説明

Radixnotoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液およびその調製方法

本発明は、notoginsengサポニン大容量静脈内注射液およびこの注射液を調製する方法を開示する。本発明の注射液は、notoginsengサポニン、等浸透圧剤、PH調節剤からなり、注射液の溶剤は注射用蒸留水である。精製注射液は、注射用蒸留水によって等浸透圧剤を溶解させ;活性炭を加え、ろ過を行い;ろ液中にnotoginsengサポニンを添加し、溶解するまで撹拌し;PH調節剤を添加し、浄化するまでろ過し、無菌化、包装することを通して調製され、その後notoginsengサポニン大容量静脈内注射液が調製される。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、静脈内注射液およびその調製に関し、特にRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の調製に関する。
【発明の背景】
【0002】
中国の伝統的医薬において、Radix notoginshenは、Panax notoginshen(Burk.)(F.H.Chen)の乾燥根である。この植物を、秋に花が咲く前に収穫、洗浄、および乾燥させる。根を集めて、根茎、支根、および主根に選別する。この医薬は口当たりがよく、わずかな匂いとほろ苦い味をもつ。
【0003】
Radix notoginshen抽出物の主な化学成分は、サポニンである。これは、心臓および脳血管疾患の治療のために非常に効果的である。今日の市場におけるRadix notoginshenの製剤は、臨床プラクティスにおいて広く使用されており、例えば、血栓通注射液(Xueshuantong injection)および血塞通注射液(Xuesaitong injection)などがある。これは、血液の循環を活性化し、血液の停滞を解消し、血管を拡張し、かつ循環を改善する。しかしながら、不適当なバッファー、医薬の過剰な処方、および医薬の不適当な適合性等のために、液体注入の反応が常に臨床プラクティスで起こる。この反応は、患者に対して激しい痛みをもたらし、時には命を危険にさらす。
【0004】
研究は、外来粒子がインビボ注入されたときに発熱反応、アレルギー等を引き起こすことを示す。多くの国の薬局方は、大容量注射剤における粒子の数について厳しい要求を課す。しかしながら、小容量注射剤および粉末注射剤についての規定はない。今日の静脈内注射液において複数薬物の適用は一般的となっている。研究は、注入後、特に中国の伝統的医薬の液体および粉末の静脈内注射を行ったときに血管内で粒子の数が増加することを示した。不溶性粒子の著しい増加は、多くの中国の伝統的医薬の注入が液体注入で行われたときに観察された。主な理由は、中国の伝統的医薬成分の複雑さにある。また、異なる医薬品製造工業は、有効成分の精製および抽出を含む異なる調製方法をもつ。医薬溶液の幾つかの成分、例えば色素、タンニン、デンプン、およびタンパク質は、コロイド状態で存在する。酸化、重合、およびpH変化によるサポニンおよびアルカロイドからの大量の不溶性粒子の沈殿を含む多くの反応は、医薬溶液が液体注入で行われた後に起こる。5%または10%グルコース注射液の希釈バッファーは、血塞通薬、赤根サルビア化合物、刺五加(acanthopanax)、β-アエシンナトリウム(β-aescin sodium)および他の中国の伝統的医薬を使用する静脈内注射液に適用するときには生理食塩水よりも推奨される。これは、中国の伝統的医薬の抽出物の非常に数多くの成分を含む生理食塩水を使用すると、大量の不溶性粒子が沈殿するからである。これは、液体注入反応の危険性を増加させ、医学的事件を引き起こす(Honglan Zhong, Analysis and solutions for fluid infusion reactions, Guangdong Medicine, 2002, vol. 12, number 4)。
【0005】
医薬類の不適切な適合性は、化合物溶液の透明性に影響を与え、結晶化を招き、pHを変化させる(Xiujing Luo, 1999, The cause of fluid infusion fever, the preventive measures and thereof, Chinese Nursing Magazine, 34(10))。液体注入の反応は、複数の医薬類の過剰な投与量および不適切な適合性によって引き起こされる。複数の医薬が加えられる医薬容器内への医薬の繰返しの注入のために、汚染の機会が非常に増える。溶液の透明性は、クロロマイセチン/ビタミンC混合物、エリスロマイシン/ビタミンC混合物、およびテトラサイクリンと他の化合物を含む10%グルコース注射液を加えた後に標準的規則からはずれる。その後、溶液は結晶ならびに色素性および白色凝集塊などを含む。注射液のための10%グルコース溶液のpHは、テトラサイクリンを加えた後に標準値未満に減少する。粉末の注射剤が完全に溶解しない場合、医薬粒子が生み出されるおそれがある。グルコース溶液中のペニシリンGの有効期間はわずかに2時間である。これがあまりに長くなると、ペニシリン溶液は、アレルギー反応の危険性を増加させるアレルゲンを生み出しかねない(Guitian Niu, Research and Experiments of Contamination in Clinic Fluid Infusion, Practical Nuring Magazine, 1993, 9(4), 25-27)。一方、任意の希釈溶液があまりに長く存在すると、汚染の危険性が非常に高くなる。溶解度、pH、年、および温度は、医薬の均質化後に溶液に影響を与え、品質の悪化を招くおそれがある。これは、投与量が多いとき、複数の医薬成分が含まれるときは特に顕著である。含有発熱物質が、インビボ注入したときに発熱反応を引き起こす毒性値まで蓄積するからである。
【0006】
サポニンは、不適切なpHをもつ溶液中で加水分解され得る。その後、溶解度が低下し、白色粒子、凝集塊、および綿状固形物が溶液中に現れる。医薬品溶液の品質が損なわれる。従って、Radix notoginshenのサポニン注射液の生産および貯蔵において適切なpHを選択および維持することは極めて重要である。
【0007】
中国の伝統的医薬Radix notoginshenについて今日の臨床で使用されるものは、経口製剤だけでなく注射剤(小型の注射針)もある。注射剤の利点は、効率的でかつ高い生物学的利用率である。注射剤は、経口医薬で治療できない患者や深刻な病状をもつ患者に対して特に有益である。しかしながら、少量の注射液は、実際には汚染の危険性がある。操作手順が複雑化し、開業医により多くの負担を課し、患者が液体注入反応を受けるおそれがある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の目的は、心臓および脳血管疾患およびその続発症の予防および治療のために使用される、安定したpHをもつ大容量のRadix notoginshenのサポニンの静脈内注射液のための方法を提供することである。
【0009】
本発明の適用は次のとおりである:
提供されるRadix notoginshenのサポニン静脈内注射液は、0.1mg〜14.0mg(Rg1として計算された)/mlの濃度をもつRadix notoginshenのサポニン、7.5〜8.5mg/mlの濃度をもつ等浸透圧溶液、および0.1〜0.5mg/mlの濃度をもつpH安定剤を含む。蒸留水を溶媒として使用する。
【0010】
前記Radix notoginshenのサポニン静脈内注射液のために、好ましい濃度は、1.4mg(Rg1として計算された)/mlである。前記等浸透圧溶液は、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール等とすることができるが、その中でも塩化ナトリウムが好ましい。塩化ナトリウムの濃度は、7.5〜9.5mg/mlであるが、その中でも8.5mg/mlが好ましい。前記pH安定剤は、クエン酸ナトリム、クエン酸塩、リン酸塩、および酢酸塩とすることができるが、その中でもクエン酸ナトリウムが好ましい。クエン酸ナトリウムの濃度は、0.1〜0.5mg/mlであり、その中でも0.3mg/mlが好ましい。
【0011】
本発明の第2の目的は、Radix notoginshenのサポニン注射液の生産方法を提供することである。
【0012】
本発明の生産方法は、以下の工程を含む:
(1) 等浸透圧製剤を蒸留水中に80〜300mg/mlの濃度まで溶解させた。ろ過のために活性炭を加えた。
【0013】
(2) Radix notoginshenのサポニンをろ液に0.1mg〜14.0mg(Rg1として計算された)/mlの濃度まで添加した。溶解のために溶液を撹拌した。
【0014】
(3) pH安定剤を添加し0.1〜0.5mg/mlの濃度を得た。溶液がきれいになるまでろ過し、低温殺菌を行い、包装した。この結果得られる製品が、Radix notoginshenのサポニン静脈内注射液である。
【0015】
上述した方法における好ましい等浸透圧製剤は、8.5mg/mlの濃度をもつ塩化ナトリウムである。前記pH安定剤は、0.3mg/mlの濃度をもつ酢酸ナトリウムである。
【0016】
本発明の医薬は、活性成分がRadix notoginshenのサポニンである大容量の静脈内注射液である。この医薬は、心臓および脳血管疾患およびその続発症の予防および治療のためである。医薬の濃度は、0.1mg〜14.Omg(Rg1として計算された)のRadix notoginshenのサポニン/mlである。
【0017】
医薬の適用量は、患者の年齢、体重、および病気の進行状況に応じて調節することができる。単位時間当たりの量は、典型的には14Omg〜350mg(Radix notoginshenのサポニン)である。1日当り1〜2回、28日間にわたって静脈内注射を行うことができる。
【0018】
本発明の医薬は、静脈内注射される大容量のRadix notoginshenのサポニンである。静脈内注射は、適用に際し安全かつ簡便な方法を提供する。
【0019】
動物実験は、Radix notoginshenのサポニンの静脈内注射液が、脳貧血の良好な保護治療医薬であることを示す。これは、脳血管循環を著しく増加させ、その抵抗を減少させ、ウサギの眼球結膜微循環形成不全状態(rabbit eyeball conjunctiva micro-circulation aplastic status)を著しく改善し、かつ循環および毛細血管開口(circulation and capillary openings)を増加させることができる。これは、塞栓形成脳血管疾患の治療に良好な効果を示し、血行停止状態を解消することができる。
【0020】
本発明のRadix notoginshenのサポニン静脈内注射液の生産方法は、単純かつ簡便である。これはまた非常に実用的かつ画期的である。この方法において、pH安定剤をRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液に添加することによってpHを安定化させた。これは、pHを低下させ、サポニン加水分解を引き起こし、静脈内注射製剤の透明度に影響を与え得る問題をうまく解決した。
【0021】
本発明についての実験および図解を含むさらなる説明を行う。
【実施形態の詳細な説明】
【0022】
実験1.Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の調製
1.材料
Radix notoginshenのサポニンファミリー(Rg1として計算された) 0.1g
クエン酸ナトリウム 0.3g
塩化ナトリウム 7.5g
活性炭 0.8g
蒸留水 1000ml(まで加えた)
2.方法
技術的手順を図1として示す。Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の生産工程は以下の通りである。最初に、7.5gの塩化ナトリウムを蒸留水中に溶解させ、100mg/mlの濃度まで希釈した。0.4gの活性炭を前記溶液に加えた。前記液体を撹拌、煮沸、冷却し、活性炭を取り除くためにろ過を行った。その後、0.1g(Rg1として計算された)のRadix notoginshenのサポニンファミリーを前記ろ液に溶解させた。次に、0.3gのクエン酸ナトリウムを前記溶液に加えた。水酸化ナトリムを添加することによって6.0に液体のpHを調節し、1000mlの容積まで希釈した。その後、溶液を0.4gの活性炭、0.45μmのろ過膜、および0.22μmのろ過膜を通してきれいになるまでろ過を行った。Radix notoginshenのサポニンファミリー注射液の最終製品を、100mlの液体注入ボトルに入れて蓋をし、110℃で低温殺菌を行い、検査後に包装した。
【0023】
実験2.Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の調製
1.材料
Radix notoginshenのサポニンファミリー(Rg1として計算された) 1.0g
クエン酸ナトリウム 0.3g
塩化ナトリウム 8.5g
活性炭 0.8g
蒸留水 1000ml(まで加えた)
2.方法
技術的手順を図1として示す。Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の生産工程は以下の通りである。最初に、8.5gの塩化ナトリウムを蒸留水中に溶解させ、100mg/mlの濃度まで希釈した。0.4gの活性炭を前記溶液に加えた。前記液体を撹拌、煮沸、冷却し、活性炭を取り除くためにろ過を行った。その後、1.0g(Rg1として計算された)のRadix notoginshenのサポニンファミリーを前記ろ液に溶解させた。次に、0.3gのクエン酸ナトリウムを前記溶液に加えた。水酸化ナトリムを添加することによって6.0に液体のpHを調節し、1000mlの容積まで希釈した。その後、溶液を0.4gの活性炭、0.45μmのろ過膜、および0.22μmのろ過膜を通してきれいになるまでろ過を行った。Radix notoginshenのサポニンファミリー注射液の最終製品を、100mlの液体注入ボトルに入れて蓋をし、110℃で低温殺菌を行い、検査後に包装した。
【0024】
実験3.Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の調製
1.材料
Radix notoginshenのサポニンファミリー(Rg1として計算された) 1.4g
クエン酸ナトリウム 0.3g
塩化ナトリウム 8.5g
活性炭 0.8g
蒸留水 1000ml(まで加えた)
2.方法
技術的手順を図1として示す。Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の生産工程は以下の通りである。最初に、8.5gの塩化ナトリウムを蒸留水中に溶解させ、100mg/mlの濃度まで希釈した。0.4gの活性炭を前記溶液に加えた。前記液体を撹拌、煮沸、冷却し、活性炭を取り除くためにろ過を行った。その後、1.4g(Rg1として計算された)のRadix notoginshenのサポニンファミリーを前記ろ液に溶解させた。次に、0.3gのクエン酸ナトリウムを前記溶液に加えた。水酸化ナトリムを添加することによって6.0に液体のpHを調節し、1000mlの容積まで希釈した。その後、溶液を0.4gの活性炭、0.45μmのろ過膜、および0.22μmのろ過膜を通してきれいになるまでろ過を行った。Radix notoginshenのサポニンファミリー注射液の最終製品を、100mlの液体注入ボトルに入れて蓋をし、110℃で低温殺菌を行い、検査後に包装した。
【0025】
実験4.Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の調製
1.方法
Radix notoginshenのサポニンファミリー(Rg1として計算された) 3.5g
クエン酸ナトリウム 0.3g
塩化ナトリウム 8.5g
活性炭 0.8g
蒸留水 1000ml(まで加えた)
2.方法
技術的手順を図1として示す。Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の生産工程は以下の通りである。最初に、8.5gの塩化ナトリウムを蒸留水中に溶解させ、200mg/mlの濃度まで希釈した。0.4gの活性炭を前記溶液に加えた。前記液体を撹拌、煮沸、冷却し、活性炭を取り除くためにろ過を行った。その後、3.5g(Rg1として計算された)のRadix notoginshenのサポニンファミリーを前記ろ液に溶解させた。次に、0.3gのクエン酸ナトリウムを前記溶液に加えた。水酸化ナトリムを添加することによって6.0に液体のpHを調節し、1000mlの容積まで希釈した。その後、溶液を0.4gの活性炭、0.45μmのろ過膜、および0.22μmのろ過膜を通してきれいになるまでろ過を行った。Radix notoginshenのサポニンファミリー注射液の最終製品を、100mlの液体注入ボトルに入れて蓋をし、110℃で低温殺菌を行い、検査後に包装した。
【0026】
実験5.Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の調製
1.方法
Radix notoginshenのサポニンファミリー(Rg1として計算された) 7.0g
クエン酸ナトリウム 0.3g
塩化ナトリウム 9.5g
活性炭 1.0g
蒸留水 1000ml(まで加えた)
2.方法
技術的手順を図1として示す。Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の生産工程は以下の通りである。最初に、9.5gの塩化ナトリウムを蒸留水中に溶解させ、200mg/mlの濃度まで希釈した。0.4gの活性炭を前記溶液に加えた。前記液体を撹拌、煮沸、冷却し、活性炭を取り除くためにろ過を行った。その後、7.0g(Rg1として計算された)のRadix notoginshenのサポニンファミリーを前記ろ液に溶解させた。次に、0.3gのクエン酸ナトリウムを前記溶液に加えた。水酸化ナトリムを添加することによって6.0に液体のpHを調節し、1000mlの容積まで希釈した。その後、溶液を0.6gの活性炭、0.45μmのろ過膜、および0.22μmのろ過膜を通してきれいになるまでろ過を行った。Radix notoginshenのサポニンファミリー注射液の最終製品を、100mlの液体注入ボトルに入れて蓋をし、110℃で低温殺菌を行い、検査後に包装した。
【0027】
実験6.ラット脳虚血再灌流障害に対するRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の保護効果
(1)実験医薬:5%Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射製剤(Lizhu Group Limin Pharmaceutical Industryによって製造、1OOmlとして包装、バッチNo.20000301)。臨床プラクティスで使用されたRadix notoginshenのサポニン静脈内注射製剤の合計量は、処理当たり350mg/250mlである。これは、1回の処理期間の間、1日当り1〜2回、28日間にわたって行うことができる。実験における5%Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液を、生理食塩水で必要な濃度まで希釈した。
【0028】
(2)実験動物:280.45±14.91gの体重をもつ150匹のSDラット。半数がオス、半数がメス。
【0029】
(3)薬物の量:変換因子mg/Kg〜mg/m2を使用することによってヒトの薬物量に基づいて実験動物の薬物量を計算した。ラットの低投与量グループには、動物についての一回の投与量に等しい量の薬物を与えた。中間の投与量グループには、低投与量グループの2倍の量を与えた。高投与量グループには、低投与量グループの4倍の量を与えた。成人についてのRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の量は、1日当り250ml(350mgのRadix notoginshenのサポニンファミリーを含む)であり、1日当り350mg/60kgである。ラットのこれに相当する量の医薬は、350mg/60kg×35/6≒34.03mgのRadix notoginshenのサポニンファミリーである。高投与量は、34.03×4=136.12mg/Kg、34.03×2=68.06mg/Kg、34.03×1=34.03mg/Kgである。
【0030】
対照の薬物は、今日の中国の医療現場でよく使用されているSalvia Miitiorrhiza注射液とした。成人について一時に投与される薬物の量は10mlであり(10gの生薬を含む)、1日当たり2回、すなわち1日当たり20gの生薬/60kgである。ラットについてのSalvia Miitiorrhiza注射液の適用量は、20g/6Okg×35/6≒1.94g/Kgである。
【0031】
(4)実験条件:室温(25℃)、相対湿度60%〜70%
(5)実験方法:
150匹のSDラットを使用した。半数がオス、半数がメスである。各々は282.11±14.77gの体重をもつ。この中から各グループ当たり6匹のラットからなる6つのグループを作った。第1のグループを偽性操作グループとした。第2のグループをモデルグループとした。第3のグループをSalvia Miitiorrhiza注射グループとした。第4〜第6のグループには、それぞれ低投与量、中投与量、および高投与量のRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液を加えた。各グループには、舌静脈を通して4日間連続して薬物を加えた。第1および第2のグループには、同量の生理学的食塩水を注入した。最後の薬物適用後1時間してから、これらの動物に1g/Kg ipのウレタンを使用して麻酔をかけた。その後、両側の総頸動脈を分離して将来の実験のために糸をかけた。そして、これらの動物に50mg/Kgの5%エバンスブルー(EB)および486u/Kgのヘパリンを、大腿静脈を通して動物に注入した。5分後、前記モデルグループおよび他の薬物グループにおけるラットの総頸動脈の両側をクリップで締めた。同時に、2.5mlの血液を大腿静脈から排出させた。上述の2工程は、前記偽性操作グループでは行わなかった。モデルおよび他の薬物グループにおけるラットの総頸動脈をゆるめ、3時間後さらに30分間にわたって再注入を行った。その後、氷上でラットの首を切断し、脳(嗅球、小脳および脳幹下部)を注意深く取り出した。各グループから2匹のラットの脳を無作為に選択し、形態観察のためにホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドで固定した。残りのラットの脳を計量し、5mlのホルムアミド水に浸漬し、45℃で48時間にわたって水浴中に浸漬し、定期的に撹拌した。上清を得、1.5mlのクロロホルムを加えた。次に、この液体を遠心分離し、上清を得、紫外線分光光度計(620nm)を使用して分析を行った。ラットの脳内のエバンスブルーの含量は、標準曲線を使用して計算した。取り出された第2のラットの脳をその重量が一定になるまで110℃のオーブンで焼いた。その後、脳を計量し、脳の水分含量を、%={(脳の湿重量−脳の乾燥重量)/脳の湿重量}×100%として計算し、脳指数を(脳の湿重量/100g体重)として計算した。
【0032】
(6)結果
1)実験のラットの脳指数、水含量およびエバンスブルー含量についてのRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の効果
実験の結果を表1に示す。偽性操作グループの脳指数、水含量およびEB含量は全て減少し、操作モデリングにおける成功を表わす顕著な統計学的差異が認められた。モデルグループを、Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液を加えた3つのグループと比較すると、上記指数は全て減少し、顕著な統計学的差異が認められた。これらの事実は、Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液が、実験動物の不完全虚血再灌流障害を改善し、脳血管浸透性の増加および脳虚血再灌流障害によって引き起こされる脳浮腫を軽減し、脳を保護することができることを示している。
【0033】
2)実験のラットの脳の組織学的および形態学的変化についてのRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の効果
顕微鏡下で観察された結果は以下の通りである。結果は、偽性操作グループについては正常であった。所々の毛細血管の充血、血管と神経細胞の間のわずかな拡大が観察された。モデルグループの結果はかなり異なっていた。典型的な細胞浮腫、変性および壊死が観察された。また、髄膜の血管、ニューロン、および大脳皮質細胞の間の顕著な拡大が観察され、細胞核の拡大、核小体の曇り、tiger porphyriticsの消失、大脳皮質の出血、コロイド状細胞の局所的鬱血、および所々の細胞の虚血性壊死が観察された。症状は、細胞数の減少、細胞輪郭の消失、および局所的出血を含む。また、異なる程度の細胞浮腫および変性が、ポジティブコントロールグループおよび3つのRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液グループからも観察された。しかしながら、ポジティブコントロールグループおよび3つの薬物グループの症状は、モデルグループの症状と比較するとはるかに穏やかであった。前記症状は、細胞と血管の間の空洞の拡大および血管充血を含んだ。小さなコロイド状細胞の増殖が、高投与量の治療グループにおいて観察された。
【0034】
電子顕微鏡下で観察された結果は以下の通りである。偽性操作グループでは、明確な細胞骨格、無傷の軸索および細胞膜、均等に分散した染色体、明確なミトコンドリア、明確なゴルジ体および明確な粗面小胞体が観察された。全ての構造体が正常であるように思われた。モデルグループでは、ニューロン細胞の拡大、減少する細胞数、核染色体の密集、ゴルジ体の拡大、ゴルジ体内の空泡の出現、粗面小胞体の拡大、ミトコンドリアの著しい拡大、不明瞭なクリステ、血管周辺空洞の拡大、内膜の破壊、および核クロマチンの部分的消滅を含めた異常な症状が観察された。3つのRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液グループおよびポジティブコントロールグループにおいて、虚血浮腫の徴候が現れた。しかしながら、モデルグループの症状と比較して深刻さはかなり低かった。症状としては、染色体の密集、粗面小胞体、ゴルジ体およびミトコンドリアの様々な程度の拡大が観察されたが、モデルグループの症状と比較して深刻さはかなり低かった。
【0035】
電子顕微鏡下で観察された結果によれば、最も深刻な障害は、モデルグループにおいて観察された。これは、モデルがうまく構築されたことを示した。一方、3つのRadix notoginshenのサポニンファミリー注射液グループおよびポジィティブコントロールグループでは損傷の深刻さはかなり低かった。さらに、Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の量が多くなるにつれて細胞損傷は減少した。これは、Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液が、急性の不完全虚血再灌流障害から動物を保護し得ることを示した。
【表1】

【0036】
上述の結果は、Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液が、実験ラットの急性不完全虚血再灌流障害についての確かな保護効果をもつことを証明する。これは医療プラクティスの適用の価値がある。
【0037】
実験7.麻酔をかけたイヌの脳血管についてのRadix notoginshen静脈内注射液のサポニンファミリーの効果
(1)実験医薬およびその投与量:5%のRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射製剤(Lizhu Group Limin Pharmaceutical industryによって製造、1OOmlとして包装, バッチNo.20000301)。臨床プラクティスにおいて使用されたRadix notoginshenのサポニン静脈内注射製剤の合計量は、処理当たり350mg/250mlである。これは、1回の処理期間の間、1日当り1〜2回、28日間にわたって行うことができる。実験において、変換因子mg/Kg〜mg/m2を使用することによってヒトの薬物量に基づいて実験動物についての薬物の投与量を計算した。動物についての一回の投与量に等しい量の薬物を、イヌ低投与量グループに与えた。中間の投与量グループには前記薬物量の2倍の量を与え、高投与量グループには低投与量グループの薬物量の4倍の量を与えた。成人についてのRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の投与量は、1日当り250mlである。すなわち、1日当り350mgのRadix notoginshenのサポニンファミリーを与えた。イヌの場合では、1)これに相当する量の薬物は、350mg/60kg×35/19≒10.75mgのRadix notoginshenのサポニンファミリー/Kgである。2)低投与量は、10.75×1=10.75mg/Kgである。3)中投与量は、10.75×2=21.5mg/Kgである。4)高投与量は、10.75×4=43mg/Kgである。5%の合計量のRadix notoginshenのサポニン静脈内注射液およびMailuoning注射液を、使用前に生理食塩水を使用して必要な濃度まで希釈した。
【0038】
対照の薬物は、Mailuoning注射液とした(Nanjing Jinglin Pharmaceutical Corpによって製造、lOg/mlの医薬含量、バッチNo.960812)。成人の投与量は10ml(10gの生薬)を、1日2回、すなわち1日当たり20g/60kgである。イヌについては、1)等しい投与量は、20g/6Okg×35/19≒0.61g/Kgであり、2)薬物の投与量は、0.61×4=2.44g/Kgである。生理食塩水は、Southern Hospital Pharmacy、バッチNo.20000926によって製造された。
【0039】
(2)実験動物:30匹の雑種の健康成体イヌ、各体重は11〜15kg、半数がオス、半数がメス。
【0040】
(3)実験条件:室温25℃、相対湿度60%〜70%、および実験装置の定期的低温殺菌。
【0041】
(4)装置:電磁血流計、モデルFM-27、Japanese Photoelectric Ltdによって製造。モデルRM-6000の[8]Physiological Recording Instrument、Japanese Photoelectric LtdおよびChengdu Instrument Industryによって製造。
【0042】
(5)薬物適用の方法:30ml/Kgの濃度での静脈内注射。
【0043】
(6)実験対照:ネガティブコントロールグループには同量の生理食塩水を与え、一方、ポジィティブコントロールには4倍量のMailuoning注射液を与えた。
【0044】
(7)実験データの統計
実験データを統計的t-試験によって分析した。薬物適用の前後の全てのグループおよびネガティブコントロールグループ内の比較のためのデータ分析のために生理学的統計を使用した。
【0045】
(8)実験方法
実験動物を、ネガティブおよびポジィティブコントロールグループ、低投与量、中投与量、および高投与量のRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液グループを含む5つのグループに無作為にグループ分けした。最初に、イヌを30mg/Kgの3%ペントバルビタールナトリウムの静脈内注射を介して麻酔し、続いて手術台上に固定した。生理食塩水で希釈された1mg/mlのペントバルビタールナトリウムを静脈内注射し、麻酔を維持した。イヌの首を約10cmにわたって切り、左側の総頸動脈を分離し、同じ側の外頸動脈および椎骨動脈に糸をかけた。No.4センサの電磁血流計を総頸動脈に取り付けた。電磁血流計によって計算された総頸動脈の血流は、脳血流とみなすことができる。同時に、片側の大腿動脈および大腿静脈を分離した。大腿動脈を圧力変換器に接続し、大腿静脈を薬物適用のために3方向パイプに接続した。4本の脚を心電図モニターのセンサーに接続した。一方では、大腿動脈の血圧、IIリード心電図、および総頸動脈の平均血流を、[8] Physiological Recording Instrumentによって記録した。平均血流、心電図および血圧を、装置によって安定的に表示し、データを記録し、薬物を静脈内注射を介して適用した。薬物適用の平均量は、全てのグループで30ml/Kgとした。同時に、脳血流、血圧および心拍数を、薬物適用の0分、5分、15分、30分、および60分後に記録した。実験の最後に、頭蓋骨を開いて脳全体を延髄上部から取り出した。その後、脳を計量した。得られたデータを2で割ることによって片側の脳の重量を得た。脳組織1グラムの1分間当たりの脳血流量は、記録された脳血流量を片側の脳の重量で割ることによって得た。
【0046】
(9)結果
1)麻酔をかけたイヌの心拍数についてのRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の効果
実験の結果は、薬物適用の5分および15分後に記録された低投与量グループにおける心拍数、ならびに薬物適用の0分後に記録された中投与量グループにおける心拍数について統計学的に意味のある変動を示した。他のグループおよび時間フェーズでは統計学的差異は認められなかった(表2)。
【0047】
2)麻酔をかけたイヌの血圧についてのRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の効果
表3、4、5に示したように、麻酔をかけたイヌの収縮期圧の低下(p<0.05)が、適用15分後のRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液グループにおいて観察された。一方、拡張期圧の効果は明らかではなかった(唯一の統計学的に意味のある血圧低下は、低投与量グループの適用5分後で認められた)。また、唯一の統計学的に意味のある平均血圧の低下が、中投与量および低投与量グループにおいて観察されたが、薬物適用後の高投与量グループにおいては明らかな変化は観察されなかった。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0048】
3)麻酔をかけたイヌの脳血流量についてのRadix notoginshenのサポニンファミリー注射液の効果
表6のデータは、Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の全ての投与グループにおいて、血流量が薬物適用直後に著しく増加(P<0.05)したことを示している。血流量の増加は、低および中投与量グループにおいては5分間にわたって維持され、一方、高投与量グループにおいては15分間にわたって維持された。その後、血流量は、薬物適用前のレベルまで低下した。
【表6】

【0049】
4)麻酔をかけたイヌの脳血管抵抗についてのRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の効果
表7のデータは、全ての投与グループにおいて脳血管抵抗が薬物適用直後に減少(P<0.01)したことを示している。この効果は、薬物適用後15分間にわたって維持され、その後、適用前のレベルまで低下した(P>0.05)。
【表7】

【0050】
(10)結論
Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液は、適用後の短い期間内で麻酔をかけたイヌの心拍数および血圧の低下を引き起こした。しかしながら、この効果は、薬物量を増加させてもそれほど顕著にはならなかった。Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液はまた、実験動物についての脳血流量を著しく増加させ、脳血管抵抗を減少させた。その後、上述した2つの効果は、薬物適用前のレベルまで戻った。
【0051】
例8.麻酔をかけたイヌのヘマトレオロジーおよび微小循環についてのRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の効果
(1)実験の薬物
5%のRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射製剤。Lizhu Group Limin Pharmaceutical Industryによって製造、1OOmlとして包装、バッチNo.20000301。医薬プラクティスの適用量は、350mg/250mlの静脈内注射液である(Radix notoginshenのサポニンファミリーとして計算された)。1フェーズを完了するために、1日当り1〜2回、28日間にわたって適用した。実験の薬剤を生理食塩水で2.5%、1.25%および0.63%の濃度まで希釈した。薬物を4℃の冷蔵庫に貯蔵した。ポジィティブ薬物(Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液)は、2ml/ショットを含む。各ショットは、赤根サルビアおよびLignum Dalbergiae Odorfferaeそれぞれの1gの根を含む。Guangdong Yongkang Pharmaceutical Ltdによって製造、バッチNo.00070001。実験の生理食塩水を所望の濃度に調製し、冷蔵庫内に4℃で貯蔵した。
【0052】
主用な製剤は、スウェーデンで製造された分子量500,000の重合デキストラン、FARCOによって製造されたナトリウムアデノシンジホスフェート(ADP)、Chinese Pharmaceutical Corp. Beijing Branchによって提供されたナトリウムヘパリン、Shanghai Chemical Preparation Storeによって提供されたウレタン、およびGuangzhou Chemical Industryによって提供されたペントバルビタールナトリウムである。
【0053】
(2)実験動物
昆明(Kunming)品種マウス。各体重は18〜24g、オス対メスの比率は1:1;SDラット。各体重は190〜260g、オス対メスの比率は1:1;ニュージーランドウサギ。各体重は2.0〜2.5kg、オスとメスの両方。オスとメスは分けた。各ケージは、1匹のウサギ/5匹のマウス/5匹のラットを含む。適応のために動物を3日間にわたって維持した。異常な物理的行動または生理学的症状が観察されなかった後にこれらの動物を実験にのみ使用した。動物には十分に給餌し、ケージ部屋には十分な光と空気を与えた。温度は20〜25℃に維持した。湿度は45〜65%とした。専門の管理と定期的な低温殺菌を部屋に行った。
【0054】
(3)Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射の投与セットアップ
医療プラクティスにおけるRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の薬物形態は、塩化ナトリウム静脈内点滴である。成人の投与量は1回処理当たり350mg(Radix notoginshenのサポニンファミリー)、1日当たり1〜2回処理である。この薬物のLD50および毒性実験の結果に基づいて、この実験で適用された成人の投与量は、1日当たり350mgであった。変換因子を使用することによってヒトの投与量に基づいて実験動物の投与量を計算した。動物のこれに相当する量をこの変換因子を使用して計算した。低投与量グループには、前記相当量と同じ量を与えた。中間の投与量グループには、前記相当量の2倍の量を与えた。高投与量グループには、前記相当量の4倍の量を与えた。前記相当量のsalvia miltiorrhiza注射液をポジィティブコントロールとして使用した。
【0055】
1)マウスの投与量:マウス投与量=350/60×35/3=68mg/Kg;低投与量のマウス=68×1=68mg/Kg;中投与量のマウス=68×2=136mg/Kg;高投与量のマウス=68×4=272mg/Kg。
【0056】
2)ラットの投与量:ラット投与量=350/60×35/6=34mg/Kg;低投与量のラット=34×1=34mg/Kg;中投与量のラット=34×2=68mg/Kg;高投与量のラット=34×4=136mg/Kg。
【0057】
3)ウサギの投与量:ウサギ投与量=350/60×35/12=17mg/Kg;低投与量のウサギ=17×1=17mg/Kg;中投与量のウサギ=17×2=34mg/Kg;高投与量のウサギ=17×4=68mg/Kg。
【0058】
4)ポジィティブコントロールについてのsalvia miltiorrhiza注射液の投与量:医療プラクティスにおける成人の投与量=静脈内点滴を使用して1日当たり20ml;マウス投与量=20/60×35/3=3.9ml/Kg≒4ml/Kg;ラット投与量=20/60×35/6=1.94ml/Kg≒2ml/Kg;ウサギ投与量=20/60×35/12=0.97ml/Kg≒1ml/Kg。
【0059】
5)ブランクコントロールグループ:相当量の生理食塩水を加えた。
【0060】
(4)薬物の適用方法
医療プラクティスと同じように、薬物を静脈内注射(IV)を介して添加した。添加量は、マウス当たり13ml/Kg、ラット当たり3.2ml/Kg、およびウサギ当たり1.6ml/Kgとした。
【0061】
(5)実験の手順
1)マウスの血液凝固時間の試験(スライド試験)
50匹の昆明品種マウスを、1:1のオス対メスの比率で選択した。各体重は18〜24gである。動物を5つのグループ:ブランクコントロールグループ、ポジィティブコントロールグループ、および3つの薬物グループ(低投与量、中投与量、および高投与量のRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液をそれぞれ適用)に無作為にグループ分けした。各グループのマウスに尻尾の静脈内注射を介して指示された量の薬物を3日間連続して与えた。薬物の最後の投与後30分してから、2滴の血液を眼球背後の静脈叢から得た。1滴の血液をそれぞれスライドガラス上に滴下し5mmの直径とした。スライドガラス上に血液を滴下した直後から時間をモニターした。30秒毎に、きれいなNo.4針を使用して血滴を端から中央までかき回し、血の糸ができるか否かを観察した。血液を滴下してから血の糸ができるまでの時間が、血液凝固の時間とみなされた。もう一滴の血液を使用して再試験を行った。実験の結果を表8に示す。このデータは、薬物投与グループの血液凝固時間がブランクコントロールグループの時間と比較して非常に長いことを示す。統計学的分析結果は著しい差異:P<0.05またはP<0.01を示した。Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の抗凝固効果は、投与量を増加させるにつれて大きくなった。しかしながら、3つの異なる投与量グループの間に顕著な差異は認められなかった。
【表8】

【0062】
2)ラットの血栓症のインビボ実験
50匹の昆明品種ラットを、1:1のオス対メスの比率で選択した。各体重は220〜280gである。動物を5つのグループ:ブランクコントロールグループ、ポジィティブコントロールグループ、および3つの薬物グループ(低投与量、中投与量、および高投与量のRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液をそれぞれ適用)に無作為にグループ分けした。各グループのラットに尻尾の静脈内注射を介して指示された量の薬物を2日間連続して与えた。血栓症のインビボ実験を、薬物投与後3日目に行った。動物を20%ウレタン(1g/Kg, IP)で麻酔した。首を切断し、右側の総頸動脈および左側の外頸静脈を分けた。5cmのNo.4手術糸を3つの連結されたポリエチレンパイプのうち真中のパイプにセットした。3つのパイプの中で、両端の2つは1mmの内径および10cmの長さをもち、一方、真中の1つは2mmの内径および8cmの長さをもつ。パイプはヘパリン生理食塩水(50u/ml)で満たした。このパイプを通して左側の外頸静脈からヘパリン(50u/ml)を注入する。その後、パイプをクリップし、反対側から右側の総頸動脈に挿入した。この操作後、前記量の薬物を外頸静脈を通して注入した。薬物投与の5分後に循環を解除した。その後、右側の総頸動脈から左側の外頸静脈まで血液を迂回させた。15分後に循環を再度停止させた。事前にセットされた手術糸を取り出して計量した。血栓湿重量を、全重量から糸重量を引くことによって得た。以下の方程式に基づいて抵抗率を計算した。
【0063】
抵抗率(%)={(コントロールグループの血栓重量−薬物投与グループの血栓重量)/(コントロールグループの血栓重量)}×100%
実験結果を表9に示した。データは、薬物投与グループの血栓湿重量がブランクコントロールグループよりも明らかに低かった。統計学的分析は、P<0.05またはP<0.01の顕著な差異を示した。Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の抗凝固効果は、投与量が増加するにつれて増加した。しかしながら、3つの異なる投与グループ間での明確な差異は認められなかった。
【表9】

【0064】
3)ラットの血液粘度、ヘマトクリットおよび血小板凝集率の試験
50匹のSDラットを、1:1のオス対メスの比率で選択した。各ラットの重量は220〜280gである。動物を5つのグループ:ブランクコントロールグループ、ポジィティブコントロールグループ、および3つの薬物グループ(低投与量、中投与量、および高投与量のRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液をそれぞれ適用)に無作為にグループ分けした。各グループのラットに尻尾の静脈内注射を介して指示された量の薬物を3日間連続して与えた。15分後に動物に20%ウレタン(1g/Kg, IP)によって麻酔をかけた。ラットの腹大動脈から血液を得た。最初に、4mlの血液を得、血液凝固を防ぐために1%のヘパリンと一緒にした(150μlヘパリン:4ml血液)。上述した2つの製剤を、血液全体の粘度、血しょうの粘度、およびヘマトクリットの試験に使用した。別の4mlの血液を得、血液凝固を防ぐために3.8%のクエン酸ナトリウムと一緒にした(1:9)。上述した2つの製剤を、血小板凝集率の試験に使用した。
【0065】
血液粘度の試験に使用した装置は、Beijing Shidi Scientific Instrument Corpによって製造されたLG-R-80A自動洗浄血液粘度装置である。血液全体の粘度および血しょうの粘度をそれぞれ150、30、5、1 S-1で試験した。操作を前記装置の説明書に従って行った。
【0066】
ヘマトクリット試験のために、1mlの全血をRBCキュベットに充填し、3000rpmで30分間にわたって遠心分離した。赤血球細胞のカラムの重さを記録した。ヘマトクリット(%)を決定するための式は:
ヘマトクリット=(赤血球細胞カラムの重量÷全血カラムの重量)×100%
血小板凝縮率試験のために、3.8%のクエン酸ナトリウムを加えた血液を800rpmで6分間にわたって遠心分離した。上清は血小板富溶血しょう(PRP)であった。上清を取り除いた後、血液の残りを3000rpmで10分間にわたって再度遠心処理を行った。この時、上清は血小板貧溶血しょう(PPP)であった。血液はADP(5×10-6mol/L)を使用して誘導された。5分以内のラット血小板凝集率を、Beijing Shidi Scientific instrument Corpによって製造されたPABER-1血小板凝集装置を使用して試験を行った。操作は装置の説明書に従って行われた。
【0067】
実験結果を表10および11に示した。表10は、ラット全血粘度、ヘマトクリットおよび血しょう粘度が、Radix notoginshenのサポニンファミリー注射液の高投与量グループにおいて著しく減少したことを示す。しかしながら、ラット全血粘度、ヘマトクリット、および血しょう粘度は、Radix notoginshenのサポニンファミリー注射液の低および中投与量グループにおいては明白な変化はなかった。salvia miltiorrhiza注射液は、低せん断速度(5s-1および1s-1)で全血粘度について効果を示したが、他の指標についての効果はなかった。表11は、ラット血小板凝集率が、ブランクコントロールグループと比較して3つの異なる実験薬物グループおよびポジィティブコントロールグループにおいて明らかに減少したことを示す。その差異は統計分析に基づいて非常に顕著(P<0.01)であった。Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の抗凝血効果は、投与量の増加に伴って増加した。高投与量グループならびに低および中投与量グループの間で顕著な差異が認められた(P<0.01)。しかしながら、低および中投与量グループの間ではあまり差異は認められなかった。
【表10】

【表11】

【0068】
4)ウサギ眼球結膜微循環の観察
30匹のニュージーランドウサギを、オス対メスの比が1:1になるように選択した。各重量は2.0〜2.5kgである。動物を、5つのグループ(各グループ当たり6匹):ブランクコントロールグループ、ポジィティブコントロールグループ、および3つの薬物グループ(低投与量、中投与量、および高投与量のRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液をそれぞれ適用)に無作為にグループ分けした。3%ペントバルビタールナトリウム(30mg/Kg、IV)を使用してウサギに麻酔をかけた。動物の左眼瞼を開き、眼球結膜微循環をMTV-3801CB微循環マイクロビデオレコーダーシステム(Shanghai Laser Technology Research Instituteによって提供)を使用して観察した。レコーダーを0.01mm対物レンズミクロメーター(Shanghai 3rd Industry of Optical Instrumentsによって製造)を使用して標準化した後、使用拡大率を2800×とした。正常な眼球結膜微循環の通常の血流を観察した。10%ポリマーデキストラン(6ml/Kg)をウサギの耳の静脈を介して静脈内注射した。この注射液は急性の微循環障害を誘導し、微循環の変化が観察された。15分後、3つの溶液の1つを静脈内注射を介して適用した:生理食塩水、Radix notoginshenのサポニンファミリー注射液、またはsalvia miltiorrhiza注射液。適用した薬物の容量は、各薬物または生理食塩水当たり1.3ml/Kgである。薬物適用15分後に微循環の同じ領域を観察した。
【0069】
観察指標
赤血球の流れの状態:関連文献および本発明からの実験結果に基づいて、赤血球の流れの状態を6つのレベル:線的流れ、線的粒性の流れ、粒的線性の流れ、粒的流れ、鬱血、停止に分類した。
【0070】
毛細血管網の結合:観察領域の端は小動脈および静脈で構成されている。この領域における毛細血管同士の結合の数と観察領域の端にある毛細血管の数を計算した。非結合の毛細血管はカウントしなかった。
【0071】
結果を表12に示す。10%ポリマーデキストランを注入した後、ウサギの眼球微循環における血流は、正常な線的または線的流性の流れから粒的または粒的線性の流れに変化した。また、流れの速度が著しく低下した。少数のケースにおいて鬱血および停止が起こった。しかしながら、血栓または血管の歪みは観察されなかった。生理食塩水を注入したときでは顕著な血流変化は観察されなかった。Radix notoginshenのサポニンファミリーまたはsalvia miltiorrhiza注射液を注入した後、微循環の流速が非常に速くなり、流れの状態がほぼ線的流性の流れになり、毛細血管の結合が増加した。薬物適用前後の状態を比較すると、Radix notoginshenのサポニンファミリーの高投与量グループおよびポジィティブコントロールグループにおける増加が顕著(P<0.05またはP<0.01)であった。
【表12】

【0072】
(6)統計学的分析
全ての実験データをx±sとして表わし、t試験および分散の一方向分析を使用して分析を行った。
【0073】
(7)結果
この実験の結果は、Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液が、循環を著しく活性化し、鬱血を取り除く。ラット血栓症に抵抗し、凝血を遅らせる。高投与量グループでは、ラット血液粘度およびヘマトクリットにおいて比較的大きな目立った効果を示した。また、ラットの血小板凝集に強く抵抗し、ウサギの眼球微循環障害に抵抗し、毛細血管の拡張を促進し、血流を加速する。Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の効果が、実験適用投与量内で一定の投与量依存性を示した。しかしながら、高、中、および低投与量グループ内で明白な差異は観察されなかった。
【0074】
実験9.本発明の静脈内注射液についてのpH安定試験
pHの実験結果を表13に示す。
【0075】
サンプルA:Neimenggu Ganqika Pharmaceutical Industryによって製造されたXueshuangtong注射液。
【0076】
サンプルB:Lizhu Group Liming Pharmaceutical Industryによって製造された本発明の静脈内注射液
【表13】

【0077】
規格の中国医薬は、Xueshuangtong注射液の正規のpH範囲が5.0〜7.0であることを指定する。サンプルAのpHがバッチNo.に関連付けられた実験結果を示す。これはサンプルAのpHの不安定さを示し、pHは貯蔵後に低下した。一方、サンプルBのpHはより安定であった。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液についての技術的手順の図解である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)0.1mg〜14.0mg(Rg1)の濃度をもつRadix notoginshenのサポニンファミリー;
(2)7.5〜9.5mg/mlの濃度をもつ等浸透圧溶液;
(3)0.1〜0.5mg/mlの濃度をもつpH安定剤;および
(4)注射液の溶媒としての蒸留水
を含むRadix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液。
【請求項2】
前記Radix notoginshenのサポニンファミリーの濃度が、1.0〜7.0mg(Rg1)/mlである請求項1に記載の注射液。
【請求項3】
前記Radix notoginshenのサポニンファミリーの濃度が、1.0〜3.5mg(Rg1)/mlである請求項2に記載の注射液。
【請求項4】
前記Radix notoginshenのサポニンファミリーの濃度が、1.4mg(Rg1)/mlである請求項3に記載の注射液。
【請求項5】
前記等浸透圧溶液が、塩化ナトリウム、グルコース、およびソルビトールである請求項1に記載の注射液。
【請求項6】
前記等浸透圧溶液が、塩化ナトリウムである請求項1ないし4に記載の注射液。
【請求項7】
前記塩化ナトリウムの濃度が7.5〜9.5mg/mlである請求項6に記載の注射液。
【請求項8】
前記塩化ナトリウムの濃度が8.5mg/mlである請求項7に記載の注射液。
【請求項9】
前記pH安定剤が、クエン酸ナトリウム、クエン酸塩、リン酸塩、および酢酸塩である請求項1ないし4に記載の注射液。
【請求項10】
前記pH安定剤が、クエン酸ナトリウムである請求項9に記載の注射液。
【請求項11】
前記クエン酸ナトリウムの濃度が、0.1〜0.5mg/mlである請求項10に記載の注射液。
【請求項12】
前記クエン酸ナトリウムの濃度が、0.3mg/mlである請求項11に記載の注射液。
【請求項13】
(1)等浸透圧溶液を希釈水中で80〜300mg/mlの濃度まで希釈し、これを活性炭を通してろ過する工程と、
(2)Radix notoginshenのサポニンファミリーを撹拌し、これを前記ろ液中に0.1mg〜14.Omg(Rg1)/mlの濃度まで溶解させる工程と、
(3)pH安定剤を前記ろ液に0.1〜0.5mg/mlの濃度まで添加する工程と
を含み、前記溶液がきれいになるまでろ過し、低温殺菌を行い、包装し、この結果得られる製品が、Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液である、Radix notoginshenのサポニンファミリー静脈内注射液の調製のための方法。
【請求項14】
前記Radix notoginshenのサポニンファミリーの濃度が、1.4mg(Rg1)/mlである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記等浸透圧溶液が塩化ナトリウムであり、その濃度が100〜200mg/mlである請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記等浸透圧溶液がグルコースであり、その濃度が50mg/mlである請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記pH安定剤がクエン酸ナトリウム、クエン酸塩、リン酸塩、および酢酸塩であり、その濃度が0.3mg/mlである請求項13に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−525240(P2006−525240A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504213(P2006−504213)
【出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【国際出願番号】PCT/CN2004/000409
【国際公開番号】WO2004/098623
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(505039789)
【Fターム(参考)】