説明

RAFキナーゼの阻害のためのピロロ[2,3−B]ピリジン誘導体

プロパン−1−スルホン酸{2,4−ジフルオロ−3−[5−(2−メトキシピリミジン−5−イル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル]−フェニル}−アミド、プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド、プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2−フルオロフェニル]−アミド、N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−2,5−ジフルオロベンゼンスルホンアミド、N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−3−フルオロベンゼンスルホンアミド、ピロリジン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド、N,N−ジメチルアミノスルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド、およびその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体、その形態およびその使用を記載する。一定の態様および実施形態では、記載した化合物またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体およびその形態は、少なくとも1つのRafタンパク質キナーゼに対して活性がある。さらに、Rafタンパク質キナーゼの活性に関連する疾患および状態(メラノーマ、神経膠腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がんおよび胆道がんなど)を包含する疾患および状態を治療するためのその使用の方法も記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
新規の化合物およびその使用を開示する。一定の実施形態では、開示する化合物は、キナーゼ阻害剤である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本明細書中で開示する一定の態様および実施形態では、化合物ならびに多様なその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体、その形態およびその使用が提供される。さらに、本発明により企図するのは、1つまたは複数のRafキナーゼ(1つまたは複数のRafキナーゼの任意の変異体を包含する)の活性の調節に関連する疾患および状態の治療における化合物の使用の方法である。したがって、一定の実施形態では、Rafタンパク質キナーゼの調節を含む治療方法における化合物およびその塩形態の使用が提供される。一実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩は、Rafタンパク質キナーゼの調節を含む治療方法のために使用するが、そのような治療方法としては、さまざまな適応症、好ましくはがん(メラノーマ、神経膠腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、卵巣がん、肺がん、前立腺がんおよび胆道がんなどであるが、これらに限定されない)の治療が挙げられる。
【0003】
第1の態様では、プロパン−1−スルホン酸{2,4−ジフルオロ−3−[5−(2−メトキシピリミジン−5−イル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル]−フェニル}−アミド(P−0001)、プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド(P−0002)、プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2−フルオロフェニル]−アミド(P−0003)、N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−2,5−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(P−0004)、N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−3−フルオロベンゼンスルホンアミド(P−0005)、ピロリジン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド(P−0006)、N,N−ジメチルアミノスルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド(P−0007)から成る群から選択される化合物、その任意の塩、その任意の製剤、その任意のコンジュゲート、その任意の誘導体およびその任意の形態が提供される。一定の実施形態では、P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006、P−0007またはそれらの塩、それらの製剤、それらのコンジュゲート、それらの誘導体またはそれらの形態は、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf−1(これらのキナーゼの任意の変異体を包含する)など、1つまたは複数のRafタンパク質キナーゼの阻害剤である。
【0004】
第2の態様では、化合物プロパン−1−スルホン酸{2,4−ジフルオロ−3−[5−(2−メトキシピリミジン−5−イル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル]−フェニル}−アミド(P−0001)またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態が提供される。一定の実施形態では、P−0001またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態は、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf−1(これらのキナーゼの任意の変異体を包含する)など、1つまたは複数のRafタンパク質キナーゼの阻害剤である。
【0005】
第3の態様では、化合物プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド(P−0002)またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態が提供される。一定の実施形態では、P−0002またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態は、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf−1(これらのキナーゼの任意の変異体を包含する)など、1つまたは複数のRafタンパク質キナーゼの阻害剤である。
【0006】
第4の態様では、化合物プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2−フルオロフェニル]−アミド(P−0003)またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態が提供される。一定の実施形態では、P−0003またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態は、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf−1(これらのキナーゼの任意の変異体を包含する)など、1つまたは複数のRafタンパク質キナーゼの阻害剤である。
【0007】
第5の態様では、化合物N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−2,5−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(P−0004)またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態が提供される。一定の実施形態では、P−0004またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態は、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf−1(これらのキナーゼの任意の変異体を包含する)など、1つまたは複数のRafタンパク質キナーゼの阻害剤である。
【0008】
第6の態様では、化合物N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−3−フルオロベンゼンスルホンアミド(P−0005)またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態が提供される。一定の実施形態では、P−0005またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態は、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf−1(これらのキナーゼの任意の変異体を包含する)など、1つまたは複数のRafタンパク質キナーゼの阻害剤である。
【0009】
第7の態様では、化合物ピロリジン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド(P−0006)またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態が提供される。一定の実施形態では、P−0006またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態は、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf−1(これらのキナーゼの任意の変異体を包含する)など、1つまたは複数のRafタンパク質キナーゼの阻害剤である。
【0010】
第8の態様では、化合物N,N−ジメチルアミノスルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド(P−0007)またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態が提供される。一定の実施形態では、P−0007またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態は、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf−1(これらのキナーゼの任意の変異体を包含する)など、1つまたは複数のRafタンパク質キナーゼの阻害剤である。
【0011】
化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006およびP−0007に言及する場合、そうでないことが明確に示されない限り、当該化合物の仕様(specification)は、当該化合物の塩(薬学的に許容される塩など)、当該化合物の製剤(薬学的に許容される製剤など)、そのコンジュゲート、その誘導体、その形態およびそのプロドラッグを包含する。
【0012】
第9の態様では、本発明は、動物対象においてRafタンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態を治療する方法であって、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち有効量の任意の1つまたは複数を該対象に投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、この方法は、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち有効量の任意の1つまたは複数を、該疾患または状態のための1つまたは複数の他の療法と組み合わせて該対象に投与することを含む。
【0013】
第10の態様では、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち治療上有効量の任意の1つまたは複数と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、添加剤(excipient)および/または希釈剤(diluent)とを含む組成物が提供される。一定の実施形態では、この組成物は、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を、同じ疾患適応症にとって治療上有効な1つまたは複数の化合物と共に含むことができる。関連する実施形態では、この組成物は、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を、同じ疾患適応症にとって治療上有効で、該疾患適応症に相乗効果を有する1つまたは複数の化合物と共に含む。一実施形態では、この組成物は、がんの治療において有効な化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数と、同じがんの治療において有効な、さらにはがんの治療において相乗的に有効な1つまたは複数の他の化合物とを含む。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝臓がん、胆嚢がん、消化管間質腫瘍および胆道がんから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、神経膠腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がんおよび胆道がんから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、直腸結腸がん、甲状腺がん、卵巣がんおよび胆道がんから成る群から選択される。
【0014】
第11の態様では、本発明は、A−Raf、B−Raf、c−Raf−1、B−Raf V600E変異体またはB−Raf V600E/T529I変異体が介在する疾患または状態を、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を含む有効量の組成物を対象に投与することにより治療する方法を提供する。多様な実施形態では、本発明は、A−Raf、B−Raf、c−Raf−1、B−Raf V600E変異体またはB−Raf V600E/T529I変異体が介在する疾患または状態を、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を含む有効量の組成物を、該疾患を治療するための1つまたは複数の他の適当な療法と組み合わせて対象に投与することにより治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、B−Raf V600E変異体が介在するがんを、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を含む有効量の組成物を、1つまたは複数の化学療法薬など1つまたは複数の適当な抗がん療法と組み合わせて対象に投与することにより治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝臓がん、胆嚢がん、消化管間質腫瘍および胆道がんから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、神経膠腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がんおよび胆道がんから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、直腸結腸がん、甲状腺がん、卵巣がんおよび胆道がんから成る群から選択される。
【0015】
第12の態様では、本発明は、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を含む有効量の組成物を、がんの治療において有効な1つまたは複数の他の療法または医学的処置と組み合わせて対象に投与することによりがんを治療する方法を提供する。他の療法または医学的処置としては、適当な抗がん療法(たとえば薬物療法、ワクチン療法、遺伝子療法、光線力学的療法)または医学的処置(たとえば外科手術、放射線治療、温熱療法、骨髄もしくは幹細胞移植)が挙げられる。本態様の一定の実施形態では、該1つまたは複数の適当な抗がん療法または医学的処置は、以下から選択される:化学療法剤(たとえば化学療法薬)を用いた治療、放射線治療(たとえばX線、γ線、または電子、プロトン、中性子、またはα粒子ビーム)、温熱療法(hyperthermia heating)(たとえばマイクロ波、超音波、高周波アブレーション)、ワクチン療法(たとえばAFP遺伝子肝細胞癌ワクチン、AFPアデノウイルスベクターワクチン、AG−858、同種異系のGM−CSF−分泌乳がんワクチン、樹状細胞ペプチドワクチン)、遺伝子療法(たとえばAd5CMV−p53ベクター、MDA7をコードするアデノベクター(adenovector)、アデノウイルス5−腫瘍壊死因子α)、光線力学的療法(たとえばアミノレブリン酸、モテキサフィンルテチウム)、外科手術または骨髄移植および幹細胞移植。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝臓がん、胆嚢がん、消化管間質腫瘍および胆道がんから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、神経膠腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がんおよび胆道がんから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、直腸結腸がん、甲状腺がん、卵巣がんおよび胆道がんから成る群から選択される。
【0016】
第13の態様では、本発明は、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を含む有効量の組成物を、1つまたは複数の適当な化学療法剤と組み合わせて対象に投与することによりがんを治療する方法を提供する。関連する一実施形態では、該1つまたは複数の適当な化学療法剤は、以下から選択される:アルキル化剤(アドゼレシン、アルトレタミン、ベンダムスチン、ビゼレシン、ブスルファン、カルボプラチン、カルボコン、カルモフール、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、エストラムスチン、エトグルシド、フォテムスチン、ヘプスルファム、イホスファミド、インプロスルファン、イロフルベン、ロムスチン、マンノスルファン、メクロレタミン、メルファラン、ミトブロニトール、ネダプラチン、ニムスチン、オキサリプラチン、ピポスルファン、プレドニムスチン、プロカルバジン、ラニムスチン、サトラプラチン、セムスチン、ストレプトゾシン、テモゾロミド、チオテパ、トレオスルファン、トリアジコン、トリエチレンメラミン、四硝酸トリプラチン、トロホスファミドおよびウラムスチンなどであるが、これらに限定されない);抗生物質(アクラルビシン、アムルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エルサミトルシン、エピルビシン、イダルビシン、メノガリル、マイトマイシン、ネオカルチノスタチン、ペントスタチン、ピラルビシン、プリカマイシン、バルルビシンおよびゾルビシンなどであるが、これらに限定されない);代謝拮抗剤(アミノプテリン、アザシチジン、アザチオプリン、カペシタビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、5−フルオロウラシル、2’−F−アラ−デオキシウリジン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メルカプトプリン、メトトレキセート、ネララビン、ペメトレキセド、プララトレキセート、アザチオプリン、ラルチトレキセド、テガフールウラシル、チオグアニン、トリメトプリム、トリメトレキセートおよびビダラビンなどであるが、これらに限定されない);免疫療法(アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、デニロイキンディフティトックス、ガリキシマブ、ゲムツズマブ、オファツムマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、および90Yイブリツモマブチウキセタン、イピリムマブおよびトレメリムマブなどであるが、これらに限定されない);ホルモンまたはホルモン拮抗剤(アナストロゾール、アンドロゲン、ビカルタミド、ブセレリン、デガレリクス、ジエチルスチルベストロール、エキセメスタン、フルタミド、フルベストラント、ゴセレリン、イドキシフェン、レトロゾール、ロイプロリド、メゲストロール、ニルタミド、ラロキシフェン、タモキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トレミフェンおよびトリプトレリンなどであるが、これらに限定されない);タキサン(DJ−927、ドセタキセル、TPI287、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、DHA−パクリタキセルおよびテセタキセルなどであるが、これらに限定されない);レチノイド(アリトレチノイン、ベキサロテン、フェンレチニド、イソトレチノインおよびトレチノインなどであるが、これらに限定されない);アルカロイド(デメコルシン、ホモハリングトニン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニンおよびビノレルビンなどであるが、これらに限定されない);血管新生阻害剤(AE−941(GW786034、ネオバスタット)、ABT−510、2−メトキシエストラジオール、レナリドミドおよびサリドマイドなどであるが、これらに限定されない);トポイソメラーゼ阻害剤(アムサクリン、ベロテカン、エドテカリン、エトポシド、リン酸エトポシド、エキサテカン、イリノテカン(さらには活性代謝物SN−38(7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン))、ルカントン、ミトキサントロン、ピクサントロン、ルビテカン、テニポシド、トポテカンおよび9−アミノカンプトテシンなどであるが、これらに限定されない);キナーゼ阻害剤(アキシチニブ(AG013736)、ダサチニブ(BMS354825)、エルロチニブ、ゲフィチニブ、フラボピリドール、メシル酸イマチニブ、ラパチニブ、モテサニブ二リン酸(AMG706)、ニロチニブ(AMN107)、パゾパニブ、セリシクリブ、ソラフェニブ、リンゴ酸スニチニブ、AEE−788、BMS−599626、UCN−01(7−ヒドロキシスタウロスポリン)およびバタラニブなどであるが、これらに限定されない);標的化シグナル伝達阻害剤(ボルテゾミブおよびゲルダナマイシンなどであるが、これらに限定されない);生体応答調節剤(イミキモド、インターフェロン−αおよびインターロイキン−2などであるが、これらに限定されない);および他の化学療法剤(3−AP(3−アミノ−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン)、アルトラセンタン(altrasentan)、アミノグルテチミド、アナグレリド、アスパラギナーゼ、ブリオスタチン−1、シレンギチド、エレスクロモル、メシル酸エリブリン(E7389)、イクサベピロン、ロニダミン、マソプロコール、ミトグアナゾン(mitoguanazone)、オブリメルセン、スリンダク、テストラクトン、チアゾフリン、mTOR阻害剤(たとえば、テムシロリムス、エベロリムス、デホロリムス、ラパマイシン)、PI3K阻害剤(たとえばBEZ235、GDC−0941、XL147、XL765、CAL−101、PX−866、BGT226、GSK1059615)、Cdk4阻害剤(たとえばPD−332991、AG−024322)、Akt阻害剤(たとえば、GSK2110183、SR13668)、MEK阻害剤(たとえばPD0325901、AZD8330、GSK1120212、RO4987655、RDEA119、XL518)、COX−2阻害剤(たとえばセレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ)、Hsp90阻害剤(たとえばタネスピマイシン)およびファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(たとえばチピファルニブ)などであるが、これらに限定されない)。好ましくは、がんを治療する方法は、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を含む有効量の組成物を、カペシタビン、5−フルオロウラシル、カルボプラチン、ダカルバジン、ゲフィチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、SN−38、テモゾロミド、ビンブラスチン、ベバシズマブ、セツキシマブ、インターフェロン−α、インターロイキン−2、エルロチニブ、PD0325901、ラパマイシン、BEZ235およびGDC−0941から成る群から選択される化学療法剤と組み合わせて対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝臓がん、胆嚢がん、消化管間質腫瘍および胆道がんから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、神経膠腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がんおよび胆道がんから成る群から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、メラノーマ、直腸結腸がん、甲状腺がん、卵巣がんおよび胆道がんから成る群から選択される。
【0017】
第14の態様では、本発明は、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数、または本明細書に記載のとおりのそれらの組成物を備えるキットを提供する。いくつかの実施形態では、この化合物または組成物を、たとえばバイアル、瓶、フラスコ内に包装し、これを、たとえば箱、封筒または袋の中にさらに包装してもよく;この化合物または組成物は、米国食品医薬品局、または哺乳動物(たとえばヒト)への投与についての同様の規制当局により認可され;この化合物または組成物は、タンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態のための、哺乳動物(たとえばヒト)への投与について認可され;本発明キットは、使用のための取扱説明書、および/または、該化合物もしくは組成物が、タンパク質キナーゼ介在性の疾患もしくは状態のための、哺乳動物(たとえばヒト)への投与に適しているかもしくは認可されているという他の表示を備えており;ならびに、この化合物または組成物は、単位用量または単回用量の形態(たとえば、単回用量の丸剤、カプセル剤など)で包装されている。
【0018】
化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を用いる疾患または状態の治療を含む態様および実施形態では、本発明は、動物対象(たとえば、ヒト、他の霊長動物、競技動物、ウシなど商業的に重要な動物、ウマなどの家畜、またはイヌおよびネコなどのペットといった哺乳動物)におけるA−Raf介在性、B−Raf介在性および/またはc−Raf−1介在性の疾患または状態、たとえば、異常なA−Raf、B−Rafおよび/またはc−Raf−1活性(たとえばキナーゼ活性)を特徴とする疾患または状態を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、発明方法は、A−Raf介在性、B−Raf介在性および/またはc−Raf−1介在性の疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち有効量の任意の1つまたは複数を投与することが含まれていてもよい。一実施形態では、A−Raf介在性、B−Raf介在性および/またはc−Raf−1介在性の疾患は、以下から成る群から選択される:神経疾患(多発梗塞性認知症、頭部傷害、脊髄傷害、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、発作およびてんかんなどであるが、これらに限定されない);腫瘍性疾患(メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、肉腫、癌腫(たとえば、消化器、肝臓、胆道(たとえば胆管、胆管細胞癌)、直腸結腸、肺、胆嚢、乳房、膵臓、甲状腺、腎臓、卵巣、副腎皮質、前立腺のもの)、リンパ腫(たとえば組織球性リンパ腫)、神経線維腫症、消化管間質腫瘍、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、白血病、腫瘍血管新生、神経内分泌腫瘍(髄様甲状腺がんなど)、カルチノイド、小細胞肺がん、カポジ肉腫および褐色細胞腫などであるが、これらに限定されない);神経障害または炎症由来の疼痛(急性疼痛、慢性疼痛、がん関連の疼痛および偏頭痛などであるが、これらに限定されない);心血管疾患(心不全、虚血性脳卒中、心肥大、血栓症(たとえば血栓性微小血管症候群)、アテローム性硬化症および再灌流傷害などであるが、これらに限定されない);炎症および/または増殖(乾癬、湿疹、関節炎ならびに自己免疫性の疾患および状態、変形性関節炎、子宮内膜症、瘢痕、血管再狭窄、線維性障害、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)などであるが、これらに限定されない);免疫不全疾患(臓器移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、およびHIVに伴うカポジ肉腫などであるが、これらに限定されない);腎嚢胞性または前立腺の疾患(糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎、腎硬化症、糸球体腎炎、前立腺肥大、多発性嚢胞肝、結節性硬化症、フォン・ヒッペル・リンダウ病、髄質嚢胞性腎疾患、ネフロン癆および嚢胞性線維症などであるが、これらに限定されない);代謝障害(肥満などであるが、これに限定されない);感染症(ヘリコバクターピロリ、肝炎ウイルスおよびインフルエンザウイルス、発熱、HIVおよび敗血症などであるが、これらに限定されない);肺疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)および急性呼吸促迫症候群(ARDS)などであるが、これらに限定されない);遺伝性の発達疾患(ヌーナン症候群、コステロ症候群(顔面皮膚骨格症候群)、LEOPARD症候群、心臓顔面皮膚症候群(CFC)、ならびに、心血管、骨格、腸、皮膚、毛髪および内分泌性の疾患の原因となる神経堤症候群異常などであるが、これらに限定されない);ならびに、筋肉の再生または変性に伴う疾患(加齢性筋肉減少症、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型、エメリ・ドレフュス型、肢帯型、顔面肩甲上腕型、筋緊張型、眼咽頭型、末梢性および先天性の筋ジストロフィーなどであるが、これらに限定されない)、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症、小児性の進行性脊髄性筋萎縮症、中間体脊髄性筋萎縮症、若年性脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症および成人性脊髄性筋萎縮症などであるが、これらに限定されない)、炎症性ミオパチー(皮膚筋炎、多発性筋炎および封入体筋炎などであるが、これらに限定されない)、神経筋接合部疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群および先天性筋無力症候群などであるが、これらに限定されない)、内分泌異常によるミオパチー(甲状腺機能亢進性ミオパチーおよび甲状腺機能低下性ミオパチーなどであるが、これらに限定されない))、末梢神経疾患(シャルコー・マリー・トゥース病、デジェリン・ソッタス病およびフリードライヒ運動失調症などであるが、これらに限定されない)、他のミオパチー(先天性ミオトニア、先天性パラミオトニア、セントラルコア病、ネマリンミオパチー、筋細管ミオパチーおよび周期性麻痺などであるが、これらに限定されない)、ならびに代謝性の筋疾患(ホスホリラーゼ欠損症、酸性マルターゼ欠損症、ホスホフルクトキナーゼ欠損症、脱分枝酵素欠損症、ミトコンドリアミオパチー、カルニチン欠損症、カルニチンパルマチル(palmatyl)トランスフェラーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症およびミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症などであるが、これらに限定されない)などであるが、これらに限定されない)。一実施形態では、この疾患または状態は、メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、肉腫、肝臓がん、胆道がん、直腸結腸がん、肺がん、胆嚢がん、乳がん、膵臓がん、甲状腺がん、腎臓がん、卵巣がん、副腎皮質がん、前立腺がん、組織球性リンパ腫、神経線維腫症、消化管間質腫瘍、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、白血病、腫瘍血管新生、髄質甲状腺がん、カルチノイド、小細胞肺がん、カポジ肉腫および褐色細胞腫から成る群から選択される。一実施形態では、この疾患または状態は、メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝臓がん、胆嚢がん、消化管間質腫瘍および胆道がんから成る群から選択される。一実施形態では、この疾患または状態は、メラノーマ、神経膠腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がんおよび胆道がんから成る群から選択される。一実施形態では、この疾患または状態は、メラノーマ、直腸結腸がん、甲状腺がん、卵巣がんおよび胆道がんから成る群から選択される。
【0019】
第15の態様では、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数は、以下から成る群から選択されるA−Raf介在性、B−Raf介在性またはc−Raf−1介在性の疾患または状態の治療用の医薬の調製において使用できる:神経疾患(多発梗塞性認知症、頭部傷害、脊髄傷害、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、発作およびてんかんなどであるが、これらに限定されない);腫瘍性疾患(メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、肉腫、癌腫(たとえば消化器、肝臓、胆道(たとえば胆管、胆管細胞癌)、直腸結腸、肺、胆嚢、乳房、膵臓、甲状腺、腎臓、卵巣、副腎皮質、前立腺のもの)、リンパ腫(たとえば組織球性リンパ腫)、神経線維腫症、消化管間質腫瘍、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、白血病、腫瘍血管新生、神経内分泌腫瘍(髄質甲状腺がんなど)、カルチノイド、小細胞肺がん、カポジ肉腫および褐色細胞腫などであるが、これらに限定されない);神経障害または炎症由来の疼痛(急性疼痛、慢性疼痛、がん関連の疼痛および偏頭痛などであるが、これらに限定されない);心血管疾患(心不全、虚血性脳卒中、心肥大、血栓症(たとえば血栓性微小血管症候群)、アテローム性硬化症および再灌流傷害などであるが、これらに限定されない);炎症および/または増殖(乾癬、湿疹、関節炎ならびに自己免疫性の疾患および状態、変形性関節炎、子宮内膜症、瘢痕、血管再狭窄、線維性障害、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)などであるが、これらに限定されない);免疫不全疾患(臓器移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、およびHIVに伴うカポジ肉腫などであるが、これらに限定されない);腎嚢胞性または前立腺の疾患(糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎、腎硬化症、糸球体腎炎、前立腺肥大、多発性嚢胞肝、結節性硬化症、フォン・ヒッペル・リンダウ病、髄質嚢胞性腎疾患、ネフロン癆および嚢胞性線維症などであるが、これらに限定されない);代謝障害(肥満などであるが、これに限定されない);感染症(ヘリコバクターピロリ、肝炎ウイルスおよびインフルエンザウイルス、発熱、HIVおよび敗血症などであるが、これらに限定されない);肺疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)および急性呼吸促迫症候群(ARDS)などであるが、これらに限定されない);遺伝性の発達疾患(ヌーナン症候群、コステロ症候群、(顔面皮膚骨格症候群)、LEOPARD症候群、心臓顔面皮膚症候群(CFC)、ならびに、心血管、骨格、腸、皮膚、毛髪および内分泌性の疾患の原因となる神経堤症候群異常などであるが、これらに限定されない);ならびに、筋肉の再生または変性に伴う疾患(加齢性筋肉減少症、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型、エメリ・ドレフュス型、肢帯型、顔面肩甲上腕型、筋緊張型、眼咽頭型、末梢性および先天性の筋ジストロフィーなどであるが、これらに限定されない)、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症、小児性の進行性脊髄性筋萎縮症、中間体脊髄性筋萎縮症、若年性脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症および成人性脊髄性筋萎縮症などであるが、これらに限定されない)、炎症性ミオパチー(皮膚筋炎、多発性筋炎および封入体筋炎などであるが、これらに限定されない)、神経筋接合部疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群および先天性筋無力症候群などであるが、これらに限定されない)、内分泌異常によるミオパチー(甲状腺機能亢進性ミオパチーおよび甲状腺機能低下性ミオパチーなどであるが、これらに限定されない)、末梢神経疾患(シャルコー・マリー・トゥース病、デジェリン・ソッタス病およびフリードライヒ運動失調症などであるが、これらに限定されない)、他のミオパチー(先天性ミオトニア、先天性パラミオトニア、セントラルコア病、ネマリンミオパチー、筋細管ミオパチーおよび周期性麻痺などであるが、これらに限定されない)、ならびに代謝性の筋疾患(ホスホリラーゼ欠損症、酸性マルターゼ欠損症、ホスホフルクトキナーゼ欠損症、脱分枝酵素欠損症、ミトコンドリアミオパチー、カルニチン欠損症、カルニチンパルマチルトランスフェラーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症およびミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症などであるが、これらに限定されない)などであるが、これらに限定されない)。一実施形態では、この疾患または状態は、メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、肉腫、肝臓がん、胆道がん、直腸結腸がん、肺がん、乳がん、副腎皮質がん、膵臓がん、甲状腺がん、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がん、組織球性リンパ腫、神経線維腫症、消化管間質腫瘍、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、白血病、腫瘍血管新生、髄質甲状腺がん、カルチノイド、小細胞肺がん、カポジ肉腫および褐色細胞腫から成る群から選択される。一実施形態では、この疾患または状態は、メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝臓がん、胆嚢がん、消化管間質腫瘍および胆道がんから成る群から選択される。一実施形態では、この疾患または状態は、メラノーマ、神経膠腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がんおよび胆道がんから成る群から選択される。一実施形態では、この疾患または状態は、メラノーマ、直腸結腸がん、甲状腺がん、卵巣がんおよび胆道がんから成る群から選択される。
【0020】
化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうちいずれか1つまたは複数は、本明細書中で示すように、Rafキナーゼに及ぼす望ましい阻害活性(他のキナーゼに対する選択性を有するRafキナーゼ内の望ましい活性プロファイルを包含する)を示す。化合物は、さらに、1つまたは複数の望ましい特性(薬物動態学的特性の向上、より高い溶解性、より低いCyp阻害など)を示す。
【0021】
追加的な態様および実施形態は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書中で使用する場合、特に明示されない限り、以下の定義が適用される:
【0023】
本明細書中に記載する化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のいずれかの内にある全ての原子は、そうでないことが明確に示されない限り、その任意の同位元素を包含することを意図している。任意の所与の原子については、同位元素が、自然に発生するとおりの比率で本質的に存在してもよく、または、1つもしくは複数の特定の原子が、当業者に公知の合成法を用いて1つもしくは複数の同位元素に関し強化されていてもよいことは理解される。したがって、水素はたとえばH、H、Hを包含し、炭素はたとえば11C、12C、13C、14Cを包含し、酸素はたとえば16O、17O、18Oを包含し、窒素はたとえば13N、14N、15Nを包含し、イオウはたとえば32S、33S、34S、35S、36S、37S、38Sを包含し、フルオロはたとえば17F、18F、19Fを包含し、クロロはたとえば35Cl、36Cl、37Cl、38Cl、39Clを包含する、など。
【0024】
本明細書中で使用する場合、用語「〜を治療する」、「治療すること」、「療法」、「療法(複数)」および同様の用語は、物質、たとえば、本明細書に記載のとおりの任意の1つもしくは複数の化合物(複数可)を、疾患もしくは状態(すなわち適応症)の1つもしくは複数の症状を予防、緩和もしくは改善する、および/または、治療を受けている対象の生存期間を延長するのに有効な量で投与することを指す。
【0025】
本明細書中で使用する場合、用語「Rafタンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」は、A−Rafタンパク質キナーゼ、B−Rafタンパク質キナーゼもしくはc−Raf−1タンパク質キナーゼのいずれか、またはその任意の変異体を包含するRafタンパク質キナーゼ(別名RafキナーゼもしくはRaf)の生物学的機能が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、Rafの調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。Raf介在性の疾患または状態としては、Raf調節が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つまたは複数の化合物(複数可)を包含するRaf阻害剤(複数可)を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
【0026】
本明細書中で使用する場合、用語「A−Rafタンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」などは、A−Rafタンパク質キナーゼ(別名A−RafキナーゼもしくはA−Raf)(その任意の変異体を包含する)の生物学的機能が、疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、A−Rafの調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。A−Raf介在性の疾患もしくは状態としては、A−Raf阻害が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つもしくは複数の化合物(複数可)を含めA−Rafを阻害する化合物を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
【0027】
本明細書中で使用する場合、用語「B−Rafタンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」などは、B−Rafタンパク質キナーゼ(別名B−RafキナーゼもしくはB−Raf)(その任意の変異体を包含する)の生物学的機能が、疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、B−Rafの調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。B−Raf介在性の疾患もしくは状態としては、B−Raf阻害が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つもしくは複数の化合物(複数可)を含めB−Rafを阻害する化合物を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
【0028】
本明細書中で使用する場合、用語「B−Raf V600E変異体タンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」などは、B−Raf V600E変異体タンパク質キナーゼ(別名B−Raf V600EキナーゼもしくはB−Raf V600E)の生物学的機能が、疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、B−Raf V600Eの調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。B−Raf V600E介在性の疾患もしくは状態としては、B−Raf V600E阻害が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つもしくは複数の化合物(複数可)を含めB−Raf V600Eを阻害する化合物を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
【0029】
本明細書中で使用する場合、用語「B−Raf V600E/T529I変異体タンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」などは、B−Raf V600E/T529I変異体タンパク質キナーゼ(別名B−Raf V600E/T529IキナーゼもしくはB−Raf V600E/T529I)の生物学的機能が、疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、B−Raf V600E/T529Iの調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。B−Raf V600E/T529I介在性の疾患もしくは状態としては、B−Raf V600E/T529I阻害が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つもしくは複数の化合物(複数可)を含めB−Raf V600E/T529Iを阻害する化合物を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
【0030】
本明細書中で使用する場合、用語「c−Raf−1タンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」などは、c−Raf−1タンパク質キナーゼ(別名c−Raf−1キナーゼもしくはc−Raf−1)(その任意の変異体を包含する)の生物学的機能が、疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、c−Raf−1の調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。c−Raf−1介在性の疾患もしくは状態としては、c−Raf−1阻害が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つもしくは複数の化合物(複数可)を含めc−Raf−1を阻害する化合物を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
【0031】
本明細書中で使用する場合、用語「Raf阻害剤」は、A−Raf、B−Raf、c−Raf−1またはそれらの任意の変異体のうち少なくとも1つを阻害する化合物、すなわち、IC50が500nM未満、100nM未満、50nM未満、20nM未満、10nM未満、5nM未満または1nM未満(一般的に許容されるRafキナーゼ活性アッセイにおいて定量した場合)である化合物を指す。そのような化合物は、好ましくは(ただし必須ではない)、他のタンパク質キナーゼに関して選択的である、すなわち、別のタンパク質キナーゼと比較したとき、他方のキナーゼのIC50をRafキナーゼのIC50で割った値が10超、さらには20超、さらには30超、さらには40超、さらには50超、さらには60超、さらには70超、さらには80超、さらには90超、さらには100超である。好ましくは、この化合物は、他のタンパク質キナーゼ(CSK、インスリン受容体キナーゼ、AMPK、PDGFRまたはVEGFRなどであるが、これらに限定されない)に対して選択的である。
【0032】
本明細書中で使用する場合、用語「固形形態」は、治療目的での、意図する動物対象への投与に適した薬学的に活性のある化合物の固形調製物(すなわち、気体でも液体でもない調製物)を指す。固形形態としては、当該化合物の塩、共結晶または非晶質錯体などの任意の錯体、ならびに任意の多形が挙げられる。固形形態は、実質的に結晶性、半結晶性または実質的に非晶質であってもよい。固形形態は、直接投与してもよく、または、医薬特性が向上している適当な組成物の調製において使用してもよい。たとえば、固形形態は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または添加剤を含む製剤において使用してもよい。
【0033】
本明細書中で使用する場合、用語「実質的に結晶性の」物質は、約90%超の結晶化度を有する物質を包含し、「結晶性の」物質は、約98%超の結晶化度を有する物質を包含する。
【0034】
本明細書中で使用する場合、用語「実質的に非晶質の」物質は、約10%以下の結晶化度を有する物質を包含し、「非晶質の」物質は、約2%以下の結晶化度を有する物質を包含する。
【0035】
本明細書中で使用する場合、用語「半結晶性の」物質は、10%超の結晶化度、ただし90%以下の結晶化度である物質を包含し、好ましくは「半結晶性の」物質は、20%超の結晶化度、ただし80%以下の結晶化度である物質を包含する。本発明の一態様では、化合物の固形形態の混合物、たとえば、非晶質の固形形態と結晶性の固形形態との混合物を調製して、たとえば「半結晶性の」固形形態を得てもよい。そのような「半結晶性の」固形形態は、当技術分野で公知の方法により、たとえば、非晶質の固形形態を結晶性の固形形態と所望の比率で混合することにより調製してもよい。場合により、酸または塩基と混合した化合物が非晶質錯体を形成し;該化合物の化学量論を超える量の化合物成分と、該非晶質錯体中の酸または塩基とを用いて半結晶性の固形物を調製し、それにより、結果として、その化学量論に基づく量の非晶質錯体と、結晶性の形態の過剰な化合物とを得ることができる。この錯体の調製において使用される過剰な化合物の量を調節して、結果として得られる固形形態の混合物中での非晶質錯体対結晶性化合物の所望の比率を得ることができる。たとえば、酸または塩基の非晶質錯体と化合物とが1:1の化学量論を有する場合、化合物対酸または塩基のモル比が2:1の前記錯体を調製する結果、50%の非晶質錯体と50%の結晶性化合物との固形形態が得られることになる。そのような固形形態の混合物は、たとえば、バイオ医薬品特性の向上している非晶質成分と、結晶性成分とをもたらすことにより、薬物製品として有益と考えられる。非晶質成分は、より容易に生体利用可能であろうと考えられるが、結晶性成分は、生体利用されるのが遅いと考えられる。そのような混合物は、活性化合物に対する急速な曝露と長期にわたる曝露とを両方とももたらすことができる。
【0036】
本明細書中で使用する場合、用語「錯体」は、固形形態中で新しい化学種を形成または生成する、薬学的に活性のある化合物と付加的な分子種との組合せを指す。場合により、この錯体は塩であってもよく、すなわちその場合、付加的な分子種が化合物の酸性/塩基性の基に酸/塩基性の対イオンを供給する結果、酸:塩基の相互作用が生じ、それにより、典型的な塩が形成される。そのような塩形態は、典型的には実質的に結晶性であるが、部分的に結晶性、実質的に非晶質、または非晶質の形態であってもよい。場合により、付加的な分子種を薬学的に活性のある化合物と組み合わせると、塩ではない共結晶が形成される、すなわち、化合物と分子種とは、典型的な酸:塩基相互作用によっては相互作用しなくても、実質的に結晶性の構造を形成する。共結晶は、化合物の塩と付加的な分子種とから形成することもできる。場合により、この錯体は、実質的に非晶質錯体であり、典型的な塩結晶を形成せずに実質的に非晶質の固形物、すなわち、X線粉末回折パターンが鋭いピークを呈さない(たとえば非晶質ハローを呈する)固形物を形成する塩様の酸:塩基相互作用を有してもよい。
【0037】
本明細書中で使用する場合、用語「化学量論」は、2つ以上の成分の組合せのモル比、たとえば、非晶質錯体を形成する、酸または塩基対化合物のモル比を指す。たとえば、結果として非晶質の固形形態をもたらす酸または塩基と化合物との1:1混合物(すなわち、化合物1モル当たり1モルの酸または塩基)は、1:1の化学量論を有する。
【0038】
本明細書中で使用する場合、用語「組成物」は、少なくとも1つの薬学的に活性のある化合物(その任意の固形形態を包含する)を含有する、治療目的での、意図した対象への投与に適した医薬調製物を指す。この組成物は、当該化合物の改良型の製剤を得るために、適当な担体または添加剤など少なくとも1つの薬学的に許容される成分を含んでいてもよい。
【0039】
本明細書中で使用する場合、用語「対象」は、本明細書に記載のとおりの化合物を用いて治療される生体を指し、そのような生体としては、ヒト、他の霊長動物、競技動物、ウシなど商業的に重要な動物、ウマなどの家畜、またはイヌおよびネコなどのペットといった任意の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書中で使用する場合、用語「バイオ医薬品特性」は、本発明の化合物または錯体の薬物動態学的な作用を指し、そのような作用としては、対象への投与時の化合物の溶解、吸収および分布が挙げられる。したがって、本発明の化合物の一定の固形形態(本発明の化合物の非晶質錯体など)は、本活性化合物の溶解性および吸収性の向上をもたらすことを意図しており、そのような溶解性および吸収性の向上は、典型的には、Cmax(すなわち、薬物の投与後の血漿中の最大到達濃度)の向上およびAUC(すなわち、薬物投与後の薬物血漿濃度対時間の曲線下面積)の向上に反映される。
【0041】
用語「薬学的に許容される」は、その指示物質が、適度に常識のある医師に、治療すべき疾患または状態およびそれぞれの投与経路を考慮して患者に対し当該物質の投与を回避させる可能性がある特性をもたないことを指す。たとえば、そのような物質は本質的に滅菌済であること(たとえば注射剤用に)が通常求められる。
【0042】
本発明に関する場合、用語「治療上有効な」または「有効量」は、物質もしくは物質の量が、疾患もしくは医学的状態の1つもしくは複数の症状を予防、緩和もしくは改善するのに有効であること、および/または、治療を受けている対象の生存期間を延長するのに有効であることを指す。
【0043】
本発明に関する場合、用語「相乗的に有効な」または「相乗効果」は、治療上有効な2つ以上の化合物が、組み合わせて使用されると、単独で使用される各化合物の効果に基づいて予想されるであろう相加効果より大きい治療効果の向上が得られることを指す。
【0044】
本明細書中で使用する場合、用語「調節すること」または「〜を調節する」は、生物活性、特に、タンパク質キナーゼなど特定の生体分子に関連する生物活性を変化させる(すなわち、当該活性を増加または減少させる)効果を指す。たとえば、特定の生体分子の阻害剤は、当該生体分子(たとえば酵素)の活性を減少させることにより、当該生体分子(酵素など)の活性を調節する。そのような活性は、典型的には、たとえば酵素に関する阻害剤については、化合物の阻害濃度(IC50)で示される。
【0045】
「疼痛」または「疼痛状態」は、限定するものではないが以下を包含する急性および/または慢性の疼痛であってもよい:くも膜炎;関節炎(たとえば変形性関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、痛風);背痛(たとえば坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、脊椎すべり症、神経根障害);熱傷痛;がん疼痛;月経困難症;頭痛(たとえば偏頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛);頭部および顔面の疼痛(たとえば頭部神経痛、三叉神経痛);痛覚過敏;痛感過敏;炎症性疼痛(たとえば、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、膀胱炎に伴う疼痛、細菌性、真菌性またはウイルス性の感染症に由来する疼痛);ケロイドまたは瘢痕組織形成;分娩または出産の疼痛;筋痛(たとえば、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、反復性ストレス傷害の結果としてのもの(たとえば書痙、手根管症候群、腱炎、腱鞘炎));筋筋膜痛症候群(たとえば線維筋痛症);神経因性疼痛(たとえば糖尿病性ニューロパチー、灼熱痛、絞扼性ニューロパチー、腕神経叢裂離、後頭部神経痛、痛風、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、幻肢もしくは切断術後の疼痛、ヘルペス後神経痛、中枢性疼痛症候群、または外傷(たとえば神経傷害)の結果生じる神経痛、疾患(たとえば糖尿病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症など)またはがん治療);皮膚障害(たとえば帯状疱疹、単純ヘルペス、皮膚腫瘍、嚢胞、神経線維腫症)に伴う疼痛;スポーツ傷害(たとえば切創、捻挫、筋違い、打撲傷、脱臼、骨折、脊髄、頭部);脊柱管狭窄症;術後疼痛;接触性アロディニア;顎関節症;血管性の疾患または傷害(たとえば血管炎、冠動脈疾患、再灌流傷害(たとえば、虚血、脳卒中または心筋梗塞に次いで生じるもの));他の特定の臓器または組織の疼痛(たとえば眼痛、角膜痛、骨痛、心臓疼痛、内臓痛(たとえば腎臓、胆嚢、消化器の疼痛)、関節痛、歯痛、骨盤過敏症、骨盤痛、腎臓疝痛、尿失禁);疼痛を伴う他の疾患(たとえば鎌状赤血球性貧血、AIDS、帯状ヘルペス、乾癬、子宮内膜症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、珪肺症、肺サルコイドーシス、食道炎、胸焼け、胃食道逆流症、胃潰瘍および十二指腸潰瘍、機能性消化不良、骨吸収疾患、骨粗鬆症、脳性マラリア、細菌性髄膜炎);あるいは、移植片対宿主拒絶反応または同種移植片拒絶反応による疼痛。
【0046】
キナーゼ標的および本発明の適応症
タンパク質キナーゼは、多様な生物学的経路における生化学的シグナルの伝播において鍵となる役割を果たす。500を超えるキナーゼが記載されており、特定のキナーゼは、広範な疾患または状態(すなわち適応症)に関与しており、このような疾患または状態としては、たとえば限定するものではないが、がん、心血管疾患、炎症性疾患、神経疾患および他の疾患が挙げられる。したがって、キナーゼは、小分子治療剤の介入にとって重要な制御点を代表する。本発明により企図される特定の標的タンパク質キナーゼの記載は、以下のとおりである:
【0047】
A−Raf:標的キナーゼA−Raf(すなわち、v−rafマウス肉腫3611ウイルスがん遺伝子ホモログ1)は、染色体Xp11.4−p11.2によりコードされる67.6kDaのセリン/トレオニンキナーゼである(記号:ARAF)。成熟タンパク質は、RBD(すなわち、Ras結合ドメイン)およびホルボールエステル/DAG型の亜鉛フィンガードメインを含み、細胞膜から核への分裂促進シグナルの伝達に関与する。A−Raf阻害剤は、以下の治療において有用であると考えられる:神経疾患(多発梗塞性認知症、頭部傷害、脊髄傷害、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病など);腫瘍性疾患(メラノーマ、神経膠腫、肉腫、癌腫(たとえば直腸結腸、肺、胸部、膵臓、甲状腺、腎臓、卵巣のもの)、リンパ腫(たとえば組織球性リンパ腫)、神経線維腫症、骨髄異形成症候群、白血病、腫瘍血管新生などであるが、これらに限定されない);神経障害または炎症由来の疼痛(急性疼痛、慢性疼痛、がん関連の疼痛および偏頭痛など);ならびに、筋肉の再生または変性に伴う疾患(血管再狭窄、加齢性筋肉減少症、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型、エメリ・ドレフュス型、肢帯型、顔面肩甲上腕型、筋緊張型、眼咽頭型、末梢性および先天性の筋ジストロフィーなどであるが、これらに限定されない)、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症、小児性の進行性脊髄性筋萎縮症、中間体脊髄性筋萎縮症、若年性脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症および成人性脊髄性筋萎縮症などであるが、これらに限定されない)、炎症性ミオパチー(皮膚筋炎、多発性筋炎および封入体筋炎などであるが、これらに限定されない)、神経筋接合部疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群および先天性筋無力症候群などであるが、これらに限定されない)、内分泌異常によるミオパチー(甲状腺機能亢進性ミオパチーおよび甲状腺機能低下性ミオパチーなどであるが、これらに限定されない)、末梢神経疾患(シャルコー・マリー・トゥース病、デジェリン・ソッタス病およびフリードライヒ運動失調症などであるが、これらに限定されない)、他のミオパチー(先天性ミオトニア、先天性パラミオトニア、セントラルコア病、ネマリンミオパチー、筋細管ミオパチーおよび周期性麻痺などであるが、これらに限定されない)、ならびに代謝性の筋疾患(ホスホリラーゼ欠損症、酸性マルターゼ欠損症、ホスホフルクトキナーゼ欠損症、脱分枝酵素欠損症、ミトコンドリアミオパチー、カルニチン欠損症、カルニチンパルマチルトランスフェラーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症およびミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症などであるが、これらに限定されない)などであるが、これらに限定されない)。
【0048】
B−Raf:標的キナーゼB−Raf(すなわち、v−rafマウス肉腫ウイルス性がん遺伝子ホモログB1)は、染色体7q34によりコードされる84.4kDaのセリン/トレオニンキナーゼである(記号:BRAF)。成熟タンパク質は、RBD(すなわち、Ras結合ドメイン)、C1(すなわち、タンパク質キナーゼC保存領域1)およびSTK(すなわち、セリン/トレオニンキナーゼ)ドメインを含む。
【0049】
標的キナーゼB−Rafは、細胞膜から核への分裂促進シグナルの伝達に関与しており、海馬ニューロンのシナプス後応答において役割を果たすと考えられる。したがって、Rafファミリーの遺伝子は、Rasにより調節されるキナーゼをコードし、成長シグナルに対する細胞応答に介在する。事実、B−Rafキナーゼは、RAS−>Raf−>MEK−>ERK/MAPキナーゼシグナル伝達経路の鍵となる構成要素であり、この経路は、細胞の成長、分裂および増殖の調節において基礎的な役割を果たし、恒常的に活性化されると腫瘍形成の原因となる。Rafキナーゼのいくつかのアイソフォームの中で、B型またはB−Rafは、下流でのMAPキナーゼシグナル伝達の最も強いアクチベーターである。
【0050】
BRAF遺伝子は、さまざまなヒト腫瘍、特に、悪性メラノーマおよび結腸癌において頻繁に変異する。報告されている最も一般的な変異は、ヌクレオチド1796でのミスセンスチミン(T)からアデニン(A)への塩基転換(T1796A。B−Rafタンパク質におけるアミノ酸変化は、Val<600>からGlu<600>である)であり、悪性メラノーマ腫瘍の80%において観察された。機能分析から、この塩基転換は、B−Rafを優性の形質転換タンパク質に転換させることによる、RAS活性化とは無関係のB−Rafキナーゼ活性の恒常的活性化の原因となる唯一検出された変異であることがわかっている。前例に基づけば、ヒト腫瘍は、触媒ドメインにおける特定のアミノ酸を「ゲートキーパー」として突然変異させることにより、キナーゼ阻害剤への抵抗が生じる。(Balakら、Clin Cancer Res.、2006、12、6494〜501頁)。したがって、BRAF中のThr−529からIleへの変異は、BRAF阻害剤に対する抵抗の機序であると予想され、この突然変異は、コドン529においてACCからATCへ移行が生じたものであると想像できる。
【0051】
Niihoriらは、心臓顔面皮膚(CFC)症候群に罹患している43個体において、3個体においては2つのヘテロ接合のKRAS変異体を、16個体においては8つのBRAF変異体を同定し、このことから、RAS−RAF−ERK経路の調節異常は、3つの関連障害にとって共通の分子基盤であることが示唆されたと報告している(Niihoriら、Nat Genet.、2006、38(3)、294〜6頁)。
【0052】
c−Raf−1:標的キナーゼc−Raf−1(すなわち、v−rafマウス肉腫ウイルス性のがん遺伝子ホモログ1)は、染色体3p25によりコードされる73.0kDaのSTKである(記号:RAF1)。c−Raf−1は、アポトーシス細胞死の調節因子であるBCL2(すなわちがん遺伝子B細胞白血病2)によりミトコンドリアに標的化されうる。活性のあるc−Raf−1は、アポトーシスに対するBCL2介在性の抵抗を高め、c−Raf−1は、BAD(すなわち、BCL2結合タンパク質)をリン酸化する。c−Raf−1は、癌腫(直腸結腸癌、卵巣癌、肺癌および腎細胞癌など)に関与する。c−Raf−1は、腫瘍血管新生の重要なメディエーターとしても関与する(Hood,J.D.ら、2002、Science、296、2404頁)。c−Raf−1阻害剤は、急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群の治療に有用とも考えられる(Crump、Curr Pharm Des、2002、8(25)、2243〜8頁)。c−Raf−1アクチベーターは、髄質甲状腺がん、カルチノイド、小細胞肺がんおよび褐色細胞腫などの神経内分泌腫瘍の治療剤として有用であると考えられる(Kunnimalaiyaanら、Anticancer Drugs、2006、17(2)、139〜42頁)。
【0053】
A−Raf、B−Rafおよび/またはC−Rafの阻害剤は、以下から成る群から選択されるA−Raf介在性、B−Raf介在性またはc−Raf−1介在性の疾患または状態の治療において有用でありうる:神経疾患(多発梗塞性認知症、頭部傷害、脊髄傷害、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、発作およびてんかんなどであるが、これらに限定されない);腫瘍性疾患(メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、肉腫、癌腫(たとえば消化器、肝臓、胆道(たとえば胆管、胆管細胞癌)、直腸結腸、肺、胆嚢、胸部、膵臓、甲状腺、腎臓、卵巣、副腎皮質、前立腺のもの)、リンパ腫(たとえば組織球性リンパ腫)、神経線維腫症、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、白血病、腫瘍血管新生、消化管間質腫瘍、神経内分泌腫瘍(髄質甲状腺がんなど)、カルチノイド、小細胞肺がん、カポジ肉腫および褐色細胞腫などであるが、これらに限定されない);神経障害または炎症由来の疼痛(急性疼痛、慢性疼痛、がん関連の疼痛および偏頭痛などであるが、これらに限定されない);心血管疾患(心不全、虚血性脳卒中、心肥大、血栓症(たとえば血栓性微小血管症候群)、アテローム性硬化症および再灌流傷害などであるが、これらに限定されない);炎症および/または増殖(乾癬、湿疹、関節炎ならびに自己免疫性の疾患および状態、変形性関節炎、子宮内膜症、瘢痕化、血管再狭窄、線維性障害、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)などであるが、これらに限定されない);免疫不全疾患(臓器移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、およびHIVに伴うカポジ肉腫などであるが、これらに限定されない);腎嚢胞性または前立腺の疾患(糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎、腎硬化症、糸球体腎炎、前立腺肥大、多発性嚢胞肝、結節性硬化症、フォン・ヒッペル・リンダウ病、髄質嚢胞性腎疾患、ネフロン癆および嚢胞性線維症などであるが、これらに限定されない);代謝障害(肥満などであるが、これに限定されない);感染症(ヘリコバクターピロリ、肝炎ウイルスおよびインフルエンザウイルス、発熱、HIVおよび敗血症などであるが、これらに限定されない);肺疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)および急性呼吸促迫症候群(ARDS)などであるが、これらに限定されない);遺伝性の発達疾患(ヌーナン症候群、コステロ症候群、(顔面皮膚骨格症候群)、LEOPARD症候群、心臓顔面皮膚症候群(CFC)、ならびに、心血管、骨格、腸、皮膚、毛髪および内分泌性の疾患の原因となる神経堤症候群異常などであるが、これらに限定されない);ならびに、筋肉の再生または変性に伴う疾患(加齢性筋肉減少症、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型、エメリ・ドレフュス型、肢帯型、顔面肩甲上腕型、筋緊張型、眼咽頭型、末梢性および先天性の筋ジストロフィーなどであるが、これらに限定されない)、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症、小児性の進行性脊髄性筋萎縮症、中間体脊髄性筋萎縮症、若年性脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症および成人性脊髄性筋萎縮症などであるが、これらに限定されない)、炎症性ミオパチー(皮膚筋炎、多発性筋炎および封入体筋炎などであるが、これらに限定されない)、神経筋接合部疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群および先天性筋無力症候群などであるが、これらに限定されない)、内分泌異常によるミオパチー(甲状腺機能亢進性ミオパチーおよび甲状腺機能低下性ミオパチーなどであるが、これらに限定されない)、末梢神経疾患(シャルコー・マリー・トゥース病、デジェリン・ソッタス病およびフリードライヒ運動失調症などであるが、これらに限定されない)、他のミオパチー(先天性ミオトニア、先天性パラミオトニア、セントラルコア病、ネマリンミオパチー、筋細管ミオパチーおよび周期性麻痺などであるが、これらに限定されない)、ならびに代謝性の筋疾患(ホスホリラーゼ欠損症、酸性マルターゼ欠損症、ホスホフルクトキナーゼ欠損症、脱分枝酵素欠損症、ミトコンドリアミオパチー、カルニチン欠損症、カルニチンパルマチルトランスフェラーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症およびミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症などであるが、これらに限定されない)などであるが、これらに限定されない)。
【0054】
化合物の代替的な形態または誘導体
本明細書中で企図されるとおりの化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007を、特定の化合物を参照して説明する。加えて、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数は、いくつかの異なる形態または誘導体で存在してもよく、全て本発明の範囲内である。代替的な形態または誘導体としては、たとえば、(a)プロドラッグおよび活性代謝物(b)互変異性体(c)薬学的に許容される塩、ならびに(d)固形形態(異なる結晶形態、多形または非晶質の固形物など)(それらの水和物および溶媒和物を包含する)、ならびに他の形態が挙げられる。
【0055】
(a)プロドラッグおよび代謝物
本明細書に記載の化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007に加え、本発明は、プロドラッグ(一般的に薬学的に許容されるプロドラッグ)、活性代謝誘導体(活性代謝物)、およびそれらの薬学的に許容される塩も包含する。
【0056】
プロドラッグは、生理的条件下で代謝されると、または、加溶媒分解により変換されると所望の活性化合物をもたらす化合物または薬学的に許容されるその塩である。プロドラッグとしては、限定するものではないが、活性化合物のエステル、アミド、カルバメート、炭酸塩、ウレイド、溶媒和物または水和物が挙げられる。典型的には、プロドラッグは、不活性であるかまたは活性化合物より活性が低いが、取扱い、投与および/または代謝に関する1つまたは複数の有利な特性をもたらすことができる。プロドラッグしては、化合物の−NH基が、ピロロ[2,3−b]ピリジン環の1位、または、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数のスルホンアミド基の窒素などのアシル化を受けている変異体を挙げることができ、この変異体は、アシル基の切断により活性薬物の遊離−NH基をもたらす。プロドラッグによっては、酵素的に活性化されて活性化合物を生成するものもあり、または、化合物がさらなる化学反応を受けて活性化合物を生成することもある。プロドラッグは、プロドラッグ形態から活性形態へ単一のステップで進むこともあり、または、1つもしくは複数の中間形態(自身が活性をもつ場合もあり、または不活性な場合もある)を有することもある。
【0057】
The Practice of Medicinal Chemistry、第31〜32章(Wermuth編、Academic Press、San Diego、CA、2001)に記載されているように、プロドラッグは、概念的には2つの非排他的なカテゴリー、すなわち、生物学的前駆体プロドラッグと担体プロドラッグとに分けることができる。一般的に、生物学的前駆体プロドラッグは、不活性であるか、または対応する活性薬物化合物と比較して低い活性を有し、1つまたは複数の保護基を含有し、代謝または加溶媒分解により活性形態に転換する化合物である。活性薬物形態および任意の放出代謝物は両方とも、許容可能に低い毒性を有するべきである。典型的には、活性薬物化合物の形成には、以下の型のうち1つである代謝過程または反応が関与している:
【0058】
酸化反応:酸化反応は、限定するものではないが、アルコール、カルボニルおよび酸の官能基の酸化、脂肪族炭素のヒドロキシル化、脂環式炭素原子のヒドロキシル化、芳香族炭素原子の酸化、炭素−炭素二重結合の酸化、窒素含有官能基の酸化、ケイ素、リン、ヒ素およびイオウの酸化、酸化的なN−脱アルキル、酸化的なO−およびS−脱アルキル、酸化的な脱アミノ化、ならびに他の酸化反応などの反応により例示される。
【0059】
還元反応:還元反応は、限定するものではないが、カルボニル官能基の還元、アルコール官能基および炭素−炭素二重結合の還元、窒素含有官能基の還元などの反応ならびに他の還元反応により例示される。
【0060】
酸化状態の変化を伴わない反応:酸化状態の変化を伴わない反応は、限定するものではないが、エステルおよびエーテルの加水分解、炭素−窒素単結合の加水分解的切断、非芳香族複素環の加水分解的切断、多重結合での水和および脱水、脱水反応の結果生じる新しい原子結合、加水分解的脱ハロゲン化、ハロゲン化水素分子の除去などの反応ならびに他のそのような反応により例示される。
【0061】
担体プロドラッグは、輸送部分を含有する、たとえば、作用部位(複数可)への取込みおよび/または局所的送達を向上させる薬物化合物である。そのような担体プロドラッグにとって望ましいのは、薬物部分と輸送部分との間の連結が共有結合であり、プロドラッグは不活性であるかまたは薬物化合物より活性が低く、プロドラッグおよび任意の放出輸送部分は許容可能に非毒性であることである。輸送部分が、取込みを向上させるように意図されているプロドラッグの場合、典型的には、輸送部分の放出は急速であるべきである。他の場合、徐放をもたらす部分、たとえば、シクロデキストリンなど一定のポリマーまたは他の部分を利用することが望ましい。(たとえば、参照により本明細書中に組み込まれる、Chengら、米国特許出願公開第20040077595号、米国特許出願第10/656,838号を参照のこと。)そのような担体プロドラッグは、経口投与用の薬物にとって有利であることが多い。場合により、輸送部分は、薬物の標的化送達をもたらし、たとえば、薬物を抗体または抗体断片にコンジュゲートしてもよい。担体プロドラッグは、たとえば、以下の特性のうち1つまたは複数を向上させるために使用できる:親油性の向上、薬理効果の継続期間の長期化、部位特異性の向上、毒性および有害反応の低下、および/または薬物製剤の改善(たとえば、安定性、水溶性、望ましくない官能特性または生理化学的特性の抑制)。たとえば、親油性は、親油性のカルボン酸を用いてのヒドロキシル基のエステル化、またはアルコール(たとえば脂肪族アルコール)を用いてのカルボン酸基のエステル化により向上させることができる。Wermuth、前記文献。
【0062】
代謝物(たとえば活性代謝物)は、上述のようなプロドラッグ(たとえば生物学的前駆体プロドラッグ)と共通部分がある。したがって、そのような代謝物は、薬理学的に活性のある化合物、または、対象の体内での代謝過程の結果生じる誘導体である薬理学的に活性のある化合物にさらに代謝される化合物である。これらのうち、活性代謝物は、そのような薬理学的に活性のある誘導体化合物である。プロドラッグについては、プロドラッグ化合物は、一般的に不活性な、または、代謝産物より活性の低いものである。活性代謝物については、親化合物は活性化合物であっても不活性なプロドラッグであってもいずれでもよい。たとえば、いくつかの化合物においては、薬理学的な活性を維持しながら1つまたは複数のアルコキシ基をヒドロキシル基に代謝でき、および/または、カルボキシル基をエステル化(たとえばグルクロン酸抱合)できる。場合によっては、中間代謝物(複数可)がさらに代謝されて活性代謝物がもたらされる2つ以上の代謝物があってもよい。たとえば、場合によっては、代謝のグルクロン酸抱合の結果生じる誘導体化合物は、不活性であるかまたは活性が低くてもよく、さらに代謝されて活性代謝物がもたらされてもよい。
【0063】
化合物の代謝物は、当技術分野で公知の慣例的な手法を用いて同定し、その活性は、本明細書に記載のものなどの試験を用いて定量してもよい。たとえば、Bertoliniら、1997、J.Med.Chem.、40、2011〜2016頁;Shanら、1997、J Pharm Sci、86(7)、756〜757頁;Bagshawe、1995、Drug Dev.Res.、34、220〜230頁;Wermuth、前記文献を参照のこと。
【0064】
(b)互変異性体
化合物によっては互変異性を呈してもよいことは理解される。そのような場合、本明細書中で提供される式は、可能性のある互変異性型の1つのみを明示的に描く。したがって、本明細書中で提供される化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007は、描かれた化合物の任意の互変異性型を代表することを意図したものであり、同化合物の図により描かれた特定の互変異性型のみに限定されるべきではないことを理解されたい。
【0065】
(c)薬学的に許容される塩
そうでないことが明記されない限り、本明細書における化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007の仕様は、当該化合物の薬学的に許容される塩を包含する。したがって、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数は、薬学的に許容される塩の形態であってもよく、または、薬学的に許容される塩として製剤化できる。企図される薬学的に許容される塩形態としては、限定するものではないが、モノ、ビス、トリス、テトラキスなどが挙げられる。薬学的に許容される塩は、その塩が投与される量および濃度で非毒性である。そのような塩の調製は、化合物の物理的な特徴を改変させることにより、その生理学的な効果を発揮させないようにしなくても、薬理学的な使用を容易にできる。物性の有用な改変としては、融点を下げて経粘膜投与を容易にすること、および、溶解性を高めてより高濃度の薬物の投与を容易にすることが挙げられる。化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007は、十分に酸性の官能基および十分に塩基性の官能基を有していることから、多数の無機塩基または有機塩基ならびに無機酸および有機酸のうちいずれかと反応して薬学的に許容される塩を形成することができる。
【0066】
薬学的に許容される塩としては、以下を含有するものなどの酸付加塩が挙げられる:塩化物、臭化物、ヨウ化物、塩酸塩、酢酸塩、フェニル酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、2−フェノキシ安息香酸塩、2−アセトキシ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、安息香酸メチル、炭酸水素塩、ブチン−1,4ジオエート、ヘキシン−1,6−ジオエート、カプロン酸塩、カプリル酸塩、クロロ安息香酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、デカン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、グルカ酸塩、グルクロン酸塩、グルコース−6−ホスフェート、グルタミン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、フェニル酪酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マレイン酸メチル、マロン酸塩、マンデル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、イソニコチン酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、オルトリン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、2−ホスホグリセリン酸塩、3−ホスホグリセリン酸塩、フタル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、プロピオール酸塩、ピルビン酸塩、キナ酸塩、サリチル酸塩、4−アミノサリチル酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、スルファミン酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(すなわちベシル酸塩)、エタンスルホン酸塩(すなわちエシレート(esylate))、エタン−1,2−二硫酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(すなわちイセチオン酸塩)、メタンスルホン酸塩(すなわちメシル酸塩)、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩(すなわちナプシル酸塩)、プロパンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩(すなわちトシル酸塩)、キシレンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、酒石酸塩およびトリフルオロ酢酸塩。これらの薬学的に許容される酸付加塩は、適切な対応する酸を用いて調製できる。
【0067】
カルボン酸またはフェノールなどの酸性官能基が存在するとき、薬学的に許容される塩としては、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、t−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、メグルミン、ヒドロキシエチルピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛、アンモニウム、およびモノ−、ジ−もしくはトリ−アルキルアミン(たとえばジエチルアミン)を含有するものなど塩基付加塩、または、L−ヒスチジン、L−グリシン、L−リシンおよびL−アルギニンなどのアミノ酸に由来する塩も挙げられる。たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、Mack Publishing Co.、Easton、PA、第2巻、1457頁、1995を参照のこと。これらの薬学的に許容される塩基付加塩は、適切な対応する塩基を用いて調製できる。
【0068】
薬学的に許容される塩は、標準的な手法により調製できる。たとえば、化合物の遊離塩基形態は、適切な酸を含有する水溶液または水性アルコール溶液などの適当な溶媒に溶解してから溶液を蒸発させることにより単離できる。別の例では、塩は、有機溶媒中の遊離塩基と酸とを反応させることにより調製できる。特定の化合物が酸であれば、所望の薬学的に許容される塩は、任意の適当な方法、たとえば、遊離酸を適切な無機塩基または有機塩基で処理することにより調製してもよい。
【0069】
(d)他の化合物形態
固形物である薬剤の場合、当業者には、本化合物および塩は、異なる結晶もしくは多形の形態で存在してもよく、または、共結晶として製剤化されてもよく、または、非晶質の形態であってもよく、または、その任意の組合せ(たとえば、部分的に結晶性、部分的に非晶質、または多形の混合物)であってもよく、それらは全て、本発明の範囲および明記する式の範囲内であることを意図していることは理解される。塩は、酸/塩基付加により形成される、すなわち、所望の化合物の遊離塩基または遊離酸が、対応する付加塩基または付加酸とそれぞれ酸/塩基反応を形成し、結果としてイオン電荷相互作用が生じるが、共結晶は、中性化合物の間で形成される新しい化学種であり、結果として、同じ結晶構造の化合物および付加的な分子種が得られる。
【0070】
場合により、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を、以下を包含する酸または塩基と錯体化させる:アンモニウム、ジエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエタノールアミン、t−ブチルアミン、ピペラジン、メグルミンなどの塩基付加塩;酢酸塩、アセチルサリチル酸塩、ベシル酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルタル酸塩、塩酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩およびトシル酸塩などの酸付加塩;ならびに、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンなどのアミノ酸。化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を酸または塩基と組み合わせることにおいて、典型的な塩または共結晶などの結晶性の物質ではなく、非晶質錯体が好ましくは形成される。場合により、非晶質形態の錯体は、噴霧乾燥、ローラー圧縮などの機械化学的な方法、または、酸もしくは塩基と混合した親化合物のマイクロ波照射によるなど追加的な加工により容易になる。そのような非晶質錯体は、いくつかの利点をもたらす。たとえば、遊離塩基よりも融解温度を下げると、ホットメルト押出しなどの追加的な加工が容易になり、化合物のバイオ医薬品特性がさらに高められる。また、非晶質錯体は容易に砕けやすく、このことから、固形物をカプセルまたは錠剤形態の中に入れるための圧縮性の向上がもたらされる。
【0071】
加えて、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数は、同定された物質の水和形態または溶媒和形態、ならびに非水和形態または非溶媒和形態を包含することを意図している。たとえば、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはそれらの塩としては、水和形態および非水和形態の両方が挙げられる。溶媒和物の他の例としては、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸またはエタノールアミンなどの適当な溶媒と組み合わせたものが挙げられる。
【0072】
製剤および投与
本明細書に記載のとおりの任意の1つまたは複数の化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007またはその任意の形態は、典型的には、ヒト対象のための療法において使用されることになる。しかし、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数およびその組成物は、他の動物対象における類似または同一の適応症を治療するためにも使用でき、注射(すなわち非経口経路(静脈内、腹腔内、皮下および筋肉内など))、経口、経皮、経粘膜、直腸または吸入器など異なる経路により投与できる。そのような剤形は、化合物を標的細胞に到達させるはずである。他の因子は、当技術分野では周知であり、そのような因子としては、毒性などの考慮、化合物または組成物の効果の発揮を阻害する剤形が挙げられる。手法および製剤は、一般的には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott,Williams and Wilkins、Philadelphia、PA、2005(参照により本明細書中に組み込まれる)の中に見出すことができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、組成物は、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑剤、滑沢剤、錯化剤、可溶化剤および界面活性剤などの薬学的に許容される担体または添加剤を含むことになり、そのような担体または添加剤は、特定の経路による本化合物の投与を容易にするように選ぶことができる。担体の例としては、以下が挙げられる:炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、多様な糖(乳糖、グルコースまたはショ糖など)、数種のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、脂質、リポソーム、ナノ粒子など。担体としては、以下も挙げられる:溶媒としてまたは懸濁液用に生理学的に適合性のある液体、たとえば、滅菌済の注射用水(WFI)溶液、生理食塩溶液、デキストロース溶液、ハンクス液、リンゲル液、植物油、鉱油、動物油、ポリエチレングリコール、液体パラフィンなど。添加剤としては、たとえば以下を挙げることもできる:コロイド状二酸化ケイ素、シリカゲル、タルク、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、大結晶(macrocrystalline)セルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、サイロイド、ステアロウェットC、酸化マグネシウム、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素化植物油、水素化綿実油、ヒマ種子油、鉱油、ポリエチレングリコール(たとえばPEG4000〜8000)、ポリオキシエチレングリコール、ポロキサマー、ポビドン、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸、カゼイン、メタクリル酸ジビニルベンゼンコポリマー、ナトリウムドキュセート、シクロデキストリン(たとえば2−ヒドロキシプロピル−δ−シクロデキストリン)、ポリソルベート(たとえばポリソルベート80)、セトリミド、TPGS(d−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールの二脂肪酸エステル、またはポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(たとえば、ポリオキシエチレンソルビタンエステルTween(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、たとえば、オレイン酸、ステアリン酸またはパルミチン酸などの脂肪酸に由来するソルビタン脂肪酸エステル、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルトース、乳糖、乳糖一水和物またはスプレードライ乳糖、ショ糖、フルクトース、リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、デキストレート、デキストラン、デキストリン、デキストロース、酢酸セルロース、マルトデキストリン、シメチコン、ポリデキストローセム(polydextrosem)、キトサン、ゼラチン、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシエチルセルロースなど。
【0074】
いくつかの実施形態では、経口投与を用いてもよい。経口使用のための医薬調製物は、カプセル剤、錠剤などの従来の経口剤形、および、シロップ剤、エリキシル剤などの液体調製物、および濃縮ドロップ剤に製剤化できる。化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数を固形添加剤と組み合わせ、任意選択的に、結果として得られる混合物を粉砕し、所望により、適当な補助剤を加えた後、顆粒の混合物を加工して、たとえば、錠剤、コーティング錠、硬カプセル剤、軟カプセル剤、溶液剤(たとえば水性、アルコール性または油性の溶液剤)などを得てもよい。適当な添加剤は、とりわけ、以下を包含する充填剤である:糖(乳糖、グルコース、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールなど);セルロース調製物、たとえば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)および/またはポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン);油性の添加剤(ヒマワリ油、オリーブ油または肝油などの植物油および動物油など)。経口剤形の製剤は、崩壊剤(架橋ポリビニルピロリドン、寒天もしくはアルギン酸など、または、アルギン酸ナトリウムなどその塩)、滑沢剤(タルクもしくはステアリン酸マグネシウムなど)、可塑剤(グリセロールもしくはソルビトールなど)、甘味剤(ショ糖、フルクトース、乳糖もしくはアスパルテームなど)、天然もしくは人工の香味剤(ペパーミント、ヒメコウジ油もしくはサクランボ香味料など)、または色素もしくは顔料を含有することもでき、これらは、異なる用量または組合せの識別または特徴付けのために使用してもよい。適当なコーティングを用いた糖衣錠コアも提供される。この目的では、濃縮糖溶液剤を使用してもよく、このような濃縮糖溶液剤は、任意選択的に、たとえば、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含有してもよい。
【0075】
経口的に使用できる医薬調製物としては、以下が挙げられる:ゼラチンで作製されたプッシュフィットカプセル剤(「ゲルキャップ」)、ならびに、ゼラチンと、グリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤とで作製された封入式の軟カプセル剤。プッシュフィットカプセル剤は、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/または、タルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および、場合により安定化剤との混合物中に活性成分を含有できる。軟カプセル剤中では、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体に溶解または懸濁させてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、注射(非経口投与)、たとえば、筋肉内注射、静脈内注射、腹腔内注射および/または皮下注射を使用してもよい。化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数およびその注射用組成物は、滅菌済の液体溶液、好ましくは、生理食塩水溶液、ハンクス液、またはリンゲル液など生理学的に適合性のある緩衝液または溶液中で製剤化してもよい。分散剤は、グリセロール、プロピレングリコール、エタノール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよび植物油などの非水性溶液中で調製することもできる。溶液剤は、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの保存剤を含有することもできる。加えて、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物は、たとえば、凍結乾燥形態などの固形形態で製剤化して、使用に先立ち再溶解または懸濁させてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、経粘膜投与、局所投与または経皮投与を用いてもよい。化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数のそのような製剤中では、バリアに浸透させるのに適切な浸透剤を使用する。そのような浸透剤は、一般的に当技術分野で公知であり、たとえば、経粘膜投与用としては、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。加えて、界面活性物質を使用して、浸透を容易にしてもよい。経粘膜投与は、たとえば、鼻スプレーまたは坐剤(直腸または膣用のもの)によってもよい。局所投与用の化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数の組成物は、当技術分野で公知の適切な担体を選ぶことにより、油剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤などとして製剤化してもよい。適当な担体としては、植物油または鉱油、白色ワセリン(白色の軟パラフィン)、分枝鎖の脂肪または油、動物性脂肪および高分子量のアルコール(C12超)が挙げられる。いくつかの実施形態では、担体は、活性成分が溶解できるように選択する。乳化剤、安定化剤、湿潤剤および酸化防止剤、ならびに、所望により、色または芳香を賦与する薬剤を含ませることもできる。局所施用のためのクリーム剤は、好ましくは、鉱油、自己乳化する蜜蝋および水の混合物から製剤化され、この混合物中で、小量の溶媒(たとえば油)に溶解させた活性成分が混合される。加えて、経皮的な手段による投与は、活性成分と、任意選択的に、当技術分野で公知の1つまたは複数の担体または賦形剤とを染み込ませた包帯などの経皮パッチ剤または包帯剤を含んでもよい。経皮送達系の形態で投与するには、製剤投与は、投与計画を通じ、間欠的ではなく連続的なものとなろう。
【0078】
いくつかの実施形態では、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物は、吸入剤として投与される。化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物は、乾燥散剤または適当な溶液剤、懸濁剤またはエアゾール剤として製剤化してもよい。散剤および溶液剤は、当技術分野で公知の適当な添加物を用いて製剤化してもよい。たとえば、散剤は、乳糖またはデンプンなどの適当な粉末ベースを含んでいてもよく、溶液剤は、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、塩化ナトリウム、ならびに、酸、アルカリおよび緩衝塩など他の添加物を含んでいてもよい。そのような溶液剤または懸濁剤は、スプレー、ポンプ、アトマイザーまたはネブライザーなどを介して吸入することにより投与してもよい。化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物は、たとえば、以下の、他の吸入療法と組み合わせて使用することもできる:コルチコステロイド(フルチカゾンプロプリオネート(proprionate)、二プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ブデソニドおよびフロ酸モメタゾンなど)、βアゴニスト(アルブテロール、サルメテロールおよびホルモテロールなど)、抗コリン作用剤(臭化イプラトロプリウム(ipratroprium)またはチオトロピウムなど)、血管拡張薬(トレプロスチナル(treprostinal)およびイロプロストなど)、酵素(DNA分解酵素など)、治療用タンパク質、免疫グロブリン抗体、オリゴヌクレオチド(一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNA、siRNAなど)、抗生物質(トブラマイシンなど)、ムスカリン受容体拮抗剤、ロイコトリエン拮抗剤、サイトカイン拮抗剤、プロテアーゼ阻害剤、クロモリンナトリウム、ネドクリル(nedocril)ナトリウムおよびクロモグリク酸ナトリウム。
【0079】
化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物の投与すべき量は、以下のものなどの因子を考慮して、標準的な手順により決定できる:化合物の活性(in vitro活性、たとえば、標的に対する化合物のIC50、または動物有効性モデルにおけるin vivo活性)、動物モデルにおける薬物動態学的な結果(たとえば、生物学的な半減期または生体利用率)、対象の年齢、体長および体重、ならびに、対象が有する障害。こうしたさまざまな因子の重要性は、当業者に周知である。一般的に、用量は、治療を受けている対象の体重1kg当たり約0.01〜50mg、さらには1kg当たり約0.1〜20mgの範囲内であろう。反復投与を用いてもよい。
【0080】
化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物は、同じ疾患を治療するための他の療法と組み合わせて使用することもできる。そのような組合せ使用としては、以下が挙げられる:化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数と1つもしくは複数の他の治療剤とを異なる時間で投与すること、または、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数と1つもしくは複数の他の療法とを併用投与すること。いくつかの実施形態では、投与量は、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数、または組み合わせて使用される他の治療剤については、たとえば、当業者に周知の方法により、単独で使用される化合物または療法に比べて投与量を減らすなど、調節してもよい。
【0081】
組合せでの使用としては、他の療法、薬物、医学的処置などとの使用が挙げられ、その場合、他の療法または処置は、異なる時間(たとえば、数時間(たとえば1時間、2時間、3時間、4〜24時間)内などの短時間内で、または、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物より長い時間(たとえば1〜2日、2〜4日、4〜7日、1〜4週間)内)で、あるいは、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物と同時に、投与してもよいことは理解される。組合せでの使用としては、外科手術など1回または低頻度で行われる療法または医学的処置との使用も挙げられ、それに併せて、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物は、他の療法または処置の前後の短時間またはより長い時間内に投与される。いくつかの実施形態では、本発明は、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物と、異なる投与経路もしくは同じ投与経路により送達される1つもしくは複数の他の薬物治療剤との送達を提供する。任意の投与経路用の組合せでの使用としては、以下が挙げられる:化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物と、同じ投与経路により送達される1つもしくは複数の他の薬物治療剤とを任意の製剤(2つの化合物が、投与されたときにその治療上の活性を維持するような方式で化学的に結合している製剤など)で一緒に送達すること。一態様では、他の薬物療法は、化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のうち任意の1つもしくは複数またはその組成物と併用投与してもよい。併用投与による組合せでの使用としては、以下が挙げられる:共製剤(co-formulations)もしくは化学的に結合した化合物の製剤を投与すること、または、別々の製剤中の2つ以上の化合物を、互いに短時間内(たとえば1時間内、2時間内、3時間内、最大24時間内)に、同じもしくは異なる経路により投与すること。別々の製剤の併用投与としては、以下が挙げられる:1つの器具、たとえば、同一の吸入器具、同一の注射器などを介した送達による併用投与、または、別々の器具からの、互いに短時間内での投与。化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007のうち任意の1つまたは複数と、同一経路により送達される1つまたは複数の追加的な薬物療法との共製剤としては、以下が挙げられる:1つの器具により投与できるように複数の物質を一緒に調製すること(1つの製剤中で合わされた別々の化合物、または、別々の化合物が化学的に結合していても依然としてその生物活性を維持するように改変されている化合物など)。そのような化学的に結合している化合物は、in vivoで実質的に維持される結合を有していてもよく、または、この結合は、in vivoで切れて、2つの活性成分を分離してもよい。
【実施例】
【0082】
本発明に関する実施例を以下に記載する。ほとんどの場合、代替的な手法を使用できる。この実施例は、例証的なものであることを意図しており、本発明の範囲を限定または制限するものではない。いくつかの実施例においては、化合物について示された質量分析の結果が、2つ以上の値を有することがあるが、これは、分子中に原子の同位元素が分布していることによるものである(ブロモ置換基またはクロロ置換基を有する化合物など)。公知の化合物の合成は、固形形態の形成については、たとえば、米国特許出願第11/473,347号(PCT国際公開第2007/002433号も参照のこと)および米国特許出願第11/960,590号(米国特許出願公開第2008/0167338号)中に見出すことができ、その開示内容は、化合物を作製する方法に関し、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例1】
【0083】
プロパン−1−スルホン酸{2,4−ジフルオロ−3−[5−(2−メトキシピリミジン−5−イル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル]−フェニル}−アミド P−0001の合成。
プロパン−1−スルホン酸{2,4−ジフルオロ−3−[5−(2−メトキシピリミジン−5−イル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル]−フェニル}−アミド P−0001を、スキーム1に示すように、2,4−ジフルオロフェニルアミン 1から、6つのステップで合成した。
【0084】
【化1】

【0085】
ステップ1 3−アミノ−2,6−ジフルオロ安息香酸ベンジルエステル(3)の調製:
乾燥した氷/アセトン浴を用いて窒素雰囲気下で冷却した250mLのテトラヒドロフラン中の2,4−ジフルオロフェニルアミン(1、5.11mL、50.7mmol)に、n−ブチルリチウム(1.60M、ヘキサン中、34.0mL、54.4mmol)をゆっくり加えた。30分後、40.0mLのテトラヒドロフランに溶解させた1,2−ビス−(クロロジメチルシラニル)−エタン(11.5g、53.4mmol)をゆっくり加えた。1時間後、n−ブチルリチウム(1.60M、ヘキサン中、31.9mL、51.1mmol)をゆっくり加えた。この反応物を−78℃で30分間撹拌してから、40分かけて室温に温めた。この反応物を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(1.60M、ヘキサン中、35.1mL、56.1mmol)をゆっくり加えた。70分後、クロロギ酸ベンジル(2、7.97mL、55.8mmol)をこの反応物に加えた。この反応混合物を−78℃で一晩撹拌し、次いで、120mLの2N塩酸水溶液を加えた。この反応物を2時間かけて室温に温めた。有機層を分離した。水層を炭酸カリウムで塩基性化し、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。所望の化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン20%)により単離すると、無色の油が得られた(3、10.6g、79.7%)。MS(ESI)[M+H=264.1。
【0086】
ステップ2 2,6−ジフルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸ベンジルエステル(5)の調製:
150mLのジクロロメタン中の3−アミノ−2,6−ジフルオロ安息香酸ベンジルエステル(3、6.00g、22.8mmol)に、ピリジン(2.76mL、34.2mmol)およびプロパン−1−スルホニルクロリド(4、3.80mL、33.8mmol)を加えた。この反応物を、室温で一晩撹拌してから水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。所望の化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離すると、無色の油が得られた(5、7.0g、83.1%)。MS(ESI)[M+H=370.1。
【0087】
ステップ3 2,6−ジフルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸(6)の調製:
30mLのメタノール中の2,6−ジフルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸ベンジルエステル(5、2.0g、5.4mmol)に、炭素に担持させた20%水酸化パラジウム(100mg)を加えた。この反応物を、水素下にて1atmで15分間撹拌した。この反応物を濾過し、濾液を真空下で濃縮すると、所望の化合物が白色の固形物(6)として得られ、これを、次のステップにおいて、さらに精製せずに使用した。
【0088】
ステップ4 2,6−ジフルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−ベンゾイルクロリド(7)の調製:
2,6−ジフルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸(6、1.50g、5.4mmol)に、7.0mLのトルエンおよび塩化チオニル(15.0mL、0.21mmol)を加えた。この反応物を加熱して3時間還流してから濃縮すると、未精製の化合物(7)が得られ、これを、次のステップにおいて、さらに精製せずに使用した。
【0089】
ステップ5 プロパン−1−スルホン酸[3−(5−ブロモ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド(9)の調製:
三塩化アルミニウム(8.89g、66.7mmol)に、温度を5℃未満に維持しながら、150mLのジクロロメタンを窒素雰囲気下で加えた。これに、20mLのジクロロメタン中の5−ブロモ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(8、1.64g、8.34mmol)を加えた。この反応物を60分間撹拌し、20mLのジクロロメタン中の2,6−ジフルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−ベンゾイルクロリド(7、3.50g、11.8mmol)を加えた。この反応物を6時間撹拌してから、一晩室温に温めた。この反応混合物を水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。所望の化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール5%)により単離すると、白色の固形物が得られた(9、1.2g、31.4%)。MS(ESI)[M+H=460.0、462.0。
【0090】
ステップ6 プロパン−1−スルホン酸{2,4−ジフルオロ−3−[5−(2−メトキシピリミジン−5−イル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル]−フェニル}−アミド(P−0001)の調製:
プロパン−1−スルホン酸[3−(5−ブロモ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド(9、10mg、0.022mmol)を計量して5mLのマイクロ波用バイアルに入れ、2−メトキシピリミジン−5−ボロン酸(10、4.4mg、0.028mmol)と合わせてから、600μLのアセトニトリルおよび500μLの1M炭酸カリウムおよびへらの先(約1mg)の[1,1”−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)を加えた。この反応混合物をマイクロ波中にて160℃で5分間照射した。この溶液を100μLの酢酸で中和させ、全ての物質を4mLバイアルに移し、溶媒を真空下で除去した。この未精製物質を400μLのジメチルスルホキシド(dimetheylsulfoxide)に溶解し、水中の0.1%トリフルオロ酢酸、および、アセトニトリル、すなわち20〜100%のアセトニトリル中の0.1%トリフルオロ酢酸で16分かけて1分当り6mLで溶出させる逆相HPLCにより精製した。適切な画分を合わせて溶媒を真空下で除去すると、所望の化合物P−0001が得られた。MS(ESI)[M+H=487.9。
【実施例2】
【0091】
プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド P−0002の合成。
プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド P−0002を、スキーム2に示すように2,4−ジフルオロフェニルアミン 1から、4つのステップで合成した。
【0092】
【化2】

【0093】
ステップ1 プロパン−1−スルホン酸(2,4−ジフルオロフェニル)−アミド(11)の調製:
110mLのジクロロメタン中の2,4−ジフルオロフェニルアミン(1、11.8g、91.4mmol)に、ピリジン(8.13mL、100mmol)およびプロパン−1−スルホニルクロリド(4、11.3mL、100mmol)を加えた。この反応物を、室温で一晩撹拌してから1M塩酸水溶液中に注ぎ、水層を分離して酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を真空下で濃縮した。この未精製物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、所望の化合物が得られた(11、19.98g、92.9%)。MS(ESI)=[M−H=234.06。
【0094】
ステップ2 プロパン−1−スルホン酸(2,4−ジフルオロ−3−ホルミルフェニル)−アミド(12)の調製:
窒素雰囲気下において、−78℃のアセトン/乾燥氷浴中で冷却した10mLのテトラヒドロフラン中のプロパン−1−スルホン酸(2,4−ジフルオロフェニル)−アミド(11、1.5g、6.38mmol)に、リチウムジイソプロピルアミド(0.80M、テトラヒドロフラン中、24mL、n−ブチルリチウムおよびジイソプロピルアミンから新しく調製)を加えた。30分後、N,N−ジメチルホルムアミド(542μL、7.018mmol)をこの反応物に滴加した。この反応物を、30分間−78℃で撹拌してから、40分かけて室温に温めた。この反応物を水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を真空下で濃縮し、ヘキサン中の5%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、所望の化合物が淡黄色の固形物として得られた(12、300mg、18%)。MS(ESI)[M−H=262.3。追加の物質を、次のステップ用に同様に調製した。
【0095】
ステップ3 プロパン−1−スルホン酸{3−[(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシメチル]−2,4−ジフルオロフェニル}−アミド(14)の調製:
1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル(13、301mg、2.10mmol)、プロパン−1−スルホン酸(2,4−ジフルオロ−3−ホルミルフェニル)−アミド(12、1.11g、4.20mmol)および水酸化カリウム(354mg、6.31mmol)を、バイアル中で、4.2mLのメタノールと合わせた。この反応物を3時間室温で撹拌した。この反応溶液を0.1N塩酸水溶液で中和し、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄してから、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。これを週末かけて室温で撹拌してから、酢酸エチルおよび水で抽出した。有機層をブラインで洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を濾液から真空下で除去した。その結果得られる物質を、ヘキサン中の酢酸エチルで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、所望の化合物が得られた(14、315mg)。MS(ESI)[M−H=405.3。
【0096】
ステップ4 プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド(P−0002)の調製:
5mLのテトラヒドロフランに溶解したプロパン−1−スルホン酸{3−[(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシメチル]−2,4−ジフルオロフェニル}−アミド(14、313mg、0.770mmol)に、デス・マーチン・ペルヨージナン(327mg、0.770mmol)を固形物として加えた。この反応物を室温で1時間撹拌してから、水でクエンチした。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を真空下で濃縮し、その結果得られる残留物を、酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、所望の化合物が得られた(P−0002、179mg)。MS(ESI)[M−H=403.2。
【実施例3】
【0097】
プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2−フルオロフェニル]−アミド P−0003の合成。
プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2−フルオロフェニル]−アミド P−0003を、スキーム3に示すように、4−クロロ−2−フルオロフェニルアミン 15から、9つのステップで合成した。
【0098】
【化3】

【0099】
ステップ1 3−アミノ−6−クロロ−2−フルオロ−安息香酸ベンジルエステル(16)の調製:
窒素雰囲気下にて、乾燥した氷/アセトン浴で冷却した300mLのテトラヒドロフラン中の4−クロロ−2−フルオロフェニルアミン(15、6.30mL、57.0mmol)に、n−ブチルリチウム(2.50M、ヘキサン中、24.4mL)をゆっくり加えた。20分後、テトラヒドロフラン(40.0mL)に溶解した1,2−ビス−(クロロジメチルシラニル)−エタン(12.9g、60.0mmol)を、この反応物にゆっくり加えた。1時間後、n−ブチルリチウム(2.50M、ヘキサン中、25.0mL)を、この反応物にゆっくり加えた。この反応物を−78℃で20分間撹拌してから、60分かけて室温に温めた。この反応物を−78℃に冷却してから、n−ブチルリチウム(2.50M、ヘキサン中、26.0mL)をゆっくり加えた。80分後、クロロギ酸ベンジル(2、10.0mL、70.0mmol)をこの反応物に加えた。この反応混合物を−78℃で一晩撹拌してから、80mLの水および25mLの濃塩酸を加えた。この反応物を2時間かけて室温に温めた。有機層を分離した。水層を炭酸カリウムで塩基性化し、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。所望の化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン20%)により単離すると、無色の油が得られた(16、12.5g、78.3%)。MS(ESI)[M+H=280.0。
【0100】
ステップ2 6−クロロ−2−フルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸ベンジルエステル(17)の調製:
28mLのジクロロメタン中の3−アミノ−6−クロロ−2−フルオロ−安息香酸ベンジルエステル(16、1.20g、4.3mmol)に、ピリジン(0.52mL、6.4mmol)およびプロパン−1−スルホニルクロリド(4、0.685g、4.8mmol)を加えた。この反応物を、室温で一晩撹拌してから水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。所望の化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離すると、無色の油が得られた(17、960mg、58.0%)。MS(ESI)[M−H=384.1。
【0101】
ステップ3 6−クロロ−2−フルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸(18)の調製:
100mLのテトラヒドロフラン中の6−クロロ−2−フルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸ベンジルエステル(17、6.00g、15.6mmol)に、100mLの1.0M水酸化カリウム水溶液を加えた。この反応物を加熱して、一晩還流させてから水中に注ぎ、1N塩酸水溶液でpH2まで酸性化し、酢酸エチルで抽出した。有機部分を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮すると、所望の化合物が白色の固形物として得られた(18、3.95g、85.8%)。
【0102】
ステップ4 2−フルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸(19)の調製:
10mLのメタノール中の6−クロロ−2−フルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸(18、0.69g、2.3mmol)に、炭素に担持させた20%水酸化パラジウム(200mg)を加えた。この反応物を水素下にて50psiで2時間撹拌した。この反応物を濾過し、濾液を真空下で濃縮すると、所望の化合物(19)が白色の固形物として得られ、これを、次のステップにおいて、さらに精製せずに使用した。MS(ESI)[M−H=260.1。
【0103】
ステップ5 2−フルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸メチルエステル(20)の調製:
100mLのジクロロメタン中の2−フルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸(19、5.05g、19.3mmol)に、N,N−ジメチルホルムアミド(0.075mL、0.97mmol)を窒素雰囲気下で加えた。この反応物を氷/水で冷却してから、塩化オキサリル(2.00M、ジクロロメタン中、10.8mL、21.6mmol)をゆっくり加えた。この反応混合物を室温で3.0時間撹拌した。この反応物を氷/水で冷却してから、メタノール(36.0mL、0.89モル)をゆっくり加えた。この反応物を室温で一晩撹拌した。この反応物を真空下で濃縮し、ヘキサン中の30%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製すると、所望の化合物が未精製の白色の固形物として得られ(20、4.0g)、これを、次のステップにおいて、さらに精製せずに使用した。
【0104】
ステップ6 プロパン−1−スルホン酸(2−フルオロ−3−ヒドロキシメチルフェニル)−アミド(21)の調製:
133mLのテトラヒドロフラン中の2−フルオロ−3−(プロパン−1−スルホニルアミノ)−安息香酸メチルエステル(20、3.80g、13.8mmol)に、テトラヒドロアルミン酸リチウム(1.00M、テトラヒドロフラン中、20.0mL、20.0mmol)を窒素雰囲気下にて室温で加えた。この反応物を室温で8時間撹拌してから、10gの硫酸ナトリウム十水和物を加えた。12時間後、この反応物を濾過し、濾液を真空下で濃縮し、ジクロロメタン中の5%メタノールで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製すると、所望の化合物が白色の固形物として得られた(21、3.0g、87.9%)。
【0105】
ステップ7 プロパン−1−スルホン酸(2−フルオロ−3−ホルミルフェニル)−アミド(22)の調製:
5.0mLのテトラヒドロフラン中のプロパン−1−スルホン酸(2−フルオロ−3−ヒドロキシメチルフェニル)−アミド(21、0.20g、0.81mmol)に、デス・マーチン・ペルヨージナン(0.377g、0.89mmol)を加えた。この反応物を室温で10分間撹拌してから水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を真空下で濃縮し、ヘキサン中の20%酢酸エチルで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、所望の化合物が白色の固形物として得られた(22、100mg、50.0%)。MS(ESI)[M−H=244.1。
【0106】
ステップ8 プロパン−1−スルホン酸{3−[(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシメチル]−2−フルオロフェニル}−アミド(23)の調製:
1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル(13、132mg、0.923mmol)、プロパン−1−スルホン酸(2−フルオロ−3−ホルミルフェニル)−アミド(22、151mg、0.616mmol)および水酸化カリウム(104mg、1.85mmol)を、丸底フラスコ中で1.2mLのメタノールと合わせた。この反応物を2時間室温で撹拌した。この反応溶液を0.1N塩酸水溶液で中和し、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄してから、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。その結果得られる物質を、酢酸エチルおよびジクロロメタンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、所望の化合物が得られた(23、79mg)。MS(ESI)[M−H=387.5。
【0107】
ステップ9 プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2−フルオロフェニル]−アミド(P−0003)の調製:
1mLのテトラヒドロフランに溶解したプロパン−1−スルホン酸{3−[(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシメチル]−2−フルオロフェニル}−アミド(23、77mg、0.20mmol)に、デス・マーチン・ペルヨージナン(92.5mg、0.218mmol)を固形物として加えた。この反応物を室温で1時間撹拌してから水でクエンチした。水層を分離し、酢酸エチルで抽出し、有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を真空下で濃縮し、その結果得られる残留物を、酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製すると、所望の化合物が得られた(P−0003、67mg)。MS(ESI)[M−H=385.4。
【実施例4】
【0108】
N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−2,5−ジフルオロベンゼンスルホンアミド P−0004の合成。
N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−2,5−ジフルオロベンゼンスルホンアミド P−0004を、スキーム4に示すように、2,4−ジフルオロフェニルアミン 1から、6つのステップで合成した。
【0109】
【化4】

【0110】
ステップ1 (2,4−ジフルオロフェニル)−カルバミン酸ベンジルエステル(24)の調製:
2,4−ジフルオロフェニルアミン(1、50.00g、0.39mol)に、550mLの無水ジクロロメタンおよび無水ピリジン(61.27g、0.77mol)を加えてから、温度を30℃未満に維持しながらクロロギ酸ベンジル(2、79.28g、0.46mol)を滴加した。この反応混合物を室温で2時間撹拌し、追加の6.61g(0.04mol)のクロロギ酸ベンジルを加え、この反応物をさらに2時間撹拌してから、別の6.61gのクロロギ酸ベンジルを加えた。この反応混合物を一晩室温で撹拌してから減圧下で濃縮し、250mLの水で希釈した。2M塩酸水溶液でpHを2に調節してから、3×250mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。残留物をヘキサン中でスラリー化し、濾過し、固形物を回収して乾燥させると、所望の化合物が得られた(24、78.6g、77%)。
【0111】
ステップ2 (2,4−ジフルオロ−3−ホルミルフェニル)−カルバミン酸ベンジルエステル(25)の調製:
丸底フラスコ中に、窒素下で、ジイソプロピルアミン(17.68g、174.7mmol)および100mLの無水テトラヒドロフランを窒素下で加えた。この溶液を−78℃に冷却し、温度を−70℃未満で維持しながらn−ブチルリチウム(1.60M、ヘキサン中、109.2mL、174.7mmol)を滴加し、この反応物を−78℃で1時間撹拌した。温度を−70℃未満で維持しながら、100mLの無水テトラヒドロフラン中の(2,4−ジフルオロフェニル)−カルバミン酸ベンジルエステル(24、20.00g、76.0mmol)を滴加し、この反応物を−78℃で1時間撹拌した。温度を−70℃未満で維持しながら、無水のジメチルホルムアミド(13.88g、190.0mmol)を滴加し、この反応物を−78℃で1時間撹拌してから室温に温め、15分間撹拌した。この反応混合物を150mLの水中に注ぎ、2M塩酸水溶液でpH1に酸性化し、3×150mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。残留物をヘキサン中でスラリー化し、濾過し、固形物を回収して乾燥させると、所望の化合物が得られた(25、20.69g、93%)。
【0112】
ステップ3 {3−[(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシメチル]−2,4−ジフルオロフェニル}−カルバミン酸ベンジルエステル(26)の調製:
反応槽中に、(2,4−ジフルオロ−3−ホルミルフェニル)−カルバミン酸ベンジルエステル(25、10.00g、34.3mmol)、1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル(13、4.91g、34.3mmol)、50.00mLの無水メタノールおよび水酸化カリウム(2.77g、49.4mmol)を窒素下で加え、この反応混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を500mLの水中に注ぎ、3×500mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。その結果得られる残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製すると、所望の化合物が得られた(26、4.62g、31%)。
【0113】
ステップ4 [3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−カルバミン酸ベンジルエステル(27)の調製:
丸底フラスコ中に、{3−[(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシメチル]−2,4−ジフルオロフェニル}−カルバミン酸ベンジルエステル(26、3.79g、8.72mmol)、20.00mLの無水テトラヒドロフランおよびデス・マーチン・ペルヨージナン(4.44g、10.47mmol)を加えた。この反応混合物を室温で1時間撹拌してから、100mLの1M炭酸カリウムと100mLの1Mチオ硫酸ナトリウムとの混合物中に注ぎ、3×150mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。残留物をエーテル中でスラリー化し、濾過し、固形物を回収して乾燥させると、所望の化合物が得られた(27、2.97g、79%)。
【0114】
ステップ5 3−(3−アミノ−2,6−ジフルオロベンゾイル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル(28)の調製:
反応槽に、[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−カルバミン酸ベンジルエステル(27、1.78g、4.12mmol)、36mLの無水アセトニトリルおよびヨウ化トリメチルシリル(3.29g、16.47mmol)を窒素下で加え、この反応物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を20mLのメタノールで希釈し、溶媒を真空下で除去した。残留物を50mLの2M水酸化ナトリウムで希釈し、3×50mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて200mLの10%チオ硫酸ナトリウム、次いで200mLのブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。この未精製物質をメタノール中でスラリー化し、固形物を濾過により回収して乾燥させると、所望の化合物が得られた(28、0.74g、60%)。
【0115】
ステップ6 N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−2,5−ジフルオロベンゼンスルホンアミド(P−0004)の調製:
2.7mLのテトラヒドロフラン中の3−(3−アミノ−2,6−ジフルオロベンゾイル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル(28、100mg、0.335mmol)に、0.24mLのピリジンを加えた。2,5−ジフルオロベンゼンスルホニルクロリド(29、107mg、0.503mmol)を加え、この溶液を室温で48時間撹拌した。この反応混合物を1M塩酸水溶液中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせたものをブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。この未精製物質を、酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせ、溶媒を減圧下で除去すると、所望の化合物が得られた(P−0004、105mg)。MS(ESI)[M+H=475.0。
【実施例5】
【0116】
N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−3−フルオロベンゼンスルホンアミド P−0005の合成。
N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−3−フルオロベンゼンスルホンアミド P−0005を、スキーム5に示すように、3−(3−アミノ−2,6−ジフルオロベンゾイル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル 28から、1つのステップで合成した。
【0117】
【化5】

【0118】
ステップ1 N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−3−フルオロベンゼンスルホンアミド(P−0005)の調製:
3.5mLのテトラヒドロフラン中の3−(3−アミノ−2,6−ジフルオロベンゾイル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル(28、130mg、0.436mmol)に、0.31mLのピリジンを加えた。3−フルオロベンゼンスルホニルクロリド(30、127mg、0.654mmol)を加え、この溶液を室温で48時間撹拌した。この反応混合物を1M塩酸水溶液中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせたものをブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。この未精製物質を、酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせ、溶媒を減圧下で除去すると、所望の化合物が得られた(P−0005、167mg)。MS(ESI)[M+H=457.6。
【実施例6】
【0119】
ピロリジン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド P−0006の合成。
ピロリジン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド P−0006を、スキーム6に示すように、3−(3−アミノ−2,6−ジフルオロベンゾイル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル 28から、1つのステップで合成した。
【0120】
【化6】

【0121】
ステップ1 ピロリジン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド(P−0006)の調製:
9.5mLのテトラヒドロフラン中の3−(3−アミノ−2,6−ジフルオロベンゾイル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル(28、354mg、1.19mmol)に、0.84mLのピリジンを加えた。ピロリジン−1−スルホニルクロリド(31、403mg、2.37mmol)を加え、この溶液を60℃で48時間撹拌した。この反応混合物を1M塩酸水溶液中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせたものをブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。この未精製物質を、酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせ、溶媒を減圧下で除去すると、所望の化合物が得られた(P−0006、127mg)。MS(ESI)[M+H=432.1。
【実施例7】
【0122】
N,N−ジメチルアミノスルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド P−0007の合成。
N,N−ジメチルアミノスルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド P−0007を、スキーム7に示すように、3−(3−アミノ−2,6−ジフルオロベンゾイル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル 28から、1つのステップで合成した。
【0123】
【化7】

【0124】
ステップ1 N,N−ジメチルアミノスルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド(P−0007)の調製:
3−(3−アミノ−2,6−ジフルオロベンゾイル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル(28、50.0mg、0.168mmol)に、0.50mLのピリジンを加えてから、N,N−ジメチルアミノスルホニルクロリド(32、54μL、0.51mmol)を加え、この溶液を室温で2日間撹拌した。この反応混合物を1M塩酸水溶液で、さらに酢酸エチルで抽出した。有機層を水で、次いでブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。この未精製物質を、酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせ、溶媒を減圧下で除去すると、所望の化合物が得られた(P−0007、28mg)。MS(ESI)[M+H=405.8。
【実施例8】
【0125】
化合物P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007の塩形態。
P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007は、有機塩錯体を形成し、結果として溶解性を高めることができる弱塩基性および弱酸性の中心を両方とも供給する官能基を有すると特徴付けられる。たとえば、ピロロ[2,3−b]ピリジン部分のN−7は弱塩基性(pKa約4〜5)であるが、スルホンアミド窒素は弱酸性(pKa約7)である。弱塩基性のおよび弱酸性の中心があることから、塩または塩錯体は、酸添加または塩基添加のいずれかにより調製してもよい。
【0126】
塩基付加塩、好ましくは有機塩基付加塩(アンモニウム、ジエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエタノールアミン、t−ブチルアミン、ピペラジン、メグルミン、L−アルギニン、L−ヒスチジンおよびL−リシンなど)は、P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007を、20〜50溶媒体積のアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)または他の適当な溶媒(アセトンなど)に、穏やかに加熱(30〜35℃)しながら溶解することにより形成される。この懸濁液を撹拌し、溶媒の別々の部分で粉末化しておいた1当量の塩基を加える。清澄な溶液が形成されるまで、この混合物を不活性雰囲気下で撹拌する。この溶液を濾過し、溶媒を減圧下で濾液から除去する。その結果得られるフィルムは、真空乾燥させると、砕けやすい固形物を形成する。あるいは、冷溶媒(ヘプタン、メチルt−ブチルエーテル、酢酸エチルなど)を溶液に加えることにより塩形態を沈殿させ、その結果得られる固形物を濾過し、真空乾燥させると、砕けやすい固形物が単離される。その結果得られる固形物を、物性(DSC、XRPD、溶解性および固有溶解度など)について評価する。
【0127】
酸付加塩、好ましくは有機酸付加塩(酢酸塩、ベシル酸塩、カンシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩およびトシル酸塩など)は、P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007を、20〜50溶媒体積のアセトン(または他の適当な溶媒)に、撹拌および加熱(30〜35℃)しながら溶解し、次いで1当量の酸を加えることにより形成される。この溶液を2〜8℃にゆっくり冷却し、濾過または遠心分離のいずれかにより固形物を単離し、次いで真空乾燥させる。その結果得られる固形物を、物性(DSC、XRPD、溶解性および固有溶解度など)について評価する。
【0128】
P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007の追加的な有機酸塩または塩錯体(クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩およびアセチルサリチル酸塩または塩錯体)は、1:1または1:2の化合物:酸比率で、適当な溶媒(メタノールなど)中で形成される。P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007を15〜20溶媒体積のメタノールに加え、噴霧乾燥させるか、または、非溶媒(ヘプタンなど)を加えてから濾過および真空乾燥させるか、そのいずれかにより、所望の固形物を単離する。その結果得られる固形物を、物性(DSC、XRPD、溶解性および固有溶解度など)について評価する。
【0129】
P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007の鉱酸(硫酸塩、リン酸塩および塩酸塩など)は、メタノールまたは酢酸エチル溶液から調製する。
【0130】
その結果得られる塩または塩錯体を、噴霧乾燥法または微小沈殿バルク加工によるなど加工して好ましい非晶質の形態を得ることもでき、または、適当な添加剤物質と共に加工して、直接圧縮可能な剤形もしくはカプセル化した剤形を得てもよい。塩または塩錯体は、機械化学的な(たとえばローラー圧縮)、または、電荷移動の相手を適切に選択して親化合物にマイクロ波照射することによっても得ることができる。そのようなアプローチを使用すると、溶媒利用が最小化し、収量、純度および処理量が高まるだけでなく、従来の溶媒法を用いては達成できない構成物が得られる。
【実施例9】
【0131】
化合物特性。
生化学的アッセイにおける、Rafキナーゼならびに他のキナーゼに対するP−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007の阻害活性から、Rafキナーゼに対する選択的活性が示される。IC50は、0.1μM未満で、B−Raf V600E変異体について、全ての化合物について測定した。本化合物は、細胞ベースのアッセイにおいても有効であり、このアッセイでは、BRaf V600E変異を含有するがん細胞株の成長が阻害されたことが観察され、この変異がないがん細胞株の成長は、それほどまたはまったく阻害されなかった。BRaf V600E変異を有するColo205直腸結腸腫瘍細胞の異種移植片マウスモデルにおいては、それぞれの化合物で処置すると、10mg/kgの用量で腫瘍細胞成長が有意に阻害されることが示された。
【0132】
P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007の、任意のRafキナーゼに及ぼす阻害活性は、疾患の治療におけるその活性にとって重要であるが、本明細書に記載の化合物は、医薬としての利点ももたらす好ましい特性を示す。Rafキナーゼ、とりわけB−Raf V600Eに対し、生化学的アッセイまたは細胞ベースのアッセイいずれにおいてもキナーゼ阻害活性を示すことに加え、化合物は、好ましい溶解性、好ましい薬物動態学的特性および低いCyp阻害を示すと考えられる。この化合物を、当業者が使用できる以下のアッセイまたは類似のアッセイで評価する。
【0133】
生化学的および細胞ベースの活性のためのアッセイは、たとえば、PCT国際公開第2007/002433号に記載されているように当技術分野で公知であり、その開示内容は、そのようなアッセイに関する場合、参照により本明細書に組み込まれる。たとえば、生化学的活性のIC50値を、A−Rafキナーゼ活性、B−Rafキナーゼ活性、c−Raf−1キナーゼ活性またはB−Raf V600Eキナーゼ活性の阻害に関して決定するが、この場合、ペプチド基質のリン酸化の阻害を化合物濃度の関数として測定する。試験対象化合物をジメチルスルホキシド中で濃度0.1mMに希釈する。これらを15μL、96ウェルプレート中で30μLのジメチルスルホキシド中に合計8つの希釈点用に7回段階希釈し、各希釈点について1μLをアッセイプレートのウェルに加える。プレートは、384ウェルプレート中の各ウェルが、0.1ngのRaf酵素(すなわち、A−Raf、B−Raf、c−Raf−1またはB−Raf V600Eのいずれか、Upstate Biotechnology、または、当業者に公知の方法により調製したもの)、50mMのHEPES、pH7.0、50mMのNaCl、2mMのMgCl、1mMのMnCl、0.01%Tween−20、1mMのDTTおよび基質としての100nMのビオチン−MEK1と合わせて10μL体積中に1μLの化合物を含有するように調製する。反応は、10μLの200μMのATP(すなわち最終的な100μMのATP)を加えて開始させる。キナーゼ反応物を45分間室温でインキュベーションした後、5μL/ウェルのStop溶液を加える(25mMのHepes pH7.5、100mMのEDTA、0.01%BSAに、ドナービーズ(ストレプトアビジンでコーティングしたビーズ、Perkin Elmer)、アクセプタービーズ(プロテインAでコーティングしたもの、Perkin Elmer)、および抗リン酸化MEK1/2抗体(anti phosphor MEK1/2 antibody)(CellSignal)をそれぞれ最終濃度10μg/mLで加えたもの)。このプレートを3時間室温でインキュベートし、Envisionリーダー(Perkin Elmer)で読み取る。Mek1をリン酸化する結果、抗リン酸化MEK1/2抗体と、ドナービーズとアクセプタービーズとを会合させたものとが結合することから、シグナルはキナーゼ活性と相関する。このシグナル対化合物濃度を用いてIC50を決定する。
【0134】
化合物をさまざまな細胞ベースのアッセイで評価するが、用いる細胞は、B−Raf V600E変異体を有しまたは有さないもの、たとえば、B−Raf V600E変異体を有する細胞株(A375およびCOLO205)、ならびに、野生型B−RAF(SW620およびSK−MEL−2)を有する腫瘍形成細胞株である。試薬およびアッセイ条件は以下のとおりである:
A375細胞増殖培地:
ダルベッコ変法イーグル培地、4mMのL−グルタミン、4.5g/LのD−グルコース、10%ウシ胎仔血清。
COLO205細胞増殖培地:
RPMI1640、2mMのL−グルタミン、1.5g/Lの炭酸水素ナトリウム、4.5g/LのD−グルコース、10mMのHEPES、1.0mMのピルビン酸ナトリウム、10%ウシ胎仔血清。
SW620細胞増殖培地:
ライボヴィッツのL−15培地、2mMのL−グルタミン、10%ウシ胎仔血清。
SK−MEL−2細胞増殖培地:
最小限のイーグル基本培地、2mMのL−グルタミン、1.5g/Lの炭酸水素ナトリウム、0.1mMの非必須アミノ酸、1.0mMのピルビン酸ナトリウム、10%ウシ胎仔血清。
1日目に、細胞を96ウェルのポリスチレン組織培養プレート中で1ウェル当たり200μLの増殖培地中に、1ウェル当たり2,000細胞(A375、COLO205、SK−MEL−2)または1ウェル当たり5,000細胞(SW620の場合)で播種し、37℃、5%COの条件で一晩インキュベートする。
2日目に、ジメチルスルホキシド中4mMの化合物を、1:4で(10μLを30μLのジメチルスルホキシドで)合計8つの濃度点用に7回段階希釈する。各希釈点について、細胞を含有するウェルに1μLアリコートを加え(最高希釈点は20μM)、1μLのジメチルスルホキシドを陰性対照とする(各試料は0.5%ジメチルスルホキシドで)。細胞を3日間、37℃にて5%CO中でインキュベートする。
5日目に、Cell Titer Glo(Promega)を解凍し、100μLを各ウェルに加え、プレートを1〜2分間振盪させる。プレートを10分間室温でインキュベートしてから、蛍光シグナルを読み取る(たとえばSafireリーダーで)。測定された蛍光は細胞数と直接相関することから、化合物濃度の関数としてのこの測定値を用いてIC50値を決定する。
【0135】
以下の表は、B−RafおよびB−Raf V600Eの生化学的な阻害活性、ならびに、A375、COLO205、SW620およびSK−MEL−2の細胞増殖阻害活性を示すデータを、P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006およびP−0007について記載するものである:
【0136】
【表1】

【0137】
以下の表は、生化学的な阻害活性を示すデータを、他のタンパク質キナーゼに関して、P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006およびP−0007について記載するものである:
【0138】
【表2】

【0139】
化合物は、Colo205について異種移植片マウスモデルにおけるin vivo活性も示す。メスのnu/nuマウスに、ドナーマウス由来のColo−205トロカール断片を、腋窩の皮下の高い位置に埋め込む。腫瘍成長をおよそ100mgの大きさになるまでモニターし、群内の平均腫瘍量が全体の平均腫瘍量の10%内であるように、マウスを処置群に割り当てる。マウスを、5%DMSOおよび95%CMC(1%)中のビヒクル対照、陽性対照または化合物で処置し(1群当たりマウス8匹)、化合物は1日10mg/kgで14日間投与する。マウスを毎日観察し、腫瘍量および体重を週に2回測定する。腫瘍量が1500〜2000mgを超える動物および瀕死の状態の動物は、安楽死させる。ビヒクル対照群マウスの平均腫瘍成長量を、試験化合物マウスの平均腫瘍成長量と比較する。腫瘍成長阻害率(%)を、100×[(腫瘍成長量(対照)−腫瘍成長量(試験化合物))/腫瘍成長量(対照)]として計算する。
【0140】
以下の表は、Colo205異種移植片マウスモデルにおけるP−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006およびP−0007についての腫瘍成長阻害率(%)を示すデータを記載するものである:
【0141】
【表3】

【0142】
相対的な溶解性の指標として、水溶液中の化合物の濁度を評価する。異なる生理学的コンパートメント(胃、腸および血液など)における可能性のある化合物特性を評価するために、pHの異なる一連の水性緩衝液を使用する。したがって、各化合物を、生理学的に関連のある4つの異なる緩衝液中に希釈し、溶液濁度を分光光度法により測定する。十分な不溶性の懸濁液を形成して3つの波長(490nm、535nmおよび650nm)での平均光学密度を0.01超に上げることにより濁度を示す化合物の濃度を用いて、当該緩衝液への化合物溶解性の限度を規定する。
【0143】
化合物を25mMの濃度でジメチルスルホキシドに溶解してから、1:1で96ウェルプレート中に段階希釈(純粋なジメチルスルホキシド中で10倍希釈)し、各列の最後のウェルはジメチルスルホキシドブランクにする。アッセイプレート中で、99μLの適切な緩衝液を各ウェルに加え、1μLの各試料希釈液を緩衝液に加えると、異なるpHを有する水溶液中の広範な最終的な総濃度が得られる。使用する緩衝液は、人工胃液(SGF−pH1.5)0.5MのNaCl、pH1.5;人工腸液(SIF−pH4.5およびpH6.8)0.05MのNaHPO、pH4.5および6.8;ならびにHepes緩衝液(HEPES−pH7.4)10mMのHEPES、150mMのNaCl、pH7.4である。対照化合物のピレン、エストリオールおよびプロプラノロールHClも評価する。プレートを回転させてから1分間混合し、Tecan Safire IIを用いて吸光度を読み取って、1ウェル当たり4つの位置で可視域の波長(490nm、535nmおよび650nm)を読むが、この値が、その時点の濁度を反映している。各ウェル中での各波長についての平均光学的密度を、化合物濃度に対してグラフ化し、曲線が各波長について0.01の閾値O.D.を交差する濃度を、エンドポイント濁度アッセイの結果として報告する。3つの波長の平均を用いて、化合物の濁度を比較する。化合物は、閾値濃度が31.3μM未満であれば低い溶解性を、閾値濃度が31.3μM〜250μMであれば中程度の溶解性を、閾値濃度が250μM超であれば高い溶解性を有するとみなされる。
【0144】
以下の表は、各pHでの濁度閾値濃度を基準にした相対的な溶解性(L=低、M=中、H=高)を、P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006およびP−0007について示すデータを記載するものである:
【0145】
【表4】

【0146】
CYP(チトクロムP450)酵素は、肝臓に存在する主要な薬物代謝酵素である。CYP1A2、CYP2C19、CYP2C9、CYP2D6、CYP3A4(BFC)およびCYP3A4(BQ)のそれぞれについてのCYP酵素活性の阻害(IC50)を化合物について決定するが、このとき、公知の基質の代謝が阻害されると、代謝産物の蛍光が減少する。同産物の蛍光を化合物濃度の関数としてモニターする。
【0147】
化合物をジメチルスルホキシドに溶解して濃度100mMにする。これらを1μL、82μLのアセトニトリル中に希釈する。次に、この溶液の11μLアリコートを、204μLの補因子ミックス(1.3%NADPH再生系溶液A(NADPH Regeneration system Solution A)、1.04%NADPH再生系溶液B(NADPH Regeneration system Solution B)(BD Biosciences製)、5%アセトニトリルおよび0.05%ジメチルスルホキシド)に加える。次に、これらを、合計10点用に1:1で(160μLを160μLの補因子ミックスに)段階希釈する。この最終混合物の10μLアリコートを384ウェルのアッセイプレート中に分注し、10分間37℃でインキュベートする。酵素と基質とのミックス(10μL;0.5pmolのCYP1A2/5μMのCEC;1.0pmolのCYP2C9/75μMのMFC;0.5pmolのCYP2C19/25μMのCEC;1.5pmolのCYP2D6/1.5μMのAMMC;1.0pmolのCYP3A4/50μMのBFC;または1.0pmolのCYP3A4/40μMのBQ)をこれらのアッセイプレートに加える。アッセイプレートを37℃でインキュベートし(CYP1A2は15分;CYP2C9は45分;CYP2C19、2D6および3A4は30分)、Tecan Safire 2プレートリーダーで読み取る(CYP1A2、2C19および3A4は409ex/460em;CYP2C9および2D6は409ex/530em)。シグナル対化合物濃度を用いてIC50を決定する。このアッセイのための酵素および基質は、BD Biosciencesから入手する。他の因子はin vivoでのCYP効果の定量に関与するが、化合物は、好ましくはIC50値が5μM超、より好ましくはIC50値が10μM超である。
【0148】
以下の表は、Cyp阻害活性をP−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006およびP−0007について示すデータを記載するものである:
【0149】
【表5】

【0150】
化合物(その任意の固形形態または製剤を包含する)の薬物動態学的特性を、オスのSprague Dawleyラットまたはオスのビーグル犬において評価する。ラットには、外科的に埋め込んだ頸静脈カテーテルを介したIV注射または経口強制投与(PO)のいずれかにより化合物を毎日投与する。各化合物は、ジメチルスルホキシド中の20mg/mLストック溶液として調製し、これをさらに希釈すると、IVまたはPO製剤用の所望の濃度の投与ストックが得られる。IV投与については、投与ストックをSolutol(登録商標):エタノール:水の1:1:8混合物中に希釈する。PO投与については、投与ストックを1%メチルセルロース中に希釈する。カセット形式(すなわち、各化合物、その固形形態またはその製剤を個々に投与する)では、化合物をIV投与について各0.5mg/mL、PO投与について各0.4mg/mLに希釈し、それぞれ1mg/kg(2mL/kg)または2mg/kg(5mL/kg)で投与する。IV投与動物については、尾静脈血液試料を、毎日の投与後5分、15分、30分および60分ならびに4時間、8時間および24時間の時点で、リチウムヘパリン抗凝血剤を用いて採取する。PO投与動物については、尾静脈血試料を、毎日の投与後30分、1時間、2時間、4時間、8時間および24時間の時点でリチウムヘパリン抗凝血剤を用いて採取する。イヌには、適当な製剤の経口用カプセル剤により50mg/mLで毎日投与する。頭部の静脈血試料を、毎日の投与後30分、1時間、2時間、4時間、8時間および24時間の時点で、リチウムヘパリン抗凝血剤を用いて採取する。全ての試料は血漿に加工し、追って行うLC/MS/MSによる各化合物の分析用に凍結する。時間の関数としての血漿レベルをプロットして、AUC(ng時間/mL)を評価する。本発明による化合物は、好ましくは、先に記載した化合物と比較して向上した薬物動態学的特性を示す、すなわち、先に記載した化合物と比較して、AUC、Cmaxおよび半減期のうち1つまたは複数について実質的により高い値を有する。
【実施例10】
【0151】
4つのヒトがん細胞株における、標準治療の化学療法剤と組み合わせた化合物の有効性。
P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007またはその塩を、5−フルオロウラシル、カルボプラチン、ダカルバジン、ゲフィチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、SN−38、テモゾロミドまたはビンブラスチンなどの標準的な化学療法剤と組み合わせて、ヒト腫瘍細胞を殺すことにおけるその有効性を評価できる。A−375(悪性メラノーマ)、SK−MEL−2(悪性メラノーマ、皮膚転移)、COLO205(直腸結腸腺癌、腹水転移)もしくはSW−620(直腸結腸腺癌、リンパ節転移)などのヒト腫瘍細胞株は、P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007を単独で、または、前述の化学療法剤のうち1つと組み合わせて用いて、治療できる。
【0152】
腫瘍細胞は、37℃で加湿雰囲気(5%CO、95%大気)にて単層として増殖する。細胞は、適当な培養培地、たとえば、2mMのL−グルタミンを含有し10%ウシ胎仔血清(Ref DE14−801E、Cambrex)を添加したRPMI1640(Ref BE12−702F、Cambrex、Verviers、ベルギー)中で増殖する。実験的使用のために、腫瘍細胞は、トリプシン−ヴェルセン(Ref 02−007E、Cambrex)を、カルシウムまたはマグネシウムを含まないハンクス培地(Ref BE10−543F、Cambrex)中で希釈したもので5分処理することにより、培養フラスコから剥離する。トリプシン処理を培養培地添加により中和させる。細胞を血球計算盤で計数し、その生存率を0.25%トリパンブルー色素排除法により評価する。細胞株は、マイコプラズマ汚染について、Mycotectアッセイキット(Ref 15672−017、Invitrogen、Cergy−Pontoise、フランス)をメーカーの取扱説明書に従って用いて、調べる。マイコプラズマ試験は、細胞株の培養上清からアッセイし、陰性対照および陽性対照と比較する。
【0153】
腫瘍細胞(1ウェル当たり10,000)を、96ウェルの平底のマイクロタイタープレート(Ref 055260、Nunc、Dutscher、Brumath、フランス)中に蒔き、37℃で24時間インキュベートしてから、10%FBSを添加した、100μlの薬物不含の培養培地中で処理する。使用することになる各化合物のIC50を各細胞株について評価するために、10%FBSを添加し、P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006もしくはP−0007のいずれか、または、5−フルオロウラシル、カルボプラチン、ダカルバジン、ゲフィチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、SN−38、テモゾロミドもしくはビンブラスチンのうち1つを含有する200μlの最終体積のRPMI1640中で腫瘍細胞をインキュベートする。本化合物を、P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007、5−フルオロウラシル、ダカルバジンまたはゲフィチニブについては10−8〜10−3M、カルボプラチン、オキサリプラチンまたはテモゾロミドについては10−9〜10−4M、パクリタキセルまたはSN−38については10−11〜10−6M、ビンブラスチンについては10−15〜10−10Mなど、適当な濃度範囲で試験する。P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007をDMSOに溶解し、培養培地で所望の濃度に希釈する。5−フルオロウラシル(50mg/ml、Dakota Pharm、LePlessis Robinson、フランス)、カルボプラチン(10mg/ml、Aguettant、Lyon、フランス)およびパクリタキセル(6mg/ml、Bristol−Myers Squibb SpA、Rueil Malmaison、フランス)を、培養培地で所望の濃度に希釈する。ダカルバジン(Sigma、Saint Quentin Fallavier、フランス)およびビンブラスチン(Lilly France S.A.、Saint Cloud、フランス)をNaCl0.9%に溶解し、培養培地で所望の濃度に希釈する。ゲフィチニブをRPMI1640とDMSOとの混合溶液に溶解し、培養培地で所望の濃度に希釈する(最終DMSOは最高で0.1%v/v)。SN−38(LKT Laboratories,Inc.、St.Paul、Minnesota)をDMSOに溶解し、培養培地で所望の濃度に希釈する(最終DMSOは最高で0.1%v/v)。テモゾロミド(LKT Laboratories,Inc.、St.Paul、Minnesota)を注射用水に溶解し、培養培地で所望の濃度に希釈する。細胞を、試験物質の存在下で、37℃、5%CO下の条件で96時間インキュベートする。処理の終了時点で、細胞傷害活性をMTTアッセイにより評価する。
【0154】
MTTアッセイについては、細胞処理の終了時点で、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、Ref BE17−517Q、Cambrex)中の0.22μm濾過済テトラゾリウム試薬(MTT、Ref M2128、Sigma)の5mg/ml溶液20μlを、各ウェル中で加える。培養プレートを2時間37℃でインキュベートする。その結果得られる上清を除去し、ホルマザン結晶を1ウェル当たり200μlのDMSOで溶解する。吸光度(OD)は、VICTOR(商標)1420多標識型カウンター(Wallac、PerkinElmer、Courtaboeuf、フランス)を用いて、各ウェルにおいて570nmで測定する。
【0155】
各化合物のIC50を、各細胞株について、各試料のOD測定値から決定する。細胞増殖の用量応答阻害率は以下のように表す:
IC=(薬物に曝露させた細胞のOD/薬物不含のウェルのOD)×100。
各濃度についての複数の測定値の平均を薬物濃度に対してプロットする。用量応答曲線は、XLFit3(IDBS、英国)を用いてプロットする。IC50(細胞増殖の50%阻害が得られる薬物濃度)決定値は、片対数曲線からXLFit3を用いて計算する。各細胞株において各化合物について決定したIC50値を用いて、P−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007の、また、組み合わせて使用することになる標準的な化学療法剤の濃度を決定する。
【0156】
IC50の結果に基づき、細胞を、5つの濃度のP−0001、P−0002、P−0003、P−0004、P−0005、P−0006またはP−0007と、5つの濃度の、5−フルオロウラシル、カルボプラチン、ダカルバジン、ゲフィチニブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、SN−38、テモゾロミドまたはビンブラスチンのうち1つとの組合せで処理する。化合物および細胞を、前述のIC50決定値毎に処理し、MTTアッセイによりアッセイする。
【0157】
この結果を評価して、その組合せが相乗的であるかまたは拮抗的であるかを決定する。化合物の相互作用を、複数の薬物効果分析により計算し、Chou and Talalayにより記載された方法論(Adv.Enzyme Regul.、1984、22、27〜55頁)による中央値方程式の原理(median equation principle)により実施する。
【0158】
組合せ指標(CI)は、Chouらの方程式(Adv.Enzyme Regul.1984、22、27〜55頁;Encyclopaedia of human biology、Academic Press、1991、2、371〜9頁;Synergism and Antagonism in Chemotherapy、Academic Press、1991、61〜102頁)により計算されることになり、この方程式では、効力(DまたはIC50)、および、用量効果曲線の形状(m値)を両方とも考慮に入れる。2つの化合物のCIについての一般的な方程式を以下により示す:
【0159】
【数1】

式中、
分母の(Dおよび(Dは、x%の阻害を示す化合物1および化合物2単独についての用量(または濃度)であり、分子の(D)および(D)は、同じくx%を阻害する両方の化合物(1および2)を組み合わせた用量である(等効果)。CI<1、=1、および>1は、それぞれ、相乗作用、相加効果および拮抗作用を示す。
【0160】
(Dおよび(Dは、Chouら(J.Natl.Cancer Inst.、1994、86、1517〜24頁)の中央値−効果方程式から計算できる:
【0161】
【数2】

式中、
は、中央値−効果プロットのx切片の対数から得られる中央値−効果用量であり、x=log(D)対y=log{f/(1−f)}、またはD=10−(y切片)/m;mは、中央値−効果プロットの勾配であり、fは、処理により影響された細胞の画分である。
各CIは、CalcuSynソフトウェア(Biosoft、UK)を用いて、各薬物の濃度比率での、影響された画分の平均から計算されよう。
【0162】
本明細書中に引用する全ての特許および他の参考文献は、本発明が属する分野の当業者の技能レベルを示すものであり、各文献は、その全体が参照により個別に組み込まれた場合と同程度に、一切の表および図を含め、参照によりその全体が組み込まれる。
【0163】
当業者であれば、本発明をうまく適応させると、言及した目的および利点ならびにそれらに内在される目的および利点を得られることは容易に理解するであろう。好ましい実施形態を現時点で代表するものとして本明細書に記載した方法、変形および組成物は、例示的なものであり、本発明の範囲について限定するものとして意図してはいない。それらの変化形および他の使用が当業者には想起されるであろうが、そのような変化形および使用は、本発明の精神の範囲内に包含され、特許請求の範囲により定義される。
【0164】
当業者には、本明細書中で開示する本発明に対し、本発明の範囲および精神から逸脱せずに多様な代替物および改変形を作製できることは容易に明らかとなろう。したがって、そのような追加的な実施形態は、本発明の範囲および以下の特許請求の範囲内である。
【0165】
本明細書に例証的に記載した本発明は、適切には、本明細書中で具体的に開示されない任意の要素または複数の要素、制限または複数の制限なく実行できる。したがって、たとえば、本明細書におけるそれぞれの場合において、用語「〜を含む」、「〜から本質的に成る」および「〜から成る」のいずれも、他の2つの用語のうちいずれでも置き換えることができる。したがって、これらの用語のうち1つを用いた本発明の一実施形態については、本発明は、これらの用語のうち1つがこれらの用語のうち別のものと置き換えられている別の実施形態も包含する。各実施形態においては、これらの用語は、その定着した意味を有する。したがって、たとえば、一実施形態は、一連のステップ「を含む」方法を包含してもよく、別の実施形態は、同じステップ「から本質的に成る」方法を包含することになると考えられ、第3の実施形態は、同じステップ「から成る」方法を包含することになると考えられる。用いられている用語および表現は、制限ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用においては、示しおよび記載した特徴の一切の等価物またはその一部を排除する意図はなく、多様な改変形は、特許請求する本発明の範囲内で可能であることは認識される。したがって、本発明を、好ましい実施形態および任意選択的な特徴により具体的に開示してきたが、本明細書中で開示した概念の改変形および変形が当業者により用いられる可能性があること、また、そのような改変形および変形は、添付の特許請求の範囲により定義するように本発明の範囲内であるとみなされることは理解されるべきである。
【0166】
加えて、本発明の特徴または態様が、マーカッシュ群または他の分類の代用物に関して記載される場合、当業者は、本発明が、それにより、マーカッシュ群または他の群の任意の個々の構成要素または複数の構成要素の下位群に関しても記載されることを認識するであろう。
【0167】
また、そうでないことが示されない限り、実施形態について多様な数値が示される場合、追加的な実施形態は、任意の2つの異なる値を範囲の両端の値とすることにより説明される。そのような範囲も、記載された本発明の範囲内である。
【0168】
したがって、追加的な実施形態は、本発明の範囲内、および、以下の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロパン−1−スルホン酸{2,4−ジフルオロ−3−[5−(2−メトキシピリミジン−5−イル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル]−フェニル}−アミド、プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド、プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2−フルオロフェニル]−アミド、N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−2,5−ジフルオロベンゼンスルホンアミド、N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−3−フルオロベンゼンスルホンアミド、ピロリジン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミド、N,N−ジメチルアミノスルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミドから成る群から選択される化合物および薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
プロパン−1−スルホン酸{2,4−ジフルオロ−3−[5−(2−メトキシピリミジン−5−イル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル]−フェニル}−アミドである請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミドである請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
プロパン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2−フルオロフェニル]−アミドである請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−2,5−ジフルオロベンゼンスルホンアミドである請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
N−[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−3−フルオロベンゼンスルホンアミドである請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
ピロリジン−1−スルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミドである請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項8】
N,N−ジメチルアミノスルホン酸[3−(5−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−アミドである請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物またはその塩と、1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤とを含む組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物もしくはその塩または請求項9に記載の組成物を含むキット。
【請求項11】
医薬として使用するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
【請求項12】
B−Raf V600Eタンパク質キナーゼ活性の調節が治療利益をもたらす疾患または状態を治療するための医薬の調製における、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物もしくはその塩または請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項13】
メラノーマ、神経膠腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がんおよび胆道がんから成る群から選択される疾患または状態を治療するための医薬の調製における、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物もしくはその塩または請求項9に記載の組成物の使用。
【請求項14】
B−Raf V600Eキナーゼ介在性の疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象を治療する方法であって、治療上有効量の請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物もしくはその塩または請求項9に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項15】
メラノーマ、神経膠腫、直腸結腸がん、甲状腺がん、肺がん、卵巣がん、前立腺がんおよび胆道がんから成る群から選択される疾患に罹患しているかまたはそのリスクのある対象を治療する方法であって、治療上有効量の請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物もしくはその塩または請求項9に記載の組成物を投与することを含む方法。

【公表番号】特表2012−520307(P2012−520307A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554147(P2011−554147)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/026816
【国際公開番号】WO2010/104945
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(505324881)プレキシコン インコーポレーテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】PLEXXIKON INC.
【Fターム(参考)】