説明

Neomaricagracilis由来のフラボノイド豊富な組織およびその培養方法

【課題】本発明は、Neomarica gracilisの増殖能力のある組織(たとえば根、葉、葉の根元および/または地下茎など)を使った組織培養調製により得られるN. gracilisの生体外のフラボノイド豊富地下茎組織を提供する。N. gracilisのフラボノイド豊富地下茎組織はテクトリゲニンを含んでいるが、このことはテクトリゲニンを含まない野生のN. gracilisの地下茎の場合とは明確に異なっている。本発明はさらに、生体外フラボノイド豊富地下茎組織の培養の方法、フラボノイド豊富地下茎組織からテクトリゲニンを抽出する方法、およびフラボノイド豊富地下茎組織中のテクトリゲニンの定量方法を提供する。
【解決手段】Neomarica gracilisのフラボノイド含有量を変える組織培養調製品から得られたN. gracilisの生体外フラボノイド豊富組織において、前記フラボノイド豊富組織がテクトリゲニンを含む生体外フラボノイド豊富組織。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Neomarica gracilisの増殖能力のある組織(たとえば根、葉、葉の基部および/または地下茎など)を使った組織培養調製により提供されるN. gracilisの生体外のフラボノイド豊富地下茎組織に関する。N. gracilisのフラボノイド豊富地下茎組織はテクトリゲニン(tectorigenin)を含んでいるが、このことはテクトリゲニンを含まない野生のN. gracilisの地下茎の場合とは明確に異なっている。本発明はさらに、フラボノイド豊富地下茎組織の生体外培養の方法、フラボノイド豊富地下茎組織からテクトリゲニンを抽出する方法、およびフラボノイド豊富地下茎組織中のテクトリゲニンの定量方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
植物化学物質は、植物が細菌、ウィルスおよび菌類から身を守るために自然に生成する物質である。植物化学物質に関する関心が最近高くなっている。これは多くの植物化学物質が老化を遅くし、癌、心臓病その他の慢性病のリスクを減らす効果を示しているからである。
【0003】
900以上のさまざまな植物化学物質が植物性食品中に発見されており、その他にももっと発見されると考えられている。果物、野菜、無精白穀物、大豆およびナッツは全て病気と闘うこれらの物質の源である。植物化学物質は通常植物の色素と関係しているため、鮮やかな色(黄、橙、赤、青、紫、緑)をもつ果物および野菜に多く含まれている。
【0004】
フラボノイドは抗炎症、酸化防止、抗アレルギー、肝臓保護、抗血栓、抗ウィルス、および抗癌作用を持つと長年認められている植物化学物質である。典型的なフラボノイドはフェノール化合物であるため、強力な金属キレータおよびフリーラジカル捕捉剤として作用する。これらは強力な鎖切断酸化防止剤である。フラボノイドは多数の生化学および薬理学的作用を示すが、その一部はこの化合物群の中にさまざまな哺乳動物の細胞系の機能に大きく影響するものがある可能性を示唆している。植物性フラボノイドは、窒素固定の制御に関与する細胞(Rhizobium)調節遺伝子の活性化を引き起こすことが最近報告されているが、このことは特定のフラボノイドと哺乳動物遺伝子の活性化および表現の間に重要な関係があることを示唆している(非特許文献1:Midddledton et al., Pharmacological Reviews, 2000, 52:673-751などを参照)。
【0005】
テクトリゲニンはフラボノイドの一種である。テクトリゲニンは抗細菌、抗炎症および癌防止活性を示すため、その応用が最近検討されている。さらに、テクトリゲニンはプロスタグランジンの生成を刺激し、マクロファージの増殖を誘発し、エストロゲン受容体の活性を選択的に調節し、平滑筋の収縮を制御することが示されている。
【0006】
通常、テクトリゲニンはIris germanica L.、Iris pallida Lam、Iris nigricans、Iris ensata、Iris sanguinea、Iris setosaおよびBelamacanda chinensis (B. chinensis)などのアヤメ科の植物の地下茎から抽出される。地下茎の中のテクトリゲニンの含有量は温度、湿度などの成長条件に影響される。B. chinensisの場合、テクトリゲニン抽出用に地下茎を採取するためには通常2,3年成長させる必要がある。したがって、テクトリゲニン含有量の高い植物を効率的に成長させる方法がまだ必要である。
【0007】
Neomarica gracilis (N. gracilis)はアヤメ科に属する極めて一般的な園芸植物である。低コストで大量栽培が可能である。しかし、自然に育ったN. gracilisの地下茎はテクトリゲニンを含んでいない。
【0008】
後節に示す発明においては、組織培養からN. gracilisの生体外地下茎が得られるが、これは約1〜2ヶ月で採取することができる。N. gracilisの生体外地下茎はフラボノイドを豊富に含み、テクトリゲニンの含有量が高いので、テクトリゲニンの原料として使うことができる。
【0009】
【非特許文献1】Midddledton et al., Pharmacological Reviews, 2000, 52:673-751
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、Neomarica gracilis(ネオマリカ グラシリス)の増殖能力のある組織(たとえば根、葉、葉の根元および/または地下茎など)を使った組織培養調製により得られるN. gracilis(エヌ グラシリス)の生体外のフラボノイド豊富(flavonoid-rich)地下茎組織を提供する。N. gracilisのフラボノイド豊富地下茎組織はテクトリゲニンを含んでいるが、このことはテクトリゲニンを含まない野生のN. gracilisの地下茎の場合とは明確に異なっている。本発明はさらに、生体外フラボノイド豊富地下茎組織の培養の方法、フラボノイド豊富地下茎組織からテクトリゲニンを抽出する方法、およびフラボノイド豊富地下茎組織中のテクトリゲニンの定量方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は下記の通りである。
【0012】
(請求項1)
Neomarica gracilisのフラボノイド含有量を変える組織培養調製品から得られたN. gracilisの生体外フラボノイド豊富組織において、前記フラボノイド豊富組織がテクトリゲニンを含む生体外フラボノイド豊富組織。
【0013】
(請求項2)
前記生体外フラボノイド豊富組織が増殖能力を持つN. gracilis組織から培養された地下茎組織であることを特徴とする請求項1記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0014】
(請求項3)
前記N. gracilis組織が根、地下茎、葉および葉の基部を含むことを特徴とする請求項2記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0015】
(請求項4)
前記組織培養調製物が植物成長調整剤を含む培地を含むことを特徴とする請求項1記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0016】
(請求項5)
前記植物成長調整剤がサイトキニン(cytokinins)またはオーキシン(auxins)を含むことを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0017】
(請求項6)
前記植物成長調整剤が、インドール−3−酢酸(indole-3-acetic acid)、2−4−ジクロロフェノキシ酢酸(2-4-dichlorophenoxyacetic acid)、α−ナフタレン酢酸(α-naphthaleneacetic acid)、6−ベンジル−アミノプリン(6-benzyl-aminopurine)およびキネチン(kinetin)からなる群から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする請求項5記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0018】
(請求項7)
前記植物成長調整剤の濃度が約0.01〜2.0mg/Lであることを特徴とする請求項5記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0019】
(請求項8)
前記培地がさらにMurashigeとSkoogの基礎塩培地(MS培地)を含むことを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0020】
(請求項9)
前記MS培地がナトリウム、カリウム、硝酸塩、アンモニウム、マグネシウム、硫酸塩、カルシウム、鉄、塩酸塩、リン酸塩、マンガン、ヨウ素、ホウ酸塩、亜鉛、銅、モリブデン、コバルトまたはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項8記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0021】
(請求項10)
前記培地がさらに炭水化物を含むことを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0022】
(請求項11)
前記炭水化物がミオイノシトール(myo-inositol)またはシクロース(sucrose)、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項10記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0023】
(請求項12)
前記培地がさらにビタミンを含むことを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0024】
(請求項13)
前記ビタミンがチアミンHCl(thiamine HCl)、ピリドキシンHCl(pyridoxine HCl)およびニコチン酸(nicotinic acid)からなる群から選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項12記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0025】
(請求項14)
前記培地がさらにアンシミドール(ancymidol)を含むことを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0026】
(請求項15)
前記培地のpHが5〜7であることを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0027】
(請求項16)
前記組織培養調製物がフラスコ培養、一時浸漬法(TIS)またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0028】
(請求項17)
前記テクトリゲニンの量が乾燥組織重量1Kgに対して2.5〜65mgであることを特徴とする請求項1記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0029】
(請求項18)
請求項1記載のN. gracilisから前記生体外フラボノイド豊富組織を得るための方法であり、以下の手順を含む方法:
N. gracilis組織を前記組織培養調製物の培地に接種する(ただし前記N. gracilis組織は増殖能力を持つものとする)、そして
地下茎組織が形成されるのに十分な時間、前記N. gracilis組織を前記組織培養調製物の中で成長させる。
【0030】
(請求項19)
前記培地が20℃〜30℃に保持されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【0031】
(請求項20)
前記N. gracilis組織が根、葉、葉の基部または地下茎を含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【0032】
(請求項21)
前記組織培養物はフラスコ培養、一時浸漬法(TIS)またはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【0033】
(請求項22)
十分な時間が約4〜8週間であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【0034】
(請求項23)
前記TISおいてN. gracilis組織を約2〜4時間おきに1〜3分間培地に浸漬することができることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【0035】
(請求項24)
前記培地が植物成長調整剤、塩培地および炭水化物を含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【0036】
(請求項25)
前記植物成長調整剤がサイトキニン(cytokinins)またはオーキシン(auxins)を含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【0037】
(請求項26)
前記植物成長調整剤が、インドール−3−酢酸(indole-3-acetic acid)、2−4−ジクロロフェノキシ酢酸(2-4-dichlorophenoxyacetic acid)、α−ナフタレン酢酸(α-naphthaleneacetic acid)、6−ベンジル−アミノプリン(6-benzyl-aminopurine)およびキネチン(kinetin)からなる群から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【0038】
(請求項27)
前記植物成長調整剤の濃度が約0.01〜2.0mg/Lであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【0039】
(請求項28)
前記塩培地がナトリウム、カリウム、硝酸塩、アンモニウム、マグネシウム、硫酸塩、カルシウム、鉄、塩酸塩、リン酸塩、マンガン、ヨウ素、ホウ酸塩、亜鉛、銅、モリブデン、コバルト、あるいはこれらの混合物を含むMurashigeおよびSkoogの基礎塩培地(MS培地)であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【0040】
(請求項29)
前記炭水化物がミオイノシトール(myo-inositol)またはシクロース(sucrose)、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【0041】
(請求項30)
30. 前記培地がさらにビタミンを含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【0042】
(請求項31)
前記ビタミンがチアミンHCl、ピリドキシンHClおよびニコチン酸からなる群から選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項30記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【0043】
(請求項32)
前記培地のpHが約5〜7であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【0044】
(請求項33)
請求項1記載のN. gracilisの前記生体外フラボノイド豊富組織からテクトリゲニンを抽出するための方法であり、以下の手順を含む方法:
前記N. gracilisの生体外フラボノイド豊富組織を乾燥して乾燥フラボノイド豊富組織を得る;
前記乾燥生体外フラボノイド豊富組織にアルコールを添加して懸濁液を形成する;
前記懸濁液を加熱して加熱懸濁液を形成し; そして
加熱懸濁液が冷えてから濾過して前記テクトリゲニンを含む濾液を採取する。
【0045】
(請求項34)
前記乾燥生体外フラボノイド豊富組織が生体外フラボノイド豊富組織を凍結乾燥にかけることによって得られることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【0046】
(請求項35)
前記懸濁液が約50〜70℃で加熱されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【0047】
(請求項36)
前記懸濁液が振動しながら加熱されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【0048】
(請求項37)
前記振動が超音波によって生成されることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【0049】
(請求項38)
前記アルコールがメタノールまたはエタノールであることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【0050】
(請求項39)
前記濾液は前記加熱懸濁液をWhatman(登録商標)No. 1フィルタに通すことにより採取されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【0051】
(請求項40)
請求項33記載のN. gracilisの前記生体外フラボノイド豊富組織の中の前記テクトリゲニンの量を求めるための方法であり、以下の手順を含む方法:
高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって前記テクトリゲニンの量を求める。
【0052】
(請求項41)
前記HPLCがCosmosil(登録商標)5 C18-AR-IIカラムを含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【0053】
(請求項42)
前記テクトリゲニンがメタノールと水(0.1%酢酸を含む)を容積比55:45で含む溶出液で溶出されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【0054】
(請求項43)
前記テクトリゲニンの量が約265 nmの波長でψ−テクトリゲニンを標準として測定されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【0055】
(請求項44)
抽出物が抗腫瘍活性を持つことを特徴とする請求項33に記載の前記N. gracilisの生体外フラボノイド豊富組織の抽出物。
【0056】
本発明は野生のN. gracilisのフラボノイド含有量を変える組織培養環境を使ってN. gracilisの生体外フラボノイド豊富組織を提供する。特に、本発明のフラボノイド豊富組織は相当量のテクトリゲニンを含んでいる。
【0057】
このN. gracilisの生体外フラボノイド豊富組織は好ましくは地下茎組織であり、増殖能力を持つN. gracilis組織から培養されるものである。増殖能力のあるN. gracilis組織としては、N. gracilisの根、地下茎、葉、および葉の基部などが挙げられる。
【0058】
N. gracilisのフラボノイド豊富組織の調製用の組織培養には培地が使用される。培地は(1)植物成長調整剤、(2)塩培地および(3)炭水化物を含んでいる。植物成長調整剤(PGR)はサイトカイニンまたはオーキシンを含んでいる。PGRの例としては、インドール−3−酢酸、2−4−ジクロロフェノキシ酢酸、α−ナフタレン酢酸、6−ベンジル−アミノプリン、キネチンあるいはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限られるものではない。植物成長調整剤の好ましい濃度は約0.01〜2.0 mg/Lである。好ましい塩培地はMurashigeとSkoogの基礎塩培地(すなわちMS培地)である。この培地は以下の塩を含むがこれらだけに限られるものではない:ナトリウム、カリウム、硝酸塩、アンモニウム、マグネシウム、硫酸塩、カルシウム、鉄、塩酸塩、リン酸塩、マンガン、ヨウ素、ホウ酸塩、亜鉛、銅、モリブデン、コバルト、あるいはこれらの混合物。炭水化物の例としては、ミオイノシトール、シクロースまたはこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
さらに任意成分としてチアミン塩酸塩、ピリドキシン塩酸塩およびニコチン酸などのビタミンおよびアンシミドールを含むことができる。この培地のpHは約5〜7である。
【0060】
組織培養の調製にはフラスコ培養(好ましくは振盪状態)、一時浸漬法(TIS)、またはこれらの組み合わせを用いる。
【0061】
N. gracilisのフラボノイド豊富組織は乾燥重量1Kgに対して2.5〜65mgのテクトリゲニンを含んでいる。MS0(すなわち植物成長調整剤無添加のMS培地)中の固体組織培養を8週間行った後のフラボノイドの総量はフラボノイド豊富組織の乾燥重量1グラムに対して約10.74mg(ψ−テクトリゲニンを標準とした測定に基づく)である。
【0062】
本発明は、さらにN. gracilisから生体外フラボノイド豊富組織を得るための方法を提供する。この方法は(1)組織培養の培地にN. gracilis組織を接種すること、および(2)地下茎組織が形成されるのに十分な期間にわたってN. gracilis組織を成長させること、を含んでいる。このN. gracilis組織は根、葉、葉の基部あるいは地下茎と同様に細胞複製の能力を持っている。
【0063】
培地の温度は20〜30℃に保つのが好ましい。
【0064】
この組織培養はフラスコ培養、一時浸漬法(TIS)またはこれらの組み合わせである。
N. gracilisのフラボノイド豊富地下茎組織を形成するために十分な時間は約4〜8週間である。
【0065】
TISでは、N. gracilis組織を約2〜4時間おきに1〜3分間培地に浸漬する。
【0066】
本発明は、さらにN. gracilisから生体外フラボノイド豊富組織を抽出するための方法を提供する。この方法は以下の手順からなっている:(1)N. gracilisの生体外フラボノイド豊富組織を乾燥して乾燥フラボノイド豊富組織を得る、(2)乾燥フラボノイド豊富組織にアルコールを加えて懸濁液を作る、(3)懸濁液を加熱することにより、加熱懸濁液を得る、そして(4)加熱懸濁液が冷えてから濾過してテクトリゲニンを含む濾液を採取する。生体外フラボノイド豊富組織の乾燥方法としては凍結乾燥が好ましい。懸濁液を加熱する方法としては、超音波振動をかけながら懸濁液を50〜70℃で約1時間加熱する方法が好ましい。乾燥した生体外フラボノイド豊富組織に加えるアルコールとしてはメタノールまたはエタノールを挙げることができる。オプションとして、アルコールを加える前に生体外フラボノイド豊富組織をすりつぶすこともできる。濾液は加熱懸濁液をWhatman(登録商標)No. 1フィルタに通すことにより採取するのが好ましい。
【0067】
N. gracilisのフラボノイド豊富組織から抽出されたテクトリゲニンの総量は高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって求める。HPLC用に好ましいカラムはCosmosil(登録商標)5 C18-AR-IIカラムである。溶出液として好ましいのは容積比55:45でメタノールと水(0.1%の酢酸を含む)を含む溶液である。テクトリゲニンの量はψ−テクトリゲニン(Sigma(登録商標)T-9165)を標準として、約265nmの波長で測定される。
【発明の効果】
【0068】
本発明は、Neomarica gracilisの増殖能力のある組織(たとえば根、葉、葉の根元および/または地下茎など)を使った組織培養調製により得られるN. gracilisの生体外のフラボノイド豊富地下茎組織を提供する。N. gracilisのフラボノイド豊富地下茎組織はテクトリゲニンを含んでいるが、このことはテクトリゲニンを含まない野生のN. gracilisの地下茎の場合とは明確に異なっている。本発明はさらに、生体外フラボノイド豊富地下茎組織の培養の方法、フラボノイド豊富地下茎組織からテクトリゲニンを抽出する方法、およびフラボノイド豊富地下茎組織中のテクトリゲニンの定量方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明の一態様はNeomarica gracilisの増殖能力のある組織(たとえば根、葉、葉の基部および/または地下茎など)の組織培養調製から得られたN. gracilisの生体外のフラボノイド豊富地下茎組織に関する。このフラボノイド豊富組織は生体外地下茎組織であり、テクトリゲニンを含むという点で野生のN. gracilisの地下茎とは明確に異なる。最近の研究により、テクトリゲニンはフリーラジカルの除去、腫瘍の進行の停止、およびH. pylori、カビなどの病原性細菌および真菌の阻害において薬効を持つことが実証されている。
【0070】
テクトリゲニンの化学構造を以下に示す。
【化1】

【0071】
テクトリゲニンはIris spuria, Iris carthaliniaeおよびIris germanicaおよびPueraria thunbergianaなど、多くのアヤメおよびマメ科植物の地下茎または根に見られる。しかし、これらの植物におけるテクトリゲニンの量はテクトリゲニンの供給源として使うためには少なすぎる。
【0072】
テクトリゲニンの主要な供給源は天然に成長したBelamcanda chinensisの地下茎である。しかし、B. chinensisは成長が遅く、種まきから収穫まで約2〜3年かかるため、テクトリゲニンの採集が困難である。
【0073】
B. chinensisとは対照的に、N. gracilisは人気の高い半屋外植物であり、容易にs成長、繁殖させることができる。しかし、N. gracilisはテクトリゲニンを含んでいない。N. gracilisはアヤメ科のNeomarica属に属しており、この属は右の16の種を含んでいる。N. caerulea、N. capitellata、N. caulosa、N. fluminensis、N. gracilis、N. imbricata、N. longifolia、N. nitida、N. northiana、N. paradoxa、N. portosecurensis、N. rotundata、N. rupestris、N. sabini, N. silvestrisおよびN. variegata。N. gracilisはアフリカ西部および中央および南アメリカの熱帯地域に自生し、もっとも集中しているのはブラジルである。N. gracilisは多年生植物であり、太い地下茎および花が出たあとの茎から発生する新しい胚によって繁殖する。
【0074】
本発明のもう一つの態様はテクトリゲニンの含有量の高いN. gracilisの生体外地下茎組織を組織培養により約4〜8週間という比較的短時間で育てる方法に関し、これにより新しいテクトリゲニンの供給源を提供するものである。この方法は、N. gracilis組織を培地に接種するステップと地下茎組織が発達するのに十分な時間だけN. gracilisを成長させるステップからなる。
【0075】
このN. gracilis組織は天然に生えているN. gracilisまたは増殖能力を持つ培養N. gracilisから得られた任意の組織でよい。N. gracilisの根、地下茎、葉または葉の基部から取られたN. gracilis組織が好ましい。
【0076】
培地は少なくとも1つの植物成長調整剤(PGR)、1つの塩、および1つの炭水化物を含む。PGRは培養室に移植されて繁殖している組織の分化または脱分化を引き起こすかあるいは助長する。PGRの例としてはオーキシンおよびサイトキニンが挙げられるがこれらに限られるものではない。
【0077】
オーキシンは殆どの発根混合物の活性成分である。オーキシンは植物の栄養繁殖を助長する。細胞レベルで、オーキシンは細胞の細長化、細胞分割および不定根の形成に影響を与える。一部のオーキシンは超低濃度で活性がある。オーキシンの使用濃度範囲は0.0001〜20 mg/L、好ましくは0.01〜10 mg/L、より好ましくは0.01〜2.0 mg/Lである。オーキシンの例としては4−ビフェニル酢酸(4-Biphenylacetic acid)、3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル酢酸(3-Chloro-4-hydroxyphenylacetic acid)、4−ヒドロキシフェニル酢酸(4-Hydroxyphenylacetic acid)、インドール−3−酢酸(IAA、Indole-3-acetic acid)、インドール−3−プロピオン酸(Indole-3-propionic acid)、インドール−3−酪酸(Indole-3-butyric acid)、インドール−3−アセチル−L−アラニン(Indole-3-acetyl-L-alanine)、インドール−3−アセチル−DL−アスパラギン酸(Indole-3-acetyl-DL-aspartic acid)、インドール−3−アセチル−DL−トリプトファン(Indole-3-acetyl-DL-tryptophan)、インドール−3−アセチル−L−バリン(Indole-3-acetyl-L-valine)、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D、2,4-dichlorophenoxyacetic acid)、およびアルファ−ナフタレン酢酸(NAA、alpha-naphthaleneacetic acid)を挙げられるがこれらに限られない。
【0078】
サイトキニンは細胞分割を助長し、芽の増殖を刺激し、遺伝子の表現および代謝活性一般を活性化する。同時に、サイトキニンは根の形成を阻害する。このため、サイトキニンは根の形成を伴わない強い成長が求められる植物細胞組織の培養に有用である。さらに、サイトキニンは植物の老化過程を遅くする。サイトキニンの使用濃度範囲は0.0001〜20 mg/L、好ましくは0.01〜10 mg/L、より好ましくは0.01〜2.0 mg/Lである。サイトキニンの例としては、N−(3−メチル−2−ブテニル)−1H−プリン−6−アミン(N-(3-methylbut-2-enyl)-1H-purin-6-amine)、6−ベンジル−アミノプリン(BA、6-benzyl-aminopurine)、キネチン(kinetin)およびゼアチン(zeatin)が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0079】
塩の例としては、硝酸、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、ヨウ素酸などの無機酸の塩、酢酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、乳酸、ラクトビオン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸などの有機酸の塩が挙げられるが、これらに限られるものではない。塩としてはナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄、マグネシウム、マンガン、亜鉛、銅、またはコバルト塩が可能である。培地は塩の混合物を含んでいても良い。
【0080】
1つの実施態様においては培地は移植された植物組織の成長を助長する栄養分を含んでいるが、その栄養分とはたとえばMurashige & Skoog, Physiol. Plant., 15, 473-497 (1962)に記載されている主要栄養素および微量栄養素である。以下これを「MS基礎培地」と呼ぶ。MS基礎培地に含まれている塩は「MS塩」と呼ばれる。本発明の文脈において使用されるMS塩としては、適切な濃度の硝酸アンモニウム、ホウ酸、塩化カルシウム、塩化コバルト、硫酸銅、Na2-EDTA、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、モリブデン酸、ヨウ化カリウム、硝酸カリウム、第一リン酸カリウム、硝酸ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、および硫酸亜鉛などが挙げられる。
【0081】
炭水化物は植物の培養に栄養価を持つ炭水化物であればよい。炭水化物としては糖類が好ましい。さらに好ましい炭水化物はミオイノシトール、シクロースまたはこれらの混合物である。
【0082】
培地にはさらにアミノ酸、ビタミンあるいはこれらの混合物など、他の成分を添加することができる。好ましいビタミンとしては、ビタミンB1(チアミンHCl)、ビタミンB6(ピリドキシンHCl)およびビタミンB3(ニコチン酸)などが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0083】
培地はN. gracilisの成長に適したpH範囲に調整される。pH範囲は4〜8が好ましく、さらに好ましくは5〜7である。1つの態様においては、培地はpHを望ましいレベルに保つために適切なバッファを含んでいる。これらのバッファは通常pKaが約4.5〜5.5であり、例としてはクエン酸、N−モルフォリノ・エタンスルフォン酸、フタル酸水素カリウムおよび安息香酸を挙げられるがこれらに限られない。
【0084】
培養物の温度は通常約30℃以下、好ましくは20〜30℃の範囲に保たれる。
【0085】
望ましい成長期間は2〜16週間、好ましくは4〜8週間である。
【0086】
1つの好ましい実施態様においては、培地はMS塩、シクロース(30g/L)、ミオイノシトール(100mg/L)、6−ベンジル−アミノプリン(BA)(0.5mg/L)、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)(0.1mg/L)、およびα−ナフタレン酢酸(NAA)(0.84mg/L)を含んでいる。
【0087】
別の態様においては、N. gracilis組織は連続的に攪拌しながら培養される。また別の態様においては、N. gracilis組織は一時浸漬法(TIS)で培養される。図1に示すように、TISは植物組織を間欠的に培地に漬けることによって植物培養物に栄養と酸素を与えるようになっている。短時間の間、チャンバー10がスクリーン14上あるいはバスケットの中に培養物12を保持する。低圧力の空気がチャンバー10に送り込まれて液体培地16を強制的に上昇させ、培地12を浸漬する。この空気流は培地16に酸素を送り込み、攪拌する役割も果たす。空気流が止められると圧力が停止し、培地16はチャンバー10の底に戻る。通常、TISの全てのコンポーネントはオートクレーブして再使用することができる。このシステムは簡単に自動化して大規模植物組織培養を行なうことができる。1つの好ましい実施態様においては、N. gracilis組織を2〜4時間ごとに1〜3分間培地に浸漬する。
【0088】
本発明のもう1つの態様は、テクトリゲニンを多量に含む培養N. gracilis組織を提供する事である。1つの実施態様においては、培養N. gracilis地下茎組織の含有量が2.5〜65mg/kg(乾燥地下茎重)である。PGR無添加のMS培地(MS0)を含む固体培地において培養N. gracilis地下茎組織の総フラボノイド含量は乾燥地下茎重量に対して10.741 ± 0.311 (平均±S.E.)mg/gである(ψ−テクトリゲニンを標準として測定する)。
【0089】
本発明のもう1つの態様は、N. gracilis組織からフラボノイドを抽出する方法に関する。 この方法は、組織の乾燥、乾燥組織のすりつぶし、すりつぶした組織のアルコールへの懸濁、懸濁液の加熱、および懸濁液のろ過によるフラボノイドの抽出というステップを含んでいる。
【0090】
植物組織の乾燥はどんな方法でも良いが、冷却真空ドライヤーを使った凍結乾燥が好ましい。アルコールは任意のアルコールでよいが、好ましくはメタノールまたはエタノールである。アルコールは50℃〜70℃に加熱するのが好ましい、またより好ましくは振盪、振動、または音波処理をかけながら加熱するのが好ましい。振動の方法として好ましいのは超音波振動である。
【0091】
以下の実験の設計および結果は説明的なものであり、本発明の適用範囲を限定するものではない。妥当な当業者が考え付くような妥当なバリエーションは本発明の適用範囲を超えることなく可能である。また、本発明を記述する際には明確さを期して特定の用語を使っている。しかし、本発明はそのように選択された特定の用語に限られるものではない。各特定の要素は類似のやり方で類似の目的を達成する相当技術全てを含むと理解されるべきである。
【実施例】
【0092】
実施例1:材料および方法
N. gracilis (Neomarica gracilis )からの生体外フラボノイド豊富地下茎組織
N. gracilisの生体外フラボノイド豊富地下茎組織はTatung大学植物組織培養研究室由来のものを培養した。地下茎組織は、30 g/Lのシクロース、100 mg/Lのミオイノシトール、0.5 mg/LのBA、0.1 mg/Lの2,4− D、および0.84 mg/LのNAAを加えたMS基礎塩培地で毎月継代培養した。
【0093】
培地
液体培地は、30 g/Lのシクロース、100 mg/Lのミオイノシトールおよび実験によってさまざまな植物成長因子を加えたMS基礎塩培地(Murashige and Skoog, 1962)(表1)であった。固体培地は8g/Lの寒天を液体培地に加えることによって調製した。固体培地は8 x 1.5 x 1.5 cmの培養チューブ(10 mlの培地/チューブ)またはフラスコ(30 mlの培地/フラスコ)で実行した。液体培養は50 ml、100 mlまたは250 mlで、それぞれ10 ml、50 mlまたは100 mlの培地を使って実行した。培養チューブの開口部はアルミフォイルで覆った。
【0094】
TIS培養では、A-Tech Bioscientific Co. Ltd.のPlantima(登録商標)システムを用いた。各培養チャンバーに約200 mlの培地を加えた。指示通りに、ガスの入口と出口にプラスチック配管と滅菌フィルタ膜を配置した。フィルタ膜は綿とアルミフォイルで包み、プラスチック配管はクランプで固定してフィルタに水蒸気が入るのを防いだ。培養チャンバーはアルミフォイルで覆った。
【0095】
全ての培地はpHが5.70 ± 0.05で、121℃、圧力1.1〜1.2 kg/cm2のオートクレーブで滅菌した。
【0096】
MSの基礎塩組成(Murashige and Skoog, 1962)
【表1】

【0097】
フラスコ培養
(1) 接種材料の重量(100 mlの培地に対する接種材料の生体重のグラムパーセントとして表現)を求めるために、液体培養されたN. gracilisの地下茎組織を、MS基礎塩、0.5 mg/LのBA、0.1 mg/Lの2,4-Dおよび0.84 mg/LのNAAを含む継代培地に接種した。接種重量比は0.5、1、1.5、2、3、4、5、10、または15%(グラム単位の生体重(F.W.)/100mlの培地)であった。培養された組織の重量は接種の3週間後に測定した。
(2) 植物成長調整剤(PGR)の効果を測定するために、液体培養されたN. gracilis地下茎組織からメスで芽を除去した。表2に示すように、PGRを添加したMS基礎培地を含む培地に接種重量3%(g F.W. / 50 ml)で地下茎組織を接種した。培地は2週間おきに取り替えた。全8週間にわたり、培地を取り替えるたびに培養された組織を計量した。
(3) N. gracilis地下茎組織の成長曲線とテクトリゲニン含量を求めるために、液体培養されたN. gracilis地下茎組織をメスで除去した。0.1 mg/LのNAAまたは1 mg/LのNAAと1.0 mg/Lの2,4-Dの混合物を添加したMS基礎培地を含む培地に接種重量3%(g F.W. / 50 ml)で地下茎組織を接種した。8週間連続して毎週組織を計量、分析し、テクトリゲニン含量を求めた。
(4) 芽の形成とテクトリゲニン含量に対するアンシミドールの影響を求めるために、液体培養されたN. gracilisの地下茎組織を、MS、0.5 mg/LのBA、0.1 mg/Lの2,4-Dおよび0.84 mg/LのNAAを含む継代培地に接種した。培養の7日目と14日目に滅菌濾過(0.2um)したアンシミドールを培地に加えて最終濃度0.5、1.0または2.0mg/Lとした。組織の成長を監視し、テクトリゲニン含量を分析した。
【0098】
フラスコ培養において植物成長調整剤がN. gracilis組織の成長に与える影響
【表2】

【0099】
TIS培養
台湾の台北にあるA-Tect Bioscientific Co., Ltd.からTIS Plantima(登録商標)培養システムを購入した。
(1) 接種重量が組織成長に与える影響を求めるために、TIS組織チャンバーを4つの領域に分けた。液体培養されたN. gracilis地下茎組織を各領域に1.5、3、6および9g接種した。表3のサンプルT12、T17およびT18で説明されているように、培地はPGRを添加したMS培地であった。これらの組織はPlantima(登録商標)のユーザーマニュアルに説明されている条件下で培養し、3時間おきに2分間浸漬した。培養された組織を計量し、培地を10日おきに交換した。
(2) PLRがN. gracilisの成長とテクトリゲニン含量に与える影響を求めるために、液体培養されたN. gracilis地下茎組織10個を、表3のサンプルMS0、TI3、TI4、TI5およびTI6に説明されているMSとPGRを含む培地に接種した。培地は第2週に交換し、組織は第4週に採集してテクトリゲニン含量を求める分析を行った。
【0100】
TIS培養において植物成長調整剤がN. gracilis組織の成長に与える影響
【表3】

【0101】
テクトリゲニンおよび全フラボノイドの抽出
N. gracilis地下茎組織を−80℃で10時間凍結し、冷却真空ドライヤー(VirTis Freezemobile 12XL)で一晩乾燥した後、すりつぶした。0.5gの乾燥し、すりつぶした組織を10mlフラスコの中で適切な量のメタノールに懸濁し、超音波振動をかけながら60℃で1時間インキュベートした後冷却した。この懸濁液にメタノールを加えて最終容積を10mlとした。この懸濁液をWhatman No. 1フィルタペーパーで濾過した。濾過した溶液を茶色のサンプルバイアルに封入し、冷たい場所に保管して実験に備えた。
【0102】
テクトリゲニン含量を測定する前に、まずテクトリゲニン標準(Sigama T-9165, ψ-tectorigenin)溶液とサンプルを0.45umフィルタで濾過した。濾過したサンプルを2mlの茶色HPLCバイアルに封入して後の分析に備えた。
【0103】
全フラボノイドの測定
全フラボノイドはLee et al., J. Agric. Food Chem. (2003) 51: 7292-7295に準拠して測定した。簡潔に言うと、4 mlの脱イオン水と0.3 mlの5% NaNO2を約0.5 mlのN. gracilis抽出物に加えてサンプル混合液を作り、約5分間反応させた。次に約0.3 mlの10% AlCl3を反応したサンプル混合物に加え、十分に振盪しながらさらに5分間反応させた。この後、2 mlの1N NaOHおよび2.9 mlの脱イオン水をさらに反応したサンプル混合液に加えた。得られた反応済み混合液の中の全フラボノイドを求めるために、UV分光計(Ultrospec 2000, Pharmacia Biotech)を使って510 nmの吸収を測定し、このデータをψ−テクトリゲニンを標準として作った標準曲線と比較した。
【0104】
HPLCを使ったテクトリゲニンの測定
組織抽出物のテクトリゲニン含量は、Cosmosil 5 C18-AR-IIカラム(5μm, 4.6×250 mm)、Lichrospher(登録商標)100RP-18e ガード・カラム(45×4.6mm, 5・m, Merck)、脱ガス(ERC-3415a)ポンプ、Waters 600E オートサンプラーおよびインジェクタ(Schambeck SGD GmbH S5200)、Waters TM 486 UV/VIS デテクタおよび積分器(SISC Xunhua Ltd.)を使ったHPLC分析によって求めた。分析はメタノール:H2O(0.1%酢酸)比55:45、流速0.8 ml/分、検出波長265 nmで行った。標準のテクトリゲニン・ピークは約13分のところに現れた。
【0105】
統計的分析
全ての測定は3回反復した。実験データは、Duncan(Duncan D. B. 1955, Biometrics, 11:1-42)のマルチプル・レンジ・テストで有意レベルを5%として分析した。
【0106】
形態学的観察と写真
形態学的観察は解剖顕微鏡(Olympus SZ-ET)で行った。写真記録はデジタルカメラ(Nikon coolpix 8700)で行った。
【0107】
実施例2:フラスコ培養において接種重量が組織成長に与える影響
液体培養されたN. gracilisの地下茎組織を、MS基礎塩、0.5 mg/LのBA、0.1 mg/Lの2,4-Dおよび0.84 mg/LのNAAを含む継代培地に接種した。接種重量比は0.5、1、1.5、2、3、4、5、10、または15%(グラム単位の生体重(F.W.)/100mlの培地)であった。図2に示すように、接種重量が3%(グラム単位の生体重(FW)/100mlの培地)のときに成長率が最高だった、すなわち生体重が4倍分増えた((生体重の倍数増加=最終生体重−初期生体重)/初期生体重)。接種重量が4%を超えると重量増が減少した。これは恐らくフラスコ内のスペースと栄養が限られていたためだろう。
【0108】
実施例3:PGRがフラスコ培養の組織成長とテクトリゲニン含量に与える影響
さまざまな量のPGRを添加したMSを含む培地に接種重量3%(g F.W. / 100 ml)でN. gracilis地下茎組織を接種した(表2)。2週間おきに培地を取り替えて、組織の生体重を測定した。6〜8週間の培養で有意な生体重の増加が観察された(図3)。
【0109】
。。表2に記載されている15のキネチン/IAAの組み合わせの中で、僅か4つの組み合わせ(すなわちB1、C1、C2およびD1)で有意なテクトリゲニン含量の増加が見られた。テクトリゲニン含量の増加をもたらした4つの組み合わせのうち、0.5 mg/LのIAA/と0 mg/Lのキネチンの組み合わせが最大テクトリゲニン含量37.6 ± 4.9 mg/ kg D.W.を提供した(表4)。キネチンを培地に加えてもテクトリゲニン含量は増えなかったようにみえる。
【0110】
IAAおよびキネチンがNeomarica gracilisの地下茎組織の乾燥重量およびテクトリゲニン含量に与える影響
【表4】

1. データは8週間の培養後に収集し、数値は3回の繰り返しの平均±S.E.である。
2. 1つの列の中で同じ文字(a〜d)がついている平均はDuncanのマルチプル・レンジ・テスト(P>0.05)で有意な違いがない。
【0111】
2,4-DおよびNAAの存在下で培養した全ての組織およびNAAのみで培養した組織の一部にもテクトリゲニン含量の増加が認められた(表5)。テクトリゲニン含量の最大値は1.0 mg/LのNAA と 0.1.mg/L の2,4-D(60.9 ± 0.67 mg/kg D.W.)、0.5 mg/LのNAAのみ(58.9 ± 0.23 mg/kg D.W.)および0.1 mg/LのNAAのみ(55.5 ± 0.67 mg/kg D.W.)の存在下で培養した組織で得られた。NAAのみを使用した場合、NAA濃度の増加とともに乾燥重量が減少した。乾燥重量の最大値はNAA濃度が0.1mg/Lのときに得られた(表5)。
【0112】
NAAおよび2,4-DがNeomarica gracilisの地下茎組織の乾燥重量およびテクトリゲニン含量に与える影響
【表5】

1. データは8週間の培養後に収集し、数値は3回の繰り返しの平均±S.E.である。
2. 1つの列の中で同じ文字(a〜e)がついている平均はDuncanのマルチプル・レンジ・テスト(P>0.05)で有意な違いがない。
【0113】
実施例4: N. gracilisの成長率と成長中のテクトリゲニン含量
0.1 mg/LのNAAまたは1 mg/LのNAAと1.0 mg/lの2,4-Dの混合物を添加したMS基礎培地を含む培地に接種重量3%(g F.W. / 50 ml)で地下茎組織を接種した。8週間連続して毎週組織を計量、分析し、テクトリゲニン含量を求めた。
【0114】
図4に示すように、0.1 mg/LのNAAを添加したMS基礎培地で培養した地下茎組織は第3〜4週および第6〜7週に急速に成長した。第5週と第8週には殆ど成長しなかった。1 mg/LのNAAと1.0 mg/l の2,4-Dを添加したMS基礎培地で培養した地下茎組織も類似した成長曲線を示した。
【0115】
成長中のテクトリゲニン含量については、最高の含量はいずれの培養条件でも第1週に見出された(0.1 mg/L NAA および 1 mg/L NAA/1.0 mg/L 2,4-Dにおいてそれぞれ56 ± 2.82 mg/kg D.W. および 43 ± 2.15 mg/kg D.W.)。テクトリゲニン含量は第2週にかなり減少して最小値7 ± 0.42 mg/kg D.W.に達し、第3〜4週を通じて少しずつ増加した。テクトリゲニン含量は第5週にまたかなり減少して、第6〜8週に増加した(図5)。
【0116】
MS0(PGRなしのMS)で培養した組織の全フラボノイド含量は、同じ培養時間なら液体培養のMSやTISの場合よりも一般に高い。MS0を含む約8週間の固体組織培養物の全フラボノイド含量は乾燥重量として約10.74 ± 0.31(mg/g)のψ−テクトリゲニンに相当するが、これはフラボノイドの含量が高いことで広く知られているBelamcanda chinensisというハーブから抽出される全フラボノイド含量に匹敵する。B. chinensisの全フラボノイド含量はここで使用されているのと同じ測定方法によれば約11.50 ± 0.1(mg/g)のψ−テクトリゲニンに相当する。
【0117】
実施例5:アンシミドールが培養されたN. gracilis地下茎組織の芽の形成とテクトリゲニン含量に与える影響
液体培養されたN. gracilisの地下茎組織を、MS、0.5 mg/LのBA、0.1 mg/Lの2,4-Dおよび0.84 mg/LのNAAを含む継代培地に接種した。培養の7日目と14日目に滅菌濾過(0.2um)したアンシミドールを培地に加えて最終濃度0.5、1.0または2.0mg/Lとした。組織の成長を監視し、テクトリゲニン含量を分析した。表6に示すように、0.5または2.0mg/Lのアンシミドールを14日目に組織に添加するとテクトリゲニン含量が低下した。7日目にアンシミドールを組織培養物に添加してもテクトリゲニン含量には影響がなかった。しかし、形態学的には、7日目にアンシミドールを組織培養物に添加すると芽の形成がかなり減少した(図6)。
【0118】
アンシミドールがN. gracilis地下茎組織のテクトリゲニン含量に与える影響
【表6】

1. データは3週間の培養の後で収集した。数値は3回の繰り返しの平均±S.E.である。
2. 1つの列の中で同じ文字(a〜d)がついている平均はDuncanのマルチプル・レンジ・テスト(P>0.05)で有意な違いがない。
【0119】
実施例6:接種材料がN. gracilisの生体重の増加に与える影響
TIS組織チャンバーを4つの領域に分け、液体培養されたN. gracilis地下茎組織を接種重量1.5、3、6および9gで各領域に接種した。表3のサンプルT12、T17およびT18で説明されているように、培地はPGRを添加したMS培地であった。培養された組織は10日おきに計量した。図7に示すように、1mg/Lのキネチンを添加したMS培地に接種重量1.5gという組み合わせが最良の成長を提供した、すなわち30日で生体重として接種重量の4.5倍分(6.76 ± 0.33 g)に達した。その他の接種重量/PGRの組み合わせはすべてこれより成長が遅かった(図7)。
【0120】
PGRがN. gracilisの成長とテクトリゲニン含量に与える影響を求めるために、液体培養されたN. gracilis地下茎組織10個(各1.5g)を、表3のサンプルMS0、TI3、TI4、TI5およびTI6に説明されているMSとPGRを含む培地に接種した。組織は第4週に採取し、分析してテクトリゲニン含量を求めた。図7に示すように、最大のテクトリゲニン含量(48 ± 0.22 mg/kg D.W.)は0.1 mg/Lの2,4-Dおよび1.0 mg/L のNAAを添加したMS培地で得られた。
【0121】
PRGがTIS培養のN. gracilis地下茎組織のテクトリゲニン含量に与える影響
【表7】

数値は3回の繰り返しの平均±S.E.である。
1. 成長率=(最終FW−初期FW)/初期FW
【0122】
実施例7:フラスコおよびTISで培養したN. gracilis地下茎組織のテクトリゲニン含量の比較
実施例2の結果によると、2,4-DとNAAの組み合わせはIAAとキネチンの組み合わせよりも高いテクトリゲニン含量を提供する。最大のテクトリゲニン含量は0.1 mg/LのNAA(テクトリゲニン55.5 ± 0.67 mg/kg D.W.)、0.5 mg/LのNAA(テクトリゲニン59.9 ± 0.23 mg/kg D.W.)または0.1 mg/LのNAAと1 mg/Lの2,4-D(テクトリゲニン60.9 ± 0.67 mg/kg D.W.)を添加したMS培地で得られた。これらの培養条件において全フラボノイド含量も求めた。
【0123】
実施例8:培養と野生のN. gracilis地下茎組織のテクトリゲニン含量の比較
表8に培養および野生のN. gracilis地下茎組織のテクトリゲニン含量を示す。この結果によると、野生のN. gracilis地下茎組織はテクトリゲニンを含んでいないが、培養されたN. gracilis地下茎組織は55.5 ± 0.67 mg/kg D.W.のテクトリゲニンを含んでいた。
【0124】
培養および野生のN. gracilis地下茎組織のテクトリゲニン含量
【表8】

1. 地下茎の培地は0.1mg/LのNAAを添加したMSであった。
2. 数値は3回の繰り返しの平均±S.E.である。
3. ND=検出不能
【0125】
実施例9:培養されたN. gracilis地下茎組織の抽出物は腫瘍細胞の成長を阻害する
「材料と方法」に示す手順で得られた培養N. gracilis地下茎組織の抽出物を培養腫瘍細胞を使って生体外でテストした。この抽出物は0.1%〜20%の濃度範囲でヒトの正常小腸細胞に対して毒性を示さなかった。しかし、この抽出物は濃度3.13%、25%および50%においてマウスのメラノーマ細胞(B16-F0)の成長を阻害する。この抽出物を使ったテストを急性骨髄性白血病細胞株PLB985およびヒト乳癌細胞株MCF7に対しても行った。過酸化物の形成を監視するためにルシゲニン分析を行い、さらに酸化防止剤アナライザを使ってフリーラジカルの分析を行った。このテストの結果、抽出物がこの2つの細胞株の成長を阻害したことが示された。
【0126】
本明細書で説明し、議論した態様は、本発明を調製し、使用するための発明者の知る限りで最良の方法を熟練した当業者に教示することだけを意図している。本明細書のいかなる部分も本発明の適用範囲を限定するものと考えるべきではない。上記の本発明の態様は、上記の教示にかんがみて熟練した当業者が本発明から逸脱しないと判断する範囲で、修正または変更することが可能であり、要素の追加、省略も可能である。したがって、請求の範囲および相当するものの範囲内で、本発明は具体的に記述された以外のやり方で実施できると理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、Neomarica gracilisの増殖能力のある組織(たとえば根、葉、葉の根元および/または地下茎など)を使った組織培養調製により得られるN. gracilisの生体外のフラボノイド豊富地下茎組織を提供する。N. gracilisのフラボノイド豊富地下茎組織はテクトリゲニンを含んでいるが、このことはテクトリゲニンを含まない野生のN. gracilisの地下茎の場合とは明確に異なっている。本発明はさらに、生体外フラボノイド豊富地下茎組織の培養の方法、フラボノイド豊富地下茎組織からテクトリゲニンを抽出する方法、およびフラボノイド豊富地下茎組織中のテクトリゲニンの定量方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は一時浸漬法を図示したものである。一時浸漬法は本発明で用いられる2つの組織培養法のうちの1つであり、もう1つはフラスコ培養法である。
【図2】図2はフラスコ培養において接種材料の重量比がN. gracilisの生体外フラボノイド豊富地下茎組織の成長率に与える影響を示す図である。データは6−ベンジル−アミノプリンを0.5mg/L、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)を.01mg/Lおよびα−ナフタレン酢酸(NAA)を0.84mg/L含むMS培地(MurashigeおよびSkoogの培地)で培養された地下茎組織から収集した。各データ点は3回の試行の平均を表し、エラーバーは平均の標準誤差を表す。
【図3】図3はNeomarica gracilisの生体外フラボノイド豊富地下茎組織のバイオマスの増加に対するインドール−3−酢酸(IAA)およびキネチンの効果を示す図である。ここでの地下茎組織はフラスコ培養で得たものである。各データ点は3回の試行の平均を表し、エラーバーは平均の標準誤差を表す。バイオマスの増加 = 現在の生体重−2週間前の生体重
【図4】図4は、α−ナフタレン酢酸(NAA)を0.1 mg/L (◆)含むMS培地で8週間培養されたN. gracilisの成長曲線を示す図である。各データ点は3回の試行の平均を表し、エラーバーは平均の標準誤差を表す。
【図5】図5はMS+NAAを0.1 mg/L (○)、またはNAAを1mg/Lと2,4-Dを0.1 mg/L(■)で8週間培養したフラボノイド豊富地下茎のテクトリゲニン含有量を示す図である。各データ点は3回の試行の平均を表し、エラーバーは平均の標準誤差を表す。
【図6】図6はアンシミドールの存在下でN. gracilis地下茎の芽が形成されるところを示す合成写真である。写真は培養3週間後に撮影された。バー=1 cm。パネル(a):7日目にアンシミドールを0.5mg/L添加; パネル(b):7日目にアンシミドールを2.0 mg/L添加、 パネル(c):14日目にアンシミドールを2.0 mg/L添加、 パネル(d):アンシミドールなしのコントロール培養。
【図7】図7はN. gracilis地下茎組織の成長率に対する接種材料の重量と植物成長調整剤(PGR)の影響を示す図である。各データ点は3回の試行の平均を表し、エラーバーは平均の標準誤差を表す。成長率=(最終FW−初期FW)/初期FW
【符号の説明】
【0129】
10 チャンバー
12 組織培養
14 スクリーンあるいはバスケット
16 液体培地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Neomarica gracilisのフラボノイド含有量を変える組織培養調製品から得られたN. gracilisの生体外フラボノイド豊富組織において、前記フラボノイド豊富組織がテクトリゲニンを含む生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項2】
前記生体外フラボノイド豊富組織が増殖能力を持つN. gracilis組織から培養された地下茎組織であることを特徴とする請求項1記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項3】
前記N. gracilis組織が根、地下茎、葉および葉の基部を含むことを特徴とする請求項2記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項4】
前記組織培養調製物が植物成長調整剤を含む培地を含むことを特徴とする請求項1記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項5】
前記植物成長調整剤がサイトキニンまたはオーキシンを含むことを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項6】
前記植物成長調整剤が、インドール−3−酢酸、2−4−ジクロロフェノキシ酢酸、α−ナフタレン酢酸、6−ベンジル−アミノプリンおよびキネチンからなる群から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする請求項5記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項7】
前記植物成長調整剤の濃度が約0.01〜2.0mg/Lであることを特徴とする請求項5記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項8】
前記培地がさらにMurashigeとSkoogの基礎塩培地(MS培地)を含むことを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項9】
前記MS培地がナトリウム、カリウム、硝酸塩、アンモニウム、マグネシウム、硫酸塩、カルシウム、鉄、塩酸塩、リン酸塩、マンガン、ヨウ素、ホウ酸塩、亜鉛、銅、モリブデン、コバルトまたはそれらの混合物を含むことを特徴とする請求項8記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項10】
前記培地がさらに炭水化物を含むことを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項11】
前記炭水化物がミオイノシトールまたはシクロース、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項10記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項12】
前記培地がさらにビタミンを含むことを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項13】
前記ビタミンがチアミンHCl、ピリドキシンHClおよびニコチン酸からなる群から選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項12記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項14】
前記培地がさらにアンシミドールを含むことを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項15】
前記培地のpHが5〜7であることを特徴とする請求項4記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項16】
前記組織培養調製物がフラスコ培養、一時浸漬法(TIS)またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項17】
前記テクトリゲニンの量が乾燥組織重量1Kgに対して2.5〜65mgであることを特徴とする請求項1記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項18】
請求項1記載のN. gracilisから前記生体外フラボノイド豊富組織を得るための方法であり、以下の手順を含む方法:
N. gracilis組織を前記組織培養調製物の培地に接種する(ただし前記N. gracilis組織は増殖能力を持つものとする)、そして
地下茎組織が形成されるのに十分な時間、前記N. gracilis組織を前記組織培養調製物の中で成長させる。
【請求項19】
前記培地が20℃〜30℃に保持されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記N. gracilis組織が根、葉、葉の基部または地下茎を含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記組織培養物はフラスコ培養、一時浸漬法(TIS)またはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
十分な時間が約4〜8週間であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記TISおいてN. gracilis組織を約2〜4時間おきに1〜3分間培地に浸漬することができることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記培地が植物成長調整剤、塩培地および炭水化物を含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記植物成長調整剤がサイトキニンまたはオーキシンを含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記植物成長調整剤が、インドール−3−酢酸、2−4−ジクロロフェノキシ酢酸、α−ナフタレン酢酸、6−ベンジル−アミノプリンおよびキネチンからなる群から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記植物成長調整剤の濃度が約0.01〜2.0mg/Lであることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記塩培地がナトリウム、カリウム、硝酸塩、アンモニウム、マグネシウム、硫酸塩、カルシウム、鉄、塩酸塩、リン酸塩、マンガン、ヨウ素、ホウ酸塩、亜鉛、銅、モリブデン、コバルト、あるいはこれらの混合物を含むMurashigeおよびSkoogの基礎塩培地(MS培地)であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記炭水化物がミオイノシトールまたはシクロース、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項30】
30. 前記培地がさらにビタミンを含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記ビタミンがチアミンHCl、ピリドキシンHClおよびニコチン酸からなる群から選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項30記載のN. gracilisからの生体外フラボノイド豊富組織。
【請求項32】
前記培地のpHが約5〜7であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項33】
請求項1記載のN. gracilisの前記生体外フラボノイド豊富組織からテクトリゲニンを抽出するための方法であり、以下の手順を含む方法:
前記N. gracilisの生体外フラボノイド豊富組織を乾燥して乾燥フラボノイド豊富組織を得る;
前記乾燥生体外フラボノイド豊富組織にアルコールを添加して懸濁液を形成する;
前記懸濁液を加熱して加熱懸濁液を形成し; そして
加熱懸濁液が冷えてから濾過して前記テクトリゲニンを含む濾液を採取する。
【請求項34】
前記乾燥生体外フラボノイド豊富組織が生体外フラボノイド豊富組織を凍結乾燥にかけることによって得られることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記懸濁液が約50〜70℃で加熱されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記懸濁液が振動しながら加熱されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記振動が超音波によって生成されることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記アルコールがメタノールまたはエタノールであることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記濾液は前記加熱懸濁液をWhatman(登録商標)No. 1フィルタに通すことにより採取されることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項40】
請求項33記載のN. gracilisの前記生体外フラボノイド豊富組織の中の前記テクトリゲニンの量を求めるための方法であり、以下の手順を含む方法:
高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって前記テクトリゲニンの量を求める。
【請求項41】
前記HPLCがCosmosil(登録商標)5 C18-AR-IIカラムを含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記テクトリゲニンがメタノールと水(0.1%酢酸を含む)を容積比55:45で含む溶出液で溶出されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記テクトリゲニンの量が約265 nmの波長でψ−テクトリゲニンを標準として測定されることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項44】
抽出物が抗腫瘍活性を持つことを特徴とする請求項33に記載の前記N. gracilisの生体外フラボノイド豊富組織の抽出物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−161184(P2008−161184A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312162(P2007−312162)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(396008783)大同股▲ふん▼有限公司 (76)
【出願人】(507369121)大同大學 (3)
【Fターム(参考)】