説明

LEDパッケージ

【課題】 発光特性の異なる発光素子同士を共通の基板上に実装させた際に、それぞれの発光素子の特性を十分に引き出すことが可能な樹脂体で封止することによって、全体としてバランスよく且つ演色性に富んだ発光を得ることのできるLEDパッケージを提供することである。
【解決手段】 基板12と、該基板12上に隣接して実装される少なくとも1つの青色発光素子13及び赤色発光素子14と、該青色発光素子13及び赤色発光素子14を封止する樹脂体とを備えたLEDパッケージ11において、前記樹脂体は、前記青色発光素子13の上面13bより高く、且つ前記赤色発光素子14の上部に形成されるPNジャンクション14aより低い位置に上面が設定される蛍光体含有樹脂15と、この蛍光体含有樹脂15の上に設けられ、前記赤色発光素子14のPNジャンクション14aより高い位置に上面が設定される拡散剤含有樹脂16とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光色の異なる発光素子を組み合わせて構成されるLEDパッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バックライトや一般照明用の光源となるLEDパッケージにあっては、青色発光素子や赤色発光素子のように発光色の異なる光源を混在させることで演色性を持たせる場合がある。このような混在型のLEDパッケージは、基本的には、共通基板と、この共通基板上に並べて実装される青色発光素子及び赤色発光素子と、これらの発光素子上を封止する透光性を有した樹脂体とで構成される。前記LEDパッケージは、共通基板上に発光素子を所定間隔に並べて実装し、金型等を使用して前記共通基板上に樹脂材料を充填して形成される。
【0003】
特許文献1には、青色発光素子と緑色発光素子とからなる発光装置が開示されている。この発光装置は、前記青色発光素子からの青色光を励起することで黄色系の蛍光色で発光させるための黄色蛍光体と、前記緑色発光素子からの緑色光を励起することで赤色系の蛍光色で発光させるための赤色蛍光体とからなる樹脂によって封止されている。これによって、演色性に富んだ白色系の発光を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−245443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1においては、全体として白色系の発光を得ることを目的としている。このために、青色発光素子と緑色発光素子との組み合わせにおいて、黄色蛍光体と赤色蛍光体とを混在させるといったことが可能となっている。しかしながら、青色発光素子と赤色発光素子との組み合わせにおいては、励起させる蛍光体の種類が異なると、いずれか一方あるいは双方の発光特性が損なわれたり、全体として意図しない発光色となったりする場合がある。
【0006】
このように、発光特性の異なる青色発光素子と赤色発光素子とを同一種類の蛍光体が含有された樹脂体で封止してしまうと、それぞれの発光素子が有する発光特性の独自性が弱まり、全体としての演色性に欠けるといった問題があった。例えば、前記樹脂体が青色発光素子を励起するための蛍光体が含有された樹脂で封止した場合、赤色発光素子については赤色光を遮ることとなり、赤色発光作用が弱くなる。一方、前記樹脂体が透明性の高い材料で形成された場合は、赤色発光素子から発せられる赤色光はよく通すが、青色発光素子から発せられる光はそのままの青色光となる。前記青色発光素子は、蛍光体が含有された黄色系の樹脂材で封止することによって白色系の発光色として利用される場合が多いが、前記赤色発光素子からの発光を優先させるとなると、白色系の発光が得られないといった問題がある。
【0007】
上記のような共通基板を用いずに、青色発光素子と赤色発光素子とを別々の基板に実装して組み合わせるといったこともできるが、各基板間の境界部分での混色性が損なわれる場合がある。これによって、全体としての演色性のバランスが悪くなったり、発光にバラツキが生じたりする場合があり、一つの光源として使用するには難があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、発光特性の異なる発光素子同士を共通の基板上に実装させた際に、それぞれの発光素子の特性を十分に引き出すことが可能な樹脂体で封止することによって、全体としてバランスよく且つ演色性に富んだ発光を得ることのできるLEDパッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のLEDパッケージは、基板と、該基板上に隣接して実装される少なくとも1つの青色発光素子及び赤色発光素子と、該青色発光素子及び赤色発光素子を封止する樹脂体とを備えたLEDパッケージにおいて、前記樹脂体は、前記青色発光素子の上面より高く、且つ前記赤色発光素子の上部に形成されるPNジャンクションより低い位置に上面が設定される第1樹脂層と、該第1樹脂層の上に設けられ、前記赤色発光素子のPNジャンクションより高い位置に上面が設定される第2樹脂層とを備えて構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るLEDパッケージによれば、青色発光素子及び赤色発光素子を基板上に隣接して実装した場合であっても、第1樹脂層が前記青色発光素子の上面より高く、且つ前記赤色発光素子の上部に形成されるPNジャンクションより低い位置に上面が設定されるので、赤色発光素子は前記第1樹脂層の影響を受けることなく、第2樹脂層のみで適正な発光を得ることができる。一方、青色発光素子は、第1樹脂層で適正な発光が得られる。
【0011】
前記第1樹脂層には蛍光体が含有されることで、青色発光素子を白色系の発光に励起することができ、第2樹脂層には拡散剤が含有されることで、赤色発光素子から発せられる赤色光をそのままの状態で拡散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態のLEDパッケージの断面図(a)及び平面図(b)である。
【図2】第2実施形態のLEDパッケージの断面図(a)及び平面図(b)である。
【図3】第3実施形態のLEDパッケージの断面図(a)及び平面図(b)である。
【図4】第4実施形態のLEDパッケージの断面図(a)及び平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて本発明に係るLEDパッケージの実施形態を詳細に説明する。図1は第1実施形態のLEDパッケージ11を示したものである。このLEDパッケージ11は、共通の基板12と、この基板12上に実装される青色発光素子(青色素子)13及び赤色発光素子(赤色素子)14と、これらの発光素子を封止する第1樹脂層(蛍光体含有樹脂)15及び第2樹脂層(拡散剤含有樹脂)16とを有して構成される。
【0014】
前記基板12は、一般的なエポキシ樹脂やBTレジン等の絶縁材料で四角形状に形成され、表面には青色素子13及び赤色素子14がそれぞれフリップチップ実装されるカソード電極及びアノード電極からなる一対の電極パターン(図示せず)が形成されている。
【0015】
前記青色素子13は、一般照明用として白色系の発光色を出すために、主に窒化ガリウム系化合物半導体が用いられる。この青色素子13は、サファイアガラスからなるサブストレートと、このサブストレートの上にn型半導体、p型半導体を拡散成長させた拡散層とからなっている。前記n型半導体及びp型半導体はそれぞれn型電極,p型電極を備えており、前記基板12に設けられたカソード電極及びアノード電極からなる一対の電極パターン(図示せず)上にハンダ部材を介してフリップチップによって導通接続され、一定の電流を流すことでPNジャンクション13aを中心として青色光が発せられる。この青色素子13は、前記蛍光体含有樹脂15で封止することによって、白色系の発光に変換される。
【0016】
前記赤色素子14は、アルミニウムガリウムヒ素あるいはガリウムヒ素リン系の半導体が用いられ、PN構造は前記青色素子と同様である。ただし、青色素子13は前述したように、サブストレートが硬質性のサファイアでできているため強度があり、薄く形成できるが、赤色素子14はサブストレートの硬度が青色素子に比べて低いため、ウェハ状態で扱うためには一定の厚みが必要となる。そのため、基板12に実装した際、赤色素子14のPNジャンクション14aは、青色素子13の上面13bよりも高い位置にある。この赤色素子14は、前記青色素子13と組み合わせることで、暖色系の発光色となる。
【0017】
前記蛍光体含有樹脂15は、透明な樹脂基材に所定分量の蛍光体を含有させて成形したもので、前記基板12の外周部に金型(図示せず)を装着し、この金型内に樹脂を流し込むことによって形成される。この蛍光体含有樹脂15は、例えば、エポキシ樹脂あるいはシリコン樹脂基材に、蛍光粒子の原料となるイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)や、色素粒子の原料となる染料等からなる蛍光体を適量混入されることによって形成することができる。
【0018】
前記拡散剤含有樹脂16は、酸化チタン、SiO2等の拡散剤を透明な樹脂基材に含有することによって形成される。なお、前記拡散剤の代わりに反射率の高い金属粒子を透明な樹脂基材に混入して形成することもできる。
【0019】
前記蛍光体含有樹脂15は、青色素子13の上面13bを満たすが、前述したように、厚みのあるサブストレートによって形成される赤色素子14のPNジャンクション14aに到達しないような高さに形成される。このため、青色素子13のPNジャンクション13aを中心とした光は、蛍光体含有樹脂15内の蛍光体によって励起され、白色系の発光となる。一方、赤色素子14から発せられる光は、前記蛍光体含有樹脂15で励起されることがないので、他の発光色となったり、減衰したりすることなくそのままの赤色光で発光させることができる。
【0020】
前記拡散剤含有樹脂16は、前記赤色素子14のPNジャンクション14aを含むように、前記蛍光体含有樹脂15の上面から赤色素子14の上面14bを満たす高さに形成される。このため、前記拡散剤含有樹脂16では、前記蛍光体含有樹脂15による白色系の発光と、赤色素子14から直接発せられる赤色系の発光とが混在した発光色になると共に、この発光色が光拡散剤によって、さらに輝度を増した状態で発光させることができる。
【0021】
図2は第2実施形態のLEDパッケージ21を示したものである。この実施形態では、前記蛍光体含有樹脂15を青色素子13の領域と赤色素子14の領域とに隔てる溝部27を介して第1の樹脂領域(第1蛍光領域)15aと第2の樹脂領域(第2蛍光領域)15bに分離したものである。第1蛍光領域15aは、青色素子13を中心に、第2蛍光領域15bは赤色素子14を中心にした範囲に設定されている。また、拡散剤含有樹脂16は、前記溝部27を埋めるようにして充填され、更に蛍光体含有樹脂15の上面から赤色素子14の上面14bを満たす高さに形成される。この実施形態では、第2蛍光領域15bが赤色素子14を封止する土台となっているだけで、第1蛍光領域15aからの白色発光には影響を及ぼさない。このため、白色発光するのは、第1蛍光領域15aの範囲に限定したものとなる。一方、第2蛍光領域15bの範囲では赤色光が強く現れることから、純度の高い白色光と赤色光とが共通の拡散剤含有樹脂16を介して混じり合うことで、高い演色効果を得ることができる。
【0022】
図3は第3実施形態のLEDパッケージ31を示したものである。この実施形態では、上部に段差部38を有する赤色素子14を用いて構成されている。前記段差部38は、PNジャンクション14aの下部近傍の周側面を断面L字状に凹設することによってできている。この段差部38は、前記青色素子13の上面13bよりも高い位置に縁面38aを有し、この縁面38aまでの高さに合わせて蛍光体含有樹脂15が充填形成され、その上に拡散剤含有樹脂16が充填形成される。この拡散剤含有樹脂16は、赤色素子14のPNジャンクション38から上面14bを完全に満たすような高さに形成される。前記赤色素子14に段差部38を設定することによって、蛍光体含有樹脂15を充填する際に、前記縁面38aを基準として充填することができるので、蛍光体含有樹脂15がPNジャンクション14aに掛かるのを防止することができる。これによって、赤色素子14から発せられる赤色光が蛍光体含有樹脂15によって遮られることがない。
【0023】
図4は第4実施形態のLEDパッケージ41を示したものである。このLEDパッケージ41は、上記第3実施形態のLEDパッケージ31において、前記蛍光体含有樹脂15を青色素子13と赤色素子14との間に設けられる溝部47を介して2つの蛍光領域15a,15bに分けたものである。発光作用については第2実施形態と同様に、白色発光するのは、蛍光領域15aの範囲に限定したものとなる。また、赤色素子14に縁面48aを有する段差部48を設けたことによって、蛍光体含有樹脂15を充填する高さの基準が明確となり、赤色素子14のPNジャンクション14aに掛からないように規制することができる。
【0024】
以上説明したように、本発明のLEDパッケージにあっては、赤色素子の発光源となるPNジャンクションが蛍光体含有樹脂の外側に露出しているので、赤色光が蛍光体に吸収されにくくなり、赤色光の発光効率がアップした。また、全体を拡散剤含有樹脂で封止することによって、青色光、黄色光、赤色光が混色して演色性の高い白色光を得ることが可能となった。さらに、青色素子と赤色素子を封止している蛍光体含有樹脂を二分するように溝部を介して青色素子が実装されている領域と赤色素子が実装されている領域とに分離したことによって、白色光への変換効率のアップが図られた。
【0025】
前記赤色素子に段差部を設けた場合にあっては、この段差部によって蛍光体含有樹脂の高さに規制されるので、蛍光体含有樹脂で封止される上面を水平面にすることができる。これによって、発光のバラツキを低減させることができる。
【0026】
上記実施形態では、一つの青色素子と一つの赤色素子で構成したが、複数の青色素子及び赤色素子によって構成にすることもできるので、高い演色性と共に高輝度性を備えたLEDパッケージを形成することができる。また、赤色素子の代わりに緑色素子や黄色素子を用いることによって、青色素子と蛍光体含有樹脂とによる白色系の発光を合わせて、多様な演色性を有するLEDパッケージを構成することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
11,21,31,41 LEDパッケージ
12 基板
13 青色素子(青色発光素子)
13a PNジャンクション
14 赤色素子(赤色発光素子)
14a PNジャンクション
15 蛍光体含有樹脂(第1樹脂層)
16 拡散剤含有樹脂(第2樹脂層)
27,47 溝部
38,48 段差部
38a,48a 縁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に隣接して実装される少なくとも1つの青色発光素子及び赤色発光素子と、
該青色発光素子及び赤色発光素子を封止する樹脂体とを備えたLEDパッケージにおいて、
前記樹脂体は、前記青色発光素子の上面より高く、且つ前記赤色発光素子の上部に形成されるPNジャンクションより低い位置に上面が設定される第1樹脂層と、
該第1樹脂層の上に設けられ、前記赤色発光素子のPNジャンクションより高い位置に上面が設定される第2樹脂層とを備えて構成されることを特徴とするLEDパッケージ。
【請求項2】
前記基板上に実装された少なくとも1つの青色発光素子の上面は、前記基板上に実装された少なくとも1つの赤色発光素子の上面より低い位置に設定される請求項1に記載のLEDパッケージ。
【請求項3】
前記第1樹脂層には少なくとも蛍光体が含有され、第2樹脂層には少なくとも拡散剤が含有されている請求項1に記載のLEDパッケージ。
【請求項4】
前記赤色発光素子は、PNジャンクションの下部近傍の周側面に段差部を有し、この段差部に前記第1樹脂層の上面が設定されている請求項1に記載のLEDパッケージ。
【請求項5】
前記第1樹脂層は、青色発光素子の周囲に形成される第1の樹脂領域と、赤色発光素子の周囲に形成される第2の樹脂領域とに分離され、
前記第1の樹脂領域と第2の樹脂領域との間に溝部が設けられると共に、この溝部に前記第1樹脂層の上に設けられた第2樹脂層が充填されている請求項1に記載のLEDパッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−12529(P2013−12529A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143061(P2011−143061)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】