説明

PCカード

【課題】 組付強度が高く、組付強度の信頼性に優れ、部品数が少なく、組立工数が少なく、組み立てが容易で、組立設備が簡素でよく、かつ製造コストが低いPCカードを提供する。
【解決手段】 下および上カバープレート50および60は、それぞれ長さ方向Lに延びる対称線を挟んで線対称な形状であると共に互いに同一形状を呈しており、各内側板面同士が対向するように互いに係合することによって、フレーム30に対して取り付けられる。下および上カバープレート50および60同士の係合構造は、下カバープレート50に該カバープレートの内側方向に延びるように形成された凹部付き舌片56aおよび凸部付き舌片56bのうちの一方と、上カバープレート60に該カバープレートの内側方向に延びるように形成された凹部付き舌片66aおよび凸部付き舌片66bのうちの他方との対によって構成されている。凹部付き舌片56a(66a)および凸部付き舌片56b(66b)は、可撓性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータ等の電子機器に対して装着され、その電子機器の機能拡張を図るためのカード型を呈する装置に関し、特に、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)、日本電子工業振興会(JEIDA)により規格化された「PC Card Standard」に準拠したPCカードに関する。
【0002】
尚、本発明において、PCカードとは、狭義のPCカードの他に、スマートカード(商標)、スモールPCカード(商標)、CF(Compact Flash(商標))等、狭義のPCカードに類似した構造のカードをも含むものとする。
【背景技術】
【0003】
この種のPCカードは、電子回路基板と、電子回路基板に接続されていると共に電子機器に備えられた機器コネクタと接離可能なコネクタと、電子回路基板とコネクタの一部とを収容するカード状を呈する筐体とを有している。筐体は、略角枠形を呈する樹脂製のフレームと、フレームの下面および上面をそれぞれ覆蓋する板金製の下および上カバープレートとを備えている。
【0004】
このようなPCカードは従来、次のような組立構造1〜6を呈している。
【0005】
(1)下および上カバープレートは、熱接着テープによってフレームに対して接着することで組み付けされている。接着の際には、熱接着テープおよび/またはその周辺部の加熱手段および冷却手段を有する治具が使用される。
【0006】
(2)下および上カバープレートは、両面テープおよびネジ留めを併用してフレームに対して組み付けされている。
【0007】
(3)下および上カバープレートは、両面テープによってフレームに対して接着されている。
【0008】
(4)下または上カバープレートは、両面テープならびにフレームと下または上カバープレートとの係合関係を併用してフレームに対して組み付けされている。この係合関係は、フレームの厚さ方向に形成された係合溝と、下または上カバープレートに形成された鋸歯状の被係合片とにより構成されている。このような組立構造は、特許文献1に開示されている。
【0009】
(5)下または上カバープレートは、フレームと下および上カバープレートとの係合関係によってフレームに対して組み付けされている。この係合関係は、フレームの外周に形成された係合溝と、下および上カバープレートの外縁部に内方に向かうように形成されたコ字状片とにより構成されている。このような組立構造は、特許文献2に開示されている。
【0010】
(6)下および上カバープレートは、下および上カバープレート同士の係合関係を併用してフレームに対して組み付けされている。この係合関係は、下および上カバープレートの一方の外縁部に厚さ方向に向かうように形成された係合孔部と、下および上カバープレートの他方の外縁部に厚さ方向に向かうように形成された係合爪とにより構成されている。このような組立構造は、特許文献3に開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開2000−057297号公報
【特許文献2】特開2000−222548号公報
【特許文献3】特開2001−101373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した組立構造1〜6にはそれぞれ、次のような問題点がある。
【0013】
(1)組付強度は強いものの、大掛かりな治具(加熱手段および冷却手段の二種類)を使用した組立工程を必要とするため、組立工数が多く、また、そのような治具を含む組立設備が高額である。
【0014】
(2)組付強度は強いものの、組立部品が増えるため、組立工数UPとなる。カバープレートが上下共通にはならないため、カバープレート金型設備を二種類作成する必要があり、コスト上昇を招く。
【0015】
(3)組立工数が少ないものの、両面テープのみの固定のため、組付強度が低い。
【0016】
(4)組付強度は比較的強いものの、樹脂製のフレームに形成された溝に対して金属製のカバープレートに形成された鋸歯が食い込むため、組立工程等の際に、樹脂の切削や摩擦が生じ、組付強度の信頼性に劣る。また、カバープレートが上下共通にはならないため、カバープレート金型設備を二種類作成する必要があり、コスト上昇を招く。
【0017】
(5)組付強度は比較的強いものの、樹脂製のフレームに形成された溝に対して金属製のカバープレートに形成されたコ字状片が被るため、組立工程等の際に樹脂の切削や摩擦が生じたり、コ字状片が変形する虞があり、組付強度の信頼性に劣る。
【0018】
(6)組付強度は強いものの、カバープレートが上下共通にはならないため、カバープレート金型設備を二種類作成する必要があり、コスト上昇を招く。
【0019】
それ故、本発明の課題は、組付強度が高く、組付強度の信頼性に優れ、部品数が少なく、組立工数が少なく、組み立てが容易で、組立設備が簡素でよく、かつ製造コストが低いPCカードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、電子回路基板と、前記電子回路基板に接続されていると共に電子機器に備えられた機器コネクタに対して接離可能なコネクタと、カード状を呈し、前記電子回路基板と前記コネクタの一部とを収容する筐体とを有し、前記筐体は、略角枠形を呈する樹脂製のフレームと、該フレームの下面および上面をそれぞれ覆蓋する略角板形を呈する板金製の下および上カバープレートとを備えているPCカードにおいて、前記下および前記上カバープレートは、それぞれ長さ方向に延びる対称線を挟んで幅方向に線対称な形状であると共に互いに同一形状を呈しており、各内側板面同士が対向するように互いに係合することによって、前記フレームに対して取り付けられるものであり、前記下および前記上カバープレート同士の係合構造は、前記下カバープレートにその内側方向に延びるように形成された凹部付き舌片および凸部付き舌片のうちの一方と、前記上カバープレートにその内側方向に延びるように形成された該凹部付き舌片および該凸部付き舌片のうちの他方との対によって構成されており、前記凸部付き舌片および前記凹部付き舌片は、可撓性を有することを特徴とするPCカードが得られる。
【0021】
本発明によればまた、前記下および前記上カバープレートそれぞれの前記線対称の一方の領域の端部に位置する辺には、複数の前記凹部付き舌片が並列して形成されており、前記下および前記上カバープレートそれぞれの前記線対称の他方の領域の端部に位置する辺には、複数の前記凸部付き舌片が並列して形成されている前記に記載のPCカードが得られる。
【0022】
本発明によればさらに、前記下および前記上カバープレートそれぞれの前記線対称の一方の領域の端部に位置する辺には、前記凹部付き舌片、前記凸部付き舌片が順番に交互に並列して形成されており、前記下および前記上カバープレートそれぞれの前記線対称の他方の領域の端部に位置する辺には、前記凸部付き舌片、前記凹部付き舌片が順番に交互に並列して形成されている前記PCカードが得られる。
【0023】
また、本発明によれば、前記下および前記上カバープレートは、互いに係合することに加え、両面テープによって、前記フレームに対してそれぞれ取り付けられる前記PCカードが得られる。
【0024】
さらに、本発明によれば、前記下および前記上カバープレートは、互いに係合することに加え、各前記長さ方向の一端または他端が前記フレームに形成された凹部に入り込むことによって、前記フレームに対してそれぞれ取り付けられる前記PCカードが得られる。
【0025】
また、本発明によれば、前記下および前記上カバープレートが前記フレームに対して取り付けられたときに、該下および該上カバープレートの係合構造は、前記フレームに該フレームの厚さ方向に貫通するように形成された孔部内に位置する前記PCカードが得られる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるPCカードは、組付強度が高く、組付強度の信頼性に優れ、部品数が少なく、組立工数が少なく、組み立てが容易で、組立設備が簡素でよく、かつ製造コストが低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施例によるPCカードについて詳細に説明する。
【0028】
図1ならびに図2(a)〜(d)を参照して、本発明の実施例によるPCカードは、従来のPCカードと同様に、電子回路基板10と、電子回路基板10に接続されていると共に電子機器(図示せず)に備えられた機器コネクタに対して接離可能なコネクタ20と、カード状を呈し、電子回路基板とコネクタの一部とを収容する筐体とを有している。
【0029】
筐体は、略角枠形を呈する樹脂製のフレーム30と、フレーム30の下面および上面をそれぞれ覆蓋する略角板形を呈する板金製の下および上カバープレート50および60と、拡張部40とを備えている。尚、拡張部40は、通常、樹脂製で、フレーム30と別体もしくは一部がフレーム30と一体に形成されるものであり、コネクタ20以外のコネクタ、電子回路基板10以外の電子回路基板、あるいはアンテナ等をカバーする樹脂製の部材である。
【0030】
さて、本PCカードにおいて、下および上カバープレート50および60は、それぞれ長さ方向Lに延びる対称線(図示せず)を挟んで幅方向Wに線対称な形状であると共に、互いに同一形状を呈している。即ち、本実施例では、下および上カバープレート50および60というように名称や部品番号を違えて表記しているが、下および上カバープレート50および60は、同一製造工程で得られる、同一形状を呈する2つのカバープレート部品である。
【0031】
下および上カバープレート50および60は、各内側板面同士が対向するように互いに係合することによって、フレーム30に対して取り付けられる。
【0032】
下および上カバープレート50および60同士の係合構造は、図2(b)および(c)によく示されているように、下カバープレートにその内側方向に延びるように形成された凹部付き舌片56aと上カバープレートにその内側方向に延びるように形成された凸部付き舌片66bとの対、ならびに、下カバープレートにその内側方向に延びるように形成された凸部付き舌片56bと上カバープレートにその内側方向に延びるように形成された凹部付き舌片66aとの対によって構成されている。
【0033】
尚、舌片に形成されている凹凸の形状について、本実施例においては凸部は略半球状を呈していると共に凹部は孔であるが、本発明において、凹凸部の具体的な形状やサイズは本例に限定されるものではない。例えば、楔状の凸部と孔状の凹部等であってもよい。また、舌片の数や形成位置についても、下および上カバープレートを同一部品でまかなうことができさえすれば、本例に限定されるものではない。
【0034】
これら凸部付き舌片および凹部付き舌片は、プレス加工等によって、下カバープレート50、上カバープレート60と一体に形成されており、可撓性を有している。
【0035】
下カバープレート50の線対称の一方の領域の端部に位置する辺(図1中、右側の辺)には、凹部付き舌片56a、凸部付き舌片56bが順番に交互に並列して形成されている。一方、上カバープレート60の線対称の他方の領域の端部に位置する辺(図1中、右側の辺)には、凸部付き舌片66b、凹部付き舌片66aが順番に交互に並列して形成されている。
【0036】
下および上カバープレート50および60は、互いに係合することに加え、両面テープ70によって、フレーム30に対してそれぞれ取り付けられる。
【0037】
両面テープを併用することにより、下および上カバープレート50および60のフレーム30に対する組付強度が向上している。
【0038】
さらに、下、上カバープレート50、60は、互いに係合することに加え、図2(d)によく示されているように、各長さ方向Lの一端辺(図1中、前端辺)に内側方向に屈曲した後外方向に延在するように形成された先端片58、68がフレーム30の内周面に形成された凹部38内に入り込むことによって、フレーム30に対してそれぞれ取り付けられる。
【0039】
この構造により、下および上カバープレート50および60のフレーム30に対する組付強度、特に、係合構造が無い端部における下および上カバープレート50および60同士の組付強度が向上するため、本PCカードが前端から落下した際に、下、上カバープレート50、60がフレーム30から浮き上がってしまうことが防止される。
【0040】
また、下および上カバープレート50および60がフレーム30に対して取り付けられたときに、下および上カバープレート50および60の係合構造は、フレーム30にフレーム30の厚さ方向tに貫通するように形成された孔部36内に位置する。
【0041】
このため、組立後、ユーザが不用意に係合構造部分に手に触れたとしても、容易に外れてしまうことがない。逆に、点検、修理、メインテナンスなどの際には、孔部36内の隙間に治具を挿入して凸部付き舌片または凹部付き舌片を撓ませることが可能な構造としておくことで、必要時には容易に係合関係を解除することができる。
【0042】
本実施例の変形例としては、図示はしないが、下および上カバープレートそれぞれの線対称の一方の領域の端部に位置する辺に複数の凹部付き舌片を並列して形成する一方、下および上カバープレートそれぞれの線対称の他方の領域の端部に位置する辺に複数の凸部付き舌片を並列して形成する構造が考えられる。
【0043】
この場合にも、下および上カバープレートは、同一部品でまかなうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上、具体的な実施例によって本発明を説明したが、本発明は、この実施例に限定はされず、種々のPCカード等への適用、変形が当業者にとって可能であることは、云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例によるPCカードを示す分解斜視図である。
【図2】(a)は図1に示されたPCカードの平面図、(b)は(a)の切断線X1−X2に沿った部分断面図、(c)は(a)の切断線Y1−Y2に沿った部分断面図、(d)は(a)の切断線Z1−Z2に沿った部分断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10 電子回路基板
20 コネクタ
30 フレーム
36 孔部
38 溝部
40 拡張部
50 下カバープレート
56a 凹部付き舌片
56b 凸部付き舌片
58 先端片
60 上カバープレート
66a 凹部付き舌片
66b 凸部付き舌片
68 先端片
70 両面テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板と、前記電子回路基板に接続されていると共に電子機器に備えられた機器コネクタに対して接離可能なコネクタと、カード状を呈し、前記電子回路基板と前記コネクタの一部とを収容する筐体とを有し、
前記筐体は、略角枠形を呈する樹脂製のフレームと、該フレームの下面および上面をそれぞれ覆蓋する略角板形を呈する板金製の下および上カバープレートとを備えているPCカードにおいて、
前記下および前記上カバープレートは、それぞれ長さ方向に延びる対称線を挟んで線対称な形状であると共に互いに同一形状を呈しており、各内側板面同士が対向するように互いに係合することによって、前記フレームに対して取り付けられるものであり、
前記下および前記上カバープレート同士の係合構造は、前記下カバープレートにその内側方向に延びるように形成された凹部付き舌片および凸部付き舌片のうちの一方と、前記上カバープレートにその内側方向に延びるように形成された該凹部付き舌片および該凸部付き舌片のうちの他方との対によって構成されており、
前記凸部付き舌片および前記凹部付き舌片は、可撓性を有することを特徴とするPCカード。
【請求項2】
前記下および前記上カバープレートそれぞれの前記線対称の一方の領域の端部に位置する辺には、複数の前記凹部付き舌片が並列して形成されており、
前記下および前記上カバープレートそれぞれの前記線対称の他方の領域の端部に位置する辺には、複数の前記凸部付き舌片が並列して形成されている請求項1に記載のPCカード。
【請求項3】
前記下および前記上カバープレートそれぞれの前記線対称の一方の領域の端部に位置する辺には、前記凹部付き舌片、前記凸部付き舌片が順番に交互に並列して形成されており、
前記下および前記上カバープレートそれぞれの前記線対称の他方の領域の端部に位置する辺には、前記凸部付き舌片、前記凹部付き舌片が順番に交互に並列して形成されている請求項1に記載のPCカード。
【請求項4】
前記下および前記上カバープレートは、互いに係合することに加え、両面テープによって、前記フレームに対してそれぞれ取り付けられる請求項1乃至3のいずれか1つに記載のPCカード。
【請求項5】
前記下および前記上カバープレートは、互いに係合することに加え、各前記長さ方向の一端または他端が前記フレームに形成された凹部に入り込むことによって、前記フレームに対してそれぞれ取り付けられる請求項1乃至4のいずれか1つに記載のPCカード。
【請求項6】
前記下および前記上カバープレートが前記フレームに対して取り付けられたときに、該下および該上カバープレートの係合構造は、前記フレームに該フレームの厚さ方向に貫通するように形成された孔部内に位置する請求項1乃至5のいずれか1つに記載のPCカード。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−127180(P2006−127180A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315030(P2004−315030)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】