説明

PCをコーティングする2つのトリアジン紫外線吸収体の組合せ

本発明は、少なくとも1つの第1層、第2層および第3層を含む多層製品に関し、該第1層はポリカーボネートを含有し、該第2層は、紫外線安定剤として2つのトリアジン化合物を含有するアルキルアクリレートに基づく紫外線保護層を有し、および該第3層は、紫外線吸収体を含有する耐引掻き層である。さらに、本発明は、該多層製品の製造および使用、ならびに、該多層製品を含むラミネーションなどの製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも第1層、第2層および第3層を含む多層製品であって、該第1層はポリカーボネートを含有し、該第2層は、紫外線安定剤としての2つのトリアジン化合物を含有する、アルキルアクリレートに基づく紫外線保護層であり、該第3層は、同様に紫外線吸収体を含有する耐引掻き層である、該多層製品に関する。さらに、本発明は、このような多層製品の製造と、成形品、例えば、上記多層製品を有するガラスなどに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート製の成形品は、比較的長期に亘り既知である。しかしながら、ポリカーボネートは、それ自体が本質的に紫外線に安定ではないといった欠点を有する。ビスフェノールAポリカーボネートの感度曲線は、320nmと330nm間で最も高い感度を有する。330nm以下では、太陽放射は地球に到達せず、350nmより高い場合、このポリカーボネートはほぼ無反応であり、黄変はもはや生じない。
【0003】
大気中における紫外線の有害な影響からポリカーボネートを保護するために、紫外線放射を吸収して、それを無害な熱エネルギーに変換する紫外線安定剤が、一般的に使用されている。
【0004】
恒久的に保護するために、ポリカーボネート表面に紫外線放射が到達する前に、有害な紫外線放射を効果的に除去することが有利であり、このことは、ポリカーボネートの上に、紫外線保護層、例えば紫外線吸収体を含有する共押出層、紫外線吸収体を含有するフィルム、または紫外線吸収体を含有するラッカーを用いることにより可能である。
【0005】
この目的のために使用できる、代表的な紫外線吸収体の分類は、2-ヒドロキシ-ベンゾフェノン類、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-シアノアクリレートおよびオキサルアニリド(oxalanilide)である。
【0006】
多くの場合において、屋外で適用するために、改良された引掻き保護性も必要である。このことは、耐引掻きラッカーを施すことによりもたらすことができる。このことに関する最新の先行技術は、ゾル-ゲルシリケートラッカー(例えば、EP-A0339257、US-A5041313参照)および、他の無機ハイブリッドラッカー(EP-A0570165)である。オルガノシラン系ラッカーの性能プロファイルは、風化作用および光に対する優れた安定性、熱、アルカリ、溶剤および水分に対する耐性を更に含む。
【0007】
トリアジン系の紫外線吸収体は、他の紫外線吸収体と比べて、PMMAおよび紫外線硬化性アクリレートラッカー中で最も高い安定性を示す。安定性は、HALS系(ヒンダードアミン系光安定剤)を添加することにより更に増加できる(J.Pospisil 等、Prog.Polym.Sci 第25巻、(2000),第1261頁-1335頁)。
【0008】
EP-A1308084は、トリアジン系の紫外線吸収体と、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収体、所望によるHALSとの一般的な組合せを開示する。数多くの紫外線吸収体の変形例に関する種々の可能な用途が開示され、コーティングにおける使用も含む。該明細書において要求される紫外線吸収体の組合せは、ポリカーボネートにおける使用、またはコーティング組成物における使用に関して具体的に開示しない。リストからの任意の組合せ、または、好ましいものとして又は実施例に記載される、EP-A1308084中に記載の紫外線吸収体の組合せは、該紫外線吸収体が、ポリカーボネート-紫外線保護層-耐引掻きコーティングから構成される多層構造に関して、風化作用に対する最適な保護をもたらすために選択されなければならないことを開示しない。
【0009】
EP-A0502816は、ラッカー系、例えば自動車用の保護トップコートとして、HALSと組合せる、フェニル-またはp-トリル置換のトリアジンの使用を開示する。
【0010】
WO00/66675Aは、HALSと組合せて混合状態のビフェニル置換トリアジンの、接着剤における使用を開示する。
【0011】
WO2008/107095Aは、ビフェニル置換トリアジン誘導体と、特定量の更なる紫外線吸収体の混合物を含有するポリカーボネート組成物を開示する。このようにして、ポリカーボネートは紫外線から保護されるが、ラッカー処理されない。
【0012】
WO2006/108520Aは、ポリカーボネート用の、PMMA製の紫外線保護層において、式Iで表わされるビフェニル置換トリアジンの使用を開示する。そこには、適用に際して、風化作用の間における紫外線吸収体の分解が低く、高い初期吸光度が必要であることを記載する。
【0013】
しかしながら、上記出願は、ポリカーボネート層、紫外線保護層および耐引掻きラッカーを含有する多層系において、紫外線吸収体の特に効果的な組合せの選択に関するあらゆる教示を含まない。
【0014】
先行技術から既知の、紫外線安定化したポリカーボネート成形品は、多くの用途、特に屋外用途において、黄変およびヘーズに対する長期間の安定性が不十分であり、多くの用途において、耐引掻き性の観点と、恒久的に良好な視覚的印象(例えば、ガラスなど)の観点に関する高い要求を満たさなければならない。
【0015】
多くの用途において、ポリカーボネート成形品は、340nmにて9MJ/m未満の放射条件下(フロリダにおける3年間の屋外風化作用に相当する)において、できるだけ少ない黄変と可能な限り低いヘーズを示さなければならない。
【0016】
この試験において、風化作用は、Atlas Ci 5000 ウエザーメーターを用いて、3000時間の総期間に亘り、340nmにて0.75W/mの放射強度(それは、340nmにて8.1MJ/mに相当する)の下、乾燥/雨(dry/rain)サイクルを102:18分で行う。バックパネル温度は70℃、サンプル室温度は55℃、湿度は40%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0339257号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第5041313号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0570165号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1308084号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0502816号明細書
【特許文献6】国際特許出願公開第00/66675号A明細書
【特許文献7】国際特許出願公開第2008/107095号A明細書
【特許文献8】国際特許出願公開第2006/108520号A明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】J.Pospisil 等、Prog.Polym.Sci 第25巻,(2000),第1261頁-1335頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明における目的は、上述の条件のもと、340nmにて9MJ/mの放射条件において、可能な限り小さな黄変とヘーズを示す、耐引掻き性のポリカーボネート成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
驚くべきことに、これらの要求に関して、紫外線吸収体の特定の組合せを有する多層構造体は、先行技術において伝えられている同等の組合せと比べ、著しく優れることが見出されている。本発明によると、少なくとも第1層(A)、第2層(B)および第3層(C)を含む多層製品であって、該第1層(A)はポリカーボネートを含有し、該第2層(B)は、式(I)および(II)に係る紫外線安定剤の組合せを含有する、ポリアルキル(メタ)アクリレート製の紫外線保護層であり、および第3層(C)は紫外線保護した耐引掻き層である、該多層製品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る多層製品は、更なる層、特に、更なる紫外線保護層(D)と、更なる耐引掻き層(E)を有してもよく、該紫外線保護層(D)は、同様にアルキルアクリレート層であり、何れの場合も、少なくとも1つの紫外線安定剤、例えば、2-ヒドロキシ-ベンゾフェノン類、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-シアノアクリレートおよびオキサルアニリドなどの上記紫外線吸収体分類から選択されるもの(好ましくは、トリアジン誘導体は式(I)および(II)に係る紫外線吸収体である)を含有する。この場合における層配列は、(C)-(B)-(A)-(D)-(E)であり、層(B)および(D)と、(C)および(E)は、同じ組成であってもよく、異なる組成であってもよい。更に可能な変形例は、内部に紫外線吸収体を含有する耐引掻き層を、1つだけ施すことである。何故ならば、そこにおける紫外線保護に関する要求がより少ないからである。その結果、層配列は、(C)-(B)-(A)-(E)である。
【0022】
物品は、更なるコーティングを付加的に含むことができる。コーティング(B)、(C)、(D)、(E)に加えて、更なるコーティング(F)、例えばIR-吸収層、IR-反射層、導電性層、エレクトロルミネセンス層、装飾目的の着色及び印刷層、導電性印刷層(例えば、自動車の窓ガラスの加熱に使用される)、所望により加熱ワイヤーを有する層、反射防止層、水滴防止(no-drop)コーティング、防曇コーティング、耐指紋付着コーティングおよび/またはそれらの組合せが考慮される。このような層は、中間層および/または内部カバー層として施されてもよく、配置されてもよい。
【0023】
本発明に係る多層製品における層(B)および所望による層(D)において使用される、紫外線吸収体のうちの少なくとも1つは、以下の一般式(I)を有する:
【0024】
【化1】

式中、XはOR;OCHCHOR;OCHCH(OH)CHORまたはOCH(R)COORを示し、Rは、何れの場合も分枝または非分枝C〜C13アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C12アリールまたはCO−C〜C18アルキルを示し;RはHまたは分枝もしくは非分枝C〜Cアルキルであり;およびRはC〜C12アルキル;C〜C12アルケニルまたはC〜Cシクロアルキルを示す。
を有する。
【0025】
Xは、好ましくはOCH(R)COORであり、特に好ましくはR=CHおよびR=C17である。
【0026】
本発明に係る多層製品における層(B)および所望による層(D)において使用される、紫外線吸収体のうちの少なくとも1つは、以下の一般式(II)を有する:
【0027】
【化2】

式中、Tは、COOもしくはOCOもしくはOにより遮断された、またはOにより遮断されOHにより置換されたC〜C18-アルキルまたはC〜C18-アルキルである。
【0028】
は、好ましくは、C〜C18アルキル、特に好ましくはC17である。
【0029】
このような、一般式(I)および(II)で表わされるビフェニル置換およびフェニル置換トリアジンは、主に、WO96/28431A,DE-A19739797、WO00/66675A、US-A6225384、US-A6255483、EP-A1308084およびFR-A2812299において既知である。
【0030】
本発明に係る紫外線保護層(B)および(D)は、2-ヒドロキシ-ベンゾフェノン、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-シアノアクリレートおよびオキサルアニリドを含有する群から好ましく選択される、更なる紫外線吸収体を含有できる。
【0031】
紫外線保護層(B)および(D)は、硬化したラッカー配合物、フィルム層または共押出層であってもよい。
【0032】
硬化したラッカー配合物の場合、本発明に係る紫外線保護層(B)および(D)は、主な成分としてメチルメタクリレートを含有して、所望により、より長い、直鎖または分枝状のアルキル鎖(-C2n+1、この場合n>1)、好ましくは1≦n≦10、特に好ましくは直鎖のn=3(ブチルメタクリレート)を有する更なるアルキルメタクリレートを含有する、物理的に乾燥するポリアクリレート樹脂をバインダー材料として含む。2つのメタクリレート単位の比は、75〜100%メチルメタクリレートと、25〜0%アルキルメタクリレート、好ましくは85〜100%メチルメタクリレートと、15〜0%アルキルメタクリレート、特に好ましくは90〜100%メチルメタクリレートと、10〜0%アルキルメタクリレートである。
【0033】
フィルムおよび共押出層の形態において、本発明に係る紫外線保護層(B)および(D)は、アルキルメタクリレートからなるポリアクリレート、好ましくは、炭素原子が10未満(-C2n+1、この場合n<10)のアルキル鎖長を有するもの、特に好ましくは、もっぱらn=1(メチルメタクリレート)をポリマーマトリックスとして含有する。
【0034】
紫外線保護層における特有の最低限の吸光度が、恒久的な紫外線保護に関して必要であるので、要求される紫外線吸収体濃度は層厚に依存する。
【0035】
層(B)中における、式(I)および(II)で表わされる紫外線吸収体は、式(I)の紫外線吸収体:式(II)の紫外線吸収体が9.9:0.1〜6.1:3.9、好ましくは9:1〜7:3、特に好ましくは8.5:1.5〜7.5:2.5の比で使用される。
【0036】
層厚が1〜100μm、好ましくは1〜30μm、特に好ましくは1〜10μmの場合、本発明に係る紫外線保護層は、上記混合比で式(I)および(II)の紫外線吸収体の混合物を、ラッカー配合物の固形分に基づき0.5〜20wt%、好ましくは1〜15wt%、特に好ましくは1.5〜10wt%含有する、硬化ラッカー配合物形態である。この場合において、塗布および硬化後の層厚が1μmである配合物は少なくとも10wt%、好ましくは15wt%以上含有し、それらの層厚が5μmである配合物は少なくとも2wt%、好ましくは3wt%以上含有し、およびそれらの層厚が10μである配合物は少なくとも1wt%、好ましくは1.5%以上含有する。
【0037】
1〜500μm、好ましくは1〜100μm、特に好ましくは2〜50μmの層厚の場合、共押出層形態での本発明に係る紫外線保護層は、上記混合比で式(I)および(II)の紫外線吸収体の混合物を、0.05〜20wt%、好ましくは0.1〜15wt%、特に好ましくは0.5〜10wt%含有する。この場合において、2μmの層厚を有する共押出層は、少なくとも10wt%、好ましくは15wt%以上含有し、10μmのものは少なくとも2wt%、好ましくは3wt%以上含有し、および30μmのものは少なくとも0.7wt%、好ましくは1wt%以上含有する。重量パーセントは、層(B)の総重量に基づく。
【0038】
2μm〜2mm、好ましくは50μm〜1mm、特に好ましくは80μm〜500μmの層厚の場合、フィルム形態での本発明に係る紫外線保護層は、上記混合比で式(I)および(II)の紫外線吸収体の混合物を、0.01〜20wt%、好ましくは0.02〜5wt%、特に好ましくは0.04〜2wt%含有する。この場合において、80μmの層厚を有するフィルムは、少なくとも0.25wt%、好ましくは0.4wt%以上含有し、200μmのものは少なくとも0.1wt%、好ましくは0.15wt%以上含有し、500μmのものは、少なくとも0.04wt%、好ましくは0.06wt%以上含有する。重量パーセントは、層(B)の総重量に基づく。
【0039】
紫外線保護層の更なる安定化は、トリアジンに加えて、一般式(IIIa)で表わされるHALS系(ヒンダードアミン系光安定剤)とも称される、すなわち既存の紫外線吸収体を用いることによりもたらすことができる。
【0040】
【化3】

式中、Yは、H、RまたはORを表わし、Rは、何れの場合においても分枝または非分枝C〜C13アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C12アリールまたは−CO−C〜C18アルキルであり、RはHまたは分枝もしくは非分枝C〜Cアルキルであり、RはC〜C12アルキル、C〜C12アルケニルまたはC〜Cシクロアルキルである。
【0041】
【化4】

【0042】
それにより、以下の式が得られる
【0043】
【化5】

【0044】
硬化したラッカー配合物の形態における紫外線保護層に関して、好ましくはY=Rおよび以下のものである:
【0045】
【化6】

【0046】
特に好ましくは、Y=R(ただし、R=C〜C13アルキルおよび、
【0047】
【化7】

【0048】
これは、一般式(IIIe)で表わされる好ましい化合物の以下の群をもたらす
【0049】
【化8】

【0050】
硬化したラッカー配合物形態における本発明に係る紫外線保護層は、ラッカー配合物の固形分に基づき、0〜5wt%、好ましくは0〜3wt%、特に好ましくは0.5〜2wt%の、式(III)で表わされる化合物を含有する。特に好ましい量の特に好ましいHALS系(IIIe)が使用される場合、(I)および(II)の紫外線吸収体混合物の必要量は、1μmの、塗布および硬化後の層厚に関して、好ましくは≧10wt%、5μmのものに関して好ましくは≧2wt%、10μmのものに関して好ましくは≧1wt%まで減少される。
【0051】
HALS系は、0〜3wt%の量で、共押出層およびフィルムの形態の紫外線保護層において使用できる。しかしながら、より高い加工温度に起因して、ここでは、より高い分子量のHALS系が好ましく、この場合において、式(IIIa)に含まれる官能基(IIIf)は、1分子あたり2倍以上で存在する。
【0052】
【化9】

【0053】
空気中で1分あたり20℃の速度で加熱されるTGAにより定義される、300℃での重量損失≦3wt%である高分子量HALS系が好ましく、例えば、チバ製のChimassrb119として入手できる、式(IIIg)の化合物などがある。
【0054】
【化10】

【0055】
本発明に係る多層製品の層(A)に関する適当なポリカーボネートは、全ての既知のポリカーボネートである。それらは、ホモポリカーボネート、コポリカーボネートおよび熱可塑性ポリエステルカーボネートであってもよい。
【0056】
それらは、光散乱により較正された、ジクロロメタン中またはフェノール/o-ジクロロベンゼンの等しい重量混合物中で、相対溶液粘度を測定することにより測定される、18000〜40000の範囲、好ましくは22000〜36000、特に24000〜33000の平均分子量Mwを好ましく有する。
【0057】
ポリカーボネートの製造に関しては、例えば“Schnell”,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Polymer Reviews,第9巻,Interscience Publishers,ニューヨーク,ロンドン,シドニー 1964年、およびD.C.PREVORSEK,B.T.DEBONA and Y.KESTEN,アライドケミカル社、研究開発センター,モリスタウン,ニュージャージー州07960,“ポリ(エステル)カーボネートコポリマーの合成”in Journal of Polymer Science,Polymer Chemistry Edition,第19巻,75〜90頁(1980年)、D.Freitag,U.Grigo,P.R.Mueller,N.Nouvertne,バイエル AG,“ポリカーボネート”in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,第11巻,第2版,1988年,648〜718頁、およびDres.U.Grigo,K.Kircher and P.R.Mueller“ポリカーボネート”in Becker/Braun,Kunststoff−Handbuch,第3/1巻,ポリカーボネート,ポリアセタール,ポリエステル,セルロースエステル,Carl Hanser Verlag Munich,ウィーン 1992年,117〜299頁を参照できる。
【0058】
ポリカーボネートの調製は、界面法または溶融エステル交換法によって好ましく行われ、以下に、界面法に関する例を用いて記載する。
【0059】
出発化合物として使用される好ましい化合物は、下記一般式で表わされるビスフェノールである:
HO−R−OH
(式中、Rは、炭素原子を6〜30個有し、1個以上の芳香族基を含む2価の有機基である)。
【0060】
そのような化合物の例は、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、インダンビスフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトンおよびα,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンの群に属するビスフェノールである。
【0061】
上記化合物群に属する特に好ましいビスフェノールは、ビスフェノールA、テトラアルキルビスフェノールA、4,4−(メタ−フェニレンジイソプロピル)ジフェノール(ビスフェノールM)、4,4−(パラ−フェニレンジイソプロピル)ジフェノール、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BP−TMC)および所望によりそれらの混合物である。
【0062】
本発明において使用されるビスフェノール化合物を、炭酸化合物(特にホスゲン)と好ましく反応させるか、または溶融エステル交換法の場合、ジフェニルカーボネートもしくはジメチルカーボネートと反応させる。
【0063】
ポリエステルカーボネートは、既に記載したビスフェノールと、少なくとも1種類の芳香族ジカルボン酸と、所望により炭酸同等物とを反応させることによって得られる。適当な芳香族ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、3,3’−または4,4’−ジフェニルジカルボン酸およびベンゾフェノンジカルボン酸である。ポリカーボネート中のカーボネート基の一部、80mol%以下、好ましくは、20〜50mol%は、芳香族ジカルボン酸エステル基によって置換されてもよい。
【0064】
界面法において使用される不活性有機溶媒は、例えばジクロロメタン、様々なジクロロエタンおよびクロロプロパン化合物、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、クロロベンゼンおよびクロロトルエンである。クロロベンゼンまたはジクロロメタンまたはジクロロメタンとクロロベンゼンとの混合物が好ましく使用される。
【0065】
界面反応は、触媒、例えば第3級アミン、特にN−アルキルピペリジンまたはオニウム塩などによって加速され得る。トリブチルアミン、トリエチルアミンおよびN−エチルピペリジンが好ましく使用される。溶融エステル交換法の場合、DE−A4238123に記載された触媒が好ましく使用される。
【0066】
ポリカーボネートは直鎖または分枝状であってもよい。分枝と非分枝ポリカーボネートの混合物も使用できる。
【0067】
ポリカーボネートは、少量の分枝剤の使用によって意図的に制御された方法で分枝されてもよい。いくつかの適当な分枝剤は、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス−[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノール、2,6−ビス−(2−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ヘキサ−(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェニル)オルト−テレフタル酸エステル、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、テトラ−(4−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)フェノキシ)メタン、α,α’,α’’−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、1,4−ビス−(4’,4’’−ジヒドロキシトリフェニル)メチル)ベンゼン、特に1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)エタンおよびビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0068】
使用されるジフェノールに基づき0.05〜2mol%量で、付随して所望により使用される分枝剤または分枝剤の混合物を、ジフェノールと共に使用してもよく、あるいは、合成の後半の段階で添加してもよい。
【0069】
ポリカーボネート用の適当な分枝剤は文献において既知であり、以下の文献に開示されている:例えば、特許明細書の場合、US-B4185009、DE-A2500092、DE-A4240313、DE-A19943642、US-B5367044、およびそこに記載される文献。さらに、使用されるポリカーボネートは、本質的に分枝鎖状であってもよく、この場合、ポリカーボネートの調製に際し分枝剤を添加しなくてもよい。本質的な枝分かれの例は、いわゆるフリース構造であり、溶融ポリカーボネートに関して、EP-A1506249において記載される。
【0070】
連鎖停止剤として、ビスフェノール1モルあたり、1〜20モル%、好ましくは2〜10モル%の量で、フェノール、例えばフェノールなど、アルキルフェノール、例えばクレソールおよび4-tert-ブチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、クミルフェノールまたはそれらの混合物が好ましく使用される。フェノール、4-tert-ブチルフェノールおよびクミルフェノールが好ましい。
【0071】
連鎖停止剤および分枝剤は、別々に合成系に添加されてもよく、またはビスフェノールと共に添加されてもよい。
【0072】
本発明に係る多層製品における層Aに関する、本発明に係る好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネート、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンに基づくホモポリカーボネート、およびビスフェノールAと1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの2つのモノマーに基づくコポリカーボネートである。
【0073】
ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネートが特に好ましい。
【0074】
ポリカーボネートは、安定剤を含有できる。適当な安定剤は、例えば、ホスフィン、ホスファイトまたはSi−含有安定剤およびEP−A 0500496に記述されている更なる化合物である。言及できる安定剤の例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス−(ノニルフェニル)ホスファイト、テトラキス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびトリアリールホスファイトである。トリフェニルホスフィンおよびトリス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
【0075】
本発明による多層製品におけるポリカーボネート含有層(A)は、1価-〜6価アルコール、特にグリセロールのエステル若しくは部分エステル、ペンタエリトリトールまたはゲルベ(Guerbet)アルコールを、0.01〜5wt%更に含有できる。
【0076】
一価アルコールは、例えば、ステアリルアルコール、パルミチルアルコールおよびゲルベアルコールである。
【0077】
二価アルコールは、例えば、グリコールである。
【0078】
三価アルコールは、例えば、グリセロールである。
【0079】
四価アルコールは、例えばペンタエリトリトールおよびメソエリトリトールである。
【0080】
五価アルコールは、例えば、アラビトール、リビトールおよびキシリトールである。
【0081】
六価アルコールは、例えば、マンニトール、グルシトール(ソルビトール)およびズルシトールである。
【0082】
エステルは、好ましくは、飽和脂肪族C10〜C36モノカルボン酸、所望によりヒドロキシモノカルボン酸、好ましくは飽和脂肪族C14〜C32モノカルボン酸、所望によりヒドロキシモノカルボン酸のモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステルおよびヘキサエステルまたはそれらの混合物、特にランダム混合体である。
【0083】
商業的に入手可能な脂肪酸エステル、特にペンタエリトリトールおよびグリセロールの脂肪酸エステルは、それらの調製の結果として、60%未満の異なる部分エステルを含んでもよい。
【0084】
炭素原子を10〜36個有する飽和脂肪族モノカルボン酸は、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸およびベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸およびモンタン酸である。
【0085】
炭素原子を14〜22個有する、好ましい飽和脂肪族モノカルボン酸は、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸およびベヘン酸である。
【0086】
飽和脂肪族モノカルボン酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸およびヒドロキシステアリン酸が特に好ましい。
【0087】
飽和脂肪族C10〜C36カルボン酸および脂肪酸エステルは、それ自体文献で知られているものであってもよく、文献において既知の方法により調製されてもよい。ペンタエリトリトール脂肪酸エステルの例は、上記特に好ましいモノカルボン酸である。
【0088】
ペンタエリトリトールおよびグリセロールと、ステアリン酸およびパルミチン酸とのエステルが特に好ましい。
【0089】
ゲルベアルコールおよびグリセロールと、ステアリン酸およびパルミチン酸および所望によりヒドロキシステアリン酸のエステルも特に好ましい。
【0090】
本発明による多層製品は、本発明に係る紫外線吸収体とHALS系に加えて、有機着色剤、無機着色顔料、蛍光染料、紫外線保護層(B)および/または(D)とは別の更なる紫外線吸収体、IR吸収体、および特に好ましくは光学的光沢剤を含有できる。
【0091】
層(A)の製造は、例えば押出、または単一もしくは多成分射出成形法により行うことができる。
【0092】
本発明に係る紫外線保護層(B)および(D)の製造は、(a1)アルキルメタクリレート、好ましくは、炭素原子が10未満のアルキル鎖長を有するもの(-C2n+1、式中n<10)、特に好ましくは専らn=1であるもの(メチルメタクリレート)から成るポリアクリレート、および(a2)一般式(I)のビフェニル置換トリアジンと、一般式(II)のフェニル置換トリアジンの混合物から化合物(a)を調製することによりおこなわれる。次いで、(i)化合物(a)製の薄い紫外線保護層が良好な接着でポリカーボネート表面へ配置されるような方法で、化合物(a)をポリカーボネートと共押出すか、あるいは、(ii)化合物(a)を更に加工して、後にポリカーボネートとバック射出されるかまたは貼合わされることにより堅固に接着された複合材料を形成する薄いフィルムを調製する。共押出し自体は、文献において何度も記載されている。それにより、1種以上の横押出機および多チャネルダイを用いることにより、または所望により、シートダイの上流の適当な溶融アダプターを用いることにより、種々の組成物製の熱可塑性溶融体を1層ずつ重ね、その結果、多層シートまたは多層フィルムを製造することができる(共押出しに関して、EP-A0110221、EP-A0110238およびEP−A0716919を参照、アダプターおよびダイ方法の詳細は、Johannaber/Ast:"Kunststoff- Maschinenfuehrer", Hanser Verlag, 2000年、およびGesellschaft Kunststofftechnikによる"Koextrudierte Folien und Platten: Zukunftsperspektiven, Anforderungen, Anlagen und Herstellung, Qualitatssicherung" VDI-Verlag,1990年参照)。フィルムのバック射出に関しては、とりわけ、Plastverarbeiter 第47巻、(1996年)第8号、18頁以下参照。
【0093】
あるいは、本発明による紫外線保護層(B)および(D)の製造は、一般式(I)のビフェニル置換トリアジンと一般式(II)のフェニル置換トリアジンの混合物(b2)を、主成分としてメチルメタクリレートを含有し、所望により、より長く、直鎖もしくは分枝状のアルキル鎖(-C2n+1 式中、n>1)、好ましくは1≦n≦10、特に好ましくは直鎖でn=3(ブチルメタクリレート)を有する更なるアルキルメタクリレートを含有するポリアクリレート樹脂(b1)と、1種以上の溶媒と、および所望による更なるラッカー添加剤、例えば、充填剤、フロー剤、ラジカルアクセプターなどを含有するラッカー配合物(b)内へ導入することにより行われる。次いで、紫外線吸収体を含有するラッカー配合物(b)を、流しコーティング、浸漬、スプレー、ローラーコーティングまたはスピンコーティングによりポリカーボネート成形品の表面に施し、続いて、物理的に乾燥させる。それにより、PC上に堅固に接着したコーティングが得られる(Goldschmidt, Streitberger:Lackiertechnik, BASFコーティングAG社,Verlag,Hanover,2002年,p.496頁以下も参照)。
【0094】
本発明に係る多層製品における、紫外線安定化耐引掻き層(C)および(E)は、
耐引掻き性もしくは耐摩耗性のコーティング系で紫外線保護層もしくはコーティングされていないポリカーボネートをコーティングすることにより好ましく製造される。そのためには、耐引掻き性もしくは耐摩耗性ラッカーの配合物、例えばポリシロキサンラッカー(ゾル-ゲルラッカー)若しくはハイブリッドラッカーを、流しコーティング、浸漬、スプレー、ローラーコーティングまたはスピンコーティングにより、紫外線保護層の表面に施すか、コーティングされていないポリカーボネートの表面に施し、次いで、硬化させて、堅固に接着したPC/紫外線保護層/耐引掻き層の複合材料を形成するか、または、(E)-(A)-(B)-(C)構造の場合、堅固に接着した耐引掻き層/PC複合材料を形成する。
【0095】
本発明の範囲内のゾル-ゲルラッカーは、ゾル-ゲル法により製造されるラッカーである。ゾル-ゲル法は、コロイド分散系(ゾルと称される)から、非金属の無機またはハイブリッドポリマー材料を合成するための方法である。
【0096】
例えば、このようなゾル-ゲルコーティング溶液は、コロイド状二酸化ケイ素の水性分散液、オルガノアルコキシシランおよび/またはアルコキシシランまたは一般式RSi(OR')および/または一般式RSi(OR')のアルコキシシランのオルガノアルコキシシランの混合物を加水分解することにより製造できる(ただし、一般式RSi(OR')のオルガノアルコキシシランのRは、一価のC1-C6アルキル基または完全に若しくは部分的にフッ素化されたC1-C6アルキル基、ビニルもしくはアリル単位、アリール基またはC1-C6アルコキシ基である)。Rは、特に好ましくは、C1-C4アルキル基、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチルもしくはn-ブチル基、ビニル、アリル、フェニルまたは置換フェニル単位である。-OR'は、C1-C6アルコキシ基、ヒドロキシ基、ホルミル単位およびアセチル単位を含有する群から相互に独立して選択される。ある場合には、ゾル−ゲルポリシロキサンラッカーは、ハイブリッドラッカーの定義にも該当する。
【0097】
コロイド状の二酸化ケイ素が入手でき、例えば、Levasil200A(HC Starck社)、Nalco1034A(ナルコケミカル社)、LudoxAS-40またはLudox LS(Grace デイビソン社)が含まれる。以下の化合物もオルガノアルコキシシランの例として記載される:3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリトリヒドロキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン(例えば、フェニルトリエトキシシランおよびフェニルトリメトキシシラン)およびそれらの混合物。以下の化合物はアルコキシシランの例として記載できる:テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシランおよびそれらの混合物。
【0098】
例えば、有機および/または無機酸または塩基は、触媒として使用できる。
【0099】
また、実施態様において、コロイド状の二酸化ケイ素粒子は、アルコキシシランから出発する予備濃縮により、インサイチュで形成できる(これに関連する「シリカの化学」、Ralph K.Iler,John Wiley&Sons, (1979年),312-461頁参照)。
【0100】
ゾル−ゲル溶液の加水分解は、溶媒、好ましくはアルコール溶媒、例えばイソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノールまたはそれらの混合物を添加することにより大幅に抑制されるか停止される。次いで、所望により溶媒中に予め溶解させた1種以上の紫外線吸収体を、ゾル-ゲルコーティング溶液に添加し、続いて、数時間または数日/数週の熟成工程を設ける。更なる添加剤および/または安定剤、例えばフロー剤、表面添加物、増粘剤、顔料、着色剤、硬化触媒、IR吸収体および/または接着促進剤を、さらに添加できる。ヘキサメチル-ジシラザンまたは、コーティングの亀裂に対する感受性を低減することができる同程度の化合物も可能である(WO2008/109072A参照)。
【0101】
本発明の範囲内のハイブリッドラッカーは、バインダーとしてのハイブリッドポリマーの使用に基づく。ハイブリッドポリマー(ハイブリッド:lat.二元的な起源のもの)は、異なる材料区分の構造単位が分子レベルで結合するポリマー材料である。それらの構造に基づき、ハイブリッドポリマーは、全体的に新規な特性の組み合せを示すことができる。複合材料(明確な界面、層間の弱い相互作用)およびナノコンポジット(ナノスケール充填剤の使用)とは違い、ハイブリッドポリマーの構造単位は、分子レベルで相互に結合する。このことは、化学的な方法、例えばゾル−ゲル法(それを用いて有機ネットワークが構築できる)などによりもたらされる。有機反応先駆物質、例えば有機変性金属アルコキシドを使用することにより、有機オリゴマー/ポリマー構造を付加的に調製できる。硬化後に有機/無機ネットワークを形成する、表面変性ナノ粒子を含有するアクリレートラッカーは、ハイブリッドラッカーとして同様に定義される。それらは、熱的に硬化でき、紫外線硬化性のハイブリッドラッカーである。
【0102】
熱による、紫外線安定化ゾル-ゲルラッカーは、例えば、AS4000およびAS4700の製品名で、モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社から得ることができる。1〜20μm、好ましくは2〜15μm、特に好ましくは4〜12μmの層厚にて、ゾル-ゲルポリシロキサンラッカーは、0.2〜4の吸光度、好ましくは0.2〜2、特に好ましくは0.3≦吸光度(ゾル-ゲル層)≦1.5を有する。
【0103】
考えられる、熱的に硬化可能なハイブリッドラッカーは、モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社からPHC587BまたはPHC587Cとして商業的に入手でき、またはEP-A0570165において記載されている。層厚は1〜20μm、好ましくは3〜15μm、特に好ましくは6〜8μmである。紫外線硬化性ハイブリッドラッカーは、例えば紫外線硬化性アクリレートラッカーまたは紫外線硬化性で、無水の、加水分解性シラン系であり、WO2008/071363AまたはDE-A2804283において記載される。商業的に入手可能な系は、UVHC3000(モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社)である。層厚は、1〜25μm、好ましくは4〜20μm、特に好ましくは8〜12μmである。ハイブリッドラッカーに基づく耐引掻き層は、340nmにて0.1〜3、好ましくは0.2〜2.5、特に好ましくは0.3≦吸光度(ハイブリッド層)≦2の吸光度を有する。
【0104】
ここで使用され得る紫外線吸収体は、商業的に入手でき、適度に極性を有し、大部分はヒドロキシ含有紫外線吸収体および/または無機紫外線吸収体、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛または酸化セリウム(EP-A0931820)であってもよい。レソルシノールに基づくラッカー系などのアルコキシ-シリル(アルキル)基により変性された紫外線吸収体は、US-A5391795およびUS-A5679820に開示されている。
【0105】
耐引掻き層において使用できる、更なる代表的な紫外線吸収体は、2-ヒドロキシ-ベンゾフェノン、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-シアノアクリレートおよびオキサアニリドである。溶解度を増加させる基、例えばアルコキシシリルアルキル基を用いる変性が、好都合である。紫外線吸収体の最大濃度は、その溶解度により定義される。最小濃度は、耐引掻き層の所望の吸光度によりもたらされ、該吸光度は、少なくとも0.2〜2.5、特に好ましくは0.3≦吸光度(耐引掻き層)≦2である。耐引掻き層の固形分に基づき、0.5〜20wt%の紫外線吸収体の含有量が、典型的である。
【0106】
耐引掻き層を施すことは、先行技術において既知の方法によりおこなわれるか(例えば、ベーク・オン・ベーク(bake-on-bake)、ウェット-オン-ウェット法)、または製品により指定される方法でおこなわれる。
【0107】
多層製品は、シート、フィルムおよび三次元成形品からなる群から好ましくは選択される。
【0108】
本発明は、該多層製品、特に、例えばガラスなどの、視覚的印象に関して恒久的に高い要求を有する屋外用途向けの成形品の使用を同様に提供する。適用分野は、一成分および二成分射出成形品、例えば、ヘッドランプカバープレート、および自動車ガラス分野も含まれる。
【0109】
本発明は、以下の実施例によって更に説明されるが、それらに限定されない。本発明に係る実施例は、本発明の好ましい実施態様を単に提供するに過ぎない。
【実施例】
【0110】
実施例1-10
A)紫外線吸収体を含有するPMMAラッカー溶液の調製
7.2gのElvacite2021(Lucite インターナショナル、UK)を、それぞれ36.4gのジアセトンアルコールとメトキシプロパノール中に溶解させる。次いで、0.4gのBYK300(BYK Additive and Instruments、ドイツ)、0.14gのTinuvin144(チバ、スイス)および、合計0.7gの紫外線吸収体を添加する(詳細は、実施例1〜10を参照、ここに記載の吸収体は、チバ社(スイス)から商業的に入手できる)(それは、ラッカーの固形分に基づき10wt%に相当する)。ラッカーを、各成分が完全に溶解するまで攪拌し、吸引フィルター(2〜4μmセルロースフィルター)を介して濾過する。
【0111】
B)紫外線保護層(B)を施すこと
Makrolon(登録商標)2808(実施例1〜5、バイエルマテリアルサイエンスAG社、中程度の粘度のビスフェノールAポリカーボネート、1.2kgおよび300℃にてISO1133に従うMVRが10g/10分、紫外線安定化をおこなわない)製の光学グレードのポリカーボネート(PC)シート、またはMakrolon(登録商標)AL2647(実施例6〜10、バイエルマテリアルサイエンスAG社、紫外線安定剤と離型剤を有する、中程度の粘度のビスフェノールAポリカーボネート、1.2kgおよび300℃にてISO1133に従うMVRが13g/10分)製の光学グレードのポリカーボネートシートを、約50秒のサイクル時間、約30mm/秒の射出速度、金型温度90℃、溶融温度300℃にて、45の射出ユニットを備えるKlockner Ferromatik FM160によって10×15×0.32cmのサイズに製造する。これらの射出成形されたPCシートは120℃にて1時間調質し、イソプロパノールで洗浄し、空気に曝す。次いで、シートを、以下の実施例1〜10に従う紫外線吸収体を含有するPMMAラッカー溶液の各々でコートし(傾斜角は約25〜45%、紫外線保護溶液の温度は23℃、室温23℃、相対湿度22%)、室温にて10分間空気に曝し、次いで、コーティングを120℃にて30分間ベークする。
【0112】
実施例1(比較)
0.7gのTinuvin479(一般式(I)の紫外線吸収体;CAS番号204848-45-3)のみを、紫外線保護層における紫外線吸収体として使用した。コーティングをMakrolon(登録商標)2808上に施した。
【0113】
実施例2(比較)
0.56gのTinuvin479と、0.14gのTinuvin405(CAS番号137658-79-8;2-[2-ヒドロキシ-4-[3-(2-エチルヘキシル-1-オキシ)-2-ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン)を紫外線吸収体として使用した。コーティングをMakrolon(登録商標)2808上に施した。
【0114】
実施例3(比較)
0.42gのTinuvin479と、0.28gのTinuvin405を紫外線吸収体として使用した。コーティングをMakrolon(登録商標)2808上に施した。
【0115】
実施例4(比較)
0.42gのTinuvin479と、0.28gのTinuvin1577(一般式(II)の紫外線吸収体;CAS番号147315-50-1;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5−トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)-フェノール)を、紫外線吸収体として使用した。コーティングをMakrolon(登録商標)2808上に施した。
【0116】
実施例5(本発明に係る)
0.56gのTinuvin479と、0.14gのTinuvin1577を、紫外線吸収体として使用した。コーティングをMakrolon(登録商標)2808上に施した。
【0117】
実施例6(比較)
0.7gのTinuvin479のみを、紫外線吸収体として使用する。コーティングをMakrolon(登録商標)AL2647上に施した。
【0118】
実施例7(比較)
0.56gのTinuvin479と、0.14gのTinuvin405を紫外線吸収体として使用した。コーティングをMakrolon(登録商標)AL2647上に施した。
【0119】
実施例8(比較)
0.42gのTinuvin479と、0.28gのTinuvin405を紫外線吸収体として使用した。コーティングをMakrolon(登録商標)AL2647上に施した。
【0120】
実施例9(比較)
0.42gのTinuvin479と、0.28gのTinuvin1577を紫外線吸収体として使用した。コーティングをMakrolon(登録商標)AL2647上に施した。
【0121】
実施例10(本発明に係る)
0.56gのTinuvin479と、0.14gのTinuvin1577を、紫外線吸収体として使用した。コーティングをMakrolon(登録商標)AL2647上に施した。
【0122】
C)耐引掻き層(C)を施すこと
紫外線保護層でコートされたシートは、商業的に入手可能な、紫外線吸収体を含有するゾル-ゲルラッカー(AS4700、モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社)で、コートされた面上に、流し(flood)コーティングされた(傾斜角は約25〜45%、耐引掻き溶液の温度は23℃、室温23℃、相対湿度22%)。室温にて、空気に30分曝したのち、シートを100℃にて1時間乾燥させる。
【0123】
D)試験
透明なコーティングの厚さを、Eta Optik社製のEtaSD30を用いて測定した。
【0124】
以下の接着試験をおこなった。
【0125】
a.)粘着テープの剥離(粘着テープ、3M社Scotch610-1PK)、クロスカットありおよびクロスカットなし(ISO2409またはASTM D3359に類似)
b.)沸騰水中に4時間貯蔵後、粘着テープを剥離する
c.)約65℃にて、水中に10日間貯蔵後、粘着テープを剥離する(ISO2812-2およびASTM870-02に類似)、そして、全て合格した。すなわち、コーティングは全く剥離されなかった(ISO2409に従う評価0、またはASTM D3359に従い評価5B)
【0126】
Makrolon(登録商標)2808上に、耐引掻きラッカーの紫外線保護を加えて調製された紫外線保護層における、各紫外線吸収体またはそれらの混合物における紫外線吸収体分解(UVAD)の測定は、340nmにて0.75W/m/nmの放射強度、および102:18分の乾燥/湿潤サイクルで3000時間に亘る総期間にて、Atlas Ci5000ウェザロメータを用いておこなった。ブラックパネル温度は70℃であった。サンプル室温度は55℃および湿度は40%であった。
【0127】
実施例6-10は、340nmにて0.75W/m/nmの放射強度、および102:18分の乾燥/湿潤サイクルで3000時間に亘る総期間にて、Atlas Ci5000ウェザロメータを用いて同様に風化された。ブラックパネル温度は70℃であった。サンプル室温度は55℃および湿度は40%であった。ポリカーボネートにおける紫外線保護に起因して、UVADは不可能である。
【0128】
黄変指数は、以下のようにして算出する。まず、材料の波長依存黄変をスペクトル感度法に従い決定する(Interpretation of the spectral sensitivity and of the action spectrum of polymers,P.Trubiroha,Tagungsband der XXII.Donaulaendergespraeche,2001年8月17日、ベルリン、4−1頁)。次に、紫外線保護層の後方の太陽紫外光のスペクトル分布を計算する。風化作用後の黄変を、コンボリューションおよび時間積分により既知の方法で、これらの二つのデータセットから決定できる。(A.Geburtig,V.Wachtendorf,Tagungsband 34.Jahrestagung der Gesellschaft fuer Umweltsimulation,Umwelteinfluesse erfassen,simulieren und bewerten,2005年3月2日、Pfinztal、159頁を参照)。
【0129】
ヘーズはByk-Gardner製のHaze Gard Plusを用いるASTM D1003に従い測定した。
【0130】
結果
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【0133】
結果は、非紫外線安定化ポリカーボネート(実施例1〜5)において、本発明に係る実施例5は、最も低いヘーズと、3000時間の風化作用後の最も低い黄変を示す。さらに、実施例5における組み合せの紫外線吸収体は、最小の分解を示し、すなわち、340nmでの吸収光度は、UVAD=0.01/メガジュール線量のみ減少する。紫外線安定化ポリカーボネート(実施例6〜10)においても、3000時間の風化作用後の最も低いヘーズは、本発明による構造を有するもの(実施例10)において見出される。しかし、ポリカーボネートにおける付加的な紫外線保護により、風化作用による損傷は、実施例1〜5と同様に顕著ではないが、実施例において、同程度の傾向がもたらされることを判るであろう。さらに、紫外線保護層中の紫外線吸収体の溶解度は、明確に限度があるので、実施例4および9のように、高すぎる濃度のTinuvin1577を使用してはいけないことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1層(A)、第2層(B)および第3層(C)を含む多層製品であって、該第1層(A)はポリカーボネートを含有し、該第2層(B)は、ポリアルキル(メタ)アクリレート製の紫外線保護層であって、式(I)と式(II)による紫外線安定剤の組合せを含有し、および該第3層(C)は紫外線保護された耐引掻きラッカーである、該多層製品:
【化1】

(式中、XはOR;OCHCHOR;OCHCH(OH)CHORまたはOCH(R)COORを示し、この場合において、Rは、何れの場合も分枝または非分枝C〜C13-アルキル、C〜C20-アルケニル、C〜C12-アリールまたはCO−C〜C18-アルキルを示し;RはHまたは分枝または非分枝C〜C-アルキルを示し;およびRはC〜C12-アルキル;C〜C12-アルケニルまたはC〜C-シクロアルキルを示す)、
【化2】

(式中、Tは、COO若しくはOCO若しくはOにより遮断された、またはOにより遮断されOHにより置換されたC〜C18-アルキルまたはC〜C18-アルキルを示す)。
【請求項2】
層(B)が、式(IIIa)の安定剤を、層(B)に基づき5wt%以下で含有することを特徴とする、請求項1に記載の多層製品:
【化3】

【請求項3】
式(IIIa)の安定剤が、以下の一般式の化合物である、請求項2に記載の多層製品:
【化4】

【請求項4】
式(I)および式(II)の紫外線吸収体は、式(I)の紫外線吸収体:式(II)の紫外線吸収体の比が9.9:0.1〜6.1:3.9の状態で、層(B)において使用されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載の多層製品。
【請求項5】
以下のa、bを含む群から選択される、一種以上の更なる層を更に有する、請求項1から4のいずれか1つに記載の多層製品:
a.好ましくは同様にポリアルキルメタクリレートからなり、それぞれ少なくとも1種の紫外線安定剤を含有する更なる紫外線保護層(D)、
b.更なる耐引掻き層(E)。
【請求項6】
層配列(C)-(B)-(A)、(C)-(B)-(A)-(D)-(E)または(C)-(B)-(A)-(E)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載の多層製品。
【請求項7】
更なる機能性層(F)を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1つに記載の多層製品。
【請求項8】
層(B)が1〜100μmの層厚を有する硬化ラッカー配合物であり、層(B)における式(I)と式(II)の紫外線吸収体の割合が、該ラッカー配合物(B)の固形分に基づき、全体で0.5〜20wt%である、請求項1から7のいずれか1つに記載の多層製品。
【請求項9】
層(B)が1〜500μmの層厚を有する共押出層であり、層(B)における式(I)と式(II)の紫外線吸収体の割合が、層(B)の総重量に基づき、全体で0.05〜20wt%である、請求項1から7のいずれか1つに記載の多層製品。
【請求項10】
層(B)が、2μm〜2mmの層厚を有するフィルムであり、層(B)における式(I)と式(II)の紫外線吸収体の割合が、層(B)の総重量に基づき、全体で0.01〜20wt%である、請求項1に記載の多層製品。
【請求項11】
層(C)と所望による層(E)が、ゾル-ゲルシロキサンラッカー、熱的に硬化できるハイブリッドラッカーおよび/または紫外線硬化性ハイブリッドラッカーに基づく、紫外線吸収体を含有するラッカー層であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1つに記載の多層製品。
【請求項12】
層(A)が押出により、または単一もしくは多成分射出成形により製造される、請求項1から11のいずれか1つに記載の多層製品。
【請求項13】
特に自動車ガラスおよび建築ガラスにおいて、視覚的印象に関する恒久的に高い要求を備える屋外用途向けの、請求1から12のいずれか1つに記載の多層製品の使用。

【公表番号】特表2013−505149(P2013−505149A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529228(P2012−529228)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063392
【国際公開番号】WO2011/032915
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】