説明

PARP相互作用分子の同定およびPARPタンパク質の精製のための方法

本発明は、PARP相互作用化合物の同定またはPARPタンパク質の精製もしくは同定のために有用な固定化化合物および方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定化化合物(immobilization compound)ならびにPARP相互作用分子を同定するためおよびPARPタンパク質を精製するために有用な方法に関する。さらに、本発明は、例えば、癌、代謝疾患、または自己免疫性/炎症性障害を治療するための、前記相互作用分子を含む薬学的組成物、および癌を診断するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)は、DNA結合タンパク質のポリ(ADPリボシル化)を触媒する、真核生物中に存在する細胞シグナル伝達酵素のファミリーを構成する。また、PARPSは、ポリ(ADPリボース)シンセターゼ(synthethase)またはポリ(ADPリボース)トランスフェラーゼ(pART)としても公知である。これらの酵素は、DNA損傷に対する即時的細胞応答において重要な役割を果たしている。電離放射線、酸化ストレス、およびDNAに結合する抗腫瘍薬によって誘導されるDNA損傷に応答して、PARPは、標的タンパク質のアスパラギン酸残基およびグルタミン酸残基のカルボキシラート(carboxlate)基にADPリボース単位を付加する。このポリ(ADPリボシル化)は、ADPリボース単位の複雑な分枝状ポリマーの結合によってアクセプタータンパク質の不活性化を誘発する翻訳後修飾である(Schreiber et al., 2006. Nature Reviews Cell Biology 7, 517-528(非特許文献1))。
【0003】
ADPリボシル化は、ADPリボース部分がNADから標的タンパク質の特定のアミノ酸側鎖上へ転移される翻訳後タンパク質修飾である(Schreiber et al., 2006. Nature Reviews Cell Biology 7, 517-528(非特許文献1))。
【0004】
PARP1は、PARPファミリーの最初に特徴付けられ、最もよく知られているメンバーである。ADPRT遺伝子にコードされるこのタンパク質は、高度に保存されたクロマチン結合酵素であり、ニックの入ったDNAに結合し、DNA損傷からの保護を実現する。大規模なDNA損傷に応答すると、PARP1は過剰活性化され、細胞NAD+およびATPの枯渇を誘導して、細胞機能障害または細胞死をもたらす。PARP1の過剰活性化は、脳卒中、心筋梗塞(infarctation)、糖尿病、神経変性障害、および炎症性疾患を含むいくつかの疾患の病因に関与している。
【0005】
低分子阻害物質によるPARPのターゲティングは、癌療法の有望なアプローチとして提案されている(Haince et al., 2005. Trends Mol Med. 11(10):456-63(非特許文献2))。
【0006】
いくつかのPARP阻害物質が文献で報告されている。しかしながら、第1世代のPARP阻害物質は、PARPファミリーの様々なメンバーに対して非選択的であり、選択的阻害物質が必要とされている。さらに、PARP阻害物質の選択性プロファイリングのための新しい方法も必要とされている。
【0007】
PARP阻害物質を同定および特徴付けするための1つの前提条件は、好ましくはタンパク質標的の生理学的形態を用いた適切なアッセイ法の提供である。当技術分野において、この問題に対処するためにいくつかの戦略が提案されている。
【0008】
子ウシ胸腺からPARPタンパク質を精製するための2段階アフィニティー精製プロトコールが説明されている(D' Amours et al., 1997. Analytical Biochemistry 249, 106-108(非特許文献3))。第1の段階は、DNA-セルロースクロマトグラフィーからなり、第2の段階は、3-アミノベンズアミドアフィニティークロマトグラフィーからなった。3-アミノベンズアミドは、酵素のC末端触媒ドメインと相互作用するPARP阻害物質である。
【0009】
慣習的に、PARP酵素活性は、適切な基質を用いた溶液ベースのアッセイ法において精製酵素または組み換え酵素を用いて測定することができる(Dantzer et al., 2006. Methods in Enzymology 409, 493-510(非特許文献4))。このタイプのアッセイ法を用いてPARP阻害物質を同定できるが、それだけなく、PARPファミリーの全メンバーに対して阻害物質を試験することによって阻害物質選択性を評価することもできる。
【0010】
上記のことを考慮すると、PARP相互作用化合物の同定および選択性プロファイリングのため、ならびにPARPタンパク質の精製のために有効な手段および方法を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Schreiber et al., 2006. Nature Reviews Cell Biology 7, 517-528
【非特許文献2】Haince et al., 2005. Trends Mol Med. 11(10):456-63
【非特許文献3】D' Amours et al., 1997. Analytical Biochemistry 249, 106-108
【非特許文献4】Dantzer et al., 2006. Methods in Enzymology 409, 493-510
【発明の概要】
【0012】
本発明は、特に、式(I)の固定化化合物またはその塩に関する:

式中、R1a、R1b、R2は、HおよびC1〜4アルキルからなる群より独立に選択され、ここで、C1〜4アルキルは、同じまたは異なる1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよく;
R3はH、ハロゲン、 CN、C(O)OR4、OR4、C(O)R4、C(O)N(R4R4a)、S(O)2N(R4R4a)、S(O)N(R4R4a)、S(O)2R4、S(O)R4、SR4、N(R4R4a)、NO2、OC(O)R4、N(R4)C(O)R4a、N(R4)S(O)2R4a、N(R4)S(O)R4a、N(R4)C(O)N(R4aR4b)、N(R4)C(O)OR4a、OC(O)N(R4R4a)、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、またはC2〜6アルキニルであり、ここで、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたは複数のR5で置換されていてもよく;
R4、R4a、R4bは、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルからなる群より独立に選択され、ここで、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたは複数のR5で置換されていてもよく;
R5はハロゲン、CN、OR6、SR6、N(R6R6a)、またはNO2であり;
R6、R6aは、HおよびC1〜4アルキルからなる群より独立に選択され、ここで、C1〜4アルキルは、同じまたは異なる1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよく;
mは0、1、または2であり;
nは0、1、または2である。
【0013】
変数または置換基は様々な変種の群より選択され得、かつ、このような変数または置換基が複数回現れる場合、個々の変種は同じまたは異なってよい。
【0014】
本発明の意味において、用語は次のように使用される。
【0015】
「アルキル」は、直鎖または分枝状の飽和炭化水素鎖を意味する。アルキル炭素の各水素は、置換基で置換されてよい。
【0016】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、直鎖または分枝状の炭化水素鎖を意味する。アルケニル炭素の各水素は、置換基で置換されてよい。
【0017】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む、直鎖または分枝状の炭化水素鎖を意味する。アルキニル炭素の各水素は、置換基で置換されてよい。
【0018】
「C1〜4アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味し、例えば、分子の端に存在する場合、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルを意味し、または、1つの分子の2つの部分がアルキル基で連結されている場合、例えば、-CH2--CH2-CH2--CH(CH3)--C(CH2)--CH2-CH2-CH2--CH(C2H5)--CH(CH3)2-を意味する。C1〜4アルキル炭素の各水素は、置換基で置換されてよい。
【0019】
「C1〜6アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル鎖を意味し、例えば、分子の端に存在する場合、C1〜4アルキル、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルを意味し、または、1つの分子の2つの部分がアルキル基で連結されている場合、例えば、-CH2--CH2-CH2--CH(CH3)--C(CH2)--CH2-CH2-CH2--CH(C2H5)--CH(CH3)2-を意味する。C1〜6アルキル炭素の各水素は、置換基で置換されてよい。
【0020】
「C2〜6アルケニル」は、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル鎖を意味し、例えば、分子の端に存在する場合、-CH=CH2、-CH=CH-CH3、-CH2-CH=CH2、-CH=CH-CH2-CH3、-CH=CH-CH=CH2を意味し、または、1つの分子の2つの部分がアルケニル基で連結されている場合、例えば、-CH=CH-を意味する。C2〜6アルケニル炭素の各水素は、置換基で置換されてよい。
【0021】
「C2〜6アルキニル」は、2〜6個の炭素原子を有するアルキニル鎖を意味し、例えば、分子の端に存在する場合、-C≡CH-CH2-C≡CHCH2-CH2-C≡CHCH2-C≡C-CH3を意味し、または、1つの分子の2つの部分がアルキニル基で連結されている場合、例えば、-C≡C-を意味する。C2〜6アルキニル炭素の各水素は、置換基で置換されてよい。
【0022】
「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味する。ハロゲンはフルオロまたはクロロであることが一般に好ましい。
【0023】
本発明において特許請求する固定化化合物は、後述する固定化製品(immobilization product)の調製において好適に使用されるため、「固定化化合物」と名付けられている。しかしながら、他の考え得る使用、例えば、アッセイ法における可溶性競合物質または標識プローブとしての使用もまた、明示的に本発明に含まれる。
【0024】
式(I)による固定化化合物が1つまたは複数の酸性基または塩基性基を含む場合、本発明はまた、それらの対応する塩も含む。したがって、酸性基を含む式(I)の固定化化合物は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはアンモニウム塩として、本発明に従って使用され得る。このような塩のより詳細な例には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、または、アンモニアもしくは有機アミン、例えば、エチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、もしくはアミノ酸との塩が含まれる。1つまたは複数の塩基性基、すなわち、プロトン化され得る基を含む式(I)の固定化化合物は、無機酸または有機酸との付加塩の形態で、存在してよく、本発明に従って使用され得る。適切な酸の例には、塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸、および当業者に公知の他の酸が含まれる。式(I)の固定化化合物が分子中に酸性基および塩基性基を同時に含む場合、本発明はまた、言及した塩形態に加えて、分子内塩またはベタイン(双性イオン)も含む。式(I)のそれぞれの塩は、当業者に公知である慣例の方法によって、例えば、溶媒もしくは分散媒(dispersant)中でこれらを有機もしくは無機の酸もしくは塩基と接触させることによって、または、他の塩との陰イオン交換もしくは陽イオン交換によって得ることができる。
【0025】
本発明はさらに、本発明による固定化化合物の溶媒和物すべてを含む。
【0026】
実施例から理解できるように、式(I)に該当する固定化化合物は、PARPタンパク質に結合することが示されており、このことにより、PARPと相互作用する化合物を同定するためのアッセイ法において有用な手段となっている。
【0027】
式(I)の好ましい固定化化合物は、その中に含まれる1つまたは複数の残基が下記に示す意味を有する固定化化合物であり、好ましい置換基定義の組合せはすべて、本発明の対象である。式(I)の好ましい固定化化合物すべてに関して、本発明はまた、すべての互変異性型および立体異性型ならびにあらゆる比率のそれらの混合物も含む。
【0028】
本発明の好ましい態様において、後述する置換基は、以下の意味を独立に有する。それゆえ、1つまたは複数のこれらの置換基は、下記に示す好ましい、またはより好ましい意味を有してよい。
【0029】
好ましくは、R1aR1bは、H、CH3、およびC2H5からなる群より独立に選択される。より好ましい態様において、R1aR1bの内の少なくとも1つはHである。さらにより好ましい態様において、R1aR1bはHである。
【0030】
好ましくは、R2はH、CH3、またはC2H5である。より好ましい態様において、R2はCH3またはC2H5、特にC2H5である。
【0031】
好ましくは、R3はハロゲン、特にクロロ、またはR5で置換されていてもよいC1〜6アルキニルである。
【0032】
好ましくは、R5はOR6である。
【0033】
好ましくは、R6はHまたはCH3である。
【0034】
さらにより好ましくは、R3は、クロロ、またはC≡C-C(CH3)2OHである。
【0035】
好ましくは、mは1である。好ましくは、nは1である。好ましくは、n+ mは2である。
【0036】
本発明の式(I)の好ましい固定化化合物は、

からなる群より選択されるか、または両方の混合物であり、好ましくは、ハロゲン化水素酸塩(hydrohalogenide)またはカルボン酸塩、特に塩酸塩またはギ酸塩としての形態である。
【0037】
本発明の固定化化合物は、当技術分野において周知の方法によって調製され得る。合成のための例示的な類似経路を図1において説明する。
【0038】
本発明はさらに、本発明による少なくとも1つの固定化化合物が固体支持体上に固定される、固定化製品を調製するための方法に関する。本発明の方法によって得られるこのような固定化製品は、例えば、PARP相互作用化合物を同定するための本発明の方法または癌診断のための診断方法において有用である。
【0039】
本発明の方法によれば、本発明の少なくとも1つの固定化化合物が固体支持体上に固定される。本発明の全体を通して、「固体支持体」という用語は、その表面に低分子リガンドを固定できるあらゆる不溶支持体に関する。
【0040】
本発明によれば、「少なくとも1つの固定化化合物」という用語は、同じタイプの少なくとも1つの固定化化合物が固体支持体上に固定されること、または1つもしくは複数の異なる固定化化合物(それぞれが、単数または複数のいずれか)が固体支持体上に固定され得ることのいずれかを意味する。好ましくは、1つまたは2つの異なる固定化化合物が、より好ましくは、

からなる群より選択される本発明の式(I)の好ましい固定化化合物が、固体支持体上に固定される。
【0041】
固体支持体は、アガロースビーズ、修飾アガロースビーズ、セファロースビーズ(例えば、NHS活性化セファロース)、ラテックス粒子、セルロース粒子、および強磁性粒子またはフェリ磁性粒子からなる群より選択され得る。
【0042】
固体支持体が様々な実体を含む材料である場合、例えば、固体支持体がいくつかのビーズまたは粒子を含む場合、異なる固定化化合物が個々の各実体、例えば各ビーズまたは粒子上に固定されるならば1つまたは複数の固定化化合物が固定されることが本発明において想定される。したがって、2つの固定化化合物が使用される場合、個々の各実体上に1つまたは2つの異なる固定化化合物が固定されることが本発明において想定される。1つの実体上にただ1つの異なる固定化化合物が固定されるような対策が取られない場合、各実体上に、異なる固定化化合物のすべてが存在する可能性が非常に高い。
【0043】
本発明の固定化化合物または化合物は、共有結合的または非共有結合的に固体支持体に結合される。非共有結合には、ステプトアビジン(steptavidin)マトリックスに結合するビオチンアフィニティーリガンドを介した結合が含まれる。
【0044】
好ましくは、固定化化合物または化合物は、共有結合的に固体支持体に結合され得る。
【0045】
固体支持体に化合物を固定するための方法は当技術分野において公知であり、実施例1においてさらに例示する。
【0046】
一般に、結合前に、マトリックスは、固定化化合物との結合反応を可能にするための活性基、例えば、NHS、カルボジミド(Carbodimide)などを含んでよい。固定化化合物は、直接結合によって(例えば、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、およびケトン基などの官能基を用いて)、および間接的結合によって(例えば、ビオチンを介する。ビオチンは本発明の固定化製品に共有結合的に結合され、かつ、ビオチンは非共有結合的にストレプトアビジンに結合され、ストレプトアビジンは固体支持体に直接結合されている)、固体支持体に結合され得る。
【0047】
固体支持体材料への結合は、切断可能なリンカーおよび切断不可能なリンカーを含んでよい。切断は、酵素的切断または適切な化学的方法による処置によって実現することができる。
【0048】
したがって、本発明の好ましい態様によれば、固定化製品は、固体支持体への本発明の少なくとも1つの固定化化合物の共有結合的直接結合またはリンカーを介した結合の結果として生じる。
【0049】
リンカーは、S、O、NH、C(O)O、C(O)、およびC(O)NHからなる群より選択される1つまたは複数の原子または官能基が割り込んでいてもよいC1〜10アルキレン基でよく、かつ、リンカーは、ハロゲン、OH、NH2、C(O)H、C(O)NH2、SO3H、NO2、およびCNからなる群より独立に選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0050】
「C1〜10アルキレン」という用語は、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン鎖、例えば、メチレン、エチレン、-CH=CH-、-C≡C-、n-プロピレンなどを意味し、炭素原子の各水素は、置換基で置換されてもよい。
【0051】
「割り込まれる」という用語は、1つまたは複数の原子または官能基が、アルキレン鎖の2つの炭素原子の間または該鎖の端に挿入されていることを意味する。
【0052】
好ましくは、前記固定は、上記の式(I)の飽和環の環窒素原子を介して起こる。より好ましくは、該窒素原子はアミン官能基の一部分であり、その結果、固定は、本発明の固定化化合物またはその混合物と固体支持体の任意で活性化されたカルボン酸官能基とで形成されるアミド結合を介して起こる。おそらく、周知の保護基技術が、固定工程の間に必要とされる可能性がある。
【0053】
本発明はさらに、本発明の方法によって得られる固定化製品に関する。
【0054】
したがって、本発明の方法によって得られる固定化製品は、固体支持体上に固定された固定化化合物である。この固定化製品は、以下では本発明の固定化製品と呼ばれ、本発明の方法において使用される。
【0055】
好ましい態様において、本発明の固定化化合物または固定化製品はさらに標識されてよい。
【0056】
「標識された」とは、各物質が、検出シグナルをもたらす分子、例えば、放射性同位体、蛍光タグ、化学発光タグ、ペプチド、または特異的結合分子で直接的または間接的に標識されていることを意味する。特異的結合分子には、ビオチンおよびストレプトアビジン、ジゴキシンおよび抗ジゴキシンなどのペアが含まれる。標識は、検出可能なシグナルを直接的または間接的に提供できる。また、タグは、酵素断片補完アッセイ法(例えば、β-ガラクトシダーゼ酵素断片補完; Zaman et al., 2006. Assay Drug Dev. Technol. 4(4):411-420)においても使用され得るペプチドでもよい。標識された化合物は、撮像技術だけでなく、標識された化合物の結合の阻害によってPARP相互作用化合物を同定するためのインビトロおよびインビボ両方のアッセイ法においても、例えば、このような標識された化合物を含むPARPアッセイ法においても、有用であると思われる。
【0057】
放射性同位体は、様々な生体分子の検出のために生物学的用途で一般に使用されており、結合アッセイ法で有用であることが分かっている。3Hはプローブの構造を変えずに、その中の水素を置換できるため、プローブのいくつかの例は3H(トリチウムを意味するTとも書かれる)を組み込むように設計されている。「同位体的に」または「放射標識された」化合物は、1つまたは複数の原子が、自然界に典型的に存在する(すなわち、天然に存在する)原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子で置き換えられるか(replaced)、または置換(substituted)されている、本発明の化合物である。本発明の化合物に組み込まれ得る適切な放射性核種には、2H(重水素を意味するDとも書かれる)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、および131Iが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0058】
蛍光タグ(例えば、フルオレセイン色素、ローダミン色素、ダンシル色素、NBD(nitrobenz-2-oxa-1,3-diazole)色素、BODIPY(ジピロメテンボロンジフルオリド)色素、およびシアニン(Cy)色素)を低分子リガンドに結合させるための選択および方法に関する手引きは一般に当技術分野において公知である。酵素のハイスループットなスクリーニング(HTS)のためのアッセイ法における蛍光プローブ(蛍光体)の応用が、説明された(Zaman et al., 2003. Comb. Chem. High Throughput Screen 6(4): 313-320)。蛍光プローブを標的タンパク質に結合させた後の蛍光特性の変化は、例えば、蛍光偏光、蛍光共鳴エネルギー転移、または蛍光寿命を測定することによって判定することができる。さらに、680nmでドナービーズを励起することにより、アクセプタービーズへと拡散できる一重項酸素が生じ、該アクセプタービーズが化学発光反応を経るALPHAScreen技術を使用することができる(Glickman et al., 2002. J. Biomol. Screen. 7(1):3-10)。
【0059】
既に上記したように、本発明の固定化製品の考え得る1つの使用は、PARPの同定という状況におけるものである。したがって、本発明は、このような方法および使用にも関する。
【0060】
したがって、本発明の方法の第1の局面において、本発明は、以下の段階を含む、PARP相互作用化合物を同定するための方法に関する:
(a)PARPを含むタンパク質調製物を提供する段階、
(b)該タンパク質調製物と本発明の固定化製品とを、PARPと該固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、
(c)複合体を所与の化合物と共にインキュベートする段階、および
(d)その化合物がPARPを固定化製品から分離できるかどうかを判定する段階。
【0061】
本発明の方法の第2の局面において、本発明は、以下の段階を含む、PARP相互作用化合物を同定するための方法に関する:
(a)PARPを含むタンパク質調製物を提供する段階、
(b)該タンパク質調製物と本発明の固定化製品および所与の化合物とを、PARPと該固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、ならびに
(c)段階(b)で形成された複合体を検出する段階。
【0062】
本発明の方法の第3の局面において、本発明は、以下の段階を含む、PARP相互作用化合物を同定するための方法を提供する:
(a)PARPを含むタンパク質調製物のアリコート2つを提供する段階、
(b)一方のアリコートと本発明の固定化製品とを、PARPと該固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、
(c)他方のアリコートと該固定化製品および所与の化合物とを、複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、ならびに
(d)段階(b)および(c)で形成された複合体の量を測定する段階。
【0063】
本発明の方法の第4の局面において、本発明は、以下の段階を含む、PARP相互作用化合物を同定するための方法に関する:
(a)PARPを含む少なくとも1つの細胞をそれぞれ含むアリコート2つを提供する段階、
(b)一方のアリコートを所与の化合物と共にインキュベートする段階、
(c)各アリコートの細胞を回収する段階、
(d)タンパク質調製物を得るために細胞を溶解させる段階、
(e)該タンパク質調製物と本発明の固定化製品とを、PARPと該固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、および
(f)段階(e)において各アリコート中で形成された複合体の量を測定する段階。
【0064】
本発明によれば、「PARP」という用語は、PARPファミリーの1つまたは複数のメンバー、特に全メンバー(例えば、PARP1、PARP2、PARP3、PARP4(VPARP)、PARP5a(タンキラーゼ1)、PARP5b(タンキラーゼ2)、PARP5c(タンキラーゼ3)、PARP6、PARP7(TiPARP)、PARP8、PARP9(Bal)、PARP10、PARP11、PARP12、PARP13、PARP14、PARP15、PARP16)を示す(Ame et al., 2004. Bioessays 26(8):882-93)。しかしながら、本発明の全体を通して、PARPは、PARP1、PARP10、PARP14、PARP15、またはPARP16、特にそれらのヒトアイソフォームを意味することが好ましい。本発明の全体を通して、「アイソフォーム」という用語は、PARPファミリーメンバーも含む。
【0065】
本発明によれば、「PARP」という用語は、このファミリーのヒトタンパク質および他のタンパク質の両方に関する。この表現は特に、機能的に活性なそれらの誘導体、または機能的に活性なそれらの断片、またはそれらのホモログ、または該タンパク質をコードする核酸に低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸にコードされる変異体が含まれる。好ましくは、これらの低ストリンジェンシー条件は、35%ホルムアミド、5×SSC、50mM Tris-HCl(pH7.5)、5mM EDTA、0.02% PVP、0.02% BSA、100ug/mlの変性サケ精子DNA、および10%(wt/vol)硫酸デキストランを含む緩衝液中での40℃、18〜20時間のハイブリダイゼーション、2×SSC、25mM Tris-HCl(pH7.4)、5mM EDTA、および0.1% SDSからなる緩衝液中での55℃、1〜5時間の洗浄、ならびに2×SSC、25mM Tris-HCl(pH7.4)、5mM EDTA、および0.1% SDSからなる緩衝液中での60℃、1.5時間の洗浄を含む。
【0066】
本発明において同定される化合物は、PARPの1つ、いくつか、または全てのアイソフォーム(上記を参照されたい)に対するリガンドでよい。
【0067】
本発明のいくつかの局面において、最初に、PARPを含むタンパク質調製物が提供される。本発明の方法は、PARPが調製物中で可溶化される限り、任意のタンパク質調製物を出発原料として用いて実施することができる。例には、いくつかのタンパク質の液状混合物、細胞溶解物、元の細胞中に存在するタンパク質をすべて含むわけではない部分的細胞溶解物、またはいくつかの細胞溶解物の組合せが含まれる。「タンパク質調製物」という用語は、溶解された精製タンパク質も含む。
【0068】
関心対象のタンパク質調製物中のPARPタンパク質種の存在は、ウェスタンブロットにより、PARPを特異的に対象とする抗体でプローブして検出することができる。PARPが特異的アイソフォーム(例えばPARP1)である場合、該アイソフォームの存在は、アイソフォーム特異的抗体を用いて判定することができる。このような抗体は当技術分野において公知である(Cheong et al., 2003. Clin. Cancer. Res. 9(13):5018-27; Ame et al., 1999. J. Biol. Chem. 274(25):17860-17868)。あるいは、質量分析(MS)を用いて、PARP、特にPARPのアイソフォームを検出することもできる(下記を参照されたい)。
【0069】
細胞溶解物または部分的細胞溶解物は、細胞の細胞小器官(例えば、核、ミトコンドリア、リボソーム、ゴルジなど)をまず単離し、これらの細胞小器官に由来するタンパク質調製物を次いで調製することによって得ることができる。細胞の細胞小器官を単離するための方法は、当技術分野において公知である。さらに、細胞溶解物を調製するための方法が説明されている(Dantzer et al., 2006. Methods in Enzymology 409, 493-510)。
【0070】
さらに、タンパク質調製物は、細胞抽出物を分画し、それによって、細胞質タンパク質または膜タンパク質など特定のタイプのタンパク質を濃縮することによって調製することもできる。
【0071】
さらに、体液由来のタンパク質調製物も使用され得る(例えば、血液、脳脊髄液、腹水、および尿)。
【0072】
例えば、C.エレガンス(C.elegans)などのモデル生物の所定の発生段階または成虫期に由来する全胚溶解物が使用され得る。さらに、マウスから切り取られた心臓などの器官全体も、タンパク質調製物の供給源であり得る。また、これらの器官は、タンパク質調製物を得るためにインビトロで灌流させでもよい。
【0073】
さらに、タンパク質調製物は、組み換えによって(recombinantely)作製されたPARPを含む調製物でもよい。原核細胞および真核細胞において組換えタンパク質を作製するための方法は、広く確立されている(Ame et al., 1999. J. Biol. Chem. 274(25):17860-17868)。
【0074】
本発明の方法の好ましい態様において、タンパク質調製物の提供は、PARPを含む少なくとも1つの細胞を回収する段階および細胞を溶解させる段階を含む。
【0075】
この目的に適した細胞は、例えば、PARPファミリーのメンバーが発現される細胞または組織である。
【0076】
したがって、好ましい態様において、末梢血から単離された細胞は、適切な生物学的材料に相当する。末梢血(PBL)から得られたヒトリンパ球およびリンパ球部分集団を調製および培養するための手順は、広く公知である(W.E Biddison, 2.2章「Preparation and culture of human lymphocytes」,Current Protocols in Cell Biology, 1998, John Wiley & Sons, Inc.)。例えば、密度勾配遠心分離は、他の血液細胞集団(例えば、赤血球および顆粒球)からリンパ球を分離するための方法である。ヒトリンパ球部分集団は、モノクローナル抗体によって認識され得る特異的細胞表面受容体を用いて単離することができる。物理的分離方法は、これらの抗体反応物を磁性ビーズに結合させる段階を含み、磁性ビーズによって、これらの抗体が結合する細胞を濃縮できるようになる(ポジティブ選択)。単離されたリンパ球細胞をさらに培養し、受容体を介した細胞シグナル伝達、続いてSTATタンパク質のリン酸化を開始させるサイトカインを添加することによって刺激することができる(Schindler et al., 2007. 282(28):20059-20063)。
【0077】
初代ヒト細胞の代替として、培養細胞株(例えば、MOLT-4細胞、ジャーカット(Jurkat)細胞またはラモス(Ramos) 細胞)を使用することができる。
【0078】
好ましい態様において、細胞は、細胞培養系の一部分であり、細胞培養系から細胞を回収するための方法は当技術分野において公知である(前記の文献)。
【0079】
細胞の選択はPARPの発現に主に依存する。これは、選択した細胞中にこのタンパク質が主に存在するようにしなければならないためである。所与の細胞が本発明の方法のために適切な開始系であるかどうかを判定するには、ウェスタンブロット、PCRに基づいた核酸検出方法、ノーザンブロット、およびDNAマイクロアレイ法(「DNAチップ」)などの方法が、関心対象の所与のタンパク質が細胞中に存在するかどうかを判定するために適切であり得る。
【0080】
また、細胞の選択は、研究の目的にも影響され得る。所与の薬物のインビボでの有効性を解析する必要がある場合には、所望の治療的効果が生じる細胞または組織を選択してよい(例えばB細胞)。一方、望まれない副作用をもたらすタンパク質標的を解明するためには、副作用が観察される細胞または組織を解析してよい(例えば、心筋細胞、血管平滑筋細胞、または上皮細胞)。
【0081】
さらに、例えば生検によって、PARPを含む細胞を生物から得ることができることは、本発明において想定される。対応する方法は、当技術分野において公知である。例えば、生検は、顕微鏡でまたは生化学的方法によって次いで検査できる少量の組織を得るために使用される診断手順である。生検は、疾患を診断、分類、および病期分類(stage)するだけでなく、薬物治療を評価およびモニタリングするためにも重要である。
【0082】
少なくとも1つの細胞の回収によって、溶解が同時に実施されることは、本発明の範囲内に包含される。しかしながら、細胞を最初に回収し、その後、別に溶解することも同様に好ましい。
【0083】
細胞を溶解させるための方法は、当技術分野において公知である。様々な細胞型および組織の溶解は、ホモジナイザー(例えば、ポッター(Potter)型ホモジナイザー)、超音波粉砕機(desintegrator)、酵素的溶解、界面活性剤(例えば、NP-40、Triton X-100、CHAPS、SDS)、浸透圧ショック、凍結および解凍の繰り返し、またはこれらの方法の組合せによって実現することができる。
【0084】
本発明の方法によれば、PARPを含むタンパク質調製物は、PARPと本発明の固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で、固定化製品と接触させる。
【0085】
本発明において、「PARPと固定化製品との複合体」という用語は、固定化製品が、例えば、共有結合によって、または最も好ましくは非共有結合によって、PARPと相互作用する複合体を示す。
【0086】
当業者は、前記複合体の形成を可能にするためにどの条件を適用できるかを知っていると考えられる。
【0087】
本発明において、「複合体形成を可能にする条件下」という用語は、そのような形成、好ましくはそのような結合が可能であるあらゆる条件を含む。これは、固定相上に固体支持体を有し、その上に溶解物を注ぐという可能性を含む。別の好ましい態様において、固体支持体が粒子形態であり、細胞溶解物と混合されることも含まれる。
【0088】
非共有結合の場合、固定化製品とPARPとの間の結合は、例えば、塩橋、水素結合、疎水性相互作用、またはそれらの組合せを介する。
【0089】
好ましい態様において、前記複合体の形成の段階は、本質的に生理的な条件下で実施される。細胞内のタンパク質の物理的状態は、Petty, 1998 (Howard R. Petty, 1章、ユニット1.5: Juan S. Bonifacino, Mary Dasso, Joe B. Harford, Jennifer Lippincott-Schwartz、およびKenneth M. Yamada (編) Current Protocols in Cell Biology Co 版権 2003 John Wiley & Sons, Inc. 著作権所有。DOI: 10.1002/0471143030.cb0101s00 オンライン投稿日:2001年5月、出版日:1998年10月)に記載されている。
【0090】
本質的に生理的な条件下での接触には、固定化製品、PARPを含む細胞調製物、および任意で化合物の間の相互作用が、天然条件を可能な限り反映するという利点がある。「本質的に生理的な条件」とは、とりわけ、本来の未処理の試料材料中に存在する条件である。生理学的タンパク質濃度、pH、塩濃度、緩衝能、および関与するタンパク質の翻訳後修飾がこれらに含まれる。「本質的に生理的な条件」という用語は、試料が由来する元の生物における条件と同一な条件を必要としないが、本質的に細胞に似た条件または細胞条件に近い条件を必要とする。当然、当業者は、細胞にあまり似ていない条件を最終的にもたらすと考えられる実験設定が原因でいくつかの制約が生じ得ることを理解するであろう。例えば、生物から試料を採取し加工する際に最終的に必要な細胞壁または細胞膜の破壊は、生物において見出される生理的条件と同一ではない条件を必要とし得る。本発明の方法を実践するための生理的条件の適切な変形例は、当業者に明らかであると考えられ、本明細書において使用される「本質的に生理的な条件」という用語に包含される。要約すれば、「本質的に生理的な条件」という用語は、例えば、天然細胞において見出される生理的条件に近い条件に関するが、これらの条件が同一であることを必ずしも要求しない。
【0091】
例えば、「本質的に生理的な条件」は、50〜200mMのNaClまたはKCl、pH6.5〜8.5、20〜37℃、および0.001〜10mMの二価陽イオン(例えば、Mg++、Ca++);より好ましくは約150mのNaClまたはKCl、pH7.2〜7.6、5mMの二価陽イオンを含んでよく、しばしば、0.01〜1.0パーセントの非特異的タンパク質(例えばBSA)を含む。非イオン性界面活性剤(Tween、NP-40、Triton-X100)は、しばしば、通常約0.001〜2%、典型的には0.05〜0.2%(体積/体積)で存在してよい。一般的手引きの場合、次の緩衝化水性(aequous)条件が適用可能である:10〜250mMのNaCl、5〜50mMのTris HCl、pH5〜8、任意で二価陽イオンおよび/または金属キレート剤および/または非イオン性界面活性剤を添加。
【0092】
好ましくは、「本質的に生理的な条件」は、6.5〜7.5、好ましくは7.0〜7.5のpH、および/または10〜50mM、好ましくは25〜50mMの緩衝液濃度、および/または120〜170mM、好ましくは150mMの一価塩(例えばNaもしくはK)濃度を意味する。さらに、二価の塩(例えば、MgまたはCa)が1〜5mM、好ましくは1〜2mMの濃度で存在してよく、より好ましくは、緩衝液はTris-HClまたはHEPESからなる群より選択される。
【0093】
当業者は、本発明の方法の個々の段階の間に洗浄段階が必要な場合があることを理解するであろう。このような洗浄は、当業者の知識の一部である。洗浄は、細胞溶解物の未結合の構成要素を固体支持体から除去する働きをする。非特異的(例えば、単純なイオン)結合の相互作用は、低レベルの界面活性剤を添加することによって、または洗浄緩衝液中の塩濃度を適度に調整することによって、最小限に抑えることができる。
【0094】
本発明の同定方法によれば、読取りシステムは、PARPの検出もしくは測定(本発明の第1の局面)、PARPと固定化製品との複合体の検出(本発明の第2の局面)、またはPARPと固定化製品との複合体の量の測定(本発明の第2、第3、および第4の局面)のいずれかである。
【0095】
本発明の第1の局面による方法において、分離されたPARPの検出または量の測定は、好ましくは、化合物が固定化製品からPARPを分離できるということを示している。この能力は、各化合物がPARPと相互作用、好ましくは結合することを示し、その治療可能性を示唆している。
【0096】
本発明の第2の局面による方法の1つの態様において、本発明の方法の間に形成される複合体が検出される。このような複合体が形成されるということから、好ましくは、この化合物が複合体の形成を完全には阻害しないことが示唆される。他方、複合体が形成されない場合、この化合物はおそらくPARPと強く相互作用する物質であり、その治療可能性が示唆される。
【0097】
本発明の第2、第3、および第4の局面の方法によれば、方法の間に形成される複合体の量が測定される。一般に、各化合物の存在下で形成される複合体が少ないほど、各化合物はPARPとより強く相互作用し、その治療可能性が示唆される。
【0098】
本発明の第2の局面によって形成される複合体の検出は、PARPに対する標識抗体および適切な読取りシステムを用いることによって実施することができる。
【0099】
本発明の第2の局面の好ましい態様によれば、PARPと固定化製品との複合体は、その量を測定することによって検出される。
【0100】
本発明の第2、第3、および第4の局面の過程において、PARPは、前記複合体の量を測定するために固定化製品から分離されることが好ましい。
【0101】
本発明によれば、分離とは、固定化化合物とPARPの相互作用を消失させる作用すべてを意味する。好ましい態様において、これには、固定化化合物からのPARPの溶離が含まれる。
【0102】
溶離は、下記に詳述する非特異的反応物(イオン強度、pH値、界面活性剤)を用いることによって実現することができる。さらに、関心対象の化合物が固定化化合物からPARPを特異的に溶離できるかどうかを試験することもできる。このようなPARP相互作用化合物を下記のセクションでさらに説明する。
【0103】
相互作用を消失させるこのような非特異的な方法は当技術分野においてたいてい公知であり、リガンド酵素相互作用の性質に依存する。主として、イオン強度の変更、pH値、温度、または界面活性剤とのインキュベーションが、固定されたリガンドから標的酵素を解離させるために適した方法である。溶出緩衝液の適用により、極端なpH値(高pHもしくは低pH、例えば、0.1Mクエン酸(pH2〜3)を用いることによるpH低下)、イオン強度の変更(例えば、NaI、KI、MgCl2、もしくはKClを用いた高塩濃度)、疎水性相互作用を妨害する極性低下物質(例えば、ジオキサンもしくはエチレングリコール)、または変性剤(カオトロピック塩もしくはドセジル(docedyl)硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤)によって結合相手を解離させることができる。
【0104】
いくつかの場合において、固体支持体は好ましくは、遊離された材料から分離されなければならない。このための個々の方法は、固体支持体の性質に依存し、当技術分野において公知である。支持体材料がカラム内に含まれる場合、遊離された材料は、カラム通過物として回収することができる。支持体材料が溶解物構成要素と混合されている場合(いわゆるバッチ手順)、穏やかな遠心分離などの追加の分離段階が必要な場合があり、遊離された材料は上清として回収される。あるいは、磁性機器を用いることによって試料からそれらのビーズを除去することができるように、磁性ビーズを固体支持体として使用することもできる。
【0105】
本発明の第1の局面による方法の段階(d)において、PARPが本発明の固定化製品から分離されたかどうか判定される。これは、PARPの検出またはPARP量の測定を含んでよい。
【0106】
したがって、少なくとも、本発明のあらゆる同定方法の好ましい態様において、分離されたPARPを検出するための方法またはその量を測定するための方法が使用される。このような方法は当技術分野において公知であり、タンパク質配列決定(例えばエドマン(Edmann)分解)などの物理化学的方法、質量分析法による解析、またはPARPに対する抗体を使用する免疫検出方法が含まれる。
【0107】
本発明の全体を通して、PARPを検出するために、またはその量を測定するために(例えばELISAによる)抗体が使用される場合、当業者は、PARPの特定のアイソフォームを検出しようとする場合、またはPARPの特定のアイソフォームの量を測定しようとする場合、アイソフォームに特異的な抗体を使用できることを理解するであろう。先に示したように、このような抗体は当技術分野において公知である。さらに、当業者は、これを作製する方法を承知している。
【0108】
例えば、PARP2は、他のPARPファミリーメンバーと交差反応せず、PARP2に対する抗体を用いて特異的に検出することができる(Ame et al., 1999. J. Biol. Chem. 274(25):17860-17868)。
【0109】
あるいは、実施例2に示す質量分析法によって、PARPのいくつかのアイソフォームを検出することができる。
【0110】
好ましくは、質量分析法または免疫検出方法によって、PARPが検出されるか、またはPARPの量が測定される。
【0111】
質量分析解析(質量分析)によるタンパク質同定は当技術分野において公知であり(Shevchenko et al., 1996. Analytical Chemistry 68: 850-858)、実施例のセクションでさらに例示する。
【0112】
好ましくは、質量分析解析は、例えば、iTRAQ技術(相対的定量(quatification)および絶対的定量のためのアイソバリックタグ)(isobaric tags for relative and absolute quatification)またはcICAT(同位体でコードした切断可能なアフィニティータグ)(cleavable isotope-coded affinity tags)を用いることによって(Wu et al., 2006. J. Proteome Res. 5, 651-658)、定量的に実施される。
【0113】
本発明のさらに好ましい態様によれば、質量分析(MS)による特徴付けは、PARPのタンパク質特異的(proteotypic)ペプチドの同定によって実施される。PARPをプロテアーゼで消化し、結果として生じるペプチドをMSによって測定するという概念である。結果として、同じ供給源タンパク質に由来するペプチドのペプチド頻度は大きく異なる。最も頻繁に観察され、このタンパク質の同定に「典型的に」寄与するペプチドは「タンパク質特異的ペプチド」と呼ばれる。したがって、本発明で使用されるタンパク質特異的ペプチドは、特定のタンパク質またはタンパク質アイソフォームを一意的に同定する、実験で首尾よく観察可能なペプチドである。
【0114】
好ましい態様によれば、特徴付けは、本発明の方法を実践する過程で得られるタンパク質特異的ペプチドを公知のタンパク質特異的ペプチドと比較することによって実施される。MS中のタンパク質を同定するために、プロテアーゼ消化によって調製された断片を使用する場合、通常、所与の酵素に対して同じタンパク質特異的ペプチドが観察されるため、所与の試料から得られたタンパク質特異的ペプチドを、所与の酵素クラスの酵素に対して既知であるタンパク質特異的ペプチドと比較し、それによって、試料中に存在する酵素を同定することが可能である。
【0115】
質量分析解析の代替方法として、溶離されたPARP(共溶出された結合相手または足場タンパク質を含む)は、PARPに対する(またはPARPアイソフォームに対する、上記を参照されたい)特異的抗体を用いることによって、検出することができるか、またはその量を測定することができる。
【0116】
さらに、別の好ましい態様において、共溶出された結合相手のアイデンティティが質量分析解析によって確立された後、このタンパク質に対する特異的抗体を用いて各結合相手を検出することができる。
【0117】
抗体に基づく適切なアッセイ法には、ウェスタンブロット、ELISAアッセイ法、サンドイッチELISAアッセイ法、および抗体アレイ、またはそれらの組合せが含まれるがこれらに限定されるわけではない。このようなアッセイ法が確立されていることは当技術分野において公知である(11章、Immunology, 11-1 〜11-30頁 : Short Protocols in Molecular Biology. 第4版、F.M. Ausubel et al.編, Wiley, New York, 1999)。
【0118】
これらのアッセイ法は、関心対象のPARP相互作用タンパク質(例えば、PARP複合体の触媒サブユニットまたは調節サブユニット)を検出および定量するように構成するだけでなく、リン酸化、ユビキチン修飾、またはポリ(ADP)-リボシル化などの翻訳後修飾パターンを解析するようにも、構成することができる(Affar et al., 1999. Biochimica et Biophysica Acta 1428, 137-146)。
【0119】
さらに、本発明の同定方法は、PARP相互作用化合物となる能力に関して試験される化合物の使用を含む。
【0120】
主に、本発明によれば、このような化合物は、例えば、本発明の固定化製品へのPARPの結合を阻害することによってPARPと相互作用できるあらゆる分子でよい。好ましくは、化合物は、PARPに対する効果、例えば、刺激効果または阻害効果を有する。
【0121】
好ましくは、該化合物は、合成または天然の化学化合物または有機合成薬、より好ましくは低分子有機薬または天然低分子化合物からなる群より選択される。好ましくは、該化合物は、このような化合物を含むライブラリーを発端として同定される。その場合、本発明の過程において、このようなライブラリーがスクリーニングされる。
【0122】
このような低分子は、好ましくはタンパク質でも核酸でもない。好ましくは、低分子は、1000Da未満、より好ましくは750Da未満、最も好ましくは500Da未満の分子量を示す。
【0123】
本発明による「ライブラリー」とは、分類された様式で提供される(多数の)様々な化学実体の(たいていは大きな)コレクションに関する。これは、様々な個々の実体の迅速な機能解析(スクリーニング)を可能にもし、同時に、ライブラリーを形成する個々の実体の迅速な同定を提供もする。例は、ハイスループットな様式で1つまたは複数の所定の潜在的相互作用相手との反応に添加され得る化学化合物を含む、表面に置かれたチューブまたはウェルまたはスポットのコレクションである。両方の相手の所望の「陽性」相互作用が同定された後、ライブラリー構築のおかげで各化合物を迅速に同定することができる。合成起源および天然起源のライブラリーは、購入するか、または当業者が設計することができる。
【0124】
ライブラリー構築の例は当技術分野において公知であり、コンビナトリアルライブラリー設計のために、生物学的に確認された開始点である天然産物が使用される。これは天然産物が生物学的関連性の証明された記録を有するためである。医薬品化学および化学生物学における天然産物のこの特殊な役割は、構造生物学および生命情報科学によって得られるタンパク質のドメイン構造に関する新しい見識に照らして解釈することができる。あるドメインファミリー内部の個々の結合ポケットの特定の要件を満たすために、化学的変形によって天然産物構造を最適化する必要がある場合がある。固相化学は、この最適化プロセスのための効率的な手段になると言われている。様々な構造および「薬物に似た」特性を有する低分子のコレクションは、これまで、次のいくつかの手段によって取得されてきた:以前の内部リード最適化の試みを記録すること、化合物供給業者から購入すること、および会社合併後に別々のコレクションを合一すること。ハイスループット/コンビナトリアルケミストリーは新しいリード作製のプロセスにおいて重要な構成要素であると説明されているが、合成のためのライブラリー設計の選択およびライブラリーメンバーのその後の設計が、新しいレベルの努力目標および重要課題に発展した。複数の生物学的標的に対して複数の低分子化合物ライブラリー設計をスクリーニングすることの潜在的な利点は、新しいリード構造を発見する実質的な機会を与えるということである。
【0125】
本発明の第2および第3の局面の好ましい態様において、PARPを含むタンパク質調製物は、最初に化合物とインキュベートされ、次いで、固定化製品とインキュベートされる。しかしながら、化合物および本発明の固定化製品とPARPを含むタンパク質調製物との同時インキュベーション(共インキュベーション)も、同様に好ましい(競合的結合アッセイ法)。
【0126】
化合物とのインキュベーションが最初である場合、PARPは、4℃〜37℃、より好ましくは4℃〜25℃、最も好ましくは4℃の温度で、10〜60分間、より好ましくは30〜45分間、化合物と最初にインキュベートされるのが好ましい。好ましくは、化合物は、1nM〜100μM、好ましくは10nM〜10μMの範囲の濃度で使用される。固定されたリガンドと接触させる第2の段階は、好ましくは、4℃で10〜60分間実施される。
【0127】
同時インキュベーションの場合、PARPは、4℃〜37℃、より好ましくは4℃〜25℃、最も好ましくは4℃の温度で、30〜120分間、より好ましくは60〜120分間、化合物および本発明の固定化製品と同時にインキュベートされるのが好ましい。好ましくは、化合物は、1nM〜100μM、好ましくは10nM〜10μMの範囲の濃度で使用される。
【0128】
さらに、本発明の第2の局面の段階(a)〜(c)は、様々な化合物を試験するために、いくつかのタンパク質調製物を用いて実施されてよい。この態様は、ミディアムスループットなスクリーニングまたはハイスループットなスクリーニングにおいて特に興味深い(下記を参照されたい)。
【0129】
第3の局面または第4の局面による、本発明の方法の好ましい態様において、段階(c)で形成される複合体の量が、段階(b)で形成される量と比較される。
【0130】
第3の局面または第4の局面による、本発明の方法の好ましい態様において、段階(c)で形成される複合体の量が段階(b)と比べて少ない場合、PARPが化合物の標的であることが示される。これは、本発明のこの方法の段階(c)において、化合物がPARP結合についてリガンドと競合することに起因する。化合物とインキュベートされたアリコート中に存在するPARPの方が少ない場合、これは、好ましくは、その化合物が、酵素との相互作用について阻害物質と競合したこと、したがって、タンパク質の直接的標的であり逆もまた同様であることを意味する。
【0131】
好ましくは、本発明の同定方法は、ミディアムスループットなスクリーニングまたはハイスループットなスクリーニングとして実施される。
【0132】
本発明によって同定される相互作用化合物は、PARPに対する効果、例えば、その酵素活性に対する効果を有するかどうか判定することによってさらに特徴付けることができる(Dantzer et al., 2006. Methods in Enzymology 409, 493-510)。
【0133】
手短に言えば、PARP酵素活性(自己ポリADPリボシル化)は、例えば、適切な緩衝液に溶かした精製PARPをDNaseIで処理したDNAおよび[32P]-NADと共に室温でインキュベートすることによって測定することができる。この反応は、トリクロロ酢酸(TCA)を添加することによって停止され、次いで、グラスマイクロファイバーフィルターに通してろ過され、その際、反応生成物であるポリADPリボースはフィルター上に保持される。このフィルターは洗浄、乾燥され、液体シンチレーション(scintillatin)カウンターを用いて放射能量が測定される(Dantzer et al., 2006. Methods in Enzymology 409, 493-510)。
【0134】
本発明によって同定された化合物をさらに最適化してもよい(リード最適化)。このような化合物の後続のこの最適化は、これらのリード作製ライブラリーにおいてコードされている構造活性相関(SAR)情報のおかげでしばしば加速される。フォローアップ合成のためのハイスループットな化学的(HTC)方法がすぐに適用可能であるため、リード最適化はしばしば容易になる。
【0135】
本発明はさらに、以下の段階を含む、薬学的組成物を調製するための方法に関する:
(a)前述したようにPARP相互作用化合物を同定する段階、および
(b)この相互作用化合物を薬学的組成物に調製する段階。
【0136】
したがって、本発明は、有効量で対象に投与され得る薬学的組成物を調製するための方法を提供する。好ましい局面において、治療物質は実質的に精製されている。治療される対象は好ましくは、限定されるわけではないが、雌ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物を含む動物であり、好ましくは哺乳動物、および最も好ましくはヒトである。特定の態様において、非ヒト哺乳動物が対象である。
【0137】
本発明によって同定された化合物は、PARPが役割を果たす疾患の予防または治療のために有用である(例えば、癌に対するPARP1阻害物質)。したがって、本発明はまた、1種または複数種の前述の疾患を治療するための医薬を調製するための、本発明の方法によって同定された化合物の使用にも関する。さらに、本発明は、該化合物を含む薬学的組成物にも関する。
【0138】
一般に、本発明の薬学的組成物は、治療的有効量の治療物質および薬学的に許容される担体を含む。特定の態様において、「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、または米国薬局方もしくは動物およびより好ましくはヒトにおいて使用するための他の一般に認識されている薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、治療物質が一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを意味する。このような薬学的担体は、水および油などの滅菌済み液体でよく、油には、石油由来、動物由来、植物由来、または合成由来のものが含まれ、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などが含まれるがそれらに限定されるわけではない。薬学的組成物が経口投与される場合、水が好ましい担体である。薬学的組成物が静脈内投与される場合、生理食塩水およびデキストロース水溶液が好ましい担体である。好ましくは、生理食塩水ならびにデキストロース水溶液およびグリセロール溶液が、注射液剤のための液状担体として使用される。適切な薬学的賦形剤には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。所望の場合は、組成物はまた、少量の浸潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含んでよい。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形態を取り得る。組成物は、従来の結合剤およびトリグリセリドなどの担体を用いて、坐剤として製剤化することもできる。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的担体を含んでよい。適切な薬学的担体の例は、E.W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、患者に適切に投与するための形態を提供するように、好ましくは精製された形態の治療的有効量の治療物質を適切な量の担体と共に含む。製剤は、投与様式に適するべきである。
【0139】
好ましい態様において、組成物は、ヒトへの静脈内投与用に適応させた薬学的組成物として、日常的な手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、滅菌済み等張性水性緩衝液に溶かした液剤である。必要である場合、組成物はまた、可溶化剤および注射部位での疼痛を緩和するためのリドカインなどの局所麻酔薬も含んでよい。一般に、これらの成分は、別々に供給されるか、または、例えば、活性物質の量を示すアンプルもしくはサシェットなどの密閉型容器に入れられた乾燥した凍結乾燥粉末もしくは無水濃縮物として単位剤形中で混合される。組成物が輸注によって投与される予定である場合、医薬品グレードの滅菌済みの水または生理食塩水を含む点滴瓶を用いて組成物を投与することができる。組成物が注射によって投与される場合、投与前に成分を混合できるように、注射用の滅菌水または生理食塩水を入れたアンプルを提供することができる。
【0140】
本発明の治療物質は、中性形態または塩形態として製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、遊離カルボキシル基と共に形成されるもの、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するもの、遊離アミノ基と共に形成されるもの、例えば、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するもの、ならびにナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、および水酸化第二鉄などに由来するものが含まれる。
【0141】
特定の障害または病態の治療において有効であると考えられる本発明の治療物質の量は、その障害または病態の性質に依存し、標準的な臨床技術によって決定することができる。さらに、インビトロのアッセイ法を任意で使用して、最適な投薬量範囲を特定するのを助けることもできる。製剤中で使用されるべき正確な用量はまた、投与経路および疾患または障害の重篤性にも依存し、実務者の判断および各患者の状況によって決定すべきである。しかしながら、静脈内投与のために適した投薬量範囲は、一般に、キログラム体重当たり約20〜500マイクログラムの活性化合物である。鼻腔内投与のために適した投薬量範囲は、一般に、約0.01pg/kg体重〜1mg/kg体重である。有効量は、インビトロまたは動物モデルの試験系から導き出した用量反応曲線から推定することができる。一般に、坐剤は、0.5重量%〜10重量%の範囲で有効成分を含んでよい:経口製剤は、好ましくは、10%〜95%の有効成分を含む。
【0142】
様々な送達系が公知であり、本発明の治療物質を投与するために使用することができる。例えば、リポソーム、微粒子、およびマイクロカプセル中への封入;治療物質を発現できる組換え細胞の使用;受容体を介したエンドサイトーシスの使用;レトロウイルスベクターまたは他のベクターの一部分としての治療的核酸の構築など。導入方法には、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路、および経口経路が含まれるがそれらに限定されるわけではない。化合物は、任意の簡便な経路によって、例えば、輸注、ボーラス注射、上皮層または粘膜皮膚層を通しての吸収(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜、および腸粘膜など)によって投与されてよく、かつ、他の生物学的に活性な作用物質と共に投与されてもよい。投与は全身的または局所的でよい。さらに、脳室内注射およびくも膜下腔内注射を含む任意の適切な経路によって、本発明の薬学的組成物を中枢神経系中に導入することが望ましい場合もある;脳室内注射は、例えば、オンマヤリザーバーなどのリザーバーに結合された脳室内カテーテルによって容易にすることができる。また、例えば、吸入器またはネブライザー、およびエアロゾル化剤を含む製剤を用いることによって、肺投与を使用することもできる。
【0143】
特定の態様において、治療の必要な部位に本発明の薬学的組成物を局所的に投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、限定されるわけではないが、手術中の局所注入、例えば手術後の創傷被覆材と併用しての局所適用によって、注射によって、カテーテルを用いて、坐剤を用いて、または埋め込み剤を用いて実現することができ、埋め込み剤は、シアラスティック(sialastic)メンブレンなどの膜または繊維を含む、多孔性、非多孔性、またはゼラチン質の材料でできている。1つの態様において、投与は、悪性腫瘍または新生物性組織もしくは新生物発生前組織の部位(または以前の部位)への直接注射によってよい。
【0144】
本発明はさらに、以下の段階を含む、PARPを精製するための方法に関する:
(a)PARPを含むタンパク質調製物を提供する段階、
(b)該タンパク質調製物と本発明の固定化製品とを、PARPと該固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、および
(c)PARPを固定化製品から分離する段階。
【0145】
前述したように、本発明の化合物、したがって同様に本発明の固定化製品はPARPタンパク質を認識するリガンドであることが驚くべきことに判明した。これにより、PARPタンパク質の効率的な精製方法が実現する。
【0146】
PARP、PARPを含むタンパク質調製物、本発明の固定化製品と接触させるための条件、本発明の固定化製品、PARPと本発明の固定化製品との複合体、本発明の固定化製品からのPARPの分離、およびPARPの検出またはその量の測定に関して、本発明の同定方法に関して上記に定義した態様が、本発明の精製方法にも当てはまる。
【0147】
好ましい態様において、精製方法はさらに、PARPの特定のアイソフォームを精製する段階を含む。
【0148】
好ましくは、該精製は、上記に説明したアイソフォーム特異的抗体を用いて実施される。
【0149】
好ましい態様において、本発明の精製方法はさらに、段階(c)の後に、PARPに結合できるタンパク質の同定を含む。これは、本質的に生理的な条件下でタンパク質複合体の形成が実施される場合、特に興味深い。なぜならば、その場合、結合相手の存在、酵素サブユニット、または翻訳後修飾を含む酵素の天然条件を保存することが可能であり、次いで、質量分析(MS)の助けを借りて同定することができるからである。
【0150】
したがって、好ましい態様において、本発明の精製方法はさらに、段階(c)の後に、PARPが、例えばユビキチン修飾またはポリ(ADP)リボシル化によってさらに翻訳後修飾されるかどうかの判定を含む。
【0151】
結合タンパク質または翻訳後修飾は、PARPの検出またはPARPの量の測定に関して上記に説明したようにして判定することができる。好ましくは、前記の方法は、前述のように免疫検出(imunodetection)方法の質量分析を含む。
【0152】
本発明はさらに、以下の段階を含む、試料中のPARPの存在を判定するための方法に関する:
(a)PARPを含むことが予想されるタンパク質調製物を提供する段階、
(b)該タンパク質調製物と本発明の固定化製品とを、PARPと該固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、および
(c)PARPが固定化製品との複合体を形成したかどうかを検出する段階。
【0153】
本発明の好ましい態様において、段階(c)の前記検出する段階は、固定化製品からPARPを分離し、さらにPARPを同定することによって実施される。
【0154】
前記同定は、前述の質量分析法または免疫検出方法によって実施することができる。
【0155】
PARP、PARPを含むタンパク質調製物、本発明の固定化製品と接触させるための条件、本発明の固定化製品、PARPと本発明の固定化製品との複合体、本発明の固定化製品からのPARPの分離、およびPARPの検出またはその量の測定に関して、本発明の同定方法に関して上記に定義した態様が、本発明の精製方法にも当てはまる。
【0156】
本発明はさらに、PARP相互作用化合物の同定およびPARPタンパク質の精製のための、本発明の化合物または固定化製品の使用にも関する。同様に、上記に定義した態様は本発明の使用にも当てはまる。
【0157】
本発明はさらに、本発明の化合物または固定化製品を含むキットにも関する。このようなキットは、本発明の方法を実施するために特に有用である。キットのその他の構成要素は、PARPタンパク質を検出するための抗体、例えば、PARP1に特異的な抗体およびPARPタンパク質のリン酸化部位に対する抗体でよい。このような抗体およびそれらの使用は当技術分野において公知であり、これらは市販されている(Cheong et al., 2003. Clin. Cancer. Res. 9(13):5018-27; Ame et al., 1999. J. Biol. Chem. 274(25):17860-17868)。さらに、キットは、ポリADPリボースに対する抗体も含んでよい(Affar et al., 1999. Biochimica et Biophysica Acta 1428, 137-146; Kawamitsu et al., 1984. Biochemistry 23(16):3771-3777)。さらに、キットは、緩衝剤などのその他の補助成分、抗体を検出するための手段、陽性対照なども含んでよい。このような構成要素は当技術分野において公知である。
【0158】
本発明は、図面および実施例によってさらに例示される。これらの図面および実施例は、本出願の特許請求の範囲によって与えられる保護範囲を限定するものとして解釈されない。以下の実施例において「アフィニティーマトリックス」という用語が使用される場合、この用語は、本出願において定義される固定化製品を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】4-(2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-1-エチル-7-(ピペリジン-4-イルメトキシ)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-イル)-2-メチルブタ-3-イン-2-オール(XIII)および4-(4-クロロ-1-エチル-7-(ピペリジン-4-イルメトキシ)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1,2,5-オキサジアゾール-3-アミン(XIV)を合成するための反応スキーム。実施例1で説明するようにして、これらの化合物を合成した。段階(a)Br2、H2O室温、次いで50℃、(b)POCl3、NN-ジエチルアニリン、0℃、次いで還流、(c)エチルアミン、室温、(d)濃塩酸、SnCl2、還流、(e)シアノ酢酸、EDC、DCM、N-メチルモルホリン、室温、(f)酢酸、100℃、(g)NaNO2、室温、(h)ヒドロキシルアミン、Et3N、ジオキサン、還流、(i)イソプロピルマグネシウムクロリド、B(OMe)3、H2O2、-78℃、(j)tert-ブチル4-(ブロモメチル)ピペリジン-1-カルボキシラート、CsCO3、DMF、40℃、(k)2-メチル-3-ブチン-2-オール、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、Zn、NaI、DBU、DMSO、80℃、(l)ジオキサン中4N HCl、MeOH。
【図2】4-(2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-1-エチル-7-(ピペリジン-4-イルメトキシ)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-イル)-2-メチルブタ-3-イン-2-オール(XIII)の構造。
【図3】4-(4-クロロ-1-エチル-7-(ピペリジン-4-イルメトキシ)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1,2,5-オキサジアゾール-3-アミン(XIV)の構造。
【図4】固定化化合物XIIIを用いた薬物プルダウン実験。クーマシーブリリアントブルー染色後のタンパク質ゲルを示す。実施例2で説明するようにして、タンパク質50mgを含むジャーカット細胞溶解物およびラモス細胞溶解物の1:1混合物を用いて、薬物プルダウン実験を実施した。アフィニティーマトリックスに結合したタンパク質をSDS試料緩衝液を用いて溶出させ、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。図に示したゲル領域をゲル切片として切り取り、タンパク質をトリプシンで処理し、質量分析による解析に供した。
【図5】固定化化合物XIVを用いた薬物プルダウン実験。クーマシーブリリアントブルー染色後のタンパク質ゲルを示す。実施例2で説明するようにして、タンパク質50mgを含むジャーカット細胞溶解物およびラモス細胞溶解物の1:1混合物を用いて、薬物プルダウン実験を実施した。アフィニティーマトリックスに結合したタンパク質をSDS試料緩衝液を用いて溶出させ、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した。図に示したゲル領域をゲル切片として切り取り、タンパク質をトリプシンで処理し、質量分析による解析に供した。
【図6】ヒトPARP1のアミノ酸配列(IPI00449049.5)。固定化化合物XIIIを用いた薬物プルダウン実験後に質量分析によって同定されたペプチドを、下線を引いた太字で示している。
【図7】ヒトPARP10のアミノ酸配列(IPI00064457.3)。固定化化合物XIIIを用いた薬物プルダウン実験後に質量分析によって同定されたペプチドを、下線を引いた太字で示している。
【図8】ヒトPARP14のアミノ酸配列(IPI00291215.5)。固定化化合物XIIIを用いた薬物プルダウン後に質量分析によって同定されたペプチドは、下線を引いた太字である。
【図9】ヒトPARP15のアミノ酸配列(IPI00166182.3)。固定化化合物XIIIを用いた薬物プルダウン後に質量分析によって同定されたペプチドは、下線を引いた太字である。
【図10】ヒトPARP16のアミノ酸配列(IPI00297151.3)。固定化化合物XIIIを用いた薬物プルダウン後に質量分析によって同定されたペプチドは、下線を引いた太字である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0160】
実施例1:固定化化合物および固定化製品(アフィニティーマトリックス)の調製
本実施例では、化合物の合成および固体支持体にそれらを固定して細胞溶解物に由来するPARPタンパク質を捕捉するために以下の実施例で使用される固定化製品(アフィニティーマトリックス)を得るための方法を説明する。化合物の合成は、合成スキーム1(図1)に示す。
【0161】
3-ブロモ-5-ニトロピリジン-4-オール(II)の合成
水(50ml)に溶かした4-ヒドロキシ-3-ニトロピリジン(I)(7.0g、50mmol)の懸濁液に、室温でブロミド(3.23ml、63mmol)を一滴ずつ添加した。得られた混合物を1時間撹拌し、次いで、50℃で2時間加熱した。室温まで放冷しさらに1時間撹拌した後、生成物をろ過し、冷水で洗浄し、減圧下で3日間乾燥させて、白色固形物(8.35g、76%)として所望の生成物を得た。LCMS保持時間(Rt)=0.45分(mn)、顕著なMSトレースは無し。
【0162】
3-ブロモ-4-クロロ-5-ニトロピリジン(III)の合成
氷中で冷却したオキシ塩化リン(50ml)に、3-ブロモ-5-ニトロピリジン-4-オール(6.57g、30mmol)をゆっくりと添加した。得られた懸濁液を0℃で撹拌し、N,N-ジエチルアニリン(4.77ml、30mmol)を一滴ずつ添加した。得られた混合物を室温で温め、次いで、2時間還流させた。得られた黒い溶液を減圧下で濃縮し、残留物を氷上に注いだ。混合物をエーテル(200ml)で抽出した。有機層を水で2回と食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。ろ過後、溶媒を除去して、茶色の油として所望の化合物を得た。これは、さらに乾燥させると固化した(6.46g、85%)。LCMS保持時間=3.18分、顕著なMSトレースは無し。
【0163】
3-ブロモ-N-エチル-5-ニトロピリジン-4-アミン(IV)の合成
THF(19ml)に溶かした3-ブロモ-4-クロロ-5-ニトロピリジン(6.45g、25.4mmol)の溶液に、エチルアミン水溶液(70%溶液、101mmol、13ml)をゆっくりと添加した。この溶液を室温で3時間撹拌し、次いで、水中に注いだ。得られた溶液を酢酸エチルで2回抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、次いで、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を除去した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル-ヘキサン1:9から3:7まで)によって精製して、茶色の油(5.45g、92%)として所望の化合物を得た。LCMS保持時間=2.82分、[M+H]+=246〜248。
【0164】
5-ブロモ-2-クロロ-N4-エチルピリジン-3,4-ジアミン(V)の合成
3-ブロモ-N-エチル-5-ニトロピリジン-4-アミン(4.68g、19mmol)を濃塩酸(47ml)中に溶解し、85℃で加熱した。塩化スズ(10.8g、57mmol)を分割して添加した。反応物を還流下で1時間加熱し、次いで、一晩、室温まで放冷した。オフホワイトの固形物をろ取し、次いで、氷水(90ml)中に懸濁させた。12N水酸化ナトリウムを添加することによって、pHを12に調整した。得られた溶液を酢酸エチル(2×120ml)で抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を除去して、黄色の油(3.98g、83%)として所望の化合物を得た。LCMS保持時間=3.07分、[M+H]+=249.9〜251.9。
【0165】
N-(5-ブロモ-2-クロロ-4-(エチルアミノ)ピリジン-3-イル)-2-シアノアセトアミド(VI)の合成
ジクロロメタン(40ml)に溶かした5-ブロモ-2-クロロ-N4-エチルピリジン-3,4-ジアミン(3.98g、15.9mmol)の溶液に、EDC(4.57g、23.8mmol)、シアノ酢酸(2.02g、23.8mmol)、およびN-メチルモルホリン(6.98ml、63.5mmol)を添加した。この反応物を室温で4時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。スラリーに温かい酢酸エチル(40℃)150mlを添加した。有機層を2×125mlの温かい水(40℃)と食塩水(200ml)で洗浄し、次いでMgSO4上で乾燥させた。溶媒をある程度除去してスラリーを得、これをろ過した。白色固形物を2×20mlの冷水で洗浄し、40℃の真空オーブン中で乾燥させて、所望の生成物(3.66g、72%)を得た。LCMS保持時間=2.31分、[M+H]+=316.9〜318.9。
【0166】
2-(7-ブロモ-4-クロロ-1-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)アセトニトリル(VII)の合成
N-(5-ブロモ-2-クロロ-4-(エチルアミノ)ピリジン-3-イル)-2-シアノアセトアミド(3.15g、9.9mmol)に氷酢酸(35ml)を添加した。この懸濁液を還流下で3時間撹拌した。得られた溶液を室温まで放冷して、所望の生成物を得、これを次の段階においてインサイチューで使用した。LCMS保持時間=2.93分、[M+H]+=298.8〜300.8。
【0167】
7-ブロモ-4-クロロ-1-エチル-N-ヒドロキシ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-カルビミドイル(carbimidoyl)シアニド(VIII)の合成
2-(7-ブロモ-4-クロロ-1-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)アセトニトリルの溶液にNaNO2(1.7g、24.8mmol)をゆっくりと添加した。次いで、この反応物を室温で一晩撹拌した。得られた固形物をろ過し、水で洗浄し、40℃の真空オーブン中で乾燥させて、所望の化合物(3.16g、VIから97%)を得た。LCMS保持時間=3.58分、[M+H]+=327.8〜329.8。
【0168】
4-(7-ブロモ-4-クロロ-1-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1,2,5-オキサジアゾール-3-アミン(IX)の合成
ジオキサン(30ml)に溶かした7-ブロモ-4-クロロ-1-エチル-N-ヒドロキシ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-カルビミドイルシアニド(3.12g、9.5mmol)とトリエチルアミン(5.72ml、41mmol)の撹拌混合物に、ヒドロキシルアミン溶液(50%水溶液、1.5ml)を添加した。この反応物を還流下で6時間撹拌した。次いで、この反応物を室温まで放冷した。混合物をろ過し、ろ液を蒸発させて黄色の固形物を得た。この固形物をメタノール(12ml)中に懸濁し、65℃で30分間、温め撹拌し、次いでろ過して、黄色の固形物(1.82g、56%)として所望の生成物を得た。LCMS保持時間=4.15分、[M+H]+=343〜347。
【0169】
2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-4-クロロ-1-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-7-オール(X)の合成
-78℃のテトラヒフロフラン(tetrahyfrofuran)(46ml)に溶かした4-(7-ブロモ-4-クロロ-1-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1,2,5-オキサジアゾール-3-アミン(1.82g、5.3mmol)の懸濁液に、イソプロピルマグネシウムクロリド(THF中2M、8.5ml、16.9mmol)をゆっくりと添加した。添加する間、温度は-70℃未満で維持した。-78℃で10分間撹拌した後、ホウ酸トリメチル(2.12ml、18.5mmol)を添加し、次いで、反応物を-78℃で1時間撹拌した。次いで、この混合物を室温まで温め、一晩撹拌した。この反応物を0℃まで冷却した。過酸化水素(50%水溶液、5.46ml)および水酸化ナトリウム3N(3.64ml)を一緒に添加し、反応温度を40℃未満で維持した。得られた混合物を室温で2時間、勢いよく撹拌した。減圧下で有機溶媒を除去し(水が残る)、得られた懸濁液を1N塩酸の添加によってpH=1まで酸性化した。混合物を室温で30分間撹拌した。酢酸エチル45mlを添加し、この反応物を室温でさらに1時間撹拌した。この混合物をろ過した(2つの収穫物(crop))。固形物を水9ml、酢酸エチル9ml、トルエン9ml、および酢酸エチル9mlで洗浄した。40℃の真空オーブン中で乾燥させた後、黄色の固形物として所望の化合物を得た(1.31m、89%)。LCMS保持時間=3.26分、[M+H]+=281〜283。
【0170】
tert-ブチル4-((2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-4-クロロ-1-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-7-イルオキシ)メチル)ピペリジン-1-カルボキシラート(XI)の合成
ジメチルホルムアミド(15ml)に溶かした2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-4-クロロ-1-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-7-オール(0.5g、1.78mmol)の溶液に、炭酸セシウム(1.45g、4.45mmol)、続いてtert-ブチル4-(ブロモメチル)ピペリジン-1-カルボキシラート(0.545g、1.96mmol)を添加した。この反応物を40℃で20時間撹拌した。次いで、この反応物を酢酸エチルと水の間で分配した。水層を酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を食塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。溶媒を除去して黄色の固形物を得、これをヘキサン/酢酸エチルで粉砕して、ろ過後に所望の化合物を得た(0.497g、58%)。LCMS保持時間=4.97分、断片のみ入手可能であった。
【0171】
tert-ブチル4-((2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-1-エチル-4-(3-ヒドロキシ-3-メチルブタ-1-イニル)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-7-イルオキシ)メチル)ピペリジン-1-カルボキシラート(XII)の合成
マイクロ波チューブ中で、tert-ブチル4-((2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-4-クロロ-1-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-7-イルオキシ)メチル)ピペリジン-1-カルボキシラート(47mg、01mmol)、亜鉛末(0.002g、0.0033mmol)、ヨウ化ナトリウム(0.005g、0.003mmol)、DBU(0.023ml、0.15mmol)、トリエチルアミン(0.017ml、0.125mmol)、2-メチル-3-ブチン-2-オール(0.023ml、0.24mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(10重量%、0.005g)、およびDMSO(0.6ml)を一緒に混合した。この溶液を脱気し、次いで、チューブを密封し、80℃で2.5時間、反応物をマイクロ波中で加熱した。この反応物を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。水層を酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を水と食塩水で洗浄し、次いでMgSO4上で乾燥させた。溶媒を除去して粗生成物を得、これを調製HPLCによって精製して所望の化合物(0.012g、23%)を得た。LCMS保持時間=4.43分、断片のみ入手可能であった。
【0172】
4-(2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-1-エチル-7-(ピペリジン-4-イルメトキシ)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-イル)-2-メチルブタ-3-イン-2-オール塩酸塩(XIII)の合成
tert-ブチル4-((2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-1-エチル-4-(3-ヒドロキシ-3-メチルブタ-1-イニル)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-7-イルオキシ)メチル)ピペリジン-1-カルボキシラート(12mg、0.023mmol)をメタノール(3ml)中に溶解した。ジオキサン(2ml)中4N HClを添加し、この反応物を室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去した。得られた固形物をメタノール(1.5ml)中で粉砕し、ろ過し、冷メタノール(0.5ml)ですすいで、白色固形物(9.7mg、92%)として所望の化合物を得た。LCMS保持時間=2.18分、断片のみ入手可能であった。

【0173】
4-(4-クロロ-1-エチル-7-(ピペリジン-4-イルメトキシ)-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-2-イル)-1,2,5-オキサジアゾール-3-アミンギ酸塩(XIV)の合成
メタノール(4ml)に溶かしたtert-ブチル4-((2-(4-アミノ-1,2,5-オキサジアゾール-3-イル)-4-クロロ-1-エチル-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-7-イルオキシ)メチル)ピペリジン-1-カルボキシラート(0.045g、0.094mmol)の溶液に、ジオキサン(2ml)中4N HClを添加し、この反応物を室温で3時間撹拌した。溶媒を除去し、残留物をメタノール(2.5ml)で粉砕した。残留物をろ過し、次いで、調製HPLCによって精製して、白色粉末(0.0185g、46%)として所望の化合物を得た。LCMS保持時間=2.28分、断片のみ入手可能であった。

【0174】
(表1)略語

【0175】
NMR、LCMSおよび調製HPLCの条件:
・反応はいずれも不活性雰囲気下で実施した。
・NMRスペクトルはBruker dpx400を用いて取得した。
・LCMS分析試料は、以下の条件を用いて、Agilent HP1100 -LC/MSD VLシステムに流した(run)。
カラム:Phenomenex Gemini C18、30×3mm、3μm
溶媒:A=水+0.1%ギ酸;B=アセトニトリル+0.1%ギ酸
流速:1.2ml/分
温度:40℃
【0176】
(表2)勾配条件

【0177】
波長:
254nm(参照波長400nm)
210nm(参照波長360nm)
【0178】
質量分析条件:
118V〜400V(それぞれ分子量=118.09〜分子量=922.01に対する)のフラグメンター勾配(fragmentor ramp)を用いて、150amu〜700amuの間の質量をスキャンして、質量スペクトルデータをポジティブモードで集めた。調製した試料は、以下の条件を用いて、Waters-ZQ調製システムに流した。
カラム:Phenomenex Gemini C18、100×21.20mm、5μm
溶媒:A=水+0.1%ギ酸;B=(95%アセトニトリル:5%水)+0.1%ギ酸
流速:20ml/分
温度:室温
勾配条件:勾配条件は、各化合物の保持時間に応じて変化した。
波長:PDA検出(190〜600nm)
質量スペクトル条件:
APIモードおよびESモードを用いて、150amu〜700amuの質量スペクトルデータをポジティブモードおよびネガティブモードで集めた。
【0179】
ビーズへの固定化(固定化製品;アフィニティーマトリックス)
NHSで活性化したSepharose 4 Fast Flow (Amersham Biosciences, 17-0906-01) を無水DMSO(Dimethylsulfoxid、Fluka、41648、H20<=0.005%)で平衡化した。15ml Falconチューブに1mlのビーズを入れて沈殿させ、化合物原液(図4に示す2つのアイソフォームの混合物;通常、DMFまたはDMSO中100mM)を添加し(最終濃度0.2〜2μmol/mlビーズ)、同様に、トリエチルアミン(Sigma, T-0886、純度99%)15μlも添加した。転倒型振盪機(Roto Shake Genie, Scientific Industries Inc.)上で、暗所、室温で16〜20時間、ビーズをインキュベートした。HPLCによって結合効率を決定する。転倒型振盪機上で、室温で一晩、アミノエタノールとインキュベーションすることによって、未反応のNHS基をブロックした。ビーズをDMSO 10mlで洗浄し、イソプロパノール中、-20℃で保存した。これらのビーズを実施例2および3においてアフィニティーマトリックスとして使用した。前述したようなアミノエタノールとのインキュベーションによりNHS基をブロックすることにより、対照ビーズ(リガンドを固定していない)を作製した。
【0180】
実施例2:固定化化合物を用いた、PARPタンパク質の薬物プルダウン
本実施例では、ジャーカット細胞溶解物とラモス細胞溶解物の混合物からPARPタンパク質を捕捉し同定するための固定化化合物の使用を示す(図2および3を参照されたい)。このために、ジャーカット細胞とラモス細胞の細胞溶解物混合物を、実施例1で説明した固定化製品(アフィニティーマトリックス)と接触させた。固定化化合物に結合したタンパク質を、質量分析(MS)解析によって同定した。さらなる実験プロトコールはWO2006/134056において確認することができる。
【0181】
質量分析解析によってタンパク質を同定するために、アフィニティーマトリックスによって捕捉されたタンパク質をSDS 試料緩衝液中に溶出させ、続いて、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した(図4および5)。適切なゲルバンドを切り取り、トリプシンを用いたゲル中タンパク質分解消化に供し、LC-MS/MS質量分析によって解析した。PARPタンパク質由来ペプチドの質量分析による同定を表4に記載し、PARPタンパク質配列のペプチド配列包括度を図6〜10に示す。
【0182】
1.細胞培養
ジャーカット細胞(ATCC番号TIB-152)およびラモス細胞(ATCC番号CRL-1596)は、外部の供給業者(CIL SA, Mons, Belgium)から入手するか、または1リットルスピナーフラスコ(Integra Biosciences, 182101番)中で、10%ウシ胎児血清(Invitrogen,10270-106番)を添加したRPMI1640培地(Invitrogen, 21875-034番)に0.2×106〜1.0×106細胞/mlの間の濃度で懸濁して増殖させた。遠心分離によって細胞を回収し、1×PBS緩衝液(Invitrogen, 14190-094番)で1回洗浄し、液体窒素中で細胞ペレットを凍結し、続いて、-80℃で保存した。
【0183】
2.細胞溶解物の調製
Potter Sホモジナイザーを用いて、溶解緩衝液(50mM Tris-HCl、0.8% NP40、5%グリセロール、150mM NaCl、1.5mM MgCl2、25mM NaF、1mMバナジン酸ナトリウム、1mM DTT、pH7.5)中で細胞をホモジナイズした。緩衝液25ml当たり1つのコンプリートEDTAフリータブレット(プロテアーゼ阻害剤のカクテル, Roche Diagnostics, 1 873 580)を添加した。機械化されたPOTTER Sを用いて材料を20回加圧破砕(dounced)し、50mlファルコンチューブに移し、氷上で30分間インキュベートし、20,000×g、4℃で10分間、遠心沈殿させた(Sorvall SLA600中で10,000rpm、予め冷却しておいた)。上清を超遠心機(UZ)-ポリカーボネートチューブ(Beckmann, 355654)に移し、160.000×g、4℃で1時間、遠心した(Ti50.2中で42.000rpm、予め冷却しておいた)。新しい50mlファルコンチューブに上清を再び移し、Bradfordアッセイ法(BioRad)によってタンパク質濃度を測定し、アリコート当たりタンパク質50mgを含む試料を調製した。これらの試料は、直ちに実験のために使用するか、または液体窒素中で凍結し、-80℃で凍結保存した。この手順は、ラモス細胞溶解物およびジャーカット細胞溶解物の調製に適用された。
【0184】
3.薬物プルダウン実験
リガンドが固定されたセファロースビーズ(1回のプルダウン実験につきビーズ100μl)を溶解緩衝液中で平衡化し、タンパク質50mgを含む細胞溶解物試料と共に転倒型振盪機(Roto Shake Genie, Scientific Industries Inc.)上で、4℃で2時間、インキュベートした。ビーズを回収し、Mobicolカラム(MoBiTech 10055)に移し、0.4%NP40界面活性剤を含む溶解緩衝液10ml、続いて、0.2%界面活性剤を含む溶解緩衝液5mlで洗浄した。結合したタンパク質を溶出させるために、2×SDS試料緩衝液60μlを添加し、カラムを50℃で30分間加熱し、溶出液を遠心分離によってマイクロチューブに移した。次いで、108mMヨードアセトアミドでタンパク質をアルキル化した。次いで、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)によってタンパク質を分離した。
【0185】
4.質量分析によるタンパク質同定
4.1 質量分析解析に先立つタンパク質消化
ゲル分離したタンパク質を、Shevchenko et al., 1996, Anal. Chem. 68:850-858によって説明されている手順に基本的に従って、ゲル中で還元および消化した。手短に言えば、清潔なメスを用いて、ゲル分離したタンパク質をゲルから切り出し、暗所、室温で10mM DTT (5mM重炭酸アンモニウム中、54℃、45分)を用いて還元した。5mM重炭酸アンモニウムに溶かしたプロテアーゼ濃度12.5ng/μlのブタトリプシン(Promega)を用いて、還元タンパク質をゲル中で消化した。消化は37℃で4時間進行させ、続いて、5%ギ酸5μlを用いて反応を停止した。
【0186】
4.2 質量分析による解析に先立つ試料調製
1%TFA 20μlでゲルプラグを2回抽出し、酸性にした消化物上清と共にプールした。試料を真空遠心分離機中で乾燥させ、0.1%ギ酸10μl中に再懸濁した。
【0187】
4.3.質量分析データの取得
四重極TOF(QTOF2、QTOF Ultima、QTOF Micro、Micromass)質量分析計またはイオントラップ(LCQ Deca XP)質量分析計のいずれかに直接結合されたナノLCシステム(CapLC, WatersまたはUltimate, Dionex)中にペプチド試料を注入した。水性溶媒および有機溶媒の勾配(下記を参照されたい)を用いて、LCシステムにおいてペプチドを分離させた。溶媒Aは0.5%ギ酸中5%アセトニトリルであり、溶媒Bは0.5%ギ酸中70%アセトニトリルであった。
【0188】
(表3)LCシステムから溶出されたペプチドは、質量分析計内で部分的に配列決定された

【0189】
4.4.タンパク質同定
LC-MS/MS実験で生じたペプチド質量および断片データを用いて、NCBI (NCBInr、dbEST、ならびにヒトゲノムおよびマウスゲノム)および欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)(EBI、ヒト、マウス、キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)、およびC.エレガンスのプロテオームのデータベース)で維持され定期的に更新されているfasta形式のタンパク質配列データベースおよびヌクレオチド配列データベースに照合した。測定されたタンパク質質量および断片データとソフトウェアツールMascot(Matrix Science; Perkins et al., 1999. Probability-based protein identification by searching sequence databases using mass spectrometry data. Electrophoresis 20, 3551-3567)を用いてデータベース中の登録事項からコンピュータ算出した同じデータとの相互関係を示すことによってタンパク質を同定した。探索基準は、解析にどの質量分析計を使用するかによって変わった。配列識別子は、国際タンパク質指標(International Protein Index)(IPI)に基づいて定められる(Kersey et al., 2004. Proteomics 4(7): 1985-1988)。
【0190】
(表4)固定化化合物XIIIおよびXIVを用いた薬物プルダウン実験における質量分析によるPARPタンパク質の同定


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の固定化化合物またはその塩:

式中、
R1a、R1b、R2は、HおよびC1〜4アルキルからなる群より独立に選択され、ここで、C1〜4アルキルは、同じまたは異なる1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよく;
R3はH、ハロゲン、 CN、C(O)OR4、OR4、C(O)R4、C(O)N(R4R4a)、S(O)2N(R4R4a)、S(O)N(R4R4a)、S(O)2R4、S(O)R4、SR4、N(R4R4a)、NO2、OC(O)R4、N(R4)C(O)R4a、N(R4)S(O)2R4a、N(R4)S(O)R4a、N(R4)C(O)N(R4aR4b)、N(R4)C(O)OR4a、OC(O)N(R4R4a)、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、またはC2〜6アルキニルであり、ここで、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたは複数のR5で置換されていてもよく;
R4、R4a、R4bは、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルからなる群より独立に選択され、ここで、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、およびC2〜6アルキニルは、同じまたは異なる1つまたは複数のR5で置換されていてもよく;
R5はハロゲン、CN、OR6、SR6、N(R6R6a)、またはNO2であり;
R6、R6aは、HおよびC1〜4アルキルからなる群より独立に選択され、ここで、C1〜4アルキルは、同じまたは異なる1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよく;
mは0、1、または2であり;
nは0、1、または2である。
【請求項2】

からなる群より選択される、請求項1記載の固定化化合物。
【請求項3】
請求項1または2記載の少なくとも1つの固定化化合物が固体支持体上に固定され、特に、該固体支持体が、アガロースビーズ、修飾アガロースビーズ、セファロースビーズ(例えば、NHS活性化セファロース)、ラテックス粒子、セルロース粒子、および強磁性粒子またはフェリ磁性粒子からなる群より選択される、固定化製品を調製するための方法。
【請求項4】
固定化製品が、固体支持体への固定化化合物の共有結合的直接結合またはリンカーを介した結合の結果として生じ、特に、該リンカーが、S、O、NH、C(O)O、C(O)、およびC(O)NHからなる群より選択される1つまたは複数の原子または官能基が割り込んでいてもよいC1〜10アルキレン基であり、かつ、該リンカーが、ハロゲン、OH、NH2、C(O)H、C(O)NH2、SO3H、NO2、およびCNからなる群より独立に選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよく、特に、固定が、請求項1記載の式(I)の飽和環の環窒素原子を介して起こる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の方法によって得られる、固定化製品。
【請求項6】
以下の段階を含む、PARP相互作用化合物を同定するための方法:
(a)PARPを含むタンパク質調製物を提供する段階、
(b)該タンパク質調製物と請求項5記載の固定化製品および所与の化合物とを、PARPと該固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、ならびに
(c)段階(b)で形成された複合体を検出する段階。
【請求項7】
以下の段階を含む、PARP相互作用化合物を同定するための方法:
(a)PARPを含むタンパク質調製物のアリコート2つを提供する段階、
(b)一方のアリコートと請求項5記載の固定化製品とを、PARPと該固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、
(c)他方のアリコートと該固定化製品および所与の化合物とを、複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、ならびに
(d)段階(b)および(c)で形成された複合体の量を測定する段階。
【請求項8】
以下の段階を含む、PARP相互作用化合物を同定するための方法:
(g)PARPを含む少なくとも1つの細胞をそれぞれ含むアリコート2つを提供する段階、
(h)一方のアリコートを所与の化合物と共にインキュベートする段階、
(i)各アリコートの細胞を回収する段階、
(j)タンパク質調製物を得るために該細胞を溶解させる段階、
(k)該タンパク質調製物と請求項5記載の固定化製品とを、PARPと該固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、および
(l)段階(e)において各アリコート中で形成された複合体の量を測定する段階。
【請求項9】
前記化合物と共にインキュベートされたアリコート中で形成される複合体の量が、該化合物と共にインキュベートされなかったアリコートと比べて少ない場合、PARPが該化合物の標的であることが示される、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
固定化製品からPARPを分離し、分離されたPARPを続いて検出するか、または分離されたPARPの量を続いて測定することによって複合体の量が測定され、特に、質量分析法または好ましくはPARPに対する抗体を用いた免疫検出方法によってPARPが検出されるか、またはPARPの量が測定される、請求項7〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
所与の化合物が、合成化合物、または有機合成薬、より好ましくは低分子有機薬、および天然低分子化合物からなる群より選択される、請求項7〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
所与の化合物がPARP阻害物質である、請求項7〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
以下の段階を含む、PARPを精製するための方法:
(a)PARPを含むタンパク質調製物を提供する段階、
(b)該タンパク質調製物と請求項5記載の固定化製品とを、PARPと該固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、および
(c)PARPを該固定化製品から分離する段階。
【請求項14】
タンパク質調製物の提供が、PARPを含む少なくとも1つの細胞を回収する段階および該細胞を溶解させる段階を含む、請求項7〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
複合体の形成の段階が、本質的に生理的な条件下で実施される、請求項7〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
以下の段階を含む、試料中のPARPの存在を判定するための方法:
(a)PARPを含むことが予想されるタンパク質調製物を提供する段階、
(b)該タンパク質調製物と請求項5記載の固定化製品とを、PARPと該固定化製品との複合体形成を可能にする条件下で接触させる段階、および
(c)PARPが該固定化製品との複合体を形成したかどうかを検出する段階。
【請求項17】
PARP相互作用化合物の同定またはPARPの精製のための、請求項1または2記載の固定化化合物または請求項5記載の固定化製品の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2011−521214(P2011−521214A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508838(P2011−508838)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003426
【国際公開番号】WO2009/138229
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(505000022)セルゾーム アーゲー (7)
【Fターム(参考)】