説明

PBXバックアップシステム

【課題】障害時に短時間かつ少ない通信量で端末装置間の呼接続を可能にできない。
【解決手段】手段22はサーバ200が収容している端末装置30の呼接続に必要な局データを記憶し、手段26は端末装置30の呼の状態とイベント内容を記憶する。手段29は端末装置30の呼の状態とイベント内容を読み出してサーバ100へ送信し、サーバ100から呼接続の指示信号を受信すると、呼接続の指示信号を端末装置30に送信する。手段28は発信元の端末装置の呼の状態とイベント内容を受けると、着信先の端末装置を特定して呼接続の指示信号を端末装置に送信する。手段27は、イベント内容と手段26が記憶している発信元の端末装置の呼の状態を、通信が可能な場合はサーバ100、通信が不可能な場合は手段28へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク障害時あるいは交換機障害時に、端末装置の呼接続を可能とするPBXバックアップシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のこの種のPBXバックアップシステムの第1の例を示している。このPBXバックアップシステムは、ネットワーク40-1上の交換機50が、ネットワーク40-1上のIP端末301-3,301-4と、ネットワーク40を介してネットワーク40-1に接続されるネットワーク40-2上のIP端末301-5,301-6を収容して呼接続の制御を行い、ネットワーク40-2上にバックアップ装置60を設けている。交換機50がダウンした場合、あるいはネットワーク40の障害によって交換機50との接続が不可能な場合、IP端末301-5,301-6は、交換機50の呼接続の制御からバックアップ装置60の呼接続の制御に切り替わる。このことによって、IP端末301-5,301-6は、再び呼接続が可能になる。
【0003】
上述のPBXバックアップシステムでは、IP端末301-5,301-6に対する呼接続の制御の切替えのためには、バックアップ装置60に対し、IP端末301-5,301-6の呼接続開始のための登録を行う必要があるので、呼接続が可能になるまで時間を要し、通信中の呼接続が切断されることがある。更に、IP端末301-3,301-4は救済されず、バックアップ装置60による呼接続は使用可能なサービス機能が制限される。
【0004】
図7は、従来のこの種のPBXバックアップシステムの第2の例を示している。このPBXバックアップシステムは、IPネットワーク網41で接続されるネットワーク40-3,40-4,40-5に、それぞれ交換機50,バックアップ装置61,バックアップ装置62を設置する。交換機50は、ネットワーク40-4に設置されている端末装置30-1,30-3と、ネットワーク40-5に設置されている端末装置30-2,30-4を収容している。
【0005】
交換機50に障害が発生し、交換機50が使用不可能となると、端末装置30-1〜30-4は、交換機50の収容から離れ、端末装置30-1,30-3はバックアップ装置61に収容され、端末装置30-2,30-4はバックアップ装置62に収容される。バックアップ装置61は、バックアップ装置62から端末装置30-2,30-4の端末データを入手して登録し、バックアップ装置62は、バックアップ装置61から端末装置30-1,30-3の端末データを入手して登録する。このようにバックアップ装置61とバックアップ装置62は、互いに救済している端末装置のデータ交換を行うことによって、バックアップ装置61とバックアップ装置62間の呼接続は、交換機50の配下で動作している場合と同様の呼接続のサービスが可能となる。
【0006】
しかし、このバックアップシステムでは、障害発生後に、バックアップ装置が各端末装置を収容し、バックアップ装置間で呼接続に必要な端末装置のデータの交換を行なって登録するため、障害が発生してから、再び端末装置間の呼接続が可能になるまで時間を要する。
【0007】
図8は、従来のこの種のPBXバックアップシステムの第3の例を示している。このPBXバックアップシステムは、メインサーバ71が設置されているIPセントレックスセンタ70と、IPネットワーク網41を経由して接続された拠点80にメインサーバ70の代替手段であるサバイバルサーバ81を設けたものである。メインサーバ71は、拠点80に設置されているIP電話端末82〜84に対するIP−PBX機能を有する。
【0008】
IP電話端末82〜84間の通信確立に当たっては、IP電話端末82〜84からメインサーバ71に呼設定要求を送信し、メインサーバ71で所定の呼制御を行い、呼の状態も保持する。通信が確立すると、その呼制御情報をサバイバルサーバ81に送信する。これにより、サバイバルサーバ81は、メインサーバ71が管理する呼制御情報と同じ呼制御情報を保持するので、メインサーバ71あるいはIPネットワーク網41に障害が発生すると、通信を維持することができる。
【0009】
しかし、このPBXバックアップシステムでは、メインサーバ71は、通常のIP−PBX機能を有しており、通信確立のための情報(IP電話端末の状態、呼接続の進行状況、呼制御情報)を保持する必要があるため、IP電話端末との間で呼制御情報を送受信することとなり通信量が嵩んでくる。また、サバイバルサーバ81には、メインサーバ71と同等の機能を搭載する必要がある上に、IP電話端末も多機能を備えることが必要なためコスト高になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開1005−006121号公報
【特許文献2】特開1007−088544号公報
【特許文献3】特開1007−266737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする問題点は、ネットワークあるいは交換機障害時に、短時間かつ少ない通信量で端末装置間の呼接続を可能にできない点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ホステッドVoIPサーバはローカルサーバを経由して端末装置間の呼の状態遷移を制御し、障害発生時には収容している端末装置の呼の状態遷移に限りローカルサーバが代行することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のPBXバックアップシステムは、障害によりホステッドVoIPサーバとローカルサーバ間の通信が不可能な場合、呼接続の呼の状態遷移がホステッドVoIPサーバから拠点内の端末装置を収容しているローカルサーバに切り替わり、ローカルサーバが呼の状態遷移を行うことで、再び呼接続を行うことが可能となるので、ローカルサーバが端末装置を収容しており端末装置を収容する手順が不要なため、短時間で再び呼接続が可能になり、端末装置のサービス停止時間を大幅に減らすことが可能となるという利点がある。
【0014】
また、障害が復旧し、異なる拠点間で端末装置の呼の状態遷移を確立する場合、ホステッドVoIPサーバとローカルサーバ間には、端末装置の呼の状態とイベント内容のみを送受信ため、そのデータ量は、レプリケーションによって全端末装置の情報を各サーバに格納するシステムと比べて、少なく、帯域の細いIPネットワーク網でも適用可能である。
【0015】
また、端末装置における拠点間のサービスをバージョンアップする方法を考えると、ホステッドVoIPサーバのみをバージョンアップすれば良い。
【0016】
また、本システムでは、端末装置はローカルサーバに収容されているため、2者通信時以外でホステッドVoIPサーバの障害、あるいはIPネットワーク網の障害が起きた場合でも、呼の状態遷移制御を切り替えて呼を継続することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかるPBXバックアップシステムの一実施の形態の基本構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明にかかるPBXバックアップシステムの実施例1を示すブロック図である。
【図3】ホステッドVoIPサーバ100とローカルサーバ200と端末装置30の詳細を示すブロック図である。
【図4】ホステッドモードにおける呼の状態遷移の制御を示すフローチャートである。
【図5】自立モードにおける呼の状態遷移の制御を示すフローチャートである。
【図6】PBXバックアップシステムの従来例1を示すブロック図である。
【図7】PBXバックアップシステムの従来例2を示すブロック図である。
【図8】PBXバックアップシステムの従来例3を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るPBXバックアップシステムの基本構成を示す。このPBXバックアップシステムは、ホステッドVoIPサーバ100が設置されたセンター拠点10と、端末装置30-1が設置されたローカル拠点20-1と、端末装置30-2が設置されたローカル拠点20-2をネットワーク40で接続し、ローカル拠点20-1にローカルサーバ200-1、ローカル拠点20-2にローカルサーバ200-2を設置している。ローカル拠点の個数やローカル拠点内における端末装置の個数は例示に過ぎない。
【0019】
ホステッドVoIPサーバ100は、同一拠点内および同一拠点外の端末装置間の呼の状態遷移をローカルサーバ201またはローカルサーバ202を経由して制御し、そのために必要なデータを有する。ホステッドVoIPサーバ100が呼の状態遷移を制御する動作モードをホステッドモードという。呼の状態とは、例えば、発信元の受話器を上げると発信音が聞こえ、着信先の電話番号を指定し始めると発信音が止み、着信先の電話番号を指定し終えると発信元の受話器から呼出音、着信先の受話器から着信音が鳴ることをいい、このような呼の状態が遷移することを呼の状態遷移という。
【0020】
ローカルサーバ201は端末装置30-1を収容し、端末装置30-1の呼接続に必要なデータを有し、ローカル拠点20-1内の端末装置30-1間の呼の状態遷移を直接に制御する。さらに、端末装置30-1の呼の状態を保持している。同様に、ローカルサーバ30-2は端末装置30-2を収容し、端末装置30-2の呼接続に必要なデータを有し、ローカル拠点20-1内の端末装置30-1間の呼の状態遷移を制御する。さらに、端末装置30-2の呼の状態を保持している。
【0021】
本PBXバックアップシステムでは、端末装置間の呼接続は、ローカルサーバ200-1,200-2が保持している呼の状態と、端末装置30-1,30-2のイベント検出と、ホステッドVoIPサーバ100の呼の状態遷移制御により確立される。このようなシステムにおいて、ネットワーク40に障害が発生してネットワーク40が切断された場合、あるいはホステッドVoIPサーバ100に障害が発生した場合、呼接続に必要な呼の状態遷移制御がホステッドVoIPサーバ100からローカルサーバ200-1または200-2に切り替わり、同一拠点内の端末装置間通信であれば、そのローカルサーバが呼の状態遷移制御を行うことにより、端末装置30-1,30-2の呼接続を確立する。ローカルサーバが呼の状態遷移制御を行う動作モードを自立モードという。
【実施例1】
【0022】
図2は、本発明にかかるPBXバックアップシステムの実施例1を示す。このPBXバックアップシステムには、センター拠点10とローカル拠点20-1とローカル拠点20-2がIPネットワーク網41および公衆網42で接続されている。センター拠点10には、ホステッドVoIPサーバ100が設置されている。ローカル拠点20-1にはローカルサーバ200-1とIP端末301-1とレガシー端末302-1が設置され、ローカル拠点20-2にはローカルサーバ200-2とIP端末301-2とレガシー端末302-2が設置されている。ホステッドVoIPサーバ100は、IPネットワーク網41および公衆網42を経由して、ローカルサーバ200-1,200-2とIP端末301-1,301-2とレガシー端末302-1,302-2に接続されうる。
【0023】
ローカルサーバ200-1はIP端末301-1とレガシー端末302-1を収容し、IP端末301-1とレガシー端末302-1の呼接続に必要なデータを有し、さらに、IP端末301-1とレガシー端末302-1の呼の状態を保持している。ローカルサーバ200-2はIP端末301-2とレガシー端末302-2を収容し、IP端末301-2とレガシー端末302-2の呼接続に必要なデータを有し、さらに、IP端末301-2とレガシー端末302-2の呼の状態を保持している。ホステッドVoIPサーバ100がダウンした場合、あるいはIPネットワーク網41が切断された場合には、ローカルサーバ200-1はIP端末301-1とレガシー端末302-1間、ローカルサーバ200-2はIP端末301-2とレガシー端末302-2間の呼の状態遷移を制御する。
【0024】
ホステッドVoIPサーバ100は、IP端末301-1とレガシー端末302-1とIP端末301-2とレガシー端末302-2間の呼の状態遷移を制御し、回線制御部110と運用管理サーバ部120から構成されている。回線制御部110は、IP端末301-1,301-2とレガシー端末302-1,302-2の呼の状態遷移の制御をする。回線制御部110の故障に備えて、回線制御部110-1と回線制御部110-2が冗長して設けられている。運用管理サーバ部120は、ローカル拠点20-1,20-2における呼接続に必要な局データを一元的に保持する機能と、ローカルサーバ200-1,200-2に局データを送信する機能を有する。
【0025】
ローカルサーバ200-1は、IP端末301-1とレガシー端末302-1の呼接続に必要な局データを記憶し、ローカルサーバ200-2は、IP端末301-2とレガシー端末302-2の呼接続に必要な局データを記憶している。ローカルサーバ200-1,200-2は、ホステッドVoIPサーバ100と通信が可能かどうかチェックを行っている。以下、通信が可能/不可能の場合と、通信がローカル拠点内/ローカル拠点外の場合に分けて説明する。
【0026】
ホステッドVoIPサーバ100とローカルサーバ200-1が通信可能な状態で、IP端末301-1から同一のローカル拠点20-1内のレガシー端末302-1へ呼出しを行う場合、ローカルサーバ200-1は呼出要求信号を送信し、ホステッドVoIPサーバ100の回線制御部110がIPネットワーク網41を介して受信する。呼出要求信号を受信した回線制御部110は、運用管理サーバ部120が保持している局データを参照して、呼の状態遷移を行ない、IPネットワーク網41を介して、ローカルサーバ200-1に呼出要求信号を送信する。呼出要求信号を受信したローカルサーバ200-1はレガシー端末302-1に呼出し要求を行い、IP端末302-1とレガシー端末302-1の通信を可能とする。IP端末301-1からローカル拠点20-1外の例えばIP端末301-2へ呼出しを行う場合も同様である。
【0027】
ここで、IPネットワーク網41に障害が発生し、ホステッドVoIPサーバ100とローカルサーバ200-1,200-2が通信不可能になったものとする。ローカルサーバ200-1,200-2は、この通信不可能になったことを感知し、ホステッドVoIPサーバ100に代わって、自らが呼の状態遷移の制御を行う自立モードとなる。
【0028】
この状態で、IP端末301-1から同一ローカル拠点20-1内の例えばレガシー端末302-1へ呼出しを行う場合、IP端末301-1を収容しているローカルサーバ200-1が呼出要求信号を受信後、ローカルサーバ200-1は、ホステッドVoIPサーバ100と通信不可であることを判断し、ローカルサーバ200-1がレガシー端末302-1に呼出し要求を行い、IP端末301-1とレガシー端末302-1の通信を可能とする。また、IP端末301-1からローカル拠点20-1外のIP端末301-2またはレガシー端末302-2との通信は、公衆網42を経由することにより可能である。
【0029】
ホステッドVoIPサーバ100に障害が発生し、ホステッドVoIPサーバ100とローカルサーバ200-1,200-2が通信不可能になった場合、同一ローカル拠点内の端末装置の通信は、IPネットワーク網41に障害が発生した場合と同様である。また、同一ローカル拠点外の端末装置の通信は、IPネットワーク網41または公衆網42に障害が発生していないなら、その網を経由して現状の呼を継続することができる。
【0030】
なお、図1において、センター拠点10にも端末装置を設置する場合、センター拠点10にローカルサーバを設置することにより端末装置の収容が可能となる。また、ホステッドVoIPサーバ100にローカルサーバの機能を付加させることにより、独立したローカルサーバを設置せずに、センター拠点10に物理的に端末装置を収容することも考えられる。
【0031】
本システムは、端末装置をホステッドVoIPサーバが収容しない構成としたので、レガシー端末はIPコンバータ無しでもローカルサーバに収容することができる。
【0032】
図3は、ホステッドVoIPサーバ100とローカルサーバ200と端末装置30の詳細を示している。ローカルサーバ200は図1,2におけるローカルサーバ200-1および200-2を代表し、端末装置30は図1における端末装置30-1,30-2および図2におけるIP端末301-1,301-2およびレガシー端末302-1,302-2を代表する。
【0033】
ホステッドVoIPサーバ100の運用管理サーバ部120は、局データ、即ちローカルサーバ200が収容している端末装置30の呼接続に必要な端末装置データや制御データを一元的に管理している局データ記憶手段121と、局データ記憶手段121に保持されている局データの内、ローカルサーバ200に収容される端末装置30の呼制御に必要な分だけを読み出してローカルサーバ200へ配信する局データ送信手段122を備える。
【0034】
回線制御部110は、ホステッドモード動作時に端末装置30の呼の状態遷移を制御するホステッドモード呼状態遷移制御手段111と、ローカルサーバ200へ状態監視信号を定期的に送信する状態監視信号手段112を備える。ホステッドモード呼状態遷移制御手段111は、後述のように、ローカルサーバ200から発信元の端末装置の呼の状態と、発生したイベント内容を受信すると、局データ記憶手段121に保持されている局データを参照して、着信先の端末装置を収容しているローカルサーバを特定し、そのローカルサーバから着信先の端末装置の呼の状態を読む。そして、着信先の呼の状態から、遷移すべき呼の状態を決定して、送信元のローカルサーバと着信先のローカルサーバそれぞれに呼接続要求処理指示を行うことによって状態遷移の制御を行う。
【0035】
端末装置30においては、受話器を上げた、ダイヤルを回した、保留ボタンを押した等の操作に伴う各種のイベントが発生する。端末装置30が他の端末装置と呼接続を確立するためには、端末装置30のイベントをローカルサーバ200が検出して、呼の状態を保持し、ホステッドモード動作時であればホステッドVoIPサーバ100の回線制御部110による呼の状態遷移によって、相手先の端末装置との呼接続を確立する。端末装置30は、イベントをローカルサーバ200へ送信する端末イベント送信手段31と、ローカルサーバ200から端末制御指示を受信する端末制御指示受信手段32とを備えている。
【0036】
ローカルサーバ30は、ホステッドVoIPサーバ100の局データ送信手段122からの局データ、ホステッドVoIPサーバ100の状態監視信号送信手段112からの状態監視信号、端末装置30の端末イベント送信手段31からのイベントを受信し、ホステッドVoIPサーバ100の呼状態遷移制御手段111による制御によってホステッドモードと自立モードを切り替える。
【0037】
局データ受信手段21は、局データ送信手段112から配信されてくる局データを受信し、局データ記憶手段22に記憶する。状態監視手段23は、状態監視信号送信手段112から状態監視信号を受信し、ホステッドVoIPサーバ100と通信が正常か否かの状態を状態監視記憶手段24に書き込む。状態監視信号は、冗長化されている回線制御部110,110-1,110-2のそれぞれから送信されてくる。端末装置イベント検出手段25は、端末装置イベント送信手段31からのイベントを検出すると、状態監視記憶手段26に入力すると共に、呼接続制御手段27にイベント内容を送信する。
【0038】
呼接続制御切替手段27は、状態監視記憶手段24における記憶内容によって、ホステッドVoIPサーバ100と通信が可能か否かを判断している。通信が可能な場合、イベント内容を受信すると、呼接続制御切替手段27は、イベント内容と端末装置状態監視記憶手段26が記憶している発信元の端末装置の呼の状態をホステッドVoIPサーバ100のホステッドモード呼状態遷移制御手段111へ送信する。一方、通信が不可能な場合、呼接続制御切替手段27は、イベント内容と発信元の端末装置の呼の状態をローカルサーバ30内の自立モード呼状態遷移制御手段28へ送信する。
【0039】
自立モード呼状態遷移制御手段28は、呼接続制御切替手段27から発信元の端末装置の呼の状態とイベント内容を受信すると、局データ記憶手段22を参照して着信先の端末装置を特定した後、呼の状態遷移を行い、端末装置30の端末制御指示受信手段32に制御信号を送信した後、端末装置状態記憶手段26に端末装置の呼の状態を書き込み、呼接続を確立する。
【0040】
端末装置読出・呼接続要求処理指示手段29は、ホステッドモード呼状態遷移制御手段111から呼接続の指示信号を受信すると、呼接続の指示信号を端末装置30の端末制御指示受信手段32に送信すると共に、呼接続の指示信号に基づく端末装置の呼の状態を端末装置状態記憶手段26に書き込むための要求を出す。
【0041】
端末装置状態記憶手段26は、端末装置読出・呼接続要求処理指示手段29からの上記要求を受けると、自立モード呼状態遷移制御手段28からの端末装置の呼の状態,端末装置イベント検出手段25からのイベント内容を入力して記憶する。この端末装置の呼の状態とイベント内容は、呼接続制御手段27へ、および端末装置読出・呼接続要求処理指示手段29を経由してホステッドモード状態遷移制御手段111へ読み出され得る。
【0042】
次に、以上のように構成された本PBXバックアップシステムの動作について説明する。
【0043】
局データ記憶手段22には、端末装置30の呼制御に必要な分だけの局データが記憶されており、サーバ状態監視手段23は、状態監視信号送信手段112からの状態監視信号を受信し、ホステッドVoIPサーバ100と通信が正常か否かの状態を状態監視記憶手段24に書き込んでいる。呼接続制御切替手段27は、状態監視記憶手段24における記憶内容によって、ホステッドVoIPサーバ100と通信が可能か否かを判断している。つまり、一定時間内に状態監視信号を受信できれば通信は正常、タイムアウトになると通信は異常と判定される。このことによって、ローカルサーバ30は、ホステッドVoIPサーバ100と信号の送受信が可能か否かを確認する。
【0044】
通信が可能な場合はホステッドモードとなる。端末装置30では各種のイベントが発生する。端末装置イベント検出手段25がイベントを検出すると、呼接続制御切替手段27は、状態監視記憶手段26が記憶している端末装置の呼の状態を参照し、イベントの内容と発信元の端末装置の呼の状態をホステッドモード呼状態遷移制御手段111へ送信する(図4のステップA1)。ホステッドモード呼状態遷移制御手段111は、イベント内容と発信元の端末装置の呼の状態を受信すると、局データ記憶手段121に保持されている局データを参照して、着信先の端末装置を収容しているローカルサーバを特定し(図4のステップA2)、そのローカルサーバの端末装置状態記憶手段26から着信先の端末装置の呼の状態を読む(図4のステップA3)。
【0045】
そして、着信先の呼の状態から、遷移すべき呼の状態を決定して(図4のステップA4)、呼の状態遷移を行い(図4のステップA5)、送信元のローカルサーバと着信先のローカルサーバそれぞれの端末装置読出・呼接続要求処理指示手段29に呼接続要求処理指示を行う(図4のステップA6)。このように、ホステッドモードにおける呼の状態遷移制御は、ホステッドモード呼状態遷移制御手段111により行われる。
【0046】
送信元のローカルサーバと着信先のローカルサーバそれぞれの端末装置読出・呼接続要求処理指示手段29は、呼接続の指示信号を端末装置30の端末制御指示受信手段32に送信する(図4のステップA7)と共に、呼接続の指示信号に基づく端末装置の呼の状態を端末装置状態記憶手段26に書き込むための要求を出して書き込ませる(図4のステップA8)。呼接続の指示信号を受信した端末装置30は、指示信号に従って動作し、呼の状態遷移を確立する(図4のステップA9)。ホステッドモードでは、このようにして呼の状態遷移の制御を行う。
【0047】
一方、IPネットワーク網41またはホステッドVoIPサーバ100に障害が発生した場合、ホステッドモード呼状態遷移制御手段111による呼接続の制御が不可能になる。呼接続制御切替手段27はイベント内容と発信元の端末装置の呼の状態を自立モード呼状態遷移制御手段28へ送信する(図5のステップB1)。自立モード呼状態遷移制御手段28は、イベント内容と発信元の端末装置の呼の状態を受信すると、自拠点の呼制御に必要な局データを局データ記憶手段22から参照して、着信先の端末装置を特定(図5のステップB2)した後、呼の状態遷移を行い(図5のステップB3)、端末制御指示受信手段32に呼接続の指示信号を送信(図6のステップB4)した後、端末装置の呼の状態を端末装置状態記憶手段26に書き込む(図5のステップB5)。呼接続の指示信号を受信した端末装置30は、指示信号に従って動作し、呼の状態遷移を確立する(図5のステップB6)。
【0048】
なお、局データを参照して着信先のローカルサーバを特定(図4のステップA2)した結果、着信先の端末装置が他拠点であることが分かった場合は、公衆網42を経由し、相手先のレガシー端末が収容されているローカルサーバの自立モード呼状態遷移制御手段28により、相手先のレガシー端末の呼の状態遷移が行われ、着信先の端末装置を特定されることにより、呼接続を確立する。
【0049】
また、ホステッドVoIPサーバ100に障害が発生したが、IPネットワーク網41は正常であれば、異なる拠点の端末装置間の通信は、その呼に関する限り、IPネットワーク網41を経由してIP端末の間で維持することが可能である。
【0050】
このように、ホステッドVoIPサーバ100は呼接続を制御する機能のみを有し、ローカルサーバ200は障害時における必要最小限の呼接続機能と端末状態記憶機能を有する。必要最小限とは、当該ローカルサーバ200が収容している端末装置30の呼接続に必要な分ということである。ホステッドVoIPサーバ100とローカルサーバ200の機能を限定することにより、コスト安のシステムを構築することができる。
【0051】
また、IPネットワーク網401の障害時における呼の状態遷移制御は、ローカルサーバ200の自立モード呼状態遷移制御手段28によって行われる。ローカルサーバ200は、端末装置を収容しており、また、予め局データを記憶し端末装置の呼の状態を把握しているので、ホステッドVoIPサーバ100からの送信を要することなく、直ちに呼の状態遷移制御を切り替えることができる。
【0052】
また、端末装置の側から見た場合、ホステッドモードであっても自立モードであっても、呼の状態遷移の制御を直接にはローカルサーバ200のみから受けるため、複数のサーバと通信を行なう端末装置と比較して安価になる。特に、端末台数の多い大規模なシステムを構築する場合、この利点は拡大される。
【0053】
その後、IPネットワーク網41またはホステッドVoIPサーバ100の障害が復旧し、ホステッドVoIPサーバ100とローカルサーバ200の通信が再開すると、状態監視手段23が状態監視信号を受信し、ホステッドVoIPサーバ100と通信が可能であることを状態監視記憶手段24に記憶する。端末装置間の通信は、そのままローカルサーバ200による呼の状態遷移制御下で継続される。
【0054】
そして、ローカルサーバ200が次のイベントを検出すると、端末装置の呼の状態とイベント内容を端末装置読出・呼接続要求処理指示手段29を経由して、ホステッドVoIPサーバ100のホステッドモード呼状態遷移制御手段111へ送信する。この結果、通信を維持したままで、呼の状態遷移の制御がローカルサーバ200からホステッドVoIPサーバ100へ切り替わる。ローカルサーバ200からホステッドVoIPサーバ100へ送信されるのは、イベントを起こした端末装置の呼の状態とイベント内容だけであるから、ネットワークトラフィックがさほど上昇することはなく、細い通信帯域幅のネットワークで足りる。
【0055】
上記の通り、呼の状態遷移の制御は、呼接続制御切替手段27によって、ホステッドモード呼状態遷移制御手段111により行なうか、自立モード呼状態遷移制御手段28により行なうかを切り分けることによって、IPネットワーク網障害時の呼接続を担保する。
【0056】
なお、P2P接続に本PBXバックアップシステムを適用することも可能である。P2P接続に本PBXバックアップシステムを適用し、同じ拠点内の端末装置間の通信中に、ホステッドVoIPサーバの障害が起きた場合、あるいはIPネットワーク網の障害が起きた場合、ローカルサーバが予め保持している端末装置の呼の状態とローカルサーバの呼の状態遷移制御により通信は維持される。また、異なる拠点間における端末装置の通信中に、ホステッドVoIPサーバがダウンした場合、通信中の各端末装置が設置されている拠点間のIPネットワーク網が接続可能であれば、通信は切断されずに維持される。
【0057】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0058】
(付記1)複数のローカル拠点とセンター拠点をネットワークで接続したPBXバックアップシステムにおいて、前記センター拠点には、前記ローカル拠点内外の端末装置間の呼の状態遷移を制御するホステッドVoIPサーバを設置し、前記ローカル拠点それぞれには、端末装置と、前記ホステッドVoIPサーバによる呼の状態遷移制御の結果を当該端末装置へ中継するローカルサーバとを設置し、前記ネットワークまたは前記ホステッドVoIPサーバに障害が発生すると、同一ローカル拠点内の端末装置間の呼の状態遷移は当該ローカルサーバが行なうように切り替わることを特徴とするPBXバックアップシステム。
【0059】
(付記2)前記ローカルサーバは、前記ホステッドVoIPサーバから配信されてくる、当該ローカルサーバが収容している端末装置の呼接続に必要な局データ(端末装置データや制御データ)を記憶する局データ記憶手段と、当該ローカルサーバが収容している端末装置の呼の状態と該端末装置で発生したイベントの内容を記憶する端末装置状態記憶手段と、前記端末装置状態記憶手段から端末装置の呼の状態とイベント内容を読み出して前記ホステッドVoIPサーバへ送信し、また前記ホステッドVoIPサーバから呼接続の指示信号を受信すると、呼接続の指示信号を端末装置に送信する端末装置読出・呼接続要求処理指示手段と、発信元の端末装置の呼の状態とイベント内容を受けると、前記局データ記憶手段を参照して着信先の端末装置を特定した後、呼の状態遷移を行い、呼接続の指示信号を端末装置に送信した後、前記端末装置状態記憶手段に端末装置の呼の状態を書き込み、呼接続を確立する自立モード呼状態遷移制御手段と、前記ホステッドVoIPサーバと通信が可能か否かを判断しており、端末装置からのイベント内容を受信すると、前記イベント内容と前記端末装置状態監視記憶手段が記憶している発信元の端末装置の呼の状態を、通信が可能な場合は前記ホステッドVoIPサーバへ、通信が不可能な場合は前記自立モード呼状態遷移制御手段へ送信する呼接続制御切替手段とを有することを特徴とする付記1に記載のPBXバックアップシステム。
【0060】
(付記3)前記ホステッドVoIPサーバは、全ての端末装置の前記局データを一元管理していることを特徴とする付記2に記載のPBXバックアップシステム。
【0061】
(付記4)付記1に記載の障害または付記2に記載の通信が可能か否かは、前記ホステッドVoIPサーバから前記ローカルサーバへ定期的に送信されてくる状態監視信号を前記ローカルサーバで一定時間の内に受信できるか否かによって判断されることを特徴とする付記1または付記2に記載のPBXバックアップシステム。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、IPネットワーク網で電話サービスを提供するネットワークやシステムに適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 センター拠点
20 ローカル拠点
21 局データ受信手段
22 局データ記憶手段
23 状態監視手段
24 状態監視記憶手段
25 端末装置イベント検出手段
26 端末装置状態記憶手段
27 呼接続制御手段
28 自立モード呼状態遷移制御手段
29 端末装置読出・呼接続要求処理指示手段
30 端末装置
31 端末イベント送信手段
32 端末制御指示受信手段
40 ネットワーク
41 IPネットワーク網
42 公衆網
100 ホステッドVoIPサーバ
110 回線制御部
111 ホステッドモード呼状態遷移制御手段
112 状態監視信号送信手段
120 運用管理サーバ
121 局データ記憶手段
122 局データ送信手段
200 ローカルサーバ
301 IP端末
302 レガシー端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のローカル拠点とセンター拠点をネットワークで接続したPBXバックアップシステムにおいて、
前記センター拠点には、前記ローカル拠点内外の端末装置間の呼の状態遷移を制御するホステッドVoIPサーバを設置し、
前記ローカル拠点それぞれには、端末装置と、前記ホステッドVoIPサーバによる呼の状態遷移制御の結果を当該端末装置へ中継するローカルサーバとを設置し、
前記ネットワークまたは前記ホステッドVoIPサーバに障害が発生すると、同一ローカル拠点内の端末装置間の呼の状態遷移は当該ローカルサーバが行なうように切り替わることを特徴とするPBXバックアップシステム。
【請求項2】
前記ローカルサーバは、
前記ホステッドVoIPサーバから配信されてくる、当該ローカルサーバが収容している端末装置の呼接続に必要な局データ(端末装置データや制御データ)を記憶する局データ記憶手段と、
当該ローカルサーバが収容している端末装置の呼の状態と該端末装置で発生したイベントの内容を記憶する端末装置状態記憶手段と、
前記端末装置状態記憶手段から端末装置の呼の状態とイベント内容を読み出して前記ホステッドVoIPサーバへ送信し、また前記ホステッドVoIPサーバから呼接続の指示信号を受信すると、呼接続の指示信号を端末装置に送信する端末装置読出・呼接続要求処理指示手段と、
発信元の端末装置の呼の状態とイベント内容を受けると、前記局データ記憶手段を参照して着信先の端末装置を特定した後、呼の状態遷移を行い、呼接続の指示信号を端末装置に送信した後、前記端末装置状態記憶手段に端末装置の呼の状態を書き込み、呼接続を確立する自立モード呼状態遷移制御手段と、
前記ホステッドVoIPサーバと通信が可能か否かを判断しており、端末装置からのイベント内容を受信すると、前記イベント内容と前記端末装置状態監視記憶手段が記憶している発信元の端末装置の呼の状態を、通信が可能な場合は前記ホステッドVoIPサーバへ、通信が不可能な場合は前記自立モード呼状態遷移制御手段へ送信する呼接続制御切替手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のPBXバックアップシステム。
【請求項3】
前記ホステッドVoIPサーバは、全ての端末装置の前記局データを一元管理していることを特徴とする請求項2に記載のPBXバックアップシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の障害または請求項2に記載の通信が可能か否かは、前記ホステッドVoIPサーバから前記ローカルサーバへ定期的に送信されてくる状態監視信号を前記ローカルサーバで一定時間の内に受信できるか否かによって判断されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のPBXバックアップシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−60279(P2012−60279A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199484(P2010−199484)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】