説明

LED駆動装置

【課題】出力電流を容易かつ高精度に調整することが可能な車両用LED駆動装置を提供する。
【解決手段】外部接続される複数の電流設定抵抗RL、RH毎に複数の基準電流IL、IHを各々独立して設定する電流設定部80と、外部入力されるストップ信号STOPに基づいて基準電流IL、IHのいずれか一つを選択する電流制御部40と、電流制御部40で選択された基準電流IREFに基づいて外部接続される発光ダイオード列LED1への出力電流IOUTを制御する出力トランジスタ10と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用LED[Light Emitting Diode](リアランプや室内灯など)の駆動制御を行う車両用LED駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図18は、車両用LED駆動装置の一従来例を示す回路図である。本従来例の車両用LED駆動装置において、テールランプ点灯時にはスイッチ201がオンとされて、スイッチ202がオフとされる。その結果、テールランプ点灯時には、バッテリ100からスイッチ201、ダイオード301、抵抗401、及び、抵抗500を介して、発光ダイオード列600に電流I1が流される。一方、ブレーキランプ点灯時には、スイッチ201がオフとされて、スイッチ202がオンとされる。その結果、ブレーキランプ点灯時には、バッテリ100からスイッチ202、ダイオード302、抵抗402、及び、抵抗500を介して、発光ダイオード列600に電流I2が流される。ここで、抵抗402は、抵抗401よりも小さい抵抗値を有する。従って、ブレーキランプ点灯時に流される電流I2は、テールランプ点灯時に流される電流I1よりも大きい電流値となり、発光ダイオード列600は、ブレーキランプ点灯時の方がテールランプ点灯時よりも明るく発光する。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−313808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例の車両用LED駆動装置において、テールランプ点灯時及びブレーキランプ点灯時の発光ダイオード列600の発光量を調整するためには、発光ダイオード列600への電流経路上に設けられた抵抗401及び402の抵抗値を調整しなければならず、発光ダイオード列600の発光量を高精度に調整することが困難であった。
【0006】
本発明は、本願の発明者によって見い出された上記の問題点に鑑み、車両用LEDへの出力電流を容易かつ高精度に調整することが可能な車両用LED駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用LED駆動装置は、外部接続される複数の電流設定抵抗毎に複数の基準電流を各々独立して設定する電流設定部と、外部入力される制御信号に基づいて前記複数の基準電流のいずれか一つを選択する電流制御部と、前記電流制御部で選択された基準電流に基づいて外部接続される車両用LEDへの出力電流を制御する出力トランジスタと、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0008】
なお、上記第1の構成から成る車両用LED駆動装置は、異常の検出有無に応じたプロテクトバス信号の生成及びその外部入出力を行うプロテクトバス制御部をさらに有し、前記電流制御部は、前記プロテクトバス信号に基づいて前記車両用LEDへの電流供給可否を制御する構成(第2の構成)にするとよい。
【0009】
また、上記第1または第2の構成から成る車両用LED駆動装置は、前記車両用LEDの地絡を検出するLED地絡検出部をさらに有し、前記電流制御部は、前記車両用LEDの地絡時に前記出力電流の供給を強制オフさせる構成(第3の構成)にするとよい。
【0010】
また、上記第3の構成から成る車両用LED駆動装置において、前記LED地絡検出部は、前記車両用LEDの順方向降下電圧またはこれに応じたモニタ電圧と第1閾値電圧とを比較してLED地絡検出信号を生成する第1コンパレータと、前記車両用LEDの地絡解消時に前記車両用LEDへ電流を流し込んで順方向降下電圧を発生させる地絡復帰回路と、を含む構成(第4の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第1〜第4いずれかの構成から成る車両用LED駆動装置は、前記車両用LEDのオープンを検出するLEDオープン検出部をさらに有する構成(第5の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第5の構成から成る車両用LED駆動装置において、前記LEDオープン検出部は、前記車両用LEDが外部接続される外部端子の端子電圧と第2閾値電圧とを比較してLEDオープン検出信号を生成する第2コンパレータと、前記端子電圧と前記第2閾値電圧よりも低いクランプ電圧との差分を増幅して電流制限信号を生成するアンプと、を含み、前記電流制御部は、前記電流制限信号に基づいて前記端子電圧が前記クランプ電圧を上回らないように前記車両用LEDへの出力電流を制御する構成(第6の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第1〜第6いずれかの構成から成る車両用LED駆動装置において、前記電流設定部は、前記複数の電流設定抵抗にそれぞれ定電圧を印加することにより、前記複数の基準電流を生成する構成(第7の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第1〜第6いずれかの構成から成る車両用LED駆動装置において、前記電流設定部は、前記複数の電流設定抵抗にそれぞれ定電流を流すことにより、複数の電流設定電圧を生成し、さらに、複数の内部抵抗にそれぞれ前記複数の電流設定電圧を印加することにより、前記複数の基準電流を生成する構成(第8の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第8の構成から成る車両用LED駆動装置において、前記複数の電流設定抵抗にはそれぞれ負特性サーミスタが並列に接続される構成(第9の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第1〜第9いずれかの構成から成る車両用LED駆動装置において、前記電流制御部は、前記出力トランジスタと共にカレントミラーを形成し、自身に入力される前記基準電流に応じて前記出力トランジスタにミラー電流を発生させる入力トランジスタを含む構成(第10の構成)にするとよい。
【0017】
また、上記第10の構成から成る車両用LED駆動装置は、前記入力トランジスタと前記出力トランジスタのソース・ドレイン間電圧を一致させるバイアス部をさらに有する構成(第11の構成)にするとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両用LEDへの出力電流を容易かつ高精度に調整することが可能な車両用LED駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る車両用LEDドライバICの一構成例を示すブロック図
【図2】H/Lモード設定部30と電流制御部40の一構成例を示す回路図
【図3】バイアス部90の一構成例を示す回路図
【図4】電流設定部80の第1構成例を示す回路図
【図5】第1の電流設定特性を示すR/I相関図
【図6】電流設定部80の第2構成例を示す回路図
【図7】第2の電流設定特性を示すR/I相関図
【図8】PBUS制御部70の一構成例を示す回路図
【図9】プロテクトバス信号PBUSの一利用例を示すアプリケーション図
【図10】LED地絡検出部50の第1構成例を示す回路図
【図11】第1のLED地絡検出動作を示すタイムチャート
【図12】LED地絡検出部50の第2構成例を示す回路図
【図13】第2のLED地絡検出動作を示すタイムチャート
【図14】LEDオープン検出部60の第1構成例を示す回路図
【図15】LEDオープンの誤検出動作を示すタイムチャート
【図16】LEDオープン検出部60の第2構成例を示す回路図
【図17】LEDオープンの誤検出回避動作を示すタイムチャート
【図18】車両用LED駆動装置の一従来例を示す回路図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<全体ブロック図>
図1は、本発明に係る車両用LEDドライバICの一構成例を示すブロック図である。本構成例の車両用LEDドライバIC1(以下、本IC1と呼ぶ)は、出力トランジスタ10と、基準電圧生成部20と、H/Lモード設定部30と、電流制御部40と、LED地絡検出部50と、LEDオープン検出部60と、プロテクトバス制御部70(以下、PBUS制御部70と呼ぶ)と、電流設定部80と、を有する半導体集積回路装置である。
【0021】
また、本IC1は、外部との電気的な接続を確立するための手段として、外部端子T1〜T7を有する。外部端子T1は、点灯信号入力端子(VIN端子)である。外部端子T2は、ブレーキ灯入力端子(STOP端子)である。外部端子T3は、異常検出入出力端子(PBUS端子)である。外部端子T4は、Lモード用の電流設定端子(ISETL端子)である。外部端子T5は、Hモード用の電流設定端子(ISETH端子)である。外部端子T6は、グランド端子(GND端子)である。外部端子T7は、電流出力端子(IOUT端子)である。
【0022】
また、本IC1には、バッテリE1と、スイッチSW1及びSW2と、ダイオードD1〜D3と、ツェナダイオードZD1と、コンデンサC1と、プルアップ抵抗R1と、電流設定抵抗RL及びRHと、発光ダイオード列LED1と、が外部接続される。
【0023】
バッテリE1の正極端は、スイッチSW1及びSW2の第1端に各々接続されている。バッテリE1の負極端は、接地端に接続されている。スイッチSW2の第2端は、ダイオードD1のアノードに接続されている。スイッチSW2の第2端は、ダイオードD2及びD3のアノードに各々接続されている。ダイオードD1及びD2のカソードは、いずれも外部端子T1に接続されている。ダイオードD3のカソードは、外部端子T2に接続されている。ツェナダイオードZD1のカソードは、外部端子T1に接続されている。ツェナダイオードZD1のアノードは、接地端に接続されている。コンデンサC1の第1端は、外部端子T1に接続されている。コンデンサC1の第2端は、接地端に接続されている。プルアップ抵抗R1の第1端は、外部端子T1(入力電圧VINの印加端)またはバッテリE1の正極端(バッテリ電圧BATの印加端)に接続されている。プルアップ抵抗R1の第2端は、外部端子T3に接続されている。電流設定抵抗RLの第1端は、外部端子T4に接続されている。電流設定抵抗RHの第1端は、外部端子T5に接続されている。電流設定抵抗RL及びRHの第2端は、いずれも接地端に接続されている。外部端子T6は接地端に接続されている。外部端子T7は、発光ダイオード列LED1のアノードに接続されている。発光ダイオード列LED1のカソードは、接地端に接続されている。
【0024】
テールランプ点灯時にはスイッチSW1がオンとされて、スイッチSW2がオフとされる。その結果、テールランプ点灯時には、バッテリE1からスイッチSW1とダイオードD1を介して外部端子T1に入力電圧VINが印加される。また、外部端子T2に入力されるストップ信号STOPは、ローレベル(ハイインピーダンス)となる。一方、ブレーキランプ点灯時には、スイッチSW1がオフとされて、スイッチSW2がオンとされる。その結果、ブレーキランプ点灯時には、バッテリE1からスイッチSW2とダイオードD2を介して外部端子T2に入力電圧VINが印加される。また、外部端子T2に入力されるストップ信号STOPは、ハイレベル(バッテリ電圧BAT)となる。
【0025】
<回路ブロックの概要>
出力トランジスタ10は、電流制御部40の指示に基づいて発光ダイオード列LED1への出力電流IOUTを制御するスイッチ素子である。本IC1では、出力トランジスタ10として、Pチャネル型MOS[Metal Oxide Semiconductor]電界効果トランジスタが用いられている。出力トランジスタ10のソース及びバックゲートは、外部端子T1に接続されている。出力トランジスタ10のドレインは、外部端子T7に接続されている。出力トランジスタ10のゲートは、電流制御部40に接続されている。
【0026】
基準電圧生成部20は、外部端子T1に印加される入力電圧VINから所定の基準電圧VREFを生成する。
【0027】
H/Lモード設定部30は、外部端子T2に入力されるストップ信号STOPに基づいてモード設定信号MODEを生成し、これを電流制御部40に出力する。
【0028】
電流制御部40は、モード設定信号MODEに基づいて第1基準電流ILと第2基準電流IHの一方を基準電流IREFとして選択し、これに応じた出力電流IOUTが発光ダイオード列LED1に供給されるように、出力トランジスタ10の駆動制御を行う。
【0029】
LED地絡検出部50は、発光ダイオード列LED1の地絡(外部端子T7が接地端またはこれに準ずる低電位端にショートした状態)を検出して、LED地絡検出信号DET1を出力する。LED地絡検出信号DET1は、LED地絡の未検出時にはローレベルとなり、LED地絡の検出時にはハイレベルとなる2値信号である。
【0030】
LEDオープン検出部60は、発光ダイオード列LEDのオープン(外部端子T7から発光ダイオード列LEDが外れた状態)を検出して、LEDオープン検出信号DET2を出力する。LEDオープン検出信号DET2は、LEDオープンの未検出時にはローレベルとなり、LEDオープンの検出時にはハイレベルとなる2値信号である。
【0031】
PBUS制御部70は、異常の検出有無に応じたプロテクトバス信号PBUSの生成及びその外部入出力を行う。また、PBUS制御部70は、プロテクトバス信号PBUSに基づいて強制オフ信号OFFを生成し、これを電流制御部40に出力する。
【0032】
電流設定部80は、第1電流設定抵抗RLに応じた第1基準電流ILと、第2電流設定抵抗RHに応じた第2基準電流IH(ただし、IH>IL)を各々独立して設定する。
【0033】
なお、図1では明示されていないが、本IC1には、上記した回路ブロックのほかに、過電圧保護部、温度保護部、電流設定抵抗RL、RHの地絡検出部及びオープン検出部などが集積化されている。
【0034】
<特長>
本IC1における第1の特長は、入力電圧VINの電圧範囲が5.5〜40Vと広いことである。第2の特長は、電流制御部40として可変型定電流ソースドライバを内蔵している点である。第3の特長は、H/Lモード設定部30を内蔵している点である。第4の特長は、LEDオープン検出部50及びLEDショート検出部60を内蔵している点である。第5の特長は、電流設定抵抗RL、RHの地絡検出部及びオープン検出部を内蔵している点である。第6の特長は、過電圧保護部及び温度保護部を内蔵している点である。第7の特長は、PBUS制御部70(異常状態出力検知機能部)を内蔵している点である。
【0035】
本IC1は、50V高耐圧のLEDソースドライバICである。本IC1は、出力電流IOUTの定電流出力制御が可能であり、また、出力電流IOUTの電流切替制御(H/Lモード切替制御)も可能である。従って、本IC1は、車両のリアランプ用LEDや白色LEDの駆動手段として最適である。また、本IC1には、種々の保護機能(発光ダイオード列LED1の地絡/オープン保護機能、電流設定抵抗RL、RHの地絡/オープン保護機能、過電圧保護機能、温度保護機能)が内蔵されており、高い信頼性を実現することが可能である。また、本IC1にはPBUS制御部70が内蔵されており、本IC1を複数使用して複数の発光ダイオード列を駆動する際に、万一ある発光ダイオード列に地絡/オープンが生じた場合には、全系統の発光ダイオード列を一括して強制オフ制御することが可能である。
【0036】
<H/Lモード設定部、電流制御部>
図2は、H/Lモード設定部30と電流制御部40の一構成例を示す回路図である。
【0037】
H/Lモード設定部30は、抵抗31〜33と、npn型バイポーラトランジスタ34と、インバータ35と、を含む。抵抗31の第1端は、外部端子T2に接続されている。抵抗31の第2端と抵抗32の第1端は、いずれもトランジスタ34のベースに接続されている。抵抗32の第2端は、接地端に接続されている。抵抗33の第1端は、基準電圧VREFの印加端に接続されている。抵抗33の第2端は、トランジスタ34のコレクタに接続されている。トランジスタ34のエミッタは、接地端に接続されている。インバータ35の入力端は、トランジスタ34のコレクタに接続されている。インバータ35の出力端は、モード設定信号MODEの出力端として電流制御部40(より具体的には、後述するセレクタ42の制御端)に接続されている。
【0038】
上記構成から成るH/Lモード設定部30は、ブレーキランプ点灯時にスイッチSW2がオンとされて、ストップ信号STOPがハイレベル(=バッテリ電圧BAT)となっているときに、モード設定信号MODEをハイレベル(=基準電圧VREF)とする一方、テールランプ点灯時にスイッチSW2がオフとされて、ストップ信号STOPがローレベル(=ハイインピーダンス)となっているときに、モード設定信号MODEをローレベル(=GND)とする。すなわち、H/Lモード設定部30は、ストップ信号STOPの電圧レベルをシフトしてモード設定信号MODEを生成するレベルシフタとして機能する。
【0039】
電流制御部40は、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ41とセレクタ42を含む。トランジスタ41のソース及びバックゲートは、外部端子T1に接続されている。トランジスタ41のゲートは、出力トランジスタ10のゲートと共に、トランジスタ41のドレインに接続されている。トランジスタ41のドレインは、セレクタ42の共通端(基準電流IREFの入力端)に接続されている。セレクタ42の第1選択端(L)は、第1基準電流ILの入力端に接続されている。セレクタ42の第2選択端(H)は、第2基準電流IHの入力端に接続されている。セレクタ42の制御端は、モード設定信号MODEの印加端(インバータ35の出力端)に接続されている。
【0040】
上記構成から成る電流制御部40において、セレクタ42は、モード設定信号MODEに(延いてはブレーキランプの点消灯状態に応じたストップ信号STOP)基づいて、第1基準電流IL(低電流)と第2基準電流IH(高電流)のいずれか一方を基準電流IREFとして選択する。より具体的に述べると、セレクタ42は、モード設定信号MODEがローレベルであるときに、第1選択端(L)と共通端を接続することにより、第1基準電流ILを基準電流IREFとして選択する一方、モード設定信号MODEがハイレベルであるときに、第2選択端(H)と共通端を接続することにより、第2基準電流IHを基準電流IREFとして選択する。
【0041】
トランジスタ41は、出力トランジスタ10と共にカレントミラーを形成し、自身に入力される基準電流IREFに応じて出力トランジスタ10にミラー電流(=出力電流IOUT)を発生させる入力トランジスタとして機能する(以下、トランジスタ41を適宜、入力トランジスタ41と呼ぶ)。具体的に述べると、テールランプ点灯時には、第1基準電流IL(低電流)が出力電流IOUTとして流され、ブレーキランプ点灯時には、第2基準電流IH(高電流)が出力電流IOUTとして流される。発光ダイオード列LED1は、ブレーキランプ点灯時の方がテールランプ点灯時よりも明るく発光する。なお、出力トランジスタ10と入力トランジスタ41は、いずれも、入力電圧VINと接地電圧GNDとの電位差に耐え得る高耐圧素子とされている。
【0042】
上記したように、本IC1では、発光ダイオード列LED1への電流供給源として、シンクドライバではなく、高耐圧素子を用いたソースドライバが内蔵されている。このような構成とすることにより、発光ダイオード列LED1で生じる順方向降下電圧VFのばらつきや、入力電圧VINのばらつきに起因する出力電流IOUTのずれを抑制することができるので、工程でのLED選別を行う必要がなくなり、延いては、基板管理数の削減やセット設計の容易化などを実現することが可能となる。
【0043】
また、本IC1を用いることにより、ディスクリート部品を用いる従来構成に比べて、基板上の占有面積を小型化することができるので、レイアウトの自由度が高まり、車両のデザイン性を向上することも可能となる。
【0044】
<ソースドライバの高精度化>
本IC1は、上記したソースドライバの高精度化を実現する手段として、図3に示すように、入力トランジスタ41のソース・ドレイン間電圧VDS1と、出力トランジスタ10のソース・ドレイン間電圧VDS2とを一致させるバイアス部90をさらに有する。
【0045】
図3は、バイアス部90の一構成例を示す回路図である。本構成例のバイアス部90はPチャネル型MOS電界効果トランジスタ91及び92と、オペアンプ93及び94と、を含む。トランジスタ91のソース及びバックゲートは、入力トランジスタ41のドレインに接続されている。トランジスタ91のドレインは、基準電流IREFの入力端に接続されている。トランジスタ91のゲートは、オペアンプ93の出力端に接続されている。トランジスタ92のソース及びバックゲートは、出力トランジスタ10のドレインに接続されている。トランジスタ92のドレインは、外部端子T7に接続されている。トランジスタ92のゲートは、オペアンプ94の出力端に接続されている。オペアンプ93の非反転入力端(+)は、所定のバイアス電圧(=VIN−Vx)の印加端に接続されている。オペアンプ93の反転入力端(−)は、トランジスタ91のソースに接続されている。オペアンプ94の非反転入力端(+)は、所定のバイアス電圧(=VIN−Vx)の印加端に接続されている。オペアンプ94の反転入力端(−)は、トランジスタ92のソースに接続されている。なお、オペアンプ93及び94は、いずれも、入力電圧VINと接地電圧GNDとの電位差に耐え得る高耐圧素子で形成されている。
【0046】
上記構成から成るバイアス部90により、入力トランジスタ41のソース・ドレイン間電圧VDS1と、出力トランジスタ10のソース・ドレイン間電圧VDS2を同一の電圧値(=Vx)に合わせ込むことができるので、カレントミラーのチャネル長変長効果によるミラー比のずれを効果的に防止することが可能となる。従って、入力電圧VINや発光ダイオード列LED1の直列段数(延いては順方向降下電圧VF)が変化しても、これに供給される出力電流IOUTを常に一定に維持することが可能となり、ソースドライバの高精度化を実現することが可能となる。
【0047】
<電流設定部>
図4は、電流設定部80の第1構成例を示す回路図である。第1構成例の電流設定部80は、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ81及び82と、オペアンプ83及び84と、を含む。トランジスタ81のソース及びバックゲートは、外部端子T4に接続されている。トランジスタ81のドレインは、第1基準電流ILの出力端として、電流制御部40に接続されている。トランジスタ81のゲートは、オペアンプ83の出力端に接続されている。トランジスタ82のソース及びバックゲートは、外部端子T5に接続されている。トランジスタ82のドレインは、第2基準電流IHの出力端として、電流制御部40に接続されている。トランジスタ82のゲートは、オペアンプ84の出力端に接続されている。オペアンプ83の非反転入力端(+)は、所定のバイアス電圧VBの印加端に接続されている。オペアンプ83の反転入力端(−)は、トランジスタ81のソースに接続されている。オペアンプ84の非反転入力端(+)は、所定のバイアス電圧VBの印加端に接続されている。オペアンプ84の反転入力端(−)は、トランジスタ82のソースに接続されている。
【0048】
第1構成例の電流設定部80では、電流設定抵抗RL及びRHにそれぞれ所定のバイアス電圧VBを印加することにより、第1基準電流IL(=VB/RL)及び第2基準電流IH(=VB/RH)を生成する。このように、第1構成例の電流設定部80では、電流設定抵抗RL及びRHの抵抗値をそれぞれ任意に調整することにより、テールランプ点灯時の出力電流IOUT(=第1基準電流IL)と、ブレーキランプ点灯時の出力電流IOUT(=第2基準電流IH)を独立して設定することが可能である。従って、車種によって最適値が異なる出力電流IOUTを容易かつ高精度に調整することが可能となる。
【0049】
なお、第1構成例の電流設定部80で実現される第1の電流設定特性は、負特性(電流設定抵抗RL及びRHの抵抗値を大きくするほど、第1基準電流IL及び第2基準電流IHが低くなる特性)となる。図5は、第1の電流設定特性を示すR/I相関図である。
【0050】
図6は、電流設定部80の第2構成例を示す回路図である。第2構成例の電流設定部80は、図4の構成要素に加えて、さらに、定電流源85及び86(定電流値:IREF)と、抵抗87及び88(抵抗値:R)とを含む。トランジスタ81のソース及びバックゲートは、外部端子T4ではなく、抵抗87を介して接地端に接続されている。トランジスタ81のドレインは、第1基準電流ILの出力端として、電流制御部40に接続されている。トランジスタ81のゲートは、オペアンプ83の出力端に接続されている。トランジスタ82のソース及びバックゲートは、外部端子T5ではなく、抵抗88を介して接地端に接続されている。トランジスタ82のドレインは、第2基準電流IHの出力端として、電流制御部40に接続されている。トランジスタ82のゲートは、オペアンプ84の出力端に接続されている。オペアンプ83の非反転入力端(+)は、バイアス電圧VBの印加端ではなく、外部端子T4に接続されている。オペアンプ83の反転入力端(−)は、トランジスタ81のソースに接続されている。オペアンプ84の非反転入力端(+)は、バイアス電圧VBの印加端ではなく、外部端子T5に接続されている。オペアンプ84の反転入力端(−)は、トランジスタ82のソースに接続されている。定電流源85及び86は、基準電圧VREFの印加端と外部端子T4及びT5との間に各々接続されている。
【0051】
第2構成例の電流設定部80では、電流設定抵抗RL及びRHにそれぞれ定電流IREFを流すことにより、第1電流設定電圧VL(=IREF×RL)と第2電流設定電圧VH(=IREF×RH)を生成し、さらに、抵抗87及び88にそれぞれ第1電流設定電圧VLと第2電流設定電圧VHを印加することにより、第1基準電流IL(=VL/R=IREF×RL/R)と第2基準電流IH(=VH/R=IREF×RH/R)を生成する。このように、第2構成例の電流設定部80では、先述の第1構成例と同様、電流設定抵抗RL及びRHの抵抗値をそれぞれ任意に調整することにより、テールランプ点灯時の出力電流IOUT(=第1基準電流IL)と、ブレーキランプ点灯時の出力電流IOUT(=第2基準電流IH)を独立して設定することが可能である。従って、車種によって最適値が異なる出力電流IOUTを容易かつ高精度に調整することが可能となる。
【0052】
なお、第2構成例の電流設定部80で実現される第2の電流設定特性は、正特性(電流設定抵抗RL及びRHの抵抗値を大きくするほど、第1基準電流IL及び第2基準電流IHが高くなる特性)となる。図7は、第1の電流設定特性を示すR/I相関図である。従って、第2構成例の電流設定部80であれば、電流設定抵抗RL及びRHにそれぞれ負特性サーミスタNTC[Negative Temperature Coefficient]を並列に続することにより、周囲が高温になるほど第1基準電流IL及び第2基準電流IHを低下させることができるので、出力電流IOUTの温度ディレーティング設計を行うが可能となる。
【0053】
ただし、第2構成例の電流設定部80では、第1基準電流IL及び第2基準電流IHのばらつき要因として、電流設定抵抗RL及びRHのばらつきだけでなく、定電流IREFや抵抗値Rのばらつきが含まれるため、出力電流IOUTの精度向上を図るためには、定電流IREFや抵抗値Rをトリミングによって調整することができるように回路設計を行うことが望ましい。
【0054】
<PBUS制御部>
図8は、PBUS制御部70の一構成例を示す回路図である。本構成例のPBUS制御部70は、抵抗71〜73と、npn型バイポーラトランジスタ74と、ダイオード75と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ76と、論理和演算器77とを含む。抵抗71の第1端は、外部端子T3に接続されている。抵抗71の第2端と抵抗72の第1端は、いずれもトランジスタ74のベースに接続されている。抵抗72の第2端は、接地端に接続されている。抵抗73の第1端は、基準電圧VREFの印加端に接続されている。抵抗73の第2端は、トランジスタ74のコレクタに接続されている。トランジスタ74のエミッタは、接地端に接続されている。ダイオード75のアノードは、トランジスタ74のコレクタに接続されている。ダイオード75のカソードは、強制オフ信号OFFの出力端として、電流制御部40やバイアス部90に接続されている。トランジスタ76のドレインは、外部端子T3に接続されている。トランジスタ76のソース及びバックゲートは、接地端に接続されている。トランジスタ76のゲートは、論理和演算器77の出力端に接続されている。論理和演算器77の第1入力端は、LED地絡検出信号DET1の入力端に接続されている。論理和演算器77の第2入力端は、LEDオープン検出信号DET2の入力端に接続されている。なお、図8には明示されていないが、論理和演算器77には、その他の異常検出信号(例えば、電流設定抵抗RL、RHの地絡検出信号やオープン検出信号)を入力しても構わない。
【0055】
上記構成から成るPBUS制御部70は、外部端子T3に印加されるプロテクトバス信号PBUSがハイレベル(異常未検出時の論理レベル)となっているときに、強制オフ信号OFFをローレベルとする一方、プロテクトバス信号PBUSがローレベル(異常検出時の論理レベル)となっているときに、強制オフ信号OFFをハイレベルとする。
【0056】
すなわち、PBUS制御部70を形成する回路要素のうち、抵抗71〜73、トランジスタ74、及び、ダイオード75は、プロテクトバス信号PBUSの入力を受け付けて強制オフ信号OFFを生成する信号入力回路として機能する。
【0057】
なお、強制オフ信号OFFは、電流制御部40やバイアス部90に入力されており、強制オフ信号OFFがハイレベル(異常検出時の論理レベル)となったときには、出力電流IOUTの供給が強制オフされる。
【0058】
また、上記構成から成るPBUS制御部70は、LED地絡検出信号DET1とLEDオープン検出信号DET2のうち、少なくともいずれか一方がハイレベル(異常検出時の論理レベル)であるときに、プロテクトバス信号PBUSをローレベル(異常検出時の論理レベル)とする。
【0059】
すなわち、PBUS制御部70を形成する回路要素のうち、トランジスタ76と論理和演算器77は、本IC1で何らかの異常(LED地絡やLEDオープンなど)が検出されたときに、プロテクトバス信号PBUSをローレベル(異常検出時の論理レベル)に切り替えるオープンドレイン形式の信号出力回路として機能する。
【0060】
図9は、プロテクトバス信号PBUSの一利用例を示すアプリケーション図である。上記で説明したように、本IC1にはPBUS制御部70が内蔵されているので、例えば、図9に示すように、3個の本IC1−1〜1−3を使用して、3系統の発光ダイオード列LED1〜LED3を駆動する際に、万一ある発光ダイオード列に地絡/オープンが生じた場合には、全系統の発光ダイオード列LED1〜LED3を一括して強制オフ制御することが可能となる。従って、検査工程では、全系列の発光ダイオード列LED1〜LED3の一括選別を行うことが可能となり、また、量産後(出荷後)では、いずれかの発光ダイオード列に故障が生じても、これを遅滞なく発見することが可能となる。
【0061】
<LED地絡検出部>
図10は、LED地絡検出部50の第1構成例を示す回路図である。第1構成例のLED地絡検出部50は、コンパレータ51と、直流電圧源52を含む。コンパレータ51の反転入力端(−)は、外部端子T7(出力電圧VOUTの印加端)に接続されている。コンパレータ51の非反転入力端(+)は、直流電圧源52の正極端(閾値電圧VTH1の印加端)に接続されている。コンパレータ51の出力端は、LED地絡検出信号DET1の出力端として、PBUS制御部70に接続されている。
【0062】
図11は、第1構成例のLED地絡検出部50によって実現される第1のLED地絡検出動作を示すタイムチャートであり、上から順に、LED地絡の発生状態(スイッチSWxのオン/オフ状態)、出力電圧VOUT、LED地絡検出信号DET1、プロテクトバス信号PBUS、強制オフ信号OFF、及び、出力電流IOUTが描写されている。
【0063】
時刻t11において、外部端子T7に外部接続される発光ダイオード列LED1が地絡状態(スイッチSWx:オン)となった場合、出力電圧VOUTが閾値電圧VTH1を下回ることによって、LED地絡検出信号DET1がハイレベルとなり、LED地絡の検出が行われる。LED地絡の検出中は、強制オフ信号OFFがハイレベルとされ、出力電流IOUTが強制オフされる。このような保護動作により、本IC1の熱破壊を防止することが可能となる。また、LED地絡の検出中は、プロテクトバス信号PBUSがローレベルとされ、本IC1の外部に異常が報知される。
【0064】
なお、第1構成例のLED地絡検出部50では、時刻t12において発光ダイオード列LEDの地絡状態が解消された場合(スイッチSWx:オフ)であっても、出力電圧VOUTがハイインピーダンス状態となり、LED地絡検出信号DET1はハイレベル(異常検出時の論理レベル)に維持されるため、出力電流IOUTのオフ状態は継続される。
【0065】
図12は、LED地絡検出部50の第2構成例を示す回路図である。第2構成例のLED地絡検出部50は、図10の構成要素に加えて、さらに、抵抗53(抵抗値:R53)と、定電流源54(定電流値:I54)と、ダイオード55(順方向降下電圧:V55)と、を含む。コンパレータ51の反転入力端(−)は、外部端子T7ではなく、抵抗53を介して接地端に接続される一方、モニタ電圧VMONの印加端(定電流源54の第1端とダイオード55のアノードとの接続ノード)にも接続されている。ダイオード55のカソードは、外部端子T7に接続されている。定電流源54の第2端は、入力電圧VINの印加端に接続されている。コンパレータ51の非反転入力端(+)は、直流電圧源52の正極端(閾値電圧VTH1’=VTH1+V55)の印加端)に接続されている。コンパレータ51の出力端は、LED地絡検出信号DET1の出力端として、PBUS制御部70に接続されている。
【0066】
図13は、第2構成例のLED地絡検出部50によって実現される第2のLED地絡検出動作を示すタイムチャートであり、上から順に、LED地絡の発生状態(スイッチSWxのオン/オフ状態)、モニタ電圧VMON、LED地絡検出信号DET1、プロテクトバス信号PBUS、強制オフ信号OFF、及び、出力電流IOUTが描写されている。
【0067】
LED地絡が発生していない時刻t21以前には、出力電圧VOUT(=VF1)がモニタ電圧VMONよりも高く、ダイオード55が逆バイアス状態となるので、定電流源54から出力される定電流は、抵抗53を介して接地端に流し込まれる。その結果、コンパレータ51の反転入力端(−)に入力されるモニタ電圧VMONは、定電流値I54と抵抗値R53との積算値(=I54×R53)となる。なお、定電流値I54と抵抗値R53は、LED地絡未発生時のモニタ電圧VMON(=I54×R53)が閾値電圧VTH1’よりも高い電圧値となるように調整されているため、LED地絡検出信号DET1はローレベル(異常未検出時の論理レベル)となる。
【0068】
時刻t21において、外部端子T7に外部接続される発光ダイオード列LED1が地絡状態(スイッチSWx:オン)となった場合、出力電圧VOUTが接地電圧GNDまで低下することに伴い、ダイオード55が順バイアス状態となるので、定電流源54から出力される定電流は、LED地絡経路(スイッチSWx)を介して接地端に流し込まれる。その結果、モニタ電圧VMONは、接地電圧GNDよりもダイオード55の順方向降下電圧V55だけ高い電圧値(=GND+V55)となる。
【0069】
ここで、閾値電圧VTH1’は、LED地絡発生時のモニタ電圧VMON(=GND+V55)よりも高い電圧値に調整されており、モニタ電圧VMONが閾値電圧VTH1’を下回ることによって、LED地絡検出信号DET1がハイレベルとなり、LED地絡の検出が行われる。LED地絡の検出中は、第1構成例と同様にして、強制オフ信号OFFがハイレベルとされ、出力電流IOUTが強制オフされる。このような保護動作により、本IC1の熱破壊を防止することが可能となる。また、LED地絡の検出中は、プロテクトバス信号PBUSがローレベルとされ、本IC1の外部に異常が報知される。
【0070】
その後、時刻t22において発光ダイオード列LEDの地絡状態が解消された場合(スイッチSWx:オフ)、定電流源54から出力される定電流は、発光ダイオード列LED1を介して接地端に流し込まれ、発光ダイオード列LED1に順方向降下電圧VFが発生される。その結果、コンパレータ51の反転入力端(−)に入力されるモニタ電圧VMONは、発光ダイオード列LED1の順方向降下電圧VFよりもダイオード55の順方向降下電圧V55だけ高い電圧値(=VF+V55)となる。そして、時刻t23において、モニタ電圧VMONがが閾値電圧VTH1’を上回ると、LED地絡検出信号DET1がローレベル(異常未検出時の論理レベル)に立ち下げられ、出力電流IOUTがオン状態に自動復帰される。
【0071】
上記したように、第2構成例のLED地絡検出部50は、LED地絡解消時に発光ダイオード列LED1へ微小な定電流I54を流し込んで順方向降下電圧VF1を発生させる地絡復帰回路(抵抗53、定電流源54、及び、ダイオード55)を含んでいる。このような構成を採用すれば、IC外部からの復帰信号を待つことなく、LED地絡解消時に自動で出力電流IOUTの供給動作を再開することが可能となる。
【0072】
<LEDオープン検出部>
図14は、LEDオープン検出部60の第1構成例を示す回路図である。第1構成例のLEDオープン検出部60は、コンパレータ61と、抵抗62と、定電流源63を含む。コンパレータ61の非反転入力端(+)は、外部端子T7(出力電圧VOUTの印加端)に接続されている。コンパレータ61の反転入力端(−)は、抵抗62を介して入力電圧VINの印加端に接続される一方、定電流源63を介して接地端にも接続されている。コンパレータ61の出力端は、LEDオープン検出信号DET2の出力端として、PBUS制御部70に接続されている。なお、抵抗62と定電流源63との接続ノードからは、閾値電圧VTH2(=VIN−α)が引き出される。
【0073】
外部端子T7に外部接続される発光ダイオード列LED1がオープン状態となった場合は、出力電圧VOUTが過電圧状態となり、閾値電圧VTH2を上回ることによって、LEDオープン検出信号DET2がハイレベルとなり、LEDオープンの検出が行われる。なお、LEDオープンの検出中は、プロテクトバス信号PBUSがローレベルとされ、本IC1の外部に異常が報知されるが、LED地絡検出時と異なり、出力トランジスタ10の強制オフは行われない。これは、外部端子T7に入力電圧VINを印加し続けて、LEDオープンの検出状態を維持するためである。
【0074】
ただし、第1構成例のLEDオープン検出部60では、減電時(入力電圧VINの低下時)に閾値電圧VTH2が意図した電圧値よりも低下した場合に、LEDオープンの誤検出を生じるおそれがある。
【0075】
図15は、第1構成例のLEDオープン検出部60で生じ得るLEDオープンの誤検出動作を示すタイムチャートであり、上から順に、入力電圧VIN、閾値電圧VTH2、発光ダイオード列LED1〜LED3の順方向降下電圧VF1〜VF3(ただし、VF1>VF2>VF3とする)、プロテクトバス信号PBUS、及び、発光ダイオード列LED1〜LED3に流れる電流IF1〜IF3が描写されている。すなわち、図15では、3個の本IC1−1〜1−3を使用して、3系統の発光ダイオード列LED1〜LED3を駆動する際の様子が描写されている。
【0076】
時刻t31において入力電圧VINが低下し始めると、これに伴って閾値電圧VTH2も低下し始める。そして、時刻t32において閾値電圧VTH2が発光ダイオード列LED1の順方向降下電圧VF1を下回ると、LEDオープン検出信号DET2が意図せずにハイレベルとなり、LEDオープンの誤検出が生じる。このような誤検出が生じた場合には、先述のプロテクトバス機能により、LEDオープンの誤検出を生じた発光ダイオード列LED1のみが点灯を続けて、他系列の発光ダイオード列LED2及びLED3をオフするように動作してしまう。例えば、発光ダイオード列LED1〜LED3によって、車両のテールランプを形成している場合、テールランプの一部のみが点灯し続けて、残りの部分が消灯した状態となる。このような状態は、車両の安全面を鑑みれば好ましい状態とは言えず、何らかの対策を施す必要がある。
【0077】
図16は、LEDオープン検出部60の第2構成例を示す回路図である。第2構成例のLEDオープン検出部60は、図14の構成要素に加えて、さらに、オペアンプ64と、抵抗65とを含む。コンパレータ61の非反転入力端(+)は、外部端子T7(出力電圧VOUTの印加端)に接続されている。コンパレータ61の反転入力端(−)は、抵抗62を介して入力電圧VINの印加端に接続される一方、抵抗65と定電流源63を介して接地端にも接続されている。コンパレータ61の出力端は、LEDオープン検出信号DET2の出力端として、PBUS制御部70に接続されている。オペアンプ64の非反転入力端(+)は、外部端子T7に接続されている。オペアンプ64の反転入力端(−)は、抵抗65と定電流源63との接続ノードに接続されている。オペアンプ64の出力端は、電流制限信号ICLAMP(=出力電圧VOUTとクランプ電圧VCLAMPとの差分を増幅して得られる電圧信号)の出力端として、電流制御部40に接続されている。なお、抵抗62と抵抗65との接続ノードからは、閾値電圧VTH2(=VIN−α)が引き出され、抵抗65と定電流源63との接続ノードからはクランプ電圧VCLAMP(=VIN−α−β)が引き出される。
【0078】
図17は、第2構成例のLEDオープン検出部60によって実現されるLEDオープンの誤検出回避動作を示すタイムチャートであり、上から順に、入力電圧VIN、閾値電圧VTH2、クランプ電圧VCLAMP、発光ダイオード列LED1〜LED3の順方向降下電圧VF1〜VF3(ただし、VF1>VF2>VF3とする)、プロテクトバス信号PBUS、及び、発光ダイオード列LED1〜LED3に流れる電流IF1〜IF3が描写されている。すなわち、図17では、先出の図15と同じく、3個の本IC1−1〜1−3を使用して、3系統の発光ダイオード列LED1〜LED3を駆動する際の様子が描写されている。
【0079】
時刻t41において入力電圧VINが低下し始めると、これに伴って閾値電圧VTH2とクランプ電圧VCLAMPも低下し始める。そして、時刻t42においてクランプ電圧VCLAMPが発光ダイオード列LED1の順方向降下電圧VF1を下回ると、電流制御部40は、電流制限信号ICLAMPに応じて、出力電流IOUTを減少させるように、出力トランジスタ10の駆動制御を行う。その結果、発光ダイオード列LED1に流れる電流IFの減少によって、その順方向降下電圧VF1が低下していく。従って、VF1≦VCLAMPという関係を維持することが可能となり、延いては、VF1≦VTH2という関係を維持して、LEDオープンの誤検出を回避することが可能となる。
【0080】
その後も入力電圧VINの低下が続くと、時刻t43及びt44以降、順方向降下電圧VF2及びVF3もそれぞれクランプ電圧VCLAMPに制限される形となり、全系統の発光ダイオード列LED1〜LED3が一律的に暗くなっていく。例えば、発光ダイオード列LED1〜LED3によって、車両のテールランプを形成している場合、テールランプ全体が徐々に暗くなっていく状態となる。このような状態は、テールランプの一部のみが点灯する状態に比べれば、車両の安全面を鑑みて好ましい状態であると言える。
【0081】
上記したように、第2構成例のLEDオープン検出部60は、発光ダイオード列LED1が外部接続される外部端子T7に現れる出力電圧VOUTと所定の閾値電圧VTH2とを比較してLEDオープン検出信号DET2を生成するコンパレータ61と、出力電圧VOUTとクランプ電圧VCLAMPとの差分を増幅して電流制限信号ICLAMPを生成するオペアンプ64と、を含み、電流制御部40は、電流制限信号ICLAMPに基づいて出力電圧VOUTがクランプ電圧CLAMPを上回らないように発光ダイオード列LED1への出力電流IOUTを制御する構成とされている。このような構成を採用することにより、LEDオープンの誤検出を回避することが可能となる。
【0082】
なお、上記した出力飽和時の電流制御では、出力電流IOUTを所定の最小値IMINまで引き下げることができるが、その後も入力電圧VINの低下が続いた場合、時刻t45において、発光ダイオード列LED1〜LED3の順方向降下電圧VF1〜VF3が閾値電圧VTH2を上回る状態となる。このような状態をLEDオープンと誤検出しないためには、入力電圧VINが所定のマスク電圧VMASKよりも低い状態において、LEDオープン検出を無視するしておけばよい。
【0083】
<その他の変形例>
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、車両用LED駆動装置の安全性や信頼性を高めるための技術として有用に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1、1−1〜1−3 車両用LEDドライバIC
10 出力トランジスタ(Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ)
20 基準電圧生成部
30 H/Lモード設定部
31〜33 抵抗
34 npn型バイポーラトランジスタ
35 インバータ
40 電流制御部
41 Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ
42 セレクタ
50 LED地絡検出部
51 コンパレータ
52 直流電圧源
53 抵抗
54 定電流源
55 ダイオード
60 LEDオープン検出部
61 コンパレータ
62 抵抗
63 定電流源
64 オペアンプ
65 抵抗
70 プロテクトバス制御部(PBUS制御部)
71〜73 抵抗
74 npn型バイポーラトランジスタ
75 ダイオード
76 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
77 論理和演算器
80 電流設定部
81、82 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
83、84 オペアンプ
85、86 定電流源
87、88 抵抗
90 バイアス部
91、92 Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ
93、94 オペアンプ
E1 バッテリ
SW1、SW2 スイッチ
D1〜D3 ダイオード
ZD1 ツェナダイオード
C1 コンデンサ
R1 プルアップ抵抗
RL、RH 電流設定抵抗
LED1〜LED3 発光ダイオード列
T1〜T7 外部端子
NTC 負特性サーミスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部接続される複数の電流設定抵抗毎に複数の基準電流を各々独立して設定する電流設定部と、
外部入力される制御信号に基づいて前記複数の基準電流のいずれか一つを選択する電流制御部と、
前記電流制御部で選択された基準電流に基づいて外部接続される車両用LEDへの出力電流を制御する出力トランジスタと、
を有することを特徴とする車両用LED駆動装置。
【請求項2】
異常の検出有無に応じたプロテクトバス信号の生成及びその外部入出力を行うプロテクトバス制御部をさらに有し、
前記電流制御部は、前記プロテクトバス信号に基づいて前記車両用LEDへの電流供給可否を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用LED駆動装置。
【請求項3】
前記車両用LEDの地絡を検出するLED地絡検出部をさらに有し、
前記電流制御部は、前記車両用LEDの地絡時に前記出力電流の供給を強制オフさせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用LED駆動装置。
【請求項4】
前記LED地絡検出部は、
前記車両用LEDの順方向降下電圧またはこれに応じたモニタ電圧と第1閾値電圧とを比較してLED地絡検出信号を生成する第1コンパレータと、
前記車両用LEDの地絡解消時に前記車両用LEDへ電流を流し込んで順方向降下電圧を発生させる地絡復帰回路と、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の車両用LED駆動装置。
【請求項5】
前記車両用LEDのオープンを検出するLEDオープン検出部をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車両用LED駆動装置。
【請求項6】
前記LEDオープン検出部は、
前記車両用LEDが外部接続される外部端子の端子電圧と第2閾値電圧とを比較してLEDオープン検出信号を生成する第2コンパレータと、
前記端子電圧と前記第2閾値電圧よりも低いクランプ電圧との差分を増幅して電流制限信号を生成するアンプと、
を含み、
前記電流制御部は、前記電流制限信号に基づいて前記端子電圧が前記クランプ電圧を上回らないように前記車両用LEDへの出力電流を制御することを特徴とする請求項5に記載の車両用LED駆動装置。
【請求項7】
前記電流設定部は、前記複数の電流設定抵抗にそれぞれ定電圧を印加することにより、前記複数の基準電流を生成することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の車両用LED駆動装置。
【請求項8】
前記電流設定部は、前記複数の電流設定抵抗にそれぞれ定電流を流すことにより、複数の電流設定電圧を生成し、さらに、複数の内部抵抗にそれぞれ前記複数の電流設定電圧を印加することにより、前記複数の基準電流を生成することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の車両用LED駆動装置。
【請求項9】
前記複数の電流設定抵抗には、それぞれ負特性サーミスタが並列に接続されることを特徴とする請求項8に記載の車両用LED駆動装置。
【請求項10】
前記電流制御部は、
前記出力トランジスタと共にカレントミラーを形成し、自身に入力される前記基準電流に応じて前記出力トランジスタにミラー電流を発生させる入力トランジスタを含むことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の車両用LED駆動装置。
【請求項11】
前記入力トランジスタと前記出力トランジスタのソース・ドレイン間電圧を一致させるバイアス部をさらに有することを特徴とする請求項10に記載の車両用LED駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−71712(P2012−71712A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218618(P2010−218618)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】