説明

LEDバルブ

【課題】LEDなどの発光体を光源としたヘッドライトバルブ化に対して、光量不足及び配光に対して不利な単一光源からの照射及び放熱問題を解決させて、また上下配光切替が可能になり脱着が容易なヘッドライトバルブを提供する。
【解決手段】発光体からの光を反射させるリフレクターを上部に配置させ、その形状を湾曲した円錐状として発光体とリフレクターの距離を最小限とすることにより、ハロゲンバルブのような点光源化を目的としている方式であり、さらに上下に配光切替を可能にするためにリフレクター中心点に対して発光体をオフセット配置する。また発光体から発生する熱を逃がす為にリフレクターと発光体取付本体及びそれらを結合する支柱などを熱伝導率の良い素材として、上記構造部品の上下にヒートシンクを配置することにより放熱性を向上させ、またヒートシンクを着脱可能な方式としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前照灯に用いられるLEDバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
四輪車や二輪車等の自動車車両、鉄道車両、航空機、船舶、その他の輸送機械における前照灯は、フィラメントバルブを光源として用いたものが一般的である。フィラメントバルブには、ハロゲンガスを微量導入することで光量を増大させた、いわゆるハロゲンバルブも含まれる。
【0003】
図10は、自動車車両の前照灯及び当該前照灯の光源として用いられるハロゲンバルブの一具体例を模式的に示す説明図である。
図10(a)に示すように、自動車車両の前照灯10は、少なくとも、ハロゲンバルブ20が装着されるソケット部11と、その周囲に配されたリフレクターと呼ばれる凹状反射鏡12と、その前方(光の照射先)側を覆うレンズ13と、を備えて構成されている。 このような前照灯10の光源として用いられるハロゲンバルブ20は、図10(b)に示すように、ソケット部11に装着するための口金部21を備えている。そして、形状的にH−1タイプ、HB−1タイプ、H−4タイプ、HB−4タイプ、HB−5タイプ、H−7タイプ等と称される数種類の仕様が設定され、各々についてソケット部11及び口金部21の形状、寸法等が規格化されている。また、ハロゲンバルブ20は、例えばH−4タイプのようなハイロー切替バルブであれば、不活性ガスにハロゲンガスを微量導入して封止されたガラス殻22の中に、ハイビーム(走行用上向き配光パターン)用フィラメント23とロービーム(すれ違い用下向き配光パターン)用フィラメント24とが別個に配設されている。ただし、図例とは異なり、ガラス殻22の中に1つのフィラメントのみが設けられたものもある(例えばH−7タイプのようなシングルバルブ)。いずれのタイプも、フィラメントは、例えばタングステン(W)によって形成されており、通電によって白熱することで、点光源の如く周囲へ向けて放射状に広がるような光を発する。ハロゲンバルブ20の先端部には、シェードと呼ばれる傘のような遮光部25が設けられており、フィラメントからの光が直接前方側に出射されないようになっている。また、ロービーム用フィラメント24には、光の出射方向を制御するために遮蔽板26が付設されたものがある。
【0004】
このようなハロゲンバルブ20をソケット部11に装着した状態で発光させると、当該ハロゲンバルブ20のフィラメントからの光は、遮光部25による遮光範囲を除く周辺領域に向けて放射され、ソケット部11の周囲に位置する凹状反射鏡12によって光照射方向に向けて反射され、光照射方向への光路上に配されたレンズ13を介して、照射光として前方側へ向けて照射される。このとき、前方側への照射光は、凹状反射鏡12またはレンズ13の少なくとも一方の作用により、所定配光パターンに整えられることになる。具体的には、前方側への照射光の配光パターンは、水平方向に広く、垂直方向に狭い扁平な配光で、その明るさは両側で弱く、中央で強いものとなる。
また、ハロゲンバルブ20がハイロー切替バルブである場合には、ハイビームとロービームで、発光させるフィラメント23,24を切り替えるようにする。具体的には、ハイビーム用フィラメント23は凹状反射鏡12の焦点近傍に配されており、当該フィラメント23を発光させると、ここから発せられる光が凹状反射鏡12で反射して平行光線となって遠くまで照射されることになる。一方、ロービーム用フィラメント24は焦点の少し上に設置されていて、当該フィラメント24を発光させると、光源の位置がずれているために光束は下向きになるとともに、照射方向の手前側とやや左の側を照らすようになっている。
【0005】
ところで、近年では、フィラメントバルブに代わる次世代の前照灯用の光源として、LED(発光ダイオード)が注目されている。LEDは、フィラメントを用いた光源に比べて、消費電力が極端に少なく、また長寿命であるという、大きな利点を有しているからである。
LEDを前照灯用の光源とする場合には、ある程度の光量を確保する必要があることから、パワーLEDまたはハイパワーLEDと呼ばれるものを用いることが考えられる。ただし、このようなタイプのLEDは、発光面から指向性を有した光を発するように構成されており、面発光光源の如く指向性の高い光束分布を有している。その点で、LEDは、点光源の如く周囲へ向けて放射状に広がる光を発するフィラメントとは相違する。
以上のような相違点が存在することから、従来、LEDを前照灯用の光源として用いる場合には、当該前照灯をユニット化して対応すること、すなわちLEDに合わせて前照灯の凹状反射鏡やレンズ等を専用設計として車種毎の専用設計一体ユニットを構成することが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−217937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術では、車種毎の専用設計一体ユニットを構成する場合であれば前照灯へのLED光源の適用が可能となるが、例えばフィラメントバルブを使用していた既存構成の前照灯に対してはLED光源を適用することができない。つまり、上述した従来技術は、汎用性に欠けることから、極めて一部の限られた車種にだけLED光源の前照灯が採用されるという事態を招いている。また、上述した従来技術による専用設計一体ユニットでは、ユニット内に構成部品を多数配置してあるため、部品点数及び本体重量の増加等を招いてしまい、フィラメントバルブを光源として用いる構成の前照灯に比べると、コストの面で非常に不利である。さらには、取付スペースの限られた二輪車の前照灯に適用する場合についても、非常に不利な状況である。
【0008】
その一方で、前照灯に用いられるフィラメントバルブは、自動車車両用のハロゲンバルブ20に代表されるように、当該前照灯への装着構造が規格化されていることが一般的である。したがって、その規格に準拠する形状、寸法等の口金部を有したバルブ構造のLED光源であれば、フィラメントバルブとの互換性を確保することができ、上述したような汎用性、コスト、取付スペース等の問題は解決可能であると考えられる。
ところが、そのためには、フィラメントによる光束分布とLEDによる光束分布との相違を克服する必要がある。例えば、単にフィラメントをパワーLEDまたはハイパワーLEDに置換したバルブ構成では、これらの間に光束分布に相違があることから、前照灯として必要となる所定配光パターンや光量等が得られない。また、フィラメントと同様に光を放射状に発する砲弾型LEDは、出射光量の点で前照灯用途には適さない。つまり、上述した光束分布の相違を克服しなければ、前照灯にLED光源を適用しても、当該前照灯において必要となる性能が得られないという事態を招いてしまう。
【0009】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、LEDの特性である省電力、長寿命等の利点を活かせるべく、既存のフィラメントバルブとの互換性を確保しつつLED光源を前照灯に適用することを可能とするとともに、当該前照灯での使用に適した性能を得ることのできるLEDバルブの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたものである。
本発明の第1の態様は、光を放射状に発するフィラメントを光源に持つフィラメントバルブが装着されるソケット部と、前記ソケット部に装着された前記フィラメントバルブからの出射光を光照射方向に向けて反射する凹状反射鏡と、前記光照射方向への光路上に配されるレンズ部とを備え、前記フィラメントバルブからの出射光を前記凹状反射鏡及び前記レンズ部を介して照射することで所定配光パターンの照射光を得るように構成された前照灯にて、前記フィラメントバルブに代わり前記ソケット部に装着されて用いられるLEDバルブであって、発光面から指向性を有した光を発するLED発光体素子と、前記LED発光体素子からの出射光を反射して疑似光源を形成する反射部材と、を備え、前記LED発光体素子は、選択的に発光可能な下向き配光用LED発光体素子および上向き配光用LED発光体素子が前記前照灯への装着状態での上下方向に隣接するように並設され、前記反射部材は、前記疑似光源による光の出射方向が前記ソケット部に前記フィラメントバルブを装着した場合の当該フィラメントバルブによる光の出射方向と略同じになるように、円錐頂部が前記LED発光体素子の発光面の側に向けて突出する形状の反射面を有し、前記LED発光体素子と前記反射部材とは、前記上向き配光用LED発光体素子からの光を前記反射面の前記円錐頂部を含む箇所にて反射し、前記下向き配光用LED発光体素子からの光を前記反射面における上方側斜面上にて反射するように、それぞれの相対位置関係がオフセット配置され、前記上向き配光用LED発光体素子の発光により前記光照射方向へ平行光線を遠くまで全体的に照射する照射光の配光パターンが得られ、前記下向き配光用LED発光体素子の発光により上向きの光を遮りつつ前記光照射方向の手前側を中心に照射する照射光の配光パターンが得られるように構成されていることを特徴とする。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、前記反射部材は、前記疑似光源の形成位置及び当該疑似光源による発光領域の大きさが、前記ソケット部に前記フィラメントバルブを装着した場合の当該フィラメントバルブにおける前記フィラメントの配置位置及び当該フィラメントの大きさと略同じになるように、前記反射面の形状が形成されていることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に記載の発明において、前記疑似光源による出射光量が、前記ソケット部に前記フィラメントバルブを装着した場合の当該フィラメントバルブによる出射光量と略同じ量またはそれを超える量となるように、前記LED発光体素子の出射光量及び当該LED発光体素子と前記反射部材との位置関係が設定されていることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に記載の発明において、前記反射面の形状は、前記LED発光体素子の前記発光面の側に向けて頂部が突出する円錐状で、かつ、当該頂部の周囲に位置する斜面が凹状に湾曲した形状であることを特徴とする。
本発明の第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に記載の発明において、前記反射面の形状は、前記LED発光体素子から出射される光を当該光の出射方向の側方及び斜め後方へ反射して、前記ソケット部の周囲に配された前記凹状反射鏡に向けて放射状の光を発する形状であることを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第1〜第5のいずれか1つの態様に記載の発明において、前記反射部材による反射光が前記凹状反射鏡に直接到達するように構成されていることを特徴とする。
本発明の第7の態様は、第1〜第6のいずれか1つの態様に記載の発明において、前記ソケット部に着脱自在に嵌合する口金部を備えることを特徴とする。
本発明の第8の態様は、前照灯のソケット部に装着されて用いられるLEDバルブであって、発光面から指向性を有した光を発するLED発光体素子と、前記LED発光体素子の前記発光面に対向して配される反射面を有した反射部材と、を備え、前記LED発光体素子は、選択的に発光可能な下向き配光用LED発光体素子および上向き配光用LED発光体素子が前照灯への装着状態での上下方向に隣接するように並設され、前記反射面は、前記発光面の側に向けて頂部が突出する円錐状で、かつ、当該頂部の周囲に位置する斜面が凹状に湾曲した形状に形成されており、前記LED発光体素子と前記反射部材とは、前記上向き配光用LED発光体素子からの光を前記反射面の前記頂部を含む箇所にて反射し、前記下向き配光用LED発光体素子からの光を前記反射面における上方側斜面上にて反射するように、それぞれの相対位置関係がオフセット配置され、前記反射部材は、前記反射面が前記LED発光体素子からの出射光を反射することで、当該出射光の出射方向の側方及び斜め後方へ向けて放射状の光を発する疑似光源を形成するとともに、前記上向き配光用LED発光体素子の発光により前記反射面の前記頂部を含む円錐状先端部分近傍位置に上向き配光用の疑似光源を形成し、前記下向き配光用LED発光体素子の発光により前記反射面における上方側斜面上の位置に下向き配光用の疑似光源を形成するように構成されていることを特徴とする。
本発明の第9の態様は、第1〜第8のいずれか1つの態様に記載の発明において、前記LED発光体素子と前記反射部材との間の距離が所定距離範囲に属するように互いが近接して配置されていることを特徴とする。
本発明の第10の態様は、第1〜第9のいずれか1つの態様に記載の発明において、前記前照灯からの照射光が左右横長な配光パターンとなるように、前記反射部材の反射面に対向して複数の前記LED発光体素子が左右方向に並べて配置されていることを特徴とする。
本発明の第11の態様は、第1〜第10のいずれか1つの態様に記載の発明において、前記反射面の中心位置と上下二段構成の各LED発光体素子の境界位置とのオフセット量が、前記上向き配光用LED発光体素子の上下方向高さhの1/3に相当する距離h/3に設定されていることを特徴とする。
本発明の第12の態様は、第1〜第11のいずれか1つの態様に記載の発明において、前記LED発光体素子が配設されるバルブ本体と、前記LED発光体素子の発光面と前記反射部材の反射面とが対向するように当該反射部材と前記バルブ本体とを連結する支柱と、を備え、前記反射部材、前記バルブ本体及び前記支柱は、いずれも熱伝導性を有する材料によって形成され、前記反射部材における前記LED発光体素子の側とは反対側には、放熱機能を有する第1ヒートシンクが設けられていることを特徴とする。
本発明の第13の態様は、第12の態様に記載の発明において、前記バルブ本体には、前記反射部材の側とは反対側に、放熱機能を有する第2ヒートシンクが着脱自在に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前照灯用光源のLED化を、車種毎の専用設計一体ユニットを要することのない簡素な構成により、既存のフィラメントバルブとの互換性確保により高い汎用性を有した状態で、量産に適した低コスト化及び取付スペースの省スペース化等を可能にしつつ、実現することができる。これにより、前照灯用の光源について、LEDの特性である省電力、長寿命等の利点を享受することが可能となる。しかも、前照灯用光源のLED化を実現した後においても、当該前照灯において、必要十分な照射光量を得つつ、前方側への照射光につき所望の配光パターンを得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態によるLEDバルブの平面図である。
【図2】本発明の実施形態によるLEDバルブの正面図である。
【図3】本発明の実施形態によるLEDバルブの分解平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】本発明の実施形態によるLEDバルブの反射部材を具体的に示す側面図である。
【図6】本発明の実施形態によるLEDバルブが形成する疑似光源の一例を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態によるLEDバルブの前照灯への装着状態を模式的に示す側断面図である。
【図8】本発明の実施形態によるLEDバルブのハイロー切替対応のためのオフセット配置の一例を模式的に示す側断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態によるLEDバルブの反射部材を具体的に示す側面図である。
【図10】自動車車両の前照灯及び当該前照灯の光源として用いられるハロゲンバルブの一具体例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
<本発明の概要>
先ず、本発明の概要について説明する。
【0015】
本発明は、前照灯用光源について、既存のフィラメントバルブとの互換性を確保しつつ、LED化を実現可能にする。そのためには、既に説明したように、フィラメントによる光束分布とLEDによる光束分布との相違を克服する必要がある。つまり、単にフィラメントをLEDに置換したバルブ構成では、前照灯において必要な性能が得られない。
【0016】
この点につき、本願発明者は、鋭意研究を重ねた結果、LEDからの光をそのまま前照灯の凹状反射鏡の側へ出射するのではなく(すなわち単にフィラメントをLEDに置換するのではなく)、LEDからの光を利用しつつ当該光を反射することによって疑似的な光源(以下、単に「疑似光源」という。)を形成し、その疑似光源によりフィラメントの場合と略同じ光の出射状態を作り出せばよい、という着想に至った。そして、LEDからの光を反射する際の反射面形状によっては、疑似光源において、フィラメントの場合と略同じ光の出射状態、すなわち点光源の如く周囲へ向けて放射状に広がる光を発する状態が得られる、という見解を得た。
【0017】
本発明は、このような本願発明者が知見した従来にはない思想、すなわち疑似光源によって放射状の発光状態を得るという新規で独創的な思想に基づくものである。具体的には、本発明に係るLEDバルブは、発光面から指向性を有した光を発するLED発光体素子と、前記LED発光体素子からの出射光を反射して疑似光源を形成する反射部材と、を備え、前記反射部材は、前記疑似光源による光の出射方向が前照灯のソケット部にフィラメントバルブを装着した場合の当該フィラメントバルブによる光の出射方向と略同じになる反射面形状を有することを特徴とする。以上の構成を備えることで、本発明に係るLEDバルブは、既存のフィラメントバルブとの互換性を確保しつつ、前照灯用光源のLED化を実現可能にし、しかも前照灯用として必要十分な性能を得ることができるという効果を奏する。さらに詳しくは、疑似光源という従来にはなかった発想を有効に利用することで、前照灯のハウジング内という限られた装着スペースでの光源LED化を実現し、これにより既存のフィラメントバルブとの互換性確保を可能にし、しかも照射光量や照射光の配光パターン等の点において必要十分な性能を得ることができるという、従来技術に比べて有利で顕著な効果を奏するのである。
【0018】
また、本発明は、前照灯用光源のLED化にあたり、特に自動車車両の前照灯に特有であるハイロー切替(走行用上向き配光パターンとすれ違い用下向き配光パターンとの切替)に好適に対応するための構成を提供する。
さらに、本発明は、前照灯用光源のLED化にあたり、LEDに特有な熱の問題を解決するための構成を提供する。
【0019】
<本発明の一実施形態>
以下に本発明に係るLEDバルブの一実施形態について詳細に説明する。ここでは、四輪車や二輪車等の自動車車両の前照灯に用いられるLEDバルブを例に挙げる。
【0020】
(バルブ全体の構成)
本実施形態で説明するLEDバルブは、図10(a)に示すように構成された自動車車両の前照灯10に用いられる。さらに詳しくは、当該前照灯10にて、フィラメントバルブの一具体例であるハロゲンバルブ20に代わり、ソケット部11に装着されて用いられる。そのために、本実施形態におけるLEDバルブは、以下に述べるように構成されている。
【0021】
図1は、本発明の実施形態によるLEDバルブの平面図であり、図2は図1の正面図であり、図3は図1の分解平面図であり、図4は図3のA−A線断面図である。
【0022】
本実施形態におけるLEDバルブは、図1に示すように、LED発光体素子7と、LED発光体素子7が配設されるバルブ本体1と、バルブ本体1に取り付けられる口金部8と、バルブ本体1におけるLED発光体素子7の配設側に設けられる支柱5と、支柱5を介してバルブ本体1と連結される反射部材(リフレクター)4と、反射部材4に取り付けられる第1ヒートシンク3と、バルブ本体1に取り付けられる第2ヒートシンク2と、を備えている。
【0023】
LED発光体素子7としては、例えばパワーLEDと呼ばれるものを用いる。パワーLEDは、発光面の面内に複数のLED素子が配置(例えば3×3のマトリクス状配置)され、当該発光面から指向性を有した光を発するように構成されている。つまり、パワーLEDは、発光面から主に平行光となる光束を出射するようになっており、面発光光源の如く指向性の高い光束分布を有している。このようなパワーLEDを用いる理由は、前照灯用途として、必要十分な出射光量を得るためである。
なお、LED発光体素子7は、詳細を後述するように、複数個を並べて配置することが考えられるが(例えば図4参照)、これに限定されることはなく1つが単独配置されていても構わない。
【0024】
バルブ本体1は、熱伝導性を有する材料によって例えば円筒状に形成されたもので、円筒一端面にLED発光体素子7が配設されており、他の端面には第2ヒートシンク2を取り付けるためのネジ1aが形成されている。また、円筒外周には口金部8が取り付けられているとともに、円筒内部には図示しないLED発光体素子7の配線基板が配されている。熱伝導性を有する材料としては、例えばアルミニウム(Al)のような金属材料が挙げられるが、これに限定されることはなく他の熱伝導性材料を用いても構わない。
【0025】
口金部8は、LEDバルブを前照灯10のソケット部11に装着可能にするものである。そのために、口金部8は、ソケット部11に着脱自在に嵌合するように、その形状、寸法等が当該ソケット部11の規格に準拠して形成されている(例えば図2参照)。
【0026】
支柱5は、バルブ本体1と同様に、熱伝導性を有する材料によって形成されている。また、支柱5は、反射部材4の側ではナット6によるネジ止めとし、バルブ本体1の側では当該支柱5をねじ込む構造となっている。なお、支柱5は、円周上各120度振り分け合計三点支持としている(例えば図4参照)。これは、反射部材4の支持の安定化を図りつつ、遮光部材となる支柱5の設置数を極力削減するためである。
【0027】
反射部材4は、支柱5によって支持された状態においてLED発光体素子7の発光面に対向して配される反射面4aを有している。そして、反射面4aがLED発光体素子7からの出射光を反射することによって、疑似光源を形成するようになっている。この反射部材4における反射面4aの形状、及び、その反射面4aが形成する疑似光源については、詳細を後述する。なお、この反射部材4も、バルブ本体1及び支柱5と同様に、熱伝導性を有する材料によって形成されているものとする。
【0028】
第1ヒートシンク3は、熱伝導性を有する材料によって放熱フィンを有した例えば円柱形状に形成されており、反射部材4におけるLED発光体素子7の側とは反対側にて、ネジ3aによって当該反射部材4と結合するように設けられている。
【0029】
第2ヒートシンク2は、熱伝導性を有する材料によって放熱フィンを有した例えば円錐台形状に形成されており、バルブ本体1におけるLED発光体素子7の配設側(反射部材4が連結された側)とは反対側にて、ネジ1aとの螺合によって当該バルブ本体1に着脱自在に取り付けられるようになっている。第2ヒートシンク2を着脱自在とするのは、前照灯10のソケット部11へのLEDバルブ装着(すなわちソケット部11の開孔へのバルブ本体1の挿入)を可能にする必要がある一方で、第2ヒートシンク2の形成径を大きくして当該第2ヒートシンク2における放熱のための表面積を十分に確保するためである。
【0030】
なお、図示はしていないが、LED発光体素子7の配線基板から延びる配線は、バルブ本体1の筒内からネジ1aの中心部に抜けて、さらに第2ヒートシンク2の中心部を通り、LEDバルブの外方側まで導出される構造となっている。
【0031】
(反射部材)
次に、以上のように構成されたLEDバルブにおける反射部材4について、具体例を挙げてさらに詳しく説明する。
【0032】
図5は、本発明の実施形態によるLEDバルブの反射部材を具体的に示す側面図である。
【0033】
反射部材4は、LED発光体素子7の発光面7bに対向して配される反射面4aを有している。この反射面4aは、LED発光体素子7からの光を効率よく反射し得るように、鏡面研磨仕上げまたはメッキ仕上げされるものとする。
【0034】
また、反射面4aは、LED発光体素子7の発光面7bの側に向けて頂部4bが突出する円錐状で、かつ、当該頂部4bの周囲に位置する斜面4cが凹状に(発光面7bから離れる側に凹むように)湾曲した形状に形成されている。つまり、反射面4aは、円錐先端中心点(すなわち頂部4b)に向かって湾曲した円錐状の反射面形状を有している。このような反射面4aを有することで、反射部材4は、LED発光体素子7からの光を反射する円錐状リフレクターとして機能する。
【0035】
反射面4aの頂部4bは、加工可能な限度範囲内において、尖鋭に形成されていることが望ましい。
頂部4bの周囲に位置する斜面4cは、当該頂部4bの近傍部分において、LED発光体素子7からの出射光の光軸方向とのなす角度θが、例えば40〜50°の範囲内、望ましくは45°程度に形成されているものとする。
また、反射部材4は、反射面4aの頂部4bとLED発光体素子7の発光面7bとの間隔dが、所定距離範囲である例えば0.2〜1.0mmの範囲内、望ましくは0.5mm程度となる位置関係で配されているものとする。
【0036】
このような反射面形状を有する反射部材4によって、詳細を後述するように、点光源の如く周囲へ均一な光強度で放射状に広がる光を発する疑似光源を形成することができる。つまり、従来は疑似光源を利用するという発想がなかったため、LED化にあたって何をどのように使ってよいか全く分からなかったところ、本願発明者は、上述した反射面形状を有する反射部材4によって前照灯10の用途に適した疑似光源を簡単に作れることを発見し、その知見に基づき本実施形態で説明するLEDバルブに想到したのである。
【0037】
(疑似光源)
次に、以上のように構成された反射部材4が形成する疑似光源について、具体例を挙げてさらに詳しく説明する。
【0038】
図6は、本発明の実施形態によるLEDバルブが形成する疑似光源の一例を模式的に示す説明図である。
【0039】
反射部材4は、LED発光体素子7の発光面7bからの光を利用しつつ、当該光を反射面4aで反射することによって、疑似光源を形成する。このとき、反射面4aは、頂部4bが発光面7bの側に向けて突出する円錐状であり、その周囲に位置する斜面4cが円錐中心点に向かって湾曲した反射面形状を有している。そのため、LED発光体素子7からの光は、反射部材4の反射面4aによって、図6(a)に示すように、当該光の出射方向の側方及び斜め後方へ向けて、放射状に反射されることになる(図中矢印D参照)。この反射方向である側方及び斜め後方とは、LEDバルブを前照灯10のソケット部11に装着した場合に当該前照灯10の凹状反射鏡12が位置する方向である。したがって、反射部材4が形成する疑似光源は、LED発光体素子7から指向性の高い光束分布で出射される光を、当該光の出射方向の側方及び斜め後方へ反射することで、ソケット部11の周囲に配された凹状反射鏡12に向けて、点光源の如く周囲へ均一な光強度で放射状に広がる光を発することになる。なお、ここでいう「点光源」とは、周囲へ向けて指向性のない光を放射する光源のことであり、光の出射元が点状の場合の他に線状や面状等の場合も含まれる。
【0040】
このことは、疑似光源が発する光の出射方向が、ソケット部11にハロゲンバルブを装着した場合の当該ハロゲンバルブによる光の出射方向と略同じであることを意味する。つまり、反射部材4は、疑似光源による光の出射方向がソケット部11にハロゲンバルブを装着した場合の当該ハロゲンバルブによる光の出射方向と略同じになる反射面形状を有している。このような反射面形状は、具体的には、LED発光体素子7の発光面7bの側に向けて頂部4bが突出する円錐状で、かつ、当該頂部4bの周囲に位置する斜面4cが凹状に湾曲した形状によって実現される。さらには、LED発光体素子7から出射される光を当該光の出射方向の側方及び斜め後方へ反射して、ソケット部11の周囲に配された凹状反射鏡12に向けて放射状の光を発する形状によって実現される。
【0041】
このように、反射部材4は、LED発光体素子7からの出射光を単に反射するのではなく、凹状反射鏡12に向けて光を発するという目的をもって、出射方向の側方及び斜め後方という特定の方向へ向けて、放射状に広がる反射光を発するのである。つまり、特定の方向へ向けて均一な光強度で放射状に広がる光を発するのであり、入射光を反射によってランダムに散乱させるのとは異なる。そのために、反射部材4の反射面4aは、湾曲する斜面4cにおける曲率半径が、当該斜面4cの全域で一定か、または当該斜面4cの全域で連続的に変化しているものとする。
【0042】
LED発光体素子7からの光を反射して疑似光源を形成する際には、反射面4aの頂部4bが尖鋭であるほうが、当該疑似光源による出射光量を確保する上で有効である。頂部4bが尖鋭なほど、LED発光体素子7の発光面7bの側へ戻る反射光量が減少し、上述した側方及び斜め後方への反射光量を十分に確保できるからである。
【0043】
また、反射部材4が形成する疑似光源は、光の出射方向の他に、その形成位置及び発光領域の大きさについても、ソケット部11にハロゲンバルブを装着した場合の当該ハロゲンバルブにおけるフィラメントの配置位置及び大きさと略同じである。そのために、反射部材4の反射面4aは、頂部4bの近傍範囲における斜面4cとLED出射光の光軸方向とのなす角度θを例えば40〜50°(望ましくは45°程度)とし、当該斜面4cにおける湾曲部始点から円錐中心点である頂部4bまでの高さを極力低くすることにより、LED発光体素子7からの光を主に円錐状先端部分に集光させる形状に形成されている。このような反射面形状によって、図6(a),(b)に示すように、反射部材4による疑似光源の形成位置及び発光領域の大きさ(図6(a)中におけるE部参照)と、ソケット部11にハロゲンバルブを装着した場合の当該ハロゲンバルブにおけるフィラメント(例えば全長8mm程度)の配置位置及び大きさ(図6(b)中におけるF部参照)とを、互いに略同じにすることが実現可能となる。このことは、反射部材4における反射面4aの形状次第で、当該反射部材4が形成する疑似光源について、その形成位置や発光領域の大きさ(発光元が線状であるか点状であるか)等を適宜設定可能であることを意味する。
【0044】
さらに、反射部材4が形成する疑似光源は、出射光量についても、ソケット部11にハロゲンバルブを装着した場合の当該ハロゲンバルブによる出射光量と略同じ量またはそれを超える量となっている。詳しくは、本実施形態のLEDバルブでは、疑似光源による出射光量が、ハロゲンバルブによる出射光量と略同じ量またはそれを超える量となるように、LED発光体素子7の出射光量及び当該LED発光体素子7と反射部材4との位置関係が設定されている。
【0045】
LED発光体素子7の出射光量については、ハロゲンバルブを超える出射光量を得るために、以下のように設定することが考えられる。具体的には、例えばパワーLEDを複数(例えば2つまたは3つ)並べて配設し、これらを同時点灯させるようにする。なお、複数を並べる場合の配置パターンについては詳細を後述する。
【0046】
LED発光体素子7と反射部材4との位置関係については、LED発光体素子7からの出射光を効率的に疑似光源による出射光とするために、LED発光体素子7の発光面7bと反射部材4における反射面4aの頂部4bとの間隔dが所定距離範囲(例えば、0.2〜1.0mmの範囲内、望ましくは0.3〜0.4mm程度。)に属するように互いを近接して配置させることが考えられる。間隔dが上述の所定距離範囲を超えてしまうと、反射部材4の反射面4aに到達する光量の損失が生じ得るからである。また、間隔dが上述の所定距離範囲に満たないと、LED発光体素子7の発光面7bの側へ戻る反射光量が増大してしまうからである。
このように、LED発光体素子7と反射部材4の発光面7bにおける頂部4b(円錐状先端部)との距離を近接させることで、より強力な(すなわち出射光量を十分に得られる)疑似光源を形成することが可能となる。
【0047】
以上のような疑似光源による出射光(すなわち反射部材4による反射光)は、前照灯10の凹状反射鏡12に直接到達するように構成されているものとする。つまり、反射部材4の反射面4aと前照灯10の凹状反射鏡12との間には、何ら光学部材等が介在していない。光学部材等が介在していると、凹状反射鏡12に到達する光量の損失が生じ得るからである。さらには、光学部材等を透過する際に光の屈折が生じ、点光源の如く周囲へ向けて放射状に均一に広がる光が得られない可能性が生じるからである。
【0048】
(前照灯への装着)
次に、以上のような疑似光源を形成する反射部材4を備えたLEDバルブの前照灯10への装着について説明する。
【0049】
図7は、本発明の実施形態によるLEDバルブの前照灯への装着状態を模式的に示す側断面図である。
【0050】
LEDバルブを前照灯10へ装着する場合には、バルブ本体1から第2ヒートシンク2を取り外した状態で、当該バルブ本体1を凹状反射鏡12の背面側からソケット部11の開孔へ挿入して、当該ソケット部11に口金部8を嵌合させる。そして、ソケット部11に付設された図示せぬ金具を利用して、当該ソケット部11に口金部8を固定する。金具による固定を行った後は、第2ヒートシンク2をバルブ本体1のネジ1aへ螺合して取り付ける。さらには、第2ヒートシンク2の中心部を通ってLEDバルブの外方側まで導出される配線9を、前照灯10を備えた自動車車両の側に予め搭載されているLED駆動用のドライバ装置からの配線(ただし不図示)に接続する。これにより、バルブ本体1の筒内の配線基板と自動車車両の側のドライバ装置とが電気的に接続されるので、LEDバルブは、前照灯10のソケット部11に装着された状態で、ドライバ装置による駆動制御に従いつつ、LED発光体素子7を点灯させて光を出射することが可能になる。なお、LED発光体素子7を点灯させるために必要となる電気的構成(LED発光体素子7の配線基板やLED駆動用のドライバ装置等)については、公知技術を利用して構成すればよく、ここではその説明を省略する。
【0051】
LED発光体素子7が光を出射すると、その光は反射部材4の反射面4aによって反射され、凹状反射鏡12に向けて点光源の如く放射される。これにより、ソケット部11にハロゲンバルブを装着した場合における当該ハロゲンバルブからの光の出射状態が再現されることになる。つまり、光の出射方向、形成位置及び発光領域の大きさ、並びに、出射光量のいずれについても、ハロゲンバルブの場合と略同じまたはそれを超えるような光が、反射部材4が形成する疑似光源から出射されるのである。
【0052】
このような疑似光源からの出射光が凹状反射鏡12に到達すると、その出射光は、当該凹状反射鏡12によって前照灯10の光照射方向に向けて反射され、光照射方向への光路上に配されたレンズ13を介して、照射光として前方側へ向けて照射される。このとき、前方側への照射光は、凹状反射鏡12またはレンズ13の少なくとも一方の作用により、所定配光パターンに整えられることになる。つまり、LEDバルブを装着した場合であっても、ハロゲンバルブの装着時と同様に、水平方向に広く、垂直方向に狭い扁平な配光パターンを得ることができる。
【0053】
光の出射元であるLED発光体素子7については、複数のパワーLEDを並べて配設し、これらを同時点灯させるように構成することが考えられる。さらに詳しくは、前照灯10への装着時における水平方向に、例えば2つまたは3つのパワーLEDを、反射部材4の反射面4aにおける頂部4bに対して(すなわち当該反射面4aの円錐中心点に対して)左右均等に並べて配置する。このように、反射部材4の反射面4aに対向して複数のLED発光体素子7を左右方向に並べて配置した場合には、前照灯10からの照射光を左右横長な配光パターンとする上で非常に有効なものとなる。つまり、水平方向(すなわち左右方向)に延びるLED発光体素子列を構成する各LED発光体素子7を同時点灯させることで、LEDバルブを前照灯10に組み込み照射した場合に、ハロゲンバルブのような左右横長な配光を確実に得ることができる。しかも、各LED発光体素子7を同時点灯によって、LED単独点灯の場合に比べて、光量増大を実現することができる。その結果として、LEDバルブを前照灯10に組み込み照射した場合における光量を、ハロゲンバルブの装着時を超える光量とすることが実現可能となる。なお、複数のパワーLEDを並べて配設するのではなく、当該複数のパワーLED分に相当する光量を発する1チップLEDがあれば、その1チップLEDを用いるようにしても構わない。このような1チップLEDの一例としては、複数のパワーLED分に相当するLED素子を一つの長方形ボディに備えて1チップ化したものが挙げられる。また、例えば1つまたは2〜3といった少数のLED素子により複数のパワーLED分に相当する光量を発する高性能LEDが将来的に提供された場合には、その高性能LEDを1チップLEDの他の例として用いることが考えられる。
【0054】
前照灯10用のハロゲンバルブには、ハイロー切替バルブとシングルバルブとの2タイプが存在する。シングルバルブタイプとの互換性を確保する場合(以下「シングル対応時」という。)であれば、上述のLED発光体素子列は、前照灯10への装着時における垂直方向(すなわち上下方向)に一段のみ存在していればよい。一方、ハイロー切替バルブとの互換性を確保する場合(以下「ハイロー切替対応時」という。)には、上述のLED発光体素子列が、上下方向に並ぶ二段構成となっているものとする(例えば図4参照)。なお、このハイロー切替対応時については、その詳細を後述する。
【0055】
シングル対応時において、一段のみのLED発光体素子列と反射部材4の反射面4aとの位置関係は、以下のようにすることが考えられる。左右方向については、既に説明したように、反射面4aの円錐中心点に対してLED発光体素子列を左右均等に配置する。一方、上下方向については、反射面4aの円錐中心点に対してLED発光体素子列を上下均等に配置することの他に、当該円錐中心点(すなわち反射面4aの中心位置)に対してLED発光体素子列を上下に僅かにオフセットさせて配置することが考えられる。このようなオフセット配置を行えば、そのオフセット量に伴って反射部材4による疑似光源の形成位置が上下に変位するため、前照灯10に組み込み照射した場合に上向きまたは下向きの配光パターンを形成することができる。つまり、LED発光体素子列と反射面4aとの上下方向における位置関係については、互換対象となるハロゲンバルブのタイプ及び前照灯10において所望する配光パターンを考慮しつつ、適宜設定すればよい。なお、オフセット配置を行う場合のオフセット量に関しては、後述するハイロー切替対応時におけるハイビーム用オフセット量またはロービーム用オフセット量と同様に構成することが考えられる。
【0056】
また、上下方向における位置関係の他に、反射部材4の反射面形状についても、互換対象となるハロゲンバルブのタイプ及び前照灯10において所望する配光パターンを考慮しつつ、適宜設定することが考えられる。シングルバルブタイプのハロゲンバルブには、例えばH−7タイプのようにフィラメントが前照灯光軸方向に沿って配されたもの(以下「縦型タイプ」という。)と、例えばHB−1タイプのようにフィラメントが前照灯光軸方向との交差方向に沿って配されたもの(以下「横型タイプ」という。)とが存在する。このことから、例えば、横型タイプに対応する反射面形状については、縦型タイプに対応する反射面形状に比べて、反射面4aにおける円錐斜面の湾曲部始点から円錐中心点までの高さを低くして、より円錐状先端部分に集光させるといったように、想定されるバルブタイプに応じた反射面形状を採用すればよい。ただし、反射部材4の反射面形状は、想定されるバルブタイプのみに依存することはない。例えば、縦型タイプへの対応時であっても、横型タイプへの対応時と同様に、疑似光源による光の出射元を円錐状先端部分に集約させれば、縦型タイプのハロゲンバルブ装着時よりも配光パターンの横長化を実現したり、光の照射領域と非照射領域との明るさの差(コントラスト)を明確にするといったことが実現可能だからである。つまり、反射部材4の反射面形状は、互換対象となるハロゲンバルブのタイプに加え、前照灯10において所望する配光パターンをも考慮しつつ、適宜設定することが考えられる。
【0057】
(ハイロー切替対応のための構成)
次に、ハイロー切替対応のためのLEDバルブ構成について説明する。
【0058】
自動車車両において、照射光のハイロー切替対応のためには、ハイビーム用とロービーム用の各前照灯10をそれぞれ別個に設けることが考えられる。その場合、LEDバルブとしては、上述したシングルバルブタイプに対応したものを用いればよい。
一方、ハイビーム用とロービーム用を別個に設けるのではなく、それぞれに共通な1つの前照灯10であっても、例えばH−4タイプに代表されるハイロー切替バルブを用いれば、照射光のハイロー切替に対応することが可能になる。ただし、その場合には、LEDバルブについても、ハイロー切替バルブとの互換性を確保したものを用いる必要がある。
【0059】
ハイロー切替バルブは、凹状反射鏡12の焦点近傍に配されるハイビーム用フィラメント23と、当該焦点の少し上に設置されるロービーム用フィラメント24とを備えており、これらを選択的に発光させることで照射光のハイロー切替に対応するようになっている(例えば図10(b)参照)。したがって、ハイロー切替バルブとの互換性を確保するためには、LEDバルブにおいて、各フィラメント23,24の位置の違いも含めて、当該各フィラメント23,24による光の出射状態を再現する必要がある。
【0060】
これを実現するためには、近年、前照灯用として普及しつつあるHID(High Intensity Discharge)バルブを用いた場合のように、電動のアクチュエータ等を用いて光源バルブそのものを移動させることが考えられる。しかしながら、光源バルブそのものを移動させたのでは、そのための機構が必要となるので、構成複雑化や製品コスト増大等を招いてしまう。さらには、故障発生の要因となり得る箇所が増えるため、結果として信頼性低下を招いてしまうおそれもある。
【0061】
そこで、本実施形態におけるLEDバルブは、図4に示すようなLED発光体素子7の配置によって、ハイロー切替への対応を実現可能にしている。
詳しくは、図例のLEDバルブでは、反射部材4の反射面4aと対向する面内において、上下方向に隣接するように並ぶ二段構成のLED発光体素子列を備える。各LED発光体素子列のうち、下方に位置するLED発光体素子列は、左右方向に並んで配された複数(図例では2つ)のハイビーム用(上向き配光用)のLED発光体素子7によって構成される。この上向き配光用LED発光体素子列における各LED発光体素子7は、同時点灯される。一方、上方に位置するLED発光体素子列は、左右方向に並んで配された複数(図例では2つ)のロービーム用(下向き配光用)のLED発光体素子7aによって構成される。この下向き配光用LED発光体素子列における各LED発光体素子7aは、同時点灯される。ただし、上向き配光用LED発光体素子列と下向き配光用LED発光体素子列とでは、それぞれを構成するLED発光体素子7,7aが選択的に点灯されるようになっている。つまり、反射部材4の反射面4aと対向する面内には、選択的に発光可能な少なくとも2つのLED発光体素子7,7a(具体的には二段構成のLED発光体素子列)が上下方向に並設されている。
【0062】
上向き配光用LED発光体素子列と下向き配光用LED発光体素子列とは、これらの境界線の位置が反射部材4の反射面4aにおける頂部4b(円錐中心点)の位置と一致するように、上下対称に配置することが考えられる。このような配置であっても、上向き配光用LED発光体素子列からの光が反射面4aの斜面4cの下面側で反射されて前照灯10にて上向き配光パターンとなり、下向き配光用LED発光体素子列が反射面4aの斜面4cの上面側で反射されて前照灯10にて下向き配光パターンとなるので、上向き配光パターンと下向き配光パターンとを切り替えて配光することが可能となる。
ところが、上向き配光パターンと下向き配光パターンとは、上向き配光パターンが平行光線を遠くまで全体的に照射すべきであるのに対して、下向き配光パターンが上向きの光を遮りつつ照射方向の手前側を中心に照射すべきであるといったように、それぞれ求められる特性が異なる。
そこで、それぞれの特性に適した配光パターンを得られるようにすべく、上向き配光用LED発光体素子列と下向き配光用LED発光体素子列とは、以下に述べるようなオフセット配置とすることが望ましい。
【0063】
図4中において、二点鎖線Bの交点は、反射部材4の反射面4aの中心位置を示している。この中心位置は、反射面4aにおける頂部4b(円錐中心点)の位置と一致する。これに対して、二点鎖線Cは、上向き配光用LED発光体素子列と下向き配光用LED発光体素子列との境界線を示している。これら二点鎖線Bの交点と二点鎖線Cの位置は、それぞれが互いに一致せず、二点鎖線Bの位置が二点鎖線Cの位置に対して下方側にオフセットして配置されている。つまり、反射面4aの中心位置が、二段構成のLED発光体素子列の境界(中心)位置に対して、下方側にオフセット配置されているのである。
【0064】
このようなオフセット配置を行う場合のオフセット量に関しては、以下のように設定することが考えられる。
図8は、本発明の実施形態によるLEDバルブのハイロー切替対応のためのオフセット配置の一例を模式的に示す側断面図である。
図例のように、反射面4aの中心位置を通る二点鎖線Bと、上下二段構成の各LED発光体素子列の境界(中心)位置を通る二点鎖線Cとの間は、上向き配光用LED発光体素子列を構成するLED発光体素子7の上下方向の高さhに対して、その1/3に相当する距離h/3となるように、それぞれの相対位置関係を設定する。
【0065】
以上のようなオフセット配置がされている場合において、上向き配光用LED発光体素子列を構成する各LED発光体素子7を点灯させて、当該各LED発光体素子7に光を出射させると、反射部材4は、当該各LED発光体素子7からの光を反射することによって、反射面4aの頂部4bを含む円錐状先端部分近傍で上述したオフセット量に対応して下方側に僅かに偏った位置に、上向き配光用の疑似光源を形成する(図中におけるG部参照)。
一方、下向き配光用LED発光体素子列を構成する各LED発光体素子7aを点灯させて、当該各LED発光体素子7aに光を出射させると、反射部材4は、当該各LED発光体素子7aからの光を反射することによって、反射面4aの頂部4bの周囲に位置する斜面4c上の、特に上方側の面上に、下向き配光用の疑似光源を形成する(図中におけるH部参照)。
【0066】
これらの各疑似光源は、その形成位置や発光領域の大きさ等につき、ハイビーム用フィラメント23とロービーム用フィラメント24とを備えたハイロー切替バルブ(図10(b)参照)による光の出射状態を良好に再現したものとなる。特に、下向き配光用の疑似光源については、反射面4aの斜面4cの上面側に形成されるので、遮蔽板26が付設されたロービーム用フィラメント24(図10(b)参照)による光の出射状態(特に光の出射方向)を良好に再現することができる。つまり、上述したオフセット配置がされた構成のLEDバルブによれば、各フィラメント23,24の位置の違いも含めて、当該各フィラメント23,24による光の出射状態を良好に再現できるので、当該各フィラメント23,24を備えたハイロー切替バルブとの互換性を適切に確保することができる。
【0067】
したがって、上述したオフセット構成のLEDバルブを、ハイロー切替バルブに代わって前照灯10に装着し、当該LEDバルブにおける上向き配光用LED発光体素子列と下向き配光用LED発光体素子列とを選択的に点灯させるようにすれば、1つのLEDバルブで上向き配光パターンと下向き配光パターンとを切り替えて配光することが可能となり、ハイロー切替バルブ装着時のような理想的な配光パターンを得ることができる。
しかも、上述したようなオフセット配置とすることで、上向き配光パターンと下向き配光パターンのそれぞれにおける特性に適した配光パターンが得られるようになる。すなわち、上向き配光パターンは、上向き配光用LED発光体素子列からの光を反射面4aの頂部4bを含む箇所にて反射するので、平行光線を遠くまで全体的に照射するような配光パターンとなる。また、下向き配光パターンは、下向き配光用LED発光体素子列からの光を反射面4aにおける斜面4cの上方側面上にて反射するので、上向きの光を遮りつつ照射方向の手前側を中心に照射するような配光パターンとなる。
さらには、オフセット配置を行う場合のオフセット量を、上述したようなLED発光体素子7の上下方向高さhの1/3に相当する距離h/3とした場合には、上向き配光パターンと下向き配光パターンとのそれぞれにつき、理想的な配光パターンを得ることができる。例えば、オフセット量が1/3より小さいと、上向き配光パターン時に良好な配光パターンが得られず、また、オフセット量が1/3より大きいと、下向き配光パターン時に良好な配光パターンが得られないおそれがある。つまり、オフセット量が1/3であれば、上向き配光パターンと下向き配光パターンとのそれぞれを両立させる上で、最も好適である。
【0068】
これらのことは、本実施形態によるLEDバルブによれば、反射面4aの中心位置に対するLED発光体素子7の上下方向へのオフセット配置によって、前照灯10への装着時における配光パターンのハイロー切替が可能であることを意味する。つまり、例えば、シングル対応時に照射光のハイロー切替を行う場合においても、前照灯10の凹状反射鏡12やレンズ13等の形状に依らずに(すなわち、同一形状の前照灯10を用いた場合であっても)、LEDバルブにおけるオフセット設定によって、配光パターンのハイロー切替を行うことが可能となる。
【0069】
(発熱対策)
ところで、パワーLEDまたはハイパワーLEDと呼ばれる高出力のLED発光体素子7には、発熱の問題が付きまとう。すなわち、LED発光体素子7から出る熱を効率よく逃がすことができないと、前照灯用光源としての製品化は困難である。そこで、本実施形態におけるLEDバルブは、以下のような構成を採用する。
【0070】
具体的には、図1または図3に示すように、LED発光体素子7が配設されたバルブ本体1、当該LED発光体素子7に対向する反射部材4、及び、これらを連結する支柱5を、いずれも熱伝導性を有する材料によって形成する。そして、反射部材4の側には第1ヒートシンク3を取り付け、これとは反対側のバルブ本体1には第2ヒートシンク2を取り付ける。このような構成により、LED発光体素子7から出る熱は、バルブ本体1、支柱5及び反射部材4を伝わり、第1ヒートシンク3及び第2ヒートシンク2で放熱されることになる。
【0071】
さらに詳しくは、LED発光体素子7が光の出射を開始すると、これに伴ってLED発光体素子7が発熱する。このLED発光体素子7が発する熱は、先ず、当該LED発光体素子7に近接して配置されている支柱5及び反射部材4を介して第1ヒートシンク3へ伝わり、その第1ヒートシンク3で放熱される。これにより、LED発光体素子7の発熱開始直後における当該LED発光体素子7の周辺の温度上昇が抑制されることになる。その後、LED発光体素子7が発する熱は、バルブ本体1を介して第2ヒートシンク2にも伝わり、その第2ヒートシンク2で放熱される。これにより、LED発光体素子7が発熱し続けても、当該LED発光体素子7の周辺における温度上昇は抑制されて、その温度上昇量が飽和することになる。
【0072】
このように、本実施形態におけるLEDバルブは、LED発光体素子7から第1ヒートシンク3及び第2ヒートシンク2までの熱抵抗値(熱の伝わりにくさを表す値)を下げて、LED発光体素子7が発する熱を第1ヒートシンク3及び第2ヒートシンク2で積極的に放熱させ、これによりLED発光体素子7からの熱がバルブ本体1の筒内に配された配線基板へ伝わるのを抑制して、当該配線基板を熱から保護するのである。
【0073】
第1ヒートシンク3及び第2ヒートシンク2のうち、第1ヒートシンク3は、LEDバルブを前照灯10へ装着した状態において、当該前照灯10のハウジング内に配される(図7参照)。したがって、前照灯10による照射光を遮らない形状、大きさに形成されているものとする。具体的には、放熱フィンを有した円柱形状で、その最外径をバルブ本体1の径と同じか小さく形成することが考えられる。この第1ヒートシンク3は、主として発熱開始直後の温度上昇抑制機能を担うため、LED発光体素子7との距離が極力小さくなる位置に配されていることが望ましい。
【0074】
一方、第2ヒートシンク2については、LEDバルブを前照灯10へ装着した状態において、当該前照灯10のハウジング外に配される(図7参照)。つまり、ハウジング内に位置する第1ヒートシンク3に比べると、装着スペースに関する制約が少ない。したがって、第2ヒートシンク2については、放熱性の向上を図るべく、許容される限度において、大型化(表面積の増大化)をすることが望ましい。大型化をしても前照灯10へのLEDバルブの装着を容易に行えるようにすべく、第2ヒートシンク2は、バルブ本体1から容易に取り外せる構造となっている。なお、本実施形態では、ネジ1aとの螺合によって第2ヒートシンク2がバルブ本体1に着脱自在に取り付けられる場合を例に挙げているが、着脱自在とするための構成がこれに限定されることはなく、他の公知技術を利用して実現したものであっても構わない。
【0075】
また、本実施形態では、第1ヒートシンク3及び第2ヒートシンク2により放熱を行う構成を例に挙げたが、より一層の放熱性の向上を図るべく、バルブ本体1の筒状外周部分に第3のヒートシンクを形成することも考えられる。
【0076】
さらに、本実施形態では、反射部材4がバルブ本体1に対し支柱5によって支持されており、その支柱5がネジ止め固定される場合を例に挙げたが、反射部材4の支持構造がこれに限定されることはなく、適宜変更することが可能である。変更例としては、三本の支柱をバルブ本体1側の環状部材および反射部材4側の環状部材と一体で切削または成型加工で形成し、バルブ本体1側の環状部材を当該バルブ本体1に圧入または嵌合固着し、反射部材4側の環状部材を当該反射部材4に圧入または嵌合固着することで、反射部材4の支持構造としたものが挙げられる。
【0077】
<本発明の他の実施形態>
以上に説明した実施形態は、本発明の好適な一実施具体例であるが、本発明がその内容に限定されないことは勿論である。特に、上述の実施形態で挙げた具体的な数値(例えば、反射部材4の反射面形状に関する数値)等は、本発明の内容を理解容易にするための一具体例に過ぎず、これに限定されるものではない。すなわち、上述した具体的な数値は、使用するLED発光体素子の仕様、互換対象となるハロゲンバルブの仕様、所望する前照灯での配光パターン等を総合的に勘案することで、その設定を適宜変更することが考えられる。
【0078】
本発明は、LED発光体素子からの光を反射することによって疑似光源を形成し、その疑似光源によりフィラメントの場合と略同じ光の出射状態を作り出す、という技術的思想を具現化するものである。この具現化は、LED発光体素子の発光面に対向するように配された、湾曲斜面を有した円錐状の反射面形状を利用することによって、達成することが可能となる。
【0079】
ただし、かかる反射面形状において、疑似光源の形成に寄与する箇所は、主として反射面における円錐状先端部分である(例えば図6参照)。したがって、反射部材の反射面形状は、以下のような構成とすることも考えられる。
図9は、本発明の他の実施形態によるLEDバルブの反射部材を具体的に示す側面図である。
図9(a)に示す反射部材4は、疑似光源の形成に寄与する箇所(図中におけるI部参照)以外の箇所を、遮光部材4dによって覆っている。
また、図9(b)に示す反射部材4は、疑似光源の形成に寄与する箇所(図中におけるJ部参照)を残して、他の箇所が存在しない傘状に形成されている。
これらのような構成の反射部材4であっても、湾曲斜面を有した円錐状の反射面形状部分が存在しており、その部分が疑似光源の形成に寄与することになるので、その疑似光源によりフィラメントの場合と略同じ光の出射状態を作り出すことができる。
【0080】
反射面における円錐状先端部分以外、すなわち疑似光源の形成に寄与しない円錐状の裾野に相当する部分(以下、単に「裾野部分」という。)については、上述したように必ずしもその存在を要さない。しかし、反射部材4の形成加工を容易化してLEDバルブの製造コストを抑制する上では、先に説明した実施形態の場合のように円錐状先端部分から裾野部分までが連続して設けられていることが望ましい。また、円錐状先端部分から裾野部分までが連続しており、その全域にわたり鏡面研磨仕上げまたはメッキ仕上げがされていれば、当該裾野部分によってLED発光体素子7からの散乱光や回折光等が反射されると考えられる。したがって、反射面が裾野部分まで連続して設けられていれば、当該裾野部分がない場合に比べて、照射光の照射範囲増大や照射光量増大等の効果が期待できる。
【0081】
<各実施形態の効果>
上述した各実施形態では、疑似光源という従来にはなかった発想を有効に利用することで、既存のフィラメントバルブとの互換性を確保しつつ、光源LED化を実現する。したがって、前照灯用光源のLED化にあたり、車種毎の専用設計一体ユニットを要することがなく、高い汎用性を有することができる。
また、上述した各実施形態では、疑似光源の形成を、LED発光体素子及びこれに対向する反射部材という非常に簡素な構成によって行う。したがって、LEDバルブのコンパクト化が容易に実現可能となり、前照灯のハウジング内という限られたスペースへの確実な装着、すなわち取付スペースの省スペース化が図れる。さらには、構成の簡素化によるコスト低減も期待でき、量産に適した低コスト化が図れるようにもなる。
また、上述した各実施形態では、既存のフィラメントバルブとの互換性を確保することで、高い汎用性が得られるだけでなく、整備性の向上も図れ、仮に破損等が生じた場合であっても容易に交換可能である。
さらに、上述した各実施形態におけるバルブ構造によれば、反射部材4における円錐状先端部分の僅かな円錐部に集光した光を拡散する構造のため、当該反射部材4の大きさ(特に径方向の大きさ)の設定次第で、様々なバルブサイズへの対応が可能となる。つまり、対応可能なバルブサイズの多様化にも柔軟に適応することができる。
【0082】
以上のように、上述した各実施形態で説明したLEDバルブによれば、前照灯用光源のLED化を、高い汎用性を有した状態で、量産に適した低コスト化及び取付スペースの省スペース化等を可能にしつつ、実現することができ、これにより前照灯用の光源についてLEDの特性である省電力、長寿命等の利点を享受することが可能となる。しかも、前照灯用光源のLED化を実現した後においても、当該前照灯において、必要十分な照射光量を得つつ、前方側への照射光につき所望の配光パターンを得ることが可能である。
【0083】
また、上述した各実施形態で説明したLEDバルブによれば、前照灯への装着時における配光パターンのハイロー切替が可能であり、ハイビーム用(上向き配光用)及びロービーム用(下向き配光用)のそれぞれにおいて理想的な配光パターンを得ることができる。つまり、前照灯用光源のLED化にあたり、特に自動車車両の前照灯に特有であるハイロー切替(走行用上向き配光パターンとすれ違い用下向き配光パターンとの切替)に好適に対応することができる。
【0084】
さらに、上述した各実施形態で説明したLEDバルブによれば、LED発光体素子7からの熱をヒートシンク2,3によって効率的に逃がすので、当該LED発光体素子7の配線基板を熱から保護することができる。つまり、前照灯用光源のLED化にあたり、LEDに特有な熱の問題を解決することができる。
【0085】
なお、各実施形態で説明したLEDバルブは、上述したような構造であるため、自動車車両の前照灯の他に、自動車車両以外の鉄道車両、航空機、船舶、その他の輸送機械における前照灯にも適用することが可能である。
【0086】
また、前照灯からの照射光量については、今後におけるLED発光体素子の効率化に従い、より一層の発光効率の向上(すなわち照射光量の増大)が期待できる。
【符号の説明】
【0087】
1 バルブ本体
2 第2ヒートシンク
3 第1ヒートシンク
3a ネジ部
4 反射部材(リフレクター)
4a 反射面
4b 頂部
4c 斜面
5 支柱
6 ナット
7 LED発光体素子(上向き配光用発光体素子)
7a 下向き配光用発光体素子
7b 発光面
8 口金部
9 配線
10 前照灯
11 ソケット部
12 凹状反射鏡
13 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放射状に発するフィラメントを光源に持つフィラメントバルブが装着されるソケット部と、前記ソケット部に装着された前記フィラメントバルブからの出射光を光照射方向に向けて反射する凹状反射鏡と、前記光照射方向への光路上に配されるレンズ部とを備え、前記フィラメントバルブからの出射光を前記凹状反射鏡及び前記レンズ部を介して照射することで所定配光パターンの照射光を得るように構成された前照灯にて、前記フィラメントバルブに代わり前記ソケット部に装着されて用いられるLEDバルブであって、
発光面から指向性を有した光を発するLED発光体素子と、
前記LED発光体素子からの出射光を反射して疑似光源を形成する反射部材と、
を備え、
前記LED発光体素子は、選択的に発光可能な下向き配光用LED発光体素子および上向き配光用LED発光体素子が前記前照灯への装着状態での上下方向に隣接するように並設され、
前記反射部材は、前記疑似光源による光の出射方向が前記ソケット部に前記フィラメントバルブを装着した場合の当該フィラメントバルブによる光の出射方向と略同じになるように、円錐頂部が前記LED発光体素子の発光面の側に向けて突出する形状の反射面を有し、
前記LED発光体素子と前記反射部材とは、前記上向き配光用LED発光体素子からの光を前記反射面の前記円錐頂部を含む箇所にて反射し、前記下向き配光用LED発光体素子からの光を前記反射面における上方側斜面上にて反射するように、それぞれの相対位置関係がオフセット配置され、
前記上向き配光用LED発光体素子の発光により前記光照射方向へ平行光線を遠くまで全体的に照射する照射光の配光パターンが得られ、前記下向き配光用LED発光体素子の発光により上向きの光を遮りつつ前記光照射方向の手前側を中心に照射する照射光の配光パターンが得られるように構成されている
ことを特徴とするLEDバルブ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−210706(P2011−210706A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26794(P2011−26794)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【分割の表示】特願2010−186801(P2010−186801)の分割
【原出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(510179593)株式会社 Flat out (3)
【Fターム(参考)】