説明

S−ニトロソグルタチオンレダクターゼの新規なチオフェン系阻害薬

本発明は、S−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)の新規なチオフェン系阻害薬、それらのGSNOR阻害薬を含む医薬組成物、ならびにそれらを製造および使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、新規なチオフェン化合物、それらの化合物を含む医薬組成物、ならびにそれらを製造および使用する方法に関する。これらの化合物はS−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)の阻害薬として有用である。
【背景技術】
【0002】
[0002] 一酸化窒素なる化合物は、化学式NOをもつガスである。NOは、生体系において知られている幾つかのガス状シグナル伝達分子のひとつであり、種々の生物学的事象の制御に際して重要な役割を果たす。たとえば、内皮はNOを使って細動脈壁の周囲平滑筋に弛緩するシグナルを伝達し、その結果として血管を拡張させ、低酸素組織への血流を増加させる。NOは平滑筋増殖、血小板機能、および神経伝達を調節するのにも関与し、また宿主防御において役割を果たす。一酸化窒素は反応性が高く、寿命は数秒であるが、膜を通して自由に拡散し、かつ多くの分子標的に結合することができる。これらの属性により、NOは隣接細胞間および細胞内の生物学的事象を制御できる理想的なシグナル伝達分子となる。
【0003】
[0003] NOはフリーラジカルガスであり、このため反応性で不安定であり、したがってNOはインビボでの寿命が短く、生理的条件下での半減期は3〜5秒である。酸素の存在下で、NOはチオール類と結合してS−ニトロソチオール(SNO)類と呼ばれる生物学的に重要なクラスの安定なNO付加物を生成することができる。この安定なNOプールは生物活性NOの供給源として作用すると仮定されており、したがって、細胞恒常性におけるNOの中心的役割を考慮すると健康および疾患においてきわめて重要であると思われる(Stamler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 7674-7677 (1992))。タンパク質SNOは、心血管系、呼吸系、代謝系、胃腸系、免疫系および中枢神経系において幅広い役割を果たす(Foster et al., Trends in Molecular Medicine, 9 (4):160-168, (2003)。生体系において最も多く研究されているSNOのひとつは、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)(Gaston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10957-10961 (1993))、すなわちNOシグナル伝達の鍵となる新たな調節因子である;それは有効なニトロソ転移作用物質であり、細胞内で他のS−ニトロソ化タンパク質との平衡を維持すると思われるからである(Liu et al., Nature, 410: 490-494 (2001))。NO−SNO連続系列(continuum)におけるこの中心的立場を考慮すると、GSNOはNO調節が薬理学的に保証される場合に考慮すべき、療法上有望な標的となる。
【0004】
[0004] NO恒常性および細胞SNOレベルの鍵となる調節物質としてのGSNOのこの理解を考慮に入れて、GSNOおよびSNOタンパク質の内在産生を調べることに研究が向けられた;これは、一酸化窒素シンセターゼ(NOS)酵素によるNOラジカルの産生から下流で起きる。より最近になって、利用可能なGSNOの濃度の支配、したがって利用可能なNOおよびSNOの支配において重要な役割をもつ、GSNOの酵素異化作用が次第に理解されるようになった。
【0005】
[0005] このGSNO異化作用の理解にとって重要なものとして、研究者らは高度に保存されたS−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)を最近同定した(Jensen et al., Biochem J., 331: 659-668 (1998); Liu et al., (2001))。GSNORはグルタチオン依存性ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ(GS−FDH)、アルコールデヒドロゲナーゼ3(ADH−3)(Uotila and Koivusalo, Coenzymes and Cofactors., D. Dolphin, ed. pp. 517-551 (New York, John Wiley & Sons, 1989))、およびアルコールデヒドロゲナーゼ5(ADH−5)としても知られる。重要なことに、GSNORはGSNOに対して他の基質に対するより大きな活性を示し(Jensen et al., 1998; Liu et al., 2001)、細菌、植物および動物において重要なタンパク質およびペプチドの脱ニトロソ活性を仲介すると思われる。GSNORは真核細胞において主要なGSNO代謝酵素であると思われる(Liu et al., 2001)。したがって、GSNOはGSNOR活性が低いかまたは存在しない生体区画(たとえば、気道ライニング液)に蓄積する可能性がある(Gaston et al., 1993)。
【0006】
[0006] GSNORを欠如する酵母は、この酵素の基質ではないS−ニトロシル化タンパク質を蓄積する;これは、GSNOがSNOタンパク質と平衡状態で存在することを強く示唆する(Liu et al., 2001)。GSNOの、したがってSNOタンパク質の環境レベルに対する厳密な酵素制御は、生理的要求を超えたNOが産生されるニトロソ化ストレスに対する防御を含めた多数の生理的および病理的機能にわたってGSNO/GSNORが役割を果たしているという可能性を高める。実際にGSNOは、具体的に、呼吸の駆動(Lipton et al., Nature, 413: 171-174 (2001))から、嚢胞性線維症貫膜調節因子の調節(Zaman et al., Biochem Biophys Res Commun, 284: 65-70 (2001))、血管緊張、血栓症および血小板機能の調節(de Belder et al., Cardiovasc Res. 1994 May; 28(5): 691-4. (1994); Z. Kaposzta, et al., Circulation; 106(24): 3057-3062, 2002))、ならびに宿主防御(de Jesus-Berrios et al., Curr. Biol., 13: 1963-1968 (2003))にまで及ぶ生理的プロセスに関与することが示唆されている。他の研究により、GSNORは酵母細胞をニトロソ化ストレスに対してインビトロ(Liu et al., 2001)およびインビボ(de Jesus-Berrios et al., 2003)の両方で保護することが見出された。
【0007】
[0007] まとめると、データは、生体系においてGSNOを異化し、結果的に利用可能なSNOおよびNOを減少させる酵素S−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)について、GSNOが主要な生理的リガンドであることを示唆する(Liu et al., 2001)、(Liu et al., Cell, (2004), 116(4), 617-628))、および(Que et al., Science, 2005, 308, (5728): 1618-1621))。したがって、この酵素は局所および全身の生物活性NOの調節において中枢的役割を果たす。NOの生物学的利用能の撹乱は、高血圧症、アテローム性硬化症、血栓症、喘息、胃腸障害、炎症および癌を含めた多数の疾患状態の発病と関連づけられているので、GSNOR活性を調節する薬剤はNO平衡異常と関連する疾患を処置するための候補療法薬である。
【0008】
[0008] 一酸化窒素(NO)、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)、およびS−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)は正常な肺の生理を調節し、また肺の病態生理に関与する。正常な状態では、NOおよびGSNOは正常な肺の生理を維持し、それらの抗炎症作用および気管支拡張作用によって機能する。肺疾患、たとえば喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)におけるこれらの仲介因子のレベルの低下は、GSNOR酵素活性のアップレギュレーションにより起きる可能性がある。これらのNOおよびGSNOのレベルの低下、したがって抗炎症能の低下が、肺疾患に関与する、かつGSNOR阻害により反転させることができる可能性のある、鍵事象である。
【0009】
[0009] クローン病および潰瘍性大腸炎を含めた炎症性腸疾患(IBD)は、胃腸(GI)管の慢性炎症性障害であり、それらにおいてNO、GSNO、およびGSNORが影響を及ぼしている可能性がある。正常な状態では、NOおよびGSNOは抗炎症作用および腸上皮細胞バリヤーの維持によって正常な腸の生理を維持する機能をもつ。IBDではGSNOおよびNOのレベルの低下が顕著であり、これらはGSNOR活性のアップレギュレーションにより起きている可能性がある。これらの仲介因子のレベルの低下は、上皮密着帯の維持に関与するタンパク質の調節異常による上皮バリヤーの破壊によってIBDの病態生理に関与する。この上皮バリヤー機能障害、それに伴って起きる管腔からの微生物の進入、ならびにNOおよびGSNOが低下した状態で全体的に低下した抗炎症能は、IBD進行における鍵事象であって、GSNORのターゲティングによって影響を及ぼすことができる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Stamler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 7674-7677 (1992)
【非特許文献2】Foster et al., Trends in Molecular Medicine, 9 (4):160-168, (2003)
【非特許文献3】Gaston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10957-10961 (1993)
【非特許文献4】Liu et al., Nature, 410: 490-494 (2001)
【非特許文献5】Jensen et al., Biochem J., 331: 659-668 (1998)
【非特許文献6】Uotila and Koivusalo, Coenzymes and Cofactors., D. Dolphin, ed. pp. 517-551 (New York, John Wiley & Sons, 1989)
【非特許文献7】Lipton et al., Nature, 413: 171-174 (2001)
【非特許文献8】Zaman et al., Biochem Biophys Res Commun, 284: 65-70 (2001)
【非特許文献9】de Belder et al., Cardiovasc Res. 1994 May; 28(5): 691-4 (1994)
【非特許文献10】Z. Kaposzta, et al., Circulation; 106(24): 3057-3062, 2002
【非特許文献11】de Jesus-Berrios et al., Curr. Biol., 13: 1963-1968 (2003)
【非特許文献12】Liu et al., Cell, 116(4), 617-628 (2004),
【非特許文献13】Que et al., Science, 308, (5728): 1618-1621 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0010] 現在、当技術分野には、NO合成の亢進および/またはNO生物活性の亢進に関連する病的状態のための診断薬、予防薬、改善薬および治療薬に対する大きな要望がある。さらに、他のNO関連障害を予防、改善または反転させるための新規な化合物、組成物および方法に対する著しい要望がある。本発明はこれらの要望を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0011] 本発明は、新規チオフェン化合物を提供する。これらの化合物はS−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(“GSNOR”)阻害薬として有用である。本発明は、本発明化合物の医薬的に許容できる塩類、立体異性体、プロドラッグおよび代謝産物を包含する。本発明には、少なくとも1種類の本発明化合物および少なくとも1種類の医薬的に許容できるキャリヤーを含む医薬組成物も包含される。
【0013】
[0012] 本発明の組成物は、いずれか適切な医薬的に許容できる剤形で調製できる。
[0013] 本発明は、その必要がある対象においてGSNORを阻害する方法を提供する。そのような方法は、少なくとも1種類のGSNOR阻害薬またはその医薬的に許容できる塩、プロドラッグ、立体異性体もしくは代謝産物を少なくとも1種類の医薬的に許容できるキャリヤーと共に含む、療法有効量の医薬組成物を投与することを含む。GSNOR阻害薬は本発明による新規化合物であってもよく、あるいはGSNORの阻害薬であることがこれまで知られていなかった既知化合物であってもよい。
【0014】
[0014] 本発明は、その必要がある対象においてNOドナー療法により改善される障害を処置する方法をも提供する。そのような方法は、少なくとも1種類のGSNOR阻害薬またはその医薬的に許容できる塩、立体異性体、プロドラッグもしくは代謝産物を少なくとも1種類の医薬的に許容できるキャリヤーと共に含む、療法有効量の医薬組成物を投与することを含む。GSNOR阻害薬は本発明による新規化合物であってもよく、あるいはGSNORの阻害薬であることがこれまで知られていなかった既知化合物であってもよい。
【0015】
[0015] 本発明は、その必要がある対象において細胞増殖性障害を処置する方法をも提供する。そのような方法は、少なくとも1種類のGSNOR阻害薬またはその医薬的に許容できる塩、立体異性体、プロドラッグもしくは代謝産物を少なくとも1種類の医薬的に許容できるキャリヤーと共に含む、療法有効量の医薬組成物を投与することを含む。GSNOR阻害薬は本発明による新規化合物であってもよく、あるいはGSNORの阻害薬であることがこれまで知られていなかった既知化合物であってもよい。
【0016】
[0016] 本発明の方法は、1種類以上の第2の有効薬剤と共に投与することを包含する。そのような投与は逐次であってもよく、または組合わせ組成物においてであってもよい。
【0017】
[0017] 本明細書に記載するものと類似または均等な方法および材料を本発明の実施または試験に際して使用できるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書に述べる公に入手できるすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献の全体を援用する。定義を含めて、矛盾する場合は本明細書が支配するであろう。
【0018】
[0018] 以上の概要および以下の詳細な記載は共に例示および説明であって、特許請求の範囲に記載した組成物および方法の詳細をさらに提供するためのものである。他の目的、利点および新規特徴は以下の詳細な記載から当業者に容易に認識されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0019] A.発明の大要
[0020] 最近まで、S−ニトロソグルタチオンレダクターゼ(GSNOR)がホルムアルデヒドグルタチオン付加物であるS−ヒドロキシメチルグルタチオンを酸化することは知られていた。その後、GSNORは多様な細菌、酵母、植物および動物において同定され、良好に保存されている。大腸菌(E. coli)、サッカロミセス-セレビシエ(S. cerevisiae)およびマウスマクロファージに由来するタンパク質は、60%を超えるアミノ酸配列同一性を共有する。GSNOR活性(すなわち、要求補因子としてNADHが存在する場合にS−ニトロソグルタチオンを分解)が、大腸菌、マウスマクロファージ、マウス内皮細胞、マウス平滑筋細胞、酵母、ならびにヒトのHeLa細胞、上皮細胞および単核細胞において検出された。ヒトGSNORのヌクレオチドおよびアミノ酸の配列情報は、National Center for Biotechnology Information (NCBI)データベースから寄託番号M29872、NM_000671で得ることができる。マウスGSNORのヌクレオチドおよびアミノ酸の配列情報は、NCBIデータベースから寄託番号NM_007410で得ることができる。ヌクレオチド配列には開始部位と終止部位に下線が施されている。CDSはコード配列を表わす。SNPは一塩基多型を表わす。他の種のものを含めて他の関連GSNORのヌクレオチドおよびアミノ酸の配列は、U.S. Patent Application 2005/0014697中にある。
【0020】
[0021] 本発明によれば、GSNORはインビボおよびインビトロでS−ニトロソグルタチオン(GSNO)およびタンパク質S−ニトロソチオール(SNO)類を代謝し、低質量NOドナー化合物の細胞内レベルを制御してタンパク質ニトロシル化が有毒レベルに達するのを阻止することにより、NOの生物活性を調節する機能をもつことが示された。
【0021】
[0022] これに基づけば、この酵素の阻害はNOドナー療法が適応されるすべての疾患において生物活性を増強し、病的に増殖する細胞の増殖を阻害し、かつNOの生物活性の増強が有益である疾患においてそれを増強することになる。
【0022】
[0023] 本発明は、有効なGSNOR阻害薬である医薬を提供する。特に、下記に示す構造(式I)をもつGSNOR阻害薬である置換チオフェン類似体、またはその医薬的に許容できる塩、立体異性体、プロドラッグもしくは代謝産物が提供される:
【0023】
【化1】

【0024】
式中:
XおよびYは、SまたはCHからなる群から選択され、ただし、XがSである場合にはYはCHでなければならず、XがCHである場合にはYはSでなければならず;
Arは、フェニルおよびチオフェン−イルからなる群から選択され;
は、水素、非置換イミダゾリル、置換イミダゾリル、カルバモイル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、およびメトキシからなる群から選択され;
は、水素、メチル、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、カルバモイル、ジメチルアミノ、アミノ、ホルムアミド、およびトリフルオロメチルからなる群から選択され;
は、水素、メチル、メトキシ、クロロ、およびフルオロからなる群から選択され;
は、CONH、NHSOCH、ヒドロキシ、クロロ、ならびに置換および非置換イミダゾリルからなる群から選択される。
【0025】
[0024] これに関して用いる用語“類似体”は、チオフェン環を保有する式Iの化合物と類似の化学構造および機能をもつ化合物を表わす。
[0025] 本発明のあるチオフェン類似体は、立体配置異性体、幾何異性体および立体配座異性体を含めた多様な異性体の形態で存在する可能性もあり、また多様な互変異性体の形態、特に水素原子の結合点が異なる形態で存在する可能性もある。本明細書中で用いる用語“異性体”は、化合物の互変異性体形態を含めて、化合物のすべての異性体形態を包含するものとする。
【0026】
[0026] 不斉中心をもつ例示化合物は、種々の鏡像異性体およびジアステレオマーの形態で存在する可能性がある。ある化合物は光学異性体またはジアステレオマーの形態で存在する可能性がある。したがって、本発明はそれらの光学異性体、ジアステレオマー、およびラセミ混合物を含めたその混合物の形態を包含する。
【0027】
[0027] 示した構造とその構造に与えた名称の間に相異がある場合は示した構造が支配することを留意すべきである。さらに、ある構造または構造の一部の立体化学性をたとえば太線、くさび形の線または破線で指示していない場合、その構造または構造の一部は記述した化合物のすべての立体異性体を包含すると解釈すべきである。
【0028】
[0028] B.S−ニトロソグルタチオンレダクターゼ阻害薬
[0029] 1.本発明化合物
[0030] 本発明は、その1観点において式Iに示す構造をもつ化合物、またはその医薬的に許容できる塩、立体異性体、プロドラッグもしくは代謝産物を提供する:
【0029】
【化2】

【0030】
式中:
XおよびYは、SまたはCHからなる群から選択され、ただし、XがSである場合にはYはCHでなければならず、XがCHである場合にはYはSでなければならず;
Arは、フェニルおよびチオフェン−イルからなる群から選択され;
は、水素、非置換イミダゾリル、置換イミダゾリル、カルバモイル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、およびメトキシからなる群から選択され;
は、水素、メチル、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、カルバモイル、ジメチルアミノ、アミノ、ホルムアミド、およびトリフルオロメチルからなる群から選択され;
は、水素、メチル、メトキシ、クロロ、およびフルオロからなる群から選択され;
は、CONH、NHSOCH、ヒドロキシ、クロロ、ならびに置換および非置換イミダゾリルからなる群から選択される。
【0031】
[0031] 本発明の他の観点において、Arは
【0032】
【化3】

【0033】
からなる群から選択され、これらにおいてRおよびRは前記に定めたものである。
[0032] 本発明の他の観点において、R
【0034】
【化4】

【0035】
であり、ここでRは水素、メチルおよびエチルからなる群から選択される。
[0033] 本発明の他の観点において、ArRは、4−メトキシフェニル、4−クロロ−2−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、4−カルバモイルフェニル、および4−ブロモフェニルからなる群から選択される。
【0036】
[0034] 本発明の他の観点において、Rは水素、メチルおよびメトキシからなる群から選択される。
[0035] 本発明は、その1観点において式IIに示す構造をもつ化合物、またはその医薬的に許容できる塩、立体異性体、プロドラッグもしくは代謝産物を提供する:
【0037】
【化5】

【0038】
式中:
Arは、フェニルおよびチオフェン−イルからなる群から選択され;
は、水素、非置換イミダゾリル、置換イミダゾリル、カルバモイル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、およびメトキシからなる群から選択され;
は、水素、メチル、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、カルバモイル、ジメチルアミノ、アミノ、ホルムアミド、およびトリフルオロメチルからなる群から選択され;
は、水素、メチル、メトキシ、クロロ、およびフルオロからなる群から選択され;
は、CONH、NHSOCH、ヒドロキシ、クロロ、ならびに置換および非置換イミダゾリルからなる群から選択される。
【0039】
[0036] 本発明の他の観点において、Arは
【0040】
【化6】

【0041】
からなる群から選択され、これらにおいてRおよびRは前記に定めたものである。
[0037] 本発明の他の観点において、R
【0042】
【化7】

【0043】
であり、ここでRは水素、メチルおよびエチルからなる群から選択される。
[0038] 本発明の他の観点において、ArRは、4−メトキシフェニル、4−クロロ−2−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、4−カルバモイルフェニル、および4−ブロモフェニルからなる群から選択される。
【0044】
[0039] 本発明の他の観点において、Rは水素、メチルおよびメトキシからなる群から選択される。
[0040] 本発明の他の観点において、式IIの適切な化合物には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:
3−(3−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(3−(4−カルバモイルフェニル)−4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4−(4−カルバモイルフェニル)−3−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(3−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(3−(4−カルバモイルフェニル)−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)−3−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4’−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−2,3’−ビチオフェン−5’−イル)プロパン酸;
3−(5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−4’−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)−2,3’−ビチオフェン−5’−イル)プロパン酸;および
3−(4−(4−ブロモフェニル)−3−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸。
【0045】
[0041] 本発明は、その1観点において式IIIに示す構造をもつ化合物、またはその医薬的に許容できる塩、立体異性体、プロドラッグもしくは代謝産物を提供する:
【0046】
【化8】

【0047】
式中:
Arは、フェニルおよびチオフェン−イルからなる群から選択され;
は、水素、非置換イミダゾリル、置換イミダゾリル、カルバモイル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、およびメトキシからなる群から選択され;
は、水素、メチル、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、カルバモイル、ジメチルアミノ、アミノ、ホルムアミド、およびトリフルオロメチルからなる群から選択され;
は、水素、メチル、メトキシ、クロロ、およびフルオロからなる群から選択され;
は、CONH、NHSOCH、ヒドロキシ、クロロ、ならびに置換および非置換イミダゾリルからなる群から選択される。
【0048】
[0042] 本発明の他の観点において、Arは
【0049】
【化9】

【0050】
からなる群から選択され、これらにおいてRおよびRは前記に定めたものである。
[0043] 本発明の他の観点において、R
【0051】
【化10】

【0052】
であり、ここでRは水素、メチルおよびエチルからなる群から選択される。
[0044] 本発明の他の観点において、ArRは、4−メトキシフェニル、4−クロロ−2−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、4−カルバモイルフェニル、および4−ブロモフェニルからなる群から選択される。
【0053】
[0045] 本発明の他の観点において、Rは水素、メチルおよびメトキシからなる群から選択される。
[0046] 本発明の他の観点において、式IIIの適切な化合物には下記のものが含まれるが、これに限定されない:
3−(4−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸。
【0054】
[0047] 置換基への結合が環中の2原子を連結する結合を交差するように示された場合、そのような置換基はその環中のいずれの原子に結合していてもよい。置換基を、示した式の化合物の残部にその置換基が結合している原子を指示せずに挙げた場合、そのような置換基はそのような置換基中のいずれの原子により結合していてもよい。置換基および/または可変基の組合わせは許容できるが、ただしそのような組合わせによって安定な化合物が生成する場合のみである。
【0055】
[0048] 本明細書に記載する化合物は不斉中心をもつ可能性がある。不斉置換された原子を含む本発明化合物は、光学活性形態またはラセミ形態で単離できる。光学活性形態を調製する方法は、ラセミ形態の分割によるか、または光学活性出発物質からの合成によるものなど、当技術分野で周知である。オレフィン類、C=N二重結合などの多くの幾何異性体が本明細書に記載する化合物中に存在する可能性もあり、そのような安定な異性体はすべて本発明に含まれるものとする。本発明化合物のシスおよびトランス幾何異性体が記載され、異性体の混合物として、または分離した異性体形態として単離できる。特定の立体化学性または異性体形態を具体的に指示しない限り、ある構造のキラル、ジアステレオマー、ラセミおよび幾何異性体形態がすべて考慮される。提示または記載した化合物の互変異性体もすべて本発明の一部であるとみなされる。
【0056】
[0049] 別途指示しない限り、そのような不斉性から生じる異性体(たとえば、すべての鏡像異性体およびジアステレオマー)が本発明の範囲に含まれると理解すべきである。そのような異性体は、古典的な分離法によって、および立体化学的に制御された合成によって、実質的に純粋な形態で得ることができる。さらに、本発明において考察する構造ならびに他の化合物および部分には、そのすべての互変異性体も含まれる。アルケン類は、適切な場合はE−またはZ−幾何異性体のいずれかを含むことができる。
【0057】
[0050] 2.代表的化合物
[0051] 実施例1〜14に、式Iの代表的なチオフェン類似体を挙げる。各化合物を製造するために使用できる合成法は、実施例1の前に示す合成スキーム、および実施例15に記載する中間体を引用して、実施例1〜14に詳述される。各化合物について支持する質量分析データおよびプロトンNMRデータも実施例1〜14に含める。GSNOR阻害活性を実施例16に記載するアッセイ法により測定し、IC50値を求めた。実施例1〜14のGSNOR阻害化合物は、約<10μMのIC50をもっていた。実施例1、2、4、7〜9、11〜13、14のGSNOR阻害化合物は、約1.0μM未満のIC50をもっていた。
【0058】
[0052] C.定義
[0053] 本明細書中で用いる用語“約”は当業者に理解されており、それを用いる状況においてある程度異なるであろう。それが用いられる状況を考慮してもこの用語の使用が当業者に明瞭でない場合、“約”はその用語の±10%までを意味するであろう。
【0059】
[0054] 用語“アシル”には、アセチル基(CHCO−)、またはカルボニル基に直鎖もしくは分枝鎖低級アルキル基が結合したものを含む、化合物および部分が含まれる。
[0055] 本明細書中で用いる用語“アルキル”は、指示した数の炭素原子をもつ直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素を表わす。たとえば、(C−C)アルキルはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、およびネオヘキシルを含むものとするが、これらに限定されない。アルキル基は置換されていなくてもよく、あるいは場合により本明細書に記載する1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0060】
[0056] 本明細書中で用いる用語“アルケニル”は、指示した数の炭素原子および少なくとも1つの二重結合をもつ、直鎖または分枝鎖の不飽和炭化水素を表わす。(C−C)アルケニル基の例にはエチレン、プロピレン、1−ブチレン、2−ブチレン、イソブチレン、sec−ブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、イソペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、イソヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、イソヘプテン、1−オクテン、2−オクテン、3−オクテン、4−オクテン、およびイソオクテンが含まれるが、これらに限定されない。アルケニル基は置換されていなくてもよく、あるいは場合により本明細書に記載する1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0061】
[0057] 本明細書中で用いる用語“アルキニル”は、指示した数の炭素原子および少なくとも1つの三重結合をもつ、直鎖または分枝鎖の不飽和炭化水素を表わす。(C−C)アルキニル基の例にはアセチレン、プロピン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、2−ペンチン、1−ヘキシン、2−ヘキシン、3−ヘキシン、1−ヘプチン、2−ヘプチン、3−ヘプチン、1−オクチン、2−オクチン、3−オクチンおよび4−オクチンが含まれるが、これらに限定されない。アルキニル基は置換されていなくてもよく、あるいは場合により本明細書に記載する1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0062】
[0058] 本明細書中で用いる用語“アルコキシ”は、指示した数の炭素原子をもつ−O−アルキル基を表わす。たとえば、(C−C)アルコキシ基には−O−メチル、−O−エチル、−O−プロピル、−O−イソプロピル、−O−ブチル、−O−sec−ブチル、−O−tert−ブチル、−O−ペンチル、−O−イソペンチル、−O−ネオペンチル、−O−ヘキシル、−O−イソヘキシル、および−O−ネオヘキシルが含まれる。
【0063】
[0059] 本明細書中で用いる用語“アミノアルキル”は、アルキル基(一般に1〜6個の炭素原子)においてそのC−Cアルキル基の1個以上の水素原子が式−N(Rのアミンで置き換えられたものを表わす;ここで、Rはそれぞれの場合、独立して−Hまたは(C−C)アルキルである。アミノアルキル基の例には−CHNH、−CHCHNH、−CHCHCHNH、−CHCHCHCHNH、−CHCHCHCHCHNH、−CHCHCHCHCHCHNH、−CHCHCHN(CH、t−ブチルアミノメチル、イソプロピルアミノメチルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
[0060] 本明細書中で用いる用語“アリール”は、5〜14員の単環式、二環式または三環式芳香族環系を表わす。アリール基の例にはフェニルおよびナフチルが含まれる。アリール基は置換されていなくてもよく、あるいは場合により後記に記載する1以上の置換基で置換されていてもよい。アリール基の例には、フェニル、またはアリールヘテロサイクル、たとえば、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどが含まれる。
【0065】
[0061] 本明細書中で用いる用語“生物活性”は、1以上の細胞プロセスまたは細胞外プロセスに対する作用(たとえば、結合、シグナル伝達などによるもの)であって、生理学的または病態生理学的プロセスに影響を与える可能性があるものを示す。
【0066】
[0062] 用語“カルボニル”には、二重結合で酸素原子に結合した炭素を含む化合物および部分が含まれる。カルボニルを含む部分の例にはアルデヒド類、ケトン類、カルボン酸、アミド、エステル、酸無水物などが含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
[0063] 用語“カルボキシ”または“カルボキシル”は、−COOH基またはカルボン酸を意味する。
[0064] 用語“C−C”は、“m”個の炭素原子〜“n”個の炭素原子を意味する。たとえば、用語“C−C”は、1〜6個の炭素原子(C、C、C、C、CまたはC)を意味する。用語“C−C”は、2〜6個の炭素原子(C、C、C、CまたはC)を含む。用語“C−C”は、3〜6個の炭素原子(C、C、CまたはC)”を含む。
【0068】
[0065] 本明細書中で用いる用語“シクロアルキル”は、3〜14員、飽和または不飽和、非芳香族の、単環式、二環式または三環式炭化水素環系を表わす。このクラスには、ベンゼン環に縮合したシクロアルキル基が含まれる。代表的シクロアルキル基には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、1,3−シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、1,3−シクロヘプタジエニル、1,4−シクロヘプタジエニル、−1,3,5−シクロヘプタトリエニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、1,3−シクロオクタジエニル、1,4−シクロオクタジエニル、−1,3,5−シクロオクタトリエニル、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレン、ヘキサヒドロナフタレン、オクタヒドロインデン、ヘキサヒドロインデン、テトラヒドロインデン、デカヒドロベンゾシクロヘプテン、オクタヒドロベンゾシクロヘプテン、ヘキサヒドロベンゾシクロヘプテン、テトラヒドロベンゾシクロpヘプテン、ドデカヒドロヘプタレン、デカヒドロヘプタレン、オクタヒドロヘプタレン、ヘキサヒドロヘプタレン、テトラヒドロヘプタレン、(1s,3s)−ビシクロ[1.1.0]ブタン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[3.3.1]ノナン、ビシクロ[3.3.2]デカン、ビシクロ[3.3.]ウンデカン、ビシクロ[4.2.2]デカン、およびビシクロ[4.3.1]デカン。シクロアルキル基は置換されていなくてもよく、あるいは場合により後記に記載する1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0069】
[0066] 用語“ハロゲン”は、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素などを含む。
[0067] 本明細書中で用いる用語“ハロアルキル”は、C−Cアルキル基においてそのC−Cアルキル基の1個以上の水素原子が、同一でも異なってもよいハロゲン原子で置き換えられたものを表わす。ハロアルキル基の例にはトリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピル、ペンタクロロエチル、および1,1,1−トリフルオロ−2−ブロモ−2−クロロエチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
[0068] 用語“ヘテロアルキル”は、それ自体または他の用語との組合わせにおいて、別途記載しない限り、安定な直鎖または分枝鎖アルキルまたはその組合わせであって、炭素原子、ならびにO、NおよびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子からなるものを意味し、その際、窒素原子および硫黄原子は場合により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は場合により四級化していてもよい。ヘテロ原子O、NおよびSは、ヘテロアルキル基のいずれの位置にあってもよい。例には−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、および−CH−CH=N−OCHが含まれる。最高2個のヘテロ原子が連続していてもよい;たとえば、−CH−NH−OCH。ヘテロアルキル基を表わすために(C−C)などの接頭辞を用いる場合、その炭素数(この例では2〜8)はヘテロ原子も含むものとする。たとえばC−ヘテロアルキル基は、たとえば−CHOH(1個の炭素原子、および炭素原子に置き換わる1個のヘテロ原子)および−CHSHを含むものとする。
【0071】
[0069] ヘテロアルキル基の定義をさらに説明するために、ヘテロ原子が酸素である場合、ヘテロアルキル基はオキシアルキル基であってもよい。たとえば、(C2−)オキシアルキルは、−CH−O−CH(2個の炭素原子、および炭素原子に置き換わる1個の酸素をもつC−オキシアルキル基)、−CHCHCHCHOH、−OCHCHOCHCHOH、−OCHCH(OH)CHOHなどを含むものとする。
【0072】
[0070] 本明細書中で用いる用語“ヘテロアリール”は、5〜14員の芳香族複素環であって、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子をもち、かつ少なくとも1個の炭素原子を含むものを表わし、これには単環式、二環式および三環式環系が含まれる。代表的ヘテロアリールは下記のものである:トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、ピリジル、フリル、ベンゾフラニル、チエニル、ベンゾチエニル、キノリニル、ピロリル、インドリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ピリミジル、アゼピニル、オキセピニル、キノキサリニルおよびオキサゾリル。ヘテロアリール基は置換されていなくてもよく、あるいは場合により後記に記載する1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0073】
[0071] 本明細書中で用いる用語“ヘテロ原子”は、酸素(O)、窒素(N)、および硫黄(S)を含むものとする。
[0072] 本明細書中で用いる用語“ヘテロサイクル(複素環)”は、3〜14員の環系であって、飽和、不飽和または芳香族のいずれかであり、独立して窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子をもつものを表わし、その際、窒素および硫黄ヘテロ原子は場合により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は場合により四級化していてもよく、これには単環式、二環式および三環式環系が含まれる。二環式および三環式環系は、ベンゼン環に縮合したヘテロサイクルまたはヘテロアリールを包含することができる。ヘテロサイクルは、化学的に許容できる場合、ヘテロ原子または炭素原子のいずれによっても結合できる。ヘテロサイクルには前記に定義したヘテロアリールが含まれる。ヘテロサイクルの代表例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、トリアゾリル、テトラゾリル、アジリニル、ジアジリジニル、ジアジリニル、オキサジリジニル、アゼチジニル、アゼチジノニル、オキセタニル、チエタニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ピロリル、オキサジニル、チアジニル、ジアジニル、ジオキサニル、トリアジニル、テトラジニル、イミダゾリル、テトラゾリル、ピロリジニル、イソオキサゾリル、フラニル、フラザニル、ピリジニル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、チエニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピリミジニル、ベンゾイミダゾリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、プリニル、インドリル、イソキノリニル、キノリニルおよびキナゾリニル。ヘテロサイクル基は置換されていなくてもよく、あるいは場合により後記に記載する1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0074】
[0073] 用語“ヘテロシクロアルキル”は、それ自体または他の用語との組合わせにおいて、別途記載しない限り、環状の“ヘテロアルキル”を表わす。さらに、ヘテロ原子はヘテロサイクルが分子の残部に結合している位置を占めることができる。ヘテロシクロアルキルの例には、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが含まれる。
【0075】
[0074] 本明細書中で用いる用語“ヒドロキシアルキル”は、指示した数の炭素原子をもつアルキル基においてそのアルキル基の1個以上の水素原子が−OH基で置き換えられたものを表わす。ヒドロキシアルキル基の例には−CHOH、−CHCHOH、−CHCHCHOH、−CHCHCHCHOH、−CHCHCHCHCHOH、−CHCHCHCHCHCHOH、およびその分枝形が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
[0075] 用語“ヒドロキシ”または“ヒドロキシル”には、−OHまたは−Oをもつ基が含まれる。
[0076] 本明細書中で用いる用語N−オキシドまたはアミンオキシドは、第三級アミンから1個の酸素原子を窒素原子に結合させることにより誘導される化合物R−Oを表わす。拡張により、この用語は第一級アミンおよび第二級アミンの同様な誘導体を含む。
【0077】
[0077] 本明細書中で用いる用語“立体異性体”は、別途指示しない限り、ある化合物の1立体異性体であって、その化合物の他の立体異性体を実質的に含まないものを意味する。たとえば、1つのキラル中心をもつ立体異性体的に純粋な化合物は、その化合物の反対の立体異性体を実質的に含まないであろう。2つのキラル中心をもつ立体異性体的に純粋な化合物は、その化合物の他の立体異性体類を実質的に含まないであろう。ある態様において、立体異性体的に純粋な化合物は、その化合物の1立体異性体を約80重量%より多量およびその化合物の他の立体異性体類を約20重量%未満、たとえばその化合物の1立体異性体を約90重量%より多量およびその化合物の他の立体異性体類を約10重量%未満、またはその化合物の1立体異性体を約95重量%より多量およびその化合物の他の立体異性体類を約5重量%未満、またはその化合物の1立体異性体を約97重量%より多量およびその化合物の他の立体異性体類を約3重量%未満含む。
【0078】
[0078] 本明細書中で用いる“タンパク質”は、“ペプチド”、“ポリペプチド”、または“ペプチドフラグメント”と同義に用いられる。“精製した”タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、またはペプチドフラグメントは、それからアミノ酸配列が得られる細胞、組織または無細胞源に由来する細胞性物質または他の混入タンパク質を実質的に含まないか、あるいは化学合成する場合は前駆化学物質または他の化学物質を実質的に含まない。
【0079】
[0079] 本明細書中で用いる“調節する”は、ペプチドまたはポリペプチドのレベルを上昇または低下させること、あるいはペプチドまたはポリペプチドの安定性または活性を上昇または低下させることを表わすものとする。用語“阻害する”は、ペプチドまたはポリペプチドのレベルを低下させること、あるいはペプチドまたはポリペプチドの安定性または活性を低下させることを表わすものとする。好ましい態様において、調節または阻害されるペプチドは、S−ニトロソグルタチオン(GSNO)またはタンパク質S−ニトロソチオール(SNO)類である。
【0080】
[0080] 本明細書中で用いる用語“一酸化窒素”および“NO”は、荷電していない一酸化窒素種および荷電した一酸化窒素種を包含し、特にニトロソニウムイオン(NO)およびニトロキシルイオン(NO)を含む。反応性形態の一酸化窒素は、ガス状一酸化窒素により供給することができる。構造X−NO;ここで、Xは一酸化窒素を放出、送達または伝達する部分であり、一酸化窒素をそれの目標とする作用部位へそれらの目標とする目的について活性な形態で供給するありとあらゆる化合物が含まれ、Yは1または2である。
【0081】
[0081] 本明細書中で用いる用語“医薬的に許容できる”は、動物およびより特別にはヒトに使用するものとして、連邦または州の政府の規制当局により承認されていること、あるいは米国薬局方または他の一般に認められている薬局方に収録されていることを意味する。用語“キャリヤー”は、それと共に療法薬を投与する希釈剤、佐剤、賦形剤、またはビヒクルを表わし、水および油などの無菌液体を含むが、これらに限定されない。
【0082】
[0082] 本発明化合物の“医薬的に許容できる塩”または“塩”は、開示した化合物のイオン結合を含む生成物であり、一般に、開示した化合物を酸または塩基と反応させることにより調製され、対象に投与するのに適切なものである。医薬的に許容できる塩には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:下記を含む酸付加塩:塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、アルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、アリールアルキルスルホン酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、および酒石酸塩;アルカリ金属カチオン、たとえばLi、Na、Kの塩、アルカリ土類金属、たとえばMgもしくはCaの塩、または有機アミン塩。
【0083】
[0083] “医薬組成物”は、開示した化合物を対象への投与に適切な形態で含む配合物である。本発明の医薬組成物は、好ましくはそれの目標とする投与経路と適合するように配合される。投与経路の例には、経口、ならびに非経口、たとえば静脈内、皮内、皮下、吸入、経皮、経粘膜および直腸投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
[0084] 本明細書中で用いる用語“置換された”は、表示した原子上のいずれか1個以上の水素が、指示した群から選択したもので置き換えられたことを意味する;ただし、その表示した原子の普通の原子価を超えることはなく、その置換によって安定な化合物が生成する。置換基がケト(すなわち、=O)である場合、その原子上の2個の水素が置き換えられる。本明細書中で用いる環二重結合は、2個の隣接する環原子の間で形成される二重結合(たとえば、C=C、C=N、またはN=N)である。
【0085】
[0085] アルキル、ヘテロアルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニルと呼ばれる基の置換基は、−ORd’、=O、=NRd’、=N−ORd’、−NRd’d”、−SRd’、−ハロ、−SiRd’d”d”’、−OC(O)Rd’、−C(O)Rd’、−COd’、−CONRd’d”、−OC(O)NRd’d”、−NRd”C(O)Rd’、−NRd”’C(O)NRd’d”、−NRd”’SONRd’d”、−NRd”COd’、−NHC(NH)=NH、−NRa’C(NH)=NH、−NHC(NH)=NRd’、−S(O)Rd’、−SOd’、−SONRd’d”、−NRd”SOd’、−CNおよび−NOを含む多様な基から、0〜3の範囲の数で選択でき、0、1または2個の置換基をもつ基がその例である。
【0086】
[0086] Rd’、Rd”およびRd”’は、それぞれ独立して、水素、非置換(C−C)アルキル、非置換ヘテロ(C−C)アルキル、非置換アリール、ならびに−ハロ、非置換アルキル、非置換アルコキシ、非置換チオアルコキシおよび非置換アリール(C−C)アルキルから選択される1〜3個の置換基で置換されたアリールを表わす。R’およびRd”が同一窒素原子に結合している場合、それらは窒素原子と合わせて5−、6−または7−員環を形成していてもよい。たとえば、−NRd’d”は1−ピロリジニルまたは4−モルホリニルを表わすことができる。
【0087】
[0087] 一般に、アルキル基またはヘテロアルキル基は0から3個までの置換基をもち、2個以下の置換基をもつ基が本発明の例である。アルキル基またはヘテロアルキル基は置換されていなくてもよく、あるいはモノ置換されていてもよい。ある態様において、アルキル基またはヘテロアルキル基は置換されていないであろう。
【0088】
[0088] アルキル基またはヘテロアルキル基に対する置換基の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない:−ORd’、=O、=NRd’、=N−ORd’、−NRd’d”、−SRd’、−ハロ、−SiRd’d”d”’、−OC(O)Rd’、−C(O)Rd’、−COd’、−CONRd’d”、−OC(O)NRd’d”、−NRd”C(O)Rd’、−NRd”’C(O)NRd’d”、−NRd”’SONRd’d”、−NRd”CO’、−NHC(NH)=NH、−NRa’C(NH)=NH、−NHC(NH)=NRd’、−S(O)Rd’、−SOd’、−SONRd’d”、−NRd”SOd’、−CNおよび−NO;ここで、Rd’、Rd”およびRd”’は前記に定めたものである。一般的な置換基は下記のものから選択できる:−ORd’、=O、−NRd’d”、−ハロ、−OC(O)Rd’、−COd’、−C(O)NRd’d”、−OC(O)NRd’d”、−NRd”C(O)Rd’、−NRd”COd’、−NRd”’SONRd’d”、−SOd’、−SONRd’d”、−NRd”SOd’、−CNおよび−NO
【0089】
[0089] 同様に、アリール基およびヘテロアリール基に対する置換基は多様であり、下記のものから選択される:ゼロからその芳香族環系上の開放原子価の総数までの範囲の数の−ハロ、−ORe’、−OC(O)Re’、−NRe’e”、−SRe’、−Re’、−CN、−NO、−COe’、−C(O)NRe’e”、−C(O)Re’、−OC(O)NRe’e”、−NRe”C(O)Re’、−NRe”COe’、−NRe”’C(O)NRe’e”、−NRe”’SONRe’e”、−NHC(NH)=NH、−NRe’C(NH)=NH、−NH−C(NH)=NRe’、−S(O)Re’、−SOe’、−SONRe’e”、−NRe”SOe’、−N、−CH(Ph)、ペルフルオロアルコキシおよびペルフルオロ(C−C)アルキル。
【0090】
[0090] Re’、Re”およびRe”’は、独立して、水素、非置換(C−C)アルキル、非置換ヘテロ(C−C)アルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール、非置換アリール(C−C)アルキルおよび非置換アリールオキシ(C−C)アルキルから選択される。一般に、アリール基またはヘテロアリール基は0から3個までの置換基をもち、2個以下の置換基をもつ基が本発明の例である。本発明の1態様において、アリール基またはヘテロアリール基は置換されていないか、あるいはモノ置換されているであろう。他の態様において、アリール基またはヘテロアリール基は置換されていないであろう。
【0091】
[0091] 本明細書に記載するアリール基またはヘテロアリール基中のアリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の2つの置換基は、場合により式−T−C(O)−(CH−U−の置換基で置き換えられていてもよく、ここで、TおよびUは独立して−NH−、−O−、−CH−または単結合であり、qは0から2までの整数である。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の2つの置換基は、場合により式−J−(CH−K−の置換基で置き換えられていてもよく、ここで、JおよびKは独立して−CH−、−O−、−NH−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)NRf’−または単結合であり、rは1から3までの整数である。こうして形成された新たな環の単結合のひとつは、場合により二重結合で置き換えられていてもよい。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の2つの置換基は、場合により式−(CH−X−(CH−の置換基で置き換えられていてもよく、ここで、sおよびtは独立して0から3までの整数であり、Xは−O−、−NRf’−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、または−S(O)NRa’−である。−NRf’−および−S(O)NRf’−中の置換基Rf’は、水素または非置換(C−C)アルキルから選択される。
【0092】
[0092] “安定な化合物”および“安定な構造”は、反応混合物から有用な純度にまで単離し、そして配合して有効な療法薬にするのに耐えるほど、十分に強靭な化合物を示すものとする。
【0093】
[0093] 本明細書中で用いる用語“療法有効量”は、一般に本明細書の記載に従って予防、軽減または治療すべき障害の少なくとも1つの症状を改善するのに必要な量を意味する。本発明のGSNOR阻害薬に関して“療法有効量”という句は、その処置を必要とする有意数の対象において、そのためにGSNOR阻害薬を投与する特異的な薬理学的応答をもたらす、GSNOR阻害薬量を意味するものとする。特定の対象に特定の場合に投与するGSNOR阻害薬の療法有効量は、そのような用量が療法有効量であると当業者が考えたとしても、本明細書に記載する状態/疾患の処置に際して必ずしも常に有効ではないことを強調する。
【0094】
[0094] 用語“生体試料”には血液(たとえば、血清、血漿、または全血)、尿、唾液、汗、母乳、膣分泌物、精液、毛嚢、皮膚、歯、骨、爪、または他の分泌物、体液、組織、もしくは細胞の試料が含まれるが、これらに限定されない。本発明によれば、生体試料中のGSNORのレベルは、U.S. Patent Application Publication No. 2005/0014697に記載された方法により測定できる。
【0095】
[0095] D.医薬組成物
[0096] 本発明は、本明細書に記載する少なくとも1種類の化合物および少なくとも1種類の医薬的に許容できるキャリヤーを含む医薬組成物を包含する。適切なキャリヤーは、“Remington: The Science and Practice, Twentieth Edition”,発行: Lippincott Williams & Wilkinsに記載されており、これを本明細書に援用する。本発明による医薬組成物は、本発明化合物ではない有効薬剤を1種類以上含むこともできる。
【0096】
[0097] 本発明の医薬組成物は本明細書に記載する新規化合物を含むことができ、医薬組成物はGSNOR阻害活性をもつことがこれまで知られていなかった既知化合物を含むことができ、あるいはその組合わせであってもよい。
【0097】
[0098] 本発明の化合物は、いずれかの医薬的に許容できる剤形で使用でき、それには下記のものが含まれるが、これらに限定されない:注射用剤形、分散液剤、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏剤、クリーム剤、凍結乾燥配合物、乾燥粉末、錠剤、カプセル剤、制御放出配合物、即時融解性配合物、遅延放出配合物、持続放出配合物、パルス放出配合物、即時放出と制御放出の混合型配合物など。具体的には、本明細書に記載する化合物は、下記のように配合することができる:(a)経口、肺、静脈内、動脈内、くも膜下、関節内、直腸、眼、結腸、非経口、槽内(intracisternal)、膣内、腹腔内、局所(local)、口内、鼻、および表面(topical)投与からなる群から選択される投与のために;(b)分散液剤、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏剤、クリーム剤、錠剤、サッシェ剤およびカプセル剤からなる群から選択される剤形に;(c)凍結乾燥配合物、乾燥粉末、即時融解性配合物、制御放出配合物、遅延放出配合物、持続放出配合物、パルス放出配合物、即時放出と制御放出の混合型配合物からなる群から選択される剤形に;または(d)そのいずれかの組合わせ。
【0098】
[0099] 呼吸器感染症には、高い局所濃度を達成するために吸入用配合物を使用できる。吸入に適切な配合物には、罹病患者に上下気道細菌感染症を処置するためにインヘラーまたはネブライザーにより気管支内腔または鼻腔内へ分配できる乾燥粉末、またはエアゾール化もしくは気化した溶液、分散液もしくは懸濁液が含まれる。
【0099】
[00100] 非経口、皮内または皮下投与に使用する液剤または懸濁液剤は、下記成分のうち1種類以上を含むことができる:(1)無菌希釈剤、たとえば注射用水、塩類溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶剤;(2)抗細菌剤、たとえばベンジルアルコールまたはメチルパラベン類;(3)抗酸化剤、たとえばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;(4)キレート化剤、たとえばエチレンジアミン四酢酸;(5)緩衝剤、たとえば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;および(5)張性を調整するための作用剤、たとえば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは酸または塩基、たとえば塩酸または水酸化ナトリウムで調整できる。非経口製剤はガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または多数回用バイアルに収容することができる。
【0100】
[00101] 注射に適切な医薬組成物は、無菌の液剤(水溶性である場合)または分散液剤、および無菌の液剤または分散液剤を即時調合するための無菌散剤を含むことができる。静脈内投与について、適切なキャリヤーには生理食塩水、殺菌水、Cremophor EL (BASF, Parsippany, N.J.)、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合、組成物は無菌でなければならず、かつ易注射性があるほど流体であるべきである。医薬組成物は、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、かつ細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存処理されるべきである。
【0101】
[00102] キャリヤーは溶剤または分散媒であってもよく、これにはたとえば水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物が含まれる。適切な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティングの使用により、分散液剤の場合は必要な粒度の維持により、また界面活性剤の使用により維持できる。微生物の作用の阻止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、たとえばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成できる。多くの場合、等張化剤、たとえば糖類、ポリアルコール類、たとえばマニトールまたはソルビトール、および無機塩類、たとえば塩化ナトリウムを組成物に含有させることが好ましいであろう。注射用組成物の持続吸収は、吸収を遅延させる作用剤、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含有させることによってもたらすことができる。
【0102】
[00103] 無菌注射液剤は、必要量の有効薬剤を、必要に応じて前記に挙げた成分のうち1種類または組合わせと共に、適切な溶剤中に含有させ、続いて濾過殺菌することにより調製できる。一般に、分散液剤は少なくとも1種類の本発明化合物を、基本的分散媒および他のいずれかの必要成分を含有する無菌ビヒクルに含有させることにより調製できる。無菌注射液剤を調製するための無菌散剤の場合、調製法の例には真空乾燥および凍結乾燥が含まれ、これらは両方とも、本発明化合物と希望するいずれかの追加成分を合わせた粉末を、予め無菌濾過したその溶液から生成する。
【0103】
[00104] 経口組成物は一般に不活性希釈剤または食用キャリヤーを含有する。それらはたとえばゼラチンカプセルに収容されていてもよく、あるいは圧縮して錠剤になっていてもよい。経口による療法投与の目的で、本発明の化合物に賦形剤を含有させ、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の形態で用いることができる。経口組成物はマウスウォッシュとして用いるために流体キャリヤーを用いて調製することもでき、その場合、流体キャリヤー中の化合物を口内適用し、すばやく動かし、吐き出すかまたは飲み込む。医薬的に適合性である結合剤および/または佐剤を組成物の一部として含有させることができる。
【0104】
[00105] 吸入による投与のためには、化合物は、適切な噴射剤、たとえば二酸化炭素などのガスを収容した加圧容器もしくはディスペンサーからのエアゾールスプレー、噴霧化液体、または適切な器具からの乾燥粉末の形態で送達される。経粘膜または経皮投与のためには、透過すべきバリヤーに適した浸透剤を配合物中に用いる。そのような浸透剤は当技術分野で一般に知られており、たとえば経粘膜投与については、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻内スプレーまたは坐剤の使用により達成できる。経皮投与のためには、当技術分野で一般に知られるように、有効薬剤を軟膏剤、膏薬、ゲル剤またはクリーム剤中に配合する。薬剤を直腸送達のための坐剤(たとえば、一般的な坐剤基剤、たとえばカカオ脂および他のグリセリドを含む)または停留浣腸剤の形態で調製することもできる。
【0105】
[00106] 1態様において、本発明の組成物は身体からの急速排除に対して保護するキャリヤーを用いて調製される。たとえば、制御放出配合物を使用でき、これには埋込み剤およびマイクロカプセル封入した送達システムが含まれる。生分解性、生体適合性ポリマー、たとえばエチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用できる。そのような配合物を調製するための方法は当業者に自明であろう。
【0106】
[00107] リポソーム懸濁液(罹患細胞をターゲティングするリポソームをウイルス抗原に対するモノクローナル抗体と共に含有)も医薬的に許容できるキャリヤーとして使用できる。これらは、たとえばU.S. Pat. No. 4,522,811に記載される当業者に既知の方法に従って調製できる。
【0107】
[00108] さらに、本発明化合物の懸濁液剤は、適宜な油性の注射用懸濁液剤として調製できる。適切な親油性の溶剤またはビヒクルには、脂肪油、たとえばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、たとえばオレイン酸エチル、トリグリセリド、またはリポソームが含まれる。脂質ではないポリカチオン性アミノポリマーも送達に使用できる。場合により懸濁液剤は、適切な安定剤、または化合物の溶解度を高めて高濃度液剤の調製を可能にする作用剤を含有してもよい。
【0108】
[00109] 投与しやすさおよび用量の均一性のために、単位剤形の経口または非経口組成物を配合することが特に有利である。本明細書中で用いる単位剤形とは、処置される対象に対する単位量として適した物理的に別個の単位を表わす;各単位は、希望する療法効果を生じるように計算された前決定量の本発明化合物を、必要な医薬用キャリヤーと共に含有する。本発明の単位剤形についての詳細は、本発明化合物の独自の特徴、および達成すべき特定の療法効果、および個体の処置のためにその有効薬剤を配合する技術に固有の制限により支配され、それらに直接依存する。
【0109】
[00110] 少なくとも1種類の本発明化合物を含む本発明による医薬組成物は、1種類以上の医薬賦形剤を含むことができる。そのような賦形剤の例には結合剤、増量剤、滑沢剤、懸濁化剤、甘味剤、着香剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および他の賦形剤が含まれるが、これらに限定されない。そのような賦形剤は当技術分野で既知である。賦形剤の例には下記のものが含まれる:(1)結合剤:これには各種セルロース、および架橋ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロース、たとえば Avicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102、ケイ化微結晶性セルロース(ProSolv SMCC(商標))、トラガントゴムおよびゼラチンが含まれる;(2)増量剤、たとえば各種デンプン、乳糖、乳糖・1水和物、および乳糖無水物;(3)崩壊剤、たとえばアルギン酸、Primogel、コーンスターチ、軽度架橋ポリビニルピロリドン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、および化工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロス−ポビドン(cross-povidone)、グリコール酸デンプンナトリウム、およびその混合物;(4)滑沢剤:これには、圧縮される粉末の流動性に作用する下記を含めた物質が含まれる:ステアリン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、たとえばAerosil(登録商標)200、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、およびシリカゲル;(5)流動促進剤、たとえばコロイド状二酸化ケイ素;(6)保存剤、たとえばソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびそれの塩類、パラヒドロキシ安息香酸の他のエステル、たとえばブチルパラベン、アルコール類、たとえばエチルアルコールまたはベンジルアルコール、フェノール系化合物、たとえばフェノール、または第四級化合物、たとえば塩化ベンザルコニウム;(7)希釈剤、たとえば医薬的に許容できる不活性増量剤、たとえば微結晶性セルロース、乳糖、二塩基性リン酸カルシウム、糖類、および/または以上のいずれかの混合物;希釈剤の例には下記のものが含まれる:微結晶性セルロース、たとえばAvicel(登録商標)PH101およびAvicel(登録商標)PH102;乳糖、たとえば乳糖・1水和物、乳糖無水物、およびPharmatose(登録商標)DCL21;二塩基性リン酸カルシウム、たとえばEmcompress(登録商標);マンニトール;デンプン;ソルビトール;ショ糖;およびブドウ糖;(8)甘味剤:これには天然または人工の甘味剤、たとえばショ糖、サッカリンショ糖、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラミン酸塩、アスパルテーム、およびアセスルフェーム(acesulfame)が含まれる;(9)着香剤、たとえばペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバー、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、バブルガムフレーバー、果実フレーバーなど;ならびに(10)発泡剤:これには発泡剤対、たとえば有機酸とカーボネートまたはビカーボネートが含まれる。適切な有機酸には、たとえばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、およびアルギン酸、ならびに酸無水物および酸塩が含まれる。適切なカーボネートおよびビカーボネートには、たとえば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸グリシンナトリウム、炭酸L−リジン、および炭酸アルギニンが含まれる。あるいは、発泡剤対の炭酸水素ナトリウム成分のみが存在してもよい。
【0110】
[00111] E.本発明の組成物を含むキット
[00112] 本発明は、本発明の組成物を含むキットをも包含する。そのようなキットは、たとえば(1)少なくとも1種類の本発明化合物;および(2)少なくとも1種類の医薬的に許容できるキャリヤー、たとえば溶剤または溶液を含むことができる。追加のキット構成要素を場合により含むことができる:たとえば(1)本明細書中に定めるいずれかの医薬的に許容できる賦形剤、たとえば安定剤、緩衝剤など;(2)キット構成要素を保持および/または混合するための少なくとも1つの容器、バイアルまたはこれらに類する器具;ならびに(3)送達器具、たとえばインヘラー、ネブライザー、注射器など。
【0111】
[00113] F.本発明の化合物を製造するための方法
[00114] 本発明の化合物は、既知の合成法を用いて、または既知の合成法の改変によって、容易に合成できる。当業者に容易に認識されるように、以下に記載する方法によって多様な置換基をもつチオフェン類を合成できる。合成法の例を後記の実施例に記載する。
【0112】
[00115] 必要であれば、当技術分野で既知のルーティンな方法によってそれ以上の精製ならびに鏡像異性体およびジアステレオマーの分離を達成できる。たとえば、ある化合物の鏡像異性体の分離は、キラルHPLCおよび関連のクロマトグラフィー法の使用によって達成できる。ジアステレオマーも同様に分離できる。しかし、ある例では、ジアステレオマーを物理的に、たとえば制御された沈殿法または結晶化法によって簡単に分離できる。
【0113】
[00116] 本発明の方法は、本明細書に記載するように実施する場合、当技術分野でルーティンに得られる温度で好都合に実施できる。1態様において、本方法は約25℃〜約110℃の範囲の温度で実施される。他の態様において、温度は約40℃〜約100℃の範囲である。さらに他の態様において、温度は約50℃〜約95℃の範囲である。
【0114】
[00117] 塩基を必要とする合成工程は、いずれか好都合な有機塩基または無機塩基を用いて実施される。一般に、塩基は求核性ではない。たとえば1態様において、塩基はカーボネート、ホスフェート、水酸化物、アルコキシド、ジシラザン類の塩、および第三級アミンから選択される。
【0115】
[00118] 本発明の方法は、本明細書に記載するように実施する場合、反応体の性質および量ならびに反応温度に応じて数分後ないし数時間後に実質的に完了させることができる。反応が実質的に完了した時点の判定は、当技術分野で既知の常法、たとえばHPLC、LCMS、TLC、およびH NMRによって好都合に評価できる。
【0116】
[00119] G.処置方法
[00120] 本発明は、1種類以上の開示化合物の使用により病的状態を阻止または治療する(たとえば、その1以上の症状を軽減する)方法を包含する。本方法は、療法有効量の本発明化合物を必要な患者に投与することを含む。本発明の組成物は、予防療法にも使用できる。
【0117】
[00121] 本発明による処置方法に使用する本発明化合物は、下記のものであってよい:(1)本明細書に記載する新規化合物、またはその医薬的に許容できる塩、その立体異性体、そのプロドラッグ、もしくはその代謝産物;(2)本発明以前に知られていたが、その化合物がGSNOR阻害薬であることは知られていなかった化合物、またはその医薬的に許容できる塩、そのプロドラッグ、もしくはその代謝産物;(3)本発明以前に知られており、かつその化合物がGSNOR阻害薬であることが知られていたが、その化合物が本明細書に記載する方法に有用なことは知られていなかった化合物、またはその医薬的に許容できる塩、そのプロドラッグ、もしくはその代謝産物。
【0118】
[00122] 患者は、ネコ、イヌ、ウマ、ブタおよびウシを含めた(これらに限定されない)いずれかの飼育動物、家畜または野生動物、ならびに好ましくはヒト患者であってもよい。本明細書中で用いる用語、患者と対象は、互換性をもって使用できる。
【0119】
[00123] 本明細書中で用いる“処置する”は、疾患、状態または障害に対処する目的で患者を管理およびケアすることを表わし、症状もしくは合併症の発生を阻止するために、症状もしくは合併症を軽減するために、または疾患、状態もしくは障害を排除するために、本発明の化合物を投与することを含む。より具体的には、“処置する”は、疾患(障害)状態の少なくとも1つの有害な症状もしくは影響、疾患の進行、疾患の原因因子(たとえば、細菌またはウイルス)、または他の異常な状態を、反転、減弱、軽減、最小化、抑制または停止することを含む。症状および/または病態が改善される限り、処置を継続する。
【0120】
[00124] 一般に、投与量、すなわち療法有効量は、1日当たり、1μgから10g/kgまでの範囲、しばしば10μgから1g/kgまで、または10μgから100mg/kg(処置される対象の体重)までの範囲である。
【0121】
[00125] H.GSNOR用途
[00126] 有害なほど高いレベルのGSNORまたはGSNOR活性をもつ対象において、たとえばGSNOR機能を撹乱もしくはダウンレギュレートするか、またはGSNORレベルを低下させる、1種類以上の開示化合物を投与することにより、調節を達成できる。これらの化合物を、他のGSNOR阻害薬、たとえば抗GSNOR抗体もしくは抗体フラグメント、GSNORアンチセンス、iRNA、または小分子、または他の阻害薬(単独、または本明細書に詳述する他の薬剤と組み合わせたもの)と共に投与してもよい。
【0122】
[00127] 本発明は、NOドナー療法により改善される障害に罹患している対象を処置する方法を提供する。そのような方法は、対象に療法有効量のGSNOR阻害薬を投与することを含む。
【0123】
[00128] 障害には下記のものを含めることができる:低酸素症に関連する肺障害、および/または肺や気道の平滑筋収縮、および/または肺の感染症、および/または肺の炎症、および/または肺の傷害(たとえば、肺高血圧症、ARDS、喘息、肺炎、肺線維症/間質性肺疾患、嚢胞性線維症、COPD);心血管疾患および心疾患(たとえば、高血圧症、虚血性冠動脈症候群、アテローム性硬化症、心不全、緑内障);血管新生を特徴とする疾患(たとえば、冠動脈疾患);血栓症が起きるリスクのある障害;再狭窄が起きるリスクのある障害;炎症性疾患(たとえば、エイズ関連認知症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、および乾癬);機能性腸障害(たとえば、過敏性腸症候群(IBS));アポトーシスが起きるリスクのある疾患(たとえば、心不全、アテローム性硬化症、変性性神経障害、関節炎および肝傷害(虚血性またはアルコール性));インポテンス;睡眠無呼吸;糖尿病性創傷の治癒;皮膚感染症;乾癬の処置;異常な食欲に応答した摂食により起きる肥満症;発作;再潅流傷害(たとえば、心臓もしくは肺の外傷性筋傷害、または圧挫損傷);ならびに心臓または脳を後続の虚血事象に対してNO保護のために前調整することが有益である障害、中枢神経系(CNS)障害(たとえば、不安、うつ病、精神病、および統合失調症);ならびに細菌により起きる感染症(特に、たとえば結核、クロストリジウム−ディフィシレ(C. difficile)感染症)。
【0124】
[00129] 1態様において、本発明の化合物、またはその医薬的に許容できる塩、またはそのプロドラッグもしくは代謝産物を、NOドナーと組み合わせて投与することができる。NOドナーは一酸化窒素または関連の酸化還元種を供与し、より一般的には一酸化窒素の生物活性、すなわち一酸化窒素について同定されている活性、たとえば血管弛緩、または受容体タンパク質、たとえばrasタンパク質、アドレナリン受容体、NFκBの刺激もしくは阻害をもたらす。S−ニトロソ、O−ニトロソ、C−ニトロソおよびN−ニトロソ化合物ならびにそのニトロ誘導体および金属NO錯体を含めた本発明に有用なNOドナー(他のNO生物活性産生化合物も除外されない)は、“Methods in Nitric Oxide Research”, Feelisch et al. eds., pages 71-115 (J. S., John Wiley & Sons, New York, 1996)に記載されており、これを本明細書に援用する。本発明に有用なNOドナーであってニトロソが第三級炭素に結合したC−ニトロソ化合物には、U.S. Pat. No. 6,359,182およびWO 02/34705に記載されたものが含まれる。S−ニトロソチオール類を含めて本発明に有用なS−ニトロソ化合物の例には、たとえばS−ニトロソグルタチオン、S−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン、S−ニトロソ−システインおよびそのエチルエステル、S−ニトロソシステイニルグリシン、S−ニトロソ−ガンマ−メチル−L−ホモシステイン、S−ニトロソ−L−ホモシステイン、S−ニトロソ−ガンマ−チオ−L−ロイシン、S−ニトロソ−デルタ−チオ−L−ロイシン、およびS−ニトロソアルブミンが含まれる。本発明に有用な他のNOドナーの例は、ニトロプルシドナトリウム(ニプリド(nipride))、亜硝酸エチル、イソソルビド(isosorbide)、ニトログリセリン、SIN 1、すなわちモルシドミン(molsidomine)、フロキサミン(furoxamine)類、N−ヒドロキシ(N−ニトロサミン)、およびNOで飽和したペルフルオロカーボン類、または疎水性NOドナーである。
【0125】
[00130] GSNOR阻害薬とアモルジピン(amlodipine)のR(+)鏡像異性体、すなわち既知のNO放出剤(Zhang at al., J. Cardiovasc. Pharm. 39, 208-214 (2002))との組合わせも、本発明の態様である。
【0126】
[00131] 本発明は、病的に増殖する細胞に罹患している対象を処置する方法であって、その対象に療法有効量のGSNOR阻害薬を投与することを含む方法をも提供する。GSNOR阻害薬は、前記に定めた化合物、またはその医薬的に許容できる塩、またはそのプロドラッグもしくは代謝産物を、医薬的に許容できるキャリヤーと組み合わせたものである。症状および/または病態が改善される限り、処置を継続する。
【0127】
[00132] 他の態様において、病的に増殖する細胞は病的に増殖する微生物であってもよい。関与する微生物は、微生物をニトロソ化ストレスから保護するGSNORを発現するもの、または微生物に感染した宿主細胞がこの酵素を発現し、これにより微生物をニトロソ化ストレスから保護するものであってもよい。用語“病的に増殖する微生物”は、本明細書中で病的微生物を意味するために用いられ、これには病的細菌、病的ウイルス、病的クラミジア(Chlamydia)、病的原虫、病的リケッチア(Rickettsia)、病的真菌、および病的マイコプラズマ(mycoplasmata)が含まれるが、これらに限定されない。適用できる微生物に関するこれ以上の詳細は、U.S. Pat. No. 6,057,367, column 11および12に述べられている。用語“病的微生物に感染した宿主細胞”には、病的ウイルスに感染した哺乳動物細胞だけでなく、細胞内に細菌または原虫を含む哺乳動物細胞、たとえば結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、らい菌(Mycobacterium leper)(らい病)、またはチフス菌(Salmonella typhi)(腸チフス熱)を含むマクロファージも含まれる。
【0128】
[00133] 他の態様において、病的に増殖する細胞は病的寄生虫であってもよい。用語“病的寄生虫”は、本明細書中で病的線虫、病的吸虫および病的条虫を表わすために用いられる。適用できる寄生虫に関するこれ以上の詳細は、U.S. Pat. No. 6,057,367, column 12に述べられている。
【0129】
[00134] 他の態様において、病的に増殖する細胞は病的に増殖する哺乳動物細胞であってもよい。本明細書中で用いる用語“病的に増殖する哺乳動物細胞”は、その哺乳動物においてサイズまたは数が増大し、このため哺乳動物またはそれの臓器に有害な影響を引き起こす哺乳動物細胞を意味する。その用語には、たとえば病的に増殖または拡大する細胞であって再狭窄を引き起こすもの、病的に増殖または拡大する細胞であって良性前立腺肥大を引き起こすもの、病的に増殖または拡大する細胞であって心筋肥厚を引き起こすもの、および炎症部位で増殖する細胞、たとえば関節炎における滑膜細胞、または細胞増殖性障害に関連する細胞が含まれる。
【0130】
[00135] 本明細書中で用いる用語“細胞増殖性障害”は、細胞の無調節な増殖および/または異常な増殖が望ましくない状態または疾患の発症をもたらす可能性のある状態を表わす;それは癌性、または非癌性、たとえば乾癬性の状態であってもよい。本明細書中で用いる用語“乾癬性状態”は、ケラチノサイト過増殖、炎症細胞浸潤、およびサイトカイン変化を伴う障害を表わす。細胞増殖性障害は、前癌状態または癌であってもよい。癌は原発癌もしくは転移癌、または両方であってもよい。
【0131】
[00136] 本明細書中で用いる用語“癌”には、充実性腫瘍、たとえば肺癌、乳癌、大腸癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、腺癌、扁平上皮癌、肉腫、悪性神経膠腫、平滑筋肉腫、肝細胞癌、頭頚部癌、悪性黒色腫、非黒色腫皮膚癌、ならびに血液学的腫瘍および/または悪性疾患、たとえば白血病、小児の白血病およびリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、リンパ球および皮膚に由来するリンパ腫、急性および慢性白血病、たとえば急性リンパ芽球性、急性骨髄性または慢性骨髄性白血病、形質細胞新生物、リンパ性新生物、ならびにエイズ関連の癌が含まれる。
【0132】
[00137] 乾癬状態のほかに、本発明の組成物を用いて処置できる増殖性疾患のタイプは、表皮嚢腫および類皮嚢腫、脂肪腫、腺腫、毛細管性血管腫および皮膚血管腫、リンパ管腫、母斑(nevi)病変、奇形腫、腎腫、筋線維腫症、骨形成性腫瘍、ならびに他の異形成塊などである。1態様において、増殖性疾患には異形成およびこれに類する障害が含まれる。
【0133】
[00138] 1態様において、癌の処置は、腫瘍サイズの縮小、腫瘍数の減少、腫瘍増殖の遅延、原発腫瘍部位から離れた他の組織もしくは臓器における転移病変の減少、患者の生存率の改善、または患者の生活の質の改善、あるいは以上のうち少なくとも2つを含む。
【0134】
[00139] 他の態様において、細胞増殖性障害の処置は、細胞増殖速度の低下、増殖性細胞の割合の低下、細胞増殖の領域もしくは区域のサイズの縮小、または異常な外観もしくは形態をもつ細胞の数もしくは割合の低下、あるいは以上のうち少なくとも2つを含む。
【0135】
[00140] さらに他の態様において、本発明の化合物、またはその医薬的に許容できる塩、そのプロドラッグ、もしくはその代謝産物を、第2の化学療法薬と組み合わせて投与することができる。さらに他の態様において、第2の化学療法薬は下記のものからなる群から選択される:タモキシフェン(tamoxifen)、ラロキシフェン(raloxifene)、アナストロゾール(anastrozole)、エキセメスタン(exemestane)、レトロゾール(letrozole)、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、パクリタキセル(paclitaxel)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、ロバスタチン(lovastatin)、ミノシン(minosine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、araC、5−フルオロウラシル、メトトレキセート(methotrexate)、ドセタキセル(docetaxel)、ゴセレリン(goserelin)、ビンクリスチン(vincristin)、ビンブラスチン(vinblastin)、ノコダゾール(nocodazole)、テニポシド(teniposide)、エトポシド(etoposide)、エポチロン(epothilone)、ナベルビン(navelbine)、カムプトテシン(camptothecin)、ダウノニビシン(daunonibicin)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ミトキサントロン(mitoxantrone)、アムサクリン(amsacrine)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、イダルビシン(idarubicin)、イマチニブ(imatanib)、ゲフィチニブ(gefitinib)、エルロチニブ(erlotinib)、ソラフェニブ(sorafenib)、リンゴ酸スニチニブ(sunitinib malate)、トラスツヅマブ(trastuzumab)、リツキシマブ(rituximab)、セツキシマブ(cetuximab)、およびベバシズマブ(bevacizumab)。
【0136】
[00141] 1態様において、本発明の化合物、またはその医薬的に許容できる塩、そのプロドラッグ、もしくはその代謝産物は、ニトロソ化ストレスまたは酸化的ストレスを付与する薬剤と組み合わせて投与することができる。本発明のGSNOR阻害薬との併用療法において、選択的に酸化的ストレスを付与して病的に増殖する細胞の増殖を阻害するための薬剤、ならびにその投与量および投与経路には、U.S. Pat. No. 6,057,367に開示されるものが含まれ、これを本明細書に援用する。本発明のGS−FDH阻害薬との併用療法において、酸化的ストレスを付与するための補助薬(すなわち、GSSG(酸化型グルタチオン)対GSH(グルタチオン)比、またはNAD(P)対NAD(P)H比を高めるか、あるいはチオバルビツール酸誘導体を増加させる薬剤)には、たとえば標準的投与経路による標準的投与量の、L−ブチオニン−S−スルホキシイミン(BSO)、グルタチオンレダクターゼ阻害薬(たとえば、BCNU)、ミトコンドリア呼吸の阻害薬または脱共役剤、ならびに反応性酸素種(reactive oxygen species、ROS)を増加させる薬物、たとえばアドリアマイシン(adriamycin)が含まれる。
【0137】
[00142] GSNOR阻害薬は、ホスホジエステラーゼ阻害薬(たとえば、ロリプラム(rolipram)、シロミラスト(cilomilast)、ロフルミラスト(roflumilast)、Viagra(登録商標)(クエン酸シルデナフィル(sildenifil citrate))、Cialis(登録商標)(タダラフィル(tadalafil))、Levitra(登録商標)(バルデニフィル(vardenifil))など)、β-アゴニスト、ステロイド、またはロイコトリエンアンタゴニスト(LTD-4)とも共投与できる。当業者は、改善すべき障害に応じて適切な療法有効量を容易に決定できる。
【0138】
[00143] GSNOR阻害薬は、β-アドレナリンシグナル伝達を改善するための手段として使用できる。特に、GSNOR阻害薬を単独でまたはβ-アゴニストと組み合わせて用いて、心不全、または他の血管障害、たとえば高血圧症、および喘息に対して処置または保護することができる。GSNOR阻害薬は、Gs G−タンパク質を増強して平滑筋弛緩をもたらすことによって(たとえば、気道および血管)、またGq G−タンパク質を減弱させることにより平滑筋収縮を阻止することによって(たとえば、気道および血管において)、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)を調節するためにも使用できる。
【0139】
[00144] NOドナー療法によって改善される障害に罹患している対象を処置するための療法有効量は、インビボでGSNORを阻害し、これにより、その障害に関連するリスクに対して処置または保護される障害を改善させる量である。たとえば、喘息については、療法有効量は気管支の拡張に有効な量であり;嚢胞性線維症については、療法有効量は気道閉塞の改善に有効な量であり;ARDSについては、療法有効量は低酸素症の改善に有効な量であり;心疾患については、療法有効量は狭心症の緩和または血管新生の誘発に有効な量であり;高血圧症については、療法有効量は血圧の降下に有効な量であり;虚血性冠動脈障害については、療法量は血流の増加に有効な量であり;アテローム性硬化症については、療法有効量は内皮機能障害の反転に有効な量であり;緑内障については、療法量は眼内圧の降下に有効な量であり;血管新生を特徴とする疾患については、療法有効量は血管新生の阻害に有効な量であり;血栓症発生のリスクがある障害については、療法有効量は血栓形成の阻止に有効な量であり;再狭窄発生のリスクがある障害については、療法有効量は再狭窄の阻害に有効な量であり;慢性炎症性疾患については、療法有効量は炎症の軽減に有効な量であり;アポトーシス発生のリスクがある障害については、療法有効量はアポトーシスの阻止に有効な量であり;インポテンスについては、療法有効量は勃起の達成または持続に有効な量であり;肥満症については、療法有効量は満腹感を生じるのに有効な量であり;発作については、療法有効量は血流の増加またはTIAの保護に有効な量であり;再潅流傷害については、療法有効量は機能の増強に有効な量であり;心臓および脳の前調整については、療法有効量は、たとえばトロポニンまたはCPKにより測定した細胞保護に有効な量である。
【0140】
[00145] 病的に増殖する細胞に罹患している対象を処置するための療法有効量とは、インビボでGSNORを阻害する量を意味し、これは抗増殖有効量である。本明細書中で用いる抗増殖有効量とは、増殖速度を少なくとも約20%、少なくとも約10%、少なくとも約5%、または少なくとも約1%、低下させる量を意味する。
【0141】
[00146] I.器具における使用
[00147] 本発明の化合物、またはその医薬的に許容できる塩、またはそのプロドラッグもしくは立体異性体もしくは代謝産物を、そのような化合物の存在が有益である状況において種々の器具に適用することができる。そのような器具は、いずれかのデバイスまたは容器、たとえば埋め込み可能なデバイスであってもよく、その際、本発明の化合物を用いて外科用メッシュまたは心血管ステントを患者に埋め込む前にコートすることができる。本発明の化合物をインビトロアッセイの目的で、または細胞培養のために、種々の器具に適用することもできる。
【0142】
[00148] 本発明の化合物、またはその医薬的に許容できる塩、またはそのプロドラッグもしくは立体異性体もしくは代謝産物を、本発明の化合物に対する結合パートナー、たとえば抗体、天然リガンドなどの開発、単離または精製のための作用剤として用いることもできる。当業者は、本発明の化合物に関連する用途を容易に判断できる。
【実施例】
【0143】
[00149] 以下の実施例は本発明を説明するために示される。ただし、本発明はこれらの実施例に記載した特定の条件または詳細事項に限定されるべきではないことを理解すべきである。明細書全体を通して、米国特許を含めて公に入手できる文書について述べたあらゆるものを具体的に援用する。
【0144】
[00150] 実施例1〜14に、GSNOR阻害薬として有用な本発明の式Iの代表的な新規チオフェン類似体を挙げる。下記の例示スキームは本発明のチオフェン類似体を製造する幾つかの一般法を示す。各化合物を製造するために使用できる合成法を実施例1〜14に記載する。各化合物について支持する質量分析データおよびプロトンNMRデータも実施例1〜14に含める。対応する中間体の合成の詳細を実施例15に詳述する。
【0145】
【化11】

【0146】
[00151] スキームIの代表的な詳述については後記の実施例1を参照。
【0147】
【化12】

【0148】
[00152] スキームIIの代表的な詳述については後記の実施例4を参照。
【0149】
【化13】

【0150】
[00153] スキームIIIの代表的な詳述については後記の実施例14を参照。
実施例1:3−(3−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸
【0151】
【化14】

【0152】
[00154] 一般スキームIの工程1:3−ブロモ−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン(2,X=4−メトキシフェニル)の合成。3,4−ジブロモチオフェン(スキームI,1)(5g,20.7mmol)、4−メトキシフェニルボロン酸(スキームI,2,X=4−メトキシフェニル)(3.14g,20.7mmol)、炭酸ナトリウム(4.38g,41.3mmol)、トルエン(100mL)の、エタノール(60mL)および水(40mL)混合物中における混合物に、Pd(PPh(2.02g,1.75mmol)を窒素下で添加した。混合物を75℃で13時間撹拌し、水(60mL)に注入し、酢酸エチル(60mL×3)で抽出した。有機抽出液を無水硫酸マグネシウム(10g)で乾燥させ、蒸発させ、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=150:1)により精製して、3−ブロモ−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン(スキームI,2,X=4−メトキシフェニル)(1.7g,収率30.6%)を得た。1H NMR (DMSO-d6 400MHz): δ 7.84 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.64 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.97 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 3.78 (s, 3H)。
【0153】
[00155] 一般スキームIの工程2:4−(4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(3,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)の合成。3−ブロモ−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン(スキームI,2,X=4−メトキシフェニル)(1.7g,6.316mmol)、4−シアノ−2−メチルフェニルボロン酸(スキームI,2A,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(1.535g,6.316mmol)、炭酸ナトリウム(1.34g,12.63mmol)、トルエン(60mL)の、エタノール(36mL)および水(24mL)混合物中における混合物に、窒素下でPd(PPh(0.7g,0.606mmol)を添加した。混合物を80℃で5時間撹拌し、水(50mL)に注入し、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機抽出液を無水硫酸マグネシウム(6g)で乾燥させ、蒸発させ、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=50:1)により精製して、4−(4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(スキームI,3,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(1.34g,収率69.4%)を得た。1H NMR (DMSO-d6 400MHz): δ 7.68-7.65 (m, 3H), 7.58 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.33 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.98 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.80 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 3.70 (s, 3H), 1.79 (s, 3H)。
【0154】
[00156] 一般スキームIの工程3:4−(2−ホルミル−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(4B,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)の合成。新たに調製したLDA(0.8mL,1.64mmol)の無水テトラヒドロフラン(7mL)中における溶液に、4−(4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(スキームI,3,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(500mg,1.637mmol)の無水テトラヒドロフラン(6mL)中における溶液を、窒素下に−78℃で徐々に添加した。15分間撹拌した後、ジメチルホルムアミド(0.14mL,1.804mmol)の無水テトラヒドロフラン(3mL)中における溶液を滴加した。得られた混合物を−78℃で1時間、室温で3時間、撹拌した。反応を水(50mL)で停止し、酢酸エチル(40mL×3)で抽出した。有機抽出液を合わせて水(30mL)、ブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル,石油エーテル/酢酸エチル=20:1)により精製して、4−(2−ホルミル−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(スキームI,4A,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(0.16g,収率29.3%)を白色固体として得た(NOEにより確認)。1H NMR (DMSO-d6 400MHz): δ 9.46 (s, 1H), 8.31 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 7.83 (s, 2H), 7.67 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.89 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 3.77 (s, 3H), 1.94 (s, 3H)。
【0155】
[00157] 一般スキームIの工程4:(E)−3−(3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(5A,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)の合成。化合物4−(2−ホルミル−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(スキームI,4A,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(0.16g,0.48mmol)および(カルボエトキシメチレン)トリフェニルホスホラン(PhP=CHCOOEt)(0.17g,0.48mmol)のトルエン(15mL)中における混合物を、100℃に14時間加熱した。室温まで冷却した後、反応混合物を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=20:1)により精製して、(E)−3−(3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(スキームI,5A,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(0.27g,収率100%)を白色固体として得た。
【0156】
[00158] 一般スキームIの工程5:3−(3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチル(6A,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)の合成。(E)−3−(3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(スキームI,5A,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(0.27g,0.669mmol)のエタノール(40mL)中における溶液に、10% Pd/C(0.25g)を添加し、反応混合物を20℃で20Psiの水素下に30時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濃縮して、3−(3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチル(スキームI,6A,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(0.2g,収率73.7%)を得た。1H NMR (DMSO-d6 300MHz): δ 7.71 (m, 2H), 7.45-7.40 (m, 2H), 6.92 (m, 2H), 6.75 (m, 2H), 4.03-3.96 (m, 2H), 3.66 (s, 3H), 2.76-2.71 (m, 3H), 1.80 (s, 2H), 1.22 (s, 1H), 1.14-1.09 (m, 3H)。
【0157】
[00159] 一般スキームIの工程6:3−(3−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸(7A,X=4−メトキシフェニル,X=4−カルバモイル−2−メチルフェニル)の合成。3−(3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチル(スキームI,6A,X=4−メトキシフェニル,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(180mg,0.44mmol)、水酸化ナトリウム(35.52mg,0.88mmol)の、DMSO(10mL)および水(3mL)混合物中における溶液に、30%過酸化水素(0.3mL)を添加した。反応混合物を20℃で5時間撹拌し、pH=5になるまで塩化水素(1.2mL,1mol/L)を添加し、得られた混合物を酢酸エチル(10mL×4)で抽出した。有機層を合わせてブライン(15mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させ、分取HPLCにより精製して、実施例1(スキームI,7A,X=4−メトキシフェニル,X=4−カルバモイル−2−メチルフェニル)(80mg,収率45.6%)を得た。1H NMR (DMSO-d6 400MHz): δ 12.20 (br s, 1H), 7.93 (s, 1H), 7.71-7.67 (m, 2H), 7.40 (s, 1H), 7.931 (s, 1H), 7.23 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.71 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.64 (s, 3H), 2.72 (m, 2H), 2.40 (m, 2H), 1.81 (s, 3H); MS (ESI): m/z 396.1 [M+H]+
【0158】
実施例2:3−(3−(4−カルバモイルフェニル)−4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸
【0159】
【化15】

【0160】
[00160] 一般スキームIに従って製造した。工程1の出発物質1Aは4−シアノ−フェニルボロン酸であり、粗製物質をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=20:1)により精製して、4−(4−ブロモチオフェン−3−イル)ベンゾニトリル(8g,収率37%)が得られた。工程2の出発物質2Aは4−クロロ−2−メトキシフェニルボロン酸であり、反応物を100℃で一夜加熱し、粗製物質をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=20:1)により精製して、4−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)ベンゾニトリル(0.9g,収率73%)が得られた。工程3、4、5および6をスキーム1の記載に従って実施した。工程3で形成された両方の異性体を合成全体に用い、最終工程の後にHPLCにより分離した。1H NMR (CD3OD 400 MHz): δ 7.78 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.20-7.14 (m, 4H), 6.90 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.78 (s, 1H), 3.11 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.29 (t, J = 7.6 Hz, 2H); MS (ESI): m/z 438.0 [M+23]+
【0161】
実施例3:3−(3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸
【0162】
【化16】

【0163】
[00161] 一般スキームIに従って製造した。工程1の出発物質1Aは4−ヒドロキシフェニルボロン酸であり、カラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=20:1)により精製して、4−(4−ブロモチオフェン−3−イル)フェノール(2g,38%の収率)が得られた。工程2の出発物質2Aは4−クロロ−2−メトキシフェニルボロン酸であり、カラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=20:1)により精製して、4−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)フェノール(0.8g,収率65%)が得られた。工程2の後に、下記の記載に従ってヒドロキシル基を保護した。
【0164】
[00162] 3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−(メトキシメトキシ)フェニル)チオフェンの合成。4−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)フェノール(700mg,2.1mmol)の無水THF(5mL)中における溶液に、NaH(90mg,2.3mmol)を0℃で添加した。混合物をこの温度で0.5時間撹拌した後、クロロ(メトキシ)メタン(184mg,2.3mmol)を添加した。混合物を0℃で1時間、室温で2時間、撹拌した。出発物質が消費されたことをTLCが示した時点で、混合物を水で停止し、EtOAcで抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮すると粗生成物が得られ、これをカラムにより精製して、3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−(メトキシメトキシ)フェニル)チオフェン(720mg,90%)が得られ、これを工程3に用いた。
【0165】
[00163] スキームIに記載した工程3に従って、3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−(メトキシメトキシ)フェニル)チオフェン−2−カルボアルデヒド(290mg,収率37%)を得た。スキーム1に記載した工程4に従い、粗製物質をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=15:1)により精製して、(E)−3−(3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−(メトキシメトキシ)フェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(280mg,収率82%)を得た。スキーム1の工程5により、3−(3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−(メトキシメトキシ)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチル(220mg,収率78%)が得られた。スキーム1の工程6により、粗製3−(3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−(メトキシメトキシ)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸(190mg,収率92%)が得られた。最終工程はアルコールの脱保護であり、ここに記載する。
【0166】
[00164] 3−(3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸の合成。3−(3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−(メトキシメトキシ)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸(190mg,0.44mmol)のTHF(5mL)中における溶液に、HCl(1mL,12M)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を水で希釈し、EtOAcで抽出し、濃縮すると粗製化合物が得られ、これを分取HPLC(カラム:YMC ODS-AQ 150×30cm,5μm;保持時間:15分;移動相:水(0.05% TFA)中38% MeCNから水(0.05% TFA)中68% MeCNまで);波長:220nm,254nm;試料をDMSOに溶解)により精製して、3−(3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸(47.5mg,収率28%)を得た。1H NMR (CD3OD 400 MHz): δ 7.11 (s, 1H), 6.99 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 6.97-6.92 (m, 2H), 6.89 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.58 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 3.58 (s, 3H), 2.90 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 2.50 (t, J = 8.0 Hz, 2H); MS (ESI): m/z [M+1]+ =389.1。
【0167】
実施例4:3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸
【0168】
【化17】

【0169】
[00165] 一般スキームIIの工程1:4−ブロモ−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−カルボアルデヒドの合成。3,4−ジブロモチオフェン−2−カルボアルデヒド(中間体1を参照(中間体の合成については実施例15を参照))(2.0g,7.5mmol)、4−ヒドロキシフェニルボロン酸(スキームII,8A,X=4−ヒドロキシフェニル)(1.0g,7.5mmol)、NaCO(1.6g,15mmol)、およびPd(PPh(431mg,0.37mmol)の、トルエン/EtOH/HO(30mL,5:3:2)中における混合物を、80℃に加熱し、窒素下で一夜撹拌した。出発物質が消費されたことをTLCが示した時点で、混合物を水で希釈し、HCl(1M)でpH=4〜5に中和し、EtOAcで抽出し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=20:1)により精製して、4−ブロモ−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−カルボアルデヒド(スキームII,8,X=4−ヒドロキシフェニル)(350mg,収率17%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO-d6 400 MHz): δ 9.90 (s, 1H), 9.53 (s, 1H), 8.33 (s, 1H), 7.33 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.91 (d, J = 8.4 Hz, 2H)。
【0170】
[00166] 一般スキームIIの工程2:4−ブロモ−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−カルボアルデヒドの合成。4−ブロモ−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−カルボアルデヒド(スキームII,8,X=4−ヒドロキシフェニル)(300mg,1.1mmol)、4−クロロ−2−メトキシフェニルボロン酸(スキームII,9A,X=4−クロロ−2−メトキシフェニル)(237mg,1.3mmol)、NaCO(225mg,2.2mmol)、およびPd(PPh(61mg,0.05mmol)の、トルエン/EtOH/HO(10mL,5:3:2)中における混合物を、100℃に加熱し、窒素下で一夜撹拌した。出発物質が消費されたことをTLCが示した時点で、混合物を水で希釈し、HCl(1M)でpH=4〜5に中和し、EtOAcで抽出し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=20:1)により精製して、4−ブロモ−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−カルボアルデヒド(スキームII,9,X=4−ヒドロキシフェニル,X=4−クロロ−2−メトキシフェニル)(290mg,収率79%)を白色固体として得た。1H NMR (DMSO-d6 400 MHz): δ 9.54 (s, 1H), 9.50 (s, 1H), 7.90 (s, 1H), 6.98 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.89 (m, 4H), 6.58 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.29 (s, 3H)。
【0171】
[00167] 一般スキームIIの工程3:(E)−3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチルの合成。4−ブロモ−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−カルボアルデヒド(290mg,0.84mmol)および(カルボエトキシメチレン)トリフェニルホスホラン(322mg,0.93mmol)のトルエン(10mL)中における混合物を、100℃で一夜撹拌した。出発物質が消費されたことをTLCが示した時点で、混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=15:1)により精製して、(E)−3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(スキームII,10,X=4−ヒドロキシフェニル,X=4−クロロ−2−メトキシフェニル)(280mg,収率80%)を得た。1H NMR (DMSO-d6 400 MHz TMS): δ 9.56 (s, 1H), 7.65 (s, 1H), 7.51 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.81 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.71 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.26 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 4.13 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.41 (s, 3H), 1.20 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0172】
[00168] 一般スキームIIの工程4:3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチルの合成。(E)−3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(280mg,0.61mmol)のEtOH(5mL)中における溶液に、Pd/C(50mg)を添加した。混合物を室温でH雰囲気下に4時間撹拌した後、混合物を濾過し、真空中で濃縮して、3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチル(スキームII,11,X=4−ヒドロキシフェニル,X=4−クロロ−2−メトキシフェニル)(220mg,収率78%)を得た。1H NMR (DMSO-d6 400 MHz): δ 9.34 (s, 1H), 7.26 (s, 1H), 7.01 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.79 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 6.64 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.04 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.40 (s, 3H), 2.96 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.55 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.16 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0173】
[00169] 一般スキームIIの工程5:3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸の合成。3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチル(220mg,0.53mmol)のEtOH(5mL)中における溶液に、NaOH(42mg,1.06mmol)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。混合物を水で希釈し、pH=4〜5に中和し、EtOAcで抽出し、濃縮して、3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸(スキームII,12,X=4−ヒドロキシフェニル,X=4−クロロ−2−メトキシフェニル)(127.42mg,収率62%)を得た。1H NMR (DMSO-d6 400 MHz): δ 9.36 (br, 1H), 7.25 (s, 1H), 7.01 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.91-6.88 (m, 2H), 6.79 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 6.64 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.40 (s, 3H), 2.92 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.47 (t, J = 7.2 Hz, 2H); MS (ESI): m/z [M+1]+ =389.0。
【0174】
実施例5:3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸
【0175】
【化18】

【0176】
[00170] 一般スキームIIに従って製造した。工程1の出発物質8Aは4−アミノ−2−メチルフェニルボロン酸であり、粗製物質をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=5:1)により精製して、3−(4−アミノフェニル)−4−ブロモチオフェン−2−カルボアルデヒド(1.5g,収率47.8%)が得られた。工程2の出発物質9Aは4−クロロ−2−メトキシフェニルボロン酸であり、粗製物質をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=3:1)により精製して、3−(4−アミノフェニル)−4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)チオフェン−2−カルボアルデヒド(300mg,収率49.3%)が得られた。スキームIIの工程3に従い、粗製物質をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=3:1)により精製して、(E)−3−(3−(4−アミノフェニル)−4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(300mg,収率83%)が得られた。この生成物のアミンを次いでここに記載する方法に従ってメシル化した。
【0177】
[00171](E)−3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチルの合成。(E)−3−(3−(4−アミノフェニル)−4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(300mg,0.73mmol)およびTEA(75mg,0.73mmol)のDCM(10mL)中における混合物に、MsCl(108mg,0.95mmol)を添加し、混合物を室温で一夜撹拌した。反応溶液をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮すると、(E)−3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチルが得られ、これをそれ以上精製せずに次の工程に用いた。
【0178】
[00172] 一般スキームIIの工程4に従って、3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチル(200mg,収率80.0%)を得た。スキームIIの工程5に従い、その際、混合物をpH=7に酸性化し、分取HPLCにより精製して、29mgの実施例5(収率15.3%)を得た。1H NMR (CD3OD, 400 MHz): δ 7.15-7.17 (m, 3 H), 7.10 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.03 (d, J =8.4 Hz, 2H), 6.88 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.80 (s, 1H), 3.40 (s, 3H), 3.09 (t, J = 7.6 Hz, 2 H), 2.58 (t, J = 7.6 Hz, 2 H); MS (ESI): m/z 488.1 [M+1]+
【0179】
実施例6:3−(4−(4−カルバモイルフェニル)−3−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸
【0180】
【化19】

【0181】
[00173] 一般スキームIIに記載した方法を改変したものに従った。工程1に従い、その際、出発物質は3,4−ジブロモチオフェン−2−カルボアルデヒド(中間体I)の代わりに4−(4−ブロモ−5−ホルミルチオフェン−3−イル)ベンゾニトリル(中間体3)であり、出発物質8Aは中間体2(2−メチル−1−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾール)であった。カラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH=30:1)により精製した後、目的とする4−(5−ホルミル−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−3−イル)ベンゾニトリル(500mg,収率60%)が得られた。次いでスキームIIの工程3に従い、カラム条件(PE:EtOAc=1:2)を用いて、(E)−3−(4−(4−シアノフェニル)−3−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(600mg,収率100%)が得られた。スキームIIの工程4により450mgの生成物(収率75%)が得られ、続いて工程5(分取HPLCにより精製)により実施例6(45.98mg,10%の収率)を得た。1H NMR (CD3OD 400 MHz): δ 7.65-7.63 (m, 3H), 7.53 (s, 1H), 7.47 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.38-7.34 (m, 3H), 7.13 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 3.04 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.56-2.52 (m, 5H); MS (ESI): m/z 432.0 [M+1]+
【0182】
実施例7:3−(3−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸:
【0183】
【化20】

【0184】
[00174] 一般スキームIIに従って製造した。工程1の出発物質8Aは4−シアノ−2−メチルフェニルボロン酸であり、工程1のカラム条件は(PE:EtOAc=10:1)であり、4−(4−ブロモ−2−ホルミルチオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(2g,収率88%)が得られた。工程2の出発物質9Aは中間体2(2−メチル−1−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾール)であり、粗製物質をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=1:2)により精製して、4−(2−ホルミル−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(0.55g,収率60%)が得られた。スキームIIの工程3に従い、カラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=1:1)により精製して、(E)−3−(3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(600mg,収率92%)が得られた。一般スキームIIの工程4に従って400mgの目的物質(66%の収率)が得られた。スキームIIの工程5に従い、その際、分取HPLCにより精製して、26.4mgの実施例7(収率9%)を得た。1H NMR (DMSO-d6 400 MHz): δ 7.99 (s, 1H), 7.87 (s, 1H), 7.79-7.73 (m, 4H), 7.47 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.39 (s, 1H), 7.32-7.30 (m, 3H), 2.84-2.69 (m, 2H), 2.50-2.42 (m, 5H), 1.89 (s, 3H); MS (ESI): m/z 446.1 [M+1]+
【0185】
実施例8:3−(3−(4−カルバモイルフェニル)−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸
【0186】
【化21】

【0187】
[00175] 一般スキームIIに従って製造した。工程1の出発物質8Aは4−シアノフェニルボロン酸であった。工程2の出発物質9Aは中間体2(2−メチル−1−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾール)であり、粗製物質をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=2:1)により精製して、4−(2−ホルミル−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−3−イル)ベンゾニトリル(300mg,収率47%)が得られた。スキームIIの工程3に従い、カラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=1:2)により精製して、(E)−3−(3−(4−シアノフェニル)−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(250mg,収率70%)が得られた。一般スキームIIの工程4に従って3−(3−(4−シアノフェニル)−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチル(200mg,収率80%)が得られ、スキームIIの工程5に従い、その際、分取HPLCにより精製して、166mgの実施例8(収率85%)を得た。1H NMR (CD3OD 300 MHz): δ 7.88 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.64 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.50 (s, 1H), 7.43-7.35 (m, 4H), 7.29 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.09 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.61-2.55 (m, 5H); MS (ESI): m/z 432.0 [M+1]+
【0188】
実施例9:3−(4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)−3−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸
【0189】
【化22】

【0190】
[00176] 一般スキームIIに記載した方法を改変したものに従った。工程1に従い、その際、出発物質は3,4−ジブロモチオフェン−2−カルボアルデヒド(中間体I)の代わりにN−(4−(4−ブロモ−2−ホルミルチオフェン−3−イル)−3−メチルフェニル)メタンスルホンアミド(中間体4)であり、出発物質8Aは中間体2(2−メチル−1−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾール)であった。カラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=1:2)により精製した後、N−(4−(2−ホルミル−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−3−イル)−3−メチルフェニル)メタンスルホンアミド(200mg,収率30%)が得られた。次いでスキームIIの工程3に従い、カラム条件(PE:EtOAc=1:2)で(E)−3−(4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)−3−(4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(190mg,収率82%)が得られた。スキームIIの工程4により140mgの生成物(収率77%)が得られ、続いて工程5(分取HPLCにより精製)により実施例9(41.9mg,31%の収率)を得た。1H NMR (DMSO-d6 400 MHz): δ 9.76 (s, 1H), 7.82 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.69 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.43 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.27 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.14 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.07 (dd, J = 2.0 Hz, J = 8.0 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 2.0 Hz, 1H ), 2.97 (s, 3H), 2.79-2.68 (m, 2H), 2.44-2.38 (m, 5H), 1.78 (s, 3H); MS (ESI): m/z 496.0 [M+1]+
【0191】
実施例10:3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸
【0192】
【化23】

【0193】
[00177] 一般スキームIIに記載した方法を改変したものに従った。工程1に従い、その際、出発物質は3,4−ジブロモチオフェン−2−カルボアルデヒド(中間体I)の代わりにN−(4−(4−ブロモ−2−ホルミルチオフェン−3−イル)−3−メチルフェニル)メタンスルホンアミド(中間体4)であり、出発物質8Aは4−クロロ−2−メトキシフェニルボロン酸であった。カラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=3:1)により精製した後、N−(4−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−2−ホルミルチオフェン−3−イル)−3−メチルフェニル)メタンスルホンアミド(380mg,収率365.2%)が得られた。次いでスキームIIの工程3に従い、カラム条件(PE:EtOAc=3:1)で(E)−3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチル(280mg,収率63.4%)が得られた。スキームIIの工程4により200mgの生成物(収率71%)が得られ、続いて工程5(分取HPLCにより精製)により実施例10(41.9mg,13%の収率)を得た。1H NMR (DMSO-d6 400 MHz): δ 9.73 (s, 1H), 7.38 (s, 1H), 6.93 (m, 4H), 6.90 (s, 1H), 6.86(m, 1H), 3.5 (d, 3H), 2.95 (s, 1H), 2.75 (m, 2H), 7.01 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 1.82 (s, 3H); MS (ESI): m/z 502.0 [M+23]+
【0194】
実施例11:3−(4’−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−2,3’−ビチオフェン−5’−イル)プロパン酸
【0195】
【化24】

【0196】
[00178] 一般スキームIIに記載した方法を改変したものに従った。工程1に従い、その際、出発物質8Aは4−シアノ−2−メチルフェニルボロン酸であり、4−(4−ブロモ−2−ホルミルチオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリルが得られた。これに続いて改変した第2工程(ボロン酸カップリングの代わりにスズカップリング)を実施し、それを以下に詳述する。
【0197】
[00179] 工程2:中間体5(2−メチル−1−(5−(トリブチルスタンニル)チオフェン−2−イル)−1H−イミダゾール,580mg,1.28mmol)、4−(4−ブロモ−2−ホルミルチオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(392mg,1.28mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(200mg,0.17mmol)のトルエン中における混合物を、一夜、加熱還流した。混合物を水に注入し、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせて濃縮し、残留物をシリカゲルカラムで精製して、4−(5’−ホルミル−5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−2,3’−ビチオフェン−4’−イル)−3−メチルベンゾニトリル(280mg,収率56.2%)を得た。
【0198】
[00180] 次いでスキームIIの工程3に従い、(E)−3−(4’−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−2,3’−ビチオフェン−5’−イル)アクリル酸エチル(120mg,収率36.4%)が得られた。続いてスキームIIの工程4により3−(4’−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−2,3’−ビチオフェン−5’−イル)プロパン酸エチルが得られた。そして最後にスキームIIの工程5に従って(分取HPLC(26−53%アセトニトリル+0.1%トリフルオロ酢酸,水+0.1%トリフルオロ酢酸中,15分間にわたる)により直接精製)、実施例11(55mg,50%の収率)を得た。1H NMR (CD3OD 400 MHz): δ 7.82 (m, 2H), 7.72 (s, 1H), 7.60 (s, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.34 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.16 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 7.85 (d, J = 4.0 Hz, 1H), 2.87 (m, 2H), 2.54 (m, 5H), 2.08 (s, 3H); MS (ESI): m/z 452.0 [M+1]+
【0199】
実施例12:3−(5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−4’−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)−2,3’−ビチオフェン−5’−イル)プロパン酸
【0200】
【化25】

【0201】
[00181] 一般スキームIIを改変したものに従って製造した。中間体4(N−(4−(4−ブロモ−2−ホルミルチオフェン−3−イル)−3−メチルフェニル)メタンスルホンアミド)と中間体5(2−メチル−1−(5−(トリブチルスタンニル)チオフェン−2−イル)−1H−イミダゾール)を、実施例11、工程2に詳述した方法に従ってカップリングさせて、N−(4−(5’−ホルミル−5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−2,3’−ビチオフェン−4’−イル)−3−メチルフェニル)メタンスルホンアミド(200mg,収率54.5%)が得られた。次いでスキームIIの工程3に従って、(E)−3−(5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−4’−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)−2,3’−ビチオフェン−5’−イル)アクリル酸エチル(180mg,収率78.0%)が得られた。スキームIIの工程4に従って、3−(5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−4’−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)−2,3’−ビチオフェン−5’−イル)プロパン酸エチル(160mg,収率88.8%)が得られた。そして最後にスキームIIの工程5に従って(分取HPLC(26−53%アセトニトリル+0.1%トリフルオロ酢酸,水+0.1%トリフルオロ酢酸中,15分間にわたる)により直接精製)、実施例12(15mg,10%の収率)を得た。1H NMR (DMSO-d6300 MHz): δ 9.85 (s, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.38 (s, 1H), 7.10 (m, 5H), 6.83 (d, J = 3.9 Hz, 1H), 3.02 (s, 3H), 2.74 (m, 2H), 2.44 (m, 2H), 2.27 (s, 3H), 1.91 (s, 3H); MS (ESI) m/z: 502.2 [M+1]+
【0202】
実施例13:3−(4−(4−ブロモフェニル)−3−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸
【0203】
【化26】

【0204】
[00182] 一般スキームIIに記載した方法を改変したものに従った。スキームII、工程1の出発物質8Aは4−シアノ−2−メチルフェニルボロン酸であり、4−(4−ブロモ−2−ホルミルチオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(2.4g,収率88.9%)が得られた。工程2の出発物質9Aは4−アミノフェニルボロン酸であり、粗製物質をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=5:1)により精製して、4−(4−(4−アミノフェニル)−2−ホルミルチオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(1.0g,収率64.0%)が得られた。スキームIIの工程3に従って粗製(E)−3−(4−(4−アミノフェニル)−3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−2−イル)アクリル酸エチルが得られ、これをそのまま次の工程に用いた。スキームIIの工程4に従い、その際、粗製物質をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=5:1)により精製して、3−(4−(4−アミノフェニル)−3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチル(330mg,収率30.0%)が得られた。スキームIIを下記のように改変してアミノ基をブロモに変換した。
【0205】
[00183] 3−(4−(4−ブロモフェニル)−3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチルの合成:3−(4−(4−アミノフェニル)−3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチル(180mg,0.46mmol)の、HBr(48%,3mL)および水(1mL)混合溶媒中における混合物に、NaNO(32mg,0.46mmol)の水(0.5mL)中における溶液を滴加した。次いで混合物を0℃で1時間撹拌した。次いでCuBr(66mg,0.46mmol)を添加し、混合物を0℃でさらに1時間撹拌した。反応混合物をEtOAcで抽出し、有機層を合わせてNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮すると粗製3−(4−(4−ブロモフェニル)−3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチルが得られ、これをそのまま次の工程に用いた。
【0206】
[00184] 最後にスキームIIの工程5に従った:粗製3−(4−(4−ブロモフェニル)−3−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸エチル(210mg,0.46mmol)のDMSO(3mL)中における混合物に、NaOH水溶液(2M,1mL)を添加し、続いてH(0.2mL)を添加した。混合物を室温で10分間撹拌した。混合物を飽和水性NaSOで停止し、DCM/iPrOH(3/1)混合物で抽出した。有機層を合わせてNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残留物をHPLC(48−78%アセトニトリル+0.15%トリフルオロ酢酸,水中,15分間にわたる)により精製して、3−(4−(4−ブロモフェニル)−3−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸(17.0mg,収率8.3%)を得た。1H NMR (CD3OD 400 MHz): δ 7.66 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.62 (s, 1H), 7.26 (d, J=8.0Hz, 1H), 7.20-7.19 (m, 3H), 7.11-7.08 (m, 2H), 2.62-2.81 (m, 2H), 2.50 (t, J=7.6Hz, 2H), 1.98 (s, 3H). MS (ESI): m/z 446.0 [M+3]+
【0207】
実施例14:3−(4−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸
【0208】
【化27】

【0209】
[00185] 一般スキームIIIの工程1:4−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリルの合成。3,4−ジブロモチオフェン(3g,12.5mmol)、3−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゾニトリル(2g,12.5mmol)、NaCO(2.7g,25mmol)、Pd(PPh(1.4g,1.25mmol)の、トルエン/EtOH/HO混合物(40mL,5:3:2)中における混合物を、80℃で窒素下に一夜撹拌した。反応混合物をEtOAc(80mL)で希釈し、水およびブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、真空中で濃縮し、シリカゲルカラム(PE:EtOAc=30:1)で精製して、4−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(スキームIII,13,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(2.4g,収率68%)を黄色の油として得た。1H NMR (CD3OD 400 MHz): δ 7.56 (s, 1H), 7.50-7.48 (m, 2H), 7.31 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 2.10 (s, 3H)。
【0210】
[00186] 一般スキームIIIの工程2:(E)−3−(4−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−3−イル)アクリル酸エチルの合成。4−(4−ブロモチオフェン−3−イル)−3−メチルベンゾニトリル(2.4g,8.7mmol)および2−(トリチルホスフィニリデン)酢酸エチル(2.6g,26mmol)のDMF(10mL)中における溶液に、Pd(OAc)(194mg,0.87mmol)およびPPh(228mg,0.87mmol)を添加し、混合物を150℃で窒素下に一夜撹拌した。混合物をEtOAcで希釈した。有機層を水およびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮し、シリカゲルカラム(PE:EtOAc=20:1)で精製して、(E)−3−(4−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−3−イル)アクリル酸エチル(スキームIII,14,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(1g,収率39%)を黄色の油として得た。1H NMR (CD3OD 400 MHz): δ 8.03 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.71 (s, 1H), 7.64 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.39-7.34 (m, 2H), 7.28 (d, J = 16 Hz, 1H), 6.06 (d, J = 16.4 Hz, 1H), 4.15 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 2.15 (s, 3H), 1.24 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0211】
[00187] 一般スキームIIIの工程3:3−(4−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸エチルの合成。(E)−3−(4−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−3−イル)アクリル酸エチル(1g,3.4mmol)のEtOH(20mL)中における溶液に、10% Pd/C(w/w,400mg)を添加し、混合物を室温で1気圧のH下に一夜撹拌した。反応混合物を濾過し、濃縮して、3−(4−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸エチル(スキームIII,15,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(0.9g,収率90%)を灰色の油として得た。1H NMR (CD3OD 400 MHz): δ 7.69 (s, 1H), 7.60 (dd, J = 8 Hz, J = 1.2 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 8 Hz, 1H), 7.26-7.23 (m, 2H), 4.05 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 2.67 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.45 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.19 (s, 3H), 1.19 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0212】
[00188] 一般スキームIIIの工程4:3−(5−ブロモ−4−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸エチルの合成。化合物5(500mg,1.7mmol)のDMF(10mL)中における溶液に、NBS(296mg,1.7mmol)を添加し、得られた混合物を100℃で一夜撹拌した。出発物質が消費されたことをTLCが示した時点で、混合物をEtOAcで希釈し、水およびブラインで洗浄し、濃縮し、分取HPLCにより精製して、目的とする3−(5−ブロモ−4−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸エチル(スキームIII,16,X=4−シアノ−2−メチルフェニル)(15mg,収率2%)を得た(目的外の異性体が41%の収率で単離された)。1H NMR (DMSO-d6 400 MHz): δ 7.86 (s, 1H), 7.75 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.43 (s, 1H), 7.30 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 3.96 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 2.42 (s, 2H), 2.05 (s, 5H), 1.09 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0213】
[00189] 一般スキームIIIの工程5:3−(4−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸の合成。3−(5−ブロモ−4−(4−シアノ−2−メチルフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸エチル(35mg,0.09mmol)、4−メトキシフェニルボロン酸(16mg,0.10mmol)、NaCO(19mg,0.18mmol)、Pd(PPhCl(6mg,0.009mmol)の、ジオキサンおよびHO混合物(5mL,4:1)中における混合物を、100℃で一夜、窒素下に撹拌した。混合物をpH=5に中和し、EtOAcで抽出した。有機層を濃縮し、分取TLCにより精製して、3−(4−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸(30mg,収率86%)を黄色の油として得た。
【0214】
[00190] 一般スキームIIIの工程6:3−(4−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸の合成。3−(4−(4−シアノ−2−メチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸(30mg,0.08mmol)のDMSO(5mL)中における溶液に、NaOH(6mg,0.16mmol)および30% H(9mg,0.08mmol)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、分取HPLCにより精製して、16mgの表題化合物、実施例14(スキームIII,17,X=4−カルバモイル−2−メチルフェニル,X=4−メトキシフェニル)(収率52%)を白色固体として得た。1H NMR (CD3OD 400 MHz TMS): δ 7.72 (s, 2H), 7.26 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.14 (s, 1H), 7.04 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.70 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 3.70 (s, 3H), 2.57 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.38 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 1.96 (s, 3H); MS (ESI): m/z 317.9 [M+23]+
【0215】
実施例15:前記の実施例で述べた中間体の合成
中間体1:3,4−ジブロモチオフェン−2−カルボアルデヒド
[00191] ジイソプロピルアミン(1.3g,12.5mmol)の無水THF 15mL中における溶液に、n−BuLi(4.0mL,ヘキサン中2.5M)を−78℃で添加した。混合物を−78℃で0.5時間撹拌した後、無水THF(20mL)中の3,4−ジブロモチオフェン(2g,8.3mmol)を添加した。混合物を−78℃で15分間撹拌し、DMF(670mg,9.2mmol)のTHF(5mL)中における溶液を添加した。この温度で0.5時間撹拌した後、混合物を室温で2時間撹拌した。混合物をNHCl飽和溶液で停止し、水で希釈し、EtOAcで抽出し、濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製して、3,4−ジブロモチオフェン−2−カルボアルデヒド(1.0g,収率45%)を得た。
【0216】
[00192] 中間体2:2−メチル−1−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾール
[00193] 工程1:1−フルオロ−4−ニトロベンゼン(10g,70.9mmol)、2−メチル−1H−イミダゾール(5.8g,70.9mmol)およびCsCO(34.7g,106.4mmol)の、脱ガスDMF(200mL)中における混合物を、100℃で窒素下に一夜加熱した。1−フルオロ−4−ニトロベンゼンが消費されたことをTLCが示した時点で、反応混合物を真空中で濃縮した。残留物を水(300mL)で希釈すると灰色の沈殿が生成し、これを単離して2−メチル−1−(4−ニトロフェニル)−1H−イミダゾール(12.8g,収率89%)を得た。
【0217】
[00194] 工程2:2−メチル−1−(4−ニトロフェニル)−1H−イミダゾール(12.8g,63mmol)のMeOH(150mL)中における溶液に、Pd/C(3g)を添加した。得られた混合物を室温で8時間、水素下に撹拌した。出発物質が消費されたことをTLCが示した時点で混合物を濾過し、真空中で濃縮して、4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)アニリン(10g,収率92%)を得た。
【0218】
[00195] 工程3:4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)アニリン(10g,57.8mmol)のHBr溶液100mL中における溶液に、NaNO(5.2g,75.1mmol)のHO(60mL)中における溶液を0℃で添加した。この温度で20分間撹拌し、次いで混合物をCuBr(58g,404mmol)のHBr溶液(200mL)中における溶液に0℃で注入し、30分間撹拌し、水で希釈し、室温で1時間撹拌した。沈殿を分離除去し、真空中で蒸発させると28gの粗生成物が得られ、これを分取HPLCにより精製して、1−(4−ブロモフェニル)−2−メチル−1H−イミダゾール(7g,収率51%)を得た。
【0219】
[00196] 工程4:1−(4−ブロモフェニル)−2−メチル−1H−イミダゾール(3.6g,15.3mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(4.3g,16.8mmol)、KOAc(3.0g,30.5mmol)およびPd(dppf)Cl(559mg,0.76mmol)の、DMF(40mL)中における混合物を、100℃で一夜撹拌した。出発物質が消費されたことをTLCが示した時点で混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc=1:2)により精製して、2−メチル−1−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾール(1.1g,収率26%)を得た。
【0220】
[00197] 中間体3:4−(4−ブロモ−5−ホルミルチオフェン−3−イル)ベンゾニトリル
[00198] ジイソプロピルアミン(1.2g,11.4mmol)の無水THF 20mL中における溶液に、n−BuLi(3.7mL,ヘキサン中2.5M)を−78℃で添加した。混合物をこの温度で0.5時間撹拌した後、4−(4−ブロモチオフェン−3−イル)ベンゾニトリル(化合物2の工程1で製造)(2.0g,7.6mmol)の無水THF(20mL)中における溶液を滴加した。混合物を−78℃で15分間撹拌し、DMF(611mg,8.4mmol)のTHF(5mL)中における溶液を添加した。反応混合物を−78℃で0.5時間、室温で2時間、撹拌した。混合物を飽和NHCl水溶液で停止し、EtOAcで抽出し、濃縮し、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより精製して、4−(4−ブロモ−5−ホルミルチオフェン−3−イル)ベンゾニトリル(600mg,収率27%)を得た。
【0221】
[00199] 中間体4:N−(4−(4−ブロモ−2−ホルミルチオフェン−3−イル)−3−メチルフェニル)メタンスルホンアミド
[00200] 工程1:N−(4−ブロモ−3−メチルフェニル)メタンスルホンアミド(11.5g,43mmol)のDMF中における溶液に、ビス(ピニコラト)ジボロン(12g,47.3mmol)およびKOAc(8.4g,86mmol)を添加し、混合物をNで脱ガスし、PdCl(dppf)(2g,2.7mmol)を添加し、次いで混合物を再び脱ガスし、得られた混合物をN下で100℃に一夜加熱した。反応溶液をEtOAc(500mL)で希釈し、セライト(celite)により濾過し、EtOAcで洗浄し、濾液を減圧下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、N−(3−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)メタンスルホンアミド(8.2g,収率60%)を得た。
【0222】
[00201] 工程2:中間体1(4g,15mmol)の、DMEおよびHO混合物(150mL/50mL)中における溶液に、N−(3−メチル−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)メタンスルホンアミド(3.6g,1.65mmol)およびNaCO(2.8g,3.1mmol)を添加し、混合物をNで脱ガスし、Pd(PPh(500mg)を添加し、次いで混合物をN下で100℃に一夜加熱した。反応溶液を濃縮して有機溶液を分離し、次いで水層をEtOAc(100mL×3)で抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、N−(4−(4−ブロモ−2−ホルミルチオフェン−3−イル)−3−メチルフェニル)メタンスルホンアミド(2.0g,収率35.7%)を得た。
【0223】
[00202] 中間体5:2−メチル−1−(5−(トリブチルスタンニル)チオフェン−2−イル)−1H−イミダゾール
[00203] 工程1:2,5−ジブロモチオフェン(20g,82.6mmol)および2−メチル−1H−イミダゾール(4.1g,50mmol)のDMSO(100mL)中における溶液に、CuI(3.14g,16.5mmol)、L−プロリン(0.95g,8.3mmol)、KCO(22.9g,0.165mol)を添加し、得られた混合物をNバルーン保護下で100℃に一夜加熱した。反応混合物を濾過し、濾液を水に注入し、EtOAc(300mL×5)で抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、次いで濾過し、濾液を減圧下で濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、目的とする1−(5−ブロモチオフェン−2−イル)−2−メチル−1H−イミダゾール(3.8g,収率31.2%)を得た。
【0224】
[00204] 工程2:1−(5−ブロモチオフェン−2−イル)−2−メチル−1H−イミダゾール(2g,8.3mmol)の乾燥THF中における溶液に、n−BuLi(ヘキサン中2.5M,4mL,10mmol)を−78℃で滴加し、混合物を−78℃で30分間撹拌した。塩化トリブチルスズ(4.6g,0.96mmol)のTHF中における溶液を滴加し、溶液を−78℃で1時間撹拌し、反応溶液を室温まで高め、1時間撹拌した。反応溶液をNHCl水溶液に注入し、混合物をEtOAc(100mL×3)で抽出した。有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、次いで減圧下で濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、2−メチル−1−(5−(トリブチルスタンニル)チオフェン−2−イル)−1H−イミダゾールを黄色の油(1.2g,収率31.8%)として得た。
【0225】
実施例16:GSNORアッセイ
[00205] 種々の化合物をそれらがGSNOR活性を阻害する能力についてインビトロで試験した。実施例1〜14のGSNOR阻害化合物は、約<10μMのIC50をもっていた。実施例1、2、4、7〜9、11〜13、14のGSNOR阻害化合物は、約1.0μM未満のIC50をもっていた。
【0226】
[00206] GSNORの発現および精製は、Biochemistry 2000, 39, 10720-10729に記載されている。
[00207] GSNOR発酵:GSNORグリセロール原液の穿刺培養物からの前培養物を、100ug/mlのアンピシリンを含有する2XYT培地中において、37℃で一夜のインキュベーション後に増殖させた。次いで細胞を新鮮なアンピシリン含有2XYT(4L)に添加し、誘導前に37℃でOD(A600)0.6〜0.9まで増殖させた。GSNOR発現を0.1%アラビノースにより20℃で一夜のインキュベーションによって誘導した。
【0227】
[00208] GSNORの精製:大腸菌(E. coli)細胞ペーストを窒素キャビテーション(nitrogen cavitation)により溶解し、澄明化した溶解物をAKTA FPLC (Amersham Pharmacia)上でのNiアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。カラムを20mM Tris pH 8.0/250mM NaCl中、0〜500mMイミダゾール勾配で溶離した。Smt−GSNOR融合体を含有する溶出GSNOR画分をUlp-1により4℃で一夜消化してアフィニティータグを除去し、次いで同じ条件下でNiカラムに再び通した。GSNORをフロースルー画分中に回収し、結晶解析のためにQ-Sepharoseおよびヘパリン フロースルークロマトグラフィーにより20mM Tris pH8.0、1mM DTT、10uM ZnSOでさらに精製した。
【0228】
[00209] GSNORのアッセイ:GSNOおよび酵素/NADH溶液を各日に新たに調製する。これらの溶液を濾過し、室温まで上昇させる。GSNO溶液:100mMのNaPO4(pH7.4)、0.480mMのGSNO。396μLのGSNO溶液をキュベットに添加し、続いてDMSO中の被験化合物(または、完全反応対照についてはDMSOのみ)8μLを添加し、ピペットティップで混合する。被験化合物を100% DMSO中に10mMの原液濃度で調製する。100% DMSO中に2倍系列希釈を実施する。8μLの各希釈液をアッセイに添加して、アッセイにおける最終DMSO濃度が1%となるようにする。被験化合物の濃度は100〜0.003μMの範囲である。酵素/NADH溶液:100mMのNaPO(pH7.4)、0.600mMのNADH、1.0μg/mLのGSNOレダクターゼ。396μLの酵素/NADH溶液をキュベットに添加して反応を開始する。キュベットをCary 3E UV/Visible分光光度計に装入し、25℃で340nm吸光度/分の変化を3分間記録する。各化合物濃度について三重にアッセイを実施する。SigmaPlotのEnzyme Kinetics Moduleで標準曲線分析を用いて各化合物のIC50を計算する。
【0229】
[00210] 最終アッセイ条件:100mMのNaPO、pH7.4、0.240mMのGSNO、0.300mMのNADH、0.5μg/mLのGSNOレダクターゼ、および1%のDMSO。最終容量:800μL/キュベット。
【0230】
実施例17:実験的喘息におけるGSNOR阻害薬の有効性
[00211] 実験的喘息モデル:
[00212] オボアルブミン(OVA)誘発喘息のマウスモデルを用いて、GSNOR阻害薬をメタコリン(MCh)誘発気管支収縮/気道反応性亢進に対する有効性についてスクリーニングすることができる。これは、ヒトの喘息との類似性をもつ急性アレルギー性喘息表現型を呈する、広く用いられている十分に特性解明されたモデルである。OVA感作および気道攻撃の後、MCh攻撃前にGSNOR阻害薬を投与するプロトコルを用いて、GSNOR阻害薬の有効性を評価する。漸増量のMChによる攻撃に応答した気管支収縮を、全身プレチスモグラフィー(Penh;Buxco)により評価する。肺の炎症の尺度として、気管支肺胞洗浄液(BALF)中への好酸球の浸潤量も測定する。GSNOR阻害薬の効果を、ビヒクル、および陽性対照としてのCombivent(吸入;IH)と比較する。
【0231】
[00213] 材料および方法
[00214] アレルゲン感作および攻撃プロトコル
[00215] PBS中のOVA(500μg/ml)を、等容量の蒸留水中10%(w/v)硫酸アルミニウムカリウムと混合し、10N NaOHを用いてpH6.5に調整した後、室温で60分間インキュベートする。750×gで5分間遠心した後、OVA/硫酸アルミニウムカリウムペレットを元の容量にまで蒸留水に再懸濁する。マウスに、硫酸アルミニウムカリウムと複合体形成した100μgのOVA(生理食塩水中500μg/mLのもの0.2mL)を0日目に腹腔内(IP)注射する。マウスを、生理食塩水中のケタミン(ketamine)とキシラジン(xylazine)(それぞれ、0.44および6.3mg/mL)の混合物0.2−mLの腹腔内注射により麻酔し、ボード上に仰臥位で置く。250μg(2.5mg/mlのもの100μl)のOVA(8日目)および125μg(2.5mg/mlのもの50μl)のOVA(15、18および21日目)を各動物の舌の裏側に置く。
【0232】
[00216] 肺機能試験(Penh)
[00217] メタコリンに対するインビボ気道応答性を、最終OVA攻撃の24時間後に、意識のある自由運動状態の自発呼吸マウスにおいて、Buxcoチャンバー(Wilmington, NC)を用いる全身プレチスモグラフィーにより測定する。マウスを、超音波ネブライザーにより発生させたエアゾール化した生理食塩水または漸増量のメタコリン(5、20および50mg/mL)で2分間攻撃する。気管支収縮の程度を休止の増強(enhanced pause)(Penh)(無次元計算値)として表わす;これは、同じマウスの気道抵抗、インピーダンス、および胸腔内圧の測定値と相関する。それぞれの噴霧化攻撃後の4分間についてPenhの読みを求め、平均する。Penhは下記に従って計算される:Penh=[(T/T−1)×(PEF/PIF)];ここで、Tは呼息時間であり、Tは弛緩時間であり、PEFはピーク呼息流(peak expiratory flow)であり、PIFはピーク吸息流(peak inspiratory flow)×0.67係数である。ボックス圧(box pressure)が最大から最大に対するユーザー規定パーセントまで変化する時間が弛緩時間である。Tの測定は最大ボックス圧で開始し、40%で終了する。
【0233】
[00218] BALF中の好酸球浸潤物
[00219] 気道反応性亢進を測定した後、マウスを心臓穿刺により全採血し、次いで両肺から、または左肺を主幹気管支で縛った後に右肺から、BALFを採集する。総BALF細胞を0.05mLアリコートから計数し、残りの液を200×g、4℃で10分間遠心する。10% BSAを含有する生理食塩水に細胞ペレットを再懸濁し、スライドガラスに塗抹する。好酸球を蒸留水中の0.05%水性エオシンおよび5%アセトンで5分間染色し、蒸留水ですすぎ、0.07%メチレンブルーで対比染色する。あるいは好酸球および他の白血球をDiffQuikで染色する。
【0234】
[00220] GSNOR阻害薬および対照
[00221] GSNOR阻害薬を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4、または0.5% w/vカルボキシメチルセルロース中に、0.00005から3mg/mLの範囲の濃度で再構成する。GSNOR阻害薬をマウスに静脈内に(IV)または胃管により経口的に、単回または多数回投与として投与する(10mL/kg)。投与はMCh攻撃の30分前から72時間前までに実施される。GSNOR阻害薬の効果を同じ方法で投与したビヒクルと比較する。
【0235】
[00222] Combiventをすべての試験において陽性対照として用いる。Combivent (Boehringer Ingelheim)は製品と共に供給されるインヘラー器具(ただしピペットティップを用いてマウスへの投与に適合させたもの)を用いて肺に投与される。CombiventをMCh攻撃の48時間前、24時間前、および1時間前に投与する。各ひと吹き(または用量)のCombiventが、18μgの臭化イパトロピウム(ipatropium bromide)(IpBr)および103μgの硫酸アルブテロール(albuterol sulfate)、すなわちほぼ0.9mg/kgのIpBrおよび5mg/kgのアルブテロールの用量を供給する。
【0236】
[00223] 統計分析
[00224] ベースライン、生理食塩水、および漸増量のMCh攻撃にわたるPenhについての曲線下面積値をGraphPad Prism 5.0 (San Diego, CA)により計算し、それぞれの(IVまたは経口投与した)ビヒクル対照に対するパーセントとして表わす。各試験内における処置グループと各ビヒクル対照グループの間の統計差を、一元ANOVA、DunnettsまたはBonferroni事後検定もしくはt−検定(JMP 8.0, SAS Institute, Cary, NC,またはMicrosoft Exel)により計算する。処置グループと各ビヒクル対照グループの間のp値<0.05を有意差とみなす。
【0237】
実施例18:マウス薬物動態(PK)試験
[00225] 実験モデル
[00226] マウスを用いて本発明化合物の薬物動態を調べることができる。この種は、被験品を経口(PO)および静脈内(IV)の両方で投与することにより化合物の生物学的利用能を評価するために広く用いられている。雄BALB/cマウスにおいてIVまたはPO投与のいずれかによる血漿曝露をピーク活性時点で評価することにより、本発明化合物の有効性を比較する。
【0238】
[00227] 材料および方法
[00228] 本発明化合物のIV投与
[00229] 本発明の化合物をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)/10% Solutol (HS 15)透明溶液中に再構成して0.2mg/mLの濃度にし、マウスに単回IV投与として投与する(2mg/kg)。動物に尾側方静脈から投与する。イソフルラン(isoflurane)麻酔下に、指定した時点で(0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、16、24時間目)心臓穿刺により血液試料を採集する(動物当たり最高1mLの血液)。Li−ヘパリンを入れたチューブ内へ血液を採集する。血液試料を採集して約30分以内に遠心するまで氷上に保持する。血漿をラベル付きポリプロピレンチューブ内へ移し、LC/MS/MSにより分析するまで−70℃で凍結する。
【0239】
[00230] 本発明化合物のPO投与
[00231] 本発明の化合物を40%プロピレングリコール/40%炭酸プロピレン/20% 5%ショ糖の透明溶液中に再構成して2mg/mLの濃度にし、マウスに胃管により単回経口投与として投与する(10mg/kg)。イソフルラン麻酔下で、投与後0.25、0.5、1、2、4、8、12、16、20および24時間目に心臓穿刺により血液試料を採集する。Li−ヘパリンを入れたチューブ内へ血液を採集する。血液試料を採集して約30分以内に遠心するまで氷上に保持する。血漿をラベル付きポリプロピレンチューブ内へ移し、LC/MS/MSにより分析するまで−70℃で凍結する。
【0240】
[00232] LC/MS/MS分析
[00233] 各時点の血漿試料をLC−MS/MSにより1ng/mLの定量下限(lower limit of quantification)(LLOQ)で分析する。血漿を分析して各試料中の本発明化合物の量を測定し、本発明化合物それぞれについて関係マトリックスでの回帰曲線を作成する。
【0241】
[00234] IVおよびPO投与の両方についてPKパラメーターを計算するために、WinNonlin分析を用いる:
IV部分についてのPKパラメーター − AUClast;AUCINF;T1/2;Cl;Vss;Cmax;MRT
PO部分についてのPKパラメーター − AUClast;AUCINF;T1/2;Cmax;Cl;MRT。
【0242】
[00235] 上記のPKパラメーターのほかに、生物学的利用能(%F)を計算することができる。
実施例19:実験的炎症性腸疾患(IBD)におけるGSNOR阻害薬の有効性
[00236] モデルの概説:
[00237] マウスにおける硫酸デキストランナトリウム(DSS)誘発IBDの急性および慢性モデルを用いて、この疾患に対するGSNOR阻害薬の有効性を探査することができる。急性および慢性DSS誘発IBDは、結腸にヒトの疾患にみられるものと類似する病的変化を誘発する、広く用いられている十分に特性解明されたモデルである。これらのモデルおよびヒトの疾患では、結腸の陰窩内の上皮細胞が破壊されて、上皮バリヤーの機能障害、それに続いて組織の炎症、浮腫および潰瘍形成を生じる。GSNOR阻害薬療法は、s−ニトロソグルタチオン(GSNO)レベルを回復させ、したがって上皮バリヤー機能障害を阻止または反転させることにより、IBDに有益となることができる。
【0243】
[00238] 急性予防モデル:
[00239] 雄C57Bl/6マウス(グループ当たりN=8〜10匹)の飲料水にDSSを連続6日間投与することにより、実験的IBDを誘発する。GSNOR阻害薬を0.1〜10mg/kg/日の用量で、DSS曝露の2日前から始めて連続して曝露後2日目まで10日間、経口投与する。DSS曝露後2日目に、GSNOR阻害薬の効果を、内視鏡検査および組織病理学的検査によりスコア=0(正常組織)からスコア=4(潰瘍性の組織損傷および顕著な病的変化)までの範囲の5点スケールを用いて盲検法で評価する。炎症経路に関与する循環サイトカインのレベルも評価する。GSNOR阻害薬の効果をビヒクル処理対照と比較する。コルチコステロイドであるプレドニソロンをこの試験における陽性対照として用い、1日1回、3mg/kg/日で経口投与により投与する。正常組織対照としてナイーブマウス(N=5)も評価する。
【0244】
[00240] 慢性処置モデル:
[00241] 雄C57Bl/6マウス(グループ当たりN=10〜12匹)の飲料水にDSSを連続6日間投与することにより、実験的IBDを誘発する。GSNOR阻害薬を10mg/kg/日の用量で、DSS曝露停止後1日目から始めて14日間、経口投与する。GSNOR阻害薬の有効性を、GSNOR阻害薬投与の7日後および14日後に内視鏡検査により、またGSNOR阻害薬投与の14日後に組織病理学的検査により、スコア=0(正常組織)からスコア=4(潰瘍性の組織損傷および顕著な病的変化)までの範囲の5点スケールを用いて盲検法で評価する。炎症経路に関与する循環サイトカインのレベルも評価する。GSNOR阻害薬の効果をビヒクル処理対照と比較する。コルチコステロイドであるプレドニソロンをこの試験における陽性対照として用い、1日1回、3mg/kg/日で経口投与により投与する。正常組織対照としてナイーブマウス(N=5)も評価する。
【0245】
実施例20:実験的慢性閉塞性肺疾患(COPD)におけるGSNOR阻害薬の有効性
[00242] 短期喫煙COPDモデル
[00243] 煙草の煙への短期(4日または11日)曝露により誘発した慢性閉塞性肺疾患(COPD)のマウスモデルにおいて、GSNOR阻害薬の有効性を探査することができる。気管支肺胞洗浄液(BALF)への炎症細胞の浸潤、および炎症に関与するケモカインのBALFレベル、および組織代謝回転/修復を測定して、GSNOR阻害薬がCOPDの開始および進行に関連する初期事象の幾つかに及ぼす影響を評価する。
【0246】
[00244] モデルの概説:
[00245] マウスにおいて煙草の煙により誘発したCOPDの急性(4日)および亜慢性(11日)モデルを用いて、COPDに対するGSNOR阻害薬の有効性を探査する。動物を煙草の煙に曝露することによって、ヒトの疾患の場合と同じ原因因子により傷害が誘発され、かつ気道閉塞、気室拡張、およびこれらの病態における炎症反応の関与を含めて傷害がヒトの疾患に対する類似性を示す、COPDモデルが得られる。動物モデルでは、肺の病態の変化は煙草の煙に長期(数か月)曝露した後に初めて顕性になるので、慢性モデルの作成は有効なスクリーニングツールとしての妨げとなる。より最近では、マウスにおいて短期(2週間以内)の煙曝露後の炎症反応を探査するモデルが、COPDに対する新規療法薬の有効性および作用機序をスクリーニングするためのツールとして用いられている。COPDの開始および進行に際して炎症がもつ重要な役割のため、これらの短期モデルは新規療法薬の有効性の初期試験に適切となる。
【0247】
[00246] 急性(4日)煙曝露モデル:雌C57Bl/6マウス(グループ当たりN=8)を全身曝露チャンバーにより煙草の煙に曝露する。マウスを、連続6本の煙草(Kentucky 3R4F,フィルターなし)からの煙の4サイクルに、サイクル間に30分の無煙期間をおいて、1日1回、連続4日間曝露する。GSNOR阻害薬を10mg/kg/日の用量で1日1回、煙曝露の2日前から始めて連続して曝露後1日目まで7日間、経口投与により投与する。GSNOR阻害薬の効果を、最終の煙曝露の約24時間後に、光学顕微鏡によるBALF中の総細胞数、白血球数の定量、および白血球分別、ならびにELISAによるBALFケモカインのレベルの定量により評価する。GSNOR阻害薬の効果をビヒクル処理対照と比較する。PDE4阻害薬ロフルミラスト(roflumilast)をこの試験における陽性対照として用いる。ナイーブマウスのグループ(N=8)を空気に曝露し、この試験における陰性対照として用いる。
【0248】
[00247] 亜慢性(11日)煙曝露モデル:雌C57Bl/6マウス(グループ当たりN=10)を、フィルターなしMarlboro 100煙草から発生する煙草の煙に曝露する。曝露時間は、試験1日目に25分間、試験2日目に35分間、試験3〜11日目に45分間である。各日の煙曝露の1時間前にGSNOR阻害薬を投与する。GSNOR阻害薬を1〜10mg/kg/日で11日間、経口投与する。GSNOR阻害薬の効果を、最終曝露の約24時間後に、光学顕微鏡によるBALF中の総細胞数の定量および白血球分別により評価する。GSNOR阻害薬の効果をビヒクル処理対照と比較し、煙草の煙により誘発されるBALF中の細胞数増加の阻害率パーセントとして表わす。ロフルミラストをこの試験における陽性対照として用い、5mg/kg/日で投与する。この試験における陰性対照としてナイーブマウスのグループ(N=10)を空気に曝露し、ビヒクルを投与する。
【0249】
[00248] 本発明の精神または範囲から逸脱することなく本発明の方法および組成物において種々の改変および変更をなしうることは当業者に自明であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその医薬的に許容できる塩もしくは立体異性体:
【化1】

[式中:
XおよびYは、SまたはCHからなる群から選択され、ただし、XがSである場合にはYはCHでなければならず、XがCHである場合にはYはSでなければならず;
Arは、フェニルおよびチオフェン−イルからなる群から選択され;
は、水素、非置換イミダゾリル、置換イミダゾリル、カルバモイル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、およびメトキシからなる群から選択され;
は、水素、メチル、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、カルバモイル、ジメチルアミノ、アミノ、ホルムアミド、およびトリフルオロメチルからなる群から選択され;
は、水素、メチル、メトキシ、クロロ、およびフルオロからなる群から選択され;
は、CONH、NHSOCH、ヒドロキシ、クロロ、ならびに置換および非置換イミダゾリルからなる群から選択される]。
【請求項2】
Arは
【化2】

からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】

【化3】

であり、ここでRは水素、メチルおよびエチルからなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
ArRは、4−メトキシフェニル、4−クロロ−2−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、4−カルバモイルフェニル、および4−ブロモフェニルからなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
は水素、メチルおよびメトキシからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
化合物が式IIの化合物:
【化4】

[式中:
Arは、フェニルおよびチオフェン−イルからなる群から選択され;
は、水素、非置換イミダゾリル、置換イミダゾリル、カルバモイル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、およびメトキシからなる群から選択され;
は、水素、メチル、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、カルバモイル、ジメチルアミノ、アミノ、ホルムアミド、およびトリフルオロメチルからなる群から選択され;
は、水素、メチル、メトキシ、クロロ、およびフルオロからなる群から選択され;
は、CONH、NHSOCH、ヒドロキシ、クロロ、ならびに置換および非置換イミダゾリルからなる群から選択される]
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Arは
【化5】

からなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】

【化6】

であり、ここでRは水素、メチルおよびエチルからなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
ArRは、4−メトキシフェニル、4−クロロ−2−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、4−カルバモイルフェニル、および4−ブロモフェニルからなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
は水素、メチルおよびメトキシからなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
下記からなる群から選択される、請求項6に記載の化合物:
3−(3−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−4−(4−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(3−(4−カルバモイルフェニル)−4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(3−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−ヒドロキシフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4−(4−カルバモイルフェニル)−3−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(3−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(3−(4−カルバモイルフェニル)−4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4−(4−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)フェニル)−3−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4−(4−クロロ−2−メトキシフェニル)−3−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸;
3−(4’−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−2,3’−ビチオフェン−5’−イル)プロパン酸;
3−(5−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−4’−(2−メチル−4−(メチルスルホンアミド)フェニル)−2,3’−ビチオフェン−5’−イル)プロパン酸;および
3−(4−(4−ブロモフェニル)−3−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)チオフェン−2−イル)プロパン酸。
【請求項12】
化合物が式IIIの化合物:
【化7】

[式中:
Arは、フェニルおよびチオフェン−イルからなる群から選択され;
は、水素、非置換イミダゾリル、置換イミダゾリル、カルバモイル、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、およびメトキシからなる群から選択され;
は、水素、メチル、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、カルバモイル、ジメチルアミノ、アミノ、ホルムアミド、およびトリフルオロメチルからなる群から選択され;
は、水素、メチル、メトキシ、クロロ、およびフルオロからなる群から選択され;
は、CONH、NHSOCH、ヒドロキシ、クロロ、ならびに置換および非置換イミダゾリルからなる群から選択される]
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
Arは
【化8】

からなる群から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】

【化9】

であり、ここでRは水素、メチルおよびエチルからなる群から選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
ArRは、4−メトキシフェニル、4−クロロ−2−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、4−カルバモイルフェニル、および4−ブロモフェニルからなる群から選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
は水素、メチルおよびメトキシからなる群から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項17】
3−(4−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)チオフェン−3−イル)プロパン酸からなる群から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項18】
療法有効量の請求項1に記載の式Iの化合物を医薬的に許容できるキャリヤーまたは賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項19】
療法有効量の請求項1に記載の式Iの化合物をその必要がある患者に投与することを含む、疾患または状態の処置方法。
【請求項20】
請求項1に記載の式Iの化合物を製造する方法。

【公表番号】特表2013−514363(P2013−514363A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544714(P2012−544714)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/060303
【国際公開番号】WO2011/075478
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(511038606)エヌサーティー・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (8)
【Fターム(参考)】