説明

OSD用データ転送システム

【課題】 メモリへの画像データの一時保管を行うテレビジョン受像機に内蔵されるOSD回路へ文字多重放送に係る文字情報およびフォントデータを転送することができるシステムを提供する。
【解決手段】 OSD用データ転送システム1は、テレビジョン信号のVBI中に伝送される文字情報を取得するデータスライサ2と、データスライサ2で取得された文字情報を蓄積する文字情報メモリ3と、文字表示用のフォントデータが格納されたフォントデータメモリ4と、テレビジョン表示画面上に文字表示画面を形成し、その文字表示画面に表示する文字データを生成するOSD回路5と、文字情報メモリ3およびフォントデータメモリ4からOSD回路5へのデータのDMA転送を相互に排他的に実行するDMAコントローラ7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビジョン受像機に内蔵されるOSD回路に表示用データを転送するためのOSD用データ転送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン信号を利用し、主画像のほかに文字情報を多重化して伝送するものとして文字多重放送があり、日本における文字放送、欧州におけるTeletextなどが実用化されている。このような文字多重放送における文字情報は、テレビジョン信号の垂直帰線期間(VBI)中に伝送される。
【0003】
そこで、このような文字情報が多重化されているテレビジョン信号を受信して文字を表示するテレビジョン受信機では、VBI中に伝送される文字情報をテレビジョン信号から取り出してメモリに蓄積しておき、その後画面走査中に画面上に表示する。このような文字情報を画面上に表示するときに用いる回路としてOSD(オンスクリーンディスプレイ)回路がある。
【0004】
このOSD回路を用いて文字多重放送における文字情報を表示する場合、VBI中にテレビジョン信号から取り出されてメモリに蓄積された文字情報を、メモリからOSD回路へ転送する必要がある。また、メモリに蓄積された文字情報は文字コード形式であるので、これを画面に表示するフォントに変換するためのフォントデータをOSDフォントROMから転送する必要がある。
【0005】
従来、テレビジョン受像機におけるこのようなメモリからのデータの転送を高速に行う手段として、DMA(Direct Memory Access)が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
このDMAにより上述の文字情報およびフォントデータの転送を行う場合、文字情報とフォントデータでDMAの実行時期を分け、文字情報は受信したテレビジョン信号のVBI中にDMA転送を行い、フォントデータは画面への文字表示中にDMA転送を行う。
【0007】
一方、テレビジョン受像機の画質を向上させる手段として、インターレース(飛び越し)走査で1本おきに走査される走査線をプログレッシブ(順次)走査の走査線に変換するI/P(インターレース/プログレッシブ)変換が用いられることがある。このI/P変換では、インターレース走査で1本おきに送られて来る走査線の画像データからその中間の走査線の画像データが生成される。すなわち、先に送られて来る走査線の画像データをラインメモリに保存しておき、このラインメモリのデータと次に送られて来る走査線の画像データからその中間の走査線で表示する補間データを生成することが行われる。
【0008】
したがって、このようなメモリへの画像データの一時保管を行うテレビジョン受像機では、テレビジョン信号を受信してから実際に画面に映像が表示されるまでに時間遅れが生じる。これは、逆に言えば、現在の画面を表示している間に受信しているテレビジョン信号の方はVBIになっていることを意味する。
【0009】
そのため、このようなメモリへの画像データの一時保管を行うテレビジョン受像機で先に述べた文字多重放送に係る文字情報およびフォントデータのDMA転送を行おうとすると、OSD回路による画面表示中に必要なフォントデータのDMAの要求と次のVBI期間に行う文字情報をOSD回路に送るためのDMAの要求が重なるという問題が発生する。
【特許文献1】特開平10−126706号公報 (第7ページ、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、メモリへの画像データの一時保管を行うテレビジョン受像機に内蔵されるOSD回路へ文字多重放送に係る文字情報およびフォントデータを転送することができるOSD用データ転送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、テレビジョン信号の垂直帰線期間中に伝送された文字情報を蓄積する文字情報メモリと、文字表示用のフォントデータが格納されたフォントデータメモリと、前記文字情報メモリおよび前記フォントデータメモリとバスラインで接続され、前記文字情報および前記フォントデータを用いて画面表示用の文字データを生成するOSD回路とを具備し、前記文字情報メモリから前記バスラインを経由した前記OSD回路への前記文字情報の転送と、前記フォントデータメモリから前記バスラインを経由した前記OSD回路への前記フォントデータの転送とを相互に排他的なDMAで実行することを特徴とするOSD用データ転送システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、画面表示中のフォントデータのDMA転送をVBI中に受信した文字情報のDMA転送に優先して実行するので、メモリへの画像データの一時保管を行うテレビジョン受像機であっても、DMAが重なることなく文字情報およびフォントデータをOSD回路へ転送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の第1の実施例に係るOSD用データ転送システムの構成の例を示すブロック図である。なお、本実施例のOSD用データ転送システムは、インターレース走査のテレビジョン信号を一旦メモリへ保存した上でプログレッシブ走査の信号に変換して画面表示する方式のテレビジョン受像機で用いられるものである。すなわち、図1において、入力されたインターレース走査のテレビジョン信号は、I/P変換部300および映像出力部400を介してプログレッシブ走査で画面表示される映像信号として出力されるものとする。
【0015】
本実施例のOSD用データ転送システム1は、テレビジョン信号のVBI中に伝送されるアナログ波形の文字情報の振幅値に応じてデジタルデータの文字情報を生成するデータスライサ2と、データスライサ2で生成された文字情報を蓄積する文字情報メモリ3と、文字表示用のフォントデータが格納されたフォントデータメモリ4と、テレビジョン表示画面上に文字表示画面を形成し、その文字表示画面に表示する文字データを生成するOSD回路5と、文字情報メモリ3およびフォントデータメモリ4からOSD回路5へのデータのDMA転送をコントロールするDMAコントローラ7とを有する。
【0016】
ここで、DMAコントローラ7へのDMA転送要求は、データスライサ2およびOSD回路5から出される。
【0017】
このうち、データスライサ2は、文字情報メモリ3への総ての文字情報の蓄積が終わると、文字情報メモリ3からOSD回路5へ文字情報を転送するためのDMA転送要求をDMAコントローラ7へ出す。
【0018】
一方、OSD回路5は、文字情報メモリ3から転送された文字情報を内蔵のディスプレイRAM6に格納した後、このディプレイRAM6から文字情報を読み出しながら画面表示用の文字データを生成するが、このとき、画面表示の1行ごとにフォントデータメモリ4からのフォントデータの転送を要求するDMA転送要求をDMAコントローラ7へ出す。
【0019】
したがって、図2に示すように、テレビジョン表示画面600上のOSD表示画面700にm文字×n行の文字データを表示する場合、OSD回路5からはn回のDMA転送要求がDMAコントローラ7へ出される。
【0020】
また、OSD回路5は、表示インターフェイス用垂直同期信号間に含まれる表示インターフェイス用水平同期信号の数をカウントする水平位置カウンタ200のカウント値に基づいて、OSD表示期間を算出している。そして、OSD表示期間が終了したときにOSD表示終了信号をDMAコントローラ7へ出力する。
【0021】
DMAコントローラ7は、データスライサ2あるいはOSD回路5からDMA要求が出されると、CPU100へ割り込み要求を出してCPU100の動作に強制的に割り込み、データバスを占有して、文字情報メモリ3あるいはフォントデータメモリ4からOSD回路5へデータを高速転送する。
【0022】
ここで、OSD画面表示期間中のOSD回路5からのDMA要求にデータスライサ2からのDMA要求が重なると、DMAコントローラ7は、OSD回路5からのDMA要求を優先して実行し、OSD回路5からOSD表示終了信号が出力されたときにデータスライサ2からのDMA要求に基づくDMA転送を実行する。
【0023】
図3は、本実施例のOSD用データ転送システム1におけるDMA転送動作の例を示す波形図である。
【0024】
テレビジョン信号のVBI中に伝送された文字情報はデータスライサ2でデジタルデータ化されて文字情報メモリに蓄積される。この文字情報は、OSD回路5に転送され文字データに処理されてOSD表示画面700に表示される。このとき、OSD表示画面700はプログレッシブ走査で表示されるテレビジョン表示画面600上に表示されるので、その表示期間は表示インターフェイス用垂直同期信号と表示インターフェイス用水平同期信号により制御される。なお、表示インターフェイス用垂直同期信号および表示インターフェイス用水平同期信号は、受信したテレビジョン信号に含まれる垂直同期信号および水平同期信号に対してそれぞれ位相が遅れている。
【0025】
この表示期間中に、OSD回路5はDMAコントローラ7に対して、OSD表示画面700に表示される1行ごとにフォントデータメモリ4からのフォントデータのDMA転送を要求する。すなわち、OSD表示画面700に表示される文字列がn行であるので、OSD回路5は、この表示期間中にn回のDMA要求を出す。また、このDMA要求は、表示インターフェイス用水平同期信号に同期して出力される。
【0026】
OSD回路5からのDMA要求があると、DMAコントローラ7は、フォントデータメモリ4からOSD回路5へのDMA転送を実行する。
【0027】
一方、この表示期間中に文字情報メモリ3への文字情報の蓄積が終了して、データスライサ2からのDMA要求があった場合には、DMAコントローラ7は表示期間の終了までその実行を保留する。そして、OSD回路5からOSD表示終了信号が出力されたときに、文字情報メモリ3からOSD回路5へのDMA転送を実行する。
【0028】
このような本実施例のOSD用データ転送システムによれば、OSD画面表示期間中のフォントデータメモリからのフォントデータのDMA転送をVBI中に受信して文字情報メモリに蓄積した文字情報のDMA転送に優先して実行するので、I/P変換を行うテレビジョン受像機であっても、DMAが重なることなく文字情報およびフォントデータをOSD回路へ転送することができる。
【実施例2】
【0029】
図4は、本発明の第2の実施例に係るOSD用データ転送システムの構成の例を示すブロック図である。本実施例のOSD用データ転送システム11も、実施例1のOSD用データ転送システム1と同様、I/P変換を行うテレビジョン受像機で用いられるものであり、その基本的な構成は、図1に示した実施例1のOSD用データ転送システム1と同じである。そこで、図4において、実施例1と同一の機能を有するブロックには図1と同じ符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0030】
本実施例のOSD用データ転送システム11が実施例1のOSD用データ転送システム1と異なる点は、総ての行の文字情報を蓄積する実施例1の文字情報メモリ3の代わりに1行分の文字情報が書き込まれるデータバッファ31を有している点と、OSD回路51からは実施例1のOSD回路5とは異なってOSD表示終了信号が出力されない点である。
【0031】
このような本実施例のOSD用データ転送システム11において、データスライサ2は、VBI中の文字情報から1行分のデータを取得するとデータバッファ1へ書き込み、DMAコントローラ7へDMA要求を出す。そしてデータバッファ1からのDMA転送が終了すると次の行の文字情報データをデータバッファ31へ書き込む。このようにして、データバッファ1へのデータの書き込みとデータバッファ1からOSD回路51へのDMA転送が文字情報の1行ごとに実行される。
【0032】
また、OSD回路51からは、実施例1のOSD回路5と同様、OSD表示画面の表示期間中表示文字の1行ごとに、フォントデータメモリ4からのフォントデータ転送のDMA要求をDMAコントローラ7へ出す。
【0033】
このようなデータスライサ2からのDMA要求とOSD回路51からのDMA要求に対して、DMAコントローラ7は、実施例1と同様にOSD回路51からのDMA要求を優先してDMAを実行する。ただし、実施例1とは異なり、OSD回路51からの1回のDMA要求に対する処理が終了すると、直ちにデータスライサ2からのDMA要求に対する処理が行われる。
【0034】
すなわち、文字情報1行分のフォントデータのフォントデータメモリ4からのDMA転送と、1行分の文字情報のデータバッファ31からのDMA転送が交互に実行される。
【0035】
図5は、本実施例のOSD用データ転送システム11におけるDMA転送動作の例を示す波形図である。
【0036】
本実施例のOSD用データ転送システム11でも、n行の文字データを表示する表示期間中に、表示行1行ごとのn回、フォントデータメモリ4からOSD回路51へのフォントデータのDMAが実行される。
【0037】
この表示期間中にデータスライサ31からのDMA要求があると、DMAコントローラ7は、フォントデータメモリ4からの1回のDMA転送が1回終了したときに、データバッファ31からOSD回路51へのDMA転送を実行する。このDMA転送が終了すると、データバッファ31には次の行の文字情報が書き込まれる。この次の行のデータバッファ31への書き込みが終わると、データスライサ31は次のDMA要求をDMAコントローラ7へ出す。
【0038】
このデータスライサ31からの次のDMA要求に対して、DMAコントローラ7は、フォントデータメモリ4からの次のDMA転送が終了したときに、データバッファ31からOSD回路51へのDMA転送を実行する。
【0039】
このようにして、本実施例のOSD用データ転送システム11では、n行の文字情報がn回に分けてデータバッファ31に書き込まれたときのデータバッファ31からのn回のDMA転送が、フォントデータメモリ4からのn回のDMA転送と交互に実行される。
【0040】
このような本実施例のOSD用データ転送システムによれば、データスライサからの文字情報が書き込まれるデータバッファの容量が文字情報の1行分であっても、OSD画面表示期間中のフォントデータおよび文字情報のDMA転送ができるので、OSD用データ転送システムに用いるメモリのサイズを小さくすることができる。
【0041】
なお、上述した各実施例では、メモリへの画像データの一時保管を行うテレビジョン受像機としてI/P変換を行うテレビジョン受像機を例に取って本発明の構成を説明したが、本発明の実施の形態はI/P変換を行うテレビジョン受像機に限られるものではなく、メモリへの画像データの一時保管を行うテレビジョン受像機であれば他の方式のものであっても本発明を実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施例に係るOSD用データ転送システムの構成の例を示すブロック図。
【図2】OSD表示画面の例を示す図。
【図3】本発明の第1の実施例に係るOSD用データ転送システムの動作の例を示す波形図。
【図4】本発明の第2の実施例に係るOSD用データ転送システムの構成の例を示すブロック図。
【図5】本発明の第2の実施例に係るOSD用データ転送システムの動作の例を示す波形図。
【符号の説明】
【0043】
1、11 OSD用データ転送システム
2 データスライサ
3 文字情報メモリ
4 フォントデータメモリ
5、51 OSD回路
6 ディスプレイRAM
7 DMAコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレビジョン信号の垂直帰線期間中に伝送された文字情報を蓄積する文字情報メモリと、
文字表示用のフォントデータが格納されたフォントデータメモリと、
前記文字情報メモリおよび前記フォントデータメモリとバスラインで接続され、前記文字情報および前記フォントデータを用いて画面表示用の文字データを生成するOSD回路と
を具備し、
前記文字情報メモリから前記バスラインを経由した前記OSD回路への前記文字情報の転送と、前記フォントデータメモリから前記バスラインを経由した前記OSD回路への前記フォントデータの転送とを相互に排他的なDMAで実行することを特徴とするOSD用データ転送システム。
【請求項2】
前記フォントデータのDMAによる転送が、前記OSD回路による画面表示の1行ごとに行われることを特徴とする請求項1に記載のOSD用データ転送システム。
【請求項3】
前記文字情報のDMAによる転送が、前記OSD回路による画面表示が終了したときに行われることを特徴とする請求項2に記載のOSD用データ転送システム。
【請求項4】
前記文字情報のDMAによる転送が、前記OSD回路による画面表示の1行ごとに行われる前記文字情報のDMAによる転送の合間に行われることを特徴とする請求項2に記載のOSD用データ転送システム。
【請求項5】
前記文字情報メモリの容量が、前記OSD回路により表示される1行分の前記文字情報を蓄積するのに必要なだけの大きさであることを特徴とする請求項4に記載のOSD用データ転送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−121472(P2006−121472A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307878(P2004−307878)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(598010562)東芝エルエスアイシステムサポート株式会社 (119)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】