説明

N−置換マレイミド類の製造方法

【課題】N−置換マレイミド類を合成及び製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、水と共沸蒸留可能な有機溶媒、融点が150℃以上で且つ製造しようとするN−置換マレイミドと不溶性である有機ホスホン酸が固体担持体に担持された担持触媒の存在下で、第1アミン類と無水マレイン酸を投与し、100〜140℃で脱水閉環反応を通じてN−置換マレイミド類を合成及び製造する方法に関する。本発明によると、高純度のN−置換マレイミド類を高収率で製造する方法を提供する効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度のN−置換マレイミド類(N-substituted maleimides)を高収率で製造する方法に関し、より詳細には、無水マレイン酸と第1アミン類を反応して、N−置換マレイミド類を製造する方法であって、融点が150℃以上で且つ製造しようとするN−置換マレイミドと不溶性である有機ホスホン酸が固体担持体に担持された担持触媒を使用し、副反応の発生を防止して、高純度のN−置換マレイミド類を高収率で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−置換マレイミド類は、ABS、PVC、PS、PMMA、SAN樹脂などの耐熱度を向上させるための共重合単量体、農薬、医薬品の中間体などに幅広く使用される化合物である。
【0003】
N−置換マレイミド類の製造方法は、長い間研究されてきて、様々な方法が知られている。一般に、N−置換マレイミド類の合成反応は、無水マレイン酸と第1アミン類の反応を通じて、中間体であるN−置換マレアミド酸(N-substituted maleamic acid)を製造して、N−置換マレアミド酸の脱水閉環反応を通じて、N−置換マレイミド類を合成し、合成されたN−置換マレイミド類を反応溶液内で分離、精製して、N−置換マレイミド類を製造する方法により行われてきた。
【0004】
米国特許第2,444,536号には、無水酢酸を脱水剤として使用し、N−置換マレアミド酸を脱水閉環する反応を通じてマレイミド類を製造する、化学的脱水閉環反応方法が提案されている。しかしながら、脱水剤を使用した化学的脱水閉環反応を通じてN−置換マレイミド類を製造する方法は、高価な脱水剤を、製造しようとするN−置換マレイミド類の同量以上を使用しなければならず、生成されたN−置換マレイミド類を反応溶液から分離することが難しくて、商業的な適用は困難である。
【0005】
米国特許第3,431,276号、英国特許第1,041,027号では、化学的脱水剤を使用せず、トルエン、キシレン、クロロベンゼンのような、沸点が80℃以上である溶媒下で、オルトリン酸、硫酸などを酸触媒として使用して、N−置換マレイミド類を製造する方法が提案されている。たとえ提案された方法が、高価な脱水剤を使用せず、生成されたN−置換マレイミド類を反応溶液から容易に分離できるという長所があるとしても、収率が低くて、高い反応温度により副産物が多量に発生するという短所がある。
【0006】
米国特許第4,623,734、第4,786,738号では、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどのような、120〜170℃の反応温度で水と共沸蒸留が可能な溶媒を使用して、酸触媒下でN−置換マレイミド類を合成するにおいて、亜鉛アセテートなどの金属含有化合物と、銅ジブチルジチオカルバメートなどの安定化剤を使用して、高い収率でN−置換マレイミド類を合成する方法が提示されている。
【0007】
米国特許第4,851,547号では、N−置換マレイミド類を合成するにおいて、硫酸、p−トルエンスルホン酸、オルトリン酸などの酸と、N−置換マレイミド類の合成時に使用される原料の第1アミンとの中和反応により得られるアミン塩、または合成シリカ、珪藻土などの担持体に担持されたアミン塩を触媒として使用する方法が提示されている。
【0008】
しかしながら、上記の米国特許第4,623,734号、第4,786,738号、第4,851,547号で提供しているN−置換マレイミド類の合成方法は、副反応に対する効果的な抑制方法が提示されておらず、純度96%以上の高純度のN−置換マレイミド類を合成するには適さない方法である。
【0009】
米国特許第4,980,483号では、N−置換マレイミド類の合成時、副反応を通じて生成される副産物であるフマル酸の生成を抑制するために、合成反応初期には、第1アミン類に対する無水マレイン酸のモル比が1未満になるようにして、反応中期以後には、反応系に添加された第1アミン類の総量に対する反応系に添加された無水マレイン酸の総量のモル比が1を超えるようにして合成反応を行ってN−置換マレイミド類を製造する方法が提示されている。しかしながら、反応中に生成される、フマル酸以外の副産物に対する抑制方法が提示されておらず、純度96%以上の高純度のN−置換マレイミド類を合成することは難しいという問題点がある。
【0010】
米国特許第5,068,357号では、N−置換マレイミド類の製造時、水と共沸蒸留可能な溶媒と、有機非プロトン性極性溶媒とからなる混合溶媒を使用して、触媒として金属錫、酸化錫、N−置換マレイン酸錫塩などの錫化合物を使用して、脱水閉環反応を通じてN−置換マレイミド類を合成する方法が提示されている。触媒として、硫酸、オルトリン酸などの酸触媒ではない錫化合物を使用することにより、反応器の腐食問題を効果的に防止することができるが、N−置換マレアミド酸の脱水閉環反応が十分に高い収率でなされず、最終的に生成されたN−置換マレイミド内に多量のN−置換マレアミド酸が残留しているという問題点がある。
【0011】
大部分の従来技術は、オルトリン酸、硫酸などの酸触媒を使用しているが、これらの酸触媒は、N−置換マレイミド類の合成反応温度では液状で存在し、反応物である無水マレイン酸、第1アミン類、そして生成物であるN−置換マレイミド類とよく混合される特徴があって、合成反応時、多量の反応物及び生成物が触媒上に溶け込み、数々の副反応を引き起こす問題点がある。
【0012】
上記の従来技術は、商業的にN−置換マレイミド類を合成する方法として適合した方法であるが、95%以上の純度を有する高純度のN−置換マレイミド類を95%以上の高収率で合成する方法については提示されていない。
【特許文献1】米国特許第2,444,536号明細書
【特許文献2】米国特許第3,431,276号明細書
【特許文献3】英国特許第1,041,027号明細書
【特許文献4】米国特許第4,623,734号明細書
【特許文献5】米国特許第4,786,738号明細書
【特許文献6】米国特許第4,851,547号明細書
【特許文献7】米国特許第4,623,734号明細書
【特許文献8】米国特許第4,786,738号明細書
【特許文献9】米国特許第4,851,547号明細書
【特許文献10】米国特許第4,980,483号明細書
【特許文献11】米国特許第5,068,357号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、N−置換マレイミド類の合成時、融点が150℃以上で且つ製造しようとするN−置換マレイミドと不溶性である有機ホスホン酸が固体担持体に担持された担持触媒を使用し、副反応の発生を抑制して、高純度のN−置換マレイミド類を高収率で合成及び製造する方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の上記目的及びその他の目的は、下記説明する本発明により全て達成できる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、N−置換マレイミド類の製造方法において、水と共沸蒸留可能な有機溶媒、融点が150℃以上で且つ製造しようとするN−置換マレイミドと不溶性である有機ホスホン酸が固体担持体に担持された担持触媒の存在下で、第1アミン類と無水マレイン酸を投与し、100〜140℃で脱水閉環反応を通じて高純度のN−置換マレイミド類を高収率で合成及び製造することを特徴とするN−置換マレイミド類の製造方法を提供する。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明のN−置換マレイミド類の製造方法は、水と共沸蒸留可能な有機溶媒、融点が150℃以上で且つ製造しようとするN−置換マレイミドと不溶性である有機ホスホン酸が固体担持体に担持された担持触媒の存在下で、第1アミン類と無水マレイン酸を投与し、100〜140℃で脱水閉環反応を通じてN−置換マレイミド類を製造する方法である。
【0018】
本発明を通じて合成できるN−置換マレイミド類としては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−(n−プロピル)マレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−(n−ブチル)マレイミド、N−(sec−ブチル)マレイミド、N−(iso−ブチル)マレイミド、N−(tert−ブチル)マレイミド、N−(n−ヘキシル)マレイミド、N−(n−オクチル)マレイミド、N−(n−デシル)マレイミド、N−(n−ドデシル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどが挙げられる。
【0019】
本発明において、無水マレイン酸の使用量は、N−置換マレイミド類の合成時に使用される第1アミンに対して、1.0〜1.1モル比を使用することが好ましい。無水マレイン酸が1.0モル比未満に使用される場合、収率低下及び副産物の増加の問題が発生する。1.1モル比以上で使用する場合、N−置換マレイミドの合成後、未反応無水マレイン酸が多量に残留するようになって、経済的な面で好ましくない。
【0020】
本発明で使用される有機溶媒は、水と共沸蒸留可能な非極性溶媒でありながら、沸点が80〜160℃であることが好ましく、その例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クメン、メシチレン、クロロベンゼン、エチルシクロヘキサン、ジクロロベンゼン、ドデカン、ノナン、トリメチルヘキサンなどがある。
【0021】
前記有機溶媒の使用量は、N−置換マレイミドの合成時に使用される第1アミン類に対して2〜10重量倍を使用することが好ましい。有機溶媒の使用量が2重量倍未満である場合は、反応系から、N−置換マレアミド酸の脱水閉環反応を通じて生成される水の効果的な除去が容易ではなく、収率が低下する問題があって、10重量倍を超過する場合は、合成されたN−置換マレイミド溶液から溶媒を分離する過程で、多量のエネルギーが消費されるため、経済的な観点で好ましくない。
【0022】
本発明で使用される第1アミン類は、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、iso−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンなどが挙げられる。
【0023】
本発明で使用される触媒は、融点が150℃以上で、製造しようとするN−置換マレイミドと不溶性である有機ホスホン酸が固体担持体に担持された担持触媒が好ましく、有機ホスホン酸の例としては、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(2-phosphonobutane-1,2,4-tricarboxylic acid)、2−ヒドロキシホスホノ酢酸(2-hydroxy phosphonoacetic acid)、アミノトリメチレンホスホン酸(amino tri(methylene) phosphonic acid)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(1-hydroxyethylidene-1,1-diphosphonic acid)、ビスヘキサメチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(bis(hexamethylene) triamine penta(methylene) phosphonic acid)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(ethylene diamine tetra(methylene) phosphonic acid)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(diethylenetriamine penta(methylene) phosphonic acid)などがある。
【0024】
前記触媒は、固体担持体に担持して使用することが好ましい。前記触媒は、融点が150℃以上であるため、担持体に担持せずに使用する場合、常温及びN−置換マレイミド合成反応温度で固体状に存在し、その表面積が大きく減ってしまい、収率が大きく低下する問題が発生する。
【0025】
固体担持体としては、その表面積が100m/g以上であることが好ましく、その例としては、珪藻土、酸化ジルコニウム、シリカ、シリカ−アルミナ、二酸化チタン、活性炭素、粘土、モンモリロナイトなどがある。
【0026】
前記触媒の使用量は、触媒分子内に含まれているホスホン酸を基準に、N−置換マレイミド類の合成時に使用される第1アミン類に対して0.1〜1.0モル比で使用することが好ましい。その使用量が0.1モル比未満である場合、収率が低下する問題が発生し、1.0モル比を超える場合、それ以上の収率向上の効果がなく、経済的な観点で好ましくない。
【0027】
N−置換マレイミド合成反応は、1〜15時間、反応系を100〜150℃に加熱することにより行われ、本発明においてN−置換マレイミド類の合成反応温度は、100〜140℃が特に好ましい。合成反応温度が100℃未満の場合は、収率が低下する問題が発生し、140℃以上の場合は、副反応で合成されたN−置換マレイミド類の重合が進行して、合成されたN−置換マレイミド類の純度及び収率が低下する問題が発生する。
【0028】
本発明で無水マレイン酸、第1アミンの添加方法については、N−置換マレイミドの合成中、反応系内の第1アミンの含量が、無水マレイン酸に対して1モル比を超えない方法であれば、特に限定されない。
【0029】
また、本発明でN−置換マレイミド合成反応は、安定化剤の存在下で行うこともできる。安定化剤の例としては、メトキシベンゾキノン、ヒドロキノン、t−ブチルカテコール、t−ブチルヒドロキノン、亜鉛ジメチルジチオカルバメート、銅ジブチルジチオカルバメートなどがある。
【0030】
本発明で反応終了後、反応系から、ろ過を通じて触媒を分離して得られたN−置換マレイミド類を含む反応溶液を、50〜150℃で0.1〜100mmHgの圧力条件下で減圧蒸留して溶媒を分離することにより、高純度のN−置換マレイミド類を得ることができる。
【0031】
また、前記N−置換マレイミド類を含む反応溶液を、水洗浄を行った後、減圧蒸留することにより、高純度のN−置換マレイミド類を得ることもできる。
【0032】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(実施例1)
攪拌器、温度計、水分離器及び冷却器を有する1L反応器に、溶媒としてトルエン600g、触媒担持体としてシリカゲル(商品名:Wakogel C-100, Wako pure chemical Industries, Ltd.製造販売)73gを添加した後、触媒として1-hydroxyethylidene-1,1-diphosphonic acid 60%水溶液42.5gを30分間連続投与し、反応系の温度を115℃まで昇温して、触媒中に含まれていた水を、共沸蒸留を通じて反応系から除去した。この後、アニリン150gと80℃で溶融された無水マレイン酸165.9gを2時間にかけて投与した。反応中、脱水閉環反応により生成される水は、共沸蒸留を通じてトルエンと共に反応系の外に除去した。反応系から除去されたトルエンは、反応系の内部に再投与しながら、合成反応をさらに5時間行った。合成反応の終了後、ろ過を通じて担持触媒を分離し、N−フェニルマレイミドトルエン溶液を回収した。回収されたN−フェニルマレイミドトルエン溶液を10mmHg減圧下で80℃まで昇温し、トルエンを減圧蒸留により除去して、黄色結晶の純度97.1%のN−フェニルマレイミド281.4gが得られ、これは、添加されたアニリンに対して、97.9モル%の収率であった。
【0034】
(実施例2)
アニリン150gの代わりにシクロヘキシルアミン159.8gを添加したことを除いては、実施例1と同様な方法により行った。その結果、純度95.7%のN−シクロヘキシルマレイミド289.1gが得られ、これは、添加されたシクロヘキシルアミンに対して、95.9モル%の収率であった。
【0035】
(実施例3)
触媒として、1-hydroxyethylidene-1,1-diphosphonic acid 60%水溶液42.5gの代わりにamino-tri(methylene) phosphonic acid 50%水溶液51.0gを使用したことを除いては、実施例1と同様な方法により行った。その結果、純度95.5%のN−フェニルマレイミド278.7gが得られ、これは、添加したアニリンに対して、95.4モル%の収率であった。
【0036】
(実施例4)
実施例1と同様な方法により行ってN−フェニルマレイミドを合成し、N−フェニルマレイミドトルエン溶液を回収した。回収されたN−フェニルマレイミドトルエン溶液に900gの蒸留水を添加し、65℃で30分間攪拌して、30分間攪拌を停止し、水層を分離して、N−フェニルマレイミドトルエン溶液を回収する精製過程を行った。得られたN−フェニルマレイミドトルエン溶液を、10mmHg減圧下で80℃まで昇温し、トルエンを減圧蒸留により除去して、黄色結晶の純度99.7%のN−フェニルマレイミド272.9gが得られ、これは、添加されたアニリンに対して97.5モル%の収率であった。
【0037】
(比較例1)
攪拌器、温度計、水分離器及び冷却器を有した1L反応器に、溶媒としてトルエン600g、触媒としてオルトリン酸85%水溶液30.0gを30分間連続投与して、反応系の温度を115℃まで昇温し、触媒中に含まれていた水を、共沸蒸留を通じて反応系から除去した。この後、アニリン150gと80℃で溶融された無水マレイン酸165.9gを2時間にかけて投与した。反応中、脱水閉環反応により生成される水は、共沸蒸留を通じてトルエンと共に反応系の外に除去した。反応系から除去されたトルエンは、反応系の内部に再投与しながら、合成反応をさらに5時間行った。合成反応の終了後、層分離を通じて、赤色に変わった液体状のオルトリン酸触媒を分離し、N−フェニルマレイミドトルエン溶液を回収した。回収されたN−フェニルマレイミドトルエン溶液を、10mmHg減圧下で80℃まで昇温し、トルエンを減圧蒸留により除去して、黄色結晶の純度91.0%のN−フェニルマレイミド264.8gが得られ、これは、添加されたアニリンに対して、86.4モル%の収率であった。
【0038】
(比較例2)
攪拌器、温度計、水分離器及び冷却器を有した1L反応器に、溶媒としてトルエン600g、触媒として1-hydroxyethylidene-1,1-diphosphonic acid 60%水溶液42.5gを30分間連続投与して、反応系の温度を115℃まで昇温し、触媒中に含まれていた水を、共沸蒸留を通じて反応系から除去した。触媒として添加された1-hydroxyethylidene-1,1-diphosphonic acid 60%水溶液から水が除去され、触媒が固体状に変わりながら、反応器の壁面と攪拌器に付着する現象が発生した。この後、アニリン150gと80℃で溶融された無水マレイン酸165.9gを2時間にかけて投与した。反応中、脱水閉環反応により生成される水は、共沸蒸留を通じてトルエンと共に反応系の外に除去した。反応系から除去されたトルエンは、反応系の内部に再投与しながら、合成反応をさらに5時間行った。合成反応の終了後、ろ過を通じて、固体状の触媒と反応中間体として生成されたN−フェニルマレアミド酸沈殿物を分離し、N−フェニルマレイミドトルエン溶液を回収した。回収されたN−フェニルマレイミドトルエン溶液を、10mmHg減圧下で80℃まで昇温し、トルエンを減圧蒸留により除去して、黄色結晶の純度96.6%のN−フェニルマレイミド188.9gが得られ、これは、添加されたアニリンに対して、65.4モル%の収率であった。
【0039】
(比較例3)
触媒として、1-hydroxyethylidene-1,1-diphosphonic acid 60%水溶液42.5gの代わりにオルトリン酸85%水溶液30.0gを使用したことを除いては、実施例1と同様な方法により行った。その結果、純度90.1%のN−フェニルマレイミド275.2gが得られ、これは、添加されたアニリンに対して、88.9モル%の収率であった。
【0040】
下記の表1は、各実施例及び比較例における有機溶媒、触媒、第1アミン類、無水マレイン酸などの使用量を示したものである。
【0041】
【表1】

【0042】
また、下記の表2は、各実施例及び比較例におけるN−置換マレイミドの純度、添加されたアニリンに対する収率を示したものである。表2から、比較例の場合、N−置換マレイミドの高純度及び高収率を同時に満足することが難しいが、有機ホスホン酸を固体担持体に担持した担持触媒下で製造した実施例の場合は、高純度及び高収率を同時に満足するということが分かる。
【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明によると、N−置換マレイミド類の合成時、副反応の発生を抑制して、高純度のN−置換マレイミド類を高収率で合成及び製造する方法を提供する効果がある。
【0045】
本発明を詳細に且つ特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−置換マレイミド類の製造方法であって、
有機溶媒、有機ホスホン酸が固体担持体に担持された担持触媒の存在下で、第1アミン類と無水マレイン酸を投与し、N−置換マレイミド類を合成することを特徴とする、N−置換マレイミド類の製造方法。
【請求項2】
前記有機ホスホン酸は、融点が150℃以上で、N−置換マレイミドと不溶性であることを特徴とする、請求項1に記載のN−置換マレイミド類の製造方法。
【請求項3】
前記有機ホスホン酸は、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、2−ヒドロキシホスホノアセト酸、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ビスヘキサメチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、及びジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のN−置換マレイミド類の製造方法。
【請求項4】
前記固体担持体は、その表面積が100m/g以上であることを特徴とする、請求項1に記載のN−置換マレイミド類の製造方法。
【請求項5】
前記固体担持体は、珪藻土、酸化ジルコニウム、シリカ、シリカ−アルミナ、二酸化チタン、活性炭素、粘土、及びモンモリロナイトからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または4に記載のN−置換マレイミド類の製造方法。
【請求項6】
前記触媒は、触媒分子内のホスホン酸を基準に、前記第1アミン類に対して0.1〜1.0モル比を使用することを特徴とする、請求項1に記載のN−置換マレイミド類の製造方法。
【請求項7】
前記第1アミン類は、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、iso−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、シクロヘキシルアミン、及びアニリンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のN−置換マレイミド類の製造方法。
【請求項8】
前記無水マレイン酸は、前記第1アミン類に対して1.0〜1.1モル比を使用することを特徴とする、請求項1に記載のN−置換マレイミド類の製造方法。
【請求項9】
前記有機溶媒が、水と共沸蒸留可能な非極性溶媒であり、沸点が80〜160℃であることを特徴とする、請求項1に記載のN−置換マレイミド類の製造方法。
【請求項10】
前記有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クメン、メシチレン、クロロベンゼン、エチルシクロヘキサン、ジクロロベンゼン、ドデカン、ノナン、及びトリメチルヘキサンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または9に記載のN−置換マレイミド類の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒は、前記第1アミン類に対して2〜10重量倍を使用することを特徴とする、請求項1または9に記載のN−置換マレイミド類の製造方法。
【請求項12】
合成反応温度は、100〜140℃であることを特徴とする、請求項1に記載のN−置換マレイミド類の製造方法。

【公開番号】特開2009−126866(P2009−126866A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301600(P2008−301600)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】