説明

N,N−ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミドの酢酸塩、その製造方法、及びそれを含む薬剤学的組成物

本発明は、N,N−ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミドの酢酸塩、その製造方法、及びそれを含む薬剤学的組成物に関するものであり、より詳しくは、N,N−ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミドと酢酸を反応させて製造した結晶性酸付加塩であって、この酸付加塩は、溶解度、安定性、非吸湿性、付着防止特性等の物理化学的性質が優れており、毒性が低いため、糖尿及び糖尿病、肥満症、高脂血症、脂肪肝、冠動脈心疾患、骨粗鬆症、多嚢性卵巣症候群、P53遺伝子が欠如した癌等が複合的に表れる所謂代謝症候群(メタボリックシンドローム)の治療;糖尿病の治療及びその合併症予防;そして癌の治療、並びに筋肉痛、筋肉細胞毒性、及び横紋筋融解等の予防に非常に有効な治療剤としてのN,N−ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミドの酢酸塩、その製造方法、並びにそれを含む薬剤学的組成物に関するものである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N−ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミドの酢酸塩、その製造方法及びその薬剤学的組成物に関するものであり、より詳しくは、N,N−ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミドと酢酸を反応させて製造した結晶性酸付加塩であって、溶解度、安定性、非吸湿性、付着防止特性等の物理化学的性質に優れ、毒性が低いため糖尿及び糖尿病、肥満症、高脂血症、脂肪肝、冠動脈心疾患、骨粗鬆症、多嚢性卵巣症候群、P53遺伝子が欠如した癌等が複合的に表れるいわゆる代謝症候群、糖尿病の治療と合併症の予防、そして癌治療及び筋肉痛、筋肉細胞毒性、並びに横紋筋融解等の予防に非常に効果的な治療剤として有効なN,N-ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミドの酢酸塩、その製造方法と薬剤学的組成物に関するものである。
【0002】
より詳しくは、溶出率を低くし、下部胃腸管に対する透過性を改善して生体利用率の向上・改善が期待される新規なN,N−ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミド酢酸塩に関するものである。
【背景技術】
【0003】
N,N−ジメチルイミドジカルボンイミド酸ジアミドは、一般名がメトホルミン(Metformin)であり、インシュリン非依存型糖尿病治療剤として糖尿病患者がこの薬物を服用した際、全ての経口用糖尿病薬中では血糖降下作用が最も優れ、合併症の発生及び悪化予防力が最も優れる非グアニド系薬物である。
【0004】
全ての経口用糖尿病治療剤中、メトホルミンだけが1次選択薬としての特徴を有しているという事実は様々な論文で提示されている。特に、メトホルミンの薬効がAMPKを活性化させるという事実が立証されたことで、その臨床効果の正当性を立証させた。AMPKは、炭水化物代謝と脂質代謝を生理的に調節する核心酵素であり、メトホルミンはこの酵素を活性化させることにより高血糖を正常化させ、且つ脂質状態を改善させ、月経不順と排卵及び妊娠を正常化させ、脂肪肝を治療し、遺伝子P53が欠如した癌の予防及び治療に効果的だと報告されている。
【0005】
ペンシルベニア医大癌研究所(Abramson Cancer Center)が癌専門誌を通じ、P53遺伝子が欠如した癌の予防と治療にAMPK酵素活性化剤であるメトホルミンが効果的だと報告した[参照:Monica Buzzai, et al. Systemic Treatment with the Antidiabetic Drug Metformin Selectively Impairs p53-Deficient Tumor Cell Growth, Cancer Res 2007; 67:(14). July 15,2007(非特許文献1)]。
【0006】
即ち、人体が不利な条件に処されると、これに適応するエネルギー代謝を展開させるAMPK酵素をメトホルミンが活性化させて糖と脂質を調節し、癌細胞を除去する。
【0007】
P53遺伝子は、損傷した細胞や不要な細胞、そして老化細胞を自殺させるが、癌細胞が変異すると、このP53遺伝子が欠如され難治性癌細胞になる。
【0008】
このP53遺伝子が欠如された難治性癌細胞のAMPK酵素をメトホルミンが活性化させて代謝経路が変わり、変わった代謝経路に適応できず癌細胞は死滅するということが実験で立証された。
【0009】
本発表を通じて明らかになったところは、このP53遺伝子はAMPKというエネルギー代謝調節酵素を利用して癌を除去し長寿を維持させるという点である。
【0010】
メトホルミンは、AMPK酵素を活性化させて糖と脂質の代謝を正常化させる薬物であり、P53遺伝子が欠如している癌にメトホルミンを投与すると癌細胞のエネルギー代謝経路が変わり、メトホルミンの投薬量に比例して抗癌作用が増加して、メトホルミンは糖尿病を治療する正常容量で癌の治療に効果的であることが明らかになっている。
【0011】
また、米国ボストン所在の(Beth Israel Deaconess)メディカルセンターの研究陣が医学専門誌を通じて発表したところによると、PGC-1α活性剤であるメトホルミンは、筋肉痛、筋肉細胞の損傷、さらに横紋筋融解(rhabdomyolysis)という深刻な副作用の予防に効果的であることが明らかになっている[参照:Jun-ichi Hanai, et al. The muscle-specific ubiquitin ligase atrogin-1/MAFbx mediates statin-induced muscle toxicity, J. Clin. Invest. 117: 3940-3951 (2007)(非特許文献2)]。
【0012】
Atrogin-1遺伝子の発現は、筋肉痛、筋肉細胞の損傷、さらに横紋筋融解の筋肉毒性を起こすが、メトホルミンはPGC-1α転写因子の活性によってAtrogin-1遺伝子の発現を抑制してAtrogin-1遺伝子の発現増加による筋肉障害を抑制し、予防する。
【0013】
薬学的にメトホルミンは、遊離塩基形態であるものが有用だが、安定性に劣るという短所があるため、薬剤学的に許容可能な酸付加塩形態で投与されている。
【0014】
大韓民国特許登録第90,479号(特許文献1)には、薬剤学的に許容可能な塩の形態に製造することにおいては、(1)優れた溶解度;(2)優れた安定性;(3)非吸湿性;(4)錠剤の剤形への加工性のような4つの物理化学的基準を満たさなければならないと記述している。薬剤学的に許容される酸付加塩として4つの条件を全て満たすことは非常に難しい。
【0015】
メトホルミン塩酸塩ではないそれ以外の付加塩に対する研究は以前から行われて来た。US3,957,853(特許文献2)ではメトホルミンアセチルサリチル酸塩に対して開示しており、US4,028,402(特許文献3)では非グアニド系化合物の新たな付加塩に対する内容を、US4,080,472(特許文献4)ではメトホルミンクロフィブリン酸塩の合成及び糖尿病関連疾患の治療に対する内容を開示している。そしてUS6,031,004(特許文献5)ではメトホルミンのフマル酸塩、スクシン酸塩、マレイン酸塩による医薬組成物とその用途に対する内容を表している。このようにメトホルミン付加塩に対する研究は根気強く進められて来たが、今までメトホルミンは、専ら塩酸としての薬物だけが許可されていてインシュリン−非依存性糖尿病(non-insulin dependent diabetes mellitus)治療剤として広く処方されている。メトホルミン塩酸塩は小腸上部で殆ど排他的に吸収される物質である。よって、下部小腸での吸収が不完全で24時間持続性製剤化が非常に難しい塩である。これはメトホルミン塩酸塩の溶解度が高いためである(参照:Marathe,P.et al., Br.J.Clin.Pharmacol.,50:325-332(2000)(非特許文献3))。
【0016】
メトホルミン塩酸塩ではないそれ以外の付加塩に対する研究は以前から行われて来た。US3,957,853(特許文献2)ではメトホルミンアセチルサリチル酸塩に対する特許を出願し、US4,028,402(特許文献3)では非グアニド系化合物の新たな付加塩に対する特許を出願した。US4,080,472(特許文献4)ではメトホルミンクロフィブリン酸塩の糖尿病関連疾患に対する特許を出願し、US6,031,004(特許文献5)ではメトホルミンのフマル酸塩、スクシン酸塩、マレイン酸塩による医薬組成物とその用途に対する内容を表している。しかし、先行特許でメトホルミン酢酸塩の製法及び組成物に対する言及はなく、さらにメトホルミン酢酸塩の効果に対する研究は進められたり知られているところがない。
【0017】
このようにメトホルミン付加塩に対する研究は根気強く進められて来たが、実際に使用されているものはメトホルミン塩酸塩しかない。塩酸塩は単位投与量が大きく、剤形のサイズが非常に大きい。よって、新たな付加塩を試みても、分子量及び剤形が非常に大きくなるため、製剤化し難いという短所が類推される。よって、新たな付加塩の製品開発が全く試みられたことがないと判断できる。
【0018】
一方、既存特許(米国特許4,080,472(特許文献4))では、メトホルミン遊離塩基を合成する際、メトホルミン塩酸塩から塩酸を除去するためにイオン交換樹脂カラムを使用して辛うじて生産し、既存特許(米国特許4,028,402(特許文献3))で溶媒を加熱還流し熱い状態でろ過をする過酷な生産条件を要求する。
【0019】
メトホルミン塩酸塩の通常的な投与量は一日最大2550mgであり、食事と共に500mg、750mgの錠剤を一日に2〜3回投与する。
【0020】
このような投与方法は、薬物消失速度が速いメトホルミン塩酸塩の特性上、薬物の血中濃度に急激な変化を起こし、このような血中濃度の変化は薬物に対する副作用及び耐性を招き得る。実際に、メトホルミン塩酸塩の使用に対する副作用が事実上胃腸管で度々発生し、その例としては食欲不振、悪心、嘔吐症、及び場合によっては下痢のようなものがある。よって、現在のこのような副作用を減らし、第2型糖尿患者における治療の質向上のためにメトホルミン塩酸塩の拡張された制御放出剤形に対する研究が進められている。
【0021】
また、メトホルミン塩酸塩は高水溶性薬物(>300mg/mL, 25℃)で特殊な剤形に設計しない場合、急激な放出現象による過度な血糖降下を起こし得るという問題点があるため、単純に患者の便宜のためだけでなく、治療効果の面でも一定量の薬物が24時間制御放出されるように設計された徐放型錠剤が最も好ましい投与形態であると考えられている。
【0022】
しかし、メトホルミン塩酸塩は水溶解性が非常に高く、胃腸管下部での透過性が非常に悪いため、大部分の薬物が胃腸管上部で吸収されなければならない。そのため、持続的な放出のための特殊な剤形にすることも考慮しなければならないという多くの製剤技術上の問題点がある。
【0023】
このような製剤技術上の問題点を克服するためのメトホルミンの徐放型錠剤に対する特許が韓国内外に多く登録されている。デポメッド社で出願した韓国出願1999-7011439(特許文献6)では、可溶性薬物の制御放出のための剤形として一般的な高分子重合体を使用した8時間の薬物を遅延放出する製剤に対する内容を言及しており、ブリストル・マイヤーズ スクイブで出願した韓国出願2000-7010280(特許文献7)で溶解度が高いメトホルミンを必要なだけ遅延放出させるために適合した2相徐放錠に対する内容が言及されている。
【0024】
しかし、メトホルミンの単位投与量が大きく500〜750mgに至るため、ここに制御放出基剤を始めとする薬剤学的な賦形剤の投入を勘案すると、基本的に錠剤の総重量が非常に大きい方であり、またメトホルミン塩酸塩の溶解度が高いため、目的とする時間中制御放出をするためには、投入される制御放出基剤の量も自然と多く必要になるため、やや服用し難い程度に大きな剤形になり得る。よって、服用可能な錠剤の大きさ内でメトホルミン塩酸塩の持続的な制御放出を維持することは容易ではない。
【0025】
糖尿病治療剤として酢酸塩を選定することになった理由は、薬剤学的に優れた制御放出を表すことができるという理由に加え、酢酸塩の薬理学的な効果が塩酸塩より優れるということにその理由がある。
【0026】
酢酸の様々な薬理的な効果に対しての研究が近年活発に進められている。小腸で二炭糖をブドウ糖に分解させる酵素を少量の酢が抑制することにより、少量の酢が食後30分程度で血糖を下げるという実験が多く発表されて来た。
【0027】
近年、インシュリン抵抗性、2型糖尿人を対象とするCarol Johnston等の酢の効果に対する研究を見ると、インシュリン抵抗群中の酢投与群では食後の血糖が64%減少し、インシュリン感受性もやはり34%増加することを言及している[参照:Vinegar: Medicinal uses and Antiglycemic effect Carol Johnston, et al. Medscape general medicine 2006;8(2):61(非特許文献4)]。
【0028】
また、Ogawa(非特許文献5)は酢酸がスクラーゼ(Sucrase)、ラクターゼ(lactase)等の二糖類分解酵素(disaccharidase)の活性を抑制するとした。即ち、酢酸は多糖類を単糖類に分解させる酵素の作用を抑制して血糖を低下させる役割をすると言及している。
【0029】
[根拠]
1. Ogawa N, Satsu H, Watanabe H, et al. Acetic acid suppresses the increase in disaccharidase activity that occurs during culture of caco-2 cells. J Nutr. 2000 Mar;130(3):507-13 (非特許文献5)
2. Carol S. Johnston, PhD, RD; Cindy A. Gaas, BS. Vinegar: Medicinal Uses and Antiglycemic Effect,Medscape General Medicine. 2006;8(2):61. (非特許文献4)
3. Ostman E, Granfeldt Y, Persson L, Bjorck I. Vinegar supplementation lowers glucose and insulin responses and increases satiety after a bread meal in healthy subjects. Eur J Clin Nutr. 2005 Sep;59(9),983-8. (非特許文献6)
4. Johnston CS, Kim CM, Buller AJ. Vinegar improves insulin sensitivity to a high carbohydrate meal in subjects with insulin resistance or type 2 diabetes. Diabetes Care. 2004 Jan;27(1):281-2. (非特許文献7)
5. Leeman M, Ostman E, Bjorck I. Vinegar dressing and cold storage of potatoes lowers postprandial glycaemic and insulinaemic responses in healthy subjects. Eur J Clin Nutr. 2005 Nov;59(11):1266-71. (非特許文献8)
6. Ebihara K, Nakajima A. Effect of acetic acid and vinegar on blood glucose and insulin responses to orally administered sucrose and starch. Agric Biol Chem. 1988;52:1311-1312. (非特許文献9)
7. Brighenti F, Castellani G, Benini L, et al. Effect of neutralized and native vinegar on blood glucose and acetate responses to a mixed meal in healthy subjects. Eur J Clin Nutr. 1995 Apr;49(4):242-7 (非特許文献10)
【0030】
さらには、日本のミツカン社で出願した韓国出願2004-7013025(特許文献8)では、微量の酢酸が長期の経口摂取によって優れた血圧低下作用を発揮することを特徴とする高血圧予防用食品及び医薬品組成物に対して言及している。
【0031】
このように、酢及び酢酸自体に対する様々な疾病の研究は活発に行われて来た。しかし、前記研究は、酢酸塩に対する実験ではなく食品としての酢に対する研究結果として相当な効果を表していますが、本発明で表しているようなメトホルミン酢酸塩としての効果では表していないだけでなく、メトホルミンとの相互作用に対する効果も全く言及されていない。
【0032】
本発明では適切な制御放出基剤の選択による製剤設計としてメトホルミン塩酸塩の問題点を克服しなければならないというパラダイムから外れ、有効活性成分の溶解度を低くすると速放出性製剤の服用時にも過度な血糖降下や胃腸管障害のような副作用が改善され、徐放型製剤化時により効率的な制御放出を表すことができると判断し、水に対する溶解度が相対的に低いメトホルミン付加塩について研究した。しかし、溶解度が低いメトホルミン誘導体を合成しても新たなメトホルミン誘導体が、メトホルミン塩酸塩に比べて分子量が大きすぎると、メトホルミンの投与容量は増加することになり、実用性に劣るという問題点がある。これはメトホルミンの単位投与量が大きいという点を考慮すると、非常に重要な問題である。分子量が大きすぎず錠剤に打錠できる投与容量を有し、溶解度を低くして制御放出が容易で、下部胃腸管及び結腸での透過性が相対的に優れ、メトホルミン塩酸塩に比べて相対的に吸収範囲が広いメトホルミン付加塩を開発すれば、薬剤学的や薬物動力学的に優れた波及効果を有すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】大韓民国特許登録第90,479号
【特許文献2】US3,957,853
【特許文献3】US4,028,402
【特許文献4】US4,080,472
【特許文献5】US6,031,004
【特許文献6】韓国出願1999-7011439
【特許文献7】韓国出願2000-7010280
【特許文献8】韓国出願2004-7013025
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】Monica Buzzai, et al. Systemic Treatment with the Antidiabetic Drug Metformin Selectively Impairs p53-Deficient Tumor Cell Growth, Cancer Res 2007; 67:(14). July 15,2007
【非特許文献2】Jun-ichi Hanai, et al. The muscle-specific ubiquitin ligase atrogin-1/MAFbx mediates statin-induced muscle toxicity, J. Clin. Invest. 117: 3940-3951 (2007)
【非特許文献3】Marathe,P.et al., Br.J.Clin.Pharmacol.,50:325-332(2000)
【非特許文献4】Vinegar: Medicinal uses and Antiglycemic effect Carol Johnston, et al. Medscape general medicine 2006;8(2):61
【非特許文献5】Ogawa N, Satsu H, Watanabe H, et al. Acetic acid suppresses the increase in disaccharidase activity that occurs during culture of caco-2 cells. J Nutr. 2000 Mar;130(3):507-13
【非特許文献6】Ostman E, Granfeldt Y, Persson L, Bjorck I. Vinegar supplementation lowers glucose and insulin responses and increases satiety after a bread meal in healthy subjects. Eur J Clin Nutr. 2005 Sep;59(9),983-8.
【非特許文献7】Johnston CS, Kim CM, Buller AJ. Vinegar improves insulin sensitivity to a high carbohydrate meal in subjects with insulin resistance or type 2 diabetes. Diabetes Care. 2004 Jan;27(1):281-2.
【非特許文献8】Leeman M, Ostman E, Bjorck I. Vinegar dressing and cold storage of potatoes lowers postprandial glycaemic and insulinaemic responses in healthy subjects. Eur J Clin Nutr. 2005 Nov;59(11):1266-71.
【非特許文献9】Ebihara K, Nakajima A. Effect of acetic acid and vinegar on blood glucose and insulin responses to orally administered sucrose and starch. Agric Biol Chem. 1988;52:1311-1312.
【非特許文献10】Brighenti F, Castellani G, Benini L, et al. Effect of neutralized and native vinegar on blood glucose and acetate responses to a mixed meal in healthy subjects. Eur J Clin Nutr. 1995 Apr;49(4):242-7
【発明の概要】
【0035】
発明の開示
技術的課題
本発明では適切な制御放出基剤の選択による製剤設計としてメトホルミン塩酸塩の問題点を克服しなければならないというパラダイムから外れ、有効活性成分の溶解度を低くすると速放出性製剤の服用時にも過度な血糖降下や胃腸管障害のような副作用が改善され、徐放型製剤化時により効率的な制御放出を表すことができると判断し、水に対する溶解度が相対的に低いメトホルミン付加塩について研究した。しかし、溶解度が低いメトホルミン誘導体を合成しても新たなメトホルミン誘導体が、メトホルミン塩酸塩に比べて分子量が大きすぎると、メトホルミンの投与容量は増加することになり、実用性に劣るという問題点がある。これはメトホルミンの単位投与量が大きいという点を考慮すると、非常に重要な問題である。分子量が大きすぎず錠剤に打錠できる投与容量を有し、溶解度を低くして制御放出が容易で、下部胃腸管及び結腸での透過性が相対的に優れ、メトホルミン塩酸塩に比べて相対的に吸収範囲が広いメトホルミン付加塩を開発すれば、薬剤学的や薬物動力学的に優れた波及効果を有すると考えられる。
【0036】
さらに、付加塩の薬理的な効果がメトホルミンの有効活性成分と共に薬理的な上昇効果を表せればより理想的なメトホルミン付加塩になると考えられる。そこで研究を進めた結果、分子量が大きすぎず且つ溶解度が相対的に低いメトホルミン酢酸塩を見出すことにより本発明を完成させた。
【0037】
ここにメトホルミン酢酸塩に対する臨床的な研究を多角的に進めた結果、溶解度が低いことにより得られる薬剤学的、薬物動態学的な長所に加え、メトホルミン酢酸塩はメトホルミン塩酸塩に比べて初期血糖降下効果と食後血糖降下効果が相対的により優れるという薬理的な優秀さを見出すに至った。これは、メトホルミン酢酸塩をメトホルミン塩酸塩より小さい単位投与量で投与してもメトホルミン塩酸塩と同一な臨床効果を表し得るというものであり、薬理的にも優れた波及効果が期待できる。
【0038】
そのため本発明の目的は、溶解度、安定性等の物理化学的性質に優れた薬剤学的に許容可能なメトホルミン酢酸塩及びその製造方法を提供することにある。
【0039】
また、本発明はメトホルミン酢酸塩を活性成分として含む糖尿病及びその合併症を治療したり予防するための薬学組成物を提供することにまた別の目的がある。
【0040】
本発明の目的は、水に対する溶解度が相対的に低いメトホルミン酢酸塩を活性成分として含む糖尿病及びその合併症を治療したり予防するための薬学組成物を提供する。
【0041】
また、本発明の目的はメトホルミン酢酸塩の製造方法を提供するものである。
【0042】
本発明はメトホルミン酢酸塩を有効成分としてメトホルミン塩酸塩に比べて少ない制御放出基剤を使用しつつも優れた制御放出を見せ、臨床的にメトホルミン塩酸塩より初期血糖降下及び食後の血糖降下効果がより優れた速放出性及び徐放出性メトホルミン製剤を提供することにその目的がある。
【0043】
また、有効薬物成分であるメトホルミンと前記のメトホルミンの放出速度を調節できるマトリックス剤の使用により、薬物の胃腸内滞留時間を延長させることができ、メトホルミンの胃腸管内吸収速度を調節できるため、本発明の徐放性マトリックス剤は既存の徐放錠の製造に必要なマトリックス剤より少ない量で製剤化されても十分に薬物の放出が24時間持続的に行われるため、錠剤の大きさを服用に適したレベルに小さく調節できる。
【0044】
技術的解決方法
本発明者等は、メトホルミン酢酸塩、その製造方法及びそれを含む糖尿病治療剤として有用な組成物を製造して本発明を完成した。
【0045】
すなわち、本発明は、以下の通り12個の特徴的な要素から構成されている。
(1) 下記の式1で表されるメトホルミン酢酸塩。
[化1]

(2) 上記(1)において、無水物、半水和物、又は一水和物の状態のメトホルミン酢酸塩。
(3) 水又は有機溶媒中で、下記の式4のメトホルミン塩酸塩1当量と無機塩類1〜2当量を水や有機溶媒上で反応させてメトホルミン遊離塩基を生成した後に無機塩を除去したり除去していない状態で、式2の1当量〜2当量の酢酸と反応させて製造する、下記の式1で表されるメトホルミン酢酸塩の製造方法。
[化2]

[化3]

[化4]

(4) 上記の式4のメトホルミン塩酸塩1当量と有機アルカリ1〜2当量を水で反応させ、無機塩類を除去していない状態で上記の式2の酢酸と反応させて上記の式1で表したメトホルミン酢酸塩を製造する方法。
(5) 水溶液中で上記の式4のメトホルミン塩酸塩1当量と、無機塩類又は有機アルカリ1〜2当量と式2の酢酸1当量〜2当量と反応させて無機塩を除去していない状態で製造する、上記の式1で表されるメトホルミン酢酸塩の製造方法。
(6) 前記(3)又は(4)において、メトホルミン遊離塩基1当量と酢酸1当量を反応させる、メトホルミン(1:1)酢酸塩の製造方法。
(7) 前記(3)において、有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、及びアセトニトリルからなる群より選ばれる、製造方法。
(8) 前記(3)において、1当量のメトホルミン塩酸塩と1〜2当量の無機塩類を水又は有機溶媒上で反応してメトホルミン遊離塩基を合成する、製造方法。
(9) 前記(1)のメトホルミン酢酸塩を有効成分とする、糖尿及び糖尿病、肥満症、高脂血症、冠動脈心疾患等が複合的に表れる代謝症候群患者の糖尿病治療及び合併症予防用の薬剤学的組成物。
(10) 前記(9)において、錠剤又はカプセル剤に剤形化されたものである、糖尿及び糖尿病、肥満症、高脂血症、冠動脈心疾患等が複合的に表れる代謝症候群患者の糖尿病治療及び合併症予防用の薬剤学的組成物。
(11) 前記(10)において、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦型剤を更に含む薬剤学的組成物。
(12) 前記(9)、(10)、又は(11)において、メトホルミン遊離塩基として一日1〜3回に亘り50〜3,000mgが経口投与される、2型糖尿病の予防と治療、体重調節、高脂血症脂質の低下、脂肪肝の治療、動脈硬化の予防、多嚢性卵巣症候群治療用、P53遺伝子が欠如した癌治療、並びに筋肉痛、筋肉細胞毒性、及び横紋筋融解等の予防のための薬剤学的組成物。
【0046】
有利な効果
本発明にかかるメトホルミン酢酸塩は、既存に糖尿病治療剤として用いられていたメトホルミン塩酸塩より優れた血糖降下効果、特に空腹時だけでなく食後の血糖降下に非常に効果的で、インシュリン感受性を増加させる効果を表す。より詳しくは、本発明にかかるメトホルミン酢酸塩は、メトホルミン塩酸塩に比べて溶解度を低くし、薬物の効果的な制御放出を表す薬剤学的、薬物動力学的に優れた効果を表す。また、本発明にかかるメトホルミン酢酸塩は、分子量の面でも適切で、薬物学的、薬剤学的、且つ臨床学的な面で塩酸塩より優れている。本発明のメトホルミン酢酸塩は、経口服用時に小腸で徐々に溶出されながらメトホルミンと酢酸に分離され、メトホルミンは吸収され、酢酸は小腸で二炭糖の分解を抑制し血糖上昇を抑制する。メトホルミン酢酸塩は、最適な生体利用率を表すため薬剤学的にも非常に優れた化合物である。
【0047】
また、本発明にかかるメトホルミン酢酸塩の製造方法は、単純で特別な設備がなくても進められるように工程を確立した。本発明にかかるメトホルミン酢酸塩の製造方法は、特別な設備がなくても一般的な生産設備で合成が可能なように単純に工程を改善して産業の利用可能性を高めて、より低い費用でメトホルミンの新規塩を合成できる。
【0048】
本発明にかかるメトホルミン酢酸塩は、薬剤学的剤形の製造に適した結晶性酸付加塩として塩酸を用いて製造される既存のメトホルミン塩酸塩に比べ、非グアニド系の薬物としては専ら一つの塩だけが用いられており、メトホルミン塩酸塩と比較すると本発明のメトホルミン酢酸塩は比較的毒性が低い酢酸を塩として用いながらも、安定性、非吸湿性、及び錠剤の剤形への加工性等の製剤学的且つ物理化学的長所を増加させるだけでなく、糖尿病及びその合併症に対する治療効果をより増加させる新たな薬である。
【0049】
下記の表1は、メトホルミン塩酸塩の結晶性酸付加塩を形成する塩酸とメトホルミン酢酸塩の結晶性酸付加塩を形成する酢酸の経口毒性を比較したものである。二つの酸の毒性資料はRegistry of Toxic Effects of Chemical Substances(RTECS) Dataから抜粋した。
【0050】
(表1)

【0051】
前記表1に示された通り、メトホルミンの結晶性酸付加塩製造に用いられた塩酸は、化合物自体でも毒性があるが、本発明で使用する酢酸は塩酸に比べて非常に安全である。メトホルミン酢酸塩に対する薬理学的効果を様々な方法で生体内(in vivo)及び生体外(in vitro)で実験した結果、メトホルミン酢酸塩はメトホルミン塩酸塩に比べて血糖降下効果、脂質低下作用及び代謝症候群(metabolic syndrome)改善効果がより優れるだけでなく、メトホルミン塩酸塩より少ない容量を投与して治療目的を達成できることを予想できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明にかかる実施例1のメトホルミン酢酸塩のXRD測定結果である。
【図2】比較例1のメトホルミン塩酸塩のXRD測定結果である。
【図3】本発明にかかる実施例1のメトホルミン酢酸塩のNMR測定結果である。
【図4】比較例1のメトホルミン塩酸塩のNMR測定結果である。
【図5】本発明にかかる実施例1のメトホルミン酢酸塩のIR測定結果である。
【図6】比較例1のメトホルミン塩酸塩IR測定結果である。
【図7】本発明にかかる実験例2の溶解度測定結果である。
【図8】本発明にかかる実験例3の吸湿性測定結果である。
【図9】本発明にかかるメトホルミン酢酸塩のpKa測定結果である。
【図10】本発明にかかる実施例10のメトホルミン酢酸塩徐放錠と比較例2によって製造されたメトホルミン塩酸塩徐放錠に対する溶出測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の形態
本発明は、溶解度、安定性、非吸湿性、及び錠剤剤形への加工性等の物理化学的特性がより優れるだけでなく、糖尿病及びその合併症の治療や予防により有効な式1の新規なメトホルミン酢酸塩に関するものである。
【0054】
[化1]

【0055】
また、本発明では上記の式1のメトホルミン酢酸塩の製造方法を含むが、その製造方法は下記反応式1に示したように、水又は有機溶媒中で式4のメトホルミン塩酸塩に塩基を加えて製造された下記の式3で表されるメトホルミン遊離塩基に下記の式2で表される酢酸を反応させて製造するものから構成される。
【0056】
[反応式1]

【0057】
[式2]

【0058】
[式3]

【0059】
[式4]

【0060】
前記反応式1で表される本発明の製造方法を各過程別に細分化すると、
1) 式4のメトホルミン塩酸塩の付加塩を除去する段階;
2) 式2の酢酸を上記の式3のメトホルミン反応液に添加して混合物を製造する段階;及び
3) 前記混合物を攪拌して得た固体を、ろ過、洗浄及び乾燥させて式1の新規な結晶性酸付加塩を形成する段階から構成される。
【0061】
本発明にかかるメトホルミン結晶性酸付加塩は、上記の式3で表されるメトホルミンを含有した溶液内に酢酸を添加して製造し、各製造段階別に詳しく説明すると次の通りである。
【0062】
第1段階の製造過程では、メトホルミン遊離塩基を得るために水や有機溶媒の条件下で無機塩類を使用できる。製造過程に使われる無機塩類は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ等が使用できるが、好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。1当量のメトホルミン塩酸塩に対して無機塩類は1〜2当量が使用できる。
【0063】
第2段階では、メトホルミン含有反応液に酢酸を添加する過程であって、酢酸はメトホルミン塩酸塩1当量に対して1〜2当量を使用することが好ましい。
【0064】
前記の第1段階及び第2段階では、反応溶媒として通常の有機溶媒を用い、特に好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン及びアセトニトリルから選択された有機溶媒を使用するものである。
【0065】
第3段階は、結晶性酸付加塩の形成段階であって、反応は−10〜80℃の温度範囲で行う。
【0066】
より単純化された工程として、前記の第1段階と第2段階の二つの段階を経ずメトホルミン酢酸塩を得る方法であって、メトホルミン塩酸塩を水や有機溶媒の条件下で有機アルカリと反応させて製造することもでき、製造過程に使われる有機アルカリとして炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム等が使用できるが、好ましくは酢酸ナトリウムが使用される。また、下記の反応式2に示したように、メトホルミン塩酸塩を酢酸、無機塩類と同時に反応させて製造することもでき、製造過程に使われる無機塩類は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ等が使用できるが、好ましくは水酸化ナトリウムが使用される。1当量のメトホルミン塩酸塩に対して有機アルカリは1〜2当量が使用できる。
【0067】
[反応式2]

【0068】
本発明で用いている用語であるメトホルミン酢酸塩は、特に言及がない限り、メトホルミン(1:1)酢酸塩を意味する。
【0069】
本発明のメトホルミン酢酸塩は、無水物及び水和物を共に含むが、好ましくは無水物である。
【0070】
本発明では、メトホルミン遊離塩基の製造工程を単純且つ特別な設備がなくても進められるように工程を確立した。メトホルミン塩酸塩の塩酸を除去するために米国特許第4,080,472号では、イオン交換樹脂カラムを使用したり、米国特許第4,028,402号のように溶媒を加熱還流し、熱い溶液をろ過する過酷な生産条件の合成法に対して掲載している。しかし、本発明では特別な設備がなくても一般的な生産設備で合成ができるように単純に工程を改善して産業の利用可能性を高め、より低い単価でメトホルミンの有機酸塩を合成できる。この遊離塩基の合成方法は、薬剤学的に許容可能な塩の製造に用いられる様々な酸との反応に利用できる。
【0071】
本特許の遊離塩基の合成方法を適用できる薬剤学的に許容可能な塩の種類は次の通りである:塩酸、スルフェート、ナイトレート、フォスフェート、スルファイト、ジチオネート、アセテート、ベンゾエート、シトレート、グリコレート塩、グリオキシレート、メルカプトアセテート、ガンマヒドロキシブチレート、パモエート、アスパルテート、グルタメート、ピロリドンカルボキシレート、メタンスルホネート、ナフタレンスルホネート、グルコース−1−フォスフェート、クロロフェノキシアセテート、エンボネート、クロロフェノキシアセテート、マレアート、パラクロロフェノキシイソブチレート、フォルメート、ラクテート、スクシネート、タートレート、シクロヘキサンカルボキシレート、ヘキサノエート、オクタノエート、デカノエート、ヘキサデカノエート、オクタデカノエート、ベンゼンスルホネート、トリメトキシベンゾエート、パラトルエンスルホネート、アダマンタンカルボキシレート、グルタメート、ピロリドンカルボキシレート、マロネート、マレート、オキサレート等である。
【0072】
また、本発明は上記の式1のメトホルミン酢酸塩を有効成分として含有し、様々な剤形を有する糖尿病を治療、予防するための薬剤学的組成物に関するものである。
【0073】
前記方法によって製造された本発明のメトホルミン酢酸塩は、薬剤学的に許容される担体を含み、様々な形態の経口投与用製剤として活用することができ、徐放性及び速放性錠剤、軟質カプセル剤、硬質カプセル剤、丸剤、顆粒剤又は散剤、注射剤、液剤等の形態で糖尿病と関連する同伴疾患病的状態の治療及び予防用薬剤学的製剤を製造できる。
【0074】
前記の様々な経口投与剤中でも、血中濃度の急激な変化を防ぎ、薬物に対する副作用及び耐性を予防できるという面と、患者の便宜、治療効果を考慮すると、薬物の放出率を制御できる徐放型錠剤が最も好ましい投与形態と考えられている。
【0075】
前記の薬剤学的に許容される担体の中で、徐放化の目的で使用されるマトリックス基剤として、腸溶重合体、疎水性物質、親水性重合体等から選択された成分を使用する。前記の腸溶重合体としては、ポリビニルアセテートフタレート、メタクリル酸共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、シェラック、セルロースアセテートフタレート、セルロースプロピオネートフタレート、ポリ(メタクリル酸、メチルメタクリレート)共重合体等から選択された1種又は2種以上の混合物を使用でき、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを使用する。
【0076】
前記疎水性物質は、薬学的に許容できるものとしてポリビニルアセテート、ポリメタクリレート共重合体としてポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート)共重合体、ポリ(エチルアクリレート、メチルメタクリレート、トリメチルアミノエチルメタクリレート)共重合体、エチルセルロース及びセルロースアセテート、脂肪酸及び脂肪酸エステル類、脂肪酸アルコール類、ワックス類及び無機物質等を選択使用でき、具体的に、脂肪酸及び脂肪酸エステル類としてグリセリルパルミトステアレート、グリセリルステアレート、グリセリルベヘネート、セチルパルミテート、グリセリルモノオレート及びステアリン酸等の脂肪酸アルコール類としてセトステアリルアルコール、セチルアルコール、及びステアリルアルコール等のワックス類としてカルナバワックス、蜜蝋及び微結晶ワックス等、無機物質としてタルク、沈降炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイト及びビーガム等から選択された1種又は2種を選択して使用できる。
【0077】
前記の親水性高分子は、糖類、セルロース誘導体、ガム類、タンパク質類、ポリビニル誘導体、ポリメタクリレート共重合体、ポリエチレン誘導体及びカルボキシビニル重合体等を選択使用でき、具体的に糖類として、デキストリン、ポリデキストリン、デキストラン、ペクチン及びペクチン誘導体、アルギン酸塩、ポリガラクツロン酸、キシラン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン、澱粉、ヒドロキシプロピルスターチ、アミロース、アミロペクチン等を選択使用でき、セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシエチルメチルセルロース等を選択して使用でき、ガム類としてグアガム、ローカストビーンガム、トラガカント、カラギーナン、アカシアガム、アラビアガム、ジェランガム、キサンタンガム等を選択使用でき、タンパク質類としてゼラチン、カゼイン、及びゼイン等を選択使用でき、ポリビニル誘導体としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアセタルジエチルアミノアセテート等を選択使用でき、ポリメタクリレート共重合体としてポリ(ブチルメタクリレート、(2-ジメチルアミノエチル)メタクリレート、メチルメタクリレート)共重合体、ポリ(メタクリル酸、メチルメタクリレート)共重合体、ポリ(メタクリル酸、エチルアクリレート)共重合体等を選択して使用でき、ポリエチレン誘導体としてポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド等を選択使用でき、カルボキシビニルポリマーとしてカルボマーを使用できる。
【0078】
本発明の効果を阻害しない範囲内で薬学的に許容可能な希釈剤として、澱粉、微細結晶性セルロース、乳糖、ブドウ糖、マンニトール、アルギナート、アルカリ土類金属塩、クレー、ポリエチレングリコール及びジカルシウムフォスフェート等を使用できる。結合剤として、澱粉、微細結晶性セルロース、高分散性シリカ、マンニトール、ラクトース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、天然ガム、合成ガム、コポビドン及びゼラチン等を使用できる。崩壊剤として、ナトリウム澱粉グリコレート、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉又は予備ゼラチン化澱粉等の澱粉又は変性澱粉と、ベントナイト、モンモリロナイト、ビーガム(veegum)等のクレーと、微細結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はカルボキシメチルセルロース等のセルロース類と、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸等のアルギン類と、クロスカメロース(croscarmellose)ナトリウム等の架橋セルロース類と、グアガム、キサンタンガム等のガム類と、クロスポビドン(crospovidone)等の架橋重合体と、重炭酸ナトリウム、クエン酸等の沸騰性製剤等を混合使用できる。潤滑剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びアルカリ土金属ステアレート型カルシウム、亜鉛等、ラウリルスルフェート、水素化植物性オイル、ナトリウムベンゾエート、ナトリウムステアリルフマレート、グリセリルモノステアレート及びポリエチレングリコール4000等を使用できる。
【0079】
本発明の範囲が前記添加剤を使用することで限定されるのではなく、前記の添加剤は当業者の選択によって通常の範囲の容量を含有できる。
【0080】
上述の通り、メトホルミン酢酸塩は様々な形態の経口投与用製剤としての活用が可能で、本発明にかかる薬剤学的組成物の人体に対する投与容量は、患者の年齢、性別、体重、国籍、健康状態、及び疾患の程度によって変わり、処方医の判断によって分割投与もできる。
【0081】
以下、実施例を通じて本発明をより詳しく説明する。これら実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されない。
【0082】
実施例1:メトホルミン酢酸塩の製造
メトホルミン塩酸塩2Kg(1当量)と水酸化ナトリウム483g(1当量)をメタノール10Lで2時間室温で攪拌した後、残っている固形物をろ過し、残ったろ液を減圧濃縮した。減圧濃縮後、生成された固形物にアセトン15Lを加えて攪拌した後、不溶物をろ過し、ろ液を減圧濃縮して1,230gのメトホルミン遊離塩基を得た。メトホルミン遊離塩基をアセトン33Lに溶解後、酢酸2.8L(4当量)を加え2時間室温で攪拌した。生成された結晶をろ過し、水とアセトンで再結晶して1,089gのメトホルミン酢酸塩(得量収率:47.7%)を得た。
【0083】
実施例2:メトホルミン酢酸塩の製造
10L反応器に、水5L、メトホルミン塩酸塩2Kg(1当量)、水酸化ナトリウム578g(1.2当量)を入れ、室温で2時間攪拌した。1時間酢酸1L(1.45当量)を加え、一晩室温で攪拌した。生成された結晶をアセトン−水(12:1)混合液で洗浄した後、アセトンで洗浄し60℃で乾燥してメトホルミン酢酸塩1,112g(得量収率:48.7%)を得た。
【0084】
実施例3:メトホルミン酢酸塩の製造
反応器にメトホルミン塩酸塩1Kg(1当量)、水2Lを入れ、酢酸0.5L(1.45当量)を加えた後、30℃で2時間攪拌して完全に溶解した。この反応溶液に水酸化ナトリウム289.8g(1.2当量)水溶液を1時間小分け投与した。生成された結晶をろ過し、アセトンで洗浄し60℃で乾燥してメトホルミン酢酸塩601g(得量収率:52.7%)を得た。
【0085】
実施例4:メトホルミン酢酸塩の製造
反応器にメトホルミン塩酸塩20g(1当量)、水30mLを入れ、酢酸10mL(1.45当量)を加えた後、30℃で2時間攪拌して完全に溶解した。この反応溶液に水酸化ナトリウム1.23g(1.5当量)を溶解した水溶液を投与した。生成された結晶をろ過し、アセトンで洗浄し60℃で乾燥してメトホルミン酢酸塩16.7g(得量収率:73.0%)を得た。
【0086】
実施例5:メトホルミン酢酸塩の製造
反応器にメトホルミン塩酸塩20.0g(1当量)、水50mL、酢酸ナトリウム三水和物19.72g(1.2当量)を入れ攪拌した。生成された結晶をろ過し、アセトンで洗浄し60℃で乾燥してメトホルミン酢酸塩11.72g(得量収率:51.3%)を得た。
【0087】
実施例6:メトホルミン酢酸塩の製造
20L反応器に水0.4L、水酸化ナトリウム241.50g、アセトン9L、メトホルミン塩酸塩1Kgを反応液に投入し、室温で2時間40分攪拌した。生成された結晶をろ過し、ろ過物をアセトンで洗浄した。ろ過液に水0.2Lと酢酸1Lを加え、攪拌した。生成された結晶をろ過し、アセトンで洗浄し60℃で乾燥してメトホルミン酢酸塩1,056g(得量収率:92.4%)を得た。
【0088】
実施例7:メトホルミン酢酸塩の製造
反応器にメトホルミン遊離塩基78g(1当量)、イソプロパノール234mL、水234mL、酢酸57mL(1.65当量)を入れ攪拌した。生成された結晶をろ過し、イソプロパノールで洗浄し60℃で乾燥してメトホルミン酢酸塩54.6g(得量収率:47.8%)を得た。
【0089】
実施例8:メトホルミン酢酸塩の製造
メトホルミン塩酸塩20.00g(1当量)と水酸化ナトリウム4.84g(1当量)をエタノール200mLで2時間室温で攪拌した後、残っている固形物をろ過し、残ったろ液を減圧濃縮した。減圧濃縮後、生成された固形物にアセトン300mlを加えて攪拌した後、不溶物をろ過し、ろ液を減圧濃縮して12.0gのメトホルミン塩基を得た。遊離塩基にアセトン500mLと氷酢酸10mL(1.45当量)を加え攪拌した。生成された結晶をろ過し、アセトンで洗浄し60℃で乾燥してメトホルミン酢酸塩13.6g(得量収率:59.5%)を得た。
【0090】
実施例9:メトホルミン酢酸塩の製造
反応器にメトホルミン塩酸塩20g(1当量)、水50mLを入れ、氷酢酸10mL(1.45当量)を加えた後、30℃で2時間攪拌して完全に溶解した。この反応溶液に水酸化カリウム10.2g(1.5当量)を溶解した水溶液を投与した。生成された結晶をろ過し、アセトンで洗浄し60℃で乾燥してメトホルミン酢酸塩13.3g(得量収率:58.2%)を得た。
【0091】
実施例10:メトホルミン酢酸塩の薬剤学的組成物
次の表2に示した含量の通りメトホルミン酢酸塩とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び硬質無水ケイ酸を入れて混合し、16〜17Mpaの圧力条件でローラーコンパクティングしてスラグ化した。これを14号篩で整粒した後、ステアリン酸マグネシウムを入れて混合し、打錠して錠剤層を製造し、ハイコーター(SFC-30N, セジョン機械, 韓国)でオパドライOY-C-7000Aをコーティング基剤にしてフィルムコーティング層を形成し、メトホルミン酢酸塩が500mg含有されたメトホルミン徐放錠を製造した。
【0092】
実施例11:メトホルミン酢酸塩の薬剤学的組成物
次の表2に示した含量の通りメトホルミン酢酸塩とカルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース及び硬質無水ケイ酸を入れて混合し、16〜17Mpaの圧力条件でローラーコンパクティングしてスラグ化した。これを14号篩で整粒した後、ステアリン酸マグネシウムを入れて混合し、打錠して錠剤層を製造し、ハイコーター(SFC-30N, セジョン機械, 韓国)でオパドライOY-C-7000Aをコーティング基剤にしてフィルムコーティング層を形成し、メトホルミン酢酸塩が500mg含有されたメトホルミン徐放錠を製造した。
【0093】
実施例12:メトホルミン酢酸塩の薬剤学的組成物
次の表2に示した含量の通りメトホルミン酢酸塩とポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びグリセリルジベヘネートを20号篩で篩過して混合し、硬質無水ケイ酸を35号篩で整粒した後、ステアリン酸マグネシウムと一緒に入れて混合し、打錠して錠剤層を製造し、ハイコーター(SFC-30N, セジョン機械, 韓国)でオパドライOY-C-7000Aをコーティング基剤にしてフィルムコーティング層を形成し、メトホルミン酢酸塩が750mg含有されたメトホルミン徐放錠を製造した。
【0094】
比較例1:メトホルミン塩酸塩の製造
メトホルミン遊離塩基500mgをアセトン30mLに溶解後、濃塩酸280mLを加え、2時間室温で攪拌した。生成された結晶をろ過し、アセトンで洗浄し70℃で熱風乾燥してメトホルミン塩酸塩490mg(得量収率:76.4%)を得た。
【0095】
比較例2:メトホルミン塩酸塩の薬剤学的組成物
次の表2に示した含量の通りメトホルミン塩酸塩とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び硬質無水ケイ酸を入れて混合し、16〜17Mpaの圧力条件でローラーコンパクティングしてスラグ化した。これを14号篩で整粒した後、ステアリン酸マグネシウムを入れて混合し、打錠して錠剤層を製造し、ハイコーター(SFC-30N, セジョン機械, 韓国)でオパドライOY-C-7000Aをコーティング基剤にしてフィルムコーティング層を形成し、メトホルミン塩酸塩が500mg含有されたメトホルミン徐放錠を製造した。
【0096】
比較例3 : メトホルミン塩酸塩の薬剤学的組成物
次の表2に示した含量の通りメトホルミン塩酸塩とカルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース及び硬質無水ケイ酸を入れて混合し、16〜17Mpaの圧力条件でローラーコンパクティングしてスラグ化した。これを14号篩で整粒した後、ステアリン酸マグネシウムを入れて混合し、打錠して錠剤層を製造し、ハイコーター(SFC-30N, セジョン機械, 韓国)でオパドライOY-C-7000Aをコーティング基剤にしてフィルムコーティング層を形成し、メトホルミン塩酸塩が500mg含有されたメトホルミン徐放錠500mgを製造した。
【0097】
比較例4:メトホルミン塩酸塩の薬剤学的組成物
次の表2に示した含量の通りメトホルミン塩酸塩とポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びグリセリルジベヘネートを20号篩で篩過して混合し、硬質無水ケイ酸を35meshに整粒した後、ステアリン酸マグネシウムと併せて入れて混合し、打錠して錠剤層を製造し、ハイコーター(SFC-30N, セジョン機械, 韓国)でオパドライOY-C-7000Aをコーティング基剤にしてフィルムコーティング層を形成し、メトホルミン塩酸塩が750mg含有されたメトホルミン徐放錠を製造した。
【0098】
(表2)

【0099】
実験例1:メトホルミン酢酸塩の構造の定性的確認
前記実施例1によって製造された式1のメトホルミン酢酸塩のX−線回析分光度、核磁気共鳴分光データ、赤外線分光データ及び溶融点から本発明にかかるメトホルミン酢酸塩は比較例1によって製造された式4のメトホルミン塩酸塩と相違する結晶形態と構造を有することを確認した。
【0100】
1) 粉末X−線回析分析図スペクトル
図1の粉末X−線回析分析図スペクトルに示されたメトホルミン酢酸塩の特徴的なピーク(peak)を下記の表3に示し、ここで“2θ”は回折角を、“d”は結晶面間の距離を、“I/Iο”はピークの相対強度を意味する。下記の分析はRigaku社D/MAX-2200V X-ray Diffractometer(XRD)で分析した。図1のメトホルミン酢酸塩と図2のメトホルミン塩酸塩を比較して相違する結晶が得られたことを確認した。
【0101】
(表3)

【0102】
2) 溶融点の測定
前記実施例1で製造された式1のメトホルミン酢酸塩は227.3〜228.0℃の溶融点を有し、前記比較例1のメトホルミン塩酸塩は222.8〜224.0℃の溶融点を有することを確認した。
【0103】
3) 元素分析試験
前記実施例1で製造された式1のメトホルミン酢酸塩を元素分析(Elemental Analysis)した結果、実際の測定値と1価塩と2価塩の理論値を比較して酢酸が1当量結合されていることを確認した。表4に示された結果から、下記の分析は、C, H, NはFISONS EA-1108 Elemental Analyzerに依って、OはThermo Finnigan FLASH EA-1112 Elemental Analyzerで分析した。
【0104】
(表4)

【0105】
4) 核磁気共鳴分光データ(NMR)
前記実施例1で製造された式1のメトホルミン酢酸塩の核磁気共鳴(1H-NMR)ピーク(図3)と前記比較例1のメトホルミン塩酸塩のピーク(図4)を確認すると、酢酸のメチル基がδ=1.885ppmで生成されたことが確認できるため、メトホルミン遊離塩基に酢酸が結合されたことが分かった。
【0106】
5) 赤外線分光データ(FT-IR)
前記実施例1で製造された式1のメトホルミン酢酸塩の赤外線分光(FT-IR)ピーク(図5)と前記比較例1のメトホルミン塩酸塩のピーク(図6)を確認すると、全体的にピークが変わっており、特に酢酸のカルボニル基が1622cm-1で生成されたことから、メトホルミン遊離塩基に酢酸が結合されたことを確認した。
【0107】
実験例2:水に対する溶解度の測定
前記実施例1で製造された式1のメトホルミン酢酸塩と、現在までメトホルミンの薬学組成物の活性成分として利用されている市販のメトホルミン塩酸塩の水に対する溶解度を比較した。
【0108】
実験条件及び方法は次の通りである。
1) 振盪恒温水槽に水を満たして温度を30℃に設定した。
2) 100mLの三角フラスコに水20mLを入れ、10gのメトホルミン塩酸塩とメトホルミン酢酸塩をそれぞれ入れた。
3) メトホルミン酢酸塩とメトホルミン塩酸塩がそれぞれ入っている三角フラスコを水槽のrackに固定させた後、温度30℃、振盪速度は1分当り60回に機器を作動させた。
4) 24時間間隔でサンプルを採取してろ過した後、紫外部吸光光度計(λ=233nm)を利用して定量し濃度を計算した。
【0109】
上の実験過程を5日間繰り返して得た30℃での飽和溶解度及び飽和溶解度に至る速度は表5に示した。
【0110】
(表5)

【0111】
表5に示された結果のように、5日後のメトホルミン酢酸塩とメトホルミン塩酸塩のそれぞれの飽和溶解度の測定の結果、飽和溶解度がそれぞれ292.48mg/mL、534.61mg/mLであって、塩酸塩の溶解度よりも酢酸塩の溶解度がより低いことが分かる。前記の表5のように、メトホルミン酢酸塩はメトホルミン塩酸塩に比べて飽和溶解度が低いだけでなく、飽和溶解度に至る速度もメトホルミン塩酸塩に比べて遅いため、メトホルミンの徐放型錠剤の製造においてより少ない高分子賦形剤を用いて目的とする溶出率を達成できるため、剤形化に有利だという長所を有している。
【0112】
実験例3:吸湿性の測定
前記実施例1で製造された式1のメトホルミン酢酸塩と、現在までメトホルミンの薬学組成物の活性成分として利用されている市販のメトホルミン塩酸塩の吸湿性を比較した。
【0113】
実験条件及び方法は次の通りである。
1) メトホルミン塩酸塩とメトホルミン酢酸塩をそれぞれ40℃で24時間乾燥して恒量になるようにした。
2) KH2PO4飽和溶液(22g/100g)をデシケーター下段部に入れて内部の湿度を95%に合わせ、デシケーターが位置した空間の室内温度は25℃を維持させた。
3) メトホルミン塩酸塩とメトホルミン酢酸塩をそれぞれ100mgを精密に取って容器と共に重量を測定した。
4) メトホルミン塩酸塩とメトホルミン酢酸塩を容器と共にデシケーター内に入れ、24時間間隔で容器と共に取り出して重量を測定し重量の増加分だけ水分を吸収したものと計算した。
【0114】
上の実験過程を6日間繰り返して得た95%RH、25℃での吸湿率は次の表6の通りである。
【0115】
(表6)

【0116】
前記の表6の通り、メトホルミン酢酸塩の吸湿率はメトホルミン塩酸塩に比べて低かった。
【0117】
これはメトホルミン塩酸塩が高い吸湿性によって運送中に水分を吸収し粒子同士圧着して塊を形成することと異なり、運送中に性状の変化を起こす可能性を非常に低くすることができ、また製品生産のための長時間の打錠工程等の薬剤学的製造工程上でも固まり合わず優れた流動性を表すことができる。
【0118】
実験例4:pKa確認試験(Spectrographic anlysis)
前記の実施例1で製造された式1のイオン化されるメトホルミン酢酸塩は、pHによって酸、遊離塩基又は両性化合物として作用することから、各適正点でpHの変化が生じることになるため、計算されたpH値と実際に測定されたpH値の差から得られたpKa値は下記の通りであり、その結果を添付図面の図9のように示した。
【0119】
(表7)

【0120】
実験例5:メトホルミン酢酸塩とメトホルミン塩酸塩の比較溶出試験(comparative dissolution profile test)
前記実施例10によって製造された本発明のメトホルミン酢酸塩徐放錠と、比較例2によって製造されたメトホルミン塩酸塩徐放錠を使用して大韓薬典一般試験法中の溶出試験項のパドル法で溶出特性を測定し、その結果を添付図面の図10のように示した。
【0121】
実験の結果、活性成分が異なることを除いては全て同一な製剤設計のメトホルミン酢酸塩徐放錠とメトホルミン塩酸塩徐放錠の溶出特性を比較すると、メトホルミン酢酸塩の溶解度の差によって更に低く、且つ持続的な溶出率を示しているということが確認できた。
【0122】
実験例6:メトホルミン酢酸塩とメトホルミン塩酸塩の効力の比較試験
1. 血糖降下効果
本試験は発明の効果を裏付ける実験であり、実施例1のメトホルミン酢酸塩と市販のメトホルミン塩酸塩を実験動物に投与して、その効果を比較するために表8のように実施した。
【0123】
(表8)

【0124】
血糖降下試験の詳細結果は表9の通りである。
【0125】
(表9)

【0126】
表9で示された結果のように、投与10時間後の血中グルコース濃度は14.4mmol/Lである。メトホルミン酢酸塩を投与した群の10時間後の血中グルコースの濃度は6.9mmol/Lであり約7.5mmol/Lが減少した。一方、メトホルミン塩酸塩を投与した群の10時間後の血中グルコースの濃度は9.4mmol/Lであって、対照群の血中グルコース濃度よりは低いが、メトホルミン酢酸塩の血中グルコースよりは高かった。即ち、メトホルミン酢酸塩の血糖降下効果がメトホルミン塩酸塩のものより更に優れていることが確認できた。
【0127】
2. 食後の血糖降下試験
本試験は発明の効果を裏付ける実験であり、実施例1のメトホルミン酢酸塩と市販のメトホルミン塩酸塩を実験動物に投与してその効果を比較するために表10のように実施した。
【0128】
(表10)メトホルミン酢酸塩とメトホルミン塩酸塩のOGTT試験

【0129】
食後の血糖降下試験の詳細結果は表11の通りである。
【0130】
(表11)
<単位:mg/dl>

* G8と著しく相違するもので、P<0.05
** G8と著しく相違するもので、P<0.01
【0131】
1) G8に比べてスクロース投与20分にG3、G4、G6及びG7で血糖降下効果を観察できた。
2) 120分にはG3で、240分にはG2及びG3で血糖降下効果を観察できた。
3) スクロース投与後、20〜60分の時間帯に試験物質200、400mg/k g容量群でメトホルミン酢酸塩がメトホルミン塩酸塩より高い血糖降下効果を示したことが確認できた。
4) 前記結果から類推すると、メトホルミン酢酸塩の食後血糖降下効果がメトホルミン塩酸塩より優れることを確認した。
【0132】
産業上の利用可能性
上述の通り、本発明にかかるメトホルミン酢酸塩は既存のメトホルミン塩酸塩に比べて血糖降下効果に優れ、特にメトホルミン塩酸塩の短所が食後血糖調節能力が弱いのに比べ、本発明の酢酸塩は食後血糖降下効果がはるかに優れている。また、生産方法が困難だったり、過酷な条件で生産されなければならなかった既存の製造方法に対し、本発明では特別な設備がなくても一般的な生産設備で合成ができるように単純に工程を改善してより低い単価でメトホルミンの新規塩を合成できるように産業の利用可能性を高めた。また、溶解度がメトホルミン塩酸塩より低いため、急激な放出による過度な血糖降下と薬物の早い消失を防止できるため、酢酸塩は塩酸塩に比べて速放出性で、又は1日24時間徐放型に製剤化して均等な血中濃度の維持が容易だという等、薬学組成物の活性成分として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1の構造を有するメトホルミン酢酸塩:
[式1]


【請求項2】
無水物、半水和物、又は一水和物の状態にある、請求項1記載の式1のメトホルミン酢酸塩。
【請求項3】
1価塩である、請求項1記載の式1のメトホルミン酢酸塩。
【請求項4】
糖尿病を治療又は予防するための、請求項1記載の式1のメトホルミン酢酸塩。
【請求項5】
下記式4のメトホルミン塩酸塩と無機塩類を反応させてメトホルミン遊離塩基を生成する段階、生成された無機塩をろ過と濃縮過程を経て除去する段階、及び得られた物質(resultant)を有機溶媒中で有機酸である酢酸と反応させる段階を含む、式1のメトホルミン酢酸塩の製造方法:
[式4]

[式1]


【請求項6】
一つの反応器中で特別な精製過程なく、式4のメトホルミン塩酸塩を有機溶媒上で酢酸及び無機塩類と反応させる段階を含む、溶媒として水中で式1のメトホルミン酢酸塩を製造する方法:
[式4]

[式1]


【請求項7】
無機塩類が水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項5又は6記載の式1のメトホルミン酢酸塩の製造方法。
【請求項8】
1モルのメトホルミン塩酸塩と反応する無機塩類の分子比率が1〜2である、請求項5又は6記載の式1のメトホルミン酢酸塩の製造方法。
【請求項9】
1モルのメトホルミン遊離塩基と反応する酢酸の分子比率が1〜2である、請求項5記載の式1のメトホルミン酢酸塩の製造方法。
【請求項10】
式4のメトホルミン塩酸塩と有機アルカリを水中で反応させる段階、そして得られた物質をその後、無機塩を除去せずに、有機酸として酢酸と反応させる段階を含む、式1のメトホルミン酢酸塩の製造方法:
[式4]

[式1]


【請求項11】
有機アルカリが、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、又は酢酸ナトリウム3水和物である、請求項10記載の式1のメトホルミン酢酸塩の製造方法。
【請求項12】
1モルのメトホルミン塩酸塩と反応する有機アルカリの分子比率が1〜2である、請求項10記載の式1のメトホルミン酢酸塩の製造方法。
【請求項13】
反応が−10〜50℃の温度範囲で行われる、請求項5、6、及び10のいずれか一項記載の式1のメトホルミン酢酸塩の製造方法。
【請求項14】
有機溶媒が、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、及びアセトニトリルからなる群より選ばれる、請求項5又は6記載の式1のメトホルミン酢酸塩の製造方法。
【請求項15】
糖尿及び糖尿病、肥満症、高血圧、高脂血症、脂肪肝、冠動脈心疾患、骨粗鬆症、又は多嚢性卵巣症候群が複合的に表れる代謝症候群を有する患者の糖尿病を治療するため、あるいはその合併症を予防するための、式1のメトホルミン酢酸塩を有効成分として含む薬剤学的組成物:
[式1]


【請求項16】
下記式1のメトホルミン酢酸塩を遊離塩基として1日1〜3回に亘り50〜3,000mgを経口投与することによる、2型糖尿病の予防若しくは治療、体重の調節、高脂血症脂質の低下、脂肪肝の治療、冠動脈心疾患の治療、多嚢性卵巣症候群の治療、P53遺伝子が欠如した癌の治療、Atrogin-1遺伝子の発現による筋肉痛、筋肉細胞損傷、及び横紋筋融解症の予防並びに治療、又は骨粗鬆症の治療に効果的な薬剤学的組成物:
[式1]



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−516759(P2010−516759A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547178(P2009−547178)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000529
【国際公開番号】WO2008/093984
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(509121835)ハナル ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (6)
【Fターム(参考)】