N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び/又はその塩の結晶変態
本発明は、薬剤学的な薬剤として使用可能である、N−(α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニル−スルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び/又はその塩の新規の結晶変態、並びにこれらの新規の結晶変態を含有している薬剤学的組成物及び薬剤学的な使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤学的な薬剤として使用可能である、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び/又はその塩の新規の結晶変態、並びにこれらの新規の結晶変態を含有する薬剤学的組成物及び薬剤学的使用に関する。
【0002】
化学名N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニル−ピペラジドのもとで知られている化合物から出発する本発明の新規の結晶変態は、セリンプロテアーゼであるウロキナーゼの有効な阻害剤であり、故に、ウロキナーゼ随伴疾患、例えば腫瘍及び転移の処置、特に経口使用に特に適している。遊離塩基形はWX−671と呼ばれる。
【0003】
ウロキナーゼ型のプラスミノゲン活性剤(uPA)は、腫瘍浸潤及び転移形成の際に鍵となる役割を果たす(Schmitt他, J. Obst. Gyn. 21 (1995), 151-165)。uPAは、多種多様な種類の腫瘍細胞中で発現され(Kwaan, Cancer Metastasis Rev. 11 (1992), 291-311)、かつ腫瘍随伴uPAレセプター(uPAR)に結合し、そこでプラスミノゲンからプラスミンへの活性化が行われる。プラスミンは、細胞外マトリックス(ECM)、例えばフィブロネクチン、ラミニン及びIV型コラーゲンの多様な成分を分解することができる。プラスミンは、その他の幾つかのECM分解酵素、特にマトリックス−メタロプロテイナーゼも活性化させる。多量の腫瘍随伴uPAは、癌患者にとってより高い転移リスクと相関する(Harbeck他, Cancer Research 62 (2002), 4617-4622)。故に、uPAのタンパク分解活性の阻害は、抗転移療法の適切な出発点である。
【0004】
幾つかの活性かつ選択的なウロキナーゼ阻害剤は既に記載されている。例えば、ベンズアミジン型のuPA阻害剤は、欧州特許(EP)第1 098 651号明細書に、アリールグアニジン型のuPA阻害剤は国際公開(WO)第01/96286号パンフレット及び国際公開(WO)第02/14349号パンフレットに開示されている。これらの合成阻害剤の共通の特徴は、アミジノ基又は/及びグアニジノ基からなる塩基性残基である。
【0005】
国際公開(WO)第03/072559号パンフレットには、ウロキナーゼ阻害物質N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−アミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの合成の際に、中間生成物としてのWX−671が開示されている。国際公開(WO)第03/072559号パンフレットには、遊離塩基として又は酸と共に形成される塩の形での化合物WX−671の製造方法も開示されている。特殊な塩、特に硫酸水素塩形及び硫酸塩形は、記載されていない。結晶化の方法は同様に記載されていない。記載された方法の場合に、遊離塩基WX−671は、熱的に容易に不安定でありかつ吸湿性であり、かつ不適なろ過特性及び乾燥特性を有する無定形生成物として得られる。この理由から、この生成物は大規模での製造に不適であり、かつとりわけ熱及び湿気から保護されなければならない。
【0006】
国際公開(WO)第2004/011449号パンフレットには、同様に、塩として、例えば鉱酸の塩として又は有機酸の塩として、存在していてもよいフェニルアラニン誘導体の製造方法が開示されている。製造される化合物の1つがWX−671である。ここでも、開示された化合物が安定な結晶形でも得られることができることについての示唆は与えられていない。
【0007】
PCT/EP2004/005682には、ウロキナーゼ阻害物質としてのヒドロキシアミン化合物及びヒドロキシグアニジン化合物が開示されている。開示された医薬は、作用物質としてとりわけWX−671を含み、かつ作用物質が塩として、例えば塩酸塩又は硫酸水素塩として又は有機酸の塩として、存在しうる。そこで特許の保護が請求された医薬については、経口投与の際のより良好な生物学的利用能が主張されていた。しかしながら、この刊行物も、挙げられたウロキナーゼ阻害物質の硫酸塩化合物を開示しない。
【0008】
本発明の課題は、技術水準からの化合物に比較して有利な性質を有する、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び/又はその塩の結晶変態を提供することであった。
【0009】
本発明は、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド及び/又はその塩の結晶変態を提供する。
【0010】
本発明によれば、前記のウロキナーゼ阻害剤の新規の結晶変態が見出され、これらの変態は無定形のこの化合物に比較して決定的な利点を有する。本発明による結晶変態は、取扱い、貯蔵及び調剤において意義のある利点を有する。
【0011】
意外なことに、これまで不可能であった、化合物N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド及び/又はその塩が結晶化されることができ、故に、それらの性質が技術水準からの無定形化合物よりも優れている。例えば、本発明による結晶変態は、極めて僅かな吸湿性の点で優れている。これらの結晶変態は、そのうえ、分解に対して極めて安定であり、故により長期の貯蔵にも適している。そのうえ、本発明による結晶変態は、改善されたろ過特性及び乾燥特性を有する。さらにまた、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド及びその塩の結晶変態は医薬組成物における調剤に理想的に適している。
【0012】
本明細書において使用されるように、WX−671は、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジドの遊離塩基を意味する。WX−671.1は、前記化合物の硫酸水素塩を呼び、かつWX−671.2は、前記化合物の硫酸塩を呼ぶ。
【0013】
冒頭に既に説明されたように、WX−671及びその塩の本発明による変態は本質的に結晶質である。これまで、そのようなヒドロキシアミジン化合物を結晶形で製造することは不可能であった。技術水準において既に開示された化合物も、結晶化可能ではなかった。
【0014】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド及びその塩の本発明による結晶変態は、好ましくは硫酸水素塩(WX−671.1)及び硫酸塩(WX−671.2)、並びに遊離塩基(WX−671)を含む。
【0015】
本発明による結晶変態は、遊離塩基と塩との混合物、又は塩の混合物も含んでいてよい。好ましくは、本発明による結晶変態は、遊離塩基又は硫酸塩又は硫酸水素塩のその都度いずれかを結晶変態として含む。特に好ましくは、本発明による結晶変態は、それぞれの結晶変態の単結晶を含む。
【0016】
本発明による結晶変態は、レントゲン回折法により調べられ、かつ好ましくは、第3.1表(硫酸塩WX−671.2)、第7.1表(硫酸水素塩WX−671.1)及び第11.1表(遊離塩基)に示されたピークを有する。本発明による結晶変態は、本質的には、図5(硫酸塩WX−671.2)、図13(硫酸水素塩WX−671.1)及び図19(遊離塩基)に示されたピークを有する。
【0017】
例において以下に記載されているように、レントゲン回折法−分析に加えて、熱分析検査も実施した(示差走査熱量測定法、DSC及び熱重量測定法、TGA)。その場合に、硫酸水素塩WX−671.1の結晶化合物が約175℃〜195℃の温度で、より正確には約185℃からの範囲内で(2Kmin-1の加熱速度の場合)分解することがわかった。
【0018】
WX−671.2の本発明による結晶変態は、好ましくはN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸アニオンを約2:1のモル比で有し、その際にこの比は1.5〜2.5:1の範囲にわたっていてよい。好ましくは約1.25〜2.25:1、より好ましくは1.1〜2.1:1の比及び最も好ましくは約2:1の比である。
【0019】
WX−671.2の結晶変態は、好ましくは、その都度2つの分子N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び1つの硫酸アニオンからなる単位を有し、その際にこれらの単位のそれぞれにおいて、2つの分子N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドが同じ配座で存在していてよく、又はこれらは好ましくは異なる配座で存在していてもよい。
【0020】
さらに付加的に、WX−671.2の結晶変態は、好ましくは水和物として、特に三水和物として存在し、すなわち塩1molあたり水約3molが存在している。この比も、もちろん少し変動してもよく、すなわち塩1molあたり、平均して水が2.5〜3.5mol、好ましくは2.25〜3.25mol、より好ましくは2.2〜3.2mol、より好ましくは2.1〜3.1mol存在していてよい。
【0021】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの硫酸塩は、結晶性から独立して、熱力学的に安定な化合物であることがわかった。故に、本発明は、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド硫酸塩の新規化合物も提供する。結晶質ではない硫酸塩WX−671.2も、以下に結晶変態について記載されたように医薬の製造に適している。
【0022】
WX−671.1の結晶変態において、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸水素アニオンは、好ましくは、0.5〜1.5:1、より好ましくは0.8〜1.2:1、より好ましくは0.9〜1.1:1、より好ましくは約1:1のモル比で存在している。
【0023】
WX−671.1の結晶変態は水和物として存在していてもよい。
【0024】
WX−671(遊離塩基)の結晶変態は、好ましくは、水和物として存在しない。しかしながら水和形は可能である。
【0025】
本発明による結晶変態は、場合により、適した薬剤学的な助剤及び/又は担持剤を併用して、医薬の製造に使用されることができる。その場合に、その他の作用物質、例えばその他のウロキナーゼ阻害剤、例えば抗体及び/又はペプチド、しかしまた化学療法剤及び細胞増殖抑止剤又は/及びその他の細胞増殖抑制性及び細胞毒性の作用物質との組合せでの投与が可能である。
【0026】
本発明による結晶変態は、それゆえ、適した医薬製剤中に、例えば錠剤、糖衣錠、カプセル剤、トローチ剤、粉末、シロップ、懸濁剤、溶液等として調製されることができる。特に、経口投与のための医薬製剤が好ましい。
【0027】
本発明による結晶変態は、uPA又は/及びウロキナーゼ−プラスミノゲン−アクチベーターレセプター(uPAR)の病的な過剰発現が随伴している病気の制圧に適している。この変態は、例えば、悪性腫瘍の成長又は/及び拡大並びに腫瘍の転移を高効率で阻害することができる。これらの例は、腫瘍疾患、例えば乳癌、肺癌、膀胱癌、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌及び軟部組織肉腫、特に高い転移速度が随伴する腫瘍である。
【0028】
本発明による変態は、単独で又はその他の生理学的に有効な物質、例えば放射線療法剤と、又は細胞毒性又は/及び細胞増殖抑制性の薬剤と、例えば化学療法剤、例えばシスプラチン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、タキソール誘導体、又は/及び例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、エピドフィロトキシン(Epidophyllotoxine)及びビンカアルカロイドの群から選択されるその他の化学療法による薬剤との組合せで使用されることができる。同様に、放射線療法又は/及び外科手術との組合せが可能である。
【0029】
さらに、本発明による結晶変態は、その他のuPA随伴疾患のためにも有効である。そのような疾患の例は、例えば肺高血圧及び/又は心臓疾患(例えば国際公開(WO)第02/00248号パンフレット)、胃腸疾患、例えば炎症性腸疾患、前癌性大腸腺腫、炎症性疾患、例えば敗血症性関節炎、又はその他の疾患、例えば骨粗鬆症、コレステリン種、皮膚疾患及び眼疾患、例えば加齢黄斑変性症(AMD)、並びにウイルス感染又は細菌感染であり、その際に欧州特許出願公開(EP-A)第0 691 350号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第1 182 207号明細書及び米国特許(US)第5,712,291号明細書に挙げられた疾患に明らかに関連付けられている。
【0030】
本発明のさらなる対象は、本発明による結晶変態を作用物質として含む医薬である。そのような医薬は、場合によりさらに付加的に薬剤学的に適合性の担体及び/又は助剤を含んでいてよい。この医薬は、ヒト又は動物の場合に局所に、経口に、直腸に又は非経口的に、例えば静脈内に、皮下に、筋肉内に、腹膜内に、又はまた、舌下に、鼻に及び/又は吸入により投与されることができる。適した投与形は、例えば錠剤、糖衣錠、カプセル剤、トローチ剤、ペレット、粉末、坐剤、溶液、シロップ、乳濁剤、懸濁剤、リポソーム、吸入スプレー又は経皮系、例えばプラスターである。特に好ましい医薬組成物は経口投与に、例えば徐放リタード(Slow-Release-Retard)としても、適している。
【0031】
さらに、本発明は、ウロキナーゼ及び/又はウロキナーゼ−レセプターの病的な過剰発現が随伴している病気の制圧のための薬剤学的組成物を製造するための本発明による結晶変態の使用を提供する。特に、本発明による作用物質を有するそのような医薬は、腫瘍処置及び/又は腫瘍予防のため及び特に転移形成の処置又は予防のためにも、一次腫瘍及び二次腫瘍の処置のために適している。
【0032】
本発明により、生物、特にヒトの場合のウロキナーゼ阻害という可能性が、有効量の本発明による変態の投与によって提供される。投与すべき用量は、処置すべき疾患の種類及び重症度に依存する。例えば、一日量は、体重あたり作用物質0.01〜100mg/kgの範囲内、より好ましくは0.1〜50mg/kg、より好ましくは0.5〜40mg/kg、より好ましくは1〜30mg/kg、より好ましくは5〜25mg/kgである。
【0033】
本発明のさらなる対象は、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド−塩の本質的に結晶質の変態を製造する方法であって、次の工程を含む:
(a)化合物N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド又はその塩の1つを準備する工程、
(b)工程(a)からの前記化合物又はその塩を、結晶変態の形成に適した溶剤中に溶解又は/及び懸濁させる工程、
(c)結晶変態を分離する工程。
【0034】
意外なことに、WX−671、WX−671.1及びWX−671.2の結晶変態が単純な方法で結晶形で製造されることができることが明らかになった。好ましくは、出発物質として、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの塩、特に好ましくは硫酸水素塩が使用される。
【0035】
しかしながら、別の塩化合物、例えばベシラート塩、塩酸塩、メシラート塩、酒石酸塩等も、結晶変態の形成のための出発化合物として考慮に値する。
【0036】
工程(b)のための溶剤として、好ましくは、多様な有機溶剤が使用されることができる。例えば水並びに多様なアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びそれらの異性体、例えばイソプロパノール、イソブタノール等、並びにさらにグリコール、エーテル、グリコールエーテル、アセトン等が適している。適した別の溶剤は、テトラヒドロフラン(THF)及びアセトニトリルである。溶剤として特にアセトン及びアセトニトリルが好ましい。
【0037】
しかしながら、水も溶剤として使用されることができる。特に再結晶のためには(工程(d)参照)、好ましくは水が使用される。
【0038】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの塩の結晶変態を製造するために、出発物質として遊離塩基が使用される場合には、さらに付加的に、工程(b)において適した塩又は酸が、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドのそれぞれの所望の塩を得るために、添加される。
【0039】
本発明による方法は、工程(c)からの結晶化合物の再結晶のさらなる工程(d)も含んでいてよい。このことは特に、WX−671.1からのWX−671.2の製造にあてはまる。この場合に、好ましくは、工程(c)において生じた結晶変態は再び適した溶剤又は溶剤の混合物中で再結晶される。ここでも、溶剤として前記の溶剤が使用されることができる。特に水が好ましい、もしくは好ましくは所望の結晶変態の形成に十分な含量の水を伴って再結晶される。水は特に、例えばWX−671.2の場合、水和物(WX−671.2の場合に三水和物)が形成される場合に好ましい。
【0040】
本発明は、以下の図及び例によって、より詳細に説明される。
【0041】
実施例
例1
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジドの多様な塩の製造
WX−671 6.0gをアセトン50ml中に溶解させることにより塩を製造した。使用される酸を希釈せずに25%過剰量で添加し、室温で2時間撹拌した。
【0042】
結晶化条件
第1.1表
【表1】
【0043】
第二工程において、前記塩を7日間にわたり適した溶剤中に懸濁させ、ろ過し、室温で乾燥させた。
【0044】
結晶性の検査
方法:レントゲン回折法(XRD);顕微鏡法
第1.2表
【表2】
【0045】
吸湿性の検査
方法:貯蔵 1週間/85%相対湿度;熱重量分析(TGA)
第1.3表
【表3】
【0046】
例2
WX−671.2(硫酸塩)の結晶化及び単結晶 レントゲン構造分析
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニル−ピペラジド−硫酸塩の新規の形は、化合物WX−671の硫酸水素塩(WX−671.1)を水中に懸濁させ、かつ形成される結晶化合物を分離することによって得られる。
【0047】
結晶質のWX−671.2は、2つの異なる種類で得られた:
a)WX−671.1約50mgを水約0.5ml中に懸濁させた。懸濁液を室温で放置した。6日後に懸濁液をろ過し、残留物を室温で空気中で乾燥させた。
【0048】
b)WX−671.1約0.2gを水約2ml中に懸濁させた。懸濁液を25℃で振とうした。3日後に残留物をろ別し、WX−671.2の結晶を室温で空気中で乾燥させた。
【0049】
この際に製造された結晶質材料(WX−671.2)から、レントゲン構造を決定した。この際に単結晶も得られた。
【0050】
結晶構造決定を、Proteum CCD二次元検出器、CuKα線を有するFR591回転アノード、モノクロメーターとしてMontelミラー及びKryoflex低温装置(T=90K)を備えたBruker-Nonius回折計を使用して実施した。全範囲 データ確認 ω及びφスキャン。使用したプログラム:データ収集Proteum V.1.37 (Bruker-Nonius 2002)、データ換算Saint+バージョン6.22 (Bruker-Nonius 2001)及び吸収補正SADABS V.2.03 (2002)。結晶構造分解能は、SHELXTLバージョン6.10 (Sheldrick, Universitaet Goettingen)において実現されるような直接法を用いて達成され、かつXP-プログラムを用いて視覚化した。
【0051】
微分フーリエ合成により、欠けている原子の位置を決定し、原子リストに付け加えた。測定される全ての強度についてのF2への"最小二乗リファインメント(Least squares refinement)"を、プログラムSHELXTLバージョン6.10 (Sheldrick, Universitaet Goettingen, 2000)を用いて行った。全ての非水素原子を、"異方性変位パラメーター"を含めながら"リファイン"した。
【0052】
第2.1表
【表4】
【0053】
レントゲン構造分析の結果は、図1〜図3及び図7〜図9に示されている。
【0054】
例3
WX−671.2(硫酸塩)のレントゲン回折法
レントゲン回折図形を、位置敏感型検出器(PSD、5゜)、ゲルマニウム[1 1 1]−一次モノクロメーター及びCuKα 1.6kWセラミックレントゲン管(1.5406Å)を備えたデバイシェラー回折計STOE STADI-Pを使用して得た。使用したプログラム:Stoe WinXpow, バージョン2.03 (2003)。
【0055】
第3.1表
WX−671.2のレントゲン回折法−ピークリスト
【表5】
【0056】
例4
WX−671.1(硫酸水素塩)の再結晶
WX−671.1を、異なる極性の溶剤(イソプロパノール、エタノール、メタノール)中に溶解させた。溶液をろ過し、四分し、溶剤を異なる速度で除去した。
【0057】
WX−671.1は、その結晶形(変態A)及び2つのメソ相B及びCで存在する。このWX−671.1は約185℃(変態A及びメソ相B)もしくは156℃(メソ相C)から分解する。変態Aの結晶性の検出のために、レントゲン構造決定を実施する。変態Aは、室温で熱力学的に安定な形である。
【0058】
例5
WX−671.1(硫酸水素塩)の示差走査熱量測定法(DSC)及び熱重量測定法(TGA)
この例において、示差走査熱量測定法(DSC)及び熱重量測定法(TGA)によるサーモグラムを作製した。図10は、25℃で1週間イソプロパノール中で撹拌したWX−671.1(変態A)のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラムを示す。このWX−671.1は約180℃から分解する(DSCサーモグラム中の発熱ピーク、相応する温度範囲内のTGAサーモグラム中の質量損失)。分解温度は加熱速度に著しく依存しており、かつDSC熱量計中で2Kmin-1の加熱速度で決定した。描かれるDSC総括測定を、2Kmin-1の加熱速度で記録した。分解はより高い温度で相応して記録される。
【0059】
150℃で、著しい質量損失は記録されない。分解ピークの前の弱くはっきりした吸熱作用は、部分的な溶融又は部分的な変換により引き起こされうるものであった。
【0060】
図11は、WX−671.1(メソ相B)のこのスクリーニングに使用される試料のDSCサーモグラムを示す。変態A及びメソ相Bは熱分析的に同一である。メソ相Aは、イソプロパノール(室温/冷蔵庫)及びエタノール(室温)から得られた。
【0061】
図12は、室温でのメタノールからの結晶化試験による作用物質のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラムを示す(メソ相C)。この作用物質は約156℃から分解する(加熱速度2Kmin-1)。175℃までに4.5%の質量損失が記録される。DSCサーモグラム中で、分解ピークの前の吸熱作用が欠けている。この形は、変態A及びメソ相Bよりもあまり規則的でない状態で存在する。この形は、メタノール(室温、冷蔵庫)及びエタノール(冷蔵庫)からの結晶化試験後に生じている。これらの試料の場合に、4.5〜4.8質量%の質量損失が記録された。作用物質分子あたりの2つの分子水の化学量論値の質量損失は4.7%である。しかしながらこの形は水和物ではない。
【0062】
例6
WX−671.1(硫酸水素塩)の熱顕微鏡法
WX−671.1の試料から、熱顕微鏡写真を撮影した(示されていない)。特定の外見を示さないアグロメレートが観察された。作用物質は、気泡を形成しながら約197℃から分解する。DSC熱量計中で観察される分解温度の相違は、異なる加熱速度によって成立する。溶剤から、WX−671.1は特定されない形で得られる。作用物質は、結晶質及びメソモルフィックな物質に特徴的であるような複屈折を部分的に示す。
【0063】
例7
WX−671.1(硫酸水素塩)のレントゲン回折法
変態Aのレントゲン回折図形(図13)は、結晶相に特徴的な、より大きい2θ角での多数のシャープなピークのパターンを示す。結晶相の存在の確認のためには、別の検査、例えばレントゲン構造分析が実施される。
【0064】
メソ相Bのレントゲン回折図形(図14)において、約5゜の2θ角でのシャープなピーク及び約8゜〜約25゜の低い強度での別の反射が観察された。ピークの位置及び数は、変態Aのそれらに類似する。小さいθ角で存在しているピークは、分子の長距離秩序の存在を示唆し、低い強度を有するピークは、短距離秩序の存在を証明する。メソ相Bが、結晶形でも無定形でもなく、おそらくメソ相として存在することが推定されうる。
【0065】
メソ相Cのレントゲン回折図形(図15)は同様に、メソモルフィック化合物に特徴的なパターン:小さい2θ角での強いピークを示す。レントゲン回折図形は、メソ相Cが結晶相ではなく、かつ存在する長距離秩序のために無定形相に分類されることができないことを証明する。メソ相Bのレントゲン回折図形との比較は、メソ相Cがおそらくより低い秩序度を有する相を形成することを示す。それについての指摘は、メソ相Bの場合に、約8゜〜約25゜の2θ角の間での著しくはっきりしており、かつより集中的な反射である。
【0066】
室温でのイソプロパノール中の1週間の撹拌により、メソ相Bは変態Aへ変換される。水:エタノール(1:1)中の撹拌によっては変わらない。機械的な応力(きねつき、9kbarでのプレス)によっても同様に変換されない。
【0067】
第7.1表
WX−671.1(硫酸水素塩)の結晶変態のレントゲン回折法−ピークリスト
【表6】
【0068】
例8
WX−671(遊離塩基)の再結晶
作用物質WX−671を、熱分析的に(DSC、TGA)、レントゲン回折法により並びに多形への有機溶剤からの結晶化により調べる。WX−671は変態(変態A)で結晶化する。作用物質は、極めて僅かな結晶化傾向を示す。
【0069】
変態Aは室温で熱力学的に安定な形である。WX−671の多形及び擬多形の最終的な評価は、多形研究の実施後にはじめて可能である。
【0070】
WX−671を、異なる極性の溶剤(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール)中に溶解させた。溶液を、ろ過し、四分し、作用物質を異なる速度で結晶化させた。室温での乾燥後に、サーモグラム(DSC、TGA)及びレントゲン回折図形を記録した。
【0071】
多形スクリーニングに使用される出発物質は、主に結晶形で製造されることができた。結晶化は、アセトニトリルから冷凍庫中で約−18℃で成功した。
【0072】
例9
WX−671(遊離塩基)の示差走査熱量測定法(DSC)及び熱重量測定法(TGA)
図16は、無定形出発物質のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラムを示す。大部分のその他の調べた試料のDSC/TGAサーモグラムと同じように、この出発物質は45℃〜85℃の範囲内の熱的作用を示す。多形スクリーニングの範囲内で、この熱的作用は割り当てられることができなかった。これはガラス転移でありうるものであった。このことから、約190℃の融点を有する結晶形が逆に推論される。この物質は、加熱速度に依存して約155℃から分解する。この理由から、結晶試料(GBA 190903-8c)の融点は算出されることができない。故に、無定形物質及び結晶物質のサーモグラムは広範囲に及んで同一である(図16及び図17)。
【0073】
例10
WX−671(遊離塩基)の顕微鏡法
アセトニトリルから、角柱(Prismen)の形で冷凍庫中でWX−671を結晶化させる(図18)。他の溶剤から、作用物質は結晶化しないか又は極めて僅かな含分が結晶化するに過ぎず、溶融物からは結晶化しない。
【0074】
例11
WX−671(遊離塩基)のレントゲン回折法
図19は、冷凍庫中でのアセトニトリルからの結晶化後の作用物質のレントゲン回折図形を示す(変態A)。
【0075】
第11.1表
WX−671(遊離塩基)のレントゲン回折法−ピークリスト
試料を、アセトニトリルから冷凍庫中で結晶化させた。
【0076】
【表7】
【0077】
例12
WX−671(遊離塩基)の湿気収着
図20は、22℃でのWX−671の水蒸気の収着等温線を示す。無定形作用物質は、相対湿度0%から相対湿度95%まで連続的に水を吸収する。乾燥の際に、この水は再び放出される。等温線のたいてい点で、それぞれの保持時間内で平衡状態に達しなかった。試料質量は増大したか、もしくはさらに低下した。この試験において水和物形成の示唆は得られなかった。
【0078】
例13
WX−671(遊離塩基)の安定性
室温でのジイソプロピルエーテル及びエタノール/水(1:1)中の1週間の撹拌により、作用物質は結晶化しないかもしくは極めて僅かな含分が変態Aへ結晶化するに過ぎない。この作用物質はその他の多形に変換されない。機械的応力(きねつき、9kbarでのプレス)により同様に変換されず、結晶性がさらに低下するだけである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】分子A(WX−671.2)についてのラベル表示を有するOrtepプロット(50%)。
【図2】分子B(WX−671.2)についてのラベル表示を有するOrtepプロット(50%)。
【図3】2つの分子WX−671.2及び硫酸アニオンからなる単位の単位格子内の独立した分子を示す図。
【図4】WX−671.2の単結晶データを使用してシミュレーションしたレントゲン回折図形。
【図5】WX−671.2の実験によるレントゲン回折図形。
【図6a】WX−671.2についての図4及び図5によるシミュレーションしたレントゲン回折パターン及び実験によるレントゲン回折パターンのオーバーラップを示す図。
【図6b】水中撹拌後のWX−671.2のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図7】WX−671.2の結晶データ及び構造リファインメント。
【図8】WX−671.2の結合距離[Å]及び角度[゜]。
【図9】WX−671.2のねじれ角[゜]。
【図10】WX−671.1(変態A)のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図11】WX−671.1の試料(メソ相B)のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図12】WX−671.1のメソ相CのDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図13】WX−671.1の変態Aのレントゲン回折図形。
【図14】WX−671.1のメソ相Bのレントゲン回折図形。
【図15】WX−671.1のメソ相Cのレントゲン回折図形。
【図16】遊離塩基WX−671の無定形出発物質のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図17】アセトニトリルから冷凍庫中で結晶化させた遊離塩基WX−671の試料のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図18】冷凍庫中でのアセトニトリルから結晶化後の遊離塩基WX−671の顕微鏡写真。
【図19】冷凍庫中でのアセトニトリルからの結晶化後の遊離塩基WX−671のレントゲン回折図形。
【図20】22℃での遊離塩基WX−671の水蒸気の収着等温線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤学的な薬剤として使用可能である、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び/又はその塩の新規の結晶変態、並びにこれらの新規の結晶変態を含有する薬剤学的組成物及び薬剤学的使用に関する。
【0002】
化学名N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニル−ピペラジドのもとで知られている化合物から出発する本発明の新規の結晶変態は、セリンプロテアーゼであるウロキナーゼの有効な阻害剤であり、故に、ウロキナーゼ随伴疾患、例えば腫瘍及び転移の処置、特に経口使用に特に適している。遊離塩基形はWX−671と呼ばれる。
【0003】
ウロキナーゼ型のプラスミノゲン活性剤(uPA)は、腫瘍浸潤及び転移形成の際に鍵となる役割を果たす(Schmitt他, J. Obst. Gyn. 21 (1995), 151-165)。uPAは、多種多様な種類の腫瘍細胞中で発現され(Kwaan, Cancer Metastasis Rev. 11 (1992), 291-311)、かつ腫瘍随伴uPAレセプター(uPAR)に結合し、そこでプラスミノゲンからプラスミンへの活性化が行われる。プラスミンは、細胞外マトリックス(ECM)、例えばフィブロネクチン、ラミニン及びIV型コラーゲンの多様な成分を分解することができる。プラスミンは、その他の幾つかのECM分解酵素、特にマトリックス−メタロプロテイナーゼも活性化させる。多量の腫瘍随伴uPAは、癌患者にとってより高い転移リスクと相関する(Harbeck他, Cancer Research 62 (2002), 4617-4622)。故に、uPAのタンパク分解活性の阻害は、抗転移療法の適切な出発点である。
【0004】
幾つかの活性かつ選択的なウロキナーゼ阻害剤は既に記載されている。例えば、ベンズアミジン型のuPA阻害剤は、欧州特許(EP)第1 098 651号明細書に、アリールグアニジン型のuPA阻害剤は国際公開(WO)第01/96286号パンフレット及び国際公開(WO)第02/14349号パンフレットに開示されている。これらの合成阻害剤の共通の特徴は、アミジノ基又は/及びグアニジノ基からなる塩基性残基である。
【0005】
国際公開(WO)第03/072559号パンフレットには、ウロキナーゼ阻害物質N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−アミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの合成の際に、中間生成物としてのWX−671が開示されている。国際公開(WO)第03/072559号パンフレットには、遊離塩基として又は酸と共に形成される塩の形での化合物WX−671の製造方法も開示されている。特殊な塩、特に硫酸水素塩形及び硫酸塩形は、記載されていない。結晶化の方法は同様に記載されていない。記載された方法の場合に、遊離塩基WX−671は、熱的に容易に不安定でありかつ吸湿性であり、かつ不適なろ過特性及び乾燥特性を有する無定形生成物として得られる。この理由から、この生成物は大規模での製造に不適であり、かつとりわけ熱及び湿気から保護されなければならない。
【0006】
国際公開(WO)第2004/011449号パンフレットには、同様に、塩として、例えば鉱酸の塩として又は有機酸の塩として、存在していてもよいフェニルアラニン誘導体の製造方法が開示されている。製造される化合物の1つがWX−671である。ここでも、開示された化合物が安定な結晶形でも得られることができることについての示唆は与えられていない。
【0007】
PCT/EP2004/005682には、ウロキナーゼ阻害物質としてのヒドロキシアミン化合物及びヒドロキシグアニジン化合物が開示されている。開示された医薬は、作用物質としてとりわけWX−671を含み、かつ作用物質が塩として、例えば塩酸塩又は硫酸水素塩として又は有機酸の塩として、存在しうる。そこで特許の保護が請求された医薬については、経口投与の際のより良好な生物学的利用能が主張されていた。しかしながら、この刊行物も、挙げられたウロキナーゼ阻害物質の硫酸塩化合物を開示しない。
【0008】
本発明の課題は、技術水準からの化合物に比較して有利な性質を有する、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び/又はその塩の結晶変態を提供することであった。
【0009】
本発明は、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド及び/又はその塩の結晶変態を提供する。
【0010】
本発明によれば、前記のウロキナーゼ阻害剤の新規の結晶変態が見出され、これらの変態は無定形のこの化合物に比較して決定的な利点を有する。本発明による結晶変態は、取扱い、貯蔵及び調剤において意義のある利点を有する。
【0011】
意外なことに、これまで不可能であった、化合物N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド及び/又はその塩が結晶化されることができ、故に、それらの性質が技術水準からの無定形化合物よりも優れている。例えば、本発明による結晶変態は、極めて僅かな吸湿性の点で優れている。これらの結晶変態は、そのうえ、分解に対して極めて安定であり、故により長期の貯蔵にも適している。そのうえ、本発明による結晶変態は、改善されたろ過特性及び乾燥特性を有する。さらにまた、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド及びその塩の結晶変態は医薬組成物における調剤に理想的に適している。
【0012】
本明細書において使用されるように、WX−671は、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジドの遊離塩基を意味する。WX−671.1は、前記化合物の硫酸水素塩を呼び、かつWX−671.2は、前記化合物の硫酸塩を呼ぶ。
【0013】
冒頭に既に説明されたように、WX−671及びその塩の本発明による変態は本質的に結晶質である。これまで、そのようなヒドロキシアミジン化合物を結晶形で製造することは不可能であった。技術水準において既に開示された化合物も、結晶化可能ではなかった。
【0014】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド及びその塩の本発明による結晶変態は、好ましくは硫酸水素塩(WX−671.1)及び硫酸塩(WX−671.2)、並びに遊離塩基(WX−671)を含む。
【0015】
本発明による結晶変態は、遊離塩基と塩との混合物、又は塩の混合物も含んでいてよい。好ましくは、本発明による結晶変態は、遊離塩基又は硫酸塩又は硫酸水素塩のその都度いずれかを結晶変態として含む。特に好ましくは、本発明による結晶変態は、それぞれの結晶変態の単結晶を含む。
【0016】
本発明による結晶変態は、レントゲン回折法により調べられ、かつ好ましくは、第3.1表(硫酸塩WX−671.2)、第7.1表(硫酸水素塩WX−671.1)及び第11.1表(遊離塩基)に示されたピークを有する。本発明による結晶変態は、本質的には、図5(硫酸塩WX−671.2)、図13(硫酸水素塩WX−671.1)及び図19(遊離塩基)に示されたピークを有する。
【0017】
例において以下に記載されているように、レントゲン回折法−分析に加えて、熱分析検査も実施した(示差走査熱量測定法、DSC及び熱重量測定法、TGA)。その場合に、硫酸水素塩WX−671.1の結晶化合物が約175℃〜195℃の温度で、より正確には約185℃からの範囲内で(2Kmin-1の加熱速度の場合)分解することがわかった。
【0018】
WX−671.2の本発明による結晶変態は、好ましくはN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸アニオンを約2:1のモル比で有し、その際にこの比は1.5〜2.5:1の範囲にわたっていてよい。好ましくは約1.25〜2.25:1、より好ましくは1.1〜2.1:1の比及び最も好ましくは約2:1の比である。
【0019】
WX−671.2の結晶変態は、好ましくは、その都度2つの分子N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び1つの硫酸アニオンからなる単位を有し、その際にこれらの単位のそれぞれにおいて、2つの分子N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドが同じ配座で存在していてよく、又はこれらは好ましくは異なる配座で存在していてもよい。
【0020】
さらに付加的に、WX−671.2の結晶変態は、好ましくは水和物として、特に三水和物として存在し、すなわち塩1molあたり水約3molが存在している。この比も、もちろん少し変動してもよく、すなわち塩1molあたり、平均して水が2.5〜3.5mol、好ましくは2.25〜3.25mol、より好ましくは2.2〜3.2mol、より好ましくは2.1〜3.1mol存在していてよい。
【0021】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの硫酸塩は、結晶性から独立して、熱力学的に安定な化合物であることがわかった。故に、本発明は、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド硫酸塩の新規化合物も提供する。結晶質ではない硫酸塩WX−671.2も、以下に結晶変態について記載されたように医薬の製造に適している。
【0022】
WX−671.1の結晶変態において、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸水素アニオンは、好ましくは、0.5〜1.5:1、より好ましくは0.8〜1.2:1、より好ましくは0.9〜1.1:1、より好ましくは約1:1のモル比で存在している。
【0023】
WX−671.1の結晶変態は水和物として存在していてもよい。
【0024】
WX−671(遊離塩基)の結晶変態は、好ましくは、水和物として存在しない。しかしながら水和形は可能である。
【0025】
本発明による結晶変態は、場合により、適した薬剤学的な助剤及び/又は担持剤を併用して、医薬の製造に使用されることができる。その場合に、その他の作用物質、例えばその他のウロキナーゼ阻害剤、例えば抗体及び/又はペプチド、しかしまた化学療法剤及び細胞増殖抑止剤又は/及びその他の細胞増殖抑制性及び細胞毒性の作用物質との組合せでの投与が可能である。
【0026】
本発明による結晶変態は、それゆえ、適した医薬製剤中に、例えば錠剤、糖衣錠、カプセル剤、トローチ剤、粉末、シロップ、懸濁剤、溶液等として調製されることができる。特に、経口投与のための医薬製剤が好ましい。
【0027】
本発明による結晶変態は、uPA又は/及びウロキナーゼ−プラスミノゲン−アクチベーターレセプター(uPAR)の病的な過剰発現が随伴している病気の制圧に適している。この変態は、例えば、悪性腫瘍の成長又は/及び拡大並びに腫瘍の転移を高効率で阻害することができる。これらの例は、腫瘍疾患、例えば乳癌、肺癌、膀胱癌、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、腎臓癌、前立腺癌及び軟部組織肉腫、特に高い転移速度が随伴する腫瘍である。
【0028】
本発明による変態は、単独で又はその他の生理学的に有効な物質、例えば放射線療法剤と、又は細胞毒性又は/及び細胞増殖抑制性の薬剤と、例えば化学療法剤、例えばシスプラチン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、タキソール誘導体、又は/及び例えばアルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、エピドフィロトキシン(Epidophyllotoxine)及びビンカアルカロイドの群から選択されるその他の化学療法による薬剤との組合せで使用されることができる。同様に、放射線療法又は/及び外科手術との組合せが可能である。
【0029】
さらに、本発明による結晶変態は、その他のuPA随伴疾患のためにも有効である。そのような疾患の例は、例えば肺高血圧及び/又は心臓疾患(例えば国際公開(WO)第02/00248号パンフレット)、胃腸疾患、例えば炎症性腸疾患、前癌性大腸腺腫、炎症性疾患、例えば敗血症性関節炎、又はその他の疾患、例えば骨粗鬆症、コレステリン種、皮膚疾患及び眼疾患、例えば加齢黄斑変性症(AMD)、並びにウイルス感染又は細菌感染であり、その際に欧州特許出願公開(EP-A)第0 691 350号明細書、欧州特許出願公開(EP-A)第1 182 207号明細書及び米国特許(US)第5,712,291号明細書に挙げられた疾患に明らかに関連付けられている。
【0030】
本発明のさらなる対象は、本発明による結晶変態を作用物質として含む医薬である。そのような医薬は、場合によりさらに付加的に薬剤学的に適合性の担体及び/又は助剤を含んでいてよい。この医薬は、ヒト又は動物の場合に局所に、経口に、直腸に又は非経口的に、例えば静脈内に、皮下に、筋肉内に、腹膜内に、又はまた、舌下に、鼻に及び/又は吸入により投与されることができる。適した投与形は、例えば錠剤、糖衣錠、カプセル剤、トローチ剤、ペレット、粉末、坐剤、溶液、シロップ、乳濁剤、懸濁剤、リポソーム、吸入スプレー又は経皮系、例えばプラスターである。特に好ましい医薬組成物は経口投与に、例えば徐放リタード(Slow-Release-Retard)としても、適している。
【0031】
さらに、本発明は、ウロキナーゼ及び/又はウロキナーゼ−レセプターの病的な過剰発現が随伴している病気の制圧のための薬剤学的組成物を製造するための本発明による結晶変態の使用を提供する。特に、本発明による作用物質を有するそのような医薬は、腫瘍処置及び/又は腫瘍予防のため及び特に転移形成の処置又は予防のためにも、一次腫瘍及び二次腫瘍の処置のために適している。
【0032】
本発明により、生物、特にヒトの場合のウロキナーゼ阻害という可能性が、有効量の本発明による変態の投与によって提供される。投与すべき用量は、処置すべき疾患の種類及び重症度に依存する。例えば、一日量は、体重あたり作用物質0.01〜100mg/kgの範囲内、より好ましくは0.1〜50mg/kg、より好ましくは0.5〜40mg/kg、より好ましくは1〜30mg/kg、より好ましくは5〜25mg/kgである。
【0033】
本発明のさらなる対象は、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド−塩の本質的に結晶質の変態を製造する方法であって、次の工程を含む:
(a)化合物N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド又はその塩の1つを準備する工程、
(b)工程(a)からの前記化合物又はその塩を、結晶変態の形成に適した溶剤中に溶解又は/及び懸濁させる工程、
(c)結晶変態を分離する工程。
【0034】
意外なことに、WX−671、WX−671.1及びWX−671.2の結晶変態が単純な方法で結晶形で製造されることができることが明らかになった。好ましくは、出発物質として、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの塩、特に好ましくは硫酸水素塩が使用される。
【0035】
しかしながら、別の塩化合物、例えばベシラート塩、塩酸塩、メシラート塩、酒石酸塩等も、結晶変態の形成のための出発化合物として考慮に値する。
【0036】
工程(b)のための溶剤として、好ましくは、多様な有機溶剤が使用されることができる。例えば水並びに多様なアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びそれらの異性体、例えばイソプロパノール、イソブタノール等、並びにさらにグリコール、エーテル、グリコールエーテル、アセトン等が適している。適した別の溶剤は、テトラヒドロフラン(THF)及びアセトニトリルである。溶剤として特にアセトン及びアセトニトリルが好ましい。
【0037】
しかしながら、水も溶剤として使用されることができる。特に再結晶のためには(工程(d)参照)、好ましくは水が使用される。
【0038】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの塩の結晶変態を製造するために、出発物質として遊離塩基が使用される場合には、さらに付加的に、工程(b)において適した塩又は酸が、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドのそれぞれの所望の塩を得るために、添加される。
【0039】
本発明による方法は、工程(c)からの結晶化合物の再結晶のさらなる工程(d)も含んでいてよい。このことは特に、WX−671.1からのWX−671.2の製造にあてはまる。この場合に、好ましくは、工程(c)において生じた結晶変態は再び適した溶剤又は溶剤の混合物中で再結晶される。ここでも、溶剤として前記の溶剤が使用されることができる。特に水が好ましい、もしくは好ましくは所望の結晶変態の形成に十分な含量の水を伴って再結晶される。水は特に、例えばWX−671.2の場合、水和物(WX−671.2の場合に三水和物)が形成される場合に好ましい。
【0040】
本発明は、以下の図及び例によって、より詳細に説明される。
【0041】
実施例
例1
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジドの多様な塩の製造
WX−671 6.0gをアセトン50ml中に溶解させることにより塩を製造した。使用される酸を希釈せずに25%過剰量で添加し、室温で2時間撹拌した。
【0042】
結晶化条件
第1.1表
【表1】
【0043】
第二工程において、前記塩を7日間にわたり適した溶剤中に懸濁させ、ろ過し、室温で乾燥させた。
【0044】
結晶性の検査
方法:レントゲン回折法(XRD);顕微鏡法
第1.2表
【表2】
【0045】
吸湿性の検査
方法:貯蔵 1週間/85%相対湿度;熱重量分析(TGA)
第1.3表
【表3】
【0046】
例2
WX−671.2(硫酸塩)の結晶化及び単結晶 レントゲン構造分析
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニル−ピペラジド−硫酸塩の新規の形は、化合物WX−671の硫酸水素塩(WX−671.1)を水中に懸濁させ、かつ形成される結晶化合物を分離することによって得られる。
【0047】
結晶質のWX−671.2は、2つの異なる種類で得られた:
a)WX−671.1約50mgを水約0.5ml中に懸濁させた。懸濁液を室温で放置した。6日後に懸濁液をろ過し、残留物を室温で空気中で乾燥させた。
【0048】
b)WX−671.1約0.2gを水約2ml中に懸濁させた。懸濁液を25℃で振とうした。3日後に残留物をろ別し、WX−671.2の結晶を室温で空気中で乾燥させた。
【0049】
この際に製造された結晶質材料(WX−671.2)から、レントゲン構造を決定した。この際に単結晶も得られた。
【0050】
結晶構造決定を、Proteum CCD二次元検出器、CuKα線を有するFR591回転アノード、モノクロメーターとしてMontelミラー及びKryoflex低温装置(T=90K)を備えたBruker-Nonius回折計を使用して実施した。全範囲 データ確認 ω及びφスキャン。使用したプログラム:データ収集Proteum V.1.37 (Bruker-Nonius 2002)、データ換算Saint+バージョン6.22 (Bruker-Nonius 2001)及び吸収補正SADABS V.2.03 (2002)。結晶構造分解能は、SHELXTLバージョン6.10 (Sheldrick, Universitaet Goettingen)において実現されるような直接法を用いて達成され、かつXP-プログラムを用いて視覚化した。
【0051】
微分フーリエ合成により、欠けている原子の位置を決定し、原子リストに付け加えた。測定される全ての強度についてのF2への"最小二乗リファインメント(Least squares refinement)"を、プログラムSHELXTLバージョン6.10 (Sheldrick, Universitaet Goettingen, 2000)を用いて行った。全ての非水素原子を、"異方性変位パラメーター"を含めながら"リファイン"した。
【0052】
第2.1表
【表4】
【0053】
レントゲン構造分析の結果は、図1〜図3及び図7〜図9に示されている。
【0054】
例3
WX−671.2(硫酸塩)のレントゲン回折法
レントゲン回折図形を、位置敏感型検出器(PSD、5゜)、ゲルマニウム[1 1 1]−一次モノクロメーター及びCuKα 1.6kWセラミックレントゲン管(1.5406Å)を備えたデバイシェラー回折計STOE STADI-Pを使用して得た。使用したプログラム:Stoe WinXpow, バージョン2.03 (2003)。
【0055】
第3.1表
WX−671.2のレントゲン回折法−ピークリスト
【表5】
【0056】
例4
WX−671.1(硫酸水素塩)の再結晶
WX−671.1を、異なる極性の溶剤(イソプロパノール、エタノール、メタノール)中に溶解させた。溶液をろ過し、四分し、溶剤を異なる速度で除去した。
【0057】
WX−671.1は、その結晶形(変態A)及び2つのメソ相B及びCで存在する。このWX−671.1は約185℃(変態A及びメソ相B)もしくは156℃(メソ相C)から分解する。変態Aの結晶性の検出のために、レントゲン構造決定を実施する。変態Aは、室温で熱力学的に安定な形である。
【0058】
例5
WX−671.1(硫酸水素塩)の示差走査熱量測定法(DSC)及び熱重量測定法(TGA)
この例において、示差走査熱量測定法(DSC)及び熱重量測定法(TGA)によるサーモグラムを作製した。図10は、25℃で1週間イソプロパノール中で撹拌したWX−671.1(変態A)のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラムを示す。このWX−671.1は約180℃から分解する(DSCサーモグラム中の発熱ピーク、相応する温度範囲内のTGAサーモグラム中の質量損失)。分解温度は加熱速度に著しく依存しており、かつDSC熱量計中で2Kmin-1の加熱速度で決定した。描かれるDSC総括測定を、2Kmin-1の加熱速度で記録した。分解はより高い温度で相応して記録される。
【0059】
150℃で、著しい質量損失は記録されない。分解ピークの前の弱くはっきりした吸熱作用は、部分的な溶融又は部分的な変換により引き起こされうるものであった。
【0060】
図11は、WX−671.1(メソ相B)のこのスクリーニングに使用される試料のDSCサーモグラムを示す。変態A及びメソ相Bは熱分析的に同一である。メソ相Aは、イソプロパノール(室温/冷蔵庫)及びエタノール(室温)から得られた。
【0061】
図12は、室温でのメタノールからの結晶化試験による作用物質のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラムを示す(メソ相C)。この作用物質は約156℃から分解する(加熱速度2Kmin-1)。175℃までに4.5%の質量損失が記録される。DSCサーモグラム中で、分解ピークの前の吸熱作用が欠けている。この形は、変態A及びメソ相Bよりもあまり規則的でない状態で存在する。この形は、メタノール(室温、冷蔵庫)及びエタノール(冷蔵庫)からの結晶化試験後に生じている。これらの試料の場合に、4.5〜4.8質量%の質量損失が記録された。作用物質分子あたりの2つの分子水の化学量論値の質量損失は4.7%である。しかしながらこの形は水和物ではない。
【0062】
例6
WX−671.1(硫酸水素塩)の熱顕微鏡法
WX−671.1の試料から、熱顕微鏡写真を撮影した(示されていない)。特定の外見を示さないアグロメレートが観察された。作用物質は、気泡を形成しながら約197℃から分解する。DSC熱量計中で観察される分解温度の相違は、異なる加熱速度によって成立する。溶剤から、WX−671.1は特定されない形で得られる。作用物質は、結晶質及びメソモルフィックな物質に特徴的であるような複屈折を部分的に示す。
【0063】
例7
WX−671.1(硫酸水素塩)のレントゲン回折法
変態Aのレントゲン回折図形(図13)は、結晶相に特徴的な、より大きい2θ角での多数のシャープなピークのパターンを示す。結晶相の存在の確認のためには、別の検査、例えばレントゲン構造分析が実施される。
【0064】
メソ相Bのレントゲン回折図形(図14)において、約5゜の2θ角でのシャープなピーク及び約8゜〜約25゜の低い強度での別の反射が観察された。ピークの位置及び数は、変態Aのそれらに類似する。小さいθ角で存在しているピークは、分子の長距離秩序の存在を示唆し、低い強度を有するピークは、短距離秩序の存在を証明する。メソ相Bが、結晶形でも無定形でもなく、おそらくメソ相として存在することが推定されうる。
【0065】
メソ相Cのレントゲン回折図形(図15)は同様に、メソモルフィック化合物に特徴的なパターン:小さい2θ角での強いピークを示す。レントゲン回折図形は、メソ相Cが結晶相ではなく、かつ存在する長距離秩序のために無定形相に分類されることができないことを証明する。メソ相Bのレントゲン回折図形との比較は、メソ相Cがおそらくより低い秩序度を有する相を形成することを示す。それについての指摘は、メソ相Bの場合に、約8゜〜約25゜の2θ角の間での著しくはっきりしており、かつより集中的な反射である。
【0066】
室温でのイソプロパノール中の1週間の撹拌により、メソ相Bは変態Aへ変換される。水:エタノール(1:1)中の撹拌によっては変わらない。機械的な応力(きねつき、9kbarでのプレス)によっても同様に変換されない。
【0067】
第7.1表
WX−671.1(硫酸水素塩)の結晶変態のレントゲン回折法−ピークリスト
【表6】
【0068】
例8
WX−671(遊離塩基)の再結晶
作用物質WX−671を、熱分析的に(DSC、TGA)、レントゲン回折法により並びに多形への有機溶剤からの結晶化により調べる。WX−671は変態(変態A)で結晶化する。作用物質は、極めて僅かな結晶化傾向を示す。
【0069】
変態Aは室温で熱力学的に安定な形である。WX−671の多形及び擬多形の最終的な評価は、多形研究の実施後にはじめて可能である。
【0070】
WX−671を、異なる極性の溶剤(テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メタノール)中に溶解させた。溶液を、ろ過し、四分し、作用物質を異なる速度で結晶化させた。室温での乾燥後に、サーモグラム(DSC、TGA)及びレントゲン回折図形を記録した。
【0071】
多形スクリーニングに使用される出発物質は、主に結晶形で製造されることができた。結晶化は、アセトニトリルから冷凍庫中で約−18℃で成功した。
【0072】
例9
WX−671(遊離塩基)の示差走査熱量測定法(DSC)及び熱重量測定法(TGA)
図16は、無定形出発物質のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラムを示す。大部分のその他の調べた試料のDSC/TGAサーモグラムと同じように、この出発物質は45℃〜85℃の範囲内の熱的作用を示す。多形スクリーニングの範囲内で、この熱的作用は割り当てられることができなかった。これはガラス転移でありうるものであった。このことから、約190℃の融点を有する結晶形が逆に推論される。この物質は、加熱速度に依存して約155℃から分解する。この理由から、結晶試料(GBA 190903-8c)の融点は算出されることができない。故に、無定形物質及び結晶物質のサーモグラムは広範囲に及んで同一である(図16及び図17)。
【0073】
例10
WX−671(遊離塩基)の顕微鏡法
アセトニトリルから、角柱(Prismen)の形で冷凍庫中でWX−671を結晶化させる(図18)。他の溶剤から、作用物質は結晶化しないか又は極めて僅かな含分が結晶化するに過ぎず、溶融物からは結晶化しない。
【0074】
例11
WX−671(遊離塩基)のレントゲン回折法
図19は、冷凍庫中でのアセトニトリルからの結晶化後の作用物質のレントゲン回折図形を示す(変態A)。
【0075】
第11.1表
WX−671(遊離塩基)のレントゲン回折法−ピークリスト
試料を、アセトニトリルから冷凍庫中で結晶化させた。
【0076】
【表7】
【0077】
例12
WX−671(遊離塩基)の湿気収着
図20は、22℃でのWX−671の水蒸気の収着等温線を示す。無定形作用物質は、相対湿度0%から相対湿度95%まで連続的に水を吸収する。乾燥の際に、この水は再び放出される。等温線のたいてい点で、それぞれの保持時間内で平衡状態に達しなかった。試料質量は増大したか、もしくはさらに低下した。この試験において水和物形成の示唆は得られなかった。
【0078】
例13
WX−671(遊離塩基)の安定性
室温でのジイソプロピルエーテル及びエタノール/水(1:1)中の1週間の撹拌により、作用物質は結晶化しないかもしくは極めて僅かな含分が変態Aへ結晶化するに過ぎない。この作用物質はその他の多形に変換されない。機械的応力(きねつき、9kbarでのプレス)により同様に変換されず、結晶性がさらに低下するだけである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】分子A(WX−671.2)についてのラベル表示を有するOrtepプロット(50%)。
【図2】分子B(WX−671.2)についてのラベル表示を有するOrtepプロット(50%)。
【図3】2つの分子WX−671.2及び硫酸アニオンからなる単位の単位格子内の独立した分子を示す図。
【図4】WX−671.2の単結晶データを使用してシミュレーションしたレントゲン回折図形。
【図5】WX−671.2の実験によるレントゲン回折図形。
【図6a】WX−671.2についての図4及び図5によるシミュレーションしたレントゲン回折パターン及び実験によるレントゲン回折パターンのオーバーラップを示す図。
【図6b】水中撹拌後のWX−671.2のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図7】WX−671.2の結晶データ及び構造リファインメント。
【図8】WX−671.2の結合距離[Å]及び角度[゜]。
【図9】WX−671.2のねじれ角[゜]。
【図10】WX−671.1(変態A)のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図11】WX−671.1の試料(メソ相B)のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図12】WX−671.1のメソ相CのDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図13】WX−671.1の変態Aのレントゲン回折図形。
【図14】WX−671.1のメソ相Bのレントゲン回折図形。
【図15】WX−671.1のメソ相Cのレントゲン回折図形。
【図16】遊離塩基WX−671の無定形出発物質のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図17】アセトニトリルから冷凍庫中で結晶化させた遊離塩基WX−671の試料のDSCサーモグラム及びTGAサーモグラム。
【図18】冷凍庫中でのアセトニトリルから結晶化後の遊離塩基WX−671の顕微鏡写真。
【図19】冷凍庫中でのアセトニトリルからの結晶化後の遊離塩基WX−671のレントゲン回折図形。
【図20】22℃での遊離塩基WX−671の水蒸気の収着等温線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び/又はその塩の結晶変態。
【請求項2】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸塩の結晶変態を含む、請求項1記載の結晶変態。
【請求項3】
単結晶のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸塩を含む、請求項2記載の結晶変態。
【請求項4】
本質的に、レントゲン回折法−分析による次のピーク:
3.7
10.3
12.1
13.8
16.4
19.2
22.2
を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸塩の結晶変態。
【請求項5】
本質的に、レントゲン回折法−分析により図5による測定されたピークを有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸塩の結晶変態。
【請求項6】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸水素塩の結晶変態を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項7】
単結晶のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸水素塩を含む、請求項6記載の結晶変態。
【請求項8】
本質的に、レントゲン回折法−分析による次のピーク:
4.3
10.1
20.2
21.4
24.0
を有する、請求項1及び6から7までのいずれか1項記載のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸水素塩の結晶変態。
【請求項9】
本質的に、レントゲン回折法−分析により図13による測定されたピークを有する、請求項1及び6から8までのいずれか1項記載のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸水素塩の結晶変態。
【請求項10】
175℃〜195℃の温度から分解(DSC、加熱速度2Kmin-1)を示す、請求項1及び6から9までのいずれか1項記載のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸水素塩の結晶変態。
【請求項11】
遊離塩基としてのN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの結晶変態を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項12】
単結晶の遊離塩基としてのN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの結晶変態を含む、請求項11記載の結晶変態。
【請求項13】
本質的に、レントゲン回折法−分析による次のピーク:
3.2
6.4
10.2
19.7
を有する、請求項1及び11から12までのいずれか1項記載の遊離塩基としてのN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの結晶変態。
【請求項14】
本質的に、レントゲン回折法−分析により図19による測定されたピークを有する、請求項1及び11から13までのいずれか1項記載の遊離塩基としてのN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの結晶変態。
【請求項15】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸アニオンを1.5〜2.5:1のモル比で有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項16】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸アニオンを2:1のモル比で有する、請求項15記載の結晶変態。
【請求項17】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸水素アニオンを0.5〜1.5:1のモル比で有する、請求項1から16までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項18】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸水素アニオンを1:1のモル比で有する、請求項17記載の結晶変態。
【請求項19】
その都度約2つの分子N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸アニオンからなる単位を含む、請求項1から18までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項20】
2つの分子N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドが単位中で異なる配座で存在する、請求項19記載の結晶変態。
【請求項21】
塩1molあたり水約3molを有する、請求項1から20までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項22】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド及び/又はその塩の本質的に結晶質の変態の製造方法であって、次の工程:
(a)化合物N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド又はその塩の1つを準備する工程、
(b)工程(a)からの化合物又はその塩を、結晶変態の形成に適した溶剤中に溶解及び/又は懸濁させる工程、
(c)結晶変態を分離する工程
を含む、製造方法。
【請求項23】
さらに付加的な工程:
(d)適した溶剤又は溶剤の混合物から、工程(c)からの結晶変態を再結晶させる工程
を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
工程(a)において、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド−硫酸水素塩を準備する、請求項22又は23記載の方法。
【請求項25】
場合により薬剤学的に適合性の担持剤又は/及び助剤と併用した、請求項1から21までのいずれか1項記載の結晶変態を作用物質として含有する医薬。
【請求項26】
経口に、鼻に、吸入により、直腸に又は/及び非経口的に投与可能な薬剤である、請求項25記載の医薬。
【請求項27】
ウロキナーゼ及び/又はウロキナーゼレセプターの病的な過剰発現が随伴されている病気の制圧のための薬剤学的組成物を製造するための、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び/又はそれらの塩の結晶変態の使用。
【請求項28】
腫瘍処置及び/又は腫瘍予防のための請求項27記載の使用。
【請求項29】
転移形成の処置又は予防のための請求項28記載の使用。
【請求項30】
一次腫瘍の処置のための請求項28記載の使用。
【請求項31】
経口投与可能な組成物が製造される、請求項27から30までのいずれか1項記載の使用。
【請求項32】
組成物が、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、ペレット、粉末、坐剤、溶液、シロップ、乳濁剤、リポソーム又は/及び懸濁剤の形で製造される、請求項31記載の使用。
【請求項1】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び/又はその塩の結晶変態。
【請求項2】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸塩の結晶変態を含む、請求項1記載の結晶変態。
【請求項3】
単結晶のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸塩を含む、請求項2記載の結晶変態。
【請求項4】
本質的に、レントゲン回折法−分析による次のピーク:
3.7
10.3
12.1
13.8
16.4
19.2
22.2
を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸塩の結晶変態。
【請求項5】
本質的に、レントゲン回折法−分析により図5による測定されたピークを有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸塩の結晶変態。
【請求項6】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸水素塩の結晶変態を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項7】
単結晶のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸水素塩を含む、請求項6記載の結晶変態。
【請求項8】
本質的に、レントゲン回折法−分析による次のピーク:
4.3
10.1
20.2
21.4
24.0
を有する、請求項1及び6から7までのいずれか1項記載のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸水素塩の結晶変態。
【請求項9】
本質的に、レントゲン回折法−分析により図13による測定されたピークを有する、請求項1及び6から8までのいずれか1項記載のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸水素塩の結晶変態。
【請求項10】
175℃〜195℃の温度から分解(DSC、加熱速度2Kmin-1)を示す、請求項1及び6から9までのいずれか1項記載のN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド−硫酸水素塩の結晶変態。
【請求項11】
遊離塩基としてのN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの結晶変態を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項12】
単結晶の遊離塩基としてのN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの結晶変態を含む、請求項11記載の結晶変態。
【請求項13】
本質的に、レントゲン回折法−分析による次のピーク:
3.2
6.4
10.2
19.7
を有する、請求項1及び11から12までのいずれか1項記載の遊離塩基としてのN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの結晶変態。
【請求項14】
本質的に、レントゲン回折法−分析により図19による測定されたピークを有する、請求項1及び11から13までのいずれか1項記載の遊離塩基としてのN−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドの結晶変態。
【請求項15】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸アニオンを1.5〜2.5:1のモル比で有する、請求項1から14までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項16】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸アニオンを2:1のモル比で有する、請求項15記載の結晶変態。
【請求項17】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸水素アニオンを0.5〜1.5:1のモル比で有する、請求項1から16までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項18】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸水素アニオンを1:1のモル比で有する、請求項17記載の結晶変態。
【請求項19】
その都度約2つの分子N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び硫酸アニオンからなる単位を含む、請求項1から18までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項20】
2つの分子N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジドが単位中で異なる配座で存在する、請求項19記載の結晶変態。
【請求項21】
塩1molあたり水約3molを有する、請求項1から20までのいずれか1項記載の結晶変態。
【請求項22】
N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド及び/又はその塩の本質的に結晶質の変態の製造方法であって、次の工程:
(a)化合物N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド又はその塩の1つを準備する工程、
(b)工程(a)からの化合物又はその塩を、結晶変態の形成に適した溶剤中に溶解及び/又は懸濁させる工程、
(c)結晶変態を分離する工程
を含む、製造方法。
【請求項23】
さらに付加的な工程:
(d)適した溶剤又は溶剤の混合物から、工程(c)からの結晶変態を再結晶させる工程
を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
工程(a)において、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシ−カルボニルピペラジド−硫酸水素塩を準備する、請求項22又は23記載の方法。
【請求項25】
場合により薬剤学的に適合性の担持剤又は/及び助剤と併用した、請求項1から21までのいずれか1項記載の結晶変態を作用物質として含有する医薬。
【請求項26】
経口に、鼻に、吸入により、直腸に又は/及び非経口的に投与可能な薬剤である、請求項25記載の医薬。
【請求項27】
ウロキナーゼ及び/又はウロキナーゼレセプターの病的な過剰発現が随伴されている病気の制圧のための薬剤学的組成物を製造するための、N−α−(2,4,6−トリイソプロピルフェニルスルホニル)−3−ヒドロキシアミジノ−(L)−フェニルアラニン−4−エトキシカルボニルピペラジド及び/又はそれらの塩の結晶変態の使用。
【請求項28】
腫瘍処置及び/又は腫瘍予防のための請求項27記載の使用。
【請求項29】
転移形成の処置又は予防のための請求項28記載の使用。
【請求項30】
一次腫瘍の処置のための請求項28記載の使用。
【請求項31】
経口投与可能な組成物が製造される、請求項27から30までのいずれか1項記載の使用。
【請求項32】
組成物が、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、ペレット、粉末、坐剤、溶液、シロップ、乳濁剤、リポソーム又は/及び懸濁剤の形で製造される、請求項31記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8−1】
【図8−2】
【図8−3】
【図8−4】
【図8−5】
【図8−6】
【図8−7】
【図9−1】
【図9−2】
【図9−3】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8−1】
【図8−2】
【図8−3】
【図8−4】
【図8−5】
【図8−6】
【図8−7】
【図9−1】
【図9−2】
【図9−3】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2008−521764(P2008−521764A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541847(P2007−541847)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012589
【国際公開番号】WO2006/056448
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(501022343)ヴィレックス アクチェンゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】Wilex AG
【住所又は居所原語表記】Grillparzer Strasse 16, D−81675 Muenchen,Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012589
【国際公開番号】WO2006/056448
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(501022343)ヴィレックス アクチェンゲゼルシャフト (9)
【氏名又は名称原語表記】Wilex AG
【住所又は居所原語表記】Grillparzer Strasse 16, D−81675 Muenchen,Germany
【Fターム(参考)】
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