説明

NPYY5受容体アンタゴニストによる急速眼球運動(REM)睡眠妨害に関連する神経障害の治療

本発明は、急速眼球運動(REM)睡眠を効果的に減少させる量のNPY Y5受容体アンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物におけるREM睡眠妨害に関連する神経障害を治療および予防するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明が属する技術分野
本発明は、急速眼球運動(REM)睡眠を効果的に減少させる、ある量のNPY Y5受容体アンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物におけるREM睡眠妨害に関連する神経障害を治療および予防するための方法に関する。本明細書で使用するREM睡眠という用語は、急速眼球運動が見られ、そして脳電図(EEG)記録に見られるように脳波が速く、低電圧である睡眠の期間として定義される。
【0002】
発明の背景
睡眠中、哺乳動物はEEGにおける形態によって定義される2つのタイプ(すなわち、REM睡眠とNREM(非REM)睡眠)を経験する。REM睡眠においては、脳波は速く、低電圧であり;この期間の睡眠は、急速眼球運動(これをもとに命名された)ならびに夢をみること、不随意筋運動および不規則な心拍数および不規則な呼吸などの自律神経系反応を伴う。これら後者の活動は一般に使用される別の名称(たとえば逆説睡眠または非同調睡眠)の理由である。REM睡眠は、80~120分間隔で一晩に3~4回現れ、それぞれ5分間~1時間持続する。NREM睡眠は、徐波睡眠および同調睡眠とも呼ばれ、4段階の続いて起こる深さからなる高電圧の遅い脳波を特徴とし、夢を見ることのない睡眠の期間である。NREM睡眠中、心拍数および血圧のような自律神経系の活動は低く、規則的である。ヒトの場合、約20%の睡眠がREM睡眠であり、80%がNREM睡眠である。REM睡眠およびNREM睡眠は共にすべての哺乳動物のホメオスタシスおよび生存に必要である。
【0003】
睡眠構造、睡眠維持、損傷された睡眠継続性、睡眠分断、および脳波分布の異常は、多くの精神医学的睡眠障害および精神疾患、鬱病(たとえば大鬱病、単極性鬱病、双極性障害、季節的情動障害、冬季鬱病および気分変調を含む);月経前神経不安疾患、強迫神経症、全般性不安障害、躁病、パニック、心的外傷後ストレス障害、肥満ならびに食欲不振および多食症を含む摂食障害;恐怖症、境界人格、統合失調症、痴呆および認知機能障害(アルツハイマー型ならびにパーキンソン病および鬱病を伴うパーキンソン病、情動記憶の処理を含む)、線維筋痛症、慢性関節リウマチおよび変形性関節炎、REM睡眠行動障害、不眠、過眠症、睡眠時随伴症、ナルコレプシー、睡眠関連呼吸障害、睡眠時無呼吸、夢遊病、夜尿症、脚不穏症候群、睡眠中の周期性四肢運動ならびに夜間発作を含む発作障害において説明されている。また、日周期関連障害は、とりわけ時間帯間のジェットトラベル(時差ぼけ)、人工光、遅延性および進行性睡眠相症候群、非24時間睡眠/覚醒障害を始めとする睡眠障害に関連し、交替勤務の時間は体内概日時計と十分に同調しないことがある。現代の生活スケジュールの結果として、パフォーマンスの低下が、手先の器用さ、反射行動、および記憶の低下、冬季鬱病、ならびに十分な睡眠の欠如に由来する全身疲労として表れることがある。
【0004】
大鬱病患者、戦争関連不安症、心的外傷後障害、死別状態、鬱病を伴う自殺性患者、分裂情動性障害および統合失調症についての観察により、REM睡眠による妨害の頻度および持続時間が増大すること、ならびに徐波状態の全般的減少を示している。大鬱病はREM睡眠妨害、とりわけ、REM潜伏期(睡眠開始から初めのREM期間の出現までの期間として定義される)の短縮を始めとするREM睡眠の脱抑制を伴い、REM密度を増大させ、そして大鬱病患者の約90%はEEGにおいて、いずれかの形の睡眠異常を示している。したがって、抗欝薬の大部分は治療量(Winokur)においてREM睡眠を減少させることが見出されていて、多くの臨床医は患者の鬱病を治療するための治療選択をする場合、選択された抗欝薬のREM睡眠の抑制に対する有益な効果に注目する。REM睡眠抑制に関する抗欝薬の効果は、三環式抗欝薬(TCA)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、および選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)を含む代表的な抗欝薬反応機構的(mechanistic)クラスの薬剤に関して示されている。TCAおよびSSRIはREM睡眠の即時(40~85%)および持続(30~50%)抑制を生じることが示されているが、MAOは完全にREM睡眠を抑制する。さらに、完全な、または部分的な睡眠剥奪、または睡眠サイクルの相進行は、単極性鬱病および月経前神経不安疾患を含む鬱病の別の形状の患者の治療において有効である。したがって、睡眠および睡眠サイクルの操作と鬱病障害との間には強い相関関係がある。REM睡眠障害の治療および予防のための新規で効果的な薬物の探索を継続するための明確な必要性が存在する。
【0005】
36アミノ酸ペプチド神経伝達物質である神経ペプチドY(NYP)は、膵臓の神経伝達物質/神経ホルモンクラスのメンバーであり、中枢および末梢神経系に存在し、NPY特異的受容体(たとえば、Y1、Y2、Y5受容体)を介して、食物摂取、疼痛、ホメオスタシス、発作、不安、アルコール摂取、内分泌反応、睡眠、鎮静を含む多数の生物反応を媒介することが示されている。実験室動物では、NPYは、睡眠‐促進活性を有すること、睡眠潜伏期を短縮すること、NREM睡眠を刺激すること、および増大したREM睡眠を伴う内分泌ホルモンの分泌を調節することが示されている。正常なヒトでは、NPYの静脈内投与は、睡眠期時間およびステージ2睡眠を促進し、睡眠潜伏期および覚醒時間を減少させ、REM睡眠を調節した(Antonijevic et al.2000)。したがって、NPY受容体結合を遮断し、NPY活性を阻止することができる薬剤は、神経および睡眠障害を有する哺乳動物において、REMおよびNREM睡眠を含む睡眠を調節することが期待される。
【0006】
WO03/051356はREM睡眠の持続時間または量の増大を介して睡眠の質を高め、改善するためのある種のNPY Y5アンタゴニストの使用を開示する。上記の特許および特許出願はそのまま参照として本明細書に援用する。
【0007】
発明の概要
本発明はREM睡眠を減少させることにおいて有効である量のNPY Y5アンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物におけるREM睡眠を減少させる方法を提供する。
【0008】
好ましい態様において、NPY Y5アンタゴニストは式:
【0009】
【化1】

【0010】
の化合物、または薬剤的に受容可能なその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは前記のいずれかであり;
式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロメチル、水素、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C5またはC6シクロアルキル、エステル、アミド、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。
【0011】
もっとも好ましくは、式IのNPY Y5アンタゴニストは式:
【0012】
【化2】

【0013】
の化合物、または薬剤的に受容可能なその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは上記のいずれかである。
別の好ましい態様において、NPY Y5アンタゴニストは式:
【0014】
【化3】

【0015】
の化合物、または薬剤的に受容可能なその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは上記のいずれかであり;
式中、Aは酸素または水素であり、
W、X、YおよびZは独立してNまたはCR1であり、ここでR1は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、アミノにより置換された(C1~C6)アルコキシ、モノもしくはジ-(C1~C6)アルキルアミノにより置換された(C1~C6)アルコキシまたは(C1~C6)アルコキシにより置換された(C1~C6)アルコキシ、(C3~C7)シクロアルキル、(C3~C7)シクロアルキル(C1~C4)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C3~C7)シクロアルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C3~C7)シクロアルキニル、ハロ(C1~C6)アルキル、ハロ(C1~C6)アルキル、ハロ(C1~C6)アルコキシ、モノおよびジ(C1~C6)アルキルアミノ、アミノ(C1~C6)アルキル、ならびにモノおよびジ(C1~C6)アルキルアミノ(C1~C6)アルキルからそれぞれの存在において独立して選択される。
【0016】
最も好ましくは、式IIの化合物は、式:
【0017】
【化4】

【0018】
の化合物である。
本発明は急速眼球運動(REM)睡眠を減少させることにおいて有効な量のNPY Y5アンタゴニストを、ヒトを含む哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物における過度のREM睡眠が特徴の神経障害を治療および予防する方法を提供する。
【0019】
本発明による治療に対して企図される、異常な、および/または過度の急速眼球運動(REM)睡眠が特徴の神経障害には、多くの精神障害および精神疾患、たとえば大鬱病、単極性鬱病、双極性障害、季節的情動障害、冬季鬱病、気分変調を含む鬱病;月経前神経不安疾患、自殺性鬱病患者、強迫神経症、全般性不安障害、パニック、心的外傷後ストレス障害、肥満ならびに食欲不振および多食症を含む摂食障害、恐怖症、境界人格、分裂情動性障害および統合失調症、痴呆および認知機能障害(アルツハイマー型ならびにパーキンソン病および鬱病を伴うパーキンソン病、情動記憶の処理を含む)、線維筋痛症、慢性関節リウマチおよび変形性関節炎、ナルコレプシー、睡眠関連呼吸障害、夜尿症、脚不穏症候群、発作およびとりわけ時間帯間のジェットトラベル(時差ぼけ)を含む日周期関連障害が挙げられる。
【0020】
本発明の一態様では、NPY Y5アンタゴニストは神経障害を経験する前に哺乳動物に投与される。
別の態様では、神経障害の素因があるか、またはそれらを経験するリスクがある哺乳動物に投与される。
【0021】
また、本発明はREM睡眠を減少させることにおいて有効な量のNPY Y5アンタゴニストを哺乳動物に投与することにより、哺乳動物における過度のREM睡眠が特徴の神経障害を治療する方法を提供し、ここでアンタゴニストは式:
【0022】
【化5】

【0023】
の化合物、または薬剤的に受容可能なその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは上記のいずれかであり;
式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロメチル、水素、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C5またはC6シクロアルキル、エステル、アミド、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。
【0024】
好ましい態様において、NPY Y5アンタゴニストは式:
【0025】
【化6】

【0026】
の化合物、または薬剤的に受容可能なその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは上記のいずれかである。
本発明はさらに、ある量のNPY Y5アンタゴニストを哺乳動物に投与することにより、哺乳動物における過度のREM睡眠が特徴の神経障害を治療する方法を提供し、ここでアンタゴニストは式:
【0027】
【化7】

【0028】
の化合物、または薬剤的に受容可能なその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは上記のいずれかであり;
式中、Aは酸素またはH2であり、
W、X、YおよびZは独立してNまたはCR1であり、ここでR1は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、アミノにより置換された(C1~C6)アルコキシ、モノもしくはジ-(C1~C6)アルキルアミノにより置換された(C1~C6)アルコキシまたは(C1~C6)アルコキシにより置換された(C1~C6)アルコキシ、(C3~C7)シクロアルキル、(C3~C7)シクロアルキル(C1~C4)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C3~C7)シクロアルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C3~C7)シクロアルキニル、ハロ(C1~C6)アルキル、ハロ(C1~C6)アルキル、ハロ(C1~C6)アルコキシ、モノおよびジ(C1~C6)アルキルアミノ、アミノ(C1~C6)アルキル、ならびにモノおよびジ(C1~C6)アルキルアミノ(C1~C6)アルキルからそれぞれの存在において独立して選択される。
【0029】
好ましい態様において、NPY Y5アンタゴニストは式:
【0030】
【化8】

【0031】
の化合物、または薬剤的に受容可能なその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは上記のいずれかである。
不斉中心を有する化合物の場合、すべての光学異性体、ラセミ体およびその混合物は本発明に包含される。
【0032】
化合物が種々の互変異性型で存在する場合、本発明は特定の互変異性型のいずれか1つに限定されない。
本発明はさらに、生理学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせた、先に記載の化合物または調節物質を含有する医薬組成物を提供する。
【0033】
先に記載の方法の一態様では、NPY Y5アンタゴニストはREM睡眠障害を経験する前に哺乳動物に投与される。
先に記載の方法の別の態様では、NPY Y5アンタゴニストはREM睡眠障害の素因があるか、またはそれらを経験するリスクがある哺乳動物に投与される。
【0034】
本発明はREM睡眠を調節する方法を提供し、該方法は眼球運動速度を低下させること、REM睡眠の密度および潜伏期を減少させること、REM睡眠を破壊すること、および非REM睡眠および全睡眠統合を増大させることを含む。
【0035】
別の態様では、本発明はREM睡眠を減少させることにおいて効果的である量の式IまたはIIのNPY Y5アンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物において、用量に関連した様式でREM睡眠を減少させる方法を提供する。
【0036】
本明細書で使用する“REMの潜伏期”は、ステージ2睡眠の初めの出現からREM睡眠の初めの出現までの時間を表す。
本明細書で使用する“REMの密度”という用語は、時間毎のREM運動の数、およびREM睡眠に費やされる時間の量を表す。
【0037】
本明細書で使用する“睡眠潜伏期”という用語は、明かりを消すか、または眠りについてからステージ2睡眠の初めの出現までの時間を表す。
本明細書で使用する“REM睡眠の破壊”という用語は、通常のREM潜伏期および密度を不都合に妨害するいずれかの状況を表す。
【0038】
本明細書で使用する“睡眠の統合”という用語は、1日24時間を通した睡眠の一続きを表し:実験室動物はおおよそ20分ごとに睡眠/覚醒サイクルを完了させるが、ヒトは睡眠を1日につき1回の期間に統合し、通常非常に短い覚醒の一続きだけによって中断される。
【0039】
発明の詳細な説明
式Iおよび式IIの化合物は、WO02/45152(参照として本明細書にそのまま援用する)に記載され、それを参照する合成方法によって製造することができる。
【0040】
式Iの代表的な化合物には以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:
1'-(4-t-ブチル-ピリジルカルバモイル)-スピロイソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン-3-オン;
1'-(4-イソプロピル-ピリジルカルバモイル)-スピロイソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン-3-オン;
1'-(4-tトリフルオロメチル-ピリジルカルバモイル)-スピロイソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン-3-オン;
式IIの代表的な化合物には以下のものが挙げられるが、それらに限定されない:
1'-(1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-シアノ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-アセチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-カルボキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン メチルエステル;
1'-(5'-ピリジン-3-イル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-メチル1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-メトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-クロロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;および
1'-(5-トリフルオロメチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
式IIの代表的な化合物には以下のものが挙げられるが、それらに限定されない、
(1)1'-(6-トリフルオロメチル-3-H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(7-クロロ-lH-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-n-プロピルスルホニル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5シアノ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-アセチル-1-H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-カルボキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン,メチルエステル;
1'-(5'ピラジン-2-イル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
l'-(5'ピリジン-3-イル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-トリフルオロメトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-ベンゾイル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-メトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-クロロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
6-ブロモ-7-クロロ-2-(スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン;
1'-(5-フルオロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-メチルスルホニル-1Hベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-オキサゾール-2-イル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5,6-ジフルオロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-フェニル-lH-イミダゾ[4,5-b]ピラジン-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-トリフルオロメチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5,7-ジクロロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5,6-ジメトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-トリフルオロメチルスルホニル-1 H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-(3,5-ジメチル-イソキサゾール-4-イル)-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;
1'-(5-エトキシ-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)-スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン;および
5-クロロ-2-(スピロ[イソベンゾフラン-1,4'-ピペリジン]-3-オン-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン。
【0041】
本来塩基性の式IおよびIIの化合物は、種々の無機および有機酸と多様な異なった塩を形成することができる。そのような塩は動物への投与に関して薬剤的に受容可能でなければならないが、実際上、薬剤的に受容可能ではない塩として反応混合物から式IおよびIIの化合物を初めに単離し、その後アルカリ性試薬による処理により後者を遊離塩基に変換して戻し、続いて遊離塩基を薬剤的に受容可能な酸付加塩に変換することがしばしば好ましい。本発明の塩基化合物の酸付加塩は、水性溶媒中またはメタノールもしくはエタノールのような適切な有機溶媒中において、塩基化合物を実質的に等価な量の選択された鉱酸または有機酸で処理することにより容易に製造される。溶媒の注意深い留去によって、所望する固体塩が得られる。
【0042】
本発明の塩基化合物の薬剤的に受容可能な酸付加塩を製造するために使用される酸は、非毒性酸付加塩、たとえばヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、ニトレート、スルフェートまたはビスルフェート、ホスフェートまたは酸ホスフェート、アセテート、ラクテート、シトレートまたは酸シトレート、タートレートまたはビタートレート、スクシネート、マレエート、フマレート、グルコネート、サッカレート、ベンゾエート、メタンスルホネートおよびパモエート、すなわち1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート)のような、薬剤的に受容可能なアニオンを含有する塩を形成するものである。
【0043】
式IおよびIIの化合物は、好都合には、1以上の別の治療薬、たとえば、三環式抗欝薬(たとえば、アミトリプチリン、ドチエピン、ドキセピン、トリミプラミン、ブトリピリン、クロミピラミン、デシプラミン、イミプラミン、イプリンドール、ロフェプラミン、ノルトリプチリンまたはプロトリプチリン)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(たとえば、イソカルボキサジド、フェネルジンまたはトラニルシクロプラミン)または5-HT再取込阻害剤(たとえば、フルボキサミン、セルトラリン、フルオキセチンまたはパラキセチン)のような異なる抗欝薬、および/またはドーパミン作動性抗パーキンソン病薬(たとえば、好ましくは末梢デカルボキシラーゼ阻害剤、たとえばベンゼラミドまたはカルビドパ、またはドパミンアゴニスト、たとえばブロモクリプチン、リスリドまたはペルゴリドと組み合わせたレボドパ)のような抗パーキンソン病薬と一緒に使用してもよい。また、それはドネペジルのようなアセチルコリンエステラーゼと共に使用してもよい。本発明は1以上の別の治療薬と組み合わせた、式IおよびIIの化合物または生理的に受容可能なその塩または溶媒和物の使用を包含すると理解すべきである。
【0044】
本発明のNPY Y5アンタゴニスト化合物の生物学的活性は、本明細書で以下に記載の実験室実験におけるin vivo睡眠研究で測定した。本明細書に提示された結果は、式IaおよびIIaのNPY Y5受容体アンタゴニストは実験室動物の睡眠(REMおよびNREM)に影響を与えるが、NPY Y1アンタゴニストは睡眠変数にわずかな影響だけしか与えないことを示した。
【0045】
本発明の化合物は、一般に活性な主成分が薬剤的賦形剤またはキャリアと混合した医薬組成物として投与される。活性化合物または主成分は経口、口腔、筋肉内、非経口(たとえば静脈内、筋肉内または皮下)または直腸内投与のために製剤されてもよく、または吸入もしくは通気による投与に適切な形状であってもよい。
【0046】
経口投与の適切な形状には、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤および経口溶液または懸濁液、舌下および口腔投与型が挙げられる。
固体組成物が錠剤型で製造される場合、主要な賦形剤は、ゼラチン、デンプン、ラクトース、マグネシウムステアレート、タルクまたはアラビアゴムのような薬剤的賦形剤と混合する。錠剤は、一定量の活性化合物が長期間にわたり放出されるように、糖のような適切な物質で被覆することができる。
【0047】
経口投与のための液体製剤は、溶液、シロップ、または懸濁液の形状であってもよい。そのような液剤は、薬剤的に受容可能な成分、たとえば懸濁化剤(たとえば、ソルビトールシロップ);乳化剤(たとえば、レシチン);非水性ベヒクル(たとえば、エチルアルコール);および保存剤(たとえば、ソルビン酸)を使用して、慣用の方法により製造することができる。
【0048】
注射または注入による非経口投与のための製剤は、油性もしくは水性ベヒクル中の溶液もしくはエマルジョンの形状において、単位剤形、たとえば、アンプルで提示することができる。
【0049】
また、組成物は坐剤または保持浣腸剤のような直腸製剤で製剤することができる。
鼻腔内または吸入投与の場合、化合物はポンプスプレイまたは適切な噴射剤で加圧された容器から、溶液または懸濁液の形状で送達される。
【0050】
式IまたはIIの化合物の使用に関連して、これらの化合物は単独、または薬剤的に受容可能なキャリアとの組み合わせのいずれかで投与できることを認めるべきである。そのような投与は、単一または複数の投薬量で行うことができる。より具体的には、組成物は、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、ハードキャンディー、粉末剤、シロップ、水性懸濁液、注射液、エリキシル剤、シロップなどの形状において、種々の薬剤的に受容可能な不活性キャリアと組み合わせることができる。
【0051】
先に述べた状態(たとえば、鬱病)の治療のための通常の成人への経口、非経口または口腔投与のための本発明の活性化合物の提案量は、単位投薬量につき活性成分約0.1〜200mgであり、それをたとえば1日につき1~4回投与することができる。
【0052】
通常の成人における先に述べた状態(たとえば、偏頭痛)の処置のためのエアゾール製剤は好ましくは、エアゾールのそれぞれの計量された投薬量または”パフ”が約20mg〜約1000mgの本発明の活性化合物を含有するように調整される。エアゾールによる全体の1日投薬量は約100mg〜10mgの範囲内となる。投与は1日に数回、たとえば、2、3、4または8回、投与1回に、たとえば1、2または3投薬量を投与することができる。
【0053】
本発明はNPY Y5アンタゴニストがREM睡眠を抑制することができるという発見に基づいている。したがって、本発明は哺乳動物におけるREMが特徴の睡眠障害を治療および予防する方法を提供し、その方法はREM睡眠障害を治療および予防することにおいて有効な量のNPY Y5アンタゴニストを該哺乳動物に投与することを包含する。
【0054】
また、本発明は治療的有効量のNPY Y5アンタゴニストを哺乳動物に投与することにより該哺乳動物におけるREM睡眠障害を治療および予防するための方法を提供し、ここでNPY Y5アンタゴニストは式IaおよびIIaの化合物である。
【0055】
また、本発明は治療的有効量のNPY Y5アンタゴニストを哺乳動物に投与することにより該哺乳動物におけるREM睡眠障害を治療および予防するための方法を提供し、ここでNPY Y5アンタゴニストは式IaおよびIIaの化合物である。
【0056】
実施例
ラットとヒトの睡眠研究の検討:
ラットの睡眠とヒトの睡眠との間には、基本的な類似性があり、それは、ラットをモデルとして使用するために必要なすべてである。まず、ヒトに対する催眠剤であるすべての化合物はラットにおいて催眠効果を有し、ラットに対する催眠剤であるすべての化合物はヒトにおいて催眠効果を有する。2番目に、ラットおよびヒトは両方とも睡眠傾向において強固な概日性の調整(modulation)を示す。3番目に、睡眠の”恒常性”調節は、睡眠の損失がそれに続く代償的なNREM睡眠中の低周波数EEG(“デルタ波”)の量を増やすという点で、基本的に類似している。すなわち、睡眠の”深さ”は、多量の徐波睡眠を特徴とする。睡眠の深さは、“睡眠連続性”または睡眠統合を促進し、それは睡眠の質の主な決定因子である。後者に関しては、NREM睡眠におけるより大きな振幅のEEG徐波がNREMの”強度”関数を反映することが示されている。なぜなら、NREM睡眠における徐波活性は、それに先立つ覚醒期間の関数として増大し、通常の基本的な睡眠における睡眠統合に付随するものだからである。4番目に、ラットおよびヒトの両方において、すべての催眠剤は、睡眠開始への潜伏期を減らすこと、睡眠時間を増やすこと、睡眠の深さおよび/または統合を増すこと、またはこれらの効果のいくつかの組み合わせによって、NREM睡眠に影響を与える。5番目に、行動睡眠中、いわゆるNREM‐REMサイクル中に、NREMおよびREM睡眠は交互に起きる。ラットおよびヒトの両方において、NREMとREMに費やされる時間の割合は約4:1であり、NREM睡眠はいつもREMに先行する(すなわち、REMは通常睡眠開始時に起こらない)。6番目に、大部分の催眠剤はREM睡眠をある程度減らし、そしていくつかのクラスの催眠剤はREM睡眠を強く抑制する。妥当性については議論されるが、REM抑制は一般に抗鬱剤の場合には好ましいとみなされる。さらに、REM睡眠に対するすべてのクラスの催眠剤の相対的効果はラットおよびヒトにおいて同様である。
【0057】
ラットおよびヒトの睡眠には2つの主要な違いがある。第一に、ラットは夜行性であるが、ヒトは昼行性である。この違いは顕著であるが、おそらくそれ自体は催眠剤の効果を試験することに関して重要ではない。しかし、いずれの種に関しても、催眠剤の効力を評価する場合、通常の睡眠期間に関連した投薬のタイミングを考慮する。第二の違いは、一続きの睡眠の長さ、またはいわゆる”睡眠連続性”である。ヒトは睡眠を1日につき1回の期間に統合し、通常非常に短い一続きの覚醒だけによって中断される。ラットは、24時間を通して睡眠の一続きを有し:およそ20分間ごとにラットは睡眠/覚醒サイクルを完了させる。夜間(ラットが活発な時)、睡眠はそれぞれの20分間サイクルの約1/3を占め、REM睡眠はまれである。日中(点灯時)、ラットはそれぞれの20分間サイクルの約2/3は睡眠する。睡眠一続きの長さは、感度が極めて高い生理的眠気の尺度であり、ヒトにおける重要な催眠性効力の前臨床的予測因子である。
【0058】
EEGによる睡眠測定:
EEG睡眠測定の場合には、成体、雄Wistarラットを麻酔し、長期脳波(EEG)および筋電図(EMG)記録のための頭蓋移植物を外科的に移植した。少なくとも、動物が外科手術から回復するために3週間を考慮した。食物および水は任意に摂取可能であり、周囲温度は24±1℃であった。蛍光灯を使用して、24時間明暗サイクル(LD 12:12)が研究中維持された。ケージ内中央レベルにおいて、光強度は、平均して35〜40ルクスであった。それぞれの処置前後2日間、動物は静穏に過ごした。睡眠と覚醒は、マイクロコンピューターを基にした、睡眠‐覚醒および生理的モニタリングシステムを使用して測定した。システムは、16匹のげっ歯類動物から同時に、増幅したEEG(x100、バンドパス1~30Hz;デジタル化速度100Hz)、積分したEMG(バンドパス 10~100Hz、RMS積分)、および遠隔測定した体温ならびに非特異的自発運動行動および摂水行動をモニターした。覚醒状態は、EEG周期および振幅特徴抽出を使用して、10秒ごとに、NREM睡眠、REM睡眠、覚醒、またはシータ優性覚醒としてオンラインで分類し、メンバーシップアルゴリズムを位置づけた。個々に得られたEEG‐覚醒状態鋳型およびEMG基準はREM睡眠をシータ優性覚醒と区別した。摂水および自発運動行動は、10秒ごとに別個の事象として自動的に記録し、そして体温は1分ごとに記録した。データの特性は、EEGおよびEMGシグナルをたびたびオンラインで検証することにより確実なものにした。
【0059】
薬物処置:
NPY Y1受容体アンタゴニストは0.25%メチルセルロースベヒクル中5、10、20または40mg/kgで投与した。式IaのNPY Y5受容体アンタゴニストは5、10または40mg/kgで投与し、式IIaのNPY Y5受容体アンタゴニストは10および40mg/kgで投与した(両方とも、32%ヒドロキシ‐ベータシクロデキストリンベヒクル中)。薬物およびベヒクルは経口強制投与により投与した。ラットは、対応する群において処置を受けるように無作為に割り当てられた。バイオアッセイの記録期間は処置前後、30時間であった。それぞれの処置間の”ウォッシュアウト”は少なくとも7日間であった。
【0060】
EEG睡眠‐覚醒変数によって記録される変数としては、NREM、REM、全睡眠、ならびに睡眠および覚醒の一続きの持続時間が挙げられ、以下のように定義し、計算した:
・覚醒、NREM睡眠、およびREM睡眠:1時間毎または5分毎のびん(bin)における状態の時間割合。
・全睡眠、NREM睡眠、REM睡眠、自発運動行動、および摂水行動の累積:処置後に累積された基準以上の変化。基準スコアからの変化は対応する概日時間において処置後の値から基準値を減じることにより計算した。基準スコアからの変化は時間毎のびんにおいて累積し、これらの値をプロットした。
・睡眠、覚醒、およびREM睡眠の一続き:分で測定した、それぞれの時間ごとの中断されない睡眠の最長の一続きと平均の一続き。”中断”は、3以上の連続した10秒間の覚醒期間として定義する。類似の数量化は、覚醒およびREM睡眠の期間に関しても行われる。睡眠一続きの長さは、夜間、周期的に覚醒するヒトの傾向に対応する可能性があるため、興味深く(そのような覚醒は通常思い出さない)、そしてそれはヒトにおける睡眠の回復値を決定する重要な因子であることが示されている。睡眠一続きの長さの前臨床的測定値はまた、ヒトにおける催眠効果の強力な予測因子である。
・自発運動行動:1時間または5分間びん毎のカウント。
・自発運動行動強度:EEGに定義された睡眠‐覚醒1分毎の自発運動行動のカウント。この変量は、覚醒時間の量とは独立した、自発運動行動の評価を可能にし、したがって、それを覚醒‐または睡眠促進効果の特性を定量化するために使用することができる(Edgar et al.1997)。
【0061】
統計的分析‐混合モデル:
処置効果を、反復計測データのための混合モデルによって分析した。ベヒクルとそれぞれの活性な処置を比較する混合モデルを使用した。すべてのモデルに関して、分析は処置後時間に基づいており、それぞれの時間は対応する基準時間に対して調整されている。基準時間に関する調整は、基準時間中のグループ間の差を考慮する。混合モデルは、時間、処置、および処置x時間相互作用の固定効果を含み:ラットは無作為効果として処置された。不均一自己回帰共分散構造をモデル化した。この共分散構造は反復計測に特有で、そこでは分散は経時的に変化し、連続した時間で採った測定値は、ばらばらに採ったものより、きわめて相関が高い。
【0062】
結果:式IaのNPY Y5受容体アンタゴニスト(5、10および40mg/kg)は用量に関連した様式でREM睡眠を有意に減少させ、NREM睡眠および睡眠連続性(睡眠一続きの長)を増大させた。40mg/kg投与後では、REM睡眠阻害およびNREM睡眠促進効果は少なくとも48時間持続し、投薬4.5日後でも依然として観察された。この化合物に関して観察された極めて長い作用の持続時間は薬物暴露と相関するようだった。式IIaのNPY Y5受容体アンタゴニスト(10および40mg/kg)は投薬量に依存して有意にREM睡眠を阻害した。5、10、20および40mg/kgで試験したNPY Y1受容体アンタゴニストは、睡眠変数にほんのわずかの効果しか与えなかった(表1)。
【0063】
【表1】

【0064】
“REM睡眠における最大変化”は、薬物投与後はじめの24時間中のベヒクル対照に比較したREM睡眠に費やされた累積時間である。負の値は、分で表したREM睡眠の減少または阻害を示す。で示されたすべての値はp<0.025において統計的に差がある(反復計測のための混合モデル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
REM睡眠を減少させることにおいて有効な量のNPY Y5アンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物においてREM睡眠を減少させる方法。
【請求項2】
NPY Y5アンタゴニストが式:
【化1】

の化合物、または薬剤的に受容可能なその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは前記のいずれかである、請求項1に記載の方法;
式中、Xは塩素、臭素、フッ素、ヨウ素、トリフルオロメチル、水素、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C5またはC6シクロアルキル、エステル、アミド、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。
【請求項3】
NPY Y5アンタゴニストが式;
【化2】

の化合物、または薬剤的に受容可能なその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは前記のいずれかである、請求項1に記載の方法;
式中、Aは酸素または水素であり、W、X、YおよびZは独立してNまたはCR1であり、ここでR1は、それぞれの存在において、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、アミノにより置換された(C1~C6)アルコキシ、モノもしくはジ゛-(C1~C6)アルキルアミノにより置換された(C1~C6)アルコキシまたは(C1~C6)アルコキシにより置換された(C1~C6)アルコキシ、(C3~C7)シクロアルキル、(C3~C7)シクロアルキル(C1~C4)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C3~C7)シクロアルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C3~C7)シクロアルキニル、ハロ(C1~C6)アルキル、ハロ(C1~C6)アルキル、ハロ(C1~C6)アルコキシ、モノおよびジ(C1~C6)アルキルアミノ、アミノ(C1~C6)アルキル、ならびにモノおよびジ(C1~C6)アルキルアミノ(C1~C6)アルキルから独立して選択される。
【請求項4】
急速眼球運動(REM)睡眠を減少させることにおいて有効である量のNPY Y5アンタゴニストを哺乳動物に投与することを含む、該哺乳動物において過度なREM睡眠が特徴の神経障害を治療および予防する方法。
【請求項5】
神経障害が、鬱病、月経前神経不安疾患、強迫神経症、全般性不安障害、パニック、心的外傷後ストレス障害、肥満、ならびに、食欲不振および多食症を含む摂食障害、恐怖症、境界人格、分裂情動性障害および統合失調症、痴呆および情動記憶の処理を含む認知機能障害、線維筋痛症、慢性関節リウマチおよび変形性関節炎、不眠、過眠症、睡眠時随伴症、ナルコレプシー、睡眠関連呼吸障害、夜尿症、脚不穏症候群、発作障害および、とりわけ時間帯間のジェットトラベル(時差ぼけ)を含む日周期関連障害からなる精神疾患の群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項6】
鬱病障害が、大鬱病、単極性鬱病、双極性障害、季節的情動障害、冬季鬱病、気分変調、自殺性鬱病患者、鬱病を伴うアルツハイマーおよびパーキンソン病からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項7】
神経障害を経験する前に哺乳動物にNPY Y5アンタゴニストが投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
NPY Y5アンタゴニストが式:
【化3】

の化合物、または薬剤的に受容可能なその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは前記のいずれかである、請求項6に記載の方法;
式中、Xは塩素、臭素、ヨウ素、トリフルオロメチル、水素、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C5またはC6シクロアルキル、エステル、アミド、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。
【請求項9】
NPY Y5アンタゴニストが式:
【化4】

の化合物、または薬剤的に受容可能なその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグまたは前記のいずれかである、請求項6に記載の方法;
式中、Aは酸素または水素であり;
W、X、YおよびZは独立してNまたはCR1であり、ここでR1は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、(C1~C6)アルキル、(C1~C6)アルコキシ、アミノにより置換された(C1~C6)アルコキシ、モノもしくはジ-(C1~C6)アルキルアミノにより置換された(C1~C6)アルコキシまたは(C1~C6)アルコキシにより置換された(C1~C6)アルコキシ、(C3~C7)シクロアルキル、(C3~C7)シクロアルキル(C1~C4)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C3~C7)シクロアルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C3~C7)シクロアルキニル、ハロ(C1~C6)アルキル、ハロ(C1~C6)アルキル、ハロ(C1~C6)アルコキシ、モノおよびジ(C1~C6)アルキルアミノ、アミノ(C1~C6)アルキル、ならびにモノおよびジ(C1~C6)アルキルアミノ(C1~C6)アルキルからそれぞれの存在において独立して選択される。
【請求項10】
NPY Y5アンタゴニストが式:
【化5】

の化合物である、請求項13に記載の方法。
【請求項11】
眼球運動速度を低下させること、REM睡眠の密度および潜伏期を減少させること、REM睡眠を中断させること、ならびに非REM睡眠および全睡眠統合を増加させることを含む、REM睡眠を調節する方法。

【公表番号】特表2007−506731(P2007−506731A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527511(P2006−527511)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003121
【国際公開番号】WO2005/030210
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】