説明

SAWフィルタ

同じ周波数帯域の互いに近接して位置する2つのチャネルをフィルタリングするために、4つのDMSトラック(DMS1−DMS4)の相応の配線によって得ることができる、2つの通過帯域(PB1,PB2)を有するSAWフィルタを使用することが提案される。個々のDMSトラックのデザインパラメータは、2つのDMSトラックのそれぞれ2つの主共振(H1−H6)が通過帯域に加算されるとともに、それぞれ2つのDMSトラックで形成される部分フィルタの副共振(N1−N6)(TF1−TF2)が同じ周波数で、他方の部分フィルタの主共振と同相で一致するように調整される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
出力電力と到達範囲の小さい伝送システムは、世界中でさまざまな周波数帯域で作動している。これは、たとえばヨーロッパでは433.92MHz付近のISMバンド(Industrial Science Medical)や、869MHzから870MHzの間のShort Range Device(SRD)バンドである。それに対してアメリカでは、ISMバンドや915MHz付近のかなり広い帯域が使用されることが多い。これ以外の帯域には、特に315MHz周辺や390MHz周辺のものがある。
【0002】
たとえばタイヤ空気圧計測システム(TPMS)やリモートキーレスエントリ(Remote Keyless Entry:RKE)のためのテレメトリーといった数多くのアプリケーションを、このような帯域でライセンスなしに作動させることができる。しかし、このような機器のいくつかの製造者によっては、そのつどのアプリケーションにのみ適用される狭帯域の周波数領域だけがしばしば使用される。
【0003】
このような狭い周波数領域については、たとえば水晶フィルタをベースとする狭帯域フィルタを備える受信機を利用することができる。たとえば1台の自動車で、互いに近接してはいるがこのような周波数帯域の異なるチャネルを利用する、このような複数のアプリケーションが適用されている場合、状況によっては、これら各々のアプリケーションのために独自の受信フィルタが必要となり、これらの受信フィルタがそれぞれのチャネルについて相応に狭帯域に設計される。そしてチャネルを分離するために、スイッチを使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、受信機でスイッチを省略しようとする場合には、希望するすべてのチャネルを通過帯域がカバーするフロントエンドフィルタが必要である。その場合、個々のチャネルの帯域幅に基づいて、ならびに考慮されるべき許容差に基づいて、水晶フィルタによっては帯域幅を具体化可能でないか、または劣化した特性でしか具体化可能でない受信フィルタが必要になる。帯域幅が増えるにつれて、水晶ベースのSAWフィルタのインピーダンスは上昇していき、インピーダンスの増加に伴って整合安定性も低下する。
【0005】
そこで本発明の課題は、互いに近接する少なくとも2つの狭帯域のチャネルを受信することができ、高い阻止帯域抑圧を有しているフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1に記載のフィルタによって解決される。好ましい実施形態は、その他の請求項から明らかとなる。
【0007】
本発明は新規のフィルタコンセプトを記載するものであり、希望する周波数領域について広帯域のフィルタを提供するのではなく、むしろ、互いに別々に最適化された2つの通過領域を有するフィルタを提供する。これら両方の通過領域は挿入減衰が低いという特徴があり、しかも阻止領域に向かって急勾配のエッジを有している。そのうえ、両方の通過領域の間では、すなわち、両方のチャネルのいずれにも属さない周波数については、両方のチャネルの間隔が広いほど高い値を達成する阻止領域減衰が実現される。
【0008】
このような2チャネルフィルタの具体化は、4つのDMSトラックの電気配線を通じて可能となる。それぞれ2つのDMSトラックは、部分フィルタに対して逆平行に配線されている。これらの部分フィルタの各々は、結合度の低い基板の上でDMSフィルタの通過帯域を拡大するために、それ自体公知のコンセプトを利用している。各々の部分フィルタの両方のDMSトラックは2つの主共振をそれぞれ有しており、これらの主共振は、第1のトラックの上側の主共振が第2のトラックの下側の主共振と重なり合うように、トラックごとに相互にシフトしている。両方のトラックの逆平行の配線は、共通する主共振の領域で、信号の位相の正しい重なり合いを惹起する。
【0009】
このようなそれ自体公知の部分フィルタは、ある程度の帯域幅までは拡張することができるが、それを超えると機能しなくなる。その場合、高すぎるインピーダンスが生成されてしまい、阻止領域での抑圧が小さくなりすぎるからである。このような2つの部分フィルタの単純な配線は、通常、満足のいく電気パフォーマンスにもつながらない。各々のトラックが両方の主共振と並んで多数の別のモードを有しており、これらのモードが、それぞれの主共振よりも下側にそれぞれ位置しているからである。通常、これらのモードは、2つのトラックが組み合わされてなる部分フィルタにとっては支障にならない。これらのモードはフィルタ阻止帯域内に位置しており、フィルタの近接領域抑圧を低下させるにすぎないからである。ところが、希望する帯域のカバーないしいっそう広いフィルタ帯域幅が実現される程度まで両方の部分フィルタの共振周波数が引き離されると、一方の部分フィルタのこうした副モードが他方の部分フィルタの通過帯域に入り、そこで通過帯域の落ち込みにつながり、そのために、高い挿入減衰と波形の通過帯域につながることがある。この両者はいずれも満足のいくものではない。
【0010】
そこで本発明はこれを回避するために、両方の部分フィルタの各々の副モードと主モードの間の間隔は、通過帯域の所与のオフセットで、副モードがそれぞれ他方の部分フィルタの主共振に対して同相にそれぞれ配置されるように調整されている。それにより、挿入減衰が低く、整合後に通過帯域が平滑な2つの通過帯域を有するフィルタが得られる。通常は支障となる部分フィルタの副モードは、それぞれ隣接する通過帯域内に位置しており、正しい位相重なり合っているので、そこで伝達の歪みにつながることはなくなる。
【0011】
本発明のフィルタには、DMSフィルタについて典型的な2つの主共振を有していさえすれば、任意のDMSトラックを使用することができる。互いに配線された4つのDMSトラックは、低い結合定数を有する共通の基板、特に水晶に構成されていてよい。低い結合定数は、通過帯域の急勾配のエッジを保証する。
【0012】
本発明によるフィルタは、両方の通過帯域の帯域間隔と等しいオーダーの通過帯域幅を有することができる。これよりも密接に相並んでいる通過帯域については、各々の部分フィルタの実現可能な帯域幅が狭まり、逆に、これよりも遠く離れて位置する通過帯域については、挿入減衰が再び劣化する。したがってこのフィルタは、特に、同じ周波数帯域を分かち合い、通過帯域幅にほぼ相当する上述の相互間隔を有する2つの狭帯域のチャネルについて適用可能である。
【0013】
各々のDMSトラックは、2つのリフレクタの間に配置された少なくとも2つのインターディジタル変換器を有している。少なくともそれぞれ1つのインターディジタル変換器が入力部と接続されており、少なくとも1つの別の変換器がフィルタの出力部と接続されている。リフレクタから1つまたは複数のインターディジタル変換器までの間隔に基づいて、およびインターディジタル変換器相互の間隔に基づいて、各々のDMSトラックには少なくとも2つの共振空洞が構成され、その中でそれぞれ定常波が形成され、そのようにして、DMSトラックのそれぞれの共振を生成することができる。
【0014】
各々のDMSトラックでは、共振空洞の中で振動性ないし伝搬性の副モードに原因が帰せられる副共振も発生する。副モードの調節、および特に主モードと副モードの間隔の調節は、本発明によると、インターディジタル変換器ごとの電極フィンガの数の適切な選択によって、および、これに適合するインターディジタル変換器とリフレクタとの間隔および/またはインターディジタル変換器相互の間隔の設定によって可能となる。これらのパラメータを変えるだけで、一方の部分フィルタの副モードを、隣接する部分フィルタの主共振の周波数に合わせて正確にシフトさせることが可能である。各々のDMSトラックのその他のデザインパラメータがその影響を受けることはなく、独立して最適化することができる。
【0015】
原則として、各々の部分フィルタの両方のDMSトラックは同種類で構成されており、相応に相違する電極フィンガ間隔ないし相違するフィンガ周期だけを有しており、それにより、両方のDMSトラックの間の希望する周波数オフセットを実現することが可能である。このことは、たとえばDMSトラックのスケーリングによってのみ行うことができる。しかしながら、特別な最適化の要請に基づき、一方の部分フィルタの2つのDMSトラックがいっそう大きく互いに相違していることも可能である。
【0016】
互いに等しく、類似して、または相違して構成されていてよい両方の部分フィルタについても、同様のことが当てはまる。いずれの場合でも、近似的に等しいが周波数オフセットされた4つのDMSトラックを有する本発明の2チャネルフィルタを構成することが、原則として可能である。
【0017】
個々のDMSトラックの間の相違点は、特に、インターディジタル変換器の電極フィンガの数、変換器とリフレクタの間の間隔、および特にインターディジタル変換器の数であってよい。その他のパラメータは、すべてのDMSトラックを通じて一定に保たれるのが好ましい。これらのパラメータはフィルタの他の重要な特性のために最適化されており、副モードと主モードについて希望する共振間隔を設定するために変更する必要がないからである。全部のフィルタを通じて等しく保たれるこのような特性は、特に、金属被覆高さや金属被覆率である。
【0018】
本発明の1つの実施形態では、DMSトラックは2つのリフレクタの間に配置された2つのインターディジタル変換器を有している。少なくとも部分的に通過性の別の音響リフレクタが、両方のインターディジタル変換器の間に配置されている。部分的に通過性のリフレクタのリフレクタストリップの数を通じて、さらに別のフィルタ特性および特に両方のインターディジタル変換器の結合ないしこれらに付属する共振空洞の結合を調整することができる。
【0019】
本発明のフィルタを用いて、たとえば自動車に搭載され、それぞれ異なる無線の用途ないしシステムに利用される2つの無線チャネルを操作することができる受信機を構成することができる。たとえばRKEシステムの中心周波数は315MHZであり、それに対して無線で照会可能なタイヤ空気圧計測システムの周波数は313.85MHzである。本発明のフィルタでは、これら両方の中心周波数に合わせて通過帯域を最適化することができる。0.03から0.1%の間の相対チャネル幅があれば、適用のために十分である。ただし、考慮されるべき製造公差や温度公差に基づき、部分フィルタの相対幅は0.03から0.25%の間であってもよい。相対幅が0.1から0.25%の間であると好ましい。
【0020】
本発明による2チャネルフィルタを具体化するには、それぞれ1つのDMSトラックを有する4つの音響トラックがあれば十分である。しかしながら、フィルタインピーダンスを低減するために、各々のトラックまたは各々の部分フィルタをさらに同一に2倍もしくは3倍にすることも可能であり、それにより、フィルタには合計で4つ、8つ、または12のDMSトラックが互いに配線されることになる。
【0021】
各々の部分フィルタの通過帯域にわたって広がる全部で3つの主共振の間では、フィルタの伝達挙動を相応の整合化および整合部材もしくは整合回路との配線によって最適化して、各々の部分フィルタが、支障となる落ち込みなしに、平滑な通過帯域を有するようにすることができる。
【0022】
次に、実施例と添付の図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面は模式的なものにすぎず、縮尺に忠実に作成されたものではない。より良い理解のために、個々の寸法を歪めて表示している場合があるので、図面から相対的な寸法表示を読み取ることもできない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】それ自体公知のツインDMSフィルタの両方のDMSトラックの伝達曲線である。
【図2】本発明によるフィルタの4つのDMSトラックの伝達曲線である。
【図3】整合によって平滑化された本発明によるフィルタの伝達曲線である。
【図4】本発明によるフィルタを示す模式的な回路図である。
【図5】DMSトラックの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照して、ツインDMSフィルタのそれ自体公知の原理について説明する。ツインDMSフィルタの両方のDMSトラックのそれぞれ2つの主共振を、その結果として生じる伝達曲線Rとどのように組み合わせることができるかが、2つのDMSトラックの伝達曲線AおよびBによって模式的な図面で示されている。両方の伝達曲線A,Bの各々は、それぞれ異なる位相+,−に位置する2つの共振を有している。周波数の面では、両方の伝達曲線A,Bは相互にずれており、伝達曲線Aの上側の共振が、第2のDMSトラックの伝達曲線Bの下側の共振とほぼ同じ周波数に位置するとともに、両方の個別共振が共同して部分フィルタの中央の主共振H2を形成するようになっている。別の主共振H1およびH3が、主共振H1の上側と下側に後続している。これらの主共振が共同で、ツインDMSフィルタの通過帯域を形成する。
【0025】
このとき、第2のDMSトラックを第1のDMSトラックのスケーリングによって得ることが可能であり、それによって相応の周波数シフトが実現される。たとえばスケーリングによって互いに移行可能なDMSトラックA,Bが逆平行に配線されていれば、両方の部分フィルタに割り当てられるべき伝達曲線を同相で加算することができる。しかしながら両方のDMSトラックを平行に配線し、一方のトラックの位相を、フィルタの長軸を中心とする相応のインターディジタル変換器の折り返しによって、相応に反転させることも可能である。両方のインターディジタル変換器のうちの一方が波長の半分だけ、他方のインターディジタル変換器に向かってシフトしている場合にも、位相の変化を得ることができる。
【0026】
図2は、本発明によるフィルタの伝達曲線Rを示すとともに、本発明に基づいて配線された4つのDMSトラックの伝達曲線A,B,CおよびDから、どのようにしてこのフィルタが得られるかを示している。通過帯域PB1を有する第1の部分フィルタは、図1に示す図面に準ずる伝達曲線A,Bを有する2つのDMSトラックが組み合わされてなっている。この部分フィルタは、DMSトラックA,Bの個別共振に帰せられる主最大値H1,H2およびH3を有している。符号+および−は、その交代位相をそれぞれ表している。
【0027】
第2の部分フィルタは、同様の仕方で、伝達曲線CおよびDを有する別の2つのDMSトラックが組み合わされてなっている。この部分フィルタも、交代位相を備える3つの主共振H4,H5およびH6を有している。3つの主共振H4,H5およびH6は、この部分フィルタの通過帯域にわたって共同で広がっている。
【0028】
第1および第2の部分フィルタの通過帯域は、周波数に関して相互にオフセットされている。個々のDMSフィルタの伝達曲線から生じる結果として、一方の部分フィルタのそれぞれの通過帯域の下側で、さらに1つないし複数の副共振N1,N2およびN3がそれぞれ生じることになる。本発明によるとこのフィルタにおいて、フィンガの数、インターディジタル変換器からリフレクタまでの間隔、ならびにインターディジタル変換器相互の間隔を適切に変えることにより、主モードと副モードの間で、一方の部分フィルタの全部の副モードが他方の部分フィルタの主モードと同相かつ同じ周波数で現れるような周波数間隔が設定される。それにより、主共振と副共振の構造上の重なり合いが、下側の部分フィルタの通過帯域の歪みを低減させる。符号Rは、本例では4つのDMSトラックから組み合わされてなる本発明のフィルタの、結果として生じる全体的伝達曲線を表している。
【0029】
通過帯域の領域でまだ波打っているこのような未整合の伝達関数を、相応の整合部材との配線によって平滑化することができる。図3は、伝達関数が整合部材によって平滑化された本発明によるフィルタを示している。通過帯域の領域では、わずかな波形しか観察することができない。両方の通過帯域PB1およびPB2の間では伝達曲線が落ち込んでいる。その結果、この周波数領域で希望する阻止帯域抑圧が生じる。阻止領域に向かって第1の通過帯域PB1の下方および第2の通過帯域PB2の上方では、急勾配に降下していく通過帯域エッジを有する十分な減衰が生じる。
【0030】
図4は、模式的に示されたDMSトラックを用いて、隣接する2つのチャネルについて2つの通過帯域を有する本発明のフィルタの考えられる配線を示している。各々のDMSトラックDMS1からDMS4は、2つのリフレクタの間に配置された2つのインターディジタル変換器を有している。リフレクタは、リフレクタ内で相応の接触レールを介して相互に短絡されていてよい、波長の半分のラスタ間隔に位置するリフレクタストリップを有している。リフレクタをアースと接続することも可能である。
【0031】
便宜上、図面では4つすべてのDMSトラックDMS1からDMS4が同じ構造と同じ向きで図示されている。しかし実際には、個々のDMSトラックは一般にフィンガの数に関して相違しており、このことは特に、図2に示すように、本発明に基づく副共振のシフトのために必要である。同様に、1つのDMSトラックの2つのインターディジタル変換器の間の間隔、ないしはインターディジタル変換器と隣接するリフレクタとの間隔も、上述した両方の主共振が得られると同時に、副共振が主共振に対して適切な間隔で配置されるように調整される。図4に示す実施形態では、第1の部分フィルタTF1の第1および第2のDMSトラックDMS1,DMS2は、入力部INと出力部OUTとの間で逆平行に配線されている。両方のDMSトラックの共振周波数をシフトさせ、逆平行に配線することで、両方のフィルタに由来するすべての周波数部分について、位相が正しいことによる構造上の重なり合いが生じる。
【0032】
逆平行に配線されたDMSトラックDMS3およびDMS4を含む第2の部分フィルタTF2は、第1の部分フィルタTF1に対して並列につながれている。このような実施形態のほか、当然ながら、DMSトラックの長軸に沿った変換器の鏡像化によっても、位相の正しい配線、ないし必要な場合には位相の希望する反転を得ることができる。たとえば第2の部分フィルタの各々のトラックが長軸を中心として鏡像化されると、第1および第2の部分フィルタを互いに逆平行に配線することができ、このことは、結果として正の重なり合いを有する同一の位相位置をもたらす。
【0033】
図4に示す構造の別の変形例では、それぞれ2つの部分フィルタからなるこのような2つまたはそれ以上の構造を互いに並列に配線することができ、この場合、フィルタ全体のフィルタ特性および特にインピーダンスをいっそう改善することができる。
【0034】
図5は、本発明によるフィルタで採用することができるDMSトラックのさらに別の変形例を示している。このDMSトラックも、2つのリフレクタRE1およびRE2の間で音響トラック内部に配置された、2つのインターディジタル変換器IDT1およびIDT2を含んでいる。しかし図4の図面とは異なり、第1のインターディジタル変換器IDT1と第2のインターディジタル変換器IDT2との間には、中間リフレクタRZが配置されている。この中間リフレクタは個々のリフレクタストリップを有しており、または、グリッドをなすように結合されたリフレクタストリップを有している。ただし、中間リフレクタRZのリフレクタストリップの数は、外側のリフレクタRE1,RE2の数よりも少ないので、この中間リフレクタRZは音響的に通過性である。第1のインターディジタル変換器IDT1のバスバーは入力部と接続されており、第2のインターディジタル変換器IDT2の反対側のバスバーは出力部と接続されている。それぞれ他方の、本例の図面では浮遊するように図示しているバスバーは、アースと接続されるのが通常であり、リフレクタや中間リフレクタも同様である。しかしながらリフレクタおよび中間リフレクタは、インターディジタル変換器の電気接触のために利用することもでき、その場合には電位をもつことになる。同様のことは図4に示す構造についても当てはまる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
フィルタのすべてのDMSトラックは同じ基板の上に、特に水晶基板の上に配置されるのが好ましい。しかしながらそれ以外の基板材料を用いることも可能であり、ただしその場合、さほど急勾配でなく降下するフィルタエッジを甘受しなければならない。結合度が高くなるため、たとえばリチウムタンタレートやリチウムナイオベートといった他の基板材料の上にあるSAWフィルタについては、すべてのデザインパラメータを相応に適合化しなければならない。
【0036】
本発明は、実施例およびこれに対応する図面に記載された実施形態に限定されるものではない。これ以外の態様の可能性は、特に配線の形式、フィンガ電極の数、中間リフレクタのサイズ、あるいはDMSトラックごとのインターディジタル変換器の数などからもたらされる。各々のDMSトラックは、それぞれフィルタの入力部と出力部の間に配線された、2つを超えるインターディジタル変換器を有することができる。ただし、特に水晶基板上のフィルタについては、特に中間リフレクタを備える、2つのインターディジタル変換器を有する実施形態は、図3に示す良好な近接領域減衰を有する平滑な通過帯域を得るのに完全に十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SAWフィルタにおいて、
電気的に互いに配線された少なくとも4つのDMSトラックを有しており、
それぞれ2つのDMSトラックは部分フィルタに対して逆平行に配線されており、
逆平行に配線された前記2つのDMSトラックはそれぞれ2つの共振周波数を有しており、
前記共振周波数はトラックごとに部分フィルタ内部で相互にオフセットされ、それによって共同で通過帯域にわたって広がるようになっており、そのために第1のトラックの低いほうの周波数に位置する共振は同じ周波数で、第2のトラックの高いほうの周波数に位置する共振と同相であり、
両方の部分フィルタの通過帯域は相互にオフセットされるとともに、2チャネルフィルタの両方のチャネルのそれぞれ一方を含んでおり、
両方の部分フィルタにおける副モードと主モードの間の間隔は、通過帯域の所与のオフセットで、一方の部分フィルタの副モードがそれぞれ他方の部分フィルタの主共振に対して同相にそれぞれ配置されるように調整されている、フィルタ。
【請求項2】
前記DMSトラックは結合定数が低い共通の基板の上に構成されており、特に水晶の上に構成されている、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
一方の通過帯域の帯域幅は両方の通過帯域の帯域間隔と等しいオーダーである、請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
両方の前記チャネルは狭帯域で構成されるとともに等しい周波数帯域を分け合っている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項5】
各々のDMSトラックの入力部と出力部は少なくともそれぞれ1つの異なるインターディジタル変換器と配線されており、少なくとも2つのインターディジタル変換器が2つのリフレクタの間に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項6】
少なくとも1つの前記DMSトラックでは音響的に通過性のリフレクタが両方のインターディジタル変換器の間に配置されている、請求項5に記載のフィルタ。
【請求項7】
第1のチャネルの中心周波数は313.85MHzであり、第2のチャネルの中心周波数は315.0MHzである、請求項1から6までのいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項8】
両方のチャネルの各々の相対的なチャネル幅は0.1から0.25%である、請求項1から7までのいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項9】
リモートキーレスエントリ(RKE)システムや無線で照会可能なタイヤ空気圧管理システム(TPMS)で同時に受信をするための無線受信機に組み込まれている、請求項1から8までのいずれか1項に記載のフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−518353(P2012−518353A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550549(P2011−550549)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051989
【国際公開番号】WO2010/094707
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(300002160)エプコス アクチエンゲゼルシャフト (318)
【氏名又は名称原語表記】EPCOS  AG
【住所又は居所原語表記】St.−Martin−Strasse 53, D−81669 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】