説明

NOX浄化用触媒および触媒装置

【課題】卑金属担持NO浄化用触媒、および高効率でNO浄化し得るNO浄化触媒装置を提供する。
【解決手段】Cu又はNiを活性種とするNO浄化用触媒であって、担体粒子に担持されたCu又はNiあるいはいずれかの酸化物からなるナノ粒子の粒子径が1.2nm以上であって担持量(質量%)とナノ粒子の粒子径(nm)との比が0.125以上である、前記触媒、および前記触媒が内燃機関の排ガス流路に設けられ、排ガスを定常的にA/Fが、Cuを活性種とする場合は≦14.4の雰囲気に、Niを活性種とする場合はA/F≦14.2の雰囲気に制御する触媒装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物(以下、NOと略記することもある。)浄化用触媒および触媒装置に関し、さらに詳しくは特定の卑金属を用いることにより高いNO浄化性能活性を示しえるNO浄化用触媒および該触媒を用いることによって貴金属触媒と比較し同等以上にNO浄化し得る触媒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、排気ガス規制が世界的に年々強化されている。この対応策として、内燃機関においては排気ガス浄化用触媒が用いられている。この排気ガス浄化触媒において、排ガス中のHC、COおよびNOを効率的に除去するために、触媒成分としてPt、Au、Rh等の貴金属が用いられている。しかし、これらの貴金属はいずれも産出国が特定の国に限定されしかも資源枯渇の問題を抱えている。
この排気ガス浄化用触媒の金属として貴金属以外の卑金属を用いる検討もなされているが、卑金属担持浄化用触媒は、排ガス浄化性能活性、特にNO浄化性能活性が貴金属を用いた貴金属担持浄化用触媒に比べて低く、実用化に至っていない。
【0003】
一方、この浄化用触媒を用いた自動車、例えばガソリン車あるいはディーゼル車では触媒の浄化性能活性とともに燃費の向上を図るために種々のシステムが用いられている。例えば、ガソリン車の場合は定常運転中では空燃比(A/F)がストイキ(理論空燃比、A/F=14.6)の条件で燃焼させていて、ディーゼル車の場合は定常運転中では空燃比(A/F)がリーン(Lean)(酸素過剰)の条件で燃焼させ、触媒活性を向上させるために一時的にストイキ(理論空燃比、A/F=14.6)〜リッチ(Rich)(燃料過剰)の条件で燃焼させている。
このように、貴金属を用いるNO浄化用触媒および該触媒を用いる触媒装置においては、処理される排ガスについて適した排ガス条件が存在することが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、排気ガスを活性金属含有NO触媒で処理するディ−ゼルエンジンにおいて、排気ガスがリーン状態の時に排気ガスに含まれるNOを触媒中の活性金属と反応させて窒素及び酸素に分解し、触媒活性が低下したら排気ガスのリッチ雰囲気を形成することにより排気ガスを長期にわたり高効率で処理しうる排気ガス浄化装置が記載されている。そして、前記公報にはNO触媒の具体例として銅塩の水溶液にジルコニア担体粉末を加えて混合後、固体の残留物を乾燥し、水素含有窒素ガス流中で加熱処理して銅をジルコニアに担持させる含浸法による銅担持浄化触媒が示されていて、NO低減率が貴金属担持触媒と比較して77〜84%程度である結果が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−3733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように従来公知の卑金属担持NO浄化用触媒は、貴金属担持NO浄化用触媒と比較してNO浄化性能活性が低いものであった。
また、従来公知の卑金属担持触媒を排ガス流路に設けた触媒装置は、NO浄化用触媒のNO浄化性能活性が低いものであった。
従って、本発明の目的は、貴金属担持NO浄化用触媒と比較して同等以上のNO浄化性能活性を有し得る卑金属担持NO浄化用触媒を提供することである。
また、本発明の目的は、貴金属担持NO浄化用触媒装置と比較して同等以上にNO浄化し得る卑金属担持NO浄化触媒装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、銅(以下、Cuと表示する場合もある。)又はニッケル(以下、Niと表示する場合もある。)を活性種とするNO浄化用触媒であって、担体粒子に担持された銅又はニッケルあるいはいずれかの酸化物からなるナノ粒子の粒子径が1.2nm以上であって、担体粒子に対する銅又はニッケルの質量割合を示す担持量(質量%)とナノ粒子の粒子径(nm)との比(担持量/粒子径)が0.125以上である、前記触媒に関する。
【0008】
また、本発明は、前記触媒が内燃機関の排ガス流路に設けられ、前記触媒と接触する排ガスを空燃比(A/F)が、銅を活性種とする場合は≦14.4の雰囲気に、ニッケルを活性種とする場合はA/F≦14.2の雰囲気に制御する触媒装置に関する。
本発明におけるナノ粒子の粒子径は、後述の実施例の欄に詳述される測定法によって求められる粒子の径である。
また、本明細書において、貴金属担持NO浄化用触媒と比較して同等以上のNO浄化性能活性とは、Pt、Au又はRhの貴金属を従来一般的に用いられている酸化物担体のいずれかに担持した排ガス浄化触媒がA/Fストイキ雰囲気で示すNO浄化性能活性と比較して、本発明のNO浄化用触媒に対する最適な排ガス中のA/Fリッチ雰囲気でのNO浄化性能活性が90%以上であることを意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、貴金属担持NO浄化用触媒と比較して同等以上のNO浄化性能活性を有し得る卑金属担持NO浄化用触媒を得ることができる。
また、本発明によれば、貴金属担持NO浄化用触媒装置と比較して同等以上のNO浄化性能活性を示し得る卑金属担持NO浄化触媒装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のNO浄化用触媒におけるCu、Niの粒径および担持量の範囲を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の範囲内および範囲外のNO浄化用触媒による排ガス中の水素濃度を変えた場合のNO浄化性能活性を比較して示すグラフである。
【図3】図3は、Cu又はNi担持NO浄化用触媒による排ガス中の水素濃度を変えた場合のNO浄化性能活性を比較して示すグラフである。
【図4】図4は、本発明のNO浄化用装置による制御例を示す模式図である。
【図5】図5は、各種金属担持NO浄化用触媒によるストイキ排ガス条件でのNO浄化性能活性を比較して示すグラフである。
【図6】図6は、「環境ハンドブック」(社団法人産業環境管理協会発行、2002年)から引用したPt担持触媒、Pd担持触媒のA/F浄化特性を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の範囲内と範囲外のNiを活性種とするNO浄化用触媒におけるナノ粒子の結合エネルギーをXPSにより測定した結果を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例で得られたNi/Al系NO浄化用触媒におけるNi粒子径7nmのナノ粒子のSTEM像を示す写真の写しである。
【図9】図9は、実施例で得られたCu/Al系NO浄化用触媒におけるCu粒子径8.0nmのナノ粒子のTEM像を示す写真の写しである。
【図10】図10は、他の実施例で得られたCu/Al系NO浄化用触媒におけるCu粒子径1nmのナノ粒子のTEM像を示す写真の写しである。
【図11】図11は、実施例で得られたNi/SiO系NO浄化用触媒のXRDにより粒子径を求めた結果を示すグラフである。
【図12】図12は、実施例で得られたCu/SiO系NO浄化用触媒のTEM−EDX分析結果を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例で得られたNi/SiO系NO浄化用触媒のTEM−EDX分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のNO浄化用触媒においては、Cu又はNi活性種とし、担体粒子に担持されたCu又はNiあるいはいずれかの酸化物からなるナノ粒子の粒子径が1.2nm以上であって、担体粒子に対する銅又はニッケルの質量割合を示す担持量(質量%)とナノ粒子の粒子径(nm)との比(担持量/粒子径)が0.125以上であることが必要であり、これによって貴金属担持NO浄化用触媒と比べて同等以上のNO浄化性能活性が得られる。
【0012】
また、本発明の触媒装置においては、前記NO浄化用触媒が内燃機関の排ガス流路に設けられ、前記触媒と接触する排ガスを空燃比(A/F)が、銅を活性種とする場合は≦14.4のRich雰囲気に、ニッケルを活性種とする場合はA/F≦14.2のRich雰囲気に制御することが必要であり、これによって貴金属担持NO浄化用触媒装置と比較して同等以上のNO浄化性能活性を示すことができる。
【0013】
特に、本発明において、以下の実施態様を挙げることができる。
1)前記活性種が、銅である前記触媒。
2)前記活性種が、ニッケルである前記触媒。
3)前記ナノ粒子の粒子径が1.2〜10nmの範囲である前記触媒。
4)前記比(担持量/粒子径)が、0.125〜8の範囲である前記触媒。
5)前記担持量が、0.15〜10質量%である前記触媒。
6)前記担体粒子が、Al粒子、SiO粒子、CeO粒子、ZrO粒子、TiO粒子、CeO−ZrO複合酸化物粒子、CeO−Al複合酸化物粒子、CeO−TiO複合酸化物粒子、CeO−SiO複合酸化物粒子、CeO−ZrO−Al複合酸化物粒子又は炭素粒子である前記触媒。
【0014】
以下、図面を参照して本発明を詳説する。
本発明のNO浄化用触媒は、図1に示すように、対数表示の横軸を担体粒子に担持されたCu又はNiあるいはいずれかの酸化物からなるナノ粒子の粒子径:xとし、縦軸を担体粒子に対する担持されたCu又はNiの質量割合を示す担持量(質量%):yとすると、x≧1.2およびy/x=0.125の曲線で囲まれる範囲内であることが必要である。
【0015】
本発明のNO浄化用触媒は、図2に示すように、Cuを活性種とし且つ前記条件を満足するNO浄化用触媒であればA/FがA/F≦14.4のRich雰囲気、好適には14.4〜13.6、特に14.4〜14.0のRichの雰囲気であることにより、ストイキ(A/F=14.6)でのPdを活性種とするNO浄化用触媒のNO浄化性能と同等以上となり得て、またNiを活性種とし前記条件を満足するNO浄化用触媒であればA/FがA/F≦14.2、好適には14.4〜13.6、特に14.2〜14.0のRich雰囲気であることにより、ストイキ(A/F=14.6)でPd担持NO浄化用触媒のNO浄化性能と同等以上となり得ることが理解される。
また、図2から、CuおよびNi以外の金属であるFe、Co、Mn、Ag又はAuを活性種とするNO浄化用触媒は、Pdを活性種とするNO浄化用触媒と比較してA/FがA/F≦14.6の条件、すなわちストイキおよびリッチ雰囲気でもNO浄化性能が低いことが理解される。
【0016】
また、図3に示すように、Cu又はNiを活性種とするものであってもナノ粒子の粒子径が1.2nm以上、および担持量(質量%)とナノ粒子の粒子径(nm)との比(担持量/粒子径)が0.125以上であるとの条件を満足しないと、得られるNO浄化用触媒のNO浄化性能が低くなる。
特に、本発明のNO浄化用触媒において、前記ナノ粒子の粒子径は1.2〜10nmの範囲であることが好適である。また、前記比(担持量/粒子径)が0.125〜8の範囲であることが好適である。
【0017】
本発明のNO触媒装置は、図4に示すように、前記NO浄化用触媒が内燃機関の排ガス流路に設けられ、前記触媒と接触する排ガスを空燃比(A/F)が、銅を活性種とする場合は≦14.4の雰囲気に、ニッケルを活性種とする場合はA/F≦14.2の雰囲気に制御するものである。
前記の排ガスを前記の範囲のリッチ雰囲気に制御する手段としては、本発明のNO浄化用触媒に導入される前のA/F値を検出する検出装置、該検出装置によるA/F検出値が前記の範囲であればそのまま、検出値が前記範囲外であれば還元剤、例えば水素や炭化水素などをエンジンの燃料主噴射の前又は後に主噴射よりも少量の燃料を噴射するなどのそれ自体当業界で公知の技術が挙げられる。
【0018】
貴金属であるPdを活性種とするNO触媒は、図5に示すように、A/F=14.6のストイキ雰囲気において、300℃以上の温度範囲において高いNO浄化性能を示す。
Pt又はPdを活性種とするNO触媒、特にPdを活性種とするNO触媒は、図6に示すように、A/F値が浄化特性に影響を及ぼし、A/F=14.6のストイキ雰囲気で良好なNO浄化性能を示すことが知られている。
これに対して、CuおよびNiだけでなくFe、Coを活性種とするNO触媒は、図5に示すように、A/F=14.6のストイキ雰囲気において、300〜500℃の温度範囲において低いNO浄化性能を示す。
【0019】
本発明のCu又はNiを活性種とし、担体粒子に担持されたCu又はNiあるいはいずれかの酸化物からなるナノ粒子の粒子径が1.2nm以上であること、およびCu又はNiの担持量とナノ粒子の粒子径(nm)との比(担持量/粒子径)が0.125以上であることが必要である理論的な考察は未だ十分にはなされていないが、図7に示すように、H還元後のNi/AlのXPS Ni2P3スペクトルから、ナノ粒子の粒子径が1nmあり、本発明の範囲外であるとHガス処理しても還元されず、XPSより酸化物担体の影響を受け易いためであると考えられる、前記の担持量/粒子径が0.125未満であると卑金属の活性点が少なくNO浄化活性が低下すると考えられ得る。
【0020】
本発明のNO浄化用触媒は、例えば次のようにして得ることができる。先ず、高分子化合物である有機保護剤の溶液中にCu塩又はNi塩を加える。得られた混合液のpHをアルカリ、例えば1MのNaOHで7〜9程度に調整後、混合液を加熱、例えば190〜200℃程度に加熱・混合した後、混合液を室温程度の温度に冷却・静置してナノ粒子を生成させる。生成したナノ粒子を有機溶媒、例えばアセトンで処理して精製し、上澄み液をデカンテーション法又は遠心分離してナノ粒子のコロイドを取得する。得られた精製コロイドをアルコール、例えばエタノール中に分散させてコロイドのアルコール懸濁液を得る。所定量の担体を容器に入れて空気を除き、前記コロイドのアルコール懸濁液を加え、攪拌混合後、真空下に溶媒を取り除き、得られた固形物を真空下又は空気中で200〜700℃で1〜30時間程度加熱焼成してコロイドを除いて、触媒粉末が得られる。
【0021】
本発明のNO浄化用触媒を製造する場合、ナノ粒子の粒子径は用いる高分子化合物である保護剤の量によって制御し得て、一般的にはCu塩又はNi塩に対して高分子化合物の量を多くするとナノ粒子の粒子径が小さくなり、高分子化合物の量を多くするとナノ粒子の粒子径が大きくなる。高分子化合物の使用量は、用いる高分子化合物の種類によって異なるが、通常Cu塩又はNi塩の量に対して0.1〜50倍モル、特に0.2〜30倍モル程度である。また、担持量は、担体に対する金属塩の使用量によって決めることができる。
【0022】
あるいは、本発明のNO浄化用触媒は、例えば金属イオン溶液の蒸発により次のようにして得ることができる。先ず、Cu塩又はNi塩を水に溶解させる。所定量の担体を入れたコロイド懸濁水溶液に前記金属塩の水溶液を加え、1〜3時間程度放置し、水分を蒸発させ、乾燥、固形物を200〜700℃で1〜30時間程度焼成することによって得ることができる。
【0023】
前記の高分子化合物としては、Cu又はNiと配位し得る分子内にH、OH、COOH又はNHを有する高分子化合物、例えばPVP(ポリ−n−ビニルピロリドン)、ポリビニルアルコール、ポリアミン等が挙げられる。
前記のCu塩又はNi塩としては、前記Cu又はNiの硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、好適には、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩などを用い得る。
【0024】
本発明のNO浄化用触媒において、前記のようにして焼成して生成した酸化銅又は酸化ニッケルは、水素、CO、Cなどの還元性ガス、好適には水素を流通させることによってCu又はNiの活性種であり得る。
【0025】
前記の担体粒子としては、Al粒子、SiO粒子、CeO粒子、ZrO粒子、TiO粒子、CeO−ZrO複合酸化物粒子、CeO−Al複合酸化物粒子、CeO−TiO複合酸化物粒子、CeO−SiO複合酸化物粒子、CeO−ZrO−Al複合酸化物粒子又は炭素粒子、好適にはAl粒子又はSiO粒子が挙げられる。
【0026】
本発明のNO浄化用触媒は、内燃機関、例えば自動車用浄化触媒として好適に用い得る。
また、本発明のNO浄化用触媒は、通常ハニカム等の基材上に積層して用い得る。
前記の基材として用い得るハニカムは、コージェライトなどのセラミックス材料やステンレス鋼などにより形成され得る。また、本発明の排ガス浄化用触媒は任意の形状に成形して用いることができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例を示す。
以下の各例において、得られた触媒の評価は以下に示す測定法によって行った。なお、以下の測定法は例示であって、当業者にとって同等と考えられる測定法を用いて測定し得る。
また、以下の各例においては、下記の担体を用いた。
Al:シーアイ化成社製(商品名:Nano Tek、平均粒子径:31)
SiO :シーアイ化成社製(商品名:Nano Tek、平均粒子径:25)
【0028】
1.粒子径の測定
1)Cu/Al触媒については、走査透過型電子顕微鏡(SEM、装置:HITACHI S−4500)又は透過型電子顕微鏡(TEM、装置:HITACHI HD2000)によるTEMの像から観察し、100個の粒子径の平均値から平均粒子径を算出した。
2)Ni/SiO触媒については、X線回折(装置:RIGAKU RINT2000)でNi由来の44.5°付近の(111)回折ピーク又はNiO由来の43.3°付近の(012)ピーク半値幅から、シェラーの下記式より粒子径を求めた。
D=(Kλ)/(βcosθ)
λ:測定X線波長(Å)
β:半価幅(rad)
θ:X線入射角
K:定数
X線回折については、SiO担体でないと分析できず、製法(コロイド使用)から担体をAlからSiOに変えてもNi又はCuの担持粒径には変化がないと考えられるので、SiOを用いて触媒を調製し、測定を行なった。
2.金属粒子の確認
Cu/SiO触媒およびNi/SiO触媒についてエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX、装置:HITACHI HD2000)により金属粒子の確認を行った。
【0029】
実施例1〜7
二又フラスコの中で、表1に示すPVPを120mLの無水エチレングリコールに加えた。この混合物に表1に示す硫酸ニッケル・7水和物又は酢酸銅・1水和物を加え、80℃で3時間攪拌した。その後、溶液を冷却バスの中で0℃まで冷却し、1,4−ジオキサン50mLを加えて均一攪拌した。混合溶液のpHを7〜9となるように1MのNaOH(数mL)で調整した。次いで、混合溶液を198℃に加熱し、攪拌しながら3時間保持し、室温まで冷却して薄い茶色の溶液を得た。
【0030】
この溶液を放置してナノ粒子を生成させた。このナノ粒子を含む一定量分量を多量のアセトンで処理し、精製した。これにより、保護剤PVPがアセトンの相に抽出され、金属ナノ粒子が凝集した。上澄み液をデカンテーションしてコロイドを取り出した。アセトン相を取り除いた後、精製したコロイドを純エタノール中に緩やかな攪拌下に分散させたてコロイドの懸濁液を得た。
100mLのシュレンク管に10gの担体としてAl又はSiOを入れた。シュレンク管内を真空に引き、窒素を流し込んで配管を洗浄して完全に空気を取り除いた。先に合成したコロイドの懸濁液を、ゴムのセプタムを通してシュレンク管に注入した。混合物を室温で3時間攪拌し、溶媒を真空に引いて取り除いた。その後、コロイド沈殿物を、残りの保護剤を取り除くために、200〜600℃の真空又は空気雰囲気下で1〜30時間加熱焼成した。得られた触媒粉末に圧力を加えて約2mmのペレットにした。
【0031】
得られた触媒粉末について担持ナノ粒子の担持量、粒子径、TEM−EDXスポット分析の測定を行った。得られた結果を他の結果とまとめて表1、図1、図7〜13に示す。
また、ペレットを用いて、下記の条件でNO浄化活性を測定した。
1)NO−H反応活性−H濃度依存性の測定
温度:500℃
NO:500ppm
:0〜5000ppm
:残部
2)ストイキ雰囲気におけるNO−H反応のNO浄化率温度依存性の測定
温度:100〜500℃
NO:1000ppm
:1000ppm
:残部
得られた結果を比較例の結果とまとめておよび図1〜3に示す。
【0032】
比較例1〜5
PVP、硫酸ニッケル・7水和物又は酢酸銅・1水和物の量を表2に示す量に変えた他は実施例1と同様にして、触媒粉末および触媒ペレットを得た。
得られた触媒粉末について担持ナノ粒子の担持量、粒子径、を測定した。
また、ペレットを用いて、NO浄化活性を測定した。
得られた結果を比較例の結果とまとめて表2、図1〜3、図5に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
参考例1
硫酸ニッケル・7水和物に代えて塩化パラジウムを用いた他は実施例1と同様にしてPd担持触媒粉末、ペレットを得た。
ペレットを用いて、NO浄化活性を測定した。
得られた結果を他の結果とまとめて図2〜3、図5に示す。
【0036】
比較例6〜9
硫酸ニッケル・7水和物に代えて、硝酸鉄・9水和物、酢酸コバルト・4水和物、酢酸マンガン・4水和物、硝酸銀又は塩化金酸・4水和物を用いた他は実施例1と同様にして、Fe担持触媒粉末、Co担持触媒粉末、Mn担持触媒粉末、Ag担持触媒粉末、Au担持触媒粉末およびそれぞれのペレットを得た。
得られたペレットを用いて、NO浄化活性を測定した。
結果を他の結果とまとめて図2に示す。
【0037】
図2の結果から、本発明のCu担持触媒およびNi担持触媒は、銅を活性種とする場合は≦14.4の雰囲気で、ニッケルを活性種とする場合はA/F≦14.2の雰囲気で、貴金属以上のNO浄化性能活性を有している。
図3の結果から、Cu担持触媒およびNi担持触媒は、金属又は金属酸化物からなるナノ粒子の粒子径が1.2nm以上であって、担体粒子に対する銅又はニッケルの割合を示す担持量(質量%)とナノ粒子の粒子径(nm)との比(金属成分担持量/粒子径)が0.125以上であれば高いNO浄化性能活性を達成されることが示された。
図5の結果から、貴金属担持触媒はRichであってもNO浄化性能活性は向上せず頭打ちになることが示された。
図12および図13から、実施例で得られたCu担持触媒およびNi担持触媒は、Cuナノ粒子又はNiナノが担体に担持されていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のNO浄化触媒によって、卑金属を用いても貴金属担持NO浄化用触媒と比較して同等以上にNO浄化性能活性を向上させることが可能である。
また、本発明のNO浄化触媒装置によって、自動車用エンジンを始め内燃機関の排ガス浄化を実現することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又はニッケルを活性種とするNO浄化用触媒であって、担体粒子に担持された銅又はニッケルあるいはいずれかの酸化物からなるナノ粒子の粒子径が1.2nm以上であって、担体粒子に対する銅又はニッケルの質量割合を示す担持量(質量%)とナノ粒子の粒子径(nm)との比(担持量/粒子径)が0.125以上である、前記触媒。
【請求項2】
前記活性種が、銅である請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記活性種が、ニッケルである請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記ナノ粒子の粒子径が1.2〜10nmの範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
前記比(担持量/粒子径)が、0.125〜8の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
前記担持量が、0.15〜10質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
前記担体粒子が、Al粒子、SiO粒子、CeO粒子、ZrO粒子、TiO粒子、CeO−ZrO複合酸化物粒子、CeO−Al複合酸化物粒子、CeO−TiO複合酸化物粒子、CeO−SiO複合酸化物粒子、CeO−ZrO−Al複合酸化物粒子又は炭素粒子である請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項8】
請求項1に記載の触媒が内燃機関の排ガス流路に設けられ、前記触媒と接触する排ガスを空燃比(A/F)が、銅を活性種とする場合は≦14.4の雰囲気に、ニッケルを活性種とする場合はA/F≦14.2の雰囲気に制御する触媒装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−217936(P2012−217936A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86614(P2011−86614)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】