説明

S1P−1受容体アゴニスト

本発明は、化合物式(I)、それらの調製物、ならびに自己免疫障害、臓器移植片拒絶反応、活性化免疫系関連障害、およびリンパ球減少またはS1P受容体により調節される他の障害の治療のための医薬的に活性な免疫抑制剤としてのそれらの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2006年8月24日に出願された米国仮出願第60/823,403号および2006年10月3日に出願された米国仮出願第60/827,948号に関連すると共にそれらに対する優先権を主張する。これらの全内容は出典明示により本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)受容体1〜5は、7回膜貫通Gタンパク質共役受容体のファミリーを構成する。S1P1からS1P5と呼ばれるこれらの受容体は、スフィンゴシン−1−ホスフェートによる結合を介して活性化され、このスフィンゴシン−1−ホスフェートは、スフィンゴシンのスフィンゴシンキナーゼ触媒リン酸化反応により生成される。S1P受容体は、様々な細胞過程(細胞増殖および分化、細胞生存、細胞浸潤、リンパ球輸送、および細胞移動を含む)に関与する細胞表面受容体である。スフィンゴシン−1−ホスフェートは、血漿および様々な他の組織に見い出され、オートクラインおよびパラクリン効果(成長因子の分泌を調節することを含む)を発揮する。
【0003】
動物へのS1Pの投与は、リンパ球枯渇を引き起こすことなく、リンパ節およびパイエル板中へのリンパ球の壊死単分離をもたらす。この活性(移植片拒絶反応、自己免疫疾患、ならびにリンパ球輸送によって調節される他の障害を含む不適切な免疫応答に関連する疾患または状態を治療するのに有用である可能性がある)は、S1P1受容体の活性化を介して進行すると考えられる。in vivoでのS1Pの投与は、低血圧および除脈を引き起こすことが示されており、これは、1つ以上の他のS1P受容体、すなわちS1P2からS1P5による信号伝達のためであると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、S1P−1受容体の強力かつ選択的アゴニストである化合物に関する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの、かつ他の要求は、式I:
【化1】


[式中:
は、水素、ハロゲン、シアノ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、−O−アルキル、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、−S−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−COH、アルキレン−COアルキル、アルキルSO、アルキレンスルホニル、アルキレン−CO−アミノ、アルキレン−CO−アルキルアミノ、アルキレン−CO−ジアルキルアミノ、アルキレン−NH−COH、アルキレン−NH−COアルキル−COアルキル、−OH、−C(O)−アルキル、−C(O)O−アルキル、−CONH、−CO−アルキルアミノ、−CO−ジアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり、これらはいずれも、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく、置換基それ自体が、炭素上でハロで置換されていてもよく;
Aは、(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、または(C〜C20)アルキニレンであり、これらのそれぞれは、炭素上でOH、COH、COアルキル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、−O−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−OH、またはアルキレン−COHから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
は、結合であるか、またはCH、O、−CHO−、S、−S(O)、−S(O)、−C(O)−、−C(O)O−、またはNRであり、ここで、Rは、Hまたは(C〜C)アルキルであり;
R’およびR”は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素上でハロゲンで適宜置換されたアルキル、アルキルであるか、あるいはこれらが結合している炭素と一緒になって、C=Oまたは3、4、5、もしくは6員の環(O NH、N−アルキル、SO、またはSOから選択される1または2個のヘテロ原子を含んでもよい)を形成し、これらのいずれも、炭素上でアルキルまたはハロゲンで適宜置換されており;
2aは、ハロゲン、シアノ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、−O−アルキル、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、アラルコキシ、ヘテロアラルコキシ、−S−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−COH、アルキレン−COアルキル、アルキルSO、アルキレンスルホニル、アルキレン−CO−アミノ、アルキレン−CO−アルキルアミノ、アルキレン−CO−ジアルキルアミノ、アルキレン−NH−COH、アルキレン−NH−COアルキル−COアルキル、−OH、−C(O)−アルキル、−C(O)O−アルキル、−CONH、−CO−アルキルアミノ、−CO−ジアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノであり、これらのいずれも、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
2bは、水素、ハロゲン、シアノ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、−O−アルキル、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、アラルコキシ、ヘテロアラルコキシ、−S−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−COH、アルキレン−COアルキル、アルキルSO、アルキレンスルホニル、アルキレン−CO−アミノ、アルキレン−CO−アルキルアミノ、アルキレン−CO−ジアルキルアミノ、アルキレン−NH−COH、アルキレン−NH−COアルキル−COアルキル、−OH、−C(O)−アルキル、−C(O)O−アルキル、−CONH、−CO−アルキルアミノ、−CO−ジアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノであり、これらのいずれも、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
は、水素、アルキルまたはシクロアルキルであり、これらのいずれかは、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
【0006】
【化2】

は、フェニルまたはピリジルであり;
Yは、C〜Cアルキレンであり、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されており;
は水素であり;
およびRは、水素、アルキル、アルキレン−OH、アリール、アルキレン−O−アルキル、−COH、CO−アルキル、アルキレン−OC(O)アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロ、−C(O)−アルキル、−C(O)−アリール、C(O)−アラルキル、−C(O)−Oアルキル、−C(O)−Oアリール、−C(O)−Oアラルキル、アルキレン−アミノ、アルキレン−アルキルアミノ、およびアルキレン−ジアルキルアミノ(これらのいずれも、炭素上でハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、COH、COアルキルまたはアルコキシで適宜置換されていてもよい)からなる群からそれぞれ独立に選択されるか;または
およびRは、これらが結合している窒素と一緒になって、3、4、5、または6員の飽和または不飽和の環(O、S、NH、またはN−アルキルから選択される1または2個のさらなるヘテロ原子を含んでもよい)を形成してもよく、炭素上でハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、またはアルコキシで適宜置換されており;RおよびRは、5,6,7、または8員の飽和または不飽和の環(O、S、NH、またはN−アルキルから選択される1または2個のさらなるヘテロ原子を含んでもよい)を形成してもよく、炭素上でハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、またはアルコキシで適宜置換されており;
は、水素、アルキル、アリールまたはアラルキルからなる群から選択される]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩を対象とする本発明によって満たされる。
【0007】
本発明はまた、
【0008】
【化3】


である化合物ならびにその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、またはホスフェート前駆体類似体を提供する。
【0009】
本発明はまた、自己免疫障害を治療する方法であって、本発明の化合物の医薬上許容される量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0010】
本発明はまた、移植片拒絶反応を治療する方法であって、本発明の化合物の医薬上許容される量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0011】
本発明はまた、医薬上許容される担体と混合された本発明の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0012】
本発明はまた、本明細書において与えられるような本発明の化合物を製造する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
別に特記されない限り、以下の定義が用いられる。
【0014】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、またはヨード(I)を意味する。
【0015】
単独でまたは接尾辞もしくは接頭辞として用いられる「炭化水素」という用語は、14個までの炭素原子を含み、炭素原子および水素原子のみを含む任意の構造をいう。
【0016】
単独でまたは接尾辞もしくは接頭辞として用いられる「炭化水素基」または「ヒドロカルビル」という用語は、炭化水素から1個以上の水素を除去した結果として生じる任意の構造をいう。
【0017】
単独でまたは接尾辞もしくは接頭辞として用いられる「アルキル」という用語は、1から約12個の炭素原子を含む一価の直鎖または分枝鎖の炭化水素基をいう。
【0018】
単独でまたは接尾辞もしくは接頭辞として用いられる「アルキレン」という用語は、2つの構造を一緒に連結するのに役立つ、1から約12個の炭素原子を含む二価の直鎖または分枝鎖の炭化水素基をいう。
【0019】
単独でまたは接尾辞もしくは接頭辞として用いられる「シクロアルキル」という用語は、少なくとも3から約12個までの炭素原子を含む飽和または部分的に不飽和の一価の環含有炭化水素基をいう。
【0020】
単独でまたは接尾辞もしくは接頭辞として用いられる「アリール」という用語は、芳香族特性を有する1つ以上のポリ不飽和炭素環を有し、5から約14個までの炭素原子を含む一価の炭化水素基をいう。
【0021】
単独でまたは接尾辞もしくは接頭辞として用いられる「ヘテロ環」という用語は、環構造の部分としてN、OおよびSから独立に選択される1個以上の多価ヘテロ原子を有し、環(複数可)中に少なくとも3ないし約20個までの原子を含む環含有構造または分子をいう。ヘテロ環は、飽和であっても、1つ以上の二重結合を含み、不飽和であってもよく、ヘテロ環は、2つ以上の環を含んでもよい。ヘテロ環が2つ以上の環を含む場合、環は縮合していてもしていなくてもよい。縮合環は一般に、少なくとも2つの環がそれらの間に2個の原子を共有しているものをいう。ヘテロ環は、芳香族特性を有していてもよいし、有していなくもよい。
【0022】
単独でまたは接尾辞もしくは接頭辞として用いられる「ヘテロ環式基」、「ヘテロ環式部分」、「ヘテロ環式」、または「ヘテロシクロ」という用語は、ヘテロ環から1個以上の水素を除去することによってヘテロ環から誘導される基をいう。
【0023】
単独でまたは接尾辞もしくは接頭辞として用いられる「ヘテロシクリル」という用語は、ヘテロ環から1個の水素を除去することによってヘテロ環から誘導される一価の基をいう。
【0024】
単独でまたは接尾辞もしくは接頭辞として用いられる「ヘテロアリール」という用語は、芳香族特性を有するヘテロシクリルをいう。
【0025】
ヘテロ環には、例えば、単環式ヘテロ環、例えば、アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ジオキソラン、スルホラン、2,3−ジヒドロフラン、2,5−ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、チオファン、ピペリジン、1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ピラン、チオピラン、2,3−ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジヒドロピリジン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、ジオキサン、ホモピペリジン、2,3,4,7−テトラヒドロ−1H−アゼピンホモピペラジン、1,3−ジオキセパン、4,7−ジヒドロ−1,3−ジオキセピン、およびヘキサメチレンオキシドが含まれる。
【0026】
さらに、ヘテロ環には、芳香族ヘテロ環(ヘテロアリール基)、例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チオフェン、フラン、フラザン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、1,2,3−トリアゾール、テトラゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−トリアゾール、1,3,4−チアジアゾール、および1,3,4−オキサジアゾールが含まれる。
【0027】
さらに、ヘテロ環には、多環式ヘテロ環、例えば、インドール、インドリン、イソインドリン、キノリン、テトラヒドロキノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、1,4−ベンゾジオキサン、クマリン、ジヒドロクマリン、ベンゾフラン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、イソベンゾフラン、クロメン、クロマン、イソクロマン、キサンテン、フェノキサチイン、チアントレン、インドリジン、イソインドール、インダゾール、プリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、フェナントリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、1,2−ベンズイソキサゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズトリアゾール、チオキサンチン、カルバゾール、カルボリン、アクリジン、ピロリジジン、およびキノリジジンが包含される。
【0028】
上記多環式ヘテロ環に加えて、ヘテロ環には、2つ以上の環の間の環縮合に両環に共通の2つ以上の結合および両環に共通な3個以上の原子が含まれる多環式ヘテロ環が含まれる。このような架橋ヘテロ環の例には、キヌクリジン、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタンおよび7−オキサビシクロ[2,2.1]ヘプタンが含まれる。
【0029】
ヘテロシクリルには、例えば、単環式ヘテロシクリル、例えば、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ジオキソラニル、スルホラニル、2,3−ジヒドロフラニル、2,5−ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、チオファニル、ピペリジニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、チオピラニル、2,3−ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、1,4−ジヒドロピリジニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサニル、ジオキサニル、ホモピペリジニル、2,3,4,7−テトラヒドロ−1H−アゼピニル、ホモピペラジニル、1,3−ジオキセパニル、4,7−ジヒドロ−1,3−ジオキセピニル、およびヘキサメチレンオキシジルが含まれる。
【0030】
さらに、ヘテロシクリルには、芳香族ヘテロシクリルまたはヘテロアリール、例えば、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル、フリル、フラザニル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、1,2,3−チアゾリル、テトラゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−トリアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、および1,3,4−オキサジアゾリルが含まれる。
【0031】
さらに、ヘテロシクリルには、多環式ヘテロシクリル(芳香族または非芳香族の両方を含む)、例えば、インドリル、インドリニル、イソインドリニル、キノリニル、テトラヒドロキノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、1,4−ベンゾジオキサニル、クマリニル、ジヒドロクマリニル、ベンゾフラニル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、クロマニル、イソクロマニル、キサンテニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、インドリジニル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シノリニル、プテリジニル、フェナントリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、1,2−ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズトリアゾリル、チオキサンチニル、カルバゾリル、カルボリニル、アクリジニル、ピロリジジニル、およびキノリジジニルが包含される。
【0032】
上記多環式ヘテロシクリルに加えて、ヘテロシクリルには、2つ以上の環の間の環縮合に両環に共通な2つ以上の結合および両環に共通な3個以上の原子が含まれる多環式ヘテロシクリルが含まれる。このような架橋ヘテロシクリルの例には、キヌクリジニル、ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプチル;および7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプチルが含まれる。
【0033】
接頭辞として用いられる「6員」という用語は、6個の環原子を含む環を有する基をいう。
【0034】
接頭辞として用いられる「5員」という用語は、5個の環原子を含む環を有する基をいう。
【0035】
5員ヘテロアリール環は、1、2、または3個の環原子がN、OおよびSから独立に選択される5個の環原子をもった環を有するヘテロアリールである。例示的な5員環ヘテロアリールは、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、1,2,3−トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−トリアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、および1,3,4−オキサジアゾリルである。
【0036】
6員環ヘテロアリールは、1,2または3個の環原子がN、OおよびSから独立に選択される6個の環原子をもった環を有するヘテロアリールである。例示的な6員環ヘテロアリールは、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニルおよびピリダジニルである。
【0037】
「アラルキル」という用語は、アリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0038】
「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0039】
別に明記されない限り、接頭辞として用いられる場合、「置換された」という用語は、1個以上の水素が、1個以上のアルキル基、またはN、O、S、F、Cl、Br、I、およびPから選択される1個以上のヘテロ原子を含む1個以上の化学基で置き換えられている構造、分子または基をいう。1個以上のヘテロ原子を含む例示的な化学基には、ヘテロシクリル、−NO、−O−アルキル、ハロ、−CF、−COH、−COR、−NH、−SH、−NHR、−NR、−SR、−SOH、−SOR、−S(O)R、−CN、−OH、−C(O)NR、−NRC(O)R、オキソ(=O)、イミノ(=NR)、チオ(=S)、およびオキシイミノ(=N−OR)が含まれ、ここで、それぞれの「R」は上記で定義されたとおりのアルキルである。例えば、置換フェニルは、ニトロフェニル、ピリジルフェニル、メトキシフェニル、クロロフェニル、アミノフェニルなどをいうことがあり、ここで、ニトロ、ピリジル、メトキシ、クロロ、およびアミノ基は、フェニル環上の任意の好適な水素を置き換え得る。
【0040】
単独でまたは接尾辞または接頭辞として用いられる「アルコキシ」という用語は、一般的な−O−アルキルの基をいう。例示的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、イソブトキシ、シクロプロピルメトキシ、アリルオキシ、およびプロパルギルオキシが含まれる。
【0041】
単独でまたは接尾辞または接頭辞として用いられる「アミン」または「アミノ」という用語は、−NHを意味する。
【0042】
単独にまたは接尾辞または接頭辞として用いられる用語「アルキルアミノ」は−NH(アルキル)を意味する。単独でまたは接尾辞または接頭辞として用いられる「ジアルキルアミノ」という用語は、−NH(アルキル)を意味する。
【0043】
単独で、接尾辞または接頭辞として用いられる「アシル」は、−C(O)−Rを意味し、ここで、Rは、水素、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、またはアルコキシであり、これらのいずれも、上記に与えられた「置換された」の定義によって与えられるように置換されていてもよい。アシル基には、例えば、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、フェニルアセチル、カルボエトキシ、およびジメチルカルバモイルが含まれる。
【0044】
本発明における化合物の一部は、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何異性体を含む立体異性体として存在し得る。(R)、(S)、エピマー、ジアステレオマー、シス、トランス、シン(syn)、アンチ(anti)、溶媒和物(水和物を含む)、互変異性体、およびそれらの混合物を含むこれらの形態は全て、本発明の化合物に包含される。
【0045】
本発明はまた、本発明の化合物の塩および特に、医薬上許容される塩に関する。「医薬上許容される塩」は、親化合物の所望の生物活性を保有し、好ましくない毒物学的作用を全く与えない塩である。塩は、例えば、好適な酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など;酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、安息香酸、パモン酸、アルギニン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などとの塩でありうる。カチオン、例えば、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、銅、バリウム、ビスマス、カルシウムなど;または有機カチオン、例えば、テトラアルキルアンモニウムおよびトリアルキルアンモニウムのカチオンの塩も含まれる。上記塩の組合せも有用である。他の酸および/またはカチオンの塩、例えば、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、およびトリクロロ酢酸との塩も含まれる。本発明にはまた、本発明の化合物の異なる結晶形態、水和物、および溶媒和物も含まれる。
【0046】
発明化合物
ある実施形態において、本発明は、式I:
【0047】
【化4】


[式中:
は、水素、ハロゲン、シアノ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、−O−アルキル、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、−S−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−COH、アルキレン−COアルキル、アルキルSO、アルキレンスルホニル、アルキレン−CO−アミノ、アルキレン−CO−アルキルアミノ、アルキレン−CO−ジアルキルアミノ、アルキレン−NH−COH、アルキレン−NH−COアルキル−COアルキル、−OH、−C(O)−アルキル、−C(O)O−アルキル、−CONH、−CO−アルキルアミノ、−CO−ジアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり、これらのいずれも、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく、置換基それ自体が、炭素上でハロで置換されていてもよく;
Aは、(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、または(C〜C20)アルキニレンであり、これらのそれぞれは、炭素上でOH、COH、COアルキル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、−O−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−OH、またはアルキレン−COHから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
は、結合であるか、またはCH、O、−CHO−、S、−S(O)、−S(O)、−C(O)−、−C(O)O−、またはNRであり、ここで、Rは、Hまたは(C〜C)アルキルであり;
R’およびR”は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素上でハロゲンで適宜置換されたアルキル、アルキルであるか、あるいはこれらが結合している炭素と一緒になって、C=Oまたは3、4、5、もしくは6員の環(O NH、N−アルキル、SO、またはSOから選択される1または2個のヘテロ原子を含んでもよい)を形成し、これらのいずれも、炭素上でアルキルまたはハロゲンで適宜置換されており;
2aは、ハロゲン、シアノ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、−O−アルキル、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、アラルコキシ、ヘテロアラルコキシ、−S−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−COH、アルキレン−COアルキル、アルキルSO、アルキレンスルホニル、アルキレン−CO−アミノ、アルキレン−CO−アルキルアミノ、アルキレン−CO−ジアルキルアミノ、アルキレン−NH−COH、アルキレン−NH−COアルキル−COアルキル、−OH、−C(O)−アルキル、−C(O)O−アルキル、−CONH、−CO−アルキルアミノ、−CO−ジアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノであり、これらのいずれも、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
2bは、水素、ハロゲン、シアノ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、−O−アルキル、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、アラルコキシ、ヘテロアラルコキシ、−S−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−COH、アルキレン−COアルキル、アルキルSO、アルキレンスルホニル、アルキレン−CO−アミノ、アルキレン−CO−アルキルアミノ、アルキレン−CO−ジアルキルアミノ、アルキレン−NH−COH、アルキレン−NH−COアルキル−COアルキル、−OH、−C(O)−アルキル、−C(O)O−アルキル、−CONH、−CO−アルキルアミノ、−CO−ジアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノであり、これらのいずれも、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
は、水素、アルキルまたはシクロアルキルであり、これらのいずれかは、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
【0048】
【化5】


は、フェニルまたはピリジルであり;
Yは、C〜Cアルキレンであり、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されており;
は水素であり;
およびRは、水素、アルキル、アルキレン−OH、アリール、アルキレン−O−アルキル、−COH、CO−アルキル、アルキレン−OC(O)アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロ、−C(O)−アルキル、−C(O)−アリール、C(O)−アラルキル、−C(O)−Oアルキル、−C(O)−Oアリール、−C(O)−Oアラルキル、アルキレン−アミノ、アルキレン−アルキルアミノ、およびアルキレン−ジアルキルアミノ(これらのいずれも、炭素上でハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、COH、COアルキルまたはアルコキシで適宜置換されていてもよい)からなる群からそれぞれ独立に選択されるか;または
およびRは、これらが結合している窒素と一緒になって、3、4、5、または6員の飽和または不飽和の環(O、S、NH、またはN−アルキルから選択される1または2個のさらなるヘテロ原子を含んでもよい)を形成してもよく、炭素上でハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、またはアルコキシで適宜置換されており;RおよびRは、5,6,7、または8員の飽和または不飽和の環(O、S、NH、またはN−アルキルから選択される1または2個のさらなるヘテロ原子を含んでもよい)を形成してもよく、炭素上でハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、またはアルコキシで適宜置換されており;
は、水素、アルキル、アリールまたはアラルキルからなる群から選択される]
で示される化合物およびその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、またはホスフェート前駆体類似体を提供する。
【0049】
ある実施形態において、Rは水素である。他の実施形態において、Rはフェニルである。なお他の実施形態において、Rはピリジルである。さらなる実施形態において、Rはチオフェニルである。他の実施形態において、Rはシクロヘキシルである。さらに他の実施形態において、Rはシクロペンチルである。
【0050】
ある実施形態において、Aはn−オクチルである。他の実施形態において、Aはn−ヘプチルである。さらに他の実施形態において、Aはn−ヘキシルである。なお他の実施形態において、Aはn−ペンチルである。他の実施形態において、Aはn−ブチルである。
【0051】
ある実施形態において、XはOである。他の実施形態において、XはCHである。なお他の実施形態において、XはC=Oである。他の実施形態において、XはCHOであり、ここで、酸素または炭素のいずれかは
【0052】
【化6】


に結合していてもよい。
【0053】
ある実施形態において、R’は水素である。他の実施形態において、R’はメチルである。ある実施形態において、R”は水素である。他の実施形態において、R”はメチルである。
【0054】
ある実施形態において、それらが結合している炭素と一緒になったR’およびR”はC=Oであり、但し、Xまたは該炭素と一緒になったR’およびR”、の一方のみがC=Oを形成してもよいことを条件とする。
【0055】
本発明の化合物には、選択性強化部分であるR2aが含まれる。「選択性強化部分(SEM)」という用語は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、本出願の譲受人に譲渡されている2006年2月6日に出願された米国出願第11/349069号(米国公開第20060223866号として公開)に定義されている。この用語は、その部分(単数)または部分(複数)を含まない化合物と比べて、それらが結合している化合物のS1P1受容体に対する選択性の強化を与える1つ以上の部分をいう。SEMは、例えば、S1P2からS1P5受容体と比べて、S1P1受容体に対してそれが結合している化合物に選択性を与える。SEMにより化合物に与えられるこの強化は、例えば、S1P1受容体および1種以上の他のS1P受容体に対する化合物の結合特異性を決定することによって測定することができ、ここで、SEMにより化合物に与えられる強化は効力増加型であり得る。本出願のSEMは、1つの実施形態において、R2aについてのように定義される。
【0056】
より具体的には、ある実施形態において、SEMは、CF、CFCF、CFCFCF、CFHCF、CHCF、CHCHCF、CHCl、またはCHClなどのハロ置換アルキル基である。
【0057】
ある種の実施形態において、SEMは、選択性強化配向(SEO)を保有し得る。「選択性強化配向」または「SEO」という用語は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、本出願の譲受人に譲渡されている2006年2月6日に出願された米国出願第11/349069号(米国公開第20060223866号として公開)に定義されている。本明細書において用いられるように、この用語は、単独でまたは互いに組み合わせてのいずれかで、環上のSEMならびにさらなる置換基の配向に基づく化合物の相対的な選択性強化をいう。特に、SEOは、SEMが結合している環上のSEMの配向から生じ得、同じ環に結合した他の任意の環および/または部分に関連している。1つの実施形態において、
【0058】
【化7】


上のSEMは、式IのXに関してオルト位にある。もう1つの具体的な実施形態において、SEMはXに関してメタ位にある。
【0059】
したがって、ある実施形態において、R2aはトリフルオロメチルである。他の実施形態において、Rはフルオロである。なお他の実施形態において、Rはクロロである。さらなる実施形態において、Rはブロモである。他の実施形態において、Rはシアノである。さらに他の実施形態において、Rはメチルである。
【0060】
ある実施形態において、Rは水素である。他の実施形態において、Rはアルキルである。
【0061】
ある実施形態において、Rは水素である。
【0062】
ある実施形態において、RおよびRは、それぞれ独立に、水素である。
【0063】
ある実施形態において、RはHである。他の実施形態において、Rはメチルである。なお他の実施形態において、Rはエチルである。他の実施形態において、Rはベンジルである。
【0064】
ある実施形態において、
【0065】
【化8】


は、フェニルである。他の実施形態において、
【0066】
【化9】


は、ピリジルである。
【0067】
ある実施形態において、YはCHである。
【0068】
ある実施形態において、本発明の化合物は、
が水素、アリール、シクロアルキル、またはヘテロアリールであり;
が水素であり;
およびRが、それぞれ独立に、水素もしくはアルキル、またはアルキレン−OHである、化合物である。
【0069】
他の実施形態において、本発明の化合物は、
が水素またはアリールであり;
が水素であり;
およびRが、それぞれ独立に、水素もしくはアルキル、またはアルキレン−OHであり;
が水素である、化合物である。
【0070】
さらなる実施形態において、本発明の化合物は、
【0071】
【化10】


が、
【化11】


であり;
【0072】
がフェニルであり;
Aが(C〜C10)アルキルであり;
R’およびR”が水素であり;
がCHまたはOであり;
が、水素またはアルキルであり;
YがCHであり;
が水素であり;
およびRが、それぞれ独立に、水素、アルキルである、化合物である。
【0073】
ある実施形態において、本発明の化合物には、以下の表:
【0074】
【化12】


の化合物ならびにその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、またはホスフェート前駆体類似体が含まれる。
【0075】
発明化合物の生物活性
リンパ球減少アッセイ
本明細書において記載される化合物の数種は、マウスにおいてリンパ球減少を誘導する能力について評価した。雄性のC57B1/6マウスを3つの群に分けた。対照群に3%BSAビヒクルのみを与えた。他の群に、ビヒクル中の試験化合物のいずれかの特定用量の単回投与を経口(PO)および静脈内(IV)投与で与えた。6時間後、マウスをイソフルランで麻酔し、眼窩後洞から約250μLの血液を取り出し、EDTAマイクロテイナー(microtainer)に集め、抗凝血薬と混合し、全血液計算(CBC)分析までチルトテーブルに置いた。これらの化合物の経口投与(10mg/Kg)はビヒクルに対し増加したリンパ球減少を誘導した。
【0076】
S1P1受容体またはS1P3受容体に対する結合
ある種の実施形態において、本発明の化合物は、1種以上の他のS1P受容体と比較するとS1P1受容体に対して選択的である。例えば、一組の化合物には、S1P3受容体と比べてS1P1受容体に対して選択的である化合物が含まれる。S1P1受容体に対して選択的である化合物は、S1P1受容体のアゴニスト、著しくより弱い1種以上の他の受容体のアゴニストおよび/または1種以上の他の受容体のアンタゴニストであり得る。第2の受容体に対する化合物のEC50が、S1P1受容体に対するEC50より少なくとも2倍大きい場合、該化合物は第2の受容体と比べてS1P1受容体に対して「選択的」である。化合物のEC50は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第03/061567号に記載されるように、35S−GTPγS結合アッセイを用いて決定される。さらにまたは他に、第2の受容体に対する化合物のIC50が、S1P1受容体に対するIC50より少なくとも2倍大きい場合、該化合物は、第2の受容体と比べてS1P1受容体に対して「選択的」である。化合物のIC50は、その全内容がこの参照により本明細書に組み込まれる、Davis,M.Dら、Sphingosine 1−Phosphate Analogs as Receptor Antagonists.J.Biol.Chem.(2005年)280:9833〜9841頁に記載されるように、[33P]スフィンゴシン1−ホスフェート結合アッセイを用いて決定される。
【0077】
本明細書において用いられるような「アゴニスト」または「S1P1受容体アゴニスト」という用語には、S1P1受容体に結合する、および/またはそれを作動させる、本明細書に記載される化合物が含まれる。1つの実施形態において、S1P受容体アゴニストは、約100nM〜0.25nM、約50nM〜0.25nM、約25nM〜0.5nM、約100nM以下、約75nM以下、約50nM以下、約40nM以下、約30nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約5nM以下、約1nM以下、約0.5nM以下、または約0.25nM以下のS1P1受容体に対するIC50を有する。SIP1受容体に対する該化合物のIC50は、実施例13に記載される結合アッセイまたは国際公開第03/061567号に記載されるものを用いて測定されうる。本発明の化合物は一般に、100pM(ピコモル)から100Mの範囲のIC50を有した。
【0078】
例えば、
【0079】
【化13】


は、6.6nMのIC50値を有した。
【0080】
上記に列挙された値の中間にある範囲も、本発明の一部であることが意図される。例えば、上限および/または下限として上記に列挙された値の任意の組合せを用いる範囲が含まれることが意図される。
【0081】
さらなる実施形態において、S1P受容体アゴニストは、S1P3受容体に対する約10nM〜10,000nM、約100nM〜5000nM、約100nM〜3000nM、約10nM以上、約20nM以上、約40nM以上、約50nM以上、約75nM以上、または約100nM以上のIC50値を有する。もう1つの実施形態において、本発明のS1P化合物は、1000nM以上、2000nM以上、3000nM以上、5000nM以上、10,000nM以上のIC50を有してS1P3受容体に結合する。S1P3受容体のIC50は、本明細書において記載される結合アッセイまたは国際公開第03/061567号に記載されるものを用いて測定することができる。
【0082】
さらに、上記に列挙された値の中間にある範囲も、本発明の一部であることが意図されることが理解されるべきである。例えば、上限および/または下限としての上記に列挙された値の任意の組合せを用いる範囲が含まれることが意図される。
【0083】
さらにもう1つの実施形態において、本明細書において記載されるS1P受容体アゴニストは、S1P3受容体に対するそれらのIC50値より約5倍低い、約10倍低い、約20倍低い、約50倍低い、約100倍低い、約200倍低い、約500倍低い、または約1000倍低いS1P1受容体に対するIC50値を有する。
【0084】
上記に列挙された値の中間にある範囲も本発明の一部であることが意図される。例えば、上限および/または下限としての上記に列挙された値の任意の組合せを用いる範囲が含まれることが意図される。
【0085】
本明細書において記載される数種の化合物がS1P1受容体またはS1P3受容体に結合する能力も以下の通り試験した。
【0086】
膜調製として、FuGENE6トランスフェクションプロトコル(Rocheから公に利用できる)を用いて、プラスミドDNAをHEK293T細胞にトランスフェクトした。簡単には、サブコンフルエントな単層のHEK293T細胞に、FuGENE6を含むDNA混合物(1:3比を用いる)をトランスフェクトした。次いで、細胞が入っている皿を組織培養インキュベータ(5%CO、37℃)内に置いた。DNA添加後48時間に、氷上で10%ショ糖を含むHME緩衝液(mMで、20のHEPES、5のMgCl、1のEDTA、pH7.4、1mMのPMSF)中でこすることによってこの細胞を集め、Dounceホモジナイザーを用いて破壊した。800×gで遠心分離後、上清をショ糖を含まないHMEで希釈し、17,000×gで1時間遠心分離した。この粗膜ペレットをショ糖を含むHME中に再懸濁させ、アリコートし、液体窒素中に浸漬することによって急冷凍結した。この膜を−70℃で保管した。タンパク質濃度は、Bradfordタンパク質アッセイによって分光的に測定した。
【0087】
結合アッセイについて、[33P]スフィンゴシン1−ホスフェート(American Radiolabeled Chemicals,Inc.から入手)を、2.5pMの[33P]スフィンゴシン1−ホスフェート、4mg/mlのBSA、50mMのHEPES、pH7.5、100mMのNaCl、5mMのMgCl、および5μgのタンパク質のアッセイ濃度を有する、96−ウェルプレート中の200μl中の膜に添加した。室温で穏やかに攪拌しながら結合を60分間行い、GF/Bフィルタープレート上に膜を集めることによって終了した。10分間フィルタープレートを乾燥後、50μlのMicroscint40をそれぞれのウェルに添加し、フィルター結合した放射性核種をPackard Top Countで測定した。非特異的結合を、過剰の非標識S1Pの存在下で残存する放射活性の量として定義した。
【0088】
1つの実施形態において、本発明の化合物には、国際公開第06/020951A2号、国際公開第05/041899A2号、国際公開第04/010949A2号、国際公開第04/024673A1号および国際公開第02/064616号、ならびに米国特許出願第11/349069号(2006年2月2日出願)に記載される化合物は含まれず;これらのそれぞれの全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
発明化合物を使用する方法
本発明の化合物は、スフィンゴシン1ホスフェート関連障害の治療に有用であることが決定されている。したがって、1つの実施形態において、本発明は、スフィンゴシン1−ホスフェート関連障害に罹っている対象を治療する方法であって、対象がスフィンゴシン1−ホスフェート関連障害に関して治療されるように、本発明の化合物、すなわち、式Iの化合物または本明細書において別に記載される化合物の有効量を対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0090】
「スフィンゴシン1−ホスフェート関連障害」という用語には、S1P受容体の機能および/またはシグナル伝達あるいはS1P受容体リガンドの機能の誤調節に関連するまたはそれによって引き起こされる障害、疾患または状態が含まれる。用語には、スフィンゴシン1−ホスフェート受容体アゴニストの有効量を対象に投与することによって治療され得る疾患、障害または状態も含まれる。このような障害には、不適切な免疫応答に関連する障害、および過活性免疫応答、例えば、自己免疫疾患に関連する状態が含まれる。
【0091】
本明細書において用いられるような「治療」または「治療する」は疾患もしくは障害、または該疾患もしくは障害の症候群を治療する、治癒させる、軽減する、遅延させる、緩和する、変化させる、改善する(remedy)、寛解させる、改善する(improve)か、またはそれらに影響を与える目的を有して、本明細書に記載されるようなスフィンゴシン1−ホスフェート関連障害を有する対象に対する式Iの化合物などの治療薬の適用または投与として定義される。「治療」または「治療する」という用語はまた、予防的に薬剤を投与する文脈において本明細書において用いられる。
【0092】
ある実施形態において、本発明の化合物の効力は、値、レベル、特徴、特性、性質などを「適切な対照」と比較することによって測定されうる。「適切な対照」は、比較の目的に有用な当業者によく知られている任意の対照または標準である。1つの実施形態において、「適切な対照」は、本発明の組成物の投与前に測定された値、レベル、特徴、特性、性質などである。例えば、細胞または対象に本発明の化合物を導入する前に、免疫応答などを測定することができる。もう1つの実施形態において、「適切な対照」は、細胞または微生物、例えば、正常な特性を示す対照または正常な細胞もしくは微生物において測定される値、レベル、特徴、特性、性質などである。さらにもう1つの実施形態において、「適切な対照」は、所定の値、レベル、特徴、特性、性質などである。例えば、「適切な対照」は、特定のS1P受容体に対する結合の所定のレベルであり得る。
【0093】
本発明のさらなる実施形態は、スフィンゴシン1−ホスフェート関連障害に罹っている対象を治療する方法であって、対象が本発明の化合物、すなわち、式Iの化合物または本明細書において別に記載される化合物によってスフィンゴシン1−ホスフェート関連障害について治療されるように、該化合物を対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0094】
本発明はまた、スフィンゴシン1−ホスフェート関連障害を選択的に治療する方法であって、対象がスフィンゴシン1−ホスフェート関連障害について選択的に治療されるように、本発明の化合物、例えば、式I〜式VIIIの任意の化合物または本明細書において別に記載される化合物の有効量を対象に投与する工程を含む方法に関する。ある種の実施形態において、スフィンゴシン1−ホスフェート関連障害は、スフィンゴシン1−ホスフェート−(1)関連障害である。特定の実施形態において、スフィンゴシン1−ホスフェート−(1)関連障害は、スフィンゴシン1−ホスフェート−(3)関連障害と比較して選択的に治療される。
【0095】
本発明のもう1つの実施形態は、スフィンゴシン1−ホスフェート関連障害を選択的に治療する方法であって、対象が本発明の化合物、例えば、式I〜式VIIIの任意の化合物または本明細書において別に記載される化合物によってスフィンゴシン1−ホスフェート関連障害について選択的に治療されるように、該化合物を対象に投与する工程を含む方法である。ある種の実施形態において、スフィンゴシン1−ホスフェート関連障害は、スフィンゴシン1−ホスフェート−(1)関連障害である。特定の実施形態において、スフィンゴシン1−ホスフェート−(1)関連障害は、スフィンゴシン1−ホスフェート−(3)関連障害と比較して選択的に治療される。
【0096】
もう1つの実施形態において、本発明は、活性化免疫系関連状態を治療する方法を提供する。このような疾患または障害には、移植された臓器、組織または細胞の拒絶反応;移植によって引き起こされる移植片対宿主疾患;関節リウマチを含む自己免疫症候群;全身性狼瘡エリテマトーデス;抗リン脂質症候群;橋本甲状腺炎;リンパ球甲状腺炎;多発性硬化症;重症筋無力症;I型糖尿病;ブドウ膜炎;上強膜炎;強膜炎;川崎病、ブドウ膜−網膜炎;後ブドウ膜炎;ベーチェット病関連ブドウ膜炎;ブドウ膜髄膜炎症候群;アレルギー性脳脊髄炎;慢性同時移植血管症;リウマチ熱および感染後糸球体腎炎を含む感染後自己免疫疾患;炎症性および過剰増殖性皮膚疾患;乾癬;乾癬性関節炎;アトピー性皮膚炎;筋障害;筋炎;骨髄炎;接触皮膚炎;湿疹様皮膚炎;脂漏性皮膚炎;扁平苔癬;天疱瘡;水疱性類天疱瘡;表皮水疱症;じんま疹;血管性水腫;血管炎;紅斑;皮膚好酸球増加症;座瘡;強皮症;円形脱毛症;角結膜炎;春季結膜炎;角膜炎;ヘルペス性角膜炎;角膜上皮性異栄養症;角膜白斑;眼天疱瘡;モーレン潰瘍;潰瘍性角膜炎;強膜炎;グレーブス病眼症;フォークト−小柳−原田症候群;サルコイドーシス;花粉アレルギー;可逆性閉塞性気道疾患;気管支喘息;アレルギー性喘息;内因性喘息;外因性喘息;塵埃喘息;慢性(chronic)または慢性(inveterate)喘息;遅発性喘息および気道過敏症;細気管支炎;気管支炎;子宮内膜症;精巣炎;胃潰瘍;虚血性腸疾患;炎症性腸疾患;壊死性腸炎;熱傷関連腸病変;セリアック病;直腸炎;好酸球性胃腸炎;肥満細胞症;クローン病;潰瘍性大腸炎;虚血性疾患および血栓症に起因する血管損傷;アテローマ性動脈硬化症;脂肪心;心筋炎;心筋梗塞;大動脈炎症候群;ウイルス性疾患による悪液質;血管血栓症;偏頭痛;鼻炎;湿疹;間質性腎炎;IgA−誘発腎症;グッドパスチャー症候群;溶血性尿毒症症候群;糖尿病性腎症;糸球体硬化症;糸球体腎炎;尿細管間質性腎炎;間質性膀胱炎;多発性筋炎;ギランバレー症候群;メニエール病;多発性神経炎(polyneuritis);多発性神経炎(multiple neuritis);脊髄炎;単神経炎;神経根症;甲状腺機能亢進症;バセドウ病;甲状腺中毒症;真性赤血球無形成;再生不良性貧血;低形成性貧血;特発性血小板減少性紫斑;自己免疫性溶血性貧血;自己免疫性血小板減少症;顆粒球減少症;悪性貧血;巨赤芽球性貧血;赤血球形成不全;骨粗鬆症;肺線維症;特発性間質性肺炎;皮膚筋炎;尋常性白斑;尋常性魚りんせん;光アレルギー性過敏;皮膚T細胞リンパ腫;結節性多発性動脈炎;ハンチントン舞踏病;シデナム舞踏病;心筋症;心筋炎;強皮症;ウェゲナー肉芽腫;シェーグレン症候群;脂肪症;好酸球性筋膜炎;歯肉、歯周組織、歯槽骨、歯セメント質の病変;男性はげまたは老人性脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症;セザリー症候群;下垂体炎;慢性副腎不全;アジソン病;保存後生じる臓器の虚血性−再潅流傷害:内毒素性ショック;偽膜性結腸炎;薬物または放射線に起因する大腸炎;虚血性急性腎不全;慢性腎不全;肺固形癌;リンパ球起源悪性腫瘍;急性または慢性リンパ球性白血病;リンパ腫;乾癬;肺気腫;白内障;鉄沈着症;網膜色素変性;老人性黄斑変性;硝子体瘢痕化;角膜アルカリ熱傷;皮膚炎紅斑;水疱性皮膚炎;セメント質皮膚炎;歯肉炎;歯周炎;敗血症;膵炎;末梢動脈疾患;発癌;固形癌腫瘍;癌転移;高山病;自己免疫性肝炎;原発性胆汁性肝硬変;硬化性胆管炎;部分肝切除;急性肝壊死;硬変症;アルコール性硬変症;肝不全;劇症肝不全;遅発性肝不全;「慢性期急性」肝不全が含まれる。
【0097】
本明細書において用いられるように、「対象」という用語には、温血動物、例えば、ヒト、ネコ、イヌ、ウマ、クマ、ライオン、トラ、フェレット、ウサギ、マウス、ウシ、ヒツジ、ブタなどを含む哺乳動物が含まれる。特定の実施形態において、対象は霊長類である。具体的な実施形態において、霊長類はヒトである。
【0098】
本明細書において用いられるように、対象に「投与する」との用語には、非経口または経口経路のいずれかによるデリバリー、筋内注射、皮下/皮内注射、静脈内注射、頬側投与、局所デリバリー、経皮デリバリー、および直腸、結腸、膣、鼻腔内、または気道の経路による投与を含む、対象における所望部位への該化合物のデリバリーのための任意の好適な経路による対象に対する医薬製剤中の本発明の化合物(本明細書に記載されるような)を、分配、デリバリーまたは適用することが含まれる。
【0099】
本明細書において用いられるように、「有効量」という用語には、所望の結果を達成するために必要な投与量および期間で有効な、例えば、対象における状態を治療するために十分な量が含まれる。本明細書において定義されるような、本発明の化合物の有効量は、対象の疾患状態、年齢、および体重などの要因、ならびに対象における所望の反応を誘発する該化合物の能力によって変わり得る。投与計画は、最適治療応答を与えるために調製され得る。有効量はまた、治療的に有益な効果が該化合物の任意の毒性または有害効果(例えば、副作用)を上回る量である。
【0100】
本発明の化合物の治療有効量(すなわち、有効投与量)は、約0.001から30mg/kg体重、例えば、約0.01から25mg/kg体重、例えば、約0.1から20mg/kg体重の範囲であり得る。列挙されたものの間の値および範囲の全ては、本発明によって包含されることが意図されることを理解されよう。当業者は、ある種の要因が、限定されないが、疾患または障害の重症度、既往治療、対象の一般健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含めて、対象を有効に治療するのに必要とされる投与量に影響し得ることを理解するであろう。さらに、本発明の化合物の治療有効量での対象の治療には、1回治療が含まれ得るか、または、例えば、一連の治療が含まれ得る。治療に用いられる化合物の有効投与量は、特定の治療の過程にわたって増加または減少させてもよいことも理解するであろう。
【0101】
本発明の方法には、疾患または状態を治療するために知られている別の医薬的に活性な化合物、例えば、免疫調節薬または抗炎症薬と併用して本発明の化合物の治療有効量を対象に投与する工程がさらに含まれる。用いられ得る医薬的に活性な化合物は治療される状態に依存するが、これらには例として、シクロスポリン、ラパマイシン、FK506、メトトレキサート、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、非ステロイド系抗炎症薬、シクロオキシゲナーゼ−2−阻害剤(例えば、セレコキシブおよびロフェコキシブ)、およびコルチコステロイドが含まれる。他の好適な化合物は、Harrison’s Principles of Internal Medicine、第13版、T.R.Harrisonら編、McGraw−Hill N.Y.、N.Y.;およびthe Physicians Desk Reference 第50版、1997年、Oradell New Jersey、Medical Economics CO.に見い出すことができ、これらの全内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。本発明の化合物およびさらなる医薬活性化合物は、同じ医薬組成物中で、または異なる医薬組成物中で(同時にまたは異なる時間に)対象に投与され得る。
【0102】
発明化合物を含む医薬組成物
本発明はまた、本発明の1種以上の化合物;例えば、式Iの化合物または本明細書において別に記載される化合物を含む医薬上許容される製剤および組成物を提供する。ある種の実施形態において、本発明の化合物は、治療有効量;すなわち、スフィンゴシン1−ホスフェート関連障害を治療するために有効な量で製剤中に存在する。
【0103】
したがって、1つの実施形態において、本発明は、本発明の化合物;すなわち、式Iの化合物または本明細書において別に記載される化合物の治療有効量および医薬上許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0104】
もう1つの実施形態において、本発明は、本発明の化合物;すなわち、式Iの化合物または本明細書において別に記載される化合物の治療有効量を保持する容器;および対象のスフィンゴシン1−ホスフェート関連障害を治療するために該化合物を用いるための使用説明書を含む包装された医薬組成物に関する。
【0105】
「容器」という用語には、医薬組成物を保持するための任意のレセプタクルが含まれる。例えば、1つの実施形態において、容器は、医薬組成物を入れる包装である。他の実施形態において、容器は、医薬組成物を入れる包装ではなく、すなわち、容器は、包装医薬組成物または非包装医薬組成物および医薬組成物の使用のための使用説明書を入れる箱またはバイアルなどのレセプタクルである。さらに、包装技術は当該分野でよく知られている。医薬組成物の使用のための使用説明書は、医薬組成物を入れる包装上に含めることができ、そのようなものとして使用説明書は包装製品に対する増加した機能的関係を形成することが理解されるべきである。しかし、使用説明書は、その意図された機能を行う、例えば、対象におけるスフィンゴシン1−ホスフェート関連障害を治療し、予防し、または減少させる該化合物の能力に関する情報を含み得ることが理解されるべきである。
【0106】
本発明のもう1つの実施形態は、本発明の化合物;すなわち、式Iの化合物または本明細書において別に記載される化合物の治療有効量を保持する容器;および対象のスフィンゴシン1−ホスフェート関連障害を選択的に治療するために該化合物を用いるための使用説明書を含む包装医薬組成物に関する。
【0107】
このような医薬上許容される製剤には典型的に、本発明の1種以上の化合物ならびに医薬上許容される1種以上の担体および/または賦形剤が含まれる。本明細書において用いられるように、「医薬上許容される担体」には、任意および全ての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、ならびに生理学的に適合する同様のものが含まれる。医薬活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野でよく知られている。従来の任意の媒体または薬剤が本発明の化合物と適合しない場合を除いて、医薬組成物におけるその使用が企図される。
【0108】
移植または自己免疫疾患を治療するべく知られている補助的医薬活性化合物、すなわち、上記されるような免疫調節薬および抗炎症薬はまた、本発明の組成物中に取り込ませることができる。使用され得る好適な医薬活性化合物は、Harrison’s Principles of Internal Medicineに見い出すことができる。
【0109】
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路に適合するように処方される。投与経路の例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜的、および直腸投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液および懸濁液には、以下の成分が含まれ得る:滅菌希釈剤(例えば、注射用水)、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸または重硫酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝液(例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩)および張性を調整するための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムで調整し得る。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器またはガラスもしくはプラスチックから作られた複数回投与バイアルに封入され得る。
【0110】
注射用に好適な医薬組成物には、滅菌の水溶液(水可溶な場合)もしくは分散液、または滅菌の注射用溶液もしくは分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与のために、好適な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor El(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。全ての場合において、医薬組成物は滅菌でなければならず、容易な注射性が存在する程度に流動性であるべきである。それはまた、製造および保管の条件下で安定でなければならず、かつ細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、および好適なそれらの混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合に所望の粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、さまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合に、組成物中に等張剤、例えば、糖、多価アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによって生じさせ得る。
【0111】
滅菌注射用溶液は、上記に列挙された成分の1種または組合せと一緒に、適切な溶媒中に必要量で本発明の化合物を取り入れ、必要に応じて、その後ろ過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液は、基本的な分散媒体および上記に列挙されたもの由来の他の所要成分を含む滅菌ビヒクル中に該化合物を取り入れることによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合に、調製の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより該化合物+予め滅菌ろ過されたその溶液由来の追加的な所望の任意の成分の粉末を生ずる。
【0112】
経口組成物には一般に、不活性希釈剤または食用担体が含まれる。それらは、ゼラチンカプセルに封入され得るか、または錠剤に圧縮され得る。治療的経口投与のために、本発明の化合物は、賦形剤と一緒に取り込まれて、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用され得る。経口組成物にはまた、腸溶コーティングが含まれ得る。経口組成物はまた、うがい薬としての使用のために流動性担体を用いて調製することができ、ここで、流動性担体中の化合物は経口的に適用され、口の中でうがいをし、吐き出されるかまたは呑み込まれる。医薬的に適合する結合剤、および/またはアジュバント材は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、任意の以下の成分または同様の性質の化合物:結合剤(例えば、微結晶セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース)、崩壊剤(例えば、アルギニン酸、プリモゲル(Primogel)、またはトウモロコシデンプン);滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes));流動促進剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、ショ糖またはサッカリン);または香味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジフレーバー)を含み得る。
【0113】
吸入による投与のために、本発明の化合物は、適切な推進剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含む加圧容器またはディスペンサー、あるいは噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態でデリバリーされる。
【0114】
全身投与は、経粘膜または経皮的な手段によるものであり得る。経粘膜または経皮投与のために、透過すべき障壁に対する適切な浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は、一般に当該分野で知られており、例えば、経粘膜投与のために、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔用スプレーまたは坐薬の使用によって達成し得る。経皮投与のために、本発明の化合物は、当該分野で一般に知られているような軟膏、膏薬(salves)、ゲル、またはクリーム中に処方される。
【0115】
本医薬組成物は、直腸デリバリーのために坐薬(例えば、ココアバターおよび他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤で)または貯留浣腸剤の形態でも調製されうる。
【0116】
1つの実施形態において、該化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化デリバリー系を含む放出制御製剤などのように身体からの急速な除去に対して該化合物を保護する担体と一緒に調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸が使用され得る。このような製剤の調製方法は、当業者に明らかである。これらの材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手できる。リポソーム懸濁液も医薬上許容される担体として使用され得る。これらは、例えば、それらの全ての全内容が参照により本明細書において組み込まれる、米国特許第4,522,811号、米国特許第5,455,044号および米国特許第5,576,018号、ならびに米国特許第4,883,666号に記載されるように、当業者に知られている方法によって調製され得る。
【0117】
本発明の化合物は、少なくとも数週間から1カ月またはそれ以上の期間、対象への該化合物の持続的デリバリーを可能にさせる医薬組成物中に取り込ませることもできる。このような製剤は、それらの全内容が参照により本明細書に組み込まれる、公開PCT出願第WO02/74247号に記載されている。
【0118】
投与の容易さおよび投与量の均一性のために単位投与形態で経口または非経口組成物を処方することが特に有利である。本明細書において用いられるような単位投与形態は、治療される対象のための単一の投与量として適した物理的に別個の単位をいい;それぞれの単位は、所要の医薬担体と共同して所望の治療効果を生じるように計算された本発明の化合物の所定量を含む。本発明の単位投与形態の規格は、該化合物の独特の特性および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の治療のためにこのような化合物を混合することの当該分野に固有の制限によって決定され、かつ直接に依存する。
【0119】
本発明は、限定的として解釈されるべきでない以下の実施例によってさらに説明される。この出願を通して引用される参考文献、特許、特許出願の全ての内容は、参照により本明細書において組み込まれる。本明細書において記載される任意の該化合物の使用は、本発明の範囲内にあり、本発明によって包含されることが意図され、かつ事実上本明細書において明示的に組み込まれることが理解されるべきである。
【実施例】
【0120】
アミド−カルボキシレートの合成のための一般的合成戦略
種々のアミド−カルボキシレート6の合成の一般的アプローチをスキーム1に記載する。所望のアルコールを置換1−フルオロ−4−ニトロベンゼン1と反応させることにより、ニトロベンゼン中間体を得、これを水素化してアニリン2を得た。アニリン2の脱酸素類似体を置換1−ブロモ−または1−ヨード−4−ニトロベンゼンから薗頭クロス−カップリング条件を使用して、次いで水素化することにより合成した。所望のアニリンを保護されたアミノ酸とカップリングすることにより、アミド5を得、これを脱保護してアミド6を良好な収率で得た。
【0121】
【化14】

【0122】
置換ニトロベンゼンエーテル2の合成の一般的プロトコール
所望のアルコール(1.0当量)の乾燥THF溶液に窒素雰囲気下でKOBu(THF中の1.0M溶液または固体のいずれか、1.1当量)を加えた。反応混合物を60〜70℃で10分間加熱し、次いで置換1−フルオロ−4−ニトロベンゼン1(1.0当量)を加えた。次いで反応を1から3時間撹拌し、その後室温まで冷却した。溶媒を真空除去した。Combi−Flashシステム(Hex:EtOAc)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成物を精製した。
【0123】
4−ニトロ−1−(オクチルオキシ)−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン(2a)
【0124】
【化15】

【0125】
Combi−Flashシステム(Hex:EtOAc)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成物を黄色−帯茶色の油として79%(1.20g)で精製した。TLC(1:4 EtOAc:Hex)、R=0.6;H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.50(d,1H,J=2.4Hz)、8.40(dd,1H,J=9.2Hz,J=2.4Hz)、7.07(d,1H,J=9.2Hz)、4.17(t,2H,J=6.4Hz)、1.80〜1.92(m,2H)、1.43〜1.456(m,2H)、1.20〜1.42(m,8H)、0.89(t,3H,J=6.4Hz)。
【0126】
置換ニトロベンゼン4の合成の一般的プロトコール
置換ブロモ−またはヨード−ニトロベンゼン(1.0当量)、1−オクチン(1.5当量)、Pd(dba)(2mol%)、PhP(5mol%)、CuI(2mol%)、およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(4.0当量)の懸濁液を100℃においてマイクロ波条件下で1.5時間加熱した。反応を酢酸エチル(EtOAc)で希釈し、飽和NaHCO水溶液(1回)、飽和NHCl水溶液(1回)、およびブライン(1回)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、真空濃縮した。Combi−Flashシステム(Hex:EtOAc)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成物を精製した。
【0127】
4−ニトロ−1−(オクト−1−インイル)−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン(4a)
【0128】
【化16】

【0129】
Combi−Flashシステム(Hex:EtOAc)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成物を無色の油として88%(1.06g)で精製した。H NMR(400MHz,CDCl)δ 8.49(d,1H,J=2.4Hz)、8.31(dd,1H,J=8.4Hz,J=2.4Hz)、7.68(d,1H,J=8.8Hz)、2.50(t,2H,J=6.8Hz)、1.64(m,2H)、1.47(m,2H)、1.33(m,4H)、0.91(t,3H,J=6.8Hz)。
【0130】
アミド5の合成の一般的プロトコール
ニトロベンゼン2(1.0当量)のMeOHまたはEtOH溶液に10%Pd/C(10重量%)を加えた。反応混合物をH(g)の雰囲気下で1〜3時間撹拌した。反応をセライトの薄層で濾過し、次いで溶媒を真空除去した。得られたアニリンをそのまま使用した。
【0131】
ジメチルホルムアミド(DMF)またはジクロロメタンまたはこの2つの溶媒の混合物中の保護されたアミノ酸(1.0当量)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)(1.2当量)、およびDIEA(3.0当量)の溶液に所望のアニリンを加えた。得られた混合物を室温において1〜3時間撹拌した。次いで反応をEtOAcで希釈し、10%NHCl(2回)および飽和NaCl(1回)で洗浄した。溶媒を真空除去し、Combi−Flashシステム(Hex:EtOAc)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成物を精製した。
【0132】
Boc−および/またはt−ブチルエステル保護基の除去
所望の出発物質(1.0当量)の乾燥ジクロロメタン溶液にトリフルオロ酢酸(TFA、30容量%)を加えた。反応混合物を室温において1〜3時間撹拌し、次いで減圧蒸発乾固した。次いで、得られた残渣をジクロロメタン(2回)と共沸して、任意の過剰のTFAを除去した。最終生成物は、そのまま使用するか、または逆相分取HPLCで精製した。
【0133】
(S)−3−アミノ−4−(4−(オクチルオキシ)−3−(トリフルオロメチル)フェニルアミノ)−4−オキソ酪酸(6a)
【0134】
【化17】

【0135】
白色の固体として収率98%(0.476g)で3ステップで生成物を得た。MS(ESI、M+H)=405.08;H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 10.56(br s,1H)、8.31(br s,3H)、7.88(d,1H,J=2.4Hz)、7.71(dd,1H,J=8.8Hz,J=2.4Hz)、7.25(d,1H,J=8.8Hz)、4.14〜4.22(m,1H)、4.05(t,2H,J=6.4Hz)、2.97(dd,1H,J=17.6Hz,J=4.8Hz)、2.82(dd,1H,J=16.0Hz,J=7.6Hz)、1.63〜1.76(m,2H)、1.19〜1.44(m,10H)、0.84(t,3H,J=6.4Hz)。
【0136】
(S)−3−アミノ−4−(4−オクチル−3−(トリフルオロメチル)フェニルアミノ)−4−オキソ酪酸(6b)
【0137】
【化18】

【0138】
白色の固体として収率67%(45mg)で3ステップで生成物を得た。MS(ESI、M+H)=389.12;H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 10.70(br s,1H)、7.96(d,1H,J=2.0Hz)、7.73(dd,1H,J=8.4Hz,J=2.0Hz)、7.25(d,1H,J=8.6Hz)、4.19(dd,1H,J=8.0Hz,J=4.8Hz)、2.96(dd,1H,J=17.2Hz,J=4.8Hz)、2.81(dd,1H,J=17.2Hz,J=8.0Hz)、2.68(t,2H,J=8.0Hz)、1.48〜1.60(m,2H)、1.15〜1.40(m,10H)、0.86(t,3H,J=6.8Hz)。
【0139】
(S)−2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−4−tert−ブトキシ−2−メチル−4−オキソ酪酸9の合成
Cbz−保護されたα−メチル−アスパラギン酸エステル9の合成の一般的アプローチをスキーム2に記載する。Cbz−保護されたアラニン7を(ジメトキシメチル)ベンゼンとルイス酸の存在下で反応させることにより、オキサゾリジノン8を得た。オキサゾリジノン8をリチウムヘキサメチルジシラジド(LHMDS)と反応させ、次いで2−ブロモ酢酸tert−ブチルを加え、オキサゾリジノンを塩基触媒開環することによって、所望のアミノ酸9を得た。注記として、(R)−2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−4−tert−ブトキシ−2−メチル−4−オキソ酪酸を、Altmann、E.;Nebel、K.;Mutter、M.Helvetica Chimica Acta 1991、74、800−806に示された通りに調製した。
【0140】
【化19】

【0141】
(2R,4S)−ベンジル4−メチル−5−オキソ−2−フェニルオキサゾリジン−3−カルボキシレート(8)
【0142】
【化20】

【0143】
Cbz−アラニン(5.0g)の乾燥ジエチルエーテル(60mL)溶液に、(ジメトキシメチル)ベンゼン(3.7mL、1.1当量)およびBF・OEt(11.9mL、4.3当量)を加えた。溶液を終夜撹拌した。帯茶色の溶液に、EtN(19.0mL、6.0当量)を加えた。次いで、反応をEtOAc(100mL)で希釈し、10%NHCl(2×100mL)、5%NaHCO(1×100mL)、および飽和NaCl(1×100mL)で洗浄した。溶媒を真空除去し、Combi−Flashシステム(Hex:EtOAc)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成物を精製した。帯黄色の油として収率94%(6.55g)で生成物を得た。TLC(1:3 EtOAc:Hex)、R=0.5;H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.01〜7.60(m,10H)、6.64(s,1H)、5.10〜5.22(m,2H)、4.49(q,1H,J=6.8Hz)、1.58(d,3H,J=6.8Hz)。
【0144】
(S)−2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)−4−tert−ブトキシ−2−メチル−4−オキソ酪酸(9)
【0145】
【化21】

【0146】
詳細な実験手順については、Altmann、E.;Nebel、K.;Mutter、M.Helvetica Chimica Acta 1991、74、800−806を参照されたい。無色の油として収率61%(1.05g)で3ステップで生成物を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ 7.34(s,5H)、6.09(br s,1H)、5.05〜5.15(m,2H)、3.15(d,1H,J=15.6Hz)、2.94(d,1H,J=15.6Hz)、1.67(s,3H)、1.40(s,9H)。
【0147】
(S)−3−アミノ−3−メチル−4−(4−(オクチルオキシ)−3−(トリフルオロメチル)フェニルアミノ)−4−オキソ酪酸(6c)
【0148】
【化22】

【0149】
アニリンを所望の直角に保護されたα−メチルアスパラギン酸エステルにカップリングさせた後、最初に水素化し、次いでTFAでt−ブチルエステルを切断することによってCbz−保護基を除去した。白色の固体として収率42%(0.210g)で3ステップで生成物を得た。MS(ESI、M+H)=419.08;H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 10.02(br s,1H)、8.26(br s,3H)、7.81(d,1H,J=2.4Hz)、7.73(dd,1H,J=8.8Hz,J=2.4Hz)、7.25(d,1H,J=8.8Hz)、4.06(t,2H,J=6.4Hz)、3.39(d,1H,J=16.0Hz)、2.93(d,1H,J=16.0Hz)、1.60〜1.76(m,2H)、1.54(s,3H)、1.19〜1.46(m,10H)、0.84(t,3H,J=6.4Hz)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


[式中、
は、水素、ハロゲン、シアノ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、−O−アルキル、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、−S−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−COH、アルキレン−COアルキル、アルキルSO、アルキレンスルホニル、アルキレン−CO−アミノ、アルキレン−CO−アルキルアミノ、アルキレン−CO−ジアルキルアミノ、アルキレン−NH−COH、アルキレン−NH−COアルキル−COアルキル、−OH、−C(O)−アルキル、−C(O)O−アルキル、−CONH、−CO−アルキルアミノ、−CO−ジアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、またはジアルキルアミノであり、これらのいずれも、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく、置換基それ自体が、炭素上でハロで置換されていてもよく;
Aは、(C〜C20)アルキレン、(C〜C20)アルケニレン、または(C〜C20)アルキニレンであり、これらのそれぞれは、炭素上でOH、COH、COアルキル、ハロゲン、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、−O−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−OH、またはアルキレン−COHから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
は、結合であるか、またはCH、O、−CHO−、S、−S(O)、−S(O)、−C(O)−、−C(O)O−、またはNRであり、ここで、Rは、Hまたは(C〜C)アルキルであり;
R’およびR”は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素上でハロゲンで適宜置換されたアルキル、アルキルであるか、あるいはこれらが結合している炭素と一緒になって、C=Oまたは3、4、5、もしくは6員の環(O NH、N−アルキル、SO、またはSOから選択される1または2個のヘテロ原子を含んでもよい)を形成し、これらのいずれも、炭素上でアルキルまたはハロゲンで適宜置換されており;
2aは、ハロゲン、シアノ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、−O−アルキル、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、アラルコキシ、ヘテロアラルコキシ、−S−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−COH、アルキレン−COアルキル、アルキルSO、アルキレンスルホニル、アルキレン−CO−アミノ、アルキレン−CO−アルキルアミノ、アルキレン−CO−ジアルキルアミノ、アルキレン−NH−COH、アルキレン−NH−COアルキル−COアルキル、−OH、−C(O)−アルキル、−C(O)O−アルキル、−CONH、−CO−アルキルアミノ、−CO−ジアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノであり、これらのいずれも、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
2bは、水素、ハロゲン、シアノ、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、−O−アルキル、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、アラルコキシ、ヘテロアラルコキシ、−S−アルキル、アルキレン−O−アルキル、アルキレン−COH、アルキレン−COアルキル、アルキルSO、アルキレンスルホニル、アルキレン−CO−アミノ、アルキレン−CO−アルキルアミノ、アルキレン−CO−ジアルキルアミノ、アルキレン−NH−COH、アルキレン−NH−COアルキル−COアルキル、−OH、−C(O)−アルキル、−C(O)O−アルキル、−CONH、−CO−アルキルアミノ、−CO−ジアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、およびジアルキルアミノであり、これらのいずれも、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
は、水素、アルキルまたはシクロアルキルであり、これらのいずれかは、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されていてもよく;
【化2】


は、フェニルまたはピリジルであり;
Yは、C〜Cアルキレンであり、炭素上でハロ、アルキル、OH、または−O−アルキルから選択される1、2、または3個の基で適宜置換されており;
は水素であり;
およびRは、水素、アルキル、アルキレン−OH、アリール、アルキレン−O−アルキル、−COH、CO−アルキル、アルキレン−OC(O)アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロ、−C(O)−アルキル、−C(O)−アリール、C(O)−アラルキル、−C(O)−Oアルキル、−C(O)−Oアリール、−C(O)−Oアラルキル、アルキレン−アミノ、アルキレン−アルキルアミノ、およびアルキレン−ジアルキルアミノ(これらのいずれも、炭素上でハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、COH、COアルキルまたはアルコキシで適宜置換されていてもよい)からなる群からそれぞれ独立に選択されるか;または
およびRは、これらが結合している窒素と一緒になって、3、4、5、または6員の飽和または不飽和の環(O、S、NH、またはN−アルキルから選択される1または2個のさらなるヘテロ原子を含んでもよい)を形成してもよく、炭素上でハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、またはアルコキシで適宜置換されており;RおよびRは、5,6,7、または8員の飽和または不飽和の環(O、S、NH、またはN−アルキルから選択される1または2個のさらなるヘテロ原子を含んでもよい)を形成してもよく、炭素上でハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、またはアルコキシで適宜置換されており;
は、水素、アルキル、アリールまたはアラルキルからなる群から選択される]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、またはホスフェート前駆体類似体。
【請求項2】
が、1、2または3個のハロ基で置換されたアルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
がトリフルオロメチルである、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
が、水素、フェニル、ピリジル、チオフェニル、シクロヘキシルおよびシクロペンチルからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Aが、n−オクチル、n−ヘプチル、n−ヘキシル、n−ペンチルおよびn−ブチルからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
が、O、CH、C=OおよびCHOからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
が、H、メチル、エチルおよびベンジルからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
【化3】


からなる群から選択される化合物およびその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、またはホスフェート前駆体類似体。
【請求項9】
治療物質としての使用のための請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、もしくはホスフェート前駆体類似体。
【請求項10】
スフィンゴシン関連障害の治療における使用のための請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、もしくはホスフェート前駆体類似体。
【請求項11】
多発性硬化症の治療における使用のための請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、もしくはホスフェート前駆体類似体。
【請求項12】
スフィンゴシン関連障害の治療における使用のための薬剤の製造における使用のための請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、もしくはホスフェート前駆体類似体。
【請求項13】
多発性硬化症の治療のための薬剤の製造における使用のための請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、もしくはホスフェート前駆体類似体。
【請求項14】
スフィンゴシン1−ホスフェート関連障害を治療する方法であって、請求項1から8のいずれか一項に定義されたとおりの化合物またはその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、またはホスフェート前駆体類似体の治療有効量を対象に投与し、それによりスフィンゴシン1−ホスフェート関連障害を治療する工程を含む方法。
【請求項15】
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、もしくはホスフェート前駆体類似体を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の医薬組成物の調製のための方法。
【請求項17】
請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩、ホスフェート誘導体、ホスフェート模倣体、もしくはホスフェート前駆体類似体の調製のための方法。

【公表番号】特表2010−501555(P2010−501555A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525550(P2009−525550)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/017542
【国際公開番号】WO2008/024196
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(399043691)プリーシス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】PRAECIS PHARMACEUTICALS,INC.
【Fターム(参考)】