説明

RNA依存性RNAウイルスの感染を処置するためのヌクレオシドアリールホスホルアミダート

本発明は、RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼの阻害剤に対する前駆体であるヌクレオシドアリールホスホルアミダートを提供する。本発明の化合物は、RNA依存性RNAウイルスの複製の阻害剤に対する前駆体であり、RNA依存性RNAウイルスの感染を処置するために有用である。本発明の化合物は、C型肝炎ウイルス(HCV)のNS5Bポリメラーゼの阻害剤に対する前駆体として、HCVの複製の阻害剤に対する前駆体として、および/または、C型肝炎を処置するために特に有用である。本発明はまた、このようなヌクレオシドアリールホスホルアミダートを単独で含有するか、または、RNA依存性RNAウイルスの感染(具体的には、HCV感染)に対して活性である他の薬剤との組合せで含有する医薬組成物を記載する。また、本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートを用いて、RNA依存性RNAポリメラーゼを阻害し、RNA依存性RNAウイルスの複製を阻害し、および/または、RNA依存性RNAウイルスの感染を処置する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオシドアリールホスホルアミダート、この合成、および、RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼの阻害剤に対する前駆体としてのこの使用に関する。本発明の化合物は、RNA依存性RNAウイルスの複製の阻害剤に対する前駆体であり、従って、RNA依存性RNAウイルスの感染を処置するために有用である。本発明の化合物は、C型肝炎ウイルス(HCV)のNS5Bポリメラーゼの阻害剤に対する前駆体として、また、HCVの複製の阻害剤に対する前駆体として、また、C型肝炎の感染を処置するために特に有用である。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)の感染は、世界人口の2%から15%であると推定されるが、相当数の感染者において慢性的な肝臓疾患(例えば、肝硬変および肝細胞ガンなど)を引き起こす大きな健康上の問題である。米国疾病対策センターによれば、合衆国だけで450万人の感染者が推定される。世界保険機構によれば、2億人を越える感染者が世界中には存在し、少なくとも300万人から400万人が毎年感染している。ひとたび感染すると、約20%の人々はウイルスを消失させるが、残りの人々はこの後の彼らの生涯にわたってHCVを保有する。10パーセントから20パーセントの慢性的感染者は最終的には、肝臓を破壊する肝硬変またはガンを発症する。このウイルス疾患は、汚染された血液および血液製剤、汚染された注射針によって非経口的に伝染するか、または、感染した母親または保因者の母親からこの子孫に性的および垂直的に伝染する。HCV感染に対する現在の処置は、組換えインターフェロン−αを単独で用いるか、または、ヌクレオシドアナログのリバビリンとの組合せで用いる免疫療法に限られるので、臨床的利益が限定されている。さらに、HCVのためのワクチンは1つも確立されていない。従って、慢性的なHCV感染と効果的に闘う改善された治療剤が緊急に求められている。HCV感染の処置における最新技術が総説されており、下記の刊行物が参照される:B.Dymockら、「C型肝炎ウイルス感染の処置に対する新規な方法」、Antiviral Chemistry&Chemotherapy、11:79−96(2000);H.Rosenら、「C型肝炎ウイルス:現在の理解および将来の治療法についての見通し」、Molecular Medicine Today、5:393−399(1999);D.Moradpourら、「C型肝炎についての現在の治療法および進化する治療法」、European J.Gastroenterol.Hepatol.、11:1189−1202(1999);R.Bartenschlager、「C型肝炎ウイルス特異的な抗ウイルス治療のための候補となる標的」、Intervirology、40:378−393(1997);G.M.LauerおよびB.D.Walker、「C型肝炎ウイルス感染」、N.Engl.J.Med.、345:41−52(2001);B.W.Dymockら、「C型肝炎ウイルス感染のための新しい治療法」、Emerging Drugs、6:13−42(2001);C.Crabbら、「苦労して得た進歩はC型肝炎についての興奮を呼び起こす」、Science:506−507(2001);これらすべての内容はこの全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0003】
HCV治療に対する種々の取り組みが取られており、これらには、ウイルスのセリンプロテイナーゼ(NS3プロテアーゼ)、ヘリカーゼおよびRNA依存性RNAポリメラーゼ(NS5B)の阻害剤、ならびに、ワクチンの開発が含まれる。
【0004】
HCVビリオンは、約3,010アミノ酸のポリタンパク質をコードする約9600塩基の1つだけのオリゴリボヌクレオチドゲノム配列を有する、エンベロープで包まれたプラス鎖RNAウイルスである。HCV遺伝子のタンパク質産物は構造タンパク質(C、E1およびE2)および非構造タンパク質(NS2、NS3、NS4AおよびNS4B、ならびに、NS5AおよびNS5B)からなる。非構造(NS)タンパク質は、ウイルス複製のための触媒装置を提供すると考えられている。NS3プロテアーゼはNS5B(RNA依存性RNAポリメラーゼ)をポリタンパク質鎖から放出させる。HCVのNS5Bポリメラーゼは、HCVの複製サイクルにおけるテンプレートとして役立つ一本鎖ウイルスRNAからの二本鎖RNAの合成のために要求される。従って、NS5Bポリメラーゼは、HCV複製複合体における必須成分であると見なされている[K.Ishiら、「C型肝炎ウイルスのNS5Bタンパク質の発現:このRNAポリメラーゼ活性およびRNA結合の特徴づけ」、Hepatology、29:1227−1235(1999);V.Lohmannら、「C型肝炎ウイルスのNS5B RNA依存性RNAポリメラーゼの生化学的分析および速度論的分析」、Virology、249:108−118(1998)を参照のこと]。HCVのNS5Bポリメラーゼの阻害は二重鎖のHCV RNAの形成を妨げ、従って、HCV特異的な抗ウイルス治療法の開発に対する注目される取り組みとなっている。
【0005】
HCV感染の処置についての可能性を有する、HCVのNS5Bポリメラーゼの阻害剤の開発が、M.P.Walkerら、「慢性C型肝炎の処置のための有望な候補」、Expert Opin.Invest.Drugs、12:1269−1280(2003)に、また、P.Hoffmannら、「C型肝炎ウイルス感染についての実験的治療に関する最近の特許(1999−2002)」、Expert Opin.Ther.Patents、13:1707−1723(2003)に総説されている。HCVポリメラーゼに対するプリンリボヌクレオシドの活性が、A.E.Eldrupら、「HCVのRNA依存性RNAポリメラーゼの阻害についてのプリンリボヌクレオシドの構造−活性関係」、J.Med.Chem.、47:2283−2295(2004)によって報告された。HCVポリメラーゼの阻害剤としての構造的に多様なヌクレオシド誘導体がHCV治療のための治療的取り組みとして引き続き求められている。
【0006】
今回、本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートが、RNA依存性RNAウイルスの複製(具体的には、HCVの複製)の強力な阻害剤に対する前駆体であることが見出されている。本発明のホスホルアミダートは、RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼ(具体的には、HCVのNS5Bポリメラーゼ)の阻害剤である対応するヌクレオシド5’−トリホスファート誘導体に変換されるこのヌクレオシド5’−ホスファート(ヌクレオチド)誘導体にインビボで変換される。本発明のヌクレオシドスホルアミダートは、RNA依存性RNAウイルスの感染(具体的には、HCV感染)を処置するために有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼの阻害剤に対する前駆体として、具体的には、HCVのNS5Bポリメラーゼの阻害剤に対する前駆体として有用であるヌクレオシドアリールホスホルアミダートを提供することが本発明の目的の1つである。
【0008】
RNA依存性RNAウイルスの複製の阻害剤に対する前駆体として、具体的には、C型肝炎ウイルスの複製の阻害剤に対する前駆体として有用であるヌクレオシドアリールホスホルアミダートを提供することが本発明の別の目的である。
【0009】
RNA依存性RNAウイルスの感染の処置において、具体的には、HCV感染の処置において有用であるヌクレオシドアリールホスホルアミダートを提供することが本発明の別の目的である。
【0010】
本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートを医薬的に許容されるキャリアと一緒に含む医薬組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0011】
RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼの阻害剤に対する前駆体として、具体的には、HCVのNS5Bポリメラーゼの阻害剤に対する前駆体として使用される、本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートを含む医薬組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0012】
RNA依存性RNAウイルスの複製の阻害剤に対する前駆体として、具体的には、HCVの複製の阻害剤に対する前駆体として使用される、本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートを含む医薬組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0013】
RNA依存性RNAウイルスの感染の処置において、具体的には、HCV感染の処置において使用される、本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートを含む医薬組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0014】
RNA依存性RNAウイルスに対して、具体的には、HCVに対して活性な他の薬剤との組合せで本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートを含む医薬組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0015】
RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼを阻害するための方法、具体的には、HCVのNS5Bポリメラーゼを阻害するための方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0016】
RNA依存性RNAウイルスの複製を阻害するための方法、具体的には、HCVの複製を阻害するための方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0017】
RNA依存性RNAウイルスの感染を処置するための方法、具体的には、HCV感染を処置するための方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0018】
RNA依存性RNAウイルスに対して活性な他の薬剤との組合せでRNA依存性RNAウイルスの感染を処置するための方法、具体的には、HCVに対して活性な他の薬剤との組合せでHCV感染を処置するための方法を提供することが本発明の別の目的である。
【0019】
RNA依存性RNAウイルスの複製の阻害、RNA依存性RNAウイルスの感染の処置のための医薬品として、具体的には、HCVの複製の阻害および/またはHCV感染の処置のための医薬品として使用されるヌクレオシドアリールホスホルアミダートおよびこの医薬組成物を提供することが本発明の別の目的である。
【0020】
RNA依存性RNAウイルスの複製の阻害、RNA依存性RNAウイルスの感染の処置のための医薬品、具体的には、HCVの複製の阻害および/またはHCV感染の処置のための医薬品を製造するための、本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートおよびこの医薬組成物の使用を提供することが本発明の別の目的である。
【0021】
これらの目的および他の目的が下記の詳細な記載から容易に明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、示された立体化学的立体配置の下記の構造式Iの化合物またはこの医薬的に許容される塩に関連する:
【0023】
【化3】

【0024】
式中、
YはCRまたはNであり;
Arは非置換フェニルであるか、または、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、トリフルオロメチル、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルキルカルボニルオキシおよびC1−4アルキルオキシカルボニルからなる群から独立して選択される1個から3個の置換基により置換されたフェニルであり;
は、水素、フルオロ、アジド、アミノ、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、メルカプトおよびC1−3アルキルチオからなる群から選択され;
およびRはそれぞれが独立して、水素、メチル、C1−16アルキルカルボニル、C2−18アルケニルカルボニル、C1−10アルキルオキシカルボニル、C3−6シクロアルキルカルボニルおよびC3−6シクロアルキルオキシカルボニルからなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン、メチル、アジドまたはアミノであり;
およびRはそれぞれが独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−4アルコキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、ジ(C3−6シクロアルキル)アミノ、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノまたはC4−6ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、この場合、アルキル、シクロアルキル、ベンジルおよびヘテロシクロアルキルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から5個の基により置換され;
は、水素、C1−5アルキル、フェニルまたはベンジルであり、
この場合、アルキルは非置換であるか、または、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、グアニジノ、メルカプト、メチルチオ、1H−イミダゾリルおよび1H−インドール−3−イルからなる群から選択される1個の置換基により置換され、フェニルおよびベンジルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシおよびメトキシからなる群から独立して選択される1個から2個の置換基により置換され;
は、水素、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはベンジルであり、
この場合、アルキルおよびシクロアルキルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、C1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から3個の置換基により置換され、フェニルおよびベンジルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1−4アルコキシおよびトリフルオロメチルからなる群から独立して選択される1個から3個の置換基により置換され;
は、水素、フッ素、シアノ、C1−3アルキル、NHCONH、CONR1010、CSNR1010、COOR10、C(=NH)NH、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノおよびジ(C1−4アルキル)アミノからなる群から選択され;
各R10は独立して、水素またはC1−6アルキルであり;および
11は水素またはメチルである。
【0025】
式Iの化合物は、RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼ(具体的には、HCVのNS5Bポリメラーゼ)の阻害剤に対する前駆体として有用である。式Iの化合物はまた、RNA依存性RNAウイルスの複製(具体的には、HCVの複製)の阻害剤に対する前駆体であり、RNA依存性RNAウイルスの感染を処置するために、具体的には、HCV感染を処置するために有用である。
【0026】
この作用機構に関して限定されないが、本発明のアリールホスホルアミダートは、対応するヌクレオシド5’−モノホスファートのプロドラッグとして作用する。内因性のキナーゼ酵素により、この5’−モノホスファートは、RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼの阻害剤であるこの5’−トリホスファート誘導体に変換される。従って、本発明のアリールホスホルアミダートは、ヌクレオシドこれ自体よりも効率的な標的細胞浸透を提供する場合があり、また、代謝的分解をより受けにくくなる場合があり、また、特定の組織(例えば、肝臓など)を標的化する能力を有する場合があり、これらにより、抗ウイルス剤の全体的な用量を低下させることを可能にするより広い治療指数をもたらす。
【0027】
また、本発明の化合物を単独で含有するか、または、RNA依存性RNAウイルスに対して、具体的には、HCVに対して活性な他の薬剤との組合せで含有する医薬組成物、ならびに、RNA依存性RNAウイルスの複製を阻害するための方法、および、RNA依存性RNAウイルスの感染を処置するための方法も本発明に包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、示された立体化学的立体配置の下記の構造式Iの化合物またはこの医薬的に許容される塩に関連する:
【0029】
【化4】

【0030】
式中、
YはCRまたはNであり;
Arは非置換フェニルであるか、または、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、トリフルオロメチル、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルキルカルボニルオキシおよびC1−4アルキルオキシカルボニルからなる群から独立して選択される1個から3個の置換基により置換されたフェニルであり;
は、水素、フルオロ、アジド、アミノ、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、メルカプトおよびC1−3アルキルチオからなる群から選択され;
およびRはそれぞれが独立して、水素、メチル、C1−16アルキルカルボニル、C2−18アルケニルカルボニル、C1−16アルキルオキシカルボニル、C3−6シクロアルキルカルボニルおよびC3−6シクロアルキルオキシカルボニルからなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン、メチル、アジドまたはアミノであり;
およびRはそれぞれが独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−4アルコキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、ジ(C3−6シクロアルキル)アミノ、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノまたはC4−6ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、この場合、アルキル、シクロアルキル、ベンジルおよびヘテロシクロアルキルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から5個の基により置換され;
は、水素、C1−5アルキル、フェニルまたはベンジルであり、
この場合、アルキルは非置換であるか、または、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、グアニジノ、メルカプト、メチルチオ、1H−イミダゾリルおよび1H−インドール−3−イルからなる群から選択される1個の置換基により置換され、フェニルおよびベンジルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシおよびメトキシからなる群から独立して選択される1個から2個の置換基により置換され;
は、水素、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはベンジルであり、
この場合、アルキルおよびシクロアルキルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、C1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から3個の置換基により置換され、フェニルおよびベンジルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1−4アルコキシおよびトリフルオロメチルからなる群から独立して選択される1個から3個の置換基により置換され;
は、水素、フッ素、シアノ、C1−3アルキル、NHCONH、CONR1010、CSNR1010、COOR10、C(=NH)NH、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノおよびジ(C1−4アルキル)アミノからなる群から選択され;
各R10は独立して、水素またはC1−6アルキルであり;および
11は水素またはメチルである。
【0031】
式Iの化合物は、RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼの阻害剤に対する前駆体として有用である。式Iの化合物はまた、RNA依存性RNAウイルスの複製の阻害剤に対する前駆体であり、RNA依存性RNAウイルスの感染を処置するために有用である。
【0032】
本発明の化合物の1つの実施態様において、YがNであり、Rが水素またはフルオロであり、RおよびRが水素である。この実施態様の1つのクラスにおいて、Rが水素である。
【0033】
本発明の化合物の第2の実施態様において、YがCRであり、Rが水素またはフルオロであり、RおよびRが水素である。この実施態様の1つのクラスにおいて、Rが水素またはフルオロである。このクラスの1つのサブクラスにおいて、Rが水素である。
【0034】
本発明の化合物の第3の実施態様において、Arが非置換フェニルである。
【0035】
本発明の化合物の第4の実施態様において、R11が水素であり、Rが、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、イソブチル、2−メチル−1−プロピル、ヒドロキシメチル、メルカプトメチル、カルボキシメチル、カルバモイルメチル、1−ヒドロキシエチル、2−カルボキシエチル、2−カルバモイルエチル、2−メチルチオエチル、4−アミノ−1−ブチル、3−アミノ−1−プロピル、3−グアニジノ−1−プロピル、1H−イミダゾール−4−イルメチル、フェニル、4−ヒドロキシベンジルおよび1H−インドール−3−イルメチルからなる群から選択される。この実施態様の1つのクラスにおいて、Rがメチルまたはベンジルである。
【0036】
本発明の化合物の第5の実施態様において、Rが、C1−6アルキル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルである。この実施態様の1つのクラスにおいて、Rがメチルである。
【0037】
本発明の化合物の第6の実施態様において、Arが非置換フェニルであり、Rがメチルまたはベンジルであり、Rがメチルであり、R11が水素である。
【0038】
RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼの阻害剤に対する前駆体として有用である構造式Iの本発明の化合物の例示的ではあるが、非限定的な例には、下記の化合物がある:
【0039】
【化5】



またはこの医薬的に許容される塩。
【0040】
本発明の1つの実施態様において、本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートは、プラスセンスの一本鎖RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼの阻害剤に対する前駆体として、プラスセンスの一本鎖RNA依存性RNAウイルスの複製の阻害剤に対する前駆体として、および/または、プラスセンスの一本鎖RNA依存性RNAウイルスの感染を処置するために有用である。この実施態様の1つのクラスにおいて、プラスセンスの一本鎖RNA依存性RNAウイルスはフラビウイルス科のウイルスおよびピコルナウイルス科のウイルスである。このクラスの1つのサブクラスにおいて、ピコルナウイルス科のウイルスは、ライノウイルス、ポリオウイルスまたはA型肝炎ウイルスである。このクラスの第2のサブクラスにおいて、フラビウイルス科のウイルスは、C型肝炎ウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルス、ウエストナイルウイルス、日本脳炎ウイルス、バンジウイルスおよびウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)からなる群から選択される。このサブクラスの1つのサブクラスにおいて、フラビウイルス科のウイルスはC型肝炎ウイルスである。
【0041】
本発明の別の態様は、この必要性のある哺乳動物において、RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼを阻害するための方法、RNA依存性RNAウイルスの複製を阻害するための方法、および/または、RNA依存性RNAウイルスの感染を処置するための方法に関連し、この場合、これらの方法は、治療効果的な量の構造式Iの化合物をこのような哺乳動物に投与することを含む。
【0042】
本発明のこの態様の1つの実施態様において、RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼはプラスセンスの一本鎖RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼである。この実施態様の1つのクラスにおいて、プラスセンスの一本鎖RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼはフラビウイルス科のウイルスのポリメラーゼまたはピコルナウイルス科のウイルスのポリメラーゼである。このクラスの1つのサブクラスにおいて、ピコルナウイルス科のウイルスのポリメラーゼは、ライノウイルスのポリメラーゼ、ポリオウイルスのポリメラーゼまたはA型肝炎ウイルスのポリメラーゼである。このクラスの第2のサブクラスにおいて、フラビウイルス科のウイルスのポリメラーゼは、C型肝炎ウイルスのポリメラーゼ、黄熱ウイルスのポリメラーゼ、デングウイルスのポリメラーゼ、ウエストナイルウイルスのポリメラーゼ、日本脳炎ウイルスのポリメラーゼ、バンジウイルスのポリメラーゼおよびウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)のポリメラーゼからなる群から選択される。このサブクラスの1つのサブクラスにおいて、フラビウイルス科のウイルスのポリメラーゼはC型肝炎ウイルスのポリメラーゼである。
【0043】
本発明のこの態様の第2の実施態様において、RNA依存性RNAウイルスの複製はプラスセンスの一本鎖RNA依存性RNAウイルスの複製である。この実施態様の1つのクラスにおいて、プラスセンスの一本鎖RNA依存性RNAウイルスの複製はフラビウイルス科のウイルスの複製またはピコルナウイルス科のウイルスの複製である。このクラスの1つのサブクラスにおいて、ピコルナウイルス科のウイルスの複製は、ライノウイルスの複製、ポリオウイルスの複製またはA型肝炎ウイルスの複製である。このクラスの第2のサブクラスにおいて、フラビウイルス科のウイルスの複製は、C型肝炎ウイルスの複製、黄熱ウイルスの複製、デングウイルスの複製、ウエストナイルウイルスの複製、日本脳炎ウイルスの複製、バンジウイルスの複製およびウシウイルス性下痢ウイルスの複製からなる群から選択される。このサブクラスの1つのサブクラスにおいて、フラビウイルス科のウイルスの複製はC型肝炎ウイルスの複製である。
【0044】
本発明のこの態様の第3の実施態様において、RNA依存性RNAウイルスの感染はプラスセンスの一本鎖RNA依存性RNAウイルスの感染である。この実施態様の1つのクラスにおいて、プラスセンスの一本鎖RNA依存性RNAウイルスの感染はフラビウイルス科のウイルスの感染またはピコルナウイルス科のウイルスの感染である。このクラスの1つのサブクラスにおいて、ピコルナウイルス科のウイルスの感染は、ライノウイルスの感染、ポリオウイルスの感染またはA型肝炎ウイルスの感染である。このクラスの第2のサブクラスにおいて、フラビウイルス科のウイルスの感染は、C型肝炎ウイルスの感染、黄熱ウイルスの感染、デングウイルスの感染、ウエストナイルウイルスの感染、日本脳炎ウイルスの感染、バンジウイルスの感染およびウシウイルス性下痢ウイルスの感染からなる群から選択される。このサブクラスの1つのサブクラスにおいて、フラビウイルス科のウイルスの感染はC型肝炎ウイルスの感染である。
【0045】
本出願明細書全体を通して、下記の用語は、示された意味を有する:
上記で指定されたアルキル基は、直鎖形態または分枝形態のいずれかである示された長さのこのようなアルキル基を包含することが意図される。このようなアルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、第三級ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルおよびイソヘキシルなどがある。
【0046】
用語「アルケニル」は、2個から6個の総炭素原子、すなわち、この範囲内の任意の数の総炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルケン(例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルなど)を意味するものとする。
【0047】
用語「アルキニル」は、2個から6個の総炭素原子、すなわち、この範囲内の任意の数の総炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキン(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルなど)を意味するものとする。
【0048】
用語「シクロアルキル」は、3個から8個の総炭素原子、すなわち、この範囲内の任意の数の総炭素原子を有する環状環のアルキル(すなわち、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルまたはシクロオクチル)を意味するものとする。
【0049】
用語「シクロヘテロアルキル」は、窒素、酸素およびイオウから選択される1個または2個のヘテロ原子を含有する非芳香族の複素環を包含することが意図される。4員から6員のシクロヘテロアルキルの例には、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チアモルホリニル、イミダゾリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニルおよびピペラジニルなどが含まれる。
【0050】
用語「アルコキシ」は、指定された数の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルコキシド(例えば、C1−4アルコキシ)、すなわち、この範囲内の任意の数の炭素原子のアルコキシド[すなわち、メトキシ(MeO−)、エトキシ、イソプロポキシなど]を示す。
【0051】
用語「アルキルチオ」は、指定された数の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルスルフィド(例えば、C1−4アルキルチオ)、すなわち、この範囲内の任意の数の炭素原子のアルキルスルフィド[すなわち、メチルチオ(MeS−)、エチルチオ、イソプロピルチオなど]を示す。
【0052】
用語「アルキルアミノ」は、指定された数の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルアミン(例えば、C1−4アルキルアミノ)、すなわち、この範囲内の任意の数の炭素原子のアルキルアミン[すなわち、メチルアミノ、エチルアミノ、イソプロピルアミノ、t−ブチルアミノなど]を示す。
【0053】
用語「アルキルスルホニル」は、指定された数の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルスルホン(例えば、C1−6アルキルスルホニル)、すなわち、この範囲内の任意の数の炭素原子のアルキルスルホン[すなわち、メチルスルホニル(MeSO−)、エチルスルホニル、イソプロピルスルホニルなど]を示す。
【0054】
用語「アルキルオキシカルボニル」は、指定された数の炭素原子を有する、本発明のカルボン酸誘導体の直鎖または分枝鎖のエステル(例えば、C1−4アルキルオキシカルボニル)、すなわち、この範囲内の任意の数の炭素原子のこのようなエステル[すなわち、メチルオキシカルボニル(MeOCO−)、エチルオキシカルボニルまたはブチルオキシカルボニル]を示す。
【0055】
用語「ハロゲン」は、ハロゲン原子のフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含することが意図される。
【0056】
用語「ホスホリル」は−P(O)(OH)を示す。
【0057】
用語「ジホスホリル」は、下記の構造を有する基を示す:
【0058】
【化6】

【0059】
用語「トリホスホリル」は、下記の構造を有する基を示す:
【0060】
【化7】

【0061】
用語「置換された(される)」は、示された置換基による様々な多重度の置換を包含すると見なされるものとする。多数の置換基成分が開示または特許請求される場合、置換された化合物は、開示または特許請求された置換基部分の1つまたは複数によって1回または複数回、独立して置換され得る。
【0062】
用語「5’−トリホスファート」は、下記の一般構造式IIを有する本発明のヌクレオシド化合物の5’−ヒドロキシル基の三リン酸エステル誘導体を示す:
【0063】
【化8】

(式中、YおよびRからRは上記で定義される通りである)。
【0064】
用語「組成物」は、「医薬組成物」でのように、有効成分と、キャリアを構成する不活性な成分とを含む製造物、ならびに、この成分のいずれか2つ以上の組合せ、複合体化または集成から、または、この成分の1つまたは複数を分離することから、または、この成分の1つまたは複数の他のタイプの反応または相互作用から、直接的または間接的に生じる任意の製造物を包含することが意図される。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と、医薬的に許容されるキャリアとを混合することによって作製される任意の組成物を包含する。
【0065】
化合物「の投与」および化合物「を投与する」の用語は、本発明の化合物または本発明の化合物のプロドラッグを必要性のある個体に与えることを意味することを理解しなければならない。
【0066】
本発明の別の態様は、本発明の化合物を、HCV感染を処置するために有用な1つまたは複数の薬剤との組合せで用いて、HCVのNS5Bポリメラーゼを阻害する方法、HCVの複製を阻害する方法、または、HCV感染を処置する方法に関する。HCVに対して活性なこのような薬剤には、リバビリン、レボビリン、ビラミジン、チモシンα−1、インターフェロン−β、インターフェロン−α、ペグ化インターフェロン−α(ペグインターフェロン−α)、インターフェロン−αおよびリバビリンの組合せ、ペグインターフェロン−αおよびリバビリンの組合せ、インターフェロン−αおよびレボビリンの組合せ、ならびに、ペグインターフェロン−αおよびレボビリンの組合せが含まれるが、これらに限定されない。インターフェロン−αには、組換えインターフェロン−α2a(例えば、Hoffmann−LaRoche(Nutley、NJ)から入手可能なRoferonインターフェロンなど)、ペグ化インターフェロン−α2a(Pegasys(商標))、インターフェロン−α2b(例えば、Schering Corp.(Kenilworth、NJ)から入手可能なIntron−Aインターフェロンなど)、ペグ化インターフェロン−α2b(PegIntron(商標))、組換えコンセンサスインターフェロン(例えば、インターフェロンアルファコン−1など)、および、精製インターフェロン−α製剤が含まれるが、これらに限定されない。Amgenの組換えコンセンサスインターフェロンはInfergen(登録商標)の商品名を有する。レボビリンは、リバビリンと類似する免疫調節活性を示しているリバビリンのL−エナンチオマーである。ビラミジンは、国際特許出願公開WO01/60379(ICN Pharmaceuticalsに譲渡)に開示されるリバビリンのアナログを表す。本発明のこの方法によれば、組合せの個々の構成成分は治療経過の期間中の異なる時間で別々に投与することができ、または、分割または1回の組合せ形態で同時に投与することができる。従って、本発明は、同時処置または交互処置のこのような様式のすべてを包含するとして理解しなければならず、用語「投与する」はそれに応じて解釈されなければならない。HCV感染を処置するために有用な他の薬剤との本発明の化合物の組合せの範囲は、原理的には、HCV感染を処置するための任意の医薬組成物との任意の組合せを包含することが理解される。本発明の化合物またはこの医薬的に許容される塩が、HCVに対して活性な第2の治療剤との組合せで使用されるとき、それぞれの化合物の用量は、化合物が単独で使用されるときの用量と同じであり得るか、または、化合物が単独で使用されるときの用量と異なり得るかのいずれかである。
【0067】
HCV感染の処置のために、本発明の化合物はまた、HCVのNS3セリンプロテアーゼの阻害剤である薬剤との組合せで投与することができる。HCVのNS3セリンプロテアーゼは必須のウイルス酵素であり、HCVの複製を阻害するための優れた標的であることが記載されている。HCVのNS3プロテアーゼ阻害剤の基質型および非基質型の両方の阻害剤が、国際特許出願公開WO98/22496、同WO98/46630、同WO99/07733、同WO99/07734、同WO99/38888、同WO99/50230、同WO99/64442、同WO00/09543、同WO00/59929、GB−2337262、国際特許出願公開WO02/48116、同WO02/48172、および米国特許第6,323,180号に開示される。HCVの複製の阻害剤を開発するための、また、HCV感染を処置するための標的としてのHCVのNS3プロテアーゼが、B.W.Dymockら、「C型肝炎ウイルス感染のための新しい治療法」、Emerging Drugs、6:13−42(2001)において議論される。
【0068】
リバビリン、レボビリンおよびビラミジンは、細胞内酵素のイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)の阻害によってグアニンヌクレオチドの細胞内プールを調節することによってこの抗HCV効果を発揮し得る。IMPDHは、デノボでのグアニンヌクレオチド生合成における生合成経路での律速酵素である。リバビリンは細胞内で容易にリン酸化され、このモノホスファート誘導体がIMPDHの阻害剤である。このように、IMPDHの阻害は、HCVの複製の阻害剤を発見するための別の有用な標的を表す。従って、本発明の化合物はまた、IMPDHの阻害剤(例えば、国際特許出願公開WO97/41211および同WO01/00622(Vertexに譲渡)に開示されるVX−497など)との組合せで、または、別のIMPDH阻害剤(例えば、国際特許出願公開WO00/25780(Bristol−Myers Squibbに譲渡)に開示されるIMPDH阻害剤など)との組合せで、または、ミコフェノラートのモフェチル[A.C.AllisonおよびE.M.Eugui、Agents Action、44(Suppl.):165(1993)を参照のこと]との組合せで投与することができる。
【0069】
HCV感染の処置のために、本発明の化合物はまた、抗ウイルス剤のアマンタジン(1−アミノアダマンタン)との組合せで投与することができる[この薬剤の包括的な記載については、J.Kirschbaum、Anal.Profiles Drug Subs.、12:1−36(1983)を参照のこと]。
【0070】
本発明の化合物はまた、HCV感染の処置のために、R.E.Harry−O’kuruら、J.Org.Chem.、62:1754−1759(1997);M.S.Wolfeら、Tetrahedron Lett.、36:7611−7614(1995);米国特許第3,480,613号(1969年11月25日);国際特許出願公開WO01/90121(2001年11月29日);国際特許出願公開WO01/92282(2001年12月6日);および国際特許出願公開WO02/32920(2002年4月25日);および国際特許出願公開WO04/002999(2004年1月8日);および国際特許出願公開WO04/003000(2004年1月8日);および国際特許出願公開WO04/002422(2004年1月8日)に開示される様々な抗ウイルス性の2’−C−分岐型リボヌクレオシドと組み合わせることができる(これらのそれぞれの内容はこの全体が参照により組み込まれる)。このような2’−C−分岐型リボヌクレオシドには、2’−C−メチルシチジン、2’−C−メチルウリジン、2’−C−メチルアデノシン、2’−C−メチルグアノシンおよび9−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−2,6−ジアミノプリン、ならびに、リボースのC−2’ヒドロキシル、C−3’ヒドロキシルおよびC−5’ヒドロキシルの対応するアミノ酸エステル、ならびに、5’−ホスファート誘導体の対応する場合により置換された環状1,3−プロパンジオールエステルが含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
本発明の化合物はまた、HCV感染の処置のために、抗HCV性質を有する他のヌクレオシドと組み合わせることができ、例えば、国際特許出願公開WO02/51425(2002年7月4日)(Mitsubishi Pharma Corp.に譲渡);国際特許出願公開WO01/79246、同WO02/32920および同WO02/48165(2002年6月20日)(Pharmasset,Ltd.に譲渡);国際特許出願公開WO01/68663(2001年9月20日)(ICN Pharmaceuticalsに譲渡);国際特許出願公開WO99/43691(1999年9月2日);国際特許出願公開WO02/18404(2002年3月7日)(Hoffmann−LaRocheに譲渡);米国特許公開第2002/0019363号(2002年2月14日);国際特許出願公開WO02/100415(2002年12月19日);国際特許出願公開WO03/026589(2003年4月3日);国際特許出願公開WO03/026675(2003年4月3日);国際特許出願公開WO03/093290(2003年11月13日):米国特許公開第2003/0236216号(2003年12月25日);米国特許公開第2004/0006007号(2004年1月8日);国際特許出願公開WO04/011478(2004年2月5日);国際特許出願公開WO04/013300(2004年2月12日);米国特許公開第2004/0063658号(2004年4月1日);および国際特許出願公開WO04/028481(2004年4月8日)に開示されるヌクレオシドなどと組み合わせることができる。
【0072】
本発明の化合物はまた、HCVの処置のために、HCVポリメラーゼの非ヌクレオシド阻害剤と組み合わせることができ、例えば、国際特許出願公開WO01/77091(2001年10月18日)(Tularik,Inc.に譲渡);国際特許出願公開WO01/47883(2001年7月5日)(日本たばこ産業に譲渡);国際特許出願公開WO02/04425(2002年1月17日)(Boehringer Ingelheimに譲渡);国際特許出願公開WO02/06246(2002年1月24日)(Istituto di Ricerche di Biologia Molecular P.Angeletti S.P.A.に譲渡);および国際特許出願公開WO02/20497(2002年3月3日)に開示される非ヌクレオシド阻害剤などと組み合わせることができる。
【0073】
「医薬的に許容される」によって、キャリア、希釈剤または賦形剤が配合物のそれ以外の成分との適合性を有しなければならず、および、この被投与者に対して有害であってはならないことが意味される。
【0074】
本発明にはまた、本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートを医薬的に許容されるキャリアと一緒に含む医薬組成物が含まれる。本発明の別の一例が、上記で記載された化合物のいずれかと、医薬的に許容されるキャリアとを組み合わせることによって作製される医薬組成物である。本発明の別の例示が、上記で記載された化合物のいずれかと、医薬的に許容されるキャリアとを組み合わせることを含む、医薬組成物を作製するための方法である。
【0075】
本発明にはまた、効果的な量の本発明の化合物と、医薬的に許容されるキャリアとを含む、RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼ(具体的には、HCVのNS5Bポリメラーゼ)を阻害するために有用な医薬組成物が含まれる。RNA依存性RNAウイルスの感染(具体的には、HCV感染)を処置するために有用な医薬組成物もまた、RNA依存性RNAウイルスのポリメラーゼ(具体的には、HCVのNS5Bポリメラーゼ)を阻害する方法、および、RNA依存性RNAウイルスの複製(具体的には、HCVの複製)を処置する方法と同様に、本発明によって包含される。加えて、本発明は、治療効果的な量の本発明の化合物を、RNA依存性RNAウイルスに対して活性な別の薬剤、具体的には、HCVに対して活性な別の薬剤の治療効果的な量との組合せで含む医薬組成物に関する。HCVに対して活性な薬剤には、リバビリン、レボビリン、ビラミジン、チモシンα−1、HCVのNS3セリンプロテアーゼの阻害剤、インターフェロン−α、ペグ化インターフェロン−α(ペグインターフェロン−α)、インターフェロン−αおよびリバビリンの組合せ、ペグインターフェロン−αおよびリバビリンの組合せ、インターフェロン−αおよびレボビリンの組合せ、ならびに、ペグインターフェロン−αおよびレボビリンの組合せが含まれるが、これらに限定されない。インターフェロン−αには、組換えインターフェロン−α2a(例えば、Hoffmann−LaRoche(Nutley、NJ)から入手可能なRoferonインターフェロンなど)、インターフェロン−α2b(例えば、Schering Corp.(Kenilworth、NJ)から入手可能なIntron−Aインターフェロンなど)、コンセンサスインターフェロン、および、精製インターフェロン−α製剤が含まれるが、これらに限定されない。リバビリンおよびHCVに対するこの活性の議論については、J.O.SaundersおよびS.A.Raybuck、「イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ:構造、速度論および治療的可能性の検討」、Ann.Rep.Med.Chem.、35:201−210(2000)を参照のこと。
【0076】
本発明の別の態様は、RNA依存性RNAウイルスの複製(具体的には、HCVの複製)を阻害するための医薬品、および/または、RNA依存性RNAウイルスの感染(具体的には、HCV感染)を処置するための医薬品を製造するための、ヌクレオシドアリールホスホルアミダートおよびこの医薬組成物の使用を提供する。さらに、本発明のさらなる態様は、RNA依存性RNAウイルスの複製(具体的には、HCVの複製)を阻害するための医薬品、および/または、RNA依存性RNAウイルスの感染(具体的には、HCV感染)を処置するための医薬品として使用するためのヌクレオシドアリールホスホルアミダートおよびこの医薬組成物を提供する。
【0077】
本発明の医薬組成物は、有効成分としての構造式Iの化合物、または、この医薬的に許容される塩を含み、および、医薬的に許容されるキャリアと、場合により、他の治療用成分とを含むことができる。
【0078】
組成物には、経口投与、直腸投与、局所的投与、非経口的投与(皮下、筋肉内および静脈内を含む)、眼(眼科用)、肺(鼻腔吸入または口内吸入)または鼻腔投与のために好適な組成物が含まれ、だが、任意の所与の場合における最も好適な経路は、処置されている状態の性質および重篤度、ならびに、有効成分の性質に依存する。組成物は、好都合には、単位投薬形態物で提供することができ、製薬分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。
【0079】
実用的な使用において、構造式Iの化合物は、従来の薬学的配合技術に従って、医薬用キャリアと十分に混合されて有効成分として組み合わせることができる。キャリアは、投与(例えば、経口または非経口(静脈内を含む)など)のために所望される調製物の形態に依存して、広範囲の様々な形態を取ることができる。経口用投薬形態物のための組成物を調製する際、通常的な医薬用媒体のいずれかを用いることができる。例えば、水、グリコール、オイル、アルコール、矯味矯臭剤、保存剤および着色剤などを経口用の液体調製物(例えば、懸濁物、エリキシル剤および溶液など)の場合において用いることができ、または、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑剤、結合剤、崩壊剤などのキャリアを経口用の固体調製物(例えば、粉末剤、ハードカプセルおよびソフトカプセル、ならびに、錠剤など)の場合において用いることができ、固体の経口用調製物が液体調製物よりも好まれる。
【0080】
それらの容易な投与のために、錠剤およびカプセルは最も好都合な経口用の投薬形態物であり、このような場合、固体の医薬用キャリアが明らかに用いられる。所望されるならば、錠剤は標準的な水性技術または非水性技術によって被覆することができる。このような組成物および調製物は少なくとも0.1パーセントの活性な化合物を含有することが望ましい。このような組成物における活性な化合物の割合は、当然のことではあるが、変化させることができ、好都合には単位物の重量の約2パーセントから約60パーセントにすることができる。このような治療的に有用な組成物における活性な化合物の量は、効果的な投薬が得られるようにされる。活性な化合物はまた、例えば、液体滴剤またはスプレー剤として鼻腔内に投与することができる。
【0081】
錠剤、ピルおよびカプセルなどはまた、結合剤(例えば、トラガカントゴム、アラビアゴム、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなど)、賦形剤(例えば、リン酸二カルシウムなど)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸など)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムなど)、および、甘味剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはサッカリンなど)を含有することができる。投薬単位形態物がカプセルであるとき、カプセルは、上記タイプの物質に加えて、液体キャリア(例えば、脂肪油など)を含有することができる。
【0082】
様々な他の物質を、被覆剤として、または、投薬単位物の物理的形態を改変するために存在させることができる。例えば、錠剤をセラックまたは糖または両方で被覆することができる。シロップまたはエリキシル剤は、有効成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素および着香剤(例えば、サクランボ香料またはオレンジ香料など)を含有することができる。
【0083】
構造式Iの化合物はまた、非経口投与によって投与することができる。これらの活性な化合物の溶液または懸濁物を、界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなど)と好適に混合された水において調製することができる。分散物もまた、グリセロール、液状のポリエチレングリコール、および、オイルにおけるこの混合物において調製することができる。通常の貯蔵条件および使用条件のもとでは、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための保存剤を含有する。
【0084】
注射使用のために好適な医薬用形態物には、無菌の注射可能な溶液または分散物をこの場で即座に調製するための無菌の水性の溶液または分散物および無菌の粉末が含まれる。すべての場合において、形態物は無菌でなければならず、および、容易なシリンジ注入性が存在する程度に流動性でなければならない。形態物は製造および貯蔵の条件のもとで安定でなければならず、および、微生物(例えば、細菌および菌類など)の混入作用に対抗して保存されなければならない。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコール)、この好適な混合物、および、植物油を含有する溶媒または分散媒体であり得る。
【0085】
任意の好適な投与経路を、哺乳動物(特に、ヒト)に本発明の化合物の効果的な投薬量を与えるために用いることができる。例えば、経口、直腸、局所的、非経口、眼、肺および鼻腔などを用いることができる。投薬形態物には、錠剤、トローチ剤、分散物、懸濁物、溶液、カプセル、クリーム、軟膏およびエアロゾルなどが含まれる。好ましくは、構造式Iの化合物は経口投与される。
【0086】
ヒトへの経口投与については、投薬量範囲は分割服用での0.01mg/kg体重から1000mg/kg体重である。1つの実施態様において、投薬量範囲は分割服用での0.1mg/kg体重から100mg/kg体重である。別の実施態様において、投薬量範囲は分割服用での0.5mg/kg体重から20mg/kg体重である。経口投与については、組成物は、好ましくは、1.0ミリグラムから1000ミリグラムの有効成分を含有する錠剤またはカプセルの形態で提供され、具体的には、処置される患者に対する投薬量の症状による調節のために、1ミリグラム、5ミリグラム、10ミリグラム、15ミリグラム、20ミリグラム、25ミリグラム、50ミリグラム、75ミリグラム、100ミリグラム、150ミリグラム、200ミリグラム、250ミリグラム、300ミリグラム、400ミリグラム、500ミリグラム、600ミリグラム、750ミリグラム、800ミリグラム、900ミリグラムおよび1000ミリグラムの有効成分を含有する錠剤またはカプセルの形態で提供される。
【0087】
用いられる有効成分の効果的な投薬量は、用いられる特定の化合物、投与様式、処置されている状態、および、処置されている状態の重篤度に依存して変化し得る。このような投薬量は当業者によって容易に確認することができる。このような投薬様式は、最適な治療的応答をもたらすために調節することができる。
【0088】
本発明の化合物は1つまたは複数の不斉中心を含有しており、従って、ラセミ体およびラセミ混合物として、単一のエナンチオマーとして、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして存在し得る。R11が水素であり、構造式Iにおいてリン原子に結合したアミノアシル残基におけるRが下記の式において水素以外であるとき、
【0089】
【化9】

アミノ酸残基は不斉中心を含有し、個々のR−立体異性体およびS−立体異性体、ならびに、RS−立体異性体混合物を包含することが意図される。1つの実施態様において、ステレオジェン性(stereogenic)炭素における立体化学はS−アミノ酸の立体化学(すなわち、天然に存在するα−アミノ酸の立体化学)に対応する。
【0090】
構造式Iの化合物における四置換されたリンは別の不斉中心を構成しており、本発明の化合物は、リン原子における両方の立体化学的立体配置を包含することが意図される。
【0091】
本発明は、下記の構造式において示されるような5員フラノース環についてβ−Dの立体化学的立体配置を有するヌクレオシドアリールホスホルアミダート、すなわち、5員フラノース環のC−1およびC−4における置換基がβ−立体化学的立体配置(太線によって示されるような「上向き」配向)を有するアリールホスホルアミダートを包含することが意味される。
【0092】
【化10】

【0093】
本明細書中に記載される化合物のいくつかはオレフィン性二重結合を含有し、別途指定されない限り、E型およびZ型の両方の幾何異性体を包含することが意味される。
【0094】
本明細書中に記載される化合物のいくつかは互変異性体(例えば、ケト−エノール互変異性体など)として存在する場合がある。個々の互変異性体ならびにこの混合物が構造式Iの化合物により包含される。本発明の化合物に包含されることが意図されるケト−エノール互変異性体の例が下記に例示される:
【0095】
【化11】

【0096】
構造式Iの化合物は、例えば、好適な溶媒(例えば、メタノールまたは酢酸エチルまたはこの混合物)からの分別結晶化によって、または、光学活性な定常相を使用するキラルなクロマトグラフィーによってこの個々のジアステレオマーに分割することができる。
【0097】
または、構造式Iの化合物の任意の立体異性体を、配置が公知の光学的に純粋な出発物質または試薬を使用して立体特異的な合成によって得ることができる。
【0098】
本発明の化合物は医薬的に許容される塩の形態で投与することができる。用語「医薬的に許容される塩」は、医薬的に許容される非毒性の塩基または酸(無機塩基または有機塩基および無機酸または有機酸を含む)から調製される塩を示す。用語「医薬的に許容される塩」に包含される塩基性化合物の塩は、遊離塩基を好適な有機酸または無機酸と反応することによって一般に調製される、本発明の化合物の非毒性の塩を示す。本発明の塩基性化合物の代表的な塩には、下記の塩が含まれるが、それらに限定されない:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、カムシラート、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシラート、エストラート、エシラート、フマル酸塩、グルセプタート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、メチルブロミド、メチルニトラート、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシラート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エムボナート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクラート、トシラート、トリエチオジドおよび吉草酸塩。さらに、本発明の化合物が酸性部分を有する場合、この好適な医薬的に許容される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛などを含む無機塩基に由来する塩が含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいものは、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩である。医薬的に許容される有機の無毒性塩基に由来する塩には、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン化合物、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトロメタミンなどの塩が含まれる。
【0099】
また、カルボン酸基(−COOH)またはヒドロキシル基が本発明の化合物に存在する場合、カルボン酸誘導体の医薬的に許容されるプロドラッグエステル(例えば、リボースのC−2’ヒドロキシル、C−3’ヒドロキシルおよびC’−5ヒドロキシルのメチルエステル、エチルエステルまたはピバロイルオキシメチルエステルまたはプロドラッグのアシル誘導体など、例えば、O−アセチル、O−ピバロイル、O−ベンジルおよびO−アミノアシルなど)を用いることができる。生物利用能、組織分布、溶解性および加水分解の特性を持続放出配合物またはプロドラッグ配合物としての使用のために改変するために当分野で公知のこのようなエステルおよびアシル基が含まれる。意図された誘導体は、要求される化合物にインビボで容易に変換可能である。従って、本発明の処置方法において、用語「投与する」および用語「投与」は、具体的に開示された化合物を用いた、または、具体的に開示され得ないが、哺乳動物(ヒト患者を含む)への投与の後でインビボで、指定された化合物に変換する化合物を用いた、記載されるウイルス感染の処置を包含することが意図される。好適なプロドラッグ誘導体の選択および調製についての通常的な手順が、例えば、「Design of Prodrugs」(H.Bundgaard編、Elsevier、1985)に記載される(これはこの全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0100】
本発明のアリールホスホルアミダートの調製
リン酸化反応のためのヌクレオシド中間体の調製が国際特許出願公開WO02/057287(2002年7月25日)および同WO02/57425(2002年7月25日)に記載される。リン酸化反応のためのアリールホスホロクロリダートを、米国特許第6,455,513号に記載される方法に従って調製した(この内容はこの全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。本発明のアリールホスホロアミダートを作製するためのリン酸化反応を、米国特許第6,455,513号およびC.McGuiganら、J.Med.Chem.、36:1048(1993)に記載される方法に従って行った。
【0101】
下記の実施例は、本発明の化合物を調製するために使用された条件の例示を提供する。これらの実施例は、本発明の範囲に対する限定であることは決して意図されず、また、このように解釈してはならない。ヌクレオシド合成およびヌクレオチド合成の当業者は、下記の調製手順の条件およびプロセスの様々な公知の変化が、本発明のこれらの化合物および他の化合物を調製するために使用され得ることを容易に理解する。温度はすべて、別途記されない限り、摂氏度である。
【実施例】
【0102】
(実施例1および実施例2)
2’−C−メチルアデノシン5’−[フェニル メトキシ−(S)−アラニルホスファート]
【0103】
【化12】

【0104】
2’−C−メチルアデノシン(500mg)、フェニル=メトキシ−(S)−アラニルホスホロクロリダート[1.3g、これはJ.Med.Chem.、36:1048(1993)に従って調製された]、N−メチルイミダゾール(0.8mL)および1,4−ジオキサン(10mL)の溶液を周囲温度で18時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液に溶解し、クロロホルムにより3回抽出した。クロロホルム抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、濃縮して、黄褐色の固体を得た。所望する生成物を、10%メタノール/塩化メチレンを溶出液として使用するシリカゲルでのクロマトグラフィーによって精製し、この後、凍結乾燥して、リン原子におけるジアステレオマーの混合物として得られた無色の固体を得た。ジアステレオマーを、逆相液体クロマトグラフィー(Kromasil C8、4.6x250mm、15分間にわたる20%から50%のアセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸水溶液のグラジエント、1.5mL/分)を使用して分割し、各ジアステレオマーを無色の固体として得た。質量スペクトル:m/z=523(各異性体について)。
【0105】
(実施例3および実施例4)
2’−C−メチルグアノシン5’−[フェニル メトキシ−(S)−アラニルホスファート]
【0106】
【化13】

【0107】
2’−C−メチルグアノシン(40mg)、1,4−ジオキサン(2mL)、N−メチルイミダゾール(70μL)およびホスホロクロリダート(73mg)の溶液を周囲温度で一晩撹拌した。混合物を濃縮して、ジオキサンを除き、飽和重炭酸ナトリウム水溶液とクロロホルムとの間で分配した。所望する生成物は水性画分に残留した。ジアステレオマー混合物の水溶液を逆相液体クロマトグラフィー(Kromasil C8、4.6x250mm、15分間にわたる20%から50%のアセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸水溶液のグラジエント、1.5mL/分)に供し、各ジアステレオマーを無色の固体として得た。質量スペクトル:m/z=539(各異性体について)。
【0108】
(実施例5および実施例6)
4−アミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン5’−[フェニル メトキシ−(S)−アラニルホスファート]
【0109】
【化14】

【0110】
実施例5および実施例6を実施例1および実施例2と同じ様式で4−アミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンから調製し、ジアステレオマー混合物を得て、これを、実施例1および実施例2の場合のような条件を使用する逆相液体クロマトグラフィーによって分割した。質量スペクトル:m/z=522(各異性体について)。
H NMR(CDOD,500MHz):異性体A:δ0.80(s,3H),1.30(d,3H),3.66(s,3H),および6.30(s,1H);異性体B:δ0.84(s,3H),1.34(d,3H),3.62(s,3H),および6.28(s,1H)。
【0111】
(実施例7および実施例8)
2−アミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オン5’−[フェニル メトキシ−(S)−アラニルホスファート]
【0112】
【化15】

【0113】
実施例7および実施例8を、2−アミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4(3H)−オンから、実施例3および実施例4の調製のための手順に従ってジアステレオマーとして調製した。ジアステレオマー混合物を、実施例3および実施例4についての条件を使用する逆相液体クロマトグラフィーによって分割した。質量スペクトル:m/z=538(各異性体について)。
H NMR(CDOD,500MHz):異性体A:δ0.85(s,3H),1.31(d,3H),3.67(s,3H),および6.10(s,1H);異性体B:δ0.87(s,3H),1.35(d,3H),3.63(s,3H),および6.05(s,1H)。
【0114】
(実施例9および実施例10)
2,4−ジアミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン5’−[フェニル メトキシ−(S)−アラニルホスファート]
【0115】
【化16】

【0116】
実施例9および実施例10を実施例1および実施例2と同じ様式で2,4−ジアミノ−7−(2−C−メチル−β−D−リボフラノシル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンから調製して、ジアステレオマー混合物として得て、これを、実施例1および実施例2の場合のような条件を使用する逆相液体クロマトグラフィーによって分割した。質量スペクトル:(M+1)m/z=537(各異性体について)。
H NMR(CDOD,500MHz):異性体A:δ0.89(s,3H),1.32(d,3H),3.64(s,3H),および6.12(s,1H);異性体B:δ0.91(s,3H),1.35(d,3H),3.62(s,3H),および6.10(s,1H)。
【0117】
生物学的アッセイ
HCVのNS5BポリメラーゼおよびHCVの複製の阻害を測定するために用いたアッセイを下記に記載する。
【0118】
HCVのNS5BのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)の阻害剤としての本発明の化合物の有効性を下記のアッセイで測定した。
【0119】
A.HCVのNS5Bポリメラーゼの阻害についてのアッセイ
このアッセイは、ヘテロマーRNAテンプレートに対するC型肝炎ウイルス(HCV)のRNA依存性RNAポリメラーゼ(NS5B)の酵素活性を阻害する本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートの能力を測定するために使用された。
【0120】
手順
アッセイ緩衝液条件(50μL総量/反応)
20mM Tris(pH7.5)
50μM EDTA
5mM DTT
2mM MgCl
80mM KCl
0.4U/μLのRNAsin(Promega、ストック溶液は40ユニット/μLである)
0.75μgのt500(C型肝炎ゲノムのNS2/3領域からの配列を用いてT7ランオフ転写を使用して作製された500ntのRNA)
1.6μgの精製されたC型肝炎NS5B(21アミノ酸がC末端から短縮された形態)
1μMのATP/CTP/UTP/GTP(ヌクレオシド三リン酸のミックス)
[α−32P]−GTPまたは[α−33P]−GTP
化合物を100μMまでの最終濃度の様々な濃度で調べた。
【0121】
酵素およびテンプレートのt500を含む適切な体積の反応緩衝液を作製した。本発明のヌクレオシド誘導体を96ウエルプレートのウエルにピペットで加えた。ヌクレオシド三リン酸(NTPs)の混合物(放射能標識されたGTPを含む)を作製し、96ウエルプレートのウエルにピペットで加えた。反応を酵素−テンプレート反応液の添加によって開始させ、室温で1時間から2時間進行させた。
【0122】
反応を20μLの0.5M EDTA(pH8.0)の添加によって停止させた。停止溶液が反応緩衝液の添加の前にNTPsに添加されたブランク反応を含めた。
【0123】
50μLの停止させた反応液をDE81フィルターディスク(Whatman)にスポットし、30分間乾燥させた。フィルターを0.3Mギ酸アンモニウム(pH8)で洗浄した(150mL/洗浄、1mLの洗浄液におけるcpmが100未満になるまで、通常の場合には6回)。フィルターを5mLのシンチレーション液においてシンチレーションカウンターで計数した。
【0124】
阻害率を下記の式に従って計算した:
%阻害=[1−(試験反応でのcpm−ブランクでのcpm)/(コントロール反応でのcpm−ブランクでのcpm)]x100。
【0125】
HCVのNS5Bポリメラーゼのアッセイで調べられた代表的な化合物は100マイクロモル濃度未満のIC50を示した。
【0126】
B.HCVのRNA複製の阻害についてのアッセイ:
本発明の化合物はまた、サブゲノムのHCVレプリコンを含有する培養された肝ガン(HuH−7)細胞におけるC型肝炎ウイルスRNAの複製に影響を及ぼすこの能力についても調べられた。アッセイの詳細を下記に記載する。このレプリコンアッセイは、V.Lohmann、F.Korner、J−O.Koch、U.Herian、L.TheilmannおよびR.Bartenschlager、「肝ガン細胞株におけるサブゲノムのC型肝炎ウイルスRNAの複製」、Science、285:110(1999)に記載されるアッセイの改変である。
【0127】
プロトコル:
このアッセイは、インシトゥーリボヌクレアーゼ保護、シンチレーション近接に基づくプレートアッセイ(SPA)である。10,000個から40,000個の細胞を、96ウエルのcytostarプレート(Amersham)で、0.8mg/mLのG418を含有する100μLから200μLの培地において置床した。化合物を、0時間から18時間の時間で、1%DMSOにおける100μMまでの様々な濃度で細胞に加え、この後、24時間から96時間培養した。細胞を固定し(20分間、10%ホルマリン)、予備透過処理し(20分間、0.25%Triton X−100/PBS)、RNAウイルスゲノムに含有される(+)鎖NS5B(または他の遺伝子)に対して相補的な一本鎖の33P−RNAプローブを用いてハイブリダイゼーションした(一晩、50℃)。細胞を洗浄し、RNAseで処理し、洗浄し、65℃に加熱し、Top−Countで計数した。複製の阻害をカウント/分(cpm)での減少として読み取った。
【0128】
ヒトHuH−7肝ガン細胞(これは、サブゲノムのレプリコンを含有するように選択された)は、HCVの5’非翻訳領域(NTR)、ネオマイシン選択マーカー、EMCVのIRES(内部リボソーム進入部位)およびHCVの非構造タンパク質(NS3からNS5B)、それに続く3’NTRからなる細胞質RNAを有する。
【0129】
この複製アッセイで調べられた代表的な化合物は100マイクロモル濃度未満のEC50を示した。
【0130】
C.細胞内代謝についてのアッセイ:
本発明の化合物はまた、ヒト肝ガン細胞株の中に入り、対応するヌクレオシド5’−モノホスファート、ヌクレオシド5’−ジホスファートおよびヌクレオシド5’−トリホスファートに細胞内で変換されるこの能力についても評価された。
【0131】
2つの細胞株(HuH−7およびHBI10A)を本発明の化合物の細胞内代謝研究のために使用した。HuH−7はヒト肝ガン細胞株であり、HBI10Aは、HCVの二シストロン性レプリコンを有するHuH−7細胞由来のクローン株を示す。HuH−7細胞を、細胞が化合物添加時に80%のコンフルエンスになるように1.5x10細胞/60mmディッシュで、10%のウシ胎児血清を含有する完全ダルベッコ改変イーグル培地に置床し、HBI10A細胞を、G418(0.8mg/mL)を含有する同じ培地において同じ密度で置床した。トリチウム化された化合物を細胞培地において2μMで3時間から23時間インキュベーションした。細胞を集め、リン酸塩緩衝化生理的食塩水により洗浄し、計数した。この後、細胞を70%メタノール、20mM EDTA、20mM EGTAにおいて抽出し、遠心分離した。ライセートを乾燥し、放射能標識されたヌクレオチドを、インラインβ−RAMシンチレーション検出器(IN/US Systems)に接続されたWaters Milleniumシステムでのイオンペア逆相(C−18)HPLCを使用して分析した。HPLC移動相は、(a)2mMの水酸化テトラブチルアンモニウムを伴う10mMのリン酸カリウム、および(b)10mMのリン酸カリウムを2mMの水酸化テトラブチルアンモニウムとともに含有する50%のメタノールからなった。ピーク同定を標準物に対する保持時間の比較によって行った。活性が、10個のHuH−7細胞またはHBI10A細胞で検出されたヌクレオチドのピコモル数として表される。
【0132】
本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートはまた、下記に記載されるカウンタースクリーニングにおいて細胞毒性および抗ウイルス特異性についても評価された。
【0133】
C.カウンタースクリーニング:
ヒトのDNAポリメラーゼを阻害する本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートの能力を下記のアッセイで測定した。
【0134】
a.ヒトDNAポリメラーゼαおよびβの阻害:
反応条件:
50μLの反応体積
反応緩衝液の構成成分:
20mM Tris−HCl(pH7.5)
200μg/mL ウシ血清アルブミン
100mM KCl
2mM β−メルカプトエタノール
10mM MgCl
1.6μMのdATP/dGTP/dCTP/dTTP
α−33P−dATP
酵素およびテンプレート:
0.05mg/mLのギャップ化処理されたサカナ精子DNAテンプレート
0.01U/μLのDNAポリメラーゼαまたはβ
ギャップ化処理されたサカナ精子DNAテンプレートの調製:
5μLの1M MgClを500μLの活性化されたサカナ精子DNA(USB70076)に加える;
37℃に加温し、30μLの65U/μLのエキソヌクレアーゼIII(GibcoBRL18013−011)を加える;
37℃で5分間インキュベーションする;
反応を65℃での10分間の加熱によって停止させる;
50μLから100μLの量を、20mMのTris−HCl(pH7.5)で平衡化されたBio−spin6クロマトグラフィーカラム(Bio−Rad732−6002)に負荷する;
1,000Xgでの4分間の遠心分離によって溶出する;
溶出液をプールし、吸光度を260nmで測定して、濃度を求める。
【0135】
DNAテンプレートを適切な体積の20mM Tris−HCl(pH7.5)に希釈し、酵素を、2mMのβ−メルカプトエタノールおよび100mMのKClを含有する適切な体積の20mM Tris−HCl(pH7.5)に希釈した。テンプレートおよび酵素を微量遠心チューブまたは96ウエルプレートにピペットで入れた。酵素を含まないブランク反応液、および、試験化合物を含まないコントロール反応液もまた、酵素希釈緩衝液および試験化合物溶媒をそれぞれ使用して調製した。反応を、上記で示されたような構成成分を伴う反応緩衝液により開始した。反応液を37℃で1時間インキュベーションした。反応を20μLの0.5M EDTAの添加によって停止させた。50μLの停止させた反応液をWhatman DE81フィルターディスクにスポットし、風乾した。フィルターディスクを、1mLの洗浄液が100cpm未満になるまで、150mLの0.3Mギ酸アンモニウム(pH8)により繰り返し洗浄した。ディスクを150mLの無水アルコールにより2回洗浄し、次いで150mLの無水エーテルにより1回洗浄し、乾燥し、5mLのシンチレーション液において計数した。
【0136】
阻害率を下記の式に従って計算した:%阻害=[1−(試験反応でのcpm−ブランクでのcpm)/(コントロール反応でのcpm−ブランクでのcpm)]x100。
【0137】
b.ヒトDNAポリメラーゼγの阻害:
ヒトDNAポリメラーゼγの阻害についての可能性を、0.5ng/μLの酵素;10μLのdATP、dGTP、dCTPおよびTTP;2μCi/反応の[α−33P]−dATP、および、0.4μg/mLの活性化されたサカナ精子DNA(US Biochemicalsから購入)を、20mMのTris(pH8)、2mMのβ−メルカプトエタノール、50mMのKCl、10mMのMgClおよび0.1μg/mLのBSAを含有する緩衝液に含む反応液において測定した。反応を37℃で1時間行わせ、0.5M EDTAを142mMの最終濃度に加えることによって停止させた。生成物の形成を、アニオン交換フィルターへの結合およびシンチレーション計数によって定量した。化合物を50μMまでの濃度で調べた。
【0138】
阻害率を下記の式に従って計算した:%阻害=[1−(試験反応でのcpm−ブランクでのcpm)/(コントロール反応でのcpm−ブランクでのcpm)]x100。
【0139】
HIVの感染性およびHIVの拡大を阻害する本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートの能力を下記のアッセイで測定した。
【0140】
c.HIV感染性アッセイ
アッセイを、低いバックグラウンドのβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)発現のために選択された、CXCR4およびCCR5の両方を発現するHeLa Magi細胞の変化体を用いて行った。細胞を48時間感染させ、組み込まれているHIV−1のLTRプロモーターからのβ−gal産生を、化学発光基質(Galactolight Plus、Tropix、Bedford、MA)を用いて定量した。阻害剤を、100μMから出発する2倍連続希釈物において(二連で)力価測定した。各濃度における阻害率をコントロールの感染に関して計算した。
【0141】
d.HIV拡大の阻害
ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)の拡大を阻害する本発明の化合物の能力を、米国特許第5,413,999号(1995年5月9日)およびJ.P.Vaccaら、Proc.Natl.Acad.Sci.、91:4096−4100(1994)(これらはこの全体が参照により組み込まれる)に記載される方法によって測定した。
【0142】
本発明のヌクレオシドアリールホスホルアミダートはまた、下記のアッセイにおいて記載されるようなMTS細胞型アッセイで、サブゲノムのHCVレプリコンを含有する培養された肝ガン(HuH−7)細胞に対する細胞毒性についてもスクリーニングされた。
【0143】
e.細胞毒性アッセイ:
細胞培養物を、3日間のインキュベーションでの懸濁培養物については約1.5x10細胞/mLの濃度で、また、3日間のインキュベーションでの接着性培養物については5.0x10細胞/mLの濃度で適切な培地において調製した。99μLの細胞培養物を96ウエルの組織培養処理プレートのウエルに移し、DMSOにおける100倍の最終濃度の試験化合物の1μLを加えた。プレートを指定された期間にわたって37℃および5%COでインキュベーションした。インキュベーション期間の後、20μLのCellTiter 96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay試薬(MTS)(Promega)を各ウエルに加え、プレートを3時間までのさらなる期間にわたって37℃および5%COでインキュベーションした。プレートを振とうして十分に混合し、490nmにおける吸光度を、プレートリーダーを使用して読み取った。懸濁培養細胞の標準曲線を、MTS試薬添加直前の既知の細胞数を用いて調製した。代謝活性な細胞はMTSをホルマザンに還元する。ホルマザンは490nmで吸収する。化合物の存在下での490nmにおける吸光度を、化合物が何ら添加されていない細胞における吸光度と比較した。
参考文献:Cory,A.H.ら、「培養での細胞成長アッセイのための水溶性テトラゾリウム/ホルマザンアッセイの使用」、Cancer Commun.、3:207(1991)。
【0144】
下記のアッセイを、他のRNA依存性RNAウイルスに対する本発明の化合物の活性を測定するために用いた。
【0145】
a.ライノウイルスに対する化合物のインビトロ抗ウイルス活性の測定(細胞変性作用阻害アッセイ):
アッセイ条件が、SidwellおよびHuffman、「抗ウイルス誘導研究およびインターフェロン誘導研究のための使い捨てミクロ組織培養プレートの使用」、Appl.Microbiol.、22:797−801(1971)による論文に記載される。
【0146】
ウイルス:
ライノウイルス2型(RV−2)(HGP株)を、SidwellおよびHuffmanの参考文献で述べられたようにKB細胞および培地(0.1%NaHCO、抗生物質なし)とともに使用した。このウイルスは、ATCCから得られたが、軽度の急性熱性上部気道疾患の成人男性の咽頭スワブ物に由来した。
【0147】
ライノウイルス9型(RV−9)(211株)およびライノウイルス14型(RV−14)(Tow株)もまた、American Type Culture Collecton(ATCC)(Rockville、MD)から得た。RV−9はヒト咽頭洗浄物に由来し、RV−14は上部気道疾患の若い成人の咽頭スワブ物に由来した。これらのウイルスはともに、ヒト子宮頸部類上皮ガン細胞であったHeLa Ohio−1細胞(Fred Hayden博士、Univ.of VA)とともに使用された。5%のウシ胎児血清(FBS)および0.1%のNaHCOを伴うMEM(イーグル最少必須培地)を成長培地として使用した。
【0148】
3つすべてのウイルスタイプについての抗ウイルス試験培地は、5%のFBS、0.1%のNaHCO、50μg/mLのゲンタマイシンおよび10mMのMgClを伴うMEMであった。
【0149】
2000μg/mLが、本発明の化合物をアッセイするために使用された最高濃度であった。ウイルスを試験化合物の約5分後にアッセイプレートに加えた。適切なコントロールもまた処理された。アッセイプレートを、加湿空気および5%COを用いて37℃でインキュベーションした。細胞毒性を形態学的変化について顕微鏡でコントロール細胞においてモニターした。ウイルスCPEデータおよび毒性コントロールデータの回帰分析により、ED50(50%有効用量)およびCC50(50%細胞毒性濃度)を得た。選択性指数(SI)を、SI=CC50/ED50の式によって計算した。
【0150】
b.デングウイルス、バンジウイルスおよび黄熱ウイルスに対する化合物のインビトロ抗ウイルス活性の測定(CPE阻害アッセイ)
アッセイの詳細は上記のSidwellおよびHuffmanの参考文献に示される。
【0151】
ウイルス:
デングウイルス2型(New Guinea株)を疾病対策センターから得た。2系統のアフリカミドリザル腎臓細胞を使用して、ウイルスを培養し(Vero)、また、抗ウイルス試験を行った(MA−104)。黄熱ウイルス(17D株)(これは感染マウスの脳から調製された)およびバンジウイルス(H336株)(これは南アフリカにおける熱病少年の血清から単離された)の両方をATCCから得た。Vero細胞を、これらのウイルスの両方とともに、また、アッセイのために使用した。
【0152】
細胞および培地:
MA−104細胞(BioWhittaker,Inc.、Walkersville、MD)およびVero細胞(ATCC)を、5%のFBSおよび0.1%のNaHCOを伴い、および、抗生物質を伴わない培地199において使用した。
デングウイルス、黄熱ウイルスおよびバンジウイルスについてのアッセイ培地は、2%のFBS、0.18%のNaHCOおよび50μg/mLのゲンタマイシンを伴うMEMであった。
【0153】
本発明の化合物の抗ウイルス試験をSidwellおよびHuffmanの参考文献に従って行った。この試験は上記のライノウイルス抗ウイルス試験と同様であった。適切な細胞変性作用(CPE)の読み取りをこれらのウイルスのそれぞれについて5日後から6日後に達成した。
【0154】
c.ウエストナイルウイルスに対する化合物のインビトロ抗ウイルス活性の測定(CPE阻害アッセイ)
アッセイの詳細は、上記で引用されたSidwellおよびHuffmanの参考文献に示される。ウエストナイルウイルス(カラスの脳に由来するNew York単離体)を疾病対策センターから得た。Vero細胞を上記のように成長させ、使用した。試験培地は、1%のFBS、0.1%のNaHCOおよび50μg/mLのゲンタマイシンを伴うMEMであった。
【0155】
本発明の化合物の抗ウイルス試験を、ライノウイルス活性についてアッセイするために使用された方法と類似するSidwellおよびHuffmanの方法に従って行った。適切な細胞変性作用(CPE)の読み取りを5日後から6日後に達成した。
【0156】
d.ライノウイルス、黄熱ウイルス、デングウイルス、バンジウイルスおよびウエストナイルウイルスに対する化合物のインビトロ抗ウイルス活性の測定(ナチュラルレッド取り込みアッセイ)
上記のCPE阻害アッセイを行った後、「インターフェロンについてのマイクロタイターアッセイ:細胞変性作用の微量分光光度法による定量」、Appl.Environ.Microbiol.、31:35−38(1976)に記載されるさらなる細胞変性検出法を使用した。Model EL309マイクロプレートリーダー(Bio−Tek Instruments Inc.)を使用して、アッセイプレートを読み取った。ED50およびCD50を上記のように計算した。
【0157】
(医薬配合物の実施例)
本発明の化合物の経口用配合物の1つの具体的な実施態様として、50mgの実施例1または実施例2の化合物が、580mgから590mgの総量を提供するための十分に細かく分割されたラクトースを用いて配合され、サイズOのハードゼラチンカプセルに充填される。
【0158】
本発明がこの具体的な実施態様を参照して記載および例示されているが、当業者は、様々な変化、改変および代用が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、このような実施態様において行われ得ることを理解する。例えば、本明細書中上記で示されるような好ましい用量とは異なる効果的な投与量が、HCV感染の重篤度のために、処置されているヒトの応答性における変動の結果として適用可能となる場合がある。同様に、観測された薬理学的応答は、選択された特定の活性な化合物、または、医薬用キャリアが存在するかどうか、ならびに、用いられた配合物のタイプおよび投与様式、および、本発明の目的および実施に従って意図される結果におけるこのような予測される変動または違いに従って、また、それらに依存して変化し得る。従って、本発明は下記の請求項の範囲によってのみ限定されるだけであり、また、このような特許請求の範囲は、妥当であるほど広く解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造式Iの化合物またはこの医薬的に許容される塩
【化1】

(式中、
YはCRまたはNであり;
Arは非置換フェニルであるか、または、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシ、トリフルオロメチル、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C1−4アルキルカルボニル、C1−4アルキルカルボニルオキシおよびC1−4アルキルオキシカルボニルからなる群から独立して選択される1個から3個の置換基により置換されたフェニルであり;
は、水素、フルオロ、アジド、アミノ、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、メルカプトおよびC1−3アルキルチオからなる群から選択され;
およびRはそれぞれが独立して、水素、メチル、C1−16アルキルカルボニル、C2−18アルケニルカルボニル、C1−10アルキルオキシカルボニル、C3−6シクロアルキルカルボニルおよびC3−6シクロアルキルオキシカルボニルからなる群から選択され;
は、水素、ハロゲン、メチル、アジドまたはアミノであり;
およびRはそれぞれが独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−4アルコキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、ジ(C3−6シクロアルキル)アミノ、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノまたはC4−6ヘテロシクロアルキルからなる群から選択され、ここで、アルキル、シクロアルキル、ベンジルおよびヘテロシクロアルキルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から5個の基により置換され;
は、水素、C1−5アルキル、フェニルまたはベンジルであり、
ここで、アルキルは非置換であるか、または、ヒドロキシ、メトキシ、アミノ、カルボキシ、カルバモイル、グアニジノ、メルカプト、メチルチオ、1H−イミダゾリルおよび1H−インドール−3−イルからなる群から選択される1個の置換基により置換され、ならびにフェニルおよびベンジルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシおよびメトキシからなる群から独立して選択される1個から2個の置換基により置換され;
は、水素、C1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはベンジルであり、
ここで、アルキルおよびシクロアルキルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、C1−4アルコキシからなる群から独立して選択される1個から3個の置換基により置換され、ならびにフェニルおよびベンジルは非置換であるか、または、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C1−4アルコキシおよびトリフルオロメチルからなる群から独立して選択される1個から3個の置換基により置換され;
は、水素、フッ素、シアノ、C1−3アルキル、NHCONH、CONR1010、CSNR1010、COOR10、C(=NH)NH、ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノおよびジ(C1−4アルキル)アミノからなる群から選択され;
各R10は独立して、水素またはC1−6アルキルであり;および
11は水素またはメチルである)。
【請求項2】
YがNであり、Rが水素またはフルオロであり、ならびにRおよびRが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
YがCRであり、Rが水素またはフルオロであり、ならびにRおよびRが水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が水素またはフルオロである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が水素である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Arが非置換フェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
11が水素であり、ならびにRが、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、イソブチル、2−メチル−1−プロピル、ヒドロキシメチル、メルカプトメチル、カルボキシメチル、カルバモイルメチル、1−ヒドロキシエチル、2−カルボキシエチル、2−カルバモイルエチル、2−メチルチオエチル、4−アミノ−1−ブチル、3−アミノ−1−プロピル、3−グアニジノ−1−プロピル、1H−イミダゾール−4−イルメチル、フェニル、4−ヒドロキシベンジルおよび1H−インドール−3−イルメチルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
がメチルまたはベンジルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
が、C1−6アルキル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
がメチルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
Arが非置換フェニルであり、Rがメチルまたはベンジルであり、Rがメチルであり、ならびにR11が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
下記の化合物からなる群から選択される、請求項12に記載の化合物
【化2】


またはこの医薬的に許容される塩。
【請求項14】
請求項1に記載される化合物と、医薬的に許容されるキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項15】
哺乳動物におけるC型肝炎ウイルスの感染を処置するための、請求項1に記載される化合物の使用。
【請求項16】
哺乳動物におけるC型肝炎ウイルスの感染を処置するための医薬品を製造することにおける、請求項1に記載される化合物の使用。

【公表番号】特表2008−504265(P2008−504265A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518162(P2007−518162)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/021684
【国際公開番号】WO2006/012078
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】