説明

PTPシートの搬送機構および排出装置

【課題】搬送ラインにおけるPTPシート18の列の乱れを防止できる、搬送機構および排出装置を提供する。
【解決手段】排出装置を構成する搬送機構12では、第1搬送部56aから第2搬送部56bへPTPシート18が移載される際に、上流側の押進速度V1が下流側の押進速度V2よりも遅くなるように第1押進手段60aが制御される。つまり、PTPシート18を渡す側の押進速度V1が受け取る側の押進速度V2よりも遅くなるように第1押進手段60aが制御される。したがって、第1搬送部56aから第2搬送部56bへPTPシート18が移載されると、第1搬送部56aからPTPシート18が直ちに引き離され、その後の第1搬送部56aの動きによってPTPシート18の列が乱されることはない。また、下流側の押進速度V2を速くする必要がないので、第2押進手段60bを構成する第2押進部材66bの取り付けピッチを長くする必要はなく、下流側のライン長が不所望に長くなるのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容する複数のポケットを有する容器本体と、前記ポケットの開口部を閉塞するシート状の蓋材とを有するPTPシートを、包装ラインの上流側から下流側へ搬送するPTPシートの搬送機構、および当該搬送機構を用いたPTPシートの排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル剤等の固形薬剤または粒状の固形食品等を包装する際には、特許文献1に記載されているようなPTP(プレススルーパッケージ)包装体が一般に用いられている。
【0003】
PTP包装体を用いて錠剤等を包装する際には、まず、合成樹脂等からなる帯状の基材シートにポケット成形装置によって複数のポケットが形成され、各ポケットに錠剤等の内容物が充填装置によって充填される。続いて、ポケットの開口部を閉塞するようにして基材シートに帯状の蓋材シートが熱融着装置によって接合され、基材シートと蓋材シートとの接合体から所定サイズのPTPシートが打抜き装置によって連続的に打ち抜かれる。そして、このPTPシートが搬送ラインを経て集積装置へ搬送され、集積装置においてPTPシートの積層体が構成される。その後、当該積層体がバンディング装置によって結束され、または、ピロー包装装置によって包装される。また、内容物の充填不良が生じた際には、その充填不良が充填装置の下流側に配設された監視カメラによって検出され、充填不良の生じたPTPシートが搬送ラインに設けられた排出装置によって包装ラインから排出される。
【0004】
そのため、搬送ラインに適用される従来の搬送機構1では、図4に示すように、排出装置(図示省略)のために特別に設計される搬送部2が、その下流側に配設される汎用の搬送部3とは独立に構成されていた。また、搬送部2を構成するチェーン駆動の押進部材4と搬送部3を構成するチェーン駆動の押進部材5との位置関係は、図4(A)に示すように、移載の瞬間に両者が並ぶように設定されており、上流側の押進部材4の速度V1と下流側の押進部材5の速度V2とは、ほぼ同じに設定されていた。
【特許文献1】特開2003−335930
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の搬送機構1(図4)では、上流側の押進部材4の速度V1と下流側の押進部材5の速度V2とがほぼ同じに設定されていたので、上流側の押進部材4がプーリ6において徐々に傾く際に、PTPシート7の後部に押進部材4から下向きの力が作用するおそれがあった。そして、この下向きの力が作用した場合には、図4(B)に示すように、PTPシート7の前部が持ち上げられてPTPシート7の列が乱れ、後の集積工程において集積不良を生じるおそれがあった。
【0006】
この問題を解決する手段として、下流側の押進部材5の速度V2を速くすることが考えられるが、その場合には、押進部材5の取り付けピッチを長くする必要があるため、下流側のライン長が不所望に長くなるという問題があった。
【0007】
それゆえに本発明の主たる課題は、下流側のライン長が不所望に長くなるのを防止しつつ、搬送ラインにおけるPTPシートの列の乱れを防止できる、搬送機構および排出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明は、「内容物16を収容する複数のポケット20を有する容器本体22と、前記ポケット20の開口部を閉塞するシート状の蓋材24とを有するPTPシート18を、包装ラインの上流側から下流側へ搬送する搬送機構12であって、前記PTPシート18を滑らせる帯状の第1スライド板58aと、前記第1スライド板58aに載置された前記PTPシート18を下流側へ押し進める第1押進手段60aとを有する第1搬送部56a、前記PTPシート18を滑らせる帯状の第2スライド板58bと、前記第2スライド板58bに載置された前記PTPシート18を下流側へ押し進める第2押進手段60bとを有し、前記第1搬送部56aの下流側に配設された第2搬送部56b、および前記第1搬送部56aから前記第2搬送部56bへ前記PTPシート18が移載される際に、前記第1押進手段60aの押進速度V1が前記第2押進手段60bの押進速度V2よりも遅くなるように前記第1押進手段60aを制御する押進速度制御手段を備える、PTPシートの搬送機構12」である。
【0009】
本発明では、第1搬送部56aから第2搬送部56bへPTPシート18が移載される際に、第1押進手段60aの押進速度V1が第2押進手段60bの押進速度V2よりも遅くなるように第1押進手段60aが制御される。したがって、第1搬送部56aから第2搬送部56bへPTPシート18が移載された直後には、第1搬送部56aからPTPシート18が引き離され、その後の第1搬送部56aの動きによってPTPシート18の列が乱されることはない。また、下流側の押進速度V2を速くする必要がないので、第2押進手段60bを構成する押進部材の取り付けピッチを長くする必要はなく、下流側のライン長が不所望に長くなるのを防止できる。
【0010】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した「PTPシートの搬送機構12」において、「前記第1押進手段60aは、前記第1スライド板58aに沿って上流側から下流側へ動く第1押進駆動部64aと、前記第1押進駆動部64aに取り付けられ、前記PTPシート18の側端縁に当接する第1押進部材66aと、前記第1押進駆動部64aを駆動する第1モータ68aとを有しており、前記第2押進手段60bは、前記第2スライド板58bに沿って上流側から下流側へ動く第2押進駆動部64bと、前記第2押進駆動部64bに取り付けられ、前記PTPシート18の側端縁に当接する第2押進部材66bと、前記第2押進駆動部64bを駆動する第2モータ68bとを有しており、前記第1モータ68aが前記押進速度制御手段によって制御される」ことを特徴とする。
【0011】
本発明は、請求項1に記載した発明における第1押進手段60aおよび第2押進手段60bをより限定したものである。なお、第1押進駆動部64bおよび第2押進駆動部64bは、具体的には、「チェーン」または「ベルト」等によって構成されている。
【0012】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載した「PTPシートの搬送機構12」において、「前記PTPシート18を滑らせる帯状の第3スライド板58cと、前記第3スライド板58cに載置された前記PTPシート18を下流側へ押し進める第3押進手段60cとを有し、前記第1搬送部56aの上流側に配設された第3搬送部56cをさらに備えており、前記押進速度制御手段は、前記第3搬送部56cから前記第1搬送部56aへ前記PTPシート18が移載される際に、前記第1押進手段60aの押進速度V1が前記第3押進手段60cの押進速度V3よりも速くなるように前記第1押進手段60aを制御する」ことを特徴とする。
【0013】
本発明では、第1搬送部56aの下流側に第2搬送部56bが配設されており、また、第1搬送部56aの上流側に第3搬送部56cが配設されている。つまり、上流側から下流側へ向けて、第3搬送部56c,第1搬送部56aおよび第2搬送部56bがこの順に配設されている。そして、第1搬送部56aから第2搬送部56bへの移載時には、第1押進手段60aの押進速度V1が第2押進手段60bの押進速度V2よりも遅くなるように第1押進手段60aが制御され、かつ、第3搬送部56cから第1搬送部56aへの移載時には、第1押進手段60aの押進速度V1が第3押進手段60cの押進速度V3よりも速くなるように第1押進手段60aが制御される。
【0014】
請求項4に記載した発明は、「内容物16を収容する複数のポケット20を有する容器本体22と、前記ポケット20の開口部を閉塞するシート状の蓋材24とを有するPTPシート18を、包装ラインの上流側から下流側へ搬送する搬送機構12、前記PTPシート18の不良を検出する不良検出手段48,50、および前記不良検出手段48,50によって不良が検出された前記PTPシート18を包装ラインから排出する排出手段84を備える、PTPシートの排出装置14であって、前記搬送機構12は、前記PTPシート18を滑らせる帯状の第1スライド板58aと、前記第1スライド板58aに載置された前記PTPシート18を下流側へ押し進める第1押進手段60aとを有する第1搬送部56a、前記PTPシート18を滑らせる帯状の第2スライド板58bと、前記第2スライド板58bに載置された前記PTPシート18を下流側へ押し進める第2押進手段60bとを有し、前記第1搬送部56aの下流側に配設された第2搬送部56b、および前記第1搬送部56aから前記第2搬送部56bへ前記PTPシート18が移載される際に、前記第1押進手段60aの押進速度V1が前記第2押進手段60bの押進速度V2よりも遅くなるように前記第1押進手段60aを制御する押進速度制御手段を有しており、前記排出手段84は、前記第1スライド板58aに設けられた排出孔86と、前記排出孔86に開閉自在に取り付けられた蓋体92と、前記蓋体92を開閉操作する開閉操作部94とを有しており、前記不良検出手段48,50によって不良が検出された前記PTPシート18が前記排出孔86の位置に到達するとき、前記開閉操作部94によって前記蓋体92が開かれる、PTPシートの排出装置14」である。
【0015】
本発明は、請求項1に係る搬送機構12を用いたPTPシートの排出装置14に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜4に記載した発明によれば、PTPシートを渡す側の押進速度V1が受け取る側の押進速度V2よりも遅くなるように第1押進手段が制御される。したがって、第1搬送部から第2搬送部へPTPシートが移載されると、第1搬送部からPTPシートが直ちに引き離され、その後の第1搬送部の動きによってPTPシートの列が乱されることはなく、搬送ラインにおけるPTPシートの列の乱れを防止できる。また、下流側の押進速度V2を速くする必要がないので、第2押進手段を構成する第2押進部材の取り付けピッチを長くする必要はなく、下流側のライン長が不所望に長くなるのを防止できる。
【0017】
請求項3に記載した発明によれば、第3搬送部から第1搬送部へPTPシートが移載される際に、下流側の押進速度V1が上流側の押進速度V3よりも速くなるように第1押進手段が制御される。したがって、第1搬送部から第2搬送部へPTPシートが移載されるときだけでなく、第3搬送部から第1搬送部へPTPシートが移載されるときにも、下流側のライン長が不所望に長くなるのを防止しつつ、PTPシートの列の乱れを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、「PTP包装システム10」を示す簡略図であり、このPTP包装システム10において、本発明に係る「搬送機構12」および「排出装置14」が用いられている。
【0019】
PTP包装システム10は、錠剤またはカプセル剤等の内容物16をPTPシート18によって包装するものである。
【0020】
PTPシート18は、図2に示すように、内容物16(図1)を収容する複数のポケット20を有する容器本体22と、ポケット20の開口部を閉塞するシート状の蓋材24とによって構成されており、PTPシート18の側端部は、容器本体22と蓋材24とが接合されることによって1枚のシート状に構成されている。
【0021】
PTP包装システム10を用いて錠剤等の内容物16を包装する際には、図1に示すように、まず、合成樹脂等からなる帯状の基材シート26にポケット成形装置28によって複数のポケット20が形成され、続いて、各ポケット20に錠剤等の内容物16が充填装置30によって充填される。そして、ポケット20の開口部を閉塞するようにして基材シート26に帯状の蓋材シート32が熱融着装置34によって熱融着され、基材シート26と蓋材シート32との接合体36から所定サイズのPTPシート18が打抜き装置38によって連続的に打ち抜かれる。そして、このPTPシート18が搬送ライン40を経て集積装置42へ搬送され、集積装置42においてPTPシート18の積層体44が構成される。その後、この積層体44がバンディング装置46またはピロー包装装置(図示省略)によって結束または包装される。
【0022】
また、包装工程において、内容物16の充填不良が生じた際には、その充填不良が充填装置30の下流側に配設された監視カメラ48、または熱融着装置34の下流側に配設された監視カメラ50によって検出され、充填不良の生じたPTPシート18が搬送ライン40に設けられた排出装置14によって包装ラインから排出される。
【0023】
したがって、搬送ライン40の搬送機構12には、PTPシート18を単に上流側から下流側へ搬送するだけでなく、排出装置14の排出機能を有効に発揮させることのできる特別な構成が採用されている。
【0024】
搬送機構12は、図2に示すように、それぞれが搬送ライン40の一部を構成する第1搬送部56a,第2搬送部56bおよび第3搬送部56cと、押進速度制御手段(図示省略)とを備えており、第1搬送部56aの下流側に第2搬送部56bが配設されており、第1搬送部56aの上流側に第3搬送部56cが配設されている。
【0025】
第1搬送部56aは、PTPシート18を滑らせる帯状の第1スライド板58aと、第1スライド板58aに載置されたPTPシート18を下流側へ押し進める第1押進手段60aとによって構成されている。
【0026】
第1スライド板58aは、鉄またはアルミニウム等からなる板材の表面にテフロン(登録商標)コーティング等の平滑処理が施された帯板状部材であり、第1スライド板58aには、第1押進手段60aを構成する第1押進部材66aを突出させるための左右一対の長孔62aが長手方向へ延びて互いに平行に形成されている。
【0027】
第1押進手段60aは、第1スライド板58aに沿って上流側から下流側へ動く第1押進駆動部64aと、第1押進駆動部64aに取り付けられ、PTPシート18の側端縁に当接する第1押進部材66aと、第1押進駆動部64aを駆動する第1モータ68aとによって構成されている。
【0028】
第1押進駆動部64aは、逆台形状(図2(B))に配設された左右一対となる4組のプーリ70a,72a,74aおよび76aと、これらのプーリ70a〜76aに架け渡された左右一対の環状体78aとを有しており、上側のプーリ70aおよび72aが第1スライド板58aの長手方向両端部の下方に配設されており、下側のプーリ76aに第1モータ68aの回転軸が連結されている。第1押進駆動部64aを構成する環状体78aは、プーリ70a〜76aの回転運動を第1スライド板58aに沿った直線運動に変換するものであり、具体的には、チェーンまたはベルト等が環状体78aとして用いられ得る。
【0029】
第1押進部材66aは、第1押進駆動部64aの環状体78aに取り付けられた取付アーム80aと、取付アーム80aの先端に設けられた押進爪82aとによって略L状に構成されている。第1押進部材66aが第1スライド板58aに沿って移動する際には、第1スライド板58aの長孔62aから押進爪82aが上方へ突出され、この押進爪82aによってPTPシート18が押進される。
【0030】
第1モータ68aは、押進速度制御手段(図示省略)によって回転数が制御されるサーボモータであり、第1モータ68aの回転力がプーリ76aを介して環状体78aへ伝達される。したがって、押進速度制御手段(図示省略)で第1モータ68aの回転数を制御することによって、第1押進手段60aの押進速度V1が制御され得る。
【0031】
第2搬送部56bおよび第3搬送部56cは、第1搬送部56aとほぼ同様に構成されている。そこで、以下の第2搬送部56bおよび第3搬送部56cの説明では、第1搬送部56aに対応する箇所に同じ参照番号を用いるとともに、参照番号に付記したアルファベット「a」を「b」または「c」に変更している。
【0032】
第2搬送部56bは、PTPシート18を滑らせる帯状の第2スライド板58bと、第2スライド板58bに載置されたPTPシート18を下流側へ押し進める第2押進手段60bとによって構成されている。
【0033】
第2スライド板58bは、鉄またはアルミニウム等からなる板材の表面にテフロン(登録商標)コーティング等の平滑処理が施された帯板状部材であり、第2スライド板58bには、左右一対の長孔62bが長手方向へ延びて互いに平行に形成されている。
【0034】
第2押進手段60bは、第2スライド板58bに沿って上流側から下流側へ動く第2押進駆動部64bと、第2押進駆動部64bに取り付けられ、PTPシート18の側端縁に当接する第2押進部材66bと、第2押進駆動部64bを駆動する第2モータ68b(図1)とによって構成されている。
【0035】
第2押進駆動部64bは、プーリ70b,72b,74bおよび76bと、これらのプーリ70b〜76bに架け渡された環状体78bとを有しており、上側のプーリ70bおよび72bが第2スライド板58bの長手方向両端部の下方に配設されており、下側のプーリ76bに第2モータ68bの回転軸が連結されている。第2押進駆動部64bを構成する環状体78bは、プーリ70b〜76bの回転運動を第2スライド板58bに沿った直線運動に変換するものであり、具体的には、チェーンまたはベルト等が環状体78bとして用いられ得る。
【0036】
第2押進部材66bは、第2押進駆動部64bの環状体78bに取り付けられた取付アーム80bと、取付アーム80bの先端に設けられた押進爪82bとによって略L状に構成されている。第2押進部材66bが第2スライド板58bに沿って移動する際には、第2スライド板58bの長孔62bから押進爪82bが上方へ突出され、この押進爪82bによってPTPシート18が押進される。
【0037】
第2モータ68bは、押進速度制御手段(図示省略)によって回転数が制御されるサーボモータであり、第2モータ68bの回転力がプーリ76bを介して環状体78bへ伝達される。したがって、押進速度制御手段(図示省略)で第2モータ68bの回転数を制御することによって、第2押進手段60bの押進速度V2が制御され得る。
【0038】
第3搬送部56cは、PTPシート18を滑らせる帯状の第3スライド板58cと、第3スライド板58cに載置されたPTPシート18を下流側へ押し進める第3押進手段60cとによって構成されている。
【0039】
第3スライド板58cは、鉄またはアルミニウム等からなる板材の表面にテフロン(登録商標)コーティング等の平滑処理が施された帯板状部材であり、第3スライド板58cには、左右一対の長孔62cが長手方向へ延びて互いに平行に形成されている。
【0040】
第3押進手段60cは、第3スライド板58cに沿って上流側から下流側へ動く第3押進駆動部64cと、第3押進駆動部64cに取り付けられ、PTPシート18の側端縁に当接する第3押進部材66cと、第3押進駆動部64cを駆動する第3モータ68c(図1)とによって構成されている。
【0041】
第3押進駆動部64cは、プーリ70c,72c,74cおよび76cと、これらのプーリ70c〜76cに架け渡された環状体78cとを有しており、上側のプーリ70cおよび72cが第3スライド板58cの長手方向両端部の下方に配設されており、下側のプーリ74cに第3モータ68cの回転軸が連結されている。第3押進駆動部64cを構成する環状体78cは、プーリ70c〜76cの回転運動を第3スライド板58cに沿った直線運動に変換するものであり、具体的には、チェーンまたはベルト等が環状体78cとして用いられ得る。
【0042】
第3押進部材66cは、第3押進駆動部64cの環状体78cに取り付けられた取付アーム80cと、取付アーム80cの先端に設けられた押進爪82cとによって略L状に構成されている。第3押進部材66cが第3スライド板58cに沿って移動する際には、第3スライド板58cの長孔62cから押進爪82cが上方へ突出され、この押進爪82cによってPTPシート18が押進される。
【0043】
第3モータ68cは、押進速度制御手段(図示省略)によって回転数が制御されるサーボモータであり、第3モータ68cの回転力がプーリ74cを介して環状体78cへ伝達される。したがって、押進速度制御手段(図示省略)で第3モータ68cの回転数を制御することによって、第3押進手段60cの押進速度V3が制御され得る。
【0044】
押進速度制御手段(図示省略)は、PTP包装システム10の全体を制御する制御部(図示省略)によって実現されている。制御部(図示省略)は、各種の演算を実行する中央演算装置と、各種の情報を記憶する記憶装置とを有しており、「押進速度制御手段」として機能するだけでなく、排出装置14を制御する「排出制御手段」としても機能する。
【0045】
排出装置14は、充填不良の生じたPTPシート18や、熱損傷の生じたPTPシート18や、基材シート26または蓋材シート32の継ぎ目を含むPTPシート18等を包装ラインから排出するものであり、図2に示すように、上述の搬送機構12と、PTPシート18の不良を検出する「不良検出手段」としての監視カメラ48および50と、「不良検出手段」によって不良が検出されたPTPシート18等を包装ラインから排出する排出手段84とによって構成されている。
【0046】
排出手段84は、第1スライド板58aに設けられた排出孔86と、排出孔86の下方に配設されたガイド部材88と、ガイド部材88のさらに下方に配置された容器90と、排出孔86に開閉自在に取り付けられたダンパ状の蓋体92と、蓋体92を開閉操作するエアシリンダ等の開閉操作部94と、上述の制御部(図示省略)によって実現された「排出制御手段」とによって構成されている。
【0047】
PTP包装システム10を用いた包装工程において、打抜き装置38によって打ち抜かれたPTPシート18が搬送ライン40に与えられると、このPTPシート18が搬送機構12によって下流側へ搬送される。
【0048】
つまり、打抜き装置38によって打ち抜かれたPTPシート18は、まず、第3搬送部56cの第3スライド板58c上に載置され、第3押進手段60cによって下流側へ押し進められる。そして、このPTPシート18が、第3スライド板58cの下流側端部において第3搬送部56cから第1搬送部56aへ移載される。第1搬送部56aでは、第1スライド板58a上に載置されたPTPシート18が、第1押進手段60aによって下流側へ押し進められ、第1スライド板58aの下流側端部において第1搬送部56aから第2搬送部56bへ移載される。さらに、第2搬送部56bでは、第2スライド板58b上に載置されたPTPシート18が、第2押進手段60bによって下流側へ押し進められ、第2スライド板58bの下流側端部において第2搬送部56bから集積装置42へ移載される。
【0049】
第1搬送部56aから第2搬送部56bへPTPシート18が移載される際には、図3に示すように、PTPシート18を押進してきた第1搬送部56aの押進爪82aが第2搬送部56bの押進爪82bに交替される。交替の瞬間すなわち移載の瞬間には、図3(B)に示すように、押進爪82aと押進爪82bとが一列に並び、並んだ直後から押進爪82bによる押進が開始される。PTPシート18の移載の際、すなわち「移載の瞬間とその前後の所定時間とを含む範囲」では、第1押進手段60aの押進速度V1が第2押進手段60bの押進速度V2よりも遅くなるように押進速度制御手段によって第1押進手段60aが制御され、移載の後には、押進速度V1が速くされて、移載の際の遅れが挽回される。
【0050】
一方、第3搬送部56cから第1搬送部56aへPTPシート18が移載される際には、第1押進手段60aの押進速度V1が第3押進手段60cの押進速度V3よりも速くなるように押進速度制御手段によって第1押進手段60aが制御され、移載の後には、押進速度V1が遅くされて、移載の際の行き過ぎが調整される。
【0051】
したがって、第1搬送部56aから第2搬送部56bへPTPシート18が移載された直後には、第1搬送部56aからPTPシート18が引き離され、その後の第1搬送部56aの動きによってPTPシート18の列が乱されることはない。また、第3搬送部56cから第1搬送部56aへPTPシート18が移載された直後には、第3搬送部56cからPTPシート18が引き離され、その後の第3搬送部56cの動きによってPTPシート18の列が乱されることはない。さらに、下流側の押進速度V2,V1を速くする必要がないので、下流側の押進部材66b,66aの取り付けピッチを長くする必要はない。
【0052】
PTP包装システム10を用いた包装工程において、監視カメラ48または50によって不良が検出されると、不良箇所の検出位置と検出時間とが制御部(図示省略)の記憶装置に「基準情報」として記憶され、ガイドローラ96(図1)に含まれるエンコーダからの信号と「基準情報」とに基づいて不良箇所の位置が制御部(図示省略)の中央演算装置によって算出される。そして、不良箇所を含むPTPシート18が排出孔86の位置に到達するとき、制御部(図示省略)から開閉操作部94に開信号が与えられ、開信号に基づいて蓋体92が所定時間だけ開かれる。すると、不良箇所を含むPTPシート18が排出孔86から落下され、容器90に収容される。
【0053】
本実施例の排出装置14では、第1搬送部56aを構成する環状体78aと、第2搬送部56bを構成する環状体78bと、第3搬送部56cを構成する環状体78cとが互いに独立しているため、環状体78aの間隔を他の環状体78bおよび78cの間隔と一致させる必要はない。したがって、環状体78aの間隔については、排出孔86の長さに合わせて任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】PTP包装システム10を示す簡略図
【図2】搬送機構および排出装置を示す平面図および正面図
【図3】搬送機構の動作を示す図
【図4】従来の搬送機構を示す図
【符号の説明】
【0055】
10… PTP包装システム
12… 搬送機構
14… 排出装置
16… 内容物
18… PTPシート
40… 搬送ライン
48,50… 監視カメラ
56a,56b,56c… 搬送部
58a,58b,58c… スライド板
60a,60b,60c… 押進手段
62a,62b,62c… 長孔
64a,64b,64c… 押進駆動部
66a,66b,66c… 押進部材
68a,68b,68c… モータ
78a,78b,78c… 環状体
82a,82b,82c… 押進爪
84… 排出手段
86… 排出孔
92… 蓋体
94… 開閉操作部
96… ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する複数のポケットを有する容器本体と、前記ポケットの開口部を閉塞するシート状の蓋材とを有するPTPシートを、包装ラインの上流側から下流側へ搬送する搬送機構であって、
前記PTPシートを滑らせる帯状の第1スライド板と、前記第1スライド板に載置された前記PTPシートを下流側へ押し進める第1押進手段とを有する第1搬送部、
前記PTPシートを滑らせる帯状の第2スライド板と、前記第2スライド板に載置された前記PTPシートを下流側へ押し進める第2押進手段とを有し、前記第1搬送部の下流側に配設された第2搬送部、および
前記第1搬送部から前記第2搬送部へ前記PTPシートが移載される際に、前記第1押進手段の押進速度V1が前記第2押進手段の押進速度V2よりも遅くなるように前記第1押進手段を制御する押進速度制御手段を備える、PTPシートの搬送機構。
【請求項2】
前記第1押進手段は、前記第1スライド板に沿って上流側から下流側へ動く第1押進駆動部と、前記第1押進駆動部に取り付けられ、前記PTPシートの側端縁に当接する第1押進部材と、前記第1押進駆動部を駆動する第1モータとを有しており、
前記第2押進手段は、前記第2スライド板に沿って上流側から下流側へ動く第2押進駆動部と、前記第2押進駆動部に取り付けられ、前記PTPシートの側端縁に当接する第2押進部材と、前記第2押進駆動部を駆動する第2モータとを有しており、
前記第1モータが前記押進速度制御手段によって制御される、請求項1に記載のPTPシートの搬送機構。
【請求項3】
前記PTPシートを滑らせる帯状の第3スライド板と、前記第3スライド板に載置された前記PTPシートを下流側へ押し進める第3押進手段とを有し、前記第1搬送部の上流側に配設された第3搬送部をさらに備えており、
前記押進速度制御手段は、前記第3搬送部から前記第1搬送部へ前記PTPシートが移載される際に、前記第1押進手段の押進速度V1が前記第3押進手段の押進速度V3よりも速くなるように前記第1押進手段を制御する、請求項1または2に記載のPTPシートの搬送機構。
【請求項4】
内容物を収容する複数のポケットを有する容器本体と、前記ポケットの開口部を閉塞するシート状の蓋材とを有するPTPシートを、包装ラインの上流側から下流側へ搬送する搬送機構、前記PTPシートの不良を検出する不良検出手段、および前記不良検出手段によって不良が検出された前記PTPシートを包装ラインから排出する排出手段を備える、PTPシートの排出装置であって、
前記搬送機構は、前記PTPシートを滑らせる帯状の第1スライド板と、前記第1スライド板に載置された前記PTPシートを下流側へ押し進める第1押進手段とを有する第1搬送部、前記PTPシートを滑らせる帯状の第2スライド板と、前記第2スライド板に載置された前記PTPシートを下流側へ押し進める第2押進手段とを有し、前記第1搬送部の下流側に配設された第2搬送部、および前記第1搬送部から前記第2搬送部へ前記PTPシートが移載される際に、前記第1押進手段の押進速度V1が前記第2押進手段の押進速度V2よりも遅くなるように前記第1押進手段を制御する押進速度制御手段を有しており、
前記排出手段は、前記第1スライド板に設けられた排出孔と、前記排出孔に開閉自在に取り付けられた蓋体と、前記蓋体を開閉操作する開閉操作部とを有しており、
前記不良検出手段によって不良が検出された前記PTPシートが前記排出孔の位置に到達するとき、前記開閉操作部によって前記蓋体が開かれる、PTPシートの排出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−150092(P2008−150092A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342018(P2006−342018)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(591206108)マルホ発條工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】