説明

N−ビニルカルボン酸アミドの水溶性ポリマーの水性分散液、その製造及びその使用

【課題】水溶性ポリマーの水性分散液の提供。
【解決手段】N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミドの水溶性ポリマーの水性分散液において、分散液が、水100質量部に対して、
(A)水溶性でN−ビニルホルムアミド単位及び/又はN−ビニルアセトアミド単位を含有し、50nm〜2μmの粒度を有するポリマー5〜80質量部及び
(B)水溶性ポリマー(A)と水溶液中で不相溶性である少なくとも1つの高分子分散剤1〜50質量部
を含有していることを特徴とする、N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミドの水溶性ポリマーの水性分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−ビニルカルボン酸アミドの水溶性ポリマーの水性分散液、その製造法及び製紙の際のその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第0183466号明細書からは、水溶性ポリマーの水性分散液の製造法が公知であり、その際、カチオン性モノマー、例えば塩化ベンジルで四級化されたジアルキルアミノアクリルアミドを、塩水溶液中で高分子分散剤の存在で重合される。分散剤として、例えばポリオール、ポリアルキレンエーテル、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩及びポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のアルカリ金属塩が使用される。重合媒体中の塩濃度は、好ましくは15質量%から飽和限界までである。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4430069号明細書からは、紙用のサイズ剤として使用されるカチオン性ポリマーの溶剤不含の水性分散液が公知である。ポリマーは、必要に応じて他のモノマーとの混合物として、カチオン性モノマーの溶液、分散液又はバルクでのラジカル重合によって製造される。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19532229号明細書からは、低粘度の水溶性ポリマー分散液の製造法が公知である。前記方法の際に、水溶性モノマーを、水溶液中で、架橋可能なN−メチロール化合物との混合物で、少なくとも1つの高分子分散剤の存在で重合され、その際、生じるポリマーは分散剤と不相溶性である。こうして得られた分散液は凝集剤として使用される。
【0005】
国際特許出願公表第97/30094号明細書からは、水溶性のカチオン性ビニルポリマーの分散液の製造法が公知であり、その際、水溶性でカチオン性の疎水性に変性されたビニルモノマー又は水溶性で非イオン性の疎水性ビニルモノマーを、水溶性でカチオン性及び/又は水溶性で中性のビニルモノマーと、塩水溶液中で水溶性開始剤の使用下に、グラフト化ベースとしてのポリエチレンオキシド及び側鎖としてのグラフトされるカチオン性ビニルモノマーを含むグラフト共重合体からなる安定剤の存在で重合される。国際特許出願公表第97/34933号明細書は、アニオン性で水溶性のポリマー安定剤の添加下で飽和塩溶液中でのモノマーの重合によって製造された、高分子量でノニオン性又はアニオン性のポリマーの水性分散液に関する。好ましくは使用されたモノマーは、アクリルアミド及びアクリル酸である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0183466号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4430069号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19532229号明細書
【特許文献4】国際特許出願公表第97/30094号明細書
【特許文献5】国際特許出願公表第97/34933号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、水溶性ポリマーの水性分散液を提供することであり、前記分散液は、実質的に安定化させる無機塩を含まない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この対象は、本発明によれば、N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミドの水溶性ポリマーの水性分散液によって、その際、前記分散液が、水100質量部に対して、次のもの:
(A)水溶性でN−ビニルホルムアミド単位及び/又はN−ビニルアセトアミド単位を有し、50nm〜2μmの粒度を有するポリマー5〜80質量部及び
(B)水溶液中の水溶性ポリマー(A)と不相溶性である少なくとも1つの高分子分散剤1〜50質量部
を含有する場合に達成されることが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0009】
水溶性ポリマーの水性分散液は、水100質量部に対して、好ましくは次のもの:
(A)N−ビニルホルムアミド単位及び/又はN−ビニルアセトアミド単位を含有する水溶性ポリマー10〜50質量部及び
(B)水溶液中の水溶性ポリマー(A)と不相溶性である少なくとも1つの高分子分散剤5〜40質量部
を含有する。
【0010】
特に好ましい分散液は、成分(A)としてN−ビニルホルムアミドのホモポリマーを含むものである。N−ビニルホルムアミド単位及びN−ビニルアセトアミド単位は、次の式:
【化1】

[式中、RがH又はCHである]を用いて特徴づけられることができる。
【0011】
N−ビニルホルムアミド単位及び/又はN−ビニルアセトアミド単位を含有する水溶性ポリマーは1〜80質量%、好ましくは5〜30質量%の別のモノマーと共重合されていてよい。そのようなモノマーは、例えば、3〜8個の炭素原子を有するモノエチレン系不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ジメタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メチレンマロン酸、アリル酢酸、ビニル酢酸、クロトン酸、フマル酸、メサコン酸及びイタコン酸である。モノマーのこの群から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又は前記カルボン酸の混合物が好ましくは使用される。モノエチレン系不飽和カルボン酸は、共重合の際に、遊離酸の形で又はそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩の形で使用される。遊離カルボン酸の中和のためには、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、気体アンモニア又はアンモニア水、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ジエチレントリアミン又はテトラエチレンペンタミンが、好ましくは使用される。
【0012】
別の適したコモノマーは、例えば、上記のカルボン酸のエステル、アミド及びニトリル、例えばアクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシイソブチル、メタクリル酸ヒドロキシイソブチル、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ジメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル及びカルボン酸並びに鉱酸との最後に挙げた塩基性モノマーの塩並びに塩基性(メタ)アクリレートの四級化生成物である。
【0013】
他の適した共重合可能なモノマーは、更に、アクリルアミドグリコール酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリル酸3−スルホプロピル、メタクリル酸3−スルホプロピル及びアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸及びリン酸基を含有するモノマー、例えばビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びアクリルアミドメチルプロパンホスホン酸である。酸基を含有するモノマーは、遊離酸基の形で及び塩基で部分的に又は完全に中和された形で重合に使用されてよい。
【0014】
別の適した共重合可能な化合物は、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−ビニル−4−メチルイミダゾール、ジアリルアンモニウムクロリド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びスチレンである。もちろん前記モノマーの混合物を使うことも可能である。単独で重合された場合に前記モノマーは水溶性ポリマーを与えず、N−ビニルホルムアミド単位及び/又はN−ビニルアセトアミド単位を含有するポリマーは、重合された単位として、共重合体がなお水溶性である量でのみこれらのコモノマーを含有する。油中水型ポリマーエマルジョンに対比して、有機溶剤は本発明による水性分散液に必要ではない。冒頭で述べた先行技術から明らかであるように、無機塩の濃厚溶液は、水溶性ポリマーの水性分散液の製造のための常用の媒体である。結果として、公知の分散液は、極めて高い塩負荷を有する。水溶性ポリマーの本発明による水性分散液は、それに反して実質的に塩不含である。N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミドの水溶性ポリマーの水性分散液は、好ましくは高いポリマー含有量を有し、かつ好ましくは低粘度と組み合わせて高いモル質量を有するポリマーを含有する。N−ビニルホルムアミド単位及び/又はN−ビニルアセトアミド単位を含有するポリマーのモル質量は、例えば、5×10〜1×10、好ましくは2×10〜1×10である。
【0015】
水性分散液中の成分(B)として付加的に含有される高分子分散剤は、上記の水溶性ポリマー(A)と組成が異なる。高分子分散剤(B)は水溶性ポリマー(A)と不相溶性である。高分子分散剤の平均モル質量は、好ましくは1000〜500000、殊に1500〜50000である。
【0016】
高分子分散剤は、エーテル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン基、硫酸エステル基、アミノ基、イミノ基、t−アミノ基及び/又は第四アンモニウム基から選択される少なくとも1つの官能基を含有している。そのような化合物の例は、次のものである:カルボキシメチルセルロース、水溶性デンプン及びデンプン誘導体、デンプンエステル、デンプンキサントゲネート、デンプンアセテート、デキストラン、ポリアルキレングリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルスクシンイミド及びポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド。
【0017】
N−ビニルカルボン酸アミドの水溶性ポリマーの水性分散液が製紙の際に使用される場合には、これらの分散液の製造に、製紙の際に更なるプロセス改善特性又は生成物改善特性を有する高分子分散剤が好ましくは使用される。こうして、製紙業者に組合せ溶液を提供することが可能である。例えば、N−ビニルカルボン酸アミドの水溶性ポリマーの水性分散液の分散剤(B)は、固定剤、湿潤紙力増強剤又は乾燥紙力増強剤、無機固体用の分散剤、ローラーからのより良好な剥離のための付着防止組成物又は剥離剤として製紙の際に使用される化合物から選択されることができ、この結果、紙料の柔らかく粘着質の不純物が脆い析出物に変換される。製紙の際にもちろん、本発明による水性分散液と共に更なる加工助剤を使用することも可能である。例えば、歩留まり活性なポリアクリルアミド又はポリエチレンオキシドが付加的に、本発明によるポリ−N−ビニルホルムアミドの水性分散液と使用されてもよい。
【0018】
水性分散液は、水100質量部に対して少なくとも1つの上記の高分子分散剤(B)1〜50質量部、好ましくは5〜40質量部を含有する。
【0019】
本発明の対象は、それに加えて、N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミドの水溶性ポリマーの水性分散液の製造法であり、その際、
(A)水溶性ポリマーを一緒に形成する他のモノエチレン系不飽和モノマーを有していてもよい、N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミド5〜80質量部、及び
(B)モノマー(A)から形成されるポリマーと水溶液中で不相溶性である少なくとも1つの高分子分散剤1〜50質量部を、
水100質量部中で、30〜95℃の温度で、使用されるモノマーに対して、重合条件下でラジカルを形成する重合開始剤0.001〜5.0質量%の存在でラジカル重合にかける。
【0020】
本方法の好ましい実施例において、
(A)水溶性ポリマーを一緒に形成する他のモノエチレン系不飽和モノマーを有していてもよい、N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミド10〜50質量部、及び
(B)モノマー(A)から形成されるポリマーと水溶液中で不相溶性である少なくとも1つの高分子分散剤5〜40質量部を、
水100質量部中で、40〜70℃の温度で、重合で使用されるモノマーに対して重合条件下にラジカルに分解するアゾ化合物0.5〜2.0質量%を用いて重合される。
【0021】
モノマーは、本発明によるラジカル重合にかけられ、即ち重合条件下にラジカルを形成する重合防止剤が使われる。この種類の適当な化合物は、例えば、過酸化水素、過酸化物、ヒドロペルオキシド、レドックス触媒及び非酸化開始剤、例えば重合条件下でラジカルに分解するアゾ化合物である。そのようなアゾ化合物は、例えば2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]又は2,2’−アゾビスイソブチロニトリルである。もちろん異なる開始剤の混合物を使うことも可能である。水溶性ポリマーの水性分散液の特に好ましい製造法は次のものである:
(A)他のモノエチレン系不飽和モノマーを有していてもよい、N−ビニルホルムアミド、及び
(B)ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン又はその混合物を
40〜55℃の温度で水溶性アゾ開始剤を用いて重合される。高分子分散剤(B)として好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールからの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルスクシンイミド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリエチレンイミン及びその混合物が当てはまる。これらのポリマーのモル質量は好ましくは1500〜50000である。
【0022】
ポリマー分散液及び低分子量を有しているポリマーが望ましい場合には、例えば、重合の際に通常使用される開始剤の量を増大させることは可能であるので、開始剤量の上記の範囲外にある開始剤量を使用することも可能である。当てはまるビニルカルボン酸アミドの低分子量ホモポリマー及び共重合体の水性分散液も、重合調整剤の存在で重合を実施することによって及び必要に応じて同時に通常必要とされるよりも多い量の開始剤を使うことによって得ることができる。適した重合調整剤は、硫黄を結合した形で含有する化合物、例えばドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、チオ酢酸及びメルカプトアルコール、例えばメルカプトエタノール、メルカプトプロパノール及びメルカプトブタノールである。それに加えて、ギ酸、イソプロパノール及び強酸との塩の形のヒドラジンが重合調整剤として使用されてもよい。
【0023】
分散した形で存在するポリマーの分子量は、FikentscherによるK値を用いても特性決定されることができる。K値は300まで、好ましくは130〜180の範囲にある。光散乱実験から、250のK値が約7000000ダルトンのポリマーの平均分子量に相当することになる。
【0024】
N−ビニルホルムアミド単位を含有するポリマーからホルミル基を脱離することによって及びN−ビニルアセトアミド単位を含有するポリマーから基CH−CO−を脱離することによって、ビニルアミン単位を含有するポリマーがそのつど生じる。脱離は部分的に又は完全に行われてもよい。加水分解が酸の存在で実施される場合には、ポリマーのビニルアミン単位はアンモニウム塩として存在する。しかしながら、加水分解は、塩基、例えば金属水酸化物、特にアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物を用いて行われてもよい。好ましくは、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが使用される。特別な場合には、加水分解はアンモニア又はアミンを用いて実施されてもよい。塩基の存在での加水分解の場合に、ビニルアミン単位は遊離塩基の形で存在する。
【0025】
適した加水分解剤は、好ましくは鉱酸、例えばガスの形で又は水溶液として使用されてもよいハロゲン化水素である。濃塩酸、硫酸、硝酸又はリン酸及び有機酸、例えばC〜C−カルボン酸及び脂肪族又は芳香族のスルホン酸が好ましくは使用される。例えば、0.05〜2モル当量、特に1〜1.5モル当量の酸が、重合したN−ビニルホルムアミド単位を含有するポリマー中のホルミル基1当量あたりに必要である。N−ビニルホルムアミド単位の加水分解は、N−ビニルアセトアミド単位を有するポリマーよりもかなり迅速に行われる。他のコモノマーを有する適したビニルカルボン酸アミドの共重合体が加水分解を受ける場合には、共重合体中に含有されるコモノマー単位は化学的に変性されていてもよい。例えば、ビニルアルコール単位は、酢酸ビニル単位から形成される。加水分解においてアクリル酸単位はアクリル酸メチル単位から形成され、かつアクリルアミド又はアクリル酸単位はアクリロニトリル単位から形成される。ポリマー(A)のN−ビニルホルムアミド単位及び/又はビニルアセトアミド単位の加水分解は、5〜100%、好ましくは10〜40%の範囲に実施されることができる。水溶性N−ビニルカルボン酸アミドの水性分散液は水での希釈の差異に溶解するけれども、分散液は意外なことに加水分解の間に破壊されない。加水分解前後の加水分解された粒子の粒度は、50nm〜2μm又は好ましくは50nm〜2μm、及び殆どの場合に100〜700nmにある。
【0026】
上記の分散液、即ち加水分解されていない並びに加水分解された水溶性N−ビニルカルボン酸アミドの水性分散液は、脱水剤、凝集剤及び歩留まり向上剤として及び湿潤紙力増強剤及び乾燥紙力増強剤として及び製紙における固定剤として使用される。カチオン性ポリマーは、下水汚泥の脱水における廃水用の凝集剤として、選鉱及び三次石油採掘における凝集剤として又は、例えば無機及び有機顔料、染料、セメント又は植物保護剤用の分散剤として更に使用されることができる。加水分解されていない並びに加水分解された水性分散液は、紙用の紙力増強剤として、製紙の際の可溶性及び不溶性の妨害物質のための固定剤として、及び紙コーティングのための組成物として更に使用されることができる。更に、これらは、肥料及び植物保護剤のためのコーティング材料として及びフロアケア組成物として使用されることができる。前記の加水分解された及び加水分解されていない水性ポリマー分散液は、化粧品においても、例えば毛髪製剤、例えばコンディショナー、整髪剤又はスキンケア組成物のためのコンディショナー及び化粧品用の増粘剤として、更に口腔衛生のための化粧品の成分として使用されてもよい。
【0027】
K値は、H. Fikentscher, Cellulose-Chemie, 13巻(1932), 58-64及び71-74により、水溶液中で、25℃及びK値範囲に応じて0.1〜5質量%である濃度で決定した。分散液の粘度を、そのつどBrookfield粘度計で4番スピンドルを用いて20rpm及び20℃の温度で測定した。%のデータは質量パーセントである。
【実施例】
【0028】
例1
アンカー撹拌機、窒素供給路、蒸留橋及び減圧調節装置を備えた2 lのガラス容器中に、水800g、リン酸二水素ナトリウム二水和物5g、ポリビニルピロリドン150g(K値30、1%の水溶液中で測定)及びモル質量1500を有するポリエチレングリコール150gを秤量し、撹拌することにより均質な溶液に加工した。N−ビニルホルムアミド500gを添加し、ついで25%の水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより溶液のpHを6.5に調節した。持続的に窒素を反応混合物に通し、かつ水100g中の2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジヒドロクロリド2.5gの溶液を添加し、かつ反応混合物を重合のために50℃の温度に加熱した。重合をこの温度及び130ミリバールの圧力で実施し、その際、生じた反応熱を蒸発冷却によって除去した。重合時間は13時間であった。この時間内で、44%の固体含有量を有する水性分散液が得られる量の水を留去した。これは、15600mPasの粘度、140のK値(5%のNaCl水溶液中の0.1%の溶液として測定)及び0.1%のN−ビニルホルムアミドの残留モノマー含有量を有していた。
【0029】
例2
アンカー撹拌機、窒素供給路、蒸留橋及び減圧調節装置を備えた2 lガラス容器中に、水1200g、リン酸二水素ナトリウム二水和物5g、ポリビニルピロリドン150g(K値30、1%の水溶液中で測定)及び1500のモル質量を有するポリエチレングリコール150gを装入した。混合物を撹拌し、かつN−ビニルホルムアミド643gを添加した。反応混合物のpHを、25%の水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより6.5に調節した。窒素を反応混合物に連続的に通し、かつ水100g中の溶液の形の2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジヒドロクロリド2.5gを添加し、かつバッチを50℃の重合温度に加熱した。重合を130ミリバールの圧力で実施し、その際、生じる重合熱を13時間かけて蒸発冷却によって除去し、かつ反応混合物から44.1%の固体含有量及び25%のポリビニルホルムアミドフラクションを有する水性分散液が得られる量の水を留去した。水性分散液の粘度は5800mPasであった。ポリマーのK値は148であり、かつN−ビニルホルムアミド残留モノマー含有量は0.2%であった。
【0030】
例3
例1に記載された装置中で、まず最初に、水1200g、リン酸二水素ナトリウム二水和物5g、ポリビニルピロリドン150g(K値30、1%の水溶液で測定)及び1500のモル質量を有するポリエチレングリコール150gの溶液を製造し、ついでN−ビニルホルムアミド500gを添加し、かつ25%の水酸化ナトリウム水溶液を、溶液のpHが6.5になるような量で添加した。窒素を、連続的に溶液に通し、かつ水100g中の2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジヒドロクロリド2.5gの水溶液を添加し、かつ混合物を50℃の温度に加熱した。重合を13時間かけて130ミリバールの圧力で実施し、その際、41.0%の固体含有量を有する水性ポリマー分散液が得られるような量の水を蒸発冷却によって留去した。分散液の粘度は3075mPasであった。分散したポリビニルホルムアミドの割合は20%であった。ポリマーは138のK値(5%のNaCl水溶液中の0.1%の溶液として測定)及び0.2%の残留モノマー含有量を有していた。
【0031】
例4
例1に記載した装置中で、水1044g、リン酸二水素ナトリウム二水和物5g、加水分解度86%を有する部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル200g及び1500のモル質量を有するポリエチレングリコール100gの溶液を製造し、かつN−ビニルホルムアミド500gを撹拌しながら添加した。ついで25%の水酸化ナトリウム水溶液を、pHが6.5になるような量で添加した。窒素を反応混合物に通し、かつ水1000g中に溶解した2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジヒドロクロリド2.5gの溶液を添加し、かつ反応混合物を50℃の重合温度に加熱した。重合を、130ミリバールの圧力下に13時間に亘り、かつ蒸発冷却により重合熱を除去しながら実施した。36%の固体含有量を有する水性分散液が得られる量の水を留去した。ポリマーは130のK値(5%のNaCl水溶液中の0.1%のポリマー濃度で測定)及び0.1%の残留モノマー含有量を有していた。分散した粒度は200nmであった。
【0032】
例5
例1で記載された装置中にまず最初に水溶液を導き、その際、水836g、リン酸二水素ナトリウム二水和物5g、45000のモル質量を有する1:1のモル比のN−ビニルカプロラクタム及びN−ビニルメチルアセトアミドからなる共重合体150g及び1500のモル質量を有するポリエチレングリコール150gを装入し、N−ビニルホルムアミド500gを撹拌しながら添加し、かつ25%の水酸化ナトリウム水溶液の添加により溶液のpHを6.5に調節した。ついで連続的に窒素を混合物に通し、水100g中の2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)ジヒドロクロリド2.5gの溶液を添加し、かつ混合物を、重合が実施される50℃の温度に加熱した。同時に、130ミリバールの圧力に調節し、かつ生じる重合熱を蒸発冷却によって除去した。その際、13時間に亘り43%の固体含有量を有している水性ポリマー分散液が生じる量の水を留去した。ポリビニルホルムアミド含有量は26.9%であった。水溶液は8700mPasの粘度を有していた。ポリマーは110.2のK値(0.1%のポリマー濃度で5%のNaCl水溶液中で測定)及び0.2%のN−ビニルホルムアミド残留モノマー含有量を有していた。分散したポリマーの粒度は200nmであった。
【0033】
例6
例1により製造した水性ポリマー分散液216.7gを、ガス入口管、還流冷却器及び撹拌機を備えており、250mlの容量を有する三つ口フラスコ中に装入した。撹拌しながら気体状塩化水素4gを10分間かけて通した。その際、反応混合物を50℃に加熱し、かつこの温度で5時間撹拌した。その後、ポリマーの加水分解度は10.1%であり、即ちポリマーがビニルアミン単位10.1%を含有していた。アンモニアガス2.2gを通すことにより反応混合物を中和した。pHは7.5であった。分散液は16600mPasの粘度を有していた。分散した粒子の平均粒度は250nmであった。ポリマーは900000ダルトンのモル質量を有していた。
【0034】
例7
例3により製造した水性分散液206gを、ガス入口管、還流冷却器及び撹拌機を備えた容量250mlを有する三つ口フラスコ中に装入した。ついで塩化水素ガス20.3gを、25分間かけて撹拌しながら通した。反応混合物を75℃に加熱し、ついでこの温度で2時間撹拌した。ポリ−N−ビニルホルムアミドの加水分解度は75%であった。分散液は7040mPasの粘度を有していた。分散液の粒度は300nmであった。ポリマーのモル質量は500000ダルトンであった。
【0035】
例8
例3により得た分散液212gを、容量250mlを有する三つ口フラスコ中に装入した。ついで気体状塩化水素2.8gを、撹拌しながら通し、かつ反応混合物を50℃に加熱した。ついで混合物をこの温度で6.5時間撹拌した。その後、ポリマーの加水分解度は8.5%であった。水性分散液は4800mPasの粘度を有していた。分散した粒子の粒度は200nmであった。ポリマーは1.2・10ダルトンのモル質量を有していた。
【0036】
例9
例3により製造したポリマー分散液217.8gを、250mlの容量を有する三つ口フラスコ中に装入した。ついで気体状塩化水素8gを撹拌しながら通し、かつ反応混合物を50℃の温度に加熱した。ついで混合物をこの温度で7時間撹拌した。その後、ポリマーの加水分解度は27.4%であった。水性分散液は4950mPasの粘度を有していた。分散した粒子の粒度は370nmであり、かつモル質量は1.07・10ダルトンであった。
【0037】
[使用例]
(脱水時間の測定)
脱水時間を、Schopper-Riegler試験機中で、試験すべき1 lの繊維懸濁液をその中で脱水しかつそのつど水700mlの通過後の脱水時間を測定することによって測定した。
【0038】
(白水の光透過率)
白水の光透過率は微細物質及び填料の歩留まりの尺度である。これらを光度計を用いて決定し、かつパーセントで記載した。光透過率の値が高ければ高いほど、歩留まりはより良好である。次の出発物質を使用した:
先行技術との比較のためにポリマーI及びIIを用いた。
【0039】
ポリマーI:
エチレンアミンでグラフトし、かつα,ω−ジクロロポリエチレングリコールエーテル(米国特許第4144123号明細書によるカチオン性脱水剤及び歩留まり向上剤)で架橋した、アジピン酸及びジエチレントリアミンからのポリアミドアミン。
【0040】
ポリマーII:
アクリルアミド70%及びジメチルアミノエチルアクリレートクロリド30%からの市販のカチオン性共重合体、共重合体のK値250。
【0041】
ポリマーIII:
市販のカチオン性ポリアクリルアミド(Praesterat(R) K 350)
本発明による使用すべきポリマー:
【0042】
ポリマーIV:
例8により得られた水性分散液(N−ビニルホルムアミド単位91.5%及びビニルアミン単位8.5%からの共重合体)。
【0043】
例10
2g/lのコンシステンシーを有しているパルプを脱インキした古紙から製造し、かつ紙料に0.2g/lのチャイナクレーをなお付加的に添加した。紙料はpH 7を有していた。最初に白水の脱水速度及びついで光透過率を測定した。脱水時間のゼロ値は79秒であった。ついで、表1及び2に記載したポリマーを、乾燥繊維に対して0.02、0.04及び0.08%の量で繊維懸濁液に添加し、かつ脱水時間及び白水の光透過率を決定した。表1及び2に示した結果が測定された。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミドの水溶性ポリマーの水性分散液において、分散液が、水100質量部に対して、
(A)水溶性でN−ビニルホルムアミド単位及び/又はN−ビニルアセトアミド単位を含有し、50nm〜2μmの粒度を有するポリマー5〜80質量部及び
(B)水溶性ポリマー(A)と水溶液中で不相溶性である少なくとも1つの高分子分散剤1〜50質量部
を含有していることを特徴とする、N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミドの水溶性ポリマーの水性分散液。
【請求項2】
分散液が、水100質量部に対して、
(A)水溶性でN−ビニルホルムアミド単位及び/又はN−ビニルアセトアミド単位を有するポリマー10〜50質量部及び
(B)水溶性ポリマー(A)と水溶液中で不相溶性である少なくとも1つの高分子分散剤5〜40質量部
を含有している、請求項1記載の水溶性ポリマーの水性分散液。
【請求項3】
分散液が、成分(A)としてN−ビニルホルムアミドのホモポリマーを含有している、請求項1又は2記載の水溶性ポリマーの水性分散液。
【請求項4】
ポリマー(A)のN−ビニルホルムアミド単位及び/又はビニルアセトアミド単位が、酸又は塩基での加水分解によって部分的に又は完全にビニルアミン単位を含有するポリマーに変換されている、請求項1又は2記載の水溶性ポリマーの水性分散液。
【請求項5】
N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミドの水溶性ポリマーの水性分散液を製造する方法において、
(A)水溶性ポリマーを一緒に形成する他のモノエチレン系不飽和モノマーを有していてもよい、N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミド5〜80質量部、及び
(B)モノマー(A)から生じるポリマーと水溶液中で不相溶性である少なくとも1つの高分子分散剤1〜50質量部を、
水100質量部中で、30〜95℃の温度で、使用されるモノマーに対して0.001〜5.0質量%の存在でラジカル重合させることを特徴とする、N−ビニルホルムアミド及び/又はN−ビニルアセトアミドの水溶性ポリマーの水性分散液の製造法。
【請求項6】
(A)水溶性ポリマーを一緒に形成する他のモノエチレン系不飽和モノマーを有していてもよい、N−ビニルホルムアミド及び/又はビニルアセトアミド10〜50質量部、及び
(B)モノマー(A)から生じるポリマーと水溶液中で不相溶性である少なくとも1つの高分子分散剤5〜40質量部を、
水100質量部中で、40〜70℃の温度で、重合で使用されるモノマーに対して重合条件下にラジカルに分解するアゾ化合物0.5〜2.0質量%を用いて重合させる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
高分子分散剤(B)として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルスクシンイミド、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリエチレンイミン及びその混合物を使用する、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
(A)他のモノエチレン系不飽和モノマーを有していてもよい、N−ビニルホルムアミド及び
(B)ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン又はその混合物を、
40〜55℃の温度で水溶性アゾ開始剤で重合させる、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
脱水剤、凝集剤及び歩留まり向上剤として並びに湿潤紙力増強剤及び乾燥紙力増強剤として及び製紙の際の固定剤としての、請求項1から4までのいずれか1項記載の水溶性ポリマーの水性分散液の使用。

【公開番号】特開2013−28817(P2013−28817A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−234801(P2012−234801)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【分割の表示】特願2000−581070(P2000−581070)の分割
【原出願日】平成11年10月30日(1999.10.30)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】