説明

NCAM由来の新規ペプチド(FGL)

本発明は、FGFRと相互作用することが可能な神経細胞接着分子(NCAM)のフィブロネクチン3型IIモジュールから誘導される多くて13連続アミノ酸残基、またはその変異体もしくはフラグメントを含む新規の化合物に関し、それによって、化合物は、分化を誘導し、増殖を調節することが可能であり、細胞の再生、神経可塑性および/または生存を刺激する。さらに、本発明は、病態および疾患の治療のための医薬品の生成のための前記化合物の使用に関し、ここで、NCAMおよび/またはFGFRは、重要な役割を果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FGFRと相互作用することが可能な神経細胞接着分子(NCAM)のフィブロネクチン3型IIモジュールから誘導される多くて13連続アミノ酸残基、またはその変異体もしくはフラグメントを含む新規の化合物に関し、それによって、化合物は、分化を誘導し、増殖を調節することが可能であり、細胞の再生、神経可塑性および/または生存を刺激する。さらに、本発明は、病態および疾患の治療のための医薬品の生成のための前記化合物の使用に関し、ここで、NCAMおよび/またはFGFRは、重要な役割を果たす。
【背景技術】
【0002】
NCAMは、CAMのIgスーパーファミリーに属する細胞表面糖タンパク質である(文献レビューとして非特許文献1を参照のこと)。NCAMは、細胞質ドメインが異なる3つの主要なアイソフォーム(A、BおよびC)として発現され得る。NCAMの細胞外部分は、3つのアイソフォームについて同一であり、そして5つのIg様および2つのフィブロネクチンIII型(F3)モジュールからなる。NCAMは、胚発生中に広範に発現されるが、成体の器官では、それは、主に、神経由来の組織において見出される。NCAMは、神経系の発達中に主な役割を果たして、神経細胞間の接着を仲介し、そして神経突起伸長および線維束性収縮を刺激し、細胞生存およびシナプス可塑性を促進する(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。NCAMは、同種親和性結合を介して細胞−細胞間接着を仲介し、そしてFGFRにより神経突起伸長を調節する(非特許文献7;非特許文献8および非特許文献1)。NCAMへの結合に関与するFGFR部位は、Ig3モジュール、およびNCAMの対応する部位(第2のF3モジュール)にマッピングされている(非特許文献8)。この相互作用は、細胞の分化および生存を仲介する細胞内シグナル伝達カスケードの活性化をもたらす。
【0003】
NCAMとFGFRとの間の直接的相互作用に関与する配列EVYVVAENQQGKSKA(FGLペプチド)を有する同定されたNCAMフラグメントは、多様な病理学的障害の治療のための新たな候補化合物として、最近示唆されており、ここで、FGFRの活性の刺激は、重要な役割を果たし得る(特許文献1)。それは、F3,IIに局在し、そしてFGF受容体1および2に結合し、そして活性化し、神経症発症(neurotigenesis)、およびインビトロでのニューロン細胞の生存を促進し(非特許文献8;非特許文献9)、そしてラットにおける長期記憶を促進する(非特許文献10)。FGLペプチドはまた、ニューロンの生存を促進し、そしてアミロイド−βペプチド誘発神経毒性のラットモデルにおける認知障害をレスキューすることが示されている。(非特許文献11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 03/016351
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Kiselyov et al., 2005
【非特許文献2】Cremer H, Chazal G, Goridis C, Represa A (1997). NCAM is essential for axonal growth and fasciculation in the hippocampus. Mol Cell Neurosci. 8:323-335.
【非特許文献3】Berezin V, Bock E and Poulsen FM (2000). The neural cell adhesion molecule. Current Opinion in Drug Discovery&Development 3:605-609.
【非特許文献4】Bruses JL, Rutishauser U (2001). Roles, regulation, and mechanism of polysialic acid function during neural development. Biochemie 83:635-643.
【非特許文献5】Rougon G, Hobert O (2003). New insights into the diversity and function of neuronal immunoglobulin superfamily molecules. Annu Rev Neurosci. 26:207-238.
【非特許文献6】Walmod PS, Kolkova K, Berezin V, Bock E (2004). Zippers make signals: NCAM-mediated molecular interactions and signal transduction. Neurochem Res. 29:2015-2035.
【非特許文献7】Doherty P and Walsh FS (1996). CAM-FGF Receptor Interactions: A Model for Axonal Growth. Mol Cell Neurosci. 8:99-111.
【非特許文献8】Kiselyov VV, Skladchikova G, Hinsby AM, Jensen PH, Kulahin N, Soroka V, Pedersen N, Tsetlin V, Poulsen FM, Berezin V, Bock E (2003). Structural basis for a direct interaction between FGFR1 and NCAM and evidence for a regulatory role of ATP. Structure 11:691-701.
【非特許文献9】Neiiendam et al., 2004
【非特許文献10】Cambon et al., 2004
【非特許文献11】Klementiev B, Novikova T, Novitskaya V, Walmod PS, Dmytriyeva O, Pakkenberg B, Berezin V, Bock E (2007). A neural cell adhesion molecule-derived peptide reduces neuropathological signs and cognitive impairment induced by Abeta(25-35). Neuroscience 145:209-224.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、FGFRと相互作用することが可能な神経細胞接着分子(NCAM)のフィブロネクチン3型IIモジュールから誘導される多くて13アミノ酸を含む化合物に関する。
【0007】
本発明の化合物は、分化を誘導し、増殖を調節し、細胞の再生、神経可塑性および/または生存を刺激することが可能である。
【0008】
本発明のもう1つの態様は、医薬品として、および病態または疾患の治療のための医薬品の生成のための化合物の使用に関し、ここで、FGFRおよび/またはNCAMが疾患の病因または回復に役割を果たす。
【0009】
さらに、本発明は、本発明の少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物について説明している。
【0010】
なお、もう1つの態様では、本発明の化合物を、抗体の産生に使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】FGFRの活性化に対するFGLの用量依存的効果。Trex293細胞(Invitrogen)を、C末端Strep IIタグを伴うヒトFGFR1(スプライシング変異体IIIc)で安定にトランスフェクトした。リン酸化の決定のために、2×10個の細胞を、血清を含まない培地において、1晩飢餓状態にした。1〜500μg/mlの間の濃度のFGL、またはFGF1(10ngml)による20分間の処理後、細胞を溶解し、そして精製されたリン酸化タンパク質を、アガロース結合抗ホスホチロシン抗体の使用によって得た。精製されたタンパク質を、SDS−PAGEによって分離し、そしてフッ化ポリビニリデン膜に移した。組み換えStrepIIタグに対するウサギ抗体を使用して、イムノブロッティングを実施した。免疫複合体を発色させ、次いで、SynGene Gene Tool画像解析ソフトウェアを使用して、可視化および定量した。結果を、少なくとも3つの独立した実験の平均値±SEMとして示し、そしてコントロール値の百分率として例示する。p<0.05(対応のあるt検定によってコントロールと比較した場合)。
【図2】出生後早期のラット小脳ニューロンの神経突起伸長に対するFGLの効果。CGCを、7日齢Wistarラットから調製し、そして非被覆8ウェルLab−Tek(登録商標)チャンバ上でプレート化した。プレート化直後にペプチドを培地に添加し、そして細胞を、37℃、5%COで24時間、維持した。CGC培養物を、4%で固定化し、次いで、ラットGAP−43に対して免疫染色した。神経突起伸長を、個々の各実験において、200±20個のニューロンの画像解析によって決定した。1個の細胞あたりの神経突起の長さを、立体解析学的に見積もった。結果を、少なくとも3つの独立した実験の平均値±SEMとして示し、そしてコントロール値の百分率として例示する。p<0.05(対応のあるt検定によってコントロールと比較した場合)。
【図3】社会認識試験(SRT)において評価した短期社会的記憶に対するビヒクルまたはFGLの単回投与の効果。FGL(8.0mg/kg)またはビヒクル(滅菌水、4.0ml/kg)をs.c.投与し、そして投与1時間および73時間後、SRTの初回試行により、ラットを2回試験した。2時間の試行間間隔で、幼若ラットを2回用いた。各実験グループにおいて、9〜11匹のラットからデータを得た。結果を、認識率(RR)の平均およびSEMとして示す。0.5より有意に低いRR値は、社会的記憶を示す。RR値対仮定値0.50の比較を、1標本t検定を使用して行った。**P<0.01。
【図4】社会認識試験(SRT)において評価した短期社会的記憶に対するビヒクルまたはFGLの単回投与の効果。FGL(1.0、2.0、4.0および8.0mg/kg)またはビヒクル(滅菌水、4.0ml/kg)をs.c.投与し、そして投与1時間および24時間後、SRTの初回試行により、ラットを2回試験した。2時間の試行間間隔で、幼若ラットを2回用いた。各実験グループにおいて、9〜11匹のラットからデータを得た。結果を、認識率(RR)の平均およびSEMとして示す。0.5より有意に低いRR値は、社会的記憶を示す。RR値対仮定値0.50の比較を、1標本t検定を使用して行った。**P<0.01。
【図5】社会認識試験(SRT)において評価した短期社会的記憶に対するFGL、FGLおよびVEB1の皮下投与(示した用量での2回投与)の影響。結果を、認識率(RR)の平均およびSEMとして示す。0.5より有意に低いRR値は、社会的記憶を示す。RR値対仮定値0.50の比較を、1標本t検定を使用して行った。A:.グラフは、最後の投与の5時間後にSRTにおいて得られた結果を例示する。各実験グループにおいて、7〜10匹のラットから結果を得た。すべてのペプチドグループにおいて、効果を増強する有意な記憶が検出されたP<0.05;**P<0.01;***P<0.001。B:グラフは、最後の投与の77時間後にSRTにおいて得られた結果を例示する。各実験グループにおいて、8〜10匹のラットからデータを得た。FGL、およびFGLペプチドグループについて、効果を増強する有意な記憶が検出された**P<0.01。
【図6】モリス水迷路における空間学習に対するFGLの効果。1回目の試験(上記のグラフの試行1〜4)の5、3および1日前に、2.5mg/kgの単回用量でFGLまたはビヒクルをラットの皮下に投与した。2回目の試験(上記のグラフの試行5〜8)は、1回目の試験の翌日に行った。結果を、分散分析(ANOVA)およびStudentのt−検定を使用して解析した。データは、2日間の訓練(t1〜t4)中においてプラットフォームを見出すまでの平均逃避潜時(±SEM)である。p<0.05(同じ時点でのビヒクル/コントロール群と比較した場合)。
【図7】社会認識試験(SRT)において評価したスコポラミン誘発社会的健忘症に対するFGL、FGL、およびVEB1の皮下投与(19時間間隔、8mg/kgでの2回投与)の影響。ペプチド/ビヒクルの最後の投与の5時間後、およびスコポラミン(0.01mg/kg s.c.)投与の30分間後、SRTの初期試行により、ラットを試験した。15分間の試行間間隔で、幼若ラットを2回用いた。A−スコポラミンおよびビヒクル(Veh)またはスコポラミンおよび上記で詳述した3つのペプチドのうちの1つで処置したラットの認識率(RR)。結果を、認識率(RR)の平均およびSEMとして示す。0.5より有意に低いRR値は、社会的記憶を示す。RR値対仮定値0.50の比較を、1標本t検定を使用して行った。各実験グループにおいて、10匹のラットからデータを得た。スコポラミン誘発社会的健忘症に対する有意な効果が、FGL、およびFGLペプチドグループP<0.05について検出した。B−スコポラミンおよびビヒクル(Veh)またはスコポラミンおよび上記詳述した3つのペプチドのうちの1つで処置したラットのSRTの1回目の試行中の累積検査時間(T1(秒))。結果を、T1の平均およびSEMとして示す。グループ間の比較を、ANOVA、続いて、Dunnett多重比較検定によって行った。各実験グループにおいて、10匹のラットからデータを得た。FGL、およびFGLペプチド群のラットは、ビヒクルで処置したラットより有意に長いT1を示した。P<0.05。
【図8】(25−35)β−アミロイド(A−β)フラグメント神経中毒(neurointoxication)後の認知障害(短期社会的記憶における欠損)および神経変性の発症に対する(示した用量で皮下投与した)FGL、またはビヒクルの効果。RR値対仮定値0.50の比較を、1標本t検定を使用して行った。A−βグループ間のグループ間比較を、一元ANOVAおよびNewman−Keulsポストホック検定および対応のないt検定によるA−βビヒクルとシャム処置動物との間の比較を使用して行った。A:社会認識試験の成績におけるβ−アミロイド神経毒性誘発欠損に対するFGL投与の効果。結果を、認識率(RR)の平均およびSEMとして示す。1グループあたり10〜12匹の動物。0.5より有意に低いRR値は、社会的記憶を示す。p<0.05、**p<0.01(A−β/Vグループと比較した場合)。B:帯状皮質における無傷(intact)なニューロンのβ−アミロイド神経毒性により誘発された減少に対するFGL投与の効果。1グループあたり7〜8匹のラット。+/p<0.05(A−β/Vグループと比較した場合)。C:帯状皮質における損傷を受けたニューロンのβ−アミロイド神経毒性により誘発された増加に対するFGL投与の効果。1グループあたり7〜8匹のラット。**p<0.01+++/***p<0.001(A−β/Vグループと比較した場合)。D:帯状皮質におけるアミロイド負荷のβ−アミロイド神経毒性により誘発された増加(A−β/Vコントロール値の%)に対するFGLの影響。1グループあたり7〜8匹のラット。病巣、およびペプチドのいずれも有意な効果を及ぼさなかった。
【図9】社会認識試験の成績におけるβ−アミロイド神経毒性誘発欠損に対するFGLの鼻腔内投与の効果。ラットに、(25−35)β−アミロイド(A−β)フラグメントのi.c.v.投与後7〜21日目に、連日、標準用量のFGL、またはビヒクルの鼻腔内投与を行った。1グループあたり8〜10匹の動物。結果を、認識率の平均およびSEMとして表し、そして1標本t検定によって解析する:**p<0.05。
【図10】(25−35)β−アミロイド(A−β)フラグメントのi.c.v.投与後7〜21日目に、連日、0.2、0.8または3.2mg/kgのFGLの鼻腔内投与後のラットの血漿中FGLの濃度。最後の投与の30分間および60分間後に、血液サンプルを入手し、そしてFGL濃度を測定した。
【図11】FGLおよびFGLの目視での外観。目視検査のために、100mgのFGLおよびFGLを、それぞれ、1ml水に、室温で希釈した。
【図12】水およびPBSに希釈したFGLおよびFGLの光学顕微鏡写真。5mgのFGLおよびFGLを、それぞれ、1ml水に、室温で希釈した。A.水中5mg/mlのFGL、B.PBS中5mg/mlのFGL、C.水中5mg/mlのFGL、D.PBS中5mg/mlのFGL。
【図13】水中100mg/mlのFGL、FGLの90°光散乱スペクトル。A.FGF、B.FGF、C.水。
【図14】ペプチド投与後のラットの血漿中FGLの濃度。ラットに、1.25mg/kg i.vまたは2.5mg/kg s.c.で投与した。血液サンプルを、投与後の異なる時点で採取し、そしてFGL濃度を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、より可溶性であり、それによって処方がより容易である改善された効果を有する切断型のFGLを開示している。本発明に従う新規の化合物は、FGLと同じF3,IIモジュール上のモチーフから誘導される多くて13アミノ酸を含む。
【0013】
FGLのN末端からアミノ酸を取り出すと、凝集能を示さないより可溶なペプチドがもたらされ、鼻腔内および皮下の両方について処方および投与が可能になる。
【0014】
本発明に従う化合物は、NCAMのフィブロネクチン3型IIモジュールから誘導される多くて13アミノ酸の連続アミノ酸配列、またはその変異体もしくはフラグメントを含む。
【0015】
好適な実施形態では、本発明に従う化合物は、NCAMから誘導される多くて13アミノ酸を含む連続アミノ酸配列を含み得る。従って、本実施形態では、本発明に従うアミノ酸配列は、以下のアミノ酸配列から選択され得る:
VAENQQGKSKA 配列番号1
EVVAENQQGKSKA 配列番号2
NVVAENQQGKSKA 配列番号3
NSVAENQQGKSKA 配列番号4。
【0016】
本明細書では、アミノ酸残基の標準的な1文字コードならびに標準的な3文字コードを適用する。アミノ酸の略称は、IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature Eur. J. Biochem, 1984, vol. 184, pp 9-37の推奨に従う。明細書および特許請求の範囲を通して、天然アミノ酸の3文字コードまたは1文字コードのいずれをも使用する。LまたはD型が特定されない場合、形成されるペプチドが、L型、D型のアミノ酸、またはL型およびD型が混合する配列から構成され得るように、問題のアミノ酸は、天然のL型(Pure & Appl. Chem. Vol. (56(5) pp 595-624 (1984)を参照のこと)またはD型を有するものと理解されるべきである。
【0017】
指定がなければ、本発明に従う使用のためのペプチドのC−末端アミノ酸は、遊離のカルボン酸(これはまた「−OH」として特定してもよい)として存在するものと理解すべきである。しかし、本発明に従う使用のためのペプチドのC−末端アミノ酸は、「−NH」として示されるアミド化誘導体であってもよい。他で述べていなければ、ポリペプチドのN−末端アミノ酸は、遊離のアミノ基(これはまた、「H−」として特定してもよい)を含む。
【0018】
本発明に従うペプチド、そのフラグメント、相同体または変異体はまた、1つもしくはいくらかの非天然アミノ酸を含み得る。
【0019】
本発明に従う好適なペプチドは、NCAMフィブロネクチン3型IIモジュールの多くて13アミノ酸残基を含む単離された連続ペプチド配列である。本発明に従うすべてのペプチドは、配列番号1〜4の配列のいずれか、またはそのフラグメント、変異体もしくは相同体から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含むことが理解される。
【0020】
それ故、本発明のいくつかの実施形態は、配列番号1〜4から選択される配列のフラグメントを含むペプチドに関し得る。もう1つの実施形態は、配列番号1〜4の変異体に関し得る。さらなる実施形態は、配列番号1〜4の相同体に関し得る。
【0021】
配列番号1〜4の配列から選択されるアミノ酸配列の本発明に従う変異体は、以下のものであり得る。
i)選択された配列と、少なくとも75%同一性、76〜80%同一性など、例えば、81〜85%同一性、86〜90%同一性など、例えば、91〜95%同一性、96〜99%同一性などを有するアミノ酸配列であって、ここで、同一性と選択された配列とを比較参照する場合、同一性は、前記配列における同一アミノ酸の百分率として定義される。アミノ酸配列間の同一性は、BLOSUM30、BLOSUM40、BLOSUM45、BLOSUM50、BLOSUM55、BLOSUM60、BLOSUM62、BLOSUM65、BLOSUM70、BLOSUM75、BLOSUM80、BLOSUM85、またはBLOSUM90のような周知のアルゴリズムを使用して計算してもよい;
ii)選択された配列と少なくとも75%ポジティブアミノ酸一致度、76〜80%ポジティブアミノ酸一致度など、例えば、81〜85%ポジティブアミノ酸一致度、86〜90%ポジティブアミノ酸一致度など、例えば、91〜95%ポジティブアミノ酸一致度、96〜99%ポジティブアミノ酸一致度などを有するアミノ酸配列であって、ここで、ポジティブアミノ酸一致度は、2つの比較した配列の同じ位置における類似の物理的および/または化学的特性を有するアミノ酸残基の存在と定義される。本発明の好適なポジティブアミノ酸一致度は、K対R、E対D、L対M、Q対E、I対V、I対L、A対S、Y対W、K対Q、S対T、N対SおよびQ対Rである;
iii)選択された配列に同一であるか、または前記配列と少なくとも75%同一性、76〜80%同一性など、例えば、81〜85%同一性、86〜90%同一性など、例えば、91〜95%同一性、96〜99%同一性などを有するか、もしくは選択された配列と少なくとも75%ポジティブアミノ酸一致度、76〜80%ポジティブアミノ酸一致度など、例えば、81〜85%ポジティブアミノ酸一致度、86〜90%ポジティブアミノ酸一致度など、例えば、91〜95%ポジティブアミノ酸一致度、96〜99%ポジティブアミノ酸一致度などを有し、そして他の化学的部分、例えば、ホスホリル、硫黄、アセチル、グリコシル部分を含む、アミノ酸配列。
【0022】
用語「ペプチド配列の変異体」はまた、ペプチド配列が、例えば、1つ以上のアミノ酸残基の置換によって、改変され得ることを意味する。L−アミノ酸およびD−アミノ酸の両方を使用することができる。他の改変は、エステル、糖などのような誘導体、例えば、メチルおよびアセチルエステル、ならびにポリエチレングリコール改変を含み得る。
【0023】
さらに加えて、ペプチドのアミン基は、アミドに変換してもよく、ここで、アミドの酸部分は脂肪酸である。
【0024】
別の態様では、本発明に従うアミノ酸配列の変異体は、同じ変異、もしくはそのフラグメント内、または異なる変異、もしくはそのフラグメント間に、相互に独立して導入される複数の置換のような少なくとも1つの置換を含み得る。それ故、複合体の変異体、またはそれらのフラグメントは、相互に独立した保存的置換を含み得、ここで、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのグリシン(Gly)が、Ala、Val、Leu、およびIleからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのアラニン(Ala)が、Gly、Val、Leu、およびIleからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのバリン(Val)が、Gly、Ala、Leu、およびIleからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのロイシン(Leu)が、Gly、Ala、Val、およびIleからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で選択され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのイソロイシン(Ile)が、Gly、Ala、ValおよびLeuからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのアスパラギン酸(Asp)が、Glu、Asn、およびGlnからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのアスパラギン(Asn)が、Asp、Glu、およびGlnからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのグルタミン(Gln)が、Asp、Glu、およびAsnからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてここで、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのフェニルアラニン(Phe)が、Tyr、Trp、His、Proからなるアミノ酸の群から選択され、好ましくは、TyrおよびTrpからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのチロシン(Tyr)が、Phe、Trp、His、Proからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸、好ましくは、PheおよびTrpからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記フラグメントの少なくとも1つのアルギニン(Arg)が、LysおよびHisからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのリジン(Lys)が、ArgおよびHisからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメント、ならびにこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのプロリン(Pro)が、Phe、Tyr、Trp、およびHisからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換され、そしてこれとは独立した変異体、またはそれらのフラグメントでは、前記変異体、またはそれらのフラグメントの少なくとも1つのシステイン(Cys)が、Asp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Gln、Ser、Thr、およびTyrからなるアミノ酸の群から選択されるアミノ酸で置換される。
【0025】
それ故、上記より、ペプチドフラグメントの同じ変異体、または前記変異体のフラグメントは、上記で定義したように、保存的アミノ酸の2つ以上のグループからの2つ以上の保存的アミノ酸置換を含み得るということになる。用語「保存的アミノ酸置換」は、本明細書において、用語「相同的アミノ酸置換」と同義で使用される。
【0026】
保存的アミノ酸のグループは以下のとおりである:
A、G(中性、弱い疎水性)、
Q、N、S、T(親水性、非荷電)
E、D(親水性、酸性)
H、K、R(親水性、塩基性)
L、P、I、V、M、F、Y、W(疎水性、芳香族性)
C(架橋形成性)
【0027】
保存的置換は、本発明に従う使用のための好適な予め決定されたペプチドまたはそのフラグメントのいずれの位置に導入してもよい。しかしまた、非保存的置換、特に、制限されないが、いずれか1つ以上の位置における非保存的置換を導入することを所望してもよい。
【0028】
本発明に従う使用のためのペプチドの変異体フラグメントの形成をもたらす非保存的置換は、例えば、実質的に極性が異なる、例えば、非極性側鎖を有する残基(Ala、Leu、Pro、Trp、Val、Ile、Leu、PheもしくはMet)を置換して、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、もしくはGlnのような極性側鎖を有する残基またはAsp、Glu、Arg、もしくはLysのような荷電アミノ酸にするか、または荷電もしくは極性残基を置換して、非極性残基にすること;ならびに/あるいはii)もう1つの残基によるProもしくはGlyのまたはProもしくはGlyへの置換のような実質的にペプチド骨格の配向に対する影響が異なる;ならびに/あるいはiii)実質的に電荷が異なる、例えば、GluもしくはAspのような負に荷電した残基のLys、HisもしくはArgのような正に荷電した残基への置換(およびその逆);ならびに/あるいはiv)実質的に立体的嵩高さが異なる、例えば、His、Trp、PheもしくはTyrのような嵩高い残基のより小さな側鎖を有する残基、例えば、Ala、GlyもしくはSerへの置換(およびその逆)。
【0029】
アミノ酸の置換は、一実施形態では、それらの疎水性および親水性値ならびに電荷、サイズなどを含むアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性に基づいて行ってもよい。
【0030】
変異体の例には以下のものがある:
EX1a−X2b−VAENQQGKSKA
DX1a−X2a−VAENQQGKSKA
【0031】
ここで、X1aは、F、A、C、G、Q、L、M、N、S、Y、T、I、P、Vであり、より好適なX1aは、A、G、L、M、V、P、Iである。
【0032】
そして、X2bは、Q、N、S、T、Gであるか、または欠失される。
【0033】
変異体の具体的な非制限的例には、以下のものがある:
EVVAENQQGKSKA (配列番号2)
NVVAENQQGKSKA (配列番号3)
NSVAENQQGKSKA (配列番号4)
AVAENQQGKSKA (配列番号5)
GVAENQQGKSKA (配列番号6)
LVAENQQGKSKA (配列番号7)
MVAENQQGKSKA (配列番号8)
VVAENQQGKSKA (配列番号9)
PVAENQQGKSKA (配列番号10)
IVAENQQGKSKA (配列番号11)
QAVAENQQGKSKA (配列番号12)
QGVAENQQGKSKA (配列番号13)
QLVAENQQGKSKA (配列番号14)
QMVAENQQGKSKA (配列番号15)
QVVAENQQGKSKA (配列番号16)
QPVAENQQGKSKA (配列番号17)
QIVAENQQGKSKA (配列番号18)
NAVAENQQGKSKA (配列番号19)
NGVAENQQGKSKA (配列番号20)
NLVAENQQGKSKA (配列番号21)
NMVAENQQGKSKA (配列番号22)
NVVAENQQGKSKA (配列番号23)
NPVAENQQGKSKA (配列番号24)
NIVAENQQGKSKA (配列番号25)
SAVAENQQGKSKA (配列番号26)
SGVAENQQGKSKA (配列番号27)
SLVAENQQGKSKA (配列番号28)
SMVAENQQGKSKA (配列番号29)
SVVAENQQGKSKA (配列番号30)
SPVAENQQGKSKA (配列番号31)
SIVAENQQGKSKA (配列番号32)
TAVAENQQGKSKA (配列番号33)
TGVAENQQGKSKA (配列番号34)
TLVAENQQGKSKA (配列番号35)
TMVAENQQGKSKA (配列番号36)
TVVAENQQGKSKA (配列番号37)
TPVAENQQGKSKA (配列番号38)
TIVAENQQGKSKA (配列番号39)
GAVAENQQGKSKA (配列番号40)
GGVAENQQGKSKA (配列番号41)
GLVAENQQGKSKA (配列番号42)
GMVAENQQGKSKA (配列番号43)
GVVAENQQGKSKA (配列番号44)
GPVAENQQGKSKA (配列番号45)
GIVAENQQGKSKA (配列番号46)
【0034】
もう1つの実施形態では、変異体は、以下の式を有する。
X3a−X3b−X3c−VAENQQGKSKA
【0035】
ここで、X3aは、F、A、C、G、Q、L、M、N、S、Y、T、I、P、Vであるか、もしくは欠失されており、またはより好適なX3aは、A、G、L、M、V、P、Iであるか、もしくは欠失されており、そして
X3bはDまたはEであり、そしてX3cはA、G、L、M、V、P、Iであるか、または欠失されている。
【0036】
但し、X3aおよびX3cの両方を欠失させることはできない。
【0037】
具体的な変異体の例には以下のものがある:
DAVAENQQGKSKA (配列番号47)
DGVAENQQGKSKA (配列番号48)
DLVAENQQGKSKA (配列番号49)
DMVAENQQGKSKA (配列番号50)
DVVAENQQGKSKA (配列番号51)
DPVAENQQGKSKA (配列番号52)
DIVAENQQGKSKA (配列番号53)
EAVAENQQGKSKA (配列番号54)
EGVAENQQGKSKA (配列番号55)
ELVAENQQGKSKA (配列番号56)
EMVAENQQGKSKA (配列番号57)
EVVAENQQGKSKA (配列番号2)
EPVAENQQGKSKA (配列番号58)
EIVAENQQGKSKA (配列番号59)
ADVAENQQGKSKA (配列番号60)
GDVAENQQGKSKA (配列番号61)
LDVAENQQGKSKA (配列番号62)
MDVAENQQGKSKA (配列番号63)
VDVAENQQGKSKA (配列番号64)
PDVAENQQGKSKA (配列番号65)
IDVAENQQGKSKA (配列番号66)
AEVAENQQGKSKA (配列番号67)
GEVAENQQGKSKA (配列番号68)
LEVAENQQGKSKA (配列番号69)
MEVAENQQGKSKA (配列番号70)
VEVAENQQGKSKA (配列番号71)
PEVAENQQGKSKA (配列番号72)
IEVAENQQGKSKA (配列番号73)
【0038】
なおもう1つの実施形態では、変異体は、以下の式を有する。
X2a−X2b−VAENQQGKSKA
【0039】
ここで、X2aは、F、A、C、G、Q、L、M、N、S、Y、T、I、P、Vであり、またはより好適なX2aは、A、G、L、M、V、P、Iである。
【0040】
そしてX2bはD、Eである。
【0041】
本発明に従うアミノ酸配列のフラグメントおよび変異体は、両方とも、前記配列の機能的等価物である。
【0042】
アミノ酸配列の用語「機能的等価物」とは、本明細書において、上記の前記アミノ酸配列の変異体またはフラグメントの基準を満たし、そして前記配列または前記配列を含む化合物の1つ以上の機能的活性が可能である分子を意味する。好適な実施形態では、本発明に従うアミノ酸配列の機能的等価物は、FGFRに結合し、そしてFGFRの活性を調節することが可能である。
【0043】
本発明は、本発明に従う単離されたペプチドおよび本発明に従うペプチドを含む融合タンパク質の両方に関する。
【0044】
一実施形態では、本発明に従うペプチドは、単離されたペプチドである。用語「単離されたペプチド」とは、本発明に従うペプチドが、個々の化合物であり、そしてもう1つの化合物の一部ではないことを意味する。単離されたペプチドは、任意の組み換え技術方法または化学合成の使用によって産生させ、そして他の化合物から分離してもよく、またはそれは、酵素的もしくは化学的切断の方法によって、より長いポリペプチドもしくはタンパク質から分離し、そして他のタンパク質フラグメントからさらに分離してもよい。
【0045】
本発明に従う単離されたペプチドは、もう1つの実施形態において、配列番号1〜4またはその変異体から選択されるNCAMから誘導される連続アミノ酸配列を含むNCAMのフラグメントを含み得る。もう1つの実施形態では、単離されたペプチドは、配列番号1〜4の配列のうち1つ以上からなり得る。
【0046】
親油基
一実施形態では、本発明に従う化合物に、脂肪酸のような少なくとも1つの親油基が提供される。
【0047】
親油基は、ペプチド自体またはペプチドに接続したリンカーもしくはスペーサーに結合させてもよい。
【0048】
本発明の一実施形態では、スペーサーのアミノ基は、親油性置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成する。
【0049】
本発明の一実施形態では、親油性置換基は、部分的または完全に水素化されたシクロペンタノフェナントレン骨格を含む。
【0050】
本発明の一実施形態では、親油性置換基は、直鎖または分岐のアルキル基である。本発明の一実施形態では、親油性置換基は、直鎖または分岐の脂肪酸のアシル基である。
【0051】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)6−40−CHのアシル基である。は結合点を示す。
【0052】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)8−26−CHのアシル基である。は結合点を示す。
【0053】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)8−20−CHのアシル基である。は結合点を示す。
【0054】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)CHのアシル基である。は結合点を示し、そしてmは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18である。
【0055】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。
【0056】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)6−40−C(O)OHの直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。は結合点を示す。
【0057】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)8−26−C(O)OHの直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。は結合点を示す。
【0058】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)8−20−C(O)OHの直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。は結合点を示す。
【0059】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)8−18−C(O)OHの直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。は結合点を示す。
【0060】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)−C(O)OHの直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。は結合点を示す。nは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18である。
【0061】
ペプチド配列の生成
本発明のペプチド配列は、任意の従来の合成方法、組み換えDNA技術、ペプチド配列が誘導される全長タンパク質の酵素切断、または前記方法の組み合わせによって調製してもよい。
【0062】
組み換え調製
それ故、一実施形態では、本発明のペプチドは、組み換えDNA技術の使用手によって生成される。
【0063】
ペプチド、またはペプチドが生じる対応する全長タンパク質をコードするDNA配列は、確立された標準的方法、例えば、Beaucage and Caruthers, 1981, Tetrahedron Lett. 22:1859-1869に記載のホスホアミジン(phosphoamidine)法、またはMatthes et al., 1984, EMBO J. 3:801-805に記載の方法によって、合成的に調製してもよい。ホスホアミジン法によると、オリゴヌクレオチドを、例えば、自動DNA合成装置で合成し、精製し、アニーリングし、ライゲートし、そして適切なベクターにクローニングする。
【0064】
ペプチドをコードするDNA配列はまた、標準的なプロトコル(Sambrook et al., Molecular cloning: A Laboratory manual. 2 rd ed., CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)に従うDNAaseIを使用して、ペプチド由来の対応する全長タンパク質をコードするDNA配列のフラグメント化によって、調製してもよい。本発明は、上記で同定されたタンパク質の群から選択される全長タンパク質に関する。あるいは、本発明の全長タンパク質をコードするDNAを、特異的制限エンドヌクレアーゼを使用して、フラグメント化してもよい。DNAのフラグメントは、Sambrook et al., Molecular cloning: A Laboratory manual. 2 rd ed., CSHL Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載の標準的な手順を使用して、さらに精製される。
【0065】
全長タンパク質をコードするDNA配列はまた、ゲノムまたはcDNA由来であってもよく、例えば、ゲノムまたはcDNAライブラリーを調製し、そして標準的な技術(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor, 1989を参照のこと)に従って、合成オリゴヌクレオチドプローブを使用するハイブリダイゼーションにより全長タンパク質の全部または一部をコードするDNA配列をスクリーニングすることによって得られる。DNA配列はまた、例えば、US 4,683,202またはSaiki et al., 1988, Science 239:487-491に記載の特異的プライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって調製してもよい。
【0066】
次いで、DNA配列を組み換え発現ベクターに挿入するが、このベクターはいずれのベクターであってもよく、組み換えDNA手順に簡便に従い得る。ベクターの選択は、しばしば、ベクターを導入しようとする宿主細胞に依存する。それ故、ベクターは、自律的に複製するベクター、即ち、プラスミドのように染色体外の実体として存在し、その複製は、染色体の複製に依存しないベクターであってもよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入される場合、宿主細胞のゲノムに組込まれ、それが組込まれている染色体と共に複製されるものであってもよい。
【0067】
ベクターにおいて、ペプチドまたは全長タンパク質をコードするDNA配列は、適切なプロモーター配列に作動可能に連結されているべきである。プロモーターは、最適な宿主細胞において転写活性を示し、そして宿主細胞に対して同種または異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子から誘導され得るいずれのDNA配列であってもよい。哺乳動物細胞におけるコードDNA配列の転写を指令する適切なプロモーターの例には、SV40プロモーター(Subramani et al., 1981, Mol. Cell Biol. 1:854-864)、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiter et al., 1983, Science 222: 809-814)またはアデノウイルス2主要後期プロモーターがある。昆虫細胞に使用するのに適切なプロモーターは、ポリヘドリンプロモーター(Vasuvedan et al., 1992, FEBS Lett. 311:7-11)である。酵母宿主細胞に使用するのに適切なプロモーターとして、酵母解糖系遺伝子(Hitzeman et al., 1980, J. Biol. Chem. 255:12073-12080;Alber and Kawasaki, 1982, J. Mol. Appl. Gen. 1: 419-434)もしくはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(Young et al., 1982, in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals, Hollaender et al, eds., Plenum Press, New York)由来のプロモーター、またはTPI1(US 4,599,311)もしくはADH2−4c(Russell et al., 1983, Nature 304:652-654)プロモーターが挙げられる。糸状菌宿主細胞に使用するのに適切なプロモーターは、例えば、ADH3プロモーター(McKnight et al., 1985, EMBO J. 4:2093-2099)またはtpiAプロモーターである。
【0068】
コードDNA配列はまた、ヒト成長ホルモンターミネーター(Palmiter et al., op. cit.)または(真菌宿主では)TPI1(Alber and Kawasaki, op. cit.)もしくはADH3 (McKnight et al., op. cit.)プロモーターのような適切なターミネーターに作動可能に接続させてもよい。ベクターは、(例えば、SV 40またはアデノウイルス5Elb領域由来の)ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサー配列(例えば、SV40エンハンサー)および翻訳エンハンサー配列(例えば、アデノウイルスVA RNAをコードする配列)のようなエレメントをさらに含み得る。
【0069】
組み換え発現ベクターは、問題の宿主細胞においてベクターの複製を可能にするDNA配列をさらに含み得る。(宿主細胞が哺乳動物細胞である場合)そのような配列の例には、SV40複製開始点がある。ベクターはまた、選択マーカー、例えば、その産物が、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードする遺伝子または薬物、例えば、ネオマイシン、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートに対する耐性を付与する遺伝子のような宿主細胞における欠損を補完する遺伝子を含み得る。
【0070】
ペプチドまたは全長タンパク質、プロモーターおよびターミネーターをコードするDNA配列をそれぞれライゲートし、そして複製に必要な情報を含有する適切なベクターにそれらを挿入するために使用される手順は、当業者に周知である(例えば、Sambrook et al., op.cit.を参照のこと)。
【0071】
本発明の組み換えペプチドを得るために、コードDNA配列を、第2のペプチドコード配列およびプロテアーゼ切断部位コード配列と有用に融合させて、融合タンパク質をコードするDNA構築物を得てもよく、ここで、プロテアーゼ切断部位コード配列は、HBPフラグメントと第2のペプチドコードDNAとの間に位置し、組み換え発現ベクターに挿入され、そして組み換え宿主細胞において発現される。一実施形態では、前記第2のペプチドは、グルタチオン−S−レダクターゼ、仔ウシチモシン、細菌チオレドキシンまたはヒトユビキチンの天然もしくは合成変異体、あるいはそれらのペプチドを含む群から選択されるが、これらに限定されない。もう1つの実施形態では、プロテアーゼ切断部位を含むペプチド配列は、アミノ酸配列IEGR切断部位を有するXa因子、アミノ酸配列DDDDK切断部位を有するエンテロキナーゼ、アミノ酸配列LVPR/GSを有するトロンビン、またはアミノ酸配列XKX切断部位を有するアクロモバクター・リティカス(Achromobacter lyticus)であってもよい。
【0072】
発現ベクターが導入される宿主細胞は、ペプチドまたは全長タンパク質の発現が可能ないずれの細胞であってもよく、そして好ましくは、無脊椎動物(昆虫)または脊椎動物細胞、例えば、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞もしくは哺乳動物細胞のような真核細胞、特に、昆虫および哺乳動物細胞である。適切な哺乳動物細胞系統の例には、HEK293(ATCC CRL−1573)、COS(ATCC CRL−1650)、BHK(ATCC CRL−1632、ATCC CCL−10)またはCHO(ATCC CCL−61)細胞系統がある。哺乳動物細胞をトランスフェクトし、そして細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法については、例えば、Kaufman and Sharp, J. Mol. Biol. 159, 1982, pp. 601-621;Southern and Berg, 1982, J. Mol. Appl. Genet. 1:327-341;Loyter et al., 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 422-426;Wigler et al., 1978, Cell 14:725;Corsaro and Pearson, 1981, in Somatic Cell Genetics 7, p. 603;Graham and van der Eb, 1973, Virol. 52:456;およびNeumann et al., 1982, EMBO J. 1:841-845に記載されている。
【0073】
あるいは、真菌細胞(酵母細胞を含む)を、宿主細胞として使用してもよい。適切な酵母細胞の例として、サッカロマイセス(Saccharomyces)spp.またはシゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)spp.の細胞、特に、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の株が挙げられる。他の真菌細胞の例には、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)spp.またはニューロスポラ(Neurospora)spp.の細胞、特に、麹菌(Aspergillus oryzae)またはアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の株がある。タンパク質の発現のためにアスペルギルス(Aspergillus)spp.を使用することについては、例えば、EP238023に記載されている。
【0074】
細胞を培養するために使用される培地は、適切な補助剤を含有する血清含有もしくは無血清培地のような哺乳動物細胞を増殖させるのに適切な任意の従来の培地であってもよく、または昆虫、酵母もしくは真菌細胞を増殖させるための適切な培地であってもよい。適切な培地は販売者から入手可能であり、または(例えば、the American Type Culture Collectionのカタログにおいて)公開されたレシピに従って、調製してもよい。
【0075】
次いで、細胞から組み換え技術により産生されたペプチドまたは全長タンパク質を、遠心分離またはろ過により培地から宿主細胞を分離すること、塩、例えば、硫酸アンモニウムにより上清もしくはろ液のタンパク質成分を沈殿させること、多様なクロマトグラフィー手順、例えば、HPLC、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどによる精製を含む従来の手順によって、培養培地から回収してもよい。
【0076】
合成的調製
ペプチドの合成的調製のための方法については、当該技術分野において周知である。合成ペプチドを生成するための詳細な説明ならびに実際的アドバイスは、Synthetic Peptides: A User's Guide (Advances in Molecular Biology), Grant G. A. ed., Oxford University Press, 2002、またはPharmaceutical Formulation: Development of Peptides and Proteins, Frokjaer and Hovgaard eds., Taylor and Francis, 1999に見出され得る。
【0077】
ペプチドは、例えば、Fmoc化学を使用することによって、およびAcm保護システインによって合成してもよい。逆相HPLCによる精製後、ペプチドを、さらに処理して、例えば、環状またはC末端もしくはN末端修飾アイソフォームを得てもよい。環化および末端修飾のための方法は、当該分野において周知であり、そして上記引用のマニュアルに詳細に記載されている。
【0078】
好適な実施形態では、本発明のペプチド配列は、合成により、特に、配列補助ペプチド合成(Sequence Assisted Peptide Synthesis)(SAPS)法によって生成される。
【0079】
ペプチドは、ろ過用にポリプロピレンフィルターを備えるポリエチレン容器におけるバッチ式でも、またはN−a−アミノ保護基として9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)もしくはtert−ブチルオキシカルボニル(Boc)および側鎖官能性について適切な一般的保護基を使用する全自動ペプチド合成装置上のポリアミド固相法(Dryland, A. and Sheppard, R.C., (1986) J.Chem. Soc. Perkin Trans. I, 125 - 137.)の連続流バージョンのいずれにおいても、合成することができる。
【0080】
マルチマー化合物
本発明の単離されたペプチド配列を、融合タンパク質において、化学結合によってもう1つの単離されたペプチド配列に接続させてもよく、またはアミノ酸配列を、リンカー基を介して相互に接続させてもよい。いくつかの実施形態では、本発明のペプチド配列を、モノマーのオリゴマー(マルチマー)として処方してもよく、ここで、各モノマーは、上記で定義したペプチド配列として存在する。特に、デンドリマーのようなマルチマーペプチドは、複数の可撓性ペプチドモノマーの存在により、コンフォメーション決定基またはクラスターを形成し得る。一実施形態では、化合物はダイマーであり、もう1つの実施形態では、化合物はトリマーまたはテトラマーである。一実施形態では、化合物は、リジン骨格に連結した、またはポリマーキャリア、例えば、BSAのようなタンパク質キャリアに結合した4つのペプチドのようなデンドリマーである。反復配列のような高分子化または様々なキャリアへの結合は、当該分野において周知であり、4つのペプチド、8つのペプチド、16のペプチド、または32のペプチドを担持するリジンデンドリマーのような例えば、リジン骨格がある。他のキャリアは、親油性デンドリマー、または親油性誘導体によって形成されるミセル様キャリア、またはスターバスト(星状)炭素鎖ポリマーコンジュゲートであってもよい。
【0081】
それ故、本発明に従えば、マルチマー化合物は、本発明の2つ以上の同一または異なるペプチド配列を含むポリマーであってもよく、ここで、好適な実施形態では、2つ以上のアミノ酸配列のうち少なくとも1つが、本発明に従うペプチドの配列から選択される。
【0082】
いくつかの実施形態では、化合物は、2つの同一なアミノ酸配列を含み得るか、または化合物は、アミノ酸配列の4つの同一のコピーを含み得る。
【0083】
他の実施形態では、化合物は、2つ以上の異なるアミノ酸配列を含み得、ここで、2つのアミノ酸配列のうち少なくとも1つは、本明細書において示すペプチド配列、またはそれらのフラグメントもしくは変異体から選択される配列である。より好ましくは、2つ以上の配列が、本明細書において示す配列から選択される。
【0084】
本発明のマルチマー化合物は、以下の式
(Z−L[式中、
Zは、配列QQGKSKAを含む個別に選択されたペプチドであり;
Lは、親油性置換基、リンカー(場合により置換されていてもよい)、およびスペーサー(場合により置換されていてもよい)からなる群から個々に選択され;
nは、1〜6の個々に選択された整数であり;
mは、0〜6の個々に選択された整数であり;
qは、1〜4の個々に選択された整数であり、
但し、mが0であり、そしてqが1である場合、zは多くて13連続アミノ酸残基である]を含む化合物、
またはその薬学的に許容できる塩である。
【0085】
本発明の化合物の例には、以下のものがある:
【化1】

【0086】
本発明の好適なマルチマー化合物は、アミノ酸配列が、以下のようなリンカーまたはリンカー基によって相互に接続される化合物である。
【化2】

FGL















[式中、
Z1aは、F、A、G、Q、L、M、N、S、Y、T、I、P、Vの群から選択される1もしくは2アミノ酸であり
より好適には:
Z1aは、A、G、Q、L、N、S、T、I、P、Vの群から選択される1もしくは2アミノ酸であり
なおより好適には:
Z1aは、A、G、S、Nから選択される1もしくは2アミノ酸であり
Z1aは、F、A、G、Q、L、M、N、S、Y、T、I、P、Vの群から選択される1アミノ酸であり
より好適には:
Z1aは、A、G、Q、L、N、S、T、I、P、Vの群から選択される1アミノ酸であり
なおより好適には:
Z1aは、A、G、S、Nから選択される1アミノ酸である]
【0087】
一実施形態では、化合物の2つの個々のペプチド配列が、リンカーによって同時接続される。リンカー分子は、本発明に従えば、アキラルなジ−、トリ−、またはテトラカルボン酸から選択され得、前記酸は、以下の一般式を有する。
【化3】

X[(A)nCOOH][(B)mCOOH]
【0088】
化合物は、WO 00/18791に記載のLPA法によって生成してもよい。
【0089】
一実施形態では、
nおよびmは、独立して、1〜20の整数であり、
Xは、HN、HN(CR)pCR、RHN(CR)pCR、HO(CR)pCR、HS(CR)pCR、ハロゲン−(CR)pCR、HOOC(CR)pCR、ROOC(CR)pCR、HCO(CR)pCR、RCO(CR)pCR、[HOOC(A)n][HOOC(B)m]CR(CR)pCR、HN(CR)p、RHN(CR)p、HO(CR)p、HS(CR)p、ハロゲン−(CR)p、HOOC(CR)p、ROOC(CR)p、HCO(CR)p、RCO(CR)p、または[HOOC(A)n][HOOC(B)m](CR)pであって、ここで、pは、0もしくは1〜20の整数であり、
AおよびBは、独立して、置換もしくは非置換C1−10アルキル、置換もしくは非置換C2−10アルケニル、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分であるか、またはAおよびBが共に、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分を形成する。
【0090】
1−10アルキルという用語は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、およびtertブチルを意味する。
【0091】
2−10アルケニルという用語は、2〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルケニル基、例えば、エチニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、およびtert−ブテニルを意味する。
【0092】
環式部分という用語は、シクロヘキサン、およびシクロペンタンを意味する。
【0093】
芳香族部分という用語は、フェニルを意味する。
【0094】
語句「AおよびBは、環式、ヘテロ環または芳香族部分を形成する」は、シクロヘキサン、ピペリジン、ベンゼン、およびピリジンを示す。
【0095】
一実施形態では、本発明において使用すべき適切なアキラルなジ−、トリ−、またはテトラカルボン酸は、以下の一般式を有する。
【化4】


X[(A)nCOOH][(B)mCOOH]
[式中、nおよびmは、独立して、1〜20の整数であり、Xは、HNであり、AおよびBは、独立して、置換もしくは非置換C1−10アルキル、置換もしくは非置換C2−10アルケニル、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分であるか、またはAおよびBが共に、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分を形成する]
【0096】
もう1つの実施形態では、本方法において使用すべき適切なアキラルなジ−、トリ−、またはテトラカルボン酸は、以下の一般式を有する。
【化5】


X[(A)nCOOH][(B)mCOOH]
[式中、nおよびmは、0もしくは1〜20の整数であり、Xは、HN(CR)pCR、またはRHN(CR)pCRであり、ここで、pは、0もしくは1〜20の整数であり、ここで、各Rは、H、置換もしくは非置換C1−10アルキル、置換もしくは非置換C2−10アルケニル、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分であるか、またはAおよびBが共に、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分を形成する]
【0097】
なおもう1つの実施形態では、本方法において使用すべき適切なアキラルなジ−、トリ−、またはテトラカルボン酸は、以下の一般式を有する。
【化6】


X[(A)nCOOH][(B)mCOOH]
[式中、nおよびmは、0もしくは1〜20の整数であり、Xは、HO(CR)pCR、HS(CR)pCR、ハロゲン−(CR)pCR、HOOC(CR)pCR、ROOC(CR)pCR、HCO(CR)pCR、RCO(CR)pCR、または[HOOC(A)n][HOOC(B)m]CR(CR)pCRであり、ここで、pは、0もしくは1〜20の整数であり、ここで、各Rは、独立して、Hまたは置換もしくは非置換C1−10アルキル、置換もしくは非置換C2−10アルケニル、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分であるか、あるいはAおよびBが共に、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分を形成する]
【0098】
なおもう1つの実施形態では、本方法において使用すべき適切なアキラルなジ−、トリ−、またはテトラカルボン酸は、以下の一般式を有する。
【化7】


X[(A)nCOOH][(B)mCOOH]
[式中、nおよびmは、0もしくは1〜20の整数であり、Xは、HN(CR)p、RHN(CR)p、HO(CR)p、HS(CR)p、ハロゲン−(CR)p、HOOC(CR)p、ROOC(CR)p、HCO(CR)p、RCO(CR)p、または[HOOC(A)n][HOOC(B)m](CR)pであり、ここで、pは、0もしくは1〜20の整数であり、ここで、各Rは、独立して、Hまたは置換もしくは非置換C1−10アルキル、置換もしくは非置換C2−10アルケニル、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分であるか、あるいはAおよびBが共に、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分を形成する]
【0099】
環構造を提供するのに好適なジ−、トリ−、およびテトラカルボン酸は、イミノ二酢酸、2−アミノマロン酸、3−アミノグルタル酸、3−メチルアミノグルタル酸、3−クロログルタミン酸、3−メトキシ−カルボニルグルタル酸、3−アセチルグルタル酸、グルタル酸、トリカルバリル酸、3,4−ビス−カルボキシメチルアジピン酸、4−(2−カルボキシエチル)−ピメリン酸、(3,5−ビス−カルボキシメチル−フェニル)−酢酸、3,4−ビス−カルボキシメチル−アジピン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、4−(3−カルボキシ−アリルアミノ)−ブタ−2−エン酸、4,4−イミノ−二安息香酸、1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸、5−アミノイソフタル酸、2−クロロマロン酸、3−ヒドロキシグルタル酸、およびベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸から選択され得る。
【0100】
フラグメントカップリング(フラグメントカップリングまたはフラグメント縮合)は、例えば、Peptide Synthesis protocols, Methods in Molecular Biology Vol. 35, Chapter 15, 303-316, Nyfeler R, Pennington MW and Dunne BM Eds.,Humana Press, 1994に記載の標準的な手順に従って実施してもよい。従って、フラグメントを、固相上で合成し、保護基の十分な保護を伴って固相から切断し、精製し、そして上記のように特徴付けすることができる。また、上記の他の技術によって、適切なフラグメントを得ることもできる。
【0101】
本発明に従えば、上記で定義したアミノ酸配列の2つ以上を含む2つの個々のペプチド配列は、これらの2つのペプチド配列うちの1つは、上記で定義した分子から選択されるリンカー分子の2つのカルボキシル基のうちの1つに共有結合し、そしてペプチド配列のうちのもう1つが、前記リンカー分子のもう1つのカルボキシル基に共有結合するように、接続される。ペプチド配列は、N−またはC末端アミノ酸残基のそれぞれそれらのアミノ−またはカルボキシ基を介してリンカーに共有結合する。従って、本発明の化合物は、以下の式を有する。
COOH/CONH−ペプチド配列−NH−CO−リンカー−CO−NH−ペプチド配列−COOH/CONH
またはNH−ペプチド配列−CO−NH−リンカー−NH−CO−ペプチド配列−NH
【0102】
一実施形態では、本発明に従う化合物は、以下の式によって例示される:
【化8】


【0103】
ここで、T1aは、以下からなる群から選択され、ここで、は結合点である。
【化9】

【0104】
本発明のもう1つの好適なマルチマー化合物では、以下のような2つの個々のリンカーまたはリンカー基を介して、2つの個々のペプチド配列は、相互に接続される。
【化10】



Link1 → リンク1
Link2 → リンク2
【0105】
リンク2は、以下の構造を有してもよく、ここで、は、アミノ酸配列Z1cのC末端への結合点を示すか、またはリンク2は存在せず、そしてC末端基は酸性の酸またはアミド(構造において示される非置換アミド)である:
【化11】

【0106】
ここで、Z1aは、F、A、G、Q、L、M、N、S、Y、T、I、P、Vからなる群から独立して選択される1もしくは2アミノ酸であるか、または存在しない。
【0107】
Z1bは、F、A、G、Q、L、M、N、S、Y、T、I、P、Vからなる群から選択される1アミノ酸であるか、または存在しない。
【0108】
Z1dは、例えば、β−アラニンのようなβ−アミノ酸である。
【0109】
各Z1cは、本明細書において示すペプチド配列のうちの1つから独立して選択される。
【0110】
C末端アミドは、分岐もしくは非分岐C1−20アルキル基によって一置換または二置換され得る。アルキル基は、例えば、水酸基、カルボン酸基、アミド基またはハロゲン基のような1つ以上の官能基で置換され得る。
【0111】
リンク1は、一実施形態において、以下の一般式を有する適切なアキラルなジ−、トリ−またはテトラカルボン酸であり得る:
【化12】


[式中、は、アミノ酸配列Z1cのN末端部分への結合点を示すか、またはリンク1は存在せず、そしてN末端アミノ基はNH基であり、ここで、nおよびmは、独立して、1〜20の整数であり、XはHNであり、AおよびBは、独立して、置換もしくは非置換C1−10アルキル、置換もしくは非置換C2−10アルケニル、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分であるか、またはAおよびBは、共に、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分を形成する]
【0112】
もう1つの実施形態では、リンク1は、以下の一般式を有する適切なアキラルなジ−、トリ−またはテトラカルボン酸である:
【化13】

[式中、は、アミノ酸配列Z1cのN末端部分の結合点を示し、ここで、nおよびmは、独立して、1〜20の整数であり、Xは、Y1b−Y1a−Nであり、AおよびBは、独立して、置換または非置換C1−10アルキル、置換または非置換C2−10アルケニル、置換または非置換環式部分、置換または非置換ヘテロ環部分、置換または非置換芳香族部分であるか、あるいはAおよびBが共に、置換または非置換環式部分、置換または非置換ヘテロ環部分、置換または非置換芳香族部分を形成する]
【0113】
ここで、Y1aはスペーサーである。
【0114】
ここで、Y1bは、直鎖もしくは分岐脂肪酸のアシル基または直鎖もしくは分岐ジカルボン酸を含む親油性置換基である。
【0115】
本発明の一実施形態では、スペーサーは、2つのメチレン基のような1〜7つのメチレン基を有するジカルボン酸基であり、このスペーサーは、Y1aが結合するアミノ基と親油性置換基のアミノ基との間に架橋を形成する。
【0116】
本発明の一実施形態では、スペーサーは、β−アラニン、γ−アミノ酪酸(GABA)、γ−グルタミン酸、Lys、Asp、Glu、Aspを含有するジペプチド、Gluを含有するジペプチド、またはLysを含有するジペプチドからなるリストから選択される。本発明の一実施形態では、スペーサーはβ−アラニンである。本発明の一実施形態では、スペーサーはγ−アミノ酪酸(GABA)である。本発明の一実施形態では、スペーサーはγ−グルタミン酸である。
【0117】
本発明の一実施形態では、Y1aが結合するアミノ基は、スペーサーのカルボキシル基とアミド結合を形成し、そしてスペーサーのアミノ基は、親油性置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成する。
【0118】
本発明の一実施形態では、親油性置換基は、部分的または完全に水素化されたシクロペンタノフェナントレン骨格を含む。
【0119】
本発明の一実施形態では、親油性置換基は、直鎖または分岐のアルキル基である。本発明の一実施形態では、親油性置換基は、直鎖または分岐の脂肪酸のアシル基である。
【0120】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)6−40−CHのアシル基である。は結合点を示す。
【0121】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)8−26−CHのアシル基である。は結合点を示す。
【0122】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)8−20−CHのアシル基である。は結合点を示す。
【0123】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)mCHのアシル基である。は結合点を示す。
【0124】
mは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18である。
【0125】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。
【0126】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)6−40−C(O)OHの直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。は結合点を示す。
【0127】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)8−26−C(O)OHの直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。は結合点を示す。
【0128】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)8−20−C(O)OHの直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。は結合点を示す。
【0129】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)8−18−C(O)OHの直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。は結合点を示す。
【0130】
さらに好適な実施形態では、親油性置換基は、式C(C=O)−(CH)−C(O)OHの直鎖または分岐のジカルボン酸を含む。は結合点を示す。
【0131】
nは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18である。
【0132】
もう1つの実施形態では、リンク1は、以下の一般式を有する適切なアキラルなジ−、トリ−またはテトラカルボン酸である:
【化14】


[式中、は、アミノ酸配列Z1cのN末端部分の結合点を示し、ここで、nおよびmは、0もしくは1〜20の整数であり、Xは、HN(CR)pCR、またはRHN(CR)pCRであり、ここで、pは、0もしくは1〜20の整数であり、ここで、各Rは、H、置換もしくは非置換C1−10アルキル、置換もしくは非置換C2−10アルケニル、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分であるか、またはAおよびBが共に、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分を形成する]
【0133】
もう1つの実施形態では、リンク1は、以下の一般構造を有する適切なアキラルなジ−、トリ−またはテトラカルボン酸である:
【化15】

[式中、は、アミノ酸配列Z1cのN末端部分の結合点を示し、ここで、nおよびmは、0もしくは1〜20の整数であり、Xは、HO(CR)pCR、HS(CR)pCR、ハロゲン−(CR)pCR、HOOC(CR)pCR、ROOC(CR)pCR、HCO(CR)pCR、RCO(CR)pCR、または[HOOC(A)n][HOOC(B)m]CR(CR)pCRであり、ここで、pは、0もしくは1〜20の整数であり、ここで、各Rは、独立して、Hまたは置換もしくは非置換C1−10アルキル、置換もしくは非置換C2−10アルケニル、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分であるか、あるいはAおよびBが共に、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分を形成する]
【0134】
もう1つの実施形態では、リンク1は、以下の一般構造を有する適切なアキラルなジ−、トリ−またはテトラカルボン酸である:
【化16】

X[(A)nCOOH][(B)mCOOH]
[式中、は、アミノ酸配列Z1cのN末端部分の結合点を示し、ここで、nおよびmは、0もしくは1〜20の整数であり、Xは、HN(CR)p、RHN(CR)p、HO(CR)p、HS(CR)p、ハロゲン−(CR)p、HOOC(CR)p、ROOC(CR)p、HCO(CR)p、RCO(CR)p、または[HOOC(A)n][HOOC(B)m](CR)pであり、ここで、pは、0もしくは1〜20の整数であり、ここで、各Rは、独立して、Hまたは置換もしくは非置換C1−10アルキル、置換もしくは非置換C2−10アルケニル、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分であるか、あるいはAおよびBが共に、置換もしくは非置換環式部分、置換もしくは非置換ヘテロ環部分、置換もしくは非置換芳香族部分を形成する]
【0135】
もう1つの実施形態では、リンク1は、以下の一般構造を有する適切なアキラルなジ−、トリ−またはテトラカルボン酸である:
【化17】

[式中、は、アミノ酸配列Z1cのN末端部分の結合点を示し、ここで、Xは、以下の基のうちの1つを示し、ここで、ここで、は、結合点を示す]
【化18】

【0136】
1−10アルキルという用語は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、およびtertブチルを意味する。
【0137】
2−10アルケニルという用語は、2〜10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルケニル基、例えば、エチニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、およびtert−ブテニルを意味する。
【0138】
環式部分という用語は、シクロヘキサン、およびシクロペンタンを意味する。
【0139】
芳香族部分という用語は、フェニルを意味する。
【0140】
語句「AおよびBは、環式、ヘテロ環または芳香族部分を形成する」は、シクロヘキサン、ピペリジン、ベンゼン、およびピリジンを示す。
【0141】
カルボン酸との反応によって、以下のタイプの構築物
X(CO−配列)2−固相[式中、Xは上記で定義したとおりである]
が得られる。
【0142】
本明細書において用語「配列」とは、天然に存在するおよび/または天然に存在しないアミノ酸を含むペプチド、PNA−配列、またはペプチド疑似物を意味する。「天然に存在するアミノ酸」とは、天然に見出されるL−およびD−型の20の酸を意味する。天然に存在しないアミノ酸は、例えば、改変された天然に存在するアミノ酸である。配列という用語は、そのような配列の1つ以上を含むことをさらに意図する。適切なペプチド疑似物の例については、Marshall G.R.,(1993) Tetrahedron, 49:3547-3558に記載されている。用語「化学的部分」は、LPAの溶解度または生物活性を増強する実体およびLPAをその標的またはマーカーに指向させるための実体を示す。配列のための好適な実施形態については、上述している。
【0143】
基Xは、同じ配列、あるいは1つ以上の異なる配列および/または部分の直接または間接的に継続した段階的合成またはフラグメントカップリングを可能にする。所望であれば、LPAのペプチドフラグメントの配向(NからCまたはCからN)を定義する。一実施形態では、本発明は、NからCへの配向を伴うLPAを特徴とし、もう1つの実施形態では、本発明は、配列のNからCおよびCからNの同時提示を伴う化合物に関し、そしてなおもう1つの実施形態では、配列は、CからNへの配向を有する。
【0144】
Xが一時的に保護されたアミノ官能基を含む場合、保護の後に直接、合成またはカップリングを行うことができる。(工程(c)において、上記を参照のこと)環系の効果的な形成を提供するすべてのカルボキシル含有基の適切な活性化は、半等価カルボキシ酸(half−equivalent carboxy acid)を使用して確実にすることができる。トリ−、またはテトラカルボン酸の場合、活性化されたカルボキシ基は、エチレンジアミンのようなジアミン、またはメルカプト−、オキシ−、オキソもしくはカルボキシル基のようなさらなる反応のために適切に官能化されたアミンで、さらに誘導体化してもよい。ジアミンの場合、所望される配列または化学部分に従って、ペプチド合成またはフラグメントカップリングを継続することができる。好適な実施形態では、Fmoc−保護ストラテジーが使用されるが、合成またはカップリングストラテジーに依存して、いずれのアミノ保護基を使用してもよい。例には、Boc−保護基ストラテジーがある。
【0145】
継続した段階的合成またはフラグメントカップリングは、1つのアミノ酸基、またはリジンのような二官能性化学部分の場合、2つのアミノ酸基で実施されるため、意外なことに、MAP合成によって得られる従来のテトラマーリジンデンドリマーと比較して、かなり良好な結果を得ることができることが見出されている。さらに加えて、最適なペプチド合成手順またはカップリング手順を、固相に結合した単一鎖に使用することができ、そしてLPAを形成させる前に、それらの均質性を確認することができる。固相からの切断および同時側鎖脱保護は、標準的なペプチド合成手順(上記)によって実施することができる。それ故、最適かつ明確な組成を有する最終産物を得ることができる。所望または必要であれば、HPLCまたはゲルろ過のような標準的なクロマトグラフィー法による精製を、容易に実施することができる。
【0146】
環構造を提供するのに好適なジ−、トリ−、およびテトラカルボン酸は、イミノ二酢酸、2−アミノマロン酸、3−アミノグルタル酸、3−メチルアミノグルタル酸、3−クロログルタミン酸、3−メトキシ−カルボニルグルタル酸、3−アセチルグルタル酸、グルタル酸、トリカルバリル酸、3,4−ビス−カルボキシメチルアジピン酸、4−(2−カルボキシエチル)−ピメリン酸、(3,5−ビス−カルボキシメチル−フェニル)−酢酸、3,4−ビス−カルボキシメチル−アジピン酸、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、4−(3−カルボキシ−アリルアミノ)−ブタ−2−エン酸、4,4−イミノ−二安息香酸、1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボン酸、5−アミノイソフタル酸、2−クロロマロン酸、3−ヒドロキシグルタル酸、およびベンゼン−1,3,5−トリカルボン酸から選択され得る。
【0147】
フラグメントカップリング(フラグメントカップリングまたはフラグメント縮合)は、例えば、Peptide Synthesis protocols, Methods in Molecular Biology Vol. 35, Chapter 15, 303-316, Nyfeler R, Pennington MW and Dunne BM Eds.,Humana Press, 1994に記載の標準的な手順に従って実施してもよい。従って、フラグメントを、固相上で合成し、保護基の十分な保護を伴って固相から切断し、精製し、そして上記のように特徴付けすることができる。また、上記の他の技術によって、適切なフラグメントを得ることもできる。
【0148】
本発明の好適な実施形態は、本発明の化合物の生成のために上記のLPA法を使用することである。
【0149】
医薬品
本発明の目的は、NCAMの活性を調節することが可能な化合物を提供することであり、前記化合物は、疾患の治療のための医薬品として本発明にかかわり、ここで、FGFRシグナリングの調節は、治癒の必須条件と考えられ得る。
【0150】
従って、本発明は、医薬品の製造のためのNCAMまたはそのフラグメントもしくは変異体に対応する配列を含む1つ以上のペプチドの使用に関する。
【0151】
一実施形態では、本発明の医薬品は、配列番号1〜4に記載のアミノ酸配列または前記配列のフラグメントもしくは変異体の少なくとも1つを含む。もう1つの実施形態では、本発明の医薬品は、NCAMもしくはそのフラグメントを含むエピトープに結合する抗体または前記抗体のフラグメントもしくは変異体を含む。
【0152】
医薬品は、一態様において、インビトロまたはインビボで細胞の死滅を防止し、ここで、組成物は、インビトロまたはインビボにおいて、上記の化合物または下記の化合物の1つ以上の有効量で被験体に投与される。
【0153】
本発明の医薬品は、有効量の1つ以上の上記で定義した化合物、または上記で定義した化合物を、薬学的に許容できる添加物と組み合わせて含む組成物を含む。そのような医薬品は、経口、経皮、筋肉内、静脈内、動脈内、髄腔内、脳室内、鼻腔内または経肺投与のために適切に処方することができる。
【0154】
本発明のペプチドに基づく医薬品および組成物の処方開発のストラテジーは、一般的に、他の任意のタンパク質に基づく薬品の処方ストラテジーに対応する。潜在的な問題およびこれらの問題を克服するのに必要な指針については、いくらかのテキスト、例えば、“Therapeutic Peptides and Protein Formulation. Processing and Delivery Systems”, Ed. A.K. Banga, Technomic Publishing AG, Basel, 1995において取り扱われている。
【0155】
注射剤は、通常、液体の溶液もしくは懸濁液、注入前の液体への溶液化、もしくは懸濁化に適切な固体形態のいずれかとして調製される。調製物はまた、乳化してもよい。有効成分は、しばしば、薬学的に許容でき、かつ有効成分に適合可能な賦形剤と混合される。適切な賦形剤は、例えば、水、塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組み合わせである。さらに、所望であれば、製剤は、湿潤もしくは乳化剤、pH緩衝剤のような少量の補助物質、または製剤の有効性または輸送を増強する少量の補助物質を含有してもよい。
【0156】
本発明に従う化合物を含有する医薬組成物を、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 1985 or in Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19 th edition, 1995に記載のような従来の技術によって調製してもよい。
【0157】
本発明の一実施形態では、医薬製剤は、水性製剤、即ち、水を含む製剤である。そのような製剤は、典型的に、溶液または懸濁液である。本発明のさらなる実施形態では、医薬製剤は、水溶液である。用語「水性製剤」は、少なくとも50%w/wの水を含む。同様に、用語「水溶液」は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液として定義され、そして用語「水性懸濁液」は、少なくとも50%w/wの水を含む懸濁液として定義される。
【0158】
本発明の1つの目的は、約0.1mg/ml〜約50mg/ml、例えば、約0.1mg/ml〜約25mg/mlの濃度で存在する本発明に従う化合物を含む医薬製剤を提供することである。pHは、2.0〜10.0、例えば、7.0〜8.5であってもよい。製剤は、緩衝系、保存剤、等張剤、キレート剤、安定剤および界面活性剤をさらに含み得る。本発明のもう1つの実施形態では、製剤のpHは、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、および10.0.からなるリストから選択される。好ましくは、製剤のpHは、本発明に従う化合物の等電点から少なくとも1pH単位であり、製剤のなおさらに好適なpHは、本発明に従う化合物の等電点から少なくとも2pH単位である。
【0159】
もう1つの実施形態では、医薬製剤は、凍結乾燥された製剤であり、ここで、医師または患者は、例えば、上記の濃度を得るために、使用前に溶媒および/または希釈剤を添加する。
【0160】
もう1つの実施形態では、医薬製剤は、予め溶解することなく使用可能な(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥された)乾燥製剤である。
【0161】
さらなる態様では、本発明は、本発明に従う化合物の水溶液、および緩衝液を含む医薬製剤に関し、ここで、前記化合物は、0.1mg/ml以上の濃度で存在し、そしてここで、前記製剤は、約2.0〜約10.0のpHを有する。
【0162】
さらなる態様では、本発明は、本発明に従う化合物の水溶液、および緩衝液を含む医薬製剤に関し、ここで、前記化合物は、0.1mg/ml以上の濃度で存在し、そしてここで、前記製剤は、約7.0〜約8.5のpHを有する。
【0163】
緩衝液は、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、およびトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、ヘペス(hepes)、バイシン(bicine)、トリシン(tricine)、リンゴ酸、コハク酸塩、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸またはそれらの混合物からなる群から選択され得る。これらの特定の緩衝液のそれぞれは、本発明の代替実施形態を構成する。
【0164】
製剤は、薬学的に許容できる保存剤をさらに含み得る。本発明のさらなる実施形態では、保存剤は、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、2−フェノキシエタノール、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、2−フェニルエタノール、ベンジルアルコール、エタノール、クロロブタノール、およびチメロサール、ブロノポール、安息香酸、イミド尿素、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(3p−クロロフェノキシプロパン−1,2−ジオール)またはそれらの混合物からなる群から選択される。本発明のさらなる実施形態では、保存剤は、0.1mg/ml〜30mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態では、保存剤は、0.1mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態では、保存剤は、0.1mg/ml〜5mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態では、保存剤は、5mg/ml〜10mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態では、保存剤は、10mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在する。これらの特定の保存剤のそれぞれは、本発明の代替実施形態を構成する。医薬組成物における保存剤の使用については、当業者に周知である。便宜的に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995に言及されている。
【0165】
本発明のさらなる実施形態では、製剤は、等張剤をさらに含む。本発明のさらなる実施形態では、等張剤は、塩(例えば、塩化ナトリウム)、糖もしくは糖アルコール、アミノ酸(例えば、L−グリシン、L−ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えば、グリセロール(グリセリン)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール)ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、またはそれらの混合物からなる群から選択される。例えば、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプンおよびカルボキシメチルセルロース−Naを含むモノ−、ジ−、もしくは多糖、または水溶性グルカンのようないずれの糖を使用してもよい。一実施形態では、糖添加物はスクロースである。糖アルコールは、少なくとも1つの−OH基を有するC4〜C8炭化水素として定義され、例えば、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、およびアラビトールを含む。一実施形態では、糖アルコール糖添加物はマンニトールである。上記の糖または糖アルコールは、個々にまたは組み合わせて使用してもよい。糖または糖アルコールが液体製剤に可溶性であり、そして本発明の方法を使用して達成される安定化効果に有害な影響を及ぼさない限り、使用量に一定の制限はない。一実施形態では、糖または糖アルコール濃度は、約1mg/ml〜約150mg/mlの間である。本発明のさらなる実施形態では、等張剤は、1mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態では、等張剤は、1mg/ml〜7mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態では、等張剤は、8mg/ml〜24mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態では、等張剤は、25mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在する。これらの特定の等張剤のそれぞれは、本発明の代替実施形態を構成する。医薬組成物における等張剤の使用については、当業者に周知である。便宜的に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995に言及されている。
【0166】
本発明のさらなる実施形態では、製剤は、キレート剤をさらに含む。本発明のさらなる実施形態では、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、およびアスパラギン酸、およびそれらの混合物の塩から選択される。本発明のさらなる実施形態では、キレート剤は、0.1mg/ml〜5mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態では、キレート剤は、0.1mg/ml〜2mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態では、キレート剤は、2mg/ml〜5mg/mlの濃度で存在する。これらの特定のキレート剤のそれぞれは、本発明の代替実施形態を構成する。医薬組成物におけるキレート剤の使用については、当業者に周知である。便宜的に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995に言及されている。
【0167】
本発明のさらなる実施形態では、製剤は、安定剤をさらに含む。医薬組成物における安定剤の使用については、当業者に周知である。便宜的に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995に言及されている。
【0168】
より詳細には、本発明の組成物は、治療有効成分が、液体医薬製剤の貯蔵中におそらく凝集形成を呈するポリペプチドを含む安定化された液体医薬組成物である。「凝集形成」とは、可溶性を保持し得るオリゴマーの形成か、または溶液から沈殿する大きな目視可能な凝集体を生じるポリペプチド分子間の物理的相互作用を意味する。「貯蔵中」とは、一度調製された液体医薬組成物または製剤が、被験体に直ちに投与されないことを意味する。むしろ、調製後、それは、液体形態または被験体への投与に適切な他の形態への後の再構成のための液体形態、凍結状態、または乾燥形態のいずれかでの貯蔵のために、包装される。「乾燥形態」とは、液体医薬組成物または製剤が、凍結乾燥(即ち、凍結乾燥;例えば、Williams and Polli (1984) J. Parenteral Sci. Technol. 38:48-59を参照のこと)、噴霧乾燥(Masters (1991) in Spray-Drying Handbook (5th ed; Longman Scientific and Technical, Essez, U.K.), pp. 491-676;Broadhead et al. (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18:1169-1206;およびMumenthaler et al. (1994) Pharm. Res. 11:12-20を参照のこと)または空気乾燥(Carpenter and Crowe (1988) Cryobiology 25:459-470; and Roser (1991) Biopharm. 4:47-53)することによって、乾燥されることを意味する。液体医薬組成物の貯蔵中のポリペプチドによる凝集形成は、そのポリペプチドの生物活性に有害な影響を及ぼし得、医薬組成物の治療効力を生じる。さらに加えて、凝集形成は、輸注システムを使用して、ポリペプチド含有医薬組成物が投与される場合、管類、膜、またはポンプの閉塞のような他の問題を生じ得る。
【0169】
用語「安定化された製剤」は、物理的安定性が増加したか、化学的安定性が増加したかまたは物理化学的安定性が増加した製剤を指す。
【0170】
本明細書において使用されるタンパク質製剤の用語「物理的安定性」は、タンパク質の熱機械的ストレスへの暴露および/または疎水性表面および界面のような不安定化させる界面および表面との相互作用の結果としてタンパク質の生物学的に不活性なおよび/または不溶性の凝集体を形成するタンパク質の傾向を指す。水性タンパク質製剤の物理的安定性は、適切な容器(例えば、カートリッジまたはバイアル)に充填した製剤を機械的/物理的ストレス(例えば、撹拌)に、異なる温度で様々な期間、暴露した後、目視検査および/または濁度測定によって評価される。製剤の目視検査は、暗い背景での鮮明な収束光において実施される。製剤の濁度は、例えば、0〜3の尺度で濁度の程度を目視評価の格付け(濁度が認められない製剤は目視評価0に対応し、そして昼光下目視で濁度が認められる製剤は目視評価3に対応する)によって特徴付けられる。製剤は、それが昼光下目視で濁度を示す場合、タンパク質凝集に関して物理学的に不安定と分類される。あるいは、製剤の濁度は、当業者に周知の簡単な濁度測定によって評価することもできる。水性タンパク質製剤の物理的安定性はまた、タンパク質のコンフォメーション状態の分光因子(spectroscopic agent)またはプローブを使用することによって評価することもできる。プローブは、好ましくは、タンパク質の非天然の配座異性体に優先的に結合する小分子である。タンパク質構造の小分子分光プローブの一例は、チオフラビンTである。チオフラビンTは、アミロイド線維の検出に広範に使用されている蛍光染料である。線維、およびおそらくまた他のタンパク質配座の存在下、線維タンパク質形態に結合する場合、チオフラビンTは、約450nmで新たな最大励起および約482nmで蛍光の増大を生じる。非結合型チオフラビンTは、その波長で本質的に非蛍光性である。
【0171】
他の小分子を、タンパク質構造の天然の状態から非天然の状態への変化のプローブとして使用することができる。例えば、「疎水性パッチ」プローブは、タンパク質の暴露された疎水性パッチに優先的に結合する。疎水性パッチは、一般的に、天然の状態では、タンパク質の三次構造の内部に埋もれているが、タンパク質がアンフォールドまたは変性し始めるとき、暴露される。これらの小分子分光プローブの例には、アントラセン、アクリジン、フェナントロリンなどのような芳香族性疎水性染料がある。他の分光プローブは、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、およびバリンなどのような疎水性アミノ酸のコバルト金属錯体のような金属−アミノ酸錯体である。
【0172】
本明細書において使用するタンパク質製剤の用語「化学的安定性」は、タンパク質構造における化学的共有結合性の変化を指し、天然のタンパク質構造と比較して、生物学的効力のポテンシャルが低いおよび/または免疫原性特性のポテンシャルが高い化学的分解産物の形成をもたらす。様々な化学的分解産物は、天然のタンパク質のタイプおよび性質ならびにタンパク質が暴露される環境に依存して形成され得る。化学的分解の排除を、完全に回避することができない可能性が高く、そして当業者に周知のとおり、タンパク質製剤の貯蔵および使用中に、化学的分解産物量の増加が、しばしば認められる。ほとんどのタンパク質には脱アミド化の傾向があり、そのプロセスでは、グルタミルまたはアスパラギン残基の側鎖のアミド基が加水分解されて、遊離のカルボン酸を形成する。他の分解経路は、高分子量転換産物の形成に関与し、ここで、2つ以上のタンパク質分子が、アミド基転移および/またはジスルフィド相互作用を介して相互に共有結合し、共有結合したダイマー、オリゴマーおよびポリマー分解産物の形成をもたらす(Stability of Protein Pharmaceuticals, Ahern. T. J. & Manning M. C., Plenum Press, New York 1992)。(例えば、メチオニン残基の)酸化は、化学分解のもう1つの変異体として言及することができる。タンパク質製剤の化学的安定性は、異なる環境条件(例えば、温度を上昇させることによって、分解産物の形成を加速することができる)への暴露後に様々な時点で化学的分解産物の量を測定することによって評価することができる。それぞれ個々の分解産物の量は、しばしば、様々なクロマトグラフィー技術(例えば、SEC−HPLCおよび/またはRP−HPLC)を使用して、分子サイズおよび/または変化に依存する分解産物の分別によって、決定される。
【0173】
従って、上に概説したように、「安定化された製剤」は、物理的安定性が増加したか、化学的安定性が増加したかまたは物理化学的安定性が増加した製剤を指す。一般に、製剤は、有効期限日に達するまでは(推奨される使用および貯蔵条件に応じて)使用および貯蔵中に安定でなければならない。
【0174】
本発明の一実施形態では、本発明に従う化合物を含む医薬製剤は、6週間を超える使用および3年間を超える貯蔵の間、安定である。
【0175】
本発明のもう1つの実施形態では、本発明に従う化合物を含む医薬製剤は、4週間を超える使用および3年間を超える貯蔵の間、安定である。
【0176】
本発明のさらなる実施形態では、本発明に従う化合物を含む医薬製剤は、4週間を超える使用および2年間を超える貯蔵の間、安定である。
【0177】
本発明のなおさらなる実施形態では、化合物を含む医薬製剤は、2週間を超える使用および2年間を超える貯蔵の間、安定である。本発明の医薬組成物は、組成物の貯蔵中のポリペプチドによる凝集形成を減少させるのに十分な量のアミノ酸基剤をさらに含み得る。「アミノ酸基剤」とは、1アミノ酸または複数のアミノ酸の組み合わせを意味し、ここで、任意の所与のアミノ酸が、その遊離の基本形態またはその塩形態のいずれかで存在する。アミノ酸の組み合わせを使用する場合、アミノ酸のすべては、それらの遊離の基本形態で存在してもよく、すべてがそれらの塩形態で存在してもよく、またはいくつかはそれらの遊離の基本形態で存在する一方、他方がそれらの塩形態で存在してもよい。一実施形態では、本発明の組成物を調製するために使用されるアミノ酸は、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸のような荷電側鎖を担時するアミノ酸である。一実施形態では、本発明の組成物を調製するために使用されるアミノ酸はグリシンである。特定のアミノ酸(例えば、メチオニン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニンおよびそれらの混合物)の任意の立体異性体(即ち、LもしくはD)またはこれらの立体異性体の組み合わせも、特定のアミノ酸がその遊離の基本形態またはその塩形態のいずれかで存在する限り、本発明の医薬組成物に存在してもよい。一実施形態では、L−立体異性体が使用される。本発明の組成物はまた、これらのアミノ酸の類似体で処方してもよい。「アミノ酸類似体」とは、本発明の液体医薬組成物の貯蔵中のポリペプチドによる凝集形成を減少する所望される効果を生じる天然に存在するアミノ酸の誘導体を意味する。適切なアルギニン類似体として、例えば、アミノグアニジン、オルニチンおよびN−モノエチルL−アルギニンが挙げられ、適切なメチオニン類似体として、エチオニンおよびブチオニンが挙げられ、そして適切なシステイン類似体として、S−メチル−Lシステインが挙げられる。他のアミノ酸に関しても、アミノ酸類似体は、それらの遊離の基本形態またはそれらの塩形態のいずれかで組成物に組み入れられる。本発明のさらなる実施形態では、アミノ酸またはアミノ酸類似体は、タンパク質の凝集を防止または遅延させるのに十分な濃度で使用される。
【0178】
本発明のさらなる実施形態では、治療用薬剤として作用するポリペプチドがそのような酸化を受け易い少なくとも1つのメチオニン残基を含むポリペプチドである場合、メチオニン(または他の含硫アミノ酸もしくはアミノ酸類似体)を添加して、メチオニン残基のメチオニンスルホキシドへの酸化を阻害してもよい。「阻害する」とは、時間経過に伴うメチオニン酸化型種の蓄積の最小化を意味する。メチオニンの酸化を阻害すると、ポリペプチドの適切な分子形態がさらに保持される。メチオニンのいずれの立体異性体(L、Dまたはそれらの混合物)も使用することができる。添加しようとする量は、メチオニンスルホキシドの量が規制当局に受け入れ可能であるように、メチオニン残基の酸化を阻害するのに十分な量であるべきである。典型的に、これは、組成物が、約10%〜約30%以下のメチオニンスルホキシドを含有することを意味する。一般的に、これは、添加されるメチオニン対メチオニン残基の比が、約1:1〜約1000:1、例えば、10:1〜約100:1の範囲であるように、メチオニンを添加することによって、達成することができる。
【0179】
本発明のさらなる実施形態では、製剤は、高分子量ポリマーまたは低分子化合物の群から選択される安定剤をさらに含む。本発明のさらなる実施形態では、安定剤は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ−/ヒドロキシセルロースまたはその誘導体(例えば、HPC、HPC−SL、HPC−LおよびHPMC)、シクロデキストリン、硫黄含有物質、例えば、モノチオグリセロール、チオグリコール酸および2−メチルチオエタノール、ならびに様々な塩(例えば、塩化ナトリウム)から選択される。これらの特定の安定剤のそれぞれは、本発明の代替実施形態を構成する。
【0180】
医薬組成物はまた、組成物中の治療有効なポリペプチドの安定性をさらに増強するさらなる安定化剤を含み得る。本発明に特に興味深い安定化剤として、メチオニン酸化からポリペプチドを保護するメチオニンおよびEDTA、ならびに凍結融解または機械的剪断に関連する凝集からポリペプチドを保護する非イオン界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
本発明のさらなる実施形態では、製剤は、界面活性剤をさらに含む。本発明のさらなる実施形態では、界面活性剤は、洗浄剤、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロックポリマー(例えば、ポロキサマー、例えば、Pluronic.RTM.F68、poloxamer188および407、TritonX−100)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、星状PEO(starshaped PEO)、アルキル化およびアルコキシル化誘導体(ツウィーン類、例えば、Tween−20、Tween−40、Tween−80およびBrij−35)のようなポリエチレンおよびポリエチレン誘導体、ポリオキシエチレンヒドロキシステアリン酸、モノグリセリドまたはそのエトキシル化誘導体、ジグリセリドまたはそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レシチンおよびリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロールおよびスフィンゴミエリン)、リン脂質の誘導体(例えば、ジパルミトイルホスファチジン酸)およびリゾリン脂質(例えば、パルミトイルリゾホスファチジル−L−セリンおよびエタノールアミン、コリン、セリンもしくはスレオニンの1−アシル−sn−グリセロ−3−リン酸エステル)ならびにリゾホスファチジルおよびホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)−誘導体、例えば、リゾホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンのラウロイルおよびミリストイル誘導体、ならびに極性頭部基、即ち、コリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトール、および正に荷電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリンおよびリボホスファチジルスレオニンの修飾物、ならびにグリセロリン脂質(例えば、ケファリン)、グリセロ糖脂質(例えば、ガラクトピラノシド)、スフィンゴ糖脂質(例えば、セラミド、ガングリオシド)、ドデシルホスホコリン、ニワトリ卵リゾレシチン、フシジン酸誘導体−−(例えば、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウムなど)、長鎖脂肪酸およびその塩C6−C12(例えば、オレイン酸およびカプリル酸)、アシルカルニチンおよび誘導体、リジン、アルギニンもしくはヒスチジンのNα−アシル化誘導体、またはリジンもしくはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニンもしくはヒスチジンおよび中性もしくは酸性アミノ酸の任意の組み合わせを含むジペプチドのNα−アシル化誘導体、1つの中性アミノ酸および2つの荷電したアミノ酸の任意の組み合わせを含むトリペプチドのNα−アシル化誘導体、DSS(ドキュセートナトリウム、CAS登録番号[577−11−7])、ドキュセートカルシウム、CAS登録番号[128−49−4])、ドキュセートカリウム、CAS登録番号[7491−09−0])、SDS(ドデシル硫酸ナトリウムもしくはラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸もしくはその誘導体、胆汁酸およびその塩ならびにグリシンもしくはタウリンコンジュゲート、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N−ヘキサデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート、アニオン性(アルキル−アリール−スルホネート)一価界面活性剤、両性イオン性界面活性剤(例えば、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホネート、3−コールアミド−1−プロピルジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホネート、カチオン性界面活性剤(四級アンモニウム塩基)(例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム)、非イオン性界面活性剤(例えば、ドデシルβ−D−グルコピラノシド)、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドのエチレンジアミンへの逐次付加から誘導される四官能性ブロックコポリマーであるポロキサミン(例えば、Tetronic’s)から選択されるか、あるいは界面活性剤は、イミダゾリン誘導体、またはそれらの混合物の群から選択してもよい。これらの特定の界面活性剤のそれぞれは、本発明の代替実施形態を構成する。
【0182】
医薬組成物における界面活性剤の使用については、当業者に周知である。便宜的に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995に言及されている。
【0183】
他の成分が本発明のペプチド医薬製剤に存在することも可能である。そのようなさらなる成分として、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、充填剤、張度調整剤、キレート剤、金属イオン、油性ビヒクル、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチンまたはタンパク質)ならびに両イオン性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジンおよびヒスチジンのようなアミノ酸)を挙げることができる。そのようなさらなる成分は、当然ながら、本発明の医薬製剤の全体的な安定性に有害な影響を及ぼすべきではない。
【0184】
化合物の安定性をさらに増強する、バイオアベイラビリティを増加する、溶解度を増加する、有害作用を減少する、当業者に周知のクロノテラピーを達成する、および患者のコンプライアンスを増加する、またはそれらの任意の組み合わせのために、本発明の組成物を、例えば、共有結合性、疎水性および静電性の相互作用を介して、薬物キャリア、薬物送達システムおよび高度な薬物送達システムにさらに配合するか、または付着させてもよい。キャリア、薬物送達システムおよび高度な薬物送達システムの例として、ポリマー、例えば、セルロースおよび誘導体、多糖、例えば、デキストランおよび誘導体、デンプンおよび誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリレートおよびメタクリレートポリマー、ポリ乳酸およびポリグリコール酸ならびにそれらのブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、キャリアタンパク質、例えば、アルブミン、ゲル、例えば、熱ゲル化システム、例えば、当業者に周知のブロックコポリマーシステム、ミセル、リポソーム、マイクロスフェア、ナノ粒子、液晶およびその分散剤、脂質−水システムにおける相挙動の当業者に周知のL2相およびその分散剤、ポリマーミセル、多重エマルジョン、自己乳化、自己マイクロ乳化、シクロデキストリンおよびその誘導体、ならびにデンドリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
本発明の組成物は、制御放出(controlled−release)、持続放出(sustained−release)、遅延性放出(protracting−release)、遅延放出(retarded−release)、または緩徐性放出(slow−release)の薬物送達システムの処方において特に有用である。より具体的には、限定されないが、組成物は、当業者に周知の非経口制御放出および持続放出システム(両方のシステムとも、投与回数を何倍も減少させる)の処方において有用である。皮下に投与される制御放出および持続放出システムが、さらにより好ましい。本発明の範囲を限定するものではないが、有用な制御放出システムおよび組成物の例には、ヒドロゲル、油性のゲル、液晶、ポリマーミセル、マイクロスフェア、ナノ粒子がある。
【0186】
本発明の組成物に有用な制御放出システムを生成するための方法として、結晶化、縮合、共結晶化、沈殿、共沈殿、乳化、分散、高圧均質化、カプセル化、噴霧乾燥、マイクロカプセル化、コアセルベーション、相分離、マイクロスフェアを生成させるための溶媒エバポレーション、押し出し成形および超臨界流体プロセスが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、Handbook of Pharmaceutical Controlled Release (Wise, D. L., ed. Marcel Dekker, New York, 2000)およびDrug and the Pharmaceutical Sciences vol. 99: Protein Formulation and Delivery (MacNally, E. J., ed. Marcel Dekker, New York,2000)が参照される。
【0187】
それ故、本発明のGLP−1誘導体の注入可能な組成物は、所望される最終製品を付与するのに適切な成分を溶解および混合することに関与する製薬産業の従来技術を使用して、調製することができる。
【0188】
1つの手順に従えば、GLP−1誘導体は、調製しようとする組成物の最終容積より若干少ない量の水に溶解される。必要であれば、等張剤、保存剤および緩衝液を添加し、そして必要であれば、必要な酸、例えば、塩酸、または塩基、例えば、水酸化ナトリウム水溶液を使用して、溶液のpH値を調整する。最終的に、水で溶液の容量を調整して、所望される濃度の成分を得る。
【0189】
さらに、上記の成分に加えて、本発明に従うGLP−1誘導体を含有する溶液はまた、GLP−1誘導体の溶解度および/または安定性を改善するために、界面活性剤を含有してもよい。
【0190】
所定のペプチドの経鼻投与のための製剤は、例えば、European Patent No. 272097(Novo Nordisk A/S)またはWO 93/18785に記載のように調製してもよい。
【0191】
本発明の1つの好適な実施形態に従えば、GLP−1誘導体は、注入による投与に適切な組成物の形態で提供される。そのような組成物は、使用可能な注入用溶液であり得るか、またはそれは、それを注入し得る前に溶媒に溶解すべきある量の固体組成物、例えば、凍結乾燥された生成物であり得るかのいずれかである。注入用溶液は、好ましくは、約2mg/ml以上、好ましくは、約5mg/ml以上、より好適には、約10mg/ml以上のGLP−1誘導体、好ましくは、約100mg/ml以下のGLP−1誘導体を含有する。
【0192】
本発明の組成物の製剤は、当業者に公知の技術によって調製することができる。製剤は、上記のようなマイクロスフェア、リポソーム、マイクロカプセル、ナノ粒子などを含む薬学的に許容できるキャリアおよび賦形剤を含有してもよい。
【0193】
本発明に従う化合物を含有する医薬組成物は、そのような処置を必要とする患者に対して、いくらかの部位、例えば、局所部位、例えば、皮膚および粘膜部位、吸収をバイパスする部位、例えば、動脈、静脈、心臓における投与、ならびに吸収に関与する部位、例えば、皮内、皮下、筋肉または腹部における投与で投与してもよい。
【0194】
本発明に従う医薬組成物の投与は、いくらかの投与経路、例えば、舌、舌下、頬、口腔内、経口、胃および腸内、経鼻、肺、例えば、細気管支および肺胞またはそれらの組み合わせを介して、表皮、皮膚、経皮、膣、直腸、眼、例えば、結膜を介して、尿管、非経口的にそのような治療を必要とする患者に対して行われてもよい。
【0195】
本発明の組成物は、いくらかの剤形で、例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、多重エマルジョン、フォーム、膏薬、ペースト、プラスター、軟膏、錠剤、コーティング錠、リンス、カプセル、例えば、硬質ゼラチンカプセルおよび軟質ゼラチンカプセル、坐剤、直腸用カプセル、ドロップ、ゲル、スプレー、粉末、エアゾル、吸入剤、点眼剤、眼軟膏、眼用リンス、膣用ペッサリー、膣用リング、膣用軟膏、注射液、インサイチュで転換する溶液、例えば、インサイチュでのゲル化、インサイチュでの定着、インサイチュでの沈殿、インサイチュでの結晶化、輸液、ならびにインプラントとして投与してもよい。
【0196】
本発明の組成物は、例えば、定量吸入器、乾燥粉末吸入器およびネブライザー(すべて当業者に周知のデバイスである)を使用して、化合物の肺投与のための固体、半固体、粉末および溶液の処方に有用である。
【0197】
非経口投与は、シリンジ、場合により、ペン状のシリンジによる皮下、筋肉内、腹腔内または静脈内注入によって、実施してもよい。あるいは、非経口投与は、輸注ポンプによって実施することもできる。さらなる選択肢は、本発明に従う化合物を経鼻または肺スプレーの形態で投与するための溶液であってもまたは懸濁液であってもよい組成物である。なおさらなる選択肢として、本発明の化合物を含む医薬組成物はまた、例えば、無針注入による、またはパッチからの経皮投与、場合により、イオン導入パッチ、もしくは経粘膜、例えば、頬への投与に適応させることもできる。
【0198】
他の製剤も、経鼻および肺投与、例えば、吸入器およびエアゾルに適切な製剤である。
【0199】
活性化合物は、中性または塩形態として処方され得る。薬学的に許容できる塩として、(ペプチド化合物の遊離のアミノ基で形成される)酸付加塩、および例えば、塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸で形成される酸付加塩が挙げられる。遊離のカルボキシル基で形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機塩、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩から誘導してもよい。
【0200】
製剤は、投与処方に適合する様式で、かつ治療的に有効な量で投与される。投与しようとする量は、例えば、被験体の体重および年齢を含む治療しようとする被験体、治療しようとする疾患ならびに疾患の段階に依存する。適切な用量範囲は、1キロの体重あたり、通常、1回の投与あたり約数百μgの有効成分であり、好適な範囲は、1キロの体重あたり約0.1μg〜5000μgである。モノマー形態の化合物を使用すると、適切な用量は、しばしば、1キロの体重あたり0.1μg〜5000μgの範囲、例えば、1キロの体重あたり約0.1μg〜3000μgの範囲、特に、1キロの体重あたり約0.1μg〜1000μgの範囲である。マルチマー形態の化合物を使用すると、適切な用量は、しばしば、1キロの体重あたり0.1μg〜1000μgの範囲、例えば、1キロの体重あたり約0.1μg〜750μgの範囲、特に、1キロの体重あたり約0.1μg〜500μgの範囲、例えば、1キロの体重あたり約0.1μg〜250μgの範囲である。特に、経鼻的に投与する場合、他の経路によって投与する場合より少ない用量が使用される。投与は、1回実施してもよく、または続いて、その後の投与を行ってもよい。用量はまた、投与経路に依存し、そして治療しようとする被験体の年齢および重量によって変動する。モノマー形態の好適な用量は、70kgの体重あたり1mg間隔で70mgまでである。
【0201】
ほとんどの適応について、局所または実質的に局所適用が好適である。
【0202】
本発明の化合物のいくつかは、十分に活性であるが、他のもののいくつかについては、製剤が、薬学的に許容できる添加物および/またはキャリアをさらに含む場合、効果が増強される。そのような添加物およびキャリアは、当該分野において公知である。場合によって、上記のように、活性物質のその標的への送達を促進する化合物を含むことが有利である。
【0203】
多くの場合、製剤を複数回投与する必要がある。投与は、連続輸注、例えば、心室内もしくは脳室内輸注であってもよく、またはより多くの投薬での投与、例えば、1日により多くの回数を連日、1週間により多くの回数を毎週などであってもよい。医薬品の投与は、個体が細胞死をもたらし得る要因に供される前または直後に開始されるのが好ましい。好ましくは、医薬品は、要因の発生から8時間以内、例えば、要因の発生から5時間以内に投与される。化合物の多くは、長期間効果を示し、そのため、化合物の投与は、1週間または2週間のような長期の間隔で行ってもよい。
【0204】
神経ガイドにおける使用に関しては、投与は、連続的に行われてもよく、または活性化合物の制御放出に基づいて少しずつ行われてもよい。さらに加えて、前駆体を使用して、放出速度および/または放出部位を制御してもよい。他の種類のインプラント、および経口投与もまた、同様に、制御放出および/または前駆体の使用に基づき得る。
【0205】
上記で考察したように、本発明は、分化を誘導し、増殖を調節し、細胞の再生、神経可塑性および生存をインビトロまたはインビボで刺激するための個体の処置に関し、処置は、上記で定義した有効量の1つ以上の化合物を投与することを含む。
【0206】
投与のためのもう1つのストラテジーは、問題の化合物を発現および分泌することが可能な細胞をインプラントまたは注入することである。従って、化合物は、それが作用しようとする場所で産生され得る。
【0207】
治療
本発明の化合物は、神経変性疾患、ならびに認知障害を伴う病態を治療するのに特に有用であり、そして一実施形態では、本発明に従う治療は、分化を誘導し、増殖を調節し、細胞(例えば、インプラントまたは移植されている細胞)の再生、神経可塑性および生存を刺激するのに有用である。化合物は、下記の疾患および病態に有用であり、特に、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脳虚血、ならびにストレスの治療に有用である。
【0208】
さらなる実施形態では、治療は、多様な要因、例えば、外傷および損傷、急性疾患、慢性疾患および/または障害、特に、通常、細胞死をもたらす変性疾患、他の外的要因、例えば、医学的および/または外科的処置ならびに/あるいはフリーラジカルの形成を引き起こすか、またはそうでなければ、X線および化学療法のような細胞障害効果を有し得る診断方法による死滅の危険性にある細胞の生存の刺激に関し得る。化学療法に関して、本発明に従うペプチドは、癌治療に有用である。
【0209】
それ故、治療は、中枢および末梢神経系の疾患または病態、例えば、術後神経障害、例えば、脊髄損傷から生じる外傷性神経障害、神経繊維の髄鞘形成異常、例えば、脳卒中から生じる虚血後障害、多発梗塞性認知症、多発性硬化症、糖尿病に関連する神経変性、神経筋変性、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、もしくはハンチントン病に関する細胞死の治療および/または予防を含む。
【0210】
また、遺伝子もしくは外傷性萎縮性筋肉障害のような神経−筋肉接続の機能障害を伴う病態を含む筋肉の疾患または病態に関して;あるいは生殖腺、膵臓(例えば、I型およびII型糖尿病)、腎臓(例えば、ネフローゼ)の変性病態のような様々な器官の疾患または病態の治療について、本発明の化合物を、分化を誘導し、増殖を調節し、再生、神経可塑性および生存を刺激する(即ち、生存を刺激する)ために使用してもよい。
【0211】
さらに加えて、治療は、血管新生を誘導するために、急性心筋梗塞後のような心筋細胞の細胞死を予防するためのものであり得る。さらに加えて、一実施形態では、治療は、急性心筋梗塞後の生存のような心筋細胞の生存の刺激のためのものである。もう1つの態様では、治療は、損傷後のような血管再生のためのものである。
【0212】
創傷治癒の促進のためのペプチドの使用もまた、本発明の範囲内にある。本ペプチドは、血管新生を刺激することが可能であり、それによって、それらは、創傷治癒プロセスを促進することができる。
【0213】
本発明はさらに、癌の治療におけるペプチドの使用について開示している。受容体チロシンキナーゼの活性化の調節は、腫瘍の血管新生、増殖および拡散に重要である。
【0214】
なおさらなる実施形態では、FGFR活性は、神経細胞の分化に重要であるため、学習ならびに/あるいは短期および/または長期記憶の能力の刺激のために、ペプチドが使用される。
【0215】
なおもう1つの実施形態では、本発明に従う使用のためのペプチドは、アルコール消費による身体的損傷の治療のためのものである。胎児の発育奇形、長期神経行動学的変化、アルコール性肝疾患が特に考慮される。
【0216】
ペプチドの使用を含むプリオン疾患の治療的処置は、本発明のなおもう1つの実施形態である。
【0217】
特に、ペプチドの本発明に従う使用は、次の臨床状態の治療のためのものであってもよい、例えば、新生物、例えば、悪性新生物、良性新生物、非浸潤性癌および挙動が不明確な新生物、胸部、甲状腺、膵臓、脳、肺、腎臓、前立腺、肝臓、心臓、皮膚、血液器官、筋(肉腫)における癌、特定の受容体の不全および/または過剰発現もしくは過小発現、および/または変異型受容体の発現を伴うかあるいは限定されないがErb−受容体およびFGF−受容体のような可溶性受容体に関連する癌、IおよびII型糖尿病のような内分泌腺の疾患、下垂体腫瘍、精神病、例えば、老年期および初老期の器質性精神病症状、アルコール性精神病、薬物精神病、一過性器質性精神病、アルツハイマー病、脳類脂質沈着症、てんかん、進行麻痺[梅毒]、肝レンズ核変性症、ハンチントン舞踏病、ヤコブ−クロイツフェルト病、多発性硬化症、脳のピック病、結節性多発動脈炎、梅毒、統合失調症、感情病、神経症性障害、精神神経症を含む人格障害、器質性脳症候群に関連する非精神病性の人格障害、妄想性人格障害、狂信的人格、妄想性人格(障害)、妄想体質、性的倒錯および障害または機能不全(理由の如何によらず性欲減退を含む)、精神遅滞、視覚、聴覚、臭覚、感覚、味覚に影響を及ぼす神経系および感覚器の疾患、疾患後の認知異常、(例えば、外傷、外科的手順、および暴力後の)損傷、中枢神経系の炎症性疾患、例えば、髄膜炎、脳炎、脳変性、例えば、アルツハイマー病、ピック病、脳の老年性変性、老衰NOS、交通性水頭症、閉塞性水頭症、他の錐体外路疾患および異常運動障害を含むパーキンソン病、脊椎小脳疾患、小脳失調、マリー(Marie’s)、サンガー−ブラウン(Sanger−Brown)、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害、原発性小脳変性症、例えば、脊椎性筋萎縮、家族性、若年性、成人型脊椎性筋萎縮、運動神経疾患、筋萎縮性側索硬化症、運動神経疾患、進行性球麻痺、仮性球麻痺、原発性側索硬化症、他の前角細胞疾患、前角細胞疾患(詳細不明)、脊髄の他の疾患、脊髄空洞症および延髄空洞症、血管性ミエロパチー、脊髄の急性梗塞(塞栓性)(非塞栓性)、脊髄の動脈血栓症、脊髄の浮腫、脊髄出血、亜急性壊死ミエロパチー、他に分類される疾患における亜急性連合性脊髄変性症、ミエロパチー、薬物誘発、放射線誘発脊髄炎、自律神経系の障害、末梢自律神経系、交感神経、副交感神経系、または植物系の障害、家族性自律神経失調症[ライリー・デイ症候群]、特発性末梢自律神経性ニューロパチー、頸動脈洞性失神または症候群、頸部交感神経ジストロフィーまたは麻痺、他に分類される末梢自律神経性ニューロパチー、アミロイドーシス、末梢神経系の疾患、腕神経叢病変、頚肋症候群、肋骨鎖骨症候群、前斜角筋症候群、胸郭出口症候群、腕神経炎または神経根炎NOS(新生児におけるものを含む)。急性感染性多発性神経炎、ギラン−バレー症候群、感染後多発性神経炎、膠原病における多発性ニューロパチーを含む炎症性および毒性神経障害、眼の複数の構造に影響を及ぼす障害を含む眼球の障害、例えば、化膿性眼内炎、耳および乳様突起の疾患、慢性リウマチ性心臓疾患、虚血性心臓疾患、不整脈、肺系、呼吸器系、感知における疾患、例えば、オキシゲン(oxygene)、喘息、新生児における器官および軟組織の異常(神経系を含む)、分娩および出産時の麻酔剤または他の鎮静剤投与の合併症、感染を含む皮膚の疾患、不十分な循環の問題、熱傷および他の機械的および/または物理的損傷、術後を含む損傷、圧挫、火傷。神経の断裂、連続性の病変(開放創を伴うまたは伴わない)、外傷性神経腫(開放創を伴うまたは伴わない)、外傷性一過性麻痺(開放創を伴うまたは伴わない)、医学的手技過程での偶発的穿刺または裂傷を含む神経および脊髄への損傷、視神経および視覚経路への損傷、視神経損傷、第二脳神経、視交叉への損傷、視覚経路への損傷、視覚野への損傷、詳細不明の失明、他の脳神経への損傷、他のおよび詳細不明の神経への損傷、薬物、医薬および生物学的物質による中毒、遺伝性または外傷性萎縮性筋障害;あるいは様々な器官の次の疾患または病態の治療のためであってもよい、例えば、生殖腺、膵臓(例えば、I型およびII型糖尿病)、腎臓(例えば、ネフローゼ)の変性病態。スクレイピー、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−ストロイスラー−シャインカー(GSS)病;疼痛症候群、脳炎、薬物/アルコール乱用、不安、術後神経障害、周術期虚血、組織損傷を伴う炎症性障害(感染因子に影響を及ぼすかまたはもしくは組織を保護するかのいずれかによる)、HIV、肝炎、およびその後の症状、自己免疫障害、例えば、関節リウマチ、SLE、ALS、およびMS。抗炎症効果、喘息および他のアレルギー反応、急性心筋梗塞、および関連する他の障害またはAMIの後遺症、代謝異常、例えば、猥褻脂質異常(例えば、高コレステロール血症、動脈硬化症、アミノ酸輸送および代謝の異常、プリンおよびピリミジン代謝の異常ならびに痛風、骨の障害、例えば、骨折、骨粗鬆症、骨関節炎(OA)、アトピー性皮膚炎、乾癬、感染によって引き起こされる障害、インビボもしくはインビトロでの幹細胞の保護または成熟。
【0218】
なおさらなる実施形態では、医薬品は、性的動機付け、欲求または愉悦の刺激ような充足感を増加するために投与される。充足感は、身体的ならびに生理的であってもよい。
【0219】
抗体
本発明の目的は、NCAMから誘導される連続アミノ酸配列またはそのフラグメント、相同体もしくは変異体を含むエピトープに選択的に結合することが可能な抗体、その抗原結合フラグメントまたは組み換えタンパク質を提供することである。本発明は、配列番号1〜4に記載の任意の配列から選択されるNCAMから誘導される連続アミノ酸配列、または前記配列のフラグメントもしくは変異体を含むエピトープに選択的に結合することが可能な任意の抗体に関する。
【0220】
用語「エピトープ」とは、(その抗原の)抗体によって認識される(抗原分子上の)原子の特異的なグループを意味する。用語「エピトープ」は、用語「抗原決定基」の均等物である。エピトープは、連続アミノ酸配列内のように近接して位置するか、または抗原のアミノ酸配列の遠位部分に位置するが、タンパク質フォールディングにより互いに接近している3以上のアミノ酸残基、例えば、4、5、6、7、8アミノ酸残基を含み得る。
【0221】
抗体分子は、免疫グロブリンと呼ばれる血漿タンパク質のファミリーに属し、その基本構成要素である免疫グロブリンフォールドまたはドメインは、免疫系および他の生物学的認識系の多くの分子において様々な形態で使用される。典型的な免疫グロブリンは、可変領域として公知の抗原結合領域および定常領域として公知の非可変領域を含有する4つのポリペプチド鎖を有する。
【0222】
天然の抗体および免疫グロブリンは、通常、2つの同一な軽(L)鎖および2つの同一な重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結する一方、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。各重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔を置いて配置されたジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、1つの端部に可変ドメイン(V)を有し、その後に、多くの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端部に可変ドメイン(V)およびその他方の端部に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと並列し、そして軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと並列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖および重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられる(Novotny J, & Haber E. Proc Natl Acad Sci U S A. 82(14):4592-6, 1985)。
【0223】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンを異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、少なくとも5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、そしてこれらのうちのいくらかは、さらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3およびIgG−4;IgA−1およびIgA−2に分けることができる。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖の定常ドメインは、それぞれ、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と呼ばれる。抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる明確に異なる2つのタイプのうちの1つに割り当てることができる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元構造については周知である。
【0224】
抗体の可変ドメインに関する用語「可変」は、可変ドメインのある部分の配列が、抗体間で広範に異なるという事実を指す。可変ドメインは、結合するためのものであり、そしてその特定の抗原に対するそれぞれの特定の抗体の特異性を決定する。しかし、可変性は、抗体の可変ドメインを通して均一に分布していない。可変性は、軽鎖および重鎖可変ドメインの両方の超可変領域として公知である相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。
【0225】
可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、4つのFR領域を含み、その大部分は、3つのCDRに接続されたβシート配置をとっており、CDRは、βシート構造に接続するループを形成し、場合により、βシート構造の一部を形成する。各鎖中のCDRは、FR領域の直近でまとまっており、そして他の鎖由来のCDRと共に、抗体の抗原−結合部位の形成に寄与する。定常ドメインは、抗体の抗原への結合には直接関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与のような様々なエフェクター機能を示す。
【0226】
それ故、本発明での使用が考えられる抗体は、免疫グロブリン全体、抗体フラグメント、例えば、Fv、Fab、および同様のフラグメント、可変ドメイン相補性決定領域(CDR)を含む一本鎖抗体などの形態を含む多様な形態のいずれかであり得、これらはすべて、本明細書において使用する広義での用語「抗体」に当てはまる。本発明は、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)のあらゆる特異性を考慮しており、そして特異的抗原を認識および免疫反応する抗体に限定されない。以下に記載の治療およびスクリーニング方法に関して、好適な実施形態は、本発明の抗原またはエピトープに免疫特異的な抗体またはそのフラグメントの使用である。
【0227】
用語「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部、一般的に、抗原結合領域または可変領域を指す。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメントが挙げられる。抗体のパパイン消化により、Fabフラグメントと呼ばれる2つの同一な抗原結合フラグメント(それぞれ、単一の抗原結合部位を有する)および残りの「Fc」フラグメント(容易に結晶化する能力からそのように呼ばれる)が生成される。ペプシン処理では、抗原に架橋することが可能な2つの抗原結合フラグメントを有するF(ab’)フラグメント、および残りの他のフラグメント(pFc’と呼ばれる)が得られる。さらなるフラグメントとして、二重特異的抗体、線状抗体、一本鎖抗体分子、および抗体フラグメントから形成される多特異的抗体を挙げることができる。抗体に関して、本明細書において使用する「機能的フラグメント」は、Fv、F(ab)およびF(ab’)フラグメントを指す。
【0228】
用語「抗体フラグメント」は、本明細書において、用語「抗原結合フラグメント」と同義的に使用される。
【0229】
抗体フラグメントは、約4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、9アミノ酸、約12アミノ酸、約15アミノ酸、約17アミノ酸、約18アミノ酸、約20アミノ酸、約25アミノ酸、約30アミノ酸以上と同じ程度に小さくてもよい。一般に、本発明の抗体フラグメントは、配列番号1〜13として本明細書において同定される配列、または前記配列のフラグメントのいずれかから選択されるペプチド配列を含むエピトープに特異的に結合する抗体に関連する類似または免疫学的特性を有する限り、何らかのサイズの上限を有し得る。それ故、本発明に関して、用語「抗体フラグメント」は、用語「抗原結合フラグメント」と同一である。
【0230】
抗体フラグメントは、その抗原または受容体に選択的に結合するいくらかの能力を保持する。いくつかのタイプの抗体フラグメントが、以下のとおりに定義される:
(1)Fabは、抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含有するフラグメントである。Fabフラグメントは、酵素パパインで抗体全体を消化して、無傷の軽鎖および1つの重鎖の一部を生じさせることによって、生成することができる。
(2)Fab’は、抗体全体をペプシンで処理し、続いて還元して、無傷な軽鎖および重鎖の一部を得ることによって、得ることができる抗体分子のフラグメントである。1抗体分子あたり2つのFab’フラグメントが得られる。
【0231】
Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に数個の残基が付加されている点で、Fabフラグメントと異なる。
(3)(Fab’)は、その後の還元を伴わずに、抗体全体を酵素ペプシンで処理することによって、得ることができる抗体のフラグメントである。
(4)F(ab’)は、2つのジスルフィド結合によってまとめられた2つのFab’フラグメントのダイマーである。
【0232】
Fvは、完全な抗原認識および結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。この領域は、1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの緊密な非共有結合でのダイマー(V−Vダイマー)からなる。それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、V−Vダイマーの表面上の抗原結合部位を定義するのは、この配置においてである。合わせて、6つのCDRが、抗原結合特異性を抗体に付与する。しかし、なお単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なただ3つのCDRのみを含むFvの半分)は、抗原を認識および結合する能力を有するが、完全な結合部位より親和性が低い。
(5)遺伝子的に融合された一本鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含有する遺伝子操作された分子として定義された一本鎖抗体(「SCA」)。そのような一本鎖抗体はまた、「一本鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントとも称される。一般的に、Fvポリペプチドは、VおよびVドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、sFvが抗原結合に所望される構造を形成することを可能にしている。sFvのレビューについては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies 113: 269-315 Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, NY, 1994を参照のこと。
【0233】
用語「ダイアボディー」は、2つの抗原−結合部位を伴う小さな抗体フラグメントを指し、このフラグメントは、同じポリペプチド鎖(V−V)において軽鎖可変ドメイン(V)に接続された重鎖可変ドメイン(V)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成することが可能でないほど短いリンカーを使用することによって、ドメインを、別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、そして2つの抗原−結合部位を作製する。ダイアボディーについては、例えば、EP 404,097;WO 93/11161、およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)により詳細に記載されている。
【0234】
本発明はまた、少なくとも2つの結合ドメインを有する多価抗体も考慮している。結合ドメインは、同じリガンドに対して特異性を有してもよく、または異なるリガンドに対して特異性を有してもよい。一実施形態では、多特異的分子は、少なくとも2つの異なる結合ドメイン(それらのうち少なくとも1つは抗体由来である)を担持する二特異的抗体(BsAb)である。多価抗体は、多くの方法によって生成することができる。二価または多価抗体を調製するための様々な方法については、例えば、U.S. Pat. No. 5,260,203;5,455,030;4,881,175;5,132,405;5,091,513;5,476,786;5,013,653;5,258,498;および5,482,858に記載されている。
【0235】
本発明は、本発明に従うエピトープに結合することが可能なポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方、それらの抗原結合フラグメントおよび組み換えタンパク質を考慮している。
【0236】
ポリクローナル抗体の調製については、当業者に周知である。例えば、Green et al. 1992. Production of Polyclonal Antisera, in: Immunochemical Protocols (Manson, ed.), pages 1-5 (Humana Press);Coligan, et al., Production of Polyclonal Antisera in Rabbits, Rats Mice and Hamsters, in: Current Protocols in Immunology, section 2.4.1(参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0237】
同様に、モノクローナル抗体の調製も慣習的である。例えば、Kohler & Milstein, Nature, 256:495-7 (1975); Coligan, et al., sections 2.5.1-2.6.7;およびHarlow, et al., in: Antibodies: A Laboratory Manual, page 726 ,Cold Spring Harbor Pub. (1988), Monoclonal antibodies can be isolated and purified from hybridoma cultures by a variety of well-established techniquesを参照のこと。そのような単離技術として、プロテインAセファロースによるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan, et al., sections 2.7.1-2.7.12 and sections 2.9.1-2.9.3; Barnes, et al., Purification of Immunoglobulin G (IgG). In: Methods in Molecular Biology, 1992, 10:79-104, Humana Press, NYを参照のこと。
【0238】
モノクローナル抗体のインビトロおよびインビボでの操作方法については、当業者に周知である。例えば、本発明に従って使用すべきモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, 1975, Nature 256, 495-7によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作製してもよく、または例えば、US 4,816,567に記載の組み換え方法によって作製してもよい。本発明に使用されるモノクローナル抗体はまた、Clackson et al., 1991, Nature 352: 624-628、およびin Marks et al., 1991, J Mol Biol 222: 581-597に記載の技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。もう1つの方法は、組み換え手段によりモノクローナル抗体をヒト化して、ヒト特異的および認識可能配列を含有する抗体を作製することに関与する。レビューについては、Holmes, et al., 1997, J Immunol 158:2192-2201およびVaswani, et al., 1998, Annals Allergy, Asthma & Immunol 81:105-115を参照のこと。
【0239】
本明細書に記載の用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、集団を含む個々の抗体は、少量存在し得る天然に存在する可能な変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して指向されている。さらに加えて、典型的に、異なる決定基(エピトープ)に対して指向される、異なる抗体を含む従来のポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらがハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンが混入しない点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体の特徴を示すものであって、そして任意の特定の方法による抗体の産生を要すると解釈すべきではない。
【0240】
本明細書におけるモノクローナル抗体として、具体的には、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)(ここで、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種から誘導されるかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に同一もしくは相同である一方、鎖の残りの部分は、別の種から誘導されるかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に同一もしくは相同である)、ならびに(それらが所望される生物活性を示す限り)そのような抗体のフラグメントが挙げられる(US 4,816,567);Morrison et al., 1984, Proc Natl Acad Sci 81: 6851-6855。
【0241】
抗体フラグメントを作製する方法についてもまた、当該分野において公知である(例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, NY, 1988(参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。本発明の抗体フラグメントは、抗体のタンパク質加水分解またはフラグメントをコードする大腸菌(E.coli)DNAの発現によって調製することができる。抗体フラグメントは、抗体全体をペプシンまたはパパインで消化する従来の方法によって得ることができる。例えば、抗体フラグメントは、抗体をペプシンで酵素切断して、F(ab’)と示される5Sフラグメントを提供することによって生成することができる。チオール還元剤、および場合により、ジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基のブロック基を使用して、このフラグメントをさらに切断し、一価の3.5S Fab’フラグメントを生成することができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素切断により、2つの一価のFab’フラグメントおよびFcフラグメントを直接生成する。これらの方法については、例えば、US 4,036,945およびUS 4,331,647、ならびに本明細書に含まれている参考文献に記載されている。これらの特許は、それらの全体が参照により援用されている。
【0242】
抗体を切断して、例えば、重鎖を分離して、一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成し、フラグメントをさらに切断する他の方法、または他の酵素的、化学的、もしくは遺伝学的技術もまた、フラグメントが、無傷の抗体によって認識される抗原に結合する限り、使用することができる。例えば、Fvフラグメントは、VおよびV鎖の会合を含む。この会合は、一価であってもよく、または可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結され得るか、またはグルタルアルデヒドのような化学物質によって架橋され得る。好ましくは、Fvフラグメントは、ペプチドリンカーによって接続されたVおよびV鎖を含む。これらの一本鎖の抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって接続されたVおよびVドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって、調製される。構造遺伝子は、発現ベクターに挿入され、続いて、大腸菌(E.coli)のような宿主細胞に導入される。組み換え宿主細胞は、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一のポリペプチド鎖を合成する。sFvを生成する方法については、例えば、Whitlow, et al., 1991, In: Methods: A Companion to Methods in Enzymology, 2:97;Bird et al., 1988, Science 242:423-426; US 4,946,778;およびPack, et al., 1993, BioTechnology 11:1271-77に記載されている。
【0243】
抗体フラグメントのもう1つの形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)は、しばしば、抗原認識および結合に関与する。CDRペプチドは、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子をクローニングまたは構築することによって、得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって、調製される。例えば、Larrick, et al., Methods: a Companion to Methods in Enzymology, Vol. 2, page 106 (1991)を参照のこと。
【0244】
本発明は、ヒト抗体および非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態を考慮している。そのようなヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンから誘導される最小配列、例えば、エピトープ認識部位を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)もしくは抗体の他の抗原結合配列)である。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望される特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラットまたはウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。本発明の抗体の最小配列、例えば、本明細書に記載のエピトープを認識する配列を含有するヒト化抗体は、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0245】
場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはインポートされたCDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改質し、最適化するために作製される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、および典型的に2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、そしてFR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれらである。ヒト化抗体はまた、場合により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分、典型的に、ヒト免疫グロブリンの部分を含む。さらなる詳細については、Jones et al., 1986, Nature 321, 522-525;Reichmann et al., 1988, Nature 332, 323-329;Presta, 1992, Curr Op Struct Biol 2:593-596;Holmes et al., 1997, J Immunol 158:2192-2201およびVaswani, et al., 1998, Annals Allergy, Asthma & Immunol 81:105-115を参照のこと。
【0246】
抗体の作製は、配列番号1〜4として同定される配列のいずれかから選択される配列の天然または組み換えフラグメントを抗原として使用して、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を産生させるための当該分野における任意の標準的な方法によって達成してもよい。そのような抗体はまた、配列番号1〜4の変異体またはフラグメントを使用して作製してもよい。
【0247】
抗体はまた、例えば、本発明に従う免疫原性フラグメントを、前記個体を投与することによって、治療しようとする個体からインビボで産生させてもよい。従って、本発明は、さらに、上記の免疫原性フラグメントを含むワクチンに関する。
【0248】
本出願はまた、本発明の抗体を産生させるための方法に関し、前記方法は、上記の免疫原性フラグメントを提供する工程を含む。
【0249】
本発明は、NCAMの生物学的機能、特に、神経細胞の増殖および生存に関する機能を調節する、例えば、増強または減弱することが可能な抗体、ならびにその生物活性を調節することなく、NCAMを認識し、そして特異的に結合することができる抗体の両方に関する。
【0250】
本発明は、NCAMの活性の調節に関与する治療用途のための上記抗体の使用に関する。
【0251】
一態様において、本発明は、上記の抗体を含む医薬組成物の使用に関する。
【実施例】
【0252】
1.Trex293細胞におけるFGFR1cの活性化に対するFGLの効果
本研究では、ヒトFGFR1cを過剰発現するTrex293細胞におけるFGFR1cリン酸化に対するFGLの効果について調べた。本研究の結果は、FGLが、FGFR1cの有意なリン酸化を誘導することを示す。用量応答曲線は、1〜25μg/mlの濃度範囲で有意な活性を有する釣鐘型である(図1)。
【0253】
FGLは、その標的、FGFRの活性化(リン酸化)を誘導する。そのような活性化の用量応答は、インビトロで研究した活性のように、増殖因子によって予想されるように釣鐘型である。高濃度のリガンドにおいて認められる効果の減少は、しばしば、過剰なリガンドによる利用可能な受容体の飽和、および結合型受容体の内在化の組み合わせによる細胞膜上での受容体の利用可能性の減少に関連する。
【0254】
2.ラット小脳ニューロンの神経突起伸長に対するFGLの効果のインビトロ研究
本研究では、インビトロで培養したラット初代解離小脳顆粒細胞(CGC)の神経突起伸長に対するFGLの効果について調べた。結果は、FGLは、CGCからの神経突起伸長を促進した(図2)が、濃度範囲5〜25μg/mlで活性を有し、これは、FGFR活性化を誘導する濃度範囲に良好に対応することを示す(図2を参照のこと)。
【0255】
FGLは、出生後早期のラットから得られる小脳顆粒ニューロンに対して神経突起生成効果を有し、FGLがニューロンの分化を促進することを示唆する。効力は、標的(FGFR)活性化の濃度範囲に対応する濃度範囲にわたって見出され、そして同じ釣鐘型の用量応答に従う。
【0256】
3.社会認識試験を使用する社会的記憶に対するFGL、VEB1、およびFGLペプチドの皮下投与の効果の無作為化単盲検プラセボ対照研究
無傷な成熟ラットの社会的記憶の増強について、皮下投与したFGLの活性を、3つの実験において試験した。両方の研究において、試験系は、短期記憶に対して活性な化合物の評価について信頼し得る試験である社会認識試験(SRT)であった(Dantzer et al., 1987)。本発明者らの研究では、本発明者らは、SRTのプロトコルを使用し、ここで、幼若ラットを、試験ラットに2回示し、2回の試験の間に2時間の試行間間隔(ITI)を置いた。この試行間間隔は、このITIで正常ラットが有意な社会的記憶を示さない社会認識記憶の動力学に関する先の試験(Secher et al., 2006)に基づいて選択した。第1の研究では、ラットに、FGLの単回の皮下投薬(8.0mg/kg)を行い、そして投与後1時間および73時間後に試験した。FGLの効果を増強する有意な記憶が投与の1時間後に検出された一方、有意の傾向(p=0.06)が投与の73時間後に認められた(図3)。
【0257】
第2の研究では、ラットに、1.0、2.0、4.0または8.0mg/kgのFGLの単回の皮下投薬を行い、そして投与後1時間および24時間後に試験した。2.0、4.0、および8.0mg/kgのFGLの有意な記憶増強効果が、投与の1時間後に検出された一方、4.0および8.0mg/kgのFGLの有意な記憶増強効果が、投与の24時間後に認められた(図4)。
【0258】
第3の研究では、FGLの皮下投与の用量応答効果(0.25、0.80、2.50および8.0mg/kg)を試験した。同時にまた、FGLおよびVEB1、FGLのもう1つの切断型について試験した。ペプチドを、2回、第1のSRTの24および5時間前に投与し、そしてラットを、最後の投与の5時間および77時間後に試験した。投与の5時間後、FGLの最小有効用量は0.80mg/kgであり、FGLでは2.50mg/kgであった一方、VEB1では、8.0mg/kgであった(図4A)。投与の77時間後、社会的記憶の増強におけるFGLおよびFGLの両方の効果は、2.50mg/kgでなお有意であり、FGLもまた、8.0mg/kgで有効であった。VEB1投与は、長期持続性社会的記憶増強効果を生じなかった(図5B)。
【0259】
11アミノ酸形態のFGLは、完全長FGLに類似の記憶向性(mnemotropic)を有する。FGL皮下投与は、投与後少なくとも72時間持続する記憶向性(mnemotropic)効果を伴う短期社会的記憶を増強する。無傷のラットのSRTにおけるFGLの最小有効量は、0.8mg/kgであり、そしてFGLでは、2.5mg/kgであり、FGLと比較して、より可能性のFGLの方が、バイオアベイラビリティが高いことが示唆された。
【0260】
4.モリス水迷路を使用して評価した空間学習に対するFGLの皮下投与の効果の研究
本研究の目的は、試験系としてモリス水経路を使用して、FGLの皮下投与が成熟雌性Wistarラットの空間学習を調節するかどうかを調べることであった。
【0261】
MWM試験では、ラットを、水面下に隠れた避難場所のプラットフォームの位置を学習および記憶する課題について評価する。本研究では、学習を測定するために試験の設定を最適化した。MWMの訓練開始の5、3および1日前に、単回投薬として、ラットに2.5mg/kgのFGLまたはビヒクルを皮下投与した。FGLで処置したラットは、ビヒクル処置ラットより有意に速く学習し、FGL投与が空間学習を容易にすることが示された(図6)。
【0262】
FGLの皮下投与は、モリス水迷路における学習を有意に容易にし、運動学習の化合物依存的増強が示された。皮下投与後の効力が6.6mg/kgで検出された場合、これらの結果は、FGLの皮下投与で得られた結果に匹敵する。
【0263】
5.スコポラミン処置により誘導される認知障害に対するFGLの皮下投与の効果の無作為化プラセボ対照研究
成熟ラットにおけるスコポラミン誘導性社会的健忘症モデル(Van Kampen et al., 2004)での効力について、FGLを試験した。同時にまた、FGLおよびVEB1、FGLのもう1つの切断型について試験した。19時間間隔で、ラットの皮下に、ペプチド(8mg/kg)またはビヒクルの2回連続投薬を行った。ビヒクル処置ラットに、同じ容積のビヒクル(滅菌水)を投与した。ペプチドの2回目の投与の5時間後およびスコポラミン(0.01mg/kg皮下)の投与の30分後に、試験を開始した。
【0264】
SRTにおいて試験した場合、それらのRRは、0.5の理論値と有意に異ならなかったため、スコポラミンで処置したラットは、社会的健忘症を示した。FGLまたはFGLを投与したスコポラミン処置ラットは、0.5の理論値と有意に異なるRRを有し(p<0.05)、処置が、スコポラミンによって誘導された社会的記憶障害を緩和したことが示唆された。VEB1投与は、有意な効果を生じなかった(図7A)。
【0265】
統計解析により、スコポラミンおよびビヒクルで処置したラット対スコポラミンおよびFGLまたはFGLのいずれか一方で処置したラットの1回目の比較において累積検査時間の有意差(両方のペプチドでp<0.05)が検出され、新規の幼若動物に初めて暴露した場合、ペプチド処置は、スコポラミン処置ラットの調査対象の活性を増加したことが示唆された。対照的に、スコポラミン処置グループのいずれかの間での2回目の比較では、累積検査時間の有意差は認められなかった。VEB1投与は、有意な効果を生じなかった(図7B)。
【0266】
スコポラミン0.01mg/kgによる処置は、社会的健忘症(認識率の統計解析によって判定される)および調査対象の活性の有意な減少(T1の比較によって判定される)の両方を誘導した。FGLおよびFGLの両方で処置すると、両方のパラメータが改善された。
【0267】
6.(25−35)β−アミロイドフラグメントによるラットの処置後の認知障害および神経病理学に対するFGLの皮下投与の効果の無作為化プラセボ対照研究
(25−35)β−アミロイド誘導性神経毒性のラットモデル(Delobette et al., 1997;Maurice et al., 1996)では、(25−35)凝集β−アミロイド神経毒が脳室内に注入され、短期記憶の進行性悪化(30分間の試行間間隔(ITI)を伴う社会認識試験(SRT)を使用して明確に検出可能(Kogan et al., 2000)、ならびにアミロイド負荷の増加、タウリン酸化およびミクログリアおよびマクログリア活性化、ならびにニューロン消失によって特徴付けられる皮質および海馬における神経変性(Klementiev et al., 2007)がもたらされる。
【0268】
本研究では、3.2、0.8、0.2mg/kgのFGLまたは滅菌PBSを、連日、皮下注入により投与した。凝集型の(25−35)β−アミロイドペプチドフラグメントのi.c.v.投与後7日目に、投与を開始し、そしてラットを屠殺した28日目まで継続した。
【0269】
β−アミロイドフラグメントのi.c.v.投与の21〜22日後、SRTを使用して、社会的記憶の成績を評価した。短期記憶の統計的に有意な損傷を、(25−35)β−アミロイドフラグメント+ビヒクル、または+コントロールペプチドを投与したラットにおける(25−35)β−アミロイド神経毒性の結果として観察した。0.8mg/kgの用量でFGLを皮下に注入したラットは、プラセボ処置ラットと比較して、短期記憶欠損の有意な減少を示した(図8A)。
【0270】
神経病理学調査の結果((25−35)β−アミロイド注入の28日後、表1を参照のこと)は、β−アミロイド注入により、ニューロンの立体解析学的計数、ならびに損傷項目の増加によって決定されるように、帯状皮質(図8BおよびC)、ならびに海馬(CA3領域)におけるニューロンの有意な消失およびニューロン損傷が誘導されたことを示した。FGLの有意な神経保護効果が、両方の領域において検出された。神経保護についてFGLの最小有効量は、海馬では0.8mg/kgおよび帯状皮質では0.2mg/kgであった。β−アミロイド注入は、β−アミロイド負荷の増加を引き起こし、そしてペプチド処置は、この病状の改善を引き起こしたが、しかし、動物間の変動性が大きいため、両方の効果は、有意性に達しなかった(図8D)。
【0271】
【表1】


RR値対仮定値0.50の比較を、1標本t検定を使用して行った。
シャム処置動物(滅菌水のi.c.v.注入を投与し、そして皮下薬物ビヒクルを投与したラット)と皮下薬物ビヒクルを投与したβ−アミロイド処置ラットとの間の差異を、対応のないt検定によって解析した。
皮下薬物ビヒクルを投与したβ−アミロイド処置ラットと異なる用量のFGLで処置したβ−アミロイド処置ラットとの間の差異を、One Way ANOVA、続いて、Newman−Keulsポストホック検定によって解析した。
【0272】
本研究の結果は、β−アミロイド神経毒性によって引き起こされる社会認識記憶欠損の改善における皮下投与後のFGLの効力を示し、最小有効量は0.8mg/kgである。神経保護では、最小有効量は0.2mg/kgであった。
【0273】
7.(25−35)β−アミロイドフラグメントによる処置後の認知障害に対するFGLの鼻腔内投与の用量応答効果の無作為化プラセボ対照研究
本研究では、ラットにおける(25−35)β−アミロイドペプチドフラグメント誘導性認知障害モデルを使用して、β−アミロイドペプチドi.c.v.注入後7日目〜21日目の15回投薬について、鼻腔内に連日投与したFGLの用量応答(0.08、0.32または1.28mg/kg)効果について調べた。β−アミロイド注入の22日後、SRTを使用して、社会的記憶の成績を評価した。短期記憶の統計的に有意な損傷を、(25−35)β−アミロイドフラグメント+ビヒクルを投与したラットにおける(25−35)β−アミロイド神経毒性の結果として観察した。1.28mg/kgのFGLを鼻腔内に処置したβ−アミロイド注入ラットは、ビヒクル処置ラットと比較して、それらの社会的記憶の成績の欠損の有意(p<0.01)な改善を示した(図9)。
【0274】
社会認識試験の成績の改善によって反映されるように、(FGLとしての)FGL鼻腔内投与は、短期記憶損傷を有意に改善した。本投与プロトコルによる最小有効量(7〜21日目の15連日投薬および最後の投与24時間後の試験)は、1.28mg/kgであった。
【0275】
最後の投与の30分間および60分間後に、血漿のサンプルを得た。血漿中FGL濃度の時間経過について研究した。ペプチド投与後の血漿中FGFsの濃度を、図10において見ることができる。
【0276】
8.水に希釈したFGFおよびFGFsの目視での外観
FGFおよびFGFsを、目視検査のために、100mg/mlの濃度で水に希釈した(図11)。FGL溶液は混濁した硬質ゲルになったが、FGFs溶液は澄明なままであった。別の実験では、5mgのFGLおよびFGLを、それぞれ、1ml水またはPBSに、室温で希釈した。FGLおよびFGLの水およびPBS溶液の光学顕微鏡画像を、図12において見ることができる。図13は、FGF溶液とFGL溶液との間の強度の差異を示す水中100mg/mlのFGFおよびFGLの90°光散乱スペクトルである。
【0277】
9.i.vおよびs.c投与後の血漿中FGL濃度
静脈内および皮下投与後の無傷なラットにおける血漿中FGL濃度の時間経過について研究した。1.25mg/kgのFGLの単回投薬を、静脈内注入により、または2.5mg/kgを皮下注入により投与した。FGL投与後の異なる時点において、血液サンプルを回収した。ELISAアッセイおよびポリクローナルウサギ抗FGL抗体を使用して、FGLの濃度を測定した。ペプチド投与後の血漿中FGFsの濃度を、図14において見ることができる。
【0278】
10.本発明に従う化合物の調製
以下の配列を含む化合物を、以下に記載の方法に従って生成した:
ペプチド配列:
VAENQQGKSKA
EVVAENQQGKSKA
NVVAENQQGKSKA
NSVAENQQGKSKA
【0279】
以下の構造式の化合物の生成によって例示される:
【化19】

【0280】
それは、2つの同一な11アミノ酸ペプチドからなり、リンカー分子を介してダイマーを形成する。
【0281】
固相合成
ペプチド鎖は、標準的なFmoc−固相法によって合成される。固相合成を、第1の(C末端)アミノ酸が結合されたRinkアミドリンカーを有するTentagel樹脂上で実施する。アミノ酸が、Fmoc基の脱離と交互に、1回で1つのアミノ酸に結合する。使用するアミノ酸誘導体は、(以下の順で):
Fmoc−Ala−OH
Fmoc−Lys(Boc)−OH
Fmoc−Ser(tBu)−OH
Fmoc−Lys(Boc)−OH
Fmoc−Gly−OH
Fmoc−Gln(Trt)−OH
Fmoc−Gln(Trt)−OH
Fmoc−Asn(Trt)−OH
Fmoc−Glu(OtBu)−OH
Fmoc−Ala−OH
Fmoc−Val−OH
である。
【0282】
Fmoc−アミノ酸を、TBTU/HOBtによって、DMF中で予め活性化し、次いで、伸長中のペプチド−樹脂に結合させる。Fmoc−基の脱離のために、DMF中ピペリジンを使用する。固相合成の終了時、ペプチド樹脂は以下のとおりである:
Val−Ala−Glu(OtBu)−Asn(Trt)−Gln(Trt)−Gln(Trt)−Gly−Lys(Boc)−Ser(tBu)−Lys(Boc)−Ala−R
【0283】
ダイマー形成
ピペリジン/DMFによるFmoc基の脱離後、NMP中TBTU/HOBtを使用して、Boc−イミノジ酢酸を樹脂上のペプチドに結合させることによって、ダイマーを作製する。副反応を抑制するために、複数のカップリングを、限定成分としてのBoc−イミノジ酢酸によって実施する。
【0284】
切断
ペプチドを、樹脂から同時に切断し、そしてスカベンジャーとしての水でTFA中側鎖上で脱保護を行い、ペプチドアミドを得る:
【化20】

【0285】
ペプチドを、2つのクロマトグラフィー工程で精製し、イオン交換して、TFA−イオンを取り出し、そして最終的に、凍結乾燥によって単離する。
【化21】

【0286】
FGLの精製において使用される出発物質、試薬および溶媒
酢酸
無水酢酸
O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)
Bocイミノジ酢酸
ジメチルホルムアミド
エタノール、99.9%
酢酸エチル
N−エチル−ジイソプロピルアミン
Fmoc−Ala−OH
Fmoc−Asn(Trt)−OH
Fmoc−Gln(Trt)−OH
Fmoc−Glu(OtBu)−OH
Fmoc−Gly−OH
Fmoc−Lys(Boc)−OH
Fmoc−Ser(tBu)−OH
Fmoc−Val−OH
HCl
1−ヒドロキシベンドトリアゾール
イソプロパノール
N−メチルピロリドン
NaOH
NHAc
ピペリジン
Tentagel SRAM樹脂
トルエン
トリフルオロ酢酸
【0287】
略称
アミノ酸の略称は、IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature Eur. J. Biochem, 1984, vol. 184, pp 9-37の推奨に従う。
【0288】
他の略称は以下のとおりである:
AA アミノ酸
AcOH 酢酸
Boc N−tert−ブチルオキシカルボニル
DIPEA N−エチル−ジイソプロピルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
EtOH エタノール、99.9%
Fmoc 9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
Ida イミノジ酢酸
NMP N−メチルピロリドン
R アミド−TG−樹脂
tBu tert−ブチル
TFA トリフルオロ酢酸
TBTU O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート
【0289】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Z−L[式中、
Zは、配列QQGKSKAを含む個別に選択されたペプチドであり、
Lは、親油性置換基、リンカー(場合により置換されていてもよい)、およびスペーサー(場合により置換されていてもよい)からなる群から個々に選択され、
nは、1〜6の個々に選択された整数であり、
mは、0〜6の個々に選択された整数であり、
qは、1〜4の個々に選択された整数であり、
但し、mが0であり、そしてqが1である場合、zは多くて13連続アミノ酸残基である]を含む化合物、
またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
少なくとも1つのLはリンカーである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
少なくとも1つのLは、β−アラニン、γ−アミノ酪酸(GABA)、γ−グルタミン酸、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸を含有するジペプチド、グルタミン酸を含有するジペプチド、またはリジンもしくはγ−グルタミン酸を含有するジペプチドからなる群から選択されるスペーサーである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
スペーサーはβ−アラニンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
スペーサーはγ−アミノ酪酸(GABA)である、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
スペーサーはγ−グルタミン酸である、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
少なくとも1つのLは親油性置換基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
親油性置換基は、部分的または完全に水素化されたシクロペンタノフェナントレン骨格を含む、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
親油性置換基は、直鎖または分岐アルキル基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
親油性置換基は、直鎖または分岐脂肪酸のアシル基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
NCAMのフィブロネクチン3型IIモジュールから誘導される多くて13連続アミノ酸残基、またはその変異体もしくはフラグメントを含むペプチドを含む化合物。
【請求項12】
前記ペプチドは、FGFRと相互作用する、例えば、FGFRに結合することが可能である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記ペプチドは、FGFRシグナリングを調節することが可能である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記ペプチドは、FGFRシグナリングを刺激することが可能である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記ペプチドは、FGFRシグナリングを阻害することが可能である、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
前記ペプチドは、配列QQGKSKAを含む、例えば、以下の配列のうちの1つ
VAENQQGKSKA(配列番号1)
EVVAENQQGKSKA(配列番号2)
NVVAENQQGKSKA(配列番号3)
NSVAENQQGKSKA(配列番号4)、またはそのフラグメントもしくは変異体
を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
前記ペプチドは、神経突起伸長を刺激することが可能である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
前記ペプチドは、細胞生存を刺激することが可能である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
前記ペプチドは、シナプス可塑性を刺激することが可能である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
前記ペプチドは、学習および/または記憶を刺激することが可能である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
化合物は、ペプチドの単一コピーからなるモノマーとして処方される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
化合物は、ペプチドの2つの同一のコピーを含むダイマーとして処方されるか、または3つの同一のコピーを含むトリマーとして処方される、請求項11〜20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
化合物は、2つの異なるペプチド配列を含むダイマーとしてかまたは少なくとも2つの異なるコピーを含むトリマーとして処方される、請求項11〜20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
化合物は、ペプチドの4つ以上の同一コピーを含むデンドリマーとして処方される、請求項11〜20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載の少なくとも1つの化合物を含む、医薬組成物。
【請求項26】
医薬品の製造のための、請求項1〜24のいずれか一項に記載の化合物または請求項25に記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
医薬品は、疾患または病態の治療のためのものであり、ここで、FGFRシグナリングの調節が必須である、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
医薬品は、中枢もしくは末梢神経系の疾患または病態の治療のためのものである、請求項26に記載の使用。
【請求項29】
医薬品は、疾患または病態の治療のためのものであり、ここで、神経細胞分化、神経細胞生存、神経発生、幹細胞増殖、幹細胞分化、ならびに/あるいは学習および記憶の刺激は、前記疾患または病態からの回復に有益である、請求項26に記載の使用。
【請求項30】
医薬品は、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、術後神経障害、外傷性神経障害、神経線維の髄鞘形成異常、虚血後障害、多発梗塞性認知症、多発性硬化症、糖尿病に伴う神経変性、神経筋変性、統合失調症、気分障害、躁うつ病の治療のためのものである、請求項26に記載の使用。
【請求項31】
医薬品は、神経−筋接続部の機能異常に伴う病態を含む筋肉の疾患または病態の治療のためのものか、あるいは生殖腺、膵臓もしくは腎臓の疾患または変性病態の治療のためのものである、請求項26に記載の使用。
【請求項32】
医薬品は、心筋細胞の細胞死を予防するためのものである、請求項26に記載の使用。
【請求項33】
医薬品は、血管再生を刺激するためのものである、請求項26に記載の使用。
【請求項34】
医薬品は、創傷治癒の促進のためのものである、請求項26に記載の使用。
【請求項35】
医薬品は、血管新生を阻害するためのものである、請求項26に記載の使用。
【請求項36】
医薬品は、癌の治療のためのものである、請求項26に記載の使用。
【請求項37】
医薬品は、学習する能力ならびに/あるいは短期および/または長期記憶の刺激のためのものである、請求項26に記載の使用。
【請求項38】
医薬品は、細胞の増殖および/または分化および/または再生および/または形態学的可塑性を調節するためのものである、請求項26に記載の使用。
【請求項39】
医薬品は、性的動機付け、欲求または愉悦の刺激のような充足感を増加するためのものである、請求項26に記載の使用。
【請求項40】
請求項16〜39のいずれか一項に記載の医薬品を含む医薬組成物。
【請求項41】
抗体の産生のための請求項1〜20のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項42】
アミノ酸配列の配列番号1〜4の少なくとも1つを含むエピトープに結合することが可能な抗体。
【請求項43】
前記抗体は、NCAMおよび/またはFGFRによって仲介される生物活性を調節することが可能である、請求項42に記載の抗体。
【請求項44】
請求項28〜39に記載の病態の治療のための医薬品の製造のための請求項42〜43に記載の抗体の使用。
【請求項45】
請求項42〜44のいずれか一項に記載の抗体を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−504888(P2011−504888A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535218(P2010−535218)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/DK2008/050282
【国際公開番号】WO2009/068042
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(503214070)エンカム ファーマシューティカルズ アクティーゼルスカブ (8)
【出願人】(506354755)ユニバーシティ オブ コペンハーゲン (5)
【Fターム(参考)】