説明

P2X7レセプター発現を阻害する方法及び組成物

P2X7レセプターの発現または活性をダウンレギュレートするための方法及び組成物を開示する。好ましい組成物はsiNAを含む。前記方法及び組成物は、神経変性疾患、アルツハイマー病、炎症性疾患、及びある種の癌のようなP2X7レセプターの活性の増大によって特徴付けられる疾患の治療において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、P2X7レセプター(P2RX7)の高レベルの発現または活性に関連する、神経変性疾患または他の疾患の治療及び/または予防のための方法及び組成物に関する。好ましい実施態様では、本発明は、P2RX7の発現をダウンレギュレートするためのRNAi技術の使用に関する。
【0002】
神経変性疾患、脳卒中または心臓発作における再灌流障害または虚血、アルツハイマー病、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節症、喘息、鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病のような炎症性腸疾患(IBD))、アレルギー、自己免疫疾患、癌(例えば、白血病または非黒色腫皮膚癌)、皮膚関連の疾患(例えば、乾癬、湿疹、脱毛)、網膜の疾患、及び神経障害性及び炎症性の起源の疼痛の治療を含むが、それらに限らない高レベルのP2RX7に関連する疾患の治療のための方法及び組成物が提供される。
【背景技術】
【0003】
遺伝子発現をダウンレギュレートするツールとしてのRNAi
相同組換えによる遺伝子標的が一般的に使用されて、哺乳動物における遺伝子機能が決定されているが、これはコストがかかり、時間を消費する方法である。代替的に、多数の遺伝子の機能が、リボザイムまたはアンチセンス技術を使用するmRNA阻害後に決定され得る。幾つかの場合において成功しているが、これらの技術は一般的に適用することが困難であった。siRNAによる「ノックダウン」の出現は、体細胞遺伝学において衝撃的な進化をもたらし、哺乳動物における遺伝子機能の安価で迅速な分析を可能にした。
【0004】
mRNAレベルでの遺伝子発現のノックアウトの簡易的で信頼できる方法を確立することは、最近の15年に亘って分子生物学において頻発するテーマであった。細胞または生物の機能の欠損を生じさせるための試みにおいて、例えば、アンチセンス配列、リボザイム、及びキメラオリゴヌクレオチドを含む各種の分子が試験されたが、その様な分子の設計は試行錯誤に基づいており、標的遺伝子の特性に依存していた。更に、所望の効果を予測することが困難であり、多くの場合には弱い抑制のみが達成された(Braasch & Corey, 2002)。
【0005】
1990年代の初期に植物において現象が発見された後、1998年にAndy Fire及びCraig Melloが、dsRNA(二本鎖RNA)が非常に効率的な様式で遺伝子発現を特異的及び選択的に阻害する可能性がある事を虫であるCaenorhabditis elegansを使用して初めて明らかにした(Fire et al., 1998)。彼らの実験では、第1の鎖(いわゆるセンスRNA)の配列は標的メッセンジャーRNA(mRNA)の相当する領域の配列と一致する。第2の鎖(アンチセンスRNA)は、このmRNAと相補的である。結果として得られるdsRNAは、相当する一本鎖RNA分子(特にアンチセンスRNA)よりも非常に(桁違いに)効率的であることが明らかとなった。Fire et al., 1998は、RNAi(RNA干渉)現象と名付けた。この強力な遺伝子サイレンシング機構は、大多数の系統発生学的な門のうちの幾つかの種において働くことが認められている。
【0006】
RNAiは、DICERという名称の酵素がdsRNAと遭遇し、低分子干渉RNA(siRNA)と称される断片に切断する際に開始する。このタンパク質は、RNアーゼ IIIヌクレアーゼファミリーに属する。タンパク質の複合体がこれらのRNAを集め、標的mRNAのような一致する配列を有する細胞中の任意のRNAを捜し出し、破壊するためのガイドとしてそれらのコードを維持し、使用する(Bosher & Labouesse, 2000参照)。
【0007】
RNAi現象(Akashi et al., 2001)は、
・ステップ1:dsRNA認識及びスキャンプロセス
・ステップ2:RNase III活性を介するdsRNA切断及びsiRNAの産生
・ステップ3:siRNAとRISC複合体中の結合因子との結合
・ステップ4:相補的な標的mRNAの認識
・ステップ5:siRNAと相補的な領域の中心における標的mRNAの切断
・ステップ6:標的mRNAの分解及びRISC複合体の再利用
のように要約されるであろう。
【0008】
遺伝子ノックダウンのための技術としてRNAi現象を適用する試みにおいて、哺乳動物細胞が、この方法の使用を妨害し得るウイルス感染に対する各種の保護現象を発達させていることがすぐに明らかになった。実際に、非常に低レベルのウイルスdsRNAの存在がインターフェロン応答を引き起こし、続いてアポトーシスを引き起こす翻訳の広範な非特異的抑制を生じさせる(Williams, 1997, Gil & Esteban, 2000)。
【0009】
2000年には、dsRNAを使用する初めての試みが、マウス卵母細胞及び初期胚において3つの遺伝子(伸長因子1a、E-カドヘリン、及びc-mosの対照の下でMmGFP)の特異的な阻害を生じさせた。翻訳の停止、及びPKR応答は発生が続けられた胚のように認められなかった(Wianny & Zernicka-Goetz, 2000)。一年後、Ribopharma AG (Kulmbach, Germany)での研究が哺乳動物におけるRNAiの機能性を初めて明らかにした。SIRPLEX(登録商標)と称される短い(20-24塩基対)dsRNAを使用して、急性期反応を開始させずにヒトの細胞においてさえ遺伝子を特異的にスイッチオフした。同様の実験が他の研究グループによっても後に実施され、これらの結果が更に確認された(Elbashir et al., 2001; Caplen et al., 2001)。
【0010】
一年後、Paddison et al. (Paddison et al., 2002)は、ヘアピン構造に折りたたまれた低分子RNAを使用して、特定の遺伝子の機能を阻害することを試みた。この研究は、Caenorhabditis elegansにおける幾つかの遺伝子がヘアピン構造のRNAをコードすることによってRNAiを介して他の遺伝子を天然に制御していることを示す過去の研究から着想した。各種の正常及び癌のヒト及びマウスの細胞株において試験され、短いヘアピンRNA(shRNA)が、それらのsiRNAの相当するものと同様に効率的に遺伝子をサイレンシングすることが可能であった。更に、shRNAは、相当する二本鎖よりもin vivoにおいて良好な解離定数を示した。更に重要なことに、これらの著者は、細胞分裂の間に長く続く抑制効果を示すshRNAを合成するように改変したトランスジェニック細胞株を産生した(Eurogentec)。最近、低分子RNA(21-25 ntの範囲に含まれる)の他の群が、遺伝子発現のダウンレギュレートを仲介することが示された。これらのRNAは、small temporally regulated RNA (stRNA)として知られており、Caenorhabditis elegansにおいて発生の間の遺伝子発現の時間を制御すると記載されている。stRNAとsiRNAとは、明らかに類似しているが、異なる形態の作用を介することに注意するべきである(Banerjee & Slack, 2002参照)。siRNAと比較して、22 ntの長さのstRNAは、mRNAの完全性に影響を与えずに翻訳の開始後に標的mRNAの発現をダウンレギュレートする。最近の研究によって、線虫において最初に記載された2つのstRNAが、後生動物に存在する数百の更なるマイクロRNA(miRNA)を有する非常に大きなファミリーの一員であることを示している(Grosshans & Slack, 2002)。
【0011】
科学者は、Caenorhabditis elegans、Drosophila、トリパノソーマ、及び各種の他の無脊椎動物を含む複数のシステムにおいて、始めにRNAiを使用している。更に、最近は、この方法を使用して、複数のグループが各種の哺乳動物細胞株、特にHeLa細胞におけるタンパク質生合成の特異的な抑制を提供し、RNAiがin vitroの遺伝子サイレンシングのための広範に適用可能な方法であることを示している。これらの結果に基づいて、RNAiが遺伝子機能を評価(同定及びアサイン)するためのツールとして急速に認識されてきている。短いdsRNAオリゴヌクレオチドを使用するRNA干渉は、更に、部分的にのみ配列決定されている遺伝子の機能の解明を可能にするであろう。そのため、RNAiは、
・真核細胞における翻訳後レベルでの遺伝子発現の阻害。ここでは、RNAiは遺伝子機能を迅速に評価し、無効にされた際のフェノタイプを明らかにするための簡易的なツールである。
・移植後の真核生物における使用のためのRNAi技術の開発。
・RNA干渉の有力な経済的な重要性は、治療目的としての応用によって確立される。その様なものとして、RNAiはヒトの病気を治療するためのRNAに基づく薬剤を産生し得る。
のような研究において不可欠なものになるであろう。
【0012】
疾患を予防するための高レベルのP2RX7の阻害
P2Xレセプターは、細胞外のATPの結合に応答して開く膜イオンチャンネルである(North, 2002)。それらは豊富に分布しており、機能的な応答がニューロン、グリア、上皮、内皮、骨、筋肉、及び造血組織において見られる。
【0013】
プリン作動性P2X7レセプター(P2RX7)は、免疫及び造血組織の細胞を含む広範な分布を有するリガンド依存性カチオンチャンネルである(Di Virgilio et al., 2001; North 2002)。GenBank Accession Number NM_002562及びNM_177427に相当するP2RX7の2つのスプライス形態が、はじめに同定された。しかしながら、選択的スプライシングによるヒトP2RX7の7つのバリアントの同定が最近報告された(Cheewatrakoolpong et al., 2005)。
【0014】
細胞外ATPに対する短時間の曝露によるP2RX7の活性化はチャンネルを開き、Ca2+及びNa+の流入及びK+の流出を可能にし、細胞内の下流の事象のカスケードを開始させる。これらは、ホスホリパーゼDの刺激(El-Moatassim & Dubyak, 1993; Gargett et al, 1996)、膜メタロプロテアーゼの活性化(Jamieson, et al., 1996; Gu et al, 1998; Sluyter & Wiley, 2002)、及び最終的に標的細胞のアポトーシス死を誘導する細胞内カスパーゼ刺激(Ferrari et al, 1999; Humphreys et al, 2000)を含む。P2RX7の活性化は、アポトーシスのプロセスの典型的な形態的特徴である過剰な膜のブレブ形成も誘導する(Virginio et al, 1999)。
【0015】
P2RX7は、脳及び脊髄の広範な領域における急速な興奮性伝達を仲介する(North, 2002)。最近ATPは、星状細胞のカルシウムシグナリングの強力な伝達物質として同定された(Cotrina et al, 1998; Guthrie et al, 1999)。星状細胞のカルシウムシグナリングは、星状細胞が、シナプス活性、伝達物質曝露、及び外傷性の損傷を含む各種の刺激に応答するための一般的な機構のようである(Fields & Stevens-Graham, 2002)。この手段によって、局所の星状細胞が、それらの地理的な微小ドメイン内のニューロンにカルシウムシグナルを伝達する。カルシウム波動伝搬のATP依存性のプロセスは、脳内並びに脊髄の実質内において生じ、局所的な損傷の拡張における役割を有する可能性がある(Scemes et al., 2000, Fam et al, 2000)。
【0016】
先の知見は、外傷性の損傷がATPの放出とカルシウムシグナリングの双方を開始させることを示唆している(Cook & McCleskey, 2002; Neary et al., 2003, Du et al., 1999)。P2RX7が運動ニューロンを含む脊髄ニューロンで発現しており(Deuchars et al., 2001)、P2RX7はその活性化が細胞死を直接仲介するATP依存性カチオンチャンネルである(Di Virgilio et al., 1998)という事実は、外傷性の損傷の結果並びに慢性的な外傷の予防のために阻害される良好な候補としてP2RX7を標的にする。急速な衝撃による損傷後のラットに対するP2RX7アンタゴニストであるOxATPまたはPPADSの送達は、損傷周辺の部位において機能の回復を有意に改善し、細胞死を有意に減少させ、急性の脊髄損傷の組織学的な程度と機能的な後遺症の双方を低減させる。
【0017】
虚血後の、ニューロン及びグリア細胞におけるP2X7レセプターサブタイプの時間依存性のアップレギュレートも明らかにされており、in vivoの大脳の虚血の病態生理学におけるこのレセプターの役割を示唆している(Franke et al., 2004)。
【0018】
Parvathenani et alはアルツハイマー病(AD)のトランスジェニックマウスモデルの脳切片におけるP2RX7の染色パターンにおける顕著な違いを示した(Parvathenani et al, 2003)。プラーク周辺のP2RX7の強い染色は、P2X7レセプターのアップレギュレート及び/またはプラーク周辺のグリアの凝集の結果である可能性がある。ADのトランスジェニックマウスモデルにおけるP2X7レセプターポジティブ細胞とプラークとの間のin vivoの顕著な関連性は、P2RX7のアンタゴニストが、病理学的に活性化されたミクログリアの調節によるADの治療において治療的に利用できるであろうということを示唆する。
【0019】
細胞外ATPは、ヒトTリンパ芽球様細胞株における多数の下流のシグナリングの事象を活性化することが明らかにされている(Budagian et al., 2003)。P2RX7 mRNAとタンパク質の双方が、系列に非特異的な様式で11種類のヒト造血細胞株の8種類において検出されている(Zhang et al., 2004)。更に、69人の白血病及び9人の骨髄異型性症候群(MDS)患者に由来する骨髄単核細胞サンプル(各々、87人及び10人の患者の内)が、mRNAレベルでP2RX7ポジティブであった。更に、ポジティブである割合と相対的な発現レベルの双方は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、及びMDSの群において、正常なドナーの群よりも有意に高かった。一連の標準的な導入療法の後に、高いP2RX7発現の群における寛解率は、P2RX7ネガティブの群または低いP2RX7発現の群のいずれかにおいてより低かった(Zhang et al., 2004)。P2RX7の発現及び機能は、慢性リンパ芽球性白血病(CLL)に罹患している患者の臨床的な経過にも関連している(Cabrinl et al., 2005)。
【0020】
適応免疫応答の開始における中枢である樹状細胞(DC)(Hart, 1997; Stockwin et al., 2000)は、P2RX7を発現する(Mutini et al., 1999; Berchtold et al., 1999; Ferrari et al., 2000)。更に、DCにおけるP2RX7の活性化はカチオン選択的チャンネルを開き、IgEの低アフィニティーレセプターであるCD23の急速な完全に近い減少を引き起こし(Sluyter & Wiley, 2002)、慢性関節リウマチを含む慢性炎症性疾患において新たに役割を有することが明らかにされている(Bonnefy, 1996)。
【0021】
ヒト及びマウスの肺上皮細胞及び他の上皮細胞の電気生理学的なデータ及びmRNA分析は、複数のP2RX7がこれらの組織において広範に発現していること、及びそれらが先端及び基底外側の表面の双方において活性であることを示唆している(Taylor et al., 1999)。
【0022】
P2RX7は、表皮の増殖、分化、及びアポトーシスの調節のためのシグナリングシステムにおける役割を有するヒト皮膚のケラチノサイトにおいても発現している(Greig et al., 2003a; Greig et al., 2003b)。上述の効果に加え、ATPの結合に応答して、P2RX7は生物学的活性を有する炎症性サイトカインであるインターロイキンIL-1ベータの放出、それに続くLPS感作マクロファージのような免疫起源細胞の活性化に関与する(Verhoef et al., 2003)。単球/マクロファージの炎症性応答の産生におけるP2RX7の関与は、P2RX7を乾癬のような細胞仲介自己免疫疾患に対する良好な標的にする。
【0023】
P2RX7の発現は、ヒト網膜に由来するMullerグリア細胞(Pannicke et al., 2000)並びにラット網膜より単離された、微小血管網の多細胞機能性組織化を調節する微小血管周囲細胞においても検出されている(Kawamura et al., 2003)。最近、ベンゾイルベンゾイルアデノシントリホスフェート(BzATP)のようなアゴニストによるP2RX7の刺激がCa2+を増大させ、網膜神経節細胞を殺滅することが示されている(Zhang et al., 2005)。
【0024】
P2RX7活性の増大は、糖尿病患者由来のヒト線維芽細胞において検出されており、糖尿病における血管損傷に関する可能性がある病原機構を示している(Solini et al., 2004)。
【0025】
P2RX7欠失マウスを使用して実施された実験によって、変異マウスには機械的及び熱的な刺激の双方に対する炎症性及び神経障害性の過敏症が存在せず、正常な侵害受容処理が保存されていることが明らかにされている(Chessell et al., 2005)。前記ノックアウト動物はプロIL-1ベータのmRNAの生産機能に関しては減損されておらず、アジュバントの供給後のノックアウト及び野生型の動物に由来する足及び全身のサイトカインのサイトメトリー分析は、IL-1ベータ及びIL-10の放出に対する遺伝子欠失の選択的な効果を示した。この部分的な根拠は、P2RX7が慢性神経障害性疼痛患者より得られるヒト脊髄神経節及び損傷した神経においてアップレギュレートされていたという事実と共に、P2RX7が、成熟IL-1ベータの産生の調節を介して、神経障害性及び炎症性の起源の疼痛の発達における役割を担うという仮説を供する(Chessell et al., 2005)。この標的をブロックする薬剤は、広範な無痛を提供する可能性がある。
【0026】
従って、上述の実験的な根拠は、神経変性疾患、脳卒中または心臓発作における再灌流または虚血、アルツハイマー病、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節症、喘息、鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病のような炎症性腸疾患(IBD))、アレルギー、自己免疫疾患、癌(例えば、白血病、非黒色腫皮膚癌)、皮膚関連の疾患(例えば、乾癬、湿疹、脱毛)、網膜の疾患、及び神経障害性及び炎症性の起源の疼痛の治療のような疾患の有効な治療としてP2RX7の阻害を提示する。
【非特許文献1】Braasch & Corey, 2002
【非特許文献2】Fire et al., 1998
【非特許文献3】Bosher & Labouesse, 2000
【非特許文献4】Akashi et al., 2001
【非特許文献5】Williams, 1997
【非特許文献6】Gil & Esteban, 2000
【非特許文献7】Wianny & Zernicka-Goetz, 2000
【非特許文献8】Elbashir et al., 2001
【非特許文献9】Caplen et al., 2001
【非特許文献10】Paddison et al., 2002
【非特許文献11】Banerjee & Slack, 2002
【非特許文献12】Grosshans & Slack, 2002
【非特許文献13】North, 2002
【非特許文献14】Di Virgilio et al., 2001
【非特許文献15】Cheewatrakoolpong et al., 2005
【非特許文献16】El-Moatassim & Dubyak, 1993
【非特許文献17】Gargett et al, 1996
【非特許文献18】Jamieson, et al., 1996
【非特許文献19】Gu et al, 1998
【非特許文献20】Sluyter & Wiley, 2002
【非特許文献21】Ferrari et al, 1999
【非特許文献22】Humphreys et al, 2000
【非特許文献23】Virginio et al, 1999
【非特許文献24】Cotrina et al, 1998
【非特許文献25】Guthrie et al, 1999
【非特許文献26】Fields & Stevens-Graham, 2002
【非特許文献27】Scemes et al., 2000
【非特許文献28】Fam et al, 2000
【非特許文献29】Cook & McCleskey, 2002
【非特許文献30】Neary et al., 2003
【非特許文献31】Du et al., 1999
【非特許文献32】Deuchars et al., 2001
【非特許文献33】Di Virgilio et al., 1998
【非特許文献34】Franke et al., 2004
【非特許文献35】Parvathenani et al, 2003
【非特許文献36】Budagian et al., 2003
【非特許文献37】Zhang et al., 2004
【非特許文献38】Cabrinl et al., 2005
【非特許文献39】Hart, 1997
【非特許文献40】Stockwin et al., 2000
【非特許文献41】Mutini et al., 1999
【非特許文献42】Berchtold et al., 1999
【非特許文献43】Ferrari et al., 2000
【非特許文献44】Sluyter & Wiley, 2002
【非特許文献45】Bonnefy, 1996
【非特許文献46】Taylor et al., 1999
【非特許文献47】Greig et al., 2003a
【非特許文献48】Greig et al., 2003b
【非特許文献49】Verhoef et al., 2003
【非特許文献50】Pannicke et al., 2000
【非特許文献51】Kawamura et al., 2003
【非特許文献52】Zhang et al., 2005
【非特許文献53】Solini et al., 2004
【非特許文献54】Chessell et al., 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
この阻害を及ぼす新規の方法は、RNA干渉(RNAi)によって仲介されるP2RX7遺伝子発現のダウンレギュレートである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明では、高レベルのP2RX7に関連する神経変性疾患または他の疾患の治療及び/または予防のための方法を記載する。この方法は、P2RX7遺伝子の1つ以上のスプライス形態の発現のダウンレギュレートに基づく。ダウンレギュレートは、P2RX7遺伝子の1つ以上のスプライシング形態のmRNA発現の干渉を目的とする、siNAまたは低分子干渉NAと名付けられた二本鎖核酸部分の使用によって作用されて良い。前記siNAは好ましくはsiRNAであるが、修飾核酸または類似の化学合成物も本発明の範囲に含まれる。
【0029】
本発明の実施態様は、高レベルのP2RX7に関連する神経変性疾患及び他の動物(ヒトを含む)の疾患の治療における使用のための製薬組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
siNAの設計
RNAiに関する機構は未知のままであるが、特異的なdsRNAオリゴヌクレオチドの産生に必要な工程は明らかである。21-26ヌクレオチドの長さのdsRNA二本鎖が、RNA干渉において最も効果的に働くことが示されている。遺伝子内の適切な相同領域を選択することも重要である。開始コドンからの距離、G/C含量、及びアデノシンダイマーの位置のような因子が、RNAiのためのdsRNAの産生を考慮する際には重要である。しかしながら、この事の1つの帰結は、最も効率的なRNAiのために幾つかの異なる配列を試験することを必要とする可能性があることであり、これにコストがかかる可能性がある。
【0031】
1999年にTuschl et al.は、siRNAのサイレンシング効果が、それらの効率が二本鎖の長さ、3'末端の突出の長さ、及びこれらの突出の配列に依存することを示すことを解明した。この研究に基づいて、Eurogentecは、標的mRNA領域、siRNA二本鎖の配列は以下のガイドラインを使用して選択されるべきであることを推奨している。
【0032】
RNAiは複雑なタンパク質相互作用の確立に依存するため、mRNAの標的は、関連のない結合因子を避けるべきであることは明らかである。ここで、5'及び3'の翻訳されない領域(UTR)並びに開始コドンに近接する領域の双方は、調節タンパク質結合部位が豊富に存在する可能性があるため避けるべきである。そのため、siRNAの配列は、
・mRNAの配列において、AUGの開始コドンの下流または停止コドンの上流の50から100 ntに位置する領域が選択される。
・この領域において、AA(N19)、CA(N19)の配列が検索される。
・同定された配列の各々のG/Cの割合を算出する。理想的には、G/C含量が50%であるが、70%未満で30%より大きい必要がある。
・好ましくは、AAA、CCC、GGG、TTT、AAAA、CCCC、GGGG、TTTTという繰り返しを含む配列を避ける。
・mRNAの二次構造によるアクセシビリティの予測も実施する。
・唯一の遺伝子が不活性化されることを確実にするために、過去の基準に最も適合するヌクレオチド配列でBLASTも実施する(すなわち、NCBI ESTデータベース)。
のように選択される。
【0033】
結果の解釈を最大化するために、以下の注意:
・常に、センス及びアンチセンス一本鎖を別々の実験で試験する。
・スクランブルsiRNA二本鎖を試験する。これは目的のsiRNAと同一のヌクレオチドの組成を有するが、任意の他の遺伝子(目的の遺伝子を含む)に対する有意な配列相同性を欠いているべきである。
・可能であれば、サイレンシングプロセスの特異性を調節するために、2つの独立したsiRNA二本鎖で同一の遺伝子をノックダウンする。
がsiRNAを使用する際には為されるべきである。
【0034】
実際に、選択された遺伝子の各々が、最適なオリゴヌクレオチドの設計のための上述の可変要素の全てを考慮に入れた予測プログラムにおけるヌクレオチド配列として導入される。このプログラムは、siRNAによって標的とされやすい領域に関して、任意のmRNAヌクレオチド配列をスキャンする。この分析の結果は、可能性があるsiRNAオリゴヌクレオチドのスコアである。最も高いスコアが、典型的に化学合成によって作製される二本鎖RNAオリゴヌクレオチドを設計するために使用される(他の長さも可能であるが、典型的には21bpの長さ)。
【0035】
siRNAに加え、修飾ヌクレオチドも使用されて良い。当該技術分野でよく知られた幾つかの化学修飾を試験することが意図される。これらの修飾はsiNAの安定性またはアベイラビリティーを増大することを目的とする。適切な修飾の例は、参照によって本明細書に含まれる、下記の文献に記載されている。
【0036】
2つのヌクレオチド3'突出を有する21-merのsiRNA二本鎖の3'末端ヌクレオチド突出部分をデオキシリボヌクレオチドで置き換えることは、RNAi活性に対して不利な効果を有さないことが複数の研究によって示されている。siRNAの各末端上の4つのヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドで置き換えることはよく許容されるが、デオキシリボヌクレオチドでの完全な置換はRNAi活性を生じないことが報告されている(Elbashir 2001)。更に、Elbashir et al.は、2'-O-メチルヌクレオチドでのsiRNAの置換はRNAi活性を完全に消失させることも報告している。
【0037】
WO 2005/044976に記載のアフィニティー修飾ヌクレオチドが使用されて良い。この文献は、標的mRNA及び/または相補的なsiNA鎖における相補的なヌクレオチドに対するアフィニティーを増大または低減するように修飾したヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを記載している。
【0038】
GB2406568は、分解に対する耐性の改善または取り込みの改善を与えるために化学的に修飾されている代替的な修飾オリゴヌクレオチドを記載している。その様な修飾の例は、ホスホロチオエートのヌクレオチド内リンケージ、2'-O-メチルリボヌクレオチド、2'-デオキシ-フルオロリボヌクレオチド、2'-デオキシリボヌクレオチド、「一般的な塩基(universal base)」ヌクレオチド、5-C-メチルヌクレオチド、及び逆向きデオキシ塩基の基(inverted deoxybasic residue)の結合を含む。
【0039】
WO 2004/029212は、siRNAの安定性の促進または標的効率の増大のために修飾されているオリゴヌクレオチドを記載している。修飾は、siRNAの2つの相補鎖の間の化学的な架橋及びsiRNAの鎖の3'末端の化学的な修飾を含む。好ましい修飾は、内部の修飾、例えば糖の修飾、核酸塩基の修飾、及び/または主鎖の修飾である。2'-フルオロ修飾リボヌクレオチド及び2'-デオキシリボヌクレオチドが記載されている。
【0040】
WO2005/040537は、本発明に使用されて良い修飾オリゴヌクレオチドを更に記載している。
【0041】
dsNA及び修飾dsNAの使用と同様に、本発明は短いヘアピンNA(shNA){siNA分子の2つの鎖が、ヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーであって良いリンカー領域で結合されて良い}を使用して良い。
【0042】
標的領域に完全に相補的なsiNAに加えて、相同領域を標的とするために分解siNA配列が使用されても良い。WO 2005/045037は、例えば更なる標的配列を提供し得る標準的でない塩基対(例えばミスマッチ及び/またはゆらぎ塩基対)を含ませることによって、その様な相同領域を標的とするsiNA分子の設計を記載している。ミスマッチが同定される場合は、標準的でない塩基対(例えば、ミスマッチ及び/またはゆらぎ塩基対)が、2つ以上の遺伝子配列を標的とするsiNA分子を産生するために使用されて良い。制限されない例として、UU及びCC塩基対のような標準的でない塩基対は、配列相同性を共有する各種の標的に関する配列を標的とすることが可能であるsiNA分子の産生に使用される。そのように、本発明のsiNAを使用する利点は、相同遺伝子の間で保存されているヌクレオチド配列と相補的な核酸配列を含むように、単一のsiNAを設計することが可能である事である。この方法では、異なる遺伝子を標的とする2つ以上のsiNA分子を使用する代わりに、単一のsiNAを2つ以上の遺伝子の発現を阻害するために使用できる。
【0043】
本発明の好ましいsiNA分子は二本鎖である。本発明のsiNA分子は、いずれの突出しているヌクレオチドを含まない平滑末端を含んで良い。1つの実施態様では、本発明のsiNAは1つ以上の平滑末端を含んで良い。好ましい実施態様では、siNA分子は3'突出を有する。本発明のsiNA分子は、nヌクレオチド(5≧n≧1)の3'突出を有する二本鎖核酸分子を含んで良い。Elbashir (2001)は、21ヌクレオチドのsiRNA二本鎖が3'末端2ヌクレオチド突出を含有する際に最も活性があることを示している。
【0044】
動物からヒトの臨床試験への移行を容易にするために、候補オリゴヌクレオチドを種間の配列保存に関して更にフィルターにかける。本発明の好ましい実施態様では、保存されているオリゴヌクレオチドが使用される;この事が、単一のオリゴヌクレオチド配列で動物モデルとヒトの臨床試験の双方で使用することを可能にする。
【0045】
選択的スプライシングによって生じるP2RX7転写物に相当するGenBank Accession Numberを図1に示す。
【0046】
RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列を図2に示す。挙げている配列は、siNAによって標的とされるDNA配列である。従って、本発明は示されているDNA配列と相補的な配列を有するNA二本鎖を使用するであろう。
【0047】
図2に示されている配列は制限するものではない。実際に、標的DNAがAAまたはCAによって先行される必要はない。更に、任意の連続する配列によって隣接されている図2に含まれる配列によって、標的DNAが構成されて良い。
【0048】
in vitro試験
siRNA二本鎖の入手
好ましくは、RNAは、適当に保護されたリボヌクレオチドホスホルアミダイトと従来のDNA/RNA合成機を使用して化学的に合成される。2'-デオキシまたは2'-O-メチルオリゴリボヌクレオチドによるsiRNA二本鎖の1つまたは双方の置換は、ハエ抽出物においてサイレンシングを消失させた(Elbashir et al. 2001)。しかしながら、哺乳動物細胞では、2'-O-メチルオリゴリボヌクレオチドによるセンスsiRNAの置換が可能な様である(Ge et al. 2003)。
【0049】
最も簡易的には、各種の品質及びコストのRNA合成製品を販売している商業的なRNAオリゴ合成の業者より、siRNAが得られる。一般的には、21-nt RNAは合成するのが困難ではなく、RNAiに適する品質で容易に提供される。
【0050】
RNA合成試薬の供給業者は、Proligo (Hamburg, Germany)、Dharmacon Research (Lafayette, CO, USA)、Glen Research (Sterling, VA, USA)、ChemGenes (Ashland, MA, USA)、及びCruachem (Glasgow, UK)、Qiagen (Germany)、Ambion (USA)、及びInvitrogen (Scotland)を含む。以上のカスタムRNA合成会社は、標的確認のためのライセンスと共にsiRNAを提供する資格を有する。特に、本発明者のsiRNA供給業者は、siRNAのための伝統的なカスタム化学合成サービスを提供し、siRNAをHPLC精製し、RNアーゼを含まない水と共に乾燥した形態で提供する会社である、Ambion、Dharmacon、及びInvitrogenである。更なるsiRNAに関連する製品及びサービスへのリンク、並びにRNAi及びsiRNAの方法論の主なウェブの情報源は、上述の供給業者のウェブサイトにおいて見ることが可能である。
【0051】
アニーリング工程は、一本鎖RNA分子を使用する際に必要である。滅菌されており、RNアーゼが存在しない条件下で全ての作業工程を実施することが重要である。RNAをアニールするために、オリゴを260ナノメートル(nm)におけるUV吸収によってはじめに定量することが必要である。Elbashir et al. (2001)に基づく以下のプロトコル:
・各RNAオリゴを別々に分取し、希釈して50μMの濃度にする。
・30μlの各RNAオリゴ溶液と15μlの5×アニーリングバッファーとを混合する(最終的なバッファー濃度は:100 mM 酢酸ナトリウム、30 mM HEPES-KOH pH 7.4、2 mM 酢酸マグネシウム。最終的な容量は75μlである)。
・溶液を1分間90℃でインキュベートし、15秒間チューブを遠心分離して、1時間37℃に静置し、環境温度で使用する。その溶液は-20℃で凍結保存することが可能であり、5回まで凍結融解することができる。siRNA二本鎖の最終的な濃度は通常20μMである。
をアニーリングに使用する。代替的に、既にアニールされているdsRNAを供給業者より購入して良い。
【0052】
化学修飾されている核酸を使用しても良い。例えば、使用して良い修飾のタイプの概要が、参照によって本明細書に含まれるWO 03/070744に記載されている。この文献の第11から21頁に特に注目される。他の可能な修飾は上述のものである。当業者は、RNA分子に含まれて良い他のタイプの化学修飾に気づくであろう。
【0053】
「in vitro」システム
siRNA干渉の特異性を調べるために、標的遺伝子を発現する細胞培養物及び器官培養物の双方を使用した。
【0054】
これらの実験に使用した細胞はマウス筋肉細胞であるC2C12であり、器官培養物は脊髄切片であった。P2RX7の発現レベルは、相当するsiRNA二本とインキュベートした後に分析した。培養細胞において特異的なフェノタイプにsiRNAのノックダウンを関連させるために、標的タンパク質の減少または少なくとも標的mRNAの減少を明らかにする必要がある。
【0055】
標的遺伝子のmRNAレベルは、リアルタイム定量的PCR(qRT-PCR)によって定量することが可能である。更に、タンパク質レベルは、標的タンパク質の減少の直接的なモニターを可能にする各種の標的に対する特異的な抗体を用いるウエスタンブロット分析のような、当該技術分野においてよく知られている各種の方法において測定されて良い。
【0056】
細胞培養物におけるsiRNA二本鎖のトランスフェクション
当該技術分野でよく知られている技術の幾つかの例は以下のものである:Lipofectamine 2000試薬(Invitrogen)のようなカチオン性脂質を使用してsiRNA二本鎖の単独のトランスフェクションをし、トランスフェクションの24、48、及び72時間後にサイレンシングに関するアッセイを実施することが可能である。
【0057】
典型的なトランスフェクションプロトコルは以下のように実施されて良い:6ウェルプレートの1つのウェルに関して、100または200nMの最終的な濃度のsiRNAを使用してトランスフェクトする。トランスフェクションの前日に、DMEM、10%血清、抗生物質、及びグルタミンを含有する3mlの適当な増殖培地中で、1ウェル当たり2-4×105の細胞を播種し、通常の増殖条件下(37℃及び5% CO2)で細胞をインキュベートする。トランスフェクションの当日に、細胞は30-50%コンフルエントである必要がある。250μlのDMEMで12.5μl、20μMのsiRNA二本鎖(100 nMの最終的な濃度に相当する)または25μl、20μMのsiRNA二本鎖(200 nMの最終的な濃度に相当する)を希釈し、混合する。更に、6μlのLipofectamine 2000を250μlのDMEMで希釈して混合する。室温で5分のインキュベート後に、希釈したオリゴマー(siRNA二本鎖)と希釈したLipofectamineを混合して、室温で20分間のインキュベートの間に複合体を形成させる。その後、低量の抗生物質を含む2mlの新しい増殖培地と共に、その複合体を細胞に滴々と添加し、プレートを前後に振動させて穏やかに混合してトランスフェクション複合体の均一な分配を確実にする。通常の増殖条件下でその細胞をインキュベートし、その次の日に、複合体を除去し、新しい完全な培地を添加する。遺伝子のサイレンシングをモニターするために、トランスフェクトの24、48、及び72時間後に細胞を回収する。
【0058】
トランスフェクション効率は細胞のタイプだけでなく、細胞の継代数及びコンフルエントの程度にも依存する可能性がある。siRNA-リポソーム複合体の形成時間及び方法(例えば、ボルテックスに対する転倒)も重要である。低いトランスフェクション効率は、サイレンシングが成功しない最も頻度の高い原因である。良好なトランスフェクションは重要な問題であり、各々の新しく使用される細胞について注意深く試験する必要がある。トランスフェクション効率は、レポーター遺伝子、例えばCMV駆動EGFP発現プラスミド(例えばClontech社製)またはB-Gal発現プラスミドをトランスフェクトして、翌日に位相差及び/または蛍光顕微鏡によって評価して試験して良い。
【0059】
siRNA二本鎖の試験
標的タンパク質の存在量及び寿命(代謝回転)に依存して、ノックダウンフェノタイプが1から3日後またはその後に明らかになるであろう。フェノタイプが認められない場合は、タンパク質の減少を免疫蛍光またはウエスタンブロットによって確認して良い。
【0060】
トランスフェクション後に、細胞から抽出される総RNAのフラクションをDNアーゼIで事前処理し、ランダムプライマーを使用する逆転写に使用する。プレmRNAの増幅の対照とするために、少なくとも1つのエクソン-エクソンをカバーする特異的なプライマー対を使用してPCRで増幅する。標的ではないmRNAのRT/PCRも対照として必要である。標的タンパク質の減少は検出不可能であるにもかかわらず、mRNAが効果的に減少することは、多くの安定なタンパク質の貯蔵が細胞内に存在する可能性があることを示唆している可能性がある。あるいは、リアルタイムPCR増幅を使用して、mRNAの低減または消失をより正確に試験することができる。リアルタイム逆転写(RT)PCRは、開始時の鋳型の量を最も特異的、高精度、及び再現的に定量する。リアルタイムPCRは、ライトサイクラー装置において各PCRサイクルの間の複製配列の生産の指標として反応の間に発光する蛍光をモニターする。このシグナルは、反応におけるPCR生成物の量に応じて増大する。各サイクルの蛍光の発光量を記録することによって、対数増殖期の間のPCR反応をモニターすることが可能であり、そこでPCR生成物の量における最初の有意な増大は標的の鋳型の開始時の量に相関する。
【0061】
細胞培養物において異なって発現しているP2RX7遺伝子の干渉パターンを確認するために、qRT-PCRを製造業者(Roche)のプロトコルに従って実施した。定量的qRT-PCRのために、約500 ngの総RNAを逆転写に使用して、続いてMaster SYBR Green Iを含有する反応混合物中の各遺伝子に特異的なプライマーを使用してPCR増幅を実施する。PCR条件は、91℃で30分の最初のステップ、それに続いて95℃で5秒、62℃で10秒、及び72℃で15秒の40サイクルであった。b-アクチンmRNAの定量をデータの標準化のための対照として使用した。選択された細胞内/内部の対照の遺伝子発現がより大量であり、サンプル間で総RNAに対する割合で一定のままである際に、相対的な遺伝子発現の比較が最も効果的である。活性を有する参照として不変の細胞内の対照を使用する事によって、各反応に添加した総RNAの量における違いに関して、標的mRNAの定量を標準化することが可能である。ライトサイクラーで得られる増幅曲線を、製造業者のプロトコルに従ってin vitroで転写されたサイトカインRNA鋳型を標的とする対照キットRNAと比較して分析した。増幅されたPCR生産物の特異性を評価するために、融解曲線分析を実施した。結果として得られた融解曲線が、プライマーダイマーと特異的なPCR生産物との間の区別を可能にする。
【0062】
器官培養物におけるsiRNA二本鎖のトランスフェクション
脊髄器官培養物を得るために、実験プロトコルを以下のように実施した。脊髄を6から8週齢のラットより抽出し、D-グルコース(6.5 mg/ml)及び15 mMヘペスを添加したゲイ培地を含有する氷冷解剖媒体に入れた。器官培養物を産生するために、胸部脊髄より500μmの切片を、組織細切器を使用して得て、アール塩溶液を添加した滅菌MEMに入れた。脊髄をMillicell培養プレートに移した。4から6の切片を有する各プレートを、1.25mlの抗生物質を含まない培地(アール塩及びグルタミンを有する50% MEM、25% ハンクス安定援用液、並びに25%ウシ血清、D-グルコース(6mg/ml)及び20mM ヘペスを添加した)を含有する6ウェルプレートのウェルに入れた。
【0063】
通常の増殖条件下(37℃及び5% CO2)で切片をインキュベートして、翌日に媒体を交換し、その後一週間に三回、媒体を交換した。
【0064】
これらの条件で、脊髄器官培養物は、少なくとも15日間それらの構造的な完全性を維持し、高レベルのP2RX7転写物を提供する。また、定量的PCRアッセイによって調べられるP2RX7遺伝子発現は、培養期間の間にいずれの相対的な変化も示さない。
【0065】
siRNAトランスフェクションを実施するために、当該技術分野でよく知られている幾つかのプロトコル及び技術が存在する。この場合では、遺伝子発現の阻害の促進を確認するために、ダブルトランスフェクションが必要とされる。ダブルsiRNAトランスフェクションは、Lipofectamine 2000試薬(Invitrogen)のようなカチオン性脂質を使用して実施され、遺伝子発現のサイレンシングが各種の時点でアッセイされる。
【0066】
典型的なトランスフェクションのプロトコルは以下のように実施されて良い。4から6切片を含有する各Millicell培養プレートに、特定の濃度のsiRNAを使用してトランスフェクトする。siRNAのトランスフェクションのためのLipofectamine 2000試薬のプロトコルに従って、50μlのMEMでsiRNA二本鎖を希釈して混合する。異なるチューブでは、Lipofectamine 2000を50μlのMEMで希釈して混合する。室温で5分インキュベートした後に、希釈したsiRNAと希釈したLipofectamineを混合して、室温で20分間のインキュベートの間に複合体を形成させる。その後、その複合体を切片全体に滴々と添加する。通常の増殖条件下で切片をインキュベートし、翌日に前記複合体を除去して、新しい完全な培地を添加する。必要な際には、最初のLipofectamine処理の48時間後に前記プロトコルを上述のようにして繰り返す。
【0067】
トランスフェクションの効率は、細胞または組織のタイプだけでなく、それらの培養特性にも依存する可能性がある。siRNA-リポソーム複合体の形成の時間及び方法も重要である。低いトランスフェクション効率は、サイレンシングが成功しない最も頻発する原因である。良好なトランスフェクションは重要な問題であり、各々の新しく使用される細胞株について注意深く試験する必要がある。トランスフェクション効率は、レポーター遺伝子、例えばCMV駆動EGFP発現プラスミド(例えばClontech社製)またはB-Gal発現プラスミドをトランスフェクトして、翌日に位相差及び/または蛍光顕微鏡によって評価して試験して良い。脊髄組織培養物は、β-Galをコードするコンストラクトレポーターを使用して成功裏にトランスフェクトされた。バクテリアのβ-Galの酵素活性は、適当な市販の染色セットを使用して、トランスフェクトした組織より容易にアッセイできる。
【0068】
製薬組成物
本発明は、1つ以上の種類のsiNA分子の同時の投与を含んで良い。これらの種類は1つ以上の標的遺伝子を標的とするために選択されて良い。
【0069】
本発明のsiNA分子及びその製剤または組成物は、当該技術分野で一般的に知られているように、興味がある器官(例えば、精髄、脳など)に直接または局所的(例えば局在的)に投与して良い。例えば、siNA分子は、被験者への投与のためのリポソームを含む送達媒体を含んで良い。担体及び希釈剤及びそれらの塩が、製薬学的に許容される製剤に存在して良い。核酸分子は、リポソームにおけるカプセル化、イオントフォレシス、または生体分解ポリマー、ヒドロゲル、シクロデキストリンポリ(乳酸-コグリコール酸)(PLGA)、及びPLCAミクロスフェア、生体分解ナノカプセル、及び生体接着ミクロスフェアのような他の媒体に含ませること、あるいはタンパク質性ベクターを含むが、それらに制限されない当業者に既知の各種の方法によって細胞に投与されて良い。他の実施態様では、本発明の核酸分子は、ポリエチレンイミン及びその誘導体、例えばポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-GAL)またはポリエチレンイミン-ポリエチレングリコール-トリ-N-アセチルガラクトサミン(PEI-PEG-トリGAL)誘導体と製剤化または複合体化しても良い。
【0070】
本発明のsiNA分子は、膜破壊剤及び/またはカチオン性脂質若しくはヘルパー脂質分子と複合体化しても良い。
【0071】
本発明で使用しても良い送達システムは、例えば水性及び非水性ゲル、クリーム、多重エマルション、ミクロエマルション、リポソーム、軟膏、水性及び非水性溶液、ローション、エアロゾル、炭化水素ベース、及び粉末を含み、可溶化剤、浸透促進剤(例えば脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、及びアミノ酸)、並びに親水性ポリマー(例えばポリカルボフィル及びポリビニルピロリドン)のような添加剤を含有して良い。1つの実施態様では、製薬学的に許容される担体はリポソームまたは経皮促進剤である。
【0072】
本発明の医薬製剤は、投与、例えばヒトを含む細胞または被験者への全身的若しくは局所的投与に適する形態である。適切な形態は、部分的に、使用または摂取の経路(例えば経口、経皮、または注射)に依存する。他の因子は当該技術分野で知られており、毒性及び組成物または製剤が効果を奏することを妨げる形態の様な検討を含む。
【0073】
本発明は、製薬学的に許容される媒体または希釈剤中に、製薬学的に有効量の所望の化合物を含む貯蔵または投与のために調製される組成物も含む。治療的な使用のために許容される媒体または希釈剤は、製薬学的な分野でよく知られている。例えば保存剤、安定剤、染料、及び香味剤が挙げられる。これらは、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びpヒドロキシ安息香酸のエステルを含む。更に、抗酸化剤及び懸濁剤が使用されて良い。
【0074】
製薬学的に有効な用量は、疾患状態の発生を予防、阻害、または疾患状態を治療する(ある程度まで症状を軽減、好ましくは症状の全てを軽減する)ために必要とされる用量である。製薬学的な有効用量は、疾患のタイプ、使用される組成物、投与の経路、治療される哺乳動物のタイプ、関係する特定の哺乳動物の身体的な特性、併用薬、及び当業者が認識するであろう他の因子に依存する。
【0075】
一般的には、0.1mg/kgから100mg/kgの間の活性成分の1日の体重当たりの量が投与される。
【0076】
本発明の製剤は、従来の非毒性の製薬学的に許容される担体、アジュバント、及び/または媒体を含有する単位用量製剤で投与されて良い。製剤は、経口的な使用に適する形態、例えば錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁物、分散粉末若しくは顆粒、エマルション、硬質若しくは軟質カプセル、またはシロップ若しくはエリキシルであって良い。経口的な使用が意図される組成物が、製薬組成物の製造のための当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製されて良く、その様な組成物は、製薬学的に洗練され快適な製剤を提供するために甘味剤、香味剤、着色剤、または保存剤の1つ以上を含有して良い。錠剤は、錠剤の製造に適切な非毒性の製薬学的に許容される添加剤との混合物において、活性成分を含有する。
【0077】
これらの添加剤は、例えば、不活性希釈剤;例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム;顆粒化及び崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、またはアカシア;並びに潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであって良い。錠剤はコーティングされなくて良く、既知の技術によってコーティングされても良い。ある場合では、その様なコーティングが既知の技術によって調製されて、胃腸管における崩壊及び吸収を遅延させ、それにより長期間にわたる持続的な作用を提供して良い。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような時間を遅延させる物質が使用されて良い。
【0078】
経口的な使用のための製剤は、活性成分が不活性固形希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合されている硬質ゼラチンカプセル、あるいは活性成分が水または油媒体、例えばピーナッツオイル、液状パラフィン、またはオリーブオイルと混合される軟質ゼラチンカプセルとして提供されても良い。
【0079】
水性懸濁物は、水性懸濁物の製造のために適切な添加剤との混合物中に活性物質を含有する。その様な添加剤は、懸濁剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロプロピル-メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアカシアゴムであり;分散または湿潤剤は、天然のホスファチド、例えばレシチン、脂肪酸とアルキレンとの縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、または長鎖脂肪族アルコールとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、または脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンである。水性分散物は、1つ以上の保存剤、例えば、エチル、またはn-プロピル p-ヒドロキシベンゾエート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、並びに1つ以上の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンを含有しても良い。
【0080】
油性懸濁物は、植物油、例えばピーナッツオイル、オリーブオイル、ゴマ油、若しくはココナッツオイル、または鉱物油、例えば液体パラフィン中に活性成分を懸濁することによって製剤化されて良い。油性懸濁物は、増粘剤、例えばミツロウ、硬質パラフィン、またはセチルアルコールを含有して良い。甘味剤及び香味剤を添加して、快適な経口製剤を提供して良い。これらの組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸の添加によって保存されて良い。
【0081】
水の添加による水性懸濁物の調製に適切な分散粉末及び顆粒は、分散剤若しくは湿潤剤、懸濁剤、及び1つ以上の保存剤との混合物中に活性成分を提供する。適切な分散剤若しくは湿潤剤または懸濁剤は、既に上述して例示している。更なる添加剤、例えば甘味剤、香味剤、及び着色剤が存在しても良い。
【0082】
本発明の製薬組成物は水中油型エマルションの形態であって良い。油相は植物油または鉱物油、あるいはこれらの混合物であって良い。適切な乳化剤は、天然ゴム、例えばアカシアゴム若しくはトラガカントゴム、天然のホスファチド、例えばダイズ、レシチン、及び脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、及びエチレンオキシドと前記部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであって良い。エマルションは、甘味剤及び香味剤を含有しても良い。
【0083】
シロップ及びエリキシルは、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、グルコース、またはスクロースと共に製剤化して良い。その様な組成物は、粘滑剤、保存剤、香味剤、及び着色剤を含有しても良い。前記製薬学的な組成物は、滅菌している注射可能な水性または油性の懸濁物の形態であって良い。
【0084】
上述の適切な分散剤または湿潤剤、及び懸濁剤を使用する既知の技術に従って、この分散物が製剤化されて良い。
【0085】
滅菌されている注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒における滅菌されている注射可能な溶液若しくは懸濁物、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であっても良い。とりわけ、使用されて良い許容される媒体及び溶媒は、水、リンガー溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液である。更に、滅菌されている、不揮発性油が溶媒または懸濁媒体として従来のように使用される。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の普通の不揮発性油が使用されて良い。更に、オレイン酸のような脂肪酸が注射可能な製剤に使用されて良い。
【0086】
本発明の核酸分子は、例えば薬剤の直腸投与のために坐剤の形態で投与されても良い。これらの組成物は、常温で固体であるが直腸の温度で液体であるため、直腸で融解して薬剤を放出する適切な無刺激性の添加剤と薬剤とを混合することによって調製されて良い。その様な物質はココアバター及びポリエチレングリコールを含む。
【0087】
本発明の核酸分子は、滅菌されている媒体中で非経口的に投与されて良い。前記薬剤は、媒体及び使用される濃度に依存して、媒体中に懸濁または溶解されて良い。有利には、局所的な麻酔剤、保存剤、及び緩衝剤のようなアジュバントが前記媒体中に溶解されて良い。
【0088】
任意の特定の被験者のための特定の用量は、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食餌、投与時間、投与経路、及び排出速度、薬剤の組み合わせ、並びに治療される特定の病気の重度を含む各種の因子に依存すると解される。
【0089】
ヒトを除く動物に対する投与に関しては、前記組成物が動物の食餌または飲み水に添加されても良い。動物が治療に適当な量の組成物をその食餌と共に摂取するように、動物の食餌及び飲み水の組成物を製剤化することは簡便である可能性がある。食餌または飲み水に添加するためのプレミックスとして組成物を提供することも簡便である可能性がある。
【0090】
本発明の核酸分子は、全体的な治療効果を増大するために他の治療用化合物と組み合わせて、被験者に投与しても良い。症状を治療するための複数の化合物の使用は有利な効果を増大すると共に、副作用の存在を低減し得る。
【0091】
あるいは、本発明のあるsiNA分子は真核生物プロモーターより細胞内で発現されて良い。siNA分子を発現することができる組換えベクターは標的細胞に送達され、持続的に存在し得る。代替的に、核酸分子を一過性に発現するために提供されるベクターが使用されて良い。その様なベクターは必要であれば繰り返し投与されて良い。一度発現すると、siNA分子は標的mRNAと相互作用して、RNAi応答を生じさせる。siNA分子を発現するベクターの送達は全身的であって良く、例えば静脈内若しくは筋肉内投与によって、被験者から摘出した標的細胞に投与し、続いて被験者に再導入することによって、または所望の標的細胞に導入することを可能にし得る任意の他の方法によって送達されて良い。
【実施例】
【0092】
(実施例1)
In vitroアッセイ
P2RX7標的遺伝子に対するsiRNAを分析した。最初のステップは細胞培養物における実験の実施であった。P2RX7標的遺伝子のために、上述の規則に従う特定のソフトウェアを使用して幾つかのsiRNAを設計した。最も良好な特性を有するものを選択して、試験した。siRNAをC2C12のような細胞培養物に適用した。標的遺伝子へのsiRNAの効果を製造業者のプロトコルに従ってリアルタイムPCRによって分析した。標的遺伝子の転写物のレベルをハウスキーピング遺伝子であるアクチンを使用して標準化した。試験された幾つかの異なるsiRNA及び標的遺伝子の干渉における異なる効力が図3に含まれる。RNAを、異なるsiRNAで48時間処理したC2C12細胞より調製した。サンプルを特異的なプライマーを使用するリアルタイムPCRによって分析した。値は、対照細胞に対するアクチンに対して標準化された異なる転写物の発現レベルの平均を示す。siRNA1、siRNA2、及びsiRNA3は、以下の図2に記載されたヒト配列に相同性を有するマウス配列を標的とする。siRNA1は、ヒト配列番号37に相同性を有するマウス配列を標的とする;siRNA2は、ヒト配列番号78に相同性を有するマウス配列を標的とする;並びにsiRNA3は、ヒト配列番号92に相同性を有するマウス配列を標的とする。値は、対照遺伝子の発現を超えるsiRNA干渉における標準化されたmRNAレベルの割合の平均及びその標準偏差を表す。siRNA処理後のP2RX7転写物のレベルは、対照細胞と比較するとsiRNA2及びsiRNA3と共に非常に低減した。遺伝子発現の低減は、siRNAサイレンシングにおける効率に依存する。実際に、siRNA2処理は、P2RX7遺伝子発現を対照と比較して58%まで低減させた。
【0093】
(実施例2)
In vitro時間-用量応答
siRNA2の効率を評価するために、更なる処理をC2C12細胞において実施した。細胞をsiRNA2を使用してトランスフェクトし、P2RX7転写物のレベルを24、48、及び72時間でリアルタイムPCRによって分析した。転写物のレベルは、siRNA処理後のこの時点で有意に低減した。図4は、各時点における対照遺伝子発現を超えるsiRNA干渉におけるP2RX7の標準化されたmRNAレベルの割合の平均及びその標準偏差を示す。更に、siRNAの用量依存性を分析した。図4は、2つの異なるsiRNAの適用(100及び200nm)の結果を示す。200nmのsiRNAの適用は、P2RX7のダウンレギュレートにおいて100nmよりも効果的であり、処理の特異性及び有効性の双方を確認した。
【0094】
(実施例3)
器官培養物
siRNAの脊髄への適用の前に、脊髄切片培養物に基づいて確立されたモデルを使用するin vitro実験を実施した。最初の外傷後に展開する複雑なプロセスを理解するために、適当な実験モデルを使用することは重要である。この実験モデルは、脊髄損傷後に生じる細胞死の一次的な及び二次的な機構の発見を利用し、マウスモデルにおけるP2RX7干渉の効果の試験前のステップを表わす。幾つかのin vivoモデルは、慢性的な症状を試験するために特徴付けられている。しかしながら、in vivoシステムの複雑さのために、結果の解釈はより困難である可能性があり、動物モデルを維持するコストは非常に高い。外傷後の事象を試験するためには、in vitroモデルが好ましく、これらは環境上の適切な調節を可能にし、簡便であり、再利用することが可能である。
【0095】
実験の前に、培養物の形態学的な完全性を顕微鏡によって調べ、このモデルにおける送達を上述のプロトコルによってレポーター遺伝子(β-gal)をトランスフェクトして実施した。β-galコンストラクトで細胞をトランスフェクトする上で、脊髄は固定化し、洗浄して、新しく調製したX-gal染色溶液で染色した。青色の染色が24時間後に現れ、成功裏に送達されたことを示す。
【0096】
2つのsiRNAは、siRNAH及びsiRNARの異なる基準に従って選択した。siRNAHは、図2のヒト配列番号58に相同性を有するラット配列を標的とし、一方、siRNARは、図2のヒト配列番号37に相同性を有する特定のソフトウェアによって選択されたラット内の最も良好な候補配列を標的とする。脊髄培養物は上述の様に得た。各プレートは相当するsiRNAを使用してダブルトランスフェクトされ、遺伝子発現を最初のトランスフェクトの72及び96時間後にリアルタイムPCRによってアッセイした。
【0097】
図5は、代表的な実験を示す。値は、参照するハウスキーピング遺伝子として18Sを使用して標準化したsiRNA処理後の対照に対するmRNA転写物の割合を表わす。過去の実験は、脊髄培養物分析においてβ-アクチンよりも良好な参照として18Sを示した。P2RX7転写物の減少は72時間で約70%よりも高く、96時間ではより減少し、約80-90%である。この一連の実験は、in vivoモデルに非常に近い器官培養物におけるP2RX7発現を低減させるRNAiの能力を確証する。
(参考文献)






【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】選択的スプライシングによって生じるP2RX7転写物に相当するGenBank Accession Numberを図1に示す。
【図2A】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列(配列番号1から44)を図2に示す。
【図2B】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列(配列番号45から96)を図2に示す。
【図2C】RNAiの対象とされる選択されたオリゴヌクレオチド配列(配列番号97から109)を図2に示す。
【図3】図3は、siRNA処理はP2RX7遺伝子転写物のレベルを低減することを示す。RNAを48時間、各種のsiRNAで処理したC2C12細胞より調製した。サンプルを特異的なプライマーを使用してリアルタイムPCRによって分析した。値は、対照細胞に対するアクチンに対して標準化した各種の転写物の平均発現レベルを示す。
【図4】図4は、P2RX7ダウンレギュレートにおけるsiRNAの時間依存的な応答を示す。値は、異なる時間(24、48、及び72時間)及び用量(100及び200 nm)のsiRNA2(ヒト配列番号78に相同性を有するマウス配列を標的とする)の処理におけるP2RX7転写物の平均発現レベルを表わす。サンプルをリアルタイムPCRで分析し、参照ハウスキーピング遺伝子としてアクチンを使用して標準化した。
【図5】図5は、siRNA処理は、脊髄培養物におけるP2RX7遺伝子転写物のレベルを低減することを示す。RNAを72及び96時間、各種のsiRNAで処理した脊髄培養物より調製した。サンプルを特異的なプライマーを使用して、リアルタイムPCRによって分析した。値は、参照ハウスキーピング遺伝子として18Sを使用して標準化した各種の転写物の平均発現レベルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者においてP2RX7の発現をダウンレギュレートすることを含む、P2RX7の発現及び/または活性の増大によって特徴付けられる疾患の治療方法に使用するための医薬の調製におけるsiNAの使用。
【請求項2】
前記疾患が、神経変性疾患、脳卒中または心臓発作における再灌流障害または虚血、アルツハイマー病、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節症、喘息、鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病のような炎症性腸疾患(IBD))、アレルギー、自己免疫疾患、癌(例えば、白血病または非黒色腫皮膚癌)、皮膚関連の疾患(例えば、乾癬、湿疹、脱毛)、網膜の疾患、及び神経障害性及び炎症性の起源の疼痛の治療を含む群より選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記siNAがsiRNAである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記siRNAがdsRNAである、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記siRNAがshRNAである、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記siNAが修飾オリゴヌクレオチドを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記siNAが患者に局所的に投与される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
複数の種類のsiNAが使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記複数の種類が同一のmRNAの種類を標的とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記複数の種類が異なるmRNAの種類を標的とする、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記siNAが、配列番号1から配列番号109より選択される配列を標的とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記siNAが、GenBank Accession Number NM_002562、NM_177427、AY847298、AY847299、AY847300、AY847301、AY847302、AY847303、AY847304を有する群より選択されるP2RX7のスプライス形態を標的とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
患者においてP2RX7遺伝子の発現をダウンレギュレートするためにsiNAを投与することを含む、P2RX7の発現及び/または活性の増大によって特徴付けられる疾患状態の治療方法。
【請求項14】
前記疾患状態が、神経変性疾患、脳卒中または心臓発作における再灌流障害または虚血、アルツハイマー病、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節症、喘息、鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病のような炎症性腸疾患(IBD))、アレルギー、自己免疫疾患、癌(例えば、白血病または非黒色腫皮膚癌)、皮膚関連の疾患(例えば、乾癬、湿疹、脱毛)、網膜の疾患、及び神経障害性及び炎症性の起源の疼痛の治療を含む群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記疾患状態が神経変性疾患である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記疾患状態が脳卒中または心臓発作における再灌流障害または虚血である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記疾患状態がアルツハイマー病である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記疾患状態が、炎症性疾患(例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節症、喘息、鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病のような炎症性腸疾患(IBD))である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患状態がアレルギーである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患状態が自己免疫疾患である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記疾患状態が、癌(例えば、白血病または非黒色腫皮膚癌)である、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患状態が、皮膚関連の疾患(例えば、乾癬、湿疹、脱毛)である、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患状態が網膜の疾患である、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患状態が、神経障害性及び炎症性の起源の疼痛である、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記siNAがsiRNAである、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記siNAがdsRNAである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記siNAがshRNAである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記siNAが修飾オリゴヌクレオチドを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項29】
P2RX7の発現及び/または活性の増大に特徴付けられる疾患状態の治療における使用のための、配列番号1から配列番号109より選択されるヌクレオチド配列と相補的である、単離されているsiNA分子。
【請求項30】
疾患状態の治療のための医薬の調製における、配列番号1から配列番号109より選択されるヌクレオチド配列と相補的である配列を有する、単離されているsiNA分子の使用。
【請求項31】
配列番号1から配列番号109より選択されるヌクレオチド配列と相補的である配列を有するsiRNAを含む、製薬組成物。
【請求項32】
RNAiを誘導するための製薬学的に有効な調製物の対象への投与によって、P2RX7遺伝子発現をダウンレギュレートすることを含む、細胞外カルシウムの増大と関連する、または細胞外カルシウムの増大が介在する疾患の治療方法。
【請求項33】
前記疾患が、脳または他のCNS組織への血流の低減と関連するか、または脳または他のCNS組織への血液の供給の一時的な遮断という事実と関連する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記疾患が、虚血性の疾患、低酸素性のエピソード、外傷または他の損傷によって引き起こされる脳及びCNSの他の部分に対する損傷、頭部打撲、または脊髄損傷、血栓塞栓性または出血性の脳卒中、大脳の血管痙攣、低血糖症、心停止、痙攣重積状態、周産期仮死、無酸素症、大脳の外傷、ラチリズム、アルツハイマー病、パーキンソン病、及びハンチントン病、大脳の虚血または大脳梗塞、虚血性、低酸素性または無酸素性の脳損傷、脊髄損傷、組織虚血、及びその様な損傷のリスクがある哺乳動物における再灌流障害である、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
サンプルを細胞に投与し、P2RX7の活性の変化を測定することを含む、生物学的サンプルにおける薬理学的活性の検出方法。
【請求項36】
P2RX7遺伝子の発現がダウンレギュレートされている細胞を前記サンプルが投与されている正常細胞と比較することによって、活性の変化を測定する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
P2RX7のダウンレギュレートがsiNAを使用して作用される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記生物学的サンプルが海産物由来のものである、請求項35から37のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−511302(P2008−511302A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529004(P2007−529004)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/GB2005/050139
【国際公開番号】WO2006/024880
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(507058270)
【Fターム(参考)】