説明

K‐252Aおよびその誘導体のポリマー結合体

本発明は、K-252aおよびその誘導体の新規なポリマー結合体、ならびに、キナーゼ関連病変の予防、緩和および治療に有用な医薬組成物の調製のためのその使用に関する。特に、本発明は、HMGB1関連病変の予防、緩和および治療に関する。特定の態様において、本発明は、中枢および末梢神経系の神経性障害、ニューロパシーおよび神経変性障害の予防、緩和および治療のために有用な医薬組成物の調製におけるK-252aおよびその誘導体の新規なポリマー結合体の使用に関する。さらなる好ましい態様において、皮膚病変、特に、過剰ケラチノサイト増殖に伴う皮膚病変、特に乾癬の予防、緩和および治療のために有用な医薬組成物の調製におけるポリマー結合体の使用に関する。なおさらなる態様において、本発明は、NGF関連痛の予防、緩和および治療における該ポリマー結合体の使用に関する。より具体的には、本発明は、該ポリマーが、ポリエチレングリコールまたはメトキシポリエチレングリコールである、K-252aおよびその誘導体のポリマー結合体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、K-252aおよびその誘導体の新規なポリマー結合体、ならびにキナーゼ関連病変の予防、緩和および治療に有用な医薬組成物の調製のためのその使用に関する。特に、本発明は、HMGB1関連病変の予防、緩和および治療に関する。特定の態様において、本発明は、中枢および末梢神経系における神経障害、ニューロパシーおよび神経変性障害の予防、緩和および治療に有用な医薬組成物の調製におけるk-252aおよびその誘導体の新規なポリマー結合体の使用に関する。さらに好ましい態様において、本発明は、皮膚病変、特に過剰ケラチノサイト増殖関連皮膚病変、特に乾癬の予防、緩和および治療に有用な医薬組成物の調製におけるポリマー結合体の使用に関する。なおさらなる態様において、本発明は、NGF関連痛の予防、緩和および治療におけるポリマー結合体の使用に関する。より具体的には、本発明は、ポリマーがポリエチレングリコールまたはメトキシ-ポリエチレングリコールである、K-252aおよびその誘導体のポリマー結合体に関する。
【背景技術】
【0002】
K-252aは、Nocardiopsis sp soil fungi(国際公開第97/38120号)から最初に単離された脂肪親和性アルカロイドであり、以下の式:
【0003】
【化1】

【0004】
で表されるインドロカルバゾール骨格を有する。
【0005】
K-252aは、細胞機能の調節に対して中心的役割を担うプロテインキナーゼC(PKC)を強力に阻害し、平滑筋収縮を阻害する作用(Jpn. 3. Pharmacol. 43(suppl.):284、1987)、セロトニン分泌を阻害する作用(Yamadaら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 144:35〜40、1987)、神経突起の伸長を阻害する作用(Koizumiら、J. Neurosci. Res. 8:715、1988)、ヒスタミン放出を阻害する作用(Moritaら、Allergy 43:100〜104、1988)、平滑筋ミオシン軽鎖キナーゼを阻害する作用(Nakanishiら、J. Biol. Chem. 263:6215〜6219、1988)、抗炎症作用(Pappら、Acta Physiol. Hung. 80:423〜425、1992)、細胞生存の活性(Glicksmanら、J. Neurochem. 64:1502〜1512、1995)などのさまざまな活性を有する。また、K-252a がIL-2産生を阻害する活性を有することも、Groveら、Exp. Cell Res.、193:175〜182、1991において開示されている。その上、K-252aの完全な合成が、達成されている(Woodら、J. Am. Chem. Soc. 117:10413〜10414、1995)。
【0006】
神経成長因子(NGF)は、最も特徴付けされたニューロトロフィンであり、特定の感覚ニューロンおよびコリン作動性ニューロンの正常な発達および機能に必要である(Levi-Montalcini、Annu. Rev. Neurosci. 5:341〜362、1982)。高親和性ニューロトロフィン受容体であるtrkは、trk A、trk B、およびtrk Cからなるタンパク質のファミリーを含む(Knuselら、J. Neurochem. 59:715〜722、1992)。この受容体ファミリーのメンバーは、チロシンキナーゼ活性を示す膜結合タンパク質である。ニューロトロフィンリガンドとtrkとの相互作用は、受容体上の特定のチロシン残基のリン酸化を誘導する。trkのリン酸化は、ニューロトロフィン結合に即時に応答する。これは、細胞によるニューロトロフィンへの官能基反応を調節する酵素経路の活性化にとって絶対要件である(Kleinら、Cell 65:189〜197、1991;Lamballeら、Cell 66:967〜979、1991)。K-252aは、trkを含むいくつかの酵素の阻害剤である。この効果と整合して、一部のin vitro 細胞アッセイにおいてNGF媒介細胞生存を阻止するが(Koizumiら、J. Neurosci. 8:715〜721、1988;Dohertyら、Neurosci. Lett. 96:1〜6、1989;Matsudaら、Neurosci. Lett. 87:11〜17、1988)、これはtrkのリン酸化状態に影響するからである。
【0007】
文献には、例えば、神経変性疾患のビス-エチル-チオメチルアナログCEP-1347としてK-252aおよびその誘導体の治療潜在性が示されている(Annu Rev Pharmacol Toxicol. 2004;44:451〜74; Neurochem Int. 2001 Nov〜Dec;39(5〜6):459〜68; Neuroport. 2000 Nov 9;11(16):3453〜6; Neuroscience. 1998 Sep;86(2):461〜72; Brains Res. 1994 Jul 4; 650(1):170〜4)。
【0008】
皮膚の恒常性および病態生理学的過程の双方の主要な細胞成分であるケラチノサイトは、多くのサイトカインを分泌し、いくつかの成長因子によって刺激される。NGFは、皮膚で合成され、培養中の正常ヒトケラチノサイトの増殖を、用量依存的に著しく刺激する。この作用は、高親和性NGF受容体(trk)特異的阻害剤であるK-252aの添加によって抑制することができ、したがって、ヒトケラチノサイトに対するNGF効果が高親和性NGF受容体によって仲介されていることを示唆する。このように、NGFは、ヒト皮膚においてサイトカインとして作用することができ、ケラチノサイト増殖の障害に関与する(Pincelliら、J. Invest. Dermatol. 103:13〜18、1994)。神経原性炎症およびNGFの役割については、乾癬において広範囲に研究されてきた。ケラチノサイトにおいては、NGFのレベルが増加し、そして、乾癬プラークの皮神経においては、NGF受容体が上方制御(upregulation)される。NGFは、乾癬において認められた顕著な病変事象すべてに影響することができ、これらの事象には、ケラチノサイトの増殖、血管形成、T細胞活性化、接着分子の発現、皮神経の増殖、および神経ペプチドの増加作用などがある。二重盲検プラセボ対照試験において、乾癬のNGFおよびNGF受容体の役割を、乾癬の重症複合免疫不全(SCID)マウス-ヒト皮膚モデルを用いるin vivo系で調べた。SCIDマウスに移植された乾癬プラークを、K-252aで処置した。乾癬は、2週間の治療後著しく改善した(Raychaudhuriら、J. Invest. Dermatol. 122:812〜819、2004)。
【0009】
さらに、NGFは、いくつかの急性および慢性疼痛状態の疼痛および痛覚過敏の発生において重要な役割を果たすことが報告されている。NGFの発現は、損傷および炎症組織で高く、侵害受容ニューロンのNGF受容体チロシンキナーゼTrkAの活性化は、多機構による疼痛シグナル伝達を引き起こし、増強する。NGF拮抗作用は、多くの疼痛状態において極めて有効な治療手法であり、従来の鎮痛薬の副作用を有さないことが予期される[Hefti FFら、Trends Pharmacol. Sci. (2006)27:85〜91]。TrkA受容体はNGFの侵害受容作用に必要であるという証拠が示されている。受容体チロシンキナーゼ阻害剤のほとんどは、ATPが触媒チロシンキナーゼ領域に結合することを阻害する[Madhusudan Sら、Clin. Biochem. (2004)37:618〜635]。アルカロイドK-252aは、Trkシグナル伝達を強力に阻害し、膵臓痛の動物モデルにおける感覚過敏を軽減する[Winston JHら、J. Pain (2003)4:329〜337]。しかし、K-252aはいくつかのキナーゼに対する強力な阻害剤なので、TrkAに対する選択性に欠ける。これは、K-252aが、TrkAの阻害と無関係な多くの副作用を持ちやすいことを意味する。
【0010】
特許出願国際公開第2005/014003号には、乾癬および皮膚腫瘍などの障害の特徴である過剰ケラチノサイト増殖を阻害可能な局所用薬剤を調製するための、K-252ファミリーに属する微生物起源のチロシンキナーゼ阻害剤の使用が記載されている。
【0011】
国際特許出願第PCT/EP/2005/008258号には、HMGB1関連病変の予防および治療におけるK-252aおよびその誘導体の使用が開示されている。HMGB1は、壊死細胞または死にかけた細胞により放出される炎症促進性ケモカインであり、いくつかのヒト病変において炎症性サイトカインカスケードを引き起こす。好ましい実施形態において、上記の米国特許出願は、再狭窄の予防および治療用の治療薬としてK-252aおよびその誘導体の新規な使用を記載している。実際、双方とも再狭窄形成の根底にある事象である、HMGB1誘発動脈平滑筋細胞の遊走および増殖を阻止/阻害する能力を有する。この目的のために、in situで活性剤を放出させるために、結合、埋め込み、または吸着することによる表面コーティングとして、K-252aおよびその誘導体を、医療装置、特にステントにとりつける。
【0012】
K-252それ自体に加えて、K-252aのさまざまな誘導体が合成され、生物活性が試験されてきた。例として、K-252a誘導体であるCEP1347は、神経防護特性を保持するが、TrkAを阻害しない。CEP1347は、MLK3を含むMAPKKKを直接阻害することが示されている(Rouxら、J. Biol. Chem. 277:49473〜49480、2002)。別のK-252a誘導体であるKT5926は、BHK-21細胞における水疱性口内炎ウイルス(VSV)複製に対して研究されてきた(Kimら、Biol. Pharm. Bull. 21:498〜505、1998)。C3'に保存的置換を有するK-252aアナログは、一連のキナーゼに対して効力を保持する(Schneiderら、Org. Lett. 7:1695〜1698、2005)。
【0013】
全身投与薬剤の効果は、生理学的pHでの低い溶解度、ならびに糸球体濾過、細胞クリアランスおよび代謝による急速な除去などの要因によって、in vivoで妨げられる可能性がある。多くの場合、このような不利な作用は、このような薬剤の有効な治療的使用を妨げる。薬剤の効果の有効性および持続時間の双方を改善し、潜在的毒性作用を減少させるための成功した戦略は、生物学的活性剤を多様なポリマーへ共有結合させることである。活性剤の薬理学的および毒性学的特性を改善するために最もしばしば使用されるポリマーの1つは、ポリアルキレンオキシドポリエチレングリコール、要するにPEGである。
【0014】
両親媒性で、非毒性で、免疫学的に不活性なポリエチレングリコール(PEG)ポリマーは、医薬品に結合させて、薬物動態および毒性学的特性の多くを操作することができる。薬物送達の分野では、免疫原性、タンパク質分解、および腎臓クリアランスを減少させ、溶解度を高めるために、PEG誘導体は、タンパク質に共有結合させて(すなわち、「PEG化」)、広範に使用されてきた(Zalipsky、Adv. Drug Del. Rev. 16:157〜182、1995)。同様に、毒性を減少させ、生体内分布を変化させ、溶解度を高めるために、PEGは、低分子量で、比較的疎水性の薬剤に結合させてきた。結合体となったPEGの特性によって、PEG化製剤は、その修飾されていない親薬剤よりもより有効でありうることがある(Molineux、Pharmacotherapy 23: 3S〜8S、2003)。
【特許文献1】国際公開第97/38120号
【特許文献2】国際公開第2005/014003号
【特許文献3】国際特許出願第PCT/EP/2005/008258号
【特許文献4】国際公開第2006/002971号
【非特許文献1】Jpn. 3. Pharmacol. 43(suppl.):284、1987
【非特許文献2】Yamadaら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 144:35〜40、1987
【非特許文献3】Koizumiら、J. Neurosci. Res. 8:715、1988
【非特許文献4】Moritaら、Allergy 43:100〜104、1988
【非特許文献5】Nakanishiら、J. Biol. Chem. 263:6215〜6219、1988
【非特許文献6】Pappら、Acta Physiol. Hung. 80:423〜425、1992
【非特許文献7】Glicksmanら、J. Neurochem. 64:1502〜1512、1995
【非特許文献8】Groveら、Exp. Cell Res.、193:175〜182、1991
【非特許文献9】Woodら、J. Am. Chem. Soc. 117:10413〜10414、1995
【非特許文献10】Levi-Montalcini、Annu. Rev. Neurosci. 5:341〜362、1982
【非特許文献11】Knuselら、J. Neurochem. 59:715〜722、1992
【非特許文献12】Kleinら、Cell 65:189〜197、1991
【非特許文献13】Lamballeら、Cell 66:967〜979、1991
【非特許文献14】Koizumiら、J. Neurosci. 8:715〜721、1988
【非特許文献15】Dohertyら、Neurosci. Lett. 96:1〜6、1989
【非特許文献16】Matsudaら、Neurosci. Lett. 87:11〜17、1988
【非特許文献17】Annu Rev Pharmacol Toxicol. 2004;44:451〜74
【非特許文献18】Neurochem Int. 2001 Nov〜Dec;39(5〜6):459〜68
【非特許文献19】Neuroport. 2000 Nov 9;11(16):3453〜6
【非特許文献20】Neuroscience. 1998 Sep;86(2):461〜72
【非特許文献21】Brains Res. 1994 Jul 4; 650(1):170〜4
【非特許文献22】Pincelliら、J. Invest. Dermatol. 103:13〜18、1994
【非特許文献23】Raychaudhuriら、J. Invest. Dermatol. 122:812〜819、2004
【非特許文献24】Hefti FFら、Trends Pharmacol. Sci. (2006)27:85〜91
【非特許文献25】Madhusudan Sら、Clin. Biochem. (2004)37:618〜635
【非特許文献26】Winston JHら、J. Pain (2003)4:329〜337
【非特許文献27】Rouxら、J. Biol. Chem. 277:49473〜49480、2002
【非特許文献28】Kimら、Biol. Pharm. Bull. 21:498〜505、1998
【非特許文献29】Schneiderら、Org. Lett. 7:1695〜1698、2005
【非特許文献30】Zalipsky、Adv. Drug Del. Rev. 16:157〜182、1995
【非特許文献31】Molineux、Pharmacotherapy 23: 3S〜8S、2003
【非特許文献32】P.B. Laubら、Journal of Pharmaceutical Sciences、1996、85(4):393〜395
【非特許文献33】Gibaldiら、Pharmacokinetics、1982、Marcel Dekker, Inc.、New York
【非特許文献34】Mosmann T.、Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival: Application to proliferation and cytotoxicity assays. J. Immunol. Methods、1983,Dec. 16、65(1-2):55〜63
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、インドロカルバゾールファミリーのメンバーの治療的に有用な投与形態を開発するために、いくつかのポリマー、特にポリエチレングリコール(PEG)の特有の特徴を利用することであった。PEG修飾によって、ポリマーを結合させたインドロカルバゾール化合物の薬物動態および毒性学的性能改善を得ることが本発明の発明者らの目的であった。さらに、新規な結合化合物の活性および/または毒性プロファイルの変化もこの発明の対象であった。
【0016】
本発明の根底にある特有の問題の1つは、改善された薬物動態および毒性学的性能を可能にするK-252aの投与形態を開発し、さまざまな可能な適用経路においてK-252aまたはその誘導体の最良の生物利用能を達成するために、いくつかのポリマー、特にPEGの特有の特徴を利用することであった。本発明の特定の態様において、該問題は、局所投与の場合に、K-252aまたはその誘導体の吸収低下、およびその結果、起こり得る全身毒性および/または副作用の減少およびさらには除去を達成するために、該ポリマーの特徴を利用することであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、本発明は、インドロカルバゾール化合物のメンバー、特に、K-252aまたはその誘導体の新規なポリマー結合体、その調製およびその使用に関し、ここで、該ポリマー結合体は、非結合インドロカルバゾール化合物あるいはK-252a化合物またはその誘導体に比べて増加した水溶解度、改善された医薬取扱性、改善された薬物動態および生物利用能ならびに/あるいは低下した毒性および/または免疫原性を有する。
【0018】
特に好ましい態様において、本発明は、K-252aまたはその誘導体のポリマー結合体、その調製およびその使用に関し、ここで、局所投与後、全身吸収は制限され、したがって、全身毒性および/または副作用は減少し、またはさらには除去される。
【0019】
したがって、本発明の第1の態様は、一般式(I):
【0020】
【化2】

【0021】
および好ましくは、一般式(II):
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、RaおよびRbは、独立して、水素あるいは、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシまたはアルコキシカルボニルからなる群から選択される有機残基である:または
RaおよびRbは、一緒に、0、1または2個のヘテロ原子、好ましくは窒素原子を含み、カルボニル基を含んでもよい、インドロ[2,3-a]カルバゾール核構造に直接縮合した5〜7員、好ましくは5員環状構造を形成し、該環状構造は、非置換であるか、あるいは置換されており、好ましくは、カルボニル基またはW1もしくはW2から選択される少なくとも1個の置換基によって置換されており、ここで、該環状構造のヘテロ原子のメンバーが窒素である場合、該窒素は残基R3によって置換されており、
RcおよびRdは、
(a)独立して、水素あるいは、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシまたはアルコキシカルボニルからなる群から選択される有機残基である;または、
RcおよびRdの1個は、水素、置換もしくは非置換の低級アルキルおよびヒドロキシから選択され、RcおよびRdの他の1個は、3〜7員、好ましくは5または6員環状部分、好ましくは環状炭化水素部分であり、ここで、該環状部分は、非置換であるか、または置換されており、好ましくは、ポリマー部分の結合に好適な少なくとも1個の官能基によって置換されており、より好ましくは、該環の少なくとも1個、好ましくは2〜3個、および全部までの位置で、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルキル、低級アルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルキルアミノカルボニルまたはオキシム基によって置換されており;あるいは、
(b)RcおよびRdは、3〜7員、好ましくは5または6員環状部分、好ましくは環状炭化水素部分を一緒に形成し、ここで、該環状部分は、非置換であるか、または置換されており、好ましくは、ポリマー部分の結合に好適な少なくとも1個の官能基によって置換されており、より好ましくは、該環の少なくとも1個、好ましくは2または3個、および全部までの位置で、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルキル、低級アルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルキルアミノカルボニルおよび/またはオキシム基によって置換されており、
ここで、残基R1、R2、R3、W1およびW2は、下記のとおり定義される);
のインドロカルバゾール化合物のポリマー結合体またはその医薬的に許容される塩である。
【0024】
好ましくはRcおよび/またはRdに位置して、ポリマー部分が結合する少なくとも1個の官能基を、化合物(I)および(II)は、有する。該結合体は、1つまたはいくつかのポリマー部分、例えば、1つ、2つ、3つまたはそれより多くのポリマー部分を含んでもよい。好ましくは、本発明の結合体化合物は、1つのポリマー部分を含む。
【0025】
3〜7員環状部分、好ましくは環状炭化水素部分が、インドロカルバゾール構造の1個のインドール窒素への結合または双方のインドール窒素への結合によってインドロカルバゾール化合物へ結合する。したがって、該結合は、1個のインドールまたは2個のインドールを含むことができ、好ましくは1個または2個のN-グリコシド結合によって与えられる。
【0026】
好ましくは、該3〜7員環状部分、好ましくは該環状炭化水素部分は、置換フラノ基または置換ピラノ基である。したがって、好ましいポリマー結合化合物は、シクロフラノシル化インドロカルバゾール化合物またはシクロピラノシル化インドロカルバゾール化合物である。本発明に従い、ポリマー部分に結合させる好ましいシクロフラノシル化インドロカルバゾール化合物は、K-252a、K-252b、ICP-1から選択することができる。好ましいシクロピラノシル化インドロカルバゾール化合物は、スタウロスポリン(Staurosporine)、K-252d、TAN-1030a、RK-286c、MLR-52、レベッカマイシン(Rebeccamycin)、UNC-01、UNC-02およびRK-1409Bから選択することができる。
【0027】
該少なくとも1つのポリマー部分は、安定な結合体を与えるために、共有化学結合によって式(I)および/または(II)の化合物に結合している。特に、該ポリマー部分は、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アルコキシカルボニルまたはアミノカルボニルから選択される官能基上の結合によって、一般式(I)および/または(II)の化合物に結合している。本発明の極めて好ましい実施形態において、該ポリマー部分は、残基RcおよびRdの1個、特に好ましくは残基RcおよびRdによって同定される環状炭化水素部分で、一般式(I)および/または(II)の化合物に結合している。本発明の化合物のポリマー部分ならびに、該ポリマー部分が式(I)および/または(II)のインドロカルバゾール化合物に結合しうる好ましい化学結合を、以下に記載する。
【0028】
本発明の極めて好ましい態様は、ポリマー結合体であり、これは、以下の式(III):
【0029】
【化4】

【0030】
{式中、R1およびR2は、同じまたは異なる残基であり、
a)水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アシル、ニトロ、カルバモイル、低級アルキルアミノカルボニル、-NR5R6(ここで、R5およびR6は、水素、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルキルアミノカルボニル、置換もしくは非置換の低級アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アシルから、それぞれ独立して、選択されるか、またはR5およびR6は、ヘテロ環式基由来の窒素原子と結合している)、
b)-CO(CH2)jR4[ここで、jは1から6であり、R4は、
(i)水素、ハロゲン、-N3
(ii)-NR5R6(ここで、R5およびR6は、上記に定義したとおりである)、
(iii)-SR7(ここで、R7は、水素、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、-(CH2)aCO2R10(ここで、aは1または2であり、R10は、水素および置換もしくは非置換の低級アルキルからなる群から選択される)、および-(CH2)aCO2NR5R6(ここで、aならびにR5およびR6は、上記に定義したとおりである))、
(iv)-OR8、-OCOR8(ここで、R8は、水素、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールから選択される)
からなる群から選択される]、
c)-CH(OH)(CH2)jR4(ここで、jおよびR4は、上記に定義したとおりである)、
d)-(CH2)dCHR11CO2R12または-(CH2)dCHR11CONR5R6[ここで、dは0から5であり、R11は、水素、-CONR5R6、または-CO2R13(ここで、R13は、水素または置換もしくは非置換の低級アルキルである)であり、R12は、水素または置換もしくは非置換の低級アルキルである]、
e)-(CH2)kR14[ここで、kは2から6であり、R14は、ハロゲン、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、-COOR15、-OR15(ここで、R15は、水素、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールまたはアシルである)、-SR7(ここで、R7は上記に定義したとおりである)、-CONR5R6、-NR5R6(ここで、R5およびR6は上記に定義したとおりである)または-N3である]、
f)-CH=CH(CH2)mR16[ここで、mは0から4であり、R16は、水素、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、-COOR15、-OR15(ここで、R15は上記に定義したとおりである)、-CONR5R6または-NR5R6(ここで、R5およびR6は上記に定義したとおりである)である]、
g)-CH=C(CO2R12)2(ここで、R12は上記に定義したとおりである)、
h)-C≡C(CH2)nR16(ここで、nは0から4であり、R16は上記に定義したとおりである)、
i)-CH2OR22(ここで、R22は、3個の低級アルキル基が同じかまたは異なっているトリ-低級アルキルシリルであるか、あるいはR22はR8と同じ意味を有する)、
j)-CH(SR23)2および-CH2-SR7(ここで、R23は、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルであり、R7は上記に定義したとおりである)
からなる群から、それぞれ独立して、選択され、
R3は、水素、ハロゲン、アシル、カルバモイル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニルまたはアミノであり、
Xは-L1-X'を表し、Yは-L2-Y'(ここで、X'およびY'の少なくとも1つは、式(III)の化合物のテトラヒドロフラン部分にL1および/またはL2によって結合する、直鎖または分岐のいずれかのポリマーであり;L1および/またはL2は、テトラヒドロフラン部分をポリマーX'および/またはY'に結合する共有化学結合またはリンカー基である)を表し;
Y'がポリマーであって、X'がポリマーでない場合、L1は共有化学結合であり、X'は
(a)水素、低級ヒドロキシアルキル、アシル、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、
(b)-CONR17aR17b[ここで、R17aおよびR17bは、
(i)水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、
(ii)-CH2R18(ここで、R18はヒドロキシである)、または
(iii)-NR19R20(ここで、R19またはR20は、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニルから、それぞれ独立して、選択されるか、あるいはR19またはR20は、独立して、カルボキシル基のヒドロキシ基が除かれているα-アミノ酸の残基であるか、あるいはR19またはR20は、窒素原子と組み合わさって、ヘテロ環式基を形成)
から、それぞれ独立して、選択される]、および
(c)-CH=N-R21(ここで、R21は、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、グアニジノ、またはイミダゾリルアミノである)
からなる群から選択され;
X'がポリマーであって、Y'がポリマーでない場合、L2は共有化学結合であり、Y'は、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アラルキルオキシ、またはアシルオキシから選択され;
W1およびW2は、独立して、水素、ヒドロキシであるか、またはW1およびW2は、一緒に酸素を表す}
またはその医薬的に許容される塩で表される。
【0031】
用語「低級アルキル」は、単独で用いられるかまたは他の基と合わせて用いられる場合、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜4個、特に好ましくは1〜3個または1〜2個の炭素原子を含む直鎖または分岐の低級アルキル基を意味する。これらの基には、特に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、アミル、イソアミル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシルなどがある。「低級アルコキシ」、「低級アルコキシカルボニル」、「低級アルキルアミノカルボニル」、「低級ヒドロキシアルキル」および「トリ-低級アルキルシリル」の低級アルキル部分は、上記に定義した「低級アルキル」と同じ意味を有する。
【0032】
「低級アルケニル」基は、直鎖または分岐であってもよく、Z型またはE型であってもよいC2〜C6アルケニル基として定義する。このような基には、ビニル、プロペニル、1-ブテニル、イソブテニル、2-ブテニル、1-ペンテニル、(Z)-2-ペンテニル、(E)-2-ペンテニル、(Z)-4-メチル-2-ペンテニル、(E)-4-メチル-2-ペンテニル、ペンタジエニル、例えば、1,3または2,4-ペンタジエニルなどがある。より好ましいC2〜C6-アルケニル基は、C2〜C5-、C2〜C4-アルケニル基、さらにより好ましくはC2〜C3-アルケニル基である。
【0033】
用語「低級アルキニル」基は、直鎖または分岐であってもよいC2〜C6-アルキニル基を意味し、エチニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1-ペンチニル、3-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニルなどがある。より好ましいC2〜C6-アルキニル基は、C2〜C5-、C2〜C4-アルキニル基、さらにより好ましくはC2〜C3-アルキニル基である。
【0034】
用語「アリール」基は、6から14個までの環状炭素原子を含むC6〜C14-アリール基を意味する。これらの基は、単環式、二環式、または三環式であってもよく、縮合環である。好ましいアリール基には、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニルなどがある。「アリールカルボニル」基および「アリールアミノカルボニル」基のアリール部分は、上記定義と同じ意味を有する。
【0035】
用語「ヘテロアリール」基は、窒素、硫黄または酸素から独立して選択される1から3個のヘテロ原子を含み得、C3〜C13-ヘテロアリール基をいう。これらの基は、単環式、二環式または三環式であってもよい。本発明のC3〜C13ヘテロアリール基には、ヘテロ芳香族、ならびに飽和および部分飽和ヘテロ環基などがある。これらのヘテロ環は、単環式、二環式、三環式であってもよい。好ましい5または6員ヘテロ環基は、チエニル、フリル、ピロリル、ピリジル、ピラニル、モノホリニル、ピラジニル、メチルピロリル、およびピリダジニルである。C3〜C13-ヘテロアリールは、二環式ヘテロ環基であってもよい。好ましい二環式ヘテロ環基は、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、イミダゾリル、およびピリミジニルである。最も好ましいC3〜C13-ヘテロアリールは、フリルおよびピリジルである。
【0036】
用語「低級アルコキシ」には、1から6個の炭素原子、好ましくは1から5個、より好ましくは1から4個、特に好ましくは1から3個または1から2個の炭素原子を含むアルコキシ基が含まれ、直鎖または分岐であってもよい。これらの基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどがある。
【0037】
用語「アシル」には、1から6個の炭素原子、好ましくは1から5個、1から4個、1から3個または1から2個の炭素原子を含む低級アルカノイルが含まれ、直鎖または分岐であってもよい。これらの基には、好ましくは、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、tert-ブチリル、ペンタノイルおよびヘキサノイルなどがある。「アシルオキシ」基のアシル部分は、上記定義と同じ意味を有する。
【0038】
用語「ハロゲン」には、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードなどがある。
【0039】
用語「アラルキル」基は、アルキル基がアリールによって置換されているC7〜C15-アラルキルをいう。該アルキル基およびアリールは、上記に定義したC1〜C6-アルキル基およびC6〜C14-アリール基から選択することができ、ここで、炭素原子の総数は7から15個である。好ましいC7〜C15-アラルキル基は、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルイソプロピル、フェニルブチル、ジフェニルメチル、1,1-ジフェニルエチル、1,2-ジフェニルエチルである。「アラルキルオキシ」基のアラルキル部分は、上記定義と同じ意味を有する。
【0040】
置換低級アルキル基、置換低級アルケニル基、および置換低級アルキニル基は、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、モノまたはジ低級アルキルアミノ、ジオキソラン、ジオキサン、ジチオラン、およびジチオンなどの独立して選択される1から3個の置換基を有する。置換低級アルキル基、置換低級アルケニル基および置換低級アルキニル基の低級アルキル置換部分、ならびに置換低級アルキル基、置換低級アルケニル基および置換低級アルキニル基の低級アルコキシ置換基、低級アルコキシカルボニル置換基、モノまたはジ低級アルキルアミノ置換基の低級アルキル部分は、上記に定義した「低級アルキル」と同じ意味を有する。
【0041】
置換アリール基、置換ヘテロアリール基および置換アラルキル基はそれぞれ、低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、ニトロ、アミノ、モノまたはジ低級アルキルアミノ、およびハロゲンなどの独立して選択される1から3個の置換基を有する。
【0042】
窒素原子と結合したR5およびR6によって形成されるヘテロ環基には、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペリジノ、モルホリニル、モルホリノ、チオモルホリノ、N-メチルピペラジニル、インドリル、およびイソインドリルなどがある。
【0043】
α-アミノ酸基には、グリシン、アラニン、プロリン、グルタミン酸およびリジンなどがあり、L-型、D-型またはラセミ体の型であってもよい。
【0044】
好ましくは、R1およびR2は、水素、ハロゲン、ニトロ、-CH2OH、-(CH2)kR14、-CH=CH(CH2)mR16、-C≡C(CH2)nR15、-CO(CH2)jR4(ここで、R4は-SR7である)、CH2O-(置換または非置換の)低級アルキル(ここで、置換低級アルキルは、好ましくは、メトキシメチル、メトキシエチルまたはエトキシメチルである)、-NR5R6からなる群から独立して選択される。
【0045】
R1およびR2の上記好ましい意味において、残基R14は、好ましくは、フェニル、ピリジル、イミダゾリル、チアゾリル、テトラゾリル、-COOR15、-OR15(ここで、R15は、好ましくは、水素、メチル、エチル、フェニルまたはアシルから選択される)、-SR7(ここで、R7は、好ましくは、置換または非置換の低級アルキル、2-チアゾリンおよびピリジルから選択される)および-NR5R6(ここで、R5およびR6は、好ましくは、水素、メチル、エチル、フェニル、カルバモイルおよび低級アルキルアミノカルボニルから選択される)から選択される。さらに、残基R16は、好ましくは、水素、メチル、エチル、フェニル、イミダゾール、チアゾール、テトラゾール、-COOR15、-OR15および-NR5R6(ここで、残基R15、R5およびR6は、上記した好ましい意味を有する)から選択される。R1およびR2の上記好ましい意味において、残基R7は、好ましくは、置換または非置換の低級アルキル、置換または非置換のフェニル、ピリジル、ピリミジニル、チアゾールおよびテトラゾールからなる群から選択される。さらに、kは、好ましくは2、3または4であり、jは、好ましくは1または2であり、mおよびnは、独立して、好ましくは0または1である。
【0046】
好ましくは、R3は、水素またはアセチル、最も好ましくは水素である。
【0047】
好ましくは、それぞれのW1およびW2は水素である。
【0048】
Y'がポリマーであって、X'がポリマーでない場合、X'は、好ましくは、カルボキシ、ヒドロキシメチルまたは低級アルコキシカルボニルから選択され、特に好ましくは、メトキシカルボニルおよびカルボキシルである。
【0049】
X'がポリマーであって、Y'がポリマーでない場合、Y'は、好ましくは、ヒドロキシまたはアセチルオキシから選択され、最も好ましくはヒドロキシである。
【0050】
本発明の極めて好ましい実施形態は、ポリマーに位置Xおよび/またはYにおいて結合した化合物K-252aをいう。したがって、本発明の極めて好ましい実施形態において、式(III)のポリマー結合体は、R1、R2、R3、W1およびW2が水素であり、X'およびY'の少なくとも1つがポリマーであり、それによりY'がポリマーであって、X'がポリマーでない場合、X'はメトキシカルボニルであり、X'がポリマーであって、Y'がポリマーでない場合、Y'はヒドロキシである化合物によって表される。
【0051】
本発明の極めて好ましい実施形態は、ポリマーに位置Xおよび/またはYにおいて結合した化合物K-252bをいう。したがって、本発明の極めて好ましい実施形態において、式(III)のポリマー結合体は、R1、R2、R3、W1およびW2が水素であり、X'およびY'の少なくとも1つがポリマーであり、それによりY'がポリマーであって、X'がポリマーでない場合、X'はカルボキシルであり、X'がポリマーであって、Y'がポリマーでない場合、Y'はヒドロキシである化合物によって表される。
【0052】
本発明の化合物は、医薬的に許容される塩として調製してもよく、これらには、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの無機酸の塩、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリールスルホン酸(例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)、マロン酸などの有機酸の塩がある。医薬的に許容される塩の形成のための好適な酸は、当業者に知られている。さらに、本発明の化合物の医薬的に許容される塩は、医薬的に許容されるカチオンと一緒に形成してもよい。医薬的に許容されるカチオンは、当業者に知られており、アルカリカチオン(Li+、Na+、K+)、アルカリ土類カチオン(Mg2+、Ca2+、Ba2+)、アンモニウムおよび有機カチオン(4級アンモニウムカチオンなど)などがある。
【0053】
例えば、X'および/またはY'によって一般式(III)で表される本発明によるポリマー部分は、生体適合性でなければならず、天然または半合成または合成由来であることができ、直鎖または分岐の構造を有することができる。例示的なポリマーとしては、限定されないが、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリアクリルアミドまたはそのN-アルキル誘導体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリエチルアクリル酸、ポリエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、デキストラン、キトサン、ポリアミノ酸などがある。
【0054】
本発明の極めて好ましい実施形態において、該ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)基であり、ここで、末端OH基は、場合によって、例えば、C1〜C5-アルキル基またはC1〜C5-アシル基、好ましくは、C1-、C2-もしくはC3-アルキル基またはC1-、C2-もしくはC3-アシル基で修飾することができる。好ましくは、該修飾されたポリエチレングリコールは、メトキシポリエチレン-グリコール(m-PEG)である。
【0055】
本発明により使用するポリマーは、100から100,000Da、好ましくは200から50,000Da、より好ましくは500から10,000Daの範囲の分子量を有する。本発明の1つの好ましい態様によれば、該ポリマーは、200から1,500Da、好ましくは400から1,200Da、さらに好ましくは550から1,100Daの範囲の分子量を有する、好ましくは末端OH基および/またはメトキシ基を有する短鎖PEGである。最も好ましい実施形態において、短鎖PEGは、550Daまたは1,100Daの平均分子量を有する。本発明の第2の好ましい態様によれば、該ポリマーは、4,000から6,000Da、好ましくは4,500から5,500Daの範囲の分子量を有する、好ましくは末端OH基および/またはメトキシ基を有する長鎖PEGである。本発明のこの態様の最も好ましい実施形態において、2,000Daまたは5,000Daの平均分子量を有する長鎖PEGあるいはm-PEGを使用する。
【0056】
式(I)、(II)および/または(III)のポリマー結合体のポリマー鎖は、安定した結合体を与えるために活性剤に共有化学結合によって結合している。図1aおよび図1bは、例えば、式(III)の好ましいポリマー結合体を示す。該ポリマーは、式(I)または(II)の化合物あるいは、式(III)のK-252a誘導体に直接結合することができる。この式(III)の場合、L1およびL2は共有結合である。
【0057】
本発明の好ましい実施形態において、該ポリマー部分は、リンカー基を用いてインドロカルバゾール誘導体に結合している。式(III)の化合物の好ましい実施形態において、該ポリマー部分X'および/またはY'は、この実施形態において、L1およびL2は、該リンカー基を表すリンカー基によって結合している。本発明の式(III)の好ましい実施形態において、用語リンカー基L1および/またはL2は、式(III)のテトラヒドロフラン部分のC3位置の残基と該ポリマー部分の反応基との化学反応によって得られる基を意味する。したがって、ポリマー部分X'およびY'をテトラヒドロフラン環にカップリングさせるL1およびL2は、上記に定義したリンカー基を表すことができる。
【0058】
該リンカー基は、ポリマー結合体の当業者に知られた任意の残基であることができ、式(I)もしくは(II)のインドロカルバゾール化合物上、好ましくは環状部分Rcおよび/もしくはRd上、あるいは式(III)のテトラヒドロフラン環の置換基上の結合に好適な官能基と該ポリマーまたは反応基によって活性化された該ポリマーとの反応によって得られる。例示的なリンカー基、例えば、例示的なL1基および/またはL2基には、限定されないが、エステル、エーテル、アセタール、ケタール、ビニルエーテル、カルバメート、尿素、アミン、アミド、エナミン、イミン、オキシム、アミジン、イミノエステル、カーボネート、オルトエステル、ホスホネート、ホスフィネート、スルホネート、スルフィネート、スルファイド、サルフェート、ジスルフィド、スルフィンアミド、スルホンアミド、チオエステル、アリール、シラン、シロキサン、ヘテロ環、チオカルボネート、チオカルバメート、およびホスホン酸アミドの結合などが含まれる。好ましくは、該リンカー基または、特にL1およびL2は、カルバメート、エーテル、エステル、炭素、アミドおよび/またはアミンの結合から選択される。
【0059】
さらに、該リンカー基は、場合によって、1個または複数のスペーサー基を含んでもよい。本発明の文脈において、スペーサー基は、両末端に反応性官能末端基を有する二官能基として定義する。1個の反応性末端基を用いて、該スペーサーは、ポリマー部分、例えば、X'およびY'、またはポリマー部分上の反応性基と反応する。他の末端上のさらなる官能基を用いて、該スペーサー基は、式(I)または(II)のインドロカルバゾール化合物上、好ましくは環状部分Rcおよび/またはRd上で結合に好適な官能基に結合するか、あるいは好ましくは式(III)のテトラヒドロフラン環のC3位置上の残基を有する式(III)のテトラヒドロフラン環に結合する。好適なスペーサー基は、当業者に知られている。スペーサー基の例には、限定されないが、ヘテロ官能性小分子、二官能性小分子またはポリマーなどがある。例えば、該スペーサー基は、N、SおよびOから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む二官能性C6〜C12アルキル基またはヘテロ二官能性アルキル基、あるいは中間の短い二官能性PEG鎖によって表すことができる。
【0060】
最も好ましい実施形態において、一般式(III)で示す該ポリマーは、X'またはY'を介して、好ましくは直接あるいはスペーサー基を介して、K-252a誘導体のテトラヒドロフラン部分のC3位置のヒドロキシ基由来の酸素原子に共有結合する。この好ましい実施形態、一般式(III)において、Y'は、ポリマー部分を表し、L2は、好ましくはカルバメート結合またはエーテル結合である(図1a)。別の最も好ましい実施形態において、該ポリマーは、直接またはスペーサー基を介して、K-252a誘導体のテトラヒドロフラン部分のC3位置のメチルエステル基由来のカルボニル基に共有結合する。この別の実施形態、一般式(III)において、X'は、ポリマー部分を表し、L1は、好ましくはアミド結合またはアミン結合である(図1b)。
【0061】
式(I)、(II)、または(III)のインドロカルバゾール化合物への該ポリマー部分の共有結合は、既知の化学合成によって得られる。特に、式(III)の化合物を得るためのK-252aまたはその誘導体への該ポリマーの共有結合は、既知の化学合成技術によって達成することができる。例えば、本発明の1つの例示的な実施形態において、K-252aまたはその誘導体のポリマー結合体は、以下の反応スキーム:
【0062】
【化5】

【0063】
によって一般的に記述されるような、好適な反応条件下でのイソシアナート-活性化ポリマーとK-252aまたはその誘導体とを反応させることによって得ることができる。
【0064】
この合成スキームによって、図2は本発明の例を示し、ここで、式(III)の化合物は、イソシアナート活性化PEGであるポリマー部分Y'とK-252aのテトラヒドロフラン部分のC3位置のヒドロキシ基との反応によって得られる。したがって、ポリマーとK-252aとの結合は、カルバメートリンカー基であるリンカー基L2によって得られる。
【0065】
本発明において、驚くべきことに、インドロカルバゾール化合物のメンバー、特にK-252aまたはその誘導体と比べて、式(I)、(II)および/または(III)の化合物は、その増加した溶解度のために改善された薬物動態的および毒性学的性能を示し、改善された生物利用能をもたらすことが見出された。本発明のもう1つの態様において、驚くべきことに、式(I)、(II)および/または(III)の化合物は、その増加した分子の大きさおよび親水性のために局所投与後制限された全身吸収を示し、その結果全身毒性および/または副作用を減少させることが見出された(実施例2参照)。
【0066】
さらに驚くべきことに、インドロカルバゾール化合物それ自体ならびに特に、K-252aおよびその誘導体の非選択的キナーゼ阻害活性と比較して、式(I)、(II)および/または(III)のK-252aポリマー結合体が、TrkAチロシンキナーゼに対する阻害活性において選択性の著しい増加を示すことが本出願の発明者らによって見出された(実施例3参照)。したがって、本発明によるインドロカルバゾール化合物、特にK-252aのポリマー分子への結合は、その治療標的に関して選択的な活性剤を提供し、結果として、好ましくない副作用の低下をもたらす。
【0067】
したがって、本発明のさらなる態様は、薬剤における活性剤としての式(I)、(II)および/または(III)の化合物の使用である。本発明の好ましい態様において、式(I)、(II)および/または(III)の化合物は、全身投与および治療のための薬剤の活性成分として使用される。さらなる好ましい態様において、本発明は、局所用薬剤の活性成分としての式(I)、(II)および/または(III)の化合物の使用に関する。
【0068】
特に、本発明の結合ポリマー化合物は、HMGB1関連病変の予防、緩和および治療に有用な薬剤における活性剤として使用される。
【0069】
HMGB1関連病変は、HMGB1核タンパク質が事実上検出できない正常対象における濃度に比べて、HMGB1核タンパク質および/またはアセチル化型または非アセチル化型のHMGB1相同タンパク質の増加した濃度が、生体液および生物組織において存在している患者の病態である。細胞外HMGB1は、強力な化学走化性炎症促進性ケモカインとして作用する。したがって、HMGB1関連病変は、強度の炎症理由(basis)を有する病変、TNF-α、IL-1、IL-6などのサイトカインの刺激に起因する病変、または中毒、感染、熱傷などの毒性事象に起因する病変である。特に、敗血症に罹った患者の血漿、関節リウマチ患者の血漿および滑液、アルツハイマー病患者の脳、メラノーマ患者の血漿および組織、全身性エリテマトーデス患者の血漿、アテローム性動脈硬化症患者のアテローム斑などにおいて、高濃度のHMGB1タンパク質および相同タンパク質が見出され、測定された。生体液および生物組織におけるHMGB1タンパク質および/または相同タンパク質の測定および証拠は、例えば、ELISAアッセイなどによる検出を含む、当業者に知られた通常の診断ツールによって検出することができる。
【0070】
したがって、さまざまな疾患は、細胞外HMGB1の関連する存在を特徴とし、これらには、限定されないが、特に、炎症性疾患、狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、自己免役疾患、腫瘍、感染症、敗血症、急性炎症性肺損傷、エリテマトーデス、神経変性疾患、中枢および末梢神経系の疾患および多発性硬化症などがある。特に好ましい実施形態において、式(I)、(II)および/または(III)の結合ポリマー化合物は、心臓血管疾患、特にアテローム性動脈硬化および/または血管形成中または後に生じる再狭窄の予防、緩和および治療に使用する。より好ましくは、該薬剤は、血管形成中または後の再狭窄における結合組織再生を阻止し、遅延し、および/または損なうために使用する。
【0071】
本発明の特に好ましい態様において、式(I)、(II)および/または(III)の結合ポリマー化合物は、中枢ならびに末梢神経系の神経障害、ニューロパシーおよび神経変性障害の予防、緩和および治療のための薬剤における活性剤としての使用に有効である。
【0072】
さらに、新規なポリマー結合体化合物は、全身治療によって血漿サイトカイン分泌を減少させおよび/または阻害することができることが本発明者らによって示された。したがって、該ポリマー結合体化合物は、血漿サイトカイン分泌の増加が関与する病変の予防、緩和および/または治療のために有用な全身投与のための薬剤における活性剤として使用される。これらの病変は、好ましくは、TNF-α、IFN-γ、MCP-1、MIP-1および/またはRANTESの分泌が主に関与している病変である。
【0073】
特に、本発明の文脈において、血漿サイトカイン分泌の増加に関連する病変には、限定されないが、炎症性疾患、自己免役疾患、全身性炎症反応症候群、臓器移植後再潅流障害、心臓血管疾患、産科および女性生殖器疾患、感染症、アレルギー性およびアトピー性疾患、固形および液体腫瘍病変、移植片拒絶反応疾患、先天性疾患、皮膚病、神経系疾患、悪液質、腎疾患、医原性中毒状態、代謝および特発性疾患、ならびに眼科疾患などがある。
【0074】
最も好ましい実施形態において、本発明の化合物は、ベーチェット病、シェーグレン症候群、脈管炎、ブドウ膜炎、網膜症の予防、緩和および/または治療に有用な全身治療のための薬剤における活性剤として使用される。
【0075】
本発明のさらに別の特定の態様において、本発明の結合ポリマー化合物は、皮膚病変の予防、緩和および/または治療のために有用な局所用薬剤における活性剤として使用される。
【0076】
本発明の文脈において好ましい皮膚病変は、乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹、座瘡、毛孔性紅色粃糠疹、ケロイド、肥厚性瘢痕などのケラチノサイトの過剰増殖、およびケラトアカントーマ、扁平上皮癌、基底細胞癌などの皮膚腫瘍を特徴とする病変である。より好ましい実施形態において、本発明の化合物は、乾癬の予防、緩和および/または治療のために有用な局所用薬剤における活性剤として使用される。
【0077】
TrkAの阻害という面での本発明の化合物の選択性増加を背景として、本発明のさらなる態様は、病変の進行をもたらす病態生理的メカニズムにおいてTrkAが重要な役割を果たす病変の予防、緩和および/または治療における該結合化合物の使用である。この文脈の中で、本発明の極めて好ましい実施形態において、式(I)、(II)、および/または(III)の結合K-252aポリマー化合物は、NGF関連疼痛および痛覚過敏の予防、緩和および/または治療のための薬剤における活性剤として使用される。
【0078】
したがって、本発明のさらなる態様は、場合によって上記に定義した病変の予防、緩和および/または治療のための薬剤の製造のための上記に定義したとおりの、式(I)、(II)、および/または(III)の化合物の使用である。
【0079】
式(I)、(II)、および/または(III)の化合物は、単独でまたは1つもしくはいくつかのさらなる活性剤と組み合わせてのいずれかで使用してもよい。特に、本発明のポリマー結合化合物は、炎症性サイトカインカスケードの早期メディエイターを阻害することができる少なくとも1つのさらなる薬剤、例えば、TNF、IL-1α、IL-1β、IL-Ra、IL-8、MIP-1α、MIF-1β、MIP-2、MIFおよびIL-6からなる群から選択されるサイトカインの拮抗剤または、阻害剤と組み合わせて使用してもよい。
【0080】
本発明のポリマー化合物と組み合わせて使用することができるさらなる薬剤は、例えば、RAGEの拮抗剤および/または阻害剤、HMGB1の拮抗剤および/または阻害剤、トール様受容体(TCR)とHMGB1との相互作用の拮抗剤および/または阻害剤、トロンボモジュリンの機能性N-末端レクチン様ドメイン(D1)ならびに/あるいは国際特許出願国際公開第2006/002971号に記載されたようなベント(bent)形状構造を有する合成二重鎖核酸または核酸類似分子である。
【0081】
式(I)、(II)、および/または(III)の化合物あるいはその医薬的に許容される塩は、そのまま、またはその薬理学的活性および投与の目的に従ってさまざまな医薬組成物の形態で投与することができる。本発明のさらに別の態様は、場合によって医薬的に許容される担体、アジュバント、希釈剤または/および添加剤と一緒の式(I)、(II)、および/または(III)の少なくとも1つの化合物の有効量を含む医薬組成物である。医薬用の担体、アジュバント、希釈剤または/および添加剤は、当業者に知られており、したがって、本発明の化合物を含む医薬組成物の製剤に適用することができる。
【0082】
本発明の医薬組成物は、当業者、例えば、医師によって知られた都合のよい方法で投与することができる。特に、本発明の医薬組成物は、注射もしくは輸液、特に、静脈内、筋内、経粘膜、皮下または腹腔内の注射もしくは輸液、および/または経口、局所、皮膚、鼻、吸入、エアロゾルおよび/または直腸適用などによって投与することができる。該投与は、局所または全身であってもよい。好ましくは、本発明の化合物および医薬組成物の投与は、非経口投与、特に液体溶液もしくは懸濁液の形態において;または経口投与、特に錠剤もしくはカプセルの形態において、または経鼻投与、特に粉末、点鼻剤、もしくはエアロゾルの形態において、または経皮投与、例えば、軟膏、クリーム、オイル、リポソームもしくは経皮パッチを介してなされ得る。
【0083】
本発明の1つの態様によれば、医薬組成物は全身的に投与される。特に、該ポリマー結合体化合物は、注射または輸液、特に静脈内、筋内、経粘膜、皮下もしくは腹腔内の注射または輸液ならびに/あるいは経口投与によって投与することができる。
【0084】
なお最も好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、局所適用、特に皮膚適用によって投与される。皮膚適用の場合、本発明の化合物の投与は、リポソームの形態でなされ得る。
【0085】
本発明のさらなる最も好ましい実施形態において、該医薬組成物は、特に、本発明の化合物および組成物を、限定されないが、ステント、カテーテル、外科用器具、カニューレ、心臓弁、または人工血管などの医療装置に結合、コーティングおよび/または埋め込むことによって、医療装置の表面に可逆的に固定して投与される。医療装置を体液または体内組織と接触させた後、可逆的に固定した化合物は遊離される。その結果、コーティングされた医療装置は、薬剤を溶出する薬物送達装置として作用し、それにより薬剤送達速度を制御し、例えば、即時放出または制御、遅延、もしくは持続した薬剤送達を提供することができる。医療装置のコーティング技術は、当業者に周知である。
【0086】
本発明の医薬組成物は、診断利用または治療利用のために用いることができる。診断利用として、式(I)、(II)、および/または(III)の化合物は、標識された形態、例えば、放射性同位元素または核磁気共鳴によって検出され得る同位元素などの同位元素を含む形態であることができる。局所適用の場合、好ましい治療利用は、乾癬の予防、緩和および治療であり、一方全身適用の場合、再狭窄における結合組織再生の予防、緩和および治療である。
【0087】
本発明の化合物は、医薬組成物における唯一の活性剤として用いることができる。他に、これらを他の活性成分、例えば、上記に定義した病変の治療における他の活性医薬成分と組み合わせて用いることができる。
【0088】
医薬組成物における本発明の化合物の濃度は変えることができる。濃度は、投与する薬剤の総用量、用いる化合物の化学特性(例えば、疎水性)、投与経路、患者の年齢、体重および症状に依存する。本発明の化合物は通常、非経口投与のために約0.1から10%w/vの化合物を含む生理学的緩衝水溶液で与えられる。通常の用量範囲は、1日当たり体重の約1μg/kgから約1g/kgであり;好ましい用量範囲は、1日当たりの約0.01mg/kg体重から100mg/kg体重、好ましくは1日当たり1回から4回で約0.1から20mg/kgである。投与する該薬剤の好ましい用量は、疾患または障害の種類、進行範囲、特定の患者の全体健康状態、選択した化合物の相対的生物学的有効性および該化合物賦形剤の剤形、およびその投与経路などの変数に依存する。
【0089】
本発明のなおさらなる態様は、ベーチェット病の予防、緩和および/または治療用の薬剤の製造のための非結合K-252a化合物またはその誘導体の使用である。
【0090】
好ましいK-252a誘導体には、合成および/または化学的に修飾した化合物、例えば、環系に置換基(例えばC1〜C4アルキル基)を有する化合物、メチルエステル基が別のエステル基、アミド基またはHもしくはカチオンによって置換された化合物および/または環状アミド基のN-原子がC1〜C4アルキル基で置換されている化合物などがある。
【0091】
本発明を以下の図および実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0092】
(実施例)
以下の実施例において、用語「K-252a-PEG」、「K-252a-PEG(2K)」または「CT327」で同定された生成物は、K-252aが、カルバメート結合によって、直鎖2kDaのPEG鎖と、テトラヒドロフラン部分の-OH基で結合している本発明による化合物に対応する。
【0093】
(実施例1:K-252a-PEG(2K)結合体(化合物CT327)の合成)
1.5mLのCH2Cl2中に1.5mgのK-252a(3.208μmolに相当)を穏やかな攪拌によって溶解して、ジクロロメタン中K-252aの1mg/mL溶液を調製した。65.05mg(32.525μmol)のメトキシ-PEG-イソシアナート2K(2000Daの平均分子量を有するm-PEG-イソシアナート)および基本触媒としてCH2Cl2中32.684mg/mLのトリエチルアミン溶液100μLを含むガラス製フラスコ中にこの溶液を加えた。このポリマーおよび触媒双方を、K-252aに比べて10倍のモル比で使用した。この混合物を電磁攪拌(回転速度約500rpm)および穏やかな窒素流下、室温で一夜(反応時間=16時間40分)保存した。次いで、溶液を蒸発させ、固体残渣を300μLのDMSOで処理した。混合物をC18カラムを用いたRP-HPLCによって精製し、所望の生成物 (約59/41のACN/水グラジエントに対応するピーク)を得た。その後4回の精製処理の対応する画分をプールし、ACN蒸発によって乾燥し、次いで凍結乾燥した。MALDI-TOF分析により、K-252a-PEG結合体を有する生成物の同定(最大m/z値2468.81を有する多分散質量ピーク)を確認した(図2、図3)。
【0094】
(実施例2:In-vivo薬物動態試験)
(実施例2.1:K-252a対K-252a-PEGのマウスにおける皮膚吸収試験)
本試験は、非結合、すなわち非PEG化K-252a分子の吸収速度と比べてマウスにおけるK-252a-PEGの経皮投与後の吸収速度を測定および評価する目的で行った。両調製物において3mg/kgの活性剤の用量を使用して実験を行った。本試験のために、各回にCharles River(Calco、Italy)から購入した6匹のBalb/C雄マウスを用いてin vivoで3回の実験を順次行った。マウスを以下の実験群に分けた(1群当たり2匹の動物):
群1:マウスを経皮投与によって3mg/kgのK-252-aで処置し、30分後に屠殺した。
群2:マウスを経皮投与によって3mg/kgのK-252-aで処置し、60分後に屠殺した。
群3:マウスを経皮投与によって3mg/kgの実施例1のK-252-a-PEG(2K)で処置し、60分後に屠殺した。
【0095】
K-252aおよびK-252a-PEG(2K)の製剤を、0.3mg/mL(オリーブオイル/DMSO 6%)のK-252aの最終濃度に達するまで、原液(CalbiochemバッチNo.B50496からのK252a原液、100μg/214μL DMSO; K-252a-PEG(2K)原液は、0.226mgK-252a/mL DMSOである)をオリーブオイルで希釈することによって、それぞれ調製した。該溶液を以下のとおりそれぞれ調製した:60μLのK-252a 5mg/mL DMSO+940μLのオリーブオイル、および30μLのK252a-PEG(2K)、5mg/mL DMSO+470μLのオリーブオイル。オイルベースの調製物は、繰り返し超音波処理によって均質にしたエマルジョンの形態にある。各動物の(実験前72時間に電気かみそりで毛をそられた)背部に、240μLのK-252a溶液および235μLのK-252a-PEG溶液を塗布した(マウスの平均体重23〜24gに基づいて3mg/kgの用量に相当)。吸収に有利に働くように、塗布したエマルジョンをマウスの背部上で軽くマッサージした。次いで、マウスをエーテル麻酔下でそれぞれ30分後または60分後に屠殺し、腹側大動脈からインスリンシリンジで血液を採取した(約1mL/動物)。次いで、EDTA 5%の水溶液50μLを含むエッペンドルフに該血液を移した。次いで、該血液試料を冷蔵(4℃)遠心分離において2000gで5分間、遠心分離し、固相抽出(SPE)によって精製し、その後HPLC定量分析(XTerra C18カラム、溶離液水/ACNを用いたRT-HPLC分析)によって分析した。
【0096】
K-252aで処置したマウスの血漿試料は、両方の接触時間について、特定の血漿濃度を示した。結果を図4に示すが、これから、30分後に屠殺した群1のマウスにおけるK-252aの平均血漿濃度は、23.33ng/mLであり、一方60分後に屠殺した群2のマウスにおけるK-252aの平均血漿濃度は、42.11ng/mLであった。これは、K-252aの経皮投与について全身吸収が生じたことを示す。他方、PEG化結合体K-252a-PEG(2K)の経皮投与で処置したマウスの血漿試料は、接触時間60分後でさえも活性化合物のいかなる血漿濃度も示さなかった。実際、MALDI-TOF分析後においてさえも、群3のマウスの血漿試料においては、いかなるクロマトグラフィーピークも示すことができなかった。したがって、K-252a-PEG(2K)結合体の皮膚を通しての吸収は、経皮投与後全く見られなかった。
【0097】
試験動物のより大きい群についてのさらなる実験研究によって、ならびに活性剤の異なる用量の経皮投与を用いたさらなる実験研究によって、このデータを確認した。
【0098】
(実施例2.2:マウスにおける薬物動態(PK)研究:CT327対K-252aの経皮単回用量および反復投与)
この実験の目的は、単回投与後のマウスにおけるCT327およびK-252aの経皮投与後のK-252aと比較したCT327の吸収の速度、ならびに反復経皮投与後の2つの試験化合物の速度比較を評価することであった。
【0099】
・動物:マウス(Balb/c雄、7〜9週齢、Charles River Italia、平均体重22.2〜22.4g); 5実験群(対照、K-252aの単回および反復投与、CT327の単回および反復投与)、4匹の動物/群、無作為群化。
【0100】
・材料:K-252a(Cephalon lot No 04274F1a)、CT327(Alchemy lot No ALC577.02)、ジメチルスルホキシド(DMSO)Hybri-max(登録商標)(Sigma lot No 114K2370)、白色ワセリンF.U(AFOM Medical lot No A908006570)、Tween 20(Sigma lot No 092K0055)、H20 MilliQ、plasma(strain CD1、OF1 lot No 50-18/12/05、Charles River Laboratories Italia SpA、Calco供給)、アセトニトリル(Merck lot No I260430545)、メタノール(VWR BDH lot No 05Z4034)、EDTA(Fluka lot No 393230/1)。
【0101】
・投与用量:単回経皮投与について、K-252a 5.075mg/kgおよびCT327 25.27mg/kg(78.5%純度に基づく、すなわち、32.19mg/kg、K-252aに対して等モル用量):反復経皮投与(5日間1日1回)について、K-252a 1.03mg/kgおよびCT327 5.06mg/kg(78.5%純度、すなわち6.45mg/kg、K-252aに関して等モル用量に基づく)。
【0102】
・被験物質の投与:経皮投与について、約0.25gのワセリンクリームを各マウスの頸(実験開始前日に剃り、擦過傷を避けた)に薄く塗った。対照動物には同用量容量でビヒクルのみを投与した。
【0103】
・験品の処方:単回経皮投与に対して、DMSO 1.1%/ホワイトワセリンクリーム、および反復経皮投与に対して、DMSO 0.23%/ホワイトワセリンクリーム。
【0104】
・動物の屠殺および血液の採取:処置後の以下の時間に血液試料を採取した。
- 単回経皮投与:K-252aまたはCT327の投与の1、3、6、9、18、24、36、48および72時間後
- 反復経皮投与:K-252aおよびCT327それぞれの最終投与の3時間および24時間後
【0105】
各試料採取時間に、深いエーテル麻酔下でインスリンシリンジを用いて各動物の腹側大動脈から約0.4mLの血液試料を採取し、血液凝固を防ぐために50μLの5%EDTA水溶液を含むポリエチレン製エッペンドルフ管に移した。血液試料は、冷蔵遠心分離(2〜4℃)において1400gで5分間の遠心分離を行うまで、氷中に保存した。次いで、各管から血漿試料を取り、新しいエッペンドルフ管に入れ、HPLC分析まで-20℃で冷凍した。
【0106】
図4bは単回用量投与試験の結果を示す。K-252aの単回経皮投与後のK-252a血漿濃度曲線を示し、平均値±誤差(95%CI、信頼区間)として報告する(各時間点で4匹のマウス、二連分析)。その代わり、CT327単回経皮投与の血漿濃度プロファイルは検出しなかった。実際、K-252で処置したマウスに比較して等モル用量でCT327の単回経皮投与を受けたマウスの血液試料の分析は、どの時間点でも検出限界(70.6nM)を超えた試験化合物レベルを示さなかった。
【0107】
次いで、各実験群からのデータのコンピュータ適合を、NCOMPバージョン3.1プログラム(P.B. Laubら、Journal of Pharmaceutical Sciences、1996、85(4):393〜395)によって行った。血漿濃度-時間プロファイル下の面積の値、T1/2、Tmax、Cmaxなどを、以前に述べた従来の式(Gibaldiら、Pharmacokinetics、1982、Marcel Dekker, Inc.、New York)によって計算した。K-252aおよびCT327の血漿濃度データを適合させることによって評価したこれらのPKパラメータを以下の表1に掲げる。
【0108】
【表1】

【0109】
本試験の結果により、単回経皮投与後、K-252aは、投与後少なくとも9時間まで血漿中で検出可能であるという結果になり(半減期63分を有する)、一方、K-252aと等しい用量のCT327は、72時間の接触時間まで血漿レベルにおいて検出できないという結果になることが確認された。
【0110】
表2は、経皮反復投与試験の結果を示す。特に、表2は、K-252aおよびCT327の反復投与についての平均血漿レベルのHPLC分析結果を示す。示されるように、K-252aは、検出可能で、定量化可能な血漿濃度を示すが、CT327に関しては、反復投与後の血液採取中に試験化合物の検出レベルは示されなかった。
【0111】
【表2】

【0112】
したがって、この第2の試験において、より低い用量(2μmol/kg)で反復経皮投与(連続5日間1日1回)後の吸収を評価した。さらにこの場合においても、PEG化分子CT327に対応するクロマトグラフィーピークは、マウス血漿試料において検出できない。最終的な非常に遅い吸収を証明するために血液採取のために十分に長い時間点(24時間)を選択した。このデータにより、K-252a-PEG(2K)の経皮投与後に皮膚を通る吸収は起こらないと結論することができる。その代わりK-252a化合物に関して、最終経皮投与後3時間後の結果として得られるK-252a血漿レベルは110.2nMであり、これは、単回経皮投与についての同じ用量および時間点で認められた濃度(72.9nM±32.5、値±95%信頼区間として)と比べた場合、ほんのわずかに高い。
【0113】
結論として、本試験の結果により、より高い用量で単回経皮投与後または、より低い用量で5日間局所処置後のいずれも、K-252a全身的吸収を回避することに対する、K-252aのポリマー結合体の有効性が確認される。
【0114】
(実施例3:In vitro薬理学)
(実施例3.1:ヒトケラチノサイトに対するTrka阻害剤としてK252a-PEG(2K)の抗増殖活性を特徴づけするためのin vitro試験)
代謝MTTアッセイを細胞のバイタリティーの試験として行った。MTTアッセイを周知で、妥当であることが確認されたプロトコルを用いて行い、それにより、結果を、分光学的説論、MTT([3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド])の還元生成物として形成されたホルマザン生成物の量に直接比例している生存細胞の数によって、定量化する(Mosmann T.、Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival: Application to proliferation and cytotoxicity assays. J. Immunol. Methods、1983,Dec. 16、65(1-2):55〜63)。本試験において、MTTアッセイを、細胞培養のための96-ウェルプレート(8000個の細胞/ウェル)に播種したケラチノサイトの密集下培養に対して行った。細胞を、分析すべき物質にさらした後、血清を含まないケラチノサイト増殖培地(KGM Clonetics Corp. San Diego、CA、USA)中MTT(0.05%)とともに37℃で4時間インキュベートする。細胞を洗浄剤で可溶化後、540nmでマルチ-ウェルプレートについて分光光度計を用いて染料ホルマザンの形成を検出する。結果を光学密度単位(OD)として得る。
【0115】
結合生成物K-252a-PEG(2K)の抗増殖活性を、ウェル中の単離ケラチノサイトと試験すべき化合物の溶液とのそれぞれ48時間および96時間の接触時間ならびに5、10、50および100nMのK-252a-PEG(2K)濃度についてMTTアッセイを用いて試験した。すべての実験を少なくとも3回行った。MTTアッセイの結果の統計分析を、ANOVAモデルを用いて行った(誤差バーは、信頼区間95%を示す、p=0.05)。図5は、K-252a-PEG(2K)に関するMTTアッセイの結果を示す。K-252a-PEGは、48時間の接触時間後、濃度≧10nMについてケラチノサイトに対する阻害作用を示すが、一方、96時間の接触時間後、いずれの濃度でも阻害作用を示す。
【0116】
これらの結果は、K-252aとポリマーPEGとの結合が、活性分子K-252aの抗増殖活性に影響しないことを示す(図5)。実際、48時間および96時間双方の接触時間後、ケラチノサイトの増殖に対して阻害作用が証明された。
【0117】
したがって、局所投与(実施例2に示されるような)後のPEG結合K-252aの全身吸収の不在または遅延、およびケラチノサイトの増殖に対する阻害活性遅延が、恐らくは、結合すなわちPEG化により、結合K-252a-PEG(2K)化合物のケラチノサイト細胞中への侵入が遅延する結果であり得ることを証明するために、さらなるMTTアッセイ分析を行った。
【0118】
したがって、ケラチノサイトの抗増殖活性を試験するために、試験すべき化合物としてK-252aおよびK-252a-PEG(2K)の双方に関して、さらなるin vitroMTTアッセイを上記のとおりに行ったが、ここでウェル中での活性化合物とケラチノサイトとの接触時間は減少させた。K252aおよびK-252a-PEG(2K)の濃度は、それぞれ25、50および100nMであった。各濃度に対して接触時間は、それぞれ1、2および4時間であった。細胞計数を48時間後および96時間後に行った。
【0119】
K-252a-PEG(2K)に関するMTTアッセイの結果を図6に示す。48時間後および96時間後の双方で、結合化合物K-252a-PEG(2K)のケラチノサイト増殖に対する効果は、対照試料に関して得られた効果と統計的に異ならないように思われる(図6aおよび図6b)。
【0120】
同様のMTTアッセイを非結合K-252aに関して行い、結果を図7a(48時間後の細胞計数)および図7b(96時間後の細胞計数)に示す。これらの結果は、濃度≧200nM および48時間後の細胞計数で、いずれの接触時間についても、K-252aの統計的に有意な抗増殖性作用を示した。細胞計数を96時間後に行った場合、抗増殖活性はいずれの試験濃度およびいずれの接触時間に対しても得られる。
【0121】
図8は、4時間接触させて96時間後に細胞計数を実施した上記MTTアッセイについて、100nMのK-252aおよびK-252a-PEG(2K)それぞれの阻害活性のデータの比較を示す。
【0122】
これらの結果から、非結合K-252a化合物と対照的に、K-252a-PEG(2K)については、濃度≦100nM (細胞計数を96時間後に利用した場合でさえも)に関して、4時間の接触時間はその抗増殖性作用を進展させるのに十分でないことが明らかとなった。非結合すなわち非PEG化K-252aに比べて、より低い濃度のK-252a-PEG(2K)について、より長い接触時間がケラチノサイトの増殖性活性に対する所望の阻害効果を得るのに必要である。したがって、K-252a-PEG(2K)について、K-252a分子のPEG化に起因する、細胞侵入能の明らかな遅延およびそのための細胞膜透過における遅延が明らかになった。
【0123】
これは、K-252a化合物およびその誘導体は、K-252a化合物およびその誘導体が細胞内に蓄積された後にその活性を発揮し、その後の培地の除去後でさえも活性分子をゆっくり放出するという仮説をさらに確認すると思われる。
【0124】
(実施例3.2:K-252aおよびCT327のキナーゼ阻害プロファイルのin vitro評価)
K-252aがいくつかのキナーゼの強力な阻害剤であることは文献で周知である。本試験において、選択した通常のチロシンキナーゼおよびセリン/スレオニンキナーゼに対するK-252aの阻害活性を評価した。CT327の阻害活性を評価するために同様の実験を行った。
【0125】
K-252a(Acros lot A020265401)をDMSOに溶解し、1mMの原液を作製し、次いでDMSOで希釈し、20μMの溶液を得て、さらにアッセイ緩衝液で希釈し、0.8μMの濃度を得た。K-252aを200nMの濃度で試験した。CT327および対照化合物の調製を同様の手順に従って行った。CT327も200nMの濃度で試験した。本発明の対照化合物として、スタウロスポリン、5-ヨードツベリシジン、NK阻害剤IIおよびSB202190(表3に示すように)などの当該技術分野で周知なプロテインキナーゼを使用した。
【0126】
【表3】

【0127】
K-252aおよびCT327のキナーゼ阻害試験を、それぞれのキナーゼに対する標準アッセイを用いて行った。
【0128】
K-252aについてのチロシンキナーゼ阻害およびセリン/スレオニンキナーゼ阻害の結果を、それぞれ表aおよび表bに示し、図9aに報告する。試験したチロシンキナーゼおよびセリン/スレオニンキナーゼに対するCT327の阻害活性を、それぞれ表aおよび表bに示し、図9bに報告する。反応対照(ATPを有する)の測定値を0%阻害と設定し、バックグラウンド(ATPを有しない)の測定値を100%阻害と設定した。
【0129】
K-252aは、200nMの濃度で、16の試験キナーゼ(TNK1、JAK2、JAK3、TYK2、FLT3、PDGFRα、PDGFRβ、RET、TrkA、TrkB、TrkC、CHK1、CHK2、JNK1、JNK2、AurAおよびMAP2K3)に対して90%を超える非常に強い阻害活性を示し、さらなる7つの試験キナーゼ(MER、JAK1、MET、KIT、BLK、FGRおよびCaMK2a)に対して80%から90%の強い阻害活性を示した。
【0130】
対照的に、CT327は、K-252a(200nM)に比べて同じ濃度で、試験したチロシンキナーゼのうちTrkAに対してのみ強い阻害活性(>50%)を示した。CT327はJAK2、JAK3およびFLT3に対して低い活性(20%から30%)を示したが、TNK1、EphB4、PDGFRβ、BLK、LCK、TrkBおよびTrkCに対して非常に低い活性が見られた(10%から20%)。試験チロシンキナーゼの大部分について、全く阻害が見られなかった。
【0131】
セリン/スレオニンキナーゼのうち、CT327は、MAP2K3に対してのみ強い阻害活性(>40%)を示し、JNK3に対して非常に低い阻害活性(14%)を示し(緑色で強調)、試験した他のセリン/スレオニンキナーゼに対して全く阻害活性を示さなかった。
【0132】
図10では、CT327対K-252aの選択性の比較を報告する。この結果は、CT327対K-252aのキナーゼ阻害の選択性における飛躍的な改善を明らかに示す。特に、この結果により、チロシンキナーゼの群におけるTrkA、およびセリン/スレオニンキナーゼの群におけるMAP2K3に関するCT327のキナーゼ活性の選択性増加が証明される。
【0133】
これらのデータは、CT327の阻害選択性は、特に、主たる標的TrkAおよびMAP2K3においてもたらされ、その結果、他のキナーゼに対する阻害活性による好ましくない生物学的作用が低下する可能性があることを示唆する。したがって、他のキナーゼの阻害が少ないほど、その分子は毒性が少ない傾向がある。
【0134】
要約すると、実施例2および3に記載した試験の結果から、生物学的活性が損なわれず同時に副作用のリスクが減少するために、式(I)のK-252aのポリマー結合体、特にK-252a-PEG(2K)は薬剤における活性剤として有望な候補となる。
【0135】
(実施例3.3:K-252aおよびCT327のTRKAに対するIC50のin vitro評価)
本試験の目的は、TrkAキナーゼに対するCT327およびK-252aのIC50値を測定することであった。試験化合物の溶液をDMSOで希釈し、100分の1の濃度を得て、次いでアッセイ緩衝液(15mM Tris-HCl、pH7.5、0.01% Tween-20、2mM DTT)で25倍に希釈し、最終試験溶液を得た。CT327およびK-252aを以下の濃度で試験した:1000nM、300nM、100nM、30nM、10nM、3nM、1nM、0.3nM、0.1nM、0.03nM。対照化合物(スタウロスポリン)の調製は試験化合物の調製に使用した方法と同様の方法で行った。スタウロスポリンを以下の濃度で試験した:100nM、30nM、10nM、3nM、1nM、0.3nM、0.1nM、0.03nM、0.01nMおよび0.003nM。アッセイ手順は以下のとおりである:
【0136】
【化6】

【0137】
反応対照(ATPを有する)の測定値を0%阻害と設定し、バックグラウンド(ATPを有しない)の測定値を100%阻害と設定し、次いで、各試験溶液の阻害割合(%)を計算した。4つのパラメータロジスティック曲線に適合させることによって濃度対阻害%曲線からIC50値を計算した。
【0138】
TrkAに対するK-252aおよびCT327のIC50値は、それぞれ、0.50nMおよび186nMであった。TrkAに対する対照化合物(スタウロスポリン)の対応するIC50値は、0.12nMであった。これらの結果を図11に要約する。
【0139】
(実施例4:CT327対K-252aのマウスにおける単回投与急性毒性試験)
本試験の目的は、前躯体K-252aと比較して、腹腔内経路および経口投与によってマウスにおいて単回用量として投与したときのCT327の毒性を評価するための非臨床毒性試験を行うことであった。14の下位群(7群は5匹の雄、7群は5匹の雌で構成)に分けた総数70匹のマウス(Balb/c、35匹雄と35匹雌)に以下の試験項目の用量レベルを投与した:
K-252a:30、45、60、75、および90mg/Kg
CT327:316.68および475.02mg/Kg(それぞれ、K-252aの60mgおよび90mgに対応)
【0140】
投与後最初の6時間は30分毎に、その後の7日間は1日2回、臨床徴候および行動変化を含む観察を行った。K-252aで処置した雄群の中では、最低用量(30mg/Kg)を投与したもののみが生存し、他はすべて投与後最初の22時間以内に死亡が認められた。得られたLD50は、37.74mg/kgであった。最低のK-252a用量を投与した雌マウスも生存し、同じ用量を投与した雄同様に、非常に軽度/軽度な鎮静作用を示し、この作用は8〜10時間内に消失した。45mg/kgを投与した5匹のうち1匹の雌が生存し、60mg/kgを投与したマウスの内1匹が生存した。より高い用量のK-252aは、雌マウスすべてに致死的であった。雌のLD50は、41.44mg/kgであった。したがって、雄と雌を合わせた平均LD50は39.02mg/kgであった。
【0141】
それぞれK-252aの60mg/kgおよび90mg/kgに相当する316.68mg/kgおよび475.02mg/kgに等しいCT327の用量は、投薬直後の時間以内または観察期間の7日間のいずれも、試験群の任意において毒性の効果および/または臨床徴候を誘発しなかった。
【0142】
同様の結果が経口投与後に得られた。特に、K-252aのLD50は、78mg/kgであることが見出され、CT327の最大用量790mg/kgまで死亡は全く観察されなかった。
【0143】
(実施例5)
LPS-誘発内毒素血症後の異なる時点でのマウスの血漿中の24種のサイトカインパネルを定量的に決定し、得られたプロファイルをCT327で前処置した内毒素血症マウスのプロファイルと比較する目的で試験を行った。
【0144】
試験のプロトコル:
動物を2つの実験群(55匹マウス/群)に分け、以下のスケジュールに従って処置した:
【0145】
【表4】

【0146】
内毒素血症誘発:時間0で、両群に4mg/kgに相当する用量のLPSを腹腔内投与した。
【0147】
CT327処置:「処置」実験群には、105.56mg/kgに相当するCT327の単回用量を腹腔内投与した。この用量はLPS内毒素血症誘発(時間0)の15分前に投与した。同じ時間に、「対照」群には同容量のビヒクル溶液を投与した。
【0148】
各実験群を5匹のマウス/下位群を有する11の下位群に分けた。各下位群を異なる時間点で屠殺し、血液試料を採取した。
【0149】
血液試料採取の時間点は以下の通りであった:
時間:時間0(基準);LPS処置前
時間:+30分;LPS処置後
時間:+1時間;LPS処置後
時間:+2時間;LPS処置後
時間:+3時間;LPS処置後
時間:+6時間;LPS処置後
時間:+12時間;LPS処置後
時間:+18時間;LPS処置後
時間:+24時間;LPS処置後
時間:+48時間;LPS処置後
時間:+72時間;LPS処置後
【0150】
血液試料をクエン酸ナトリウム管(100μLのクエン酸ナトリウム0.1M/900μLの血液)に採取し、4℃において1000gで10分間遠心分離した。血漿試料を採取し、50μL/試料を複合(multiple)サイトカインプロファイリングの試験まで-80℃で冷凍した。Silengo教授によって指導された、トリノ大学遺伝学、生物学および生化学部での23-plex panelを使用してBio-Plex System(Bio-Rad)によってこの試料を二連分析した。以下のサイトカインの血漿レベルを測定した:IL-1a、IL-1b、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12(p40)、IL-12(p70)、IL-17、G-CSF、GM-CSF、IFN-γ、KC、MIP-1-α、RANTES、TNF-α、IL-9、IL-13、エオタキシン、MCP-1、MIP-1-α。
【0151】
最も重要な結果を図12および図13に示す。特に、図12は、本発明によるCT327化合物で前処理したマウスの血漿レベルにおけるTNF-α分泌の顕著な減少を示す。
【0152】
図13a〜図13eは、K-252aで行われた平行実験の結果を示す。TNF-αのみでなく、INF-γ、MCP-1、MIP-αおよびRANTESの顕著な減少を示す。
【0153】
(実施例6:K-252a-PEG(1100)(化合物CT336)の合成)
1)m-PEG1100-O-CH2-COOEt合成
不活性雰囲気下で適切な反応フラスコにおいて、室温で攪拌下t-BuOK(11.2g、100.0mmol)を無水THF(70.0mL)に添加した。溶解が終了したとき、MeO-PEG1100-OH(22.0g、20.0mmol)を添加し、次いでBrCH2CO2Et(16.7g、100.0mmol)を30分以内で滴下し、反応フラスコを水浴で冷却した。2時間後、溶媒を真空下40℃で除去した。得られた残渣(約65g)をH2O(100mL)に溶解し、溶液を迅速にCH2Cl2(3×100mL)で抽出した。有機層を無水化し(Na2SO4)、溶媒を真空下40℃で除去した。
【0154】
2)m-PEG1100-O-CH2-COOH合成
上記のとおり得られたクルードなm-PEG-O-CH2-COOEt(約20g)をNaOH水溶液(1N、200mL)に溶解し、攪拌下60℃で3時間加熱した。次いで、反応混合物を、HCl水溶液(1N、約165mL)を使用してpH3に酸性化し、次いでCH2Cl2(5×100mL)で分配した。集めた有機抽出物を無水化し(Na2SO4)、溶媒を真空下40℃で除去した。得られた粘性オイル(約18g)を冷無水Et2O(75mL)中に滴下し、白色沈殿物をろ過し、集めて、残留溶媒を真空下室温で蒸発させた(15g)。
【0155】
3)m-PEG1100-O-CH2-NCO合成
適切な反応フラスコにおいて、m-PEG1100-O-CH2-COOH(10.0g、9.1mmol)をトルエン(80mL)に攪拌下溶解した。次いで、約15mLの溶媒を留出除去し、共沸蒸留によって混合物を乾燥した。残渣を室温まで冷却し、無水Et3N(1.1g、10.9mmol)およびジフェニルホスホリルアジド[(C6H5O)2P(O)N3](2.7g、10.0mmol)を連続的に添加した。室温で30分放置後、混合物を加熱して2時間還流し、次いで、溶媒を真空下60℃で蒸発させた。得られた粘性オイル(約9g)を冷無水Et2O(200mL)中に滴下し、白色沈殿物をろ過し、集め、残留溶媒を真空下室温で除去した(6.0g)。
【0156】
4)K-252a-PEG1100結合体の合成
DCM中K-252a 1mg/mLの溶液を、1.5mgのK-252a(3.2μmolに相当)を1.5mLのCH2Cl2に穏やかな攪拌によって溶解して調製した。この溶液を38.06mg(32.5μmol)のm-PEG1100-O-CH2-NCOおよび塩基性触媒としてCH2Cl2中32.8mg/mLのトリエチルアミン溶液100μLを含むガラス製フラスコに添加した。ポリマーおよび触媒双方をK-252aに比べて10倍モル比で使用した。この混合物を電磁攪拌 (回転速度約500rpm)下および穏やかな窒素気流下室温で一夜保存した(反応時間=16時間40分)。次いで、この溶液を蒸発させ、固体残渣を300μLのDMSOで処理した。混合物をC18カラムを用いたRP-HPLCによって精製し、所望の生成物を得た(約61/39 ACN/H2O勾配に対応するピーク)。その後の4つの精製プロセスの対応する画分をプールし、ACN蒸発によって乾燥し、次いで冷凍乾燥した。MALDI-TOF分析によって、K-252a-PEG1100結合体を有する生成物の同定が確認された。
【0157】
(参考文献)

【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1a】K-252aおよびその誘導体のポリマー結合体の構造を示す図である。
【図1b】K-252aおよびその誘導体のポリマー結合体の構造を示す図である。
【図2】PEGがカルバメート結合によって薬剤に結合しているK-252a-PEG結合体の構造を示す図である。
【図3】PEGがカルバメート結合によってK-252aに結合し、PEG鎖が2,000Daの平均分子量を有するPEG結合体の精製のクロマトグラムの図である。挿入部分に、主ピークのMALDI-TOFスペクトルを示す。
【図4a】K-252aの局所投与後マウス血漿画分中に検出されたK-252aの平均血漿濃度の結果を示す図である。
【図4b】K-252aの、5.07mg/kgに対応する約10μmol/kgの用量で単回経皮投与後の平均血漿濃度対時間のプロファイルを示すグラフの図である。
【図5】48時間および96時間の接触時間後の、MTTアッセイにおける、結合化合物K-252a-PEG(2K)のケラチノサイトの抗増殖活性を示す図である。
【図6】MTTアッセイにおける、K-252a-PEG(2K)のケラチノサイトの抗増殖活性を示す図である。図6aは、それぞれ、1、2および4時間接触させ、48時間後に細胞計数を行った結果を示す。図6bは、それぞれ、1、2および4時間接触させ、96時間後に細胞計数を行った結果を示す。
【図7】MTTアッセイにおける、K-252aのケラチノサイトの抗増殖活性を示す。図7aは、それぞれ、1、2および4時間接触させ、48時間後に細胞計数を行った結果を示す。図7bは、それぞれ、1、2および4時間接触させ、96時間後に細胞計数を行った結果を示す。
【図8】4時間接触させ、96時間後に細胞計数を実施した、K252aおよびK-252a-PEB(2K)のMTTアッセイにおける、ケラチノサイトの抗増殖活性を比較するグラフを示す図である。
【図9a−1】一般的なチロシンキナーゼに対する、K-252aの阻害活性を報告する図である。
【図9a−2】図9a-1を参照。
【図9a−3】図9a-1を参照。
【図9b−1】一般的なチロシンキナーゼに対する、K-252a-PEG(2K)の阻害活性を報告する図である。
【図9b−2】図9a-1を参照。
【図9b−3】図9a-1を参照。
【図10】K-252aおよびK-252a-PEG(2K)それぞれのキナーゼ阻害プロファイルを示し、K-252a-PEG(2K)対K-252aのキナーゼ阻害における選択性の比較を報告するグラフである。図10に報告したデータは、TrkA阻害活性に関して標準化している。
【図11】TrkAに対するK-252aおよびK-252a-PEG(2K)のIC50およびそれぞれの阻害曲線を示す図である。
【図12】LPS用量注射を用いて内毒素血症を誘発する前にK-252a-PEG(2K)を用いて処理したマウスの血漿におけるTN F-α分泌阻害を、LPS処置前にビヒクル溶液のみを投与した対照マウスと比較した図である。図において、誤差バーは、二元配置ANOVA、続けてBonferroniの事後試験によって解析したSEM-Dataを示す。
【図13a】LPS用量注射を用いて内毒素血症を誘発する前に非結合K-252aで処置したマウスの血漿におけるTNF-αの分泌阻害を、LPS処置前にビヒクル溶液のみを投与した対照マウスと比較した図である。
【図13b】LPS用量注射を用いて内毒素血症を誘発する前に非結合K-252aで処置したマウスの血漿におけるIFN-γの分泌阻害を、LPS処置前にビヒクル溶液のみを投与した対照マウスと比較した図である。
【図13c】LPS用量注射を用いて内毒素血症を誘発する前に非結合K-252aで処置したマウスの血漿におけるMCP-1の分泌阻害を、LPS処置前にビヒクル溶液のみを投与した対照マウスと比較した図である。図において、記号「§」は範囲外の結果を表す。
【図13d】LPS用量注射を用いて内毒素血症を誘発する前に非結合K-252aで処置したマウスの血漿におけるMIP-1の分泌阻害を、LPS処置前にビヒクル溶液のみを投与した対照マウスと比較した図である。
【図13e】LPS用量注射を用いて内毒素血症を誘発する前に非結合K-252aで処置したマウスの血漿におけるRANTESの分泌阻害を、LPS処置前にビヒクル溶液のみを投与した対照マウスと比較した図である。図において、記号「§」は範囲外の結果を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー部分が結合している少なくとも1個の官能基を有することを特徴とする、一般式(I):
【化1】

{式中、
RaおよびRbは、独立して、水素、あるいは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシまたはアルコキシカルボニルからなる群から選択される有機残基である;または
RaおよびRbは、一緒に、0、1または2個のヘテロ原子、好ましくは窒素原子を含み、カルボニル基を含んでもよい、インドロ[2,3-a]カルバゾール核構造に直接縮合した5〜7員、好ましくは5員環状構造を形成し、該環状構造は、非置換であるか、あるいは置換されており、好ましくは、カルボニル基またはW1もしくはW2から選択される少なくとも1個の置換基によって置換されており、ここで、該環状構造のヘテロ原子のメンバーが窒素である場合、該窒素は残基R3によって置換されており;
RcおよびRdは、
(a)独立して、水素、あるいは置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシまたはアルコキシアルボニルからなる群から選択される有機残基である;または
RcおよびRdの1個は、水素、置換または非置換の低級アルキルおよびヒドロキシから選択され、一方、RcおよびRdの他の1個は、3〜7員環状部分、好ましくは環状炭水化物部分であり、ここで、前記環状部分は、非置換であるか、または置換されており、好ましくは、ポリマー部分の結合に好適な少なくとも1個の官能基によって置換されており、より好ましくは、前記環の少なくとも1個、好ましくは2から3個および全部までの位置で、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルキル、低級アルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルキルアミノカルボニルまたはオキシム基によって置換されており;あるいは、
(b)RcおよびRdは、一緒に、3〜7員環状部分、好ましくは環状炭水化物部分を形成し、ここで、前記環状部分は、非置換であるか、または置換されており、好ましくは、ポリマー部分の結合に好適な少なくとも1個の官能基によって置換されており、より好ましくは、前記環の少なくとも1個、好ましくは2から3個、および全部までの位置で、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルキル、低級アルコキシ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノ、低級アルキルアミノ、低級アルキルアミノカルボニルおよび/またはオキシム基で置換されており、
R1およびR2は、同じまたは異なる残基であり、
(a)水素、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、アシル、ニトロ、カルバモイル、低級アルキルアミノカルボニル、-NR5R6[ここで、R5およびR6は、水素、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、置換もしくは非置換の低級アルキルアミノカルボニル、置換もしくは非置換の低級アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、アシルからそれぞれ独立に選択されるか、またはR5およびR6は、ヘテロ環式基由来の窒素原子と結合している]、
(b)-CO(CH2)jR4[ここで、jは1から6であり、R4は、
(i)水素、ハロゲン、-N3
(ii)-NR5R6(ここで、R5およびR6は上記に定義されたとおりである)、
(iii)-SR7(ここで、R7は、水素、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のアラルキル、-(CH2)aCO2R10(ここで、aは、1または2であり、R10は、水素および置換もしくは非置換の低級アルキルからなる群から選択される)および-(CH2)aCO2NR5R6
(iv)-OR8、-OCOR8(ここで、R8は、水素、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールから選択される)
からなる群から選択される]、
(c)-CH(OH)(CH2)jR4(ここで、jおよびR4は、上記に定義したとおりである);
(d)-(CH2)dCHR11CO2R12または-(CH2)dCHR11CONR5R6(ここで、dは、0から5であり、R11は、水素、-CONR5R6、または-CO2R13であり、R13は、水素または置換もしくは非置換の低級アルキルであり、R12は、水素または置換もしくは非置換の低級アルキルである);
(e)-(CH2)kR14[ここで、kは2から6であり、R14は、ハロゲン、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、-COOR15、-OR15(ここで、R15は、水素、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールまたはアシルである)、-SR7(ここで、R7は、上記に定義したとおりである)、-CONR5R6、-NR5R6(ここで、R5およびR6は、上記に定義したとおりである)または-N3である];
(f)-CH=CH(CH2)mR16[ここで、mは、0から4であり、R16は、水素、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、-COOR15、-OR15(ここで、R15は上記に定義したとおりである)、-CONR5R6または-NR5R6(ここで、R5およびR6は上記に定義したとおりである)];
(g)-CH=C(CO2R12)2(ここで、R12は、上記に定義したとおりである);
(h)-C≡C(CH2)nR16(ここで、nは0から4であり、R16は、上記に定義したとおりである);
(i)-CH2OR22(ここで、R22は、3個の低級アルキル基が同じかもしくは異なっているトリ-低級アルキルシリルであるか、またはR22は、R8と同じ意味を有する);
(j)-CH(SR23)2および-CH2-SR7(ここで、R23は、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルであり、R7は、上記に定義したとおりである)
からなる群から、それぞれ独立して、選択され、
R3は、水素、ハロゲン、アシル、カルバモイル、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニルまたはアミノであり;
W1およびW2は、独立して、水素、ヒドロキシであるか、またはW1およびW2は一緒に酸素を表す}
のインドロカルバゾール化合物のポリマー結合体またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
式(I)のインドロカルバゾール化合物が、一般式(II):
【化2】

の化合物である、請求項1に記載のポリマー結合体。
【請求項3】
以下の式(III):
【化3】

[式中、R1、R2、R3ならびにW1およびW2は、請求項1に定義したとおりであり;
Xは、-L1-X'を表し、Yは、-L2-Y'を表し、ここで、X'およびY'の少なくとも1個は、L1および/またはL2によって式(III)の化合物のテトラヒドロフラン環に結合している、直鎖または分岐のいずれかのポリマーであり;L1および/またはL2は、共有化学結合またはリンカー基であり;
Y'がポリマーであって、X'がポリマーでない場合、L1は、共有化学結合であり、X'は、
(a)水素、低級ヒドロキシアルキル、アシル、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、
(b)-CONR17aR17b(ここで、R17aおよびR17bは、
(i)水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、
(ii)-CH2R18(ここで、R18は、ヒドロキシである)、または
(iii)-NR19R20(ここで、R19またはR20は、水素、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニルから、それぞれ独立して、選択されるか、あるいはR19またはR20は、独立して、カルボキシル基のヒドロキシ基が除かれたα-アミノ酸の残基であるか、あるいはR19またはR20は、窒素原子と組み合わさって、ヘテロ環式基を形成する)
からそれぞれ独立して選択される);および
(c)-CH=N-R21(ここで、R21は、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、グアニジノ、またはイミダゾリルアミノである);
からなる群から、それぞれ独立して、選択され、
X'がポリマーであって、Y'がポリマーでない場合、L2は共有化学結合であり、Y'は、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アラルキルオキシ、またはアシルオキシである]
またはその医薬的に許容される塩によって表されるポリマー結合体。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリアクリルアミドもしくはそのN-アルキル誘導体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリレート、ポリエチルアクリル酸、ポリエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-共-グリコール酸)、デキストラン、キトサンまたはポリアミノ酸から選択されるポリマーである、請求項1から3のいずれかに記載のポリマー結合体。
【請求項5】
前記ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)またはメトキシ-ポリエチレングリコール(m-PEG)から選択されるポリマーである、請求項1から4のいずれかに記載のポリマー結合体。
【請求項6】
前記ポリマーが、100から100000Da、好ましくは200から50000Daの分子量を有するポリマーである、請求項1から5のいずれかに記載のポリマー結合体。
【請求項7】
前記ポリマーが、2000Daまたは5000Daの平均分子量を有するPEGまたはm-PEGである、請求項5または6に記載のポリマー結合体。
【請求項8】
前記ポリマーが、550Daまたは1100Daの平均分子量を有するPEGまたはm-PEGである、請求項5または6に記載のポリマー結合体。
【請求項9】
ポリマーと式(I)もしくは(II)の化合物との共有化学結合、または式(III)のL1および/またはL2が、カルバメート、エーテル、エステル、炭素、アミドおよび/またはアミン結合から選択される、請求項3から8のいずれかに記載のポリマー結合体。
【請求項10】
R1、R2、R3、W1、およびW2が水素であり、Y'がポリマーであり、X'がメトキシカルボニルまたはカルボキシルである、請求項3から9のいずれかに記載のポリマー結合体。
【請求項11】
L2が、エーテルまたはカルバメート結合である、請求項10に記載のポリマー結合体。
【請求項12】
R1、R2、R3、W1、およびW2が水素であり、X'がポリマーであり、Y'がヒドロキシである、請求項3から9のいずれかに記載のポリマー結合体。
【請求項13】
L1が、アミン結合またはアミド結合である、請求項12に記載のポリマー結合体。
【請求項14】
薬剤における活性剤としての使用のための請求項1から13のいずれかに記載のポリマー結合体。
【請求項15】
局所薬剤における活性剤としての使用のための請求項14に記載のポリマー結合体。
【請求項16】
全身治療のための薬剤における活性剤としての使用のための請求項14に記載のポリマー結合体。
【請求項17】
医薬的に許容される担体、アジュバント、希釈剤または/および添加剤と場合によって一緒に、請求項1から16のいずれかに記載の少なくとも1つのポリマー結合体を含む医薬組成物。
【請求項18】
診断用途のための請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
治療用途のための請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
HMGB1関連病変の予防、緩和または/および治療用の薬剤の製造のための請求項1から13のいずれかに記載のポリマー結合体の使用。
【請求項21】
前記HMGB1関連病変が、狭窄、再狭窄、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、自己免役疾患、腫瘍、感染症、敗血症、急性炎症性肺損傷、エリテマトーデス、神経変性疾患、中枢および末梢神経系の疾患ならびに多発性硬化症である、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記HMGB1関連病変が、狭窄または再狭窄である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記ポリマー結合体が、医療装置の表面に可逆的に固定される、請求項20から22に記載の使用。
【請求項24】
中枢および末梢神経系の神経性障害、ニューロパシーおよび神経変性障害の予防、緩和および/または治療用の薬剤の製造のための請求項1から13のいずれかに記載のポリマー結合体の使用。
【請求項25】
皮膚病変の予防、緩和または/および治療用の薬剤の製造のための請求項1から13のいずれかに記載のポリマー結合体の使用。
【請求項26】
前記皮膚病変が、ケラチノサイトの過剰増殖を特徴とする、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記皮膚病変が、乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性湿疹、座瘡、毛孔性紅色粃糠疹、ケロイド、肥厚性瘢痕および皮膚腫瘍である、請求項25または請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記皮膚病変が、乾癬である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
NGFに関連する痛みおよび痛覚過敏の予防、緩和または/および治療用の薬剤の製造のための請求項1から13のいずれかに記載のポリマー結合体の使用。
【請求項30】
前記薬剤が、局所投与のために調製される、請求項25から29のいずれかに記載の使用。
【請求項31】
前記投与が、リポソームの形態でなされる、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
炎症性疾患、自己免役疾患、全身性炎症反応症候群、臓器移植後再潅流障害、心臓血管疾患、産科および女性生殖器疾患、感染症、アレルギー性およびアトピー性疾患、固形および液体腫瘍病変、移植片拒絶反応疾患、先天性疾患、皮膚疾患、神経系疾患、悪液質、腎疾患、医原性中毒状態、代謝性および特発性疾患、および眼科疾患の予防、緩和および/または治療用の薬剤の製造のための請求項1から13のいずれかに記載のポリマー結合体の使用。
【請求項33】
ベーチェット病、シェーグレン症候群、脈管炎、ブドウ膜炎、網膜症の予防、緩和および/または治療用の薬剤の製造のための請求項1から13のいずれかに記載のポリマー結合体の使用。
【請求項34】
前記薬剤が、全身投与用である、請求項29、32または33に記載の使用。
【請求項35】
ベーチェット病の予防、緩和および/または治療用の薬剤の製造のためのK-252aの使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a−1】
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【図9a−2】
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【図9a−3】
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【図9b−1】
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【図9b−2】
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【図9b−3】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【図13e】
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【公表番号】特表2009−506000(P2009−506000A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527402(P2008−527402)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008374
【国際公開番号】WO2007/022999
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(506417360)
【Fターム(参考)】