説明

NR2B受容体アンタゴニストとしての2−[(4−ベンジル)−1−ピペリジニル)メチル]ベンゾイミダゾール−5−オール誘導体

2−[(4−ベンジル)−1−ピペリジニル)メチル]ベンゾイミダゾール−5−オール誘導体は疼痛及び他のNMDA媒介疾患の治療において有用なNMDA NR2B受容体アンタゴニストである。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
グルタメートは、主にN−メチル−D−アスパルテート(NMDA)受容体を介して作用することにより慢性疼痛及び疼痛関連神経毒性に関連するプロセスにおいて重要な役割を果たす。従って、イオンチャネルアンタゴニスト、特にNMDAアンタゴニストを用いて前記作用を阻害することは疼痛の治療及びコントロールにおいて有効であり得る。
【0002】
公知のNMDAアンタゴニストにはケタミン、デキストロメトルファン及び3−(2−カルボキシピペラジン−4−イル)−プロピル−1−ホスホン酸(CPP)が含まれる。前記化合物はヘルペス後神経痛、脊髄損傷からの中枢痛及び幻肢痛を含めた多数の神経障害の症状を緩和すると報告されているが(J.D.Kristensenら,Pain,51:249−253(1992);K.Eideら,Pain,61:221−228(1995);D.J.Knoxら,Anaesth.Intensive Care,23:620−622(1995);及びM.B.Nzsら,Clin.Neuropharmacol.,18:360−368(1995))、これらの化合物の広範囲にわたる使用は望ましくない副作用により妨げられている。鎮痛用量での副作用には、眩暈、頭痛、幻覚、神経不安や認識及び運動機能の障害のような精神異常作用が含まれる。また、鎮痛用量よりも僅かに高い用量ではより重篤な幻覚、鎮静及び運動失調が生ずる。従って、望ましくない副作用を全く生じないかまたは副作用をより少なく及び/またはより軽度にしか生じない新規なNMDAアンタゴニストの提供が望まれている。
【0003】
NMDA受容体はサブユニットのヘテロマルチマーアセンブリであり、これらのサブユニットのうちNR1及びNR2と称される2つの主要サブユニットファミリーがクローン化されている。理論に束縛されないが、通常哺乳動物中枢神経系(CNA)中の各種機能的NMDA受容体はNR1サブユニットとNR2サブユニットを組み合わせることにより形成されると考えられる。NR2サブユニットファミリーは、4つの各サブユニットタイプ、すなわちNR2A、NR2B、NR2C及びNR2Dに分類される。I.Ishiiら,J.Biol.Chem.,268:2836−2843(1993);A.Wenelら,Neural Report,7:45−48(1995);及びD.J.Laurieら,Mol.Brain Res.,51:23−32(1997)は、サブユニットを多種多様に組み合せるとイオンゲーティング特性、マグネシウム感受性、薬理学的プロフィールのような生理学的・薬理学的特性及び解剖学的分布の点で異なる各種NMDA受容体が生じることを記載している。
【0004】
例えば、NR1サブユニットは脳全体に存在しており、NR2サブユニットは別に分布している。特に、NR2Bの分布マップは疼痛を緩和しながら副作用の確率を低下させると考えられる。例えば、S.Boyceら,Neuropharmacology,38:611−632(1999)は選択的NMDA NR2Bアンタゴニストの少ない副作用での疼痛に対する効果を記載している。よって、NR2Bサブユニット含有受容体を標的とする新規なNMDAアンタゴニストの提供が望ましい。
【0005】
NMDAアンタゴニストとしてのフェノール化合物は米国特許第5,306,723号明細書、同第5,436,255号明細書、国際特許出願公開第91/17156号パンフレット、同第92/19502号パンフレット、同第93/02052号パンフレット、同第94/29571号パンフレット、同第95/28057号パンフレット、同第96/37226号パンフレット及び欧州特許出願公開第04422506号明細書に記載されている。フェノールまたはイミダゾールで置換されたベンジルピペリジンはZ.L.Zhouら,J.Medicinal Chemistry,42:2993−3000(1999);T.F.Gregoryら,1999年8月22〜26日にルイジアナ州ニューオリンズで開催された第218回アメリカ化学会全国会議のポスター#94に記載されている。他のNMDA NR2B選択的化合物は欧州特許出願公開第787493号明細書及びBritish J.Pharmacol.,123:463(1998)に記載されている。しかしながら、NR2B受容体を標的とする新規なNMDAアンタゴニストは依然として要望されている。
【0006】
国際特許出願公開第94/21615号パンフレットは、式:
【0007】
【化2】

(式中、Qは置換ピペリジル部分であり得る)
を有するドーパミンD4アンタゴニストベンゾイミダゾール−ピペリジン化合物を記載している。これらの化合物は国際特許出願公開第01/30330号パンフレットに疼痛の治療のために有用なNMDA NR2Bアンタゴニストであると開示されている。
【0008】
国際特許出願公開第01/32615号パンフレットは、式:
【0009】
【化3】

(式中、R及びRは場合により置換されていてもよいフェニルまたはベンゾイミダゾリル基であり得る)
を有する1,4−ジ置換NMDA/NR2Bアンタゴニストを記載している。
【0010】
国際特許出願公開第02/34718号パンフレットは、式:
【0011】
【化4】

を有するNR2B選択的NMDAアンタゴニストを記載している。
【発明の開示】
【0012】
本発明は、新規な2−[(4−ベンジル)−1−ピペリジニル]メチル]ベンゾイミダゾール−5−オール誘導体、前記化合物を利用する医薬組成物、及び前記化合物を用いる疼痛及びパーキンソン病の新規治療方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、式I:
【0014】
【化5】

(式中、RはHまたはOHであり、RはHまたはOHであり、RはHであるかまたはR及びRは一緒になってオキソを表し、R及びRは独立してH、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはトリフルオロメチルである)
を有する化合物及びその医薬的に許容され得る塩を提供する。
【0015】
式Iの1群は、R、R及びRがそれぞれHである化合物である。式Iの別の群は、RがOHである化合物である。
【0016】
本発明の代表的化合物を下表に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
別の態様で、本発明は、治療有効量の式Iを有する化合物及び医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
別の態様で、本発明は、治療を要する患者に対して治療有効量の式Iを有する化合物を投与することを含む疼痛の治療方法を提供する。疼痛は、ヘルペス後神経痛及び糖尿病性神経障害のような神経障害性疼痛である。
【0020】
更に別の態様で、本発明は、治療を要する者に対して治療有効量の式Iを有する化合物を投与することを含むパーキンソン病の治療方法を提供する。
【0021】
光学異性体−ジアステレオマー−幾何異性体−互変異性体
本明細書に記載されている化合物は不斉中心を含み得、よってエナンチオマーとして存在し得る。本発明の化合物が2つ以上の不斉中心を有しているときには更にジアステレオマーとして存在し得る。本発明は、実質的に純粋な分割エナンチオマー、そのラセミ混合物及びジアステレオマーの混合物のようなすべての考えられる立体異性体を含む。上記式Iは特定位置に明確な立体化学なしに示されている。本発明は、式Iを有するすべての立体異性体及びその医薬的に許容され得る塩を含む。エナンチオマーのジアステレオマー対は、例えば適当な溶媒からの分別結晶により分離され得、こうして得られたエナンチオマーの対は慣用の手段により、例えば分割剤として光学活性な酸または塩基を用いることにより、またはキラルHPLCカラムを用いることにより各立体異性体に分離され得る。更に、一般式Iを有する化合物のエナンチオマーまたはジアステレオマーは光学的に純粋な出発物質または公知の立体配置を有する試薬を用いて立体特異的合成により得ることができる。
【0022】
本明細書に記載されている化合物の幾つかはオレフィン二重結合を含み、特記しない限りE及びZ幾何異性体の両方を含むことを意味する。
【0023】
本明細書に記載されている化合物の幾つか(互変異性体と称する)は、いろいろな水素の結合点を有して存在し得る。その例は、ケト−エノール互変異性体として公知のケトン及びそのエノール形態であり得る。各互変異性体及びその混合物も式Iを有する化合物に包含される。
【0024】

用語「医薬的に許容され得る塩」は、医薬的に許容され得る非毒性塩基または酸から製造される塩を指す。本発明の化合物が酸性のとき、その対応する塩は通常(無機塩基及び有機塩基を含めた)医薬的に許容され得る非毒性塩基から製造され得る。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、第一銅及び第二銅、第一鉄及び第二鉄、リチウム、マグネシウム、第一マンガン及び第二マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛の塩等が含まれる。アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩が特に好ましい。医薬的に許容され得る有機非毒性塩基から誘導される塩には、第1級,第2級及び第3級アミン、環状アミン及び置換アミン(例えば、天然に存在する置換アミン及び合成置換アミン)の塩が含まれる。塩の製造元であり得る他の医薬的に許容され得る有機非毒性塩基にはイオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等が含まれる。
【0025】
本発明の化合物が塩基性のとき、その対応する塩は通常(無機酸及び有機酸を含めた)医薬的に許容され得る非毒性酸から製造され得る。前記酸の例には酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が含まれる。特に好ましい酸はクエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸である。
【0026】
プロドラッグ
本発明はその範囲内に本発明の化合物のプロドラッグを包含する。一般的に、前記プロドラッグは、インビボで容易に所要化合物に変換され得る本発明の化合物の官能誘導体である。よって、本発明の治療方法において、用語「投与する」は本明細書中に具体的に記載されている化合物または本明細書中に具体的に記載されていないが、患者に投与後インビボで特定化合物に変換する化合物を用いる記載されている各種状態の治療を包含する。適当なプロドラッグ誘導体の選択及び製造のための一般的手順は、例えば「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)」,H.Bundgaard編,Elsevier(1985年)発行に記載されている。前記化合物の代謝物は本発明の化合物を生物学的環境に導入したときに生成される活性種を含む。
【0027】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、活性成分として式Iで表される化合物(または、その医薬的に許容され得る塩)、医薬的に許容され得る担体及び任意成分として他の治療用成分または助剤を含む。この組成物は経口、直腸、局所及び(皮下、筋肉内及び静脈内を含めた)非経口投与に適した組成物を含むが、所与の症例における最も適当なルートは特定の宿主、活性成分を投与する状態の種類及び重篤度に依存する。医薬組成物は有利には単位投与剤形で提供され、製薬業界で公知の方法により製造され得る。
【0028】
実際、本発明の式Iで表される化合物またはその医薬的に許容され得る塩は活性成分として一般的な医薬コンパウンディング技術に従って医薬担体と均密に混合され得る。担体は所望する投与(例えば、経口、または静脈内を含めた非経口)用製剤の形態に応じて各種形態をとり得る。よって、本発明の医薬組成物は経口投与に適したばらばらの単位、例えばそれぞれ所定量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤として提供され得る。更に、前記組成物は散剤、顆粒剤、液剤、水性液体中の懸濁液、非水性液体、水中油型エマルションまたは油中水型エマルションとして提供され得る。上記した一般的な剤形に加えて、式Iで表される化合物またはその医薬的に許容され得る塩は制御放出手段及び/またはデリバリーデバイスを用いても投与され得る。前記組成物は任意の製薬方法にり製造され得る。通常、前記方法は、活性成分を1つ以上の必要な成分を構成する担体と接触させる段階を含む。通常、前記組成物は活性成分を液体担体及び/または微細な固体担体と均一且つ均密に混合することにより製造される。その後、生成物は通常所望の形態に成形され得る。
【0029】
従って、本発明の医薬組成物は医薬的に許容され得る担体及び式Iを有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩を含み得る。式Iを有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩は1つ以上の他の治療上活性な化合物と組合せて医薬組成物中に配合され得る。
【0030】
使用される医薬担体は、例えば固体、液体または気体であり得る。固体担体の例にはラクトース、白陶土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸が含まれる。液体担体の例はシュガーシロップ、落花生油、オリーブ油及び水である。気体担体の例には二酸化炭素及び窒素が含まれる。
【0031】
経口投与用組成物を製造する場合、慣用の医薬媒体が使用され得る。例えば、懸濁液、エリキシル剤や液剤のような液体製剤を形成するためには水、グリコール、オイル、アルコール、矯臭剤、保存剤、着色剤等の担体が使用され得る。散剤、カプセル剤や錠剤のような経口固体製剤を形成するためにはスターチ、糖、微晶質セルロース、希釈剤、顆粒化剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等が使用され得る。投与が容易であるので、固体医薬担体が使用されている錠剤及びカプセル剤が好ましい経口投与単位である。場合により錠剤を一般的な水性または非水性技術により被覆してもよい。
【0032】
本発明の組成物を含む錠剤は、場合により1つ以上の補助成分または助剤と一緒に圧縮または成形することにより製造され得る。圧縮錠は、適当な機械において粉末または顆粒のような自由流動形態の活性成分を場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合して圧縮することにより製造され得る。成形錠は、適当な機械において不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を成形することにより製造され得る。各錠剤は好ましくは約1〜約500mgの活性成分を含有し、各カシェ剤またはカプセル剤は好ましくは約1〜約500mgの活性成分を含有する。
【0033】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、水中に活性化合物を含む溶液または懸濁液として製造され得る。適当な界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースを配合してもよい。分散液はオイル中のグリコール、液体ポリエチレングリコール及びその混合物を用いても製造され得る。更に、保存剤は微生物の好ましくない増殖を防止するために配合され得る。
【0034】
注射用に適した本発明の医薬組成物には滅菌水性溶液または分散液が含まれる。更に、前記組成物は滅菌の注射用溶液または分散液を即時調合するための滅菌粉末の形態をとり得る。いずれの場合も、最終注射形態は滅菌状態でなければならず、容易に注射可能であるように十分に流動性でなければならない。前記医薬組成物は製造及び貯蔵条件下で安定でなければならない。よって、前記組成物は細菌や真菌のような微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、植物油及びその適当な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。
【0035】
本発明の医薬組成物は局所使用に適した形態、例えばエアゾール、クリーム、軟膏、ローション、散布粉末等の形態をとり得る。更に、前記組成物は経皮デバイスを用いて使用するのに適した形態をとり得る。前記組成物は本発明の式Iで表される化合物またはその医薬的に許容され得る塩を一般的な加工方法を用いて使用することにより製造され得る。例えば、クリーム剤または軟膏剤は、所望のコンシステンシーを有するクリーム剤または軟膏剤を得るために親水性材料及び水を約5〜約10重量%の化合物と混合することにより製造される。
【0036】
本発明の医薬組成物は、担体が固体である直腸投与に適した形態をとり得る。混合物が1回投与座薬を構成することが好ましい。適当な担体にはカカオ脂及び当業界で一般的に使用されている他の材料が含まれる。座薬は有利には組成物を軟化または溶融させた担体と混合した後冷却し、モールドで成型することにより形成され得る。
【0037】
上記した担体成分に加えて、上記した医薬組成物は適当ならば1つ以上の追加担体成分、例えば希釈剤、緩衝剤、矯臭剤、結合剤、界面活性剤、粘ちょう剤、滑沢剤、(酸化防止剤を含めた)保存剤等を配合し得る。更に、組成物をレシピエントの血液と等張性とするために他の助剤を配合してもよい。式Iで表される化合物またはその医薬的に許容され得る塩を含む組成物は粉末または液体濃縮物の形態でも製造され得る。
【0038】
有用性
式Iを有する化合物はNMDA NR2B受容体アンタゴニストであり、そのままNR2B受容体を介して媒介される疾患及び障害の治療及び予防のために有用である。前記疾患及び障害には、神経障害性疼痛(例えば、ヘルペス後神経痛、神経損傷、陰門痛のような痛み(dynias)、幻肢痛、神経根ひきぬき損傷、疼痛性糖尿病性ニューロパシー、疼痛性外傷性モノニューロパシー、疼痛性ポリニューロパシー)、(事実上任意のレベルの神経系の病巣に起因する可能性がある)中枢疼痛症候群、手術後疼痛症候群(例えば、乳房切除術後症候群、開胸術後症候群、断端痛)、骨及び関節痛(骨関節症)、反復運動痛、歯痛、ガン痛、筋膜性疼痛(筋肉損傷、線維筋痛)、術中疼痛(一般手術、婦人科手術)、慢性疼痛、月経困難症、狭心症に伴う疼痛、いろいろな起源の炎症性疼痛(例えば、骨関節症、関節リウマチ、リウマチ疾患、腱滑膜炎及び痛風)、偏頭痛、群発頭痛、うつ病、不安症、精神分裂病、卒中、外傷性脳損傷、脳虚血、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病、感音性聴力損失、耳鳴り、てんかん性発作,神経毒中毒または脳へのグルコース及び/または酸素障害に起因する神経損傷、視覚伝導路の神経変性に起因する視覚損失、レストレスレッグ症候群、多システム萎縮、非血管性頭痛、原発性痛覚過敏、続発性痛覚過敏、原発性異疼痛、続発性異疼痛、または中枢感作に起因する他の疼痛が含まれるが、これらに限定されない。式Iを有する化合物はジスキネシア、特に通常量のL−ドーパに伴う副作用を予防するために使用され得る。更に、式Iを有する化合物は疼痛のオピオイド治療の耐性及び/または依存性を減らすため及び例えばアルコール、オピオイドやコカインの禁断症候群を治療するために使用され得る。
【0039】
併用療法
式Iを有する化合物は、式Iを有する化合物が有用である疾患または状態の治療/予防/抑制または緩解において使用される他の薬物と一緒に使用され得る。これらの他の薬物は通常使用される量を通常使用されるルートにより式Iを有する化合物と同時または逐次に投与され得る。式Iを有する化合物を1つ以上の他の薬物と同時に使用する場合、式Iを有する化合物に加えて他の薬物を含有する医薬組成物が好ましい。従って、本発明の医薬組成物には、式Iを有する化合物に加えて1つ以上の他の活性成分をも含有する医薬組成物が含まれる。式Iを有する化合物と別々に投与する形態でまたは同一の医薬組成物中で組み合わされ得る他の活性成分の例には、(1)非ステロイド消炎剤、(2)COX−2阻害剤、(3)ブラジキニンB1受容体アンタゴニスト、(4)ナトリウムチャネルアンタゴニスト、(5)酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害剤、(6)グリシン部位アンタゴニスト、(7)カリウムチャネルオープナー、(8)AMP/カイネート受容体アンタゴニスト、(9)カルシウムチャネルアンタゴニスト、(10)GABA−A受容体モジュレーター(例えば、GABA−A受容体アゴニスト)、(11)マトリックスメタロプロテアーゼ(NMP)阻害剤、(12)血栓溶解剤、(13)モルヒネのようなオピオイド、及び(14)好中球阻害因子(NIF)が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
生物学的評価のための実験プロトコル
(a)特定化合物のNR1A/2B NMDA受容体機能を抑制する化合物の活性の評価(FLIPRアッセイ)
NR1A/2B受容体媒介Ca2+流入として測定した特定化合物のNR1A/2B NMDA受容体機能を抑制する活性は以下のように評価する。
【0041】
NR1A/2B受容体をトランスフェクトしたL(tk)細胞を3×10細胞/プレートで96ウェルフォーマットで平板培養し、通常の増殖培地(ピルビン酸Na、4500mg グルコース、pen/strep、グルタミン、10% FCS及び0.5mg/ml ゲネチシンを含むダルベッコMEM)において1〜2日間増殖させる。500μM ケタミンの存在下で4nM デキサメタゾンを16〜24時間添加することにより前記細胞においてNR1A/2B発現を誘導する。受容体誘導後、細胞をLabsystem Cellwasherを用いてアッセイ緩衝液(20mM HEPES、0.1% BSA、2mM CaCl及び250μM プロペネシドを含有するハンクス平衡塩類溶液(HBSS−Mg++フリー))で2回洗浄する。すべてのウェル中の細胞に光を避けながら37℃において0.5% FBS及び0.04% Pluronic F−127(Molecular Probes,Inc.)を含有するアッセイ緩衝液中4μMのCa++感受性染料Fluo−3(Molecular Probes,Inc.)を1時間充填する。次いで、細胞をCellwasherを用いてアッセイ緩衝液で4回洗浄し、緩衝液(100μl)中に残した。溶液中の試験化合物を2分間の予処理のためにFLIPR(蛍光イメージングプレートリーダー)を用いて各試験ウェルにピペットで移した。この間、蛍光強度を記録する(488nmで励起、530nmで発光)。次いで、アゴニスト溶液(グルタメート/グリシン,50μl,最終濃度1μM/4μM)をFLIPRを用いて既に試験化合物またはビヒクルを含有する緩衝液(150μl)を収容している各ウェルに添加し、蛍光を10分間連続的モニターする。終点蛍光値を用いて、ビヒクルのみのサンプルについてのアゴニスト刺激シグナルと各濃度の試験化合物とインキュベートした細胞についてのアゴニスト刺激シグナルを比較するIC50値を求めた。
【0042】
(b)ヒトNR1A/NR2B受容体に対する化合物の見かけ解離定数(Ki)の測定(結合アッセイ)
ラジオリガンド結合アッセイを室温で96ウェル微量測定プレートにおいて150mM NaClを含有する20mM Hepes緩衝液(pH7.4)中1.0mlの最終アッセイ容量で実施する。試験化合物の溶液はDMSO中で調製し、濃度が3倍ずつ異なる10個の溶液(各20μl)が生ずるようにDMSOで段階希釈した。非特異的結合(NSB)はAMD−1(最終濃度10μM)を用いて評価し、総結合(TB)はDMSOを用いて評価した。NR1A/NR2B受容体(最終濃度40pM)の溶液及びトリチウム化AMD−2(最終濃度1nM)を試験化合物に添加した。室温で3時間インキュベートした後、サンプルを(0.05% PEI,ポリエチレンイミン Sigma P−3143中に予浸漬)Packard GF/Bフィルターを介して濾過し、1回あたり1mlの冷20mM Hepes緩衝液を用いて10回洗浄する。濾紙を真空乾燥した後、Packard Microscint−20(40μl)を添加し、結合放射能をPackard TopCountを用いて測定した。見かけ解離定数(Ki)、最大阻害%(%Imax)、最小阻害%(%Imin)及びヒルスロープ(nH)は結合CPMデータを下記式#1への非線形最小二乗あてはめにより測定した。
【0043】
【数1】

ここで、Kはホット飽和により測定した受容体に対するラジオリガンドの見かけ解離定数であり、SBはTB及びNSBの差から求めた特異的に結合したCPMである。
【0044】
【化6】

【0045】
化合物AMD−1及びAMD−2は下記する一般的反応スキームに従って合成され得る。
【0046】
【化7】

【0047】
スキーム1に従って、室温において適当に置換されたベンゾニトリル1をメタノール中に含む溶液に塩化水素を通気する。揮発物を減圧下で除去し、生じた残渣をエーテルと一緒に粉砕し、濾過して、所望イミデート2を得る。このイミデート2を室温でメタノール中に溶解し、室温においてアミン3で処理し、アルゴン下で撹拌する。揮発物を減圧下で除去し、残渣を分取HPLCまたはエタノールとの粉砕により、アミジン1aを得る。
【0048】
【化8】

【0049】
スキーム2に従って、室温及びアルゴン下においてアミン3aをエーテル中に溶解し、エーテル中1M 塩化水素(1当量)を一度に添加して処理した。生じた沈殿を10分間激しく撹拌する。揮発物を減圧下で除去する。残渣をトルエン中に懸濁し、アルゴン下で0℃に冷却し、2.0M トリエチルアルミニウム(1.05当量)を滴下して処理し、室温において45分間撹拌して、中間体6を得る(単離せず)。化合物6をニトリル1をトルエン中に含む溶液に添加する。反応物を密封管において撹拌することなく80℃に18時間加熱し、室温に冷却し、シリカゲルカラムに充填し、メタノール/ジクロロメタンで溶離して、アミジン1aを得る。
【0050】
トリチウム化AMD−2の合成
トリチウム化AMD−2を下記する手順により製造した。AMD−2のフェノール(2mg,0.008ミリモル)をジメチルホルムアミド(0.6ml)及び炭酸カリウム(1.2mg)中に1時間かけて溶解させた。高い特異的活性を有するトリチウム化ヨウ化メチル(50mCi,0.0006モル,トルエン中1ml,American Radiolabeled Chemicals)を室温において添加し、2時間撹拌した。反応混合物をワットマンPTFE 0.45μm 無針濾過デバイスを用いて濾過して、不溶性炭酸カリウムを除去し、無水エタノール(2ml,Pharmaco)で洗浄し、合わせた濾液を室温において回転蒸発器を用いて濃縮乾固した。これによっても、未反応のトリチウム化ヨウ化メチルを除去した。残渣をPhenomenx Luna C8 semi−prepカラム(Luna 5 ミクロC8(2),250×10.0mm)を用いて20分間で20/80 アセトニトリル/水+0.1% トリフルオロ酢酸→100% アセトニトリル+0.1% トリフルオロ酢酸の勾配系で溶離するHPLCクロマトグラフィーにより精製した。生成物の総活性は8mCiであった。Waters C−18 Sep−pakカラム(Waters Sep−Pak PLUS C18)に吸着させ、水、次いで無水エタノールで溶離させることにより更に精製した。生成物を無水エタノール(10ml)で希釈した後、最後の分析にかけた。
【0051】
式Iを有する化合物は、下記スキームに示す手順に従って製造され得る。
【0052】
【化9】

【0053】
すなわち、4−ベンジルピペリジン−1−酢酸化合物をカップリング剤(例えば、EDC//HOBt)の存在下で4−メトキシ−1,2−フェニレンジアミンと反応させた後、高温において酸(例えば、酢酸)で処理して、対応の5−メトキシ−2−(4−ベンジルピペリジン−1−イル)ベンゾイミダゾール化合物を得る。後者は高温において酸(例えば、HBr)で処理すると式Iの化合物に変換される。式I(式中、RがOHであり、RがHである)を有する化合物は、対応のカルボニル化合物(すなわち、R+R=オキソ)から還元剤(例えば、ホウ水素化ナトリウム)を用いて製造され得る。
【0054】
4−ベンジルピペリジン−1−酢酸化合物は、4−ベンジルピペリジン誘導体及びブロモ酢酸エチルから塩基(例えば、ジイソプロピルエチルアミン)の存在下で反応させた後、エステルを対応の酸に加水分解することにより製造され得る。4−ベンジルピペリジン誘導体は当業界で公知であるかまたは慣用の有機合成方法に従って製造され得る。特定中間体化合物の製造方法を以下に説明する。
【0055】
中間体A2:4−(2−フルオロベンジル)ピペリジンの製造
4−フルオロベンジルクロリド(10.0g,69.0ミリモル)及びトリエチルホスファイト(11.5g,69.0ミリモル)のニート混合物を150℃に加熱し、15時間撹拌した。反応混合物をトルエンから2回濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離1:1 ヘキサン:酢酸エチル(EtOAc)→10% MEOH/EtOAc)により精製して、ホスホネートを得た。
【0056】
このホスホネート(16g,69ミリモル)を1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(25ml)中に含む溶液にNaH(4.4g,110ミリモル)を添加し、N−ベンジル−4−ピペリジノン(13g,69ミリモル)の溶液をゆっくり添加した。反応混合物を20分間撹拌し、0℃に冷却し、水で注意深く反応停止した。ジクロロメタン(DCM)を添加し、層を分離した。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮して、1−ベンジル−4−(2−フルオロベンジル)ピペリジンを得た。これを更に精製することなく使用した。
【0057】
1−ベンジル−4−(2−フルオロベンジル)ピペリジン(7g,25ミリモル)をEtOH(150ml)中に含む溶液に10% 水酸化パラジウム(500mg)を添加した。反応混合物を50psi 水素下でパー振とう機に置き、15時間振とうした。反応混合物をセライトを介して濾過し、濃縮しシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離95:5:0.5→90:10:1 ジクロロメタン:メタノール:NHOH)により精製して、4−(2−フルオロベンジル)ピペリジンを得た:質量スペクトルm/z 321[(M+H);計算値(C2024)=321]。
【0058】
適当なベンジルクロリドを用いて中間体A2を製造するために使用した手順を繰り返して、下記中間体を得た:
中間体A3:4−(3−フルオロベンジル)ピペリジン、
中間体A4:4−(4−フルオロベンジル)ピペリジン、
中間体A5:4−(2,6−ジフルオロベンジル)ピペリジン、
中間体A6:4−(4−メチルベンジル)ピペリジン、
中間体A7:4−(4−トリフルオロメチルベンジル)ピペリジン。
【0059】
中間体A11:トランス−4−ベンジル−ピペリジン−3−オールの製造
段階1:1,4−ジベンジル−ピペリジニウムブロミドの製造
4−ベンジルピリジン(5g,29.54ミリモル)を無水アセトン(25ml)中に含む溶液をN下で撹拌した後臭化ベンジル(5.15g,30.14ミリモル,1.02当量)を添加した。黄色懸濁液が形成されたら、15分後に粘性の白色沈殿が生じた。懸濁液を18時間撹拌し、固体を濾過し、エーテルで洗浄した。固体を真空下で乾燥して、白色固体(9.15g,91%)を得た。
【0060】
段階2:1,4−ジベンジル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジンの製造
EtOH(25ml)及び水(25ml)に臭化物塩(9.15g,26.89ミリモル)を添加し、0℃に冷却した。ホウ水素化ナトリウム(2.04g,53.78ミリモル,2当量)を15分間かけて4回にわけて等分ずつ添加して、橙色懸濁液を形成した。添加中溶液を<5℃に維持しながらホウ水素化物を添加し、撹拌しながら0℃で2時間、次いで室温で18時間放置した。有機物を真空下で蒸発させた後、水(75ml)を添加した。水性層をEtOAcで3回抽出し、合わせた有機物をMgSOで乾燥し、濾過し、蒸発してピンク色油状物を生じさせた。この油状物を少量のCHCl中に溶解し、シリカプラグを介してCHCl(〜lL)、次いでEtOAc(1L)を流して溶離し、最初の500ml含有不純物を捨てた。フラクションを蒸発させて、黄色油状物(6.07g,85.8%)を得た。
【0061】
段階3:トランス−1,4−ジベンジル−ピペリジン−3−オールの製造
0℃においてアルケン(5.37g,20.38ミリモル)を無水テトラヒドロフラン(THF)(200ml)中に含む溶液を撹拌し、ここに1M ボラン−THF(183.49ml)を添加した。黄色溶液を0℃においてN下で18時間撹拌した。反応を水(100ml)で停止した。溶液を0℃に冷却し、2N NaOH(400ml)、次いで30% H(50ml)を添加した。混合物を0℃において1時間撹拌した後、還流下で2.5時間撹拌した。有機物を真空下で蒸発させ、水性反応混合物をDCM(3×500ml)で抽出して、透明油状物(5.7g,99.3%)を集めた。
【0062】
段階4:トランス−4−ベンジル−ピペリジン−3−オール(A11)の製造
ベンジルアミン(5.7g,20.25ミリモル)をEtOH(10ml)中に含む溶液にNをパージし、ここに水酸化パラジウム(1g)を添加した。混合物をパー水素化装置において55psiで36時間水素化した。反応混合物をセライトパッドを介して濾過し、濾液を蒸発して、標記化合物を白色固体(2.9g,76%)として得た。
【0063】
中間体A12:トランス−4−(4−メチルベンジル)ピペリジン−3−オールの製造
中間体A12は、4−ベンジルピリジンの代わりに4−(4−メチルベンジル)ピリジン(J.Med.Chem.,33:3133(1990))を用いてA11に関する手順を用いて製造した。
【0064】
中間体C1:(4−ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸の製造
4−ベンジルピペリジン(1.0g,5.7ミリモル)をジメチルホルムアミド(DMF,20ml)中に含む溶液にジイソプロピルエチルアミン(990μl,5.7ミリモル)、ブロモ酢酸エチル(637μl,5.7ミリモル)を添加し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をEtOAcと水性NaHCOに分配し、有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。粗な油状物をシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離4:1 ヘキサン:EtOAc→EtOAc)により精製して、(4−ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸エチルを得た。
【0065】
(4−ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸エチル(700mg,2.6ミリモル)を6N HCl(5ml)中に溶解し、100℃に1時間加熱した。反応混合物を冷却し、濃縮して、(4−ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸を白色固体として得た。これを更に精製することなく使用した。
【0066】
4−ベンジルピペリジンの代わりに中間体A2〜A7、A11及びA22を用いて中間体C1を製造するために使用した手順を繰り返して、下記中間体C2〜C7を得た:
中間体C2:[4−(2−フルオロベンジル)ピペリジン−1−イル]酢酸、
中間体C3:[4−(3−フルオロベンジル)ピペリジン−1−イル]酢酸、
中間体C4:[4−(4−フルオロベンジル)ピペリジン−1−イル]酢酸、
中間体C5:[4−(2,6−ジフルオロベンジル)ピペリジン−1−イル]酢酸、
中間体C6:[4−(4−メチルベンジル)ピペリジン−1−イル]酢酸、
中間体C7:[4−(4−トリフルオロメチルベンジル)ピペリジン−1−イル]酢酸、
中間体C11:(トランス−4−ベンジル−3−ヒドロキシピペリジン−1−イル)酢酸、
中間体C12:[トランス−4−(4−メチルベンジル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イル]酢酸。
【0067】
本発明を説明するために下記実施例を提示する。これらの実施例は本発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【実施例1】
【0068】
2[(4−ベンジルピペリジン−1−イル)メチル]−1H−ベンゾイミダゾール−5−オール
【0069】
【化10】

【0070】
(4−ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸(2.0g,7.41ミリモル)をDMF(20ml)中に含む溶液にN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジアミド(EDC,1.56g,8.16ミリモル)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt,1.11g,8.16ミリモル)、4−メトキシ−1,2−フェニレンジアミン(1.02g,7.41ミリモル)及びトリエチルアミン(2.06ml,14.8ミリモル)を添加した。反応混合物を室温で20分間撹拌した後、水性NaHCO及びEtOAcで反応停止した。層を分離し、有機層を水で2回洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。
【0071】
粗な油状物を酢酸(20ml)中に溶解し、140℃に15分間加熱した。反応混合物を冷却し、トルエンから2回濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、更に精製することなく使用した。反応混合物のアリコートをシリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離95:5:0.5→80:20:2 ジクロロメタン:メタノール:NHOH)により精製して、2−[(4−ベンジルピペリジン−1−イル)メチル]−5−メトキシ−1H−ベンゾイミダゾールを得た:H NMR(300MHz,CDOD) δ 7.46(d,1H)、7.28(m,2H)、7.20(t,1H)、7.13(d,2H)、7.05(br.s,1H)、6.87(dd,1H)、3.87(s,2H)、3.84(s,3H)、2.94(d,2H)、2.57(d,2H)、2.23(t,2H)、1.68(d,2H)、1.59(m,1H)、1.42(q,2H)ppm;HRMS(ES)m/z 336.2070[(M+H);計算値(C2126O)=336.2058]。
【0072】
2−[(4−ベンジルピペリジン−1−イル)メチル]−5−メトキシ−1H−ベンゾイミダゾールの溶液をHBr/HO(48%,10ml)中に溶解し、100℃に3時間加熱した。反応混合物を冷却し、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離CHCl→80:20:2 CHCl:MeOH:NHOH)により精製した。その後、HCl塩を生成し、MeOH/EtO(1:2)中で粉砕して、標記化合物(1.0g,3段階の収率38%)を得た。HCl塩:H NMR(400MHz,CDOD) δ 7.61(d,1H)、7.24(t,2H)、7.17(m,5H)、4.75(s,2H)、3.60(d,2H)、3.15(t,2H)、2.60(d,2H)、1.91(m,3H)、1.61(m,2H)ppm;HRMS(ES)m/z 322.1914[(M+H);計算値(C2024O)=322.1914]。
【実施例2】
【0073】
2−{[4−(2−フルオロベンジル)ピペリジン−1−イル]メチル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−オール
【0074】
【化11】

【0075】
4−(ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸の代わりに[4−(2−フルオロベンジル)ピペリジニル]酢酸を用いて実施例1に上記した手順を実施した後、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離95:5:0.5→80:20:2 CHCl:MeOH:NHOH)にかけることにより、標記化合物を得た。その後、HCl塩を生成し、i−PrOHから再結晶した。HCl塩:H NMR(400MHz,CDOD) δ 7.61(d,1H)、7.23(m,2H)、7.07(m,4H)、4.65(s,2H)、3.59(d,2H)、3.10(t,2H)、2.67(d,2H)、1.93(d,3H)、1.62(m,2H)ppm;HRMS(ES)m/z 340.1821[(M+H);計算値(C2023FNO)=340.1820]。
【実施例3】
【0076】
2−{[4−(3−フルオロベンジル)ピペリジン−1−イル]メチル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−オール
【0077】
【化12】

【0078】
4−(ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸の代わりに[4−(3−フルオロベンジル)ピペリジン−1−イル]酢酸を用いて実施例1に上記した手順を実施した後、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離95:5:0.5→80:20:2 CHCl:MeOH:NHOH)にかけることにより、標記化合物を得た。その後、HCl塩を生成し、i−PrOHから再結晶した。HCl塩:H NMR(300MHz,CDOD) δ 7.70(d,1H)、7.30(m,1H)、7.17(m,2H)、6.93(m,3H)、4.90(s,2H)、3.63(d,2H)、3.22(t,2H)、2.62(d,2H)、1.92(d,3H)、1.63(m,2H)ppm;HRMS(ES)m/z 340.1821[(M+H);計算値(C2023FNO)=340.1820]。
【実施例4】
【0079】
2−{[4−(4−フルオロベンジル)ピペリジン−1−イル]メチル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−オール
【0080】
【化13】

【0081】
4−(ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸の代わりに[4−(4−フルオロベンジル)ピペリジン−1−イル]酢酸を用いて実施例1に上記した手順を実施した後、シリカゲルクロマトグラフィー(90:10:1 CHCl:MeOH:NHOH)にかけることにより、標記化合物を得た。遊離塩基:H NMR(400MHz,CDCl) δ 7.40(br.s,1H)、7.28(s,1H)、7.05(m,2H)、6.92(m,2H)、6.81(d,1H)、3.75(s,2H)、2.91(d,2H)、2.47(d,2H)、2.12(t,2H)、1.58(m,2H)、1.50(m,1H)、1.28(m,2H)ppm;HRMS(ES)m/z 340.1808[(M+H);計算値(C2023FNO)=340.1820]。
【実施例5】
【0082】
2−{[4−(2,6−ジフルオロベンジル)ピペリジン−1−イル]メチル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−オール
【0083】
【化14】

【0084】
4−(ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸の代わりに[4−(2,6−ジフルオロベンジル)ピペリジン−1−イル]酢酸を用いて実施例1に上記した手順を実施した後、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離95:5:0.5→80:20:2 CHCl:MeOH:NHOH)にかけることにより、標記化合物を得た。その後、HCl塩を生成し、i−PrOHから再結晶した。HCl塩:H NMR(300MHz,CDOD) δ 7.65(d,1H)、7.29(m,1H)、7.15(m,2H)、6.95(t,2H)、4.72(s,2H)、3.61(d,2H)、3.14(t,2H)、2.72(d,2H)、1.92(d,3H)、1.70(m,2H)ppm;HRMS(ES)m/z 358.1725[(M+H);計算値(C2022O)=358.1726]。
【実施例6】
【0085】
2−{[4−(4−メチルベンジル)ピペリジン−1−イル]メチル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−オール
【0086】
【化15】

【0087】
4−(ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸の代わりに[4−(4−メチルベンジル)ピペリジニル]酢酸を用いて実施例1に上記した手順を実施した後、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離90:10:1→80:20:2 CHCl:MeOH:NHOH)にかけることにより、標記化合物を得た。遊離塩基:H NMR(400MHz,CDCl) δ 7.39(br.s,1H)、7.28(s,1H)、7.10(d,2H)、6.95(d,2H)、6.81(d,1H)、3.70(s,2H)、2.90(d,2H)、2.40(d,2H)、2.29(s,3H)、2.10(t,2H)、1.57(m,2H)、1.48(m,1H)、1.23(m,2H)ppm;HRMS(ES)m/z 336.2082[(M+H);計算値(C2126O)=336.2071]。
【実施例7】
【0088】
2−{[4−(4−トリフルオロメチルベンジル)ピペリジン−1−イル]メチル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−オール
【0089】
【化16】

【0090】
4−(ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸の代わりに[4−(4−トリフルオロメチルベンジル)ピペリジニル]酢酸を用いて実施例1に上記した手順を実施した後、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離90:10:1→80:20:2 CHCl:MeOH:NHOH)にかけることにより、標記化合物を得た:質量スペクトルm/z 390[(M+H);計算値(C2123O)=390]。
【実施例8】
【0091】
2−[(4−ベンジル−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)メチル]−1H−ベンゾイミダゾール−5−オール
【0092】
【化17】

【0093】
4−ベンジルピペリジンの代わりに4−ベンジル−ピペリジン−4−オールを用いて実施例1に上記した手順を実施することにより、標記化合物を得た:質量スペクトルm/z 338[(M+H);計算値(C2024)=338]。
【実施例9】
【0094】
{1−[(5−ヒドロキシ−1H−ベンゾイミダゾル−2−イル)メチル]ピペリジン−4−イル}(フェニル)メタノン
【0095】
【化18】

【0096】
4−ベンジルピペリジンの代わりにフェニル(ピペリジン−4−イル)メタノンを用いて実施例1に上記した手順を実施することにより、標記化合物を得た:質量スペクトルm/z 336[(M+H);計算値(C2022)=336]。
【実施例10】
【0097】
2−({4−[ヒドロキシ(フェニル)メチル]ピペリジン−1−イル}メチル)−1H−ベンゾイミダゾール−5−オール
【0098】
【化19】

【0099】
室温において実施例9の化合物(50mg,0.15ミリモル)をMeOH(5ml)中に含む溶液にホウ水素化ナトリウム(11mg,0.30ミリモル)を添加した。反応混合物を5分間撹拌し、HOで反応停止し、EtOAcで2回抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離95:5:0.5→90:10:1 CHCl:MeOH:NHOH)により精製した。その後、HCl塩を生成し、MeOH/EtO(1:2)中で粉砕して、標記化合物を得た:H NMR(300MHz,CDOD) δ 7.70(d,1H)、7.30(m,5H)、7.18(m,2H)、4.80(s,2H)、4.40(d,1H)、3.65(dd,2H)、3.21(dd,2H)、2.20(d,1H)、2.00−1.60(m,4H)ppm;HRMS(ES)m/z 338[(M+H);計算値(C2024)=338]。
【実施例11】
【0100】
2−[(トランス−4−ベンジル−3−ヒドロキシピペリジン−1−イル)メチル]−1H−ベンゾイミダゾール−5−オール
【0101】
【化20】

【0102】
4−(ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸の代わりに(トランス−4−ベンジル−3−ヒドロキシピペリジン−1−イル)酢酸を用いて実施例1に上記した手順を実施した後、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離95:5:0.5→80:20:2 CHCl:MeOH:NHOH)にかけることにより、標記化合物を得た。その後、HCl塩を生成し、i−PrOHから再結晶した。HCl塩:H NMR(400MHz,CDOD) δ 7.64(d,1H)、7.27(m,2H)、7.18(m,5H)、4.68(s,2H)、3.70(m,1H)、3.55(d,1H)、3.40(d,1H)、3.20(d,1H)、2.91(m,2H)、2.42(dd,1H)、1.83(m,2H)、1.56(m,1H)ppm;HRMS(ES)m/z 338.1862[(M+H);計算値(C2024)=338.1863]。
【実施例12】
【0103】
2−{[トランス−3−ヒドロキシ−4−(4−メチルベンジル)ピペリジン−1−イル]メチル}−1H−ベンゾイミダゾール−5−オール
【0104】
【化21】

【0105】
4−(ベンジルピペリジン−1−イル)酢酸の代わりに[トランス−4−(4−メチルベンジル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イル]酢酸を用いて実施例1に上記した手順を実施した後、シリカゲルクロマトグラフィー(勾配溶離95:5:0.5→80:20:2 CHCl:MeOH:NHOH)にかけることにより、標記化合物を得た。その後、HCl塩を生成し、i−PrOHから再結晶した。HCl塩:H NMR(400MHz,CDOD) δ 7.61(d,1H)、7.08(m,6H)、4.50(s,2H)、3.62(m,1H)、3.41(m,1H)、3.23(m,1H)、3.16(d,1H)、2.77(m,2H)、2.39(dd,1H)、2.29(s,3H)、1.83(m,1H)、1.71(m,1H)、1.48(m,1H)ppm;HRMS(ES)m/z 352.2022[(M+H);計算値(C2125)=352.2020]。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式中、RはHまたはOHであり、RはHまたはOHであり、RはHであるかまたはR及びRは一緒になってオキソを表し、R及びRは独立してH、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはトリフルオロメチルである)
を有する化合物及びその医薬的に許容され得る塩。
【請求項2】
、R及びRがそれぞれHである請求の範囲第1項に記載の化合物。
【請求項3】
がOHであり、R及びRがそれぞれHである請求の範囲第1項に記載の化合物。
【請求項4】
及びRが一緒になってオキソを表す請求の範囲第1項に記載の化合物。
【請求項5】
【表1】


から選択される化合物またはその医薬的に許容され得る塩。
【請求項6】
不活性担体及び治療有効量の請求の範囲第1項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項7】
治療を要する患者に対して治療有効量の請求の範囲第1項に記載の化合物を投与する段階を含む疼痛の治療方法。
【請求項8】
疼痛が神経障害性疼痛である請求の範囲第7項に記載の方法。
【請求項9】
偏頭痛、うつ病、不安症、精神分裂病または卒中の治療方法。
【請求項10】
治療を要する患者に対して治療有効量の請求の範囲第1項に記載の化合物を投与する段階を含むパーキンソン病の治療方法。

【公表番号】特表2006−509763(P2006−509763A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555487(P2004−555487)
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/036884
【国際公開番号】WO2004/048364
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】