説明

OFDM受信装置及び送信装置

【課題】地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用し、受信形態に応じて伝送路応答を算出する。
【解決手段】受信装置20は、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用したOFDM信号であって、送信系統Tx1,Tx2において所定位置のパイロットキャリアが直交符号化されたOFDM信号を受信する。直交パイロット分離回路26の伝送路情報生成部100は、パイロットキャリアの振幅に基づいて受信形態を判定する。パイロット位置伝送路応答算出部90は、受信形態が「受信装置20が静止している」のとき、時間軸方向の受信パイロットキャリアを用いて、受信形態が「受信装置20が移動している」のとき、周波数軸方向の受信パイロットキャリアを用いて、伝送路応答をそれぞれ算出する。これにより、受信形態に応じて的確な伝送路応答を精度高く算出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロットキャリアを伝送フレームの所定位置に配置し、地上デジタル放送によるOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)信号を複数の送信アンテナから送信する送信装置、及び、複数の送信アンテナから送信されたOFDM信号を受信し、パイロットキャリアを用いて伝送路応答を算出する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上デジタル放送の伝送方式として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)の方式が知られている。このOFDM伝送方式は、周波数軸方向で互いに直交する多数の搬送波(キャリア)を用いてデータを変調する方式である。時間軸方向でみると、各搬送波の伝送速度が抑えられ、相対的に伝送シンボルが長くなるため、伝送シンボルを構成する有効シンボルとガードインターバルとの対比により、マルチパスによる遅延波の影響を緩和することができる。また、OFDM伝送方式は、マルチパス及びゴーストに対する耐性に優れており、移動受信可能な方式としても知られている。
【0003】
一方、移動通信の分野では、利用可能な周波数帯域が制限されていること等により、高品質かつ固定通信並みの高い周波数利用効率の実現が要求されている。この要求を満たすことができる技術として、MIMO(Multiple Input Multiple Output:多入力多出力)通信技術が用いられている。
【0004】
前述したOFDM方式及びMIMO通信技術を用いた通信システムは、それぞれの利点による相乗効果を得ることができるとして、従来から無線伝送のために用いられている。このMIMO−OFDM通信システムは、複数の送信アンテナを備えた送信装置、及び、複数の受信アンテナを備えた受信装置により構成される。複数の送信アンテナと複数の受信アンテナとの間には、それぞれMIMO伝送路が形成される。送信装置は、パイロットキャリアを周波数軸上及び時間軸上に所定間隔で配置し、かつ、パイロットキャリアに対して送信アンテナ毎に異なる符号を割り当ててOFDM信号を送信する。そして、受信装置は、送信装置により送信されたOFDM信号を受信し、パイロットキャリアに基づいて伝送路応答を算出する。
【0005】
このようなパイロットキャリアの伝送手法には、以下の2つがある。第1の手法は、一方の送信アンテナからパイロットキャリアを送信しているときに、他方の送信アンテナからNULLのパイロットキャリアを送信することで(パイロットキャリアを送信しないようにすることで)、送信アンテナ毎に交互にパイロットキャリアを送信するものである。また、第2の手法は、送信装置が、一方の送信系統にて生成したパイロットキャリアと、他方の送信系統にて生成したパイロットキャリアとを直交符号化し、それぞれの送信アンテナから送信し、受信装置が、受信したパイロットキャリアを分離する手法である(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
特許文献1の送信装置は、4本の送信アンテナを備え、パイロットキャリアを周波数軸上に所定間隔で配置すると共に、時間軸上に連続して配置する。そして、時間軸上の4シンボルについて、パイロットキャリアの位相を反転させ直交符号化を行い、それぞれの送信アンテナからOFDM信号を送信する。受信装置は、1本の受信アンテナを備え、時間軸上の4シンボルの受信パイロットキャリアを用いて、4シンボル分の加算平均を求める等して、4つの伝送路応答を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−124125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パイロットキャリアが時間軸方向で直交符号化された場合、直交符号化対象のパイロットキャリアが配置された時間期間中、伝送路応答は同一であるとみなす必要がある。これは、受信装置において、時間軸方向のパイロットキャリアが直交符号化されていること、及びその時間期間中の伝送路応答が同一であることを前提に、所定の式を用いて伝送路応答が算出されるからである。しかしながら、この手法では時間変動があると、伝送路応答が同一でなくなるから、伝送路応答を精度高く算出することができなくなる。
【0009】
一方、パイロットキャリアが周波数軸方向で直交符号化された場合、直交符号化対象のパイロットキャリアが配置された周波数範囲内で、伝送路応答は同一であるとみなす必要がある。これは、受信装置において、周波数軸方向のパイロットキャリアが直交符号化されていること、及びその周波数範囲内の伝送路応答が同一であることを前提に、所定の式を用いて伝送路応答が算出されるからである。しかしながら、この手法では周波数変動があると、伝送路応答が同一でなくなるから、伝送路応答を精度高く算出することができなくなる。すなわち、この手法では周波数選択性に弱い。
【0010】
地上デジタル放送のOFDM信号を伝送するシステムにおいて、OFDM信号の放送波を受信して伝送路応答を算出する受信装置は、様々な受信形態が想定される。例えば、受信装置が静止している状態で放送波を受信する場合、または、受信装置が移動した状態で放送波を受信する場合が想定される。しかしながら、前述した手法は、受信形態が変わった場合であっても固定のパイロットキャリア及び固定の式を用いるから、伝送路応答を精度高く算出することができない。
【0011】
また、特許文献1の手法では、伝送フレームにおけるパイロットキャリアの配置が、地上デジタル放送に用いる伝送フレームにおけるパイロットキャリアの配置と異なっている。このため、地上デジタル放送のOFDM信号を伝送する送信装置及び受信装置に、特許文献1の手法をそのまま適用することができない。
【0012】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用し、受信形態に応じて伝送路応答を算出可能なOFDM受信装置及び送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明によるOFDM受信装置は、複数の送信系統間でパイロットキャリアが直交符号化され、地上デジタル放送のキャリアシンボルと同じ配置の伝送フレームが構成され、前記送信系統毎の送信アンテナを介して送信された前記伝送フレームのOFDM信号を受信するOFDM受信装置において、当該OFDM受信装置が静止または移動していることを示す受信形態を判定し、前記受信形態を伝送路情報として生成する伝送路情報生成部と、前記伝送路情報生成部により生成された伝送路情報が当該OFDM受信装置の静止を示している場合、前記受信したOFDM信号に含まれる受信パイロットキャリアのうちの時間軸方向における受信パイロットキャリア及び既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出し、前記伝送路情報が当該OFDM受信装置の移動を示している場合、周波数軸方向における受信パイロットキャリア及び既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出するパイロット位置伝送路応答算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明によるOFDM受信装置は、前記伝送路情報生成部が、当該OFDM受信装置が静止している、高速で移動している、または低速で移動していることを示す受信形態を判定し、前記受信形態を伝送路情報として生成し、前記パイロット位置伝送路応答算出部が、前記伝送路情報が当該OFDM受信装置の静止を示している場合、時間軸方向における受信パイロットキャリア及び既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出し、前記伝送路情報が当該OFDM受信装置の高速移動を示している場合、周波数軸方向における受信パイロットキャリア及び既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出し、前記伝送路情報が当該OFDM受信装置の低速移動を示している場合、周波数軸及び時間軸からなる2軸の斜め方向における受信パイロットキャリア及び既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明によるOFDM受信装置は、前記伝送路情報生成部が、前記受信パイロットキャリアの振幅を算出し、前記振幅に基づいて前記受信形態を判定する、ことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明によるOFDM送信装置は、複数の送信系統間でパイロットキャリアを直交符号化し、地上デジタル放送のキャリアシンボルと同じ配置の伝送フレームを構成し、前記送信系統毎の送信アンテナを介して前記伝送フレームのOFDM信号を送信するOFDM送信装置において、既知のパイロットキャリアを生成するパイロットキャリア生成部と、前記伝送フレームを構成するパイロットキャリアについて、前記複数の送信系統間で直交符号化するための符号を生成する直交符号生成部と、前記パイロットキャリア生成部により生成された既知のパイロットキャリアを、前記直交符号生成部により生成された符号で乗算し、前記既知のパイロットキャリアの位相を変調し、周波数軸方向のパイロットキャリアにて直交符号化すると共に、時間軸方向のパイロットキャリアにて直交符号化する直交符号用位相変調回路と、を備え、前記送信されたOFDM信号を受信するOFDM受信装置に、当該OFDM受信装置が静止または移動していることを示す受信形態に応じて、前記受信したOFDM信号に含まれる受信パイロットキャリアのうちの時間軸方向または周波数軸方向における受信パイロットキャリア、及び、既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出させる、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明によるOFDM送信装置は、前記直交符号用位相変調回路が、さらに、周波数軸及び時間軸からなる2軸における斜め方向のパイロットキャリアにて直交符号化し、前記送信された地上デジタル放送のOFDM信号を受信するOFDM受信装置に、当該OFDM受信装置が静止、高速移動または低速移動していることを示す受信形態に応じて、前記受信したOFDM信号に含まれる受信パイロットキャリアのうち、時間軸方向、周波数軸方向、または前記2軸における斜め方向のうちのいずれかの方向における受信パイロットキャリア、及び、既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用し、受信形態に応じて伝送路応答を算出することが可能となる。例えば、OFDM受信装置が静止している場合、時間軸方向のパイロットキャリアを利用して、伝送路応答を算出することができる。また、OFDM受信装置が移動している場合、周波数軸方向のパイロットキャリアを利用して、伝送路応答を算出することができる。例えば、OFDM受信装置が高速で移動している場合、周波数軸方向のパイロットキャリアを利用して、伝送路応答を算出することができ、OFDM受信装置が低速で移動している場合、時間軸及び周波数軸からなる2軸における斜め方向のパイロットキャリアを利用することにより、伝送路応答を算出することができる。さらに、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用するから、地上デジタル放送を受信する既存のOFDM受信装置を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態によるOFDM送信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】フレーム構成回路の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態によるOFDM受信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】直交パイロット分離回路の構成を示すブロック図である。
【図5】周波数軸方向のパイロットキャリアを位相反転させた直交符号化の例を説明する図である。
【図6】時間軸方向のパイロットキャリアを位相反転させた直交符号化の例を説明する図である。
【図7】実施例1におけるパイロットキャリアの符号を説明する図である。
【図8】実施例1の伝送フレームについて、パイロットキャリアの配置を説明する図である。
【図9】実施例2におけるパイロットキャリアの符号を説明する図である。
【図10】実施例2の伝送フレームについて、パイロットキャリアの配置を説明する図である。
【図11】パイロット位置の伝送路応答を算出する手法について説明する図である。
【図12】複数の送信系統を備えた場合のパイロットキャリアについて説明する図である。
【図13】地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
〔OFDM送信装置の構成〕
まず、本発明の実施形態によるOFDM送信装置について説明する。図1は、OFDM送信装置の構成を示すブロック図である。このOFDM送信装置10(以下、送信装置10という。)は、誤り訂正符号化回路11、マッピング回路12、時空間符号化回路13、フレーム構成回路14、IFFT回路15、GI付加回路16、周波数変換回路17及び送信アンテナ18を備えている。フレーム構成回路14、IFFT回路15、GI付加回路16、周波数変換回路17及び送信アンテナ18は、送信系統Tx1,Tx2に対応して2系統分備えている。
【0021】
誤り訂正符号化回路11は、送信装置10により送信されるデータ(例えば、MPEG2のTS(トランスポートストリーム))を入力し、エネルギー拡散、誤り訂正符号の付加及びインターリーブ等の符号化処理を行い、誤り訂正符号化したデータをマッピング回路12に出力する。例えば、符号化処理として、RS符号、畳み込み符号、ターボ符号、LDPC符号等のFEC(Forward Error Correction:前方誤り訂正)による処理が行われる。
【0022】
マッピング回路12は、誤り訂正符号化回路11から誤り訂正符号化されたデータを入力し、所定の変調方式によりマッピングしてデータキャリア化し、マッピングしたデータを時空間符号化回路13に出力する。例えば、変調方式として、BPSK,QPSK、16QAM、64QAM等が用いられる。
【0023】
時空間符号化回路13は、マッピング回路12からマッピングされたデータを入力し、時空間符号化処理を行い、時空間符号化したデータを2系統に分け、それぞれの送信系統Tx1,Tx2のフレーム構成回路14に出力する。例えば、時空間符号化処理として、STBC(Space−Time Block Coding)、STTC(Space−Time Trellis Coding)等による処理が行われる。
【0024】
フレーム構成回路14は、時空間符号化回路13から時空間符号化されたデータを入力し、データキャリア、パイロットキャリア及び制御情報キャリアによりOFDMの伝送フレームを構成し、OFDM信号をIFFT回路15に出力する。ここで、フレーム構成回路14は、送信系統Tx1,Tx2毎に備えられている。送信系統Tx1のフレーム構成回路14は、既存の地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用し、データキャリア、パイロットキャリア等により伝送フレームを構成する。これに対し、送信系統Tx2のフレーム構成回路14は、既存の地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用し、所定位置のパイロットキャリアを位相反転させ、データキャリア、パイロットキャリア等により伝送フレームを構成する。すなわち、送信系統Tx1,Tx2のフレーム構成回路14は、既存の地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用し、所定位置のパイロットキャリアを用いて直交符号化する。フレーム構成回路14の詳細については後述する。尚、以下に説明するIFFT回路15、GI付加回路16、周波数変換回路17及び送信アンテナ18は、フレーム構成回路14と同様に、送信系統Tx1,Tx2毎に備えられている。
【0025】
IFFT回路15は、フレーム構成回路14から伝送フレームのOFDM信号を入力し、周波数領域のOFDM信号を逆高速フーリエ変換し、時間領域のOFDM信号をGI付加回路16に出力する。GI付加回路16は、IFFT回路15から時間領域のOFDM信号を入力し、GI(ガードインターバル)を付加し、周波数変換回路17に出力する。周波数変換回路17は、GI付加回路16からガードインターバルが付加されたOFDM信号を入力し、等価低域系(ベースバンド)の周波数を所定周波数帯のRF(Radio Frequency)に変換する。周波数変換回路17により周波数変換されたOFDM信号は、送信系統Tx1,Tx2毎に送信アンテナ18を介してOFDM信号の放送波として送信される。
【0026】
(フレーム構成回路)
次に、図1に示した送信装置10のフレーム構成回路14について説明する。図2は、フレーム構成回路14の構成を示すブロック図である。このフレーム構成回路14は、送信系統Tx1,Tx2毎に備えられた回路であり、直交符号化パイロットキャリア生成回路40、フレーム構成パターンメモリ50及び伝送フレーム多重回路60を備えている。フレーム構成回路14は、データキャリア、パイロットキャリア及び制御情報キャリアが地上デジタル放送と同じ配置になるように構成する。また、フレーム構成回路14は、送信系統Tx1,Tx2間で所定のパイロットキャリアが直交するように、位相を回転させる。すなわち、送信系統Tx1のフレーム構成回路14は、既存の地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用し、伝送フレームを構成する。これに対し、送信系統Tx2のフレーム構成回路14は、既存の地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用し、周波数軸方向の所定位置のパイロットキャリア、及び時間軸方向の所定位置のパイロットキャリアを位相反転させ、伝送フレームを構成する。
【0027】
図13は、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置を説明する図である。地上デジタルテレビジョン放送の放送方式であるISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式またはDVB−T(Digital Video Broadcasting-Terrestrial)方式においては、図13に示すように基準信号としてパイロットキャリアが挿入されている。図13では、パイロットキャリアを黒丸で、その他のキャリアシンボルを白抜きの丸で示している。パイロットキャリアは、振幅と位相が予め決められた信号であり、受信側のOFDM受信装置においても同じ信号を生成することができるため、これを参照信号として伝送路応答を算出することができる。フレーム構成回路14は、パイロットキャリアを、図13に示した地上デジタル放送と同じ配置になるように挿入し、伝送フレームを構成する。
【0028】
図2に戻って、直交符号化パイロットキャリア生成回路40は、パイロットキャリア生成部41、直交符号生成部42及び直交符号用位相変調回路43を備えている。送信系統Tx1の直交符号化パイロットキャリア生成回路40は、図13に示した地上デジタル放送と同じ配置のパイロットキャリアを生成する。これに対し、送信系統Tx2の直交符号化パイロットキャリア生成回路40は、図13に示した地上デジタル放送と同じ配置のパイロットキャリアであって、かつ、送信系統Tx1の直交符号化パイロットキャリア生成回路40により生成されるパイロットキャリアのうちの所定のパイロットキャリアに対し、反転した位相のパイロットキャリアを生成する。
【0029】
パイロットキャリア生成部41は、送信側及び受信側で既知となるパイロットキャリアを生成し、直交符号用位相変調回路43に出力する。例えば、BPSKの変調方式の場合、パイロットキャリアがI軸上において1または−1に配置されるように、パイロットキャリア(データは1または−1)が生成される。
【0030】
直交符号生成部42は、所定のパイロットキャリアが送信系統Tx1,Tx2間で直交するように、パイロットキャリア毎の符号を生成し、直交符号用位相変調回路43に出力する。ここで、送信系統Tx1の直交符号生成部42と、送信系統Tx2の直交符号生成部42とは、所定のパイロットキャリアについて異なる符号になるように生成する。
【0031】
直交符号用位相変調回路43は、パイロットキャリア生成部41から既知のパイロットキャリアを入力すると共に、直交符号生成部42から符号を入力し、既知のパイロットキャリアを符号により乗算し、既知のパイロットキャリアの位相を変調し、伝送フレーム多重回路60に出力する。
【0032】
フレーム構成パターンメモリ50には、伝送フレーム多重回路60が生成する伝送フレームにおけるデータキャリア、パイロットキャリア及び制御情報キャリアの配置を規定するパターンが格納されている。この伝送フレームのパターンは予め設定されており、パイロットキャリアは、図13に示した配置になるように設定されている。
【0033】
伝送フレーム多重回路60は、スイッチ制御部61及びスイッチ62を備えている。スイッチ制御部61は、フレーム構成パターンメモリ50から各キャリアの配置パターンを読み出し、この配置パターンに従って、スイッチ62において伝送フレームを構成するための切替信号をスイッチ62に出力する。
【0034】
スイッチ62は、時空間符号化回路13からデータキャリアを、直交符号化パイロットキャリア生成回路40からパイロットキャリアをそれぞれ入力すると共に、制御情報キャリアを入力する。また、スイッチ62は、スイッチ制御部61から切替信号を入力する。そして、スイッチ62は、切替信号に従って、入力信号であるデータキャリア、パイロットキャリア及び制御情報キャリアを切り替え、データキャリア、パイロットキャリア及び制御情報キャリアを、フレーム構成パターンメモリ50にて格納されている配置パターンが示す伝送フレームに配置する。これにより、図13に示すような所望の伝送フレームが構成される。
【0035】
このように、フレーム構成回路14は、データキャリア、パイロットキャリア及び制御情報キャリアによりOFDMの伝送フレームを構成し、OFDM信号をIFFT回路15に出力する。
【0036】
(周波数軸方向のパイロットキャリアを位相反転させた直交符号化の例)
図5は、周波数軸方向のパイロットキャリアを位相反転させた直交符号化の例を説明する図である。図5に示すように、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの符号が同じシンボルの周波数軸に対して「1,−1,−1,1,1,−1,・・・」の場合、送信系統Tx1の直交符号生成部42は、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアと同じ符号を生成する。そして、送信系統Tx1の直交符号用位相変調回路43は、送信系統Tx1の直交符号生成部42により生成された地上デジタル放送におけるパイロットキャリアと同じ符号を用いて、パイロットキャリア生成部41から入力したパイロットキャリアの位相を変調する。図5において、Pn(k)は、送信系統Txnにおいて、周波数軸方向の第k番目のパイロットキャリアを示している。すなわち、kは、パイロットキャリアの位置を示している。例えば、P1(1)は、送信系統Tx1において、周波数軸方向の第1番目のパイロットキャリアを示している。これにより、送信系統Tx1の直交符号用位相変調回路43から、地上デジタル放送と同じ配置及び位相のパイロットキャリアが出力される。
【0037】
これに対し、送信系統Tx2の直交符号生成部42は、図5に示すように、四角で囲んだ所定位置のパイロットキャリアの符号を、送信系統Tx1の直交符号生成部42により生成される符号に対して反転した符号とし、「1,1,−1,−1,1,1,・・・」の符号を生成する。送信系統Tx2の直交符号生成部42により生成される偶数番目の符号は、送信系統Tx1の直交符号生成部42により生成される符号に対して反転している。そして、送信系統Tx2の直交符号用位相変調回路43は、送信系統Tx2の直交符号生成部42により生成された符号を用いて、パイロットキャリア生成部41から入力したパイロットキャリアの位相を変調する。これにより、送信系統Tx2の直交符号用位相変調回路43から、同じシンボルの周波数軸上において偶数番目のパイロットキャリア(図5において、左半分が黒塗りのパイロットキャリア)が、送信系統Tx1に対して反転した位相で出力される。
【0038】
図5に示したように、送信系統Tx1において、地上デジタル放送と同じ配置及び位相のパイロットキャリアが生成され、送信系統Tx2において、地上デジタル放送と同じ配置のパイロットキャリアであって、かつ、周波数軸上の偶数番目のパイロットキャリアの位相が送信系統Tx1に対して反転するように生成される。すなわち、送信装置10は、同じシンボルの周波数軸方向において隣接する2つのパイロットキャリア(送信系統Tx1,Tx2では合計4つのパイロットキャリア)を用いることにより、直交符号化を行う。そして、OFDM受信装置は、送信装置10において直交符号化された4つのパイロットキャリアに対応する2つの受信パイロットキャリア毎に、パイロット位置の伝送路応答を算出する。以下、パイロット位置の伝送路応答算出手法について説明する。
【0039】
図11は、パイロット位置の伝送路応答を算出する手法について説明する図である。送信装置10において、送信系統Tx1の送信アンテナ18から、P1(1)=1,P1(2)=−1,P1(3)=−1,P1(4)=1,P1(5)=1,P1(6)=−1,・・・,P1(2n−1),P1(2n),・・・のパイロットキャリアを含む放送波が送信され、送信系統Tx2の送信アンテナ18から、P2(1)=1,P2(2)=1,P2(3)=−1,P2(4)=−1,P2(5)=1,P2(6)=1,・・・,P2(2n−1),P2(2n),・・・のパイロットキャリアを含む放送波が送信された場合を想定する。式で表すと以下のとおりである。
P1(2n−1)=P2(2n−1)
P1(2n)=−P2(2n) ・・・(1)
ここで、n=1,2,3,・・・(nは正の整数)である。
【0040】
この場合、後述するOFDM受信装置(受信装置20)は、受信アンテナ21を介して、送信系統Tx1からの信号と送信系統Tx2からの信号とが合成された信号を受信する。送信系統Tx1の送信アンテナ18と受信アンテナ21との間の伝送路応答をh11(k)、送信系統Tx2の送信アンテナ18と受信アンテナ21との間の伝送路応答をh12(k)とすると、周波数軸上の第1のパイロット位置において、受信信号Rx(1)=h11(1)・P1(1)+h12(1)・P2(1)である。第2,・・・,第2n−1,第2nのパイロット位置における受信信号Rx(2),・・・,Rx(2n−1),Rx(2n)は、図11に示すとおりである。
Rx(2)=h11(2)・P1(2)+h12(2)・P2(2)
・・・
Rx(2n−1)=h11(2n−1)・P1(2n−1)+h12(2n−1)・P2(2n−1)
Rx(2n)=h11(2n)・P1(2n)+h12(2n)・P2(2n)
・・・(2)
【0041】
ここで、パイロット位置を示す2n−1及び2nの周波数が十分に近い場合には、2n−1における伝送路応答及び2nにおける伝送路応答は同一であるとみなすことができる。式で表すと以下のとおりである。
11(2n−1)=h11(2n)
12(2n−1)=h12(2n) ・・・(3)
【0042】
式(2)のRx(2n−1)に式(3)を代入すると、以下の式となる。
Rx(2n−1)=h11(2n)・P1(2n−1)+h12(2n)・P2(2n−1) ・・・(4)
【0043】
送信系統Tx1において、隣り合うパイロットキャリアの符号が異なる場合、すなわち、
P1(2n−1)=−P1(2n−1)
P2(2n−1)=P2(2n) ・・・(5)
の場合、Rx(2n−1)の式(4)及びRx(2n)の式(2)から以下を導くことができる。
11(2n)=(Rx(2n)−Rx(2n−1))/2・P1(2n)
12(2n)=−(Rx(2n)+Rx(2n−1))/2・P1(2n)
・・・(6)
【0044】
また、送信系統Tx1において、隣り合うパイロットキャリアの符号が同じ場合、すなわち、
P1(2n−1)=P1(2n−1)
P2(2n−1)=−P2(2n) ・・・(7)
の場合、Rx(2n−1)の式(4)及びRx(2n)の式(2)から以下を導くことができる。
11(2n)=(Rx(2n)+Rx(2n−1))/2・P1(2n)
12(2n)=−(Rx(2n)−Rx(2n−1))/2・P1(2n)
・・・(8)
【0045】
このように、送信装置10は、送信系統Tx2において、送信系統Tx1にて生成された符号に対し極性を反転させた符号により、周波数軸方向の所定位置のパイロットキャリアを位相反転させ、送信アンテナ18から送信するようにした。これにより、後述するOFDM受信装置は、パイロット位置の伝送路応答を算出することができる。この場合、送信装置10は、送信系統Tx1,Tx2において、伝送路応答が同一であるとみなすことができる周波数軸方向のパイロットキャリアを用いて、直交符号化する。
【0046】
(時間軸方向のパイロットキャリアを位相反転させた直交符号化の例)
図6は、時間軸方向のパイロットキャリアを位相反転させた直交符号化の例を説明する図である。図6に示すように、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの符号が同じキャリアの時間軸に対して「1,1,1,1,1,1,・・・」の場合、送信系統Tx1の直交符号生成部42は、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアと同じ符号を生成する。そして、送信系統Tx1の直交符号用位相変調回路43は、送信系統Tx1の直交符号生成部42により生成された地上デジタル放送におけるパイロットキャリアと同じ符号を用いて、パイロットキャリア生成部41から入力したパイロットキャリアの位相を変調する。図6において、Pn(s)は、送信系統Txnにおいて、時間軸方向の第s番目のパイロットキャリアを示している。すなわち、sは、パイロットキャリアの位置を示している。例えば、P1(1)は、送信系統Tx1において、時間軸方向の第1番目のパイロットキャリアを示している。これにより、送信系統Tx1の直交符号用位相変調回路43から、地上デジタル放送と同じ位相のパイロットキャリアが出力される。
【0047】
これに対し、送信系統Tx2の直交符号生成部42は、図6に示すように、四角で囲んだ所定位置のパイロットキャリアの符号を、送信系統Tx1の直交符号生成部42により生成される符号に対して反転した符号とし、「1,−1,1,−1,1,−1,・・・」の符号を生成する。送信系統Tx2の直交符号生成部42により生成される偶数番目の符号は、送信系統Tx1の直交符号生成部42により生成される符号に対して反転している。そして、送信系統Tx2の直交符号用位相変調回路43は、送信系統Tx2の直交符号生成部42により生成された符号を用いて、パイロットキャリア生成部41から入力したパイロットキャリアの位相を変調する。これにより、送信系統Tx2の直交符号用位相変調回路43から、同じキャリアの時間軸上において偶数番目のパイロットキャリア(図6において、左半分が黒塗りのパイロットキャリア)が、送信系統Tx1に対して反転した位相で出力される。
【0048】
図6に示したように、送信系統Tx1において、地上デジタル放送と同じ配置及び位相のパイロットキャリアが生成され、送信系統Tx2において、地上デジタル放送と同じ配置のパイロットキャリアであって、かつ、時間軸上の偶数番目のパイロットキャリアの位相が送信系統Tx1に対して反転するように生成される。すなわち、送信装置10は、同じキャリアの時間軸方向において隣接する2つのパイロットキャリア(送信系統Tx1,Tx2では合計4つのパイロットキャリア)を用いることにより、直交符号化を行う。そして、OFDM受信装置は、送信装置10において直交符号化された4つのパイロットキャリアに対応する2つの受信パイロットキャリア毎に、パイロット位置の伝送路応答を算出する。後述するOFDM受信装置は、図11において説明した同様の手法により、パイロット位置の伝送路応答を算出することができる。伝送路応答の算出手法については説明を省略する。
【0049】
このように、送信装置10は、送信系統Tx2において、送信系統Tx1にて生成された符号に対し極性を反転させた符号により、時間軸方向の所定位置のパイロットキャリアを位相反転させ、送信アンテナ18から送信するようにした。これにより、後述するOFDM受信装置は、パイロット位置の伝送路応答を算出することができる。この場合、送信装置10は、送信系統Tx1,Tx2において、伝送路応答が同一であるとみなすことができる時間軸方向のパイロットキャリアを用いて、直交符号化する。
【0050】
(実施例1)
次に、実施例1における、位相反転したパイロットキャリアの配置パターンについて説明する。実施例1の配置パターンは、周波数軸方向のパイロットキャリアを位相反転させて直交符号化を行う場合と、時間軸方向のパイロットキャリアを位相反転させて直交符号化を行う場合とを含む例である。OFDM受信装置では、受信形態を判定し、受信形態に応じて伝送路応答を算出する。具体的には、OFDM受信装置が静止していると判定した場合、時間軸方向のパイロットキャリアを利用して伝送路応答を算出する。また、OFDM受信装置が移動していると判定した場合、周波数軸方向のパイロットキャリアを利用して伝送路応答を算出する。
【0051】
図7は、実施例1におけるパイロットキャリアの符号を説明する図である。図7(1)は、送信系統Tx1の直交符号生成部42が生成する符号であり、図7(2)は、送信系統Tx2の直交符号生成部42が生成する符号である。Pns,kは、送信系統Txnにおけるシンボル番号s及びキャリア番号kのパイロットキャリアを示す。×はパイロットキャリアが配置されていないことを示す。
【0052】
送信系統Tx1の直交符号生成部42は、図7(1)に示すように、図13の地上デジタル放送の場合と同じパイロットキャリアの符号を生成し、直交符号用位相変調回路43に出力する。
【0053】
送信系統Tx2の直交符号生成部42は、周波数軸方向のパイロットキャリアを位相反転させて直交符号化を行うと共に、時間軸方向のパイロットキャリアを位相反転させて直交符号化を行うために、四角で囲んだ所定位置のパイロットキャリアの符号を、送信系統Tx1の直交符号生成部42により生成される符号に対して反転した符号とし、図7(2)に示す符号を生成して直交符号用位相変調回路43に出力する。直交符号生成部42により生成された符号は、同一シンボルの周波数軸方向でみると、図5に示したパイロットキャリアの符号と同じパターンである。また、同一キャリアの時間軸方向でみると、図6に示したパイロットキャリアの符号と同じパターンである。
【0054】
図8は、実施例1の伝送フレームについて、パイロットキャリアの配置を説明する図である。図8(1)は、送信系統Tx1の直交符号用位相変調回路43により位相変調されたパイロットキャリアのフレーム内配置を示しており、図8(2)は、送信系統Tx2の直交符号用位相変調回路43により位相変調されたパイロットキャリアのフレーム内配置を示している。横軸が周波数、縦軸が時間を示す。
【0055】
送信系統Tx1の直交符号用位相変調回路43は、送信系統Tx1の直交符号生成部42により生成された地上デジタル放送におけるパイロットキャリアと同じ符号を用いて、パイロットキャリア生成部41から入力したパイロットキャリアの位相を変調する。これにより、送信系統Tx1の直交符号用位相変調回路43から、地上デジタル放送と同じ位相のパイロットキャリアが出力され、図8(1)に示すように、伝送フレーム内に配置される。
【0056】
送信系統Tx2の直交符号用位相変調回路43は、送信系統Tx2の直交符号生成部42により生成された符号を用いて、パイロットキャリア生成部41から入力したパイロットキャリアの位相を変調する。これにより、送信系統Tx2の直交符号用位相変調回路43から、同じシンボルの周波数軸上及び同じキャリアの時間軸上において偶数番目のパイロットキャリア(図8(2)において、左半分が黒塗りのパイロットキャリア)が、送信系統Tx1に対して反転した位相で出力され、図8(2)に示すように、伝送フレーム内に配置される。
【0057】
このように、送信系統Tx1において、地上デジタル放送と同じ配置及び位相のパイロットキャリアが生成され、送信系統Tx2において、地上デジタル放送と同じ配置のパイロットキャリアであって、かつ、周波数軸の偶数番目のパイロットキャリア及び時間軸上の偶数番目のパイロットキャリアの位相が送信系統Tx1に対して反転するように生成される。
【0058】
そして、OFDM受信装置は、図8に示した伝送フレームのOFDM信号を受信し、パイロット位置の伝送路応答を、受信形態に応じて、図11を参照して説明した同様の手法により算出する。受信形態に応じた伝送路応答の算出手法の詳細については後述する。
【0059】
(実施例2)
次に、実施例2における、位相反転したパイロットキャリアの配置パターンについて説明する。実施例2の配置パターンは、実施例1を含む配置パターンであり、周波数軸方向のパイロットキャリアを位相反転させて直交符号化を行う場合と、時間軸方向のパイロットキャリアを位相反転させて直交符号化を行う場合と、周波数軸及び時間軸からなる2軸において、所定のパイロットキャリアに対して斜め方向のパイロットキャリア(異なる周波数及び異なる時間のパイロットキャリア)を位相反転させて直交符号化を行う場合を含む例である。OFDM受信装置では、受信形態を判定し、受信形態に応じて伝送路応答を算出する。具体的には、OFDM受信装置が静止していると判定した場合、時間軸方向のパイロットキャリアを利用して伝送路応答を算出する。また、OFDM受信装置が高速で移動していると判定した場合、周波数軸方向のパイロットキャリアを利用して伝送路応答を算出する。また、OFDM受信装置が低速で移動していると判定した場合、周波数軸及び時間軸からなる2軸において斜め方向のパイロットキャリアを利用して伝送路応答を算出する。
【0060】
図9は、実施例2におけるパイロットキャリアの符号を説明する図である。図9(1)は、送信系統Tx1の直交符号生成部42が生成する符号であり、図9(2)は、送信系統Tx2の直交符号生成部42が生成する符号である。
【0061】
送信系統Tx1の直交符号生成部42は、図9(1)に示すように、図13の地上デジタル放送の場合と同じパイロットキャリアの符号を生成し、直交符号用位相変調回路43に出力する。図9(1)に示す符号は、図7(1)に示した符号と同一である。
【0062】
送信系統Tx2の直交符号生成部42は、周波数軸方向のパイロットキャリアを位相反転させて直交符号化を行うと共に、時間軸方向のパイロットキャリアを位相反転させて直交符号化を行い、さらに、周波数軸及び時間軸からなる2軸において斜め方向のパイロットキャリア(異なる周波数及び異なる時間のパイロットキャリア)を位相反転させて直交符号化を行うために、四角で囲んだ所定位置のパイロットキャリアの符号を、送信系統Tx1の直交符号生成部42により生成される符号に対して反転した符号とし、図9(2)に示す符号を生成して直交符号用位相変調回路43に出力する。直交符号生成部42により生成された符号は、同一シンボルの周波数軸方向でみると、図5に示したパイロットキャリアの符号と同じパターンである。また、同一キャリアの時間軸方向でみると、図6に示したパイロットキャリアの符号と同じパターンである。さらに、周波数軸及び時間軸からなる2軸において、斜め方向の2シンボル及び2キャリア毎に反転するパターンになっている。
【0063】
図10は、実施例2の伝送フレームについて、パイロットキャリアの配置を説明する図である。図10(1)は、送信系統Tx1の直交符号用位相変調回路43により位相変調されたパイロットキャリアのフレーム内配置を示しており、図10(2)は、送信系統Tx2の直交符号用位相変調回路43により位相変調されたパイロットキャリアのフレーム内配置を示している。
【0064】
送信系統Tx1の直交符号用位相変調回路43は、図9(1)に示した地上デジタル放送におけるパイロットキャリアと同じ符号を用いて、パイロットキャリアの位相を変調する。これにより、送信系統Tx1の直交符号用位相変調回路43から、地上デジタル放送と同じ位相のパイロットキャリアが出力され、図10(1)に示すように、伝送フレーム内に配置される。
【0065】
送信系統Tx2の直交符号用位相変調回路43は、図9(2)に示した符号を用いて、パイロットキャリアの位相を変調する。これにより、送信系統Tx2の直交符号用位相変調回路43から、同じシンボルの周波数軸上において偶数番目のパイロットキャリア、同じキャリアの時間軸上において偶数番目のパイロットキャリア、及び、周波数軸及び時間軸からなる2軸において斜め方向の2シンボル及び2キャリア毎のパイロットキャリア(図10(2)において、左半分が黒塗りのパイロットキャリア)が、送信系統Tx1に対して反転した位相で出力され、図10(2)に示すように、伝送フレーム内に配置される。
【0066】
このように、送信系統Tx1において、地上デジタル放送と同じ配置及び位相のパイロットキャリアが生成され、送信系統Tx2において、地上デジタル放送と同じ配置のパイロットキャリアであって、かつ、周波数軸上の偶数番目のパイロットキャリア、時間軸上の偶数番目のパイロットキャリア、及び、周波数軸及び時間軸からなる2軸において斜め方向のパイロットキャリア(異なる周波数及び異なる時間のパイロットキャリア)の位相が送信系統Tx1に対して反転するように生成される。
【0067】
そして、OFDM受信装置は、図10に示した伝送フレームを受信し、パイロット位置の伝送路応答を、受信形態に応じて、図11を参照して説明した同様の手法により算出する。受信形態に応じた伝送路応答の算出手法の詳細については後述する。
【0068】
以上のように、本発明の実施形態による送信装置10によれば、送信系統Tx1のフレーム構成回路14において、既存の地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置及び位相をそのまま利用し、伝送フレームを生成するようにした。また、送信系統Tx2のフレーム構成回路14において、既存の地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用し、実施例1,2に示したように、周波数軸方向及び時間軸方向における所定位置のパイロットキャリアを位相反転させて直交符号化し、伝送フレームを生成するようにした。このようにして生成された伝送フレームのOFDM信号は、送信系統Tx1,Tx2の送信アンテナ18からOFDM受信装置へそれぞれ送信される。これにより、OFDM受信装置は、実施例1,2に示したような直交符号化されたパイロットキャリアを含むOFDM信号を受信し、伝送路応答を算出することができる。この場合、OFDM受信装置の受信形態に応じた伝送路応答を算出することができる。例えば、OFDM受信装置が静止している場合、時間軸方向のパイロットキャリアを利用して、伝送路応答を算出することができる。また、実施例1では、OFDM受信装置が移動している場合、周波数軸方向のパイロットキャリアを利用して、伝送路応答を算出することができる。また、実施例2では、OFDM受信装置が高速で移動している場合、周波数軸方向のパイロットキャリアを利用し、OFDM受信装置が低速で移動している場合、時間軸及び周波数軸からなる2軸において斜め方向のパイロットキャリアを利用することにより、伝送路応答を算出することができる。つまり、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用し、受信形態に応じた伝送路応答を算出することが可能となる。
【0069】
〔OFDM受信装置の構成〕
まず、本発明の実施形態によるOFDM受信装置について説明する。図3は、OFDM受信装置の構成を示すブロック図である。このOFDM受信装置20(以下、受信装置20という。)は、受信アンテナ21、周波数変換回路22、GI除去回路23、FFT回路24、パイロット抽出回路25、直交パイロット分離回路26、伝送路応答推定回路27、遅延回路28、時空間復号回路29、デマッピング回路30及び誤り訂正復号回路31を備えている。
【0070】
受信装置20の受信アンテナ21が、図1の送信装置10により送信されたOFDM信号の放送波を受信すると、周波数変換回路22は、受信アンテナ21を介してOFDM信号を入力し、所定周波数帯のRFを等価低域系(ベースバンド)の周波数に変換し、GI除去回路23に出力する。
【0071】
GI除去回路23は、周波数変換回路22から周波数変換されたOFDM信号を入力し、OFDM信号内のGIを除去し、FFT回路24に出力する。FFT回路24は、GI除去回路23からGIが除去されたOFDM信号を入力し、時間領域のOFDM信号を高速フーリエ変換し、周波数領域のOFDM信号を遅延回路28及びパイロット抽出回路25に出力する。
【0072】
遅延回路28は、FFT回路24から周波数領域のOFDM信号を入力し、バッファに一時的に格納する。そして、遅延回路28は、パイロット抽出回路25、直交パイロット分離回路26及び伝送路応答推定回路27における複数シンボルに跨る伝送路推定の遅延を補正するために、その遅延時間経過後バッファからOFDM信号を読み出し、時空間復号回路29に出力する。
【0073】
パイロット抽出回路25は、FFT回路24から周波数領域のOFDM信号を入力し、パイロットキャリアを抽出し、受信パイロットキャリアとして直交パイロット分離回路26に出力する。
【0074】
直交パイロット分離回路26は、パイロット抽出回路25から受信パイロットキャリアを入力し、受信形態に応じて、受信パイロットキャリアを選定しパイロット位置の伝送路応答を算出し、伝送路応答推定回路27に出力する。直交パイロット分離回路26の詳細については後述する。
【0075】
伝送路応答推定回路27は、直交パイロット分離回路26からパイロット位置の伝送路応答を入力し、時間軸方向については線形処理を行い、周波数軸方向についてはローパスフィルタを用いる等して、補間フィルタの処理により、パイロット位置以外の全ての位置における伝送路応答を推定し、伝送路応答を時空間復号回路29に出力する。
【0076】
時空間復号回路29は、遅延回路28からOFDM信号を入力すると共に、伝送路応答推定回路27から伝送路応答を入力し、OFDM信号のうちのデータキャリア及び伝送路応答により時空間復号処理を行い、時空間復号したデータキャリアをデマッピング回路30に出力する。時空間復号処理として、STBC、STTC等に対応した復号処理が行われる。
【0077】
デマッピング回路30は、時空間復号回路29から時空間復号されたデータキャリアを入力し、所定の変調方式によりデマッピングし、誤り訂正復号回路31に出力する。例えば、変調方式として、BPSK,QPSK、16QAM、64QAM等が用いられる。
【0078】
誤り訂正復号回路31は、デマッピング回路30からデマッピングされたデータを入力し、デインターリーブ、誤り訂正符号の除去、エネルギー逆拡散等の復号処理を行い、復号処理した元のデータ(例えば、MPEG2のTS)を出力する。
【0079】
(直交パイロット分離回路)
次に、図3に示した受信装置20の直交パイロット分離回路26について説明する。図4は、直交パイロット分離回路26の構成を示すブロック図である。この直交パイロット分離回路26は、キャリアシンボルバッファ70、基準用直交符号化パイロットキャリア生成回路80、パイロット位置伝送路応答算出部90及び伝送路情報生成部100を備えている。直交パイロット分離回路26は、前述したとおり、受信形態に応じて、受信パイロットキャリアを選択しパイロット位置の伝送路応答を算出する。
【0080】
伝送路情報生成部100は、受信装置20の受信形態を判定し、判定した受信形態を伝送路情報としてキャリアシンボルバッファ70に出力する。例えば、図10に示した実施例2の場合、伝送路情報生成部100は、パイロット抽出回路25により抽出されたパイロットキャリアの振幅を算出し、その振幅の変動程度を求めて所定の閾値と比較し、変動程度に応じて、(1)受信装置20が静止している、(2)受信装置20が低速で移動している、または(3)受信装置20が高速で移動していることを示す受信形態を判定する。具体的には、所定の閾値との比較により、パイロットキャリアにおける振幅の変動程度が小さい場合は(1)であると判定し、変動程度が中程度の場合は(2)であると判定し、変動程度が大きい場合は(3)であると判定する。ここで、伝送路情報生成部100は、パイロットキャリアの振幅の分布を求め、分散を算出して所定の閾値と比較し、分散が小さい場合は(1)であると判定し、分散が中程度の場合は(2)であると判定し、分散が大きい場合は(3)であると判定するようにしてもよい。
【0081】
尚、伝送路情報生成部100は、SNR等のノイズデータを算出し、所定の閾値と比較することにより、ノイズが小さい場合は(1)であると判定し、ノイズが中程度である場合は(2)であると判定し、ノイズが大きい場合は(3)であると判定するようにしてもよい。本発明は、(1)〜(3)を判定するための手法として、前述したパイロットキャリアの振幅、加速度センサーまたはノイズデータを用いる手法に限定されるものではない。
【0082】
また、例えば、図8に示した実施例1の場合、伝送路情報生成部100は、前述と同様の手法により、(1)受信装置20が静止している、または(2)受信装置20が移動していることを示す受信形態を判定し、判定した受信形態を伝送路情報としてキャリアシンボルバッファ70に出力する。
【0083】
キャリアシンボルバッファ70は、パイロット抽出回路25から受信パイロットキャリアを入力すると共に、伝送路情報生成部100から受信形態(1)〜(3)のいずれかを伝送路情報として入力する。そして、キャリアシンボルバッファ70は、受信パイロットキャリアをバッファに格納し、伝送路情報に応じて、パイロット位置伝送路応答算出部90において伝送路応答の算出のために必要な受信パイロットキャリアが揃ったときに、バッファから受信パイロットキャリアを読み出し、パイロット位置伝送路応答算出部90に出力する。
【0084】
例えば、図10に示した実施例2の場合、伝送路情報が前記(1)「受信装置20が静止している」のときに、パイロット位置伝送路応答算出部90は、時間軸方向の受信パイロットキャリアを利用して伝送路応答を算出するから、例えばシンボル番号4及びキャリア番号0のパイロット位置(実際は、シンボル番号0及びキャリア番号0と、シンボル番号4及びキャリア番号0との中間点のパイロット位置)における伝送路応答の算出のために、シンボル番号0及びキャリア番号0の受信パイロットキャリア、及び、シンボル番号4及びキャリア番号0の受信パイロットキャリアの2つが必要である(図10のαを参照)。したがって、キャリアシンボルバッファ70は、これら2つの受信パイロットキャリアをバッファに格納したとき、必要な受信パイロットキャリアが揃ったとして、バッファからこれらの受信パイロットキャリアを読み出し、パイロット位置伝送路応答算出部90に出力する。このように、キャリアシンボルバッファ70は、所定のパイロット位置における伝送路応答の算出のために、時間軸方向の2つの受信パイロットキャリアが揃ったときに、バッファからこれらの受信パイロットキャリアを読み出し、パイロット位置伝送路応答算出部90に出力する。
【0085】
一方、伝送路情報が前記(2)「受信装置20が低速で移動している」のときに、パイロット位置伝送路応答算出部90は、周波数軸及び時間軸からなる2軸において斜め方向の受信パイロットキャリアを利用して伝送路応答を算出するから、例えばシンボル番号1及びキャリア番号3のパイロット位置(実際は、シンボル番号0及びキャリア番号0と、シンボル番号1及びキャリア番号3との中間点のパイロット位置)における伝送路応答の算出のために、シンボル番号0及びキャリア番号0の受信パイロットキャリア、及び、シンボル番号1及びキャリア番号3の受信パイロットキャリアの2つが必要である(図10のβを参照)。したがって、キャリアシンボルバッファ70は、これら2つの受信パイロットキャリアをバッファに格納したとき、必要な受信パイロットキャリアが揃ったとして、バッファからこれらの受信パイロットキャリアを読み出し、パイロット位置伝送路応答算出部90に出力する。このように、キャリアシンボルバッファ70は、所定のパイロット位置における伝送路応答の算出のために、周波数軸及び時間軸からなる2軸において斜め方向の2つの受信パイロットキャリアが揃ったときに、バッファからこれらの受信パイロットキャリアを読み出し、パイロット位置伝送路応答算出部90に出力する。
【0086】
一方、伝送路情報が前記(3)「受信装置20が高速で移動している」のときに、パイロット位置伝送路応答算出部90は、周波数軸方向の受信パイロットキャリアを利用して伝送路応答を算出するから、例えばシンボル番号0及びキャリア番号12のパイロット位置(実際は、シンボル番号0及びキャリア番号0と、シンボル番号0及びキャリア番号12との中間点のパイロット位置)における伝送路応答の算出のために、シンボル番号0及びキャリア番号0の受信パイロットキャリア、及び、シンボル番号0及びキャリア番号12の受信パイロットキャリアの2つが必要である(図10のγを参照)。したがって、キャリアシンボルバッファ70は、これら2つの受信パイロットキャリアをバッファに格納したとき、必要な受信パイロットキャリアが揃ったとして、バッファからこれらの受信パイロットキャリアを読み出し、パイロット位置伝送路応答算出部90に出力する。このように、キャリアシンボルバッファ70は、所定のパイロット位置における伝送路応答の算出のために、周波数軸方向の2つの受信パイロットキャリアが揃ったときに、バッファからこれらの受信パイロットキャリアを読み出し、パイロット位置伝送路応答算出部90に出力する。
【0087】
また、例えば、図8に示した実施例1の場合、伝送路情報が前記(1)「受信装置20が静止している」のときに、キャリアシンボルバッファ70は、前述した実施例2の場合と同様に、所定のパイロット位置における伝送路応答の算出のために、時間軸方向の2つの受信パイロットキャリアが揃ったときに、バッファからこれらの受信パイロットキャリアを読み出し、パイロット位置伝送路応答算出部90に出力する。
【0088】
一方、伝送路情報が前記(2)「受信装置20が移動している」のときに、キャリアシンボルバッファ70は、前述した実施例2の(3)「受信装置20が高速で移動している」の場合と同様に、所定のパイロット位置における伝送路応答の算出のために、周波数軸方向の2つの受信パイロットキャリアが揃ったときに、バッファからこれらの受信パイロットキャリアを読み出し、パイロット位置伝送路応答算出部90に出力する。
【0089】
図4に戻って、基準用直交符号化パイロットキャリア生成回路80は、パイロットキャリア生成部81、直交符号生成部82及び直交符号用位相変調回路83を備えている。この基準用直交符号化パイロットキャリア生成回路80は、送信装置10に備えた送信系統Tx1のフレーム構成回路14における直交符号化パイロットキャリア生成回路40と同一の機能を有し、パイロットキャリア生成部81がパイロットキャリア生成部41に、直交符号生成部82が直交符号生成部42に、直交符号用位相変調回路83が直交符号用位相変調回路43にそれぞれ相当する。
【0090】
つまり、基準用直交符号化パイロットキャリア生成回路80は、送信系統Tx1の直交符号化パイロットキャリア生成回路40と同一の機能を有するから、図13に示した地上デジタル放送におけるパイロットキャリアと同じ配置及び同じ位相のパイロットキャリアを生成し、パイロット位置伝送路応答算出部90に出力する。これは、パイロット位置伝送路応答算出部90において、パイロット位置の伝送路応答を算出するために、前述した式(6)及び式(8)に示したように、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアと同じ配置及び同じ位相のパイロットキャリアP1(2n)のみが必要だからである。
【0091】
パイロット位置伝送路応答算出部90は、キャリアシンボルバッファ70から受信パイロットキャリアを入力すると共に、基準用直交符号化パイロットキャリア生成回路80からパイロットキャリアを入力し、前述した式(6)または式(8)によりパイロット位置の伝送路応答を算出し、伝送路応答推定回路27に出力する。
【0092】
尚、式(6)及び式(8)は、周波数軸方向の2つの受信パイロットキャリアRx(2n−1),Rx(2n)及び既知の1つのパイロットキャリアP1(2n)から、パイロット位置の伝送路応答h11(2n),h12(2n)を算出する式である。この場合、送信系統Tx1,Tx2において周波数軸方向の4つのパイロットキャリア毎に直交符号化され、これに対応して受信装置20では周波数軸方向の2つの受信パイロットキャリア毎に、パイロット位置の伝送路応答が算出される。同様に、時間軸方向の2つの受信パイロットキャリア及び既知の1つのパイロットキャリアからも、パイロット位置の伝送路応答h11,h12を算出することができる。この場合、送信系統Tx1,Tx2において時間軸方向の4つのパイロットキャリア毎に直交符号化され、これに対応して受信装置20では時間軸方向の2つの受信パイロットキャリア毎に、パイロット位置の伝送路応答が算出される。同様に、周波数軸及び時間軸からなる2軸において斜め方向の2つの受信パイロットキャリア及び既知の1つのパイロットキャリアからも、パイロット位置の伝送路応答h11,h12を算出することができる。この場合、送信系統Tx1,Tx2において周波数軸及び時間軸からなる2軸において斜め方向の4つのパイロットキャリア毎に直交符号化され、これに対応して受信装置20では周波数軸及び時間軸からなる2軸において斜め方向の2つの受信パイロットキャリア毎に、パイロット位置の伝送路応答が算出される。時間軸方向における伝送路応答h11,h12の算出手法、及び周波数軸及び時間軸からなる2軸において斜め方向における伝送路応答h11,h12の算出手法については、前述した周波数軸方向における伝送路応答h11(2n),h12(2n)の算出手法と同様であるから、説明を省略する。
【0093】
例えば、図8に示した実施例1の場合、伝送路情報が前記(2)「受信装置20が移動している」のときに、パイロット位置伝送路応答算出部90は、キャリアシンボルバッファ70から、周波数軸方向の2つの受信パイロットキャリアRx(2n−1),Rx(2n)を入力し、直交符号用位相変調回路83から、これら2つの受信パイロットキャリアのうちの1つの受信パイロットキャリアと同じキャリア番号のパイロットキャリアP1(2n)を入力する。そして、パイロット位置伝送路応答算出部90は、キャリア番号2n−1,2nのパイロットキャリアが異符号の場合、式(6)を用いて、パイロット位置の伝送路応答h11(2n),h12(2n)を算出する。一方、パイロット位置伝送路応答算出部90は、キャリア番号2n−1,2nのパイロットキャリアが同符号の場合、式(8)を用いて、パイロット位置の伝送路応答h11(2n),h12(2n)を算出する。伝送路情報が前記(1)「受信装置20が静止している」のときも、パイロットキャリアの異符号及び同符号を判断し、所定の式により、パイロット位置の伝送路応答h11,h12を算出する。
【0094】
また、例えば、図10に示した実施例2の場合、伝送路情報が前記(3)「受信装置20が高速で移動している」のときに、パイロット位置伝送路応答算出部90は、前述した実施例1の(2)「受信装置20が移動している」のときと同様に、パイロットキャリアの異符号及び同符号を判断し、式(6)または式(8)を用いて、パイロット位置の伝送路応答h11(2n),h12(2n)を算出する。伝送路情報が前記(1)「受信装置20が静止している」のとき、及び、伝送路情報が前記(2)「受信装置20が低速で移動している」のときも、パイロットキャリアの異符号及び同符号を判断し、所定の式により、パイロット位置の伝送路応答h11,h12を算出する。
【0095】
以上のように、本発明の実施形態による受信装置20によれば、送信装置10から、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用した伝送フレームのOFDM信号であって、送信系統Tx1,Tx2において所定範囲のパイロットキャリアが直交符号化されたOFDM信号を受信し、受信形態を判定し、受信形態に応じた、2つの受信パイロットキャリア及び既知の1つのパイロットキャリアによる所定の式を用いて、パイロット位置の伝送路応答を算出するようにした。具体的には、受信装置20における直交パイロット分離回路26の伝送路情報生成部100は、パイロットキャリアの振幅を求め、その変動程度に基づいて、実施例1では(1)「受信装置20が静止している」、または(2)「受信装置20が移動している」ことを示す受信形態を判定し、実施例2では(1)「受信装置20が静止している」、(2)「受信装置20が低速で移動している」、または(3)「受信装置20が高速で移動している」ことを示す受信形態を判定する。
【0096】
そして、実施例2において、パイロット位置伝送路応答算出部90は、受信形態が(3)「受信装置20が高速で移動している」のときに、時間軸方向における近隣の2つの受信パイロットキャリア及び既知の1つのパイロットキャリアにより、式(6)または式(8)を用いて、パイロット位置の伝送路応答h11(2n),h12(2n)を算出するようにした。これは、受信装置20が静止しているときは、マルチパスの影響を受け易く、周波数軸方向のパイロットキャリアを利用することができないからである。また、これに対し、時間軸方向における近隣のパイロットキャリア間は時間が短く、その間の伝送路応答は変動しないものとみなすことができ、時間軸方向のパイロットキャリアを利用することができるからである。式(6)及び式(8)はこれを前提にした式である。したがって、受信形態が(1)「受信装置20が静止している」のときの伝送路応答を、精度高く算出することができる。
【0097】
また、パイロット位置伝送路応答算出部90は、受信形態が(2)「受信装置20が低速で移動している」のときに、周波数軸及び時間軸からなる2軸における斜め方向の近隣の2つの受信パイロットキャリア及び既知の1つのパイロットキャリアにより、所定の式を用いて、パイロット位置の伝送路応答h11,h12を算出するようにした。これは、受信装置20が低速で移動しているときは、周波数軸及び時間軸からなる2軸における斜め方向のパイロットキャリアにおいて、近隣のパイロットキャリア間は時間が短く、かつ周波数の差が小さく、その間の伝送路応答は変動しないものとみなすことができ、斜め方向のパイロットキャリアを利用することができるからである。したがって、受信形態が(2)「受信装置20が低速で移動している」のときの伝送路応答を、精度高く算出することができる。
【0098】
また、パイロット位置伝送路応答算出部90は、受信形態が(1)「受信装置20が静止している」のときに、周波数軸方向における近隣の2つの受信パイロットキャリア及び既知の1つのパイロットキャリアにより、所定の式を用いて、パイロット位置の伝送路応答h11,h12を算出するようにした。これは、受信装置20が高速で移動しているときは、時変動の影響を受け易く、時間軸方向のパイロットキャリアを利用することができないからである。また、これに対し、周波数軸方向における近隣のパイロットキャリアではマルチパスの影響はさほど受けず、周波数の差は小さく、その間の伝送路応答は変動しないものとみなすことができ、周波数軸方向のパイロットキャリアを利用することができるからである。したがって、受信形態が(3)「受信装置20が高速で移動している」のときの伝送路応答を、精度高く算出することができる。
【0099】
このように、本発明の実施形態による受信装置20によれば、地上デジタル放送におけるパイロットキャリアの配置をそのまま利用し、受信形態に応じて的確に伝送路応答を算出することができる。また、地上デジタル放送におけるパイロット配置をそのまま利用するから、既存の地上デジタル放送を受信する受信装置を用いることができ、受信装置の一部(例えば、図3に示した受信装置20において、周波数変換回路22、GI除去回路23、FFT回路24、パイロット抽出回路25、伝送路応答推定回路27、遅延回路28、時空間復号回路29、デマッピング回路30及び誤り訂正復号回路31)を共用化及び共通化できる。
【0100】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、図3に示した受信装置20は1つの受信系統を備えた例であるが、MIMO−OFDMシステムに適用するために、受信装置20は複数の受信系統を備えていてもよい。この場合、受信装置20は、受信アンテナ21、周波数変換回路22、GI除去回路23、FFT回路24、パイロット抽出回路25、直交パイロット分離回路26、伝送路応答推定回路27及び遅延回路28を受信系統分備えており、時空間復号回路29が、各受信系統のデータキャリア及び伝送路応答を入力し、復号処理を行う。
【0101】
また、図1に示した送信装置10では、2つの送信系統Tx1,Tx2により2本の送信アンテナ18を介してOFDM信号の放送波を送信する例を示したが、他の複数の送信系統によりそれと同じ本数の送信アンテナ18を介してOFDM信号の放送波を送信するようにしてもよい。図12は、複数の送信系統を備えた場合のパイロットキャリアについて説明する図である。送信系統の数がnの場合、送信装置10は、各送信系統でn個のパイロットキャリアを用いて直交符号化を行う。図12の〔〕で囲まれたパイロットキャリアは、直交符号化を行う範囲を示している。例えば、n=4の場合、送信装置10は、4つの送信系統においてそれぞれ4個のパイロットキャリアを対象にして直交符号化を行い、OFDM信号の放送波を送信する。受信装置20は、直交符号化されたパイロットキャリアを含むOFDM信号の放送波を受信し、受信形態に応じた4つの受信パイロットキャリアにより、所定の式を用いて伝送路応答h11,h12,h13,h14を算出する。
【0102】
また、図3に示した受信装置20では、直交パイロット分離回路26の伝送路情報生成部100が受信形態である伝送路情報を生成し、キャリアシンボルバッファ70及びパイロット位置伝送路応答算出部90が、受信形態に応じて、周波数軸方向のパイロットキャリア、時間軸方向のパイロットキャリア、または、周波数軸及び時間軸からなる2軸における斜め方向のパイロットキャリアのうちのいずれかにより、パイロット位置の伝送路応答を算出するようにした。しかしながら、直交パイロット分離回路26のパイロット位置伝送路応答算出部90は、周波数軸方向のパイロットキャリア、時間軸方向のパイロットキャリア、及び、周波数軸及び時間軸からなる2軸における斜め方向のパイロットキャリアを用いた3つの方式により、パイロット位置の伝送路応答をそれぞれ算出するようにしてもよい。この場合、伝送路応答推定回路27は、方式毎にそれぞれ伝送路応答を推定し、時空間復号回路29、デマッピング回路30及び誤り訂正復号回路31においても、方式毎に処理を行う。そして、受信装置20は、方式毎に誤り率を算出する等して最適な方式を選定し、その方式により得られたデータ(TS等)を出力する。
【符号の説明】
【0103】
10 送信装置
11 誤り訂正符号化回路
12 マッピング回路
13 時空間符号化回路
14 フレーム構成回路
15 IFFT回路
16 GI付加回路
17,22 周波数変換回路
18 送信アンテナ
20 受信装置
21 受信アンテナ
23 GI除去回路
24 FFT回路
25 パイロット抽出回路
26 直交パイロット分離回路
27 伝送路応答推定回路
28 遅延回路
29 時空間復号回路
30 デマッピング回路
31 誤り訂正復号回路
40 直交符号化パイロットキャリア生成回路
41,81 パイロットキャリア生成部
42,82 直交符号生成部
43,83 直交符号用位相変調回路
50 フレーム構成パターンメモリ
60 伝送フレーム多重回路
61 スイッチ制御部
62 スイッチ
70 キャリアシンボルバッファ
80 基準用直交符号化パイロットキャリア生成回路
90 パイロット位置伝送路応答算出部
100 伝送路情報生成部
Tx1,Tx2 送信系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信系統間でパイロットキャリアが直交符号化され、地上デジタル放送のキャリアシンボルと同じ配置の伝送フレームが構成され、前記送信系統毎の送信アンテナを介して送信された前記伝送フレームのOFDM信号を受信するOFDM受信装置において、
当該OFDM受信装置が静止または移動していることを示す受信形態を判定し、前記受信形態を伝送路情報として生成する伝送路情報生成部と、
前記伝送路情報生成部により生成された伝送路情報が当該OFDM受信装置の静止を示している場合、前記受信したOFDM信号に含まれる受信パイロットキャリアのうちの時間軸方向における受信パイロットキャリア及び既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出し、前記伝送路情報が当該OFDM受信装置の移動を示している場合、周波数軸方向における受信パイロットキャリア及び既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出するパイロット位置伝送路応答算出部と、
を備えたことを特徴とするOFDM受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のOFDM受信装置において、
前記伝送路情報生成部は、当該OFDM受信装置が静止している、高速で移動している、または低速で移動していることを示す受信形態を判定し、前記受信形態を伝送路情報として生成し、
前記パイロット位置伝送路応答算出部は、前記伝送路情報が当該OFDM受信装置の静止を示している場合、時間軸方向における受信パイロットキャリア及び既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出し、前記伝送路情報が当該OFDM受信装置の高速移動を示している場合、周波数軸方向における受信パイロットキャリア及び既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出し、前記伝送路情報が当該OFDM受信装置の低速移動を示している場合、周波数軸及び時間軸からなる2軸の斜め方向における受信パイロットキャリア及び既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出する、ことを特徴とするOFDM受信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のOFDM受信装置において、
前記伝送路情報生成部は、前記受信パイロットキャリアの振幅を算出し、前記振幅に基づいて前記受信形態を判定する、ことを特徴とするOFDM受信装置。
【請求項4】
複数の送信系統間でパイロットキャリアを直交符号化し、地上デジタル放送のキャリアシンボルと同じ配置の伝送フレームを構成し、前記送信系統毎の送信アンテナを介して前記伝送フレームのOFDM信号を送信するOFDM送信装置において、
既知のパイロットキャリアを生成するパイロットキャリア生成部と、
前記伝送フレームを構成するパイロットキャリアについて、前記複数の送信系統間で直交符号化するための符号を生成する直交符号生成部と、
前記パイロットキャリア生成部により生成された既知のパイロットキャリアを、前記直交符号生成部により生成された符号で乗算し、前記既知のパイロットキャリアの位相を変調し、周波数軸方向のパイロットキャリアにて直交符号化すると共に、時間軸方向のパイロットキャリアにて直交符号化する直交符号用位相変調回路と、を備え、
前記送信されたOFDM信号を受信するOFDM受信装置に、当該OFDM受信装置が静止または移動していることを示す受信形態に応じて、前記受信したOFDM信号に含まれる受信パイロットキャリアのうちの時間軸方向または周波数軸方向における受信パイロットキャリア、及び、既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出させる、ことを特徴とするOFDM送信装置。
【請求項5】
請求項4に記載のOFDM送信装置において、
前記直交符号用位相変調回路は、さらに、周波数軸及び時間軸からなる2軸における斜め方向のパイロットキャリアにて直交符号化し、
前記送信された地上デジタル放送のOFDM信号を受信するOFDM受信装置に、当該OFDM受信装置が静止、高速移動または低速移動していることを示す受信形態に応じて、前記受信したOFDM信号に含まれる受信パイロットキャリアのうち、時間軸方向、周波数軸方向、または前記2軸における斜め方向のうちのいずれかの方向における受信パイロットキャリア、及び、既知のパイロットキャリアに基づいて、前記パイロットキャリアの位置の伝送路応答を算出させる、ことを特徴とするOFDM送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−66679(P2011−66679A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215398(P2009−215398)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(591053926)財団法人エヌエイチケイエンジニアリングサービス (169)
【Fターム(参考)】