P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類に特異的に結合するペプチド
本発明は、P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類に特異的に結合するペプチド、特にヒトモノクローナル抗体に関する。本発明は、P.aeruginosa感染および関連の障害(例えば嚢胞性線維症)の診断、予防および治療に、これらのペプチドを使用するための方法をさらに提供する。本発明のいくつかの抗体は、P.aeruginosaの複数のムコイド株のオプソニン貪食作用による殺傷を増強する。薬学的組成物を含むこれらのペプチドの組成物、およびそのようなペプチドの機能的に等価な改変体である組成物はまた、提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれるシリアル番号60/292,365を有する「P AERUGINOSA MUCOID EXOPOLYSACCHARIDE SPECIFIC BINDING PEPTIDES」(「P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類特異的結合ペプチド」)と題された2001年5月21日出願の米国暫定特許出願の優先権を請求するシリアル番号10/153,437を有する「P AERUGINOSA MUCOID EXOPOLYSACCHARIDE SPECIFIC BINDING PEPTIDES」(「P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類特異的結合ペプチド」)と題された2002年5月21日出願の米国非暫定出願の継続出願である。
【0002】
(政府による支援)
本研究は米国国立衛生研究所の認定番号HL−58346により部分的に資金協力されている。従って、米国政府は本発明の特定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は一般的にシュードモナス・アエルギノーサ(P.aeruginosa)のムコイドエキソ多糖類(MEP)に結合するヒトモノクローナル抗体を含むペプチドを用いたP.aeruginosaの感染および関連の障害(例えば嚢胞性線維症)の予防および治療に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
P.aeruginosaは皮膚、耳、肺および腸にコロニー形成できる日和見生物である。健常個体においては、このようなコロニー形成は通常は問題を起こさない。しかしながら、自らの免疫を弱めるような伏在する障害または状態を個体が有する場合、感染は重篤なものとなる。このような障害または状態の例は化学療法誘発の免疫阻害、真性糖尿病、癌、AIDSおよび嚢胞性線維症を包含する。嚢胞性線維症を有する患者の70%超がP.aeruginosaに感染していると推定されている。これらの患者において、P.aeruginosaの感染は慢性閉塞性気管支炎を伴っている。
【0005】
P.aeruginosaのコロニー形成は上皮組織(例えば肺上皮)への細菌の付着により開始される。P.aeruginosaのムコイド株がムコイドエキソ多糖類(すなわち、MEPまたはアルギネート)を生産し、これは感染の期間中を通じて細菌により使用される。MEPはウロン酸の重合体である。
【0006】
細菌は抗生物質療法および生来および適応型の免疫機序、例えば抗体および補体の媒介する経路に比較的耐性であることができる。MEPは微生物の免疫耐性に寄与する因子であると考えられている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は一般的にはP.aeruginosaのムコイドエキソ多糖類(MEP)に結合するペプチドの識別および使用に関する。本明細書に記載した可変領域配列を利用したペプチドはポリペプチド、モノクローナル抗体(例えばヒトモノクローナル抗体)および抗体フラグメントを包含する。本明細書に記載したペプチドの共通の特徴はP.aeruginosa MEPを認識して特異的に結合するその能力である。本発明により提供される抗体および抗体フラグメントの一部の重要な特徴はP.aeruginosaのオプソニン作用および貪食作用(すなわち、オプソニン貪食作用)を増強するその能力である。
【0008】
1つの特徴において、本発明は、P.aeruginosa MEPに好ましくは選択的に結合し、そしてP.aeruginosa MEP結合相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む単離されたペプチドまたはその機能的に等価な改変体を含む組成物を提供する。P.aeruginosa MEP結合CDRは本発明の抗体から誘導された重および軽鎖CDRの群から選択してよい。各重および軽鎖は3種の異なるCDR、すなわち、CDR1、CDR2およびCDR3を有する。すなわち、P.aeruginosa MEP結合CDRはP.aeruginosa MEP結合CDR3またはP.aeruginosa MEP結合CDR2またはP.aeruginosa MEP結合CDR1であってよい。これらのCDRは配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号30、配列番号31および配列番号32は本明細書に記載したP.aeruginosa MEP結合重鎖可変領域から誘導されたCDRのアミノ酸配列である。配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29は本明細書に記載したP.aeruginosa MEP結合軽鎖可変領域から誘導されたCDRのアミノ酸配列である。
【0010】
本発明は上記した単離されたペプチドに関する種々の実施形態の多くを包含する。単離されたペプチドは好ましくはP.aeruginosa MEP結合CDRを含む。1つの実施形態において、P.aeruginosa MEP結合CDRはP.aeruginosa MEP結合CDR3である。CDR3は軽鎖CDR3または重鎖CDR3であってよい。このようなCDR3アミノ酸配列は、配列番号23、配列番号26、配列番号29および配列番号32からなる群より選択される。重鎖CDR3のアミノ酸配列は配列番号23および配列番号32を包含する。軽鎖CDR3のアミノ酸配列は配列番号26および配列番号29を包含する。別の実施形態においては単離されたペプチドは軽鎖CDR3のアミノ酸配列および重鎖CDR3のアミノ酸配列を含む。
【0011】
別の実施形態において、P.aeruginosa MEP結合CDRはP.aeruginosa MEP結合CDR2である。CDR2は軽鎖CDR2または重鎖CDR2であってよい。このようなCDR2アミノ酸配列は配列番号22、配列番号25、配列番号28および配列番号31からなる群より選択される。重鎖CDR2のアミノ酸配列は配列番号22および配列番号31を包含する。軽鎖CDR2のアミノ酸配列は配列番号25および配列番号28を包含する。別の実施形態においては、単離されたペプチドは軽鎖CDR2のアミノ酸配列および重鎖CDR2のアミノ酸配列を含む。
【0012】
さらに別の実施形態において、P.aeruginosa MEP結合CDRはP.aeruginosa MEP結合CDR1である。CDR1は軽鎖CDR1または重鎖CDR1であってよい。このようなCDR1アミノ酸配列は配列番号21、配列番号24、配列番号27および配列番号30からなる群より選択される。重鎖CDR1のアミノ酸配列は配列番号21および配列番号30を包含する。軽鎖CDR1のアミノ酸配列は配列番号24および配列番号27を包含する。別の実施形態においては、単離されたペプチドは軽鎖CDR1のアミノ酸配列および重鎖CDR1のアミノ酸配列を含む。
【0013】
本発明はまた単離されたペプチドがP.aeruginosa MEPに結合する限り、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3の開示されたアミノ酸配列の如何なる組み合わせをも含む単離されたペプチドも包含する。重要な実施形態において、単離されたペプチドはP.aeruginosa MEPに選択的に結合する。
【0014】
1つの実施形態において、単離されたペプチドは本明細書に開示された抗体の重鎖または軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を含む。重要な実施形態においては、アミノ酸配列は配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8からなる群より選択される。配列番号5および配列番号8は本明細書に開示したP.aeruginosa MEP結合抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号6および配列番号7は本明細書に開示したP.aeruginosa MEP結合抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。これらの重鎖および軽鎖の可変領域の配列は、実施例に記載するとおり、フレーム枠およびCDRの配列を含む。
【0015】
1つの実施形態において、単離されたペプチドはMEP結合重鎖可変領域から誘導されたCDRのアミノ酸配列およびMEP結合軽鎖可変領域から誘導されたCDRのアミノ酸配列を含む。
【0016】
1つの実施形態において、単離されたペプチドは単離された抗体または抗体フラグメントである。単離された抗体または抗体フラグメントは単離されたインタクトな可溶性モノクローナル抗体であってよい。単離された抗体または抗体フラグメントはF(ab’)2フラグメント、FdフラグメントおよびFabフラグメントからなる群より選択される単離されたモノクローナル抗体フラグメントであってよい。好ましい実施形態において、単離された抗体または抗体フラグメントはP.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する。このような抗体または抗体フラグメントは本明細書においては「オプソニン抗体または抗体フラグメント」と称する。重要な実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントはP.aeruginosa MEP結合CDRの1つ以上を含む以外に、Fcドメインを含む。従って、一部の実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは1つ以上のP.aeruginosa MEP結合CDRを含み、そしてP.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する。
【0017】
一部の実施形態、特に単離されたペプチドが抗体または抗体フラグメントであるものにおいては、ペプチドは重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列、すなわち、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列2つを含む。一部の好ましい実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは配列番号5および配列番号8からなる群より選択される重鎖可変領域アミノ酸配列1つおよび配列番号6および配列番号7からなる群より選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列1つを含む。一部の実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。別の実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。さらに別の実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。さらに別の実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。本発明の抗体および抗体フラグメントは同様に、本明細書に開示したP.aeruginosa MEP結合CDR1つ以上またはその機能的に等価な改変体を含んでよい。
【0018】
抗体およびそのフラグメントを含む本発明のペプチドはP.aeruginosa細菌の検出、P.aeruginosa感染の診断、および、そのような感染およびそれらが関わる障害の防止および治療において特に有用である。
【0019】
従って、別の特徴において、本発明は被験体におけるP.aeruginosaを検出するための方法を提供する。方法は被験体中、またはそれから得たサンプルへの単離されたペプチドまたはその機能的に等価な改変体の結合のレベル(結合の試験レベル)を測定すること、および、コントロールと結合の試験レベルを比較することを包含する。単離されたペプチドはP.aeruginosa MEPに選択的に結合し(すなわち、MEP結合ペプチド)、そしてP.aeruginosa MEP結合CDRまたはその機能的に等価な改変体を含む。P.aeruginosa MEP結合CDRは上記した軽鎖または重鎖からなる群より選択してよい。コントロールより高値の結合の試験レベルはサンプル中、すなわち、被験体中のP.aeruginosaを示している。コントロールはP.aeruginosa陰性であることがわかっている被験体中、またはこれより得たコントロールサンプルへのペプチドの結合のレベルである。1つの実施形態において、結合の試験レベルはインビトロで測定され、そして被験体からのサンプルの採取を包含する。あるいは、結合の試験レベルはインビボで測定され、そして好ましくは本明細書に記載する薬学的組成物として被験体に単離されたペプチドを投与することを包含する。さらに好ましくは、ペプチドは検出可能な標識、または、検出されることができる標識(例えばビオチンまたはアビジン)に結合体化する。1つの実施形態において、被験体はP.aeruginosa感染を発症する危険性を有する。別の実施形態においては、被験体は嚢胞性線維症を有する。ペプチドは抗体または抗体フラグメントであってよく、これがその後オプソニン貪食作用を増強するが、これに限定されない。
【0020】
さらに別の特徴において、本発明はP.aeruginosa感染を有するか、それを発症する危険性を有する被験体を治療するための方法を提供する。方法はこのような治療を必要とする被験体に対し、P.aeruginosa MEPに好ましくは選択的に結合し、そしてP.aeruginosa MEP結合CDRを含む単離ペプチドまたはその機能的に等価な改変体を投与することを包含する。CDRは上記した本発明の抗体の軽鎖または重鎖CDRのアミノ酸配列を含む。単離されたペプチドはP.aeruginosa感染を阻害するために効果的な量で被験体に投与する。1つの実施形態において、被験体は嚢胞性線維症を有する。重要な実施形態においては、単離されたペプチドは単離された抗体または抗体フラグメントである。好ましい実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントはP.aeruginosaのオプソニン貪食作用が可能である。一部の実施形態においては、このようなペプチドの1つより多くを被験体に投与する。
【0021】
本発明の別の特徴において、単離されたペプチドは例えばインビボのP.aeruginosaのコロニーまたは個々の細菌への造影剤または細胞毒性剤の送達において使用できる。一部の実施形態においては、ペプチドは例えば抗体のような物質に結合体化することができる。他の実施形態において、ペプチドは、ペプチドのインビボの投与によりP.aeruginosaの細菌または細菌コロニーに薬剤を送達できる細胞毒性剤(例えば殺菌剤)に結合体化してよい。
【0022】
関連の特徴において、本発明はP.aeruginosa関連障害(すなわち、P.aeruginosa感染に関連するかこれを伴っている障害)を有するか、発症する危険性のある被験体を治療するための方法を提供する。方法はP.aeruginosa関連障害を阻害する有効量の本発明の単離されたペプチドまたはその機能的に等価な改変体をこのような治療が必要な被験体に投与することを包含する。P.aeruginosa関連障害は、嚢胞性線維症、潰瘍性角膜炎、肺炎、菌血症、臓器感染、例えば腎臓、膀胱、肝臓、脳、皮膚、筋肉、リンパ節または副鼻腔の感染よりなる障害群から選択してよい。重要な実施形態において、単離されたペプチドは単離された抗体または抗体フラグメントである。好ましい実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントはP.aeruginosaのオプソニン貪食作用が可能である。
【0023】
本明細書に記載する投与方法の特定の実施形態においては、単離されたペプチドは他の治療薬と同時投与される。治療薬は例えば抗生物質のようなP.aeruginosa感染において予防的または治療的に使用されるものであってよい。あるいは、P.aeruginosa関連障害の治療に使用される薬剤、例えばN−アセチルシステイン、または、嚢胞性線維症の治療に使用されるDNaseであってよい。抗生物質と組み合わせて投与する場合は、単離されたペプチドはP.aeruginosaコロニーへの抗生物質の進入を促進することにより抗生物質の細胞殺傷作用を増強できる。これが特に該当する例は、ペプチドがオプソニン貪食作用を増強する抗体または抗体フラグメントである場合である。一部の実施形態においては、投与方法は単離されたペプチドおよび他の治療薬の相乗作用量を投与することを包含する。
【0024】
さらに別の特徴において、本発明は1つ以上の上記した単離されたペプチド、例えば1つ以上の上記した単離された抗体または抗体フラグメント、またはその機能的に等価な改変体および薬学的に受容可能な担体を含む薬学的組成物を提供する。1つの実施形態において薬学的組成物はP.aeruginosa MEPに結合し、P.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する単離された抗体または抗体フラグメントであるペプチドを含む。単離されたペプチドは多くの化合物、例えば検出可能な標識や細胞毒性剤などと結合体化してよい。一部の重要な実施形態においては、単離されたペプチドは予防的または治療的に有効な量で存在する。別の実施形態においては、単離されたペプチドは被験体中、またはこれより得たサンプル中のP.aeruginosaを検出するための有効量で存在する。関連の特徴において、本発明は薬学的に受容可能な担体に本発明の単離されたペプチドを接触させることを含む医薬の製造のための方法を提供する。
【0025】
さらに別の特徴において、本発明はP.aeruginosa MEP結合CDRをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を提供する。CDRは本発明の抗体の重鎖または軽鎖由来のCDR1、CDR2またはCDR3であってよい。1つの実施形態においては、単離された核酸分子は配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号18、配列番号19および配列番号20が重鎖CDRのヌクレオチド配列である。配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16および配列番号17が軽鎖CDRのヌクレオチド配列である。別の実施形態においては、単離された核酸分子は配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31および配列番号32、および、別の実施形態においては配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するP.aeruginosa MEP結合ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子も本発明に包含される。
【0026】
関連の特徴において、本発明はプロモーターに作動可能に連結した上記した単離された核酸分子を含む発現ベクター、このような発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞、および、単離された核酸分子によりコードされる単離されたペプチドを提供する。
【0027】
本発明はまたさらに別の特徴において本明細書に記載する抗体を生産する細胞系統を提供する。
【0028】
これらおよびその他の本発明の実施形態は本明細書においてより詳細に説明する。
【0029】
(配列表の簡単な説明)
配列番号1はクローンF428およびF429由来の重鎖の可変領域のヌクレオチド配列である。
【0030】
配列番号2はクローンF428およびF431由来の軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列である。
【0031】
配列番号3はクローンF429およびCOMB由来の軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列である。
【0032】
配列番号4はクローンF431およびCOMB由来の重鎖の可変領域のヌクレオチド配列である。
【0033】
配列番号5はクローンF428およびF429由来の重鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号6はクローンF428およびF431由来の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号7はクローンF429およびCOMB由来の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号8はクローンF431およびCOMB由来の重鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号9は配列番号1由来のCDR1のヌクレオチド配列である。
【0038】
配列番号10は配列番号1由来のCDR2のヌクレオチド配列である。
【0039】
配列番号11は配列番号1由来のCDR3のヌクレオチド配列である。
【0040】
配列番号12は配列番号2由来のCDR1のヌクレオチド配列である。
【0041】
配列番号13は配列番号2由来のCDR2のヌクレオチド配列である。
【0042】
配列番号14は配列番号2由来のCDR3のヌクレオチド配列である。
【0043】
配列番号15は配列番号3由来のCDR1のヌクレオチド配列である。
【0044】
配列番号16は配列番号3由来のCDR2のヌクレオチド配列である。
【0045】
配列番号17は配列番号3由来のCDR3のヌクレオチド配列である。
【0046】
配列番号18は配列番号4由来のCDR1のヌクレオチド配列である。
【0047】
配列番号19は配列番号4由来のCDR2のヌクレオチド配列である。
【0048】
配列番号20は配列番号4由来のCDR3のヌクレオチド配列である。
【0049】
配列番号21は配列番号5由来のCDR1のアミノ酸配列である。
【0050】
配列番号22は配列番号5由来のCDR2のアミノ酸配列である。
【0051】
配列番号23は配列番号5由来のCDR3のアミノ酸配列である。
【0052】
配列番号24は配列番号6由来のCDR1のアミノ酸配列である。
【0053】
配列番号25は配列番号6由来のCDR2のアミノ酸配列である。
【0054】
配列番号26は配列番号6由来のCDR3のアミノ酸配列である。
【0055】
配列番号27は配列番号7由来のCDR1のアミノ酸配列である。
【0056】
配列番号28は配列番号7由来のCDR2のアミノ酸配列である。
【0057】
配列番号29は配列番号7由来のCDR3のアミノ酸配列である。
【0058】
配列番号30は配列番号8由来のCDR1のアミノ酸配列である。
【0059】
配列番号31は配列番号8由来のCDR2のアミノ酸配列である。
【0060】
配列番号32は配列番号8由来のCDR3のアミノ酸配列である。
【0061】
配列番号33は配列番号1由来のFR1のヌクレオチド配列である。
【0062】
配列番号34は配列番号1由来のFR2のヌクレオチド配列である。
【0063】
配列番号35は配列番号1由来のFR3のヌクレオチド配列である。
【0064】
配列番号36は配列番号1由来のFR4のヌクレオチド配列である。
【0065】
配列番号37は配列番号2由来のFR1のヌクレオチド配列である。
【0066】
配列番号38は配列番号2由来のFR2のヌクレオチド配列である。
【0067】
配列番号39は配列番号2由来のFR3のヌクレオチド配列である。
【0068】
配列番号40は配列番号2由来のFR4のヌクレオチド配列である。
【0069】
配列番号41は配列番号3由来のFR1のヌクレオチド配列である。
【0070】
配列番号42は配列番号3由来のFR2のヌクレオチド配列である。
【0071】
配列番号43は配列番号3由来のFR3のヌクレオチド配列である。
【0072】
配列番号44は配列番号3由来のFR4のヌクレオチド配列である。
【0073】
配列番号45は配列番号4由来のFR1のヌクレオチド配列である。
【0074】
配列番号46は配列番号4由来のFR2のヌクレオチド配列である。
【0075】
配列番号47は配列番号4由来のFR3のヌクレオチド配列である。
【0076】
配列番号48は配列番号4由来のFR4のヌクレオチド配列である。
【0077】
配列番号49は配列番号5由来のFR1のアミノ酸配列である。
【0078】
配列番号50は配列番号5由来のFR2のアミノ酸配列である。
【0079】
配列番号51は配列番号5由来のFR3のアミノ酸配列である。
【0080】
配列番号52は配列番号5由来のFR4のアミノ酸配列である。
【0081】
配列番号53は配列番号6由来のFR1のアミノ酸配列である。
【0082】
配列番号54は配列番号6由来のFR2のアミノ酸配列である。
【0083】
配列番号55は配列番号6由来のFR3のアミノ酸配列である。
【0084】
配列番号56は配列番号6由来のFR4のアミノ酸配列である。
【0085】
配列番号57は配列番号7由来のFR1のアミノ酸配列である。
【0086】
配列番号58は配列番号7由来のFR2のアミノ酸配列である。
【0087】
配列番号59は配列番号7由来のFR3のアミノ酸配列である。
【0088】
配列番号60は配列番号7由来のFR4のアミノ酸配列である。
【0089】
配列番号61は配列番号8由来のFR1のアミノ酸配列である。
【0090】
配列番号62は配列番号8由来のFR2のアミノ酸配列である。
【0091】
配列番号63は配列番号8由来のFR3のアミノ酸配列である。
【0092】
配列番号64は配列番号8由来のFR4のアミノ酸配列である。
【0093】
(発明の詳細な説明)
本発明はP.aeruginosaムコイドエキソ多糖類(すなわち、MEPまたはアルギネート)に結合するペプチドの発見および合成に関する。P.aeruginosa MEPに結合するペプチドは本明細書においてはMEP結合ペプチドと称する。これらのペプチドは好ましくはP.aeruginosa MEP結合相補性決定領域(CDR)少なくとも1つを含む。本明細書においては、P.aeruginosa MEP結合CDRは本明細書に記載する抗体、すなわち、F428、F429、F431またはCOMBの1つから誘導したCDRである。P.aeruginosaのムコイド株は共通して嚢胞性線維症を有する被験体に感染している。MEPはP.aeruginosaのムコイド株により生産される外部多糖類であり、上皮細胞表面への初期接着においてこのような細菌により使用される。MEPはインビボおよびインビトロでP.aeruginosaのコロニー周囲にスライム様のコーティングを形成する。これは分子的にはウロン酸(例えばマンヌロン酸およびグルロン酸)の重合体として特性化されている。重要な点は、インビボのP.aeruginosa細菌コロニーの周囲のMEPコーティングの存在はこれらのコロニーを部分的に抗生物質療法に対して耐性とするということである。
【0094】
特定の理論に制約されないが、嚢胞性線維症患者の慢性ムコイドP.aeruginosa感染の進行は病原体を排除する十分な免疫応答をもたらすことができない点に起因すると信じられている。特に、P.aeruginosaのMEP被膜に対して特異的なオプソニン抗体の作成の失敗が欠陥である。オプソニン抗体は補体の存在下および非存在下で抗原上または細菌上に自らを付着させ、そして抗原提示細胞(例えばマクロファージまたは樹状細胞)のような貪食細胞による抗原または細菌の貪食作用を促進する抗体である。P.aeruginosa感染の部位にオプソニン抗体を提供する能力は、例えば慢性コロニー形成嚢胞性線維症患者の肺からのムコイドP.aeruginosaの根絶に寄与するはずである。本明細書においては、オプソニンおよびオプソニン貪食作用という用語は互換的に使用され、細菌のような抗原のFc媒介貪食作用を誘導できる抗体を指すものとする。
【0095】
本発明は部分的にはP.aeruginosa MEPに結合しP.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強するヒトモノクローナル抗体(すなわち、P.aeruginosaMAPに特異的なオプソニンヒトモノクローナル抗体)の発見および合成を前提としている。これらの抗体は精製されたMEPで免疫化したヒト被験体から採取したB細胞由来の抗体コード遺伝子を分子的に操作することにより作成した。これらのB細胞の組み換え免疫グロブリン(Ig)遺伝子、特に可変領域遺伝子を採取したB細胞より単離し、重鎖および短鎖の両方のヒトIg定常領域遺伝子をコードするIg組み換えベクターにクローニングした。この手法を用いて、P.aeruginosa MEPに結合し、P.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する新規な抗体4種を識別し、合成した。全ての抗体クローンはIgGアイソタイプであり、それらはF429、F430、F431およびCOMBと命名されている。
【0096】
本明細書に記載した抗体はムコイドおよび数種の非ムコイドのP.aeruginosa株に結合することができる。「非ムコイド」と特徴付けられる株であってもなお、ペプチドにより検出されるのに十分な低濃度のMEPを分泌すると信じられている。抗体は感染したヒト被験体由来のP.aeruginosa単離株のオプソニン殺傷を媒介できる。P.aeruginosa感染のネズミモデルにおいてインビボで使用した場合、抗体はP.aeruginosa攻撃に対する保護を与える。これらおよび他の所見は実施例においてより詳細に説明する。
【0097】
本発明のペプチドは最小限でもMEPに結合する領域(すなわち、P.aeruginosa MEP結合領域)を含む。P.aeruginosa MEP結合領域は本発明の抗体のMEP結合領域から誘導するか、または、そのような領域のその機能的に等価な改変体である。抗体誘導P.aeruginosa MEP結合領域の2つの特定のクラスは可変領域および相補性決定領域(CDR)である。可変領域とCDRはどちらも当業者により容易に配列決定される。これらの領域の説明は、本発明の抗体および配列におけるこれらの領域の位置と同様、後に説明する。
【0098】
当該分野で周知の抗体はジスルフィド架橋により連結されたポリペプチド鎖の組立物である。軽鎖および重鎖と称される2種の基本的なポリペプチド鎖は抗体の全ての主要な構造クラス(アイソタイプ)を構成する。重鎖および軽鎖は共に、可変領域および定常領域と称されるサブ領域に細分される。一部の場合において、ペプチドは上記した抗体の抗体重軽可変鎖を含む。重鎖可変領域は一般的に長さ100〜150アミノ酸の範囲のペプチドである。軽鎖可変領域は一般的に長さ80〜130アミノ酸の範囲のペプチドである。本発明は4種の異なる可変領域を提供し、うち2つは重鎖可変領域であり、2つは軽鎖可変領域である。配列番号1および配列番号5は抗体クローンF428およびF429から誘導した重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列に相当する。配列番号2および配列番号6は抗体クローンF428およびF431から誘導した軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列に相当する。配列番号3および配列番号7は抗体クローンF429から誘導した軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列に相当する。配列番号4および配列番号8は抗体クローンF431から誘導した重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列に相当する。
【0099】
あるいは、ペプチドは上記した可変領域の相補性決定領域(すなわち、CDR)のみを含む。当該分野で知られるとおり、抗体のCDRは抗体の特異性に大部分寄与する抗体の部分である。CDRは抗原のエピトープと直接相互作用する(一般的にClark,1986;Roitt,1991参照)。IgG免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域の両方において、相補性決定領域3つ(CDR1、CDR2、CDR3)によりそれぞれ分離されるフレーム枠領域4つ(FR1〜FR4)が存在する。フレーム枠領域(FR)は抗原との相互作用に関与する抗体の部分であるパラトープの三次構造を維持している。CDR、そして特にCDR3、および、より詳しくは重鎖CDR3は抗体の特異性に寄与している。CDR、そして特にCDR3は抗体に抗原特異性を与えるため、これらの領域を別の抗体またはペプチドに取り込むことにより、その抗体またはペプチドに同一の抗原特異性を付与してよい。
【0100】
P.aeruginosa MEP結合領域は、P.aeruginosa MEP結合CDR1、P.aeruginosa MEP結合CDR2、またはP.aeruginosa MEP結合CDR3であってよく、これらは全て、本明細書に開示した抗体および抗体の可変鎖から誘導する。本明細書においては、「P.aeruginosa MEP結合CDR1」とは好ましくは特異的にP.aeruginosa MEPに結合し、本明細書に開示する抗体の重鎖または軽鎖の可変領域の何れかから誘導されるCDR1である。これは好ましくは配列番号21、配列番号24、配列番号27および配列番号30からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。同様の該当する定義をP.aeruginosa結合CDR2およびCDR3にも適用する。「P.aeruginosa MEP結合CDR2」とは好ましくは特異的にP.aeruginosa MEPに結合し、本明細書に開示する抗体の重鎖または軽鎖の可変領域の何れかから誘導されるCDR2である。これは配列番号22、配列番号25、配列番号28および配列番号31からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。「P.aeruginosa MEP結合CDR3」とは好ましくは特異的にP.aeruginosa MEPに結合し、本明細書に開示する抗体の重鎖または軽鎖の可変領域の何れかから誘導されるCDR3である。これは好ましくは配列番号23、配列番号26、配列番号29および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。上記した配列のほかに、本発明は後に詳述するとおり、保存された置換改変体を含むこれらの配列の機能的に等価な改変体も包含するものとする。
【0101】
本発明のペプチド、例えば本明細書に開示するオプソニン貪食作用抗体は、被験体中、またはそれより得たサンプル中のP.aeruginosa細菌を検出することを目的とした診断方法において特に有用である。最低でも、これらの方法において有用なペプチドは、それらがオプソニン作用および貪食作用も増強するかに関わらず、P.aeruginosa MEPを認識して結合することのみを必要とする。重要な実施形態において、抗体およびそのフラグメントは選択的にMEPに結合する。従って、それらは本明細書に記載した抗体クローンから誘導されたCDR1つ以上を保有することのみを要する。好ましい実施形態においては、ペプチドはMEP結合CDR3を含み、より好ましくは、ペプチドは重鎖MEP結合CDR3を含む。CDRの全てがP.aeruginosa MEPへの結合を起こすために必要なわけではないことが理解されなければならない。しかしながら、一部の実施形態においては、ペプチドは本明細書に開示したCDR全てを含む。
【0102】
さらにまた、本発明は本発明により提供される可変領域の間のCDRの交換も包含することが理解されなければならない。好ましくは、重鎖CDRは別の重鎖可変領域CDRと交換され、そして同様に軽鎖CDRは別の軽鎖可変領域CDRと交換される。
【0103】
本明細書に開示した可変鎖のCDRのヌクレオチド配列は以下の通りである:
【0104】
【表1】
。
【0105】
本明細書に開示した可変鎖のCDRのアミノ酸配列は以下の通りである:
【0106】
【表2】
。
【0107】
本明細書においては、「ペプチド」という用語は、モノクローナル抗体、機能的に活性および/または等価な抗体フラグメント、および、機能的に活性および/または等価なペプチドおよびポリペプチドを包含する。本発明のペプチドは単離されたペプチドである。本明細書においては、「単離されたペプチド」という用語はペプチドが実質的に純粋であり、その意図される使用のために実質的で適切である範囲まで天然またはインビボの系においては共に検出される他の物質は本質的に非含有であることを指す。特に、ペプチドは、例えば医薬品調製物の製造または配列において有用である程度に、十分純粋であり、そして宿主細胞の他の生物学的構成成分は十分非含有となっている。本発明の単離されたペプチドは医薬品調製物中で薬学的に受容可能な担体と混合してよいため、ペプチドは調製物の小重量%を占めるのみである。しかしなお、ペプチドはそれが生態系において伴っていた物質から実質的に分離されている点において実質的に純粋である。
【0108】
本発明のペプチドは好ましくは選択的な態様でMEPに結合する。本明細書において、「選択的結合」および「特異的結合」という用語は互換的に使用し、非MEP誘導化合物よりもMEPおよびそのフラグメントに対して高い親和性で結合するペプチドの能力を指すものとする。すなわち、MEPに選択的に結合するペプチドはそれらがMEPおよびそのフラグメントの結合する場合と同様の程度や同様の親和性では非MEP誘導化合物には結合しない。好ましい実施形態においては、本発明のペプチドはMEPおよびそのフラグメントにのみ結合する。
【0109】
前述したとおり、本発明はP.aeruginosa MEPに結合するペプチド、例えば抗体または抗体フラグメントを提供する。このような抗体は好ましくはP.aeruginosaのオプソニン作用および貪食作用(すなわち、オプソニン貪食作用)を増強し、そしてその結果、被験体におけるP.aeruginosa感染の防止および治療において有用である。オプソニン作用とは抗原に対するオプソニン(例えば抗体または補体因子C3b)の付着により貪食作用が促進される過程を指す。貪食作用は貪食細胞(例えばマクロファージ、樹状細胞および多形核白血球(PMNL))が物質を捕獲し、それを自身の細胞質中の空胞(例えば食胞)内に封入する過程を指す。すなわち、オプソニン作用および貪食作用を増強する抗体または抗体フラグメントは抗原を認識してこれに付着し、そしてそのようにすることにより貪食細胞による抗原(および抗原担持物質、例えばP.aeruginosa細菌)の取り込みおよび捕獲を促進する抗体または抗体フラグメントである。一般的に、貪食作用およびオプソニン作用を増強するために、抗体はFcドメインまたは領域を含む。FcドメインはFc受容体担持細胞(例えば抗原提示細胞、例えばマクロファージまたはPMNL)により認識される。本明細書においては、「オプソニン貧食作用を増強する」とは、抗原または抗原担持物質が抗体の付着を介して貪食細胞により認識され捕獲される確率を増大させることを意味する。この増強はインビボにおいて細菌負荷を低減することにより、または、後述するインビトロの方法を用いたインビトロの細菌細胞殺傷により、測定できる。
【0110】
オプソニン作用試験は当該分野で標準的なものである。一般的にこのような試験は抗体、抗原(標的細菌細胞上に発現)、補体および貪食細胞の存在下の細菌殺傷量を測定する。血清は補体の原料として一般的に使用されており、多形核細胞は貪食細胞の原料として一般的に使用されている。標的細胞原料はどのような細胞型が抗原を発現するかに応じて原核細胞(本発明の場合)または真核細胞であることができる。細胞の殺傷は反応成分のインキュベーション前後の生存細胞数の計数により測定できる。あるいは、細胞の殺傷は反応混合物の上澄みにおける標識細胞含量を測定することにより定量できる(例えばクロムの放出)。他の試験は本明細書を読むことにより当業者には自明のものであり、それらはP.aeruginosa MEPに結合する抗体または抗体フラグメントが同様にオプソニン作用および貪食作用を促進するかどうかを調べるために有用である。
【0111】
本発明は特にムコイドP.aeruginosaのオプソニン性殺傷を増強するMEP特異的ヒトモノクローナル抗体を提供する。これらの抗体の名称はF428、F429、F431およびCOMBである。インビボで使用する場合は、ヒトモノクローナル抗体は遥かに低免疫原性である(他の種の抗体と比較して)。その結果、これらの抗体はワクチンの設計ならびにP.aeruginosaをターゲティングする受動免疫療法において有用な新しい薬剤を呈示する。これらのモノクローナル抗体の合成は実施例に記載する。要約すると、米国特許4,578,458記載のMEPで免疫化した個体から採取したB細胞から抗体を誘導した。採取したB細胞をエプスタイン・バーウィルスを用いて形質転換し、次にHMMA2.5と称される不死化細胞系統の融合相手と融合した。単一の抗体を生産するクローンを生育させ、結合試験(例えばELISA)を用いて個別に分析した。三種類の抗体をP.aeruginosa MEPに結合するその能力に基づいて選択した。これら三種類の抗体は全てIgAアイソタイプであった。次にこれら三種類の抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするcDNAを単離し、配列決定した。可変領域のcDNAを、重鎖および軽鎖の両方に関するIg定常領域コーディング配列を含有するヒトIg発現ベクター(すなわち、TCAE5.3)内にクローニングした。次にこれらの発現ベクターを細胞(例えばCHO DG44細胞)内にトランスフェクトし、細胞をインビトロで成育させ、そしてその後Igを上澄みから採取した。得られた抗体はヒト可変領域およびヒトIgG定常領域を保有していた。P.aeruginosa、特にP.aeruginosa MEPに結合し、そしてP.aeruginosaのオプソニン作用および貪食作用を増強するそれらの能力を本明細書に記載するような結合およびオプソニン貧食作用殺傷試験を用いて評価した。
【0112】
従って、1つの実施形態において、本発明のペプチドはP.aeruginosa MEPに特異的な単離されたインタクトな可溶性モノクローナル抗体である。本明細書においては、「モノクローナル抗体」という用語は同一のエピトープ(すなわち、抗原決定基)に特異的に結合する免疫グロブリンの均一な集団を指す。1つの実施形態において本発明のペプチドは例えば配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有するモノクローナル抗体である。別の実施形態においてはモノクローナル抗体は配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有する。モノクローナル抗体は配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有することができる。軽鎖および重鎖の可変領域の何れかの組み合わせを有するモノクローナル抗体は本発明の範囲に包含される。重鎖および軽鎖可変領域およびその相当するアミノ酸および核酸の配列を記載するための実施例において示す命名法を用いれば、以下の組み合わせ、すなわち、重鎖A(配列番号5)および軽鎖1(配列番号6);重鎖A(配列番号5)および軽鎖2(配列番号7);重鎖B(配列番号8)および軽鎖1(配列番号6);および重鎖B(配列番号8)および軽鎖2(配列番号7)、を本発明のモノクローナル抗体に包含することができる。
【0113】
本発明は、例えばクローンF428、F429、F431およびCOMB以外の抗体であっても本明細書に記載するモノクローナル抗体の結合特性をその抗体が有する限りそのような抗体も包含することを意図している。場合により、これらの他の抗体はまたP.aeruginosa細胞のオプソニン貧食作用を増強する。当業者は本明細書に詳述するスクリーニングおよび結合試験を用いてこれらのモノクローナル抗体の機能的特性(例えば結合、オプソニン作用および貪食作用の属性)を有する抗体を容易に識別できる。
【0114】
他の実施形態において、ペプチドは抗体フラグメントである。当該分野でよく知られている通り、抗体分子の小型部分、パラトープのみが抗体のそのエピトープへの結合に関与している(一般的にClark,W.R.(1986)The Experimental Foundations of Modern Immunology Wiley &Sons,Inc.,New York;Roitt,I.(1991)Essential Immunology,7th Ed.,Blackwell Scientific Publications,Oxford参照)。抗体のpFc’およびFc領域は例えば補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合には関与していない。pFc’領域由来の抗体が酵素的に切断除去されているか、または、pFc’領域を有さないように製造されている抗体、すなわち、F(ab’)2フラグメントと命名されているものは、インタクトな抗体の抗原結合部位を両方とも温存している。単離されたF(ab’)2フラグメントはその2抗原結合部位のために2価のモノクローナルフラグメントと称される。同様に、Fc領域が酵素的に切断除去されているか、または、Fc領域を有さないように製造されている抗体、すなわち、Fabフラグメントと命名されているものは、インタクトな抗体分子の抗原結合部位の1つを温存している。さらに進んで、Fabフラグメントは共有結合した抗体軽鎖およびFdと称される抗体重鎖の部分(重鎖可変領域)よりなる。Fdフラグメントは抗体特異性の主要な決定要因(単一のFdフラグメントは抗体の特異性を改変することなく10種以下の異なる軽鎖を伴っていてよい)であり、そしてFdフラグメントは単離においてエピトープ結合能力を温存している。
【0115】
Fab、Fc、pFc’、F(ab)2およびFvという用語は何れかの標準的な免疫学的意味と共に使用される[Klein,Immunology(John Wiley, New York,NY,1982);Clark,W.R.(1986) The Experimental Foundations of Modern Immunology (Wiley & Sons,Inc.,New York);Roitt,(1991)Essential Immunology,7th Ed.,(Blackwell Scientific Publications,Oxford)]。
【0116】
他の実施形態において、本発明の抗体のFc部分は本明細書に記載したモノクローナル抗体のCDRの一部または全てを担持するIgMならびにヒトIgG抗体を作成できるように置き換えてよい。特に重要なのは、P.aeruginosa MEP結合CDR3領域、および程度は低いが、他のCDRおよび本明細書に記載するモノクローナル抗体のフレーム枠領域の部分の包含である。このようなヒト抗体はそれらが好ましくは選択的にP.aeruginosa MEPを認識して結合するが抗体そのものに対抗したヒトにおける免疫応答を惹起しないという点において、特に臨床上の有用性を有することになる。
【0117】
本発明はP.aeruginosa MEP結合ペプチドの機能的に等価な改変体も包含するものとする。「機能的に等価な改変体」という用語は本発明のペプチドと同様の機能(すなわち、P.aeruginosa MEPに結合する、そして一部の実施形態においては細菌のオプソニン作用を促進する能力)を有する化合物である。機能的に等価な改変体は本質的にペプチドであってよいが、それに限定されない。例えば、炭水化物、ペプチドミメテイック等であってもよい。重要な実施形態においては、機能的に等価な改変体は内部に保存的な置換を有する可変領域またはCDRのアミノ酸配列を有するペプチド、すなわち、P.aeruginosa MEPに結合することがなお可能であるものである。クローンF428の重鎖可変領域由来のP.aeruginosa MEP結合CDR3(すなわち、配列番号5)の機能的に等価な改変体の例は、P.aeruginosaに好ましくは特異的に結合し、そして場合によりP.aeruginosaのオプソニン作用を増強する配列番号5における保存的置換を有するペプチドである。本明細書においては、「保存的置換」とは、アミノ酸置換が起こるペプチドの相対的な電荷または大きさの特性を改変しないアミノ酸置換を指す。アミノ酸の保存的置換は以下の群、すなわち、(1)M、I、L、V;(2)F、Y、W;(3)K、R、H;(4)A、G;(5)S、T;(6)Q、N;および(7)E、Dによるアミノ酸内で起こる置換を包含する。
【0118】
機能的に等価な改変体は本明細書に明示したペプチドとの同一性を有する。すなわち、そのような改変体は、本明細書に記載したアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも70%の同一性、少なくとも65%の同一性、少なくとも60%の同一性、少なくとも55%の同一性、少なくとも50%の同一性、少なくとも45%の同一性、少なくとも40%の同一性、少なくとも35%の同一性、少なくとも30%の同一性、少なくとも25%の同一性、少なくとも20%の同一性、少なくとも10%の同一性、または、少なくとも5%の同一性を有してよい。
【0119】
機能的な等価性とは等価な活性(例えばP.aeruginosaへの結合またはP.aeruginosaのオプソニン貧食作用の増強)を指すが、そのような活性のレベルの変動も包含する。例えば、機能的な等価体は、その改変体がなお本発明において有用である(すなわち、P.aeruginosa MEPに結合し、そして場合によりP.aeruginosaのオプソニン貧食作用を増強する)限り、本明細書に記載したモノクローナル抗体クローンよりも、低い、等しいまたは高い親和性でP.aeruginosa MEPに結合する改変体である。
【0120】
このような置換は当業者の知る種々の方法により行える。例えばアミノ酸置換はPCR指向突然変異、Kunkelの方法に従った部位指向突然変異誘発(Kunkel,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 82:488−492,1985)または特定のCDRをコードする遺伝子の化学合成により行ってよい。これらの方法およびCDR含有ペプチドを改変するためのその他の方法は当業者が知るとおりであり、このような方法を編集した参考文献、例えば上記したSambrookまたはAusubelに記載されている。しかしながら、一部の実施形態においては、CDRの大きさのため、市販のペプチド合成装置を使用して改変体ペプチドを合成することが好都合である。P.aeruginosa MEP結合CDRの機能的に等価な改変体の活性は結合試験により、そして一部の場合においては後に詳述するとおり生物学的活性試験において試験することができる。本明細書においては、「機能的改変体」、「機能的に等価な改変体」および「機能的に活性な改変体」という用語は互換的に使用する。
【0121】
本明細書においては、「機能的に活性な抗体フラグメント」という用語は好ましくは特異的な態様において、P.aeruginosa MEPに結合する能力を温存している本発明のP.aeruginosa MEP結合領域を含む抗体分子のフラグメントを意味する。このようなフラグメントはインビトロおよびインビボで使用できる。特によく知られた機能的に活性な抗体フラグメントは例えば、抗体のF(ab’)2、Fab、FvおよびFdフラグメントを包含する。インタクトな抗体のFcフラグメントを欠失しているフラグメントはより急速に循環から消失し、そしてインタクトな抗体よりも非特異的組織結合が低値である(Wahlら,J.Nucl.Med,24:316−325(1983))。別の例として、一本鎖抗体はLadner等への米国特許4,946,778に記載の方法に従って構築できる。このような一本鎖抗体は可撓性のリンカー部分により連結された軽鎖および重鎖の可変領域を含む。単離された可変重鎖単ドメインを含む単ドメイン抗体(「Fd」)を得るための方法も報告されている(例えばWardら,Nature 341:644−646(1989)参照、単離された形態でその標的エピトープに結合するのに十分なそれに対する親和性を有する抗体重鎖可変領域(VH単ドメイン抗体)を識別するためのスクリーニング方法を開示)。既知の抗体の重鎖および軽鎖の可変領域の配列に基づいて組み換えFvフラグメントを作成するための方法は当該分野で知られており、例えばMoore等の米国特許4,462,344に記載されている。抗体フラグメントの使用および作成を記載した他の参考文献は、例えばFabフラグメント(Tijssen,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays(Elsevier,Amsterdam,1985))、Fvフラグメント(Hochmanら,Biochemistry 12:1130(1973);Sharonら,Biochemistry 15:1591(1976);Ehrlichら,米国特許4,355,023)および抗体フラグメントの部分(Audilore−Hargreaves,米国特許4,470,925)を含む。すなわち、当業者は、P.aeruginosa MEPエピトープに対する抗体の特異性を破壊することなくインタクトな抗体の種々の部分から抗体フラグメントを構築してよい。
【0122】
本発明の重要な特徴において、機能的に活性な抗体フラグメントはまたP.aeruginosaに対するオプソニン作用および貪食作用が可能である能力を温存している。後者の例においては、抗体フラグメントはFc領域ならびにエピトープ結合ドメインを含む。Fc領域はFc受容体陽性細胞への抗体フラグメントの結合を可能にし、それがその後、抗体のFab領域により結合したエピトープを貪食する。
【0123】
本発明のペプチドを識別するためのさらに別のスクリーニング試験は例えばHartら,J.Biol.Chem.269:12468(1994)に記載のもののようなファージディスプレイ操作法を用いて実施する。Hart等は哺乳類細胞受容体に対する新しいペプチドリガンドを識別するためのフィラメントファージディスプレイライブラリを報告している。一般的に例えばM13またはfdファージを使用したファージディスプレイライブラリは上記した参考文献に記載のもののような従来の操作法を用いて調製する。ライブラリは4〜80アミノ酸残基を含むインサートをディスプレイする。インサートは場合により完全に縮重した、または偏向したペプチドのアレイを示す。P.aeruginosa MEPに好ましくは選択的に結合するリガンドはP.aeruginosa MEPに結合するリガンドを自身の表面上に発現するファージを選択することにより得られる。次にこれらのファージを数回の再選択サイクルに付して、最も有用な結合特性を有するペプチドリガンド発現ファージを識別する。典型的には、最良の結合特性(例えば最高の親和性)を示すファージをさらに、核酸分析により特性化し、ファージ表面上に発現されたペプチドの特定のアミノ酸配列およびP.aeruginosa MEPへの至適結合を達成するような発現ペプチドの至適長さを識別する。あるいは、このようなペプチドリガンドはアミノ酸1つ以上を含有するペプチドのコンビナトリアルライブラリから選択できる。このようなライブラリはその天然の相手方と比較した場合に酵素的分解に付される程度がより低い非ペプチド合成部分を含有するようにさらに合成できる。
【0124】
さらにまた、P.aeruginosa MEP結合CDR3領域を含有する小型ペプチドは組み換え手段により容易に合成または作成でき、本発明のペプチドを得ることができる。このような方法は当該分野でよく知らている。ペプチドは例えば市販の自動ペプチド合成装置を用いて合成できる。ペプチドは発現ベクター内にペプチドを発現するDNAを組み込むこと、および、発現ベクターで細胞を形質転換してペプチドを生産することによる組み換え手段により製造できる。
【0125】
抗体を包含するペプチドは当該分野で知られた標準的な結合試験を用いてP.aeruginosa MEPへのその結合能力について試験できる。適当な試験の例として、P.aeruginosa MEPを表面上(例えばマルチウェルプレートのウェル中)に固定し、そして次に標識されたペプチドと接触させる。次にP.aeruginosa MEPに結合する(そしてこれにより表面上に自身を固定化する)ペプチドの量を定量してP.aeruginosa MEPに特定のペプチドが結合するかどうかを調べる。あるいは、表面に結合していないペプチドの量を測定してもよい。本試験の変法においては、ペプチドはインビトロで生育しているP.aeruginosaコロニーに直接結合する能力について試験できる。この後者の試験の例は実施例において詳述する。
【0126】
ペプチド結合は競合試験を用いて試験することもできる。試験すべきペプチドが本明細書に記載したモノクローナル抗体または抗体フラグメントと競合することが、モノクローナル抗体またはフラグメントの結合の低下により明らかにされる場合、ペプチドおよびモノクローナル抗体は同じ、または、少なくとも重複したエピトープに結合する可能性が高い。この試験系においては、抗体または抗体フラグメントを標識し、そしてP.aeruginosa MEPを固体表面上に固定化する。これらおよびその他の試験は本明細書において詳述するとおりである。
【0127】
標準的な結合試験は当該分野で知られており、そしてこれらの多くのものが本発明に適しており、例えばELISA、競合結合試験(上記)、サンドイッチ試験、放射性標識ペプチドまたは放射標識抗体を用いた放射性受容体試験、イムノアッセイ等が例示される。試験の性質は、それが少数のペプチドの結合を検出するのに十分な感度を有する限り、重要ではない。
【0128】
種々の他の試薬も結合混合物中に含有させてよい。これらには、塩類、緩衝剤、中性タンパク質(例えばアルブミン)、洗剤等が包含され、これらは至適結合を促進するために使用してよい。このような試薬はまた反応成分の非特異的またはバックグラウンドの相互作用を低減する。試験の効率を向上させる別の試薬も使用してよい。上記した試験物質の混合物はモノクローナル抗体が通常は特異的にP.aeruginosa MEPに結合するような条件下にインキュベートする。そのような条件は好ましくは生理学的条件を模倣するものである。成分の添加順序、インキュベーションの温度、インキュベーション時間、および他の試験パラメーターは容易に決定できる。このような実験は試験パラメーターの至適化に関わるのみであり、試験の本質的な要素ではない。インキュベーション温度は典型的には4℃〜40℃である。インキュベーション時間は好ましくは、迅速で高スループットのスクリーニングを容易にするために最小限とし、そして典型的には、0.1〜10時間である。インキュベーションの後、ペプチドとP.aeruginosa MEPの間の特異的結合の存在または非存在を使用者が利用できる何れかの好都合な方法で検出する。
【0129】
典型的には、異なるペプチドまたは異なるペプチド濃度の複数の試験混合物を平行して試験することにより種々の濃度に対する異なる応答を得る。これらの濃度の1つが陰性コントロール、すなわち、P.aeruginosa MEPのゼロ濃度における、または、試験検出限界より低値のP.aeruginosa MEP濃度における値として使用される。
【0130】
分離工程は未結合のペプチドまたは抗体からの結合型を分離するために使用される場合が多い。分離工程は種々の方法において達成してよい。好都合には、成分の少なくとも1つ(例えばペプチドまたは抗体)をP.aeruginosa MEPへの結合を介して固体基板上に固定化する。未結合の成分は結合画分から容易に分離される。固体基板は種々の材料から、種々の形状、例えばポリアクリルアミド、アガロースまたはセファロースのカラムまたはゲル、マイクロプレート、マイクロビーズ、樹脂粒子等として製造できる。分離段階は好ましくは複数のすすぎまたは洗浄を含む。例えば、固体基板がマイクロプレートである場合は、典型的には、塩類、緩衝剤、洗剤、非特異的タンパク質等のような特異的結合に参加しないインキュベーション混合物成分と同様のものを含有する洗浄溶液でウェルを数回洗浄する。固体基板が磁気ビーズである場合は、ビーズを洗浄溶液で一回以上洗浄し、磁石を使用して単離する。
【0131】
ペプチドは単独で使用するか、または、他の分子、例えば本発明の検出および投与方法における検出薬または細胞毒性剤と、本明細書に詳述するとおり結合体化することができる。
【0132】
典型的には、成分の1つは通常は検出標識を含むか、これとカップリングされるか、または結合体化される。検出可能な標識は、その存在が直接または間接的に確認できる部分である。一般的に、標識の検出には標識によるエネルギーの発生を用いる。標識は特定の波長の光を発射および/または吸収するその能力(例えば放射能、ルミネセンス、光学密度または電子密度等)により直接検出できる。標識は、特定の波長の光を自ら発射または吸収する別の部分(例えばエピトープタグ、例えばFLAGエピトープ、酵素タグ、例えばセイヨウワサビパーオキシダーゼ等)に対し、結合、収集および、一部の場合においては脱離を行うその能力により間接的に検出できる。間接的検出の例は、物質を分解して可視産物にする第1の酵素標識の使用である。標識は、化学物質、ペプチドまたは核酸の性質のものであってよいが、これらに限定されない。他の検出可能な標識は、放射性同位体、例えばP32またはH3、ルミネセンスマーカー、例えばフルオロクローム、光学的または電子の密度マーカー等、または、エピトープタグ、例えばFLAGエピトープまたはHAエピトープ、ビオチン、アビジンおよび酵素タグ、例えばセイヨウワサビパーオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ等を包含する。標識はその合成の間、またはその後にペプチドに結合させてよい。多くの異なる標識および標識方法は当業者の知るとおりである。本発明において使用できる標識の種類の例は、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、コロイド金属、化学ルミネセンス化合物、およびバイオルミネセンス化合物を包含する。本明細書に記載したペプチドのための他の適当な標識は当業者の知るとおりであり、あるいは、日常的な実験により確認できる。さらにまた、これらの標識の本発明のペプチドへのカップリングまたは結合体化は当業者のよく知る標準的方法を用いて実施できる。
【0133】
より高感度となる他の標識手法は、低分子量のハプテンへのペプチドのカップリングよりなる。次にこれらのハプテンを第2の反応により特異的に改変することができる。例えば、アビジンと反応するビオチンのようなハプテン、特定の抗ハプテン抗体と反応するジニトロフェノール、ピリドキサール、または、フルオレセインを使用することが一般的である。
【0134】
抗体またはそのフラグメントを含むペプチドの検出可能な標識への結合体化は、特に診断試験におけるこのような薬剤の使用を容易にする。検出可能な標識の別の種類は、診断用および造影用の標識、例えば磁気共鳴撮影(MRI)用のGd(DOTA)、核治療用の201Tl、ガンマ線発射放射性核種99mTc、陽電子発射断層撮影(PET)用の陽電子発射同位体、(18)F−フルオロデオキシグルコース((18)FDC)、(18)F−フロリド、銅−64、ガドジアミドおよびPb(II)の放射性同位体、例えば203Pb;111Inを包含する。
【0135】
本明細書に記載する結合体化および修飾は、日常的な化学操作を使用しており、そのような化学操作は本発明の部分を構成せず、当業者の知るとおりである。保護基および知られたリンカー、例えばモノ、またはヘテロの2官能性のリンカーの使用は文献に記載されている通りであり、本明細書においては反復しない。
【0136】
本明細書においては、「結合体化された」とは、何れかの物理化学的手段により相互に安定に結合した2つの実体を意味する。結合の性質はそれが何れの実体の有効性も実質的に損なわないものであることが重要である。これらのパラメーターを念頭において、当該分野で使用されている何れかの共有結合または非共有結合の連結を使用してよい。一部の実施形態においては、共有結合が望ましい。非共有結合の結合体化には疎水性相互作用、イオン性相互作用、高親和性相互作用、例えばビオチン−アビジンおよびビオチン−ストレプトアビジンの複合体形成、および他の親和性相互作用が包含される。このような結合の手段および方法は当業者のよく知るとおりである。
【0137】
標識および他の試験成分の性質に応じて、標識の検出のために種々の方法を使用してよい。例えば、標識は固体基板に結合している状態で、または、固体基板から分離した後に検出してよい。標識は光学密度または電子密度、放射線発射、非放射線エネルギー転移等を介して直接検出するか、または、抗体結合体化、ストレプトアビジン−ビオチン結合体化等により間接的に検出してよい。標識を検出する方法は当業者のよく知るとおりである。
【0138】
本明細書に記載するモノクローナル抗体は、本発明のモノクローナル抗体と同様の結合特異性を有する他の抗体をスクリーニングして識別するために使用できる抗イディオタイプ抗体を作成するためにも使用できる。抗イディオタイプ抗体は本発明のモノクローナル抗体上に存在する独特の決定基を認識する抗体である。これらの決定基は抗体の超可変領域中に位置している。所定のエピトープに結合し、これにより抗体の特異性の原因となるのはこの領域である。このような抗イディオタイプ抗体はよく知られたハイブリドーマ技術を用いて作成できる(Kohler and Milstein,Nature,256:495,1975)。一例として、抗イディオタイプ抗体はモノクローナル抗体で被験体を免疫化することにより調製できる。免疫化した被験体は免疫化モノクローナル抗体のイディオタイプ決定基を認識してこれに応答し、これらのイディオタイプ決定基に対する抗体を生産する。本発明のモノクローナル抗体に対して特異的な免疫化動物の抗イディオタイプ抗体を使用することにより、免疫化に使用したモノクローナル抗体と同じイディオタイプを有する他のクローンを識別することができる。2つの細胞系統のモノクローナル抗体の間のイディオタイプの同一性は、2つのモノクローナル抗体が同じエピトープ決定基のその認識に関して同様であることを示している。すなわち、抗イディオタイプ抗体を使用することにより、同じエピトープ特異性を有するモノクローナル抗体を発現する他のハイブリドーマを識別することができる。
【0139】
抗イディオタイプ抗体はまた、エピトープを模倣するモノクローナル抗体を生産するために抗イディオタイプ技術を使用することが可能であることから、能動免疫化のために使用できる(Herlynら,Science,232:100,1986)。例えば、第1のモノクローナル抗体に対して作成された抗イディオタイプモノクローナル抗体は第1のモノクローナル抗体により結合されたエピトープの像である超可変領域中の結合ドメインを有する。すなわち、抗イディオタイプモノクローナル抗体は、抗イディオタイプモノクローナル抗体結合ドメインが抗原として効果的に機能するため、免疫化のために使用できる。
【0140】
本発明のモノクローナル抗体の特異性の原因となる配列は決定されている。従って、本発明のペプチドは組み換えDNA技術を用いて調製できる。商業的にこの機能を実施する合衆国内の団体、例えばThomas Jefferson UniversityおよびScripps Protein and Nucleic Acid Core Sequencing Facility(La Jolla,California)が存在する。例えば可変領域cDNAは縮重または非縮重のプライマー(アミノ酸配列より誘導)を用いて寄託されたハイブリドーマRNAからポリメラーゼ連鎖反応により製造できる。cDNAをサブクローニングし、従来の配列決定反応または装置により配列決定するのに十分な量の2本鎖DNAを生成する。
【0141】
P.aeruginosa MEPモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインの核酸配列の知識を用いれば、当業者はこの抗体をコードする、または、種々の抗体フラグメント、ヒト化抗体または上記ポリペプチドをコードする核酸を作成できる。このような核酸は、クローニングのため、または、本発明のペプチドの発現のための組み換えベクターを形成する他の核酸に作動可能に連結すると考えられる。本発明は、原核細胞または真核細胞の形質転換、トランスフェクションまたは遺伝子療法用に関わらず、コーディング配列またはその部分を含有する何れの組み換えベクターも包含する。このようなベクターは当業者の知る従来の分子生物学の技術を用いて調製でき、そしてCDR領域(好ましくはCDR3領域)のDNAコーディング配列および抗体またはその部分の特異性に寄与している別の可変配列、ならびに、非特異的なペプチド配列および適当なプロモーターを、輸出または分泌のためのシグナル配列の存在下(Whittleら,Protein Eng.1:499,1987およびBurtonら,Science 266:1024−1027,1994)または非存在下(Marascoら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)90:7889,1993およびDuanら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)91:5075−5079,1994)に含む。このようなベクターは、当業者の知る従来の方法により、原核細胞(Huseら,Science 246:1275,1989,Wardら,Nature 341:644−646,1989;Marksら,J.Mol.Biol.222:581,1991およびBarbasら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:7978,991)または真核細胞(Whittleら,1987およびBurtonら,1994)に形質転換またはトランスフェクトするか、または、遺伝子療法(Marascoら,1993およびDuanら,1994)のために使用してよい。
【0142】
本明細書においては、「ベクター」とは異なる遺伝子環境の間の輸送のため、または、宿主細胞内における発現のために、制限酵素切断およびライゲーションにより所望の配列を挿入してよい多くの核酸のいずれかである。ベクターは典型的にはDNAであるが、RNAベクターも使用可能である。ベクターには例えばプラスミドまたはファージミドが包含される。クローニングベクターは宿主細胞内で複製することができ、そしてベクターが測定可能な態様で切断される部位であり、そして新しい組み換えベクターが宿主細胞内で複製する能力を温存できるようにその部位中に所望のDNA配列をライゲーションするエンドヌクレアーゼ制限部位1つ以上によりさらに特徴付けられるものである。プラスミドの場合、所望の配列の複製はプラスミドが宿主細菌内でコピー数を増大させるに従って多くの回数起こるか、または有糸分裂により宿主が再生する前に宿主あたり単回のみ起こる。ファージの場合、複製は溶解期に能動的に、または、溶原期に受動的に起こってよい。発現ベクターは、所望のDNA配列が調節配列に作動可能に連結し、RNA転写物として発現されるように制限酵素切断とライゲーションによりこれを挿入するものである。ベクターはさらにベクターにより形質転換またはトランスフェクトされているか、されていない細胞の発見において使用するために適するマーカー配列1つ以上を含んでよい。マーカーは例えば抗体または他の化合物に対する耐性または感受性のいずれかを増大または低減するタンパク質をコードする遺伝子、当該分野で知られた標準的な試験法で活性を検出できる酵素をコードする遺伝子(例えばβ−ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)、および、形質転換またはトランスフェクトされた細胞、宿主、コロニーまたはプラークの表現型に目視可能な影響を与える遺伝子を包含する。好ましいベクターはそれらが作動可能に連結されるDNAセグメント内に存在する構造遺伝子産物の自律複製および発現が可能であるものである。
【0143】
本発明の発現ベクターは本発明のペプチドの1つをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した調節配列を包含する。本明細書においては、「調節配列」という用語は所望のポリペプチドをコードし、そして/または得られた転写物の所望のポリペプチドへの翻訳に必要であるか、それを誘導するヌクレオチド配列の転写のために必要であるか、それを誘導するヌクレオチド配列を意味する。調節配列は、例えば5’配列、例えばオペレーター、プロモーターおよびリボソーム結合配列、および3’配列、例えばポリアデニル化シグナルを包含する。本発明のベクターは場合により5’リーダーまたはシグナル配列、タンパク質の精製に役立つ融合産物をコードする5’または3’配列、および形質転換体の識別または選択に役立つ種々のマーカーを包含する。適切なベクターの選択および設計は当業者の知るとおりである。ペプチドのその後の精製は当該分野で知られた標準的な手段の種々のもののいずれかにより行ってよい。
【0144】
ペプチドのスクリーニングのためには好ましいが、必ずしも本発明のペプチドの大量生産のために好ましいわけではないベクターは、(1)原核細胞分泌シグナルドメイン、(2)本発明のポリペプチド、および、場合により(3)融合タンパク質ドメインを、アミノからカルボキシ末端の方向に含有する、融合ポリペプチドをコードし、その発現が可能なヌクレオチド配列を含有する組み換えDNA分子である。ベクターは融合ポリペプチドの発現のためのDNA調節配列、好ましくは原核細胞調節配列を包含する。このようなベクターは当業者が構築できるものであり、そしてSmith等(Science 228:1315−1317,1985)、Clackson等(Nature 352:624−628,1991);Kang等(Methods:A Companion to Methods in Enzymology:Vol.2,R.A.Lerner and D.R.Burton,ed.Academic Press,NY.pp111−118,1991)、Barbas等(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:7978−7982,1991)、Roberts等(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:2429−2433,1992)に記載されている。
【0145】
融合ポリペプチドは本発明のペプチドの精製のために有用である。融合ドメインは例えば、Ni+カラム上での精製を可能にするポリHisテール、または、市販ベクターpMAL(New England BioLabs,Beverly,MA)のマルトース結合タンパク質を包含する。現時点で好ましいが必須ではない融合ドメインは糸状ファージ膜アンカーである。このドメインはモノクローナル抗体のファージディスプレイライブラリのスクリーニングのために特に有用であるが、抗体の大量生産においては有用性は低い。糸状ファージ膜アンカーは好ましくは糸状ファージ粒子のマトリックスと会合して融合ポリペプチドをファージ表面に取り込むことができ、これにより特定の抗原またはエピトープへの固相結合を可能にし、これによりファージミドベクターによりコードされる特定の抗体またはフラグメントのリッチ化および選択を可能にすることができる、cpIIIまたはcpVIIIコートタンパク質のドメインである。
【0146】
分泌シグナルはグラム陰性細菌の原形質周囲膜のような宿主細胞のタンパク質膜をターゲティングするタンパク質のリーダーペプチドドメインである。E.coliに対する好ましい分泌シグナルはpelB分泌シグナルである。Erwinia carotova由来の2つのpelB遺伝子生産改変体由来の分泌シグナルドメインの推定アミノ酸残基配列はLei等(Nature 381:543−546,1988)により報告されている。pelBタンパク質のリーダー配列は以前は融合タンパク質のための分泌シグナルとして使用されていた(Betterら,Science 240:1041−1043,1988、Sastryら,Proc.Natl.Acad.Sci(USA)86:5728−5732,1989、およびMullinaxら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:8095−8099,1990)。本発明において有用なE.coli由来の他の分泌シグナルポリペプチドドメインのアミノ酸残基配列はOliver,In Neidhard,F.C.(ed)Escherichia coli and Salmonella Typhimurium,American Society for Microbiology,Washington,D,C,1:56−69(1987)に記載されている。
【0147】
E.coli内で高レベルの遺伝子発現を達成するためには、大量のmRNAを精製するための強力なプロモーターだけではなく、mRNAが効率的に翻訳されるためのリボソーム結合部位が必要である。E.coliにおいては、リボソーム結合部位は開始コドン(AUG)および開始コドンから上流3〜11ヌクレオチドに位置する3〜9ヌクレオチド長の配列を包含する(Shineら,Nature 254:34,1975)。Shine−Dalgarno(SD)配列と称される配列AGGAGGUはE.coli 16S rRNAの3’末端に相補である。mRNAへのリボソームの結合およびmRNAの3’末端における配列はいくつかの要因、すなわち、(i)SD配列と16S rRNAの3’末端との間の相補性の程度;(ii)SD配列とAUGとの間に存在するスペーシングおよびおそらくはDNA配列の影響を受ける場合がある(Robertsら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)76:760,1979a、Robertsら,Proc.Natl.Acad.Sci(USA)76:5596,1979b、Guarenteら,Science 209:1428,1980、およびGuarenteら,Cell 20:543,1980)。至適化はスペーシングが体系的にに改変されているプラスミド中の遺伝子発現のレベルを測定することにより達成される。異なるmRNAの比較により、−20〜+13位の統計学的に好ましい配列があることが示される(ここでAUGのAを0位とする)(Goldら,Annu.Rev,Microbiol.35:365,1981)。リーダー配列は劇的に翻訳に影響し(Robertsら,1979a,b上出);ならびに(iii)リボソーム結合に影響するAUG後のヌクレオチド配列(Taniguchiら,J.Mol.Biol.,118:533,1978)。
【0148】
3’調節配列は非相同の融合ポリペプチドとインフレームであり、これに作動可能に連結している終止コドン少なくとも1つを定義する。
【0149】
原核細胞発現宿主を用いる好ましい実施形態においては、使用するベクターは複製の原核細胞起点またはレプリコン、すなわち、それにより形質転換された細菌宿主細胞のような原核細胞宿主細胞において染色体外に組み換えDNA分子の自律複製および維持を指向する能力を有するDNA配列を包含する。このような複製起点は当該分野でよく知られている。好ましい複製起点は宿主の生物において効率的なものである。好ましい宿主細胞はE.coliである。E.coli中のベクターの使用のためには、好ましい複製起点はpBR322および種々の他の一般的プラスミドに存在するColE1である。pACYCおよびその誘導体に存在するp15A複製起点も好ましい。ColE1およびp15Aレプリコンは分子生物学で広範に使用されており、種々のプラスミド上で使用可能であり、そしてSambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989に記載されている。
【0150】
さらにまた、原核細胞レプリコンを包含するこれらの実施形態はまた、その発現が選択上の利点、例えば薬剤耐性を、それにより形質転換された細菌宿主に対して与える遺伝子を包含する。典型的な細菌の薬剤耐性遺伝子はアンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン/カナマイシンまたはクロラムフェニコールに対する耐性を与えるものである。ベクターは典型的には翻訳可能なDNA配列の挿入のための好都合な制限部位を含有する。例示されるベクターはプラスミドpUC18およびpUC19および誘導されたベクター、例えばInvitrogen(San Diego,CA)から入手可能なpcDNAIIである。
【0151】
本発明のペプチドが重鎖および軽鎖の配列の両方を含む抗体である場合は、これらの配列は別々のベクター上にコードされてよく、または、より好都合には、単一のベクターにより発現されてよい。重鎖および軽鎖は、翻訳後、または分泌後、天然の抗体分子のヘテロ2量体構造を形成してよい。このようなヘテロ2量体抗体は重鎖と軽鎖の間のジスルフィド結合により安定化されてもされなくてもよい。
【0152】
本発明のインタクトな抗体または本発明のF(ab’)2、FabまたはFvフラグメント抗体のようなヘテロ2量体抗体の発現のためのベクターは、翻訳可能な第1および第2のDNAを受領して発現するために適合された組み換えDNA分子である。すなわち、ヘテロ2量体抗体を発現するためのDNA発現ベクターは、ベクター内に存在する2つの別々のカセット内に2つの翻訳可能なDNA配列を独立してクローニング(挿入)し、これによりヘテロ2量体抗体の第1および第2のポリペプチドを発現するための2つの別々のシストロンを形成するための系を提供する。2つのシストロンを発現するためのDNA発現ベクターはジシストロン発現ベクターと称する。
【0153】
好ましくは、ベクターはインサートDNAへの指向性のライゲーションのために適合されたヌクレオチドの配列を介して作動可能に連結された上流および下流のDNA調節配列を包含する第1のカセットを含む。上流の翻訳可能な配列は好ましくは上記した分泌シグナルをコードする。カセットは、インサート翻訳可能DNA配列(インサートDNA)が指向性ライゲーションのために適合されたヌクレオチドの配列を介してカセット内に指向性に挿入される場合に生産される第1の抗体ポリペプチドを発現するためのDNA調節配列を包含する。
【0154】
ジシストロン発現ベクターはまた第2の抗体ポリペプチドを発現するための第2のカセットを含有する。第2のカセットはカセットの読み枠内の少なくとも1つの終止コドンを典型的には定義するベクターの下流のDNA配列への指向性ライゲーションのために適合されたヌクレオチドの配列を介してその3’末端に作動可能に連結した上記の分泌シグナルを好ましくはコードする第2の翻訳可能なDNA配列を包含する。第2の翻訳可能なDNA配列は5’エレメントを形成するDNA調節配列にその5’末端において作動可能に連結している。第2のカセットは、翻訳可能なDNA配列(インサートDNA)の挿入があれば、インサートDNAによりコードされるポリペプチドとともに分泌シグナルを含む第2の融合ポリペプチドを発現することができる。
【0155】
本発明のペプチドはまた、CHO細胞、ヒトハイブリドーマ、不死化B−リンパ芽球様細胞等のような真核細胞により生産してもよい。このような場合、ベクターは、真核生物調節配列がペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されているように構築する。適切な真核生物ベクターの設計および選択は当業者の知るとおりである。ペプチドのその後の精製は当該分野で知られている種々の標準的方法のいずれかにより行ってよい。
【0156】
別の実施形態においては、本発明は、本発明のベクターにより形質転換またはトランスフェクトされており、従ってそれを含んでいる原核生物および真核生物の両方の宿主細胞を提供する。
【0157】
核酸に関して本明細書においては、「単離された」という用語は(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりインビトロで増幅され;(ii)クローニングにより組み換え生産され;(iii)切断およびゲル分離により精製され;または、(iv)例えば化学合成により合成されたことを意味する。単離された核酸は当該分野でよく知られた組み換えDNA技術により容易に操作できるものである。すなわち、5’および3’制限部位が既知であるか、または、そのためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列が開示されているベクター中に含有されるヌクレオチド配列は単離されているとみなされるが、その天然の宿主中においてネイティブの状態で存在する核酸配列はそのようにみなされない。単離された核酸は実質的に精製されていてよいが、必須ではない。例えばクローニングまたは発現ベクター内において単離されている核酸は、それがそれを含む細胞内の物質の僅か数パーセントを構成するのみである点において純粋ではない。しかしながらこのような核酸は、当該分野でよく知られた標準的な技術により容易に操作できるため、本明細書において使用される用語としては、単離されている。
【0158】
本明細書においては、コーディング配列および調節配列はそれらが調節配列の影響下または制御下にコーディング配列の発現または転写を付すような態様で共有結合している場合に「作動可能に連結した」と表現する。コーディング配列を機能的タンパク質に翻訳したい場合は、2つのDNA配列は、5’調節配列のプロモーターの誘導がコーディング配列の転写をもたらす場合、および、2つのDNAの間の連結の性質が(1)フレームシフト突然変異の誘導をもたらさず、(2)コーディング配列の転写を指向するプロモーター領域の能力を妨害せず、または(3)相当するRNA転写物がタンパク質に翻訳される能力を妨害しない場合に、作動可能に連結されていると表現する。すなわち、得られる転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳されるようにプロモーター領域がそのDNA配列の転写を行うことが可能であった場合に、プロモーター領域はコーディング配列に作動可能に連結していることになる。
【0159】
遺伝子発現のために必要な調節配列の厳密な性質は種または細胞型の間で変動するが、一般的には必要に応じてそれぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写および5’非翻訳配列、例えばTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等を包含する。特にこのような5’非転写調節配列は作動可能に連結した遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を包含するプロモーター領域を包含する。調節配列はまた、所望によりエンハンサー配列または上流のアクティベーター配列を含んでよい。
【0160】
本発明はまたインビボまたはインビトロの方法において本明細書に記載したペプチドの使用を包含する。特にペプチドは検出方法ならびに治療方法において使用できる。本発明により提供される検出または診断方法は一般的に被験体中、またはそれより得たサンプルに本発明のペプチド1つ以上を接触させることを包含する。インビボの検出方法も想定しているが、好ましくは、サンプルをまず被験体から採取する。サンプルは細菌を保有していると疑われるいずれかの身体の組織または液体を包含してよい。P.aeruginosaの感染はいずれかの数の組織、例えば眼、耳、呼吸管(肺を含む)、心臓(弁を含む)、中枢神経系、骨および関節、胃腸管(大腸を含む)、尿管、皮膚および軟組織に罹患する。肺または胃腸の洗浄液またはCNS液もすべて採取して細菌の存在について試験することができる。
【0161】
細菌を検出するためには、サンプルを本発明のペプチドに接触させ、ペプチドの結合のレベルを細菌陰性であることが既知のサンプル(陰性コントロール)に対するペプチドの結合のレベルと比較する。検出可能な標識に結合体化したペプチドはこのような試験において最も有用である。検出可能な標識または細胞毒性剤にペプチドを結合体化する方法は上記において詳述したとおりである。
【0162】
本発明はまた、細菌の汚染を発見するために、医療用の装置、表面、機材等の内部または表面におけるP.aeruginosaを検出する方法を包含する。これらの検出方法は上記したものと本質的に同様の態様で実施される。試験すべき物品および表面を本発明のペプチドに直接接触させるか、または、それらのサンプルを採取し、サンプルを細菌の存在について試験する。サンプル採取は例えばスワブ採取、ワイピング、フラッシング等を包含する。
【0163】
本明細書においては、「治療」という用語は医療上望ましい利益を達成する目的の被験体へのペプチドの投与を指す。従って、「治療」とは「予防的」および「治療的」な投与方法の両方を包含するものとする。予防的投与方法とはP.aeruginosa感染またはP.aeruginosa関連状態の診断よりも前に被験体に投与することを指す。換言すれば被験体はP.aeruginosa感染またはP.aeruginosa関連状態のいずれかの危険性を有しているが、いずれの状態も呈していない。治療的投与方法とはP.aeruginosa感染またはP.aeruginosa関連状態の診断後に被験体に投与することを指す。換言すれば、被験体はP.aeruginosa感染またはP.aeruginosa関連状態を有すると診断されているか、または、被験体はいずれかに関連する状態を呈している。
【0164】
本明細書においては、被験体はヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはげっ歯類である。全ての実施形態において、ヒト被験体が好ましい。
【0165】
治療的に使用される場合は、有効量はP.aeruginosa感染を阻害する量である。そのような阻害は、細菌の菌体の増殖の部分的または完全な阻害、または、一部の例においては、細菌のコロニーの部分的または完全な排除により測定され、これは細菌または細菌コロニーの数の低減により一般的に測定される。予防的に使用される場合は、有効量はP.aeruginosaの感染が発症しないような量である。そのような阻害は例えば嚢胞性線維症を有する患者、または、嚢胞性線維症を発症する危険性を有する患者から得た肺洗浄液中の細菌の非存在により測定する。一般的に、治療有効量は被験体の年齢、状態および性別、ならびに、被験体における疾患の程度により変動し、そして当業者が決定できる。用量はいずれかの合併症の場合には個々の医師により調節してよい。
【0166】
本発明はまたP.aeruginosa関連障害の治療のための方法を包含する。「P.aeruginosa関連障害」とは本明細書においては、P.aeruginosa感染の存在に関連するいずれかの障害である。これらの障害は嚢胞性線維症、潰瘍性角膜炎、肺炎、菌血症、臓器および組織の感染、例えば腎臓、膀胱、肝臓、脳、皮膚、筋肉、リンパ節または副鼻腔の感染を包含する。方法は疾患を阻害するために有効な量の本発明のペプチドをそのような障害を有する被験体に投与する工程を包含する。障害は障害に関連する状態が低減した場合に「阻害される」。一部の場合においては、この量は被験体におけるP.aeruginosa感染を阻害するために必要な量と等しい。
【0167】
有効量は典型的には1日または数日間(上記した投与様式および要因の過程により変動する)にわたり、1日1回以上の投与において、約0.01mg/kg〜約1000mg/kg、より典型的には約0.1mg/kg〜約200mg/kg、そして頻繁には約0.2mg/kg〜約20mg/kgである。
【0168】
P.aeruginosa MEPに結合し、そして場合によりインビトロでオプソニン作用および貪食作用を増強するペプチドの能力をスクリーニングすることにより、当業者はペプチドの有効量が如何なるものであるかを決定できる。P.aeruginosa MEPに結合し、場合によりオプソニン作用および貪食作用を増強する本発明のペプチドの能力を測定するための例示される方法は実施例に示すとおりであり、そして上記において説明したとおりである。
【0169】
本発明の方法によれば、ペプチドは薬学的組成物中において投与してよい。一般的に薬学的組成物は本発明のペプチドおよび薬学的に受容可能な担体を含有する。ペプチド、モノクローナル抗体および抗体フラグメントのための薬学的に受容可能な担体は当該分野でよく知られている。本明細書においては、薬学的に受容可能な担体とは活性成分の生物学的な活性の有効性、すなわち、P.aeruginosa MEPに結合し、場合によりオプソニン作用および貪食作用を増強するペプチドの能力を妨害しない非毒性の物質を意味する。
【0170】
薬学的に受容可能な担体は希釈剤、充填剤、塩類、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤および当該分野でよく知られた他の物質を包含する。特にペプチドのための薬学的に受容可能な担体の例は米国特許5,211,657に記載されている。このような調製物は日常的に塩、緩衝剤、保存料、相溶剤および場合により他の治療薬を含有してよい。医薬品に使用する場合は、塩類は薬学的に受容可能なものでなければならないが、非薬学的に受容可能な塩はその薬学的に受容可能な塩の調製のために好都合に使用してよく、本発明の範囲から除外されない。このような薬理学的および薬学的に受容可能な塩には、例えば以下の酸、すなわち、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等から調製されるものが包含される。さらにまた、薬学的に受容可能な塩はナトリウム、カリウムまたはカルシウムの塩のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属として調製できる。
【0171】
本発明のペプチドは固体、半固体、液体またはガス状の形態、例えば錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座剤、吸入薬および注射剤および経口、非経口または外科的投与のための通常の状態としての調製物に処方してよい。本発明はまたインプラントのような局所投与のために処方される薬学的組成物を包含する。
【0172】
種々の投与経路を使用してよい。本発明の方法は一般的に、臨床上許容されない副作用を起こすことなく活性化合物の有効濃度をもたらすようないずれかの様式を意味する、医療上許容されるいずれかの投与様式を用いて実施してよい。本発明の方法によれば、ペプチドは注射によるか、時間をかけた緩徐な注入によるか、または、他のいずれかの医療上許容される様式により投与できる。このような投与様式には、経口、直腸、局所、経鼻、皮内または非経口の経路が包含される。「非経口」という用語は皮下、静脈内、筋肉内または注入を包含する。静脈内または筋肉内の経路は長期の治療および予防のためには特に適していない。しかしながらそれらは緊急事態においては好ましい。経口投与は患者の利便性ならびに投与計画の点において予防的投与のために好ましい。経口投与に適する組成物は個々の単位、例えばカプセル、錠剤、トローチ剤として提供してよく、各々が所定量の活性剤を含有するものとする。他の組成物には水性の液体または非水性の液体中の懸濁液、例えばシロップ、エリキシルまたは乳液が包含される。
【0173】
本明細書に記載した化合物(ペプチドおよび非ペプチドの種々のものを含む)を治療的に使用する場合は、特定の実施形態において、投与の望ましい経路は肺エアロゾルによるものであってよい。化合物を含有するエアロゾル送達系の調製のための技術は当該分野でよく知られている。一般的に、このような系はペプチドの生物学的特性を大きく損なうことのない成分を利用しなければならない(例えば参照により本明細書に組み込まれるSciarra and Cutie,”Aerosols”, Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,1990,pp1694−1712参照)。当業者は特に予定外の実験を行うことなくエアロゾルを製造するための種々のパラメーターおよび条件を容易に決定することができる。
【0174】
本発明の方法は伏在する細菌感染を治療するための従来の治療法と組み合わせて本発明のペプチドを投与する工程も包含する。例えば、本発明の方法は例えば抗生物質療法のような従来の治療薬投与と同時に実施してよい。一部の実施形態においてはペプチドは従来の投与と実質的に同時に投与する。実質的に同時とは、本発明のペプチドを従来薬品(例えば抗生物質)の投与と時間的に十分近接して被験体に投与することにより、2つの化合物が相加的または相乗的な作用を発揮することを意味する。一部の例においては、ペプチドおよび従来の治療薬は相互に結合体化する。別の例では化合物は物理的に分離されている。
【0175】
本発明のペプチドは組織に直接投与してよい。好ましくは、組織は細菌の感染が存在しているもの、例えば、嚢胞性線維症患者における肺である。あるいは、組織は感染が生じる可能性があるものである。直接の組織への投与は直接の注射により達成してよい。ペプチドは1回投与するか、または、複数回投与してよい。複数回投与する場合は、ペプチドは異なる経路で投与してよい。例えば、第1回(または最初の数回)の投与は罹患組織に直接行い、その後は全身投与してよい。
【0176】
非経口投与のための調製物は、滅菌された水性または非水性の溶液、懸濁液および乳液を包含する。非水性の溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射用の有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性の担体は水、アルコール性/水性の溶液、乳液または懸濁液、例えば食塩水および緩衝媒体を包含する。非経口のベヒクルは塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸添加リンゲル液または固定油を包含する。静脈内ベヒクルは水分および栄養の補給剤、電解質の補給剤(例えばリンゲルデキストロースに基づくもの)等を包含する。保存料および他の添加剤もまた存在してよく、例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガス等が挙げられる。低用量は他の投与形態、例えば静脈内投与により得られる。被験体における応答が初回用量で不十分である場合は、患者の耐容性が許す限り、より高用量(または異なるより局所的な送達経路による有効性が高い用量)を使用してよい。一日当たり多数回の投与も化合物の適切な全身濃度を達成するために意図される。
【0177】
さらに別の実施形態においては、好ましいベヒクルは生体適合性の微粒子または哺乳類レシピエント内への移植に適するインプラントである。この方法に従って使用される生体内分解性のインプラントの例はPCT国際特許出願PCT/US/03307(公開番号WO95/24929、標題Polymeric Gene Delivery System、1994年3月15日出願の米国出願213,668の優先権主張)に記載されている。PCT/US/0307は生物学的マクロ分子を含有するための、生体適合性の、好ましくは生体分解性の重合体マトリックスを記載している。重合体マトリックスは被験体において薬剤の徐放性を達成するために使用してよい。本発明の1つの特徴によれば、本明細書に記載した薬剤はPCT/US/03307に開示されている生体適合性の、好ましくは生体分解性の重合体マトリックス内に封入または分散してよい。重合体マトリックスは好ましくは、微粒子、例えばマイクロスフェア(薬剤が固体重合体マトリックス全体にわたって分散)またはマイクロカプセル(薬剤が重合体シェル内のコア中に貯留)の形態である。薬剤を含有するための重合体マトリックスの他の形態はフィルム、コーティング、ゲル、インプラントおよびステントを包含する。重合体マトリックス装置の大きさおよび組成はマトリックス装置を移植する組織において良好な放出速度が得られるように選択する。重合体マトリックス装置の大きさは使用すべき送達の方法、典型的には組織内への注射、または、鼻腔および/または肺の領域内へのエアロゾルによる懸濁液の投与、に従って選択する。重合体マトリックス組成物は良好な分解速度を有するため、そして装置が血管、肺または他の表面に投与された場合に移行の有効性をさらに増大させる生体接着性である物質として形成されるように選択することができる。マトリックス組成物はまた分解するよりはむしろ長時間に亘り拡散により放出されるように選択することもできる。
【0178】
非生体分解性および生体分解性の重合体マトリックスの両方を用いて被験体に本発明の薬剤を送達してよい。生体分解性物質が好ましい。そのような重合体は天然または合成の重合体であってよい。合成の重合体が好ましい。重合体は放出が望まれる時間の長さに基づいて選択され、一般的には数時間〜1年以上である。典型的には、数時間および3〜12ヶ月の間の範囲の期間に亘る放出が最も望ましい。重合体は場合により水中でその重量の約90%まで吸収でき、そして場合により多価のイオンまたは他の重合体と交差結合しているヒドロゲルの形態である。
【0179】
一般的に、本発明の薬剤は重合体マトリックスの拡散により、またはより好ましくは分解により、生体内分解性のインプラントを用いて送達してよい。生体分解性送達系を形成するために使用できる合成重合体の例は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびこれらの共重合体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルおよびメタクリルエステルの重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルローススルフェートナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびポリビニルピロリドンを包含する。
【0180】
非生体分解性重合体の例はエチレンビニルアセテート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、これらの共重合体または混合物を包含する。
【0181】
生体分解性の重合体の例は合成重合体、例えば乳酸とグリコール酸の重合体、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)およびポリ(ラクチド−コカプロラクトン)および天然の重合体、例えばアルギネートおよび他の多糖類、例えばデキストランおよびセルロース、コラーゲン、その化学的誘導体(化学基の置換、付加、例えばアルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化、および当業者が日常的に行う他の修飾)、アルブミンおよび他の親水性のタンパク質、ゼインおよび他のプロラミン類および疎水性タンパク質、共重合体およびこれらの混合物を包含する。一般的に、これらの物質は酵素的加水分解または水への曝露によりインビボで、または、表面または全体の腐食により、分解する。
【0182】
特に有利な生体接着性の重合体は参照により本明細書に組み込まれるH.S.Sawhney,C.P.Pathak and J.A.Hubell,Macromolecules,1993,26,581−587に記載の生体内分解性ヒドロゲル、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)およびポリ(オクタデシルアクリレート)を包含する。
【0183】
他の送達系は経時的放出、遅延放出または徐放性の送達系を包含する。このような系はペプチドの反復投与の回避を可能とし、被験体および医師の利便性を増大させる。多くの形態の放出送達系が使用可能であり、当該分野でよく知られている。それらは重合体、例えばポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸およびポリ無水物に基づく系を包含する。薬剤を含有する上記した重合体のマイクロカプセルは例えば米国特許5,075,109に記載されている。送達系はまた脂質、例えばステロール、例えばコレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸または中性脂肪、例えばモノ、ジおよびトリグリセリド;ヒドロゲル放出系;サイラスティック系;ペプチドに基づく系;ワックスコーティング;従来のバインダーおよび賦形剤を用いた圧縮錠剤;部分融合インプラント等である非重合体の系も包含する。特定の実施例は例えば(a)米国特許4,452,775、4,675,189および5,736,152に記載されているもののような血小板減少剤がマトリックス内の形態で含有されている腐食性の系;および(b)米国特許3,854,480、5,133,974および5,407,686に記載されているもの様な重合体から制御された速度で活性化合物が浸透する分散系を包含する。さらにまた、ポンプ系のハードウエア送達系も使用でき、その一部は移植に適合されている。
【0184】
長期間の徐放性のインプラントの使用はP.aeruginosa感染を発症する危険性を有する被験体の予防的治療のために特に適している。長期間の放出とは、本明細書においては、少なくとも30日間、好ましくは60日間、活性成分の治療濃度を送達するようにインプラントが構築され配置されることを意味する。長期間の徐放性のインプラントは当該分野でよく知られており、上記した放出系の一部を包含する。
【0185】
以下の実施例は本発明の実施の特定の例を説明するものであり、本発明の範囲を制限する意図はない。当業者の知るとおり、本発明は種々の組成物および方法において提供される。
【実施例】
【0186】
(実施例1:)
(材料および方法:)
(MEPを用いた患者の免疫化:)
P.aeruginosaの培養、MEPの精製、およびMEPを用いた被験体の免疫化は参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許4,578,458に記載されている。要約すると、被験体を好ましくはP.aeruginosa2192単離株(ATCC39324)から採取した精製MEPで免疫化する。P.aeruginosa株2192が好ましいが、P.aeruginosa2192中に存在するものと本質的に同じ抗原決定基を有する多糖類を生産する新しい株も使用してよい。P.aeruginosaは必須の栄養および成分を含有する液体基礎培地中で維持することができる(例えばMian最小培地、トリプチケース大豆ブロスおよびデオキシコレートシトレート寒天、好ましくはマグネシウムのような2価カチオンを添加)。細菌の培養方法は当該分野でよく知られている。MEPはMian最小培地から精製し、その後アルコールでMEPを沈殿させる。次に沈殿をDNaseおよびRNaseで昇華し、その後Sephacel S−300カラム上で分離し、沈殿させ、凍結乾燥する。物質を1〜3時間95°Cで1%酢酸で処理し、冷却し、次に沈殿を遠心分離により除去し、上澄みを透析し、凍結乾燥する。この操作により99%超の純度となる。被験体に投与するためには、凍結乾燥した沈殿を薬学的に受容可能な担体中に希釈再調整する。投与したMEPの量は投与前に存在したものよりも少なくとも4倍高値の濃度における抗体の形成を示すために必要な量に相当する。一般的にこの量は10〜500μg/投薬である。
【0187】
(B細胞の採取、EBVによる形質転換およびスクリーニング試験:)
ヒト血液はMEP投与後7日の被験体から採取する。末梢血単核細胞をフィコール−ハイプラーク沈殿により血液から単離し、Posner等(Autoimmunity,8:149−158,1990)に記載の通りEBVで形質転換する。形質転換したB細胞から、ELISAを用いてインビトロでP.aeruginosaコロニーを認識してこれに結合する能力があるものをスクリーニングする。Posner等(Hybridoma,6:611−625,1987)に記載の通り、抗体を分泌する形質転換B細胞を不死化細胞系統の融合相手HMMA2.5と融合する。
【0188】
クローンはELISAを用いてインビトロでP.aeruginosaコロニーを認識して結合する能力のあるものをスクリーニングする。ELISAプレートは37°Cで2時間0.04Mリン酸塩緩衝液pH7.4のmlあたり10μgMEPでコーティングする。洗浄後、1%スキムミルクを37°Cで1時間添加し、その後プレートを再度洗浄する。上澄みを37°Cで1時間プレート上でインキュベートする。PBSで洗浄後、セイヨウワサビパーオキシダーゼ結合体化抗体ヤギ抗ヒトIgGおよびヤギ抗ヒトIgAを37°Cで1時間添加する。陽性のウェルを基質であるo−フェニレジアミンを添加した際の変色により選択する。
【0189】
(可変領域のクローニング:アイソタイプの切り替え:)
次に、MEP特異的不死化融合B細胞クローンをさらに分析することによりMEP特異的抗体の配列を誘導する。RNAを個別に各クローンから単離し、その後cDNAを調製する。ヒトIg軽鎖可変領域DNAは5’末端におけるヒト軽鎖シグナル配列および3’末端におけるヒト軽鎖C領域に対する相同性を有するDNAプライマーのセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりcDNAから増幅した。この増幅されたDNAフラグメントをヒトκ軽鎖定常ドメインの前面で発現プラスミド(TCAE5.3)内に直接挿入し、全コンストラクトを配列決定した。同様にヒトIg重鎖可変領域DNAをPCRおよび5’末端におけるヒト重鎖シグナル配列および3’末端におけるヒト重鎖CH1領域に対する相同性を有するプライマーセットを用いてcDNAから増幅した。この後者の増幅DNAフラグメントをヒトIgG1重鎖定常ドメインの前面でTCAE5.3発現プラスミド内に挿入し、全コンストラクトを配列決定した。TCAE5.3はReffら,Blood 83:435−445,1994に記載されているヒトIg発現ベクターである。これはヒトIgG1重鎖およびヒトカッパ軽鎖定常領域遺伝子を同じプラスミド上に含有している。
【0190】
得られた発現ベクターは、Prestonら,Infection and Immunity 66:4137−4142,1998およびReffら,Blood 83:435−445,1994に記載の通り、DNAリポソーム媒介トランスフェクションによるか、またはエレクトロポレーションにより、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)系統DGH44(入手元:Dr.Larry Chasin,Columbia University,New York)に導入した。トランスフェクトされたCHO細胞系統が生育している上澄みの抗体生産について、ELISAを用いて試験した。抗体はGタンパク質アフィニティークロマトグラフィー(IgGアイソタイプ用)およびレクチンであるJacalinのアフィニティークロマトグラフィー(IgAアイソタイプ用)を用いて培養上澄みから精製した。
【0191】
(結果:)
MEPワクチンで免疫化された個体由来の形質転換されたヒトB細胞の3つのクローンが得られた。これらのクローンは精製されたMEP抗原に結合する抗体を生産するその能力に基づいて識別された。3つ全てがIgA/ラムダアイソタイプであった。これらをF428、F429およびF431と命名した。
【0192】
これら3つのクローンの各々の軽鎖および重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列を決定した。3つのクローンから、2種の異なる重鎖配列および2種の異なる軽鎖配列が、以下の組み合わせにおいて識別された:
【0193】
【表3】
。
【0194】
第4の抗体分子はB重鎖および第2の軽鎖を用いて構築し、抗体標識「COMB」(組み合わせ用)を作成した。すなわち、元の3つのクローンで発見された重鎖および軽鎖の可能な対4種の全てを含む組み換え抗体分子が構築され、発現された。
【0195】
以下のデータは2種の異なる重鎖および2種の異なる軽鎖に関するヌクレオチドおよびアミノ酸の配列の情報を包含する。
【0196】
第1のフレーム枠領域(FAR)の初期のアミノ酸に対する第1のヌクレオチドからはじまり、可変領域の末端に対する最後のヌクレオチドで終わるP.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖の可変領域のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号NO.1):
CAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCCGGACTGGTGAAGCCTACGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCCCCATCACCTATATTAATTACTACTGGGGCTGGGTCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCCATTATGATGGGAGCACCTTCTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGCGTCACCATATCAGGAGACACGTCCAAGAGCGAGTTCTCTGTGAAGCTGAGTTCTGTGACCGCCGCGGACACGGCCGTCTATTACTGTGCGAGAACGTATTACGATGCTTCGGGGAGCCCTTACTTTGACCACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA。
【0197】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のフレーム枠領域1(FR1)のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号33):
CAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCCGGACTGGTGAAGCCTACGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCCCCATCACC。
【0198】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR1のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号9):
TATATTAATTACTACTGGGGC。
【0199】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR2のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号34):
TGGGTCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGG。
【0200】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR2のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号10):
AGTATCCATTATGATGGGAGCACCTTCTACAACCCGTCCCTCAAGAGT。
【0201】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR3のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号35):
CGCGTCACCATATCAGGAGACACGTCCAAGAGCGAGTTCTCTGTGAAGCTGAGTTCTGTGACCGCCGCGGACACGGCCGTCTATTACTGTGCGAGA。
【0202】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR3のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号11):
ACGTATTACGATGCTTCGGGGAGCCCTTACTTTGACCAC。
【0203】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR4のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号36):
TGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA。
【0204】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖の可変領域の単アミノ酸配列(配列番号5):
QLQLQESGPGLVKPTETLSLTCTVSGGPITYINYYWGWVRQPPGKGLEWIGSIHYDGSTFYNPSLKSRVTISGDTSKSEFSVKLSSVTAADTAVYYCARTYYDASGSPYFDHWGQGTLVTVSS。
【0205】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR1の単アミノ酸配列(配列番号49):
QLQLQESGPGLVKPTETLSLTCTVSGGPIT。
【0206】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR1の単アミノ酸配列(配列番号21):
YINYYWG。
【0207】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR2の単アミノ酸配列(配列番号50):
WVRQPPGKGLEWIG。
【0208】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR2の単アミノ酸配列(配列番号22):
SIHYDGSTFYNPSLKS。
【0209】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR3の単アミノ酸配列(配列番号51):
RVTISGDTSKSEFSVKLSSVTAADTAVYYCAR。
【0210】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR2の単アミノ酸配列(配列番号23):
TYYDASGSPYFDH。
【0211】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR4の単アミノ酸配列(配列番号52):
WGQGTLVTVSS。
【0212】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列(配列番号2):
CAGTCTGTGTTGACGCAGCCGCCCTCAGTGTCTGCGGCCCCAGGACAGAGGGTCACCATCTCCTGCTCTGGAAGCAGCTCCAACCTTGGGAACAATTTTGTATCCTGGTACCAGCAACTCCCAGGAGCAGCCCCCCGGCTCCTCATTTATGACAATGATAAGCGACCCTCAGGGATTCCTGACCGATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACGTCAGCCACCCTGGGCATCACCGGGCTCCAGACTGGGGACGAGGCCGATTATTACTGCGGAACATGGGATAGCAGCCTGACTGCTTATGTCTTCGGAAGTGGGACCAAGGTCACCGTCCTA。
【0213】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR1のヌクレオチド配列(配列番号37):
CAGTCTGTGTTGACGCAGCCGCCCTCAGTGTCTGCGGCCCCAGGACAGAGGGTCACCATCTCCTGC。
【0214】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR1のヌクレオチド配列(配列番号12):
TCTGGAAGCAGCTCCAACCTTGGGAACAATTTTGTATCC。
【0215】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR2のヌクレオチド配列(配列番号38):
TGGTACCAGCAACTCCCAGGAGCAGCCCCCCGGCTCCTCATTTAT。
【0216】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR2のヌクレオチド配列(配列番号13):
GACAATGATAAGCGACCCTCA。
【0217】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR3のヌクレオチド配列(配列番号39):
GGGATTCCTGACCGATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACGTCAGCCACCCTGGGCATCACCGGGCTCCAG ACTGGGGACGAGGCCGATTATTACTGC。
【0218】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR3のヌクレオチド配列(配列番号14):
GGAACATGGGATAGCAGCCTGACTGCTTATGTC。
【0219】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR4のヌクレオチド配列(配列番号40):
TTCGGAAGTGGGACCAAGGTCACCGTCCTA。
【0220】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖の可変領域の単アミノ酸配列(配列番号6):
QSVLTQPPSVSAAPGQRVTISCSGSSSNLGNNFVSWYQQLPGAAPRLLIYDNDKRPSGIPDRFSGSKSGTSATLGITGLQTGDEADYYCGTWDSSLTAYVFGSGTKVTV。
【0221】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR1の単アミノ酸配列(配列番号53):
QSVLTQPPSVSAAPGQRVTISC。
【0222】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR1の単アミノ酸配列(配列番号24):
SGSSSNLGNNFVS。
【0223】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR2の単アミノ酸配列(配列番号54):
WYQQLPGAAPRLLIY。
【0224】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR2の単アミノ酸配列(配列番号25):
DNDKRPS。
【0225】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR3の単アミノ酸配列(配列番号55):
GIPDRFSGSKSGTSATLGITGLQTGDEADYYC。
【0226】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR3の単アミノ酸配列(配列番号26):
GTWDSSLTAYV。
【0227】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の軽鎖のFR4の単アミノ酸配列(配列番号56):
FGSGTKVTV。
【0228】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列(配列番号3):
CAGTCTGTGTTGACGCAGCCGCCCTCAGTGTCTGCGGCCCCAGGACAGAAGGTCTCCATCTCCTGCTCTGGAAGCAGCTCCAACATTGGGAATAATTATGTATCCTGGTACCAGCAGCTCCCAGGAACAGCCCCCAATCTCCTCATTTATGACAATAATAAGCGACCCTCAGGGATTCCGGACCGATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACGTCAGCCACCCTGGACATCACCGGACTCCAGAGTGGGGACGAGGCCGATTATTACTGCGGAACATGGGATAGCAGCCTGAGTACTTGGGTGTTCGGCGGAGGGACCAAACTGACCGTCCTA。
【0229】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR1のヌクレオチド配列(配列番号41):
CAGTCTGTGTTGACGCAGCCGCCCTCAGTGTCTGCGGCCCCAGGACAGAAGGTCTCCATCTCCTGC。
【0230】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR1のヌクレオチド配列(配列番号15):
TCTGGAAGCAGCTCCAACATTGGGAATAATTATGTATCC。
【0231】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR2のヌクレオチド配列(配列番号42):
TGGTACCAGCAGCTCCCAGGAACAGCCCCCAATCTCCTCATTTAT。
【0232】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR2のヌクレオチド配列(配列番号16):
GACAATAATAAGCGACCCTCA。
【0233】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR3のヌクレオチド配列(配列番号43):
GGGATTCCGGACCGATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACGTCAGCCACCCTGGACATCACCGGACTCCAGAGTGGGGACGAGGCCGATTATTACTGC。
【0234】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR3のヌクレオチド配列(配列番号17):
GGAACATGGGATAGCAGCCTGAGTACTTGGGTG。
【0235】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR4のヌクレオチド配列(配列番号44):
TTCGGCGGAGGGACCAAACTGACCGTCCTA。
【0236】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖の可変領域の単アミノ酸配列(配列番号7):
QSVLTQPPSVSAAPGQKVSISCSGSSSNIGNNYVSWYQQLPGTAPNLLIYDNNKRPSGIPDRFSGSKSGTSATLDITGLQSGDEADYYCGTWDSSLSTWVFGGGTKLTVL。
【0237】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR1の単アミノ酸配列(配列番号57):
QSVLTQPPSVSAAPGQKVSISC。
【0238】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR1の単アミノ酸配列(配列番号27):
SGSSSNIGNNYVS。
【0239】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR2の単アミノ酸配列(配列番号58):
WYQQLPGTAPNLLIY。
【0240】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR2の単アミノ酸配列(配列番号28):
DNNKRPS。
【0241】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR3の単アミノ酸配列(配列番号59):
GIPDRFSGSKSGTSATLDITGLQSGDEADYYC。
【0242】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR3の単アミノ酸配列(配列番号29):
GTWDSSLSTWV。
【0243】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR4の単アミノ酸配列(配列番号60):
FGGGTKLTVL。
【0244】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖の可変領域のヌクレオチド配列(配列番号4):
CAGCTGCACCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTAGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACGTGCACTGTCTCTGGTGGCCCCATCACCAGTAATAATTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGACTATCTCTTATAATGGGTACACCTACTACATCCCGTCCCTCAGGGGTCGAGTCACCATATCCGGAGACACGTCCAAGAACCAGTTCTCCCTGAGGGTGAACTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTATGTATTACTGTGCGAGACATGACTATAGCATGTCGTCCGGACTTACTGACAACTGGTTCGACCCCTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA。
【0245】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR1のヌクレオチド配列(配列番号45):
CAGCTGCACCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTAGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACGTGCACTGTCTCTGGTGGCCCCATCACC。
【0246】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR1のヌクレオチド配列(配列番号18):
AGTAATAATTACTACTGGGGC。
【0247】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR2のヌクレオチド配列(配列番号46):
TGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGG。
【0248】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR2のヌクレオチド配列(配列番号19):
ACTATCTCTTATAATGGGTACACCTACTACATCCCGTCCCTCAGGGGT。
【0249】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR3のヌクレオチド配列(配列番号47):
CGAGTCACCATATCCGGAGACACGTCCAAGAACCAGTTCTCCCTGAGGGTGAACTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTATGTATTACTGTGCGAG。
【0250】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR3のヌクレオチド配列(配列番号20):
CATGACTATAGCATGTCGTCCGGACTTACTGACAACTGGTTCGACCCC。
【0251】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR4のヌクレオチド配列(配列番号48):
TGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA。
【0252】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖の可変領域の単アミノ酸配列(配列番号8):
QLHLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGPITSNNYYWGWIRQPPGKGLEWIGTISYNGYTYYIPSLRGRVTISGDTSKNQFSLRVNSVTAADTAMYYCARHDYSMSSGLTDNWFDPWGQGTLVTVSS。
【0253】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR1の単アミノ酸配列(配列番号61):
QLHLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGPIT。
【0254】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR1の単アミノ酸配列(配列番号30):
SNNYYWG。
【0255】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR2の単アミノ酸配列(配列番号62):
WIRQPPGKGLEWIG。
【0256】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR2の単アミノ酸配列(配列番号31):
TISYNGYTYYIPSLRG。
【0257】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR3の単アミノ酸配列(配列番号63):
RVTISGDTSKNQFSLRVNSVTAADTAMYYCAR。
【0258】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR3の単アミノ酸配列(配列番号32):
HDYSMSSGLTDNWFDP。
【0259】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR4の単アミノ酸配列(配列番号64):
WGQGTLVTVSS。
【0260】
(実施例2:)
(材料および方法:)
(P.aeruginosaおよび精製MEPへの結合試験:)
ELISAプレートを4°Cで一夜アジ化ナトリウムを含有する0.02Mリン酸塩緩衝液中2μg/mlの精製P.aeruginosa MEPでコーティングした。0.05%Tweenを含有するPBSでプレートを数回洗浄して未結合のMEPを除去した。次にプレートをPBS/BSAとともに4°Cで一夜インキュベートすることにより全ての他の非特異的結合部位をブロックした。数回洗浄した後、抗体を0.0625〜2.0μg/mlの範囲の種々の濃度でプレートに添加した。プレートを室温で2時間インキュベートした。結合した抗体をFcドメインに特異的なアルカリホスファターゼ結合体化ヤギ抗ヒトIgG抗体を用いて検出した。試験はPrestonら, Infection and Immunity 66:4137−4142,1998に記載の通りインタクトな細菌を用いても同様に実施される。
【0261】
(補体付着試験:)
ELISAプレートを一夜(例えば約10時間)室温でpH7の0.02Mリン酸塩緩衝液中10μg/mlの濃度で精製P.aeruginosa MEPでコーティングした。抗体を種々の濃度で添加し、そしてプレートを37°Cで1時間インキュベートした。健常者血清は補体原料として添加した。プレートをさらに15分間インキュベートし、次に洗浄し、ポリクローナルウサギ抗ヒトC3抗血清とともにインキュベートした。C3に結合したウサギ抗体をアルカリホスファターゼ結合体化ヤギ抗ウサギIgGを用いて検出した。室温で45分間インキュベートした後、OD405を測定した。
【0262】
(オプソニン貪食作用殺傷試験:)
オプソニン貪食作用殺傷試験は以前に報告されている(Amesら,Infection and Immunity49:281−285,1985参照)。要約すると、試験は10%熱不活性化胎児ウシ血清の存在下に行い、そして新鮮ヒト血清を1:10希釈度で補体原料として使用する。血清をP.aeruginosaに氷上30分間予備曝露することにより、既存のP.aeruginosa特異的抗体があればそれを全て除去する。試験は2x107個/mlの細菌100μl、種々の希釈度の被験抗体100μl、貪食作用細胞原料としての2x107個/mlの精製新鮮ヒト多形核白血球(PMN)および補体原料としての吸収血清100μlを混合することにより実施した。コントロールにはPMN非含有とした。被験およびコントロールの試験管を一定の攪拌を行いながら37°Cで60分間インキュベートした。細胞溶解を試験するために、少量を取り出し、希釈し、寒天プレート上で培養した。一夜インキュベートした後、プレートのコロニー生育を計数した。コントロール試験管と比較した場合のコロニー形成単位(CFU)の%低下を下記式:
[(PMN非存在下の生存CFU)−(PMN存在下の生存CFU)/PMN非存在下の生存CFU]x100
に従って計算した。
【0263】
(インビボ細菌攻撃生存試験:)
マウスをケタミンおよびキシラミンで麻酔し、次に攻撃の4時間前に点鼻投与によりコントロールまたは被験のモノクローナル抗体(F429γ1およびFCOMBγ1)のいずれか50μgを投与した。次に抗体と同様の投与経路でマウスを生菌のP.aeruginosa株N13(5x107cfu/マウス)で攻撃した。生存性は攻撃の5日後まで測定した。
【0264】
(結果:)
試験した抗体は全て、親和性は異なるもののMEPに結合することができた。試験した抗体の最高濃度(2.0μg/ml)において、FCOMBγ1は最高レベルまでMEPに結合できた(図1)。この濃度における他の抗体の親和性は(漸減順序で)F431γ1、F428γ1そしてF429γ1であった。試験した抗体の最低濃度において(0.0625μg/ml)、F431γ1は最高値の親和性を示した。この低濃度における他の抗体の親和性は(漸減順序で)FCOMBγ1、F428γ1そしてF429γ1であった。
【0265】
11種類の異なるムコイドおよび非ムコイドのP.aeruginosa株のオプソニン作用殺傷を誘導するF429γ1の能力を分析した(図2)。4種のムコイド株(581、2192、FRD1および324)および7種の非ムコイドの株(324NM、2344NM、PA14NM、FRD1131、N6、N8およびN13)を使用した。F429γ1は試験あたり4〜25μgの範囲の濃度で使用した。抗体は試験した各ムコイド株に対し少なくとも60%殺傷(いずれの抗体も含まないコントロールと比較)を誘導できた。試験した7種の非ムコイド株のうち4種(324NM、N6,N8およびN13)に対しても同様に少なくとも60%殺傷を誘導できた。7種の非ムコイド株のうち2種(2344NMおよびFRD1131)においては、F429γ1は少なくとも25%殺傷を誘導できた。残余の非ムコイド株(PA14NM)はF429γ1による殺傷に対して比較的耐性であり、5%未満の殺傷が観察された。これらの結果はF429γ1抗体がムコイドおよび非ムコイドの株のオプソニン作用性の殺傷を認識して誘導できることを示している。
【0266】
P.aeruginosaの天然の単離株のオプソニン作用性の殺傷を誘導するF429γ1の能力を試験するために、4種のP.aeruginosa株を菌血症患者の血液から回収し、F429γ1誘導オプソニン作用性殺傷に対する感受性を試験した(図3)。F429γ1は0.01μg〜10.0μgの濃度範囲で使用した。使用した4種の単離株はB312、JG1、EM1および11B1874−2であった。濃度依存性の作用が全ての単離株について観察された。F429γ1の最低用量(0.01μg)において、抗体は全単離株に対し少なくとも20%殺傷を誘導する効果を有していた。1.0μgにおいて使用した場合抗体は全ての単離株において少なくとも55%殺傷を誘導することができ、単離株のうち2つは抗体に対するより大きい感受性を示していた(B312およびEM1)。
【0267】
インビボの抗体の薬効を試験するために、F429γ1およびFCOMBγ1を点鼻(50μg)によりネズミ被験体に投与し、その後生菌のP.aeruginosa株N13で攻撃した(図4)。攻撃の5日後まで生存性をモニタリングした。図4は攻撃後のマウスの生存曲線を示す。コントロール抗体投与マウス0%、FCOMBγ1投与マウス約25%およびF429γ1投与マウス100%が株N13の攻撃に対して生存できた。これらのデータはF429γ1およびFCOMBγ1がP.aeruginosaによる攻撃を受けたマウスに対して保護作用を示し、F429γ1がFCOMBγ1より高い有効性を示したことを示している。
【0268】
(同等性)
上記した明細書は当業者が本発明を実施できるためには十分であると考えられる。本明細書に開示した特定の抗体およびペプチドは、それらが本明細書において可能である本発明の特定の実施形態を説明するのみであることを意図していることから、本発明をなんら限定しないものである。従って、本明細書に記載したものと機能的に等価であるいずれのペプチド、抗体および抗体フラグメントも添付する請求項の精神および範囲内に包含される。実際に、本明細書に示し記載したもののほかに本発明の種々の変更が上記より当業者には明らかになり、添付する請求項の範囲に包含される。
【0269】
本出願において引用した全ての参考文献、特許および特許出願は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0270】
【図1】抗体濃度の関数としての直接ELISAにおけるP.aeruginosa株2192Mから単離したムコイドエキソ多糖類(MEP)へのモノクローナル抗体の結合を示すグラフである。
【図2】4〜25μgの濃度におけるモノクローナル抗体F429γ1によるムコイドまたは非ムコイドのP.aeruginosa株のオプソニン殺傷を示す棒グラフである。
【図3】モノクローナル抗体F429γ1濃度の関数としての菌血症患者から単離したP.aeruginosa株のオプソニン殺傷を示す棒グラフである。
【図4】生菌P.aeruginosaを用いた攻撃後のマウス生存に対する抗体投与の作用を示す棒グラフである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれるシリアル番号60/292,365を有する「P AERUGINOSA MUCOID EXOPOLYSACCHARIDE SPECIFIC BINDING PEPTIDES」(「P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類特異的結合ペプチド」)と題された2001年5月21日出願の米国暫定特許出願の優先権を請求するシリアル番号10/153,437を有する「P AERUGINOSA MUCOID EXOPOLYSACCHARIDE SPECIFIC BINDING PEPTIDES」(「P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類特異的結合ペプチド」)と題された2002年5月21日出願の米国非暫定出願の継続出願である。
【0002】
(政府による支援)
本研究は米国国立衛生研究所の認定番号HL−58346により部分的に資金協力されている。従って、米国政府は本発明の特定の権利を有する。
【0003】
(発明の分野)
本発明は一般的にシュードモナス・アエルギノーサ(P.aeruginosa)のムコイドエキソ多糖類(MEP)に結合するヒトモノクローナル抗体を含むペプチドを用いたP.aeruginosaの感染および関連の障害(例えば嚢胞性線維症)の予防および治療に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
P.aeruginosaは皮膚、耳、肺および腸にコロニー形成できる日和見生物である。健常個体においては、このようなコロニー形成は通常は問題を起こさない。しかしながら、自らの免疫を弱めるような伏在する障害または状態を個体が有する場合、感染は重篤なものとなる。このような障害または状態の例は化学療法誘発の免疫阻害、真性糖尿病、癌、AIDSおよび嚢胞性線維症を包含する。嚢胞性線維症を有する患者の70%超がP.aeruginosaに感染していると推定されている。これらの患者において、P.aeruginosaの感染は慢性閉塞性気管支炎を伴っている。
【0005】
P.aeruginosaのコロニー形成は上皮組織(例えば肺上皮)への細菌の付着により開始される。P.aeruginosaのムコイド株がムコイドエキソ多糖類(すなわち、MEPまたはアルギネート)を生産し、これは感染の期間中を通じて細菌により使用される。MEPはウロン酸の重合体である。
【0006】
細菌は抗生物質療法および生来および適応型の免疫機序、例えば抗体および補体の媒介する経路に比較的耐性であることができる。MEPは微生物の免疫耐性に寄与する因子であると考えられている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は一般的にはP.aeruginosaのムコイドエキソ多糖類(MEP)に結合するペプチドの識別および使用に関する。本明細書に記載した可変領域配列を利用したペプチドはポリペプチド、モノクローナル抗体(例えばヒトモノクローナル抗体)および抗体フラグメントを包含する。本明細書に記載したペプチドの共通の特徴はP.aeruginosa MEPを認識して特異的に結合するその能力である。本発明により提供される抗体および抗体フラグメントの一部の重要な特徴はP.aeruginosaのオプソニン作用および貪食作用(すなわち、オプソニン貪食作用)を増強するその能力である。
【0008】
1つの特徴において、本発明は、P.aeruginosa MEPに好ましくは選択的に結合し、そしてP.aeruginosa MEP結合相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含む単離されたペプチドまたはその機能的に等価な改変体を含む組成物を提供する。P.aeruginosa MEP結合CDRは本発明の抗体から誘導された重および軽鎖CDRの群から選択してよい。各重および軽鎖は3種の異なるCDR、すなわち、CDR1、CDR2およびCDR3を有する。すなわち、P.aeruginosa MEP結合CDRはP.aeruginosa MEP結合CDR3またはP.aeruginosa MEP結合CDR2またはP.aeruginosa MEP結合CDR1であってよい。これらのCDRは配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0009】
配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号30、配列番号31および配列番号32は本明細書に記載したP.aeruginosa MEP結合重鎖可変領域から誘導されたCDRのアミノ酸配列である。配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29は本明細書に記載したP.aeruginosa MEP結合軽鎖可変領域から誘導されたCDRのアミノ酸配列である。
【0010】
本発明は上記した単離されたペプチドに関する種々の実施形態の多くを包含する。単離されたペプチドは好ましくはP.aeruginosa MEP結合CDRを含む。1つの実施形態において、P.aeruginosa MEP結合CDRはP.aeruginosa MEP結合CDR3である。CDR3は軽鎖CDR3または重鎖CDR3であってよい。このようなCDR3アミノ酸配列は、配列番号23、配列番号26、配列番号29および配列番号32からなる群より選択される。重鎖CDR3のアミノ酸配列は配列番号23および配列番号32を包含する。軽鎖CDR3のアミノ酸配列は配列番号26および配列番号29を包含する。別の実施形態においては単離されたペプチドは軽鎖CDR3のアミノ酸配列および重鎖CDR3のアミノ酸配列を含む。
【0011】
別の実施形態において、P.aeruginosa MEP結合CDRはP.aeruginosa MEP結合CDR2である。CDR2は軽鎖CDR2または重鎖CDR2であってよい。このようなCDR2アミノ酸配列は配列番号22、配列番号25、配列番号28および配列番号31からなる群より選択される。重鎖CDR2のアミノ酸配列は配列番号22および配列番号31を包含する。軽鎖CDR2のアミノ酸配列は配列番号25および配列番号28を包含する。別の実施形態においては、単離されたペプチドは軽鎖CDR2のアミノ酸配列および重鎖CDR2のアミノ酸配列を含む。
【0012】
さらに別の実施形態において、P.aeruginosa MEP結合CDRはP.aeruginosa MEP結合CDR1である。CDR1は軽鎖CDR1または重鎖CDR1であってよい。このようなCDR1アミノ酸配列は配列番号21、配列番号24、配列番号27および配列番号30からなる群より選択される。重鎖CDR1のアミノ酸配列は配列番号21および配列番号30を包含する。軽鎖CDR1のアミノ酸配列は配列番号24および配列番号27を包含する。別の実施形態においては、単離されたペプチドは軽鎖CDR1のアミノ酸配列および重鎖CDR1のアミノ酸配列を含む。
【0013】
本発明はまた単離されたペプチドがP.aeruginosa MEPに結合する限り、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3の開示されたアミノ酸配列の如何なる組み合わせをも含む単離されたペプチドも包含する。重要な実施形態において、単離されたペプチドはP.aeruginosa MEPに選択的に結合する。
【0014】
1つの実施形態において、単離されたペプチドは本明細書に開示された抗体の重鎖または軽鎖の可変領域のアミノ酸配列を含む。重要な実施形態においては、アミノ酸配列は配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8からなる群より選択される。配列番号5および配列番号8は本明細書に開示したP.aeruginosa MEP結合抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列である。配列番号6および配列番号7は本明細書に開示したP.aeruginosa MEP結合抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列である。これらの重鎖および軽鎖の可変領域の配列は、実施例に記載するとおり、フレーム枠およびCDRの配列を含む。
【0015】
1つの実施形態において、単離されたペプチドはMEP結合重鎖可変領域から誘導されたCDRのアミノ酸配列およびMEP結合軽鎖可変領域から誘導されたCDRのアミノ酸配列を含む。
【0016】
1つの実施形態において、単離されたペプチドは単離された抗体または抗体フラグメントである。単離された抗体または抗体フラグメントは単離されたインタクトな可溶性モノクローナル抗体であってよい。単離された抗体または抗体フラグメントはF(ab’)2フラグメント、FdフラグメントおよびFabフラグメントからなる群より選択される単離されたモノクローナル抗体フラグメントであってよい。好ましい実施形態において、単離された抗体または抗体フラグメントはP.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する。このような抗体または抗体フラグメントは本明細書においては「オプソニン抗体または抗体フラグメント」と称する。重要な実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントはP.aeruginosa MEP結合CDRの1つ以上を含む以外に、Fcドメインを含む。従って、一部の実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは1つ以上のP.aeruginosa MEP結合CDRを含み、そしてP.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する。
【0017】
一部の実施形態、特に単離されたペプチドが抗体または抗体フラグメントであるものにおいては、ペプチドは重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列、すなわち、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列2つを含む。一部の好ましい実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは配列番号5および配列番号8からなる群より選択される重鎖可変領域アミノ酸配列1つおよび配列番号6および配列番号7からなる群より選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列1つを含む。一部の実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。別の実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。さらに別の実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。さらに別の実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントは配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。本発明の抗体および抗体フラグメントは同様に、本明細書に開示したP.aeruginosa MEP結合CDR1つ以上またはその機能的に等価な改変体を含んでよい。
【0018】
抗体およびそのフラグメントを含む本発明のペプチドはP.aeruginosa細菌の検出、P.aeruginosa感染の診断、および、そのような感染およびそれらが関わる障害の防止および治療において特に有用である。
【0019】
従って、別の特徴において、本発明は被験体におけるP.aeruginosaを検出するための方法を提供する。方法は被験体中、またはそれから得たサンプルへの単離されたペプチドまたはその機能的に等価な改変体の結合のレベル(結合の試験レベル)を測定すること、および、コントロールと結合の試験レベルを比較することを包含する。単離されたペプチドはP.aeruginosa MEPに選択的に結合し(すなわち、MEP結合ペプチド)、そしてP.aeruginosa MEP結合CDRまたはその機能的に等価な改変体を含む。P.aeruginosa MEP結合CDRは上記した軽鎖または重鎖からなる群より選択してよい。コントロールより高値の結合の試験レベルはサンプル中、すなわち、被験体中のP.aeruginosaを示している。コントロールはP.aeruginosa陰性であることがわかっている被験体中、またはこれより得たコントロールサンプルへのペプチドの結合のレベルである。1つの実施形態において、結合の試験レベルはインビトロで測定され、そして被験体からのサンプルの採取を包含する。あるいは、結合の試験レベルはインビボで測定され、そして好ましくは本明細書に記載する薬学的組成物として被験体に単離されたペプチドを投与することを包含する。さらに好ましくは、ペプチドは検出可能な標識、または、検出されることができる標識(例えばビオチンまたはアビジン)に結合体化する。1つの実施形態において、被験体はP.aeruginosa感染を発症する危険性を有する。別の実施形態においては、被験体は嚢胞性線維症を有する。ペプチドは抗体または抗体フラグメントであってよく、これがその後オプソニン貪食作用を増強するが、これに限定されない。
【0020】
さらに別の特徴において、本発明はP.aeruginosa感染を有するか、それを発症する危険性を有する被験体を治療するための方法を提供する。方法はこのような治療を必要とする被験体に対し、P.aeruginosa MEPに好ましくは選択的に結合し、そしてP.aeruginosa MEP結合CDRを含む単離ペプチドまたはその機能的に等価な改変体を投与することを包含する。CDRは上記した本発明の抗体の軽鎖または重鎖CDRのアミノ酸配列を含む。単離されたペプチドはP.aeruginosa感染を阻害するために効果的な量で被験体に投与する。1つの実施形態において、被験体は嚢胞性線維症を有する。重要な実施形態においては、単離されたペプチドは単離された抗体または抗体フラグメントである。好ましい実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントはP.aeruginosaのオプソニン貪食作用が可能である。一部の実施形態においては、このようなペプチドの1つより多くを被験体に投与する。
【0021】
本発明の別の特徴において、単離されたペプチドは例えばインビボのP.aeruginosaのコロニーまたは個々の細菌への造影剤または細胞毒性剤の送達において使用できる。一部の実施形態においては、ペプチドは例えば抗体のような物質に結合体化することができる。他の実施形態において、ペプチドは、ペプチドのインビボの投与によりP.aeruginosaの細菌または細菌コロニーに薬剤を送達できる細胞毒性剤(例えば殺菌剤)に結合体化してよい。
【0022】
関連の特徴において、本発明はP.aeruginosa関連障害(すなわち、P.aeruginosa感染に関連するかこれを伴っている障害)を有するか、発症する危険性のある被験体を治療するための方法を提供する。方法はP.aeruginosa関連障害を阻害する有効量の本発明の単離されたペプチドまたはその機能的に等価な改変体をこのような治療が必要な被験体に投与することを包含する。P.aeruginosa関連障害は、嚢胞性線維症、潰瘍性角膜炎、肺炎、菌血症、臓器感染、例えば腎臓、膀胱、肝臓、脳、皮膚、筋肉、リンパ節または副鼻腔の感染よりなる障害群から選択してよい。重要な実施形態において、単離されたペプチドは単離された抗体または抗体フラグメントである。好ましい実施形態においては、単離された抗体または抗体フラグメントはP.aeruginosaのオプソニン貪食作用が可能である。
【0023】
本明細書に記載する投与方法の特定の実施形態においては、単離されたペプチドは他の治療薬と同時投与される。治療薬は例えば抗生物質のようなP.aeruginosa感染において予防的または治療的に使用されるものであってよい。あるいは、P.aeruginosa関連障害の治療に使用される薬剤、例えばN−アセチルシステイン、または、嚢胞性線維症の治療に使用されるDNaseであってよい。抗生物質と組み合わせて投与する場合は、単離されたペプチドはP.aeruginosaコロニーへの抗生物質の進入を促進することにより抗生物質の細胞殺傷作用を増強できる。これが特に該当する例は、ペプチドがオプソニン貪食作用を増強する抗体または抗体フラグメントである場合である。一部の実施形態においては、投与方法は単離されたペプチドおよび他の治療薬の相乗作用量を投与することを包含する。
【0024】
さらに別の特徴において、本発明は1つ以上の上記した単離されたペプチド、例えば1つ以上の上記した単離された抗体または抗体フラグメント、またはその機能的に等価な改変体および薬学的に受容可能な担体を含む薬学的組成物を提供する。1つの実施形態において薬学的組成物はP.aeruginosa MEPに結合し、P.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する単離された抗体または抗体フラグメントであるペプチドを含む。単離されたペプチドは多くの化合物、例えば検出可能な標識や細胞毒性剤などと結合体化してよい。一部の重要な実施形態においては、単離されたペプチドは予防的または治療的に有効な量で存在する。別の実施形態においては、単離されたペプチドは被験体中、またはこれより得たサンプル中のP.aeruginosaを検出するための有効量で存在する。関連の特徴において、本発明は薬学的に受容可能な担体に本発明の単離されたペプチドを接触させることを含む医薬の製造のための方法を提供する。
【0025】
さらに別の特徴において、本発明はP.aeruginosa MEP結合CDRをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を提供する。CDRは本発明の抗体の重鎖または軽鎖由来のCDR1、CDR2またはCDR3であってよい。1つの実施形態においては、単離された核酸分子は配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19および配列番号20からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号18、配列番号19および配列番号20が重鎖CDRのヌクレオチド配列である。配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16および配列番号17が軽鎖CDRのヌクレオチド配列である。別の実施形態においては、単離された核酸分子は配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31および配列番号32、および、別の実施形態においては配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するP.aeruginosa MEP結合ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子も本発明に包含される。
【0026】
関連の特徴において、本発明はプロモーターに作動可能に連結した上記した単離された核酸分子を含む発現ベクター、このような発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞、および、単離された核酸分子によりコードされる単離されたペプチドを提供する。
【0027】
本発明はまたさらに別の特徴において本明細書に記載する抗体を生産する細胞系統を提供する。
【0028】
これらおよびその他の本発明の実施形態は本明細書においてより詳細に説明する。
【0029】
(配列表の簡単な説明)
配列番号1はクローンF428およびF429由来の重鎖の可変領域のヌクレオチド配列である。
【0030】
配列番号2はクローンF428およびF431由来の軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列である。
【0031】
配列番号3はクローンF429およびCOMB由来の軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列である。
【0032】
配列番号4はクローンF431およびCOMB由来の重鎖の可変領域のヌクレオチド配列である。
【0033】
配列番号5はクローンF428およびF429由来の重鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【0034】
配列番号6はクローンF428およびF431由来の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号7はクローンF429およびCOMB由来の軽鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号8はクローンF431およびCOMB由来の重鎖の可変領域のアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号9は配列番号1由来のCDR1のヌクレオチド配列である。
【0038】
配列番号10は配列番号1由来のCDR2のヌクレオチド配列である。
【0039】
配列番号11は配列番号1由来のCDR3のヌクレオチド配列である。
【0040】
配列番号12は配列番号2由来のCDR1のヌクレオチド配列である。
【0041】
配列番号13は配列番号2由来のCDR2のヌクレオチド配列である。
【0042】
配列番号14は配列番号2由来のCDR3のヌクレオチド配列である。
【0043】
配列番号15は配列番号3由来のCDR1のヌクレオチド配列である。
【0044】
配列番号16は配列番号3由来のCDR2のヌクレオチド配列である。
【0045】
配列番号17は配列番号3由来のCDR3のヌクレオチド配列である。
【0046】
配列番号18は配列番号4由来のCDR1のヌクレオチド配列である。
【0047】
配列番号19は配列番号4由来のCDR2のヌクレオチド配列である。
【0048】
配列番号20は配列番号4由来のCDR3のヌクレオチド配列である。
【0049】
配列番号21は配列番号5由来のCDR1のアミノ酸配列である。
【0050】
配列番号22は配列番号5由来のCDR2のアミノ酸配列である。
【0051】
配列番号23は配列番号5由来のCDR3のアミノ酸配列である。
【0052】
配列番号24は配列番号6由来のCDR1のアミノ酸配列である。
【0053】
配列番号25は配列番号6由来のCDR2のアミノ酸配列である。
【0054】
配列番号26は配列番号6由来のCDR3のアミノ酸配列である。
【0055】
配列番号27は配列番号7由来のCDR1のアミノ酸配列である。
【0056】
配列番号28は配列番号7由来のCDR2のアミノ酸配列である。
【0057】
配列番号29は配列番号7由来のCDR3のアミノ酸配列である。
【0058】
配列番号30は配列番号8由来のCDR1のアミノ酸配列である。
【0059】
配列番号31は配列番号8由来のCDR2のアミノ酸配列である。
【0060】
配列番号32は配列番号8由来のCDR3のアミノ酸配列である。
【0061】
配列番号33は配列番号1由来のFR1のヌクレオチド配列である。
【0062】
配列番号34は配列番号1由来のFR2のヌクレオチド配列である。
【0063】
配列番号35は配列番号1由来のFR3のヌクレオチド配列である。
【0064】
配列番号36は配列番号1由来のFR4のヌクレオチド配列である。
【0065】
配列番号37は配列番号2由来のFR1のヌクレオチド配列である。
【0066】
配列番号38は配列番号2由来のFR2のヌクレオチド配列である。
【0067】
配列番号39は配列番号2由来のFR3のヌクレオチド配列である。
【0068】
配列番号40は配列番号2由来のFR4のヌクレオチド配列である。
【0069】
配列番号41は配列番号3由来のFR1のヌクレオチド配列である。
【0070】
配列番号42は配列番号3由来のFR2のヌクレオチド配列である。
【0071】
配列番号43は配列番号3由来のFR3のヌクレオチド配列である。
【0072】
配列番号44は配列番号3由来のFR4のヌクレオチド配列である。
【0073】
配列番号45は配列番号4由来のFR1のヌクレオチド配列である。
【0074】
配列番号46は配列番号4由来のFR2のヌクレオチド配列である。
【0075】
配列番号47は配列番号4由来のFR3のヌクレオチド配列である。
【0076】
配列番号48は配列番号4由来のFR4のヌクレオチド配列である。
【0077】
配列番号49は配列番号5由来のFR1のアミノ酸配列である。
【0078】
配列番号50は配列番号5由来のFR2のアミノ酸配列である。
【0079】
配列番号51は配列番号5由来のFR3のアミノ酸配列である。
【0080】
配列番号52は配列番号5由来のFR4のアミノ酸配列である。
【0081】
配列番号53は配列番号6由来のFR1のアミノ酸配列である。
【0082】
配列番号54は配列番号6由来のFR2のアミノ酸配列である。
【0083】
配列番号55は配列番号6由来のFR3のアミノ酸配列である。
【0084】
配列番号56は配列番号6由来のFR4のアミノ酸配列である。
【0085】
配列番号57は配列番号7由来のFR1のアミノ酸配列である。
【0086】
配列番号58は配列番号7由来のFR2のアミノ酸配列である。
【0087】
配列番号59は配列番号7由来のFR3のアミノ酸配列である。
【0088】
配列番号60は配列番号7由来のFR4のアミノ酸配列である。
【0089】
配列番号61は配列番号8由来のFR1のアミノ酸配列である。
【0090】
配列番号62は配列番号8由来のFR2のアミノ酸配列である。
【0091】
配列番号63は配列番号8由来のFR3のアミノ酸配列である。
【0092】
配列番号64は配列番号8由来のFR4のアミノ酸配列である。
【0093】
(発明の詳細な説明)
本発明はP.aeruginosaムコイドエキソ多糖類(すなわち、MEPまたはアルギネート)に結合するペプチドの発見および合成に関する。P.aeruginosa MEPに結合するペプチドは本明細書においてはMEP結合ペプチドと称する。これらのペプチドは好ましくはP.aeruginosa MEP結合相補性決定領域(CDR)少なくとも1つを含む。本明細書においては、P.aeruginosa MEP結合CDRは本明細書に記載する抗体、すなわち、F428、F429、F431またはCOMBの1つから誘導したCDRである。P.aeruginosaのムコイド株は共通して嚢胞性線維症を有する被験体に感染している。MEPはP.aeruginosaのムコイド株により生産される外部多糖類であり、上皮細胞表面への初期接着においてこのような細菌により使用される。MEPはインビボおよびインビトロでP.aeruginosaのコロニー周囲にスライム様のコーティングを形成する。これは分子的にはウロン酸(例えばマンヌロン酸およびグルロン酸)の重合体として特性化されている。重要な点は、インビボのP.aeruginosa細菌コロニーの周囲のMEPコーティングの存在はこれらのコロニーを部分的に抗生物質療法に対して耐性とするということである。
【0094】
特定の理論に制約されないが、嚢胞性線維症患者の慢性ムコイドP.aeruginosa感染の進行は病原体を排除する十分な免疫応答をもたらすことができない点に起因すると信じられている。特に、P.aeruginosaのMEP被膜に対して特異的なオプソニン抗体の作成の失敗が欠陥である。オプソニン抗体は補体の存在下および非存在下で抗原上または細菌上に自らを付着させ、そして抗原提示細胞(例えばマクロファージまたは樹状細胞)のような貪食細胞による抗原または細菌の貪食作用を促進する抗体である。P.aeruginosa感染の部位にオプソニン抗体を提供する能力は、例えば慢性コロニー形成嚢胞性線維症患者の肺からのムコイドP.aeruginosaの根絶に寄与するはずである。本明細書においては、オプソニンおよびオプソニン貪食作用という用語は互換的に使用され、細菌のような抗原のFc媒介貪食作用を誘導できる抗体を指すものとする。
【0095】
本発明は部分的にはP.aeruginosa MEPに結合しP.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強するヒトモノクローナル抗体(すなわち、P.aeruginosaMAPに特異的なオプソニンヒトモノクローナル抗体)の発見および合成を前提としている。これらの抗体は精製されたMEPで免疫化したヒト被験体から採取したB細胞由来の抗体コード遺伝子を分子的に操作することにより作成した。これらのB細胞の組み換え免疫グロブリン(Ig)遺伝子、特に可変領域遺伝子を採取したB細胞より単離し、重鎖および短鎖の両方のヒトIg定常領域遺伝子をコードするIg組み換えベクターにクローニングした。この手法を用いて、P.aeruginosa MEPに結合し、P.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する新規な抗体4種を識別し、合成した。全ての抗体クローンはIgGアイソタイプであり、それらはF429、F430、F431およびCOMBと命名されている。
【0096】
本明細書に記載した抗体はムコイドおよび数種の非ムコイドのP.aeruginosa株に結合することができる。「非ムコイド」と特徴付けられる株であってもなお、ペプチドにより検出されるのに十分な低濃度のMEPを分泌すると信じられている。抗体は感染したヒト被験体由来のP.aeruginosa単離株のオプソニン殺傷を媒介できる。P.aeruginosa感染のネズミモデルにおいてインビボで使用した場合、抗体はP.aeruginosa攻撃に対する保護を与える。これらおよび他の所見は実施例においてより詳細に説明する。
【0097】
本発明のペプチドは最小限でもMEPに結合する領域(すなわち、P.aeruginosa MEP結合領域)を含む。P.aeruginosa MEP結合領域は本発明の抗体のMEP結合領域から誘導するか、または、そのような領域のその機能的に等価な改変体である。抗体誘導P.aeruginosa MEP結合領域の2つの特定のクラスは可変領域および相補性決定領域(CDR)である。可変領域とCDRはどちらも当業者により容易に配列決定される。これらの領域の説明は、本発明の抗体および配列におけるこれらの領域の位置と同様、後に説明する。
【0098】
当該分野で周知の抗体はジスルフィド架橋により連結されたポリペプチド鎖の組立物である。軽鎖および重鎖と称される2種の基本的なポリペプチド鎖は抗体の全ての主要な構造クラス(アイソタイプ)を構成する。重鎖および軽鎖は共に、可変領域および定常領域と称されるサブ領域に細分される。一部の場合において、ペプチドは上記した抗体の抗体重軽可変鎖を含む。重鎖可変領域は一般的に長さ100〜150アミノ酸の範囲のペプチドである。軽鎖可変領域は一般的に長さ80〜130アミノ酸の範囲のペプチドである。本発明は4種の異なる可変領域を提供し、うち2つは重鎖可変領域であり、2つは軽鎖可変領域である。配列番号1および配列番号5は抗体クローンF428およびF429から誘導した重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列に相当する。配列番号2および配列番号6は抗体クローンF428およびF431から誘導した軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列に相当する。配列番号3および配列番号7は抗体クローンF429から誘導した軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列に相当する。配列番号4および配列番号8は抗体クローンF431から誘導した重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列に相当する。
【0099】
あるいは、ペプチドは上記した可変領域の相補性決定領域(すなわち、CDR)のみを含む。当該分野で知られるとおり、抗体のCDRは抗体の特異性に大部分寄与する抗体の部分である。CDRは抗原のエピトープと直接相互作用する(一般的にClark,1986;Roitt,1991参照)。IgG免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域の両方において、相補性決定領域3つ(CDR1、CDR2、CDR3)によりそれぞれ分離されるフレーム枠領域4つ(FR1〜FR4)が存在する。フレーム枠領域(FR)は抗原との相互作用に関与する抗体の部分であるパラトープの三次構造を維持している。CDR、そして特にCDR3、および、より詳しくは重鎖CDR3は抗体の特異性に寄与している。CDR、そして特にCDR3は抗体に抗原特異性を与えるため、これらの領域を別の抗体またはペプチドに取り込むことにより、その抗体またはペプチドに同一の抗原特異性を付与してよい。
【0100】
P.aeruginosa MEP結合領域は、P.aeruginosa MEP結合CDR1、P.aeruginosa MEP結合CDR2、またはP.aeruginosa MEP結合CDR3であってよく、これらは全て、本明細書に開示した抗体および抗体の可変鎖から誘導する。本明細書においては、「P.aeruginosa MEP結合CDR1」とは好ましくは特異的にP.aeruginosa MEPに結合し、本明細書に開示する抗体の重鎖または軽鎖の可変領域の何れかから誘導されるCDR1である。これは好ましくは配列番号21、配列番号24、配列番号27および配列番号30からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。同様の該当する定義をP.aeruginosa結合CDR2およびCDR3にも適用する。「P.aeruginosa MEP結合CDR2」とは好ましくは特異的にP.aeruginosa MEPに結合し、本明細書に開示する抗体の重鎖または軽鎖の可変領域の何れかから誘導されるCDR2である。これは配列番号22、配列番号25、配列番号28および配列番号31からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。「P.aeruginosa MEP結合CDR3」とは好ましくは特異的にP.aeruginosa MEPに結合し、本明細書に開示する抗体の重鎖または軽鎖の可変領域の何れかから誘導されるCDR3である。これは好ましくは配列番号23、配列番号26、配列番号29および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する。上記した配列のほかに、本発明は後に詳述するとおり、保存された置換改変体を含むこれらの配列の機能的に等価な改変体も包含するものとする。
【0101】
本発明のペプチド、例えば本明細書に開示するオプソニン貪食作用抗体は、被験体中、またはそれより得たサンプル中のP.aeruginosa細菌を検出することを目的とした診断方法において特に有用である。最低でも、これらの方法において有用なペプチドは、それらがオプソニン作用および貪食作用も増強するかに関わらず、P.aeruginosa MEPを認識して結合することのみを必要とする。重要な実施形態において、抗体およびそのフラグメントは選択的にMEPに結合する。従って、それらは本明細書に記載した抗体クローンから誘導されたCDR1つ以上を保有することのみを要する。好ましい実施形態においては、ペプチドはMEP結合CDR3を含み、より好ましくは、ペプチドは重鎖MEP結合CDR3を含む。CDRの全てがP.aeruginosa MEPへの結合を起こすために必要なわけではないことが理解されなければならない。しかしながら、一部の実施形態においては、ペプチドは本明細書に開示したCDR全てを含む。
【0102】
さらにまた、本発明は本発明により提供される可変領域の間のCDRの交換も包含することが理解されなければならない。好ましくは、重鎖CDRは別の重鎖可変領域CDRと交換され、そして同様に軽鎖CDRは別の軽鎖可変領域CDRと交換される。
【0103】
本明細書に開示した可変鎖のCDRのヌクレオチド配列は以下の通りである:
【0104】
【表1】
。
【0105】
本明細書に開示した可変鎖のCDRのアミノ酸配列は以下の通りである:
【0106】
【表2】
。
【0107】
本明細書においては、「ペプチド」という用語は、モノクローナル抗体、機能的に活性および/または等価な抗体フラグメント、および、機能的に活性および/または等価なペプチドおよびポリペプチドを包含する。本発明のペプチドは単離されたペプチドである。本明細書においては、「単離されたペプチド」という用語はペプチドが実質的に純粋であり、その意図される使用のために実質的で適切である範囲まで天然またはインビボの系においては共に検出される他の物質は本質的に非含有であることを指す。特に、ペプチドは、例えば医薬品調製物の製造または配列において有用である程度に、十分純粋であり、そして宿主細胞の他の生物学的構成成分は十分非含有となっている。本発明の単離されたペプチドは医薬品調製物中で薬学的に受容可能な担体と混合してよいため、ペプチドは調製物の小重量%を占めるのみである。しかしなお、ペプチドはそれが生態系において伴っていた物質から実質的に分離されている点において実質的に純粋である。
【0108】
本発明のペプチドは好ましくは選択的な態様でMEPに結合する。本明細書において、「選択的結合」および「特異的結合」という用語は互換的に使用し、非MEP誘導化合物よりもMEPおよびそのフラグメントに対して高い親和性で結合するペプチドの能力を指すものとする。すなわち、MEPに選択的に結合するペプチドはそれらがMEPおよびそのフラグメントの結合する場合と同様の程度や同様の親和性では非MEP誘導化合物には結合しない。好ましい実施形態においては、本発明のペプチドはMEPおよびそのフラグメントにのみ結合する。
【0109】
前述したとおり、本発明はP.aeruginosa MEPに結合するペプチド、例えば抗体または抗体フラグメントを提供する。このような抗体は好ましくはP.aeruginosaのオプソニン作用および貪食作用(すなわち、オプソニン貪食作用)を増強し、そしてその結果、被験体におけるP.aeruginosa感染の防止および治療において有用である。オプソニン作用とは抗原に対するオプソニン(例えば抗体または補体因子C3b)の付着により貪食作用が促進される過程を指す。貪食作用は貪食細胞(例えばマクロファージ、樹状細胞および多形核白血球(PMNL))が物質を捕獲し、それを自身の細胞質中の空胞(例えば食胞)内に封入する過程を指す。すなわち、オプソニン作用および貪食作用を増強する抗体または抗体フラグメントは抗原を認識してこれに付着し、そしてそのようにすることにより貪食細胞による抗原(および抗原担持物質、例えばP.aeruginosa細菌)の取り込みおよび捕獲を促進する抗体または抗体フラグメントである。一般的に、貪食作用およびオプソニン作用を増強するために、抗体はFcドメインまたは領域を含む。FcドメインはFc受容体担持細胞(例えば抗原提示細胞、例えばマクロファージまたはPMNL)により認識される。本明細書においては、「オプソニン貧食作用を増強する」とは、抗原または抗原担持物質が抗体の付着を介して貪食細胞により認識され捕獲される確率を増大させることを意味する。この増強はインビボにおいて細菌負荷を低減することにより、または、後述するインビトロの方法を用いたインビトロの細菌細胞殺傷により、測定できる。
【0110】
オプソニン作用試験は当該分野で標準的なものである。一般的にこのような試験は抗体、抗原(標的細菌細胞上に発現)、補体および貪食細胞の存在下の細菌殺傷量を測定する。血清は補体の原料として一般的に使用されており、多形核細胞は貪食細胞の原料として一般的に使用されている。標的細胞原料はどのような細胞型が抗原を発現するかに応じて原核細胞(本発明の場合)または真核細胞であることができる。細胞の殺傷は反応成分のインキュベーション前後の生存細胞数の計数により測定できる。あるいは、細胞の殺傷は反応混合物の上澄みにおける標識細胞含量を測定することにより定量できる(例えばクロムの放出)。他の試験は本明細書を読むことにより当業者には自明のものであり、それらはP.aeruginosa MEPに結合する抗体または抗体フラグメントが同様にオプソニン作用および貪食作用を促進するかどうかを調べるために有用である。
【0111】
本発明は特にムコイドP.aeruginosaのオプソニン性殺傷を増強するMEP特異的ヒトモノクローナル抗体を提供する。これらの抗体の名称はF428、F429、F431およびCOMBである。インビボで使用する場合は、ヒトモノクローナル抗体は遥かに低免疫原性である(他の種の抗体と比較して)。その結果、これらの抗体はワクチンの設計ならびにP.aeruginosaをターゲティングする受動免疫療法において有用な新しい薬剤を呈示する。これらのモノクローナル抗体の合成は実施例に記載する。要約すると、米国特許4,578,458記載のMEPで免疫化した個体から採取したB細胞から抗体を誘導した。採取したB細胞をエプスタイン・バーウィルスを用いて形質転換し、次にHMMA2.5と称される不死化細胞系統の融合相手と融合した。単一の抗体を生産するクローンを生育させ、結合試験(例えばELISA)を用いて個別に分析した。三種類の抗体をP.aeruginosa MEPに結合するその能力に基づいて選択した。これら三種類の抗体は全てIgAアイソタイプであった。次にこれら三種類の抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をコードするcDNAを単離し、配列決定した。可変領域のcDNAを、重鎖および軽鎖の両方に関するIg定常領域コーディング配列を含有するヒトIg発現ベクター(すなわち、TCAE5.3)内にクローニングした。次にこれらの発現ベクターを細胞(例えばCHO DG44細胞)内にトランスフェクトし、細胞をインビトロで成育させ、そしてその後Igを上澄みから採取した。得られた抗体はヒト可変領域およびヒトIgG定常領域を保有していた。P.aeruginosa、特にP.aeruginosa MEPに結合し、そしてP.aeruginosaのオプソニン作用および貪食作用を増強するそれらの能力を本明細書に記載するような結合およびオプソニン貧食作用殺傷試験を用いて評価した。
【0112】
従って、1つの実施形態において、本発明のペプチドはP.aeruginosa MEPに特異的な単離されたインタクトな可溶性モノクローナル抗体である。本明細書においては、「モノクローナル抗体」という用語は同一のエピトープ(すなわち、抗原決定基)に特異的に結合する免疫グロブリンの均一な集団を指す。1つの実施形態において本発明のペプチドは例えば配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有するモノクローナル抗体である。別の実施形態においてはモノクローナル抗体は配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を有する。モノクローナル抗体は配列番号6または配列番号7のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有することができる。軽鎖および重鎖の可変領域の何れかの組み合わせを有するモノクローナル抗体は本発明の範囲に包含される。重鎖および軽鎖可変領域およびその相当するアミノ酸および核酸の配列を記載するための実施例において示す命名法を用いれば、以下の組み合わせ、すなわち、重鎖A(配列番号5)および軽鎖1(配列番号6);重鎖A(配列番号5)および軽鎖2(配列番号7);重鎖B(配列番号8)および軽鎖1(配列番号6);および重鎖B(配列番号8)および軽鎖2(配列番号7)、を本発明のモノクローナル抗体に包含することができる。
【0113】
本発明は、例えばクローンF428、F429、F431およびCOMB以外の抗体であっても本明細書に記載するモノクローナル抗体の結合特性をその抗体が有する限りそのような抗体も包含することを意図している。場合により、これらの他の抗体はまたP.aeruginosa細胞のオプソニン貧食作用を増強する。当業者は本明細書に詳述するスクリーニングおよび結合試験を用いてこれらのモノクローナル抗体の機能的特性(例えば結合、オプソニン作用および貪食作用の属性)を有する抗体を容易に識別できる。
【0114】
他の実施形態において、ペプチドは抗体フラグメントである。当該分野でよく知られている通り、抗体分子の小型部分、パラトープのみが抗体のそのエピトープへの結合に関与している(一般的にClark,W.R.(1986)The Experimental Foundations of Modern Immunology Wiley &Sons,Inc.,New York;Roitt,I.(1991)Essential Immunology,7th Ed.,Blackwell Scientific Publications,Oxford参照)。抗体のpFc’およびFc領域は例えば補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合には関与していない。pFc’領域由来の抗体が酵素的に切断除去されているか、または、pFc’領域を有さないように製造されている抗体、すなわち、F(ab’)2フラグメントと命名されているものは、インタクトな抗体の抗原結合部位を両方とも温存している。単離されたF(ab’)2フラグメントはその2抗原結合部位のために2価のモノクローナルフラグメントと称される。同様に、Fc領域が酵素的に切断除去されているか、または、Fc領域を有さないように製造されている抗体、すなわち、Fabフラグメントと命名されているものは、インタクトな抗体分子の抗原結合部位の1つを温存している。さらに進んで、Fabフラグメントは共有結合した抗体軽鎖およびFdと称される抗体重鎖の部分(重鎖可変領域)よりなる。Fdフラグメントは抗体特異性の主要な決定要因(単一のFdフラグメントは抗体の特異性を改変することなく10種以下の異なる軽鎖を伴っていてよい)であり、そしてFdフラグメントは単離においてエピトープ結合能力を温存している。
【0115】
Fab、Fc、pFc’、F(ab)2およびFvという用語は何れかの標準的な免疫学的意味と共に使用される[Klein,Immunology(John Wiley, New York,NY,1982);Clark,W.R.(1986) The Experimental Foundations of Modern Immunology (Wiley & Sons,Inc.,New York);Roitt,(1991)Essential Immunology,7th Ed.,(Blackwell Scientific Publications,Oxford)]。
【0116】
他の実施形態において、本発明の抗体のFc部分は本明細書に記載したモノクローナル抗体のCDRの一部または全てを担持するIgMならびにヒトIgG抗体を作成できるように置き換えてよい。特に重要なのは、P.aeruginosa MEP結合CDR3領域、および程度は低いが、他のCDRおよび本明細書に記載するモノクローナル抗体のフレーム枠領域の部分の包含である。このようなヒト抗体はそれらが好ましくは選択的にP.aeruginosa MEPを認識して結合するが抗体そのものに対抗したヒトにおける免疫応答を惹起しないという点において、特に臨床上の有用性を有することになる。
【0117】
本発明はP.aeruginosa MEP結合ペプチドの機能的に等価な改変体も包含するものとする。「機能的に等価な改変体」という用語は本発明のペプチドと同様の機能(すなわち、P.aeruginosa MEPに結合する、そして一部の実施形態においては細菌のオプソニン作用を促進する能力)を有する化合物である。機能的に等価な改変体は本質的にペプチドであってよいが、それに限定されない。例えば、炭水化物、ペプチドミメテイック等であってもよい。重要な実施形態においては、機能的に等価な改変体は内部に保存的な置換を有する可変領域またはCDRのアミノ酸配列を有するペプチド、すなわち、P.aeruginosa MEPに結合することがなお可能であるものである。クローンF428の重鎖可変領域由来のP.aeruginosa MEP結合CDR3(すなわち、配列番号5)の機能的に等価な改変体の例は、P.aeruginosaに好ましくは特異的に結合し、そして場合によりP.aeruginosaのオプソニン作用を増強する配列番号5における保存的置換を有するペプチドである。本明細書においては、「保存的置換」とは、アミノ酸置換が起こるペプチドの相対的な電荷または大きさの特性を改変しないアミノ酸置換を指す。アミノ酸の保存的置換は以下の群、すなわち、(1)M、I、L、V;(2)F、Y、W;(3)K、R、H;(4)A、G;(5)S、T;(6)Q、N;および(7)E、Dによるアミノ酸内で起こる置換を包含する。
【0118】
機能的に等価な改変体は本明細書に明示したペプチドとの同一性を有する。すなわち、そのような改変体は、本明細書に記載したアミノ酸配列と少なくとも99%の同一性、少なくとも98%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも94%の同一性、少なくとも93%の同一性、少なくとも92%の同一性、少なくとも91%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも70%の同一性、少なくとも65%の同一性、少なくとも60%の同一性、少なくとも55%の同一性、少なくとも50%の同一性、少なくとも45%の同一性、少なくとも40%の同一性、少なくとも35%の同一性、少なくとも30%の同一性、少なくとも25%の同一性、少なくとも20%の同一性、少なくとも10%の同一性、または、少なくとも5%の同一性を有してよい。
【0119】
機能的な等価性とは等価な活性(例えばP.aeruginosaへの結合またはP.aeruginosaのオプソニン貧食作用の増強)を指すが、そのような活性のレベルの変動も包含する。例えば、機能的な等価体は、その改変体がなお本発明において有用である(すなわち、P.aeruginosa MEPに結合し、そして場合によりP.aeruginosaのオプソニン貧食作用を増強する)限り、本明細書に記載したモノクローナル抗体クローンよりも、低い、等しいまたは高い親和性でP.aeruginosa MEPに結合する改変体である。
【0120】
このような置換は当業者の知る種々の方法により行える。例えばアミノ酸置換はPCR指向突然変異、Kunkelの方法に従った部位指向突然変異誘発(Kunkel,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 82:488−492,1985)または特定のCDRをコードする遺伝子の化学合成により行ってよい。これらの方法およびCDR含有ペプチドを改変するためのその他の方法は当業者が知るとおりであり、このような方法を編集した参考文献、例えば上記したSambrookまたはAusubelに記載されている。しかしながら、一部の実施形態においては、CDRの大きさのため、市販のペプチド合成装置を使用して改変体ペプチドを合成することが好都合である。P.aeruginosa MEP結合CDRの機能的に等価な改変体の活性は結合試験により、そして一部の場合においては後に詳述するとおり生物学的活性試験において試験することができる。本明細書においては、「機能的改変体」、「機能的に等価な改変体」および「機能的に活性な改変体」という用語は互換的に使用する。
【0121】
本明細書においては、「機能的に活性な抗体フラグメント」という用語は好ましくは特異的な態様において、P.aeruginosa MEPに結合する能力を温存している本発明のP.aeruginosa MEP結合領域を含む抗体分子のフラグメントを意味する。このようなフラグメントはインビトロおよびインビボで使用できる。特によく知られた機能的に活性な抗体フラグメントは例えば、抗体のF(ab’)2、Fab、FvおよびFdフラグメントを包含する。インタクトな抗体のFcフラグメントを欠失しているフラグメントはより急速に循環から消失し、そしてインタクトな抗体よりも非特異的組織結合が低値である(Wahlら,J.Nucl.Med,24:316−325(1983))。別の例として、一本鎖抗体はLadner等への米国特許4,946,778に記載の方法に従って構築できる。このような一本鎖抗体は可撓性のリンカー部分により連結された軽鎖および重鎖の可変領域を含む。単離された可変重鎖単ドメインを含む単ドメイン抗体(「Fd」)を得るための方法も報告されている(例えばWardら,Nature 341:644−646(1989)参照、単離された形態でその標的エピトープに結合するのに十分なそれに対する親和性を有する抗体重鎖可変領域(VH単ドメイン抗体)を識別するためのスクリーニング方法を開示)。既知の抗体の重鎖および軽鎖の可変領域の配列に基づいて組み換えFvフラグメントを作成するための方法は当該分野で知られており、例えばMoore等の米国特許4,462,344に記載されている。抗体フラグメントの使用および作成を記載した他の参考文献は、例えばFabフラグメント(Tijssen,Practice and Theory of Enzyme Immunoassays(Elsevier,Amsterdam,1985))、Fvフラグメント(Hochmanら,Biochemistry 12:1130(1973);Sharonら,Biochemistry 15:1591(1976);Ehrlichら,米国特許4,355,023)および抗体フラグメントの部分(Audilore−Hargreaves,米国特許4,470,925)を含む。すなわち、当業者は、P.aeruginosa MEPエピトープに対する抗体の特異性を破壊することなくインタクトな抗体の種々の部分から抗体フラグメントを構築してよい。
【0122】
本発明の重要な特徴において、機能的に活性な抗体フラグメントはまたP.aeruginosaに対するオプソニン作用および貪食作用が可能である能力を温存している。後者の例においては、抗体フラグメントはFc領域ならびにエピトープ結合ドメインを含む。Fc領域はFc受容体陽性細胞への抗体フラグメントの結合を可能にし、それがその後、抗体のFab領域により結合したエピトープを貪食する。
【0123】
本発明のペプチドを識別するためのさらに別のスクリーニング試験は例えばHartら,J.Biol.Chem.269:12468(1994)に記載のもののようなファージディスプレイ操作法を用いて実施する。Hart等は哺乳類細胞受容体に対する新しいペプチドリガンドを識別するためのフィラメントファージディスプレイライブラリを報告している。一般的に例えばM13またはfdファージを使用したファージディスプレイライブラリは上記した参考文献に記載のもののような従来の操作法を用いて調製する。ライブラリは4〜80アミノ酸残基を含むインサートをディスプレイする。インサートは場合により完全に縮重した、または偏向したペプチドのアレイを示す。P.aeruginosa MEPに好ましくは選択的に結合するリガンドはP.aeruginosa MEPに結合するリガンドを自身の表面上に発現するファージを選択することにより得られる。次にこれらのファージを数回の再選択サイクルに付して、最も有用な結合特性を有するペプチドリガンド発現ファージを識別する。典型的には、最良の結合特性(例えば最高の親和性)を示すファージをさらに、核酸分析により特性化し、ファージ表面上に発現されたペプチドの特定のアミノ酸配列およびP.aeruginosa MEPへの至適結合を達成するような発現ペプチドの至適長さを識別する。あるいは、このようなペプチドリガンドはアミノ酸1つ以上を含有するペプチドのコンビナトリアルライブラリから選択できる。このようなライブラリはその天然の相手方と比較した場合に酵素的分解に付される程度がより低い非ペプチド合成部分を含有するようにさらに合成できる。
【0124】
さらにまた、P.aeruginosa MEP結合CDR3領域を含有する小型ペプチドは組み換え手段により容易に合成または作成でき、本発明のペプチドを得ることができる。このような方法は当該分野でよく知らている。ペプチドは例えば市販の自動ペプチド合成装置を用いて合成できる。ペプチドは発現ベクター内にペプチドを発現するDNAを組み込むこと、および、発現ベクターで細胞を形質転換してペプチドを生産することによる組み換え手段により製造できる。
【0125】
抗体を包含するペプチドは当該分野で知られた標準的な結合試験を用いてP.aeruginosa MEPへのその結合能力について試験できる。適当な試験の例として、P.aeruginosa MEPを表面上(例えばマルチウェルプレートのウェル中)に固定し、そして次に標識されたペプチドと接触させる。次にP.aeruginosa MEPに結合する(そしてこれにより表面上に自身を固定化する)ペプチドの量を定量してP.aeruginosa MEPに特定のペプチドが結合するかどうかを調べる。あるいは、表面に結合していないペプチドの量を測定してもよい。本試験の変法においては、ペプチドはインビトロで生育しているP.aeruginosaコロニーに直接結合する能力について試験できる。この後者の試験の例は実施例において詳述する。
【0126】
ペプチド結合は競合試験を用いて試験することもできる。試験すべきペプチドが本明細書に記載したモノクローナル抗体または抗体フラグメントと競合することが、モノクローナル抗体またはフラグメントの結合の低下により明らかにされる場合、ペプチドおよびモノクローナル抗体は同じ、または、少なくとも重複したエピトープに結合する可能性が高い。この試験系においては、抗体または抗体フラグメントを標識し、そしてP.aeruginosa MEPを固体表面上に固定化する。これらおよびその他の試験は本明細書において詳述するとおりである。
【0127】
標準的な結合試験は当該分野で知られており、そしてこれらの多くのものが本発明に適しており、例えばELISA、競合結合試験(上記)、サンドイッチ試験、放射性標識ペプチドまたは放射標識抗体を用いた放射性受容体試験、イムノアッセイ等が例示される。試験の性質は、それが少数のペプチドの結合を検出するのに十分な感度を有する限り、重要ではない。
【0128】
種々の他の試薬も結合混合物中に含有させてよい。これらには、塩類、緩衝剤、中性タンパク質(例えばアルブミン)、洗剤等が包含され、これらは至適結合を促進するために使用してよい。このような試薬はまた反応成分の非特異的またはバックグラウンドの相互作用を低減する。試験の効率を向上させる別の試薬も使用してよい。上記した試験物質の混合物はモノクローナル抗体が通常は特異的にP.aeruginosa MEPに結合するような条件下にインキュベートする。そのような条件は好ましくは生理学的条件を模倣するものである。成分の添加順序、インキュベーションの温度、インキュベーション時間、および他の試験パラメーターは容易に決定できる。このような実験は試験パラメーターの至適化に関わるのみであり、試験の本質的な要素ではない。インキュベーション温度は典型的には4℃〜40℃である。インキュベーション時間は好ましくは、迅速で高スループットのスクリーニングを容易にするために最小限とし、そして典型的には、0.1〜10時間である。インキュベーションの後、ペプチドとP.aeruginosa MEPの間の特異的結合の存在または非存在を使用者が利用できる何れかの好都合な方法で検出する。
【0129】
典型的には、異なるペプチドまたは異なるペプチド濃度の複数の試験混合物を平行して試験することにより種々の濃度に対する異なる応答を得る。これらの濃度の1つが陰性コントロール、すなわち、P.aeruginosa MEPのゼロ濃度における、または、試験検出限界より低値のP.aeruginosa MEP濃度における値として使用される。
【0130】
分離工程は未結合のペプチドまたは抗体からの結合型を分離するために使用される場合が多い。分離工程は種々の方法において達成してよい。好都合には、成分の少なくとも1つ(例えばペプチドまたは抗体)をP.aeruginosa MEPへの結合を介して固体基板上に固定化する。未結合の成分は結合画分から容易に分離される。固体基板は種々の材料から、種々の形状、例えばポリアクリルアミド、アガロースまたはセファロースのカラムまたはゲル、マイクロプレート、マイクロビーズ、樹脂粒子等として製造できる。分離段階は好ましくは複数のすすぎまたは洗浄を含む。例えば、固体基板がマイクロプレートである場合は、典型的には、塩類、緩衝剤、洗剤、非特異的タンパク質等のような特異的結合に参加しないインキュベーション混合物成分と同様のものを含有する洗浄溶液でウェルを数回洗浄する。固体基板が磁気ビーズである場合は、ビーズを洗浄溶液で一回以上洗浄し、磁石を使用して単離する。
【0131】
ペプチドは単独で使用するか、または、他の分子、例えば本発明の検出および投与方法における検出薬または細胞毒性剤と、本明細書に詳述するとおり結合体化することができる。
【0132】
典型的には、成分の1つは通常は検出標識を含むか、これとカップリングされるか、または結合体化される。検出可能な標識は、その存在が直接または間接的に確認できる部分である。一般的に、標識の検出には標識によるエネルギーの発生を用いる。標識は特定の波長の光を発射および/または吸収するその能力(例えば放射能、ルミネセンス、光学密度または電子密度等)により直接検出できる。標識は、特定の波長の光を自ら発射または吸収する別の部分(例えばエピトープタグ、例えばFLAGエピトープ、酵素タグ、例えばセイヨウワサビパーオキシダーゼ等)に対し、結合、収集および、一部の場合においては脱離を行うその能力により間接的に検出できる。間接的検出の例は、物質を分解して可視産物にする第1の酵素標識の使用である。標識は、化学物質、ペプチドまたは核酸の性質のものであってよいが、これらに限定されない。他の検出可能な標識は、放射性同位体、例えばP32またはH3、ルミネセンスマーカー、例えばフルオロクローム、光学的または電子の密度マーカー等、または、エピトープタグ、例えばFLAGエピトープまたはHAエピトープ、ビオチン、アビジンおよび酵素タグ、例えばセイヨウワサビパーオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ等を包含する。標識はその合成の間、またはその後にペプチドに結合させてよい。多くの異なる標識および標識方法は当業者の知るとおりである。本発明において使用できる標識の種類の例は、酵素、放射性同位体、蛍光化合物、コロイド金属、化学ルミネセンス化合物、およびバイオルミネセンス化合物を包含する。本明細書に記載したペプチドのための他の適当な標識は当業者の知るとおりであり、あるいは、日常的な実験により確認できる。さらにまた、これらの標識の本発明のペプチドへのカップリングまたは結合体化は当業者のよく知る標準的方法を用いて実施できる。
【0133】
より高感度となる他の標識手法は、低分子量のハプテンへのペプチドのカップリングよりなる。次にこれらのハプテンを第2の反応により特異的に改変することができる。例えば、アビジンと反応するビオチンのようなハプテン、特定の抗ハプテン抗体と反応するジニトロフェノール、ピリドキサール、または、フルオレセインを使用することが一般的である。
【0134】
抗体またはそのフラグメントを含むペプチドの検出可能な標識への結合体化は、特に診断試験におけるこのような薬剤の使用を容易にする。検出可能な標識の別の種類は、診断用および造影用の標識、例えば磁気共鳴撮影(MRI)用のGd(DOTA)、核治療用の201Tl、ガンマ線発射放射性核種99mTc、陽電子発射断層撮影(PET)用の陽電子発射同位体、(18)F−フルオロデオキシグルコース((18)FDC)、(18)F−フロリド、銅−64、ガドジアミドおよびPb(II)の放射性同位体、例えば203Pb;111Inを包含する。
【0135】
本明細書に記載する結合体化および修飾は、日常的な化学操作を使用しており、そのような化学操作は本発明の部分を構成せず、当業者の知るとおりである。保護基および知られたリンカー、例えばモノ、またはヘテロの2官能性のリンカーの使用は文献に記載されている通りであり、本明細書においては反復しない。
【0136】
本明細書においては、「結合体化された」とは、何れかの物理化学的手段により相互に安定に結合した2つの実体を意味する。結合の性質はそれが何れの実体の有効性も実質的に損なわないものであることが重要である。これらのパラメーターを念頭において、当該分野で使用されている何れかの共有結合または非共有結合の連結を使用してよい。一部の実施形態においては、共有結合が望ましい。非共有結合の結合体化には疎水性相互作用、イオン性相互作用、高親和性相互作用、例えばビオチン−アビジンおよびビオチン−ストレプトアビジンの複合体形成、および他の親和性相互作用が包含される。このような結合の手段および方法は当業者のよく知るとおりである。
【0137】
標識および他の試験成分の性質に応じて、標識の検出のために種々の方法を使用してよい。例えば、標識は固体基板に結合している状態で、または、固体基板から分離した後に検出してよい。標識は光学密度または電子密度、放射線発射、非放射線エネルギー転移等を介して直接検出するか、または、抗体結合体化、ストレプトアビジン−ビオチン結合体化等により間接的に検出してよい。標識を検出する方法は当業者のよく知るとおりである。
【0138】
本明細書に記載するモノクローナル抗体は、本発明のモノクローナル抗体と同様の結合特異性を有する他の抗体をスクリーニングして識別するために使用できる抗イディオタイプ抗体を作成するためにも使用できる。抗イディオタイプ抗体は本発明のモノクローナル抗体上に存在する独特の決定基を認識する抗体である。これらの決定基は抗体の超可変領域中に位置している。所定のエピトープに結合し、これにより抗体の特異性の原因となるのはこの領域である。このような抗イディオタイプ抗体はよく知られたハイブリドーマ技術を用いて作成できる(Kohler and Milstein,Nature,256:495,1975)。一例として、抗イディオタイプ抗体はモノクローナル抗体で被験体を免疫化することにより調製できる。免疫化した被験体は免疫化モノクローナル抗体のイディオタイプ決定基を認識してこれに応答し、これらのイディオタイプ決定基に対する抗体を生産する。本発明のモノクローナル抗体に対して特異的な免疫化動物の抗イディオタイプ抗体を使用することにより、免疫化に使用したモノクローナル抗体と同じイディオタイプを有する他のクローンを識別することができる。2つの細胞系統のモノクローナル抗体の間のイディオタイプの同一性は、2つのモノクローナル抗体が同じエピトープ決定基のその認識に関して同様であることを示している。すなわち、抗イディオタイプ抗体を使用することにより、同じエピトープ特異性を有するモノクローナル抗体を発現する他のハイブリドーマを識別することができる。
【0139】
抗イディオタイプ抗体はまた、エピトープを模倣するモノクローナル抗体を生産するために抗イディオタイプ技術を使用することが可能であることから、能動免疫化のために使用できる(Herlynら,Science,232:100,1986)。例えば、第1のモノクローナル抗体に対して作成された抗イディオタイプモノクローナル抗体は第1のモノクローナル抗体により結合されたエピトープの像である超可変領域中の結合ドメインを有する。すなわち、抗イディオタイプモノクローナル抗体は、抗イディオタイプモノクローナル抗体結合ドメインが抗原として効果的に機能するため、免疫化のために使用できる。
【0140】
本発明のモノクローナル抗体の特異性の原因となる配列は決定されている。従って、本発明のペプチドは組み換えDNA技術を用いて調製できる。商業的にこの機能を実施する合衆国内の団体、例えばThomas Jefferson UniversityおよびScripps Protein and Nucleic Acid Core Sequencing Facility(La Jolla,California)が存在する。例えば可変領域cDNAは縮重または非縮重のプライマー(アミノ酸配列より誘導)を用いて寄託されたハイブリドーマRNAからポリメラーゼ連鎖反応により製造できる。cDNAをサブクローニングし、従来の配列決定反応または装置により配列決定するのに十分な量の2本鎖DNAを生成する。
【0141】
P.aeruginosa MEPモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインの核酸配列の知識を用いれば、当業者はこの抗体をコードする、または、種々の抗体フラグメント、ヒト化抗体または上記ポリペプチドをコードする核酸を作成できる。このような核酸は、クローニングのため、または、本発明のペプチドの発現のための組み換えベクターを形成する他の核酸に作動可能に連結すると考えられる。本発明は、原核細胞または真核細胞の形質転換、トランスフェクションまたは遺伝子療法用に関わらず、コーディング配列またはその部分を含有する何れの組み換えベクターも包含する。このようなベクターは当業者の知る従来の分子生物学の技術を用いて調製でき、そしてCDR領域(好ましくはCDR3領域)のDNAコーディング配列および抗体またはその部分の特異性に寄与している別の可変配列、ならびに、非特異的なペプチド配列および適当なプロモーターを、輸出または分泌のためのシグナル配列の存在下(Whittleら,Protein Eng.1:499,1987およびBurtonら,Science 266:1024−1027,1994)または非存在下(Marascoら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)90:7889,1993およびDuanら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)91:5075−5079,1994)に含む。このようなベクターは、当業者の知る従来の方法により、原核細胞(Huseら,Science 246:1275,1989,Wardら,Nature 341:644−646,1989;Marksら,J.Mol.Biol.222:581,1991およびBarbasら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:7978,991)または真核細胞(Whittleら,1987およびBurtonら,1994)に形質転換またはトランスフェクトするか、または、遺伝子療法(Marascoら,1993およびDuanら,1994)のために使用してよい。
【0142】
本明細書においては、「ベクター」とは異なる遺伝子環境の間の輸送のため、または、宿主細胞内における発現のために、制限酵素切断およびライゲーションにより所望の配列を挿入してよい多くの核酸のいずれかである。ベクターは典型的にはDNAであるが、RNAベクターも使用可能である。ベクターには例えばプラスミドまたはファージミドが包含される。クローニングベクターは宿主細胞内で複製することができ、そしてベクターが測定可能な態様で切断される部位であり、そして新しい組み換えベクターが宿主細胞内で複製する能力を温存できるようにその部位中に所望のDNA配列をライゲーションするエンドヌクレアーゼ制限部位1つ以上によりさらに特徴付けられるものである。プラスミドの場合、所望の配列の複製はプラスミドが宿主細菌内でコピー数を増大させるに従って多くの回数起こるか、または有糸分裂により宿主が再生する前に宿主あたり単回のみ起こる。ファージの場合、複製は溶解期に能動的に、または、溶原期に受動的に起こってよい。発現ベクターは、所望のDNA配列が調節配列に作動可能に連結し、RNA転写物として発現されるように制限酵素切断とライゲーションによりこれを挿入するものである。ベクターはさらにベクターにより形質転換またはトランスフェクトされているか、されていない細胞の発見において使用するために適するマーカー配列1つ以上を含んでよい。マーカーは例えば抗体または他の化合物に対する耐性または感受性のいずれかを増大または低減するタンパク質をコードする遺伝子、当該分野で知られた標準的な試験法で活性を検出できる酵素をコードする遺伝子(例えばβ−ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)、および、形質転換またはトランスフェクトされた細胞、宿主、コロニーまたはプラークの表現型に目視可能な影響を与える遺伝子を包含する。好ましいベクターはそれらが作動可能に連結されるDNAセグメント内に存在する構造遺伝子産物の自律複製および発現が可能であるものである。
【0143】
本発明の発現ベクターは本発明のペプチドの1つをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した調節配列を包含する。本明細書においては、「調節配列」という用語は所望のポリペプチドをコードし、そして/または得られた転写物の所望のポリペプチドへの翻訳に必要であるか、それを誘導するヌクレオチド配列の転写のために必要であるか、それを誘導するヌクレオチド配列を意味する。調節配列は、例えば5’配列、例えばオペレーター、プロモーターおよびリボソーム結合配列、および3’配列、例えばポリアデニル化シグナルを包含する。本発明のベクターは場合により5’リーダーまたはシグナル配列、タンパク質の精製に役立つ融合産物をコードする5’または3’配列、および形質転換体の識別または選択に役立つ種々のマーカーを包含する。適切なベクターの選択および設計は当業者の知るとおりである。ペプチドのその後の精製は当該分野で知られた標準的な手段の種々のもののいずれかにより行ってよい。
【0144】
ペプチドのスクリーニングのためには好ましいが、必ずしも本発明のペプチドの大量生産のために好ましいわけではないベクターは、(1)原核細胞分泌シグナルドメイン、(2)本発明のポリペプチド、および、場合により(3)融合タンパク質ドメインを、アミノからカルボキシ末端の方向に含有する、融合ポリペプチドをコードし、その発現が可能なヌクレオチド配列を含有する組み換えDNA分子である。ベクターは融合ポリペプチドの発現のためのDNA調節配列、好ましくは原核細胞調節配列を包含する。このようなベクターは当業者が構築できるものであり、そしてSmith等(Science 228:1315−1317,1985)、Clackson等(Nature 352:624−628,1991);Kang等(Methods:A Companion to Methods in Enzymology:Vol.2,R.A.Lerner and D.R.Burton,ed.Academic Press,NY.pp111−118,1991)、Barbas等(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88:7978−7982,1991)、Roberts等(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:2429−2433,1992)に記載されている。
【0145】
融合ポリペプチドは本発明のペプチドの精製のために有用である。融合ドメインは例えば、Ni+カラム上での精製を可能にするポリHisテール、または、市販ベクターpMAL(New England BioLabs,Beverly,MA)のマルトース結合タンパク質を包含する。現時点で好ましいが必須ではない融合ドメインは糸状ファージ膜アンカーである。このドメインはモノクローナル抗体のファージディスプレイライブラリのスクリーニングのために特に有用であるが、抗体の大量生産においては有用性は低い。糸状ファージ膜アンカーは好ましくは糸状ファージ粒子のマトリックスと会合して融合ポリペプチドをファージ表面に取り込むことができ、これにより特定の抗原またはエピトープへの固相結合を可能にし、これによりファージミドベクターによりコードされる特定の抗体またはフラグメントのリッチ化および選択を可能にすることができる、cpIIIまたはcpVIIIコートタンパク質のドメインである。
【0146】
分泌シグナルはグラム陰性細菌の原形質周囲膜のような宿主細胞のタンパク質膜をターゲティングするタンパク質のリーダーペプチドドメインである。E.coliに対する好ましい分泌シグナルはpelB分泌シグナルである。Erwinia carotova由来の2つのpelB遺伝子生産改変体由来の分泌シグナルドメインの推定アミノ酸残基配列はLei等(Nature 381:543−546,1988)により報告されている。pelBタンパク質のリーダー配列は以前は融合タンパク質のための分泌シグナルとして使用されていた(Betterら,Science 240:1041−1043,1988、Sastryら,Proc.Natl.Acad.Sci(USA)86:5728−5732,1989、およびMullinaxら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:8095−8099,1990)。本発明において有用なE.coli由来の他の分泌シグナルポリペプチドドメインのアミノ酸残基配列はOliver,In Neidhard,F.C.(ed)Escherichia coli and Salmonella Typhimurium,American Society for Microbiology,Washington,D,C,1:56−69(1987)に記載されている。
【0147】
E.coli内で高レベルの遺伝子発現を達成するためには、大量のmRNAを精製するための強力なプロモーターだけではなく、mRNAが効率的に翻訳されるためのリボソーム結合部位が必要である。E.coliにおいては、リボソーム結合部位は開始コドン(AUG)および開始コドンから上流3〜11ヌクレオチドに位置する3〜9ヌクレオチド長の配列を包含する(Shineら,Nature 254:34,1975)。Shine−Dalgarno(SD)配列と称される配列AGGAGGUはE.coli 16S rRNAの3’末端に相補である。mRNAへのリボソームの結合およびmRNAの3’末端における配列はいくつかの要因、すなわち、(i)SD配列と16S rRNAの3’末端との間の相補性の程度;(ii)SD配列とAUGとの間に存在するスペーシングおよびおそらくはDNA配列の影響を受ける場合がある(Robertsら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)76:760,1979a、Robertsら,Proc.Natl.Acad.Sci(USA)76:5596,1979b、Guarenteら,Science 209:1428,1980、およびGuarenteら,Cell 20:543,1980)。至適化はスペーシングが体系的にに改変されているプラスミド中の遺伝子発現のレベルを測定することにより達成される。異なるmRNAの比較により、−20〜+13位の統計学的に好ましい配列があることが示される(ここでAUGのAを0位とする)(Goldら,Annu.Rev,Microbiol.35:365,1981)。リーダー配列は劇的に翻訳に影響し(Robertsら,1979a,b上出);ならびに(iii)リボソーム結合に影響するAUG後のヌクレオチド配列(Taniguchiら,J.Mol.Biol.,118:533,1978)。
【0148】
3’調節配列は非相同の融合ポリペプチドとインフレームであり、これに作動可能に連結している終止コドン少なくとも1つを定義する。
【0149】
原核細胞発現宿主を用いる好ましい実施形態においては、使用するベクターは複製の原核細胞起点またはレプリコン、すなわち、それにより形質転換された細菌宿主細胞のような原核細胞宿主細胞において染色体外に組み換えDNA分子の自律複製および維持を指向する能力を有するDNA配列を包含する。このような複製起点は当該分野でよく知られている。好ましい複製起点は宿主の生物において効率的なものである。好ましい宿主細胞はE.coliである。E.coli中のベクターの使用のためには、好ましい複製起点はpBR322および種々の他の一般的プラスミドに存在するColE1である。pACYCおよびその誘導体に存在するp15A複製起点も好ましい。ColE1およびp15Aレプリコンは分子生物学で広範に使用されており、種々のプラスミド上で使用可能であり、そしてSambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989に記載されている。
【0150】
さらにまた、原核細胞レプリコンを包含するこれらの実施形態はまた、その発現が選択上の利点、例えば薬剤耐性を、それにより形質転換された細菌宿主に対して与える遺伝子を包含する。典型的な細菌の薬剤耐性遺伝子はアンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン/カナマイシンまたはクロラムフェニコールに対する耐性を与えるものである。ベクターは典型的には翻訳可能なDNA配列の挿入のための好都合な制限部位を含有する。例示されるベクターはプラスミドpUC18およびpUC19および誘導されたベクター、例えばInvitrogen(San Diego,CA)から入手可能なpcDNAIIである。
【0151】
本発明のペプチドが重鎖および軽鎖の配列の両方を含む抗体である場合は、これらの配列は別々のベクター上にコードされてよく、または、より好都合には、単一のベクターにより発現されてよい。重鎖および軽鎖は、翻訳後、または分泌後、天然の抗体分子のヘテロ2量体構造を形成してよい。このようなヘテロ2量体抗体は重鎖と軽鎖の間のジスルフィド結合により安定化されてもされなくてもよい。
【0152】
本発明のインタクトな抗体または本発明のF(ab’)2、FabまたはFvフラグメント抗体のようなヘテロ2量体抗体の発現のためのベクターは、翻訳可能な第1および第2のDNAを受領して発現するために適合された組み換えDNA分子である。すなわち、ヘテロ2量体抗体を発現するためのDNA発現ベクターは、ベクター内に存在する2つの別々のカセット内に2つの翻訳可能なDNA配列を独立してクローニング(挿入)し、これによりヘテロ2量体抗体の第1および第2のポリペプチドを発現するための2つの別々のシストロンを形成するための系を提供する。2つのシストロンを発現するためのDNA発現ベクターはジシストロン発現ベクターと称する。
【0153】
好ましくは、ベクターはインサートDNAへの指向性のライゲーションのために適合されたヌクレオチドの配列を介して作動可能に連結された上流および下流のDNA調節配列を包含する第1のカセットを含む。上流の翻訳可能な配列は好ましくは上記した分泌シグナルをコードする。カセットは、インサート翻訳可能DNA配列(インサートDNA)が指向性ライゲーションのために適合されたヌクレオチドの配列を介してカセット内に指向性に挿入される場合に生産される第1の抗体ポリペプチドを発現するためのDNA調節配列を包含する。
【0154】
ジシストロン発現ベクターはまた第2の抗体ポリペプチドを発現するための第2のカセットを含有する。第2のカセットはカセットの読み枠内の少なくとも1つの終止コドンを典型的には定義するベクターの下流のDNA配列への指向性ライゲーションのために適合されたヌクレオチドの配列を介してその3’末端に作動可能に連結した上記の分泌シグナルを好ましくはコードする第2の翻訳可能なDNA配列を包含する。第2の翻訳可能なDNA配列は5’エレメントを形成するDNA調節配列にその5’末端において作動可能に連結している。第2のカセットは、翻訳可能なDNA配列(インサートDNA)の挿入があれば、インサートDNAによりコードされるポリペプチドとともに分泌シグナルを含む第2の融合ポリペプチドを発現することができる。
【0155】
本発明のペプチドはまた、CHO細胞、ヒトハイブリドーマ、不死化B−リンパ芽球様細胞等のような真核細胞により生産してもよい。このような場合、ベクターは、真核生物調節配列がペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されているように構築する。適切な真核生物ベクターの設計および選択は当業者の知るとおりである。ペプチドのその後の精製は当該分野で知られている種々の標準的方法のいずれかにより行ってよい。
【0156】
別の実施形態においては、本発明は、本発明のベクターにより形質転換またはトランスフェクトされており、従ってそれを含んでいる原核生物および真核生物の両方の宿主細胞を提供する。
【0157】
核酸に関して本明細書においては、「単離された」という用語は(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりインビトロで増幅され;(ii)クローニングにより組み換え生産され;(iii)切断およびゲル分離により精製され;または、(iv)例えば化学合成により合成されたことを意味する。単離された核酸は当該分野でよく知られた組み換えDNA技術により容易に操作できるものである。すなわち、5’および3’制限部位が既知であるか、または、そのためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列が開示されているベクター中に含有されるヌクレオチド配列は単離されているとみなされるが、その天然の宿主中においてネイティブの状態で存在する核酸配列はそのようにみなされない。単離された核酸は実質的に精製されていてよいが、必須ではない。例えばクローニングまたは発現ベクター内において単離されている核酸は、それがそれを含む細胞内の物質の僅か数パーセントを構成するのみである点において純粋ではない。しかしながらこのような核酸は、当該分野でよく知られた標準的な技術により容易に操作できるため、本明細書において使用される用語としては、単離されている。
【0158】
本明細書においては、コーディング配列および調節配列はそれらが調節配列の影響下または制御下にコーディング配列の発現または転写を付すような態様で共有結合している場合に「作動可能に連結した」と表現する。コーディング配列を機能的タンパク質に翻訳したい場合は、2つのDNA配列は、5’調節配列のプロモーターの誘導がコーディング配列の転写をもたらす場合、および、2つのDNAの間の連結の性質が(1)フレームシフト突然変異の誘導をもたらさず、(2)コーディング配列の転写を指向するプロモーター領域の能力を妨害せず、または(3)相当するRNA転写物がタンパク質に翻訳される能力を妨害しない場合に、作動可能に連結されていると表現する。すなわち、得られる転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳されるようにプロモーター領域がそのDNA配列の転写を行うことが可能であった場合に、プロモーター領域はコーディング配列に作動可能に連結していることになる。
【0159】
遺伝子発現のために必要な調節配列の厳密な性質は種または細胞型の間で変動するが、一般的には必要に応じてそれぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写および5’非翻訳配列、例えばTATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等を包含する。特にこのような5’非転写調節配列は作動可能に連結した遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を包含するプロモーター領域を包含する。調節配列はまた、所望によりエンハンサー配列または上流のアクティベーター配列を含んでよい。
【0160】
本発明はまたインビボまたはインビトロの方法において本明細書に記載したペプチドの使用を包含する。特にペプチドは検出方法ならびに治療方法において使用できる。本発明により提供される検出または診断方法は一般的に被験体中、またはそれより得たサンプルに本発明のペプチド1つ以上を接触させることを包含する。インビボの検出方法も想定しているが、好ましくは、サンプルをまず被験体から採取する。サンプルは細菌を保有していると疑われるいずれかの身体の組織または液体を包含してよい。P.aeruginosaの感染はいずれかの数の組織、例えば眼、耳、呼吸管(肺を含む)、心臓(弁を含む)、中枢神経系、骨および関節、胃腸管(大腸を含む)、尿管、皮膚および軟組織に罹患する。肺または胃腸の洗浄液またはCNS液もすべて採取して細菌の存在について試験することができる。
【0161】
細菌を検出するためには、サンプルを本発明のペプチドに接触させ、ペプチドの結合のレベルを細菌陰性であることが既知のサンプル(陰性コントロール)に対するペプチドの結合のレベルと比較する。検出可能な標識に結合体化したペプチドはこのような試験において最も有用である。検出可能な標識または細胞毒性剤にペプチドを結合体化する方法は上記において詳述したとおりである。
【0162】
本発明はまた、細菌の汚染を発見するために、医療用の装置、表面、機材等の内部または表面におけるP.aeruginosaを検出する方法を包含する。これらの検出方法は上記したものと本質的に同様の態様で実施される。試験すべき物品および表面を本発明のペプチドに直接接触させるか、または、それらのサンプルを採取し、サンプルを細菌の存在について試験する。サンプル採取は例えばスワブ採取、ワイピング、フラッシング等を包含する。
【0163】
本明細書においては、「治療」という用語は医療上望ましい利益を達成する目的の被験体へのペプチドの投与を指す。従って、「治療」とは「予防的」および「治療的」な投与方法の両方を包含するものとする。予防的投与方法とはP.aeruginosa感染またはP.aeruginosa関連状態の診断よりも前に被験体に投与することを指す。換言すれば被験体はP.aeruginosa感染またはP.aeruginosa関連状態のいずれかの危険性を有しているが、いずれの状態も呈していない。治療的投与方法とはP.aeruginosa感染またはP.aeruginosa関連状態の診断後に被験体に投与することを指す。換言すれば、被験体はP.aeruginosa感染またはP.aeruginosa関連状態を有すると診断されているか、または、被験体はいずれかに関連する状態を呈している。
【0164】
本明細書においては、被験体はヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはげっ歯類である。全ての実施形態において、ヒト被験体が好ましい。
【0165】
治療的に使用される場合は、有効量はP.aeruginosa感染を阻害する量である。そのような阻害は、細菌の菌体の増殖の部分的または完全な阻害、または、一部の例においては、細菌のコロニーの部分的または完全な排除により測定され、これは細菌または細菌コロニーの数の低減により一般的に測定される。予防的に使用される場合は、有効量はP.aeruginosaの感染が発症しないような量である。そのような阻害は例えば嚢胞性線維症を有する患者、または、嚢胞性線維症を発症する危険性を有する患者から得た肺洗浄液中の細菌の非存在により測定する。一般的に、治療有効量は被験体の年齢、状態および性別、ならびに、被験体における疾患の程度により変動し、そして当業者が決定できる。用量はいずれかの合併症の場合には個々の医師により調節してよい。
【0166】
本発明はまたP.aeruginosa関連障害の治療のための方法を包含する。「P.aeruginosa関連障害」とは本明細書においては、P.aeruginosa感染の存在に関連するいずれかの障害である。これらの障害は嚢胞性線維症、潰瘍性角膜炎、肺炎、菌血症、臓器および組織の感染、例えば腎臓、膀胱、肝臓、脳、皮膚、筋肉、リンパ節または副鼻腔の感染を包含する。方法は疾患を阻害するために有効な量の本発明のペプチドをそのような障害を有する被験体に投与する工程を包含する。障害は障害に関連する状態が低減した場合に「阻害される」。一部の場合においては、この量は被験体におけるP.aeruginosa感染を阻害するために必要な量と等しい。
【0167】
有効量は典型的には1日または数日間(上記した投与様式および要因の過程により変動する)にわたり、1日1回以上の投与において、約0.01mg/kg〜約1000mg/kg、より典型的には約0.1mg/kg〜約200mg/kg、そして頻繁には約0.2mg/kg〜約20mg/kgである。
【0168】
P.aeruginosa MEPに結合し、そして場合によりインビトロでオプソニン作用および貪食作用を増強するペプチドの能力をスクリーニングすることにより、当業者はペプチドの有効量が如何なるものであるかを決定できる。P.aeruginosa MEPに結合し、場合によりオプソニン作用および貪食作用を増強する本発明のペプチドの能力を測定するための例示される方法は実施例に示すとおりであり、そして上記において説明したとおりである。
【0169】
本発明の方法によれば、ペプチドは薬学的組成物中において投与してよい。一般的に薬学的組成物は本発明のペプチドおよび薬学的に受容可能な担体を含有する。ペプチド、モノクローナル抗体および抗体フラグメントのための薬学的に受容可能な担体は当該分野でよく知られている。本明細書においては、薬学的に受容可能な担体とは活性成分の生物学的な活性の有効性、すなわち、P.aeruginosa MEPに結合し、場合によりオプソニン作用および貪食作用を増強するペプチドの能力を妨害しない非毒性の物質を意味する。
【0170】
薬学的に受容可能な担体は希釈剤、充填剤、塩類、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤および当該分野でよく知られた他の物質を包含する。特にペプチドのための薬学的に受容可能な担体の例は米国特許5,211,657に記載されている。このような調製物は日常的に塩、緩衝剤、保存料、相溶剤および場合により他の治療薬を含有してよい。医薬品に使用する場合は、塩類は薬学的に受容可能なものでなければならないが、非薬学的に受容可能な塩はその薬学的に受容可能な塩の調製のために好都合に使用してよく、本発明の範囲から除外されない。このような薬理学的および薬学的に受容可能な塩には、例えば以下の酸、すなわち、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等から調製されるものが包含される。さらにまた、薬学的に受容可能な塩はナトリウム、カリウムまたはカルシウムの塩のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属として調製できる。
【0171】
本発明のペプチドは固体、半固体、液体またはガス状の形態、例えば錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座剤、吸入薬および注射剤および経口、非経口または外科的投与のための通常の状態としての調製物に処方してよい。本発明はまたインプラントのような局所投与のために処方される薬学的組成物を包含する。
【0172】
種々の投与経路を使用してよい。本発明の方法は一般的に、臨床上許容されない副作用を起こすことなく活性化合物の有効濃度をもたらすようないずれかの様式を意味する、医療上許容されるいずれかの投与様式を用いて実施してよい。本発明の方法によれば、ペプチドは注射によるか、時間をかけた緩徐な注入によるか、または、他のいずれかの医療上許容される様式により投与できる。このような投与様式には、経口、直腸、局所、経鼻、皮内または非経口の経路が包含される。「非経口」という用語は皮下、静脈内、筋肉内または注入を包含する。静脈内または筋肉内の経路は長期の治療および予防のためには特に適していない。しかしながらそれらは緊急事態においては好ましい。経口投与は患者の利便性ならびに投与計画の点において予防的投与のために好ましい。経口投与に適する組成物は個々の単位、例えばカプセル、錠剤、トローチ剤として提供してよく、各々が所定量の活性剤を含有するものとする。他の組成物には水性の液体または非水性の液体中の懸濁液、例えばシロップ、エリキシルまたは乳液が包含される。
【0173】
本明細書に記載した化合物(ペプチドおよび非ペプチドの種々のものを含む)を治療的に使用する場合は、特定の実施形態において、投与の望ましい経路は肺エアロゾルによるものであってよい。化合物を含有するエアロゾル送達系の調製のための技術は当該分野でよく知られている。一般的に、このような系はペプチドの生物学的特性を大きく損なうことのない成分を利用しなければならない(例えば参照により本明細書に組み込まれるSciarra and Cutie,”Aerosols”, Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,1990,pp1694−1712参照)。当業者は特に予定外の実験を行うことなくエアロゾルを製造するための種々のパラメーターおよび条件を容易に決定することができる。
【0174】
本発明の方法は伏在する細菌感染を治療するための従来の治療法と組み合わせて本発明のペプチドを投与する工程も包含する。例えば、本発明の方法は例えば抗生物質療法のような従来の治療薬投与と同時に実施してよい。一部の実施形態においてはペプチドは従来の投与と実質的に同時に投与する。実質的に同時とは、本発明のペプチドを従来薬品(例えば抗生物質)の投与と時間的に十分近接して被験体に投与することにより、2つの化合物が相加的または相乗的な作用を発揮することを意味する。一部の例においては、ペプチドおよび従来の治療薬は相互に結合体化する。別の例では化合物は物理的に分離されている。
【0175】
本発明のペプチドは組織に直接投与してよい。好ましくは、組織は細菌の感染が存在しているもの、例えば、嚢胞性線維症患者における肺である。あるいは、組織は感染が生じる可能性があるものである。直接の組織への投与は直接の注射により達成してよい。ペプチドは1回投与するか、または、複数回投与してよい。複数回投与する場合は、ペプチドは異なる経路で投与してよい。例えば、第1回(または最初の数回)の投与は罹患組織に直接行い、その後は全身投与してよい。
【0176】
非経口投与のための調製物は、滅菌された水性または非水性の溶液、懸濁液および乳液を包含する。非水性の溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射用の有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性の担体は水、アルコール性/水性の溶液、乳液または懸濁液、例えば食塩水および緩衝媒体を包含する。非経口のベヒクルは塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸添加リンゲル液または固定油を包含する。静脈内ベヒクルは水分および栄養の補給剤、電解質の補給剤(例えばリンゲルデキストロースに基づくもの)等を包含する。保存料および他の添加剤もまた存在してよく、例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガス等が挙げられる。低用量は他の投与形態、例えば静脈内投与により得られる。被験体における応答が初回用量で不十分である場合は、患者の耐容性が許す限り、より高用量(または異なるより局所的な送達経路による有効性が高い用量)を使用してよい。一日当たり多数回の投与も化合物の適切な全身濃度を達成するために意図される。
【0177】
さらに別の実施形態においては、好ましいベヒクルは生体適合性の微粒子または哺乳類レシピエント内への移植に適するインプラントである。この方法に従って使用される生体内分解性のインプラントの例はPCT国際特許出願PCT/US/03307(公開番号WO95/24929、標題Polymeric Gene Delivery System、1994年3月15日出願の米国出願213,668の優先権主張)に記載されている。PCT/US/0307は生物学的マクロ分子を含有するための、生体適合性の、好ましくは生体分解性の重合体マトリックスを記載している。重合体マトリックスは被験体において薬剤の徐放性を達成するために使用してよい。本発明の1つの特徴によれば、本明細書に記載した薬剤はPCT/US/03307に開示されている生体適合性の、好ましくは生体分解性の重合体マトリックス内に封入または分散してよい。重合体マトリックスは好ましくは、微粒子、例えばマイクロスフェア(薬剤が固体重合体マトリックス全体にわたって分散)またはマイクロカプセル(薬剤が重合体シェル内のコア中に貯留)の形態である。薬剤を含有するための重合体マトリックスの他の形態はフィルム、コーティング、ゲル、インプラントおよびステントを包含する。重合体マトリックス装置の大きさおよび組成はマトリックス装置を移植する組織において良好な放出速度が得られるように選択する。重合体マトリックス装置の大きさは使用すべき送達の方法、典型的には組織内への注射、または、鼻腔および/または肺の領域内へのエアロゾルによる懸濁液の投与、に従って選択する。重合体マトリックス組成物は良好な分解速度を有するため、そして装置が血管、肺または他の表面に投与された場合に移行の有効性をさらに増大させる生体接着性である物質として形成されるように選択することができる。マトリックス組成物はまた分解するよりはむしろ長時間に亘り拡散により放出されるように選択することもできる。
【0178】
非生体分解性および生体分解性の重合体マトリックスの両方を用いて被験体に本発明の薬剤を送達してよい。生体分解性物質が好ましい。そのような重合体は天然または合成の重合体であってよい。合成の重合体が好ましい。重合体は放出が望まれる時間の長さに基づいて選択され、一般的には数時間〜1年以上である。典型的には、数時間および3〜12ヶ月の間の範囲の期間に亘る放出が最も望ましい。重合体は場合により水中でその重量の約90%まで吸収でき、そして場合により多価のイオンまたは他の重合体と交差結合しているヒドロゲルの形態である。
【0179】
一般的に、本発明の薬剤は重合体マトリックスの拡散により、またはより好ましくは分解により、生体内分解性のインプラントを用いて送達してよい。生体分解性送達系を形成するために使用できる合成重合体の例は、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタンおよびこれらの共重合体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルおよびメタクリルエステルの重合体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルローススルフェートナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンおよびポリビニルピロリドンを包含する。
【0180】
非生体分解性重合体の例はエチレンビニルアセテート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド、これらの共重合体または混合物を包含する。
【0181】
生体分解性の重合体の例は合成重合体、例えば乳酸とグリコール酸の重合体、ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)およびポリ(ラクチド−コカプロラクトン)および天然の重合体、例えばアルギネートおよび他の多糖類、例えばデキストランおよびセルロース、コラーゲン、その化学的誘導体(化学基の置換、付加、例えばアルキル、アルキレン、ヒドロキシル化、酸化、および当業者が日常的に行う他の修飾)、アルブミンおよび他の親水性のタンパク質、ゼインおよび他のプロラミン類および疎水性タンパク質、共重合体およびこれらの混合物を包含する。一般的に、これらの物質は酵素的加水分解または水への曝露によりインビボで、または、表面または全体の腐食により、分解する。
【0182】
特に有利な生体接着性の重合体は参照により本明細書に組み込まれるH.S.Sawhney,C.P.Pathak and J.A.Hubell,Macromolecules,1993,26,581−587に記載の生体内分解性ヒドロゲル、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)およびポリ(オクタデシルアクリレート)を包含する。
【0183】
他の送達系は経時的放出、遅延放出または徐放性の送達系を包含する。このような系はペプチドの反復投与の回避を可能とし、被験体および医師の利便性を増大させる。多くの形態の放出送達系が使用可能であり、当該分野でよく知られている。それらは重合体、例えばポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸およびポリ無水物に基づく系を包含する。薬剤を含有する上記した重合体のマイクロカプセルは例えば米国特許5,075,109に記載されている。送達系はまた脂質、例えばステロール、例えばコレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸または中性脂肪、例えばモノ、ジおよびトリグリセリド;ヒドロゲル放出系;サイラスティック系;ペプチドに基づく系;ワックスコーティング;従来のバインダーおよび賦形剤を用いた圧縮錠剤;部分融合インプラント等である非重合体の系も包含する。特定の実施例は例えば(a)米国特許4,452,775、4,675,189および5,736,152に記載されているもののような血小板減少剤がマトリックス内の形態で含有されている腐食性の系;および(b)米国特許3,854,480、5,133,974および5,407,686に記載されているもの様な重合体から制御された速度で活性化合物が浸透する分散系を包含する。さらにまた、ポンプ系のハードウエア送達系も使用でき、その一部は移植に適合されている。
【0184】
長期間の徐放性のインプラントの使用はP.aeruginosa感染を発症する危険性を有する被験体の予防的治療のために特に適している。長期間の放出とは、本明細書においては、少なくとも30日間、好ましくは60日間、活性成分の治療濃度を送達するようにインプラントが構築され配置されることを意味する。長期間の徐放性のインプラントは当該分野でよく知られており、上記した放出系の一部を包含する。
【0185】
以下の実施例は本発明の実施の特定の例を説明するものであり、本発明の範囲を制限する意図はない。当業者の知るとおり、本発明は種々の組成物および方法において提供される。
【実施例】
【0186】
(実施例1:)
(材料および方法:)
(MEPを用いた患者の免疫化:)
P.aeruginosaの培養、MEPの精製、およびMEPを用いた被験体の免疫化は参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許4,578,458に記載されている。要約すると、被験体を好ましくはP.aeruginosa2192単離株(ATCC39324)から採取した精製MEPで免疫化する。P.aeruginosa株2192が好ましいが、P.aeruginosa2192中に存在するものと本質的に同じ抗原決定基を有する多糖類を生産する新しい株も使用してよい。P.aeruginosaは必須の栄養および成分を含有する液体基礎培地中で維持することができる(例えばMian最小培地、トリプチケース大豆ブロスおよびデオキシコレートシトレート寒天、好ましくはマグネシウムのような2価カチオンを添加)。細菌の培養方法は当該分野でよく知られている。MEPはMian最小培地から精製し、その後アルコールでMEPを沈殿させる。次に沈殿をDNaseおよびRNaseで昇華し、その後Sephacel S−300カラム上で分離し、沈殿させ、凍結乾燥する。物質を1〜3時間95°Cで1%酢酸で処理し、冷却し、次に沈殿を遠心分離により除去し、上澄みを透析し、凍結乾燥する。この操作により99%超の純度となる。被験体に投与するためには、凍結乾燥した沈殿を薬学的に受容可能な担体中に希釈再調整する。投与したMEPの量は投与前に存在したものよりも少なくとも4倍高値の濃度における抗体の形成を示すために必要な量に相当する。一般的にこの量は10〜500μg/投薬である。
【0187】
(B細胞の採取、EBVによる形質転換およびスクリーニング試験:)
ヒト血液はMEP投与後7日の被験体から採取する。末梢血単核細胞をフィコール−ハイプラーク沈殿により血液から単離し、Posner等(Autoimmunity,8:149−158,1990)に記載の通りEBVで形質転換する。形質転換したB細胞から、ELISAを用いてインビトロでP.aeruginosaコロニーを認識してこれに結合する能力があるものをスクリーニングする。Posner等(Hybridoma,6:611−625,1987)に記載の通り、抗体を分泌する形質転換B細胞を不死化細胞系統の融合相手HMMA2.5と融合する。
【0188】
クローンはELISAを用いてインビトロでP.aeruginosaコロニーを認識して結合する能力のあるものをスクリーニングする。ELISAプレートは37°Cで2時間0.04Mリン酸塩緩衝液pH7.4のmlあたり10μgMEPでコーティングする。洗浄後、1%スキムミルクを37°Cで1時間添加し、その後プレートを再度洗浄する。上澄みを37°Cで1時間プレート上でインキュベートする。PBSで洗浄後、セイヨウワサビパーオキシダーゼ結合体化抗体ヤギ抗ヒトIgGおよびヤギ抗ヒトIgAを37°Cで1時間添加する。陽性のウェルを基質であるo−フェニレジアミンを添加した際の変色により選択する。
【0189】
(可変領域のクローニング:アイソタイプの切り替え:)
次に、MEP特異的不死化融合B細胞クローンをさらに分析することによりMEP特異的抗体の配列を誘導する。RNAを個別に各クローンから単離し、その後cDNAを調製する。ヒトIg軽鎖可変領域DNAは5’末端におけるヒト軽鎖シグナル配列および3’末端におけるヒト軽鎖C領域に対する相同性を有するDNAプライマーのセットを用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりcDNAから増幅した。この増幅されたDNAフラグメントをヒトκ軽鎖定常ドメインの前面で発現プラスミド(TCAE5.3)内に直接挿入し、全コンストラクトを配列決定した。同様にヒトIg重鎖可変領域DNAをPCRおよび5’末端におけるヒト重鎖シグナル配列および3’末端におけるヒト重鎖CH1領域に対する相同性を有するプライマーセットを用いてcDNAから増幅した。この後者の増幅DNAフラグメントをヒトIgG1重鎖定常ドメインの前面でTCAE5.3発現プラスミド内に挿入し、全コンストラクトを配列決定した。TCAE5.3はReffら,Blood 83:435−445,1994に記載されているヒトIg発現ベクターである。これはヒトIgG1重鎖およびヒトカッパ軽鎖定常領域遺伝子を同じプラスミド上に含有している。
【0190】
得られた発現ベクターは、Prestonら,Infection and Immunity 66:4137−4142,1998およびReffら,Blood 83:435−445,1994に記載の通り、DNAリポソーム媒介トランスフェクションによるか、またはエレクトロポレーションにより、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)系統DGH44(入手元:Dr.Larry Chasin,Columbia University,New York)に導入した。トランスフェクトされたCHO細胞系統が生育している上澄みの抗体生産について、ELISAを用いて試験した。抗体はGタンパク質アフィニティークロマトグラフィー(IgGアイソタイプ用)およびレクチンであるJacalinのアフィニティークロマトグラフィー(IgAアイソタイプ用)を用いて培養上澄みから精製した。
【0191】
(結果:)
MEPワクチンで免疫化された個体由来の形質転換されたヒトB細胞の3つのクローンが得られた。これらのクローンは精製されたMEP抗原に結合する抗体を生産するその能力に基づいて識別された。3つ全てがIgA/ラムダアイソタイプであった。これらをF428、F429およびF431と命名した。
【0192】
これら3つのクローンの各々の軽鎖および重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列を決定した。3つのクローンから、2種の異なる重鎖配列および2種の異なる軽鎖配列が、以下の組み合わせにおいて識別された:
【0193】
【表3】
。
【0194】
第4の抗体分子はB重鎖および第2の軽鎖を用いて構築し、抗体標識「COMB」(組み合わせ用)を作成した。すなわち、元の3つのクローンで発見された重鎖および軽鎖の可能な対4種の全てを含む組み換え抗体分子が構築され、発現された。
【0195】
以下のデータは2種の異なる重鎖および2種の異なる軽鎖に関するヌクレオチドおよびアミノ酸の配列の情報を包含する。
【0196】
第1のフレーム枠領域(FAR)の初期のアミノ酸に対する第1のヌクレオチドからはじまり、可変領域の末端に対する最後のヌクレオチドで終わるP.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖の可変領域のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号NO.1):
CAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCCGGACTGGTGAAGCCTACGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCCCCATCACCTATATTAATTACTACTGGGGCTGGGTCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGAGTATCCATTATGATGGGAGCACCTTCTACAACCCGTCCCTCAAGAGTCGCGTCACCATATCAGGAGACACGTCCAAGAGCGAGTTCTCTGTGAAGCTGAGTTCTGTGACCGCCGCGGACACGGCCGTCTATTACTGTGCGAGAACGTATTACGATGCTTCGGGGAGCCCTTACTTTGACCACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA。
【0197】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のフレーム枠領域1(FR1)のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号33):
CAGCTGCAGCTGCAGGAGTCGGGCCCCGGACTGGTGAAGCCTACGGAGACCCTGTCCCTCACCTGCACTGTCTCTGGTGGCCCCATCACC。
【0198】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR1のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号9):
TATATTAATTACTACTGGGGC。
【0199】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR2のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号34):
TGGGTCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGG。
【0200】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR2のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号10):
AGTATCCATTATGATGGGAGCACCTTCTACAACCCGTCCCTCAAGAGT。
【0201】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR3のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号35):
CGCGTCACCATATCAGGAGACACGTCCAAGAGCGAGTTCTCTGTGAAGCTGAGTTCTGTGACCGCCGCGGACACGGCCGTCTATTACTGTGCGAGA。
【0202】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR3のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号11):
ACGTATTACGATGCTTCGGGGAGCCCTTACTTTGACCAC。
【0203】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR4のヌクレオチド配列(すなわち、配列番号36):
TGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA。
【0204】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖の可変領域の単アミノ酸配列(配列番号5):
QLQLQESGPGLVKPTETLSLTCTVSGGPITYINYYWGWVRQPPGKGLEWIGSIHYDGSTFYNPSLKSRVTISGDTSKSEFSVKLSSVTAADTAVYYCARTYYDASGSPYFDHWGQGTLVTVSS。
【0205】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR1の単アミノ酸配列(配列番号49):
QLQLQESGPGLVKPTETLSLTCTVSGGPIT。
【0206】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR1の単アミノ酸配列(配列番号21):
YINYYWG。
【0207】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR2の単アミノ酸配列(配列番号50):
WVRQPPGKGLEWIG。
【0208】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR2の単アミノ酸配列(配列番号22):
SIHYDGSTFYNPSLKS。
【0209】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR3の単アミノ酸配列(配列番号51):
RVTISGDTSKSEFSVKLSSVTAADTAVYYCAR。
【0210】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のCDR2の単アミノ酸配列(配列番号23):
TYYDASGSPYFDH。
【0211】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF429の重鎖のFR4の単アミノ酸配列(配列番号52):
WGQGTLVTVSS。
【0212】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列(配列番号2):
CAGTCTGTGTTGACGCAGCCGCCCTCAGTGTCTGCGGCCCCAGGACAGAGGGTCACCATCTCCTGCTCTGGAAGCAGCTCCAACCTTGGGAACAATTTTGTATCCTGGTACCAGCAACTCCCAGGAGCAGCCCCCCGGCTCCTCATTTATGACAATGATAAGCGACCCTCAGGGATTCCTGACCGATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACGTCAGCCACCCTGGGCATCACCGGGCTCCAGACTGGGGACGAGGCCGATTATTACTGCGGAACATGGGATAGCAGCCTGACTGCTTATGTCTTCGGAAGTGGGACCAAGGTCACCGTCCTA。
【0213】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR1のヌクレオチド配列(配列番号37):
CAGTCTGTGTTGACGCAGCCGCCCTCAGTGTCTGCGGCCCCAGGACAGAGGGTCACCATCTCCTGC。
【0214】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR1のヌクレオチド配列(配列番号12):
TCTGGAAGCAGCTCCAACCTTGGGAACAATTTTGTATCC。
【0215】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR2のヌクレオチド配列(配列番号38):
TGGTACCAGCAACTCCCAGGAGCAGCCCCCCGGCTCCTCATTTAT。
【0216】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR2のヌクレオチド配列(配列番号13):
GACAATGATAAGCGACCCTCA。
【0217】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR3のヌクレオチド配列(配列番号39):
GGGATTCCTGACCGATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACGTCAGCCACCCTGGGCATCACCGGGCTCCAG ACTGGGGACGAGGCCGATTATTACTGC。
【0218】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR3のヌクレオチド配列(配列番号14):
GGAACATGGGATAGCAGCCTGACTGCTTATGTC。
【0219】
ヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR4のヌクレオチド配列(配列番号40):
TTCGGAAGTGGGACCAAGGTCACCGTCCTA。
【0220】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖の可変領域の単アミノ酸配列(配列番号6):
QSVLTQPPSVSAAPGQRVTISCSGSSSNLGNNFVSWYQQLPGAAPRLLIYDNDKRPSGIPDRFSGSKSGTSATLGITGLQTGDEADYYCGTWDSSLTAYVFGSGTKVTV。
【0221】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR1の単アミノ酸配列(配列番号53):
QSVLTQPPSVSAAPGQRVTISC。
【0222】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR1の単アミノ酸配列(配列番号24):
SGSSSNLGNNFVS。
【0223】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR2の単アミノ酸配列(配列番号54):
WYQQLPGAAPRLLIY。
【0224】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR2の単アミノ酸配列(配列番号25):
DNDKRPS。
【0225】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のFR3の単アミノ酸配列(配列番号55):
GIPDRFSGSKSGTSATLGITGLQTGDEADYYC。
【0226】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の重鎖のCDR3の単アミノ酸配列(配列番号26):
GTWDSSLTAYV。
【0227】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F428およびF431の軽鎖のFR4の単アミノ酸配列(配列番号56):
FGSGTKVTV。
【0228】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列(配列番号3):
CAGTCTGTGTTGACGCAGCCGCCCTCAGTGTCTGCGGCCCCAGGACAGAAGGTCTCCATCTCCTGCTCTGGAAGCAGCTCCAACATTGGGAATAATTATGTATCCTGGTACCAGCAGCTCCCAGGAACAGCCCCCAATCTCCTCATTTATGACAATAATAAGCGACCCTCAGGGATTCCGGACCGATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACGTCAGCCACCCTGGACATCACCGGACTCCAGAGTGGGGACGAGGCCGATTATTACTGCGGAACATGGGATAGCAGCCTGAGTACTTGGGTGTTCGGCGGAGGGACCAAACTGACCGTCCTA。
【0229】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR1のヌクレオチド配列(配列番号41):
CAGTCTGTGTTGACGCAGCCGCCCTCAGTGTCTGCGGCCCCAGGACAGAAGGTCTCCATCTCCTGC。
【0230】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR1のヌクレオチド配列(配列番号15):
TCTGGAAGCAGCTCCAACATTGGGAATAATTATGTATCC。
【0231】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR2のヌクレオチド配列(配列番号42):
TGGTACCAGCAGCTCCCAGGAACAGCCCCCAATCTCCTCATTTAT。
【0232】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR2のヌクレオチド配列(配列番号16):
GACAATAATAAGCGACCCTCA。
【0233】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR3のヌクレオチド配列(配列番号43):
GGGATTCCGGACCGATTCTCTGGCTCCAAGTCTGGCACGTCAGCCACCCTGGACATCACCGGACTCCAGAGTGGGGACGAGGCCGATTATTACTGC。
【0234】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR3のヌクレオチド配列(配列番号17):
GGAACATGGGATAGCAGCCTGAGTACTTGGGTG。
【0235】
ヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR4のヌクレオチド配列(配列番号44):
TTCGGCGGAGGGACCAAACTGACCGTCCTA。
【0236】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖の可変領域の単アミノ酸配列(配列番号7):
QSVLTQPPSVSAAPGQKVSISCSGSSSNIGNNYVSWYQQLPGTAPNLLIYDNNKRPSGIPDRFSGSKSGTSATLDITGLQSGDEADYYCGTWDSSLSTWVFGGGTKLTVL。
【0237】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR1の単アミノ酸配列(配列番号57):
QSVLTQPPSVSAAPGQKVSISC。
【0238】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR1の単アミノ酸配列(配列番号27):
SGSSSNIGNNYVS。
【0239】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR2の単アミノ酸配列(配列番号58):
WYQQLPGTAPNLLIY。
【0240】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR2の単アミノ酸配列(配列番号28):
DNNKRPS。
【0241】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR3の単アミノ酸配列(配列番号59):
GIPDRFSGSKSGTSATLDITGLQSGDEADYYC。
【0242】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のCDR3の単アミノ酸配列(配列番号29):
GTWDSSLSTWV。
【0243】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F429およびCOMBの軽鎖のFR4の単アミノ酸配列(配列番号60):
FGGGTKLTVL。
【0244】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖の可変領域のヌクレオチド配列(配列番号4):
CAGCTGCACCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTAGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACGTGCACTGTCTCTGGTGGCCCCATCACCAGTAATAATTACTACTGGGGCTGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGGACTATCTCTTATAATGGGTACACCTACTACATCCCGTCCCTCAGGGGTCGAGTCACCATATCCGGAGACACGTCCAAGAACCAGTTCTCCCTGAGGGTGAACTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTATGTATTACTGTGCGAGACATGACTATAGCATGTCGTCCGGACTTACTGACAACTGGTTCGACCCCTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA。
【0245】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR1のヌクレオチド配列(配列番号45):
CAGCTGCACCTGCAGGAGTCGGGCCCAGGACTAGTGAAGCCTTCGGAGACCCTGTCCCTCACGTGCACTGTCTCTGGTGGCCCCATCACC。
【0246】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR1のヌクレオチド配列(配列番号18):
AGTAATAATTACTACTGGGGC。
【0247】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR2のヌクレオチド配列(配列番号46):
TGGATCCGCCAGCCCCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGATTGGG。
【0248】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR2のヌクレオチド配列(配列番号19):
ACTATCTCTTATAATGGGTACACCTACTACATCCCGTCCCTCAGGGGT。
【0249】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR3のヌクレオチド配列(配列番号47):
CGAGTCACCATATCCGGAGACACGTCCAAGAACCAGTTCTCCCTGAGGGTGAACTCTGTGACCGCCGCAGACACGGCTATGTATTACTGTGCGAG。
【0250】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR3のヌクレオチド配列(配列番号20):
CATGACTATAGCATGTCGTCCGGACTTACTGACAACTGGTTCGACCCC。
【0251】
ヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR4のヌクレオチド配列(配列番号48):
TGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCA。
【0252】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖の可変領域の単アミノ酸配列(配列番号8):
QLHLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGPITSNNYYWGWIRQPPGKGLEWIGTISYNGYTYYIPSLRGRVTISGDTSKNQFSLRVNSVTAADTAMYYCARHDYSMSSGLTDNWFDPWGQGTLVTVSS。
【0253】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR1の単アミノ酸配列(配列番号61):
QLHLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGPIT。
【0254】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR1の単アミノ酸配列(配列番号30):
SNNYYWG。
【0255】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR2の単アミノ酸配列(配列番号62):
WIRQPPGKGLEWIG。
【0256】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR2の単アミノ酸配列(配列番号31):
TISYNGYTYYIPSLRG。
【0257】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR3の単アミノ酸配列(配列番号63):
RVTISGDTSKNQFSLRVNSVTAADTAMYYCAR。
【0258】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のCDR3の単アミノ酸配列(配列番号32):
HDYSMSSGLTDNWFDP。
【0259】
P.aeruginosa MEP抗原に特異的なヒトモノクローナル抗体F431およびCOMBの重鎖のFR4の単アミノ酸配列(配列番号64):
WGQGTLVTVSS。
【0260】
(実施例2:)
(材料および方法:)
(P.aeruginosaおよび精製MEPへの結合試験:)
ELISAプレートを4°Cで一夜アジ化ナトリウムを含有する0.02Mリン酸塩緩衝液中2μg/mlの精製P.aeruginosa MEPでコーティングした。0.05%Tweenを含有するPBSでプレートを数回洗浄して未結合のMEPを除去した。次にプレートをPBS/BSAとともに4°Cで一夜インキュベートすることにより全ての他の非特異的結合部位をブロックした。数回洗浄した後、抗体を0.0625〜2.0μg/mlの範囲の種々の濃度でプレートに添加した。プレートを室温で2時間インキュベートした。結合した抗体をFcドメインに特異的なアルカリホスファターゼ結合体化ヤギ抗ヒトIgG抗体を用いて検出した。試験はPrestonら, Infection and Immunity 66:4137−4142,1998に記載の通りインタクトな細菌を用いても同様に実施される。
【0261】
(補体付着試験:)
ELISAプレートを一夜(例えば約10時間)室温でpH7の0.02Mリン酸塩緩衝液中10μg/mlの濃度で精製P.aeruginosa MEPでコーティングした。抗体を種々の濃度で添加し、そしてプレートを37°Cで1時間インキュベートした。健常者血清は補体原料として添加した。プレートをさらに15分間インキュベートし、次に洗浄し、ポリクローナルウサギ抗ヒトC3抗血清とともにインキュベートした。C3に結合したウサギ抗体をアルカリホスファターゼ結合体化ヤギ抗ウサギIgGを用いて検出した。室温で45分間インキュベートした後、OD405を測定した。
【0262】
(オプソニン貪食作用殺傷試験:)
オプソニン貪食作用殺傷試験は以前に報告されている(Amesら,Infection and Immunity49:281−285,1985参照)。要約すると、試験は10%熱不活性化胎児ウシ血清の存在下に行い、そして新鮮ヒト血清を1:10希釈度で補体原料として使用する。血清をP.aeruginosaに氷上30分間予備曝露することにより、既存のP.aeruginosa特異的抗体があればそれを全て除去する。試験は2x107個/mlの細菌100μl、種々の希釈度の被験抗体100μl、貪食作用細胞原料としての2x107個/mlの精製新鮮ヒト多形核白血球(PMN)および補体原料としての吸収血清100μlを混合することにより実施した。コントロールにはPMN非含有とした。被験およびコントロールの試験管を一定の攪拌を行いながら37°Cで60分間インキュベートした。細胞溶解を試験するために、少量を取り出し、希釈し、寒天プレート上で培養した。一夜インキュベートした後、プレートのコロニー生育を計数した。コントロール試験管と比較した場合のコロニー形成単位(CFU)の%低下を下記式:
[(PMN非存在下の生存CFU)−(PMN存在下の生存CFU)/PMN非存在下の生存CFU]x100
に従って計算した。
【0263】
(インビボ細菌攻撃生存試験:)
マウスをケタミンおよびキシラミンで麻酔し、次に攻撃の4時間前に点鼻投与によりコントロールまたは被験のモノクローナル抗体(F429γ1およびFCOMBγ1)のいずれか50μgを投与した。次に抗体と同様の投与経路でマウスを生菌のP.aeruginosa株N13(5x107cfu/マウス)で攻撃した。生存性は攻撃の5日後まで測定した。
【0264】
(結果:)
試験した抗体は全て、親和性は異なるもののMEPに結合することができた。試験した抗体の最高濃度(2.0μg/ml)において、FCOMBγ1は最高レベルまでMEPに結合できた(図1)。この濃度における他の抗体の親和性は(漸減順序で)F431γ1、F428γ1そしてF429γ1であった。試験した抗体の最低濃度において(0.0625μg/ml)、F431γ1は最高値の親和性を示した。この低濃度における他の抗体の親和性は(漸減順序で)FCOMBγ1、F428γ1そしてF429γ1であった。
【0265】
11種類の異なるムコイドおよび非ムコイドのP.aeruginosa株のオプソニン作用殺傷を誘導するF429γ1の能力を分析した(図2)。4種のムコイド株(581、2192、FRD1および324)および7種の非ムコイドの株(324NM、2344NM、PA14NM、FRD1131、N6、N8およびN13)を使用した。F429γ1は試験あたり4〜25μgの範囲の濃度で使用した。抗体は試験した各ムコイド株に対し少なくとも60%殺傷(いずれの抗体も含まないコントロールと比較)を誘導できた。試験した7種の非ムコイド株のうち4種(324NM、N6,N8およびN13)に対しても同様に少なくとも60%殺傷を誘導できた。7種の非ムコイド株のうち2種(2344NMおよびFRD1131)においては、F429γ1は少なくとも25%殺傷を誘導できた。残余の非ムコイド株(PA14NM)はF429γ1による殺傷に対して比較的耐性であり、5%未満の殺傷が観察された。これらの結果はF429γ1抗体がムコイドおよび非ムコイドの株のオプソニン作用性の殺傷を認識して誘導できることを示している。
【0266】
P.aeruginosaの天然の単離株のオプソニン作用性の殺傷を誘導するF429γ1の能力を試験するために、4種のP.aeruginosa株を菌血症患者の血液から回収し、F429γ1誘導オプソニン作用性殺傷に対する感受性を試験した(図3)。F429γ1は0.01μg〜10.0μgの濃度範囲で使用した。使用した4種の単離株はB312、JG1、EM1および11B1874−2であった。濃度依存性の作用が全ての単離株について観察された。F429γ1の最低用量(0.01μg)において、抗体は全単離株に対し少なくとも20%殺傷を誘導する効果を有していた。1.0μgにおいて使用した場合抗体は全ての単離株において少なくとも55%殺傷を誘導することができ、単離株のうち2つは抗体に対するより大きい感受性を示していた(B312およびEM1)。
【0267】
インビボの抗体の薬効を試験するために、F429γ1およびFCOMBγ1を点鼻(50μg)によりネズミ被験体に投与し、その後生菌のP.aeruginosa株N13で攻撃した(図4)。攻撃の5日後まで生存性をモニタリングした。図4は攻撃後のマウスの生存曲線を示す。コントロール抗体投与マウス0%、FCOMBγ1投与マウス約25%およびF429γ1投与マウス100%が株N13の攻撃に対して生存できた。これらのデータはF429γ1およびFCOMBγ1がP.aeruginosaによる攻撃を受けたマウスに対して保護作用を示し、F429γ1がFCOMBγ1より高い有効性を示したことを示している。
【0268】
(同等性)
上記した明細書は当業者が本発明を実施できるためには十分であると考えられる。本明細書に開示した特定の抗体およびペプチドは、それらが本明細書において可能である本発明の特定の実施形態を説明するのみであることを意図していることから、本発明をなんら限定しないものである。従って、本明細書に記載したものと機能的に等価であるいずれのペプチド、抗体および抗体フラグメントも添付する請求項の精神および範囲内に包含される。実際に、本明細書に示し記載したもののほかに本発明の種々の変更が上記より当業者には明らかになり、添付する請求項の範囲に包含される。
【0269】
本出願において引用した全ての参考文献、特許および特許出願は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0270】
【図1】抗体濃度の関数としての直接ELISAにおけるP.aeruginosa株2192Mから単離したムコイドエキソ多糖類(MEP)へのモノクローナル抗体の結合を示すグラフである。
【図2】4〜25μgの濃度におけるモノクローナル抗体F429γ1によるムコイドまたは非ムコイドのP.aeruginosa株のオプソニン殺傷を示す棒グラフである。
【図3】モノクローナル抗体F429γ1濃度の関数としての菌血症患者から単離したP.aeruginosa株のオプソニン殺傷を示す棒グラフである。
【図4】生菌P.aeruginosaを用いた攻撃後のマウス生存に対する抗体投与の作用を示す棒グラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類に選択的に結合し、そしてP.aeruginosa MEP結合CDRのアミノ酸配列を含む単離されたペプチド、またはその機能的に等価な改変体を含有する、組成物。
【請求項2】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23、配列番号26、配列番号29および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR2が、配列番号22、配列番号25、配列番号28および配列番号31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR1が、配列番号21、配列番号24、配列番号27および配列番号30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記単離されたペプチドが、配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記単離されたペプチドが、配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記単離されたペプチドが、単離された抗体または抗体フラグメントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、インタクトな可溶性モノクローナル抗体である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、F(ab’)2フラグメント、FdフラグメントおよびFabフラグメントからなる群より選択される単離されたモノクローナル抗体フラグメントである、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、P.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、
重鎖CDRを含み、そして配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびに
軽鎖CDRを含み、そして配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列、
を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記単離されたペプチドが、検出可能な標識に結合体化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
薬学的に受容可能な担体をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、P.aeruginosa感染を阻害するために有効な量で存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、P.aeruginosa関連状態を阻害するために有効な量で存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記単離されたペプチドが、被験体中もしくは被験体からのサンプル中のP.aeruginosaを検出するために有効な量で存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記単離されたペプチドが、P.aeruginosaのムコイドエキソ多糖類に選択的に結合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
被験体におけるP.aeruginosaを検出するための方法であって、該方法は、
被験体中もしくは被験体からのサンプルへの単離されたペプチドまたはその機能的に等価な改変体の結合の試験レベルを測定する工程、および
該結合の試験レベルとコントロールとを比較する工程、
を包含し、
ここで、該単離されたペプチドが、P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類に選択的に結合し、そしてP.aeruginosa MEP結合CDRまたはその機能的に等価な改変体を含み、そして
ここで、該コントロールより大きい結合の試験レベルが、該サンプル中のP.aeruginosaの存在を示す、方法。
【請求項27】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR3である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23、配列番号26、配列番号29および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR2である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR2が、配列番号22、配列番号25、配列番号28および配列番号31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR1である、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR1が、配列番号21、配列番号24、配列番号27および配列番号30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記単離されたペプチドが、配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記単離されたペプチドが、配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記単離されたペプチドが、単離された抗体または抗体フラグメントである、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、インタクトな可溶性モノクローナル抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、F(ab’)2フラグメント、FdフラグメントおよびFabフラグメントからなる群より選択される単離されたモノクローナル抗体フラグメントである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、P.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、
重鎖CDRを含み、そして配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびに
軽鎖CDRを含み、そして配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列、
を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項44】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項45】
前記単離されたペプチドが、検出可能な標識に結合体化される、請求項26に記載の方法。
【請求項46】
前記結合の試験レベルが、インビトロで測定される、請求項26に記載の方法。
【請求項47】
前記被験体が、P.aeruginosa感染を発症する危険性がある、請求項26に記載の方法。
【請求項48】
前記被験体が、嚢胞性線維症を有する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
P.aeruginosa感染を有するか、またはP.aeruginosa感染を発症する危険性がある被験体を処置するための方法であって、該方法は、
P.aeruginosa感染を阻害するために有効量の、P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類に選択的に結合し、そしてP.aeruginosa MEP結合CDRを含む単離されたペプチドまたはその機能的に等価な改変体を、該処置の必要な被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項50】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR3である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23、配列番号26、配列番号29および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR2である、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR2が、配列番号22、配列番号25、配列番号28および配列番号31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR1である、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR1が、配列番号21、配列番号24、配列番号27および配列番号30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記単離されたペプチドが、配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記単離されたペプチドが、配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項59】
前記単離されたペプチドが、単離された抗体または抗体フラグメントである、請求項49に記載の方法。
【請求項60】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、インタクトな可溶性モノクローナル抗体である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、F(ab’)2フラグメント、FdフラグメントおよびFabフラグメントからなる群より選択される単離されたモノクローナル抗体フラグメントである、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、P.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、
重鎖CDRを含み、そして配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびに
軽鎖CDRを含み、そして配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列、
を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項67】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項68】
前記単離されたペプチドが、細胞毒性剤に結合体化される、請求項49に記載の方法。
【請求項69】
前記被験体が、P.aeruginosa感染を発症する危険性がある、請求項49に記載の方法。
【請求項70】
前記被験体が、嚢胞性線維症を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項71】
P.aeruginosa MEP結合CDRをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項72】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4からなる群より選択される、請求項71に記載の単離された核酸分子。
【請求項73】
前記プロモーターに作動可能に連結された、請求項71または72に記載の単離された核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項74】
請求項73の発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた、宿主細胞。
【請求項1】
P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類に選択的に結合し、そしてP.aeruginosa MEP結合CDRのアミノ酸配列を含む単離されたペプチド、またはその機能的に等価な改変体を含有する、組成物。
【請求項2】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23、配列番号26、配列番号29および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR2が、配列番号22、配列番号25、配列番号28および配列番号31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR1が、配列番号21、配列番号24、配列番号27および配列番号30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記単離されたペプチドが、配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記単離されたペプチドが、配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記単離されたペプチドが、単離された抗体または抗体フラグメントである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、インタクトな可溶性モノクローナル抗体である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、F(ab’)2フラグメント、FdフラグメントおよびFabフラグメントからなる群より選択される単離されたモノクローナル抗体フラグメントである、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、P.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、
重鎖CDRを含み、そして配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびに
軽鎖CDRを含み、そして配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列、
を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項17】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記単離されたペプチドが、検出可能な標識に結合体化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
薬学的に受容可能な担体をさらに含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、P.aeruginosa感染を阻害するために有効な量で存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、P.aeruginosa関連状態を阻害するために有効な量で存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記単離されたペプチドが、被験体中もしくは被験体からのサンプル中のP.aeruginosaを検出するために有効な量で存在する、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記単離されたペプチドが、P.aeruginosaのムコイドエキソ多糖類に選択的に結合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
被験体におけるP.aeruginosaを検出するための方法であって、該方法は、
被験体中もしくは被験体からのサンプルへの単離されたペプチドまたはその機能的に等価な改変体の結合の試験レベルを測定する工程、および
該結合の試験レベルとコントロールとを比較する工程、
を包含し、
ここで、該単離されたペプチドが、P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類に選択的に結合し、そしてP.aeruginosa MEP結合CDRまたはその機能的に等価な改変体を含み、そして
ここで、該コントロールより大きい結合の試験レベルが、該サンプル中のP.aeruginosaの存在を示す、方法。
【請求項27】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR3である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23、配列番号26、配列番号29および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR2である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR2が、配列番号22、配列番号25、配列番号28および配列番号31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR1である、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR1が、配列番号21、配列番号24、配列番号27および配列番号30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記単離されたペプチドが、配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記単離されたペプチドが、配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記単離されたペプチドが、単離された抗体または抗体フラグメントである、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、インタクトな可溶性モノクローナル抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、F(ab’)2フラグメント、FdフラグメントおよびFabフラグメントからなる群より選択される単離されたモノクローナル抗体フラグメントである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、P.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、
重鎖CDRを含み、そして配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびに
軽鎖CDRを含み、そして配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列、
を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項44】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項45】
前記単離されたペプチドが、検出可能な標識に結合体化される、請求項26に記載の方法。
【請求項46】
前記結合の試験レベルが、インビトロで測定される、請求項26に記載の方法。
【請求項47】
前記被験体が、P.aeruginosa感染を発症する危険性がある、請求項26に記載の方法。
【請求項48】
前記被験体が、嚢胞性線維症を有する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
P.aeruginosa感染を有するか、またはP.aeruginosa感染を発症する危険性がある被験体を処置するための方法であって、該方法は、
P.aeruginosa感染を阻害するために有効量の、P.aeruginosaムコイドエキソ多糖類に選択的に結合し、そしてP.aeruginosa MEP結合CDRを含む単離されたペプチドまたはその機能的に等価な改変体を、該処置の必要な被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項50】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR3である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23、配列番号26、配列番号29および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR3が、配列番号23および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR2である、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR2が、配列番号22、配列番号25、配列番号28および配列番号31からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記P.aeruginosa MEP結合CDRが、P.aeruginosa MEP結合CDR1である、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記P.aeruginosa MEP結合CDR1が、配列番号21、配列番号24、配列番号27および配列番号30からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記単離されたペプチドが、配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記単離されたペプチドが、配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項59】
前記単離されたペプチドが、単離された抗体または抗体フラグメントである、請求項49に記載の方法。
【請求項60】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、インタクトな可溶性モノクローナル抗体である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、F(ab’)2フラグメント、FdフラグメントおよびFabフラグメントからなる群より選択される単離されたモノクローナル抗体フラグメントである、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、P.aeruginosaのオプソニン貪食作用を増強する、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、
重鎖CDRを含み、そして配列番号5および配列番号8からなる群より選択されるアミノ酸配列、ならびに
軽鎖CDRを含み、そして配列番号6および配列番号7からなる群より選択されるアミノ酸配列、
を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号5のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項67】
前記単離された抗体または抗体フラグメントが、配列番号8のアミノ酸配列および配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項68】
前記単離されたペプチドが、細胞毒性剤に結合体化される、請求項49に記載の方法。
【請求項69】
前記被験体が、P.aeruginosa感染を発症する危険性がある、請求項49に記載の方法。
【請求項70】
前記被験体が、嚢胞性線維症を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項71】
P.aeruginosa MEP結合CDRをコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項72】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3および配列番号4からなる群より選択される、請求項71に記載の単離された核酸分子。
【請求項73】
前記プロモーターに作動可能に連結された、請求項71または72に記載の単離された核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項74】
請求項73の発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた、宿主細胞。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公表番号】特表2007−533295(P2007−533295A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524616(P2006−524616)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/015657
【国際公開番号】WO2006/009525
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(300057805)ベス イスラエル デアコネス メディカル センター (3)
【氏名又は名称原語表記】Beth lsrael Deaconess Medical Center
【住所又は居所原語表記】330 Brookline Avenue,Boston,Massachusetts 02215,United States of America
【出願人】(500471962)ザ ブライハム アンド ウイミンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/015657
【国際公開番号】WO2006/009525
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(300057805)ベス イスラエル デアコネス メディカル センター (3)
【氏名又は名称原語表記】Beth lsrael Deaconess Medical Center
【住所又は居所原語表記】330 Brookline Avenue,Boston,Massachusetts 02215,United States of America
【出願人】(500471962)ザ ブライハム アンド ウイミンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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