存在比及び同時に存在している時間は限定されない。チオグリセロール及びNACの濃度は好ましくはそれぞれ上記の濃度であり、一態様において、特にIMPDH含有組成物が溶液の形態である場合、それぞれの濃度を合算して1mM以上20mM以下であることが好ましい場合もある。1mM以下では十分なIMPDH安定化効果が得られないことがあり、20mM以上ではIMPDH含有組成物に濁りやpHの経時変化による悪影響が生じ得る。本実施の形態において、IMPDH含有組成物がチオグリセロール及びNACを含有する場合、通常は意図的に含有させるが、IMPDHにチオグリセロール又はNACが含有している場合など意図せずに含有する場合もある。
【0048】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物は、凍結乾燥状態を含む固体状態、濾紙上や薄膜間に存在させた状態及びそれらを乾燥した状態、電極やゲル等の担体に固定化した状態等とし得る。例えば、本実施の形態のIMPDH含有組成物を凍結乾燥させる際の母液中のIMPDH並びにチオグリセロール及び/又はNACの濃度は、上記のIMPDH含有組成物中の濃度よりも濃くする場合がある。一般的には上記の濃度のIMPDH含有組成物を1倍より濃くなるように濃縮した母液を凍結乾燥し、溶解液が上記の濃度となるように、例えば純水や緩衝液で用事溶解して使用する。すなわち、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物中のIMPDH並びにチオグリセロール及び/又はNACの濃度は、溶液の濃縮倍率に応じて濃くなるが、IMPDH含有組成物中のIMPDH並びにチオグリセロール及び/又はNACの濃度比率は変動しない。また、凍結乾燥状態においては、IMPDH並びにチオグリセロール及び/又はNACは、母液中の濃度比率で存在する。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、濾紙上や薄膜中で乾燥させるための母液とする場合も同様である。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物中に、他の物質を存在させる場合の濃度についても同様である。
【0049】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物に含有される、チオグリセロール及びNACを含む上記の添加物は、前記IMPDH含有組成物中のIMPDHの安定性や、添加物の臭い、揮発性、昇華性、安定性等の添加物の性質や、添加物の価格、安全性、有害性等を考慮して適宜選択し、適切な濃度で含有させることができる。例えば複数の添加物を含有させる場合、添加物同士の存在比率についても同様に適宜決定することができる。添加物選択に考慮が必要な例としては、例えば、揮発性の高い添加物を含有する組成物を凍結乾燥する場合、凍結乾燥中に該添加物が昇華するために凍結乾燥装置内に該添加物が蒸着し、次回以降の凍結乾燥作業や凍結乾燥品の品質に影響を与える場合がある。また、揮発性の高い添加物を含有する溶液の形態の組成物(試薬)を、生化学自動分析機などの試薬庫で開栓して保存すると、試薬庫内の他の組成物(試薬)にエアーコンタミネーションにより影響を与える場合がある。
【0050】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物の安定化方法は様々な場面において有用であり、例えば、上記のIMPDHの製造時、後述するIMPDHの保存時に用いることができる。IMPDH含有組成物を、IMPDHの酵素反応を利用した組成物として用いる場合には、IMPDHの活性を安定して利用することができるため、特に好ましく上記の安定化方法を用いることができる。
【0051】
本実施の形態のIMPDH含有組成物は、例えば、複数の試薬を組み合わせた、IMPDHの酵素反応を利用して試料を測定するためのキットを構成する一試薬であってもよい。例えば、IMPDHならびにNAC及び/又はチオグリセロールを含む本実施の形態のIMPDH含有組成物を試薬1とし、ATP及びMgを含む試薬2と、試料を測定する際に混和して、IMPDHの酵素反応を利用した測定に用いてもよい。
【0052】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物は水溶液、有機溶媒溶液等の溶液の形態であることができるが、利便性という観点からは、好ましくは水溶液である。IMPDH含有組成物が水溶液である場合、IMPDHの安定化という観点から、適宜pH緩衝剤を用いることが好ましい。pH緩衝剤は、目的のpHを保つことができれば特に限定されないが、グッドのpH緩衝液、Tris/HCl緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、酢酸/NaOH緩衝液、クエン酸/NaOH緩衝液が例示できる。IMPDH含有組成物が水溶液である場合、そのpHは、下限としてpH4以上、好ましくはpH4.8以上、更に好ましくはpH5.2以上が例示され、上限としてはpH8.5以下、好ましくはpH8以下、更に好ましくはpH7.5以下が例示される。pH緩衝剤の濃度は目的のpHを保つことができる限り特に限定されないが、下限として3mM以上、好ましくは5mM以上、更に好ましくは10mM以上が例示され、上限としては500mM以下、好ましくは200mM以下、更に好ましくは100mM以下が例示される。一態様において、本実施の形態のIMPDH含有組成物は、例えばゾル・ゲル又は乳濁液であることができる。ゾル・ゲルは、例えば、前記の溶液に寒天等の多糖類を添加することで得ることができる乳濁液は、例えば、当業者に公知の手法により、前記の溶液やゾル・ゲルから、有機溶媒等を用いて得ることができる。両親媒性物質を利用してミセルとして得ることもできる。一態様において、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物は、組成物中の各成分の濃度を1倍より濃くなるよう濃縮した溶液の形態、該溶液又は該濃縮溶液の凍結物、乾燥物、凍結乾燥物であってもよく、長期間安定して保存する場合には、該溶液又は該濃縮溶液の凍結乾燥物が好ましい。さらには、該乾燥物又は凍結乾燥物を水や緩衝液で再溶解した溶液の形態であってもよい。濃縮、乾燥、凍結、凍結乾燥等は、当業者に公知の手法を用いて行うことができ、例えば、乾燥には、スプレードライ、加熱乾燥、風乾、減圧乾燥等の手法を用いることができる。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物は、特に好ましい態様において、使用時までは凍結乾燥状態で保存し、使用時に例えば純水や緩衝液で溶解し、溶解後はそのまま水溶液として保存する。
【0053】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物が、IMPDHの酵素反応を利用して、試料(検体ともいう)中の特定の成分を測定するための組成物(試薬)である場合、該試料は、特に限定されないが、全血、血漿、血清、血球、髄液、リンパ液、尿等の排泄物、その他体液を含む生体試料や研究用試料及びそれらの抽出物や標準液等を挙げることができる。それらの試料はIMPDHの酵素反応を利用して測定することができる成分を含むと予想される試料であることが好ましく、一態様において、前記試料はミゾリビン及び/又はリバビリンを含有すると予想される試料であることが好ましく、正確な測定値を得るという観点からは、ミゾリビン又はリバビリンのいずれか一方を含有すると予想される試料であることが更に好ましい。例えば、試料が生体試料である場合、ミゾリビン及び/又はリバビリンの標的臓器、例えば、白血球、肝細胞、ウィルス感染細胞等を選別して試料とすることも好ましく、特に試料が白血球の場合には、更に、T細胞、B細胞、リンパ球等を選別して試料とすることも好ましい。ミゾリビン及び/又はリバビリンを含有すると予想される生体試料を取得する場合、取得方法は公知の方法を用いることができる。例えば全血を取得する場合には、分離剤や抗プラスミン剤等の使用の有無は特に限定されず、EDTA、フッ化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヘパリンナトリウム等の抗凝固剤や解糖阻止剤の使用の有無も特に限定されない。生体試料以外の試料としては、例えば、海水、天然水、果汁、飲料、廃液等が挙げられる。
【0054】
リン酸化されたミゾリビン又はリバビリンは、IMPDHの阻害活性を有する。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、特に、ミゾリビン又はリバビリン等、IMPDH阻害剤の前駆体を測定するための組成物として用いる場合、該組成物は[ミゾリビン、及び/又はリバビリンをリン酸化する酵素](以下、酵素Pということもある)を含有することが好ましい。該酵素Pは、ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化し得る酵素であれば特に限定されず、例えば、リン酸供与体の存在下、ヌクレオシドをリン酸化ヌクレオシドとなす反応を触媒することが知られる酵素から選択することができ、アデノシンキナーゼやホスホフルクトキナーゼ−Bを含むヌクレオシドキナーゼ、又はホスファターゼ等も利用可能である。該酵素Pの由来は特に限定されず、例えば天然の生物由来であってもよい。微生物由来の該酵素Pとしては、大腸菌由来のグアノシンイノシンキナーゼ、Methanocaldococcus jannaschii由来のホスホフルクトキナーゼ−B、Archaeoglobus fulgidus由来のホスホフルクトキナーゼ−Bと予想されるタンパク質が挙げられる。その他の微生物由来の酵素Pとしては、パン酵母やマイコバクテリウム由来であって、ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化し得るアデノシンキナーゼが挙げられる。また、入手が困難であり必ずしも効率が高いとは言えないものの、哺乳類由来の酵素であってもよく、例えば、ヒト由来のアデノシンキナーゼやマウス、ラット、ウサギ等の、公知のアデノシンキナーゼが挙げられる。ミゾリビンに対する特異性が高いという観点からは、好ましい例として、例えばBurkholderia属やその近縁のXanthomonas属等、好ましくはBurkholderia thailandensis、最も好ましくは、Burkholderia thailandensis DSM13276株由来のミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化し得る酵素が挙げられる。該酵素Pは、ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化し得る限りそのアミノ酸配列は限定されず、例えば配列番号9のアミノ酸配列であってもよい。該アミノ酸配列は、リボースの結合に関連すると予想される配列番号10のアミノ酸配列及びATP、リボース、マグネシウムの結合に関連すると予想される配列番号11のアミノ酸配列を含む配列であることが好ましく(但し、配列番号10及び11中、Xaaは任意のアミノ酸を示す)、最も好ましくはミゾリビンに対する特異性の高い配列番号9のアミノ酸配列である。酵素Pのアミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、置換、付加、翻訳後修飾、化学修飾及び高次構造の例はIMPDHのアミノ酸配列の場合と同様、当業者に公知の様々な例を挙げることができる。
【0055】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が、ミゾリビン又はリバビリンを測定するための試薬であって、酵素Pを含有する場合、該酵素Pの量は、例えば、測定対象となる試料に含まれるミゾリビン及び/又はリバビリンの存在量が1mM以下でその全てをリン酸化しようとする場合、下限値は0.01U/mL、好ましくは0.05U/mL以上、更に好ましくは0.1U/mL以上であり、上限値は特に限定されないが、5U/mL以下、好ましくは2U/mL以下、更に好ましくは1U/mL以下である。
【0056】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が、ミゾリビン及び/又はリバビリンを測定するための試薬であって、ミゾリビン、及び/又はリバビリンをリン酸化するために、リン酸供与体を含有させる場合、該リン酸供与体は、ATP、ITP、UTP、CTP、GTP、TTP又はポリリン酸等のいずれか一つ以上であることができるが、経済性の観点からは、ATPが特に好ましい。該リン酸供与体の量は、試料中のミゾリビン又はリバビリンの量に応じて適宜変更できる。例えば、ATPの場合、下限値が0.1mM、好ましくは1mM以上、更に好ましくは5mM以上が例示され、上限値は特に限定されないが、好ましくは500mM以下、更に好ましくは200mM以下、特に好ましくは50mM以下が例示され、試料中のミゾリビン又はリバビリンの量が多い場合は、ATPの濃度も高くすることが好ましい。
【0057】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物に、IMPDHの基質であるIMPを含有する場合、該IMPの量は、IMPDHの基質となるという観点から、その下限値は1mM、好ましくは3mM以上、更に好ましくは5mM以上が例示される。また、その上限値は特に限定されいが、好ましくは100mM以下、更に好ましくは50mM以下、特に好ましくは30mM以下が例示される。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が同じくIMPDHの基質であるXMPを含有せする場合もその量は上記IMPの場合と同様である。
【0058】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物がIMPDHの補酵素として作用するNAD(P)類を含有する場合、該NAD(P)類の量は、下限値が0.1mM、好ましくは0.5mM以上、更に好ましくは1mM以上が例示され、上限値は特に制限されないが、好ましくは50mM以下、更に好ましくは10mM以下、特に好ましくは7mM以下が例示される。
【0059】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が、金属イオンを含有する場合、例えばマグネシウムイオンを含有する場合、その下限値は、リン酸供与体の濃度に対して0.1当量以上、好ましくは0.5当量以上、更に好ましくは1当量以上であり、上限値は、リン酸供与体の濃度に対して10当量以下、好ましくは5当量以下、更に好ましくは3当量以下である。最も好ましい濃度は、リン酸供与体の2当量である。金属イオンは、例えば各種酵素の補因子として機能し得る。
【0060】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を試薬として用いる場合、試薬の感度、正確性、再現性、安定性等の品質を向上する目的等で、前記組成物は、NaClやKCl等の塩、TX−100やTween20等の界面活性剤、及び/又はアジ化ナトリウムや抗性物等の防腐剤を含有してもよい。
【0061】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が塩を含有する場合、該塩の量は、例えば塩化カリウムの場合、下限値が0.1mM、好ましくは5mM以上、更に好ましくは50mM以上が例示され、上限値は特に制限されないが、好ましくは200mM以下、更に好ましくは150mM以下、特に好ましくは120mM以下が例示される。その他の塩の種類や濃度は限定されないが、例えば塩化ナトリウムや塩化アンモニウム等を含有する場合、通常は5mM以上200mM以下の範囲が例示される。これらの塩は、IMPDHの活性化剤として作用し得る。
【0062】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が糖を含有する場合、該糖の濃度は溶解可能な範囲内であれば限定されないが、例えばシュークロースを含有する場合、下限値は全組成物の0.05(w/v)%、好ましくは0.1(w/v)%以上、更に好ましくは0.3(w/v)%以上であり、上限値は全組成物の30(w/v)%以下、好ましくは10(w/v)%以下、更に好ましくは5(w/v)%以下である。例えばマンニトールを含有する場合、下限値は全組成物の0.05(w/v)%以上、好ましくは0.1(w/v)%以上、更に好ましくは0.3(w/v)%以上であり、上限値は全組成物の3(w/v)%以下、好ましくは2(w/v)%以下、更に好ましくは2(w/v)%以下である。その他の糖としてはトレハロースやシクロデキストリン等が挙げられる。これらの糖は、酵素や組成物の安定化剤として、また、組成物を凍結乾燥する場合は凍結乾燥賦型剤として、機能し得る。
【0063】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が防腐剤を含有する場合、該防腐剤の種類や濃度は限定されないが、例えばアジ化ナトリウムの場合、下限値は全組成物の0.005(w/v)%、好ましくは0.01(w/v)%以上、更に好ましくは0.03(w/v)%以上であり、上限値は全組成物の1(w/v)%以下、好ましくは0.5(w/v)%以下、更に好ましくは0.1(w/v)%以下である。例えば抗生物質の場合、下限値は5μg/mL以上、好ましくは10μg/mL以上、更に好ましくは30μg/mL以上であり、上限値は100μg/mL以下、好ましくは75μg/mL以下、更に好ましくは60μg/mL以下である。
【0064】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が界面活性剤を含有する場合、該界面活性剤の種類や濃度は限定されないが、例えばTX−100、OP−10、Tween20等を含有する場合、通常は全組成物の0.001(w/v)%以上5(w/v)%以下の範囲である。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が例えばIMPDHの酵素反応を利用した試薬である場合、界面活性剤は再現性等の試薬の性能を向上し得る。
【0065】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物がEDTA等のキレート剤を含有する場合、その種類や濃度は限定されないが、例えばEDTAを含有する場合、通常は0.05mM以上10mM以下の範囲である。EDTAやEGTA等は、金属を活性発現に利用するプロテアーゼが組成物中に存在する場合、該活性を阻害する場合がある。
【0066】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が、牛アルブミン、卵アルブミン、ヒトアルブミン等のタンパク質を含有する場合、該タンパク質の種類や濃度は限定されないが、例えば牛アルブミンを含有する場合、通常は0.01(w/v)%以上5(w/v)%以下の範囲である。これらのタンパク質は、プロテアーゼの基質となるため、酵素の安定化剤となる場合がある。また、凍結乾燥に際しては凍結乾燥賦型剤となり得る。
【0067】
上記本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が含有する物質は、組成物の目的や用途に応じて適宜変更することができ、例えば、該IMPDH含有組成物を特定の成分の測定用試薬として用いる場合であれば、測定感度、特異度、再現性、経済的な理由、安全性目的、適用法令等に応じて適宜変更しうる。
【0068】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、特定の成分を測定するための試薬として用いる場合、該組成物を単独で試薬として用いてもよいが、他の試薬と組み合わせて、測定用キットを構成することもできる。他の試薬は、測定対象のキャリブレーター試薬や管理血清等を含む。
【0069】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物をPOCのキャピラリーへ使用する場合又は酵素センサーとしての使用する場合、各成分の濃度は通常よりも濃い濃度が好ましく、例えば、固定化したり、紙や膜に染み込ませたり、ゲル・ゾル状組成物としたりして使用することが好ましい。
【0070】
一態様において、本実施の形態は、リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物の保存方法であって、チオグリセロール及び/又はNACを前記組成物に添加する工程、及び前記IMPDH含有組成物を25℃以下で保存する工程、を含むIMPDH含有組成物の保存方法に関する。該チオグリセロール及び/又はNACを前記組成物に添加する行程は、上記のIMPDH含有組成物の安定化方法において、チオグリセロール及び/又はNACを添加する工程に関する記載を参照して行うことができる。該IMPDH含有組成物を保存する工程における温度は、0℃以下の冷凍保存でもよく、後述の実施例等における0〜10℃の冷蔵保存や生化学自動分析機などの試薬庫での保存、又は15〜25℃の常温や1〜30℃の室温の保存でもよく、更に加速試験等を含む25℃以上の保存でもよいが、一般的には低温保存ほどIMPDH含有組成物中のIMPDHが安定となるため好ましい。溶液の形態であるIMPDH含有組成物を保存する工程における保存期間は、IMPDH含有組成物中のIMPDHが安定な期間であれば限定せず、実施例で示す49日程度でもよいが、長期間保存できるほど好ましい。
【0071】
一態様において、本実施の形態は、リン酸供与体及び/又は金属イオンと、IMPDHとを含有するIMPDH含有組成物の安定化剤であって、チオグリセロール及び/又はNACを有効成分とする安定化剤に関する。該安定化剤におけるチオグリセロール、NAC、ATP、マグネシウムイオン及びIMPDHについては、上記の各成分に関する記載を参照することができる。該安定化剤はリン酸供与体及び/又は金属イオンがIMPDHに混在すると予想される場合や、リン酸供与体及び/又は金属イオンにIMPDHが混在すると予想される場合に使用できるが、リン酸供与体及び金属イオンが混在するIMPDH、特にATP及びマグネシウムイオンが混在するIMPDHに使用するのが好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を参考例及び実施例(実施例等)に基づいて説明するが、本発明の範囲は以下の実施例等に限定して解釈されるものではない。尚、「常法に従って」と記述した方法は、例えばマニアティスらの方法(Maniatis,T.,et al.Molecular Cloning.Cold Spring Harbor Laboratory 1982年、1989年)、非特許文献1の記載又は市販の各種酵素若しくはキット類に添付された取扱説明書等の手順に従い、当業者であれば実施できる方法である。又、以下に示した測定値等は、様々な条件、例えば、測定の条件、使用機器の精度等、使用機器の置かれた温度や気圧等の雰囲気により変化し得るが、同条件で測定した場合には以下の実施例等で得られたものと同じ傾向を示す結果が得られるであろう。
【0073】
以下の実施例等で使用する試薬類は、特に断らない限り、和光純薬工業株式会社製、シグマアルドリッチ社製、タカラバイオ株式会社製等から市販され容易に入手することができる任意の試薬類を使用することができる。試薬のメーカーや純度等は特に限定されず、必要に応じて当業者であれば適宜選択して用いることができる。DSM菌株は、Deutsche SammLung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHから入手することができる。ATCC菌株は、American Type Culture Collectionから入手することができる。又、以下の実施例等で使用した血清等のヒト生体材料は、市販品、又は、使用目的の情報を正しく伝えた上での合意を得て採取した検体若しくは匿名検体である。
【0074】
[参考例1]IMPDH活性測定方法
[反応試薬混合液]
50mM Tris/HCl緩衝液pH8.0
2mM IMP
2mM NAD
50mM 塩化カリウム
【0075】
石英製の光路長1.0cmキュベットに上記の[反応試薬混合液]2mLを量りとり、37℃で2分間予備加温した。以下の参考例3に示した方法にて調製したIMPDHを50mM Tris/HCl緩衝液(pH8.0)で希釈し、後述のAs/minが0.05から0.300の範囲に収まる濃度のIMPDH溶液を調製した。IMPDH溶液0.03mLを前述のキュベットに加えて混和し37℃で反応を開始した。反応開始後、340nmにおける吸光度を測定し、直線的に反応している1分間当たりの吸光変化を求めた。求められた吸光変化をAs/min、IMPDHの代わりに精製水を用いた盲検をAb/minとして、酵素活性(U/mL)は(式1)で算出した。
(式1)
酵素活性(U/mL)={(As/min−Ab/min)/6.22}×2.03/0.03×希釈倍数
【0076】
[参考例2]ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化し得る酵素の活性測定方法
[反応試薬混合液1]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
10mM ATP(pH7)
20mM 塩化マグネシウム
5mM イノシン
50mM 塩化カリウム
【0077】
[反応試薬混合液2]
100mM Tris/HCl緩衝液 pH9.0
13U/mL 参考例3で製造したIMPDH
20mM NAD
50mM 塩化カリウム
1mM DTT
200mM EDTA(pH9)
【0078】
石英製の1.0cmキュベットに上記の[反応試薬混合液1]1.0mLを量りとり、37℃で2分間予備加温した。後述の参考例6の方法にて調製した酵素Pを30mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に溶解し、後述のAs/minが0.05から0.400の範囲に収まる濃度の酵素P溶液を調製した。この酵素P溶液0.01mLを前述のキュベットに加えて混和し、37℃で反応を開始した。反応開始5分後に、上記の[反応試薬混合液2]1.0mLを混和して反応を止め、340nmの吸光度を測定した(As)。酵素P溶液の代わりに精製水を用いた盲検をAbとして酵素活性(U/mL)を下記(式2)で算出した。
(式2)
酵素活性(U/mL)={(As−Ab)/5)/6.22}×2.01/0.01×希釈倍数
【0079】
[参考例3]IMPDHの製造方法1
Nutrient 2.3(w/v)%、ポテト抽出液 0.2(w/v)%を含む培地を使用してBacillus subtilis ATCC23857株を26℃1日間培養して菌体を得た。この菌体から常法に従ってBacillus subtilis ATCC23857株DNAを得た。Bacillus subtilis ATCC23857株のDNAをテンプレートに配列番号12と配列番号13のプライマーを用いてPCRで遺伝子増幅した。PCRはKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)を用いて常法に従って行った。得られた約1.5kbpのPCR産物は常法に従って精製した。
【0080】
PCR産物をXbaI及びSacIにより常法に従って制限酵素処理しインサートとした。常法に従って精製したインサートは、XbaI及びSacIにより制限酵素処理し精製したpHSG399と常法に従ってライゲーションし、pHSG399/BsuIMPDHを作成した。pHSG399/BsuIMPDHを大腸菌W3110に常法に従って導入して形質転換し、コロニーダイレクトPCR法によるポジティブクローンから精製した組換体プラスミドについて、DNAシーケンスによりインサート配列が正しいことを確認した。
【0081】
上記の形質転換体を34μg/mLのクロラムフェニコール及び1mM IPTGを含むLB培地に植菌し、30℃で1日間培養した。培養液を遠心分離して集菌し、培養液の1/5倍量の1mM DTTを含む20mM Tris/HCl緩衝液pH7.5に懸濁し、超音波破砕して遠心分離し、粗酵素液を得た。該粗酵素液を1mM DTTを含む10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0で平衡化したQ sep.BB(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に吸着させた。1mM DTTを含む10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0で充分に洗浄した後、1mM DTT及び0又は0.5MのKClを含む10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0を用いたリニアグラジェントにて溶出した。活性画分に最終濃度15(w/v)%になるように硫酸アンモニウムを添加し、1mM DTT及び15(w/v)%の硫酸アンモニウムを含む10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で平衡化したPhenyl sep.FF(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に吸着させて、1mM DTT及び15又は0%の硫酸アンモニウムを含む10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5を用いたリニアグラジェントにて溶出した。活性画分は10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で平衡化したG−25で脱塩して、Bacillus subtilis由来IMPDHを得た。1Lの培養で約10mgのBacillus subtilis由来IMPDHを得た。
【0082】
[参考例4]IMPDHの製造方法2
ペプトン 5g/L、酵母エキス 1g/L、塩化ナトリウム 20g/L、クエン酸鉄 0.1g/L、塩化マグネシウム 5.9g/L、硫酸ナトリウム 3.24g/Lを工業用水で溶解しpH7.6に調整した培地を使用してOceanobacillus iheyensis DSM14731株を25℃1日間培養して菌体を得た。
【0083】
この菌体から常法に従ってOceanobacillus iheyensis DSM14731株のDNAを得た。Oceanobacillus iheyensis DSM14731株のDNAをテンプレートに配列番号14と配列番号15のプライマーを用いてPCRで遺伝子増幅した。PCRはKOD DNAポリメラーゼを用いて常法に従って行った。得られた約1.5kbpのPCR産物は常法に従って精製した。
【0084】
PCR産物をXbaI及びSacIにより常法に従って制限酵素処理しインサートとした。常法に従って精製したインサートは、XbaI及びSacIにより制限酵素処理し精製したpHSG399と常法に従ってライゲーションし、pHSG399/ObIMPDHを作成した。pHSG399/ObIMPDHを大腸菌W3110に常法に従って導入して形質転換し、コロニーダイレクトPCR法によるポジティブクローンから精製した組換体プラスミドについて、DNAシーケンスによりインサート配列が正しいことを確認した。
【0085】
上記の形質転換体を用いて、参考例3と同様の手法でOceanobacillus iheyensis由来IMPDHを得た。1Lの培養で約10mgのOceanobacillus iheyensis由来IMPDHを得た。
【0086】
[参考例5]ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化する酵素(酵素P)の製造方法1
LB培地を使用して30℃2日間培養して集菌したBurkholderia thailandensis DSM13276株の菌体をを得た。この菌体から常法に従ってBurkholderia thailandensis DSM13276株のDNAを得た。
【0087】
pTip QC1又はpTip QC2(特許第3944577号公報、及び特許第3793812号公報)のマルチクローニングサイトNdeI及びBamHI部位に配列番号16の遺伝子を挿入するように、配列番号17と配列番号18のプライマーを設計した。PCRはKOD DNAポリメラーゼを用いて常法に従って行った。得られた約1.0kbpのPCR産物は、常法に従って精製した。PCR産物をNdeI及びBamHIにより常法に従って制限酵素処理しインサートとした。常法に従って精製したインサートは、NdeI及びBamHIにより制限酵素処理し精製したpTip QC1又はpTip QC2と常法に従ってライゲーションし、pTip QC1/BthNK及びpTip QC2/BthNKを作成した。pTip QC1/BthNK及びpTip QC2/BthNKを大腸菌 DH5αに常法に従って導入して形質転換し、コロニーダイレクトPCR法によるポジティブクローンから精製した組換体プラスミドについて、DNAシーケンスによりインサート配列が正しいことを確認した。
【0088】
pTip QC1/BthNK、及びpTip QC2/BthNKのRhodococcus erythropolisへの形質転換は特開2004−073116号公報等に記載の方法に従いエレクトロポレーション法(電気穿孔法)で実施した。エレクトロポレーション条件は次のとおりであった。コンピテントセルを融解し、pTip QC1/BthNK、又はpTip QC2/BthNKと混合して、2mmの専用チャンバーに入れ、7.5mS、2500V、25μF、400Ωでパルスをかけた。
【0089】
上記の形質転換体を34μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB培地に植菌し、30℃で2日間培養してシードとした。34μg/mLのクロラムフェニコールと1μg/mLのチオストレプトンを含むLB培地に上記のシードを1/10量植菌し、30℃で1日間培養した。培養液を遠心分離して集菌し、培養液の1/5倍量の20mM Tris/HCl緩衝液pH7.5に懸濁、超音波破砕して、遠心分離し、得られた上清を粗酵素液とした。
【0090】
pTip QC1/BthNK形質転換体を培養して得られた粗酵素液を0.1Mの塩化ニッケル、及び0.3Mの塩化ナトリウムを含む50mMのリン酸緩衝液pH8.0で平衡化したCherating Sepharose FF(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に吸着させた。0.3Mの塩化ナトリウムを含む50mMのリン酸緩衝液pH8.0で充分に洗浄した後、10(w/v)%グリセロール及び0.3Mの塩化ナトリウムを含む50mMのリン酸緩衝液pH6.0で充分に洗浄した。0.4Mイミダゾール、10(w/v)%グリセロール及び0.3Mの塩化ナトリウムを含む50mMのリン酸緩衝液pH6.0にて溶出した。活性画分は0.03Mの塩化ナトリウム、0.05MのKCl及び1mMのDTTを含む30mMのリン酸緩衝液pH7.0で透析して酵素Pを得た。1Lの培養で約80mgの酵素Pを得た。
【0091】
[参考例6]ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化する酵素(酵素P)の製造方法2
参考例5のインサートを、NdeI及びBamHIにより制限酵素処理し精製したpET21a(+)と常法に従ってライゲーションし、pET21a(+)/BthNKを作成した。pET21a(+)/BthNKを大腸菌BL21(DE3)に常法に従って導入して形質転換し、コロニーダイレクトPCR法によるポジティブクローンから精製した組換体プラスミドについて、DNAシーケンスしてインサート配列が正しいことを確認した。得られた形質転換体を50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地に植菌した。30℃で1日間培養してシードとした。50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地に上記のシードを1/100量植菌し、30℃で一日培養した。培養液中の濃度が1mMになるようにIPTGを加え、更に30℃で3時間培養した。培養液を遠心分離して集菌し、培養液の1/5倍量の20mM Tris/HCl緩衝液pH8.5に懸濁、超音波破砕して、遠心分離し、得られた上清を粗酵素液とした。
【0092】
上記の粗酵素液を10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0で平衡化したQ sep.BBに吸着させた。10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0で充分に洗浄した後、0又は0.5MのKClを含む10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0を用いたリニアグラジェントにて溶出した。活性画分に最終濃度15(w/v)%になるように硫酸アンモニウムを添加し、15(w/v)%の硫酸アンモニウムを含む10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で平衡化したPhenyl sep.FFに吸着させて15又は0%の硫酸アンモニウムを含む10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5を用いたリニアグラジェントにて溶出した。活性画分は10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で平衡化したG−25で脱塩した後、10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で平衡化したDEAE sep.FF(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に吸着させた。10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で充分に洗浄した後、0又は0.5MのKClを含む10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5を用いたリニアグラジェントにて溶出した。活性画分は10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.0で平衡化したG−25で脱塩して酵素Pを得た。1Lの培養で約50mgの酵素Pを得た。
【0093】
[実施例1]種々の溶液中におけるIMPDHの安定性
[組成物1]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0094】
上記組成物1に以下のとおり添加物を添加し、組成物1−1から1−3を調製した。
組成物1−1:組成物1+5mM DTT
組成物1−2:組成物1+5mM チオグリセロール
組成物1−3:組成物1+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で0から12日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表1(10℃)と表2(25℃)に示した。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
10℃保存の場合、DTT、チオグリセロール及びNACはそれぞれIMPDH安定化効果を示した。25℃保存の場合、DTTはIMPDH安定化効果を示さなかったが、チオグリセロール及びNACは、IMPDH安定化効果を示した。
【0097】
[組成物2]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0098】
上記の組成物2に以下のとおり添加物を添加し、組成物2−1から2−3を調製した。
組成物2−1:組成物2+5mM DTT
組成物2−2:組成物2+5mM チオグリセロール
組成物2−3:組成物2+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で、0から12日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表3(10℃)と表4(25℃)に示した。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
ATPの存在下において、DTT、チオグリセロール及びNACはそれぞれIMPDH安定化効果を示した。
【0101】
[組成物3]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
16mM 塩化マグネシウム
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0102】
上記の組成物3に以下のとおり添加物を添加し、組成物3−1から3−3を調製した。
組成物3−1:組成物3+5mM DTT
組成物3−2:組成物3+5mM チオグリセロール
組成物3−3:組成物3+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で、0から12日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表5(10℃)と表6(25℃)に示した。
【0103】
【表5】
【0104】
【表6】
10℃保存の場合、塩化マグネシウムの存在下においてDTTがIMPDH安定化効果を示したが、25℃保存の場合、DTTはIMPDH安定化効果を示さなかった。塩化マグネシウムの存在下において、10℃及び25℃保存の場合、チオグリセロール及びNACはそれぞれIMPDH安定化効果を示した。
【0105】
[組成物4]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
0.14% マンニトール
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0106】
上記の組成物4に以下のとおり添加物を添加し、組成物4−1から4−3を調製した。
組成物4−1:組成物4+5mM DTT
組成物4−2:組成物4+5mM チオグリセロール
組成物4−3:組成物4+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で、0から12日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表7(10℃)と表8(25℃)に示した。
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
組成物1−1から1−3について得られた結果と比較したところ、マンニトールは、IMPDHの安定性とは関係がないことが明らかになった。
【0109】
[組成物5]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
16mM 塩化マグネシウム
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0110】
上記の組成物5に以下のとおり添加物を添加し、組成物5−1から5−3を調製した。
組成物5−1:組成物5+5mM DTT
組成物5−2:組成物5+5mM チオグリセロール
組成物5−3:組成物5+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で、0から14日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表9(10℃)と表10(25℃)に示した。
【0111】
【表9】
【0112】
【表10】
ATPとマグネシウムイオンの存在下においては、DTTはIMPDH安定化効果を示さず、逆に不安定化効果を示した。一方、チオグリセロール及びNACはそれぞれ、ATPとマグネシウムイオンの存在下においてもIMPDHの安定化効果を示した。
【0113】
[組成物6]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
16mM 塩化マグネシウム
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
0.14% マンニトール
【0114】
上記の組成物6に以下のとおり添加物を添加し、組成物6−1から6−3を調製した。
組成物6−1:組成物6+5mM DTT
組成物6−2:組成物6+5mM チオグリセロール
組成物6−3:組成物6+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で、0から14日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表11(10℃)と表12(25℃)に示した。
【0115】
【表11】
【0116】
【表12】
組成物6から組成物6−3中のIMPDHの安定性は、組成物5から5−3と同様の傾向を示した。マンニトールの影響は無いと考えられた。
【0117】
「組成物1から1−3」から「組成物6から6−3」を用いた上記の安定性試験の結果から、チオグリセロール及び/又はNACを添加することにより、IMPDHが安定化することが確認された。特に、少なくともIMPDH、ATP及びマグネシウムイオンが存在する条件において、チオグリセロール及び/又はNACを添加することにより、IMPDHが安定化することが確認された。
【0118】
組成物5に、下記表に示した濃度のDTTを添加した各組成物を調製した。該組成物を10℃又は25℃で0から14日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表13(10℃)と表14(25℃)に示した。
【0119】
【表13】
【0120】
【表14】
DTTの濃度に関わらず、ATPとマグネシウムイオンの存在下においては、DTTはIMPDH安定化効果を示さず、逆に不安定化効果を示した。
【0121】
組成物5に、下記表に示した濃度のチオグリセロールを添加した。該組成物を10℃又は25℃で0から14日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表15(10℃)と表16(25℃)に示した。
【0122】
【表15】
【0123】
【表16】
チオグリセロールは、DTTと異なり、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても、少なくとも5から20mMの範囲で、0.16U/mLのIMPDHの安定化効果を示した。すなわち、IMPDH 1U当たり、少なくとも31.25から125μmolの範囲のチオグリセロールが存在する場合には、IMPDHの安定化が認められた。
【0124】
組成物5に、下記表に示した濃度のNACを添加した。該組成物を10℃又は25℃で0から14日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表17(10℃)と表18(25℃)に示した。
【0125】
【表17】
【0126】
【表18】
NACは、DTTと異なり、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても、少なくとも5から20mMの範囲で、0.16U/mLのIMPDHの安定化効果を示した。すなわち、IMPDH 1U当たり、少なくとも31.25から125μmolの範囲のNACが存在する場合には、IMPDHの安定化が認められた。
【0127】
[組成物5A]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
16mM 塩化マグネシウム
0.1U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0128】
上記の組成物5Aに、下記表に示した濃度のDTT又はチオグリセロールを添加した。該組成物を25℃で0から16日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表19(DTT)及び表20(チオグリセロール)に示した。
【0129】
【表19】
【0130】
【表20】
ATPとマグネシウムイオンの存在下においては、1から10mMの範囲のDTTは0.1U/mLのIMPDHの安定化効果を示さず、逆に不安定化効果を示した。一方、少なくとも1から10mMの範囲のチオグリセロールは、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても0.1U/mLのIMPDHの安定化効果を示した。すなわち、IMPDH 1U当たり、少なくとも10から100μmolの範囲のチオグリセロールが存在する場合には、IMPDHの安定化が認められた。
【0131】
[組成物5B]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
16mM 塩化マグネシウム
1U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0132】
上記の組成物5Bに、下記表に示した濃度のDTT又はチオグリセロールを添加した。該組成物を25℃で0から16日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表21(DTT)及び表22(チオグリセロール)に示した。
【0133】
【表21】
【0134】
【表22】
ATPとマグネシウムイオンの存在下においては、1から10mMの範囲のDTTは1U/mLのIMPDHの安定化効果を示さず、逆に不安定化効果を示した。一方、少なくとも5から10mMの範囲のチオグリセロールは、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても1U/mLのIMPDHの安定化効果を示した。すなわち、IMPDH 1U当たり、少なくとも5から10μmolの範囲のチオグリセロールが存在する場合には、IMPDHの安定化が認められた。
【0135】
[組成物5C]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
16mM 塩化マグネシウム
10U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0136】
上記の組成物5Cに、下記表に示した濃度のDTT又はチオグリセロールを添加した。該組成物を25℃で0から16日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表23(DTT)及び表24(チオグリセロール)に示した。
【0137】
【表23】
【0138】
【表24】
ATPとマグネシウムイオンの存在下においては、1から10mMの範囲のDTTは10U/mLのIMPDH安定化効果を示さず、逆に不安定化効果を示した。一方、少なくとも10mMの範囲のチオグリセロールは、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても10U/mLのIMPDHの安定化効果を示した。すなわち、IMPDH 1U当たり、少なくとも1μmolのチオグリセロールが存在する場合には、IMPDHの安定化が認められた。
【0139】
[実施例2]IMPDHを含有するミゾリビン測定用組成物の安定性1
[組成物7]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
1% シュークロース
0.14% マンニトール
50mM 塩化カリウム
8mM ATP
5mM NAD
30mM 塩化ナトリウム
16mM 塩化マグネシウム
0.05% アジ化ナトリウム
0.05% TX−100
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
0.7U/mL 参考例6で製造した酵素P
【0140】
[組成物8]
150mM Tris/HCl緩衝液 pH9.2
50mM 塩化カリウム
20mM IMP
0.05% アジ化ナトリウム
0.05% TX−100
【0141】
[ミゾリビン標準液1から4]
生理的食塩水をミゾリビン標準液1、ミゾリビンを生理的食塩水にて溶解して調製して得たミゾリビン0.87μg/mLの濃度の溶液をミゾリビン標準液2とし、以下、2.63μg/mL濃度の溶液をミゾリビン標準液3、4.42μg/mLをミゾリビン標準液4として用意した。なお、生理的食塩水をミゾリビン標準液1とした。
【0142】
[日立7080形自動分析機パラメーター1]
分析法: [レートA][10][20][22][0][0]
波長(副波長/主波長): [405]/[340]
検体量: 種別1
標準: [2.0][0.0][0]
試薬分注量
R1: [120][0][ ][99]
R2: [0][0][ ][99]
R3: [60][0][ ][99]
R4: [0][0][ ][99]
キャリブレーション
S1 Abs.: 0
K: 10000
スタートアップキャリブレーションはしない。
【0143】
[日立7080形自動分析機パラメーター1]と下記の[日立7080形自動分析機パラメーター2]は、日立7080形自動分析機の取扱説明書等を参考に設定した。
【0144】
上記の組成物7に以下のとおり添加物を添加し、組成物7−1から7−3を調製した。
組成物7−1:組成物7+1mM DTT
組成物7−2:組成物7+1mM チオグリセロール
組成物7−3:組成物7+1mM NAC
組成物7から7−3を10℃で0から22日間保存した。各期間保存した該組成物と、用事調製した組成物8とを用いて、ミゾリビン標準液1から4についてのミゾリビン量を測定した。測定には[日立7080形自動分析機パラメーター1]を用いて日立7080形自動分析機を使用した。該パラメーター中、検体はミゾリビン標準液1から4、R1は各期間保存した後の組成物7から7−3、R3は用事調製した組成物8とした。R2及びR4は使用しなかった。
【0145】
図1に、凡例に示した期間10℃で保存した組成物7と、用事調製した組成物8を用いてミゾリビン標準液1から4中のミゾリビンを測定した結果を、検量線として示した。図中の横軸はミゾリビン濃度(μg/mL)を示す。縦軸(ΔA340nm)は、感度(NADHの吸光変化が、直線的である部分の1分間当たりの変化量(ΔmAbs/min))を示す。
【0146】
また、組成物7−1から7−3の結果は、それぞれ図2から図4に示した。0日保存の組成物7から7−3を用いて測定した場合は、図1から図4の「0日」の線(○の線)で示されているとおり、検量線が直線となりミゾリビンを正確に測定できることを示している。図1に示されるとおり、組成物7を6日間保存してもミゾリビンの測定が可能であったが、11日間の保存後においては、検量線は直線とならず、ミゾリビンが測定できないことが確認された。すなわち、ミゾリビン測定用の組成物7は、11日の保存ができないことが明らかになった。
【0147】
図2に示した結果から、DTTを添加した組成物7−1では、0日保存の場合のみミゾリビンの測定が可能であった。すなわち、極めて不安定な組成物であった。一方、図3と図4に示されるとおり、チオグリセロール又はNACを添加した組成物7−2と7−3では、少なくとも11日間の保存後もミゾリビンを測定することができ、充分に安定であった。
【0148】
本実施例により、IMPDH、ATP、及びマグネシウムイオンが存在するミゾリビン測定用の組成物に、チオグリセロール又はNACを含有させることにより、10℃での保存において、該組成物が安定化することが示された。
【0149】
[実施例3]IMPDHを含有するミゾリビン測定用組成物の安定性2
[組成物9]
90mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
1% シュークロース
0.14% マンニトール
50mM 塩化カリウム
8mM ATP
5mM NAD
30mM 塩化ナトリウム
16mM 塩化マグネシウム
0.05% アジ化ナトリウム
0.05% TX−100
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
0.7U/mL 参考例6で製造した酵素P
【0150】
上記の組成物9に以下のとおり添加物を添加し、組成物9−1から9−3を調製した。
組成物9−1:組成物9+5mM DTT
組成物9−2:組成物9+5mM チオグリセロール
組成物9−3:組成物9+5mM NAC
【0151】
組成物9は4℃で60日間保存した。組成物9−1から9−3を4℃で49日間保存した。各期間保存した後の組成物9から9−3と、用事調製した組成物8とを用いて上記ミゾリビン標準液1から4のミゾリビン量を測定した。測定には上記[日立7080形自動分析機パラメーター1]を用いて日立7080形自動分析機を使用した。該パラメーター中、検体はミゾリビン標準液1から4、R1は各期間保存した組成物9から9−3、R3は用事調製した組成物8とした。R2及びR4は使用しなかった。
【0152】
結果を組成物7から7−3の場合と同様に検量線として図5から図8に示した。図5で示されているとおり、組成物9は0日保存の場合にはミゾリビンの測定をすることができたが、60日保存の場合にはミゾリビンが測定できなかった。また、図6によれば、DTTを添加した組成物9−1では、29日保存までの場合はミゾリビンの測定をすることができたが、49日保存後はミゾリビンが測定できなかった。一方、図7と図8で示されるとおり、チオグリセロール又はNACを添加した組成物9−2と9−3では、少なくとも49日保存後もミゾリビンを測定することができた。
【0153】
本実施例により、IMPDH、ATP、及びマグネシウムイオンが存在するミゾリビン測定用の組成物に、チオグリセロール又はNACを含有させることにより、4℃での保存において、該組成物が安定化することが示された。
【0154】
[実施例4]IMPDHを含有するミゾリビン測定用組成物の安定性3
[組成物10]
90mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
1% シュークロース
50mM 塩化カリウム
8mM ATP
5mM NAD
30mM 塩化ナトリウム
16mM 塩化マグネシウム
0.05% アジ化ナトリウム
0.05% TX−100
5mM チオグリセロール
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
0.7U/mL 参考例6で製造した酵素P
【0155】
上記の組成物10に以下のとおり添加物を添加し、組成物10−1から10−4を調製した。
組成物10−1:組成物10+0.07%マンニトール
組成物10−2:組成物10+0.14%マンニトール
組成物10−3:組成物10+0.75%(約40mM)マンニトール
組成物10−4:組成物10+0.14%トレハロース
【0156】
組成物10から10−4を10℃で12日間保存した。各期間保存した後の組成物10から10−4と、用事調製した組成物8とを用いて、上記ミゾリビン標準液1〜4のミゾリビン量を測定した。測定には上記[日立7080形自動分析機パラメーター1]を用いて日立7080形自動分析機を使用した。該パラメーター中、検体はミゾリビン標準液1から4、R1は各期間保存した組成物10から10−4、R3は用事調製した組成物8とした。R2及びR4は使用しなかった。10℃で0から12日間保存した組成物10から10−4と用事調製した組成物8を用いてミゾリビン標準液1〜4のミゾリビン量を測定した結果を組成物7から7−3の場合と同様に検量線として図9から図13に示した。図9から図13で示すように、組成物10から10−4を使用した場合、検体中のミゾリビン濃度を少なくとも12日目までは測定することができた。
【0157】
[実施例5]
[日立7080形自動分析機パラメーター2]
分析法: [レートA][10][20][22][0][0]
波長(副波長/主波長): [405]/[340]
検体量: 種別1
標準: [2.0][0.0][0]
試薬分注量
R1: [120][0][ ][99]
R2: [0][0][ ][99]
R3: [60][0][ ][99]
R4: [0][0][ ][99]
キャリブレーション
キャリブレーション方法:[リニア]
ポイント: [2]
スパンポイント: [0]
重み付けファクタ: [0]
標準液 (1) (2) (3) (4)
濃度: [0.00] [0.87] [2.63] [4.42]
検体量: [2.0] [2.0] [2.0] [2.0]
スタートアップキャリブレーションをする。
【0158】
上記組成物9−2を日立7080形自動分析機の試薬用冷蔵庫中(4〜10℃の範囲で温度が変動する)で0から12日間保存した。用事調製の組成物9−2と12日保存の組成物9−2を用いて、3人のミゾリビンを投与された患者の血清(検体1〜3)中のミゾリビンを測定して、用事調製の組成物9−2と12日保存の組成物9−2の組成物の、ミゾリビン測定用組成物としての性能を比較した。測定には日立7080形自動分析機を使用し、上記[日立7080形自動分析機パラメーター2]を用い、キャリブレーターは上記ミゾリビン標準液1〜4を使用した。該パラメーター中、検体は検体1〜3、R1は用事調製の組成物9−2又は12日保存の組成物9−2、R3は用事調製した組成物8とした。R2及びR4は使用しなかった。検体1から3中のミゾリビン濃度をそれぞれ5回測定し、平均値とCV(%)を求めて、用事調製の組成物9−2の結果を表19に、12日保存の組成物9−2の結果を表20に示した。
【0159】
【表25】
【0160】
【表26】
表25と表26に示すように、用事調製の組成物9−2を使用した測定結果に対して、12日間保存した組成物9−2を使用した測定結果は±10%の範囲に収まり、組成物9−2は、12日間保存後もミゾリビン測定用の組成物として好適に用いることができることが明らかになった。さらに、用事調製及び12日間保存した組成物9−2を使用した測定結果は、いずれもCV(%)が0.5%以下であり、再現性が高いことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明によれば、様々な条件下であっても、IMPDHを安定して含有するIMPDH含有組成物及びIMPDHを安定化する方法が提供される。、これにより、例えば、医薬品の開発や、試薬の開発の分野で安定なIMPDHの利用が可能になるという産業上の利用可能性を有する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDHと略す場合がある)を安定して含む、IMPDH含有組成物に関する。また、本発明は、IMPDHを安定化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IMPDHは、生体内に存在し、グアニンヌクレオチドの新規合成に関与する酵素である。IMPDHは、典型的には、イノシン5’一リン酸(IMPと略す場合がある)を酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADと略す場合がある)の存在下、キサントシン5’一リン酸(XMPと略す場合がある)と酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADHと略す場合がある)に変換する反応に作用する(非特許文献1)。増殖の早いヒト白血球細胞系や、その他の腫瘍細胞系において、IMPDHの活性上昇が観察されており、これは、IMPDHが免疫抑制療法や抗癌療法のための標的となり得ることを示唆する。また、ウィルスに感染した細胞系におけるウィルスの複製において、IMPDHが関与することも知られている。これらのことから、IMPDHは、種々の医薬品の開発において着目されており、例えば、IMPDH阻害剤は、免疫抑制剤、抗癌剤、抗血管過増殖剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗乾癬、及び抗ウィルス剤となり得ると考えられる。
【0003】
しかしながら、IMPDHは安定性が低いという問題を有する。例えば、水溶液中における哺乳類由来のIMPDHは不安定であり、特に水溶液の塩濃度が低いときには凝集しやすいということが知られている。IMPDHの安定性について非特許文献2には、IMPDHを濃縮するか又は牛アルブミンと共存させると、室温でも安定となること、及びジチオトレイトール(DTTと略す場合がある)の添加はIMPDHの安定性を向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】酵素ハンドブック、朝倉書店、1987年第5刷、78頁
【非特許文献2】Hager P. W.、Collart F. R.、Huberman E.、Mitchell B. S.、 Recombinant human inosine monophosphate dehydrogenase type I and type II proteins、 Biochem. Pharmacol.、49巻、1323−1329頁、1995年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、IMPDHは、医薬品の開発や、試薬の開発の分野で重要視されている酵素であり、様々な条件下において、IMPDHを安定化する方法及び安定化されたIMPDHを含有する組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、IMPDHの安定化方法を種々検討する中で、IMPDHの安定化効果を有するとして非特許文献2に報告されているDTTが、非特許文献2に記載されるような条件下では確かにIMPDHの安定化効果を示すが、異なる条件下、例えばATPとマグネシウムイオンの存在下においては、DTTがIMPDHを不安定化するという想像もしなかった効果を示すことを発見した。一方、本発明者らは、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NACと略す場合がある)がIMPDHの安定化効果を有することを発見し、さらにこれらの化合物は、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても顕著なIMPDHの安定化効果を示すことを発見して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の態様では、以下のものが提供される。
[1]
イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)と、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)とを含有する、IMPDH含有組成物。
[1−2]
リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はNACをさらに含有する、IMPDH含有組成物。
[1−3]
リン酸供与体及び金属イオンが混在するIMPDH含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はNACをさらに含有する、IMPDH含有組成物。
[1−4]
前記リン酸供与体がATPである、[1−2]又は[1−3]に記載のIMPDH含有組成物。
[1−5]
前記金属イオンがマグネシウムイオンである、[1−2]〜[1−4]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−6]
水溶液の形態である、[1]〜[1−5]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−7]
IMPDHの含有量が、0.01U/mL以上1000U/mL以下である、[1]〜[1−6]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−7−1]
IMPDHの含有量が、0.1U/mL以上200U/mL以下である、[1]〜[1−6]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−7−2]
IMPDHの含有量が、0.1U/mL以上50U/mL以下である、[1]〜[1−6]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−8]
チオグリセロール又はNACの含有量が、0.1mM以上100mM以下である、[1]〜[1−7−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−8−1]
チオグリセロール又はNACの含有量が、1mM以上50mM以下である、[1]〜[1−7−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−8−2]
チオグリセロール又はNACの含有量が、1mM以上20mM以下である、[1]〜[1−7−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−9]
IMPDH 1U当たり、チオグリセロール及び/又はNACを0.02μmol以上200μmol以下含有する、[1]〜[1−8−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−9−1]
IMPDH 1U当たり、チオグリセロール及び/又はNACを1μmol以上200μmol以下含有する、[1]〜[1−8−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−9−2]
IMPDH 1U当たり、チオグリセロール及び/又はNACを1μmol以上125μmol以下含有する、[1]〜[1−8−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−10]
IMPDHの酵素反応を利用するための組成物である、[1]〜[1−9−2]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−11]
IMPDHの酵素反応を利用して、IMPDHの阻害剤、IMPDHの基質若しくはIMPDHの補酵素又はこれらの前駆体のいずれかを測定するための試薬である、[1]〜[1−10]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−12]
IMPDHの酵素反応を利用して、ミゾリビン及び/又はリバビリンを測定するための試薬である、[1]〜[1−11]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−13]
ジチオトレイトール(DTT)を実質的に含まない、[1]〜[1−12]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−14]
乾燥状態である、[1]〜[1−5]及び[1−9]〜[1−13]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−15]
凍結乾燥状態である、[1]〜[1−5]及び[1−9]〜[1−13]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−16]
前記IMPDHが、Bacillus属由来である、[1]〜[1−15]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−17]
前記IMPDHが、Bacillus subtilis由来である、[1]〜[1−16]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−18]
前記IMPDHが、Bacillus subtilis ATCC23857株由来である、[1]〜[1−17]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−19]
IMPDHの酵素反応を利用して、IMP、キサントシン5’一リン酸(XMP)、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(酸化型NAD(P)類)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(還元型NAD(P)類)、ミゾリビン5’一リン酸、リバビリン5’一リン酸、ミコフェノール酸及びこれらの前駆体のいずれかを測定するための試薬である、[1]〜[1−18]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−20]
酸化型NAD(P)類を含有する[1]から[1−19]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−21]
還元型NAD(P)類を含有する[1]から[1−20]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−22]
IMPを含有する[1]から[1−21]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−23]
XMPを含有する[1]から[1−22]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
[1−24]
塩化カリウムを含有する[1]から[1−23]のいずれかに記載の組成物。
[1−25]
[1]〜[1−24]のいずれかに記載のIMPDH含有組成物を試薬として含む、IMPDHの酵素反応を利用して試料を測定するためのキット。
【0008】
また、本発明の第2の態様では、以下のものが提供される。
[2]
リン酸供与体及び/又は金属イオンと、イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)とを含有するIMPDH含有組成物のための安定化剤であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を有効成分とする安定化剤。
[2−2]
前記IMPDH含有組成物が[1−4]〜[1−7−2]及び[1−10]〜[1−24]のいずれかに記載の特徴を有する[2]に記載の安定化剤。
[2−3]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの量が0.02μmol以上200μmol以下である、[2]又は[2−2]に記載の安定化剤。
[2−3−1]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの量が1μmol以上200μmol以下である、[2]又は[2−2]に記載の安定化剤。
[2−3−2]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの量が1μmol以上125μmol以下である、[2]又は[2−2]に記載の安定化剤。
【0009】
また、本発明の第3の態様では、以下のものが提供される。
[3]
イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物の安定化方法であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を前記組成物に添加する工程を含む安定化方法。
[3−2]
前記IMPDH含有組成物が[1−6]〜[1−7−2]及び[1−10]〜[1−24]のいずれかに記載の特徴を有する[3]に記載の安定化方法。
[3−3]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が0.02μmol以上200μmol以下である、[3]又は[3−2]に記載の安定化方法。
[3−3−1]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上200μmol以下である、[3]又は[3−2]に記載の安定化方法。
[3−3−2]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上125μmol以下である、[3]又は[3−2]に記載の安定化方法。
[3−4]
リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物の安定化方法であって、チオグリセロール及び/又はNACを前記組成物に添加する工程を含む安定化方法。
[3−5]
前記IMPDH含有組成物が[1−4]〜[1−7−2]及び[1−10]〜[1−24]のいずれかに記載の特徴を有する[3−4]に記載の安定化方法。
[3−6]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が0.02μmol以上200μmol以下である、[3−4]又は[3−5]に記載の安定化方法。
[3−6−1]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上200μmol以下である、[3−4]又は[3−5]に記載の安定化方法。
[3−6−2]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上125μmol以下である、[3−4]又は[3−5]に記載の安定化方法。
【0010】
また、本発明の第4の態様では、以下のものが提供される。
[4]
リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するイノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物の保存方法であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を前記組成物に添加する工程、及び、前記IMPDH含有組成物を25℃以下で保存する工程、を含む保存方法。
[4−2]
前記IMPDH含有組成物が[1−4]〜[1−7−2]及び[1−10]〜[1−24]のいずれかに記載の特徴を有する[4]に記載の保存方法。
[4−3]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が0.02μmol以上200μmol以下である、[4]又は[4−2]に記載の保存方法。
[4−3−1]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上200μmol以下である、[4]又は[4−2]に記載の保存方法。
[4−3−2]
1UのIMPDHに対する、チオグリセロール及び/又はNACの添加量が1μmol以上125μmol以下である、[4]又は[4−2]に記載の保存方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、様々な条件下、例えば、リン酸供与体及び/又は金属イオンの存在下であっても、IMPDHを安定化する方法を提供することができる。また、IMPDHが安定化された、IMPDH含有組成物を提供することができる。これらの方法及び組成物は、例えば、医薬品の開発や、試薬の開発の分野で非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例2において、IMPDH、ATP及びマグネシウムイオンを主に含有する組成物7を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図2】実施例2において、組成物7に1mM DTTを添加した組成物7−1を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図3】実施例2において、組成物7に1mM チオグリセロールを添加した組成物7−2を、10℃にて種々の期間保存後、この保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図4】実施例2において、組成物7に1mM NACを添加した組成物7−3を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図5】実施例3において、IMPDH、ATP及びマグネシウムイオンを主に含有する組成物9を4℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図6】実施例3において、組成物9に5mM DTTを添加した組成物9−1を4℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図7】実施例3において、組成物9に5mM チオグリセロールを添加した組成物9−2を4℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図8】実施例3において、組成物9に5mM NACを添加した組成物9−3を4℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図9】実施例4において、5mM チオグリセロールを添加したIMPDH、ATP及びマグネシウムイオンを主に含有する組成物10を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図10】実施例4において、組成物10に0.07%マンニトールを添加した組成物10−1を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図11】実施例4において、組成物10に0.14%マンニトールを添加した組成物10−2を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図12】実施例4において、組成物10に0.75%(40mM)マンニトールを添加した組成物10−3を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【図13】実施例4において、組成物10に0.14%トレハロースを添加した組成物10−4を10℃にて種々の期間保存後、保存後の組成物を用いてミゾリビン標準液を測定して得た検量線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
本実施の形態は、イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)と、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)とを含有する、IMPDH含有組成物に関する。
【0015】
本実施の形態におけるチオグリセロール(α−チオグリセロール、α−Thioglycerolともいう)は、公知の化合物であり、CAS番号96−27−5と分類される場合もあり、チオール基を有する。なお、本実施の形態における「チオグリセロール」とは、所望のIMPDH安定化活性を有する限り、その塩、誘導体等であってもよい。
【0016】
本実施の形態におけるNAC(N−アセチルシステイン、N−Acetyl cysteine、(2R)−acetamido−3−sulfanylpropanoic acidともいう)は、公知の化合物であり、CAS番号616−91−1と分類される場合もあり、チオール基を有する。なお、本実施の形態における「NAC」とは、所望のIMPDH安定化活性を有する限り、その塩、誘導体等であってもよい。
【0017】
本実施の形態におけるDTT(ジチオトレイトール、dithiothreitolともいう)は、公知の化合物であり、CAS番号3483−12−3と分類される場合もあり、チオール基を2つ有する。
【0018】
本実施の形態におけるIMPDHは、正反応として、NAD(P)類とIMPからNAD(P)H類とXMPを生ずる反応A、又はこの逆反応に対する触媒作用を主な作用とする酵素である。正反応の場合、IMPに加えて、アデノシン5’一リン酸、5−メチルウリジン5’一リン酸、グアノシン5’一リン酸、シチジン5’一リン酸、ウリジン5’一リン酸等から選択されるいずれか一つ以上のヌクレオチドや、デオキシアデノシン5’一リン酸、デオキシチミジン5’一リン酸、デオキシグアノシン5’一リン酸、デオキシシチジン、デオキシウリジン5’一リン酸等から選択されるいずれか一つ以上のデオキシヌクレオチドに作用してもよい。一態様において、本実施の形態のIMPDH含有組成物を、後述のミゾリビン又はリバビリンの測定に用いるという観点からは、IMPDHは、ミゾリビンで阻害されず、リン酸化ミゾリビンで阻害される反応を触媒し得る理化学的性質や、リバビリンで阻害されず、リン酸化リバビリンで阻害される反応を触媒し得る理化学的性質を有することが好ましい。本実施の形態におけるIMPDHは、上記の反応A又はその逆反応に対する触媒作用を有する限り特に限定されず、また、I型、II型のいずれのアイソザイムであってもよいが、例えば、EC 1.1.1.205と分類される酵素を用いることができる。
【0019】
本実施の形態におけるIMPDHの由来は特に限定されず、天然の生物由来であってもよい。例えば、ヒト、大腸菌、Candida albicans、Tritrichomonas foetus、Brrelia burgdorferi、ラット、ウサギ、Bacillus sereus由来等公知のIMPDHであってもよいし、それらのアイソザイムであってもよく(S.F.Carrら、J.Biol.Chem.、268巻、27286頁、1993年、H.J.Gilbertら、Biochem.J.、183巻、481頁、1979年、G.A.Koehlerら、J.Bacteriol.、179巻、2331頁、1997年、F.G.Whitbyら、36巻、10666頁、1997年、X.Zhouら、J.Biol.Chem.、272巻、21977頁、1997年等)、典型的な例としては、Bacillus属やOceanobacillus属に属する微生物、好ましくは、Bacillus subtilis又はOceanobacillus iheyensis、更に好ましくは、Bacillus subtilis ATCC23857株又はOceanobacillus iheyensis DSM14731株、最も好ましくはBacillus subtilis ATCC23857株由来である。他の菌株バンクで購入できる上記の株との同等株や自然界から分離した同等株由来であってもよい。
【0020】
本実施の形態におけるIMPDHのアミノ酸配列は、上記の所望の活性を有する限り特に限定されない。例えば配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列あるいはこれらの配列において1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列であってもよい。該アミノ酸配列は、IMPDHオーソログで高く保存されている配列である配列番号3のアミノ酸配列及び配列番号4のアミノ酸配列を含む配列が好ましく、更に、同様に高く保存されている配列でIMP結合に関連するとされている(J. Biol. Chem., 2004年、 279巻、 40320-40327頁)配列番号5を含む配列がより好ましく、更に、同様に高く保存されている配列で活性中心のループ配列であるとされている(J. Biol. Chem., 2004年、 279巻、 40320-40327頁)配列番号6の配列を含む配列が更に好ましく、特に好ましくは配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列である。配列番号1又は配列番号2におけるアミノ酸の欠失、置換若しくは付加のうち、付加の例としては、N末端側及び/又はC末端側にチオレドキシン酵素等の機能性酵素やその他のアミノ酸配列からなる部分の付加が挙げられる。付加アミノ酸残基としては、シグナルペプチド、TEE配列、Sタグ又はHisタグ等が挙げられる。アミノ酸を融合タンパク質とすることも好ましい例として挙げられ、例えば、タンパク質の精製や確認等をすることのできるタグと呼ばれる部分を融合させることができる。場合によっては、タグ部分を削除してもよいし、タグ部分の全部又は一部を残してもよい。さらには、例えば、IMPDHを菌体外やペリプラズム(グラム陰性細菌等の場合)へ輸送する為の約20個のシグナルペプチドの付加や、効率的な精製を行う為の5から10個のHisの付加であってもよい。これらを直列して付加してもよい。これらのアミノ酸配列の間等に数個のプロテアーゼ認識アミノ酸配列を配置して付加することもできる。上記の付加の例と同様に、欠失、又は置換についても、当業者に公知の様々な欠失又は置換を行うことができる。欠失の例としては、N末端側又はC末端側から順にアミノ酸を削除する欠失が挙げられる。例えば、IMPDHの酵素の本質的な機能とは無関係の数個のアミノ酸からなるドメインが存在する場合や、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列中の複数個のアミノ酸からなるギャップが存在する場合、それらの欠失を組み合わせることもできる。1つのアミノ酸配列において、欠失、置換又は付加を適宜組み合わせることも可能である。本実施の形態におけるIMPDHは、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列において、場合によっては、N末端のMetの欠失や、N末端がアシル基やアルキル基等による修飾を受ける等の翻訳後修飾を受けたものであってもよい。IMPDHを公知の方法で無水コハク酸やPEG等により化学修飾して、至適pHや安定性等の性質を利用しやすいように変化させたものであってもよい。所望の活性を有する限り、IMPDHの二次構造、三次構造及び四次構造は、特に限定されない。
【0021】
本実施の形態におけるIMPDHを、塩基配列の翻訳によって得る場合に用いる塩基配列は、得られるIMPDHが所望の活性を有する限り特に限定されない。例えば配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列をコードする塩基配列の場合、配列番号1又は配列番号2と実質的に均等なアミノ酸配列をコードする塩基配列であってもよく、例えば配列番号1のアミノ酸配列のうち、IMPDHの所望の活性に関与しない一部のアミノ酸を変異させたアミノ酸配列、例えば1又は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列であってもよい。好ましくは、前記の塩基配列は配列番号1又は配列番号2のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列が含まれる塩基配列である。配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列をコードする塩基配列としては、配列番号7又は配列番号8の塩基配列や、その塩基配列を大腸菌や放線菌等宿主のコドン使用頻度に合わせて当業者に公知の手法により変更した塩基配列が例示される。
【0022】
一態様において、本実施の形態は、リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はNACをさらに含有する、前記IMPDH含有組成物に関する。特に好ましい態様において、本実施の形態は、ATP及び/又はマグネシウムイオンが混在するIMPDH含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はNACをさらに含有する、前記IMPDH含有組成物に関する。
【0023】
本実施の形態において、「リン酸供与体」としては、例えば、ATP、ITP、UTP、CTP、GTP、TTP又はポリリン酸等のいずれか一つ以上が挙げられ、好ましくはATPである。一態様において、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物がミゾリビン/リバビリン測定試薬である場合、リン酸供与体は、ミゾビリン/リバビリンのリン酸化に寄与する化合物であることが好ましく、ATPが特に好ましい。
【0024】
本実施の形態において、ATP(アデノシン5’−三リン酸、Adenosine Tri−phosphate、5−(6−アミノプリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシオキソフラン−2−イルメトキシヒドロキシホスホリルオキシヒドロキシホスホリルオキソリン酸ともいう)は、公知のATPを含み、ナトリウム塩等を形成した塩としてIMPDH含有組成物中に含有されてもよい。
【0025】
本実施の形態において、「金属イオン」としては、例えば、マグネシウムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン等が挙げられ、好ましくは2価の金属イオンであり、より好ましくはマグネシウムイオンである。一態様において、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物がミゾリビン/リバビリン測定試薬である場合、金属イオンは、ミゾビリン/リバビリンリン酸化酵素の補因子となる金属イオンであることが好ましく、マグネシウムイオンが特に好ましい。
【0026】
本実施の形態において、例えばマグネシウム(Mg)イオンは、マグネシウムイオン(Mg2+等)自体及び水溶液中でマグネシウムイオンとなるマグネシウムを含み、塩を形成した塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等としてIMPDH含有組成物中に含有されてもよい。本実施の形態における他の金属イオンについても同様である。
【0027】
本実施の形態において、リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物(例えば、ATP及び/又はマグネシウムイオンが混在するIMPDH含有組成物)とは、リン酸供与体及び/又は金属イオンが前記組成物に混在する場合のみならず、混在すると予想される場合も含む。好ましくは、前記組成物は、リン酸供与体及び金属イオンが混在する組成物である。また、本実施の形態において混在とは、前記組成物に意図的に混在させる場合と意図せずに混在する場合を含む。リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物において、リン酸供与体及び/又は金属イオンとIMPDHとが同時に存在する限り、それぞれの量、存在比及び同時に存在している時間は限定されない。混在するリン酸供与体及び/又は金属イオンの量は特に限定されず、後述する細胞や培地中に存在する程度の量でもよいが、これらの存在下でも安定してIMPDHを含む組成物を提供するという観点からは、IMPDHの1当量以上が好ましく、後述する濃度であれば更に好ましい。
【0028】
なお本発明の一態様としては、DTTを実質的に含まない、前記のIMPDH含有組成物、特にリン酸供与体及び/又は金属イオンが混在する前記IMPDH含有組成物(例えば、ATP及び/又はマグネシウムイオンが混在するIMPDH含有組成物)が好ましい例として挙げられる。DTTは、一定の条件下、例えばATPとマグネシウムイオンの存在下においては、IMPDHの不安定化に働くことがあり、その場合には、DTTを、例えば検出限界以下とすることが好ましい。そのような場合の例として、DTT含有量が0.1mM以下、好ましくは0.05mM以下、より好ましくは0.01mM以下であることが例示される。同様に、DTTの分解物や酸化されたDTTも実質的に含まない前記IMPDH含有組成物も、好ましい例として挙げられる。
【0029】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物の用途は限定されない。例えば、該IMPDH含有組成物の用途としては、前記のIMPDHの酵素反応(逆反応)を利用した、物質変換における作用剤としての用途が挙げられ、その例としてはイノシン又はIMP(イノシン酸と呼ばれる場合がある)の合成が挙げられる。その他の用途としては試薬としての用途が挙げられ、その例としてはプリンヌクレオチド生合成経路の解析試薬、新規IMPDH阻害剤のスクリーニング用の試薬等が挙げられる。好ましい試薬の例としてはIMPDHの阻害剤(例えば、ミゾリビン5’一リン酸、リバビリン5’一リン酸、ミコフェノール酸等)、IMPDHの基質(例えば、IMP、XMP等)、IMPDHの補酵素(例えば、酸化型NAD(P)類、還元型NAD(P)類等)又はこれらの前駆体(例えば、ミゾリビン、リバビリン、後述の各種ミコフェノール酸前駆体等)等を測定するための測定試薬が挙げられる。一態様において、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物の用途は、IMP、XMP、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(酸化型NAD(P)類)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(還元型NAD(P)類)、ミゾリビン5’一リン酸、リバビリン5’一リン酸、ミコフェノール酸並びにミゾリビン及びリバビリンを含むこれらの前駆体からなる群から選ばれるいずれかの化合物の測定であることが好ましく、ミゾリビン及び/又はリバビリンの測定であることが更に好ましい。
【0030】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、IMPDHの阻害剤を測定するための試薬として用いる際の具体例を以下に説明する。IMPDHは、例えば、IMPをNADの存在下、XMPとNADHに変換する酵素であるため、測定対象とするIMPDH阻害剤の存在下又は非存在下で、上記の反応を行い、反応生成物の濃度変化から、IMPDH阻害剤の濃度を測定することができる。
【0031】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、IMPDHの基質を測定するための試薬として用いる際には、例えば、IMPDHの補酵素とIMPDHを含有する溶液中、IMPDHの基質の存在下又は非存在下で、IMPDHの酵素反応を行い、反応生成物の濃度変化から、IMPDHの基質の濃度を測定することができる。同様に、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、IMPDHの補酵素を測定するための試薬として用いる際には、例えば、IMPDHの基質とIMPDHを含有する溶液中、IMPDHの補酵素の存在下又は非存在下で、IMPDHの酵素反応を行い、反応生成物の濃度変化から、IMPDHの補酵素の濃度を測定することができる。
【0032】
また、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、上記のIMPDHの阻害剤、IMPDHの基質又はIMPDHの補酵素の前駆体を測定するための試薬として用いる際には、前駆体を上記の各阻害剤等に変換した後、上記と同様の手法を用いることにより、それぞれの前駆体の濃度を測定することができる。
【0033】
本実施の形態におけるミゾリビン(Mizoribine、4−carbamoyl−1−β−D−ribofuranosylimidazolium−5−olateともいう)又はリバビリン(Ribavirin、1−β−D−ribofuranosyl−1H−1,2,4−tri−azole−3−carboxamideともいう)は、公知の化合物であり、それぞれCAS番号50924−49−7又は36791−04−5と分類される場合もある。ミゾリビンはブレデニン等という商品名で市販されている場合もある。
【0034】
ミゾリビンは、主に免疫抑制剤として使用されている低分子化合物であるが、各個人に最適な投与を行うためには、血中ミゾビリン濃度を測定しながら投与量を調整することが必要であるという指摘がある(今日の移植 VOL.19 NO.5 SEPTEMBER 2006年 567頁)。従って、ミゾリビン濃度の正確な測定は非常に重要度が高い。なお、リン酸化ミゾビリン、リン酸化リバビリンは、IMPDH阻害作用を有することが知られている(Biochemical Pharmacology、49巻、9号、1323頁、1995年)。リン酸化ミゾリビン又はリン酸化リバビリンは、ミゾリビン又はリバビリンにリン酸基が結合した物質であり、リン酸基の数は1、2又は3であることができるが、好ましくは1である。すなわち、モノリン酸化ミゾリビン又はモノリン酸化リバビリンが好ましい。リン酸化され得る部位は特に限定されず、ミゾリビン又はリバビリンの糖部分、すなわちリボース部分の任意の水酸基であることができ、例えば1’位、2’位、又は5’位のリン酸化が挙げられ、場合によってはリングを形成してもよい。例えばモノリン酸化ミゾリビン又はモノリン酸化リバビリンの場合は、5’位が好ましく、すなわち、ミゾリビン5’一リン酸又はリバビリン5’一リン酸が好ましい。
【0035】
本実施の形態におけるミコフェノール酸(Mycophenolic acidともいう)は、公知の化合物であり、CAS番号24280−93−1と分類される場合もある。ミコフェノール酸はIMPDH阻害作用を有することが知られている(Biochemical Pharmacology、49巻、9号、1323頁、1995年)。一態様において、本実施の形態におけるミコフェノール酸は、IMPDHの阻害活性有する限り特に限定されず、硫酸、酢酸、グルタチオン、グルクロン酸と抱合される等、代謝されたミコフェノール酸、ミコフェノール酸類縁体等を含む。ミコフェノール酸の前駆体としては、ミコフェノール酸モフェチル((E)−6−(1,3−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−6−メトキシ−7−メチル−3−オキソ−5−イソベンゾフラニル)−4−メチルヘキセン酸2−(4−モルフォリニル)エチルエステルともいう)という場合がある。
【0036】
本実施の形態におけるNAD(P)類(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(リン酸)ともいう)は、それ自体又はその類縁体がIMPDHの補酵素としての活性を有する限り特に限定されず、NAD(P)、デアミドNAD(P)、チオNAD(P)、ニコチンアミドグアニンジヌクレオチド(リン酸)、ニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチド(リン酸)等が挙げられ、そのうちいずれか一つ以上であってもよいが、NADが好ましい。本実施の形態において、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(還元型NAD(P)類)、NAD(P)H類とは、上記NAD(P)類の還元型である。
【0037】
本実施の形態において、ATP、NAC、チオグリセロール、ミゾリビン、リバビリン、ミコフェノール酸等の化合物や添加物は、それぞれ所望の性質を有する限り、その由来、剤型、結晶型、添加物、商品名等により限定されない。
【0038】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物中のIMPDHは安定であり、特に溶液の形態のIMPDH含有組成物中においても安定である。また、後述するように、一態様において、本実施の形態は、IMPDHの安定化方法に関する。ここで、「IMPDHの安定化」は、X線回折や円偏光二色性スペクトルを利用したIMPDHの立体構造、電気泳動やゲル濾過等を利用したポリペプチドの状態、又は理化学的性質を指標として確認することができるが、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、IMPDHの酵素反応を利用するために用いるという観点からは、後述するIMPDHの活性を指標として確認することが好ましい。
【0039】
一態様において、本実施の形態は、IMPDH含有組成物の安定化方法であって、チオグリセロール及び/又はNACを前記組成物に添加する工程を含む安定化方法に関する。該安定化方法において、IMPDH含有組成物が安定であるか否かは、例えば、IMPDH含有組成物において、チオグリセロール及び/又はNACを添加した場合と、添加しない場合とで、どちらの場合のIMPDHが安定化しているかを比較することで判断することができる。例えば、IMPDHに温度や保存(期間)等の負荷を加えた条件下で、該比較を行うことができる。一般的には、温度は高いほど高負荷となり、保存(期間)は長いほど高負荷となる。そのような条件と、特に溶液の形態であるIMPDH含有組成物の安定化の指標の好ましい例を挙げれば、添加物を添加せずに、ATP及びマグネシウムイオンの存在下、IMPDH含有組成物を10℃で7日間又は14日間保存し、IMPDHの残存活性が保存前の80%又は69%以下になる条件において、チオグリセロール及び/又はNAC等を添加した場合には、IMPDHの残存活性が保存前の85%又は75%以上となる例が挙げられる。また、添加物を添加せずに、ATP及びマグネシウムイオンの存在下、IMPDHを25℃で7日間又は14日間保存し、IMPDHの残存活性が保存前の41%又は23%以下になる条件において、チオグリセロール及び/又はNAC等を添加した場合には、70%又は41%以上となる例が挙げられる。例えば試薬として用いるという観点からは、ATP及びマグネシウムイオンが混在するIMPDH含有組成物は、凍結保存した場合、1年以上安定であれば好ましく、1年半以上安定であれば更に好ましく、2年以上安定であれば最も好ましい。ATP及びマグネシウムイオンが混在するIMPDH含有組成物を凍結乾燥させた場合には、その状態で、25℃以下において1年以上安定であれば好ましく、1年半以上安定であれば更に好ましく、2年以上安定であれば最も好ましい。凍結乾燥状態である該組成物を、溶解(再構成)した溶液の形態の場合、10℃以下において1週間以上安定であれば好ましく、1ヶ月以上安定であれば更に好ましく、2ヶ月以上安定であれば最も好ましい。
【0040】
本実施の形態における、IMPDH含有組成物を特定の用途に用いる場合、該組成物に温度や保存(期間)等の負荷を加えた後に、該特定の用途に該組成物を用いることができることが望ましい。例えば、ATP及びマグネシウムイオンが混在する、特に溶液の形態である前記IMPDH含有組成物を、ミゾリビンを測定する目的(ミゾリビン測定用試薬)で用いる場合、10℃で6日間保存した後にもミゾリビンの測定が可能であることが好ましく、11日間保存した後にも測定が可能であることがより好ましく、21日保存した後にも測定が可能であることが更に好ましい。ミゾリビン測定用試薬に異なる条件の負荷を加えた場合の例としては、4℃で15日間保存した後にもミゾリビンの測定でが可能であることが望ましく、22日間保存した後にも測定が可能であることが好ましく、29日間保存した後にも測定が可能であることがより好ましく、49日間保存した後にも測定が可能であることが更に好ましい。なお、上記IMPDH含有組成物の安定性は、通気条件、湿度、気圧等により影響される場合がある。例えば、該組成物が溶液の形態である場合は、該組成物の容器を密栓して保存する方が開栓して保存するより一般的には安定性が向上する。該組成物が凍結乾燥状態を含む固体状態である場合は、低湿度下で保存する方が高湿度下で保存するより一般的には安定性が向上し、低湿度低気圧下で保存すれば更に安定性は向上する。
【0041】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物は、チオグリセロール、NAC又はチオグリセロール及びNACを含有することで、IMPDH含有組成物中のIMPDHが安定化する。チオグリセロール及びNAC以外で、IMPDH含有組成物中のIMPDHを安定化し得る化合物として、IMPDHを含むSH酵素に関して公知である安定化剤のうち、所望の安定化作用を示す化合物が挙げられる。例えば、セミカルバジド、TCEP、β−メルカプトプロピオン酸、システイン、チオグルコース、システアミン、グルタチオン、メルカプト琥珀酸、メルカプト酢酸、臭化2−アミノエチルイソチオウロニウム、2−メルカプトエタンスルホン酸、又はメルカプトエタノール等から選択される化合物、より好ましくは、システイン、グルタチオン(特に還元型)、メルカプト琥珀酸、TCEP塩酸塩及びチオグルコースから選択される化合物は、これら単独であっても、IMPDH含有組成物に添加した際にIMPDHの安定化作用を示しうる。より高いIMPDHの安定化作用を得るという観点からは、これらを、チオグリセロール及び/又はNACと組み合わせて、IMPDH含有組成物に添加することが好ましい。従って、本実施の形態は、一態様において、チオグリセロール及び/又はNACに加えて、上記の化合物の一種以上をさらに含む、IMPDH含有組成物、IMPDH含有組成物の安定化剤ならびにIMPDH含有組成物におけるIMPDHの安定化方法にも関する。
【0042】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物におけるIMPDH濃度は特に限定されず、該組成物やIMPDHの製造方法や該組成物の用途に応じて適宜設定することができる。例えば、微生物や動物等の細胞からIMPDHを製造する場合、該IMPDHは、該細胞や培地由来のリン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物となり得る。さらに、その後の塩析や熱処理等の固液分離工程やカラムクロマトグラフィー工程等の精製工程中もIMPDHにリン酸供与体及び/又は金属イオンが混在(残留)する可能性があるが、これらの工程後に得られるIMPDH含有組成物中のIMPDH濃度は、一般に培養スケールや製造スケール等に応じて変化する。通常、IMPDH製造におけるIMPDH濃度は、加水濃縮脱塩工程であれば例えば0.01U/mL程度に希釈し、硫安沈殿工程であれば例えば100U/mL以上に濃縮する場合もある。また、IMPDH濃度を、前記IMPDH含有組成物の用途によって変化させる例としては、物質変換の用途の場合に望ましい濃いIMPDH濃度、例えば100〜1000U/mL等とすることが挙げられる。また、試料の測定の用途(試薬)に利用する場合、レートアッセイであれば例えば1U/mL以下、エンドポイントアッセイであれば例えば1〜10U/mL程度のIMPDH濃度の組成物を使用し得る。また、IMPDH活性を測定するための試薬(組成物)中にリン酸供与体及び/又は金属イオンが混在する場合も想定されるが、この場合のIMPDH濃度は通常0.1U/mL以下である。
【0043】
本実施の形態において、特にIMPDH含有組成物が溶液の形態であることが好ましい。IMPDH含有組成物の安定化方法における前記組成物中のIMPDH濃度の下限値は特に限定されないが、通常0.01U/mL以上が例示でき、0.1U/mL以上が好ましく、1U/mL以上が更に好ましい。同様に、前記組成物中のIMPDH濃度の上限値は特に限定されないが、特にIMPDH含有組成物が溶液の形態である場合、通常1000U/mL以下が例示でき、500U/mL以下が好ましく、200U/mL以下が更に好ましい。
【0044】
本実施の形態において、IMPDHと、チオグリセロール及び/又はNACとを含有するIMPDH含有組成物中のチオグリセロール又はNACの濃度は特に限定されず、前記組成物の製造方法や用途に応じて適宜変更し得る。例えば、IMPDH製造時のIMPDH含有組成物においては、該濃度は1〜5mMとなり得る。凍結保存を含む低温で前記IMPDH含有組成物を保存する際には、該濃度は0.5mM程度となり得る。IMPDH含有組成物中のチオグリセロール又はNACの濃度は、IMPDH含有組成物が溶液の形態である場合、一般的には1mM以上20mM以下が例示でき、例えば100mM以上では過剰な場合もある。過剰な濃度であるかどうかの判断は、例えば、前記組成物中に沈殿、濁り、発色、変色、pH変化等が発生するかどうかで判断することができる。本実施の形態の、IMPDH含有組成物の安定化方法において前記組成物中に添加されるチオグリセロールやNACの濃度の下限値は特に限定されないが、特にIMPDH含有組成物が溶液の形態である場合、通常それぞれ0.1mM以上が例示でき、1mM以上が好ましく、5mM以上が更に好ましい。同様に、上限値は特に限定されしないが、特にIMPDH含有組成物が溶液の形態である場合、通常それぞれ100mM以下が例示でき、50mM以下が好ましく、20mM以下が更に好ましい。
【0045】
本実施の形態において、チオグリセロール及び/又はNACを含有するIMPDH含有組成物中のIMPDHと、チオグリセロール又はNACとの存在比率は、IMPDH含有組成物がいずれの形態であっても特に限定されないが、下限としては、IMPDH 1U当たりのチオグリセロール又はNACが、通常0.02μmol以上が例示され、0.1μmol以上が好ましく、1μmol以上であれば更に好ましく、10μmol以上であれば更により好ましく、31.25μmol以上であれば最も好ましい。また上限としては、IMPDH 1U当たりのチオグリセロール又はNACが、200μmol以下であることが好ましい例として挙げられ、125μmol以下が更に好ましく、100μmol以下が最も好ましい。
【0046】
また、チオグリセロールとNACが共存する形態であってもよい。その場合は、チオグリセロールとNACの存在量がそれぞれ上述の上限及び下限の範囲となることが好ましい例として挙げられ、チオグリセロールとNACとを合算して、上述の上限及び下限の範囲となることもさらに好ましい例として挙げられる。
【0047】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物が、チオグリセロール及びNACを含有する場合又はIMPDH含有組成物にこれらを添加する場合、2成分のそれぞれの濃度、存在比及び同時に存在している時間は限定されない。チオグリセロール及びNACの濃度は好ましくはそれぞれ上記の濃度であり、一態様において、特にIMPDH含有組成物が溶液の形態である場合、それぞれの濃度を合算して1mM以上20mM以下であることが好ましい場合もある。1mM以下では十分なIMPDH安定化効果が得られないことがあり、20mM以上ではIMPDH含有組成物に濁りやpHの経時変化による悪影響が生じ得る。本実施の形態において、IMPDH含有組成物がチオグリセロール及びNACを含有する場合、通常は意図的に含有させるが、IMPDHにチオグリセロール又はNACが含有している場合など意図せずに含有する場合もある。
【0048】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物は、凍結乾燥状態を含む固体状態、濾紙上や薄膜間に存在させた状態及びそれらを乾燥した状態、電極やゲル等の担体に固定化した状態等とし得る。例えば、本実施の形態のIMPDH含有組成物を凍結乾燥させる際の母液中のIMPDH並びにチオグリセロール及び/又はNACの濃度は、上記のIMPDH含有組成物中の濃度よりも濃くする場合がある。一般的には上記の濃度のIMPDH含有組成物を1倍より濃くなるように濃縮した母液を凍結乾燥し、溶解液が上記の濃度となるように、例えば純水や緩衝液で用事溶解して使用する。すなわち、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物中のIMPDH並びにチオグリセロール及び/又はNACの濃度は、溶液の濃縮倍率に応じて濃くなるが、IMPDH含有組成物中のIMPDH並びにチオグリセロール及び/又はNACの濃度比率は変動しない。また、凍結乾燥状態においては、IMPDH並びにチオグリセロール及び/又はNACは、母液中の濃度比率で存在する。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、濾紙上や薄膜中で乾燥させるための母液とする場合も同様である。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物中に、他の物質を存在させる場合の濃度についても同様である。
【0049】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物に含有される、チオグリセロール及びNACを含む上記の添加物は、前記IMPDH含有組成物中のIMPDHの安定性や、添加物の臭い、揮発性、昇華性、安定性等の添加物の性質や、添加物の価格、安全性、有害性等を考慮して適宜選択し、適切な濃度で含有させることができる。例えば複数の添加物を含有させる場合、添加物同士の存在比率についても同様に適宜決定することができる。添加物選択に考慮が必要な例としては、例えば、揮発性の高い添加物を含有する組成物を凍結乾燥する場合、凍結乾燥中に該添加物が昇華するために凍結乾燥装置内に該添加物が蒸着し、次回以降の凍結乾燥作業や凍結乾燥品の品質に影響を与える場合がある。また、揮発性の高い添加物を含有する溶液の形態の組成物(試薬)を、生化学自動分析機などの試薬庫で開栓して保存すると、試薬庫内の他の組成物(試薬)にエアーコンタミネーションにより影響を与える場合がある。
【0050】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物の安定化方法は様々な場面において有用であり、例えば、上記のIMPDHの製造時、後述するIMPDHの保存時に用いることができる。IMPDH含有組成物を、IMPDHの酵素反応を利用した組成物として用いる場合には、IMPDHの活性を安定して利用することができるため、特に好ましく上記の安定化方法を用いることができる。
【0051】
本実施の形態のIMPDH含有組成物は、例えば、複数の試薬を組み合わせた、IMPDHの酵素反応を利用して試料を測定するためのキットを構成する一試薬であってもよい。例えば、IMPDHならびにNAC及び/又はチオグリセロールを含む本実施の形態のIMPDH含有組成物を試薬1とし、ATP及びMgを含む試薬2と、試料を測定する際に混和して、IMPDHの酵素反応を利用した測定に用いてもよい。
【0052】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物は水溶液、有機溶媒溶液等の溶液の形態であることができるが、利便性という観点からは、好ましくは水溶液である。IMPDH含有組成物が水溶液である場合、IMPDHの安定化という観点から、適宜pH緩衝剤を用いることが好ましい。pH緩衝剤は、目的のpHを保つことができれば特に限定されないが、グッドのpH緩衝液、Tris/HCl緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、酢酸/NaOH緩衝液、クエン酸/NaOH緩衝液が例示できる。IMPDH含有組成物が水溶液である場合、そのpHは、下限としてpH4以上、好ましくはpH4.8以上、更に好ましくはpH5.2以上が例示され、上限としてはpH8.5以下、好ましくはpH8以下、更に好ましくはpH7.5以下が例示される。pH緩衝剤の濃度は目的のpHを保つことができる限り特に限定されないが、下限として3mM以上、好ましくは5mM以上、更に好ましくは10mM以上が例示され、上限としては500mM以下、好ましくは200mM以下、更に好ましくは100mM以下が例示される。一態様において、本実施の形態のIMPDH含有組成物は、例えばゾル・ゲル又は乳濁液であることができる。ゾル・ゲルは、例えば、前記の溶液に寒天等の多糖類を添加することで得ることができる乳濁液は、例えば、当業者に公知の手法により、前記の溶液やゾル・ゲルから、有機溶媒等を用いて得ることができる。両親媒性物質を利用してミセルとして得ることもできる。一態様において、本実施の形態におけるIMPDH含有組成物は、組成物中の各成分の濃度を1倍より濃くなるよう濃縮した溶液の形態、該溶液又は該濃縮溶液の凍結物、乾燥物、凍結乾燥物であってもよく、長期間安定して保存する場合には、該溶液又は該濃縮溶液の凍結乾燥物が好ましい。さらには、該乾燥物又は凍結乾燥物を水や緩衝液で再溶解した溶液の形態であってもよい。濃縮、乾燥、凍結、凍結乾燥等は、当業者に公知の手法を用いて行うことができ、例えば、乾燥には、スプレードライ、加熱乾燥、風乾、減圧乾燥等の手法を用いることができる。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物は、特に好ましい態様において、使用時までは凍結乾燥状態で保存し、使用時に例えば純水や緩衝液で溶解し、溶解後はそのまま水溶液として保存する。
【0053】
本実施の形態において、IMPDH含有組成物が、IMPDHの酵素反応を利用して、試料(検体ともいう)中の特定の成分を測定するための組成物(試薬)である場合、該試料は、特に限定されないが、全血、血漿、血清、血球、髄液、リンパ液、尿等の排泄物、その他体液を含む生体試料や研究用試料及びそれらの抽出物や標準液等を挙げることができる。それらの試料はIMPDHの酵素反応を利用して測定することができる成分を含むと予想される試料であることが好ましく、一態様において、前記試料はミゾリビン及び/又はリバビリンを含有すると予想される試料であることが好ましく、正確な測定値を得るという観点からは、ミゾリビン又はリバビリンのいずれか一方を含有すると予想される試料であることが更に好ましい。例えば、試料が生体試料である場合、ミゾリビン及び/又はリバビリンの標的臓器、例えば、白血球、肝細胞、ウィルス感染細胞等を選別して試料とすることも好ましく、特に試料が白血球の場合には、更に、T細胞、B細胞、リンパ球等を選別して試料とすることも好ましい。ミゾリビン及び/又はリバビリンを含有すると予想される生体試料を取得する場合、取得方法は公知の方法を用いることができる。例えば全血を取得する場合には、分離剤や抗プラスミン剤等の使用の有無は特に限定されず、EDTA、フッ化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ヘパリンナトリウム等の抗凝固剤や解糖阻止剤の使用の有無も特に限定されない。生体試料以外の試料としては、例えば、海水、天然水、果汁、飲料、廃液等が挙げられる。
【0054】
リン酸化されたミゾリビン又はリバビリンは、IMPDHの阻害活性を有する。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、特に、ミゾリビン又はリバビリン等、IMPDH阻害剤の前駆体を測定するための組成物として用いる場合、該組成物は[ミゾリビン、及び/又はリバビリンをリン酸化する酵素](以下、酵素Pということもある)を含有することが好ましい。該酵素Pは、ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化し得る酵素であれば特に限定されず、例えば、リン酸供与体の存在下、ヌクレオシドをリン酸化ヌクレオシドとなす反応を触媒することが知られる酵素から選択することができ、アデノシンキナーゼやホスホフルクトキナーゼ−Bを含むヌクレオシドキナーゼ、又はホスファターゼ等も利用可能である。該酵素Pの由来は特に限定されず、例えば天然の生物由来であってもよい。微生物由来の該酵素Pとしては、大腸菌由来のグアノシンイノシンキナーゼ、Methanocaldococcus jannaschii由来のホスホフルクトキナーゼ−B、Archaeoglobus fulgidus由来のホスホフルクトキナーゼ−Bと予想されるタンパク質が挙げられる。その他の微生物由来の酵素Pとしては、パン酵母やマイコバクテリウム由来であって、ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化し得るアデノシンキナーゼが挙げられる。また、入手が困難であり必ずしも効率が高いとは言えないものの、哺乳類由来の酵素であってもよく、例えば、ヒト由来のアデノシンキナーゼやマウス、ラット、ウサギ等の、公知のアデノシンキナーゼが挙げられる。ミゾリビンに対する特異性が高いという観点からは、好ましい例として、例えばBurkholderia属やその近縁のXanthomonas属等、好ましくはBurkholderia thailandensis、最も好ましくは、Burkholderia thailandensis DSM13276株由来のミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化し得る酵素が挙げられる。該酵素Pは、ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化し得る限りそのアミノ酸配列は限定されず、例えば配列番号9のアミノ酸配列であってもよい。該アミノ酸配列は、リボースの結合に関連すると予想される配列番号10のアミノ酸配列及びATP、リボース、マグネシウムの結合に関連すると予想される配列番号11のアミノ酸配列を含む配列であることが好ましく(但し、配列番号10及び11中、Xaaは任意のアミノ酸を示す)、最も好ましくはミゾリビンに対する特異性の高い配列番号9のアミノ酸配列である。酵素Pのアミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、置換、付加、翻訳後修飾、化学修飾及び高次構造の例はIMPDHのアミノ酸配列の場合と同様、当業者に公知の様々な例を挙げることができる。
【0055】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が、ミゾリビン又はリバビリンを測定するための試薬であって、酵素Pを含有する場合、該酵素Pの量は、例えば、測定対象となる試料に含まれるミゾリビン及び/又はリバビリンの存在量が1mM以下でその全てをリン酸化しようとする場合、下限値は0.01U/mL、好ましくは0.05U/mL以上、更に好ましくは0.1U/mL以上であり、上限値は特に限定されないが、5U/mL以下、好ましくは2U/mL以下、更に好ましくは1U/mL以下である。
【0056】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が、ミゾリビン及び/又はリバビリンを測定するための試薬であって、ミゾリビン、及び/又はリバビリンをリン酸化するために、リン酸供与体を含有させる場合、該リン酸供与体は、ATP、ITP、UTP、CTP、GTP、TTP又はポリリン酸等のいずれか一つ以上であることができるが、経済性の観点からは、ATPが特に好ましい。該リン酸供与体の量は、試料中のミゾリビン又はリバビリンの量に応じて適宜変更できる。例えば、ATPの場合、下限値が0.1mM、好ましくは1mM以上、更に好ましくは5mM以上が例示され、上限値は特に限定されないが、好ましくは500mM以下、更に好ましくは200mM以下、特に好ましくは50mM以下が例示され、試料中のミゾリビン又はリバビリンの量が多い場合は、ATPの濃度も高くすることが好ましい。
【0057】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物に、IMPDHの基質であるIMPを含有する場合、該IMPの量は、IMPDHの基質となるという観点から、その下限値は1mM、好ましくは3mM以上、更に好ましくは5mM以上が例示される。また、その上限値は特に限定されいが、好ましくは100mM以下、更に好ましくは50mM以下、特に好ましくは30mM以下が例示される。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が同じくIMPDHの基質であるXMPを含有せする場合もその量は上記IMPの場合と同様である。
【0058】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物がIMPDHの補酵素として作用するNAD(P)類を含有する場合、該NAD(P)類の量は、下限値が0.1mM、好ましくは0.5mM以上、更に好ましくは1mM以上が例示され、上限値は特に制限されないが、好ましくは50mM以下、更に好ましくは10mM以下、特に好ましくは7mM以下が例示される。
【0059】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が、金属イオンを含有する場合、例えばマグネシウムイオンを含有する場合、その下限値は、リン酸供与体の濃度に対して0.1当量以上、好ましくは0.5当量以上、更に好ましくは1当量以上であり、上限値は、リン酸供与体の濃度に対して10当量以下、好ましくは5当量以下、更に好ましくは3当量以下である。最も好ましい濃度は、リン酸供与体の2当量である。金属イオンは、例えば各種酵素の補因子として機能し得る。
【0060】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を試薬として用いる場合、試薬の感度、正確性、再現性、安定性等の品質を向上する目的等で、前記組成物は、NaClやKCl等の塩、TX−100やTween20等の界面活性剤、及び/又はアジ化ナトリウムや抗性物等の防腐剤を含有してもよい。
【0061】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が塩を含有する場合、該塩の量は、例えば塩化カリウムの場合、下限値が0.1mM、好ましくは5mM以上、更に好ましくは50mM以上が例示され、上限値は特に制限されないが、好ましくは200mM以下、更に好ましくは150mM以下、特に好ましくは120mM以下が例示される。その他の塩の種類や濃度は限定されないが、例えば塩化ナトリウムや塩化アンモニウム等を含有する場合、通常は5mM以上200mM以下の範囲が例示される。これらの塩は、IMPDHの活性化剤として作用し得る。
【0062】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が糖を含有する場合、該糖の濃度は溶解可能な範囲内であれば限定されないが、例えばシュークロースを含有する場合、下限値は全組成物の0.05(w/v)%、好ましくは0.1(w/v)%以上、更に好ましくは0.3(w/v)%以上であり、上限値は全組成物の30(w/v)%以下、好ましくは10(w/v)%以下、更に好ましくは5(w/v)%以下である。例えばマンニトールを含有する場合、下限値は全組成物の0.05(w/v)%以上、好ましくは0.1(w/v)%以上、更に好ましくは0.3(w/v)%以上であり、上限値は全組成物の3(w/v)%以下、好ましくは2(w/v)%以下、更に好ましくは2(w/v)%以下である。その他の糖としてはトレハロースやシクロデキストリン等が挙げられる。これらの糖は、酵素や組成物の安定化剤として、また、組成物を凍結乾燥する場合は凍結乾燥賦型剤として、機能し得る。
【0063】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が防腐剤を含有する場合、該防腐剤の種類や濃度は限定されないが、例えばアジ化ナトリウムの場合、下限値は全組成物の0.005(w/v)%、好ましくは0.01(w/v)%以上、更に好ましくは0.03(w/v)%以上であり、上限値は全組成物の1(w/v)%以下、好ましくは0.5(w/v)%以下、更に好ましくは0.1(w/v)%以下である。例えば抗生物質の場合、下限値は5μg/mL以上、好ましくは10μg/mL以上、更に好ましくは30μg/mL以上であり、上限値は100μg/mL以下、好ましくは75μg/mL以下、更に好ましくは60μg/mL以下である。
【0064】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が界面活性剤を含有する場合、該界面活性剤の種類や濃度は限定されないが、例えばTX−100、OP−10、Tween20等を含有する場合、通常は全組成物の0.001(w/v)%以上5(w/v)%以下の範囲である。本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が例えばIMPDHの酵素反応を利用した試薬である場合、界面活性剤は再現性等の試薬の性能を向上し得る。
【0065】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物がEDTA等のキレート剤を含有する場合、その種類や濃度は限定されないが、例えばEDTAを含有する場合、通常は0.05mM以上10mM以下の範囲である。EDTAやEGTA等は、金属を活性発現に利用するプロテアーゼが組成物中に存在する場合、該活性を阻害する場合がある。
【0066】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が、牛アルブミン、卵アルブミン、ヒトアルブミン等のタンパク質を含有する場合、該タンパク質の種類や濃度は限定されないが、例えば牛アルブミンを含有する場合、通常は0.01(w/v)%以上5(w/v)%以下の範囲である。これらのタンパク質は、プロテアーゼの基質となるため、酵素の安定化剤となる場合がある。また、凍結乾燥に際しては凍結乾燥賦型剤となり得る。
【0067】
上記本実施の形態におけるIMPDH含有組成物が含有する物質は、組成物の目的や用途に応じて適宜変更することができ、例えば、該IMPDH含有組成物を特定の成分の測定用試薬として用いる場合であれば、測定感度、特異度、再現性、経済的な理由、安全性目的、適用法令等に応じて適宜変更しうる。
【0068】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物を、特定の成分を測定するための試薬として用いる場合、該組成物を単独で試薬として用いてもよいが、他の試薬と組み合わせて、測定用キットを構成することもできる。他の試薬は、測定対象のキャリブレーター試薬や管理血清等を含む。
【0069】
本実施の形態におけるIMPDH含有組成物をPOCのキャピラリーへ使用する場合又は酵素センサーとしての使用する場合、各成分の濃度は通常よりも濃い濃度が好ましく、例えば、固定化したり、紙や膜に染み込ませたり、ゲル・ゾル状組成物としたりして使用することが好ましい。
【0070】
一態様において、本実施の形態は、リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するIMPDH含有組成物の保存方法であって、チオグリセロール及び/又はNACを前記組成物に添加する工程、及び前記IMPDH含有組成物を25℃以下で保存する工程、を含むIMPDH含有組成物の保存方法に関する。該チオグリセロール及び/又はNACを前記組成物に添加する行程は、上記のIMPDH含有組成物の安定化方法において、チオグリセロール及び/又はNACを添加する工程に関する記載を参照して行うことができる。該IMPDH含有組成物を保存する工程における温度は、0℃以下の冷凍保存でもよく、後述の実施例等における0〜10℃の冷蔵保存や生化学自動分析機などの試薬庫での保存、又は15〜25℃の常温や1〜30℃の室温の保存でもよく、更に加速試験等を含む25℃以上の保存でもよいが、一般的には低温保存ほどIMPDH含有組成物中のIMPDHが安定となるため好ましい。溶液の形態であるIMPDH含有組成物を保存する工程における保存期間は、IMPDH含有組成物中のIMPDHが安定な期間であれば限定せず、実施例で示す49日程度でもよいが、長期間保存できるほど好ましい。
【0071】
一態様において、本実施の形態は、リン酸供与体及び/又は金属イオンと、IMPDHとを含有するIMPDH含有組成物の安定化剤であって、チオグリセロール及び/又はNACを有効成分とする安定化剤に関する。該安定化剤におけるチオグリセロール、NAC、ATP、マグネシウムイオン及びIMPDHについては、上記の各成分に関する記載を参照することができる。該安定化剤はリン酸供与体及び/又は金属イオンがIMPDHに混在すると予想される場合や、リン酸供与体及び/又は金属イオンにIMPDHが混在すると予想される場合に使用できるが、リン酸供与体及び金属イオンが混在するIMPDH、特にATP及びマグネシウムイオンが混在するIMPDHに使用するのが好ましい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を参考例及び実施例(実施例等)に基づいて説明するが、本発明の範囲は以下の実施例等に限定して解釈されるものではない。尚、「常法に従って」と記述した方法は、例えばマニアティスらの方法(Maniatis,T.,et al.Molecular Cloning.Cold Spring Harbor Laboratory 1982年、1989年)、非特許文献1の記載又は市販の各種酵素若しくはキット類に添付された取扱説明書等の手順に従い、当業者であれば実施できる方法である。又、以下に示した測定値等は、様々な条件、例えば、測定の条件、使用機器の精度等、使用機器の置かれた温度や気圧等の雰囲気により変化し得るが、同条件で測定した場合には以下の実施例等で得られたものと同じ傾向を示す結果が得られるであろう。
【0073】
以下の実施例等で使用する試薬類は、特に断らない限り、和光純薬工業株式会社製、シグマアルドリッチ社製、タカラバイオ株式会社製等から市販され容易に入手することができる任意の試薬類を使用することができる。試薬のメーカーや純度等は特に限定されず、必要に応じて当業者であれば適宜選択して用いることができる。DSM菌株は、Deutsche SammLung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbHから入手することができる。ATCC菌株は、American Type Culture Collectionから入手することができる。又、以下の実施例等で使用した血清等のヒト生体材料は、市販品、又は、使用目的の情報を正しく伝えた上での合意を得て採取した検体若しくは匿名検体である。
【0074】
[参考例1]IMPDH活性測定方法
[反応試薬混合液]
50mM Tris/HCl緩衝液pH8.0
2mM IMP
2mM NAD
50mM 塩化カリウム
【0075】
石英製の光路長1.0cmキュベットに上記の[反応試薬混合液]2mLを量りとり、37℃で2分間予備加温した。以下の参考例3に示した方法にて調製したIMPDHを50mM Tris/HCl緩衝液(pH8.0)で希釈し、後述のAs/minが0.05から0.300の範囲に収まる濃度のIMPDH溶液を調製した。IMPDH溶液0.03mLを前述のキュベットに加えて混和し37℃で反応を開始した。反応開始後、340nmにおける吸光度を測定し、直線的に反応している1分間当たりの吸光変化を求めた。求められた吸光変化をAs/min、IMPDHの代わりに精製水を用いた盲検をAb/minとして、酵素活性(U/mL)は(式1)で算出した。
(式1)
酵素活性(U/mL)={(As/min−Ab/min)/6.22}×2.03/0.03×希釈倍数
【0076】
[参考例2]ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化し得る酵素の活性測定方法
[反応試薬混合液1]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
10mM ATP(pH7)
20mM 塩化マグネシウム
5mM イノシン
50mM 塩化カリウム
【0077】
[反応試薬混合液2]
100mM Tris/HCl緩衝液 pH9.0
13U/mL 参考例3で製造したIMPDH
20mM NAD
50mM 塩化カリウム
1mM DTT
200mM EDTA(pH9)
【0078】
石英製の1.0cmキュベットに上記の[反応試薬混合液1]1.0mLを量りとり、37℃で2分間予備加温した。後述の参考例6の方法にて調製した酵素Pを30mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に溶解し、後述のAs/minが0.05から0.400の範囲に収まる濃度の酵素P溶液を調製した。この酵素P溶液0.01mLを前述のキュベットに加えて混和し、37℃で反応を開始した。反応開始5分後に、上記の[反応試薬混合液2]1.0mLを混和して反応を止め、340nmの吸光度を測定した(As)。酵素P溶液の代わりに精製水を用いた盲検をAbとして酵素活性(U/mL)を下記(式2)で算出した。
(式2)
酵素活性(U/mL)={(As−Ab)/5)/6.22}×2.01/0.01×希釈倍数
【0079】
[参考例3]IMPDHの製造方法1
Nutrient 2.3(w/v)%、ポテト抽出液 0.2(w/v)%を含む培地を使用してBacillus subtilis ATCC23857株を26℃1日間培養して菌体を得た。この菌体から常法に従ってBacillus subtilis ATCC23857株DNAを得た。Bacillus subtilis ATCC23857株のDNAをテンプレートに配列番号12と配列番号13のプライマーを用いてPCRで遺伝子増幅した。PCRはKOD DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)を用いて常法に従って行った。得られた約1.5kbpのPCR産物は常法に従って精製した。
【0080】
PCR産物をXbaI及びSacIにより常法に従って制限酵素処理しインサートとした。常法に従って精製したインサートは、XbaI及びSacIにより制限酵素処理し精製したpHSG399と常法に従ってライゲーションし、pHSG399/BsuIMPDHを作成した。pHSG399/BsuIMPDHを大腸菌W3110に常法に従って導入して形質転換し、コロニーダイレクトPCR法によるポジティブクローンから精製した組換体プラスミドについて、DNAシーケンスによりインサート配列が正しいことを確認した。
【0081】
上記の形質転換体を34μg/mLのクロラムフェニコール及び1mM IPTGを含むLB培地に植菌し、30℃で1日間培養した。培養液を遠心分離して集菌し、培養液の1/5倍量の1mM DTTを含む20mM Tris/HCl緩衝液pH7.5に懸濁し、超音波破砕して遠心分離し、粗酵素液を得た。該粗酵素液を1mM DTTを含む10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0で平衡化したQ sep.BB(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に吸着させた。1mM DTTを含む10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0で充分に洗浄した後、1mM DTT及び0又は0.5MのKClを含む10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0を用いたリニアグラジェントにて溶出した。活性画分に最終濃度15(w/v)%になるように硫酸アンモニウムを添加し、1mM DTT及び15(w/v)%の硫酸アンモニウムを含む10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で平衡化したPhenyl sep.FF(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に吸着させて、1mM DTT及び15又は0%の硫酸アンモニウムを含む10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5を用いたリニアグラジェントにて溶出した。活性画分は10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で平衡化したG−25で脱塩して、Bacillus subtilis由来IMPDHを得た。1Lの培養で約10mgのBacillus subtilis由来IMPDHを得た。
【0082】
[参考例4]IMPDHの製造方法2
ペプトン 5g/L、酵母エキス 1g/L、塩化ナトリウム 20g/L、クエン酸鉄 0.1g/L、塩化マグネシウム 5.9g/L、硫酸ナトリウム 3.24g/Lを工業用水で溶解しpH7.6に調整した培地を使用してOceanobacillus iheyensis DSM14731株を25℃1日間培養して菌体を得た。
【0083】
この菌体から常法に従ってOceanobacillus iheyensis DSM14731株のDNAを得た。Oceanobacillus iheyensis DSM14731株のDNAをテンプレートに配列番号14と配列番号15のプライマーを用いてPCRで遺伝子増幅した。PCRはKOD DNAポリメラーゼを用いて常法に従って行った。得られた約1.5kbpのPCR産物は常法に従って精製した。
【0084】
PCR産物をXbaI及びSacIにより常法に従って制限酵素処理しインサートとした。常法に従って精製したインサートは、XbaI及びSacIにより制限酵素処理し精製したpHSG399と常法に従ってライゲーションし、pHSG399/ObIMPDHを作成した。pHSG399/ObIMPDHを大腸菌W3110に常法に従って導入して形質転換し、コロニーダイレクトPCR法によるポジティブクローンから精製した組換体プラスミドについて、DNAシーケンスによりインサート配列が正しいことを確認した。
【0085】
上記の形質転換体を用いて、参考例3と同様の手法でOceanobacillus iheyensis由来IMPDHを得た。1Lの培養で約10mgのOceanobacillus iheyensis由来IMPDHを得た。
【0086】
[参考例5]ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化する酵素(酵素P)の製造方法1
LB培地を使用して30℃2日間培養して集菌したBurkholderia thailandensis DSM13276株の菌体をを得た。この菌体から常法に従ってBurkholderia thailandensis DSM13276株のDNAを得た。
【0087】
pTip QC1又はpTip QC2(特許第3944577号公報、及び特許第3793812号公報)のマルチクローニングサイトNdeI及びBamHI部位に配列番号16の遺伝子を挿入するように、配列番号17と配列番号18のプライマーを設計した。PCRはKOD DNAポリメラーゼを用いて常法に従って行った。得られた約1.0kbpのPCR産物は、常法に従って精製した。PCR産物をNdeI及びBamHIにより常法に従って制限酵素処理しインサートとした。常法に従って精製したインサートは、NdeI及びBamHIにより制限酵素処理し精製したpTip QC1又はpTip QC2と常法に従ってライゲーションし、pTip QC1/BthNK及びpTip QC2/BthNKを作成した。pTip QC1/BthNK及びpTip QC2/BthNKを大腸菌 DH5αに常法に従って導入して形質転換し、コロニーダイレクトPCR法によるポジティブクローンから精製した組換体プラスミドについて、DNAシーケンスによりインサート配列が正しいことを確認した。
【0088】
pTip QC1/BthNK、及びpTip QC2/BthNKのRhodococcus erythropolisへの形質転換は特開2004−073116号公報等に記載の方法に従いエレクトロポレーション法(電気穿孔法)で実施した。エレクトロポレーション条件は次のとおりであった。コンピテントセルを融解し、pTip QC1/BthNK、又はpTip QC2/BthNKと混合して、2mmの専用チャンバーに入れ、7.5mS、2500V、25μF、400Ωでパルスをかけた。
【0089】
上記の形質転換体を34μg/mLのクロラムフェニコールを含むLB培地に植菌し、30℃で2日間培養してシードとした。34μg/mLのクロラムフェニコールと1μg/mLのチオストレプトンを含むLB培地に上記のシードを1/10量植菌し、30℃で1日間培養した。培養液を遠心分離して集菌し、培養液の1/5倍量の20mM Tris/HCl緩衝液pH7.5に懸濁、超音波破砕して、遠心分離し、得られた上清を粗酵素液とした。
【0090】
pTip QC1/BthNK形質転換体を培養して得られた粗酵素液を0.1Mの塩化ニッケル、及び0.3Mの塩化ナトリウムを含む50mMのリン酸緩衝液pH8.0で平衡化したCherating Sepharose FF(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に吸着させた。0.3Mの塩化ナトリウムを含む50mMのリン酸緩衝液pH8.0で充分に洗浄した後、10(w/v)%グリセロール及び0.3Mの塩化ナトリウムを含む50mMのリン酸緩衝液pH6.0で充分に洗浄した。0.4Mイミダゾール、10(w/v)%グリセロール及び0.3Mの塩化ナトリウムを含む50mMのリン酸緩衝液pH6.0にて溶出した。活性画分は0.03Mの塩化ナトリウム、0.05MのKCl及び1mMのDTTを含む30mMのリン酸緩衝液pH7.0で透析して酵素Pを得た。1Lの培養で約80mgの酵素Pを得た。
【0091】
[参考例6]ミゾリビン及び/又はリバビリンをリン酸化する酵素(酵素P)の製造方法2
参考例5のインサートを、NdeI及びBamHIにより制限酵素処理し精製したpET21a(+)と常法に従ってライゲーションし、pET21a(+)/BthNKを作成した。pET21a(+)/BthNKを大腸菌BL21(DE3)に常法に従って導入して形質転換し、コロニーダイレクトPCR法によるポジティブクローンから精製した組換体プラスミドについて、DNAシーケンスしてインサート配列が正しいことを確認した。得られた形質転換体を50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地に植菌した。30℃で1日間培養してシードとした。50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地に上記のシードを1/100量植菌し、30℃で一日培養した。培養液中の濃度が1mMになるようにIPTGを加え、更に30℃で3時間培養した。培養液を遠心分離して集菌し、培養液の1/5倍量の20mM Tris/HCl緩衝液pH8.5に懸濁、超音波破砕して、遠心分離し、得られた上清を粗酵素液とした。
【0092】
上記の粗酵素液を10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0で平衡化したQ sep.BBに吸着させた。10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0で充分に洗浄した後、0又は0.5MのKClを含む10mMのTris/HCl緩衝液pH8.0を用いたリニアグラジェントにて溶出した。活性画分に最終濃度15(w/v)%になるように硫酸アンモニウムを添加し、15(w/v)%の硫酸アンモニウムを含む10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で平衡化したPhenyl sep.FFに吸着させて15又は0%の硫酸アンモニウムを含む10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5を用いたリニアグラジェントにて溶出した。活性画分は10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で平衡化したG−25で脱塩した後、10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で平衡化したDEAE sep.FF(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に吸着させた。10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5で充分に洗浄した後、0又は0.5MのKClを含む10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.5を用いたリニアグラジェントにて溶出した。活性画分は10mM リン酸カリウム緩衝液pH7.0で平衡化したG−25で脱塩して酵素Pを得た。1Lの培養で約50mgの酵素Pを得た。
【0093】
[実施例1]種々の溶液中におけるIMPDHの安定性
[組成物1]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0094】
上記組成物1に以下のとおり添加物を添加し、組成物1−1から1−3を調製した。
組成物1−1:組成物1+5mM DTT
組成物1−2:組成物1+5mM チオグリセロール
組成物1−3:組成物1+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で0から12日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表1(10℃)と表2(25℃)に示した。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
10℃保存の場合、DTT、チオグリセロール及びNACはそれぞれIMPDH安定化効果を示した。25℃保存の場合、DTTはIMPDH安定化効果を示さなかったが、チオグリセロール及びNACは、IMPDH安定化効果を示した。
【0097】
[組成物2]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0098】
上記の組成物2に以下のとおり添加物を添加し、組成物2−1から2−3を調製した。
組成物2−1:組成物2+5mM DTT
組成物2−2:組成物2+5mM チオグリセロール
組成物2−3:組成物2+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で、0から12日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表3(10℃)と表4(25℃)に示した。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
ATPの存在下において、DTT、チオグリセロール及びNACはそれぞれIMPDH安定化効果を示した。
【0101】
[組成物3]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
16mM 塩化マグネシウム
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0102】
上記の組成物3に以下のとおり添加物を添加し、組成物3−1から3−3を調製した。
組成物3−1:組成物3+5mM DTT
組成物3−2:組成物3+5mM チオグリセロール
組成物3−3:組成物3+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で、0から12日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表5(10℃)と表6(25℃)に示した。
【0103】
【表5】
【0104】
【表6】
10℃保存の場合、塩化マグネシウムの存在下においてDTTがIMPDH安定化効果を示したが、25℃保存の場合、DTTはIMPDH安定化効果を示さなかった。塩化マグネシウムの存在下において、10℃及び25℃保存の場合、チオグリセロール及びNACはそれぞれIMPDH安定化効果を示した。
【0105】
[組成物4]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
0.14% マンニトール
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0106】
上記の組成物4に以下のとおり添加物を添加し、組成物4−1から4−3を調製した。
組成物4−1:組成物4+5mM DTT
組成物4−2:組成物4+5mM チオグリセロール
組成物4−3:組成物4+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で、0から12日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表7(10℃)と表8(25℃)に示した。
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
組成物1−1から1−3について得られた結果と比較したところ、マンニトールは、IMPDHの安定性とは関係がないことが明らかになった。
【0109】
[組成物5]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
16mM 塩化マグネシウム
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0110】
上記の組成物5に以下のとおり添加物を添加し、組成物5−1から5−3を調製した。
組成物5−1:組成物5+5mM DTT
組成物5−2:組成物5+5mM チオグリセロール
組成物5−3:組成物5+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で、0から14日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表9(10℃)と表10(25℃)に示した。
【0111】
【表9】
【0112】
【表10】
ATPとマグネシウムイオンの存在下においては、DTTはIMPDH安定化効果を示さず、逆に不安定化効果を示した。一方、チオグリセロール及びNACはそれぞれ、ATPとマグネシウムイオンの存在下においてもIMPDHの安定化効果を示した。
【0113】
[組成物6]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
16mM 塩化マグネシウム
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
0.14% マンニトール
【0114】
上記の組成物6に以下のとおり添加物を添加し、組成物6−1から6−3を調製した。
組成物6−1:組成物6+5mM DTT
組成物6−2:組成物6+5mM チオグリセロール
組成物6−3:組成物6+5mM NAC
これらの組成物を、10℃又は25℃で、0から14日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表11(10℃)と表12(25℃)に示した。
【0115】
【表11】
【0116】
【表12】
組成物6から組成物6−3中のIMPDHの安定性は、組成物5から5−3と同様の傾向を示した。マンニトールの影響は無いと考えられた。
【0117】
「組成物1から1−3」から「組成物6から6−3」を用いた上記の安定性試験の結果から、チオグリセロール及び/又はNACを添加することにより、IMPDHが安定化することが確認された。特に、少なくともIMPDH、ATP及びマグネシウムイオンが存在する条件において、チオグリセロール及び/又はNACを添加することにより、IMPDHが安定化することが確認された。
【0118】
組成物5に、下記表に示した濃度のDTTを添加した各組成物を調製した。該組成物を10℃又は25℃で0から14日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表13(10℃)と表14(25℃)に示した。
【0119】
【表13】
【0120】
【表14】
DTTの濃度に関わらず、ATPとマグネシウムイオンの存在下においては、DTTはIMPDH安定化効果を示さず、逆に不安定化効果を示した。
【0121】
組成物5に、下記表に示した濃度のチオグリセロールを添加した。該組成物を10℃又は25℃で0から14日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表15(10℃)と表16(25℃)に示した。
【0122】
【表15】
【0123】
【表16】
チオグリセロールは、DTTと異なり、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても、少なくとも5から20mMの範囲で、0.16U/mLのIMPDHの安定化効果を示した。すなわち、IMPDH 1U当たり、少なくとも31.25から125μmolの範囲のチオグリセロールが存在する場合には、IMPDHの安定化が認められた。
【0124】
組成物5に、下記表に示した濃度のNACを添加した。該組成物を10℃又は25℃で0から14日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表17(10℃)と表18(25℃)に示した。
【0125】
【表17】
【0126】
【表18】
NACは、DTTと異なり、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても、少なくとも5から20mMの範囲で、0.16U/mLのIMPDHの安定化効果を示した。すなわち、IMPDH 1U当たり、少なくとも31.25から125μmolの範囲のNACが存在する場合には、IMPDHの安定化が認められた。
【0127】
[組成物5A]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
16mM 塩化マグネシウム
0.1U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0128】
上記の組成物5Aに、下記表に示した濃度のDTT又はチオグリセロールを添加した。該組成物を25℃で0から16日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表19(DTT)及び表20(チオグリセロール)に示した。
【0129】
【表19】
【0130】
【表20】
ATPとマグネシウムイオンの存在下においては、1から10mMの範囲のDTTは0.1U/mLのIMPDHの安定化効果を示さず、逆に不安定化効果を示した。一方、少なくとも1から10mMの範囲のチオグリセロールは、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても0.1U/mLのIMPDHの安定化効果を示した。すなわち、IMPDH 1U当たり、少なくとも10から100μmolの範囲のチオグリセロールが存在する場合には、IMPDHの安定化が認められた。
【0131】
[組成物5B]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
16mM 塩化マグネシウム
1U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0132】
上記の組成物5Bに、下記表に示した濃度のDTT又はチオグリセロールを添加した。該組成物を25℃で0から16日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表21(DTT)及び表22(チオグリセロール)に示した。
【0133】
【表21】
【0134】
【表22】
ATPとマグネシウムイオンの存在下においては、1から10mMの範囲のDTTは1U/mLのIMPDHの安定化効果を示さず、逆に不安定化効果を示した。一方、少なくとも5から10mMの範囲のチオグリセロールは、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても1U/mLのIMPDHの安定化効果を示した。すなわち、IMPDH 1U当たり、少なくとも5から10μmolの範囲のチオグリセロールが存在する場合には、IMPDHの安定化が認められた。
【0135】
[組成物5C]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
0.05% アジ化ナトリウム
8mM ATP
16mM 塩化マグネシウム
10U/mL 参考例3で製造したIMPDH
【0136】
上記の組成物5Cに、下記表に示した濃度のDTT又はチオグリセロールを添加した。該組成物を25℃で0から16日間保存した。各期間保存した後の組成物中のIMPDH活性を測定して、0日目に対する割合として表23(DTT)及び表24(チオグリセロール)に示した。
【0137】
【表23】
【0138】
【表24】
ATPとマグネシウムイオンの存在下においては、1から10mMの範囲のDTTは10U/mLのIMPDH安定化効果を示さず、逆に不安定化効果を示した。一方、少なくとも10mMの範囲のチオグリセロールは、ATPとマグネシウムイオンの存在下においても10U/mLのIMPDHの安定化効果を示した。すなわち、IMPDH 1U当たり、少なくとも1μmolのチオグリセロールが存在する場合には、IMPDHの安定化が認められた。
【0139】
[実施例2]IMPDHを含有するミゾリビン測定用組成物の安定性1
[組成物7]
30mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
1% シュークロース
0.14% マンニトール
50mM 塩化カリウム
8mM ATP
5mM NAD
30mM 塩化ナトリウム
16mM 塩化マグネシウム
0.05% アジ化ナトリウム
0.05% TX−100
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
0.7U/mL 参考例6で製造した酵素P
【0140】
[組成物8]
150mM Tris/HCl緩衝液 pH9.2
50mM 塩化カリウム
20mM IMP
0.05% アジ化ナトリウム
0.05% TX−100
【0141】
[ミゾリビン標準液1から4]
生理的食塩水をミゾリビン標準液1、ミゾリビンを生理的食塩水にて溶解して調製して得たミゾリビン0.87μg/mLの濃度の溶液をミゾリビン標準液2とし、以下、2.63μg/mL濃度の溶液をミゾリビン標準液3、4.42μg/mLをミゾリビン標準液4として用意した。なお、生理的食塩水をミゾリビン標準液1とした。
【0142】
[日立7080形自動分析機パラメーター1]
分析法: [レートA][10][20][22][0][0]
波長(副波長/主波長): [405]/[340]
検体量: 種別1
標準: [2.0][0.0][0]
試薬分注量
R1: [120][0][ ][99]
R2: [0][0][ ][99]
R3: [60][0][ ][99]
R4: [0][0][ ][99]
キャリブレーション
S1 Abs.: 0
K: 10000
スタートアップキャリブレーションはしない。
【0143】
[日立7080形自動分析機パラメーター1]と下記の[日立7080形自動分析機パラメーター2]は、日立7080形自動分析機の取扱説明書等を参考に設定した。
【0144】
上記の組成物7に以下のとおり添加物を添加し、組成物7−1から7−3を調製した。
組成物7−1:組成物7+1mM DTT
組成物7−2:組成物7+1mM チオグリセロール
組成物7−3:組成物7+1mM NAC
組成物7から7−3を10℃で0から22日間保存した。各期間保存した該組成物と、用事調製した組成物8とを用いて、ミゾリビン標準液1から4についてのミゾリビン量を測定した。測定には[日立7080形自動分析機パラメーター1]を用いて日立7080形自動分析機を使用した。該パラメーター中、検体はミゾリビン標準液1から4、R1は各期間保存した後の組成物7から7−3、R3は用事調製した組成物8とした。R2及びR4は使用しなかった。
【0145】
図1に、凡例に示した期間10℃で保存した組成物7と、用事調製した組成物8を用いてミゾリビン標準液1から4中のミゾリビンを測定した結果を、検量線として示した。図中の横軸はミゾリビン濃度(μg/mL)を示す。縦軸(ΔA340nm)は、感度(NADHの吸光変化が、直線的である部分の1分間当たりの変化量(ΔmAbs/min))を示す。
【0146】
また、組成物7−1から7−3の結果は、それぞれ図2から図4に示した。0日保存の組成物7から7−3を用いて測定した場合は、図1から図4の「0日」の線(○の線)で示されているとおり、検量線が直線となりミゾリビンを正確に測定できることを示している。図1に示されるとおり、組成物7を6日間保存してもミゾリビンの測定が可能であったが、11日間の保存後においては、検量線は直線とならず、ミゾリビンが測定できないことが確認された。すなわち、ミゾリビン測定用の組成物7は、11日の保存ができないことが明らかになった。
【0147】
図2に示した結果から、DTTを添加した組成物7−1では、0日保存の場合のみミゾリビンの測定が可能であった。すなわち、極めて不安定な組成物であった。一方、図3と図4に示されるとおり、チオグリセロール又はNACを添加した組成物7−2と7−3では、少なくとも11日間の保存後もミゾリビンを測定することができ、充分に安定であった。
【0148】
本実施例により、IMPDH、ATP、及びマグネシウムイオンが存在するミゾリビン測定用の組成物に、チオグリセロール又はNACを含有させることにより、10℃での保存において、該組成物が安定化することが示された。
【0149】
[実施例3]IMPDHを含有するミゾリビン測定用組成物の安定性2
[組成物9]
90mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
1% シュークロース
0.14% マンニトール
50mM 塩化カリウム
8mM ATP
5mM NAD
30mM 塩化ナトリウム
16mM 塩化マグネシウム
0.05% アジ化ナトリウム
0.05% TX−100
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
0.7U/mL 参考例6で製造した酵素P
【0150】
上記の組成物9に以下のとおり添加物を添加し、組成物9−1から9−3を調製した。
組成物9−1:組成物9+5mM DTT
組成物9−2:組成物9+5mM チオグリセロール
組成物9−3:組成物9+5mM NAC
【0151】
組成物9は4℃で60日間保存した。組成物9−1から9−3を4℃で49日間保存した。各期間保存した後の組成物9から9−3と、用事調製した組成物8とを用いて上記ミゾリビン標準液1から4のミゾリビン量を測定した。測定には上記[日立7080形自動分析機パラメーター1]を用いて日立7080形自動分析機を使用した。該パラメーター中、検体はミゾリビン標準液1から4、R1は各期間保存した組成物9から9−3、R3は用事調製した組成物8とした。R2及びR4は使用しなかった。
【0152】
結果を組成物7から7−3の場合と同様に検量線として図5から図8に示した。図5で示されているとおり、組成物9は0日保存の場合にはミゾリビンの測定をすることができたが、60日保存の場合にはミゾリビンが測定できなかった。また、図6によれば、DTTを添加した組成物9−1では、29日保存までの場合はミゾリビンの測定をすることができたが、49日保存後はミゾリビンが測定できなかった。一方、図7と図8で示されるとおり、チオグリセロール又はNACを添加した組成物9−2と9−3では、少なくとも49日保存後もミゾリビンを測定することができた。
【0153】
本実施例により、IMPDH、ATP、及びマグネシウムイオンが存在するミゾリビン測定用の組成物に、チオグリセロール又はNACを含有させることにより、4℃での保存において、該組成物が安定化することが示された。
【0154】
[実施例4]IMPDHを含有するミゾリビン測定用組成物の安定性3
[組成物10]
90mM リン酸カリウム緩衝液 pH7.0
1% シュークロース
50mM 塩化カリウム
8mM ATP
5mM NAD
30mM 塩化ナトリウム
16mM 塩化マグネシウム
0.05% アジ化ナトリウム
0.05% TX−100
5mM チオグリセロール
0.16U/mL 参考例3で製造したIMPDH
0.7U/mL 参考例6で製造した酵素P
【0155】
上記の組成物10に以下のとおり添加物を添加し、組成物10−1から10−4を調製した。
組成物10−1:組成物10+0.07%マンニトール
組成物10−2:組成物10+0.14%マンニトール
組成物10−3:組成物10+0.75%(約40mM)マンニトール
組成物10−4:組成物10+0.14%トレハロース
【0156】
組成物10から10−4を10℃で12日間保存した。各期間保存した後の組成物10から10−4と、用事調製した組成物8とを用いて、上記ミゾリビン標準液1〜4のミゾリビン量を測定した。測定には上記[日立7080形自動分析機パラメーター1]を用いて日立7080形自動分析機を使用した。該パラメーター中、検体はミゾリビン標準液1から4、R1は各期間保存した組成物10から10−4、R3は用事調製した組成物8とした。R2及びR4は使用しなかった。10℃で0から12日間保存した組成物10から10−4と用事調製した組成物8を用いてミゾリビン標準液1〜4のミゾリビン量を測定した結果を組成物7から7−3の場合と同様に検量線として図9から図13に示した。図9から図13で示すように、組成物10から10−4を使用した場合、検体中のミゾリビン濃度を少なくとも12日目までは測定することができた。
【0157】
[実施例5]
[日立7080形自動分析機パラメーター2]
分析法: [レートA][10][20][22][0][0]
波長(副波長/主波長): [405]/[340]
検体量: 種別1
標準: [2.0][0.0][0]
試薬分注量
R1: [120][0][ ][99]
R2: [0][0][ ][99]
R3: [60][0][ ][99]
R4: [0][0][ ][99]
キャリブレーション
キャリブレーション方法:[リニア]
ポイント: [2]
スパンポイント: [0]
重み付けファクタ: [0]
標準液 (1) (2) (3) (4)
濃度: [0.00] [0.87] [2.63] [4.42]
検体量: [2.0] [2.0] [2.0] [2.0]
スタートアップキャリブレーションをする。
【0158】
上記組成物9−2を日立7080形自動分析機の試薬用冷蔵庫中(4〜10℃の範囲で温度が変動する)で0から12日間保存した。用事調製の組成物9−2と12日保存の組成物9−2を用いて、3人のミゾリビンを投与された患者の血清(検体1〜3)中のミゾリビンを測定して、用事調製の組成物9−2と12日保存の組成物9−2の組成物の、ミゾリビン測定用組成物としての性能を比較した。測定には日立7080形自動分析機を使用し、上記[日立7080形自動分析機パラメーター2]を用い、キャリブレーターは上記ミゾリビン標準液1〜4を使用した。該パラメーター中、検体は検体1〜3、R1は用事調製の組成物9−2又は12日保存の組成物9−2、R3は用事調製した組成物8とした。R2及びR4は使用しなかった。検体1から3中のミゾリビン濃度をそれぞれ5回測定し、平均値とCV(%)を求めて、用事調製の組成物9−2の結果を表19に、12日保存の組成物9−2の結果を表20に示した。
【0159】
【表25】
【0160】
【表26】
表25と表26に示すように、用事調製の組成物9−2を使用した測定結果に対して、12日間保存した組成物9−2を使用した測定結果は±10%の範囲に収まり、組成物9−2は、12日間保存後もミゾリビン測定用の組成物として好適に用いることができることが明らかになった。さらに、用事調製及び12日間保存した組成物9−2を使用した測定結果は、いずれもCV(%)が0.5%以下であり、再現性が高いことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明によれば、様々な条件下であっても、IMPDHを安定して含有するIMPDH含有組成物及びIMPDHを安定化する方法が提供される。、これにより、例えば、医薬品の開発や、試薬の開発の分野で安定なIMPDHの利用が可能になるという産業上の利用可能性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)と、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)とを含有する、IMPDH含有組成物。
【請求項2】
リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するイノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)をさらに含有する、IMPDH含有組成物。
【請求項3】
リン酸供与体及び金属イオンが混在するイノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)をさらに含有する、IMPDH含有組成物。
【請求項4】
前記リン酸供与体がATPである、請求項2又は3に記載のIMPDH含有組成物。
【請求項5】
前記金属イオンがマグネシウムイオンである、請求項2〜4のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
【請求項6】
水溶液の形態である、請求項1〜5のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
【請求項7】
IMPDHの酵素反応を利用するための組成物である、請求項1〜6のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
【請求項8】
IMPDHの酵素反応を利用して、IMPDHの阻害剤、IMPDHの基質若しくはIMPDHの補酵素又はこれらの前駆体のいずれかを測定するための試薬である、請求項1〜7のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
【請求項9】
IMPDHの酵素反応を利用して、ミゾリビン及び/又はリバビリンを測定するための試薬である、請求項1〜8のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
【請求項10】
リン酸供与体及び/又は金属イオンと、イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)とを含有するIMPDH含有組成物のための安定化剤であって、
チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を有効成分とする安定化剤。
【請求項11】
イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物の安定化方法であって、
チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を前記組成物に添加する工程を含む安定化方法。
【請求項12】
リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するイノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物の安定化方法であって、
チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を前記組成物に添加する工程を含む安定化方法。
【請求項1】
イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)と、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)とを含有する、IMPDH含有組成物。
【請求項2】
リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するイノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)をさらに含有する、IMPDH含有組成物。
【請求項3】
リン酸供与体及び金属イオンが混在するイノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物であって、チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)をさらに含有する、IMPDH含有組成物。
【請求項4】
前記リン酸供与体がATPである、請求項2又は3に記載のIMPDH含有組成物。
【請求項5】
前記金属イオンがマグネシウムイオンである、請求項2〜4のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
【請求項6】
水溶液の形態である、請求項1〜5のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
【請求項7】
IMPDHの酵素反応を利用するための組成物である、請求項1〜6のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
【請求項8】
IMPDHの酵素反応を利用して、IMPDHの阻害剤、IMPDHの基質若しくはIMPDHの補酵素又はこれらの前駆体のいずれかを測定するための試薬である、請求項1〜7のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
【請求項9】
IMPDHの酵素反応を利用して、ミゾリビン及び/又はリバビリンを測定するための試薬である、請求項1〜8のいずれかに記載のIMPDH含有組成物。
【請求項10】
リン酸供与体及び/又は金属イオンと、イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)とを含有するIMPDH含有組成物のための安定化剤であって、
チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を有効成分とする安定化剤。
【請求項11】
イノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物の安定化方法であって、
チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を前記組成物に添加する工程を含む安定化方法。
【請求項12】
リン酸供与体及び/又は金属イオンが混在するイノシン5’一リン酸脱水素酵素(IMPDH)含有組成物の安定化方法であって、
チオグリセロール及び/又はN−アセチル−L−システイン(NAC)を前記組成物に添加する工程を含む安定化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−263839(P2010−263839A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118370(P2009−118370)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(303046299)旭化成ファーマ株式会社 (105)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(303046299)旭化成ファーマ株式会社 (105)
【Fターム(参考)】
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