Mgベースの水素吸蔵材料における触媒水素脱着およびその材料の製造方法
マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金、該マグネシウムベースの水素吸蔵合金に不溶であり、1)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金のバルク中の触媒性物質の独立した分散領域、2)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粒子表面上の独立した分散領域、3)バルクもしくは粒子状形態にある該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金表面上の触媒性物質の連続もしくは半連続層、または4)それらの組み合わせ、の形態にある水素脱離触媒を含むマグネシウムベースの水素吸蔵材料。この材料の製造方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、水素吸蔵材料に関し、より具体的には、マグネシウムベースの水素吸蔵材料であって、水素脱着が該マグネシウムベースの水素吸蔵材料に不溶である物質によって触媒される水素吸蔵材料に関する。この不溶性触媒性物質は、1)水素吸蔵材料バルク中の触媒性物質の独立した分散領域、2)水素吸蔵材料の粒子表面上の独立した分散領域、3)バルクもしくは粒子状の水素吸蔵材料表面上の触媒性物質の連続もしくは半連続層、または4)それらの組み合わせの形態であり得る。
【背景技術】
【0002】
増大するエネルギー需要が、伝統的なエネルギー源、例えば、石炭、石油もしくは天然ガスが無尽蔵では無いこと、または少なくともそれらがますます高価になり続けるようになり、それらを水素で置き換えることを考慮することが賢明であることを認識するようにその道の専門家たちに促している。
【0003】
水素は、例えば、炭化水素の代わりに内燃機関の燃料として用いることができる。この場合、炭化水素が燃焼する際の炭素、窒素および硫黄の酸化物の形成による大気汚染が無いという利点がある。水素は、電気モーターに必要な電気を生成するための水素−空気燃料電池に燃焼するのに用いることもできる。
【0004】
水素の使用が提起する問題の1つはその貯蔵および輸送である。多くの解決法が提示されている。
【0005】
水素は高圧下で鋼製円筒に貯蔵することができるが、この方法は(貯蔵容量が約1重量%と低いことに加えて)扱いが難しい危険で重い容器を必要とするという欠点を有する。水素は極低温貯蔵容器に貯蔵することもできるが、これは極低温の液体の使用に関連する不利益、例えば、慎重な取り扱いをも必要とする高価な容器、を伴う。毎日約2−5%の「沸騰漏出(boil off)」損失も存在する。
【0006】
水素を貯蔵する別の方法はそれを水素化物の形態で貯蔵するものであり、貯蔵後、適正な時期に分解して水素を供給する。フランス特許第1,529,371号に記載されるように、鉄−チタン、ランタン−ニッケル、バナジウム、およびマグネシウムの水素化物がこの目的で用いられている。
【0007】
水素を安全で小型の固体状態の金属水素化物形態で貯蔵できるというこの最初の発見以来、研究者らは最適な特性を有する水素貯蔵材料を製造しようと努力してきている。一般には、これらの研究者が達成しようと試みている理想的な材料の特性は、1)大きい水素貯蔵容量、2)軽量材料、3)適切な水素吸収/脱離温度、4)適切な吸収/脱離圧、5)高速の吸収反応速度、および6)長期の吸収/脱離サイクル寿命である。これらの材料特性に加えて、理想的な材料は安価であり、製造が容易である。
【0008】
MgH2−Mg系が、水素貯蔵の理論的容量の最も高い重量パーセント(7.65重量%)を有し、したがって、貯蔵材料の単位重量あたり最も高い理論的エネルギー密度(2332Wh/kg;Reilly & Sandrock, Spektrum der Wissenschaft, Apr. 1980, 53)を有するため、可逆的水素貯蔵系として用いることができるすべての公知の金属水素化物および金属系のうちで最も適切なものである。
【0009】
この特性およびマグネシウムの比較的低い価格がMgH2−Mg系を輸送に最適の水素貯蔵系のように考えらるが、水素動力源自動車については、その反応速度が不満足なために現時点までそれが用いられることを妨げている。例えば、純粋なマグネシウムはおそらくは400℃という極端な温度条件下でのみ、および非常にゆっくりと不完全にのみ、水素化することができることが公知である。生じる水素化物の脱水素化速度も水素貯蔵材料としては不適当なものである(Genossar & Rudman, Z. f. Phys. Chem., Neue Folge 116, 215 [1979]、およびそこで引用される文献)。
【0010】
さらに、マグネシウム貯蔵材料の水素貯蔵容量は、充填/放出サイクルの間に減衰する。この現象は、充電中に材料内部に位置するマグネシウム原子を水素に接近できないようにする表面汚染が進行するということによって説明することができる。
【0011】
従来のマグネシウムまたはマグネシウム/ニッケル貯蔵材料系において水素を放出させるには250℃以上の温度が必要であり、これには同時にエネルギーの大量供給が伴う。水素を放出するのに必要な高い温度レベルおよび高エネルギーは、例えば、内燃機関を有する乗り物をこれらの合金のみで運転することができないという結果をもたらす。これは、排気ガスに含まれるエネルギーが、最も都合の良い場合(満載)においても、マグネシウムまたはマグネシウム/ニッケル合金からの内燃機関の水素必要量の50%を満たすのに十分なものに過ぎないために生じる。したがって、残りの水素要求量は他の水化物合金から得なければならない。例えば、この合金は、0℃未満の温度で稼働可能であるチタン/鉄水素化物(典型的な低温水素化物貯蔵)であり得る。これらの低温水素化物合金は水素貯蔵容量が小さいという欠点を有する。
【0012】
比較的大きな貯蔵容量を有するが、それでもやはり水素の放出が約250℃までの温度である貯蔵材料が過去に開発されている。米国特許第4,160,014号は、式Ti[1−x]Zr[x]Mn[2−y−z]Cr[y]V[z](式中、x=0.05乃至0.4、y=0乃至1およびz=0乃至0.4)の水素吸蔵材料を記載している。約2重量%までの水素をそのような合金に吸蔵することができる。この比較的小さい貯蔵容量に加えて、これらの合金は、金属バナジウムが用いられる場合には合金の価格が非常に高価であるという不利な点も有する。
【0013】
さらに、米国特許第4,111,689号は、31ないし46重量%のチタン、5ないし33重量%のバナジウムおよび36ないし53重量%の鉄および/またはマンガンを含有する吸蔵合金を開示している。このタイプの合金は、引用によりここに組み込まれる米国特許第4,160,014号による合金よりも大きい水素貯蔵容量を有するが、それらは水素を完全に放出するために少なくとも250℃の温度が必要であるという欠点を有する。約100℃までの温度では、最良の場合で、放出できるのは水素含有量の約80%である。しかしながら、水素化物貯蔵から水素を放出するのに必要とされる熱はしばしば低温レベルでのみ利用可能であるため、特に低温での、高い放出能力が産業において頻繁に必要とされる。
【0014】
他の金属または金属合金特にはチタンもしくはランタンを含むものとは対照的に、マグネシウムを含有する金属合金は、その低い材料経費だけではなく、特にその吸蔵材料としてその低い比重のため、水素の吸蔵に好ましい。しかしながら、
Mg+H2 → MgH2
という水素化はマグネシウムでは達成がより困難である。それは一般には、マグネシウムの表面が空気中で急速に酸化して安定なMgOおよび/またはMg(OH)2表面層を形成するからである。これらの層は、水素分子の解離の他、生成される水素原子の吸収および粒子表面からマグネシウム貯蔵材料の体積内への水素原子の拡散を阻害する。
【0015】
マグネシウムの水素化能力を、アルミニウム(Douglass, Metall. Trans. 6a, 2179 [1975])、インジウム(Mintz, Gavra, & Hadari, J. Inorg. Nucl. Chem. 40, 765 [1978])、もしくは鉄(Welter & Rudman, Scripta Metallurgica 16, 285 [1982])のような個々の外来金属、或いは様々な外来金属(German Offenlegungsschriften 2 846 672 および 2 846 673)、またはMg2NiもしくはMg2Cu(Wiswall, Top Appl. Phys. 29, 201 [1978] および Genossar & Rudman, op. cit)およびLaNi5(Tanguy et al., Mater. Res. Bull. 11, 1441 [1976])のような金属間化合物をドープするか、またはそれらと合金化することによって改善しようとする集中的な努力が近年なされてきた。
【0016】
これらの試みはそれらの反応速度を幾らかは改善したものの、その結果として作られたものから本質的な欠点のいくつかは未だに取り除かれてはいない。外来金属または金属間化合物でドープされたマグネシウムの初期水素化は依然として厳しい反応条件を要求され、多くの水素化および脱水素化のサイクルの後にのみ系の反応速度が満足のいくものとなって可逆的水素の含有量が高くなる。反応速度を改善するには相当なパーセンテージの外来金属または高価な金属間化合物も必要である。さらに、そのような系の貯蔵容量は、一般には、MgH2の場合に理論的に期待されるものを遙かに下回る。
【0017】
マグネシウムおよびマグネシウム合金の貯蔵特性が、安定なマグネシウムの酸化物を破壊する助けとなり得る物質の添加によっても強化できることが公知である。例えば、そのような合金はMg2Niであり、Niが不安定な酸化物を形成するようである。この合金においては、表面反応Mg2Ni+O2 → 2MgO+Niにより水素解離−吸収反応を触媒するニッケル金属の包含物にも拡張して適用されることを熱力学的考察が示した。A. Seller et al., Journal of Less−Common Metals 73, 1980, pages 193以下を参照することができる。
【0018】
マグネシウム表面上での水素解離−吸収反応の触媒の可能性の1つは、一方の相が水素化物形成剤であり、他方の相が触媒である二相合金の形成にもある。このように、ニッケルメッキされたマグネシウムを水素吸蔵体として用いることは公知である。F. G. Eisenberg et al. Journal of Less−Common Metals 74, 1980, pages 323以降を参照のこと。しかしながら、マグネシウム表面全体にニッケルを付着および分散させる間に遭遇する問題が存在する。
【0019】
非常に高密度かつ良好な付着触媒層を平衡相の形成のみのにより得るため、水素化物形成相としてのマグネシウムとマグネシウム銅(Mg2Cu)との共晶混合物を水素吸蔵のために用いることができることも公知である。J. Genossar et al., Zeitschrift fur Physikalische Chemie Neue Folge 116, 1979, pages 215以降を参照のこと。しかしながら、このマグネシウム含有粒子によって達成される材料の単位体積あたりの貯蔵容量は、共晶混合物に必要であるマグネシウム銅の量のため、高い需要には答えられない。
【0020】
この当時の科学者らは様々な材料を調べ、特定の結晶構造が水素吸蔵に必要であるものと仮定した。例えば、“Hydrogen Storage in Metal Hydride”, Scientific American, Vol. 242, No. 2, pp. 118−129, February, 1980を参照のこと。異なる種類の材料、即ち無秩序化水素吸蔵材料を利用することによって先行技術の材料の欠点の多くを克服できることが見出された。例えば、Guenter Winstelの「水素のための吸蔵材料(Storage Materials for Hydrogen)」についての米国特許第4,265,720号は、非晶質または微結晶ケイ素の水素吸蔵体を記載している。ケイ素は、好ましくは、適切な触媒と組み合わされ、かつ基体上の簿膜である。
【0021】
Matsumotoらの名での特開昭55−167401号、「水素吸蔵材料(Hydrogen Storage Material)」は、少なくとも50体積パーセントが非晶質構造の2成分もしくは3成分水素吸蔵材料を開示している。第1成分はCa、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Yおよびランタニドの群から選択され、第2成分はAl、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、MnおよびSiの群から選択される。B、C、PおよびGeの群からの第3成分は場合により存在し得る。特開昭55−167401号の教示によると、非晶質構造はほとんどの結晶系の不利な高脱離温度特性の問題を克服するのに必要である。高い脱離温度(例えば、150℃以上)はその系で可能な用途範囲を厳しく制限する。
【0022】
Matsumotoらによると、少なくとも50%が非晶質の材料は、個々の原子の結合エネルギーが結晶性材料の場合と違って均一ではなく、それが広範囲に分布するため、少なくとも幾らかの水素を比較的低温で脱離することが可能である。
【0023】
Matsumotoらは少なくとも50%が非晶質構造の材料をクレームとしている。Matsumotoらは「非晶質」という用語の意味に関して別にこれ以上教示をしていないが、その用語の科学的に認められている定義は約20オングストロームが上限でそれ以下の範囲にわたる短距離秩序を意味する。
【0024】
Matsumotoらのヒステリシス曲線が平坦でないことを利用するより良好な脱離反応速度の達成するための非晶質構造材料の使用は不十分かつ部分的な解決である。結晶性水素吸蔵材料において見出される他の問題、特に、中程度の温度での有用な水素貯蔵容量の少なさが問題として残る。
【0025】
しかしながら、さらにより良好な水素貯蔵の結果、すなわち、長いサイクル寿命、良好な機械的強度、低い吸収/脱離温度および圧力、可逆性、および化学的汚染に対する耐性は、無秩序化された準安定の水素吸蔵材料を変性することによるすべての利点が採用されるならば、実現することができる。無秩序化された構造的に準安定の水素吸蔵材料の変性は、Stanford R. Ovshinsky らの「水素吸蔵材料およびその製造方法(Hydrogen Storage Materials and Method of Making the Same)」についての米国特許第4,431,561号に記載されている。そこに記載されるように、化学的に変性され、熱力学的に準安定の構造を特徴とする無秩序化された水素吸蔵材料は、広範囲の商業的用途に望ましいすべての水素吸蔵特性を持つように設計することができる。変性した水素吸蔵材料は、単一相結晶性ホスト材料よりも大きな水素貯蔵容量を有するように設計製造することができる。水素とこれらの変性した材料内の貯蔵部位との間の化学結合の強さは、広い範囲の可能な結合力の分布をもたらし、それにより望ましい吸収および脱離特性が得られるように設計することができる。化学的に変性され、熱力学的に準安定な構造を有する無秩序化された水素吸蔵材料は、水素吸蔵反応速度の改善と汚染に対する耐性の増加をもたらす触媒的に活性の部位の密度も大幅に増加している。
【0026】
選択されたホストマトリックスに組み込まれている選択された変性剤の相乗的な組み合わせは、水素吸蔵を容易にする化学的、物理的、および電子構造および形態を安定化する構造および化学変性の量と質とを共に達成する。
【0027】
変性された水素吸蔵材料の骨組みは軽量なホスト・マトリックスである。ホスト・マトリックスは選択された変性剤成分で構造的に変性され、必要な水素吸蔵特性をもたらす局所的な化学的環境を持つ無秩序化材料を提供する。
【0028】
Ovshinskyらによって述べられたホスト・マトリックスの別の利点は、変性剤をその成分の割合を殆ど連続的な範囲で変化させて用いて変性できることである。この能力は、ホストマトリックスを変性剤によって操作し、特定の用途に適する特性を有する水素吸蔵材料を要求に沿って設計するか、または加工することを可能にする。これは、一般に利用可能な化学量論的範囲が非常に制限されている多成分単一相ホスト結晶性材料とは対照的である。したがって、そのような結晶性材料の熱力学的特性および反応速度の化学的および構造的変性を連続的な範囲で制御することは不可能である。
【0029】
これらの無秩序化された水素吸蔵材料のさらなる利点は、それらが汚染に対してさらにより耐性であることである。前述のように、これらの材料はより高い密度の触媒活性部位を有する。したがって、そのような部位の幾つかを汚染種の効果の犠牲としても、一方で多数の非汚染活性部位は依然として望ましい水素吸蔵反応速度をもたらし続けることができる。
【0030】
これらの無秩序化材料の別の利点は、それらを単一相結晶性材料よりも機械的に柔軟になるように設計できることである。したがって、無秩序化材料は膨張および収縮の際により大きく歪ませることが可能であり、これは吸収および脱離サイクルの際のより高い機械的安定性を可能にする。
【0031】
これらの無秩序化材料の欠点の1つは、従来、Mgベースの合金の幾つかが製造困難であったことである。特に、溶融状態で共溶液を形成しない材料。その上、最も有望な材料(すなわち、マグネシウムベースの材料)はバルク形態で製造することが極度に困難であった。すなわち、薄膜スパッタリング技術によりこれらの無秩序化合金を少量製造することはできるが、バルク調製技術は存在していなかった。
【0032】
1980年代の中頃、2つのグループがバルク無秩序化マグネシウム合金の水素吸蔵材料を製造する機械的合金化技術を開発した。機械的合金化は、特に安定な金属間相が存在しないとき、非常に異なる蒸気圧および融点を有する成分(例えば、MgとFeもしくはTi等)の合金化を可能にすることが見出された。誘導溶融のような従来の技術はそのような目的には不適当であることが見出されている。
【0033】
2つのグループのうちの第1は、Mg−Ni系の材料の機械的合金化およびそれらの水素吸蔵特性を研究するフランス人科学者のチームであった。Senegas, et al., “Phase Characterization and Hydrogen Diffusion Study in the Mg−Ni−H System”, Journal of the Less−Common Metals, Vol. 129, 1987, pp. 317−326(0、10、25および55wt%のNiを組み込むMgおよびNiの二元機械的合金)、および、また、Song, et al. “Hydriding and Dehydriding Characteristics of Mechanically Alloyed Mixtures Mg − x wt % Ni (x=5, 10, 25 and 55)”, Journal of the Less−Common Metals, Vol. 131, 1987, pp.71−79(5、10、25および55wt%のNiを組み込むMgおよびNiの二元機械的合金)を参照のこと。
【0034】
2つのグループのうちの第2は、マグネシウムおよび他の金属の二元機械的合金の水素吸蔵特性を研究したロシア人科学者のチームであった。Ivanov, et al., “Mechanical Alloys of Magnesium−New Materials For Hydrogen Energy” , Doklady Physical Chemistry (English Translation) vol. 286: 1−3, 1986, pp. 55−57(MgとNi、Ce、Nb、Ti、Fe、Co、SiおよびQとの二元機械的合金)、また、Ivanov, et al. “Magnesium Mechanical Alloys for Hydrogen Storage” , Journal of the Less−Common Metals, vol. 131 , 1987, pp. 25−29(MgとNi、Fe、Co、NbおよびTiとの二元機械的合金)、およびStepanov, et al., “Hydriding Properties of Mechanical Alloys of Mg−Ni” , Journal of the Less−Common Metals, vol. 131, 1987, pp. 89−97(Mg−Ni系の二元機械的合金)を参照のこと。これらのフランスおよびロシアのグループの間の共同研究、Konstanchuk, et al., “ The Hydriding Properties of a Mechanical Alloy With Composition Mg−25% Fe”, Journal of the Less−Common Metals, vol. 131, 1987, pp. 181−189(Mgと25wt%Feの二元機械的合金)も参照のこと。
【0035】
後に、1980年代後期および1990年代早期に、ブルガリアの科学者グループが(時には、ロシアの科学者グループと共同で)マグネシウムと金属酸化物との機械的合金の水素吸蔵特性を研究した。Khrussanova, et al., “Hydriding Kinetics of Mixtures Containing Some 3d−Transition Metal Oxides and Magnesium”, Zeitschrift fur Physikalische Chemie Neue Folge, Munchen, vol. 164, 1989, pp. 1261− 1266(MgとTiO2、V2O5、およびCr2O3との二元混合物および機械的合金の比較)、およびPeshev, et al., “Surface Composition of Mg−−TiO2 Mixtures for Hydrogen Storage, Prepared by Different Methods”, Materials Research Bulletin, vol. 24, 1989, pp. 207−212(MgとTiO2の従来の混合物および機械的合金の比較)を参照のこと。Khrussanova, et al., “On the Hydriding of a Mechanically Alloyed Mg(90%)−V2O5 (10%) Mixture”, International Journal of Hydrogen Energy, vol. 15, No. 11, 1990, pp. 799−805(MgとV2O5の二元機械的合金の水素吸蔵特性の研究)、およびKhrussanova, et al., “Hydriding of Mechanically Alloyed Mixtures of Magnesium With MnO2, Fe2O3, and NiO”, Materials Research Bulletin, vol. 26, 1991, pp. 561−567(MgとMnO2、Fe2O3、およびNiOとの二元機械的合金の水素吸蔵特性の研究)も参照のこと。最後に、Khrussanova, et al., “The Effect of the d−Electron Concentration on the Absorption Capacity of Some Systems for Hydrogen Storage”, Materials Research Bulletin, vol. 26, 1991, pp. 1291−1298(Mgと3−d金属酸化物の機械的合金を含む、材料の水素吸蔵特性に対する高密度d電子効果の研究)、およびMitov, et al., “A Mossbauer Study of a Hydrided Mechanically Alloyed Mixture of Magnesium and Iron(III) Oxide”, Materials Research Bulletin, vol. 27, 1992, pp. 905−910(MgとFe2O3の二元機械的合金の水素吸蔵特性の研究)も参照のこと。
【0036】
より近年、中国人科学者のグループがMgと他の金属との幾つかの機械的合金の水素吸蔵特性を研究している。Yang, et al., “The Thermal Stability of Amorphous Hydride Mg50Ni50H54 and Mg30Ni70H45”, Zeitschrift fur Physikalische Chemie, Munchen, vol. 183, 1994, pp. 141−147(機械的合金Mg50Ni50およびMg30Ni70の水素吸蔵特性の研究)、また、Lei, et al., “Electrochemical Behavior of Some Mechanically Alloyed Mg−Ni−based Amorphous Hydrogen Storage Alloys”, Zeitschrift fur Physikalische Chemie, Munchen, vol. 183, 1994, pp. 379−384(Mg−NiとCo、Si、Al、Co−Siとの幾つかの機械的合金の電気化学的[すなわち、Ni−MH電池]特性の研究)を参照のこと。
【0037】
短距離秩序、すなわち局所的秩序は、組成的に変化する材料および該材料の合成方法(Compositionally Varied Materials and Method for Synthesizing the Materials)と題するOvshinskyの米国特許第4,520,039号において詳述されており、その内容は引用により組み込まれる。この特許は、無秩序化材料がいかなる周期的な局所秩序をも必要とせず、局所的配置をより高い精度と制御により、類似の、もしくは異なる原子もしくは原子群の空間的および方向的配置が可能になり、その結果、新規現象を定量的に生成することが可能であることを開示した。加えて、この特許は、用いられる原子を「d帯」原子または「f帯」原子に制限する必要はなく、材料の物理的特性に、したがって、材料の機能に影響を及ぼすように、人工的に設計された局所的環境との相互作用の様相および/または電子軌道重複が物理的、電子的、または化学的に重要な役割を果たす如何なる原子でもあり得ることを論じている。これらの材料の成分は、d電子軌道の多方向性のため、様々な結合可能性を提供する。d電子軌道の多方向性(「ポーキュパイン効果」)は、密度の、したがって、活性部位の著しい増加をもたらす。これらの技術は、同時に幾つかの異なる形で無秩序である新規材料を合成する手段を与える。
【0038】
Ovshinskyは、そのバルクが望ましい比較的純粋な材料に似ている非晶質膜を作製することにより、表面部位の数を大幅に増加できることを以前に示した。Ovshinskyは、また、複数の成分を用いて、必要とされる電気化学的特徴を材料が達成することを可能にする化学結合の増加および局所環境秩序を得た。Principles and Applications of Amorphicity, Structural Change, and Optical Information Encoding, 42 Journal De Physique at C4−1096 (October 1981)においてOvshinskyが説明するように、
「非晶質性とは、長距離周期性を立証するX線回折像の欠如を指す一般用語であり、物質の十分な説明ではない。非晶質物質を理解するのに考慮すべき幾つかの重要な要素が存在する。すなわち、化学結合のタイプ、局所的秩序によって生成される結合の数、すなわち、その配位数、及び化学的および幾何学的な局所的環境全体が結果として生じた様々な配置に与える影響である。非晶質性は、原子を硬質の球として考えてそれを無作為に充填して作られるものでもなく、非晶質性固体は単に原子が無作為に埋め込まれている母体でもない。非晶質物質は、電子配置が自由エネルギーにより生ずる力によって生成される相互作用性マトリックスで構成されるものとして見られるべきであり、それらは構成原子の化学的性質および配位によって具体的に定義することができる。多電子軌道原子を成分としまた様々な調製技術を用いて、平衡状態に復帰させようとする正常の緩和現象の進行を阻害し、かつ、非晶質状態が三次元の自由度を持つため、まったく新たなタイプの非晶質物質−化学変性物質を作製することができる…。」
非晶質性が膜に表面部位を導入する手段としてひとたび理解されると、その結果のあらゆる種類、例えば、多孔性、位相幾何学的性質、結晶性、部位の特徴、および部位間の距離など、を考慮に入れた「無秩序」を生成することが可能になった。したがって、秩序付けられた結晶構造を持つ材料中に偶発的に生じる表面のボンドおよび表面の無秩序性が最大になるような材料変化を探索するよりも、OvshinskyおよびECDの彼のチームは「無秩序化」材料を構築し始め、そこで望ましい無秩序性を人工的に設計した。米国特許第4,623,597号(その開示は引用により本願に組み込まれる)を参照のこと。
【0039】
「無秩序化」という用語は、電気化学的電極材料を指すのにここで用いられる場合、文献において用いられる用語の意味、例えば、以下のものに相当する。
【0040】
無秩序化半導体は幾つかの構造状態で存在することができる。この構造要素は、[物質]...の物理特性を制御することができる新たな変数を構成する。さらに、構造的な無秩序は、熱力学的平衡の制限を遙かに超える新たな組成物および混合物を準安定状態で調製する可能性を開く。したがって、我々は以下の点をさらなる識別特徴として記す。多くの無秩序化[物質]...において、短距離秩序パラメータを制御し、それにより、成分に新たな配位数を強いること...を含めて、これらの材料の物理特性の劇的な変化を達成することが可能である。
【0041】
S. R. Ovshinsky, The Shape of Disorder, 32 Journal of Non−Crystalline Solids at 22 (1979)(強調を加えた)。
【0042】
これらの無秩序化材料の「短距離秩序」がOvshinskyによってThe Chemical Basis of Amorphicity: Structure and Function, 26:8−9 Rev. Roum. Phys. at 893−903 (1981)においてさらに説明されている。
【0043】
「短距離秩序は保存量ではない...。実際、結晶の対称性が破壊されるとき、同じ短距離秩序を保持することは不可能になる。その理由は、短距離秩序が電子軌道の力場によって制御され、したがって、対応する結晶および非晶質固体において環境が根本的に異なっていなければならないことである。換言すると、それは局所的化学結合とその物質の電気的、化学的、および物理的特性を決定するそれらの周囲環境との相互作用であり、これらが非晶質物質においてそれらが結晶性物質であるときと同じではあり得ない...。非晶質物質の三次元空間内には存在し得るが結晶性物質にはない電子軌道上の関係は新たな幾何学的考察の基礎であり、その多くは自然状態で本質的に反結晶性である。結合の歪み及び原子の位置ずれは単一成分物質において非晶質性が生じる妥当な理由であり得る。しかしながら、非晶質性を十分に理解するには、それが結晶格子の並進対称性と両立しない内部の位相幾何学的性質を生成するものであるため、非晶質状態において本質的な三次元の関係を理解しなければならない。非晶質状態において重要なことは、いかなる結晶性の対応物をも持たず、主として化学組成において類似であるものさえない無限の物質を作製することができるという事実である。これらの原子の空間的およびエネルギー的な関係は、それらの化学成分が同じであり得るとしても、非晶質および結晶形態においてはまったく異なるものであり得る...。」
上述の、無秩序化材料の諸原理に基づき、非常に効率的な電気化学的水素吸蔵陰極材料の3種類を配合した。これらの陰極材料の種類は、個別的にまた一括して、以下「オボニック(Ovonic)」と呼ぶ。第1種はLa−Ni5型陰極材料であり、これは、近年、無秩序化多成分合金、すなわち、「オボニック」になるように、希土類元素、例えば、Ce、Pr、Ndおよび他の金属、例えば、Mn、Al、およびCoの添加により著しく変性されている。第二種はTi−Ni型陰極材料であり、これは本願発明の譲受人によって導入および開発され、無秩序化された多成分合金、すなわち、「オボニック」になるように、遷移金属、例えば、Zr、Vおよび他の金属性変性剤成分、例えば、Mn、Cr、Al、Fe等の添加によって著しく変性されている。第3種は、米国特許第5,506,069号、第5,616,432号、および第5,554,456号(これらの開示は引用によりここに組み込まれる)に記載される無秩序化多成分MgNi型陰極材料である。
【0044】
Ovshinskyの‘597特許に表される諸原理に基づき、オボニックTi−V−Zr−Ni型活性材料がSapru、Fetcenkoらの米国特許第4,451,400号(‘400特許)(その開示は引用によりここに組み込まれる)に開示されている。このオボニック材料の第2種は、水素吸蔵のため、可逆的に水素化物を形成する。‘400特許において用いられるすべての材料はTi−V−Ni組成を用い、少なくともTi、V、およびNiを含み、それが少なくとも1種類又は1種類以上のCr、Zr、およびAlと共に存在する。‘400特許の材料は、一般には多相多結晶性材料であり、これらに限定されるものではないが、C 14 およびC15 .型結晶構造を有するTi−V−Zr−Ni材料の1つまたは1つ以上の相が含まれ得る。他のオボニックTi−V−Zr−Ni合金は、改良された電荷保持電気化学的水素吸蔵合金および改良された電荷保持電気化学的電池(Enhanced Charge Retention Electrochemical Hydrogen Storage Alloys and an Enhanced Charge Retention Electrochemical Cell)と題する、共通に譲渡されている米国特許第4,728,586号(‘586特許)(その開示は引用により組み込まれる)に記載されている。
【0045】
金属電解質界面の特徴的な表面の粗さは、共通に譲渡されている、Reichman、Venkatesan、Fetcenko、Jeffries、Stahl、およびBennetの米国特許第4,716,088号(その開示は引用により組み込まれる)に開示されるように、その材料の無秩序性の結果である。多くの合金およびそれらの相に加えて、すべての構成成分がその金属全体を通して存在するため、それらは表面および金属/電解質界面に形成されるクラックにも露出している。したがって、特徴的な表面の粗さは、アルカリ性環境におけるホスト材料と合金およびその合金の結晶相の物理的および化学的特性の相互作用の現れである。水素吸蔵合金材料内の個々の相の顕微鏡的レベルにおける化学的、物理的、および結晶学的パラメータはその巨視的電気化学的な特徴を決定する上で重要である。
【0046】
その粗面化表面の物理的性質に加えて、V−Ti−Zr−Ni型合金は表面状態および粒径は定常状態に到達する傾向があることが観察されている。この定常状態における表面状態は比較的高濃度の金属ニッケルを特徴とする。これらの観察は、チタンの酸化物とジルコニウムの酸化物が析出により表面から比較的高速に除去されること、及びニッケルの溶解速度がより低速であることと一貫している。その結果生じる表面は、水素吸蔵陰極のバルク組成物から期待されるものよりも高濃度のニッケルを有する。金属状態のニッケルは導電性および触媒性であり、これらの特性を表面に付与する。結果として、水素吸蔵陰極の表面は、表面がより高い濃度の絶縁性酸化物を含む場合と比較して、触媒性と導電性がより高い。
【0047】
導電性および触媒性成分である金属ニッケルを有する陰極の表面は、金属水素化物合金との相互作用により電気化学的な充電および放電反応過程の触媒作用をする他に、高速の気体再結合を促進する。
【0048】
最後に、米国特許第5,616,432号(‘432特許)において、Ovonic Battery Companyの研究者らは本発明の複合水素吸蔵材料の基本合金に類似するMg−Ni−Co−Mn合金を製造した。これらの合金の貯蔵容量は約2.7重量パーセントに限ぎられ、30℃では吸蔵水素は合金から脱離しなかった。図1は‘432特許の薄膜合金(記号△)のPCT曲線を本発明の複合水素吸蔵材料(記号◆)のものと共にプロットする。見られるように、本発明の水素吸蔵複合材料は4重量パーセントを上回る水素を吸収し、さらに注目すべきことはこの水素を30℃の温度で脱離できることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0049】
本発明は触媒を用いて、比較的純粋なMg材料における水素吸収/脱離を不溶性触媒性物質を用いて促進し、かつ大容量のMgベースの材料の脱離温度を幾らかの粒子成長阻害剤を添加することによって低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0050】
本発明は、マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金、および該マグネシウムベースの水素吸蔵合金に不溶性であり、かつ、1)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金のバルク内の触媒性物質の独立した分散領域、2)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粒子表面上の独立した分散領域、3)バルクもしくは粒状形態にある該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金表面上の触媒性物質の連続または半連続層、または4)それらの組み合わせ、の形態にある水素脱離触媒を含むマグネシウムベースの水素吸蔵材料を提供する。好ましくは、マグネシウムベースの水素吸蔵合金は少なくとも80原子パーセントのマグネシウムを含み、またアルミニウムを含むこともできる。好ましくは、水素脱離触媒は鉄を含み、B、Cu、Pd、V、Ni、C、Mn、Zr、Rb、Nb、Ti、UおよびScからなる群より選択される1つまたは1つ以上の元素を含むことができる。
【0051】
本発明は、さらに、マグネシウムベースの水素吸蔵材料の製造方法を含む。そのような方法の1つは、a)マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および水素脱離触媒の粉末を混合し、b)混合された粉末を圧縮して緊密体とし、c)該緊密体を450℃ないし600℃の温度で焼結/焼鈍することを含む。好ましくは、焼結/焼鈍は少なくとも10時間行う。
【0052】
別の製造方法としては、a)マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および水素脱離触媒の粉末の溶融物を保護雰囲気中で形成し、b)該溶融物を攪拌して溶融マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金内での水素脱離触媒の不溶性粉末の懸濁を確実なものとし、c)懸濁された水素脱離触媒の不溶性粉末が固相のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金内に十分に分布するように攪拌された溶融物を急冷することを含む。
【0053】
さらに別の方法は、a)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および該水素脱離触媒の粉末を混合し、b)該水素脱離触媒の粉末粒子が少なくとも該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末粒子の表面に埋め込まれるように、磨砕機によって該混合物を機械的に合金化することを含む。好ましくは、ヘプタンおよび炭素粉末を、該混合物の機械的合金化の間、摩砕助剤として用いる。
【0054】
さらなる方法は、a)バルクもしくは粒状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を提供し、b)触媒性物質の連続もしくは半連続層を該バルクもしくは粒状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の表面上に、蒸着、電気分解コーティングもしくは無電解コーティングによって被着させることを含む。好ましくは、コーティングは該触媒性物質の蒸発によって形成し、約100オングストローム厚である。
【0055】
上記技術を組み合わせることにより、触媒は複数の方法で分散することができる。バルクもしくは粒状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金は、a)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の溶融物を形成し、そして b)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金をバルク急冷法によって急冷することによって生成することができる。有用なバルク急冷法には、溶融紡糸法、遠心噴霧法、ガス噴霧法、または水噴霧法が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明者らは、Mg及びMgベースの合金中での溶解度が非常に低い鉄および/または他の元素が合金内でのMgもしくはMgベースの結晶子の粒子成長を妨げ、そのようなMg材料からの水素の脱離を触媒することを見出している。したがって、本発明は、マグネシウムベースの水素吸蔵材料であって、該マグネシウムベースの水素吸蔵材料において実質的に不溶である鉄および/または他の元素よって水素の脱離が触媒される水素吸蔵材料を提供する。この不溶性触媒性物質は、1)水素吸蔵材料バルクにおける触媒性物質の独立した分散領域、2)水素吸蔵材料の粒子表面上の独立した分散領域、3)バルクもしくは粒子状の水素吸蔵材料表面上の触媒性物質の連続もしくは半連続層、または4)それらの組み合わせの形態であり得る。触媒性物質は、合金化プロセスの間に特別な急冷法によって、または機械的合金化法によって添加することができる。触媒性物質は、熱蒸発法、磁気スパッタリングのようなプロセスにより、または電解メッキもしくは無電解メッキ法により、マグネシウムベースの合金の表面に塗布することもできる。
【0057】
Mg中での固相溶解度がほとんどない元素を粒子成長阻害剤/脱離触媒として用いることができる。具体的な候補には、Fe(0.00043原子%の溶解度を有する)、Rb(<0.05原子%の溶解度を有する)、Nb、Ti、V、およびUが含まれる。加えて、マグネシウム中での固相溶解度が限ぎられている元素を上に列挙される元素との金属間化合物の一部として用いて、粒子境界の結晶子成長を阻害する物質を形成することができる。候補には、Mn(溶解度=Mg中で0.99原子%)およびZr(溶解度=Mg中で1.042原子%)が含まれる。
【実施例1】
【0058】
マグネシウム(99.8%、−325メッシュ)、アルミニウム(99.5%、−325メッシュ)、鉄(99.9+%、10ミクロン)の純粋な金属粉末および他の微量成分からなる原料をメノウ乳鉢−乳棒で混合した。10種類の異なる組成物を生成し、それらの重量パーセントでの組成を表1に列挙する。硬質スチール・ダイを用いて混合した粉末を直径1cmおよび長さ1cmのペレットに圧縮した。圧縮したペレットを石英管に入れ、500℃以上の温度で22時間、真空下で焼結した。
【表1】
【0059】
図1は、500℃で焼結/焼鈍されたMM−1試料の後方散乱モードで撮影された走査電子顕微鏡写真(SEM)である。このSEMは、Mgの主マトリックス内に埋め込まれているFeおよびAl5Fe2金属間化合物の相分離を示す。FeおよびFeに富む相は直径がほぼ数ミクロンであり、その相間距離は約10−20ミクロンである。図2はこの試料のX線回折パターンであり、これはRigaku Mini Flexで記録された。これはFeおよびFeAlとMgの主相との共存を明瞭に示す。
【0060】
図3は、240℃で測定された同じ材料の圧力−濃度等温(PCT)曲線のプロットである。見てわかるように、非常に平坦なプラトー圧が約1800トルに見出された。すべての吸収/脱離は可逆的であり、水素の最大容量は5wt%である。図4は、MM−1合金の水素吸収パーセント対時間(すなわち、吸収速度)を様々な温度でプロットする。図4において示されるように、温度が上昇するに従って吸収反応速度が改善される。これも見てとれるように、吸収温度が高すぎる場合、最大貯蔵容量は減少する(270℃での例を参照)。したがって、最適化された吸収温度を見出すことは反応速度と貯蔵容量との均衡であることがわかる。MM−1材料については、約240℃の吸収温度が最も最適であることが見出された。120−150PSIの最大水素供給圧で、90%を上回る水素が2時間以内に吸収された。より高い水素供給圧力で、吸収プロセスの時間はさらに減少する。図5は、MM−1の脱離した水素のパーセント対時間(すなわち、脱離速度)を240℃でプロットする。この温度で、90%の水素が1時間以内に放出された。
【実施例2】
【0061】
別のMM−1材料を、実施例1において説明されるプロセスにより、焼結/焼鈍温度を変化させて製造した。図6は、それぞれ570℃および600℃で焼結/焼鈍した試料のPCT曲線をプロットする。570℃で焼結/焼鈍された材料のPCTが実施例1の材料(500℃で焼結/焼鈍されたもの)からの変位が僅かであるのに対して、600℃で焼結/焼鈍された材料は僅かに高い圧力で幅広いプラトーをもたらす。
【実施例3】
【0062】
MM−1の機械的に合金化された(MA)粉末を、純粋な元素マグネシウム(99.8%、−325メッシュ)、アルミニウム(99.5%、−325メッシュ)、および鉄(99.9+%、10ミクロン)の混合物から調製した。粉砕はクローム鋼破砕ボールを搭載した摩砕機において行った。機械的合金化プロセスは、アルゴン雰囲気下、1%グラフィイトおよびヘプタンを添加して材料の摩砕機壁面上でのケーク形成を回避しながら行った。典型的な粉砕時間は2時間である。図7はこの試料のSEM後方散乱顕微鏡写真である。この図は、この材料内での著しい相分離を示す。領域1(写真上の明るい対照物)がFeおよびAl粉末で充填されているのに対して、領域2(中央の暗領域)はすべてマグネシウムである。この試料のXRDプロットである図8は、このプロセスによって形成されるいかなる非晶質金属間生成物の徴候も示さない。MA−MM−1粉末を延展ニッケル金属基体上にプレスした後、両側を100オングストロームの表面触媒としての鉄で被覆した。
【0063】
図9は、240℃で測定されたMA−MM−1のPCT曲線のプロットである。圧力プラトーは、Mg貯蔵相とFe触媒相との距離が変動するため、焼結されたMM−1よりも高く、変化する反応速度のスペクトルを示す。最大水素貯蔵容量は5.0から5.7%に増加し、その水素は240℃で完全に脱離した。図10は、MA−MM−1試料の240℃、210℃、180℃、および150℃でのPCT脱離曲線をプロットする。プラトー圧は温度と共に増加する。この現象は熱平衡的な考慮から期待されるものである。しかしながら、最大貯蔵容量は温度の低下と共に減少する。この特徴は熱平衡モデルとは一致しない。この異常は吸収反応速度に対する温度の影響のためだと信じられる。すなわち、このPCT分析は特定の時間的拘束のうちで行われ、したがって、低温での水素貯蔵容量を過小評価した可能性がある。平衡を達成するのにより多くの時間を費ひやすことが可能であったならば、これらの低温で測定されたものよりも大きい最大容量が達成されたかもしれない。
【実施例4】
【0064】
MM−1の設計組成を有する原料を、表面を雰囲気から隔離し、かつ金属液体からのマグネシウムの過剰の蒸発を防止するために融剤を追加して、空気作動型誘導炉に入れた。追加のアルゴンを隔離ブランケットとしてるつぼに供給し、溶融金属の酸化を防止した。るつぼ内ですべての成分を溶融した後、溶融物を型に傾斜注入し、室温に徐々に冷却した。生じたインゴットの成分を誘導結合プラズマ(TCP)分析によって検査したところ、鉄の痕跡は検出されなかった。この比較例から、従来の誘導溶融技術ではMgバルク中に鉄を組み込むことができないことがわかる。
【0065】
上からのMg−Alインゴットを底部注入型溶融紡糸機に入れた。温度を融点以上まで上昇させた後、液体を水冷銅ホイール上に注入して長いリボンとした。図11はこのリボンの断面のSEM後方散乱顕微鏡写真であり、これは非常に均一なMg−Al合金を示す。次に、そのリボンを小片に切断し、実施例3において説明されるものと同じMAプロセスのため、摩砕機に入れた。次いで、粉砕された粉末をNi延展金属基体上にプレスし、両面を100オングストロームのFeで被覆した。
【0066】
このMS+MA−MM−1は比較的低い温度で良好な水素脱離動態を示す。図12は150℃で測定されたこの試料のPCTプロットを示す。観察された吸収/脱離圧力ヒステリシスは低い測定温度のためである。それにもかかわらず、250トルでの脱離プラトーは非常に注目すべきものである。図13は、3つの異なるプロセス(すなわち、焼結、MAのみ、MS+MA)について様々な温度での最大可逆的水素貯蔵容量を比較する。MS+MAプロセスは最も低い脱離開始温度(90℃)をもたらすが、Fe相の不均一な分布のため、最大可逆的容量も最も小さい。MAのみの試料は最も高い脱離温度での開始(150℃)を示すが、可逆的貯蔵容量は最も高い。
【実施例5】
【0067】
MM−1の標準組成を有する原料を、溶融表面を雰囲気から隔離し、かつ液体金属からの過剰のマグネシウム蒸発を防止するために追加した融剤と共に、空気作動型誘導炉に入れた。追加のアルゴンを隔離ブランケットとしてるつぼに供給し、金属の酸化を防止した。溶融合金を手動で攪拌し、非混和性のFeAlおよびFe相を液体中に均一に懸濁させた。この液体をアルゴンで保護されたひしゃくによって水冷の急冷型に傾斜注入し、FeおよびFeAl相を最終生成物に組み入れた。図14このようにして作ったインゴットの断面のSEM顕微鏡写真であり、これはMgのホストマトリックス中でのFeAlおよびFe二次相の均一な分布を示す。このFe包含物はサイズが約1ミクロンである。ICP分析はこのインゴットにおけるFeおよびAlの存在を確認した。液体中での適正な攪拌、例えば、二次攪拌コイル、不活性気体通気、回転るつぼ等を用いる他のバルク急冷法、例えば、溶融紡糸法、遠心噴霧法、ガス噴霧法、水噴霧法は類似の結果を達成し得る。図15は本発明の様々な処理方法によって製造された水素吸蔵粉末材料の微小構造の模式図である。すべての方法が、従来技術よりも実質的に低い温度で、可逆的水素吸蔵体を製造することを可能にする。
【0068】
本明細書の図面、考察、説明、および例は単に本発明の特定の態様を説明するものであり、その実施を制限しようとするものではない。本発明の範囲を定義するものは、すべての等価物を含めて、以下の請求の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】圧縮され、500℃を上回る温度で22時間、真空下で焼結された純金属粉末から作製された本発明の水素吸蔵材料の、後方散乱モードで撮影された走査電子顕微鏡写真(SEM)。
【図2】図1の材料のX線回折パターン。
【図3】240℃で測定された、図1の材料の圧力−濃度等温線(PCT)のプロット。
【図4】図1の材料の水素吸収パーセント対時間(すなわち、吸収速度)を様々な温度でプロットする。
【図5】図1の材料の脱離する水素のパーセント対時間(すなわち、脱離速度)を240℃でプロットする。
【図6】図1のものと同じ組成を有するが、それぞれ570および600℃で焼結/焼鈍されている試料のPCT曲線をプロットする。
【図7】図1の材料と同じ組成を有するが機械的合金化によって形成された本発明による別の材料のSEM後方散乱顕微鏡写真。
【図8】図7の材料のXRDプロット。
【図9】240℃で測定された、図7の材料のPCT曲線のプロット。
【図10】図7の材料のPCT吸収曲線を240℃、210℃、180℃、および150℃でプロットする。
【図11】本発明による材料の製造に用いられる、非常に均一なMg−Al合金の溶融紡糸リボンの断面のSEM後方散乱顕微鏡写真。
【図12】本発明による水素吸蔵材料の150℃でのPCTプロットを示すものであり、この材料は、機械的に合金化され、延展されたニッケル基体上に平坦にプレスされ、かつ100オングストロームの鉄で両側が被覆されている、図1の材料を用いて製造された。
【図13】図1、7および12の材料の、様々な温度での最大可逆水素貯蔵容量の比較プロット。
【図14】図1の材料の組成物の製造に必要な成分金属粉末を、溶融物を連続的に攪拌して不溶性物質を懸濁させながら誘導溶融および鋳造することによって製造されたインゴットの断面のSEM顕微鏡写真。
【図15】本発明の様々な処理方法によって製造される水素吸蔵粉末材料の微小構造の模式図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、水素吸蔵材料に関し、より具体的には、マグネシウムベースの水素吸蔵材料であって、水素脱着が該マグネシウムベースの水素吸蔵材料に不溶である物質によって触媒される水素吸蔵材料に関する。この不溶性触媒性物質は、1)水素吸蔵材料バルク中の触媒性物質の独立した分散領域、2)水素吸蔵材料の粒子表面上の独立した分散領域、3)バルクもしくは粒子状の水素吸蔵材料表面上の触媒性物質の連続もしくは半連続層、または4)それらの組み合わせの形態であり得る。
【背景技術】
【0002】
増大するエネルギー需要が、伝統的なエネルギー源、例えば、石炭、石油もしくは天然ガスが無尽蔵では無いこと、または少なくともそれらがますます高価になり続けるようになり、それらを水素で置き換えることを考慮することが賢明であることを認識するようにその道の専門家たちに促している。
【0003】
水素は、例えば、炭化水素の代わりに内燃機関の燃料として用いることができる。この場合、炭化水素が燃焼する際の炭素、窒素および硫黄の酸化物の形成による大気汚染が無いという利点がある。水素は、電気モーターに必要な電気を生成するための水素−空気燃料電池に燃焼するのに用いることもできる。
【0004】
水素の使用が提起する問題の1つはその貯蔵および輸送である。多くの解決法が提示されている。
【0005】
水素は高圧下で鋼製円筒に貯蔵することができるが、この方法は(貯蔵容量が約1重量%と低いことに加えて)扱いが難しい危険で重い容器を必要とするという欠点を有する。水素は極低温貯蔵容器に貯蔵することもできるが、これは極低温の液体の使用に関連する不利益、例えば、慎重な取り扱いをも必要とする高価な容器、を伴う。毎日約2−5%の「沸騰漏出(boil off)」損失も存在する。
【0006】
水素を貯蔵する別の方法はそれを水素化物の形態で貯蔵するものであり、貯蔵後、適正な時期に分解して水素を供給する。フランス特許第1,529,371号に記載されるように、鉄−チタン、ランタン−ニッケル、バナジウム、およびマグネシウムの水素化物がこの目的で用いられている。
【0007】
水素を安全で小型の固体状態の金属水素化物形態で貯蔵できるというこの最初の発見以来、研究者らは最適な特性を有する水素貯蔵材料を製造しようと努力してきている。一般には、これらの研究者が達成しようと試みている理想的な材料の特性は、1)大きい水素貯蔵容量、2)軽量材料、3)適切な水素吸収/脱離温度、4)適切な吸収/脱離圧、5)高速の吸収反応速度、および6)長期の吸収/脱離サイクル寿命である。これらの材料特性に加えて、理想的な材料は安価であり、製造が容易である。
【0008】
MgH2−Mg系が、水素貯蔵の理論的容量の最も高い重量パーセント(7.65重量%)を有し、したがって、貯蔵材料の単位重量あたり最も高い理論的エネルギー密度(2332Wh/kg;Reilly & Sandrock, Spektrum der Wissenschaft, Apr. 1980, 53)を有するため、可逆的水素貯蔵系として用いることができるすべての公知の金属水素化物および金属系のうちで最も適切なものである。
【0009】
この特性およびマグネシウムの比較的低い価格がMgH2−Mg系を輸送に最適の水素貯蔵系のように考えらるが、水素動力源自動車については、その反応速度が不満足なために現時点までそれが用いられることを妨げている。例えば、純粋なマグネシウムはおそらくは400℃という極端な温度条件下でのみ、および非常にゆっくりと不完全にのみ、水素化することができることが公知である。生じる水素化物の脱水素化速度も水素貯蔵材料としては不適当なものである(Genossar & Rudman, Z. f. Phys. Chem., Neue Folge 116, 215 [1979]、およびそこで引用される文献)。
【0010】
さらに、マグネシウム貯蔵材料の水素貯蔵容量は、充填/放出サイクルの間に減衰する。この現象は、充電中に材料内部に位置するマグネシウム原子を水素に接近できないようにする表面汚染が進行するということによって説明することができる。
【0011】
従来のマグネシウムまたはマグネシウム/ニッケル貯蔵材料系において水素を放出させるには250℃以上の温度が必要であり、これには同時にエネルギーの大量供給が伴う。水素を放出するのに必要な高い温度レベルおよび高エネルギーは、例えば、内燃機関を有する乗り物をこれらの合金のみで運転することができないという結果をもたらす。これは、排気ガスに含まれるエネルギーが、最も都合の良い場合(満載)においても、マグネシウムまたはマグネシウム/ニッケル合金からの内燃機関の水素必要量の50%を満たすのに十分なものに過ぎないために生じる。したがって、残りの水素要求量は他の水化物合金から得なければならない。例えば、この合金は、0℃未満の温度で稼働可能であるチタン/鉄水素化物(典型的な低温水素化物貯蔵)であり得る。これらの低温水素化物合金は水素貯蔵容量が小さいという欠点を有する。
【0012】
比較的大きな貯蔵容量を有するが、それでもやはり水素の放出が約250℃までの温度である貯蔵材料が過去に開発されている。米国特許第4,160,014号は、式Ti[1−x]Zr[x]Mn[2−y−z]Cr[y]V[z](式中、x=0.05乃至0.4、y=0乃至1およびz=0乃至0.4)の水素吸蔵材料を記載している。約2重量%までの水素をそのような合金に吸蔵することができる。この比較的小さい貯蔵容量に加えて、これらの合金は、金属バナジウムが用いられる場合には合金の価格が非常に高価であるという不利な点も有する。
【0013】
さらに、米国特許第4,111,689号は、31ないし46重量%のチタン、5ないし33重量%のバナジウムおよび36ないし53重量%の鉄および/またはマンガンを含有する吸蔵合金を開示している。このタイプの合金は、引用によりここに組み込まれる米国特許第4,160,014号による合金よりも大きい水素貯蔵容量を有するが、それらは水素を完全に放出するために少なくとも250℃の温度が必要であるという欠点を有する。約100℃までの温度では、最良の場合で、放出できるのは水素含有量の約80%である。しかしながら、水素化物貯蔵から水素を放出するのに必要とされる熱はしばしば低温レベルでのみ利用可能であるため、特に低温での、高い放出能力が産業において頻繁に必要とされる。
【0014】
他の金属または金属合金特にはチタンもしくはランタンを含むものとは対照的に、マグネシウムを含有する金属合金は、その低い材料経費だけではなく、特にその吸蔵材料としてその低い比重のため、水素の吸蔵に好ましい。しかしながら、
Mg+H2 → MgH2
という水素化はマグネシウムでは達成がより困難である。それは一般には、マグネシウムの表面が空気中で急速に酸化して安定なMgOおよび/またはMg(OH)2表面層を形成するからである。これらの層は、水素分子の解離の他、生成される水素原子の吸収および粒子表面からマグネシウム貯蔵材料の体積内への水素原子の拡散を阻害する。
【0015】
マグネシウムの水素化能力を、アルミニウム(Douglass, Metall. Trans. 6a, 2179 [1975])、インジウム(Mintz, Gavra, & Hadari, J. Inorg. Nucl. Chem. 40, 765 [1978])、もしくは鉄(Welter & Rudman, Scripta Metallurgica 16, 285 [1982])のような個々の外来金属、或いは様々な外来金属(German Offenlegungsschriften 2 846 672 および 2 846 673)、またはMg2NiもしくはMg2Cu(Wiswall, Top Appl. Phys. 29, 201 [1978] および Genossar & Rudman, op. cit)およびLaNi5(Tanguy et al., Mater. Res. Bull. 11, 1441 [1976])のような金属間化合物をドープするか、またはそれらと合金化することによって改善しようとする集中的な努力が近年なされてきた。
【0016】
これらの試みはそれらの反応速度を幾らかは改善したものの、その結果として作られたものから本質的な欠点のいくつかは未だに取り除かれてはいない。外来金属または金属間化合物でドープされたマグネシウムの初期水素化は依然として厳しい反応条件を要求され、多くの水素化および脱水素化のサイクルの後にのみ系の反応速度が満足のいくものとなって可逆的水素の含有量が高くなる。反応速度を改善するには相当なパーセンテージの外来金属または高価な金属間化合物も必要である。さらに、そのような系の貯蔵容量は、一般には、MgH2の場合に理論的に期待されるものを遙かに下回る。
【0017】
マグネシウムおよびマグネシウム合金の貯蔵特性が、安定なマグネシウムの酸化物を破壊する助けとなり得る物質の添加によっても強化できることが公知である。例えば、そのような合金はMg2Niであり、Niが不安定な酸化物を形成するようである。この合金においては、表面反応Mg2Ni+O2 → 2MgO+Niにより水素解離−吸収反応を触媒するニッケル金属の包含物にも拡張して適用されることを熱力学的考察が示した。A. Seller et al., Journal of Less−Common Metals 73, 1980, pages 193以下を参照することができる。
【0018】
マグネシウム表面上での水素解離−吸収反応の触媒の可能性の1つは、一方の相が水素化物形成剤であり、他方の相が触媒である二相合金の形成にもある。このように、ニッケルメッキされたマグネシウムを水素吸蔵体として用いることは公知である。F. G. Eisenberg et al. Journal of Less−Common Metals 74, 1980, pages 323以降を参照のこと。しかしながら、マグネシウム表面全体にニッケルを付着および分散させる間に遭遇する問題が存在する。
【0019】
非常に高密度かつ良好な付着触媒層を平衡相の形成のみのにより得るため、水素化物形成相としてのマグネシウムとマグネシウム銅(Mg2Cu)との共晶混合物を水素吸蔵のために用いることができることも公知である。J. Genossar et al., Zeitschrift fur Physikalische Chemie Neue Folge 116, 1979, pages 215以降を参照のこと。しかしながら、このマグネシウム含有粒子によって達成される材料の単位体積あたりの貯蔵容量は、共晶混合物に必要であるマグネシウム銅の量のため、高い需要には答えられない。
【0020】
この当時の科学者らは様々な材料を調べ、特定の結晶構造が水素吸蔵に必要であるものと仮定した。例えば、“Hydrogen Storage in Metal Hydride”, Scientific American, Vol. 242, No. 2, pp. 118−129, February, 1980を参照のこと。異なる種類の材料、即ち無秩序化水素吸蔵材料を利用することによって先行技術の材料の欠点の多くを克服できることが見出された。例えば、Guenter Winstelの「水素のための吸蔵材料(Storage Materials for Hydrogen)」についての米国特許第4,265,720号は、非晶質または微結晶ケイ素の水素吸蔵体を記載している。ケイ素は、好ましくは、適切な触媒と組み合わされ、かつ基体上の簿膜である。
【0021】
Matsumotoらの名での特開昭55−167401号、「水素吸蔵材料(Hydrogen Storage Material)」は、少なくとも50体積パーセントが非晶質構造の2成分もしくは3成分水素吸蔵材料を開示している。第1成分はCa、Mg、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Yおよびランタニドの群から選択され、第2成分はAl、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、MnおよびSiの群から選択される。B、C、PおよびGeの群からの第3成分は場合により存在し得る。特開昭55−167401号の教示によると、非晶質構造はほとんどの結晶系の不利な高脱離温度特性の問題を克服するのに必要である。高い脱離温度(例えば、150℃以上)はその系で可能な用途範囲を厳しく制限する。
【0022】
Matsumotoらによると、少なくとも50%が非晶質の材料は、個々の原子の結合エネルギーが結晶性材料の場合と違って均一ではなく、それが広範囲に分布するため、少なくとも幾らかの水素を比較的低温で脱離することが可能である。
【0023】
Matsumotoらは少なくとも50%が非晶質構造の材料をクレームとしている。Matsumotoらは「非晶質」という用語の意味に関して別にこれ以上教示をしていないが、その用語の科学的に認められている定義は約20オングストロームが上限でそれ以下の範囲にわたる短距離秩序を意味する。
【0024】
Matsumotoらのヒステリシス曲線が平坦でないことを利用するより良好な脱離反応速度の達成するための非晶質構造材料の使用は不十分かつ部分的な解決である。結晶性水素吸蔵材料において見出される他の問題、特に、中程度の温度での有用な水素貯蔵容量の少なさが問題として残る。
【0025】
しかしながら、さらにより良好な水素貯蔵の結果、すなわち、長いサイクル寿命、良好な機械的強度、低い吸収/脱離温度および圧力、可逆性、および化学的汚染に対する耐性は、無秩序化された準安定の水素吸蔵材料を変性することによるすべての利点が採用されるならば、実現することができる。無秩序化された構造的に準安定の水素吸蔵材料の変性は、Stanford R. Ovshinsky らの「水素吸蔵材料およびその製造方法(Hydrogen Storage Materials and Method of Making the Same)」についての米国特許第4,431,561号に記載されている。そこに記載されるように、化学的に変性され、熱力学的に準安定の構造を特徴とする無秩序化された水素吸蔵材料は、広範囲の商業的用途に望ましいすべての水素吸蔵特性を持つように設計することができる。変性した水素吸蔵材料は、単一相結晶性ホスト材料よりも大きな水素貯蔵容量を有するように設計製造することができる。水素とこれらの変性した材料内の貯蔵部位との間の化学結合の強さは、広い範囲の可能な結合力の分布をもたらし、それにより望ましい吸収および脱離特性が得られるように設計することができる。化学的に変性され、熱力学的に準安定な構造を有する無秩序化された水素吸蔵材料は、水素吸蔵反応速度の改善と汚染に対する耐性の増加をもたらす触媒的に活性の部位の密度も大幅に増加している。
【0026】
選択されたホストマトリックスに組み込まれている選択された変性剤の相乗的な組み合わせは、水素吸蔵を容易にする化学的、物理的、および電子構造および形態を安定化する構造および化学変性の量と質とを共に達成する。
【0027】
変性された水素吸蔵材料の骨組みは軽量なホスト・マトリックスである。ホスト・マトリックスは選択された変性剤成分で構造的に変性され、必要な水素吸蔵特性をもたらす局所的な化学的環境を持つ無秩序化材料を提供する。
【0028】
Ovshinskyらによって述べられたホスト・マトリックスの別の利点は、変性剤をその成分の割合を殆ど連続的な範囲で変化させて用いて変性できることである。この能力は、ホストマトリックスを変性剤によって操作し、特定の用途に適する特性を有する水素吸蔵材料を要求に沿って設計するか、または加工することを可能にする。これは、一般に利用可能な化学量論的範囲が非常に制限されている多成分単一相ホスト結晶性材料とは対照的である。したがって、そのような結晶性材料の熱力学的特性および反応速度の化学的および構造的変性を連続的な範囲で制御することは不可能である。
【0029】
これらの無秩序化された水素吸蔵材料のさらなる利点は、それらが汚染に対してさらにより耐性であることである。前述のように、これらの材料はより高い密度の触媒活性部位を有する。したがって、そのような部位の幾つかを汚染種の効果の犠牲としても、一方で多数の非汚染活性部位は依然として望ましい水素吸蔵反応速度をもたらし続けることができる。
【0030】
これらの無秩序化材料の別の利点は、それらを単一相結晶性材料よりも機械的に柔軟になるように設計できることである。したがって、無秩序化材料は膨張および収縮の際により大きく歪ませることが可能であり、これは吸収および脱離サイクルの際のより高い機械的安定性を可能にする。
【0031】
これらの無秩序化材料の欠点の1つは、従来、Mgベースの合金の幾つかが製造困難であったことである。特に、溶融状態で共溶液を形成しない材料。その上、最も有望な材料(すなわち、マグネシウムベースの材料)はバルク形態で製造することが極度に困難であった。すなわち、薄膜スパッタリング技術によりこれらの無秩序化合金を少量製造することはできるが、バルク調製技術は存在していなかった。
【0032】
1980年代の中頃、2つのグループがバルク無秩序化マグネシウム合金の水素吸蔵材料を製造する機械的合金化技術を開発した。機械的合金化は、特に安定な金属間相が存在しないとき、非常に異なる蒸気圧および融点を有する成分(例えば、MgとFeもしくはTi等)の合金化を可能にすることが見出された。誘導溶融のような従来の技術はそのような目的には不適当であることが見出されている。
【0033】
2つのグループのうちの第1は、Mg−Ni系の材料の機械的合金化およびそれらの水素吸蔵特性を研究するフランス人科学者のチームであった。Senegas, et al., “Phase Characterization and Hydrogen Diffusion Study in the Mg−Ni−H System”, Journal of the Less−Common Metals, Vol. 129, 1987, pp. 317−326(0、10、25および55wt%のNiを組み込むMgおよびNiの二元機械的合金)、および、また、Song, et al. “Hydriding and Dehydriding Characteristics of Mechanically Alloyed Mixtures Mg − x wt % Ni (x=5, 10, 25 and 55)”, Journal of the Less−Common Metals, Vol. 131, 1987, pp.71−79(5、10、25および55wt%のNiを組み込むMgおよびNiの二元機械的合金)を参照のこと。
【0034】
2つのグループのうちの第2は、マグネシウムおよび他の金属の二元機械的合金の水素吸蔵特性を研究したロシア人科学者のチームであった。Ivanov, et al., “Mechanical Alloys of Magnesium−New Materials For Hydrogen Energy” , Doklady Physical Chemistry (English Translation) vol. 286: 1−3, 1986, pp. 55−57(MgとNi、Ce、Nb、Ti、Fe、Co、SiおよびQとの二元機械的合金)、また、Ivanov, et al. “Magnesium Mechanical Alloys for Hydrogen Storage” , Journal of the Less−Common Metals, vol. 131 , 1987, pp. 25−29(MgとNi、Fe、Co、NbおよびTiとの二元機械的合金)、およびStepanov, et al., “Hydriding Properties of Mechanical Alloys of Mg−Ni” , Journal of the Less−Common Metals, vol. 131, 1987, pp. 89−97(Mg−Ni系の二元機械的合金)を参照のこと。これらのフランスおよびロシアのグループの間の共同研究、Konstanchuk, et al., “ The Hydriding Properties of a Mechanical Alloy With Composition Mg−25% Fe”, Journal of the Less−Common Metals, vol. 131, 1987, pp. 181−189(Mgと25wt%Feの二元機械的合金)も参照のこと。
【0035】
後に、1980年代後期および1990年代早期に、ブルガリアの科学者グループが(時には、ロシアの科学者グループと共同で)マグネシウムと金属酸化物との機械的合金の水素吸蔵特性を研究した。Khrussanova, et al., “Hydriding Kinetics of Mixtures Containing Some 3d−Transition Metal Oxides and Magnesium”, Zeitschrift fur Physikalische Chemie Neue Folge, Munchen, vol. 164, 1989, pp. 1261− 1266(MgとTiO2、V2O5、およびCr2O3との二元混合物および機械的合金の比較)、およびPeshev, et al., “Surface Composition of Mg−−TiO2 Mixtures for Hydrogen Storage, Prepared by Different Methods”, Materials Research Bulletin, vol. 24, 1989, pp. 207−212(MgとTiO2の従来の混合物および機械的合金の比較)を参照のこと。Khrussanova, et al., “On the Hydriding of a Mechanically Alloyed Mg(90%)−V2O5 (10%) Mixture”, International Journal of Hydrogen Energy, vol. 15, No. 11, 1990, pp. 799−805(MgとV2O5の二元機械的合金の水素吸蔵特性の研究)、およびKhrussanova, et al., “Hydriding of Mechanically Alloyed Mixtures of Magnesium With MnO2, Fe2O3, and NiO”, Materials Research Bulletin, vol. 26, 1991, pp. 561−567(MgとMnO2、Fe2O3、およびNiOとの二元機械的合金の水素吸蔵特性の研究)も参照のこと。最後に、Khrussanova, et al., “The Effect of the d−Electron Concentration on the Absorption Capacity of Some Systems for Hydrogen Storage”, Materials Research Bulletin, vol. 26, 1991, pp. 1291−1298(Mgと3−d金属酸化物の機械的合金を含む、材料の水素吸蔵特性に対する高密度d電子効果の研究)、およびMitov, et al., “A Mossbauer Study of a Hydrided Mechanically Alloyed Mixture of Magnesium and Iron(III) Oxide”, Materials Research Bulletin, vol. 27, 1992, pp. 905−910(MgとFe2O3の二元機械的合金の水素吸蔵特性の研究)も参照のこと。
【0036】
より近年、中国人科学者のグループがMgと他の金属との幾つかの機械的合金の水素吸蔵特性を研究している。Yang, et al., “The Thermal Stability of Amorphous Hydride Mg50Ni50H54 and Mg30Ni70H45”, Zeitschrift fur Physikalische Chemie, Munchen, vol. 183, 1994, pp. 141−147(機械的合金Mg50Ni50およびMg30Ni70の水素吸蔵特性の研究)、また、Lei, et al., “Electrochemical Behavior of Some Mechanically Alloyed Mg−Ni−based Amorphous Hydrogen Storage Alloys”, Zeitschrift fur Physikalische Chemie, Munchen, vol. 183, 1994, pp. 379−384(Mg−NiとCo、Si、Al、Co−Siとの幾つかの機械的合金の電気化学的[すなわち、Ni−MH電池]特性の研究)を参照のこと。
【0037】
短距離秩序、すなわち局所的秩序は、組成的に変化する材料および該材料の合成方法(Compositionally Varied Materials and Method for Synthesizing the Materials)と題するOvshinskyの米国特許第4,520,039号において詳述されており、その内容は引用により組み込まれる。この特許は、無秩序化材料がいかなる周期的な局所秩序をも必要とせず、局所的配置をより高い精度と制御により、類似の、もしくは異なる原子もしくは原子群の空間的および方向的配置が可能になり、その結果、新規現象を定量的に生成することが可能であることを開示した。加えて、この特許は、用いられる原子を「d帯」原子または「f帯」原子に制限する必要はなく、材料の物理的特性に、したがって、材料の機能に影響を及ぼすように、人工的に設計された局所的環境との相互作用の様相および/または電子軌道重複が物理的、電子的、または化学的に重要な役割を果たす如何なる原子でもあり得ることを論じている。これらの材料の成分は、d電子軌道の多方向性のため、様々な結合可能性を提供する。d電子軌道の多方向性(「ポーキュパイン効果」)は、密度の、したがって、活性部位の著しい増加をもたらす。これらの技術は、同時に幾つかの異なる形で無秩序である新規材料を合成する手段を与える。
【0038】
Ovshinskyは、そのバルクが望ましい比較的純粋な材料に似ている非晶質膜を作製することにより、表面部位の数を大幅に増加できることを以前に示した。Ovshinskyは、また、複数の成分を用いて、必要とされる電気化学的特徴を材料が達成することを可能にする化学結合の増加および局所環境秩序を得た。Principles and Applications of Amorphicity, Structural Change, and Optical Information Encoding, 42 Journal De Physique at C4−1096 (October 1981)においてOvshinskyが説明するように、
「非晶質性とは、長距離周期性を立証するX線回折像の欠如を指す一般用語であり、物質の十分な説明ではない。非晶質物質を理解するのに考慮すべき幾つかの重要な要素が存在する。すなわち、化学結合のタイプ、局所的秩序によって生成される結合の数、すなわち、その配位数、及び化学的および幾何学的な局所的環境全体が結果として生じた様々な配置に与える影響である。非晶質性は、原子を硬質の球として考えてそれを無作為に充填して作られるものでもなく、非晶質性固体は単に原子が無作為に埋め込まれている母体でもない。非晶質物質は、電子配置が自由エネルギーにより生ずる力によって生成される相互作用性マトリックスで構成されるものとして見られるべきであり、それらは構成原子の化学的性質および配位によって具体的に定義することができる。多電子軌道原子を成分としまた様々な調製技術を用いて、平衡状態に復帰させようとする正常の緩和現象の進行を阻害し、かつ、非晶質状態が三次元の自由度を持つため、まったく新たなタイプの非晶質物質−化学変性物質を作製することができる…。」
非晶質性が膜に表面部位を導入する手段としてひとたび理解されると、その結果のあらゆる種類、例えば、多孔性、位相幾何学的性質、結晶性、部位の特徴、および部位間の距離など、を考慮に入れた「無秩序」を生成することが可能になった。したがって、秩序付けられた結晶構造を持つ材料中に偶発的に生じる表面のボンドおよび表面の無秩序性が最大になるような材料変化を探索するよりも、OvshinskyおよびECDの彼のチームは「無秩序化」材料を構築し始め、そこで望ましい無秩序性を人工的に設計した。米国特許第4,623,597号(その開示は引用により本願に組み込まれる)を参照のこと。
【0039】
「無秩序化」という用語は、電気化学的電極材料を指すのにここで用いられる場合、文献において用いられる用語の意味、例えば、以下のものに相当する。
【0040】
無秩序化半導体は幾つかの構造状態で存在することができる。この構造要素は、[物質]...の物理特性を制御することができる新たな変数を構成する。さらに、構造的な無秩序は、熱力学的平衡の制限を遙かに超える新たな組成物および混合物を準安定状態で調製する可能性を開く。したがって、我々は以下の点をさらなる識別特徴として記す。多くの無秩序化[物質]...において、短距離秩序パラメータを制御し、それにより、成分に新たな配位数を強いること...を含めて、これらの材料の物理特性の劇的な変化を達成することが可能である。
【0041】
S. R. Ovshinsky, The Shape of Disorder, 32 Journal of Non−Crystalline Solids at 22 (1979)(強調を加えた)。
【0042】
これらの無秩序化材料の「短距離秩序」がOvshinskyによってThe Chemical Basis of Amorphicity: Structure and Function, 26:8−9 Rev. Roum. Phys. at 893−903 (1981)においてさらに説明されている。
【0043】
「短距離秩序は保存量ではない...。実際、結晶の対称性が破壊されるとき、同じ短距離秩序を保持することは不可能になる。その理由は、短距離秩序が電子軌道の力場によって制御され、したがって、対応する結晶および非晶質固体において環境が根本的に異なっていなければならないことである。換言すると、それは局所的化学結合とその物質の電気的、化学的、および物理的特性を決定するそれらの周囲環境との相互作用であり、これらが非晶質物質においてそれらが結晶性物質であるときと同じではあり得ない...。非晶質物質の三次元空間内には存在し得るが結晶性物質にはない電子軌道上の関係は新たな幾何学的考察の基礎であり、その多くは自然状態で本質的に反結晶性である。結合の歪み及び原子の位置ずれは単一成分物質において非晶質性が生じる妥当な理由であり得る。しかしながら、非晶質性を十分に理解するには、それが結晶格子の並進対称性と両立しない内部の位相幾何学的性質を生成するものであるため、非晶質状態において本質的な三次元の関係を理解しなければならない。非晶質状態において重要なことは、いかなる結晶性の対応物をも持たず、主として化学組成において類似であるものさえない無限の物質を作製することができるという事実である。これらの原子の空間的およびエネルギー的な関係は、それらの化学成分が同じであり得るとしても、非晶質および結晶形態においてはまったく異なるものであり得る...。」
上述の、無秩序化材料の諸原理に基づき、非常に効率的な電気化学的水素吸蔵陰極材料の3種類を配合した。これらの陰極材料の種類は、個別的にまた一括して、以下「オボニック(Ovonic)」と呼ぶ。第1種はLa−Ni5型陰極材料であり、これは、近年、無秩序化多成分合金、すなわち、「オボニック」になるように、希土類元素、例えば、Ce、Pr、Ndおよび他の金属、例えば、Mn、Al、およびCoの添加により著しく変性されている。第二種はTi−Ni型陰極材料であり、これは本願発明の譲受人によって導入および開発され、無秩序化された多成分合金、すなわち、「オボニック」になるように、遷移金属、例えば、Zr、Vおよび他の金属性変性剤成分、例えば、Mn、Cr、Al、Fe等の添加によって著しく変性されている。第3種は、米国特許第5,506,069号、第5,616,432号、および第5,554,456号(これらの開示は引用によりここに組み込まれる)に記載される無秩序化多成分MgNi型陰極材料である。
【0044】
Ovshinskyの‘597特許に表される諸原理に基づき、オボニックTi−V−Zr−Ni型活性材料がSapru、Fetcenkoらの米国特許第4,451,400号(‘400特許)(その開示は引用によりここに組み込まれる)に開示されている。このオボニック材料の第2種は、水素吸蔵のため、可逆的に水素化物を形成する。‘400特許において用いられるすべての材料はTi−V−Ni組成を用い、少なくともTi、V、およびNiを含み、それが少なくとも1種類又は1種類以上のCr、Zr、およびAlと共に存在する。‘400特許の材料は、一般には多相多結晶性材料であり、これらに限定されるものではないが、C 14 およびC15 .型結晶構造を有するTi−V−Zr−Ni材料の1つまたは1つ以上の相が含まれ得る。他のオボニックTi−V−Zr−Ni合金は、改良された電荷保持電気化学的水素吸蔵合金および改良された電荷保持電気化学的電池(Enhanced Charge Retention Electrochemical Hydrogen Storage Alloys and an Enhanced Charge Retention Electrochemical Cell)と題する、共通に譲渡されている米国特許第4,728,586号(‘586特許)(その開示は引用により組み込まれる)に記載されている。
【0045】
金属電解質界面の特徴的な表面の粗さは、共通に譲渡されている、Reichman、Venkatesan、Fetcenko、Jeffries、Stahl、およびBennetの米国特許第4,716,088号(その開示は引用により組み込まれる)に開示されるように、その材料の無秩序性の結果である。多くの合金およびそれらの相に加えて、すべての構成成分がその金属全体を通して存在するため、それらは表面および金属/電解質界面に形成されるクラックにも露出している。したがって、特徴的な表面の粗さは、アルカリ性環境におけるホスト材料と合金およびその合金の結晶相の物理的および化学的特性の相互作用の現れである。水素吸蔵合金材料内の個々の相の顕微鏡的レベルにおける化学的、物理的、および結晶学的パラメータはその巨視的電気化学的な特徴を決定する上で重要である。
【0046】
その粗面化表面の物理的性質に加えて、V−Ti−Zr−Ni型合金は表面状態および粒径は定常状態に到達する傾向があることが観察されている。この定常状態における表面状態は比較的高濃度の金属ニッケルを特徴とする。これらの観察は、チタンの酸化物とジルコニウムの酸化物が析出により表面から比較的高速に除去されること、及びニッケルの溶解速度がより低速であることと一貫している。その結果生じる表面は、水素吸蔵陰極のバルク組成物から期待されるものよりも高濃度のニッケルを有する。金属状態のニッケルは導電性および触媒性であり、これらの特性を表面に付与する。結果として、水素吸蔵陰極の表面は、表面がより高い濃度の絶縁性酸化物を含む場合と比較して、触媒性と導電性がより高い。
【0047】
導電性および触媒性成分である金属ニッケルを有する陰極の表面は、金属水素化物合金との相互作用により電気化学的な充電および放電反応過程の触媒作用をする他に、高速の気体再結合を促進する。
【0048】
最後に、米国特許第5,616,432号(‘432特許)において、Ovonic Battery Companyの研究者らは本発明の複合水素吸蔵材料の基本合金に類似するMg−Ni−Co−Mn合金を製造した。これらの合金の貯蔵容量は約2.7重量パーセントに限ぎられ、30℃では吸蔵水素は合金から脱離しなかった。図1は‘432特許の薄膜合金(記号△)のPCT曲線を本発明の複合水素吸蔵材料(記号◆)のものと共にプロットする。見られるように、本発明の水素吸蔵複合材料は4重量パーセントを上回る水素を吸収し、さらに注目すべきことはこの水素を30℃の温度で脱離できることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0049】
本発明は触媒を用いて、比較的純粋なMg材料における水素吸収/脱離を不溶性触媒性物質を用いて促進し、かつ大容量のMgベースの材料の脱離温度を幾らかの粒子成長阻害剤を添加することによって低下させる。
【課題を解決するための手段】
【0050】
本発明は、マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金、および該マグネシウムベースの水素吸蔵合金に不溶性であり、かつ、1)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金のバルク内の触媒性物質の独立した分散領域、2)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粒子表面上の独立した分散領域、3)バルクもしくは粒状形態にある該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金表面上の触媒性物質の連続または半連続層、または4)それらの組み合わせ、の形態にある水素脱離触媒を含むマグネシウムベースの水素吸蔵材料を提供する。好ましくは、マグネシウムベースの水素吸蔵合金は少なくとも80原子パーセントのマグネシウムを含み、またアルミニウムを含むこともできる。好ましくは、水素脱離触媒は鉄を含み、B、Cu、Pd、V、Ni、C、Mn、Zr、Rb、Nb、Ti、UおよびScからなる群より選択される1つまたは1つ以上の元素を含むことができる。
【0051】
本発明は、さらに、マグネシウムベースの水素吸蔵材料の製造方法を含む。そのような方法の1つは、a)マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および水素脱離触媒の粉末を混合し、b)混合された粉末を圧縮して緊密体とし、c)該緊密体を450℃ないし600℃の温度で焼結/焼鈍することを含む。好ましくは、焼結/焼鈍は少なくとも10時間行う。
【0052】
別の製造方法としては、a)マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および水素脱離触媒の粉末の溶融物を保護雰囲気中で形成し、b)該溶融物を攪拌して溶融マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金内での水素脱離触媒の不溶性粉末の懸濁を確実なものとし、c)懸濁された水素脱離触媒の不溶性粉末が固相のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金内に十分に分布するように攪拌された溶融物を急冷することを含む。
【0053】
さらに別の方法は、a)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および該水素脱離触媒の粉末を混合し、b)該水素脱離触媒の粉末粒子が少なくとも該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末粒子の表面に埋め込まれるように、磨砕機によって該混合物を機械的に合金化することを含む。好ましくは、ヘプタンおよび炭素粉末を、該混合物の機械的合金化の間、摩砕助剤として用いる。
【0054】
さらなる方法は、a)バルクもしくは粒状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を提供し、b)触媒性物質の連続もしくは半連続層を該バルクもしくは粒状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の表面上に、蒸着、電気分解コーティングもしくは無電解コーティングによって被着させることを含む。好ましくは、コーティングは該触媒性物質の蒸発によって形成し、約100オングストローム厚である。
【0055】
上記技術を組み合わせることにより、触媒は複数の方法で分散することができる。バルクもしくは粒状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金は、a)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の溶融物を形成し、そして b)該マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金をバルク急冷法によって急冷することによって生成することができる。有用なバルク急冷法には、溶融紡糸法、遠心噴霧法、ガス噴霧法、または水噴霧法が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明者らは、Mg及びMgベースの合金中での溶解度が非常に低い鉄および/または他の元素が合金内でのMgもしくはMgベースの結晶子の粒子成長を妨げ、そのようなMg材料からの水素の脱離を触媒することを見出している。したがって、本発明は、マグネシウムベースの水素吸蔵材料であって、該マグネシウムベースの水素吸蔵材料において実質的に不溶である鉄および/または他の元素よって水素の脱離が触媒される水素吸蔵材料を提供する。この不溶性触媒性物質は、1)水素吸蔵材料バルクにおける触媒性物質の独立した分散領域、2)水素吸蔵材料の粒子表面上の独立した分散領域、3)バルクもしくは粒子状の水素吸蔵材料表面上の触媒性物質の連続もしくは半連続層、または4)それらの組み合わせの形態であり得る。触媒性物質は、合金化プロセスの間に特別な急冷法によって、または機械的合金化法によって添加することができる。触媒性物質は、熱蒸発法、磁気スパッタリングのようなプロセスにより、または電解メッキもしくは無電解メッキ法により、マグネシウムベースの合金の表面に塗布することもできる。
【0057】
Mg中での固相溶解度がほとんどない元素を粒子成長阻害剤/脱離触媒として用いることができる。具体的な候補には、Fe(0.00043原子%の溶解度を有する)、Rb(<0.05原子%の溶解度を有する)、Nb、Ti、V、およびUが含まれる。加えて、マグネシウム中での固相溶解度が限ぎられている元素を上に列挙される元素との金属間化合物の一部として用いて、粒子境界の結晶子成長を阻害する物質を形成することができる。候補には、Mn(溶解度=Mg中で0.99原子%)およびZr(溶解度=Mg中で1.042原子%)が含まれる。
【実施例1】
【0058】
マグネシウム(99.8%、−325メッシュ)、アルミニウム(99.5%、−325メッシュ)、鉄(99.9+%、10ミクロン)の純粋な金属粉末および他の微量成分からなる原料をメノウ乳鉢−乳棒で混合した。10種類の異なる組成物を生成し、それらの重量パーセントでの組成を表1に列挙する。硬質スチール・ダイを用いて混合した粉末を直径1cmおよび長さ1cmのペレットに圧縮した。圧縮したペレットを石英管に入れ、500℃以上の温度で22時間、真空下で焼結した。
【表1】
【0059】
図1は、500℃で焼結/焼鈍されたMM−1試料の後方散乱モードで撮影された走査電子顕微鏡写真(SEM)である。このSEMは、Mgの主マトリックス内に埋め込まれているFeおよびAl5Fe2金属間化合物の相分離を示す。FeおよびFeに富む相は直径がほぼ数ミクロンであり、その相間距離は約10−20ミクロンである。図2はこの試料のX線回折パターンであり、これはRigaku Mini Flexで記録された。これはFeおよびFeAlとMgの主相との共存を明瞭に示す。
【0060】
図3は、240℃で測定された同じ材料の圧力−濃度等温(PCT)曲線のプロットである。見てわかるように、非常に平坦なプラトー圧が約1800トルに見出された。すべての吸収/脱離は可逆的であり、水素の最大容量は5wt%である。図4は、MM−1合金の水素吸収パーセント対時間(すなわち、吸収速度)を様々な温度でプロットする。図4において示されるように、温度が上昇するに従って吸収反応速度が改善される。これも見てとれるように、吸収温度が高すぎる場合、最大貯蔵容量は減少する(270℃での例を参照)。したがって、最適化された吸収温度を見出すことは反応速度と貯蔵容量との均衡であることがわかる。MM−1材料については、約240℃の吸収温度が最も最適であることが見出された。120−150PSIの最大水素供給圧で、90%を上回る水素が2時間以内に吸収された。より高い水素供給圧力で、吸収プロセスの時間はさらに減少する。図5は、MM−1の脱離した水素のパーセント対時間(すなわち、脱離速度)を240℃でプロットする。この温度で、90%の水素が1時間以内に放出された。
【実施例2】
【0061】
別のMM−1材料を、実施例1において説明されるプロセスにより、焼結/焼鈍温度を変化させて製造した。図6は、それぞれ570℃および600℃で焼結/焼鈍した試料のPCT曲線をプロットする。570℃で焼結/焼鈍された材料のPCTが実施例1の材料(500℃で焼結/焼鈍されたもの)からの変位が僅かであるのに対して、600℃で焼結/焼鈍された材料は僅かに高い圧力で幅広いプラトーをもたらす。
【実施例3】
【0062】
MM−1の機械的に合金化された(MA)粉末を、純粋な元素マグネシウム(99.8%、−325メッシュ)、アルミニウム(99.5%、−325メッシュ)、および鉄(99.9+%、10ミクロン)の混合物から調製した。粉砕はクローム鋼破砕ボールを搭載した摩砕機において行った。機械的合金化プロセスは、アルゴン雰囲気下、1%グラフィイトおよびヘプタンを添加して材料の摩砕機壁面上でのケーク形成を回避しながら行った。典型的な粉砕時間は2時間である。図7はこの試料のSEM後方散乱顕微鏡写真である。この図は、この材料内での著しい相分離を示す。領域1(写真上の明るい対照物)がFeおよびAl粉末で充填されているのに対して、領域2(中央の暗領域)はすべてマグネシウムである。この試料のXRDプロットである図8は、このプロセスによって形成されるいかなる非晶質金属間生成物の徴候も示さない。MA−MM−1粉末を延展ニッケル金属基体上にプレスした後、両側を100オングストロームの表面触媒としての鉄で被覆した。
【0063】
図9は、240℃で測定されたMA−MM−1のPCT曲線のプロットである。圧力プラトーは、Mg貯蔵相とFe触媒相との距離が変動するため、焼結されたMM−1よりも高く、変化する反応速度のスペクトルを示す。最大水素貯蔵容量は5.0から5.7%に増加し、その水素は240℃で完全に脱離した。図10は、MA−MM−1試料の240℃、210℃、180℃、および150℃でのPCT脱離曲線をプロットする。プラトー圧は温度と共に増加する。この現象は熱平衡的な考慮から期待されるものである。しかしながら、最大貯蔵容量は温度の低下と共に減少する。この特徴は熱平衡モデルとは一致しない。この異常は吸収反応速度に対する温度の影響のためだと信じられる。すなわち、このPCT分析は特定の時間的拘束のうちで行われ、したがって、低温での水素貯蔵容量を過小評価した可能性がある。平衡を達成するのにより多くの時間を費ひやすことが可能であったならば、これらの低温で測定されたものよりも大きい最大容量が達成されたかもしれない。
【実施例4】
【0064】
MM−1の設計組成を有する原料を、表面を雰囲気から隔離し、かつ金属液体からのマグネシウムの過剰の蒸発を防止するために融剤を追加して、空気作動型誘導炉に入れた。追加のアルゴンを隔離ブランケットとしてるつぼに供給し、溶融金属の酸化を防止した。るつぼ内ですべての成分を溶融した後、溶融物を型に傾斜注入し、室温に徐々に冷却した。生じたインゴットの成分を誘導結合プラズマ(TCP)分析によって検査したところ、鉄の痕跡は検出されなかった。この比較例から、従来の誘導溶融技術ではMgバルク中に鉄を組み込むことができないことがわかる。
【0065】
上からのMg−Alインゴットを底部注入型溶融紡糸機に入れた。温度を融点以上まで上昇させた後、液体を水冷銅ホイール上に注入して長いリボンとした。図11はこのリボンの断面のSEM後方散乱顕微鏡写真であり、これは非常に均一なMg−Al合金を示す。次に、そのリボンを小片に切断し、実施例3において説明されるものと同じMAプロセスのため、摩砕機に入れた。次いで、粉砕された粉末をNi延展金属基体上にプレスし、両面を100オングストロームのFeで被覆した。
【0066】
このMS+MA−MM−1は比較的低い温度で良好な水素脱離動態を示す。図12は150℃で測定されたこの試料のPCTプロットを示す。観察された吸収/脱離圧力ヒステリシスは低い測定温度のためである。それにもかかわらず、250トルでの脱離プラトーは非常に注目すべきものである。図13は、3つの異なるプロセス(すなわち、焼結、MAのみ、MS+MA)について様々な温度での最大可逆的水素貯蔵容量を比較する。MS+MAプロセスは最も低い脱離開始温度(90℃)をもたらすが、Fe相の不均一な分布のため、最大可逆的容量も最も小さい。MAのみの試料は最も高い脱離温度での開始(150℃)を示すが、可逆的貯蔵容量は最も高い。
【実施例5】
【0067】
MM−1の標準組成を有する原料を、溶融表面を雰囲気から隔離し、かつ液体金属からの過剰のマグネシウム蒸発を防止するために追加した融剤と共に、空気作動型誘導炉に入れた。追加のアルゴンを隔離ブランケットとしてるつぼに供給し、金属の酸化を防止した。溶融合金を手動で攪拌し、非混和性のFeAlおよびFe相を液体中に均一に懸濁させた。この液体をアルゴンで保護されたひしゃくによって水冷の急冷型に傾斜注入し、FeおよびFeAl相を最終生成物に組み入れた。図14このようにして作ったインゴットの断面のSEM顕微鏡写真であり、これはMgのホストマトリックス中でのFeAlおよびFe二次相の均一な分布を示す。このFe包含物はサイズが約1ミクロンである。ICP分析はこのインゴットにおけるFeおよびAlの存在を確認した。液体中での適正な攪拌、例えば、二次攪拌コイル、不活性気体通気、回転るつぼ等を用いる他のバルク急冷法、例えば、溶融紡糸法、遠心噴霧法、ガス噴霧法、水噴霧法は類似の結果を達成し得る。図15は本発明の様々な処理方法によって製造された水素吸蔵粉末材料の微小構造の模式図である。すべての方法が、従来技術よりも実質的に低い温度で、可逆的水素吸蔵体を製造することを可能にする。
【0068】
本明細書の図面、考察、説明、および例は単に本発明の特定の態様を説明するものであり、その実施を制限しようとするものではない。本発明の範囲を定義するものは、すべての等価物を含めて、以下の請求の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】圧縮され、500℃を上回る温度で22時間、真空下で焼結された純金属粉末から作製された本発明の水素吸蔵材料の、後方散乱モードで撮影された走査電子顕微鏡写真(SEM)。
【図2】図1の材料のX線回折パターン。
【図3】240℃で測定された、図1の材料の圧力−濃度等温線(PCT)のプロット。
【図4】図1の材料の水素吸収パーセント対時間(すなわち、吸収速度)を様々な温度でプロットする。
【図5】図1の材料の脱離する水素のパーセント対時間(すなわち、脱離速度)を240℃でプロットする。
【図6】図1のものと同じ組成を有するが、それぞれ570および600℃で焼結/焼鈍されている試料のPCT曲線をプロットする。
【図7】図1の材料と同じ組成を有するが機械的合金化によって形成された本発明による別の材料のSEM後方散乱顕微鏡写真。
【図8】図7の材料のXRDプロット。
【図9】240℃で測定された、図7の材料のPCT曲線のプロット。
【図10】図7の材料のPCT吸収曲線を240℃、210℃、180℃、および150℃でプロットする。
【図11】本発明による材料の製造に用いられる、非常に均一なMg−Al合金の溶融紡糸リボンの断面のSEM後方散乱顕微鏡写真。
【図12】本発明による水素吸蔵材料の150℃でのPCTプロットを示すものであり、この材料は、機械的に合金化され、延展されたニッケル基体上に平坦にプレスされ、かつ100オングストロームの鉄で両側が被覆されている、図1の材料を用いて製造された。
【図13】図1、7および12の材料の、様々な温度での最大可逆水素貯蔵容量の比較プロット。
【図14】図1の材料の組成物の製造に必要な成分金属粉末を、溶融物を連続的に攪拌して不溶性物質を懸濁させながら誘導溶融および鋳造することによって製造されたインゴットの断面のSEM顕微鏡写真。
【図15】本発明の様々な処理方法によって製造される水素吸蔵粉末材料の微小構造の模式図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金と、
水素脱離触媒と、
を含むマグネシウムベースの水素吸蔵材料であって、前記水素脱離触媒が前記マグネシウムベースの水素吸蔵合金に不溶であり、
1)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金のバルク中の触媒性物質の独立した分散領域、
2)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粒子表面上の独立した分散領域、
3)バルクもしくは粒子状形態にある前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金表面上の触媒性物質の連続もしくは半連続層、または
4)それらの組み合わせ、
の形態にある水素吸蔵材料。
【請求項2】
前記マグネシウムベースの水素吸蔵合金が少なくとも80原子パーセントのマグネシウムを含む、請求項1のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項3】
前記マグネシウムベースの水素吸蔵合金がアルミニウムをさらに含む、請求項2のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項4】
前記水素脱離触媒が鉄を含む、請求項1のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項5】
前記水素脱離触媒がB、Cu、Pd、V、Ni、C、Mn、Zr、Rb、Nb、Ti、UおよびScからなる群より選択される1種類又は1種類以上の元素をさらに含む、請求項4のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項6】
前記水素脱離触媒が前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金のバルク中に触媒性物質の独立した分散領域を含む、請求項1のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項7】
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および前記水素脱離触媒の粉末を混合する工程と、
b)混合された粉末を圧縮して緊密体とする工程と、
c)前記緊密体を450℃ないし600℃の温度で焼結/焼鈍する工程と、
によって形成される、請求項6のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項8】
前記焼結/焼鈍を少なくとも10時間行う、請求項7のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項9】
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および前記水素脱離触媒の粉末の溶融物を保護雰囲気中で形成する工程と、
b)前記溶融物を攪拌して溶融マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金中での前記水素脱離触媒の不溶性粉末の懸濁を確実なものとする工程と、
c)懸濁された前記水素脱離触媒の不溶性粉末が固相のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金内に十分に分布するように攪拌された溶融物を急冷する工程と、
によって形成される、請求項6のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項10】
前記水素脱離触媒が前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粒子表面上の独立した分散領域を含む、請求項1のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項11】
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および前記水素脱離触媒の粉末を混合する工程と、
b)前記水素脱離触媒の粉末粒子が前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末粒子の少なくとも表面に埋め込まれるように、磨砕機において前記混合物を機械的に合金化する工程と、
によって形成される、請求項10のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項12】
ヘプタンおよび炭素粉末を破砕助剤として前記混合物の機械的合金化の際に用いる、請求項10のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項13】
前記水素脱離触媒が、バルクもしくは粒子状形態にある前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金表面上の触媒性材料の連続もしくは半連続層を含む、請求項1のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項14】
a)バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を生成する工程と、
b)触媒性物質の連続もしくは半連続層を前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の表面上に、蒸着、電気分解コーティングもしくは無電解コーティングによって被着させる工程と、
によって形成される、請求項13のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項15】
触媒性物質の連続もしくは半連続層を前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金表面上に被着させる工程が前記触媒性物質の蒸発を含む、請求項14のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項16】
前記触媒性物質の連続もしくは半連続層が約100オングストロームの厚みである、請求項13のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項17】
前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を生成する工程が、バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金内に独立した分散領域の状態で配置されている水素脱離触媒を有するバルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を提供することを含む、請求項14のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項18】
前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を生成工程が、
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および前記水素脱離触媒の粉末を混合し、
b)混合された粉末を圧縮して緊密体とし、
c)前記緊密体を450℃ないし600℃の温度で焼結/焼鈍する、
ことを含む、請求項17のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項19】
前記焼結/焼鈍を少なくとも10時間行う、請求項18のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項20】
前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を生成する工程が、
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および前記水素脱離触媒の粉末の溶融物を保護雰囲気中で形成し、
b)前記溶融物を攪拌して溶融マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金中での前記水素脱離触媒の不溶性粉末の懸濁を確実なものとし、
c)懸濁された前記水素脱離触媒の不溶性粉末が固相のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金内に十分に分布するように溶融物を急冷する、
ことを含む、請求項17のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項21】
前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を生成する工程が、
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の溶融物を形成し、
b)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金をバルク急冷法によって急冷する、
ことを含む、請求項14のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項22】
前記バルク急冷法が、溶融紡糸法、遠心噴霧法、ガス噴霧法、または水噴霧法を含む、請求項21のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項1】
マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金と、
水素脱離触媒と、
を含むマグネシウムベースの水素吸蔵材料であって、前記水素脱離触媒が前記マグネシウムベースの水素吸蔵合金に不溶であり、
1)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金のバルク中の触媒性物質の独立した分散領域、
2)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粒子表面上の独立した分散領域、
3)バルクもしくは粒子状形態にある前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金表面上の触媒性物質の連続もしくは半連続層、または
4)それらの組み合わせ、
の形態にある水素吸蔵材料。
【請求項2】
前記マグネシウムベースの水素吸蔵合金が少なくとも80原子パーセントのマグネシウムを含む、請求項1のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項3】
前記マグネシウムベースの水素吸蔵合金がアルミニウムをさらに含む、請求項2のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項4】
前記水素脱離触媒が鉄を含む、請求項1のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項5】
前記水素脱離触媒がB、Cu、Pd、V、Ni、C、Mn、Zr、Rb、Nb、Ti、UおよびScからなる群より選択される1種類又は1種類以上の元素をさらに含む、請求項4のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項6】
前記水素脱離触媒が前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金のバルク中に触媒性物質の独立した分散領域を含む、請求項1のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項7】
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および前記水素脱離触媒の粉末を混合する工程と、
b)混合された粉末を圧縮して緊密体とする工程と、
c)前記緊密体を450℃ないし600℃の温度で焼結/焼鈍する工程と、
によって形成される、請求項6のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項8】
前記焼結/焼鈍を少なくとも10時間行う、請求項7のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項9】
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および前記水素脱離触媒の粉末の溶融物を保護雰囲気中で形成する工程と、
b)前記溶融物を攪拌して溶融マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金中での前記水素脱離触媒の不溶性粉末の懸濁を確実なものとする工程と、
c)懸濁された前記水素脱離触媒の不溶性粉末が固相のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金内に十分に分布するように攪拌された溶融物を急冷する工程と、
によって形成される、請求項6のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項10】
前記水素脱離触媒が前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粒子表面上の独立した分散領域を含む、請求項1のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項11】
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および前記水素脱離触媒の粉末を混合する工程と、
b)前記水素脱離触媒の粉末粒子が前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末粒子の少なくとも表面に埋め込まれるように、磨砕機において前記混合物を機械的に合金化する工程と、
によって形成される、請求項10のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項12】
ヘプタンおよび炭素粉末を破砕助剤として前記混合物の機械的合金化の際に用いる、請求項10のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項13】
前記水素脱離触媒が、バルクもしくは粒子状形態にある前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金表面上の触媒性材料の連続もしくは半連続層を含む、請求項1のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項14】
a)バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を生成する工程と、
b)触媒性物質の連続もしくは半連続層を前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の表面上に、蒸着、電気分解コーティングもしくは無電解コーティングによって被着させる工程と、
によって形成される、請求項13のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項15】
触媒性物質の連続もしくは半連続層を前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金表面上に被着させる工程が前記触媒性物質の蒸発を含む、請求項14のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項16】
前記触媒性物質の連続もしくは半連続層が約100オングストロームの厚みである、請求項13のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項17】
前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を生成する工程が、バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金内に独立した分散領域の状態で配置されている水素脱離触媒を有するバルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を提供することを含む、請求項14のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項18】
前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を生成工程が、
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および前記水素脱離触媒の粉末を混合し、
b)混合された粉末を圧縮して緊密体とし、
c)前記緊密体を450℃ないし600℃の温度で焼結/焼鈍する、
ことを含む、請求項17のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項19】
前記焼結/焼鈍を少なくとも10時間行う、請求項18のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項20】
前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を生成する工程が、
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の粉末および前記水素脱離触媒の粉末の溶融物を保護雰囲気中で形成し、
b)前記溶融物を攪拌して溶融マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金中での前記水素脱離触媒の不溶性粉末の懸濁を確実なものとし、
c)懸濁された前記水素脱離触媒の不溶性粉末が固相のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金内に十分に分布するように溶融物を急冷する、
ことを含む、請求項17のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項21】
前記バルクもしくは粒子状のマグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金を生成する工程が、
a)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金の溶融物を形成し、
b)前記マグネシウムもしくはマグネシウムベースの水素吸蔵合金をバルク急冷法によって急冷する、
ことを含む、請求項14のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【請求項22】
前記バルク急冷法が、溶融紡糸法、遠心噴霧法、ガス噴霧法、または水噴霧法を含む、請求項21のマグネシウムベースの水素吸蔵材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2007−522917(P2007−522917A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543883(P2006−543883)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/040227
【国際公開番号】WO2005/060547
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504455182)テキサコ オヴォニック ハイドロゲン システムズ エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/040227
【国際公開番号】WO2005/060547
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(504455182)テキサコ オヴォニック ハイドロゲン システムズ エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】
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