Sモード付きゲート式ATシフトレバー装置
【課題】簡単な構造で、部品数が少なく製造コストを低減できるSモード付きゲート式ATシフトレバー装置を提供する。
【解決手段】シフトレバー1の揺動中心からシフト方向に張出されたコントロールレバー8の先端に小球部7を形成し、シフトケーブル5のケーブルエンド10に固定したブッシュ9の球状凹部9aに小球部7を嵌合させる。小球部7を,コントロールレバー8に固定された円板部7aと、その両側に配置され円板部7aに形成された長溝7dに沿ってスライド可能な2つの球体切断片7a、7bとからなるものとする。ブッシュ9には、シフトレバー1がSモードにあるときの円板部7aと同一の方向にスリット9bを形成し、Sモードにおけるシフト方向操作時にはケーブルエンド10を動かすことなく円板部7aをこのスリット9bの内部でスライド可能とした。
【解決手段】シフトレバー1の揺動中心からシフト方向に張出されたコントロールレバー8の先端に小球部7を形成し、シフトケーブル5のケーブルエンド10に固定したブッシュ9の球状凹部9aに小球部7を嵌合させる。小球部7を,コントロールレバー8に固定された円板部7aと、その両側に配置され円板部7aに形成された長溝7dに沿ってスライド可能な2つの球体切断片7a、7bとからなるものとする。ブッシュ9には、シフトレバー1がSモードにあるときの円板部7aと同一の方向にスリット9bを形成し、Sモードにおけるシフト方向操作時にはケーブルエンド10を動かすことなく円板部7aをこのスリット9bの内部でスライド可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレバーをSモード(手動変速モード)のポジションにセレクト操作したうえでシフト方向の手動操作を行うことにより、シフトアップあるいはシフトダウン操作を行うことができるSモード付きゲート式ATシフトレバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のようなSモード付きゲート式ATシフトレバー装置は、通常の自動変速モードにおいてはシフトレバーのシフト方向の動きをそのままシフトケーブルによって変速機に伝えている。しかしSモードに切り換えた状態ではシフトレバーのシフト方向の操作は電気的スイッチによって検出され、変速機に対して電気信号として入力される。このためにシフトレバーがSモードにあるときには、そのシフト方向の動きがシフトケーブルに伝わらないようにすることが求められる。
【0003】
そこで従来は例えば特許文献1に示されるように、シフトレバーとは別にシフトケーブル操作用のコントロールレバーを設け、通常の自動変速モードにおいてはシフトレバーの突起がコントロールレバーの凹部に嵌合してコントロールレバーをシフトレバーと一体化するが、シフトレバーをSモードにセレクト操作すると両者間の係合がはずれ、シフトレバーの動きがコントロールレバーおよびシフトケーブルに伝わらないようにした構造が採用されている。
【0004】
しかし、シフトレバーとは別にコントロールレバーを設ける必要があるために構造が複雑で設置スペースが大きくなるうえ、部品数が多くなって製造コストが増し、重量増加の原因となるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−206017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、シフトレバーとは別にコントロールレバーを設ける必要がなく構造が簡単であり、しかもシフトレバーがSモードにあるときには、そのシフト方向の動きがシフトケーブルに伝わらないようにしたSモード付きゲート式ATシフトレバー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明のSモード付きゲート式ATシフトレバー装置は、シフトレバーの揺動中心からシフト方向に張出されたコントロールレバーの先端に小球部を形成するとともに、シフトケーブルのケーブルエンドに回転不能に取付けたブッシュの球状凹部に前記小球部を嵌合させたSモード付きゲート式ATシフトレバー装置であって、前記小球部をコントロールレバーに固定された円板部と、この円板部の両側に配置され円板部に形成された長溝に沿ってスライド可能な2つの球体切断片とからなるものとし、また前記ブッシュには、シフトレバーがSモードにあるときの前記円板部と同一の方向にスリットを形成し、Sモードにおけるシフト方向操作時にはケーブルエンドを動かすことなく前記円板部をこのスリット内部でスライド可能としたことを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2のように、シフトケーブルのケーブルエンドが、シフトレバー装置本体に対して回転不能に保持されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のSモード付きゲート式ATシフトレバー装置は、シフトケーブルのケーブルエンドに回転しないように取付けたブッシュに、シフトレバーがSモードにあるときのコントロールレバーの円板部と同一方向にスリットを形成したので、Sモードにおいてシフト方向操作を行っても、スリット内部で円板部がスライドするだけで、ケーブルエンドが動かされることはない。しかしシフトレバーが通常の自動変速モードにあるときには、コントロールレバーの円板部の角度とスリットの角度が一致しなくなるため、シフト方向操作を行うとそれに連れてシフトケーブルのケーブルエンドが動かされる。このように本発明によれば、従来のような独立したコントロールレバーを必要とせずに、シフトレバーがSモードにあるときには、そのシフト方向の動きがシフトケーブルに伝わらないという機能を達成することができる。
【0010】
なお請求項2のようにシフトケーブルのケーブルエンドをシフトレバー装置本体に対して回転不能に保持させておけば、シフトケーブルのねじれによってスリットの方向が変化してしまうおそれを完全になくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を示す側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】要部を分解して示す斜視図である。
【図6】各レンジにおけるブッシュと円板部との配置を示す説明図である。
【図7】ストレート式セレクトボタン有りシフトパターン図である。
【図8】ゲート式セレクトボタン無しシフトパターン図である。
【図9】ゲート式セレクトボタン無しの他のシフトパターン図である。
【図10】ケーブルエンドを回り止めする他の構造例を示す側面図である。
【図11】同じく平面図である。
【図12】図10のC−C断面図である。
【図13】2軸方式のシフトレバー装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2、3において、1はSモード付きゲート式ATシフトレバー装置のベースプレートであり、2はこのベースプレート1に組み付けられるケーブルブラケットである。ケーブルブラケット2の内部には、シフトレバー装置と図示しない変速機とを連結するシフトケーブル3が配置されている。ベースプレート1の上部に形成された球面座4には、シフトレバー5の中間部に形成された大球部6が保持され、シフトレバー5を揺動自在に支持してシフトレバー5がシフト方向及びセレクト方向に枢動できるようになっている。
【0013】
シフトレバー5の大球部6には、先端に小球部7を形成したコントロールレバー8が、揺動中心からシフト方向に張出されている。コントロールレバー8はケーブルブラケット2の方向に延びている。なおこのシフトレバー5は、図7以下に示されるようなゲートパターンに応じて、シフト方向及びセレクト方向に操作されるものであり、何れのパターンにおいても、シフトレバー5を通常の自動変速モードからSモード(手動変速モード)のポジションに入れるときには、セレクト操作が行われる。
【0014】
コントロールレバー8の先端の小球部7は図5に示されるように3つの部分からなる。中心にはコントロールレバー8の先端に固定された円板部7aが設けられ、その両側には、2つの球体切断片7b、7cが配置されている。これらの2つの球体切断片7b、7cは中央部が相互に連結されている。またこの円板部7aにはコントロールレバー8に対して垂直方向の長溝7dが形成されており、2つの球体切断片7b、7cの中央の連結部がこの長溝7dを貫通している。これらの円板部7aとその両側の2つの球体切断片7b、7cとは組み合わされて常時は完全な球体を構成している。しかし図1、4、5に示すように2つの球体切断片7b、7cは、円板部7aの長溝7dに沿ってスライド可能となっている。従って、2つの球体切断片7b、7cに対してコントロールレバー8の先端の円板部7aを相対的に移動させることができる構造である。
【0015】
前記したシフトケーブル3の先端のケーブルエンド10には、図4に示されるように、ブッシュ9の外周面に形成された係合突起9cと係合する係止溝10aが形成されてブッシュ9を回転不能に固定している。そして、ベースプレート1の内側面には図2に示されるように、ケーブルエンド10の外側面に形成された平坦面10bと当接される凸部1aが形成されてケーブルエンド10を回り止めしている。またブッシュ9には小球部7を嵌合させる球状凹部9aが形成され、コントロールレバー8とシフトケーブル3とを連結している。このためシフトレバー5を通常の自動変速モードにおいてシフト方向に動かすとコントロールレバー8も大球部6を中心として動き、シフトケーブル3をケーブルブラケット2の内部において進退させてシフトポジションを変速機に伝達することができる。
【0016】
本発明ではこのブッシュ9にスリット9bが形成されている。このスリット9bはシフトレバー5がセレクト操作されてSモードにあるときの円板部7aの側面方向と同一の方向に形成されている。またこのスリット9bの幅は円板部7aの幅よりも僅かに広く、シフトレバー5がセレクト操作されてSモードにあるときには、スリット9bの内部で円板部7aがスライドできるようになっている。しかしシフトレバー5がセレクト前の通常の自動変速モードにあるときには、セレクト角度分だけ円板部7aの方向(角度)が傾斜するため、スリット9bの方向と円板部7aの方向とが一致しない。
【0017】
この様子は図6に示される通りであり、図6に示すゲートパターンの場合には、各ポジションからのセレクト角度a,b,cに対応して円板部7aの角度もそれぞれ同一角度ずつ変化する。そしてSモードのポジションにおいてのみスリット9bの方向と円板部7aの方向とが一致するようになっている。このため、Sモードにおいてシフトレバー5をシフト操作しても、コントロールレバー8の先端の円板部7aはブッシュ9のスリット9bの内部をスライドするだけであり、ケーブルエンド10を動かさない。このためシフトケーブル3は動かず、シフトレバー5の動きが変速機に伝達されることはない。しかしSモード以外のポジションではコントロールレバー8の先端の円板部7aの方向とブッシュ9のスリット9bの方向とが一致しないので、シフトレバー5をシフト操作するとケーブルエンド10が動き、シフトケーブル3も動き、シフトレバー5の動きが変速機に伝達される。
【0018】
本願発明は上記のように、ケーブルエンド10のブッシュ9のスリット9bと、コントロールレバー8の先端の円板部7aとの角度の変化を利用したものである。このため、シフトレバー装置のベースプレート1に対してブッシュ9が固定されたケーブルエンド10がねじれないように維持することが好ましい。そこで上記の実施形態では図3に示すように、ブッシュ9の基部ガイド片9dをコントロールレバー8の突部8aに回転及びスライド自在に支持させ、コントロールレバー8に対してケーブルエンド10とブッシュ9とが揺動することを防止し、シフト操作が円滑に行われるようにしている。なお、ブッシュ9の代わりにケーブルエンド10の基部をコントロールレバー8の突部8aに回転及びスライド自在に支持させてもよいことはいうまでもない。
【0019】
また図10、11、12に示すように、ケーブルエンド10の基部を角形にしてその両側面をケーブルブラケット2から突出させたガイド片11で挟み、コントロールレバー8に対してケーブルエンド10とブッシュ9とが揺動することを防止し、シフト操作が円滑に行われるようにしている。
【0020】
なお、実施形態ではシフトレバー5は大球部6を介して支持されているが、図13に示すように、シフトレバー5をセレクト回転軸5aとシフト回転軸5bにより支持する2軸方式としてもよい。
【0021】
以上に説明したように、本発明によればシフトレバー5とコントロールレバー8とを一体化させながら、シフトレバー5がSモードにあるときには、そのシフト方向の動きがシフトケーブル3に伝わらないようにすることができ、装置の簡素化による小型化、軽量化、コストダウンなどを達成することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 ベースプレート
1a 凸部
2 ケーブルブラケット
3 シフトケーブル
4 球面座
5 シフトレバー
5a セレクト回転軸
5b シフト回転軸
6 大球部
7 小球部
7a 円板部
7b 球体切断片
7c 球体切断片
7d 長溝
8 コントロールレバー
8a 凸部
9 ブッシュ
9a 球状凹部
9b スリット
9c 係合突起
9d 基部ガイド片
10 ケーブルエンド
10a 係止溝
10b 平坦面
11 ガイド片
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトレバーをSモード(手動変速モード)のポジションにセレクト操作したうえでシフト方向の手動操作を行うことにより、シフトアップあるいはシフトダウン操作を行うことができるSモード付きゲート式ATシフトレバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のようなSモード付きゲート式ATシフトレバー装置は、通常の自動変速モードにおいてはシフトレバーのシフト方向の動きをそのままシフトケーブルによって変速機に伝えている。しかしSモードに切り換えた状態ではシフトレバーのシフト方向の操作は電気的スイッチによって検出され、変速機に対して電気信号として入力される。このためにシフトレバーがSモードにあるときには、そのシフト方向の動きがシフトケーブルに伝わらないようにすることが求められる。
【0003】
そこで従来は例えば特許文献1に示されるように、シフトレバーとは別にシフトケーブル操作用のコントロールレバーを設け、通常の自動変速モードにおいてはシフトレバーの突起がコントロールレバーの凹部に嵌合してコントロールレバーをシフトレバーと一体化するが、シフトレバーをSモードにセレクト操作すると両者間の係合がはずれ、シフトレバーの動きがコントロールレバーおよびシフトケーブルに伝わらないようにした構造が採用されている。
【0004】
しかし、シフトレバーとは別にコントロールレバーを設ける必要があるために構造が複雑で設置スペースが大きくなるうえ、部品数が多くなって製造コストが増し、重量増加の原因となるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−206017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、シフトレバーとは別にコントロールレバーを設ける必要がなく構造が簡単であり、しかもシフトレバーがSモードにあるときには、そのシフト方向の動きがシフトケーブルに伝わらないようにしたSモード付きゲート式ATシフトレバー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明のSモード付きゲート式ATシフトレバー装置は、シフトレバーの揺動中心からシフト方向に張出されたコントロールレバーの先端に小球部を形成するとともに、シフトケーブルのケーブルエンドに回転不能に取付けたブッシュの球状凹部に前記小球部を嵌合させたSモード付きゲート式ATシフトレバー装置であって、前記小球部をコントロールレバーに固定された円板部と、この円板部の両側に配置され円板部に形成された長溝に沿ってスライド可能な2つの球体切断片とからなるものとし、また前記ブッシュには、シフトレバーがSモードにあるときの前記円板部と同一の方向にスリットを形成し、Sモードにおけるシフト方向操作時にはケーブルエンドを動かすことなく前記円板部をこのスリット内部でスライド可能としたことを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2のように、シフトケーブルのケーブルエンドが、シフトレバー装置本体に対して回転不能に保持されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のSモード付きゲート式ATシフトレバー装置は、シフトケーブルのケーブルエンドに回転しないように取付けたブッシュに、シフトレバーがSモードにあるときのコントロールレバーの円板部と同一方向にスリットを形成したので、Sモードにおいてシフト方向操作を行っても、スリット内部で円板部がスライドするだけで、ケーブルエンドが動かされることはない。しかしシフトレバーが通常の自動変速モードにあるときには、コントロールレバーの円板部の角度とスリットの角度が一致しなくなるため、シフト方向操作を行うとそれに連れてシフトケーブルのケーブルエンドが動かされる。このように本発明によれば、従来のような独立したコントロールレバーを必要とせずに、シフトレバーがSモードにあるときには、そのシフト方向の動きがシフトケーブルに伝わらないという機能を達成することができる。
【0010】
なお請求項2のようにシフトケーブルのケーブルエンドをシフトレバー装置本体に対して回転不能に保持させておけば、シフトケーブルのねじれによってスリットの方向が変化してしまうおそれを完全になくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を示す側面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【図5】要部を分解して示す斜視図である。
【図6】各レンジにおけるブッシュと円板部との配置を示す説明図である。
【図7】ストレート式セレクトボタン有りシフトパターン図である。
【図8】ゲート式セレクトボタン無しシフトパターン図である。
【図9】ゲート式セレクトボタン無しの他のシフトパターン図である。
【図10】ケーブルエンドを回り止めする他の構造例を示す側面図である。
【図11】同じく平面図である。
【図12】図10のC−C断面図である。
【図13】2軸方式のシフトレバー装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2、3において、1はSモード付きゲート式ATシフトレバー装置のベースプレートであり、2はこのベースプレート1に組み付けられるケーブルブラケットである。ケーブルブラケット2の内部には、シフトレバー装置と図示しない変速機とを連結するシフトケーブル3が配置されている。ベースプレート1の上部に形成された球面座4には、シフトレバー5の中間部に形成された大球部6が保持され、シフトレバー5を揺動自在に支持してシフトレバー5がシフト方向及びセレクト方向に枢動できるようになっている。
【0013】
シフトレバー5の大球部6には、先端に小球部7を形成したコントロールレバー8が、揺動中心からシフト方向に張出されている。コントロールレバー8はケーブルブラケット2の方向に延びている。なおこのシフトレバー5は、図7以下に示されるようなゲートパターンに応じて、シフト方向及びセレクト方向に操作されるものであり、何れのパターンにおいても、シフトレバー5を通常の自動変速モードからSモード(手動変速モード)のポジションに入れるときには、セレクト操作が行われる。
【0014】
コントロールレバー8の先端の小球部7は図5に示されるように3つの部分からなる。中心にはコントロールレバー8の先端に固定された円板部7aが設けられ、その両側には、2つの球体切断片7b、7cが配置されている。これらの2つの球体切断片7b、7cは中央部が相互に連結されている。またこの円板部7aにはコントロールレバー8に対して垂直方向の長溝7dが形成されており、2つの球体切断片7b、7cの中央の連結部がこの長溝7dを貫通している。これらの円板部7aとその両側の2つの球体切断片7b、7cとは組み合わされて常時は完全な球体を構成している。しかし図1、4、5に示すように2つの球体切断片7b、7cは、円板部7aの長溝7dに沿ってスライド可能となっている。従って、2つの球体切断片7b、7cに対してコントロールレバー8の先端の円板部7aを相対的に移動させることができる構造である。
【0015】
前記したシフトケーブル3の先端のケーブルエンド10には、図4に示されるように、ブッシュ9の外周面に形成された係合突起9cと係合する係止溝10aが形成されてブッシュ9を回転不能に固定している。そして、ベースプレート1の内側面には図2に示されるように、ケーブルエンド10の外側面に形成された平坦面10bと当接される凸部1aが形成されてケーブルエンド10を回り止めしている。またブッシュ9には小球部7を嵌合させる球状凹部9aが形成され、コントロールレバー8とシフトケーブル3とを連結している。このためシフトレバー5を通常の自動変速モードにおいてシフト方向に動かすとコントロールレバー8も大球部6を中心として動き、シフトケーブル3をケーブルブラケット2の内部において進退させてシフトポジションを変速機に伝達することができる。
【0016】
本発明ではこのブッシュ9にスリット9bが形成されている。このスリット9bはシフトレバー5がセレクト操作されてSモードにあるときの円板部7aの側面方向と同一の方向に形成されている。またこのスリット9bの幅は円板部7aの幅よりも僅かに広く、シフトレバー5がセレクト操作されてSモードにあるときには、スリット9bの内部で円板部7aがスライドできるようになっている。しかしシフトレバー5がセレクト前の通常の自動変速モードにあるときには、セレクト角度分だけ円板部7aの方向(角度)が傾斜するため、スリット9bの方向と円板部7aの方向とが一致しない。
【0017】
この様子は図6に示される通りであり、図6に示すゲートパターンの場合には、各ポジションからのセレクト角度a,b,cに対応して円板部7aの角度もそれぞれ同一角度ずつ変化する。そしてSモードのポジションにおいてのみスリット9bの方向と円板部7aの方向とが一致するようになっている。このため、Sモードにおいてシフトレバー5をシフト操作しても、コントロールレバー8の先端の円板部7aはブッシュ9のスリット9bの内部をスライドするだけであり、ケーブルエンド10を動かさない。このためシフトケーブル3は動かず、シフトレバー5の動きが変速機に伝達されることはない。しかしSモード以外のポジションではコントロールレバー8の先端の円板部7aの方向とブッシュ9のスリット9bの方向とが一致しないので、シフトレバー5をシフト操作するとケーブルエンド10が動き、シフトケーブル3も動き、シフトレバー5の動きが変速機に伝達される。
【0018】
本願発明は上記のように、ケーブルエンド10のブッシュ9のスリット9bと、コントロールレバー8の先端の円板部7aとの角度の変化を利用したものである。このため、シフトレバー装置のベースプレート1に対してブッシュ9が固定されたケーブルエンド10がねじれないように維持することが好ましい。そこで上記の実施形態では図3に示すように、ブッシュ9の基部ガイド片9dをコントロールレバー8の突部8aに回転及びスライド自在に支持させ、コントロールレバー8に対してケーブルエンド10とブッシュ9とが揺動することを防止し、シフト操作が円滑に行われるようにしている。なお、ブッシュ9の代わりにケーブルエンド10の基部をコントロールレバー8の突部8aに回転及びスライド自在に支持させてもよいことはいうまでもない。
【0019】
また図10、11、12に示すように、ケーブルエンド10の基部を角形にしてその両側面をケーブルブラケット2から突出させたガイド片11で挟み、コントロールレバー8に対してケーブルエンド10とブッシュ9とが揺動することを防止し、シフト操作が円滑に行われるようにしている。
【0020】
なお、実施形態ではシフトレバー5は大球部6を介して支持されているが、図13に示すように、シフトレバー5をセレクト回転軸5aとシフト回転軸5bにより支持する2軸方式としてもよい。
【0021】
以上に説明したように、本発明によればシフトレバー5とコントロールレバー8とを一体化させながら、シフトレバー5がSモードにあるときには、そのシフト方向の動きがシフトケーブル3に伝わらないようにすることができ、装置の簡素化による小型化、軽量化、コストダウンなどを達成することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 ベースプレート
1a 凸部
2 ケーブルブラケット
3 シフトケーブル
4 球面座
5 シフトレバー
5a セレクト回転軸
5b シフト回転軸
6 大球部
7 小球部
7a 円板部
7b 球体切断片
7c 球体切断片
7d 長溝
8 コントロールレバー
8a 凸部
9 ブッシュ
9a 球状凹部
9b スリット
9c 係合突起
9d 基部ガイド片
10 ケーブルエンド
10a 係止溝
10b 平坦面
11 ガイド片
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーの揺動中心からシフト方向に張出されたコントロールレバーの先端に小球部を形成するとともに、シフトケーブルのケーブルエンドに回転不能に取付けたブッシュの球状凹部に前記小球部を嵌合させたSモード付きゲート式ATシフトレバー装置であって、前記小球部をコントロールレバーに固定された円板部と、この円板部の両側に配置され円板部に形成された長溝に沿ってスライド可能な2つの球体切断片とからなるものとし、また前記ブッシュには、シフトレバーがSモードにあるときの前記円板部と同一の方向にスリットを形成し、Sモードにおけるシフト方向操作時にはケーブルエンドを動かすことなく前記円板部をこのスリット内部でスライド可能としたことを特徴とするSモード付きゲート式ATシフトレバー装置。
【請求項2】
シフトケーブルのケーブルエンドが、シフトレバー装置本体に対して回転不能に保持されたものであることを特徴とする請求項1記載のSモード付きゲート式ATシフトレバー装置。
【請求項1】
シフトレバーの揺動中心からシフト方向に張出されたコントロールレバーの先端に小球部を形成するとともに、シフトケーブルのケーブルエンドに回転不能に取付けたブッシュの球状凹部に前記小球部を嵌合させたSモード付きゲート式ATシフトレバー装置であって、前記小球部をコントロールレバーに固定された円板部と、この円板部の両側に配置され円板部に形成された長溝に沿ってスライド可能な2つの球体切断片とからなるものとし、また前記ブッシュには、シフトレバーがSモードにあるときの前記円板部と同一の方向にスリットを形成し、Sモードにおけるシフト方向操作時にはケーブルエンドを動かすことなく前記円板部をこのスリット内部でスライド可能としたことを特徴とするSモード付きゲート式ATシフトレバー装置。
【請求項2】
シフトケーブルのケーブルエンドが、シフトレバー装置本体に対して回転不能に保持されたものであることを特徴とする請求項1記載のSモード付きゲート式ATシフトレバー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−46213(P2011−46213A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193879(P2009−193879)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000243700)万能工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000243700)万能工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
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