説明

RTM成形用樹脂注入装置およびそれを用いたRTM成形装置とRTM成形方法

【課題】注入樹脂の不都合な硬化を防止して望ましい円滑な樹脂注入操作を可能とし、かつ、使い捨てのチューブ等を用いなくても樹脂流路の開閉を可能とする熱硬化性樹脂を用いてRTM成形を行う方法の提供。
【解決手段】熱硬化性の液状樹脂28を、強化繊維基材5が配置された金型4内部へと注入するために金型4に取り付けられ、外部から供給される液状樹脂28を導入する樹脂導入路と、導入された液状樹脂28を金型4内へと注入する樹脂注入路8とからなる樹脂流路が内部に形成され、樹脂導入路と樹脂注入路8が連通される樹脂注入状態と、該連通が遮断される流路閉止状態とを切り替え可能な樹脂流路開閉機構10と、樹脂導入路の温度T1と、樹脂注入路8の金型側先端部の温度T2の差(T2−T1)を30℃以上とする温度調整手段とを有することを特徴とするRTM成形用樹脂注入装置1、およびそれを用いたRTM成形装置とRTM成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP(繊維強化樹脂)成形品のRTM(Resin Transfer Molding)成形に用いられるRTM成形用樹脂注入装置と、それを用いたRTM成形装置およびRTM成形方法に関し、とくに、金型内に効率よく円滑に樹脂を注入できるようにしたRTM成形用樹脂注入装置およびそれを用いたRTM成形装置とRTM成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維基材を金型からなる成形型の内部に配置し、成形型内部に液状の熱硬化性樹脂を注入して強化繊維基材に含浸させ、次いで樹脂を硬化させることでFRP成形品を得るRTM成形が知られている(例えば、特許文献1)。このようなRTM成形においては、成形品を形成する熱硬化性樹脂が、その主剤と硬化剤の混合機(ミキサー機構)から成形型までの経路においても硬化してしまうことがある。
【0003】
そのために、成形型への樹脂注入部分には、内部で樹脂が硬化しても簡単に交換できるよう使い捨ての樹脂チューブを用いる必要があった。また、樹脂流路を閉止する場合も通常のバルブを用いることが困難であり、樹脂チューブをクランプで挟むなどの方法に頼っており、自動化に対応しきれていなかった。さらに、樹脂混合機から成形型までの樹脂流路を常設化する場合には、樹脂経路内に残存した樹脂が硬化する前に溶剤で洗浄する必要もあり、作業性が悪かった。
【特許文献1】特開2007−7910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の課題は、上記のような実情に鑑み、熱硬化性樹脂を用いてRTM成形を行う場合において、注入樹脂の不都合な硬化を防止して望ましい円滑な樹脂注入操作を可能とし、かつ、使い捨てのチューブ等を用いなくても樹脂流路の開閉を可能とすることにある。また、樹脂供給経路内の洗浄を不要とし、成形サイクル全体の作業性を向上するとともに、洗浄に伴い発生していた樹脂の廃棄を無くし、材料の使用効率を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係るRTM成形用樹脂注入装置は、熱硬化性の液状樹脂を、強化繊維基材が配置された金型内部へと注入するために金型に取り付けられ、外部から供給されてくる液状樹脂を導入する樹脂導入路と、該樹脂導入路を通して導入された液状樹脂を金型内へと注入する樹脂注入路とからなる樹脂流路が内部に形成されたRTM成形用樹脂注入装置であって、樹脂導入路と樹脂注入路が連通される樹脂注入状態と、該連通が遮断される流路閉止状態とを切り替え可能な樹脂流路開閉機構と、樹脂導入路の温度T1と、樹脂注入路の金型側先端部(つまり、樹脂注入路の金型内キャビティ面に到達する先端部)の温度T2との差(T2−T1)を30℃以上とする温度調整手段とを有することを特徴とするものからなる。
【0006】
このようなRTM成形用樹脂注入装置においては、樹脂導入路と樹脂注入路とからなる樹脂流路の開閉機構が設けられ、該樹脂流路開閉機構により樹脂注入状態と流路閉止状態(樹脂注入停止状態)とに切り替えられる。樹脂注入路は、金型側に位置し金型に接触するために、金型からの受熱によって高温になるが、この受熱部からの熱により樹脂導入路側が高温になって樹脂が硬化するのを防止するために、樹脂導入路と樹脂注入路の金型側先端部との温度差が温度調整手段により予め定めた所定値以上となるように調整される。とくに本発明では、温度調整手段により、樹脂流路の樹脂導入路の温度T1と、樹脂注入路の金型内キャビティ面に到達する先端部の温度T2との差(T2−T1)が30℃以上、好ましくは50℃以上となるように、樹脂導入路側の温度が相対的に低く抑えられる。この温度差(T2−T1)が30℃以上、好ましくは50℃以上あれば、樹脂導入路内の樹脂の硬化速度が十分に遅くなる。一方(T2−T1)の差が90℃以上になると、樹脂の粘度が高くなり、流動抵抗が大きくなったり、基材への含浸が悪くなったりする。
【0007】
温度調整手段の一例として、以下のような冷却手段を用いることができる。冷却手段により、樹脂導入路の温度T1が、樹脂注入路の金型内キャビティ面に到達する先端部の温度T2よりも30℃以上、好ましくは50℃以上低くなるように冷却される。つまり、金型から離れた流路位置では、冷却手段による冷却によって、受熱部に隣接する内部の樹脂が硬化しないように低温に保たれる。この冷却により、樹脂導入路側における樹脂の熱硬化が防止され、常時、樹脂流路の円滑な開閉操作が可能となる。また、流路閉止時においても、樹脂導入路等における滞留樹脂が低温に保たれることによりこの樹脂滞留部での樹脂硬化の発生が防止され、樹脂流路開閉機構は円滑に動作できる状態に保たれる。その結果、使い捨てのチューブ等を用いなくても樹脂流路の開閉が可能になり、さらに、樹脂供給経路内の洗浄の不要化も可能になる。
【0008】
上記の冷却手段の冷媒としては、例えば冷却水や他の冷媒を用いることができる。冷媒の流路は、例えば装置内の冷却すべき部位の周囲に形成しておけばよく、例えば冷媒流路を埋設しておくことができる。
【0009】
また、上記RTM成形用樹脂注入装置においては、上記流路閉止状態において、装置内の金型内キャビティ面に到達する先端部の温度T2が、先端部周辺の金型キャビティ面の温度より低過ぎると、低温部分で樹脂の硬化不良が生じ、良好な成形品が得られない。低温であっても時間をかけることで樹脂は硬化するが、成形時間が長くなり、生産性が著しく悪化する。金型内キャビティ面に到達する先端部から100mm離れた金型キャビティ面の温度T3との温度差(T3−T2)が20℃以内であれば、先端部周囲や先端部の温度が短時間で樹脂を硬化させるためには十分でなくても、先端部周辺のキャビティ面からの伝熱や、対向する型のキャビティ面からの受熱によって樹脂の硬化が進み、硬化時間を延長しなくても概ね良好な硬化状態が得られる。温度差(T3−T2)が10℃以内であれば全く影響はない。逆に、温度差(T3−T2)が20℃よりも大きくなる場合は、良好な成形品を得るためには、温度差に応じて硬化時間を長く取る必要があり、生産性が悪化する。
【0010】
また、上記樹脂流路開閉機構は、液状樹脂の漏出を防止するシール機構を備えていることが好ましい。すなわち、開閉動作のいずれのタイミングにおいても、シール機構により液状樹脂の漏出が防止されることが好ましい。
【0011】
また、上記樹脂流路開閉機構の好ましい形態として、後述の実施態様にも示されるように、樹脂注入路内にスライド可能なピストンを備えたピストンバルブからなる形態が望ましい。このようなピストンバルブを用いると、上記流路閉止状態においては、樹脂注入路内の実質的に全体を(あるいは大半を)ピストンで埋めることが可能になり、この樹脂注入路内には実質的に樹脂が滞留していない状態を現出可能となる。このようにすれば、樹脂注入路内における樹脂硬化はより確実に防止され、それによって樹脂流路開閉機構の円滑な動作が確実に確保されることになる。ただし、樹脂流路開閉機構の形態としてはピストンバルブ形態に限定されず、同様の機能を発揮できるものであれば、他の開閉機構を採用できる。
【0012】
樹脂流路開閉機構としてピストンバルブを用いる場合、樹脂注入路の内壁とピストンの間に残存した樹脂が受熱により粘度上昇あるいは硬化してしまった場合であっても、ピストンバルブを作動させるための駆動力、つまり、ピストンがスライド動作を行える駆動力が確保されていることが好ましい。駆動力が小さいと樹脂流路内壁とピストンが固着し動作できなくなる。一方駆動力が大きすぎると、樹脂注入装置全体が大型化し所望の場所へ設置することが困難になったり、設備費用が大きくなる。
【0013】
このように大きい駆動力が必要となるのは、樹脂注入路とピストンの間に残留した樹脂が硬化した場合であり、駆動力をピストンバルブが“閉”状態のときに(つまり、樹脂流路が閉止状態にあるときに)樹脂注入路内部に滞在するピストンの側面の表面積で除した値が、5MPa以上であることが好ましい。10MPa以上であれば、受熱が大きかったり、受熱時間が長かったりして、残留樹脂の硬化が大きく進展した場合であっても、ピストンバルブが固着して動作不良を生じることがない。一方、25MPa以上とすると、装置全体が大型化し所望の場所へ設置することが困難になったり、設備費用が大きくなるので、好ましくない。
【0014】
ピストンバルブを駆動するための具体的手段としては、例えば、油圧ポンプによって駆動される油圧シリンダをピストンバルブに接続する方法などがあるが、その他の各種アクチュエータも用いることができる。
【0015】
本発明は、上記のようなRTM成形用樹脂注入装置を用いたRTM成形装置とRTM成形方法についても提供する。すなわち、本発明に係るRTM成形装置は、少なくとも、上記のようなRTM成形用樹脂注入装置と、液状樹脂の主剤と硬化剤を貯留する貯槽、各貯槽から主剤と硬化剤を計量吐出するポンプ機構、計量吐出された主剤と硬化剤を混合するミキサー機構、該ミキサー機構から前記RTM成形用樹脂注入装置への樹脂供給路、RTM成形用の金型、および該金型からの樹脂排出路から構成されてなるものである。
【0016】
装置全体を小型化するためには、樹脂注入路が短いことが好ましく、そのためには、金型の厚さを薄くすることが有効である。金型の厚さを薄くすることで、金型の剛性低下や温調手段の設置が困難になるなどの問題が生じる場合は、例えば、樹脂注入装置を設置する部分の周辺部の金型を掘り込むなどの方法によって、局所的に金型の厚さを薄くすることも有効である。
【0017】
このようなRTM成形装置においては、上記樹脂供給路にも、内部の液状樹脂を温度調整する温度調整手段が設けられていることが好ましい。特に、内部の液状樹脂を冷却する冷却手段が設けられていることがより好ましい。これによって、熱硬化性液状樹脂の供給経路全般にわたって、適切に樹脂硬化を防ぐことができるようになる。
【0018】
また、上記樹脂排出路に、樹脂の排出を制御可能な開閉弁が設けられており、該開閉弁と金型の間に、樹脂排出の際に金型内から流出してきた強化繊維(つまり、金型内に配置された強化繊維基材における毛羽等が流出したもの)を捕捉可能な濾過機構が設けられていることが好ましい。金型内に樹脂を注入し、少量の余剰樹脂を金型内から排出させることにより、金型内に気泡等が残って成形不良の原因となることを未然に防止可能であるが、この樹脂排出の際に強化繊維毛羽等も流出してくることがある。とくに強化繊維毛羽のかたまりが流出してくると、樹脂の排出を制御する開閉弁の動作不良の原因となるおそれがあることから、開閉弁の手前で流出してきた強化繊維を捕捉するようにしたものである。樹脂排出量は少量であり、たとえ強化繊維毛羽が流出してきても少量であるから、濾過機構に詰まりが生じることはない。
【0019】
また、本発明に係るRTM成形方法は、前述のようなRTM成形用樹脂注入装置を用いて、金型内部へと注入される液状樹脂の温度を、前記樹脂流路の部位に応じて相対的に低温と高温とに制御することを特徴とする方法からなる。すなわち、樹脂硬化が望ましくない部位は低温に制御され、より金型に近い部位は、熱硬化性樹脂の適切な硬化反応を妨げないよう、相対的に高温になることが許容される。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明に係るRTM成形用樹脂注入装置によれば、熱硬化性の液状樹脂を金型に注入するに際し、樹脂供給経路における注入樹脂の不都合な硬化を防止でき、望ましい円滑な樹脂注入操作および円滑な注入の開始、停止動作が可能となる。また、注入樹脂の硬化を防止できるので、使い捨てのチューブ等を用いなくても樹脂流路の開閉が可能になり、かつ、樹脂供給経路内の洗浄を不要化することも可能となる。したがって、成形サイクル全体の作業性を向上でき、生産性を向上できる。また、従来の洗浄に伴い発生していた樹脂廃棄量を削減でき、樹脂材料の使用効率を高めることも可能となる。
【0021】
また、このようなRTM成形用樹脂注入装置を用いた本発明に係るRTM成形装置およびRTM成形方法によれば、樹脂注入を円滑に行うことができ、繰り返し成形を行う場合にもタクトタイムの短縮をはかることができ、FRP成形品の生産効率を大幅に高めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図3は、本発明の一実施態様に係るRTM成形用樹脂注入装置およびそれを用いたRTM成形装置を示しており、これらを用いたRTM成形方法とともに、以下に説明する。図1に示すRTM成形装置1においては、下型2と上型3からなる成形型としての金型4内に強化繊維基材5が配置され、この金型4内に、FRP成形品のマトリックス樹脂となる熱硬化性樹脂が液状の状態で注入される。この注入のために、金型4に、RTM成形用樹脂注入装置6が取り付けられている。また、図4〜図6は、本発明の他の実施態様に係るRTM成形用樹脂注入装置およびそれを用いたRTM成形装置を示している。図1〜図3に係る装置に対して、RTM成形用樹脂注入装置6が、金型4の上型3の上方から取り付けられている点で異なる。また、下型2には、成形型外部と空気や液体の流通を遮断するシール材15が取り付けられている。
【0023】
RTM成形用樹脂注入装置6内には、図2および図3、もしくは図5および図6にも示すように、外部から供給されてくる液状樹脂を導入する樹脂導入路7と、該樹脂導入路7を通して導入された液状樹脂を金型4内へと注入する樹脂注入路8とからなる樹脂流路9が形成されている。また、RTM成形用樹脂注入装置6には、樹脂流路9を開閉する樹脂流路開閉機構10が設けられており、該樹脂流路開閉機構10は、樹脂導入路7と樹脂注入路8が連通される樹脂注入状態と、該連通が遮断される流路閉止状態とを切り替える。本実施態様では、この樹脂流路開閉機構10は、樹脂注入路8内にスライド可能なピストン11と該ピストン11を往復動させるシリンダ12とからなるピストンバルブに構成されている。ピストン11は、図2もしくは図5に示すように樹脂導入路7の樹脂注入路8側開口部を開いて両者を連通させることができるとともに、図3もしくは図6に示すように、流路閉止時には、この連通を遮断するとともに樹脂注入路8内を埋めて実質的に樹脂注入路8内には樹脂が滞留しないようになっている。また、この樹脂流路開閉機構10において、とくにそのピストン11部分は、樹脂流路9からの液状樹脂の漏出を防止するシール機構を構成している。
【0024】
さらに、樹脂注入路8の先端は成形面と段差のない形状に加工されており、またピストンバルブの先端も“閉”時には成形面と段差のない形状となるよう加工されていることが好ましい。そうすることで、成形品の表面に樹脂注入路やピストンバルブの跡が残らない良好な表面が実現できる。
【0025】
この樹脂流路開閉機構10においては、樹脂導入路7の温度T1と、樹脂注入路8の金型4内キャビティ面に到達する先端部の温度T2との差(T2−T1)を30℃以上とする温度調整手段が設けられている。本実施態様では、温度調整手段として、樹脂導入路7の温度T1が、金型4内キャビティ面に到達する先端部の温度T2よりも50℃以上低くなるように冷却する冷却手段13が設けられている。金型4側に相対的に高温部の温度が例えば100℃に制御され、樹脂導入路7側の相対的に低温部の温度が例えば30℃に制御される。また本実施態様では、冷却手段13が主として樹脂導入路7の周囲に埋設された冷却ライン14を有しており、この冷却ライン14中を冷媒(例えば、冷却水)が循環されるようになっている。
【0026】
RTM成形装置1は、液状樹脂の主剤21を貯留する貯槽22と硬化剤23を貯留する貯槽24を有しており、各貯槽22、24からの主剤21と硬化剤23を計量吐出するポンプ機構25、26を備えている。計量吐出された主剤21と硬化剤23はミキサー機構27によって所定の液状樹脂として混合され、該液状樹脂28が、樹脂供給路29を介して上述のRTM成形用樹脂注入装置6に送られる。図示は省略するが、この樹脂供給路29にも、内部の液状樹脂を冷却する冷却手段が設けられていることが好ましい。また、樹脂供給路29は、フレキシブルなチューブ等で構成することも可能であり、固定配管仕様とすることも可能である。RTM成形用樹脂注入装置6からは、液状樹脂28がRTM成形用の金型4内に注入され、少量の液状樹脂28が金型内残留気泡等とともに樹脂排出路30を介して排出される。樹脂排出は、例えば減圧機構等(図示略)によって行うことができ、図示例では、排出されてきた樹脂を溜めるトラップ31が設けられている。本実施態様では、樹脂排出路30に、樹脂の排出を制御可能な開閉弁32が設けられており、該開閉弁32と金型4の間に(開閉弁32の上流側に)、樹脂排出の際に金型4内から流出してきた強化繊維(強化繊維基材5の毛羽等)を捕捉可能な濾過機構33が設けられている。
【0027】
上記のように構成されたRTM成形装置1においては、図2と図3、もしくは図5と図6に示すように、RTM成形用樹脂注入装置6の樹脂流路開閉機構10により、樹脂注入状態(図2または図5)と流路閉止状態(樹脂注入停止状態)(図3または図6)とに切り替えられる。そして、樹脂注入路8側は、金型4からの受熱によって相対的に高温に保たれるが(高温側)、樹脂導入路7側は、冷却手段13による冷却によって、樹脂注入路8の金型4側先端部の温度よりも50℃以上低くなるように制御される(低温側)。この冷却により、樹脂流路9の樹脂導入路7側における樹脂の熱硬化が防止され、常時、樹脂流路開閉機構10による樹脂流路9の円滑な開閉操作が可能となる。また、流路閉止時においても、とくに樹脂導入路7における滞留樹脂が低温に保たれるので、この樹脂滞留部での樹脂硬化の発生が防止され、樹脂流路開閉機構10が円滑に動作できる状態に保たれる。したがって、従来のように使い捨てのチューブ等を用いなくても樹脂流路9の開閉が可能になり、さらに、樹脂供給経路全体にわたって洗浄が不要となり、供給配管やチューブをそのままの状態にしておくことが可能になる。その結果、成形作業の効率を向上でき、生産性を向上できる。また、成形サイクルのタクトタイムの短縮も可能になる。また、洗浄の不要化により、樹脂材料の使用効率を高めることができるようになる。
【0028】
また、RTM成形装置1に液状樹脂が注入される際、樹脂注入路8が金型内キャビティ面に到達する先端部の温度T2と、先端部から100mm離れた金型キャビティ面の温度T3との温度差(T3−T2)が20℃以下になるように、金型キャビティ面の温度が制御されている。制御方法は特に制限がなく、金型キャビティ面に複数の温度センサ等を取り付けておき、先端部から100mm離れた金型キャビティ面の温度T3が上がり過ぎたり、もしくは先端部の温度T2が下がり過ぎたりしないように調整することができる。このように金型内の温度分布にムラがないようにすることで、液状樹脂が周辺部から先に硬化し始めることもなく、液状樹脂を強化繊維基材に均一に含浸させることができる。
【0029】
また、上記実施態様のように、樹脂排出路30の開閉弁32の上流側に濾過機構33を設ければ、樹脂排出の際に金型4内から流出してきた強化繊維(とくに強化繊維の毛羽)を開閉弁32の手前で捕捉することができ、開閉弁32の作動不良の発生を防止して、樹脂排出においても所望の円滑な作動を確保できる。その結果、成形工程全体にわたって、良好な操作、作動形態を維持できる。なお、開閉弁32の機構としては、注入装置と同様の機構を用いることができる。
【0030】
なお、本発明に係るRTM成形においてFRP(繊維強化樹脂)とは、強化繊維により強化された樹脂を指し、強化繊維基材に用いる強化繊維としては、炭素繊維の他、例えば、ガラス繊維等の無機繊維や、ケブラー繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ボロン繊維、PBO繊維などの有機繊維からなる強化繊維を使用することも可能である。FRP成形品の剛性等の制御の容易性の面からは、とくに炭素繊維が好ましい。FRPの熱硬化性のマトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。また、成形するFRP成形品の構成としては、FRP部分のみからなるものは勿論のこと、例えば、比重の小さいコア材を有し、そのコア材の片面側あるいは両面側にFRP板を配置した部材構成とすることも可能である。このようなコア材を有する場合のコア材の材質としては、弾性体や発泡材、ハニカム材の使用が可能であり、軽量化のためにはとくに発泡材が好ましい。発泡材の材質としては特に限定されず、例えば、ポリウレタンやアクリル、ポリスチレン、ポリイミド、塩化ビニル、フェノールなどの高分子材料のフォーム材などを使用できる。ハニカム材としては特に限定されず、例えばアルミニウム合金、紙、アラミドペーパー等を使用することができる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
<成形型>
図4に示すように、300mm×300mm、厚さ1.2mmのキャビティを有する上下金型からなる成形型を用意した。上型および下型の内部には複数の貫通孔が設けられており、温水を流すことで温度調整が可能になっている。また、樹脂注入路の先端部および先端部から100mm離れた位置の成形型キャビティ面には、温度センサが取り付けられている。
【0032】
<樹脂>
東レ(株)製のエポキシ樹脂TR−C35を使用した。このエポキシ樹脂は、主剤である”JER828”(ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ樹脂)と、硬化剤である東レ(株)製ブレンドTR−C35H(イミダゾール誘導体)とを、混合比を主剤:硬化剤=10:1で混合させたものである。
【0033】
<樹脂注入装置>
樹脂注入装置の樹脂注入路は、内径φ10mm、注入路を内部に有する外筒部の外形φ20mmであり、樹脂注入路内部のピストンバルブが“開”の状態での樹脂注入路の奥行は65mmである。また、樹脂注入装置は、樹脂注入路の中心が成形型のキャビティ端部から25mmの位置となるよう上型上面にボルトで締めつけられ、その時、外筒部先端はキャビティ面と同一面に、注入装置のピストンバルブが閉止状態のときに、その先端がキャビティ面と同一面となるように、位置決めされている。注入装置ケーシングと上型の間にはOリング(図5、図6に符号16で図示)が取り付けられている。ピストンバルブはキャビティと反対側で油圧シリンダに接続され、油圧シリンダは油圧ポンプで駆動される。油圧シリンダ径φ63mm、ストロークは65mmとなっている。油圧ポンプは、10MPaの圧力を発生するよう調整した。樹脂注入装置には、内部に冷却水を流すことができる流路が設けられ、外部のチラーから冷却水が循環供給される。
【0034】
<樹脂排出路>
樹脂排出路は、上型上面の樹脂注入装置と反対側の位置に設けられている。上型に設けられた樹脂排出路に濾過機構を介して、開閉弁が取り付けられている。開閉弁は、注入装置に取り付けられた開閉弁と同一仕様のものである。濾過機構として、20メッシュ(20本/25.4mm)のステンレス製の金網を樹脂排出路内に設置した。
【0035】
<積層>
強化繊維基材として用いる炭素繊維織物は、東レ(株)製BT70−30(平織り、目付317g/m2 、強化繊維T700SC−12K)を4枚、成形型の下型に掘り込まれたキャビティに配置し、上型を閉じた。キャビティ周囲にはシール材が配置されており、成形型を閉じることで、成形型外部との空気や液体の流通を遮断することができる。上下成形型の型閉め力は50tとした。
【0036】
<成形>
成形型に流す温水温度、注入装置の冷却水の温度を調整し、(T1,T2,T3)=(40、90、100℃)とした。温度が一定になったことを確認した後、樹脂注入装置のピストンバルブを閉じ、排出側の開閉弁を開けた。次に、排出側に樹脂トラップを介して接続された真空ポンプによりキャビティ内部を真空引きし、キャビティ内部の圧力がゲージ圧で−98kPa(G)以下になったことを確認した。次いで、エポキシ樹脂の主剤と硬化剤を貯槽より計量ポンプを用いて吐出させ、10:1の割合で混合させた後、樹脂供給路に導入した。エポキシ樹脂が樹脂注入装置にまで到達した時点で、樹脂注入装置のピストンバルブを開けた。排出側からエポキシ樹脂が排出されはじめたことを確認して、排出側の開閉弁を閉じた。キャビティ内部にエポキシ樹脂を充満させ、樹脂供給路の樹脂の流れが停止したのを確認して、樹脂注入装置のピストンバルブを閉じた。ここで、樹脂注入装置のバルブを開けてから閉じるまでに要した時間は2分であった。
【0037】
<硬化/脱型>
硬化中、樹脂供給路、樹脂注入装置内部に残存している樹脂はそのまま残しておいた。樹脂注入装置のバルブを閉じてから15分放置した後、成形型を開けて成形品を取り出した。
【0038】
<成形結果>
成形型から取り出した成形品は、全体にわたってエポキシ樹脂が十分硬化しており、成形品の表面状態は良好であった。樹脂注入装置の樹脂注入路先端の近傍部分(先端部から100mm以内の部分)の成形品表面は平滑であり、裏面側も表面と同様に良好な平滑性が認められた。なお、ピストンバルブの駆動力をピストンバルブ閉止状態のときに樹脂注入路内部に滞在するピストン側面の表面積で除した値は、1回目から最終回まで15.3MPaで一定であった。
【0039】
<成形サイクル>
成形品を取り出した後、成形型を清掃し、炭素繊維織物(BT70−30)を再度4枚積層し、成形型を閉じて、次の成形に移った。2回目の成形を開始するまでに、1回目の樹脂注入開始から25分経過していた。1回目の成形と同様に、排出弁を開け、次いで樹脂注入装置のバルブを開けた。それぞれ動作に問題は無く、樹脂供給路からエポキシ樹脂をキャビティ内部に供給させた。1回目と同様の手順でエポキシ樹脂の注入を行い、脱型を行った。その結果、得られた2回目の成形品は1回目と同様に、表面および裏面とも良好な平滑性が得られた。3回目、4回目と成形を繰り返した結果、いずれも樹脂の注入には問題なく、成形サイクルは25分で成形を行うことができた。得られた成形品も1回目の成形品と同様の表面平滑性を再現することができた。
【0040】
(実施例2)
温度条件を(T1,T2,T3)=(30、85、100℃)とした以外は、実施例1と同様の材料、成形条件で成形を実施した。
【0041】
<成形結果>
その結果、得られた成形品は、樹脂注入装置の樹脂注入路先端の近傍部分(先端部から100mm以内の部分)の表面にはややざらつきが認められたものの、全体としては十分硬化していた。裏面側は、良好な平滑性を有していた。4回成形を繰り返した結果、いずれも樹脂の注入には問題なく、成形サイクルは25分で成形を行うことができた。得られた成形品も1回目の成形品と同様の表面平滑性を再現することができた。なお、ピストンバルブの駆動力をピストン側面の表面積で除した値は、1回目から最終回まで15.3MPaで一定であった。
【0042】
(実施例3)
温度条件を(T1,T2,T3)=(50、100、110℃)としたこと、および、硬化時間を10分に短縮したこと以外は、実施例1と同様の材料、条件で成形を実施した。
【0043】
<成形結果>
得られた成形品は、実施例1と同様に、いずれの部分もざらつき等はみられず、良好な平滑性を有する成形品が得られた。
【0044】
<成形サイクル>
硬化時間の短縮に伴い、1回目の樹脂注入開始から2回目の樹脂注入を開始するまでに要した時間は20分に短縮された。温度条件を実施例1より高温としたものの、樹脂注入装置の動作に問題は起きなかった。4回成形を繰り返した結果、いずれも樹脂の注入には問題なく、成形サイクルは20分で成形を行うことができた。得られた成形品も1回目の成形品と同様の表面平滑性を再現することができた。なお、ピストンバルブの駆動力をピストン側面の表面積で除した値は、1回目から最終回まで15.3MPaで一定であった。
【0045】
(実施例4)
温度条件を(T1,T2,T3)=(55、95、100℃)とした以外は、実施例1と同様の材料、成形条件で成形を実施した。
【0046】
<成形結果>
得られた成形品は、実施例1と同様に、いずれの部分もざらつき等はみられず、良好な平滑性を有する成形品が得られた。
【0047】
<成形サイクル>
硬化時間は実施例1と同じ15分で十分な硬化が得られたが、2回目以降の成形においては、注入開始時にエポキシ樹脂の初期流動がやや悪くなったため、樹脂注入に3分を要し、成形サイクルは26分に延びた。これは、T1とT2の温度差が小さく、成形型内で樹脂を硬化している間に樹脂注入装置内部で滞留しているエポキシ樹脂の粘度が若干上昇したためと考えられる。しかしながら、2回目以降の成形を継続したが、樹脂注入装置のバルブ開閉動作自体には問題はなく、4回目まで成形サイクル26分を維持したまま成形を繰り返すことができた。なお、ピストンバルブの駆動力をピストン側面の表面積で除した値は、1回目から最終回まで15.3MPaで一定であった。
【0048】
(比較例1)
<注入装置>
実施例1の装置と比較して、樹脂注入装置と排出弁を用いずに、エポキシ樹脂の主剤と硬化剤を計量吐出し混合する装置と成形型、成形型と真空ポンプとを、それぞれ樹脂チューブを用いて直接接続した。
【0049】
<成形>
実施例1と同じ強化繊維織物を成形型内部のキャビティに配置し、成形型内部の温度をT3=100℃として成形を行った。具体的には、注入側の樹脂チューブをクランプで閉じ、排出側を樹脂トラップを介して真空ポンプに接続し、キャビティ内部をゲージ圧で−98kPa(G)以下になった時点でエポキシ樹脂を成形型内に注入して、注入側のクランプに到達した時点で、クランプを開けた。排出側からエポキシ樹脂が排出されだしたのを確認して、排出側の樹脂チューブをクランプで閉じた。次いで、注入側の樹脂チューブ内のエポキシ樹脂の流動が止まったのを確認して、注入側の樹脂チューブをクランプで閉じた。注入開始から、クランプ閉じるまでに要した時間は2分であった。
【0050】
<硬化>
樹脂供給路である樹脂チューブ内部に残存しているエポキシ樹脂はそのまま残しておいた。注入側クランプを閉じてから15分放置し、成形型を開けて成形品を取り出した。
【0051】
<成形結果>
その結果、得られた成形品は、全体が十分硬化しており表面状態は良好であった。樹脂チューブが接続された部分近傍の成形品表面は平滑であり、裏面側も表面と同様に良好な平滑性が認められた。
【0052】
<成形サイクル>
成形品を取り出した後、成形型を清掃し、炭素繊維織物(BT70−30)を再度4枚積層し、成形型を閉じて、次の成形に移った。2回目の成形を開始するまでに、1回目の樹脂注入開始から25分経過していた。成形型内部へエポキシ樹脂を供給しようとしたが、樹脂チューブが成形型に接続されている部分で、樹脂チューブ内部に残留していたエポキシ樹脂が既に硬化しており、新たにエポキシ樹脂を供給することができなかった。すなわち、2回目以降の成形を行うことができなかった。
【0053】
(比較例2)
比較例1と同様の材料、成形条件で成形を実施した。2回目の成形開始時に、注入側および排出側それぞれで成形型に接続された樹脂チューブを新品の樹脂チューブに交換し、成形を行った。3回目以降の成形も、同様の手順で成形を実施した。その結果、各回ともに表面平滑性に優れた成形品は得られたものの、樹脂チューブを交換することに時間を要し、各回の成形サイクルは35分であった。
【0054】
(比較例3)
温度条件を(T1,T2,T3)=(85、100、100℃)とした以外は、実施例1と同様の材料、成形条件で成形を実施した。
【0055】
<成形結果>
その結果、得られた成形品は、全体が十分硬化しており表面状態は良好であった。樹脂注入装置の樹脂注入路先端の近傍部分(先端部から100mm以内の部分)の成形品表面は平滑であり、裏面側も表面と同様に良好な平滑性が認められた。
【0056】
<成形サイクル>
成形品を取り出した後、成形型を清掃し、炭素繊維織物(BT70−30)を再度4枚積層し、成形型を閉じて、次の成形に移った。2回目の成形を開始するまでに、1回目の樹脂注入開始から25分経過していた。2回目の樹脂注入を行うために、排出弁を開け、次いで樹脂注入装置のバルブを開けたところ、樹脂注入装置の樹脂導入路内部に残留していたエポキシ樹脂が既に硬化しており、樹脂注入装置内部の樹脂流路を閉塞させていたため、新しいエポキシ樹脂を成形型内へ供給することができなかった。すなわち、1回目の成形は問題なく実施できたが、2回目以降の成形を継続することができなかった。
【0057】
(参考実施例1)
温度条件を(T1,T2,T3)=(15、70、100℃)とした以外は実施例1と同様の材料、成形条件で成形を実施した。
【0058】
<成形結果>
その結果、得られた成形品は概ね全体が硬化していたが、樹脂注入装置の樹脂注入路先端の近傍部分(先端部から100mm以内の部分)において、表裏両面ともにエポキシ樹脂が十分硬化しておらず、良好な表面状態ではなかった。この結果から、注入装置先端の近傍の部分の温度が低い場合は、エポキシ樹脂の硬化が十分ではなく、十分な硬化状態とするためには、より長い硬化時間を必要とすることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係るRTM成形用樹脂注入装置およびそれを用いたRTM成形装置とRTM成形方法は、RTM成形によるあらゆるFRP成形品の成形に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施態様に係るRTM成形装置の概略機器系統図である。
【図2】図1の装置におけるRTM成形用樹脂注入装置部分の樹脂注入状態を示す概略拡大断面図である。
【図3】図1の装置におけるRTM成形用樹脂注入装置部分の流路閉止状態を示す概略拡大断面図である。
【図4】本発明の他の実施態様に係る概略機器系統図である。
【図5】図4の装置におけるRTM成形用樹脂注入装置部分の樹脂注入状態を示す概略拡大断面図である
【図6】図4の装置におけるRTM成形用樹脂注入装置部分の流路閉止状態を示す概略拡大断面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 RTM成形装置
2 下型
3 上型
4 金型
5 強化繊維基材
6 RTM成形用樹脂注入装置
7 樹脂導入路
8 樹脂注入路
9 樹脂流路
10 樹脂流路開閉機構
11 ピストン
12 シリンダ
13 温度調整手段としての冷却手段
14 冷却ライン
15 シール材
16 Oリング
21 主剤
22、24 貯槽
23 硬化剤
25、26 ポンプ機構
27 ミキサー機構
28 液状樹脂
29 樹脂供給路
30 樹脂排出路
31 トラップ
32 開閉弁
33 濾過機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性の液状樹脂を、強化繊維基材が配置された金型内部へと注入するために金型に取り付けられ、外部から供給されてくる液状樹脂を導入する樹脂導入路と、該樹脂導入路を通して導入された液状樹脂を金型内へと注入する樹脂注入路とからなる樹脂流路が内部に形成されたRTM成形用樹脂注入装置であって、樹脂導入路と樹脂注入路が連通される樹脂注入状態と、該連通が遮断される流路閉止状態とを切り替え可能な樹脂流路開閉機構と、樹脂導入路の温度T1と、樹脂注入路の金型側先端部の温度T2の差(T2−T1)を30℃以上とする温度調整手段とを有することを特徴とするRTM成形用樹脂注入装置。
【請求項2】
前記温度調整手段が、樹脂導入路の温度T1と、樹脂注入路の金型側先端部の温度T2の差(T2−T1)を50℃以上とする手段からなる、請求項1に記載のRTM成形用樹脂注入装置。
【請求項3】
前記温度調整手段が、樹脂導入路の温度T1を、樹脂注入路の金型側先端部の温度T2よりも予め定めた所定値以上低くする冷却手段からなる、請求項1または2に記載のRTM成形用樹脂注入装置。
【請求項4】
樹脂注入路の金型側先端部の温度T2と、該先端部から100mm離れた金型キャビティ面の温度T3の差(T3−T2)が20℃以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のRTM成形用樹脂注入装置。
【請求項5】
前記樹脂流路開閉機構が、液状樹脂の漏出を防止するシール機構を備えている、請求項1〜4のいずれかに記載のRTM成形用樹脂注入装置。
【請求項6】
前記樹脂流路開閉機構が、樹脂注入路内にスライド可能なピストンを備えたピストンバルブからなる、請求項1〜5のいずれかに記載のRTM成形用樹脂注入装置。
【請求項7】
前記ピストンバルブを作動させるための駆動力を、樹脂流路が閉止状態にあるときに樹脂注入路内部に滞在するピストンの側面の表面積で除した値が5MPa以上である、請求項6に記載のRTM成形用樹脂注入装置。
【請求項8】
少なくとも、請求項1〜7のいずれかに記載のRTM成形用樹脂注入装置と、液状樹脂の主剤と硬化剤を貯留する貯槽、各貯槽から主剤と硬化剤を計量吐出するポンプ機構、計量吐出された主剤と硬化剤とを混合するミキサー機構、該ミキサー機構から前記RTM成形用樹脂注入装置への樹脂供給路、RTM成形用の金型、および該金型からの樹脂排出路から構成されてなるRTM成形装置。
【請求項9】
前記樹脂供給路に、内部の液状樹脂の温度を調整する温度調整手段が設けられている、請求項8に記載のRTM成形装置。
【請求項10】
前記樹脂排出路に、樹脂の排出を制御可能な開閉弁が設けられており、該開閉弁と該樹脂排出路の間に、樹脂排出の際に金型内から流出してきた強化繊維を捕捉可能な濾過機構が設けられている、請求項8または9に記載のRTM成形装置。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載のRTM成形用樹脂注入装置を用いて、金型内部へと注入される液状樹脂の温度を、前記樹脂流路の部位に応じて相対的に低温と高温に制御することを特徴とするRTM成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−51208(P2009−51208A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196024(P2008−196024)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】